View difference between Paste ID: hH46RCAi and vMzLn62r
SHOW: | | - or go back to the newest paste.
1
==Part A==
2
3
口病院屋上
4
夕陽の中、キユウベえと向き合って対峙するさやか。
5
さやか「本当に、どんな願いでも叶うんだね...」
6
キユウベえ「大丈夫。君の祈りは間違いなく遂げられる。じゃあ、いいんだね?」
7
さやか「うん。やって」
8
キユウべえ、手を差し伸べてさやかの胸に触れる。
9
さやか「...ッ!」
10
痛みに似た衝撃に身を震わせるさやか。
11
キユウベえが手を離すと、さやかの心臓の位置れから、ゆっくりと光る球が浮かび上がり、空中に浮遊する。さやかのソウルジエム。
12
出現した宝石を、恐る恐る、両手で掴み取るさやか。
13
キユウベえ「さあ、受け入れるといい。それが君の運命だ」
14
さやか「...」
15
決意に表情を引き締め、頷くさやか。
16
17
口朝の教室
18
朝のHR前、漫然と談笑している生徒たち。
19
仁美の机に、さやかとまどかが屯している。
20
ふわ、と欠伸をする仁美。
21
仁美「ああ、はしたない...ごめんあそばせ」
22
さやか「どうしたのよ仁美?寝不足?」
23
仁美「ええ。ゆうべは病院やら警察やらで夜遅くまで...」
24
まどか「...」
25
息を呑みそうになるまどか。だがさやかは素知らぬ顔で続ける。
26
さやか「え~? 何かあったの?」
27
仁美「なんだか私、夢遊病っていうのか...それも同じような症状の人が大勢いて、気がついたらみんなで同じ場所に倒れていたんですの」
28
さやか「はあ?何ソレ?」
29
仁美「お医者様は集団幻覚だとか何とか...今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの。ああ、面倒臭いわ・・・・・」
30
さやか「そんなことなら学校休んじゃえば良かったのに」
31
仁美「駄目ですわ。それではまるで本当に病気みたいで、家の者がますます心配してしまいますもの」
32
さやか「さっすが優等生。体いわあ」
33
まどか「...」
34
からからと笑うさやか。まどかはそこまで厚顏に上辺を繕えず、決まり悪く沈黙する。
35
ほむら「...」
36
そんな二人を、やや離れた席から、無表情に観察しているほむら。
37
38
口河原の土手
39
放課後(士曜なので半ドンです)、土手の芝生に寝転がって青空を見上げているさやか。隣に座っているまどか。
40
さやか「んーツ、久々に気分いいわぁ。爽快爽快ッ!」
41
まどか「さやかちゃんはさ、...恐くは、ないの?」
42
さやか「ん? そりゃ、ちょっとは恐いけど。まあ昨日のヤツにはあっさり勝てたし」
43
あくまで笑顔のさやか。が、やや真面目な声で続ける。
44
さやか「もしかしたらまどかと仁美とーー友達二人も同時に亡くしたかもしれないって、そっちの方がよっぽど恐いよね」
45
まどか「...」
46
さやか「だ・か・らツ」
47
身体を起こし、ピシッ、と格好つけてソウルジエムを構えて見せるさやか。
48
さやか「何?っかな。自信? 安心感?ちょっと自分を褒めちやいたい気分つうかね。まー舞い上がっちゃってますねーあたし。これからも見滝原市の平和は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン護リまくっちゃいますからねー」
49
さやかが一人でテンションを上げまくる一方で、まどかはいまいち素直に笑えない。
50
まどか「後悔とか、ぜんぜんないの?」
51
さやか「そーねえ...後悔っていえば、迷ってたことが後悔かな」
52
苦笑いしつつ、ややシリアスに過去を顧みてしまうさやか。
53
さやか「どうせだったら、もうちょっと早く、心を決めるべきだったな、って」
54
まどか「...」
55
まどかとさやか、共に思い出すのは、三話でのマミの最期。
56
さやか「あのときの魔女、あたしと二人がかりで戦ってたら、マミさんも死なないで済んだかもしれない」
57
まどか「わたし...」
58
まどか、マミの最後の戦いの前に、魔法少女になることを誓けったことを思い山す。魔法少女への道を志したのは、実はさやかよりまどかの方が先だったのだ。
59
まどか「...」
60
責められるべきは自分だ、と悔恨に泣きそうになるまどか。
61
そんなまどかの肩を、励ましの笑顔でこづくさやか。
62
さやか「さては、なんか変なこと考えてるな?」
63
まどか「...わたし...わたしだって...」
64
さやか「なっちゃった後だから言えるの。こーゅーことは」
65
まどかの葛藤を和らげるために、あえて気安い口調で言い放つさやか。
66
さやか「『どうせなら」っていうのがミソなのよ。あたしはさ、なるべくして魔法少女になったわけ」
67
まどか「さやかちゃん...」
68
さやか「願い事、見つけたんだもの。命懸けで戦う羽目になったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの。そう気付くのが遅すぎた、っていうのが、ちょっと悔しいだけでさ...」
69
まどかに、にっこりと微笑みかけるさやか。
70
さやか「だから、引け目なんて感じなくていいんだよ。まどかは魔法少女にならずにすんだっていう、ただそれだけのことなんだから」
71
まどか「...」
72
素直に納得はできないものの、ともかく領くまどか。
73
さやかは立ち上がり、気持ちよさそうに伸びをする。
74
さやか「ん~っ、さて、と。じゃあそろそろ、あたしは行かないと」
75
まどか「? 何か用事があるの?」
76
さやか「まあ。ちょっと、ね」
77
何やら浮かれた表情のさやか。
78
79
口恭介の病室
80
見舞いに来ているさやか。恭介は以前より明らかに血色がいい。
81
さやか「そっか。退院はまだなんだ...」
82
恭介「足のリハビリがまだ済んでないしね。ちゃんと歩けるようになってからでないと」
83
不思議そうに、全治した左手をしげしげと眺める恭介。
84
恭介「手の方も、いったいどうして急に治ったのか、まったく理由が分からないんだってき。だからもうしばらく、精密検査がいるんだって」
85
さやか「恭介自身は、どうなの?どっか身体におかしなとこ、ある?」
86
恭介「いや、なさすぎて恐いっていうか...事故に遭ったのさえ悪い夢だったみたいに思えてくる。なんで僕、こんなベッドに寝てるのかな、って。...さやかが言った通り、奇跡だよね、これ」
87
気まずげに目を伏せる恭介。
88
さやか「ん?どしたの?」
89
恭介「さやかには...酷いこと、言っちゃったよね。いくら気が滅入ってたとはいえ...」
90
にこやかに笑い飛ばすさやか。
91
さやか「変なこと思い山さなくていーの。今の恭介は大喜びしてて当然なんだから。そんな顔してちゃ駄目だよ」
92
恭介「うん。...なんか、実感なくてさ」
93
さやか「まあ、無理もないよね」
94
ちらり、と腕時計を確かめるさやか。
95
さやか「うん、そろそろかな」
96
恭介「?」
97
さやか「恭介、ちょっと外の空気、吸いに行こ」
98
99
口病院エレベーター
100
車椅子に乗せた恭介を押して、エレベーターに乗り込むさやか。
101
屋上の行き先ボタンを押す。やや不思議そうな恭介。
102
恭介「...屋上なんかに、何の用?」
103
さやか「いいから、いいから」
104
105
口病院屋上
106
屋上に出た恭介とさやかを出迎える人々ーー恭介の両親、主治医、そして手の空いていた病院のスタッフたち一同。
107
晴れヤかな拍手。
108
恭介、初めは驚き戸惑うものの、やがて皆の祝福に照れはじめる。
109
恭介「みんなーー」
110
さやか「本当のお祝いは、退院してからなんだけど...足より先に手が治っちゃったしね」
111
恭介の父親が進み出る。手にはバイオリンのケース。
112
やや狼狽える恭介。
113
恭介「それはーー」
114
恭介の父「お前からは処分しろと言われていたが...どうしても捨てられなかったんだ。私は」
115
感極まりつつも、努めて平静を装っている恭介の父。(ちなみに恭介の師でもあります)
116
差し出されたバイオリンを、恐る恐る受け取る恭介。
117
恭介の父、目線で主治医の顔色を窺う。
118
まあ大丈夫でしょう、と笑顔で頷く主治医。
119
恭介の父「さあ、試してごらん。怖がらなくていい」
120
恭介「...」
121
やや躊躇する恭介だが、やがて覚悟を決め、バイオリンを構えて弓を弦に当てる。
122
ゆっくりと演奏が始まるラフマニノフのヴオカリーズ。
123
初めは恐る恐る、だが次第に情熱的に。
124
まったく衰えていない天賦の才能。その場にいる全員が陶然と聞き惚れる。
125
諦めていた演奏の喜びに、涙を流しながら弾き続ける恭介。
126
さやかM『マミさん...あたしの願い、叶つたよ』
127
その様子に、さやかは至福を噛み締めて、青い空を見上げる。
128
さやかM『後悔なんて、あるわけない...あたし、今、最高に幸せだよ...』
129
演奏が終わる。車椅子の上で精根尽きて、だが清々しく脱力する恭介。聴衆からはやんやの拍手喝采。
130
感激の涙に喉を詰まらせながら、苦笑いする恭介。
131
恭介「...駄目だなあ...レッスン、サボりすぎちゃったから...全然、なってない...」
132
恭介の父「また、やり直せばいい。いくらでも練習すればいい」
133
恭介の父も、もはや涙を抑えきれない。
134
見守るさやかは、満ち足りた想いで、自分のソウルジエムを握リしめる。
135
136
口街のランドマークタワー、展望台
137
コイン式双眼鏡で、病院の屋上のさやかを観察している杏子。
138
双眼鏡は脊子のソウルジエムがめり込み、即製の魔道具と化している。
139
杏子「ふーん、あれがこの街の新しい魔法少女ね...」
140
手にしたワッフルをむしゃむしゃ食べながら、冷笑する杏子。
141
その隣にはキユウベえ。
142
キユウべえ「本当に彼女と事を構える気かい?」
143
杏子「だってチヨロそうじゃん。瞬殺っしょ。あんなやつ」
144
双眼鏡から顔を上げ、ソウルジエムを引っこ抜く杏子。
145
途端に双眼鏡は魔力を失ってもとの姿に。
146
杏子「それとも何?文句あるっての?あんた」
147
キユウべえ「...すべて君の思い通りにいくとは限らないよ。
148
この街にはもう一人、魔法少女がいるからね」
149
杏子「へえ? 何者なの、そいつ」
150
キユウベえ「僕にもよく分からない」
151
杏子「ハア?」
152
キユウベえを恫喝するかのように眼差しを険しくする杏子。
153
杏子「どういうことさ。そいつだってあんたと契約して魔法少女になったんでしょ?」
154
キユウベえ「そうとも言えるし、違うとも言える」
155
意味深にはぐらかすキユウベえ。はったりではなく厄介な事情があるらしいと察して、眉を顰める杏子。
156
キユウベえ「あの子は極めつきのイレギュラーだ。どういう行動に出るか、僕にも予想しきれない」
157
杏子「ハン...上等じゃないの」
158
不敵に笑って、残りのワッフルを口に放り込む杏子。
159-
杏子「退屈すぎても何だしさ。ちったあ面白味もないとねえ」
159+
杏子「退屈すぎても何だしさ。ちったあ面白味もないとねえ」
160
161
==Part B==
162
163
口ファーストフード店
164
まどか達の行きつけの店。今日はまどかとほむらが差し向かいに座っている。まどかは定番のバリューセットだが、ほむらはコーヒー単品の注文。
165
明らかに緊張してガチガチになっているまどか。
166
ほむら「話って、何?」
167
昨日と違ってあからさまに拒絶の雰囲気を放っているほむら。まどかは萎縮してしまい、話しづらい。
168
まどか「あのね、さやかちゃんの事、なんだけど...」
169
ほむら「...」
170
さやかの名前を聞いた途端、ますます冷淡な雰囲気を漂わせはじめるほむら。さらに慌てるまどか。
171
まどか「ぁ、あの子はね、思い込みが激しくて意地っ張りで、けつこうすぐに人とケンカしちやったり...でもね、すっごくいい子なの。優しくて勇気があって、誰かのためと思ったら頑張りすぎちゃって...」
172
ほむら「魔法少女としては致命的ね」
173
まどか「そう...なの?」
174
ほむら、コーヒーを口に運んでから、あくまで冷淡に続ける。
175
ほむら「度を超した優しさは甘さに繋がるし、蛮勇は油断になる。そしてどんな献身にも見返りなんてない...それを弁えていなければ魔法少女は務まらない。だから巴マミもん命を落とした」
176
まどか「そんな言い方やめてよ!」
177
思わずかっとなって反駁してから、口論しに来たのではないと思い直し、しゅんとなるまどか。
178
まどか「...そう。さやかちゃん、自分では平気だって言つてるけど...でももしマミさんのときと同じようなことになったら、って思うと...わたし、どうすればいいのか...」
179
ほむら「美樹さやかのことが、心配なのね」
180
こくん、と領くまどか。
181
まどか「わたしじゃあ、もう、さやかちゃんのカになってあげられないから...だから、ほむらちゃんにお願いしたいの」
182
まどか、勇気を出して、真正面からほむらを見つめて頼み込む。
183
まどか「さやかちゃんと仲良くしてあげて。マミさんのときみたいに、ケンカしないで。魔女をやっつけるときも、みんなで協力して戦えば、ずっと安全なはずだよね?」
184
ほむら「...」
185
無言のままコーヒーを啜るほむら。辛抱強く返事を待つまどか。
186
やがて、根負けしたほむらが口を聞く。
187
ほむら「私は嘘をつきたくないし、できもしない約束をしたくもない」
188
まどか「...」
189
ほむら「だから、美樹さやかのことは諦めて」
190
きっぱり言い切るほむらに、悲しくなって目を潤ませるまどか。
191
まどか「...どうして、なの?」
192
ほむら「あの子は契約なんでするべきじゃなかった。たしかに私のミスよ。あなただけでなく彼女もきちんと監視しておくべきだった」
193
まどか「ならーー」
194
ほむら「でも、責任を認めた上で言わせてもらうわ。今となっては、どうやっても償いきれないミスなの。死んでしまった人が帰ってこないのと同じこと」
195
淡々と、だが有無を言わせぬほむらの語調。まどかは納得できず、さりとて言い返すこともできず、ただ項垂れるしかない。
196
ほむら「一度魔法少女になってしまったら、もう救われる望みなんて、ない。...あの契約は、たったひとつの希望と引き換えに、すべてを諦めるってことだから」
197
まどか「...だから、ほむらちゃんも諦めちゃってるの?自分のことも、他の子のことも、全部?」
198
ほむら「ええ」
199
さも当然のように領くほむら。
200
ほむら「罪滅ぼし、なんて言い訳はしないわ。私はどんな罪を背負おうと、私の戦いを続けなきゃならない」
201
ほむら、飲みかけのコーヒーの横に千円札を一枚置き、席を立つ。
202
ほむら「時間を無駄にさせたわね。ごめんなさい」
203
立ち去るほむら。まどかは遣リ場のない悔しさに涙して、その場を動けない。
204
205
口さやかの私室
206
外出の準備を整えるさやか。いよいよ単独で初の魔女探レ。
207
鏡の前で、両手で顔をひっぱたいて気合いを入れる。
208
その様子を見守っているキユウベえ。
209
キュゥベえ「緊張しているのかい?」
210
さやか「まーねー。一つ間違えたら御陀仏なわけだし」
211
212
口美樹家のアパートの前
213
アパートを出たところで、さやかは、すぐ側の街灯の下で待っていたまどかの姿に気付く。
214
さやか「...まどか?」
215
まどか「さやかちゃん、これから、その...」
216
さやか「そ。悪い魔女を捜してパトロール。これも正義の昧方の務めだからねー」
217
茶化して言、っさやかだが、まどかは笑う気になれない。
218
まどか「一人でーー平気なの?」
219
さやか「へーきへーき。マミさんだってそうしてたんだし。弟子としてそのぐらいはねー」
220
それを言われた途端、まどかは、孤独に耐えかねていたマミの本音を思い出す。
221
まどか「ぁ、あのねてわたし、何にもできないし、足手まといにしかならないって分かってるんだけど、でも...邪魔にならない所まででいいの。行ける所まで、一緒に...連れてってもらえたら、って...」
222
さやか「...」
223
さやか、一旦きょとんとなってから、まどかの気持ちを理解して優しく微笑む。
224
さやか「頑張りすぎじゃない?」
225
まどか「ご、ごめん...駄目だよね。迷惑だつてのは分かつてたの...」
226
さやか「ううん。すっごく嬉しい」
227
さやか、まどかの手を握る。
228
はっとなるまどか。
229
さやか「ね...分かる?手が震えちやってき。さっきから、止まらないの。情けないよね。もう魔法少女だつてのに、一人だと心細いなんでさ...」
230
まどか「さやかちゃん...」
231
さやか「邪魔なんかじゃない。凄く嬉しい。誰かが一緒にいてくれるってだけで、あたし、すっごく心強いよ。それこそ百人力って感じ」
232
まどか「わたし...」
233
さやか「必ず守るよ。だから安心して、あたしの後についてきて。今までみたいに、一緒に魔女をやっつけよ」
234
まどか「...うん」
235
はにかみながら領くまどか。
236
だがキユウべえはあくまで冷静に、さやかに問う。
237
キユウベえ「危険は承知の上なんだね?」
238
自信を込めて微笑むさやか。
239
さやか「あたしパカだから、一人だと無茶な出鱈目やらかしかねないし。まどかもいるんだって肝に銘じてれば、それだけ慎重になれると思う」
240
キユウべえ「そうか...うん。考えがあっての事なら、いいんだ」
241
まどか「キユウベえ...」
242
声をかけるまどか。キユウべえはさやかの肩に乗ったまま振り向き、視線だけをまどかに向けて、思念を送ってくる。
243
キユウベえ『君にも君の考えがあるんだろう?まどか』
244
まどか「...」
245
さやか抜きの密談に、ぎょっとなるまどか。
246
キユウベえ『さやかを守りたい君の気持ちは解る。実際、君が隣にいてくれるだけで、最悪の事態に備えた切り札を、ひとつだけ用意できるしね』
247
x x x
248
無人のマミの部屋。テーブルの上に置き去りにされたまどかの変身構想ノート。
249
閣の中で、どこからともなく風が吹き、数々の空想図が描かれたページがぱらぱらと捲れ上がる。
250
x x x 
251
ごくり、と生唾を呑むまどか。
252
まどか『わたしは...』
253
キユウベえ『今は何も言わなくていい。さやかもきっと反対するだろうし』
254
テレパシーで交わされるまどかとキユウベえの会話に、さやかは全く気付かない。
255
合みを込めた微笑をまどかに送るキユウベえ。
256
キユウべえ『ただーーもし君が心を決めるときが来たら、僕の準備はいつでも整ってるからね』
257
まどか『...うん』
258
259
口結界内部
260
いつもの魔女の結界よりも狭くて不安定な異空間を進むさやか、まどか、キユウベえ。
261
キユウベえ「この結界は、たぶん魔女じゃなくて使い魔のものだね」
262
さやか「楽に越したことないよ。こちとらまだ初心者なんだし」
263
まどか「あツ、あそこ!」
264
物陰に潜んでいる使い魔の姿を見つける一行。
265
使い魔「ギィッ、ギギッ!」
266
使い魔は侵入者を攻撃することすらせず、そのまま逃げに入る。
267
まどか「逃げるよ!」
268
さやか「任せて!」
269
さやか変身。
270
光弾を放ち、逃げる使い魔に追い打ち。
271
だがその攻撃が、不意に張られたバリアによって阻まれる。
272
まどか、さやか「えつ!?」
273
驚くまどかとさやか。唯一、状況を察したキュゥべえは苦い顔。
274
逃げる使い魔とさやかとの間に割り込んできたのは、魔法少女スタイルの杏子。右肩に拾を担ぎつつ、左手では鯛焼きを食べている。
275
杏子「ちょっとちょっと、何やってんのさアンタ達」
276
小馬鹿にした呆れ顔の杏子。
277
その閲に使い・隠は逃げて、姿を消す。
278
さやか「な:::逃がしちゃう!」
279
追おうとするさやかを、杏子の檎の切っ先が阻む。
280
その間に結界は解除され、周囲は人気のない裏路地の景色に。
281
杏子「見て分かんないの?あれ魔女じゃなくて使い魔だよ。グリーフシードを持ってるわけないじゃん」
282
さやか「だって、あれ放つといたら、誰かが殺されるのよ!」
283
怒るさやかの剣幕に、ますます面倒臭そうに眉を顰める杏子。
284
杏子「だあからさ、4、5人ばかり喰って魔女になるまで待てつての。そうすりゃちゃんとグリーフシードも孕むんだからさ。アン夕、タマゴ産む前のニワトリ絞めてどーすんのさ」
285
さやか「な...」
286
杏子の言葉に愕然となるきゃか。その驚きはすぐさま怒りに。
287
さやか「魔女に襲われる人たちを...あんた、見殺しにするってい、つの!?」
288
呑気に鯛焼きを食べながら、呆れた風に歎息する杏子。
289
杏子「アンタさ、なんか大本から勘違いしてんじゃない?食物述鎖って知ってる?ガツコーで習ったよねえ?」
290
微笑みに邪悪さを覗かせる杏子。
291
杏子「弱い人間を魔女が喰う。その魔女をアタシたちが喰う。これが当たり前のルールでしょ。そういう強さの順番なんだから」
292
まどか「そんな...」
293
想像だにしなかった邪悪な思考に、震え上がるまどか。
294
さやか「あんたは...」
295
怒りのあまり言葉に詰まるさやか。
296
杏子「まさかとは思うけどーー」
297
杏子は冷ややかな侮蔑の眼差しで、さやかとまどかを見据えながら、キユウベえを顎で指す。
298
キユウベえ、さりげなく、さやかから離れてまどかに身を寄せている。
299
杏子「ゃれ人助けだの正義だの...その手のおちゃらけた冗談かますために、ソイツと契約したわけじゃないよね?アンタ」
300
さやか「だったら何だってのよ!」
301
叫ぶと同時に剣で杏子に斬りかかるさやかだが水杏子はさやかの動きを完全に見越して、右手一本で揮つた槍でガードする。
302
杏子「...ちょっとさあ、やめてくれない?」
303
相変わらず鯛焼きを食べながら、余裕の笑顔でさやかの剣を受け止めている杏子。さやかが渾身の力で押し込もうとも、びくともしない。
304
杏子は笑顔を引っ込め、冷淡な殺意の無表情に。
305
杏子「遊び半分で首突っ込まれるのってさあ...ほんとムカツクんだわ」
306
杏子はさやかの剣を振り払い、返す拾でさやかを一撃。
307
盛大に吹っ飛ばされるさやか。
308
さやか「あぐ...ッ!」
309
まどか「さやかちゃん!」
310
鼻で笑って踵を返す杏子。
311
杏子「フン、トーシロが。ちったあ頭冷やせつての」
312
そのまま立ち去ろうとした杏子だが、ふと背後の気配に眉を顰め、立一ち止まって振り返る。
313
苦しそうに呻きながらも、立ち上がるさやか。
314
杏子「...おっかしいなあ。全治三ヶ月、ってぐらいにはかましてやった筈なんだけど」
315
心配して戸惑うまどか。
316
まどか「さやかちゃん、平気なの...」
317
キユウベえ「彼女は癒しの祈りを契約にして魔法少女になったからね。ダメージからの回復力は人一倍だ」
318
さやか「誰が...あんたなんかに...」
319
杏子を睨み、怒りを込めて剣を構えるさやか。
320
さやか「あんたみたいなヤツがいるから、マミさんは...」
321
杏子「...うぜー、チョーうぜー」
322
鯛焼きの最後の一日を頬張って片付ける杏子。
323
さも欝陶しそうに舌打ちしながら、両手で槍を構え直す。
324
杏子「つーか何?そもそも口の利き方がなってないよねえ。
325
先輩に向かってさあ」
326
さやか「黙れえツ!」
327
斬りかかるさやか。応戦する杏子。
328
撃ち合う剣と槍。だが両手で槍を繰るようになった杏子は、ますます圧倒的である。
329
杏子「チャラチヤラ踊ってんじゃねーょ、ウスノロ!」
330
一矢報いるのも叶わぬどころか、たちまち追い詰められるさやか。
331
まどか「さやかちゃん...ッ!」
332
キユウベえ「まどか、近づいたら危険だ!」
333
容赦ない杏子の約を何発も受けて、膝をつくさやか。
334
さやか「ぐッ...うッ...!」
335
杏子「言って聞かせて分からねー、殴っても分からねーバカとなりや...あとは殺しちゃうしかないよねえ!」
336
杏子が繰り出すとどめの一撃。すんでのところで避けるさやか。
337
痛みに歯を食いしばっているものの、槍で受けた傷は、治癒魔術によってどんどん塞がっていく。
338
さやか「負けない...負けるもんかッ!」
339
再び愚直にも斬りかかっていくさやか。
340
痛ましいその姿が、まどかは正視に堪えない。
341
まどか「どうして...ねえ、どうして?魔女じゃないのに...どうして味方同士で戦わなきゃならないの!?」
342
キユウベえ「どうしょうもない...お互い、譲る気なんてまるでないよ」
343
激しい剣戦。余裕の笑みの杏子。ますます傷つくさやか。
344
まどか「お願い、キユウベえ、止めさせて...こんなのってないよ!」
345
キユウベえ「僕にはどうしょうもない。でもーー」
346
言葉に含みを込めて、まどかを見つめるキユウベえ。
347
キュゥべえ「どうしても、力ずくでも止めさせたいのなら、方法がないわけじゃないよ。まどかーーどうする?」
348
まどか「...ッ!」
349
胸を押さえるまどか。怯えて足が震える。
350
キユウベえ「あの戦いに割り込むには、同じ魔法少女でなきゃ駄目だ。でも君にならその資絡がある。本当にそれを望むなら、ね」
351
まどかM『そうだ...わたしが、契約すれば...』
352
追い詰められていくさやか。
353
それを救いたいと思いつつ、最後の勇気を固められず、躊躇するまどか。
354
さやか、ついに両足を砕かれて倒れ伏す。治癒して立ち上がるよりも、杏子の次の攻撃が早い。
355
杏子「終わりだよ!」
356
さやか「くーー」
357
まどか、自棄になり叫ぽうとする。
358
まどか「わたし...」
359
ほむら「ーーそれには及ばないわ」
360
ふいにまどかの背後に現れて、告げるほむら。
361
はっとして振り向くまどかだが、既にほむらの姿はない。
362
同時に、槍を繰り出そうとしていた杏子も、立ち上がろうとしていたさやかも、何故かそれぞれ全然別の位置で、別の方向を向いている。空振りで終わる杏子の槍。(ほむらが時間を止めて細工しました)
363
杏子「なーーツ!?」
364
さやか「え...?」
365
愕然となる二人。その中間に、平然と件んでいる魔法少女スタイルのほむら。