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- Anderson
- よく帰ってきたと言っておこう。
- ヤードの警官たちについては残念だったな。
- Anderson
- 少しは休んでおけ。
- 聞けば、こちらへ来てから休みなしなんだろう?
- Anderson
- 根を詰めても良いモノが仕上がるとはかぎらない。
- 執筆であれ聖杯探索であれ、適度な休息が必要だ。
- Mashu
- ありがとうございます。
- ですが……状況は予断を許しません。
- Anderson
- バカめ。貴様もワーカーホリックか。
- 荷物の重さを忘れられないとはな。
- Anderson
- では、退屈しのぎに一つ語ってやろう。
- 俺やナーサリー・ライムがどうやって現界したのかを。
- Mashu
- ええと、アリス……ですね。
- あの子はそう名乗っていたような……
- Anderson
- ナーサリー・ライムだ。ともかく。
- 禄に話す間もなくおまえたちはヤードへ向かった。
- Anderson
- 話す機会がなかったが、
- 俺もナーサリー・ライムも共に[#魔霧から]現界した。
- Anderson
- マスターの存在もなく、
- 召喚の手順も踏まれずに、だ。
- Mordred
- そういや、オレもそんな感じだったな。
- ジキルはマスターでもないし召喚の儀式もなかった。
- Mordred
- 気付けば霧の中にいた。
- 何だ、サーヴァントってのは自然に湧くのか?
- ?1:そうかも知れない
- Dr. Roman
- いやいやいや!
- そんな事は絶対にあり得ないから!
- Dr. Roman
- 勝手に顕現……いや召喚されるなんてモノがいるなら、
- それはもうサーヴァントを越えた何かだよ!
- ?2:いや、それはどうだろう
- Mashu
- はい。本来、有り得ません。
- Mashu
- 英霊が自然発生的に現界する
- という意味では、
- 僅かですが記録は幾つか存在しています。
- Mashu
- しかし、その際には
- 人格を持った存在にはならない筈です。
- Mashu
- そして、サーヴァントとして現界する英霊は、
- 必ず召喚の手順によって座から呼び出されるものです。
- ?!
- Dr. Roman
- いいかい。これまで巡った三つの時代でも、
- サーヴァントの召喚は聖杯の影響によるものだ。
- Dr. Roman
- サーヴァントが自然に迷い出てくるなんて、
- そんな事は絶対に起こりえないからね!
- Anderson
- サーヴァントは霧から現界する訳ではない、か。
- なら、帰結はひとつだろうな。
- Anderson
- 霧は[#聖杯が生み出している]。
- もしくは、霧を生み出す何かが聖杯の影響下にある。
- Mashu
- そういうことに……なりますね。
- 確かに、理論的な帰結です。矛盾はありません。
- Anderson
- 現実の多くには必ず理屈が付くものだ。
- 理屈が通用しないのは恋ぐらいだろうよ。
- Anderson
- 想像力を働かせろ。
- それで大抵の物事は予想できるし、時には予測へ至る。
- Mordred
- はは。恋だ?
- ガキが生意気言いやがって。
- Anderson
- 恋も知らんガキに言われたくはないな。
- 俺は童貞だぞ。愛も恋も、完全に理解しているとも。
- Mordred
- ……はあ? ん。あれ?
- それ、理屈になってないよな? んん?
- ?1:よくわからないがすごい言葉だ
- ?2:ん? 確かに理屈に……
- ?!
- Anderson
- 忘れたか、俺はアンデルセン。
- 物語るが故にこそキャスターに区分された英霊だ。
- Anderson
- 剣と戦いが剣士の本分であるなら、
- 文字と言葉、怠惰と苦悩と愛と恋は作家の本分だ。
- Anderson
- 即興詩だろうと無茶な締め切りであろうと、
- 本気になればすべてこなしてみせる。それが作家だ。
- Anderson
- 中でもオレは創作作家。
- 想像力でオレに敵う奴はそうそういまい。
- Anderson
- 弁論も知らない素人如きに口で負けるものか。
- 休む気がないなら、深夜の[#哨戒:しょうかい]でもするがいい。
- Mordred
- あー、まあ、そうだな!
- あの「P」あたりを押さえて吐かせれば全部解決だ。
- Mordred
- じゃ、オレは見回りに行くぜ。
- シティエリアを端までぐるっと回ってみるか。
- Mashu
- あ……先輩っ、
- モードレッドさんが行ってしまいます。
- ?1:追い掛けよう
- ?2:何もしないより行動しよう
- ?!
- Mashu
- はい!
- Jekyll
- 人を乗せるのがうまいね、君は。
- でも礼を言うよ。彼らは少し堪えていたようだし。
- Anderson
- どうという事もない。
- 読者を感動させる手間に比べればこんなもの。
- Anderson
- たかが[#やる気]を出させるくらいはな。
- ……だが、わからんぞ。
- Jekyll
- うん?
- Anderson
- 俺が見せたのはマッチの火に現れた幻かも知れん。
- 理屈が繋がっても、それだけでは妄想と変わらん。
- Jekyll
- 想像力を働かせるんだろ?
- なら
- Anderson
- バカかおまえは。
- あんなもの、言葉の[#あや]に決まっているだろうに。
- Mordred
- …………複数での見回りってのも、な。
- 変な気分だぜ。
- Mordred
- 普段はひとりでやってたからなあ。
- ま、楽ではあるから構わんが……と。早速か。
- Dr. Roman
- どうしてもモードレッドに速度で敵わないなあ。
- こちらでも感知、敵性反応だよ!
- Mashu
- 了解しました。
- マスター、戦闘指示を!
- ==
- Mordred
- 結構、量がいたな。
- ふう。
- Mashu
- お疲れさまでした。
- 休息の必要はありますか?
- Mordred
- まさか。ただ量が多いだけだ。
- ヘルタースケルターがいたら話は別だけどな。
- Mordred
- あいつ、強いからな。
- 今回の現界で楽しみながら戦えるのはあいつだけだ。
- Dr. Roman
- マシュと[%1][&君:ちゃん]が遭遇したのはまだ
- 一度だけだけど、強力な相手だったね。
- Dr. Roman
- あまり数は多くないのかい?
- そういえば、あちこち移動したが見掛けないね。
- Mordred
- そうだな……
- 言われてみりゃ、アレが数いるところは見たことねえな。
- Mordred
- せっかくなら歯応えのある奴がいいし、
- 今夜あたり、出て来ねーかなー。
- ?1:そういうこと言うと出るよ
- ?2:縁起でもない
- ?!
- Mordred
- お、そうか?
- Mashu
- もう少し移動しましょうか。
- シティの端までは、まだ距離がありますね。
- Mashu
- あ、いえ。地図情報を確認しただけで……
- ロンドンに対しての土地勘がある訳ではないんですが。
- Mordred
- ま。何か出れば、出た時の話だ。
- ==
- Mordred
- ……ったく、歯応えのない。
- Mashu
- 敵性体、すべて撃退しました。
- いえ。それほど楽な相手という訳でもない、ような……
- Mordred
- 霧からサーヴァントが出るってんなら、
- 派手に、強い奴をどんと出して欲しいもんだぜ。
- Mordred
- あー……でも、あれか。
- 出てくるのが敵とはかぎらないのか?
- Dr. Roman
- そうだね。事実、君はボクらと協力してくれてるし、
- アンデルセンにしてもそうだ。
- Dr. Roman
- でも、ナーサリー・ライムやジャックは敵だった。
- 彼らもきっと魔霧から現界したサーヴァントだろう。
- Mordred
- 搦め手の奴ばっかりじゃなくて、たまには
- 真正面から戦うような奴が来て欲しいな、オレは。
- ?1:確かに
- Mordred
- そうだろ?
- おまえ、なかなか分かってるマスターだな。
- ?2:搦め手もいいものだよ
- Mordred
- ……そうかあ?
- ?!
- Mashu
- 先輩、哨戒を続けますね。
- あと少しでシティの端まで到着します。
- Mordred
- 強い奴、来い。来い!
- ==
- Shakespeare
- さあ
- 吾輩を召喚せしめたのはどなたか!
- キャスター・シェイクスピア、霧の都へ馳せ参じました。
- Shakespeare
- と、言いたいところなのですが。
- どうやらこれは聖杯戦争による召喚ではない模様。
- Shakespeare
- さあ、これは困ってしまいましたね。
- 神よ、吾輩が傍観すべき物語は何処にありや?
- Shakespeare
- 答えはない。答えはない。ああ、神は私を見放したか。
- 血湧き肉躍り、心震い魂揺らす物語は何処にありや!
- Shakespeare
- ならば吾輩はこう言うしかないでしょう。
- ああ、『[#恋は目ではなく心にて見やるもの:Love looks not with the eyes but with the mind]』!
- Mordred
- …………ハズレだ。次。
- Shakespeare
- おお、これは。異様の霧の中にて、
- 今度こそ貴方とこうしてお目に掛かれようとは。
- Mashu
- お知り合いですか?
- その、彼……キャスター・シェイクスピアと?
- Mordred
- 知らん。こいつはハズレだ。
- Mordred
- だが、本当に確認できたな。
- たった今、こいつは魔霧の中から現界していた。
- Shakespeare
- マスターが存在しないことは不幸ではありますが、
- こうして貴方にお会いできました。これも運命でしょう。
- Shakespeare
- 今は貴方の物語を紡ぐとしましょう。
- 噂に違わぬ物語を期待していますよ。
- Mordred
- あー…………
- Mordred
- 敵
- ってワケでもなさそうだし。
- しかし、いよいよそうなると奇妙ではあるよな。
- Mordred
- 道化師やジャックみたいな奴らとの違いは何だ?
- ジャックはともかく、他の奴らは自分の意思で動いてた。
- Mordred
- それに
- Mordred
- ……いや。待て。
- 何だよ、夜の見回りは大当たりだったか?
- Mashu
- はい?
- Mordred
- 来たぜ、お待ちかねの奴だ。
- なあ、おい! 一度逃げ帰った割には度胸があるな!
- @「P」
- ……遅かったようですね。
- ?1:「P」か!
- ?2:いつの間に……!
- ?!
- @「P」
- 新たに現界したサーヴァントは
- そちらに確保されてしまったようですね。残念です。
- @「P」
- 現界したのはキャスターのようですね。
- 確保できれば、私たちの良い仲間になったでしょうに。
- Mordred
- ははあ、掴めたぜ。
- 種を明かせば至極単純って訳だ。
- Mashu
- ……はい。たった今、わたしも理解しました。
- Dr. Roman
- 魔霧から現界したサーヴァントを確保・回収し、
- 自分たちの仲間にしていた、といったところか。
- Dr. Roman
- なるほど。理屈は簡単だ。
- だが、言うほど容易いことではないはずだよ。
- Dr. Roman
- 英霊を自分たちの思うがままに動かすなんて、
- それは、[#聖杯でもなければ]不可能だ。
- @「P」
- 正解、とまずはお返ししましょう。
- その通りです。
- @「P」
- 我々は、我々にとって必要な者が
- このロンドンへと現れるのを待ち続けているのです。
- @「P」
- ですから、魔霧から現界した英霊を順次確保し、
- 魔霧の拡大のため働くように「調整」しています。
- @「P」
- 貴方たちを確保できなかった事、
- 本当に、本当に、この私には残念でなりません。
- @「P」
- きっと、良い友人になれたでしょう。
- 私たちは。お互いに。
- ?1:そんなはずはない
- ?2:冗談だろ
- ?!
- Mashu
- ……はい、先輩。
- わたしもまったく同じ感想を抱きました。
- Mordred
- は! まったくだ!
- そんなのはこっちから願い下げだぜ!
- Mordred
- 今度は逃がさん!
- 切り捨てられる前に名乗ってみろ、魔術師!
- @「P」
- いいでしょう。今回は移送すべき触媒もない。
- ここで私が貴方たちを確保します。
- @「P」
- 私は、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス。
- 四大の精霊を操る者にして、真なるエーテルを求む者。
- Paracelsus
- もっとも、今は……
- 望むものは異なりましょうがね。
- Mashu
- マスター、対サーヴァント戦闘です!
- 指示を!
- ==
- Paracelsus
- …………それでこそ。
- Paracelsus
- それでこそ、剣を持つ英雄です。
- ならば、悪逆を成す者が打ち倒されるのは道理でしょう。
- Paracelsus
- この世すべての悪を[#斃:たお]して。
- この世すべての欲に[#抗:あらが]って。
- Paracelsus
- この世すべての明日を拓いてみせる者たちよ。
- 貴方たちの行く手に……
- Paracelsus
- どうか……
- 真なる、光……を……
- Mashu
- ……敵性サーヴァントの消滅を確認しました。
- 先輩、わたしたちの勝利です。
- Mordred
- くそ、何の手掛かりも残さず消えやがった。
- 最後まで胸くそ悪い魔術師だったぜ。
- Mordred
- 何が、明日を拓いてみせる者だ。
- オレはそんなんじゃねえぞ、ったく。
- Shakespeare
- 『[#人生は歩く影が如く、哀れな役者に過ぎぬ:Life's but a walking shadow, a poor player]』
- Mordred
- あ? 何だって?
- Shakespeare
- いいえ。ただ、思い浮かんだ言葉に過ぎません。
- なかなか悪くないものを見せて戴けました。
- Shakespeare
- 吾輩が目にしたのは一端だけですが、
- かの魔術師殿。なかなか良い[#結末:エンディング]に見えました。
- Mordred
- ……バカ言ってんな。
- 気のせいだよ、それは。
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