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- ==Part A==
- 口病院屋上
- 夕陽の中、キユウベえと向き合って対峙するさやか。
- さやか「本当に、どんな願いでも叶うんだね...」
- キユウベえ「大丈夫。君の祈りは間違いなく遂げられる。じゃあ、いいんだね?」
- さやか「うん。やって」
- キユウべえ、手を差し伸べてさやかの胸に触れる。
- さやか「...ッ!」
- 痛みに似た衝撃に身を震わせるさやか。
- キユウベえが手を離すと、さやかの心臓の位置れから、ゆっくりと光る球が浮かび上がり、空中に浮遊する。さやかのソウルジエム。
- 出現した宝石を、恐る恐る、両手で掴み取るさやか。
- キユウベえ「さあ、受け入れるといい。それが君の運命だ」
- さやか「...」
- 決意に表情を引き締め、頷くさやか。
- 口朝の教室
- 朝のHR前、漫然と談笑している生徒たち。
- 仁美の机に、さやかとまどかが屯している。
- ふわ、と欠伸をする仁美。
- 仁美「ああ、はしたない...ごめんあそばせ」
- さやか「どうしたのよ仁美?寝不足?」
- 仁美「ええ。ゆうべは病院やら警察やらで夜遅くまで...」
- まどか「...」
- 息を呑みそうになるまどか。だがさやかは素知らぬ顔で続ける。
- さやか「え~? 何かあったの?」
- 仁美「なんだか私、夢遊病っていうのか...それも同じような症状の人が大勢いて、気がついたらみんなで同じ場所に倒れていたんですの」
- さやか「はあ?何ソレ?」
- 仁美「お医者様は集団幻覚だとか何とか...今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの。ああ、面倒臭いわ・・・・・」
- さやか「そんなことなら学校休んじゃえば良かったのに」
- 仁美「駄目ですわ。それではまるで本当に病気みたいで、家の者がますます心配してしまいますもの」
- さやか「さっすが優等生。体いわあ」
- まどか「...」
- からからと笑うさやか。まどかはそこまで厚顏に上辺を繕えず、決まり悪く沈黙する。
- ほむら「...」
- そんな二人を、やや離れた席から、無表情に観察しているほむら。
- 口河原の土手
- 放課後(士曜なので半ドンです)、土手の芝生に寝転がって青空を見上げているさやか。隣に座っているまどか。
- さやか「んーツ、久々に気分いいわぁ。爽快爽快ッ!」
- まどか「さやかちゃんはさ、...恐くは、ないの?」
- さやか「ん? そりゃ、ちょっとは恐いけど。まあ昨日のヤツにはあっさり勝てたし」
- あくまで笑顔のさやか。が、やや真面目な声で続ける。
- さやか「もしかしたらまどかと仁美とーー友達二人も同時に亡くしたかもしれないって、そっちの方がよっぽど恐いよね」
- まどか「...」
- さやか「だ・か・らツ」
- 身体を起こし、ピシッ、と格好つけてソウルジエムを構えて見せるさやか。
- さやか「何?っかな。自信? 安心感?ちょっと自分を褒めちやいたい気分つうかね。まー舞い上がっちゃってますねーあたし。これからも見滝原市の平和は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン護リまくっちゃいますからねー」
- さやかが一人でテンションを上げまくる一方で、まどかはいまいち素直に笑えない。
- まどか「後悔とか、ぜんぜんないの?」
- さやか「そーねえ...後悔っていえば、迷ってたことが後悔かな」
- 苦笑いしつつ、ややシリアスに過去を顧みてしまうさやか。
- さやか「どうせだったら、もうちょっと早く、心を決めるべきだったな、って」
- まどか「...」
- まどかとさやか、共に思い出すのは、三話でのマミの最期。
- さやか「あのときの魔女、あたしと二人がかりで戦ってたら、マミさんも死なないで済んだかもしれない」
- まどか「わたし...」
- まどか、マミの最後の戦いの前に、魔法少女になることを誓けったことを思い山す。魔法少女への道を志したのは、実はさやかよりまどかの方が先だったのだ。
- まどか「...」
- 責められるべきは自分だ、と悔恨に泣きそうになるまどか。
- そんなまどかの肩を、励ましの笑顔でこづくさやか。
- さやか「さては、なんか変なこと考えてるな?」
- まどか「...わたし...わたしだって...」
- さやか「なっちゃった後だから言えるの。こーゅーことは」
- まどかの葛藤を和らげるために、あえて気安い口調で言い放つさやか。
- さやか「『どうせなら」っていうのがミソなのよ。あたしはさ、なるべくして魔法少女になったわけ」
- まどか「さやかちゃん...」
- さやか「願い事、見つけたんだもの。命懸けで戦う羽目になったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの。そう気付くのが遅すぎた、っていうのが、ちょっと悔しいだけでさ...」
- まどかに、にっこりと微笑みかけるさやか。
- さやか「だから、引け目なんて感じなくていいんだよ。まどかは魔法少女にならずにすんだっていう、ただそれだけのことなんだから」
- まどか「...」
- 素直に納得はできないものの、ともかく領くまどか。
- さやかは立ち上がり、気持ちよさそうに伸びをする。
- さやか「ん~っ、さて、と。じゃあそろそろ、あたしは行かないと」
- まどか「? 何か用事があるの?」
- さやか「まあ。ちょっと、ね」
- 何やら浮かれた表情のさやか。
- 口恭介の病室
- 見舞いに来ているさやか。恭介は以前より明らかに血色がいい。
- さやか「そっか。退院はまだなんだ...」
- 恭介「足のリハビリがまだ済んでないしね。ちゃんと歩けるようになってからでないと」
- 不思議そうに、全治した左手をしげしげと眺める恭介。
- 恭介「手の方も、いったいどうして急に治ったのか、まったく理由が分からないんだってき。だからもうしばらく、精密検査がいるんだって」
- さやか「恭介自身は、どうなの?どっか身体におかしなとこ、ある?」
- 恭介「いや、なさすぎて恐いっていうか...事故に遭ったのさえ悪い夢だったみたいに思えてくる。なんで僕、こんなベッドに寝てるのかな、って。...さやかが言った通り、奇跡だよね、これ」
- 気まずげに目を伏せる恭介。
- さやか「ん?どしたの?」
- 恭介「さやかには...酷いこと、言っちゃったよね。いくら気が滅入ってたとはいえ...」
- にこやかに笑い飛ばすさやか。
- さやか「変なこと思い山さなくていーの。今の恭介は大喜びしてて当然なんだから。そんな顔してちゃ駄目だよ」
- 恭介「うん。...なんか、実感なくてさ」
- さやか「まあ、無理もないよね」
- ちらり、と腕時計を確かめるさやか。
- さやか「うん、そろそろかな」
- 恭介「?」
- さやか「恭介、ちょっと外の空気、吸いに行こ」
- 口病院エレベーター
- 車椅子に乗せた恭介を押して、エレベーターに乗り込むさやか。
- 屋上の行き先ボタンを押す。やや不思議そうな恭介。
- 恭介「...屋上なんかに、何の用?」
- さやか「いいから、いいから」
- 口病院屋上
- 屋上に出た恭介とさやかを出迎える人々ーー恭介の両親、主治医、そして手の空いていた病院のスタッフたち一同。
- 晴れヤかな拍手。
- 恭介、初めは驚き戸惑うものの、やがて皆の祝福に照れはじめる。
- 恭介「みんなーー」
- さやか「本当のお祝いは、退院してからなんだけど...足より先に手が治っちゃったしね」
- 恭介の父親が進み出る。手にはバイオリンのケース。
- やや狼狽える恭介。
- 恭介「それはーー」
- 恭介の父「お前からは処分しろと言われていたが...どうしても捨てられなかったんだ。私は」
- 感極まりつつも、努めて平静を装っている恭介の父。(ちなみに恭介の師でもあります)
- 差し出されたバイオリンを、恐る恐る受け取る恭介。
- 恭介の父、目線で主治医の顔色を窺う。
- まあ大丈夫でしょう、と笑顔で頷く主治医。
- 恭介の父「さあ、試してごらん。怖がらなくていい」
- 恭介「...」
- やや躊躇する恭介だが、やがて覚悟を決め、バイオリンを構えて弓を弦に当てる。
- ゆっくりと演奏が始まるラフマニノフのヴオカリーズ。
- 初めは恐る恐る、だが次第に情熱的に。
- まったく衰えていない天賦の才能。その場にいる全員が陶然と聞き惚れる。
- 諦めていた演奏の喜びに、涙を流しながら弾き続ける恭介。
- さやかM『マミさん...あたしの願い、叶つたよ』
- その様子に、さやかは至福を噛み締めて、青い空を見上げる。
- さやかM『後悔なんて、あるわけない...あたし、今、最高に幸せだよ...』
- 演奏が終わる。車椅子の上で精根尽きて、だが清々しく脱力する恭介。聴衆からはやんやの拍手喝采。
- 感激の涙に喉を詰まらせながら、苦笑いする恭介。
- 恭介「...駄目だなあ...レッスン、サボりすぎちゃったから...全然、なってない...」
- 恭介の父「また、やり直せばいい。いくらでも練習すればいい」
- 恭介の父も、もはや涙を抑えきれない。
- 見守るさやかは、満ち足りた想いで、自分のソウルジエムを握リしめる。
- 口街のランドマークタワー、展望台
- コイン式双眼鏡で、病院の屋上のさやかを観察している杏子。
- 双眼鏡は脊子のソウルジエムがめり込み、即製の魔道具と化している。
- 杏子「ふーん、あれがこの街の新しい魔法少女ね...」
- 手にしたワッフルをむしゃむしゃ食べながら、冷笑する杏子。
- その隣にはキユウベえ。
- キユウべえ「本当に彼女と事を構える気かい?」
- 杏子「だってチヨロそうじゃん。瞬殺っしょ。あんなやつ」
- 双眼鏡から顔を上げ、ソウルジエムを引っこ抜く杏子。
- 途端に双眼鏡は魔力を失ってもとの姿に。
- 杏子「それとも何?文句あるっての?あんた」
- キユウべえ「...すべて君の思い通りにいくとは限らないよ。
- この街にはもう一人、魔法少女がいるからね」
- 杏子「へえ? 何者なの、そいつ」
- キユウベえ「僕にもよく分からない」
- 杏子「ハア?」
- キユウベえを恫喝するかのように眼差しを険しくする杏子。
- 杏子「どういうことさ。そいつだってあんたと契約して魔法少女になったんでしょ?」
- キユウベえ「そうとも言えるし、違うとも言える」
- 意味深にはぐらかすキユウベえ。はったりではなく厄介な事情があるらしいと察して、眉を顰める杏子。
- キユウベえ「あの子は極めつきのイレギュラーだ。どういう行動に出るか、僕にも予想しきれない」
- 杏子「ハン...上等じゃないの」
- 不敵に笑って、残りのワッフルを口に放り込む杏子。
- 杏子「退屈すぎても何だしさ。ちったあ面白味もないとねえ」
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