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- このSSは『鬼畜王ランス』がベースとなっていますがやってなくても多分わかります。
- 途中現れるリンクに応じてくだらない注釈が出てくるので良ければ参照されてください。
- 「一体何の集まりなのかしら・・・・」
- 正直それがホーネットの感想だった
- 地下へと続くこの階段。
- もう随分と下りているように思う
- (リーザス城の地下にこのような施設があったなんて・・・)
- やっと目的地へとたどり着いたようだ。
- 薄暗いランプが灯された脇に小さな扉があった。
- その横に侍女と思しき人物が控えていた。
- ホーネットはその侍女には面識がある。
- マリス・アマリリス。
- リーザスの重要職、いわば宰相、とも言える人物だった。
- 「お待ちしておりました、さあどうぞ中へお入りください」
- そう言われてはいそうですか、とすんなりと承諾したくはなかった。
- だが、もちろんここまできて拒む事が出来ない。
- そのような一瞬の心中の葛藤を微塵も顔に出さず結局ホーネットはその指示に従った。
- 中に入るとそこはとても地下室とは思えないような空間が広がっていた
- おそらく魔法を使った仕掛けなのだろう。
- 自然光が入らない割にはいやみにならない程度に天井ではシャンデリアが輝いている。
- 自分以外の招待客はもう既に集まっていたのかホーネットのあとにマリスも続いてきた。
- 室内を見渡すと先客たちは立食パーティのようなテーブルを数人ずつで囲み談笑している。
- 所在なさげに室内を見渡すとひとつのテーブルにサテラの姿を見つけたのでそこにいそいそと移動した。
- なにやら皆の視線を集めていたようなので居心地も少々悪かったというのもある。
- 「あ、ホーネット」
- サテラもこちらに気づいたらしい。
- 「良かったサテラがいてくれて。実は心細かったんです・・・」
- そういうとちょうど近くへきた侍女の差し出すグラスを受け取り一息つく。
- サテラはワインレッドの胸元が大きく開いたドレスを着込んでおり髪の毛も結い上げ、黒のリボンでまとめられていた。
- ちょっとした正装だ。
- (いつの間に作ったのかしら?)
- かく言ううホーネットもこういうことのためではなかったが、スペアミントのドレスに身を包んでいる。
- 肘を越える手袋を着用していたがむき出しになった肩が多少心細い。
- とは言え両人とも国家主席と駐在大使のようなものでこのような公式?の場に際するに当たってそのような服装も必要であると言えば必要でありそれで用立てしたのだろう。
- 「ねえサテラ、これって一体何の集まりなんですか?招待状には開場の時間とそれなりの格好を、としか書かれてありませんでしたし・・・」
- サテラに耳打ちする。
- 「サテラも詳しくは・・・・でもなんだかランスについて語る、という趣旨らしいですよ」
- 「・・・・え?」
- ランスという名にホーネットは頬を染めた。
- 実際に招待状にはランスの名前は書かれていなかった。
- だがマリスにそれとなくランスのことに関して、と示唆されていたため参加する気になったのも事実なのだ。
- (ランス様に関して・・・・)
- その様子をサテラはむ~と少々不満げに頬を膨らませたが当のホーネットは気づかなかった。
- だがサテラもその後ろで皆がニヤリ、と微笑んだことには気づかなかった。
- いまさら100万ヒット記念+6周年とかいろいろ
- そうこう言っている内にマリスが司会者席で開会の挨拶を始めようとしていたので皆そちらを注目する。
- 「ではまだ時間ではありませんが始めてもよろしいでしょうか?皆さんお集まりのようですし」
- 特に不満の声は上がらない。
- 始めても構わない、ということだろう。
- マリス自身の表情は口調に反して少しばかり仏頂面である。
- あまり乗り気ではないとでも言うのかしら?
- そうホーネットは首を傾げたが自分自身あまり会の趣旨が判っていない為深く考えないことにした。
- 始まってみれば判るだろう、と。
- 侍女たちが皆にグラスを配って回る。
- どうやら最初は乾杯があるらしい。
- しばらくしてからマリスの声が聞こえてくる。
- 「いきわたりましたでしょうか?・・・・・コホン、ではみなさんの奮闘を応援いたします。乾杯」
- 実に感情の篭らないいわゆる乾杯の音頭に合わせてテーブルのあちこちでグラスがチンと合わせられる。
- ホーネットも同じテーブルのサテラ、そして同席していた少女と乾杯を交わし口に付けた。
- 「では早速ではございますが始めましょう。例のものを。」
- 司会進行はそのままマリスが行うようだ。
- 予め打ち合わせてあったのだろう、横の侍女にそう伝えるとなにやら大きめの箱を持ってきた。
- マリスはその箱のふたに開けられた穴に手を突っ込むと数度かき混ぜ手を抜いた。
- その手にはカラーボールが握られておりなにやら文字が書いてあるようだ。
- (何が始まると言うの・・・?)
- そんな不安顔のホーネットをよそに会場内ではぐびり、と固唾を飲んでボールに注視しているようだ。
- 「一番手はハウレーン将軍、お願いします」
- 会場内は残念とも安堵、どちらとも取れるどよめきが一瞬沸き起こった。
- マリスに紹介されたハウレーンが壇上へと上がる
- ランス様の陰口の叩きあいなのかしら?だとしたらいやだな・・・・
- 本人がいないところで陰口を叩くだなんて・・・・
- そうホーネットが顔を曇らせる。
- (リア王妃が見当たらないのは・・・そうよね、仮にも・・・ええ、仮にも夫の悪口大会には呼ばれは・・・)
- 壇上に立ったハウレーンがマイクの前で少しばかり逡巡していたが意を決したように口を開く。
- 「・・・・私は陛下が王位におつきになる際の演説に反旗を翻し・・・敗北し捕らえられました。
- しかし王はそのような私を寛大にもお許しになられ・・・・
- その直後に嫌がる私を・・・私は何度も強引にランス王の肉欲の餌食に・・・・・それはもう初めてのときから一貫して・・・あまつさえSMまで仕込まれてしまい・・・・」
- マイクの前でどんどん真っ赤になっていくハウレーン。
- 「!?」
- ホーネットはぼっと顔を真っ赤に火照らせた。
- よもやこういう話が出るとは思っていなかったためである。
- 性に疎いとは言え彼女が何を喋りだしているかはわかった。
- ランスとの・・・その、夜の秘め事についての暴露話だ。
- リアが呼ばれないわけだ。
- どうやらこれはお惚気大会に様相を呈して・・・いやいや、そう断じてしまうのは気が早いのかもしれない。
- もうしばらく様子を・・・
- だが場はホーネットのそのような衝撃をものともしていなかったようだ。
- それどころか一斉に野次が飛びだした。
- 「子供まで作っといてなんだー」
- 「うそつけー気持ち良さそうに舐められてたじゃないかー」
- 「くっ」
- 恥ずかしそうに歯噛みするハウレーン。
- だが当たっているだけに言い返せない。
- 結局すごすごと壇を降りてしまった。
- こ、これが今回の趣旨・・・・?
- ホーネットがほうけてしまうのも無理はない。
- だが会はそのような事などものともせず進もうとする。
- 「はい、一番手にしてはややパンチが弱かったですが将軍お疲れ様でした。では次は・・・・はい、メルフェイス将軍、お願いします。」
- またもや箱の中に手を突っ込んでくじを引いたマリスが宣言する。
- ホーネットはマリスのあまり気乗りして無さそうな顔の理由がようやくわかった気がした。
- 彼女からすれば馬鹿らしくてなんでこの私が司会なんぞを、とでも思っているのだろう。
- どおりでマリスは開始前からを胃腸薬やら苦そうなものを口いっぱいに頬張ったような微妙な顔をしていたのだろう。
- そして促されて次に壇上に上がったのはメルフェイス・プロムナード。
- 腰まで流れる金髪をふわりとなびかせ一瞬ホーネットに目をやる。
- ふふん、と唇の端ををゆがめたようにも見えた。
- 「?」
- その視線の意味がわからないがとりあえず彼女のスピーチを聞くことにする。
- コホン、と咳払いをひとつ。
- 「あれは忘れもしません、9年前の12月。鬼畜王発売日、新キャラ目一杯だった中においてユーザーを虜にしたのはまず私・・・」
- とそこまでしゃべりかけて一気に会場はヒートアップする。
- 「そんなこと聞いてないぞー」
- 「というかもうゲームネタに走るのかー」
- どうやら今回のオーディエンスはかなり手厳しいらしい。
- メルフェイスもそうこだわってなかったのかそれならば、と別のことを言うことにする。
- 「わかりました。え~と、では私と王様の馴れ初めは・・・」
- 「Boo!Boo!」
- オーディエンスは馴れ初め、という言葉が気に入らないらしい。
- だがまるでそのブーイングが聞こえないかのようにメルフェイスは続ける。
- 「・・・・・私たちが初めて出会ったのは・・・・そう、忘れもしません。幾人ものケダモノに襲われていた私。颯爽と助けに来てくださった王様はあの状況に臆することなく優しくぎゅっと私を抱きしめてくださり・・・優しくキスをくださいました。敵味方だったという逆に萌えるシチュエーションも手伝い私たちはしっぽりと愛の確認を・・・」
- 悦に入り、はう、と艶っぽいため息すら漏らすメルフェイス。
- 勿論そこでも入るブーイング。
- 「勝手に記憶を美化するなー!」
- 「美少女ゲームで非処女はまずヒロインにはなれないぞー」
- 「ランスとエッチくらいここにいる連中みんなだぞー」
- 外野の声に一瞬詰まるも敢えて気にしないようにふふん、と髪を一房かき上げる。
- 「知りません、そのようなこと。最近メルフェイス熱は各地で再燃しています。大人の魅力に加え淫乱な時と清楚な時のギャップ爆発で王様もイチコロですよ・・・うふふ」
- 彼女の言うようにこれまでのキャラの中でも抜群のスタイルを誇るメルフェイス。
- お見せできないのが残念だが今も色気むんむんの格好を出し惜しみしない。
- 自信溢れる彼女だがあくまで清楚にそしてなおかつカメラ目線で微笑みかける。
- 「・・・・・・・そりゃ必死ですよね、あれから8年も経てばお姉さま方は30台に突入していらっしゃいますもの・・・・(ぼそっ)」
- 「!?誰ですか今言ったのはっ!」
- 気色ばむメルフェイス。
- その般若にでも変化したかのような表情はとてもランスには見せられない姿だろう。
- だがもちろん見渡したところで今日の雰囲気では誰が口にしてもおかしくない。
- 見つけられるはずもなかった。
- というか皆が皆疑わしかったりする。
- ぎろっとにらむ視線が一人の少女を掠める。
- 「ひんっ」
- そう、その視線が掠めたのが誰なのかこれだけでもうお分かりかもしれない。
- 「ああ、はいはい、メルフェイス将軍も抑えてください。しかしまあ模範とは言えなくともこれぐらい心強いスピーチが望まれてるようです・・・ねえアールコート副将」
- それはある意味無言の指名である。
- 早くも3人目でくじは無視され、次の発言権を(否応なく)獲得したのはアールコートだった。
- おそるおそるアールコートは壇上へと上がる。
- だがさっそく皆の視線を受けるとそのプレッシャーに貧血を起こそうとする。
- やはりか弱い彼女にはこのような舞台に立つことは無理だったのか。
- 無論外野はそのような軟弱、惰弱は許さないw
- 「か弱い振りするなーー」
- 「鬼畜王がリメイクされないのは児童ポルノに引っかかりそうなお前が原因だーー」
- ラファリア「バボラの作戦が出来るからっていい気になるなー・・・って、何で私だけ実名表記なのよ!?」
- まあなにはともあれ外野の野次も容赦がない。
- 「そ、そんな、私だけじゃ・・・・・それに理由がそうと決まったわけでも・・・・」
- もちろん彼女の言い分ももっともではある。
- 鬼畜王ランスが発売されてはや9年。
- 世間は当時は無かった規約も増えたり改正されたり、と様々だろう。
- もちろんアールコート以外にもそれらしきキャラクターはいるしなにより開発してるのかどうかも怪しい。
- 「それに先輩だって・・・一応あの作戦は・・・できるじゃないですか・・・」
- 「きーー、その上から見下ろしたような発言がムカつくのよ!」
- いきり立つラファリアだが確かに下手な同情もたちが悪い。
- 本人にその気がないなら尚更である。
- 「そ、それに年齢の事なら・・・・本編6にだって・・・その・・・あの・・・・」
- 言いにくそうにある一点をちらり、と見つめる。
- と、その視線の先にはホーネットと同じテーブルの少女がいたのだが・・・
- 「私は関係ないでしょ!さっさと済ませてください、後がつかえてるんだから」
- と一蹴されてしまった。
- 仕方なくアールコートはか細い声であの、その、と前置きしつつ喋りだした。
- 「あ、あの、わたし女子士官学校に入学して・・・ラファリア先輩に卒業試験で・・・完膚なきまでのこれ以上無い逆転勝利をしてしまって・・・」
- ラファリア「その辺りはすっ飛ばしなさい!・・・って、だから何でまた私は実名なのよ!」
- 「ひん、は、はい・・・緑軍に入隊した私ですが一軍を率いるだなんて自信が待てずにいたんです。・・・でも」
- 怯えの混ざっていたアールコートの目の色が徐々に変化してくる。
- 「でも・・・・そんな私を王様は優しく励ましてくれて・・・」
- 当時のことを思い出し始めたのか徐々にほほが紅潮してくるアールコート。
- 彼女も彼女でこのつわものどもに囲まれて相当に鍛えられたらしい。
- 「初めてのときは怖かったですけど・・・・すごく怖かったですけど・・・・ああ、王様、あれが白い人になるって言う本当の意味だったんですね、それはもういっぱい王様に飲まされて・・・・かけられて・・・・ああ、私王様・・・ランス様・・・・私もっと白くなりたいです・・・・」
- いやんいやん、と髪をフルフルと可愛く身悶えるがその口から漏れるのはやはり危ない。
- 「上から下から・・・ああ、はい王様、私王様が好きだから出来ます・・・」
- もはやどこかに行ってしまったアールコート。
- そのおぼつかない視線の先にはランスがいるのだろうか?
- 周囲の雑音など聞こえていないようだった。
- もう一度確認しておくが彼女の年齢はイワユルお察しください、である。
- 「ええと、このままでは進みそうにないのでアールコート将軍のスピーチはここまでにして次の方にいきましょう・・・
- さすがマリス・アマリリス。
- 指をぱちんと鳴らさずともスタッフがとうじょうしどこかいっちゃったアールコートを迅速に運び出していく。
- 司会進行によどみはない。
- 「えーと、ではどうやら次も女子士官学校つながりですね・・・アビァトールさんお願いします」
- なんでかエントリーされているのはラファリアでは無さそうだ。
- 後ろでなんで私じゃないのよ!と暴れるラファリアはおいといてアビァトールは困惑の表情を隠せないでいた。
- 「わ、わたしですか?」
- 困惑するアビァトールだがここの列席してる以上拒否権は無いだろう。
- 「ええ、あなたのようです」
- 無情にもそう答えるマリスの手の中にはアビァトール・スカットと書かれたボールが握られていた。
- 友人として同情もしたいがこの場に居合わせた以上予想できない事も無いはずでありあっさりと壇上に上げられてしまう。
- 「えー、私は・・・」
- ただ生徒たちの引率のつもりだったのに・・・
- 髪の色に合わせた様なオレンジを基調とした地味目のドレスを気にしながらもマイクの前に立つ。
- だが観衆はヒートアップする。
- と言うか異様に盛り上がる。
- 「よ、最年長!」
- 「人妻~」
- 「おまけにバツイチ~」
- 「しかも女教師か!よっ、このマニア殺し!あと足りないのは巨乳とめがねだけってか?」
- 次々に飛んでくる合いの手。
- もはや誰が飛ばしてるのかも判らない有様だが良くぞ集まった我が精鋭たちと言いたくなるチームワークである。
- それの多くがその実当てはまってるからだろうか、どんどんしゅん、と縮こまっていくアビァトール。
- 「歳は・・・しかしそもそも私はレイラと・・・おまけにジュリアまでいなくならないと軍に復帰は・・・なにもそこまで」
- もっともな反論だが今日のオーディエンスは許すはずも無い。
- 勝手に壇上に上げられながら何を言う事も出来ずしょんぼりと下がってしまった。
- ちなみのこれを口実に後日ランスに慰めてもらうと言う技を披露し周囲を歯噛みさせたことをここに付け加えておく。
- 「まあ彼女の場合公式のイベント数からしてトーンダウンは否めませんがここらで起死回生のスピーチが欲しいものですね。・・・えーと、次は・・・あら」
- スムースな進行を見せていたマリスが次にボールを取り出そうとしてステージを見るともう誰かが演壇に上がろうとしていた。
- 「こほん・・・続きましては・・・」
- もう既にマイクの前に誰かたっている。
- だがかなり身長が足りないのか必死にマイクスタンドを下げようとしている。
- 殺伐とした空気が緩和されるかのごとく会場からもきゃー、だの、可愛いーだの、と黄色い声が飛ぶ。
- 見かねたマリスが壇上に上がりマイクの高さを調節してあげた。
- 「ありがと、おばちゃん」
- にぱっと花開いたような笑顔と無邪気な言葉だったが周囲を凍りつかせるには必要十分なセリフだったようだ。
- おまけにそのセリフはしっかりとマイクに拾われ会場中に響いてしまっていた。
- 誰もが聴いてはいなかったかのようにすっとぼけ視線を合わせようとはしない。
- 「ほ、ほほ、いいんですよ、リセット・・・様・・・うふふ・・・」
- 「ひぃっ」
- 「だ、大丈夫ですか?」
- だがその時のマリスの表情を不運にも正面で見てしまったアールコートはあまりの恐怖に気絶してしまった。
- 倒れそうになるのを危うく隣にいたホーネットに支えられる。
- (・・・これほどの緊張感・・・・私には感じ取れない何かがこの場にはあるのかしら・・・)
- 幸いにして?マリスの表情を見なかったホーネットはこれまたとんちきな感想を抱いてしまう。
- 先ほどのおばちゃん発言をあっさりとスルーしてる辺りのほほんとしてるのか切れ者なのかやはり定かじゃない。
- とか考えてる間にもステージではリセットのスピーチが始まったようである。
- 「あのね、パーパはねリセットをお嫁さんにしてくれるって約束してくれたの」
- 小さなカラーの女の子が可愛いドレスを着てとつとつと大好きなランスへの想いを述べる様はこの荒廃とした場を一時ほんわかとさせるには十分だった。
- 「だからね、リセットはパーパが大好きなの。おしまい。くふふ~」
- リセットは言い終わるとぺこり、とお辞儀した。
- 恐縮して同様に緑を基調としたドレスを着たパステルが壇上に上がりリセットの手を引いて退場しようとする。
- 「だめですよ、リセット。勝手にこのような場に出ては。」
- 「だってみんなパーパのこと好きなんだもん。リセットパーパとられちゃうきがして・・・」
- 「ご安心なさい、ランスの子供でまず間違いなく生まれるのはリセットだけですから。もちろん産むのもママだけよ」
- 天然なのか見事な捨て台詞に会場はヒートアップする。
- そういうことなら、とハウレーンやらかなみが騒ぎ出すが却下される前に激しいブーイングにかき消されてしまう。
- 「Booooooooo!!」
- しかしそうした中でも一際激昂した者がいた。
- 「ら、ランス王の御子を産むのは何もあなただけではありません!そういうことであれば不肖このわたし!山本五十六もお忘れにならないで頂きたい!」
- そう、だれあろう、山本五十六である。
- 出産と聞いては黙ってはいられなかったようである。
- 彼女も正装なのだろう気合の入った着物に身を包んでいる。
- 「殿方がおなごに子を産ませる・・・かなりの決意が必要でしょう。ランス王は私に子を産ませたい、と仰ってくれました。これぞまさに偽りのない澄み切った愛の証です。そのような愛し合う若い2人の間に愛の結晶、子供が生まれることは至極当然であり・・・」
- その着物姿は実に清楚なものだったがそのマイクパフォーマンスたるや会場を更にヒートアップさせる事間違いなしのセリフを十二分に含んでいた。
- 「いきなり捏造するなー!」
- 「交換条件で取引したくせにー」
- 「計算高いぞーこの悪女伝説ーー」
- いきなりの突っ込みにひるむことなく、しかも五十六は敢えてそちらに向きスピーチを続ける。
- さすが弓使い、人差し指で正確にそちらをびしぃっと指し示す。
- この辺りはさすがに女人禁制の中、戦場に身を置いていただけはある迫力だ。
- プロレスラーもかくやというパフォーマンスに場内は一層盛り上がる。
- 「愛されてるのでなければ男の子が生まれるようなご配慮はされません。約束を守ろうとされるからこそ・・・いえ、約束を超越した真の愛情があるからこそあのような格好でかように激しく・・・そう、私たちは激しく愛し合ったのですから・・・・」
- これまた鍛えられた結果なのか、それとも天然でそうなのか、ハーレムでの日々を思い出しているようだ。
- 「ああ、懐妊・・・」
- どこかいってしまった彼女の耳にはもはやうんこだの山本山だのと言う罵声は届かない。
- 届くのは二十一というう命名のエピソードのみである。
- 「あ、あの、それならわたしはエンディングに絡んで『幸福、ランス再び冒険へ』が・・・」
- 「存じております、ですがファン投票(公式)の結果が如実に真実を物語っております。鬼畜王ランス、真のヒロインは私であった、と」
- EDということでようやくおずおずと、だが発言したシィルには五十六はひときわ目を見据えて切り返した。
- 無論多くのランスSSの作者はシィルにはことのほか厳しい。
- 「あ、あのエンディング関係なら私も・・・その・・・」
- シィルに気兼ねしてかマリアも今まで沈黙を守っていたがエンディング関係の話が出てついポロリと口に出てしまう。
- 「日陰の女は黙ってろー。」
- 「あんたは草葉の陰からひっそりとランスを見てなさーい」
- 「このぶちょ権限のくせにーー」
- だがもちろんギャラリーの野次は容赦ない。
- 「ひ、ひどーい、私これでもカスタム4人衆だし本編でだって準レギュラーなのに・・・」
- そこまで言われては黙っていられない、とマリアも頬を膨らませてしまう。
- 「や、やめて、マリア、私を巻き込むような不穏なカテゴライズの発言をするのは・・・」
- 取り皿をテーブルに置いてまでマリアの袖を必死で引っ張るラン。
- 余程いやなのだろう。
- 彼女だけは今後もエンディングなどでちらりとしか登場はしないのかもしれない。
- 「そうよ、あのバカに付き合うのはあんただけで十分よ。ついでに私も巻き込むのはやめてよね。」
- と、こちらは確かに興味無さそうな魔想志津香。
- 一応正装と言うことでそれっぽいドレスに身を包んではいたがやる気のなさは隠せない。
- そもそも協調性に乏しい女性なのでそのあたりを気にした様子もない。
- いまも取り皿に自分が好きな料理を少量ずつ取ってはフォークで口に運んでいた。
- ・・・のだったが、
- 喧騒がぴたりと止む。
- 「・・・・・ん?」
- ミートローフを口の中に収めたままの志津香が異様な雰囲気に周囲を見渡す。
- そこらじゅうの視線が自分に向いてることに気付き、さすがに数歩後ずさる。
- 「な、なによ・・・わ、私はあの緑馬鹿なんて・・・・い、いらないわよ」
- たじたじとなりながらもそれだけを口にする志津香だがもちろん周囲は非難GOGOだ。
- 「やる気のない者はここからでてお行きになれば?」
- 「なんですって!?」
- 志津香もさすがに売り言葉には鋭い反応を見せる。
- そしてその声がした先にいたのはマジック・ザ・ガンジー。
- 同じ魔法使い、と言うこともあるのだろうか、それとも魔法使いは協調性がないのだろうか?
- この2人もとかく仲があまりよろしくない。
- マジックはお下げをひと房かき上げると壇上へとあがりマイクの前に立った。
- 「やる気のないものまで相手にする必要ってありますか?みなさん」
- まず最初がこれである。
- オーディエンスはやや気勢をそがれたがつい頷いてしまう。
- 確かに志津香は最大級のライバルではあるが競争に加わらないと言う事であればそれに越したことはないのだ。
- だが。
- 「それに・・・どうせ勝つのは私に決まってるんですから。」
- 丁寧ではあるがその挑戦的な一言に再び会場は熱くなる。
- 「ちょっとステータスが高いからって良い気になるなー」
- 「そうだ、この児童ポルノ2号ーー」
- 「もっと壊滅的なキャラデザ変更受けて来いーーー」
- 再び壇上に殺到する罵声。
- もちろんそれを発するのはこの国中でもっとも美女ばかりを集めていたはずのハーレムの方々がメインであることは言うまでもない。
- 「最新作でもヒロインはほぼ私でした。この鬼畜王の設定がどこまで食い込めるか微妙になって来た昨今、ゼスと言う1国をバックボーンに持つ私の有意は揺るぎません。いいえ、鬼畜王ベースであってもゼスを復興させる、と言う夢をランスとともに成し遂げていく隠しマジックルートが鬼畜王2では企画されるに決まってます。」
- そしてそこらじゅうにいるであろう女性たちにとどめの一言を発する。
- 「まあ本編に再登場する事すら危うい方々は必死になられるのは判りますけどね。」
- と。
- ステージ上ではなく立食パーティの様を呈したテーブルの周囲での舌戦に収拾がつかなくなる一同。
- だがそれらを横目に一人の少女が壇上に上がる。
- 「さっきのエンディング関係とかいう話だがそういうことならサテラだって黙ってられないな。」
- ステージ上でふんぞり返るサテラ。
- 最近忘れられがちだが魔人である彼女は人間など相変わらず虫けらのごとくしか思っていない。
- 約一名、ランスを除いては。
- 「なんたってサテラは3の真のヒロインと言っても過言じゃないからな。
- 確かにその他の女どもはどこの馬の骨ともつかない有象無象の集まりだったがそれでもサテラが群を抜いていた事は間違いない。
- その証拠に他の魔人は全員殺されたがサテラはランスに助けられている。
- その時の人気が高じて鬼畜王でもランスはサテラにべったりだ。皆がこぞって『よかったね、サテラ』なるエンディングを迎えるのも無理はない。」
- ふふん、と周囲を見渡す。
- あのエンディングはさも満足だったのか恍惚とした表情である。
- 「麻痺してたくせにイキまくる敏感魔人めー」
- 「ふんっ、ランスはアイゼルに嫉妬して殺したのよ」
- 「あれだけ殺すとか言ってたくせに掌返しやがってー」
- 「つかなんだ!そのエンディングタイトルの捏造はー」
- だがしかし暗黙の無礼講状態の今夜の集まり、
- オーディエンスの野次は相手が魔人といえども怯む事はない。
- 一部すごく個人を特定できそうな発言があったのだが今夜ばかりは気にしてはいけない。
- 「なんだと!?人間の癖にサテラを侮辱するのか!た、確かに毎晩1回だけだがその分一回の愛の込め方が違うぞ!」」
- もちろんそういうつもりではなく今夜は無礼講でもある。
- こ、こんなに皆さんランス様と?
- おまけにサテラもなんてことを・・・
- 盛り上がる会場を他所に驚愕の表情を浮かべるホーネット。
- がーーん、と顔に縦線まで入ってしまっている。
- 「ちゃっちゃと次に行きましょう。え~あ、ホーネットさんですね。ではお願いします。」
- 「ええっ、わ、私ですか?」
- ついに順番が回ってくるもこの面々の前で何を言えるというのか・・・
- 周囲の視線が全身を貫くように痛い。
- (勝ち負けなんか考えちゃいけない・・・ランス様と私の愛を真実のみを誠実に語れば・・・きっと皆さん判って下さるに違いない・・・)
- 「そう、誠実さで勝負です」
- ついさっき勝ち負けなど関係ない、と心の中で言ったのではなかったか?
- だがここまで来たら引くに引けない。
- なにより魔王城の代表でもあるのだから、と決意も新たにマイクの前に立った。
- 「以下、赤裸々な発表が円円続く」
- あまりのないようにドン引きする会場。
- 引かないのはなぜかそこにいたカミーラ。
- 「ふっ、やけに猫かぶりだな、お嬢。お話になってる淫乱な口上とは似ても似つかん」
- 「カミーラ!?なぜあなたがここに!!」
- 「フ、知らなかったのか?あの坊やには私も度々招待を受けている。」
- 冷静なホーネットだがカミーラには対抗心を露わにする。
- やはりこの2人、どうとも引けぬ因縁でもあるのだろうか?
- 方や魔王のお嬢様、方やドラゴンのお姫様
- その血統書タルや伊達ではない。
- 魔人のトップを争うような戦闘力の持ち主2人の戦いが開始されるともう会場はちゃめちゃに。
- その喧騒を後目に
- はぁ・・・やはりこうなりましたか。そもそも無理なんですよ、あの面子が素直に自慢話大会を開くだなんて・・・
- (リア様を参加させなくて良かった・・・)
- もっともな意見とため息を残し扉を閉じ退室するマリス
- そんな彼女の背後ではとてもランスには聞かせられない罵詈雑言の砲弾が飛び交っている。
- いずれそれが実弾となり、皿を経て魔法攻撃の応酬になるのも時間の問題だろう。
- なにせ無駄に高位な者たちばかりなのだから。
- まあ黙ってやられるような方々でもないでしょう。
- そう無責任な結論を出すとマリスはすたすたと階段を上っていくのだった。
- 一方同じ頃リーザス城内。
- 「まったく、なんで今夜に限って誰もいやがらねえんだ。メイドのウェンディやすずめちゃんも見当たらないじゃないか」
- ハーレム中の女性たちがいないため一人寝を余儀なくされたランスはぶつくさ言いながら布団にもぐりこんだ。
- ちなみにメイドの2人は会場の準備片付け、各種雑多なサービスのため忙しく動き回っていた。
- 「ふん、しょうがない。今日は女にサービスしない日だ・・・しくしく・・・・」
- こうしてリーザスの夜はまた更けていくのであった。
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