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- FILENAME: text_518610-0.txt
- <静寂に風が吹き 誰かの足跡を砂が消していく>
- <広大なる砂漠、地平は遥か遠く>
- <照りつける太陽の光が魂をも焦がしていく>
- <それでも人は砂漠を歩く>
- <どこかへ向かって…>
- <何かを求めて…>
- 静香: …ふぅ…
- 静香: どうやら到着…って、どこ…!?
- 南津 涼子: あー…こいつは砂漠のようだな
- 静香: 砂漠!噂には聞いてたけど… 本当に砂だらけ!
- ちはる: ひぃ~!暑い!
- 南津 涼子: しかし、壮観だなぁ…!
- 青葉 ちか: 確かに…!
- すなお: 見渡す限り…というやつですね!
- 静香: とはいえ、ただ砂漠…
- 静香: 時代を越えてきたっていう 実感がないけど…
- ねむ: 間違いなくやって来たんだよ
- ねむ: ここはいわゆる、古代エジプト と呼ばれた時代
- ねむ: それも末期…
- ねむ: クレオパトラ女王の治世だよ
- 南津 涼子: ビッグネームだな…
- ちはる: まさかそんな時代に 来ることができたなんて…!
- 青葉 ちか: ドキドキしちゃいます!…けど…
- 青葉 ちか: 遊びで来たわけじゃ ないですもんね…!
- すなお: そうです 私たちには目的が…!
- 静香: それにしても… クレオパトラ、か…
- 静香: …………
- 南津 涼子: ん? なんか、変な間があったな…?
- 静香: …………
- 青葉 ちか: …あ、もしかして…
- ちはる: クレオパトラと言われても、 いまいちピンときてない…?
- 静香: …ご明察
- 南津 涼子: え~!? かなりの有名人だぞ!?
- 静香: …まったく知らない…
- 南津 涼子: マジか…
- ねむ: その辺は追々説明するから まずは移動しよう
- ねむ: 少し歩くけど そう遠い距離ではないよ
- 静香: どこに向かうの?
- ねむ: プトレマイオス朝の首都…
- ねむ: アレクサンドリア
- 静香: …アレクサンドリア…
- 南津 涼子: …………
- 南津 涼子: …ピンときてないだろ?
- 静香: 時女一族、行動開始!
- ちはる: ごまかした!
- 南津 涼子: あ、待った その前に、ちょっと話が…
- 静香: …ん?
- ???: …………
- ???: …この感覚…
- ???: 何なの、一体…?
- <遥かなる時代を越えて…>
- <運命の輪が交錯しようとしている…>
- [From the opening sequence]
- 砂漠の少女はその身を神に捧げた
- 砂漠の少女はその身を神の化身にも捧げた
- [Title card] ピュエラ・ヒストリア アレクサンドリアの蜃気楼編
- FILENAME: text_518610-1_n5cdx.txt
- 南津 涼子: あっつ…
- ちはる: こっちであってるの?
- ねむ: 大丈夫
- ねむ: そのまま直進で
- 静香: …それで、今はどんな時代で どんな状況なの?
- ねむ: そうだね 説明しておくと…
- ねむ: 今は紀元前31年の7月
- 静香: それって… 江戸時代よりも前?
- ねむ: そんなレベルじゃないよ
- 青葉 ちか: “紀元前”ですから 西暦が始まる前ですよね
- ねむ: そう
- ねむ: 今いる場所は古代のエジプト
- ねむ: プトレマイオス朝が この地を治めている
- ねむ: その王…ここで呼ぶところの 「ファラオ」こそが…
- すなお: クレオパトラ女王…ですね
- 静香: なるほど…
- 静香: この地域で一番偉いのが その女王なのね…
- ねむ: その通りだよ
- ねむ: ただ、国内の情勢は かなり混沌としているんだ
- ねむ: 前年にローマ執政官が 王朝に宣戦布告しているからね
- 静香: 執政官…?
- ねむ: 政治的にも軍事的にも 古代ローマを仕切るトップだよ
- ねむ: 宣戦布告をした執政官の 名前はオクタウィアヌス
- ねむ: 一方で、クレオパトラに 味方している執政官もいるんだ
- ねむ: それがアントニウス
- すなお: …つまり… オクタウィアヌス対…
- すなお: クレオパトラ&アントニウス …という図式ですね
- ねむ: その通りだよ
- ちはる: でも、なんでアントニウスは クレオパトラの味方をしてるの?
- ねむ: 基本的なところを簡単に言うと 執政官同士の権力争いがあって…
- ねむ: アントニウスはエジプトの 国力を欲していたからだよ
- ねむ: ただ、その内実には別の理由も あったと言われているけどね
- 静香: 別の理由…?
- ねむ: 絶世の美女と名高い クレオパトラが籠絡した…とね
- 静香: …ん?どういうこと?
- 南津 涼子: つまり、だ…
- 南津 涼子: クレオパトラがアントニウスを 色仕掛けで落としたってことだよ
- 静香: …まあ!
- ねむ: ともかく、色々な事情が 折り重なって…
- ねむ: 今の緊張状態が生まれている ということだね
- 静香: …なるほど…
- 静香: それで、環さんは この時代で何を…?
- ねむ: 本の解析が難航していて断片的な 情報しか拾えてないけど…
- ねむ: お姉さんはクレオパトラの 周辺を窺ってたみたいだね
- ねむ: 可能性としては…
- ねむ: クレオパトラが魔法少女 という線もありえる
- ちはる: ええっ!?
- 青葉 ちか: そんなこと…!
- ねむ: 可能性としては捨てきれない
- ねむ: いずれにせよ、最初の 手がかりはクレオパトラなんだ
- ねむ: まずは彼女の調査から 始めた方がいい
- 静香: …そうね…
- 静香: 私たちの最大の目的は 環さんの概念の回収…
- 静香: まずは動かないと…!
- 南津 涼子: てことは、今向かっているのも…
- ねむ: もちろん、そのためだよ
- ねむ: さあ、着いた
- 静香: ここは…?
- ねむ: プトレマイオス朝の首都…
- ねむ: アレクサンドリアだよ
- FILENAME: text_518610-2_n5cdx.txt
- ねむ: さあ、着いた
- 静香: ここは…?
- ねむ: プトレマイオス朝の首都…
- ねむ: アレクサンドリアだよ
- 静香: アレクサンドリア…
- 静香: …………
- 南津 涼子: 『…って、どこ?』 みたいな顔してんな
- 静香: …そ、その通りだけど みんなはわかってるの!?
- 南津 涼子: それは…
- 南津 涼子: …わからん!
- ちはる: んー…
- 青葉 ちか: まあ、確かに…
- すなお: あんまりわかってないですね…
- ねむ: アレクサンドリアはエジプトの 北に位置している町だよ
- ねむ: 地中海の沿岸にあって 貿易の中心地でもあるね
- ねむ: それに、学者や芸術家が たくさん集まっていて…
- ねむ: アレクサンドリア図書館が 建てられたことでも有名だね
- 静香: 図書館? 図書館が有名なの?
- ねむ: ただの図書館じゃないよ
- ねむ: 収められたパピルス文書は 70万巻とも言われ…
- 南津 涼子: …ん? なんか騒がしいな…?
- 民衆: 「ファラオだ! ファラオがお通りになられるぞ!」
- 民衆: 「沿岸の別荘地からの 帰りだそうよ」
- 民衆: 「聞いてないぜ、そんなこと… おい!その辺のもの片付けろ!」
- 民衆: 「馬車の邪魔になったら事だぞ!」
- 南津 涼子: …おいおい、聞いたか!?
- 静香: …ツイてるわね それとも、予定通りってこと?
- ねむ: いや、たまたまだよ これは幸先がいいね
- 青葉 ちか: じゃ、じゃあ…
- すなお: 女王との初接近、ですね…!
- ちはる: ひー!ドキドキだ…!
- 兵士: 道をあけろ! ファラオのお通りである!
- 兵士: 邪魔だ! どけどけ!
- ???の声: やめなさい…
- クレオパトラ: そう声を荒げないで 耳障りだから
- 兵士: こ、これは…失礼いたしました…
- 静香: あの人が…クレオパトラ!?
- ちはる: ふぁ~!
- ねむ: 彼女がそのようだね… クレオパトラ7世フィロパトル
- ねむ: エジプトとローマを繋ぐ女王だ
- 青葉 ちか: 顔は…布に隠れてわかりませんね
- ねむ: …うーん、あれだと 鼻の高さもわからない…かな
- 静香: …鼻?
- ねむ: …いや、気にしなくていいよ それよりも…
- 青葉 ちか: ここからでも感じますね… 雰囲気というか、オーラというか
- すなお: いえ、それだけじゃないですね…
- 南津 涼子: ああ…
- 静香: 感じるわね…
- 静香: 魔力を…
- FILENAME: text_518610-3_n5cdx.txt
- <クレオパトラ女王の姿を見た静香たち…>
- <通りを過ぎる女王から 彼女たちは確かに“魔力”を感じた…>
- ちはる: ごめん! 遅くなっちゃった!
- 静香: 揃ったわね で、どうだった?町の様子は?
- 南津 涼子: 世情が世情なだけに ピリついてる感じはするが…
- 南津 涼子: とはいえ、特に大きい混乱が 起きそうって雰囲気でもねーかな
- ちはる: クレオパトラ女王の話も あちこちでされてたね
- ちはる: 結構、不満を言ってる人も いたけど…
- ちはる: 最後には『仕方ない』とか 『ファラオには従う』とか…
- 青葉 ちか: 私の方もそうで…
- 青葉 ちか: 結局は服従しているという 感じでした
- すなお: ローマの人とエジプトの人の間で 軋轢があるようですね
- すなお: ただ、あくまで水面下での 争いという印象です
- 静香: うん…私の方も大体同じ
- 静香: ひとつ言えるのが…
- 静香: どうも、魔法の“残り香” みたいなものを感じるの
- 静香: この町全体にね
- 南津 涼子: …だな
- すなお: ええ…
- ちはる: でも、すごいよね!
- ちはる: この格好でも怪しまれないし 言葉も通じちゃうし!
- 青葉 ちか: ねむちゃんの力 …ってことですよね!
- ねむ: そうだね
- ちはる: もしわたしが海外へ旅行する 機会があれば、ぜひ一緒に!
- ねむ: …………
- ねむ: …まあ、それはそれとして…
- ちはる: 流された!
- ねむ: おそらく、間違いないと思う
- ねむ: クレオパトラと魔法少女の間に 何らかの接点があるはず
- 静香: そういうことであれば 本腰を入れて調査しないと
- 南津 涼子: じゃ、ご挨拶といくか!
- ちはる: それはまだ早いよ!
- ちはる: まずは身辺の洗い出しから! これが捜査のセオリー!
- ちはる: 情報無しの手ぶらじゃ 真実に辿り着けないよ!
- 南津 涼子: う…一理あるな、ちくしょう…
- すなお: ですが、女王の身辺…ですか どのようなやり方で?
- 静香: だったら ご挨拶とまではいかないものの…
- 静香: お宅にはお邪魔させて もらおうかしら…ね
- クレオパトラ: …で、どうかしら?
- クレオパトラ: …民どもに不穏な動きはない?
- ???の声: はい
- クレオパトラ: …うふふ…
- クレオパトラ: 便利な力よねぇ…
- クレオパトラ: この力さえあれば 国内の治世は問題ないわ…
- クレオパトラ: あとは…ローマ
- クレオパトラ: いずれ、私の意のままに 操ってみせる…!
- クレオパトラ: …そう心得ておきなさい いい?エボニー
- エボニー: 承知、いたしました…
- FILENAME: text_518610-4_n5cdx.txt
- <…クレオパトラが魔法少女…?>
- <その疑問の答えを探すべく 静香たちが取った行動は…>
- ちはる: シュタッ…と!
- 南津 涼子: 擬音を声に出さんでいい
- すなお: 潜入中ですよ!お静かに!
- 青葉 ちか: それにしても 大胆じゃないですか…?
- 青葉 ちか: 女王の宮殿に潜入するなんて…!
- 静香: 町中で女王の身辺調査なんて たかが知れてるわ
- 静香: それよりも 本丸で調べるのが一番…でしょ?
- ねむ: 僕も同意するよ
- 青葉 ちか: 見つかっちゃいませんかね…?
- 南津 涼子: あたしら魔法少女なら普通の 人間に見つからず行動できるだろ
- ちはる: もし気づく者がいるとすれば わたしの推理によると…
- すなお: 魔法少女…ですね
- ちはる: ああ!言いたかったのにぃ!
- 静香: そういうこと…
- 静香: じゃあ、さっそく 調べ上げるとしますか…
- ちはる: にしても…さすが女王の宮殿…
- ちはる: 飾ってあるものとか 超ゴージャスというか…!
- ???の声: 動くな!
- ちはる: ひえっ!
- 静香: お出迎えが早いわね…!
- エボニー: 見知らぬ顔ばかり… エジプトの民ですらないわね…?
- エボニー: 狙いはなに?盗み? それとも…ファラオか!
- 静香: どちらかというと…ファラオね
- エボニー: なにを…!
- エボニー: …ん…! こ、この感覚…!?
- エボニー: 知っている…あの時に感じた…
- 南津 涼子: あの時感じた…だ?
- エボニー: 私の力と…近い…?
- エボニー: まさか、お前らも 神との契約を…?
- すなお: …“契約”…!
- エボニー: …いずれにせよ ここはやるしかない…
- エボニー: それが…私の仕事!
- ちはる: ああっ!
- 青葉 ちか: この人、魔法少女!
- エボニー: …魔法少女?
- 南津 涼子: つーことは、早くも目的達成か!
- ねむ: いや、そうとも限らないよ
- 南津 涼子: なんでだよ?
- ねむ: お姉さんが注視していたのは あくまでクレオパトラ女王
- ねむ: 彼女の正体を見極めるまでは 真相を突き止めたとはいえないよ
- ねむ: この本が彼女を追いかけた 1冊かどうかはわからないからね
- ちはる: な、なるほど…
- 静香: …あなた、名前は?
- エボニー: 待って、先に聞かせて
- エボニー: …お前は神と契約したの?
- 静香: …神と…か…
- 静香: 確かに、巫として 契約はしたわ…
- 静香: あの時は、ね…
- エボニー: カンナギ…? なんだそれは…?
- エボニー: …ともかく、お前らはお前らの 神と契約したということね…
- エボニー: ならば名乗るわ… 私の名はエボニー!
- エボニー: メトの一族より遣わされた 女王を守る僕!
- すなお: “メトの一族”…?
- ちはる: なんか、親近感…?
- 静香: 面白い…では、こちらも 名乗らせてもらうわね!
- 南津 涼子: おいおい…!
- 静香: 私の名は時女静香! そして私たちは、時女一族!
- 静香: 故あって女王の身辺を 探りに来たわ!
- 青葉 ちか: な、なんて高らかに…!
- ちはる: こっそり来たはずだったよね…?
- エボニー: ―エボニー― 女王の身辺…!? なんと不届きな!
- エボニー: ―エボニー― おおかた、オクタウィアヌスの 手の者でしょうね!
- 静香: ―静香― いーえ、時女の者です!
- エボニー: ―エボニー― …トキメなどという部族は 聞いたこともないけど…
- エボニー: ―エボニー― もはや問答無用!
- FILENAME: text_518610-5_n5cdx.txt
- エボニー: ―エボニー― 女王の身辺…!? なんと不届きな!
- エボニー: ―エボニー― おおかた、オクタウィアヌスの 手の者でしょうね!
- 静香: ―静香― いーえ、時女の者です!
- エボニー: ―エボニー― …トキメなどという部族は 聞いたこともないけど…
- エボニー: ―エボニー― もはや問答無用!
- エボニー: 全員まとめて ドゥアトに送ってやるわ!
- 静香: …待ちなさい!
- エボニー: …な!?
- 静香: …ドゥアトって何?
- エボニー: …はぁ!?
- ねむ: エジプト神話における 人が死後に向かう世界だね
- ちはる: …それって、つまり…
- ねむ: 平たく言うと 『あの世』…だね
- 青葉 ちか: ひぃ~!
- エボニー: ええい!訳のわからないことを ごちゃごちゃと!
- 静香: 訳がわからないことを言ったのは そっちでしょ!
- エボニー: 黙れ!
- 静香: …この匂い…! くっ!
- 南津 涼子: …え…身動きが…!
- ちはる: ふぇ…!?
- 青葉 ちか: ど、どうして…!?
- すなお: 身体が…言うことを…!
- 静香: みんな!
- エボニー: …んっ!? お前、どうして効かない…!
- 静香: 私の魔法は「阻止」…! つまり、こういう魔法なのよ…!
- 静香: あなたこそ、一体何を…!?
- エボニー: …こういう力だ…!
- 静香: くぅ…!押してくる…!
- エボニー: これで…効かないなんて…!
- 静香: (マズい…!)
- 静香: (一瞬でも気を緩めたら やられてしまう…!)
- エボニー: (攻め手を緩めたら やられてしまう…!)
- ねむ: この図式…
- ねむ: 手詰まりってやつだね…
- ねむ: あんまり魔力を消費するのは おススメできないよ
- 静香: わかってる!
- 静香: わかってる、けど…!
- エボニー: ぐっ…!
- 静香: (共倒れはマズい…!)
- 静香: (あの人の魔力が尽きてもみんな が今の状態のままだったら…)
- 静香: …こ、こうなったら…!
- 静香: …ちょっと待って!
- エボニー: …!?
- 静香: 提案があるの…!
- 静香: …お互い、同時に 矛を収めるっていうのはどう?
- エボニー: …え…!?
- 静香: このままじゃ埒が明かないわ!
- エボニー: うっ…!
- 静香: 私たちは撤退する! それで納得して!
- エボニー: 何を勝手なことを! そちらから押し入ったくせに!
- 静香: それは百も承知! あえての提案よ!
- エボニー: そもそも! そんな話、信じられないわ!
- 静香: これもあえて言うけど…
- 静香: 信じて!
- エボニー: なっ…!?
- 静香: 信じてもらうしかない! 決して嘘はつかないから!
- 静香: 時女一族の誇りにかけて!
- エボニー: …一族の…
- エボニー: …………
- エボニー: (確かにこのままでは 行き詰まるのは必至…)
- エボニー: (私が倒れたら、ファラオが…)
- エボニー: …わかったわ…
- 静香: …ありがとう…っていうのも なんか変だけど…
- 静香: とにかく、ありがとう… じゃあ、せーの…!
- エボニー: …………
- 静香: …………
- ねむ: …矛は収まった…みたいだね
- 静香: …みんなも解放してもらえる?
- 静香: それとも…
- エボニー: …約束は違えない…
- 南津 涼子: …くはっ…!
- ちはる: 動いた!
- すなお: よ、よかった…
- 青葉 ちか: で、でも、あの人…!
- 静香: みんな、退くわよ
- 南津 涼子: …えっ?
- ちはる: なんでまた…!?
- 静香: いいから!
- ちはる: あ、待って!
- 南津 涼子: ちっ!仕方ねーな…!
- すなお: は、はい!
- 青葉 ちか: ええ~!?
- エボニー: …………
- エボニー: (…追うべき?)
- エボニー: (…いや、宮殿を出ることは…)
- エボニー: …奴ら…一体…?
- FILENAME: text_518610-6_n5cdx.txt
- <静香たちがクレオパトラの宮殿に 潜入した翌日…>
- 静香: では、やはりクレオパトラの 周辺で間違いないと?
- ねむ: 昨晩の潜入で、魂の器に 概念が回収されていたからね
- 南津 涼子: だったら確定だな
- ちはる: あとは、果たしてクレオパトラも 魔法少女かどうか…だね
- すなお: でも、調査範囲は広がりましたね
- 青葉 ちか: 確かに…
- 青葉 ちか: クレオパトラ女王と エボニーさん…でしたっけ
- 青葉 ちか: 両者を追う 必要がありますから…
- 南津 涼子: それはそうだけどよ そんな面倒なことでもないだろ
- 南津 涼子: あのエボニーって奴 確かこう言ってたよな
- エボニー: ならば名乗るわ… 私の名はエボニー!
- エボニー: メトの一族より遣わされた 女王を守る僕!
- 南津 涼子: つまり、クレオパトラの 周辺で仕えているってことだろ?
- 南津 涼子: だったら、クレオパトラを探れば 一緒に引っ掛かってくるわけだ
- 静香: それはそうね…
- 静香: ただ、“メトの一族”というのも 引っかかるわ
- ねむ: あの時の会話から察するに…
- ねむ: 魔法少女の 契約にも関わってきそうだね
- すなお: その線も追わないと 魔法少女は絞り切れませんね
- ちはる: エボニー、もしかしてだけど クレオパトラ…
- ちはる: さらに、他にも魔法少女がいる 可能性が…放ってはおけないかぁ
- 静香: …ともかく、改めて クレオパトラに探りを入れる
- 静香: 今度は少し距離を取ってね
- 静香: その上で、メトの一族の調査も 並行して行う…
- 南津 涼子: …まあ、そんなとこだな
- 南津 涼子: で、クレオパトラへのアプローチ 今度はどんな感じで行く?
- 静香: ちか、あなたの魔法で お願いできる?
- 青葉 ちか: 宮殿にはいっぱい鳥さんたちが 出入りしていましたからね…
- 青葉 ちか: 情報収集、頼んでみます!
- 静香: すなおはちかのサポートを
- すなお: かしこまりました!
- 静香: 涼子とちゃるは 私とメトの一族を追うわよ
- ちはる: 了解~!
- 南津 涼子: …“もう一手”、動かしとくか?
- 静香: うん…準備はしていて
- <静香たちは再び動き出した>
- <ちかが宮殿を訪れる鳥たちから情報を収集>
- <得られるネタは些細で断片的だが ともかくそれを静香たちにフィードバックさせ 町中での聞き込み精度に厚みを持たせていった>
- <このサイクルで地道に調べていった結果…>
- 青葉 ちか: あ、静香さん!
- 青葉 ちか: すなおさんから、有力な情報を 手に入れたって聞いて…!
- 静香: うん、ちょうどあなたを 呼びにいこうと思ってたところ
- 静香: メトの一族を知っているって 人をついに見つけたの…!
- 青葉 ちか: やりましたね!
- 南津 涼子: 今晩、接触する予定だ
- ちはる: いよいよだね…!
- 静香: さて…
- 静香: 鬼が出るか蛇が出るか…
- FILENAME: text_518610-7_n5cdx.txt
- <地道な調査の末…>
- <メトの一族を知るという者と 接触できることになった静香たち>
- <一行は、その待ち合わせ場所へ…>
- ちはる: ここ…だよね?
- 静香: そのはずよ…
- 静香: 仲介役の人が連れて来る 段取りになってるんだけど…
- 青葉 ちか: その仲介役を知っているのは…
- 南津 涼子: あたしとすなおだけだ
- 青葉 ちか: で、その人はまだ…
- 南津 涼子: 姿は見えねぇな
- すなお: …ですが…
- ちはる: …ん?んん~!?
- ちはる: 何か、嫌な臭いがするけど…
- 南津 涼子: それって、悪者の、か…?
- 兵士: よお…
- 青葉 ちか: え!?兵隊…さん!?
- 静香: この人、仲介役?
- 南津 涼子: …いや、違うな
- すなお: ですね…
- 兵士: お目当ての奴は 待ってもこないぞ
- 兵士: なんせ、仕込みだからな
- 南津 涼子: …あらあら…
- 兵士: 囲め!
- 兵士たち: …………
- 静香: 取り囲まれた…!?
- 兵士: これ以上の詮索はさせんぞ…
- 兵士: この場で全員葬る…!
- 青葉 ちか: ど、どういうことでしょうか!?
- ねむ: クレオパトラの手の者が ここにいるということは…
- ちはる: メトの一族を探ることが女王の 不利益になる…ってこと!?
- 南津 涼子: …まあ、トラブルも ある程度織り込み済みだ
- すなお: 逆に、この人たちを捕まえて 詳しい情報を聞き出せますし…
- 静香: こちらにとっても好都合…!
- 兵士: …やれ!
- 兵士: うらぁ!
- 静香: はっ!
- 兵士: な、なんだ!? あの身のこなしは…!
- 静香: こういう荒事 そこそこ慣れていてね…
- ちはる: …そういうことなら!
- ちはる: わたしがまとめて お縄にしてやる~!
- 兵士: す、姿を変えた!?
- 静香: ちょっと! 人前で急に変身しないで!
- ちはる: こっちの方が手っ取り早く 終わらせられるから!
- 静香: そうかもしれないけど!
- ねむ: 気軽に人前で変身するのは あまりお勧めできないよ
- ちはる: …え…?
- ねむ: この場にいる人間以外で 目撃者がいたとしたら?
- ねむ: 変な噂が立つのは 僕達の行動を縛りかねない
- ちはる: …えーと…
- ちはる: こ、これは手品で変身したの! ね?手品だから!よろしく!
- 南津 涼子: 雑なフォロー…
- 兵士: こ、こんなこと…
- 兵士: メトの一族でもない者が どうしてできるんだ…!
- ちはる: …へ?
- ねむ: …どうやら、 そんなに影響は出ないかな
- ねむ: 魔法少女を 知っているみたいだから…
- FILENAME: text_518610-8_n5cdx.txt
- <襲ってきた謎の一団を捕縛すべく 魔法少女に変身したちはる>
- <無暗に変身することを静香にたしなめられたが 襲撃者はその光景に見覚えがあるようで…>
- 兵士: は、話の通りだった…!
- 兵士: メトの一族でもない者が なぜそのような秘儀を…!?
- 南津 涼子: …ふ~ん…
- 南津 涼子: やっぱりなんか知ってるわけだ
- 南津 涼子: あのエボニーって魔法少女…
- 南津 涼子: で、そこからのメトの一族 そしてあんたら…
- 南津 涼子: 線は繋がってるもんな?
- 兵士: くっ…!
- 静香: …捕まえて、ちゃる
- ちはる: 了解!
- 兵士: うぐっ!
- 兵士: み、身動きが…!
- 兵士: この力…!やはり…!
- 南津 涼子: じゃあ、次はあたしだ
- 南津 涼子: あんたを特別な空間にご招待して じ~っくり話を聞かせてもらう…
- 南津 涼子: あたしには そんな力があってね…!
- 兵士: な、なにをする…!やめろ…!
- <涼子の魔法により特殊空間へと 幽閉された襲撃者…>
- <そこで長時間にわたる尋問を受けた末に…>
- 南津 涼子: …ふぅ…
- 兵士: はぁ…はぁ…はぁ…
- 静香: どうだった?
- 南津 涼子: まだ隠していることは ありそうだけど…
- 南津 涼子: とりあえず休憩がてら 途中報告すると…
- 南津 涼子: まず基本情報として、こいつは メトの一族ってやつだそうだ
- 南津 涼子: それに、他の兵士たちもな 宮殿に潜り込ませているんだと
- 青葉 ちか: ええっ!?
- 南津 涼子: で、宮殿内に断片的な メトの一族の情報を流したらしい
- 南津 涼子: もちろん、その名前は出さず 巧妙に、うすーく希釈した情報を
- すなお: …あ…もしかして…
- すなお: その情報って、ちかさんが話を 聞いた鳥さんたちからも…?
- 南津 涼子: おそらく
- 南津 涼子: どのような手段かは わからなかっただろうけど…
- 南津 涼子: あたしらがキャッチする可能性が あるとして撒いた情報だ
- 南津 涼子: 他にも、町中で拾ってきたのも こいつらのネタが紛れ込んでる
- 南津 涼子: そんな“餌”が積み重なった結果 まんまと釣り上げられちまった
- 南津 涼子: …ったくよー!チマチマした 罠を仕掛けやがって…!
- すなお: 慎重に身元を隠蔽しながら 私たちを誘い出したんですね…
- 青葉 ちか: 知らず知らずのうちに…!
- 静香: 他には?
- 南津 涼子: あいつが言い放った通り エボニーはメトの一族だ
- 南津 涼子: で、今回の一件はあいつから 報告を受けて一族が動いたそうだ
- 南津 涼子: ただ、一族の秘密を 守るとかじゃなくて…
- 南津 涼子: あくまで女王に近づく 不穏分子を抹殺するためらしい
- すなお: それだけ王朝への忠誠心が 強い一族、というわけですか?
- 南津 涼子: みたいだな
- 南津 涼子: 今のところは以上 さーて、第2Rといきますか
- 兵士: う…ぐ…
- 兵士: …くそぉっ!
- 兵士: あがっ…!
- ちはる: えっ!?
- 兵士: …………
- 南津 涼子: ど、どうしたんだ、急に…?
- 兵士: …………
- 兵士: …ふ……ふふふ…
- 兵士: …ふは!ふはは!ふふふふ!
- 青葉 ちか: え、ええええ~!?
- FILENAME: text_518610-9_n5cdx.txt
- 兵士: …くそぉっ!
- 兵士: あがっ…!
- ちはる: えっ!?
- 兵士: …………
- 南津 涼子: ど、どうしたんだ、急に…?
- 兵士: …………
- 兵士: …ふ……ふふふ…
- 兵士: …ふは!ふはは!ふふふふ!
- 青葉 ちか: え、ええええ~!?
- 兵士: …ぶつぶつぶつ…
- すなお: な、なにかつぶやいてます…?
- 静香: なんなの、一体…!?
- 兵士: …自分を壊したんだよ…
- 南津 涼子: 壊した…だと!?
- 兵士: 奴の手にはめられた指輪には 仕込み針があってな…
- 兵士: それには「夢見の薬」が 塗られている
- 静香: 夢見の薬…!?
- 兵士: で、針を刺すとな そんなザマになっちまうんだ
- 兵士: 「目覚めの薬」を使わない限り ずっとこの状態だぜ…
- 南津 涼子: なんだと…!?
- 兵士: 薬はメトの一族の秘伝… 易々と手に入らない
- 兵士: どうする?お前ら…
- 兵士: こんなになっちまったこいつを 拘束し続けるのか?
- 兵士: それとも、殺しちまうか?
- 静香: …くっ…!
- 兵士: 殺したところで、だよなぁ~… 面倒事が増えるだけだ
- すなお: どうしてこんなことを…!
- 兵士: 俺たち一族は死と踊る…
- 兵士: ゆえに窮地に陥ったからといって 簡単に死を選ばない
- 兵士: 最後まで抗うが故に 編み出した術だ
- 兵士: その末での死なら、ドゥアトの 道行きも足が軽くなるというもの
- 兵士: 死を貴ぶからこそ 死を軽々しく扱わぬ
- 兵士: そうやって長い年月を 生き抜いてきたのだ…!
- 静香: ……!
- 兵士: わかったか!
- 兵士: お前らに我が一族の深奥に 触れる勇気があるか?
- 南津 涼子: …触れてやろうじゃねぇか!
- 南津 涼子: 話はてめーらに聞く!
- 兵士: はっ…
- 兵士: 手遅れだ
- 兵士: …うっ!
- 兵士: …くくく…
- 兵士: くははははは!
- 南津 涼子: こ、こいつらも…!
- 通りがかりの人: 「な、なんだなんだ…?」
- 南津 涼子: …ちっ!
- ちはる: わわっ!
- ちはる: ちょっとマズそうだよ…!
- 静香: くっ…!
- FILENAME: text_518610-10_n5cdx.txt
- 通りがかりの人: 「な、なんだなんだ…?」
- 南津 涼子: …ちっ!
- ちはる: わわっ!
- ちはる: ちょっとマズそうだよ…!
- 静香: くっ…!
- すなお: 情報源がこの状態では 留まっていても…!
- 静香: …あー、もう!
- 静香: …撤退よ!撤退!
- ちはる: ひー…また砂漠に来ちゃった…
- すなお: 結構逃げちゃいましたね…
- 静香: …いいのよ
- 静香: もはや私たちはメトの一族に 目を付けられている…
- 静香: そう思って間違いないわ
- 静香: だったら、町に留まると また襲撃を受ける可能性もある
- 静香: そうなると、下手にこちらの 手の内をさらすことになるかも…
- 南津 涼子: うーん…
- 静香: であれば、ここは一旦 距離を取った方がいいでしょ
- 静香: それに、無用な騒ぎは 歴史に対しても…
- ねむ: あんまりよくはないね
- 静香: 現時点ではどう?
- ねむ: 収束の範囲内…と思いたいね
- 静香: そう…
- 青葉 ちか: と、ところで、あの…
- 静香: なに?
- 青葉 ちか: さっきの人たち、放っておいて よかったんでしょうか…?
- 南津 涼子: いずれ仲間が回収するだろ
- すなお: おそらく、それも計算の内かと…
- 青葉 ちか: そ、そうなんですか…?
- 南津 涼子: 言ってみりゃ、さっきのは 身体を張った駆け引きさ
- 南津 涼子: あんな薬を打って、リスクが ゼロってこともないだろうに…
- ちはる: だ、だよね… 完全に目が飛んでたもん…
- 静香: …でも、収穫もあるわね
- 静香: 脅しのつもり だったんでしょうけど…
- 静香: メトの一族の断片的な情報は 掴むことができた
- 静香: それに、エボニーという 魔法少女とも明確に線で繋がった
- 静香: さらに、その先には クレオパトラ女王まで…
- 南津 涼子: もっとその辺を探って あぶり出していけば…
- 南津 涼子: 最終的に、魔法少女は誰で 何人いるのか…
- 南津 涼子: 答えが見えてくる…ってわけだな
- すなお: ですね…!
- ねむ: いずれにせよ、事態の中心地は 宮殿にあるようだ
- ねむ: でも、そこからは物理的に どんどん離れてしまっている…
- ねむ: さて…どうする?
- 静香: …時間はかかるけど…
- 静香: 外堀で手がかりを 拾い上げていくしかないようね
- <一方、その宮殿内では…>
- 兵士: エボニー…
- エボニー: …どうだった?
- 兵士: 捕縛には失敗
- 兵士: 逆に夢見の薬を使うところ まで追い込まれたようだ
- エボニー: …そう…
- 兵士: 仲間は既に回収したが 連中の行方は掴めていない
- エボニー: …………
- エボニー: …再襲撃の可能性もあるわ
- エボニー: 宮殿内の警備は厳にと 仲間たちに伝えて
- 兵士: 承知…
- エボニー: …くっ…
- エボニー: (なんなの、あいつらは…)
- エボニー: (私と同じ契約を…?)
- エボニー: …知りたい…
- エボニー: (どのような者たちなのか…)
- エボニー: (私は知りたい…)
- <しばらく経っても、エボニーは静香たちの 消息を掴むことができないままだった>
- <彼女が晴れない胸の内を抱えつつも 月日は過ぎていく…>
- <するとやがて、プトレマイオス朝は 岐路にさしかかろうとしていた>
- <ローマからの情報に曰く…>
- <オクタウィアヌス軍に進発の動きあり、と…>
- FILENAME: text_518610-11_n5cdx.txt
- <――オクタウィアヌス、動く――>
- <ローマとエジプトの間に さらなる緊張が走り始めたその頃…>
- <静香たちは…>
- ちはる: ひー…ひー…
- ちはる: 次の街、まだですかね…
- ねむ: この移動スピードだと…
- ねむ: あと3時間ってところだね
- ちはる: ひー!
- 南津 涼子: まったく…地道な旅だな…
- 青葉 ちか: でも、アレクサンドリア以外の 街を巡って情報を収集する…
- 青葉 ちか: それくらいしか、私たちには 有効な手段がないですからね…
- ちはる: それなんだけど…
- ちはる: もう一度、エボニーと直接 対峙するっていうのは…?
- 南津 涼子: 却下だな
- ちはる: やっぱダメ…?
- 南津 涼子: まず、また戦闘になった場合 静香以外は足手まといなだけ
- ちはる: うっ…!
- すなお: それに、あの薬を使われたら 元も子もないですからねぇ…
- 兵士: …………
- 南津 涼子: ど、どうしたんだ、急に…?
- 兵士: …………
- 兵士: …ふ……ふふふ…
- 兵士: …ふは!ふはは!ふふふふ!
- 青葉 ちか: え、ええええ~!?
- ちはる: だよね…
- 静香: でも…
- 静香: いずれ彼女とは再会する必要が あることも確かね
- ちはる: え?
- 静香: ただ、今はその時じゃない…
- 静香: それに、今の宮殿内は 大騒ぎの真っ最中だろうしね
- 南津 涼子: 戦争か…
- すなお: それが辿るべき歴史の必然 であることはわかりますが…
- 青葉 ちか: 嫌ですよね、戦争なんて…
- ねむ: かといって、決して 干渉することは許されない
- ねむ: やれることは 静観することのみ…
- ちはる: あのさ…結果ってやっぱり…
- ねむ: 教えた通り 覆ることはないよ
- ちはる: そう…
- 静香: いつの世も争いね…
- 静香: 私たちがいる、この過去も 私たちがいた、この先の未来も…
- 南津 涼子: やれやれ…
- 南津 涼子: …ん…?ラクダ…? 近づいてくるぞ…
- すなお: 1、2…3頭…
- ちはる: 人も乗ってるね…
- 静香: …ちか! 鳥に調べさせて!
- 青葉 ちか: は、はい!
- 青葉 ちか: えーっと…ハゲワシさん! そこのハゲワシさん!お願い!
- 青葉 ちか: …うん…え!?
- 青葉 ちか: 兵士の恰好をしているそうです!
- 南津 涼子: …もしかして、メトの一族か!?
- すなお: ついに嗅ぎつけられましたか…!
- 静香: 見つからないように移動して 目的の町へ入るわよ!
- ちはる: ひ、ひーっ!
- <そして、運命の決戦が始まる…>
- <紀元前31年9月2日…>
- <「アクティウムの海戦」の戦端が開かれた>
- FILENAME: text_518610-12_n5cdx.txt
- エボニー: …あの頃、ローマの政争は…
- エボニー: アントニウスとオクタウィアヌス の直接対決となっていた
- エボニー: アントニウスが近づいたのは ファラオ、クレオパトラ様…
- エボニー: クレオパトラ様もまた アントニウスの力を利用していた
- エボニー: そんなクレオパトラ様に対し オクタウィアヌスが宣戦を布告…
- エボニー: ついに戦いが始まってしまった…
- クレオパトラ: ふん…
- クレオパトラ: 狙いはアントニウスであることは 火を見るよりも明らか
- クレオパトラ: それを、私に宣戦布告するなど 迂遠なことを…
- 兵士: アントニウス様は艦隊を アンブラキア湾へ集結させました
- クレオパトラ: ふむ…
- クレオパトラ: 我らも艦隊を出す! いそぎ編成せよ!
- 兵士: はっ!
- クレオパトラ: エボニー 戦場での護衛、頼むぞ
- エボニー: かしこまりました…
- エボニー: やがて両軍は アクティウム岬沖で激突した
- エボニー: 開戦当初、オクタウィアヌスは 劣勢を強いられていたものの…
- エボニー: 間もなく形勢は一気に傾いた
- エボニー: 目も当てられない惨状に クレオパトラ様は…
- クレオパトラ: ど、どういうこと…! 我が軍がこんなにも…!
- 兵士: このままでは危険です! 完全に包囲されています!
- クレオパトラ: …エ、エボニー! お前の力でどうにかせよ!
- エボニー: 恐れながら、このような乱戦状況 に加え広範囲となると効果は…!
- クレオパトラ: …ええい! 肝心な時に役に立たないとは!
- 兵士: 今なら包囲網に 若干の隙があります!
- 兵士: アレクサンドリアに戻り 捲土重来を…!
- クレオパトラ: そ、そうよ! そなたの言う通り!
- クレオパトラ: 退却せよ! アレクサンドリアへ向かえ!
- クレオパトラ: 私を守れ!ファラオを守るのだ!
- 兵士: はーっ!
- エボニー: …………
- エボニー: クレオパトラ様の離脱により 戦線は崩壊…
- エボニー: アクティウムでの戦いは 敗北に終わった…
- クレオパトラ: く…ぐぐぐ…!
- クレオパトラ: おのれオクタウィアヌス…! 忌々しい…!
- 兵士: 敵の勢いは増しています…
- 兵士: このままでは アレクサンドリアも…
- クレオパトラ: …くっ…
- クレオパトラ: こうなれば、やれる手段は すべてやるしかあるまい…
- クレオパトラ: まずは外交からぞ 停戦の糸口を探りなさい
- 兵士: は! …しかし、首都防衛の方は…
- クレオパトラ: それは私がアントニウスと 協議をします
- クレオパトラ: 至急、手筈を!
- 兵士: ははーっ!
- クレオパトラ: …エボニー 道中の警護、ぬかりなく
- エボニー: は…
- クレオパトラ: …いい、エボニー…
- クレオパトラ: あなたの命は私を 守るために使うの
- エボニー: …はい…
- クレオパトラ: あなたの力は私の栄華を 守るために使うの
- エボニー: …はい…
- クレオパトラ: あなたの人生は私のものなの!
- エボニー: …はい…
- クレオパトラ: こんな状況になったとて それをゆめゆめ忘れないこと
- クレオパトラ: いいわね…
- エボニー: …………
- エボニー: …はい…
- ???: よいか、エボニー
- ???: お前の命は 王朝へと捧げられるもの…
- ???: 王朝に生き、王朝に死せ
- ???: それが我ら一族の道…
- ???: お前が歩く道だ…
- ???: ゆめゆめ忘れるな…
- エボニー: 私の命は王朝に捧げられた…
- エボニー: それが宿命であるなら 間もなく燃え尽きるだろう…
- エボニー: なぜなら…
- エボニー: もはや王朝に 未来はないからだ…
- FILENAME: text_518610-13_n5cdx.txt
- <アレクサンドリアに逃げ帰った クレオパトラは外交ルートを開くと…>
- <アントニウスのことは考えず オクタウィアヌスに恭順の意を示した>
- <しかし、停戦の条件が折り合わず失敗…>
- <すると、かつてのローマで権勢を誇った 終身独裁官・カエサルとの間に もうけた息子、カエサリオンを 国外へと逃亡させた>
- クレオパトラ: では、カエサリオンは無事に 出発したのね?
- 兵士: はい 教育係を随伴させ南へ
- クレオパトラ: …ふぅ… まずはよし…
- クレオパトラ: …それで、オクタウィアヌスは?
- 兵士: 既にこちらへ向けて 進軍中とのこと…
- クレオパトラ: …アントニウスは?
- 兵士: 残存勢力をまとめ 最終決戦に挑まれるそうです…
- クレオパトラ: …くっ…
- 兵士: それと アントニウス様のお耳に…
- クレオパトラ: 私がオクタウィアヌスに 接近したことが知れた…でしょ
- 兵士: は、はい!
- クレオパトラ: 把握してるわ…
- クレオパトラ: 今にもここへ乗り込んでくる 勢いだということもね…
- 兵士: 今はまだ軍備を整えることで 司令部に留まられていますが…
- クレオパトラ: いずれ来るわね…
- 兵士: 左様かと…
- クレオパトラ: …………
- クレオパトラ: 人払いを
- 兵士: はっ…
- クレオパトラ: エボニーは残りなさい
- エボニー: …承知しました
- クレオパトラ: …エボニー…
- クレオパトラ: 私がアントニウスを裏切り…
- クレオパトラ: オクタウィアヌスと和議を 結ぼうとしていたこと…
- クレオパトラ: 外聞が悪い事、甚だしいわよね?
- エボニー: …………
- クレオパトラ: 民衆からの支持に影響が出るわ
- クレオパトラ: オクタウィアヌスに従ってでも この王朝は残さないと…
- クレオパトラ: しかし、そもそも民が離れては 王朝も成り立たない…
- クレオパトラ: 外患の対処と同時に 内憂への配慮も必要…
- クレオパトラ: それはわかるわね?
- エボニー: はい…
- クレオパトラ: そのためにも、ちょっとした 芝居を上演する必要があるの…
- クレオパトラ: 筋はすでに 私が書いておいたから…
- クレオパトラ: あとは演出と実演のみ…
- クレオパトラ: そこで、あなたの出番よ
- エボニー: 私…ですか…?
- クレオパトラ: 先の海戦ではまったく役に 立たなかったあなたの力だけど…
- エボニー: …………
- クレオパトラ: こういう仕事には うってつけなのよね…
- クレオパトラ: いい?今から筋を説明するから よく聞きなさい
- クレオパトラ: そして、すぐに実行するの
- エボニー: …………
- エボニー: …はい、かしこまりました…
- FILENAME: text_518610-14_n5cdx.txt
- <紀元前30年8月1日…>
- <アントニウスは自殺を図った>
- <彼は瀕死の状態でクレオパトラのもとへ 運び込まれ、今際の際で対面を果たした>
- クレオパトラ: おお!アントニー! な、なんということを…!
- アントニウス: …………
- クレオパトラ: そんな… もうすぐ死ぬだなんて…!
- クレオパトラ: 死んではなりませぬ!
- クレオパトラ: …え?酒をご所望ですか?
- クレオパトラ: 誰ぞ、酒を!
- エボニー: はい…
- 兵士: …おい、なんでアントニウス様は 自裁なんてことを…?
- 兵士: アントニウス様の 側近の話によると…
- 兵士: どうやらクレオパトラ様が自裁 されたという誤報を聞いたらしい
- 兵士: それで悲嘆のあまり… とのことだ
- 兵士: そんな発作的にか!? 裏どりもされずに…?
- 兵士: ああ、そうみたいだな…
- 兵士: 信じられん…
- エボニー: …………
- クレオパトラ: …ええっ?
- クレオパトラ: オクタウィアヌスに 慈悲を乞え、と!?
- クレオパトラ: そんなこと! できようはずが…!
- クレオパトラ: ああ、アントニー…! アントニー…!
- クレオパトラ: うっ…ううっ…
- クレオパトラ: …旅立たれてしまった…
- 兵士: …………
- エボニー: …………
- <果たして、この一連の悲劇は…>
- <クレオパトラによって仕組まれた 茶番に過ぎなかった>
- <あの夜…>
- クレオパトラ: いい?今から筋を説明するから よく聞きなさい
- クレオパトラ: そして、すぐに実行するの
- エボニー: …………
- エボニー: …はい、かしこまりました…
- クレオパトラ: 今からあなたは アントニウスのもとへ行きなさい
- クレオパトラ: そして、こう伝えるのです
- クレオパトラ: 私が自殺した、と
- エボニー: …え!?
- クレオパトラ: そう言っても 彼は簡単に信じないでしょうね
- クレオパトラ: そこであなたの力が必要なの
- クレオパトラ: あなたの“魅了”の力がね…
- エボニー: そ、それはどういう…?
- クレオパトラ: まず、私が自殺したとしっかり 信じ込ませる…
- クレオパトラ: しかも、とびきりの悲しみが 彼を襲うようにね…
- クレオパトラ: あなたの力を使えば 造作もないことでしょ?
- エボニー: う…は、はい…
- クレオパトラ: そして持たせるの…
- クレオパトラ: 彼に刃を…
- エボニー: …刃…
- クレオパトラ: そして、部下の見ている前で 自刃するよう仕込みなさい
- クレオパトラ: ただし、瀕死の状態で 留めること
- クレオパトラ: 私の目の前に辿り着く程度にね…
- エボニー: そんな…! そんなこと…!
- クレオパトラ: …逆らうっていうの!? この私に!
- クレオパトラ: お前は私の言うことを 聞いてればいいの!
- クレオパトラ: 口答えなんて 決して許されないのよ!
- クレオパトラ: 私の筋通りになれば、世間は これを美談と持て囃すはず!
- クレオパトラ: そうすれば、私の裏切りから 目をそらすこともできるの!
- エボニー: ク、クレオパトラ様…!
- クレオパトラ: やるのよ、エボニー!
- クレオパトラ: あなたはやるしかないの!
- エボニー: う…うう…!
- クレオパトラ: …わかったら さっさと行きなさい…
- クレオパトラ: 吉報を待ってるわ
- クレオパトラ: …あら、悲報、かしら…
- クレオパトラ: あはははは…!
- エボニー: …………
- エボニー: (これが…)
- エボニー: (これが私の命を捧げた ファラオのやること…?)
- エボニー: (今までも無理難題を 押し付けられてきたけど…)
- エボニー: (今回はあまりにも…!)
- エボニー: (あれほどの蜜月関係を結んだ アントニウスをかように…!)
- 兵士: …で?やるんだろ?
- エボニー: うっ…!
- 兵士: ファラオの言うことは 絶対服従なのだ…
- 兵士: それが我ら一族の掟…
- エボニー: …………
- エボニー: わ、わかっている…
- エボニー: (…しかし、私の人生とは 一体なんなのだ…)
- 兵士: それと… 例の侵入者たちだがな…
- 兵士: 性懲りもなくアレクサンドリアに 向かっているらしい
- エボニー: …なに!?
- 兵士: ここへまた現れる可能性は高い
- 兵士: ファラオを必ずお守りしろ いいな…
- エボニー: …奴らが、また…
- エボニー: (私と同じような力を持つ あの女が…)
- FILENAME: text_518610-15_n5cdx.txt
- <アントニウスの死去から数日後…>
- ちはる: …………
- 南津 涼子: 今度は擬音なしだな
- ちはる: へへ…それほどでも…
- 南津 涼子: 別にほめてねーよ…
- 青葉 ちか: でも、以前と比べて 警備が緩いというか…
- すなお: それだけ状況がひっ迫している ということですかね…
- すなお: 守る兵士も減っているというか…
- 静香: しっ…! 誰か来る…!
- クレオパトラ: ふふふ…
- クレオパトラ: あは…あははは…!
- クレオパトラ: ここにいるの?アントニー?
- すなお: あの人…クレオパトラ!?
- クレオパトラ: どこなの~! 出てきてよ~!
- クレオパトラ: 私が裏切ったこと 怒ってるの~?
- クレオパトラ: それとも、あの筋が 気に入らなかったの~?
- クレオパトラ: …いいから出てきなさいよ!
- クレオパトラ: …うう…許して… あなたなら許してくれるわよね?
- 南津 涼子: …何を言ってるんだ…?
- すなお: ひどく錯乱してますね…
- ちはる: あと…お酒の匂い…?
- 静香: …魂の器は?
- ねむ: 反応なし
- 静香: ということは、やっぱり…
- エボニー: クレオパトラ様! こちらに来てはなりません!
- 青葉 ちか: エボニーさん…!
- 南津 涼子: 今はどうだ?
- ねむ: 反応…あり
- 南津 涼子: …決まりだな 本が追いかけているのはこっちだ
- ねむ: エジプト界隈の魔法少女も 今はあの子だけのようだね
- ねむ: これまで行ってきた調査からも まず間違いないはずだ
- 静香: …では、再会よ
- 静香: エボニー…
- エボニー: …………
- エボニー: …やっぱり来てたのね…
- クレオパトラ: アントニーが来たの? どこ!連れてきて!早く!
- エボニー: クレオパトラ様…
- エボニー: ご無礼を…
- クレオパトラ: うっ…
- エボニー: しばし 玉座にてお休みください…
- 静香: かいがいしいわね
- エボニー: …私の主君だから…
- 南津 涼子: なかなかの ご乱心だったようだけど?
- エボニー: …アントニウスが 死んだ日を境に…
- エボニー: 心が壊れてしまったのよ…
- エボニー: きっと、呪いね… アぺプに魅入られたのだわ…
- ちはる: アぺプ…?
- ねむ: エジプト神話の邪神だよ
- 南津 涼子: ふーん…でもよ ホントに呪いなんてあんの?
- エボニー: …え!?あなた、何を…!
- 南津 涼子: いやさ、あたしからすると こう見えんのよ
- 南津 涼子: 今のこの状況に耐えられなくて 精神の堤防が決壊した…みたいな
- 静香: だとしたら、それだけじゃないわ 今までやってきたことの累積…
- 静香: 膨大な心の負債から染み出た 罪の意識とかにも…
- エボニー: …………
- 静香: エボニー 私たちはあなたに用があるの
- エボニー: 私に…
- 静香: 話を聞いてもらえる?
- 静香: そして…あなたの 話も聞かせてもらえる?
- エボニー: …………
- エボニー: …そうか…
- エボニー: …私も密かに、お前たちと 話がしたいと思っていた
- 南津 涼子: おう!いいね! 話が早い!
- エボニー: …しかし…!
- 南津 涼子: なっ…!
- 青葉 ちか: 体が…!
- すなお: また魔法を…!?
- ちはる: 話をするんじゃ… なかったの…!
- 静香: くっ…!
- エボニー: 私は私の仕事を 全うするしかないのよ…
- エボニー: 歩んできた道は… もはや引き返せない!
- [Part 1 end]
- ---
- [Part 2 start]
- FILENAME: text_518620-1_0b1U9.txt
- <時を越えていろはが追っていた魔法少女が エボニーであることを確定させた静香たち>
- <しかし、彼女は対話を拒否し、 静香たちを襲った…!>
- 南津 涼子: なっ…!
- 青葉 ちか: 体が…!
- すなお: また魔法を…!?
- ちはる: 話をするんじゃ… なかったの…!
- 静香: くっ…!
- エボニー: 私は私の仕事を 全うするしかないのよ…
- エボニー: 歩んできた道は… もはや引き返せない!
- 静香: みんな…!
- 南津 涼子: だ、だめだ…! 耐えようとしているけど…!
- ちはる: 意識が飛ばされ…そう…!
- エボニー: やはりお前だけには 私の力が効かないようね…
- エボニー: しかし、この前とは違うわ!
- エボニー: 決して退かない! 力が尽きようとも…!
- エボニー: いや、もはやこの命… ここで使い切ってしまえば…!
- 静香: 何を言ってるの…!
- エボニー: はぁぁぁぁ!
- 静香: (この勢い…! 魔力が尽きてしまうわ…!)
- 静香: (そうなる前に…!)
- 静香: 今よ!
- ???: 了解であります
- エボニー: うっ…!
- 静香: ―静香― よしっ!
- エボニー: ―エボニー― こ、香炉が…!
- 南津 涼子: ―涼子― …解けた!
- 静香: ちゃる!
- ちはる: 捕まえた!
- エボニー: あぐっ…!
- 青葉 ちか: や、やりました!
- すなお: 作戦成功ですね!
- 静香: ふぅ~…
- 静香: ご苦労様、旭
- 旭: 任務完了でありますか
- エボニー: ま、まだひとり…!?
- 静香: 切り札は、ここぞという 時に出さないとね…
- <時は戻り…>
- <静香たちがこの時代に到着した頃…>
- 静香: 時女一族、行動開始!
- 南津 涼子: あ、待った その前に、ちょっと話が…
- 静香: …ん?
- 南津 涼子: いや、ここに行く前からよ 旭がさ…
- 南津 涼子: あれ…? 旭?おーい、旭ー!
- 旭: 遅れたでありますー!
- 旭: ただいま現着したであります!
- 南津 涼子: おお、来た来た
- 南津 涼子: 旭がよ、別行動したいんだってさ
- 静香: 別行動?
- 旭: はい
- 旭: 我を入れると、都合6人の 調査部隊となりますが…
- 旭: ちと行動するには多いかと 思うのであります
- ちはる: 5人も6人も大差ないんじゃ…?
- 旭: 微妙にあるのであります!
- 旭: 6人では多数決を取る時も 真っ二つになる可能性も!
- 南津 涼子: そこ心配するのかよ…
- 南津 涼子: …でも、まあ、確かに 意見が割れた時は面倒だな…
- 旭: それに、ここは勝手のわからない 時代であります
- 旭: 遊軍を待機させた方が いざ何か起きた時に…
- 青葉 ちか: 助けてくれる…というわけですか
- 旭: そうであります!
- すなお: スーパーサブ、みたいな…
- 旭: 遊軍であります!
- すなお: あ、は、はい…
- 南津 涼子: …どうする?
- ねむ: 一聴に値する提案だと思うけど
- 静香: うん…
- 静香: 別行動する人材として 旭ほど適任はいないわね…
- 旭: では…
- 静香: そうしましょ
- 静香: ただし、常につかず離れずの 距離にいること
- 静香: それと、定時連絡だけはすること
- 静香: 念じて話しかけてくるなり その手段は任せるわ
- 旭: 了解であります!
- 静香: 転ばぬ先の杖…
- 静香: あなたの提案に 助けられたわ
- 南津 涼子: 勲章モノだな!
- 旭: 光栄であります!
- 静香: …さて…
- 静香: ゆっくりお話しましょうか
- エボニー: …………
- FILENAME: text_518620-2_0b1U9.txt
- 静香: …さて…
- 静香: ゆっくりお話しましょうか
- エボニー: …………
- 静香: まずは、私たちの話からね…
- 静香: あなたも知っている通り 私たちはこの町を離れた…
- 静香: そして、アレクサンドリア周辺の 街を訪ね歩きながら…
- 静香: メトの一族の情報に絞って 聞き込みを重ねていた
- 静香: クレオパトラ、あなた… そして…
- 静香: あなたから出た メトの一族という名前
- 静香: 最後に出た糸口を辿れば やがて遡って核心へ辿り着く
- 静香: クレオパトラの調査が そもそも目的だったからね
- エボニー: 調査…?
- 静香: それがなんのためかは 追々話すとして…
- 静香: 先に確認させてもらえる?
- エボニー: …………
- 静香: 私たちはギザにあった 朽ちかけた集落に辿り着いた
- ちはる: すごかったね! ピラミッドにスフィンクス!
- 南津 涼子: 脱線するな
- ちはる: あ…ごめーん…
- 静香: そこにいるという 老人の話を聞きにね
- 静香: 情報によると、その老人はかつて メトの一族を密かに抜けたとか…
- エボニー: …バカな! そんな者が…!
- 静香: そう…私もほぼ疑っていた
- 静香: なんせ、それまで散々に ガセ情報を掴んできたから
- 静香: だから、その老人から 聞いた話の答え合わせをしたいの
- エボニー: …答え…?
- 静香: その老人は、こう語っていたわ…
- 老人: 「この命、もはやいくばくもない…」
- 老人: 「こうして逃げ隠れてきたが… あんたに伝えることで少しでも 葦の原野へ近づけんことを…」
- 老人: 「…しかし…げに罪深きはメトの一族じゃ…」
- 老人: 「なぜわしはあの一族に 生まれ落ちたのだ…神々よ!なぜだ!」
- 静香: メトの一族は 怪しげな神を信奉している…
- 静香: それは“白き獣の神”…
- 静香: 自らを『キュゥべえ』と 名乗っている…と
- エボニー: …うっ…!
- エボニー: (知っているの!?)
- エボニー: (私が契約した神のことを…!)
- FILENAME: text_518620-3_0b1U9.txt
- 静香: メトの一族は 怪しげな神を信奉している…
- 静香: それは“白き獣の神”…
- 静香: 自らを『キュゥべえ』と 名乗っている…と
- エボニー: …うっ…!
- エボニー: (知っているの!?)
- エボニー: (私が契約した神のことを…!)
- 南津 涼子: んで、こう言ってたぜ
- 南津 涼子: メトの一族は、少女と神を 引き合わせて契約させる
- 南津 涼子: 少女は契約の見返りとして 願いをひとつ叶えてもらえる
- 南津 涼子: だが…
- 南津 涼子: その願いはすべて一族の目的に 寄与するものに限られる…
- エボニー: …………
- 老人: 「その目的とは何か…」
- 老人: 「それはな… 王朝の庇護を受ける…ということだ」
- すなお: エジプトを支配する王朝の 繁栄を盤石にするための願い…
- すなお: それを強制的に言わされていた…
- すなお: しかも 今に始まったことじゃない…
- すなお: ずっと昔から、歴代のファラオと 密かに繋がり、すり寄っていた…
- すなお: …そう仰ってました
- エボニー: …………
- 青葉 ちか: さらに、契約した少女は力を得て 魔の神を倒す責務を課せられた…
- 青葉 ちか: また、そうすることで 少女たちは力を永らえることも…
- 青葉 ちか: ただ、メトの一族はそのこと だけに専従させることは許さず…
- 青葉 ちか: 少女をファラオの側近として 王室に献上…
- 青葉 ちか: 得た力をファラオのためだけに 使わせていた…
- 青葉 ちか: …合ってますか?
- エボニー: …くっ…!
- 静香: つまり、メトの一族は…
- 静香: 少女を白い獣の神と契約させ 王室繁栄の願いを叶えさせる
- 静香: 少女は力を得て、魔の神を 打倒する使命を課されつつも…
- 静香: メトの一族の意向によって 王室へと送り込まれ…
- 静香: その力をファラオのためにのみ 行使させられてきた
- 静香: それも、遥か昔からずっと…
- エボニー: う…うう…!
- 静香: 少女に人権はなく、人生はなく ただ命を王朝に捧げるのみ…
- エボニー: …うう…ううう…!
- 静香: あなたも、そうなんでしょ?
- エボニー: …くぅっ…!
- 南津 涼子: …あのじいさん、こんなことも 言ってたよな…
- 老人: 「今のファラオ…クレオパトラ…」
- 老人: 「あれはそもそも、カエサルや アントニウスを手玉に取れるような 美貌も頭脳も持っておらなんだ…」
- 老人: 「すべては、捧げられてきた 少女たちの力だ…」
- 老人: 「あの女は、まやかしのファラオだ…!」
- FILENAME: text_518620-4_0b1U9.txt
- 老人: 「今のファラオ…クレオパトラ…」
- 老人: 「あれはそもそも、カエサルや アントニウスを手玉に取れるような 美貌も頭脳も持っておらなんだ…」
- 老人: 「すべては、捧げられてきた 少女たちの力だ…」
- 老人: 「あの女は、まやかしのファラオだ…!」
- エボニー: …う…ううう…!
- エボニー: そうよ! その通りよ!
- 静香: …………
- 南津 涼子: …てことは…
- エボニー: お前たちが見つけた 老人の話…
- エボニー: すべて本当よ… いたのね、一族を抜けた者が…
- 静香: …やっと… 真相に手が届いたわね…
- 青葉 ちか: そうなんですね… クレオパトラ女王って…
- エボニー: あの方は…
- クレオパトラ: …………
- エボニー: 私よりも以前に仕えていた 少女たちの願いの化身…
- エボニー: 幾人もの命を吸い上げて 形作られた…ファラオ…
- 静香: そう…だったのね…
- ねむ: これで疑問が明確に解消された
- ねむ: だから、お姉さんは 監視していたんだね
- ねむ: 彼女のもとに魔法少女たちが 寄越されてくるから…
- 静香: あなたは何人目だったの?
- エボニー: 知らない…
- エボニー: 知ったところで関係ない…
- エボニー: しょせんはファラオに 使い捨てられる命よ…
- エボニー: ふふ…ふふふ… ようやく気づいた…
- エボニー: …いや、違うわね…
- エボニー: 今まで目を背けていた事実を 直視することができた…!
- エボニー: 私はメトの一族に生まれ!
- エボニー: ファラオに捧げられるために 育てられて!
- エボニー: ファラオの命運と共に死する者!
- エボニー: …なんて惨めな人生… …くやしい…
- エボニー: 一族を抜けた老人の悔やむ 気持ちがわかるわ…
- エボニー: どうしてあんな連中に 育てられてしまったの!
- エボニー: どうしてあんな神と 契約をさせられてしまったの!
- エボニー: …ふ…ふふふ…! もはや滑稽ですらあるわ…
- エボニー: 笑うなら笑いなさい… この情けない生き様を…
- 静香: …笑えないわ
- エボニー: …そうか 笑えもしないか…
- 静香: そうじゃない…
- 静香: 私たちの人生で 笑えるわけがないの
- エボニー: …え…?
- 静香: 私も、その白き獣の神… キュゥべえと契約した…
- 静香: それも、メトの一族と近い事情を 背景にしてね…
- エボニー: そうなの、ね…!?
- エボニー: やはり、お前たちの力も 白き獣の神から…!
- 静香: かつて、名乗ったでしょ? 私たちは…
- エボニー: …トキメ…一族…
- 静香: その通り…
- 静香: 私の名は時女静香…
- 静香: 私は祖国を守護するために この身を捧げた…
- 南津 涼子: 南津涼子 時女一族だ
- ちはる: 広江ちはる 同じくだよ
- すなお: 土岐すなおです 私も時女の者です
- 青葉 ちか: 人の恐ろしさ…私も知ってます… 青葉ちかです…
- 旭: 三浦旭であります 時女一族出身であります
- エボニー: 皆、同じ一族…
- 静香: 得た力は「魔法」と そして…
- 静香: 力を得た少女は「かん…」 いや…「魔法少女」と呼ばれて…
- エボニー: 魔法…少女…
- エボニー: …ああ!確かに神も 『魔法少女』と言っていたわ…!
- 南津 涼子: ちなみに、魔の神は 「魔女」って呼んでんだわ
- エボニー: そ、そう!その呼び名だった…!
- 静香: …エボニー
- 静香: 私たちは「概念の欠片」を回収 するため、あなたを探していたの
- エボニー: …概念の…欠片?
- 静香: あなたと、あなたの時代をなぞる ことで回収できるとわかって…
- エボニー: それは…お前…
- エボニー: …いや、あなたたちにとって 大事なものなの…?
- 静香: ええ、とても…
- 静香: 私たちも魔法少女になったことで 様々な経験をしてきた…
- 静香: そして、少し前に とんでもない争いの渦中にいたの
- 静香: その争いを鎮めた人がいてね…
- 静香: 今回の旅は、その人の恩義に 報いる旅でもあるの
- 静香: …いや、人たち、かな…
- エボニー: …?
- エボニー: …ともかく、仔細までは 理解できないけど…
- エボニー: おおよその事情はわかったわ…
- 静香: …ただね…ここにきて 思ったことがあるの
- 南津 涼子: …なんだぁ?
- 静香: …おこがましい 物言いかもしれないけど…
- 静香: …私はあなたを救いたい!
- FILENAME: text_518620-5_0b1U9.txt
- 静香: …ただね…ここにきて 思ったことがあるの
- 南津 涼子: …なんだぁ?
- 静香: …おこがましい 物言いかもしれないけど…
- 静香: …私はあなたを救いたい!
- エボニー: 私を…救う…!?
- 静香: そう…
- 静香: このままクレオパトラの 命運と沈むあなたを…
- 静香: 私は見過ごすことができない!
- 静香: あなたは新しい道を 歩むべきだわ
- 静香: 私たちも過去を背負いながら 再び進み始めた…
- 静香: 偉そうなことを言うようだけど あなたにもそうであってほしい…
- ねむ: それはどうだろうか
- 静香: …………
- ねむ: 君達の目的は お姉さんを助けること、だよね?
- ねむ: 彼女ではない
- エボニー: …え?さっきからだけど… もしかして…それから声が…?
- ちはる: そうなんだけど… このことも後でね…!
- ねむ: それに、彼女を助けることは 歴史の干渉になりかねない
- ねむ: それはご法度だよ
- 静香: 欠片は、回収しきれたの?
- ねむ: それは…まだだね
- 静香: だったら、この後も エボニーを追う必要がある、と
- ねむ: …その通り
- 静香: ところで、私たちは既に ここまで関わってしまった
- 静香: それは歴史の干渉にならないの?
- ねむ: お姉さんの監視対象を絞るための やむを得ない対応だったし…
- ねむ: 歴史を改変するクリティカルな 行動はなかったと判断している
- ねむ: ただ、今はこうして 事の真相を突き止めた
- ねむ: もはや無理に干渉すべきではない 距離を置いて追うべきだ
- 静香: こんなにも 話し込んでしまった上でも?
- ねむ: 上でも、だよ 今が線を引くタイミングだ
- 静香: じゃあ、質問
- 静香: 環さんの本には 事の顛末が記されていたの?
- ねむ: それがわかっていたら こんなことにはなってないよ
- 静香: だったら、こういう可能性も あるんじゃないの?
- 静香: エボニーと距離を取ることで 欠片を回収することができない…
- 静香: …とか
- 静香: むしろ、一緒にいることで 欠片は回収できる…
- 静香: …とか
- ねむ: …それは…
- ねむ: 可能性を言われたら 否定できない
- 静香: 彼女を救うことが歴史の干渉に 繋がらない可能性は?
- ねむ: …さっきからずるい質問だね…
- ねむ: それも否定できない
- ねむ: …ところで、彼女の発言に みんな驚いてないみたいだけど?
- 南津 涼子: いや…言い出しそー!って 感じだったからよ
- ちはる: そうそう!
- すなお: 私も思ってました
- 青葉 ちか: というか、私も静香さんと 同意見です!
- 旭: さもありなんと 思った次第であります!
- ねむ: …やれやれ…
- 静香: 歴史の大きな流れは 変わっていないんでしょ?
- 静香: だったら、そこには 触れないようにすれば…!
- ねむ: しかし…
- 静香: それに!環さんだったら決して エボニーを放っておかない!
- 静香: …私は、そう思うの…
- ねむ: …………
- ねむ: 可能性の枝葉は無限大に 広がっている…
- ねむ: だけど、選ぶべきルートは 確率として無難な方のはず…
- ねむ: なのに、あえてリスクを 拾う方に進むなんて…
- ねむ: …でも、お姉さんなら…か…
- ねむ: …………
- 静香: …どう?
- ねむ: 時女一族…困った人たちだ…
- ねむ: わかったよ…
- ねむ: 僕だけが反対しても 君達の意見は変らないだろうしね
- ねむ: それに、リスクを取るのが 正解という可能性もある
- 静香: …ありがとう!
- ねむ: まったく…
- 静香: エボニー!
- エボニー: な、なにが、どうなって…
- 静香: 細かいことは置いといて…
- 静香: とにかく、ここが岐路なの
- エボニー: …岐路…?
- 静香: あなたが新たな人生を 歩んでいくかどうかの…!
- FILENAME: text_518620-6_0b1U9.txt
- 静香: とにかく、ここが岐路なの
- エボニー: …岐路…?
- 静香: あなたが新たな人生を 歩んでいくかどうかの…!
- エボニー: 私が…新しい人生を…
- 静香: このままクレオパトラに 身命を捧げるのか…
- 静香: それとも、これからの自分の ために身命を取り戻すのか…!
- 静香: あなたの覚悟が必要なの!
- エボニー: …………
- 静香: あなた、自分で言ったでしょ?
- エボニー: 私はメトの一族に生まれ!
- エボニー: ファラオに捧げられるために 育てられて!
- エボニー: ファラオの命運と共に死する者!
- エボニー: …なんて惨めな人生… …くやしい…
- 静香: 『惨めな人生』…
- 静香: それでいいの?
- 静香: そんな風に自分で 言い捨ててしまうような…
- 静香: 悲しい生き方のままでいいの?
- エボニー: …………
- エボニー: …私は…
- エボニー: どこかであの御方を 憐れんでいたんだ…
- クレオパトラ: …う…うう…
- クレオパトラ: …アントニー…アントニー…
- エボニー: 歴代の贄…いや、魔法少女、か…
- エボニー: 白き獣の神と契約した 魔法少女たちの願いは…
- エボニー: すべて 「王朝の繁栄」だったそうよ
- エボニー: だから今まで 王権を保つことができた…
- エボニー: でも、クレオパトラ様は違った…
- エボニー: 即位されてからメトの一族に 要望を出してきてね…
- エボニー: まずは美貌… 次に多国籍の言語能力…
- エボニー: 王朝の国庫を潤わせろだとか 街の発展だとかも…
- エボニー: だから、クレオパトラ様の代で 多くの少女が犠牲になった…
- 静香: …………
- エボニー: …ふふ…私に至っては 「クレオパトラ様の栄華」よ…
- エボニー: 願いを叶えすぎて 思いつかなかったみたいね
- エボニー: だから、すごく適当…
- エボニー: 曖昧な要望だったものだから 私も言ってることが曖昧で…
- エボニー: 『歴史に名が残る栄華を!』とか 漠然としちゃってね…
- ねむ: でも、クレオパトラは人類史 におけるビッグネームだし…
- ねむ: ある意味、その願いは しっかりと叶ったみたいだね
- エボニー: 結果がどうなろうと 関係ないわ…
- エボニー: ともかく、クレオパトラ様は 魔法少女たちを散々利用した
- エボニー: 私の力…魔法もね
- 南津 涼子: あんたのは受けたけどさ 具体的にはどんな魔法なんだ?
- エボニー: 香炉から出す香りで人を魅了し 意のままに操ることができる…
- 南津 涼子: そういうやつか…!
- 静香: 町の人にもかけてたのね
- エボニー: ええ…主に王朝に叛意を 持つ人たちにね
- 青葉 ちか: そうやって均衡を…
- エボニー: それに、魔の神とも… あ、ええと…
- 南津 涼子: 魔女
- エボニー: …魔女とも戦ってきた
- エボニー: そうしないと、身を保てない ことは伝え聞いていたから
- エボニー: クレオパトラ様のために 昼夜問わず働きながらね…
- ちはる: …辛かったよね…
- エボニー: うん…
- エボニー: 内心、わかっていたの
- エボニー: こんな生き方 望んでいないのにって
- エボニー: だけど、そう生きるのだと 一族によって教え込まれてきた…
- エボニー: 他の生き方を想像することなんて できなかった…
- エボニー: 憐れなクレオパトラ様…
- エボニー: ある意味で、魔法の被害者でも あるこの御方から離れるなんて…
- エボニー: それは自分自身の否定に なるのではという恐怖すら…
- 静香: そんなことないわ!
- 静香: 彼女から離れるのは 自分自身の否定じゃない!
- 静香: 自分自身の回復なのよ…!
- エボニー: …そうね…
- エボニー: …今、ここが…
- エボニー: 私の岐路…
- FILENAME: text_518620-7_0b1U9.txt
- 静香: 彼女から離れるのは 自分自身の否定じゃない!
- 静香: 自分自身の回復なのよ…!
- エボニー: …そうね…
- エボニー: …今、ここが…
- エボニー: 私の岐路…
- 静香: ええ、そうよ…
- エボニー: …わかった…
- エボニー: 覚悟は決めたわ…
- 静香: エボニー…!
- エボニー: ただし、最後に やることがあるから…
- エボニー: みんな、物陰に隠れてもらえる?
- 南津 涼子: おいおい 何をやろうって…
- 静香: いいから
- 南津 涼子: …ああ…
- エボニー: …………
- エボニー: …ファラオ、お目覚めを…
- クレオパトラ: …ん…んん~…
- クレオパトラ: エボニーか… アントニーはどこに?
- エボニー: クレオパトラ様… お願いがあります…
- クレオパトラ: …なに? お前が私に願いだと…?
- エボニー: …暇を、頂戴したく…
- クレオパトラ: 暇…?
- クレオパトラ: 私から離れるというのか!? 許さないわ!そのようなことは!
- クレオパトラ: 私の香炉の分際が…! 暇を取って、どこに行くのよ!
- エボニー: 一族のもとへ…
- クレオパトラ: …なに?メトの一族の…?
- クレオパトラ: …おお、そうかそうか! 新たな贄を連れてくるのね!
- クレオパトラ: ふふふ!ならばいいわ! 行くがいい!
- クレオパトラ: 此度の願いは、そうね… オクタウィアヌスの死!これよ!
- クレオパトラ: それで形勢は逆転するわ!
- クレオパトラ: そうそう!なんでこの方法を 思いつかなかったのかしら!
- エボニー: …………
- クレオパトラ: いいこと!オクタウィアヌスに 確実なる死をもたらしなさい!
- クレオパトラ: そうなれば… アントニーも喜ぶはず!
- クレオパトラ: ローマは彼のもの! そして私のものに…!
- エボニー: …ファラオ、夜も深くなりました どうぞ、ご寝所に…
- クレオパトラ: ふふ…そうね… もう寝ないと…!
- クレオパトラ: 部屋でアントニーが 待ってるわ…!
- クレオパトラ: アントニー… ああ、アントニー…!
- エボニー: …もういいわよ
- 南津 涼子: あれは…確かに、憐れなもんだな 盛者必衰か…
- 静香: これで気が済んだ?
- エボニー: …ファラオに対しては、ね
- 青葉 ちか: …え?何かまだあるような 口ぶりですけど…
- エボニー: 一族にも決別を言い渡したいの
- すなお: えっ?クレオパトラさんに言った のは方便じゃなかったと…!?
- 旭: 本当にメトの一族と相対する のでありますか!?
- エボニー: そのつもり…
- 南津 涼子: いや、そんな わざわざこじれそうなことを…!
- エボニー: 一族を無視しては 前へ進めないと思うの…
- エボニー: 私が王宮を離れたら 必ず追手を放つはず…
- エボニー: それだと、いつまでたっても 逃げ回ることになる
- エボニー: 結局、彼らとの対峙は 避けて通れない…
- 静香: …………
- 静香: …いいわ…こうなったら とことんやりましょう
- 静香: あなたのやりたいように…!
- エボニー: ありがとう…
- 南津 涼子: …かー、マジかよ…
- 南津 涼子: タダじゃすまねーだろうな… 間違いなく…
- 静香: いいから そうと決まれば出立よ!
- 南津 涼子: へーい…
- エボニー: …………
- エボニー: ―エボニー― クレオパトラ様…
- エボニー: ―エボニー― 以前もこうして空の玉座に向かい 膝をつきました…
- エボニー: ―エボニー― しかし、あの時の心の内とは すっかり変わりました…
- エボニー: ―エボニー― 私は行きます…クレオパトラ様…
- 静香: …エボニー…
- エボニー: …ごめんなさい さあ、行きましょう
- 静香: …ええ!
- 兵士: …エボニーめ…!
- FILENAME: text_518620-8_0b1U9.txt
- <クレオパトラとの決別を果たし エボニーと静香たちはメトの一族のもとを 訪れようとしていた>
- <しかし、その道行きは厳しく…>
- ちはる: ひー…ひー…ひー…
- ちはる: 相変わらず、砂漠はキツい…
- 南津 涼子: どこにあんだよ… 一族の集落ってのは…
- エボニー: そう簡単に辿り着ける ものではないの
- エボニー: エジプトの中でも 人知れず生きてきた部族だから…
- すなお: 易々と人目につくところには 住んでいないわけですね…
- 青葉 ちか: ただ、なんだか、同じところを 何度も歩いているような…
- エボニー: そういう道順なのよ
- ちはる: ひー!なんでー!?
- <そしてようやく 一行はメトの一族の本拠地へ辿り着いた>
- エボニー: 着いた…!
- 静香: ここが…!?
- ちはる: つ、疲れた…
- 青葉 ちか: …でも、なんだかひと気が ないような…
- エボニー: 正確に言うと ここは『メトの聖地』
- エボニー: 一族はそれぞれの役目があって 各地へ分散してるから…
- エボニー: 基本的に一族の者たちが同じ所に 留まって暮らすことはないの
- エボニー: ただ、ここは別…
- エボニー: 聖地を守るために 一部の者が隠れ住んでいる
- エボニー: 魔法少女候補の子たちも この地で教育を受けている
- エボニー: いわば、私の故郷…
- 静香: …あなたは、ここで…
- ???の声: 来たか、エボニー…
- エボニー: …長老…
- 長老: 待っておったぞ…
- 静香: この人は…?
- エボニー: メトの一族を統べる長よ…
- 静香: この人が…
- 南津 涼子: 元締めってわけだ
- ちはる: …あれ? 『待ってた』ってことは…
- エボニー: 宮殿内の一族の者から 報せが届いたのですね
- すなお: あの時も聞かれていたし 行動は全部筒抜け、ですか…
- 長老: 造作もないことだ
- エボニー: 承知の上です
- エボニー: では、私の目的も…
- 長老: ああ…
- エボニー: …では、改めて…
- 長老: 待て その前に話がある
- エボニー: …なんでしょうか?
- 長老: ファラオがオクタウィアヌスの 虜囚となった
- エボニー: …え!?
- エボニー: …そう、ですか…
- 長老: ほう… さほど驚かぬか
- 長老: 王朝の命運を見極めて おったということか
- エボニー: …………
- 長老: ファラオが捕らえられたのは お前のせいだ、エボニー
- エボニー: …う…
- 長老: お前が傍にいれば おめおめと敵の手に…!
- 長老: …これで プトレマイオス王朝も潰えたわ…
- 長老: なんと嘆かわしい… 我ら一族はどうなるのだ…
- 長老: エボニー…責任をどう取るのだ!
- 静香: 待って!
- 静香: 王朝の命脈は とっくに尽きていたのよ!
- 長老: …ぬう…
- 静香: 歴代の王が…クレオパトラが… そしてあなたたちが!
- 静香: 人の命を軽んじてきた末路よ! それが定めだったのよ!
- エボニー: 静香…
- 静香: だからこそ、もうエボニーを 解き放ってあげて…
- 静香: 自由にさせてあげて!
- 静香: すべてが変わる時なの…!
- 長老: …………
- 長老: …お前の一族は 我らと似通っておると聞く…
- 長老: 今、どのような状況にあるのだ?
- 静香: 新たな道を歩み始めているわ
- 静香: 一族皆、勇気をもって!
- 南津 涼子: おうよ!
- ちはる: だね!
- 青葉 ちか: そうです!
- すなお: 頑張ってます!
- 旭: 右に同じであります!
- 長老: …そうか…
- 長老: …………
- 長老: …わかった…
- 長老: エボニーよ お前を任から解き放つ
- 長老: 好きにするがいい…
- エボニー: 長老…!
- ちはる: やったー!
- 長老: …ただし…
- 長老: 我ら一族は長きに渡り ファラオより恩を受けてきた
- 長老: 最後に義理は通したい
- 長老: ファラオと会ってくるのだ エボニー
- エボニー: え…!?
- 長老: 囚われの身ではあるが お前なら潜入は容易かろう
- 長老: 一族を代表して、感謝と詫びを お伝えするのだ
- 長老: それが王家への礼というもの
- エボニー: …………
- 長老: よいな
- 静香: …どうするの?
- エボニー: …………
- エボニー: …わかりました…
- エボニー: クレオパトラ様に 会ってまいります…
- FILENAME: text_518620-9_0b1U9.txt
- エボニー: …わかりました…
- エボニー: クレオパトラ様に 会ってまいります…
- <長老からの依頼を受け エボニーは一族の筋を通すべく 虜囚となったクレオパトラのもとに向かった>
- <クレオパトラが幽閉されている館は 厳重な警備がなされていたが そこに潜入することなど 魔法少女にとっては造作もないことで…>
- 南津 涼子: よっ…と
- 南津 涼子: …この部屋で合ってんのか?
- エボニー: 一族からの情報は確かなはず…
- 静香: 随分静かだけど…
- 青葉 ちか: 気配…は感じますね…
- エボニー: クレオパトラ様…! クレオパトラ様はおられますか!
- エボニー: エボニーが参りました! クレオパトラ様…!
- クレオパトラの声: エボニー…?
- クレオパトラ: おお、エボニー…! エボニーではないか!
- エボニー: ク、クレオパトラ様…!?
- ちはる: うわあぁっ!
- すなお: 顔が…崩れている…!?
- ねむ: どうやら魔法が 切れかかっているみたいだ
- 静香: 魔法!?それって、つまり…
- ねむ: おそらく、過去に仕えた 魔法少女の魔法じゃないかな
- ねむ: その効力が 時限的なものだったんだろうね
- エボニー: それを知らず、女王は魔法を かけさせ続け…
- エボニー: 当の魔法少女は 既にもう…ということ…?
- ねむ: この状態と過去を踏まえれば その結論が妥当だろうね
- エボニー: …くっ!この御方は…!
- クレオパトラ: エボニーよ! どこへ行っていたのです!
- クレオパトラ: いつの間にか私のもとから いなくなって…!
- クレオパトラ: 勝手を働くなど言語道断! なにをやってるの!
- クレオパトラ: おかげで私は虜囚の身と なってしまったではないか!
- エボニー: クレオパトラ様…! 落ち着かれてください!
- クレオパトラ: 早く私を解放しなさい! 今すぐに!
- クレオパトラ: 忌々しいオクタウィアヌスめ… ここを出たら必ずその命を…!
- エボニー: クレオパトラ様! 私は今日、一族を代表して…!
- クレオパトラ: そうだ…メトの一族は あなたが束ねなさい!
- エボニー: ええっ…!?
- クレオパトラ: あの老人 前から気に食わなかった…
- クレオパトラ: もはや古き者は不要! あなたが新しい長よ!
- クレオパトラ: そして、神への贄をどんどん 送り込みなさい!
- クレオパトラ: 願いはまず 私に永遠の美しさを!
- クレオパトラ: 次に我が息子、カエサリオンに 強大な力を与えるのです!
- クレオパトラ: あ…そうよ! オクタウィアヌスも殺しなさい!
- クレオパトラ: 贄の願いなら、簡単でしょ?
- エボニー: …………
- クレオパトラ: ふ、ふふふ…!
- クレオパトラ: どうしてこんな簡単な手 思いつかなかったのかしら!
- クレオパトラ: 贄よ…王朝への贄よ! 捧げるのです!もっと命を!
- エボニー: …クレオパトラ様! あなたは、あなたは…!
- クレオパトラ: 私の香炉よ! さあ、贄を連れて来るのです!
- クレオパトラ: さすれば、我が王朝は 永遠に光輝き…!
- クレオパトラ: …つづっ…!?
- エボニー: …クレオパトラ様…?
- クレオパトラ: …け…る…
- エボニー: …ク、クレオパトラ様ーっ!
- FILENAME: text_518620-10_0b1U9.txt
- クレオパトラ: 私の香炉よ! さあ、贄を連れて来るのです!
- クレオパトラ: さすれば、我が王朝は 永遠に光輝き…!
- クレオパトラ: …つづっ…!?
- エボニー: …クレオパトラ様…?
- クレオパトラ: …け…る…
- エボニー: …ク、クレオパトラ様ーっ!
- 静香: これは…!?
- ちはる: ん!?…くんくん…
- ちはる: そこだ!
- 兵士: …くっ!
- エボニー: お前は…一族の者か! どうしてここに…!?
- 兵士: …ふ、ふふ…! いやあ、楽だったぜ…!
- 兵士: お前さんがたのお陰で ここまで簡単に入り込めた
- 兵士: 後をついてきゃ いいだけだったからな…!
- エボニー: …まさか、お前か…!
- エボニー: クレオパトラ様に何をした…!
- 兵士: …クレオパトラ女王は!
- 兵士: 偶然部屋に入り込んだ 蛇の毒で死んだ!
- 兵士: …ということになったのだ
- エボニー: 蛇の毒、だと…!?
- エボニー: …腕に何か…!?
- 兵士: 俺が刺した暗殺用の特製の針だ ああ…いい具合に撃ち込めたな
- 兵士: で…そいつに仕込んであるのが 蛇の毒ってわけさ!
- エボニー: …なんで…
- エボニー: …なんでそんなことを!
- ねむ: …この感じ…危ないな
- ねむ: エボニーが急速に穢れを 溜め込み始めている
- 静香: ええっ!?
- ちはる: うそっ!?
- 兵士: (…動ける?)
- 兵士: (今だ…!)
- ちはる: ああ、しまったー!
- 静香: 放っておきなさい! 今はこっち!
- 南津 涼子: やべーぞやべーぞ…! どうすんだよ!
- ねむ: まだ器は満ちていない 回収は終わっていないんだ
- ねむ: エボニーを魔女にしてはならない 本にはまだ続きがあるんだ
- ねむ: ここで魔女になる 結末ではないんだ
- 静香: …わかってる…!
- ちはる: し、静香ちゃんの魔法で!
- 静香: さっきからやってるけど 止まらない…!
- 静香: ちゃるは!?
- ちはる: …んん~!
- ちはる: …ダメ…拘束も無理…!
- 南津 涼子: あたしもダメだ!
- 青葉 ちか: わ、私たちは…
- 旭: この状況だと戦力外であります!
- 静香: …そうだ、すなお!
- すなお: やってます!
- すなお: どうにか少しは穢れを 落ち着かせられていますが…
- すなお: げ、限界が…!
- 南津 涼子: だったら、グリーフシードで!
- 静香: やってみる!
- 静香: …ああ…!
- すなお: すぐに穢れでいっぱいに…
- ちはる: ど、どうしたら…!?
- 静香: …姿は、まだ変わってない…
- 静香: 今なら間に合うはず!
- 静香: みんな、エボニーに呼びかけて!
- 静香: 向こう側へ渡らせてはいけない! こっちへ引き戻すの!
- 静香: 絶望を踏みとどまらせるの!
- 静香: その上で もう一度グリーフシードを…!
- 南津 涼子: …くそっ!やるしかねー! おい、エボニー!
- ちはる: エボニーちゃん! それ以上はダメ―!
- 旭: 耐えるのであります!
- 青葉 ちか: 魔女になってしまいますよ!
- すなお: いけません…エボニーさん!
- 静香: 時女一族が あなたを魔女にさせない…!
- FILENAME: text_518620-11_0b1U9.txt
- 南津 涼子: …くそっ!やるしかねー! おい、エボニー!
- ちはる: エボニーちゃん! それ以上はダメ―!
- 旭: 耐えるのであります!
- 青葉 ちか: 魔女になってしまいますよ!
- すなお: いけません…エボニーさん!
- 静香: 時女一族が あなたを魔女にさせない…!
- エボニー: う…うう…!
- 静香: エボニー! 聞きなさい!
- 静香: 突然の出来事で あなたは精神の均衡が崩れた!
- 静香: 一度はあなたの人生を捧げた人が 目の前で殺されてしまったから…
- エボニー: うぐ…!ううううー…!
- 静香: 魔法少女は心を完全に 壊してしまうと魔女になる!
- 静香: 魔の神になってしまうの!
- エボニー: 魔の…くっ…!
- 静香: そんなの…悔しくないの!?
- 静香: 自分の人生を思うように 歩くこともできないまま…
- 静香: あなた本来の生を まっとうできないままで!
- 静香: 嫌でしょ!
- エボニー: うう…!
- 静香: だから、帰ってきて!
- 静香: 生きるの! これからもあなたは!
- 静香: 自由に!思うがままに!
- エボニー: う…う…
- エボニー: ああああああああああ!
- すなお: …今!?
- すなお: 静香!グリーフシードを渡して!
- 静香: え、ええ!
- すなお: これでどう…!?
- すなお: …きゃああああっ!
- 静香: すなお!
- すなお: …はぁ…はぁ…はぁ…
- エボニー: …………
- すなお: か、帰ってこれた…みたい…
- 静香: すなおー!
- すなお: わ、私は平気… それよりも…
- エボニー: くっ…ううっ…
- ねむ: 精神が摩耗して 衰弱しているようだ
- ちはる: …んん!?
- ちはる: …な、なんか匂いが いっぱい近づいてきてる!
- 静香: 異変に気づかれたようね…!
- 静香: 私と涼子でエボニーを! ちゃるとちかですなおを!
- 静香: 旭は周辺を警戒しつつ 殿(しんがり)を!
- 南津 涼子: わかった!
- 青葉 ちか: ちはるさん!
- ちはる: うん!
- 旭: 殿、お任せを!
- 青葉 ちか: …あ、で、でも!
- 青葉 ちか: クレオパトラさんは このままでいいんですか…?
- ねむ: このままでいいよ それが一番だ
- 青葉 ちか: え…!?
- ねむ: クレオパトラは蛇の毒で 死亡したとされている
- ねむ: 経緯はどうあれ 歴史に記された通りの結果…
- ねむ: だから、このままでいいんだ
- 静香: …わかったわ
- 静香: 行くわよ!
- <紀元前30年8月29日…>
- <オクタウィアヌスに幽閉されていた クレオパトラ7世は厳重な監視下にも関わらず 自死したと伝わっている>
- <その方法は、贈答品の果物に忍ばせていた 猛毒のコブラに自らを咬ませたというが…>
- <真相は、定かではない…>
- FILENAME: text_518620-12_0b1U9.txt
- <クレオパトラの死から数日後…>
- 長老: …で…
- 長老: ファラオには会えたのか? エボニーよ
- エボニー: …………
- 静香: …どういうことか、説明を!
- 長老: なんの説明だ?
- 南津 涼子: クレオパトラを殺したことだよ!
- ちはる: メトの一族の人が 手にかけたんでしょ!
- 青葉 ちか: エボニーさんが 知っている顔だと!
- 長老: さあな…
- 長老: そんな用なら わしは去るぞ…
- すなお: 動かない方がいいです
- すなお: 遠くから私たちの仲間が あなたを狙っています
- すなお: 命は取りませんが 勝手をすると痛い目を見ますよ
- 長老: …………
- 長老: やれやれ… 大人しそうな顔して言うことが…
- エボニー: …話してもらえますよね、長老…
- 長老: …ふぅ…
- 長老: わかった! ああ、わかった!
- 長老: 狙いはいくつかあった…
- 長老: ひとつは、お前だ
- エボニー: …私?
- 長老: 我らは魔の神を生み出す 術を心得ておる
- 長老: それは、贄の心を壊すこと
- 静香: なっ…!?
- すなお: で、では…
- 長老: そう…
- 長老: エボニーを敵中で魔の神に堕とす
- 長老: 女王の死を目の前で 見せつけてな…
- エボニー: ぐっ…!
- 南津 涼子: …外道がっ…!
- 長老: さすれば、ローマの連中に一泡 吹かせられると考えたのだが…
- 長老: はぁ… まさか食い止めるとはなぁ…
- エボニー: そんなことの…ために…!
- 静香: なんて人…!
- 長老: それから、用済みの ファラオの片付けでもあった
- 青葉 ちか: 用済み…!?
- 長老: 国外にはプトレマイオス15世 カエサリオン様がおられる
- 長老: ならば、いつまでも クレオパトラに居てもらっては…
- 長老: 有害、というものだろ?
- ちはる: 酷い…!
- 長老: そもそも!
- 長老: 栄えあるエジプトの女王が 虜囚の辱めを受けるなど…
- 長老: かつてのファラオたちに 申し訳が立たないというもの!
- 長老: 名誉のための死を 我らがもたらしたのだ
- 長老: むしろ女王には 感謝していただきたいくらいだ!
- エボニー: くっ…!
- 長老: …なあ、エボニーよ
- 長老: 改めて カエサリオン様に仕えよ
- エボニー: …なっ…!?
- 長老: 一族の使命を再び果たすのだ…!
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- 長老: …なあ、エボニーよ
- 長老: 改めて カエサリオン様に仕えよ
- エボニー: …なっ…!?
- 長老: 一族の使命を再び果たすのだ…!
- 静香: あなたは…なんて…!
- エボニー: もうたくさんよ!
- 長老: …む…
- 静香: エボニー…
- エボニー: もう…もう本当に うんざり…!
- エボニー: 私はもうメトの一族とは 完全に縁を断つ!
- エボニー: 追うなら追うがいいわ! 火の粉は必ず払う!
- エボニー: この…人でなし!
- 南津 涼子: ははっ!
- 静香: よく言ったわ、エボニー!
- 長老: …………
- 長老: …ふーむ… ならば新しい贄が必要だな
- エボニー: なっ…!?
- 長老: カエサリオン様が力をつければ そこに贄を送り込む
- 長老: ローマがエジプトを支配するなら オクタウィアヌスに…
- 長老: 肝要なのは 一族の命脈を保つこと
- 長老: それだけだ…
- エボニー: お前は…どこまでも…!
- 長老: …ふはははは!はははは!
- 南津 涼子: こんの野郎ー!
- 長老: …は…
- 南津 涼子: …な、なんだぁ、急に!?
- ちはる: …わっ!こ、これ…!
- ちはる: 魔女だ!魔女の反応だ…!
- 静香: え?どこから…!?
- ちはる: そこ!
- エボニー: …長老から!?
- 長老: …では、わしはこれで旅立つ
- エボニー: ま、待て!
- 長老: …メトの一族よ…
- 長老: 永遠なれ…!
- エボニー: ああっ!
- 青葉 ちか: きゃあっ!
- 静香: 岸壁に頭を打ちつけて…!?
- エボニー: これは…どういうこと!?
- 南津 涼子: この感じ… おそらく間違いねぇ…!
- 静香: 魔女に魅入られたわね…
- エボニー: 魔女に…!?
- ねむ: それも、僕達と話している 隙を狙われたようだ
- 旭: 警戒するであります!
- エボニー: …………
- エボニー: …報いよ…
- 静香: …エボニー?
- エボニー: さんざん魔法少女を 食い物にしてきた…
- エボニー: 報いを受けたのよ!
- エボニー: ドゥアトでアヌビスに心臓の 重さを計られるがいいわ…!
- エボニー: 天秤はきっと傾くはずよ…!
- 静香: …………
- ねむ: みんな、心づもりを…
- ねむ: 来るよ
- 青葉 ちか: わわっ!
- 南津 涼子: 魔女の結界…だ!
- 静香: 引き込まれたわね…
- ちはる: 急展開すぎるよー!
- ねむ: …魔法少女たちの無念が 引き寄せてしまった…
- ねむ: …そんなことはないか…
- 南津 涼子: ちくしょう… 何で現れちゃうかね~…!
- エボニー: …………
- エボニー: …今、魔法少女たちの無念が 呼び寄せたって言ったわよね?
- ねむ: …世迷言だよ
- エボニー: その世迷言…
- エボニー: 私は信じるわ!
- FILENAME: text_518620-14_0b1U9.txt
- エボニー: …今、魔法少女たちの無念が 呼び寄せたって言ったわよね?
- ねむ: …世迷言だよ
- エボニー: その世迷言…
- エボニー: 私は信じるわ!
- ねむ: …………
- エボニー: みんなの無念が長老を裁いた…
- エボニー: 魔女となって…!
- 静香: …そんな魔女とおそらく 戦うことになるわけだけど…
- 静香: あなたは倒せるの? 相手が…
- 静香: 犠牲となった魔法少女たちの 成れの果てだったとしても…
- エボニー: …だからこそ、よ
- エボニー: だからこそ、私が葬らないと…
- エボニー: 悲劇の過去に終止符を打つ…
- エボニー: 先達の魔法少女たちの苦しみを 解き放つ…!
- エボニー: 彼女たちを葦の原野へ… 楽園アアルへ送り出すため…!
- 静香: …そう…
- 静香: …だったら、魔女と戦うことは 「儀式」なのかもね
- エボニー: 儀式…
- 静香: 魔法少女たちを弔うための…
- 静香: そして、あなたが自分の人生を 歩むための…
- 静香: 皆が前へ進むための 大事な儀式…!
- 南津 涼子: …だったら! 手伝うっきゃねーな!
- ちはる: うん!
- 青葉 ちか: もちろんです!
- すなお: やりましょう!
- 静香: 旭!
- 旭: 現着済みであります!
- 静香: これから魔女に仕掛けるから 援護射撃をお願い!
- 旭: 了解であります!
- 静香: 旭の射撃が始まったら 一斉にかかるわよ!
- 静香: いいわね?エボニー
- エボニー: ええ!
- 旭: ではこの儀式…
- 旭: 我の一撃で幕開けであります!
- 静香: 今よ!
- エボニー: はぁぁぁぁぁぁ!
- FILENAME: text_518620-15_0b1U9.txt
- エボニー: や、やった…!
- 静香: 終わった…
- 南津 涼子: ナイス連携だったな!
- ちはる: バッチリだね!
- 青葉 ちか: やりました~…!
- 旭: 勝利であります!
- すなお: 素晴らしい射撃でしたよ!
- 静香: エボニー…
- エボニー: …………
- エボニー: やっと…やっと一歩 踏み出せた気がするわ…
- ねむ: …うん…
- ねむ: 今、魂の器が満ちたようだ
- ちはる: え!ってことは…
- 旭: 任務完了なのでありますか!?
- ねむ: そうなるね
- ねむ: この旅は、ここが終着点だ
- エボニー: 終着点…
- 静香: …………
- 静香: …エボニー あなたとはここでお別れみたい
- エボニー: …そう、か…
- 静香: 私があなたに会ったことは 何か運命のように思えるわ
- 静香: 時女の私と、メトのあなたと…
- エボニー: 私もそう思う…
- エボニー: 神々のお導きね
- ねむ: お姉さんの導き、かな
- 静香: もう帰らなくては… 本来、私たちがいるべき時代へ…
- 南津 涼子: …じゃあな 達者で生きてけよ…!
- ちはる: あ!「宿無し探偵等々力耕一」の 話をするのを忘れてた!
- エボニー: …トドロキ…?
- 南津 涼子: ああ、いーのいーの! 忘れて!
- ちはる: 忘れないで!
- 青葉 ちか: お世話になりました エボニーさん!
- 青葉 ちか: それと、この時代の鳥さんたち!
- すなお: あなたには相当大変なことが 起きましたから…
- すなお: まずは心を休めてくださいね
- エボニー: わかったわ…
- 旭: エジプトの魔法少女に 敬意を表するであります!
- エボニー: そんな…ありがとう
- 静香: 生きる場所は違っても…
- 静香: お互い しっかり歩いていきましょう
- 静香: 新しい道のりを…!
- エボニー: 静香…!
- 静香: さようなら…
- 静香: …さようなら…
- エボニー: …………
- エボニー: …行ってしまった…
- エボニー: (…これからは 本当の私の人生が始まる…)
- エボニー: (…私の、人生…)
- エボニー: …………
- エボニー: (これからどうしよう…)
- エボニー: (途方もない…)
- エボニー: (まるで、この砂漠のよう…)
- エボニー: …………
- エボニー: …でも… 今はとにかく…
- エボニー: 一歩ずつ、前へ…!
- <静寂に風が吹き 彼女の足跡を砂が消していく>
- <広大なる砂漠、地平は遥か遠く>
- <照りつける太陽の光が魂をも焦がしていく>
- <それでも彼女は砂漠を歩く>
- <どこかへ向かって…>
- <何かを求めて…>
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