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London: London Night

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Jun 21st, 2017
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  1. Anderson
  2. よく帰ってきたと言っておこう。
  3. ヤードの警官たちについては残念だったな。
  4.  
  5. Anderson
  6. 少しは休んでおけ。
  7. 聞けば、こちらへ来てから休みなしなんだろう?
  8.  
  9. Anderson
  10. 根を詰めても良いモノが仕上がるとはかぎらない。
  11. 執筆であれ聖杯探索であれ、適度な休息が必要だ。
  12.  
  13. Mashu
  14. ありがとうございます。
  15. ですが……状況は予断を許しません。
  16.  
  17. Anderson
  18. バカめ。貴様もワーカーホリックか。
  19. 荷物の重さを忘れられないとはな。
  20.  
  21. Anderson
  22. では、退屈しのぎに一つ語ってやろう。
  23. 俺やナーサリー・ライムがどうやって現界したのかを。
  24.  
  25. Mashu
  26. ええと、アリス……ですね。
  27. あの子はそう名乗っていたような……
  28.  
  29. Anderson
  30. ナーサリー・ライムだ。ともかく。
  31. 禄に話す間もなくおまえたちはヤードへ向かった。
  32.  
  33. Anderson
  34. 話す機会がなかったが、
  35. 俺もナーサリー・ライムも共に[#魔霧から]現界した。
  36.  
  37. Anderson
  38. マスターの存在もなく、
  39. 召喚の手順も踏まれずに、だ。
  40.  
  41. Mordred
  42. そういや、オレもそんな感じだったな。
  43. ジキルはマスターでもないし召喚の儀式もなかった。
  44.  
  45. Mordred
  46. 気付けば霧の中にいた。
  47. 何だ、サーヴァントってのは自然に湧くのか?
  48.  
  49. ?1:そうかも知れない
  50.  
  51. Dr. Roman
  52. いやいやいや!
  53. そんな事は絶対にあり得ないから!
  54.  
  55. Dr. Roman
  56. 勝手に顕現……いや召喚されるなんてモノがいるなら、
  57. それはもうサーヴァントを越えた何かだよ!
  58.  
  59. ?2:いや、それはどうだろう
  60.  
  61. Mashu
  62. はい。本来、有り得ません。
  63.  
  64. Mashu
  65. 英霊が自然発生的に現界する
  66. という意味では、
  67. 僅かですが記録は幾つか存在しています。
  68.  
  69. Mashu
  70. しかし、その際には
  71. 人格を持った存在にはならない筈です。
  72.  
  73. Mashu
  74. そして、サーヴァントとして現界する英霊は、
  75. 必ず召喚の手順によって座から呼び出されるものです。
  76.  
  77. ?!
  78.  
  79. Dr. Roman
  80. いいかい。これまで巡った三つの時代でも、
  81. サーヴァントの召喚は聖杯の影響によるものだ。
  82.  
  83. Dr. Roman
  84. サーヴァントが自然に迷い出てくるなんて、
  85. そんな事は絶対に起こりえないからね!
  86.  
  87. Anderson
  88. サーヴァントは霧から現界する訳ではない、か。
  89. なら、帰結はひとつだろうな。
  90.  
  91. Anderson
  92. 霧は[#聖杯が生み出している]。
  93. もしくは、霧を生み出す何かが聖杯の影響下にある。
  94.  
  95. Mashu
  96. そういうことに……なりますね。
  97. 確かに、理論的な帰結です。矛盾はありません。
  98.  
  99. Anderson
  100. 現実の多くには必ず理屈が付くものだ。
  101. 理屈が通用しないのは恋ぐらいだろうよ。
  102.  
  103. Anderson
  104. 想像力を働かせろ。
  105. それで大抵の物事は予想できるし、時には予測へ至る。
  106.  
  107. Mordred
  108. はは。恋だ?
  109. ガキが生意気言いやがって。
  110.  
  111. Anderson
  112. 恋も知らんガキに言われたくはないな。
  113. 俺は童貞だぞ。愛も恋も、完全に理解しているとも。
  114.  
  115. Mordred
  116. ……はあ? ん。あれ?
  117. それ、理屈になってないよな? んん?
  118.  
  119. ?1:よくわからないがすごい言葉だ
  120.  
  121. ?2:ん? 確かに理屈に……
  122.  
  123. ?!
  124.  
  125. Anderson
  126. 忘れたか、俺はアンデルセン。
  127. 物語るが故にこそキャスターに区分された英霊だ。
  128.  
  129. Anderson
  130. 剣と戦いが剣士の本分であるなら、
  131. 文字と言葉、怠惰と苦悩と愛と恋は作家の本分だ。
  132.  
  133. Anderson
  134. 即興詩だろうと無茶な締め切りであろうと、
  135. 本気になればすべてこなしてみせる。それが作家だ。
  136.  
  137. Anderson
  138. 中でもオレは創作作家。
  139. 想像力でオレに敵う奴はそうそういまい。
  140.  
  141. Anderson
  142. 弁論も知らない素人如きに口で負けるものか。
  143. 休む気がないなら、深夜の[#哨戒:しょうかい]でもするがいい。
  144.  
  145. Mordred
  146. あー、まあ、そうだな!
  147. あの「P」あたりを押さえて吐かせれば全部解決だ。
  148.  
  149. Mordred
  150. じゃ、オレは見回りに行くぜ。
  151. シティエリアを端までぐるっと回ってみるか。
  152.  
  153. Mashu
  154. あ……先輩っ、
  155. モードレッドさんが行ってしまいます。
  156.  
  157. ?1:追い掛けよう
  158.  
  159. ?2:何もしないより行動しよう
  160.  
  161. ?!
  162.  
  163. Mashu
  164. はい!
  165.  
  166. Jekyll
  167. 人を乗せるのがうまいね、君は。
  168. でも礼を言うよ。彼らは少し堪えていたようだし。
  169.  
  170. Anderson
  171. どうという事もない。
  172. 読者を感動させる手間に比べればこんなもの。
  173.  
  174. Anderson
  175. たかが[#やる気]を出させるくらいはな。
  176. ……だが、わからんぞ。
  177.  
  178. Jekyll
  179. うん?
  180.  
  181. Anderson
  182. 俺が見せたのはマッチの火に現れた幻かも知れん。
  183. 理屈が繋がっても、それだけでは妄想と変わらん。
  184.  
  185. Jekyll
  186. 想像力を働かせるんだろ?
  187. なら
  188.  
  189. Anderson
  190. バカかおまえは。
  191. あんなもの、言葉の[#あや]に決まっているだろうに。
  192.  
  193. Mordred
  194. …………複数での見回りってのも、な。
  195. 変な気分だぜ。
  196.  
  197. Mordred
  198. 普段はひとりでやってたからなあ。
  199. ま、楽ではあるから構わんが……と。早速か。
  200.  
  201. Dr. Roman
  202. どうしてもモードレッドに速度で敵わないなあ。
  203. こちらでも感知、敵性反応だよ!
  204.  
  205. Mashu
  206. 了解しました。
  207. マスター、戦闘指示を!
  208.  
  209. ==
  210.  
  211. Mordred
  212. 結構、量がいたな。
  213. ふう。
  214.  
  215. Mashu
  216. お疲れさまでした。
  217. 休息の必要はありますか?
  218.  
  219. Mordred
  220. まさか。ただ量が多いだけだ。
  221. ヘルタースケルターがいたら話は別だけどな。
  222.  
  223. Mordred
  224. あいつ、強いからな。
  225. 今回の現界で楽しみながら戦えるのはあいつだけだ。
  226.  
  227. Dr. Roman
  228. マシュと[%1][&君:ちゃん]が遭遇したのはまだ
  229. 一度だけだけど、強力な相手だったね。
  230.  
  231. Dr. Roman
  232. あまり数は多くないのかい?
  233. そういえば、あちこち移動したが見掛けないね。
  234.  
  235. Mordred
  236. そうだな……
  237. 言われてみりゃ、アレが数いるところは見たことねえな。
  238.  
  239. Mordred
  240. せっかくなら歯応えのある奴がいいし、
  241. 今夜あたり、出て来ねーかなー。
  242.  
  243. ?1:そういうこと言うと出るよ
  244.  
  245. ?2:縁起でもない
  246.  
  247. ?!
  248.  
  249. Mordred
  250. お、そうか?
  251.  
  252. Mashu
  253. もう少し移動しましょうか。
  254. シティの端までは、まだ距離がありますね。
  255.  
  256. Mashu
  257. あ、いえ。地図情報を確認しただけで……
  258. ロンドンに対しての土地勘がある訳ではないんですが。
  259.  
  260. Mordred
  261. ま。何か出れば、出た時の話だ。
  262.  
  263. ==
  264.  
  265. Mordred
  266. ……ったく、歯応えのない。
  267.  
  268. Mashu
  269. 敵性体、すべて撃退しました。
  270. いえ。それほど楽な相手という訳でもない、ような……
  271.  
  272. Mordred
  273. 霧からサーヴァントが出るってんなら、
  274. 派手に、強い奴をどんと出して欲しいもんだぜ。
  275.  
  276. Mordred
  277. あー……でも、あれか。
  278. 出てくるのが敵とはかぎらないのか?
  279.  
  280. Dr. Roman
  281. そうだね。事実、君はボクらと協力してくれてるし、
  282. アンデルセンにしてもそうだ。
  283.  
  284. Dr. Roman
  285. でも、ナーサリー・ライムやジャックは敵だった。
  286. 彼らもきっと魔霧から現界したサーヴァントだろう。
  287.  
  288. Mordred
  289. 搦め手の奴ばっかりじゃなくて、たまには
  290. 真正面から戦うような奴が来て欲しいな、オレは。
  291.  
  292. ?1:確かに
  293.  
  294. Mordred
  295. そうだろ?
  296. おまえ、なかなか分かってるマスターだな。
  297.  
  298. ?2:搦め手もいいものだよ
  299.  
  300. Mordred
  301. ……そうかあ?
  302.  
  303. ?!
  304.  
  305. Mashu
  306. 先輩、哨戒を続けますね。
  307. あと少しでシティの端まで到着します。
  308.  
  309. Mordred
  310. 強い奴、来い。来い!
  311.  
  312. ==
  313.  
  314. Shakespeare
  315. さあ
  316. 吾輩を召喚せしめたのはどなたか!
  317. キャスター・シェイクスピア、霧の都へ馳せ参じました。
  318.  
  319. Shakespeare
  320. と、言いたいところなのですが。
  321. どうやらこれは聖杯戦争による召喚ではない模様。
  322.  
  323. Shakespeare
  324. さあ、これは困ってしまいましたね。
  325. 神よ、吾輩が傍観すべき物語は何処にありや?
  326.  
  327. Shakespeare
  328. 答えはない。答えはない。ああ、神は私を見放したか。
  329. 血湧き肉躍り、心震い魂揺らす物語は何処にありや!
  330.  
  331. Shakespeare
  332. ならば吾輩はこう言うしかないでしょう。
  333. ああ、『[#恋は目ではなく心にて見やるもの:Love looks not with the eyes but with the mind]』!
  334.  
  335. Mordred
  336. …………ハズレだ。次。
  337.  
  338. Shakespeare
  339. おお、これは。異様の霧の中にて、
  340. 今度こそ貴方とこうしてお目に掛かれようとは。
  341.  
  342. Mashu
  343. お知り合いですか?
  344. その、彼……キャスター・シェイクスピアと?
  345.  
  346. Mordred
  347. 知らん。こいつはハズレだ。
  348.  
  349. Mordred
  350. だが、本当に確認できたな。
  351. たった今、こいつは魔霧の中から現界していた。
  352.  
  353. Shakespeare
  354. マスターが存在しないことは不幸ではありますが、
  355. こうして貴方にお会いできました。これも運命でしょう。
  356.  
  357. Shakespeare
  358. 今は貴方の物語を紡ぐとしましょう。
  359. 噂に違わぬ物語を期待していますよ。
  360.  
  361. Mordred
  362. あー…………
  363.  
  364. Mordred
  365. ってワケでもなさそうだし。
  366. しかし、いよいよそうなると奇妙ではあるよな。
  367.  
  368. Mordred
  369. 道化師やジャックみたいな奴らとの違いは何だ?
  370. ジャックはともかく、他の奴らは自分の意思で動いてた。
  371.  
  372. Mordred
  373. それに
  374.  
  375. Mordred
  376. ……いや。待て。
  377. 何だよ、夜の見回りは大当たりだったか?
  378.  
  379. Mashu
  380. はい?
  381.  
  382. Mordred
  383. 来たぜ、お待ちかねの奴だ。
  384. なあ、おい! 一度逃げ帰った割には度胸があるな!
  385.  
  386. @「P」
  387. ……遅かったようですね。
  388.  
  389. ?1:「P」か!
  390.  
  391. ?2:いつの間に……!
  392.  
  393. ?!
  394.  
  395. @「P」
  396. 新たに現界したサーヴァントは
  397. そちらに確保されてしまったようですね。残念です。
  398.  
  399. @「P」
  400. 現界したのはキャスターのようですね。
  401. 確保できれば、私たちの良い仲間になったでしょうに。
  402.  
  403. Mordred
  404. ははあ、掴めたぜ。
  405. 種を明かせば至極単純って訳だ。
  406.  
  407. Mashu
  408. ……はい。たった今、わたしも理解しました。
  409.  
  410. Dr. Roman
  411. 魔霧から現界したサーヴァントを確保・回収し、
  412. 自分たちの仲間にしていた、といったところか。
  413.  
  414. Dr. Roman
  415. なるほど。理屈は簡単だ。
  416. だが、言うほど容易いことではないはずだよ。
  417.  
  418. Dr. Roman
  419. 英霊を自分たちの思うがままに動かすなんて、
  420. それは、[#聖杯でもなければ]不可能だ。
  421.  
  422. @「P」
  423. 正解、とまずはお返ししましょう。
  424. その通りです。
  425.  
  426. @「P」
  427. 我々は、我々にとって必要な者が
  428. このロンドンへと現れるのを待ち続けているのです。
  429.  
  430. @「P」
  431. ですから、魔霧から現界した英霊を順次確保し、
  432. 魔霧の拡大のため働くように「調整」しています。
  433.  
  434. @「P」
  435. 貴方たちを確保できなかった事、
  436. 本当に、本当に、この私には残念でなりません。
  437.  
  438. @「P」
  439. きっと、良い友人になれたでしょう。
  440. 私たちは。お互いに。
  441.  
  442. ?1:そんなはずはない
  443.  
  444. ?2:冗談だろ
  445.  
  446. ?!
  447.  
  448. Mashu
  449. ……はい、先輩。
  450. わたしもまったく同じ感想を抱きました。
  451.  
  452. Mordred
  453. は! まったくだ!
  454. そんなのはこっちから願い下げだぜ!
  455.  
  456. Mordred
  457. 今度は逃がさん!
  458. 切り捨てられる前に名乗ってみろ、魔術師!
  459.  
  460. @「P」
  461. いいでしょう。今回は移送すべき触媒もない。
  462. ここで私が貴方たちを確保します。
  463.  
  464. @「P」
  465. 私は、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス。
  466. 四大の精霊を操る者にして、真なるエーテルを求む者。
  467.  
  468. Paracelsus
  469. もっとも、今は……
  470. 望むものは異なりましょうがね。
  471.  
  472. Mashu
  473. マスター、対サーヴァント戦闘です!
  474. 指示を!
  475.  
  476. ==
  477.  
  478. Paracelsus
  479. …………それでこそ。
  480.  
  481. Paracelsus
  482. それでこそ、剣を持つ英雄です。
  483. ならば、悪逆を成す者が打ち倒されるのは道理でしょう。
  484.  
  485. Paracelsus
  486. この世すべての悪を[#斃:たお]して。
  487. この世すべての欲に[#抗:あらが]って。
  488.  
  489. Paracelsus
  490. この世すべての明日を拓いてみせる者たちよ。
  491. 貴方たちの行く手に……
  492.  
  493. Paracelsus
  494. どうか……
  495. 真なる、光……を……
  496.  
  497. Mashu
  498. ……敵性サーヴァントの消滅を確認しました。
  499. 先輩、わたしたちの勝利です。
  500.  
  501. Mordred
  502. くそ、何の手掛かりも残さず消えやがった。
  503. 最後まで胸くそ悪い魔術師だったぜ。
  504.  
  505. Mordred
  506. 何が、明日を拓いてみせる者だ。
  507. オレはそんなんじゃねえぞ、ったく。
  508.  
  509. Shakespeare
  510. 『[#人生は歩く影が如く、哀れな役者に過ぎぬ:Life's but a walking shadow, a poor player]』
  511.  
  512. Mordred
  513. あ? 何だって?
  514.  
  515. Shakespeare
  516. いいえ。ただ、思い浮かんだ言葉に過ぎません。
  517. なかなか悪くないものを見せて戴けました。
  518.  
  519. Shakespeare
  520. 吾輩が目にしたのは一端だけですが、
  521. かの魔術師殿。なかなか良い[#結末:エンディング]に見えました。
  522.  
  523. Mordred
  524. ……バカ言ってんな。
  525. 気のせいだよ、それは。
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