Not a member of Pastebin yet?
Sign Up,
it unlocks many cool features!
- (Since there were a few adjustments made to the text later on and this hasn't been TL-ed yet still, I decided to do a new extract of the JP transcript.)
- FILENAME: text_514410-0.txt
- ―プロローグ―
- コツ…
- 入名 クシュ: ふぁ…
- こくっ
- 入名 クシュ: ………… …まだ…眠…
- 入名 クシュ: …………
- ???の声: あっ
- ???の声: マミィ、ダディ! こっちこっち!
- 入名 クシュ: …えっ
- 入名 クシュ: (この声…!)
- 入名 クシュ: (人違い…?)
- 入名 クシュ: (…当然、だよね)
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: お別れも、ちゃんとできなかった
- 入名 クシュ: もう一度だけ… さよならをやり直せたらいいのに
- 入名 クシュ: ………… …………
- ???の声: お嬢さん
- 入名 クシュ: …えっ?
- 落としましたよ、これ
- 入名 クシュ: …それ、私のじゃ…
- いえ、あなた様のものです
- ご当選おめでとうございます
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: …ハッ
- 入名 クシュ: ………… …学校、行かなきゃ
- FILENAME: text_514410-1_elfXK.txt
- 第1部
- Ⅰ ‐ ユメミカガミ
- <聖リリアンナ学園>
- 七瀬 ゆきか: ………… …………
- 七瀬 ゆきか: えっ…と
- 七瀬 ゆきか: 待ち合わせの時間… もう、過ぎてますよね?
- 七瀬 ゆきか: …もしかして、時間 間違えちゃったりしてます?
- …それ、本当?
- ええ 神浜市の外の話らしいけど
- それにしても、いまどき 吸血鬼だなんて…
- 七瀬 ゆきか: (え…?)
- 七瀬 ゆきか: (何だか、不吉な噂話が 聞こえたような…?)
- 七瀬 ゆきか: ………… …それにしても
- 七瀬 ゆきか: 門から出てくるのは 下校される方ばかりで
- 七瀬 ゆきか: リリアンナ生徒会からのお迎えは 一向にいらっしゃいませんね…
- 入名 クシュ: ………… …………
- 七瀬 ゆきか: (あれっ 学園内へ、外から…?)
- 七瀬 ゆきか: (こんな時間に登校… のはず、ありませんよね?)
- 七瀬 ゆきか: (…忘れ物とか?)
- ドサッ
- 七瀬 ゆきか: ――っ!?
- 入名 クシュ: …いたた… 転んじゃった…
- 七瀬 ゆきか: あっ、あの! 大丈夫ですかっ
- 入名 クシュ: …あ、うん… 平気…
- 入名 クシュ: あ…ごめんね 急がないと補習、遅れちゃうから
- 入名 クシュ: それじゃ…
- 七瀬 ゆきか: あ、はい… お気をつけてっ
- 入名 クシュ: …ありがと
- 七瀬 ゆきか: (放課後の補習を受けにきた… ということでしょうか?)
- ねえ、うちの学校に あんな子いたかな?
- 初めて見たかも
- 七瀬 ゆきか: (わたしじゃなくて… さっきの子のこと…ですよね?)
- 七瀬 ゆきか: (わたしが聖リリアンナ学園の 生徒じゃないのは)
- 七瀬 ゆきか: (制服を見れば 明らかですので!)
- …でね、いま話したのとは 別の噂なんだけど
- まだあるのね
- そう…ユメミカガミの噂って いってね…
- 七瀬 ゆきか: …………?
- …ごめんなさい! 大変お待たせしてしまって…
- リリアンナ生徒会の者です!
- 七瀬 ゆきか: あ、初めまして 水名女学園の七瀬ですっ
- 次の交流会の担当の方よね? こちらへいらしてください
- 七瀬 ゆきか: はいっ よろしくおねがいします!
- 黒羽根: ………… …………
- FILENAME: text_514410-2_elfXK.txt
- …では、水名女学園のみなさんに よろしくお伝えくださいね
- 七瀬 ゆきか: はいっ 次の交流会、楽しみにしてますっ
- それじゃ バス停までお送りしますね
- 七瀬 ゆきか: あ、校門までで結構ですっ その先はわかりますので…
- 七瀬 ゆきか: ――っ!?
- 七瀬 ゆきか: 生徒会の方は…?
- 七瀬 ゆきか: ………… …いない?
- 七瀬 ゆきか: …それに、何でしょう この違和感…?
- 七瀬 ゆきか: 静かすぎます… 人の気配が…ない?
- 七瀬 ゆきか: (学園内から… 一斉に人が消えた?)
- 七瀬 ゆきか: (間違いありません 巻き込まれてますっ)
- 七瀬 ゆきか: (そう、これは…)
- 七瀬 ゆきか: 面倒事ですっ
- <同じ頃…>
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: ――っ!?
- 入名 クシュ: …ご、ごめ… ね、寝てないよ!?
- 入名 クシュ: …誰もいない?
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: (確か…補習の時間になっても 先生が姿を見せないから)
- 入名 クシュ: (うとうとしてたら… いつのまにか、眠り込んで…)
- 入名 クシュ: あ…この鏡
- ???の声: お嬢さん
- 入名 クシュ: …えっ?
- 落としましたよ、これ
- 入名 クシュ: …それ、私のじゃ…
- いえ、あなた様のものです
- ご当選おめでとうございます
- 入名 クシュ: (あれって 夢じゃなかったんだ…)
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: 鏡なのに… …私が映ってない?
- 入名 クシュ: まるで、夢の中…
- 入名 クシュ: “ユメミカガミ”… あの噂、本当だったの?
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: …誰か、いないのかな?
- アラもう聞いた?誰から聞いた? ユメミカガミのそのウワサ
- もしも、あの時に戻れたら… もしも、あの日をやり直せたら… 毎週、オヒトリサマを抽選で “もしも”の夢にゴアンナーイ!
- 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
- ノンノン、ただしご忠告! 落第したら永遠に目が覚めないって 北養区のお嬢様の間ではもっぱらのウワサ
- カガミヨカガミー!
- FILENAME: text_514410-3_elfXK.txt
- ガラ…
- 入名 クシュ: (人の気配…ない…)
- 入名 クシュ: (やっぱり… 静かすぎる…よね?)
- 七瀬 ゆきか: あ…
- 入名 クシュ: …人…いた?
- 七瀬 ゆきか: 確か、校門で会いましたよね?
- 入名 クシュ: そういえば…
- 入名 クシュ: …いたた… 転んじゃった…
- 七瀬 ゆきか: あっ、あの! 大丈夫ですかっ
- 七瀬 ゆきか: …あ、申し遅れましたが 生徒会のお使いで来ました
- 七瀬 ゆきか: 水名女学園高等部1年の 七瀬ゆきかと申しますっ
- 入名 クシュ: ゆきか…さん?
- 入名 クシュ: …私は、入名クシュ リリアンナの中等部3年
- 七瀬 ゆきか: 入名さんですか… よろしくお願いしますっ
- 七瀬 ゆきか: で、さっそくなんですが… ここってどこなんでしょう?
- 入名 クシュ: たぶん…夢の中だと思う 他の人の気配、全然ないし…
- 七瀬 ゆきか: はっきりしているのは
- 七瀬 ゆきか: わたしが巻き込まれた以上 何らかの面倒事だということ…
- 入名 クシュ: …え?
- 七瀬 ゆきか: いえ、お気になさらず こちらの話ですのでっ
- 入名 クシュ: 校舎の様子、見てみる…?
- 七瀬 ゆきか: そうしましょう!
- 七瀬 ゆきか: …さっきは、教室に おひとりでいたんですか?
- 入名 クシュ: うん…補習が始まるのを 待ってた
- 七瀬 ゆきか: 夕方に登校されてましたよね? お昼の授業はお休みしてた…?
- 入名 クシュ: うん… 私、お昼は来ないから
- 入名 クシュ: 毎日、夕方に来て ひとりで特別補習を受けてる
- 七瀬 ゆきか: 毎日、補習…?
- 七瀬 ゆきか: でしたら、普通に登校して 授業を受ければよいのでは…
- 入名 クシュ: …………
- 七瀬 ゆきか: (はっ…)
- 七瀬 ゆきか: (何か深い事情とか ご病気とかをお持ちなのかも…)
- 入名 クシュ: …昼間は…起きられないから
- 七瀬 ゆきか: …えっ
- 入名 クシュ: …ほんとは夕方も… …無理やり…起きてるだけで…
- こくっ
- 七瀬 ゆきか: ――っ!?
- 入名 クシュ: …すぅ…
- 七瀬 ゆきか: …あの…もしかして… 寝ちゃって…ます?
- 入名 クシュ: …はっ!
- 入名 クシュ: ね…寝てないよ!?
- 七瀬 ゆきか: …………
- 七瀬 ゆきか: (これはやっぱり、ご病気とか… 体質的な?)
- 入名 クシュ: …で、出席日数がゼロだから…
- 七瀬 ゆきか: (あ… 話、続いてたんですね)
- 入名 クシュ: 補習は欠かさず受けるのと 定期テストで全教科8割以上を
- 入名 クシュ: 進級の条件にしてもらってて
- 七瀬 ゆきか: えっ…全教科8割って むしろ成績優秀なのでは…?
- 七瀬 ゆきか: リリアンナの定期テストって かなり難しいって伺ったことが…
- 入名 クシュ: うん…出席日数が足りないから 上位を維持するのが条件
- 七瀬 ゆきか: (頭はいい子なんですね…)
- 七瀬 ゆきか: 来年は高等部… 進級がかかっているとなると
- 七瀬 ゆきか: ここが踏ん張りどころですねっ
- 入名 クシュ: …昼間、目が覚めないのは 不可抗力だから
- 入名 クシュ: すぐに退学には ならないみたいだけど
- 七瀬 ゆきか: (…不可抗力?)
- 入名 クシュ: 進級できないと、中学3年生を もう1回することになるって…
- 七瀬 ゆきか: えっ…中学生で そんなのあるんですかっ
- 入名 クシュ: 前例、あるみたい
- 七瀬 ゆきか: ………… …………
- 七瀬 ゆきか: …ところで、この廊下 どこまで続くんでしょう?
- 七瀬 ゆきか: もう10分くらい 歩いたような気がするんですけど
- 七瀬 ゆきか: 聖リリアンナ学園には こんなに長い廊下が…?
- 入名 クシュ: …ないよ
- 入名 クシュ: やっぱり、ユメミカガミの中… なのかな…?
- 七瀬 ゆきか: えっ…? ユメミ…カガミ?
- FILENAME: text_514410-4_elfXK.txt
- 入名 クシュ: やっぱり、ユメミカガミの中… なのかな…?
- 七瀬 ゆきか: えっ…? ユメミ…カガミ?
- 七瀬 ゆきか: それって…?
- ~♪~♪~♪
- クシュ&ゆきか: ――っ!?
- 七瀬 ゆきか: 誰かの歌声が…!
- 入名 クシュ: …うん あっちの教室から
- 黒羽根: あの子はキュンキュンでぇ~?
- 黒羽根: いつもニコニコ天使なぁ~♪
- コン、コン
- 黒羽根: ふぇっ!?
- 七瀬 ゆきか: お邪魔いたします…
- 黒羽根: …コホン ど、どうも
- 入名 クシュ: えっと…あなたは…
- 黒羽根: …な、名乗る名はないよっ 私は、ただの黒羽根
- 入名 クシュ: 黒…羽根?
- 黒羽根: えっ、と… マギウスの翼の…
- 七瀬 ゆきか: …………?
- 黒羽根: マギウスの翼、知らないのっ? ふたりとも魔法少女なのに!?
- 入名 クシュ: えっ… ゆきかさんって…?
- 七瀬 ゆきか: あ…入名さん 魔法少女なんです?
- 黒羽根: だって、その指輪…!
- 入名 クシュ: あ…
- 七瀬 ゆきか: おたがい 気づいてませんでした…
- 黒羽根: …知り合いじゃないの?
- 入名 クシュ: 1時間くらい前に初めて会って さっき廊下で再会した
- 黒羽根: ほぼ初対面よね、それ?
- 七瀬 ゆきか: そうとも言いますね…
- 黒羽根: ………… …………
- 黒羽根: それで… どっちなの?
- 黒羽根: 私をこの 変な空間に引きずり込んだのは
- 七瀬 ゆきか: えっ…?
- 黒羽根: 何か心あたりあるでしょ?
- 黒羽根: 寝る前におまじないを試したとか 開かずの扉を開けちゃったとか
- 黒羽根: 怪しいおじさんから 何かを受け取ったとか!
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: …受け取ったかも
- 七瀬 ゆきか: えっ、怪しいお方から?
- 入名 クシュ: …うん ユメミカガミ
- 七瀬 ゆきか: あ…さっき言いかけてましたよね
- 入名 クシュ: うん、この鏡
- 七瀬 ゆきか: 何か変わった鏡なんでしょうか?
- 入名 クシュ: …私が映らない
- 黒羽根: え…?
- 七瀬 ゆきか: ほんとだ…! 入名さんの姿だけ映ってません!
- 七瀬 ゆきか: ユメミカガミっていうんですか? これ…?
- 入名 クシュ: うん
- 黒羽根: ユメミカガミのうわさ… 私も聞いたことあるかも
- 黒羽根: それ、過去をやり直せる鏡だよ
- 七瀬 ゆきか: えっ…
- 黒羽根: 神浜市で広まっている噂の中には 不思議な力を持つものがあって
- 黒羽根: ユメミカガミのうわさは そんな噂のひとつ
- 黒羽根: 毎週ひとりずつ、誰かが選ばれて 鏡の中の夢に招待される…
- 黒羽根: 夢の中では、心を試されて
- 黒羽根: 試練を乗り越えたら ひとつだけ“過去”をやり直せる
- 黒羽根: …そんな話だったと思う
- 入名 クシュ: 私が読んだのと、同じ…
- 七瀬 ゆきか: 読んだって…?
- 入名 クシュ: 補習に使うノートに 同じ内容が書いてあったの
- 入名 クシュ: …私の字で
- 入名 クシュ: 書いた覚え、ないのに
- 黒羽根: “ユメミカガミ”って名前も そこで知ったわけね?
- 入名 クシュ: うん
- 七瀬 ゆきか: 不思議ですね…
- 入名 クシュ: でも… どうして3人なの?
- 入名 クシュ: 招待されるのは ひとりだけのはずじゃ…?
- 黒羽根: あとのふたり…私たちは 巻き込まれたんだよ
- 七瀬 ゆきか: どうしてでしょう?
- 黒羽根: さあ… たまたま近くにいたから…とか?
- FILENAME: text_514410-5_elfXK.txt
- アラもう聞いた?誰から聞いた? ユメミカガミのそのウワサ
- もしも、あの時に戻れたら… もしも、あの日をやり直せたら… 毎週、オヒトリサマを抽選で “もしも”の夢にゴアンナーイ!
- 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
- ノンノン、ただしご忠告! 落第したら永遠に目が覚めないって 北養区のお嬢様の間ではもっぱらのウワサ
- カガミヨカガミー!
- 七瀬 ゆきか: …ここがその 不思議な夢の世界だとすると
- 七瀬 ゆきか: 夢の主役は 入名さんということですよね?
- 黒羽根: 鏡に映らないのも そっちの子だけだしね
- 七瀬 ゆきか: 試練を乗り越えれば 過去をやり直せる…
- 七瀬 ゆきか: そんな夢に招待されたからには
- 七瀬 ゆきか: 入名さんには何か
- 七瀬 ゆきか: やり直したい過去がある… ということでしょうか?
- 入名 クシュ: ………… …うん
- 入名 クシュ: もう一度、出会いを やり直したい人がいるの
- 入名 クシュ: ちゃんとお別れも言えないまま 離ればなれになっちゃったから…
- 黒羽根: どんな人?
- 入名 クシュ: 隣に住んでたお姉さん… 名前は、アネカさん
- 入名 クシュ: ………… …………
- 七瀬 ゆきか: …………
- 七瀬 ゆきか: 入名さんが 試練を乗り越えられるよう
- 七瀬 ゆきか: わたしもお手伝いしますっ
- 黒羽根: そうしないと私たちも 夢から出られないみたいだしね…
- 入名 クシュ: …ありがとう ごめんね…
- 黒羽根: …もしかすると ひとりじゃなく3人なのは
- 黒羽根: その試練の中身と 関係があるのかも…
- 七瀬 ゆきか: どういう意味でしょう?
- 黒羽根: ここは、この子の夢の中で…
- 黒羽根: つまり、夢の主の心を 映した世界なわけでしょ?
- 七瀬 ゆきか: あ…だから 課される試練の内容にも
- 七瀬 ゆきか: 入名さんの心にあるものが 反映されるということでしょうか
- 黒羽根: …そう思う
- 黒羽根: まったく関係ない3人が 集まったこの状況に
- 黒羽根: 何か心あたり、ない?
- 入名 クシュ: 関係ない3人が仲間になって 夢の中をさまよう…
- 入名 クシュ: えっと…さっきから
- 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」に 似てるかも、って
- 入名 クシュ: ちょっと思ってた…
- 黒羽根: …何、それ?
- 入名 クシュ: 私の好きな外国の作家さんの本で
- 入名 クシュ: 「さよならの寓話」っていう 児童書のシリーズの第4巻
- 黒羽根: …うん、それで?
- 入名 クシュ: 主人公は消えてしまった ソウルメイトを探して
- 入名 クシュ: “すぎさりし夢”という世界に 入り込むの
- 入名 クシュ: そこで出会った ふたりの仲間と一緒に
- 入名 クシュ: 3人で旅をすることに なるんだけど…
- 入名 クシュ: 最初に会った仲間とはね まずは長い回廊をさまようの
- 七瀬 ゆきか: 確かにここに来るまでに
- 七瀬 ゆきか: ありえないくらい長い廊下を 一緒に歩きましたよね?
- 入名 クシュ: うん…歩きながら
- 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」を 思い浮かべてた
- 七瀬 ゆきか: その最初の仲間って わたしに似てるんでしょうか?
- 入名 クシュ: 剣士だから… ゆきかさんとは違うけど
- 七瀬 ゆきか: あ…いえっ
- 七瀬 ゆきか: わたしの武器、剣です! 合ってますっ
- 七瀬 ゆきか: …わたし、存在感が薄いので ほんとは剣士とかじゃなく
- 七瀬 ゆきか: 「村人A」とかが お似合いなんですけどね…
- 黒羽根: 剣士かぁ…児童書っていうけど 案外、中二病っぽい内容…?
- 入名 クシュ: ちゅう…?
- 黒羽根: ごめん、忘れて …で、続きは?
- 入名 クシュ: 確か、不思議な歌声に導かれて 愉快な幽霊と仲間になるはず…
- 黒羽根: ――っ!?
- 黒羽根: あの子はキュンキュンでぇ~?
- 黒羽根: いつもニコニコ天使なぁ~♪
- 七瀬 ゆきか: …確かに廊下で 楽しそうな歌が聴こえましたね
- 入名 クシュ: うん
- 黒羽根: (ふぇええ~ん!! やっぱり聴かれてたー!)
- 七瀬 ゆきか: …つまり黒羽根さんは 幽霊さん役?
- 入名 クシュ: 格好、それっぽいよね…?
- 黒羽根: …そう!?
- 七瀬 ゆきか: 入名さんが主役の夢ですからね
- 七瀬 ゆきか: 入名さんがそれっぽいと思うなら きっと愉快な幽霊さん役だし
- 七瀬 ゆきか: ここまでの展開から、入名さんが
- 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」を 連想したのなら
- 七瀬 ゆきか: たぶん試練の内容も その本と関係があるんですよ
- 黒羽根: …ちなみに、主人公はどんな人?
- 入名 クシュ: …最後の異端審問官で エクソシスト
- 七瀬 ゆきか: 悪魔祓いとかする人ですか?
- 黒羽根: ふぇっ? 私、祓われる側じゃん!
- 入名 クシュ: 平気、善き幽霊だから…
- 七瀬 ゆきか: …つまり今、この夢では 入名さんの好きな
- 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」という お話に沿った試練が課されていて
- 七瀬 ゆきか: これを乗り越えなければ 3人とも夢の外に出られない…?
- 入名 クシュ: お話の通りに進めば、試練は成功 つまずいたら失敗ってこと?
- 七瀬 ゆきか: だと思います…
- 黒羽根: 私たち、次は どこを目指せばいいのかな
- 入名 クシュ: …えっ…と…
- 入名 クシュ: ………… …古代の図書館?
- 黒羽根: そこ、うろおぼえなの?
- 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」って あまり見かけない本なの
- 入名 クシュ: 私、その本を持ってなくて
- 入名 クシュ: アネカお姉さんからあらすじを 聞いていただけなの
- 入名 クシュ: その頃はふたりとも 外国に住んでたし
- 入名 クシュ: アネカさんも大きな町の図書館で 一度読んだきりで…
- 入名 クシュ: 私、それを聞いて どんなお話なのかなって
- 入名 クシュ: 空想するのが好きだった
- 黒羽根: じゃあ、その本の結末って…
- 入名 クシュ: 私も…知らない…
- FILENAME: text_514410-6_elfXK.txt
- Ⅱ ‐ うろおぼえ夢騎行
- 黒羽根: …………
- 黒羽根: (綺麗な噴水… お嬢様学園って感じ)
- 七瀬 ゆきか: 図書室はこの先なんですね
- 入名 クシュ: うん… 次に行くならそこかなって
- 入名 クシュ: 古代の図書館っぽい場所って 他に思いつかないし
- 七瀬 ゆきか: …図書室に着きましたけど… 何をすればいいんでしょう?
- 入名 クシュ: 記憶を集めるの
- 黒羽根: えっ?
- 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」の 主人公たちは行く先々で
- 入名 クシュ: …ソウルメイトの思い出を ひとつずつ集めていくの
- 入名 クシュ: ソウルメイトのお姫様は お城の地下で眠っていてね…
- 入名 クシュ: 主人公が、集めた思い出を その心に戻してあげると
- 入名 クシュ: 長い眠りから目を覚まして…
- 入名 クシュ: 主人公たちと一緒に… 夢の世界から脱出するの
- 入名 クシュ: …そのために必要な 最初の思い出が見つかる場所が
- 入名 クシュ: 古代の図書館
- 七瀬 ゆきか: 入名さん、話を聞いただけで 読んだことはないそうですけど
- 七瀬 ゆきか: 割と詳しく覚えてらしたので よかったですっ
- 入名 クシュ: たぶん…私が勝手に空想した分も 混じってると思う…
- 黒羽根: それ、大丈夫なの…?
- 入名 クシュ: …わからな…ごめん…ね… …ふぁ…
- 入名 クシュ: ………… …………
- 黒羽根: あの…もしかして寝てる?
- 入名 クシュ: …………! ね、寝てないよ!?
- 黒羽根: …いいけど
- 七瀬 ゆきか: 本の中身が、試練の内容に かかわってくるくらい
- 七瀬 ゆきか: 入名さんの心の中は 本のことでいっぱいなんですね
- 入名 クシュ: うん…童話とか児童書とか 子どもの頃から、ずっと
- 入名 クシュ: だから、アネカお姉さんとも 最初から気が合った
- 七瀬 ゆきか: ふたりとも同じような本が 好きだった…?
- 入名 クシュ: うん…ふたりとも お姫様や妖精の出てくる
- 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」と 同じシリーズの本が好きで…
- アネカ: 「えっ…クシュちゃんも好きなの? 「さよならの寓話」シリーズ」
- 入名 クシュ: 『…お姉さん、この本知ってるの?』
- アネカ: 「うん、大好き!」
- アネカ: 「不思議、どうしてかな?」
- 入名 クシュ: 『…何が?』
- アネカ: 「…きみとは初めて会った気がしないの」
- 入名 クシュ: 私、両親の仕事で
- 入名 クシュ: 外国に引っ越した ばかりだったんだけど
- 入名 クシュ: 隣に住んでたアネカお姉さんとは すぐに仲良くなれたの
- 入名 クシュ: 周りに何もない土地だったから… いつも、本の話をしてた
- 七瀬 ゆきか: あれっ、じゃあ 入名さんって外国育ち?
- 入名 クシュ: うん…日本生まれの日本人だし 外国語も得意じゃないけど
- 入名 クシュ: 両親が転勤ばかりしてたから 外国暮らしの方が長いかも
- 黒羽根: 名前も日本人離れしてるけど ハーフとか…?
- 入名 クシュ: ひいおじいさんが日本人だから 血筋的には8分の1くらい日本人
- 七瀬 ゆきか: (想像してたより だいぶ日本人離れしてますっ)
- 黒羽根: …で、この図書館で 何をすればいいのかな?
- 七瀬 ゆきか: 記憶を集める…
- 七瀬 ゆきか: 児童書のコーナーで 思い出の本を探すとか?
- 入名 クシュ: …探してみる
- 入名 クシュ: …あった
- 入名 クシュ: 「さよならの寓話」シリーズ なぜか2巻だけ…
- 七瀬 ゆきか: 図書館って最初の巻が なぜかなかったりしますよねっ
- 黒羽根: その本、変わったところある?
- 入名 クシュ: …ページを開いてみるね
- 入名 クシュ: …………?
- 七瀬 ゆきか: 光が…!
- 入名 クシュ: 『あの…アネカお姉さん ありがとうございました』
- アネカ: …クシュちゃん 危ないところだったね
- アネカ: まさか、魔女に 捕まっちゃうなんてね
- 入名 クシュ: 『魔女って…あの怪物のこと?』
- アネカ: 魔女が見えたんだ…?
- アネカ: きみにも私と同じ 魔法少女の素質があるんだね
- 入名 クシュ: 『魔法少女って?』
- 入名 クシュ: 『お姉さん、魔法が使えるの?』
- 入名 クシュ: 『「さよならの寓話」シリーズに出てくる お姫様みたいな魔法を使ってたけど…』
- アネカ: うん、クシュちゃんにも その素質があるの
- 入名 クシュ: 『ねえ、それって…』
- アネカ: きみにも魔法が使えるってこと おとぎ話の主人公みたいに、ね!
- クシュ&ゆきか: …………
- 入名 クシュ: アネカ…さん…
- 七瀬 ゆきか: …今のって…入名さんと アネカさんの記憶でしょうか?
- 黒羽根: みたいだね
- 入名 クシュ: あ…
- 七瀬 ゆきか: クシュちゃんのシュシュに 光が吸い込まれました
- 黒羽根: 記憶をひとつ回収したってこと?
- 入名 クシュ: …だと思う
- 入名 クシュ: これ、アネカお姉さんに もらった大切なものなの
- 七瀬 ゆきか: 同じ要領で、そのシュシュに
- 七瀬 ゆきか: 記憶を集めていけば いいんでしょうか…?
- 入名 クシュ: たぶん…
- 黒羽根: なるほど…
- 七瀬 ゆきか: じゃ、図書室を出ましょうか?
- 入名 クシュ: …………
- 七瀬 ゆきか: どうかしたんですか?
- 入名 クシュ: 私の思い出、覗かれちゃった… 恥ずかし…
- 黒羽根: …………
- 黒羽根: (おっとりしてるから 一見わかりにくいけど)
- 黒羽根: (よく見ると 気持ちに正直で面白い…)
- FILENAME: text_514410-7_elfXK.txt
- コツ…
- 七瀬 ゆきか: …えっと、次はどこへ行けば 記憶が集められるんでしょう?
- 入名 クシュ: 確か…幻灯機?…か何かを探して 町を目指すって話だった…気が?
- 黒羽根: 幻灯機?
- 七瀬 ゆきか: 昔のショーで使われてた
- 七瀬 ゆきか: プロジェクターみたいな 機械だったかと…
- 入名 クシュ: …幻灯機じゃなかったかも…
- 七瀬 ゆきか: だいぶうろおぼえですね…
- 入名 クシュ: すみません…
- 黒羽根: ………… …………
- 黒羽根: 私は牧野郁美 マギウスの翼の、名もなき黒羽根
- 牧野 郁美: そもそも学生でもない私が 聖リリアンナ学園にいるのは
- 牧野 郁美: マギウスのひとり、里見灯花への届けものを みふゆさんに頼まれたから
- ピロン♪
- 牧野 郁美: (みふゆさんから?)
- 牧野 郁美: (『工匠区にいる羽根の方… どなたかお願いします!』)
- 牧野 郁美: (『至急、北養区まで 届けてほしいものが…!』)
- 牧野 郁美: …困ってるみたい
- 牧野 郁美: (次のシフトまで時間あるし 今日はお店もガラッガラだし…)
- 牧野 郁美: 店長ぉ~!
- 牧野 郁美: くみ、中抜けしたいんですけどぉ
- 牧野 郁美: (みふゆさん、すっごく 急いでるみたいだったから)
- 牧野 郁美: (メイド服のまま店を出たのが 失敗だったよね…)
- 灯花: ありがと! このパーツが欲しかったんだよ
- 灯花: じゃ、外に出してあげる みふゆによろしくねー
- 牧野 郁美: えっ…外にって ここから?
- 灯花: うん、実験中の転送装置で 外までひとっ飛び!
- 牧野 郁美: ふぇっ…実験中?
- 牧野 郁美: ふぇぇ…
- 牧野 郁美: (まさかリリアンナの校内に)
- 牧野 郁美: (放り出されるとは 思わなかったよぉ~)
- 牧野 郁美: (この姿でも怪しいし… メイド服に戻っても怪しい!)
- 牧野 郁美: (くみ、学校から どうやって出ればいいのぉ?)
- 牧野 郁美: (そのあとで、この夢に 取り込まれちゃったんだよね)
- 牧野 郁美: (なぜか学校から人が消えて 門の外にも出られなくなって)
- 牧野 郁美: (誰もいないし、いいかと思って 歌の練習をしてたら…)
- 牧野 郁美: あの子はキュンキュンでぇ~?
- 牧野 郁美: いつもニコニコ天使なぁ~♪
- コン、コン
- 牧野 郁美: ふぇっ!?
- 七瀬 ゆきか: お邪魔いたします…
- 牧野 郁美: (くみ、恥ずかしいよぉ~!)
- 七瀬 ゆきか: あのぉ…
- 牧野 郁美: …な、何?
- 七瀬 ゆきか: 神浜市の不思議な噂って… 他にもあるんでしょうか?
- 七瀬 ゆきか: それと、黒羽根さんが言ってた マギウス…?
- 牧野 郁美: マギウスの翼ね
- 七瀬 ゆきか: はい、それって 関係があるんでしょうか…?
- 牧野 郁美: (ギクッ)
- 牧野 郁美: さ、さぁ…?
- 牧野 郁美: 不思議な噂が ひとつじゃないのは確かだけど
- 牧野 郁美: 私、マギウスの翼でも下っ端だし 詳しいことは何も…
- 牧野 郁美: うわさが巻き起こす現象を 偶然こんな風に経験するのだって
- 牧野 郁美: 初めてだしね
- 七瀬 ゆきか: そうですか… わたしよりは詳しそうだったので
- 七瀬 ゆきか: 解決のヒントになりそうなことを 何かご存じかと思ったんですが
- 牧野 郁美: ごめんね
- 入名 クシュ: あの…黒羽根さんって 魔法少女なんですよね?
- 牧野 郁美: そうだよ?
- 入名 クシュ: そのローブは… 変身したときの姿?
- 七瀬 ゆきか: わたしも不思議に思ってました
- 七瀬 ゆきか: でも、よく考えると 前に調整屋さんで
- 七瀬 ゆきか: 同じような格好の人を 見かけた気が…
- 牧野 郁美: あー、もうっ! めんどくさいなっ!
- バッ
- 牧野 郁美: これがくみの本当の姿!
- 牧野 郁美: みんなのアイドルいくみんこと 牧野郁美だよぉ~♪
- クシュ&ゆきか: ――っ!?
- 七瀬 ゆきか: キャラ…変わりました…?
- 牧野 郁美: こっちが素だからねっ! でも、みんなには内緒でお願い!
- 入名 クシュ: またちょっと変わった…?
- 牧野 郁美: これは普通のメイド服だよ くみ、メイド喫茶で働いてるのぉ
- 七瀬 ゆきか: なるほど…
- 牧野 郁美: あの黒いローブは マギウスの翼の魔法少女が
- 牧野 郁美: プライバシーを守るために 着てるものだから
- 牧野 郁美: 今後、同じ格好の人を見ても
- 牧野 郁美: 根掘り葉掘り聞いたりしちゃ… めっ、だよっ!
- 七瀬 ゆきか: …し、失礼しましたっ
- 入名 クシュ: ごめんなさい… 黒羽根さん
- 牧野 郁美: ………… …郁美でいいよ
- 牧野 郁美: 何か幽霊役?…らしいけど このキャラでいいのかなぁ~?
- 七瀬 ゆきか: 愉快な幽霊役らしいので いいのではないでしょうか…
- FILENAME: text_514410-8_elfXK.txt
- Ⅲ ‐ クシュとアネカ
- ガラッ
- 牧野 郁美: ここはぁ~?
- 七瀬 ゆきか: 視聴覚教室的なお部屋… でしょうか?
- 入名 クシュ: うん…
- 入名 クシュ: 幻灯機みたいなものがあるなら ここだと思って
- 七瀬 ゆきか: 確かに… プロジェクターがありますね
- 入名 クシュ: スイッチ、入れてみる
- アネカ: …今日はお手柄だったね! クシュちゃん!
- アネカ: クシュちゃんが 魔女の結界を見つけて
- アネカ: 私に知らせてくれなかったら
- アネカ: たくさんの人が、あの魔女の 犠牲になっていたところよ
- 入名 クシュ: 『…………』
- アネカ: どうしたの? クシュちゃん
- アネカ: ぼうっとしちゃって…
- アネカ: …あっ いけない、こんな時間
- アネカ: また明日ね!
- 入名 クシュ: 夢…みたいだった…
- 入名 クシュ: アネカお姉さんの姿は…おとぎ話で読んだ 戦うお姫様そのもので
- 入名 クシュ: 私も、あんな風になれたら… お姉さんの側で戦えたら…
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: だけど、あと何時間かしたら 夢の時間は終わって
- 入名 クシュ: また退屈な朝が来る…
- 入名 クシュ: ………… …………
- アネカ: えっ…?
- アネカ: クシュちゃんも 魔法少女になりたい?
- キュゥべえ: 魂を賭けて魔女と戦い続ける 宿命を受け入れてでも
- キュゥべえ: 叶えたい願いが できたということかい?
- 入名 クシュ: 『うん…覚悟はできてる』
- アネカ: 歓迎よ
- アネカ: クシュちゃんにも 素質があるって聞いてから
- アネカ: ずっとこの日を待っていたの
- 入名 クシュ: 『ありがとう…私、決めた』
- キュゥべえ: それじゃあ 聞かせてごらん、キミの願いを
- 入名 クシュ: 『うん…』
- アネカ: クシュちゃん、その姿って…
- 入名 クシュ: うん… “最後の異端審問官”
- 入名 クシュ: 呪いを振りまく魔女たちを 一緒にやっつけよう?
- アネカ: 違うよ、クシュちゃん
- アネカ: そこは 「ともに粛清を!」でしょ!
- 入名 クシュ: ごめん…そうだった
- アネカ: ちょっと意外な 願い事だったけど…
- アネカ: でも、すごく クシュちゃんらしいね
- 入名 クシュ: …ありがと
- アネカ: それと…これ 受け取って
- アネカ: 誕生日プレゼント
- 入名 クシュ: え…?
- アネカ: 今日はクシュちゃんが
- アネカ: 魔法少女として 生まれ変わった日でしょ?
- キュゥべえ: …………
- アネカ: このときのために 前から用意していたの
- 入名 クシュ: ありがとう… 大切にするね
- アネカ: きっと クシュちゃんや私みたいに
- アネカ: 夢を信じられる人だけが 魔法少女になれるのね
- アネカ: うれしいな…まるで 新しく妹ができたみたい
- 入名 クシュ: うん…私もうれしい
- 入名 クシュ: ねえ、アネカさんのこと… お姉ちゃんって呼んでいいかな
- アネカ: えっ…
- アネカ: …それはやめておきましょ? マミィとダディが驚いちゃう
- 入名 クシュ: …そうだね わかった
- 入名 クシュ: …………
- 牧野 郁美: シュシュに新しい記憶が 集まったみたいだねっ!
- 七瀬 ゆきか: 魔法少女になった日に もらったものだったんですね
- 入名 クシュ: うん…
- 牧野 郁美: 『夢を信じられる人だけが 魔法少女になれる』かぁ~
- 牧野 郁美: 私も友だちと一緒に 夢を追いかけてるんだよぉ~!
- 七瀬 ゆきか: …わたしの場合は 夢を信じてというより
- 七瀬 ゆきか: 夢だと思い込んでキュゥべえと 契約しちゃったんですよね…
- 牧野 郁美: クシュちゃんも いつも眠そうなキャラっぽいし
- 牧野 郁美: 3人とも 夢つながりっていう共通点が
- 牧野 郁美: あるような、ないようなぁ…?
- 入名 クシュ: 私は…いつも 時差ボケみたいなものだから…
- 牧野 郁美: そうなの?
- 入名 クシュ: 体内時計が完全に 半日ずれてるの
- 入名 クシュ: 願い事のせいで、朝日が昇ると 自動的に眠っちゃうから
- 七瀬 ゆきか: えっ…?
- FILENAME: text_514410-9_elfXK.txt
- 七瀬 ゆきか: キュゥべえに奇跡を祈った結果 朝日が昇ると
- 七瀬 ゆきか: 自動的に眠りに落ちる体質に なってしまったってことですか?
- 入名 クシュ: うん… 日の出の瞬間に気絶する感じ
- 七瀬 ゆきか: それは深刻ですね…
- 七瀬 ゆきか: (さきほど見た記憶では)
- 七瀬 ゆきか: (入名さんが何を願ったかまでは わかりませんでしたけど…)
- 入名 クシュ: …昼間はそのまま目が覚めなくて お医者さんもお手上げ
- 牧野 郁美: 夕方は、学校に来られるのぉ?
- 入名 クシュ: うん、私にとっては まだ眠い時間だけど
- 入名 クシュ: 日が沈みはじめると 少しは動けるみたい…
- 牧野 郁美: 無理して起きてたから そんなに眠そうだったんだねっ?
- 入名 クシュ: 陽射しがある時間は かなりつらいかも
- 入名 クシュ: 普通の人の感覚で言うと
- 入名 クシュ: 朝の3時台に起きて 学校に行くような感じかも…
- 牧野 郁美: そうまでして補習受けるんだね…
- 入名 クシュ: 帰国して リリアンナに転入するときに
- 入名 クシュ: 毎日、放課後の夕方に 補習をやってくれることになって
- 入名 クシュ: 補習だけでも出席しないと 進級できないから…
- 牧野 郁美: …クラスの子とかとは 仲良くできてるの?
- 入名 クシュ: 顔も知らない… …向こうも知らないと思う
- 七瀬 ゆきか: (あ…)
- ねえ、うちの学校に あんな子いたかな?
- 初めて見たかも
- 七瀬 ゆきか: …………
- 七瀬 ゆきか: 朝になると眠っちゃうのって…
- 七瀬 ゆきか: 魔法少女になった 次の日からずっとなんですか?
- 入名 クシュ: うん… だから最初は大騒ぎだった
- 入名 クシュ: 昼の間は、周りが何しても 目を覚まさないみたいだし
- 牧野 郁美: 自分じゃわからないから 『みたいだし』なんだね…
- 入名 クシュ: いちおう…真夜中になると 目が冴えるんだけど
- 七瀬 ゆきか: 真性の夜行性ですねっ
- 入名 クシュ: 親に見つからないように 魔女の粛清に行くのも大変だし
- 入名 クシュ: 朝日が出る前に家に戻らないと 外で倒れちゃうし…
- 牧野 郁美: ん、ちょっと待って? 魔女の…粛清…?
- 入名 クシュ: …え、何か変?
- 牧野 郁美: それって “処刑”みたいな意味だよねっ?
- 七瀬 ゆきか: …ですね
- 入名 クシュ: 魔女を粛清します、とかって… 言わない?
- 七瀬 ゆきか: 初めて聞きました
- 入名 クシュ: そうなんだ…
- 入名 クシュ: 「さよならの寓話」シリーズで 主人公の“最後の異端審問官”が
- 入名 クシュ: 吸血鬼や悪霊を祓うときに よく言うセリフなんだけど…
- 入名 クシュ: ごめん… …ちょっと、お腹すいたかも
- 牧野 郁美: 突然だねっ!?
- ごそ
- 七瀬 ゆきか: …それ、ミニトマトですか?
- 入名 クシュ: うん、おやつがわりに 持ち歩いてるの
- 入名 クシュ: 食べる?
- 牧野 郁美: 私はいいかな
- 七瀬 ゆきか: どうぞおかまいなくっ
- 牧野 郁美: 感心するくらいマイペース…!
- 七瀬 ゆきか: 大物感ありますねっ…
- 入名 クシュ: じゃ…
- ぱくっ
- 七瀬 ゆきか: あ…
- 牧野 郁美: 八重歯だね かっわい~!
- 入名 クシュ: …ありがと
- ぱく…
- 七瀬 ゆきか: …………
- 七瀬 ゆきか: (夜行性…色白で八重歯…)
- 七瀬 ゆきか: (それに…)
- 七瀬 ゆきか: 何か変わった鏡なんでしょうか?
- 入名 クシュ: …私が映らない
- 黒羽根: え…?
- 七瀬 ゆきか: ほんとだ…! 入名さんの姿だけ映ってません!
- 七瀬 ゆきか: (鏡に映らないのって…)
- 七瀬 ゆきか: (異端審問官とか エクソシストとかじゃなくて)
- 七瀬 ゆきか: (祓われる側の 吸血鬼の特徴なのでは…?)
- 入名 クシュ: はむ…
- FILENAME: text_514410-10_elfXK.txt
- Ⅳ ‐ 真実
- コツ…
- 牧野 郁美: ちょっと気になるんだけどぉ…
- 牧野 郁美: ずっと夕方が続いてない?
- 入名 クシュ: …夢の中だから…?
- 七瀬 ゆきか: 目を覚ましたら、全然 時間が経ってないかもしれません
- 牧野 郁美: だといいなぁ…
- 牧野 郁美: くみ、お店を中抜けしてるから 早く戻らないと怒られちゃう~!
- 七瀬 ゆきか: 試練を乗り越えれば、過去を やり直せるってことでしたけど
- 七瀬 ゆきか: 本の内容通りに記憶を集めるのが 試練なんでしょうか?
- 牧野 郁美: だと思うよっ?
- 入名 クシュ: 心を試されてる感じは あんまりしないけど…
- 七瀬 ゆきか: でも、冒険仕立てだから 時間はかかっちゃいますね…
- 牧野 郁美: ねえねえ、クシュちゃんはぁ~
- 牧野 郁美: アネカちゃんとの出会いを やり直したいって言ってたよね?
- 入名 クシュ: うん…
- 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
- 牧野 郁美: 入場料はプライスレス… プライスレスってどういうこと?
- 七瀬 ゆきか: 一般的には…
- 七瀬 ゆきか: 値段がつけられないほど 途方もない価値がある…みたいな
- 牧野 郁美: えっ!?
- 牧野 郁美: それってやり直したい 過去の内容によっては
- 牧野 郁美: ものすごい代償を 要求されるってことじゃないの?
- 七瀬 ゆきか: 試練の内容も、それだけ 重くなったりしそうですね…
- 入名 クシュ: …………
- 牧野 郁美: あれっ? またこの場所ぉ~?
- 入名 クシュ: うん…
- 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」に
- 入名 クシュ: “すぎさりし過去の泉”…? みたいな名前のところへ行って
- 入名 クシュ: 水面を覗き込む場面が あるって聞いた…
- 七瀬 ゆきか: なるほど それでこの噴水が怪しいと?
- 入名 クシュ: …聞いた?…ような…?
- 牧野 郁美: トーンダウンしてるぅ~
- 入名 クシュ: もしかすると… 他の本のお話だったかも
- 牧野 郁美: うろおぼえ大会だねっ!
- 七瀬 ゆきか: 思うんですけど…実際の 「オトラントのうみべで」と
- 七瀬 ゆきか: 違っていてもかまわないのでは?
- 入名 クシュ: どういうこと?
- 七瀬 ゆきか: ここは入名さんの夢の中なので 入名さんがそうだと思うものが
- 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」 なのではないかとっ
- 牧野 郁美: …確かに結局、クシュちゃんの 推測が全部当たってるもんね!
- 入名 クシュ: わかった 水面、覗いてみる…
- 入名 クシュ: あ…
- 入名 クシュ: 『えっ…アネカお姉さん、帰ってないの?』
- クシュの母: 「うん…昨日、学校に出かけたきり 連絡がつかないんだって」
- クシュの父: 「クシュは何か聞いてないか?」
- 入名 クシュ: 『うん、何も…』
- 入名 クシュ: (アネカお姉さんに… 何かあったの?)
- 入名 クシュ: やな…予感…
- 入名 クシュ: 探しにいかなきゃ…!
- 入名 クシュ: アネカさん…どこ?
- 入名 クシュ: どこにもいない…
- 入名 クシュ: まさか…強い魔女に負けちゃったんじゃ…
- 入名 クシュ: だとしたら…私のせい…!
- 入名 クシュ: 私がこんな体質じゃなかったら… 昼間だって、一緒に戦えたのに…!
- タッ…
- 入名 クシュ: …はぁ…はぁ…
- 入名 クシュ: あんな強い魔女… 初めて見た
- 入名 クシュ: グリーフシードを落としてくれて 助かった…けど
- 入名 クシュ: ………… …………
- キュゥべえ: ずいぶんと苦戦していたね 入名クシュ
- 入名 クシュ: キュゥべえ…見てたの?
- キュゥべえ: キミがあの魔女と戦っている 途中からね
- 入名 クシュ: ねえ…
- 入名 クシュ: …あの場所って 学校のすぐ近くだよね?
- 入名 クシュ: アネカお姉さん…あの魔女に… …やられちゃったんじゃ…
- キュゥべえ: 違うよ アネカを倒したのはキミだよ
- 入名 クシュ: えっ…
- キュゥべえ: 穢れを溜め込みすぎた ソウルジェムは
- キュゥべえ: グリーフシードへと変化して 魔女を生み出す
- キュゥべえ: つまり魔法少女はいずれ 魔女になるということさ
- 入名 クシュ: キュゥべえ…? 何を…言ってるの?
- キュゥべえ: こう言えばわかるかい?
- キュゥべえ: アネカは魔女になって ついさっきキミに倒され消滅した
- キュゥべえ: キミがいま浄化に使った グリーフシードは
- キュゥべえ: アネカのソウルジェム… すなわち魂だったものだよ
- 入名 クシュ: うそ…
- 入名 クシュ: 『イヤぁあああっ!』
- 七瀬 ゆきか: すみません…入名さんの記憶 …見えてしまいました
- 入名 クシュ: ………… …………
- 七瀬 ゆきか: 入名さん…
- 牧野 郁美: …………
- FILENAME: text_514410-11_elfXK.txt
- 牧野 郁美: ねえ…
- 牧野 郁美: クシュちゃんが 出会いをやり直したかった
- 牧野 郁美: アネカちゃんって…
- 牧野 郁美: (魔女に…)
- 七瀬 ゆきか: お別れも言えずに 離ればなれになったって
- 七瀬 ゆきか: …そういうことだったんですね
- 入名 クシュ: …うん…
- 七瀬 ゆきか: そんな…悲しい別れが…
- 入名 クシュ: ………… …………
- 牧野 郁美: …………
- 牧野 郁美: ごめん…少しいいかな?
- 入名 クシュ: …何?
- 牧野 郁美: つまり、この試練の目的って
- 牧野 郁美: 亡くなった人と出会い直すため… ってことだよね?
- 牧野 郁美: そのための代償って…
- 七瀬 ゆきか: あっ…
- 牧野 郁美: それってやり直したい 過去の内容によっては
- 牧野 郁美: ものすごい代償を 要求されるってことじゃないの?
- 七瀬 ゆきか: 入場料はプライスレスって ことでしたけど
- 七瀬 ゆきか: 何か大事なものが なくなったりしてませんか…?
- 入名 クシュ: …んっ、と… あ…
- 牧野 郁美: どうしたの?
- 入名 クシュ: グリーフシードが 2個しか残ってない…
- 牧野 郁美: 2個しかって… いくつ持ち歩いてたの?
- 入名 クシュ: えっと…
- 牧野 郁美: …は!? そんなにたくさん?
- 牧野 郁美: 私が…じゃなくて…
- 牧野 郁美: くみがこの1年で集めた分 全部より多いよぉ~!
- 七瀬 ゆきか: 強いんですね 入名さん…
- 入名 クシュ: 私が魔法少女になったの… もっと前だから…
- 入名 クシュ: たくさん集まってた
- 七瀬 ゆきか: その、ごっそり減った分が 夢の入場料ってことですよね…?
- 牧野 郁美: ほんとにプライスレスだよぉ~
- 牧野 郁美: グリーフシードは私たちの 命と同じだもんっ!
- 入名 クシュ: お姉さんと…アネカさんと もう一度会えるんだったら
- 入名 クシュ: これくらい、かまわない
- 七瀬 ゆきか: …………!
- 牧野 郁美: (本気、なんだ…)
- 牧野 郁美: すごいね…そんなにたくさんの グリーフシードをなくしたら
- 牧野 郁美: 私なら大パニックだよ
- 七瀬 ゆきか: ひとりで集めたんですか…?
- 入名 クシュ: うん…魔法少女の友だちとか 全然いないし
- 入名 クシュ: 神浜市の外とかの
- 入名 クシュ: あまり他の魔法少女が いないところに行って
- 入名 クシュ: 魔女を粛清してあげてる
- 七瀬 ゆきか: (あっ…)
- …それ、本当?
- ええ 神浜市の外の話らしいけど
- それにしても、いまどき 吸血鬼だなんて…
- 七瀬 ゆきか: (吸血鬼の正体… わかっちゃったかもしれません)
- 牧野 郁美: クシュちゃんは強いね…
- 牧野 郁美: …あんなことがあったのに 魔女を狩るの、怖くない…?
- 入名 クシュ: …そう?
- 牧野 郁美: うん、だってその魔女 元は魔法少女だったんだよ?
- 牧野 郁美: 私は弱いから…
- 牧野 郁美: そんなこと考えてたら 魔女にやられちゃうし
- 牧野 郁美: 仲間に助けてもらって やっと倒せても
- 牧野 郁美: ごめん、って心の中で 謝ってるけど…
- 入名 クシュ: えっ…? 魔女は魔法少女じゃないよね?
- 入名 クシュ: 穢れが溜まって呪いを生み始めた 魔法少女の魂…グリーフシード
- 入名 クシュ: そこから生まれる呪いの化身… それが魔女でしょ?
- 入名 クシュ: だから粛清して その呪いを浄化してあげてるの
- 入名 クシュ: 私たち、悪いことなんて 何もしてないよね?
- 牧野 郁美: えっ?
- 七瀬 ゆきか: あれっ…?
- 牧野 郁美: 合ってるけど…何か違うよね?
- 七瀬 ゆきか: わたしも、そんな気が…
- 七瀬 ゆきか: あのぉ…
- キュゥべえ: こう言えばわかるかい?
- キュゥべえ: アネカは魔女になって ついさっきキミに倒され消滅した
- 七瀬 ゆきか: …キュゥべえにはっきり そう言われたんですよね?
- 入名 クシュ: うん、その説明には 納得できない点があるから
- 入名 クシュ: いつもキュゥべえに
- 入名 クシュ: 詳しい話を聞かせてって 言ってるんだけど…
- 牧野 郁美: もしかして、クシュちゃん
- 牧野 郁美: 魔法少女が魔女になるって まだ信じてない…?
- 七瀬 ゆきか: あっ…わかった気がします
- 七瀬 ゆきか: 入名さんも本当は
- 七瀬 ゆきか: 魔法少女が魔女になる…って 心の底では理解してるんです
- 七瀬 ゆきか: でも、そのことを認めると
- 七瀬 ゆきか: アネカさんが魔女になったって 認めることになっちゃうから
- 七瀬 ゆきか: 入名さんの中では あくまで魔女と魔法少女は別物で
- 七瀬 ゆきか: 魔法少女が生んでしまった 呪いの化身を祓ってあげている…
- 七瀬 ゆきか: …だから“粛清”なんですよ
- 牧野 郁美: …そっか そう思い込まないと
- 牧野 郁美: アネカちゃんに手を下したのは クシュちゃん自身になっちゃう
- 牧野 郁美: 認めちゃいけないんだ 心が、壊れちゃうから…
- FILENAME: text_514410-12_elfXK.txt
- 入名 クシュ: あのとき、どうして
- 入名 クシュ: 魔法少女が魔女になる、なんて 言ったのか
- 入名 クシュ: キュゥべえに会うたびに 話を聞こうとするんだけど
- 入名 クシュ: …いつも逃げられちゃうの
- 入名 クシュ: 最近は、キュゥべえ自体 あまり見かけないし…
- 牧野 郁美: (神浜市外に行かないと いまは会えないもんね…)
- 入名 クシュ: キュゥべえ…!
- 入名 クシュ: あっ、待って!
- 牧野 郁美: …その剣幕じゃ 逃げられて当然だと思うよ?
- 七瀬 ゆきか: 話を聞かせてっていう 空気じゃありませんね…
- 入名 クシュ: 確かに、キュゥべえのことは
- 入名 クシュ: 魔法少女になったときから 嫌いだけど
- 入名 クシュ: …大嫌いだけど!
- 牧野 郁美: ほら、態度に出てるっ!
- 牧野 郁美: キュゥべえでもわかるくらい 殺意満々だよっ!
- 入名 クシュ: …そうなのかな? でも、本当に殺したことはないよ
- 入名 クシュ: グリーフシードの処理とか してもらわなきゃいけないし…
- 入名 クシュ: 郁美さんの言う通り 殺しちゃいたいくらい憎いけど…
- 牧野 郁美: …やっぱりクシュちゃんって 気持ちにすごく正直だよね?
- 牧野 郁美: くみは、今まで実行してないのが 奇跡だと思うよ…
- 七瀬 ゆきか: えっ…えっ?
- 七瀬 ゆきか: キュゥべえを本気で殺そうなんて 思うはずないですよね?
- 牧野 郁美: んんっ…どういう意味?
- 七瀬 ゆきか: どういう意味って… だって、可哀想じゃないです?
- 七瀬 ゆきか: わたしも、キュゥべえのやり方は どうかと思いますけど
- 七瀬 ゆきか: それとこれは別…っていうか… 憎しみは何も生みませんし…
- 牧野 郁美: (こっちはこっちで 何かすごくまぶしい…!)
- 牧野 郁美: (みんながそんな考えなら 復讐って言葉は生まれてないよ)
- 牧野 郁美: …はぁ
- 牧野 郁美: 何だか、うらやましいな…
- 牧野 郁美: くみも、ふたりと同じくらい しっかり自分を持っていれば
- 牧野 郁美: マギウスの翼に入らなくても やっていけたのかなぁ~
- 入名 クシュ: マギウスの翼って… 何をしてる人たちなの?
- 七瀬 ゆきか: 今の話と関係あるんでしょうか?
- 牧野 郁美: あ…ううん もう、隠さなくてもいっか…
- 牧野 郁美: あのねっ マギウスの翼っていうのはね…
- 入名 クシュ: 魔法少女の救済のために 活動する人たち…?
- 牧野 郁美: うん
- 牧野 郁美: 胡散臭い目で見る魔法少女も いっぱいいるけどね…
- 牧野 郁美: でもいま説明した ドッペルという現象があるかぎり
- 牧野 郁美: 神浜市内にいれば 魔法少女は魔女にならないの
- 牧野 郁美: …それがなければ、私はもう ここにいなかったと思う
- 牧野 郁美: あっ…“私”じゃなくて “くみ”だった!…てへっ!
- 入名 クシュ: …神浜市内にいると 争いに巻き込まれそうだし
- 入名 クシュ: 私はいままで通り 市外への遠征を続けようかな
- 牧野 郁美: くみの話聞いてたっ? 市外の方が危ないって…
- 牧野 郁美: 神浜市内で、チームを組んで 戦うのが一番安全だよ?
- 入名 クシュ: いままでもひとりでやってきたし 何かあったら仕方ないよ
- 入名 クシュ: …アネカお姉さんは逃げなかった だから私も逃げたくない
- 牧野 郁美: (死ぬのが怖くないのっ? 私は怖いよ…)
- 牧野 郁美: (群れないでやっていけるのって こういう子なんだろうな…)
- 入名 クシュ: それに、市外の魔女だって
- 入名 クシュ: 放っておけば 誰かが犠牲になっちゃうんだよ?
- 七瀬 ゆきか: はっ… その通りですっ
- 七瀬 ゆきか: 自分だけ 救われるわけにはいきません!
- 牧野 郁美: それは、そうだけど… でも…どうなのかな…?
- 牧野 郁美: くみは、マギウスの考えは よくわからないんだけど
- 牧野 郁美: でも、みふゆさんほどの人が…
- 牧野 郁美: 市外のことはどうでもいいって 思ってるのかな…?
- 七瀬 ゆきか: みふゆさん…?
- 牧野 郁美: あっ、ごめん… 私の恩人で、マギウスの翼の幹部
- 牧野 郁美: 梓みふゆさんっていう人で… って言っても知らないよねっ?
- 七瀬 ゆきか: えっ!?
- 七瀬 ゆきか: 梓センパイって 魔法少女なんですか?
- 牧野 郁美: まさかの知り合いっ!?
- 七瀬 ゆきか: 水名女学園の大先輩ですっ
- 牧野 郁美: あ、学校同じなんだ…
- 牧野 郁美: マギウスの翼に興味あるなら みふゆさんを紹介できるけど…?
- 七瀬 ゆきか: …………
- 牧野 郁美: あっ、無理に勧誘しようとか そういうんじゃないからっ!
- 牧野 郁美: ちょっとしゃべりすぎちゃって バレたら怒られそうだし…
- FILENAME: text_514410-13_elfXK.txt
- 牧野 郁美: 話がだいぶ逸れちゃったけど…
- 牧野 郁美: 次はどこへ向かえばいいのっ?
- 七瀬 ゆきか: これって…
- 七瀬 ゆきか: 記憶はもう充分に 集まったってことでしょうか?
- 牧野 郁美: その場合はどこへ行くのかなぁ~
- 入名 クシュ: …………
- 牧野 郁美: あっ、うろおぼえでもいいから!
- 入名 クシュ: …たぶん、お城?
- 七瀬 ゆきか: お姫様が眠っているっていう?
- 入名 クシュ: …うん
- 入名 クシュ: ソウルメイトのお姫様は お城の地下で眠っていてね…
- 入名 クシュ: 主人公が、集めた思い出を その心に戻してあげると
- 入名 クシュ: 長い眠りから目を覚まして…
- 入名 クシュ: 主人公たちと一緒に… 夢の世界から脱出するの
- 牧野 郁美: ああ…そうだったねっ
- 牧野 郁美: それっぽい場所って… 校内にあるかな?
- 七瀬 ゆきか: 聖リリアンナ学園自体が お城みたいに立派ですからね
- 入名 クシュ: 正門から見ると 少しお城っぽい…かも?
- 入名 クシュ: …着いたけど
- 入名 クシュ: ここ、本当にお城なのかな…?
- 七瀬 ゆきか: 入名さんが疑ってる時点で かなり怪しいですね…
- 七瀬 ゆきか: とにかくお姫様を見つけて
- 七瀬 ゆきか: そのシュシュを 渡せばいいはずなんですけど…
- 七瀬 ゆきか: …お姫様はどこなんでしょう?
- 入名 クシュ: お城の地下…
- 七瀬 ゆきか: 地下って… どうやって行けば…?
- 牧野 郁美: ほらっ、何かないのぉ~っ? 魔法のアイテムを使うとか!
- 七瀬 ゆきか: シュシュと鏡しかないです…
- 牧野 郁美: じゃ、鏡!
- 七瀬 ゆきか: とりあえず、ユメミカガミを 出してもらえます?
- 入名 クシュ: うん
- 牧野 郁美: 覗いてみたらどうかな?
- 入名 クシュ: わかった… やってみるね
- 七瀬 ゆきか: …どんな感じでしょう?
- 七瀬 ゆきか: いま見えてる風景は実は幻で 鏡に本当の姿が映る的なことが
- 七瀬 ゆきか: 起きたりなんかして…
- クシュ&ゆきか: ――っ!?
- 牧野 郁美: お墓…?
- 七瀬 ゆきか: いきなり夜になりましたっ
- 七瀬 ゆきか: …………
- 七瀬 ゆきか: 地下に眠るお姫様…
- 七瀬 ゆきか: 地下…お墓の… 地面の下…?
- 牧野 郁美: えっ… それって…
- 牧野 郁美: (死んでる、ってことじゃ…)
- アネカ: ………… …………
- 入名 クシュ: ――っ!?
- ゆきか&郁美: あれは…!
- 入名 クシュ: アネカ…お姉さん
- アネカ: …………?
- アネカ: きみは…誰?
- 入名 クシュ: えっ…?
- 入名 クシュ: 誰って…クシュだよ! 隣に住んでた…
- アネカ: クシュ…ちゃん?
- 入名 クシュ: 覚えてないの!?
- アネカ: …ごめんなさい 何も…思い出せないの…
- 入名 クシュ: そんな…
- 入名 クシュ: ………… …………
- 牧野 郁美: ――っ!?
- 七瀬 ゆきか: 何だか…まずい予感がしますっ
- ゆきか&郁美: …………
- 牧野 郁美: ここって…?
- 七瀬 ゆきか: 魔女の結界か何かでしょうか…?
- アネカ: …………
- 入名 クシュ: …違う
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: これも私の心の中 いままでより、ずっと深い場所
- つづく…
- FILENAME: text_514420-1_X0gyS.txt
- 第2部
- Ⅴ ‐ すぎさりし夢
- 牧野 郁美: ここって…?
- 七瀬 ゆきか: 魔女の結界か何かでしょうか…?
- アネカ: …………
- 入名 クシュ: …違う
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: これも私の心の中 いままでより、ずっと深い場所
- 牧野 郁美: そうなの?
- 入名 クシュ: うん、私が空想してた “すぎさりし夢”と
- 入名 クシュ: 同じ風景だから
- 七瀬 ゆきか: (…とても荒れ果てて)
- 七瀬 ゆきか: (…寂しい場所…ですね)
- 牧野 郁美: …気のせいかな、クシュちゃん さっきよりきりっとしてない?
- 入名 クシュ: そう? 目が冴えてきたからかな?
- 七瀬 ゆきか: もしかすると… 夜が深まったからでは?
- 入名 クシュ: たぶんそうだと思う
- 牧野 郁美: ほんとに夜行性なんだ…
- 入名 クシュ: アネカお姉さん
- アネカ: な…何?
- 入名 クシュ: …自分の名前はわかるんだよね? 他に覚えてることは?
- アネカ: ………… …………
- アネカ: …わからない ここって、どこ…なの?
- アネカ: きみは、私を知ってるの?
- 入名 クシュ: うん… とてもよく
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: アネカお姉さんは 何も覚えてない…
- 七瀬 ゆきか: それって…
- 七瀬 ゆきか: シュシュに集めた記憶を 渡せばいいのでは?
- 入名 クシュ: …違う気がする
- 入名 クシュ: いままで集めたのは
- 入名 クシュ: 私とアネカお姉さんが 出会ってからの思い出だから
- 入名 クシュ: その前の記憶がないお姉さんと
- 入名 クシュ: “出会い”をやり直すことは できないと思うよ
- 牧野 郁美: じゃあ、どうするのぉ~?
- 入名 クシュ: まず、アネカさんが私と “出会うまで“の記憶を戻して
- 入名 クシュ: シュシュに込められた記憶は そのあとで返すんだと思う
- 入名 クシュ: (そうすれば、今度こそ… 言えなかったさよならが言える)
- 七瀬 ゆきか: 集めた記憶だけじゃなく 残り半分がいるってことですねっ
- 牧野 郁美: やり直したい過去が大きいから 試練も半端じゃないってことぉ?
- 七瀬 ゆきか: でも、どうしましょう?
- 七瀬 ゆきか: 残り半分の記憶って… どうやって取り戻すんでしょうか
- 入名 クシュ: …これを使うしか 思いつかないけど
- 七瀬 ゆきか: シュシュじゃないなら それ以外にないですよね…
- 牧野 郁美: アネカちゃんが それを覗き込めばいいのっ?
- 入名 クシュ: たぶん…そうだと思う
- 七瀬 ゆきか: あのっ…すみません
- 七瀬 ゆきか: この試練って確か…
- 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」の 通りに話を進めるんですよね?
- 七瀬 ゆきか: お城の地下を目指してたのに お墓でお姫様と会ったりとか
- 七瀬 ゆきか: 効果がわからないアイテムを とりあえず使ってみようとか
- 七瀬 ゆきか: 何だか微妙に展開が 違ってきてる気がするんですが
- 七瀬 ゆきか: そのあたり含めて
- 七瀬 ゆきか: こんなにふんわりした感じで OKなんでしょうか?
- 入名 クシュ: たぶん…大丈夫だと思う
- 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」の 内容をあれこれ空想してるとき…
- 入名 クシュ: こんなストーリーかなって 思ったことがあったし
- 牧野 郁美: じゃあ、それが正解だよっ!
- 七瀬 ゆきか: 入名さんが正しいと思うものが 正しいみたいですからねっ
- 入名 クシュ: それじゃ…
- 入名 クシュ: …アネカさん、この鏡を 覗き込んでみて
- アネカ: う、うん…
- FILENAME: text_514420-2_X0gyS.txt
- アネカ: これって…
- アネカ: 私の記憶?
- アネカの母: ごめんね、アネカ
- アネカの母: せっかくたくさん 友だちができたのに
- アネカの母: 遠い国に引っ越しだなんて…
- アネカ: 「ううん、仕方ないよ それに、次の学校も楽しみ!」
- アネカの父: 歳の近い友だちは なかなかできないかもしれないな
- アネカ: 「そうなの?」
- アネカの母: 人口の少ない地域だからね 閉鎖的な土地柄だって聞くし
- アネカの母: その分、家族同士で しっかり支え合って
- アネカの母: 暮らしていきましょう
- アネカ: 「…そうだよね!」
- アネカの妹: これからも仲良くしようね お姉ちゃん!
- アネカの父: …どうしてふたりで 森なんかに入ったんだ
- アネカの母: 警察まで呼んで 本当に大騒ぎだったのよ
- アネカの妹: …ごめんなさい…
- アネカの妹: わたしがお姉ちゃんに頼んで 一緒に来てもらったの
- アネカの妹: 絵本で読んだ、妖精さんの 踊った跡を探したいって…
- アネカの父: いや、悪いのは 言いつけを守らなかったアネカだ
- アネカの父: あの森は迷いやすくて 地元の人でもめったに近寄らない
- アネカの父: だから立ち入ってはダメだと 何度も言って聞かせただろう?
- アネカ: 「ごめんなさい…ダディ、マミィ」
- アネカ: 「もう絶対にしないから」
- アネカの父: …わかったなら、それでいい さあ、食事にしよう
- アネカの母: そうね、アネカも懲りただろうし お腹もペコペコでしょう?
- アネカの母: 仲良し姉妹が行方不明… なんてニュースにならなくて
- アネカの母: 本当によかったわ…!
- アネカ: …………
- 入名 クシュ: ………… …………
- 牧野 郁美: …いま見えたのって アネカちゃんの記憶…だよね?
- アネカ: …そうみたい
- アネカ: ずいぶん前のできごとだけど 確かに、私の記憶…
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: (知らなかった…)
- 入名 クシュ: (アネカお姉さんに… 妹さんがいたの…?)
- アネカ: あ…
- 七瀬 ゆきか: …続きがあるんでしょうか?
- 牧野 郁美: そんな感じだねっ!
- 入名 クシュ: コンパクト、覗いてみて
- アネカ: …うん
- FILENAME: text_514420-3_X0gyS.txt
- アネカ: ………… …………
- 医者: …大変申し上げにくいのですが
- 医者: 現在の医学では、妹さんの ご病気を治すことは不可能です
- アネカの母: そんな…
- 医者: 有望な新薬の研究開発も 進んではいるのですが
- 医者: 実用化にはまだ 何年もかかる見込みで…
- アネカの父: …とても間に合いそうもない?
- 医者: はい…
- 医者: このまま入院して、緩和ケアを 続けることもできますが
- 医者: ご自宅での療養に切り替えて
- 医者: 残された時間を 家族とお過ごしになるのが
- 医者: ご本人にとって いちばん幸せではないかと…
- 医者: お力になれず、申し訳ありません
- アネカの妹: …お姉ちゃん…
- アネカ: 「なぁに?」
- アネカの妹: 昨日も寝ないで 看病してくれてたんでしょ?
- アネカの妹: 少しは休んで…! お姉ちゃんが病気になっちゃうよ
- アネカ: 「あなたの痛みに比べたら…」
- アネカの妹: 痛くないよ 今日打ったのって
- アネカの妹: 病気は治らないけど、痛みには すごく効く注射なんでしょ?
- アネカ: 「えっと…」
- アネカの妹: えへへ… お医者さんの話、聞こえちゃった
- アネカの妹: ねえ、お姉ちゃん
- アネカの妹: あとでまた あの本、読んで聞かせて
- アネカ: 「また、妖精さんの冒険のお話?」
- アネカの妹: うん…飽きちゃった?
- アネカ: 「気にしないで 何度でも読み聞かせてあげる」
- アネカの妹: えへ…ありがと
- アネカの妹: わたし、この病気になって
- アネカの妹: ちょっとだけ よかったこともあるんだ
- アネカ: 「そうなの?」
- アネカの妹: みんな優しいし…
- アネカの妹: さっきみたいにワガママ言っても 聞いてくれるし
- アネカの妹: それに…
- アネカ: 「それに?」
- アネカの妹: お姉ちゃんと…前より 仲良くなれたし…ね
- アネカ: 「…………!」
- アネカの妹: 病気になったあとのことも…
- アネカの妹: 今この瞬間だって わたしの大切な宝物だよ
- アネカの妹: それから…妖精さんの冒険は… もう…いいや
- アネカ: 「えっ…」
- アネカの妹: お姉ちゃんも…わたしのために 無理しなくてもよくなるね…
- アネカ: 「…うそ?」
- アネカの妹: これからは、わたしの分まで …幸せに生きて…
- アネカの妹: ありがとう…
- アネカの妹: おねえ…ちゃ…
- アネカ: 「…うそでしょ!?」
- アネカの妹: …………
- アネカ: 「そんなっ…」
- アネカの母: …大好きなアネカの側に 最後まで一緒にいられて
- アネカの母: あの子は幸せだったと思うわ
- アネカの父: ああ、だからアネカも あの子が生きられなかった分まで
- アネカの父: 幸せに生きてほしい
- アネカ: 「うん…」
- キュゥべえ: ………… …………
- クシュ&アネカ: ………… …………
- 入名 クシュ: (亡くなった妹さんがいたなんて 私、知らなかった…)
- 入名 クシュ: (アネカお姉さんは ひとことも口にしなかった)
- 入名 クシュ: (顔も記憶も、私と出会う前の アネカさんそのものなのに…)
- 入名 クシュ: (まるで、別の人みたい…)
- 牧野 郁美: くみにも全部見えちゃった つらい記憶だね…
- 七瀬 ゆきか: はい… それに、少し気になったことが
- 牧野 郁美: 何?
- 七瀬 ゆきか: 妹さんって、入名さんと 何となく似てません…?
- 牧野 郁美: あ…確かに! クシュちゃんを幼くした感じ
- 七瀬 ゆきか: はい…それから 見た目だけじゃなくて
- 七瀬 ゆきか: 童話の世界が大好きだったり 声や雰囲気も…
- 牧野 郁美: …うん 違うけど、似てるね
- FILENAME: text_514420-4_X0gyS.txt
- Ⅵ ‐ 心の試練
- 七瀬 ゆきか: …アネカさんの記憶は さっきので終わりなんでしょうか
- アネカ: …………
- 七瀬 ゆきか: 覗き込んでも、何も起きません?
- アネカ: …うん…
- 七瀬 ゆきか: とすると…今のアネカさんは
- 七瀬 ゆきか: 記憶の半分を取り戻した… ということです?
- 入名 クシュ: そのはずだけど…
- 七瀬 ゆきか: あとは入名さんと出会ってからの 思い出が詰まったこのシュシュを
- 七瀬 ゆきか: アネカさんにお渡しすれば
- 七瀬 ゆきか: アネカさんは、入名さんの 知っているアネカさんに戻る…?
- 入名 クシュ: うん…ただ ちょっと引っかかる
- 牧野 郁美: …何が?
- 七瀬 ゆきか: …って、牧野さん!
- 七瀬 ゆきか: どうしてその格好に 戻ってるんですか?
- 牧野 郁美: ちょっと肌寒かったから…
- 七瀬 ゆきか: …そうですか
- 七瀬 ゆきか: では、話を戻しますと…
- 七瀬 ゆきか: 入名さんは 何が気になるんでしょう?
- 入名 クシュ: …アネカお姉さん
- アネカ: はい?
- 入名 クシュ: 自分がどうして 魔法少女になったのか
- 入名 クシュ: 覚えてる?
- アネカ: 魔法…少女?
- 入名 クシュ: 魔法少女を知らない…?
- 入名 クシュ: キュゥべえに会う前の記憶しか ないってこと…?
- 七瀬 ゆきか: あ…アネカさんは 妹さんが亡くなったあとで
- 七瀬 ゆきか: キュゥべえと出会って 魔法少女になったんですね
- 入名 クシュ: うん、私が隣に引っ越したときは もう魔法少女だったんだけど
- 入名 クシュ: でも、その記憶はないみたい
- 七瀬 ゆきか: 抜けてる記憶がある…?
- 入名 クシュ: そう、私もお姉さんが どんな願いをしたのかは知らない
- 入名 クシュ: …聞いてないの
- アネカ: ………… …………
- アネカ: 私は、きみが誰なのか まだ知らない
- アネカ: 私が誰なのかもよくわからない…
- アネカ: …でも知りたい 自分が何者かわからないのはイヤ
- 入名 クシュ: …………!
- 入名 クシュ: (アネカお姉さんだったら… 絶対にそう言う…と思うけど)
- 入名 クシュ: (でも、この人は 私の知らないアネカさん…)
- 入名 クシュ: (だって…)
- 入名 クシュ: “私を知らないアネカさん”は “私の知ってるアネカさん”じゃない
- 入名 クシュ: (ふたりが出会う前だったら そんな風には思わなかった)
- 入名 クシュ: (なのにそう思ってしまうのは)
- 入名 クシュ: (アネカさんが 変わったからじゃない…)
- 入名 クシュ: (私が変わっちゃったからだ)
- 入名 クシュ: (同じ思い出を持ってないと)
- 入名 クシュ: (出会いをやり直すことは できないんだ…)
- アネカ: …………
- 牧野 郁美: あの…とにかく やってみたらどう?
- 牧野 郁美: シュシュに集めた記憶を アネカさんに戻してみれば
- 牧野 郁美: 抜けてる記憶も一緒に 戻ってくるかもしれないし
- 入名 クシュ: 怖い…よね?
- アネカ: うん…少し…
- 入名 クシュ: じゃあ、一緒にやってみよう?
- アネカ: え…?
- 入名 クシュ: 集めた記憶を戻すには 思い出を集めた品を…
- 入名 クシュ: つまりシュシュを身に着けて 鏡を覗き込めばいいはずだけど
- 入名 クシュ: ふたりで手をつないで
- 入名 クシュ: シュシュを手首に巻きつけて それをやるの
- 七瀬 ゆきか: …大丈夫でしょうか?
- アネカ: クシュちゃんを信じるよ
- 入名 クシュ: え…?
- アネカ: きみとは 初めて会った気がしないから
- 入名 クシュ: あ…
- アネカ: 「不思議、どうしてかな?」
- 入名 クシュ: 『…何が?』
- アネカ: 「…きみとは初めて会った気がしないの」
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: じゃあ、やってみる
- 入名 クシュ: …準備はいい?
- アネカ: うん…
- 入名 クシュ: それじゃ…
- FILENAME: text_514420-5_X0gyS.txt
- アネカ: 「ふたりの心がつながって…」
- 入名 クシュ: 『シュシュから流れ込んでくる…』
- アネカ: 「抜け落ちていた、記憶の隙間が 埋まってゆく…」
- アネカ: 「私が…」
- 入名 クシュ: 『アネカお姉さんが…』
- アネカ: 「魔法少女になるときに、願ったことは…」
- キュゥべえ: 妹に代わる存在が欲しい…?
- アネカ: 「うん…」
- アネカ: 「あの子の死をなかったことにはしたくないし 別の妹が欲しいわけでもない」
- アネカ: 「あの子がいない寂しさを 埋めてくれるような、そんな友だちが欲しいの」
- アネカ: 「あの子の最後の言葉に応えるために…」
- アネカの妹: 「えへ…ありがと わたし、この病気になって ちょっとだけよかったこともあるんだ」
- アネカ: 「そうなの?」
- アネカの妹: 「みんな優しいし… さっきみたいにワガママ言っても 聞いてくれるし、それに…」
- アネカ: 「それに?」
- アネカの妹: 「お姉ちゃんと…前より 仲良くなれたし…ね」
- アネカ: 「…………!」
- アネカの妹: 「病気になったあとのことも… 今この瞬間だって わたしの大切な宝物だよ」
- アネカの妹: 「これからは、わたしの分まで …幸せに生きて…」
- アネカの妹: 「ありがとう…」
- アネカの妹: 「おねえ…ちゃ…」
- アネカ: 「あの『ありがとう』を なかったことになんてしたくない」
- アネカ: 「あの子の分まで幸せに生きるために “あの子”じゃなくて あの子に代わる友だちが欲しいの」
- キュゥべえ: その願いはキミにとって 魂を差し出すに足るものかい?
- アネカ: 「…うん」
- キュゥべえ: 覚悟は決まったようだね
- キュゥべえ: キミの祈りは 間違いなく遂げられる
- アネカ: この服って…?
- キュゥべえ: それが魔法少女になった キミの姿だよ
- ピロン♪
- アネカ: あっ…メッセージ マミィから?
- アネカ: ………… …………
- キュゥべえ: どうかしたのかい?
- アネカ: 隣の空き家を
- アネカ: 日本の会社が社宅として 借りることになったみたいなの
- アネカ: 近々、日本から 親子が越してくるかもって…!
- アネカ: 気の合う子だといいなぁ…
- キュゥべえ: 契約が成立した以上 キミは必ず出会うことになる
- キュゥべえ: 妹に代わる存在に なりうる友人とね
- アネカ: まだ出会う前から 気の合う子って決まってる…
- アネカ: それって、ソウルメイトみたい
- 入名 クシュ: 私の一家が、アネカさんの隣に引っ越したのは…
- 入名 クシュ: アネカさんが、妹に代わる友だちが欲しいって 願ったからだったの…?
- アネカ: 「えっ…クシュちゃんも好きなの? 「さよならの寓話」シリーズ」
- 入名 クシュ: 『…お姉さん、この本知ってるの?』
- アネカ: 「うん、大好き!」
- アネカ: 「不思議、どうしてかな?」
- 入名 クシュ: 『…何が?』
- アネカ: 「…きみとは初めて会った気がしないの」
- アネカ: (…どうしよう)
- アネカ: (見た目も、声も妹にそっくりで 好きな本までよく似てて…)
- アネカ: (マミィもダディも驚いて 言葉が出なかった…)
- アネカ: (もしも…あの声で)
- アネカ: (“お姉ちゃん”って 呼んでくれたら…)
- アネカ: …………
- アネカ: (…だめよ、アネカ)
- アネカ: (クシュちゃんはクシュちゃん! 妹の生まれ変わりじゃないの)
- アネカ: (ただ、すごく気の合う子… そのことを忘れちゃだめ)
- アネカ: うれしいな…まるで 新しく妹ができたみたい
- 入名 クシュ: うん…私もうれしい
- 入名 クシュ: ねえ、アネカさんのこと… お姉ちゃんって呼んでいいかな
- アネカ: えっ…
- アネカ: …それはやめておきましょ? マミィとダディが驚いちゃう
- 入名 クシュ: …そうだね わかった
- 入名 クシュ: 知らなかった…
- 入名 クシュ: アネカお姉さんは 亡くなった妹さんを思い出させる私を見て 苦しみながら 別個の存在として扱おうとしてくれていた
- 入名 クシュ: だから私に “お姉ちゃん”って呼ばせなかったんだ…
- 入名 クシュ: だけどある日、アネカお姉さんは ソウルジェムの秘密を知ってしまった
- 入名 クシュ: そして、私が魔法少女になることを 自分から後押ししたことを後悔して…
- 入名 クシュ: その絶望のあまり…
- アネカ: ………… …………
- 入名 クシュ: …何も知らなかった
- 入名 クシュ: アネカさんは、アネカさんの物語の主人公で
- 入名 クシュ: 私は亡くなった妹さんの代わりに連れてこられた ただの代役
- 入名 クシュ: アネカさんを苦しめて 絶望の運命に追いやるだけの役割だった…
- 入名 クシュ: 魔法少女になるとき… 私も、おとぎ話の主人公みたいになれるかもって そう思っちゃったけど…
- 入名 クシュ: 私は、主人公なんかじゃなかった
- クシュ&アネカ: ………… …………
- 入名 クシュ: あ…
- アネカ: 全部、思い出した…
- アネカ: 私、クシュちゃんに ひどいことしたんだね…
- アネカ: ………… …ごめんね、黙ってて
- アネカ: 幻滅したよね
- アネカ: 許してもらうことなんて できないよね…
- 入名 クシュ: 許すとか、許さないとか… そんなの…
- 入名 クシュ: (私がアネカお姉さんを 嫌いになれるわけ、ない…!)
- アネカ: …さよなら
- 入名 クシュ: ――っ!?
- 七瀬 ゆきか: えっ…!
- 牧野 郁美: 消えちゃった…!
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: (「オトラントのうみべで」の お話の通りに)
- 入名 クシュ: (“お姫様”を 連れ戻せなかった…)
- 入名 クシュ: “心の試練”に… 失敗した?
- 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
- ノンノン、ただしご忠告! 落第したら永遠に目が覚めないって 北養区のお嬢様の間ではもっぱらのウワサ
- カガミヨカガミー!
- FILENAME: text_514420-6_X0gyS.txt
- Ⅶ ‐ さよならの寓話
- 入名 クシュ: “心の試練”に… 失敗した?
- 牧野 郁美: …いったい何があったの? ふたりは何を見たの?
- 七瀬 ゆきか: わたしたちが知っているのは
- 七瀬 ゆきか: 手をつないでいたふたりが 目を覚ましたと思ったら
- 七瀬 ゆきか: アネカさんが突然 手を振りほどいて
- 七瀬 ゆきか: 『…さよなら』と言い残して 消えてしまったことだけで…
- 入名 クシュ: えっ…と…
- 七瀬 ゆきか: …『妹に代わる友だちが欲しい』 アネカさんがそう願った結果
- 七瀬 ゆきか: アネカさんと入名さんの ふたりが出会ったってこと…?
- 牧野 郁美: 妹さんによく似た 相性バッチリのソウルメイトが
- 牧野 郁美: 日本からやってきた… それがクシュちゃんで
- 牧野 郁美: アネカちゃんはクシュちゃんを
- 牧野 郁美: 魔法少女の世界に 引き込んじゃったことに苦しんで
- 牧野 郁美: 絶望してしまった…
- 牧野 郁美: (悲惨すぎるお話だよぉ…!)
- 入名 クシュ: うん…魔法少女になって
- 入名 クシュ: 私もおとぎ話の主人公みたいに なれるかも、なんて
- 入名 クシュ: 浮かれてたのが、バカみたい
- 入名 クシュ: 私は、代役だったのに…
- 牧野 郁美: 代役じゃないよぉ!
- 入名 クシュ: えっ…
- 牧野 郁美: アネカちゃんはいつだって
- 牧野 郁美: クシュちゃんを クシュちゃんとして見てたのに
- 牧野 郁美: そんなこと言ったら とっても失礼だよっ、ぷんぷん!
- 牧野 郁美: くみはまだ、修行中のアイドルで
- 牧野 郁美: ドラマの脇役だって もらえてないけど…
- 牧野 郁美: でも、くみの物語の中では くみだけが主人公なんだよっ!
- 七瀬 ゆきか: そ、その通りですっ
- 七瀬 ゆきか: …牧野さん、いまちょっと キャラと見た目がズレてますから
- 七瀬 ゆきか: 言葉が頭に入ってきづらいかも しれませんけど…
- 牧野 郁美: ふぇえっ!?…忘れてた
- 牧野 郁美: きつい言い方して 怖がらせちゃいけないから
- 牧野 郁美: 一生懸命キャラ作ったのにぃ…
- 七瀬 ゆきか: …とっ、とにかくっ
- 七瀬 ゆきか: 入名さんの物語に 入名さんの代役はいませんのでっ
- 入名 クシュ: 私の代役はいない…
- 入名 クシュ: そうだよね
- 七瀬 ゆきか: それに試練の内容は 入名さんがイメージしてた
- 七瀬 ゆきか: 「オトラントのうみべで」の 通りに話を進めることで…
- 七瀬 ゆきか: この夢の主人公は 入名さんなんですから
- 七瀬 ゆきか: 次にすることは入名さんが 決めちゃってくださいっ
- 入名 クシュ: 次にすること…
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: お姫様を取り戻す…?
- 七瀬 ゆきか: それですっ
- 牧野 郁美: でも、アネカちゃんはどこに…?
- 入名 クシュ: ………… …お城の地下?
- 牧野 郁美: そのイベントもうやったよね? お墓でアネカさんを見つけて…
- 七瀬 ゆきか: …いえ、勝手にお城っぽいって 決めつけて正門に行っただけです
- 七瀬 ゆきか: あのへんの展開は入名さんも うろおぼえゾーンで
- 七瀬 ゆきか: 鏡を使ってみたら たまたま進展があったりとか
- 七瀬 ゆきか: かなりオリジナルっぽい 展開になりかけてましたし…
- 七瀬 ゆきか: わたしたち、本物のお城は まだ見つけていないのでは…?
- 入名 クシュ: 本物のお城って…?
- 牧野 郁美: …どう見てもアレだよぉ~?
- 入名 クシュ: 行こう
- 入名 クシュ: 私たちの 「オトラントのうみべで」は…
- 入名 クシュ: …試練はまだ、終わっていない!
- 入名 クシュ: 郁美さん、ゆきかさん 力を貸して…!
- 七瀬 ゆきか: はいっ、村人Aなりに 精一杯がんばりますっ
- 牧野 郁美: ゆきかちゃん 剣士役のはずだよねっ!?
- ???の声: …通さない
- ゆきか&郁美: ――っ!?
- ???: 入名クシュの試練は 失敗に終わった…
- ???: そう、夢から出ることは 永遠に許されない…
- ???: アネカさんの願いの記憶を 欠落したままにしておけば
- ???: 予定通り、幸せな出会いを やり直せたのに…
- 入名 クシュ: まだ…試練は終わってないよ…!
- ???: 違う、すべては終わった…
- 七瀬 ゆきか: 見解の違いですねっ
- 七瀬 ゆきか: …というか、この人たち 何なんでしょうか…?
- 七瀬 ゆきか: 入名さんのニセモノっぽい 怪しい見た目ですけど…
- 牧野 郁美: “うわさ”に反した行動を取ると その化身が襲ってくるらしいの
- 牧野 郁美: 試練は本当は終わってるのに
- 牧野 郁美: 強引な解釈で続けようとしたから 出てきた…とか?
- 入名 クシュ: 「オトラントのうみべで」の ストーリーに沿っていれば
- 入名 クシュ: 試練は続行できるはず…
- 七瀬 ゆきか: 途中でオリジナル展開に なりかけたあたりからの解釈が
- 七瀬 ゆきか: わたしたちと違うから
- 七瀬 ゆきか: 戦って決めようってことですねっ
- 入名 クシュ: えっと… …私のうろおぼえが原因?
- ???: …通さないと言った
- クシュ&ゆきか: …………!
- 牧野 郁美: あぁー、もうぉっ! このローブ、邪魔っ!
- バッ
- 入名 クシュ: ―クシュ― …迷惑かけて、ごめん 最悪でも、ふたりは夢の外に逃がすから
- 牧野 郁美: ―郁美― もうっ! とっくに大迷惑な目に遭ってるんだから
- 牧野 郁美: ―郁美― いまさらそんなの言いっこなしだよっ!
- 七瀬 ゆきか: ―ゆきか― その通りですっ お城に乗り込んで、アネカさんを連れ戻さないと
- 七瀬 ゆきか: ―ゆきか― この面倒事から解放されても 後味が悪すぎますのでっ
- ???: …抵抗はムダ 試練は終わった
- 入名 クシュ: えっ…?
- 七瀬 ゆきか: あれっ…?
- 牧野 郁美: ふぇえええっ!? 学校に戻されてるぅ~!
- 入名 クシュ: 敵…来るよ!
- FILENAME: text_514420-7_X0gyS.txt
- ???: ――っ!?
- 入名 クシュ: やぁああぁーーーっ!
- ???: …………!
- 入名 クシュ: …………
- 七瀬 ゆきか: あれっ、いま…?
- 七瀬 ゆきか: 相手の魔力が入名さんの剣に… その、吸収されたような?
- 入名 クシュ: うん…私の魔法 ちょっとだけ便利
- 七瀬 ゆきか: (やっぱり吸血鬼っぽい…?)
- カラン…
- 入名 クシュ: あ…
- 入名 クシュ: ユメミカガミ…
- 牧野 郁美: 落としちゃ、めっ、だよぉ~! 大事なものなんだからぁ
- 入名 クシュ: ごめん…
- 入名 クシュ: ――っ!?
- 入名 クシュ: えっ?
- 七瀬 ゆきか: あっ…
- 牧野 郁美: うわさの結界が解けたよ!?
- 入名 クシュ: …夢から覚めたってこと?
- 牧野 郁美: たぶん…
- 七瀬 ゆきか: もしかすると、さっきの敵って… 倒しちゃいけない相手だったとか
- 牧野 郁美: うわさのルールを破ったから うわさの化身に襲われてぇ…
- 牧野 郁美: 化身を倒しちゃったら どうなるのかな?
- 入名 クシュ: うわさ自体が…消える?
- 七瀬 ゆきか: それじゃ… 城の地下にも行けないし
- 七瀬 ゆきか: アネカさんを救い出すことも できません…よね?
- 牧野 郁美: うそぉ~ これで、終わりっ?
- 七瀬 ゆきか: …そんなっ
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: ううん…
- 入名 クシュ: まだ夢は終わってない
- 七瀬 ゆきか: えっ?
- 入名 クシュ: 人の気配、全然ない… 夢が始まったときと同じ
- 七瀬 ゆきか: 確かにそうですっ
- 入名 クシュ: それに、ほら… ユメミカガミがまだあるし
- 牧野 郁美: それ、うわさが消滅したら なくなってるはずだよねっ
- 入名 クシュ: うん…たぶん私たちを 夢から覚めたつもりにさせて
- 入名 クシュ: あきらめさせるための…罠
- 牧野 郁美: じゃ、さっきの城があるところに 戻るためには…?
- 入名 クシュ: 鏡を使うんだと思う
- 七瀬 ゆきか: いま見えてる風景は実は幻で 鏡に本当の姿が映る的なことが
- 七瀬 ゆきか: 起きたりなんかして…
- 七瀬 ゆきか: あのときと同じですねっ
- 入名 クシュ: うん… 校舎の中に見えるけど
- 入名 クシュ: ユメミカガミに映して見れば…
- 入名 クシュ: やっぱり…!
- 七瀬 ゆきか: まだ結界の中ですっ
- 入名 クシュ: 今のって…
- 七瀬 ゆきか: はい、廊下の奥に… 光がっ
- 七瀬 ゆきか: あの光に飛び込めば…
- 牧野 郁美: さっきの城に戻れるかもっ…!
- 入名 クシュ: うん!
- ???の声: …そうはさせない
- ???: …………
- 牧野 郁美: わざわざ邪魔しに 出てきたってことはぁ…
- 七瀬 ゆきか: 光に飛び込むのが 正解なんですねっ
- 牧野 郁美: ここは引き受けたからっ!
- 七瀬 ゆきか: 入名さん、走って!
- 入名 クシュ: …うん ありがと
- ???: …………!
- 七瀬 ゆきか: 邪魔させませんっ
- 牧野 郁美: くみたちが相手だよっ!
- FILENAME: text_514420-8_X0gyS.txt
- 牧野 郁美: はぁ…はあ…
- 七瀬 ゆきか: もう少しですっ
- ???: …………
- 七瀬 ゆきか: 負けられませんっ
- 七瀬 ゆきか: 入名さんがあの光に たどり着くまでは!
- 牧野 郁美: うん…くみも、がんばる!
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: 見えた…!
- 入名 クシュ: (あの光に…飛び込んで…)
- 入名 クシュ: (夢の最深部まで!)
- 入名 クシュ: やあぁぁあーーーっ!
- 入名 クシュ: あそこだ…! あの城の地下に、アネカお姉さんが…!
- 入名 クシュ: 待ってて… いま、私が行くから!
- 入名 クシュ: アネカお姉さん…
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: 私が迎えに行くからね
- ???: …………
- 牧野 郁美: ふぇぇっ!?
- 七瀬 ゆきか: いきなり…消えました?
- 牧野 郁美: クシュちゃんが 光に飛び込んだからかなぁ?
- 七瀬 ゆきか: まあ、意味ないですよね
- 七瀬 ゆきか: わたしたち脇役と これ以上戦っても…
- 牧野 郁美: クシュちゃんはアネカちゃんを どうするつもりなのかなぁ…?
- 七瀬 ゆきか: へっ…?
- 七瀬 ゆきか: 夢から連れ出すために 飛び込んだのでは…?
- 牧野 郁美: 全部の記憶が戻った アネカちゃんを連れて帰って
- 牧野 郁美: もう一度会いたいっていうこと?
- 牧野 郁美: それはクシュちゃんが
- 牧野 郁美: 本当に望んでいる ことなのかな、って
- 七瀬 ゆきか: …アネカさんも 亡くなった妹さんを
- 七瀬 ゆきか: 甦らせたいとは 願わなかったんですよね
- 七瀬 ゆきか: それでも入名さんのことで あんなに苦しんだ…
- 牧野 郁美: うん…
- 牧野 郁美: 永遠の眠りについた人を お墓から呼び起こす…
- 牧野 郁美: それはとっても怖いことだって くみは思うの
- 入名 クシュ: ………… …………
- FILENAME: text_514420-9_X0gyS.txt
- ギィ…
- 入名 クシュ: アネカさん…
- アネカ: …あ、えっと
- アネカ: …クシュちゃん だっけ?
- 入名 クシュ: えっ… 記憶…元に戻っちゃったの?
- アネカ: えっと…クシュちゃんは
- アネカ: さっき、私の記憶を取り戻す 手伝いをしてくれた子だよね?
- アネカ: 私、それから妹の 悲しい記憶を思い出して…
- アネカ: 気づいたらここにいたの
- アネカ: でも不思議…
- 入名 クシュ: え?
- アネカ: クシュちゃんって 妹によく似てる気がする
- 入名 クシュ: (やっぱり 最後に一緒に見た記憶を…)
- 入名 クシュ: (魔法少女になったあとのことを 忘れちゃってる…)
- アネカ: ここ…どこなの? 真っ暗だけど
- 入名 クシュ: ここはお城の地下
- 入名 クシュ: 私はアネカさんを ここから連れ出しにきたの
- アネカ: そうなんだ…
- 入名 クシュ: じゃあ、覚えてないんだ?
- 入名 クシュ: 私に、さよならって言って 消えたことも
- アネカ: そうなの?
- 入名 クシュ: …うん
- 入名 クシュ: …準備はいい?
- アネカ: うん…
- 入名 クシュ: (シュシュを振りほどいたから 記憶も消えちゃったんだ…)
- 入名 クシュ: じゃあ、願い事をして 私と出会ったときのことも
- 入名 クシュ: また忘れちゃったんだね
- アネカ: 願い事…?
- 入名 クシュ: うん、魔法少女になった理由
- アネカ: 魔法少女って…?
- 入名 クシュ: (あのときの反応と同じ…)
- 入名 クシュ: (この人は、妹さんを失って すごく傷ついていた…)
- 入名 クシュ: (まだ、魔法少女になる前の アネカさんなんだ…)
- 入名 クシュ: …………
- もしも、あの時に戻れたら… もしも、あの日をやり直せたら… 毎週、オヒトリサマを抽選で “もしも”の夢にゴアンナーイ!
- 入場料はプライスレス! ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
- 入名 クシュ: (お別れは、突然すぎて ずっと心残りだった…)
- 入名 クシュ: (だから、いつも思ってた)
- 入名 クシュ: お別れも、ちゃんとできなかった
- 入名 クシュ: もう一度だけ… さよならをやり直せたらいいのに
- 入名 クシュ: (さよならをやり直すために 出会いをやり直したかった)
- 入名 クシュ: (…でも、私が会いたいのは どのアネカさんなの?)
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: …ねえ
- アネカ: 何?
- 入名 クシュ: 聞いてくれるかな…
- アネカ: …いいよ
- 入名 クシュ: ここはね、“もしも”の夢の中
- 入名 クシュ: やり直したかった過去に 戻ることができる場所なの
- アネカ: うん…
- 入名 クシュ: 妹さんを亡くして
- 入名 クシュ: 悲しい思いをしている 今のあなたはね…
- 入名 クシュ: 私と出会う前の、過去のあなた
- 入名 クシュ: あなたはこの先の未来 私と出会って、仲良くなって
- 入名 クシュ: そのせいで苦しんで 最後は私の前から姿を消すの
- アネカ: …うん
- 入名 クシュ: だから私は できなかったお別れをしたくて
- 入名 クシュ: あなたと…アネカお姉さんと もう一度会いたいと思ったんだ…
- アネカ: うん…それで?
- 入名 クシュ: このシュシュを渡せば
- 入名 クシュ: あなたは私と過ごした日々を 思い出す
- 入名 クシュ: そうすれば今度こそ 言えなかったさよならを
- 入名 クシュ: 言えると思ってたんだけど…
- アネカ: けど?
- 入名 クシュ: けど、違うの
- 入名 クシュ: この“もしも”の夢の中で 私はいろんなあなたを知った
- 入名 クシュ: 私を知らない、今のあなた 私と会った頃のアネカさん
- 入名 クシュ: 私と会って、傷ついて いなくなる前のアネカさん…
- アネカ: …………
- 入名 クシュ: 真実から目を背ければ つらい過去も消し去って
- 入名 クシュ: 楽しかった記憶だけを 残すことだって
- 入名 クシュ: できたのかもしれないけど…
- 入名 クシュ: でも…わかったの
- 入名 クシュ: 私が会いたかったアネカさんは ただひとり
- 入名 クシュ: 私と出会って、笑い合って
- 入名 クシュ: 苦しんで、そして姿を消した “あの”アネカお姉さんだけで
- 入名 クシュ: あなたにどんな記憶を渡しても それは別の人なんだって
- 入名 クシュ: ごめんね…私が何を言ってるか わからないよね…
- アネカ: ううん、わかるよ クシュちゃんの言ったこと
- アネカ: 私の妹は、今はもういない あの子ただひとりで
- アネカ: “あの子”とは二度と会えない… それと同じことだよね?
- 入名 クシュ: うん…
- 入名 クシュ: 私がお別れをしたかったのは もうどこにもいない人で
- 入名 クシュ: そんな私のわがままで
- 入名 クシュ: あなたの記憶をこれ以上 いじりまわしたりしたくない…
- 入名 クシュ: だから、このシュシュは あなたに返さない
- 入名 クシュ: 私と“アネカお姉さん”の 思い出は
- 入名 クシュ: 私だけのものにしておくね
- アネカ: うん…
- 入名 クシュ: …聞いてくれて、ありがとう やっぱりアネカさんは優しいな
- 入名 クシュ: さあ、ここから出よう?
- アネカ: 出られるの?
- 入名 クシュ: 出られるよ、きっと
- 入名 クシュ: …私の手を取って
- アネカ&クシュ: …………
- FILENAME: text_514420-10_X0gyS.txt
- 入名 クシュ: ………… …………
- キンコ~ン♪ カンコ~ン♪
- 入名 クシュ: ――っ!?
- 入名 クシュ: 夢を…見てたの?
- 入名 クシュ: 補習… まだ、始まってない
- 入名 クシュ: あ…
- 入名 クシュ: ―クシュ― アネカさんのくれたシュシュ… 想いを結んでくれたシュシュ
- 入名 クシュ: ―クシュ― いまは私の手にあって 想いを私に伝えてくれる
- 入名 クシュ: ―クシュ― 光が消えて 夢が終わった、そのあとも…
- 入名 クシュ: (夢だけど… 本当にあったことなんだ)
- 入名 クシュ: アネカさん…
- アネカ&クシュ: …………
- 入名 クシュ: (つないだ手のぬくもりが まだ残ってる)
- 入名 クシュ: (まだ魔法少女になってなくて 私とも出会っていない頃の)
- 入名 クシュ: (その先の未来を知らない アネカさん…)
- ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
- 入名 クシュ: (…アネカさんを お城の地下から連れ出せば)
- 入名 クシュ: (夢から連れ出したことに なるのかな…?)
- 入名 クシュ: (それって…)
- 入名 クシュ: (私はどんな“もしも”を 選んだことになるの…?)
- パラ…
- 入名 クシュ: あ…
- 入名 クシュ: (机の上に メモが置いてある…?)
- 補習がんばってねぇ~! 愉快な幽霊と村人剣士Aより
- 入名 クシュ: (郁美さん ゆきかさん…)
- ???の声: ごめん! 入名さん、まだいる!?
- 入名 クシュ: 先生… あ…はい
- 遅れてごめんなさいね ひどい連絡ミスがあって…
- 先生同士で話し合って
- こういうことは 二度とないようにするから!
- 入名 クシュ: …あ、大丈夫です
- 入名 クシュ: (寝てたし…)
- それじゃ 補習を始めましょうか
- ―断章―
- 灯花: …………
- ねむ: さっきから無言で 思索にふけっているけれど
- ねむ: また何か悪だくみでも しているのかな?
- 灯花: わたくしをどういう人間だと 思っているのかにゃー!?
- ねむ: 灯花の想像に委ねるよ
- 灯花: 委ねてほしくないんだけどー!?
- 灯花: …考えていたのは ユメミカガミのうわさのことだよ
- ねむ: ん…?
- 灯花: 過去をやり直せる… “もしも”が現実になる
- 灯花: それって過去への干渉ってこと?
- 灯花: 例えば事故でねむが死んで
- 灯花: 「もしも事故がなかったら」と わたくしが望んだら
- 灯花: ねむが生き返るの?
- ねむ: その例えには 若干の悪意を感じるけど…
- ねむ: うわさは万能じゃない
- ねむ: 相応の対価が必要で 過ぎた望みには応えられない
- ねむ: そういう仕組みになっているよ
- 灯花: 質問に答えてないよー
- 灯花: わたくしが聞いているのは
- 灯花: 本当に過去が 変わるのかっていうことだよ
- ねむ: その場合、何をもって 「本当に」と呼ぶのかが問題だね
- 灯花: どーいう意味?
- ねむ: そう…さっきの例えで言うと いなくなった僕の代わりに
- ねむ: 僕と同じ記憶を持つ 複製が配置され
- ねむ: 周囲の記憶も丸ごと 書き換えられたとしよう
- ねむ: それが本物なのか
- ねむ: それとも本物と同じ記憶を持つ 複製なのか
- ねむ: 灯花には区別がつくのかい?
- 灯花: …哲学問答にきょーみはないよ!
- ねむ: 失礼、抽象的な議論に 聞こえてしまったかな?
- ねむ: さまざまな可能性が 考えられるけど
- ねむ: たとえばそうしたことならば 実現可能だと思う…という
- ねむ: 私見に基づいた言葉の つもりだったんだけど…
- 灯花: 自分が創造したうわさの性質も わかんないのー?
- ねむ: あのうわさのすることは
- ねむ: その人の心が望む やり直しの機会を用意する…
- ねむ: ただそれだけだよ
- ねむ: 支払った代償に応じてね
- ねむ: 僕達には観測不可能な その舞台裏で何が起きているのか
- ねむ: 僕の見解を詳しく聞いたとして
- ねむ: むふっ…灯花は 素直にそれを信じるのかな?
- 灯花: んーーーーー!
- 灯花: ねむに聞いたわたくしが 愚かだったよーー!!
- FILENAME: text_514420-11_X0gyS.txt
- ―エピローグ―
- <翌日…>
- 入名 クシュ: ふぁ…
- 入名 クシュ: ………… …ねむ…
- 入名 クシュ: (お店が開いてるうちに 本屋さん…寄らなきゃ)
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: (昨日の夢… もう終わったんだよね?)
- 入名 クシュ: (ユメミカガミは なくなっちゃってたし…)
- 入名 クシュ: (…結局、夢から 出られたってことは)
- 入名 クシュ: (試練を乗り越えた… ってことだよね?)
- 入名 クシュ: (一度、失敗しかけたけど…)
- 入名 クシュ: ………… …………
- 入名 クシュ: うん…たぶん私たちを 夢から覚めたつもりにさせて
- 入名 クシュ: あきらめさせるための…罠
- 入名 クシュ: (何だか、似たような場面に 心あたりがある気が…?)
- 入名 クシュ: (あ、これって…!)
- 入名 クシュ: (「オトラントのうみべで」の 話を聞いて…)
- 入名 クシュ: (…私が、勝手に 空想してた場面だ)
- 入名 クシュ: (お姫様の救出に一度失敗して)
- 入名 クシュ: (夢から追い出されたと 思い込むんだけど…)
- 入名 クシュ: (実は幻を見せられてたのを 見破るっていう場面…)
- 入名 クシュ: (…ということは)
- 牧野 郁美: “うわさ”に反した行動を取ると その化身が襲ってくるらしいの
- 牧野 郁美: 試練は本当は終わってるのに
- 牧野 郁美: 強引な解釈で続けようとしたから 出てきた…とか?
- 入名 クシュ: (あの敵が出てきたのも 実は試練の一部で…)
- 入名 クシュ: (夢の中で実際に 私の空想通りになったから)
- 入名 クシュ: (…試練は合格ってこと?)
- ココロのテストに合格すれば “もしも”が現実になるチャンス!
- 入名 クシュ: それって…
- 入名 クシュ: お別れも、ちゃんとできなかった
- 入名 クシュ: もう一度だけ… さよならをやり直せたらいいのに
- 入名 クシュ: …………
- ???の声: あっ
- ???の声: マミィ、ダディ! こっちこっち!
- 入名 クシュ: …えっ
- 入名 クシュ: ―クシュ― ………… …………
- 入名 クシュ: ―クシュ― …アネカ…さん…
- 入名 クシュ: ―クシュ― ………… …………
- アネカの声: ごめん、どの出口か わかんなかった?
- アネカの母の声: …ちょっと迷ったわ 無事に会えてよかった
- アネカの父の声: それで 行きたい店っていうのは?
- アネカの声: いまから案内するね!
- 入名 クシュ: …………
- 入名 クシュ: (…夢じゃない)
- 入名 クシュ: (あれは、魔法少女にもならず 私とも出会わなかった)
- 入名 クシュ: (“もしも”のアネカさん…)
- 入名 クシュ: (顔も、声も、そっくりなのに… わたしの知らないアネカさん)
- 入名 クシュ: …そっか
- 入名 クシュ: もう一度だけ… さよならをやり直したかった
- 入名 クシュ: さよならをやり直すために 出会いをやり直したかった
- 入名 クシュ: (…ユメミカガミは 私が本当に望んでいたことを)
- 入名 クシュ: (ちゃんと叶えてくれたんだね)
- 入名 クシュ: (おたがい他人同士のまま 振り返ることなく、すれ違う…)
- 入名 クシュ: (それが、私のやり直したかった アネカさんとの出会い)
- 入名 クシュ: ずっと凍りついたままだった 私の時間が…
- 入名 クシュ: やっと、動きはじめた
- 入名 クシュ: …ありがとう
- 入名 クシュ: そして…
- 入名 クシュ: さよなら
- おしまい
Add Comment
Please, Sign In to add comment