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- FILENAME: text_520310-0.txt
- 結菜: それは、ハロウィンも近くなってきたある日 父と外出をしていた時のこと
- ~~♪~~♪
- 結菜の父: もしもし、はい…工事の件ですか 日程は…ええ、そうですね
- 結菜: …近くで工事が?
- 結菜の父: ああ、都市計画の関係で 道路の拡張工事があるらしい
- 結菜の父: 場所によっては立ち退き云々で 揉めることも多々あるんだが…
- 結菜の父: 今回は、特にそういうこともなく 順調に進みそうでな
- 結菜の父: ただ、交通規制があるだろうから 結菜も気をつけておくといい
- 結菜: そう…場所は?
- 結菜の父: 普段はあまり人の寄りつかない 河原の方らしい
- 結菜の父: 最近若者がたむろしてると聞くが 結菜には関係ない話かな
- 結菜: 河原の近く… もしかして…
- 結菜の父: 友だちの家でもあるのか? 詳しい地図も送られてるが…
- 結菜: …見せて
- 結菜: …大変だわぁ
- 結菜: 世間がハロウィンに浮かれる頃
- 智珠 らんか: ほんと、どうすんの…
- 智珠 らんか: あんな場所がバレたら、 アタシら生きていけないって…
- ひかる: 結菜さんが連れていかれたんす…
- ひかる: カタコンベの死体は全部 自分の指示で埋めさせたって…
- アオ: わたしは魔法少女の苦しみを 伝えようとしただけなのに…
- アオ: だけど、変な広がり方をして みんな犯罪者にされちゃった…
- 結菜: あの子たちが、いつか見た悪夢が…
- 樹里: こっちの事情も知らねーで 騒ぎ倒しやがって
- 樹里: ちょっとは怒りも我慢できて 抑えられるようになったが
- 樹里: お前らが標的になるってんじゃ 話は別だっつーの
- 智珠 らんか: バカ!
- 智珠 らんか: 一般人に危害なんて加えたら アタシら人類の敵だって!
- 結菜: 実現しようとしていた…
- FILENAME: text_520310-1_qzi97.txt
- YOU LOSE
- 樹里: っだぁー! また負けた!
- アオ: もー!姉ちゃん! アシストはやるって言ったのに!
- アオ: そうやって、いつも突っ込むから やられちゃうんでしょー!
- アオ: 協力プレイなのに なんで協力しようとしないの!?
- 樹里: クッソ…樹里サマに ゾンビゲームは合わねえんだよ!
- 樹里: 攻撃は弱いし、すぐやられんのに 倒しても倒しても起き上がる!
- 樹里: 敵は、うじゃうじゃしてやがるし らちが明かねーったらねえよ
- 智珠 らんか: 言い訳とかダサすぎ 樹里がゲーム下手なだけじゃん
- 智珠 らんか: 前も、結菜さんに 格ゲーで負けてなかった?
- 樹里: おい、ウェルダンにすんぞ!
- うらら: 火気厳禁なんよ!
- ひかる: そうっす! 結菜さんちなんすよ!?
- ひかる: というか、ふたりでゲームの 協力プレイなんて珍しいすね
- 樹里: あーこれだよ、これ ひとりじゃクリアできなくてさ
- ハロウィンイベント開催中! 高難度クエストクリアで ジャック・オ・ランタンの衣装をプレゼント!
- 智珠 らんか: あ~、なるほど そういや、もうハロウィンか
- ひかる: 素朴な疑問なんすけど
- ひかる: …ジャック・オ・ランタン って、なんでジャックなんすか?
- 樹里: あぁ?なんか、そういう 話があったんじゃなかったか?
- アオ: それ、わたし知ってるよ~
- アオ: なんかねぇ…ネットの知識だから ふわっとしてるけど~
- アオ: ジャックっていうずる賢い人が 魂を取りに来た悪魔をだまして
- アオ: 自分の魂が取られちゃうのを 回避する~みたいなお話でね
- アオ: 最終的には二度と魂を 取らないって悪魔に約束させるの
- ひかる: へ~、ジャックすごいっすね 悪魔に勝つなんて
- 智珠 らんか: 魂を取られないってことは 不死身になったわけ?
- アオ: んーん、このお話は ここからがポイントなんだよ~
- アオ: 「ジャックは、そのあと年をとって死ぬんだけど うそつきだから天国には入れてもらえなくって 仕方なく地獄に行くんだよ …でもそこにいたのは、かつてだました悪魔」
- アオ: 「ジャックは地獄に入ろうとするんだけど 魂をとらない約束だ~って悪魔に言われて 地獄にも入れてもらえないから、どこにも行けず 天国と地獄の間…真っ暗闇をいったりきたり…」
- アオ: 「…で、さすがに可哀想だと思った悪魔に もらった火を、ジャックはカブで作った ランタンに灯して、その光だけを頼りに 永遠にさまよいつづけることになったんだとさ」
- アオ: …みたいな 諸説ありって感じだけどね
- 智珠 らんか: え、ホラーじゃん…てか カボチャじゃなくてカブなの?
- アオ: 手に入りやすかったとかで カボチャが主流になったらしいよ
- アオ: 可哀想な話だけど、まぁ うそつきのジャックが悪いよね~
- ひかる: 悪魔も悪魔で、意外と お人好しというかなんというか…
- うらら: …でも、さまよいっぱなしは なんだか可哀想な気もするんよ
- ガチャ
- ひかる: この扉を開ける音は… 結菜さんのご帰宅っす!
- 樹里: 音でわかるって… 馬も、いよいよヤバいな
- タッタッタッタッタッタッ
- アオ: ん?姉さまが走ってるなんて かなり…珍しいっていうか…
- 智珠 らんか: 嫌な予感しかしないんだけど…
- 結菜: た…大変よぉ…
- 樹里: どうした、姉さん
- 結菜: カタコンベの真上で 工事が行われるらしいわぁ…!
- 樹里: なっ…!?
- FILENAME: text_520310-2_qzi97.txt
- 結菜: 私が父から聞いたのは 二木市で、これから都市計画に基づいた 道路の拡張工事があるらしいこと
- 結菜: そして、詳細な地図を見て気づいたのは 工事が行われる予定の場所が カタコンベの真上である…ということだった
- アオ: …ってことは、カタコンベも 掘り起こされたり…とか
- 智珠 らんか: それ…まずくない? 死体が埋まってるわけだし…
- 樹里: いろいろ、バレちまうな…
- ひかる: 結菜さんが 警察に連れていかれて…
- ひかる: う、うあああぁ…! 悪夢の再来っすよ…!
- 結菜: 落ち着きなさぁぃ…
- 結菜: その言い方だと私が一度 捕まったみたいでしょぅ…
- 結菜: それは全部、悪夢の話…
- 結菜: 一度忘れて 今後のことを考えないとぉ…
- うらら: …その、まずいって言うのは…
- 結菜: カタコンベは、魔法少女たちの墓
- 結菜: 掘り起こされて死体が出てくれば 当然、警察沙汰になる…
- ひかる: それに、死体と魔法少女の 因果関係に気づかれでもしたら…
- アオ: わたしたち殺人鬼だと思われて 世の中の敵になっちゃうよ
- うらら: ぁ…
- 結菜: 工事を中止させるアプローチが できないか考えてるけど
- 結菜: 市長の娘だからって 工事は覆せないでしょうねぇ…
- 樹里: まあ、仲間の死体があるなんて 口が裂けても言えねーよな
- ひかる: せめて遺骸だけでも 移動させたいっすけど
- ひかる: カタコンベはひかるたちにとって 大切な場所っす…
- 結菜: えぇ、死んだ彼女たちに対して 心の整理をする場所…
- 結菜: それを失うのは避けたいわぁ…
- 樹里: 樹里サマもアイツらに対して ケジメをつけてねーからな
- 結菜: 私はユニオンと和解したときに 祈ることができたけど
- 樹里: …そういうこった 樹里サマはあのころ…
- 結菜: …だけど、私だって 一方的に赦しを乞うただけ…
- 結菜: 本質的には樹里と なんら変わらないわぁ…
- 樹里: いずれにしても、樹里サマは まだ償いってもんをしてない
- 樹里: 墓が失われちまうなら その前になんとかしてえ
- 智珠 らんか: そうは言っても 償いって何をするつもりなわけ?
- 樹里: 昔の樹里サマなら、償いのために 命を捨てることも考えただろうが
- 智珠 らんか: はぁ!? やめてよね、そんなの
- 樹里: 言われなくても わかってるっつーの
- 樹里: お前らのこととか… 守るもんを残して死ねねーからな
- 樹里: けど、何かしらの形で ケジメはつけたいと思っちまう
- 結菜: ゆっくり考える時間も あまりなさそうだからねぇ…
- 樹里: …どうしたもんかな
- ラビ: …急に集まりたいと 言い出したかと思えば
- ラビ: 旭の固有魔法を使い 二木市の亡者を呼び出したい、と
- うらら: そうなんよ!
- ラビ: 大庭さんたちが、死んだ仲間への ケジメをつけられるように?
- うらら: 直接話すことで赦してもらえれば お互いケジメがつけられるんよ
- アレクサンドラ: …言うほど簡単な ものなんでしょうか?
- アレクサンドラ: それに、あの魔法は 旭ちゃんが…
- 旭: …我は、賛成できないであります
- うらら: なんでなんよ…!
- 旭: …まず、魔法少女の亡者となると 未知なことが多い
- 旭: 魔女になっていたり ソウルジェムが砕けていたら
- 旭: 亡者を呼べるかどうか わからないのであります
- うらら: そんなの、やってみないと わからないんよ!
- 旭: …死者の魂は、そう易々と 呼ぶものでないのであります
- 旭: それは、生命への冒涜と 言えるのでありますよ…うらら
- 旭: それに…この魔法で呼ぶのが 本当の魂かは、わからない
- 旭: 我らの記憶が生み出した 幻想であるかもしれないし
- 旭: 亡骸に染みついた 記憶でしかないかもしれない…
- うらら: それでも、ウチは結菜さんたちに 恩を返したいんよ
- うらら: このままカタコンベが無くなれば 後悔が残っちゃうんよ…
- うらら: それに…ウチ…
- 旭: なんでありますか?
- うらら: ううん
- うらら: …お願いなんよ、旭さん!
- 旭: ………… はぁ…わかったであります
- 旭: 何やら、亡者を呼びたい 他の理由もあるようでありますし
- 旭: うららの頼みなら 仕方がないでありますから
- うらら: 他の理由なんてないんよ!?
- 旭: …そうでありますね
- 旭: さて、やるならば しっかり準備するであります
- ラビ: …ええ、あの時のような 失敗はできないから
- FILENAME: text_520310-3_qzi97.txt
- 結菜: 工事のことが発覚した次の日 三浦さんと氷室さんを引き連れたうららから カタコンベに呼び出された私たちは ある提案を受けることとなった
- 結菜: それでぇ…?
- 結菜: 三浦さんの魔法で、亡くなった 魔法少女の魂を呼んでくれる…と
- うらら: これなら、ケジメも つけられると思ったんよ!
- 樹里: …なるほどなぁ
- うらら: …あれ、なんだか微妙な顔 嬉しくないんよ?
- うらら: 死んじゃった仲間に もう一度、会えるんよ?
- 樹里: まぁ十中八九恨まれてる相手だし 手放しでは喜べねーよ
- 樹里: とは言えケジメをつけられるのは 願ったり叶ったりだ
- 樹里: 霊を呼び出す…っつーと 呪い殺される不安はあるけどな…
- うらら: 大丈夫なんよ! きっと赦してくれるんよ!
- 結菜: …うららは血の惨劇を見てないし そう思うのも仕方ないけどぉ…
- 結菜: あなたが考えているよりも 赦されないことをしてきたのよぉ
- 結菜: …けど、今となっては これが最善かもしれないわねぇ
- 結菜: 工事が始まる前に ケジメをつける方法は…
- 樹里: ま、せっかくのお膳立てだ やるっきゃねーな
- 樹里: …んで、これって霊から 攻撃は受けたりすんのか?
- 樹里: 相応のことをした自覚はあるから 罰は受けるが、殺されんのは困る
- 樹里: 生きて、これからを変えることが 過去への報いでもあるだろうし
- 樹里: 守るもんを放って死ぬなんて そんなダセーこともできねぇから
- 樹里: アイツらの恨みは受け入れても 死なねー必要があんだ
- 樹里: それなりに対処は考えておきたい
- 旭: …霊による物理攻撃は 基本的に無いかと
- 旭: ただ、精神攻撃については …未知数でありますな
- 樹里: オイオイ…曖昧だなぁ…
- 結菜: ひかるたちを連れてこなくて 正解だったわねぇ…
- 樹里: ま、実際アイツらは こっちに振り回されただけだしな
- 樹里: 神浜市でのことやアオの件は …ここじゃ、どうにもできねー
- 樹里: ともかく、二木市での争いで 責任があんのは樹里サマたちだ
- 旭: …では、亡者を呼び出す ということでいいのでありますか
- 結菜: ええ、お願いするわぁ
- 樹里: ん…つーか、お前らんとこの もうひとりはどこ行った?
- ラビ: サーシャは、外で待機中
- ラビ: 何かあった時のために グリーフシードも用意してある
- 樹里: 何かあった時って… 怖いこと言うな…
- 旭: …以前、この魔法を使った結果 悲劇が起きたのは事実であります
- 樹里: おい…マジかよ
- ラビ: だからこそ、細心の注意を払う
- 旭: …では、花を手向けたら さっそく始めるであります
- ラビ: …概念強化
- 旭: ふぅ…
- 旭: 冥府にいる亡者たちよ 我の声に応えて欲しいであります
- 旭: 亡くなった二木市の魔法少女たち 戦いの中で失われた命よ
- 旭: 我の声が聞こえたら 姿を現してほしいであります
- 結菜: …本当に、みんななのぉ…?
- 旭: …さぁ、時間は僅かであります 今のうちに、言葉を
- 結菜: …………ええ まず、説明させてぇ…
- …そう、前に進むのね
- 結菜: …ごめんなさい 私たちのせいで…みんなが
- 結菜: それなのに、私たちだけが 生きて前へ進むだなんて…
- 樹里: …赦されるとは、思ってない ただ、ケジメをつけにきた
- 樹里: カタコンベが なくなっちまう前に
- …まあ、私たちは死んだ身 恨む気持ちがない訳じゃないけど
- その気持ちだけあれば 好きにしてくれて構わない
- はい、私たちの死が 良いものに繋がるのなら
- …………
- …だけど、謝罪は必要だよね 殺された子だっているし
- 樹里さんのせいで …魔女になった子だっていた
- 確かに、多くの子が死んだ その溜飲を下げる必要はあります
- 死んだ身…とは言え 気持ちだけでも救われたい
- だから、説明して あの戦いの意味を
- 樹里: …………
- 結菜: すべては、私たちのせいよぉ
- それでは、説明になってない
- 樹里: 戦いの意味っつーなら あれは、生きるための戦いだった
- だけど、多くが死んだ なぜ?
- 樹里: 魔女が減れば、奪い合いになる それは、当たり前のことだったが
- 樹里: その上で、争いが激化したのは 樹里サマたちの責任だ
- 責任を認められたところで 何も帰ってこない
- 樹里: …んなの、わかってんだよ!
- 結菜: 樹里…
- 樹里: …つーか、状況を考えれば 仕方ないことだったろ、あれは!
- 樹里: 仮に、仲良しこよしでいられても その先の結果は見えてた…
- 樹里: 結局、グリーフシードが不足して みんなで魔女化ってのがオチだ!
- …言い逃れするの?
- 樹里: …っ、そうじゃねぇ
- 樹里: ただ、今さら言葉を尽くしても お前らが納得できるとも思えない
- 樹里: さっき言われた通り 失われたもんは、もう…
- だから、すべて水に流せと?
- 樹里: いや、償いは…
- …信じられない
- 赦すわけにはいかないよ
- 神浜市の件も原因だったけど 自治にだって問題があった
- もっと他のやり方だって あったはずなのに
- そうしたら、死なずに済んだ子も いたかもしれないのに
- 「赦せない」 「赦せない」 「赦せない」
- うらら: わ…わ…
- ラビ: 旭、早く魔法の解除を… 概念強化はもう解いてある
- 旭: おかしいであります…! 魔力の制御が効かず…!
- 旭: く…まずい…意識…まで…
- 結菜: …いったい、何が…
- 樹里: うっ…
- 「私たちの想いを知れ」
- アレクサンドラ: ――っ!? 大変…旭ちゃんたちの魔力が…
- アレクサンドラ: どうして…ソウルジェムが すごい勢いで濁って…!
- アレクサンドラ: 他のみんなも… 気を失って…
- アレクサンドラ: いったい 何が起きたの…?
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- それで、説明してもらえる? テリトリーで何をしていたか
- ご、ごめんなさい… 迷って入っちゃっただけで…
- 謝罪してほしい訳じゃなくて 改善策を聞きたいの
- そう責めなくてもいいだろう 虎屋町も以前こちらを侵害した
- だから、責めてるわけじゃないわ それに、あれは魔女を追って…
- 樹里: てめーら落ち着けよ
- 樹里: お互いにわざとじゃねーのは わかってるっつーの
- 結菜: そう、だから今回のような実例を 今後どう扱うか話したいわぁ
- 樹里: 樹里サマとしては方針だけで 別にかまわねーけどな
- 樹里: テリトリーは侵害しない それで十分だろ
- しかし、ルールがなければ 再び揉めることもあります
- はい…私たちは争わず 今まで通り穏やかに過ごしたい
- その日常を得るためにも きちんと話し合いましょう
- 結菜: みんなの総意がある以上 面倒臭がってちゃだめよぉ
- 結菜: 今日は、ここで解散…いいわねぇ
- 結菜: それで…どうするぅ…?
- 樹里: …………
- 樹里: 姉さん、気づいてんだろ いつまで茶番に…
- 結菜: その先は、ストップよぉ…
- 結菜: 誰が…何が聞いているか わからないんだからぁ…
- 樹里: …気づいてたか
- 結菜: …えぇ さすがにおかしいものぉ
- 結菜: 私たちがいたのは、違和感だらけの二木市 目を覚まし、時間を過ごす中で気づいたことは どこまでも平和だという決定的な違いだった
- 結菜: 加えて、魔女は問題なく現れ キュゥべえは普通に二木市内に存在し 魔法少女も、日々増えていく …何より、血の惨劇は起きていない
- 結菜: 虎屋町、竜ケ崎、蛇の宮と 市内で魔法少女の派閥はあれど それらは協力関係を結び抗争なども起きない
- 結菜: そんな、ありえない二木市
- 樹里: 過去に戻ったとか… そういうのじゃなさそうだよな
- 結菜: ええ、魔女もちゃんといるし… アオやひかる…さくやもいない
- 樹里: らんかも、見てねーな
- 樹里: 今生きてるやつでここに居るのは 姉さんと樹里サマだけみてーだ
- 結菜: それに、同時に存在しないはずの 子たちもいたりするから…
- 結菜: 時系列がごちゃまぜになった 死者たちの世界…というところ?
- 樹里: …こりゃ、普通の人間が 起こしたこととは思えねーな
- 結菜: だから、さっき樹里の発言を 止めたのよぉ…
- 樹里: キモチやウワサと戦ってきた 経験から考えてってことか
- 樹里: まぁ、キモチに関しては意志まで 干渉してきたけどな…
- 結菜: それでも、未知の敵なら対策を しておくに越したことはないわぁ
- 結菜: 現状で危険がないのであれば 気づかないふりをするのが得策
- 樹里: まぁ…だな
- 結菜: …ただ、きっかけはどう考えても 三浦さんの魔法…でしょうね
- 樹里: というか、呼ばれた霊たちの 攻撃ってとこじゃねーか?
- 結菜: それなら、あなたの余計な一言が 引き金を引いたんじゃないのぉ…
- 結菜: 仕方ない…だなんて 半ば逆ギレだったじゃなぃ…
- 樹里: だったら、“たられば”でも 披露すればよかったか?
- 樹里: キュゥべえを排除しなけりゃとか 樹里サマが離反しなけりゃとか…
- 結菜: …………
- 樹里: …確かに、言葉足らずだったし カッとなっちまったとこはある…
- 樹里: ただ、過去は変えられない…
- 樹里: それに、あの結果を辿ったのは “必然”だと思うぜ…
- 結菜: …避けようがなかった、と?
- 樹里: ああ…
- 樹里: 魔女化を知れば、同じように キュゥべえを狩っていただろうし
- 樹里: 魔女が減りゃ、どんな形にしろ 二木市内で争いは起きてた
- 樹里: それでも、キュゥべえを 狩り始めた姉さんと
- 樹里: 離反し、争いを大きくした 樹里サマが悪いのは変わらない
- 結菜: …だから自分たちの行動を 正当化するってことぉ…?
- 樹里: そう取られても仕方ねーが… ただな…
- 樹里: あそこで、綺麗な言葉を吐きゃ 一件落着したかもしんねー
- 樹里: だけどよ、それはなんつーか だましてるような気がすんだよ
- 結菜: …はぁ…
- 結菜: 不器用なのか、誠実なのか… 相変わらず下手ねぇ…樹里は
- 樹里: 姉さんと違ってな
- 樹里: それに、いくら言葉を重ねても 罪は軽くなったりしねーだろ
- 結菜: …そうねぇ
- 樹里: …で、この状況を作り出したのは あいつらの復讐か?
- 結菜: まぁ…いくら平和な二木市 とは言え、それ自体が不気味だし
- 結菜: それに…
- 「赦せない」 「赦せない」 「赦せない」
- 結菜: あの感じだと、十中八九 復讐でしょうねぇ…
- 樹里: だよなぁ…
- FILENAME: text_520310-5_qzi97.txt
- 結菜: 私たちが迷い込んだのは平和な二木市 そこには『血の惨劇』という歴史がなく どこまでも協調的な魔法少女たちがいた
- 結菜: この世界に私たちを連れてきたのは 死んだ二木市の魔法少女かもしれない…
- 結菜: そう推測した私たちは不気味さを覚えながら 死んだ彼女たちの霊に 復讐されるのではと考えていた
- 樹里: 復讐なら、普通に樹里サマたちを 呪い殺すなりしたらいいのにな
- 結菜: 三浦さんが言うように 物理攻撃が不可能なのかも…
- 樹里: そう考えりゃ精神攻撃が順当か
- 結菜: 平和な世界に私たちを閉じ込めて 魔力を涸渇させるつもりかしらぁ
- 樹里: ったく、遠回りだな
- 樹里: …なあ、姉さん いっそのこと仕掛けねーか?
- 樹里: 向こうが手をだせねーんなら その切っ掛けを与えてやろーぜ
- 結菜: こちらの攻撃がトリガーになって 向こうも手を出せるってことぉ?
- 樹里: ああ、樹里サマたちが話し合いに 応じてたから
- 樹里: アイツらも復讐を 果たせなかったのかもしれねえ
- 結菜: もしも、そうなら試しましょぅ
- 樹里: 復讐を受け入れるんだな?
- 結菜: だけど、殺すつもりで来るのなら 全力で抵抗させてもらうわぁ
- 結菜: 自分が罪深いのはわかってるけど 今後を思えば死ねないものぉ
- 結菜: 相手の気持ちを晴らして 脱出できるのがベストなんだけど
- 樹里: 殺されず、復讐を受け入れる その矛盾を叶えるために
- 樹里: アイツらの無念を晴らし 復讐させる舞台を作るってことか
- 結菜: 昔みたいな殺伐とした二木市なら 復讐もしやすいだろうしねぇ…
- 樹里: 殺す気概で樹里サマたちと戦わせ こっちは殺されないよう耐える
- 樹里: んで…スッキリさせたら あいつらには悪いがトンズラする
- 結菜: でも、相手は亡者 上手くいくかしらぁ…
- 樹里: んなの、樹里サマの腕っぷしと 姉さんの頭脳があればいけんだろ
- 樹里: ま、普通に死ぬかもしれねーけど そん時はそん時だろ
- 樹里: 先にヘバんじゃねーぞ、姉さん
- 結菜: …樹里こそ
- 樹里: …じゃあ、さっそく今夜 始めるとすっか
- 結菜: ええ…何度も繰り返した あの、血生臭い抗争を…
- 結菜: 私たちは今宵… 赦されない罪を重ねるわぁ
- それで、今後のルールなどは…
- 樹里: そんなもんはねーよ
- え、じゃあ…テリトリー問題は…
- 樹里: あぁ? そんなの拳で解決しろよ
- どういうこと!? 樹里さん…!
- 樹里: どういうことも何も 単純な話だっつーの
- 樹里: 強いやつが魔女を倒し グリーフシードを手に入れる
- 樹里: それで万事解決だろ、ニヒッ
- …じゃあ、弱い子は 淘汰されてしまう…!
- 樹里: そりゃー 弱いやつらが悪いだろ
- 樹里: ま、竜ケ崎の傘下に入れば 多少は手助けしてやってもいい
- 樹里: 傘下に入ったら 一生、小間使いだけどな
- くっ…
- 結菜さん…いいんですか
- 結菜: えぇ…樹里との話し合いは 決裂してしまったわぁ…
- 結菜: だから 力で屈服させようと思うのよぉ…
- 力でって…まさか!
- 結菜: 戦争よぉ…
- 樹里: んじゃ、久々に やりあおうぜぇ…姉さん!
- そんな…!
- 結菜: 文句があるなら 私たちに勝負を挑むことねぇ
- 結菜: いつでも待っているからぁ…
- 結菜: …じゃあ、樹里 やりましょうかぁ
- 樹里: あぁ…!
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- 結菜: 死んだ彼女たちの復讐を受け入れることを 決めた私たちだったけれど これから守るべきもののことを考えれば 贖罪はしても、死ぬことはできなかった
- 結菜: 復讐は受け入れるが、死ねない その矛盾を果たすためには、彼女たちが 私たちを殺す気概で叩ける場所が必要となり 死んだ彼女たちの復讐を果たす舞台を作るべく 戦いの場を設けた
- 結菜: そして、殺されないように 全力で抵抗する…というのが私たちの答え
- 結菜: それは、赦されない罪を繰り返す 苦渋の選択だったけれど どれだけ戦おうが、煽ろうが 彼女たちが私たちに手を出すことはなく 樹里と私だけが戦う時間が過ぎていった
- 樹里: なんっっっで、一切 攻撃されねーんだよ!
- 樹里: どんだけボコっても、アイツら やり返さねーし怒りもしねえ!
- 結菜: 攻撃されないことを嘆く… というのも変な話ねぇ…
- 結菜: ここから逃げる方法も まだよくわかってないし…
- 樹里: こうなりゃ次で最後だ 戦わざるを得ない状況にすんぞ
- 結菜: 今でも十分だと思うけど 何をするつもりぃ…?
- 樹里: 奇襲だよ やってなかったと思ってな
- 結菜: …今度こそ 死人が出るかもしれないわよぉ
- 樹里: なるべく殺したくはねえし 負かすだけのつもりだ
- 樹里: けど…どっちにしろ、アイツらは 樹里サマたちのせいで死んでる
- 樹里: アイツらの復讐を果たさせて ケジメをつける方が大事だろ
- 樹里: …樹里サマたちの 罪悪感なんかよりな
- 樹里: その為なら、いくらでも暴れるし 攻撃だって一身に受けてやる
- 樹里: …それに、もう樹里サマたちは 罪を重ねるっつー選択をした
- 樹里: …今さらだろ
- 結菜: …………わかったわぁ
- 樹里: じゃ、樹里サマは ひとりで虎屋町に奇襲するから
- 樹里: 次の集会は外でやってくれれば そこでケリをつける
- 結菜: …ということだから 今日の集会はここまでよぉ…
- 樹里さんとは あの後どうなっているんです?
- 結菜: それは…
- 樹里: これが答えだっつーの!
- 結菜: みんな!奇襲よぉ…!
- 樹里: お前ら!死にたくなきゃ戦え!
- きゃぁっ!
- やめて…樹里さんッ!
- 樹里: 日和ってんじゃねーぞ! オイ!
- ぐあぁっ!
- 樹里: …チッ、殺さない程度ってのは どうも難しいな…
- 樹里: …おらぁ! 姉さんも!やんぞ!
- 結菜: くっ…!
- ふたりとも、やめて…!
- 樹里: ならっ!
- くぅっ!
- 樹里: 自分でやれよ…な!
- がぁあっ!
- 樹里: っあ、やべ… やりすぎた…か…?
- 結菜: …だけど、これをきっかけに 虎屋町は反撃するはず…
- 樹里: …あぁ、覚悟はできてたんだ
- どうして… もう、やめましょうよ…ね?
- …そうです 終わりにしましょう
- 戦うなんてよくないですよ
- 樹里: じゃあ、お前らが 止めればいいだろ!
- 樹里: 樹里サマたちを倒せば 争いは終わるんだぞ!?
- そんな止め方、望んでませんよ
- 樹里: なぁ、さすがにおかしいだろ こいつら、訳がわかんねえ…
- 結菜: …えぇ、もはや不気味 というか…こんなの…
- 結菜: あ…れ…
- そうですよ、樹里さん 結菜さん
- 樹里: な…お前、さっき倒したはず… すぐ動ける傷じゃねーだろうが…
- ねえ、楽しく暮らしましょうよ これからも、この幸せの中で
- 樹里: なん…だよ、これ… 普通じゃ…ねーよ…
- 結菜: 樹里、行きましょぉ…
- 樹里: 行く…って、どこに!
- 結菜: とにかく 一度、距離を取るのよぉ…!
- 樹里: …この電車 神浜市方面行きか…?
- 結菜: 望みは薄いけど 誰かいるかもしれなぃ…
- 結菜: 道中、長いし眠ってていいわぁ 疲労も溜まっているでしょうから
- 樹里: …あぁ、体より…心にな
- FILENAME: text_520310-7_qzi97.txt
- 「次は~…」
- 樹里: ん…だいぶ寝ちまったし… そろそろか?
- 樹里: …姉さん、起きろ
- 結菜: …あぁ、ごめんなさぃ 疲れがたまっていて…
- 結菜: あと何駅くらいかしらぁ… というか
- 結菜: 私たち以外 乗客は誰もいないのねぇ…
- 樹里: なんつーか、不気味だな…
- 「次は~…」
- 樹里: お、アナウンスだ さっきは聞き損ねてさ
- 「次は~…■■■■」
- 樹里: …あ?今、なんつった? なんかキモい音だったような
- 結菜: …見て、樹里… 窓の外…
- 樹里: これ、二木市の近くか…? 寝すぎて折り返した…?
- 結菜: いえ…それほど時間が経ったなら 日が沈んでいてもいいはずよぉ…
- 樹里: じゃあ…!
- 「次は~…二木市~二木市~」
- 樹里: っ…いや、行き先を 間違えたんだよ…きっと
- 樹里: もう一度、神浜市に向かうぞ
- 「次は~…二木市~二木市~」
- 樹里: …おかしいだろ なんっなんだよ!これ!
- 結菜: …私たちは二木市から出られない 降りるしかないようねぇ…
- プシューッ
- 結菜: …な
- おかえりなさい 結菜さん、樹里さん
- 「おかえりなさい」 「おかえりなさい」 「おかえりなさい」
- 樹里: …っ
- 樹里: …もう、復讐を受け入れようとか そういう話じゃないよな
- 樹里: 目的も分からねえコイツらに 付き合ったところで
- 樹里: この空間を出られねえ
- 結菜: ええ…こんな状況だったら ここから脱出するのが優先…
- 結菜: だから、とにかくこの場は 切り抜けないといけないわぁ…
- 樹里: …つっても、囲まれてるぞ
- 結菜: …それなら 強行突破しかないでしょぅ…
- 結菜: はぁっ!
- ぐぅっ
- う…うぅ…
- 樹里: 倒れても倒れても起き上がる
- 樹里: これじゃあ、アオとやった ゾンビゲームじゃねえか…
- 結菜: …………
- 樹里: …姉さん?
- 結菜: 二木市の魔法少女は みんな地獄行き…
- 結菜: そう思っていたけど… 地獄にも行けないかもしれなぃ…
- 樹里: あ? どういうことだよ
- 結菜: 樹里、ジャック・オ・ランタンの 物語は知ってるぅ…?
- 樹里: ああ、ちょっと前に アオから聞いた
- 樹里: 悪魔をだましたジャックが 地獄にも天国にも行けず
- 樹里: さまよいつづける っつー話だろ?
- 樹里: …まさか、樹里サマたちも そうなるって…
- 結菜: あくまで、想像でしかないけど
- 結菜: このまま、じわじわと 精神を破壊されるのかも…って
- 結菜: 元の世界にも戻れずに 平和すぎる二木市で、ずっと…
- 樹里: オイ…思ってた復讐と 色が違い過ぎねーか…
- 結菜: しかも、相手は殺しても 死なないような相手…
- 樹里: …詰んだかもしれねぇな
- 樹里: …なんだ、今の気配
- 結菜: …見て、ランタンが浮かんでる
- 樹里: あんなの、今まであったか?
- 結菜: わからないわぁ…
- 結菜: なかったかもしれないし 認識できていなかっただけかも…
- 樹里: そういや、あいつらも なんであんな格好してんだ?
- 結菜: 言われてみれば…どうして 今まで気にならなかったのかしら
- 結菜: こんな世界でも正気を保っている …そう、思っていたけれど
- 結菜: もはや自分の意識も 見えているものも信じられない…
- 樹里: でも、この熱は嘘じゃねえ シャキッとしろ、姉さん
- 結菜: そうねぇ…あなただけは 信じるわぁ…樹里
- 樹里: はは、皮肉なもんだな かつては殺しあったってのに
- 樹里: 今じゃ、信じられるのは お互いだけってか
- 樹里: そんじゃ、やるか
- 結菜: …ええ
- FILENAME: text_520310-8_qzi97.txt
- 樹里: っらぁ!
- ぐぅぅ…
- 樹里: クソ…らちが明かない上に まったく攻撃してこねえ!
- 樹里: そのくせ、数は多いし復活するし すぐに囲まれる…!
- 樹里: 樹里サマ、ゾンビゲームは 苦手だって言っただろーが…
- 樹里: このままじゃ堂々巡り… 魔力が尽きてお陀仏だぞ!
- 結菜: はぁっ!
- うぁ…あぁ…
- 結菜: …いくら、手加減を しているとは言っても…
- 結菜: 何度も、みんなを倒して… こんなの心がもたないわぁ…
- 結菜: 直接、殺されることもなく… ここからは逃げられない…
- 結菜: 罪は背負い、復讐も受け入れる… そのつもりでいた…
- 結菜: けど…守るものも守れずに 死ぬなんて…それこそ情けなぃ…
- 結菜: アオやひかる、らんか 二木市の仲間のためにも
- 結菜: 魔法少女が救われる 未来を作っていくためにも
- 結菜: まだ、死ぬわけにいかなぃ…!
- 樹里: なら、この攻防戦を 打ち破る一手が必要だな
- 樹里: だが、それには アイツらとぶつからねーとだ
- 樹里: 今までのように手加減した 攻撃じゃなく、本気でな
- 樹里: 未来と、死んだアイツらを 天秤にかけなきゃなんねぇ
- 結菜: やっていいことじゃなぃ… それこそ、鬼の所業…
- 結菜: …あぁ、そう…そうねぇ… 再び鬼になればいいのよぉ…
- 結菜: この無間地獄から抜け出して あの子たちと未来を歩むために…
- 結菜: 心を、鬼にして 死んだ仲間へ再び刃を振るう
- 結菜: 樹里…もう互いの血を すするだけじゃ足りないわぁ…
- 結菜: 死んだあの子たちの血を すべて背負って戦うのよぉ…
- 樹里: …ああ、姉さん 一緒に鬼になろうぜ
- 結菜: ええ、血の涙を飲んで 傍若無人の鬼となる…
- 結菜: ―結菜― 倒しても倒しても起き上がるのなら 起きる暇もないほどに蹂躙し
- 樹里: ―樹里― 樹里サマたちは、暴虐の限りを尽くす
- 樹里: ―樹里― お前らの血も、恨みも、全部吸い上げて ここから抜け出してやるよ
- 結菜: ―結菜― じゃあ、行きましょうか…樹里 弔いのための…戦争を…
- 樹里: ―樹里― 矛盾どころの騒ぎじゃねーな こりゃあ、もう…地獄にだって行けねーっつーの
- 樹里: …っしゃ、やるぞ!
- 結菜: …えぇ
- 樹里: おらぁああああっ!
- 結菜: はぁあああああっ!
- FILENAME: text_520310-9_qzi97.txt
- 樹里: …っしゃ、やるぞ!
- 結菜: …えぇ
- 樹里: おらぁああああっ!
- 結菜: はぁあああああっ!
- うらら: …いったい、どうなってるんよ?
- うらら: 結菜さんと樹里さんは なんであんなこと…?
- ラビ: 目が覚めると、私たちは不思議な空間にいて 紅晴さんたちの様子を モニターのようなもので見ていた
- ラビ: その様子は、ひどいもので 死者に対し刃を振るう、まさに鬼の所業… 私は、その行動を理解できずにいた
- 旭: 話し声が聞こえないゆえ 動機が不明瞭でありますな…
- ラビ: 昔の彼女たちならわかるけど ただ暴れるなんて、らしくない…
- うらら: 結菜さんたちは優しいから 何か理由があるはずなんよ…!
- 旭: だとすれば、操られてるとか… そんなところでありましょうか
- ラビ: ちなみに、あの幽霊?たちの中に うららの知っている人はいる?
- うらら: 顔が見えないから よくわからないんよ…
- うらら: …でも、死んじゃった人が いっぱいいるみたいなのに
- うらら: …どうして、さくやさんは あそこにいないんよ…?
- 旭: …………
- ラビ: そもそも、この空間は いったい…
- 旭: それについてでありますが…
- 旭: 魔法を発動したときに 魔力を奪われた感覚があり…
- うらら: …ってことは 旭さんの魔力が尽きて…
- ラビ: …………みんな死んだ?
- うらら: 確かに、お化けもいるし… 死後の世界ってことなんよ!?
- ラビ: …本当にそんなものがあるなら 少し興味深くはあるけど…
- 旭: 最悪の想像をすると…
- 旭: ソウルジェムが濁りきった 我の魔女結界内…とか
- うらら: お、おしまいなんよ~!
- ???の声: 「安心して」
- ???の声: 「魔力を奪われてしまったのは確かですが あなたたちは死んでないですし 魔女にもなっていません」
- ラビ: …あなたは?
- ???: えっと…その 樹里さんたちの知り合いというか
- 案内役: んー、案内役…とでも 呼んでいただければ?
- 旭: …疑問形でありますか
- 案内役: す、すみません…
- 案内役: だけど、この空間についてなら ご説明できますよ
- うらら: お願いしますなんよ!
- 案内役: はいっ! えーっと…なになに…
- 案内役: ここは、三浦旭…さん、の魔力を 使用した空間になっており…
- 旭: …我、名乗ったでありますか?
- 案内役: あ…えへへ…えっと…
- 案内役: 現状、外にいる栗栖アレクしゃ… 栗栖さんがソウルジェムの浄化を
- ラビ: …台本でも読んでる?
- 旭: アレクサンドラ、初めてだと 言いにくいでありますよね
- 案内役: ぅ…怪しい者ではないんです…
- ラビ: まぁ…怪しかろうと 今はあなたしか頼れる人はいない
- ラビ: 説明を続けてもらえる?
- FILENAME: text_520310-10_qzi97.txt
- ラビ: 案内役を名乗る彼女が まるで、台本でも読むかのように 私たちに説明したのは、この世界の成り立ち
- ラビ: まず、この世界は旭の呼んだ亡者たちが 彼女と繋がっていることを利用して 旭の魔力を元に作った空間であるということ
- ラビ: 空間と言っても、魔女結界のようなものではなく どちらかと言えば夢や幻覚に近いもので ただ、それでも精神攻撃などによって 死ぬことはあり得るらしい…
- 案内役: この空間は派生してできた場所で 傍聴席…みたいな感じかな
- 案内役: 私たちのようにふたりを赦してる 亡者が作った空間なんです
- うらら: ここは、なんのためにあるのん?
- 案内役: あっちの空間は危険そうなので 関係ない皆さんは逃がしたくて…
- 旭: それで傍聴席…でありますか お気遣い感謝するでありますよ
- ラビ: じゃあ… 大庭さんたちのいる空間は?
- 案内役: あっちは、樹里さんたちを赦すか 悩んでる子が作ってるのかなと
- 案内役: すみません…私たちにも はっきりとはわからないんです
- うらら: 私たち…ってことは、ここには 案内役さん以外もいるのん!?
- 案内役: あ…えと、いるけど… それより説明したいことが!
- ラビ: …なに?
- 案内役: その、樹里さんたちがいる空間が 崩れない限り、ここは安全ですが
- 案内役: あそこが崩れれば…
- 旭: 我らの居る空間も 危うい…と
- 案内役: …はい、というか終わりです
- うらら: 仲良くお陀仏なんよ!? それは困るんよ!
- 案内役: なので、脱出してもらうためにも 見てもらいたいものがあるんです
- 案内役: ついてきてもらえますか?
- うらら: あれ、戻ってきたのん?
- 案内役: いえ、ここは この世界にあるカタコンベです
- ラビ: 確かに、元の場所とは 異なる空気が漂っているような…
- 旭: …案内役殿、あれは?
- 案内役: あれは、ここにいる亡者たちの お墓のようなものです
- うらら: あ、いろんな色があるんよ!
- ラビ: 色によって 何か意味はあるの?
- 案内役: 先ほど、亡者がふたりを赦せるか 悩んでいるのかもと話しましたが
- 案内役: その、亡者の想いが ランタンに反映されるんです
- 案内役: 「オレンジ色のランタンは 私たちと同じ、赦している色」
- 案内役: 「紫色のランタンは 赦すか赦さないか、判断できていない色」
- 案内役: 「そして、赤色のランタンは 赦さない…という色」
- ラビ: さっきの、火がついていない ランタンは?
- 案内役: あれに、この「想いの結晶」を 火と共にくべると
- 案内役: さっきのように色がつき 亡者の想いがわかる仕組みです
- 案内役: ここは、そういう世界なので 細かい原理などはお気になさらず
- 旭: なんだか、都合がいいように 感じるでありますが…
- ラビ: …それを、私たちに 説明する理由は…?
- 案内役: ………… お願いが、あるんです
- うらら: なんなんよ?
- 案内役: …私たちの仲間とふたりを 救ってくれませんか?
- [Part 1 end]
- ---
- [Part 2 start]
- FILENAME: text_520320-1_ejrFi.txt
- ラビ: 二木市の魔法少女が眠るカタコンベ それが工事によって失われる前に ケジメをつけたいという大庭さんたちのため
- ラビ: うららの提案で、旭の魔法を用い 二木市で死んだ魔法少女たちを呼び出した私たち
- ラビ: だが、大庭さんの言葉をきっかけとして 亡者たちの怒りを買ってしまったのか 我々は不思議な空間へとひきずりこまれた
- ラビ: 旭の魔力を使って作られたという空間の中でも “傍聴席”と呼ばれる場所にいた私たちは 紅晴さんたちの不可解な行動を見ながら 案内役を名乗る少女に出会う
- ラビ: そして、少女はこの世界について 私たちに説明すると こんなことを言い始めたのだった
- 案内役: …私たちの仲間とふたりを 救ってくれませんか?
- ラビ: どういうこと?
- 案内役: あの空間を作った子たちの想いは 同じ亡者である私にもわからない
- 案内役: …ただ、きっと何かしら 成したいことがあるはずなんです
- 案内役: だから、みなさんには彼女たちの 想いを遂げさせてあげてほしくて
- ラビ: 想い…と言っても…見る限り 復讐のような気がするけど
- うらら: そ、そんなこと…
- 旭: いえ、復讐…と考える方が 妥当でありますよ
- 案内役: かもしれないですけど… 私は復讐だけじゃないと信じたい
- ラビ: あなたの気持ちはわかったけど 遂げたい想いを知る方法なんて…
- うらら: もしかして、さっきのランタンが 使えたりするんよ?
- 旭: 色で赦しているかわかる …というあれでありますか
- ラビ: オレンジは赦す 紫は検討中、赤は赦さない…
- ラビ: でも、それだけじゃ… 救う手立てまではわからない…
- 案内役: そこで、この 「想いの結晶」が役に立ちます
- 案内役: これは、結菜さんと樹里さんの 想いなんです
- うらら: 結菜さんたちの想い …って、どういうことなんよ?
- 案内役: 死者へ手向けられた花は
- 案内役: この世界で 結晶へと変化するのですが
- 案内役: 手向けた本人が結晶をくべると 亡者が抱える想いが見えるんです
- ラビ: ランタンの持ち主である 亡者の想い…ということ?
- 旭: …どういう原理でありますか?
- 案内役: …まあやってみるのが早いので 試しに、三浦さん…これを
- 案内役: 私たちに花を 手向けてくれましたよね
- 旭: …あぁ、そういえば 呼び出す前に
- 案内役: これは、私のランタンです 結晶をくべてみてくれますか?
- 旭: …わかったであります
- 案内役: 今のは、私の想い…記憶の断片 と言った方が近いかもしれません
- 案内役: 結晶をくべる以外にも 既に結晶がくべられたランタンに
- 案内役: 花を手向けた本人自身が 触れることでも、同じ現象が
- 旭: …本当でありますね 大庭殿と親しい仲でありましたか
- 案内役: というより、樹里さんは 私にとって命の恩人だったんです
- 案内役: 三浦さんと私は繋がりが浅いので 記憶や景色しか伝わりませんが
- 案内役: 繋がりが強いと亡者の言葉など もっと鮮明に伝わるんですよ
- ラビ: …ランタンはオレンジ色
- 案内役: まあ、私のランタンですからね 赦していないわけがありません
- 案内役: すべてのランタンをオレンジに… そうすれば脱出できるのでは、と
- ラビ: 亡者たちがみんな 大庭さんたちを赦せば…
- 案内役: だから…
- ラビ: …私たちの脱出もかかってるから 協力してほしい…
- 案内役: …はい
- うらら: じゃあ、やるしかないんよ! みんなを助けるんよ!
- 旭: …ひとつ、疑問であります
- 旭: 案内役殿が結晶をくべることは できないのでありますか?
- 案内役: ごめんなさい、死者は 結晶をくべられなくて…
- 案内役: 私たちは、花を手向けられる側 ですからね
- 旭: 確かに、それはそうであります
- 案内役: あと赤いランタンが多い空間には 私たち、入れない決まりで…
- うらら: わかったんよ! ウチらに任せるんよ!
- 旭: …ええ、我が呼び出した亡者 最後まで責任は持つであります
- ラビ: そもそも、解決しないと 私たちも出られないようだし…
- 案内役: ただ…頼んでおいてなんですけど あちらに行くのは結構、危険で…
- うらら: 大丈夫なんよ ウチら魔法少女だから!
- うらら: それに、もう… 見ているだけは嫌なんよ!
- FILENAME: text_520320-2_ejrFi.txt
- うらら: それに、もう… 見ているだけは嫌なんよ!
- 旭: ええ、我らは ずっと傍観者でありました
- ラビ: …だけど、今は違う 観測するだけの私たちじゃない
- うらら: ウチらも、みんなを助けられる! 傍聴席にはいられないんよ!
- 案内役: ………… ありがとうございます
- 案内役: …それじゃあ、少しでも みなさんの身を守れるように…
- 案内役の声: 「えいっ」
- うらら: わっ!?
- 旭: この姿は…
- 案内役: 亡者たちに紛れ込むための 変装…といったところです
- 案内役: 亡者に敵とみなされれば 何をされるかわからないので…
- 案内役: 目立たぬ方が吉かと
- 案内役: 気休め程度ですが 役には立つはずですよ
- うらら: ありがとうなんよ!
- ラビ: 案内役から与えられたミッションは 紅晴さんたちのいる世界へ行き 想いの結晶をランタンにくべて 亡者たちが赦すか赦さないかの想いを知ること
- ラビ: そして、その想いが後者であるなら 亡者たちに赦免を請う…ということだったが これには、まだ疑問点があった
- ラビ: …それなら、紅晴さんたちに直接 結晶を渡した方が早いのでは…?
- 旭: 確かに、我らが色を確認してから ふたりに伝えるのは回りくどい…
- 旭: 本人にしてもらった方が 手っ取り早いでありますな
- 旭: 結晶の持ち主であれば想いも 詳しく知れるようでありますし
- 案内役: それが…今のみなさんは こちらの息がかかってるというか
- 案内役: たぶん、結菜さんたちに会っても 認識してもらえないかもで…
- うらら: どういうことなんよ?
- 案内役: この世界は、認識や存在が とってもあいまいなんです
- 案内役: だから、もしかすると 亡者と似た格好をしたみなさんは
- 案内役: 樹里さんたちにとっては他の 亡者と同じに見えるかもしれない
- うらら: ボコボコにされるんよ!?
- 案内役: …だから、一度あちらの世界と 繋がりを持ってほしいんです
- 案内役: そうすれば、樹里さんたちにも あなたたちだと認識してもらえる
- ラビ: 繋がりを持つ手段が 結晶をくべること…と
- 案内役: ややこしくてすみません
- 旭: いえ、納得できたであります とにかく、我々の任務は…
- 旭: 「あちらの世界へ行き、亡者たちにバレないよう 紅晴殿と大庭殿の結晶をランタンにくべ 亡者たちに彼女たちを赦免する想いが あるかどうかを知る」
- 旭: 「そして、あちらの空間と繋がりを作った上で 花を手向けた本人であるふたりに 結晶をくべたランタンを触ってもらい 共に亡者が望むことをしてやる…」
- 旭: ということでありますな
- 案内役: はい、その通りです
- ラビ: …でも、上手くいくだろうか
- うらら: どういうことなんよ?
- ラビ: 私には暴れまわっているふたりが 何を考えているのかわからない
- うらら: きっと、わざと悪役を 演じているんよ!
- うらら: だから…想いを知って ちゃんと話したら
- うらら: 死んじゃった魔法少女たちにも 赦してもらえると思うんよ!
- 旭: …………
- 旭: (うららは、彼女らの罪を正しく 理解できてないのであります…)
- 旭: (故に、希望を抱きたくなるのも わかるのでありますが…)
- ラビ: (そう簡単にはいかない…)
- ラビ: (うららに伝えるのは簡単だけど きっと、まだすべきではない)
- ラビ: (そう思うのは 私の甘さ…なのだろうか)
- うらら: なんとかなるんよ!
- ラビ: …ええ
- 旭: そうでありますな
- 案内役: では、あちらへの道を作ったので ここをまっすぐ進んでください
- 案内役: ああ、そうそう 決して振り返らないように
- 案内役: まっすぐ進めば、必ず 求めた場所に辿り着くので
- 旭: 承知したであります 行って参るでありますよ
- うらら: またね、なんよ!
- うらら: …ぁ 今の…
- ラビ: うらら、何かあった?
- 旭: 振り返っては いけないのでありますよ
- うらら: …ううん、なんでもないんよ
- うらら: (…今の魔力)
- うらら: (…さくやさんのなんよ…?)
- FILENAME: text_520320-3_ejrFi.txt
- ラビ: 亡者と、紅晴さんたちを救うため 案内役に説明されたとおり 彼女たちがいるという世界を訪れた私たち
- ラビ: しかし、辿り着いたのは 異様な空気が漂う二木市だった…
- 旭: ここは…
- うらら: 二木市なんよ…けど 雰囲気がいつもと違うんよ
- ラビ: …とにかく、すぐに ランタンがあるカタコンベへ
- うらら: つ、着いたんよ~…
- 旭: 何人もの亡者に遭遇し ヒヤヒヤしたでありますな
- うらら: お化け屋敷みたいで すっごく怖かったんよ…
- うらら: みんなニコニコしてるのも 不気味だったし…
- ラビ: 特に何もなかったのは 変装のおかげだろうか
- 旭: 案内役殿に感謝でありますな
- 旭: さあ、カタコンベに着きましたし 目的を果たすであります
- ラビ: ええ、ランタンもちゃんと あるみたい
- うらら: じゃあ、ひとつずつ 結晶をくべていくんよ
- うらら: 「ひとつめ…」
- うらら: 「ふたつめ…」
- うらら: 「みっつめ…」
- うらら: 「よっつめ…」
- ラビ: オレンジが、ない…
- 旭: かろうじて、赤よりも 紫が多いのは救いでありますか
- うらら: この色は、亡者が結菜さんたちを 赦すかどうかのジャッジなんよね
- うらら: だから、全員が赦すわけじゃ ないのは仕方ないんよ
- ラビ: …でも、ひとつもオレンジが ないというのは…
- うらら: 赦してる人たちはきっと 案内役さんのとこにいるんよ
- 旭: それも考えられるでありますが…
- ラビ: …うらら、これは仮説だけど ふたりはもう…
- ラビ: …赦されないのでは…?
- 旭: 我も、そう思っていたであります 何をしても赦されない…と
- うらら: …でも、案内役さんは ふたりを赦してたんよ?
- ラビ: あの人は、元々大庭さんに 命を救われたと話していた
- ラビ: 最初から、赦すも何も 恨んでいなかったのだろう
- 旭: そもそも、紅晴殿と大庭殿の 影響で死んだ者であるのなら
- 旭: 赦せない方が 普通だと思うのでありますよ
- 旭: 死というのは、覆せない事象 とても重いことであります
- 旭: 遺された者にとっても 遺す者にとっても、それは同じ
- 旭: 簡単に、赦せるようなことでは ないはずでありますよ
- 旭: それを、我らは無理に話し合わせ 赦しを与えさせようとした
- ラビ: もしかすると罪は 私たちにもあるのかもしれない
- うらら: ぅ…でも、でも! きっと、わかりあえるんよ…!
- うらら: じゃないと嫌なんよ… 悲しいんよ…
- ラビ: うらら…
- うらら: だって、結菜さんも樹里さんも やり方は悪かったかもだけど
- うらら: いつだって仲間のことを想って それで…その…
- うらら: そうなんよ…!
- うらら: ラビさんと旭さんの言うことは もっともだと思うんよ…
- うらら: でも、だとしたら
- うらら: ランタンが赤一色じゃ ないのはおかしいんよ!
- ラビ: …………それは 一理あるかもしれない
- 旭: 確かに、赦さないのであれば 紫である必要はない…
- 旭: 悩んでいるからこそ こうなっているのだとしたら…
- ラビ: 今、ここで彼女たちは 赦そうとしているのかもしれない
- ラビ: でも、いったいそれなら 何をもって判断しようと…?
- うらら: わかんないけど…
- うらら: とにかく結菜さんたちのところに 行くんよ!
- うらら: 希望があるなら、ウチらは そこに向かうしかないんよ!
- うらら: もう、諦めたくはないんよ!
- 旭: そうでありますな…諦めるのは 辞めると決めたはずでありますね
- ラビ: …ええ
- FILENAME: text_520320-4_ejrFi.txt
- 結菜: 倒しても倒しても起き上がる亡者 平和すぎる、ありえない二木市
- 結菜: そこから抜け出すために血を飲む想いで姿を変え 亡者たちを蹂躙していた私たちだったけれど 戦いは体力だけでなく、心を削っていった
- 結菜: 心を鬼にしたって… やっぱり、苦しいわねぇ…
- 樹里: それでも、戦う以外に 今は選択肢がねぇからな
- ガサッ
- 樹里: っ…誰だ!
- うららの声: こ、攻撃しないでほしいんよ! お化けじゃなくてウチらなんよ!
- 樹里: …この話し方は もしかして、うららか?
- うらら: 良かったんよ…ウチらだって わかってもらえたんよ!
- 結菜: あなたたちも この世界に巻き込まれてたのねぇ
- 樹里: つーか、旭がいるってことは 魔法の解除とかできねーのか!?
- 旭: いや、それが…ここはもう 我では制御できないのであります
- 樹里: 制御できねーって… いったいどういうことだよ
- 結菜: 話を聞かせてもらえるかしらぁ…
- ラビ: ええ、これまでのことを
- 結菜: 亡者が魔力を奪って 作った空間…ねぇ…
- 樹里: 樹里サマたちを亡者が赦すかは 審議中…ってところか
- うらら: そうなんよ!
- 樹里: じゃあ、攻撃される準備を しておかなきゃなんねーな
- 樹里: ただで 殺されるわけにはいかねーし
- うらら: 待つんよ!樹里さんたちは 赦されるかもしれないんよ!
- 樹里: …あ?んなわけ…
- うらら: ランタンは、赤一色じゃ なかったんよ!
- うらら: ウチは…樹里さんたちの罪を 見てないし詳しくは知らないんよ
- うらら: でも、死んじゃった魔法少女は 赦そうとしてるかもなんよ!
- 樹里: …仮に、そうだとしてだ 樹里サマたちに何ができる
- うらら: 案内役さんの言ったことを頼りに ずーっと、考えていたんよ
- うらら: もし、ふたりが赦されることで 死んじゃった子も救われるなら
- ラビ: その行為は、亡者たちを 悼むようなことなのかもしれない
- 樹里: でも、悼むっつったって…
- 旭: 想いを、知るのであります
- ラビ: さっき、ランタンにあなたたちの 「想いの結晶」をくべてきた
- ラビ: 花を手向けた当事者…つまり
- ラビ: 結晶の持ち主であるふたりが そのランタンに触れれば
- ラビ: 亡者たちの想いを 知ることができるらしい
- 結菜: それがわかって…私たちに できることなんてあるのかしらぁ
- ラビ: 何もせず、諦めるよりかは…
- 結菜: …ふ…そうねぇ、わかったわぁ ランタンはどこにあるのぉ…?
- うらら: カタコンベなんよ
- 樹里: …ランタンに 触れればいいんだな
- 旭: 何が見えるかわからない ソウルジェムの濁りには…
- 結菜: 心配は無用よぉ… どんな罵声だって受け入れるわぁ
- 結菜: じゃあ、いくわよぉ 樹里…
- 樹里: …あぁ
- 私は、魔法少女だったけど 普通の女子高生でもあって…好きな人がいた …抗争が収まったら告白をしようと思っていた
- 付き合えたら手を繋いでデートをしてみたかった 失恋したって、きっと大人になってから 思い出せるようないい時間になると思っていた
- …死んじゃうなんて、考えもしなかったから
- もうすぐ来るはずだった誕生日には ママの手作りケーキを食べる予定だったの 大好物のイチゴが乗った、大きなケーキを 家族みんなで
- 大人になったら、たくさん働いて 苦労させた親に良い暮らしをさせてやるのが あたしの夢だった だけど、先に死ぬなんて親不孝しちまった
- いつか、好きな人と結婚して子どもを産んで そんなありきたりな幸せが当たり前に訪れるって 魔法少女のくせに思っちゃったりしてさ バカだったよね…ほんと
- 望むものなんて、多くはなかった ただ明日も生きて くだらないことで誰かと笑って 魔女退治をしながらでも、普通に… そんな日常を過ごせればよかったんだ
- 樹里: 「…あぁ、これは 樹里サマたちが奪った、あいつらのこれから…」
- 結菜: 『死んでしまった彼女たちには 二度と訪れることのない未来…』
- 樹里: 「そうか、単純なことだった 樹里サマは謝りたいと思っていたはずなのに アイツらに伝えてなかったんだ、ちゃんと」
- 樹里: ごめん…って もっと早く、言うべきだった
- 樹里: あの戦いは、仕方なかった 避けられることじゃなかった
- 樹里: それでも、樹里サマたちのせいで 死んだアイツらに悪いと思ってた
- 樹里: …ごめん 奪っちまって
- 樹里: 綺麗事を言ったって赦されねーし 謝って済む話でもない
- 樹里: だけど、それでも 謝るべきだったんだよな
- 結菜: 何度、謝ったって足りない 今でも脳裏に響くのはみんなの声
- 結菜: 何度だって謝るべきだった ごめんなさい…みんな…
- 樹里: どんな制裁だって 受ける覚悟はできてる
- 樹里: お前らの恨みは全部受け入れる 殺したきゃ、そうして構わねえ
- 樹里: けど、樹里サマたちには 守るべき奴らと未来がある
- 樹里: だから、殺されるにしても 抵抗するし、立ち向かう
- 樹里: …それに
- 樹里: 罪を犯してきた樹里サマたちは 死んで赦されたりしちゃいけない
- うらら: …答えは、これなんよ?
- 旭: ふたりが罪を再認識し 謝罪をすること…
- ラビ: …いえ
- ラビ: ランタンの色は 変わっていない…
- 旭: じゃあ、いったい…
- うらら: あ!見るんよ!
- 結菜: な…ランタンが光って…
- FILENAME: text_520320-5_ejrFi.txt
- ラビ: ここは…?
- うらら: さっきの傍聴席…とも 違うんよ…
- 旭: けど、同じように… 二木市の様子が見えるであります
- 樹里: これを見ろ…っつーことか?
- これで、テリトリー問題も 一件落着…?
- まあ、今後次第だよな
- みんなで頑張ろう…!
- 樹里: 「…樹里サマたちが苦しめられてきた この世界の平和な二木市…か?」
- 結菜: 『…私たちの奪ったものたち もう、痛いほどに自覚はしたけれど… こうして見せられると苦しいものねぇ…』
- 樹里: 「でも待て…あれ…」
- 結菜: 弱い子へのフォローも 何か考えていきたいわよねぇ
- 樹里: つっても、どうすんだぁ? 稽古ならつけてやってもいいけど
- ひかる: あとは分け合うとか…っすかね?
- アオ: でも、そしたら昔みたいに 強奪とか起きない~?
- 智珠 らんか: ちょっと…こっち見ないでよ ま、ルールは必要なんじゃない?
- 結菜: 『どうして、私たちもいるの…?』
- 樹里: 「アイツらが、想像する 求めていた平和な二木市の未来… ってことなのか…?」
- 結菜: 『でも、求める未来だとしたら 私たちは、そこに必要ないんじゃ…』
- 樹里: 「場面が変わっていく… 今より、少し未来みてーだ…」
- アオ: 魔法少女について少しずつ 知られていってるみたい
- 結菜: えぇ…良い方に 向かっているわぁ…
- 結菜: 『これは、かなり先の未来のようねぇ…』
- あぁ、久しぶりね
- おー、なんていうか 大人っぽくなったなぁ
- ふふ、みんなまだかなー
- ひかる: お待たせしたっすー!
- ひかる: アオさんとらんかさんは ゲーセンに寄るって遅刻っす…
- ひかる: 結菜さんと樹里さんは 特に連絡がなく…
- ???の声: 遅れてごめんなさぃ…
- 樹里: わりーわりー 道草食ってたら遅れたわ
- 結菜: 私は仕事が 長引いちゃってぇ…
- お疲れ様です、結菜さん!
- 樹里さんは…もう大人なんすから ちゃんとしてくださいよ
- 樹里: あ?お前、竜ケ崎のか! 何だよオイ!色気づいちまって!
- 樹里: 化粧も似合ってんじゃねーか!
- 樹里さん… おじさんみたい…
- ひかる: ほんとっすよ…
- 結菜: 何で…?
- 樹里: これが、アイツらの求めた 未来だとしたら…
- ラビ: …そこには あなたたちも存在している
- 樹里: いや、おかしいだろ… だって…樹里サマたちは…!
- 結菜: …あの子たちは 私たちが奪った平和を見せた
- 結菜: ここに来て、ずっと…
- 結菜: それは、未来を奪った私たちへの 当てつけかと思っていたけど
- 結菜: この未来を求めろ… ということだったのぉ…?
- うらら: …みんなで幸せに なりたかったかもなんよ
- 旭: でも、もはや叶わないから ふたりに託したのでは?
- 旭: ふたりに見せた平和な世界を作り 守りつづけてくれ…と
- ラビ: それこそが、きっと祈りであり あなたたちに架せられた十字架
- ラビ: …そう考えれば合点がいく
- 樹里: …んだよ、殺す気だと思って 抵抗したのは何だったんだ…
- 樹里: 大人になっても笑いあえる平和… はは、高難度クエストすぎんだろ
- 樹里: あいつらが求める平和 ハードル高すぎだっつーの
- 結菜: だけど、本当は最初から それを求めるべきだったのよぉ…
- 結菜: 私たちは現実を見過ぎて 夢を見られなくなっていたのねぇ
- 樹里: 祈りでも十字架でもねぇ…こりゃ “呪い”だ…はっ…二木市らしい
- 樹里: でも…安心しろよ 樹里サマたちは実現する
- 結菜: ええ、奪ってしまった未来も命も 全部背負って平和に繋げるわぁ…
- 「やっと、伝わった」
- FILENAME: text_520320-6_ejrFi.txt
- 結菜: …ここは
- この場所の、本来の姿よ
- 樹里: …お前ら
- 平和を見せ、自覚してもらう その想いが果たせた
- 樹里: …こんな場所を作ったのは それが理由か?
- 魔力を借りた彼女には 悪いことをしたと思ってます
- 本当なら、話さずとも 気づいてほしかったけど
- それは私たちの傲慢だった
- だから、あの子たちのおかげで 通じ合えてよかった
- うらら: …場所の 空気が変わったんよ?
- 私たちはふたりを 赦せるのかもしれない
- 結菜: …いいのぉ? 赦せるような罪じゃないわぁ
- 想いを知ってくれた 今のふたりになら
- 未来を託してみても いいかもと思ったから
- 私も
- …いや、待って…本当に赦せる?
- どういうこと?
- 思い出して、ふたりはここでも あんなに暴れた
- 樹里: …っ、それは
- 仕方なかった?
- 何か理由があれば 誰かを傷つけてもいいの?
- 蹂躙することが 殺すことが赦されるの?
- 結菜: …赦され…ないわぁ…
- …確かに、そうだ 赦していいわけがない
- 結菜さんたちの言ってることも わからないわけじゃない
- だけどやっぱり、心では 赦せない…呪ってしまう
- ふたりが変わらぬままなら あまりにやるせない
- 未来に希望はない 私たちは、無念のまま死んだだけ
- 赦しちゃいけない
- 「赦せない」
- ふたりを生かしておけば 二木市はまた争いに飲まれる
- 今、終わらせるのが未来のため ふたりを、殺して
- うらら: いったい…何が どうなってるんよ…?
- ラビ: …彼女たちは 赦されなかったのかも
- 旭: …暴れたのが仇となったのか
- 旭: それとも、はじめから 赦されぬ運命だったのか…
- はぁっ!
- 樹里: …当たんねぇ?
- 旭: …物理攻撃は難しい その予想は正解のようであります
- 結菜: …確かに、ここまでも直接 手を下されることはなかった…
- …なら!
- 「そいつらの体を操る!」
- うらら: えっ!?
- うらら: わわ、体が勝手に 動いちゃうんよ!?
- うらら: 結菜さんっ! 逃げてほしいんよ!
- 結菜: く…もう、心も体も 限界なのよぉ…
- 結菜: それに、あなたのことを 傷つけられないわぁ…
- 旭: 我らも…体が勝手に…!
- ラビ: 大庭さん、逃げて…
- 樹里: …クソッ
- ???の声: 「樹里さん!」
- 結菜: ごめんなさぃ…うららぁ あとは頼むわぁ…
- うらら: そんなの 絶対、イヤなんよ!
- うらら: だ、誰か! 誰か助けてほしいんよ!
- ???の声: 「うらら、結菜!」
- うらら: ランタンが、攻撃を 防いでくれたんよ…!
- うらら: それより、さっきの声…
- 鈴鹿 さくや: …ふぅ ギリギリセーフかな?
- うらら: な…な… さくやさん…!
- 鈴鹿 さくや: 亡者の私には、うららの攻撃が 相殺できなくってさ
- 鈴鹿 さくや: ほら、亡者は 生者に攻撃できないからね
- 鈴鹿 さくや: ランタンなら、まあ できるんじゃないかなー的な
- 鈴鹿 さくや: …こんな手荒なマネじゃ あのときの借りは返せないかな
- 結菜: …さくや
- 鈴鹿 さくや: 遅くなってゴメン、結菜 いろいろと手間取っちゃって
- 案内役: ま、間に合った…
- 樹里: …お前、その声
- 案内役: …久しぶりだね、樹里さん
- 鈴鹿 さくや: …で、さすがに やりすぎなんじゃない?
- ぐうぅ…
- 案内役: …あら、聞こえないモードですね
- 旭: 案内役殿は、こちらの世界に 来られないんじゃ…
- 案内役: オレンジランタンが増えた隙に すっと入り込んじゃいました
- 鈴鹿 さくや: 仲間たちを連れてこられたのも みんなのおかげってこと!
- 鈴鹿 さくや: さぁ、みんな! 暴れてる仲間を止めるよ!
- 鈴鹿 さくや: はい、そっちのみんなも もう動けるはずだよ!
- 旭: 本当でありますね… 助かったでありますよ
- ラビ: 鈴鹿さん、暴れた亡者については 私たちが押さえておく
- 旭: だから、鈴鹿殿は うららたちと話を
- 旭: ここから脱出する算段も つくかもしれないでありますから
- 樹里: …どーなってんだ、これ
- 結菜: ほんと、ねぇ…
- FILENAME: text_520320-7_ejrFi.txt
- うらら: うっ…ぐぅ…ひく さくやさんなんよぉおおお…!
- うらら: ずっと、会いたかったんよ… ウチ、ウチ…あの時
- うらら: っ…助けられなくって… ごめんなさいなんよ…
- 鈴鹿 さくや: うらら、そんな泣かないでよ
- 鈴鹿 さくや: ありがとね、あの時 うららが無事で、何よりだよ
- うらら: ざぐやざんんん…
- 鈴鹿 さくや: あーよしよしよし! こうなるから出づらかったんだ
- 結菜: さくやぁ…
- 鈴鹿 さくや: おっと、再会のあれこれは 一旦ストップ!収集つかないから
- 樹里: …あぁ、色々と説明を してもらわないといけねーな
- 結菜: …どうして、今まで 出てこなかったのぉ…?
- 鈴鹿 さくや: いやぁ…なんか こういうの、気まずくて…
- 鈴鹿 さくや: でも、それ以前に こっちには来られなかったんだよ
- 鈴鹿 さくや: ふたりを赦す亡者は別のところに いるって話は聞いたよね?
- 結菜: えぇ…
- 鈴鹿 さくや: そこから、こっちに来るのって わりかし難しくってさ
- 鈴鹿 さくや: ふたりを恨むか、こっちで 赦す雰囲気になるかの二択で
- 樹里: お、恨んだか?
- 鈴鹿 さくや: 後者に決まってるでしょ…
- うらら: あれ…でも、それならウチらとは 会おうと思えば…
- 鈴鹿 さくや: う…だから出づらかったんだよ ごめんって…
- 鈴鹿 さくや: それで、悩んでたら案内役を 買って出てくれるって子に会って
- 鈴鹿 さくや: その子にテレパシーで指示しつつ みんなを誘導させてもらったんだ
- うらら: じゃあ、やっぱりあの時 感じた魔力はさくやさんなんよ!
- うらら: 台本を読んでたみたいなのも そのせいだったんよ…!
- 樹里: とりあえず、大方理解した それで、こっからどうする?
- 鈴鹿 さくや: いや、それなんだけど本当に ふたりが暴れたのが悪手!
- 結菜: う…ごめんなさぃ… 他に手がなくてぇ…
- 鈴鹿 さくや: まぁ、あんな状況になったら 動揺する気持ちもわかるけど…
- 鈴鹿 さくや: あの子たち、たぶん本当に 伝われば良かったみたいでさ…
- 鈴鹿 さくや: ま、私もこっちに来るまで わかんなかったんだけど
- 鈴鹿 さくや: あの子たちも、ちょっと 伝え方が下手すぎる節はあったよ
- 鈴鹿 さくや: 「穏便に、平和な未来を作ってほしいと 伝えたかった亡者たちと 殺されると思って本気の抵抗をした結菜たち」
- 鈴鹿 さくや: すっごいすれ違ってたみたい
- 樹里: なら、もっとわかりやすく 伝えらんねーのか…
- 鈴鹿 さくや: 二木市の魔法少女が話し合いで なんとかなってたら苦労しないよ
- 結菜: それは…否めないわねぇ…
- 鈴鹿 さくや: ってことだから、強行突破だよ
- 樹里: また暴れんのかぁ? さすがに、もう体力ねーぞ
- 鈴鹿 さくや: いや、さっきのランタンに今度は ふたりが自分で結晶をくべるんだ
- 鈴鹿 さくや: そうすれば、もっとお互いに 想いを伝えあうことができる
- 鈴鹿 さくや: 言いにくい想いも丸裸に ひとりずつ向き合えるよ
- 鈴鹿 さくや: …ふたりの結晶のストックは たんまりあるからね
- うらら: …あれ、そういえばその結晶って 元々はお供えした花…なんよね?
- うらら: …っていうことは樹里さん…
- 鈴鹿 さくや: うん、何度も何度も カタコンベに供えてくれたよね
- 樹里: バラすんじゃねーっつーの
- 樹里: …んで ランタンにくべればいいんだな
- 鈴鹿 さくや: うん これ、持っていって
- 樹里: わかった、行ってくる
- 鈴鹿 さくや: 樹里
- 樹里: んだよ
- 鈴鹿 さくや: ありがとね、花 らしくないことしてくれて
- 樹里: …花くらい供えるっつーの 樹里サマをあんまなめんなよ
- 鈴鹿 さくや: じゃあ、あっちに カタコンベがあるから
- うらら: あっちって… 何もないんよ?
- 鈴鹿 さくや: あるって信じてまっすぐ進んで そしたら、あるから
- 結菜: …えぇ、わかったわぁ
- 鈴鹿 さくや: じゃあ、うららは私と一緒に 暴れてる子たちを抑えようか
- うらら: わかったんよ!
- FILENAME: text_520320-8_ejrFi.txt
- 結菜: …本当にあったわねぇ
- 樹里: じゃあ、さっそく結晶を ランタンにくべるか
- …結菜さんがキュゥべえを 狩り始めなければ争わずに済んだ
- でも、魔法少女の真実を知れば そうなる気持ちもわかる
- だからこそ、恨みも怒りも 霞んでしまう
- 神浜市と共に歩むのも 怒りを抑えられない
- あれさえなければ 争いも激化しなくてよかった
- なのに、なぜ…と思いながらも 未来のためなら理解もできる
- 私たちはこの感情をいったい どうしたらいいんですか
- 誰を恨み、誰を怒り 自分を慰めればいいんです
- 結菜: 恨みも怒りも 私にぶつけていいわぁ…
- 結菜: その想いもすべて 私が連れて行くからぁ…
- 結菜: あなたたちが望んだ 平和な未来へ…
- 結菜: …だから、無理に赦さなくていい ただもう少し見ていてほしいの…
- 樹里さんが離反しなければ… そう、何度も考える
- あれは私たちも 悪いところがあったと思う…
- それでも、もう少し 他のやり方はありませんでしたか
- 樹里: …あの頃の樹里サマにとっては あれが正解で、唯一だった
- たくさん死んだのに、正解? バカ言わないでくださいよ
- 樹里: わかってる だから、赦さなくていい
- 何を…それなら ここで死んでくれますか
- 樹里: そうしたいなら、受け入れる
- 樹里: けど、殺されるつもりはねえ
- …あなたに勝てるわけがないと わかってて言うから、嫌いです
- 樹里: …悪いな
- 樹里: あと少し、時間をくれ もう昔とは違う…
- 樹里: だから樹里サマたちに 未来を、預けてくんねーか
- 結菜: ひとりひとりと語り合っていく
- 結菜: 語り合い、赦してくれる子 仕方なく、赦そうとしてくれる子 赦しはしないけれど、未来を託してくれる子 まだ、決められない子 はじめから、赦してくれていた子
- 結菜: それぞれの想いは ひとつずつ、ランタンをオレンジ色にしていく
- 結菜: そして、私たちが最後に 向き合うことになったのは…
- 鈴鹿 さくや: 改まって話すのは恥ずかしいね …えっと、なんかある?
- 結菜: たくさんあるわよぉ… でも、一番は感謝と謝罪…
- 結菜: …あなたのおかげで 争いは終わったし
- 結菜: 私は、一線を越えずにいられた
- 結菜: …あなたがいなければ、私は… なのに…
- 結菜: ごめんなさい…さくや… 私…あの時…っう…
- 鈴鹿 さくや: …よく頑張ったね、結菜 いいよ、今は泣いて
- 鈴鹿 さくや: 結菜は、全部ひとりで 背負おうとするから心配だよ
- 結菜: ふっ…うぅ… さくや…ごめんなさい…
- 鈴鹿 さくや: ごめんね、本当はこれからも 支えていくつもりだったのに
- 鈴鹿 さくや: 一緒に、未来へ行けなくて …ごめんね、結菜
- 案内役: えっと…
- 樹里: …お前だよな あの時の…
- 気づいてたんですね
- 樹里: …忘れるかよ
- 樹里: 樹里サマのストレス発散に 散々、付き合ってくれたヤツをさ
- 私で良ければ相手になりますよ
- 虎屋町の結菜さんが見せてくれる 景色もとても好きだけど
- 竜ケ崎の樹里さんが作る 景色も見てみたいって思う
- 結菜: っ、アナタどきなさい!!
- 樹里: それで、樹里サマのせいで 死んじまったんだから
- 樹里さんのせいじゃないよ
- ねぇ…樹里さん、見せてね 樹里さんの作った未来
- 樹里: あぁ…あの頃描いてたのとは だいぶ変わるだろうけどな
- 樹里: 姉さんたちと作る未来を いつか、見せてやる
- ふふ、期待してるね
- 結菜: そして、すべてのランタンは オレンジ色になった
- 鈴鹿 さくや: ああ、上手くやったみたいだね
- すみません、暴れちゃって
- 結菜: そっちも、落ち着いたのねぇ…
- 鈴鹿 さくや: 死ぬと情緒が不安定になる的な そういう世界っぽいね、ここは
- 旭: とりあえず、一件落着 …でありましょうか?
- 樹里: なんつーか、意外と すんなり…でもねーけど
- 樹里: マンガとかだとこういう時 ラスボスとか出てくるのにな
- 鈴鹿 さくや: あ、バカ…!
- 確かに、樹里さんの読んでた マンガなんかじゃそうかも
- でっかいラスボスとか アオさん好きそうだなぁ
- 鈴鹿 さくや: バカバカ!樹里のバカ! あーもう、どうすんのさ…
- 樹里: んだよ、さくや お前も情緒不安定か?
- 鈴鹿 さくや: いや、説明したらいろいろ まずいと思って言わなかったけど
- 鈴鹿 さくや: 「この世界は 思いのままの世界なんだよ」
- 樹里: ああ? どういうことだよ
- 鈴鹿 さくや: 想像したことが起きるってこと!
- 結菜: だから、さっきも信じれば カタコンベがあったのねぇ…
- うらら: じゃないんよ! こ、これって…まさか!
- ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
- 旭: 巨大ランタン…!?
- 鈴鹿 さくや: あぁ…言わんこっちゃない!
- 樹里: あれ、倒さないと 樹里サマたち死ぬか?
- 鈴鹿 さくや: 樹里が今そう思ったから そうなったね
- 樹里: オイ、マジかよ…
- 結菜: 無駄なことは考えず アイツを倒すわよぉ…!
- 樹里: っしゃ、じゃあ樹里サマたちが 道を開けるからお前ら援護しろ!
- みんな: 「はい!」
- 樹里: ―樹里― じゃ、今まで溜めてた血を全部ぶっ放して フルパワーで攻撃だっつーの!
- 鈴鹿 さくや: ―さくや― え、は、待って そこに溜まってんのみんなの血なわけ!?
- 樹里: ―樹里― アイツらボコしてた時に吸い込んだ 恨みや怒り、希望…すべて詰まってるぜ
- 結菜: ―結菜― さぁ…みんなの恨みも怒りも… 血と一緒に未来へ連れて行くわぁ…
- 結菜: ―結菜― これでみんな、血で繋がった義姉妹ねぇ…
- 鈴鹿 さくや: ―さくや― ほんとぶっ飛んでる…けど、いいね 連れて行ってよ、私たちも…未来に!
- FILENAME: text_520320-9_ejrFi.txt
- 結菜: こうして、突如現れた ラスボスを倒し、私たちは…
- 鈴鹿 さくや: ま、想定外は色々あったけど これで、おしまいだね
- うらら: さよならなのん…?
- 鈴鹿 さくや: …うん
- 結菜さん、樹里さん ありがとう
- 結菜: え…お礼を言われるような ことはなかったでしょぉ…?
- 未来を約束してくれて 嬉しかったんです
- 樹里: …改めて、悪かった それから…
- 樹里: 期待、しといてくれよ ニヒッ
- ああ、私たちの死体の上に 成り立つ平和ってやつをね
- 樹里: おい…言い方ってもんがあるだろ
- 恨みつづけることに ならなくてよかった
- …私は、ずっと赦しません
- 樹里: あぁ、わかってる 赦さなくていい
- 樹里: …これで最後なんだろ 一発くらい、殴ってもいいんだぞ
- …いえ、赦しもしないし 制裁も与えてあげません
- 一発殴られたからスッキリ …なんて、癪ですから
- それに…
- 求めた未来が一瞬だけ 見えたような気がしたから
- 結菜: その、求めた未来を きっと作っていくわぁ…
- あと、ごめんなさい 魔力を奪ってしまって
- 旭: いえ、こちらこそ勝手に 呼びつけてしまい…
- でも、おかげでお互い ケジメがつけられた…感謝する
- 案内役: 樹里さん また、いつかだね
- 樹里: …おう、再会は 遠くなるかもしれねーけどな
- 案内役: ふふ、樹里さんが 早く来るなんて思ってないよ
- 結菜: さくや…
- 鈴鹿 さくや: ちょ、湿っぽいのは ほんと無しだからね!
- 結菜: ええ、待っててちょうだぃ… 黄泉比良坂で、また会いましょぉ
- 鈴鹿 さくや: うん、すぐに来たら許さないよ!
- 鈴鹿 さくや: あ、そうそう、さっき攻撃を 相殺したランタンだけど…あれ
- 鈴鹿 さくや: 結菜のお墓になる予定なんだよね だから、早く来たらないよ、お墓
- 鈴鹿 さくや: まあ、今決めたんだけど
- 結菜: えぇ?
- 鈴鹿 さくや: ゆっくり直しておくからさ 100年後くらいにまた会おう
- 結菜: そんなに長生きできないわよぉ… ふふっ
- 樹里: さくや、達者でな …ってのはおかしいか
- 鈴鹿 さくや: いや、きっとそんなもんだよ 樹里も元気で
- 鈴鹿 さくや: 結菜に…ひかるやアオ、らんかも 二木市のみんなをよろしくね
- 樹里: おう、任せとけ
- うらら: さくやさん…
- 鈴鹿 さくや: うらら、ありがとうね いろいろと
- うらら: うっ…やっぱり泣かないなんて ムリなんよぉ…!
- うらら: ウチ、まだ帰りたくないんよ… さくやさんと、もっといたいんよ
- うらら: 話したいことも、したいことも いっぱいいっぱいあったんよ…!
- 鈴鹿 さくや: …大丈夫、いつかまた会える
- 鈴鹿 さくや: そうだ、たまに花を供えてよ そしたら…きっと繋がれる
- うらら: わかったんよ… たくさん持ってくるんよ!
- 旭: …やはり、うららは最初から 鈴鹿殿に会いたくて…
- ラビ: ええ、懐いていたし とても、悲しんでいたから…
- 鈴鹿 さくや: あの、三浦さん…だよね
- 旭: あ、えぇ…
- 鈴鹿 さくや: その…さ、えっと…アイツ 南津…
- 鈴鹿 さくや: …………いや、ごめん 何でもないんだ
- 鈴鹿 さくや: アイツなら、自分で いつか伝えにくるだろうし
- 鈴鹿 さくや: 勝手に元気かどうか聞くのは 野暮…ってやつだよね
- 鈴鹿 さくや: 三浦さん、氷室さん
- 鈴鹿 さくや: その、結菜たちはあんなだけどさ これからも仲良くしてやって
- 鈴鹿 さくや: あと、うららも… みんなをよろしく頼むよ
- 旭: …ええ、任せるでありますよ
- 鈴鹿 さくや: じゃあ、今度こそ お別れだね!
- 案内役: そこの道をまっすぐ行けば 元の世界に戻れます
- 鈴鹿 さくや: そう信じればね
- 結菜: えぇ、わかったわぁ…
- うらら: あ、ここでも 振り返ったらいけないのん?
- 鈴鹿 さくや: …あれは、振り返られたら私が 見つかっちゃいそうだっただけ
- 案内役: ええ、だから 振り返っても大丈夫ですよ
- 鈴鹿 さくや: むしろ、たまには 振り返って思い出してよ
- 鈴鹿 さくや: それで、前に進めるなら大歓迎 私たちはいつでもここにいるから
- 結菜: えぇ…またいつか
- 樹里: またな、お前ら
- うらら: またなんよーっ!
- 結菜: 私たちは、さくやたちが見えなくなるまで 何度も何度も振り返って手を振った
- 結菜: 何度も、何度も…
- 結菜: 次に目を覚ました時 私たちは、元の世界へと戻っていた
- アレクサンドラ: 旭ちゃん! 起きたんですね!大丈夫!?
- 結菜: 聞けば、私たちが倒れたあとは 栗栖さんがひとりで見ていてくれたという
- 旭: いつの間にか 魔法も解除されている…?
- 結菜: そして、私たちが出会った彼女たちは どこまでが三浦さんの魔法で呼び出したものか 全員で見た集団幻覚のようなものなのか それとも、もっと別の何かなのか
- 結菜: 真相は、わからないまま
- うらら: せっかく可愛い格好だったのに 元に戻っちゃったんよ…
- ラビ: まあ、あの世界でなった姿だし 仕方ない…
- らんかの声: あ、いないと思ったら みんなこんなところに…
- 智珠 らんか: …って何その格好!?
- ひかる: もしや、ハロウィンパーティーの 準備とかっすか!?
- アオ: えー!わたしたちに 内緒でなんてずるいよー!
- 樹里: いや…
- 結菜: 説明するのは難しいし… パーティーを実現させましょぉ
- 樹里: おいおい、マジかよ まあ…それもありか…?
- 樹里: おお、そうだ! さっさと準備すんぞ!
- 智珠 らんか: 墓でパーティーって なんか、怒られない?
- 結菜: ハロウィンには死者が 帰ってくるとも言うし…
- 結菜: お供え物いっぱいしたら きっと許してくれるっすよ!
- 結菜: 勘違いから始まったハロウィンパーティーは とんとん拍子で準備が進んでいき…
- 結菜: …グラスは 持ったかしらぁ…?
- 結菜: それじゃあ、二木市の発展と 魔法少女の未来を祈って…
- 結菜: …乾杯…は場所的に 悪いかしらぁ…ええと…
- 樹里: んじゃ! ハッピーハロウィーン!
- みんな: 「ハッピーハロウィーン!」
- 樹里: うらら、その衣装どうした?
- うらら: サーシャさんたちに 作ってもらったんよ~
- アレクサンドラ: ええ、私とはぐむちゃんで 可愛いですよね…うふふ♪
- 智珠 らんか: ねね、ミイラゲームやるから 結菜さんそこに立ってくんない?
- 結菜: えっと…こうかしらぁ…?
- アオ: そしたら、トイレットペーパーで 全身ぐるぐる巻きに!
- 結菜の声: あわ…ぁあああ…
- ひかる: ゆ、結菜さーん!
- 結菜: そのどんちゃん騒ぎは 夜遅くまで続き…
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- <数日後>
- 結菜: た、大変よぉ…
- 樹里: どうした、姉さん
- 結菜: 工事の着工が 見直されることになったのぉ…
- ひかる: ほんとっすか!?
- アオ: もしかして、最近 流れてた噂が理由…?
- 智珠 らんか: ああ、これ? 神浜市のオカルトサイトだけど
- 智珠 らんか: なぜか、二木市のことが 書いてあったんだよね
- ラプンツェル:最新情報を入手!! 今回はF市で起きたという怪現象について! 話によれば、ハロウィンの夜に とある場所で、夜までどんちゃん騒ぎが 聞こえたそうで…
- ラプンツェル:しかも、そこにいたのは吸血鬼! 吸血鬼については以前も紹介しましたが 今回はふたり組だったとか! 我々の知らぬ間に、吸血鬼は 徐々にその数を増やしているのかも~!?
- ラプンツェル:こんなオカルトページを 信じるかどうかは きみしだいだけどww
- <コメント> 暗黒魔術師X:T市の友人に聞いた話によれば どうやら、謎の儀式が行われていたのでは… ということだけど もしかしたら彼等が動き出したのかも…
- 結菜: これは…
- ラビ: サーシャ… これ…やりすぎなんじゃ…
- アレクサンドラ: 私は、少~し盛ったオカルトを お友だちに渡しただけですよ♪
- アレクサンドラ: 実際、ちょっとした噂には なっていたみたいですし…うふふ
- 旭: …工事が見直されたのであれば 結果オーライでありますか?
- 結菜: 私たちのどんちゃん騒ぎは どうやら、栗栖さんの裏工作もあり 都市伝説となっていて… その結果、工事の着工が見直されることとなった
- ひかる: まさか、ひかるたちが 伝説になるなんて…
- アオ: でも、とりあえずはよかったね 姉さまが警察送りにならなくて
- 智珠 らんか: 墓荒らされんのは困るし 樹里が暴れたら大変だし
- うらら: 一件落着なんよ~!
- 結菜: …………
- 結菜: 先輩は、あの世界にはいなかった 魔女になってしまったからなのか 先輩自身の意志かはわからない
- 結菜: けど先輩、私…未来に平和を繋いでいきます… だから、見ていてください
- 結菜: 憎まず、嫉まず、利己的にならず 何よりも誰かのためであり 世の平和と心の安寧を願い続ける
- 結菜: (それを、忘れずに…)
- 樹里: (穏やかな、今 …アイツらと約束した未来)
- 樹里: (平和な未来も悪くねえけど やっぱ、樹里サマは…)
- 樹里: オイ、姉さん! いっちょ、戦おうぜ
- 結菜: どういうことぉ…?
- 樹里: 格ゲーのリベンジだよ! 負けっぱなしは性にあわねー!
- 結菜: えぇ…目が疲れるから あまりしたくないんだけどぉ
- 樹里: いいからやんぞ! 馬!準備しとけ!
- ひかる: も~!樹里さんは 人使いが荒いんすから!
- 樹里: ニヒッ これが樹里サマだからな
- 結菜: …まったく
- 結菜: さあ樹里、やるからには 本気でやりましょぉ…
- 樹里: おおよ!
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