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- FILENAME: text_340041-1.txt
- 美国 織莉子: 本当は、ずっと前から わかっていたのかもしれない
- 美国 織莉子: でも、それを認めることは 誰かに頼るわたしを…
- 美国 織莉子: 弱いわたしを認めることになりそうで 認められなかっただけ
- 美国 織莉子: わたしの願い… “生きる意味を知りたい”
- 美国 織莉子: 答えはすぐ近くにあったのに 理解していないフリをしていた
- 美国 織莉子: あの子が大切な存在だと気づく要因
- 美国 織莉子: それは 本当に過去に戻ったかのような夢から 始まった…
- 美国 織莉子: いってきます
- 織莉子の父: いってらっしゃい
- 美国 織莉子: …………
- あっ…白羽女学院の子だ 雰囲気ある~…
- ああ、あのお嬢様学校かぁ… 私たちとは別次元だよね
- おはようございます 美国先輩
- 美国 織莉子: ごきげんよう
- …朝から 美国先輩にお会いできるなんて…
- やっぱり風格が違うわ さすが、“美国”のお嬢様ね
- 生徒会長としても お忙しいのに
- お父様のお手伝いもして いらっしゃるんでしょう?
- 美国さんのお父様って… 見滝原市の市議よね?
- ええ、次の選挙では 国政にも乗り出すそうよ
- そんなお父様を支えるなんて とても真似できないわ
- 美国市議も 誇らしいでしょうね
- 美国 織莉子: (誰から見ても)
- 美国 織莉子: (立派なお父様を わたしがお支えできているなら)
- 美国 織莉子: (これ以上に 誇らしいことはないわ)
- 美国 織莉子: (だって、不慮の事故で 亡くなったお母様に代わって)
- 美国 織莉子: (お父様を支えることが わたしの生きがい)
- 美国 織莉子: (生きる意味だもの)
- 美国さんだ…
- 良家組って私たちのこと 成金組とか呼んで見下してるけど
- 美国さんだけは違うよね
- お嬢様の中のお嬢様だもん 他とは違うよ
- そんなにすごいんだ?
- えっ、知らない?
- “美国”っていえば 政治家一族だよ?
- おじいさんは すごい政治家だったっていうし
- 伯父さんは現役の国会議員!
- 美国さんのお父さんだって すごい人じゃん?
- それは、確かに本物のお嬢様だわ 格が違う…
- しかも、本人は 文武両道で才色兼備!将来有望!
- 凄すぎて怖いものなし! って感じでしょ?
- 美国 織莉子: (…怖いものなし、か)
- 美国 織莉子: (確かに わたしは恵まれているわ)
- 美国 織莉子: (日々の生活だって お父様がいて学校も順調…)
- 美国 織莉子: (不満なんて 何もない日々のはず)
- 美国 織莉子: (…でも、なぜ)
- 美国 織莉子: (わたしは何かが足りないと 感じているの…?)
- ???: …………
- 美国 織莉子: …?
- 美国 織莉子: (知らない子、よね…?)
- 美国 織莉子: (でも…)
- 美国 織莉子: (何か…気になる… 嫌な感じがするわ…)
- 美国 織莉子: …………
- 美国 織莉子: (不安になるなんて “美国織莉子”らしくない)
- 美国 織莉子: (しっかりしなさい、織莉子)
- FILENAME: text_340041-2.txt
- 美国さん ボランティア活動のことで
- 意見を聞きたいのですが お時間いただけますか?
- 美国 織莉子: はい、もちろん お手伝いさせてください
- 美国 織莉子: …というのはいかがでしょう?
- 美国 織莉子: 奉仕活動は大切ですが
- 美国 織莉子: まずは興味を持ってもらうことが 重要だと思いますので
- さすが“美国”さん とても参考になりました
- 美国 織莉子: …お役に立てたなら 何よりです
- この問題は少し難しいので 美国さん解いてもらえますか?
- 美国 織莉子: はい
- さすがね すらすら解いてるわ…
- わたしなんてどの公式を使えば いいのかすらわからないのに…
- 美国 織莉子: …………
- キーンコーンカーンコーン…
- お昼、ご一緒しましょう
- 天気がいいから お外でいただきましょうか
- 美国 織莉子: (学校が一緒だったら わたしもあの子と…)
- 美国 織莉子: (…………あの子?)
- 美国 織莉子: (他校に友人なんていないのに おかしいわね…)
- 美国先輩よ
- お誘いしたら ご一緒してくださると思う?
- わたくしもご一緒できたら 嬉しいけれど…
- お忙しい方よ お邪魔したら申し訳ないわ…
- そうよね 特別なお方だもの…
- 美国 織莉子: …………
- 美国 織莉子: (特別…)
- 美国 織莉子: (美国の…お父様の名前を 背負っているのだもの…)
- 美国 織莉子: (特別でいなければならないのは 当たり前だわ…)
- 美国 織莉子: でも…………
- 美国 織莉子: 日常ってこんなに窮屈だったかしら…?
- 美国 織莉子: これではまるで型にはめられて 繰り返すだけ…
- 美国 織莉子: わたしの日常はもっと賑やかだったはずだと…
- 美国 織莉子: 物足りないと思ってしまうのはなぜ…?
- 美国 織莉子: …………ダメよ しっかりしなさい、織莉子
- 美国 織莉子: (お母様がいなくなったいま)
- 美国 織莉子: (お父様を支えられるのは わたしだけ)
- 美国 織莉子: (そのためには 美国に相応しく…)
- 美国 織莉子: (完璧でなければならない)
- 美国 織莉子: (それが わたしの存在意義なのだから)
- 美国 織莉子: …………
- FILENAME: text_340041-3.txt
- ご一緒にお茶ができないか お誘いしてみる?
- そうね… もし、ご一緒できたら素敵だわ
- 美国さん、もしよろしければ…
- 美国 織莉子: …………
- チラ…
- あの…美国さん 今日もお忙しいかしら?
- 美国 織莉子: …いえ、どうして?
- ご連絡を待っているように 見えたので…
- 美国 織莉子: …………
- 美国 織莉子: (…無意識のうちに スマートフォンを見ていたのね)
- 美国 織莉子: (いつもこの時間に メッセージが来るから…)
- …お忙しいところ お邪魔してしまってごめんなさい
- 美国 織莉子: 謝らないでちょうだい そういうわけじゃないの
- 美国 織莉子: (そう… 鳴るはずがないわ)
- 美国 織莉子: (個人的な連絡をくれる子なんて わたしには、いないもの…)
- 美国 織莉子: それより、 何か御用だったかしら?
- 実はね…
- 美国 織莉子: ――っ!?
- 美国 織莉子: (今朝の…!)
- 美国 織莉子: (どうしてここに…?)
- 美国 織莉子: …ごめんなさい 用事を思い出したので失礼するわ
- 美国 織莉子: (どこに行ったのかしら…? きっとまだ近くに…)
- ???: …………
- 美国 織莉子: えっ…?
- 美国 織莉子: 影…? さっきの子どもは…?
- 美国 織莉子: ひっ…!
- 美国 織莉子: (ダメ…!)
- 美国 織莉子: (輪郭すらわからないのに…)
- 美国 織莉子: (おぞましいものだってことは わかる…)
- 美国 織莉子: (よくないものだわ…!)
- 美国 織莉子: いやっ…!! 誰か…
- 美国 織莉子: …………
- 美国 織莉子: いまのは…一体…?
- 美国 織莉子: ………… …………
- 美国 織莉子: (帰ろう…家に…)
- 美国 織莉子: (お父様が、待ってる…)
- FILENAME: text_340041-4.txt
- 美国 織莉子: そろそろ休憩にしませんか? お茶を淹れるわ
- 織莉子の父: ありがとう、織莉子
- 織莉子の父: いつも僕の仕事を 手伝ってもらって悪いね…
- 織莉子の父: たまには学校のお友だちとも 遊びたいだろう
- 織莉子の父: 無理に早く帰って来なくても いいんだよ
- 美国 織莉子: 無理はしてないわ
- 美国 織莉子: わたしが お父様のお役に立ちたいだけ
- 織莉子の父: 織莉子…
- 美国 織莉子: それにわたしにとっては
- 美国 織莉子: お父様と一緒に過ごす
- 美国 織莉子: ティータイムが 1日で一番好きな時間なんです
- 美国 織莉子: (だって、このティータイムは)
- 美国 織莉子: (お母様がご健在だった頃からの 習慣だもの)
- 美国 織莉子: (そして、いまは お父様と過ごす大切な時間だわ)
- 織莉子の父: 今日はどんなことがあったか 聞かせてくれるかな?
- 美国 織莉子: 今日は…
- ???: …………
- 美国 織莉子: でも…………
- 美国 織莉子: 日常ってこんなに窮屈だったかしら…?
- 美国 織莉子: これではまるで型にはめられて 繰り返すだけ…
- 美国 織莉子: わたしの日常はもっと賑やかだったはずだと…
- 美国 織莉子: 物足りないと思ってしまうのはなぜ…?
- ???: …………
- 美国 織莉子: …………
- 織莉子の父: 織莉子? 困り事があるのかい?
- 美国 織莉子: …いいえ、お父様 学校はいつも通り順調でした
- 美国 織莉子: (…少し疲れているだけよ)
- 美国 織莉子: (お父様に相談するほどの ことではないわ)
- 織莉子の父: 本当に…?
- 美国 織莉子: はい
- 美国 織莉子: それより、パンケーキが 冷めてしまうわ
- 美国 織莉子: 早く食べましょう
- 美国 織莉子: シロップ1本って…
- 美国 織莉子: ちょっと かけすぎじゃないかしら…?
- 美国 織莉子: パンケーキがシロップで びしゃびしゃよ、“ ”
- ???: 「これくらいの方がおいしいんだよ!」
- 美国 織莉子: …あら? シロップが足りないわ
- 織莉子の父: そうかな? 十分だと思うけど…
- 美国 織莉子: でも、これだと…
- 織莉子の父: 織莉子が、そんなに甘いものが 好きだなんて知らなかったよ
- 織莉子の父: 持ってくるから待ってて
- 美国 織莉子: あ、ありがとう…
- 美国 織莉子: …?
- 美国 織莉子: (変ね…)
- 美国 織莉子: (どうして、びしゃびしゃの パンケーキなんて思ったの…?)
- 美国 織莉子: (あんな風に食べる子なんて 知らないのに…)
- 美国 織莉子: ――っ!?
- 美国 織莉子: ど、どうしてここに…!?
- 美国 織莉子: (黒い…何か… あれは…あの中身は…!)
- 美国 織莉子: (触ってはダメ…)
- 美国 織莉子: (でも… 確かめなければ…)
- 美国 織莉子: (どんなものなのか 確かめないといけない…)
- 美国 織莉子: ………… …………
- 美国 織莉子: (こういうの、カリギュラ効果… っていうのよね…確か…)
- スッ…
- 美国 織莉子: (…中を確かめれば)
- 美国 織莉子: (この理由がわからない恐怖も 消える…かしら…?)
- 美国 織莉子: (触れれば…)
- 織莉子の父: どうしたんだい? 座って待っていてよかったのに
- 美国 織莉子: お父様…
- 織莉子の父: もしかして、 待たせちゃったかな?
- 美国 織莉子: …えっと…
- 美国 織莉子: (なくなっている…)
- 美国 織莉子: もしかしたら、 場所がわからないのかと思って
- 織莉子の父: そんなことないよ ほら、ちゃんと持ってきただろ?
- 美国 織莉子: ふふっ… では、改めていただきましょう
- 美国 織莉子: 今日も平和でいい一日だったわ …けれどこの違和感は何?
- FILENAME: text_340042-1.txt
- 美国 織莉子: わたしの日常を 脅かすように現れた黒い影…
- 美国 織莉子: その影を否定しながらも 拒絶しきれないものがあった
- 美国 織莉子: 後から思えば 否定は意固地になっていたわたしの心の表れ
- 美国 織莉子: それでも拒絶できなかったのは その存在がわたしにとって とても大きなものになっていたからだと思う
- 美国 織莉子: …………
- 美国 織莉子: ――っ!?
- 美国 織莉子: ど、どうしてここに…!?
- 美国 織莉子: (黒い…何か… あれは…あの中身は…!)
- 美国 織莉子: ………… …………
- 美国 織莉子: (眠れないわ…)
- 美国 織莉子: (どうしても、あの黒い何かが 気になってしまう…)
- 美国 織莉子: 正しく認識できないのは 見てはいけないから… あってはならないものだから…
- 美国 織莉子: (知らなくていい… 触らなくて正解だったのよ)
- 美国 織莉子: (あのとき、お父様が 戻ってきてくれてよかった…)
- 美国 織莉子: (おかげで触らないで 済んだのだから…)
- 美国 織莉子: お父様に感謝、しないと…
- 美国 織莉子: (そう… わたしにはお父様がいる)
- 美国 織莉子: (お父様を支えるために わたしはここにいる)
- 美国 織莉子: (それがわたしの生きる意味)
- 美国 織莉子: (わたしの…………)
- 美国 織莉子: 本当に…? 本当に、それがわたしの生きる意味なの?
- 美国 織莉子: それなら… このひやりとした感覚は…
- 美国 織莉子: 何かが足りない… 胸に穴が開いた感覚は何?
- 美国 織莉子: どうかしているわ 美国織莉子
- 美国 織莉子: (疲れているのよ)
- 美国 織莉子: (だから…)
- 美国 織莉子: (あんなものを見て 心を乱されるの…)
- 美国 織莉子: だらしない、疲労くらいで こんなに乱されるなんて…
- 美国 織莉子: もっと強くならなければ…
- 美国 織莉子: 何があっても揺らがず お父様を支えられるように…
- 美国 織莉子: わたしの生きる意味を 守るために…
- 美国 織莉子: しっかりしなさい わたしは美国織莉子なのよ…
- 「猛スピードで車両が歩道に乗り上げてきたため 避けられなかったようです」
- 「手は尽くしましたが…残念です」
- 美国 織莉子: 『…………おか…』
- 織莉子の父: 「うわぁああぁ」
- 織莉子の父: 「由良子!由良子ぉぉ!! 君がいなくなったら 僕はどうすればいいんだ」
- 美国 織莉子: (あの日、誓ったの…)
- 美国 織莉子: (伯父さまや伯母さまには 頼れない…)
- 美国 織莉子: (世間的に 成功していたとしても…)
- 美国 織莉子: (傲慢で冷徹な目をした あの人たちは)
- 美国 織莉子: (優しいお父様とは 相容れない存在…)
- 美国 織莉子: (だから…)
- 美国 織莉子: (お母様の代わりにお父様を 支えられるのはわたしだけ…)
- 美国 織莉子: (泣いているだけの子どもは とっくに卒業したのよ)
- 美国 織莉子: (いまはしっかり睡眠をとって 英気を養わなければ…)
- 美国 織莉子: …………
- ???: 「…………子」
- ???: 「ねぇ…………子ってば!」
- ドサッ…!
- ガバッ!
- 美国 織莉子: 何っ!?
- 美国 織莉子: (枕元に何かが落ちて来た…?)
- 美国 織莉子: ひっ…!
- FILENAME: text_340042-2.txt
- 美国 織莉子: (枕元に何かが落ちて来た…?)
- 美国 織莉子: ひっ…!
- 美国 織莉子: …あっ、あぁ…
- 美国 織莉子: (わたしは…知っている)
- 美国 織莉子: (この手帳が、何か… 本当は…知っている…)
- 美国 織莉子: (ずっと気づかないふりを していただけ…)
- 美国 織莉子: (だって…これは、 わたしの生きる意味を奪うもの)
- 美国 織莉子: (決して触れてはいけない…)
- 美国 織莉子: (わたしは… お父様と生きていくの…)
- ???の声: 何も知らないまま 全ての罪を忘れたままで?
- 美国 織莉子: えっ…?
- ???: 本当はわかっているんでしょう?
- ???: 自分が何をしたのか どれだけ罪深いのか
- ???: わかっているんでしょう?
- 美国 織莉子: …何を、言っているの…? わたしはただお父様のために…
- ???: そうね、お父様のため
- ???: いいのよ それでいいの
- ???: 全部忘れて ここで生きていくの
- ???: 大好きなお父様と一緒に… それで正しいの
- 美国 織莉子: …わたしは、間違ってない
- ???: …織莉子
- 美国 織莉子: …!
- 美国 織莉子: パンケーキがシロップで びしゃびしゃよ、“ ”
- ???: 「これくらいの方がおいしいんだよ!」
- 美国 織莉子: (パンケーキをシロップで びしゃびしゃにして)
- 美国 織莉子: (1日に何度もメッセージを 送ってきて…)
- 美国 織莉子: (どこか危なっかしい 困った子…)
- 美国 織莉子: (あの子の声だ)
- 美国 織莉子: (わたしはあの子と…)
- ???: …お父様はいいの?
- 美国 織莉子: えっ…?
- ???: 織莉子
- 美国 織莉子: あっ…
- ???: お父様を見捨てるの…? ねぇ…見捨てるの?
- 美国 織莉子: そういうわけじゃ…
- ???: でも、どちらもなんて 都合のいい答えはないわ
- 美国 織莉子: …………
- ???: 織莉子
- 美国 織莉子: (わたしは… 選ばなければならないのね)
- 美国 織莉子: (お父様か、あなたか…)
- 美国 織莉子: (わたしの願いは…………)
- ???: 「織莉子…」
- FILENAME: text_340042-3.txt
- ガバッ!
- 美国 織莉子: …はぁ…はぁ…
- 美国 織莉子: (いまのは…夢…?)
- 織莉子の父: 織莉子…
- 美国 織莉子: …お父様…?
- 美国 織莉子: (手に持ってらっしゃるのは …縄?)
- 織莉子の父: 織莉子… 一緒に死のう…
- 美国 織莉子: …………えっ?
- 織莉子の父: 一緒に、お母様のところへいこう
- 美国 織莉子: ………… …………
- 美国 織莉子: (ああ…そうだ… お父様は…)
- 美国 織莉子: (…お父様、大丈夫かしら?)
- 美国 織莉子: (汚職疑惑のせいで 辛い思いをされているし…)
- 美国 織莉子: (一応様子を 見に行ってみましょう…)
- 美国 織莉子: 『お父様…? いらっしゃいますか…?』
- ギィ…
- 美国 織莉子: ――っ!?
- 美国 織莉子: お父様…!?
- 美国 織莉子: あっ、あぁ…どうして… あぁあああ…
- 美国 織莉子: 裏切られた
- 美国 織莉子: お父様は ひとりでいってしまった…
- 美国 織莉子: 何も言わず わたしを置いてきぼりにした
- 織莉子の父: さぁ、いこう…
- 美国 織莉子: (…頷けばいい)
- 美国 織莉子: (ただ、頷くだけで わたしの望みは叶う…)
- 美国 織莉子: (何も言わずに わたしを置いていったお父様に)
- 美国 織莉子: (裏切られたと 思ったあの日から…)
- 美国 織莉子: (ずっと…望んでいたのよ…)
- 美国 織莉子: (あのとき、 お父様と一緒にって…)
- 美国 織莉子: …………
- 織莉子の父: どうしたんだ? 一緒にいこう…
- 美国 織莉子: わたし…
- 美国 織莉子: (頷けない…)
- 美国 織莉子: (何故…?)
- 織莉子の父: …そうか 見たんだね
- 美国 織莉子: お父、さま…?
- FILENAME: text_340042-4.txt
- 織莉子の父: …そうか 見たんだね
- 美国 織莉子: お父、さま…?
- 織莉子の父?: それを読んでしまったんだね
- 美国 織莉子: 何を言っているの…?
- 織莉子の父?: さぁ…一緒にいこう!
- 美国 織莉子: や、やめてください…!
- 美国 織莉子: (無理やり私の首に縄を…!)
- 美国 織莉子: (絞め殺すつもりなの…?)
- 織莉子の父?: 織莉子… 僕の手帳を読んでしまったんだね
- 美国 織莉子: ぁぐ… ちがっ…わたしは…っ…!
- 由良子が亡くなって 織莉子は変わってしまった
- 泣き虫だったあの子が まったく泣かなくなった
- なんでもそつなくこなすようになり
- 進学すると 多くの人望を集め 人の上に立つようになった
- 僕の子とは思えないほどに “出来すぎる”ようになった
- 僕は怖い 僕は知っている
- 能力高く 人望があり 微笑みの中に冷たさを湛えた人間を
- もう僕は疲れた 逃げようと思う
- この世から逃げようと思う
- 美国 織莉子: …………ぁ…
- 美国 織莉子: (そうだ…あの手帳は お父様が遺したもの…)
- 美国 織莉子: (わたしが 置いていかれた理由…)
- ???: 「…………!…………!」
- 美国 織莉子: (へ、部屋が…一体…?)
- 美国 織莉子: (違う…元々こうなんだわ…)
- 美国 織莉子: (わたしは幻を… 夢を見ていただけ…)
- 織莉子の父?: 織莉子 君は似ているんだよ
- 織莉子の父?: 優秀で冷酷で
- 織莉子の父?: 兄弟の中で出来の悪かった僕を 見捨てた僕の父に
- 美国 織莉子: (おじい様のこと…?)
- 美国 織莉子: (でも、知らない…)
- 美国 織莉子: (わたしは、そんな人… 会ったこともない…!)
- 織莉子の父?: …ああ、そうだろうね…
- 織莉子の父?: 父に見捨てられた僕たちは
- 織莉子の父?: 美国家の敷居を跨ぐことを 許されなかったから
- 織莉子の父?: 織莉子、君は そんな父によく似ているんだよ
- 織莉子の父?: 怖くて怖くてたまらなかったんだ
- 織莉子の父?: いつか成長して僕の無能がばれて 見下されるんじゃないかって
- 美国 織莉子: (そんなことしない…)
- 美国 織莉子: (わたしにとって お父様はずっと大切な…)
- 織莉子の父?: だから僕は危ない橋を渡って
- 織莉子の父?: …………そして失敗した
- 美国 織莉子: (やめて…)
- 織莉子の父?: 逃げたんだ僕は
- 美国 織莉子: (もうやめて… わたしはただお父様のために…)
- 織莉子の父?: 人生からじゃない
- 美国 織莉子: (わたしはお父様のために 生きてきたのに…!)
- 織莉子の父?: 君から逃げたんだ!!
- この世から逃げようと思う
- 織莉子から逃げようと思う
- 美国 織莉子: あっ…あぁあああ…!
- 織莉子の父?: でも、もう君を 置いていったりはしないよ
- 美国 織莉子: (お父様…)
- 美国 織莉子: (今度こそ… 連れていってくださるの…?)
- 美国 織莉子: (わたしの望んだ通り… 一緒に、わたしを…)
- 織莉子の父?: 君はもう生きる意味を 失わなくていいんだ
- 織莉子の父?: ―織莉子の父?― 織莉子、君はどのノブに吊られたい?
- 織莉子の父?: ―織莉子の父?― 僕のとなり… いいや同じノブがいいね
- 織莉子の父?: ―織莉子の父?― 親子ふたりよりそっていくことが 君の望みだったんだから
- 美国 織莉子: そうだ… 確かにそう…
- 美国 織莉子: あのとき、お父様が わたしをひとり置いていったから わたしは願ったの
- 美国 織莉子: お父様を通してしか見てもらえないわたしが… お父様の一部に過ぎないわたしが なぜ生きているのか…
- 美国 織莉子: “生きる意味を知りたい” って…
- 美国 織莉子: だったら、このまま… 終わらせればいい
- ???: 「…………子! 織莉子…!」
- 美国 織莉子: …………あっ…
- 美国 織莉子: お父様と一緒にお母様のところへ …どうして頷けなかったの?
- FILENAME: text_340043-1.txt
- 美国 織莉子: お父様がわたしを一緒に連れていってくれる…
- 美国 織莉子: キュゥべえに願った時に望んだ状況が そこにあった
- 美国 織莉子: けれど… お父様の言葉に頷けなかったのは
- 美国 織莉子: わたしが目を背け続けた自身の心の置き場所が すでに決まっていたからだったのかもしれない
- 美国 織莉子: だったら、このまま… 終わらせればいい
- ???: 「…………子! 織莉子…!」
- 美国 織莉子: …………あっ…
- 呉 キリカ: 織莉子ー! お腹空いたー!
- 呉 キリカ: 織莉子とおでかけだー!
- 呉 キリカ: はい、グリーフシード! 織莉子のためにとってきたよ
- 美国 織莉子: シロップ1本って…
- 美国 織莉子: ちょっと かけすぎじゃないかしら…?
- 美国 織莉子: パンケーキがシロップで びしゃびしゃよ、キリカ
- 呉 キリカ: これくらいの方が おいしいんだよ!
- 美国 織莉子: キリカ…!
- 美国 織莉子: (そうだ… わたしはもう…!)
- 美国 織莉子: 放して…!
- 織莉子の父?: くっ… 何故だい…?
- 織莉子の父?: 織莉子…一緒に…
- 美国 織莉子: いけません わたしにはもう…
- 織莉子の父?: …織莉子、いけない子だ… お前は…悪い子なんだよ…
- ???: …………
- 美国 織莉子: これは…?
- ???: わたしは罪人 あらゆる罪を犯してきた…
- 美国 織莉子: 何を言っているの…?
- ???: 忘れたとは言わせないわ、わたし
- ???: 思い出せないのなら ひとつずつ教えてあげましょう
- ???: 父のためと言いながら
- ???: 父を苦しめて死に追いやった…
- ???: 魔法少女がどんな末路を辿るのか 知っていたのに
- ???: 関係のない子どもを
- ???: 大義のためだからと インキュベーターに捧げた
- 美国 織莉子: …全ては救世のためよ…
- 美国 織莉子: 最悪の魔女から世界を守るために 必要だったことだわ…!
- ???: それで何を救えたの…?
- 美国 織莉子: …………
- ???: キリカはわたしのせいで壊れた
- ???: わたしの代わりに手を汚した… 魔法少女を殺した
- ???: わたしのせいで死んだのよ
- ???: でも、何を救えたの…?
- 美国 織莉子: わたしはまだ…!
- ???: まだ…何?
- 美国 織莉子: ――っ!?
- ???: 無駄だったわ…
- ???: 最悪の魔女になる少女は 魔法少女になってしまった
- ???: いつだって重要なことは 知らないところで起こっていて
- ???: わたしは後から知るの
- ???: 何も知らないまま 周りを傷つけて壊す
- ???: わたしに何が救えたの?
- 美国 織莉子: …………
- ???: だったら、 連れていってもらいましょう
- ???: そうすれば、もう誰も傷つけない
- 美国 織莉子: …………
- ???: 罪には罰を… 罪人は罰を受けるべきなのよ
- FILENAME: text_340043-2.txt
- ???: 罪には罰を… 罪人は罰を受けるべきなのよ
- 美国 織莉子: うっ…くぅ…
- 美国 織莉子: (また…縄が…)
- 美国 織莉子: (逃れられない…!)
- 美国 織莉子: (でも、わたしは もう見つけたの…)
- 美国 織莉子: (連れていってほしかったのは 本当…)
- 美国 織莉子: (けれど、いまのわたしは… 新しい意味を…)
- 美国 織莉子: …キリカ!
- ???: 黒革の手帳が鎌に…?
- ???: 縄を切り裂いていく…!
- 美国 織莉子: 鎌がわたしの中に…
- 美国 織莉子: (でも、痛くないわ…)
- 美国 織莉子: (むしろ… 失くしていたものを取り戻したような…)
- 美国 織莉子: (おかしなことだけど…)
- 美国 織莉子: (…いいえ 何もおかしくはないわね)
- 美国 織莉子: (わたしの胸の内には いつだって“貴女”がいるんだもの)
- ???: くっ…
- ???: どうしてだい?織莉子!!
- ???: これは!!君が! 望んだ!世界だ!!
- 美国 織莉子: いいえ、お父様
- ???: ぐっ…!
- 美国 織莉子: お父様…ではないわね
- ???: あなたはわたしで、 わたしはあなた
- 美国 織莉子: …!
- ???: だから、わかるわ!
- ???: ここの場所も!わたしも!
- ???: わたしの想いが 生み出したのよ!!
- 美国 織莉子: わたしが…?
- ???: だって、もう嫌だと思ったはずよ
- ???: もう、耐え切れない この罪から逃れたいって…!
- 美国 織莉子: …………
- ???: 罪から逃げられるだけじゃない わたしの望みも叶うわ
- ???: 今度こそ、 お父様と一緒にいける
- ???: もう置いてかれることはないの
- ???: お父様と一緒に 心中し続けること…
- ???: それが償えない罪を背負った わたしへの罰で在り救い…
- ???: そうでしょう?
- 美国 織莉子: …そうね そうだったわ
- FILENAME: text_340043-3.txt
- ???: お父様と一緒に 心中し続けること…
- ???: それが償えない罪を背負った わたしへの罰で在り救い…
- ???: そうでしょう?
- 美国 織莉子: …そうね そうだったわ
- 美国 織莉子: これは望郷 望んでいた在処
- 美国 織莉子: 在りし日のわたしの観想
- 美国 織莉子: だけどね…
- 美国 織莉子: もう、わたしの想いじゃないのよ
- ???: …否定するの?
- 美国 織莉子: 違うわ
- 美国 織莉子: かつてのわたしは
- 美国 織莉子: お父様と一緒に お母様のところへいきたかった…
- 美国 織莉子: そう思ったことは否定しない
- 美国 織莉子: でも、いまのわたしと あの頃のわたしは同じではないの
- 美国 織莉子: わたしの世界は キリカと出会って変わっていった…
- 美国 織莉子: わたしが折れそうなとき 先に折れてわたしを守ってくれたのも
- 美国 織莉子: お父様に裏切られていたと知ったあの日 消えたいと思ったわたしを 重過ぎる愛情で繋ぎとめようとしてくれたのも
- 美国 織莉子: キリカだった
- 美国 織莉子: いつしか願った“生きる意味” それは願いとは違うかたちで得ていた
- 美国 織莉子: だからわたしの願いは…
- 美国 織莉子: わたしの世界を守りたい
- 美国 織莉子: わたしの願いは ずっとすぐ近くにあったのよ…
- 美国 織莉子: 弱いわたしを…
- 美国 織莉子: 他者に縋るわたしを 認めたくないから
- 美国 織莉子: 気づかないフリをしていただけ…
- 美国 織莉子: あの子こそが… わたしの世界だったんだわ
- ???: …………
- ???: お父様は わたしを愛さなかったわ
- 美国 織莉子: …そうかもしれないわね
- ???: また繰り返すつもりなの?
- ???: あの子もいつかは…
- ???: わたしを 愛さなくなるかもしれない
- ???: 置いていくかもしれない
- 美国 織莉子: 本当にそう思っているの?
- ???: …………
- 美国 織莉子: わたしならわかるでしょう?
- 美国 織莉子: あの子の愛は そんなに軽いものではないわ
- ???: どうしても、戻るのね… 戻らずにはいられないのね
- 美国 織莉子: …ええ
- ???: …耐え切れなくなったとき またここに堕ちるわ
- ???: そのときは…
- 美国 織莉子: そのときはきっとあの子が また呼び戻してくれる
- 美国 織莉子: そうでしょう?
- ???: …そうね
- ???: さようなら、新しいわたし
- 美国 織莉子: さようなら、かつてのわたし
- 美国 織莉子: …………
- 美国 織莉子: …さようなら、お父様
- 美国 織莉子: こうして、わたしを試すような夢は終わった
- 美国 織莉子: わたしの心の中にすでにあった 大切なものが何なのか…
- 美国 織莉子: その自覚を促して
- 美国 織莉子: ―織莉子― あなたたちが、破滅をもたらす魔法少女… 八雲みたまを庇うというのなら
- 美国 織莉子: ―織莉子― わたしは、あなたたちを排して 世界を守る…
- 美国 織莉子: ―織莉子― わたしたちの世界を…!
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- 美国 織莉子: (お茶の準備は終わったわ)
- 美国 織莉子: (そろそろあの子が…)
- 呉 キリカ: 織莉子ー! ただいま!
- 美国 織莉子: おかえりなさい、キリカ
- 美国 織莉子: 頼んだものは 買って来てくれたかしら?
- 呉 キリカ: もちろんだよ!
- 呉 キリカ: 織莉子の頼みならなんだって 叶えるのが私だからね!
- 美国 織莉子: ふふっ
- 呉 キリカ: でも、シロップ2本って?
- 呉 キリカ: いくら私でも こんなにいらないよ?
- 美国 織莉子: たまにはわたしも
- 美国 織莉子: びしゃびしゃのパンケーキを 食べてみようかと思うの
- 呉 キリカ: えっ! お揃い!?
- 呉 キリカ: へへ、織莉子大好き!
- 美国 織莉子: ふふっ…
- 呉 キリカ: ああっ! 大好きなんて言葉では
- 呉 キリカ: 私の織莉子への愛は 欠片も足りないんだけど!
- 美国 織莉子: ふふっ、そうだったわね
- 呉 キリカ: そういえば、織莉子は 大丈夫なのかい?
- 美国 織莉子: ん?
- 呉 キリカ: 神浜市で発現したドッペル
- 呉 キリカ: 副作用があるとか なんとか言ってなかったっけ?
- 美国 織莉子: なんともないわ
- 美国 織莉子: (ドッペルは、神浜市のみで 魔女になる代わりに起こる現象)
- 美国 織莉子: (初めて発現するときは)
- 美国 織莉子: (自分の心と向き合うことになる って聞いたけど…)
- 美国 織莉子: (あれは全てわたしの心が 見せたものだった…)
- 美国 織莉子: (でも…)
- 美国 織莉子: (あのことがあったから わたしは本当に大切なものを…)
- 美国 織莉子: (わたしの“守るべき世界”を 見つけられたのよね)
- 呉 キリカ: 織莉子? ぼぅっとしてどうしたの?
- 呉 キリカ: まさか! やっぱり副作用!?
- 美国 織莉子: 違うわ
- 美国 織莉子: ただね…
- じー
- 呉 キリカ: 織莉子? じっと見つめてどうしたの?
- 美国 織莉子: んー…そうねぇ…
- 美国 織莉子: (わたしがしたことは 許されることじゃない…)
- 美国 織莉子: (もしかしたら、いつか 報いを受けるかもしれない)
- 美国 織莉子: (それでも…)
- 美国 織莉子: キリカがいれば
- 美国 織莉子: どんなことがあっても 大丈夫な気がする
- 美国 織莉子: …って改めて思っただけよ
- 呉 キリカ: …!
- 呉 キリカ: もちろんだよ! 私は織莉子のためにいるんだから
- 美国 織莉子: ふふっ
- 美国 織莉子: …さて、お茶にしましょう
- 美国 織莉子: びしゃびしゃのパンケーキは
- 美国 織莉子: 初めてだから 美味しい食べ方を教えてね
- 美国 織莉子: わたしの世界… わたしのあるべき場所…それは…
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