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Farewell Storage JP Text

Sep 16th, 2022 (edited)
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  1. (From the opening sequence in 517310-0)
  2. "ふたり"で過ごした日々は 鏡の中できらきらと輝いている…。
  3. 「全部、台なしにしようよ。 それがあたしたちにできる 唯一の反撃だと思うからさ」
  4. [Title card] サヨナラ・ストレージ
  5.  
  6. FILENAME: text_517310-1_6cQGi.txt
  7. みこと: 落ちていく太陽が好きだった
  8. みこと: 自分がここにいた証拠を残そうと あんまりにもまぶしく輝くから…
  9. みこと: だから、好きだった
  10. みこと: あの団地の…屋上が好きだった あそこは私の秘密基地 パノラマに見える景色をひとり占めできた
  11. みこと: だから、好きだった
  12. みこと: そう考えると 私が最後にあの屋上で夕日を見たのは 宿命だったのかもしれない
  13. 更紗 帆奈: 瀬奈!瀬奈!
  14. みこと: …帆奈ちゃん…!
  15. 更紗 帆奈: 瀬奈ーっ!
  16. みこと: あのとき、私は魔女になった
  17. みこと: それは来る日も来る日も、呆れるほど魔法を使い ソウルジェムが穢れに呑まれていった結果…
  18. みこと: でもあのときの私は自分の身に何が起きたのか わからなくて、恐怖と苦しみで混乱していた
  19. みこと: そんな中でも夕日はきれいで… この町…この世界を きらきらとした黄金に染めていた
  20. みこと: ああ、世界はなんてきれいなんだ… 最後の最後になってそんなことを思い知った
  21. みこと: 辛いことや悲しいことから目を逸らさず ちゃんと向き合っていれば
  22. みこと: まだやり直しがきくときに 世界の美しさを知れたかもしれない
  23. みこと: そう思うと、無性に悲しくなった
  24. みこと: …そのとき、声が聞こえた
  25. みこと: この世のすべてを恨むような呪詛の声 あるいは、滅びを願う切実な声…
  26. みこと: その声を聞いた途端 きれいに見えたはずの町が 忌々しいもののように思えてくる
  27. みこと: 私が消えようとしているのに、どうして? どうしてそんなに祝うように美しいの?
  28. みこと: 私が生まれてこなかったらよかったってこと?
  29. みこと: 私はただ普通の子として生まれ この町で幸せに生きたかっただけなのに… それさえも許さず、こんな仕打ちをされる
  30. みこと: 憎い、あの美しいすべてが憎い 私が手に入れられなかったものの 象徴のようで憎い…消してやりたい
  31. みこと: 私はこの私を生み落とした憎い町を 世界を消してしまいたい
  32. みこと: そのために生きたい
  33. みこと: そう思ったとき、私は自分の力を開花させた それは瀬奈みことという人格を 他人の中へ移植すること
  34. みこと: その力を使ってそばにいた友だち… 帆奈ちゃんの中へ逃れることで 私は私として在りつづけることに成功した
  35. みこと: つまり私は魔女になりながらも 人格だけは影響を免れるために 他人に寄生している存在…
  36. みこと: ただ、離れていても魔女の一部だから この神浜市を滅ぼしたいという意思も 変容した私の魂がもたらしたものかもしれない
  37. みこと: こうやって私は変わっていく… あんなにもきれいだった夕方の景色を 憎しみで塗り替えてしまったように
  38. みこと: きっとこれから すべてを憎しみで染めていくのだろう
  39. みこと: そうやってこの人格も 魔女になっちゃうんだ…
  40. みこと: ーみことー でも… 帆奈ちゃんの中は温かかった
  41. みこと: ーみことー 憎しみを和らげるような 温かな光が射し込んでいる
  42. みこと: ーみことー その日だまりはまばゆく光っていて
  43. みこと: ーみことー 鏡のように何かを反射していた…
  44. みこと: 大丈夫だった!?
  45. 更紗 帆奈: …あんたは…?
  46. みこと: 私は瀬奈みこと
  47. みこと: 一応、魔法少女なんだけど あなたも…だよね?
  48. 更紗 帆奈: …う、うん…
  49. みこと: これは… 帆奈ちゃんとはじめて会ったときの記憶?
  50. 更紗 帆奈: あんたの魔法が一番使える
  51. みこと: 使える…?
  52. 更紗 帆奈: 便利だってこと
  53. みこと: えー!そうなの!
  54. みこと: …えへへ~! ちょっと誇らしいかも…!
  55. 更紗 帆奈: …ふふ…
  56. みこと: そう、これは帆奈ちゃんの魔法が 「上書きの魔法」だとわかったとき…
  57. みこと: 私たちはよくこのお店で 魔法やこれからのことを話し合ったっけ
  58. みこと: 魔女を捜して ふたりで色んなところにも行ったね
  59. みこと: 他の魔法少女とも出会ったけど 私たち“ふたり”が一番居心地よかったね
  60. みこと: 私たちはずっとふたりで 色んなことをしたね
  61. みこと: 交換日記だってした
  62. みこと: お揃いのペンだって買った!
  63. みこと: …まあ、私が押しつけたようなものだけど
  64. みこと: 帆奈ちゃん嫌そうにしてたもん 可愛いと思ったのに
  65. みこと: ふふ…
  66. みこと: ーみことー …あの日々だけは、憎しみに染めたくない
  67. みこと: ーみことー 大切にできなかったから 今度こそは大切にしたい
  68. みこと: ーみことー そんなふうに帆奈ちゃんを思うと 滅びの意思がゆれた
  69. みこと: ーみことー 私が人格だけっていう 半端な状態にあるから?
  70. みこと: ーみことー それとも… 帆奈ちゃんが私を守ってくれてるの?
  71. みこと: ーみことー …帆奈ちゃん… 私はここにいるよ…?
  72. みこと: ーみことー 帆奈ちゃんの中にいる こんなにも近くにいる
  73. みこと: ーみことー なのに、話すこともできないね…
  74. みこと: ーみことー 顔を合わして、また話したい…
  75. みこと: ーみことー 帆奈ちゃんに伝えたいことが いっぱいあるの
  76. みこと: ーみことー 帆奈ちゃん…帆奈ちゃん…!
  77. みこと: ーみことー 瀬奈みことは、まだここにいるよ…!
  78. ???: 「…見つけた」
  79. みこと: ――っ!?
  80. みこと: ここって…団地の屋上…?
  81. ???: やっと… やっと、会えた…!
  82. みこと: え…?
  83. 更紗 帆奈: ずっと捜してたよ、瀬奈
  84. 更紗 帆奈: あっは!
  85.  
  86. FILENAME: text_517310-2_6cQGi.txt
  87. みこと: これって… …私、もとに戻ったの…?
  88. みこと: そんな淡い期待はすぐに潰えた
  89. みこと: 自分が実体を持っていない状態だと すぐに気づいたからだ
  90. みこと: つまり私はまだ帆奈ちゃんの中にいる 帆奈ちゃんの視覚を使って 外の世界にいるように見えているだけで…
  91. 更紗 帆奈: …………
  92. みこと: …帆奈ちゃん?
  93. 更紗 帆奈: …あっは…瀬奈が、蘇った… あっは、あっははは…
  94. 更紗 帆奈: あーっははははははははは!
  95. みこと: …帆奈ちゃん…!
  96. 更紗 帆奈: 瀬奈ーっ!
  97. みこと: 帆奈ちゃんは私が実体のある人間に 見えているのか、こちらへ 飛びつくように走ってきて…
  98. 更紗 帆奈の声: あが…っ!
  99. みこと: 盛大に倒れた
  100. 更紗 帆奈: あいたた… …な、なんで…?
  101. みこと: えっと、それは…
  102. みこと: 私は、今ここにいる自分が実体を持たないこと つまり、帆奈ちゃんが見ている虚像… イメージに過ぎないことを説明した
  103. みこと: 要約すると…帆奈ちゃんだけに 見える意識体、かな…?
  104. 更紗 帆奈: ん~…? つまり、幽霊ってこと?
  105. みこと: 幽霊…?
  106. 更紗 帆奈: あー、やっぱりそうなんだ!
  107. 更紗 帆奈: あのね!あたし、ずっと瀬奈が どこかにいるような気がしてたの
  108. 更紗 帆奈: 目の前で魔女になったはずなのに なんか瀬奈の存在を感じてて…
  109. 更紗 帆奈: なのに瀬奈はどこにもいないから もしかしてって思ったんだ
  110. 更紗 帆奈: 瀬奈は一足先に幽霊になって あたしを見守ってるんじゃ?って
  111. 更紗 帆奈: あっは、やっぱりそうだった!
  112. みこと: …………
  113. 更紗 帆奈: けどさ、瀬奈も意地悪だよねー
  114. 更紗 帆奈: もっと早く 姿を見せてくれたらよかったのに
  115. みこと: すんなり受けいれてくれるんだね 私がここにいることを
  116. 更紗 帆奈: は?どこかにいる気がしてたって 言ったでしょ?
  117. 更紗 帆奈: あたし、ずっと信じてたんだよ 瀬奈は消えてないって!あっは!
  118. みこと: 帆奈ちゃんは警戒心が強く そして思慮深い性格をしていた
  119. みこと: それが今はこんな荒唐無稽な話を あっさりと受けいれてしまう
  120. みこと: きっとそれは…私が魔女になった光景を 目の前で見て、少し壊れてしまったせい
  121. みこと: もちろん私を失ったという事実だけじゃなく 魔法少女の行き着く先が魔女なんだと 希望はいとも簡単に裏切られるのだと…
  122. みこと: そう思い知らされてしまったことも 原因だとは思う…私に流れてきた 情報を紐解く限りでは
  123. 更紗 帆奈: 瀬奈!これからどーする? もう何だってしていいよ~
  124. 更紗 帆奈: どうせあたしの結末は 決まってんだから、あっは…
  125. 更紗 帆奈: あーっははははははははははっ!!
  126. みこと: …………
  127. みこと: 私が生きているってちゃんと伝えられれば もとに戻るかもしれないって思ってたけど そう甘くはないよね…
  128. みこと: それに…今の私って 生きてるって言えるの?
  129. みこと: 幽霊か…そうじゃないのに そうみたい…
  130. 更紗 帆奈: え…違うの?
  131. みこと: うん、まあ…幽霊みたいだけど 私はちゃんとここにいるの
  132. 更紗 帆奈: ふーん…
  133. 更紗 帆奈: でも、こんなところから姿を 消して自由に生きられるなんて…
  134. 更紗 帆奈: あっは!すーっごくいいね!
  135. みこと: ふふ…そうだね…
  136. 更紗 帆奈: …………
  137. 更紗 帆奈: …そっか、嫌なんだ
  138. みこと: え…?
  139. 更紗 帆奈: ま、家族とか学校とか あんなにこだわってたもんねー
  140. みこと: ――っ!?
  141. 更紗 帆奈: でもさー、そういうものが瀬奈を 今の状態に追い込んだって…
  142. 更紗 帆奈: …そうは思わない?
  143. みこと: そんなの…
  144. みこと: 思うに決まってるよ
  145. 更紗 帆奈: …あっは
  146. みこと: 帆奈ちゃん、今の私ね ちょっと変なの
  147. みこと: 最後に何もかもがきれいに見えて 私、前向きになれたはずなのに…
  148. みこと: その何もかもが憎く思えてくるの 今は抑えられてるけど…
  149. みこと: そのうち抑えられなくなって 私が私でなくなっちゃう気が…
  150. 更紗 帆奈: それなら…
  151. 更紗 帆奈: 「全部、台なしにしようよ」
  152. みこと: え…?
  153. 更紗 帆奈: 瀬奈はきっと家とか学校とかの 日常に縛られて、もがいてる
  154. 更紗 帆奈: もがいて、もがいて…でも 報われないから、憎い
  155. みこと: …………
  156. 更紗 帆奈: この町を混沌に叩き落として 日常の仕組みを台なしにすれば
  157. 更紗 帆奈: …そうすれば瀬奈を 縛りつけてるものも
  158. 更紗 帆奈: 憎しみに値しない 無意味なものになってさ…
  159. 更紗 帆奈: 自由になれるよ
  160. みこと: 自由に…?
  161. 更紗 帆奈: 憎しみだけじゃない…辛いことや 悲しいことからも自由になって
  162. 更紗 帆奈: んで、瀬奈は生まれ変わるの! むかつく日常から解放されて!
  163. 更紗 帆奈: ハッピーバースデー、瀬奈!
  164. 更紗 帆奈: あんたの人生は そこからはじまっていくんだぜ!
  165. みこと: 生まれ、変わるって…
  166. 更紗 帆奈: …瀬奈を消させたりしない
  167. 更紗 帆奈: そんなふざけた仕組み 台なしにしてやる
  168. 更紗 帆奈: それがあたしたちにできる 唯一の反撃だと思うからさ
  169. みこと: 夕日が落ちていく 夜がはじまる
  170. みこと: もしかしたら私たちのすることなんて すべてが暗闇に包まれる前の 一瞬の輝きでしかないのかもしれない
  171. みこと: でも、それでもいいの 帆奈ちゃんと一緒なら
  172. みこと: 一緒に落ちていこう
  173. みこと: 神様に見捨てられた私たちを哀れんで こんな奇跡を起こしてくれた悪魔に 感謝しながら…
  174.  
  175. FILENAME: text_517310-3_6cQGi.txt
  176. 更紗 帆奈: あっは!待たせたね パーティーのはじまりだよ~ん
  177. みこと: 驚いたことに、帆奈ちゃんは 結構な数の魔女に暗示をかけ 自分のそばに置いていた
  178. みこと: ペットみたいだと言うと そうだよ~、と答えてくれた
  179. みこと: けれどただ何の意味もなく ペットにしていたわけじゃなくて タイミングを見ていたみたい
  180. みこと: 町へ放って 混沌を生み出すタイミングを
  181. 更紗 帆奈: あっははあっはあははっ!!
  182. 更紗 帆奈: いい感じに厄災を振りまいてる この町、どうなっちゃうのかな~
  183. みこと: 帆奈ちゃんは魔女へ 詳細に暗示を植えつけ 次々、実行させた
  184. みこと: これによって町に様々な問題が 発生することになるだろう
  185. みこと: それこそ、これまで多くの人たちが ありがたがっていた普通の日常が ことごとく台なしにされるほどの…
  186. 更紗 帆奈: 瀬奈もやってみる~?
  187. みこと: …あ、私はもう暗示の魔法は…
  188. 更紗 帆奈: あー、そっか…そーだったね…
  189. みこと: …えっと…
  190. みこと: そうだ!魔女を使って 魔法少女をどうにかできない?
  191. 更紗 帆奈: どうにかって?
  192. みこと: だって、魔女がこんなに活発に 動いていたら倒しにくるでしょ?
  193. 更紗 帆奈: なーるほど… その前に襲わせるわけ?
  194. みこと: ううん、そうじゃなくて…
  195. みこと: 「魔女を使って 魔法少女同士を争わせられないかな?」
  196. 更紗 帆奈: ――っ!?
  197. みこと: 人って、危機が迫っても 自分の命大事さに
  198. みこと: 仲間の足を引っ張ったり することがあるでしょ?
  199. みこと: その心理を応用すれば 魔法少女同士で戦い出すと思うの
  200. みこと: そうすれば 魔女どころじゃなくなるかも
  201. 更紗 帆奈: …あっは…ついでに魔法少女の 仕組みも台なしにしようって?
  202. 更紗 帆奈: すご~い、瀬奈! そんなの思いつかなかった~!
  203. みこと: それは…
  204. みこと: 私が魔女の影響を受けてるから なんだと思う…
  205. 更紗 帆奈: …んー? どーしたの、黙って
  206. みこと: え?ううん…それより 私、役に立った?
  207. 更紗 帆奈: 役に立つ…? あー、そういうこと…
  208. 更紗 帆奈: ねえ、瀬奈が暗示を使えなくても 役立たずなんて思わないよ
  209. 更紗 帆奈: つーか、本当に役に立たなくても それでいいの!ツレなんだからさ
  210. みこと: う、うん…
  211. みこと: (役に立ったって 言ってほしかったのにな…)
  212. 更紗 帆奈: でもなー…そこまで思い通りに 魔女が動くかなー
  213. みこと: えームリそう?
  214. 更紗 帆奈: 魔女だけじゃなくて あたしらも動いたほうがいいかも
  215. みこと: 何か仕掛けるんだ?
  216. 更紗 帆奈: そ!あたしらの邪魔をされちゃ たまんないし…
  217. 更紗 帆奈: 面白そーだからね!
  218. みこと: そうして私たちは河川敷に来た… 目当ての魔法少女が たまに通るらしい
  219. みこと: ねえ、どんな人なの?
  220. 更紗 帆奈: …ちょろちょろ 動いてるやつなんだけどさ
  221. 更紗 帆奈: あいつなら期待通りの 反応をしてくれるはずだよ~
  222. みこと: ふーん、仲いいんだ
  223. 更紗 帆奈: え…なんでそうなるの?
  224. みこと: あ、誰か来た… あの人?
  225. 更紗 帆奈: うん…そうだけど…
  226. 更紗 帆奈: …ま、とりあえず隠れるよ!
  227. 常盤 ななか: …………
  228. 常盤 ななか: …ん?
  229. 常盤 ななか: …………
  230. 更紗 帆奈: ん~…隙がないな…
  231. みこと: あの人が魔法少女?
  232. 更紗 帆奈: そ、常磐ななか… 面白そうなやつなんだわ
  233. みこと: ふーん…ふーん
  234. 更紗 帆奈: …なんか、怒ってる?
  235. みこと: 別に~…それより 行っちゃったけど、どうする?
  236. 更紗 帆奈: そりゃ追いかけるって
  237.  
  238. FILENAME: text_517310-4_6cQGi.txt
  239. みこと: 帆奈ちゃんと一緒に常磐ななかさんという人を 追いかけて、公園までやってきた
  240. みこと: ななかさんはどういうわけか 公園に入るなりぴたっと立ち止まって…
  241. 常盤 ななか: …………
  242. 常盤 ななか: はあ…
  243. 常盤 ななか: …ここまで来れば 問題ありません
  244. 常盤 ななか: 姿を現しなさい! つけているのはわかっています!
  245. 更紗 帆奈: (へ~…気づいてたってわけ)
  246. みこと: でも、どこに隠れてるかは わからないみたい
  247. みこと: …そんなようじゃ 後ろは取り放題だね
  248. 更紗 帆奈: (あっは!怖い~! さすがあたしのツレ~!)
  249. 更紗 帆奈: …じゃ、行きますか
  250. 常盤 ななか: ――っ!?
  251. 常盤 ななか: くっ…
  252. 常盤 ななか: …次の攻撃が来ない?逃げた?
  253. みこと: …………
  254. 常盤 ななか: 今の攻撃は 魔法によるものだった
  255. 常盤 ななか: もし私も 魔法少女になってなければ…
  256. 常盤 ななか: …………
  257. 常盤 ななか: やはり…
  258. 常盤 ななか: みんなで手を繋いで…とは いかないようですね
  259. 常盤 ななか: 魔法少女同士で戦うことになる…
  260. 常盤 ななか: ならその前に、こちらも 仲間をつくらないと…
  261. みこと: んふふ…行っちゃった
  262. みこと: …もういいよ、帆奈ちゃん
  263. 更紗 帆奈: あっはははは!
  264. みこと: わ、大声を出すのはダメだって!
  265. 更紗 帆奈: ごめんごめん~
  266. 更紗 帆奈: でもさー、いやー笑える あの驚いた顔ったらないよ~
  267. 更紗 帆奈: あんなに澄ました顔してたのに あっは、あっははは…
  268. みこと: 知り合いなんだよね?
  269. 更紗 帆奈: 一方的に知ってるだけ
  270. 更紗 帆奈: ま、期待通りグループを つくってくれるみたいでよかった
  271. 更紗 帆奈: この調子でつづけていけば 放っておいても争い出すよ
  272. 更紗 帆奈: 疑心暗鬼になってさ
  273. みこと: 魔女を操るのも 忘れちゃダメだよ~
  274. 更紗 帆奈: あっは!忙しいね~
  275. みこと: 魔女を使って混沌を生みながら 魔法少女たちへ様々な暗示をかけ 不和や暴走を起こさせる…
  276. みこと: それだけでも大変なのに 帆奈ちゃんは家族や学校を 重点的に台なしにしようとした
  277. みこと: たとえば…
  278. みこと: 私の暮らしていた団地にいる魔女 これを使って団地の幸せな日常を 台なしにしようとしてくれた
  279. みこと: …ただ、私は確かに団地に 住んでいたし、帆奈ちゃんに家族を 紹介したこともあるんだけど…
  280. みこと: その家族は本当の家族じゃない
  281. みこと: 同じ団地の別の家族を 魔法によって私の家族にして これが自分の家族だと紹介しただけ
  282. みこと: 家族のことだけじゃなく 学校のことでも帆奈ちゃんに 嘘をついている
  283. みこと: だからかな…
  284. 更紗 帆奈: 聞いた、瀬奈!あの学校で 不登校が増えたんだって!
  285. みこと: みーんな行かなくなれば 学校の意味がなくなるもんね
  286. 更紗 帆奈: そう!こんな感じで 台なしにしていくの!あっは!
  287. みこと: 魔女のおかげだねー
  288. みこと: だから…引け目を感じちゃって 帆奈ちゃんが家族や学校を 台なしにしていっても…
  289. みこと: 何も変わる気がしなかった
  290.  
  291. FILENAME: text_517310-5_6cQGi.txt
  292. みこと: お邪魔しまーす
  293. みこと: …本当だ、誰もいない
  294. 更紗 帆奈: 魔女のせいでっつーか、おかげで みんな出ていったんだわ
  295. 更紗 帆奈: 一家離散ってやつ
  296. みこと: へー、そんなことが… 今日はここに泊まるの?
  297. 更紗 帆奈: そーゆーこと
  298. みこと: そう、私たちは毎日毎日 泊まる場所を探し求めている…
  299. 更紗 帆奈: …え?あたしの家?
  300. 更紗 帆奈: そんなのあるわけないっつーの あっは!
  301. みこと: …ということだったので 泊まれそうな場所を見つければ そこに転がり込む毎日…
  302. みこと: でも…不思議なのは 毎回違う場所にすること
  303. みこと: 拠点みたいにひとつの場所を 完全に私たちのものにしたほうが いちいち探さなくて楽なのに…
  304. 更紗 帆奈: よいしょっと
  305. みこと: …何してるの?
  306. 更紗 帆奈: ブレーカー壊してるの 電気がつかないように
  307. みこと: え…な、なんで?
  308. 更紗 帆奈: 下準備だからね~!
  309. みこと: 下準備って… 全部台なしにするぞ計画の?
  310. 更紗 帆奈: あ、そーんな名前になってたの…
  311. みこと: 可愛いでしょ?
  312. 更紗 帆奈: え…
  313. みこと: それで、ブレーカー壊すのって 次に起こす何かの下準備?
  314. 更紗 帆奈: あ、うん… まー、そんな感じ?
  315. 更紗 帆奈: …でもなー、この調子だと 時間がかかりすぎるんだよねー
  316. 更紗 帆奈: 直接暗示をかけて 回るしかないか…
  317. みこと: ダメなの?
  318. 更紗 帆奈: ちょーっと魔力がね…
  319. みこと: そっか…魔力…
  320. みこと: …………
  321. 更紗 帆奈: あー!この本! 懐かし~
  322. みこと: 本?
  323. 更紗 帆奈: そー!
  324. 更紗 帆奈: ほら、前はさ…よく喫茶店で 待ち合わせしたでしょ?
  325. みこと: …私が魔法少女だった頃だね
  326. 更紗 帆奈: うん…で、瀬奈を待ってるときに 暇潰しでこの本読んでたの
  327. みこと: あーそういえば 本を読んでたときもあったね!
  328. みこと: 私が席についても 夢中で読んでて…
  329. 更紗 帆奈: 区切りのいいとこまで 読んでただけだって
  330. みこと: 何の本だったっけ?
  331. 更紗 帆奈: 人は負けるためにつくられて いない、っていう本
  332. みこと: …あやしい自己啓発の本?
  333. 更紗 帆奈: 違うよ… フツーの小説
  334. みこと: ふーん…私も読んでみよっかな? ページめくってくれる?
  335. 更紗 帆奈: いいよ!…あは…
  336. みこと: へー…
  337. みこと: なんか、眠くなってきちゃった!
  338. 更紗 帆奈: ええええ…
  339. みこと: 早いけど、もう寝よっか? 明日から忙しいし
  340. 更紗 帆奈: …忙しい?何かあった?
  341. みこと: 魔女をたくさん見つけるの!
  342.  
  343. FILENAME: text_517310-6_6cQGi.txt
  344. みこと: 見つけた魔女に暗示をかけ 安全を確保する…
  345. みこと: 捜せばそれなりに見つかると 思っていたのだけど 結局見つけたのはこの1体だけ
  346. みこと: う~ん…うまくいかない…
  347. 更紗 帆奈: ま、1体でも見つかって よかったよ
  348. 更紗 帆奈: んで、どーするの?
  349. みこと: とりあえず… グリーフシードにしよっか…?
  350. 更紗 帆奈: あ、結局そーするの?
  351. みこと: 本当は暗示をかけて、いつでも 利用できるようにしたかったの
  352. みこと: ほら…一斉に放ってからは 都度、魔女を捜してたでしょ?
  353. みこと: それで見つけてから、利用するか グリーフシードにするか決めてた
  354. 更紗 帆奈: ま、結構場当たり的だったね
  355. みこと: 全部台なしにするぞ計画は ノリだけじゃ成功しないと思うの
  356. 更紗 帆奈: ノリだけでいけそうな 計画名なんだけどなー…
  357. みこと: だから町に魔女を泳がせておいて 計画的に使えたらな…って
  358. みこと: それに 使い道がなくなったら…
  359. 更紗 帆奈: グリーフシードを 回収すればいい?
  360. みこと: うん、そう…!
  361. 更紗 帆奈: なーるほど…
  362. みこと: とりあえず、もしものために グリーフシードは集めておこう?
  363. みこと: それで、ここに隠しておくの!
  364. 更紗 帆奈: …奪われないようにするため? 考えすぎな気もするけど…
  365. 更紗 帆奈: まー、瀬奈がそうしたいなら そうしようよ
  366. みこと: ありがとう…
  367. みこと: 色々と言ったけど 私が一番やりたかったのは グリーフシードを集めること…
  368. みこと: 私は…自分のときと同じように 帆奈ちゃんがムリをして 魔女になってしまうのを恐れていた
  369. みこと: もしかしたら… グリーフシードなんかにしないで 景気よくパーッと使おうよ!
  370. みこと: …なんて言い出すんじゃないかと 思ったんだけど…承諾してくれて ともかくよかった…
  371. みこと: …帆奈ちゃんを 魔女にはさせないんだから…
  372. 更紗 帆奈: んー?あたしが魔女に?
  373. みこと: あ、それは…
  374. 更紗 帆奈: だいじょーぶ、だいじょーぶ! あたしは魔女にならないっつーか
  375. 更紗 帆奈: その前にパーンッて弾けるから!
  376. みこと: …………
  377. みこと: え?
  378. 更紗 帆奈: あたしって色々したでしょ? ま、これからもやってくけど
  379. 更紗 帆奈: そんなあたしは魔女になることも 許されないと思うわけよ
  380. 更紗 帆奈: つーか、許されちゃいけない
  381. みこと: 何を…言ってるの…?
  382. 更紗 帆奈: んー?あたし側は、やっぱ負けて 派手に散らないと!ってこと
  383. 更紗 帆奈: そうじゃないと…
  384. 更紗 帆奈: ―帆奈― 世界が悪意で成り立っているって 証明してるみたいじゃない?
  385. みこと: ―みこと― …………
  386. 更紗 帆奈: ―帆奈― あたしの周囲には、嫌なこと 不条理なこと、そんなのばっかだった
  387. 更紗 帆奈: ―帆奈― つーか、そんなのばっかが 日の目を見てた
  388. 更紗 帆奈: ―帆奈― んで、今やその悪意の権化が あたしってわけ
  389. 更紗 帆奈: ―帆奈― だったら倒されなきゃ 悪意がまかり通るってことにならない?
  390. 更紗 帆奈: ―帆奈― うん、きっとそうなる… あの日常を肯定することになる…
  391. 更紗 帆奈: ―帆奈― それはやっぱ嫌だし… そんなところに瀬奈がいたら
  392. 更紗 帆奈: ―帆奈― きっと生まれ変われない
  393. みこと: ―みこと― 帆奈ちゃんが何を言ってるのか わからないよ…
  394. 更紗 帆奈: ―帆奈― まだ瀬奈には早かったかなー? あっははは…
  395. 更紗 帆奈: ―帆奈― ま、だからって あたしは手を抜いたりしないよ
  396. 更紗 帆奈: ―帆奈― 挑んでくるなら返り討ちにしてやる 命がけでやつらには証明してもらうんだ
  397. 更紗 帆奈: ―帆奈― どんな困難があろうと 人は負けたりしないってことを
  398. みこと: ―みこと― でも帆奈ちゃんは…負けたいって…
  399. 更紗 帆奈: ―帆奈― あたしはさ、違うから… もうすっかり絶望してるから
  400. 更紗 帆奈: ―帆奈― いや違うな…ひとつだけ あたしにも希望はある
  401. 更紗 帆奈: ―帆奈― それは、瀬奈
  402. みこと: ―みこと― え…?
  403. 更紗 帆奈: ―帆奈― 瀬奈を消させない…いや… 幽霊じゃないと世界に教えてやるんだ
  404. 更紗 帆奈: ―帆奈― そう!この町の人間全員に…世界中の人々に 瀬奈の存在を気づかせてやるんだよ
  405. 更紗 帆奈: ―帆奈― きっとみんながお祝いしてくれる… 瀬奈の新しい人生を
  406. みこと: ―みこと― …どうやればそんなことができるの?
  407. みこと: ―帆奈― 今準備を進めてるやつが成功すれば いいだけ…でも詳しいことは教えない!
  408. 更紗 帆奈: ―帆奈― 誕生日プレゼントには サプライズがつきものだもん
  409. みこと: それからは何を聞いても 内緒という返事しか返ってこなかったので 仕方なく魔女探索を再開した
  410. みこと: 何日もかけて魔女を見つけては 暗示をかけていく…
  411. みこと: もちろんグリーフシードを 回収するのも忘れていない
  412. みこと: 1か所に集めておくのは、やっぱり 危険だということになり、廃墟とか 山の中とか色んな場所に分散して隠した
  413. 更紗 帆奈: 今日はこの辺にしようよー
  414. みこと: そうだね…それなりに集まって きたから、もう急がなくていっか
  415. 更紗 帆奈: んじゃ 今日の泊まることに行こう
  416. みこと: …え、ここ?
  417. 更紗 帆奈: ちーがーうって! ここを抜けた先だよー
  418. みこと: ふーん…ねえ、どうしていつも 場所を変えるの?
  419. 更紗 帆奈: …足がつかないようにするため
  420. みこと: そっか、色々考えてるんだね
  421. みこと: …でも、ここって…
  422. みこと: ――っ!?
  423. みこと: 共同墓地の墓碑の前に ひとりの女の人が立っていた よく見なくてもわかる
  424. みこと: その人は…
  425. 更紗 帆奈: どーしたの?
  426. みこと: …お母さん…
  427. 更紗 帆奈: え…?
  428. みこと: その人は、私の母だった
  429. みこと: お母さんはなんだか悲しそうに 墓碑に向かって何かを語りかけていた
  430. みこと: 私は知っている その墓碑には、私の名も刻まれてあると
  431.  
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  433. みこと: 私の家は荒れていた
  434. みこと: 父親は家を頻繁に空け どこかで遊び回っていた
  435. みこと: そんな人だから家にお金を入れることはまれで お母さんが貯めたお金も持ち出したりしていた
  436. みこと: お母さんも私も父親に振り回され 苦労が絶えなかった
  437. みこと: 今になっては大袈裟なように思えるけど… 当時の私はそんな日々を地獄のように感じていた
  438. みこと: だから、願いで父親には いなくなってもらうことにしたの
  439. みこと: …それが、私が魔法少女になった理由 私はあの人をここから消すために契約した
  440. みこと: そういうわけだから、バチがあたっちゃった… お母さんがあの人みたいになってしまったの
  441. みこと: お母さんはあの人みたいに家に帰らなくなり 私のことを放り出して、どこかで遊び回った …お金だって全然家に入れてくれなくなった
  442. みこと: どうしてこうなっちゃうんだろう 私は、幸せな家庭が欲しかっただけなのに… お母さんとふたりなら幸せになれると思ったのに
  443. みこと: そんなときだ、帆奈ちゃんと出会ったのは
  444. みこと: …………
  445. 更紗 帆奈: …あそこにいるのが 瀬奈のお母さん?
  446. 更紗 帆奈: 前にお母さんだって 紹介してもらった人と違うけど?
  447. みこと: …………
  448. みこと: そう、私は帆奈ちゃんに嘘を吐いていた
  449. みこと: 最初はただ、普通の子と思われたほうが 仲よくなれるだろうと安易に考えて ごく普通の家庭で育ったと言った
  450. みこと: けど嘘を吐いていたとバレてしまうと 嫌われてしまう気がして、私は嘘を隠すために さらに嘘を重ねていき…
  451. みこと: ついにはまったくの他人を暗示の魔法で 私の家族…それも理想の家族にして 帆奈ちゃんに紹介してしまった…
  452. みこと: あ…
  453. みこと: お母さんは目を擦りながら 立ち去っていった
  454. みこと: 泣いていた?結局父親みたいに家族を… 私をいないものとして扱ったくせに 本当にいなくなったら涙を流すの?
  455. みこと: 嫌いだ、お母さんもあの人も… 最初から家族なんてものがなければよかったのに
  456. みこと: 最初からそんなものがなければ 私はきっと違っていたのに…
  457. みこと: …………
  458. 更紗 帆奈: …あー…
  459. 更紗 帆奈: …瀬奈は知ってるよね あたしの親のこと
  460. みこと: え?うん…交換日記に 書いてあったから…
  461. 更紗 帆奈: うん…ま、そこに書いた通り どーしよーもないやつらだったの
  462. 更紗 帆奈: ホント、両方とも死んでくれて 清々するくらいに!
  463. みこと: …その気持ち、わかるよ
  464. 更紗 帆奈: あっは、瀬奈なら そー言ってくれると思った!
  465. 更紗 帆奈: でも一般的にはそーゆーの 思っちゃいけないんだって
  466. 更紗 帆奈: おかしいよね?
  467. 更紗 帆奈: なんでそんなこと 強要されなきゃいけないの?
  468. みこと: うん、そうだよ… そんなのおかしい
  469. みこと: その結果、苦しむ人間がいるのに
  470. 更紗 帆奈: …ねえ瀬奈 あたし、最初に言ったよね?
  471. 更紗 帆奈: 瀬奈を縛りつけるものは 全部台なしにするって
  472. みこと: うん、それが… 全部台なしにするぞ計画
  473. 更紗 帆奈: 毎度その名前で力が抜けるけど… ま、いいや
  474. 更紗 帆奈: 今にして思えば 魔女に頼りきりだった
  475. 更紗 帆奈: それだと実感がないっつーか 区切りがついた感じしないよね
  476. 更紗 帆奈: こーゆーのは自分の手で やらないと
  477. みこと: 自分の手…?
  478. 更紗 帆奈: 瀬奈の手はあたしの手… 直接やってやろうよ!
  479. 更紗 帆奈: あっは!
  480.  
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  482. みこと: ―みこと― 直接、家族を台なしにするって どうやるの?
  483. 更紗 帆奈: ―帆奈― ほんのちょっと暗示を使うだけ
  484. 更紗 帆奈: ―帆奈― それだけで家族なんて崩壊し 意味をなさなくなる
  485. 更紗 帆奈: ―帆奈― ま、最初はかるーいのから いってみようか
  486. 更紗 帆奈: ―帆奈― なーんか記念日を祝ってるこの夫婦に 本音でしか喋れない暗示をかけると…
  487. いつもグチグチ文句言ってきて… もううんざりだ!
  488. それはこっちもよ! 安い給料のくせに偉そうにして!
  489. な、何だと!!
  490. 離婚よ、離婚! 本当はずっと言いたかったの!
  491. 更紗 帆奈: ―帆奈― ま、こんな感じ?
  492. 更紗 帆奈: ―帆奈― あっは、別にうまくいきすぎてるわけじゃないよ 家族なんて嘘の上で体裁を保ってるんだから…
  493. 更紗 帆奈: ―帆奈― その嘘がなくなれば、崩壊するしかない
  494. 更紗 帆奈: ―帆奈― こっちでも、別の暗示を使えば…
  495. ああ、そうだよ!今まで 隠してたけど、浮気してるんだ!
  496. 何ですって!?
  497. 隠れて借金をしていただって!?
  498. わたしだって遊びたいのよ!
  499. きゃああ! 何なの、あなた!?
  500. 更紗 帆奈: あんた、ずっとずっと 親が憎くて仕方ないんでしょ?
  501. 更紗 帆奈: あっは!隠そうとしてもムダ! 昔のあたしと同じ目をしてるもん
  502. 更紗 帆奈: もうバレてるんだからさ… 素直になっちゃいなよ
  503. …………
  504. ど、どうしたんだ そんなものを持ち出して…!
  505. うるさい!出ていけ!
  506. 親に向かって何をするの!!
  507. 親をやめた人間が言うな!
  508. みこと: …たくさんの声が町に広がっていく
  509. みこと: こんなにも呆気なく 家族が台なしになっていく…
  510. もう離婚よ!
  511. こんな家、捨ててやる!
  512. なくなればいいんだ 家族なんて…!!
  513. 更紗 帆奈: あっはははははは!!
  514. 更紗 帆奈: 瀬奈、気分はどう? 台なしにしてやったよ!
  515. んふふ…そうだね
  516. みこと: 今まで悩んでた自分が バカみたいな気がする
  517. 更紗 帆奈: あっは!よかった~
  518. みこと: …ねえ帆奈ちゃん 気づいてるんだよね?
  519. 更紗 帆奈: んー…何が?
  520. みこと: 私が家族のことで 嘘を吐いてるって…
  521. 更紗 帆奈: …嘘っていうほどのものじゃ ないと思うけどー
  522. みこと: でも、騙してたのに変わりない
  523. 更紗 帆奈: …………
  524. みこと: それに…家族だけじゃないの 学校のことだって…
  525. 更紗 帆奈: 学校?
  526. みこと: うん…
  527. みこと: 学校には多くの友だちがいて… 充実した日々を過ごしてる
  528. みこと: そんなふうに帆奈ちゃんには 言っていたと思うけど…実際は違うの
  529. みこと: …学校にも嫌な思い出しかない
  530. みこと: 私は友だちが欲しかった クラスメイトとお喋りしたり 放課後、どこかに遊びにいったり
  531. みこと: そういう普通のものが欲しかったの
  532. みこと: だから…変な家庭の子だと思われたら 敬遠されちゃうだろうから 家はどこにでもある普通の家庭だと嘘をついた
  533. みこと: その結果… 家に友だちを呼べなくなっちゃった
  534. みこと: お金がなかったから、まともなお弁当を 用意できなくて…それを周りに知られるのが 恥ずかしかったから、ひとりで食べた
  535. みこと: 放課後みんなと遊びにいくのも お金がないからできなかった
  536. みこと: 普通の家庭だと嘘をついているからね 家庭の事情だとは言えなくて…周りからは 付き合いの悪い子だと思われちゃったの
  537. みこと: このままではいけないと思って 明るく、社交的に振る舞ったんだけど なんだか空回りばかりして…
  538. みこと: そうして私は欲しいものが何も手に入らず かわりに偽りの友情と偽りの自分を手に入れた
  539. みこと: …ごめんね、帆奈ちゃん 嘘ばっかり吐いてて…
  540. みこと: 一度嘘を吐いたら本当のことを 話すのが怖くなって
  541. みこと: 嫌われるんじゃないかとか 他にも変に思い詰めたりもして
  542. みこと: 結局、今まで言い出せなかったの
  543. 更紗 帆奈: …………
  544. みこと: でも、こんなふうになっちゃって もう守るものも何もないし
  545. みこと: それに帆奈ちゃんがあんなふうに 簡単に家族を壊しちゃうし…
  546. みこと: ふふ…もういいやって 話しちゃえって思ったの
  547. 更紗 帆奈: …そっかー
  548. みこと: 帆奈ちゃんはいつ気がついたの?
  549. 更紗 帆奈: んー…交換日記でなんとなく
  550. 更紗 帆奈: 学校のことだって わかってたよ
  551. みこと: え、そうなの?
  552. 更紗 帆奈: だって、そーんな充実したやつが あたしとツルむわけないもん
  553. 更紗 帆奈: …似たような境遇なんだろうなー ってのは、わかってたよ
  554. みこと: そうなんだ…
  555. みこと: もっとちゃんと… 帆奈ちゃんと話せばよかった…
  556. みこと: そうしていれば こんなふうにはならなかったかも
  557. 更紗 帆奈: …………
  558. 更紗 帆奈: …ま、あたしはそんなことで 瀬奈を嫌いにならないよ
  559. みこと: わかってる…
  560. みこと: わかってるから、言えなかったの
  561. 更紗 帆奈: んー?
  562. みこと: んふふ…なんだか 体が軽くなった気がする
  563. 更紗 帆奈: …区切りがついたからじゃない?
  564. みこと: 区切りか…
  565. みこと: 普通の人はもっと真っ当な方法で 区切りをつけて…
  566. みこと: そして… 大人になっていくんだろうけど
  567. みこと: んふふ、私たちはやっぱり違うね
  568. 更紗 帆奈: なーに終わった気でいるの? まだ残ってるよ
  569. みこと: 残ってる…?
  570. 更紗 帆奈: 学校がさ
  571. 更紗 帆奈: で、学校に忍び込みましたー!
  572. みこと: 忍び込んだのはいいけど… 帆奈ちゃん、何それ?バケツ?
  573. 更紗 帆奈: ペンキ~!
  574. みこと: ペンキ?
  575. 更紗 帆奈: ま、定番の窓ガラスを壊して回る ってのも考えたけど
  576. みこと: ワルだよ、それ ワル
  577. 更紗 帆奈: だよね~!やっぱあたしらには 合わないな~って思って
  578. 更紗 帆奈: このペンキで思いの丈を ぶちまけることにしたの~!
  579. みこと: え…落書きするの?
  580. 更紗 帆奈: 落書きってのはちょっと…
  581. 更紗 帆奈: ポエムって言おうよ!
  582. みこと: だったら落書きのほうがいいかも
  583. 更紗 帆奈: ま、何にしろ…言いたいことは 山ほどあるでしょ?
  584. 更紗 帆奈: その若気の至りで 学校も台なしにしてやろう!
  585.  
  586. FILENAME: text_517310-9_6cQGi.txt
  587. みこと: よし、誰もいない
  588. みこと: 帆奈ちゃん、こっちこっち!
  589. 更紗 帆奈: …ねえ、なんでコソコソするの?
  590. みこと: だって帆奈ちゃん部外者だから 見つかったら大変だよ?
  591. 更紗 帆奈: 制服着てるから どーにかなるって
  592. みこと: えー別の学校の制服なのに?
  593. 更紗 帆奈: 知り合いを捜しにきた 他校の学生みたいな感じで…
  594. みこと: でもこれから ペンキで落書きするんだよね?
  595. 更紗 帆奈: ペンキで落書きしながらも 知り合いを捜す他校生な感じで…
  596. みこと: そんな人、この世にいないよ…
  597. 更紗 帆奈: あーもー!そもそも 無茶苦茶しにきてるんだから
  598. 更紗 帆奈: そんなことはどーでもいいの!
  599. みこと: まあ、いざとなれば 暗示の魔法を使えばいいもんね
  600. 更紗 帆奈: …そーね
  601. 更紗 帆奈: んじゃ、はじめよっか
  602. みこと: うん…!
  603. みこと: 作業は簡単だった
  604. みこと: 学校なんて牢獄だ!と私が言えば その通りに帆奈ちゃんが書いてくれる
  605. みこと: なんで誰かに合わせないといけない! なんで押さえつけてくる! なんで自分を埋没させようとする!
  606. みこと: そんなことを言えば ちゃんと全部帆奈ちゃんが書いてくれる
  607. みこと: 私は段々気分が乗ってきた
  608. みこと: だから踏み込んだことも言った
  609. みこと: きれいごとばかり言っておきながら 学校はもっていない人間には残酷な場所だ
  610. みこと: もっていない人はもっている人の 充実した日々を眺めるしかないんだから
  611. みこと: 多くの友だちも、仲間も 楽しい放課後も
  612. みこと: 全部、もっている人の特権
  613. みこと: もっていない人はその永遠に手に入らないものを 指を咥えて眺めるしかない
  614. みこと: でもそんなの、普通って呼ばれるものじゃない?
  615. みこと: 普通の学校生活に分類されるものでしょ? なのに私は、私のままだと普通の学校生活を 送れそうになかった
  616. みこと: けど普通っていうくらいなら 私が手に入れてもいいはず… そう思って、羨ましくなって、自分を偽った
  617. みこと: その結果、表面上は普通の学校生活を 手に入れられたけど…
  618. みこと: 自分を偽りつづけるうちに なんだか自分のことがわからなくなって ついに私は何者でもなくなってしまった
  619. みこと: 透明な存在になってしまった
  620. みこと: そう、このときから私は幽霊だったんだ
  621. みこと: 読んでいるか、私はここにいるぞ
  622. みこと: 幽霊はここにいるぞ!
  623. みこと: 全部台なしにするために帰ってきたぞ!!
  624. みこと: 私たちは笑い転げながら とにかく言いたいことをぶちまけた
  625. みこと: 他にも、適当にイスや机を見繕うと 廊下とか階段に並べて封鎖したりした
  626. みこと: ただ封鎖したわけじゃない
  627. みこと: イメージは、迷路
  628. みこと: きちんとした道筋があって その通りに進むとちゃんと1階から 最上階までたどり着けるようになってる
  629. みこと: 視聴覚室では みんなの顔が引き攣るような す~っごい映像を流してやろうと思ったけど
  630. みこと: 残念なことにそんな映像はなかった
  631. みこと: でも帆奈ちゃんがかわりに スクリーンに絵を描いてくれた!
  632. みこと: …まあ、あんまり上手じゃないから 何の絵かわからない感じになっちゃったけど…
  633. みこと: 最後の教室に入ったとき ようやく人の騒ぎ声が聞こえてきた
  634. みこと: 今さら騒いだって遅いのに
  635. みこと: 改めて見渡すと、ここがかつて 私が使っていた教室だとわかった
  636. みこと: ここでこそ色々とぶちまけたい
  637. みこと: けどもうペンキはなかった
  638. みこと: がっかりはしたけど… 今は楽しさのほうが勝っていた
  639. みこと: 私はもう自分の席ではない場所に座る
  640. みこと: こんなにも充実した気分で ここに座るのははじめてだった
  641. みこと: すると帆奈ちゃんがチョークで 黒板に何かを書きはじめる
  642. みこと: 書き終わった文字を見て 私はつい笑ってしまった
  643. みこと: そうだ、私の言いたいことなんて それだけでよかったんだ
  644. みこと: 私も…たぶん帆奈ちゃんも 自分の存在を証明したかっただけなんだから
  645. みこと: …騒ぎ声が近づいてくる
  646. みこと: 先生たちも今はあの迷路に苦戦してるのかな? なんだか面白い…
  647. みこと: そして私たちは窓から飛び降りた
  648. みこと: 今まで味わったことがないほどに 私は自由だった
  649. やっと上れた… 教室はどうなってますか?
  650. ここもダメです
  651. こんな有り様じゃあ しばらく授業は…
  652. あれ…?
  653. どうかしました?
  654. 先生、この教室の黒板を
  655. …「帆奈と瀬奈」…?
  656. 更紗 帆奈: ―帆奈― あっはははは…! あいつら、追いかけてきてる?
  657. みこと: ―みこと― 追いかけてはきてないよ
  658. 更紗 帆奈: ―帆奈― あっは!どうせ追いかけてきても あたしたちには追いつけないけどねー!
  659. みこと: ―みこと― 警察に連絡されるかな?
  660. 更紗 帆奈: ―帆奈― そりゃされるよ!
  661. 更紗 帆奈: ―帆奈― ばっちり名前残してきたから 身元が割れるかもね~
  662. みこと: ―みこと― んふふふ、最悪~!
  663. 更紗 帆奈: ―帆奈― あっははは、笑ってる場合じゃないよ~
  664. みこと: ―みこと― 帆奈ちゃんも笑ってるじゃない~
  665. 更紗 帆奈: ―帆奈― 楽しいからね~!あっは!
  666. みこと: ―みこと― きっと大きな騒動になるよね? 新聞に載るかも…!
  667. 更紗 帆奈: ―帆奈― そうなれば、みーんながあたしたちを記憶する!
  668. 更紗 帆奈: ―帆奈― でもなー、あいつら汚いからなー もみ消すかも
  669. みこと: ―みこと― えー残念
  670. 更紗 帆奈: ―帆奈― 大丈夫! 今度はこの町全体でやってやるんだから!
  671. みこと: ―みこと― それって 前に準備を進めてるって言ってたやつ?
  672. 更紗 帆奈: ―帆奈― そう! 町全体でやればもみ消されたりしない!
  673. みこと: ―みこと― よかった、まだつづきがあるんだ… もうこれで終わりなのかなって
  674. 更紗 帆奈: ―帆奈― あっは!まだはじまってもないのに?
  675. みこと: けれど終わりが迫っていることを 私たちはきちんと理解していた
  676. みこと: こんなふうに騒動を起こした以上は 警察も動き出すだろう
  677. みこと: それに何よりどこかの魔法少女たちが 私たちを嗅ぎ回っているらしい
  678. みこと: 暗示を使って探りを入れているとき そういう情報を手に入れた
  679. みこと: この道の先は行き止まり…
  680. みこと: それを理解しながらも 私たちは進まずにはいられなかった
  681. みこと: 不思議なくらいの万能感があった
  682. みこと: そう、帆奈ちゃんといれば何でもできる 私たちは無敵なんだ
  683. みこと: だから…あのきれいな夕日にだって 私たちがここにいることを見せつけてやれる
  684. みこと: この瞬間は、そう無邪気に信じられた
  685.  
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  687. 更紗 帆奈: 眠った振りをやめて、目を開ける
  688. 更紗 帆奈: 勝手に転がり込んだ家は静まり返り 誰の気配も感じない
  689. 更紗 帆奈: …………
  690. 更紗 帆奈: 瀬奈、そこにいる…? 瀬奈…?
  691. 更紗 帆奈: 瀬奈からの返事はなかった というより、どこにもいない
  692. 更紗 帆奈: 最初は寝ると消えるのかなって思ったけど 最近になって違うことがわかった
  693. 更紗 帆奈: 一時的にここからいなくなって… 見えなくなってしまっているんだ
  694. 更紗 帆奈: けれど魔力を分ければもとに戻る ま、偶然わかったことなんだけどさ
  695. 更紗 帆奈: そう、それは…少し前
  696. 更紗 帆奈: 何日も瀬奈が姿を見せなかったことがあって それでも瀬奈の存在を感じるから ワラにも縋る思いで魔力を分けてみたんだけど…
  697. 更紗 帆奈: そうしたら次の日、ケロッとした顔で 瀬奈は姿を見せたってわけ
  698. 更紗 帆奈: 意図して行ったことじゃない だから、原理もわからない
  699. 更紗 帆奈: それでも色々と試したり 聞いたりしているうちに わかってきたことがある
  700. 更紗 帆奈: ひとつは いなくなっていた期間の記憶がないこと
  701. 更紗 帆奈: それでもうひとつが 瀬奈の人格は常時魔力を消費していること
  702. 更紗 帆奈: 要は、ガソリンみたいなもんだ 瀬奈が何かをするためには つねに魔力を必要とする
  703. 更紗 帆奈: 魔力が消費されると姿が見えなくなり 尽きてしまえば、瀬奈は…
  704. 更紗 帆奈: この先、瀬奈が自分の体に慣れていけば 自然に魔力消費の抑え方を覚えて 問題も解消されるのかもしれないけど…
  705. 更紗 帆奈: あたしには時間がなかった
  706. 更紗 帆奈: …ソウルジェムが…
  707. 更紗 帆奈: 魔力を分けながらバンバン暗示を 使ってるし…こうなるのも当然か
  708. 更紗 帆奈: せめて暗示は控えないと いけないんだけどね~…
  709. 更紗 帆奈: けれど今さら控えるわけにはいかない まだフィナーレが完成してないのだから
  710. 更紗 帆奈: とりあえず グリーフシードを使いますか…
  711. 更紗 帆奈: あっは…瀬奈の言うことは ちゃんと聞いとくもんだわ…
  712. 更紗 帆奈: こんなことを繰り返しているせいで 集めたグリーフシードも ほとんどなくなっている
  713. 更紗 帆奈: ホント、瀬奈がここにいないのは不幸中の幸い… 見つかったら何を言われるかわからない
  714. 更紗 帆奈: いや、わかってるか わかってるよねー
  715. 更紗 帆奈: もう自分に魔力を分けるなって言うに決まってる
  716. 更紗 帆奈: …誰がそんなことするものか
  717. 更紗 帆奈: 瀬奈!瀬奈!
  718. みこと: …帆奈ちゃん…!
  719. 更紗 帆奈: もう瀬奈が目の前から消えてなくなるのは まっぴらごめんだ
  720. 更紗 帆奈: …………
  721. 更紗 帆奈: ひとりの夜は、心がざわついて眠れない
  722. 更紗 帆奈: 早く瀬奈に会いたい またあの笑顔を見せてほしい…
  723. 更紗 帆奈: 最後まで縛りつけてるのは あたしってわけ?…あっは
  724. 更紗 帆奈: でも、あと少しならいいよね?
  725. 更紗 帆奈: もっといっぱい面白おかしいことをしよう… 忌々しいものを全部台なしにしていこう…
  726. 更紗 帆奈: あたしと過ごしたこの時を かけがえのないものだったと いつまでも覚えてもらえるようにしよう
  727. 更紗 帆奈: これがきっと…
  728. 更紗 帆奈: あたしたちの別れの記憶になるから
  729. [Part 1 end]
  730. ---
  731. [Part 2 start]
  732. FILENAME: text_517320-1_xNzXO.txt
  733. や、やめてくれ…! 子どもには手を…
  734. 更紗 帆奈: なーに勘違いしてんの そんなことしないって
  735. 更紗 帆奈: あんたたちにやってほしいのは 他にあるんだから
  736. やってほしい、こと…?
  737. 更紗 帆奈: うん
  738. 更紗 帆奈: あ、カレンダーがある… 忘れないように印つけておくね!
  739. 更紗 帆奈: まあ、暗示をかけるんだから 忘れないと思うけど
  740. …君は、何を…?
  741. 更紗 帆奈: 何って…簡単だよ
  742. 更紗 帆奈: この日、家の電気を消しててよ
  743. 更紗 帆奈: …ね?簡単でしょ?
  744. 更紗 帆奈: さーて、このビルは終わりっと
  745. みこと: ねえ、これって前に言ってた… 次の準備をしてるんだよね?
  746. 更紗 帆奈: そうだけど…?
  747. みこと: うーん… 電気を消すだけでいいの?
  748. 更紗 帆奈: …もしかして、疑ってる?
  749. みこと: 疑ってるっていうか…
  750. みこと: そんなことして 何が楽しいのかなって…
  751. 更紗 帆奈: 楽しいことになるんですう!
  752. みこと: どうなるの?
  753. 更紗 帆奈: ぷい!教えなーい
  754. みこと: えーけち~
  755. 更紗 帆奈: ま、びっくりさせたいからさ そのときまで待っててよ
  756. みこと: 帆奈ちゃんがそう言うんなら 待ってる、け、ど…
  757. みこと: あ、あれ…? 急に、力が…
  758. 更紗 帆奈: …………
  759. 更紗 帆奈: 瀬奈の消える間隔が 短くなってきてる…
  760. 更紗 帆奈: うっ、くっ… あたしのほうも結構限界か…
  761. 更紗 帆奈: …急がないと…
  762. 更紗 帆奈: はあ…はあ…
  763. 更紗 帆奈: ここからはこの町の全景を一望できる
  764. 更紗 帆奈: 私は大学ノートを取り出し 町の景色を睨みつけながら 印をつけていく…
  765. 更紗 帆奈: 今日はここと、ここ… あとはこうすれば…
  766. 更紗 帆奈: 何だよも~曲線難しいなあ…
  767. 更紗 帆奈: 実際にやっていけばいくほど 課題が見えてくる
  768. 更紗 帆奈: こりゃ、思ってた以上に難しいね
  769. 更紗 帆奈: ひとつひとつの課題を乗り越えながら コツコツ地道にやっていくなんて 正直、柄じゃなかった
  770. 更紗 帆奈: だけどなあ… 今度ばっかりはそうも言ってられない
  771. 更紗 帆奈: 今のこの状態がつづくのだとすれば 新しい魔女を見つけて、グリーフシードを 手に入れる…なんてことはできそうにもない
  772. 更紗 帆奈: だから備えてある魔女の数から計算して 自分がもちそうなギリギリの日を割り出した
  773. 更紗 帆奈: それがエックスデーになる
  774. 更紗 帆奈: …問題は 他の魔法少女のやつらだ
  775. 更紗 帆奈: 大人しくしていてくれよ…なんて 都合がよすぎるか
  776. 更紗 帆奈: 勧善懲悪、この世に悪の栄えた試しなし… ま、それ自体はいい…というか、そのほうがいい
  777. 更紗 帆奈: 最終的にそうなるのだとしても 今は、待ってほしい 勝手だとわかっているけど、待ってほしい
  778. 更紗 帆奈: 瀬奈のために、待ってほしい…
  779. 更紗 帆奈: あたしはそんなことを思って つい、祈ってしまった
  780.  
  781. FILENAME: text_517320-2_xNzXO.txt
  782. みこと: 何か…景色が見える
  783. みこと: それは遠い昔の景色だったり 神のための人柱になった悲劇だったり 虐殺の恐ろしい瞬間だったり
  784. みこと: そして… 多くの魔法少女が魔女になっていった光景だった
  785. みこと: これはなに?なんでこんな光景が…?
  786. みこと: わけもわからないまま見ているうちに すべての光景には共通点があると悟った
  787. みこと: どれだけ足掻こうが、正しさがあろうが 行き着く先は絶望である、と
  788. みこと: …希望なんて無意味だ
  789. みこと: 私の中で確信が深まっていくと 同時に、憎しみがひどく燃え盛る
  790. みこと: そうだ…すべてを滅ぼさないと…
  791. 更紗 帆奈: 瀬奈!
  792. みこと: え…?
  793. 更紗 帆奈: どーしたの ずっと呼んでたんだよ?
  794. みこと: あ、ごめん…ぼんやりしてて…
  795. 更紗 帆奈: …………
  796. みこと: …ねえ、これからまた 計画の準備するの?
  797. 更紗 帆奈: そうだけど?
  798. みこと: それよりさ もっと別のことをしない?
  799. 更紗 帆奈: 別のこと?
  800. みこと: たとえば…
  801. みこと: あるはずのない事件をめぐって 魔法少女たちが対立するの
  802. みこと: それこそ仲間を敵だと 思ってしまうほどに…
  803. 更紗 帆奈: …………
  804. みこと: 今までやってきたちょっかいは お上品すぎたかなって思うの
  805. みこと: 魔女頼りでもあったし
  806. みこと: だから、もっと色々と仕掛けて みんなを混沌に陥れようよ
  807. みこと: …ね、面白そうでしょ?
  808. 更紗 帆奈: ま、これ以上魔女は 使えないからね…
  809. みこと: そうなの?
  810. 更紗 帆奈: んー…いや、戦力になりそうな 魔女が減ってきただけ
  811. 更紗 帆奈: 数自体は、全然よゆー
  812. みこと: んふふ、よかった
  813. 更紗 帆奈: …けど、それはそれで困るから 先に魔女を捕まえよっか?
  814. みこと: …………
  815. みこと: 嫌なんだ、帆奈ちゃん
  816. 更紗 帆奈: え…?
  817. みこと: やりたくないんでしょ? だから魔女狩りの話題に変えた…
  818. みこと: 帆奈ちゃんのことなら 何でもお見通し…んふふふっ
  819. 更紗 帆奈: …………
  820. 更紗 帆奈: いいよ、やろう 変に疑われるのも嫌だからね
  821. みこと: そう言ってくれるって信じてた
  822. 更紗 帆奈: …で、どこでやるの?
  823. みこと: 地図だと…ここ
  824. 更紗 帆奈: …施設があるところ?
  825. みこと: あ、そうなんだ 知らなかったけど…
  826. みこと: 前、一緒に近くを通ったとき 気に入らない感じがしたの
  827. 更紗 帆奈: ふ~ん…
  828. みこと: もしかしたら魔法少女が いるかも…ねえ、行ってみようよ
  829. 更紗 帆奈: わかった、わかったって!
  830. 更紗 帆奈: けど今回は偵察 下調べしてから実行に移すから
  831. みこと: は~い… 真面目だね、帆奈ちゃんは
  832. みこと: そして私たちは下調べに出かけた
  833. みこと: その施設の名は つつじの家といった
  834.  
  835. FILENAME: text_517320-3_xNzXO.txt
  836. みこと: 月日は流れていく…
  837. みこと: 帆奈ちゃんと再会して どれだけたったのだろう?
  838. みこと: 数ヶ月?それとも一年?
  839. みこと: 時間の流れが人だった頃とは違うのか あまり定かではない…
  840. みこと: ただ最近気になっているのは… 帆奈ちゃんがトーンダウンしたように思えること
  841. みこと: 再会した当初はいい感じに壊れてて 今の私にぴったりだと思ったんだけど…
  842. みこと: やっぱり帆奈ちゃんは帆奈ちゃんだった
  843. みこと: 優しくて真面目で、虚勢を張ってるけど 可愛さが見え隠れする女の子…
  844. みこと: それじゃあダメだよ
  845. みこと: 全部台なしにするってことは ある意味では、全部なくすってことでしょ?
  846. みこと: つまり、滅ぼすってこと
  847. みこと: 今の帆奈ちゃんじゃ せいぜい周りを引っかき回すだけ… そんなんじゃ帆奈ちゃんだって楽しくないよ
  848. みこと: だから私が、ちゃんと導いてあげる
  849. 更紗 帆奈: すー…すー…
  850. みこと: …………
  851. みこと: …帆奈ちゃんにも 見せてあげられるかな…?
  852. みこと: この世界がどんなに汚くて 悲しいものなのかを教えてくれる
  853. みこと: あの光景を…
  854. みこと: ねえ帆奈ちゃん…ここのところ ずっとその光景ばかり見るの
  855. みこと: きっと…魔女が見ているものを 私も見ているんだよ
  856. みこと: …私は本当に魔女なんだね あとは、人格が消えるだけ…
  857. 更紗 帆奈: …………
  858. みこと: …帆奈ちゃん 私はもうムリみたい
  859. みこと: 憎しみが抑えきれなくて すべてを滅ぼしたいの…!
  860. みこと: だから…
  861. 更紗 帆奈: …瀬奈は、消えないよ
  862. みこと: ――っ!? 起きてたの?
  863. 更紗 帆奈: まーねー…
  864. みこと: えっと、これは…
  865. 更紗 帆奈: いーよいーよ、わかってるから
  866. 更紗 帆奈: 自分自身 何してるんだろって思うもん
  867. 更紗 帆奈: 何やっても無意味だって 知ってるはずなのにね…
  868. みこと: じゃあ…
  869. 更紗 帆奈: でもダーメ! 変なことさせようとしてもムダ
  870. 更紗 帆奈: あたしがやることに 変わりはないよ
  871. みこと: な…
  872. みこと: なんでよ…!
  873. 更紗 帆奈: ――っ!?
  874. みこと: 全部、台なしにするって 言ったよね?
  875. みこと: なのに、何にも変わらないよ…?
  876. 更紗 帆奈: …………
  877. みこと: 帆奈ちゃんなら 変えてくれるんでしょ?
  878. みこと: こんな世界から何もかも なくしてくれるんでしょ?
  879. みこと: そうだよね?帆奈ちゃんは すごいから、できるんだよね?
  880. 更紗 帆奈: …………
  881. みこと: うんって言ってよ!
  882. 更紗 帆奈: …瀬奈は、焦ってるの?
  883. みこと: え…?
  884. 更紗 帆奈: 昔からそう…瀬奈は思い悩むと 急に空回りしはじめる
  885. 更紗 帆奈: …不安なんだね?魔女になって しまうかもしれないって
  886. みこと: …んふふ 帆奈ちゃんは勘違いしてるよ
  887. 更紗 帆奈: え…?
  888. みこと: 私は猶予があるだけで 魔女であることに変わりはないの
  889. みこと: だから恨みとか憎しみとか 嫌な感情が溢れ出てきて
  890. みこと: 時々、自分を忘れそうになる
  891. みこと: …いずれ、完全に自分を忘れる きっとそうなる
  892. みこと: そして私は… ここからいなくなるんだ
  893. 更紗 帆奈: 何度も言うけど 瀬奈はいなくならないよ
  894. みこと: わかったふうなこと言わないで!
  895. 更紗 帆奈: わかったふうじゃなくて 瀬奈のことならわかる
  896. みこと: わかんないよ!
  897. みこと: 帆奈ちゃんに、こんな体になった 私の気持ちなんて!
  898. 更紗 帆奈: …………
  899. みこと: あ…
  900. みこと: 帆奈ちゃんと私は それから一言も交わさなかった
  901. みこと: はじめて帆奈ちゃんとケンカをした いや違う…こんなの私が一方的に わめいているだけ…帆奈ちゃんは何も悪くない
  902. みこと: 自分が恥ずかしくなった… ここから消えたい…そう強く思ったら…
  903. みこと: 私の姿はなくなった
  904. みこと: でも、しっかりと周りの景色が見える… そうなんだ…こんなこともできたんだ…
  905. 更紗 帆奈: …………
  906. みこと: 帆奈ちゃんは私がいなくなったのに 全然動じない…
  907. みこと: もしかして、負担をかけてたのかな…? やっぱり私なんていないほうがよかったんだ…
  908. 更紗 帆奈: …くっ…うう…っ
  909. みこと: え…?
  910. みこと: 帆奈ちゃんが苦しんでる…? なんで?何が起こって…
  911. 更紗 帆奈: は、帆奈ちゃん! ど、どうしよう!?
  912. 更紗 帆奈: 苦しいよ…!! た、助け…て…!!
  913. みこと: あのとき…魔女になる直前… 私は激しい苦しみに襲われた
  914. みこと: でも… どうして、そんなことを思い出すんだろう…?
  915. みこと: 帆奈ちゃんはちょっと苦しんでるだけ… 魔女になるわけない…なるわけないんだ!!
  916. みこと: 帆奈ちゃん…!
  917. 更紗 帆奈: せ、瀬奈…?どうして…? いつもなら…ううっ
  918. みこと: こ、これって…
  919. みこと: 帆奈ちゃんが手にしていたソウルジェムを見て 私は膝から崩れ落ちそうになった
  920. みこと: それはもう真っ黒になるほど穢れていた
  921.  
  922. FILENAME: text_517320-4_xNzXO.txt
  923. 更紗 帆奈: ほら…グリーフシードはないの 他の場所に隠してたものも…
  924. みこと: もしものときのために 集めておいたはずのグリーフシードは もうどこにもなかった
  925. みこと: 本当に私…時々消えてたんだね… その間に帆奈ちゃんは…
  926. 更紗 帆奈: そう、グリーフシードを使ってた
  927. 更紗 帆奈: 本当だったらまだ残ってたはず だったんだけど…
  928. 更紗 帆奈: ま、計算通りにはいかないねー
  929. みこと: そんな、他人事みたいに…!
  930. みこと: 帆奈ちゃんがいなくなったら 私…!!
  931. みこと: …そ、そうだ! 魔女を倒しにいこう!
  932. みこと: グリーフシードさえ使えば 治るんだから、ね?
  933. 更紗 帆奈: …ムリだねー 魔女を倒す力なんてないって
  934. みこと: そんな…
  935. 更紗 帆奈: …いつかはこうなるって わかってたことでしょ?
  936. 更紗 帆奈: それがちょっと早く来ただけ…
  937. みこと: い、嫌だ…魔女にならないで!
  938. 更紗 帆奈: 無茶言わないでよ…あっははは…
  939. 更紗 帆奈: でも…そうだね… もっと引き延ばしたかった
  940. 更紗 帆奈: まだ完成してないのに…
  941. 更紗 帆奈: …そうだ、瀬奈ってさ 高いところが好きだったよね?
  942. 更紗 帆奈: あたしが魔女になったら この町で一番高い展望台に…
  943. 更紗 帆奈: …あれ…?あたしが魔女に なったら、瀬奈はどうなるの…?
  944. みこと: 私の本当の魔法は 移植させることだから…
  945. みこと: 魔法を使ってまた別の人に この人格を移植させれば…
  946. 更紗 帆奈: …移植?…へえー… それで、瀬奈は助かるんだね
  947. みこと: …………
  948. 更紗 帆奈: …あたしと一緒におしまいに しようなんて思わないでよ
  949. みこと: …………
  950. みこと: やっぱり…行こう
  951. 更紗 帆奈: え…?
  952. みこと: 私、自分の姿を消せるって 知らなかったの
  953. みこと: それが偶然できた…
  954. みこと: もしかしたら まだ他に力があるかもしれない
  955. 更紗 帆奈: その力を使って 魔女を倒すって…?
  956. みこと: うん…!
  957. 更紗 帆奈: …………
  958. 更紗 帆奈: いーよ、瀬奈がそうしたいなら そうしよっか
  959. みこと: うぬぬぬぬ…っ!
  960. 更紗 帆奈: え…何してんの…?
  961. みこと: 帆奈ちゃんにパワーを送ってる
  962. みこと: どう?少しは変わった?
  963. 更紗 帆奈: …あっは…別に変化なんか…
  964. 更紗 帆奈: って、あわわわ! 急に力が湧いてきた!
  965. みこと: 本当!?
  966. 更紗 帆奈: ホントホント! これなら魔女も倒せるよ!
  967. みこと: やったあ!
  968. 更紗 帆奈: よーし、そんなら出発だ!
  969. みこと: おーっ!
  970. みこと: どうして帆奈ちゃんは そんなに嘘が下手なんだろう…?
  971. みこと: これじゃあ私がバカみたい…
  972.  
  973. FILENAME: text_517320-5_xNzXO.txt
  974. みことの声: 帆奈ちゃ~ん!
  975. 更紗 帆奈: …………
  976. みこと: 帆奈ちゃんって!
  977. 更紗 帆奈: あ…
  978. みこと: どうしたの? どこか苦しい?
  979. 更紗 帆奈: ううん…青空を見るの 久し振りな気がして…
  980. みこと: …………
  981. みこと: い、行こう! 早く魔女をやっつけないと!
  982. 更紗 帆奈: あっはは、どこ行くの?
  983. みこと: こっち!
  984. みこと: えっと…えっと…
  985. みこと: (おかしい…何も感じない…)
  986. みこと: (もしかして…帆奈ちゃんが 弱っているから、私の力も…?)
  987. みこと: (だとしたら… もう、ムリじゃない…?)
  988. 更紗 帆奈: あっは、魔女も使い魔もいないね
  989. みこと: 違う!たまたま外れただけ! 今度は…こっち!
  990. 更紗 帆奈: 懐かしー… よくふたりで来たよね…?
  991. みこと: そうだけど…
  992. 更紗 帆奈: 休憩したかった? ちょうどいいや、あたしも…
  993. みこと: 違うの、また外れただけ! 今度こそ…
  994. いらっしゃいませ おひとり様ですか?
  995. 更紗 帆奈: はあ?見てわかんない? ふたりだっつーの
  996. みこと: ちょ、ちょっと帆奈ちゃん! 私は見えないから…
  997. 更紗 帆奈: あ、そっか…
  998. 更紗 帆奈: でもふたりだから!
  999. え、ええと…
  1000. みこと: もう出よう、ね?
  1001. みこと: ここでもなくて… 向こうでも…
  1002. 更紗 帆奈: ねー、ちょっと休憩しよ? 疲れちゃった
  1003. みこと: あ、ごめん…
  1004. みこと: (帆奈ちゃんが休憩したがる ことなんてなかったのに…)
  1005. みこと: (…それだけ苦しいんだ)
  1006. 更紗 帆奈: …………
  1007. 更紗 帆奈: …なんかさ バカみたいにいい天気だね~
  1008. みこと: う、うん
  1009. 更紗 帆奈: いいのかな…こんなの
  1010. みこと: え?
  1011. 更紗 帆奈: …瀬奈と色んなところ回ってさ
  1012. 更紗 帆奈: んで、家族連れが楽しんでる ような公園で、ぼんやりして…
  1013. 更紗 帆奈: あたしが、いいのかな? こんなに幸せで
  1014. みこと: よくわからないけど… いいと思うよ
  1015. 更紗 帆奈: そうかな…?
  1016. 更紗 帆奈: だってあたし 色んなことしたよ?
  1017. 更紗 帆奈: 最初は…嫌なやつを消した 願いでね
  1018. 更紗 帆奈: 瀬奈のことだって利用するつもり だったんだ
  1019. 更紗 帆奈: 嫌なことから逃げて、逃げて… 幽霊みたいになるために
  1020. みこと: …幽霊?
  1021. 更紗 帆奈: この世界の誰にも 見つけられない存在…
  1022. 更紗 帆奈: 自由になれると思ってたの 幽霊になればね
  1023. みこと: 今でも、そう思ってる?
  1024. 更紗 帆奈: 思ってない
  1025. 更紗 帆奈: そもそも、それが成功したら… なんつーか、違うでしょ?
  1026. 更紗 帆奈: やっぱ悪は倒されないと むかつくよ
  1027. 更紗 帆奈: うん…滅びなかったら この世は本当に救いようがない
  1028. みこと: …じゃあ、私もそうだ 帆奈ちゃんの共犯だもん
  1029. 更紗 帆奈: 実際にやったのはあたしだよ
  1030. みこと: 関係ないよ、もう
  1031. みこと: ねえ… 一緒に滅びよっか
  1032. 更紗 帆奈: …………
  1033. 更紗 帆奈: …だから、それじゃダメだよ
  1034. みこと: えーなんで?
  1035. 更紗 帆奈: あっは… あたしが、幸せだから
  1036. みこと: 幸せなら、いいじゃない…
  1037. 更紗 帆奈: ダーメ
  1038. 更紗 帆奈: だから、休憩はここまで… やつらも待ってるしね
  1039. みこと: え…?
  1040. 更紗 帆奈: あたしたちが引っかき回して 衝突させてきた魔法少女たち…
  1041. 更紗 帆奈: そいつらに…犯人があたしだって たぶん、バレた
  1042. みこと: そ、そうなの…? じゃあ逃げないと…
  1043. 更紗 帆奈: …あっは…逃げないよ… 予定より早かったけど…
  1044. 帆奈の声: このときを待ってたんだから
  1045.  
  1046. FILENAME: text_517320-6_xNzXO.txt
  1047. みこと: ここって…?
  1048. 更紗 帆奈: 最近、あたしたちのことを 嗅ぎ回ってるやつがいてね…
  1049. 更紗 帆奈: そいつらが ここでよくたむろってるんだわ
  1050. みこと: …知らなかった
  1051. 更紗 帆奈: だろうねー ここんところ頻繁に消えてたから
  1052. みこと: え…じゃあ、計算が違ったって…
  1053. 更紗 帆奈: 黙って… ほら、そこにやつらがいる
  1054. 更紗 帆奈: あっは、あっははは… すんごい数…
  1055. みこと: ね、ねえ…本当に戦うの? やっぱり逃げたほうが…
  1056. 更紗 帆奈: 逃げたってすぐ捕まるよ
  1057. 更紗 帆奈: もうあたしらは 追い詰められてるわけ
  1058. みこと: …………
  1059. 更紗 帆奈: それにさ、あたしは…
  1060. 更紗 帆奈: 「そもそも見つけてほしかったんだ」
  1061. 更紗 帆奈: だから、ちゃーんと
  1062. 更紗 帆奈: あたしが諸々の犯人だって わかるようにしておいたんだから
  1063. 更紗 帆奈: …まあ 魔女が勝手にやったのもあるけど
  1064. みこと: な、なんで、そんなことを
  1065. 更紗 帆奈: …………
  1066. 更紗 帆奈: 「あたしが戦って負ければ この世界にもいいところはあるんだって そう思えるから」
  1067. みこと: …わ、わからない…帆奈ちゃんが 何を言っているのか、全然!
  1068. 更紗 帆奈: ま、ヴィランにはヴィランなりの 心意気ってもんがあるのさ
  1069. 更紗 帆奈: あっは!
  1070. みこと: 帆奈ちゃん!!
  1071. 常盤 ななか: 警戒してください!
  1072. 伊吹 れいら: え?
  1073. 常盤 ななか: …ここに…
  1074. 常盤 ななか: 「もうひとり、誰かがいます…!」
  1075. 更紗 帆奈: (だからさあ…)
  1076. 更紗 帆奈: (ふたりだっつーのッ!)
  1077. やちよ: …捉えた!
  1078. 常盤 ななか: そこ!
  1079. 更紗 帆奈: (そんなもの…ッ)
  1080. 静海 このは: …後ろっ!
  1081. みこと: 帆奈ちゃん…!
  1082. 鶴乃: 手応えありっぽい!
  1083. やちよ: みんな、広がって包囲を!
  1084. 更紗 帆奈: (いやあー…強いね、こいつら)
  1085. みこと: 強くなんかない!
  1086. みこと: 帆奈ちゃんが万全だったら こんなやつらなんかには…!
  1087. 更紗 帆奈: (あっは、瀬奈ー やっぱ加勢してくれるの?)
  1088. 更紗 帆奈: (…あたしはさ 確かに筋を通しにきたよ?)
  1089. 更紗 帆奈: (ここで死んじまってもいい!)
  1090. 更紗 帆奈: (けど、やるからには全力が ポリシーなんだなー、これが!)
  1091. みこと: …もう、わかんないけど
  1092. みこと: 帆奈ちゃんが戦うなら 私も戦う
  1093. みこと: …理由なんてそれだけでいい
  1094. 常盤 ななか: 姿を現しなさい!
  1095. 更紗 帆奈: (行くよ…)
  1096. みこと: うん…!
  1097. 更紗 帆奈: じゃじゃーん!
  1098. やちよ: あなたが…
  1099. 常盤 ななか: ようやく会えましたね…
  1100. 更紗 帆奈: どーもどーも!
  1101. 更紗 帆奈: はじめまして…でもないか…
  1102. 更紗 帆奈: え~、あたしがお目当ての…
  1103. 更紗 帆奈: 更紗帆奈だよ~っと!
  1104. みこと: 相棒の瀬奈みことだよ~!
  1105. みこと&帆奈: あっはー!
  1106.  
  1107. FILENAME: text_517320-7_xNzXO.txt
  1108. 三栗 あやめ: ちょりゃー!
  1109. みこと: 帆奈ちゃん、右から来る!
  1110. 更紗 帆奈: おっと!
  1111. 三栗 あやめ: んぐっ!?
  1112. 静海 このは: あやめ!
  1113. 三栗 あやめ: …こんにゃろー!
  1114. 静海 このは: こっちも!
  1115. 遊佐 葉月: よぉーし!
  1116. みこと: 大丈夫! こっち、帆奈ちゃん!
  1117. 更紗 帆奈: あっはー!
  1118. 静海 このは: …ちっ!
  1119. 遊佐 葉月: 3人がかりなのに…!?
  1120. みこと: 帆奈ちゃん、何ともない?
  1121. 更紗 帆奈: (やっぱ瀬奈のサポートは 最高だわ…負ける気しない)
  1122. みこと: んふふ、これがふたりの力だよ
  1123. 更紗 帆奈: (あっは! 恥ずかしいセリフ禁止~)
  1124. 更紗 帆奈: けれど、体はとっくに悲鳴を上げている
  1125. 更紗 帆奈: 苦しくて、気持ち悪くて 立っているのですらやっと
  1126. 更紗 帆奈: なんでこんなに必死になってるんだろ
  1127. みこと: 今だよ、帆奈ちゃん!
  1128. 更紗 帆奈: あっはははー!
  1129. やちよ: あぐっ…!
  1130. 鶴乃: やちよー!
  1131. 鶴乃: 今、行く…
  1132. 更紗 帆奈: ダメーっ!
  1133. 鶴乃: あがっ!?
  1134. やちよ: つ、鶴乃!
  1135. 更紗 帆奈: そんなに食いついてくるなよ こーんな満身創痍の相手にさ
  1136. 更紗 帆奈: もうさ、とっくに限界は超えてるんだわ 放っておいても あと少しで魔女にはなるくらいに
  1137. 更紗 帆奈: でも…楽にはなりたくない
  1138. 更紗 帆奈: あたしはずっと楽になろうとしていた だってあたしは生きることの外側へ 逃げようとしていたんだから
  1139. 更紗 帆奈: でも、もう逃げるのはやめた そんな姿を瀬奈に見せたくないもん
  1140. 更紗 帆奈: ああ、そっか…今わかった
  1141. 更紗 帆奈: あたしは瀬奈に… あたしが敗れるところを見せたいんだ
  1142. 更紗 帆奈: 憎しみや絶望に呑まれてしまうと 行き着くところは、敗北なんだって 最後に教えてあげたいんだ…
  1143. 更紗 帆奈: でもなあ… どうせなら、巨悪に立ち向かう側がよかったなあ
  1144. 更紗 帆奈: そのほうが、すっきりしたと思うんだ
  1145. 更紗 帆奈: あたしも、きっと幸せになれて…
  1146. 常盤 ななか: …私たちは目的を果たします…
  1147. 夏目 かこ: …あ、あなたを…止める…!
  1148. 志伸 あきら: ボ、ボクたちは…
  1149. 純 美雨: …その…ために…集またネ…!
  1150. 更紗 帆奈: あっ…と思った
  1151. 更紗 帆奈: 不思議なもんで悪役をやっていると わかってしまうんだねえ…
  1152. 更紗 帆奈: あたしを倒すのは、こいつだ
  1153.  
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  1155. みこと: 帆奈ちゃんの魔法って 上書きの魔法だったよね?
  1156. みこと: 私の暗示の魔法が便利だって 言ってたけど、他にも…
  1157. 更紗 帆奈: …………
  1158. みこと: あれ…遅れてきたの怒ってる?
  1159. みこと: …じゃないか 本を読んでるんだ、めずらしいね
  1160. 更紗 帆奈: え…?
  1161. みこと: だから、本を読んでるの めずらしいねって
  1162. 更紗 帆奈: ああ、これ…?
  1163. みこと: すごいな…私って活字読んでると 眠たくなっちゃうの
  1164. みこと: 憧れちゃうなあ…
  1165. 更紗 帆奈: そう?別に、普通だけど
  1166. 更紗 帆奈: (どうしよう… お薦めの本聞かれたら…)
  1167. 更紗 帆奈: (この一冊読むのに半年も かかったから、他の本なんて…)
  1168. お待たせしました アイスコーヒーのお客さま
  1169. 更紗 帆奈: あ、はい
  1170. こちらアイスティーです
  1171. みこと: わーい!
  1172. どうぞごゆっくり おくつろぎください
  1173. みこと: 帆奈ちゃん大人だねー 私、コーヒー飲めないもん
  1174. 更紗 帆奈: …そう?
  1175. 更紗 帆奈: (どうしよう… シロップ入れにくくなった)
  1176. みこと: 憧れるなあ… …じゃなくて!
  1177. みこと: もう、店員さんが来たから 話が逸れちゃった…
  1178. 更紗 帆奈: この本だっけ?
  1179. みこと: そうそう、何の本?
  1180. 更紗 帆奈: うーん…
  1181. 更紗 帆奈: 人は負けるためにつくられて いない、っていう本
  1182. みこと: え、どういうこと?
  1183. 更紗 帆奈: うまく言えないんだけど
  1184. 更紗 帆奈: あたしたちは決して負けたり しないんだっていう
  1185. 更紗 帆奈: 希望を信じつづける話
  1186. みこと: んー? とにかく、いいお話なのかな?
  1187. 更紗 帆奈: そりゃそうだよ
  1188. 更紗 帆奈: 希望を信じつづけるってことは 困難に抗うってことなんだから
  1189. 常盤 ななか: ああああああああ!
  1190. みこと: 帆奈ちゃん!!
  1191. 更紗 帆奈: ――っ!?
  1192. 更紗 帆奈: 意識が飛んでいた…!? そう気づいたときには遅かった
  1193. 更紗 帆奈: …ちょい止ま…
  1194. 常盤 ななか: 黙れ!
  1195. 更紗 帆奈: ぐっ…!
  1196. 更紗 帆奈: (こ…これは…)
  1197. 更紗 帆奈: (…死ぬかな…?)
  1198. 更紗 帆奈: …あっは…!
  1199. 常盤 ななか: はぁぁぁぁぁぁぁっ!
  1200. みこと: や、やめてー!!
  1201. 更紗 帆奈: 常磐ななかはあたしのソウルジェムを狙っていた そう、あたしを殺すつもりなんだ
  1202. 更紗 帆奈: それでいい、あんたたちは正しさを証明するため あたしを殺すんだ…そこに情けはいらない
  1203. 更紗 帆奈: だってさ、下手に情けをかけると 真似する人がいるでしょ? とくにこの、瀬奈みこととかさ
  1204. 更紗 帆奈: 思い知らせてやってよ、正義の魔法少女さん
  1205. 更紗 帆奈: 滅びだとか憎しみだとか そんなこと言ってるとこうなるって
  1206. 更紗 帆奈: それが正しい世の中のありようなんだって
  1207. 更紗 帆奈: …………
  1208. 常盤 ななか: …………
  1209. 更紗 帆奈: でも彼女は私のソウルジェムを壊さなかった いや、壊せなかったんだ
  1210. 更紗 帆奈: 勘弁してよ… なんでそこでやめちゃうの?
  1211. 更紗 帆奈: それじゃあ、何の意味もないだろうが!
  1212. みこと: 帆奈ちゃん 今のうちに逃げよう!
  1213. 更紗 帆奈: (一緒に 滅ぶんじゃなかったの?)
  1214. 更紗 帆奈: (怖くなった?)
  1215. みこと: うん、怖い
  1216. みこと: 帆奈ちゃんが死んじゃうのは やっぱり怖いの!!
  1217. 更紗 帆奈: (瀬奈…)
  1218. みこと: お願い、逃げて…
  1219. みこと: 私、帆奈ちゃんには 生きていてほしい
  1220. みこと: 帆奈ちゃんだけは 消えてほしくないの!
  1221. 常盤 ななか: …………
  1222. 更紗 帆奈: …はぁ~…
  1223. 更紗 帆奈: (ごめんね、瀬奈… …あたし、逃げないよ)
  1224. みこと: でも…! 帆奈ちゃん、負けちゃうよ!
  1225. 更紗 帆奈: (うん、そうだよ… でもそんなのはわかりきってる)
  1226. 更紗 帆奈: (彼女たちは決して 負けたりしないんだ)
  1227. 更紗 帆奈: (だからあたしは逃げない)
  1228. みこと: 何なの…? もう、わけわかんない!
  1229. 更紗 帆奈: (活字を読むと 眠くなるからだよ、あっは)
  1230. みこと: え…?
  1231. 更紗 帆奈: この場でできる最後の抵抗… そんなのはただのひとつしかない
  1232. 更紗 帆奈: 自分で自分を殺すんだ
  1233.  
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  1235. 更紗 帆奈: ねえ瀬奈、あたしはあんたが思ってるより ずっとあんたのことを大切に感じてるんだ
  1236. 更紗 帆奈: …………
  1237. 更紗 帆奈: 瀬奈…
  1238. 更紗 帆奈: あんたが魔女になったって信じてた頃なんか そりゃもうわけわかんなくちゃっててさ…
  1239. 更紗 帆奈: ――っ!?
  1240. 更紗 帆奈: 瀬奈!
  1241. え…だ、誰ですか?
  1242. 更紗 帆奈: …………
  1243. 更紗 帆奈: …あっは…あっははは…
  1244. 更紗 帆奈: あっははは あっはあはああっははは!
  1245. な、なに…この人…
  1246. 更紗 帆奈: いるはずがないってわかってるのに あんたを捜して 夜の町を歩き回ったりしたんだから
  1247. 更紗 帆奈: でも、瀬奈の気配を感じるようになってからは すべてが一変した
  1248. 更紗 帆奈: 生きる意味を得た気分だったし 何より、瀬奈があたしの中にいるっていうのが どうにかなりそうなくらいにうれしかった
  1249. 更紗 帆奈: それからは取り憑かれたように あんたをこの世界へ生み落とす方法を探した
  1250. 更紗 帆奈: どうすればここから出てくるんだろう? これはいい影響があるかな? コーヒーを飲んだら瀬奈が嫌がるかな?
  1251. 更紗 帆奈: そんなことばっかり考えてた
  1252. 更紗 帆奈: それなのにあんたはぜーんぜん出てこないから あたしの中で瀬奈が 死んじゃったんじゃないかって思ったの
  1253. 更紗 帆奈: だから…あたしの命をあげることにした
  1254. 更紗 帆奈: 魔力を分け与えることになったのは 本当に偶然… あたしは自分の命を捧げようとしたの
  1255. 更紗 帆奈: 瀬奈が生きるためなら あたしは死んだっていい そう思っていたから
  1256. 更紗 帆奈: それは今でも変わらない だからさ…
  1257. みこと: …なに、してるの…帆奈ちゃん?
  1258. みこと: ソウルジェムなんか握って… どうする気…?
  1259. 更紗 帆奈: 常磐ななかにはそもそもそんな発想がないのか 誤魔化すことができていたけど やっぱり、瀬奈には通用しなかった
  1260. 更紗 帆奈: 瀬奈はあたしが何をしようとしているか もうわかっている
  1261. 更紗 帆奈: そしてグリーフシードが もう何の役にも立たなくなっていることも
  1262. みこと: …そっか…ここが行き止まりか…
  1263. みこと: じゃあ、しょうがないね
  1264. 更紗 帆奈: 悪いんだけどさ、瀬奈…
  1265. 更紗 帆奈: あたしの敗北に あんたを付き合わせる気はないよ
  1266. みこと: ――っ!?
  1267. 更紗 帆奈: あたしは、残りの魔力をすべて使って… 瀬奈を移植させる
  1268. 更紗 帆奈: 騒ぎに気づいたのか他の魔法少女の 気配も少し離れたところで感じる…
  1269. 更紗 帆奈: …ま、移植させるなら よりどりみどりってわけだ
  1270. みこと: うっ…なに、これ… 帆奈ちゃんから、引き離される!
  1271. みこと: は、帆奈ちゃん、何をしたの!?
  1272. 更紗 帆奈: 忘れたの、瀬奈 あたしの魔法は暗示の魔法じゃない
  1273. 更紗 帆奈: 本当は上書きの魔法 暗示は、あんたからコピーしていただけ…
  1274. 更紗 帆奈: で、今のあんたの魔法は何よ?
  1275. みこと: 移植の魔法を…コピーしたの!?
  1276. 更紗 帆奈: どいつもこいつも すぐ答えを知りたがる…
  1277. 更紗 帆奈: そんなもん、自分で見つけな!
  1278. みこと: 待って、帆奈ちゃん!
  1279. みこと: 私を置いていかないで!!
  1280. 更紗 帆奈: んじゃ…いい感じなんで…
  1281. 更紗 帆奈: …お先~!
  1282. みこと: ――っ!?
  1283. 常盤 ななか: …あっ!!
  1284. 更紗 帆奈: …あっは…笑えるじゃない…
  1285. 更紗 帆奈: …あたしの…人生…
  1286. みこと: 帆奈ちゃああああんッ!!
  1287. 更紗 帆奈: 真っ白な光に包まれる… あたしが消えてなくなっていく…
  1288. 更紗 帆奈: でももし…もう一度願いが叶うなら 今度は誰かを消すとか、なかったことにするとか そういうことを願うんじゃなく
  1289. 更紗 帆奈: 瀬奈との記憶をいつまでも残したい
  1290. 更紗 帆奈: あたしの魂がなくなっても あたしたちの日々がこの世界に 記憶されているようにしたい
  1291. 更紗 帆奈: そうしたら… たとえ自分自身が なくなってしまうのだとしても
  1292. 更紗 帆奈: きっと寂しくないから
  1293. 更紗 帆奈: ああ、瀬奈…
  1294. 更紗 帆奈: あんたと一緒にいて 本当に楽しかったよ
  1295. 更紗 帆奈: さようなら、瀬奈
  1296.  
  1297. FILENAME: text_517320-10_xNzXO.txt
  1298. 更紗 帆奈: どいつもこいつも すぐ答えを知りたがる…
  1299. 更紗 帆奈: そんなもん、自分で見つけな!
  1300. みこと: 帆奈ちゃんが何をしようとしているのか その答えはわかっていた
  1301. みこと: わからないのは、その理由だった
  1302. みこと: 考えようとしたって何もまとまらない 嫌だ、嫌だ、帆奈ちゃんがいなくなるのは嫌だ そんなことばかり思ってしまう
  1303. みこと: ここにいてよ
  1304. みこと: それがムリなら、連れてってよ
  1305. みこと: ひとりなんて悲しいじゃない?
  1306. みこと: お願いだから、置いていかないでよ
  1307. みこと: 待って、帆奈ちゃん!
  1308. みこと: 私を置いていかないで!!
  1309. 更紗 帆奈: んじゃ…いい感じなんで…
  1310. 更紗 帆奈: …お先~!
  1311. みこと: ――っ!?
  1312. みこと: 帆奈ちゃんは自分のソウルジェムを壊した
  1313. みこと: ああ、なくなる…
  1314. みこと: 私が一番失いたくなかったものが 今、目の前で…
  1315. 更紗 帆奈: …あっは…笑えるじゃない…
  1316. 更紗 帆奈: …あたしの…人生…
  1317. みこと: 帆奈ちゃああああんッ!!
  1318. みこと: 強い力で引っ張られたかと思うと 私は深い暗闇の底に落ちていた
  1319. みこと: ここはどこなんだろう?
  1320. みこと: その疑問はすぐに消え失せた どうでもよかったから
  1321. みこと: ここがどこだろうが、私がどうなっていようが そんなことはもうどうでもいい
  1322. みこと: 帆奈ちゃん…
  1323. みこと: …何かが込み上げてくる ドロドロとした熱い何か…
  1324. みこと: これは、憎しみだった
  1325. みこと: そうだ、私は憎むべきなんだ 帆奈ちゃんを奪ったこの世界を 悲しみしか用意されていないこの世の真相を
  1326. みこと: 滅ぼしてやる
  1327. みこと: 結局何も台なしにできなかったから こんな悲しみが待っていたんだ
  1328. みこと: 全部滅ぼしてやる
  1329. みこと: もう仕組みがどうのとか、抵抗がどうのとか そんなのお構いなしにすべて力でねじ伏せ 情け容赦なく叩きのめしてやる
  1330. みこと: 絶対に許さない、この世界を
  1331. みこと: ーみことー 温かな光が射し込んでくる すると私の周囲がきらきらと輝きだした
  1332. みこと: ーみことー 私の周りには鏡の破片が無数に浮かんでいた それらが反射し、光っているんだ
  1333. みこと: ーみことー この光景には見覚えがある
  1334. みこと: ーみことー そう、帆奈ちゃんと再会を果たす直前
  1335. みこと: ーみことー こんなふうに光が射し込んできて きらきらと輝き出し…
  1336. みこと: ーみことー 帆奈ちゃんとの記憶が ここに広がったんだ
  1337. みこと: ーみことー 私は、手を伸ばす
  1338. みこと: ーみことー 記憶の景色でいい、幻だっていい そこに帆奈ちゃんがいるなら何でもいい
  1339. みこと: ーみことー もう一度だけ会いたい… 会いたいよ、帆奈ちゃん
  1340. 更紗 帆奈: …見つけた
  1341. みこと: え…?
  1342. 更紗 帆奈: 最後に会えてよかったよ、瀬奈
  1343. みこと: …………
  1344. みこと: …嘘…なんで…?
  1345. 更紗 帆奈: なんでって… 会いにきちゃダメだった?
  1346. みこと: いいに決まってるよ!!
  1347. みこと: 帆奈ちゃん!帆奈ちゃん…!
  1348. みこと: 夢でも、幻でもいい 帆奈ちゃんに会えてうれしい
  1349. 更紗 帆奈: よかった…
  1350. みこと: 迎えにきてくれたんだね?
  1351. 更紗 帆奈: …ううん、そうじゃなくてさ 計画のことを話しておきたくて
  1352. みこと: 計画って…帆奈ちゃんが 準備してたやつだよね?
  1353. みこと: もうそんなのいいじゃない どうせ全部失敗したんだから
  1354. 更紗 帆奈: あっは、ひっどいな~ 失敗したわけじゃないって
  1355. 更紗 帆奈: 未完成だけど… ちゃんとわかるようにはなってる
  1356. 更紗 帆奈: だから…日付覚えてる? その日に、あの高い展望台から…
  1357. 更紗 帆奈: 町の夜景を見て
  1358. みこと: 町の、夜景を?
  1359. 更紗 帆奈: そこにあたしの言いたいことが 全部つまってあるの
  1360. みこと: そんなよくわからないことよりさ 私を連れていって
  1361. みこと: ずっと一緒にいようよ!
  1362. 更紗 帆奈: 連れてはいけない 瀬奈はここに残るの
  1363. 更紗 帆奈: ここで生きていかないと
  1364. 更紗 帆奈: 罪や罰は全部あたしが 引き受けるからさ
  1365. みこと: なんでそんな… 勝手なこと言うの…?
  1366. みこと: 自己満足だよ、そんなの! そんなことして何の意味があるの
  1367. 更紗 帆奈: あたしにとってはさ…
  1368. 更紗 帆奈: 瀬奈が生きているって事実が 希望になり得るんだよ
  1369. みこと: ――っ!?
  1370. 更紗 帆奈: すべてを忘れろとは言わない けど…憎しみとはさよならして
  1371. 更紗 帆奈: そして、今までとは別の… 新たな人として生きていくの
  1372. 更紗 帆奈: きっと世界中の人たちが 誕生を祝ってくれるよ
  1373. 更紗 帆奈: あんたはここにいるんだ… ここにいていいんだって
  1374. みこと: でも…!
  1375. みこと: 帆奈ちゃんがいなかったら 何もうれしくないよ
  1376. みこと: ――っ!?
  1377. みこと: 気がついたとき 私は展望台にいた
  1378. みこと: 懐かしい夢を見ていた… 帆奈ちゃんと過ごした あの掛け替えのない日々の夢を
  1379. みこと: もう私は帆奈ちゃんの中にいない あれから転々と宿主を替え 今は…
  1380. アリナ: …………
  1381. みこと: この宿主の中にいた
  1382. みこと: 帆奈ちゃんとはまた違った宿主で もしかしたら仲よくなれるかも しれないんだけど…
  1383. みこと: 私の声はこの宿主には届かない… やっぱり帆奈ちゃんは私にとって 特別で、あの時間は奇跡だったんだと思う
  1384. みこと: それでも、この宿主の声は聞こえるし 外の世界も宿主を通して見ることができる
  1385. みこと: この展望台に宿主が来たのは 町で多数魔力の反応があって それが何なのか確かめるためらしい
  1386. みこと: …まあ、もうどうでもいい この町に何があろうと、どうでもいい
  1387. みこと: だって帆奈ちゃんが消えてしまったから
  1388. みこと: そう…帆奈ちゃんは もうこの世界のどこにもいない
  1389. みこと: 帆奈ちゃんのいない世界は この夜みたいに真っ暗だ…
  1390. みこと: なんで私はまだ こうして生きながらえているのだろう
  1391. みこと: ここにいたってもう意味なんてないんだ さっさと消えてしまったほうが…
  1392. みこと: …そう思ったときだった
  1393. みこと: ふと今日が帆奈ちゃんの言っていた 計画のエックスデーだったと思い出す
  1394. みこと: 帆奈ちゃんが電気を消すよう 暗示をかけて回っていたあれ いったい何だったんだろう…
  1395. アリナ: ワオ… これだったワケ
  1396. みこと: ふいに宿主が 町の夜景を見て声を上げた 他の人たちのザワつきも聞こえてくる
  1397. みこと: 私は…言葉が出てこなかった 頭の中が真っ白になった気分で ただその光景を見つめる…
  1398. みこと: 見下ろした町には、明かりによって 「HAPPY BIRTHDAY」という 誕生を祝うメッセージがつくられていた
  1399. みこと: これは、誰が何のためにしているの? どこかの恵まれた人への 誕生日プレゼントだったりする?
  1400. みこと: いや、違う…あの家も、その家も 帆奈ちゃんとふたりで行った場所… そして…暗示をかけた場所
  1401. みこと: ねえ、帆奈ちゃん ずっと準備をしていたのは これだったんだね
  1402. みこと: …私に生まれ変わることができるって そう言ってくれているの…?
  1403. アリナ: ―アリナ― 滅びの中にある人間が それでも命を散らして輝く…
  1404. アリナ: ―アリナ― ビューティフル… きれいだヨネ
  1405. みこと: 確かに、この光景はきれいだった
  1406. みこと: 不条理なものへ命の輝きを 見せつけているようで…
  1407. みこと: そして何より…
  1408. みこと: 嫌いだったこの町が…この世界全体が 私を祝っているかのようで
  1409. みこと: 世界に自分の存在を はじめて認められた気がした
  1410. みこと: でも…だからって、どうすればいい? こんなものを見せられて、どうすればいいのよ
  1411. みこと: 心を入れ替えて それこそ帆奈ちゃんの言う通り 新たな人生をはじめる?
  1412. みこと: 私は今日、この瞬間 世界に祝福されて生まれたのだと そう思って絶望に負けずに生きていく?
  1413. みこと: できるわけない! こんなの見せられたって、無意味なんだ
  1414. みこと: そう、無意味だ…
  1415. みこと: そんなのはわかってる…でも…
  1416. みこと: なんでこんなに、うれしいの…?
  1417. みこと: うれしくて…本当にうれしくて 涙が止まらなかった
  1418. みこと: 私がずっと欲しくて でも絶対に手に入らないと思っていたもの…
  1419. みこと: そういうものが帆奈ちゃんから プレゼントされたのだから…
  1420. みこと: 帆奈ちゃんはきっと私に別の人生を 歩んでほしかったんだと思う
  1421. みこと: でも…今さら変えることはできない
  1422. みこと: やっぱり私の憎しみは消えない…
  1423. みこと: 帆奈ちゃんがいなくなるしかなかった この世の仕組みがどうしても許せない
  1424. みこと: だからきっと 私は自分のありかたを変えられないだろう
  1425. みこと: でもこの光景を 私はきっといつまでも覚えている…
  1426. みこと: 憎しみに染まって罪を犯すたびに きっとこの光景を思い出すことになるんだろうな
  1427. みこと: 私を踏みとどまらせるために
  1428. みこと: …そういうこと全部わかっていながら 私は隅々まで目に焼きつけるように じっとこの光景を見つめつづけた
  1429. みこと: そして… 生きていこう、と思った
  1430. みこと: 「さようなら、帆奈ちゃん」
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