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Grey/Ashen Revolution JP Text

Jan 28th, 2022 (edited)
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  1. (from the opening sequence images)
  2. これは、
  3. 魔法少女の存在を みんなに知ってもらって
  4. なぐさめて欲しかった 少女たちが
  5. 見えない何かに 抗い続ける物語。
  6. 灰色革命
  7. ---
  8. FILENAME: text_515601-0.txt
  9. ラビ: 私たちは絶え間なく巡る 星空の動きを止めることはできない
  10. うらら: ウチがどれだけ練習をしても ディアボロを吸い寄せる引力には逆らえない
  11. アレクサンドラ: 私がどれだけ声を出しても この大気がなければ歌声は響かない
  12. 旭: そう、我らは常に 見えないものに支配されている
  13. 旭: このウサギも同じ 見えない我の手によって命を失った
  14. 旭: すべては自然の摂理でできている 翻弄されることは諦めるしかない宿命だ…
  15.  
  16. FILENAME: text_515601-1_UNnvl.txt
  17. 旭: おはようであります
  18. 旭の父: ん、おはよう
  19. 旭の父: ちょうど、茶を淹れたところだ 1杯いるか?
  20. 旭: ありがたく頂戴するであります
  21. 旭の母: はい、朝食の味噌汁ね あと卵焼きとおひたしもあるから
  22. 旭: おぉ、今朝の味噌汁は ずいぶんと山菜づくしであります
  23. 旭の母: お婆ちゃんが朝から山を歩いて 採ってきたのよ
  24. 旭: 暖かくなってきたことを 表しているようでありますな
  25. 「湯国市オールスターフェストが開催決定!」
  26. 旭: お…
  27. 「地域の名産品が目白押しの直売所に 湯国市の歴史や習わしに関する展示が盛り沢山」
  28. 「さらに、ステージでは 地元の天才大道芸人“有愛うらら”が ユニットを組んで技を披露!」
  29. 「他にも魅力的なコンテンツが詰まった イベントに、みんなで一緒に参加しよう! 詳しくは湯国市観光組合のHPをチェック!」
  30. 旭: フェストも 本番まであと少しでありますが
  31. 旭: CMの打ち方も含めて、 例年より力が入ってるであります
  32. 旭の父: 冬の雪崩と土砂崩れのせいで、 町の雰囲気が暗くなったからなあ
  33. 旭の父: これを機会に気を取り直そうって みんな頑張ってるんだ
  34. 旭の父: うちだって山菜から肉まで、 山の幸を売る予定だ
  35. 旭の母: それに燻製したお肉は 真空パックにして出すのよ?
  36. 旭の母: はい、ごはん
  37. 旭: あぁ、ありがとうであります
  38. 旭の母: 今年は県外からの観光客も来るし 楽しくなりそうだわ
  39. 旭: そうでありますな
  40. 旭: …雪崩で家族を亡くされた方には 大声で言えないでありますが
  41. 旭: こうした機会に少しでも、 元気を出して欲しいでありますよ
  42. 旭の祖母: ほれ、オレの卵焼きで全部だ みんなでいただくぞ
  43. 旭: はい
  44. みんな: 「いただきます!」
  45.  
  46. FILENAME: text_515601-2_UNnvl.txt
  47. じゃあ今日はここまで みんな気を付けて帰れよ
  48. フェストの委員は、あとで 打ち合わせがあるから残るように
  49. じゃあ日直、号令
  50. 起立!
  51. 気をつけ!
  52. 礼!
  53. 旭: (どこもかしこも フェスト一色でありますな)
  54. ???: お疲れさま、三浦 今日も相変わらずクールだね
  55. ???: この間はありがとな、三浦
  56. 旭: 灰谷に黒田、ありがとうって 何かしたでありますか?
  57. 黒田: この間もらった鹿の肉だよ 親父が美味いって喜んでた
  58. 旭: 鹿の肉…ああっ!
  59. 旭: あの時はなんと言うか 黒田が憔悴してたので
  60. 旭: 食を通して元気になればと 思っただけでありますよ…
  61. 黒田: ほんと、 気を遣わせてごめんな…
  62. 旭: そう頭を下げられると 我も恐縮するであります
  63. 旭: ちなみに、 灰谷も同じ件でありますか?
  64. 灰谷: 私の方は別件で三浦に記事を 共有しようと思ったの
  65. 灰谷: ほら、この記事 地元誌のウェブ版なんだけどさ
  66. 旭: んん…?
  67. 朱鷺集落の山中で発見の石碑 長らく証拠がないと言われていた 平家の落人伝説を裏付けるか
  68. 旭: …………なっ
  69. 旭: まさか、あの時に我が見つけた 石碑でありますか!?
  70. 黒田: そう、教育委員会の管轄に入って 今後は調べていくみたいだぞ
  71. 旭: はぁー…何が起きるか、 わからないものでありますな…
  72. 灰谷: おかげで私と黒田はフェストの 実行委員だから忙しくなりそうよ
  73. 灰谷: うちの学校からは湯国市の歴史に 関する展示があるからね
  74. 旭: 先生が言っていた打ち合わせは 石碑の件でありましたか…
  75. 旭: ふたりの仕事を増やして 申し訳ないであります
  76. 灰谷: 謝らなくていいわよ
  77. 灰谷: せっかく平家の落人伝説っていう 面白い題材があるのに
  78. 灰谷: 何の裏付けもないから 残念だなって思ってたところなの
  79. 灰谷: “信じられる要素がないと、 存在しないのと同じだからね”
  80. 灰谷: だからむしろ 見つけてくれて感謝してるわ
  81. 黒田: 俺も忙しくさせてくれて 感謝してるよ
  82. 黒田: 忙しい方が前の雪崩のことを 忘れていられるからな
  83. 旭: 返事しづらいことを笑顔で 言わないで欲しいでありますな…
  84. ピロン♪
  85. 黒田: あ、悪い 三浦も用事があるよな
  86. 旭: 別に野暮用でありますよ
  87. 旭: フェストの実行委員 ふたりとも頑張るであります
  88. 黒田: おう、ありがとな
  89. 灰谷: うん、ありがとう
  90.  
  91. FILENAME: text_515601-3_UNnvl.txt
  92. 旭: …………
  93. 旭: (なるほど…)
  94. 旭: (ふたつの問題が 同時に起きたようでありますな)
  95. 旭: 1件目は魔法少女同士のテリトリー争い…
  96. 旭: 国の防衛大綱の影響で人口が増えたせいか 10人ぐらいだった魔法少女の数が 一気に膨れあがった気がするであります…
  97. 旭: ほとんどが引っ越してきた子たちで こうした衝突も不可抗力な手前 折り合いを付けるしかないでありますな…
  98. 旭: むしろ気になるのはもう1件の方…
  99. 旭: キュゥべえに契約を迫られている 少女が魔女の反応がある方へ移動している…
  100. 旭: 我が行って衝突の火種を増やすぐらいなら こちらのフォローに回って 契約を阻止した方が良さそうでありますな
  101. うらら: はぁ…はぁ… 本当に幻じゃないんよ…
  102. うらら: ウチに付きまとうなんて いったい何が目的なんよ…
  103. キュゥべえ: 有愛うらら
  104. キュゥべえ: ボクと契約して 魔法少女になって欲しいんだ
  105. うらら: …突拍子がなくて意味不明だし そういう勧誘はお断りなんよ
  106. キュゥべえ: 代わりにボクはキミの願いを 何でもひとつ叶えてあげられる
  107. キュゥべえ: キミには叶えたい願いが あるんじゃないのかい?
  108. うらら: …確かにお金には困ってたけど 大道芸で稼げるようになったんよ
  109. うらら: 今後もうまくいくかどうかは、 ちょっと不安だけど…
  110. キュゥべえ: その未来への不安も ボクなら解消することができる
  111. うらら: だだ、ダメなんよ! 変な勧誘にだまされるんよ!
  112. うらら: って、なんなんよこれは!
  113. うらら: ひぃぃっ!?
  114. キュゥべえ: まずいことになったね ここは魔女の結界だ
  115. うらら: 魔法少女の次は魔女なのん!?
  116. キュゥべえ: 町で起こる事故や事件 それに自殺といった出来事は
  117. キュゥべえ: 魔女と、ここにいる使い魔が 原因で引き起こされているんだ
  118. □▽★※◎◆♯ポッー!!
  119. うらら: うぁぅ!
  120. うらら: こ、攻撃してきたんよ…
  121. キュゥべえ: うらら、ボクと契約するんだ!
  122. キュゥべえ: 魔法少女になって戦わなければ キミは殺されてしまう
  123. うらら: そそ、そんなこと言われても!
  124. □▽★※◎◆♯ポッー!!
  125. うらら: キャァアアッ!
  126. うらら: へ…?
  127. この場は私たちに任せて!
  128. あなたはどこかに隠れてて!
  129. うらら: な、なんなんよ…
  130.  
  131. FILENAME: text_515601-4_UNnvl.txt
  132. っ…ハァ…グ…
  133. なんとか、倒せた…
  134. ギリギリだけど
  135. うらら: だ、大丈夫なのん…!?
  136. 私たち、傷の治りは早いから… だから早く行って…
  137. うん、またキュゥべえに 勧誘されるかもしれないよ…
  138. うらら: あ、ありがとうなんよ…
  139. っ…
  140. 動けないね…
  141. うん…この後悔を あの子には味わわせたくないよ
  142. 旭: 連絡があったのは、 確かこの辺りだったはず…
  143. 旭: あっ…
  144. 旭: …もしかして 氷室ラビ、栗栖アレクサンドラ…
  145. アレクサンドラ: 初めまして、三浦旭さん 気軽にサーシャと呼んでください
  146. アレクサンドラ: グループメッセージにいますけど 3人とも初対面でしたよね
  147. ラビ: 元は町の状況や魔法少女の数を 把握するため作った私のグループ
  148. ラビ: みんなが声を掛け合って 知らない間に数がそろってたから
  149. ラビ: 面識がない人たちが多いのは 当然だと思う
  150. ラビ: 私も人と話すのは得意じゃなくて 積極的に関わらないから…
  151. 旭: ただ、町の状況がわかるので 助かってるでありますよ
  152. 旭: それで、情報を送ってくれた 魔法少女は?
  153. アレクサンドラ: 私たちも今 ここに着いたばかりなので
  154. ラビ: 近くに反応があるから、 捜してみよう
  155. 旭: ――っ!?
  156. 旭: 彼女たちは…!
  157. ラビ: 恐らく、グループに連絡をくれた 魔法少女だと思う!
  158. 旭: …ソウルジェムの濁りがひどい
  159. ぐっ、う、アァッ…
  160. なんなの…これ… やだ、やだ
  161. イヤなことばっかり、頭の中に…
  162. 旭: これは、どうすれば…
  163. アレクサンドラ: ソウルジェムが 濁ってるせいかもしれません
  164. ラビ: 確かに浄化できれば、 解決するかもしれない
  165. アレクサンドラ: ですが私、今は手持ちがなくて…
  166. ラビ: それは私も…あなたは…
  167. 旭: 我でありますか…!? いや、我もないであります…
  168. 旭: 最近は魔法少女も増えて、 魔女も奪い合いでありますし…
  169. 旭: あ、魔女を倒したのであれば、 近くにグリーフシードが…!
  170. 当てにしてた…けど… なかったの…くっ…
  171. ねぇ、私、どうなるの…?
  172. ラビ: わからない…
  173. ラビ: ソウルジェムが濁りきった先に 何があるのか、私は何も…
  174. アレクサンドラ: 私だって、今までどうなったか 聞いたこともなかったもの
  175. ぐっ、あ、アァアアッ!
  176. アレクサンドラ: ――っ!?
  177. アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
  178. 旭: この反応はまるで…
  179. ァアアアアアアッ!!
  180. 旭: 「魔女と同じ反応…!」
  181.  
  182. FILENAME: text_515601-5_UNnvl.txt
  183. 旭: ここは、なんでありますか…
  184. ラビ: どう見たって魔女の結界…
  185. 旭: …我が彼女たちから感じた魔力と この魔女の反応は同じ…
  186. アレクサンドラ: つまり、間違いなくこの魔女は、 ふたりの魔法少女…
  187. 旭: 魔法少女から…魔女… いや、待って欲しいであります…
  188. 旭: 我には意味が…!
  189. 縺薙lwg縺ァ”Б懊無*為!!
  190. 旭: ぐっ!
  191. ラビ: ボサッとしてると危険 今は目の前の敵を倒さないと
  192. アレクサンドラ: そうですね…
  193. ラビ: あなたはどういう魔法を使うの?
  194. アレクサンドラ: 私は相手のやる気を削ぐ 力を使えます
  195. ラビ: つまり動きが緩慢になる なら、その間に私が攻撃を…!
  196. アレクサンドラ: さあ、このハープの音色で、 穏やかになってください
  197. 菴輔ЁЛ*ォ!?
  198. ラビ: その間に私が…
  199. …………
  200. ラビ: 私が…!!
  201. 旭の声: 魔女が動くであります!
  202. ラビ: ッ!
  203. ラビ: 栗栖が言う通り この子たちは…きっと…!
  204. 謨キッ迚縺ォ繧ゥ!!
  205. ラビ: ァアアッ!
  206. ラビ: グッ…!
  207. 旭: 大丈夫でありますか!
  208. ラビ: 私にも、彼女たちが 魔女になったように見えた…
  209. アレクサンドラ: それは…
  210. 旭: だとしたら、我らは 同胞を殺すことになりますな…
  211. アレクサンドラ: そう…ですね…
  212. アレクサンドラ: 逃げられた…
  213. 旭: 言い訳はしたくないでありますが 仕方ないでありますよ…
  214. 旭: こんな気持ちで、どうやって あの魔女を倒せと…
  215. ラビ: …キュゥべえ、いる?
  216. キュゥべえ: 何か用かい? 氷室ラビ
  217. ラビ: どういうこと…?
  218. ラビ: 私たち3人には彼女たちが、 魔女の正体のように見えた…
  219. キュゥべえ: その通りだよ
  220. キュゥべえ: ソウルジェムに穢れが溜まり グリーフシードに変わる瞬間
  221. キュゥべえ: キミたちは魔女になるんだ
  222.  
  223. FILENAME: text_515601-6_UNnvl.txt
  224. キュゥべえ: その通りだよ
  225. キュゥべえ: ソウルジェムに穢れが溜まり グリーフシードに変わる瞬間
  226. キュゥべえ: キミたちは魔女になるんだ
  227. ラビ: 契約時に私は そんな話を聞いた覚えはない
  228. キュゥべえ: 聞かれなかったからさ 何か問題でもあったのかい?
  229. アレクサンドラ: 何を言ってるんですか! 重要な問題ですよ!
  230. アレクサンドラ: あんな姿になって… 生きていないのと同じです…!
  231. キュゥべえ: キミたち人は滅びることなく 数を増やしていっているのだから
  232. キュゥべえ: 一個体の生き死になんて 関係のないことじゃないか
  233. 旭: 我らの世界では個人の生死は 十分に尊重されること
  234. 旭: 重大なリスクを知らせないなど 詐欺と変わらないであります…
  235. キュゥべえ: 自分ではどうしようもない願いを 叶えただけでも十分な対価だよ
  236. キュゥべえ: とても詐欺だなんて ボクは言えないと思うけど
  237. パンッ!
  238. 旭: お前がその対価の価値を決めるな
  239. アレクサンドラ: …………
  240. 旭: っ、申し訳ないであります 話を聞く前に…
  241. ラビ: いえ、三浦が殺さなければ 私が殺してただけのことだから
  242. うららの声: あ、あの…
  243. アレクサンドラ: な、今の様子… 見てたんですか…?
  244. うらら: 助けてくれたのに、 逃げるのも悪いと思ったんよ…
  245. うらら: あの…助けてくれたふたりから 変なものが見えたんよ…
  246. うらら: だ、大丈夫なのん…?
  247. ラビ: あなたが契約を勧められていた 魔法少女という存在は
  248. ラビ: あなたが見た驚異である 魔女と戦うことで世を守っている
  249. うらら: え…?
  250. ラビ: けど、その末路は今見たように 自分自身が魔女になること
  251. ラビ: 魔法少女にならないことだけを 教訓にして忘れた方がいい
  252. 旭: 今日見たものは幻だったので ありますよ…
  253. アレクサンドラ: 夢です…幻です… だから忘れてください…
  254. うらら: でも…
  255. アレクサンドラ: 何もなかったことにした方が 身のためだと思いますよ…
  256. うらら: …わ、わかったんよ
  257. アレクサンドラ: はぁ…
  258. ラビ: 彼女たちのソウルジェムが なくなっている…
  259. 旭: 体は魂が抜けたように、 温もりを残して…
  260. 旭: …さしずめ、ソウルジェムは 我々の命ということでありますな
  261. アレクサンドラ: 信じたくない… けど、これが現実なんですよね…
  262. アレクサンドラ: っ…ふっ…ぅぅ…
  263. 旭: …………
  264. 旭: 我々は罠の存在に気付かない獲物と同じ
  265. 旭: 何も知らないまま野山を駆けまわり こうして罠に捕われて気付くのであります
  266. 旭: 自分の命が誰か目に見えない何者かによって 握られているという現実を…
  267.  
  268. FILENAME: text_515602-1_UNnvl.txt
  269. みんな: 「~~♪」
  270. 先生: 課題だったソプラノも 引っ張られなくなったな
  271. 先生: ただ、楽譜を意識しすぎて ニュアンスを押さえられていない
  272. 先生: フェストでのステージまで、 そこまで間もないから
  273. 先生: しっかり仕上げていくつもりで 自分の声を意識してみるんだ
  274. みんな: 「はいっ!」
  275. アレクサンドラ: (声を出す私がいる…)
  276. アレクサンドラ: (ノドに触れると しっかりと声帯が震えていて)
  277. アレクサンドラ: (音程を変えると、自分のノドが クッと上ずるのを感じる…)
  278. アレクサンドラ: (これが私…人間として生きる 栗栖アレクサンドラの体…)
  279. アレクサンドラ: だけど、私はもう人間離れしている…
  280. アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
  281. 旭: この反応はまるで…
  282. ァアアアアアアッ!!
  283. アレクサンドラ: (魔女になるかもしれない私は 今はまだ魔法少女…)
  284. アレクサンドラ: (かろうじて人間をしている いつもの栗栖アレクサンドラだ)
  285. あ~今日も終わった~
  286. 先生って良い人なんだけど もう少し優しくして欲しいよね
  287. ほんとそれな
  288. アレクサンドラ: …………
  289. サーシャ、何かあった?
  290. アレクサンドラ: え、ううん、何もないですよ うふふ♪
  291. まさか、実は噂通り先生のこと、 本当は好きだったり?
  292. だったらごめん! ちょっと悪口言っちゃった
  293. アレクサンドラ: あの、その話は…!
  294. 今さら掘り返さないの 誰かが傷付く話題はやめよ
  295. う、ごめん…
  296. けど、サーシャさ本当に大丈夫? 今日元気ないよ?
  297. あー、突っ込まない方がいいなら 聞かない!聞かないよ!?
  298. アレクサンドラ: そんな、私こそ変に気遣わせて ごめんなさい…!
  299. アレクサンドラ: 実は今度のフェストのことを 考えてたんですよ
  300. アレクサンドラ: パートを リードすることになったので
  301. アレクサンドラ: 本当に私で大丈夫なのかなって 少し不安だったんです
  302. だったら心配しすぎって言える サーシャなら平気でしょ
  303. うん、努力をしたからこそ 任された役割だし
  304. 先生ってひいきはしないからね
  305. アレクサンドラ: そう言ってもらえると、 少しは心が楽になります♪
  306. アレクサンドラ: ありがとうございます! うふふっ♪
  307. アレクサンドラ: (魔女になることを知った日、 一緒に居たふたりは大丈夫かな)
  308. アレクサンドラ: (氷室ラビさんと三浦旭さん だったっけ…)
  309. アレクサンドラ: (メッセージを送りたいけど、 私はたぶん慰めが欲しいだけ…)
  310. アレクサンドラ: (それが透けて見えるから、 申し訳ない気がする…)
  311.  
  312. FILENAME: text_515602-2_UNnvl.txt
  313. ラビ: (チャイムも鳴り終えて、 息を潜めた学校の屋上…)
  314. ラビ: (ただ、満天の星空だけが、 真下にいる私を見ている…)
  315. ラビ: (星々は長らく地球の歴史と共に 魔法少女の存在も見てきて)
  316. ラビ: (恐らく私も、消えゆく少女の ひとりとして見てきたのだろう)
  317. ラビ: (そういう虚しい存在として 私は“認められてきた”んだ…)
  318. ガチャ…キィ…
  319. ラビ: …………白金?
  320. 白金: 今日も氷室先輩と一緒に 星々に認めてもらいに来ました
  321. ラビ: 夜な夜な寝転がって 星を眺めるだけ
  322. ラビ: 普通なら付き合うのも 面倒になると思うけど…
  323. 白金: 付き合ってるつもりはありません 私が好きで来てるんです
  324. ラビ: はぁ…あなたは私と違って クラスの人気者だったんだから
  325. ラビ: 早く友だちの元に戻って 幸せな学生生活を送りなさい
  326. 白金: でも、私ってば他人に 興味が全然ないんですよ
  327. 白金: クラスの中で注目されてても 良く見られるようにしてるだけで
  328. 白金: 本当はクラスで団結して 仲良くするとか興味ないんです
  329. 白金: だから氷室先輩との距離が 気負わなくて心地良いんですよね
  330. ラビ: …私にも興味はないはず
  331. 白金: 氷室先輩だけに興味があります
  332. ラビ: …はぁ、じゃあ勝手にして
  333. 白金: それに、初めて屋上に来た時に 氷室先輩が言っていたことが
  334. 白金: ようやく理解できるような 気がしたんです
  335. ラビ: …覚えてない
  336. 白金: 「自分のような目的もなく 誰にも認知されないような空虚な存在は 多くから見られることによって 自己を保存するんだ」
  337. ラビ: 要は本当は友だちが欲しいのに ひとりでいる人間の
  338. ラビ: 寂しい妄言みたいなもの
  339. 白金: 私だってそんな矛盾の塊ですよ
  340. 白金: 人と仲良くしたり惹きつけるのは 得意なはずなのに
  341. 白金: そこに意味を 見出してないんですから
  342. ラビ: 本当にもったいないし うらやましい
  343. ラビ: 「自己に限らず世界そのものが 他者の知覚によって存在する世の中において あなたは十分、他者に知られる素養がある」
  344. ラビ: 「私みたいに星が意思を持っていると仮定して 身をさらけだすことで この世との繋がりを持とうとしなくても 十分やっていけると思うけど」
  345. 白金: そんなこと言って、 引き留めたそうなひどい顔
  346. 白金: 氷室先輩… 何かありましたか…?
  347. ラビ: …………
  348. ラビ: 自分という存在が 今まで以上にわからなくなった…
  349. ラビ: 人ではなくなってしまった自分を 私は認めたくない…
  350. 白金: 人ですよ? ちゃんと氷室先輩は…
  351. ラビ: 永久と言える歴史を眺めてきた 月や星々はどう思うだろう
  352. ラビ: 全てを白日の元にさらす 太陽と比べて
  353. ラビ: 私を優しく慰めてくれる存在だと 思ってたのに
  354. ラビ: 今、それらに慰められるどころか 嘲笑われてるように思える…
  355. 白金: 月と星々と同じだけ氷室先輩を 見続けていた私は断言できます
  356. 白金: 大丈夫です 氷室先輩は人ですから
  357. ラビ: ――っ!?
  358. ラビ: …ありがとう、白金 少しだけ私は自分に自信が持てた
  359. ラビ: また、ここで会ってくれる?
  360. 白金: はい、勝手に来ます
  361. ピロン♪
  362. ラビ: …………
  363. アレクサンドラ: 今、魔女の反応を感じたのですが もしも近くにいるようでしたら 皆さんとお話をできませんか…?
  364. アレクサンドラ: 逃げ道のない何かに捕らわれたような感覚が ずっと私を支配していて 自分が何者なのかもわからないんです…
  365. ラビ: みんな、同じだ…
  366.  
  367. FILENAME: text_515602-3_UNnvl.txt
  368. アレクサンドラ: すみません 急にあんなメッセージを送って
  369. ラビ: いえ、私も自分という存在が わからなくなりかけていた
  370. 旭: 我もサーシャ殿や氷室殿と同じで
  371. 旭: 何かに狙われているようで、 落ち着かなかったでありますよ…
  372. アレクサンドラ: …私たちは魔女を倒して グリーフシードを手に入れないと
  373. アレクサンドラ: 彼女たちと同じように、 魔女になってしまうんですよね?
  374. アレクサンドラ: 私、あれ以来 魔女と戦う勇気がでなくて…
  375. アレクサンドラ: だけど、 自分が魔女になるのは怖くて…
  376. アレクサンドラ: 本当にワガママなんですけど、 仲間が欲しかったんです…
  377. アレクサンドラ: 一緒に自分の正体と向き合って 魔女と戦える仲間が…
  378. 旭: 正直、 願ってもないことであります
  379. 旭: 我も悶々と悩んでいるうちに、 時間が経ってしまい
  380. 旭: 気付けばソウルジェムも この通りでありますよ
  381. アレクサンドラ: 私と同じように 濁ってるみたいですね
  382. アレクサンドラ: 氷室さんはいかがですか…?
  383. ラビ: このままだと3人とも共倒れ いつかは力尽きると思う…
  384. アレクサンドラ: では…
  385. ラビ: 濁らされた者同士、 共に戦えたら幸いだと思う
  386. ラビ: それに、今なら3人の相性を 調べるのも最適かと
  387. 旭: 魔法少女の秘密を共有する者が チームを組んだ
  388. 旭: その初戦であります
  389. 旭: とはいえ、いざ結界を前にすると 緊張するでありますな…
  390. アレクサンドラ: 元は同じ魔法少女だからこそ、 魔女を倒すのは後ろめたいです…
  391. アレクサンドラ: けど、放置していれば 町の人が呪いを受けてしまう…
  392. 旭: …魔女になった彼女たちは、 目の前の少女を救っていた…
  393. 旭: ここで背を向ければ、 そんな魔法少女の高潔さを
  394. 旭: 傷付けることになりますな…
  395. ラビ: かつて抱いていた清廉な想いを 生かし続けるためにも
  396. ラビ: 私たちは魔女を倒す必要がある
  397. 旭: そうでありますな
  398. アレクサンドラ: はい、魔女を放置するだけで、 過去の想いを台無しにしますから
  399.  
  400. FILENAME: text_515602-4_UNnvl.txt
  401. 縺ォ繧ゅжl!!
  402. アレクサンドラ: 響けっ!
  403. 縺雁燕q溘ォ薙!?
  404. ラビ: ひるんだ隙に…!
  405. 旭: 一撃必中であります!
  406. 旭の声: サーシャ殿! 今でありますよ!!
  407. アレクサンドラ: はいっ!
  408. 隕九≠隕?スゅ?縺雰!
  409. アレクサンドラ: っ…
  410. アレクサンドラ: この魔女も私と同じ魔法少女だったんだ 普段は一緒に勉強をしてたような人を 楽しく部活をしてた人を 愛する家族がいたような人を私は今…
  411. アレクサンドラ: 殺そうとしている…
  412. アレクサンドラ: 違う、それでも倒すことに意味はある 魔女を倒せば奇跡を願って みんなを助けてきた魔法少女の想いを 救うことになるんだって 氷室さんも三浦さんも言ってた
  413. アレクサンドラ: はっ…はぁ…はぁ…
  414. 旭: 氷室殿、ここは我らで!
  415. ラビ: ええ
  416. ラビ: 栗栖も浄化して ソウルジェムがもたない
  417. アレクサンドラ: いえ、私は最後にひるんで 魔女にとどめを刺せなかった
  418. アレクサンドラ: 下手をすれば、おふたりに迷惑を かけることになったのに…
  419. アレクサンドラ: ――っ!?
  420. 旭: むしろサーシャ殿が魔女になると 我々にとっては迷惑であります
  421. アレクサンドラ: …………
  422. 旭: もとい、寂しいであります
  423. アレクサンドラ: 三浦さん… ありがとうございます…
  424. ラビ: 魔女と戦うことについて、 折り合いをつけたとしても
  425. ラビ: 何かに捕らわれてしまったような 謎の緊張感はなくならない
  426. 旭: 魔法少女の真実を知るだけで 不思議でありますな…
  427. アレクサンドラ: …家で飼っていた猫を 思い出しました
  428. 旭: …猫でありますか?
  429. アレクサンドラ: 家の中で飼ってたんですけど、 ある日、外に出てしまって…
  430. アレクサンドラ: それ以来、窓の外を恋しそうに 見るようになったんです
  431. アレクサンドラ: もしかしたら、外を見たことで 自分を取り巻く状況を知って
  432. アレクサンドラ: 救いを求めていたのかも しれません…
  433. アレクサンドラ: 私たちも同じだと思いませんか?
  434. アレクサンドラ: 急に真実を知って、苦しんで、 自由と救いを求めてるんです…
  435. 旭: 我も魔女になる真相を知ったとき 何かに不意を突かれた気がして
  436. 旭: 自分が射止めたウサギの姿を 思い出したであります…
  437. 旭: それも真実を知ったことで 未知の存在に捕らわれたことを
  438. 旭: 自覚したのが 原因かもしれないであります…
  439. 旭: 氷室殿はどうでありましたか?
  440. ラビ: 私は夜空の星が迫ってくるような 感じがした…
  441. ラビ: 今まで私のことを人間として 見下ろしていた夜空に浮かぶ星が
  442. ラビ: それがお前の正体だと言いたげに 迫ってくるのを感じた
  443. ラビ: それと同時に常人が理解できる 理屈の範疇を出た私たちは
  444. ラビ: 誰にも理解されないだろうという 虚しさが胸に広がった
  445. アレクサンドラ: そんな寂しいこと…
  446. ラビ: 私がかつて患っていた病も ほとんど理解してくれなかった
  447. ラビ: だから、氷室ラビという存在を 私はひとりにすることにした
  448. ラビ: 理解のできないものに対して 人々は不寛容なのを
  449. ラビ: 私はよく知ってる…
  450. 旭: この不気味な支配された感覚は 我らしか理解できない…
  451. アレクサンドラ: 魔法少女たちだけで向き合うしか ないってことですよね…
  452.  
  453. FILENAME: text_515602-5_UNnvl.txt
  454. アレクサンドラ: おふたりの家はどちらですか?
  455. 旭: 我は朱鷺集落なので、 ここからはバスであります
  456. ラビ: 私は湯国温泉郷だから、 三浦とは別系統のバスで
  457. ラビ: 栗栖は?
  458. アレクサンドラ: 私は逆で港の方なんです みんなバラバラですね、ふふ♪
  459. 旭: 下手に魔法少女の宿命を 知ってしまった手前
  460. 旭: そんな自然な笑顔を見るのは 初めてな気がするでありますな
  461. 旭: サーシャ殿の笑顔は とても可愛らしいであります
  462. アレクサンドラ: ええっ、なんですか急に 恥ずかしいじゃないですか…
  463. 旭: それだけ笑顔を陰らせた 事の大きさを実感したであります
  464. 「というわけで本日紹介する湯国市の有名人は 地元の若者からも人気を集めている大道芸人 有愛うららさんです」
  465. うららの声: 「初めましてなんよ!」
  466. 旭: ――っ!?
  467. 旭: あの画面に映ってるのって この間助けた…?
  468. ラビ: キュゥべえに契約を迫られた上に 魔女化も目撃してしまった子
  469. アレクサンドラ: やっぱりあの子 有愛うららだったんですね
  470. ラビ: 栗栖は知ってた?
  471. アレクサンドラ: 大道芸の公演をしてるので、 私も見たことはありましたよ
  472. アレクサンドラ: 地元のテレビに出演してるので、 知ってる子は多いかもしれません
  473. ラビ: へぇ…
  474. 旭: 山に籠ってばかりで、 その辺りは疎かったであります…
  475. 確か大道芸を始めるきっかけは ご弟妹だったんですよね?
  476. うらら: そうなんよ
  477. うらら: ウチらは貧乏だったから、 毎日食べるご飯も大変だったんよ
  478. うらら: 一応、畑があったから、 ある程度は大丈夫だったんだけど
  479. うらら: オモチャは何もなかったから 弟妹は娯楽に餓えてたんよ
  480. そこで出会ったのが 大道芸ですか?
  481. うらら: そう、路上パフォーマンスを見て これならって思ったんよ
  482. うらら: それでバランスをとったり、 箱を使って投げてみたり
  483. うらら: 自分でディアボロを作って 練習をしてたら
  484. うらら: 弟妹みんなが 楽しんでくれるようになったんよ
  485. それが今となっては仕事に なったんですね
  486. うらら: 自分でもビックリなんよ
  487. アレクサンドラ: そうそう、こういう 特殊なエピソードもあって
  488. アレクサンドラ: 急に話題になり始めたんですよ
  489. 旭: 確かに自分より幼い子が、 健気に頑張ってる姿を見ると
  490. 旭: こう、応援したくなるような 気持ちが湧いてくるでありますな
  491. アレクサンドラ: 言い方は良くないですけど
  492. アレクサンドラ: 同情票みたいなものも あるのかもしれませんね♪
  493. うららの声: 「本当に今は自分の過去を受け入れてくれる 仕事仲間やファンがいることに感謝してるんよ」
  494. ラビ: …………
  495. アレクサンドラ: なんか急に神妙な顔に… どうかしましたか…?
  496. アレクサンドラ: な、急になんですか!?
  497. 旭: おもむろに抱きしめられると 混乱するでありますよ!
  498. ラビ: 急に自分が抱えていた 寂寥感の意味を理解した…
  499. 旭: なっ…え…
  500. ラビ: 何かに捕らわれたことに対して 私が感じたのは
  501. ラビ: 恐怖でも虚しさでも怒りでもなく ただ寂しい気持ち
  502. ラビ: 孤独感のようなものだった…
  503. ラビ: それは、有愛うららと同様に 人に受け入れて欲しかったから…
  504. ラビ: 私はただ自分の境遇を誰も知らず 認めてくれる人もいない状況が
  505. ラビ: ただただ寂しかった…
  506. 旭: それは、我もわかるであります
  507. アレクサンドラ: 私たちは3人だけで、 秘密を共有してますからね…
  508. ラビ: それも限定的な 魔法少女という世界の中で…
  509.  
  510. FILENAME: text_515602-6_UNnvl.txt
  511. ラビ: もう、何年も前のことだが 私は父を亡くした
  512. ラビ: 「お父さん、お父さん… っ、うう…ぁああああ…くっぅ…」
  513. ほら、ちゃんとお花を入れて 見送ってあげよう
  514. お父さんはちゃんとラビちゃんを 見守ってくれるからね
  515. 空に昇ったあとも一滴の雨となり あなたのところに帰って来る
  516. 胸の中の記憶と一緒に お父さんはあなたの中に残ります
  517. ラビ: 当時、私に寄り添ってくれる人が 何人も私に声をかけてくれた
  518. ラビ: ただ悲しみが頭の中を支配して、 話を聞く余裕なんてなかった
  519. ラビ: 何かを思ったとしても、 私の何がわかるんだって気持ちや
  520. ラビ: 適当なことを言うなっていう 怒りに似た感情の方が強かった
  521. ラビ: でも、気持ちを理解してもらう 必要なんてなかった…
  522. ラビ: …………
  523. うらら: 昔は冗談抜きで からかわれることもあったし
  524. うらら: 汚い格好でお店に入るから、 白い目で見られたりしたんよ
  525. うらら: でも、助けてくれる人も多くて、 それが家族の支えになったんよ
  526. 旭: …………
  527. 旭: 外との繋がりがあるだけで、 確かに変わるのかもしれない…
  528. 旭: 我々は3人とも同じ牢獄に入り 誰も面会に来ない囚人であります
  529. アレクサンドラ: 今は私たちの悲しみや苦しみを 誰も知らず理解もしてくれません
  530. ラビ: 人が知らないことに対して 不寛容なのは知っている
  531. ラビ: だけど私は、 誰かの同情が欲しくなった…
  532. ラビ: 理解はされないけど 宿命から解放もされないけど
  533. ラビ: 気休めでもいいから慰めてくれる そんな言葉が欲しくなった…
  534. ほら、ちゃんとお花を入れて 見送ってあげよう
  535. お父さんはちゃんとラビちゃんを 見守ってくれるからね
  536. 空に昇ったあとも一滴の雨となり あなたのところに帰って来る
  537. 胸の中の記憶と一緒に お父さんはあなたの中に残ります
  538. ラビ: 父が死んだ時ですら、 苛立ちながら救われていた…
  539. ラビ: 初めて気付いた…
  540. ラビ: 今、私はその場限りの同情や、 下手な励ましですら欲しいんだ…
  541.  
  542. FILENAME: text_515603-1_UNnvl.txt
  543. 旭: ふぅ…
  544. 旭: (ためらいはあったものの、 ちゃんと倒せた…)
  545. 旭: (氷室殿やサーシャ殿と一緒に たどり着いた答えなら…)
  546. 旭: (魔女を救うつもりで戦える)
  547. 旭: みんなが起きる頃合い…
  548. 旭: スリングライフルと弾を用意して 正解でありますな
  549. 旭: 朝の散策で山に入っていたことに するであります
  550. 旭: (いた…)
  551. 旭: (息を潜めろ…音を立てるな…)
  552. カコッ
  553. 旭: ただいま戻ったであります
  554. 旭の母: いないと思ったら、 早くからどこに行ってたの?
  555. 旭: 目覚めが早かったので、 少々散歩に行ってきたであります
  556. 旭: ついでにフェストに出す品に 使えたらと思って
  557. 旭: ウサギを一羽 狩ってきたであります
  558. 旭の母: …昨日、もう数は足りたって 話さなかった?
  559. 旭: 当日、足りなくなるよりか、 多い方が良いと思ったので
  560. 旭の祖母: だめよ、旭ちゃん
  561. 旭: …?
  562. 旭の父: 旭、ちょっと俺の前に座れ
  563. 旭: え、はい…
  564. パシッ
  565. 旭: った…
  566. 旭の父: 旭なりに命を狩る必要性を 感じていたなら文句はないが
  567. 旭の父: なんとなくで狩っていたのなら 言語道断だ
  568. 旭: っ…
  569. 旭の父: 生き物の命を粗末に扱うな
  570. 旭: 我はさっきも言った通り…
  571. 旭の父: ここで俺たちがさばかなかったら お前の仕留めた命は無駄になるぞ
  572. 旭: …………
  573. 旭の父: それに、気に食わないことがある
  574. 旭: なんでありますか…
  575. 旭の父: お前、命を狩ることを、 不安のはけ口にしやがったな
  576. 旭: そんな、我は!
  577. 旭の父: お前の様子がおかしいのはな! 親だからよく知ってんだよ!
  578. 旭: ――っ!?
  579. 旭の父: お前に命の尊さだって、 俺らはちゃんと教えたつもりだ!
  580. 旭の父: お前はわかってるのに ウサギの命をはけ口にした…
  581. 旭の父: ウサギにとったらあまりにも 理不尽すぎる死に方だろう
  582. 旭: (我自身も見えないものに、 命を握られてるにも関わらず…)
  583. 旭: ごめ…ごめんなさい…
  584. 旭の父: 謝る相手が違う
  585. 旭の父: 今日は遅刻しても構わないから お前の手でさばいて食え
  586. 旭: …はい
  587. 旭: (ごめんなさい…本当に…)
  588.  
  589. FILENAME: text_515603-2_UNnvl.txt
  590. 旭: はぁ…
  591. 旭: (考えれば考えるほど、 自己嫌悪に陥るであります…)
  592. 旭: (憂さ晴らしに命を狩ったことを 我は明確に否定できない…)
  593. 旭: (いたずらに狩られては ただの無駄死に…)
  594. 旭: (我々も魔法少女の宿命に 絡め取られている以上)
  595. 旭: (もう一度、命との向き合い方を 考えねばならないであります…)
  596. 灰谷の声: おはよう、三浦
  597. 旭: おはようであります 黒田も一緒でありましたか
  598. 黒田: なんだよ、 俺も一緒に居たら悪いか?
  599. 旭: むしろ灰谷といつも一緒なので、 なんとも思わないでありますな
  600. 黒田: そんなに一緒かぁ?
  601. 灰谷: 私たちって幼馴染な上に お互い浮いた話なんてないから
  602. 灰谷: 学校に通うのも一緒で フェストの実行委員も一緒だと
  603. 灰谷: 周りから見れば 確かにずっと一緒に見えるかもね
  604. 黒田: あー…考えてみるとそうだな 自覚すると恥ずかしいな…
  605. 灰谷: ちょっと、 私と一緒にいるのが嫌なの?
  606. 黒田: いや、なんでそうなるんだよ それより石碑の話だろ?
  607. 灰谷: あ、そうそう
  608. 灰谷: 三浦さ、今度良かったら 取材をさせてくれないかな?
  609. 旭: な、我はそういうの かなり苦手なのでありますが…
  610. 灰谷: 石碑の件を展示をするにしても、 もう少しコンテンツが欲しいの
  611. 灰谷: 大学の先生を突撃した インタビュー記事も載せるけど
  612. 灰谷: 第一発見者のインタビューも あった方が面白いと思わない?
  613. 黒田: 石碑を巡る話を 色んな視点から見た方がさ
  614. 黒田: どこか信憑性が増すだろ?
  615. 灰谷: “信じられる要素がないと 存在しないのと同じだから”
  616. 灰谷: できればコンテンツを 充実させたいの
  617. 旭: …前も同じことを灰谷は 言ってたでありますな
  618. 灰谷: だからお願い!
  619. 旭: ん~~~…
  620. 灰谷: お願いお願いお願い!
  621. 旭: …………
  622. 旭: 外との繋がりがあるだけで、 確かに変わるのかもしれない…
  623. 旭: 我々は3人とも同じ牢獄に入り 誰も面会に来ない囚人であります
  624. アレクサンドラ: 今は私たちの悲しみや苦しみを 誰も知らず理解もしてくれません
  625. 旭: そうでありますな 知られることに意味がある
  626. 灰谷: インタビュー、 付き合ってくれる?
  627. 旭: 了承したでありますよ
  628. 灰谷: やった! ありがとうね三浦!
  629. 黒田: 俺からもありがとう三浦
  630. 旭: 認知されて信じられるためには 必要なことでありますからな
  631. 旭: 我が抱えている魔法少女という境遇を 魔女になってしまうという宿命を語れば 黒田と灰谷は信じてくれるだろうか
  632. 旭: 裏付けのなかった平家の落人伝説を信じるように 我の言う話を信じてくれるだろうか
  633. 旭: その場限りの同情でも下手な励ましでも欲しいと 氷室殿は言っていた
  634. 旭: 無意識に命を狩ることを 不安のはけ口にした我の中にも 同じような感情があって きっと見えないところに根を張っている…
  635. 旭: 黒田と灰谷は信じてくれるだろうか 我が話すことを信じて憂いてくれるだろうか
  636. 旭: (だけど、言ってはいけない 我々のことは秘密であります…)
  637. 旭: (魔法少女とは そういうものであります…)
  638.  
  639. FILENAME: text_515603-3_UNnvl.txt
  640. みんな: 「~~♪」
  641. アレクサンドラ: ……………
  642. ラビ: 父が死んだ時ですら、 苛立ちながら救われていた…
  643. ラビ: 初めて気付いた…
  644. ラビ: 今、私はその場限りの同情や、 下手な励ましですら欲しいんだ…
  645. アレクサンドラ: (氷室さんの言う通りだ)
  646. アレクサンドラ: (私だって同じで ひとりで抱えていたくない…)
  647. アレクサンドラ: (友だちや先生や家族が 私たちの事情を知ってくれて)
  648. アレクサンドラ: (慰めの言葉を少しくれるだけで 全然構わない…)
  649. みんな: 「~~♪」
  650. アレクサンドラ: だめ…泣きそうになって 声が震えてしまう…
  651. 先生: なんで残ってもらったかと言うと
  652. アレクサンドラ: わかってます… 私の歌、ダメでしたよね…
  653. 先生: そうだな
  654. 先生: 声も腹から出ていないばかりか 持ち前の伸びもない
  655. 先生: パートをリードしてもらおうと 考えてはいたが
  656. 先生: フェストまで日がない中で 続投というのは厳しい話になる
  657. アレクサンドラ: ごめんなさい…
  658. 先生: ただ、ダメなのはダメだったが、 残ってもらった理由は他にもある
  659. アレクサンドラ: えっ…
  660. 先生: 率直に聞くが 栗栖、何があった
  661. アレクサンドラ: それは…………
  662. 先生: あ、う、悪かった 無理に聞こうとしたわけじゃ…
  663. 先生: 話し辛いことだったら別に 話す必要はない
  664. 先生: ただ、自分で抱えきれない時は 誰かに相談することを忘れるな
  665. 先生: 先生も教員の端くれだ
  666. 先生: 他に相談したい先生がいるなら 話を伝えてみる
  667. アレクサンドラ: いえ、大丈夫です ごめんなさい心配をかけて
  668. アレクサンドラ: 少しショックな出来事があって、 心の整理がつかなくて
  669. アレクサンドラ: でも、答えは見つかりそうなので 心配して頂かなくても平気です
  670. 先生: そうか…
  671. 先生: だが、他の部員を引っ張るには 不安が残る以上
  672. アレクサンドラ: はい、私は抜けます…
  673. 先生: 代わりに独唱パートを 任せようと思うんだがどうだ?
  674. アレクサンドラ: えっ!?
  675. 先生: バランスはとれなかったとしても 個人のレベルは申し分ない
  676. 先生: むしろ今抱えている揺らぎが、 人々に届ける力になると思ってる
  677. 先生: 栗栖がやれると言ってくれるなら 任せようと思うんだが
  678. アレクサンドラ: (かつて恋心を抱いた人は、 やっぱり私を理解してくれる…)
  679. アレクサンドラ: (不器用だけど、不器用なりに 寄り添ってくれようとしてる…)
  680. アレクサンドラ: (私の揺らぎを理解してくれる そんな先生になら言いたい…)
  681. アレクサンドラ: (言ってしまいたい… 私が抱えていることについて…)
  682. アレクサンドラ: でも“魔法少女のことは秘密”…
  683. アレクサンドラ: 魔法少女になったことも 魔女と戦っていることも 私たちが魔女になってしまうことも
  684. アレクサンドラ: すべて内緒にしなくてはならないのは 変わらないんだ…
  685.  
  686. FILENAME: text_515603-4_UNnvl.txt
  687. ラビ: 本当に白金は 毎日のように来る
  688. 白金: 氷室先輩が存在することの証明を 私がしないといけないので
  689. ラビ: それはずいぶんと重大な 役割を背負わせた
  690. 白金: 本当ですよ
  691. ラビ: 周りはフェストの準備とかで 忙しいみたいだけど
  692. ラビ: 白金は大丈夫? 家は農家だったでしょう
  693. 白金: 私は興味ないんで
  694. 白金: 氷室先輩も湯国温泉郷の関係で 手伝いとかないんですか?
  695. ラビ: 私もフェストには興味ないから 当日に軽く手伝うだけ
  696. 白金: 同じじゃないですか
  697. ラビ: …………
  698. 白金: なんですか急に見つめて
  699. ラビ: …もう少し見つめさせて
  700. 白金: いいですよ?
  701. ラビ: …………
  702. ラビ: 最近、三浦や栗栖といった魔法少女と 知り合ったとは言っても それまでの私は常にひとりで 自分の存在を証明できるのは家族以外に この白金ひとりだった
  703. ラビ: きっと彼女は 偽った姿を私に見せていない
  704. ラビ: それなのに私は偽っている 私を受け止め続けてくれる彼女に対して 自分の素性を偽っている
  705. ラビ: 正直、彼女が認めてきた私が偽りなら 存在証明なんてされてなかったことになる
  706. ラビ: そればかりか 私の存在を証明することで保たれていた 白金という存在の意味も失われてしまい 私は彼女を裏切ることになる
  707. ラビ: (それは耐えられない…)
  708. ラビ: 白金…
  709. 白金: はい、さっきから変ですけど どうしたんですか?
  710. ラビ: 実は私は隠していたことがある…
  711. 白金: 隠していたこと? 裏表なんてなさそうなのに
  712. ラビ: でも、私は裏の顔を持っている それを告白したい
  713. ラビ: 私を証明してくれる 白金への誠意だと思うから…
  714. 白金: …わかりました では、心して聞きますね
  715. 白金: 絶対に茶化したりしません
  716. ラビ: …実は
  717. ラビ: っ…!?
  718. ラビ: どうして、ここで言葉が詰まる
  719. ラビ: 魔法少女のことは秘密だから…? 心のどこかで嫌われると思ってる? 変なやつだと認識されると思ってる? 引かれるのではと思ってる?
  720. ラビ: こんな不安なんて覚える必要はないし 白金とはあまりにも無縁のこと
  721. ラビ: 何も問題はない、ないはずだ!
  722. ラビ: 白金、実は!
  723. ラビ: ぐっ!?
  724. 白金: どうして 話してくれないんですか?
  725. 白金: 私はずっと信じてたのに 氷室先輩のことを…
  726. 白金: 私が見てきたあなたは何? あなたは何者なの?
  727. ラビ: やめ、首がしまっ、て…
  728. 白金: 早く言いなさい!
  729. ラビ: ――っ!?
  730. ラビ: (魔女の口付け…)
  731. ラビ: (近くに反応があることに 気付かなかったなんて…)
  732. ラビ: くっ!
  733. 白金: あっ!
  734. ラビ: 自分のことに捕らわれて なんて不甲斐ないんだ私は…
  735. 白金: …………
  736. ラビ: すぐに助ける
  737.  
  738. FILENAME: text_515603-5_UNnvl.txt
  739. 白金: っ、ううん あれ、私はどうして…
  740. 白金: 氷室…先輩…?
  741. 白金: あ、私、ごめんなさい! どうして、どうして先輩に…
  742. ラビ: 白金、落ち着いて
  743. 白金: でも、自分がなんで首を絞めたか 全然わからなくて…!
  744. ラビ: この通り、私は平気だから
  745. ラビ: 何もなかった以上は、 白金を責める理由はない
  746. ラビ: それに私たち魔法少女は
  747. ラビ: 魔女に操られてしまった 白金のような子を助けるのも
  748. ラビ: 役割のひとつだから
  749. 白金: 魔法少女…魔女…? 何を言ってるんですか先輩…
  750. 白金: っ、その格好…
  751. ラビ: 今の現象で 説明が省けたかもしれない
  752. ラビ: 白金が私に手を掛けたのは、 魔女という存在のせい
  753. ラビ: そして私はその魔女と戦う 魔法少女で
  754. ラビ: ちょうど、あなたを操った魔女を 倒してきたところ
  755. 白金: 理解がちょっと…
  756. 白金: 私は魔女に操られていて、 魔法少女の氷室先輩が倒した…?
  757. ラビ: その解釈でいい
  758. ラビ: 魔女はこの世の事件や事故を 引き起こす原因でもあって
  759. ラビ: 白金が被害に遭ったのは、 心に隙が生まれたからだと思う
  760. ラビ: 私が突然変なことを言って 不安にさせたせいかもしれない
  761. ラビ: ごめんなさい
  762. 白金: は、はい…
  763. ラビ: これがあなたに伝えたかった 私が持っている裏の顔
  764. 白金: 氷室先輩は、私のような人を たくさん助けてるんですね…
  765. ラビ: ただ、皮肉なことに 魔法少女は魔女を倒すけど
  766. ラビ: 魔法少女が力尽きた時に 行き着く先は魔女
  767. ラビ: 一概にいいとは言えない
  768. 白金: ごめんなさい…
  769. 白金: やっぱり氷室先輩の話を すべて飲み込むのは難しいです
  770. ラビ: 無理もない 私だって同じだから…
  771. 白金: でも…
  772. 白金: 私はとりあえず信じます
  773. 白金: 数少ない信用できる人の言葉を 私は先に飲み下しておきます
  774. 白金: 反すうして咀嚼するのは、 それからあとでも構いませんし
  775. 白金: 氷室先輩の言葉だから
  776. ラビ: …ありがとう、白金
  777. ピロン♪
  778. 白金: 家からですか…?
  779. ラビ: いえ、他でも魔女が出たみたい だから少し行ってくる
  780. 白金: …わかりました
  781. ラビ: じゃあ、また今度
  782. 白金: うそ、飛び降りた…
  783. 白金: …………
  784. 白金: あんなに速く移動するなんて 本当に氷室先輩は…
  785.  
  786. FILENAME: text_515603-6_UNnvl.txt
  787. 旭: なっ!
  788. 旭: それでは、氷室殿は自分の正体を 話したってことでありますか!
  789. アレクサンドラ: それで相手の反応は!? 普通は信じられませんよ!
  790. ラビ: まだ意味を深く理解してくれた わけじゃないけど
  791. ラビ: 白金は咀嚼するより前に信じて、 言われたことを飲み込むって
  792. ラビ: そう言ってくれた
  793. アレクサンドラ: すごい…
  794. アレクサンドラ: なんだか私、自分にブレーキを かけたのが不思議です…
  795. アレクサンドラ: 私にだって信用してる人はいる
  796. アレクサンドラ: それなのに秘密にしなきゃって 勝手に思っちゃって
  797. 旭: 我だって サーシャ殿と同じでありますよ
  798. 旭: 知ってもらいたいという 気持ちを抱いていたにも関わらず
  799. 旭: 正体を明かせないと 思っていたでありますよ…
  800. ラビ: 正直迷いはあった…
  801. ラビ: 境遇はどうであれ、 私たちは自分の望みを叶えている
  802. ラビ: 本来の人生では有り得ない、 ズルをしている
  803. ラビ: だからこそ、 誰かに憐れんで欲しいと思うなど
  804. ラビ: ただの高望みで傲慢だろうかと 思いもした
  805. ラビ: だけど、振り返れば失ったものの 方が多いようにも感じた
  806. 旭: …命を常に危険にさらしている
  807. アレクサンドラ: 命を危険にさらさないと 生きることすら許されない…
  808. 旭: その上、魂が穢れに染まれば 魔女になってしまう…
  809. ラビ: そして、願いを叶えたとしても、 良い結果になるとは限らない
  810. 旭: …………
  811. アレクサンドラ: …………
  812. ラビ: …………
  813. ラビ: プライバシーに関わるから、 深くは聞かないけど
  814. ラビ: 思いあたるところはあるはず…
  815. 旭: そう考えると我々は 必要以上に不幸になっている…
  816. アレクサンドラ: 下手をすれば願いを叶える前より 不幸せなのかもしれない…
  817. ラビ: それなら、少しは自分の幸せを、 取り戻してもいいのでは…?
  818. ラビ: そんな思いが私の中を巡った
  819. 旭: つまり、誰かに知らせることで、 慰めを得ることは傲慢ではない…
  820. アレクサンドラ: 失った分を取り戻すだけだから、 それぐらい許される…
  821. ラビ: だから、これは相談だけど 3人でやってみない?
  822. ラビ: 魔法少女のことを 世間に知ってもらうための活動を
  823.  
  824. FILENAME: text_515604-1_UNnvl.txt
  825. うらら: というワケで今週も始まったんよ
  826. うらら: うららと!
  827. くらら: くららの!
  828. うらら&くらら: 夜遊びホームルーム!!
  829. うらら: 今日もいつもの収録スタジオから 生放送でお送りするんよ!
  830. くらら: って、辺境のテレビ局だからって 予算が全然ないだけでしょ?
  831. うらら: いきなり内部事情の告白は えげつないんよ!
  832. うらら: スタッフが、魔女も蔓延る 深夜に至るまで会議をした上に
  833. うらら: 予算を切り詰めて実現した、 努力の結晶と言える放送なんよ!
  834. くらら: 出た出た“魔女”!
  835. くらら: なんか、うららってば最近、 その都市伝説にハマってるよね
  836. うらら: ハマってるも何も、 実際にウチは襲われたんよ
  837. うらら: しかも助けてくれたのは、 魔法少女っていう人たち!
  838. うらら: 自分の危険なんて省みずに、 ウチらを助けてくれる
  839. うらら: 日常の中に隠れたヒーローだから 会ったら応援して欲しいんよ!
  840. くらら: んー、私は見たことないし、 あんまり信じられないかも
  841. くらら: そもそも、そんな危険な目に 遭うのは嫌だし
  842. うらら: 言われてみればそうなんよ
  843. うらら: 魔法少女と会わない方が 幸せかもしれないんよ
  844. くらら: 危険な目に遭ってないからね
  845. うらら: まぁ、みんな魔法少女は 過酷な運命を背負ってるので
  846. うらら: 応援して欲しいんよ
  847. くらら: 以上、うららの オカルトコーナーでしたー
  848. うらら: まだオープニングトークなんよ! 変な枠を作らないで欲しいんよ!
  849. ラビ: この放送は…
  850. アレクサンドラ: この間、私たちが助けた子で、 ネットで番組をやってたんです
  851. アレクサンドラ: ケーブルテレビで放送してから、 アーカイブ配信をしてるそうです
  852. アレクサンドラ: 年代的には中高生の子たちが よく見ているみたいですよ
  853. ラビ: 魔法少女の話を広めるにしても 手段が課題だった…
  854. 旭: それゆえに 思わぬ助け船でありますな
  855. 旭: 彼女を助けたことがこんな形で プラスに働くとはなんとも
  856. アレクサンドラ: 運命とも言うのでしょうか 不思議ですね
  857. アレクサンドラ: 正直、この放送を見るまでは、 すごくネガティブだったんです
  858. アレクサンドラ: 魔法少女の話を広められずに 虚しい思いが続いて
  859. アレクサンドラ: 結局、何かに捕らわれる感覚と 付き合い続けるんだろうなって
  860. アレクサンドラ: だけど、勇気が湧いてきました うふふ♪
  861. ラビ: 影響力のある人が 私たちの存在を流布してくれる
  862. ラビ: これほど、心強いことはない
  863. 旭: 我らの知らない間に気がつけば 広まってるかもしれない
  864. 旭: あとは我々の正体を どう明かすかでありますな
  865. ラビ: ちなみに放送はいつされた?
  866. アレクサンドラ: 1時間ほど前に 終わったところです
  867. アレクサンドラ: 今のもアーカイブ配信なので、 これから見る人もいると思います
  868. ラビ: それなら噂になっているかどうか 明日、学校で耳を澄ませてみる
  869. アレクサンドラ: 私もそれとなく部活の仲間に、 話題を振ってみます
  870. 旭: そうでありますな
  871. 旭: (我も氷室殿も世情に疎いので サーシャ殿には助けられる)
  872. 旭: (流行を追うということは、 大切なものでありますな)
  873. 旭: …この反応は魔女
  874. 旭: (ここは、雪崩と一緒に 土砂災害の酷かった地域…)
  875. 旭: 黒田…?
  876. 黒田: …………
  877. 旭: (そうか、確か黒田は この辺りが出身だったはず…)
  878. 黒田: お袋もまともに守れずに、 何が男だよ…
  879. 黒田: なんで他のヤツは死んで、 俺だけ生き残ってるんだよ…
  880. 黒田: アイツまでいなくなったら俺は…
  881. 旭: な…馬鹿!
  882. 黒田: ぐっ、何するんだ三浦…!
  883. 旭: 自分の首に包丁を当ててるヤツを ただ見てられないであります!
  884. 黒田: 邪魔するナァアアア!!
  885. 旭: そうくるなら!
  886. 黒田: ガッ
  887. 旭: 魔女の口付けでありますか…
  888. ラビ: だから、これは相談だけど 3人でやってみない?
  889. ラビ: 魔法少女のことを 世間に知ってもらうための活動を
  890. 旭: (いっそ、どんな反応をするか、 ふっかけてみるであります…)
  891.  
  892. FILENAME: text_515604-2_UNnvl.txt
  893. 黒田: ぐ、う、うぅ、俺は…
  894. 旭: 目覚めたでありますか
  895. 黒田: ――っ!?
  896. 黒田: お前、なんだその格好
  897. 旭: 面と向かってそう言われると、 恥ずかしいものであります…
  898. 旭: 魔法少女でありますよ
  899. 旭: 黒田の様子がおかしかったので 探ってみたら
  900. 旭: 魔女の影響を受けていたので 解決してきたんでありますよ
  901. 黒田: 魔法少女…魔女って…
  902. 黒田: まさか、夜遊びホームルームで 言ってたやつか
  903. 旭: やっぱり、あの番組を見て 知ってたでありますか
  904. 黒田: いや、あれは都市伝説で、 それはコスプレだろ…?
  905. 旭: しっつれいな!
  906. 旭: これでも、有愛うららが目撃した 魔法少女のひとりでありますよ!?
  907. 黒田: …………本当かよ
  908. 旭: こんなウソをついても なんの得もしないでありますよ
  909. 旭: そもそも恥ずかしいで ありますからな…
  910. カラン…
  911. 黒田: あ…この包丁…
  912. 黒田: そうだ…俺… なんか急にヘコんできて
  913. 黒田: 考えないようにしてたことが 急に頭ん中を巡って
  914. 黒田: それで、なんかみんなに悪いから 俺も死のうって…死のうって…!
  915. 旭: 落ち着くであります
  916. 旭: 本音かもしれないでありますが その感情を増幅させたのは魔女!
  917. 旭: 黒田は弱っているところで、 目をつけられたのであります
  918. 黒田: ほんと、悪いとは思ってても、 死のうなんて考えたこと…
  919. 旭: わかってるでありますよ
  920. 旭: だけど、そうやって追い込んで 人の命を消していく
  921. 旭: だから魔女というのは、 始末に負えないのであります…
  922. 黒田: ごめん…ありがとう…
  923. 黒田: なんか急に実感が湧いてきた…
  924. 黒田: それに魔法少女だなんてウソを 三浦がつくと思えないしな…
  925. 旭: なので、あの… 信じてもらえれば幸いであります
  926. 旭: 我も放送で存在を明かされるとは 思わなかったでありますよ…
  927. 黒田: …わかった
  928. 旭: では、我は行くであります
  929. 黒田: あ、三浦!
  930. 旭: なんでありますか?
  931. 黒田: 改めて、 助けてくれてありがとう
  932.  
  933. FILENAME: text_515604-3_UNnvl.txt
  934. 旭: …………
  935. 旭: ふむ…
  936. 旭: (魔法少女…魔女…昨日の番組 夜遊びホームルーム…)
  937. 旭: (放課後まで話を聞いた限りだと ちらほら聞こえるであります…)
  938. 旭: (都市伝説の領域ではあるものの メディアの力は絶大であります)
  939. 灰谷: あ、三浦お疲れさま!
  940. 灰谷: この間はインタビューありがとね
  941. 旭: お安い御用であります
  942. 旭: とはいえ、ただ見つけただけで 良いネタはなかったと…
  943. 灰谷: そこは私の方でちょちょいと 編集しておくから安心して
  944. 旭: それは捏造では…
  945. 旭: む、もしかして、その紙の束は これから記事を作るところで?
  946. 灰谷: そうそう、印刷じゃなくて 壁に展示するやつは手書きだから
  947. 灰谷: めちゃくちゃ大変なの
  948. 灰谷: たぶん残りの大量の紙は 黒田が運んでくると思う、ほら
  949. 黒田: お、三浦!
  950. 旭: ご苦労でありますな
  951. 黒田: こういった力仕事こそ、 俺の出番だからな
  952. 黒田: そうだ、荷物を置いたあとで、 ちょっと時間くれないか?
  953. 旭: 我でありますか?
  954. 黒田: ああ、ちょっとだけ 話したいことがあってさ…
  955. 灰谷: キャー、黒田ったらもしかして 三浦のことを…!?
  956. 黒田: 何を考えてんだ、ちげーよ
  957. 旭: で、なんでありますか?
  958. 旭: (灰谷が変なこと言うから 妙に緊張するであります…)
  959. 黒田: 実は三浦にお願いがあるんだ
  960. 旭: あ、改まって、 なんでありますか…?
  961. 黒田: …………
  962. 旭: …………
  963. 黒田: 実は告白しようと思うんだ フェストの当日に!
  964. 旭: 告白…
  965. 黒田: ああ、灰谷に…
  966. 旭: っ、あぁ、そうでありますか
  967. 黒田: なんだよその反応…
  968. 旭: いや、そもそも我に言われても 手伝えることはないでありますよ
  969. 黒田: ある!
  970. 旭: ええ…?
  971. 旭: 連れて来なくても、 大体ふたりは一緒でありますし
  972. 旭: それに我は基本的に、 不器用であります
  973. 黒田: いや、お前って魔法少女だろ…?
  974. 旭: あぁ…あの話… 本当に信じてるでありますか!?
  975. 黒田: え、ウソなのか?
  976. 旭: いやいや本当であります!
  977. 旭: むしろ信じてくれたことに 安心と驚きが…
  978. 黒田: 本当だったらさ、告白の時に 俺をサポートしてくれよ
  979. 旭: はぁ…ハァ?
  980. 黒田: つまり、魔女が俺の告白を 邪魔するなら防いでくれ!
  981. 旭: な、なるほど、 そういうことでありますか
  982. 旭: (呪いを振りまくとはいえ、 魔女もそんな瑣末なことは…)
  983. 旭: (と、考えるのは 黒田に失礼でありますな…)
  984. 黒田: どうかお守りください!
  985. 旭: 別に構わないでありますが…
  986. 旭: フラれても我のせいには してほしくないであります…
  987. 黒田: それは当然だろ じゃあ守ってくれるんだな
  988. 旭: 友の頼みでありますからな
  989. 黒田: ありがとう 恩に着るよ三浦!
  990. 旭: (変な約束をしてしまった… 少々不安でありますな…)
  991. ピロン♪
  992. ラビ: キュゥべえが有愛うららを追っている また、魔女がいる恐れがあるので 先行して私の方は追いかけている
  993. ラビ: もしも近くにいるようであれば 三浦と栗栖は添付した場所の近くまで 来て欲しい
  994. ラビ: 恐らく魔力の反応を辿れば 私の居場所がわかる
  995. 旭: またでありますか!
  996.  
  997. FILENAME: text_515604-4_UNnvl.txt
  998. ラビ: …………
  999. うらら: ごめんなさいなんよ… また助けてもらったんよ…
  1000. ラビ: 私はキュゥべえの被害者を 増やしたくなかっただけ
  1001. キュゥべえ: ボクは有愛うららに 危害を加えるつもりはないよ
  1002. キュゥべえ: 魔法少女にならないか 改めて聞きたかっただけだからね
  1003. ラビ: それが、魔女が好みそうな場所に 誘導した言い訳になる?
  1004. キュゥべえ: 何か勘違いしているようだし、 話を聞いてくれる様子じゃないね
  1005. ラビ: あなたとの会話は 噛み合うようで噛み合わないから
  1006. キュゥべえ: どうやら冷静に話し合うのは 難しそうだね
  1007. キュゥべえ: また機会を改めることにするよ
  1008. ラビ: 改めないで
  1009. キュゥべえ: それじゃあね、有愛うらら
  1010. ラビ: はぁ、大丈夫…?
  1011. うらら: あの…実は危なそうなところに 入ったのはウチなんよ…
  1012. ラビ: え…?
  1013. うらら: 前に魔女に襲われた時を 思い出して
  1014. うらら: 同じようなシチュエーションを 作ってみたんよ…
  1015. ラビ: どうして?
  1016. ラビ: もしかして自殺志願者で 私が邪魔をしてしまった…?
  1017. ラビ: それほどの悩みを抱えていれば 魔女が目をつけるのも頷ける
  1018. うらら: 違うんよ
  1019. うらら: 実はまた 魔法少女に会いたかったんよ
  1020. うらら: それもウチを助けてくれた 魔法少女に会いたくて…
  1021. ラビ: ――っ!?
  1022. ラビ: 私たちっていうこと…?
  1023. うらら: そう、だから聞いてくれたらって 番組で話題にしてみたり
  1024. うらら: キュゥべえや魔女に会えそうな 行動を毎日続けてみたんよ
  1025. ラビ: …ふっ
  1026. ラビ: それで私たちはあなたの下げた 釣り針にかかった
  1027. うらら: 名前も知らないから、どうすれば 会えるかわからなかったんよ…
  1028. ラビ: おかげで町の学生たちが、 魔法少女のことを知ってくれて
  1029. ラビ: 私たちにとってもプラスだった 文句は言わない
  1030. ラビ: それにちょうど 残りのふたりも近くに来てる
  1031. ラビ: 聞きたいことがあるなら、 道中で自己紹介でもしながら
  1032. ラビ: どこかのお店で ゆっくり話をしましょう
  1033. うらら: ありがとうなんよ
  1034. ラビ: ちなみに何が聞きたいの?
  1035. うらら: ウチを魔女から助けてくれた ふたりの魔法少女についてなんよ
  1036. ラビ: …………
  1037.  
  1038. FILENAME: text_515604-5_UNnvl.txt
  1039. アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
  1040. 旭: この反応はまるで…
  1041. ァアアアアアアッ!!
  1042. うらら: それ…本当なのん…?
  1043. うらら: あのときの話はウソじゃなくて 本当にふたりは魔女に…?
  1044. ラビ: 私たちも知らなかった
  1045. 旭: まさに、うらら殿を帰した日に 我々も真相を知ったでありますよ
  1046. アレクサンドラ: だから、もう一度言うけど、 魔法少女になっちゃダメだよ
  1047. アレクサンドラ: どれだけ、悩みを抱えていても 強い欲求があったとしても
  1048. アレクサンドラ: キュゥべえの言葉に乗った先には 辛い宿命が待ってるから…
  1049. うらら: わかったんよ…
  1050. うらら: でも、ひどいんよ…
  1051. 旭: 責められても 文句は言えないであります…
  1052. 旭: 結局、我々魔法少女たちが、 呪いを振りまいてるようなもので
  1053. うらら: 違うんよ…!
  1054. うらら: そんなの対価として見合わない 宿命としか思えないんよ…!
  1055. 旭: うらら殿…
  1056. ラビ: だから、せめて私たちのことを 知って欲しいと思って
  1057. ラビ: 3人で世間に知らせるための 行動を起こそうとしていた
  1058. ラビ: 解決しなかったとしても、 慰めの言葉が欲しかったから…
  1059. うらら: ウチも助けてもらった以上は、 黙って見てられないんよ
  1060. うらら: 何か協力したいんよ
  1061. アレクサンドラ: もう、してくれていますよ
  1062. うらら: そんなはずないんよ
  1063. アレクサンドラ: 私たちに会うために、番組で 魔法少女を紹介してくれました
  1064. アレクサンドラ: おかげで学生たちの間には、 広まり始めたんです
  1065. うらら: あ…
  1066. ラビ: まさにメディアの力 むしろ私はあなたに感謝してる
  1067. 旭: 実際、うらら殿の番組を見た者を 昨日助けたのであります…
  1068. 旭: 自分の友人だった手前、 魔法少女だと告白したところ
  1069. ラビ: どうだった…?
  1070. 旭: 受け入れてくれたであります それも、好意的に
  1071. アレクサンドラ: うららちゃんの番組の力は ちゃんと発揮されていますね
  1072. うらら: こんな形で力になれているなんて 自分でも驚きなんよ
  1073. アレクサンドラ: うふふっ♪
  1074. アレクサンドラ: 「実は魔法少女の中にも変化があって グループメッセージを見ていると 自分のことについて誰かに伝えてみようって 考えてる人が増えてるみたいなんです」
  1075. アレクサンドラ: 「魔女になってしまうという真相は 魔法少女の間でも知らない人が多いですし デリケートでセンシティブな話題なので 話の中には出てきませんが」
  1076. アレクサンドラ: 「それでも、魔法少女と魔女のことについては 信頼できる人に伝えようとしているんです」
  1077. うらら: それ、もしかしたら、 チャンスかもしれないんよ
  1078. アレクサンドラ: チャンス?
  1079. うらら: みんなのことを湯国市中に伝える チャンスってことなんよ
  1080. ラビ: 詳しく聞かせて
  1081. うらら: 今度、フェストのステージで パフォーマンスをするんだけど
  1082. うらら: 出張夜遊びホームルームの プログラムも確保されてるから
  1083. うらら: 魔法少女の話題を出しつつ、 3人をゲストで紹介するんよ
  1084. うらら: くららには怒られちゃうかも しれないけど
  1085. うらら: これは魔法少女を 都市伝説から引っ張り上げる
  1086. うらら: 千載一遇のチャンスなんよ!
  1087. ラビ: かなりリスクは高そうだけど…
  1088. 旭: 千載一遇のチャンスと言われると 確かにそうであります
  1089. うらら: ただ、長く時間はとれないんよ
  1090. アレクサンドラ: 伝えることや見せることは 極力絞った方が良さそうですね
  1091. ラビ: ええ、私や三浦が魔法少女として 友人に受け入れられたのは
  1092. ラビ: 元の関係値があったからこそ
  1093. ラビ: ちゃんと段階を踏まないと 混乱を生む
  1094. アレクサンドラ: そうですね
  1095. うらら: じゃあ、とりあえずフェストで みんなに出てもらう件は…
  1096. アレクサンドラ: やってみましょう
  1097. 旭: そうでありますな
  1098. ラビ: うん
  1099.  
  1100. FILENAME: text_515604-6_UNnvl.txt
  1101. ラビ: …………
  1102. ラビ: (誰かに知ってもらう… それはきっと正しいこと…)
  1103. ラビ: そうだよね…お父さん…
  1104. ラビ: (よくわからない 私には難しい哲学の本ばかり…)
  1105. ラビ: (でも、ときどき内容を 教えてくれたのを覚えてる…)
  1106. ラビ: そう確か…
  1107. ラビ: 苦しみというものを肯定するような内容で
  1108. ラビ: “人は乗り越えることで成長を感じられる 力があると感じられるから幸せになれる”
  1109. ラビ: そんなことが書いてあった気がする
  1110. ラビ: (力があるのが幸せって、 危険な感じがするけど)
  1111. ラビ: (何かを乗り越えることで 自信に繋がるのはわかる)
  1112. ラビ: (今、自分に課せられているのは それこそ魔法少女の宿命で)
  1113. ラビ: (誰にも知られることなく、 苦しんでいるけど)
  1114. ラビ: (知ってもらうという壁を 越えるだけでも)
  1115. ラビ: (きっと私は 幸せになれると思う)
  1116. ラビ: 湯国市オールスターフェスト そこで壁を越えよう
  1117.  
  1118. FILENAME: text_515605-1_UNnvl.txt
  1119. 「湯国市オールスターフェストが開催決定!」
  1120. 「地域の名産品が目白押しの直売所に 湯国市の歴史や習わしに関する展示が盛り沢山」
  1121. 「さらに、ステージでは 地元の天才大道芸人“有愛うらら”が ユニットを組んで技を披露!」
  1122. 「他にも気になるコンテンツが詰まった イベントに、みんなで一緒に参加しよう! 詳しくは湯国市観光組合のHPをチェック!」
  1123. アレクサンドラ: (少し先だと思っていたのに、 もうやってきましたね)
  1124. アレクサンドラ: (湯国市オールスターフェスト)
  1125. 先生: 本番当日を迎えたが、 各々、心の準備はできたか?
  1126. みんな: 「はいっ!」
  1127. 先生: では、出番まで時間があるから 自由に遊んできなさい
  1128. 先生: ずっと緊張したままだと、 本番までに疲れ切るからな
  1129. 先生: 次に集合するのは30分前 場所はここだ
  1130. 先生: では、解散
  1131. アレクサンドラ: ふぅ…
  1132. 先生: ノドの調子は大丈夫そうか
  1133. アレクサンドラ: はい、おかげさまで 今日は独唱パート頑張ります♪
  1134. 先生: 言わずとも期待してるぞ
  1135. むぅ、湯国温泉郷のパンフレット まだ届いてないのか
  1136. ここに置いて 配るはずだったんだが…
  1137. ラビ: 先ほど吉祥旅館の女将さんが 取りに行きましたよ
  1138. そうかそうか ありがとう、ラビちゃん
  1139. ラビの母: ラビ、野菜の棚はもう埋まった?
  1140. ラビ: うん、少し遅れたけど ようやく終わったところ
  1141. ラビの母: あなたの体を治してくれた 野菜たちだから
  1142. ラビの母: この機会に沢山の人たちが 知ってくれるといいわね
  1143. ラビの母: お爺ちゃんもお父さんも 喜んでくれると思うわ
  1144. ラビ: そうだね
  1145. 白金: 先輩、おはようございます
  1146. ラビ: あ、おはよう白金
  1147. 旭: 我々の出店も 問題はなさそうでありますな
  1148. 旭: (あとはこのフェストで、 自分たちの出番を待つばかり…)
  1149. 黒田: よぉ、三浦 準備の方は順調にいってるか?
  1150. 旭: 確認も終えて万全でありますよ よければひとつどうでありますか
  1151. 黒田: 俺も地元民だからなぁ 鹿もウサギも食ったことあるよ
  1152. 旭: まぁ、とりあえず 今日は応援してるでありますよ
  1153. 黒田: こっちこそ頼りにしてるぞ
  1154. 灰谷: あ、いたいた黒田 最後に展示の確認があるって!
  1155. 黒田: マジで? ごめん、すぐ行く
  1156. 灰谷: あ、私も三浦と話があるから 先に戻ってくれる?
  1157. 黒田: オッケー
  1158. 旭: 我に話でありますか?
  1159. 灰谷: ひとつは展示の件
  1160. 灰谷: インタビューの記事もできたし、 満足できる仕上がりになったわ
  1161. 灰谷: 手伝ってくれてありがとうね
  1162. 旭: そんなことでありますか 改めて言わなくていいであります
  1163. 灰谷: 三浦のそういうところ好きだよ
  1164. 灰谷: それで、もうひとつは 黒田の件なんだけど
  1165. 旭: く、黒田でありますか?
  1166. 灰谷: …たぶん私、 告白される気がする
  1167. 旭: ぶっ…!
  1168. 灰谷: ちょっと大丈夫!?
  1169. 旭: 驚いただけでありますよ…! しかし、なぜそれを我に…?
  1170. 灰谷: たぶん私、変なこと言われなきゃ 普通にオーケーすると思うの
  1171. 灰谷: で、付き合うとか まだよくわからないんだけどさ
  1172. 灰谷: 他の子とか見てると、彼氏優先で 友だちと疎遠になっててさ
  1173. 灰谷: 私、三浦とは友だちでいたいから それだけ伝えたくて
  1174. 旭: 灰谷…
  1175. 旭: 少し疎遠になるぐらいで 嫌いになるのは友だちではない
  1176. 旭: 我はそう思うであります
  1177. 旭: だから何も気にせず堂々と、 黒田を受け入れるでありますよ
  1178. 灰谷: うん、ありがとう
  1179. うらら: 今日のMCを担当するのは、 湯国市きっての大道芸人コンビ!
  1180. くらら: うららとくららでお送りします!
  1181. うらら: それでは開場5秒前の カウントダウンを始めるんよ!
  1182. 「5!」
  1183. 「4!」
  1184. 「3!」
  1185. 「2!」
  1186. 「1!」
  1187. うらら&くらら: 湯国市オールスターフェスト はじまりまーす!
  1188.  
  1189. FILENAME: text_515605-2_UNnvl.txt
  1190. 旭: お、氷室殿!
  1191. ラビ: 三浦、まさかこんな広い会場で 遭遇するなんて
  1192. 旭: 驚きでありますな っと、友人の方もご一緒で…
  1193. 白金: 初めまして白金といいます
  1194. 旭: ご丁寧にどうも 我は三浦旭であります
  1195. 旭: これから学校の実行委員の展示を 見に行くのでありますが
  1196. 旭: よければ、おふたりも一緒に いかがでありますか?
  1197. ラビ: 何にも興味が湧かなかったから ちょうど良かった
  1198. 旭: 身も蓋もない言い方であります…
  1199. 白金: いざ、読んでみると面白いです
  1200. 白金: 湯国温泉郷の地熱料理とか 芸事の文化って面白いですね
  1201. ラビ: 元々、私が住んでる辺りは 温泉地でありながら宿場町だから
  1202. ラビ: 人の行き交いが多くて、 芸で生計を立ててる人もいた
  1203. ラビ: 書いてあるみたいに、ある時期は かなり華やいでたみたい
  1204. 白金: 同じ湯国市の中でも地域によって 文化の色が違いますね
  1205. 旭: 我のような山林の中で暮らす者は 林業か狩猟業が多いであります
  1206. 旭: とはいえ、我の家も含めて 兼業が多いでありますな
  1207. 白金: こっちにある平家の落人伝説 記事に書いてあるのって…
  1208. 旭: 我でありますよ
  1209. 旭: 真偽は定かではないでありますが 石碑を発見したのであります
  1210. 白金: 「口承とわずかな文献だけが 裏付けとされていたが」
  1211. 白金: 「調査の結果次第では、 重要な物証となるかもしれない」
  1212. 白金: …存在証明
  1213. 白金: 知覚されない存在は無いのと同じ まるで魔法少女ですね
  1214. 旭: ――っ!?
  1215. ラビ: 私が自分の正体を明かした相手が 白金ということ
  1216. 旭: そうだったのでありますか
  1217. 白金: 三浦さんと栗栖さんの話も 氷室先輩から伺ってます
  1218. 白金: もしも力になれることがあれば 言ってください
  1219. 白金: 私に友だちはいませんが、 その分、障壁もありませんから
  1220. 旭: …白金殿は、なぜ氷室殿の話を 信じようと思ったのでありますか
  1221. 白金: 「自分たちのような目的もなく 誰にも認知されないような空虚な存在は 多くから見られることによって 自己を保存するんだ」
  1222. 旭: …………?
  1223. 白金: 氷室先輩が私に言った言葉です
  1224. 白金: 私という個を保存してくれたのは 氷室ラビという人です
  1225. 白金: そんな自分を証明する存在を 私は否定するすべを知りません
  1226. 旭: どこまでも氷室殿のことを 信用するということでありますか
  1227. 白金: …たとえ魔法少女の行く果てを 知ったとしても
  1228. 旭: …………そこまで…
  1229. ラビ: 白金のことを世間に知らせる 指標にするべきではないと思う
  1230. ラビ: 私たちは他の友人関係とは違って 歪な繋がりを持っているからこそ
  1231. ラビ: 魔法少女の宿命を 受け入れられたに過ぎないと思う
  1232. 旭: 承知しているでありますよ
  1233. 旭: 我も段取りを踏むべきだと 思うであります
  1234. ラビ: そろそろ栗栖の歌唱もあるし ステージに移動しよう
  1235.  
  1236. FILENAME: text_515605-3_UNnvl.txt
  1237. アレクサンドラ: はぁ~緊張しました~♪
  1238. 旭: いやぁ、とても素晴らしい 歌唱でありました
  1239. ラビ: 私も驚いた
  1240. ラビ: 練習を積み重ねた歌声は、 伸びやかに響くものなんだって
  1241. ラビ: 混声の合唱も素敵だったけど あなたの独唱が好きだった
  1242. アレクサンドラ: きゃ~、なんだか恥ずかしい ありがとうございます♪
  1243. 旭: 本当、素直に感動したで ありますな
  1244. うららの声: 「さ、ステージは早くも中盤戦なんよ!」
  1245. くららの声: 「軽く今後のおさらいをしておくと このあとは湯国市の民俗資料館の館長さんと 民俗学の学者さんとの対談があります」
  1246. くららの声: 「そのあとは私とうららによる ディアボロの演技があって 出張夜遊びホームルームの時間になりまーす」
  1247. うららの声: 「今回はただのトークだけじゃなくて ゲストを呼んだコーナーも用意してあるんよ」
  1248. くららの声: 「最近、うららがハマってるあれでしょ?」
  1249. うららの声: 「そう、湯国市の学生さんならご存知 あの魔法少女と連絡がとれたので ゲストで来てもらうことになってるんよ」
  1250. うららの声: 「ひとつの都市伝説が現実になる瞬間を みんな見逃さないで欲しいんよ」
  1251. くららの声: 「あと、今日はフェストに投票してくれた コンテンツランキングの結果発表もあるので ホームルームの時間は 欠かさず出席するように!」
  1252. うららの声: 「それではさっそく偉い先生のおふたりに 登場してもらうんよ!」 
  1253. みなさんこんにちは 湯国市立民俗資料館の館長です
  1254. この町出身の学生なら遠足などで お会いしてるかもしれませんね
  1255. 今日はよろしくお願いします
  1256. 太助: 皆さんはじめまして
  1257. 太助: 民俗学を専門に研究をしています 里見太助と申します
  1258. 太助: 本日は町に訪れる話をしたところ 館長からお誘いを受けまして
  1259. 太助: 急遽対談を させてもらうことになりました
  1260. 太助: よろしくお願いします
  1261. ラビ: …………
  1262. 白金: …氷室先輩? どうかしましたか?
  1263. ラビ: いえ、なんでもない
  1264. 白金: それにしては、 らしくない驚き方でしたが…
  1265. ラビ: 少し、知り合いに 似ていると思っただけだから
  1266. ラビ: ――っ!?
  1267. 旭: 氷室殿とサーシャ殿も 感じたでありますか…?
  1268. アレクサンドラ: はい、魔女の魔力反応です それも…
  1269. 旭: ここは、なんでありますか…
  1270. ラビ: どう見たって魔女の結界…
  1271. 旭: …我が彼女たちから感じた魔力と この魔女の反応は同じ…
  1272. アレクサンドラ: つまり、間違いなくこの魔女は、 ふたりの魔法少女…
  1273. アレクサンドラ: 私たちが目撃した あの時、魔女になったふたり…
  1274. ラビ: まだ誰にも倒されることなく 生き残っていた
  1275. 旭: 我々がゲストとして出るまで 少し時間が残ってるであります
  1276. 旭: フェストに被害が及ぶ前に 倒しに行くであります
  1277. ラビ: 他の魔法少女にも連絡を取ろう
  1278. アレクサンドラ: はい、私もそれに賛成です
  1279.  
  1280. FILENAME: text_515605-4_UNnvl.txt
  1281. アレクサンドラ: 今、湯国市オールスターフェストにいるんですが 近くに魔女の気配を感じました
  1282. アレクサンドラ: 数は2体 かなり前からいる魔女の反応なので 成長していて強いと思われます
  1283. アレクサンドラ: 私たちは3人いるのですが 被害はなるべく最小限に食い止めたいので どなたか手伝ってくれませんか?
  1284. 私たちも近くにいるところ
  1285. ひとりはフェストで忙しくしてるから 参加は難しいと思うけど ふたりなら途中から手伝えると思う
  1286. アレクサンドラ: ふたりを 待っている余裕もありませんね…
  1287. ラビ: 私たちが先行して戦う
  1288. ラビ: ただ、仕留めきれなかった時の サポートはしてもらおう
  1289. 旭: そうでありますな
  1290. 旭: 我々と彼女たちによる二段構えで 確実に仕留めるであります
  1291. 旭: まずいであります…
  1292. 旭: 2体居たはずが、 1体だけ移動したようであります
  1293. アレクサンドラ: 元々、二手に分かれない限りは、 同時に押さえることはできません
  1294. アレクサンドラ: ここでひとりが対応して、 ふたりでもう1体を探しましょう
  1295. ラビ: まだ、そう遠くに行ってない すぐに追いつけるはず
  1296. ラビ: 栗栖はサポートに長けてるから 誰かと一緒に組んで
  1297. ラビ: 私と三浦で分かれよう
  1298. 旭: では、我がひとりでこの魔女と 戦うことにするので
  1299. 旭: ふたりは、残りを
  1300. アレクサンドラ: わかりました 氷室さんは構いませんか?
  1301. ラビ: ええ、もちろん
  1302.  
  1303. FILENAME: text_515605-5_UNnvl.txt
  1304. うらら: おふたりとも貴重なお話 ありがとうございました!
  1305. くらら: はい、民俗学が何かすら 理解できてなかったんですけど
  1306. くらら: おふたりの話を聞いて、 すごく興味が湧いてきました
  1307. 太助: 私の方こそ多くの方に話を 聞いて頂ける機会は少ないので
  1308. 太助: 貴重な時間を過ごせました
  1309. よろしければ、 資料館に遊びにきてくださいね
  1310. 黒田: なんか、すっごく感動した
  1311. 灰谷: 民俗学の話が?
  1312. 黒田: いや、俺たちが作ってきた展示 すごく褒めてくれただろ?
  1313. 黒田: なんか、やって良かったなって
  1314. 灰谷: 授業の前も後も 時間をかけてよかったよね
  1315. 黒田: うん、ありがとうな灰谷
  1316. 灰谷: 黒田も一緒に頑張ったんだから お互い様でしょ?
  1317. 黒田: いや、冬の雪崩でお袋が死んでさ 俺を気遣ってくれてただろ…?
  1318. 黒田: フェストの実行委員会に 誘ってくれたのも
  1319. 黒田: 俺が悲しんでドツボにハマるのを 防いでくれたのかなって
  1320. 灰谷: 意外と鋭いのね
  1321. 灰谷: 黒田が好きだからさ、 支えたくなっちゃったんだ
  1322. 黒田: えっ
  1323. 旭: やはり、かなり強い… で、ありますが…
  1324. 惡此令母 母沙利伴 人惡多執
  1325. …………
  1326. 旭: (そう、お前が追いかけたのは 我が魔力を込めた短剣…)
  1327. 旭: 捜している本命は、 こっちでありますよ!
  1328. 奇慈佛影 生裏華爾 偏佛日衆
  1329. 旭: (接近して…)
  1330. 旭: (考えるな… 元の姿を思い出すな…!)
  1331. 旭: (罠にかかった動物と、 撃たれた動物と同じだ…)
  1332. 旭: (魔女は死にかけ… 苦しんでいる姿…)
  1333. 旭: ならば、我は…!
  1334. 旭: 楽にしてやるのが、 精一杯の優しさであります!!
  1335. 怒是王死 劔與惑即 日幻賊術
  1336. 旭: はぁ…はぁ…
  1337. 旭: やった… あとは、もう1体…!
  1338. 菫wp*斬翫Лq!!
  1339. アレクサンドラ: 争う必要はありません 今はリラックスしてください
  1340. ~~♪
  1341. …………
  1342. アレクサンドラ: 氷室さん、今です!
  1343. ラビ: (これで彼女は救われる…)
  1344. ラビ: (魔法少女として望んだ希望を 魔女と戦ってきた意味を)
  1345. ラビ: (呪いで上塗りして、 消してしまう宿命から解かれる)
  1346. ラビ: っやぁあっ!
  1347. liжxヮ亦試緒!
  1348. ラビ: 動ける!?
  1349. ラビ: しまった… 致命傷にならなかった…!
  1350. 蝨*溷慍‡繧[]貞ョ医l!!
  1351. ラビ: アァッ!
  1352. アレクサンドラ: まさか、私の固有魔法を受けて まだ動けるなんて…
  1353. ラビ: それだけ成長してたってことかも
  1354. ラビ: 逃げて会場に向かってる 早く追いかけないと…
  1355.  
  1356. FILENAME: text_515605-6_UNnvl.txt
  1357. 旭: 逃がしたでありますか…!?
  1358. アレクサンドラ: ごめんなさい
  1359. ラビ: ふたりで対処できないほど、 魔女が成長していた…
  1360. ラビ: 今、追いかけてるけど、 もうすぐ他のふたりと合流できる
  1361. アレクサンドラ: 4人いればさすがに倒せます もう少し待ってください…
  1362. 旭: 我はもしもを想定して 会場に戻るでありますよ
  1363. アレクサンドラ: はい、 最後の壁になってもらえると
  1364. ラビ: かなり魔女の動きが速い…
  1365. ラビ: 移動に集中したいから テレパシーはここまでに
  1366. 旭: わかったであります
  1367. ラビ: 見つけた! 栗栖!こっち!
  1368. アレクサンドラ: はぁっ…ふぅ…
  1369. アレクサンドラ: まるで、隠れるように… 何をするつもりですか…
  1370. ラビ: ここはイベント会場までの 見通しが良い…まさか…!
  1371. アレクサンドラ: 魔法少女の反応がふたつあります 恐らく連絡が来た相手です
  1372. ラビ: 私たちは先行して入る ふたりとは中で合流する方向で!
  1373. アレクサンドラ: はいっ!
  1374. 旭: (ここから向かえば会場が近い… 急げばもうすぐ…!)
  1375. 旭: なっ…この音は… 爆発でありますか…!?
  1376. ――!――!――!!
  1377. 旭: 悲鳴…会場の方から…!!
  1378. 旭: なっ…あ…これは…
  1379. うららの声: これは、どういうことなんよ!
  1380. 旭: ―旭― 我が聞きたいでありますよ… これは、いったい何が…
  1381. うらら: ―うらら― 突然トラックが突っ込んできて 火が点いたと思ったら爆発したんよ!
  1382. 旭: ―旭― 魔女にやられた…間に合わなかった… ということでありますか…
  1383. うらら: ―うらら― 三浦さんは気付いてたのん…?
  1384. 旭: ―旭― 魔女の反応を感知して氷室殿とサーシャ殿と一緒に 倒しにいったであります…
  1385. 旭: ―旭― ただ、1体だけ倒しきれず…
  1386. うらら: ―うらら― じゃあ、その魔女の仕業ってことなのん…?
  1387. 旭: ―旭― しょせんは憶測であります… 我にも真実はわからないであります…
  1388. 旭: ―旭― それでも、ひとつ言えることがあるとすれば…
  1389. アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
  1390. 旭: この反応はまるで…
  1391. ァアアアアアアッ!!
  1392. 旭: 「魔女は間違いなく 我々の前で魔女になったふたりの魔法少女… それは、わかったであります…」
  1393. うらら: ずっと湯国市にいたのん…?
  1394. 旭: 既に倒されたか逃げ切っていると 思っていたでありますが…
  1395. 黒田の声: 今の話、本当かよ!
  1396. 旭: な…黒田…!
  1397. 旭: ――っ!?
  1398. うらら: ひっ…
  1399. 旭: まさか、ウソだ…! 灰谷…!!
  1400. 旭: あぁ…金属片が…胸に… 我の魔力で、なんとか体を…!
  1401. 黒田: おせぇよ…意味ねぇよ…
  1402. 黒田: 抱えてたらわかる… 肌で感じるよ…灰谷の状態は…
  1403. 旭: っ…
  1404. 黒田: なんでだ、どうしてだ… なぁ三浦…なんで殺したんだ…!!
  1405. 旭: 殺した…!? わ、我は魔女を倒そうと!
  1406. 黒田: 今さら白々しいんだよ!
  1407. 黒田: テメエ自分で言ってただろ! 魔法少女が魔女だって!
  1408. 黒田: しかも、逃げ切ったかどうか、 仲間の心配までしやがって…!
  1409. 旭: あ…
  1410. 黒田: 結局、都市伝説を作ったのも 雪崩と土砂崩れを起こしたのも
  1411. 黒田: フェストでみんなを殺したのも!
  1412. 黒田: 全部オマエらがやってるだけの 自作自演じゃねーか!!
  1413. 旭: 黒田、我の話を…
  1414. 黒田: ダマレ!!
  1415. 黒田: 人の命を弄んで、 何が面白いんだ…
  1416. 黒田: 俺は…オマエたちを許さない… 人の命と心を弄ぶオマエらを…
  1417. 黒田: 「一生恨むからな… お袋と灰谷を奪ったオマエのことを…」
  1418. 黒田: 「お前たちだけは消してやる…」
  1419. 旭: …………
  1420. ラビ: そんなことが…
  1421. ラビ: 私が魔女を倒せなかったせいで 三浦を苦しめてしまった
  1422. ラビ: ごめんなさい…
  1423. アレクサンドラ: 本当に自分が情けないです…
  1424. アレクサンドラ: 魔法少女なのに、こんなに多くの 犠牲を出してしまうなんて…
  1425. 旭: それほど魔女が 強くなっていたということ
  1426. 旭: それは納得してるでありますよ…
  1427. 旭: でも、友だちに誤解されるのは かなりこたえるでありますな…
  1428. うらら: 少しずつ誤解を解いていくしか ないと思うんよ…
  1429. うらら: 近くで聞いてた人たちが いなかったのが幸いだと思うんよ
  1430. 旭: ただ…
  1431. 旭: 「何か得体の知れないものに 狙い撃ちされたような嫌な気分であります…」
  1432. (Part 1 end)
  1433. -----------
  1434. (Part 2 start)
  1435. FILENAME: text_515606-1_czJwk.txt
  1436. うらら: ―うらら― じゃあ、その魔女の仕業ってことなのん…?
  1437. 旭: ―旭― しょせんは憶測であります… 我にも真実はわからないであります…
  1438. 旭: ―旭― それでも、ひとつ言えることがあるとすれば…
  1439. 旭: ―旭― 魔女は間違いなく 我々の前で魔女になったふたりの魔法少女…
  1440. 旭: ―旭― それは、わかったであります…
  1441. うらら: ―うらら― ずっと湯国市にいたのん…?
  1442. 旭: ―旭― 既に倒されたか逃げ切っていると 思っていたでありますが…
  1443. 旭: …………
  1444. 旭の父: おはよう
  1445. 旭: おはようであります…
  1446. 旭の母: 朝ご飯の用意できてるけど、 食べられる?
  1447. 旭: 今日もあまり食欲がないので、 少なめでお願いするであります
  1448. 「湯国市のイベントで起きた事故から1週間 今日も現地では被害者の方を悼んで 花を手向ける人の姿が見られました」
  1449. 旭: …………
  1450. 旭の祖母: この集落の人も亡くなった… 他にも被害に遭った人がおる…
  1451. 旭の祖母: 旭も友だちのことで 辛いかもしれんがのう
  1452. 旭の祖母: 生き残ったのは何か意味があると 思って前を向かんと
  1453. 旭の祖母: 自分が潰れてしまうだけじゃぞ…
  1454. 旭: …わかってるつもりであります
  1455. 旭: (灰谷の死と黒田の怒りを 受け止めきれない…)
  1456. 旭: (ただ、それと同じぐらい 我の心が乱されているのは)
  1457. 旭: (有愛うららと話す様子が ネットに流れたからであります)
  1458. 旭: あの場にいた誰かが撮ったのか… URLは湯国市にいる学生の間で広まって 黒田を勘違いさせてしまった内容は この1週間で拡散してしまった…
  1459. 旭: だから一層…
  1460. 旭: まぁ、とりあえず 今日は応援してるでありますよ
  1461. 黒田: こっちこそ頼りにしてるぞ
  1462. 灰谷: 私、三浦とは友だちでいたいから それだけ伝えたくて
  1463. 旭: あの頃には戻れなくなったという確信が 胸を締め付けてくるであります…
  1464. あの人…だよね… 動画に映ってた人って…
  1465. 有愛うららが言ってた 魔法少女のゲストだろ…?
  1466. まさに出演する直前に魔女を けしかけたって噂だよ…
  1467. あんだけの事故起こすとか ほんとに狙ってやってんの…?
  1468. 旭: …………
  1469. 旭: …………
  1470. 三浦、気にしない方がいいよ
  1471. あの映像もさ、ちょっとした コスプレみたいなものでしょ?
  1472. 他にも同じような人がいたしさ
  1473. 黒田の声: チッ
  1474. ――っ!?
  1475. 黒田: コイツをかばう必要なんてねーよ
  1476. 黒田: 灰谷だけじゃねぇ 何人死んだと思ってんだ…
  1477. 黒田: それに、魔法少女が魔女だって 三浦は自分で言ってた
  1478. 黒田: 今まで警察も手を出せないような 不思議な力でやりたい放題だ
  1479. あんなの、有愛うららが言ってた ただの都市伝説でしょ!?
  1480. 三浦になすりつけないでよ!
  1481. 「ふざけんな! 実際に見たってやつは何人もいるんだぞ!?」
  1482. 「そもそも、三浦が何も言わないのは 後ろめたいことがあるからだろ!」
  1483. 「ちょっと三浦! コイツらに何か言ってやりなよ!」
  1484. 旭: 我は…我は… 何もしてないであります…
  1485. 旭: むしろあの時は、 本当に被害を防ごうと思って…
  1486. 黒田: そんな三浦も 人を殺す魔女になるっていうなら
  1487. 黒田: 魔法少女が存在すること自体 俺たちにとっては害悪だろ
  1488. 黒田: それに良いヤツのフリを してるだけかもしれないしな
  1489. 黒田: 灰谷を殺したのが良い例だ…
  1490. 旭: はぁ…はぁ…
  1491. 旭: (フェストの件で責任はない…)
  1492. 旭: (だけど、これからは…?)
  1493. 旭: (死ぬのを拒めば、 我もいずれは魔女になる…)
  1494. 旭: (どれだけ今の我が人を守っても 呪いを振りまく存在になる…)
  1495. 旭: (そんな確かな未来があるのに、 我には罪がないと言えるのか…)
  1496.  
  1497. FILENAME: text_515606-2_czJwk.txt
  1498. うらら: というワケで今週も始まったんよ
  1499. うらら: うららと!
  1500. くらら: くららの!
  1501. うらら&くらら: 夜遊びホームルーム!!
  1502. うらら: 今日もいつもの収録スタジオから お送りするんよ!
  1503. くらら: …で、うららは最初に何か 謝罪をすることがあるんでしょ?
  1504. うらら: そうなんよ…
  1505. うらら: 前々からこの番組で取り上げてた 魔法少女についてなんだけど
  1506. うらら: 本当にあくまで都市伝説で、 実際にいるかはわからないんよ
  1507. くらら: ほんっと世間を混乱させる話は 金輪際やめて欲しいわ…
  1508. くらら: 私は魔法少女なんていないって うららには言ってたから
  1509. くらら: こんなに話がこじれるなんて 思わなかった…
  1510. うらら: みんなに魔法少女の話が広まって 思ったより反響があったから
  1511. うらら: フェストのタイミングで 一芝居打とうと思ってたんよ…
  1512. くらら: それが、あの時に言ってた スペシャルゲストってやつよね?
  1513. うらら: 殺陣(たて)が得意な人を呼んで 沸かせようと思ってたんよ…
  1514. うらら: つまり、何が言いたいかというと
  1515. うらら: ウチが変に騒いで みんなに魔法少女を広めた結果
  1516. うらら: 今、出回ってる映像に出てる人に 迷惑がかかってるんよ…
  1517. うらら: だから、お願いなんよ
  1518. うらら: これまでの話も 都市伝説の内容を踏まえて
  1519. うらら: ウチが脚色して 色々と話してただけなんよ
  1520. くらら: だから、魔法少女の話は 終わりにして綺麗に忘れましょ
  1521. うらら: うん…
  1522. くらら: 私も今回の騒動に巻き込まれた 被害者なんだから
  1523. くらら: これから魔法少女の話は 私に対してもナシだからね
  1524. うらら: はい、ごめんなさいなんよ…
  1525. くらら: オバケを信じるのと同じよね ほんと馬鹿馬鹿しいわ…
  1526. アレクサンドラ: これが 昨日放送された番組の内容です
  1527. 旭: 魔法少女を好意的に見てくれる 貴重な人だったでありますが…
  1528. ラビ: 今は私たちとの出会いは夢や幻 そう演じるのが賢明…
  1529. アレクサンドラ: はい…学校でいじめられてないと いいんですけど…
  1530. 旭: 我も白い目で見られているのが 現状でありますからな…
  1531. 旭: 氷室殿とサーシャ殿は 特に変わりないでありますか?
  1532. 旭: 魔法少女のグループメッセージを 見ていると
  1533. 旭: 我と同じような状況にある人が いるようでありましたが…
  1534. アレクサンドラ: …実は私も同じように 周りから距離を置かれてます…
  1535. ラビ: 人間関係が希薄な私でさえ 鋭い視線を感じることがある
  1536. 旭: やはり、そうでありますか…
  1537. 旭: ネットに上げられた映像には、 我しか映ってないはずなのに…
  1538. アレクサンドラ: どうも、指輪を見て魔法少女だと 見分ける方法が
  1539. アレクサンドラ: 学生たちの間で 広まっているみたいなんです…
  1540. アレクサンドラ: みんなに魔法少女を 知ってもらおうとする試みは
  1541. アレクサンドラ: 私たちから始まって、 他の人にも広がっていたので
  1542. アレクサンドラ: その弊害とも言えると思います…
  1543. ラビ: 私たちに悪印象を持つ者が 見分け方を知った結果だと…
  1544. 旭: 指輪は外した方が 良さそうでありますな…
  1545. ラビ: 視線を感じた時点で遅い
  1546. ラビ: 他の魔法少女に警戒するように 伝えても、防げるかどうか…
  1547. おい、そこのお前ら
  1548. 旭: ――っ!?
  1549. やっぱりお前… 動画に出てたヤツだよな…?
  1550. 旭: わ、我のことでありますか…
  1551. へっ、指輪をしてたから 尾けてみて正解だ
  1552. あのイベントで俺のツレも ケガをして入院してんだよなぁ
  1553. 旭: っ…
  1554. ここで会ったのもなんかの運命だ 女だろうと関係ねえ
  1555. テメエにも同じ痛みを 味わわせてやるよ…!
  1556. 旭: あれは不可抗力であります…!
  1557. 言い訳はいらねえ!
  1558. 事件にはしたくねーから、 勝てると思ったら引いとけよ
  1559. 女に手え出すなんて、 ただでさえ恥ずかしいからな
  1560. わーってますよ先輩
  1561.  
  1562. FILENAME: text_515606-3_czJwk.txt
  1563. くそっ、マジで当たんねぇ!
  1564. 旭: いくら仕掛けて来ても 同じであります!
  1565. 旭: そもそも我々とあなたたちでは 肉体的な差が大きすぎる
  1566. 旭: 持久戦に持ち込むことも 不可能でありますよ
  1567. じゃあ早く終わらせるために そっちからも来いよ!
  1568. ラビ: 人を助けるのが魔法少女
  1569. アレクサンドラ: はい、どんな人であろうとも 傷付けることなんて…
  1570. ラビ: はぁ…
  1571. ラビ: これ以上続くようであれば、 栗栖の固有魔法に頼らせて
  1572. アレクサンドラ: はい、気力を削がないと、 終わりそうにないですしね…
  1573. 相手が防戦一方じゃ面白くない 追加でふたりぐらい呼ぶか
  1574. おちょくられたままじゃ ただの赤っ恥になっちまいます
  1575. 旭: 我だって、殴れるものなら 殴って止めているでありますよ
  1576. ラビ: …それは悪評が広がるだけ 栗栖、お願い
  1577. アレクサンドラ: やむを得ませんね
  1578. ???の声: 両者そこまでです!
  1579. ラビ: え、白金…!?
  1580. 白金: これ以上続けるようでしたら、 警察に通報します
  1581. 水を差してきやがって… お前、巻き込まれたいのか?
  1582. 白金: あなたたちが呼んだ 仲間はここに来ませんよ
  1583. 白金: こちらの仲間が 外で足止めをしてますので
  1584. …………チッ
  1585. 白けたし行こうぜ
  1586. でも、このままじゃ…
  1587. 警察が来れば 報復だなんて話は通用しねえぞ
  1588. 殴れば厄介になるのは 俺たちの方だ
  1589. っ…
  1590. 白金: ふぅ… 氷室先輩、大丈夫ですか?
  1591. ラビ: ありがとう…ただ、 どうして私たちの居場所を…?
  1592. 白金: 騒いでるやんちゃな人たちを見て 胸騒ぎがしたんです
  1593. 旭: 野性のカンのようですな 感謝するでありますよ
  1594. アレクサンドラ: 私も、あと少し遅かったら 魔法を使うところでした
  1595. 白金: 先輩方が魔法少女である以上、 抵抗して手を出せば悪者ですし
  1596. 白金: 自分を正当化しようとしても 自作自演に見えてしまう
  1597. 白金: だから危ないと思ったんです
  1598. アレクサンドラ: 仰る通りですね…
  1599. ラビ: ちなみにさっき、 仲間がいるって言ってなかった?
  1600. 白金: はい、今回のようなことも ありますので
  1601. 白金: 魔法少女を擁護するための 組織を作ることにしました
  1602. 白金: 有愛うららの番組は 確かに多くの敵を作りましたが
  1603. 白金: 多少なりとも 味方を作っていたんです
  1604. 白金: 魔法少女に助けられた人が いることは確かですから
  1605. ラビ: 何にもやる気がなかったあなたが 突然どうして…
  1606. 白金: 氷室先輩を守るためです
  1607. 白金: 私は人と関わって生きることが わずらわしくなって以来
  1608. 白金: 氷室先輩の認識によって、 この世界と繋がれていたんです
  1609. 白金: だから今度は私が、苦しむ先輩を 助けたいと思ったんです
  1610. 白金: なんだか不思議ですよ
  1611. 白金: 今は他人と関わることが わずらわしくないんですから
  1612. ラビ: 白金が何か目標を見出せたことは 嬉しく思う
  1613. ラビ: けど、私のためになるなんて… 心配かけて本当にごめん…
  1614. 白金: 先輩は私に干渉してこないから、 自分が空っぽでも苦しくなかった
  1615. 白金: 救われていた分のお返しは させてください
  1616. 白金: あと、三浦さん
  1617. 旭: な、なんでありますか?
  1618. 白金: 黒田と言う人物をご存知ですか?
  1619. 旭: …クラスメイトであります
  1620. 白金: 私が擁護派で固めた 組織を作ったのは彼が原因です
  1621. 旭: というと…
  1622. 白金: 彼は魔法少女の撲滅を目指して 人を募っています
  1623. 旭: な…
  1624.  
  1625. FILENAME: text_515606-4_czJwk.txt
  1626. ラビ: …………
  1627. ラビ: (白金は私に助けられたと 言っていたけど)
  1628. ラビ: (私にそのつもりはなかった…)
  1629. ラビ: (ただ、彼女が私のところに来て 自分で勝手に救われただけ…)
  1630. ラビ: (私は白金のために 何かをしてあげたことはない…)
  1631. ラビ: だから、何か返してあげたいけど 果たしてどうすればいいのか…
  1632. ラビ: 人との付き合いが乏しい私には、 あまりに難しい問題だ…
  1633. ラビ: ただいま
  1634. ラビの母: お帰りなさいラビ またお父さんの部屋に行く?
  1635. ラビ: うん、考え事があるから
  1636. ラビの母: ちょっと悪いんだけど、 少しの間だけ入らないようにして
  1637. ラビ: どうして?
  1638. ラビの母: 長期宿泊希望のお客様がいてね その人に滞在してもらうのよ
  1639. ラビの母: ちょうどタイミング悪く 他の客室も埋まってるから
  1640. ラビ: そんな…!
  1641. ラビの母: ちょっとラビ!
  1642. ラビ: どうして知らない人なんかを あの部屋にいれるの…
  1643. ラビ: 私がお父さんの存在を感じられる 唯一の場所なのに…
  1644. ガチャ!
  1645. ラビ: ――っ!?
  1646. 太助: あ、大地のゆりかごの娘さんかな
  1647. 太助: 今日からお世話になります 里見太助です
  1648. 太助: 家族で使ってた部屋なのに 使わせてもらって申し訳ない…
  1649. ラビ: …………
  1650. 太助: ん、もし?
  1651. ラビ: あ、ごめんなさい… えっ、と、すみませんでした…!
  1652. 太助: 待って
  1653. ラビ: …なんでしょうか
  1654. 太助: あまり、無理はしないようにね
  1655. 太助: 本日は町に訪れる話をしたところ 館長からお誘いを受けまして
  1656. 太助: 急遽対談を させてもらうことになりました
  1657. 太助: よろしくお願いします
  1658. ラビ: …………
  1659. 白金: …氷室先輩? どうかしましたか?
  1660. ラビ: いえ、なんでもない
  1661. ラビ: (なんとなく、あのステージで 見た時から思ってたけど…)
  1662. ラビ: お母さん! ねえ、あの人…!
  1663. ラビの母: さっそく見に行って… “お父さん”にそっくりよね…
  1664. ラビの母: だからってあの部屋に通した わけじゃないのよ?
  1665. ラビの母: むしろあの部屋に入るまで 面影は感じなかったんだけどね
  1666. ラビの母: 不思議だわ
  1667. ラビ: 心臓に悪い…
  1668. ラビの母: 気まずいかもしれないけど 少しの間、我慢してね
  1669. ラビ: …無視するようにする
  1670.  
  1671. FILENAME: text_515606-5_czJwk.txt
  1672. ラビ: (少しずつだけど、 視線の鋭さが和らいだような…)
  1673. ラビ: (私を好奇の目で見るような輩も 減ったような気がする…)
  1674. 白金: お疲れさまです氷室先輩
  1675. ラビ: お疲れ白金
  1676. ラビ: (全ては白金が擁護派の人と 動いてくれてるおかげ…)
  1677. ラビ: あなたには返しきれない恩が できてしまった…
  1678. ラビ: とはいえ、ほとぼりが冷めるまで お返しするのも難しいけど…
  1679. 白金: 本当はこうして話してるのも 良くないですからね
  1680. ラビ: ええ、適度に距離をとらないと 身内に擁護は通じなくなる
  1681. 白金: それより今は 私が恩を返してるところなので
  1682. 白金: 氷室先輩が何かする必要は ありませんよ
  1683. ラビ: 私が白金から もらい過ぎてるから…
  1684. 白金: そうですか?
  1685. 白金: では、氷室先輩の気が済むのなら お返しを楽しみにしておきます
  1686. ピロン♪
  1687. ラビ: …………
  1688. お願い誰か助けて!
  1689. 急に知らない学校の人から 魔法少女だろって追いかけられて 離してくれないの!
  1690. どこで知ったのか知らないけど この人たち指輪を見て判断してる…!
  1691. 白金: これは、他の魔法少女ですね
  1692. ラビ: ええ、私たちが絡まれたみたいに 執拗に攻められているのかも
  1693. 白金: 警察に連絡してもらってください
  1694. 白金: 私も現場付近にいる仲間に 連絡するので
  1695. 白金: 可能なら場所も教えてもらえると
  1696. ラビ: そんな余裕があればいいけど 一応確認はしてみる
  1697. ピロン♪
  1698. ラビ: …………
  1699. ラビ: 栗栖が近くで反応を掴んで 現場に向かってるみたい
  1700. ラビ: 私も追いかける
  1701. 白金: どうか助けてあげてください
  1702. はっ、ふっ…ふぅ…
  1703. 黒田: 本当に、その指輪が 魔法少女になったやつの証拠か
  1704. 私は何もしてないのに、 どうして追いかけてくるの…!?
  1705. 被害者ぶってる理由が 私にはわからない
  1706. 毎日、魔女と一緒になって、 人を殺してるのは誰よ
  1707. お姉ちゃんを殺したのは アンタでしょ!?
  1708. 違うよ! それに私、魔女なんかじゃない!
  1709. 黒田: 裏はとれてんだよ!
  1710. ひっ!
  1711. アレクサンドラ: 救われたくて魔法少女の話を 広めたかったのに…
  1712. アレクサンドラ: こうして人から恨まれることに なってしまうなんて…
  1713. アレクサンドラ: …………
  1714. アレクサンドラ: (動画を撮られた三浦さんだけが 悪いわけじゃない)
  1715. アレクサンドラ: (魔女を逃がした私も氷室さんも この状況を招いた原因だ…)
  1716. アレクサンドラ: なんとか… 誤解を解かないと…
  1717.  
  1718. FILENAME: text_515606-6_czJwk.txt
  1719. アレクサンドラ: 魔法少女の反応がある… この辺りかもしれませんね…
  1720. アレクサンドラ: 掴んだ…
  1721. 黒田: 魔法少女が湯国市を出て行くなら 俺たちは何も文句は言わねえ
  1722. 黒田: けど、出て行かないって言うなら 逃げたくなるまで追い詰めてやる
  1723. じゃないと俺たちみたいに、 他の人たちが泣くことになる
  1724. 魔法少女は魔女とは違う 責められる理由なんてないよ!
  1725. 黒田: 魔法少女と魔女はイコールだろ
  1726. 黒田: 魔女になって姿を消して、 俺らの前から逃げてるんだからな
  1727. 意味がわからない…
  1728. 追い出されるのが嫌なら 私たちを殺せば?
  1729. そんなの できるわけないでしょ…
  1730. アレクサンドラ: かなり近付いてきた…
  1731. アレクサンドラ: 私が行けば人を傷付けなくても 危機を脱せる…急がないと…!
  1732. ウ~~ウ~~
  1733. アレクサンドラ: よかった… 警察も来てくれました…!
  1734. 湯国市は生まれ育った町だから 出て行くつもりはないわ…
  1735. 黒田: それなら言った通りにするか
  1736. ああ、こっちから手を出して お前を追い出してやるよ
  1737. 何をするつもり…?
  1738. 魔法少女に暴力を振るっても 勝てるわけがない
  1739. 返り討ちにあっても 文句なんて言えないわよ…?
  1740. その暴力を動画で広めてあげる まずはあなたの友だちにね
  1741. お前らを撲滅するための執念を 舐めるなよ
  1742. あなたがカメラを持ってるのね…
  1743. 渡しなさい!
  1744. ウァアアア゙ッ!!
  1745. アレクサンドラ: ――っ!?
  1746. アレクサンドラ: はぁ、はぁ…見つけた…
  1747. アレクサンドラ: けど、 手を出してしまったんですか…
  1748. ぐっ、肩が…肩がぁ…
  1749. 警官: おい、大丈夫か…!
  1750. ――っ!?
  1751. 悪いのは…この人たちよ… みんなが私を脅すから…!
  1752. 警官: 話はあとで聞く!
  1753. ってーーーー!
  1754. 警官: っ…折れてるか…
  1755. 黒田: 聞いてくれ!
  1756. 黒田: 俺たちはコイツに誘い込まれて 急に殴られたんだ!
  1757. え…
  1758. 黒田: その上、骨を折るなんて 立派な傷害だよな!?
  1759. 黒田: アイツを調べてくれ 絶対に何か持ってるって!
  1760. 警官: 何か持ってるのはいいとして、 話は落ち着いた場所で聞く
  1761. 警官: 殴られる現場を見た以上は、 放ってはおけないしな
  1762. 違います! 私が追いかけられてたんです!
  1763. 警官: 別に逮捕しようってわけじゃない
  1764. 警官: こういう話はややこしくなるから 交番で状況を聞かせて
  1765. なんでですか! 私は悪くないのに!
  1766. 警官: 人を病院送りにしておいて さすがに悪くないはないだろう
  1767. だってこれはっ!
  1768. アレクサンドラ: (さすがに見てられません)
  1769. アレクサンドラ: (やる気を削いで倒れたあと、 私の方で回収しましょう)
  1770. アレクサンドラ: …………
  1771. アレクサンドラ: (視線…?)
  1772. 黒田: …………
  1773. ピロン♪
  1774. アレクサンドラ: (三浦さん…)
  1775. 旭: 黒田から連絡があった 出ちゃいけない
  1776. 旭: サーシャ殿も共犯者に仕立て上げて 一緒に連れて行くつもりだ
  1777. アレクサンドラ: っ…
  1778. 警官: ほら、来なさい!
  1779. どうしてこんな目に…
  1780. 魔法少女っていうだけで 苦しんでるのに
  1781. どうして…どうして…!
  1782. みんなを守ってるのは、 私たちなのに!
  1783. 警官: 何を言ってるんだ…
  1784. あぁあああ…
  1785. アレクサンドラ: この反応… あの時と同じ…!
  1786. アレクサンドラ: 早くグリーフシードを!
  1787. ァアアアアッ!!
  1788. アレクサンドラ: キャァアアッ!!
  1789. 旭: ―旭― 魔女は間違いなく 我々の前で魔女になったふたりの魔法少女…
  1790. 旭: ―旭― それは、わかったであります…
  1791. うらら: ―うらら― ずっと湯国市にいたのん…?
  1792. 旭: ―旭― 既に倒されたか逃げ切っていると 思っていたでありますが…
  1793. 黒田: 魔法少女が魔女になれば、 湯国市から逃げようとする
  1794. 黒田: それなら俺は、平和を掴むために やれる手は尽くしてやるさ…
  1795.  
  1796. FILENAME: text_515606-7_czJwk.txt
  1797. アレクサンドラ: ごめんなさい…
  1798. アレクサンドラ: 私は同じ魔法少女を 見捨ててしまった…
  1799. アレクサンドラ: また、自分の目の前で 魔女にさせてしまいました…
  1800. 旭: あの場で飛び出して サーシャ殿も補導されていれば
  1801. 旭: 我々3人はフェストにいて 他の魔法少女より知られてる手前
  1802. 旭: 今まで以上に立場が悪化してたと 思うであります…
  1803. ラビ: でも、どうして三浦に 彼は連絡をとってきたのか…
  1804. 旭: 恐らく、我々に対する脅し 本気である証明でありますよ
  1805. 旭: 明確に撲滅派が存在することを 示してきたんであります
  1806. 旭: 文面を見てもらえれば、 わかると思うでありますよ…
  1807. 黒田: フェストや雪崩の被害者を募って 俺たちはお前たち魔法少女を 湯国市から追い出すための組織を作った
  1808. 黒田: お前たちに恨みを抱いている他の仲間から 魔法少女の見分け方も教えてもらって さっそくひとり魔法少女を見つけた
  1809. 黒田: 後悔させてやるから覚悟しておけよ
  1810. 旭: 魔女になった彼女の救助に 向かっていた時に
  1811. 旭: このメッセージが 届いてたのでありますが
  1812. 旭: 我が気付いた時に追加で メッセージが届いたでありますよ
  1813. 黒田: フェストでお前がつるんでいた 魔法少女が来てるから 他のヤツと共犯にして補導してもらう
  1814. 黒田: 三浦を筆頭に顔は割れてるし コイツはフェストのステージで ソロもやってたから有名だ
  1815. 黒田: 退かせるなら退かせてやれ そして、この町から早く出ていってくれ 俺からの最初で最後の温情だ
  1816. アレクサンドラ: こういうこと… だったんですね…
  1817. ラビ: 本当は傷付けたくないからこそ 時間を与えたようにも読める
  1818. 旭: 確かに、 そうかもしれないであります…
  1819. 旭: ただ我々にも、住む家があり 家族が居る以上は
  1820. 旭: 簡単に町から出ることは できないであります
  1821. アレクサンドラ: だけど、私たちを取り巻く状況は 間違いなく悪くなりました…
  1822. 警官: った…
  1823. …………
  1824. 警官: おい…キミ…キミ!!
  1825. 警官: ――っ!? うそ、だろ…死んでる…?
  1826. 黒田: 魔法少女が魔女になれば 見えなくなる
  1827. 黒田: 今ごろ体だけを残して、 湯国市を出ようとしてるはずだ
  1828. 黒田: 追い詰めれば魔女になるって わかったのは良い検証だったな
  1829. これで魔法少女がいなくなるなら 急いで追い込まないと
  1830. あいつらは善人面をして 周りの信用を得ようとしてるから
  1831. つまり…放置してたら 被害者が増える…
  1832. 俺たちで、守らねえと…
  1833. 黒田: ああ、町にいる魔法少女を すべて炙り出すんだ…
  1834. 警官: 俺は事情を聞こうとしただけ… 何がどうなってるんだ…これは…
  1835. アレクサンドラ: このままだと、 みんな魔女にされてしまう…
  1836. 見つけたぞ! 追いかけて捕まえろ!
  1837. アレクサンドラ: っ!
  1838. アレクサンドラ: …………はぁ
  1839. アレクサンドラ: 私たちを捜していた わけではないようです…
  1840. ラビ: 私たちが魔女を倒せていれば、 息が詰まることもなかった…
  1841. 旭: いや、我が不用意に自分の正体を 明かしたせいかもしれない…
  1842. ラビ: いずれにしても、狂った歯車は 私たちを締め上げていく…
  1843.  
  1844. FILENAME: text_515607-1_czJwk.txt
  1845. 旭: ひとり、またひとり 魔法少女たちが消えていく
  1846. 旭: 我々、魔法少女の撲滅を目論む学生たちは皆 抜け殻になった体を見て 「魔女になってこの町から逃げていった」 と、喜ぶ始末であります…
  1847. 旭: 魔女になったと聞いた魔法少女がいれば グループメッセージのメンバーから削除していく
  1848. 旭: 気がつけば、湯国市の魔法少女たちは 半分になっていて 心が絞られるように痛むであります…
  1849. 旭: (黒田に魔法少女の存在を 打ち明けなければここまで…)
  1850. ラビ: …………
  1851. 白金: 私たちの力が及ばず、 撲滅派はその数を増やしています
  1852. 白金: その上、彼らは魔女になることの 正しい知識を持っていないので
  1853. 白金: 魔法少女を魔女にすれば 湯国市から逃げていくと信じて
  1854. 白金: 自分たちの虐殺行為を 断罪だと言って正当化してます…
  1855. ラビ: 魔法少女の中には、魔女化の話を 知らない子だっている…
  1856. ラビ: 素直にみんなのために魔女と 戦っている子もいる…
  1857. ラビ: あまりにむごい…
  1858. 白金: いっそ、魔法少女の力を使って 彼らを押さえてはいかがですか?
  1859. ラビ: それはできない
  1860. 白金: すぐに片付きます
  1861. ラビ: 撲滅派の人間はその様子を 動画で記録して流すはず
  1862. ラビ: その人間を押さえたところで、 どこに目があるかわからない以上
  1863. ラビ: 無理に事態を片付けても 私たちは人々の敵になってしまう
  1864. ラビ: だから私は、 力での解決は望まない
  1865. 白金: そうですね、共存共栄の未来は 望めないかもしれません…
  1866. ラビ: だから、やるべきことは 制することではないんだと思う
  1867. 白金: では、どうするつもりですか…
  1868. ラビ: 雪崩の日に生まれた悲しみと フェストで爆発した怒り
  1869. ラビ: そのすべてを私たちは、 癒やさないといけないんだ…
  1870. ラビ: ただいま
  1871. 太助: おかみさんなら、 少し買出しに行くそうだよ
  1872. ラビ: そうですか
  1873. ラビ: (最近、一番遭いたくない人に 遭ってしまった…)
  1874. 太助: あの、もしかして 何か悪いことでもしたかな…
  1875. ラビ: いえ
  1876. ラビ: すみません、失礼します
  1877. 太助: ひとつだけ聞いていいかな
  1878. ラビ: …なんでしょう
  1879. 太助: いつ頃から湯国市の学生は 魔法少女の噂を始めたのかな…?
  1880. ラビ: ――っ!?
  1881. 太助: ごめん、変なことを聞いたね
  1882. ラビ: …いえ、驚いたんです
  1883. ラビ: 大人に魔法少女の話をされたのは 初めてだったので…
  1884. 太助: 普通は都市伝説だって言われて 話を聞いてもらえないからね
  1885. ラビ: 今はその方が好都合なんです
  1886. ラビ: だから、関わらないでください… 母に心配をかけたくないので…
  1887. 太助: 誰かに頼らないと 無理が祟ってしまうよ…
  1888. 旭: すまないであります、灰谷…
  1889. 旭: 我の魔法で 都合良く呼び出してしまい…
  1890. 灰谷: 私こそごめんね…
  1891. 灰谷: 苦しんでる三浦に こんなこと頼んじゃって…
  1892. 旭: 大丈夫、責任を持って我が 黒田を救うでありますよ
  1893. 旭: 黒田の怒りも悲しみも、 我々が原因で生じたもの
  1894. 旭: 責任は我にあります
  1895. 灰谷: 違う、悪いのは私よ
  1896. 灰谷: 雪崩の件で死にたがってた黒田を 繋ぎ止めようとしたのに
  1897. 灰谷: その私が 死んじゃったんだから…
  1898. 旭: 責任の押し付け合いならぬ 引き取り合いでありますな
  1899. 灰谷: そうね、これだと堂々巡り
  1900. 灰谷: 少なくとも死んだ私には もう何もできないから
  1901. 灰谷: よろしくね、三浦
  1902. 旭: 善処するでありますよ
  1903. 旭: (死者を呼ぶ魔法など命の冒涜 使いたくはないのでありますが)
  1904. 旭: それでも 仕方なかったであります
  1905. 旭: 許して欲しいであります…灰谷
  1906. ~~♪~~♪
  1907. 旭: 氷室殿…
  1908.  
  1909. FILENAME: text_515607-2_czJwk.txt
  1910. ラビ: …………
  1911. アレクサンドラ: 本気なんですね、氷室さん…
  1912. ラビ: ええ
  1913. ラビ: 撲滅派の怒りも悲しみも 私に集めるつもり
  1914. ラビ: すべては同情が欲しいという、 私のくだらない意見から始まった
  1915. ラビ: それなのに、関係ない魔法少女が 消えていくのは見ていられない
  1916. アレクサンドラ: 氷室さんだけで 責任を背負わないでください
  1917. アレクサンドラ: 私も、この状況を招いたひとり… 一緒に背負わせてください
  1918. 旭: 我にも撲滅派の人々の 怒りと悲しみを集めるべきかと
  1919. アレクサンドラ: 皆さんが癒やされるのなら 私たち3人で受け止めましょう
  1920. ラビ: ありがとう…
  1921. アレクサンドラ: それに、魔法少女が追いやられて 治安も悪化してますからね…
  1922. ラビ: ええ…撲滅派が言うように、 魔女が逃げるなんてことはない…
  1923. ラビ: 湯国市に残り続けているなら 事件や事故が増えてしまう…
  1924. 旭: 我々が標的になって済む話なら、 もう、魔法少女は魔女にならない
  1925. 旭: 少しは湯国市の人たちを 救うことができるでありますな
  1926. アレクサンドラ: 撲滅派を癒やすだけでなく 被害を減らすのも目的なのは
  1927. アレクサンドラ: なんとなく気付きましたよ
  1928. 旭: 我も同じであります
  1929. 旭: だから、湯国市で起きてる事象を 氷室殿ひとりで抱えなくていい
  1930. 旭: 撲滅派も魔女も、 我々で引き受けるでありますよ
  1931. ラビ: ありがとう、正直ホッとした
  1932. 旭: 礼はいらないであります
  1933. 旭: それで一手に引き受けるとして どうするでありますか
  1934. ラビ: 今日放送する 夜遊びホームルームを利用する
  1935. ラビ: 有愛うららには 話は通してあるから安心して
  1936.  
  1937. FILENAME: text_515607-3_czJwk.txt
  1938. うらら: 今週も始まったんよ
  1939. うらら: うららと!
  1940. くらら: くららの!
  1941. うらら&くらら: 夜遊びホームルーム!!
  1942. うらら: 今日もいつもの収録スタジオから お送りするんだ、け、ど!
  1943. うらら: 実はサプライズで、 スペシャルゲストが来てるんよ!
  1944. くらら: 確か、湯国市の学生の間で 有名になったあの人たちよね…
  1945. くらら: んー、前に魔法少女の話は もうしないって言ってたけど
  1946. くらら: これは迷惑をかけちゃった 番組の罪滅ぼし…
  1947. うらら: そう、だからこそ出演したいって 依頼をOKさせてもらったので
  1948. うらら: 視聴者のみんなには 許して欲しいんよ
  1949. うらら: というわけで、 来てくれた3人を紹介するんよ
  1950. うらら: 氷室ラビさん、三浦旭さん、 栗栖アレクサンドラさんなんよ
  1951. ラビ: よろしくお願いします
  1952. くらら: 今日は皆さんで どんな話をしに来たんでしょうか
  1953. くらら: 急遽出演が決まったみたいで、 台本に書いてなかったんですよね
  1954. うらら: 実はウチも、氷室ラビさんから メールが届いたって話以外は
  1955. うらら: なーんにも聞かされてないんよ
  1956. うらら: ただ、魔法少女の目撃談など メールは絶え間なく届いてるし
  1957. うらら: 巷にいる学生の間でも、 まだ噂は続いてるから
  1958. うらら: 視聴者のみんなが気にしてるのは 間違いないはずなんよ
  1959. くらら: でも、魔法少女は人を殺すって、 悪い話ばっかり…
  1960. うらら: もしかして、その辺りの話を しに来てくれたってことなのん?
  1961. ラビ: はい
  1962. ラビ: 私たち魔法少女に関する話と フェストでの件についてです
  1963. ラビ: 番組冒頭の時間を借りて 手短にお話しますので
  1964. ラビ: どうか最後まで お付き合いください
  1965. うらら: わかったんよ
  1966. うらら: ウチとくららは静かに聞くから、 よろしくお願いするんよ
  1967. ラビ: ふぅ…
  1968. ラビ: 「この放送を見ている多くの学生たちは すでに私たち魔法少女の存在を知り 日々、呪いを振りまく魔女と戦っていることを ご存知だと思います」
  1969. ラビ: 「さらに、私たち魔法少女自身が 呪いを振りまく魔女になってしまうことも…」
  1970. ラビ: 「だからこそ、私たち魔法少女の正体が 魔女だと考えている人が大多数だと思いますが それは事実ではありません…」
  1971. ラビ: 「魔女になるということは 私たちにとっては死ぬも同然のこと」
  1972. ラビ: 「望んで魔女になることはありませんし 下手をすれば、魔女になるという辛い宿命を 知らない魔法少女の方が多いはずです」
  1973. ラビ: 「実際、最近になって私たちも 魔女になるという真実を知ることになりました」
  1974. ラビ: 「だから、もしも無差別に魔法少女を 追い詰めているようであればやめてください」
  1975. ラビ: 「私たちは人々が魔女の被害を受けないように 戦いを続けていますが 心が闇に染まれば魔女になり 湯国市に被害を与える側に回ってしまいます」
  1976. ラビ: 「魔法少女が魔女になれば逃げていくなんて ただの迷信で報復にはなりません」
  1977. ラビ: 「では、これまでの事件や事故に対して 私たち魔法少女はどうケジメをつけるのか 皆さんの中から声があがってくると思います…」
  1978. ラビ: 「ただ、残念ですが 魔法少女も人数には限りがあるので 全ての事件や事故を防ぐことはできません」
  1979. ラビ: 「雪崩や地震といった大規模な自然災害は 起きてから対処することはできませんし 事態に気付いて原因の魔女と戦っても 力不足であれば私たちが殺されてしまいます」
  1980. ラビ: 「それでも、全てを仕方がなかったなんて言葉で 片付けるつもりは一切ありません」
  1981. ラビ: 「断言しますが、皆さんが味わった苦しみは 私たちの怠慢が引き起こした結果によるもので 悪いのは全て私たち3人なのです」
  1982. ラビ: 「他の魔法少女は 努力をして災厄を退けてきたのに 私たちは諦めていて何もしなかった」
  1983. ラビ: 「少なくとも、先日起きたフェストでの事故は 3人で対応できたはずでしたが 私たちは現場で何もしなかったのです」
  1984. ラビ: 「だからどうか、関係のない魔法少女からは 手を引いてもらえればと思います」
  1985. ラビ: 「自分たちの罪は自分で償うので 他の魔法少女のことは見逃してください」
  1986.  
  1987. FILENAME: text_515607-4_czJwk.txt
  1988. ラビ: ありがとう、うらら 今日は突然の要望に応えてくれて
  1989. うらら: ウチは助けてもらった手前、 手伝えることはしたいんよ
  1990. 旭: くらら殿も 迷惑をかけたであります
  1991. アレクサンドラ: 急で困っちゃいましたよね
  1992. くらら: …私も魔法少女なんて 都市伝説だと思ってたけど
  1993. くらら: フェストで3人の動きを見て 信じざるを得なくなっただけよ
  1994. くらら: けど、今日の放送のあとで 何が起きても責任はとれないよ
  1995. うらら: そうなんよ… 正直、話を聞いて驚いたんよ…
  1996. うらら: もっと魔法少女への同情を誘えば 擁護する人は増えたはずなんよ
  1997. うらら: これだと3人に怒りを集めて、 他の魔法少女を助けただけなんよ
  1998. ラビ: 確かにうららの言う通りだけど 今の状況で同情を誘えば
  1999. ラビ: 撲滅派の神経を逆撫でして、 より一層、被害が増えていた
  2000. ラビ: 今、私たちがやるべきなのは
  2001. ラビ: 私たちを好きなように叩かせて 撲滅派を満足させること
  2002. さっきの放送聞いたぞ…!
  2003. 話が本当なら恨みを晴らす相手は あなたたちだけってこと…!?
  2004. 旭: …黒田のところの
  2005. アレクサンドラ: ふたりは早くスタジオに戻って
  2006. うらら: …ごめんなんよ
  2007. コイツらを追い出せば、 入院してる仲間も納得するかもな
  2008. 黒田ってヤツと合流して コイツらを潰してやりましょう
  2009. ラビ: 目論見通り、 さっそく火が点いた
  2010. アレクサンドラ: これからは耐える時ですね
  2011. 旭: そうでありますな…
  2012. ラビ: 「だからどうか、関係のない魔法少女からは 手を引いてもらえればと思います」
  2013. ラビ: 「自分たちの罪は自分で償うので 他の魔法少女のことは見逃してください」
  2014. 太助: そうじゃない…ラビちゃん…
  2015. 太助: 確かに君のしていることで、 他の魔法少女は救われる
  2016. 太助: だけど、恐らく君は 本来の目的を見失っている…
  2017. 太助: この町で起きた事件や事故を 自分たちのせいだと認めれば
  2018. 太助: 人々は魔法少女を危険だと考えて 忌避するようになる…
  2019. 太助: 最も救いを求めていた君たちは 決して救われない…
  2020. 太助: (魔法少女の存在が 普通の人に認知されている町は)
  2021. 太助: (私が魔法少女を調べ始めて以来 この湯国市が初めてだ…)
  2022. 太助: …これを足掛かりにしないと
  2023. 太助: 那由他…待っていてくれ…
  2024.  
  2025. FILENAME: text_515608-1_czJwk.txt
  2026. 旭: 湯国市の魔法少女が追い詰められて ひとり、またひとりと なりたくもない魔女へと姿を変え その魔女の呪いに苦しめられた人が 魔法少女に報復するという負のスパイラル
  2027. 旭: 黒田が率いる撲滅派は 魔法少女の家族をも標的にしようとしつつも 事件として問題を表面化させないために 負い目を持っている我々だけを追い詰めていき 何人もの魔法少女が姿を消していった
  2028. 旭: 見ていられなかった我々3人は 他の魔法少女に被害が及ばないようにしながら 湯国市の被害を増やさないようにするために フェストの件で生じた魔法少女への負の感情を 一身に背負ってしまおうと考えた
  2029. 旭: しかし、ここまで過酷になるとは 思わなかったであります…
  2030. 旭: ぐっ…!
  2031. 黒田: …魔法少女っていうのは、 本当に傷の治りが早いんだな
  2032. 黒田: それに、ソウルジェムっていう 魂の器を壊さない限り
  2033. 黒田: こうして生きてるっていうのは 本当なんだな
  2034. 旭: はぁ…はぁ…
  2035. 黒田: ここまでされてるんだから 早く町から出て行けよ
  2036. 黒田: 魔法少女が全員消えないと 平和にならないって知ってるのに
  2037. 黒田: 3人が出て行くだけで 溜飲を下げるって言ってるんだ
  2038. 黒田: むしろお前たち魔法少女は 俺たちに感謝するべきだろ?
  2039. それに、今後は 何か事件が起きたとしても
  2040. 俺たちが責めるのは 原因になった魔法少女だけだ
  2041. 無差別に責めたりしないから さっさと消えてくれよ
  2042. 言ってもムダムダ コイツらは簡単に出て行かないよ
  2043. 他の魔法少女が狙われないように 3人で盾になってるんだから
  2044. 黒田: なら、見せしめに盾を潰すか
  2045. 黒田: そうすれば、次に標的になる 魔法少女は自分かもしれないって
  2046. 黒田: 町から出て行くかもしれない…
  2047. 黒田: そうなったら、 俺たちにとってはプラスだろ?
  2048. それなら、まだ手ぬるいな
  2049. 俺にやらせてくれ
  2050. 前にバカにされた時の恨みを ここで返しておきたいんだ
  2051. 黒田: つまらない私怨を持ち込むな
  2052. 黒田: 俺たちの目的は、 あくまで町を平和にすることだ
  2053. 旭: 平和か…
  2054. 黒田: なあ、三浦 最後にもう一度選ばせてやる
  2055. 黒田: 見せしめになるか 町を出て行って楽になるか…
  2056. 旭: …我々が出て行けば 次は他の魔法少女が標的になる…
  2057. 黒田: 何か事件や事故が起きれば その可能性はある
  2058. 黒田: お前たちは俺たちの前で 本性を現したんだからな…
  2059. 旭: 魔法少女が人を殺すことは ないでありますよ…
  2060. 黒田: そう言われても不安が残る以上は 追い出すしかないだろ
  2061. 旭: …………
  2062. 旭: 出て行くことは できないであります
  2063. 旭: だから、その怒りと悲しみを 我にぶつけるでありますよ
  2064. 黒田: …そんなもんで消えるかよ
  2065. 黒田: お前も 負けたとかを気にしてるけど
  2066. 黒田: 本当は入院してた友だちが 死んだんだろ?
  2067. ああ…
  2068. 黒田: お前が殴って満足するなら そうしてやればいい
  2069. 黒田: 三浦はそれを望んでるらしい
  2070. じゃあ、遠慮なくやってやる
  2071. 死んだヤツの痛みを 味わえよ、このやろう!!
  2072. 旭: ぐっ…!
  2073. 黒田: どうすれば、 この状況を回避できたんだろうな
  2074. 旭: 我々が…魔法少女の話を… 広めなければ良かった…
  2075. 黒田: そうだな…
  2076. 黒田: 知らない方が、俺たちは 自分の不幸を呪うだけで済んだ…
  2077. 無視してんじゃねーよ!
  2078. 旭: がっ…
  2079. 旭: これでいい すべては我々の作りあげた罪だからこそ 今の状況を受け入れるしかない
  2080. 旭: どんな乱暴なやり方であったとしても 我々が耐え続ける限り 他の魔法少女は無事であります
  2081. 旭: 見せしめとなった我々を見て この町から出て行くのも 生きているのであれば構わないであります
  2082. 旭: それに黒田たちも いずれ暴力の先に残る虚しさに気付いて 怒りが収まってくるはず
  2083. 旭: それでも収まらないようであれば 我は人というものと決別して ひっそりとこの町を出て行って 山で暮らすことにするでありますよ…
  2084. これぐらい引っぱたいてやれよ
  2085. 旭: ウッ…!
  2086. 旭: まずい、意識が落ちる… これ以上は痛覚を遮断した方が 良さそうでありますな…
  2087. 旭: …あぁ、自在に痛みを消せるなど いよいよ我は人ではないと 実感させられるでありますな…
  2088.  
  2089. FILENAME: text_515608-2_czJwk.txt
  2090. ほら、まだピアノが 拭き終わってないから急ぎなよ
  2091. 次は譜面の整理があるんだから 早くしてよね
  2092. アレクサンドラ: わ、わかりました…
  2093. アレクサンドラ: 泣いてはいけません これぐらいで済むなら平気です
  2094. アレクサンドラ: 旭ちゃんが受けている暴力や ラビちゃんが受けているイジメと比べれば こき使われるぐらい問題ありません
  2095. アレクサンドラ: 私が誰かに救いを求める資格はない みんなの心を傷付けた原因は 私にあるんだから…
  2096. やばいやばい、家で練習するのに 楽譜忘れるところだった
  2097. 帰り道で気付けたのは ラッキーだったね
  2098. アレクサンドラ: ――っ!?
  2099. あぁ、掃除…中だよね
  2100. 気にしないで 私たちならすぐに帰るから
  2101. アレクサンドラ: …………
  2102. あ~今日も終わった~
  2103. 先生って良い人なんだけど もう少し優しくして欲しいよね
  2104. ほんとそれな
  2105. アレクサンドラ: …………
  2106. サーシャ、何かあった?
  2107. アレクサンドラ: (わかってる… 私を心配する余裕なんてない…)
  2108. アレクサンドラ: (魔法少女の私を心配すれば、 何をされるかわからない…)
  2109. アレクサンドラ: (友だちだからって期待しない… みんなも自分を守ってる…)
  2110. アレクサンドラ: ここで、私が助けを求めれば 苦しむのはみんなだ…
  2111. なに、ブツブツ言ってるの?
  2112. アレクサンドラ: あ、どうすれば効率良くなるか 考えていただけで、ふふっ♪
  2113. 人を殺しといて 笑わないで欲しいんだけど
  2114. アレクサンドラ: はい…
  2115. もしも先生に言おうなんてしたら わかってるよね?
  2116. あなたと先生が付き合ってるって 前に流れてた噂をさ
  2117. もっと脚色した上で 流してもいいんだからね?
  2118. アレクサンドラ: やめてください!
  2119. アレクサンドラ: 私は当事者だから構いません! だけど、先生は巻き込まないで!
  2120. 私だって本気じゃないって ただ気をつけろって言ってるの
  2121. アレクサンドラ: …………
  2122. 先生: 話し辛いことだったら別に 話す必要はない
  2123. 先生: ただ、自分で抱えきれない時は 誰かに相談することを忘れるな
  2124. 先生: 先生も教員の端くれだ
  2125. 先生: 他に相談したい先生がいるなら 話を伝えてみる
  2126. アレクサンドラ: (ごめんなさい、先生… 私には相談なんてできません…)
  2127. 掃除が終わったら 明日から栗栖は長期ミッションね
  2128. アレクサンドラ: 長期ミッション…?
  2129. 来年の部員を確保するのに もっと箔が欲しいからさ
  2130. 今度の独奏・独唱コンクールで 金賞以上をとってほしいんだ
  2131. アレクサンドラ: そんな、簡単に…!
  2132. 栗栖は先生に独唱で選ばれて フェストで期待に応えたんだから
  2133. その期待を裏切ったりして 悲しませたりしないようにね
  2134. アレクサンドラ: く…努力…します…
  2135. アレクサンドラ: あんなに楽しかった歌うことが 呪いのように感じる…
  2136. アレクサンドラ: 気持ち良く、自由に歌いながら 自分の声が空気に溶けていくのを鼓膜で感じる あの時間が、私を癒やしてくれていたのに
  2137. アレクサンドラ: 今は声帯に重しをつけたかのように うまく声が出ない気がする…
  2138.  
  2139. FILENAME: text_515608-3_czJwk.txt
  2140. ラビ: (死ね、消えろ、殺人犯…)
  2141. ラビ: (大人が許しても私は許さない)
  2142. ラビ: (少年法なんて関係なく、 私刑でお前を潰す…)
  2143. ラビ: (どす黒く汚れた言葉の数々は、 ほぼ撲滅派の人が書いたもの…)
  2144. ラビ: (別に気にしなければ良いけど)
  2145. ラビ: (靴への落書きや、 残飯のぶち込みは想定外…)
  2146. ラビ: …………
  2147. ラビ: うちも決して裕福ではない
  2148. ラビ: 早いうちにお父さんが亡くなって それでも頑張ってお母さんが宿を切り盛りして なんとかやってきている…
  2149. ラビ: その辛さを隣で見てきたからこそ これが一番こたえる…
  2150. ラビ: 私が買ったものに対して何をされても 傷付きはしないけど お母さんが買ってくれたものが傷付けられると 辛そうなお母さんの顔が浮かんでしまう…
  2151. ラビ: (だめ、ソウルジェムが濁る… 心を凍らせてしまわないと…)
  2152. え、ちょっと 今どきあんなイジメって…
  2153. さすがにまずくない…?
  2154. アイツ、夜遊びホームルームに ゲストで出てきたらしくてさ
  2155. この間のフェストの死亡事故とか 自分のせいだって名乗り出て
  2156. 滅茶苦茶恨まれてるらしいぜ
  2157. うっそ、ヤッバ…
  2158. 何考えてるか知らないけど、 関わるとお前も標的になるぞ…
  2159. ラビ: (そう、関わらないのが正解…)
  2160. ラビ: (私は、人知れず怒りと悲しみを 受け止めるサンドバッグ…)
  2161. ラビ: (それでいい…)
  2162. ラビ: あ…
  2163. ラビ: …………
  2164. ピロン♪
  2165. 白金: すみません あまり親しくしていると私も動き辛くなるので 冷たい態度をとることになりました
  2166. ラビ: 気にしないで むしろ私たちを擁護していたからこそ 学校で目をつけられていると思う 関わらない方が良い…
  2167. 白金: はい、人数的にも魔法少女を擁護してくれる人は 少なくなって、撲滅派の数だけが増えています 氷室先輩には申し訳ないですが しばらくは水面下で動かせてもらいます
  2168. ラビ: …夜遊びホームルームでの宣言で 魔法少女全体に対するヘイトを 私たち3人だけに集められたらって思ったけど 正直、思ってたほどの成果はあがってないから…
  2169. 白金: 撲滅派としては、ここで手を緩め過ぎると 魔法少女の集団虐殺を認めたことになりますから 今は3人が標的になっていたとしても いずれ全員の魔法少女を追い出すという方針は 変わらないでしょうね
  2170. ラビ: これからも魔女が事件を起こすと思うと 私たちがいなくなれば 次は別の標的を見つけて叩くだけ…
  2171. 白金: そうだと思います 魔法少女を纏めて叩いていたところを 的を絞って叩くように変えただけですから
  2172. 白金: …だから私は氷室先輩が心配です
  2173. ラビ: 今のところは大丈夫 ほとんどの仕打ちには耐えられる
  2174. ラビ: ただ、家族や仲間が巻き込まれると心が痛むし 机や黒板に書かれた悪口自体はいいけど 自分で消すという行為は精神をすり減らしていく
  2175. ラビ: 消すことで 自分では認めていないことまで あたかも認めたような気持ちになるから
  2176. 白金: それでも何か解決策が見つかるまでは…
  2177. ラビ: ええ、耐えるつもり…
  2178. パシッ!
  2179. 白金: った…!
  2180. 氷室と連絡とらないでくれる? 次に見たら容赦しないからね
  2181. 白金: …………
  2182. ラビ: (そう、こういう時が、 最も自分の心を削ってくる…)
  2183. ラビ: 少しの辛抱…少しの辛抱だから…
  2184.  
  2185. FILENAME: text_515608-4_czJwk.txt
  2186. ラビ: 魔法少女全体に向けられていた 憎悪が自分たちに集中すると
  2187. ラビ: これほど苛烈になるのかと 正直自分で驚いてる…
  2188. アレクサンドラ: こき使われているだけの私が 一番マシかもしれませんね…
  2189. 旭: サーシャは顧問の先生とのことを 脅しに使われた上に
  2190. 旭: 無理難題を言われている以上、 マシとは言えないであります
  2191. アレクサンドラ: それなら旭ちゃんなんて 連日のように生傷が…
  2192. ラビ: ええ、痛みを消すことも 傷を消すこともできるとはいえ
  2193. ラビ: 心の傷は癒えずに蓄積するはず…
  2194. 旭: それで彼らの気が済むなら 仕方ないであります
  2195. 旭: ほとぼりが冷めるまでは 待つでありますよ…
  2196. アレクサンドラ: 短い話ではなさそうですね…
  2197. 旭: そうでありますな…
  2198. 旭: ただ、黒田はあれでいて 元は優しい男でありますよ
  2199. 旭: ちゃんと会話を重ねていって 我々を理解してくれたなら
  2200. 旭: 今までのことを猛省して、 逆に理解者になるはずであります
  2201. アレクサンドラ: ここまでされて、 旭ちゃんは許せるんですか?
  2202. 旭: 彼の心を壊したのは、 我のせいでありますから…
  2203. ラビ: …本当にごめんなさい
  2204. ラビ: 魔法少女を広める話も 恨みを一手に引き受ける話も
  2205. ラビ: すべては私が決めたことなのに
  2206. ラビ: 私は旭とサーシャを巻き込んで、 友人関係まで壊してる…
  2207. アレクサンドラ: 違いますよラビちゃん
  2208. アレクサンドラ: 安請け合いしてしまった 私が悪いんです
  2209. 旭: それに、ラビが言ってることは 何も間違ってないであります
  2210. アレクサンドラ: そうですね
  2211. アレクサンドラ: 同情を得たかった気持ちが 偽りのない本音だったからこそ
  2212. アレクサンドラ: 私はラビちゃんに共鳴した
  2213. 旭: 救いを共に求めた時から我々は 一蓮托生だったのでありますよ
  2214. ラビ: ありがとう
  2215. アレクサンドラ: それでは明日も 3人で頑張って耐えましょう♪
  2216. 旭: もはや、日々傷付く覚悟は できてるであります
  2217. ラビ: 私も女々しくはならず 耐えてみせる
  2218. ラビ: じゃあ、また…
  2219. ラビ: (そう強がってみても 涙は自然とこぼれてくる…)
  2220. ラビ: …………
  2221. ラビ: (いっそ、自分のソウルジェムを 壊して死んでしまった方が)
  2222. ラビ: (撲滅派が溜め込んだ憎悪は 晴れるかもしれない…)
  2223. ラビ: そうすれば、 旭も…サーシャも…
  2224. 太助: 何をする気だ…!
  2225. ラビ: はっ…
  2226. 太助: グリーフシードがあるなら 早く浄化するんだ…!
  2227. ラビ: あ…
  2228. 太助: 良かった…間に合った…
  2229. 太助: 前から鬱々としていたからね 気になっていたんだ…
  2230. ラビ: どうして…
  2231. 太助: ちょうど飲みものを買おうと 外に出てきたところだよ
  2232. ラビ: そうじゃなくて、どうして 魔法少女のことを知ってるの…?
  2233. 太助: …………
  2234. 太助: 私の娘も、君たちと同じように 魔法少女として戦っているからね
  2235. ラビ: ――っ!?
  2236. 太助: 長期で宿を借りているのも、 魔法少女に関する本を書くためだ
  2237. ラビ: …魔法少女の存在を認める大人… そんな人には初めて会った
  2238. 太助: 認めているだけじゃない 娘のためにずっと研究も続けてる
  2239. 太助: 魔女化を回避する方法をはじめ 人に周知させる方法についてもね
  2240. ラビ: 私たちのことは どこまで知ってる…?
  2241. 太助: ラビちゃんたちのことは そこまで知らないよ
  2242. 太助: ただ、この辺りの大学に 知り合いの准教授がいてね
  2243. 太助: 学生の間で魔法少女のことが 噂されてると聞いたんだ
  2244. 太助: それで、噂の出所とも言える 夜遊びホームルームを知り
  2245. 太助: 番組を見る中で ラビちゃんの発言を聞いた
  2246. ラビ: そう…
  2247. 太助: 魔法少女の話は意図的じゃないと 広まることはない
  2248. 太助: おおよそ、魔法少女の存在を みんなに周知させようとした結果
  2249. 太助: 悪人として捉えられるように 誤解されてしまったんだね
  2250. ラビ: …だから私たちに恨みの矛先を 向けるために放送に出た
  2251. ラビ: 同情が欲しかったとは言っても、 ミスをしたのは私だから…
  2252. 太助: それが、穢れを溜めてしまう 原因になったんだね…
  2253. ラビ: 理解してくれるのは嬉しい 助けてくれたことも感謝する
  2254. ラビ: けど、私たちには関わらないで
  2255. 太助: …いや、ラビちゃん むしろ私に力にならせて欲しい
  2256. ラビ: どうして…!
  2257. 太助: 私の娘も魔法少女である以上 この状況を看過できない
  2258. ラビ: だけど、私は誤った判断のせいで 仲間を不幸にしている…
  2259. ラビ: だから…
  2260. 太助: だからこそ第三者である 私を頼ってくれ
  2261. 太助: 魔法少女全体への恨みを 一身に引き受けるのは辛すぎる…
  2262. ラビ: ……………………
  2263. ラビ: …………
  2264. 太助: ラビちゃん…!
  2265. ラビ: 一緒に…旭を助けて欲しい…
  2266. ラビ: 私でさえ、こんな状況なら… 彼女は最も危険な状態にある…
  2267.  
  2268. FILENAME: text_515608-5_czJwk.txt
  2269. 太助: はぁ…はぁ…
  2270. 太助: これは、ライトがあっても、 足元に気をつけないとダメだな…
  2271. ラビ: 地元の人しか入らないような 獣道だから
  2272. ラビ: でも、旭の反応があるのは、 もっと奧の方
  2273. 太助: 人目のつかないところで 痛めつけようなんて酷いな…
  2274. 太助: わっ!
  2275. 太助: ごめん、ラビちゃん 助かったよ
  2276. ラビ: …今夜は月が明るいから 逆にライトは消した方がいいかも
  2277. ラビ: 私は夜目が利くから割と見える
  2278. 太助: 老眼の始まってるおじさんには 同じことはできないな…
  2279. ダーーンッ!!
  2280. 太助: ――っ!?
  2281. ラビ: 銃声…
  2282. 旭: ぐぅぁああッ!
  2283. ふ、ふふ、ははっ…
  2284. 旭: っ…は…はぁ…はぁ…
  2285. 古い猟銃でも整備してやれば 十分使えるみたいだな
  2286. おい、これでお前も 町から出てく気になっただろ?
  2287. 旭: 残念ながら…
  2288. 次は足を狙え
  2289. 黒田: やめておけ これ以上は人に気付かれる
  2290. クラスメイトだからって 優し過ぎないか?
  2291. 黒田: 他に追い詰める手があっても、 今から痛みに慣れられたら困る
  2292. 旭: …さすがにおかしいであります 十分、犯罪でありますよ…
  2293. 黒田: …雪崩やフェストの件で 大勢を殺しただけじゃない…
  2294. 黒田: 俺たちに正体がバレる前だって 何人も殺してきたんだろ…
  2295. 黒田: そんな非道な連中が放つ 台詞とは思えねえな
  2296. 黒田: 本当は魔女になりたくない 魔法少女は魔女から守ってる
  2297. 黒田: 他の奴らは頑張ってて、 悪いのは自分たちだけだ
  2298. 黒田: どんな顔をして何を言われても、 こっちは長年だまされてたんだ
  2299. 旭: 黒田…本当におかしくなったので ありますか…
  2300. 黒田: ああ…おかげさまでなぁ!
  2301. 旭: ――っ!?
  2302. 太助: 「ぐぅ…っ!」
  2303. 旭: …………
  2304. 太助: ッ…大変だったね…
  2305. 旭: 肩から血が…!
  2306. 太助: 大丈夫…掠めただけだよ あとで病院に行けば平気だから
  2307. ラビ: 無鉄砲に出て行って…!
  2308. まずい、見つかったよ…!
  2309. 黒田: こいつ、覚えてるぞ… フェストのステージで話してた…
  2310. 太助: 君たちは魔法少女がどんな子か 勘違いしている
  2311. 黒田: なんだと…?
  2312. 太助: 夜遊びホームルームで、 ラビちゃんが話していた通りだ
  2313. 太助: 魔法少女が望んで 魔女になることはない…
  2314. 黒田: は…?
  2315. 太助: 誰もが君たちと同じように 望みや悩みを抱えている若者で
  2316. 太助: 自分ではどうしようもない 苦しみを解消するために
  2317. 太助: 魔法少女の詳細を知らないまま キュゥべえと契約を交す
  2318. 黒田: だから、何が言いたいんだ
  2319. 太助: つまり、魔法少女の大多数は 魔女になる宿命を知らない
  2320. 太助: 呪いを振りまくために 生まれる魔法少女はいないんだ…
  2321. 黒田: それを受け入れろって言うのか?
  2322. 太助: もう君たちも退けないだろうし、 受け入れるのも難しいはずだ…
  2323. 太助: それでも 誤解してると認めて欲しい…!
  2324. 太助: そして、本当の彼女たち 魔法少女を理解して欲しい…!
  2325. 黒田: …………
  2326. 太助: 苦しみから逃れようとしたのに、 命をかけて魔女と戦うことになり
  2327. 太助: その上、自分の末路が魔女だと 眼前に突きつけられる
  2328. 太助: それでさえ想像を絶する悲しみ なのにも関わらず
  2329. 太助: こうして友だちだった人にも 苦しめられるんだ…!
  2330. 太助: それでも彼女たちは君たちが 大切な人を失った怒りと悲しみを
  2331. 太助: こうして 受け止めようとしてる…!
  2332. 太助: 君たちは穢れなき魔法少女の魂に 救われているんだ…!
  2333. 太助: だから、どうか彼女たちを 解放してやってくれ…
  2334. 黒田: …………
  2335. ごたくはどうでもいいよ つか、見られたけどどうする?
  2336. ここなら深く掘れば、 犬に見つかったりしないと思うぞ
  2337. それ、俺たちで…
  2338. ~~♪
  2339. アレクサンドラ: 危害を加えるというなら、 私の音で無力化しますよ?
  2340. ラビ: サーシャ
  2341. アレクサンドラ: タイミングが良かったみたいです
  2342. 黒田: …認識を改めるかどうかは 話は別だ
  2343. 黒田: とりあえず今日は終わりだ 白けたからな
  2344. 太助: …ふぅ
  2345.  
  2346. FILENAME: text_515608-6_czJwk.txt
  2347. ラビ: 本当に飛び出した時は 心臓が止まるかと思いました
  2348. ラビ: 下手に急所を刺されていたら どうするんですか
  2349. アレクサンドラ: 何針か肩を縫うだけで済んだのは 幸いでしたね
  2350. 旭: 本当に…ってこの話をするのは もう3回目のような…
  2351. アレクサンドラ: ラビちゃんが蒸し返すから…
  2352. ラビ: 魔法少女を心配してくださるのは 実に結構なのですが
  2353. ラビ: 命を投げ出すようなマネは しないで欲しいんですよ
  2354. 太助: うん、反省するよ…
  2355. ラビ: …娘さんも魔法少女なんでしょう
  2356. ラビ: 娘のために頑張るあなたが死ねば 悲しむのは、あなたの娘です
  2357. 太助: そうだね…
  2358. アレクサンドラ: なんとなくラビちゃんから、 経緯は聞きましたけど
  2359. アレクサンドラ: 失礼を承知で聞かせてください
  2360. 太助: 何かな?
  2361. アレクサンドラ: どうして、そこまで湯国市での 出来事に固執するんですか?
  2362. 旭: それは気になるであります
  2363. 旭: 我々にこだわって、魔法少女を 正しく理解してもらったところで
  2364. 旭: 魔女化から逃れる方法には 繋がらないでありますよ
  2365. 太助: そうだね 根本的な解決にはならないよ
  2366. 旭: では、どうして
  2367. 太助: それでも魔法少女になる少女を 減らせると思ったんだ
  2368. 太助: 魔法少女が辿る宿命を人が知れば 契約をする子は減らせる
  2369. 太助: 魔法少女になる少女が、 どんな願いを叶えたかを知れば
  2370. 太助: 自分たちがその環境や苦しみを 作る一端を担っていると気付ける
  2371. ラビ: それはつまり…
  2372. 太助: 人が人に優しくなれば、 魔法少女になる理由は減っていく
  2373. 太助: それに、人が魔法少女に対して 寛容になると思ったんだ
  2374. ラビ: …知ってもらわないと存在しない
  2375. ラビ: 知られているからこそ 得られる気持ちがある…
  2376. ラビ: 同情を欲した私の気持ちと、 教授の考えは近いかもしれません
  2377. 太助: そうだね、近いかもしれない
  2378. 太助: それに、人が魔法少女に 同情の念を抱いてくれれば
  2379. 太助: 魔法少女が抱える問題を 世界に提起する切っ掛けになるし
  2380. 太助: みんなが解決に動きだせば 仲間が一気に増えていく
  2381. 太助: それで魔女化を避ける方法が 広く研究されることを考えると
  2382. 太助: 魔法少女の存在を認知することは とても意義のあることなんだ
  2383. ラビ: そう考える教授にとって、 私の状況は看過できなかった…?
  2384. 太助: 日本のみならず 世界中を回ってきたけど
  2385. 太助: 魔法少女の存在を広めようとする 活動を目の当たりにしたのは
  2386. 太助: この湯国市が初めてだった
  2387. 太助: それに、民宿の娘さんである ラビちゃんが中心にいたからね
  2388. 太助: どうしても助けたかったし、 失敗させたくなかったんだ…
  2389. ラビ: …………
  2390. 旭: それほど、我々の行動は、 珍しい行動なんでありますか?
  2391. 太助: 魔法少女自体は 遙か昔からいるはずなのに
  2392. 太助: 何千何万という歴史の中で 触れられていないのが証拠だよ
  2393. アレクサンドラ: それだけ魔法少女を広める活動は 失敗してるってことですか…?
  2394. 太助: ただ、失敗してるだけなのか
  2395. 太助: 成功しても失われているのかは 私にもわからない
  2396. 太助: だけどね…
  2397. 太助: 「その理由を求めて世界を巡り 魔法少女らしい人物に関する 書物や物品を調べていくと」
  2398. 太助: 「魔女との戦いや魔法少女の宿命など 語るべき大切な部分は削られて 神話や伝説という物語の中に消えていくんだ」
  2399. 太助: 「時には、魔法少女や魔女に関わった人々が 虐殺されるような歴史も残されているのに 魔法少女という言葉は残されることはない…」
  2400. 太助: 「そうした結末をいくつも眺めてると 魔法少女を広める活動がどうなろうとも 天の悪戯とも思える不思議な力で 理不尽にもねじ曲げられてるような気がするよ」
  2401. アレクサンドラ: 天の悪戯による…ねじ曲げ…
  2402. 太助: 魔法少女や魔女が関わる 事件や事故は不自然に目立たない
  2403. 太助: 身近なところにもあると思うよ
  2404. 旭: そんな、我々の外にある意思に 操られているようであれば
  2405. 旭: 何をしても無駄でありますよ…
  2406. ラビ: 教授もその諦念を払拭するために 自分でもやれることをして
  2407. ラビ: 希望を絶やさないように 抗っている…
  2408. 太助: そう、諦めそうな心を 私自身も鼓舞しているんだよ
  2409. 太助: 魔法少女たちの歴史を塗り替える 千載一遇の機会だからね
  2410. 太助: だから私にも手伝わせて欲しい みんなの幸せのために
  2411. アレクサンドラ: もう、知ってもらうことは 諦めようと思っていたけど
  2412. 旭: もう一度立ち上がってみるで ありますよ
  2413. ラビ: 本来の目的を思い出して もう一度だけ粘ってみよう
  2414. ラビ: ただ、魔法少女の信頼を 回復させるには
  2415. ラビ: 大きい壁を越える必要があるけど
  2416. 旭: 壁、でありますか?
  2417. ラビ: 真実を知った人々にも 受け入れてもらわないといけない
  2418. ラビ: 私たちが魔女になる現実を
  2419.  
  2420. FILENAME: text_515609-1_czJwk.txt
  2421. ラビ: 魔法少女の研究をしている里見教授の協力も得て 私たちはもう一度、魔法少女のことを みんなに知ってもらう試みを始めることにした
  2422. ラビ: 前までは、魔女の被害者たちの怒りと悲しみを 私たち3人が一身に受けることで 彼らにとっての癒やしになればと思っていた
  2423. ラビ: だけど、これまで苦痛を味わった魔法少女たちは 私たちを含めて6人まで数を減らしてしまい 事態は一向に良くなる気配を見せない
  2424. ラビ: だから私たちはもう一度初心に返り 魔法少女と人々が理解し合えるように 動くことを決めた
  2425. ラビ: ただ、このまま私たちが何かしたところで 撲滅派の人々からすると自作自演でしかない そこで、里見教授が動いてくれることになった
  2426. ラビ: 周りの誤解を解く切っ掛けが生まれて 改めて信頼という芽を育てられる状況になれば その時こそ、私たち魔法少女の出番
  2427. ラビ: 次こそ必ず理解してもらおう 本当の魔法少女を
  2428. 旭の母: ほらもう、旭 食事中にケータイ見ないの
  2429. 旭: あ、すまないであります 少々気になる連絡があって…
  2430. 旭の父: お前がケータイに夢中なんて 珍しいこともあるもんだな
  2431. 旭: いやぁ、あはは…
  2432. 旭: (我々以外に残った3人も、 魔法少女の話を広めた当事者…)
  2433. 旭: (特に異論はなさそうで よかったものの)
  2434. 旭: (ラビの宿に泊まってるという 里見太助という民俗学者…)
  2435. 旭: (果たして 何をするつもりなのか…)
  2436. 旭: (我としては撲滅派の動きを 止めたいところであります…)
  2437. 「湯国市のイベントで起きた事故から 町の中では新たな事件や事故が頻発しています」
  2438. 「警察による因果関係の調査も行われていますが 今のところ全ての事件や事故は 繋がりがないとの報告がされています」
  2439. 「特に被害が10代の若者に集中していることから 公立の小中学校では集団下校の実施や 夜間の外出自粛の要請が行われています」
  2440. 旭: (同胞の仕業だと思うと やり切れないでありますな…)
  2441. 黒田: なんだよ、呼び出して とうとう俺を殺す気になったか?
  2442. 旭: まさか、黒田に手を上げる気は 毛頭ないでありますよ
  2443. 黒田: そうかよ… じゃあ、何の用だ?
  2444. 旭: この間、我を守ってくれた教授が 言っていた話は本当であります
  2445. 黒田: お前らの穢れなき魂に 俺たちが救われてるって話か?
  2446. 旭: 違うであります
  2447. 旭: 魔法少女は 魔女になるという話を知らずに
  2448. 旭: 魔女との戦いに命を割いている そういう話であります
  2449. 旭: 夜遊びホームルームで ラビが話していた内容とは
  2450. 旭: 相違なかったかと
  2451. 黒田: それなら俺もあのオッサンの話を 引用させてもらうけど
  2452. 旭: 何でありますか…
  2453. 黒田: 俺たちが魔女にさせた以上はな もう退けない
  2454. 黒田: お前たちの言い分を 今さら受け入れられねえよ
  2455. 旭: …そうでありますな
  2456. 黒田の声: 三浦
  2457. 旭: …………
  2458. 黒田の声: 猟銃はやり過ぎた
  2459.  
  2460. FILENAME: text_515609-2_czJwk.txt
  2461. 太助: (湯国市の教育委員会は、 この辺りみたいだな…)
  2462. 太助: (第三者から魔法少女の話題を アプローチするにしても)
  2463. 太助: (まさかフェストでの対談が こんな形で役立つとは)
  2464. 太助: 引き受けてみるものだな
  2465. 太助: (確か名刺は…)
  2466. 太助: (教育企画室の室長か… 影響力を図りかねるな…)
  2467. 太助: では、学生の噂については こちらでもご存知なんですね
  2468. ええ
  2469. 魔法少女なるものの話が、 学生の間ではやってるのは
  2470. 我々も認識しています
  2471. 太助: 実は私が専門で研究してるのは その魔法少女についてなんですよ
  2472. はは、ご冗談を 学生の噂ですよ?
  2473. 太助: そう言われると、 胸に刺さるものがありますが
  2474. 太助: 例えば、この湯国温泉郷に伝わる 芸事も風俗のひとつですし
  2475. 太助: 民間で信仰があるおとぎ話や 妖怪に関する言い伝えも
  2476. 太助: 民俗学を織りなすひとつです
  2477. なるほど…
  2478. そう言われると確かに、 空想事も捨てたものじゃない
  2479. 太助: その通りで、言い伝えや習わしは 土地を表す顔とも言えます
  2480. 太助: もちろん 魔法少女も同様なのですが
  2481. 太助: 他と違って面白いのは
  2482. 太助: 魔法少女というものは ワールドワイドな存在なんです
  2483. 太助: そこで提案させて欲しいのですが 講演をさせていただけませんか?
  2484. 魔法少女に関する?
  2485. 太助: はい
  2486. 太助: 民俗学で有名な土地に 遠野があるように
  2487. 太助: 湯国市も民俗学の発信地として 名をはせる切っ掛けになります
  2488. 私もよく知らず、 馴染みがないだけに面白いですね
  2489. ただ、何もないと掛け合うことも できないので
  2490. 太助: もちろん、プレゼンになるような 資料はご用意します
  2491. わかりました
  2492. それにしても小さな町の噂に よく飛びついてくださりました
  2493. 太助: このままイジメを放置していると 取り返しがつかなくなるので
  2494. イジメ?
  2495. 太助: 本音を言うと学生の間に伝わる 誤った魔法少女像の影響で
  2496. 太助: 一部の少女たちが イジメを受けてるようなんです…
  2497. 太助: 私としては、まずその点を どうにかしたく
  2498. その件は聞いてませんね…
  2499. 太助: そちらの耳に入る状況ですと 手遅れになるかもしれません…
  2500. 講演の件ですが、 その子たちが関わるんですね?
  2501. 太助: はい
  2502. では、まずは情報を精査しないと 被害が増える恐れがある
  2503. まずは状況を把握したいので お待ち頂けますか?
  2504. 太助: どれぐらいかかりますか
  2505. これから他の部署とも掛け合って 対応を決めるのでなんとも
  2506. 太助: いや、それじゃ遅いです
  2507. 各校からの上申がない以上、 この町にイジメはないんですよ
  2508. それを“ある”と言うのなら、 まず調べないといけない
  2509. 太助: そんな悠長な…!
  2510. 今、魔法少女という噂について お話頂くのは危険と存じます
  2511. 太助: 待ってください
  2512. 時間をおけばイジメの有無は わかりますから
  2513. 太助: っ…
  2514.  
  2515. FILENAME: text_515609-3_czJwk.txt
  2516. 太助: くっ…
  2517. 太助: 食いつきは良かったが、 結局のところは保身か…
  2518. 太助: (経験上、ああなると、 前進しないのが目に見えるな…)
  2519. 准教授: あらぁ、先生にしては 珍しいミスをしてしまいましたね
  2520. 太助: 人間関係を築くのは 得意分野だったんだけどね…
  2521. 准教授: それに驚きましたよ
  2522. 太助: 私の失敗にかい?
  2523. 准教授: いえ、前にも伺いましたけど まだ魔法少女を調べてたんだって
  2524. 太助: もはや私にとっては 人生をかけた研究だからね
  2525. 准教授: 娘さんの命がかかってるから?
  2526. 太助: そうだよ まだ信じられないかな?
  2527. 准教授: 前と比べると、 信じる気持ちになってきましたよ
  2528. 准教授: 一部の学生が話してるのを 耳にするようになって
  2529. 准教授: 本当に掘り下げられていない 題材かもしれないと
  2530. 太助: 君に信じてもらえるなら 噂に感謝だよ
  2531. 太助: 良ければ、魔法少女の話を広める 協力をしてもらえないか
  2532. 太助: 正確に言うと 誤解を解くといった方がいいな
  2533. 准教授: 教授は運が良いですね
  2534. 太助: ん?
  2535. 准教授: 夜遊びホームルームっていう ローカル番組はご存知ですか?
  2536. 太助: もちろん
  2537. 太助: 有愛うららっていう子が、 魔法少女の話をしてたからね
  2538. 准教授: そうなんです
  2539. 准教授: 実は今度、その中でやってる コーナーに呼ばれているんですが
  2540. 准教授: 里見教授もご一緒に出演するのは いかがですか?
  2541. 准教授: 湯国市のマニアックな話を 取り上げるコーナーで
  2542. 准教授: 本当なら湯国漁師の舟歌について 話そうと思ってたんですが
  2543. 太助: そこで魔法少女の話をすると
  2544. 准教授: ご明察です
  2545. うららのマネージャー: うららー、くららー
  2546. うらら: どうしたんよ?
  2547. うららのマネージャー: 次の夜遊びホームルームに 出て貰う予定だった准教授だけど
  2548. うららのマネージャー: トークテーマを変えたいって 連絡が来てた
  2549. うらら: ウチらは合わせるだけだから 別に構わないんよ
  2550. くらら: 私も、ある程度台本があれば 対応できるから任せて
  2551. くらら: ただ、どういうトークテーマに 変えたいの?
  2552. うららのマネージャー: 聞いて驚くなよ?
  2553. くらら: 何よもったいぶって…
  2554. うららのマネージャー: 「魔法少女」
  2555. くらら: なっ!
  2556. うらら: …………
  2557. うららのマネージャー: あはは! 驚いて逆に声も出ない?
  2558. くらら: いやいやどういうこと? 呪われてるの?
  2559. くらら: もう面倒事に巻き込まれるのは ごめんなんだけど!
  2560. うらら: まさか、魔法少女の話題が 他から舞い込んで来るだなんて
  2561. うらら: ぜんぜん思わなかったんよ!
  2562. うらら: どうして急に魔法少女の話を したいって言ってるのん?
  2563. うららのマネージャー: 学生の間で流れてる間違った噂を ちゃんと正したいんだって
  2564. うららのマネージャー: このままじゃ本人たちが 誤解されたまま可哀相だからって
  2565. くらら: そんな厄介そうな話 拒否してよ!
  2566. うららのマネージャー: いいだろ? こうなったら何かの縁
  2567. うららのマネージャー: とことん魔法少女の話題に 付き合ってやれ!
  2568. くらら: えーーーー!?
  2569. うらら: わかったんよ!
  2570.  
  2571. FILENAME: text_515609-4_czJwk.txt
  2572. うららの声: うららと!
  2573. くららの声: くららの!
  2574. うらら&くららの声: 夜遊びホームルーム!!
  2575. うららの声: 今日もいつもの収録スタジオから お送りするんよ!
  2576. 旭: まさか、里見教授が この番組に出ることになるとは…
  2577. アレクサンドラ: みんなに伝える手段として、 結局、頼ることになるんですね…
  2578. ラビ: ただ、いくら第三者の意見でも
  2579. ラビ: 先の放送で私たちは 自分たちの罪を認めてしまった…
  2580. 旭: そんな我々への心象が 学生たちの間で変わるかどうか
  2581. 旭: さすがに未知でありますな
  2582. アレクサンドラ: そうですね…
  2583. 准教授: だから、学生から魔法少女の話を 聞いた時は本当に驚いたの
  2584. 准教授: 里見教授がずっと調べてる ことだったからね
  2585. うらら: でも、湯国市だけでも 何人もの魔法少女がいるのに
  2586. うらら: 世界中でも知られてないのは どういうことなのん?
  2587. 太助: 仮説だけど、大きな理由としては 勘違いされやすいからだと思う
  2588. うらら: 勘違いなのん?
  2589. 太助: さっきも話した通り、魔法少女は 魔女から人々を守ってるけど
  2590. 太助: その魔女になってしまうという 悲しい側面も持っている
  2591. 太助: だから、彼女たちがいなければ 魔女は生まれないという理屈で
  2592. 太助: どうしても、 悪者にされがちなんだ
  2593. くらら: でも、みんなわかってて 魔法少女になってるって話なら
  2594. くらら: 周りに責められても 文句は言えないような気がする
  2595. 太助: 実は魔女になるという事実を 承知の上で契約する子は
  2596. 太助: ほぼいないのが現実だ
  2597. くらら: じゃあ、前にうちの番組に来た 魔法少女が話してたことは…
  2598. 太助: 恐らく本当だと思うよ
  2599. 太助: どんな魔法少女も、進路や夢 家庭や友人との関係など
  2600. 太助: みんなと同じような 等身大の悩みを抱えていて
  2601. 太助: そのどうしようもない想いから なんとか逃れるために
  2602. 太助: 契約を交して魔法少女になる
  2603. 太助: 病気や事故で苦しんでる時に 契約を持ちかけられた子は
  2604. 太助: そんな魔女になるなんて話を する余裕は一切ないだろうね
  2605. うらら: そんな正確に判断できない時に 契約を迫ってくるのん?
  2606. 太助: 契約をする相手のキュゥべえは、 手段を選ばないからね
  2607. うらら: そ、そうかもしれないんよ…
  2608. 太助: こうした事情もあってか 魔法少女になった子というのは
  2609. 太助: 一括りにはできないけど、 純粋な子が多い
  2610. 太助: この間、番組に出演していた 魔法少女たちもそうだ
  2611. うらら: そう、フェストの件は全部 自分たちが悪いって言ってたんよ
  2612. 太助: 何を伝えようとしても、 当事者が話せば自演に聞こえる
  2613. 太助: だから、せめて他の魔法少女が 苦しまないように
  2614. 太助: 今回の件で苦しんだ人たちの 感情のはけ口は残すように
  2615. 太助: 彼女たちなりに 自分を犠牲にしたんだよ
  2616. うらら: それじゃあ、あまりにも みじめすぎるんよ!
  2617. 准教授: だから、さっき里見教授が 言っていた状況になっちゃうのよ
  2618. 太助: そうだね
  2619. 太助: 魔法少女自身が歴史の闇の中に 自ら消えるようになってしまう
  2620. うらら: なんとかできないのん…?
  2621. 太助: 魔法少女に対して 少しだけ優しくしてあげて欲しい
  2622. 太助: そして魔法少女を増やさないよう 周りにも優しくなって欲しい
  2623. 太助: 今できるのはそれだけだ
  2624. うらら: じゃあ、最後にひとことあれば お願いするんよ
  2625. 太助: …………
  2626. 太助: 「湯国市で魔法少女の排斥が進んだ結果 魔女になってしまった子が増えているなら この町ではあらゆる被害が増えているはずだよ」
  2627. 太助: 「ただ、その原因は魔法少女にないし 魔法少女を排斥した人たちにもない 色々な悩みや苦しみを生んでしまう環境にあると 考えてくれたら嬉しい」
  2628. 太助: 「加えて、町の惨状を正すことができるのは 魔法少女だけである以上 たとえ納得できなかったとしても 彼女たちに頼るようにして欲しい」
  2629. 太助: 「それが最も被害を減らす方法だからね」
  2630. 太助: ふぅ…
  2631. ラビ: おかえりなさい、教授
  2632. 太助: ああ、ラビちゃん ただいま
  2633. ラビ: 今日はありがとうございました 本当に助かりました
  2634. 太助: 私にできることはしてるけど、 結果がどうなるかはわからないよ
  2635. ラビ: それでも、私たちのことを 真剣に考えてる人が側にいる
  2636. ラビ: その現実が目の前にあるだけで 私は嬉しいんです
  2637. 太助: 今日もまた自殺者が出ている
  2638. 太助: 状況は周りがわかっている以上 あとは君たち次第になるよ
  2639. ラビ: はい
  2640.  
  2641. FILENAME: text_515609-5_czJwk.txt
  2642. ラビ: ――っ!?
  2643. ラビ: (下駄箱へのいたずらが 目に見えて減っているような…)
  2644. 白金: 氷室先輩
  2645. ラビ: 白金…私と話していていいの…? また目をつけられるんじゃ…
  2646. 白金: いえ、構いません
  2647. 白金: 私は氷室先輩の味方のつもりで 逃げているだけでした
  2648. 白金: 動きやすいかどうかなんて 逃げる言い訳に過ぎませんでした
  2649. 白金: 今までのこと、 どうか謝らせてください
  2650. ラビ: 謝る必要はない
  2651. ラビ: 白金という存在があるだけで、 私がどれだけ支えられているか
  2652. ラビ: むしろ私が謝るべきだから あなたは頭を下げないで
  2653. 白金: ありがとうございます
  2654. アレクサンドラ: …………
  2655. サーシャ…
  2656. アレクサンドラ: ――っ!?
  2657. 私たちも手伝うね 朝の掃除…
  2658. アレクサンドラ: …あ、ありがとうございます
  2659. …………
  2660. …………
  2661. ごめ…ごめんね… サーシャのこと無視して…
  2662. アレクサンドラ: 放送を聞いたんですか?
  2663. うん、それですごく後悔して… わざと距離とって…
  2664. こき使われてるのに、 見てないフリをしてさ…
  2665. アレクサンドラ: …………
  2666. 友だちに戻ってなんて言えない… けど、許して…
  2667. こんなこと言うのも 自分勝手だよね…
  2668. アレクサンドラ: いえ、嬉しいです
  2669. アレクサンドラ: こうして理解してくれる人が、 ひとりでも増えるだけで…私は…
  2670. 旭: (いつもよりクラスメイトが 大人しいような…)
  2671. 旭: (里見教授という第三者でないと 起きない奇跡でありますな…)
  2672. あの…
  2673. 旭: ん?
  2674. ごめんなさい…三浦…
  2675. 旭: なんでありますか急に
  2676. 私、三浦をかばうような フリをしてたのに
  2677. 魔法少女に批判的な人の圧力で 簡単に引いちゃった…
  2678. 私なんかより、三浦の方が 大変だったはずなのに…
  2679. 旭: 気に病むことじゃないで ありますよ
  2680. 旭: 少しでもかばってくれた事実が 我にとっては嬉しいであります
  2681. 本当にごめんね
  2682. 黒田: …………
  2683. 旭: …………
  2684. 「結局、黒田がやってたことって 人殺しみたいなものなんじゃないの…?」
  2685. 「そりゃあ信じてたヤツも悪いけど 主導するヤツがいなかったら こんなにリンチみたいにならないって…」
  2686. 「可哀相だよね…三浦さん…」
  2687. 旭: …………
  2688.  
  2689. FILENAME: text_515609-6_czJwk.txt
  2690. ガチャッ
  2691. 旭: あぁああッ! なんって、腹立たしいッ…!
  2692. 旭: 我々のことを理解してくれるのは 有り難いであります…!
  2693. 旭: けど、我々が何を言ったところで 傍観者だったのはお前たち
  2694. 旭: 撲滅派でも擁護派でもない お前たちであります…!
  2695. 旭: ラビが言ってた同情とは違う…
  2696. 旭: こいつらには感情がない
  2697. 旭: 風に揺られるわたぼうしと同じで ただ流されているだけ…
  2698. 旭: 灰谷を失った黒田の気持ちを 考えれば
  2699. 旭: そんな簡単に手のひらを 返すことだなんて…
  2700. 旭: っ…
  2701. 旭: なんて、人の嫌なところばかりが 見える日々でありますか…!
  2702. 黒田の声: 仕方ないだろ
  2703. 黒田の声: みんなの言う通り、 俺は殺人犯なんだからな
  2704. 旭: 黒田…どうして…
  2705. 黒田: ひとりで悩みたかったのに 三浦がいただけだよ
  2706. 黒田: …好きな子を失ったからって 人を殺していい道理はない
  2707. 黒田: そんなことは 最初からわかってたからさ
  2708. 黒田: 周りが手のひらを返しだしたら 持論なんて維持できないだろ
  2709. 旭: 腹が立たないのでありますか
  2710. 黒田: お前変だよ、三浦 なんで俺のために怒ってるんだよ
  2711. 黒田: どれだけ俺がお前を 傷付けたと思ってるんだよ
  2712. 旭: 我は魔法少女であります
  2713. 旭: 痛みを消すこともできるし あの程度のケガなんて
  2714. 黒田: 普通の人なら死んでるだろ
  2715. 旭: それは…
  2716. 黒田: それに魔女になった魔法少女は 何人もいたはずだ
  2717. 黒田: あれが逃げたわけじゃなく お前らにとっての死であれば
  2718. 黒田: 俺たちは何人も殺したのと 変わらないんだよ
  2719. 旭: …………
  2720. 黒田: なんだよ…
  2721. 旭: その様子だと、灰谷との約束は 守れそうであります
  2722. 黒田: 約束…?
  2723. 旭: 我は死者を呼び出して 対話できるのでありますが
  2724. 旭: 灰谷は言ってたでありますよ
  2725. 旭: これ以上、 黒田に殺させないで欲しいと
  2726. 黒田: そう…か…
  2727. 旭: あれから紆余曲折あったものの 黒田は元に戻ってきた
  2728. 旭: 『猟銃はやり過ぎた』
  2729. 旭: あのひとことを聞いた時が、 最もそう感じたでありますよ
  2730. 黒田: 俺も少しずつ 冷静になってたからな…
  2731. 旭: …………
  2732. 黒田: なあ、三浦
  2733. 旭: なんでありますか
  2734. 黒田: この湯国市で増えてる被害を 魔法少女たちで減らしてくれよ
  2735. 旭: 魔女を倒せと?
  2736. 黒田: それで、この町から事件や事故が 本当に少なくなれば
  2737. 黒田: 俺は心置きなくお前たちを信じて 今の撲滅派を終わらせられる
  2738. 旭: まだ、我に頑張れと ひどい話でありますな
  2739. 旭: でも、どうせ倒すべき相手 構いはしないであります
  2740. 旭: 約束でありますよ
  2741. 黒田: もちろん
  2742. 黒田: …本当は死刑になるべきだけど たぶん、そうはならない
  2743. 黒田: だから、撲滅派を終わらせたら 俺は少年院にでも入るよ…
  2744. 旭: なっ
  2745. 黒田: 償いきれない罪を 己に刻まないと
  2746. 黒田: この先、生きていけるような気が しないんだよ、俺…
  2747.  
  2748. FILENAME: text_515610-1_czJwk.txt
  2749. ラビ: では、始めよう
  2750. 旭: 魔法少女の 信頼を回復させるために
  2751. アレクサンドラ: 魔女になった湯国市の仲間を 救いに行きましょう
  2752. 准教授: そう、それじゃあこの間の放送は 成功だったんですね
  2753. 太助: 撲滅派のやり方には 内心否定的な人も多かったのか
  2754. 太助: やはり第三者の意見が効いたね
  2755. 太助: 少しずつ魔法少女の立場は 学生の間で向上しているようだよ
  2756. 准教授: 事件や事故の増加が 地元の番組で話題になってたけど
  2757. 准教授: 右肩下がりになってきたのは、 魔法少女が原因でしょうか
  2758. 太助: うん
  2759. 太助: 湯国市に残った魔法少女が 6人で倒していってるらしい
  2760. 准教授: 急に減るということは 魔女がそれだけ多かった…
  2761. 准教授: ニュースでも言ってましたけど 被害は10代が多かったとか
  2762. 太助: 魔女になった子を含めると 女性が多いかもしれないね…
  2763. 太助: それでも、治安が改善すれば、 撲滅派とも和解すると聞いてる
  2764. 太助: 魔法少女たちや私にとって 今が正念場だね
  2765. 太助: 魔法少女の存在を広めつつ 擁護してくれる人が現れるという
  2766. 太助: 有史以来叶わなかったことを 成そうとしているんだから…
  2767. 太助: 自分たちの力で成せるのなら 歴史が物語る理不尽な仕打ちに 終止符が打たれるなら
  2768. 太助: 私が抱えている どうしようもなく絶望的な仮説は 消えてなくなるかもしれない…
  2769. アレクサンドラ: グリーフシードは ソウルジェムを浄化してくれる…
  2770. アレクサンドラ: それは、誰かを助けるために戦う 私たち魔法少女が残した
  2771. アレクサンドラ: 最後の優しさかもしれませんね…
  2772. そう考えるとグリーフシードを 落としてくれて良かった
  2773. あの子は 呪いを振りまくだけじゃなくて
  2774. こうして私たちのことを 救ってくれたんだもん…
  2775. アレクサンドラ: 今倒したのは、 幼馴染の方だったんですよね…?
  2776. うん…
  2777. 同じ願いを叶えて衝突しても、 支え合える親友だった
  2778. アレクサンドラ: 以前、少しだけ話を聞いたことは ありましたけど
  2779. アレクサンドラ: 衝突をしただなんて、 聞いたことがありませんでした
  2780. 実はね、好きな人と付き合うのが 私たちの願いだったの
  2781. それだけなら、似た者同士って 笑っていられるんだけど
  2782. 私が好きな人はね あの子と同じ人だったんだ
  2783. アレクサンドラ: えっ!?
  2784. 私の方があとに願ったから 奪うような形になっちゃって
  2785. お互い、好きな相手のことは 知らなかったとは言っても
  2786. 発覚した時は、もう大ゲンカ
  2787. アレクサンドラ: で、ですよね…
  2788. アレクサンドラ: それで、また以前のように 仲良しに戻れたんですか…?
  2789. 私も好きな人を振って 親友との関係をとったから
  2790. アレクサンドラ: あ…
  2791. 魔法少女になった意味って 何だろうって悩んだりもしたけど
  2792. ふたり一緒なら 仲良く魔女退治も頑張れたんだ
  2793. 本当は私たちのことを みんなに知ってもらって
  2794. 少しは報われたら良いねって 話してたんだけどね
  2795. アレクサンドラ: それはすみません たぶん私たちのせいで
  2796. アレクサンドラ: 魔法少女が勘違いされて…
  2797. 希望を抱いたのは、 私たちだって同じだったし
  2798. 信頼できそうな友だちに 魔法少女の話はしてたから
  2799. サーシャが悪いわけじゃない 生きてるみんなお相子だよ
  2800. アレクサンドラ: …このまま叶えましょう 私たちが夢見た希望を
  2801. アレクサンドラ: 魔法少女のことを理解してくれる 人たちが溢れていて
  2802. アレクサンドラ: 人が人に優しくあれる 世界にしていくために
  2803. うん、それが魔女になった あの子との約束でもあるからね
  2804.  
  2805. FILENAME: text_515610-2_czJwk.txt
  2806. 湯国市の治安が改善すれば 魔法少女や擁護派と和解
  2807. これでいいのか…?
  2808. いいわけねーだろ 犠牲が出た過去は変わらねー
  2809. もう少し骨があるかと思ったが 黒田は完全に日和ったな
  2810. でも、魔法少女が成果を出しても 周りが認めないと意味がない
  2811. だから、他の撲滅派の人たちにも 動いてもらって
  2812. グループメッセージとかを通して 印象は操作してもらってるよ
  2813. とは言っても、学校が静かだと こちらの勢いが落ちた印象になる
  2814. 強気には出ず涙を誘った方が いいかもしれないな
  2815. 白金の声: もはや、そんな姑息な方法が 通用する状況ではありませんよ
  2816. お前、擁護派の…
  2817. 白金: もう、力に怯えて隠れるような 私たちではありません
  2818. 白金: あなたたちがSNSや掲示板で 悪辣な風評を広めるのであれば
  2819. 白金: 私たちはそれを食い止めるための 書き込みを続けるだけ
  2820. 白金: あなたたちが学校などで お涙頂戴をするというのなら
  2821. 白金: 涙を拭う手が魔法少女たちの 血で濡れていることを
  2822. 白金: 私たち擁護派が証明するだけです
  2823. 今さら、どこにそんな力がある
  2824. 白金: 私たちは隠れていただけで 常にあなたたちの側にいたんです
  2825. 白金: 舐めないでください
  2826. 白金: あなたたちに対抗するだけの数は こちらにだって居るんですから
  2827. っ…
  2828. 白金さん、湯の花国際の校庭で ヘイトスピーチがあるって…
  2829. 白金: 何人か先に行ってもらって、 大事になる前に止めてください
  2830. あの学校にもメンバーがいるので 大丈夫だと思います
  2831. …こちらが何をしようとしても 情報は筒抜けっていうことか
  2832. 白金: こちらに回ってきた撲滅派の人も 居ますからね
  2833. 白金: 私たちの力が拮抗するのであれば あとは魔法少女の行動次第
  2834. 白金: 彼女たちの命運が決まる 分水嶺なんです
  2835. 白金: 仲良く結末を見守りませんか?
  2836.  
  2837. FILENAME: text_515610-3_czJwk.txt
  2838. 旭: サーシャの方で 魔女を倒したそうでありますが
  2839. 旭: やはり、我々が知る魔法少女が 相手だったようであります…
  2840. 最近の魔女は 流れ着いてきたわけじゃなくて
  2841. 私たちの仲間から 生まれてきたものだから…
  2842. 旭: そうでありますな…
  2843. 旭: 魔女になるところを目撃したり、 その人の特徴を知ってる手前
  2844. 旭: 誰なのかが想像できてしまうのは 非常に心苦しいであります…
  2845. うん…
  2846. 近くで感じる反応は残り2体 だいぶ私たちも倒したけど
  2847. その相手も恐らく 私たちが知っている元魔法少女
  2848. 覚悟を決めていかないと…
  2849. ちなみに撲滅派の動きは大丈夫? 何か邪魔をしてきそうだけど…
  2850. ラビ: 教授たちの動きもあって、 擁護派が盛り返してきてる
  2851. ラビ: 白金から連絡があったけど 撲滅派から流れて来た人もいて
  2852. ラビ: 向こうの動きが掴みやすいから 先回りできてるみたい
  2853. ラビ: だから、あとは私たち次第
  2854. ラビ: 今日は残り2体だから、 私はあなたと一緒に倒しに行く
  2855. うん、オッケー
  2856. 旭: では、我は彼女とタッグで もう1体を相手するであります
  2857. 旭: この反応… かなり近付いたでありますな…
  2858. 旭: やはりご存知の方でありますか?
  2859. 湯国青波学園の水泳部で 部長をやってる人って知ってる?
  2860. 旭: もちろんでありますよ 優れた選手として有名であります
  2861. 旭: 魔法少女としても優れていて 我も助けられたことが…
  2862. 旭: まさか…!
  2863. そう、この反応は彼女なの
  2864. 私は水泳部のマネージャーでね 魔法少女の話を広めてた
  2865. そしたら悪者扱いになっちゃって 指輪の話もしてたから
  2866. 彼女も撲滅派の標的として 狙われるようになってしまったの
  2867. 旭: …元はといえば我々が始めたこと なんと詫びれば良いのか…
  2868. 舞い上がって仲良くない人にまで 話した私が悪いだけ
  2869. むしろ彼女の華々しい学園生活を 奪った自分に呆れてるぐらい…
  2870. 旭: 本当に本人なのでありますか…
  2871. 旭: 湯国市のグループメッセージで 特にそのような方が消えた様子は
  2872. あの人、SNSとかが嫌いで、 私が連絡係をしてたから
  2873. 旭: そういうことでありますか
  2874. ねえ、三浦さん
  2875. あの人は魔法少女として かなり優秀だった
  2876. 町の人を助けるだけじゃなくて 魔法少女のことも助けてきた
  2877. 旭: 実際に我も救われたことが あったであります
  2878. もしも、魔女としても強くて ふたりで倒せない時は
  2879. 私が動きを止めるから、 彼女と一緒に私を貫いて
  2880.  
  2881. FILENAME: text_515610-4_czJwk.txt
  2882. ガシャ!
  2883. ラビ: っ…はぁ…クッ…
  2884. ごめん…! 私が無理させたせいで…
  2885. グリーフシードは、 あなたが使って…!
  2886. ラビ: ありがとう…
  2887. ラビ: けど、ここだと目立つ… 場所を変えよう…
  2888. …本当にごめんなさい
  2889. どんな魔女が相手だったとしても 平気だって覚悟は決めてたのに…
  2890. ラビ: 実の妹が相手ともなれば ためらうのも仕方がない…
  2891. ラビ: つい、この間まで寝食を共にして ひとつ屋根の下で育ってきた
  2892. ラビ: それが突然いなくなるばかりか、 姿を変えて現れたともなれば
  2893. ラビ: 心境を察して余りある…
  2894. 可愛かった… 世界で一番可愛い妹だった…
  2895. いたずら好きで 少し腹立たしいところはあっても
  2896. すぐに何だって許せる…
  2897. 今度、初めてふたりだけで 都会に遊びに行こうって
  2898. 約束してたのに…
  2899. …………ッ!
  2900. ラビ: ごめんなさい…
  2901. ラビ: 私はこういうときに どういう言葉をかけていいか…
  2902. ふっ…ぅ…ぐすっ…うぅぅ…
  2903. ラビ: …このグリーフシードは 私だけに使っちゃいけない
  2904. ラビ: もう姿も形も 違っていたかもしれないけど
  2905. ラビ: こうして妹はそばにいて あなたを癒やしてくれる…
  2906. ラビ: 誰にも倒されることなく 今まで残っていたのは
  2907. ラビ: 妹も姉に一目会って、 挨拶をしたかったのかもしれない
  2908. 太助: おかえり、ラビちゃん
  2909. ラビ: 教授
  2910. 太助: まだ、湯国市のニュースは 見てないよね?
  2911. ラビ: はい、何か変化がありましたか?
  2912. 太助: さっき親御さんと一緒に、 見てたんだけど
  2913. 太助: 増えていた事件や事故が 今日は減ったという話をしてたよ
  2914. ラビ: 本当ですか…!
  2915. 太助: ここしばらく、ラビちゃんたちが 頑張ってきた成果が出てるね
  2916. ラビ: ここまで動きやすくなったのは、 教授のおかげです
  2917. ラビ: 撲滅派の憎悪を受け止めて 終わらせようとしていた私たちに
  2918. ラビ: 救われたいという本来の気持ちを 思い出させてくれたんですから
  2919. ラビ: それに教授のおかげで 学生の心が動いたんですから
  2920. ラビ: 感謝してもしきれません
  2921. 太助: 私はできることをしただけだよ それに私も感謝してるんだ
  2922. 太助: 魔法少女は救われるということを 証明してくれようとしてるからね
  2923. ラビ: まだ、結果はわかりません
  2924. 太助: そうだね
  2925. 太助: だけど、希望を持つのが 魔法少女で
  2926. 太助: そんな魔法少女を信じる私たちも 希望を信じる
  2927. ラビ: …そうですね
  2928.  
  2929. FILENAME: text_515610-5_czJwk.txt
  2930. 「ねえ、今日のネットニュース見た?」
  2931. 「あれでしょ? 湯国市で起きてる怪現象 有り得ない犯罪件数の乱高下ってやつ」
  2932. 「ほんと、ここ暫くの間で すごいことになってるもんね」
  2933. アレクサンドラ: ~~♪
  2934. アレクサンドラ: これで黒板も綺麗になりましたし 新しく書いても読みやすいですね
  2935. アレクサンドラ: (…こうしてまっさらにするのは 私たちが魔女を倒すのと同じ)
  2936. アレクサンドラ: (今までの関係をリセットして やり直そうとしている…)
  2937. アレクサンドラ: 私たちへの理解も深くなれば 嬉しいんですけどね…
  2938. アレクサンドラ: …………
  2939. アレクサンドラ: って、あれ、黒板の譜面って 消して良かったんでしたっけ…
  2940. 消しても問題ないよ
  2941. アレクサンドラ: ――っ!?
  2942. 掃除しろなんて言ってないのに まだちゃんとやってたんだ
  2943. アレクサンドラ: 自発的にやってただけです
  2944. アレクサンドラ: 綺麗な方が気持ち良く 部活ができるじゃないですか
  2945. すごいね、栗栖は…
  2946. 魔法少女は悪くないって話が みんなに広まった今も
  2947. こき使ってた私たちに 何ひとつ恨み言をぶつけない…
  2948. アレクサンドラ: 魔法少女が魔女として 人を殺してるだなんて知ったら
  2949. アレクサンドラ: 怒ったり怯えたりするのは 当然だと思います…
  2950. なんだか自分がちっぽけ…
  2951. …許されないと思うけど、 一応、言わせて
  2952. ごめん、栗栖 今までひどいことして…
  2953. アレクサンドラ: …本当に許せないことが あるとしたら
  2954. アレクサンドラ: 関係ない先生を 巻き込もうとしたことぐらいです
  2955. アレクサンドラ: それに、私はこのままおふたりを 許すつもりもありません
  2956. うん…
  2957. いいよ、それだけのことを 私たちはしたと思ってる…
  2958. アレクサンドラ: 手を取り合うのなら 全てが終わってからです
  2959. えっ…
  2960. アレクサンドラ: だから魔女を倒し終えて、 湯国市の治安が落ち着くまで
  2961. アレクサンドラ: 待ってください
  2962. アレクサンドラ: (下手に安心するのは怖い…)
  2963. アレクサンドラ: (もしも最後に失敗すれば、 今以上のしっぺ返しが待ってる)
  2964. アレクサンドラ: (だけど、これを糧に もう少し頑張ろう…私…!)
  2965. ラビ: 今、感知できている魔女は 残るところあと2体
  2966. ラビ: これまで倒した魔女もいるから 既に治安は改善してきてる
  2967. ラビ: だから今日で最後
  2968. ラビ: あとは示される数字次第で 手を取り合って終われる
  2969. ただ、さすがは最後に残った魔女
  2970. 反応でわかるけど、 ふたりじゃ手強いかもしれないよ
  2971. それなら組合わせは…
  2972. この3人と
  2973. あなたたち3人が良さそう
  2974. 旭: 確かに我々は 3人で戦い慣れてはいるので
  2975. 旭: 連携はとりやすいでありますが…
  2976. アレクサンドラ: そっちは本当に その3人で大丈夫ですか?
  2977. 確実に勝ちを狙うなら この組合わせがベストだと思うよ
  2978. アレクサンドラ: いっそ6人であたるのも 良いと思いますが…
  2979. アレクサンドラ: …………
  2980. 魔女が移動してるのを 感じるでしょ?
  2981. ラビ: 確かに2体とも 活発に動いてるような節がある
  2982. 放っておいたら 被害が出るかもしれない以上
  2983. 3人組で分かれて 同時に倒さないといけない
  2984. …ここで失敗して 白紙に戻しちゃいけないからね
  2985. ラビ: わかった… だけど気をつけて…
  2986.  
  2987. FILENAME: text_515610-6_czJwk.txt
  2988. うらら: ということで、皆さんお待ちかね 魔法少女のコーナーなんよ
  2989. くらら: なんか、気がついたら 私たちの番組に定着してるわね…
  2990. うらら: 最初にウチが話をしてから 色々とゴタゴタがあったけど
  2991. うらら: この番組でしか発信してない 情報だからこそ
  2992. うらら: 視聴者の要望が多いんよ
  2993. くらら: うちの番組ディレクターも ノリノリで構成に入れてるしね
  2994. くらら: で、今日はどんな情報があるの?
  2995. うらら: 前に出演してくれた里見教授から 情報提供があったんだけど
  2996. うらら: ドドン!
  2997. くらら: えーっと
  2998. くらら: 湯国市で発生した事件や事故に 関するSNSへの投稿件数?
  2999. うらら: そう、ビッグデータ? っていうものらしいんよ
  3000. くらら: あるタイミングから上がって、 最近になって下がってるみたいね
  3001. うらら: 上がったタイミングは、 魔法少女が魔女になってた時期
  3002. うらら: つまり撲滅派が魔法少女たちを 追い詰めてた時なんよ
  3003. くらら: じゃあ、下がってるのは、 撲滅派の動きが落ち着いた時?
  3004. くらら: あ、里見教授の出演したあとで 上昇傾向が落ち着いて
  3005. くらら: 最近になってグッと減ってる
  3006. うらら: 今は魔法少女たちも自分たちの 信頼を回復するために
  3007. うらら: 辛くても、元々仲間だった魔女を 倒して湯国市を守ってる
  3008. うらら: その結果が治安の回復という形で しっかり出てきてるんよ
  3009. アレクサンドラ: っ…使い魔の数があまりにも多い
  3010. アレクサンドラ: 倒さないと、魔女がいる最深部に 近づくのは難しいです…!
  3011. ラビ: サーシャの固有魔法で、 気力を削いでもらう必要がある
  3012. アレクサンドラ: 数が多すぎます!
  3013. アレクサンドラ: ラビちゃん、何を…
  3014. ラビ: 私の概念強化の力で、 サーシャの固有魔法を強くした
  3015. ラビ: これで、数の多い相手にも 十分通じるはず
  3016. ラビ: 旭は使い魔の注意を逸らして サーシャに余裕を作ってあげて
  3017. 旭: 了解であります これで道筋は見えたでありますな
  3018. 旭: …さあ使い魔ども
  3019. 旭: 狙うべき敵はこちらであります!
  3020. 旭: 来た!今でありますよ!
  3021. アレクサンドラ: これで演奏に集中できます!
  3022. アレクサンドラ: このまま私の奏でる音で 眠りについてください!
  3023. …………
  3024. ラビ: 最後に私がブーメランで刻んで、 最深部への道を切り開く…!
  3025. ラビ: やぁああああッ!
  3026. みんな…大丈夫…?
  3027. くっ…う、なんとか…!
  3028. って、あなた足…!
  3029. さっきの一撃で もっていかれちゃった…
  3030. 一度、退きませんか…?
  3031. こんな状態で戦っても、 勝ち目はありません…
  3032. 片足ぐらい大丈夫ですから 今は倒すことを先決しましょう…
  3033. 本気で言ってます…?
  3034. この場で私たちが魔女を逃がして 普通の人が傷付けば
  3035. また、弱みに付け込む 隙を与えてしまう…
  3036. わかった…
  3037. 最深部の手前に戻ったら、 グリーフシードを使って浄化
  3038. 改めて固有魔法を確認し合って 作戦を練って挑もう
  3039. はい
  3040. そうですね… 今は逃げられない…!
  3041.  
  3042. FILENAME: text_515610-7_czJwk.txt
  3043. ドサッ…
  3044. なんとか…倒せた…
  3045. 作戦は成功… これで被害も増えないはず…
  3046. ただ…ふふっ… もうみんなして限界ですね…
  3047. やることは決まってる… 覚悟もできています…
  3048. うん…
  3049. 黒田: 魔法少女か…
  3050. やだ、足が…
  3051. おい、これ放っておいたら 死ぬんじゃないか?
  3052. 黒田: いや、魔女になるんだ
  3053. それでまた湯国市のやつらを 見境なく攻撃するっていうのか…
  3054. 黒田: …………
  3055. 黒田: グリーフシードってやつは?
  3056. 落としてくれるのが頼りだった でも、落とさなかった…
  3057. 黒田: 病院での治療は?
  3058. 私たちに魔力が残されてない限り 意味はないよ
  3059. もしかして撲滅派として、 魔女になるところを見に来たの?
  3060. それでまた、私たち魔法少女を 責め立てるために…
  3061. 黒田: どうだろうな
  3062. 諦めて… 私たちは3人で決めたの…
  3063. 最悪の場合、魔女にならない道を 辿るようにしようって…
  3064. ウッ…
  3065. それは私たちにとっては死と同じ
  3066. お願い… 魔女にならないから…約束して…
  3067. 氷室さんたちがこの町を助けたら また、私たち魔法少女と
  3068. 友だちだった時と同じように、 付き合ってくれるって…
  3069. そして私たちは危険じゃないって 他の人に伝えていって…
  3070. おい、いいのか… 簡単に信じて…!
  3071. コイツら何をするかなんて
  3072. 黒田: いや…約束するよ…
  3073. 黒田: 俺はお前たちを理解するし、 本当の魔法少女の姿を伝えるよ
  3074. 黒田: また、みんなが 友だちでいられるようにする…
  3075. よかった…ありがとう…
  3076. パキンッ!
  3077. 何、したの…?
  3078. なんか、 宝石を割ったのか…?
  3079. 黒田: 自殺したみたいだ…
  3080. な…
  3081. 黒田: 俺たちが魔法少女に対して 悪意を抱かないように
  3082. 黒田: 湯国市の人たちを事件や事故で 脅かさないように
  3083. 黒田: 3人は魔女になってしまう前に、 魂の器を壊してしまったんだ…
  3084. それなら私たちは…
  3085. 黒田: 何も魔法少女を責められない…
  3086. 黒田: …白金に感謝しておくよ
  3087. 黒田: わざわざ魔法少女の動きを 教えてくれたことに…
  3088.  
  3089. FILENAME: text_515610-8_czJwk.txt
  3090. アレクサンドラ: ったた…うぅ… 呼吸をすると、つらいです…
  3091. ラビ: 畳みかけるタイミングでの 不意打ちだったから
  3092. ラビ: 完全にカウンターだった…
  3093. 旭: これは、あばら骨がやられてるで ありますなぁ…
  3094. 旭: …魔法少女である手前、 自宅療養でも治るでありますよ
  3095. アレクサンドラ: 痛みはコントロールできるかも しれませんけど
  3096. アレクサンドラ: あんまり、人から外れたことは したくないんですよね…
  3097. ピロン♪
  3098. 旭: …黒田からの連絡であります
  3099. 旭: …………
  3100. 旭: なっ…
  3101. ラビ: 何かあった…?
  3102. 旭: 「本当に…減ってる…」
  3103. ラビ: 「まさか、あの3人は…」
  3104. アレクサンドラ: 「亡くなったっていうことですか…?」
  3105. 旭: 「3人とも、自分でグループメッセージから 抜けたようでありますな…」
  3106. 旭: 「その3人が死ぬ様子も 黒田たちが目の前で確認したようであります…」
  3107. アレクサンドラ: 「撲滅派が何かしたんですか…?」
  3108. 旭: 「彼女たちは魔女になる前に 自分のソウルジェムを壊したとあるので」
  3109. 旭: 「すでに手遅れという状態で 手をかけたわけではないようであります」
  3110. アレクサンドラ: 「え…」
  3111. ラビ: 「そういうこと…」
  3112. ラビ: 「魔女になる前に自分で壊してしまえば 撲滅派が魔法少女を叩く理由はない」
  3113. 旭: 加えて、湯国市の治安も 回復してきたので
  3114. 旭: 黒田は撲滅派を終わらせて、 手を取り合うつもりであります
  3115. 旭: しかし、辛いでありますな…
  3116. アレクサンドラ: 魔法少女も他のみんなも一緒に 楽しく暮らしている未来を望んで
  3117. アレクサンドラ: あの3人も頑張ってたのに…
  3118. ラビ: 残された私たちにできるのは 彼女たちの想いに報いること…
  3119. ラビ: 魔法少女が正しく理解されて、 手を取り合えるようにしないと…
  3120. 白金: (まさか、3人で挑んで やられるほどだなんて…)
  3121. 白金: (良い結末に向かっていても、 素直に喜べない…)
  3122. 白金: (…けど、沈んでられない)
  3123. 白金: (この機会に撲滅派のメンバーと 手を取る場を作らないと…)
  3124. 白金: …………
  3125. 白金: (なんだか変な感じ…)
  3126. 白金: (自分が誰かのために動く人間に なるとは思わなかった…)
  3127. 白金: (多くの人に認識される人間に なるだなんて思わなかった…)
  3128. 白金: (ひとりで戦ってた氷室先輩も きっと同じなんだろうな…)
  3129. 白金: 共に私たちは星空に認められて 存在を証明してきたから
  3130. 旭: …………
  3131. 旭: (これで我々魔法少女は、 救われたのかもしれない…)
  3132. 旭: (見えない何かに狙われて、 自分たちの運命を握られている)
  3133. 旭: (そんな感覚がなくなったことが 証明になっている気がする…)
  3134. 旭: それでも…
  3135. 旭: あぁ…金属片が…胸に… 我の魔力で、なんとか体を…!
  3136. 黒田: おせぇよ…意味ねぇよ…
  3137. 黒田: 抱えてたらわかる… 肌で感じるよ…灰谷の状態は…
  3138. 旭: っ…
  3139. 黒田: なんでだ、どうしてだ… なぁ三浦…なんで殺したんだ…!!
  3140. 旭: 我々は黒田たち被害者の心を、 蔑ろにしてるであります…
  3141.  
  3142. FILENAME: text_515611-1_czJwk.txt
  3143. 太助: いよいよ今日がセレモニーだね
  3144. ラビ: はい、ようやく 手を取り合える日が来ました
  3145. 旭: 黒田と白金も 準備を進めてるようであります
  3146. アレクサンドラ: 確か山の中腹にある展望駐車場が 会場になるんですよね
  3147. 太助: 賢明な判断だと思うよ
  3148. 太助: ひと気が少ない方が 魔女の被害は抑えられるからね
  3149. アレクサンドラ: 夜遊びホームルームの番組が 場所を押さえてるそうなので
  3150. アレクサンドラ: どこまで考えてくれてるかは わかりませんけどね、うふふっ♪
  3151. 旭: しかし、最後の最後まで 縁のある番組でありますな
  3152. ラビ: 今まで魔法少女の話を ピックアップしてきたんだから
  3153. ラビ: 最後まで付き合わせて欲しいって テレビの人が言ってるらしい
  3154. 旭: おかげで声楽部の人たちと、 擁護派をバスに乗せてくれるので
  3155. 旭: ありがたい話でありますよ
  3156. アレクサンドラ: 教授も番組の関係で いらっしゃるんですよね?
  3157. 太助: 専門家として出演したからね 出演して欲しいそうだよ
  3158. 太助: ただ、色々と絡まれたくないから 私はのんびり歩いていくよ
  3159. 太助: それに、今回の一件は 私にとっても感慨深いことだから
  3160. 太助: ゆっくりと喜びを 噛みしめておきたいんだ
  3161. ラビ: 娘さんを救う道を 諦めずに済みましたからね
  3162. ラビ: それで、3人集められたのは、 どういった理由からですか?
  3163. 太助: …うん、実は私が 魔法少女を救う道を諦めていた
  3164. 太助: 本当の理由を 話しておきたかったんだ
  3165. ラビ: 魔法少女が認知されない歴史 それとは別の話でしょうか
  3166. 太助: それよりひとつ深い 認知されない“理由”についてだ
  3167. ラビ: 理由…
  3168. 太助: 私はね、世間に魔法少女の存在が 認知されない原因は
  3169. 太助: “宇宙”にあると思っていたんだ
  3170. ラビ: また、唐突ですね
  3171. 太助の声: 「まず、魔法少女が魔女になってしまうのは その際に発生するエネルギーを使って 宇宙を維持するという明確な理由があるんだ」
  3172. 太助の声: 「キュゥべえは そのエネルギーを回収するために 魔法少女になる契約を交しているんだよ」
  3173. ラビ: それは初耳です…
  3174. 旭: 詰まるところ、我らは宇宙の糧 ということでありますか…
  3175. 太助の声: 「人の体が多くの細胞でできているように 私たちも宇宙を構成する一部だと 考えた方がいいかもしれない」
  3176. 太助の声: 「その中でも魔法少女は 宇宙が活動するために必要なエネルギーを作る 重要な役割を担っている 人の体で言うと細胞の中にある ミトコンドリアと同じかもしれないね」
  3177. 旭: 糧と言うよりかは 糧を生産する者でありますか
  3178. 太助の声: 「その、生きる糧を得るのに 魔法少女の魔女化が必要不可欠なのに それが失われてしまうのは 宇宙にとっては病気だと思わないかい?」
  3179. アレクサンドラ: ミトコンドリアの働きが低下する 病気は聞いたことがあります…
  3180. アレクサンドラ: でも…私たちがそうだとしたら 魔法少女を救う行為は…
  3181. 太助の声: 「まさに宇宙に対する反逆のようなもので 私たちは宇宙にとっては “がん”と同じようなものになってしまう」
  3182. ラビ: 今まで、教授から聞いた話を 踏まえると
  3183. ラビ: 魔法少女の話が残らずに 神話や伝説に溶けて消えるのは
  3184. ラビ: 宇宙にとって都合が悪いから…?
  3185. 旭: あ…
  3186. 太助: 「そうした結末をいくつも眺めてると 魔法少女を広める活動がどうなろうとも 天の悪戯とも思える不思議な力で 理不尽にもねじ曲げられてるような気がするよ」
  3187. 旭: 天の悪戯とも思える力とは このことでありますか…
  3188. 太助の声: 「宇宙に免疫というものが備わっていたり 自浄作用とも言えるものがあるのなら 我々は知らず知らずの間に 宇宙からの攻撃を受けていることになる」
  3189. 太助の声: 「その結果が見えない何者かに狙われている 例えようのない感覚や 魔法少女に関わる事件や事故が騒ぎにならない 不自然な状況を作りあげていると思っていた」
  3190. ラビ: でも今回、 その天の悪戯はなかった…
  3191. 太助: だからこそ嬉しいんだ だからこそ感慨深いんだ
  3192. 太助: ラビも旭もサーシャも 3人は私の仮説を破ったんだ…!
  3193. 太助: だから今日は、この喜びと一緒に 考えていたことを伝えたかった
  3194. 太助: 犠牲になった魔法少女がいる以上 言いづらいことだが
  3195. 太助: それでも、諦念に至るような 虚しい考えが否定されて
  3196. 太助: 魔法少女が救われるという未来に 光が差し込んで来た
  3197. 太助: 私に希望を持たせてくれた3人に 感謝したかったんだ…!
  3198. 太助: ありがとう…
  3199. ラビ: いえ、私たちも教授のおかげで 奮い立つことができたんです
  3200. アレクサンドラ: はい、むしろ ありがとうございます♪
  3201. 旭: あとは、みんなで手を取り合い 締めくくって来るであります
  3202.  
  3203. FILENAME: text_515611-2_czJwk.txt
  3204. 私たちの席はバスの 真ん中の方って言ってたよ
  3205. 番組の中で映るらしいから なんだか緊張してきちゃった…
  3206. こういう時じゃないと、 栗栖への罪滅ぼしもできないし
  3207. 今日のセレモニーは私たちの歌で 最高のものに仕上げないとね
  3208. くらら: 湯の花国際の声楽部は もうバスに乗り込んだよ
  3209. うらら: じゃあ擁護派の人もそろったら 早く席に座って欲しいんよ
  3210. くらら: はぁ…
  3211. くらら: これで面倒だった魔法少女問題が 終わりになるわね…
  3212. うらら: 本当にくららには迷惑を かけたんよ…
  3213. くらら: そういえば、撲滅派の人たちは 一緒にバスには乗ってかないの?
  3214. うらら: 向こうは先に行って、ラビさんと 話をしてるみたいなんよ
  3215. 白金: 今日は魔法少女たちにとっても 町の人にとっても
  3216. 白金: これまでの因縁に終止符を打つ 大切な1日になります
  3217. 白金: なので、放送の際は 気をつけて頂けると幸いです
  3218. うらら: もちろんなんよ
  3219. うらら: 助けてくれた人たちを ないがしろにはしないんよ
  3220. 黒田: 人口が少ないところなら 魔女も現れにくいってことか
  3221. 黒田: 考えたな三浦
  3222. 旭: 白金殿たちのフォローもあって いきついた結論でありますし
  3223. 旭: 夜遊びホームルームのスタッフも 動いてくれたでありますよ
  3224. 旭: むしろ、みんなにはご足労頂いて 悪かったであります
  3225. 黒田: 手を取るとは言ってるけど、 俺たちが謝罪する場でもあるんだ
  3226. 黒田: むしろ手配してくれて 感謝してるよ
  3227. 旭: 事の始まりは我が灰谷たちを 守り切れなかったせいであります
  3228. 黒田: だとしても、 冷静になればわかる
  3229. 黒田: 常に100点を取り続けるなんて どれだけ頑張っても難しいのに
  3230. 黒田: 俺たちはそれを求め続けた…
  3231. 黒田: お前たちに支えられてるだけで 本当は十分だったのにな
  3232. うん…湯国市の事件や事故も 減っていくのを目の当たりにして
  3233. 助けられてたのを実感して、 自分たちの過ちを理解した…
  3234. 魔女にならないように死ぬ姿も この目で見ちまったしな…
  3235. 黒田: それで、俺たちが呼ばれたのは 今までの鬱憤を晴らすためか…?
  3236. 黒田: …俺は約束通り、 この後で警察に出頭するつもりだ
  3237. 旭: いや、そういうわけでは…
  3238. ラビ: 旭は魔女の被害を受けた 撲滅派の人たちだからこそ
  3239. ラビ: その心を救えればと この場にみんなを呼んだ
  3240. アレクサンドラ: 私たちで皆さんを 本当に癒やせたらと思ったんです
  3241. 黒田: 責められることはあっても、 そんな気を遣われるような…
  3242. 旭: ラビが言っていたことを 思い出したのでありますよ
  3243. 旭: 我々はまず、撲滅派のみんなを 癒やさないといけない
  3244. 旭: 当初は暴力を受け止めるという 間違った形になったでありますが
  3245. 旭: 今回はちゃんと我々の手で 癒やせたらと思うであります
  3246. 黒田: 反応に困るけど… 三浦たちがいいなら…
  3247. 旭: これは、魔女…
  3248. 黒田: このタイミングで…!?
  3249. アレクサンドラ: それにこの反応…
  3250. アレクサンドラ: まさか、私の固有魔法を受けて まだ動けるなんて…
  3251. ラビ: それだけ成長してたってことかも
  3252. ラビ: 逃げて会場に向かってる 早く追いかけないと…
  3253. アレクサンドラ: 私たちが逃がして フェストの事故を起こした魔女…
  3254. ラビ: そして、私たちの前で魔女化した 魔法少女の宿命を示した相手…
  3255. ラビ: 始まりとなった相手が 今になって追いかけてきたみたい
  3256. 旭: 締めくくれ そう言ってるようでありますな
  3257. 黒田: …大丈夫なのか
  3258. 旭: おおよそここまで生きていれば 大丈夫な相手ではないであります
  3259. 旭: ただ、無事に戻るであります
  3260. ラビ: ええ、もう私たちは 宇宙の意思に翻弄されたりしない
  3261.  
  3262. FILENAME: text_515612-1_czJwk.txt
  3263. 舌キ縺昴!!
  3264. アレクサンドラ: あぅッ…!
  3265. 旭: サーシャ! 相手に固有魔法は!
  3266. アレクサンドラ: かけているはずなんですが、 まったく効かないみたいで…!
  3267. 旭: 力の差なのか、相性の問題なのか 厄介でありますな…
  3268. アレクサンドラ: 大丈夫ですよ
  3269. アレクサンドラ: それでも私、 なぜか不安を感じてないんです♪
  3270. 旭: ふっ、奇遇でありますな 実は我も同じでありますよ
  3271. ラビ: 勝てる自信とかではなく 大丈夫だという根拠のない確信
  3272. ラビ: 恐らくそれは、今までの犠牲を 無駄にはしないという覚悟が
  3273. ラビ: 私たちにもたらした 不撓不屈の精神なのかもしれない
  3274. アレクサンドラ: はい、そうかもしれませんね♪
  3275. アレクサンドラ: 「始まりは魔法少女が魔女になるという 自分たちの真実を知った時」
  3276. ぐっ、あ、アァアアッ!
  3277. アレクサンドラ: ――っ!?
  3278. アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
  3279. 旭: この反応はまるで…
  3280. ァアアアアアアッ!!
  3281. ラビ: 「魔女になるという真実を嘆き悲しみ 私たちは人々からの慰めを欲した…」
  3282. ラビ: 父が死んだ時ですら、 苛立ちながら救われていた…
  3283. ラビ: 初めて気付いた…
  3284. ラビ: 今、私はその場限りの同情や、 下手な励ましですら欲しいんだ…
  3285. 旭: 「そして魔法少女を知ってもらおうとしたけど 魔女になるという真実が我々を苦しめた」
  3286. 黒田: 結局、都市伝説を作ったのも 雪崩と土砂崩れを起こしたのも
  3287. 黒田: フェストでみんなを殺したのも!
  3288. 黒田: 全部オマエらがやってるだけの 自作自演じゃねーか!!
  3289. アレクサンドラ: それから苦難の時が続きました
  3290. 黒田: ああ、町にいる魔法少女を すべて炙り出すんだ…
  3291. 警官: 俺は事情を聞こうとしただけ… 何がどうなってるんだ…これは…
  3292. ラビ: だけど、苦難を支えてくれる 人たちがいた
  3293. 太助: …いや、ラビちゃん むしろ私に力にならせて欲しい
  3294. 白金: 私は氷室先輩の味方のつもりで 逃げているだけでした
  3295. 旭: そして、最後まで抗ってくれる 魔法少女たちがいた
  3296. 放っておいたら 被害が出るかもしれない以上
  3297. 3人組で分かれて 同時に倒さないといけない
  3298. …ここで失敗して 白紙に戻しちゃいけないからね
  3299. 旭: 我々は、辛い事実を知り 苦難の連続が訪れていなければ
  3300. 旭: 魔法少女を本当の意味で 理解してもらうという
  3301. 旭: 救いのある未来を描けなかった
  3302. アレクサンドラ: 湯国市の人が何人も犠牲になって 魔法少女も私たちだけが残った
  3303. アレクサンドラ: それでも、後ろ向きにならず 前を向いて意味ある犠牲にしたい
  3304. ラビ: だからようやく迎えた この日を決して無駄にしない
  3305. ラビ: 手を取り合うことで成長して、 互いが支え合えるようになる
  3306. ラビ: きっとそうやって人同士が 理解しあって優しくなれたら
  3307. ラビ: 人の未来と魔法少女の未来は もっと幸せになるはずだ!
  3308. ラビ: 私の概念強化で、 ふたりの持つ力を強くする
  3309. 旭: ならば我は死した獣たちを呼んで 我々の味方とするであります!
  3310. アレクサンドラ: 私は魔女のやる気を削いで 完全に無力化します
  3311. Б懊無*為!!
  3312. ラビ: いくら強くても勝てる その確信があれば倒せる
  3313.  
  3314. FILENAME: text_515612-2_czJwk.txt
  3315. 太助: (今ならどんな理不尽をも 跳ね返せるかもしれないね…)
  3316. 太助: (そんな清々しい澄んだ空気を 肌で感じる気がする…)
  3317. 太助: 那由他…
  3318. 太助: まだ魔法少女を救うには、 前途多難かもしれないけど
  3319. 太助: 少なくとも現状を変えることは できそうな気がするよ
  3320.  
  3321. FILENAME: text_515613-1_czJwk.txt
  3322. 黒田: 三浦!
  3323. 無事に魔女は倒せた…?
  3324. 旭: 相手は、間違いなくフェストで 事故を起こした魔女でありました
  3325. 黒田: つまり灰谷を…
  3326. 旭: 死なせる要因を作った 魔女であります
  3327. 旭: ただ、最初に有愛うららを助けた 魔法少女でもあります…
  3328. アレクサンドラ: 魔法少女と魔女が持つ表裏を 最も教えてくれた相手でしたけど
  3329. アレクサンドラ: それを倒したことで魔法少女と 皆さんとの間に起きた問題も
  3330. アレクサンドラ: ようやく締めくくれそうです
  3331. ラビ: 水を差されてしまったけど、 最後にすることがある
  3332. 旭: そう、我々で魔女の被害を受けた 撲滅派のみんなを
  3333. 旭: 癒やすのでありますよ
  3334. 黒田: さっきも言っていたけど、 癒やすって言ってもどうやって
  3335. 旭: 我々に任せるでありますよ
  3336. アレクサンドラ: まずは、私の奏でる音色で リラックスしてください
  3337. ~~♪
  3338. な…
  3339. これ、急に力が…
  3340. なんか頭がぼーっと…
  3341. アレクサンドラ: 急な出来事でビックリしちゃうと いけませんからね♪
  3342. アレクサンドラ: それでは、旭ちゃん、ラビちゃん お願いします♪
  3343. ラビ: 旭、やることは魔女との戦いで やったことと同じだから
  3344. 旭: わかったでありますよ
  3345. ラビ: 概念強化
  3346. 旭: ふぅ…
  3347. 黒田: おい、三浦… どういうつもりだ…
  3348. 旭: 以前、黒田に話した通り、 我は死者を呼び出せるであります
  3349. 黒田: それはつまり…
  3350. 旭: ここには多くの撲滅派の人々が 集まってるであります
  3351. 旭: ゆえにラビの概念強化がないと 成せないのでありますが
  3352. 旭: ほんの少しの間
  3353. 旭: 皆が会いたい人々を我の力で 一気に呼んでみせるでありますよ
  3354. ラビ: それじゃあ、旭 お願い
  3355. 旭: 冥府にいる亡者たちよ 我の声に応えて欲しいであります
  3356. 旭: 冬の雪崩と土砂崩れで 亡くなった人々
  3357. 旭: フェストの事故で失われた命よ
  3358. 旭: 我の声が聞こえたら 姿を現して欲しいであります
  3359. 旭: ここにあなたたちを待つ方々が 何人も居るでありますよ
  3360. 旭: だからせめて ひとりずつだけでも…
  3361. 爺ちゃん…
  3362. お姉ちゃん…!
  3363. 黒田: 灰谷…
  3364.  
  3365. FILENAME: text_515613-2_czJwk.txt
  3366. 本当にお前さんは人を傷付けて、 しょうもないことをしたもんじゃ
  3367. だって、アイツらが居なけりゃ 生きてたって思ったらさ…
  3368. お前の祖父として、ひとつだけ 教えておかなきゃならんな
  3369. なんだよ、 消える前に教えてくれよ…
  3370. 罪を悪んで人を悪まず 折り合いを付けることが大切だ
  3371. 己が欲に従順であってはいけない それでは知性のある動物だからね
  3372. 年に何回か私のことを 思い出してくれたらいいから
  3373. 恨みは捨てて穏やかに生きて いつものあなたが私は好きよ…?
  3374. だって、結婚するって聞いて 嬉しくって私…
  3375. 色んな未来を奪われたって思うと 気持ちを抑えられなくて
  3376. 最後に抱きしめてあげるから その恨みは私の中に捨てていって
  3377. うん…
  3378. 灰谷: 三浦はちゃんと黒田を 救ってくれたんだね
  3379. 黒田: 心配をかけたし、 ヒドいところばかりを見られた…
  3380. 黒田: だけど俺、ちゃんと罪を償うから その時はお前の…灰谷の…
  3381. 灰谷: うん、いつでもおいでよ 償ってくるのを待ってるから
  3382. 黒田: それを聞けただけでも、 俺は満足だよ
  3383. 灰谷: 私は満足じゃない
  3384. 黒田: え…?
  3385. 灰谷: あの日、私に言い忘れたことが あるんじゃない?
  3386. 黒田: …ああ
  3387. 灰谷: お願い、今のうちに言って
  3388. 黒田: …………
  3389. 黒田: …ずっと、ずっと俺は
  3390. 黒田: 灰谷のことが好きでした 付き合ってください
  3391. 灰谷: ありがとう その言葉を聞きたかった…
  3392. 灰谷: 私も好きだったよ 黒田のことが好きだった
  3393. 黒田: っ…
  3394. 灰谷: だけど付き合うことはできない ごめんなさい
  3395. 灰谷: ちっちゃい頃からずっと一緒で これからも隣に居たかった
  3396. 灰谷: けど、私にはそれができないから 黒田を縛り付けるだけだから
  3397. 灰谷: 私は…黒田の次の恋が実ることを 向こうで、祈って…ます…
  3398. 灰谷: だから前を… 前を向いて、黒田!
  3399. 黒田: …おう、前向いて生きるよ…俺…
  3400. 旭: …………
  3401. ラビ: 成功した
  3402. 旭: これで黒田たちは、 救われるでありますかね…
  3403. アレクサンドラ: 大丈夫ですよ、旭ちゃん
  3404. アレクサンドラ: みんなの心の穢れが 晴れていくような気がします♪
  3405. …………
  3406. 「ア゙ア゙ア゙ァアッッ!!」
  3407. 「グッ、ガッ…!」
  3408. 「イヤァアア、アァアアッ!」
  3409. 「ママ!パパァアッ!」
  3410. 「血が、ァアアッ!!」
  3411. 黒田: ウァアアアアッ!
  3412. 黒田: な、なんだ! なんだよこの声は!!
  3413. みんなが死んでく…!
  3414. 声が頭に響く…!
  3415. 黒田: ヤメロヤメロ、ヤメテクレ! 三浦…!早く止めてくれ…!
  3416. 黒田: 断末魔で… あたまがおかしくなる…!
  3417. 灰谷: 三浦!早く!黒田が!
  3418. 旭: 止めたいでありますよ!!
  3419. 旭: ただ、魔法が強化されて… 暴走して…止められない…!
  3420. ラビ: この声はいったいどこから…!
  3421. アレクサンドラ: どうして、声楽部のみんなが!?
  3422. ラビ: ―ラビ― まだ、まだ増えてる…
  3423. アレクサンドラ: ―アレクサンドラ― 旭ちゃんが呼べるのは死んだ人たちだけじゃ
  3424. 旭: ―旭― 間違い無くそうであります…!
  3425. ラビ: ―ラビ― 早く止めないと…!
  3426. ラビ: ―ラビ― 普通の人は、心と体のどちらが壊れても おかしくない!
  3427. 旭: ―旭― しかし、どうやって止めれば…!
  3428. アレクサンドラ: ―アレクサンドラ― 擁護派の人たちの姿も増えてる…
  3429. ラビ: ―ラビ― まさか…これは…!
  3430. 白金: 氷室先輩
  3431. ラビ: 白金!?
  3432. 白金: バスが転落して炎上しました
  3433. ラビ: …なにを…そんな冗談…
  3434. 白金: 残念ながら本当です 多くの人が亡くなり…私も…
  3435. 白金: 最後まで力添えしたかった… 申し訳ありません…
  3436. ラビ: 謝らなくていいからお願い 生き延びて…ここから戻って…!
  3437. 白金: すみませんが私はここまでです
  3438. 白金: 先輩と出会えて 人生の最後は充実していた
  3439. 白金: ありがとうございます
  3440. ラビ: やめて!
  3441. 白金: これからは側で見守りますので 私を見つけてください
  3442. 白金: 今日のお祝いを 用意しておいたんです
  3443. アレクサンドラ: ああ…あの黒煙が…
  3444. 黒田: 三浦、お前は…魔法少女は…! やっぱり、俺たちを…!!
  3445. 旭: 違う、不本意であります…!
  3446. 旭: あぁ、なぜ…魔女も全部… 倒したはずなのに…
  3447. 太助: 私はね、世間に魔法少女の存在が 認知されない原因は
  3448. 太助: “宇宙”にあると思っていたんだ
  3449. 旭: 最後に…絡め取られた…
  3450.  
  3451. FILENAME: text_515613-3_czJwk.txt
  3452. 「生存者確認!早く下に担架を下ろして!」
  3453. 「救急車来たから早く! 第1順位の子から乗せていくから!」
  3454. 「何やってんの、それ黒でしょ!」
  3455. 太助: 今度こそ宇宙の意思なんてものは 信じずに済むと思っていたのに…
  3456. くらら: …………
  3457. うらら: おかしいんよ くららの方が酷いんよ!
  3458. うらら: 先に運んで欲しいんよ!
  3459. 太助: …うららちゃん
  3460. うらら: 教授からも言って欲しいんよ
  3461. 太助: もう、助からない
  3462. うらら: ウソなんよ…さっきまで一緒に… 元気にしてたはずなんよ…
  3463. キュゥべえ: 困っているようだね有愛うらら
  3464. うらら: キュゥべえ…
  3465. 太助: ――っ!?
  3466. 太助: そこにキュゥべえがいるのか ダメだ、契約しちゃいけない…!
  3467. キュゥべえ: 今なら叶えたい願いが あるんじゃないかい?
  3468. 太助: うららちゃん!
  3469. キュゥべえ: さあ、有愛うらら
  3470. キュゥべえ: キミは魂を対価にして どんな願いを叶えるんだい?
  3471. うらら: お願いなんよ! くららを助けて欲しいんよ!
  3472. 太助: うらら…!!
  3473. くらら: …っ、あれ…私…
  3474. うらら: くららっ!
  3475. くらら: うらら、私バスで転落して、 それですごい煙を吸っちゃって…
  3476. くらら: ――っ!?
  3477. くらら: ちょっと待って、 あんたその指輪…もしかして…!
  3478. うらら: そう、魔法少女になったんよ それでくららを助けられたんよ…
  3479. くらら: そんな…
  3480. 「こんなひどい現場…初めてだ…」
  3481. 「ほとんど助からないな…」
  3482. 「ヘリの要請は!」
  3483. 「引き上げるにしても場所が悪い!」
  3484. くらら: どうして…
  3485. うらら: え…
  3486. くらら: どうして私だけ助けたの… 事故を無くせばよかったのに…
  3487. うらら: あ…くららを助けようって 無我夢中で…
  3488. くらら: それで、 他の人を見殺しにしたの…?
  3489. うらら: 見殺しって…違うんよ…!
  3490. くらら: アンタっていつもそうやって 勢いで行動するよね…
  3491. くらら: おかげで魔法少女の件も、 全部私は巻き込まれっぱなしだし
  3492. くらら: 1回死にかけてるとか 本当に笑えない…
  3493. くらら: アンタ、周りが見えてないのに 自分勝手過ぎなのよ…
  3494. うらら: 今までのことは謝るんよ けど今回は助けたい一心で!
  3495. くらら: 触らないで
  3496. うらら: ――っ!?
  3497. くらら: 魔法少女は願いでなんとかする 自分勝手な奴らの集まり
  3498. くらら: 運命をねじ曲げようなんて魂胆が 最初っからクズなのよ
  3499. くらら: そのクズが、 嫌いだったアンタで良かったわ
  3500. うらら: そんなぁ…!
  3501. うらら: うっ…あ、ぁああああっ…
  3502. 旭: 魔女は倒した手前 原因はわからないであります…
  3503. 旭: こんな締めくくりになり、 申し訳ないばかりで…
  3504. アレクサンドラ: ごめんね、うららちゃん
  3505. アレクサンドラ: 私たちのことを信じて キュゥべえと契約したのに…
  3506. 太助: すまない、止められなかった…
  3507. ラビ: あの状況では教授の声は 耳に入らなかったはず
  3508. ラビ: ただ、どういうことですか…
  3509. ラビ: 私たち魔法少女には 救いの道はないのでしょうか
  3510. ラビ: 教授の仮説通りに…
  3511. ラビ: 宇宙の免疫に駆逐されるだけと 諦めるしかないのですか…
  3512. 太助: 本当に…辛いね…
  3513. 太助: ただ、ひとつだけ未来の少女が 救われる方法はあるよ
  3514. ラビ: それは…
  3515. 太助: 今の世界で魔法少女も魔女も 滅ぼした上で
  3516. 太助: 魔法少女が生まれないような 風習を作るんだよ…
  3517. 太助: ゼロにはできないかもしれないが 圧倒的に数を減らせるようにね
  3518. 太助: いつ、宇宙の自浄作用によって 失われるかわからない以上は
  3519. 太助: キュゥべえに干渉されない世界を 作ることもセットかもしれない
  3520. ラビ: 本気ですか…
  3521. 太助: いいや、まだ信じたくないよ
  3522. 太助: 私だって救いたい者がいる以上 まだ諦念の底には落ちたくない…
  3523. 太助: だけど、また同じようなことが 繰り返されるようなら
  3524. 太助: 私たちは宇宙の意思からは 逃れられないと考えた方が良い
  3525. 太助: ゲホッ、ゴホッ!
  3526. ラビ: 教授…!
  3527. ラビ: その手、血が…
  3528. 太助: 本当に、早めに娘の前から 姿を消しておいて良かったよ
  3529. みんな: …………
  3530. 旭: もはや怒りも悲しみもなく ただ広漠として果てのない砂漠が心に広がる 風もなくただ森閑とした心の様態を 諦念だと言うのであれば
  3531. 旭: 我々は否定することなく 諦念に落ちたと言えるのかもしれない
  3532. 旭: もはや心臓は石のようで 傷付いて血を流すこともなく
  3533. 旭: 未来を見つめることに虚しさを覚え ただ、されるがままに射貫かれて そこに横たわるだけであります
  3534. 旭: ただ、ラビは言っていた それでもまだ希望を見出そうと抗う音が 自分から聞こえていると…
  3535. 旭: 我々が何をしようとも どんな者たちに利益や不利益を与えたとしても 魔法少女の行動で曲がらないのが宇宙の意思なら
  3536. 旭: 最後に試してから 本当に諦念に落ちたいと…
  3537.  
  3538. FILENAME: text_515613-4_czJwk.txt
  3539. 旭: …………
  3540. 「アイツよく顔が出せるよな」
  3541. 「灰谷さんが死んだのって 三浦さんのせいでしょ」
  3542. 「黒田だってアイツのせいだろ まだ正気に戻らないって噂だぞ…」
  3543. 旭: っ…
  3544. ラビ: った…
  3545. どうして殺したんですか… 白金さんは心配してたのに…!
  3546. ずっとあなたを…
  3547. 氷室ラビを救うためだけに 活動してたのに、どうして…!
  3548. ラビ: …………
  3549. わかってるでしょ
  3550. アレクサンドラ: はい…もう部活には 顔を出しません
  3551. 本当なら顔すら 合わせたくないんだけど…
  3552. アレクサンドラ: はい、部員をおかしくしたのは、 私ですから…
  3553. うららのマネージャー: 辞めるって本気か… ちょうど売れてきたところだろ…
  3554. うららのマネージャー: バスの転落事故は気にするな お前のせいで起きたわけじゃない
  3555. うらら: 周りはそう思ってくれないから、 事務所の子が危険な目に遭うんよ
  3556. うらら: それに、コンビを解散したいって 話も来るはずなんよ…
  3557. アレクサンドラ: あの駐車場で起きた学生たちの錯乱と 山道を転落したバスの炎上事故
  3558. 旭: 事故に巻き込まれた生徒や撮影クルーの中には 多くの死傷者が出て その死者の断末魔を聞いた生徒たちは 駐車場で心が壊れるという結末になった
  3559. ラビ: 紙面を踊る大事故の写真と見出しは 私たちの心を蝕んでいき それに追い打ちをかけるように教授の説明は 私たちに芽生えた虚しさを少しずつ育んでいった
  3560. うらら: 教授が聞かせてくれたのは 魔法少女とキュゥべえの話に始まって 宇宙との関わりにまで広がっていったんよ
  3561. 旭: 知られないことには存在しない 見つけた石碑も歴史も…
  3562. ラビ: 当然、私たち魔法少女も同じで このまま何も残らず消えてゆく…
  3563. 旭: それを虚しく感じても、 我々がキュゥべえに選ばれた駒で
  3564. 旭: 宇宙を維持するエネルギーを 生み出すためだけの者なら
  3565. 旭: その役割から逃れることは 決して許されないであります…
  3566. うらら: 逃げようとしたら 宇宙のがんみたいな扱いなんよ…
  3567. アレクサンドラ: 教授も言ってましたね
  3568. アレクサンドラ: 私たちが持つ免疫システムは、 知らない間に病を防いでいて
  3569. アレクサンドラ: 宇宙にも同じようなシステムが あるのかもしれないって…
  3570. うらら: だからウチらは知らない間に 宇宙に殺されるんよね…?
  3571. ラビ: …宇宙を人に置き換えれば 私たちは小さな細胞
  3572. ラビ: いえ、その中にある ミトコンドリア
  3573. ラビ: それが肉体維持のルールを外れて 自由にしようとするなら
  3574. ラビ: 排除しようとするのは自然
  3575. 旭: 我が感じていた、 こちらを狙う何者かは
  3576. 旭: 宇宙の意思だったのかも しれないでありますな…
  3577. アレクサンドラ: そうですね…
  3578. アレクサンドラ: 何かを操る見えないものなんて いくらでもあるのかも…
  3579. アレクサンドラ: 自分の体を動かす信号なんて 私には見えません
  3580. アレクサンドラ: そう考えれば、私たちにとって 理不尽な出来事は
  3581. アレクサンドラ: 宇宙の影響だって言われても 有り得るのかもしれません
  3582. うらら: なんかよくわからないけど 変な感じなんよ…
  3583. うらら: 学校のみんなもウチらも ただの操り人形ってことなんよ
  3584. うらら: ウチのこういう言葉もぜーんぶ 宇宙の意思なのん…?
  3585. 旭: 残念でありますが、 我々にはわからないであります…
  3586. 旭: ―旭― ただ、見えない意思によって コントロールされているのは確かであります
  3587. ラビ: ―ラビ― キュゥべえを消そうとしても 私たちの存在を知らせようとしても
  3588. ラビ: ―ラビ― 決して手を届かせることができない 絶対的な意思…
  3589. アレクサンドラ: ―アレクサンドラ― そんな概念を持ち出されてしまったら 私たちには何もできないじゃないですか…
  3590. 旭: ―旭― 何もできないでありますよ
  3591. うらら: ―うらら― 救われることもできないってことなんよ
  3592. 旭: ―旭― そう、一切救われることもないでありますよ
  3593. 旭: ―旭― 我が殺して食べるウサギと同じ
  3594. 旭: ―旭― 我々はいつ宇宙に殺されるかもしれない 宇宙の糧であります
  3595. ラビ: ―ラビ― 救われる時があるとすれば それは見えない宇宙の意思が判断した時
  3596. うらら: ―うらら― 救われるのを諦めることしか できないってことなんよ…
  3597. アレクサンドラ: ―アレクサンドラ― ええ、そうですね…
  3598. 旭: ―旭― 諦念であります…
  3599. ラビ: ―ラビ― ただ、教授も言っていた
  3600. ラビ: ―ラビ― もしも叶うことがあるのであれば この仮説が正しいのか、最後に判断したいと
  3601. キュゥべえ: 人々が魔法少女の存在を知る
  3602. キュゥべえ: その様子を観察したいのなら 神浜市に行けばいいよ
  3603. ラビ: キュゥべえ!?
  3604. 旭: 本当に神出鬼没でありますな…
  3605. うらら: 神浜市に行けっていうのは どういうことなんよ
  3606. アレクサンドラ: そこで教授や私たちの仮説が 検証できるということですか?
  3607. キュゥべえ: 保証することはできないけど
  3608. キュゥべえ: 検証を行う場所としては 最適だろうね
  3609. キュゥべえ: 神浜市では魔法少女の存在を 広めようとする動きがあるからね
  3610. キュゥべえ: それも、ひとりやふたりじゃない 組織的に動いているみたいだった
  3611. アレクサンドラ: わざわざキュゥべえの方から 勧めてくるだなんて
  3612. アレクサンドラ: あなたにとっても得があるような 何か裏があるんじゃないですか?
  3613. キュゥべえ: ボクもキミたちが戦うことで 検証したいことがあるだけだよ
  3614. アレクサンドラ: どうします?
  3615. ラビ: 教授に相談して、 神浜市に向かうのはアリだと思う
  3616. 旭: 我々の考えではキュゥべえもまた 宇宙の歯車でありますからな
  3617. うらら: でも、キュゥべえにとっては そんなに得じゃないはずなんよ
  3618. うらら: ウチらは神浜市に行っても 検証するだけの傍観者なんよ
  3619. 太助: わかった、それならみんなで 様子を見てきて欲しい
  3620. 太助: 私はその間に この下巻を書き進めておくよ
  3621. ラビ: はい
  3622. 太助: 神浜市でも同じことが 起きるようであれば
  3623. 太助: 二度と魔法少女が生まれないよう 風習を作らないといけないね
  3624. 太助: 何千年、何万年と絶えずに、 魔法少女になることを否定する
  3625. 太助: 民俗学史に永遠に刻まれる 永らく続く風習を…
  3626. 太助: そして今いる魔法少女たちも 救わなくてはいけない
  3627. ラビ: 加えて、教授の言われた通り、 魔法少女の滅びを通して…
  3628. 太助: …そうだね
  3629. ラビ: 私たちが居なくなることが 現在も未来も救う重大な決断です
  3630. 太助: その時計は…
  3631. ラビ: 壊れてしまいましたが、 ちょっとした贈り物です…
  3632. ラビ: 0時まで残り5分…
  3633. ラビ: 私がこの時計を0時にした時、 本当に諦めたと思ってください
  3634. 太助: 午前0時を迎えて、民俗学には 新たなしきたりが刻まれる…
  3635. ラビ: …午前0時のフォークロアです
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