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- [From the opening sequence in 520010-0]
- 彼女の望みは いつもただひとつ...
- それは
- 「普通」に生きること
- [Pic of her] ← 31歳
- [Title card] 「普通」でありたい伊並満
- FILENAME: text_520010-1_ABe8j.txt
- 結菜: アオ、不戦勝が嫌って言うなら、 戦う条件を与えるわぁ
- アオ: いいよ、聞いてあげる
- 結菜: 生まれた時からやりなおして、 私たちと一緒に過ごしましょぅ
- 結菜: それでもまだ、私たちと戦って 天辺に行きたいって言うなら
- 結菜: 私たちは止めはしないから、 試してみないかしらぁ
- アオ: …………
- アオ: …いいよ、やってみる じゃないと自殺する気でしょ?
- 結菜: えぇ
- アオ: その代わり約束は守ってよね
- 結菜: もちろんよぉ
- 結菜: もしもあなたの気持ちが 変わらないなら
- 結菜: 最後に遊んであげるわぁ…
- アオ: じゃあ、3人とも わたしのそばに近づいてきて
- アオ: 「これから、わたし自身の過去を さかのぼっていくから…」
- 結菜: そして時は巻き戻り、やがて進み始め…
- アオ: ほっ!
- ひかる: うわっ!?えぐいっす! そのコンボ!
- アオ: もっといくよ~! ほらほら~!
- ひかる: ひえっ!
- 結菜: いつまでゲームしてるのぉ ご飯できてるわよぉ
- アオ: はい勝ち~!
- ひかる: くぅ~…
- アオ: ご飯、ご飯~!
- ひかる: ま、またあとで一勝負!
- アオ: いいよ!
- 結菜: ダメよぉ 宿題がまだなんだからぁ
- アオ: …あ、そうだった…
- 樹里: ただいま~っと
- 結菜: おかえりぃ
- 樹里: 姉さん、わりぃな 夕飯用意してもらって
- 結菜: 仕事、立て込んでいるんだから 仕方ないわよぉ
- 樹里: いや、そっちだって 忙しいのによ…
- 結菜: いいから、食べましょぅ
- アオ: いただきまーす
- ひかる: いただきますっす!
- 樹里: あ、馬! また紛れ込みやがって…
- 結菜: …………
- 結菜: 生まれ直したアオをキモチから守り通す 生活を始めてもう10年…
- 結菜: 彼女が14歳になるまでの戦いだから あと数年無事に過ごせればゴールとなる
- 結菜: これはあくまでかりそめの暮らしだけど 生きていくこと自体はどこまでもリアルで 悩みも苦労も付きまとってくる
- ひかる: いやー、美味しいっす!
- 結菜: …無職のこの子はちょっと特殊だけど…
- 樹里: それにしても、今日はマジで 忙しかったぜ…あー疲れた
- アオ: ママ、毎日大変だね…
- 樹里: あ?…ん… いや、どーってことねーよ!
- ひかる: さすがっす!
- 樹里: おめーは ちったー働け!
- ひかる: うっ!?藪蛇だったっす…
- 結菜: 樹里はバイクや自動車の 整備工場で働いている
- 結菜: しかし、このところ人手不足で 仕事量が増えているという
- 結菜: それに従って残業も多くなってきた 今日はまだ普通に帰れた方だろう…
- 結菜: 私も私で…
- 樹里: 姉さんはどうなんだよ
- 結菜: …まあまあねぇ
- 樹里: …とか言って、この後も 家で仕事すんじゃねーの?
- 結菜: …そうよぉ
- 樹里: やっぱり…
- 結菜: 私は現在、市役所に市長の 秘書として勤めている
- 結菜: 二木市長を父に持つ私は、それなりに 市長周辺の事情には知見があり この世界で自然と選んだ職だった
- 結菜: ただ、自分の仕事もキャリアを積むに 従って広範囲に及ぶようになり 樹里同様に多忙な日々を送っていた
- 結菜: そのため、アオの面倒はひかるが 見てはくれているものの 家の仕事がおろそかになりがちで 目下、それが課題となっていた
- 結菜: そこで私は、ある提案をしてみた
- 結菜: …ちょうどみんな 集まっているし、いい機会だわぁ
- 結菜: 聞いてもらいたい話があるのぉ
- アオ: なになに?
- ひかる: どこか遊びにいくっすか!
- 結菜: …ハウスキーパーを 雇おうと思うのよぉ
- 樹里: ハウスキーパー…?
- ひかる: 家事代行…ってやつっすか?
- 結菜: そうよぉ…
- 結菜: 私はここに至るまでの事情を皆に説明した
- 結菜: ひかるはともかく、樹里は反対するかと 思っていたけど、自身の最近の事情も あったことから、案外素直に賛成してくれた
- 結菜: アオに至っては…
- アオ: どんな人が来るんだろう… ドキドキするね…!
- 結菜: 家人の同意を得て、私は本格的に ハウスキーパーを捜し…
- 結菜: そして遂に…
- ???の声: 「失礼します…」
- 結菜: どうぞぉ
- ひかる: 来たっす!
- 樹里: なんで馬も顔合わせすんだよ…
- アオ: わくわく…!
- 伊並 満: 自分、伊並満と申します…
- 伊並 満: よろしく…お願いします
- FILENAME: text_520010-2_ABe8j.txt
- 伊並 満: 自分、伊並満と申します…
- 伊並 満: よろしく…お願いします
- 結菜: よろしくねぇ 私は紅晴結菜
- 樹里: 大庭樹里だ
- アオ: 笠音アオだよ!
- ひかる: 煌里ひかるっす!
- 樹里: こいつだけ 近所の知り合いだから
- ひかる: そうっすけど 家族みたいなもんっすよぉ!
- 伊並 満: あ、あの…み、み、皆様
- 伊並 満: 不束者ではありますが ご指導、ご鞭撻のほど何卒…!
- 結菜: そんな堅い挨拶はいいわよぉ
- 樹里: …つーか…ちょっと姉さん…
- 結菜: なによぉ
- 樹里: 大丈夫か?あんなにおどおどして 頼りねーったらありゃしねーぞ
- 結菜: あなたの無言の圧力でも 感じ取ったんじゃないのぉ?
- 樹里: んなことしてねーよ!
- 結菜: …でも、まあ…
- 結菜: 確かに心配なところは あるわねぇ…
- 結菜: …とはいえ、まずはお手並みを 拝見してみましょうよぉ
- 伊並 満: あ、あの~…
- 結菜: ごめんなさぃ なんでもないのよぉ
- 伊並 満: …こ、こちら、自分の経歴書と なっております
- 結菜: うん…伺っている通りねぇ…
- 伊並 満: それで、業務の内容ですが…
- 結菜: お願いしたいのは 掃除、洗濯、食事の用意
- 結菜: いわゆる家事全般ねぇ
- 結菜: アオのことは基本的に ひかるが面倒を見るけどぉ
- ひかる: はいっす!
- 結菜: あなたにもサポートは してほしいと思ってるわぁ
- 伊並 満: わ、わかりました…!
- 結菜: では早速お願いしてもぉ…?
- 伊並 満: は、はいっ! では、掃除から…
- 伊並 満: 掃除道具は…?
- 結菜: ここよぉ
- 伊並 満: かしこまりました…!
- 樹里: …おお
- 結菜: うんうん…
- ひかる: テキパキと動くっすねぇ…!
- アオ: ひかるちゃんと全然違うね
- ひかる: …そ、そんなことないっすよ ひかるも本気を出せば…
- 伊並 満: ひとまず、居間の片づけは 終わりました
- 伊並 満: 掃除機をお借りします
- 結菜: …どぉ?
- 樹里: …ま…
- 樹里: いいんじゃねーの?
- 結菜: …同感
- 樹里: …おし、仕事に戻るぜ
- 結菜: 私もぉ
- ひかる: アオちゃんはひかると…!
- 結菜: 宿題ねぇ~
- ひかる: …うっ!
- アオ: は~い…
- 結菜: こうして私たちの生活に変化が起きた
- 結菜: そう、“変化”が…
- FILENAME: text_520010-3_ABe8j.txt
- 結菜: 伊並さんが私たちの家に来てから 数日が経過した…
- 樹里: 帰ったぜ~
- 樹里: 今日は思ってたより 早く上がれてよ…
- 樹里: …あん?
- 樹里: 誰もいねーのか…
- 樹里: (姉さんは仕事だよな)
- 樹里: (アオは…)
- 樹里: …ん?
- 樹里: (メモ…アオの字だな)
- 樹里: …………
- 樹里: (…やっぱり馬の ところに行ってんな)
- 樹里: (で、伊並さんは…)
- 樹里: (…買い物用のバッグが ねーってことは…だな)
- 樹里: (つまり…)
- 樹里: 今、家には樹里サマのみ…
- 樹里: …………
- 樹里: (チャーンス!)
- 樹里: ふふふ…
- 樹里: (樹里サマのクローゼットの 奥に密かに隠した…)
- 樹里: (秘蔵のカワイイお菓子!)
- 樹里: …あむっ!
- 樹里: …うん…うん…
- 樹里: …うめーなー…!
- 樹里: (機械いじりに興味があったから 就職した今の勤め先だが…)
- 樹里: (よくよく考えれば…)
- 樹里: (火気厳禁!)
- 樹里: (あの四文字見てるだけで ストレスが溜まる日々…)
- 樹里: (仕事は好きだがあれだけは どうもなぁ~…)
- 樹里: (そのストレス解消として 見出した方法がこの…)
- 樹里: (カワイイお菓子を見つけては 噛み砕いて食べること!)
- 樹里: (しかも、それを密かに …っていうのがポイントだ)
- 樹里: (ただ、こんな妙とこ 見られでもしたら…)
- 樹里: (樹里サマのイメージが ちょっとまあアレだから…)
- 樹里: …ん?
- 樹里: …んごっ!
- 伊並 満: …あ!あ!
- 樹里: ごほっ!ごほっ!
- 伊並 満: お、お水、どうぞ!
- 樹里: …ごくっ…ごくっ…
- 樹里: …ふーっ…わりーな…
- 樹里: …って、いつからそこに!
- 伊並 満: すみません!
- 伊並 満: 大庭様が美味しそうに お菓子を頬張られていた時から…
- 伊並 満: 随分と可愛らしいお菓子で…
- 樹里: おおーい!
- 伊並 満: ひっ!
- 樹里: このこと…誰にも 言うんじゃねーぞ!
- 伊並 満: ひえぇぇ…
- 樹里: …ああ、いや… 待て、別に脅してるわけじゃ…
- 伊並 満: ううっ…
- 樹里: …このこと、黙ってて くんねーかなぁ?ん?
- 伊並 満: …あの…自分、やましいところは なにも、その…
- 樹里: 黙っててくれるよな?
- 伊並 満: そ、それはもちろん…はい!
- 樹里: …よーし…
- 樹里: 約束だかんな! 頼むぜ!
- 伊並 満: は、はいーっ!
- 樹里: …………
- 樹里: (…かーっ!なんてこった…)
- FILENAME: text_520010-4_ABe8j.txt
- 結菜: 伊並さんが私たちの家に来てから 1か月が経過した…
- ひかる: お邪魔するっすー!
- ひかる: …って…
- ひかる: (誰もいないっすよね~…)
- ひかる: (結菜さんと樹里さんは仕事で アオちゃんは学校…)
- ひかる: (そして、ここ最近の調査だと 伊並さんはこの時間帯…)
- ひかる: (夕飯の買い物に出てる!)
- ひかる: (つまり…)
- ひかる: 今、家にはひかるのみっす…
- ひかる: …………
- ひかる: (チャーンスっす!)
- ひかる: ふふふ…
- ひかる: (ひかるが提案して作成に こぎつけた思い出アルバム!)
- ひかる: (ここには大人になった 結菜さんの写真が満載…!)
- ひかる: (さらに!持参したひかる秘蔵の 結菜さん写真コレクション!)
- ひかる: (これを結菜さんの住んでいる 家でじっくりと鑑賞する…)
- ひかる: (はぁ~…沁みるっす… 大人結菜さんの魅力が…)
- ひかる: (この鑑賞会、本当は表立って 堂々とやりたいっすけど…)
- ひかる: (結菜さんが嫌がるから こんな秘密の個人開催に…)
- ひかる: (…まあ、個人だろうがバレたら 怒られると思うっすけど…)
- ひかる: (これはもはや芸術鑑賞の 領域に入ってるっすから…)
- ひかる: (つまりこれはある意味で 芸術的な活動という…)
- ひかる: …ぶわっ!
- 伊並 満: …あ!あ!
- ひかる: あば、あばばばば!
- ひかる: わっ!…し、しまったっす!
- ひかる: (持ち込んだひかる所蔵の 写真をぶちまけたっす…!)
- 伊並 満: ああ、紅晴様のお写真が 散らかって…はい、どうぞ
- ひかる: …あ、ありがとうっす…
- ひかる: …って、いつからそこに!
- 伊並 満: 煌里様がうっとりとしたお顔で アルバムを見られている時から…
- 伊並 満: ですが、どうして紅晴様の お写真を四方に置かれて…
- ひかる: そそそそれはあれっす!
- ひかる: …おまじないっす!
- 伊並 満: おまじない…?
- ひかる: 家内安全商売繁盛健康第一の おまじないっす!
- 伊並 満: …健康第一…?
- ひかる: とにかく!
- ひかる: …このことは内緒にして もらいたいっす!
- 伊並 満: ああ!そんな、困ります! 頭を下げられましても…!
- ひかる: 内緒でお願いっす~!
- 伊並 満: わ、わかりました…! わかりましたから…!
- アオ: ただいま~…
- 伊並 満: …あ
- アオ: …ん? なにしてんの?
- ひかる: うわわっ!
- 伊並 満: ああ、煌里様! お写真が…!
- アオ: …写真~?
- アオ: …あ、お母さんの写真だ どうしたの、これ?
- ひかる: そ、それはっすね…
- 結菜: ただいまぁ
- ひかる: …なぁっ!
- 樹里: こっちも帰ったぜ ちょうどそこで一緒に…
- 樹里: …あ?どうした、馬…?
- ひかる: …あ、あわわ…あわ…
- FILENAME: text_520010-5_ABe8j.txt
- 結菜: ただいまぁ
- ひかる: …なぁっ!
- 樹里: こっちも帰ったぜ ちょうどそこで一緒に…
- 樹里: …あ?どうした、馬…?
- ひかる: …あ、あわわ…あわ…
- アオ: ほら、これ お母さんの写真
- 結菜: あらぁ…
- 結菜: …ひかる…
- ひかる: こ、これには事情が~!
- 結菜: あのねぇ… 言ったわよねぇ…!
- ひかる: な、なので、あくまで こっそりとっす!こっそりと!
- ひかる: 誰もいない時を見計らっての 鑑賞だったっす~!
- 樹里: それをこの家に来て やるってのがなぁ…
- ひかる: アルバムはここにあるんで 仕方ないっすよ~!
- 樹里: 『仕方ない』ってなんだよ!
- ひかる: ああ…ひかるの密やかな趣味が…
- 結菜: それをよりにもよって アオに見つかるなんてぇ…
- ひかる: アオちゃんじゃないっす… 伊並さんっす…
- 結菜: え?そうなのぉ?
- ひかる: はい…いつの間にか 背後に立たれていて…
- 樹里: …!?
- 樹里: (いつの間にか…背後に!?)
- アオ: …あっ!
- 結菜: …なにが『あっ!』なのぉ?
- アオ: え?…いや…別にその~
- 結菜: あからさまに焦ってるわねぇ…
- 結菜: 何か隠し事でもぉ?
- アオ: そんな…はは…
- 結菜: どうなのぉ?
- アオ: …………
- 結菜: ど・う・な・のぉ?
- アオ: …わた…わたし…
- アオ: 宿題サボってゲームしてるとこ 伊並さんに見られたの…!
- アオ: それで、黙っててって お願いして…
- ひかる: い、一緒っすね!ひかると!
- 結菜: …はぁ…やれやれねぇ…
- 樹里: あ、あの、アレだな…! なんというか、つまり…!
- 結菜: …なんで急にあなたまで 焦りだしているのよぉ…?
- 樹里: 焦ってないけど、アレだよ! 伊並さん、なんなんだ!?
- 樹里: こっそりと目撃しちゃいやすい タチだったりするわけか?
- 結菜: こっそり…?え、なにぃ…?
- 樹里: だ、だから!
- 樹里: …あれ?伊並さんは?
- 結菜: …そう言えば…
- ひかる: さっきまでいたっすよね…?
- アオ: おかしいなぁ…
- 伊並 満: …ここです…
- アオ: わぁぁぁっ!
- 樹里: ビックリした~!
- ひかる: これっすよ、さっきも!
- 伊並 満: 申し訳ありません…
- 結菜: …伊並さん、あなた…
- 伊並 満: 自分…
- 伊並 満: 空気みたいな存在なんで…
- 結菜: …………
- FILENAME: text_520010-6_ABe8j.txt
- 樹里: …で…
- 樹里: なんだよ、話って わざわざこんなとこ集めてよ…
- ひかる: あの~、アオちゃんは…?
- 結菜: …まだ学校よぉ
- 結菜: ひとまず私たちだけで 話すべき内容だからぁ
- 樹里: …っていうと?
- 結菜: 伊並さんのことよぉ…
- 樹里: …………
- ひかる: いや、昨日の件は本当に 反省しているっす…
- 結菜: その話じゃなくて…
- 結菜: 彼女…気になるのよねぇ…
- 樹里: …ん~、まああれだけ 気配を消せるってのは…
- ひかる: なかなかっすよねぇ…
- ひかる: …あれ?樹里さんって伊並さんに ぬるっと近寄られたことって…
- 樹里: …あ…い、いや! そう聞いたからだっつーの!
- 樹里: じ、実際、そうなんだろ…?
- ひかる: ええ、それはもう!
- 樹里: (ふー…あぶねー…)
- 結菜: まさにそれよぉ
- 結菜: 今の私たちの状況… 常に警戒は怠れない…でしょぉ?
- 樹里: …そうだな…
- 樹里: アオが生まれ直して、そこから 樹里サマたちで14年間育てる…
- 樹里: …キモチから守りながら…
- 樹里: この日常自体が 異常だからな…
- 結菜: だから、何か引っ掛かったら 即、身構える…
- ひかる: それが伊並さんのこと…って わけっすか…?
- 結菜: ええ…
- 結菜: だから、今日はこの場に 伊並さんも呼び出したのぉ…
- 樹里: そうなのか!?
- 結菜: まずはじっくりと 話を聞こうと思ってねぇ
- ひかる: まさか… もういるとかっすか…!?
- 結菜: 彼女との待ち合わせ時間は もう少し後にしてあるわぁ
- 結菜: 時間通りに来るならば まだいないはずよぉ…
- ひかる: …そうっすか
- 結菜: あなたの今の動揺っぷりが 自然と表しているかもねぇ
- 結菜: 彼女への…警戒心を
- ひかる: そ、それは昨日 あんなことがあったから…!
- 樹里: 確かに意図的に気配を 消せるっていうのはすごいけど…
- 樹里: 仮に樹里サマたち…いや、アオを 狙っているとしても…
- 樹里: わざわざ実行して 手の内を見せるか…?
- 結菜: どんなことであろうと、異変の 一端を感じたらすぐに対応よぉ
- ひかる: でも、これからすることって 伊並さんと話す…っすよね?
- ひかる: なんでこの場所なんすか? 別に家でも…
- 結菜: 万が一を考えてねぇ
- 樹里: まさか、姉さん…
- 結菜: やり合うかもしれないでしょぉ 彼女と…
- ひかる: うっ…! そんなこと…!?
- 結菜: 一寸先は闇よぉ…
- 伊並 満: 皆さん…
- 結菜: …!?
- 樹里: …えっ!?
- ひかる: 伊並さん…!
- 伊並 満: あ…こ、こんにちは…!
- 伊並 満: も、もしかして お待たせしてしまいました…!?
- 結菜: …時間通りよぉ
- 伊並 満: よかった…
- 結菜: …………
- 結菜: (この感覚…)
- 結菜: (どこかで…!?)
- FILENAME: text_520010-7_ABe8j.txt
- 伊並 満: あ、あの…今日のお話って…
- 結菜: それはねぇ…
- 伊並 満: 自分が、こっそりと人の後ろに 立ってたりすることですか…?
- 結菜: …まあ そのことも含まれるけどぉ…
- 伊並 満: …勘弁してください! わざとじゃないんです!
- 結菜: …………
- 伊並 満: 自分、どうにも存在感が 薄いというか…
- 伊並 満: いや、むしろないというか…
- 伊並 満: 昔からこうなんです… どうにも気づいてもらえなくて…
- 伊並 満: 今後、注意しますので 先日からの件はどうかご容赦を!
- 結菜: …あのねぇ、伊並さん 私が聞きたいのはぁ…
- 伊並 満: すみません!仕事は どうか続けさせてください!
- 樹里: (な、なんか圧が…)
- ひかる: (すごいっす…)
- 伊並 満: お願いします!お願いします!
- 結菜: …!
- 樹里: (こいつは…!)
- ひかる: (魔女っす…!)
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: えっと…それで…
- 結菜: …そう…ねぇ…
- 伊並 満: も、もう、大丈夫でしょうか…?
- 結菜: …え?
- 伊並 満: なんと言いますか、その…
- 伊並 満: そろそろ、夕飯の 準備などがありますので…
- 伊並 満: 買い物に行かせていただいて よろしいでしょうか…?
- 結菜: …………
- 結菜: …いいわよぉ
- 結菜: 呼び出しちゃって 悪かったわねぇ
- 伊並 満: い、いえ、そんな… では…!
- 樹里: …なんだぁ?急に…
- ひかる: でも、好都合っすね 魔女から遠ざかって…
- ひかる: …あれ?
- 樹里: 魔女の反応が…動き出した!?
- 結菜: …………
- 結菜: …とにかく、やることは 変わらないわぁ
- 結菜: この世界に起こる異変は 根こそぎ排除する…
- 結菜: すべてアオのため…
- 樹里: …だな
- ひかる: 了解っす!
- FILENAME: text_520010-8_ABe8j.txt
- 結菜: 私たちは魔女を追った…
- 結菜: その果てに見たのは…
- ひかる: ここら辺じゃないっすか?
- 結菜: …っぽいわねぇ
- 樹里: …え?お、おい! あそこ!
- 結菜: …伊並さん!?
- 伊並 満: …え?
- 伊並 満: …ななな…なんでここに!?
- 伊並 満: …あ、マズい… 捕捉された…
- 伊並 満: どうしよう…! 自分が戦うしかないの…!?
- 結菜: 伊並さん…!
- 伊並 満: …どうしよう…普通じゃないって 思われちゃう…どうしよう…
- 結菜: …え?普通…?
- 伊並 満: あ、あのですね!これは 自分にとって普通なんです!
- 伊並 満: 日常茶飯事の普通のことで!
- 伊並 満: ここ、結界と言いまして 魔女というのが作ってます!
- 伊並 満: で、魔女は人間を襲うんですけど 多分、自分が狙われてるんです!
- 結菜: …………
- 伊並 満: ど、どうも自分を 仕留めきれないせいか…
- 伊並 満: し、しつこいんですよ! 困っちゃいますね、はは!
- 伊並 満: こういう変わった魔女も いるもんだなぁーって!
- 樹里: …………
- 伊並 満: …あっ、そうか… こ、これでどうでしょうか!
- 伊並 満: 自分、魔法少女っていうのを やってまして…
- 伊並 満: …いや、年齢的に少女って おかしいのは承知してます!
- 伊並 満: ただ、若い頃からなんだかんだで やり続けてまして…
- 伊並 満: だから! これが“普通”なんです!
- 伊並 満: 自分にとっての 当たり前になってまして…!
- 伊並 満: 今の説明で おわかりいただけましたよね…?
- 伊並 満: 自分が普通だってこと…!
- ひかる: …あ、あの~…
- 結菜: …私たちも…いいわねぇ?
- 樹里: ああ…
- ひかる: そうっすね…
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: …えええええええええええ!
- ……………
- 結菜: …細かい話は後でねぇ
- 伊並 満: へ?へ?へ? よくわかりませんが…は、はい!
- 樹里: うっしゃあ! 久々に暴れるかぁ…!
- ひかる: …来そうっす!
- …………!
- ひかる: …あれ?
- 樹里: 樹里サマたちをスルーして…?
- 結菜: …伊並さん!
- 伊並 満: ああ、やっぱり自分です~!
- …………!
- 伊並 満: ひぇっ!
- 樹里: …攻撃が逸れた!?
- ひかる: こっちに着弾しそうっす!
- 結菜: くっ…!
- 樹里: …んんんのやろおぉぉぉ!
- 樹里: ウェルダンにしてやる! おらぁっ!
- …………!?
- 樹里: ああん?逃げやがったのか!? クソッ!
- 伊並 満: ひー…ひー…ひー…
- 結菜: …魔女はともかく…
- 結菜: 本題はここからよぉ…
- FILENAME: text_520010-9_ABe8j.txt
- 結菜: …じゃあ…
- 結菜: お互いのこと 話しましょうかぁ?
- 伊並 満: は、はい…是非!
- 結菜: 伊並さんは改めて自身の事情を話した
- 結菜: 伊並さんはとにかく、小さい頃から 『普通の暮らしがしたい』と望んでいたようで キュゥべえと出会い、そのことを願ったそうだ
- 結菜: 以来、彼女は彼女なりの普通の暮らしを 手に入れはしたが、魔法少女としての暮らしも 始まってしまい、それで苦労してきたという
- 伊並 満: 魔法少女になってから数年は 自分の能力がわかってなくて…
- 伊並 満: なんせ、基本的に 逃げ回っていましたから…
- 伊並 満: でも、なぜか時々、魔女が勝手に やられちゃったりしてて…
- 伊並 満: それで、グリーフシードも どうにか手に入ったりして…
- 結菜: そして、ようやく彼女が 理解した自身の能力というのが…
- 伊並 満: 無意識での回避といいますか…
- 伊並 満: 自分には攻撃が当たらず 逸れていってしまうんです
- 樹里: なっ…!?
- ひかる: ホントっすか!?
- 伊並 満: はい…
- 結菜: それでさっきも…
- 樹里: なぜかこっちが被弾して… てんめぇ~!
- 伊並 満: す、すみませ~ん! どうしようもないんです!
- 伊並 満: 勝手に発動する能力なんです!
- 結菜: じゃあ、もしかして 気配を消すこともぉ…!?
- 伊並 満: …あ、そっちは関係ないです
- ひかる: そ、そうなんすか!? じゃあ、天然というか…
- 伊並 満: ええ…
- 結菜: 伊並さんは母親から徹底的に 『目立つな』『せめて人並みでいろ』という 教育を受けてきたらしい
- 結菜: そのせいで決して前に出過ぎず 後ろに下がり過ぎず、浮き過ぎず沈み過ぎず とにかく中庸であろうと努めてきた
- 結菜: その結果、人としての存在感を 極力薄めることが自然体となったそうだ
- 伊並 満: 自分…ゴミみたいなものなんで…
- ひかる: そんな… 卑下しないでくださいっす!
- ひかる: だったら、無職のひかるも なかなかのものというか…
- 伊並 満: いえ、自分です… 間違いなくクズです…
- ひかる: ひかるっす… 社会のダニっす…
- 樹里: あーもうやめろ! 辛気臭い!
- 結菜: …あれぇ…?
- 樹里: …なんだよ
- 結菜: …待ってぇ…もしかしてぇ… 伊並さん…!
- 伊並 満: は、はい!
- 結菜: あなたぁ…
- 結菜: 二木市にいたこと、あるぅ…?
- 伊並 満: …え?なんでそのことを…?
- 伊並 満: 確かに、親の仕事の都合で 少しだけ住んでたことが…
- 伊並 満: …ん?…あれ?
- 伊並 満: …うわあああああああ!
- 樹里: なんだなんだ、おい!?
- 結菜: やっぱり…
- 結菜: 覚えてなぃ? “幽霊の魔法少女”の話…
- 樹里: 幽霊の…?
- 樹里: …ああ、思い出した!
- 樹里: 二木市でバチバチに やり合ってた頃、原因不明で…
- 樹里: …あれ…?
- ひかる: ひかるも覚えてるっす!
- ひかる: 戦っている最中に 原因不明で倒されることから
- ひかる: 幽霊みたいに立ち回る 魔法少女がいるんじゃないかって
- ひかる: 市内で都市伝説になってた 話っすよね
- 結菜: 不意に死角から 攻撃が飛んできてぇ…
- 結菜: 私たちも樹里たちも…
- 樹里: なぜかボロボロにされた 経験があるなぁ…
- 樹里: もしかして… あれもてめーの仕業かぁ!
- 伊並 満: お、思い出しました…! 虎屋町と竜ケ崎のぉぉぉ~!
- 樹里: まさか今まで バックレてたってことか…!
- 伊並 満: なななないです!ないです!
- 伊並 満: 自分、つらい記憶は頑張って 忘れるようにしてまして!
- 伊並 満: 二木市の頃は大変だったので それはもう努力して…!
- 伊並 満: それに、先ほども説明した通り 自分の能力は意図せずに~!
- 樹里: あん時の借り…ここで~!
- 結菜: …はぁ…まあ、昔のことよぉ いいじゃない、樹里
- 樹里: …ぐぬぅううう~!
- ひかる: そ、そうっすよ… 伊並さんの事情も考えて…
- 樹里: くぅうううぁあ!
- 樹里: …けっ!わーったよ! 水に流してやらぁ…
- 伊並 満: あ、ありがとうございます…!
- 結菜: それにしても、妙な導きねぇ… こんな形で再会するなんて…
- 結菜: (この世界って…まったく どうなってるの…?)
- 伊並 満: 本当に…奇跡的な導きです…!
- 伊並 満: まさか同じ魔法少女の皆さんが 暮らす家で働けるなんて…
- 伊並 満: これで気持ち的にはより普通の 暮らしが送れそうな気がします!
- 伊並 満: これからも、どうぞよろしく…
- 結菜: …そのことなんだけどぉ…
- 伊並 満: …え?
- FILENAME: text_520010-10_ABe8j.txt
- 伊並 満: これからも、どうぞよろしく…
- 結菜: …そのことなんだけどぉ…
- 伊並 満: …え?
- 結菜: ごめんなさい…伊並さんには 辞めていただくわぁ…
- 樹里: …マジか!?
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: …辞め…て…?
- 結菜: そうよぉ…
- ひかる: いいんす…か…?
- 樹里: お、おい!
- 結菜: なによぉ さっきまで怒ってたくせにぃ
- 樹里: それは…それというか…!
- 結菜: …後で説明するからぁ 聞けば納得すると思うわぁ
- 樹里: …はあ?
- 結菜: じゃあ、派遣元には 電話しておくからぁ…
- 伊並 満: ちょ、ちょっと待ってください!
- 伊並 満: 魔法少女同士の方が きっとそちらのご都合も…!
- 結菜: じゃあ…
- 樹里: …ったく…わりぃな
- ひかる: 待ってくださいっす!
- 伊並 満: どうか… どうか考え直してください!
- 伊並 満: 皆さんと…皆さんと…
- 伊並 満: 普通に暮らしたいだけなんです!
- 結菜: …………
- 樹里: なあ、おい!
- 樹里: そろそろ理由を教えろよ! スッキリしねーじゃねーか!
- ひかる: ひかるにも是非!
- 結菜: …頃合かしらねぇ…
- 結菜: じゃあ、3人で向き合ってぇ
- 樹里: …なんでだよ
- 結菜: 伊並さん対策よぉ お互いの背後を警戒するのぉ
- ひかる: つけている…ってことっすか?
- 結菜: 可能性はあるでしょぅ ほらぁ
- 樹里: お、おう…
- 結菜: …理由なんて簡単でしょぉ
- 結菜: あんな危なっかしい ハウスキーパーが
- 結菜: アオの側にいられたら 困るのよぉ
- 樹里: …あ…
- ひかる: それは…ごもっともっす…
- 結菜: 今の私たちにとって 一番重要なのはアオなのぉ
- 結菜: 伊並さんみたいな魔法少女が 近くにいたら…
- 結菜: 何が起こるかわかったもんじゃ ないでしょぉ
- 樹里: だったら、ちゃんと 理由を説明してやれば…
- 結菜: 下手に交渉して 食い下がられても大変よぉ
- 結菜: こういう時はスパッと!
- 結菜: それなりの理由は 派遣元に言えばいいわぁ
- 結菜: とにかく、アオが第一…
- 樹里: …そうだな…
- ひかる: …ただ、そのアオちゃん…
- ひかる: 伊並さんに 結構なついてたっすからねぇ…
- アオ: ええええー! 伊並さん、辞めちゃうの…!!
- アオ: どうしてどうしてどうしてー!
- 結菜: 大人の事情よぉ…
- アオ: なにそれ…わけわかんないよー!
- 結菜: ごめんねぇ…
- アオ: やだやだやだー!
- ひかる: し、仕方ないんすよ~!
- 樹里: 落ち着けって!
- 結菜: …お願いねぇ 私、電話するからぁ
- アオ: やだよー!
- 結菜: ………… …あ、もしもしぃ?
- 満の派遣元: 「はい…カームヘルプでございます…」
- 結菜: インターネットで契約した 紅晴という者ですけどぉ…
- 満の派遣元: 「ありがとうございます…」
- 結菜: 今日付けで契約を 解除したくてぇ…
- 満の派遣元: 「承知しました…」
- 満の派遣元: 「では、弊社から派遣した者の 名前を伺えますか?」
- 結菜: 伊並満さんですぅ
- 満の派遣元: 「伊並…満…ですね…」
- 満の派遣元: 「申し訳ございません… その者との契約は解除できません」
- 結菜: …えっ? なんでですかぁ…?
- 満の派遣元: 「その者とは今後も契約を 続けていただければと思います」
- 結菜: いや、ちょっと待ってください どうしてなんですか…!?
- 満の派遣元: 「どうしてって…」
- 伊並 満: お願いしますよ、紅晴さん…
- 結菜: …え…まさか…
- 結菜: …伊並さん? 伊並さんなのぉ…?
- 伊並 満: そうですよ…
- 伊並 満: この会社、自分しかいないんで… ははは…
- 伊並 満: とにかく、契約は続けてください どうかお願いします…
- 伊並 満: …え?…ダメなんですか…
- 伊並 満: そうですか…
- 伊並 満: でも…
- 伊並 満: 明日以降も伺いますんで…
- 結菜: ちょ、ちょっと! 伊並さん!
- 結菜: (切られた…)
- 結菜: (これからも…ここに来る!?)
- 結菜: 彼女のその言葉は…
- 結菜: まさしく実行されることになった…
- [Part 1 end]
- ---
- [Part 2 start]
- FILENAME: text_520020-1_76qnC.txt
- 結菜: 伊並満…
- 結菜: 溢れていた家事を手伝ってもらうために 私が雇ったハウスキーパー…
- 結菜: しかしその正体は、無意識の内に 受ける攻撃を逸らすことができる能力により 31歳となる今まで生き延びてきた 魔法少女だった…
- 結菜: 私はアオの身辺を危惧し、 彼女との契約を切ろうとしたのだけど…
- 伊並 満: とにかく、契約は続けてください どうかお願いします…
- 伊並 満: …え?…ダメなんですか…
- 伊並 満: そうですか…
- 伊並 満: でも…
- 伊並 満: 明日以降も伺いますんで…
- 結菜: ちょ、ちょっと! 伊並さん!
- 結菜: (切られた…)
- 結菜: (これからも…ここに来る!?)
- 結菜: 事態は思わぬ方向へ転がり始めていた…
- 結菜: …………
- アオ: 伊並さん、やめちゃったの!?
- 結菜: え、ええ…
- アオ: …ううううう~!
- アオ: お母さんのバカ~!
- ひかる: ああ、アオちゃーん!
- 樹里: 当分すねてるだろうな…
- 結菜: …………
- 樹里: …どうしたんだよ 険しい顔して…
- 結菜: …困ったことになったかも…
- 樹里: …あ?
- 樹里: これからも来るだぁ…?
- ひかる: な、なんすか、それ…?
- 結菜: …脅し? …でも何の…?
- ひかる: これからも来て… 何をするんすか…?
- 樹里: 気味がわりぃなぁ…
- 結菜: …ひかる 今まで以上にアオの身辺を…
- ひかる: 任せてくださいっす…!
- 結菜: 私たちも、なるべく早く家に…!
- 樹里: ああ…
- 結菜: (伊並満…)
- 結菜: (何を仕掛けてくるの…!?)
- FILENAME: text_520020-2_76qnC.txt
- 結菜: 伊並さんとの電話の翌日…
- 結菜: 異変はさっそく起きた
- 結菜: ただいまぁ…
- 樹里: おう
- ひかる: いただいてるっす!
- アオ: …ふん! おかえり…!
- ひかる: アオちゃん…あはは…
- 結菜: …あらぁ?
- 結菜: …ご飯…樹里が作ったのぉ?
- 樹里: …は?なんでだよ 姉さんだろ?
- 結菜: …私がぁ? 今帰って来たのよぉ…?
- 樹里: いや、一旦帰ってきて メシ作ってまた出たんだろ?
- 樹里: そこのメモに書いてあったぜ
- 結菜: …え?
- 結菜: (…何…これ…?)
- 結菜: (…どういうこと…一体…?)
- 伊並 満: 明日以降も伺いますんで…
- 結菜: …まさか…
- 樹里: お、おい…どうしたんだよ…
- アオ: ごちそーさま…
- 結菜: アオ…
- アオ: …ふーんだ!
- 結菜: …………
- ひかる: あの~、結菜さん…?
- 結菜: この食事…私は作ってない…
- 樹里: …お、おい… 樹里サマでもねーぞ…
- ひかる: ひ、ひかるには こんなご飯作れないっす…!
- 結菜: …まさか…
- 結菜: 伊並…さん…!?
- 樹里: …嘘だろ…?
- ひかる: ご飯を…なんで…?
- 結菜: …毒…とか…?
- 樹里: …魔法少女相手にか?
- ひかる: …え…もしかして 標的は…
- 結菜: …アオ!?
- 樹里: …やばい…!
- ひかる: そんな…!
- 結菜: …!?
- 結菜: 電話…この番号…!
- 結菜: …もしもし…
- 伊並 満: 「こんばんは、紅晴様…」
- 結菜: 伊並さん…!
- 伊並 満: 「お食事、満足いただけましたか?」
- 伊並 満: 「すみません、作り置きのものを 持ち込んだんですが…」
- 結菜: …メモまで残して…
- 伊並 満: 「はい…」
- 伊並 満: 「自分、一旦そちらへ帰りまして また出て行きましたから…」
- 結菜: あなた…まさかあの食事に 変なものを入れたり…!
- 伊並 満: 「変なもの…?そんなこといたしませんよ!」
- 伊並 満: 「誠心誠意、作らせていただきました」
- 伊並 満: 「ではまた…明日」
- 結菜: …くっ…!
- 樹里: …ふぅ…アオは大丈夫そうだ
- ひかる: ケロッとしてたっす…
- 結菜: …今、伊並さんから 電話があったわぁ…
- 樹里: …んだとぉ!?
- 結菜: 変なものは入れてないってぇ…
- ひかる: そ、そんなこと 信じられないっす…けど…
- 結菜: 今のところ アオは無事なのよねぇ…?
- 樹里: あ、ああ…
- ひかる: じゃ、じゃあ… 伊並さん、嘘は言ってないって…
- 結菜: ことなのかどうか わからないけどぉ…
- 結菜: アオに妙な心配させたくないから 今は様子を見ましょう…
- 樹里: …なんなんだよ、ちくしょう!
- 結菜: どういうことなの…伊並さん…?
- FILENAME: text_520020-3_76qnC.txt
- 結菜: …………
- 結菜: …ダメ… こちらからの電話には出ない…
- 樹里: 今日もやられたぞ!
- 樹里: 帰ったらリビングが 綺麗に掃除されてやがった…
- ひかる: 昨日は洗濯っす…
- 樹里: アオにはどうにか 誤魔化しちゃいるが…
- 樹里: 気持ちわりーったら ありゃしねーよ!
- ひかる: そもそも、どうやって 侵入しているんすかね…
- 結菜: 鍵は渡してないのにねぇ…
- 樹里: …馬!まさかお前の合鍵 取られてたりとか…!
- ひかる: 持ってるっすよ!
- ひかる: でなきゃ、どうやってひかるは この家に入れるんすか!
- 樹里: …だよな…
- ひかる: …アオちゃんも同様っす 渡してはいないそうっす
- 結菜: …設置した監視カメラにも?
- ひかる: 全然映ってないっす…
- 結菜: …参ったわね…
- 樹里: とりあえず、鍵を変えるか…
- 結菜: 鍵を渡してないのに 侵入してくる相手よぉ
- 結菜: 鍵を変えたところで どうかしらねぇ…
- 樹里: …くそっ…
- ひかる: 訳がわからないっす…
- ひかる: …実は今も、いたりして…
- 結菜: …!?
- 結菜: …………
- 樹里: や、やめろよ… 急に振り返ったりして…
- 樹里: 誰もいねーだろ…誰も…
- ひかる: そう…っすよね…
- 樹里: …馬、コラ! 変なこと言うんじゃねーよ!
- ひかる: ご、ごめんなさいっす!
- 樹里: …ちっ!
- 樹里: 息苦しい気分だぜ… まったくよぉ…
- 結菜: (…考えなきゃ…)
- 結菜: (何か…打開策を…!)
- FILENAME: text_520020-4_76qnC.txt
- 結菜: …………
- 樹里: …っていう感じで この部屋を封鎖すんだよ
- 結菜: …ダメねぇ
- 結菜: 私たちの生活そのものに 支障をきたしてしまうわぁ
- 樹里: …ぐむむむ…
- ひかる: アオちゃん、眠ったようっす
- 結菜: …そう
- ひかる: いいアイデア、出たっすか?
- 樹里: お前がアオの様子見に行った 程度の短時間で浮かぶかよ…
- 樹里: そもそも行き詰ってたんだ 『三人寄れば~』…
- 結菜: 『文殊の知恵』
- 樹里: それだ それだったのにこのザマだ…
- 結菜: …はぁ…
- ひかる: ふむう~… どうすればいいっすかねぇ…
- 結菜: 私たちはこの後も伊並さんへの 対策を話し合ったけど これだという案は出てこなかった
- 結菜: やがて夜も深くなり 私たちはまどろみ始めた…
- 結菜: そして私は、昔の夢を見た…
- 結菜: どうも変ねぇ…
- 何が…ですか?
- 結菜: …いや、なんとなく なんだけどぉ…
- 結菜: 違和感があるのよぉ…
- 違和感…?
- 結菜: これは…緊張…?
- 結菜: その緊張がこの場の空気に 違和感を与えている…?
- 結菜: その発信源はぁ…
- 結菜: …はっ!
- 結菜: …………
- 結菜: (今のは…)
- 結菜: (まだ樹里たちと 争っていた頃の…)
- 結菜: …“違和感”…!?
- 結菜: (あの頃の私は常に神経を 尖らせていた…)
- 結菜: (隙を見せないように… 常に先手を取れるように…)
- 結菜: (だからあの時、感じられた… 何者かが発する違和感に…)
- 結菜: (…そうだ…きっとそうだ…)
- 結菜: (当時、その違和感を発していた 人物というのが…)
- 結菜: …………
- 結菜: …伊並さん、あなたねぇ いるんでしょ?
- 結菜: 全力で集中したら 今も感じ取れたわぁ
- 結菜: あの時と同じように…
- 伊並 満: そう…ですか…
- 伊並 満: …嬉しいです…
- FILENAME: text_520020-5_76qnC.txt
- 結菜: …嬉しい?
- 伊並 満: はい…
- 伊並 満: 自分の存在を感じてくれる人… 今まで誰もいませんでした
- 伊並 満: 紅晴様のような方がいらっしゃる この家は、やはり素敵です…!
- 伊並 満: 改めてお願いします… この家で働かせてください!
- 結菜: …今の時点で不法侵入なんだけど そのこと、わかってるぅ…?
- 伊並 満: …契約は続いてますから…
- 結菜: あなたが一方的に 続けてるの!
- 樹里: …ん…うるせえな…
- ひかる: ふぁ~…寝落ちしてたっす…
- 樹里: …ああっ!?
- ひかる: …えええーっ! …こ、これ…夢…っすか?
- 結菜: 本物よぉ…
- 結菜: 勝手に入ってきたところを ついに捉えたのぉ…
- 伊並 満: いえ、だから 勝手ではなく契約が…
- 樹里: 契約だぁ…? 姉さんが打ち切ったろうが!
- 伊並 満: 契約破棄だなんて 普通じゃないこと…!
- 伊並 満: …あってはいけないんです…
- ひかる: …普通じゃ…ない…?
- 伊並 満: そうです… そんなことダメなんです…
- 伊並 満: 自分の契約は続いてます… 続いているんです…
- 伊並 満: だからお食事も用意しました 掃除も、洗濯も…
- 伊並 満: この家に皆さんがいて 自分が家事をして…
- 伊並 満: そして自分も、あなたも あなたもあなたも!
- 伊並 満: みんな魔法少女だなんて… とても安心できます…
- 伊並 満: 魔法少女である自分の生活も ここでは本当に普通…!
- 伊並 満: だから ここに居させてください…
- 伊並 満: いや、居るのが普通ですよね? ね?ね?
- 樹里: こいつ…何言ってんだ…?
- ひかる: 普通じゃないっす…!
- 伊並 満: …え? 今、なんて言いました?
- ひかる: ふ、普通じゃないっす!
- 伊並 満: …は?何言ってるんですか…?
- ひかる: …え…
- 伊並 満: 自分、普通ですよ?当たり前です 普通に決まってます、そうです
- 伊並 満: だって、自分が魔法少女になる 時の願いだってそうだったんです
- 伊並 満: 『すべて普通になりたい』って ほら、自分、普通でしょ?
- 伊並 満: なのにどうして普通じゃないって 言っちゃうんですか?
- 伊並 満: そっちがどうかしてます そっちが普通じゃないです
- 伊並 満: 自分は普通です、本当に普通です 本当に間違いなく普通なんです
- ひかる: ひ…ひぃ~…
- 結菜: 伊並さん!
- 伊並 満: …はい
- 結菜: あなたとは契約できないわ!
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: …どうしてなんですかぁぁぁ!
- 結菜: 今のこの状況が…!
- アオ: …うるさいよぉ… 眠れないからぁ…
- 結菜: …アオ!?
- FILENAME: text_520020-6_76qnC.txt
- アオ: …うるさいよぉ… 眠れないからぁ…
- 結菜: …アオ!?
- 樹里: …なっ!?こいつは…!
- ひかる: 見覚えある結界っす…!
- アオ: …うわぁ、何これ?
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: …これは夢ですよ
- アオ: …夢?
- …………
- 樹里: げっ…!出てきやがった!
- ひかる: やっぱりこの前の…!
- アオ: …あはは、何あれ~
- アオ: …そっか~、これ夢か~ だからあんな変なの出てくるんだ
- 伊並 満: そうですよ… あの変なのが何かしてきても…
- …………!
- 結菜: …くっ…!
- 伊並 満: 自分の傍にいてくれれば 平気ですからね…
- アオ: ふ~ん… 伊並さん、すごいね~…
- 樹里: てめぇ!アオから離れろ!
- 結菜: 待って!
- 樹里: んだよ!
- 結菜: …こうなってしまったからには 仕方ないわぁ…
- 結菜: 伊並さんの近くにいるのが 安全なのは確かだし…
- 結菜: 夢と勘違いしている内に ケリをつけた方がいい…!
- 樹里: …ぐっ!
- ひかる: …この状況だと やむを得ないっすね…
- 結菜: まずは魔女を倒して 結界を解除するわよぉ…!
- 樹里: …やるしかねーか!
- ひかる: なる早っすね…!
- 結菜: …伊並さん… こんなこと言いたくないけど…
- 結菜: アオを頼んだわよぉ…!
- 伊並 満: …はい!お任せください!
- FILENAME: text_520020-7_76qnC.txt
- …………!
- 樹里: このぉ!こいつ…!
- ひかる: 伊並さん狙いで こっちは眼中にないっすよ!
- 結菜: まともに相手されないと 攻めにくい上に…
- ひかる: はーっ!
- ひかる: …あ、しまったっす…
- 伊並 満: …あら…
- ひかる: あだっ!
- 結菜: …伊並さんに攻撃が逸れると こっちに流れてくることもぉ…
- 樹里: …お!だったらあいつに向けて 集中攻撃すんのはどうだ!?
- 樹里: そうしたら魔女にも当たるかも…
- 結菜: 当たるかもしれないけど こっちも危ないでしょぉ…
- 樹里: …うっ…そうか…
- ひかる: 厄介な戦いっすね~…
- 結菜: …ただ、手はあるわぁ…!
- 結菜: 伊並さん! あなたも魔女に攻撃を!
- 結菜: そうすれば挟撃になって きっと倒せるはず!
- 樹里: …む!
- ひかる: 確かに…!
- 結菜: こちらと呼吸を合わせて…!
- 伊並 満: …いやぁ…自分 そういうの無理なんで…
- ひかる: …へ?
- 結菜: なぜ…!?
- 伊並 満: こ、攻撃だなんて…今まで 一度もしたことないです…
- 樹里: …て、てめー! だったらどうして生き残った!
- 伊並 満: 前にも言いましたよね…?
- 伊並 満: 気がついたら魔女が勝手に 倒されてたりしてたって…
- 伊並 満: 本当に自分 何もしてないんです…
- 伊並 満: だ、だって、攻撃とか そんなことしたら…
- 伊並 満: 目立っちゃうじゃないですか…!
- ひかる: …ええ!? いや、目立つとかそんな…
- 伊並 満: 目立ったら普通じゃないんです…
- 伊並 満: 普通でいたいんです…! 自分はとにかく普通が…
- アオ: …普通~…?
- 伊並 満: そうです、普通です 笠音様も普通が一番…
- アオ: …普通ってなぁに?
- 伊並 満: …え…?
- FILENAME: text_520020-8_76qnC.txt
- …………!
- 樹里: なろ~! ちょこまかと…!
- ひかる: マズいっす…! ズルズルっすよ!
- 樹里: 消耗戦になってるな… このままじゃ持たねぇ…!
- ひかる: …あ…
- ひかる: 伊並さんの魔力も 無限じゃないっすよね…
- 樹里: そりゃそうだろ…
- 樹里: …って、そうか!ヤバい…!
- ひかる: あの絶対防御も 魔力がつきたら終わりっすよ…!
- 樹里: 早く…早く倒さねーと…!
- 樹里: 姉さん!どうする!?
- 樹里: …おい、姉さん!
- 結菜: …………
- ひかる: どうしたんすか!?
- 結菜: …あの人の…気配が変わった…?
- ひかる: あの人…?伊並さんすか?
- 結菜: …魔女、しばらくお願い やっぱりあの人が鍵だわぁ…!
- 樹里: ちょ、ちょい!
- ひかる: 結菜さん!?
- アオ: …普通ってなぁに?
- 伊並 満: …え…?
- アオ: …ん…だから 普通ってなんなのかなって
- 伊並 満: 普通は…普通ですよ? 目立たないように大人しく…
- アオ: 何もしないってこと?
- 伊並 満: な、何もしないというか 何かはするんですけど、その…
- アオ: …よくわかんない…
- 伊並 満: …うっ…
- アオ: 普通ってなんなんだろう… …ふぁ~…むにゃ…
- 伊並 満: な、波風立てないのが 一番なんですよ…!
- 伊並 満: ほら!『出る杭は打たれる』って 言うじゃないですか!
- 伊並 満: じっとしているのがいいんです! そうすれば嵐が来てもいずれ…
- アオ: でも、困っている人がいたら 何かしてあげたいけどなぁ~…
- アオ: じっとしているだけじゃ その人、困っているままでしょ?
- 伊並 満: …そ、それは…
- アオ: わたし、伊並さんが困っていたら 助けてあげたいよ?
- 伊並 満: …か、笠音様…
- アオ: …う~ん…ダメだ… やっぱり眠いや…
- アオ: …す~…す~…
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: …ち、違うんですよ、ははは…
- 伊並 満: 普通であるのがいいんです… 普通でいないとダメなんです…!
- 伊並 満: だって…自分は母親から そう言われてきたんですから!
- 伊並 満: 『お前みたいなのは普通にしてて やっと生きられる』って!
- 伊並 満: 自分、そういう奴なんですよ… だから普通でいないと…
- 伊並 満: 生きられないんです… うう…自分は…普通でないと…
- 結菜: 伊並さん…
- 伊並 満: …紅晴…さん…
- FILENAME: text_520020-9_76qnC.txt
- 結菜: 伊並さん…
- 伊並 満: …紅晴…さん…
- 結菜: あなたの契約を切ったのは アオのためなのよぉ…
- 伊並 満: …笠音様の…
- 結菜: 私たちにとって 一番大事なのはアオ…
- 結菜: 魔女を連れてきてしまうような あなたがいると…
- 結菜: アオを危険にさらすことになる …実際、こうだしねぇ
- 結菜: それはわかってもらえる…?
- 伊並 満: …………
- 結菜: …あなた 普通にこだわっているのねぇ
- 結菜: そんなに普通でいたいのぉ?
- 伊並 満: …はい…
- 結菜: …あなたの願い…
- 結菜: 『すべて普通でありたい』 …だったわよねぇ
- 伊並 満: ええ…
- 結菜: そうね… 確かに叶ったんじゃない?
- 結菜: その願いのおかげで…
- 結菜: あなたのやること、考えることは すべて“普通”になった…
- 結菜: ただし…あくまであなたの 基準の中で…
- 伊並 満: …え…
- 結菜: あなたが何をしても、あなたの 中ではすべて普通になる…
- 結菜: 大方、そういうことで 願いは結実したのよぉ…
- 結菜: だって、“普通”なんて 絶対的な定義がないものぉ
- 伊並 満: …そ、そんなこと!
- 結菜: …まあいいわぁ そう考えるなら逆に
- 結菜: あなたにはあなたの“普通”が あっていいわけだしねぇ…
- 結菜: …でもね、ひとつだけ 言わせてもらえるぅ?
- 伊並 満: …何ですか…?
- 結菜: 魔法少女である限り…
- 結菜: 魔女を倒さないと“普通”には 生きられないのよ…!
- 伊並 満: …うっ…!
- 結菜: だってそうでしょ? 魔女を倒すのが魔法少女の宿業…
- 結菜: グリーフシードがなければ 生きることさえできない…!
- 結菜: あなたがここまで生き残ったのは ハッキリ言って奇跡よ…!
- 結菜: 得た能力もね…!
- 伊並 満: じ、自分はただ普通に…!
- 結菜: でも、その奇跡ももう終わり…
- 結菜: このまま何もしなかったらね…!
- 伊並 満: …お、終わり…
- 結菜: 今、この戦いは妙な 捻じれ方をしているわぁ…
- 結菜: 終わりが見えないまま、私たちも 限界を迎えようとしている…
- 伊並 満: い、いや、まだ 手持ちのグリーフシードが…!
- 結菜: それだって限りがあるでしょ!?
- 結菜: あの魔女がしばらくしたら 手を引く保証でもあるの!?
- 伊並 満: …それは…
- 結菜: …戦うのよぉ…
- 結菜: あなたが戦えば、きっと決着を つけることができる…!
- 結菜: 戦えば…また生き残れる!
- 結菜: お願い…ろくに説明もしないで 契約を切った非礼は詫びるから…
- 結菜: 立ち上がって…! そして魔女を倒して…
- 結菜: アオを…助けて…!
- 伊並 満: …笠音様を…
- アオ: でも、困っている人がいたら 何かしてあげたいけどなぁ~…
- アオ: じっとしているだけじゃ その人、困っているままでしょ?
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: …戦わないと…
- 伊並 満: …生き残れないんですよね…
- 伊並 満: 自分も…皆さんも…
- 結菜: …そうよ
- …………!
- 樹里: くそっ!もうギリだぜ…!
- ひかる: 結菜さん! どうすれば…!
- 伊並 満: 皆さん… 自分の近くに来てください…
- 樹里: …あんだぁ!?
- 結菜: いいから、早く!
- ひかる: は、はいっす! 樹里さんも!
- 樹里: …んだよもう!…行くよ!
- …………!
- 結菜: …逸れた…!
- 伊並 満: 戦わないと生き残れない… 戦わないと助けられない…
- 伊並 満: 戦わないと…普通でいられない!
- 伊並 満: うわあああああああああぁぁぁ!
- FILENAME: text_520020-10_76qnC.txt
- …………
- …………!?
- 伊並 満: はぁ…はぁ…はぁ…
- 結菜: …終わったぁ…
- ひかる: 危なかったっす…
- 樹里: …ふん…
- 樹里: …さっきの なかなかだったじゃねーか…
- 伊並 満: …い、いえ…
- 伊並 満: …普通ですよ…
- 結菜: こうして一連の騒動は幕を下ろした…
- 結菜: …………
- 樹里: …部屋に連れてったぜ
- 結菜: どうだったぁ?
- ひかる: ビックリするくらいグッスリっす
- 樹里: 鈍感なんだか大物なんだか…
- 結菜: …ふふっ…
- 樹里: …ところでよ…
- 樹里: 本当にあんなこと言って よかったのか?あいつに…
- 結菜: …………
- 伊並 満: …自分、行きます… ご迷惑をおかけしました…
- 結菜: …これからどうするのぉ?
- 伊並 満: …自分の生き方 見つめ直そうかと思います…
- 伊並 満: でも、自分を変えたいとか そういうことじゃなくて…
- 伊並 満: …とにかく、もっとしっかりと 自分自身と向き合ってみます
- 伊並 満: ただ、そうしたいと 今は思うんです…
- 結菜: …そう…
- 伊並 満: …あ、家事代行は続けたいかと… 自分、この仕事好きなんで…
- 結菜: …だったら、たまに うちもお願いしようかしらねぇ…
- 伊並 満: …え!?
- 樹里: おい!
- ひかる: いいんすか…!?
- 結菜: あくまで、たまによぉ
- 結菜: (…それに…この人はもう 大丈夫だと思うし…)
- 結菜: (むしろ、何かあった時は 強力な味方になる…)
- 結菜: (…我ながら打算的で 嫌な考えだけどねぇ…)
- 伊並 満: あ、ありがとうございます…! 是非、お願いします…!
- 結菜: ええ
- 樹里: …ったく、知らねーぞ…
- ひかる: ま、まあ、いいっすかね!
- 伊並 満: …では…
- 結菜: …うーん…
- 結菜: …多分ねぇ
- 樹里: なんだかなぁ…
- 樹里: …ま、ああ言っちまうのも…
- 樹里: 姉さんの“普通”かね…
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: 「…普通…」
- 伊並 満: 「…普通…」
- 伊並 満: 「…普通なのが…」
- 伊並 満: 「…普通…」
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: …何言ってんだろ…
- 伊並 満: …………
- 伊並 満: …行こう…
- <「伊並満は“普通”に生きたい」>
- <終>
- アオ: うむむむ…
- アオ: …あーもうわかんなーい! 宿題むずいよー!
- ひかる: 頑張るっすよ、アオちゃん!
- アオ: …あー、お腹も空いた…
- ひかる: ひかるが何か作るっすか?
- アオ: …………
- アオ: …伊並さんのご飯 また食べたいなぁ~
- ひかる: スルーしないでほしいっす!
- アオ: ねー、伊並さん また来るんでしょー?
- アオ: いつなのー?
- ひかる: さあ~…
- アオ: 会いたいな~、伊並さんに…
- ひかる: あ!そういえば棚の奥の奥の奥に カワイイお菓子を見つけたんす!
- ひかる: 宿題終わったら それを食べるっすよ!
- アオ: ホント!? じゃあ頑張っちゃおーっと!
- ひかる: …現金っすね~…
- アオ: ふんふふんふふ~ん!
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