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- FILENAME: text_420171-1.txt
- 月出里: 記憶ミュージアムで「初心」を思い出せば 魔法少女としても調整屋としても もっと成長できる…
- 月出里: リヴィアさんにそう言われて わたしはこの本の中に入ることになった
- 月出里: そこで思い出したのは 「あの事件」の直後のわたし
- 月出里: …あのとき、学校の教室に 銃を持った人が押し入ってきて わたしはクラスメイトに 「生贄」として差し出された
- 月出里: だけど殺されたのは、みんなの方 わたしが「選んだ」願いのせいで みんな死んでしまったから
- 月出里: それからわたしは「選ぶ」のが怖くなった あのとき、大人しくわたしが殺されてたらとか そんなことばっかり、ぐるぐる考えてた
- 月出里: これは、そんな頃のわたしの記憶
- 月出里: 死んで償いたいと思ってはいたけど 死ぬのも生きるのも選べなかった
- 月出里: 魔女退治を始めたのは 魔法少女の「使命」だって言われたから
- 月出里: 使命なら仕方ないって思ったの だって、わたしが選んだわけじゃないんだし
- 月出里: ふむっ!
- …………!
- 月出里: ふむぅ…っ!
- 月出里: だけど、わたしはすっごく弱くて 魔女に傷ひとつつけられなかった…
- 月出里: (どうしよう、このままじゃ…)
- 月出里: (…でも、わたしなんて このまま死んじゃった方が…)
- やあぁあっ!
- ふぅ… あなた大丈夫?
- 月出里: ふ、ふむ…
- ここら辺で見ない顔だけど新人? …小学生くらいかしら
- …って、あなた どこかで見たことあるような…
- もしかして… あの事件で生き残った…?
- 月出里: ――っ!?
- やっぱり… …え、でもこんなタイミングで
- あなた… いったい何を願ったの?
- 事件が関わってたり… しない、よね…?
- 月出里: (わたしが酷いことを願ったの… この人にバレちゃう…!)
- 月出里: (…………逃げよう)
- 月出里: みんなを殺したかったわけじゃない それでも、みんなが死んだのは わたしの願いのせい…だから
- 月出里: (魔女退治、したくないな… わたしじゃきっと勝てないし)
- 月出里: (…でも、ソウルジェム だいぶ濁ってきちゃったし)
- 月出里: (魔女が、わたしたちを襲った 犯罪者みたいなのを)
- 月出里: (生み出すこともあるって キュゥべえは言ってた…)
- 月出里: …………
- 月出里: (使命だから…仕方ないよね)
- 月出里: 魔女を倒せたことがないから グリーフシードは持っていなかった だから、戦えば戦うほど ソウルジェムは濁っていって…
- 月出里: (やっぱりわたしの攻撃 全然効いてない…!)
- 月出里: ふぐぅっ…!
- 月出里: ふ、ふむ…
- 月出里: 「罪を背負って死ね」 あのとき犯人に言われた言葉は ずっとわたしの頭に残ってた
- 月出里: でも「死んだ人の分も生きろ」… そんな風に言ってくる人もいて わたしはどっちも選べなかった
- 月出里: でも魔女に殺されるなら、それで死ぬなら もう何も選ばなくていい、楽になれるかなって …そう思ったの
- ☆▼◎△★…!!!!
- 月出里: (そう…やっとわたしは… 罪を背負って、死ねる…)
- ???の声: そうはいかへんで! みんな、やったり!
- リヴィア: あんた、大丈夫か!? すぐ浄化したるからな
- 月出里: (どうして…わたしなんか… 死んじゃえばよかったのに…)
- リヴィア: あぁ、起きたん 魔女なら、もうおらへんよ
- リヴィア: ま、倒したんは私やなくて 他の魔法少女たちやけどな
- リヴィア: 私もあんたと同じで 魔女退治は不得手やからなぁ
- リヴィア: こうしてたまに 助けてもろとるんや
- リヴィア: って、名乗り忘れてたわ
- リヴィア: 私はリヴィア・メディロス 出張調整屋さんや
- 月出里: (調整屋…?)
- リヴィア: それより体はどうや? 魔力がみなぎってくるやろ
- 月出里: (体…? 言われてみたらちょっと軽い?)
- リヴィア: それが「調整」ってやつやな
- リヴィア: …で、本題なんやけど あんたも調整屋にならへんか?
- 月出里: ふむ…?
- リヴィア: って、急にこんなん困るわな とりあえず簡単に説明するわ
- リヴィア: 「調整屋っていうのはな… 魔法少女のソウルジェムをいじって 能力を強化したり使いやすくしたりする商売や」
- リヴィア: 「そのお代として、魔法少女から グリーフシードを頂くっちゅうわけやな」
- リヴィア: 「中にはケガして駆け込んでくる子もおるけど 別に病院ってわけやないで ま、調整で回復の手助けくらいはできるけどな」
- リヴィア: そんで、あんたにはその調整屋に なれる素質があるんや
- 月出里: …ふむ?
- リヴィアさーん! いるー?
- リヴィア: おっと、お客さんや あんたちょっと手伝ってくれるか
- 月出里: ふむっ!?
- FILENAME: text_420171-2.txt
- リヴィアさんありがとー
- リヴィア: まいどおおきになー あんたもお疲れさんやな
- 月出里: (なんか…すごく雑用を させられたような…)
- リヴィア: って、もうこんな時間かいな
- リヴィア: あんたに調整屋の素質がある って話、まだ終わってなかったな
- リヴィア: 家の近くまで送ったるから また明日おいで
- 月出里: (あれ、なんか勝手に 明日も来ることになってる…)
- 月出里: (ちょっと面倒だけど… この人相手に断る方が大変そう)
- 月出里: ふむ…
- リヴィア: ん、ええ子や!
- <翌日…>
- リヴィア: あ、奥にあるグリーフシード 取ってきてくれへんか?
- 月出里: ふ、ふむっ!
- 月出里: (結局、今日も お手伝いさせられてる…)
- リヴィア: そら大変やなぁ いつでもうちを頼ってええからな
- うん…ありがとう調整屋さん
- 月出里: (テキトーな人だと思ったけど あの人、頼られてるんだ…)
- あ、お菓子持ってきてくれたの? ありがとう!
- 月出里: ふ、むむん…
- リヴィア: よう働いてくれとるわ ほんまありがとな
- 月出里: (なんか、変な気持ち…)
- 月出里: (わたしにも調整屋の素質が あるっていうけど)
- 月出里: (こうやって人の役に立てるなら それも悪くない、のかな)
- こんにちはー
- 月出里: (あれ、この声… あのときの人…!)
- 「あなた… いったい何を願ったの?」
- 「罪を背負って死ね」
- 月出里: ふむ…む、む…
- 月出里: そこで見た悪夢は 銃声と叫び声が響く 赤い赤いあの日の教室
- 月出里: それが、わたしが選んだ願いの結果
- 月出里: あの日から 「罪を背負って死ね」って言葉が 耳を離れなくて
- 月出里: ずっとずっと、苦しくて…
- 月出里: ――っ!?
- リヴィア: 大丈夫や、落ち着き…
- 月出里: (そうだ…わたし、わたしは…)
- 月出里: ふむむむ、ふむむん ふんむむんむむんむ!
- 月出里: (あのときわたしが死んでたら みんなは死なずに済んだ!)
- 月出里: ふむむ、ふむんむ!
- リヴィア: 罪を背負って死ぬべきだった って言いたいんか
- 月出里: ――っ!? ふんむ…
- リヴィア: なんで知ってるのかって顔やな
- リヴィア: …調整屋の素質があるんは 呪いを願った子や…
- リヴィア: …私と同じようにな
- リヴィア: 私は、あんたみたいな子を探して 調整を教えて回ってるんや
- リヴィア: 報道写真であんたを知って 指輪つけてんのを見てな
- リヴィア: もしかしたら…と思って このあたりを探してたら
- リヴィア: 結界であんたを見つけて ビンゴや!ってなったわけや
- 月出里: …………
- リヴィア: それに言っとらんかったけど 調整屋さんはな
- リヴィア: 調整すると相手の記憶が 少しだけ見えることがあるんや
- リヴィア: 見たくて見てるわけやないんや 堪忍やで?
- 月出里: (そんな…)
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- 月出里: (全部、知られてた… わたしが、何をしたのか…)
- 月出里: ふむ…!
- リヴィア: おっと、逃げたらあかんで
- リヴィア: あんたの悪いようにはせんから ちょっと茶でも飲まへんか?
- リヴィア: 他の子らには帰ってもろたから ゆっくり話しよか
- 月出里: (…逃げられなかった)
- リヴィア: せや、ドーナツあるんやけど チョコといちごどっちがええ?
- 月出里: …………
- リヴィア: なんや、選ばんのか?
- 月出里: (選びたく、ないな…)
- リヴィア: しゃーないな… ほな、どっちも私が食べたるわ
- ぱくっ
- 月出里: (あ…)
- リヴィア: なんて顔してんねん
- リヴィア: 選ばんかった あんたが悪いんやで
- 月出里: ふむぅ…
- リヴィア: 別に意地悪したんちゃう いまのは話の前フリや
- 月出里: ふむむん…?
- リヴィア: あんた、選ぶの避けてるやろ
- 月出里: ふむぅ…
- リヴィア: あのな、あんたは選択を せんかったつもりやろうけど
- リヴィア: 選ばんことも選択したことに 入るんやで
- リヴィア: 現に、あんたはいま 選ばんかったから
- リヴィア: 私にドーナツを両方 食べられてしもうたやろ?
- 月出里: …………
- リヴィア: あんたは自分の願いを 選んだ責任を感じとるんやろ
- リヴィア: …その気持ちは わからんでもないけどな
- リヴィア: せやからって罪を背負って あんたが死ぬのはおかしわ
- リヴィア: そもそも、悪いのは犯人やし あの状況で冷静な判断は無理やろ
- 月出里: ふむ…
- リヴィア: ま、そんくらいであんたが 自分の罪を許すとも思わへんけど
- 月出里: …………
- リヴィア: あんたは、みんなの命を犠牲に 自分が生き残ったのを悔いとる
- リヴィア: そんなあんたに ええこと教えたるわ
- 月出里: ふむ…?
- リヴィア: 「あんたには調整屋としての才能がある それは多くの魔法少女を 救える可能性があるっちゅうことや」
- リヴィア: 「あんたが死んで償って誰が喜ぶ? いったい、どこの誰が得すんねん」
- リヴィア: 「まぁ、あんたは罪から逃れて楽かもしれんけど 犯人もクラスメイトも死んでしもたんや 残念やけど、死んだ人間は返ってけーへん」
- リヴィア: けど、あんたが…月出里が これから救える人は何人や?
- 月出里: (わたしが、救う…?)
- リヴィア: 確かに、あんたの選択の結果 死んでしもた人はいるかもしれん
- リヴィア: それは取り返せへんけど 同じか、それ以上の人らを
- リヴィア: 月出里、あんたが救うことは できるかもしれへんやろ
- リヴィア: 人の生き死にを数で話すんは 不謹慎やって言われるかもしれん
- リヴィア: せやけど、月出里が死ぬよりも 生きて救い続けた方が
- リヴィア: 最終的に助かる人間は 多くなるんちゃうか?
- 月出里: (そんなこと 考えたこともなかった…)
- リヴィア: そうしたら…罪は消せんけど 少しくらい許されるんちゃうかな
- リヴィア: …って、私は思っとる
- 月出里: …………
- リヴィア: せや、あんたのために これ用意しといたんや
- リヴィア: すっかり使う機会を 逃しとったけど…ほれ
- 月出里: (…これ 小さいホワイトボード…)
- リヴィア: 月出里の言葉で 返事聞かせてくれんか?
- 月出里: (わたしにもできることが あるんだとしたら、それは…)
- きゅっ…きゅ
- 月出里: …ふむ
- 調整屋さんに わたしもなれますか?
- リヴィア: 当たり前やろ 私が見込んだんやから
- リヴィア: ま、修行は たっくさん必要やろけど
- 月出里: ふむっ!?
- リヴィア: そらそうや にしても、字ぃちっさいなぁ
- 月出里: ふむむっ!
- リヴィア: ん?怒っとるんか? 全然こわないよ?
- 月出里: (ちょっと意地悪な人… …でも、わたしこの人に)
- 月出里: (リヴィアさんに ついていきたいな…)
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- 月出里: それから、リヴィアさんは お母さんへの挨拶をしにわたしの家に来た
- 月出里: 調整屋修行に連れていくために しばらくわたしを預かって 自宅学習って扱いにしたいからって
- リヴィア: 広い世界を見て学ぶのも いまのこの子に必要やないかと
- 月出里の母: そう…そうですか、自宅学習… はい、いいかもしれませんね
- リヴィア: …………おおきに 話が早くて助かりますわぁ
- リヴィア: ほんなら、諸々の手続きは また後日伺いますんで…
- リヴィア: …せや、これ手土産のドーナツ 危うく渡し損ねるところやったわ
- 月出里の母: ああ、そんな 気を遣わなくても…
- リヴィア: チョコといちごのがあるんやけど どっちがええとかあります?
- 月出里の母: えと…私は別にどちらでも… 頂けるだけでありがたいですから
- リヴィア: なんや…事件のせいやなくて そもそも親譲りなんかいな
- 月出里の母: …?
- 月出里: (はっ…このままじゃ両方 リヴィアさんに食べられる…!)
- 月出里: ふ…ふんむっ!
- リヴィア: お…あんたが選んでくれるんか
- リヴィア: それじゃ、残りの方は トレーラーで一緒に食べよか
- リヴィア: ちゅーことで、今日から ここで過ごすわけやけど…
- ???の声: 先生 ただいま戻りました
- リヴィア: お、帰ったか ええタイミングや!
- 月出里: ふ、ふむっ!?
- リヴィア: そうそう、初対面やったな
- リヴィア: もうひとりの弟子のヨヅルや 一緒に学ぶもん同士仲良くしいや
- ヨヅル: はじめまして 篠目ヨヅルと申します
- 月出里: ふ、ふむ… ふむむむ…ふむんむむ…
- ヨヅル: は? なんと言ってるかわかりません
- リヴィア: 言い方キツイわ…月出里は 色々あって喋られへんのや
- ヨヅル: …そうですか、それはなぜ? どうして話せないのでしょう?
- 月出里: ふ、ふむむ…
- リヴィア: ほらヨヅル… 私が言うことちゃうけどやな
- リヴィア: 初めからズケズケと聞くんは 優しさとちゃうんやなかったか?
- ヨヅル: あ…すみません 少し待ってください、メモを…
- 月出里: (メモ…? なんのことだろう…?)
- ヨヅル: あ! これだ、ありました!
- ヨヅル: …相手の個人的なことに 踏み込んだ発言は慎重に…
- ヨヅル: すみません、いまのは あなたの個人的なことでしたか
- ヨヅル: ところで、あなたは どうして調整屋に?
- リヴィア: …うん、それも 個人的なことやな
- ヨヅル: あっ…その、あの… 申し訳ありません…
- リヴィア: すまんな、この子も色々あって 人への接し方が下手なんやわ
- ヨヅル: ですが、私には先生に貰った 優しい行動のメモがあるので
- リヴィア: メモがあっても実行でけへんと なんにもならんやろ
- ヨヅル: …そうでした
- 月出里: (あれ…そんなに怖い人じゃ ないのかも…?)
- 月出里: (それに、なんだか ここは息がしやすいな…)
- 月出里: あんな事件があったから 大人たちはみんな、わたしにすごく優しくて たぶん、はれもの扱いをされてたんだと思う
- 月出里: だから、ふたりの雰囲気が あのときは、なんかいいなあって思った
- 月出里: でも、楽しいって思えば思うほど 罪を犯したわたしが笑ってていいのかなって 逆に不安になったりした
- 月出里: だから、わたしは自分がしたことを わたしの言葉で、ふたりに伝えることにしたの
- リヴィア: あんときの写真まで用意して… …よく話してくれたな
- 月出里: …ふむんむふんむ?
- ヨヅル: 嫌いになったか? どうしてでしょう?
- ヨヅル: 先生にスカウトされた以上 訳ありなのはお互い様です
- リヴィア: …せやな、私らは罪を背負うてる だから、救わなあかんのや
- 月出里: …ふむむ、ふむむむ ふむむ、ふむむふむむん
- ヨヅル: 生きて罪を償えるように…? …はい、共に頑張りましょう
- 月出里: ふむふむっ!
- リヴィア: …ほんで、さっきから 気になってたんやけど
- リヴィア: なんでヨヅルだけ月出里の 言うてることわかるんや
- ヨヅル: …え? いや、テレパシーで普通に…
- リヴィア: なんやて、私には してきたことないのに…!
- ヨヅル: あぁ…自慢になるので 隠しておくのが優しさでしたか
- リヴィア: 自慢…わざとやないのが 逆にむっかつくわぁ…
- 月出里: ふむむっ
- リヴィア: ったく… ま、一歩前進っちゅーことで
- リヴィア: そんな根詰めすぎずに 気楽にやってこな、月出里
- 月出里: ふむっ!
- 月出里: こうして、わたしは調整屋になるために そして、生きて罪を償うための 一歩を踏み出したんだ
- 月出里: 魔法少女たちを救うたびに 少しずつ罪が晴れるような気持ちになる それに、神浜市に来てからは ミィちゃんって友だちもできた
- 月出里: でもきっと、これからも わたしの罪が消えることはない …消したいとも思わない
- 月出里: それでも、生きて、生き続けて みんなを救えたらって思う それがわたしが選んだ道だから
- 月出里: 「罪を背負って死ね」 あの言葉は、心から消えないけれど
- 月出里: 「生きていく」って自分で決めた このときの気持ちが、わたしの初心… 本当のスタートだったんだ
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