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- ポケモン・ザ・ムービー2017
- Refine~無限のゼロ~(仮)
- 第3稿 脚本 米村正二
- ○登場人物
- サトシ
- マコト
- トキオ
- ピカチュウ
- ヒトカゲ リザード リザードン メガY
- キャタピー トランセル バタフリー
- へラクロス
- ポッチャマ
- ルカリオ
- ガ―ディ
- ホウオウ
- エンテイ
- ムサシ
- コジロウ
- ニャース
- ソーナンス
- ロケット団・正規軍(色違いのユニホーム)
- ロケット団・仮面の隊長
- X(クロス)
- D(ビーストY MOZZURA)
- ゴウカザル
- カゲ
- マツリ
- ハナコ
- オーキド博士
- ジョーイ
- トレーナー1
- トレーナーAB
- カメックス メガカメックス
- ポッポ
- オニスズメ
- ギャラドス
- (ポッチャマはピカチュウ同様、マコトといつも一緒。ルカリオは適時外にいます)
- ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
- ○アバン
- N「ポケットモンスター、ちぢめてポケモン」
- ポケットモンスターの設定を紹介。
- N「この星の、不思議な不思議な生き物」
- ポケモンワールドの紹介。
- N「森に」
- 森に棲むポケモンの紹介。
- N「空に」
- 空を飛ぶポケモンの紹介。
- N「海に」
- 海を泳ぐポケモンの紹介。
- N「世界のいたるところで、その姿を見ることができる」
- ポケモンバトルするポケモン達。
- N「そして人とポケモンは様々な絆を結び、この世界の中で暮らしている」
- 人と仲良く暮らすポケモン達の紹介。
- ○マサラタウン・サトシの部屋(朝)
- N「そしてこの少年、マサラタウンのサトシ」
- パジャマで寝ているサトシ、夢でバトルをしているらしく、MB(モンスターボール)型の目覚まし時計を掴み、
- サトシ「君に決めた!」
- と、投げつけ、壁に当たって目覚まし時計は壊れた。
- N「この町では10歳になると、ポケモン研究家、オーキド博士から初心者用ポケモン、一体をもらい、ポケモントレーナーとして旅立てる……のだが」
- 気持ちよさそうに寝ているサトシ。
- 母・ハナコがバーン!とドアを開けた。
- ハナコ「サトシ、いつまで寝てるの!? オーキド研究所に遅れちゃうわよ!」
- サトシは眠そうな目を開け、
- サトシ「オーキド研究所……?」
- 朝日の差し込む窓をボ~っと見て、
- サトシ「あ~~~~~~~!?」
- と、飛び起きた。
- ○同・サトシの家・全景(朝)
- サトシの声「ママ、なんで起こしてくれなかったの!?」
- ハナコの声「10歳になったら、自分で起きるって言ったでしょ!」
- ドタドタと階段を駆け下り、転ぶ音、廊下を走る音が響き……。
- ドアから飛び出て来るパジャマ姿のサトシ、物凄い勢いで走りまくる。
- サトシ「ゼニガメ、フシギダネ、ヒトカゲ! なんでもいいから待っててくれ~~~!」
- ○オーキド研究所・正門前
- サトシ「オーキド博士~~~!」
- と、走ってくる。
- 門の所にオーキド博士が立っていた。
- オーキド「おう、サトシくん!」
- サトシ、止まって息を切らしながら、
- サトシ「オレの! オレのポケモンは!?」
- オーキド「ん? ああ、今日の旅立ちは4人と聞いていたが君が最後の一人か…… しかしサトシ君、パジャマで行くのか?」
- サトシ「え? ああっ!?」
- と、パジャマのままの自分に気づいた。
- ○同・中
- オーキドの前にMBが3つ、マシン上にあり、パジャマのサトシが見ている。
- サトシ「オレ、ず~っと迷ってましたけど、決めました。ゼニガメ! オレのポケモンは君に決めた!」
- と、蓋を開けるが中身は空。
- オーキド「ゼニガメは遅刻しなかった子が連れて行った」
- サトシ「くっ……悪いのは遅刻したオレだ。ならば……フシギダネ、君に決めた!」
- と、蓋を開けるが中身は空。
- オーキド「それも時間通りに来た子が持って行った」
- サトシ「う~~。ヒトカゲ、君こそオレの選んだポケモンだ!」
- と、蓋を開けるが中身は空。
- オーキド「通勤電車もポケモンも1秒の遅れが人生を変える」
- サトシ「じゃあオレはポケモンなしで旅に出るんですか!?」
- オーキド「もう一体、いるにはいるんじゃが」
- サトシ「そいつをください!」
- マシンにせり上がってくるMB。
- オーキド「この残りポケモンには、ちと問題があってな」
- サトシ「いいんです! オレが遅刻したことにも問題があります!」
- オーキド「ならば!」
- と、渡したサトシの掌でMBが開き、
- まばゆい光を発して現れたのは……。
- ピカチュウ「ピカチュウ!」
- と、耳を動かす、ちょっと太めの体。
- オーキド「ピカチュウというポケモンじゃ」
- サトシ「わあ! かわいい! 最高じゃないですか!」
- オーキド「そうかな」
- サトシ「そうですよ」
- と、ピカチュウを抱え上げ、
- サトシ「オレ、サトシって言うんだ! よろしくな! ピカチュウ!」
- ピカチュウ「ピカ……チュウウウウウ!」
- と、電撃を発し、感電するサトシ。
- サトシ「ぎゃああああああああ!?」
- オーキド「別名、電気ネズミ。恥ずかしがり屋のくせに人に慣れにくく、へたに触るとそうなる」
- サトシ「こ……これしき、へっちゃらです」
- と、言うが髪はアフロで服もボロボロ。
- ○サトシの家の前
- 既に外着に着替えているサトシ、
- サトシ「よ~~し! 出発だ!」
- と、初代帽子をキュッと被った。
- ハナコ「サトシ! 忘れものよ!」
- と、リュックを持って出てきて、ガクッとこけるサトシ……忘れていたリュックを受け取った。
- ハナコ「まったく最後の最後まで心配かけるんだから……」
- と、少し涙ぐむと「ん?」とサトシの足元にいたピカチュウに気づく。
- ハナコ「ポケモンは普通、モンスターボールに入るんじゃない?」
- サトシ「あ、そうだ。ピカチュウ、これに入るんだ」
- と、MBを投げるが、
- ピカチュウ「ピカ!」
- と、頭で跳ね返した。
- サトシ「あれ? この! よっ!」
- と、その後も投げ続けるが、
- ピカチュウ「ピ! カ! チュウ!」
- と、蹴ったり、尻尾で弾き返したり。
- ハナコ「まあ、キャッチボールするほど仲がいいのね」
- サトシ「そうさ、ピカチュウとオレは友達なんだ」
- と、ピカチュウを抱き上げたが、
- ピカチュウ「チュウウウウウ!」
- と、電撃し、サトシは感電。
- サトシ「わあああああああああああ!?」
- ○森の坂道
- サトシが紐で何かを引っ張っている。それは嫌がるピカチュウだった。
- しばしその状態で坂道を上がる……が立ち止まって溜息をつく。
- サトシ「あのさ、この状態ずっと続ける気?」
- ピカチュウ「(フン)ピ」
- サトシはしゃがんで聞いてみる。
- サトシ「君はオレが嫌い?」
- ピカチュウ「(うん、嫌いだよ)ピカピカ」
- サトシ「オレは君が好きだよ」
- ピカチュウ「(フン)ピ」
- サトシ「とにかくオレは仲良くなりたいんだ。これもやめよう」
- と、ピカチュウに巻いた縄を解いた。
- サトシ「さ、握手」
- と、指を差し出すが、
- ピカチュウ「(フン)ピ」
- と、そっぽを向いた。
- サトシ「困ったな~」
- ポッポの声「ポッポ」
- 見れば木のそばにポッポがいた。
- サトシ「あっ!? ポッポだ! よ~し! いけ! ピカチュウ!」
- ピカチュウ「(やだねとソッポ向き)チュウ」
- サトシ「協力してくれないのか?」
- ピカチュウ「(うん)チュウ」
- と、そっぽを向き、近くにあった木の枝に昇ると、大きなあくびをして、体をかいたり、舐めたりしている。
- サトシ「そうか……だったらオレが!」
- サトシはいきなりMBを投げる。
- コツンと当たってポッポがMBに入る。
- サトシ「やったぜ!」
- だがMBから出てくるポッポ。
- サトシ「あれ? あ、そうだ。ある程度バトルしないとゲットできないんだ」
- ピカチュウ「(バカだなと笑う)ピカカカカ!」
- サトシ「(ムッとし)この! 今度こそ!」
- と、石を掴んで投げた。
- コツン! と当たって振り返ったのは、
- オニスズメ「オニ!」
- サトシ「しまった、オニスズメだ!?」
- オニスズメ「オニオニオニ~~~!」
- と、仲間を呼ぶ。
- 少し離れた木からオニスズメの大群がブワアアアア! と、迫り来る!
- サトシ「うわっ!? 逃げるぞ、ピカチュウ」
- 一緒に逃げるサトシとピカチュウ。
- ピカチュウ「(お先に)ピ!」
- と、サトシを追い抜いていく。
- サトシ「あっ!?」
- オニスズメはピカチュウに攻撃を集中。
- オニスズメの大群「オニオニオニ~~!」
- ピカチュウ「(うわ~~!)ピカ~~~!」
- サトシ「やめろ~~! 石を投げたのはオレだ! 攻撃するならオレにしろ~~~!」
- と、手でオニスズメを払いながら、傷だらけのピカチュウを抱き上げる。
- サトシ「ピカチュウ……」
- ピカチュウ「(元気なく)ピ……」
- 見れば前方に大河、その先には滝が。
- 尚も襲い来るオニスズメの大群!
- サトシ「こうなったら一か八かだ!」
- と、ピカチュウを抱いて滝にダイブ!
- ○滝のある大河
- ピカチュウを守るように抱いたサトシが滝と並行するように落ち………ドボーン! 滝壺の奥深くへ……その間もピカチュウを強く抱きしめているサトシ、激流に流されていく……。 だが水中からギャラドスが迫り来る。
- ギャラドス「ギャラアアアア!」
- サトシ「(水中で驚き)うぐぐぐぐぐ!?」
- と、必死に泳ぎ、大きな口を開けて迫るギャラドスに齧られそうになる!間一髪で岸に這いあがったサトシ。
- サトシ「ブハ~~ッ! ハァハァ……大丈夫か? ピカチュウ」
- ピカチュウ「(うつろな目で)……」
- と、かなりのダメージな様子。
- オニスズメ達の声「オニオニ~~~~!」
- 振り返ればオニスズメの大群がくる。
- サトシ「クッ……!」
- ○森の道
- ピカチュウを抱いて走るサトシ。
- 曇り空を追って来るオニスズメの大群。
- 雨雲からは雨が降り出し、嵐になる。
- サトシ「ピカチュウ! 絶対にオレが守ってやるからな! 頑張れよ!」
- ピカチュウ「(うつろな目で)……」
- サトシ「うあっ!?」
- と、転んでしまい、ピカチュウを落としてしまった。ぐったりしたままのピカチュウに手を差し伸べるサトシ。
- サトシ「ピカチュウ……こんなのありかよ」
- ピカチュウ「チュウ……」
- オニスズメの大群が迫ってくる。
- サトシはMBを出して見せ、
- サトシ「ピカチュウ、これに入れ!」
- ピカチュウ「チュウ?」
- サトシ「この中に入るのが嫌いなのは分かってる……でも入れば、お前は助かるかもしれないんだ……さあ入ってくれ……後はオレに任せろ!」
- と、MBをピカチュウの前に置く。
- そしてサトシはオニスズメの大群に向かって両手を広げ、訴えかける。
- サトシ「お前ら、オレをなんだと思ってんだ!? オレはマサラタウンのサトシ! 世界一のポケモンマスターになるんだ! お前らなんかに負けない! みんなまとめてゲットしてやるぜ!」
- サトシ、視線はオニスズメに向けたまま、ピカチュウに言う。
- サトシ「ピカチュウ、入れ! モンスターボールに!」
- ピカチュウはMBを見る。
- サトシ「さあ来い! オニスズメ!」
- ピカチュウはサトシを見る。
- 迫るオニスズメの大群。
- 天空からは稲光が迫る。
- そんな中、駆けだしたピカチュウ!
- サトシの肩を蹴ってジャンプ!
- ドーン! と、落雷、電気を充電したピカチュウ、自らも電撃を放った!
- バリバリバリ!
- ドオオオオオオオオオンンン!
- × × ×
- 夕刻になり、既に嵐は過ぎ去っている。
- 森に日差しが戻り、水たまりが輝く。
- 気絶したサトシとピカチュウが並んで倒れていた……が、同時に目覚める。
- サトシ「ピカチュウ……」
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ……」
- サトシ、手を伸ばしてピカチュウを抱きよせる。
- サトシ「オレでいいのか?」
- サトシの頬をペロリと舐めて返事をするピカチュウ。
- サトシ「ピカチュウ!」
- と、ピカチュウを強く抱きしめた。
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ」
- サトシとピカチュウは一緒にオレンジ色の夕焼け空を眺めた。
- すると七色の光を浴びるサトシ達。
- サトシ「ん? あれは?」
- と、見上げれば、七色に輝く羽根で空を飛ぶホウオウがいた。
- 虹のふもとに向かって飛び去るホウオウを見送るサトシとピカチュウ…。
- サトシ「この広い世界には、まだ知らないポケモンがいっぱい、いるんだな」
- ピカチュウ「(うん)ピカ」
- サトシ「よ~~し! 燃えて来た! 一緒に冒険の旅に出発だ!」
- ピカチュウ「(おう!)ピカチュウ!」
- ミュージックイン!
- ○オープニング
- ♪『目指せ! ポケモンマスター!』
- 野生ポケモンいっぱいの大自然の中を旅するサトシとピカチュウの活写。
- 緑の草原を走るサトシとピカチュウ。
- サトシ、初の野宿の夜はちょっぴり不安だけど、寝袋にピカチュウが入って来てくれて、暖かだ。
- サトシとピカチュウ、夜明けを見る。
- 朝、荷物をまとめたら、今日も出発だ。
- 青空の中、肩にピカチュウを乗せたサトシが、6体のレディバが糸を引く空中ブランコに乗って移動している。
- 黄色い花が一面に咲く場所で、昼寝をするサトシとピカチュウ。
- サトシ、森で野生のキャタピーと出会い、ピカチュウでバトルし、MBを投げて、初ゲットした。
- サトシの仲間はピカチュウとキャタピーになった。
- サトシの身体の上を這うキャタピー。
- 夜、仲良く満月を見上げるピカチュウとキャタピー。
- 雨の日は木陰でみんな一緒に雨宿り。
- 晴れた日は一緒にオレンの実の畑を駆け回り…。
- みんな一緒のキャンプ生活。
- トレーナーと出会えば、挨拶代わりにポケモンバトル!
- ポケモンセンターでは傷ついたピカチュウとキャタピーを治療する。
- 朝のポケモンセンターでは知り合った仲間と別れて、それぞれ旅立つ。
- そして時は流れ……。
- ミュージックエンド。
- ○高原のそばの森
- 青空と入道雲、夏を思わせる日差し。
- サトシ(新たな帽子)が草むらの中をほふく前進し、木のたもとまで来たら素早く気の影に立って隠れた。そっと覗く。近くの木にへラクロスがいた。
- サトシ「よ~~し! 虫タイプには虫タイプだ! キャタピー! キミに決めた!」
- と、木陰から出て投げたMBからは、
- キャタピー「キャタピー!」
- と、出て来た。
- サトシ「キャタピー! 糸を吐くだ!」
- キャタピー「キャター!」
- と、へラクロスに糸を吐いた。
- へラクロス「へラクロ!」
- ブ~~ン! と、飛び立ってかわした。
- サトシ「あっ!?」
- へラクロス「へラクロ!」
- と、Uターンして、角でついてくる。
- サトシ「角でつくか…かわして体当たりだ!」
- キャタピー「キャタ!」
- と、角をかわし、体当たりした。
- サトシ「いいぞ! ん?」
- キャタピーの体が輝きだし、へラクロスも思わず動きを止めて見てしまう。
- サトシ「進化だ!」
- ピカチュウ「(ほんとだ)ピカ!」
- キャタピー、天に向けて吹いた自分の糸を浴びて繭になり、やがてトランセルになった。
- トランセル「トラ!」
- サトシ「トランセルになったぞ!」
- へラクロス「ヘラクロ!」
- と、角で突いてくる。
- サトシ「うわわわ!? 固くなるだ!」
- トランセル「トラ!」
- と、固くなって、角攻撃を耐える。
- サトシ「戻れ、トランセル!」
- と、MBに戻した。
- サトシ「ピカチュウ、電光石火!」
- ピカチュウ「ピカピカピカ!」
- と、右に左に移動しながら体当たり。
- ドーン! と、へラクロスに決まった。
- サトシ「いけ! モンスターボール!」
- と、投げたMBに入るへラクロス!
- 揺れるMBを見つめるサトシ。
- MBはランプ点灯からツーン!
- サトシ「やった! へラクロス、ゲットだぜ!」
- ピカチュウ「ピ~ピカチュウ!」
- ○標高の高い高原のポケモンセンター・全景
- サトシの声「あ、ママ?」
- ○同・受付
- サトシがスカイプで話をしていた。
- ハナコ「サトシ! やっと連絡くれたわね」
- サトシ「なんでオレがここにいるって分かったの?」
- ハナコ「あんたが行きそうなポケモンセンターにかたっぱしから伝言しておいたの」
- サトシ「え? じゃあ大事な急用って」
- ハナコ「そうでも言わないと連絡してこないでしょ」
- サトシ「なんだ……じゃあ切るよ」
- ハナコ「待ちなさい。ご飯、ちゃんと食べてる?」
- サトシ「うん」
- ハナコ「野菜もちゃんと取らないとだめよ」
- サトシ「分かってるって」
- ハナコ「お洗濯は? 汚れたシャツを着てないでしょうね」
- サトシ「大丈夫だよ、ママ」
- × × ×
- 受付にいたマコト、そんなサトシを見て、「フフン」とほくそ笑み、遠目には無表情でサトシを見たトキオ。
- 受付ではポケモンの体力回復の音楽。
- ジョーイ「お預かりしたポケモンは元気になりましたよ」
- と、トレイに入れたMBを差し出した。
- マコト「ありがとうございます。ジョーイさん」
- と、1つのMBを手にした際、受付の前にある手配写真に気づいた。
- マコト「この人たち、なんですか?」
- ジョーイ「ロケット団よ」
- マコト「ロケット団?」
- 『WANTED』の文字とムサシとコジロウの手配写真(顔は見えない)。
- ジョーイ「各地で珍しいポケモンや強いポケモンを強奪する悪い奴らなの。気を付けてね」
- マコト「大丈夫です! こう見えて私、空手五段ですから!」
- と、空手のポーズ。
- × × ×
- カメラを振ると、建物の外の物陰で、当のムサシが新聞に掲載された同じ手配写真を見ていた。
- ムサシ「ろくに顔も分からないひどい写真ね」
- コジロウ「所詮、田舎のジュンサーには我らの美しさは理解できない」
- と、バラの花の香りをかぐ。
- ムサシ「許せない」
- コジロウ「許しちゃいけない」
- ムサシ「とびっきり」
- コジロウ「そこのけに」
- ニャース「強くて珍しいポケモンをゲットしてニャ~達の凄さを教えてやるのニャ!」
- ソーナンス「ソーナンス!」
- × × ×
- バーン! と、ドアを開けたトレーナー1、弱ったワニノコを抱いていた。
- ハナコとスカイプ中だったサトシ、
- サトシ「?」
- トレーナー1「ジョーイさん、お願いします!」
- と、ワニノコをジョーイに渡す。
- ジョーイ「ひどいケガ……どうしたの?」
- トレーナー1「エンテイにやられたんです!」
- サトシ「えっ!?」
- マコト「!?」
- トキオ「!?」
- サトシ「じゃもう切るからね」
- ハナコ「待ちなさい」
- スカイプを切ったサトシ、トレーナー1の所へ駆け寄った。
- サトシ「なあ、エンテイって、あの?」
- トレーナー1「うん、滅多に見る事が出来ない伝説のポケモンだよ……」
- × × ×
- インサート。威厳のある足取りで森の中を歩くエンテイの今の姿。
- トレーナー1の声「伝説のポケモンは世界中に様々な影響を与える特別な存在とも言われているんだ」
- × × ×
- サトシ「どこにいたんだ?」
- × × ×
- それを建物の外から集音機で聞いていたロケット団、
- ムサシ「コジロウ、ニャース、聞いての通りよ」
- コジロウ「フッ……伝説のポケモン、エンテイなら、獲物にとって不足なし」
- ニャース「猫に小判、ポケモンも小判ニャ」
- 三人「バンバンやるさ」
- ソーナンス「ソーナンス!」
- ○高原の先にある森の手前
- 走って来たサトシ、肩にはピカチュウ、背中にはリュック。
- サトシ「この森のどこかにエンテイが!?」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- 森の奥で爆音! ドーーーーン!
- ムサシ・コジロウ・ニャース「やな感じ~!」
- ソーナンス「ソーナンス!」
- と、炎の渦を浴びて飛んで行った。
- サトシ「ロケット団!? もしかしてあいつらもエンテイを!?」
- サトシ、森の中へと走って入った。
- × × ×
- 森の中、木々の間を走るサトシ、
- サトシ「どこだどこだどこだ~~~~!?」
- ○岩場
- サトシ、森を抜けて岩場に出てしまう。
- サトシ「どこにいるんだよ!? エンテイ!」
- エンテイの声「グルル……」
- 野太い声がし、振り返るサトシ。
- サトシ「!?」
- すぐそばの岩の上にエンテイが仁王立ちして睨んでいたのだ。
- サトシ「こ、これがエンテイか……!?」
- エンテイの威圧する様な視線に圧倒されるサトシだが、気持ちを立て直し、
- サトシ「よ~~し! いくぞ、ピカチュウ!」
- ピカチュウ「(オウ!)ピカ!」
- マコト「そこどいて~~~!」
- 見ればエンテイを挟んだ対角線上にマコトがいた。
- マコト「勝負よ! エンテイ!」
- と、MBを構える。
- サトシ「ちょっと待てよ! バトルならオレの方が先だ!」
- マコト「私の方が先よ! 邪魔! どいて!」
- サトシ「どくのはお前だ!」
- マコト「なによ!」
- サトシ「なんだよ!」
- エンテイ「グワオッ!!!」
- と、炎の渦をサトシのいる位置からマコトのいる位置までの足元に放った。
- ドオオオオオオンンン!!!
- サトシ「うわっ!?」
- マコト「キャッ!?」
- トキオ「ルカリオ! しんそくだ!」
- ルカリオ「ルカ!」
- 爆炎の中から走って来るトキオ、神速で駆けるルカリオ。
- サトシ・マコト「え!?」
- トキオ「波動弾!」
- ルカリオ「ルカ!」
- と、跳び上がると空中から波動弾!
- ドーン! と、命中するが、微動だにしないエンテイ。
- エンテイ「グワオッッッ!」
- と、炎の渦! ブオオオオオオオ!
- まともに浴びて吹っ飛ぶルカリオ。
- トキオ「ルカリオ!?」
- マコト「次は私よ!」
- サトシ「え? あ、しまった!」
- マコト「炎タイプには水タイプ! ポッチャマ! ハイドロポンプよ!」
- と、投げたMBから出たポッチャマ。
- ポッチャマ「ポッチャマ~~~!」
- と、思い切りハイドロポンプ。
- ドーン! と、命中するが、微動だにしないエンテイ。
- エンテイ「グワッ!」
- と、にらみつける。
- ポッチャマ「(ひ~~)ポッチャマ~~」
- と、睨みに威圧されて動けなくなる。
- サトシ「次はオレだ! ピカチュウ! 10万ボルト!」
- ピカチュウ「ピ~~~カ! チュウ~~~!」
- と、10万ボルト!
- バリバリバリ! と、命中するが、微動だにしないエンテイ。
- エンテイ「グワアアアアッ!」
- と、大きく吠える!
- ピカチュウ「ピカ~~~!」
- と、吠えの風圧で吹っ飛び、岩に激突。
- サトシ「ピカチュウ!」
- エンテイ「グルルル……ガウッ!!」
- エンテイは背後にあった岩山を飛び越え、姿が見えなくなった。
- サトシ「ピカチュウ、大丈夫か?」
- ピカチュウ「(うん)ピカ」
- マコト「ちょっと! あんたのせいで失敗しちゃったじゃない!」
- サトシ「なにを! そっちこそオレの邪魔したじゃないか!」
- マコト「なによ、やる気?」
- サトシ「いいとも! オレはマサラタウンのサトシ! バトルしようぜ!」
- マコト「受けて立つわ! 私はルネシティのマコト!(トキオを振り返り)ちょっとそこの男子、このサトシって子を倒したら次はあんたともバトルよ!」
- サトシ「(トキオに)オレともバトルしろ! (ハッとしてマコトに)オレを倒したらだと~!?」
- ルカリオを介抱していたトキオ。
- トキオ「僕はエンジュシティのトキオ……バトルならお断りだ」
- と、ルカリオをMBに戻した。
- マコト「逃げる気?」
- サトシ「そうだ! バトルしろ!」
- トキオ「忠告しておく。もうじき、嵐が来る。どこか雨宿りの場所でも捜したまえ」
- と、歩き去る。
- サトシ「なんだよ、あいつ……」
- マコト「(サトシに)あんたは雨宿りの前にママに電話しないとね」
- カチンと来るサトシ。
- サトシ「うるさい! 始めようぜ!」
- マコト「望む所よ!」
- サトシ「そっちから来い!」
- マコト「かっこつけちゃって、後悔しても知らないわよ! ポッチャマ、ドリルくちばし!」
- ポッチャマ「(OK)ポッチャマ~~!」
- と、ドリルくちばしで迫る!
- サトシ「ピカチュウ、アイアンテールで迎え撃て!」
- ピカチュウ「ピイイカ、チュウウウ!」
- と、アイアンテール!
- 二つの技が激突! ドオオオンン!
- バッ! と、離れる両者。
- マコト「バブル光線!」
- ポッチャマ「ポッチャマ~~!」
- と、バブル光線!
- サトシ「エレキボール!」
- ピカチュウ「ピカ!」
- と、エレキボール!
- ドーン! と、激突!
- マコト「渦潮!」
- ポッチャマ「ポ~~~ッ! チャマ~~~!」
- と、渦潮。
- サトシ「かわすんだ!」
- ピカチュウ「ピカ!」
- と、かわした。
- しかしその延長線上、遠くにいたバッフロンの群れに渦潮が命中した!
- バッフロン・ボスと群れ「バフッ!?」
- マコト「えっ!?」
- サトシ「バッフロンだ!?」
- バッフロン・ボス「(この!)バッフロン!」
- と、ポッチャマに向かって突進を始め、群れも皆、後から続いて突進してきた。
- ドドドドドドドド!
- マコト「うわわわっ!?」
- ポッチャマ「(ええ~!?)ポチャ~!?」
- 迫るバッフロンの群れの余りの迫力に動けないポッチャマ。
- マコト「(ハッとし)ポッチャマ!?」
- だがその時には既に走り出していたサトシ、先頭のバッフロン・ボスの頭突きがポッチャマに当たる寸前、
- サトシ「うおおおおおお!」
- と、ダイブしてポッチャマを抱いて、頭突きをかわし、ゴロゴロと転がった。
- マコト「サトシ!?」
- だがすぐに後続の群れが迫り来る。
- ドドドドドドドド!
- サトシ「いっ!? だあああああああ!?」
- と、マコトの方へ走るしかない。(左右の小脇にポッチャマとピカチュウを抱えているサトシ)
- マコト「ポッチャマを助けてくれたのは感謝するけど、来ないで~~~!」
- サトシ「逃げろ~~~!」
- 結局はマコトもサトシと並んで走って逃げるしかない。
- マコト「なんでこっちに来るのよ~~!」
- サトシ「他に逃げる場所なんかないだろ!」
- しかしバッフロン・ボスが群れを追い抜いて再び迫り来る。それに気づくサトシ、前には手ごろな岩山があった。
- サトシ「マコト! オレに掴まれ!」
- マコト「えっ!?」
- バッフロン「バッフロン!」
- と、頭突きで迫った瞬間、サトシはマコトを背負って岩山を蹴ってジャンプ、そのままバク転! ドガーン! と、岩山を砕いて行き過ぎたバッフロン・ボスの背中に飛び乗ったサトシ達。
- マコト「うそ!? やるじゃない!」
- サトシ「今はそんな事言ってる場合じゃないだろ!」
- ドガーン! と、岩山に激突して砕き飛ばすバッフロン・ボス。
- マコト「キャッ!」
- と、サトシの背中にしがみつく。
- 後続の群れも興奮したまま岩山に激突してはダメージを受けている。
- サトシ「このままだとバッフロン達も危ない! 止まるんだ! バッフロン!」
- だが興奮は収まらず、ドガーン! と、大きめの岩山に激突! 砕き飛ばす。
- マコト「無理よ、どうするのよ~?」
- サトシ「やる前から諦めるな!」
- と、怒られて、ドキッとするマコト。
- サトシ「落ち着くんだ、バッフロン……急におどかして悪かったよ」
- と、バッフロンの喉元をさする。
- バッフロン・ボス「バフッ! バフッ!」
- サトシ「許してくれ……心を鎮めてくれ……ど~ど~ど~」
- と、バッフロンの喉元をさする。
- バッフロン・ボス「バフ~」
- サトシ「お前たちは静かに草を食べていただけなんだよな……それなのに俺達がおどかしてしまって……ほんと、ゴメンな…」
- と、バッフロンの喉元をさする。
- バッフロン・ボス「バフロロロ……」
- と、走るのをやめ、助走になった。
- サトシ「許してくれるのか? バッフロン」
- バッフロン・ボス「(ああ)バッフロン」
- と、止まった。すると後続のバッフロンの群れも全て止まった。
- サトシとマコトがバッフロン・ボスから降り、サトシはその正面に向かった。
- サトシ「ありがとう。お前と一緒に走れて楽しかったよ」
- ピカチュウ「(ありがとう)ピカ!」
- バッフロン・ボス「(ああ)バッフロン」
- バッフロン・ボスの先導で、群れが歩き去っていく……のを見送るサトシ。
- サトシ「またな! バッフロン!」
- ピカチュウ「(バイバイ)ピカピカ!」
- そんなサトシを見ていたマコト。
- マコト「ちょっとだけ見直したかな……」
- サトシ「え?」
- マコト「あれだけ興奮していたバッフロンを落ち着かせるなんて大したもんよ」
- サトシ「(はにかみ)オレはただ、みんなと仲良くしたかっただけだよ……ポケモンはみんな友達だからな」
- マコト「……」
- と、サトシの優しさに感じ入る。
- ポツポツと雨が降りだした。
- サトシ「雨だ!」
- マコト「トキオの予測が当たったの?」
- ○高原(夕刻)
- 小雨の中を走るサトシとマコト、岩の上で待っているヒトカゲと遭遇した。
- サトシ「あっ!? ヒトカゲだ!」
- ピカチュウ「(ほんとだ)ピカ!」
- マコト「わ~! かわいいわね」
- ポッチャマ「(僕の方がかわいい)ポッチャマ」
- ヒトカゲ「カゲ……」
- サトシ「でもなんか元気ないな」
- マコト「尻尾の炎も弱い気がする」
- サトシ「お前、こんな雨ン中で何してんだ?」
- ヒトカゲ「カゲ……(何かに気づき)カゲ!」
- サトシ・マコト「?」
- X(クロス12歳男)が走っていた。
- ヒトカゲ「カゲ~~~~!」
- と、Xに向かって走っていく。
- X「(冷めた顔で)? お前、まだいたのか」
- ヒトカゲ「(ずっと待ってたんだよ、でも迎えに来てくれてよかった~)カゲカゲカ~」
- と、Xの足にすがりつく。
- X「お前にもう用はない。消えろ」
- と、ヒトカゲを足蹴にする。
- サトシ「あっ!? やめろっっっ!」
- マコト「あんたこの子のトレーナー?」
- X「なんだお前ら……?」
- サトシ「答えろよ!」
- X「なにを熱くなっている?……ああ、元、だけどな」
- サトシ「元?」
- X「弱いから捨てたんだよ。この程度のヒトカゲならいくらでもいる」
- サトシ「!?」
- マコト「!?」
- X「だが、しつこくついて来るから、ここでずっと待ってろって言ったんだ」
- サトシ、Xの襟首を掴んだ。
- サトシ「何て事言うんだ! ゲットしたポケモンに待ってろって言ったら、死ぬまで待ってる事だってあるんだぞ!」
- X「それがどうした?」
- サトシ「!?」
- X「もしそのせいで死んだら、そいつはそれまでだったって事だ」
- サトシ「貴様!?」
- と、さらに襟首を掴みあげる。
- X「オレはな、弱いポケモンが嫌いなんだよ」
- サトシ「なんだとっ!?」
- X「放せよ」
- と、腕を振り払い、水たまりの中に転んだサトシはギラリと睨み返す。
- マコト「やめなさい! ケンカするなら、空手五段の私が相手よ!」
- ポッチャマ「(そうだ)ポッチャマ~!」
- と、二人で空手の構えでXを睨んだ。
- サトシ「マコト、邪魔するな!」
- マコト「……」
- X「ポケモンは強さこそ全て……死にたくないなら強くなればいい」
- サトシ「その為にトレーナーがいるんだろ! 一緒に頑張って一緒に強くなればいい!」
- X「で……何かいいことあるのか?」
- サトシ「心が繋がる! 友達になれる!」
- X「甘いな……友情、愛情、そんなもんはポケモンを弱くするだけだ」
- サトシ「!?」
- X、サトシのそばのピカチュウを見て、
- X「お前のピカチュウか、かわいそうに……トレーナーと同じで、どうにも弱そうだ」
- ピカチュウ「(なんだとっ)ピカ!」
- サトシ「オレのピカチュウを悪く言うな!」
- X「オレは学ばせてやってるんだ。弱いポケモンに待っているのはみじめな敗北だけ。生きていたいなら強くなれってな」
- サトシ「クッ……!」
- X「オレの名はクロス。バトルしたかったらいつでも来い。叩き潰してやる」
- サトシ「ああ、やってやるさ!」
- X「だが、雨の日は御免だな……あばよ」
- Xは歩き去る。
- サトシ「……」
- ヒトカゲ「カゲ~~!」
- と、それでもけなげに走ってXを追いかけたが……力尽き、転んでしまう。
- サトシ「ヒトカゲ!」
- と、駆け寄り、抱き上げて介抱する。
- ヒトカゲ「(力なく)カゲ……」
- サトシ「さっきより尻尾の炎が弱くなってる」
- マコト「ヒトカゲは尻尾の炎が消えると死んじゃうんだよ」
- サトシ「えっ!? 急いで手当てしないと!」
- × × ×
- 薄暗がりの嵐の中、ヒトカゲを抱いて走るサトシ、マコト。
- ピカッ! と、稲光、ゴロゴロと稲光。
- マコト「キャッ! 雷きら~~い!」
- サトシ「怖いのか? 空手五段だろ?」
- マコト「あんなのハッタリに決まってるでしょ! ホントはただの五級よ!」
- 稲光がピカッ!
- マコト「キャ~~~~!」
- サトシ「ん?」
- と、死火山のふもとに洞窟を発見する。中から焚火の灯りが漏れていた。
- 顔を見合わせ、洞窟に走って行く二人。
- 中で焚火していたのはトキオだった。
- サトシ・マコト「あっ!?」
- トキオ「?」
- ○死火山のふもとの洞窟(夜)
- (焚火では既にトキオの上着と寝袋をロープを使って乾かしていた)
- トキオ、苦しげなヒトカゲを診て怒る。
- トキオ「なんでこんなになるまでほっといたんだ!?」
- サトシ「いや、その」
- マコト「サトシのせいじゃないのよ。捨てられて、ずっと雨の中を待っていたの。トレーナーが迎えに来てくれるって信じて…」
- トキオ「……」
- サトシ「治せるか?」
- トキオ「治してみせる……トレーナー想いのポケモンを死なせるわけにはいかない」
- トキオ、熱があるヒトカゲのおでこに濡れたタオルを絞って置き、小型ケースを開くと治療道具と木の実、薬草等が入っていて、オボン、オレンの実と薬草を取り、すり器ですり潰す。
- トキオ「体力を回復させるオレンの実とオボンの実、そして復活草を混ぜ合わせる」
- その手際の良さをただ眺めるサトシ達。
- トキオ、ヒトカゲの首を支え、すり器から液体を飲ませる……苦そうな顔。
- トキオ「苦いだろうが、我慢したまえ」
- 飲んだヒトカゲ、トキオは寝かせる。
- トキオ「後は安静にして回復を待つしかない」
- サトシ「うん……あっ、ヒトカゲが」
- ヒトカゲが震えていた。
- トキオ「体がまだ冷えているんだ」
- サトシ「オレがあっためてやるよ」
- マコト「その前に服を乾かさないと」
- × × ×
- 既に上着のないサトシがヒトカゲを抱いている。マコトはサラシ姿で、トキオの物に加えて、サトシとマコトの上着、寝袋も焚火で乾かしている。
- たき火を囲んで座る一同。
- ヒトカゲの呼吸はおだやかに……。
- サトシ「だいぶ落ち着いてきた」
- ピカチュウ「(うん)ピカピカ」
- サトシ「トキオのおかげだ。ありがとう」
- トキオ「当然のことをしたまでだ」
- マコト「でもジョーイさんみたいだった」
- トキオ「ポケモンブリーダーを目指すなら医学の知識も必要だ」
- サトシ「ブリーダーを目指しているのか?」
- トキオ「世界一のね」
- サトシ「へ~。マコトは?」
- マコト「私は水タイプポケモンを極めたい……そしていつか伝説のポケモン、スイクンに会ってみたい……サトシは?」
- サトシ「オレか? オレは」
- ヒュ~~っと冷たい風が吹き込む。
- サトシ、寒さにぶるるっ! と、なる。
- トキオ「ここは標高が高い。気温はこれからもっと下がる。だがマキはこれだけしかない」
- わずかしかない細い木のマキ。
- マコト「寝袋も着替えも濡れちゃったしね……ポッチャマは中に入って」
- と、ポッチャマをMBに入れた。
- 皆の吐く息が白くなってくる。
- ヒュ~~っと冷たい風が吹き込む。
- サトシ「ううう……」
- と、寒さに耐えつつ、ヒトカゲを抱いている。
- マコト「大丈夫?」
- サトシ「ああ、こんなのへっちゃらさ……ハ、ハ、ハ~~ックション!」
- マコト「強がって……ぜんぜん大丈夫じゃないじゃない」
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ」
- と、サトシの腕にすり寄る。
- サトシ「オレをあっためてくれるのか?」
- ピカチュウ「(うん)ピカ」
- トキオ「忠告しておく。早くモンスターボールに入れたまえ」
- マコト「その方が寒さをしのげるわ」
- サトシ「うん……でもオレのピカチュウは、モンスターボールに入るのが嫌いなんだ」
- マコト「え? なんで?」
- サトシ「オレにも分からない……出会った時からずっとそうなんだ」
- するとマコトのポッチャマ、トキオのルカリオもMBから出て来た。
- マコト「!?」
- トキオ「!?」
- ポッチャマ「(マコト)ポチャ~」
- ルカリオ「(トキオ)ルカ」
- と、それぞれのポケモンが自分のトレーナーに身を寄せる。
- マコト「ダメよ、風邪ひいちゃうよ!」
- トキオ「モンスターボールの中なら寒くない。戻りたまえ」
- 首を振るポッチャマ、ルカリオ。
- マコト「ポッチャマ……」
- トキオ「ルカリオ……」
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ……」
- サトシ「お前ら……」
- それぞれのポケモンが満足そうな顔でトレーナーに身を寄せている。
- サトシの頬を熱い物が伝い落ちる。
- サトシ「バカだな……」
- と、帽子を目深に被って涙を隠した。
- ピカチュウ「チュウ……」
- サトシ「……でも……すっごくあったかいや」
- マコト「うん……」
- トキオ「ああ……」
- みんなで寒さに耐える……。
- × × ×
- 外ではまだ冷たい雨が降っている。
- × × ×
- 火が弱い焚火。
- 凍えて歯がガチガチするサトシ達……。
- ズシャッ! と、いう足音。
- サトシ「?」
- と、見れば、エンテイが来ていた。
- サトシ「エンテイ!?」
- マコト、トキオ達も驚いている。
- エンテイが一歩一歩、威厳を持った足取りで洞窟内へと入ってくる。
- するとその後には雨に濡れて凍える森の野生ポケモン達を引き連れていた。
- 圧倒されて動けないサトシ達の横を通り抜けていくエンテイ、ポケモン達。
- エンテイは洞窟の奥まで行くとクルリと向きを変え、サトシ達に顔を向けた状態で寝そべる。他の野生ポケモン達もそれぞれ寝そべり、休憩姿勢。
- マコト「知ってる? エンテイはホウオウに命を与えられたそうよ」
- サトシ「ホウオウに?」
- トキオ「ボクのホームタウン、エンジュシティに伝わる伝説のことだね」
- サトシ「教えてくれよ」
- ○回想・エンジュシティ・スズの塔
- 京都を連想させる古都・エンジュ。
- そこに九重のスズの塔がある。
- トキオの声「150年前、ホウオウが人間と接触を持っていたスズの塔が、落雷で火事になり……焼け落ち……突然の大雨で鎮火した」
- スズの塔が、落雷で火事になり、焼け落ち、やがて突然の大雨で鎮火した
- トキオの声「その火事で名も無き三体のポケモンが死んでしまった……そこへホウオウが降臨し、命を与え、復活させた」
- ホウオウ降臨!!!
- ホウオウ、命を与える。
- トキオの声「その三体は、塔に落ちた雷、塔を焼いた炎、塔を鎮火させた雨の化身だと言われている。それが伝説のポケモン、ライコウ、エンテイ、スイクンだ」
- ライコウの雷。
- エンテイの火炎放射。
- スイクンのハイドロポンプ。
- ○洞窟の中(夜)
- サトシ「へ~。なあ、ホウオウってどんなポケモンなんだ?」
- トキオ「これさ」
- と、タブレットでホウオウを見せた。
- サトシ「あっ!?」
- トキオ「知ってるのか?」
- サトシ「ああ、旅立ちの日に見たんだ!」
- トキオ「本当か!?」
- マコト「凄いじゃない!」
- すると人知れず……エンテイの影の一部が伸びてカゲの頭部になり、サトシに注目する様に赤い瞳を光らせた。
- サトシ「オレ、その時、誓ったんだ。ピカチュウと一緒にいつかホウオウとバトルするって」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- マコト「ホウオウとバトルか~。夢があるわね~」
- サトシ「なに言ってんだよ、夢なんかじゃないさ。伝説のポケモン、エンテイともバトルしたし、今だって目の前にいるんだぜ」
- エンテイ、ジッとサトシを見ている。
- マコト「言われてみればそうね」
- トキオ「当たって砕けろという言葉があるが、君はそのタイプのようだ」
- サトシ「ああ、でもオレ達は絶対に砕けないぜ! なっ、ピカチュウ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- マコト「その固そうな石頭なら大丈夫そうね」
- サトシ「なんだよそれ」
- マコトが笑うとトキオも吹き出し、サトシもまざって三人で笑った。
- サトシ「あれ? なんかあったかくなってきたな」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- トキオ「エンテイだよ。エンテイはマグマの様に熱い情熱を持ったポケモンと言われている」
- サトシ「おかげでヒトカゲもあったかそうだ」
- サトシの胸で安心したように眠るヒトカゲであった。
- そんな中、エンテイの影のカゲが伸び、ピカチュウの影に近づく。
- その時、焚火の炎が消えた。
- エンテイの影も消え、影の中にいたカゲの姿が露わになる。カゲはハッと自分の状況に気づき、慌ててサトシのそばの岩陰に姿を隠した。
- × × ×
- 時間経過。夜明け前の群青色の空。
- × × ×
- 洞窟内。ヒトカゲを抱いて、ピカチュウと共に丸まるように眠るサトシ。
- 差し込んだ朝日……で、影が出来ると岩陰に隠れていたカゲが、抜き足差し足でピカチュウの影に近寄る。
- 目覚めるサトシ。
- サトシ「……ん? 朝だ!」
- ピカチュウ「(も目覚め)ピ……」
- マコト&ポッチャマ、トキオ&ルカリオも起き、カゲは慌ててピカチュウの影に入った。
- マコト「わ~~! 太陽がうれし~~~い!」
- ポッチャマ「ポッチャマ~!」
- ルカリオ「(何かに気づき、トキオに)ルカ」
- トキオ「エンテイ達がいなくなってる……」
- 見ればエンテイも野生ポケモン達もいなくなっていた。
- ヒトカゲ「(も目覚め)カゲ……」
- サトシ「おっ! ヒトカゲ、具合はどうだ?」
- ヒトカゲ「(元気になったよ)カゲカゲ!」
- サトシ「元気になったな!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- サトシ「トキオ」
- トキオ、ヒトカゲのおでこを触って熱があるか確認し、尻尾の炎を見て、
- トキオ「うん、熱もない。尻尾の炎にも勢いがある。もう大丈夫だ」
- サトシ「よかったな、ヒトカゲ」
- ヒトカゲ「(うん)カゲ!」
- サトシ「なあ、オレと一緒に来ないか?」
- ヒトカゲ「カゲ?」
- サトシ「前のトレーナーの事は忘れてさ、オレの友達になってくれよ」
- ピカチュウ「(そうしなよ)ピカピカ」
- ヒトカゲ「(うん)カゲ!」
- マコト「OKって言ってる感じね」
- サトシ「(喜び)ほんとか!? じゃあ行くぞ、モンスターボール!」
- と、MBを構えて投げ、カーン! と、開いたMBにヒトカゲが入った。
- サトシ「ヒトカゲ、ゲットだぜ!」
- ピカチュウ「ピ~ピカチュウ!」
- サトシ、MBからヒトカゲを出した。
- サトシ「よろしくな。仲良くしようぜ」
- ヒトカゲ「(うん)カゲ」
- サトシとヒトカゲ、握手する。
- ○洞窟の外(早朝)
- 旅の荷物を背負ったサトシ&ピカチュウ、マコト&ポッチャマ、トキオ&ルカリオが洞窟から出て、何かを見た。
- サトシ「虹だ!」
- マコト「ほんとだ! きれいね~!」
- トキオ「ああ……」
- それは大きな虹だった。
- 雲と青空と大地と森……大自然と虹の織り成す美しい光景を眺める三人…。
- マコト「知ってる? ホウオウは虹のふもとに住むって言われているのよ」
- サトシ「へ~!」
- サトシ、虹のふもとの方角を指さし、
- サトシ「じゃあ、あの虹のふもとには何があるんだろう?」
- トキオ、タブレットのマップを操作し、
- トキオ「断崖絶壁の岩が連なるメテオタウン。ここにあるのはポケモンセンターと…」
- タブレットは虹のコロシアムを示した。
- トキオ「虹のコロシアムだ」
- ピカチュウの影のカゲが反応する。
- サトシ「虹のコロシアム?」
- トキオ「スズの塔が焼け落ちた後、ホウオウはこの場所でのみ、人間と接触を持っていたと言われている」
- サトシ「面白そうだな! (ピカに)俺たちは虹のコロシアムへ向かおうぜ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- ピカチュウの影のカゲも嬉しく頷く。
- ピカチュウ「(え?)ピ?」
- と、影を振り返るとカゲは隠れた。
- マコト「ホウオウを捜しに行くの?」
- サトシ「ああ! ホウオウって伝説のポケモンを蘇らせたぐらい凄いんだろ! そのホウオウとバトルして勝ったら、オレはポケモンマスターになれるぜ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- マコト「ポケモンマスター?」
- サトシ「オレの夢は世界一のポケモンマスターになる事なんだ!」
- マコト「それって喫茶店のマスターみたいなもの?」
- サトシ「違うよ! ポケモンマスターはポケモンマスターだ!」
- マコト「(まだよく分からないが)ふ~ん」
- サトシ「確かこっちだったよな。(ピカチュウに)行こうぜ、ピカチュウ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- トキオ「待ちたまえ」
- サトシ「?」
- トキオ「忠告しておく。その方角に行くのはやめた方がいい」
- サトシ「え? なんでだよ」
- トキオ「入ってはいけない危険な森がある」
- サトシ「危険な森か……でもそんなの、行ってみないと分からないぜ」
- トキオ「また当たって砕けろか? 君が砕けるのは勝手だが、ポケモンまで危険な目に遭わせるのはよくない」
- サトシ「大丈夫だよ! いざとなったら、オレが絶対にピカチュウを守ってやる。これまでだってずっと守って来たんだ! なっ、ピカチュウ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- サトシ「(マコト達に)じゃあな! またどこかで会おうぜ!」
- と、元気に走り、ピカチュウも続く。
- トキオ「……(ルカリオに)僕たちも行こう」
- ルカリオ「(うん)ルカ!」
- と、サトシとは逆方向へ歩き出す。
- マコト「(トキオに)ねえ、危険な森に何がいるの?」
- 立ち止まったトキオ、
- トキオ「ダークライだ」
- マコト「え!?」
- ポッチャマ「ポチャ?」
- ○不気味な森の中
- 薄暗く、不気味な森……を、左右を警戒しながら歩くサトシ。
- サトシ「ここがトキオの言ってた危険な森か」
- ピカチュウ「(そうだね)ピ~カ」
- 野生のシンドラー達が「ギャアアアアアア!」と鳴いて飛び立った。
- サトシ「いっ!?」
- ピカチュウ「(いっ!?)ピカ!?」
- 思わず抱き合っていたことに気づくサトシとピカチュウ、「ハハハ」と笑い、
- サトシ「なんだよ、ピカチュウ、怖いのか?」
- ピカチュウ「(怖くないと首を振り)ピカカ」
- サトシ「だよな! オレもへっちゃらだぜ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカピカ!」
- サトシとピカチュウ、歩いていく。
- ○不気味な森の手前
- 不気味な森の手前へマコトとトキオが走って来た。
- トキオ「この先はダークライのテリトリーだ」
- マコト「(心配して)サトシ……!」
- ○不気味な森の中(陽のささない夕刻)
- 薄暗く、不気味な森を歩くサトシ。
- サトシ「おかしいな~、もうそろそろ森を出てもいい頃なんだけど……」
- ピカチュウ「(だよね)ピ~カ」
- よそ見をしてたサトシ、滑り落ちた。
- サトシ「うわああああ!?」
- 斜面の中腹にあった木にゴッツ~ン!と、激突したサトシ。
- オンバットの群れ「オ~~~ン!」
- 無数のオンバットの群れが飛び立ち、
- サトシ「うわっ!?」
- それは視界も遮られる凄い数……。
- 斜面の上に取り残されたピカチュウも、
- ピカチュウ「(うわっ!?)ピカ!?」
- と、オンバットの群れで視界を失い、後退し、反対側の斜面に滑り落ちた。
- ピカチュウ「(うわ~~)ピカピカ~!?」
- サトシ「ん? ピカチュウ!?」
- と、叫べどピカチュウの姿が見えない。
- サトシ「今行くぞ!」
- と、激突した木を掴んで斜面を上がろうとしたが、その木はオーロットで、しかも辺りはオーロットだらけで、突然、サトシに向かってきた。
- サトシ「え!? うわああああああ!」
- と、さらに斜面を滑り落ちていく。
- ドシーン! と、落ちた谷底では木の葉の下から大群で姿を現すヤミラミ、その目を不気味に光らせ襲ってきた。
- サトシ「うわわわわわ!?」
- と、走って逃げる。
- サトシ「って逃げてちゃダメだ! ピカチュウを守らないと!」
- と、斜面を駆け上がっていった。
- だが斜面の上にピカチュウの姿はない。
- サトシ「ピカチュウウウ! どこにいったんだ!? ピカチュウウウウ!!!」
- × × ×
- 夜になっていて、空には新月間際の極細の三日月……が翳り、完全なダークムーンになる。
- その下の森の中を走るマコト達。
- マコト「ダークムーンになったわ」
- トキオ「このままではサトシ達が悪夢に囚われてしまうぞ」
- マコト「サトシ~~! どこなの~~!?」
- ポッチャマ「(どこだ~)ポッチャマ~!?」
- × × ×
- ピカチュウも森の中を必死でサトシを捜して走っていた。
- ピカチュウ「(サトシ~)ピカピ~~!」
- × × ×
- ピカチュウヲ探して走るサトシ。
- サトシ「ピカチュウウ! どこだ~!? ピカ(チューと叫ぼうとして)あれ? 急に眠く……なんだ? どうなってんだ?」
- 行き倒れのようにその場に倒れて、眠ってしまうサトシ。
- 闇の中から浮き出て来るダークライ。
- ダークライ「……」
- フェードアウト。
- ○サトシの部屋(朝)(実は夢)
- フェードイン。
- 色彩のない白黒の世界である。
- ベッドにパジャマで寝ているサトシ。
- バーン! と、ドアを開けたハナコ。
- ハナコ「サトシ、いつまで寝てるの!? 学校に遅れちゃうわよ」
- サトシ「学校……?」
- 朝日の差し込む窓をボ~っと見て、
- サトシ「あ~~~~~~~!?」
- と、飛び起きた。
- ○サトシの家・全景(朝)(実は夢)
- サトシの声「ママ、なんで起こしてくれなかったの!?」
- ハナコの声「10歳になったら、自分で起きるって言ったでしょ!」
- ドタドタと階段を駆け下り、転ぶ音、廊下を走る音が響き……。
- サトシ「行ってきま~~~す!」
- ドアから飛び出したサトシ、ブレザーの制服姿で学生鞄を持って、走る。
- ○近未来的な学校の全景・正門前(朝)
- 無機質で近未来的な校舎が見える。
- サトシ「オーキドせんせ~~~い!」
- と、走ってくる。
- 門の所にオーキド先生が立っていた。
- オーキド「おう、サトシくん!」
- サトシ、止まって息を切らしながら、
- サトシ「ハァハァ、間に合いましたか?」
- オーキド「今日遅刻した生徒は全部で4人。その中でも君が一番最後だ」
- サトシ「あ~あ、また遅刻か」
- オーキド「通学電車も人生も1秒の遅れが人生を変える。君はこれにて減点10、内申書にもかなり響くぞ」
- サトシ「は~い……」
- ○同・サトシの教室(実は夢)
- サトシが教室に入ってくる。
- カスミとタケシが振り返った。
- カスミ「サトシ、遅かったじゃない」
- サトシ「ちょっと寝坊しちゃってさ」
- と、窓際の席に鞄を置く。
- タケシ「宿題は?」
- サトシ「あ、忘れてた!?」
- カスミ「もう、何やってるのよ! また先生に叱られるわよ!」
- タケシ「オレのを写すか?」
- サトシ「わっ! サンキュ!」
- カスミ「ダメダメ! 宿題は自分でやんなきゃ意味ないでしょ」
- サトシ「そうだな」
- カスミ「ここらで気合を入れ直さないと、留年しちゃうよ」
- サトシ「分かってる……分かってるんだけどさ……なんか本気になれないんだ」
- タケシ「なぜ?」
- サトシ「燃えるものがないっていうか、何かが足りないっていうか……」
- カスミ「何が足りないのよ?」
- サトシ「それが……俺にも分からないんだ」
- サトシの視界、デスクの下方に黄色い物体がチラッっと見えた。(未だに世界は全て白黒のまま)
- サトシ「え!?」
- カスミ「どうしたの?」
- サトシ、目を凝らすが何もいない。
- サトシ「いや……なんでもない」
- カスミ「変なの……」
- タケシ「見つかるといいな、サトシが燃えられるもの……」
- サトシ「……うん」
- × × ×
- アララギ先生の数学の授業中の風景。
- 窓際の席のサトシ、上の空である。
- サトシ、窓から外を見る。
- サトシ「(ぽつりと独り言)虹だ……」
- 大きな虹が出ていて、すぐ近くの雲の中を光る物体が飛んでいた。
- サトシ「?」
- と、見守る。
- 光る物体が雲から出るとそれは旅客機で太陽を浴びて光っていたのだった。
- 「なんだ」と、思うサトシ。
- 旅客機は空虚な空を飛んで行く。
- それを目で追うサトシの心も空虚だ。
- ○同・校舎の屋上(実は夢)
- 必要以上に高い金網。
- その金網越しに眼下に広がる風景を眺めているサトシ、カスミ、タケシ。
- 建物が並び、川があり、森があり、遠くには高い山も見える。
- カスミ「いつまで見てるの?」
- サトシ「え? ああ」
- カスミ「こんな風景、見飽きたわ」
- サトシ「だよな」
- タケシ「何を考えていたんだ?」
- サトシ「うん……この風景の先には何があるのかなって……」
- タケシ「そうだな……森があって、川があって、山があって、また次の町があるんだろうな」
- サトシ「その先は?」
- タケシ「また森と川と山があって……やがて海に出るかもな」
- サトシ「その先は?」
- タケシ「……」
- カスミ「きっと同じ事の繰り返しよ」
- サトシ「でもさ……行ってみないと分からないぜ……」
- タケシ「……」
- カスミ「……」
- サトシ「オレさ……」
- タケシ「?」
- カスミ「?」
- サトシ「旅に出たい」
- カスミ「旅?」
- タケシ「旅か……」
- サトシ「楽しいだろうな……時間なんか気にしないで、知らない場所をどこまでも自由に歩いて……」
- カスミとタケシも想像が膨らむ。
- カスミ「そうね……普段は絶対に行かないような場所を冒険して……」
- タケシ「初めての町で、初めて食べる料理…その土地ならではの文化との触れ合い…」
- サトシの瞳も輝いてくる。
- サトシ「キャンプして……星を眺めて……旅で出会った仲間と喋って……あいつがいれば、オレはどこにだって行けるんだ」
- タケシ「あいつ?」
- カスミ「あいつって?」
- サトシ「決まってるだろ! あいつはいつもオレのそばに…(言葉が詰まり)そばに…」
- タケシ・カスミ「?」
- ピカチュウの声「ピカ」
- サトシ「!?」
- と、自分の肩に黄色い生物が見えた気がしたが、見れば肩には何もいない。
- 無表情のまま、サトシの瞳からポロッと涙が零れ落ちた。
- カスミ「サトシ、泣いてるの?」
- サトシ「あれ? どうしたんだ?」
- と、自分でも泣いていた事に驚いた。
- カスミ「もう! しっかりしてよ!」
- タケシ「ちょっと疲れてるんじゃないのか?」
- サトシ「うん……」
- と、涙を拳でゴシゴシ拭う。
- カスミの声「サトシならきっと大丈夫よ!」
- タケシの声「ああ、元気出せよ!」
- サトシ「ん……ああ!」
- と、涙をぬぐい終えると、カスミとタケシも消えていた。
- サトシ「え!?」
- サトシは独りぼっちだ。
- 遠くでピカチュウの声「(サトシ)ピカピ!」
- サトシ「!?」
- 振り返れば眼下の町の中を黄色い生物が走っていたが、見えなくなった。
- サトシ「待ってくれ!」
- と、走って行く。
- ○マサラタウンの町の中(実は夢)
- サトシが何かを捜して走っている。
- サトシ「お~い! どこにいるんだ~!?」
- 一瞬、通りを黄色い生物が通り抜けた。
- サトシ「あっ!?」
- と、その生物を追いかける。
- 通りまで来たが黄色い生物はいない。と、思いきや、ずっと遠くの通りにチラッと姿を出し、また消えた。
- サトシ「頼む! 待ってくれよ!」
- サトシ、追いかけていく。
- その前方、遥か彼方を走って逃げる黄色い生物。
- サトシ「なあ……こうやって昔……一緒に走ったよな!」
- 黄色い生物は遠くを走り続け、サトシは走って追い続ける。
- サトシ「オレ……またお前と一緒に走りたいんだ……でもお前の事が思い出せなくて……オレの……オレの一番大切な友達だったのに……思い出せなくて(涙がブワッと噴き出た)お願いだ! もう一度! もう一度だけオレと! オレと一緒に!」
- 足をひっかけ、派手に転ぶサトシ。
- サトシ「うわっ……!」
- サトシ、「あつつ……」と、痛みに耐えながら、思い切り叫ぶ。
- サトシ「頼む! 行かないでくれええええ!」
- だが、誰もいない街に一人ぼっち……。
- サトシ、喪失感で泣きたくなる。
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ」
- サトシ「!」
- 目の前にピカチュウがいた。
- サトシ「あっ……!」
- それまで色彩のない白黒の世界だったサトシの視界、ピカチュウの黄色を中心にブワ~ッ! と、世界の全てに色がついて広がっていく。
- サトシ「ピ……」
- ピカチュウ「(首をひねり)チュウ?」
- サトシ「ピカ……」
- ○森の中の空間(夜)
- サトシ「ピカチュウ!!!」
- と、叫んで目が覚めた。
- サトシ「ハァハァハァ……」
- と、汗をびっしょりかいていた。
- マコト「サトシ」
- 目の前にマコト&ポッチャマとトキオ&ルカリオがいた。
- サトシ「マコト!? トキオ!? なんでここに?」
- マコト「森中を走り回って探したのよ。見つけるの大変だったんだから」
- トキオ「君だけなら放っておいたが、君のポケモンが心配になってね」
- サトシ「オレのポケモン? あ、そうだ! ピカチュウは!?」
- ピカチュウの声「(サトシ)ピカピ!」
- 横にピカチュウがいた。
- サトシ「ピカチュウ!」
- と、強く抱きしめた。
- マコト「ピカチュウは悪夢にうなされてたサトシを必死に起こそうとしていたわ」
- サトシ「すまない……お前を守ってやれなくて……」
- ピカチュウ「(そんなことないよ)ピカピカ」
- サトシ「あっ!?」
- 闇の中に光るダークライの目……ス~っと足元の闇の中に消えて行った。
- トキオ「この森には暗黒ポケモン・ダークライが住んでいるんだ」
- サトシ「!?」
- ピカチュウ「(そうだったの)ピカピカ!?」
- トキオ「ダークライは人やポケモンを自分のテリトリーから追い出すために悪夢を見せる。君も見たんじゃないのか?」
- サトシ「見たよ……すっごく怖い夢……」
- マコト・トキオ「?」
- と、顔を見合わせた。
- × × ×
- 優しい焚火の炎、その周りに座るサトシ&ピカチュウとその影にカゲ、トキオ&ルカリオ、マコト&ポッチャマ。
- マコト「へ~、じゃあその世界にはポケモンが全くいないんだ……」
- サトシ「それどころか……自分がポケモンと一緒にいた事も忘れてるんだ……」
- マコト「う~ん……かなり怖い夢ね」
- トキオ「だが……それも悪くないかもな」
- サトシ「え?」
- マコト「?」
- トキオ「仲良くなれば別れが辛い……だったら最初からポケモンなんて、いないほうがいい……そんな風に思った事もある……」
- マコト「……もしかして辛い別れがあったの?」
- トキオ「過ぎた話さ」
- ピカチュウの影のカゲも聞いている。
- ○回想・トキオの家・豪邸の庭
- 母と添い寝するようにガ―ディと添い寝する3歳のトキオ。
- トキオの声「ボクの両親は仕事でいない事が多かったから、赤ん坊の頃からガ―ディが親代わりでね……」
- × × ×
- 7歳のトキオが年上の子供におもちゃを取り上げられて泣いているとガ―ディが猛然と走って来て、助けた。
- トキオの声「たとえいない時でも、来て、と強く想えば、必ず来てくれた……だからあの時も」
- × × ×
- 吹雪の夜、未踏の雪面、ボードで木に激突したトキオが動けないでいる。
- 斜面を駆け下りて来るガ―ディ。
- トキオ「ガ―ディ!!!」
- 猛吹雪の中、雪の斜面に掘った穴でトキオを包み込むように抱くガ―ディ。
- × × ×
- 翌朝、救助隊が来て目覚めたトキオ、ガ―ディを見る。ガ―ディは「大丈夫だよ」という笑顔のまま動かない。
- トキオ「ガ―ディ?」
- 全く反応しないガ―ディ。
- トキオの「ガ―ディィィ!!!」という叫びは音にならず、画面は吹雪でホワイトアウト。回想終わり…。
- ○森の一角(夜)
- サトシ「……そんな事があったのか」
- マコト「……だから洞窟でヒトカゲを診た時、あんなに怒ったのね」
- トキオ「失って初めて気づいたんだ。その存在がどれだけ大切だったか……それなのに僕は感謝の気持ちも伝えられなかった」
- サトシ「……トキオの想いはきっとガ―ディに届いているよ」
- ピカチュウ「(そうだよ)ピカチュウ」
- トキオ「……うん」
- ピカチュウの影で「うんうん」と頷き、もらい泣きしているカゲ。
- ピカチュウ「ピカ?」
- と、カゲに気づいて「ピカ!」と驚き、
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ!」
- サトシ「ん?」
- と、見るがカゲは影の中に消えた。
- サトシ「どうしたんだ?」
- ピカチュウ「(今ここにたんだ)ピカピカ。(変だな~)ピカチュウ」
- マコト「それでトキオはポケモンがいない方がいいって思ったの?」
- トキオ「ああ。でもこのルカリオと出会って、その考えが間違っていたと気づいた」
- ルカリオ「(トキオ)ルカル……」
- トキオとルカリオの出会いからこれまでの回想フラッシュと重なりながら、
- トキオ「ポケモンは楽しい時、悲しい時、雨の日も、晴れた日も、いつもそばにいてくれる。別れの辛さの何十倍、何百倍、何千倍もの愛情を注いでくれる……最高の友達だよ」
- ルカリオ「(うん!)ルカ!」
- サトシ「トキオ!」
- と、右手を差し出した。
- トキオ「?」
- サトシ「オレ、ポケモンが大好きだ! ポケモンが大好きな奴も大好きだ! だから……友達になってくれ!」
- トキオ「……うん」
- 握手し、ニカッ!と、微笑むサトシ。
- マコト「私も」
- と、右手を添え、三人の手が繋がった。
- カゲ「ミーもなり~~~!」
- と、三人の手に自分の手を重ねた。
- サトシ達一同「え!?」
- と、改めてカゲを見た。
- カゲ「あ……!」
- と、姿をさらしている自分に気づいた。
- サトシ「うわっ!?」
- トキオ「なんだ君は!?
- マコト「しかも喋った!?」
- トキオ「テレパシーか!?」
- カゲ「ミーはカゲなり!」
- サトシ「カゲナリ?」
- カゲ「なりはいらないなり! カゲなり!」
- サトシ「カ、ゲ、ナリ?」
- カゲ「違うなり~~!」
- トキオ「急に現れたけど、どこにいたんだ?」
- カゲ「チュウピカの影に隠れてユー達を観察してたなり!」
- ピカチュウ「チュウ、ピカ?」
- カゲ「そして三人とも合格したなり! みんなでホウオウに会いに行くなり~~!」
- サトシ「ホウオウに!?」
- カゲ「ミーが虹のコロシアムまで案内するなり!」
- サトシ「じゃあカゲについて行けばホウオウに会えるのか?」
- カゲ「もちろんなり!」
- マコト「自信たっぷりだけど本当なの?」
- トキオ「虹のコロシアムなら僕達だけでも行けるんだが」
- カゲ「ミーと一緒じゃないとダメなり! ミーはホウオウの友達なり!」
- サトシ「凄え!」
- ピカチュウ「(うん)ピカピカ!」
- カゲ「えっへんなり!」
- マコト「サトシってだまされやすいタイプかも……」
- トキオ「確かに……」
- 夜明けの太陽が射しこんだ。
- サトシ「おっ!?」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- マコト「夜明けだ」
- ポッチャマ「(うん)ポチャ……」
- トキオ「……」
- ルカリオ「……」
- カゲ「……」
- それぞれの思いで夜明けを見つめる。
- サトシ「なあ、マコトとトキオも行こうぜ、虹のコロシアム」
- マコト「憧れのスイクンに命を与えたホウオウなら、私も会ってみたいかな」
- ポッチャマ「(うん)ポッチャマ!」
- トキオ「ホウオウはポケモンの生命を司るとも言われている。世界一のブリーダーを目指すなら、会っておいた方がよさそうだ」
- ルカリオ「(ああ)ルカ!」
- サトシ「よ~し! 虹のコロシアムを目指して出発だ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- カゲ「出発なり~~!」
- ミュージックイン。
- ○旅の点描(音楽シーン)
- サトシ&ピカチュウ&カゲ、マコト&ポッチャマ、トキオ&ルカリオの旅が始まり、その点描。
- 深い渓谷の不安定な怖い橋を励ましあいながらどうにか渡り…。
- トレーナーと出会ってバトルするサトシ、トランセルを使ってバタフリーに進化した。
- 湖畔の自炊。カゲが正拳突きでピカチュウの持つ木切れを割ってマキにし、ヒトカゲが火をつけ、バタフリーが風おこしで火を大きくするが、燃えすぎてサトシの顔が真っ黒アフロに。
- みんなで力を合わせて砂漠を抜け…。
- 渡し舟代わりのマンムーに乗って大きな激流の河を越え……。
- 悪天候の山道もどうにか切り抜け…。
- 海辺の砂浜ではカゲが正拳突きや蹴りをピカチュウ、ポッチャマ、ヒトカゲに教えるが、ルカリオがカゲより上手で、面目丸つぶれで怒るカゲ。
- ランチの後には花畑でみんなで昼寝。
- ポケモンセンターに着く一同。
- ロビーではマコトにバカにされながらもサトシはハナコにスカイプし、マコトとトキオ、自分のポケモン達を紹介した。
- センターでの食事もおいしい!
- センターに併設のバトルフィールドでマコトのポッチャマとバトルするヒトカゲ、リザードに進化した。
- 喜ぶサトシ。嬉しいリザード、そしてピカチュウ、バタフリー、へラクロス。
- 爽やかな朝、センターから旅立つ一同。
- ○海岸線の崖の上(夕刻)
- スピア―の集団に襲われていたメスのバタフリー。
- サトシ「バタフリー、風おこしだ!」
- バタフリー「フリ~!」
- と、風起こしでスピア―の集団を吹き飛ばしてメスのバタフリーを助けた。
- 海の上空にはバタフリーの群れ。
- カゲ「あっ! バタフリーの群れなり!」
- ピカチュウ「(ほんとだ)ピカ!」
- トキオ「この時期、バタフリーは子作りの為に集団で南に渡るんだ」
- ルカリオ「(うん)ルカ……」
- バタフリー「(好き好き)フリ~フリ~」
- と、メスに求愛ダンスをして訴える。
- メスのバタフリー「フリ~フリ~」
- と、「OK」のダンス。
- カゲ「求愛オーケーのダンスなり~!」
- サトシ「そっか……」
- と、ふと寂しげな顔になった……が、決断し、敢えて明るい笑顔で、
- サトシ「バタフリー……みんなと行きたいならオレ……いいんだぜ」
- バタフリー「(え)フリ?」
- サトシ「行ってこい。これはオレからのプレゼントだ」
- と、マフラーを巻いてやった。
- サトシ「似合ってるぞ」
- そしてメスのバタフリーに、
- サトシ「こいつ、とってもいい奴だから、よろしくな」
- メスのバタフリー「(うん)フリ……フリ~!」
- と、空高くまで飛び立った。
- サトシ「(バタフリーに)みんなにはオレから言っとくよ。バタフリーはかわいい彼女と旅立ったって」
- バタフリー「フリ~」
- サトシは涙を見せたくなくて、俯く。
- メスのバタフリー「(いこう)フリ~!」
- と、空高くから呼びかける。
- サトシ「(俯いたまま)ほら、彼女が呼んでるぞ」
- バタフリー「(行ってくるね)フリ~フリ~」
- と、飛び立った。
- マコト「バタフリー!」
- ポッチャマ「ポチャ~!」
- トキオ「みんなと仲良くな!」
- ルカリオ「ルカ!」
- カゲ「さよならなり~!」
- ピカチュウ「(さよなら)ピ~カ……チュウ!」
- バタフリー「(さよなら)フリ~フリ~」
- 俯いたままのサトシはバタフリーとの出会いからこれまでの事を思い出す。キャタピーでゲットして、トランセルに進化し、バタフリーに進化した……。
- サトシ「(呟く)バタフリー……」
- カゲ「バタフリー、行っちゃうなりよ」
- サトシ「!?」
- と、見上げるとバタフリーは彼女と一緒に群れに向かって飛んでいた。
- サトシ「バタフリー! 元気でな~~!」
- バタフリー「フリ~フリ~」
- サトシ「(笑顔で)さよならバタフリー! さようなら~~! さようなら~~~~!」
- バタフリーも泣きながらサトシを振り返っていたが、やがて彼女と一緒に群れの中へと飛んで行った。
- サトシ「行っちゃったか……」
- トキオ「サトシ……」
- サトシ「分かってる……友達が言ってた……オレ達トレーナーは育てる事は出来ても、生み出す事はできないって」
- マコト「うん……」
- カゲ「いいこと言うなり……ぐすっ」
- と、泣いていた。
- 水平線の夕日、岩礁に打ち寄せる波。
- ○メテオタウン・全景(後日)
- 雨雲、小雨……。大きな断崖が林立し、その上に村がある不思議な場所。
- ○同・断崖の上の荒野(後日)
- 小雨の中を小走りで行くサトシ&ピカチュウ&カゲ、マコト&ポッチャマ、トキオ&ルカリオ。
- マコト「せっかくメテオタウンに着いたのに」
- トキオ「この先にあるポケモンセンターで雨宿りしよう」
- サトシ「でも虹のコロシアムも近くなんだろ?」
- カゲ「そうなり! もうすぐなり!」
- すると前方からXが歩いて来た。
- サトシ「あっ!?」
- X「お前と会う日はいつも雨だな……ん? (カゲを見て)見たことのないポケモンを連れているな。どうにも弱そうだが」
- カゲ「カゲは弱くないなり!」
- トキオ「知り合いか?」
- マコト「あいつよ。ヒトカゲを捨てたの」
- トキオ「なにっ!」
- ルカリオ「ルカ!」
- と、Xをギラリと睨む。
- X「クロスだ。オレもこの先にある虹のコロシアムを目指していたが、無駄足だった」
- サトシ「お前もホウオウとバトルしたいのか?」
- X「オレの目的はゲットだ」
- カゲ「ゲ、ゲット!? とんでもないなり~!」
- X「強いポケモンはこのオレが全てもらう。(サトシに)それに引き換え、お前はあの使えないヒトカゲを拾ったんだってな?」
- サトシ「使えないポケモンなんていない! 出て来い! リザード!」
- と、MBを投げてリザードが現れた。
- リザード「リザード!」
- サトシ「見ろ! 立派に育ってる!」
- X「進化したのか……だが進化しても弱い奴は弱いままだ」
- サトシ「なにっ!?」
- リザード「(ムッと)ガウッ!」
- サトシ達を制止するトキオ。
- トキオ「よしたまえ。ホウオウは心正しきトレーナーの前にしか姿を現さない」
- マコト「つまり、あんたの前には絶対に現れないってことよ」
- ポッチャマ「(そうだ!)ポッチャマ!」
- X「甘いんだよ。心正しきだと? 正しいのはただ一つ、強いって事だ。勝った者だけが正義を語れる。つまり俺こそがホウオウをゲットできる、心正しきトレーナーだ!」
- トキオ「……!」
- マコト「……!」
- カゲ「……!」
- サトシ「じゃあ弱い奴は?」
- X「ゴミだ」
- サトシ「負けた奴は?」
- X「それ以下だ」
- サトシ「最初は弱くたって、そのせいで負けたって……その悔しさをばねに、トレーナーと一緒に頑張れば、強くなれる!」
- リザード「(そうだ)ガウッ!」
- X「時間の無駄だ。弱いのは捨て、強いのを拾う。オレはそうやって最強のポケモンを手に入れた」
- サトシ「お前に……トレーナーを名乗る資格はない」
- X「フン(雨雲を見上げ)雨も止んだな……やるか」
- サトシ「ああ、バトルだ!」
- X「どれでいく?」
- サトシ「リザードだ!」
- リザード「ガウッ!」
- と、前に出た。
- X「じゃあ、お前を捨てた後にゲットしたポケモンでやってやる。どっちが強いか自分の目で確かめろ……ゴウカザル! To arms!(戦闘準備)」
- と、投げたMBから現れたのは。
- ゴウカザル「ゴウ……ハァハァ……」
- と、息も荒い。
- サトシ「ダメージを負ってるじゃないか」
- トキオ「今すぐ治療が必要だ」
- X「構うな。体力を失わないと出せない技もある」
- サトシ「もうかの事か?」
- X「それぐらいの知識はあるんだな……覚えておけ。ポケモンは追い込めば追い込むほど強くなる。だからオレはこいつの為に、ギリギリまで追い込んでやってるんだ」
- サトシ「バトルは中止だ」
- X「なにっ!?」
- サトシ「まずはゴウカザルの体力を回復させろ! バトルはそれからだ!」
- そんなサトシにグッと来たような視線で見つめているカゲ。
- サトシ「戻れ! リザード!」
- と、リザードをMBに戻した。
- X「甘いな……(ニヤリと)無理やりバトルに引きずり込む事も出来るんだぞ」
- サトシ「だとしても……オレは戦わない!」
- ピカチュウ「(うん!)ピカ!」
- トキオ「忠告しておく。ゴウカザルにもしもの事があったら、僕は君を許さない」
- ルカリオ「(そうだ)ルカ!」
- マコト「私もよ!」
- ポッチャマ「(僕も)ポッチャマ!」
- カゲ「ミーもなり!」
- X「フッ、笑わせてくれる。オレにトレーナーの資格がないだと? お前らみたいな甘ちゃんこそトレーナー失格なんだよ!」
- サトシ「!」
- マコト「!」
- トキオ「!」
- X「(にやりと)なんとか言えよ」
- サトシ「……オレ、難しい事は分かんないけど、これだけは言える……オレは絶対に……! 絶対にお前には負けない!!!」
- トキオ「……」
- マコト「……」
- X、ゴウカザルをMBに戻し、
- X「その言葉、忘れるなよ」
- サトシ「ああ!」
- ピカチュウ「(ああ!)ピカ!」
- マコト「いきましょう!」
- と、Xを睨み続けるサトシとトキオの腕を引いて、歩いて行く。
- Xはサトシを睨み続けている。
- ○同・断崖の上に建つポケモンセンターの脇
- 曇り空。山小屋風のポケモンセンターの脇を通り過ぎ、
- カゲ「この先なり」
- と、断崖の果てに向かうサトシ達。
- だんだん見えて来たのは……深い谷を挟み、古い石の橋で繋がった向こう側の崖……雨雲に包まれて見えない。
- トキオ「雲でよく見えない」
- カゲ「こっちなり!」
- と、古い石の橋を渡っていく。
- サトシ「とにかく行ってみようぜ」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- × × ×
- 古い石造りの橋、植物のツルが巻き付き、雑草が生え、今にも崩れそう。
- カゲに続き、橋を渡っていくサトシ達。
- ○廃墟の虹のコロシアム・バトルフィールド
- 風で雨雲が流れ、視界が開けていく……と、戦場跡の様に破壊された観客席、足元には瓦礫が散乱するバトルフィールド、中央に祭壇、その中に佇んでいるサトシ&ピカチュウ&カゲ、マコト&ポッチャマ、トキオ&ルカリオ、廃墟のコロシアムの全貌が見えた。
- サトシ「!?」
- トキオ「これが……虹のコロシアム!?」
- マコト「もうボロボロじゃない……」
- サトシ「ん? あれは……?」
- バトルフィールドの脇には植物と一体化した遺跡の様な転送装置があった。
- (モニター付き)
- マコト「転送装置よ……でも、かなり長い間、使われていない感じ」
- トキオ「ここにあるのは怒り、憎しみ、破壊……こんな所にホウオウが現れるとは思えない(カゲに)僕達をだましたのか?」
- カゲ「だましてないなり! ここにはホウオウと一緒にミーのトレーナーも待っているなり」
- サトシ「トレーナーも!?」
- マコト「どこに?」
- カゲ「確かにここにいるなり! でも会えなくなったなり」
- サトシ「どういうことなんだ?」
- カゲ「みんなにも真実を教えるなり! 影が重なるように立つなり!」
- と、サトシ達の影が重なるように立たせると、その影に入るカゲ。
- カゲ「ここで何が起きたかを見るなり!」
- カゲが記憶映像をみんなの脳裏に送る。
- ○回想・虹のコロシアム・バトルフィールド
- 破壊される前のコロシアムのバトルフィールドにトレーナーAB、その前に杖を持った神官マツリ&カゲがいる。
- マツリ「これより、選ばれし勇者を決めるバトルを始める!」
- カゲ「使用するポケモンは一体なり」
- マツリ「使わないポケモンをセンターへ送りたまえ」
- トレーナーAとBが転送装置でMBを送る。
- マツリ「ここではポケモンのバトル能力が最大限まで引き出される。だが勝っただけではホウオウには会えない。ホウオウはトレーナーとポケモンの魂の重なりを最上の喜びとするのだ!」
- カゲ「その時初めて虹のコロシアムへのゲートが開くなり!」
- 頷くトレーナーAとB。
- マツリ「では……はじめ!」
- × × ×
- バトルの中、カメックスがメガ進化!
- トレーナーA「よ~し! ラスターカノン!」
- メガカメックス「カメ~~~ックス!!!」
- と、ラスターカノンで、相手のメガボーマンダを吹き飛ばし、KOした。
- マツリ「カメックスの勝ちだ!」
- 天空から祭壇に虹の光が降り注いだ。
- マツリ・カゲ「!?」
- 祭壇には虹から球体のプリズムが現れ、まるでモンスターボールの様にパカッと開くと、プリズムの中から虹の光が溢れ出て、辺りを異空間にする。
- マツリ「おお……!」
- カゲ「現れるなり~~~!」
- プリズムの発するレーザー的な虹の光と共に、ホウオウが現れた。
- ブワアアアアアアアア!!!
- だがその瞬間、岩陰から一斉に出て来たロケット団正規軍(ムサシ達とは色違いのユニホーム)と仮面の隊長。
- 隊長「閃光弾!」
- 部下が閃光弾発射! パパパッ!閃光。
- ホウオウ「(まぶしくて目を閉じ)グワア!?」
- マツリ「何だ、お前たちは!?」
- 隊長「左右からグレネードランチャー! 正面はワイヤー針スタンガン!」
- 左右から数人ずつグレネードランチャ―でゴム弾を撃ち、ホウオウに命中。
- 正面から数人がワイヤー針スタンガンを撃ち、ホウオウの胸部に刺さると電気を流す。バリバリバリバリ!
- ホウオウ「(苦しむ)グワアアアアアア!?」
- カゲ「やめるなり~~~~!」
- マツリ「(トレーナーABに)君たちは逃げるんだ!」
- トレーナーAとB、MBにポケモンを戻し、入場門から逃げていく。
- マツリ「カゲ、インファイトだ!」
- カゲ「カゲカゲカゲ~~~!」
- と、パンチ、キックの連続で、攻撃中のロケット団たちを蹴散らす。
- 隊長「いけ! マスターボール!」
- と、マスターボールを投げ、ホウオウに当たると開いてビームを浴びせるが、ホウオウには効かない。
- 隊長「まだか!? グレネード隊は実弾を装填! スタンガン隊は電圧を最大にしろ」
- 部下たち「ハッ!」
- マツリ「連続でグロウパンチ!」
- カゲ「カゲカゲカゲ~~~~!」
- と、グロウパンチの連続でグレネード隊を吹き飛ばしていく!
- 隊長「装甲戦車、撃て!」
- ロケット団の装甲戦車が現れ、大砲をホウオウに向けて撃った。ドーン!
- ホウオウ「(苦しむ)グワオオオッ!」
- マツリ「カゲ、いくぞ!」
- カゲ「うん!」
- 輝きを増す虹ビーズ、その輝きがマツリとカゲを包み込み、カゲは全力モードに変化した。
- カゲ「これが僕たちの……全力・グロウパンチだあああああああ!!!」
- カゲ「たあああああああ!」
- と、高くジャンプすると、そこから落下しながら全力のグロウパンチ!
- ドオオオオオオン!!! と、炸裂!
- 装甲戦車からロケット団が逃げ出すとドガーン! と、大破した。だが……。
- ホウオウ「(苦しむ)グワアアアアアア!?」
- ワイヤー針スタンガンで感電していた。
- マツリ「やめろ~~~~~!」
- ロケット団に突っ込むマツリ、杖でスタンガンのワイヤーを切ろうと斬りつけ、バリバリバリ! と、感電する。
- マツリ「うわああああああ!?」
- 倒れるマツリ、大きなダメージ。
- カゲ「マツリ~~!?」
- 倒れているマツリを見て怒るホウオウ。
- ホウオウ「グオオオオオオオオ!!!」
- と、羽ばたいて、スタンガンのワイヤー針を蹴散らした!
- スタンガン部隊「うわあああああ!?」
- と、吹き飛ばされた。
- 隊長「ひるむな! バズーカ隊、撃て!」
- 部下達がバズーカを撃ちまくる。
- ホウオウ「カッ!」
- と、破壊光線を放つ!
- シュン! と、光の筋! ドーン!
- 隊長・部下たち「うわあああああ!?」
- 一撃でコロシアムは半壊した。
- ホウオウ、その後も人間への怒りをぶつけるように破壊光線を撃ちまくる。
- ホウオウ「クオオオオオオオ!」
- ドーン! ズドーン! 破壊は進む。
- 気絶した隊長達を抱え、コロシアムの入場門から逃げていくロケット団。
- カゲに介抱されるマツリ、
- マツリ「怒りを鎮めてくれ……ホウオウ!」
- ホウオウ「クオオオ……」
- と、破壊光線を止めた時、既にコロシアムはボロボロに破壊されていた。
- マツリ「人間はあんな連中ばかりじゃない……ポケモンは家族、いや、それ以上だ……人間を見限らないでくれ」
- ホウオウ「クオオオオオ!」
- と、球体のプリズムがMBの様に開き、虹の光を発した。
- マツリ「ホウオウ!!!」
- ホウオウはプリズムの中へ戻った。
- すると、プリズムが宙に舞い、ブワアアア! と、異空間全体が嵐になって、プリズムの中へと吸い込まれていく。
- マツリ「クッ……!」
- カゲ「急いで外に出るなり!」
- だがダメージで立てないマツリ。
- マツリ「だめだ……ここはカゲだけでも」
- カゲ「何を言ってるなり! マツリと一緒じゃなきゃイヤなり! つかまるなり!」
- カゲが支えるようにして重傷のマツリを立たせ、暴風に逆らうようにして必死にコロシアムの入場門へ向かう。
- もう少しで出られそうな所まで来たが、入場門の扉が閉まり始めた。
- マツリ「!」
- と、カゲを押しやった。
- カゲ「あっ!?」
- × × ×
- 異空間の外、(橋の部分)に転がり出て来たカゲ、見れば入場門はガン! と、扉が閉まった。
- カゲ「マツリ~~!?」
- 宙に浮いていたプリズム、異世界を吸い尽くし、天空から降り注ぐ虹の光に包まれ、虹が消えるとプリズム自体も消えていた。
- そこには破壊された虹のコロシアムの残骸だけが残されていた。
- カゲ「……ミーが……ミーが必ず助けるなり! それまで待つなり~!」
- ○廃墟の虹のコロシアム・バトルフィールド
- 回想あけて……。サトシ達。
- サトシ「じゃあカゲは、それからずっとマツリさんを助け出そうとしていたのか?」
- カゲ「そうなり!(と、頷き)それにはポケモンと魂を重ねられるトレーナーが必要だったなり」
- 回想フラッシュ。エンテイの影からサトシ達を観察するカゲ。ダークライの夢の後、サトシ達三人の握手。
- カゲ「それで……この三人なら大丈夫って思ったなり!」
- トキオ「僕たちが勇者を決めるバトルを行い、ポケモンと魂を重ねることでゲートが開くんだな」
- カゲ「その通りなり!」
- サトシ「マコト! トキオ! やろうぜ!」
- マコト「OK! サトシとの決着はまだだし、トキオとはバトルしたことないしね」
- トキオ「そのバトル、僕が本気になるだけの価値はありそうだ」
- サトシ「ヘヘっ! でも負けないぜ! オレが勝ち上がって勇者になって、ホウオウにも勝つ! そして世界一のポケモンマスターになるんだ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- Xの声「甘いな」
- サトシ達「!?」
- D「D!」
- と、雷パンチでサトシに迫る!?
- サトシ「何だ!? あのポケモンは!?」
- ピカチュウが「ピカピッ!」と、サトシを守ろうとジャンプしたが、
- ピカチュウ「(間に合わない!?)!?」
- MBから出て来たリザード、
- サトシ「リザード!?」
- リザード「ガウッ!」
- と、Dの右パンチを受け止めた。
- ドーン! バリバリバリバリ! と、雷の稲光が拡散!!!
- サトシ・マコト・トキオ「うわっ!?」
- と、その衝撃に後退する。
- バリバリバリ! リザード、光に包まれてリザードンに進化した!
- リザードン「グオオオオオオオオオ!」
- サトシ「進化した!?」
- ピカチュウ「(すごい)ピカ!」
- D「D!」
- ガツッ! Dの左パンチが顔面に炸裂し、吹っ飛ぶリザードン。
- サトシ「リザードン!」
- リザードン、足を地面に踏ん張って止まり、ギラッ! と、Dを振り返った。
- X「それが……オレの最強ポケモン、Dだ」
- 入場門から歩いてくるX。
- サトシ「クロス!?」
- X「オレには絶対に負けないと言ったな。だったら決着をつけようぜ」
- リザードン「(サトシ、やろう)ガウガウ!」
- サトシ「リザードン、お前、あいつとバトルしたいのか?」
- リザードン「(ああ!)ガウッ!」
- サトシ「マコト! トキオ! いいか!?」
- マコト「悔しいけど勇者を決めるバトルはサトシに譲るわ!」
- トキオ「ただし! 絶対に勝ってくれ! 何より、リザードンの為に!」
- サトシ「ああ!」
- リザードン「ガウッ!」
- X「フン! D、アームハンマー!」
- D「D!」
- と、羽根で高速で飛んで、リザードンにアームハンマー!
- サトシ「速い!?」
- ドーン! と、リザードンに炸裂!
- サトシ「リザードン! ドラゴンテールだ!」
- リザードン「ガウッ!」
- と、ドラゴンテール!
- ドーン! と、Dに炸裂!
- だがDにはダメージがない。
- X「その程度の技では効かない。D、あてみなげだ!」
- D「D!」
- と、羽根で鋭角的に飛んでリザードンの懐に入ると腕をつかみ、あてみなげ。
- ドーン! と、リザードンに炸裂!
- 技を食らったリザードンだがそこから、
- サトシ「火炎放射だ!」
- リザードン「ガウッ!」
- と、吹き飛ばされながらも火炎放射!
- ゴオオオオオ! と、Dに直撃!
- しかし平然としているD。
- サトシ「あいつ不死身なのか?」
- ピカチュウ「(どうなってるの?)ピカ?」
- X「雷パンチ!」
- D「D!」
- と、羽根で高速で飛んで雷パンチ。
- ドーン! と、リザードンに炸裂! バリバリバリ! と、雷も落ちた。
- リザードン「(苦しみ)グワオ!?」
- サトシ「頑張れリザードン! 切り裂くだ!」
- リザードン「ガウッ!」!」
- と、切り裂く攻撃!
- ジャキーン! と、Dに炸裂!
- D「(痛い)D!?」
- X「その痛みを力に変えろ。とどめばり!」
- D「グウウ……D!」
- と、羽根で高速で飛んでリザードンの胸にとどめばりを突き刺した。
- サトシ「あっ!?」
- リザードン「ガウッ!?」
- サトシ、リザードンに駆け寄って傷を見る。
- サトシ「大丈夫か!? リザードン!?」
- リザードン「グルルル……」
- と、その目はまだ戦う気満々だ。
- X「あいつもろとも吹き飛ばせ! 雷パンチだ!」
- D「D!」
- と、羽根で高速で飛んでサトシとリザードンに雷パンチで迫る。
- サトシ「いこうぜ! オレ達二人、もっと強くなるんだ!」
- リザードン「(ああ、強くなる)ガウッ!!」
- リザードンとサトシ、ドクン!!! と、鼓動が一つになる!!!
- サトシ「リザードン!」
- リザードン「(サトシ)ガウッ!」
- 二人の魂が交じり、リザードンにはリザードナイトYが、サトシにはキーストーンのリングが現れた。
- サトシ「これは!?」
- 互いの石が光った!
- リザードン「メガリザードン!!!」
- 進化してメガリザードンYになり、
- ドオオオオオオン! バリバリバリ!
- Dの雷パンチを受け止めた。
- X「メガ進化しただと!?」
- カゲ「進化を超えた進化、メガ進化なり!」
- X「ええい、とどめばりで今度こそ息の根を止めろ!」
- D「D!」
- と、とどめばりで迫る。
- サトシ「リザードン! これが俺たちの……魂のバトルだ!!!」
- メガリザードンY「ガウッ!」
- その瞬間、サトシゲッコウガと同じように二人の魂が重なった。
- サトシ「フレアドライブ!!! いっけーーーーーーーーっっっ!」
- メガリザードンY「グワアアアアアア!!!」
- と、フレアドライブ!!!
- ドオオオオオオン!
- Dに直撃! フレアドライブを浴びて 吹っ飛んできたDがXにぶつかり、
- X「うわ~~っ!?」
- と、一緒に吹き飛んで、コロシアムの壁に激突! DはKO。
- サトシ「やったぜ! リザードン!」
- キーストーンとリングが消え、メガリザードンYからリザードンに戻った。
- リザードン「ガウッ!」
- と、サトシと腕を握り合った。
- 天空から祭壇に虹の光が降り注いだ。
- サトシ「!?」
- ピカチュウ「(あれは!)ピカ!?」
- マコト・トキオ「!?」
- カゲ「ゲートが開くなり! サトシが勇者に選ばれたなり~~!」
- 祭壇に球体のプリズムが現れ、まるでモンスターボールの様にパカッと開くと、中からプリズムの虹の光が溢れ出て、辺りを異空間にする。
- トキオ「ついに……!?」
- マコト「現れるの……!?」
- サトシ「よ~~~し! いよいよホウオウとのバトルだ!」
- 肩で息をしていたリザードン。
- サトシ「よく頑張ってくれたな、リザードン。戻るんだ!」
- と、リザードンをMBに戻した。
- サトシ「いくぜ! ピカチュウ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- と、前に出た。
- そしてプリズムから虹の光と共に出たのは、神官のマツリだった。
- サトシ達「!?」
- カゲ「マツリ~~!!!」
- と、マツリに向かって走る。
- マツリ「カゲ!!!」
- と、駆け寄り、抱き合うカゲとマツリ……再会を果たして涙する。
- カゲ「やっと……やっと会えたなり~~!」
- マツリ「すまない、心配かけたな」
- カゲ「無事でよかったなり~~!」
- マツリ「カゲのおかげだよ、ありがとう。本当にありがとう」
- 「わ~~~ん!」と号泣のカゲ。
- マツリは一層強くカゲを抱きしめた。
- サトシ「よかったな、カゲ」
- ピカチュウ「(よかった)ピカ!」
- カゲ「(うん)なり~!」
- マツリ「ありがとう。君達のおかげで僕はカゲと会うことができた」
- サトシ「いや、オレ達は思い切りバトルしただけです」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- カゲ「(マツリに)ホウオウはどうなったなり?」
- マツリ「……」
- サトシ「オレ、ホウオウに勝ってポケモンマスターになりたいんです!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- マツリ「実はあの事件の後、ホウオウはどこかへ行ってしまった………」
- サトシ「えっ!?」
- マツリ「そのせいかこの空間は崩壊が進んでいるんだ……」
- ガラガラ……さらに崩れるコロシアム、プリズムが宙に浮き、異空間全体をブワアア!と、嵐の様な風で吸い込み始め、その瓦礫が巻き上げられていく。
- 一同「うわっ!?」
- マツリ「ボクが閉じ込められた時と同じだ。
- 早くここから出よう」
- カゲ「出るなり~!」
- マツリ達は行くが、サトシは名残惜しそうにプリズムを見上げていた。
- サトシ「ホウオウ……!」
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ!」
- マコト・トキオ「サトシ!」
- サトシ「うん……!」
- マツリ達を先頭に入場門へ向かい、最後尾に続くサトシとピカチュウ。
- Xの声「とどめばり!」
- D「D!」
- と、とどめばりがサトシに迫る。
- サトシ「あっ!?」
- ピカチュウ「ピカ~~~ッ!」
- と、アイアンテールで迎撃。
- ドーン! バリバリバリ!
- 二つの技が激突した。
- Dの背後には狂気の笑みのXがいた。
- サトシ「クロス!?」
- X「勝負はまだこれからだろ?」
- Dは「ゼ~ゼ~」と肩で息をしている。
- サトシ「何を言ってるんだ、ここはもう崩壊するんだぞ!」
- X「ここから出たいなら、オレを倒してから行け……雷パンチ!」
- D「D!」
- と、雷パンチがサトシに迫る!?
- サトシ「クッ……! 電光石火!」
- ピカチュウ「(うん)ピカピカピカ~~!」
- と、電光石火で雷パンチをかわして電光石火をDに決めた。ドーン!
- X「フフフ、その痛みを力に変えろ」
- Dは「ゼ~ゼ~」と肩で息をしている。
- マコト・トキオ「サトシ!?」
- サトシ「オレはクロスとケリを付けてから行く! 先に行ってくれ!」
- マコト「ダメよ!」
- トキオ「危険すぎる!」
- サトシ「大丈夫だ! マツリさん、マコト達をお願いします!」
- マツリ「残された時間は少ないぞ!」
- サトシ「はい!」
- マツリ「行こう!」
- と、動かないマコトとトキオを引っ張って、入場門に向かう。
- サトシはそれを確認し、振り返った。
- X&Dと対峙するサトシ&ピカチュウ。
- × × ×
- マコト&ポッチャマ、トキオ&ルカリオ、マツリ&カゲ、崩壊した瓦礫が強風で迫るとそれぞれのポケモンが技で瓦礫を弾き返しながら、入場門からコロシアムの(異世界の)外へ出た。
- そして古い石の橋を渡って、ポケモンセンターがある断崖にいく。
- × × ×
- 崩壊が進む異世界の虹のコロシアム。
- X「D、アームハンマー!」
- D「D!」
- と、高速で飛んでアームハンマー!
- サトシ「エレキボール!」
- ドーン! と、Dに炸裂!
- X「あてみなげ!」
- D「D!」
- と、羽根で鋭角的に飛んでピカチュウに近づく。
- サトシ「10万ボルト!」
- ピカチュウ「ピイイイカ、チュウウウウ!」
- と、10万ボルト。
- バリバリバリ! 感電して苦しむD。
- X「(狂気の笑みで)いいぞ、もっと苦しめ、そしてもっと強くなれ」
- 「ゼ~ゼ~」と肩で息をしていたD。
- D「D!」
- と、飛び去った。
- X「D! どこへ行く!?」
- Dは入場門から飛んで出て行った。
- X「戻って来い、D!? D~!?」
- サトシ「あいつはお前だ」
- X「?」
- サトシ「捨てたんだよ。トレーナーを」
- X「なに! このオレが弱いというのか!?」
- サトシ「そんなの関係ない。お前は強さだけ にこだわってるけど、ポケモンがどう生きるかはポケモンが決める!」
- X「ポケモンがどう生きるかだと!?」
- サトシ「ポケモンにもトレーナーを選ぶ権利があるんだ!!!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- X「クッ……!」
- 崩壊が進む異世界の虹のコロシアム、
- 入場門の扉が閉まり始めた。
- サトシ「あっ!?」
- と、ドン! と、Xを押しやった。
- X「!?」
- × × ×
- 押されて、異空間の外、(橋の部分)に転がり出たX、見ればガン! と、扉が閉まった。
- X「!?」
- と、足元を見れば石の橋も崩壊し始め、
- X「うわっ!?」
- と、慌ててポケモンセンターのある断崖に向かって渡っていき、そのそばから、崩れ落ちていく石の橋。
- × × ×
- 一方、扉の閉まった虹のコロシアム内。
- サトシ「うわっ!?」
- 崩壊した瓦礫はさらに嵐の様にプリズムに吸い込まれ、サトシ達も思わず、
- サトシ「わああああああ!」
- ピカチュウ「(うわ~)ピカアアアアア!?」
- と、フィールド中央まで戻され、どうにか何かを掴んで止まったが、崩壊した大小の瓦礫が吹き荒れ、飛んでくる。
- サトシ「くっ!?」
- と、かわしたが、いくつかを浴び、
- サトシ「ううっ!?」
- と、ダメージを負いつつ、その後も瓦礫がたくさん飛んでくる。
- サトシ「このままじゃ……!?」
- と、掴まっている物を見ると転送装置だった。
- サトシ「転送装置……使えるのか!?」
- サトシ、スイッチを押すと稼働する。
- サトシ「いけそうだ!」
- モニターにはジョーイが映る。
- サトシ「ジョーイさん、モンスターボールを転送します。受け取ってください!」
- と、リザードンのMBを転送する。
- × × ×
- 近くのポケモンセンターではジョーイが転送されてきたMBを受け取った。
- モニターに映っているサトシ、既に傷だらけである。
- ジョーイ「ひどい傷……大丈夫なの?」
- サトシ「近くに……オレの友達がいます!」
- × × ×
- マコト&ポッチャマ、トキオ&ルカリオ、マツリ&カゲ、そしてXはポケモンセンターのある側の断崖から、向かいの断崖の様子を固唾をのんで見守っていた。その背後のセンターからジョーイが走ってくる。
- ジョーイ「サトシ君の友達って、君たちのこと?」
- マコト「え!?(振り返り)はい!」
- × × ×
- サトシが2つ目のMBを転送している間、ピカチュウはサトシを守ろうと飛んでくる瓦礫を、
- ピカチュウ「ピカッ! ピカッ!」
- と、アイアンテールで弾き返す。
- サトシ「次はピカチュウだ!」
- と、ピカチュウのMBを構えた。
- ピカチュウ「(え?)ピ?」
- サトシ「モンスターボールに入れば助かるんだ! 入ってくれ! ピカチュウ!」
- と、MBの光線を浴びせるが、
- ピカチュウ「ピ!」
- と、かわす。
- サトシ「頼むよ、入るんだ!」
- と、MBの光線を浴びせるが、
- ピカチュウ「ピ! ピ!」
- と、かわし続ける。
- サトシ「なんで入ってくれないんだよ!?」
- ピカチュウ「(いやなんだ)ピカチュウ!」
- ガラガラガラ! ブワアアアア!
- 瓦礫が吹き飛んできた。
- サトシ「危ない!」
- と、ピカチュウを抱きあげて守るが、
- サトシ「うっ!? ううっ!? くっ!」
- と、瓦礫を体に浴び続ける。
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ!」
- サトシ「ピカチュウ……!」
- さらに大きな瓦礫が飛んで来た。
- サトシ「!」
- かわせないと判断したサトシ、防御姿勢でピカチュウを守って瓦礫を浴び、
- サトシ「うわああっ!?」
- と、壁にぶち辺り、大きなダメージを負い、吹き飛ばされそうになるが、近くにあった柱を掴んでどうにか耐えた。だが体中、傷だらけである。
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ!」
- × × ×
- マコト・トキオ「サトシ!?」
- と、センターの転送装置のモニターでその様子を見ていた。
- × × ×
- サトシは、心配かけまいと笑顔で、
- サトシ「ピカチュウ、大丈夫か?」
- ピカチュウ「(うん)ピカ」
- サトシ「オレ、頑張ったけどさ……限界みたいだ……だから、なっ、お前だけでも生きてくれ……」
- と、ピカチュウを地面に下ろした。
- サトシ「頼む! 入ってくれ!」
- と、MBの光線を浴びせるが、
- ピカチュウ「(やだ)ピカ!」
- と、かわす。
- サトシ「なんで……!?」
- 飛んで来る瓦礫。
- ピカチュウはサトシを守ろうと、
- ピカチュウ「ピカッ!」
- と、アイアンテールで弾き返す。
- だが別の瓦礫が飛んできて、ガツッ!
- サトシ「うっ!?」
- と、頭部に瓦礫を浴びた。
- × × ×
- マコト・トキオ「あっ!?」
- × × ×
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ!」
- サトシ、朦朧とする意識の中で、
- サトシ「なんで入ってくれないんだよ? ピカチュウ……」
- と、ピカチュウを見つめる。
- ピカチュウもサトシを見つめている。
- ピカチュウが口を開く。
- ピカチュウ「(サトシは)ピカピ」
- サトシ「……」
- するとサトシにはピカチュウの心の声が聞こえたような気がする。
- ピカチュウ「サトシは……」
- サトシ「!?」
- ピカチュウ「ボクが守る……!」
- 余りの驚きで声にならないサトシ。
- ピカチュウ「だから……いつでも一緒だよ」
- 泣きながら優しく微笑むピカチュウ。
- サトシ「ピカチュウ、お前……」
- サトシの瞳からも涙が溢れる。
- サトシ「ピカチュウ!!!」
- と、ピカチュウを抱きしめた。
- ピカチュウ「(サトシ!)ピカピ!」
- ピカチュウは出会った日、「オレでいいのか?」と言われた後と同じようにサトシを舐めた。サトシも思わずその時のことを思い出し、回想フラッシュ。これまでのピカチュウとの思い出の数々……ピカチュウが愛おしい……。
- だが決断した!
- サトシ「涙はな……むやみに見せるもんじゃないんだぞ」
- と、強がった笑みで帽子を脱ぎ、涙を隠す様にピカチュウに目深に被せた。
- ピカチュウ「(え?)ピ?」
- サトシはそのすきにMBの光線を浴びせ、ピカチュウをMBに入れた。
- × × ×
- マコト・トキオ「サトシ!?」
- × × ×
- サトシ「マコト! トキオ! ピカチュウを頼む!」
- サトシ、そのMBを転送した!!!
- その刹那、メキメキ、ガラガラガラ!
- コロシアム全体がついに完全崩壊した。
- サトシ「……」
- と、満足げなおだやかな笑顔のまま…ブワアアアアアアアアァァァァ!
- 瓦礫と共に吹き飛ばされた。
- ○断崖のポケモンセンター内
- マコト・トキオ「サトシ~~~~!?」
- カウンター内部の装置に転送されてきたMBから飛び出す、ピカチュウ。(サトシの帽子を被っている)、
- マコト・トキオ「ピカチュウ!?」
- ピカチュウ「ピッ!?」
- と、辺りを見回して事態を把握し、そばにあったMBが誰の物かを理解し、呼びかける。
- ピカチュウ「(サトシが大変だ)ピカピカ!」
- MBから姿を現すリザードン、へラクロス。
- ピカチュウ「(こっちだ!)ピカ!」
- と、皆を先導して建物の外へと走る。
- ○同・外
- ピカチュウ、へラクロス、リザードンが出て来た。遅れてトキオとマコトも。
- マツリ&カゲとXは異世界に包まれた隣の断崖を心配そうに見ていた。
- カゲ「(振り返り)ピカチュウなり!」
- マツリ「サトシは!?」
- ピカチュウ「(まだあそこだよ)ピカピカ!」
- と、隣の断崖を示した。
- × × ×
- 異空間内のサトシは球体のプリズムに吸い込まれる寸前で、何かを掴んで耐えていたが、それも崩壊した。
- サトシ「うわあああああ!?」
- と、プリズムに吸い込まれていった。
- × × ×
- マコト・トキオ「サトシ~~~!?」
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ~~!?」
- 宙に浮いている球体プリズムは異空間を全て吸い尽くすとMBの様に閉じ、虹の光と共に消えた。
- 何事もなかったかの如く、そこにはコロシアムの残骸だけが残った。
- マコト「サトシはどこなの……?」
- トキオ「まさか……!?」
- マツリ「僕と同じ目に……プリズムに吸い込まれてしまったんだ……しかもそのプリズムは……」
- カゲ「消えてしまったなり! サトシはもう、戻れないなり~~~!」
- マコト・トキオ「!?」
- ピカチュウ「(そんな!?)ピカピカ!?」
- コロシアムの残骸だけを残した断崖の頂は移動してきた雲に覆われていく。
- ピカチュウは強い意思で決意した!
- ピカチュウ「(みんなでサトシを助けよう)ピカピカ!」
- リザードン「(ああ!)ガウッ!」
- ヘラクロス「(うん!)ヘラクロ!」
- リザードン「(だがどうすれば)ガウガウッ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ……」
- × × ×
- 一方、異空間の中を漂っているサトシ。
- サトシ「ここは……?」
- 天の川、流星群、アンドロメダ大星雲、土星、木星、火星、その間をアルセウスが駆け、天の川と思ったのは数百体のポケモン達でその中から近づいて来たガ―ディがサトシの頬を舐める。
- サトシ「お前、トキオのガ―ディなのか?」
- ガ―ディ「(ああ)ガウ!」
- サトシ「……まさかオレ、死んじゃったのか? ……まだ……ポケモンマスターにもなってないのに」
- ガ―ディ「(あれを見ろ)ガウガウ!」
- 異空間にピカチュウ、リザードン、へラクロスの映像が走馬灯の様に浮かんでは消える。
- サトシ「ピカチュウ、リザードン、へラクロス……どうにかお前らだけは助けられた。……オレ……けっこう頑張ったよな……」
- サトシ、疲れ果てた戦士が死に行くように瞼が重くなってくる。
- × × ×
- 帽子を被っているピカチュウ、他のポケモン達に叫ぶ。
- ピカチュウ「(みんなでいくよ)ピカピカ!」
- リザードン「(おう!)ガウ!」
- と、断崖の頂上を覆う雲を睨んだ。
- マコト「ポッチャマも!」
- ポッチャマ「(うん)ポッチャマ!」
- トキオ「ルカリオも頼む!」
- ルカリオ「(おう)ルカ!」
- マツリ「カゲ!」
- カゲ「もちろんなり!」
- X「まだいけるなら……お前もいけ!」
- Xの投げたMBから出たゴウカザル、ダメージを負ったままで息が荒いが、
- ゴウカザル「(いけるぜ!)ゴウカ!」
- X「終わったらすぐに体力を回復させてやる」
- と、ゴウカザルを気遣ってやる。
- マコト「クロス……!?」
- ポッチャマ、ルカリオ、ゴウカザルも一緒に並んだ。
- ピカチュウ「ピイイイカチュウウウ!」
- と、10万ボルト!
- リザードン「ガウッ!」
- と、フレアドライブ!
- へラクロス「へラクロス!」
- と、気合玉!
- ポッチャマ「ポッチャマ~~!」
- と、バブル光線。
- ルカリオ「ルカリオ!」
- と、竜の波動!
- カゲ「カゲ~~~~!」
- と、気合玉!
- ゴウカザル「ゴウカ!」
- と、火炎放射!
- 全ての技が一体となって渦を巻き……。
- ドオオオオオオン!!!
- 断崖の頂の雲を吹き飛ばした!!!
- すると雲の蒸発などで虹が出た。
- マコト「虹よ!」
- トキオ「しかもただの虹じゃない」
- アーチ型だった虹は宙に浮き、そのまま虹のリングになった。
- マコト「虹のリング!?」
- 虹の輪の内側はサトシのいる異世界と繋がっていて、その姿が見えた。
- トキオ「サトシだ!」
- ピカチュウ「(あの輪の向こうだ)ピカピカ!」
- リザードン「(乗れ)ガウッ!」
- ピカチュウ、ヘディングの要領で帽子をマコトの手元に飛ばし、自分はリザードンに飛び乗り、リザードンが飛び立った。
- × × ×
- 異空間を漂うサトシ、死を迎えたように瞳を閉じていく。そのサトシの視点……見えている異空間の光景が閉じられていき、ブラックアウト。だが…。
- ドーン! と何かがぶつかる様な音。
- × × ×
- フラッシュ。リザードンの背中に乗ったピカチュウ、虹の輪に突っ込むが、電気の壁で弾き返される。ドーーン! バリバリバリ!
- ピカチュウ「(諦めるな!)ピカ!」
- × × ×
- サトシ「ピカ…チュウ……?」
- と、閉じていた瞳を開くがまだうつろ。
- 再び脳裏にはっきり浮かぶ光景。
- リザードンの背中に乗ったピカチュウ達が虹の輪に入ろうとして電気の壁にぶつかる。ドーン! バリバリ!
- サトシ「ピカチュウ!」
- 目を覚ましたサトシが振り返る。
- 遠く……異空間に開いた虹の輪の向こう側からリザードンとピカチュウが入ろうと突っ込むが、稲光の壁に阻まれ、入れない……のが見えた。
- サトシ「リザードン! ピカチュウ!」
- × × ×
- リザードン、その背中に乗ったピカチュウ、虹の輪に突っ込んでいく……が、バリバリバリ! と、電気の壁で弾き返される。だがそれでも諦めず、
- ピカチュウ「(諦めるな!)ピカ!」
- もう一度トライするリザードン。
- バリバリバリ!
- リザードン「ガウッ!」
- だが諦めないピカチュウ達、トライする。バリバリバリ! 阻まれる。
- × × ×
- 異空間で諦めかけていたサトシはピカチュウ達の頑張りに心が動く。
- サトシ「ずっと……すっと助けてきたつもりだった……でも助けられていたんだ、オレは……あいつらに……!!!」
- サトシ、洞窟で自分を暖めようとしてくれたピカチュウの笑顔、サトシが抱いていたヒトカゲの笑顔を思い出し、涙が溢れる。
- × × ×
- 断崖ではサトシの帽子を握りしめたマコトとトキオも声を送っていた。
- マコト「サトシ! 戻って来るのよ!」
- ポッチャマ「(戻って)ポッチャマ!」
- トキオ「サトシ! 諦めるな!」
- ルカリオ「(そうだ)ルカ!」
- × × ×
- 異空間のサトシにそんなマコトやトキオの姿が幻影となって一瞬、見えた。
- サトシ「ありがとう、マコト、トキオ……オレ、もう諦めない! 必ず、みんなの所へ戻ってみせる!」
- × × ×
- マツリとカゲもサトシに叫ぶ。
- マツリ「魂が重なれば、どんな壁をも乗り越えられる!」
- カゲ「どんなに離れていても繋がるなり~!」
- × × ×
- その声がサトシにも届いていた。
- サトシ「ああ!」
- と、瞳を閉じて魂を交わらせようと意識を集中させる。
- サトシ「ピカチュウ……!」
- と、ピカチュウを想う。
- × × ×
- ピカチュウ「(分かった)ピカ!」
- と、瞳を閉じて魂を交わらせようと意識を集中させる。
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ……!」
- と、サトシを想う。
- × × ×
- サトシの脳裏にピカチュウが浮かぶ。
- × × ×
- ピカチュウの脳裏にサトシが浮かぶ。
- × × ×
- すると虹の輪の中央に虹の光と共に球体のプリズムが現れた。
- ピカチュウ「(これは!?)ピカッ!?」
- バシュッ! 開いた球体プリズムから虹の光が伸びて行き、この世のピカチュウと異世界のサトシを包み込んだ。
- (虹の両端にいるサトシとピカチュウ)
- ○虹の中
- サトシ「ここは……!?」
- 幻想的な虹の空間にいるサトシ。
- × × ×
- ピカチュウ「(ここは!?)ピカ!?」
- 幻想的な虹の空間にいるピカチュウ。
- × × ×
- 一人きりのサトシ、辺りを見回す。
- サトシ「さっきまで見えていたのに……ピカチュウはどこにいったんだ!?」
- × × ×
- 一人きりのピカチュウ、辺りを見回す。
- ピカチュウ「(サトシはどこ?)ピカピ?」
- × × ×
- サトシ「この先にいるのか!? ピカチュウ~~!」
- サトシは虹の中を走り出した。
- × × ×
- ピカチュウ「(この先にいるの?)ピカピ? (サトシ)ピカピ~~~!」
- ピカチュウは虹の中を走り出した。
- × × ×
- サトシ「ピカチュウ~~!」
- と、虹の光の奥へと走り続ける。。
- × × ×
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ~~~!」
- と、虹の光の奥へと走り続ける。
- × × ×
- 虹の空間が緑一色になる。
- サトシ「緑になった!?」
- と、以下も走り続けながら……。
- × × ×
- 虹の空間が緑一色になっている。
- ピカチュウ「(緑だ)ピカ~~!」
- と、以下も走り続けながら……。
- × × ×
- サトシ「そうだ! 魂を重ねるんだ」
- × × ×
- ピカチュウ「(魂を重ねるんだ)ピカピカ」
- × × ×
- サトシ「この色……思い出す……お前と一緒に草原を走ったこと!」
- 緑一色の空間を走っている。
- × × ×
- ピカチュウ「(思い出すな、一緒に走ったこと)ピッカピカ~~!」
- 緑一色の空間を走っている。
- × × ×
- サトシとピカチュウの記憶が重なる。
- 緑一色の草原をどこまでも走るサトシとピカチュウ。(オープニングの曲バックの映像でも描いた)
- サトシ「ピカチュウ、お前にも見えているのか!?」
- × × ×
- ピカチュウ「(サトシにも見えているの!?)ピッカピカ!?」
- × × ×
- 空間が黄色一色になる。
- サトシ「今度は黄色だ!?」
- × × ×
- 空間が黄色一色になっている。
- ピカチュウ「(黄色だ)ピカ~~!」
- × × ×
- サトシ「一緒に花畑で昼寝をしたよな」
- 黄色を見つめながら走る。
- × × ×
- ピカチュウ「(一緒にお昼ねしたね)ピカ~!」
- 黄色を見つめながら走る。
- × × ×
- サトシとピカチュウの記憶が重なる。
- 一面に黄色い花が咲く場所で、仲良く並んで昼寝をした。(オープニングの曲バックの映像でも描いた)
- × × ×
- 空間が青一色になる。
- ピカチュウ「(今度は青だ)ピッカピカ!(一緒に空を飛んだね)ピカピカ!」
- と、青を見つめながら走る。
- × × ×
- サトシ「ああ、一緒に青空の中を飛んだな」
- と、青を見つめながら走る。
- × × ×
- サトシとピカチュウの記憶が重なる。
- 肩にピカチュウを乗せたサトシが、6体のレディバが糸を引く空中ブランコに乗って、青空の中を移動している。
- (オープニングの曲バックの映像でも描いた)
- × × ×
- 空間がオレンジ一色になる。
- サトシ「初めて出会った日、一緒にこんな夕日を見たよな」
- オレンジ色を見つめる。
- × × ×
- ピカチュウ「(うん)ピカ~~!」
- オレンジ色を見つめる。
- × × ×
- サトシとピカチュウの記憶が重なる。
- あの旅立ちの日、オニスズメに襲われて気絶から目覚めた時、一緒に夕焼けのオレンジ色の夕焼け空を眺めた。そして一緒にホウオウを見た。
- × × ×
- 空間は虹色に戻り、魂を重ねながら走るのが楽しくなってくるサトシ。
- サトシ「ピカチュウ」
- × × ×
- 虹色の空間を、サトシと同じ気持ちで走っているピカチュウ。
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ」
- × × ×
- サトシ、ピカチュウとの距離が近くなってるような気がして嬉しい。
- サトシ「ピカチュウ!!!」
- × × ×
- ピカチュウも同じ気持ちで。
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピ!!!」
- × × ×
- サトシ「ピカチュウウウ!!!」
- × × ×
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピイイイ!!!」
- × × ×
- 虹のかけ橋の中央部、虹の輪には虹を発する球形プリズムが浮いている。
- その中央部へと走って来たサトシからピカチュウが見えた。
- サトシ「!?」
- × × ×
- 同じく走って来たピカチュウからサトシが見えた。
- ピカチュウ「!?」
- × × ×
- サトシ「ピカチュウウウウウウ!!」
- × × ×
- ピカチュウ「(サトシ)ピカピイイイイイ!!」
- 駆け寄るサトシ!!!
- 飛びつくピカチュウ!!!
- 抱き合った!!!
- サトシは強く抱きしめ……。
- ピカチュウも顔をこすりつける。
- サトシとピカチュウの互いを想う魂の重なりが最高潮に達した!!!
- × × ×
- この地球のどこかでそれを感じ取り、
- ホウオウの瞳がカッ! と開いた。
- × × ×
- マコト「虹が!?」
- マコト達からは、虹の架け橋が、端から消えていき、虹の輪も閉じていき、球体のプリズムに吸い込まれるのが見えた。
- トキオ「サトシとピカチュウは!?」
- マコト達の方へと降りていく球体のプリズム。
- リザードン「(どうなってんだ?)ガウッ!?」
- と、球体のプリズムを追って行く…と、その中にはピカチュウを抱きしめるサトシがいた。
- リザードン「(サトシ)グオオッ!」
- マコト・トキオ「サトシ!?」
- へラクロス、ポッチャマ、ルカリオ、ゴウカザル、カゲも喜ぶ!
- リザードン「(サトシ~!)ガウウ!」
- サトシ「リザードン!」
- 球体プリズムが地面まで降下するとMBの様に開き、中からサトシ&ピカチュウが飛び出した。(そこでプリズムは消える)
- マコト・トキオ「サトシ!」
- サトシ「マコト! トキオ!」
- 走り寄るマコト&ポッチャマ、トキオ&ルカリオ、そしてカゲと抱き合って喜んだ。マツリも遠巻きに喜ぶ。
- カゲ「奇跡が起こったなり~~~!」
- サトシと視線を交わしたXも、ニヤリとしてゴウカザルをMBに入れ、踵を返し、歩き去る。
- 涙をぬぐったマコトが受け取っていた帽子をサトシに被せてやる。
- サトシ「サンキュ、マコト!」
- マコト「ったくも~! 無茶ばっかりしないでよね」
- そんな中、七色の光を浴びたマツリ。
- マツリ「あっ!? ホウオウだ!」
- サトシたち「!?」
- と、空を見上げる。
- サトシ達の上空を飛び去っていくホウオウがいた。
- カゲ「きっとホウオウが助けてくれたなり~!」
- サトシ「ありがとう! ホウオウ! ありがとう!」
- ピカチュウ「(ありがとう)ピカピカ!」
- みんなでホウオウを見送った。
- × × ×
- 虹のコロシアムがある崖へと上る途中でホウオウを見送っていたムサシ、コジロウ、ニャース、ソーナンス、既に登山の疲労でボロボロ。
- ムサシ「サカキ様にホウオウには近づくなと言われたけど」
- コジロウ「来たかいがあったな~」
- ニャース「ホウオウを見た者には永遠の幸せが約束されるのニャ~」
- ソーナンス「ソーナンス~~!!」
- ロケット団「いい感じ~~~!」
- ○夕焼けの道
- マツリとカゲを見送るサトシ達。
- マツリ「僕はもう一度、人とホウオウとの交流が復活するよう、頑張るよ」
- カゲ「カゲも頑張るなり!」
- サトシ「マツリさんとカゲなら絶対大丈夫ですよ!」
- ピカチュウ「(うん!)ピカ!」
- マツリ「ありがとう! それじゃあ、いつかまた会おう!」
- カゲ「バイバイなり~~!」
- と、マツリと仲良く歩き去る。
- サトシ・マコト・トキオ「さようなら~!」
- ピカチュウ・ポッチャマ・ルカリオ「(それぞれの声で、さよなら!)」
- と、手を振って見送った。
- トキオ「さてと……僕もここでお別れだ」
- サトシ「え?」
- 前方には3つに別れた道があった。
- トキオ「サトシが目指す町はあっちだろ? (真っすぐな道を示す)僕はこっち。(右の道)ポケモンブリーダーの学校で、本格的に勉強を始める事にしたんだ」
- マコト「なんだ……実は私も水タイプポケモンを極める為にハナダシティに行くの。だから行き先はあっち(左の道)」
- 三人の行く方向は三方向バラバラ。
- サトシ「そっか……みんなそれぞれの道を往くんだな」
- マコト「サトシは?」
- サトシ「もちろんオレはオレの道を往く! 目指せ、ポケモンマスターだ!」
- ピカチュウ「ピーピカチュウ!」
- マコト「応援してるよ」
- トキオ「僕も」
- サトシ「ありがとう! マコト! トキオ!」
- トキオ「忠告しておく。旅の途中でまた会うこともあるだろう。その時は」
- マコト「ポケモンバトルね!」
- サトシ「ああ! 約束だ!」
- トキオ「それじゃ!」
- ルカリオ「(さらば)ルカ!」
- マコト「またいつか!」
- ポッチャマ「(ばいばい)ポッチャマ!」
- サトシ「元気でな!」
- ピカチュウ「(元気でね)ピカチュウ!」
- 三人は手を振りあい、それぞれの道を往く。振り返らずに……。
- × × ×
- 大きな滝のある夕焼けの道をマコトが歩いている。
- マコト「?」
- 滝の上にスイクンがいたのだ。
- マコト「スイクンだ!」
- ポッチャマ「(ほんとだ)ポッチャマ!」
- スイクンは滝からトーン! と、飛び降り、森の中へと消えた。
- ポッチャマと顔を見合わせたマコトの瞳、希望に燃えて来る。
- × × ×
- 夕焼けの荒野をトキオとルカリオが歩いている。
- ふと見ると、野生のウェンディが3体のガ―ディを連れて歩いていた。
- まるで親子の様なガ―ディたちを微笑ましく見つめるトキオとルカリオ。
- トキオ「ルカリオ、行こう!」
- と、笑顔で元気に歩きだし、ルカリオも嬉しそうにトキオに続いた。
- × × ×
- 夕焼けの道をサトシが歩いている。
- サトシ・ピカチュウ「?」
- 再び遠くをホウオウが飛び去った。
- サトシ「ホウオウだ」
- ピカチュウ「(うん)ピカ」
- サトシ「旅立ちの日と同じだな」
- ピカチュウ「(うん!)ピカ」
- 旅立ちの日に見たホウオウを思い出す。
- サトシ「また新しい冒険が始まりそうだぜ!」
- ピカチュウ「(うん)ピカ!」
- サトシ「いこう! ピカチュウ!」
- ピカチュウ「(いこう)ピカチュウ!」
- サトシとピカチュウは走り出した。
- どこまでも続く希望の道を!
- ミュージックイン。
- スタッフロール流れて……。
- END
- ペラ合計313枚
- ○ポケモンの使用する技
- ピカチュウ…電光石火、アイアンテール、 10万ボルト、エレキボール。
- ルカリオ……波動弾、インファイト、竜の波動、しんそく。
- エンテイ……ほのおのうず、ほのおのきば、吠える、睨みつける。
- ポッチャマ…ハイドロポンプ、 バブル光線、ドリルくちばし、うずしお。
- F(ビースト)あてみなげ、とどめばり、雷パンチ、アームハンマー。
- カゲ…………にどげり、インファイト、グロウパンチ、きあいだま。
- リザードン…火炎放射、ドラゴンテール、切り裂く、フレアドライブ。
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