Vi_Vi

Mabayu MSS JP Text

Feb 26th, 2024
98
0
Never
Not a member of Pastebin yet? Sign Up, it unlocks many cool features!
text 45.25 KB | None | 0 0
  1. FILENAME: text_320091-1.txt
  2. まばゆ: もしも私の人生が 1本の映画だったら…
  3. まばゆ: ごく当たり前に過ぎていく ごく当たり前の日常…
  4. まばゆ: それはとっても退屈で 観客の半分は途中で居眠り
  5. まばゆ: とても人様にお見せできる ようなものじゃない…
  6. まばゆ: そんなふうに思っていました
  7. まばゆ: だってまさか 突然時間が止まるなんて…
  8. まばゆ: そんなこと、本気で信じられる わけないじゃないですか!
  9. まばゆ: …………
  10. まばゆ: (さっきのアレ、なんですか? 信号もヤケに長かったし…)
  11. まばゆ: (時間が止まってたとしか… それ以外、考えられない…)
  12. まばゆ: (うーん、しかし…そんな 非科学的なこと、起こるワケ…)
  13. まばゆ: (起こるなら…せめてテスト中に 起こって欲しかった…!!)
  14. まばゆ: (カンニング させて欲しかった…!)
  15. まばゆ: (悔しい…!)
  16. まばゆ: …………いやいや
  17. まばゆ: (っていうか…うーん 私、疲れてるんですかね…)
  18. まばゆ: (まさかこれも、夢の続きとか そういうオチじゃ…)
  19. まばゆ: 咲笑さん
  20. 咲笑: なあに、まばゆちゃん?
  21. まばゆ: ほっぺ、つねってくれませんか?
  22. 咲笑: えいっ
  23. まばゆ: いででででっ!
  24. まばゆ: ちゅ、ちゅうちょがなひ…
  25. 咲笑: やあっ、とりゃー!
  26. まばゆ: だだだ、だいじょうぶ! もう、だいじょうぶれすからぁ…
  27. まばゆ: はぁ…咲笑さん、やることが極端
  28. 咲笑: 今日は様子が変よ また夜更かししちゃった?
  29. まばゆ: そうじゃ、ないんですけど…
  30. カランカラン
  31. 咲笑の声: いらっしゃいませー
  32. まばゆ: いらっしゃいま…せ
  33. まばゆ&マミ: あ…
  34. マミ: ええと…もしかして 愛生…さん?
  35. まばゆ: クラスメイトの、たしか… 巴さん…ですよね
  36. まばゆ: すみません!あ、あの…っ!! これ、アルバイトじゃなくて!
  37. まばゆ: 家の、手伝いで、だからその で、で、できれば内密に…
  38. マミ: ふふふ、大丈夫よ
  39. まばゆ: ほ…ほんとうですかっ!?
  40. マミ: だって、このお店にはいつも お世話になってるんだもの
  41. まばゆ: あ、あ、ありがとうございます! 恩に着ます!!
  42. 咲笑: ねえ、まばゆちゃん?
  43. 咲笑: さっきのお客さんは 同じクラスの子かしら?
  44. まばゆ: はい、巴マミさんって言って とっても優秀な生徒さんで…
  45. 咲笑: ステキなお友だちね
  46. まばゆ: おおお、お友だちなんてそんな!
  47. まばゆ: 私みたいな陰キャが友だちに なれるワケないじゃないですか!
  48. まばゆ: まともに話したのも、今日が 初めてですってば!
  49. 咲笑: あら、そう? そうは見えなかったけど
  50. まばゆ: はぁ…まったく、私を 甘く見ないでくださいよ!
  51. まばゆ: なんと言っても、筋金入りの ボッチなんですからね!
  52.  
  53. FILENAME: text_320091-2.txt
  54. 先生: それじゃあ、次の問題…
  55. 先生: 巴マミ、計算してみろ
  56. マミ: はい
  57. まばゆ: (うーん、さすが)
  58. まばゆ: (私には全然わからない問題も 淀みなくすらすら解いて…)
  59. まばゆ: (別世界の存在って感じです)
  60. まばゆ: (それにくらべて、私は…)
  61. まばゆ: (成績、ダメ)
  62. まばゆ: (運動、下手)
  63. まばゆ: (友だち、皆無)
  64. まばゆ: (趣味、映画観賞)
  65. まばゆ: (…陰キャの詰め合わせ 欲張りセットですか?)
  66. まばゆ: (毎日学校行って… お店を手伝って… 映画を見て…コタツで寝て…)
  67. まばゆ: (繰り返し…繰り返し…)
  68. まばゆ: (繰り返し…繰り返し…)
  69. まばゆ: (なんか、ループもの みたいですね)
  70. まばゆ: (繰り返し…繰り返し…)
  71. まばゆ: (繰り返し…繰り返し…)
  72. まばゆ: (繰り返し…繰り返し…)
  73. まばゆ: (繰り返し…繰り返し…)
  74. まばゆ: …………
  75. まばゆ: へ?
  76. まばゆ: また…時間、止まってます!?
  77. まばゆ: (ううーん、やっぱり、変)
  78. まばゆ: (一度だけなら気のせいかとも 思いましたけども…)
  79. まばゆ: (まさか、もしかして…)
  80. まばゆ: (私に前世から宿っていた不思議 パワーが目覚めたのでは!?)
  81. まばゆ: って、まさかそんなことはね… あるわけ…ないわけ…
  82. まばゆ: …ん?
  83. エイミー: みゃーう
  84. まばゆ: エイミー!
  85. まばゆ: (お散歩の途中ですかね? お店の前でよく見るんですよね)
  86. まばゆ: (お仕事中じゃなかったら 遊んであげたいんですが…)
  87. まばゆ: あ…!
  88. まばゆ: (もしも、私が時間を止める 能力に目覚めたとしたら…)
  89. まばゆ: (エイミーにそっと近づいて なでなでしたりできるはず!)
  90. まばゆ: にひひひひ… 止まれ…止まれ…
  91. まばゆ: 時間よ…止まれ… 止まるのだー!でりゃあああ!
  92. 咲笑: まばゆちゃん…!?
  93. まばゆ: え
  94. 咲笑: ええと…どうしちゃったの?
  95. まばゆ: あ、いやですね、咲笑さん ただの冗談、冗談ですよ
  96. まばゆ: あはははは…
  97. まばゆ: (は、は、恥ずかしいところを 見られてしまった…!)
  98. まばゆ: (きっと、映画の見過ぎで頭が おかしくなったんだと思われる)
  99. まばゆ: (いや、でもホントに そうなっちゃったのかも…)
  100. 咲笑: ほら、まばゆちゃん オーダー溜まってるわよ
  101. まばゆ: は、はいっ!
  102. まばゆ: (咲笑さんは、レコンパンスを 切り盛りするパティシエで…)
  103. まばゆ: (身寄りをなくした私を 引き取った叔母でもあります)
  104. まばゆ: (あんまり心配は かけたくないんですが…)
  105. まばゆ: はぁ…
  106. 咲笑: えええええええーっ!?
  107. まばゆ: わわわわっ!
  108. まばゆ: ど、どうしました咲笑さん?
  109. 咲笑: だって、そのカフェ・マキアート どうしたの?
  110. まばゆ: どうしたって… ただ絵を描いただけですけど
  111. まばゆ: 私また何かやっちゃいました?
  112. 咲笑: だってまばゆちゃん、今まで つくったことなかったでしょ?
  113. 咲笑: なのに、そんなにステキな エイミーちゃんを描くなんて!!
  114. まばゆ: え?あー…そういえば… 今まで、描いた記憶…ない、かも
  115. まばゆ: 私ってばもしかして…天才!?
  116. まばゆ: ふんふふんふんふーん
  117. まばゆ: (絵を咲笑さんに絶賛されて お客さんにも褒められて…)
  118. まばゆ: (こんなに上機嫌になるなんて 我ながらチョロいですね)
  119. まばゆ: にひひひひ…
  120. エイミーの声: みゃーう
  121. まばゆ: ん?え、エイミーちゃん!?
  122. エイミー: なーう、ごろごろ…
  123. まばゆ: えっ?えっ?えっ?
  124. まばゆ: な、なんですか急に!? 突然の大サービス!?
  125. まばゆ: お、おさわりしちゃって 問題ないんです?ですね?
  126. エイミー: みゃーお
  127. まばゆ: うひょー!あ、ありがたやー!
  128. まばゆ: なでなで…なでなで… おおおおお…
  129. まばゆ: (私は成績ダメ、運動下手 友だちもいないボッチですけど)
  130. まばゆ: (でもまあ、映画は楽しいし 咲笑さんも優しいし…)
  131. まばゆ: (お手伝いも嫌いじゃないし 楽しいこともあったりで…)
  132. まばゆ: (私は私なりに 満足して毎日を暮らしてます)
  133. まばゆ: (そりゃまあ、マミさんみたいに 完璧じゃあないですけど…)
  134. まばゆ: (コレはコレで、幸せに やっているワケですよ)
  135. まばゆ: (いや、ホントに)
  136. まばゆ: なのに、うーん… なんででしょう
  137. まばゆ: なんか、しっくり来ないというか 忘れちゃってるよーな気が…
  138. まばゆ: しかも、それがめちゃくちゃ 大事なことだったよーな…
  139. まばゆ: ん…?あ…あれ…?
  140. まばゆ: ま、ま、まままま…
  141. まばゆ: まさか、この映画! タイムマシンが…公衆電話!?
  142. まばゆ: って、見たことあるじゃ ないですかー!!
  143. まばゆ: せっかくレンタルしてきたのに 忘れてたなんて…
  144. まばゆ: トホホホホホ…!
  145.  
  146. FILENAME: text_320091-3.txt
  147. 先生: よーし、それじゃ 出席を取るぞー!
  148. 先生: 愛生まばゆ
  149. まばゆ: ふ、ふぁい…
  150. まばゆ: (私の名前、出席番号順で いつも最初なんですよね)
  151. まばゆ: (授業で最初に指名されたりも しょっちゅうだし)
  152. まばゆ: (サボり魔の私には 酷な名字ですよ、マッタク…)
  153. 先生: 巴マミ
  154. 先生: …………
  155. 先生: 巴マミ 居ないのか?
  156. 先生: …めずらしいな 巴が連絡もなしに休むなんて
  157. まばゆ: (ん…?)
  158. まばゆ: (確かにちょっと 珍しいかも)
  159. まばゆ: (ま、優等生にだって サボりたい日はありますよね)
  160. きゃーっ、かわいい!
  161. えっ?これすごくない!?
  162. あの、これ、店員さんが 描いたんですか?
  163. まばゆ: ええ…まあ…
  164. あのっ!もし良かったら ネットにアップしても…
  165. まばゆ: いえいえ!大したものでも ないですし、恥ずかしいし…
  166. 咲笑: もちろん!アップしてOKです
  167. 咲笑: お店の名前も入れて たくさん宣伝して下さいね!
  168. あ、は、はい!
  169. まばゆ: う、うううう… 咲笑さんってば…
  170. 咲笑: 褒めてくれてるんだし 恥ずかしがることないでしょう
  171. 咲笑: もしかしたら ネットで話題になるかもよ
  172. まばゆ: そ、そんなの…恐ろしすぎます!
  173. まばゆ: 見ず知らずの人間が、私の絵を 見て、弄って、嘲笑って…
  174. まばゆ: 晒されて、住所特定されて 卒アルがアップされて…
  175. 咲笑: ま、まばゆちゃん?そんな ネガティブにならなくても…
  176. まばゆ: 魚に空を飛べって言うんですか?
  177. まばゆ: しかも私は深海魚…
  178. まばゆ: 光の届かない、暗ーい海の 底でしか生きられない魚ですよ!
  179. 咲笑: うーん、そんなことないと 思うんだけれどなあ…
  180. まばゆ: ありますよ!
  181. まばゆ: 私の陰キャっぷりを 舐めてもらっては困ります
  182. 咲笑: やれやれ…
  183. まばゆ: 私はそういう性格だけど でも、不自由はないし…
  184. まばゆ: だから別に、自分が不幸だなんて 思いませんし…
  185. 咲笑: でも最近、ずーっと 浮かない顔よね
  186. まばゆ: …………
  187. 咲笑: あのお友だち、最近お店に来ないし 喧嘩しちゃったとか?
  188. まばゆ: だから、マミさんはただの クラスメイトですってば!
  189. まばゆ: まあ…最近学校を休んでて 心配ではありますけど…
  190. 咲笑: それじゃあ、別に何か心配事が?
  191. まばゆ: いや、まあ、それはその…
  192. まばゆ: (時間が止まってる…なんて 言ったら心配かけちゃうし…)
  193. まばゆ: (あんまり隠し事をしたくは ないですけれども…)
  194. まばゆ: (なんか、ごまかさないと…)
  195. まばゆ: え、ええと、ですね…
  196. まばゆ: さ、最近なんか、心に穴が 空いてるというか…
  197. まばゆ: 忘れてはいけない重要なことを 忘れてしまっているような…
  198. まばゆ: なんか、そんな気がするんです
  199. まばゆ: だからたぶんそのせいで 考え事が多いのかも…
  200. 咲笑: …………
  201. まばゆ: あれ?咲笑さん?
  202. まばゆ: (なんか急に深刻な雰囲気…?)
  203. 咲笑: まばゆちゃんは、嫌なことを 急に思い出しちゃうことはない?
  204. まばゆ: あ…はい、ありますあります!
  205. まばゆ: なんで昨日、クラスであんな 返事をしちゃったんだろう、とか
  206. まばゆ: 急に思い出しちゃって 「うがー!」って叫びだしたり
  207. まばゆ: あれって一体なんなんですかね
  208. 咲笑: 叫ぶだけで済むならいいけれど 場合によってはもっと深刻で…
  209. 咲笑: その出来事にずっと向き合うと 心が壊れてしまうこともあるの
  210. 咲笑: そうならないように、自分の 記憶を隠してしまう…
  211. 咲笑: そういう働きが、人にはあるのよ
  212. まばゆ: 記憶を、隠す…?
  213. 咲笑: あなたが、もしも何かを 忘れてしまっていたとしても…
  214. 咲笑: それは、忘れた方が いいことなのよ
  215. まばゆ: …………
  216. 咲笑: まばゆちゃん?
  217. まばゆ: 嫌です
  218. まばゆ: 忘れてしまったことが 忘れた方がいいことだなんて…
  219. まばゆ: 忘れた方がいいことが この世の中にあるだなんて…
  220. まばゆ: そんなの…私、絶対 納得できませんッ!!
  221. 咲笑: …………
  222. …………
  223. …………
  224. まばゆ: あ…やば…
  225. まばゆ: (我を忘れて、大声を 出してしまった…)
  226. まばゆ: (は、は、は、恥ずかしいっ!)
  227. まばゆ: よーし
  228. まばゆ: 今日の映画は 先日の続編ですよ…!
  229. まばゆ: 向こうの映画は見たこと自体 すっかり忘れていましたが…
  230. まばゆ: 続編はまだ、初見の…
  231. まばゆ: 忘れてしまったことが 忘れた方がいいことだなんて…
  232. まばゆ: 忘れた方がいいことが この世の中にあるだなんて…
  233. まばゆ: そんなの…私、絶対 納得できませんッ!!
  234. まばゆ: ぎゃああああああっ!
  235. まばゆ: やだー!やだー! 急に思い出してしまったー!
  236. まばゆ: 店の中で急に奇声を 発するだなんて…ううう…
  237. まばゆ: なんて、なんて恥ずかしい…
  238. まばゆ: というか、これを思い出すって どういうことですか?
  239. まばゆ: 忘れた方がいいことが世の中に あるのなら…
  240. まばゆ: 真っ先にこの記憶を忘れさせて くださいよー!ううううう…!
  241. まばゆ: …………
  242. まばゆ: でも…私、なんで大声 出しちゃったんですかね…
  243. まばゆ: 別にそんな、キレるところじゃ ないと思うんですけど…
  244. まばゆ: う、うう~ん…
  245. まばゆ: 我ながら謎
  246.  
  247. FILENAME: text_320092-1.txt
  248. カランカラン
  249. まばゆ: ありがとうございましたー!
  250. 咲笑: まばゆちゃん、お疲れ様
  251. 咲笑: 今日も先に上がってもらって いいわよ
  252. まばゆ: はーい
  253. まばゆ: あ、あの…咲笑さん
  254. まばゆ: この前は、仕事中に大声あげて しまって、スミマセンでした
  255. 咲笑: そんな、気にしないで
  256. 咲笑: それより、はい これ、今日のまかない
  257. 咲笑: 多めに余ったから、豪華な 詰め合わせになっちゃって…
  258. まばゆ: あ…えっと
  259. 咲笑: ん?どうしたの?
  260. まばゆ: ちょっと、最近体重が 気になるというか…
  261. まばゆ: ケーキの量は 減らした方がいいかなって…
  262. 咲笑: あら、そう…
  263. まばゆ: それじゃ、今日も お疲れ様でしたー
  264. まばゆ: (謝るには謝ったけど…)
  265. まばゆ: (あれからなんか、咲笑さんと ギクシャクしちゃってますね)
  266. まばゆ: (別に、なにか問題があるって わけでもないんですが…)
  267. まばゆ: ってか、あー…
  268. まばゆ: ケーキ、どうして 断っちゃったんだろ
  269. まばゆ: (豪華な詰め合わせ…わざわざ 用意してくれたのかも)
  270. まばゆ: (せっかく気を遣ってくれたのに あんなにあっさり断って)
  271. まばゆ: (いや…でも、私が近頃 食べすぎなのは間違いないし)
  272. まばゆ: (受け取っても、余らせたら 申し訳ないし)
  273. まばゆ: (だから、断った私は 別に悪くない)
  274. まばゆ: (って、悪いとか悪くないとか そういう話をしたいわけじゃ…)
  275. まばゆ: …………あ
  276. まばゆ: また、時間…止まってる
  277. まばゆ: ま、時間が止まっても、全然 有効活用できないわけですが
  278. まばゆ: レンタルビデオ屋に忍びこんで コッソリ新作を借りる…
  279. まばゆ: とかも、考えましたけど ちょっと気が進まないというか
  280. まばゆ: 私はむしろ、ビデオ屋さんを 買い支えないといけない立場で…
  281. まばゆ: ってか…あれー?
  282. まばゆ: 借りてきた映画 全部見ちゃってますね
  283. まばゆ: 最近、映画を見るペースが 上がってるせい…かな
  284. まばゆ: 時間が止まってる間も プレイヤーを触ると再生できて…
  285. まばゆ: もしかしたらその分 たくさん消化できてるのかも
  286. まばゆ: うれしい悲鳴って ところですか
  287. まばゆ: ま、でも、仕方ないですね 今日はアーカイブの名作を…と
  288. まばゆ: んー、何がいいかな
  289. まばゆ: 知る人ぞ知る…な マニアック作品もいいですが…
  290. まばゆ: 今日はなんだか、もっと メジャーなエンタメ作品を…
  291. まばゆ: ん?あ、あれ?
  292. まばゆ: こんな映画 うちにありましたっけ?
  293. まばゆ: 未来から殺人マシーンが 襲ってくる、アレ…ですよね
  294. まばゆ: いや、めちゃくちゃ有名な名作… なのは、わかってるんですけど
  295. まばゆ: 全然、見た記憶がなくて 逆になんで覚えてないのか、謎
  296. まばゆ: ま、いいや!
  297. まばゆ: 名作は何度繰り返して見ても いいもんですからね!
  298. まばゆ: とりあえず再生、再生、と!!
  299. まばゆ: いやー、面白かったー!
  300. まばゆ: 内容すっかり忘れてたんで もーたっぷり楽しめましたよ
  301. まばゆ: でも、例の名台詞は覚えてたし 絶対見たことがあるはずで…
  302. まばゆ: …………
  303. まばゆ: う、うーん…なんか最近 忘れっぽくてダメですね
  304. まばゆ: まあいいや!それじゃあ続けて 2の方も見ちゃいましょうか
  305. まばゆの母: 次は、殺人鬼が味方になって 現れるんじゃないかしら
  306. まばゆ: え…?
  307. まばゆ: 今のって…お母さん?
  308. まばゆ: あれ?もしかして、私が 前に見たのって…
  309. まばゆ: あ、そうか…確か
  310. まばゆ: 私の記憶が確かなら この映画も一緒に観て…
  311. まばゆ: すごい…全部、お母さんの 言った通りになったよ!
  312. まばゆ: 今の「グッジョブ!」って 機械に魂が宿ったんだよね!?
  313. まばゆの母: ええ、きっとそうね
  314. まばゆ: それなのに死んじゃうなんて ロボットさんが、かわいそう…
  315. まばゆの母: まばゆは優しいのね
  316. まばゆ: 味方と思ったのが敵だったのも 言った通りだったし…
  317. まばゆ: お母さん、この映画 前に見たことがあるの?
  318. まばゆの母: いいえ、初めてよ
  319. まばゆ: うっそだー!
  320. まばゆ: 初めてだったら、こんなに次の お話がわかるわけないもん
  321. まばゆ: あ…もしかして、この映画の お話も、占いでわかったの!?
  322. まばゆの母: 占い…そうね
  323. まばゆの母: 少し、似ているところも あるかもしれないわね
  324. まばゆ: 似ている?
  325. まばゆの母: 例えば、の話なんだけれどね
  326. まばゆの母: 道路を渡っているとき目の前で おばあちゃんが転んだら…
  327. まばゆの母: それを見ていた女の子は どうすると思う?
  328. まばゆ: それは、助けないとダメだよ
  329. まばゆの母: 道路の向こう側から トラックが近づいていても?
  330. まばゆ: う、うーん…ええと…
  331. まばゆ: それでもやっぱり、できるだけ 助けようとすると思う!
  332. まばゆの母: ええ、そうね
  333. まばゆ: それでそのお話、おばあちゃんは どうなったの?
  334. まばゆ: まさか…トラックに 轢かれちゃった?
  335. まばゆの母: いいえ、きっと助かるわ
  336. まばゆの母: だって私たちは、助かって 欲しいって願うんだもの
  337. まばゆの母: お話はね、色んな出来事があって ハラハラドキドキするけれども…
  338. まばゆの母: でもそれは、皆がお話を鏡にして 自分の姿を見ているからなのよ
  339. まばゆ: かがみ…?
  340. まばゆの母: 占いも、それと同じなの
  341. まばゆの母: たくさんの人がやってきて 色んなお話を聞かせてくれるわ
  342. まばゆの母: 私は、お話を聞きながら 皆が見ている鏡の形を想像するの
  343. まばゆの母: どこの部分が欠けていて どこの部分が足りないのか
  344. まばゆの母: 全部埋めたものが、その人が 本当に語りたかった「お話」
  345. まばゆの母: 私の占いは、その欠けた部分を 探すお手伝いなのよ
  346. まばゆ: …………
  347. まばゆ: よく、わかんない
  348. まばゆの母: そうね、まだまばゆには 少し早かったかもね
  349. まばゆ: でも…だったら いっぱいお話を聞けばいいの?
  350. まばゆ: それで、お話の先が 想像できるようになったら…
  351. まばゆ: 私も、お母さんみたいに 占い師になれるかな?
  352. まばゆ: これからどうしようか 困っている人の力になれるかな?
  353. まばゆの母: …そうね
  354. まばゆの母: もしかしたら なれるかもしれないわね
  355. まばゆ: そっか…そうなんだ
  356. まばゆ: うん、わかった!
  357. まばゆ: 私、これから、いっぱい いっぱい、お話を見る!
  358. まばゆ: それで、お母さんみたいに 未来を占えるように…
  359. まばゆの母: ううん
  360. まばゆの母: あなたは、私みたいには ならなくていいのよ
  361.  
  362. FILENAME: text_320092-2.txt
  363. 先生: それじゃあこの問題を、巴…
  364. 先生: …………
  365. 先生: ん?巴はまだ休みなのか
  366. まばゆ: (授業を上の空で 聞き流しながら…)
  367. まばゆ: (頭の中には、あの日の記憶が ずーっと繰り返されています)
  368. まばゆ: (『私みたいには ならなくていい』)
  369. まばゆ: (そう言った、お母さんの顔は なんだかとても悲しそうで…)
  370. まばゆ: (私も、思い出すだけで 泣きそうになってしまいます)
  371. 咲笑: お疲れ様、まばゆちゃん 今日はもう、上がっていいわよ
  372. まばゆ: あの…咲笑さん
  373. 咲笑: ん…何?
  374. まばゆ: お母さんって、未来のことが 視えたりしたんですよね
  375. まばゆ: 占いのこと…本当は どう思ってたんでしょうか?
  376. 咲笑: 占いのこと? 急に、どうかした?
  377. まばゆ: いや、あの… なんていうか…ですね
  378. まばゆ: 私、こんなに映画をたくさん 観るようになったのは…
  379. まばゆ: お母さんみたいに、お話の未来が 先にわかるようになりたいって…
  380. まばゆ: それで、人の役に立てるように なりたいと思ったからだって…
  381. まばゆ: そういうこと、映画を観てたら 突然思い出しちゃって
  382. 咲笑: まばゆちゃん…
  383. まばゆ: 『私みたいにはならなくていい』
  384. まばゆ: お母さんがそう、言ったのは なんでなんですかね?
  385. まばゆ: もしかして、私のこと…
  386. まばゆ: 嫌いだったのかな、なんて 考えちゃったりして…
  387. 咲笑: それは違うわ
  388. まばゆ: でも…それじゃあなんでです?
  389. まばゆ: 未来のことがわかって たくさんの人が救えて…
  390. まばゆ: だから私も、お母さんみたいに なりたいって思ったのに…
  391. まばゆ: そんなこと言う理由が 全然、わかんなくて…
  392. 咲笑: それは…
  393. 咲笑: …………
  394. まばゆ: やっぱり、それも…
  395. まばゆ: 忘れた方がいいことですか?
  396. 咲笑: え…
  397. まばゆ: 忘れてしまったことは 忘れた方がいいこと…
  398. まばゆ: 私がお母さんとの思い出を 忘れてしまったのも…
  399. まばゆ: 私にとっては、忘れた方が いい思い出だったから…?
  400. 咲笑: まばゆちゃん
  401. 咲笑: 焦らなくても、大丈夫
  402. 咲笑: もしそれが必要なら 必要な時にはちゃんと…
  403. まばゆ: 嫌なんです
  404. まばゆ: 私は…お母さんのことを ちゃんと覚えていたい
  405. まばゆ: 楽しいことも、辛いことも ぜんぶ、ぜんぶひっくるめて…
  406. まばゆ: 私の目に、焼き付けたい!
  407. 咲笑: …………
  408. まばゆ: え、ええと…
  409. まばゆ: また、大声出してしまって スミマセン…
  410. まばゆ: お先に失礼します
  411. まばゆ: (まただ…)
  412. まばゆ: (また、咲笑さんを 困らせてしまいました…)
  413. まばゆ: (咲笑さんは何にも悪いこと してないのに…)
  414. まばゆ: (これじゃただの 八つ当たりです)
  415. まばゆ: (うん、やっぱり決めました)
  416. まばゆ: (このまま、モヤモヤとした 気持ちじゃいられません)
  417. まばゆ: (私、もっとちゃんと お母さんのこと、思い出そう!)
  418.  
  419. FILENAME: text_320092-3.txt
  420. まばゆ: ええと…確かお店は あのビルでしたよね
  421. まばゆ: (私のお母さんは とても有名な占い師でした)
  422. まばゆ: (未来のことがよく当たるって 大評判!)
  423. まばゆ: (お父さんは、私が物心つく前に 亡くなっていたけれども…)
  424. まばゆ: (お母さんは女手ひとつで 私を育ててくれていて…)
  425. まばゆ: (なにひとつ、不自由する ことなんてありませんでした)
  426. まばゆ: …懐かしいですね
  427. まばゆ: いつも、仕事場には 入れてもらえませんでしたけど…
  428. まばゆ: (色々な悩みを抱えた人たちが 遠くからわざわざやってきて…)
  429. まばゆ: (お店に入るときは、みんな 深刻な顔をしていたけれど…)
  430. まばゆ: (お母さんの占いを聞いて 笑顔で外に出て行った)
  431. まばゆ: (それはまるで魔法みたいで…)
  432. まばゆ: (私もいつか、お母さんみたいに 誰かの役に立ちたいって思った)
  433. まばゆ: まあ…今の私には 絶対無理ですけど
  434. まばゆ: あー、せめて私にも、占いの 才能があったらなあ…
  435. まばゆ: ねえ、お母さん
  436. まばゆの母: なあに、まばゆ
  437. まばゆ: お母さんは 未来が視えるんだよね?
  438. まばゆの母: ええ、調子のいいときはね
  439. まばゆ: だったら、私の未来も占える?
  440. まばゆの母: ごめんなさい それはできないわ
  441. まばゆ: えー!?どうして?
  442. まばゆの母: だってまばゆは、未来を 占うことができたら…
  443. まばゆの母: きっと、テストをカンニング したいって言うでしょう?
  444. まばゆ: あっ ば、バレてた…
  445. まばゆの母: ふふふ
  446. まばゆの母: 未来を視ることは、あなたの ためになるとは限らないのよ
  447. まばゆの母: だからちゃんと テスト勉強は続けないとね
  448. まばゆ: はーい、わかりました
  449. まばゆ: (お母さんは、いつも優しくて 私はとっても大好きで…)
  450. まばゆ: (でも…よくわからないけど それとは別の感情もあって)
  451. まばゆ: (お母さんのことを思い出すと 胸がキューッと締め付けられる)
  452. まばゆ: (心臓がバクバクして 頭がフワフワ真っ白になる)
  453. まばゆ: (なんで?どうして?)
  454. まばゆ: (私、やっぱり何か 忘れてること、あるのかな?)
  455. 咲笑: お帰りなさい、まばゆちゃん
  456. まばゆ: ただいまです、咲笑さん
  457. 咲笑: 今日は帰り、遅かったわね どこかお出かけ?
  458. まばゆ: まあ、そんなところです
  459. 咲笑: そう…ご飯、作ってあるから 温めて食べてちょうだいね
  460. まばゆ: はい、ありがとうございます
  461. 咲笑: ええと…
  462. まばゆ: 咲笑さん
  463. 咲笑: あ、なあに?
  464. まばゆ: いつも、ご心配おかけして スミマセン…
  465. まばゆ: でも、私は大丈夫なんで
  466. 咲笑: ええ…わかってるわ
  467. まばゆ: (ごまかしちゃって ごめんなさい、咲笑さん)
  468. まばゆ: (いつも優しくしてくれて すごく感謝しているんですが…)
  469. まばゆ: (私にとって お母さんは特別で…)
  470. まばゆ: (私ひとりで、ちゃんと 向き合いたいんです)
  471.  
  472. FILENAME: text_320093-1.txt
  473. 「本日午前7時、突発的異常気象に 伴い避難指示が発令されました」
  474. 「付近にお住まいの皆さまは」
  475. 「速やかに最寄りの避難場所への 移動をお願いします」
  476. まばゆ: うへぇ…昨日までの天気予報じゃ 全然大丈夫だったのに…
  477. まばゆ: 異常気象ってヤツですね
  478. 咲笑の声: まばゆちゃーん 避難所、準備お願いねー
  479. まばゆ: わかりましたー
  480. まばゆ: (表面上は、今までと同じ 仲良く暮らしているけれど…)
  481. まばゆ: (私と咲笑さんの関係は 相変わらずどこかぎこちない)
  482. まばゆ: (嫌ったり、疎んじたりしている わけじゃなくて…)
  483. まばゆ: (むしろお互いに尊重して 気を遣っている感じ)
  484. まばゆ: (だからかえって、問題が こんがらがっているのかも…)
  485. 咲笑: まばゆちゃん、そろそろ行くわよ
  486. まばゆ: はーい
  487. おばあちゃん、良かったら この座布団使って下さいね
  488. ママー!どこー?
  489. 気分が悪くなった方は、すぐに 係の人にご連絡下さーい
  490. 咲笑: あらら、ずいぶん賑やかね
  491. まばゆ: 大ごとですね…これ以上 何もないといいのですけれど…
  492. 咲笑: まばゆちゃん、私、ちょっと お手伝いに行ってくるわね
  493. 咲笑: ひとりでも大丈夫?
  494. まばゆ: あ、はい 映画も持って来ましたし
  495. まばゆ: いつもボッチなんで 時間を潰すのは得意です!
  496. 咲笑: そ、そう… それじゃ、また後でね
  497. まばゆ: はーい
  498. まばゆ: (さて…と)
  499. まばゆ: (やることもないですし 早速映画でも観ますかね)
  500. まばゆ: (こんなこともあろうかと まとめて借りてて良かったー)
  501. まばゆ: (さて、それじゃあ何から 観始めますかね…)
  502. まばゆ: (尾道舞台の名作タイムトラベル 映画にしましょうか?)
  503. うぎゃああああああああんっ!!
  504. まばゆ: (あるいは、先に同原作の アニメ版を先に観ちゃう手も…)
  505. やだやだやだやだあああああ!! うちに帰るうううううううう!!
  506. こらっ!静かにしなさい!
  507. ここつまんない! つまんないいいいいいいいいい!!
  508. 駄々こねるんじゃない! ほら、皆うるさがってるんだぞ!
  509. 知らなーい!!帰るんだもーん!! お母さんのところに行くのーッ!!
  510. まばゆ: あ、あの…
  511. まばゆ: もし良かったら これ、使いますか?
  512. へ…?なに、この丸いの?
  513. まばゆ: ポチッと再生!
  514. わわっ、これ、アニメ?
  515. まばゆ: ポータブルビデオプレイヤーです
  516. まばゆ: これさえあれば、いつでも どこでも映画の世界にダイブ!
  517. まばゆ: つまんない日常とも オサラバですよ
  518. お姉ちゃん、これ、貸して!
  519. まばゆ: はい、どうぞどうぞ
  520. すみません…うちの息子が ご迷惑をかけて…
  521. まばゆ: い、いえいえ! 迷惑だなんてそんな
  522. まばゆ: 困ったときはお互い様ですし…
  523. いや、でも本当に助かりました 言いだしたら聞かないもんで…
  524. 本当に、隣町の病院まで つれて行かなきゃならないかと…
  525. まばゆ: 隣町の病院?
  526. はい、つい先日から 妻が盲腸で入院してて…
  527. 避難指示が出て、大きな病院に 転院できたのは良かったんですが…
  528. まばゆ: 病院…
  529. まばゆの母: 近づかないでって 言ったでしょう、まばゆ!
  530. まばゆの母: あなたの顔が、見たくないの…
  531. まばゆ: あっ…
  532. まばゆ: お、お母さん… そんな、そんなのって…
  533. あの…どうかしましたか?
  534. まばゆ: い、いえ…なんでもないです なんでも!
  535. まばゆ: それ、お貸ししますんで 楽しんで下さいね!
  536. はい、助かります
  537. まばゆ: …………ふぅ
  538. まばゆ: (さっきのは…何?)
  539. まばゆ: (お母さんが、私に向かって 怒鳴って、別人みたいで…)
  540. まばゆ: (あれは…夢?)
  541. まばゆ: (ううん、違う…)
  542. まばゆ: (あの場所は、お母さんが 入院した病院で…)
  543. まばゆ: (私は確かに あの光景を見たことがある)
  544. まばゆ: (でも、何があったの?)
  545. まばゆ: (どうして、忘れていたの?)
  546. まばゆ: (それもやっぱり 忘れた方がいいことなの…!?)
  547. まばゆ: そんなわけ…あ…
  548. まばゆ: (また、時間が止まった…)
  549. まばゆ: …………
  550. まばゆ: っ!!
  551. まばゆ: (私、お母さんとの思い出を 忘れたくなんて、ない…!!)
  552. まばゆ: (もし、それが辛いことでも… それでも、私、どうしても…!)
  553. まばゆ: どうしても 思い出したいッ!!
  554. まばゆ: (嵐が近づく町を走って、時間は しばらく止まったままでした)
  555. まばゆ: (それは、私が今まで経験した中で 一番の長さで…)
  556. まばゆ: (私が病院にたどり着くのを 待っていたみたいでした)
  557.  
  558. FILENAME: text_320093-2.txt
  559. まばゆ: はぁっ…はぁっ…はぁっ…
  560. まばゆ: (今までずっと 思い出せなかったのに…)
  561. まばゆ: (不思議と記憶は鮮明でした)
  562. まばゆ: (お母さんが 入院していた病院…)
  563. まばゆ: (お母さんが 最期の日を過ごした病室…)
  564. まばゆ: (私は、時間の止まった病院の 階段を駆け上がって…)
  565. まばゆ: ここだ…っ!
  566. まばゆ: ここに、私、前に お見舞いに、来て…
  567. まばゆ: それで、お母さんは…
  568. まばゆの母: 近づかないでって 言ったでしょう、まばゆ!
  569. まばゆの母: 私は、死ぬの…運命なのよ それが視えてしまったの
  570. まばゆの母: 私はもう…何も感じたくない
  571. まばゆの母: このまま静かに… 消えていきたいのよ!
  572. まばゆの母: だから…来ないでちょうだい
  573. まばゆ: お母さん、私を信じて
  574. まばゆ: 病気は絶対治るから 絶対に、治るから!
  575. まばゆ: だからまた昔みたいに 元気に占いの仕事をして…
  576. まばゆの母: …………
  577. まばゆ: お母さん?
  578. まばゆの母: …けるな
  579. まばゆ: お母さん?なにを…
  580. まばゆの母: ふざけるなッ!!
  581. まばゆ: えっ…
  582. まばゆの母: そんなこと、無理に決まってる! 私の占いは外れないの!
  583. まばゆの母: 私の運命は定まってしまって もう、変えることはできない!
  584. まばゆの母: もし変えられるなら、そんなの とっくの昔にやっていたわ!
  585. まばゆの母: あなたの顔が、見たくないの…
  586. まばゆの母: もう…私に辛い思いを させないでちょうだい…お願い
  587. まばゆ: …………
  588. まばゆ: ああ…そうだ…
  589. まばゆ: 私…ずっと、忘れてた…
  590. まばゆ: お母さんは、自分が命を 失う未来を、視ちゃったんだ
  591. まばゆ: 自分の未来に怯えて まるで、人が変わったみたいに…
  592. まばゆ: 私のことなんて 忘れてしまったみたいに…
  593. まばゆ: 私は、それが怖くて… 受け止められなくて…
  594. まばゆ: だから、目を逸らしたんだ
  595. まばゆ: あんなに好きだった お母さんのことを…
  596. まばゆ: 心の中から 追い出しちゃったんだ…
  597. まばゆ: あはは…
  598. まばゆ: そりゃ…そうですよね…
  599. まばゆ: そんな、薄情者ですもん
  600. まばゆ: ボッチになっても 当たり前っていうか…
  601. まばゆ: 自業自得ですよ
  602. まばゆ: 私には、誰にも 愛される資格なんて…
  603. 咲笑の声: まばゆちゃんっ!!
  604. まばゆ: え…
  605. 咲笑: まばゆちゃん やっぱりここに居たのね
  606. まばゆ: 咲笑さん…! なんで、ここに…?
  607. 咲笑: ふふふ…まばゆちゃんが 考えてることは、わかるわよ
  608. 咲笑: 様子を見に戻ったら どこにも居なくて…
  609. 咲笑: まばゆちゃんのプレイヤーを 使ってる子が居たから
  610. 咲笑: お父さんに、話を聞いたの
  611. まばゆ: ああ、なるほど…
  612. 咲笑: まばゆちゃん最近、お母さんの ことで悩んでいたでしょう?
  613. 咲笑: もしどこかに行くなら この場所かなって
  614. まばゆ: 咲笑さんは、なんでも お見通しですね
  615. まばゆ: お見舞いに来たときも 咲笑さんと一緒でしたもんね
  616. 咲笑: まばゆちゃん
  617. 咲笑: あの時のお母さんは あなたを嫌ったわけじゃなくて…
  618. まばゆ: ええ、そうです お母さんは、優しい人でした
  619. まばゆ: 変えてしまったのは私です
  620. まばゆ: 私が居なかったら…お母さんは あんなふうにはならなかった
  621. まばゆ: みんな、私のせいなんです
  622.  
  623. FILENAME: text_320093-3.txt
  624. まばゆ: ねえ、お母さん?
  625. まばゆの母: なあに、まばゆ?
  626. まばゆ: お母さんは 未来が視えるんだよね
  627. まばゆの母: ええ、調子がいいときはね
  628. まばゆ: それ、すごいね!
  629. まばゆの母: ええ、これはね 私が神様から授かった力なの
  630. まばゆの母: この力があるおかげで 私は皆の役に立てるのよ
  631. まばゆの母: もし私が、この力を失ったら 困ってしまうかもしれないわね
  632. まばゆ: それじゃあ、未来を変えたら どうなるの?
  633. まばゆの母: ううん、残念だけれど 未来は変わらないの
  634. まばゆ: なんで?
  635. まばゆの母: さあ、どうしてかしらね? 私にもわからないわ
  636. まばゆの母: でもね、どれだけ努力をしても 未来は変わらない…
  637. まばゆの母: もしかしたら運命は、最初から 決まっているのかもね
  638. まばゆ: でもお母さん 占いをしてるんだよね?
  639. まばゆ: 嫌な未来が視えて、変えられ なかったら、どうするの?
  640. まばゆ: そんな未来、知っても 嫌な気持ちになるだけだよね?
  641. まばゆの母: ええ、そうね
  642. まばゆの母: だからそういうときは そっと胸の奥にしまっておくの
  643. まばゆ: 胸の奥に…?
  644. まばゆの母: 伝えるのはいいことだけ お互いにとって、幸せでしょ?
  645. まばゆ: …苦しくないの?
  646. まばゆの母: えっ…?
  647. まばゆ: お母さんの胸の中には、誰にも 言えない不幸が詰まってて…
  648. まばゆ: それって、なんだか苦しそう
  649. まばゆの母: 人の未来を預かるのは、とても 苦しくて、責任のあることだわ
  650. まばゆの母: だから時々は辛くもなる
  651. まばゆの母: でも…私はこの仕事に誇りを 持っているわ
  652. まばゆの母: 未来を視るこの力は 私の人生そのものなの
  653. まばゆ: 人生、そのもの…?
  654. まばゆの母: 心配してくれて、ありがとう
  655. まばゆの母: まばゆみたいな優しい娘がいて 私は幸せだわ
  656. まばゆ: お母さん…
  657. まばゆの母: え…
  658. まばゆの母: 嘘…
  659. まばゆ: …お母さん?
  660. まばゆの母: やめて…
  661. まばゆ: お母さん、どうしたの?
  662. まばゆの母: お願い、来ないで!
  663. まばゆ: え…
  664. まばゆの母: 視えた…
  665. まばゆの母: 視えて、しまったの…!!
  666. まばゆ: あの時…お母さんは 私の未来を視たんです
  667. まばゆ: 私が、お母さんの死を 経験する、未来を
  668. まばゆ: だから、もし、あの時 私がそばにいなければ…
  669. まばゆ: お母さんは、自分の運命を 知ることはなかった
  670. まばゆ: 死に怯えて、あんなに 苦しむ事もなかったんです!
  671. まばゆ: お母さんは、私のせいで…
  672. 咲笑: 違う あなたのせいじゃないわ
  673. まばゆ: そんな気休めは、要らないです
  674. 咲笑: 気休めなんかじゃない
  675. 咲笑: まばゆちゃん、良く聞いて
  676. 咲笑: あなたは、お母さんの 希望だったのよ
  677. まばゆ: …希望?
  678. 咲笑: あなたのお母さんが自分の未来を 視たのは、それが初めてじゃない
  679. 咲笑: それまでにも何度も 自分の未来を視ていたわ
  680. 咲笑: 不意に近くの人の未来が視えて 自分の運命がわかってしまう
  681. 咲笑: それは、避けようのない ことだったのよ
  682. 咲笑: 嬉しいことも視えれば 悲しいことだって視える
  683. 咲笑: 中には、自分の大切な人を失う 未来が、視えることだってあった
  684. まばゆ: あ…それって、もしかして…
  685. まばゆ: お父さんの、未来も?
  686. 咲笑: ええ、そうよ
  687. 咲笑: あなたのお母さんは、必死に 未来を変えようとした
  688. 咲笑: お父さんが巻き込まれる事故を 防ごうとしたのよ、でも…
  689. 咲笑: 変えられなかった
  690. 咲笑: 愛おしい人たちの死を ただ見送ることしかできなかった
  691. 咲笑: それが…彼女が視る未来の 絶対のルールだったから
  692. まばゆ: そんな…
  693. 咲笑: その時、あなたのお母さんは 絶望に沈んだわ
  694. 咲笑: 周囲に当たり散らして 自分の力を呪った
  695. 咲笑: 未来を変えることができないのに 予知に何の意味があるんだって
  696. 咲笑: 愛する人を救えずに 生きている意味なんてないって
  697. 咲笑: そんな、お母さんの苦しみを 救ったのが…
  698. 咲笑: まばゆちゃん あなただったのよ
  699. まばゆ: 私…?
  700. 咲笑: ええ
  701. 咲笑: あなたの居る未来が お母さんの生きる意味だった
  702. 咲笑: あなたの命こそが まばゆい未来の希望だった
  703. 咲笑: だから…
  704. 咲笑: 自分の死で、その希望を 手放すときに、お母さんは…
  705. 咲笑: 我を失ってしまうくらい 辛い思いをすることになったの
  706. 咲笑: あなたが悪いわけじゃない あなたが嫌いだったわけじゃない
  707. 咲笑: むしろ逆で…
  708. 咲笑: あなたが大好きだったから 苦しんだのよ
  709. まばゆ: お母さん…
  710. まばゆ: でも…だったら、やっぱり…
  711. まばゆ: 私がそばにいなければ… 未来を視せたりしなければ…
  712. 咲笑: まばゆちゃんは、そのショックが 大きくて、覚えていないかしら
  713. まばゆ: なにを、ですか?
  714. 咲笑: お医者さんは、化学治療の 副作用と言っていたけれど…
  715. 咲笑: 最期の頃のお母さんは、どうやら 記憶を失っていたみたいなの
  716. まばゆ: あ…
  717. まばゆの母: あら、まばゆ いらっしゃい
  718. まばゆ: お母さん…?
  719. まばゆ: 大丈夫…? 気分は、悪くない?
  720. まばゆの母: 悪くないどころか 曇り空が晴れたみたい
  721. まばゆの母: 心配かけちゃって ゴメンなさいね
  722. まばゆの母: すぐに病気を治して 元気なお母さんに戻るから!
  723. まばゆ: お…お、お…
  724. まばゆ: お母さんっ!!
  725. まばゆの母: ん?なあに?泣いてるの?
  726. まばゆの母: ふふふ、大丈夫よ だってまばゆは、強い子でしょう
  727. まばゆの母: だって、どんな運命にも負けない 私の希望なんだもの
  728. まばゆ: そうだった…
  729. まばゆ: 私、お母さんと 最期に、この部屋で…
  730. 咲笑: まばゆちゃん、聞いて
  731. まばゆ: 咲笑さん…?
  732. 咲笑: 辛いことがあっても 苦しいことがあっても…
  733. 咲笑: あなたを愛する人は あなたのそばに、確かにいるし…
  734. 咲笑: 例え、その人が遠くなっても 記憶から薄れてしまっても…
  735. 咲笑: あなたがここにいることは とても意味のあることなのよ
  736. まばゆ: …うん
  737.  
  738. FILENAME: text_320093-4.txt
  739. まばゆ: 遠くから、音が…
  740. 咲笑: 町の中心部は危ないみたいね
  741. 咲笑: 今日はこのまま、ここに 避難させてもらいましょう
  742. まばゆ: はい、それがいいと思います
  743. 咲笑: それじゃ、私はボランティアの お手伝いに行ってくるから
  744. 咲笑: 今度は、ひとりでどこかに 行ったりしないでよ
  745. まばゆ: はーい
  746. まばゆ: 咲笑さんも、あんまり 無理しないでくださいね
  747. 咲笑: はいはい、わかってます
  748. まばゆ: (といっても、ちょっとは 無理しちゃうんだろうなあ)
  749. まばゆ: (私を探しに、当てもなく 嵐の中に飛び出すくらいだし)
  750. まばゆ: (今度は私が、咲笑さんを 助けてあげなきゃ!)
  751. まばゆ: (もうこれ以上、心配なんて かけられないですからね!)
  752. まばゆ: あ、また時間が…
  753. まばゆ: (全く、なんなんですかね 私のこの力…)
  754. まばゆ: (やっぱり、お母さんの占いと 何か関係があるんでしょうか?)
  755. まばゆ: (私、まだまだ何かを 忘れてしまっていて…)
  756. まばゆ: …………
  757. まばゆ: (でも、まあ…)
  758. まばゆ: (それも、悪くはないのかも しれませんね)
  759. まばゆ: (お母さんが、笑顔で最期を 迎えられたのも…)
  760. まばゆ: (優しい忘却があったからで…)
  761. まばゆ: きっと、意味がある
  762. まばゆ: えっ!?
  763. まばゆ: (急に、空が晴れた?)
  764. まばゆ: (なんだろう あの眩しい光は…?)
  765. まばゆ: (不思議と心が温かくなって…)
  766. まばゆ: なんだか、不思議と 笑顔になっちゃいますね…
  767. まばゆ: にひひひひ
Add Comment
Please, Sign In to add comment