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Brethren Come Back To Life On Halloween JP Text

Oct 23rd, 2023 (edited)
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  1. FILENAME: text_520310-0.txt
  2. 結菜: それは、ハロウィンも近くなってきたある日 父と外出をしていた時のこと
  3. ~~♪~~♪
  4. 結菜の父: もしもし、はい…工事の件ですか 日程は…ええ、そうですね
  5. 結菜: …近くで工事が?
  6. 結菜の父: ああ、都市計画の関係で 道路の拡張工事があるらしい
  7. 結菜の父: 場所によっては立ち退き云々で 揉めることも多々あるんだが…
  8. 結菜の父: 今回は、特にそういうこともなく 順調に進みそうでな
  9. 結菜の父: ただ、交通規制があるだろうから 結菜も気をつけておくといい
  10. 結菜: そう…場所は?
  11. 結菜の父: 普段はあまり人の寄りつかない 河原の方らしい
  12. 結菜の父: 最近若者がたむろしてると聞くが 結菜には関係ない話かな
  13. 結菜: 河原の近く… もしかして…
  14. 結菜の父: 友だちの家でもあるのか? 詳しい地図も送られてるが…
  15. 結菜: …見せて
  16. 結菜: …大変だわぁ
  17. 結菜: 世間がハロウィンに浮かれる頃
  18. 智珠 らんか: ほんと、どうすんの…
  19. 智珠 らんか: あんな場所がバレたら、 アタシら生きていけないって…
  20. ひかる: 結菜さんが連れていかれたんす…
  21. ひかる: カタコンベの死体は全部 自分の指示で埋めさせたって…
  22. アオ: わたしは魔法少女の苦しみを 伝えようとしただけなのに…
  23. アオ: だけど、変な広がり方をして みんな犯罪者にされちゃった…
  24. 結菜: あの子たちが、いつか見た悪夢が…
  25. 樹里: こっちの事情も知らねーで 騒ぎ倒しやがって
  26. 樹里: ちょっとは怒りも我慢できて 抑えられるようになったが
  27. 樹里: お前らが標的になるってんじゃ 話は別だっつーの
  28. 智珠 らんか: バカ!
  29. 智珠 らんか: 一般人に危害なんて加えたら アタシら人類の敵だって!
  30. 結菜: 実現しようとしていた…
  31.  
  32. FILENAME: text_520310-1_qzi97.txt
  33. YOU LOSE
  34. 樹里: っだぁー! また負けた!
  35. アオ: もー!姉ちゃん! アシストはやるって言ったのに!
  36. アオ: そうやって、いつも突っ込むから やられちゃうんでしょー!
  37. アオ: 協力プレイなのに なんで協力しようとしないの!?
  38. 樹里: クッソ…樹里サマに ゾンビゲームは合わねえんだよ!
  39. 樹里: 攻撃は弱いし、すぐやられんのに 倒しても倒しても起き上がる!
  40. 樹里: 敵は、うじゃうじゃしてやがるし らちが明かねーったらねえよ
  41. 智珠 らんか: 言い訳とかダサすぎ 樹里がゲーム下手なだけじゃん
  42. 智珠 らんか: 前も、結菜さんに 格ゲーで負けてなかった?
  43. 樹里: おい、ウェルダンにすんぞ!
  44. うらら: 火気厳禁なんよ!
  45. ひかる: そうっす! 結菜さんちなんすよ!?
  46. ひかる: というか、ふたりでゲームの 協力プレイなんて珍しいすね
  47. 樹里: あーこれだよ、これ ひとりじゃクリアできなくてさ
  48. ハロウィンイベント開催中! 高難度クエストクリアで ジャック・オ・ランタンの衣装をプレゼント!
  49. 智珠 らんか: あ~、なるほど そういや、もうハロウィンか
  50. ひかる: 素朴な疑問なんすけど
  51. ひかる: …ジャック・オ・ランタン って、なんでジャックなんすか?
  52. 樹里: あぁ?なんか、そういう 話があったんじゃなかったか?
  53. アオ: それ、わたし知ってるよ~
  54. アオ: なんかねぇ…ネットの知識だから ふわっとしてるけど~
  55. アオ: ジャックっていうずる賢い人が 魂を取りに来た悪魔をだまして
  56. アオ: 自分の魂が取られちゃうのを 回避する~みたいなお話でね
  57. アオ: 最終的には二度と魂を 取らないって悪魔に約束させるの
  58. ひかる: へ~、ジャックすごいっすね 悪魔に勝つなんて
  59. 智珠 らんか: 魂を取られないってことは 不死身になったわけ?
  60. アオ: んーん、このお話は ここからがポイントなんだよ~
  61. アオ: 「ジャックは、そのあと年をとって死ぬんだけど うそつきだから天国には入れてもらえなくって 仕方なく地獄に行くんだよ …でもそこにいたのは、かつてだました悪魔」
  62. アオ: 「ジャックは地獄に入ろうとするんだけど 魂をとらない約束だ~って悪魔に言われて 地獄にも入れてもらえないから、どこにも行けず 天国と地獄の間…真っ暗闇をいったりきたり…」
  63. アオ: 「…で、さすがに可哀想だと思った悪魔に もらった火を、ジャックはカブで作った ランタンに灯して、その光だけを頼りに 永遠にさまよいつづけることになったんだとさ」
  64. アオ: …みたいな 諸説ありって感じだけどね
  65. 智珠 らんか: え、ホラーじゃん…てか カボチャじゃなくてカブなの?
  66. アオ: 手に入りやすかったとかで カボチャが主流になったらしいよ
  67. アオ: 可哀想な話だけど、まぁ うそつきのジャックが悪いよね~
  68. ひかる: 悪魔も悪魔で、意外と お人好しというかなんというか…
  69. うらら: …でも、さまよいっぱなしは なんだか可哀想な気もするんよ
  70. ガチャ
  71. ひかる: この扉を開ける音は… 結菜さんのご帰宅っす!
  72. 樹里: 音でわかるって… 馬も、いよいよヤバいな
  73. タッタッタッタッタッタッ
  74. アオ: ん?姉さまが走ってるなんて かなり…珍しいっていうか…
  75. 智珠 らんか: 嫌な予感しかしないんだけど…
  76. 結菜: た…大変よぉ…
  77. 樹里: どうした、姉さん
  78. 結菜: カタコンベの真上で 工事が行われるらしいわぁ…!
  79. 樹里: なっ…!?
  80.  
  81. FILENAME: text_520310-2_qzi97.txt
  82. 結菜: 私が父から聞いたのは 二木市で、これから都市計画に基づいた 道路の拡張工事があるらしいこと
  83. 結菜: そして、詳細な地図を見て気づいたのは 工事が行われる予定の場所が カタコンベの真上である…ということだった
  84. アオ: …ってことは、カタコンベも 掘り起こされたり…とか
  85. 智珠 らんか: それ…まずくない? 死体が埋まってるわけだし…
  86. 樹里: いろいろ、バレちまうな…
  87. ひかる: 結菜さんが 警察に連れていかれて…
  88. ひかる: う、うあああぁ…! 悪夢の再来っすよ…!
  89. 結菜: 落ち着きなさぁぃ…
  90. 結菜: その言い方だと私が一度 捕まったみたいでしょぅ…
  91. 結菜: それは全部、悪夢の話…
  92. 結菜: 一度忘れて 今後のことを考えないとぉ…
  93. うらら: …その、まずいって言うのは…
  94. 結菜: カタコンベは、魔法少女たちの墓
  95. 結菜: 掘り起こされて死体が出てくれば 当然、警察沙汰になる…
  96. ひかる: それに、死体と魔法少女の 因果関係に気づかれでもしたら…
  97. アオ: わたしたち殺人鬼だと思われて 世の中の敵になっちゃうよ
  98. うらら: ぁ…
  99. 結菜: 工事を中止させるアプローチが できないか考えてるけど
  100. 結菜: 市長の娘だからって 工事は覆せないでしょうねぇ…
  101. 樹里: まあ、仲間の死体があるなんて 口が裂けても言えねーよな
  102. ひかる: せめて遺骸だけでも 移動させたいっすけど
  103. ひかる: カタコンベはひかるたちにとって 大切な場所っす…
  104. 結菜: えぇ、死んだ彼女たちに対して 心の整理をする場所…
  105. 結菜: それを失うのは避けたいわぁ…
  106. 樹里: 樹里サマもアイツらに対して ケジメをつけてねーからな
  107. 結菜: 私はユニオンと和解したときに 祈ることができたけど
  108. 樹里: …そういうこった 樹里サマはあのころ…
  109. 結菜: …だけど、私だって 一方的に赦しを乞うただけ…
  110. 結菜: 本質的には樹里と なんら変わらないわぁ…
  111. 樹里: いずれにしても、樹里サマは まだ償いってもんをしてない
  112. 樹里: 墓が失われちまうなら その前になんとかしてえ
  113. 智珠 らんか: そうは言っても 償いって何をするつもりなわけ?
  114. 樹里: 昔の樹里サマなら、償いのために 命を捨てることも考えただろうが
  115. 智珠 らんか: はぁ!? やめてよね、そんなの
  116. 樹里: 言われなくても わかってるっつーの
  117. 樹里: お前らのこととか… 守るもんを残して死ねねーからな
  118. 樹里: けど、何かしらの形で ケジメはつけたいと思っちまう
  119. 結菜: ゆっくり考える時間も あまりなさそうだからねぇ…
  120. 樹里: …どうしたもんかな
  121. ラビ: …急に集まりたいと 言い出したかと思えば
  122. ラビ: 旭の固有魔法を使い 二木市の亡者を呼び出したい、と
  123. うらら: そうなんよ!
  124. ラビ: 大庭さんたちが、死んだ仲間への ケジメをつけられるように?
  125. うらら: 直接話すことで赦してもらえれば お互いケジメがつけられるんよ
  126. アレクサンドラ: …言うほど簡単な ものなんでしょうか?
  127. アレクサンドラ: それに、あの魔法は 旭ちゃんが…
  128. 旭: …我は、賛成できないであります
  129. うらら: なんでなんよ…!
  130. 旭: …まず、魔法少女の亡者となると 未知なことが多い
  131. 旭: 魔女になっていたり ソウルジェムが砕けていたら
  132. 旭: 亡者を呼べるかどうか わからないのであります
  133. うらら: そんなの、やってみないと わからないんよ!
  134. 旭: …死者の魂は、そう易々と 呼ぶものでないのであります
  135. 旭: それは、生命への冒涜と 言えるのでありますよ…うらら
  136. 旭: それに…この魔法で呼ぶのが 本当の魂かは、わからない
  137. 旭: 我らの記憶が生み出した 幻想であるかもしれないし
  138. 旭: 亡骸に染みついた 記憶でしかないかもしれない…
  139. うらら: それでも、ウチは結菜さんたちに 恩を返したいんよ
  140. うらら: このままカタコンベが無くなれば 後悔が残っちゃうんよ…
  141. うらら: それに…ウチ…
  142. 旭: なんでありますか?
  143. うらら: ううん
  144. うらら: …お願いなんよ、旭さん!
  145. 旭: ………… はぁ…わかったであります
  146. 旭: 何やら、亡者を呼びたい 他の理由もあるようでありますし
  147. 旭: うららの頼みなら 仕方がないでありますから
  148. うらら: 他の理由なんてないんよ!?
  149. 旭: …そうでありますね
  150. 旭: さて、やるならば しっかり準備するであります
  151. ラビ: …ええ、あの時のような 失敗はできないから
  152.  
  153. FILENAME: text_520310-3_qzi97.txt
  154. 結菜: 工事のことが発覚した次の日 三浦さんと氷室さんを引き連れたうららから カタコンベに呼び出された私たちは ある提案を受けることとなった
  155. 結菜: それでぇ…?
  156. 結菜: 三浦さんの魔法で、亡くなった 魔法少女の魂を呼んでくれる…と
  157. うらら: これなら、ケジメも つけられると思ったんよ!
  158. 樹里: …なるほどなぁ
  159. うらら: …あれ、なんだか微妙な顔 嬉しくないんよ?
  160. うらら: 死んじゃった仲間に もう一度、会えるんよ?
  161. 樹里: まぁ十中八九恨まれてる相手だし 手放しでは喜べねーよ
  162. 樹里: とは言えケジメをつけられるのは 願ったり叶ったりだ
  163. 樹里: 霊を呼び出す…っつーと 呪い殺される不安はあるけどな…
  164. うらら: 大丈夫なんよ! きっと赦してくれるんよ!
  165. 結菜: …うららは血の惨劇を見てないし そう思うのも仕方ないけどぉ…
  166. 結菜: あなたが考えているよりも 赦されないことをしてきたのよぉ
  167. 結菜: …けど、今となっては これが最善かもしれないわねぇ
  168. 結菜: 工事が始まる前に ケジメをつける方法は…
  169. 樹里: ま、せっかくのお膳立てだ やるっきゃねーな
  170. 樹里: …んで、これって霊から 攻撃は受けたりすんのか?
  171. 樹里: 相応のことをした自覚はあるから 罰は受けるが、殺されんのは困る
  172. 樹里: 生きて、これからを変えることが 過去への報いでもあるだろうし
  173. 樹里: 守るもんを放って死ぬなんて そんなダセーこともできねぇから
  174. 樹里: アイツらの恨みは受け入れても 死なねー必要があんだ
  175. 樹里: それなりに対処は考えておきたい
  176. 旭: …霊による物理攻撃は 基本的に無いかと
  177. 旭: ただ、精神攻撃については …未知数でありますな
  178. 樹里: オイオイ…曖昧だなぁ…
  179. 結菜: ひかるたちを連れてこなくて 正解だったわねぇ…
  180. 樹里: ま、実際アイツらは こっちに振り回されただけだしな
  181. 樹里: 神浜市でのことやアオの件は …ここじゃ、どうにもできねー
  182. 樹里: ともかく、二木市での争いで 責任があんのは樹里サマたちだ
  183. 旭: …では、亡者を呼び出す ということでいいのでありますか
  184. 結菜: ええ、お願いするわぁ
  185. 樹里: ん…つーか、お前らんとこの もうひとりはどこ行った?
  186. ラビ: サーシャは、外で待機中
  187. ラビ: 何かあった時のために グリーフシードも用意してある
  188. 樹里: 何かあった時って… 怖いこと言うな…
  189. 旭: …以前、この魔法を使った結果 悲劇が起きたのは事実であります
  190. 樹里: おい…マジかよ
  191. ラビ: だからこそ、細心の注意を払う
  192. 旭: …では、花を手向けたら さっそく始めるであります
  193. ラビ: …概念強化
  194. 旭: ふぅ…
  195. 旭: 冥府にいる亡者たちよ 我の声に応えて欲しいであります
  196. 旭: 亡くなった二木市の魔法少女たち 戦いの中で失われた命よ
  197. 旭: 我の声が聞こえたら 姿を現してほしいであります
  198. 結菜: …本当に、みんななのぉ…?
  199. 旭: …さぁ、時間は僅かであります 今のうちに、言葉を
  200. 結菜: …………ええ まず、説明させてぇ…
  201. …そう、前に進むのね
  202. 結菜: …ごめんなさい 私たちのせいで…みんなが
  203. 結菜: それなのに、私たちだけが 生きて前へ進むだなんて…
  204. 樹里: …赦されるとは、思ってない ただ、ケジメをつけにきた
  205. 樹里: カタコンベが なくなっちまう前に
  206. …まあ、私たちは死んだ身 恨む気持ちがない訳じゃないけど
  207. その気持ちだけあれば 好きにしてくれて構わない
  208. はい、私たちの死が 良いものに繋がるのなら
  209. …………
  210. …だけど、謝罪は必要だよね 殺された子だっているし
  211. 樹里さんのせいで …魔女になった子だっていた
  212. 確かに、多くの子が死んだ その溜飲を下げる必要はあります
  213. 死んだ身…とは言え 気持ちだけでも救われたい
  214. だから、説明して あの戦いの意味を
  215. 樹里: …………
  216. 結菜: すべては、私たちのせいよぉ
  217. それでは、説明になってない
  218. 樹里: 戦いの意味っつーなら あれは、生きるための戦いだった
  219. だけど、多くが死んだ なぜ?
  220. 樹里: 魔女が減れば、奪い合いになる それは、当たり前のことだったが
  221. 樹里: その上で、争いが激化したのは 樹里サマたちの責任だ
  222. 責任を認められたところで 何も帰ってこない
  223. 樹里: …んなの、わかってんだよ!
  224. 結菜: 樹里…
  225. 樹里: …つーか、状況を考えれば 仕方ないことだったろ、あれは!
  226. 樹里: 仮に、仲良しこよしでいられても その先の結果は見えてた…
  227. 樹里: 結局、グリーフシードが不足して みんなで魔女化ってのがオチだ!
  228. …言い逃れするの?
  229. 樹里: …っ、そうじゃねぇ
  230. 樹里: ただ、今さら言葉を尽くしても お前らが納得できるとも思えない
  231. 樹里: さっき言われた通り 失われたもんは、もう…
  232. だから、すべて水に流せと?
  233. 樹里: いや、償いは…
  234. …信じられない
  235. 赦すわけにはいかないよ
  236. 神浜市の件も原因だったけど 自治にだって問題があった
  237. もっと他のやり方だって あったはずなのに
  238. そうしたら、死なずに済んだ子も いたかもしれないのに
  239. 「赦せない」 「赦せない」 「赦せない」
  240. うらら: わ…わ…
  241. ラビ: 旭、早く魔法の解除を… 概念強化はもう解いてある
  242. 旭: おかしいであります…! 魔力の制御が効かず…!
  243. 旭: く…まずい…意識…まで…
  244. 結菜: …いったい、何が…
  245. 樹里: うっ…
  246. 「私たちの想いを知れ」
  247. アレクサンドラ: ――っ!? 大変…旭ちゃんたちの魔力が…
  248. アレクサンドラ: どうして…ソウルジェムが すごい勢いで濁って…!
  249. アレクサンドラ: 他のみんなも… 気を失って…
  250. アレクサンドラ: いったい 何が起きたの…?
  251.  
  252. FILENAME: text_520310-4_qzi97.txt
  253. それで、説明してもらえる? テリトリーで何をしていたか
  254. ご、ごめんなさい… 迷って入っちゃっただけで…
  255. 謝罪してほしい訳じゃなくて 改善策を聞きたいの
  256. そう責めなくてもいいだろう 虎屋町も以前こちらを侵害した
  257. だから、責めてるわけじゃないわ それに、あれは魔女を追って…
  258. 樹里: てめーら落ち着けよ
  259. 樹里: お互いにわざとじゃねーのは わかってるっつーの
  260. 結菜: そう、だから今回のような実例を 今後どう扱うか話したいわぁ
  261. 樹里: 樹里サマとしては方針だけで 別にかまわねーけどな
  262. 樹里: テリトリーは侵害しない それで十分だろ
  263. しかし、ルールがなければ 再び揉めることもあります
  264. はい…私たちは争わず 今まで通り穏やかに過ごしたい
  265. その日常を得るためにも きちんと話し合いましょう
  266. 結菜: みんなの総意がある以上 面倒臭がってちゃだめよぉ
  267. 結菜: 今日は、ここで解散…いいわねぇ
  268. 結菜: それで…どうするぅ…?
  269. 樹里: …………
  270. 樹里: 姉さん、気づいてんだろ いつまで茶番に…
  271. 結菜: その先は、ストップよぉ…
  272. 結菜: 誰が…何が聞いているか わからないんだからぁ…
  273. 樹里: …気づいてたか
  274. 結菜: …えぇ さすがにおかしいものぉ
  275. 結菜: 私たちがいたのは、違和感だらけの二木市 目を覚まし、時間を過ごす中で気づいたことは どこまでも平和だという決定的な違いだった
  276. 結菜: 加えて、魔女は問題なく現れ キュゥべえは普通に二木市内に存在し 魔法少女も、日々増えていく …何より、血の惨劇は起きていない
  277. 結菜: 虎屋町、竜ケ崎、蛇の宮と 市内で魔法少女の派閥はあれど それらは協力関係を結び抗争なども起きない
  278. 結菜: そんな、ありえない二木市
  279. 樹里: 過去に戻ったとか… そういうのじゃなさそうだよな
  280. 結菜: ええ、魔女もちゃんといるし… アオやひかる…さくやもいない
  281. 樹里: らんかも、見てねーな
  282. 樹里: 今生きてるやつでここに居るのは 姉さんと樹里サマだけみてーだ
  283. 結菜: それに、同時に存在しないはずの 子たちもいたりするから…
  284. 結菜: 時系列がごちゃまぜになった 死者たちの世界…というところ?
  285. 樹里: …こりゃ、普通の人間が 起こしたこととは思えねーな
  286. 結菜: だから、さっき樹里の発言を 止めたのよぉ…
  287. 樹里: キモチやウワサと戦ってきた 経験から考えてってことか
  288. 樹里: まぁ、キモチに関しては意志まで 干渉してきたけどな…
  289. 結菜: それでも、未知の敵なら対策を しておくに越したことはないわぁ
  290. 結菜: 現状で危険がないのであれば 気づかないふりをするのが得策
  291. 樹里: まぁ…だな
  292. 結菜: …ただ、きっかけはどう考えても 三浦さんの魔法…でしょうね
  293. 樹里: というか、呼ばれた霊たちの 攻撃ってとこじゃねーか?
  294. 結菜: それなら、あなたの余計な一言が 引き金を引いたんじゃないのぉ…
  295. 結菜: 仕方ない…だなんて 半ば逆ギレだったじゃなぃ…
  296. 樹里: だったら、“たられば”でも 披露すればよかったか?
  297. 樹里: キュゥべえを排除しなけりゃとか 樹里サマが離反しなけりゃとか…
  298. 結菜: …………
  299. 樹里: …確かに、言葉足らずだったし カッとなっちまったとこはある…
  300. 樹里: ただ、過去は変えられない…
  301. 樹里: それに、あの結果を辿ったのは “必然”だと思うぜ…
  302. 結菜: …避けようがなかった、と?
  303. 樹里: ああ…
  304. 樹里: 魔女化を知れば、同じように キュゥべえを狩っていただろうし
  305. 樹里: 魔女が減りゃ、どんな形にしろ 二木市内で争いは起きてた
  306. 樹里: それでも、キュゥべえを 狩り始めた姉さんと
  307. 樹里: 離反し、争いを大きくした 樹里サマが悪いのは変わらない
  308. 結菜: …だから自分たちの行動を 正当化するってことぉ…?
  309. 樹里: そう取られても仕方ねーが… ただな…
  310. 樹里: あそこで、綺麗な言葉を吐きゃ 一件落着したかもしんねー
  311. 樹里: だけどよ、それはなんつーか だましてるような気がすんだよ
  312. 結菜: …はぁ…
  313. 結菜: 不器用なのか、誠実なのか… 相変わらず下手ねぇ…樹里は
  314. 樹里: 姉さんと違ってな
  315. 樹里: それに、いくら言葉を重ねても 罪は軽くなったりしねーだろ
  316. 結菜: …そうねぇ
  317. 樹里: …で、この状況を作り出したのは あいつらの復讐か?
  318. 結菜: まぁ…いくら平和な二木市 とは言え、それ自体が不気味だし
  319. 結菜: それに…
  320. 「赦せない」 「赦せない」 「赦せない」
  321. 結菜: あの感じだと、十中八九 復讐でしょうねぇ…
  322. 樹里: だよなぁ…
  323.  
  324. FILENAME: text_520310-5_qzi97.txt
  325. 結菜: 私たちが迷い込んだのは平和な二木市 そこには『血の惨劇』という歴史がなく どこまでも協調的な魔法少女たちがいた
  326. 結菜: この世界に私たちを連れてきたのは 死んだ二木市の魔法少女かもしれない…
  327. 結菜: そう推測した私たちは不気味さを覚えながら 死んだ彼女たちの霊に 復讐されるのではと考えていた
  328. 樹里: 復讐なら、普通に樹里サマたちを 呪い殺すなりしたらいいのにな
  329. 結菜: 三浦さんが言うように 物理攻撃が不可能なのかも…
  330. 樹里: そう考えりゃ精神攻撃が順当か
  331. 結菜: 平和な世界に私たちを閉じ込めて 魔力を涸渇させるつもりかしらぁ
  332. 樹里: ったく、遠回りだな
  333. 樹里: …なあ、姉さん いっそのこと仕掛けねーか?
  334. 樹里: 向こうが手をだせねーんなら その切っ掛けを与えてやろーぜ
  335. 結菜: こちらの攻撃がトリガーになって 向こうも手を出せるってことぉ?
  336. 樹里: ああ、樹里サマたちが話し合いに 応じてたから
  337. 樹里: アイツらも復讐を 果たせなかったのかもしれねえ
  338. 結菜: もしも、そうなら試しましょぅ
  339. 樹里: 復讐を受け入れるんだな?
  340. 結菜: だけど、殺すつもりで来るのなら 全力で抵抗させてもらうわぁ
  341. 結菜: 自分が罪深いのはわかってるけど 今後を思えば死ねないものぉ
  342. 結菜: 相手の気持ちを晴らして 脱出できるのがベストなんだけど
  343. 樹里: 殺されず、復讐を受け入れる その矛盾を叶えるために
  344. 樹里: アイツらの無念を晴らし 復讐させる舞台を作るってことか
  345. 結菜: 昔みたいな殺伐とした二木市なら 復讐もしやすいだろうしねぇ…
  346. 樹里: 殺す気概で樹里サマたちと戦わせ こっちは殺されないよう耐える
  347. 樹里: んで…スッキリさせたら あいつらには悪いがトンズラする
  348. 結菜: でも、相手は亡者 上手くいくかしらぁ…
  349. 樹里: んなの、樹里サマの腕っぷしと 姉さんの頭脳があればいけんだろ
  350. 樹里: ま、普通に死ぬかもしれねーけど そん時はそん時だろ
  351. 樹里: 先にヘバんじゃねーぞ、姉さん
  352. 結菜: …樹里こそ
  353. 樹里: …じゃあ、さっそく今夜 始めるとすっか
  354. 結菜: ええ…何度も繰り返した あの、血生臭い抗争を…
  355. 結菜: 私たちは今宵… 赦されない罪を重ねるわぁ
  356. それで、今後のルールなどは…
  357. 樹里: そんなもんはねーよ
  358. え、じゃあ…テリトリー問題は…
  359. 樹里: あぁ? そんなの拳で解決しろよ
  360. どういうこと!? 樹里さん…!
  361. 樹里: どういうことも何も 単純な話だっつーの
  362. 樹里: 強いやつが魔女を倒し グリーフシードを手に入れる
  363. 樹里: それで万事解決だろ、ニヒッ
  364. …じゃあ、弱い子は 淘汰されてしまう…!
  365. 樹里: そりゃー 弱いやつらが悪いだろ
  366. 樹里: ま、竜ケ崎の傘下に入れば 多少は手助けしてやってもいい
  367. 樹里: 傘下に入ったら 一生、小間使いだけどな
  368. くっ…
  369. 結菜さん…いいんですか
  370. 結菜: えぇ…樹里との話し合いは 決裂してしまったわぁ…
  371. 結菜: だから 力で屈服させようと思うのよぉ…
  372. 力でって…まさか!
  373. 結菜: 戦争よぉ…
  374. 樹里: んじゃ、久々に やりあおうぜぇ…姉さん!
  375. そんな…!
  376. 結菜: 文句があるなら 私たちに勝負を挑むことねぇ
  377. 結菜: いつでも待っているからぁ…
  378. 結菜: …じゃあ、樹里 やりましょうかぁ
  379. 樹里: あぁ…!
  380.  
  381. FILENAME: text_520310-6_qzi97.txt
  382. 結菜: 死んだ彼女たちの復讐を受け入れることを 決めた私たちだったけれど これから守るべきもののことを考えれば 贖罪はしても、死ぬことはできなかった
  383. 結菜: 復讐は受け入れるが、死ねない その矛盾を果たすためには、彼女たちが 私たちを殺す気概で叩ける場所が必要となり 死んだ彼女たちの復讐を果たす舞台を作るべく 戦いの場を設けた
  384. 結菜: そして、殺されないように 全力で抵抗する…というのが私たちの答え
  385. 結菜: それは、赦されない罪を繰り返す 苦渋の選択だったけれど どれだけ戦おうが、煽ろうが 彼女たちが私たちに手を出すことはなく 樹里と私だけが戦う時間が過ぎていった
  386. 樹里: なんっっっで、一切 攻撃されねーんだよ!
  387. 樹里: どんだけボコっても、アイツら やり返さねーし怒りもしねえ!
  388. 結菜: 攻撃されないことを嘆く… というのも変な話ねぇ…
  389. 結菜: ここから逃げる方法も まだよくわかってないし…
  390. 樹里: こうなりゃ次で最後だ 戦わざるを得ない状況にすんぞ
  391. 結菜: 今でも十分だと思うけど 何をするつもりぃ…?
  392. 樹里: 奇襲だよ やってなかったと思ってな
  393. 結菜: …今度こそ 死人が出るかもしれないわよぉ
  394. 樹里: なるべく殺したくはねえし 負かすだけのつもりだ
  395. 樹里: けど…どっちにしろ、アイツらは 樹里サマたちのせいで死んでる
  396. 樹里: アイツらの復讐を果たさせて ケジメをつける方が大事だろ
  397. 樹里: …樹里サマたちの 罪悪感なんかよりな
  398. 樹里: その為なら、いくらでも暴れるし 攻撃だって一身に受けてやる
  399. 樹里: …それに、もう樹里サマたちは 罪を重ねるっつー選択をした
  400. 樹里: …今さらだろ
  401. 結菜: …………わかったわぁ
  402. 樹里: じゃ、樹里サマは ひとりで虎屋町に奇襲するから
  403. 樹里: 次の集会は外でやってくれれば そこでケリをつける
  404. 結菜: …ということだから 今日の集会はここまでよぉ…
  405. 樹里さんとは あの後どうなっているんです?
  406. 結菜: それは…
  407. 樹里: これが答えだっつーの!
  408. 結菜: みんな!奇襲よぉ…!
  409. 樹里: お前ら!死にたくなきゃ戦え!
  410. きゃぁっ!
  411. やめて…樹里さんッ!
  412. 樹里: 日和ってんじゃねーぞ! オイ!
  413. ぐあぁっ!
  414. 樹里: …チッ、殺さない程度ってのは どうも難しいな…
  415. 樹里: …おらぁ! 姉さんも!やんぞ!
  416. 結菜: くっ…!
  417. ふたりとも、やめて…!
  418. 樹里: ならっ!
  419. くぅっ!
  420. 樹里: 自分でやれよ…な!
  421. がぁあっ!
  422. 樹里: っあ、やべ… やりすぎた…か…?
  423. 結菜: …だけど、これをきっかけに 虎屋町は反撃するはず…
  424. 樹里: …あぁ、覚悟はできてたんだ
  425. どうして… もう、やめましょうよ…ね?
  426. …そうです 終わりにしましょう
  427. 戦うなんてよくないですよ
  428. 樹里: じゃあ、お前らが 止めればいいだろ!
  429. 樹里: 樹里サマたちを倒せば 争いは終わるんだぞ!?
  430. そんな止め方、望んでませんよ
  431. 樹里: なぁ、さすがにおかしいだろ こいつら、訳がわかんねえ…
  432. 結菜: …えぇ、もはや不気味 というか…こんなの…
  433. 結菜: あ…れ…
  434. そうですよ、樹里さん 結菜さん
  435. 樹里: な…お前、さっき倒したはず… すぐ動ける傷じゃねーだろうが…
  436. ねえ、楽しく暮らしましょうよ これからも、この幸せの中で
  437. 樹里: なん…だよ、これ… 普通じゃ…ねーよ…
  438. 結菜: 樹里、行きましょぉ…
  439. 樹里: 行く…って、どこに!
  440. 結菜: とにかく 一度、距離を取るのよぉ…!
  441. 樹里: …この電車 神浜市方面行きか…?
  442. 結菜: 望みは薄いけど 誰かいるかもしれなぃ…
  443. 結菜: 道中、長いし眠ってていいわぁ 疲労も溜まっているでしょうから
  444. 樹里: …あぁ、体より…心にな
  445.  
  446. FILENAME: text_520310-7_qzi97.txt
  447. 「次は~…」
  448. 樹里: ん…だいぶ寝ちまったし… そろそろか?
  449. 樹里: …姉さん、起きろ
  450. 結菜: …あぁ、ごめんなさぃ 疲れがたまっていて…
  451. 結菜: あと何駅くらいかしらぁ… というか
  452. 結菜: 私たち以外 乗客は誰もいないのねぇ…
  453. 樹里: なんつーか、不気味だな…
  454. 「次は~…」
  455. 樹里: お、アナウンスだ さっきは聞き損ねてさ
  456. 「次は~…■■■■」
  457. 樹里: …あ?今、なんつった? なんかキモい音だったような
  458. 結菜: …見て、樹里… 窓の外…
  459. 樹里: これ、二木市の近くか…? 寝すぎて折り返した…?
  460. 結菜: いえ…それほど時間が経ったなら 日が沈んでいてもいいはずよぉ…
  461. 樹里: じゃあ…!
  462. 「次は~…二木市~二木市~」
  463. 樹里: っ…いや、行き先を 間違えたんだよ…きっと
  464. 樹里: もう一度、神浜市に向かうぞ
  465. 「次は~…二木市~二木市~」
  466. 樹里: …おかしいだろ なんっなんだよ!これ!
  467. 結菜: …私たちは二木市から出られない 降りるしかないようねぇ…
  468. プシューッ
  469. 結菜: …な
  470. おかえりなさい 結菜さん、樹里さん
  471. 「おかえりなさい」 「おかえりなさい」 「おかえりなさい」
  472. 樹里: …っ
  473. 樹里: …もう、復讐を受け入れようとか そういう話じゃないよな
  474. 樹里: 目的も分からねえコイツらに 付き合ったところで
  475. 樹里: この空間を出られねえ
  476. 結菜: ええ…こんな状況だったら ここから脱出するのが優先…
  477. 結菜: だから、とにかくこの場は 切り抜けないといけないわぁ…
  478. 樹里: …つっても、囲まれてるぞ
  479. 結菜: …それなら 強行突破しかないでしょぅ…
  480. 結菜: はぁっ!
  481. ぐぅっ
  482. う…うぅ…
  483. 樹里: 倒れても倒れても起き上がる
  484. 樹里: これじゃあ、アオとやった ゾンビゲームじゃねえか…
  485. 結菜: …………
  486. 樹里: …姉さん?
  487. 結菜: 二木市の魔法少女は みんな地獄行き…
  488. 結菜: そう思っていたけど… 地獄にも行けないかもしれなぃ…
  489. 樹里: あ? どういうことだよ
  490. 結菜: 樹里、ジャック・オ・ランタンの 物語は知ってるぅ…?
  491. 樹里: ああ、ちょっと前に アオから聞いた
  492. 樹里: 悪魔をだましたジャックが 地獄にも天国にも行けず
  493. 樹里: さまよいつづける っつー話だろ?
  494. 樹里: …まさか、樹里サマたちも そうなるって…
  495. 結菜: あくまで、想像でしかないけど
  496. 結菜: このまま、じわじわと 精神を破壊されるのかも…って
  497. 結菜: 元の世界にも戻れずに 平和すぎる二木市で、ずっと…
  498. 樹里: オイ…思ってた復讐と 色が違い過ぎねーか…
  499. 結菜: しかも、相手は殺しても 死なないような相手…
  500. 樹里: …詰んだかもしれねぇな
  501. 樹里: …なんだ、今の気配
  502. 結菜: …見て、ランタンが浮かんでる
  503. 樹里: あんなの、今まであったか?
  504. 結菜: わからないわぁ…
  505. 結菜: なかったかもしれないし 認識できていなかっただけかも…
  506. 樹里: そういや、あいつらも なんであんな格好してんだ?
  507. 結菜: 言われてみれば…どうして 今まで気にならなかったのかしら
  508. 結菜: こんな世界でも正気を保っている …そう、思っていたけれど
  509. 結菜: もはや自分の意識も 見えているものも信じられない…
  510. 樹里: でも、この熱は嘘じゃねえ シャキッとしろ、姉さん
  511. 結菜: そうねぇ…あなただけは 信じるわぁ…樹里
  512. 樹里: はは、皮肉なもんだな かつては殺しあったってのに
  513. 樹里: 今じゃ、信じられるのは お互いだけってか
  514. 樹里: そんじゃ、やるか
  515. 結菜: …ええ
  516.  
  517. FILENAME: text_520310-8_qzi97.txt
  518. 樹里: っらぁ!
  519. ぐぅぅ…
  520. 樹里: クソ…らちが明かない上に まったく攻撃してこねえ!
  521. 樹里: そのくせ、数は多いし復活するし すぐに囲まれる…!
  522. 樹里: 樹里サマ、ゾンビゲームは 苦手だって言っただろーが…
  523. 樹里: このままじゃ堂々巡り… 魔力が尽きてお陀仏だぞ!
  524. 結菜: はぁっ!
  525. うぁ…あぁ…
  526. 結菜: …いくら、手加減を しているとは言っても…
  527. 結菜: 何度も、みんなを倒して… こんなの心がもたないわぁ…
  528. 結菜: 直接、殺されることもなく… ここからは逃げられない…
  529. 結菜: 罪は背負い、復讐も受け入れる… そのつもりでいた…
  530. 結菜: けど…守るものも守れずに 死ぬなんて…それこそ情けなぃ…
  531. 結菜: アオやひかる、らんか 二木市の仲間のためにも
  532. 結菜: 魔法少女が救われる 未来を作っていくためにも
  533. 結菜: まだ、死ぬわけにいかなぃ…!
  534. 樹里: なら、この攻防戦を 打ち破る一手が必要だな
  535. 樹里: だが、それには アイツらとぶつからねーとだ
  536. 樹里: 今までのように手加減した 攻撃じゃなく、本気でな
  537. 樹里: 未来と、死んだアイツらを 天秤にかけなきゃなんねぇ
  538. 結菜: やっていいことじゃなぃ… それこそ、鬼の所業…
  539. 結菜: …あぁ、そう…そうねぇ… 再び鬼になればいいのよぉ…
  540. 結菜: この無間地獄から抜け出して あの子たちと未来を歩むために…
  541. 結菜: 心を、鬼にして 死んだ仲間へ再び刃を振るう
  542. 結菜: 樹里…もう互いの血を すするだけじゃ足りないわぁ…
  543. 結菜: 死んだあの子たちの血を すべて背負って戦うのよぉ…
  544. 樹里: …ああ、姉さん 一緒に鬼になろうぜ
  545. 結菜: ええ、血の涙を飲んで 傍若無人の鬼となる…
  546. 結菜: ―結菜― 倒しても倒しても起き上がるのなら 起きる暇もないほどに蹂躙し
  547. 樹里: ―樹里― 樹里サマたちは、暴虐の限りを尽くす
  548. 樹里: ―樹里― お前らの血も、恨みも、全部吸い上げて ここから抜け出してやるよ
  549. 結菜: ―結菜― じゃあ、行きましょうか…樹里 弔いのための…戦争を…
  550. 樹里: ―樹里― 矛盾どころの騒ぎじゃねーな こりゃあ、もう…地獄にだって行けねーっつーの
  551. 樹里: …っしゃ、やるぞ!
  552. 結菜: …えぇ
  553. 樹里: おらぁああああっ!
  554. 結菜: はぁあああああっ!
  555.  
  556. FILENAME: text_520310-9_qzi97.txt
  557. 樹里: …っしゃ、やるぞ!
  558. 結菜: …えぇ
  559. 樹里: おらぁああああっ!
  560. 結菜: はぁあああああっ!
  561. うらら: …いったい、どうなってるんよ?
  562. うらら: 結菜さんと樹里さんは なんであんなこと…?
  563. ラビ: 目が覚めると、私たちは不思議な空間にいて 紅晴さんたちの様子を モニターのようなもので見ていた
  564. ラビ: その様子は、ひどいもので 死者に対し刃を振るう、まさに鬼の所業… 私は、その行動を理解できずにいた
  565. 旭: 話し声が聞こえないゆえ 動機が不明瞭でありますな…
  566. ラビ: 昔の彼女たちならわかるけど ただ暴れるなんて、らしくない…
  567. うらら: 結菜さんたちは優しいから 何か理由があるはずなんよ…!
  568. 旭: だとすれば、操られてるとか… そんなところでありましょうか
  569. ラビ: ちなみに、あの幽霊?たちの中に うららの知っている人はいる?
  570. うらら: 顔が見えないから よくわからないんよ…
  571. うらら: …でも、死んじゃった人が いっぱいいるみたいなのに
  572. うらら: …どうして、さくやさんは あそこにいないんよ…?
  573. 旭: …………
  574. ラビ: そもそも、この空間は いったい…
  575. 旭: それについてでありますが…
  576. 旭: 魔法を発動したときに 魔力を奪われた感覚があり…
  577. うらら: …ってことは 旭さんの魔力が尽きて…
  578. ラビ: …………みんな死んだ?
  579. うらら: 確かに、お化けもいるし… 死後の世界ってことなんよ!?
  580. ラビ: …本当にそんなものがあるなら 少し興味深くはあるけど…
  581. 旭: 最悪の想像をすると…
  582. 旭: ソウルジェムが濁りきった 我の魔女結界内…とか
  583. うらら: お、おしまいなんよ~!
  584. ???の声: 「安心して」
  585. ???の声: 「魔力を奪われてしまったのは確かですが あなたたちは死んでないですし 魔女にもなっていません」
  586. ラビ: …あなたは?
  587. ???: えっと…その 樹里さんたちの知り合いというか
  588. 案内役: んー、案内役…とでも 呼んでいただければ?
  589. 旭: …疑問形でありますか
  590. 案内役: す、すみません…
  591. 案内役: だけど、この空間についてなら ご説明できますよ
  592. うらら: お願いしますなんよ!
  593. 案内役: はいっ! えーっと…なになに…
  594. 案内役: ここは、三浦旭…さん、の魔力を 使用した空間になっており…
  595. 旭: …我、名乗ったでありますか?
  596. 案内役: あ…えへへ…えっと…
  597. 案内役: 現状、外にいる栗栖アレクしゃ… 栗栖さんがソウルジェムの浄化を
  598. ラビ: …台本でも読んでる?
  599. 旭: アレクサンドラ、初めてだと 言いにくいでありますよね
  600. 案内役: ぅ…怪しい者ではないんです…
  601. ラビ: まぁ…怪しかろうと 今はあなたしか頼れる人はいない
  602. ラビ: 説明を続けてもらえる?
  603.  
  604. FILENAME: text_520310-10_qzi97.txt
  605. ラビ: 案内役を名乗る彼女が まるで、台本でも読むかのように 私たちに説明したのは、この世界の成り立ち
  606. ラビ: まず、この世界は旭の呼んだ亡者たちが 彼女と繋がっていることを利用して 旭の魔力を元に作った空間であるということ
  607. ラビ: 空間と言っても、魔女結界のようなものではなく どちらかと言えば夢や幻覚に近いもので ただ、それでも精神攻撃などによって 死ぬことはあり得るらしい…
  608. 案内役: この空間は派生してできた場所で 傍聴席…みたいな感じかな
  609. 案内役: 私たちのようにふたりを赦してる 亡者が作った空間なんです
  610. うらら: ここは、なんのためにあるのん?
  611. 案内役: あっちの空間は危険そうなので 関係ない皆さんは逃がしたくて…
  612. 旭: それで傍聴席…でありますか お気遣い感謝するでありますよ
  613. ラビ: じゃあ… 大庭さんたちのいる空間は?
  614. 案内役: あっちは、樹里さんたちを赦すか 悩んでる子が作ってるのかなと
  615. 案内役: すみません…私たちにも はっきりとはわからないんです
  616. うらら: 私たち…ってことは、ここには 案内役さん以外もいるのん!?
  617. 案内役: あ…えと、いるけど… それより説明したいことが!
  618. ラビ: …なに?
  619. 案内役: その、樹里さんたちがいる空間が 崩れない限り、ここは安全ですが
  620. 案内役: あそこが崩れれば…
  621. 旭: 我らの居る空間も 危うい…と
  622. 案内役: …はい、というか終わりです
  623. うらら: 仲良くお陀仏なんよ!? それは困るんよ!
  624. 案内役: なので、脱出してもらうためにも 見てもらいたいものがあるんです
  625. 案内役: ついてきてもらえますか?
  626. うらら: あれ、戻ってきたのん?
  627. 案内役: いえ、ここは この世界にあるカタコンベです
  628. ラビ: 確かに、元の場所とは 異なる空気が漂っているような…
  629. 旭: …案内役殿、あれは?
  630. 案内役: あれは、ここにいる亡者たちの お墓のようなものです
  631. うらら: あ、いろんな色があるんよ!
  632. ラビ: 色によって 何か意味はあるの?
  633. 案内役: 先ほど、亡者がふたりを赦せるか 悩んでいるのかもと話しましたが
  634. 案内役: その、亡者の想いが ランタンに反映されるんです
  635. 案内役: 「オレンジ色のランタンは 私たちと同じ、赦している色」
  636. 案内役: 「紫色のランタンは 赦すか赦さないか、判断できていない色」
  637. 案内役: 「そして、赤色のランタンは 赦さない…という色」
  638. ラビ: さっきの、火がついていない ランタンは?
  639. 案内役: あれに、この「想いの結晶」を 火と共にくべると
  640. 案内役: さっきのように色がつき 亡者の想いがわかる仕組みです
  641. 案内役: ここは、そういう世界なので 細かい原理などはお気になさらず
  642. 旭: なんだか、都合がいいように 感じるでありますが…
  643. ラビ: …それを、私たちに 説明する理由は…?
  644. 案内役: ………… お願いが、あるんです
  645. うらら: なんなんよ?
  646. 案内役: …私たちの仲間とふたりを 救ってくれませんか?
  647. [Part 1 end]
  648. ---
  649. [Part 2 start]
  650. FILENAME: text_520320-1_ejrFi.txt
  651. ラビ: 二木市の魔法少女が眠るカタコンベ それが工事によって失われる前に ケジメをつけたいという大庭さんたちのため
  652. ラビ: うららの提案で、旭の魔法を用い 二木市で死んだ魔法少女たちを呼び出した私たち
  653. ラビ: だが、大庭さんの言葉をきっかけとして 亡者たちの怒りを買ってしまったのか 我々は不思議な空間へとひきずりこまれた
  654. ラビ: 旭の魔力を使って作られたという空間の中でも “傍聴席”と呼ばれる場所にいた私たちは 紅晴さんたちの不可解な行動を見ながら 案内役を名乗る少女に出会う
  655. ラビ: そして、少女はこの世界について 私たちに説明すると こんなことを言い始めたのだった
  656. 案内役: …私たちの仲間とふたりを 救ってくれませんか?
  657. ラビ: どういうこと?
  658. 案内役: あの空間を作った子たちの想いは 同じ亡者である私にもわからない
  659. 案内役: …ただ、きっと何かしら 成したいことがあるはずなんです
  660. 案内役: だから、みなさんには彼女たちの 想いを遂げさせてあげてほしくて
  661. ラビ: 想い…と言っても…見る限り 復讐のような気がするけど
  662. うらら: そ、そんなこと…
  663. 旭: いえ、復讐…と考える方が 妥当でありますよ
  664. 案内役: かもしれないですけど… 私は復讐だけじゃないと信じたい
  665. ラビ: あなたの気持ちはわかったけど 遂げたい想いを知る方法なんて…
  666. うらら: もしかして、さっきのランタンが 使えたりするんよ?
  667. 旭: 色で赦しているかわかる …というあれでありますか
  668. ラビ: オレンジは赦す 紫は検討中、赤は赦さない…
  669. ラビ: でも、それだけじゃ… 救う手立てまではわからない…
  670. 案内役: そこで、この 「想いの結晶」が役に立ちます
  671. 案内役: これは、結菜さんと樹里さんの 想いなんです
  672. うらら: 結菜さんたちの想い …って、どういうことなんよ?
  673. 案内役: 死者へ手向けられた花は
  674. 案内役: この世界で 結晶へと変化するのですが
  675. 案内役: 手向けた本人が結晶をくべると 亡者が抱える想いが見えるんです
  676. ラビ: ランタンの持ち主である 亡者の想い…ということ?
  677. 旭: …どういう原理でありますか?
  678. 案内役: …まあやってみるのが早いので 試しに、三浦さん…これを
  679. 案内役: 私たちに花を 手向けてくれましたよね
  680. 旭: …あぁ、そういえば 呼び出す前に
  681. 案内役: これは、私のランタンです 結晶をくべてみてくれますか?
  682. 旭: …わかったであります
  683. 案内役: 今のは、私の想い…記憶の断片 と言った方が近いかもしれません
  684. 案内役: 結晶をくべる以外にも 既に結晶がくべられたランタンに
  685. 案内役: 花を手向けた本人自身が 触れることでも、同じ現象が
  686. 旭: …本当でありますね 大庭殿と親しい仲でありましたか
  687. 案内役: というより、樹里さんは 私にとって命の恩人だったんです
  688. 案内役: 三浦さんと私は繋がりが浅いので 記憶や景色しか伝わりませんが
  689. 案内役: 繋がりが強いと亡者の言葉など もっと鮮明に伝わるんですよ
  690. ラビ: …ランタンはオレンジ色
  691. 案内役: まあ、私のランタンですからね 赦していないわけがありません
  692. 案内役: すべてのランタンをオレンジに… そうすれば脱出できるのでは、と
  693. ラビ: 亡者たちがみんな 大庭さんたちを赦せば…
  694. 案内役: だから…
  695. ラビ: …私たちの脱出もかかってるから 協力してほしい…
  696. 案内役: …はい
  697. うらら: じゃあ、やるしかないんよ! みんなを助けるんよ!
  698. 旭: …ひとつ、疑問であります
  699. 旭: 案内役殿が結晶をくべることは できないのでありますか?
  700. 案内役: ごめんなさい、死者は 結晶をくべられなくて…
  701. 案内役: 私たちは、花を手向けられる側 ですからね
  702. 旭: 確かに、それはそうであります
  703. 案内役: あと赤いランタンが多い空間には 私たち、入れない決まりで…
  704. うらら: わかったんよ! ウチらに任せるんよ!
  705. 旭: …ええ、我が呼び出した亡者 最後まで責任は持つであります
  706. ラビ: そもそも、解決しないと 私たちも出られないようだし…
  707. 案内役: ただ…頼んでおいてなんですけど あちらに行くのは結構、危険で…
  708. うらら: 大丈夫なんよ ウチら魔法少女だから!
  709. うらら: それに、もう… 見ているだけは嫌なんよ!
  710.  
  711. FILENAME: text_520320-2_ejrFi.txt
  712. うらら: それに、もう… 見ているだけは嫌なんよ!
  713. 旭: ええ、我らは ずっと傍観者でありました
  714. ラビ: …だけど、今は違う 観測するだけの私たちじゃない
  715. うらら: ウチらも、みんなを助けられる! 傍聴席にはいられないんよ!
  716. 案内役: ………… ありがとうございます
  717. 案内役: …それじゃあ、少しでも みなさんの身を守れるように…
  718. 案内役の声: 「えいっ」
  719. うらら: わっ!?
  720. 旭: この姿は…
  721. 案内役: 亡者たちに紛れ込むための 変装…といったところです
  722. 案内役: 亡者に敵とみなされれば 何をされるかわからないので…
  723. 案内役: 目立たぬ方が吉かと
  724. 案内役: 気休め程度ですが 役には立つはずですよ
  725. うらら: ありがとうなんよ!
  726. ラビ: 案内役から与えられたミッションは 紅晴さんたちのいる世界へ行き 想いの結晶をランタンにくべて 亡者たちが赦すか赦さないかの想いを知ること
  727. ラビ: そして、その想いが後者であるなら 亡者たちに赦免を請う…ということだったが これには、まだ疑問点があった
  728. ラビ: …それなら、紅晴さんたちに直接 結晶を渡した方が早いのでは…?
  729. 旭: 確かに、我らが色を確認してから ふたりに伝えるのは回りくどい…
  730. 旭: 本人にしてもらった方が 手っ取り早いでありますな
  731. 旭: 結晶の持ち主であれば想いも 詳しく知れるようでありますし
  732. 案内役: それが…今のみなさんは こちらの息がかかってるというか
  733. 案内役: たぶん、結菜さんたちに会っても 認識してもらえないかもで…
  734. うらら: どういうことなんよ?
  735. 案内役: この世界は、認識や存在が とってもあいまいなんです
  736. 案内役: だから、もしかすると 亡者と似た格好をしたみなさんは
  737. 案内役: 樹里さんたちにとっては他の 亡者と同じに見えるかもしれない
  738. うらら: ボコボコにされるんよ!?
  739. 案内役: …だから、一度あちらの世界と 繋がりを持ってほしいんです
  740. 案内役: そうすれば、樹里さんたちにも あなたたちだと認識してもらえる
  741. ラビ: 繋がりを持つ手段が 結晶をくべること…と
  742. 案内役: ややこしくてすみません
  743. 旭: いえ、納得できたであります とにかく、我々の任務は…
  744. 旭: 「あちらの世界へ行き、亡者たちにバレないよう 紅晴殿と大庭殿の結晶をランタンにくべ 亡者たちに彼女たちを赦免する想いが あるかどうかを知る」
  745. 旭: 「そして、あちらの空間と繋がりを作った上で 花を手向けた本人であるふたりに 結晶をくべたランタンを触ってもらい 共に亡者が望むことをしてやる…」
  746. 旭: ということでありますな
  747. 案内役: はい、その通りです
  748. ラビ: …でも、上手くいくだろうか
  749. うらら: どういうことなんよ?
  750. ラビ: 私には暴れまわっているふたりが 何を考えているのかわからない
  751. うらら: きっと、わざと悪役を 演じているんよ!
  752. うらら: だから…想いを知って ちゃんと話したら
  753. うらら: 死んじゃった魔法少女たちにも 赦してもらえると思うんよ!
  754. 旭: …………
  755. 旭: (うららは、彼女らの罪を正しく 理解できてないのであります…)
  756. 旭: (故に、希望を抱きたくなるのも わかるのでありますが…)
  757. ラビ: (そう簡単にはいかない…)
  758. ラビ: (うららに伝えるのは簡単だけど きっと、まだすべきではない)
  759. ラビ: (そう思うのは 私の甘さ…なのだろうか)
  760. うらら: なんとかなるんよ!
  761. ラビ: …ええ
  762. 旭: そうでありますな
  763. 案内役: では、あちらへの道を作ったので ここをまっすぐ進んでください
  764. 案内役: ああ、そうそう 決して振り返らないように
  765. 案内役: まっすぐ進めば、必ず 求めた場所に辿り着くので
  766. 旭: 承知したであります 行って参るでありますよ
  767. うらら: またね、なんよ!
  768. うらら: …ぁ 今の…
  769. ラビ: うらら、何かあった?
  770. 旭: 振り返っては いけないのでありますよ
  771. うらら: …ううん、なんでもないんよ
  772. うらら: (…今の魔力)
  773. うらら: (…さくやさんのなんよ…?)
  774.  
  775. FILENAME: text_520320-3_ejrFi.txt
  776. ラビ: 亡者と、紅晴さんたちを救うため 案内役に説明されたとおり 彼女たちがいるという世界を訪れた私たち
  777. ラビ: しかし、辿り着いたのは 異様な空気が漂う二木市だった…
  778. 旭: ここは…
  779. うらら: 二木市なんよ…けど 雰囲気がいつもと違うんよ
  780. ラビ: …とにかく、すぐに ランタンがあるカタコンベへ
  781. うらら: つ、着いたんよ~…
  782. 旭: 何人もの亡者に遭遇し ヒヤヒヤしたでありますな
  783. うらら: お化け屋敷みたいで すっごく怖かったんよ…
  784. うらら: みんなニコニコしてるのも 不気味だったし…
  785. ラビ: 特に何もなかったのは 変装のおかげだろうか
  786. 旭: 案内役殿に感謝でありますな
  787. 旭: さあ、カタコンベに着きましたし 目的を果たすであります
  788. ラビ: ええ、ランタンもちゃんと あるみたい
  789. うらら: じゃあ、ひとつずつ 結晶をくべていくんよ
  790. うらら: 「ひとつめ…」
  791. うらら: 「ふたつめ…」
  792. うらら: 「みっつめ…」
  793. うらら: 「よっつめ…」
  794. ラビ: オレンジが、ない…
  795. 旭: かろうじて、赤よりも 紫が多いのは救いでありますか
  796. うらら: この色は、亡者が結菜さんたちを 赦すかどうかのジャッジなんよね
  797. うらら: だから、全員が赦すわけじゃ ないのは仕方ないんよ
  798. ラビ: …でも、ひとつもオレンジが ないというのは…
  799. うらら: 赦してる人たちはきっと 案内役さんのとこにいるんよ
  800. 旭: それも考えられるでありますが…
  801. ラビ: …うらら、これは仮説だけど ふたりはもう…
  802. ラビ: …赦されないのでは…?
  803. 旭: 我も、そう思っていたであります 何をしても赦されない…と
  804. うらら: …でも、案内役さんは ふたりを赦してたんよ?
  805. ラビ: あの人は、元々大庭さんに 命を救われたと話していた
  806. ラビ: 最初から、赦すも何も 恨んでいなかったのだろう
  807. 旭: そもそも、紅晴殿と大庭殿の 影響で死んだ者であるのなら
  808. 旭: 赦せない方が 普通だと思うのでありますよ
  809. 旭: 死というのは、覆せない事象 とても重いことであります
  810. 旭: 遺された者にとっても 遺す者にとっても、それは同じ
  811. 旭: 簡単に、赦せるようなことでは ないはずでありますよ
  812. 旭: それを、我らは無理に話し合わせ 赦しを与えさせようとした
  813. ラビ: もしかすると罪は 私たちにもあるのかもしれない
  814. うらら: ぅ…でも、でも! きっと、わかりあえるんよ…!
  815. うらら: じゃないと嫌なんよ… 悲しいんよ…
  816. ラビ: うらら…
  817. うらら: だって、結菜さんも樹里さんも やり方は悪かったかもだけど
  818. うらら: いつだって仲間のことを想って それで…その…
  819. うらら: そうなんよ…!
  820. うらら: ラビさんと旭さんの言うことは もっともだと思うんよ…
  821. うらら: でも、だとしたら
  822. うらら: ランタンが赤一色じゃ ないのはおかしいんよ!
  823. ラビ: …………それは 一理あるかもしれない
  824. 旭: 確かに、赦さないのであれば 紫である必要はない…
  825. 旭: 悩んでいるからこそ こうなっているのだとしたら…
  826. ラビ: 今、ここで彼女たちは 赦そうとしているのかもしれない
  827. ラビ: でも、いったいそれなら 何をもって判断しようと…?
  828. うらら: わかんないけど…
  829. うらら: とにかく結菜さんたちのところに 行くんよ!
  830. うらら: 希望があるなら、ウチらは そこに向かうしかないんよ!
  831. うらら: もう、諦めたくはないんよ!
  832. 旭: そうでありますな…諦めるのは 辞めると決めたはずでありますね
  833. ラビ: …ええ
  834.  
  835. FILENAME: text_520320-4_ejrFi.txt
  836. 結菜: 倒しても倒しても起き上がる亡者 平和すぎる、ありえない二木市
  837. 結菜: そこから抜け出すために血を飲む想いで姿を変え 亡者たちを蹂躙していた私たちだったけれど 戦いは体力だけでなく、心を削っていった
  838. 結菜: 心を鬼にしたって… やっぱり、苦しいわねぇ…
  839. 樹里: それでも、戦う以外に 今は選択肢がねぇからな
  840. ガサッ
  841. 樹里: っ…誰だ!
  842. うららの声: こ、攻撃しないでほしいんよ! お化けじゃなくてウチらなんよ!
  843. 樹里: …この話し方は もしかして、うららか?
  844. うらら: 良かったんよ…ウチらだって わかってもらえたんよ!
  845. 結菜: あなたたちも この世界に巻き込まれてたのねぇ
  846. 樹里: つーか、旭がいるってことは 魔法の解除とかできねーのか!?
  847. 旭: いや、それが…ここはもう 我では制御できないのであります
  848. 樹里: 制御できねーって… いったいどういうことだよ
  849. 結菜: 話を聞かせてもらえるかしらぁ…
  850. ラビ: ええ、これまでのことを
  851. 結菜: 亡者が魔力を奪って 作った空間…ねぇ…
  852. 樹里: 樹里サマたちを亡者が赦すかは 審議中…ってところか
  853. うらら: そうなんよ!
  854. 樹里: じゃあ、攻撃される準備を しておかなきゃなんねーな
  855. 樹里: ただで 殺されるわけにはいかねーし
  856. うらら: 待つんよ!樹里さんたちは 赦されるかもしれないんよ!
  857. 樹里: …あ?んなわけ…
  858. うらら: ランタンは、赤一色じゃ なかったんよ!
  859. うらら: ウチは…樹里さんたちの罪を 見てないし詳しくは知らないんよ
  860. うらら: でも、死んじゃった魔法少女は 赦そうとしてるかもなんよ!
  861. 樹里: …仮に、そうだとしてだ 樹里サマたちに何ができる
  862. うらら: 案内役さんの言ったことを頼りに ずーっと、考えていたんよ
  863. うらら: もし、ふたりが赦されることで 死んじゃった子も救われるなら
  864. ラビ: その行為は、亡者たちを 悼むようなことなのかもしれない
  865. 樹里: でも、悼むっつったって…
  866. 旭: 想いを、知るのであります
  867. ラビ: さっき、ランタンにあなたたちの 「想いの結晶」をくべてきた
  868. ラビ: 花を手向けた当事者…つまり
  869. ラビ: 結晶の持ち主であるふたりが そのランタンに触れれば
  870. ラビ: 亡者たちの想いを 知ることができるらしい
  871. 結菜: それがわかって…私たちに できることなんてあるのかしらぁ
  872. ラビ: 何もせず、諦めるよりかは…
  873. 結菜: …ふ…そうねぇ、わかったわぁ ランタンはどこにあるのぉ…?
  874. うらら: カタコンベなんよ
  875. 樹里: …ランタンに 触れればいいんだな
  876. 旭: 何が見えるかわからない ソウルジェムの濁りには…
  877. 結菜: 心配は無用よぉ… どんな罵声だって受け入れるわぁ
  878. 結菜: じゃあ、いくわよぉ 樹里…
  879. 樹里: …あぁ
  880. 私は、魔法少女だったけど 普通の女子高生でもあって…好きな人がいた …抗争が収まったら告白をしようと思っていた
  881. 付き合えたら手を繋いでデートをしてみたかった 失恋したって、きっと大人になってから 思い出せるようないい時間になると思っていた
  882. …死んじゃうなんて、考えもしなかったから
  883. もうすぐ来るはずだった誕生日には ママの手作りケーキを食べる予定だったの 大好物のイチゴが乗った、大きなケーキを 家族みんなで
  884. 大人になったら、たくさん働いて 苦労させた親に良い暮らしをさせてやるのが あたしの夢だった だけど、先に死ぬなんて親不孝しちまった
  885. いつか、好きな人と結婚して子どもを産んで そんなありきたりな幸せが当たり前に訪れるって 魔法少女のくせに思っちゃったりしてさ バカだったよね…ほんと
  886. 望むものなんて、多くはなかった ただ明日も生きて くだらないことで誰かと笑って 魔女退治をしながらでも、普通に… そんな日常を過ごせればよかったんだ
  887. 樹里: 「…あぁ、これは 樹里サマたちが奪った、あいつらのこれから…」
  888. 結菜: 『死んでしまった彼女たちには 二度と訪れることのない未来…』
  889. 樹里: 「そうか、単純なことだった 樹里サマは謝りたいと思っていたはずなのに アイツらに伝えてなかったんだ、ちゃんと」
  890. 樹里: ごめん…って もっと早く、言うべきだった
  891. 樹里: あの戦いは、仕方なかった 避けられることじゃなかった
  892. 樹里: それでも、樹里サマたちのせいで 死んだアイツらに悪いと思ってた
  893. 樹里: …ごめん 奪っちまって
  894. 樹里: 綺麗事を言ったって赦されねーし 謝って済む話でもない
  895. 樹里: だけど、それでも 謝るべきだったんだよな
  896. 結菜: 何度、謝ったって足りない 今でも脳裏に響くのはみんなの声
  897. 結菜: 何度だって謝るべきだった ごめんなさい…みんな…
  898. 樹里: どんな制裁だって 受ける覚悟はできてる
  899. 樹里: お前らの恨みは全部受け入れる 殺したきゃ、そうして構わねえ
  900. 樹里: けど、樹里サマたちには 守るべき奴らと未来がある
  901. 樹里: だから、殺されるにしても 抵抗するし、立ち向かう
  902. 樹里: …それに
  903. 樹里: 罪を犯してきた樹里サマたちは 死んで赦されたりしちゃいけない
  904. うらら: …答えは、これなんよ?
  905. 旭: ふたりが罪を再認識し 謝罪をすること…
  906. ラビ: …いえ
  907. ラビ: ランタンの色は 変わっていない…
  908. 旭: じゃあ、いったい…
  909. うらら: あ!見るんよ!
  910. 結菜: な…ランタンが光って…
  911.  
  912. FILENAME: text_520320-5_ejrFi.txt
  913. ラビ: ここは…?
  914. うらら: さっきの傍聴席…とも 違うんよ…
  915. 旭: けど、同じように… 二木市の様子が見えるであります
  916. 樹里: これを見ろ…っつーことか?
  917. これで、テリトリー問題も 一件落着…?
  918. まあ、今後次第だよな
  919. みんなで頑張ろう…!
  920. 樹里: 「…樹里サマたちが苦しめられてきた この世界の平和な二木市…か?」
  921. 結菜: 『…私たちの奪ったものたち もう、痛いほどに自覚はしたけれど… こうして見せられると苦しいものねぇ…』
  922. 樹里: 「でも待て…あれ…」
  923. 結菜: 弱い子へのフォローも 何か考えていきたいわよねぇ
  924. 樹里: つっても、どうすんだぁ? 稽古ならつけてやってもいいけど
  925. ひかる: あとは分け合うとか…っすかね?
  926. アオ: でも、そしたら昔みたいに 強奪とか起きない~?
  927. 智珠 らんか: ちょっと…こっち見ないでよ ま、ルールは必要なんじゃない?
  928. 結菜: 『どうして、私たちもいるの…?』
  929. 樹里: 「アイツらが、想像する 求めていた平和な二木市の未来… ってことなのか…?」
  930. 結菜: 『でも、求める未来だとしたら 私たちは、そこに必要ないんじゃ…』
  931. 樹里: 「場面が変わっていく… 今より、少し未来みてーだ…」
  932. アオ: 魔法少女について少しずつ 知られていってるみたい
  933. 結菜: えぇ…良い方に 向かっているわぁ…
  934. 結菜: 『これは、かなり先の未来のようねぇ…』
  935. あぁ、久しぶりね
  936. おー、なんていうか 大人っぽくなったなぁ
  937. ふふ、みんなまだかなー
  938. ひかる: お待たせしたっすー!
  939. ひかる: アオさんとらんかさんは ゲーセンに寄るって遅刻っす…
  940. ひかる: 結菜さんと樹里さんは 特に連絡がなく…
  941. ???の声: 遅れてごめんなさぃ…
  942. 樹里: わりーわりー 道草食ってたら遅れたわ
  943. 結菜: 私は仕事が 長引いちゃってぇ…
  944. お疲れ様です、結菜さん!
  945. 樹里さんは…もう大人なんすから ちゃんとしてくださいよ
  946. 樹里: あ?お前、竜ケ崎のか! 何だよオイ!色気づいちまって!
  947. 樹里: 化粧も似合ってんじゃねーか!
  948. 樹里さん… おじさんみたい…
  949. ひかる: ほんとっすよ…
  950. 結菜: 何で…?
  951. 樹里: これが、アイツらの求めた 未来だとしたら…
  952. ラビ: …そこには あなたたちも存在している
  953. 樹里: いや、おかしいだろ… だって…樹里サマたちは…!
  954. 結菜: …あの子たちは 私たちが奪った平和を見せた
  955. 結菜: ここに来て、ずっと…
  956. 結菜: それは、未来を奪った私たちへの 当てつけかと思っていたけど
  957. 結菜: この未来を求めろ… ということだったのぉ…?
  958. うらら: …みんなで幸せに なりたかったかもなんよ
  959. 旭: でも、もはや叶わないから ふたりに託したのでは?
  960. 旭: ふたりに見せた平和な世界を作り 守りつづけてくれ…と
  961. ラビ: それこそが、きっと祈りであり あなたたちに架せられた十字架
  962. ラビ: …そう考えれば合点がいく
  963. 樹里: …んだよ、殺す気だと思って 抵抗したのは何だったんだ…
  964. 樹里: 大人になっても笑いあえる平和… はは、高難度クエストすぎんだろ
  965. 樹里: あいつらが求める平和 ハードル高すぎだっつーの
  966. 結菜: だけど、本当は最初から それを求めるべきだったのよぉ…
  967. 結菜: 私たちは現実を見過ぎて 夢を見られなくなっていたのねぇ
  968. 樹里: 祈りでも十字架でもねぇ…こりゃ “呪い”だ…はっ…二木市らしい
  969. 樹里: でも…安心しろよ 樹里サマたちは実現する
  970. 結菜: ええ、奪ってしまった未来も命も 全部背負って平和に繋げるわぁ…
  971. 「やっと、伝わった」
  972.  
  973. FILENAME: text_520320-6_ejrFi.txt
  974. 結菜: …ここは
  975. この場所の、本来の姿よ
  976. 樹里: …お前ら
  977. 平和を見せ、自覚してもらう その想いが果たせた
  978. 樹里: …こんな場所を作ったのは それが理由か?
  979. 魔力を借りた彼女には 悪いことをしたと思ってます
  980. 本当なら、話さずとも 気づいてほしかったけど
  981. それは私たちの傲慢だった
  982. だから、あの子たちのおかげで 通じ合えてよかった
  983. うらら: …場所の 空気が変わったんよ?
  984. 私たちはふたりを 赦せるのかもしれない
  985. 結菜: …いいのぉ? 赦せるような罪じゃないわぁ
  986. 想いを知ってくれた 今のふたりになら
  987. 未来を託してみても いいかもと思ったから
  988. 私も
  989. …いや、待って…本当に赦せる?
  990. どういうこと?
  991. 思い出して、ふたりはここでも あんなに暴れた
  992. 樹里: …っ、それは
  993. 仕方なかった?
  994. 何か理由があれば 誰かを傷つけてもいいの?
  995. 蹂躙することが 殺すことが赦されるの?
  996. 結菜: …赦され…ないわぁ…
  997. …確かに、そうだ 赦していいわけがない
  998. 結菜さんたちの言ってることも わからないわけじゃない
  999. だけどやっぱり、心では 赦せない…呪ってしまう
  1000. ふたりが変わらぬままなら あまりにやるせない
  1001. 未来に希望はない 私たちは、無念のまま死んだだけ
  1002. 赦しちゃいけない
  1003. 「赦せない」
  1004. ふたりを生かしておけば 二木市はまた争いに飲まれる
  1005. 今、終わらせるのが未来のため ふたりを、殺して
  1006. うらら: いったい…何が どうなってるんよ…?
  1007. ラビ: …彼女たちは 赦されなかったのかも
  1008. 旭: …暴れたのが仇となったのか
  1009. 旭: それとも、はじめから 赦されぬ運命だったのか…
  1010. はぁっ!
  1011. 樹里: …当たんねぇ?
  1012. 旭: …物理攻撃は難しい その予想は正解のようであります
  1013. 結菜: …確かに、ここまでも直接 手を下されることはなかった…
  1014. …なら!
  1015. 「そいつらの体を操る!」
  1016. うらら: えっ!?
  1017. うらら: わわ、体が勝手に 動いちゃうんよ!?
  1018. うらら: 結菜さんっ! 逃げてほしいんよ!
  1019. 結菜: く…もう、心も体も 限界なのよぉ…
  1020. 結菜: それに、あなたのことを 傷つけられないわぁ…
  1021. 旭: 我らも…体が勝手に…!
  1022. ラビ: 大庭さん、逃げて…
  1023. 樹里: …クソッ
  1024. ???の声: 「樹里さん!」
  1025. 結菜: ごめんなさぃ…うららぁ あとは頼むわぁ…
  1026. うらら: そんなの 絶対、イヤなんよ!
  1027. うらら: だ、誰か! 誰か助けてほしいんよ!
  1028. ???の声: 「うらら、結菜!」
  1029. うらら: ランタンが、攻撃を 防いでくれたんよ…!
  1030. うらら: それより、さっきの声…
  1031. 鈴鹿 さくや: …ふぅ ギリギリセーフかな?
  1032. うらら: な…な… さくやさん…!
  1033. 鈴鹿 さくや: 亡者の私には、うららの攻撃が 相殺できなくってさ
  1034. 鈴鹿 さくや: ほら、亡者は 生者に攻撃できないからね
  1035. 鈴鹿 さくや: ランタンなら、まあ できるんじゃないかなー的な
  1036. 鈴鹿 さくや: …こんな手荒なマネじゃ あのときの借りは返せないかな
  1037. 結菜: …さくや
  1038. 鈴鹿 さくや: 遅くなってゴメン、結菜 いろいろと手間取っちゃって
  1039. 案内役: ま、間に合った…
  1040. 樹里: …お前、その声
  1041. 案内役: …久しぶりだね、樹里さん
  1042. 鈴鹿 さくや: …で、さすがに やりすぎなんじゃない?
  1043. ぐうぅ…
  1044. 案内役: …あら、聞こえないモードですね
  1045. 旭: 案内役殿は、こちらの世界に 来られないんじゃ…
  1046. 案内役: オレンジランタンが増えた隙に すっと入り込んじゃいました
  1047. 鈴鹿 さくや: 仲間たちを連れてこられたのも みんなのおかげってこと!
  1048. 鈴鹿 さくや: さぁ、みんな! 暴れてる仲間を止めるよ!
  1049. 鈴鹿 さくや: はい、そっちのみんなも もう動けるはずだよ!
  1050. 旭: 本当でありますね… 助かったでありますよ
  1051. ラビ: 鈴鹿さん、暴れた亡者については 私たちが押さえておく
  1052. 旭: だから、鈴鹿殿は うららたちと話を
  1053. 旭: ここから脱出する算段も つくかもしれないでありますから
  1054. 樹里: …どーなってんだ、これ
  1055. 結菜: ほんと、ねぇ…
  1056.  
  1057. FILENAME: text_520320-7_ejrFi.txt
  1058. うらら: うっ…ぐぅ…ひく さくやさんなんよぉおおお…!
  1059. うらら: ずっと、会いたかったんよ… ウチ、ウチ…あの時
  1060. うらら: っ…助けられなくって… ごめんなさいなんよ…
  1061. 鈴鹿 さくや: うらら、そんな泣かないでよ
  1062. 鈴鹿 さくや: ありがとね、あの時 うららが無事で、何よりだよ
  1063. うらら: ざぐやざんんん…
  1064. 鈴鹿 さくや: あーよしよしよし! こうなるから出づらかったんだ
  1065. 結菜: さくやぁ…
  1066. 鈴鹿 さくや: おっと、再会のあれこれは 一旦ストップ!収集つかないから
  1067. 樹里: …あぁ、色々と説明を してもらわないといけねーな
  1068. 結菜: …どうして、今まで 出てこなかったのぉ…?
  1069. 鈴鹿 さくや: いやぁ…なんか こういうの、気まずくて…
  1070. 鈴鹿 さくや: でも、それ以前に こっちには来られなかったんだよ
  1071. 鈴鹿 さくや: ふたりを赦す亡者は別のところに いるって話は聞いたよね?
  1072. 結菜: えぇ…
  1073. 鈴鹿 さくや: そこから、こっちに来るのって わりかし難しくってさ
  1074. 鈴鹿 さくや: ふたりを恨むか、こっちで 赦す雰囲気になるかの二択で
  1075. 樹里: お、恨んだか?
  1076. 鈴鹿 さくや: 後者に決まってるでしょ…
  1077. うらら: あれ…でも、それならウチらとは 会おうと思えば…
  1078. 鈴鹿 さくや: う…だから出づらかったんだよ ごめんって…
  1079. 鈴鹿 さくや: それで、悩んでたら案内役を 買って出てくれるって子に会って
  1080. 鈴鹿 さくや: その子にテレパシーで指示しつつ みんなを誘導させてもらったんだ
  1081. うらら: じゃあ、やっぱりあの時 感じた魔力はさくやさんなんよ!
  1082. うらら: 台本を読んでたみたいなのも そのせいだったんよ…!
  1083. 樹里: とりあえず、大方理解した それで、こっからどうする?
  1084. 鈴鹿 さくや: いや、それなんだけど本当に ふたりが暴れたのが悪手!
  1085. 結菜: う…ごめんなさぃ… 他に手がなくてぇ…
  1086. 鈴鹿 さくや: まぁ、あんな状況になったら 動揺する気持ちもわかるけど…
  1087. 鈴鹿 さくや: あの子たち、たぶん本当に 伝われば良かったみたいでさ…
  1088. 鈴鹿 さくや: ま、私もこっちに来るまで わかんなかったんだけど
  1089. 鈴鹿 さくや: あの子たちも、ちょっと 伝え方が下手すぎる節はあったよ
  1090. 鈴鹿 さくや: 「穏便に、平和な未来を作ってほしいと 伝えたかった亡者たちと 殺されると思って本気の抵抗をした結菜たち」
  1091. 鈴鹿 さくや: すっごいすれ違ってたみたい
  1092. 樹里: なら、もっとわかりやすく 伝えらんねーのか…
  1093. 鈴鹿 さくや: 二木市の魔法少女が話し合いで なんとかなってたら苦労しないよ
  1094. 結菜: それは…否めないわねぇ…
  1095. 鈴鹿 さくや: ってことだから、強行突破だよ
  1096. 樹里: また暴れんのかぁ? さすがに、もう体力ねーぞ
  1097. 鈴鹿 さくや: いや、さっきのランタンに今度は ふたりが自分で結晶をくべるんだ
  1098. 鈴鹿 さくや: そうすれば、もっとお互いに 想いを伝えあうことができる
  1099. 鈴鹿 さくや: 言いにくい想いも丸裸に ひとりずつ向き合えるよ
  1100. 鈴鹿 さくや: …ふたりの結晶のストックは たんまりあるからね
  1101. うらら: …あれ、そういえばその結晶って 元々はお供えした花…なんよね?
  1102. うらら: …っていうことは樹里さん…
  1103. 鈴鹿 さくや: うん、何度も何度も カタコンベに供えてくれたよね
  1104. 樹里: バラすんじゃねーっつーの
  1105. 樹里: …んで ランタンにくべればいいんだな
  1106. 鈴鹿 さくや: うん これ、持っていって
  1107. 樹里: わかった、行ってくる
  1108. 鈴鹿 さくや: 樹里
  1109. 樹里: んだよ
  1110. 鈴鹿 さくや: ありがとね、花 らしくないことしてくれて
  1111. 樹里: …花くらい供えるっつーの 樹里サマをあんまなめんなよ
  1112. 鈴鹿 さくや: じゃあ、あっちに カタコンベがあるから
  1113. うらら: あっちって… 何もないんよ?
  1114. 鈴鹿 さくや: あるって信じてまっすぐ進んで そしたら、あるから
  1115. 結菜: …えぇ、わかったわぁ
  1116. 鈴鹿 さくや: じゃあ、うららは私と一緒に 暴れてる子たちを抑えようか
  1117. うらら: わかったんよ!
  1118.  
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  1120. 結菜: …本当にあったわねぇ
  1121. 樹里: じゃあ、さっそく結晶を ランタンにくべるか
  1122. …結菜さんがキュゥべえを 狩り始めなければ争わずに済んだ
  1123. でも、魔法少女の真実を知れば そうなる気持ちもわかる
  1124. だからこそ、恨みも怒りも 霞んでしまう
  1125. 神浜市と共に歩むのも 怒りを抑えられない
  1126. あれさえなければ 争いも激化しなくてよかった
  1127. なのに、なぜ…と思いながらも 未来のためなら理解もできる
  1128. 私たちはこの感情をいったい どうしたらいいんですか
  1129. 誰を恨み、誰を怒り 自分を慰めればいいんです
  1130. 結菜: 恨みも怒りも 私にぶつけていいわぁ…
  1131. 結菜: その想いもすべて 私が連れて行くからぁ…
  1132. 結菜: あなたたちが望んだ 平和な未来へ…
  1133. 結菜: …だから、無理に赦さなくていい ただもう少し見ていてほしいの…
  1134. 樹里さんが離反しなければ… そう、何度も考える
  1135. あれは私たちも 悪いところがあったと思う…
  1136. それでも、もう少し 他のやり方はありませんでしたか
  1137. 樹里: …あの頃の樹里サマにとっては あれが正解で、唯一だった
  1138. たくさん死んだのに、正解? バカ言わないでくださいよ
  1139. 樹里: わかってる だから、赦さなくていい
  1140. 何を…それなら ここで死んでくれますか
  1141. 樹里: そうしたいなら、受け入れる
  1142. 樹里: けど、殺されるつもりはねえ
  1143. …あなたに勝てるわけがないと わかってて言うから、嫌いです
  1144. 樹里: …悪いな
  1145. 樹里: あと少し、時間をくれ もう昔とは違う…
  1146. 樹里: だから樹里サマたちに 未来を、預けてくんねーか
  1147. 結菜: ひとりひとりと語り合っていく
  1148. 結菜: 語り合い、赦してくれる子 仕方なく、赦そうとしてくれる子 赦しはしないけれど、未来を託してくれる子 まだ、決められない子 はじめから、赦してくれていた子
  1149. 結菜: それぞれの想いは ひとつずつ、ランタンをオレンジ色にしていく
  1150. 結菜: そして、私たちが最後に 向き合うことになったのは…
  1151. 鈴鹿 さくや: 改まって話すのは恥ずかしいね …えっと、なんかある?
  1152. 結菜: たくさんあるわよぉ… でも、一番は感謝と謝罪…
  1153. 結菜: …あなたのおかげで 争いは終わったし
  1154. 結菜: 私は、一線を越えずにいられた
  1155. 結菜: …あなたがいなければ、私は… なのに…
  1156. 結菜: ごめんなさい…さくや… 私…あの時…っう…
  1157. 鈴鹿 さくや: …よく頑張ったね、結菜 いいよ、今は泣いて
  1158. 鈴鹿 さくや: 結菜は、全部ひとりで 背負おうとするから心配だよ
  1159. 結菜: ふっ…うぅ… さくや…ごめんなさい…
  1160. 鈴鹿 さくや: ごめんね、本当はこれからも 支えていくつもりだったのに
  1161. 鈴鹿 さくや: 一緒に、未来へ行けなくて …ごめんね、結菜
  1162. 案内役: えっと…
  1163. 樹里: …お前だよな あの時の…
  1164. 気づいてたんですね
  1165. 樹里: …忘れるかよ
  1166. 樹里: 樹里サマのストレス発散に 散々、付き合ってくれたヤツをさ
  1167. 私で良ければ相手になりますよ
  1168. 虎屋町の結菜さんが見せてくれる 景色もとても好きだけど
  1169. 竜ケ崎の樹里さんが作る 景色も見てみたいって思う
  1170. 結菜: っ、アナタどきなさい!!
  1171. 樹里: それで、樹里サマのせいで 死んじまったんだから
  1172. 樹里さんのせいじゃないよ
  1173. ねぇ…樹里さん、見せてね 樹里さんの作った未来
  1174. 樹里: あぁ…あの頃描いてたのとは だいぶ変わるだろうけどな
  1175. 樹里: 姉さんたちと作る未来を いつか、見せてやる
  1176. ふふ、期待してるね
  1177. 結菜: そして、すべてのランタンは オレンジ色になった
  1178. 鈴鹿 さくや: ああ、上手くやったみたいだね
  1179. すみません、暴れちゃって
  1180. 結菜: そっちも、落ち着いたのねぇ…
  1181. 鈴鹿 さくや: 死ぬと情緒が不安定になる的な そういう世界っぽいね、ここは
  1182. 旭: とりあえず、一件落着 …でありましょうか?
  1183. 樹里: なんつーか、意外と すんなり…でもねーけど
  1184. 樹里: マンガとかだとこういう時 ラスボスとか出てくるのにな
  1185. 鈴鹿 さくや: あ、バカ…!
  1186. 確かに、樹里さんの読んでた マンガなんかじゃそうかも
  1187. でっかいラスボスとか アオさん好きそうだなぁ
  1188. 鈴鹿 さくや: バカバカ!樹里のバカ! あーもう、どうすんのさ…
  1189. 樹里: んだよ、さくや お前も情緒不安定か?
  1190. 鈴鹿 さくや: いや、説明したらいろいろ まずいと思って言わなかったけど
  1191. 鈴鹿 さくや: 「この世界は 思いのままの世界なんだよ」
  1192. 樹里: ああ? どういうことだよ
  1193. 鈴鹿 さくや: 想像したことが起きるってこと!
  1194. 結菜: だから、さっきも信じれば カタコンベがあったのねぇ…
  1195. うらら: じゃないんよ! こ、これって…まさか!
  1196. ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
  1197. 旭: 巨大ランタン…!?
  1198. 鈴鹿 さくや: あぁ…言わんこっちゃない!
  1199. 樹里: あれ、倒さないと 樹里サマたち死ぬか?
  1200. 鈴鹿 さくや: 樹里が今そう思ったから そうなったね
  1201. 樹里: オイ、マジかよ…
  1202. 結菜: 無駄なことは考えず アイツを倒すわよぉ…!
  1203. 樹里: っしゃ、じゃあ樹里サマたちが 道を開けるからお前ら援護しろ!
  1204. みんな: 「はい!」
  1205. 樹里: ―樹里― じゃ、今まで溜めてた血を全部ぶっ放して フルパワーで攻撃だっつーの!
  1206. 鈴鹿 さくや: ―さくや― え、は、待って そこに溜まってんのみんなの血なわけ!?
  1207. 樹里: ―樹里― アイツらボコしてた時に吸い込んだ 恨みや怒り、希望…すべて詰まってるぜ
  1208. 結菜: ―結菜― さぁ…みんなの恨みも怒りも… 血と一緒に未来へ連れて行くわぁ…
  1209. 結菜: ―結菜― これでみんな、血で繋がった義姉妹ねぇ…
  1210. 鈴鹿 さくや: ―さくや― ほんとぶっ飛んでる…けど、いいね 連れて行ってよ、私たちも…未来に!
  1211.  
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  1213. 結菜: こうして、突如現れた ラスボスを倒し、私たちは…
  1214. 鈴鹿 さくや: ま、想定外は色々あったけど これで、おしまいだね
  1215. うらら: さよならなのん…?
  1216. 鈴鹿 さくや: …うん
  1217. 結菜さん、樹里さん ありがとう
  1218. 結菜: え…お礼を言われるような ことはなかったでしょぉ…?
  1219. 未来を約束してくれて 嬉しかったんです
  1220. 樹里: …改めて、悪かった それから…
  1221. 樹里: 期待、しといてくれよ ニヒッ
  1222. ああ、私たちの死体の上に 成り立つ平和ってやつをね
  1223. 樹里: おい…言い方ってもんがあるだろ
  1224. 恨みつづけることに ならなくてよかった
  1225. …私は、ずっと赦しません
  1226. 樹里: あぁ、わかってる 赦さなくていい
  1227. 樹里: …これで最後なんだろ 一発くらい、殴ってもいいんだぞ
  1228. …いえ、赦しもしないし 制裁も与えてあげません
  1229. 一発殴られたからスッキリ …なんて、癪ですから
  1230. それに…
  1231. 求めた未来が一瞬だけ 見えたような気がしたから
  1232. 結菜: その、求めた未来を きっと作っていくわぁ…
  1233. あと、ごめんなさい 魔力を奪ってしまって
  1234. 旭: いえ、こちらこそ勝手に 呼びつけてしまい…
  1235. でも、おかげでお互い ケジメがつけられた…感謝する
  1236. 案内役: 樹里さん また、いつかだね
  1237. 樹里: …おう、再会は 遠くなるかもしれねーけどな
  1238. 案内役: ふふ、樹里さんが 早く来るなんて思ってないよ
  1239. 結菜: さくや…
  1240. 鈴鹿 さくや: ちょ、湿っぽいのは ほんと無しだからね!
  1241. 結菜: ええ、待っててちょうだぃ… 黄泉比良坂で、また会いましょぉ
  1242. 鈴鹿 さくや: うん、すぐに来たら許さないよ!
  1243. 鈴鹿 さくや: あ、そうそう、さっき攻撃を 相殺したランタンだけど…あれ
  1244. 鈴鹿 さくや: 結菜のお墓になる予定なんだよね だから、早く来たらないよ、お墓
  1245. 鈴鹿 さくや: まあ、今決めたんだけど
  1246. 結菜: えぇ?
  1247. 鈴鹿 さくや: ゆっくり直しておくからさ 100年後くらいにまた会おう
  1248. 結菜: そんなに長生きできないわよぉ… ふふっ
  1249. 樹里: さくや、達者でな …ってのはおかしいか
  1250. 鈴鹿 さくや: いや、きっとそんなもんだよ 樹里も元気で
  1251. 鈴鹿 さくや: 結菜に…ひかるやアオ、らんかも 二木市のみんなをよろしくね
  1252. 樹里: おう、任せとけ
  1253. うらら: さくやさん…
  1254. 鈴鹿 さくや: うらら、ありがとうね いろいろと
  1255. うらら: うっ…やっぱり泣かないなんて ムリなんよぉ…!
  1256. うらら: ウチ、まだ帰りたくないんよ… さくやさんと、もっといたいんよ
  1257. うらら: 話したいことも、したいことも いっぱいいっぱいあったんよ…!
  1258. 鈴鹿 さくや: …大丈夫、いつかまた会える
  1259. 鈴鹿 さくや: そうだ、たまに花を供えてよ そしたら…きっと繋がれる
  1260. うらら: わかったんよ… たくさん持ってくるんよ!
  1261. 旭: …やはり、うららは最初から 鈴鹿殿に会いたくて…
  1262. ラビ: ええ、懐いていたし とても、悲しんでいたから…
  1263. 鈴鹿 さくや: あの、三浦さん…だよね
  1264. 旭: あ、えぇ…
  1265. 鈴鹿 さくや: その…さ、えっと…アイツ 南津…
  1266. 鈴鹿 さくや: …………いや、ごめん 何でもないんだ
  1267. 鈴鹿 さくや: アイツなら、自分で いつか伝えにくるだろうし
  1268. 鈴鹿 さくや: 勝手に元気かどうか聞くのは 野暮…ってやつだよね
  1269. 鈴鹿 さくや: 三浦さん、氷室さん
  1270. 鈴鹿 さくや: その、結菜たちはあんなだけどさ これからも仲良くしてやって
  1271. 鈴鹿 さくや: あと、うららも… みんなをよろしく頼むよ
  1272. 旭: …ええ、任せるでありますよ
  1273. 鈴鹿 さくや: じゃあ、今度こそ お別れだね!
  1274. 案内役: そこの道をまっすぐ行けば 元の世界に戻れます
  1275. 鈴鹿 さくや: そう信じればね
  1276. 結菜: えぇ、わかったわぁ…
  1277. うらら: あ、ここでも 振り返ったらいけないのん?
  1278. 鈴鹿 さくや: …あれは、振り返られたら私が 見つかっちゃいそうだっただけ
  1279. 案内役: ええ、だから 振り返っても大丈夫ですよ
  1280. 鈴鹿 さくや: むしろ、たまには 振り返って思い出してよ
  1281. 鈴鹿 さくや: それで、前に進めるなら大歓迎 私たちはいつでもここにいるから
  1282. 結菜: えぇ…またいつか
  1283. 樹里: またな、お前ら
  1284. うらら: またなんよーっ!
  1285. 結菜: 私たちは、さくやたちが見えなくなるまで 何度も何度も振り返って手を振った
  1286. 結菜: 何度も、何度も…
  1287. 結菜: 次に目を覚ました時 私たちは、元の世界へと戻っていた
  1288. アレクサンドラ: 旭ちゃん! 起きたんですね!大丈夫!?
  1289. 結菜: 聞けば、私たちが倒れたあとは 栗栖さんがひとりで見ていてくれたという
  1290. 旭: いつの間にか 魔法も解除されている…?
  1291. 結菜: そして、私たちが出会った彼女たちは どこまでが三浦さんの魔法で呼び出したものか 全員で見た集団幻覚のようなものなのか それとも、もっと別の何かなのか
  1292. 結菜: 真相は、わからないまま
  1293. うらら: せっかく可愛い格好だったのに 元に戻っちゃったんよ…
  1294. ラビ: まあ、あの世界でなった姿だし 仕方ない…
  1295. らんかの声: あ、いないと思ったら みんなこんなところに…
  1296. 智珠 らんか: …って何その格好!?
  1297. ひかる: もしや、ハロウィンパーティーの 準備とかっすか!?
  1298. アオ: えー!わたしたちに 内緒でなんてずるいよー!
  1299. 樹里: いや…
  1300. 結菜: 説明するのは難しいし… パーティーを実現させましょぉ
  1301. 樹里: おいおい、マジかよ まあ…それもありか…?
  1302. 樹里: おお、そうだ! さっさと準備すんぞ!
  1303. 智珠 らんか: 墓でパーティーって なんか、怒られない?
  1304. 結菜: ハロウィンには死者が 帰ってくるとも言うし…
  1305. 結菜: お供え物いっぱいしたら きっと許してくれるっすよ!
  1306. 結菜: 勘違いから始まったハロウィンパーティーは とんとん拍子で準備が進んでいき…
  1307. 結菜: …グラスは 持ったかしらぁ…?
  1308. 結菜: それじゃあ、二木市の発展と 魔法少女の未来を祈って…
  1309. 結菜: …乾杯…は場所的に 悪いかしらぁ…ええと…
  1310. 樹里: んじゃ! ハッピーハロウィーン!
  1311. みんな: 「ハッピーハロウィーン!」
  1312. 樹里: うらら、その衣装どうした?
  1313. うらら: サーシャさんたちに 作ってもらったんよ~
  1314. アレクサンドラ: ええ、私とはぐむちゃんで 可愛いですよね…うふふ♪
  1315. 智珠 らんか: ねね、ミイラゲームやるから 結菜さんそこに立ってくんない?
  1316. 結菜: えっと…こうかしらぁ…?
  1317. アオ: そしたら、トイレットペーパーで 全身ぐるぐる巻きに!
  1318. 結菜の声: あわ…ぁあああ…
  1319. ひかる: ゆ、結菜さーん!
  1320. 結菜: そのどんちゃん騒ぎは 夜遅くまで続き…
  1321.  
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  1323. <数日後>
  1324. 結菜: た、大変よぉ…
  1325. 樹里: どうした、姉さん
  1326. 結菜: 工事の着工が 見直されることになったのぉ…
  1327. ひかる: ほんとっすか!?
  1328. アオ: もしかして、最近 流れてた噂が理由…?
  1329. 智珠 らんか: ああ、これ? 神浜市のオカルトサイトだけど
  1330. 智珠 らんか: なぜか、二木市のことが 書いてあったんだよね
  1331. ラプンツェル:最新情報を入手!! 今回はF市で起きたという怪現象について! 話によれば、ハロウィンの夜に とある場所で、夜までどんちゃん騒ぎが 聞こえたそうで…
  1332. ラプンツェル:しかも、そこにいたのは吸血鬼! 吸血鬼については以前も紹介しましたが 今回はふたり組だったとか! 我々の知らぬ間に、吸血鬼は 徐々にその数を増やしているのかも~!?
  1333. ラプンツェル:こんなオカルトページを 信じるかどうかは きみしだいだけどww
  1334. <コメント> 暗黒魔術師X:T市の友人に聞いた話によれば どうやら、謎の儀式が行われていたのでは… ということだけど もしかしたら彼等が動き出したのかも…
  1335. 結菜: これは…
  1336. ラビ: サーシャ… これ…やりすぎなんじゃ…
  1337. アレクサンドラ: 私は、少~し盛ったオカルトを お友だちに渡しただけですよ♪
  1338. アレクサンドラ: 実際、ちょっとした噂には なっていたみたいですし…うふふ
  1339. 旭: …工事が見直されたのであれば 結果オーライでありますか?
  1340. 結菜: 私たちのどんちゃん騒ぎは どうやら、栗栖さんの裏工作もあり 都市伝説となっていて… その結果、工事の着工が見直されることとなった
  1341. ひかる: まさか、ひかるたちが 伝説になるなんて…
  1342. アオ: でも、とりあえずはよかったね 姉さまが警察送りにならなくて
  1343. 智珠 らんか: 墓荒らされんのは困るし 樹里が暴れたら大変だし
  1344. うらら: 一件落着なんよ~!
  1345. 結菜: …………
  1346. 結菜: 先輩は、あの世界にはいなかった 魔女になってしまったからなのか 先輩自身の意志かはわからない
  1347. 結菜: けど先輩、私…未来に平和を繋いでいきます… だから、見ていてください
  1348. 結菜: 憎まず、嫉まず、利己的にならず 何よりも誰かのためであり 世の平和と心の安寧を願い続ける
  1349. 結菜: (それを、忘れずに…)
  1350. 樹里: (穏やかな、今 …アイツらと約束した未来)
  1351. 樹里: (平和な未来も悪くねえけど やっぱ、樹里サマは…)
  1352. 樹里: オイ、姉さん! いっちょ、戦おうぜ
  1353. 結菜: どういうことぉ…?
  1354. 樹里: 格ゲーのリベンジだよ! 負けっぱなしは性にあわねー!
  1355. 結菜: えぇ…目が疲れるから あまりしたくないんだけどぉ
  1356. 樹里: いいからやんぞ! 馬!準備しとけ!
  1357. ひかる: も~!樹里さんは 人使いが荒いんすから!
  1358. 樹里: ニヒッ これが樹里サマだからな
  1359. 結菜: …まったく
  1360. 結菜: さあ樹里、やるからには 本気でやりましょぉ…
  1361. 樹里: おおよ!
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