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- (From the opening sequence in 517310-0)
- "ふたり"で過ごした日々は 鏡の中できらきらと輝いている…。
- 「全部、台なしにしようよ。 それがあたしたちにできる 唯一の反撃だと思うからさ」
- [Title card] サヨナラ・ストレージ
- FILENAME: text_517310-1_6cQGi.txt
- みこと: 落ちていく太陽が好きだった
- みこと: 自分がここにいた証拠を残そうと あんまりにもまぶしく輝くから…
- みこと: だから、好きだった
- みこと: あの団地の…屋上が好きだった あそこは私の秘密基地 パノラマに見える景色をひとり占めできた
- みこと: だから、好きだった
- みこと: そう考えると 私が最後にあの屋上で夕日を見たのは 宿命だったのかもしれない
- 更紗 帆奈: 瀬奈!瀬奈!
- みこと: …帆奈ちゃん…!
- 更紗 帆奈: 瀬奈ーっ!
- みこと: あのとき、私は魔女になった
- みこと: それは来る日も来る日も、呆れるほど魔法を使い ソウルジェムが穢れに呑まれていった結果…
- みこと: でもあのときの私は自分の身に何が起きたのか わからなくて、恐怖と苦しみで混乱していた
- みこと: そんな中でも夕日はきれいで… この町…この世界を きらきらとした黄金に染めていた
- みこと: ああ、世界はなんてきれいなんだ… 最後の最後になってそんなことを思い知った
- みこと: 辛いことや悲しいことから目を逸らさず ちゃんと向き合っていれば
- みこと: まだやり直しがきくときに 世界の美しさを知れたかもしれない
- みこと: そう思うと、無性に悲しくなった
- みこと: …そのとき、声が聞こえた
- みこと: この世のすべてを恨むような呪詛の声 あるいは、滅びを願う切実な声…
- みこと: その声を聞いた途端 きれいに見えたはずの町が 忌々しいもののように思えてくる
- みこと: 私が消えようとしているのに、どうして? どうしてそんなに祝うように美しいの?
- みこと: 私が生まれてこなかったらよかったってこと?
- みこと: 私はただ普通の子として生まれ この町で幸せに生きたかっただけなのに… それさえも許さず、こんな仕打ちをされる
- みこと: 憎い、あの美しいすべてが憎い 私が手に入れられなかったものの 象徴のようで憎い…消してやりたい
- みこと: 私はこの私を生み落とした憎い町を 世界を消してしまいたい
- みこと: そのために生きたい
- みこと: そう思ったとき、私は自分の力を開花させた それは瀬奈みことという人格を 他人の中へ移植すること
- みこと: その力を使ってそばにいた友だち… 帆奈ちゃんの中へ逃れることで 私は私として在りつづけることに成功した
- みこと: つまり私は魔女になりながらも 人格だけは影響を免れるために 他人に寄生している存在…
- みこと: ただ、離れていても魔女の一部だから この神浜市を滅ぼしたいという意思も 変容した私の魂がもたらしたものかもしれない
- みこと: こうやって私は変わっていく… あんなにもきれいだった夕方の景色を 憎しみで塗り替えてしまったように
- みこと: きっとこれから すべてを憎しみで染めていくのだろう
- みこと: そうやってこの人格も 魔女になっちゃうんだ…
- みこと: ーみことー でも… 帆奈ちゃんの中は温かかった
- みこと: ーみことー 憎しみを和らげるような 温かな光が射し込んでいる
- みこと: ーみことー その日だまりはまばゆく光っていて
- みこと: ーみことー 鏡のように何かを反射していた…
- みこと: 大丈夫だった!?
- 更紗 帆奈: …あんたは…?
- みこと: 私は瀬奈みこと
- みこと: 一応、魔法少女なんだけど あなたも…だよね?
- 更紗 帆奈: …う、うん…
- みこと: これは… 帆奈ちゃんとはじめて会ったときの記憶?
- 更紗 帆奈: あんたの魔法が一番使える
- みこと: 使える…?
- 更紗 帆奈: 便利だってこと
- みこと: えー!そうなの!
- みこと: …えへへ~! ちょっと誇らしいかも…!
- 更紗 帆奈: …ふふ…
- みこと: そう、これは帆奈ちゃんの魔法が 「上書きの魔法」だとわかったとき…
- みこと: 私たちはよくこのお店で 魔法やこれからのことを話し合ったっけ
- みこと: 魔女を捜して ふたりで色んなところにも行ったね
- みこと: 他の魔法少女とも出会ったけど 私たち“ふたり”が一番居心地よかったね
- みこと: 私たちはずっとふたりで 色んなことをしたね
- みこと: 交換日記だってした
- みこと: お揃いのペンだって買った!
- みこと: …まあ、私が押しつけたようなものだけど
- みこと: 帆奈ちゃん嫌そうにしてたもん 可愛いと思ったのに
- みこと: ふふ…
- みこと: ーみことー …あの日々だけは、憎しみに染めたくない
- みこと: ーみことー 大切にできなかったから 今度こそは大切にしたい
- みこと: ーみことー そんなふうに帆奈ちゃんを思うと 滅びの意思がゆれた
- みこと: ーみことー 私が人格だけっていう 半端な状態にあるから?
- みこと: ーみことー それとも… 帆奈ちゃんが私を守ってくれてるの?
- みこと: ーみことー …帆奈ちゃん… 私はここにいるよ…?
- みこと: ーみことー 帆奈ちゃんの中にいる こんなにも近くにいる
- みこと: ーみことー なのに、話すこともできないね…
- みこと: ーみことー 顔を合わして、また話したい…
- みこと: ーみことー 帆奈ちゃんに伝えたいことが いっぱいあるの
- みこと: ーみことー 帆奈ちゃん…帆奈ちゃん…!
- みこと: ーみことー 瀬奈みことは、まだここにいるよ…!
- ???: 「…見つけた」
- みこと: ――っ!?
- みこと: ここって…団地の屋上…?
- ???: やっと… やっと、会えた…!
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: ずっと捜してたよ、瀬奈
- 更紗 帆奈: あっは!
- FILENAME: text_517310-2_6cQGi.txt
- みこと: これって… …私、もとに戻ったの…?
- みこと: そんな淡い期待はすぐに潰えた
- みこと: 自分が実体を持っていない状態だと すぐに気づいたからだ
- みこと: つまり私はまだ帆奈ちゃんの中にいる 帆奈ちゃんの視覚を使って 外の世界にいるように見えているだけで…
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: …帆奈ちゃん?
- 更紗 帆奈: …あっは…瀬奈が、蘇った… あっは、あっははは…
- 更紗 帆奈: あーっははははははははは!
- みこと: …帆奈ちゃん…!
- 更紗 帆奈: 瀬奈ーっ!
- みこと: 帆奈ちゃんは私が実体のある人間に 見えているのか、こちらへ 飛びつくように走ってきて…
- 更紗 帆奈の声: あが…っ!
- みこと: 盛大に倒れた
- 更紗 帆奈: あいたた… …な、なんで…?
- みこと: えっと、それは…
- みこと: 私は、今ここにいる自分が実体を持たないこと つまり、帆奈ちゃんが見ている虚像… イメージに過ぎないことを説明した
- みこと: 要約すると…帆奈ちゃんだけに 見える意識体、かな…?
- 更紗 帆奈: ん~…? つまり、幽霊ってこと?
- みこと: 幽霊…?
- 更紗 帆奈: あー、やっぱりそうなんだ!
- 更紗 帆奈: あのね!あたし、ずっと瀬奈が どこかにいるような気がしてたの
- 更紗 帆奈: 目の前で魔女になったはずなのに なんか瀬奈の存在を感じてて…
- 更紗 帆奈: なのに瀬奈はどこにもいないから もしかしてって思ったんだ
- 更紗 帆奈: 瀬奈は一足先に幽霊になって あたしを見守ってるんじゃ?って
- 更紗 帆奈: あっは、やっぱりそうだった!
- みこと: …………
- 更紗 帆奈: けどさ、瀬奈も意地悪だよねー
- 更紗 帆奈: もっと早く 姿を見せてくれたらよかったのに
- みこと: すんなり受けいれてくれるんだね 私がここにいることを
- 更紗 帆奈: は?どこかにいる気がしてたって 言ったでしょ?
- 更紗 帆奈: あたし、ずっと信じてたんだよ 瀬奈は消えてないって!あっは!
- みこと: 帆奈ちゃんは警戒心が強く そして思慮深い性格をしていた
- みこと: それが今はこんな荒唐無稽な話を あっさりと受けいれてしまう
- みこと: きっとそれは…私が魔女になった光景を 目の前で見て、少し壊れてしまったせい
- みこと: もちろん私を失ったという事実だけじゃなく 魔法少女の行き着く先が魔女なんだと 希望はいとも簡単に裏切られるのだと…
- みこと: そう思い知らされてしまったことも 原因だとは思う…私に流れてきた 情報を紐解く限りでは
- 更紗 帆奈: 瀬奈!これからどーする? もう何だってしていいよ~
- 更紗 帆奈: どうせあたしの結末は 決まってんだから、あっは…
- 更紗 帆奈: あーっははははははははははっ!!
- みこと: …………
- みこと: 私が生きているってちゃんと伝えられれば もとに戻るかもしれないって思ってたけど そう甘くはないよね…
- みこと: それに…今の私って 生きてるって言えるの?
- みこと: 幽霊か…そうじゃないのに そうみたい…
- 更紗 帆奈: え…違うの?
- みこと: うん、まあ…幽霊みたいだけど 私はちゃんとここにいるの
- 更紗 帆奈: ふーん…
- 更紗 帆奈: でも、こんなところから姿を 消して自由に生きられるなんて…
- 更紗 帆奈: あっは!すーっごくいいね!
- みこと: ふふ…そうだね…
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …そっか、嫌なんだ
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: ま、家族とか学校とか あんなにこだわってたもんねー
- みこと: ――っ!?
- 更紗 帆奈: でもさー、そういうものが瀬奈を 今の状態に追い込んだって…
- 更紗 帆奈: …そうは思わない?
- みこと: そんなの…
- みこと: 思うに決まってるよ
- 更紗 帆奈: …あっは
- みこと: 帆奈ちゃん、今の私ね ちょっと変なの
- みこと: 最後に何もかもがきれいに見えて 私、前向きになれたはずなのに…
- みこと: その何もかもが憎く思えてくるの 今は抑えられてるけど…
- みこと: そのうち抑えられなくなって 私が私でなくなっちゃう気が…
- 更紗 帆奈: それなら…
- 更紗 帆奈: 「全部、台なしにしようよ」
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: 瀬奈はきっと家とか学校とかの 日常に縛られて、もがいてる
- 更紗 帆奈: もがいて、もがいて…でも 報われないから、憎い
- みこと: …………
- 更紗 帆奈: この町を混沌に叩き落として 日常の仕組みを台なしにすれば
- 更紗 帆奈: …そうすれば瀬奈を 縛りつけてるものも
- 更紗 帆奈: 憎しみに値しない 無意味なものになってさ…
- 更紗 帆奈: 自由になれるよ
- みこと: 自由に…?
- 更紗 帆奈: 憎しみだけじゃない…辛いことや 悲しいことからも自由になって
- 更紗 帆奈: んで、瀬奈は生まれ変わるの! むかつく日常から解放されて!
- 更紗 帆奈: ハッピーバースデー、瀬奈!
- 更紗 帆奈: あんたの人生は そこからはじまっていくんだぜ!
- みこと: 生まれ、変わるって…
- 更紗 帆奈: …瀬奈を消させたりしない
- 更紗 帆奈: そんなふざけた仕組み 台なしにしてやる
- 更紗 帆奈: それがあたしたちにできる 唯一の反撃だと思うからさ
- みこと: 夕日が落ちていく 夜がはじまる
- みこと: もしかしたら私たちのすることなんて すべてが暗闇に包まれる前の 一瞬の輝きでしかないのかもしれない
- みこと: でも、それでもいいの 帆奈ちゃんと一緒なら
- みこと: 一緒に落ちていこう
- みこと: 神様に見捨てられた私たちを哀れんで こんな奇跡を起こしてくれた悪魔に 感謝しながら…
- FILENAME: text_517310-3_6cQGi.txt
- 更紗 帆奈: あっは!待たせたね パーティーのはじまりだよ~ん
- みこと: 驚いたことに、帆奈ちゃんは 結構な数の魔女に暗示をかけ 自分のそばに置いていた
- みこと: ペットみたいだと言うと そうだよ~、と答えてくれた
- みこと: けれどただ何の意味もなく ペットにしていたわけじゃなくて タイミングを見ていたみたい
- みこと: 町へ放って 混沌を生み出すタイミングを
- 更紗 帆奈: あっははあっはあははっ!!
- 更紗 帆奈: いい感じに厄災を振りまいてる この町、どうなっちゃうのかな~
- みこと: 帆奈ちゃんは魔女へ 詳細に暗示を植えつけ 次々、実行させた
- みこと: これによって町に様々な問題が 発生することになるだろう
- みこと: それこそ、これまで多くの人たちが ありがたがっていた普通の日常が ことごとく台なしにされるほどの…
- 更紗 帆奈: 瀬奈もやってみる~?
- みこと: …あ、私はもう暗示の魔法は…
- 更紗 帆奈: あー、そっか…そーだったね…
- みこと: …えっと…
- みこと: そうだ!魔女を使って 魔法少女をどうにかできない?
- 更紗 帆奈: どうにかって?
- みこと: だって、魔女がこんなに活発に 動いていたら倒しにくるでしょ?
- 更紗 帆奈: なーるほど… その前に襲わせるわけ?
- みこと: ううん、そうじゃなくて…
- みこと: 「魔女を使って 魔法少女同士を争わせられないかな?」
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- みこと: 人って、危機が迫っても 自分の命大事さに
- みこと: 仲間の足を引っ張ったり することがあるでしょ?
- みこと: その心理を応用すれば 魔法少女同士で戦い出すと思うの
- みこと: そうすれば 魔女どころじゃなくなるかも
- 更紗 帆奈: …あっは…ついでに魔法少女の 仕組みも台なしにしようって?
- 更紗 帆奈: すご~い、瀬奈! そんなの思いつかなかった~!
- みこと: それは…
- みこと: 私が魔女の影響を受けてるから なんだと思う…
- 更紗 帆奈: …んー? どーしたの、黙って
- みこと: え?ううん…それより 私、役に立った?
- 更紗 帆奈: 役に立つ…? あー、そういうこと…
- 更紗 帆奈: ねえ、瀬奈が暗示を使えなくても 役立たずなんて思わないよ
- 更紗 帆奈: つーか、本当に役に立たなくても それでいいの!ツレなんだからさ
- みこと: う、うん…
- みこと: (役に立ったって 言ってほしかったのにな…)
- 更紗 帆奈: でもなー…そこまで思い通りに 魔女が動くかなー
- みこと: えームリそう?
- 更紗 帆奈: 魔女だけじゃなくて あたしらも動いたほうがいいかも
- みこと: 何か仕掛けるんだ?
- 更紗 帆奈: そ!あたしらの邪魔をされちゃ たまんないし…
- 更紗 帆奈: 面白そーだからね!
- みこと: そうして私たちは河川敷に来た… 目当ての魔法少女が たまに通るらしい
- みこと: ねえ、どんな人なの?
- 更紗 帆奈: …ちょろちょろ 動いてるやつなんだけどさ
- 更紗 帆奈: あいつなら期待通りの 反応をしてくれるはずだよ~
- みこと: ふーん、仲いいんだ
- 更紗 帆奈: え…なんでそうなるの?
- みこと: あ、誰か来た… あの人?
- 更紗 帆奈: うん…そうだけど…
- 更紗 帆奈: …ま、とりあえず隠れるよ!
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: …ん?
- 常盤 ななか: …………
- 更紗 帆奈: ん~…隙がないな…
- みこと: あの人が魔法少女?
- 更紗 帆奈: そ、常磐ななか… 面白そうなやつなんだわ
- みこと: ふーん…ふーん
- 更紗 帆奈: …なんか、怒ってる?
- みこと: 別に~…それより 行っちゃったけど、どうする?
- 更紗 帆奈: そりゃ追いかけるって
- FILENAME: text_517310-4_6cQGi.txt
- みこと: 帆奈ちゃんと一緒に常磐ななかさんという人を 追いかけて、公園までやってきた
- みこと: ななかさんはどういうわけか 公園に入るなりぴたっと立ち止まって…
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: はあ…
- 常盤 ななか: …ここまで来れば 問題ありません
- 常盤 ななか: 姿を現しなさい! つけているのはわかっています!
- 更紗 帆奈: (へ~…気づいてたってわけ)
- みこと: でも、どこに隠れてるかは わからないみたい
- みこと: …そんなようじゃ 後ろは取り放題だね
- 更紗 帆奈: (あっは!怖い~! さすがあたしのツレ~!)
- 更紗 帆奈: …じゃ、行きますか
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 常盤 ななか: くっ…
- 常盤 ななか: …次の攻撃が来ない?逃げた?
- みこと: …………
- 常盤 ななか: 今の攻撃は 魔法によるものだった
- 常盤 ななか: もし私も 魔法少女になってなければ…
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: やはり…
- 常盤 ななか: みんなで手を繋いで…とは いかないようですね
- 常盤 ななか: 魔法少女同士で戦うことになる…
- 常盤 ななか: ならその前に、こちらも 仲間をつくらないと…
- みこと: んふふ…行っちゃった
- みこと: …もういいよ、帆奈ちゃん
- 更紗 帆奈: あっはははは!
- みこと: わ、大声を出すのはダメだって!
- 更紗 帆奈: ごめんごめん~
- 更紗 帆奈: でもさー、いやー笑える あの驚いた顔ったらないよ~
- 更紗 帆奈: あんなに澄ました顔してたのに あっは、あっははは…
- みこと: 知り合いなんだよね?
- 更紗 帆奈: 一方的に知ってるだけ
- 更紗 帆奈: ま、期待通りグループを つくってくれるみたいでよかった
- 更紗 帆奈: この調子でつづけていけば 放っておいても争い出すよ
- 更紗 帆奈: 疑心暗鬼になってさ
- みこと: 魔女を操るのも 忘れちゃダメだよ~
- 更紗 帆奈: あっは!忙しいね~
- みこと: 魔女を使って混沌を生みながら 魔法少女たちへ様々な暗示をかけ 不和や暴走を起こさせる…
- みこと: それだけでも大変なのに 帆奈ちゃんは家族や学校を 重点的に台なしにしようとした
- みこと: たとえば…
- みこと: 私の暮らしていた団地にいる魔女 これを使って団地の幸せな日常を 台なしにしようとしてくれた
- みこと: …ただ、私は確かに団地に 住んでいたし、帆奈ちゃんに家族を 紹介したこともあるんだけど…
- みこと: その家族は本当の家族じゃない
- みこと: 同じ団地の別の家族を 魔法によって私の家族にして これが自分の家族だと紹介しただけ
- みこと: 家族のことだけじゃなく 学校のことでも帆奈ちゃんに 嘘をついている
- みこと: だからかな…
- 更紗 帆奈: 聞いた、瀬奈!あの学校で 不登校が増えたんだって!
- みこと: みーんな行かなくなれば 学校の意味がなくなるもんね
- 更紗 帆奈: そう!こんな感じで 台なしにしていくの!あっは!
- みこと: 魔女のおかげだねー
- みこと: だから…引け目を感じちゃって 帆奈ちゃんが家族や学校を 台なしにしていっても…
- みこと: 何も変わる気がしなかった
- FILENAME: text_517310-5_6cQGi.txt
- みこと: お邪魔しまーす
- みこと: …本当だ、誰もいない
- 更紗 帆奈: 魔女のせいでっつーか、おかげで みんな出ていったんだわ
- 更紗 帆奈: 一家離散ってやつ
- みこと: へー、そんなことが… 今日はここに泊まるの?
- 更紗 帆奈: そーゆーこと
- みこと: そう、私たちは毎日毎日 泊まる場所を探し求めている…
- 更紗 帆奈: …え?あたしの家?
- 更紗 帆奈: そんなのあるわけないっつーの あっは!
- みこと: …ということだったので 泊まれそうな場所を見つければ そこに転がり込む毎日…
- みこと: でも…不思議なのは 毎回違う場所にすること
- みこと: 拠点みたいにひとつの場所を 完全に私たちのものにしたほうが いちいち探さなくて楽なのに…
- 更紗 帆奈: よいしょっと
- みこと: …何してるの?
- 更紗 帆奈: ブレーカー壊してるの 電気がつかないように
- みこと: え…な、なんで?
- 更紗 帆奈: 下準備だからね~!
- みこと: 下準備って… 全部台なしにするぞ計画の?
- 更紗 帆奈: あ、そーんな名前になってたの…
- みこと: 可愛いでしょ?
- 更紗 帆奈: え…
- みこと: それで、ブレーカー壊すのって 次に起こす何かの下準備?
- 更紗 帆奈: あ、うん… まー、そんな感じ?
- 更紗 帆奈: …でもなー、この調子だと 時間がかかりすぎるんだよねー
- 更紗 帆奈: 直接暗示をかけて 回るしかないか…
- みこと: ダメなの?
- 更紗 帆奈: ちょーっと魔力がね…
- みこと: そっか…魔力…
- みこと: …………
- 更紗 帆奈: あー!この本! 懐かし~
- みこと: 本?
- 更紗 帆奈: そー!
- 更紗 帆奈: ほら、前はさ…よく喫茶店で 待ち合わせしたでしょ?
- みこと: …私が魔法少女だった頃だね
- 更紗 帆奈: うん…で、瀬奈を待ってるときに 暇潰しでこの本読んでたの
- みこと: あーそういえば 本を読んでたときもあったね!
- みこと: 私が席についても 夢中で読んでて…
- 更紗 帆奈: 区切りのいいとこまで 読んでただけだって
- みこと: 何の本だったっけ?
- 更紗 帆奈: 人は負けるためにつくられて いない、っていう本
- みこと: …あやしい自己啓発の本?
- 更紗 帆奈: 違うよ… フツーの小説
- みこと: ふーん…私も読んでみよっかな? ページめくってくれる?
- 更紗 帆奈: いいよ!…あは…
- みこと: へー…
- みこと: なんか、眠くなってきちゃった!
- 更紗 帆奈: ええええ…
- みこと: 早いけど、もう寝よっか? 明日から忙しいし
- 更紗 帆奈: …忙しい?何かあった?
- みこと: 魔女をたくさん見つけるの!
- FILENAME: text_517310-6_6cQGi.txt
- みこと: 見つけた魔女に暗示をかけ 安全を確保する…
- みこと: 捜せばそれなりに見つかると 思っていたのだけど 結局見つけたのはこの1体だけ
- みこと: う~ん…うまくいかない…
- 更紗 帆奈: ま、1体でも見つかって よかったよ
- 更紗 帆奈: んで、どーするの?
- みこと: とりあえず… グリーフシードにしよっか…?
- 更紗 帆奈: あ、結局そーするの?
- みこと: 本当は暗示をかけて、いつでも 利用できるようにしたかったの
- みこと: ほら…一斉に放ってからは 都度、魔女を捜してたでしょ?
- みこと: それで見つけてから、利用するか グリーフシードにするか決めてた
- 更紗 帆奈: ま、結構場当たり的だったね
- みこと: 全部台なしにするぞ計画は ノリだけじゃ成功しないと思うの
- 更紗 帆奈: ノリだけでいけそうな 計画名なんだけどなー…
- みこと: だから町に魔女を泳がせておいて 計画的に使えたらな…って
- みこと: それに 使い道がなくなったら…
- 更紗 帆奈: グリーフシードを 回収すればいい?
- みこと: うん、そう…!
- 更紗 帆奈: なーるほど…
- みこと: とりあえず、もしものために グリーフシードは集めておこう?
- みこと: それで、ここに隠しておくの!
- 更紗 帆奈: …奪われないようにするため? 考えすぎな気もするけど…
- 更紗 帆奈: まー、瀬奈がそうしたいなら そうしようよ
- みこと: ありがとう…
- みこと: 色々と言ったけど 私が一番やりたかったのは グリーフシードを集めること…
- みこと: 私は…自分のときと同じように 帆奈ちゃんがムリをして 魔女になってしまうのを恐れていた
- みこと: もしかしたら… グリーフシードなんかにしないで 景気よくパーッと使おうよ!
- みこと: …なんて言い出すんじゃないかと 思ったんだけど…承諾してくれて ともかくよかった…
- みこと: …帆奈ちゃんを 魔女にはさせないんだから…
- 更紗 帆奈: んー?あたしが魔女に?
- みこと: あ、それは…
- 更紗 帆奈: だいじょーぶ、だいじょーぶ! あたしは魔女にならないっつーか
- 更紗 帆奈: その前にパーンッて弾けるから!
- みこと: …………
- みこと: え?
- 更紗 帆奈: あたしって色々したでしょ? ま、これからもやってくけど
- 更紗 帆奈: そんなあたしは魔女になることも 許されないと思うわけよ
- 更紗 帆奈: つーか、許されちゃいけない
- みこと: 何を…言ってるの…?
- 更紗 帆奈: んー?あたし側は、やっぱ負けて 派手に散らないと!ってこと
- 更紗 帆奈: そうじゃないと…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 世界が悪意で成り立っているって 証明してるみたいじゃない?
- みこと: ―みこと― …………
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あたしの周囲には、嫌なこと 不条理なこと、そんなのばっかだった
- 更紗 帆奈: ―帆奈― つーか、そんなのばっかが 日の目を見てた
- 更紗 帆奈: ―帆奈― んで、今やその悪意の権化が あたしってわけ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― だったら倒されなきゃ 悪意がまかり通るってことにならない?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― うん、きっとそうなる… あの日常を肯定することになる…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― それはやっぱ嫌だし… そんなところに瀬奈がいたら
- 更紗 帆奈: ―帆奈― きっと生まれ変われない
- みこと: ―みこと― 帆奈ちゃんが何を言ってるのか わからないよ…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― まだ瀬奈には早かったかなー? あっははは…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ま、だからって あたしは手を抜いたりしないよ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 挑んでくるなら返り討ちにしてやる 命がけでやつらには証明してもらうんだ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― どんな困難があろうと 人は負けたりしないってことを
- みこと: ―みこと― でも帆奈ちゃんは…負けたいって…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あたしはさ、違うから… もうすっかり絶望してるから
- 更紗 帆奈: ―帆奈― いや違うな…ひとつだけ あたしにも希望はある
- 更紗 帆奈: ―帆奈― それは、瀬奈
- みこと: ―みこと― え…?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 瀬奈を消させない…いや… 幽霊じゃないと世界に教えてやるんだ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― そう!この町の人間全員に…世界中の人々に 瀬奈の存在を気づかせてやるんだよ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― きっとみんながお祝いしてくれる… 瀬奈の新しい人生を
- みこと: ―みこと― …どうやればそんなことができるの?
- みこと: ―帆奈― 今準備を進めてるやつが成功すれば いいだけ…でも詳しいことは教えない!
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 誕生日プレゼントには サプライズがつきものだもん
- みこと: それからは何を聞いても 内緒という返事しか返ってこなかったので 仕方なく魔女探索を再開した
- みこと: 何日もかけて魔女を見つけては 暗示をかけていく…
- みこと: もちろんグリーフシードを 回収するのも忘れていない
- みこと: 1か所に集めておくのは、やっぱり 危険だということになり、廃墟とか 山の中とか色んな場所に分散して隠した
- 更紗 帆奈: 今日はこの辺にしようよー
- みこと: そうだね…それなりに集まって きたから、もう急がなくていっか
- 更紗 帆奈: んじゃ 今日の泊まることに行こう
- みこと: …え、ここ?
- 更紗 帆奈: ちーがーうって! ここを抜けた先だよー
- みこと: ふーん…ねえ、どうしていつも 場所を変えるの?
- 更紗 帆奈: …足がつかないようにするため
- みこと: そっか、色々考えてるんだね
- みこと: …でも、ここって…
- みこと: ――っ!?
- みこと: 共同墓地の墓碑の前に ひとりの女の人が立っていた よく見なくてもわかる
- みこと: その人は…
- 更紗 帆奈: どーしたの?
- みこと: …お母さん…
- 更紗 帆奈: え…?
- みこと: その人は、私の母だった
- みこと: お母さんはなんだか悲しそうに 墓碑に向かって何かを語りかけていた
- みこと: 私は知っている その墓碑には、私の名も刻まれてあると
- FILENAME: text_517310-7_6cQGi.txt
- みこと: 私の家は荒れていた
- みこと: 父親は家を頻繁に空け どこかで遊び回っていた
- みこと: そんな人だから家にお金を入れることはまれで お母さんが貯めたお金も持ち出したりしていた
- みこと: お母さんも私も父親に振り回され 苦労が絶えなかった
- みこと: 今になっては大袈裟なように思えるけど… 当時の私はそんな日々を地獄のように感じていた
- みこと: だから、願いで父親には いなくなってもらうことにしたの
- みこと: …それが、私が魔法少女になった理由 私はあの人をここから消すために契約した
- みこと: そういうわけだから、バチがあたっちゃった… お母さんがあの人みたいになってしまったの
- みこと: お母さんはあの人みたいに家に帰らなくなり 私のことを放り出して、どこかで遊び回った …お金だって全然家に入れてくれなくなった
- みこと: どうしてこうなっちゃうんだろう 私は、幸せな家庭が欲しかっただけなのに… お母さんとふたりなら幸せになれると思ったのに
- みこと: そんなときだ、帆奈ちゃんと出会ったのは
- みこと: …………
- 更紗 帆奈: …あそこにいるのが 瀬奈のお母さん?
- 更紗 帆奈: 前にお母さんだって 紹介してもらった人と違うけど?
- みこと: …………
- みこと: そう、私は帆奈ちゃんに嘘を吐いていた
- みこと: 最初はただ、普通の子と思われたほうが 仲よくなれるだろうと安易に考えて ごく普通の家庭で育ったと言った
- みこと: けど嘘を吐いていたとバレてしまうと 嫌われてしまう気がして、私は嘘を隠すために さらに嘘を重ねていき…
- みこと: ついにはまったくの他人を暗示の魔法で 私の家族…それも理想の家族にして 帆奈ちゃんに紹介してしまった…
- みこと: あ…
- みこと: お母さんは目を擦りながら 立ち去っていった
- みこと: 泣いていた?結局父親みたいに家族を… 私をいないものとして扱ったくせに 本当にいなくなったら涙を流すの?
- みこと: 嫌いだ、お母さんもあの人も… 最初から家族なんてものがなければよかったのに
- みこと: 最初からそんなものがなければ 私はきっと違っていたのに…
- みこと: …………
- 更紗 帆奈: …あー…
- 更紗 帆奈: …瀬奈は知ってるよね あたしの親のこと
- みこと: え?うん…交換日記に 書いてあったから…
- 更紗 帆奈: うん…ま、そこに書いた通り どーしよーもないやつらだったの
- 更紗 帆奈: ホント、両方とも死んでくれて 清々するくらいに!
- みこと: …その気持ち、わかるよ
- 更紗 帆奈: あっは、瀬奈なら そー言ってくれると思った!
- 更紗 帆奈: でも一般的にはそーゆーの 思っちゃいけないんだって
- 更紗 帆奈: おかしいよね?
- 更紗 帆奈: なんでそんなこと 強要されなきゃいけないの?
- みこと: うん、そうだよ… そんなのおかしい
- みこと: その結果、苦しむ人間がいるのに
- 更紗 帆奈: …ねえ瀬奈 あたし、最初に言ったよね?
- 更紗 帆奈: 瀬奈を縛りつけるものは 全部台なしにするって
- みこと: うん、それが… 全部台なしにするぞ計画
- 更紗 帆奈: 毎度その名前で力が抜けるけど… ま、いいや
- 更紗 帆奈: 今にして思えば 魔女に頼りきりだった
- 更紗 帆奈: それだと実感がないっつーか 区切りがついた感じしないよね
- 更紗 帆奈: こーゆーのは自分の手で やらないと
- みこと: 自分の手…?
- 更紗 帆奈: 瀬奈の手はあたしの手… 直接やってやろうよ!
- 更紗 帆奈: あっは!
- FILENAME: text_517310-8_6cQGi.txt
- みこと: ―みこと― 直接、家族を台なしにするって どうやるの?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ほんのちょっと暗示を使うだけ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― それだけで家族なんて崩壊し 意味をなさなくなる
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ま、最初はかるーいのから いってみようか
- 更紗 帆奈: ―帆奈― なーんか記念日を祝ってるこの夫婦に 本音でしか喋れない暗示をかけると…
- いつもグチグチ文句言ってきて… もううんざりだ!
- それはこっちもよ! 安い給料のくせに偉そうにして!
- な、何だと!!
- 離婚よ、離婚! 本当はずっと言いたかったの!
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ま、こんな感じ?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あっは、別にうまくいきすぎてるわけじゃないよ 家族なんて嘘の上で体裁を保ってるんだから…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― その嘘がなくなれば、崩壊するしかない
- 更紗 帆奈: ―帆奈― こっちでも、別の暗示を使えば…
- ああ、そうだよ!今まで 隠してたけど、浮気してるんだ!
- 何ですって!?
- 隠れて借金をしていただって!?
- わたしだって遊びたいのよ!
- きゃああ! 何なの、あなた!?
- 更紗 帆奈: あんた、ずっとずっと 親が憎くて仕方ないんでしょ?
- 更紗 帆奈: あっは!隠そうとしてもムダ! 昔のあたしと同じ目をしてるもん
- 更紗 帆奈: もうバレてるんだからさ… 素直になっちゃいなよ
- …………
- ど、どうしたんだ そんなものを持ち出して…!
- うるさい!出ていけ!
- 親に向かって何をするの!!
- 親をやめた人間が言うな!
- みこと: …たくさんの声が町に広がっていく
- みこと: こんなにも呆気なく 家族が台なしになっていく…
- もう離婚よ!
- こんな家、捨ててやる!
- なくなればいいんだ 家族なんて…!!
- 更紗 帆奈: あっはははははは!!
- 更紗 帆奈: 瀬奈、気分はどう? 台なしにしてやったよ!
- んふふ…そうだね
- みこと: 今まで悩んでた自分が バカみたいな気がする
- 更紗 帆奈: あっは!よかった~
- みこと: …ねえ帆奈ちゃん 気づいてるんだよね?
- 更紗 帆奈: んー…何が?
- みこと: 私が家族のことで 嘘を吐いてるって…
- 更紗 帆奈: …嘘っていうほどのものじゃ ないと思うけどー
- みこと: でも、騙してたのに変わりない
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: それに…家族だけじゃないの 学校のことだって…
- 更紗 帆奈: 学校?
- みこと: うん…
- みこと: 学校には多くの友だちがいて… 充実した日々を過ごしてる
- みこと: そんなふうに帆奈ちゃんには 言っていたと思うけど…実際は違うの
- みこと: …学校にも嫌な思い出しかない
- みこと: 私は友だちが欲しかった クラスメイトとお喋りしたり 放課後、どこかに遊びにいったり
- みこと: そういう普通のものが欲しかったの
- みこと: だから…変な家庭の子だと思われたら 敬遠されちゃうだろうから 家はどこにでもある普通の家庭だと嘘をついた
- みこと: その結果… 家に友だちを呼べなくなっちゃった
- みこと: お金がなかったから、まともなお弁当を 用意できなくて…それを周りに知られるのが 恥ずかしかったから、ひとりで食べた
- みこと: 放課後みんなと遊びにいくのも お金がないからできなかった
- みこと: 普通の家庭だと嘘をついているからね 家庭の事情だとは言えなくて…周りからは 付き合いの悪い子だと思われちゃったの
- みこと: このままではいけないと思って 明るく、社交的に振る舞ったんだけど なんだか空回りばかりして…
- みこと: そうして私は欲しいものが何も手に入らず かわりに偽りの友情と偽りの自分を手に入れた
- みこと: …ごめんね、帆奈ちゃん 嘘ばっかり吐いてて…
- みこと: 一度嘘を吐いたら本当のことを 話すのが怖くなって
- みこと: 嫌われるんじゃないかとか 他にも変に思い詰めたりもして
- みこと: 結局、今まで言い出せなかったの
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: でも、こんなふうになっちゃって もう守るものも何もないし
- みこと: それに帆奈ちゃんがあんなふうに 簡単に家族を壊しちゃうし…
- みこと: ふふ…もういいやって 話しちゃえって思ったの
- 更紗 帆奈: …そっかー
- みこと: 帆奈ちゃんはいつ気がついたの?
- 更紗 帆奈: んー…交換日記でなんとなく
- 更紗 帆奈: 学校のことだって わかってたよ
- みこと: え、そうなの?
- 更紗 帆奈: だって、そーんな充実したやつが あたしとツルむわけないもん
- 更紗 帆奈: …似たような境遇なんだろうなー ってのは、わかってたよ
- みこと: そうなんだ…
- みこと: もっとちゃんと… 帆奈ちゃんと話せばよかった…
- みこと: そうしていれば こんなふうにはならなかったかも
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …ま、あたしはそんなことで 瀬奈を嫌いにならないよ
- みこと: わかってる…
- みこと: わかってるから、言えなかったの
- 更紗 帆奈: んー?
- みこと: んふふ…なんだか 体が軽くなった気がする
- 更紗 帆奈: …区切りがついたからじゃない?
- みこと: 区切りか…
- みこと: 普通の人はもっと真っ当な方法で 区切りをつけて…
- みこと: そして… 大人になっていくんだろうけど
- みこと: んふふ、私たちはやっぱり違うね
- 更紗 帆奈: なーに終わった気でいるの? まだ残ってるよ
- みこと: 残ってる…?
- 更紗 帆奈: 学校がさ
- 更紗 帆奈: で、学校に忍び込みましたー!
- みこと: 忍び込んだのはいいけど… 帆奈ちゃん、何それ?バケツ?
- 更紗 帆奈: ペンキ~!
- みこと: ペンキ?
- 更紗 帆奈: ま、定番の窓ガラスを壊して回る ってのも考えたけど
- みこと: ワルだよ、それ ワル
- 更紗 帆奈: だよね~!やっぱあたしらには 合わないな~って思って
- 更紗 帆奈: このペンキで思いの丈を ぶちまけることにしたの~!
- みこと: え…落書きするの?
- 更紗 帆奈: 落書きってのはちょっと…
- 更紗 帆奈: ポエムって言おうよ!
- みこと: だったら落書きのほうがいいかも
- 更紗 帆奈: ま、何にしろ…言いたいことは 山ほどあるでしょ?
- 更紗 帆奈: その若気の至りで 学校も台なしにしてやろう!
- FILENAME: text_517310-9_6cQGi.txt
- みこと: よし、誰もいない
- みこと: 帆奈ちゃん、こっちこっち!
- 更紗 帆奈: …ねえ、なんでコソコソするの?
- みこと: だって帆奈ちゃん部外者だから 見つかったら大変だよ?
- 更紗 帆奈: 制服着てるから どーにかなるって
- みこと: えー別の学校の制服なのに?
- 更紗 帆奈: 知り合いを捜しにきた 他校の学生みたいな感じで…
- みこと: でもこれから ペンキで落書きするんだよね?
- 更紗 帆奈: ペンキで落書きしながらも 知り合いを捜す他校生な感じで…
- みこと: そんな人、この世にいないよ…
- 更紗 帆奈: あーもー!そもそも 無茶苦茶しにきてるんだから
- 更紗 帆奈: そんなことはどーでもいいの!
- みこと: まあ、いざとなれば 暗示の魔法を使えばいいもんね
- 更紗 帆奈: …そーね
- 更紗 帆奈: んじゃ、はじめよっか
- みこと: うん…!
- みこと: 作業は簡単だった
- みこと: 学校なんて牢獄だ!と私が言えば その通りに帆奈ちゃんが書いてくれる
- みこと: なんで誰かに合わせないといけない! なんで押さえつけてくる! なんで自分を埋没させようとする!
- みこと: そんなことを言えば ちゃんと全部帆奈ちゃんが書いてくれる
- みこと: 私は段々気分が乗ってきた
- みこと: だから踏み込んだことも言った
- みこと: きれいごとばかり言っておきながら 学校はもっていない人間には残酷な場所だ
- みこと: もっていない人はもっている人の 充実した日々を眺めるしかないんだから
- みこと: 多くの友だちも、仲間も 楽しい放課後も
- みこと: 全部、もっている人の特権
- みこと: もっていない人はその永遠に手に入らないものを 指を咥えて眺めるしかない
- みこと: でもそんなの、普通って呼ばれるものじゃない?
- みこと: 普通の学校生活に分類されるものでしょ? なのに私は、私のままだと普通の学校生活を 送れそうになかった
- みこと: けど普通っていうくらいなら 私が手に入れてもいいはず… そう思って、羨ましくなって、自分を偽った
- みこと: その結果、表面上は普通の学校生活を 手に入れられたけど…
- みこと: 自分を偽りつづけるうちに なんだか自分のことがわからなくなって ついに私は何者でもなくなってしまった
- みこと: 透明な存在になってしまった
- みこと: そう、このときから私は幽霊だったんだ
- みこと: 読んでいるか、私はここにいるぞ
- みこと: 幽霊はここにいるぞ!
- みこと: 全部台なしにするために帰ってきたぞ!!
- みこと: 私たちは笑い転げながら とにかく言いたいことをぶちまけた
- みこと: 他にも、適当にイスや机を見繕うと 廊下とか階段に並べて封鎖したりした
- みこと: ただ封鎖したわけじゃない
- みこと: イメージは、迷路
- みこと: きちんとした道筋があって その通りに進むとちゃんと1階から 最上階までたどり着けるようになってる
- みこと: 視聴覚室では みんなの顔が引き攣るような す~っごい映像を流してやろうと思ったけど
- みこと: 残念なことにそんな映像はなかった
- みこと: でも帆奈ちゃんがかわりに スクリーンに絵を描いてくれた!
- みこと: …まあ、あんまり上手じゃないから 何の絵かわからない感じになっちゃったけど…
- みこと: 最後の教室に入ったとき ようやく人の騒ぎ声が聞こえてきた
- みこと: 今さら騒いだって遅いのに
- みこと: 改めて見渡すと、ここがかつて 私が使っていた教室だとわかった
- みこと: ここでこそ色々とぶちまけたい
- みこと: けどもうペンキはなかった
- みこと: がっかりはしたけど… 今は楽しさのほうが勝っていた
- みこと: 私はもう自分の席ではない場所に座る
- みこと: こんなにも充実した気分で ここに座るのははじめてだった
- みこと: すると帆奈ちゃんがチョークで 黒板に何かを書きはじめる
- みこと: 書き終わった文字を見て 私はつい笑ってしまった
- みこと: そうだ、私の言いたいことなんて それだけでよかったんだ
- みこと: 私も…たぶん帆奈ちゃんも 自分の存在を証明したかっただけなんだから
- みこと: …騒ぎ声が近づいてくる
- みこと: 先生たちも今はあの迷路に苦戦してるのかな? なんだか面白い…
- みこと: そして私たちは窓から飛び降りた
- みこと: 今まで味わったことがないほどに 私は自由だった
- やっと上れた… 教室はどうなってますか?
- ここもダメです
- こんな有り様じゃあ しばらく授業は…
- あれ…?
- どうかしました?
- 先生、この教室の黒板を
- …「帆奈と瀬奈」…?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あっはははは…! あいつら、追いかけてきてる?
- みこと: ―みこと― 追いかけてはきてないよ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あっは!どうせ追いかけてきても あたしたちには追いつけないけどねー!
- みこと: ―みこと― 警察に連絡されるかな?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― そりゃされるよ!
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ばっちり名前残してきたから 身元が割れるかもね~
- みこと: ―みこと― んふふふ、最悪~!
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あっははは、笑ってる場合じゃないよ~
- みこと: ―みこと― 帆奈ちゃんも笑ってるじゃない~
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 楽しいからね~!あっは!
- みこと: ―みこと― きっと大きな騒動になるよね? 新聞に載るかも…!
- 更紗 帆奈: ―帆奈― そうなれば、みーんながあたしたちを記憶する!
- 更紗 帆奈: ―帆奈― でもなー、あいつら汚いからなー もみ消すかも
- みこと: ―みこと― えー残念
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 大丈夫! 今度はこの町全体でやってやるんだから!
- みこと: ―みこと― それって 前に準備を進めてるって言ってたやつ?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― そう! 町全体でやればもみ消されたりしない!
- みこと: ―みこと― よかった、まだつづきがあるんだ… もうこれで終わりなのかなって
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あっは!まだはじまってもないのに?
- みこと: けれど終わりが迫っていることを 私たちはきちんと理解していた
- みこと: こんなふうに騒動を起こした以上は 警察も動き出すだろう
- みこと: それに何よりどこかの魔法少女たちが 私たちを嗅ぎ回っているらしい
- みこと: 暗示を使って探りを入れているとき そういう情報を手に入れた
- みこと: この道の先は行き止まり…
- みこと: それを理解しながらも 私たちは進まずにはいられなかった
- みこと: 不思議なくらいの万能感があった
- みこと: そう、帆奈ちゃんといれば何でもできる 私たちは無敵なんだ
- みこと: だから…あのきれいな夕日にだって 私たちがここにいることを見せつけてやれる
- みこと: この瞬間は、そう無邪気に信じられた
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- 更紗 帆奈: 眠った振りをやめて、目を開ける
- 更紗 帆奈: 勝手に転がり込んだ家は静まり返り 誰の気配も感じない
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: 瀬奈、そこにいる…? 瀬奈…?
- 更紗 帆奈: 瀬奈からの返事はなかった というより、どこにもいない
- 更紗 帆奈: 最初は寝ると消えるのかなって思ったけど 最近になって違うことがわかった
- 更紗 帆奈: 一時的にここからいなくなって… 見えなくなってしまっているんだ
- 更紗 帆奈: けれど魔力を分ければもとに戻る ま、偶然わかったことなんだけどさ
- 更紗 帆奈: そう、それは…少し前
- 更紗 帆奈: 何日も瀬奈が姿を見せなかったことがあって それでも瀬奈の存在を感じるから ワラにも縋る思いで魔力を分けてみたんだけど…
- 更紗 帆奈: そうしたら次の日、ケロッとした顔で 瀬奈は姿を見せたってわけ
- 更紗 帆奈: 意図して行ったことじゃない だから、原理もわからない
- 更紗 帆奈: それでも色々と試したり 聞いたりしているうちに わかってきたことがある
- 更紗 帆奈: ひとつは いなくなっていた期間の記憶がないこと
- 更紗 帆奈: それでもうひとつが 瀬奈の人格は常時魔力を消費していること
- 更紗 帆奈: 要は、ガソリンみたいなもんだ 瀬奈が何かをするためには つねに魔力を必要とする
- 更紗 帆奈: 魔力が消費されると姿が見えなくなり 尽きてしまえば、瀬奈は…
- 更紗 帆奈: この先、瀬奈が自分の体に慣れていけば 自然に魔力消費の抑え方を覚えて 問題も解消されるのかもしれないけど…
- 更紗 帆奈: あたしには時間がなかった
- 更紗 帆奈: …ソウルジェムが…
- 更紗 帆奈: 魔力を分けながらバンバン暗示を 使ってるし…こうなるのも当然か
- 更紗 帆奈: せめて暗示は控えないと いけないんだけどね~…
- 更紗 帆奈: けれど今さら控えるわけにはいかない まだフィナーレが完成してないのだから
- 更紗 帆奈: とりあえず グリーフシードを使いますか…
- 更紗 帆奈: あっは…瀬奈の言うことは ちゃんと聞いとくもんだわ…
- 更紗 帆奈: こんなことを繰り返しているせいで 集めたグリーフシードも ほとんどなくなっている
- 更紗 帆奈: ホント、瀬奈がここにいないのは不幸中の幸い… 見つかったら何を言われるかわからない
- 更紗 帆奈: いや、わかってるか わかってるよねー
- 更紗 帆奈: もう自分に魔力を分けるなって言うに決まってる
- 更紗 帆奈: …誰がそんなことするものか
- 更紗 帆奈: 瀬奈!瀬奈!
- みこと: …帆奈ちゃん…!
- 更紗 帆奈: もう瀬奈が目の前から消えてなくなるのは まっぴらごめんだ
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: ひとりの夜は、心がざわついて眠れない
- 更紗 帆奈: 早く瀬奈に会いたい またあの笑顔を見せてほしい…
- 更紗 帆奈: 最後まで縛りつけてるのは あたしってわけ?…あっは
- 更紗 帆奈: でも、あと少しならいいよね?
- 更紗 帆奈: もっといっぱい面白おかしいことをしよう… 忌々しいものを全部台なしにしていこう…
- 更紗 帆奈: あたしと過ごしたこの時を かけがえのないものだったと いつまでも覚えてもらえるようにしよう
- 更紗 帆奈: これがきっと…
- 更紗 帆奈: あたしたちの別れの記憶になるから
- [Part 1 end]
- ---
- [Part 2 start]
- FILENAME: text_517320-1_xNzXO.txt
- や、やめてくれ…! 子どもには手を…
- 更紗 帆奈: なーに勘違いしてんの そんなことしないって
- 更紗 帆奈: あんたたちにやってほしいのは 他にあるんだから
- やってほしい、こと…?
- 更紗 帆奈: うん
- 更紗 帆奈: あ、カレンダーがある… 忘れないように印つけておくね!
- 更紗 帆奈: まあ、暗示をかけるんだから 忘れないと思うけど
- …君は、何を…?
- 更紗 帆奈: 何って…簡単だよ
- 更紗 帆奈: この日、家の電気を消しててよ
- 更紗 帆奈: …ね?簡単でしょ?
- 更紗 帆奈: さーて、このビルは終わりっと
- みこと: ねえ、これって前に言ってた… 次の準備をしてるんだよね?
- 更紗 帆奈: そうだけど…?
- みこと: うーん… 電気を消すだけでいいの?
- 更紗 帆奈: …もしかして、疑ってる?
- みこと: 疑ってるっていうか…
- みこと: そんなことして 何が楽しいのかなって…
- 更紗 帆奈: 楽しいことになるんですう!
- みこと: どうなるの?
- 更紗 帆奈: ぷい!教えなーい
- みこと: えーけち~
- 更紗 帆奈: ま、びっくりさせたいからさ そのときまで待っててよ
- みこと: 帆奈ちゃんがそう言うんなら 待ってる、け、ど…
- みこと: あ、あれ…? 急に、力が…
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: 瀬奈の消える間隔が 短くなってきてる…
- 更紗 帆奈: うっ、くっ… あたしのほうも結構限界か…
- 更紗 帆奈: …急がないと…
- 更紗 帆奈: はあ…はあ…
- 更紗 帆奈: ここからはこの町の全景を一望できる
- 更紗 帆奈: 私は大学ノートを取り出し 町の景色を睨みつけながら 印をつけていく…
- 更紗 帆奈: 今日はここと、ここ… あとはこうすれば…
- 更紗 帆奈: 何だよも~曲線難しいなあ…
- 更紗 帆奈: 実際にやっていけばいくほど 課題が見えてくる
- 更紗 帆奈: こりゃ、思ってた以上に難しいね
- 更紗 帆奈: ひとつひとつの課題を乗り越えながら コツコツ地道にやっていくなんて 正直、柄じゃなかった
- 更紗 帆奈: だけどなあ… 今度ばっかりはそうも言ってられない
- 更紗 帆奈: 今のこの状態がつづくのだとすれば 新しい魔女を見つけて、グリーフシードを 手に入れる…なんてことはできそうにもない
- 更紗 帆奈: だから備えてある魔女の数から計算して 自分がもちそうなギリギリの日を割り出した
- 更紗 帆奈: それがエックスデーになる
- 更紗 帆奈: …問題は 他の魔法少女のやつらだ
- 更紗 帆奈: 大人しくしていてくれよ…なんて 都合がよすぎるか
- 更紗 帆奈: 勧善懲悪、この世に悪の栄えた試しなし… ま、それ自体はいい…というか、そのほうがいい
- 更紗 帆奈: 最終的にそうなるのだとしても 今は、待ってほしい 勝手だとわかっているけど、待ってほしい
- 更紗 帆奈: 瀬奈のために、待ってほしい…
- 更紗 帆奈: あたしはそんなことを思って つい、祈ってしまった
- FILENAME: text_517320-2_xNzXO.txt
- みこと: 何か…景色が見える
- みこと: それは遠い昔の景色だったり 神のための人柱になった悲劇だったり 虐殺の恐ろしい瞬間だったり
- みこと: そして… 多くの魔法少女が魔女になっていった光景だった
- みこと: これはなに?なんでこんな光景が…?
- みこと: わけもわからないまま見ているうちに すべての光景には共通点があると悟った
- みこと: どれだけ足掻こうが、正しさがあろうが 行き着く先は絶望である、と
- みこと: …希望なんて無意味だ
- みこと: 私の中で確信が深まっていくと 同時に、憎しみがひどく燃え盛る
- みこと: そうだ…すべてを滅ぼさないと…
- 更紗 帆奈: 瀬奈!
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: どーしたの ずっと呼んでたんだよ?
- みこと: あ、ごめん…ぼんやりしてて…
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: …ねえ、これからまた 計画の準備するの?
- 更紗 帆奈: そうだけど?
- みこと: それよりさ もっと別のことをしない?
- 更紗 帆奈: 別のこと?
- みこと: たとえば…
- みこと: あるはずのない事件をめぐって 魔法少女たちが対立するの
- みこと: それこそ仲間を敵だと 思ってしまうほどに…
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: 今までやってきたちょっかいは お上品すぎたかなって思うの
- みこと: 魔女頼りでもあったし
- みこと: だから、もっと色々と仕掛けて みんなを混沌に陥れようよ
- みこと: …ね、面白そうでしょ?
- 更紗 帆奈: ま、これ以上魔女は 使えないからね…
- みこと: そうなの?
- 更紗 帆奈: んー…いや、戦力になりそうな 魔女が減ってきただけ
- 更紗 帆奈: 数自体は、全然よゆー
- みこと: んふふ、よかった
- 更紗 帆奈: …けど、それはそれで困るから 先に魔女を捕まえよっか?
- みこと: …………
- みこと: 嫌なんだ、帆奈ちゃん
- 更紗 帆奈: え…?
- みこと: やりたくないんでしょ? だから魔女狩りの話題に変えた…
- みこと: 帆奈ちゃんのことなら 何でもお見通し…んふふふっ
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: いいよ、やろう 変に疑われるのも嫌だからね
- みこと: そう言ってくれるって信じてた
- 更紗 帆奈: …で、どこでやるの?
- みこと: 地図だと…ここ
- 更紗 帆奈: …施設があるところ?
- みこと: あ、そうなんだ 知らなかったけど…
- みこと: 前、一緒に近くを通ったとき 気に入らない感じがしたの
- 更紗 帆奈: ふ~ん…
- みこと: もしかしたら魔法少女が いるかも…ねえ、行ってみようよ
- 更紗 帆奈: わかった、わかったって!
- 更紗 帆奈: けど今回は偵察 下調べしてから実行に移すから
- みこと: は~い… 真面目だね、帆奈ちゃんは
- みこと: そして私たちは下調べに出かけた
- みこと: その施設の名は つつじの家といった
- FILENAME: text_517320-3_xNzXO.txt
- みこと: 月日は流れていく…
- みこと: 帆奈ちゃんと再会して どれだけたったのだろう?
- みこと: 数ヶ月?それとも一年?
- みこと: 時間の流れが人だった頃とは違うのか あまり定かではない…
- みこと: ただ最近気になっているのは… 帆奈ちゃんがトーンダウンしたように思えること
- みこと: 再会した当初はいい感じに壊れてて 今の私にぴったりだと思ったんだけど…
- みこと: やっぱり帆奈ちゃんは帆奈ちゃんだった
- みこと: 優しくて真面目で、虚勢を張ってるけど 可愛さが見え隠れする女の子…
- みこと: それじゃあダメだよ
- みこと: 全部台なしにするってことは ある意味では、全部なくすってことでしょ?
- みこと: つまり、滅ぼすってこと
- みこと: 今の帆奈ちゃんじゃ せいぜい周りを引っかき回すだけ… そんなんじゃ帆奈ちゃんだって楽しくないよ
- みこと: だから私が、ちゃんと導いてあげる
- 更紗 帆奈: すー…すー…
- みこと: …………
- みこと: …帆奈ちゃんにも 見せてあげられるかな…?
- みこと: この世界がどんなに汚くて 悲しいものなのかを教えてくれる
- みこと: あの光景を…
- みこと: ねえ帆奈ちゃん…ここのところ ずっとその光景ばかり見るの
- みこと: きっと…魔女が見ているものを 私も見ているんだよ
- みこと: …私は本当に魔女なんだね あとは、人格が消えるだけ…
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: …帆奈ちゃん 私はもうムリみたい
- みこと: 憎しみが抑えきれなくて すべてを滅ぼしたいの…!
- みこと: だから…
- 更紗 帆奈: …瀬奈は、消えないよ
- みこと: ――っ!? 起きてたの?
- 更紗 帆奈: まーねー…
- みこと: えっと、これは…
- 更紗 帆奈: いーよいーよ、わかってるから
- 更紗 帆奈: 自分自身 何してるんだろって思うもん
- 更紗 帆奈: 何やっても無意味だって 知ってるはずなのにね…
- みこと: じゃあ…
- 更紗 帆奈: でもダーメ! 変なことさせようとしてもムダ
- 更紗 帆奈: あたしがやることに 変わりはないよ
- みこと: な…
- みこと: なんでよ…!
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- みこと: 全部、台なしにするって 言ったよね?
- みこと: なのに、何にも変わらないよ…?
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: 帆奈ちゃんなら 変えてくれるんでしょ?
- みこと: こんな世界から何もかも なくしてくれるんでしょ?
- みこと: そうだよね?帆奈ちゃんは すごいから、できるんだよね?
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: うんって言ってよ!
- 更紗 帆奈: …瀬奈は、焦ってるの?
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: 昔からそう…瀬奈は思い悩むと 急に空回りしはじめる
- 更紗 帆奈: …不安なんだね?魔女になって しまうかもしれないって
- みこと: …んふふ 帆奈ちゃんは勘違いしてるよ
- 更紗 帆奈: え…?
- みこと: 私は猶予があるだけで 魔女であることに変わりはないの
- みこと: だから恨みとか憎しみとか 嫌な感情が溢れ出てきて
- みこと: 時々、自分を忘れそうになる
- みこと: …いずれ、完全に自分を忘れる きっとそうなる
- みこと: そして私は… ここからいなくなるんだ
- 更紗 帆奈: 何度も言うけど 瀬奈はいなくならないよ
- みこと: わかったふうなこと言わないで!
- 更紗 帆奈: わかったふうじゃなくて 瀬奈のことならわかる
- みこと: わかんないよ!
- みこと: 帆奈ちゃんに、こんな体になった 私の気持ちなんて!
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: あ…
- みこと: 帆奈ちゃんと私は それから一言も交わさなかった
- みこと: はじめて帆奈ちゃんとケンカをした いや違う…こんなの私が一方的に わめいているだけ…帆奈ちゃんは何も悪くない
- みこと: 自分が恥ずかしくなった… ここから消えたい…そう強く思ったら…
- みこと: 私の姿はなくなった
- みこと: でも、しっかりと周りの景色が見える… そうなんだ…こんなこともできたんだ…
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: 帆奈ちゃんは私がいなくなったのに 全然動じない…
- みこと: もしかして、負担をかけてたのかな…? やっぱり私なんていないほうがよかったんだ…
- 更紗 帆奈: …くっ…うう…っ
- みこと: え…?
- みこと: 帆奈ちゃんが苦しんでる…? なんで?何が起こって…
- 更紗 帆奈: は、帆奈ちゃん! ど、どうしよう!?
- 更紗 帆奈: 苦しいよ…!! た、助け…て…!!
- みこと: あのとき…魔女になる直前… 私は激しい苦しみに襲われた
- みこと: でも… どうして、そんなことを思い出すんだろう…?
- みこと: 帆奈ちゃんはちょっと苦しんでるだけ… 魔女になるわけない…なるわけないんだ!!
- みこと: 帆奈ちゃん…!
- 更紗 帆奈: せ、瀬奈…?どうして…? いつもなら…ううっ
- みこと: こ、これって…
- みこと: 帆奈ちゃんが手にしていたソウルジェムを見て 私は膝から崩れ落ちそうになった
- みこと: それはもう真っ黒になるほど穢れていた
- FILENAME: text_517320-4_xNzXO.txt
- 更紗 帆奈: ほら…グリーフシードはないの 他の場所に隠してたものも…
- みこと: もしものときのために 集めておいたはずのグリーフシードは もうどこにもなかった
- みこと: 本当に私…時々消えてたんだね… その間に帆奈ちゃんは…
- 更紗 帆奈: そう、グリーフシードを使ってた
- 更紗 帆奈: 本当だったらまだ残ってたはず だったんだけど…
- 更紗 帆奈: ま、計算通りにはいかないねー
- みこと: そんな、他人事みたいに…!
- みこと: 帆奈ちゃんがいなくなったら 私…!!
- みこと: …そ、そうだ! 魔女を倒しにいこう!
- みこと: グリーフシードさえ使えば 治るんだから、ね?
- 更紗 帆奈: …ムリだねー 魔女を倒す力なんてないって
- みこと: そんな…
- 更紗 帆奈: …いつかはこうなるって わかってたことでしょ?
- 更紗 帆奈: それがちょっと早く来ただけ…
- みこと: い、嫌だ…魔女にならないで!
- 更紗 帆奈: 無茶言わないでよ…あっははは…
- 更紗 帆奈: でも…そうだね… もっと引き延ばしたかった
- 更紗 帆奈: まだ完成してないのに…
- 更紗 帆奈: …そうだ、瀬奈ってさ 高いところが好きだったよね?
- 更紗 帆奈: あたしが魔女になったら この町で一番高い展望台に…
- 更紗 帆奈: …あれ…?あたしが魔女に なったら、瀬奈はどうなるの…?
- みこと: 私の本当の魔法は 移植させることだから…
- みこと: 魔法を使ってまた別の人に この人格を移植させれば…
- 更紗 帆奈: …移植?…へえー… それで、瀬奈は助かるんだね
- みこと: …………
- 更紗 帆奈: …あたしと一緒におしまいに しようなんて思わないでよ
- みこと: …………
- みこと: やっぱり…行こう
- 更紗 帆奈: え…?
- みこと: 私、自分の姿を消せるって 知らなかったの
- みこと: それが偶然できた…
- みこと: もしかしたら まだ他に力があるかもしれない
- 更紗 帆奈: その力を使って 魔女を倒すって…?
- みこと: うん…!
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: いーよ、瀬奈がそうしたいなら そうしよっか
- みこと: うぬぬぬぬ…っ!
- 更紗 帆奈: え…何してんの…?
- みこと: 帆奈ちゃんにパワーを送ってる
- みこと: どう?少しは変わった?
- 更紗 帆奈: …あっは…別に変化なんか…
- 更紗 帆奈: って、あわわわ! 急に力が湧いてきた!
- みこと: 本当!?
- 更紗 帆奈: ホントホント! これなら魔女も倒せるよ!
- みこと: やったあ!
- 更紗 帆奈: よーし、そんなら出発だ!
- みこと: おーっ!
- みこと: どうして帆奈ちゃんは そんなに嘘が下手なんだろう…?
- みこと: これじゃあ私がバカみたい…
- FILENAME: text_517320-5_xNzXO.txt
- みことの声: 帆奈ちゃ~ん!
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: 帆奈ちゃんって!
- 更紗 帆奈: あ…
- みこと: どうしたの? どこか苦しい?
- 更紗 帆奈: ううん…青空を見るの 久し振りな気がして…
- みこと: …………
- みこと: い、行こう! 早く魔女をやっつけないと!
- 更紗 帆奈: あっはは、どこ行くの?
- みこと: こっち!
- みこと: えっと…えっと…
- みこと: (おかしい…何も感じない…)
- みこと: (もしかして…帆奈ちゃんが 弱っているから、私の力も…?)
- みこと: (だとしたら… もう、ムリじゃない…?)
- 更紗 帆奈: あっは、魔女も使い魔もいないね
- みこと: 違う!たまたま外れただけ! 今度は…こっち!
- 更紗 帆奈: 懐かしー… よくふたりで来たよね…?
- みこと: そうだけど…
- 更紗 帆奈: 休憩したかった? ちょうどいいや、あたしも…
- みこと: 違うの、また外れただけ! 今度こそ…
- いらっしゃいませ おひとり様ですか?
- 更紗 帆奈: はあ?見てわかんない? ふたりだっつーの
- みこと: ちょ、ちょっと帆奈ちゃん! 私は見えないから…
- 更紗 帆奈: あ、そっか…
- 更紗 帆奈: でもふたりだから!
- え、ええと…
- みこと: もう出よう、ね?
- みこと: ここでもなくて… 向こうでも…
- 更紗 帆奈: ねー、ちょっと休憩しよ? 疲れちゃった
- みこと: あ、ごめん…
- みこと: (帆奈ちゃんが休憩したがる ことなんてなかったのに…)
- みこと: (…それだけ苦しいんだ)
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …なんかさ バカみたいにいい天気だね~
- みこと: う、うん
- 更紗 帆奈: いいのかな…こんなの
- みこと: え?
- 更紗 帆奈: …瀬奈と色んなところ回ってさ
- 更紗 帆奈: んで、家族連れが楽しんでる ような公園で、ぼんやりして…
- 更紗 帆奈: あたしが、いいのかな? こんなに幸せで
- みこと: よくわからないけど… いいと思うよ
- 更紗 帆奈: そうかな…?
- 更紗 帆奈: だってあたし 色んなことしたよ?
- 更紗 帆奈: 最初は…嫌なやつを消した 願いでね
- 更紗 帆奈: 瀬奈のことだって利用するつもり だったんだ
- 更紗 帆奈: 嫌なことから逃げて、逃げて… 幽霊みたいになるために
- みこと: …幽霊?
- 更紗 帆奈: この世界の誰にも 見つけられない存在…
- 更紗 帆奈: 自由になれると思ってたの 幽霊になればね
- みこと: 今でも、そう思ってる?
- 更紗 帆奈: 思ってない
- 更紗 帆奈: そもそも、それが成功したら… なんつーか、違うでしょ?
- 更紗 帆奈: やっぱ悪は倒されないと むかつくよ
- 更紗 帆奈: うん…滅びなかったら この世は本当に救いようがない
- みこと: …じゃあ、私もそうだ 帆奈ちゃんの共犯だもん
- 更紗 帆奈: 実際にやったのはあたしだよ
- みこと: 関係ないよ、もう
- みこと: ねえ… 一緒に滅びよっか
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …だから、それじゃダメだよ
- みこと: えーなんで?
- 更紗 帆奈: あっは… あたしが、幸せだから
- みこと: 幸せなら、いいじゃない…
- 更紗 帆奈: ダーメ
- 更紗 帆奈: だから、休憩はここまで… やつらも待ってるしね
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: あたしたちが引っかき回して 衝突させてきた魔法少女たち…
- 更紗 帆奈: そいつらに…犯人があたしだって たぶん、バレた
- みこと: そ、そうなの…? じゃあ逃げないと…
- 更紗 帆奈: …あっは…逃げないよ… 予定より早かったけど…
- 帆奈の声: このときを待ってたんだから
- FILENAME: text_517320-6_xNzXO.txt
- みこと: ここって…?
- 更紗 帆奈: 最近、あたしたちのことを 嗅ぎ回ってるやつがいてね…
- 更紗 帆奈: そいつらが ここでよくたむろってるんだわ
- みこと: …知らなかった
- 更紗 帆奈: だろうねー ここんところ頻繁に消えてたから
- みこと: え…じゃあ、計算が違ったって…
- 更紗 帆奈: 黙って… ほら、そこにやつらがいる
- 更紗 帆奈: あっは、あっははは… すんごい数…
- みこと: ね、ねえ…本当に戦うの? やっぱり逃げたほうが…
- 更紗 帆奈: 逃げたってすぐ捕まるよ
- 更紗 帆奈: もうあたしらは 追い詰められてるわけ
- みこと: …………
- 更紗 帆奈: それにさ、あたしは…
- 更紗 帆奈: 「そもそも見つけてほしかったんだ」
- 更紗 帆奈: だから、ちゃーんと
- 更紗 帆奈: あたしが諸々の犯人だって わかるようにしておいたんだから
- 更紗 帆奈: …まあ 魔女が勝手にやったのもあるけど
- みこと: な、なんで、そんなことを
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: 「あたしが戦って負ければ この世界にもいいところはあるんだって そう思えるから」
- みこと: …わ、わからない…帆奈ちゃんが 何を言っているのか、全然!
- 更紗 帆奈: ま、ヴィランにはヴィランなりの 心意気ってもんがあるのさ
- 更紗 帆奈: あっは!
- みこと: 帆奈ちゃん!!
- 常盤 ななか: 警戒してください!
- 伊吹 れいら: え?
- 常盤 ななか: …ここに…
- 常盤 ななか: 「もうひとり、誰かがいます…!」
- 更紗 帆奈: (だからさあ…)
- 更紗 帆奈: (ふたりだっつーのッ!)
- やちよ: …捉えた!
- 常盤 ななか: そこ!
- 更紗 帆奈: (そんなもの…ッ)
- 静海 このは: …後ろっ!
- みこと: 帆奈ちゃん…!
- 鶴乃: 手応えありっぽい!
- やちよ: みんな、広がって包囲を!
- 更紗 帆奈: (いやあー…強いね、こいつら)
- みこと: 強くなんかない!
- みこと: 帆奈ちゃんが万全だったら こんなやつらなんかには…!
- 更紗 帆奈: (あっは、瀬奈ー やっぱ加勢してくれるの?)
- 更紗 帆奈: (…あたしはさ 確かに筋を通しにきたよ?)
- 更紗 帆奈: (ここで死んじまってもいい!)
- 更紗 帆奈: (けど、やるからには全力が ポリシーなんだなー、これが!)
- みこと: …もう、わかんないけど
- みこと: 帆奈ちゃんが戦うなら 私も戦う
- みこと: …理由なんてそれだけでいい
- 常盤 ななか: 姿を現しなさい!
- 更紗 帆奈: (行くよ…)
- みこと: うん…!
- 更紗 帆奈: じゃじゃーん!
- やちよ: あなたが…
- 常盤 ななか: ようやく会えましたね…
- 更紗 帆奈: どーもどーも!
- 更紗 帆奈: はじめまして…でもないか…
- 更紗 帆奈: え~、あたしがお目当ての…
- 更紗 帆奈: 更紗帆奈だよ~っと!
- みこと: 相棒の瀬奈みことだよ~!
- みこと&帆奈: あっはー!
- FILENAME: text_517320-7_xNzXO.txt
- 三栗 あやめ: ちょりゃー!
- みこと: 帆奈ちゃん、右から来る!
- 更紗 帆奈: おっと!
- 三栗 あやめ: んぐっ!?
- 静海 このは: あやめ!
- 三栗 あやめ: …こんにゃろー!
- 静海 このは: こっちも!
- 遊佐 葉月: よぉーし!
- みこと: 大丈夫! こっち、帆奈ちゃん!
- 更紗 帆奈: あっはー!
- 静海 このは: …ちっ!
- 遊佐 葉月: 3人がかりなのに…!?
- みこと: 帆奈ちゃん、何ともない?
- 更紗 帆奈: (やっぱ瀬奈のサポートは 最高だわ…負ける気しない)
- みこと: んふふ、これがふたりの力だよ
- 更紗 帆奈: (あっは! 恥ずかしいセリフ禁止~)
- 更紗 帆奈: けれど、体はとっくに悲鳴を上げている
- 更紗 帆奈: 苦しくて、気持ち悪くて 立っているのですらやっと
- 更紗 帆奈: なんでこんなに必死になってるんだろ
- みこと: 今だよ、帆奈ちゃん!
- 更紗 帆奈: あっはははー!
- やちよ: あぐっ…!
- 鶴乃: やちよー!
- 鶴乃: 今、行く…
- 更紗 帆奈: ダメーっ!
- 鶴乃: あがっ!?
- やちよ: つ、鶴乃!
- 更紗 帆奈: そんなに食いついてくるなよ こーんな満身創痍の相手にさ
- 更紗 帆奈: もうさ、とっくに限界は超えてるんだわ 放っておいても あと少しで魔女にはなるくらいに
- 更紗 帆奈: でも…楽にはなりたくない
- 更紗 帆奈: あたしはずっと楽になろうとしていた だってあたしは生きることの外側へ 逃げようとしていたんだから
- 更紗 帆奈: でも、もう逃げるのはやめた そんな姿を瀬奈に見せたくないもん
- 更紗 帆奈: ああ、そっか…今わかった
- 更紗 帆奈: あたしは瀬奈に… あたしが敗れるところを見せたいんだ
- 更紗 帆奈: 憎しみや絶望に呑まれてしまうと 行き着くところは、敗北なんだって 最後に教えてあげたいんだ…
- 更紗 帆奈: でもなあ… どうせなら、巨悪に立ち向かう側がよかったなあ
- 更紗 帆奈: そのほうが、すっきりしたと思うんだ
- 更紗 帆奈: あたしも、きっと幸せになれて…
- 常盤 ななか: …私たちは目的を果たします…
- 夏目 かこ: …あ、あなたを…止める…!
- 志伸 あきら: ボ、ボクたちは…
- 純 美雨: …その…ために…集またネ…!
- 更紗 帆奈: あっ…と思った
- 更紗 帆奈: 不思議なもんで悪役をやっていると わかってしまうんだねえ…
- 更紗 帆奈: あたしを倒すのは、こいつだ
- FILENAME: text_517320-8_xNzXO.txt
- みこと: 帆奈ちゃんの魔法って 上書きの魔法だったよね?
- みこと: 私の暗示の魔法が便利だって 言ってたけど、他にも…
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: あれ…遅れてきたの怒ってる?
- みこと: …じゃないか 本を読んでるんだ、めずらしいね
- 更紗 帆奈: え…?
- みこと: だから、本を読んでるの めずらしいねって
- 更紗 帆奈: ああ、これ…?
- みこと: すごいな…私って活字読んでると 眠たくなっちゃうの
- みこと: 憧れちゃうなあ…
- 更紗 帆奈: そう?別に、普通だけど
- 更紗 帆奈: (どうしよう… お薦めの本聞かれたら…)
- 更紗 帆奈: (この一冊読むのに半年も かかったから、他の本なんて…)
- お待たせしました アイスコーヒーのお客さま
- 更紗 帆奈: あ、はい
- こちらアイスティーです
- みこと: わーい!
- どうぞごゆっくり おくつろぎください
- みこと: 帆奈ちゃん大人だねー 私、コーヒー飲めないもん
- 更紗 帆奈: …そう?
- 更紗 帆奈: (どうしよう… シロップ入れにくくなった)
- みこと: 憧れるなあ… …じゃなくて!
- みこと: もう、店員さんが来たから 話が逸れちゃった…
- 更紗 帆奈: この本だっけ?
- みこと: そうそう、何の本?
- 更紗 帆奈: うーん…
- 更紗 帆奈: 人は負けるためにつくられて いない、っていう本
- みこと: え、どういうこと?
- 更紗 帆奈: うまく言えないんだけど
- 更紗 帆奈: あたしたちは決して負けたり しないんだっていう
- 更紗 帆奈: 希望を信じつづける話
- みこと: んー? とにかく、いいお話なのかな?
- 更紗 帆奈: そりゃそうだよ
- 更紗 帆奈: 希望を信じつづけるってことは 困難に抗うってことなんだから
- 常盤 ななか: ああああああああ!
- みこと: 帆奈ちゃん!!
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- 更紗 帆奈: 意識が飛んでいた…!? そう気づいたときには遅かった
- 更紗 帆奈: …ちょい止ま…
- 常盤 ななか: 黙れ!
- 更紗 帆奈: ぐっ…!
- 更紗 帆奈: (こ…これは…)
- 更紗 帆奈: (…死ぬかな…?)
- 更紗 帆奈: …あっは…!
- 常盤 ななか: はぁぁぁぁぁぁぁっ!
- みこと: や、やめてー!!
- 更紗 帆奈: 常磐ななかはあたしのソウルジェムを狙っていた そう、あたしを殺すつもりなんだ
- 更紗 帆奈: それでいい、あんたたちは正しさを証明するため あたしを殺すんだ…そこに情けはいらない
- 更紗 帆奈: だってさ、下手に情けをかけると 真似する人がいるでしょ? とくにこの、瀬奈みこととかさ
- 更紗 帆奈: 思い知らせてやってよ、正義の魔法少女さん
- 更紗 帆奈: 滅びだとか憎しみだとか そんなこと言ってるとこうなるって
- 更紗 帆奈: それが正しい世の中のありようなんだって
- 更紗 帆奈: …………
- 常盤 ななか: …………
- 更紗 帆奈: でも彼女は私のソウルジェムを壊さなかった いや、壊せなかったんだ
- 更紗 帆奈: 勘弁してよ… なんでそこでやめちゃうの?
- 更紗 帆奈: それじゃあ、何の意味もないだろうが!
- みこと: 帆奈ちゃん 今のうちに逃げよう!
- 更紗 帆奈: (一緒に 滅ぶんじゃなかったの?)
- 更紗 帆奈: (怖くなった?)
- みこと: うん、怖い
- みこと: 帆奈ちゃんが死んじゃうのは やっぱり怖いの!!
- 更紗 帆奈: (瀬奈…)
- みこと: お願い、逃げて…
- みこと: 私、帆奈ちゃんには 生きていてほしい
- みこと: 帆奈ちゃんだけは 消えてほしくないの!
- 常盤 ななか: …………
- 更紗 帆奈: …はぁ~…
- 更紗 帆奈: (ごめんね、瀬奈… …あたし、逃げないよ)
- みこと: でも…! 帆奈ちゃん、負けちゃうよ!
- 更紗 帆奈: (うん、そうだよ… でもそんなのはわかりきってる)
- 更紗 帆奈: (彼女たちは決して 負けたりしないんだ)
- 更紗 帆奈: (だからあたしは逃げない)
- みこと: 何なの…? もう、わけわかんない!
- 更紗 帆奈: (活字を読むと 眠くなるからだよ、あっは)
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: この場でできる最後の抵抗… そんなのはただのひとつしかない
- 更紗 帆奈: 自分で自分を殺すんだ
- FILENAME: text_517320-9_xNzXO.txt
- 更紗 帆奈: ねえ瀬奈、あたしはあんたが思ってるより ずっとあんたのことを大切に感じてるんだ
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: 瀬奈…
- 更紗 帆奈: あんたが魔女になったって信じてた頃なんか そりゃもうわけわかんなくちゃっててさ…
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- 更紗 帆奈: 瀬奈!
- え…だ、誰ですか?
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …あっは…あっははは…
- 更紗 帆奈: あっははは あっはあはああっははは!
- な、なに…この人…
- 更紗 帆奈: いるはずがないってわかってるのに あんたを捜して 夜の町を歩き回ったりしたんだから
- 更紗 帆奈: でも、瀬奈の気配を感じるようになってからは すべてが一変した
- 更紗 帆奈: 生きる意味を得た気分だったし 何より、瀬奈があたしの中にいるっていうのが どうにかなりそうなくらいにうれしかった
- 更紗 帆奈: それからは取り憑かれたように あんたをこの世界へ生み落とす方法を探した
- 更紗 帆奈: どうすればここから出てくるんだろう? これはいい影響があるかな? コーヒーを飲んだら瀬奈が嫌がるかな?
- 更紗 帆奈: そんなことばっかり考えてた
- 更紗 帆奈: それなのにあんたはぜーんぜん出てこないから あたしの中で瀬奈が 死んじゃったんじゃないかって思ったの
- 更紗 帆奈: だから…あたしの命をあげることにした
- 更紗 帆奈: 魔力を分け与えることになったのは 本当に偶然… あたしは自分の命を捧げようとしたの
- 更紗 帆奈: 瀬奈が生きるためなら あたしは死んだっていい そう思っていたから
- 更紗 帆奈: それは今でも変わらない だからさ…
- みこと: …なに、してるの…帆奈ちゃん?
- みこと: ソウルジェムなんか握って… どうする気…?
- 更紗 帆奈: 常磐ななかにはそもそもそんな発想がないのか 誤魔化すことができていたけど やっぱり、瀬奈には通用しなかった
- 更紗 帆奈: 瀬奈はあたしが何をしようとしているか もうわかっている
- 更紗 帆奈: そしてグリーフシードが もう何の役にも立たなくなっていることも
- みこと: …そっか…ここが行き止まりか…
- みこと: じゃあ、しょうがないね
- 更紗 帆奈: 悪いんだけどさ、瀬奈…
- 更紗 帆奈: あたしの敗北に あんたを付き合わせる気はないよ
- みこと: ――っ!?
- 更紗 帆奈: あたしは、残りの魔力をすべて使って… 瀬奈を移植させる
- 更紗 帆奈: 騒ぎに気づいたのか他の魔法少女の 気配も少し離れたところで感じる…
- 更紗 帆奈: …ま、移植させるなら よりどりみどりってわけだ
- みこと: うっ…なに、これ… 帆奈ちゃんから、引き離される!
- みこと: は、帆奈ちゃん、何をしたの!?
- 更紗 帆奈: 忘れたの、瀬奈 あたしの魔法は暗示の魔法じゃない
- 更紗 帆奈: 本当は上書きの魔法 暗示は、あんたからコピーしていただけ…
- 更紗 帆奈: で、今のあんたの魔法は何よ?
- みこと: 移植の魔法を…コピーしたの!?
- 更紗 帆奈: どいつもこいつも すぐ答えを知りたがる…
- 更紗 帆奈: そんなもん、自分で見つけな!
- みこと: 待って、帆奈ちゃん!
- みこと: 私を置いていかないで!!
- 更紗 帆奈: んじゃ…いい感じなんで…
- 更紗 帆奈: …お先~!
- みこと: ――っ!?
- 常盤 ななか: …あっ!!
- 更紗 帆奈: …あっは…笑えるじゃない…
- 更紗 帆奈: …あたしの…人生…
- みこと: 帆奈ちゃああああんッ!!
- 更紗 帆奈: 真っ白な光に包まれる… あたしが消えてなくなっていく…
- 更紗 帆奈: でももし…もう一度願いが叶うなら 今度は誰かを消すとか、なかったことにするとか そういうことを願うんじゃなく
- 更紗 帆奈: 瀬奈との記憶をいつまでも残したい
- 更紗 帆奈: あたしの魂がなくなっても あたしたちの日々がこの世界に 記憶されているようにしたい
- 更紗 帆奈: そうしたら… たとえ自分自身が なくなってしまうのだとしても
- 更紗 帆奈: きっと寂しくないから
- 更紗 帆奈: ああ、瀬奈…
- 更紗 帆奈: あんたと一緒にいて 本当に楽しかったよ
- 更紗 帆奈: さようなら、瀬奈
- FILENAME: text_517320-10_xNzXO.txt
- 更紗 帆奈: どいつもこいつも すぐ答えを知りたがる…
- 更紗 帆奈: そんなもん、自分で見つけな!
- みこと: 帆奈ちゃんが何をしようとしているのか その答えはわかっていた
- みこと: わからないのは、その理由だった
- みこと: 考えようとしたって何もまとまらない 嫌だ、嫌だ、帆奈ちゃんがいなくなるのは嫌だ そんなことばかり思ってしまう
- みこと: ここにいてよ
- みこと: それがムリなら、連れてってよ
- みこと: ひとりなんて悲しいじゃない?
- みこと: お願いだから、置いていかないでよ
- みこと: 待って、帆奈ちゃん!
- みこと: 私を置いていかないで!!
- 更紗 帆奈: んじゃ…いい感じなんで…
- 更紗 帆奈: …お先~!
- みこと: ――っ!?
- みこと: 帆奈ちゃんは自分のソウルジェムを壊した
- みこと: ああ、なくなる…
- みこと: 私が一番失いたくなかったものが 今、目の前で…
- 更紗 帆奈: …あっは…笑えるじゃない…
- 更紗 帆奈: …あたしの…人生…
- みこと: 帆奈ちゃああああんッ!!
- みこと: 強い力で引っ張られたかと思うと 私は深い暗闇の底に落ちていた
- みこと: ここはどこなんだろう?
- みこと: その疑問はすぐに消え失せた どうでもよかったから
- みこと: ここがどこだろうが、私がどうなっていようが そんなことはもうどうでもいい
- みこと: 帆奈ちゃん…
- みこと: …何かが込み上げてくる ドロドロとした熱い何か…
- みこと: これは、憎しみだった
- みこと: そうだ、私は憎むべきなんだ 帆奈ちゃんを奪ったこの世界を 悲しみしか用意されていないこの世の真相を
- みこと: 滅ぼしてやる
- みこと: 結局何も台なしにできなかったから こんな悲しみが待っていたんだ
- みこと: 全部滅ぼしてやる
- みこと: もう仕組みがどうのとか、抵抗がどうのとか そんなのお構いなしにすべて力でねじ伏せ 情け容赦なく叩きのめしてやる
- みこと: 絶対に許さない、この世界を
- みこと: ーみことー 温かな光が射し込んでくる すると私の周囲がきらきらと輝きだした
- みこと: ーみことー 私の周りには鏡の破片が無数に浮かんでいた それらが反射し、光っているんだ
- みこと: ーみことー この光景には見覚えがある
- みこと: ーみことー そう、帆奈ちゃんと再会を果たす直前
- みこと: ーみことー こんなふうに光が射し込んできて きらきらと輝き出し…
- みこと: ーみことー 帆奈ちゃんとの記憶が ここに広がったんだ
- みこと: ーみことー 私は、手を伸ばす
- みこと: ーみことー 記憶の景色でいい、幻だっていい そこに帆奈ちゃんがいるなら何でもいい
- みこと: ーみことー もう一度だけ会いたい… 会いたいよ、帆奈ちゃん
- 更紗 帆奈: …見つけた
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: 最後に会えてよかったよ、瀬奈
- みこと: …………
- みこと: …嘘…なんで…?
- 更紗 帆奈: なんでって… 会いにきちゃダメだった?
- みこと: いいに決まってるよ!!
- みこと: 帆奈ちゃん!帆奈ちゃん…!
- みこと: 夢でも、幻でもいい 帆奈ちゃんに会えてうれしい
- 更紗 帆奈: よかった…
- みこと: 迎えにきてくれたんだね?
- 更紗 帆奈: …ううん、そうじゃなくてさ 計画のことを話しておきたくて
- みこと: 計画って…帆奈ちゃんが 準備してたやつだよね?
- みこと: もうそんなのいいじゃない どうせ全部失敗したんだから
- 更紗 帆奈: あっは、ひっどいな~ 失敗したわけじゃないって
- 更紗 帆奈: 未完成だけど… ちゃんとわかるようにはなってる
- 更紗 帆奈: だから…日付覚えてる? その日に、あの高い展望台から…
- 更紗 帆奈: 町の夜景を見て
- みこと: 町の、夜景を?
- 更紗 帆奈: そこにあたしの言いたいことが 全部つまってあるの
- みこと: そんなよくわからないことよりさ 私を連れていって
- みこと: ずっと一緒にいようよ!
- 更紗 帆奈: 連れてはいけない 瀬奈はここに残るの
- 更紗 帆奈: ここで生きていかないと
- 更紗 帆奈: 罪や罰は全部あたしが 引き受けるからさ
- みこと: なんでそんな… 勝手なこと言うの…?
- みこと: 自己満足だよ、そんなの! そんなことして何の意味があるの
- 更紗 帆奈: あたしにとってはさ…
- 更紗 帆奈: 瀬奈が生きているって事実が 希望になり得るんだよ
- みこと: ――っ!?
- 更紗 帆奈: すべてを忘れろとは言わない けど…憎しみとはさよならして
- 更紗 帆奈: そして、今までとは別の… 新たな人として生きていくの
- 更紗 帆奈: きっと世界中の人たちが 誕生を祝ってくれるよ
- 更紗 帆奈: あんたはここにいるんだ… ここにいていいんだって
- みこと: でも…!
- みこと: 帆奈ちゃんがいなかったら 何もうれしくないよ
- みこと: ――っ!?
- みこと: 気がついたとき 私は展望台にいた
- みこと: 懐かしい夢を見ていた… 帆奈ちゃんと過ごした あの掛け替えのない日々の夢を
- みこと: もう私は帆奈ちゃんの中にいない あれから転々と宿主を替え 今は…
- アリナ: …………
- みこと: この宿主の中にいた
- みこと: 帆奈ちゃんとはまた違った宿主で もしかしたら仲よくなれるかも しれないんだけど…
- みこと: 私の声はこの宿主には届かない… やっぱり帆奈ちゃんは私にとって 特別で、あの時間は奇跡だったんだと思う
- みこと: それでも、この宿主の声は聞こえるし 外の世界も宿主を通して見ることができる
- みこと: この展望台に宿主が来たのは 町で多数魔力の反応があって それが何なのか確かめるためらしい
- みこと: …まあ、もうどうでもいい この町に何があろうと、どうでもいい
- みこと: だって帆奈ちゃんが消えてしまったから
- みこと: そう…帆奈ちゃんは もうこの世界のどこにもいない
- みこと: 帆奈ちゃんのいない世界は この夜みたいに真っ暗だ…
- みこと: なんで私はまだ こうして生きながらえているのだろう
- みこと: ここにいたってもう意味なんてないんだ さっさと消えてしまったほうが…
- みこと: …そう思ったときだった
- みこと: ふと今日が帆奈ちゃんの言っていた 計画のエックスデーだったと思い出す
- みこと: 帆奈ちゃんが電気を消すよう 暗示をかけて回っていたあれ いったい何だったんだろう…
- アリナ: ワオ… これだったワケ
- みこと: ふいに宿主が 町の夜景を見て声を上げた 他の人たちのザワつきも聞こえてくる
- みこと: 私は…言葉が出てこなかった 頭の中が真っ白になった気分で ただその光景を見つめる…
- みこと: 見下ろした町には、明かりによって 「HAPPY BIRTHDAY」という 誕生を祝うメッセージがつくられていた
- みこと: これは、誰が何のためにしているの? どこかの恵まれた人への 誕生日プレゼントだったりする?
- みこと: いや、違う…あの家も、その家も 帆奈ちゃんとふたりで行った場所… そして…暗示をかけた場所
- みこと: ねえ、帆奈ちゃん ずっと準備をしていたのは これだったんだね
- みこと: …私に生まれ変わることができるって そう言ってくれているの…?
- アリナ: ―アリナ― 滅びの中にある人間が それでも命を散らして輝く…
- アリナ: ―アリナ― ビューティフル… きれいだヨネ
- みこと: 確かに、この光景はきれいだった
- みこと: 不条理なものへ命の輝きを 見せつけているようで…
- みこと: そして何より…
- みこと: 嫌いだったこの町が…この世界全体が 私を祝っているかのようで
- みこと: 世界に自分の存在を はじめて認められた気がした
- みこと: でも…だからって、どうすればいい? こんなものを見せられて、どうすればいいのよ
- みこと: 心を入れ替えて それこそ帆奈ちゃんの言う通り 新たな人生をはじめる?
- みこと: 私は今日、この瞬間 世界に祝福されて生まれたのだと そう思って絶望に負けずに生きていく?
- みこと: できるわけない! こんなの見せられたって、無意味なんだ
- みこと: そう、無意味だ…
- みこと: そんなのはわかってる…でも…
- みこと: なんでこんなに、うれしいの…?
- みこと: うれしくて…本当にうれしくて 涙が止まらなかった
- みこと: 私がずっと欲しくて でも絶対に手に入らないと思っていたもの…
- みこと: そういうものが帆奈ちゃんから プレゼントされたのだから…
- みこと: 帆奈ちゃんはきっと私に別の人生を 歩んでほしかったんだと思う
- みこと: でも…今さら変えることはできない
- みこと: やっぱり私の憎しみは消えない…
- みこと: 帆奈ちゃんがいなくなるしかなかった この世の仕組みがどうしても許せない
- みこと: だからきっと 私は自分のありかたを変えられないだろう
- みこと: でもこの光景を 私はきっといつまでも覚えている…
- みこと: 憎しみに染まって罪を犯すたびに きっとこの光景を思い出すことになるんだろうな
- みこと: 私を踏みとどまらせるために
- みこと: …そういうこと全部わかっていながら 私は隅々まで目に焼きつけるように じっとこの光景を見つめつづけた
- みこと: そして… 生きていこう、と思った
- みこと: 「さようなら、帆奈ちゃん」
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