Vi_Vi

Only Dreamers JP Text

Jun 21st, 2023 (edited)
102
0
Never
Not a member of Pastebin yet? Sign Up, it unlocks many cool features!
text 106.60 KB | None | 0 0
  1. (Since there were a few adjustments made to the text later on and this hasn't been TL-ed yet still, I decided to do a new extract of the JP transcript.)
  2.  
  3. FILENAME: text_514410-0.txt
  4. ―プロローグ―
  5. コツ…
  6. 入名 クシュ: ふぁ…
  7. こくっ
  8. 入名 クシュ: ………… …まだ…眠…
  9. 入名 クシュ: …………
  10. ???の声: あっ
  11. ???の声: マミィ、ダディ! こっちこっち!
  12. 入名 クシュ: …えっ
  13. 入名 クシュ: (この声…!)
  14. 入名 クシュ: (人違い…?)
  15. 入名 クシュ: (…当然、だよね)
  16. 入名 クシュ: …………
  17. 入名 クシュ: お別れも、ちゃんとできなかった
  18. 入名 クシュ: もう一度だけ… さよならをやり直せたらいいのに
  19. 入名 クシュ: ………… …………
  20. ???の声: お嬢さん
  21. 入名 クシュ: …えっ?
  22. 落としましたよ、これ
  23. 入名 クシュ: …それ、私のじゃ…
  24. いえ、あなた様のものです
  25. ご当選おめでとうございます
  26. 入名 クシュ: …………
  27. 入名 クシュ: …ハッ
  28. 入名 クシュ: ………… …学校、行かなきゃ
  29.  
  30. FILENAME: text_514410-1_elfXK.txt
  31. 第1部
  32. Ⅰ ‐ ユメミカガミ
  33. <聖リリアンナ学園>
  34. 七瀬 ゆきか: ………… …………
  35. 七瀬 ゆきか: えっ…と
  36. 七瀬 ゆきか: 待ち合わせの時間… もう、過ぎてますよね?
  37. 七瀬 ゆきか: …もしかして、時間 間違えちゃったりしてます?
  38. …それ、本当?
  39. ええ 神浜市の外の話らしいけど
  40. それにしても、いまどき 吸血鬼だなんて…
  41. 七瀬 ゆきか: (え…?)
  42. 七瀬 ゆきか: (何だか、不吉な噂話が 聞こえたような…?)
  43. 七瀬 ゆきか: ………… …それにしても
  44. 七瀬 ゆきか: 門から出てくるのは 下校される方ばかりで
  45. 七瀬 ゆきか: リリアンナ生徒会からのお迎えは 一向にいらっしゃいませんね…
  46. 入名 クシュ: ………… …………
  47. 七瀬 ゆきか: (あれっ 学園内へ、外から…?)
  48. 七瀬 ゆきか: (こんな時間に登校… のはず、ありませんよね?)
  49. 七瀬 ゆきか: (…忘れ物とか?)
  50. ドサッ
  51. 七瀬 ゆきか: ――っ!?
  52. 入名 クシュ: …いたた… 転んじゃった…
  53. 七瀬 ゆきか: あっ、あの! 大丈夫ですかっ
  54. 入名 クシュ: …あ、うん… 平気…
  55. 入名 クシュ: あ…ごめんね 急がないと補習、遅れちゃうから
  56. 入名 クシュ: それじゃ…
  57. 七瀬 ゆきか: あ、はい… お気をつけてっ
  58. 入名 クシュ: …ありがと
  59. 七瀬 ゆきか: (放課後の補習を受けにきた… ということでしょうか?)
  60. ねえ、うちの学校に あんな子いたかな?
  61. 初めて見たかも
  62. 七瀬 ゆきか: (わたしじゃなくて… さっきの子のこと…ですよね?)
  63. 七瀬 ゆきか: (わたしが聖リリアンナ学園の 生徒じゃないのは)
  64. 七瀬 ゆきか: (制服を見れば 明らかですので!)
  65. …でね、いま話したのとは 別の噂なんだけど
  66. まだあるのね
  67. そう…ユメミカガミの噂って いってね…
  68. 七瀬 ゆきか: …………?
  69. …ごめんなさい! 大変お待たせしてしまって…
  70. リリアンナ生徒会の者です!
  71. 七瀬 ゆきか: あ、初めまして 水名女学園の七瀬ですっ
  72. 次の交流会の担当の方よね? こちらへいらしてください
  73. 七瀬 ゆきか: はいっ よろしくおねがいします!
  74. 黒羽根: ………… …………
  75.  
  76. FILENAME: text_514410-2_elfXK.txt
  77. …では、水名女学園のみなさんに よろしくお伝えくださいね
  78. 七瀬 ゆきか: はいっ 次の交流会、楽しみにしてますっ
  79. それじゃ バス停までお送りしますね
  80. 七瀬 ゆきか: あ、校門までで結構ですっ その先はわかりますので…
  81. 七瀬 ゆきか: ――っ!?
  82. 七瀬 ゆきか: 生徒会の方は…?
  83. 七瀬 ゆきか: ………… …いない?
  84. 七瀬 ゆきか: …それに、何でしょう この違和感…?
  85. 七瀬 ゆきか: 静かすぎます… 人の気配が…ない?
  86. 七瀬 ゆきか: (学園内から… 一斉に人が消えた?)
  87. 七瀬 ゆきか: (間違いありません 巻き込まれてますっ)
  88. 七瀬 ゆきか: (そう、これは…)
  89. 七瀬 ゆきか: 面倒事ですっ
  90. <同じ頃…>
  91. 入名 クシュ: ………… …………
  92. 入名 クシュ: ――っ!?
  93. 入名 クシュ: …ご、ごめ… ね、寝てないよ!?
  94. 入名 クシュ: …誰もいない?
  95. 入名 クシュ: ………… …………
  96. 入名 クシュ: (確か…補習の時間になっても 先生が姿を見せないから)
  97. 入名 クシュ: (うとうとしてたら… いつのまにか、眠り込んで…)
  98. 入名 クシュ: あ…この鏡
  99. ???の声: お嬢さん
  100. 入名 クシュ: …えっ?
  101. 落としましたよ、これ
  102. 入名 クシュ: …それ、私のじゃ…
  103. いえ、あなた様のものです
  104. ご当選おめでとうございます
  105. 入名 クシュ: (あれって 夢じゃなかったんだ…)
  106. 入名 クシュ: …………
  107. 入名 クシュ: 鏡なのに… …私が映ってない?
  108. 入名 クシュ: まるで、夢の中…
  109. 入名 クシュ: “ユメミカガミ”… あの噂、本当だったの?
  110. 入名 クシュ: ………… …………
  111. 入名 クシュ: …誰か、いないのかな?
  112. アラもう聞いた?誰から聞いた? ユメミカガミのそのウワサ
  113. もしも、あの時に戻れたら… もしも、あの日をやり直せたら… 毎週、オヒトリサマを抽選で “もしも”の夢にゴアンナーイ!
  114. 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
  115. ノンノン、ただしご忠告! 落第したら永遠に目が覚めないって 北養区のお嬢様の間ではもっぱらのウワサ
  116. カガミヨカガミー!
  117.  
  118. FILENAME: text_514410-3_elfXK.txt
  119. ガラ…
  120. 入名 クシュ: (人の気配…ない…)
  121. 入名 クシュ: (やっぱり… 静かすぎる…よね?)
  122. 七瀬 ゆきか: あ…
  123. 入名 クシュ: …人…いた?
  124. 七瀬 ゆきか: 確か、校門で会いましたよね?
  125. 入名 クシュ: そういえば…
  126. 入名 クシュ: …いたた… 転んじゃった…
  127. 七瀬 ゆきか: あっ、あの! 大丈夫ですかっ
  128. 七瀬 ゆきか: …あ、申し遅れましたが 生徒会のお使いで来ました
  129. 七瀬 ゆきか: 水名女学園高等部1年の 七瀬ゆきかと申しますっ
  130. 入名 クシュ: ゆきか…さん?
  131. 入名 クシュ: …私は、入名クシュ リリアンナの中等部3年
  132. 七瀬 ゆきか: 入名さんですか… よろしくお願いしますっ
  133. 七瀬 ゆきか: で、さっそくなんですが… ここってどこなんでしょう?
  134. 入名 クシュ: たぶん…夢の中だと思う 他の人の気配、全然ないし…
  135. 七瀬 ゆきか: はっきりしているのは
  136. 七瀬 ゆきか: わたしが巻き込まれた以上 何らかの面倒事だということ…
  137. 入名 クシュ: …え?
  138. 七瀬 ゆきか: いえ、お気になさらず こちらの話ですのでっ
  139. 入名 クシュ: 校舎の様子、見てみる…?
  140. 七瀬 ゆきか: そうしましょう!
  141. 七瀬 ゆきか: …さっきは、教室に おひとりでいたんですか?
  142. 入名 クシュ: うん…補習が始まるのを 待ってた
  143. 七瀬 ゆきか: 夕方に登校されてましたよね? お昼の授業はお休みしてた…?
  144. 入名 クシュ: うん… 私、お昼は来ないから
  145. 入名 クシュ: 毎日、夕方に来て ひとりで特別補習を受けてる
  146. 七瀬 ゆきか: 毎日、補習…?
  147. 七瀬 ゆきか: でしたら、普通に登校して 授業を受ければよいのでは…
  148. 入名 クシュ: …………
  149. 七瀬 ゆきか: (はっ…)
  150. 七瀬 ゆきか: (何か深い事情とか ご病気とかをお持ちなのかも…)
  151. 入名 クシュ: …昼間は…起きられないから
  152. 七瀬 ゆきか: …えっ
  153. 入名 クシュ: …ほんとは夕方も… …無理やり…起きてるだけで…
  154. こくっ
  155. 七瀬 ゆきか: ――っ!?
  156. 入名 クシュ: …すぅ…
  157. 七瀬 ゆきか: …あの…もしかして… 寝ちゃって…ます?
  158. 入名 クシュ: …はっ!
  159. 入名 クシュ: ね…寝てないよ!?
  160. 七瀬 ゆきか: …………
  161. 七瀬 ゆきか: (これはやっぱり、ご病気とか… 体質的な?)
  162. 入名 クシュ: …で、出席日数がゼロだから…
  163. 七瀬 ゆきか: (あ… 話、続いてたんですね)
  164. 入名 クシュ: 補習は欠かさず受けるのと 定期テストで全教科8割以上を
  165. 入名 クシュ: 進級の条件にしてもらってて
  166. 七瀬 ゆきか: えっ…全教科8割って むしろ成績優秀なのでは…?
  167. 七瀬 ゆきか: リリアンナの定期テストって かなり難しいって伺ったことが…
  168. 入名 クシュ: うん…出席日数が足りないから 上位を維持するのが条件
  169. 七瀬 ゆきか: (頭はいい子なんですね…)
  170. 七瀬 ゆきか: 来年は高等部… 進級がかかっているとなると
  171. 七瀬 ゆきか: ここが踏ん張りどころですねっ
  172. 入名 クシュ: …昼間、目が覚めないのは 不可抗力だから
  173. 入名 クシュ: すぐに退学には ならないみたいだけど
  174. 七瀬 ゆきか: (…不可抗力?)
  175. 入名 クシュ: 進級できないと、中学3年生を もう1回することになるって…
  176. 七瀬 ゆきか: えっ…中学生で そんなのあるんですかっ
  177. 入名 クシュ: 前例、あるみたい
  178. 七瀬 ゆきか: ………… …………
  179. 七瀬 ゆきか: …ところで、この廊下 どこまで続くんでしょう?
  180. 七瀬 ゆきか: もう10分くらい 歩いたような気がするんですけど
  181. 七瀬 ゆきか: 聖リリアンナ学園には こんなに長い廊下が…?
  182. 入名 クシュ: …ないよ
  183. 入名 クシュ: やっぱり、ユメミカガミの中… なのかな…?
  184. 七瀬 ゆきか: えっ…? ユメミ…カガミ?
  185.  
  186. FILENAME: text_514410-4_elfXK.txt
  187. 入名 クシュ: やっぱり、ユメミカガミの中… なのかな…?
  188. 七瀬 ゆきか: えっ…? ユメミ…カガミ?
  189. 七瀬 ゆきか: それって…?
  190. ~♪~♪~♪
  191. クシュ&ゆきか: ――っ!?
  192. 七瀬 ゆきか: 誰かの歌声が…!
  193. 入名 クシュ: …うん あっちの教室から
  194. 黒羽根: あの子はキュンキュンでぇ~?
  195. 黒羽根: いつもニコニコ天使なぁ~♪
  196. コン、コン
  197. 黒羽根: ふぇっ!?
  198. 七瀬 ゆきか: お邪魔いたします…
  199. 黒羽根: …コホン ど、どうも
  200. 入名 クシュ: えっと…あなたは…
  201. 黒羽根: …な、名乗る名はないよっ 私は、ただの黒羽根
  202. 入名 クシュ: 黒…羽根?
  203. 黒羽根: えっ、と… マギウスの翼の…
  204. 七瀬 ゆきか: …………?
  205. 黒羽根: マギウスの翼、知らないのっ? ふたりとも魔法少女なのに!?
  206. 入名 クシュ: えっ… ゆきかさんって…?
  207. 七瀬 ゆきか: あ…入名さん 魔法少女なんです?
  208. 黒羽根: だって、その指輪…!
  209. 入名 クシュ: あ…
  210. 七瀬 ゆきか: おたがい 気づいてませんでした…
  211. 黒羽根: …知り合いじゃないの?
  212. 入名 クシュ: 1時間くらい前に初めて会って さっき廊下で再会した
  213. 黒羽根: ほぼ初対面よね、それ?
  214. 七瀬 ゆきか: そうとも言いますね…
  215. 黒羽根: ………… …………
  216. 黒羽根: それで… どっちなの?
  217. 黒羽根: 私をこの 変な空間に引きずり込んだのは
  218. 七瀬 ゆきか: えっ…?
  219. 黒羽根: 何か心あたりあるでしょ?
  220. 黒羽根: 寝る前におまじないを試したとか 開かずの扉を開けちゃったとか
  221. 黒羽根: 怪しいおじさんから 何かを受け取ったとか!
  222. 入名 クシュ: …………
  223. 入名 クシュ: …受け取ったかも
  224. 七瀬 ゆきか: えっ、怪しいお方から?
  225. 入名 クシュ: …うん ユメミカガミ
  226. 七瀬 ゆきか: あ…さっき言いかけてましたよね
  227. 入名 クシュ: うん、この鏡
  228. 七瀬 ゆきか: 何か変わった鏡なんでしょうか?
  229. 入名 クシュ: …私が映らない
  230. 黒羽根: え…?
  231. 七瀬 ゆきか: ほんとだ…! 入名さんの姿だけ映ってません!
  232. 七瀬 ゆきか: ユメミカガミっていうんですか? これ…?
  233. 入名 クシュ: うん
  234. 黒羽根: ユメミカガミのうわさ… 私も聞いたことあるかも
  235. 黒羽根: それ、過去をやり直せる鏡だよ
  236. 七瀬 ゆきか: えっ…
  237. 黒羽根: 神浜市で広まっている噂の中には 不思議な力を持つものがあって
  238. 黒羽根: ユメミカガミのうわさは そんな噂のひとつ
  239. 黒羽根: 毎週ひとりずつ、誰かが選ばれて 鏡の中の夢に招待される…
  240. 黒羽根: 夢の中では、心を試されて
  241. 黒羽根: 試練を乗り越えたら ひとつだけ“過去”をやり直せる
  242. 黒羽根: …そんな話だったと思う
  243. 入名 クシュ: 私が読んだのと、同じ…
  244. 七瀬 ゆきか: 読んだって…?
  245. 入名 クシュ: 補習に使うノートに 同じ内容が書いてあったの
  246. 入名 クシュ: …私の字で
  247. 入名 クシュ: 書いた覚え、ないのに
  248. 黒羽根: “ユメミカガミ”って名前も そこで知ったわけね?
  249. 入名 クシュ: うん
  250. 七瀬 ゆきか: 不思議ですね…
  251. 入名 クシュ: でも… どうして3人なの?
  252. 入名 クシュ: 招待されるのは ひとりだけのはずじゃ…?
  253. 黒羽根: あとのふたり…私たちは 巻き込まれたんだよ
  254. 七瀬 ゆきか: どうしてでしょう?
  255. 黒羽根: さあ… たまたま近くにいたから…とか?
  256.  
  257. FILENAME: text_514410-5_elfXK.txt
  258. アラもう聞いた?誰から聞いた? ユメミカガミのそのウワサ
  259. もしも、あの時に戻れたら… もしも、あの日をやり直せたら… 毎週、オヒトリサマを抽選で “もしも”の夢にゴアンナーイ!
  260. 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
  261. ノンノン、ただしご忠告! 落第したら永遠に目が覚めないって 北養区のお嬢様の間ではもっぱらのウワサ
  262. カガミヨカガミー!
  263. 七瀬 ゆきか: …ここがその 不思議な夢の世界だとすると
  264. 七瀬 ゆきか: 夢の主役は 入名さんということですよね?
  265. 黒羽根: 鏡に映らないのも そっちの子だけだしね
  266. 七瀬 ゆきか: 試練を乗り越えれば 過去をやり直せる…
  267. 七瀬 ゆきか: そんな夢に招待されたからには
  268. 七瀬 ゆきか: 入名さんには何か
  269. 七瀬 ゆきか: やり直したい過去がある… ということでしょうか?
  270. 入名 クシュ: ………… …うん
  271. 入名 クシュ: もう一度、出会いを やり直したい人がいるの
  272. 入名 クシュ: ちゃんとお別れも言えないまま 離ればなれになっちゃったから…
  273. 黒羽根: どんな人?
  274. 入名 クシュ: 隣に住んでたお姉さん… 名前は、アネカさん
  275. 入名 クシュ: ………… …………
  276. 七瀬 ゆきか: …………
  277. 七瀬 ゆきか: 入名さんが 試練を乗り越えられるよう
  278. 七瀬 ゆきか: わたしもお手伝いしますっ
  279. 黒羽根: そうしないと私たちも 夢から出られないみたいだしね…
  280. 入名 クシュ: …ありがとう ごめんね…
  281. 黒羽根: …もしかすると ひとりじゃなく3人なのは
  282. 黒羽根: その試練の中身と 関係があるのかも…
  283. 七瀬 ゆきか: どういう意味でしょう?
  284. 黒羽根: ここは、この子の夢の中で…
  285. 黒羽根: つまり、夢の主の心を 映した世界なわけでしょ?
  286. 七瀬 ゆきか: あ…だから 課される試練の内容にも
  287. 七瀬 ゆきか: 入名さんの心にあるものが 反映されるということでしょうか
  288. 黒羽根: …そう思う
  289. 黒羽根: まったく関係ない3人が 集まったこの状況に
  290. 黒羽根: 何か心あたり、ない?
  291. 入名 クシュ: 関係ない3人が仲間になって 夢の中をさまよう…
  292. 入名 クシュ: えっと…さっきから
  293. 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」に 似てるかも、って
  294. 入名 クシュ: ちょっと思ってた…
  295. 黒羽根: …何、それ?
  296. 入名 クシュ: 私の好きな外国の作家さんの本で
  297. 入名 クシュ: 「さよならの寓話」っていう 児童書のシリーズの第4巻
  298. 黒羽根: …うん、それで?
  299. 入名 クシュ: 主人公は消えてしまった ソウルメイトを探して
  300. 入名 クシュ: “すぎさりし夢”という世界に 入り込むの
  301. 入名 クシュ: そこで出会った ふたりの仲間と一緒に
  302. 入名 クシュ: 3人で旅をすることに なるんだけど…
  303. 入名 クシュ: 最初に会った仲間とはね まずは長い回廊をさまようの
  304. 七瀬 ゆきか: 確かにここに来るまでに
  305. 七瀬 ゆきか: ありえないくらい長い廊下を 一緒に歩きましたよね?
  306. 入名 クシュ: うん…歩きながら
  307. 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」を 思い浮かべてた
  308. 七瀬 ゆきか: その最初の仲間って わたしに似てるんでしょうか?
  309. 入名 クシュ: 剣士だから… ゆきかさんとは違うけど
  310. 七瀬 ゆきか: あ…いえっ
  311. 七瀬 ゆきか: わたしの武器、剣です! 合ってますっ
  312. 七瀬 ゆきか: …わたし、存在感が薄いので ほんとは剣士とかじゃなく
  313. 七瀬 ゆきか: 「村人A」とかが お似合いなんですけどね…
  314. 黒羽根: 剣士かぁ…児童書っていうけど 案外、中二病っぽい内容…?
  315. 入名 クシュ: ちゅう…?
  316. 黒羽根: ごめん、忘れて …で、続きは?
  317. 入名 クシュ: 確か、不思議な歌声に導かれて 愉快な幽霊と仲間になるはず…
  318. 黒羽根: ――っ!?
  319. 黒羽根: あの子はキュンキュンでぇ~?
  320. 黒羽根: いつもニコニコ天使なぁ~♪
  321. 七瀬 ゆきか: …確かに廊下で 楽しそうな歌が聴こえましたね
  322. 入名 クシュ: うん
  323. 黒羽根: (ふぇええ~ん!! やっぱり聴かれてたー!)
  324. 七瀬 ゆきか: …つまり黒羽根さんは 幽霊さん役?
  325. 入名 クシュ: 格好、それっぽいよね…?
  326. 黒羽根: …そう!?
  327. 七瀬 ゆきか: 入名さんが主役の夢ですからね
  328. 七瀬 ゆきか: 入名さんがそれっぽいと思うなら きっと愉快な幽霊さん役だし
  329. 七瀬 ゆきか: ここまでの展開から、入名さんが
  330. 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」を 連想したのなら
  331. 七瀬 ゆきか: たぶん試練の内容も その本と関係があるんですよ
  332. 黒羽根: …ちなみに、主人公はどんな人?
  333. 入名 クシュ: …最後の異端審問官で エクソシスト
  334. 七瀬 ゆきか: 悪魔祓いとかする人ですか?
  335. 黒羽根: ふぇっ? 私、祓われる側じゃん!
  336. 入名 クシュ: 平気、善き幽霊だから…
  337. 七瀬 ゆきか: …つまり今、この夢では 入名さんの好きな
  338. 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」という お話に沿った試練が課されていて
  339. 七瀬 ゆきか: これを乗り越えなければ 3人とも夢の外に出られない…?
  340. 入名 クシュ: お話の通りに進めば、試練は成功 つまずいたら失敗ってこと?
  341. 七瀬 ゆきか: だと思います…
  342. 黒羽根: 私たち、次は どこを目指せばいいのかな
  343. 入名 クシュ: …えっ…と…
  344. 入名 クシュ: ………… …古代の図書館?
  345. 黒羽根: そこ、うろおぼえなの?
  346. 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」って あまり見かけない本なの
  347. 入名 クシュ: 私、その本を持ってなくて
  348. 入名 クシュ: アネカお姉さんからあらすじを 聞いていただけなの
  349. 入名 クシュ: その頃はふたりとも 外国に住んでたし
  350. 入名 クシュ: アネカさんも大きな町の図書館で 一度読んだきりで…
  351. 入名 クシュ: 私、それを聞いて どんなお話なのかなって
  352. 入名 クシュ: 空想するのが好きだった
  353. 黒羽根: じゃあ、その本の結末って…
  354. 入名 クシュ: 私も…知らない…
  355.  
  356. FILENAME: text_514410-6_elfXK.txt
  357. Ⅱ ‐ うろおぼえ夢騎行
  358. 黒羽根: …………
  359. 黒羽根: (綺麗な噴水… お嬢様学園って感じ)
  360. 七瀬 ゆきか: 図書室はこの先なんですね
  361. 入名 クシュ: うん… 次に行くならそこかなって
  362. 入名 クシュ: 古代の図書館っぽい場所って 他に思いつかないし
  363. 七瀬 ゆきか: …図書室に着きましたけど… 何をすればいいんでしょう?
  364. 入名 クシュ: 記憶を集めるの
  365. 黒羽根: えっ?
  366. 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」の 主人公たちは行く先々で
  367. 入名 クシュ: …ソウルメイトの思い出を ひとつずつ集めていくの
  368. 入名 クシュ: ソウルメイトのお姫様は お城の地下で眠っていてね…
  369. 入名 クシュ: 主人公が、集めた思い出を その心に戻してあげると
  370. 入名 クシュ: 長い眠りから目を覚まして…
  371. 入名 クシュ: 主人公たちと一緒に… 夢の世界から脱出するの
  372. 入名 クシュ: …そのために必要な 最初の思い出が見つかる場所が
  373. 入名 クシュ: 古代の図書館
  374. 七瀬 ゆきか: 入名さん、話を聞いただけで 読んだことはないそうですけど
  375. 七瀬 ゆきか: 割と詳しく覚えてらしたので よかったですっ
  376. 入名 クシュ: たぶん…私が勝手に空想した分も 混じってると思う…
  377. 黒羽根: それ、大丈夫なの…?
  378. 入名 クシュ: …わからな…ごめん…ね… …ふぁ…
  379. 入名 クシュ: ………… …………
  380. 黒羽根: あの…もしかして寝てる?
  381. 入名 クシュ: …………! ね、寝てないよ!?
  382. 黒羽根: …いいけど
  383. 七瀬 ゆきか: 本の中身が、試練の内容に かかわってくるくらい
  384. 七瀬 ゆきか: 入名さんの心の中は 本のことでいっぱいなんですね
  385. 入名 クシュ: うん…童話とか児童書とか 子どもの頃から、ずっと
  386. 入名 クシュ: だから、アネカお姉さんとも 最初から気が合った
  387. 七瀬 ゆきか: ふたりとも同じような本が 好きだった…?
  388. 入名 クシュ: うん…ふたりとも お姫様や妖精の出てくる
  389. 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」と 同じシリーズの本が好きで…
  390. アネカ: 「えっ…クシュちゃんも好きなの? 「さよならの寓話」シリーズ」
  391. 入名 クシュ: 『…お姉さん、この本知ってるの?』
  392. アネカ: 「うん、大好き!」
  393. アネカ: 「不思議、どうしてかな?」
  394. 入名 クシュ: 『…何が?』
  395. アネカ: 「…きみとは初めて会った気がしないの」
  396. 入名 クシュ: 私、両親の仕事で
  397. 入名 クシュ: 外国に引っ越した ばかりだったんだけど
  398. 入名 クシュ: 隣に住んでたアネカお姉さんとは すぐに仲良くなれたの
  399. 入名 クシュ: 周りに何もない土地だったから… いつも、本の話をしてた
  400. 七瀬 ゆきか: あれっ、じゃあ 入名さんって外国育ち?
  401. 入名 クシュ: うん…日本生まれの日本人だし 外国語も得意じゃないけど
  402. 入名 クシュ: 両親が転勤ばかりしてたから 外国暮らしの方が長いかも
  403. 黒羽根: 名前も日本人離れしてるけど ハーフとか…?
  404. 入名 クシュ: ひいおじいさんが日本人だから 血筋的には8分の1くらい日本人
  405. 七瀬 ゆきか: (想像してたより だいぶ日本人離れしてますっ)
  406. 黒羽根: …で、この図書館で 何をすればいいのかな?
  407. 七瀬 ゆきか: 記憶を集める…
  408. 七瀬 ゆきか: 児童書のコーナーで 思い出の本を探すとか?
  409. 入名 クシュ: …探してみる
  410. 入名 クシュ: …あった
  411. 入名 クシュ: 「さよならの寓話」シリーズ なぜか2巻だけ…
  412. 七瀬 ゆきか: 図書館って最初の巻が なぜかなかったりしますよねっ
  413. 黒羽根: その本、変わったところある?
  414. 入名 クシュ: …ページを開いてみるね
  415. 入名 クシュ: …………?
  416. 七瀬 ゆきか: 光が…!
  417. 入名 クシュ: 『あの…アネカお姉さん ありがとうございました』
  418. アネカ: …クシュちゃん 危ないところだったね
  419. アネカ: まさか、魔女に 捕まっちゃうなんてね
  420. 入名 クシュ: 『魔女って…あの怪物のこと?』
  421. アネカ: 魔女が見えたんだ…?
  422. アネカ: きみにも私と同じ 魔法少女の素質があるんだね
  423. 入名 クシュ: 『魔法少女って?』
  424. 入名 クシュ: 『お姉さん、魔法が使えるの?』
  425. 入名 クシュ: 『「さよならの寓話」シリーズに出てくる お姫様みたいな魔法を使ってたけど…』
  426. アネカ: うん、クシュちゃんにも その素質があるの
  427. 入名 クシュ: 『ねえ、それって…』
  428. アネカ: きみにも魔法が使えるってこと おとぎ話の主人公みたいに、ね!
  429. クシュ&ゆきか: …………
  430. 入名 クシュ: アネカ…さん…
  431. 七瀬 ゆきか: …今のって…入名さんと アネカさんの記憶でしょうか?
  432. 黒羽根: みたいだね
  433. 入名 クシュ: あ…
  434. 七瀬 ゆきか: クシュちゃんのシュシュに 光が吸い込まれました
  435. 黒羽根: 記憶をひとつ回収したってこと?
  436. 入名 クシュ: …だと思う
  437. 入名 クシュ: これ、アネカお姉さんに もらった大切なものなの
  438. 七瀬 ゆきか: 同じ要領で、そのシュシュに
  439. 七瀬 ゆきか: 記憶を集めていけば いいんでしょうか…?
  440. 入名 クシュ: たぶん…
  441. 黒羽根: なるほど…
  442. 七瀬 ゆきか: じゃ、図書室を出ましょうか?
  443. 入名 クシュ: …………
  444. 七瀬 ゆきか: どうかしたんですか?
  445. 入名 クシュ: 私の思い出、覗かれちゃった… 恥ずかし…
  446. 黒羽根: …………
  447. 黒羽根: (おっとりしてるから 一見わかりにくいけど)
  448. 黒羽根: (よく見ると 気持ちに正直で面白い…)
  449.  
  450. FILENAME: text_514410-7_elfXK.txt
  451. コツ…
  452. 七瀬 ゆきか: …えっと、次はどこへ行けば 記憶が集められるんでしょう?
  453. 入名 クシュ: 確か…幻灯機?…か何かを探して 町を目指すって話だった…気が?
  454. 黒羽根: 幻灯機?
  455. 七瀬 ゆきか: 昔のショーで使われてた
  456. 七瀬 ゆきか: プロジェクターみたいな 機械だったかと…
  457. 入名 クシュ: …幻灯機じゃなかったかも…
  458. 七瀬 ゆきか: だいぶうろおぼえですね…
  459. 入名 クシュ: すみません…
  460. 黒羽根: ………… …………
  461. 黒羽根: 私は牧野郁美 マギウスの翼の、名もなき黒羽根
  462. 牧野 郁美: そもそも学生でもない私が 聖リリアンナ学園にいるのは
  463. 牧野 郁美: マギウスのひとり、里見灯花への届けものを みふゆさんに頼まれたから
  464. ピロン♪
  465. 牧野 郁美: (みふゆさんから?)
  466. 牧野 郁美: (『工匠区にいる羽根の方… どなたかお願いします!』)
  467. 牧野 郁美: (『至急、北養区まで 届けてほしいものが…!』)
  468. 牧野 郁美: …困ってるみたい
  469. 牧野 郁美: (次のシフトまで時間あるし 今日はお店もガラッガラだし…)
  470. 牧野 郁美: 店長ぉ~!
  471. 牧野 郁美: くみ、中抜けしたいんですけどぉ
  472. 牧野 郁美: (みふゆさん、すっごく 急いでるみたいだったから)
  473. 牧野 郁美: (メイド服のまま店を出たのが 失敗だったよね…)
  474. 灯花: ありがと! このパーツが欲しかったんだよ
  475. 灯花: じゃ、外に出してあげる みふゆによろしくねー
  476. 牧野 郁美: えっ…外にって ここから?
  477. 灯花: うん、実験中の転送装置で 外までひとっ飛び!
  478. 牧野 郁美: ふぇっ…実験中?
  479. 牧野 郁美: ふぇぇ…
  480. 牧野 郁美: (まさかリリアンナの校内に)
  481. 牧野 郁美: (放り出されるとは 思わなかったよぉ~)
  482. 牧野 郁美: (この姿でも怪しいし… メイド服に戻っても怪しい!)
  483. 牧野 郁美: (くみ、学校から どうやって出ればいいのぉ?)
  484. 牧野 郁美: (そのあとで、この夢に 取り込まれちゃったんだよね)
  485. 牧野 郁美: (なぜか学校から人が消えて 門の外にも出られなくなって)
  486. 牧野 郁美: (誰もいないし、いいかと思って 歌の練習をしてたら…)
  487. 牧野 郁美: あの子はキュンキュンでぇ~?
  488. 牧野 郁美: いつもニコニコ天使なぁ~♪
  489. コン、コン
  490. 牧野 郁美: ふぇっ!?
  491. 七瀬 ゆきか: お邪魔いたします…
  492. 牧野 郁美: (くみ、恥ずかしいよぉ~!)
  493. 七瀬 ゆきか: あのぉ…
  494. 牧野 郁美: …な、何?
  495. 七瀬 ゆきか: 神浜市の不思議な噂って… 他にもあるんでしょうか?
  496. 七瀬 ゆきか: それと、黒羽根さんが言ってた マギウス…?
  497. 牧野 郁美: マギウスの翼ね
  498. 七瀬 ゆきか: はい、それって 関係があるんでしょうか…?
  499. 牧野 郁美: (ギクッ)
  500. 牧野 郁美: さ、さぁ…?
  501. 牧野 郁美: 不思議な噂が ひとつじゃないのは確かだけど
  502. 牧野 郁美: 私、マギウスの翼でも下っ端だし 詳しいことは何も…
  503. 牧野 郁美: うわさが巻き起こす現象を 偶然こんな風に経験するのだって
  504. 牧野 郁美: 初めてだしね
  505. 七瀬 ゆきか: そうですか… わたしよりは詳しそうだったので
  506. 七瀬 ゆきか: 解決のヒントになりそうなことを 何かご存じかと思ったんですが
  507. 牧野 郁美: ごめんね
  508. 入名 クシュ: あの…黒羽根さんって 魔法少女なんですよね?
  509. 牧野 郁美: そうだよ?
  510. 入名 クシュ: そのローブは… 変身したときの姿?
  511. 七瀬 ゆきか: わたしも不思議に思ってました
  512. 七瀬 ゆきか: でも、よく考えると 前に調整屋さんで
  513. 七瀬 ゆきか: 同じような格好の人を 見かけた気が…
  514. 牧野 郁美: あー、もうっ! めんどくさいなっ!
  515. バッ
  516. 牧野 郁美: これがくみの本当の姿!
  517. 牧野 郁美: みんなのアイドルいくみんこと 牧野郁美だよぉ~♪
  518. クシュ&ゆきか: ――っ!?
  519. 七瀬 ゆきか: キャラ…変わりました…?
  520. 牧野 郁美: こっちが素だからねっ! でも、みんなには内緒でお願い!
  521. 入名 クシュ: またちょっと変わった…?
  522. 牧野 郁美: これは普通のメイド服だよ くみ、メイド喫茶で働いてるのぉ
  523. 七瀬 ゆきか: なるほど…
  524. 牧野 郁美: あの黒いローブは マギウスの翼の魔法少女が
  525. 牧野 郁美: プライバシーを守るために 着てるものだから
  526. 牧野 郁美: 今後、同じ格好の人を見ても
  527. 牧野 郁美: 根掘り葉掘り聞いたりしちゃ… めっ、だよっ!
  528. 七瀬 ゆきか: …し、失礼しましたっ
  529. 入名 クシュ: ごめんなさい… 黒羽根さん
  530. 牧野 郁美: ………… …郁美でいいよ
  531. 牧野 郁美: 何か幽霊役?…らしいけど このキャラでいいのかなぁ~?
  532. 七瀬 ゆきか: 愉快な幽霊役らしいので いいのではないでしょうか…
  533.  
  534. FILENAME: text_514410-8_elfXK.txt
  535. Ⅲ ‐ クシュとアネカ
  536. ガラッ
  537. 牧野 郁美: ここはぁ~?
  538. 七瀬 ゆきか: 視聴覚教室的なお部屋… でしょうか?
  539. 入名 クシュ: うん…
  540. 入名 クシュ: 幻灯機みたいなものがあるなら ここだと思って
  541. 七瀬 ゆきか: 確かに… プロジェクターがありますね
  542. 入名 クシュ: スイッチ、入れてみる
  543. アネカ: …今日はお手柄だったね! クシュちゃん!
  544. アネカ: クシュちゃんが 魔女の結界を見つけて
  545. アネカ: 私に知らせてくれなかったら
  546. アネカ: たくさんの人が、あの魔女の 犠牲になっていたところよ
  547. 入名 クシュ: 『…………』
  548. アネカ: どうしたの? クシュちゃん
  549. アネカ: ぼうっとしちゃって…
  550. アネカ: …あっ いけない、こんな時間
  551. アネカ: また明日ね!
  552. 入名 クシュ: 夢…みたいだった…
  553. 入名 クシュ: アネカお姉さんの姿は…おとぎ話で読んだ 戦うお姫様そのもので
  554. 入名 クシュ: 私も、あんな風になれたら… お姉さんの側で戦えたら…
  555. 入名 クシュ: …………
  556. 入名 クシュ: だけど、あと何時間かしたら 夢の時間は終わって
  557. 入名 クシュ: また退屈な朝が来る…
  558. 入名 クシュ: ………… …………
  559. アネカ: えっ…?
  560. アネカ: クシュちゃんも 魔法少女になりたい?
  561. キュゥべえ: 魂を賭けて魔女と戦い続ける 宿命を受け入れてでも
  562. キュゥべえ: 叶えたい願いが できたということかい?
  563. 入名 クシュ: 『うん…覚悟はできてる』
  564. アネカ: 歓迎よ
  565. アネカ: クシュちゃんにも 素質があるって聞いてから
  566. アネカ: ずっとこの日を待っていたの
  567. 入名 クシュ: 『ありがとう…私、決めた』
  568. キュゥべえ: それじゃあ 聞かせてごらん、キミの願いを
  569. 入名 クシュ: 『うん…』
  570. アネカ: クシュちゃん、その姿って…
  571. 入名 クシュ: うん… “最後の異端審問官”
  572. 入名 クシュ: 呪いを振りまく魔女たちを 一緒にやっつけよう?
  573. アネカ: 違うよ、クシュちゃん
  574. アネカ: そこは 「ともに粛清を!」でしょ!
  575. 入名 クシュ: ごめん…そうだった
  576. アネカ: ちょっと意外な 願い事だったけど…
  577. アネカ: でも、すごく クシュちゃんらしいね
  578. 入名 クシュ: …ありがと
  579. アネカ: それと…これ 受け取って
  580. アネカ: 誕生日プレゼント
  581. 入名 クシュ: え…?
  582. アネカ: 今日はクシュちゃんが
  583. アネカ: 魔法少女として 生まれ変わった日でしょ?
  584. キュゥべえ: …………
  585. アネカ: このときのために 前から用意していたの
  586. 入名 クシュ: ありがとう… 大切にするね
  587. アネカ: きっと クシュちゃんや私みたいに
  588. アネカ: 夢を信じられる人だけが 魔法少女になれるのね
  589. アネカ: うれしいな…まるで 新しく妹ができたみたい
  590. 入名 クシュ: うん…私もうれしい
  591. 入名 クシュ: ねえ、アネカさんのこと… お姉ちゃんって呼んでいいかな
  592. アネカ: えっ…
  593. アネカ: …それはやめておきましょ? マミィとダディが驚いちゃう
  594. 入名 クシュ: …そうだね わかった
  595. 入名 クシュ: …………
  596. 牧野 郁美: シュシュに新しい記憶が 集まったみたいだねっ!
  597. 七瀬 ゆきか: 魔法少女になった日に もらったものだったんですね
  598. 入名 クシュ: うん…
  599. 牧野 郁美: 『夢を信じられる人だけが 魔法少女になれる』かぁ~
  600. 牧野 郁美: 私も友だちと一緒に 夢を追いかけてるんだよぉ~!
  601. 七瀬 ゆきか: …わたしの場合は 夢を信じてというより
  602. 七瀬 ゆきか: 夢だと思い込んでキュゥべえと 契約しちゃったんですよね…
  603. 牧野 郁美: クシュちゃんも いつも眠そうなキャラっぽいし
  604. 牧野 郁美: 3人とも 夢つながりっていう共通点が
  605. 牧野 郁美: あるような、ないようなぁ…?
  606. 入名 クシュ: 私は…いつも 時差ボケみたいなものだから…
  607. 牧野 郁美: そうなの?
  608. 入名 クシュ: 体内時計が完全に 半日ずれてるの
  609. 入名 クシュ: 願い事のせいで、朝日が昇ると 自動的に眠っちゃうから
  610. 七瀬 ゆきか: えっ…?
  611.  
  612. FILENAME: text_514410-9_elfXK.txt
  613. 七瀬 ゆきか: キュゥべえに奇跡を祈った結果 朝日が昇ると
  614. 七瀬 ゆきか: 自動的に眠りに落ちる体質に なってしまったってことですか?
  615. 入名 クシュ: うん… 日の出の瞬間に気絶する感じ
  616. 七瀬 ゆきか: それは深刻ですね…
  617. 七瀬 ゆきか: (さきほど見た記憶では)
  618. 七瀬 ゆきか: (入名さんが何を願ったかまでは わかりませんでしたけど…)
  619. 入名 クシュ: …昼間はそのまま目が覚めなくて お医者さんもお手上げ
  620. 牧野 郁美: 夕方は、学校に来られるのぉ?
  621. 入名 クシュ: うん、私にとっては まだ眠い時間だけど
  622. 入名 クシュ: 日が沈みはじめると 少しは動けるみたい…
  623. 牧野 郁美: 無理して起きてたから そんなに眠そうだったんだねっ?
  624. 入名 クシュ: 陽射しがある時間は かなりつらいかも
  625. 入名 クシュ: 普通の人の感覚で言うと
  626. 入名 クシュ: 朝の3時台に起きて 学校に行くような感じかも…
  627. 牧野 郁美: そうまでして補習受けるんだね…
  628. 入名 クシュ: 帰国して リリアンナに転入するときに
  629. 入名 クシュ: 毎日、放課後の夕方に 補習をやってくれることになって
  630. 入名 クシュ: 補習だけでも出席しないと 進級できないから…
  631. 牧野 郁美: …クラスの子とかとは 仲良くできてるの?
  632. 入名 クシュ: 顔も知らない… …向こうも知らないと思う
  633. 七瀬 ゆきか: (あ…)
  634. ねえ、うちの学校に あんな子いたかな?
  635. 初めて見たかも
  636. 七瀬 ゆきか: …………
  637. 七瀬 ゆきか: 朝になると眠っちゃうのって…
  638. 七瀬 ゆきか: 魔法少女になった 次の日からずっとなんですか?
  639. 入名 クシュ: うん… だから最初は大騒ぎだった
  640. 入名 クシュ: 昼の間は、周りが何しても 目を覚まさないみたいだし
  641. 牧野 郁美: 自分じゃわからないから 『みたいだし』なんだね…
  642. 入名 クシュ: いちおう…真夜中になると 目が冴えるんだけど
  643. 七瀬 ゆきか: 真性の夜行性ですねっ
  644. 入名 クシュ: 親に見つからないように 魔女の粛清に行くのも大変だし
  645. 入名 クシュ: 朝日が出る前に家に戻らないと 外で倒れちゃうし…
  646. 牧野 郁美: ん、ちょっと待って? 魔女の…粛清…?
  647. 入名 クシュ: …え、何か変?
  648. 牧野 郁美: それって “処刑”みたいな意味だよねっ?
  649. 七瀬 ゆきか: …ですね
  650. 入名 クシュ: 魔女を粛清します、とかって… 言わない?
  651. 七瀬 ゆきか: 初めて聞きました
  652. 入名 クシュ: そうなんだ…
  653. 入名 クシュ: 「さよならの寓話」シリーズで 主人公の“最後の異端審問官”が
  654. 入名 クシュ: 吸血鬼や悪霊を祓うときに よく言うセリフなんだけど…
  655. 入名 クシュ: ごめん… …ちょっと、お腹すいたかも
  656. 牧野 郁美: 突然だねっ!?
  657. ごそ
  658. 七瀬 ゆきか: …それ、ミニトマトですか?
  659. 入名 クシュ: うん、おやつがわりに 持ち歩いてるの
  660. 入名 クシュ: 食べる?
  661. 牧野 郁美: 私はいいかな
  662. 七瀬 ゆきか: どうぞおかまいなくっ
  663. 牧野 郁美: 感心するくらいマイペース…!
  664. 七瀬 ゆきか: 大物感ありますねっ…
  665. 入名 クシュ: じゃ…
  666. ぱくっ
  667. 七瀬 ゆきか: あ…
  668. 牧野 郁美: 八重歯だね かっわい~!
  669. 入名 クシュ: …ありがと
  670. ぱく…
  671. 七瀬 ゆきか: …………
  672. 七瀬 ゆきか: (夜行性…色白で八重歯…)
  673. 七瀬 ゆきか: (それに…)
  674. 七瀬 ゆきか: 何か変わった鏡なんでしょうか?
  675. 入名 クシュ: …私が映らない
  676. 黒羽根: え…?
  677. 七瀬 ゆきか: ほんとだ…! 入名さんの姿だけ映ってません!
  678. 七瀬 ゆきか: (鏡に映らないのって…)
  679. 七瀬 ゆきか: (異端審問官とか エクソシストとかじゃなくて)
  680. 七瀬 ゆきか: (祓われる側の 吸血鬼の特徴なのでは…?)
  681. 入名 クシュ: はむ…
  682.  
  683. FILENAME: text_514410-10_elfXK.txt
  684. Ⅳ ‐ 真実
  685. コツ…
  686. 牧野 郁美: ちょっと気になるんだけどぉ…
  687. 牧野 郁美: ずっと夕方が続いてない?
  688. 入名 クシュ: …夢の中だから…?
  689. 七瀬 ゆきか: 目を覚ましたら、全然 時間が経ってないかもしれません
  690. 牧野 郁美: だといいなぁ…
  691. 牧野 郁美: くみ、お店を中抜けしてるから 早く戻らないと怒られちゃう~!
  692. 七瀬 ゆきか: 試練を乗り越えれば、過去を やり直せるってことでしたけど
  693. 七瀬 ゆきか: 本の内容通りに記憶を集めるのが 試練なんでしょうか?
  694. 牧野 郁美: だと思うよっ?
  695. 入名 クシュ: 心を試されてる感じは あんまりしないけど…
  696. 七瀬 ゆきか: でも、冒険仕立てだから 時間はかかっちゃいますね…
  697. 牧野 郁美: ねえねえ、クシュちゃんはぁ~
  698. 牧野 郁美: アネカちゃんとの出会いを やり直したいって言ってたよね?
  699. 入名 クシュ: うん…
  700. 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
  701. 牧野 郁美: 入場料はプライスレス… プライスレスってどういうこと?
  702. 七瀬 ゆきか: 一般的には…
  703. 七瀬 ゆきか: 値段がつけられないほど 途方もない価値がある…みたいな
  704. 牧野 郁美: えっ!?
  705. 牧野 郁美: それってやり直したい 過去の内容によっては
  706. 牧野 郁美: ものすごい代償を 要求されるってことじゃないの?
  707. 七瀬 ゆきか: 試練の内容も、それだけ 重くなったりしそうですね…
  708. 入名 クシュ: …………
  709. 牧野 郁美: あれっ? またこの場所ぉ~?
  710. 入名 クシュ: うん…
  711. 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」に
  712. 入名 クシュ: “すぎさりし過去の泉”…? みたいな名前のところへ行って
  713. 入名 クシュ: 水面を覗き込む場面が あるって聞いた…
  714. 七瀬 ゆきか: なるほど それでこの噴水が怪しいと?
  715. 入名 クシュ: …聞いた?…ような…?
  716. 牧野 郁美: トーンダウンしてるぅ~
  717. 入名 クシュ: もしかすると… 他の本のお話だったかも
  718. 牧野 郁美: うろおぼえ大会だねっ!
  719. 七瀬 ゆきか: 思うんですけど…実際の 「オトラントのうみべで」と
  720. 七瀬 ゆきか: 違っていてもかまわないのでは?
  721. 入名 クシュ: どういうこと?
  722. 七瀬 ゆきか: ここは入名さんの夢の中なので 入名さんがそうだと思うものが
  723. 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」 なのではないかとっ
  724. 牧野 郁美: …確かに結局、クシュちゃんの 推測が全部当たってるもんね!
  725. 入名 クシュ: わかった 水面、覗いてみる…
  726. 入名 クシュ: あ…
  727. 入名 クシュ: 『えっ…アネカお姉さん、帰ってないの?』
  728. クシュの母: 「うん…昨日、学校に出かけたきり 連絡がつかないんだって」
  729. クシュの父: 「クシュは何か聞いてないか?」
  730. 入名 クシュ: 『うん、何も…』
  731. 入名 クシュ: (アネカお姉さんに… 何かあったの?)
  732. 入名 クシュ: やな…予感…
  733. 入名 クシュ: 探しにいかなきゃ…!
  734. 入名 クシュ: アネカさん…どこ?
  735. 入名 クシュ: どこにもいない…
  736. 入名 クシュ: まさか…強い魔女に負けちゃったんじゃ…
  737. 入名 クシュ: だとしたら…私のせい…!
  738. 入名 クシュ: 私がこんな体質じゃなかったら… 昼間だって、一緒に戦えたのに…!
  739. タッ…
  740. 入名 クシュ: …はぁ…はぁ…
  741. 入名 クシュ: あんな強い魔女… 初めて見た
  742. 入名 クシュ: グリーフシードを落としてくれて 助かった…けど
  743. 入名 クシュ: ………… …………
  744. キュゥべえ: ずいぶんと苦戦していたね 入名クシュ
  745. 入名 クシュ: キュゥべえ…見てたの?
  746. キュゥべえ: キミがあの魔女と戦っている 途中からね
  747. 入名 クシュ: ねえ…
  748. 入名 クシュ: …あの場所って 学校のすぐ近くだよね?
  749. 入名 クシュ: アネカお姉さん…あの魔女に… …やられちゃったんじゃ…
  750. キュゥべえ: 違うよ アネカを倒したのはキミだよ
  751. 入名 クシュ: えっ…
  752. キュゥべえ: 穢れを溜め込みすぎた ソウルジェムは
  753. キュゥべえ: グリーフシードへと変化して 魔女を生み出す
  754. キュゥべえ: つまり魔法少女はいずれ 魔女になるということさ
  755. 入名 クシュ: キュゥべえ…? 何を…言ってるの?
  756. キュゥべえ: こう言えばわかるかい?
  757. キュゥべえ: アネカは魔女になって ついさっきキミに倒され消滅した
  758. キュゥべえ: キミがいま浄化に使った グリーフシードは
  759. キュゥべえ: アネカのソウルジェム… すなわち魂だったものだよ
  760. 入名 クシュ: うそ…
  761. 入名 クシュ: 『イヤぁあああっ!』
  762. 七瀬 ゆきか: すみません…入名さんの記憶 …見えてしまいました
  763. 入名 クシュ: ………… …………
  764. 七瀬 ゆきか: 入名さん…
  765. 牧野 郁美: …………
  766.  
  767. FILENAME: text_514410-11_elfXK.txt
  768. 牧野 郁美: ねえ…
  769. 牧野 郁美: クシュちゃんが 出会いをやり直したかった
  770. 牧野 郁美: アネカちゃんって…
  771. 牧野 郁美: (魔女に…)
  772. 七瀬 ゆきか: お別れも言えずに 離ればなれになったって
  773. 七瀬 ゆきか: …そういうことだったんですね
  774. 入名 クシュ: …うん…
  775. 七瀬 ゆきか: そんな…悲しい別れが…
  776. 入名 クシュ: ………… …………
  777. 牧野 郁美: …………
  778. 牧野 郁美: ごめん…少しいいかな?
  779. 入名 クシュ: …何?
  780. 牧野 郁美: つまり、この試練の目的って
  781. 牧野 郁美: 亡くなった人と出会い直すため… ってことだよね?
  782. 牧野 郁美: そのための代償って…
  783. 七瀬 ゆきか: あっ…
  784. 牧野 郁美: それってやり直したい 過去の内容によっては
  785. 牧野 郁美: ものすごい代償を 要求されるってことじゃないの?
  786. 七瀬 ゆきか: 入場料はプライスレスって ことでしたけど
  787. 七瀬 ゆきか: 何か大事なものが なくなったりしてませんか…?
  788. 入名 クシュ: …んっ、と… あ…
  789. 牧野 郁美: どうしたの?
  790. 入名 クシュ: グリーフシードが 2個しか残ってない…
  791. 牧野 郁美: 2個しかって… いくつ持ち歩いてたの?
  792. 入名 クシュ: えっと…
  793. 牧野 郁美: …は!? そんなにたくさん?
  794. 牧野 郁美: 私が…じゃなくて…
  795. 牧野 郁美: くみがこの1年で集めた分 全部より多いよぉ~!
  796. 七瀬 ゆきか: 強いんですね 入名さん…
  797. 入名 クシュ: 私が魔法少女になったの… もっと前だから…
  798. 入名 クシュ: たくさん集まってた
  799. 七瀬 ゆきか: その、ごっそり減った分が 夢の入場料ってことですよね…?
  800. 牧野 郁美: ほんとにプライスレスだよぉ~
  801. 牧野 郁美: グリーフシードは私たちの 命と同じだもんっ!
  802. 入名 クシュ: お姉さんと…アネカさんと もう一度会えるんだったら
  803. 入名 クシュ: これくらい、かまわない
  804. 七瀬 ゆきか: …………!
  805. 牧野 郁美: (本気、なんだ…)
  806. 牧野 郁美: すごいね…そんなにたくさんの グリーフシードをなくしたら
  807. 牧野 郁美: 私なら大パニックだよ
  808. 七瀬 ゆきか: ひとりで集めたんですか…?
  809. 入名 クシュ: うん…魔法少女の友だちとか 全然いないし
  810. 入名 クシュ: 神浜市の外とかの
  811. 入名 クシュ: あまり他の魔法少女が いないところに行って
  812. 入名 クシュ: 魔女を粛清してあげてる
  813. 七瀬 ゆきか: (あっ…)
  814. …それ、本当?
  815. ええ 神浜市の外の話らしいけど
  816. それにしても、いまどき 吸血鬼だなんて…
  817. 七瀬 ゆきか: (吸血鬼の正体… わかっちゃったかもしれません)
  818. 牧野 郁美: クシュちゃんは強いね…
  819. 牧野 郁美: …あんなことがあったのに 魔女を狩るの、怖くない…?
  820. 入名 クシュ: …そう?
  821. 牧野 郁美: うん、だってその魔女 元は魔法少女だったんだよ?
  822. 牧野 郁美: 私は弱いから…
  823. 牧野 郁美: そんなこと考えてたら 魔女にやられちゃうし
  824. 牧野 郁美: 仲間に助けてもらって やっと倒せても
  825. 牧野 郁美: ごめん、って心の中で 謝ってるけど…
  826. 入名 クシュ: えっ…? 魔女は魔法少女じゃないよね?
  827. 入名 クシュ: 穢れが溜まって呪いを生み始めた 魔法少女の魂…グリーフシード
  828. 入名 クシュ: そこから生まれる呪いの化身… それが魔女でしょ?
  829. 入名 クシュ: だから粛清して その呪いを浄化してあげてるの
  830. 入名 クシュ: 私たち、悪いことなんて 何もしてないよね?
  831. 牧野 郁美: えっ?
  832. 七瀬 ゆきか: あれっ…?
  833. 牧野 郁美: 合ってるけど…何か違うよね?
  834. 七瀬 ゆきか: わたしも、そんな気が…
  835. 七瀬 ゆきか: あのぉ…
  836. キュゥべえ: こう言えばわかるかい?
  837. キュゥべえ: アネカは魔女になって ついさっきキミに倒され消滅した
  838. 七瀬 ゆきか: …キュゥべえにはっきり そう言われたんですよね?
  839. 入名 クシュ: うん、その説明には 納得できない点があるから
  840. 入名 クシュ: いつもキュゥべえに
  841. 入名 クシュ: 詳しい話を聞かせてって 言ってるんだけど…
  842. 牧野 郁美: もしかして、クシュちゃん
  843. 牧野 郁美: 魔法少女が魔女になるって まだ信じてない…?
  844. 七瀬 ゆきか: あっ…わかった気がします
  845. 七瀬 ゆきか: 入名さんも本当は
  846. 七瀬 ゆきか: 魔法少女が魔女になる…って 心の底では理解してるんです
  847. 七瀬 ゆきか: でも、そのことを認めると
  848. 七瀬 ゆきか: アネカさんが魔女になったって 認めることになっちゃうから
  849. 七瀬 ゆきか: 入名さんの中では あくまで魔女と魔法少女は別物で
  850. 七瀬 ゆきか: 魔法少女が生んでしまった 呪いの化身を祓ってあげている…
  851. 七瀬 ゆきか: …だから“粛清”なんですよ
  852. 牧野 郁美: …そっか そう思い込まないと
  853. 牧野 郁美: アネカちゃんに手を下したのは クシュちゃん自身になっちゃう
  854. 牧野 郁美: 認めちゃいけないんだ 心が、壊れちゃうから…
  855.  
  856. FILENAME: text_514410-12_elfXK.txt
  857. 入名 クシュ: あのとき、どうして
  858. 入名 クシュ: 魔法少女が魔女になる、なんて 言ったのか
  859. 入名 クシュ: キュゥべえに会うたびに 話を聞こうとするんだけど
  860. 入名 クシュ: …いつも逃げられちゃうの
  861. 入名 クシュ: 最近は、キュゥべえ自体 あまり見かけないし…
  862. 牧野 郁美: (神浜市外に行かないと いまは会えないもんね…)
  863. 入名 クシュ: キュゥべえ…!
  864. 入名 クシュ: あっ、待って!
  865. 牧野 郁美: …その剣幕じゃ 逃げられて当然だと思うよ?
  866. 七瀬 ゆきか: 話を聞かせてっていう 空気じゃありませんね…
  867. 入名 クシュ: 確かに、キュゥべえのことは
  868. 入名 クシュ: 魔法少女になったときから 嫌いだけど
  869. 入名 クシュ: …大嫌いだけど!
  870. 牧野 郁美: ほら、態度に出てるっ!
  871. 牧野 郁美: キュゥべえでもわかるくらい 殺意満々だよっ!
  872. 入名 クシュ: …そうなのかな? でも、本当に殺したことはないよ
  873. 入名 クシュ: グリーフシードの処理とか してもらわなきゃいけないし…
  874. 入名 クシュ: 郁美さんの言う通り 殺しちゃいたいくらい憎いけど…
  875. 牧野 郁美: …やっぱりクシュちゃんって 気持ちにすごく正直だよね?
  876. 牧野 郁美: くみは、今まで実行してないのが 奇跡だと思うよ…
  877. 七瀬 ゆきか: えっ…えっ?
  878. 七瀬 ゆきか: キュゥべえを本気で殺そうなんて 思うはずないですよね?
  879. 牧野 郁美: んんっ…どういう意味?
  880. 七瀬 ゆきか: どういう意味って… だって、可哀想じゃないです?
  881. 七瀬 ゆきか: わたしも、キュゥべえのやり方は どうかと思いますけど
  882. 七瀬 ゆきか: それとこれは別…っていうか… 憎しみは何も生みませんし…
  883. 牧野 郁美: (こっちはこっちで 何かすごくまぶしい…!)
  884. 牧野 郁美: (みんながそんな考えなら 復讐って言葉は生まれてないよ)
  885. 牧野 郁美: …はぁ
  886. 牧野 郁美: 何だか、うらやましいな…
  887. 牧野 郁美: くみも、ふたりと同じくらい しっかり自分を持っていれば
  888. 牧野 郁美: マギウスの翼に入らなくても やっていけたのかなぁ~
  889. 入名 クシュ: マギウスの翼って… 何をしてる人たちなの?
  890. 七瀬 ゆきか: 今の話と関係あるんでしょうか?
  891. 牧野 郁美: あ…ううん もう、隠さなくてもいっか…
  892. 牧野 郁美: あのねっ マギウスの翼っていうのはね…
  893. 入名 クシュ: 魔法少女の救済のために 活動する人たち…?
  894. 牧野 郁美: うん
  895. 牧野 郁美: 胡散臭い目で見る魔法少女も いっぱいいるけどね…
  896. 牧野 郁美: でもいま説明した ドッペルという現象があるかぎり
  897. 牧野 郁美: 神浜市内にいれば 魔法少女は魔女にならないの
  898. 牧野 郁美: …それがなければ、私はもう ここにいなかったと思う
  899. 牧野 郁美: あっ…“私”じゃなくて “くみ”だった!…てへっ!
  900. 入名 クシュ: …神浜市内にいると 争いに巻き込まれそうだし
  901. 入名 クシュ: 私はいままで通り 市外への遠征を続けようかな
  902. 牧野 郁美: くみの話聞いてたっ? 市外の方が危ないって…
  903. 牧野 郁美: 神浜市内で、チームを組んで 戦うのが一番安全だよ?
  904. 入名 クシュ: いままでもひとりでやってきたし 何かあったら仕方ないよ
  905. 入名 クシュ: …アネカお姉さんは逃げなかった だから私も逃げたくない
  906. 牧野 郁美: (死ぬのが怖くないのっ? 私は怖いよ…)
  907. 牧野 郁美: (群れないでやっていけるのって こういう子なんだろうな…)
  908. 入名 クシュ: それに、市外の魔女だって
  909. 入名 クシュ: 放っておけば 誰かが犠牲になっちゃうんだよ?
  910. 七瀬 ゆきか: はっ… その通りですっ
  911. 七瀬 ゆきか: 自分だけ 救われるわけにはいきません!
  912. 牧野 郁美: それは、そうだけど… でも…どうなのかな…?
  913. 牧野 郁美: くみは、マギウスの考えは よくわからないんだけど
  914. 牧野 郁美: でも、みふゆさんほどの人が…
  915. 牧野 郁美: 市外のことはどうでもいいって 思ってるのかな…?
  916. 七瀬 ゆきか: みふゆさん…?
  917. 牧野 郁美: あっ、ごめん… 私の恩人で、マギウスの翼の幹部
  918. 牧野 郁美: 梓みふゆさんっていう人で… って言っても知らないよねっ?
  919. 七瀬 ゆきか: えっ!?
  920. 七瀬 ゆきか: 梓センパイって 魔法少女なんですか?
  921. 牧野 郁美: まさかの知り合いっ!?
  922. 七瀬 ゆきか: 水名女学園の大先輩ですっ
  923. 牧野 郁美: あ、学校同じなんだ…
  924. 牧野 郁美: マギウスの翼に興味あるなら みふゆさんを紹介できるけど…?
  925. 七瀬 ゆきか: …………
  926. 牧野 郁美: あっ、無理に勧誘しようとか そういうんじゃないからっ!
  927. 牧野 郁美: ちょっとしゃべりすぎちゃって バレたら怒られそうだし…
  928.  
  929. FILENAME: text_514410-13_elfXK.txt
  930. 牧野 郁美: 話がだいぶ逸れちゃったけど…
  931. 牧野 郁美: 次はどこへ向かえばいいのっ?
  932. 七瀬 ゆきか: これって…
  933. 七瀬 ゆきか: 記憶はもう充分に 集まったってことでしょうか?
  934. 牧野 郁美: その場合はどこへ行くのかなぁ~
  935. 入名 クシュ: …………
  936. 牧野 郁美: あっ、うろおぼえでもいいから!
  937. 入名 クシュ: …たぶん、お城?
  938. 七瀬 ゆきか: お姫様が眠っているっていう?
  939. 入名 クシュ: …うん
  940. 入名 クシュ: ソウルメイトのお姫様は お城の地下で眠っていてね…
  941. 入名 クシュ: 主人公が、集めた思い出を その心に戻してあげると
  942. 入名 クシュ: 長い眠りから目を覚まして…
  943. 入名 クシュ: 主人公たちと一緒に… 夢の世界から脱出するの
  944. 牧野 郁美: ああ…そうだったねっ
  945. 牧野 郁美: それっぽい場所って… 校内にあるかな?
  946. 七瀬 ゆきか: 聖リリアンナ学園自体が お城みたいに立派ですからね
  947. 入名 クシュ: 正門から見ると 少しお城っぽい…かも?
  948. 入名 クシュ: …着いたけど
  949. 入名 クシュ: ここ、本当にお城なのかな…?
  950. 七瀬 ゆきか: 入名さんが疑ってる時点で かなり怪しいですね…
  951. 七瀬 ゆきか: とにかくお姫様を見つけて
  952. 七瀬 ゆきか: そのシュシュを 渡せばいいはずなんですけど…
  953. 七瀬 ゆきか: …お姫様はどこなんでしょう?
  954. 入名 クシュ: お城の地下…
  955. 七瀬 ゆきか: 地下って… どうやって行けば…?
  956. 牧野 郁美: ほらっ、何かないのぉ~っ? 魔法のアイテムを使うとか!
  957. 七瀬 ゆきか: シュシュと鏡しかないです…
  958. 牧野 郁美: じゃ、鏡!
  959. 七瀬 ゆきか: とりあえず、ユメミカガミを 出してもらえます?
  960. 入名 クシュ: うん
  961. 牧野 郁美: 覗いてみたらどうかな?
  962. 入名 クシュ: わかった… やってみるね
  963. 七瀬 ゆきか: …どんな感じでしょう?
  964. 七瀬 ゆきか: いま見えてる風景は実は幻で 鏡に本当の姿が映る的なことが
  965. 七瀬 ゆきか: 起きたりなんかして…
  966. クシュ&ゆきか: ――っ!?
  967. 牧野 郁美: お墓…?
  968. 七瀬 ゆきか: いきなり夜になりましたっ
  969. 七瀬 ゆきか: …………
  970. 七瀬 ゆきか: 地下に眠るお姫様…
  971. 七瀬 ゆきか: 地下…お墓の… 地面の下…?
  972. 牧野 郁美: えっ… それって…
  973. 牧野 郁美: (死んでる、ってことじゃ…)
  974. アネカ: ………… …………
  975. 入名 クシュ: ――っ!?
  976. ゆきか&郁美: あれは…!
  977. 入名 クシュ: アネカ…お姉さん
  978. アネカ: …………?
  979. アネカ: きみは…誰?
  980. 入名 クシュ: えっ…?
  981. 入名 クシュ: 誰って…クシュだよ! 隣に住んでた…
  982. アネカ: クシュ…ちゃん?
  983. 入名 クシュ: 覚えてないの!?
  984. アネカ: …ごめんなさい 何も…思い出せないの…
  985. 入名 クシュ: そんな…
  986. 入名 クシュ: ………… …………
  987. 牧野 郁美: ――っ!?
  988. 七瀬 ゆきか: 何だか…まずい予感がしますっ
  989. ゆきか&郁美: …………
  990. 牧野 郁美: ここって…?
  991. 七瀬 ゆきか: 魔女の結界か何かでしょうか…?
  992. アネカ: …………
  993. 入名 クシュ: …違う
  994. 入名 クシュ: ………… …………
  995. 入名 クシュ: これも私の心の中 いままでより、ずっと深い場所
  996. つづく…
  997.  
  998. FILENAME: text_514420-1_X0gyS.txt
  999. 第2部
  1000. Ⅴ ‐ すぎさりし夢
  1001. 牧野 郁美: ここって…?
  1002. 七瀬 ゆきか: 魔女の結界か何かでしょうか…?
  1003. アネカ: …………
  1004. 入名 クシュ: …違う
  1005. 入名 クシュ: ………… …………
  1006. 入名 クシュ: これも私の心の中 いままでより、ずっと深い場所
  1007. 牧野 郁美: そうなの?
  1008. 入名 クシュ: うん、私が空想してた “すぎさりし夢”と
  1009. 入名 クシュ: 同じ風景だから
  1010. 七瀬 ゆきか: (…とても荒れ果てて)
  1011. 七瀬 ゆきか: (…寂しい場所…ですね)
  1012. 牧野 郁美: …気のせいかな、クシュちゃん さっきよりきりっとしてない?
  1013. 入名 クシュ: そう? 目が冴えてきたからかな?
  1014. 七瀬 ゆきか: もしかすると… 夜が深まったからでは?
  1015. 入名 クシュ: たぶんそうだと思う
  1016. 牧野 郁美: ほんとに夜行性なんだ…
  1017. 入名 クシュ: アネカお姉さん
  1018. アネカ: な…何?
  1019. 入名 クシュ: …自分の名前はわかるんだよね? 他に覚えてることは?
  1020. アネカ: ………… …………
  1021. アネカ: …わからない ここって、どこ…なの?
  1022. アネカ: きみは、私を知ってるの?
  1023. 入名 クシュ: うん… とてもよく
  1024. 入名 クシュ: …………
  1025. 入名 クシュ: アネカお姉さんは 何も覚えてない…
  1026. 七瀬 ゆきか: それって…
  1027. 七瀬 ゆきか: シュシュに集めた記憶を 渡せばいいのでは?
  1028. 入名 クシュ: …違う気がする
  1029. 入名 クシュ: いままで集めたのは
  1030. 入名 クシュ: 私とアネカお姉さんが 出会ってからの思い出だから
  1031. 入名 クシュ: その前の記憶がないお姉さんと
  1032. 入名 クシュ: “出会い”をやり直すことは できないと思うよ
  1033. 牧野 郁美: じゃあ、どうするのぉ~?
  1034. 入名 クシュ: まず、アネカさんが私と “出会うまで“の記憶を戻して
  1035. 入名 クシュ: シュシュに込められた記憶は そのあとで返すんだと思う
  1036. 入名 クシュ: (そうすれば、今度こそ… 言えなかったさよならが言える)
  1037. 七瀬 ゆきか: 集めた記憶だけじゃなく 残り半分がいるってことですねっ
  1038. 牧野 郁美: やり直したい過去が大きいから 試練も半端じゃないってことぉ?
  1039. 七瀬 ゆきか: でも、どうしましょう?
  1040. 七瀬 ゆきか: 残り半分の記憶って… どうやって取り戻すんでしょうか
  1041. 入名 クシュ: …これを使うしか 思いつかないけど
  1042. 七瀬 ゆきか: シュシュじゃないなら それ以外にないですよね…
  1043. 牧野 郁美: アネカちゃんが それを覗き込めばいいのっ?
  1044. 入名 クシュ: たぶん…そうだと思う
  1045. 七瀬 ゆきか: あのっ…すみません
  1046. 七瀬 ゆきか: この試練って確か…
  1047. 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」の 通りに話を進めるんですよね?
  1048. 七瀬 ゆきか: お城の地下を目指してたのに お墓でお姫様と会ったりとか
  1049. 七瀬 ゆきか: 効果がわからないアイテムを とりあえず使ってみようとか
  1050. 七瀬 ゆきか: 何だか微妙に展開が 違ってきてる気がするんですが
  1051. 七瀬 ゆきか: そのあたり含めて
  1052. 七瀬 ゆきか: こんなにふんわりした感じで OKなんでしょうか?
  1053. 入名 クシュ: たぶん…大丈夫だと思う
  1054. 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」の 内容をあれこれ空想してるとき…
  1055. 入名 クシュ: こんなストーリーかなって 思ったことがあったし
  1056. 牧野 郁美: じゃあ、それが正解だよっ!
  1057. 七瀬 ゆきか: 入名さんが正しいと思うものが 正しいみたいですからねっ
  1058. 入名 クシュ: それじゃ…
  1059. 入名 クシュ: …アネカさん、この鏡を 覗き込んでみて
  1060. アネカ: う、うん…
  1061.  
  1062. FILENAME: text_514420-2_X0gyS.txt
  1063. アネカ: これって…
  1064. アネカ: 私の記憶?
  1065. アネカの母: ごめんね、アネカ
  1066. アネカの母: せっかくたくさん 友だちができたのに
  1067. アネカの母: 遠い国に引っ越しだなんて…
  1068. アネカ: 「ううん、仕方ないよ それに、次の学校も楽しみ!」
  1069. アネカの父: 歳の近い友だちは なかなかできないかもしれないな
  1070. アネカ: 「そうなの?」
  1071. アネカの母: 人口の少ない地域だからね 閉鎖的な土地柄だって聞くし
  1072. アネカの母: その分、家族同士で しっかり支え合って
  1073. アネカの母: 暮らしていきましょう
  1074. アネカ: 「…そうだよね!」
  1075. アネカの妹: これからも仲良くしようね お姉ちゃん!
  1076. アネカの父: …どうしてふたりで 森なんかに入ったんだ
  1077. アネカの母: 警察まで呼んで 本当に大騒ぎだったのよ
  1078. アネカの妹: …ごめんなさい…
  1079. アネカの妹: わたしがお姉ちゃんに頼んで 一緒に来てもらったの
  1080. アネカの妹: 絵本で読んだ、妖精さんの 踊った跡を探したいって…
  1081. アネカの父: いや、悪いのは 言いつけを守らなかったアネカだ
  1082. アネカの父: あの森は迷いやすくて 地元の人でもめったに近寄らない
  1083. アネカの父: だから立ち入ってはダメだと 何度も言って聞かせただろう?
  1084. アネカ: 「ごめんなさい…ダディ、マミィ」
  1085. アネカ: 「もう絶対にしないから」
  1086. アネカの父: …わかったなら、それでいい さあ、食事にしよう
  1087. アネカの母: そうね、アネカも懲りただろうし お腹もペコペコでしょう?
  1088. アネカの母: 仲良し姉妹が行方不明… なんてニュースにならなくて
  1089. アネカの母: 本当によかったわ…!
  1090. アネカ: …………
  1091. 入名 クシュ: ………… …………
  1092. 牧野 郁美: …いま見えたのって アネカちゃんの記憶…だよね?
  1093. アネカ: …そうみたい
  1094. アネカ: ずいぶん前のできごとだけど 確かに、私の記憶…
  1095. 入名 クシュ: ………… …………
  1096. 入名 クシュ: (知らなかった…)
  1097. 入名 クシュ: (アネカお姉さんに… 妹さんがいたの…?)
  1098. アネカ: あ…
  1099. 七瀬 ゆきか: …続きがあるんでしょうか?
  1100. 牧野 郁美: そんな感じだねっ!
  1101. 入名 クシュ: コンパクト、覗いてみて
  1102. アネカ: …うん
  1103.  
  1104. FILENAME: text_514420-3_X0gyS.txt
  1105. アネカ: ………… …………
  1106. 医者: …大変申し上げにくいのですが
  1107. 医者: 現在の医学では、妹さんの ご病気を治すことは不可能です
  1108. アネカの母: そんな…
  1109. 医者: 有望な新薬の研究開発も 進んではいるのですが
  1110. 医者: 実用化にはまだ 何年もかかる見込みで…
  1111. アネカの父: …とても間に合いそうもない?
  1112. 医者: はい…
  1113. 医者: このまま入院して、緩和ケアを 続けることもできますが
  1114. 医者: ご自宅での療養に切り替えて
  1115. 医者: 残された時間を 家族とお過ごしになるのが
  1116. 医者: ご本人にとって いちばん幸せではないかと…
  1117. 医者: お力になれず、申し訳ありません
  1118. アネカの妹: …お姉ちゃん…
  1119. アネカ: 「なぁに?」
  1120. アネカの妹: 昨日も寝ないで 看病してくれてたんでしょ?
  1121. アネカの妹: 少しは休んで…! お姉ちゃんが病気になっちゃうよ
  1122. アネカ: 「あなたの痛みに比べたら…」
  1123. アネカの妹: 痛くないよ 今日打ったのって
  1124. アネカの妹: 病気は治らないけど、痛みには すごく効く注射なんでしょ?
  1125. アネカ: 「えっと…」
  1126. アネカの妹: えへへ… お医者さんの話、聞こえちゃった
  1127. アネカの妹: ねえ、お姉ちゃん
  1128. アネカの妹: あとでまた あの本、読んで聞かせて
  1129. アネカ: 「また、妖精さんの冒険のお話?」
  1130. アネカの妹: うん…飽きちゃった?
  1131. アネカ: 「気にしないで 何度でも読み聞かせてあげる」
  1132. アネカの妹: えへ…ありがと
  1133. アネカの妹: わたし、この病気になって
  1134. アネカの妹: ちょっとだけ よかったこともあるんだ
  1135. アネカ: 「そうなの?」
  1136. アネカの妹: みんな優しいし…
  1137. アネカの妹: さっきみたいにワガママ言っても 聞いてくれるし
  1138. アネカの妹: それに…
  1139. アネカ: 「それに?」
  1140. アネカの妹: お姉ちゃんと…前より 仲良くなれたし…ね
  1141. アネカ: 「…………!」
  1142. アネカの妹: 病気になったあとのことも…
  1143. アネカの妹: 今この瞬間だって わたしの大切な宝物だよ
  1144. アネカの妹: それから…妖精さんの冒険は… もう…いいや
  1145. アネカ: 「えっ…」
  1146. アネカの妹: お姉ちゃんも…わたしのために 無理しなくてもよくなるね…
  1147. アネカ: 「…うそ?」
  1148. アネカの妹: これからは、わたしの分まで …幸せに生きて…
  1149. アネカの妹: ありがとう…
  1150. アネカの妹: おねえ…ちゃ…
  1151. アネカ: 「…うそでしょ!?」
  1152. アネカの妹: …………
  1153. アネカ: 「そんなっ…」
  1154. アネカの母: …大好きなアネカの側に 最後まで一緒にいられて
  1155. アネカの母: あの子は幸せだったと思うわ
  1156. アネカの父: ああ、だからアネカも あの子が生きられなかった分まで
  1157. アネカの父: 幸せに生きてほしい
  1158. アネカ: 「うん…」
  1159. キュゥべえ: ………… …………
  1160. クシュ&アネカ: ………… …………
  1161. 入名 クシュ: (亡くなった妹さんがいたなんて 私、知らなかった…)
  1162. 入名 クシュ: (アネカお姉さんは ひとことも口にしなかった)
  1163. 入名 クシュ: (顔も記憶も、私と出会う前の アネカさんそのものなのに…)
  1164. 入名 クシュ: (まるで、別の人みたい…)
  1165. 牧野 郁美: くみにも全部見えちゃった つらい記憶だね…
  1166. 七瀬 ゆきか: はい… それに、少し気になったことが
  1167. 牧野 郁美: 何?
  1168. 七瀬 ゆきか: 妹さんって、入名さんと 何となく似てません…?
  1169. 牧野 郁美: あ…確かに! クシュちゃんを幼くした感じ
  1170. 七瀬 ゆきか: はい…それから 見た目だけじゃなくて
  1171. 七瀬 ゆきか: 童話の世界が大好きだったり 声や雰囲気も…
  1172. 牧野 郁美: …うん 違うけど、似てるね
  1173.  
  1174. FILENAME: text_514420-4_X0gyS.txt
  1175. Ⅵ ‐ 心の試練
  1176. 七瀬 ゆきか: …アネカさんの記憶は さっきので終わりなんでしょうか
  1177. アネカ: …………
  1178. 七瀬 ゆきか: 覗き込んでも、何も起きません?
  1179. アネカ: …うん…
  1180. 七瀬 ゆきか: とすると…今のアネカさんは
  1181. 七瀬 ゆきか: 記憶の半分を取り戻した… ということです?
  1182. 入名 クシュ: そのはずだけど…
  1183. 七瀬 ゆきか: あとは入名さんと出会ってからの 思い出が詰まったこのシュシュを
  1184. 七瀬 ゆきか: アネカさんにお渡しすれば
  1185. 七瀬 ゆきか: アネカさんは、入名さんの 知っているアネカさんに戻る…?
  1186. 入名 クシュ: うん…ただ ちょっと引っかかる
  1187. 牧野 郁美: …何が?
  1188. 七瀬 ゆきか: …って、牧野さん!
  1189. 七瀬 ゆきか: どうしてその格好に 戻ってるんですか?
  1190. 牧野 郁美: ちょっと肌寒かったから…
  1191. 七瀬 ゆきか: …そうですか
  1192. 七瀬 ゆきか: では、話を戻しますと…
  1193. 七瀬 ゆきか: 入名さんは 何が気になるんでしょう?
  1194. 入名 クシュ: …アネカお姉さん
  1195. アネカ: はい?
  1196. 入名 クシュ: 自分がどうして 魔法少女になったのか
  1197. 入名 クシュ: 覚えてる?
  1198. アネカ: 魔法…少女?
  1199. 入名 クシュ: 魔法少女を知らない…?
  1200. 入名 クシュ: キュゥべえに会う前の記憶しか ないってこと…?
  1201. 七瀬 ゆきか: あ…アネカさんは 妹さんが亡くなったあとで
  1202. 七瀬 ゆきか: キュゥべえと出会って 魔法少女になったんですね
  1203. 入名 クシュ: うん、私が隣に引っ越したときは もう魔法少女だったんだけど
  1204. 入名 クシュ: でも、その記憶はないみたい
  1205. 七瀬 ゆきか: 抜けてる記憶がある…?
  1206. 入名 クシュ: そう、私もお姉さんが どんな願いをしたのかは知らない
  1207. 入名 クシュ: …聞いてないの
  1208. アネカ: ………… …………
  1209. アネカ: 私は、きみが誰なのか まだ知らない
  1210. アネカ: 私が誰なのかもよくわからない…
  1211. アネカ: …でも知りたい 自分が何者かわからないのはイヤ
  1212. 入名 クシュ: …………!
  1213. 入名 クシュ: (アネカお姉さんだったら… 絶対にそう言う…と思うけど)
  1214. 入名 クシュ: (でも、この人は 私の知らないアネカさん…)
  1215. 入名 クシュ: (だって…)
  1216. 入名 クシュ: “私を知らないアネカさん”は “私の知ってるアネカさん”じゃない
  1217. 入名 クシュ: (ふたりが出会う前だったら そんな風には思わなかった)
  1218. 入名 クシュ: (なのにそう思ってしまうのは)
  1219. 入名 クシュ: (アネカさんが 変わったからじゃない…)
  1220. 入名 クシュ: (私が変わっちゃったからだ)
  1221. 入名 クシュ: (同じ思い出を持ってないと)
  1222. 入名 クシュ: (出会いをやり直すことは できないんだ…)
  1223. アネカ: …………
  1224. 牧野 郁美: あの…とにかく やってみたらどう?
  1225. 牧野 郁美: シュシュに集めた記憶を アネカさんに戻してみれば
  1226. 牧野 郁美: 抜けてる記憶も一緒に 戻ってくるかもしれないし
  1227. 入名 クシュ: 怖い…よね?
  1228. アネカ: うん…少し…
  1229. 入名 クシュ: じゃあ、一緒にやってみよう?
  1230. アネカ: え…?
  1231. 入名 クシュ: 集めた記憶を戻すには 思い出を集めた品を…
  1232. 入名 クシュ: つまりシュシュを身に着けて 鏡を覗き込めばいいはずだけど
  1233. 入名 クシュ: ふたりで手をつないで
  1234. 入名 クシュ: シュシュを手首に巻きつけて それをやるの
  1235. 七瀬 ゆきか: …大丈夫でしょうか?
  1236. アネカ: クシュちゃんを信じるよ
  1237. 入名 クシュ: え…?
  1238. アネカ: きみとは 初めて会った気がしないから
  1239. 入名 クシュ: あ…
  1240. アネカ: 「不思議、どうしてかな?」
  1241. 入名 クシュ: 『…何が?』
  1242. アネカ: 「…きみとは初めて会った気がしないの」
  1243. 入名 クシュ: …………
  1244. 入名 クシュ: じゃあ、やってみる
  1245. 入名 クシュ: …準備はいい?
  1246. アネカ: うん…
  1247. 入名 クシュ: それじゃ…
  1248.  
  1249. FILENAME: text_514420-5_X0gyS.txt
  1250. アネカ: 「ふたりの心がつながって…」
  1251. 入名 クシュ: 『シュシュから流れ込んでくる…』
  1252. アネカ: 「抜け落ちていた、記憶の隙間が 埋まってゆく…」
  1253. アネカ: 「私が…」
  1254. 入名 クシュ: 『アネカお姉さんが…』
  1255. アネカ: 「魔法少女になるときに、願ったことは…」
  1256. キュゥべえ: 妹に代わる存在が欲しい…?
  1257. アネカ: 「うん…」
  1258. アネカ: 「あの子の死をなかったことにはしたくないし 別の妹が欲しいわけでもない」
  1259. アネカ: 「あの子がいない寂しさを 埋めてくれるような、そんな友だちが欲しいの」
  1260. アネカ: 「あの子の最後の言葉に応えるために…」
  1261. アネカの妹: 「えへ…ありがと わたし、この病気になって ちょっとだけよかったこともあるんだ」
  1262. アネカ: 「そうなの?」
  1263. アネカの妹: 「みんな優しいし… さっきみたいにワガママ言っても 聞いてくれるし、それに…」
  1264. アネカ: 「それに?」
  1265. アネカの妹: 「お姉ちゃんと…前より 仲良くなれたし…ね」
  1266. アネカ: 「…………!」
  1267. アネカの妹: 「病気になったあとのことも… 今この瞬間だって わたしの大切な宝物だよ」
  1268. アネカの妹: 「これからは、わたしの分まで …幸せに生きて…」
  1269. アネカの妹: 「ありがとう…」
  1270. アネカの妹: 「おねえ…ちゃ…」
  1271. アネカ: 「あの『ありがとう』を なかったことになんてしたくない」
  1272. アネカ: 「あの子の分まで幸せに生きるために “あの子”じゃなくて あの子に代わる友だちが欲しいの」
  1273. キュゥべえ: その願いはキミにとって 魂を差し出すに足るものかい?
  1274. アネカ: 「…うん」
  1275. キュゥべえ: 覚悟は決まったようだね
  1276. キュゥべえ: キミの祈りは 間違いなく遂げられる
  1277. アネカ: この服って…?
  1278. キュゥべえ: それが魔法少女になった キミの姿だよ
  1279. ピロン♪
  1280. アネカ: あっ…メッセージ マミィから?
  1281. アネカ: ………… …………
  1282. キュゥべえ: どうかしたのかい?
  1283. アネカ: 隣の空き家を
  1284. アネカ: 日本の会社が社宅として 借りることになったみたいなの
  1285. アネカ: 近々、日本から 親子が越してくるかもって…!
  1286. アネカ: 気の合う子だといいなぁ…
  1287. キュゥべえ: 契約が成立した以上 キミは必ず出会うことになる
  1288. キュゥべえ: 妹に代わる存在に なりうる友人とね
  1289. アネカ: まだ出会う前から 気の合う子って決まってる…
  1290. アネカ: それって、ソウルメイトみたい
  1291. 入名 クシュ: 私の一家が、アネカさんの隣に引っ越したのは…
  1292. 入名 クシュ: アネカさんが、妹に代わる友だちが欲しいって 願ったからだったの…?
  1293. アネカ: 「えっ…クシュちゃんも好きなの? 「さよならの寓話」シリーズ」
  1294. 入名 クシュ: 『…お姉さん、この本知ってるの?』
  1295. アネカ: 「うん、大好き!」
  1296. アネカ: 「不思議、どうしてかな?」
  1297. 入名 クシュ: 『…何が?』
  1298. アネカ: 「…きみとは初めて会った気がしないの」
  1299. アネカ: (…どうしよう)
  1300. アネカ: (見た目も、声も妹にそっくりで 好きな本までよく似てて…)
  1301. アネカ: (マミィもダディも驚いて 言葉が出なかった…)
  1302. アネカ: (もしも…あの声で)
  1303. アネカ: (“お姉ちゃん”って 呼んでくれたら…)
  1304. アネカ: …………
  1305. アネカ: (…だめよ、アネカ)
  1306. アネカ: (クシュちゃんはクシュちゃん! 妹の生まれ変わりじゃないの)
  1307. アネカ: (ただ、すごく気の合う子… そのことを忘れちゃだめ)
  1308. アネカ: うれしいな…まるで 新しく妹ができたみたい
  1309. 入名 クシュ: うん…私もうれしい
  1310. 入名 クシュ: ねえ、アネカさんのこと… お姉ちゃんって呼んでいいかな
  1311. アネカ: えっ…
  1312. アネカ: …それはやめておきましょ? マミィとダディが驚いちゃう
  1313. 入名 クシュ: …そうだね わかった
  1314. 入名 クシュ: 知らなかった…
  1315. 入名 クシュ: アネカお姉さんは 亡くなった妹さんを思い出させる私を見て 苦しみながら 別個の存在として扱おうとしてくれていた
  1316. 入名 クシュ: だから私に “お姉ちゃん”って呼ばせなかったんだ…
  1317. 入名 クシュ: だけどある日、アネカお姉さんは ソウルジェムの秘密を知ってしまった
  1318. 入名 クシュ: そして、私が魔法少女になることを 自分から後押ししたことを後悔して…
  1319. 入名 クシュ: その絶望のあまり…
  1320. アネカ: ………… …………
  1321. 入名 クシュ: …何も知らなかった
  1322. 入名 クシュ: アネカさんは、アネカさんの物語の主人公で
  1323. 入名 クシュ: 私は亡くなった妹さんの代わりに連れてこられた ただの代役
  1324. 入名 クシュ: アネカさんを苦しめて 絶望の運命に追いやるだけの役割だった…
  1325. 入名 クシュ: 魔法少女になるとき… 私も、おとぎ話の主人公みたいになれるかもって そう思っちゃったけど…
  1326. 入名 クシュ: 私は、主人公なんかじゃなかった
  1327. クシュ&アネカ: ………… …………
  1328. 入名 クシュ: あ…
  1329. アネカ: 全部、思い出した…
  1330. アネカ: 私、クシュちゃんに ひどいことしたんだね…
  1331. アネカ: ………… …ごめんね、黙ってて
  1332. アネカ: 幻滅したよね
  1333. アネカ: 許してもらうことなんて できないよね…
  1334. 入名 クシュ: 許すとか、許さないとか… そんなの…
  1335. 入名 クシュ: (私がアネカお姉さんを 嫌いになれるわけ、ない…!)
  1336. アネカ: …さよなら
  1337. 入名 クシュ: ――っ!?
  1338. 七瀬 ゆきか: えっ…!
  1339. 牧野 郁美: 消えちゃった…!
  1340. 入名 クシュ: …………
  1341. 入名 クシュ: (「オトラントのうみべで」の お話の通りに)
  1342. 入名 クシュ: (“お姫様”を 連れ戻せなかった…)
  1343. 入名 クシュ: “心の試練”に… 失敗した?
  1344. 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
  1345. ノンノン、ただしご忠告! 落第したら永遠に目が覚めないって 北養区のお嬢様の間ではもっぱらのウワサ
  1346. カガミヨカガミー!
  1347.  
  1348. FILENAME: text_514420-6_X0gyS.txt
  1349. Ⅶ ‐ さよならの寓話
  1350. 入名 クシュ: “心の試練”に… 失敗した?
  1351. 牧野 郁美: …いったい何があったの? ふたりは何を見たの?
  1352. 七瀬 ゆきか: わたしたちが知っているのは
  1353. 七瀬 ゆきか: 手をつないでいたふたりが 目を覚ましたと思ったら
  1354. 七瀬 ゆきか: アネカさんが突然 手を振りほどいて
  1355. 七瀬 ゆきか: 『…さよなら』と言い残して 消えてしまったことだけで…
  1356. 入名 クシュ: えっ…と…
  1357. 七瀬 ゆきか: …『妹に代わる友だちが欲しい』 アネカさんがそう願った結果
  1358. 七瀬 ゆきか: アネカさんと入名さんの ふたりが出会ったってこと…?
  1359. 牧野 郁美: 妹さんによく似た 相性バッチリのソウルメイトが
  1360. 牧野 郁美: 日本からやってきた… それがクシュちゃんで
  1361. 牧野 郁美: アネカちゃんはクシュちゃんを
  1362. 牧野 郁美: 魔法少女の世界に 引き込んじゃったことに苦しんで
  1363. 牧野 郁美: 絶望してしまった…
  1364. 牧野 郁美: (悲惨すぎるお話だよぉ…!)
  1365. 入名 クシュ: うん…魔法少女になって
  1366. 入名 クシュ: 私もおとぎ話の主人公みたいに なれるかも、なんて
  1367. 入名 クシュ: 浮かれてたのが、バカみたい
  1368. 入名 クシュ: 私は、代役だったのに…
  1369. 牧野 郁美: 代役じゃないよぉ!
  1370. 入名 クシュ: えっ…
  1371. 牧野 郁美: アネカちゃんはいつだって
  1372. 牧野 郁美: クシュちゃんを クシュちゃんとして見てたのに
  1373. 牧野 郁美: そんなこと言ったら とっても失礼だよっ、ぷんぷん!
  1374. 牧野 郁美: くみはまだ、修行中のアイドルで
  1375. 牧野 郁美: ドラマの脇役だって もらえてないけど…
  1376. 牧野 郁美: でも、くみの物語の中では くみだけが主人公なんだよっ!
  1377. 七瀬 ゆきか: そ、その通りですっ
  1378. 七瀬 ゆきか: …牧野さん、いまちょっと キャラと見た目がズレてますから
  1379. 七瀬 ゆきか: 言葉が頭に入ってきづらいかも しれませんけど…
  1380. 牧野 郁美: ふぇえっ!?…忘れてた
  1381. 牧野 郁美: きつい言い方して 怖がらせちゃいけないから
  1382. 牧野 郁美: 一生懸命キャラ作ったのにぃ…
  1383. 七瀬 ゆきか: …とっ、とにかくっ
  1384. 七瀬 ゆきか: 入名さんの物語に 入名さんの代役はいませんのでっ
  1385. 入名 クシュ: 私の代役はいない…
  1386. 入名 クシュ: そうだよね
  1387. 七瀬 ゆきか: それに試練の内容は 入名さんがイメージしてた
  1388. 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」の 通りに話を進めることで…
  1389. 七瀬 ゆきか: この夢の主人公は 入名さんなんですから
  1390. 七瀬 ゆきか: 次にすることは入名さんが 決めちゃってくださいっ
  1391. 入名 クシュ: 次にすること…
  1392. 入名 クシュ: ………… …………
  1393. 入名 クシュ: お姫様を取り戻す…?
  1394. 七瀬 ゆきか: それですっ
  1395. 牧野 郁美: でも、アネカちゃんはどこに…?
  1396. 入名 クシュ: ………… …お城の地下?
  1397. 牧野 郁美: そのイベントもうやったよね? お墓でアネカさんを見つけて…
  1398. 七瀬 ゆきか: …いえ、勝手にお城っぽいって 決めつけて正門に行っただけです
  1399. 七瀬 ゆきか: あのへんの展開は入名さんも うろおぼえゾーンで
  1400. 七瀬 ゆきか: 鏡を使ってみたら たまたま進展があったりとか
  1401. 七瀬 ゆきか: かなりオリジナルっぽい 展開になりかけてましたし…
  1402. 七瀬 ゆきか: わたしたち、本物のお城は まだ見つけていないのでは…?
  1403. 入名 クシュ: 本物のお城って…?
  1404. 牧野 郁美: …どう見てもアレだよぉ~?
  1405. 入名 クシュ: 行こう
  1406. 入名 クシュ: 私たちの 「オトラントのうみべで」は…
  1407. 入名 クシュ: …試練はまだ、終わっていない!
  1408. 入名 クシュ: 郁美さん、ゆきかさん 力を貸して…!
  1409. 七瀬 ゆきか: はいっ、村人Aなりに 精一杯がんばりますっ
  1410. 牧野 郁美: ゆきかちゃん 剣士役のはずだよねっ!?
  1411. ???の声: …通さない
  1412. ゆきか&郁美: ――っ!?
  1413. ???: 入名クシュの試練は 失敗に終わった…
  1414. ???: そう、夢から出ることは 永遠に許されない…
  1415. ???: アネカさんの願いの記憶を 欠落したままにしておけば
  1416. ???: 予定通り、幸せな出会いを やり直せたのに…
  1417. 入名 クシュ: まだ…試練は終わってないよ…!
  1418. ???: 違う、すべては終わった…
  1419. 七瀬 ゆきか: 見解の違いですねっ
  1420. 七瀬 ゆきか: …というか、この人たち 何なんでしょうか…?
  1421. 七瀬 ゆきか: 入名さんのニセモノっぽい 怪しい見た目ですけど…
  1422. 牧野 郁美: “うわさ”に反した行動を取ると その化身が襲ってくるらしいの
  1423. 牧野 郁美: 試練は本当は終わってるのに
  1424. 牧野 郁美: 強引な解釈で続けようとしたから 出てきた…とか?
  1425. 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」の ストーリーに沿っていれば
  1426. 入名 クシュ: 試練は続行できるはず…
  1427. 七瀬 ゆきか: 途中でオリジナル展開に なりかけたあたりからの解釈が
  1428. 七瀬 ゆきか: わたしたちと違うから
  1429. 七瀬 ゆきか: 戦って決めようってことですねっ
  1430. 入名 クシュ: えっと… …私のうろおぼえが原因?
  1431. ???: …通さないと言った
  1432. クシュ&ゆきか: …………!
  1433. 牧野 郁美: あぁー、もうぉっ! このローブ、邪魔っ!
  1434. バッ
  1435. 入名 クシュ: ―クシュ― …迷惑かけて、ごめん 最悪でも、ふたりは夢の外に逃がすから
  1436. 牧野 郁美: ―郁美― もうっ! とっくに大迷惑な目に遭ってるんだから
  1437. 牧野 郁美: ―郁美― いまさらそんなの言いっこなしだよっ!
  1438. 七瀬 ゆきか: ―ゆきか― その通りですっ お城に乗り込んで、アネカさんを連れ戻さないと
  1439. 七瀬 ゆきか: ―ゆきか― この面倒事から解放されても 後味が悪すぎますのでっ
  1440. ???: …抵抗はムダ 試練は終わった
  1441. 入名 クシュ: えっ…?
  1442. 七瀬 ゆきか: あれっ…?
  1443. 牧野 郁美: ふぇえええっ!? 学校に戻されてるぅ~!
  1444. 入名 クシュ: 敵…来るよ!
  1445.  
  1446. FILENAME: text_514420-7_X0gyS.txt
  1447. ???: ――っ!?
  1448. 入名 クシュ: やぁああぁーーーっ!
  1449. ???: …………!
  1450. 入名 クシュ: …………
  1451. 七瀬 ゆきか: あれっ、いま…?
  1452. 七瀬 ゆきか: 相手の魔力が入名さんの剣に… その、吸収されたような?
  1453. 入名 クシュ: うん…私の魔法 ちょっとだけ便利
  1454. 七瀬 ゆきか: (やっぱり吸血鬼っぽい…?)
  1455. カラン…
  1456. 入名 クシュ: あ…
  1457. 入名 クシュ: ユメミカガミ…
  1458. 牧野 郁美: 落としちゃ、めっ、だよぉ~! 大事なものなんだからぁ
  1459. 入名 クシュ: ごめん…
  1460. 入名 クシュ: ――っ!?
  1461. 入名 クシュ: えっ?
  1462. 七瀬 ゆきか: あっ…
  1463. 牧野 郁美: うわさの結界が解けたよ!?
  1464. 入名 クシュ: …夢から覚めたってこと?
  1465. 牧野 郁美: たぶん…
  1466. 七瀬 ゆきか: もしかすると、さっきの敵って… 倒しちゃいけない相手だったとか
  1467. 牧野 郁美: うわさのルールを破ったから うわさの化身に襲われてぇ…
  1468. 牧野 郁美: 化身を倒しちゃったら どうなるのかな?
  1469. 入名 クシュ: うわさ自体が…消える?
  1470. 七瀬 ゆきか: それじゃ… 城の地下にも行けないし
  1471. 七瀬 ゆきか: アネカさんを救い出すことも できません…よね?
  1472. 牧野 郁美: うそぉ~ これで、終わりっ?
  1473. 七瀬 ゆきか: …そんなっ
  1474. 入名 クシュ: …………
  1475. 入名 クシュ: ううん…
  1476. 入名 クシュ: まだ夢は終わってない
  1477. 七瀬 ゆきか: えっ?
  1478. 入名 クシュ: 人の気配、全然ない… 夢が始まったときと同じ
  1479. 七瀬 ゆきか: 確かにそうですっ
  1480. 入名 クシュ: それに、ほら… ユメミカガミがまだあるし
  1481. 牧野 郁美: それ、うわさが消滅したら なくなってるはずだよねっ
  1482. 入名 クシュ: うん…たぶん私たちを 夢から覚めたつもりにさせて
  1483. 入名 クシュ: あきらめさせるための…罠
  1484. 牧野 郁美: じゃ、さっきの城があるところに 戻るためには…?
  1485. 入名 クシュ: 鏡を使うんだと思う
  1486. 七瀬 ゆきか: いま見えてる風景は実は幻で 鏡に本当の姿が映る的なことが
  1487. 七瀬 ゆきか: 起きたりなんかして…
  1488. 七瀬 ゆきか: あのときと同じですねっ
  1489. 入名 クシュ: うん… 校舎の中に見えるけど
  1490. 入名 クシュ: ユメミカガミに映して見れば…
  1491. 入名 クシュ: やっぱり…!
  1492. 七瀬 ゆきか: まだ結界の中ですっ
  1493. 入名 クシュ: 今のって…
  1494. 七瀬 ゆきか: はい、廊下の奥に… 光がっ
  1495. 七瀬 ゆきか: あの光に飛び込めば…
  1496. 牧野 郁美: さっきの城に戻れるかもっ…!
  1497. 入名 クシュ: うん!
  1498. ???の声: …そうはさせない
  1499. ???: …………
  1500. 牧野 郁美: わざわざ邪魔しに 出てきたってことはぁ…
  1501. 七瀬 ゆきか: 光に飛び込むのが 正解なんですねっ
  1502. 牧野 郁美: ここは引き受けたからっ!
  1503. 七瀬 ゆきか: 入名さん、走って!
  1504. 入名 クシュ: …うん ありがと
  1505. ???: …………!
  1506. 七瀬 ゆきか: 邪魔させませんっ
  1507. 牧野 郁美: くみたちが相手だよっ!
  1508.  
  1509. FILENAME: text_514420-8_X0gyS.txt
  1510. 牧野 郁美: はぁ…はあ…
  1511. 七瀬 ゆきか: もう少しですっ
  1512. ???: …………
  1513. 七瀬 ゆきか: 負けられませんっ
  1514. 七瀬 ゆきか: 入名さんがあの光に たどり着くまでは!
  1515. 牧野 郁美: うん…くみも、がんばる!
  1516. 入名 クシュ: …………
  1517. 入名 クシュ: 見えた…!
  1518. 入名 クシュ: (あの光に…飛び込んで…)
  1519. 入名 クシュ: (夢の最深部まで!)
  1520. 入名 クシュ: やあぁぁあーーーっ!
  1521. 入名 クシュ: あそこだ…! あの城の地下に、アネカお姉さんが…!
  1522. 入名 クシュ: 待ってて… いま、私が行くから!
  1523. 入名 クシュ: アネカお姉さん…
  1524. 入名 クシュ: ………… …………
  1525. 入名 クシュ: 私が迎えに行くからね
  1526. ???: …………
  1527. 牧野 郁美: ふぇぇっ!?
  1528. 七瀬 ゆきか: いきなり…消えました?
  1529. 牧野 郁美: クシュちゃんが 光に飛び込んだからかなぁ?
  1530. 七瀬 ゆきか: まあ、意味ないですよね
  1531. 七瀬 ゆきか: わたしたち脇役と これ以上戦っても…
  1532. 牧野 郁美: クシュちゃんはアネカちゃんを どうするつもりなのかなぁ…?
  1533. 七瀬 ゆきか: へっ…?
  1534. 七瀬 ゆきか: 夢から連れ出すために 飛び込んだのでは…?
  1535. 牧野 郁美: 全部の記憶が戻った アネカちゃんを連れて帰って
  1536. 牧野 郁美: もう一度会いたいっていうこと?
  1537. 牧野 郁美: それはクシュちゃんが
  1538. 牧野 郁美: 本当に望んでいる ことなのかな、って
  1539. 七瀬 ゆきか: …アネカさんも 亡くなった妹さんを
  1540. 七瀬 ゆきか: 甦らせたいとは 願わなかったんですよね
  1541. 七瀬 ゆきか: それでも入名さんのことで あんなに苦しんだ…
  1542. 牧野 郁美: うん…
  1543. 牧野 郁美: 永遠の眠りについた人を お墓から呼び起こす…
  1544. 牧野 郁美: それはとっても怖いことだって くみは思うの
  1545. 入名 クシュ: ………… …………
  1546.  
  1547. FILENAME: text_514420-9_X0gyS.txt
  1548. ギィ…
  1549. 入名 クシュ: アネカさん…
  1550. アネカ: …あ、えっと
  1551. アネカ: …クシュちゃん だっけ?
  1552. 入名 クシュ: えっ… 記憶…元に戻っちゃったの?
  1553. アネカ: えっと…クシュちゃんは
  1554. アネカ: さっき、私の記憶を取り戻す 手伝いをしてくれた子だよね?
  1555. アネカ: 私、それから妹の 悲しい記憶を思い出して…
  1556. アネカ: 気づいたらここにいたの
  1557. アネカ: でも不思議…
  1558. 入名 クシュ: え?
  1559. アネカ: クシュちゃんって 妹によく似てる気がする
  1560. 入名 クシュ: (やっぱり 最後に一緒に見た記憶を…)
  1561. 入名 クシュ: (魔法少女になったあとのことを 忘れちゃってる…)
  1562. アネカ: ここ…どこなの? 真っ暗だけど
  1563. 入名 クシュ: ここはお城の地下
  1564. 入名 クシュ: 私はアネカさんを ここから連れ出しにきたの
  1565. アネカ: そうなんだ…
  1566. 入名 クシュ: じゃあ、覚えてないんだ?
  1567. 入名 クシュ: 私に、さよならって言って 消えたことも
  1568. アネカ: そうなの?
  1569. 入名 クシュ: …うん
  1570. 入名 クシュ: …準備はいい?
  1571. アネカ: うん…
  1572. 入名 クシュ: (シュシュを振りほどいたから 記憶も消えちゃったんだ…)
  1573. 入名 クシュ: じゃあ、願い事をして 私と出会ったときのことも
  1574. 入名 クシュ: また忘れちゃったんだね
  1575. アネカ: 願い事…?
  1576. 入名 クシュ: うん、魔法少女になった理由
  1577. アネカ: 魔法少女って…?
  1578. 入名 クシュ: (あのときの反応と同じ…)
  1579. 入名 クシュ: (この人は、妹さんを失って すごく傷ついていた…)
  1580. 入名 クシュ: (まだ、魔法少女になる前の アネカさんなんだ…)
  1581. 入名 クシュ: …………
  1582. もしも、あの時に戻れたら… もしも、あの日をやり直せたら… 毎週、オヒトリサマを抽選で “もしも”の夢にゴアンナーイ!
  1583. 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
  1584. 入名 クシュ: (お別れは、突然すぎて ずっと心残りだった…)
  1585. 入名 クシュ: (だから、いつも思ってた)
  1586. 入名 クシュ: お別れも、ちゃんとできなかった
  1587. 入名 クシュ: もう一度だけ… さよならをやり直せたらいいのに
  1588. 入名 クシュ: (さよならをやり直すために 出会いをやり直したかった)
  1589. 入名 クシュ: (…でも、私が会いたいのは どのアネカさんなの?)
  1590. 入名 クシュ: ………… …………
  1591. 入名 クシュ: …ねえ
  1592. アネカ: 何?
  1593. 入名 クシュ: 聞いてくれるかな…
  1594. アネカ: …いいよ
  1595. 入名 クシュ: ここはね、“もしも”の夢の中
  1596. 入名 クシュ: やり直したかった過去に 戻ることができる場所なの
  1597. アネカ: うん…
  1598. 入名 クシュ: 妹さんを亡くして
  1599. 入名 クシュ: 悲しい思いをしている 今のあなたはね…
  1600. 入名 クシュ: 私と出会う前の、過去のあなた
  1601. 入名 クシュ: あなたはこの先の未来 私と出会って、仲良くなって
  1602. 入名 クシュ: そのせいで苦しんで 最後は私の前から姿を消すの
  1603. アネカ: …うん
  1604. 入名 クシュ: だから私は できなかったお別れをしたくて
  1605. 入名 クシュ: あなたと…アネカお姉さんと もう一度会いたいと思ったんだ…
  1606. アネカ: うん…それで?
  1607. 入名 クシュ: このシュシュを渡せば
  1608. 入名 クシュ: あなたは私と過ごした日々を 思い出す
  1609. 入名 クシュ: そうすれば今度こそ 言えなかったさよならを
  1610. 入名 クシュ: 言えると思ってたんだけど…
  1611. アネカ: けど?
  1612. 入名 クシュ: けど、違うの
  1613. 入名 クシュ: この“もしも”の夢の中で 私はいろんなあなたを知った
  1614. 入名 クシュ: 私を知らない、今のあなた 私と会った頃のアネカさん
  1615. 入名 クシュ: 私と会って、傷ついて いなくなる前のアネカさん…
  1616. アネカ: …………
  1617. 入名 クシュ: 真実から目を背ければ つらい過去も消し去って
  1618. 入名 クシュ: 楽しかった記憶だけを 残すことだって
  1619. 入名 クシュ: できたのかもしれないけど…
  1620. 入名 クシュ: でも…わかったの
  1621. 入名 クシュ: 私が会いたかったアネカさんは ただひとり
  1622. 入名 クシュ: 私と出会って、笑い合って
  1623. 入名 クシュ: 苦しんで、そして姿を消した “あの”アネカお姉さんだけで
  1624. 入名 クシュ: あなたにどんな記憶を渡しても それは別の人なんだって
  1625. 入名 クシュ: ごめんね…私が何を言ってるか わからないよね…
  1626. アネカ: ううん、わかるよ クシュちゃんの言ったこと
  1627. アネカ: 私の妹は、今はもういない あの子ただひとりで
  1628. アネカ: “あの子”とは二度と会えない… それと同じことだよね?
  1629. 入名 クシュ: うん…
  1630. 入名 クシュ: 私がお別れをしたかったのは もうどこにもいない人で
  1631. 入名 クシュ: そんな私のわがままで
  1632. 入名 クシュ: あなたの記憶をこれ以上 いじりまわしたりしたくない…
  1633. 入名 クシュ: だから、このシュシュは あなたに返さない
  1634. 入名 クシュ: 私と“アネカお姉さん”の 思い出は
  1635. 入名 クシュ: 私だけのものにしておくね
  1636. アネカ: うん…
  1637. 入名 クシュ: …聞いてくれて、ありがとう やっぱりアネカさんは優しいな
  1638. 入名 クシュ: さあ、ここから出よう?
  1639. アネカ: 出られるの?
  1640. 入名 クシュ: 出られるよ、きっと
  1641. 入名 クシュ: …私の手を取って
  1642. アネカ&クシュ: …………
  1643.  
  1644. FILENAME: text_514420-10_X0gyS.txt
  1645. 入名 クシュ: ………… …………
  1646. キンコ~ン♪ カンコ~ン♪
  1647. 入名 クシュ: ――っ!?
  1648. 入名 クシュ: 夢を…見てたの?
  1649. 入名 クシュ: 補習… まだ、始まってない
  1650. 入名 クシュ: あ…
  1651. 入名 クシュ: ―クシュ― アネカさんのくれたシュシュ… 想いを結んでくれたシュシュ
  1652. 入名 クシュ: ―クシュ― いまは私の手にあって 想いを私に伝えてくれる
  1653. 入名 クシュ: ―クシュ― 光が消えて 夢が終わった、そのあとも…
  1654. 入名 クシュ: (夢だけど… 本当にあったことなんだ)
  1655. 入名 クシュ: アネカさん…
  1656. アネカ&クシュ: …………
  1657. 入名 クシュ: (つないだ手のぬくもりが まだ残ってる)
  1658. 入名 クシュ: (まだ魔法少女になってなくて 私とも出会っていない頃の)
  1659. 入名 クシュ: (その先の未来を知らない アネカさん…)
  1660. ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
  1661. 入名 クシュ: (…アネカさんを お城の地下から連れ出せば)
  1662. 入名 クシュ: (夢から連れ出したことに なるのかな…?)
  1663. 入名 クシュ: (それって…)
  1664. 入名 クシュ: (私はどんな“もしも”を 選んだことになるの…?)
  1665. パラ…
  1666. 入名 クシュ: あ…
  1667. 入名 クシュ: (机の上に メモが置いてある…?)
  1668. 補習がんばってねぇ~! 愉快な幽霊と村人剣士Aより
  1669. 入名 クシュ: (郁美さん ゆきかさん…)
  1670. ???の声: ごめん! 入名さん、まだいる!?
  1671. 入名 クシュ: 先生… あ…はい
  1672. 遅れてごめんなさいね ひどい連絡ミスがあって…
  1673. 先生同士で話し合って
  1674. こういうことは 二度とないようにするから!
  1675. 入名 クシュ: …あ、大丈夫です
  1676. 入名 クシュ: (寝てたし…)
  1677. それじゃ 補習を始めましょうか
  1678. ―断章―
  1679. 灯花: …………
  1680. ねむ: さっきから無言で 思索にふけっているけれど
  1681. ねむ: また何か悪だくみでも しているのかな?
  1682. 灯花: わたくしをどういう人間だと 思っているのかにゃー!?
  1683. ねむ: 灯花の想像に委ねるよ
  1684. 灯花: 委ねてほしくないんだけどー!?
  1685. 灯花: …考えていたのは ユメミカガミのうわさのことだよ
  1686. ねむ: ん…?
  1687. 灯花: 過去をやり直せる… “もしも”が現実になる
  1688. 灯花: それって過去への干渉ってこと?
  1689. 灯花: 例えば事故でねむが死んで
  1690. 灯花: 「もしも事故がなかったら」と わたくしが望んだら
  1691. 灯花: ねむが生き返るの?
  1692. ねむ: その例えには 若干の悪意を感じるけど…
  1693. ねむ: うわさは万能じゃない
  1694. ねむ: 相応の対価が必要で 過ぎた望みには応えられない
  1695. ねむ: そういう仕組みになっているよ
  1696. 灯花: 質問に答えてないよー
  1697. 灯花: わたくしが聞いているのは
  1698. 灯花: 本当に過去が 変わるのかっていうことだよ
  1699. ねむ: その場合、何をもって 「本当に」と呼ぶのかが問題だね
  1700. 灯花: どーいう意味?
  1701. ねむ: そう…さっきの例えで言うと いなくなった僕の代わりに
  1702. ねむ: 僕と同じ記憶を持つ 複製が配置され
  1703. ねむ: 周囲の記憶も丸ごと 書き換えられたとしよう
  1704. ねむ: それが本物なのか
  1705. ねむ: それとも本物と同じ記憶を持つ 複製なのか
  1706. ねむ: 灯花には区別がつくのかい?
  1707. 灯花: …哲学問答にきょーみはないよ!
  1708. ねむ: 失礼、抽象的な議論に 聞こえてしまったかな?
  1709. ねむ: さまざまな可能性が 考えられるけど
  1710. ねむ: たとえばそうしたことならば 実現可能だと思う…という
  1711. ねむ: 私見に基づいた言葉の つもりだったんだけど…
  1712. 灯花: 自分が創造したうわさの性質も わかんないのー?
  1713. ねむ: あのうわさのすることは
  1714. ねむ: その人の心が望む やり直しの機会を用意する…
  1715. ねむ: ただそれだけだよ
  1716. ねむ: 支払った代償に応じてね
  1717. ねむ: 僕達には観測不可能な その舞台裏で何が起きているのか
  1718. ねむ: 僕の見解を詳しく聞いたとして
  1719. ねむ: むふっ…灯花は 素直にそれを信じるのかな?
  1720. 灯花: んーーーーー!
  1721. 灯花: ねむに聞いたわたくしが 愚かだったよーー!!
  1722.  
  1723. FILENAME: text_514420-11_X0gyS.txt
  1724. ―エピローグ―
  1725. <翌日…>
  1726. 入名 クシュ: ふぁ…
  1727. 入名 クシュ: ………… …ねむ…
  1728. 入名 クシュ: (お店が開いてるうちに 本屋さん…寄らなきゃ)
  1729. 入名 クシュ: ………… …………
  1730. 入名 クシュ: (昨日の夢… もう終わったんだよね?)
  1731. 入名 クシュ: (ユメミカガミは なくなっちゃってたし…)
  1732. 入名 クシュ: (…結局、夢から 出られたってことは)
  1733. 入名 クシュ: (試練を乗り越えた… ってことだよね?)
  1734. 入名 クシュ: (一度、失敗しかけたけど…)
  1735. 入名 クシュ: ………… …………
  1736. 入名 クシュ: うん…たぶん私たちを 夢から覚めたつもりにさせて
  1737. 入名 クシュ: あきらめさせるための…罠
  1738. 入名 クシュ: (何だか、似たような場面に 心あたりがある気が…?)
  1739. 入名 クシュ: (あ、これって…!)
  1740. 入名 クシュ: (「オトラントのうみべで」の 話を聞いて…)
  1741. 入名 クシュ: (…私が、勝手に 空想してた場面だ)
  1742. 入名 クシュ: (お姫様の救出に一度失敗して)
  1743. 入名 クシュ: (夢から追い出されたと 思い込むんだけど…)
  1744. 入名 クシュ: (実は幻を見せられてたのを 見破るっていう場面…)
  1745. 入名 クシュ: (…ということは)
  1746. 牧野 郁美: “うわさ”に反した行動を取ると その化身が襲ってくるらしいの
  1747. 牧野 郁美: 試練は本当は終わってるのに
  1748. 牧野 郁美: 強引な解釈で続けようとしたから 出てきた…とか?
  1749. 入名 クシュ: (あの敵が出てきたのも 実は試練の一部で…)
  1750. 入名 クシュ: (夢の中で実際に 私の空想通りになったから)
  1751. 入名 クシュ: (…試練は合格ってこと?)
  1752. ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
  1753. 入名 クシュ: それって…
  1754. 入名 クシュ: お別れも、ちゃんとできなかった
  1755. 入名 クシュ: もう一度だけ… さよならをやり直せたらいいのに
  1756. 入名 クシュ: …………
  1757. ???の声: あっ
  1758. ???の声: マミィ、ダディ! こっちこっち!
  1759. 入名 クシュ: …えっ
  1760. 入名 クシュ: ―クシュ― ………… …………
  1761. 入名 クシュ: ―クシュ― …アネカ…さん…
  1762. 入名 クシュ: ―クシュ― ………… …………
  1763. アネカの声: ごめん、どの出口か わかんなかった?
  1764. アネカの母の声: …ちょっと迷ったわ 無事に会えてよかった
  1765. アネカの父の声: それで 行きたい店っていうのは?
  1766. アネカの声: いまから案内するね!
  1767. 入名 クシュ: …………
  1768. 入名 クシュ: (…夢じゃない)
  1769. 入名 クシュ: (あれは、魔法少女にもならず 私とも出会わなかった)
  1770. 入名 クシュ: (“もしも”のアネカさん…)
  1771. 入名 クシュ: (顔も、声も、そっくりなのに… わたしの知らないアネカさん)
  1772. 入名 クシュ: …そっか
  1773. 入名 クシュ: もう一度だけ… さよならをやり直したかった
  1774. 入名 クシュ: さよならをやり直すために 出会いをやり直したかった
  1775. 入名 クシュ: (…ユメミカガミは 私が本当に望んでいたことを)
  1776. 入名 クシュ: (ちゃんと叶えてくれたんだね)
  1777. 入名 クシュ: (おたがい他人同士のまま 振り返ることなく、すれ違う…)
  1778. 入名 クシュ: (それが、私のやり直したかった アネカさんとの出会い)
  1779. 入名 クシュ: ずっと凍りついたままだった 私の時間が…
  1780. 入名 クシュ: やっと、動きはじめた
  1781. 入名 クシュ: …ありがとう
  1782. 入名 クシュ: そして…
  1783. 入名 クシュ: さよなら
  1784. おしまい
Add Comment
Please, Sign In to add comment