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- (現在大ヒット中の、携帯音楽プレーヤーのイメージ
- キャラクターに、(ユニット名 )が選ばれた)
- 「というわけで、まずは今日、こうやって
- TVCMを撮影しているわけだが……」
- 「…………」
- 「今後も、いろいろなメディアを使ったプロモーション
- 計画が、山のように控えている」
- 「かなり大きな仕事だ。
- ひとつ、しっかり頼むぞ!」
- 「でも、ちょっと、ヤバイんだよね」
- 「……って、いきなりか?
- まさか、トラブル発生じゃないよな?」
- 「いや、この宣伝コピーの台詞だけど……。
- 今から変えてもらえたり、できない……かな?」
- 「えっ!? 今さら、なに言ってるんだ。
- そんなの無理に決まってるだろ?」
- 「だって、なんか、うまく言えなくて……」
- 「『感じて。ジュリアのウイスパー』だっけ。
- クールでいいじゃないか」
- 「よくないよ! これってなんか、艶っぽくささやく
- とか、そんなイメージのコピーなんだろ?」
- 「まぁ、そうだろうな」
- 「練習したけど、やっぱそういうのって……、
- こっぱずかしいんだもん」
- 「こ、こっぱずかしいと言われてもな……」
- (どう考えても、今からコピーの
- 文面を調整するは、不可能だ)
- (ここはやはり、ジュリアの演技を
- どうにかするしかない……!)
- 「……よし、それじゃ、最初から演技のつもりで
- やってみたらどうだ?」
- 「要するに、これはジュリア自身の言葉じゃなくて、
- 別の誰かの言葉だと思ってみる、とか」
- 「別の誰かって、誰だよ?」
- 音無小鳥
- 水瀬伊織
- 三浦あずさ
- 「音無さんだ。
- 今からお前は、自分を音無小鳥と思うんだ!」
- 「ぴ、ピヨ姉? なんで、ピヨ姉なの?」
- 「音無さんは、あれで十分、大人の女性だろ?
- まあ、普段はピヨピヨしてるけど」
- 「いざとなれば、ちょっとはずかしいコピーでも
- 平然と言えてしまいそうじゃないか」
- 「そ、そっか……。ピヨ姉って、
- なにげに芸達者だもんね……」
- 「伊織だ。
- 今からお前は、自分を水瀬伊織と思うんだ!」
- 「イオリかぁ……。
- 演技力は、ハンパないもんね」
- 「だろ? ファンの前では平然と別人に成りすます、
- あの割り切りっぷりは、尋常じゃない」
- 「う、うん。だから、あんまりマネできる気も
- しないんだけど……」
- 「あずささんだ。
- 今からお前は、自分を三浦あずさと思うんだ!」
- 「あ、あず姉? 無理だよ!
- だって、あたしと真逆すぎるもん!」
- 「あたし癒し系じゃないし、色っぽくもないし……。
- む、胸とか、全然……ごにょごにょごにょ……」
- 「ま、とにかく、自分じゃないと思えばいいんだよね?
- よーし、なんとかなる気がしてきた」
- 「え、なんだって? よく聞こえないぞ?」
- 「ま、とにかく、自分じゃないと思えばいいんだよね?
- それだけなら、なんとかなる気がしてきた」
- 「でもさ、そもそも、艶っぽさって……。
- どんな気分で言えば、いい感じになるの?」
- 「艶っぽさを出すための気分、か。
- そうだな、しいて言うなら……」
- 捨てられた子猫の$気分?
- 獲物を狙う黒豹の$気分?
- 産卵する海亀の$気分?
- 「捨てられた子猫の気分で言えば、
- いいんじゃないか?」
- 「えっ、マジで?
- それって、なんか、さみしくない?」
- 「逆にそこが、いい味を出すかもしれない。
- 試しに言ってみてくれないか?」
- 「わ、わかった。それじゃ……。
- えと、自分じゃなくて、子猫の気持ちで……」
- 「……感じて? ジュリアの、ウイスパー……」
- 「……おっ?
- 今の、本当にいいんじゃないか?」
- 「ほ、ホントに? こんなんで、いいの?」
- 「もちろん、演出予定とは違うかもしれないけど、
- 新しい魅力が出てる気がする……」
- 「よし! さっそくクライアントや監督にも、
- 聞いてもらおう!」
- 「う、うん、OK……」
- (結局、ジュリアの意外なウイスパーボイスは、
- 監督たちにも大好評で、即採用となった)
- (このランクに来てもまだ、新しい魅力を披露して
- くれるとは。さすがだな、ジュリア)
- 「獲物を狙う黒豹の気分で言えば、
- いいんじゃないか?」
- 「……ああ、なるほどね。
- なんか、イメージ湧いたかも」
- 「試しにちょっと、練習してみたらどうだ?」
- 「うん、それじゃ……。
- えと、自分じゃなくて、黒豹の気持ちで……」
- 「……感じて。ジュリアのウイスパー」
- 「……うん、いいんじゃないかな!
- きっとクライアントも、満足してくれるよ」
- 「そ、そっかな? だと、いいんだけど……」
- (結局、ジュリアの台詞はクライアントの注文通りの
- 雰囲気だったらしく、一発OKをもらった)
- (大きな仕事だったけど、どうやら、
- 無事にこなせたようだ……)
- 「産卵する海亀の気分で言えば、
- いいんじゃないか?」
- 「いや、よくねーだろ! そんなの知らないし!
- つか、なんでウミガメなんだよ!?」
- 「だから、卵を絞り出すような気分で、
- 言ってみればいいと思って……」
- 「試しに練習してみてくれないか?」
- 「誰がするか、バカ! もういいよ!
- 1人で好きにタマゴ産んでろ、このウミガメP!」
- 「別に、俺がタマゴを産みたいわけじゃ
- ないんだけどな……」
- (結局ジュリアは、本番で何度もNGを出したものの、
- 最後には、どうにかOKテイクを撮ることができた)
- (もう少し効果的なアドバイスができていれば、
- もっとスムーズにできたかもしれない……)
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