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- (from the opening sequence images)
- これは、
- 魔法少女の存在を みんなに知ってもらって
- なぐさめて欲しかった 少女たちが
- 見えない何かに 抗い続ける物語。
- 灰色革命
- ---
- FILENAME: text_515601-0.txt
- ラビ: 私たちは絶え間なく巡る 星空の動きを止めることはできない
- うらら: ウチがどれだけ練習をしても ディアボロを吸い寄せる引力には逆らえない
- アレクサンドラ: 私がどれだけ声を出しても この大気がなければ歌声は響かない
- 旭: そう、我らは常に 見えないものに支配されている
- 旭: このウサギも同じ 見えない我の手によって命を失った
- 旭: すべては自然の摂理でできている 翻弄されることは諦めるしかない宿命だ…
- FILENAME: text_515601-1_UNnvl.txt
- 旭: おはようであります
- 旭の父: ん、おはよう
- 旭の父: ちょうど、茶を淹れたところだ 1杯いるか?
- 旭: ありがたく頂戴するであります
- 旭の母: はい、朝食の味噌汁ね あと卵焼きとおひたしもあるから
- 旭: おぉ、今朝の味噌汁は ずいぶんと山菜づくしであります
- 旭の母: お婆ちゃんが朝から山を歩いて 採ってきたのよ
- 旭: 暖かくなってきたことを 表しているようでありますな
- 「湯国市オールスターフェストが開催決定!」
- 旭: お…
- 「地域の名産品が目白押しの直売所に 湯国市の歴史や習わしに関する展示が盛り沢山」
- 「さらに、ステージでは 地元の天才大道芸人“有愛うらら”が ユニットを組んで技を披露!」
- 「他にも魅力的なコンテンツが詰まった イベントに、みんなで一緒に参加しよう! 詳しくは湯国市観光組合のHPをチェック!」
- 旭: フェストも 本番まであと少しでありますが
- 旭: CMの打ち方も含めて、 例年より力が入ってるであります
- 旭の父: 冬の雪崩と土砂崩れのせいで、 町の雰囲気が暗くなったからなあ
- 旭の父: これを機会に気を取り直そうって みんな頑張ってるんだ
- 旭の父: うちだって山菜から肉まで、 山の幸を売る予定だ
- 旭の母: それに燻製したお肉は 真空パックにして出すのよ?
- 旭の母: はい、ごはん
- 旭: あぁ、ありがとうであります
- 旭の母: 今年は県外からの観光客も来るし 楽しくなりそうだわ
- 旭: そうでありますな
- 旭: …雪崩で家族を亡くされた方には 大声で言えないでありますが
- 旭: こうした機会に少しでも、 元気を出して欲しいでありますよ
- 旭の祖母: ほれ、オレの卵焼きで全部だ みんなでいただくぞ
- 旭: はい
- みんな: 「いただきます!」
- FILENAME: text_515601-2_UNnvl.txt
- じゃあ今日はここまで みんな気を付けて帰れよ
- フェストの委員は、あとで 打ち合わせがあるから残るように
- じゃあ日直、号令
- 起立!
- 気をつけ!
- 礼!
- 旭: (どこもかしこも フェスト一色でありますな)
- ???: お疲れさま、三浦 今日も相変わらずクールだね
- ???: この間はありがとな、三浦
- 旭: 灰谷に黒田、ありがとうって 何かしたでありますか?
- 黒田: この間もらった鹿の肉だよ 親父が美味いって喜んでた
- 旭: 鹿の肉…ああっ!
- 旭: あの時はなんと言うか 黒田が憔悴してたので
- 旭: 食を通して元気になればと 思っただけでありますよ…
- 黒田: ほんと、 気を遣わせてごめんな…
- 旭: そう頭を下げられると 我も恐縮するであります
- 旭: ちなみに、 灰谷も同じ件でありますか?
- 灰谷: 私の方は別件で三浦に記事を 共有しようと思ったの
- 灰谷: ほら、この記事 地元誌のウェブ版なんだけどさ
- 旭: んん…?
- 朱鷺集落の山中で発見の石碑 長らく証拠がないと言われていた 平家の落人伝説を裏付けるか
- 旭: …………なっ
- 旭: まさか、あの時に我が見つけた 石碑でありますか!?
- 黒田: そう、教育委員会の管轄に入って 今後は調べていくみたいだぞ
- 旭: はぁー…何が起きるか、 わからないものでありますな…
- 灰谷: おかげで私と黒田はフェストの 実行委員だから忙しくなりそうよ
- 灰谷: うちの学校からは湯国市の歴史に 関する展示があるからね
- 旭: 先生が言っていた打ち合わせは 石碑の件でありましたか…
- 旭: ふたりの仕事を増やして 申し訳ないであります
- 灰谷: 謝らなくていいわよ
- 灰谷: せっかく平家の落人伝説っていう 面白い題材があるのに
- 灰谷: 何の裏付けもないから 残念だなって思ってたところなの
- 灰谷: “信じられる要素がないと、 存在しないのと同じだからね”
- 灰谷: だからむしろ 見つけてくれて感謝してるわ
- 黒田: 俺も忙しくさせてくれて 感謝してるよ
- 黒田: 忙しい方が前の雪崩のことを 忘れていられるからな
- 旭: 返事しづらいことを笑顔で 言わないで欲しいでありますな…
- ピロン♪
- 黒田: あ、悪い 三浦も用事があるよな
- 旭: 別に野暮用でありますよ
- 旭: フェストの実行委員 ふたりとも頑張るであります
- 黒田: おう、ありがとな
- 灰谷: うん、ありがとう
- FILENAME: text_515601-3_UNnvl.txt
- 旭: …………
- 旭: (なるほど…)
- 旭: (ふたつの問題が 同時に起きたようでありますな)
- 旭: 1件目は魔法少女同士のテリトリー争い…
- 旭: 国の防衛大綱の影響で人口が増えたせいか 10人ぐらいだった魔法少女の数が 一気に膨れあがった気がするであります…
- 旭: ほとんどが引っ越してきた子たちで こうした衝突も不可抗力な手前 折り合いを付けるしかないでありますな…
- 旭: むしろ気になるのはもう1件の方…
- 旭: キュゥべえに契約を迫られている 少女が魔女の反応がある方へ移動している…
- 旭: 我が行って衝突の火種を増やすぐらいなら こちらのフォローに回って 契約を阻止した方が良さそうでありますな
- うらら: はぁ…はぁ… 本当に幻じゃないんよ…
- うらら: ウチに付きまとうなんて いったい何が目的なんよ…
- キュゥべえ: 有愛うらら
- キュゥべえ: ボクと契約して 魔法少女になって欲しいんだ
- うらら: …突拍子がなくて意味不明だし そういう勧誘はお断りなんよ
- キュゥべえ: 代わりにボクはキミの願いを 何でもひとつ叶えてあげられる
- キュゥべえ: キミには叶えたい願いが あるんじゃないのかい?
- うらら: …確かにお金には困ってたけど 大道芸で稼げるようになったんよ
- うらら: 今後もうまくいくかどうかは、 ちょっと不安だけど…
- キュゥべえ: その未来への不安も ボクなら解消することができる
- うらら: だだ、ダメなんよ! 変な勧誘にだまされるんよ!
- うらら: って、なんなんよこれは!
- うらら: ひぃぃっ!?
- キュゥべえ: まずいことになったね ここは魔女の結界だ
- うらら: 魔法少女の次は魔女なのん!?
- キュゥべえ: 町で起こる事故や事件 それに自殺といった出来事は
- キュゥべえ: 魔女と、ここにいる使い魔が 原因で引き起こされているんだ
- □▽★※◎◆♯ポッー!!
- うらら: うぁぅ!
- うらら: こ、攻撃してきたんよ…
- キュゥべえ: うらら、ボクと契約するんだ!
- キュゥべえ: 魔法少女になって戦わなければ キミは殺されてしまう
- うらら: そそ、そんなこと言われても!
- □▽★※◎◆♯ポッー!!
- うらら: キャァアアッ!
- うらら: へ…?
- この場は私たちに任せて!
- あなたはどこかに隠れてて!
- うらら: な、なんなんよ…
- FILENAME: text_515601-4_UNnvl.txt
- っ…ハァ…グ…
- なんとか、倒せた…
- ギリギリだけど
- うらら: だ、大丈夫なのん…!?
- 私たち、傷の治りは早いから… だから早く行って…
- うん、またキュゥべえに 勧誘されるかもしれないよ…
- うらら: あ、ありがとうなんよ…
- っ…
- 動けないね…
- うん…この後悔を あの子には味わわせたくないよ
- 旭: 連絡があったのは、 確かこの辺りだったはず…
- 旭: あっ…
- 旭: …もしかして 氷室ラビ、栗栖アレクサンドラ…
- アレクサンドラ: 初めまして、三浦旭さん 気軽にサーシャと呼んでください
- アレクサンドラ: グループメッセージにいますけど 3人とも初対面でしたよね
- ラビ: 元は町の状況や魔法少女の数を 把握するため作った私のグループ
- ラビ: みんなが声を掛け合って 知らない間に数がそろってたから
- ラビ: 面識がない人たちが多いのは 当然だと思う
- ラビ: 私も人と話すのは得意じゃなくて 積極的に関わらないから…
- 旭: ただ、町の状況がわかるので 助かってるでありますよ
- 旭: それで、情報を送ってくれた 魔法少女は?
- アレクサンドラ: 私たちも今 ここに着いたばかりなので
- ラビ: 近くに反応があるから、 捜してみよう
- 旭: ――っ!?
- 旭: 彼女たちは…!
- ラビ: 恐らく、グループに連絡をくれた 魔法少女だと思う!
- 旭: …ソウルジェムの濁りがひどい
- ぐっ、う、アァッ…
- なんなの…これ… やだ、やだ
- イヤなことばっかり、頭の中に…
- 旭: これは、どうすれば…
- アレクサンドラ: ソウルジェムが 濁ってるせいかもしれません
- ラビ: 確かに浄化できれば、 解決するかもしれない
- アレクサンドラ: ですが私、今は手持ちがなくて…
- ラビ: それは私も…あなたは…
- 旭: 我でありますか…!? いや、我もないであります…
- 旭: 最近は魔法少女も増えて、 魔女も奪い合いでありますし…
- 旭: あ、魔女を倒したのであれば、 近くにグリーフシードが…!
- 当てにしてた…けど… なかったの…くっ…
- ねぇ、私、どうなるの…?
- ラビ: わからない…
- ラビ: ソウルジェムが濁りきった先に 何があるのか、私は何も…
- アレクサンドラ: 私だって、今までどうなったか 聞いたこともなかったもの
- ぐっ、あ、アァアアッ!
- アレクサンドラ: ――っ!?
- アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
- 旭: この反応はまるで…
- ァアアアアアアッ!!
- 旭: 「魔女と同じ反応…!」
- FILENAME: text_515601-5_UNnvl.txt
- 旭: ここは、なんでありますか…
- ラビ: どう見たって魔女の結界…
- 旭: …我が彼女たちから感じた魔力と この魔女の反応は同じ…
- アレクサンドラ: つまり、間違いなくこの魔女は、 ふたりの魔法少女…
- 旭: 魔法少女から…魔女… いや、待って欲しいであります…
- 旭: 我には意味が…!
- 縺薙lwg縺ァ”Б懊無*為!!
- 旭: ぐっ!
- ラビ: ボサッとしてると危険 今は目の前の敵を倒さないと
- アレクサンドラ: そうですね…
- ラビ: あなたはどういう魔法を使うの?
- アレクサンドラ: 私は相手のやる気を削ぐ 力を使えます
- ラビ: つまり動きが緩慢になる なら、その間に私が攻撃を…!
- アレクサンドラ: さあ、このハープの音色で、 穏やかになってください
- 菴輔ЁЛ*ォ!?
- ラビ: その間に私が…
- …………
- ラビ: 私が…!!
- 旭の声: 魔女が動くであります!
- ラビ: ッ!
- ラビ: 栗栖が言う通り この子たちは…きっと…!
- 謨キッ迚縺ォ繧ゥ!!
- ラビ: ァアアッ!
- ラビ: グッ…!
- 旭: 大丈夫でありますか!
- ラビ: 私にも、彼女たちが 魔女になったように見えた…
- アレクサンドラ: それは…
- 旭: だとしたら、我らは 同胞を殺すことになりますな…
- アレクサンドラ: そう…ですね…
- アレクサンドラ: 逃げられた…
- 旭: 言い訳はしたくないでありますが 仕方ないでありますよ…
- 旭: こんな気持ちで、どうやって あの魔女を倒せと…
- ラビ: …キュゥべえ、いる?
- キュゥべえ: 何か用かい? 氷室ラビ
- ラビ: どういうこと…?
- ラビ: 私たち3人には彼女たちが、 魔女の正体のように見えた…
- キュゥべえ: その通りだよ
- キュゥべえ: ソウルジェムに穢れが溜まり グリーフシードに変わる瞬間
- キュゥべえ: キミたちは魔女になるんだ
- FILENAME: text_515601-6_UNnvl.txt
- キュゥべえ: その通りだよ
- キュゥべえ: ソウルジェムに穢れが溜まり グリーフシードに変わる瞬間
- キュゥべえ: キミたちは魔女になるんだ
- ラビ: 契約時に私は そんな話を聞いた覚えはない
- キュゥべえ: 聞かれなかったからさ 何か問題でもあったのかい?
- アレクサンドラ: 何を言ってるんですか! 重要な問題ですよ!
- アレクサンドラ: あんな姿になって… 生きていないのと同じです…!
- キュゥべえ: キミたち人は滅びることなく 数を増やしていっているのだから
- キュゥべえ: 一個体の生き死になんて 関係のないことじゃないか
- 旭: 我らの世界では個人の生死は 十分に尊重されること
- 旭: 重大なリスクを知らせないなど 詐欺と変わらないであります…
- キュゥべえ: 自分ではどうしようもない願いを 叶えただけでも十分な対価だよ
- キュゥべえ: とても詐欺だなんて ボクは言えないと思うけど
- パンッ!
- 旭: お前がその対価の価値を決めるな
- アレクサンドラ: …………
- 旭: っ、申し訳ないであります 話を聞く前に…
- ラビ: いえ、三浦が殺さなければ 私が殺してただけのことだから
- うららの声: あ、あの…
- アレクサンドラ: な、今の様子… 見てたんですか…?
- うらら: 助けてくれたのに、 逃げるのも悪いと思ったんよ…
- うらら: あの…助けてくれたふたりから 変なものが見えたんよ…
- うらら: だ、大丈夫なのん…?
- ラビ: あなたが契約を勧められていた 魔法少女という存在は
- ラビ: あなたが見た驚異である 魔女と戦うことで世を守っている
- うらら: え…?
- ラビ: けど、その末路は今見たように 自分自身が魔女になること
- ラビ: 魔法少女にならないことだけを 教訓にして忘れた方がいい
- 旭: 今日見たものは幻だったので ありますよ…
- アレクサンドラ: 夢です…幻です… だから忘れてください…
- うらら: でも…
- アレクサンドラ: 何もなかったことにした方が 身のためだと思いますよ…
- うらら: …わ、わかったんよ
- アレクサンドラ: はぁ…
- ラビ: 彼女たちのソウルジェムが なくなっている…
- 旭: 体は魂が抜けたように、 温もりを残して…
- 旭: …さしずめ、ソウルジェムは 我々の命ということでありますな
- アレクサンドラ: 信じたくない… けど、これが現実なんですよね…
- アレクサンドラ: っ…ふっ…ぅぅ…
- 旭: …………
- 旭: 我々は罠の存在に気付かない獲物と同じ
- 旭: 何も知らないまま野山を駆けまわり こうして罠に捕われて気付くのであります
- 旭: 自分の命が誰か目に見えない何者かによって 握られているという現実を…
- FILENAME: text_515602-1_UNnvl.txt
- みんな: 「~~♪」
- 先生: 課題だったソプラノも 引っ張られなくなったな
- 先生: ただ、楽譜を意識しすぎて ニュアンスを押さえられていない
- 先生: フェストでのステージまで、 そこまで間もないから
- 先生: しっかり仕上げていくつもりで 自分の声を意識してみるんだ
- みんな: 「はいっ!」
- アレクサンドラ: (声を出す私がいる…)
- アレクサンドラ: (ノドに触れると しっかりと声帯が震えていて)
- アレクサンドラ: (音程を変えると、自分のノドが クッと上ずるのを感じる…)
- アレクサンドラ: (これが私…人間として生きる 栗栖アレクサンドラの体…)
- アレクサンドラ: だけど、私はもう人間離れしている…
- アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
- 旭: この反応はまるで…
- ァアアアアアアッ!!
- アレクサンドラ: (魔女になるかもしれない私は 今はまだ魔法少女…)
- アレクサンドラ: (かろうじて人間をしている いつもの栗栖アレクサンドラだ)
- あ~今日も終わった~
- 先生って良い人なんだけど もう少し優しくして欲しいよね
- ほんとそれな
- アレクサンドラ: …………
- サーシャ、何かあった?
- アレクサンドラ: え、ううん、何もないですよ うふふ♪
- まさか、実は噂通り先生のこと、 本当は好きだったり?
- だったらごめん! ちょっと悪口言っちゃった
- アレクサンドラ: あの、その話は…!
- 今さら掘り返さないの 誰かが傷付く話題はやめよ
- う、ごめん…
- けど、サーシャさ本当に大丈夫? 今日元気ないよ?
- あー、突っ込まない方がいいなら 聞かない!聞かないよ!?
- アレクサンドラ: そんな、私こそ変に気遣わせて ごめんなさい…!
- アレクサンドラ: 実は今度のフェストのことを 考えてたんですよ
- アレクサンドラ: パートを リードすることになったので
- アレクサンドラ: 本当に私で大丈夫なのかなって 少し不安だったんです
- だったら心配しすぎって言える サーシャなら平気でしょ
- うん、努力をしたからこそ 任された役割だし
- 先生ってひいきはしないからね
- アレクサンドラ: そう言ってもらえると、 少しは心が楽になります♪
- アレクサンドラ: ありがとうございます! うふふっ♪
- アレクサンドラ: (魔女になることを知った日、 一緒に居たふたりは大丈夫かな)
- アレクサンドラ: (氷室ラビさんと三浦旭さん だったっけ…)
- アレクサンドラ: (メッセージを送りたいけど、 私はたぶん慰めが欲しいだけ…)
- アレクサンドラ: (それが透けて見えるから、 申し訳ない気がする…)
- FILENAME: text_515602-2_UNnvl.txt
- ラビ: (チャイムも鳴り終えて、 息を潜めた学校の屋上…)
- ラビ: (ただ、満天の星空だけが、 真下にいる私を見ている…)
- ラビ: (星々は長らく地球の歴史と共に 魔法少女の存在も見てきて)
- ラビ: (恐らく私も、消えゆく少女の ひとりとして見てきたのだろう)
- ラビ: (そういう虚しい存在として 私は“認められてきた”んだ…)
- ガチャ…キィ…
- ラビ: …………白金?
- 白金: 今日も氷室先輩と一緒に 星々に認めてもらいに来ました
- ラビ: 夜な夜な寝転がって 星を眺めるだけ
- ラビ: 普通なら付き合うのも 面倒になると思うけど…
- 白金: 付き合ってるつもりはありません 私が好きで来てるんです
- ラビ: はぁ…あなたは私と違って クラスの人気者だったんだから
- ラビ: 早く友だちの元に戻って 幸せな学生生活を送りなさい
- 白金: でも、私ってば他人に 興味が全然ないんですよ
- 白金: クラスの中で注目されてても 良く見られるようにしてるだけで
- 白金: 本当はクラスで団結して 仲良くするとか興味ないんです
- 白金: だから氷室先輩との距離が 気負わなくて心地良いんですよね
- ラビ: …私にも興味はないはず
- 白金: 氷室先輩だけに興味があります
- ラビ: …はぁ、じゃあ勝手にして
- 白金: それに、初めて屋上に来た時に 氷室先輩が言っていたことが
- 白金: ようやく理解できるような 気がしたんです
- ラビ: …覚えてない
- 白金: 「自分のような目的もなく 誰にも認知されないような空虚な存在は 多くから見られることによって 自己を保存するんだ」
- ラビ: 要は本当は友だちが欲しいのに ひとりでいる人間の
- ラビ: 寂しい妄言みたいなもの
- 白金: 私だってそんな矛盾の塊ですよ
- 白金: 人と仲良くしたり惹きつけるのは 得意なはずなのに
- 白金: そこに意味を 見出してないんですから
- ラビ: 本当にもったいないし うらやましい
- ラビ: 「自己に限らず世界そのものが 他者の知覚によって存在する世の中において あなたは十分、他者に知られる素養がある」
- ラビ: 「私みたいに星が意思を持っていると仮定して 身をさらけだすことで この世との繋がりを持とうとしなくても 十分やっていけると思うけど」
- 白金: そんなこと言って、 引き留めたそうなひどい顔
- 白金: 氷室先輩… 何かありましたか…?
- ラビ: …………
- ラビ: 自分という存在が 今まで以上にわからなくなった…
- ラビ: 人ではなくなってしまった自分を 私は認めたくない…
- 白金: 人ですよ? ちゃんと氷室先輩は…
- ラビ: 永久と言える歴史を眺めてきた 月や星々はどう思うだろう
- ラビ: 全てを白日の元にさらす 太陽と比べて
- ラビ: 私を優しく慰めてくれる存在だと 思ってたのに
- ラビ: 今、それらに慰められるどころか 嘲笑われてるように思える…
- 白金: 月と星々と同じだけ氷室先輩を 見続けていた私は断言できます
- 白金: 大丈夫です 氷室先輩は人ですから
- ラビ: ――っ!?
- ラビ: …ありがとう、白金 少しだけ私は自分に自信が持てた
- ラビ: また、ここで会ってくれる?
- 白金: はい、勝手に来ます
- ピロン♪
- ラビ: …………
- アレクサンドラ: 今、魔女の反応を感じたのですが もしも近くにいるようでしたら 皆さんとお話をできませんか…?
- アレクサンドラ: 逃げ道のない何かに捕らわれたような感覚が ずっと私を支配していて 自分が何者なのかもわからないんです…
- ラビ: みんな、同じだ…
- FILENAME: text_515602-3_UNnvl.txt
- アレクサンドラ: すみません 急にあんなメッセージを送って
- ラビ: いえ、私も自分という存在が わからなくなりかけていた
- 旭: 我もサーシャ殿や氷室殿と同じで
- 旭: 何かに狙われているようで、 落ち着かなかったでありますよ…
- アレクサンドラ: …私たちは魔女を倒して グリーフシードを手に入れないと
- アレクサンドラ: 彼女たちと同じように、 魔女になってしまうんですよね?
- アレクサンドラ: 私、あれ以来 魔女と戦う勇気がでなくて…
- アレクサンドラ: だけど、 自分が魔女になるのは怖くて…
- アレクサンドラ: 本当にワガママなんですけど、 仲間が欲しかったんです…
- アレクサンドラ: 一緒に自分の正体と向き合って 魔女と戦える仲間が…
- 旭: 正直、 願ってもないことであります
- 旭: 我も悶々と悩んでいるうちに、 時間が経ってしまい
- 旭: 気付けばソウルジェムも この通りでありますよ
- アレクサンドラ: 私と同じように 濁ってるみたいですね
- アレクサンドラ: 氷室さんはいかがですか…?
- ラビ: このままだと3人とも共倒れ いつかは力尽きると思う…
- アレクサンドラ: では…
- ラビ: 濁らされた者同士、 共に戦えたら幸いだと思う
- ラビ: それに、今なら3人の相性を 調べるのも最適かと
- 旭: 魔法少女の秘密を共有する者が チームを組んだ
- 旭: その初戦であります
- 旭: とはいえ、いざ結界を前にすると 緊張するでありますな…
- アレクサンドラ: 元は同じ魔法少女だからこそ、 魔女を倒すのは後ろめたいです…
- アレクサンドラ: けど、放置していれば 町の人が呪いを受けてしまう…
- 旭: …魔女になった彼女たちは、 目の前の少女を救っていた…
- 旭: ここで背を向ければ、 そんな魔法少女の高潔さを
- 旭: 傷付けることになりますな…
- ラビ: かつて抱いていた清廉な想いを 生かし続けるためにも
- ラビ: 私たちは魔女を倒す必要がある
- 旭: そうでありますな
- アレクサンドラ: はい、魔女を放置するだけで、 過去の想いを台無しにしますから
- FILENAME: text_515602-4_UNnvl.txt
- 縺ォ繧ゅжl!!
- アレクサンドラ: 響けっ!
- 縺雁燕q溘ォ薙!?
- ラビ: ひるんだ隙に…!
- 旭: 一撃必中であります!
- 旭の声: サーシャ殿! 今でありますよ!!
- アレクサンドラ: はいっ!
- 隕九≠隕?スゅ?縺雰!
- アレクサンドラ: っ…
- アレクサンドラ: この魔女も私と同じ魔法少女だったんだ 普段は一緒に勉強をしてたような人を 楽しく部活をしてた人を 愛する家族がいたような人を私は今…
- アレクサンドラ: 殺そうとしている…
- アレクサンドラ: 違う、それでも倒すことに意味はある 魔女を倒せば奇跡を願って みんなを助けてきた魔法少女の想いを 救うことになるんだって 氷室さんも三浦さんも言ってた
- アレクサンドラ: はっ…はぁ…はぁ…
- 旭: 氷室殿、ここは我らで!
- ラビ: ええ
- ラビ: 栗栖も浄化して ソウルジェムがもたない
- アレクサンドラ: いえ、私は最後にひるんで 魔女にとどめを刺せなかった
- アレクサンドラ: 下手をすれば、おふたりに迷惑を かけることになったのに…
- アレクサンドラ: ――っ!?
- 旭: むしろサーシャ殿が魔女になると 我々にとっては迷惑であります
- アレクサンドラ: …………
- 旭: もとい、寂しいであります
- アレクサンドラ: 三浦さん… ありがとうございます…
- ラビ: 魔女と戦うことについて、 折り合いをつけたとしても
- ラビ: 何かに捕らわれてしまったような 謎の緊張感はなくならない
- 旭: 魔法少女の真実を知るだけで 不思議でありますな…
- アレクサンドラ: …家で飼っていた猫を 思い出しました
- 旭: …猫でありますか?
- アレクサンドラ: 家の中で飼ってたんですけど、 ある日、外に出てしまって…
- アレクサンドラ: それ以来、窓の外を恋しそうに 見るようになったんです
- アレクサンドラ: もしかしたら、外を見たことで 自分を取り巻く状況を知って
- アレクサンドラ: 救いを求めていたのかも しれません…
- アレクサンドラ: 私たちも同じだと思いませんか?
- アレクサンドラ: 急に真実を知って、苦しんで、 自由と救いを求めてるんです…
- 旭: 我も魔女になる真相を知ったとき 何かに不意を突かれた気がして
- 旭: 自分が射止めたウサギの姿を 思い出したであります…
- 旭: それも真実を知ったことで 未知の存在に捕らわれたことを
- 旭: 自覚したのが 原因かもしれないであります…
- 旭: 氷室殿はどうでありましたか?
- ラビ: 私は夜空の星が迫ってくるような 感じがした…
- ラビ: 今まで私のことを人間として 見下ろしていた夜空に浮かぶ星が
- ラビ: それがお前の正体だと言いたげに 迫ってくるのを感じた
- ラビ: それと同時に常人が理解できる 理屈の範疇を出た私たちは
- ラビ: 誰にも理解されないだろうという 虚しさが胸に広がった
- アレクサンドラ: そんな寂しいこと…
- ラビ: 私がかつて患っていた病も ほとんど理解してくれなかった
- ラビ: だから、氷室ラビという存在を 私はひとりにすることにした
- ラビ: 理解のできないものに対して 人々は不寛容なのを
- ラビ: 私はよく知ってる…
- 旭: この不気味な支配された感覚は 我らしか理解できない…
- アレクサンドラ: 魔法少女たちだけで向き合うしか ないってことですよね…
- FILENAME: text_515602-5_UNnvl.txt
- アレクサンドラ: おふたりの家はどちらですか?
- 旭: 我は朱鷺集落なので、 ここからはバスであります
- ラビ: 私は湯国温泉郷だから、 三浦とは別系統のバスで
- ラビ: 栗栖は?
- アレクサンドラ: 私は逆で港の方なんです みんなバラバラですね、ふふ♪
- 旭: 下手に魔法少女の宿命を 知ってしまった手前
- 旭: そんな自然な笑顔を見るのは 初めてな気がするでありますな
- 旭: サーシャ殿の笑顔は とても可愛らしいであります
- アレクサンドラ: ええっ、なんですか急に 恥ずかしいじゃないですか…
- 旭: それだけ笑顔を陰らせた 事の大きさを実感したであります
- 「というわけで本日紹介する湯国市の有名人は 地元の若者からも人気を集めている大道芸人 有愛うららさんです」
- うららの声: 「初めましてなんよ!」
- 旭: ――っ!?
- 旭: あの画面に映ってるのって この間助けた…?
- ラビ: キュゥべえに契約を迫られた上に 魔女化も目撃してしまった子
- アレクサンドラ: やっぱりあの子 有愛うららだったんですね
- ラビ: 栗栖は知ってた?
- アレクサンドラ: 大道芸の公演をしてるので、 私も見たことはありましたよ
- アレクサンドラ: 地元のテレビに出演してるので、 知ってる子は多いかもしれません
- ラビ: へぇ…
- 旭: 山に籠ってばかりで、 その辺りは疎かったであります…
- 確か大道芸を始めるきっかけは ご弟妹だったんですよね?
- うらら: そうなんよ
- うらら: ウチらは貧乏だったから、 毎日食べるご飯も大変だったんよ
- うらら: 一応、畑があったから、 ある程度は大丈夫だったんだけど
- うらら: オモチャは何もなかったから 弟妹は娯楽に餓えてたんよ
- そこで出会ったのが 大道芸ですか?
- うらら: そう、路上パフォーマンスを見て これならって思ったんよ
- うらら: それでバランスをとったり、 箱を使って投げてみたり
- うらら: 自分でディアボロを作って 練習をしてたら
- うらら: 弟妹みんなが 楽しんでくれるようになったんよ
- それが今となっては仕事に なったんですね
- うらら: 自分でもビックリなんよ
- アレクサンドラ: そうそう、こういう 特殊なエピソードもあって
- アレクサンドラ: 急に話題になり始めたんですよ
- 旭: 確かに自分より幼い子が、 健気に頑張ってる姿を見ると
- 旭: こう、応援したくなるような 気持ちが湧いてくるでありますな
- アレクサンドラ: 言い方は良くないですけど
- アレクサンドラ: 同情票みたいなものも あるのかもしれませんね♪
- うららの声: 「本当に今は自分の過去を受け入れてくれる 仕事仲間やファンがいることに感謝してるんよ」
- ラビ: …………
- アレクサンドラ: なんか急に神妙な顔に… どうかしましたか…?
- アレクサンドラ: な、急になんですか!?
- 旭: おもむろに抱きしめられると 混乱するでありますよ!
- ラビ: 急に自分が抱えていた 寂寥感の意味を理解した…
- 旭: なっ…え…
- ラビ: 何かに捕らわれたことに対して 私が感じたのは
- ラビ: 恐怖でも虚しさでも怒りでもなく ただ寂しい気持ち
- ラビ: 孤独感のようなものだった…
- ラビ: それは、有愛うららと同様に 人に受け入れて欲しかったから…
- ラビ: 私はただ自分の境遇を誰も知らず 認めてくれる人もいない状況が
- ラビ: ただただ寂しかった…
- 旭: それは、我もわかるであります
- アレクサンドラ: 私たちは3人だけで、 秘密を共有してますからね…
- ラビ: それも限定的な 魔法少女という世界の中で…
- FILENAME: text_515602-6_UNnvl.txt
- ラビ: もう、何年も前のことだが 私は父を亡くした
- ラビ: 「お父さん、お父さん… っ、うう…ぁああああ…くっぅ…」
- ほら、ちゃんとお花を入れて 見送ってあげよう
- お父さんはちゃんとラビちゃんを 見守ってくれるからね
- 空に昇ったあとも一滴の雨となり あなたのところに帰って来る
- 胸の中の記憶と一緒に お父さんはあなたの中に残ります
- ラビ: 当時、私に寄り添ってくれる人が 何人も私に声をかけてくれた
- ラビ: ただ悲しみが頭の中を支配して、 話を聞く余裕なんてなかった
- ラビ: 何かを思ったとしても、 私の何がわかるんだって気持ちや
- ラビ: 適当なことを言うなっていう 怒りに似た感情の方が強かった
- ラビ: でも、気持ちを理解してもらう 必要なんてなかった…
- ラビ: …………
- うらら: 昔は冗談抜きで からかわれることもあったし
- うらら: 汚い格好でお店に入るから、 白い目で見られたりしたんよ
- うらら: でも、助けてくれる人も多くて、 それが家族の支えになったんよ
- 旭: …………
- 旭: 外との繋がりがあるだけで、 確かに変わるのかもしれない…
- 旭: 我々は3人とも同じ牢獄に入り 誰も面会に来ない囚人であります
- アレクサンドラ: 今は私たちの悲しみや苦しみを 誰も知らず理解もしてくれません
- ラビ: 人が知らないことに対して 不寛容なのは知っている
- ラビ: だけど私は、 誰かの同情が欲しくなった…
- ラビ: 理解はされないけど 宿命から解放もされないけど
- ラビ: 気休めでもいいから慰めてくれる そんな言葉が欲しくなった…
- ほら、ちゃんとお花を入れて 見送ってあげよう
- お父さんはちゃんとラビちゃんを 見守ってくれるからね
- 空に昇ったあとも一滴の雨となり あなたのところに帰って来る
- 胸の中の記憶と一緒に お父さんはあなたの中に残ります
- ラビ: 父が死んだ時ですら、 苛立ちながら救われていた…
- ラビ: 初めて気付いた…
- ラビ: 今、私はその場限りの同情や、 下手な励ましですら欲しいんだ…
- FILENAME: text_515603-1_UNnvl.txt
- 旭: ふぅ…
- 旭: (ためらいはあったものの、 ちゃんと倒せた…)
- 旭: (氷室殿やサーシャ殿と一緒に たどり着いた答えなら…)
- 旭: (魔女を救うつもりで戦える)
- 旭: みんなが起きる頃合い…
- 旭: スリングライフルと弾を用意して 正解でありますな
- 旭: 朝の散策で山に入っていたことに するであります
- 旭: (いた…)
- 旭: (息を潜めろ…音を立てるな…)
- カコッ
- 旭: ただいま戻ったであります
- 旭の母: いないと思ったら、 早くからどこに行ってたの?
- 旭: 目覚めが早かったので、 少々散歩に行ってきたであります
- 旭: ついでにフェストに出す品に 使えたらと思って
- 旭: ウサギを一羽 狩ってきたであります
- 旭の母: …昨日、もう数は足りたって 話さなかった?
- 旭: 当日、足りなくなるよりか、 多い方が良いと思ったので
- 旭の祖母: だめよ、旭ちゃん
- 旭: …?
- 旭の父: 旭、ちょっと俺の前に座れ
- 旭: え、はい…
- パシッ
- 旭: った…
- 旭の父: 旭なりに命を狩る必要性を 感じていたなら文句はないが
- 旭の父: なんとなくで狩っていたのなら 言語道断だ
- 旭: っ…
- 旭の父: 生き物の命を粗末に扱うな
- 旭: 我はさっきも言った通り…
- 旭の父: ここで俺たちがさばかなかったら お前の仕留めた命は無駄になるぞ
- 旭: …………
- 旭の父: それに、気に食わないことがある
- 旭: なんでありますか…
- 旭の父: お前、命を狩ることを、 不安のはけ口にしやがったな
- 旭: そんな、我は!
- 旭の父: お前の様子がおかしいのはな! 親だからよく知ってんだよ!
- 旭: ――っ!?
- 旭の父: お前に命の尊さだって、 俺らはちゃんと教えたつもりだ!
- 旭の父: お前はわかってるのに ウサギの命をはけ口にした…
- 旭の父: ウサギにとったらあまりにも 理不尽すぎる死に方だろう
- 旭: (我自身も見えないものに、 命を握られてるにも関わらず…)
- 旭: ごめ…ごめんなさい…
- 旭の父: 謝る相手が違う
- 旭の父: 今日は遅刻しても構わないから お前の手でさばいて食え
- 旭: …はい
- 旭: (ごめんなさい…本当に…)
- FILENAME: text_515603-2_UNnvl.txt
- 旭: はぁ…
- 旭: (考えれば考えるほど、 自己嫌悪に陥るであります…)
- 旭: (憂さ晴らしに命を狩ったことを 我は明確に否定できない…)
- 旭: (いたずらに狩られては ただの無駄死に…)
- 旭: (我々も魔法少女の宿命に 絡め取られている以上)
- 旭: (もう一度、命との向き合い方を 考えねばならないであります…)
- 灰谷の声: おはよう、三浦
- 旭: おはようであります 黒田も一緒でありましたか
- 黒田: なんだよ、 俺も一緒に居たら悪いか?
- 旭: むしろ灰谷といつも一緒なので、 なんとも思わないでありますな
- 黒田: そんなに一緒かぁ?
- 灰谷: 私たちって幼馴染な上に お互い浮いた話なんてないから
- 灰谷: 学校に通うのも一緒で フェストの実行委員も一緒だと
- 灰谷: 周りから見れば 確かにずっと一緒に見えるかもね
- 黒田: あー…考えてみるとそうだな 自覚すると恥ずかしいな…
- 灰谷: ちょっと、 私と一緒にいるのが嫌なの?
- 黒田: いや、なんでそうなるんだよ それより石碑の話だろ?
- 灰谷: あ、そうそう
- 灰谷: 三浦さ、今度良かったら 取材をさせてくれないかな?
- 旭: な、我はそういうの かなり苦手なのでありますが…
- 灰谷: 石碑の件を展示をするにしても、 もう少しコンテンツが欲しいの
- 灰谷: 大学の先生を突撃した インタビュー記事も載せるけど
- 灰谷: 第一発見者のインタビューも あった方が面白いと思わない?
- 黒田: 石碑を巡る話を 色んな視点から見た方がさ
- 黒田: どこか信憑性が増すだろ?
- 灰谷: “信じられる要素がないと 存在しないのと同じだから”
- 灰谷: できればコンテンツを 充実させたいの
- 旭: …前も同じことを灰谷は 言ってたでありますな
- 灰谷: だからお願い!
- 旭: ん~~~…
- 灰谷: お願いお願いお願い!
- 旭: …………
- 旭: 外との繋がりがあるだけで、 確かに変わるのかもしれない…
- 旭: 我々は3人とも同じ牢獄に入り 誰も面会に来ない囚人であります
- アレクサンドラ: 今は私たちの悲しみや苦しみを 誰も知らず理解もしてくれません
- 旭: そうでありますな 知られることに意味がある
- 灰谷: インタビュー、 付き合ってくれる?
- 旭: 了承したでありますよ
- 灰谷: やった! ありがとうね三浦!
- 黒田: 俺からもありがとう三浦
- 旭: 認知されて信じられるためには 必要なことでありますからな
- 旭: 我が抱えている魔法少女という境遇を 魔女になってしまうという宿命を語れば 黒田と灰谷は信じてくれるだろうか
- 旭: 裏付けのなかった平家の落人伝説を信じるように 我の言う話を信じてくれるだろうか
- 旭: その場限りの同情でも下手な励ましでも欲しいと 氷室殿は言っていた
- 旭: 無意識に命を狩ることを 不安のはけ口にした我の中にも 同じような感情があって きっと見えないところに根を張っている…
- 旭: 黒田と灰谷は信じてくれるだろうか 我が話すことを信じて憂いてくれるだろうか
- 旭: (だけど、言ってはいけない 我々のことは秘密であります…)
- 旭: (魔法少女とは そういうものであります…)
- FILENAME: text_515603-3_UNnvl.txt
- みんな: 「~~♪」
- アレクサンドラ: ……………
- ラビ: 父が死んだ時ですら、 苛立ちながら救われていた…
- ラビ: 初めて気付いた…
- ラビ: 今、私はその場限りの同情や、 下手な励ましですら欲しいんだ…
- アレクサンドラ: (氷室さんの言う通りだ)
- アレクサンドラ: (私だって同じで ひとりで抱えていたくない…)
- アレクサンドラ: (友だちや先生や家族が 私たちの事情を知ってくれて)
- アレクサンドラ: (慰めの言葉を少しくれるだけで 全然構わない…)
- みんな: 「~~♪」
- アレクサンドラ: だめ…泣きそうになって 声が震えてしまう…
- 先生: なんで残ってもらったかと言うと
- アレクサンドラ: わかってます… 私の歌、ダメでしたよね…
- 先生: そうだな
- 先生: 声も腹から出ていないばかりか 持ち前の伸びもない
- 先生: パートをリードしてもらおうと 考えてはいたが
- 先生: フェストまで日がない中で 続投というのは厳しい話になる
- アレクサンドラ: ごめんなさい…
- 先生: ただ、ダメなのはダメだったが、 残ってもらった理由は他にもある
- アレクサンドラ: えっ…
- 先生: 率直に聞くが 栗栖、何があった
- アレクサンドラ: それは…………
- 先生: あ、う、悪かった 無理に聞こうとしたわけじゃ…
- 先生: 話し辛いことだったら別に 話す必要はない
- 先生: ただ、自分で抱えきれない時は 誰かに相談することを忘れるな
- 先生: 先生も教員の端くれだ
- 先生: 他に相談したい先生がいるなら 話を伝えてみる
- アレクサンドラ: いえ、大丈夫です ごめんなさい心配をかけて
- アレクサンドラ: 少しショックな出来事があって、 心の整理がつかなくて
- アレクサンドラ: でも、答えは見つかりそうなので 心配して頂かなくても平気です
- 先生: そうか…
- 先生: だが、他の部員を引っ張るには 不安が残る以上
- アレクサンドラ: はい、私は抜けます…
- 先生: 代わりに独唱パートを 任せようと思うんだがどうだ?
- アレクサンドラ: えっ!?
- 先生: バランスはとれなかったとしても 個人のレベルは申し分ない
- 先生: むしろ今抱えている揺らぎが、 人々に届ける力になると思ってる
- 先生: 栗栖がやれると言ってくれるなら 任せようと思うんだが
- アレクサンドラ: (かつて恋心を抱いた人は、 やっぱり私を理解してくれる…)
- アレクサンドラ: (不器用だけど、不器用なりに 寄り添ってくれようとしてる…)
- アレクサンドラ: (私の揺らぎを理解してくれる そんな先生になら言いたい…)
- アレクサンドラ: (言ってしまいたい… 私が抱えていることについて…)
- アレクサンドラ: でも“魔法少女のことは秘密”…
- アレクサンドラ: 魔法少女になったことも 魔女と戦っていることも 私たちが魔女になってしまうことも
- アレクサンドラ: すべて内緒にしなくてはならないのは 変わらないんだ…
- FILENAME: text_515603-4_UNnvl.txt
- ラビ: 本当に白金は 毎日のように来る
- 白金: 氷室先輩が存在することの証明を 私がしないといけないので
- ラビ: それはずいぶんと重大な 役割を背負わせた
- 白金: 本当ですよ
- ラビ: 周りはフェストの準備とかで 忙しいみたいだけど
- ラビ: 白金は大丈夫? 家は農家だったでしょう
- 白金: 私は興味ないんで
- 白金: 氷室先輩も湯国温泉郷の関係で 手伝いとかないんですか?
- ラビ: 私もフェストには興味ないから 当日に軽く手伝うだけ
- 白金: 同じじゃないですか
- ラビ: …………
- 白金: なんですか急に見つめて
- ラビ: …もう少し見つめさせて
- 白金: いいですよ?
- ラビ: …………
- ラビ: 最近、三浦や栗栖といった魔法少女と 知り合ったとは言っても それまでの私は常にひとりで 自分の存在を証明できるのは家族以外に この白金ひとりだった
- ラビ: きっと彼女は 偽った姿を私に見せていない
- ラビ: それなのに私は偽っている 私を受け止め続けてくれる彼女に対して 自分の素性を偽っている
- ラビ: 正直、彼女が認めてきた私が偽りなら 存在証明なんてされてなかったことになる
- ラビ: そればかりか 私の存在を証明することで保たれていた 白金という存在の意味も失われてしまい 私は彼女を裏切ることになる
- ラビ: (それは耐えられない…)
- ラビ: 白金…
- 白金: はい、さっきから変ですけど どうしたんですか?
- ラビ: 実は私は隠していたことがある…
- 白金: 隠していたこと? 裏表なんてなさそうなのに
- ラビ: でも、私は裏の顔を持っている それを告白したい
- ラビ: 私を証明してくれる 白金への誠意だと思うから…
- 白金: …わかりました では、心して聞きますね
- 白金: 絶対に茶化したりしません
- ラビ: …実は
- ラビ: っ…!?
- ラビ: どうして、ここで言葉が詰まる
- ラビ: 魔法少女のことは秘密だから…? 心のどこかで嫌われると思ってる? 変なやつだと認識されると思ってる? 引かれるのではと思ってる?
- ラビ: こんな不安なんて覚える必要はないし 白金とはあまりにも無縁のこと
- ラビ: 何も問題はない、ないはずだ!
- ラビ: 白金、実は!
- ラビ: ぐっ!?
- 白金: どうして 話してくれないんですか?
- 白金: 私はずっと信じてたのに 氷室先輩のことを…
- 白金: 私が見てきたあなたは何? あなたは何者なの?
- ラビ: やめ、首がしまっ、て…
- 白金: 早く言いなさい!
- ラビ: ――っ!?
- ラビ: (魔女の口付け…)
- ラビ: (近くに反応があることに 気付かなかったなんて…)
- ラビ: くっ!
- 白金: あっ!
- ラビ: 自分のことに捕らわれて なんて不甲斐ないんだ私は…
- 白金: …………
- ラビ: すぐに助ける
- FILENAME: text_515603-5_UNnvl.txt
- 白金: っ、ううん あれ、私はどうして…
- 白金: 氷室…先輩…?
- 白金: あ、私、ごめんなさい! どうして、どうして先輩に…
- ラビ: 白金、落ち着いて
- 白金: でも、自分がなんで首を絞めたか 全然わからなくて…!
- ラビ: この通り、私は平気だから
- ラビ: 何もなかった以上は、 白金を責める理由はない
- ラビ: それに私たち魔法少女は
- ラビ: 魔女に操られてしまった 白金のような子を助けるのも
- ラビ: 役割のひとつだから
- 白金: 魔法少女…魔女…? 何を言ってるんですか先輩…
- 白金: っ、その格好…
- ラビ: 今の現象で 説明が省けたかもしれない
- ラビ: 白金が私に手を掛けたのは、 魔女という存在のせい
- ラビ: そして私はその魔女と戦う 魔法少女で
- ラビ: ちょうど、あなたを操った魔女を 倒してきたところ
- 白金: 理解がちょっと…
- 白金: 私は魔女に操られていて、 魔法少女の氷室先輩が倒した…?
- ラビ: その解釈でいい
- ラビ: 魔女はこの世の事件や事故を 引き起こす原因でもあって
- ラビ: 白金が被害に遭ったのは、 心に隙が生まれたからだと思う
- ラビ: 私が突然変なことを言って 不安にさせたせいかもしれない
- ラビ: ごめんなさい
- 白金: は、はい…
- ラビ: これがあなたに伝えたかった 私が持っている裏の顔
- 白金: 氷室先輩は、私のような人を たくさん助けてるんですね…
- ラビ: ただ、皮肉なことに 魔法少女は魔女を倒すけど
- ラビ: 魔法少女が力尽きた時に 行き着く先は魔女
- ラビ: 一概にいいとは言えない
- 白金: ごめんなさい…
- 白金: やっぱり氷室先輩の話を すべて飲み込むのは難しいです
- ラビ: 無理もない 私だって同じだから…
- 白金: でも…
- 白金: 私はとりあえず信じます
- 白金: 数少ない信用できる人の言葉を 私は先に飲み下しておきます
- 白金: 反すうして咀嚼するのは、 それからあとでも構いませんし
- 白金: 氷室先輩の言葉だから
- ラビ: …ありがとう、白金
- ピロン♪
- 白金: 家からですか…?
- ラビ: いえ、他でも魔女が出たみたい だから少し行ってくる
- 白金: …わかりました
- ラビ: じゃあ、また今度
- 白金: うそ、飛び降りた…
- 白金: …………
- 白金: あんなに速く移動するなんて 本当に氷室先輩は…
- FILENAME: text_515603-6_UNnvl.txt
- 旭: なっ!
- 旭: それでは、氷室殿は自分の正体を 話したってことでありますか!
- アレクサンドラ: それで相手の反応は!? 普通は信じられませんよ!
- ラビ: まだ意味を深く理解してくれた わけじゃないけど
- ラビ: 白金は咀嚼するより前に信じて、 言われたことを飲み込むって
- ラビ: そう言ってくれた
- アレクサンドラ: すごい…
- アレクサンドラ: なんだか私、自分にブレーキを かけたのが不思議です…
- アレクサンドラ: 私にだって信用してる人はいる
- アレクサンドラ: それなのに秘密にしなきゃって 勝手に思っちゃって
- 旭: 我だって サーシャ殿と同じでありますよ
- 旭: 知ってもらいたいという 気持ちを抱いていたにも関わらず
- 旭: 正体を明かせないと 思っていたでありますよ…
- ラビ: 正直迷いはあった…
- ラビ: 境遇はどうであれ、 私たちは自分の望みを叶えている
- ラビ: 本来の人生では有り得ない、 ズルをしている
- ラビ: だからこそ、 誰かに憐れんで欲しいと思うなど
- ラビ: ただの高望みで傲慢だろうかと 思いもした
- ラビ: だけど、振り返れば失ったものの 方が多いようにも感じた
- 旭: …命を常に危険にさらしている
- アレクサンドラ: 命を危険にさらさないと 生きることすら許されない…
- 旭: その上、魂が穢れに染まれば 魔女になってしまう…
- ラビ: そして、願いを叶えたとしても、 良い結果になるとは限らない
- 旭: …………
- アレクサンドラ: …………
- ラビ: …………
- ラビ: プライバシーに関わるから、 深くは聞かないけど
- ラビ: 思いあたるところはあるはず…
- 旭: そう考えると我々は 必要以上に不幸になっている…
- アレクサンドラ: 下手をすれば願いを叶える前より 不幸せなのかもしれない…
- ラビ: それなら、少しは自分の幸せを、 取り戻してもいいのでは…?
- ラビ: そんな思いが私の中を巡った
- 旭: つまり、誰かに知らせることで、 慰めを得ることは傲慢ではない…
- アレクサンドラ: 失った分を取り戻すだけだから、 それぐらい許される…
- ラビ: だから、これは相談だけど 3人でやってみない?
- ラビ: 魔法少女のことを 世間に知ってもらうための活動を
- FILENAME: text_515604-1_UNnvl.txt
- うらら: というワケで今週も始まったんよ
- うらら: うららと!
- くらら: くららの!
- うらら&くらら: 夜遊びホームルーム!!
- うらら: 今日もいつもの収録スタジオから 生放送でお送りするんよ!
- くらら: って、辺境のテレビ局だからって 予算が全然ないだけでしょ?
- うらら: いきなり内部事情の告白は えげつないんよ!
- うらら: スタッフが、魔女も蔓延る 深夜に至るまで会議をした上に
- うらら: 予算を切り詰めて実現した、 努力の結晶と言える放送なんよ!
- くらら: 出た出た“魔女”!
- くらら: なんか、うららってば最近、 その都市伝説にハマってるよね
- うらら: ハマってるも何も、 実際にウチは襲われたんよ
- うらら: しかも助けてくれたのは、 魔法少女っていう人たち!
- うらら: 自分の危険なんて省みずに、 ウチらを助けてくれる
- うらら: 日常の中に隠れたヒーローだから 会ったら応援して欲しいんよ!
- くらら: んー、私は見たことないし、 あんまり信じられないかも
- くらら: そもそも、そんな危険な目に 遭うのは嫌だし
- うらら: 言われてみればそうなんよ
- うらら: 魔法少女と会わない方が 幸せかもしれないんよ
- くらら: 危険な目に遭ってないからね
- うらら: まぁ、みんな魔法少女は 過酷な運命を背負ってるので
- うらら: 応援して欲しいんよ
- くらら: 以上、うららの オカルトコーナーでしたー
- うらら: まだオープニングトークなんよ! 変な枠を作らないで欲しいんよ!
- ラビ: この放送は…
- アレクサンドラ: この間、私たちが助けた子で、 ネットで番組をやってたんです
- アレクサンドラ: ケーブルテレビで放送してから、 アーカイブ配信をしてるそうです
- アレクサンドラ: 年代的には中高生の子たちが よく見ているみたいですよ
- ラビ: 魔法少女の話を広めるにしても 手段が課題だった…
- 旭: それゆえに 思わぬ助け船でありますな
- 旭: 彼女を助けたことがこんな形で プラスに働くとはなんとも
- アレクサンドラ: 運命とも言うのでしょうか 不思議ですね
- アレクサンドラ: 正直、この放送を見るまでは、 すごくネガティブだったんです
- アレクサンドラ: 魔法少女の話を広められずに 虚しい思いが続いて
- アレクサンドラ: 結局、何かに捕らわれる感覚と 付き合い続けるんだろうなって
- アレクサンドラ: だけど、勇気が湧いてきました うふふ♪
- ラビ: 影響力のある人が 私たちの存在を流布してくれる
- ラビ: これほど、心強いことはない
- 旭: 我らの知らない間に気がつけば 広まってるかもしれない
- 旭: あとは我々の正体を どう明かすかでありますな
- ラビ: ちなみに放送はいつされた?
- アレクサンドラ: 1時間ほど前に 終わったところです
- アレクサンドラ: 今のもアーカイブ配信なので、 これから見る人もいると思います
- ラビ: それなら噂になっているかどうか 明日、学校で耳を澄ませてみる
- アレクサンドラ: 私もそれとなく部活の仲間に、 話題を振ってみます
- 旭: そうでありますな
- 旭: (我も氷室殿も世情に疎いので サーシャ殿には助けられる)
- 旭: (流行を追うということは、 大切なものでありますな)
- 旭: …この反応は魔女
- 旭: (ここは、雪崩と一緒に 土砂災害の酷かった地域…)
- 旭: 黒田…?
- 黒田: …………
- 旭: (そうか、確か黒田は この辺りが出身だったはず…)
- 黒田: お袋もまともに守れずに、 何が男だよ…
- 黒田: なんで他のヤツは死んで、 俺だけ生き残ってるんだよ…
- 黒田: アイツまでいなくなったら俺は…
- 旭: な…馬鹿!
- 黒田: ぐっ、何するんだ三浦…!
- 旭: 自分の首に包丁を当ててるヤツを ただ見てられないであります!
- 黒田: 邪魔するナァアアア!!
- 旭: そうくるなら!
- 黒田: ガッ
- 旭: 魔女の口付けでありますか…
- ラビ: だから、これは相談だけど 3人でやってみない?
- ラビ: 魔法少女のことを 世間に知ってもらうための活動を
- 旭: (いっそ、どんな反応をするか、 ふっかけてみるであります…)
- FILENAME: text_515604-2_UNnvl.txt
- 黒田: ぐ、う、うぅ、俺は…
- 旭: 目覚めたでありますか
- 黒田: ――っ!?
- 黒田: お前、なんだその格好
- 旭: 面と向かってそう言われると、 恥ずかしいものであります…
- 旭: 魔法少女でありますよ
- 旭: 黒田の様子がおかしかったので 探ってみたら
- 旭: 魔女の影響を受けていたので 解決してきたんでありますよ
- 黒田: 魔法少女…魔女って…
- 黒田: まさか、夜遊びホームルームで 言ってたやつか
- 旭: やっぱり、あの番組を見て 知ってたでありますか
- 黒田: いや、あれは都市伝説で、 それはコスプレだろ…?
- 旭: しっつれいな!
- 旭: これでも、有愛うららが目撃した 魔法少女のひとりでありますよ!?
- 黒田: …………本当かよ
- 旭: こんなウソをついても なんの得もしないでありますよ
- 旭: そもそも恥ずかしいで ありますからな…
- カラン…
- 黒田: あ…この包丁…
- 黒田: そうだ…俺… なんか急にヘコんできて
- 黒田: 考えないようにしてたことが 急に頭ん中を巡って
- 黒田: それで、なんかみんなに悪いから 俺も死のうって…死のうって…!
- 旭: 落ち着くであります
- 旭: 本音かもしれないでありますが その感情を増幅させたのは魔女!
- 旭: 黒田は弱っているところで、 目をつけられたのであります
- 黒田: ほんと、悪いとは思ってても、 死のうなんて考えたこと…
- 旭: わかってるでありますよ
- 旭: だけど、そうやって追い込んで 人の命を消していく
- 旭: だから魔女というのは、 始末に負えないのであります…
- 黒田: ごめん…ありがとう…
- 黒田: なんか急に実感が湧いてきた…
- 黒田: それに魔法少女だなんてウソを 三浦がつくと思えないしな…
- 旭: なので、あの… 信じてもらえれば幸いであります
- 旭: 我も放送で存在を明かされるとは 思わなかったでありますよ…
- 黒田: …わかった
- 旭: では、我は行くであります
- 黒田: あ、三浦!
- 旭: なんでありますか?
- 黒田: 改めて、 助けてくれてありがとう
- FILENAME: text_515604-3_UNnvl.txt
- 旭: …………
- 旭: ふむ…
- 旭: (魔法少女…魔女…昨日の番組 夜遊びホームルーム…)
- 旭: (放課後まで話を聞いた限りだと ちらほら聞こえるであります…)
- 旭: (都市伝説の領域ではあるものの メディアの力は絶大であります)
- 灰谷: あ、三浦お疲れさま!
- 灰谷: この間はインタビューありがとね
- 旭: お安い御用であります
- 旭: とはいえ、ただ見つけただけで 良いネタはなかったと…
- 灰谷: そこは私の方でちょちょいと 編集しておくから安心して
- 旭: それは捏造では…
- 旭: む、もしかして、その紙の束は これから記事を作るところで?
- 灰谷: そうそう、印刷じゃなくて 壁に展示するやつは手書きだから
- 灰谷: めちゃくちゃ大変なの
- 灰谷: たぶん残りの大量の紙は 黒田が運んでくると思う、ほら
- 黒田: お、三浦!
- 旭: ご苦労でありますな
- 黒田: こういった力仕事こそ、 俺の出番だからな
- 黒田: そうだ、荷物を置いたあとで、 ちょっと時間くれないか?
- 旭: 我でありますか?
- 黒田: ああ、ちょっとだけ 話したいことがあってさ…
- 灰谷: キャー、黒田ったらもしかして 三浦のことを…!?
- 黒田: 何を考えてんだ、ちげーよ
- 旭: で、なんでありますか?
- 旭: (灰谷が変なこと言うから 妙に緊張するであります…)
- 黒田: 実は三浦にお願いがあるんだ
- 旭: あ、改まって、 なんでありますか…?
- 黒田: …………
- 旭: …………
- 黒田: 実は告白しようと思うんだ フェストの当日に!
- 旭: 告白…
- 黒田: ああ、灰谷に…
- 旭: っ、あぁ、そうでありますか
- 黒田: なんだよその反応…
- 旭: いや、そもそも我に言われても 手伝えることはないでありますよ
- 黒田: ある!
- 旭: ええ…?
- 旭: 連れて来なくても、 大体ふたりは一緒でありますし
- 旭: それに我は基本的に、 不器用であります
- 黒田: いや、お前って魔法少女だろ…?
- 旭: あぁ…あの話… 本当に信じてるでありますか!?
- 黒田: え、ウソなのか?
- 旭: いやいや本当であります!
- 旭: むしろ信じてくれたことに 安心と驚きが…
- 黒田: 本当だったらさ、告白の時に 俺をサポートしてくれよ
- 旭: はぁ…ハァ?
- 黒田: つまり、魔女が俺の告白を 邪魔するなら防いでくれ!
- 旭: な、なるほど、 そういうことでありますか
- 旭: (呪いを振りまくとはいえ、 魔女もそんな瑣末なことは…)
- 旭: (と、考えるのは 黒田に失礼でありますな…)
- 黒田: どうかお守りください!
- 旭: 別に構わないでありますが…
- 旭: フラれても我のせいには してほしくないであります…
- 黒田: それは当然だろ じゃあ守ってくれるんだな
- 旭: 友の頼みでありますからな
- 黒田: ありがとう 恩に着るよ三浦!
- 旭: (変な約束をしてしまった… 少々不安でありますな…)
- ピロン♪
- ラビ: キュゥべえが有愛うららを追っている また、魔女がいる恐れがあるので 先行して私の方は追いかけている
- ラビ: もしも近くにいるようであれば 三浦と栗栖は添付した場所の近くまで 来て欲しい
- ラビ: 恐らく魔力の反応を辿れば 私の居場所がわかる
- 旭: またでありますか!
- FILENAME: text_515604-4_UNnvl.txt
- ラビ: …………
- うらら: ごめんなさいなんよ… また助けてもらったんよ…
- ラビ: 私はキュゥべえの被害者を 増やしたくなかっただけ
- キュゥべえ: ボクは有愛うららに 危害を加えるつもりはないよ
- キュゥべえ: 魔法少女にならないか 改めて聞きたかっただけだからね
- ラビ: それが、魔女が好みそうな場所に 誘導した言い訳になる?
- キュゥべえ: 何か勘違いしているようだし、 話を聞いてくれる様子じゃないね
- ラビ: あなたとの会話は 噛み合うようで噛み合わないから
- キュゥべえ: どうやら冷静に話し合うのは 難しそうだね
- キュゥべえ: また機会を改めることにするよ
- ラビ: 改めないで
- キュゥべえ: それじゃあね、有愛うらら
- ラビ: はぁ、大丈夫…?
- うらら: あの…実は危なそうなところに 入ったのはウチなんよ…
- ラビ: え…?
- うらら: 前に魔女に襲われた時を 思い出して
- うらら: 同じようなシチュエーションを 作ってみたんよ…
- ラビ: どうして?
- ラビ: もしかして自殺志願者で 私が邪魔をしてしまった…?
- ラビ: それほどの悩みを抱えていれば 魔女が目をつけるのも頷ける
- うらら: 違うんよ
- うらら: 実はまた 魔法少女に会いたかったんよ
- うらら: それもウチを助けてくれた 魔法少女に会いたくて…
- ラビ: ――っ!?
- ラビ: 私たちっていうこと…?
- うらら: そう、だから聞いてくれたらって 番組で話題にしてみたり
- うらら: キュゥべえや魔女に会えそうな 行動を毎日続けてみたんよ
- ラビ: …ふっ
- ラビ: それで私たちはあなたの下げた 釣り針にかかった
- うらら: 名前も知らないから、どうすれば 会えるかわからなかったんよ…
- ラビ: おかげで町の学生たちが、 魔法少女のことを知ってくれて
- ラビ: 私たちにとってもプラスだった 文句は言わない
- ラビ: それにちょうど 残りのふたりも近くに来てる
- ラビ: 聞きたいことがあるなら、 道中で自己紹介でもしながら
- ラビ: どこかのお店で ゆっくり話をしましょう
- うらら: ありがとうなんよ
- ラビ: ちなみに何が聞きたいの?
- うらら: ウチを魔女から助けてくれた ふたりの魔法少女についてなんよ
- ラビ: …………
- FILENAME: text_515604-5_UNnvl.txt
- アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
- 旭: この反応はまるで…
- ァアアアアアアッ!!
- うらら: それ…本当なのん…?
- うらら: あのときの話はウソじゃなくて 本当にふたりは魔女に…?
- ラビ: 私たちも知らなかった
- 旭: まさに、うらら殿を帰した日に 我々も真相を知ったでありますよ
- アレクサンドラ: だから、もう一度言うけど、 魔法少女になっちゃダメだよ
- アレクサンドラ: どれだけ、悩みを抱えていても 強い欲求があったとしても
- アレクサンドラ: キュゥべえの言葉に乗った先には 辛い宿命が待ってるから…
- うらら: わかったんよ…
- うらら: でも、ひどいんよ…
- 旭: 責められても 文句は言えないであります…
- 旭: 結局、我々魔法少女たちが、 呪いを振りまいてるようなもので
- うらら: 違うんよ…!
- うらら: そんなの対価として見合わない 宿命としか思えないんよ…!
- 旭: うらら殿…
- ラビ: だから、せめて私たちのことを 知って欲しいと思って
- ラビ: 3人で世間に知らせるための 行動を起こそうとしていた
- ラビ: 解決しなかったとしても、 慰めの言葉が欲しかったから…
- うらら: ウチも助けてもらった以上は、 黙って見てられないんよ
- うらら: 何か協力したいんよ
- アレクサンドラ: もう、してくれていますよ
- うらら: そんなはずないんよ
- アレクサンドラ: 私たちに会うために、番組で 魔法少女を紹介してくれました
- アレクサンドラ: おかげで学生たちの間には、 広まり始めたんです
- うらら: あ…
- ラビ: まさにメディアの力 むしろ私はあなたに感謝してる
- 旭: 実際、うらら殿の番組を見た者を 昨日助けたのであります…
- 旭: 自分の友人だった手前、 魔法少女だと告白したところ
- ラビ: どうだった…?
- 旭: 受け入れてくれたであります それも、好意的に
- アレクサンドラ: うららちゃんの番組の力は ちゃんと発揮されていますね
- うらら: こんな形で力になれているなんて 自分でも驚きなんよ
- アレクサンドラ: うふふっ♪
- アレクサンドラ: 「実は魔法少女の中にも変化があって グループメッセージを見ていると 自分のことについて誰かに伝えてみようって 考えてる人が増えてるみたいなんです」
- アレクサンドラ: 「魔女になってしまうという真相は 魔法少女の間でも知らない人が多いですし デリケートでセンシティブな話題なので 話の中には出てきませんが」
- アレクサンドラ: 「それでも、魔法少女と魔女のことについては 信頼できる人に伝えようとしているんです」
- うらら: それ、もしかしたら、 チャンスかもしれないんよ
- アレクサンドラ: チャンス?
- うらら: みんなのことを湯国市中に伝える チャンスってことなんよ
- ラビ: 詳しく聞かせて
- うらら: 今度、フェストのステージで パフォーマンスをするんだけど
- うらら: 出張夜遊びホームルームの プログラムも確保されてるから
- うらら: 魔法少女の話題を出しつつ、 3人をゲストで紹介するんよ
- うらら: くららには怒られちゃうかも しれないけど
- うらら: これは魔法少女を 都市伝説から引っ張り上げる
- うらら: 千載一遇のチャンスなんよ!
- ラビ: かなりリスクは高そうだけど…
- 旭: 千載一遇のチャンスと言われると 確かにそうであります
- うらら: ただ、長く時間はとれないんよ
- アレクサンドラ: 伝えることや見せることは 極力絞った方が良さそうですね
- ラビ: ええ、私や三浦が魔法少女として 友人に受け入れられたのは
- ラビ: 元の関係値があったからこそ
- ラビ: ちゃんと段階を踏まないと 混乱を生む
- アレクサンドラ: そうですね
- うらら: じゃあ、とりあえずフェストで みんなに出てもらう件は…
- アレクサンドラ: やってみましょう
- 旭: そうでありますな
- ラビ: うん
- FILENAME: text_515604-6_UNnvl.txt
- ラビ: …………
- ラビ: (誰かに知ってもらう… それはきっと正しいこと…)
- ラビ: そうだよね…お父さん…
- ラビ: (よくわからない 私には難しい哲学の本ばかり…)
- ラビ: (でも、ときどき内容を 教えてくれたのを覚えてる…)
- ラビ: そう確か…
- ラビ: 苦しみというものを肯定するような内容で
- ラビ: “人は乗り越えることで成長を感じられる 力があると感じられるから幸せになれる”
- ラビ: そんなことが書いてあった気がする
- ラビ: (力があるのが幸せって、 危険な感じがするけど)
- ラビ: (何かを乗り越えることで 自信に繋がるのはわかる)
- ラビ: (今、自分に課せられているのは それこそ魔法少女の宿命で)
- ラビ: (誰にも知られることなく、 苦しんでいるけど)
- ラビ: (知ってもらうという壁を 越えるだけでも)
- ラビ: (きっと私は 幸せになれると思う)
- ラビ: 湯国市オールスターフェスト そこで壁を越えよう
- FILENAME: text_515605-1_UNnvl.txt
- 「湯国市オールスターフェストが開催決定!」
- 「地域の名産品が目白押しの直売所に 湯国市の歴史や習わしに関する展示が盛り沢山」
- 「さらに、ステージでは 地元の天才大道芸人“有愛うらら”が ユニットを組んで技を披露!」
- 「他にも気になるコンテンツが詰まった イベントに、みんなで一緒に参加しよう! 詳しくは湯国市観光組合のHPをチェック!」
- アレクサンドラ: (少し先だと思っていたのに、 もうやってきましたね)
- アレクサンドラ: (湯国市オールスターフェスト)
- 先生: 本番当日を迎えたが、 各々、心の準備はできたか?
- みんな: 「はいっ!」
- 先生: では、出番まで時間があるから 自由に遊んできなさい
- 先生: ずっと緊張したままだと、 本番までに疲れ切るからな
- 先生: 次に集合するのは30分前 場所はここだ
- 先生: では、解散
- アレクサンドラ: ふぅ…
- 先生: ノドの調子は大丈夫そうか
- アレクサンドラ: はい、おかげさまで 今日は独唱パート頑張ります♪
- 先生: 言わずとも期待してるぞ
- むぅ、湯国温泉郷のパンフレット まだ届いてないのか
- ここに置いて 配るはずだったんだが…
- ラビ: 先ほど吉祥旅館の女将さんが 取りに行きましたよ
- そうかそうか ありがとう、ラビちゃん
- ラビの母: ラビ、野菜の棚はもう埋まった?
- ラビ: うん、少し遅れたけど ようやく終わったところ
- ラビの母: あなたの体を治してくれた 野菜たちだから
- ラビの母: この機会に沢山の人たちが 知ってくれるといいわね
- ラビの母: お爺ちゃんもお父さんも 喜んでくれると思うわ
- ラビ: そうだね
- 白金: 先輩、おはようございます
- ラビ: あ、おはよう白金
- 旭: 我々の出店も 問題はなさそうでありますな
- 旭: (あとはこのフェストで、 自分たちの出番を待つばかり…)
- 黒田: よぉ、三浦 準備の方は順調にいってるか?
- 旭: 確認も終えて万全でありますよ よければひとつどうでありますか
- 黒田: 俺も地元民だからなぁ 鹿もウサギも食ったことあるよ
- 旭: まぁ、とりあえず 今日は応援してるでありますよ
- 黒田: こっちこそ頼りにしてるぞ
- 灰谷: あ、いたいた黒田 最後に展示の確認があるって!
- 黒田: マジで? ごめん、すぐ行く
- 灰谷: あ、私も三浦と話があるから 先に戻ってくれる?
- 黒田: オッケー
- 旭: 我に話でありますか?
- 灰谷: ひとつは展示の件
- 灰谷: インタビューの記事もできたし、 満足できる仕上がりになったわ
- 灰谷: 手伝ってくれてありがとうね
- 旭: そんなことでありますか 改めて言わなくていいであります
- 灰谷: 三浦のそういうところ好きだよ
- 灰谷: それで、もうひとつは 黒田の件なんだけど
- 旭: く、黒田でありますか?
- 灰谷: …たぶん私、 告白される気がする
- 旭: ぶっ…!
- 灰谷: ちょっと大丈夫!?
- 旭: 驚いただけでありますよ…! しかし、なぜそれを我に…?
- 灰谷: たぶん私、変なこと言われなきゃ 普通にオーケーすると思うの
- 灰谷: で、付き合うとか まだよくわからないんだけどさ
- 灰谷: 他の子とか見てると、彼氏優先で 友だちと疎遠になっててさ
- 灰谷: 私、三浦とは友だちでいたいから それだけ伝えたくて
- 旭: 灰谷…
- 旭: 少し疎遠になるぐらいで 嫌いになるのは友だちではない
- 旭: 我はそう思うであります
- 旭: だから何も気にせず堂々と、 黒田を受け入れるでありますよ
- 灰谷: うん、ありがとう
- うらら: 今日のMCを担当するのは、 湯国市きっての大道芸人コンビ!
- くらら: うららとくららでお送りします!
- うらら: それでは開場5秒前の カウントダウンを始めるんよ!
- 「5!」
- 「4!」
- 「3!」
- 「2!」
- 「1!」
- うらら&くらら: 湯国市オールスターフェスト はじまりまーす!
- FILENAME: text_515605-2_UNnvl.txt
- 旭: お、氷室殿!
- ラビ: 三浦、まさかこんな広い会場で 遭遇するなんて
- 旭: 驚きでありますな っと、友人の方もご一緒で…
- 白金: 初めまして白金といいます
- 旭: ご丁寧にどうも 我は三浦旭であります
- 旭: これから学校の実行委員の展示を 見に行くのでありますが
- 旭: よければ、おふたりも一緒に いかがでありますか?
- ラビ: 何にも興味が湧かなかったから ちょうど良かった
- 旭: 身も蓋もない言い方であります…
- 白金: いざ、読んでみると面白いです
- 白金: 湯国温泉郷の地熱料理とか 芸事の文化って面白いですね
- ラビ: 元々、私が住んでる辺りは 温泉地でありながら宿場町だから
- ラビ: 人の行き交いが多くて、 芸で生計を立ててる人もいた
- ラビ: 書いてあるみたいに、ある時期は かなり華やいでたみたい
- 白金: 同じ湯国市の中でも地域によって 文化の色が違いますね
- 旭: 我のような山林の中で暮らす者は 林業か狩猟業が多いであります
- 旭: とはいえ、我の家も含めて 兼業が多いでありますな
- 白金: こっちにある平家の落人伝説 記事に書いてあるのって…
- 旭: 我でありますよ
- 旭: 真偽は定かではないでありますが 石碑を発見したのであります
- 白金: 「口承とわずかな文献だけが 裏付けとされていたが」
- 白金: 「調査の結果次第では、 重要な物証となるかもしれない」
- 白金: …存在証明
- 白金: 知覚されない存在は無いのと同じ まるで魔法少女ですね
- 旭: ――っ!?
- ラビ: 私が自分の正体を明かした相手が 白金ということ
- 旭: そうだったのでありますか
- 白金: 三浦さんと栗栖さんの話も 氷室先輩から伺ってます
- 白金: もしも力になれることがあれば 言ってください
- 白金: 私に友だちはいませんが、 その分、障壁もありませんから
- 旭: …白金殿は、なぜ氷室殿の話を 信じようと思ったのでありますか
- 白金: 「自分たちのような目的もなく 誰にも認知されないような空虚な存在は 多くから見られることによって 自己を保存するんだ」
- 旭: …………?
- 白金: 氷室先輩が私に言った言葉です
- 白金: 私という個を保存してくれたのは 氷室ラビという人です
- 白金: そんな自分を証明する存在を 私は否定するすべを知りません
- 旭: どこまでも氷室殿のことを 信用するということでありますか
- 白金: …たとえ魔法少女の行く果てを 知ったとしても
- 旭: …………そこまで…
- ラビ: 白金のことを世間に知らせる 指標にするべきではないと思う
- ラビ: 私たちは他の友人関係とは違って 歪な繋がりを持っているからこそ
- ラビ: 魔法少女の宿命を 受け入れられたに過ぎないと思う
- 旭: 承知しているでありますよ
- 旭: 我も段取りを踏むべきだと 思うであります
- ラビ: そろそろ栗栖の歌唱もあるし ステージに移動しよう
- FILENAME: text_515605-3_UNnvl.txt
- アレクサンドラ: はぁ~緊張しました~♪
- 旭: いやぁ、とても素晴らしい 歌唱でありました
- ラビ: 私も驚いた
- ラビ: 練習を積み重ねた歌声は、 伸びやかに響くものなんだって
- ラビ: 混声の合唱も素敵だったけど あなたの独唱が好きだった
- アレクサンドラ: きゃ~、なんだか恥ずかしい ありがとうございます♪
- 旭: 本当、素直に感動したで ありますな
- うららの声: 「さ、ステージは早くも中盤戦なんよ!」
- くららの声: 「軽く今後のおさらいをしておくと このあとは湯国市の民俗資料館の館長さんと 民俗学の学者さんとの対談があります」
- くららの声: 「そのあとは私とうららによる ディアボロの演技があって 出張夜遊びホームルームの時間になりまーす」
- うららの声: 「今回はただのトークだけじゃなくて ゲストを呼んだコーナーも用意してあるんよ」
- くららの声: 「最近、うららがハマってるあれでしょ?」
- うららの声: 「そう、湯国市の学生さんならご存知 あの魔法少女と連絡がとれたので ゲストで来てもらうことになってるんよ」
- うららの声: 「ひとつの都市伝説が現実になる瞬間を みんな見逃さないで欲しいんよ」
- くららの声: 「あと、今日はフェストに投票してくれた コンテンツランキングの結果発表もあるので ホームルームの時間は 欠かさず出席するように!」
- うららの声: 「それではさっそく偉い先生のおふたりに 登場してもらうんよ!」
- みなさんこんにちは 湯国市立民俗資料館の館長です
- この町出身の学生なら遠足などで お会いしてるかもしれませんね
- 今日はよろしくお願いします
- 太助: 皆さんはじめまして
- 太助: 民俗学を専門に研究をしています 里見太助と申します
- 太助: 本日は町に訪れる話をしたところ 館長からお誘いを受けまして
- 太助: 急遽対談を させてもらうことになりました
- 太助: よろしくお願いします
- ラビ: …………
- 白金: …氷室先輩? どうかしましたか?
- ラビ: いえ、なんでもない
- 白金: それにしては、 らしくない驚き方でしたが…
- ラビ: 少し、知り合いに 似ていると思っただけだから
- ラビ: ――っ!?
- 旭: 氷室殿とサーシャ殿も 感じたでありますか…?
- アレクサンドラ: はい、魔女の魔力反応です それも…
- 旭: ここは、なんでありますか…
- ラビ: どう見たって魔女の結界…
- 旭: …我が彼女たちから感じた魔力と この魔女の反応は同じ…
- アレクサンドラ: つまり、間違いなくこの魔女は、 ふたりの魔法少女…
- アレクサンドラ: 私たちが目撃した あの時、魔女になったふたり…
- ラビ: まだ誰にも倒されることなく 生き残っていた
- 旭: 我々がゲストとして出るまで 少し時間が残ってるであります
- 旭: フェストに被害が及ぶ前に 倒しに行くであります
- ラビ: 他の魔法少女にも連絡を取ろう
- アレクサンドラ: はい、私もそれに賛成です
- FILENAME: text_515605-4_UNnvl.txt
- アレクサンドラ: 今、湯国市オールスターフェストにいるんですが 近くに魔女の気配を感じました
- アレクサンドラ: 数は2体 かなり前からいる魔女の反応なので 成長していて強いと思われます
- アレクサンドラ: 私たちは3人いるのですが 被害はなるべく最小限に食い止めたいので どなたか手伝ってくれませんか?
- 私たちも近くにいるところ
- ひとりはフェストで忙しくしてるから 参加は難しいと思うけど ふたりなら途中から手伝えると思う
- アレクサンドラ: ふたりを 待っている余裕もありませんね…
- ラビ: 私たちが先行して戦う
- ラビ: ただ、仕留めきれなかった時の サポートはしてもらおう
- 旭: そうでありますな
- 旭: 我々と彼女たちによる二段構えで 確実に仕留めるであります
- 旭: まずいであります…
- 旭: 2体居たはずが、 1体だけ移動したようであります
- アレクサンドラ: 元々、二手に分かれない限りは、 同時に押さえることはできません
- アレクサンドラ: ここでひとりが対応して、 ふたりでもう1体を探しましょう
- ラビ: まだ、そう遠くに行ってない すぐに追いつけるはず
- ラビ: 栗栖はサポートに長けてるから 誰かと一緒に組んで
- ラビ: 私と三浦で分かれよう
- 旭: では、我がひとりでこの魔女と 戦うことにするので
- 旭: ふたりは、残りを
- アレクサンドラ: わかりました 氷室さんは構いませんか?
- ラビ: ええ、もちろん
- FILENAME: text_515605-5_UNnvl.txt
- うらら: おふたりとも貴重なお話 ありがとうございました!
- くらら: はい、民俗学が何かすら 理解できてなかったんですけど
- くらら: おふたりの話を聞いて、 すごく興味が湧いてきました
- 太助: 私の方こそ多くの方に話を 聞いて頂ける機会は少ないので
- 太助: 貴重な時間を過ごせました
- よろしければ、 資料館に遊びにきてくださいね
- 黒田: なんか、すっごく感動した
- 灰谷: 民俗学の話が?
- 黒田: いや、俺たちが作ってきた展示 すごく褒めてくれただろ?
- 黒田: なんか、やって良かったなって
- 灰谷: 授業の前も後も 時間をかけてよかったよね
- 黒田: うん、ありがとうな灰谷
- 灰谷: 黒田も一緒に頑張ったんだから お互い様でしょ?
- 黒田: いや、冬の雪崩でお袋が死んでさ 俺を気遣ってくれてただろ…?
- 黒田: フェストの実行委員会に 誘ってくれたのも
- 黒田: 俺が悲しんでドツボにハマるのを 防いでくれたのかなって
- 灰谷: 意外と鋭いのね
- 灰谷: 黒田が好きだからさ、 支えたくなっちゃったんだ
- 黒田: えっ
- 旭: やはり、かなり強い… で、ありますが…
- 惡此令母 母沙利伴 人惡多執
- …………
- 旭: (そう、お前が追いかけたのは 我が魔力を込めた短剣…)
- 旭: 捜している本命は、 こっちでありますよ!
- 奇慈佛影 生裏華爾 偏佛日衆
- 旭: (接近して…)
- 旭: (考えるな… 元の姿を思い出すな…!)
- 旭: (罠にかかった動物と、 撃たれた動物と同じだ…)
- 旭: (魔女は死にかけ… 苦しんでいる姿…)
- 旭: ならば、我は…!
- 旭: 楽にしてやるのが、 精一杯の優しさであります!!
- 怒是王死 劔與惑即 日幻賊術
- 旭: はぁ…はぁ…
- 旭: やった… あとは、もう1体…!
- 菫wp*斬翫Лq!!
- アレクサンドラ: 争う必要はありません 今はリラックスしてください
- ~~♪
- …………
- アレクサンドラ: 氷室さん、今です!
- ラビ: (これで彼女は救われる…)
- ラビ: (魔法少女として望んだ希望を 魔女と戦ってきた意味を)
- ラビ: (呪いで上塗りして、 消してしまう宿命から解かれる)
- ラビ: っやぁあっ!
- liжxヮ亦試緒!
- ラビ: 動ける!?
- ラビ: しまった… 致命傷にならなかった…!
- 蝨*溷慍‡繧[]貞ョ医l!!
- ラビ: アァッ!
- アレクサンドラ: まさか、私の固有魔法を受けて まだ動けるなんて…
- ラビ: それだけ成長してたってことかも
- ラビ: 逃げて会場に向かってる 早く追いかけないと…
- FILENAME: text_515605-6_UNnvl.txt
- 旭: 逃がしたでありますか…!?
- アレクサンドラ: ごめんなさい
- ラビ: ふたりで対処できないほど、 魔女が成長していた…
- ラビ: 今、追いかけてるけど、 もうすぐ他のふたりと合流できる
- アレクサンドラ: 4人いればさすがに倒せます もう少し待ってください…
- 旭: 我はもしもを想定して 会場に戻るでありますよ
- アレクサンドラ: はい、 最後の壁になってもらえると
- ラビ: かなり魔女の動きが速い…
- ラビ: 移動に集中したいから テレパシーはここまでに
- 旭: わかったであります
- ラビ: 見つけた! 栗栖!こっち!
- アレクサンドラ: はぁっ…ふぅ…
- アレクサンドラ: まるで、隠れるように… 何をするつもりですか…
- ラビ: ここはイベント会場までの 見通しが良い…まさか…!
- アレクサンドラ: 魔法少女の反応がふたつあります 恐らく連絡が来た相手です
- ラビ: 私たちは先行して入る ふたりとは中で合流する方向で!
- アレクサンドラ: はいっ!
- 旭: (ここから向かえば会場が近い… 急げばもうすぐ…!)
- 旭: なっ…この音は… 爆発でありますか…!?
- ――!――!――!!
- 旭: 悲鳴…会場の方から…!!
- 旭: なっ…あ…これは…
- うららの声: これは、どういうことなんよ!
- 旭: ―旭― 我が聞きたいでありますよ… これは、いったい何が…
- うらら: ―うらら― 突然トラックが突っ込んできて 火が点いたと思ったら爆発したんよ!
- 旭: ―旭― 魔女にやられた…間に合わなかった… ということでありますか…
- うらら: ―うらら― 三浦さんは気付いてたのん…?
- 旭: ―旭― 魔女の反応を感知して氷室殿とサーシャ殿と一緒に 倒しにいったであります…
- 旭: ―旭― ただ、1体だけ倒しきれず…
- うらら: ―うらら― じゃあ、その魔女の仕業ってことなのん…?
- 旭: ―旭― しょせんは憶測であります… 我にも真実はわからないであります…
- 旭: ―旭― それでも、ひとつ言えることがあるとすれば…
- アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
- 旭: この反応はまるで…
- ァアアアアアアッ!!
- 旭: 「魔女は間違いなく 我々の前で魔女になったふたりの魔法少女… それは、わかったであります…」
- うらら: ずっと湯国市にいたのん…?
- 旭: 既に倒されたか逃げ切っていると 思っていたでありますが…
- 黒田の声: 今の話、本当かよ!
- 旭: な…黒田…!
- 旭: ――っ!?
- うらら: ひっ…
- 旭: まさか、ウソだ…! 灰谷…!!
- 旭: あぁ…金属片が…胸に… 我の魔力で、なんとか体を…!
- 黒田: おせぇよ…意味ねぇよ…
- 黒田: 抱えてたらわかる… 肌で感じるよ…灰谷の状態は…
- 旭: っ…
- 黒田: なんでだ、どうしてだ… なぁ三浦…なんで殺したんだ…!!
- 旭: 殺した…!? わ、我は魔女を倒そうと!
- 黒田: 今さら白々しいんだよ!
- 黒田: テメエ自分で言ってただろ! 魔法少女が魔女だって!
- 黒田: しかも、逃げ切ったかどうか、 仲間の心配までしやがって…!
- 旭: あ…
- 黒田: 結局、都市伝説を作ったのも 雪崩と土砂崩れを起こしたのも
- 黒田: フェストでみんなを殺したのも!
- 黒田: 全部オマエらがやってるだけの 自作自演じゃねーか!!
- 旭: 黒田、我の話を…
- 黒田: ダマレ!!
- 黒田: 人の命を弄んで、 何が面白いんだ…
- 黒田: 俺は…オマエたちを許さない… 人の命と心を弄ぶオマエらを…
- 黒田: 「一生恨むからな… お袋と灰谷を奪ったオマエのことを…」
- 黒田: 「お前たちだけは消してやる…」
- 旭: …………
- ラビ: そんなことが…
- ラビ: 私が魔女を倒せなかったせいで 三浦を苦しめてしまった
- ラビ: ごめんなさい…
- アレクサンドラ: 本当に自分が情けないです…
- アレクサンドラ: 魔法少女なのに、こんなに多くの 犠牲を出してしまうなんて…
- 旭: それほど魔女が 強くなっていたということ
- 旭: それは納得してるでありますよ…
- 旭: でも、友だちに誤解されるのは かなりこたえるでありますな…
- うらら: 少しずつ誤解を解いていくしか ないと思うんよ…
- うらら: 近くで聞いてた人たちが いなかったのが幸いだと思うんよ
- 旭: ただ…
- 旭: 「何か得体の知れないものに 狙い撃ちされたような嫌な気分であります…」
- (Part 1 end)
- -----------
- (Part 2 start)
- FILENAME: text_515606-1_czJwk.txt
- うらら: ―うらら― じゃあ、その魔女の仕業ってことなのん…?
- 旭: ―旭― しょせんは憶測であります… 我にも真実はわからないであります…
- 旭: ―旭― それでも、ひとつ言えることがあるとすれば…
- 旭: ―旭― 魔女は間違いなく 我々の前で魔女になったふたりの魔法少女…
- 旭: ―旭― それは、わかったであります…
- うらら: ―うらら― ずっと湯国市にいたのん…?
- 旭: ―旭― 既に倒されたか逃げ切っていると 思っていたでありますが…
- 旭: …………
- 旭の父: おはよう
- 旭: おはようであります…
- 旭の母: 朝ご飯の用意できてるけど、 食べられる?
- 旭: 今日もあまり食欲がないので、 少なめでお願いするであります
- 「湯国市のイベントで起きた事故から1週間 今日も現地では被害者の方を悼んで 花を手向ける人の姿が見られました」
- 旭: …………
- 旭の祖母: この集落の人も亡くなった… 他にも被害に遭った人がおる…
- 旭の祖母: 旭も友だちのことで 辛いかもしれんがのう
- 旭の祖母: 生き残ったのは何か意味があると 思って前を向かんと
- 旭の祖母: 自分が潰れてしまうだけじゃぞ…
- 旭: …わかってるつもりであります
- 旭: (灰谷の死と黒田の怒りを 受け止めきれない…)
- 旭: (ただ、それと同じぐらい 我の心が乱されているのは)
- 旭: (有愛うららと話す様子が ネットに流れたからであります)
- 旭: あの場にいた誰かが撮ったのか… URLは湯国市にいる学生の間で広まって 黒田を勘違いさせてしまった内容は この1週間で拡散してしまった…
- 旭: だから一層…
- 旭: まぁ、とりあえず 今日は応援してるでありますよ
- 黒田: こっちこそ頼りにしてるぞ
- 灰谷: 私、三浦とは友だちでいたいから それだけ伝えたくて
- 旭: あの頃には戻れなくなったという確信が 胸を締め付けてくるであります…
- あの人…だよね… 動画に映ってた人って…
- 有愛うららが言ってた 魔法少女のゲストだろ…?
- まさに出演する直前に魔女を けしかけたって噂だよ…
- あんだけの事故起こすとか ほんとに狙ってやってんの…?
- 旭: …………
- 旭: …………
- 三浦、気にしない方がいいよ
- あの映像もさ、ちょっとした コスプレみたいなものでしょ?
- 他にも同じような人がいたしさ
- 黒田の声: チッ
- ――っ!?
- 黒田: コイツをかばう必要なんてねーよ
- 黒田: 灰谷だけじゃねぇ 何人死んだと思ってんだ…
- 黒田: それに、魔法少女が魔女だって 三浦は自分で言ってた
- 黒田: 今まで警察も手を出せないような 不思議な力でやりたい放題だ
- あんなの、有愛うららが言ってた ただの都市伝説でしょ!?
- 三浦になすりつけないでよ!
- 「ふざけんな! 実際に見たってやつは何人もいるんだぞ!?」
- 「そもそも、三浦が何も言わないのは 後ろめたいことがあるからだろ!」
- 「ちょっと三浦! コイツらに何か言ってやりなよ!」
- 旭: 我は…我は… 何もしてないであります…
- 旭: むしろあの時は、 本当に被害を防ごうと思って…
- 黒田: そんな三浦も 人を殺す魔女になるっていうなら
- 黒田: 魔法少女が存在すること自体 俺たちにとっては害悪だろ
- 黒田: それに良いヤツのフリを してるだけかもしれないしな
- 黒田: 灰谷を殺したのが良い例だ…
- 旭: はぁ…はぁ…
- 旭: (フェストの件で責任はない…)
- 旭: (だけど、これからは…?)
- 旭: (死ぬのを拒めば、 我もいずれは魔女になる…)
- 旭: (どれだけ今の我が人を守っても 呪いを振りまく存在になる…)
- 旭: (そんな確かな未来があるのに、 我には罪がないと言えるのか…)
- FILENAME: text_515606-2_czJwk.txt
- うらら: というワケで今週も始まったんよ
- うらら: うららと!
- くらら: くららの!
- うらら&くらら: 夜遊びホームルーム!!
- うらら: 今日もいつもの収録スタジオから お送りするんよ!
- くらら: …で、うららは最初に何か 謝罪をすることがあるんでしょ?
- うらら: そうなんよ…
- うらら: 前々からこの番組で取り上げてた 魔法少女についてなんだけど
- うらら: 本当にあくまで都市伝説で、 実際にいるかはわからないんよ
- くらら: ほんっと世間を混乱させる話は 金輪際やめて欲しいわ…
- くらら: 私は魔法少女なんていないって うららには言ってたから
- くらら: こんなに話がこじれるなんて 思わなかった…
- うらら: みんなに魔法少女の話が広まって 思ったより反響があったから
- うらら: フェストのタイミングで 一芝居打とうと思ってたんよ…
- くらら: それが、あの時に言ってた スペシャルゲストってやつよね?
- うらら: 殺陣(たて)が得意な人を呼んで 沸かせようと思ってたんよ…
- うらら: つまり、何が言いたいかというと
- うらら: ウチが変に騒いで みんなに魔法少女を広めた結果
- うらら: 今、出回ってる映像に出てる人に 迷惑がかかってるんよ…
- うらら: だから、お願いなんよ
- うらら: これまでの話も 都市伝説の内容を踏まえて
- うらら: ウチが脚色して 色々と話してただけなんよ
- くらら: だから、魔法少女の話は 終わりにして綺麗に忘れましょ
- うらら: うん…
- くらら: 私も今回の騒動に巻き込まれた 被害者なんだから
- くらら: これから魔法少女の話は 私に対してもナシだからね
- うらら: はい、ごめんなさいなんよ…
- くらら: オバケを信じるのと同じよね ほんと馬鹿馬鹿しいわ…
- アレクサンドラ: これが 昨日放送された番組の内容です
- 旭: 魔法少女を好意的に見てくれる 貴重な人だったでありますが…
- ラビ: 今は私たちとの出会いは夢や幻 そう演じるのが賢明…
- アレクサンドラ: はい…学校でいじめられてないと いいんですけど…
- 旭: 我も白い目で見られているのが 現状でありますからな…
- 旭: 氷室殿とサーシャ殿は 特に変わりないでありますか?
- 旭: 魔法少女のグループメッセージを 見ていると
- 旭: 我と同じような状況にある人が いるようでありましたが…
- アレクサンドラ: …実は私も同じように 周りから距離を置かれてます…
- ラビ: 人間関係が希薄な私でさえ 鋭い視線を感じることがある
- 旭: やはり、そうでありますか…
- 旭: ネットに上げられた映像には、 我しか映ってないはずなのに…
- アレクサンドラ: どうも、指輪を見て魔法少女だと 見分ける方法が
- アレクサンドラ: 学生たちの間で 広まっているみたいなんです…
- アレクサンドラ: みんなに魔法少女を 知ってもらおうとする試みは
- アレクサンドラ: 私たちから始まって、 他の人にも広がっていたので
- アレクサンドラ: その弊害とも言えると思います…
- ラビ: 私たちに悪印象を持つ者が 見分け方を知った結果だと…
- 旭: 指輪は外した方が 良さそうでありますな…
- ラビ: 視線を感じた時点で遅い
- ラビ: 他の魔法少女に警戒するように 伝えても、防げるかどうか…
- おい、そこのお前ら
- 旭: ――っ!?
- やっぱりお前… 動画に出てたヤツだよな…?
- 旭: わ、我のことでありますか…
- へっ、指輪をしてたから 尾けてみて正解だ
- あのイベントで俺のツレも ケガをして入院してんだよなぁ
- 旭: っ…
- ここで会ったのもなんかの運命だ 女だろうと関係ねえ
- テメエにも同じ痛みを 味わわせてやるよ…!
- 旭: あれは不可抗力であります…!
- 言い訳はいらねえ!
- 事件にはしたくねーから、 勝てると思ったら引いとけよ
- 女に手え出すなんて、 ただでさえ恥ずかしいからな
- わーってますよ先輩
- FILENAME: text_515606-3_czJwk.txt
- くそっ、マジで当たんねぇ!
- 旭: いくら仕掛けて来ても 同じであります!
- 旭: そもそも我々とあなたたちでは 肉体的な差が大きすぎる
- 旭: 持久戦に持ち込むことも 不可能でありますよ
- じゃあ早く終わらせるために そっちからも来いよ!
- ラビ: 人を助けるのが魔法少女
- アレクサンドラ: はい、どんな人であろうとも 傷付けることなんて…
- ラビ: はぁ…
- ラビ: これ以上続くようであれば、 栗栖の固有魔法に頼らせて
- アレクサンドラ: はい、気力を削がないと、 終わりそうにないですしね…
- 相手が防戦一方じゃ面白くない 追加でふたりぐらい呼ぶか
- おちょくられたままじゃ ただの赤っ恥になっちまいます
- 旭: 我だって、殴れるものなら 殴って止めているでありますよ
- ラビ: …それは悪評が広がるだけ 栗栖、お願い
- アレクサンドラ: やむを得ませんね
- ???の声: 両者そこまでです!
- ラビ: え、白金…!?
- 白金: これ以上続けるようでしたら、 警察に通報します
- 水を差してきやがって… お前、巻き込まれたいのか?
- 白金: あなたたちが呼んだ 仲間はここに来ませんよ
- 白金: こちらの仲間が 外で足止めをしてますので
- …………チッ
- 白けたし行こうぜ
- でも、このままじゃ…
- 警察が来れば 報復だなんて話は通用しねえぞ
- 殴れば厄介になるのは 俺たちの方だ
- っ…
- 白金: ふぅ… 氷室先輩、大丈夫ですか?
- ラビ: ありがとう…ただ、 どうして私たちの居場所を…?
- 白金: 騒いでるやんちゃな人たちを見て 胸騒ぎがしたんです
- 旭: 野性のカンのようですな 感謝するでありますよ
- アレクサンドラ: 私も、あと少し遅かったら 魔法を使うところでした
- 白金: 先輩方が魔法少女である以上、 抵抗して手を出せば悪者ですし
- 白金: 自分を正当化しようとしても 自作自演に見えてしまう
- 白金: だから危ないと思ったんです
- アレクサンドラ: 仰る通りですね…
- ラビ: ちなみにさっき、 仲間がいるって言ってなかった?
- 白金: はい、今回のようなことも ありますので
- 白金: 魔法少女を擁護するための 組織を作ることにしました
- 白金: 有愛うららの番組は 確かに多くの敵を作りましたが
- 白金: 多少なりとも 味方を作っていたんです
- 白金: 魔法少女に助けられた人が いることは確かですから
- ラビ: 何にもやる気がなかったあなたが 突然どうして…
- 白金: 氷室先輩を守るためです
- 白金: 私は人と関わって生きることが わずらわしくなって以来
- 白金: 氷室先輩の認識によって、 この世界と繋がれていたんです
- 白金: だから今度は私が、苦しむ先輩を 助けたいと思ったんです
- 白金: なんだか不思議ですよ
- 白金: 今は他人と関わることが わずらわしくないんですから
- ラビ: 白金が何か目標を見出せたことは 嬉しく思う
- ラビ: けど、私のためになるなんて… 心配かけて本当にごめん…
- 白金: 先輩は私に干渉してこないから、 自分が空っぽでも苦しくなかった
- 白金: 救われていた分のお返しは させてください
- 白金: あと、三浦さん
- 旭: な、なんでありますか?
- 白金: 黒田と言う人物をご存知ですか?
- 旭: …クラスメイトであります
- 白金: 私が擁護派で固めた 組織を作ったのは彼が原因です
- 旭: というと…
- 白金: 彼は魔法少女の撲滅を目指して 人を募っています
- 旭: な…
- FILENAME: text_515606-4_czJwk.txt
- ラビ: …………
- ラビ: (白金は私に助けられたと 言っていたけど)
- ラビ: (私にそのつもりはなかった…)
- ラビ: (ただ、彼女が私のところに来て 自分で勝手に救われただけ…)
- ラビ: (私は白金のために 何かをしてあげたことはない…)
- ラビ: だから、何か返してあげたいけど 果たしてどうすればいいのか…
- ラビ: 人との付き合いが乏しい私には、 あまりに難しい問題だ…
- ラビ: ただいま
- ラビの母: お帰りなさいラビ またお父さんの部屋に行く?
- ラビ: うん、考え事があるから
- ラビの母: ちょっと悪いんだけど、 少しの間だけ入らないようにして
- ラビ: どうして?
- ラビの母: 長期宿泊希望のお客様がいてね その人に滞在してもらうのよ
- ラビの母: ちょうどタイミング悪く 他の客室も埋まってるから
- ラビ: そんな…!
- ラビの母: ちょっとラビ!
- ラビ: どうして知らない人なんかを あの部屋にいれるの…
- ラビ: 私がお父さんの存在を感じられる 唯一の場所なのに…
- ガチャ!
- ラビ: ――っ!?
- 太助: あ、大地のゆりかごの娘さんかな
- 太助: 今日からお世話になります 里見太助です
- 太助: 家族で使ってた部屋なのに 使わせてもらって申し訳ない…
- ラビ: …………
- 太助: ん、もし?
- ラビ: あ、ごめんなさい… えっ、と、すみませんでした…!
- 太助: 待って
- ラビ: …なんでしょうか
- 太助: あまり、無理はしないようにね
- 太助: 本日は町に訪れる話をしたところ 館長からお誘いを受けまして
- 太助: 急遽対談を させてもらうことになりました
- 太助: よろしくお願いします
- ラビ: …………
- 白金: …氷室先輩? どうかしましたか?
- ラビ: いえ、なんでもない
- ラビ: (なんとなく、あのステージで 見た時から思ってたけど…)
- ラビ: お母さん! ねえ、あの人…!
- ラビの母: さっそく見に行って… “お父さん”にそっくりよね…
- ラビの母: だからってあの部屋に通した わけじゃないのよ?
- ラビの母: むしろあの部屋に入るまで 面影は感じなかったんだけどね
- ラビの母: 不思議だわ
- ラビ: 心臓に悪い…
- ラビの母: 気まずいかもしれないけど 少しの間、我慢してね
- ラビ: …無視するようにする
- FILENAME: text_515606-5_czJwk.txt
- ラビ: (少しずつだけど、 視線の鋭さが和らいだような…)
- ラビ: (私を好奇の目で見るような輩も 減ったような気がする…)
- 白金: お疲れさまです氷室先輩
- ラビ: お疲れ白金
- ラビ: (全ては白金が擁護派の人と 動いてくれてるおかげ…)
- ラビ: あなたには返しきれない恩が できてしまった…
- ラビ: とはいえ、ほとぼりが冷めるまで お返しするのも難しいけど…
- 白金: 本当はこうして話してるのも 良くないですからね
- ラビ: ええ、適度に距離をとらないと 身内に擁護は通じなくなる
- 白金: それより今は 私が恩を返してるところなので
- 白金: 氷室先輩が何かする必要は ありませんよ
- ラビ: 私が白金から もらい過ぎてるから…
- 白金: そうですか?
- 白金: では、氷室先輩の気が済むのなら お返しを楽しみにしておきます
- ピロン♪
- ラビ: …………
- お願い誰か助けて!
- 急に知らない学校の人から 魔法少女だろって追いかけられて 離してくれないの!
- どこで知ったのか知らないけど この人たち指輪を見て判断してる…!
- 白金: これは、他の魔法少女ですね
- ラビ: ええ、私たちが絡まれたみたいに 執拗に攻められているのかも
- 白金: 警察に連絡してもらってください
- 白金: 私も現場付近にいる仲間に 連絡するので
- 白金: 可能なら場所も教えてもらえると
- ラビ: そんな余裕があればいいけど 一応確認はしてみる
- ピロン♪
- ラビ: …………
- ラビ: 栗栖が近くで反応を掴んで 現場に向かってるみたい
- ラビ: 私も追いかける
- 白金: どうか助けてあげてください
- はっ、ふっ…ふぅ…
- 黒田: 本当に、その指輪が 魔法少女になったやつの証拠か
- 私は何もしてないのに、 どうして追いかけてくるの…!?
- 被害者ぶってる理由が 私にはわからない
- 毎日、魔女と一緒になって、 人を殺してるのは誰よ
- お姉ちゃんを殺したのは アンタでしょ!?
- 違うよ! それに私、魔女なんかじゃない!
- 黒田: 裏はとれてんだよ!
- ひっ!
- アレクサンドラ: 救われたくて魔法少女の話を 広めたかったのに…
- アレクサンドラ: こうして人から恨まれることに なってしまうなんて…
- アレクサンドラ: …………
- アレクサンドラ: (動画を撮られた三浦さんだけが 悪いわけじゃない)
- アレクサンドラ: (魔女を逃がした私も氷室さんも この状況を招いた原因だ…)
- アレクサンドラ: なんとか… 誤解を解かないと…
- FILENAME: text_515606-6_czJwk.txt
- アレクサンドラ: 魔法少女の反応がある… この辺りかもしれませんね…
- アレクサンドラ: 掴んだ…
- 黒田: 魔法少女が湯国市を出て行くなら 俺たちは何も文句は言わねえ
- 黒田: けど、出て行かないって言うなら 逃げたくなるまで追い詰めてやる
- じゃないと俺たちみたいに、 他の人たちが泣くことになる
- 魔法少女は魔女とは違う 責められる理由なんてないよ!
- 黒田: 魔法少女と魔女はイコールだろ
- 黒田: 魔女になって姿を消して、 俺らの前から逃げてるんだからな
- 意味がわからない…
- 追い出されるのが嫌なら 私たちを殺せば?
- そんなの できるわけないでしょ…
- アレクサンドラ: かなり近付いてきた…
- アレクサンドラ: 私が行けば人を傷付けなくても 危機を脱せる…急がないと…!
- ウ~~ウ~~
- アレクサンドラ: よかった… 警察も来てくれました…!
- 湯国市は生まれ育った町だから 出て行くつもりはないわ…
- 黒田: それなら言った通りにするか
- ああ、こっちから手を出して お前を追い出してやるよ
- 何をするつもり…?
- 魔法少女に暴力を振るっても 勝てるわけがない
- 返り討ちにあっても 文句なんて言えないわよ…?
- その暴力を動画で広めてあげる まずはあなたの友だちにね
- お前らを撲滅するための執念を 舐めるなよ
- あなたがカメラを持ってるのね…
- 渡しなさい!
- ウァアアア゙ッ!!
- アレクサンドラ: ――っ!?
- アレクサンドラ: はぁ、はぁ…見つけた…
- アレクサンドラ: けど、 手を出してしまったんですか…
- ぐっ、肩が…肩がぁ…
- 警官: おい、大丈夫か…!
- ――っ!?
- 悪いのは…この人たちよ… みんなが私を脅すから…!
- 警官: 話はあとで聞く!
- ってーーーー!
- 警官: っ…折れてるか…
- 黒田: 聞いてくれ!
- 黒田: 俺たちはコイツに誘い込まれて 急に殴られたんだ!
- え…
- 黒田: その上、骨を折るなんて 立派な傷害だよな!?
- 黒田: アイツを調べてくれ 絶対に何か持ってるって!
- 警官: 何か持ってるのはいいとして、 話は落ち着いた場所で聞く
- 警官: 殴られる現場を見た以上は、 放ってはおけないしな
- 違います! 私が追いかけられてたんです!
- 警官: 別に逮捕しようってわけじゃない
- 警官: こういう話はややこしくなるから 交番で状況を聞かせて
- なんでですか! 私は悪くないのに!
- 警官: 人を病院送りにしておいて さすがに悪くないはないだろう
- だってこれはっ!
- アレクサンドラ: (さすがに見てられません)
- アレクサンドラ: (やる気を削いで倒れたあと、 私の方で回収しましょう)
- アレクサンドラ: …………
- アレクサンドラ: (視線…?)
- 黒田: …………
- ピロン♪
- アレクサンドラ: (三浦さん…)
- 旭: 黒田から連絡があった 出ちゃいけない
- 旭: サーシャ殿も共犯者に仕立て上げて 一緒に連れて行くつもりだ
- アレクサンドラ: っ…
- 警官: ほら、来なさい!
- どうしてこんな目に…
- 魔法少女っていうだけで 苦しんでるのに
- どうして…どうして…!
- みんなを守ってるのは、 私たちなのに!
- 警官: 何を言ってるんだ…
- あぁあああ…
- アレクサンドラ: この反応… あの時と同じ…!
- アレクサンドラ: 早くグリーフシードを!
- ァアアアアッ!!
- アレクサンドラ: キャァアアッ!!
- 旭: ―旭― 魔女は間違いなく 我々の前で魔女になったふたりの魔法少女…
- 旭: ―旭― それは、わかったであります…
- うらら: ―うらら― ずっと湯国市にいたのん…?
- 旭: ―旭― 既に倒されたか逃げ切っていると 思っていたでありますが…
- 黒田: 魔法少女が魔女になれば、 湯国市から逃げようとする
- 黒田: それなら俺は、平和を掴むために やれる手は尽くしてやるさ…
- FILENAME: text_515606-7_czJwk.txt
- アレクサンドラ: ごめんなさい…
- アレクサンドラ: 私は同じ魔法少女を 見捨ててしまった…
- アレクサンドラ: また、自分の目の前で 魔女にさせてしまいました…
- 旭: あの場で飛び出して サーシャ殿も補導されていれば
- 旭: 我々3人はフェストにいて 他の魔法少女より知られてる手前
- 旭: 今まで以上に立場が悪化してたと 思うであります…
- ラビ: でも、どうして三浦に 彼は連絡をとってきたのか…
- 旭: 恐らく、我々に対する脅し 本気である証明でありますよ
- 旭: 明確に撲滅派が存在することを 示してきたんであります
- 旭: 文面を見てもらえれば、 わかると思うでありますよ…
- 黒田: フェストや雪崩の被害者を募って 俺たちはお前たち魔法少女を 湯国市から追い出すための組織を作った
- 黒田: お前たちに恨みを抱いている他の仲間から 魔法少女の見分け方も教えてもらって さっそくひとり魔法少女を見つけた
- 黒田: 後悔させてやるから覚悟しておけよ
- 旭: 魔女になった彼女の救助に 向かっていた時に
- 旭: このメッセージが 届いてたのでありますが
- 旭: 我が気付いた時に追加で メッセージが届いたでありますよ
- 黒田: フェストでお前がつるんでいた 魔法少女が来てるから 他のヤツと共犯にして補導してもらう
- 黒田: 三浦を筆頭に顔は割れてるし コイツはフェストのステージで ソロもやってたから有名だ
- 黒田: 退かせるなら退かせてやれ そして、この町から早く出ていってくれ 俺からの最初で最後の温情だ
- アレクサンドラ: こういうこと… だったんですね…
- ラビ: 本当は傷付けたくないからこそ 時間を与えたようにも読める
- 旭: 確かに、 そうかもしれないであります…
- 旭: ただ我々にも、住む家があり 家族が居る以上は
- 旭: 簡単に町から出ることは できないであります
- アレクサンドラ: だけど、私たちを取り巻く状況は 間違いなく悪くなりました…
- 警官: った…
- …………
- 警官: おい…キミ…キミ!!
- 警官: ――っ!? うそ、だろ…死んでる…?
- 黒田: 魔法少女が魔女になれば 見えなくなる
- 黒田: 今ごろ体だけを残して、 湯国市を出ようとしてるはずだ
- 黒田: 追い詰めれば魔女になるって わかったのは良い検証だったな
- これで魔法少女がいなくなるなら 急いで追い込まないと
- あいつらは善人面をして 周りの信用を得ようとしてるから
- つまり…放置してたら 被害者が増える…
- 俺たちで、守らねえと…
- 黒田: ああ、町にいる魔法少女を すべて炙り出すんだ…
- 警官: 俺は事情を聞こうとしただけ… 何がどうなってるんだ…これは…
- アレクサンドラ: このままだと、 みんな魔女にされてしまう…
- 見つけたぞ! 追いかけて捕まえろ!
- アレクサンドラ: っ!
- アレクサンドラ: …………はぁ
- アレクサンドラ: 私たちを捜していた わけではないようです…
- ラビ: 私たちが魔女を倒せていれば、 息が詰まることもなかった…
- 旭: いや、我が不用意に自分の正体を 明かしたせいかもしれない…
- ラビ: いずれにしても、狂った歯車は 私たちを締め上げていく…
- FILENAME: text_515607-1_czJwk.txt
- 旭: ひとり、またひとり 魔法少女たちが消えていく
- 旭: 我々、魔法少女の撲滅を目論む学生たちは皆 抜け殻になった体を見て 「魔女になってこの町から逃げていった」 と、喜ぶ始末であります…
- 旭: 魔女になったと聞いた魔法少女がいれば グループメッセージのメンバーから削除していく
- 旭: 気がつけば、湯国市の魔法少女たちは 半分になっていて 心が絞られるように痛むであります…
- 旭: (黒田に魔法少女の存在を 打ち明けなければここまで…)
- ラビ: …………
- 白金: 私たちの力が及ばず、 撲滅派はその数を増やしています
- 白金: その上、彼らは魔女になることの 正しい知識を持っていないので
- 白金: 魔法少女を魔女にすれば 湯国市から逃げていくと信じて
- 白金: 自分たちの虐殺行為を 断罪だと言って正当化してます…
- ラビ: 魔法少女の中には、魔女化の話を 知らない子だっている…
- ラビ: 素直にみんなのために魔女と 戦っている子もいる…
- ラビ: あまりにむごい…
- 白金: いっそ、魔法少女の力を使って 彼らを押さえてはいかがですか?
- ラビ: それはできない
- 白金: すぐに片付きます
- ラビ: 撲滅派の人間はその様子を 動画で記録して流すはず
- ラビ: その人間を押さえたところで、 どこに目があるかわからない以上
- ラビ: 無理に事態を片付けても 私たちは人々の敵になってしまう
- ラビ: だから私は、 力での解決は望まない
- 白金: そうですね、共存共栄の未来は 望めないかもしれません…
- ラビ: だから、やるべきことは 制することではないんだと思う
- 白金: では、どうするつもりですか…
- ラビ: 雪崩の日に生まれた悲しみと フェストで爆発した怒り
- ラビ: そのすべてを私たちは、 癒やさないといけないんだ…
- ラビ: ただいま
- 太助: おかみさんなら、 少し買出しに行くそうだよ
- ラビ: そうですか
- ラビ: (最近、一番遭いたくない人に 遭ってしまった…)
- 太助: あの、もしかして 何か悪いことでもしたかな…
- ラビ: いえ
- ラビ: すみません、失礼します
- 太助: ひとつだけ聞いていいかな
- ラビ: …なんでしょう
- 太助: いつ頃から湯国市の学生は 魔法少女の噂を始めたのかな…?
- ラビ: ――っ!?
- 太助: ごめん、変なことを聞いたね
- ラビ: …いえ、驚いたんです
- ラビ: 大人に魔法少女の話をされたのは 初めてだったので…
- 太助: 普通は都市伝説だって言われて 話を聞いてもらえないからね
- ラビ: 今はその方が好都合なんです
- ラビ: だから、関わらないでください… 母に心配をかけたくないので…
- 太助: 誰かに頼らないと 無理が祟ってしまうよ…
- 旭: すまないであります、灰谷…
- 旭: 我の魔法で 都合良く呼び出してしまい…
- 灰谷: 私こそごめんね…
- 灰谷: 苦しんでる三浦に こんなこと頼んじゃって…
- 旭: 大丈夫、責任を持って我が 黒田を救うでありますよ
- 旭: 黒田の怒りも悲しみも、 我々が原因で生じたもの
- 旭: 責任は我にあります
- 灰谷: 違う、悪いのは私よ
- 灰谷: 雪崩の件で死にたがってた黒田を 繋ぎ止めようとしたのに
- 灰谷: その私が 死んじゃったんだから…
- 旭: 責任の押し付け合いならぬ 引き取り合いでありますな
- 灰谷: そうね、これだと堂々巡り
- 灰谷: 少なくとも死んだ私には もう何もできないから
- 灰谷: よろしくね、三浦
- 旭: 善処するでありますよ
- 旭: (死者を呼ぶ魔法など命の冒涜 使いたくはないのでありますが)
- 旭: それでも 仕方なかったであります
- 旭: 許して欲しいであります…灰谷
- ~~♪~~♪
- 旭: 氷室殿…
- FILENAME: text_515607-2_czJwk.txt
- ラビ: …………
- アレクサンドラ: 本気なんですね、氷室さん…
- ラビ: ええ
- ラビ: 撲滅派の怒りも悲しみも 私に集めるつもり
- ラビ: すべては同情が欲しいという、 私のくだらない意見から始まった
- ラビ: それなのに、関係ない魔法少女が 消えていくのは見ていられない
- アレクサンドラ: 氷室さんだけで 責任を背負わないでください
- アレクサンドラ: 私も、この状況を招いたひとり… 一緒に背負わせてください
- 旭: 我にも撲滅派の人々の 怒りと悲しみを集めるべきかと
- アレクサンドラ: 皆さんが癒やされるのなら 私たち3人で受け止めましょう
- ラビ: ありがとう…
- アレクサンドラ: それに、魔法少女が追いやられて 治安も悪化してますからね…
- ラビ: ええ…撲滅派が言うように、 魔女が逃げるなんてことはない…
- ラビ: 湯国市に残り続けているなら 事件や事故が増えてしまう…
- 旭: 我々が標的になって済む話なら、 もう、魔法少女は魔女にならない
- 旭: 少しは湯国市の人たちを 救うことができるでありますな
- アレクサンドラ: 撲滅派を癒やすだけでなく 被害を減らすのも目的なのは
- アレクサンドラ: なんとなく気付きましたよ
- 旭: 我も同じであります
- 旭: だから、湯国市で起きてる事象を 氷室殿ひとりで抱えなくていい
- 旭: 撲滅派も魔女も、 我々で引き受けるでありますよ
- ラビ: ありがとう、正直ホッとした
- 旭: 礼はいらないであります
- 旭: それで一手に引き受けるとして どうするでありますか
- ラビ: 今日放送する 夜遊びホームルームを利用する
- ラビ: 有愛うららには 話は通してあるから安心して
- FILENAME: text_515607-3_czJwk.txt
- うらら: 今週も始まったんよ
- うらら: うららと!
- くらら: くららの!
- うらら&くらら: 夜遊びホームルーム!!
- うらら: 今日もいつもの収録スタジオから お送りするんだ、け、ど!
- うらら: 実はサプライズで、 スペシャルゲストが来てるんよ!
- くらら: 確か、湯国市の学生の間で 有名になったあの人たちよね…
- くらら: んー、前に魔法少女の話は もうしないって言ってたけど
- くらら: これは迷惑をかけちゃった 番組の罪滅ぼし…
- うらら: そう、だからこそ出演したいって 依頼をOKさせてもらったので
- うらら: 視聴者のみんなには 許して欲しいんよ
- うらら: というわけで、 来てくれた3人を紹介するんよ
- うらら: 氷室ラビさん、三浦旭さん、 栗栖アレクサンドラさんなんよ
- ラビ: よろしくお願いします
- くらら: 今日は皆さんで どんな話をしに来たんでしょうか
- くらら: 急遽出演が決まったみたいで、 台本に書いてなかったんですよね
- うらら: 実はウチも、氷室ラビさんから メールが届いたって話以外は
- うらら: なーんにも聞かされてないんよ
- うらら: ただ、魔法少女の目撃談など メールは絶え間なく届いてるし
- うらら: 巷にいる学生の間でも、 まだ噂は続いてるから
- うらら: 視聴者のみんなが気にしてるのは 間違いないはずなんよ
- くらら: でも、魔法少女は人を殺すって、 悪い話ばっかり…
- うらら: もしかして、その辺りの話を しに来てくれたってことなのん?
- ラビ: はい
- ラビ: 私たち魔法少女に関する話と フェストでの件についてです
- ラビ: 番組冒頭の時間を借りて 手短にお話しますので
- ラビ: どうか最後まで お付き合いください
- うらら: わかったんよ
- うらら: ウチとくららは静かに聞くから、 よろしくお願いするんよ
- ラビ: ふぅ…
- ラビ: 「この放送を見ている多くの学生たちは すでに私たち魔法少女の存在を知り 日々、呪いを振りまく魔女と戦っていることを ご存知だと思います」
- ラビ: 「さらに、私たち魔法少女自身が 呪いを振りまく魔女になってしまうことも…」
- ラビ: 「だからこそ、私たち魔法少女の正体が 魔女だと考えている人が大多数だと思いますが それは事実ではありません…」
- ラビ: 「魔女になるということは 私たちにとっては死ぬも同然のこと」
- ラビ: 「望んで魔女になることはありませんし 下手をすれば、魔女になるという辛い宿命を 知らない魔法少女の方が多いはずです」
- ラビ: 「実際、最近になって私たちも 魔女になるという真実を知ることになりました」
- ラビ: 「だから、もしも無差別に魔法少女を 追い詰めているようであればやめてください」
- ラビ: 「私たちは人々が魔女の被害を受けないように 戦いを続けていますが 心が闇に染まれば魔女になり 湯国市に被害を与える側に回ってしまいます」
- ラビ: 「魔法少女が魔女になれば逃げていくなんて ただの迷信で報復にはなりません」
- ラビ: 「では、これまでの事件や事故に対して 私たち魔法少女はどうケジメをつけるのか 皆さんの中から声があがってくると思います…」
- ラビ: 「ただ、残念ですが 魔法少女も人数には限りがあるので 全ての事件や事故を防ぐことはできません」
- ラビ: 「雪崩や地震といった大規模な自然災害は 起きてから対処することはできませんし 事態に気付いて原因の魔女と戦っても 力不足であれば私たちが殺されてしまいます」
- ラビ: 「それでも、全てを仕方がなかったなんて言葉で 片付けるつもりは一切ありません」
- ラビ: 「断言しますが、皆さんが味わった苦しみは 私たちの怠慢が引き起こした結果によるもので 悪いのは全て私たち3人なのです」
- ラビ: 「他の魔法少女は 努力をして災厄を退けてきたのに 私たちは諦めていて何もしなかった」
- ラビ: 「少なくとも、先日起きたフェストでの事故は 3人で対応できたはずでしたが 私たちは現場で何もしなかったのです」
- ラビ: 「だからどうか、関係のない魔法少女からは 手を引いてもらえればと思います」
- ラビ: 「自分たちの罪は自分で償うので 他の魔法少女のことは見逃してください」
- FILENAME: text_515607-4_czJwk.txt
- ラビ: ありがとう、うらら 今日は突然の要望に応えてくれて
- うらら: ウチは助けてもらった手前、 手伝えることはしたいんよ
- 旭: くらら殿も 迷惑をかけたであります
- アレクサンドラ: 急で困っちゃいましたよね
- くらら: …私も魔法少女なんて 都市伝説だと思ってたけど
- くらら: フェストで3人の動きを見て 信じざるを得なくなっただけよ
- くらら: けど、今日の放送のあとで 何が起きても責任はとれないよ
- うらら: そうなんよ… 正直、話を聞いて驚いたんよ…
- うらら: もっと魔法少女への同情を誘えば 擁護する人は増えたはずなんよ
- うらら: これだと3人に怒りを集めて、 他の魔法少女を助けただけなんよ
- ラビ: 確かにうららの言う通りだけど 今の状況で同情を誘えば
- ラビ: 撲滅派の神経を逆撫でして、 より一層、被害が増えていた
- ラビ: 今、私たちがやるべきなのは
- ラビ: 私たちを好きなように叩かせて 撲滅派を満足させること
- さっきの放送聞いたぞ…!
- 話が本当なら恨みを晴らす相手は あなたたちだけってこと…!?
- 旭: …黒田のところの
- アレクサンドラ: ふたりは早くスタジオに戻って
- うらら: …ごめんなんよ
- コイツらを追い出せば、 入院してる仲間も納得するかもな
- 黒田ってヤツと合流して コイツらを潰してやりましょう
- ラビ: 目論見通り、 さっそく火が点いた
- アレクサンドラ: これからは耐える時ですね
- 旭: そうでありますな…
- ラビ: 「だからどうか、関係のない魔法少女からは 手を引いてもらえればと思います」
- ラビ: 「自分たちの罪は自分で償うので 他の魔法少女のことは見逃してください」
- 太助: そうじゃない…ラビちゃん…
- 太助: 確かに君のしていることで、 他の魔法少女は救われる
- 太助: だけど、恐らく君は 本来の目的を見失っている…
- 太助: この町で起きた事件や事故を 自分たちのせいだと認めれば
- 太助: 人々は魔法少女を危険だと考えて 忌避するようになる…
- 太助: 最も救いを求めていた君たちは 決して救われない…
- 太助: (魔法少女の存在が 普通の人に認知されている町は)
- 太助: (私が魔法少女を調べ始めて以来 この湯国市が初めてだ…)
- 太助: …これを足掛かりにしないと
- 太助: 那由他…待っていてくれ…
- FILENAME: text_515608-1_czJwk.txt
- 旭: 湯国市の魔法少女が追い詰められて ひとり、またひとりと なりたくもない魔女へと姿を変え その魔女の呪いに苦しめられた人が 魔法少女に報復するという負のスパイラル
- 旭: 黒田が率いる撲滅派は 魔法少女の家族をも標的にしようとしつつも 事件として問題を表面化させないために 負い目を持っている我々だけを追い詰めていき 何人もの魔法少女が姿を消していった
- 旭: 見ていられなかった我々3人は 他の魔法少女に被害が及ばないようにしながら 湯国市の被害を増やさないようにするために フェストの件で生じた魔法少女への負の感情を 一身に背負ってしまおうと考えた
- 旭: しかし、ここまで過酷になるとは 思わなかったであります…
- 旭: ぐっ…!
- 黒田: …魔法少女っていうのは、 本当に傷の治りが早いんだな
- 黒田: それに、ソウルジェムっていう 魂の器を壊さない限り
- 黒田: こうして生きてるっていうのは 本当なんだな
- 旭: はぁ…はぁ…
- 黒田: ここまでされてるんだから 早く町から出て行けよ
- 黒田: 魔法少女が全員消えないと 平和にならないって知ってるのに
- 黒田: 3人が出て行くだけで 溜飲を下げるって言ってるんだ
- 黒田: むしろお前たち魔法少女は 俺たちに感謝するべきだろ?
- それに、今後は 何か事件が起きたとしても
- 俺たちが責めるのは 原因になった魔法少女だけだ
- 無差別に責めたりしないから さっさと消えてくれよ
- 言ってもムダムダ コイツらは簡単に出て行かないよ
- 他の魔法少女が狙われないように 3人で盾になってるんだから
- 黒田: なら、見せしめに盾を潰すか
- 黒田: そうすれば、次に標的になる 魔法少女は自分かもしれないって
- 黒田: 町から出て行くかもしれない…
- 黒田: そうなったら、 俺たちにとってはプラスだろ?
- それなら、まだ手ぬるいな
- 俺にやらせてくれ
- 前にバカにされた時の恨みを ここで返しておきたいんだ
- 黒田: つまらない私怨を持ち込むな
- 黒田: 俺たちの目的は、 あくまで町を平和にすることだ
- 旭: 平和か…
- 黒田: なあ、三浦 最後にもう一度選ばせてやる
- 黒田: 見せしめになるか 町を出て行って楽になるか…
- 旭: …我々が出て行けば 次は他の魔法少女が標的になる…
- 黒田: 何か事件や事故が起きれば その可能性はある
- 黒田: お前たちは俺たちの前で 本性を現したんだからな…
- 旭: 魔法少女が人を殺すことは ないでありますよ…
- 黒田: そう言われても不安が残る以上は 追い出すしかないだろ
- 旭: …………
- 旭: 出て行くことは できないであります
- 旭: だから、その怒りと悲しみを 我にぶつけるでありますよ
- 黒田: …そんなもんで消えるかよ
- 黒田: お前も 負けたとかを気にしてるけど
- 黒田: 本当は入院してた友だちが 死んだんだろ?
- ああ…
- 黒田: お前が殴って満足するなら そうしてやればいい
- 黒田: 三浦はそれを望んでるらしい
- じゃあ、遠慮なくやってやる
- 死んだヤツの痛みを 味わえよ、このやろう!!
- 旭: ぐっ…!
- 黒田: どうすれば、 この状況を回避できたんだろうな
- 旭: 我々が…魔法少女の話を… 広めなければ良かった…
- 黒田: そうだな…
- 黒田: 知らない方が、俺たちは 自分の不幸を呪うだけで済んだ…
- 無視してんじゃねーよ!
- 旭: がっ…
- 旭: これでいい すべては我々の作りあげた罪だからこそ 今の状況を受け入れるしかない
- 旭: どんな乱暴なやり方であったとしても 我々が耐え続ける限り 他の魔法少女は無事であります
- 旭: 見せしめとなった我々を見て この町から出て行くのも 生きているのであれば構わないであります
- 旭: それに黒田たちも いずれ暴力の先に残る虚しさに気付いて 怒りが収まってくるはず
- 旭: それでも収まらないようであれば 我は人というものと決別して ひっそりとこの町を出て行って 山で暮らすことにするでありますよ…
- これぐらい引っぱたいてやれよ
- 旭: ウッ…!
- 旭: まずい、意識が落ちる… これ以上は痛覚を遮断した方が 良さそうでありますな…
- 旭: …あぁ、自在に痛みを消せるなど いよいよ我は人ではないと 実感させられるでありますな…
- FILENAME: text_515608-2_czJwk.txt
- ほら、まだピアノが 拭き終わってないから急ぎなよ
- 次は譜面の整理があるんだから 早くしてよね
- アレクサンドラ: わ、わかりました…
- アレクサンドラ: 泣いてはいけません これぐらいで済むなら平気です
- アレクサンドラ: 旭ちゃんが受けている暴力や ラビちゃんが受けているイジメと比べれば こき使われるぐらい問題ありません
- アレクサンドラ: 私が誰かに救いを求める資格はない みんなの心を傷付けた原因は 私にあるんだから…
- やばいやばい、家で練習するのに 楽譜忘れるところだった
- 帰り道で気付けたのは ラッキーだったね
- アレクサンドラ: ――っ!?
- あぁ、掃除…中だよね
- 気にしないで 私たちならすぐに帰るから
- アレクサンドラ: …………
- あ~今日も終わった~
- 先生って良い人なんだけど もう少し優しくして欲しいよね
- ほんとそれな
- アレクサンドラ: …………
- サーシャ、何かあった?
- アレクサンドラ: (わかってる… 私を心配する余裕なんてない…)
- アレクサンドラ: (魔法少女の私を心配すれば、 何をされるかわからない…)
- アレクサンドラ: (友だちだからって期待しない… みんなも自分を守ってる…)
- アレクサンドラ: ここで、私が助けを求めれば 苦しむのはみんなだ…
- なに、ブツブツ言ってるの?
- アレクサンドラ: あ、どうすれば効率良くなるか 考えていただけで、ふふっ♪
- 人を殺しといて 笑わないで欲しいんだけど
- アレクサンドラ: はい…
- もしも先生に言おうなんてしたら わかってるよね?
- あなたと先生が付き合ってるって 前に流れてた噂をさ
- もっと脚色した上で 流してもいいんだからね?
- アレクサンドラ: やめてください!
- アレクサンドラ: 私は当事者だから構いません! だけど、先生は巻き込まないで!
- 私だって本気じゃないって ただ気をつけろって言ってるの
- アレクサンドラ: …………
- 先生: 話し辛いことだったら別に 話す必要はない
- 先生: ただ、自分で抱えきれない時は 誰かに相談することを忘れるな
- 先生: 先生も教員の端くれだ
- 先生: 他に相談したい先生がいるなら 話を伝えてみる
- アレクサンドラ: (ごめんなさい、先生… 私には相談なんてできません…)
- 掃除が終わったら 明日から栗栖は長期ミッションね
- アレクサンドラ: 長期ミッション…?
- 来年の部員を確保するのに もっと箔が欲しいからさ
- 今度の独奏・独唱コンクールで 金賞以上をとってほしいんだ
- アレクサンドラ: そんな、簡単に…!
- 栗栖は先生に独唱で選ばれて フェストで期待に応えたんだから
- その期待を裏切ったりして 悲しませたりしないようにね
- アレクサンドラ: く…努力…します…
- アレクサンドラ: あんなに楽しかった歌うことが 呪いのように感じる…
- アレクサンドラ: 気持ち良く、自由に歌いながら 自分の声が空気に溶けていくのを鼓膜で感じる あの時間が、私を癒やしてくれていたのに
- アレクサンドラ: 今は声帯に重しをつけたかのように うまく声が出ない気がする…
- FILENAME: text_515608-3_czJwk.txt
- ラビ: (死ね、消えろ、殺人犯…)
- ラビ: (大人が許しても私は許さない)
- ラビ: (少年法なんて関係なく、 私刑でお前を潰す…)
- ラビ: (どす黒く汚れた言葉の数々は、 ほぼ撲滅派の人が書いたもの…)
- ラビ: (別に気にしなければ良いけど)
- ラビ: (靴への落書きや、 残飯のぶち込みは想定外…)
- ラビ: …………
- ラビ: うちも決して裕福ではない
- ラビ: 早いうちにお父さんが亡くなって それでも頑張ってお母さんが宿を切り盛りして なんとかやってきている…
- ラビ: その辛さを隣で見てきたからこそ これが一番こたえる…
- ラビ: 私が買ったものに対して何をされても 傷付きはしないけど お母さんが買ってくれたものが傷付けられると 辛そうなお母さんの顔が浮かんでしまう…
- ラビ: (だめ、ソウルジェムが濁る… 心を凍らせてしまわないと…)
- え、ちょっと 今どきあんなイジメって…
- さすがにまずくない…?
- アイツ、夜遊びホームルームに ゲストで出てきたらしくてさ
- この間のフェストの死亡事故とか 自分のせいだって名乗り出て
- 滅茶苦茶恨まれてるらしいぜ
- うっそ、ヤッバ…
- 何考えてるか知らないけど、 関わるとお前も標的になるぞ…
- ラビ: (そう、関わらないのが正解…)
- ラビ: (私は、人知れず怒りと悲しみを 受け止めるサンドバッグ…)
- ラビ: (それでいい…)
- ラビ: あ…
- ラビ: …………
- ピロン♪
- 白金: すみません あまり親しくしていると私も動き辛くなるので 冷たい態度をとることになりました
- ラビ: 気にしないで むしろ私たちを擁護していたからこそ 学校で目をつけられていると思う 関わらない方が良い…
- 白金: はい、人数的にも魔法少女を擁護してくれる人は 少なくなって、撲滅派の数だけが増えています 氷室先輩には申し訳ないですが しばらくは水面下で動かせてもらいます
- ラビ: …夜遊びホームルームでの宣言で 魔法少女全体に対するヘイトを 私たち3人だけに集められたらって思ったけど 正直、思ってたほどの成果はあがってないから…
- 白金: 撲滅派としては、ここで手を緩め過ぎると 魔法少女の集団虐殺を認めたことになりますから 今は3人が標的になっていたとしても いずれ全員の魔法少女を追い出すという方針は 変わらないでしょうね
- ラビ: これからも魔女が事件を起こすと思うと 私たちがいなくなれば 次は別の標的を見つけて叩くだけ…
- 白金: そうだと思います 魔法少女を纏めて叩いていたところを 的を絞って叩くように変えただけですから
- 白金: …だから私は氷室先輩が心配です
- ラビ: 今のところは大丈夫 ほとんどの仕打ちには耐えられる
- ラビ: ただ、家族や仲間が巻き込まれると心が痛むし 机や黒板に書かれた悪口自体はいいけど 自分で消すという行為は精神をすり減らしていく
- ラビ: 消すことで 自分では認めていないことまで あたかも認めたような気持ちになるから
- 白金: それでも何か解決策が見つかるまでは…
- ラビ: ええ、耐えるつもり…
- パシッ!
- 白金: った…!
- 氷室と連絡とらないでくれる? 次に見たら容赦しないからね
- 白金: …………
- ラビ: (そう、こういう時が、 最も自分の心を削ってくる…)
- ラビ: 少しの辛抱…少しの辛抱だから…
- FILENAME: text_515608-4_czJwk.txt
- ラビ: 魔法少女全体に向けられていた 憎悪が自分たちに集中すると
- ラビ: これほど苛烈になるのかと 正直自分で驚いてる…
- アレクサンドラ: こき使われているだけの私が 一番マシかもしれませんね…
- 旭: サーシャは顧問の先生とのことを 脅しに使われた上に
- 旭: 無理難題を言われている以上、 マシとは言えないであります
- アレクサンドラ: それなら旭ちゃんなんて 連日のように生傷が…
- ラビ: ええ、痛みを消すことも 傷を消すこともできるとはいえ
- ラビ: 心の傷は癒えずに蓄積するはず…
- 旭: それで彼らの気が済むなら 仕方ないであります
- 旭: ほとぼりが冷めるまでは 待つでありますよ…
- アレクサンドラ: 短い話ではなさそうですね…
- 旭: そうでありますな…
- 旭: ただ、黒田はあれでいて 元は優しい男でありますよ
- 旭: ちゃんと会話を重ねていって 我々を理解してくれたなら
- 旭: 今までのことを猛省して、 逆に理解者になるはずであります
- アレクサンドラ: ここまでされて、 旭ちゃんは許せるんですか?
- 旭: 彼の心を壊したのは、 我のせいでありますから…
- ラビ: …本当にごめんなさい
- ラビ: 魔法少女を広める話も 恨みを一手に引き受ける話も
- ラビ: すべては私が決めたことなのに
- ラビ: 私は旭とサーシャを巻き込んで、 友人関係まで壊してる…
- アレクサンドラ: 違いますよラビちゃん
- アレクサンドラ: 安請け合いしてしまった 私が悪いんです
- 旭: それに、ラビが言ってることは 何も間違ってないであります
- アレクサンドラ: そうですね
- アレクサンドラ: 同情を得たかった気持ちが 偽りのない本音だったからこそ
- アレクサンドラ: 私はラビちゃんに共鳴した
- 旭: 救いを共に求めた時から我々は 一蓮托生だったのでありますよ
- ラビ: ありがとう
- アレクサンドラ: それでは明日も 3人で頑張って耐えましょう♪
- 旭: もはや、日々傷付く覚悟は できてるであります
- ラビ: 私も女々しくはならず 耐えてみせる
- ラビ: じゃあ、また…
- ラビ: (そう強がってみても 涙は自然とこぼれてくる…)
- ラビ: …………
- ラビ: (いっそ、自分のソウルジェムを 壊して死んでしまった方が)
- ラビ: (撲滅派が溜め込んだ憎悪は 晴れるかもしれない…)
- ラビ: そうすれば、 旭も…サーシャも…
- 太助: 何をする気だ…!
- ラビ: はっ…
- 太助: グリーフシードがあるなら 早く浄化するんだ…!
- ラビ: あ…
- 太助: 良かった…間に合った…
- 太助: 前から鬱々としていたからね 気になっていたんだ…
- ラビ: どうして…
- 太助: ちょうど飲みものを買おうと 外に出てきたところだよ
- ラビ: そうじゃなくて、どうして 魔法少女のことを知ってるの…?
- 太助: …………
- 太助: 私の娘も、君たちと同じように 魔法少女として戦っているからね
- ラビ: ――っ!?
- 太助: 長期で宿を借りているのも、 魔法少女に関する本を書くためだ
- ラビ: …魔法少女の存在を認める大人… そんな人には初めて会った
- 太助: 認めているだけじゃない 娘のためにずっと研究も続けてる
- 太助: 魔女化を回避する方法をはじめ 人に周知させる方法についてもね
- ラビ: 私たちのことは どこまで知ってる…?
- 太助: ラビちゃんたちのことは そこまで知らないよ
- 太助: ただ、この辺りの大学に 知り合いの准教授がいてね
- 太助: 学生の間で魔法少女のことが 噂されてると聞いたんだ
- 太助: それで、噂の出所とも言える 夜遊びホームルームを知り
- 太助: 番組を見る中で ラビちゃんの発言を聞いた
- ラビ: そう…
- 太助: 魔法少女の話は意図的じゃないと 広まることはない
- 太助: おおよそ、魔法少女の存在を みんなに周知させようとした結果
- 太助: 悪人として捉えられるように 誤解されてしまったんだね
- ラビ: …だから私たちに恨みの矛先を 向けるために放送に出た
- ラビ: 同情が欲しかったとは言っても、 ミスをしたのは私だから…
- 太助: それが、穢れを溜めてしまう 原因になったんだね…
- ラビ: 理解してくれるのは嬉しい 助けてくれたことも感謝する
- ラビ: けど、私たちには関わらないで
- 太助: …いや、ラビちゃん むしろ私に力にならせて欲しい
- ラビ: どうして…!
- 太助: 私の娘も魔法少女である以上 この状況を看過できない
- ラビ: だけど、私は誤った判断のせいで 仲間を不幸にしている…
- ラビ: だから…
- 太助: だからこそ第三者である 私を頼ってくれ
- 太助: 魔法少女全体への恨みを 一身に引き受けるのは辛すぎる…
- ラビ: ……………………
- ラビ: …………
- 太助: ラビちゃん…!
- ラビ: 一緒に…旭を助けて欲しい…
- ラビ: 私でさえ、こんな状況なら… 彼女は最も危険な状態にある…
- FILENAME: text_515608-5_czJwk.txt
- 太助: はぁ…はぁ…
- 太助: これは、ライトがあっても、 足元に気をつけないとダメだな…
- ラビ: 地元の人しか入らないような 獣道だから
- ラビ: でも、旭の反応があるのは、 もっと奧の方
- 太助: 人目のつかないところで 痛めつけようなんて酷いな…
- 太助: わっ!
- 太助: ごめん、ラビちゃん 助かったよ
- ラビ: …今夜は月が明るいから 逆にライトは消した方がいいかも
- ラビ: 私は夜目が利くから割と見える
- 太助: 老眼の始まってるおじさんには 同じことはできないな…
- ダーーンッ!!
- 太助: ――っ!?
- ラビ: 銃声…
- 旭: ぐぅぁああッ!
- ふ、ふふ、ははっ…
- 旭: っ…は…はぁ…はぁ…
- 古い猟銃でも整備してやれば 十分使えるみたいだな
- おい、これでお前も 町から出てく気になっただろ?
- 旭: 残念ながら…
- 次は足を狙え
- 黒田: やめておけ これ以上は人に気付かれる
- クラスメイトだからって 優し過ぎないか?
- 黒田: 他に追い詰める手があっても、 今から痛みに慣れられたら困る
- 旭: …さすがにおかしいであります 十分、犯罪でありますよ…
- 黒田: …雪崩やフェストの件で 大勢を殺しただけじゃない…
- 黒田: 俺たちに正体がバレる前だって 何人も殺してきたんだろ…
- 黒田: そんな非道な連中が放つ 台詞とは思えねえな
- 黒田: 本当は魔女になりたくない 魔法少女は魔女から守ってる
- 黒田: 他の奴らは頑張ってて、 悪いのは自分たちだけだ
- 黒田: どんな顔をして何を言われても、 こっちは長年だまされてたんだ
- 旭: 黒田…本当におかしくなったので ありますか…
- 黒田: ああ…おかげさまでなぁ!
- 旭: ――っ!?
- 太助: 「ぐぅ…っ!」
- 旭: …………
- 太助: ッ…大変だったね…
- 旭: 肩から血が…!
- 太助: 大丈夫…掠めただけだよ あとで病院に行けば平気だから
- ラビ: 無鉄砲に出て行って…!
- まずい、見つかったよ…!
- 黒田: こいつ、覚えてるぞ… フェストのステージで話してた…
- 太助: 君たちは魔法少女がどんな子か 勘違いしている
- 黒田: なんだと…?
- 太助: 夜遊びホームルームで、 ラビちゃんが話していた通りだ
- 太助: 魔法少女が望んで 魔女になることはない…
- 黒田: は…?
- 太助: 誰もが君たちと同じように 望みや悩みを抱えている若者で
- 太助: 自分ではどうしようもない 苦しみを解消するために
- 太助: 魔法少女の詳細を知らないまま キュゥべえと契約を交す
- 黒田: だから、何が言いたいんだ
- 太助: つまり、魔法少女の大多数は 魔女になる宿命を知らない
- 太助: 呪いを振りまくために 生まれる魔法少女はいないんだ…
- 黒田: それを受け入れろって言うのか?
- 太助: もう君たちも退けないだろうし、 受け入れるのも難しいはずだ…
- 太助: それでも 誤解してると認めて欲しい…!
- 太助: そして、本当の彼女たち 魔法少女を理解して欲しい…!
- 黒田: …………
- 太助: 苦しみから逃れようとしたのに、 命をかけて魔女と戦うことになり
- 太助: その上、自分の末路が魔女だと 眼前に突きつけられる
- 太助: それでさえ想像を絶する悲しみ なのにも関わらず
- 太助: こうして友だちだった人にも 苦しめられるんだ…!
- 太助: それでも彼女たちは君たちが 大切な人を失った怒りと悲しみを
- 太助: こうして 受け止めようとしてる…!
- 太助: 君たちは穢れなき魔法少女の魂に 救われているんだ…!
- 太助: だから、どうか彼女たちを 解放してやってくれ…
- 黒田: …………
- ごたくはどうでもいいよ つか、見られたけどどうする?
- ここなら深く掘れば、 犬に見つかったりしないと思うぞ
- それ、俺たちで…
- ~~♪
- アレクサンドラ: 危害を加えるというなら、 私の音で無力化しますよ?
- ラビ: サーシャ
- アレクサンドラ: タイミングが良かったみたいです
- 黒田: …認識を改めるかどうかは 話は別だ
- 黒田: とりあえず今日は終わりだ 白けたからな
- 太助: …ふぅ
- FILENAME: text_515608-6_czJwk.txt
- ラビ: 本当に飛び出した時は 心臓が止まるかと思いました
- ラビ: 下手に急所を刺されていたら どうするんですか
- アレクサンドラ: 何針か肩を縫うだけで済んだのは 幸いでしたね
- 旭: 本当に…ってこの話をするのは もう3回目のような…
- アレクサンドラ: ラビちゃんが蒸し返すから…
- ラビ: 魔法少女を心配してくださるのは 実に結構なのですが
- ラビ: 命を投げ出すようなマネは しないで欲しいんですよ
- 太助: うん、反省するよ…
- ラビ: …娘さんも魔法少女なんでしょう
- ラビ: 娘のために頑張るあなたが死ねば 悲しむのは、あなたの娘です
- 太助: そうだね…
- アレクサンドラ: なんとなくラビちゃんから、 経緯は聞きましたけど
- アレクサンドラ: 失礼を承知で聞かせてください
- 太助: 何かな?
- アレクサンドラ: どうして、そこまで湯国市での 出来事に固執するんですか?
- 旭: それは気になるであります
- 旭: 我々にこだわって、魔法少女を 正しく理解してもらったところで
- 旭: 魔女化から逃れる方法には 繋がらないでありますよ
- 太助: そうだね 根本的な解決にはならないよ
- 旭: では、どうして
- 太助: それでも魔法少女になる少女を 減らせると思ったんだ
- 太助: 魔法少女が辿る宿命を人が知れば 契約をする子は減らせる
- 太助: 魔法少女になる少女が、 どんな願いを叶えたかを知れば
- 太助: 自分たちがその環境や苦しみを 作る一端を担っていると気付ける
- ラビ: それはつまり…
- 太助: 人が人に優しくなれば、 魔法少女になる理由は減っていく
- 太助: それに、人が魔法少女に対して 寛容になると思ったんだ
- ラビ: …知ってもらわないと存在しない
- ラビ: 知られているからこそ 得られる気持ちがある…
- ラビ: 同情を欲した私の気持ちと、 教授の考えは近いかもしれません
- 太助: そうだね、近いかもしれない
- 太助: それに、人が魔法少女に 同情の念を抱いてくれれば
- 太助: 魔法少女が抱える問題を 世界に提起する切っ掛けになるし
- 太助: みんなが解決に動きだせば 仲間が一気に増えていく
- 太助: それで魔女化を避ける方法が 広く研究されることを考えると
- 太助: 魔法少女の存在を認知することは とても意義のあることなんだ
- ラビ: そう考える教授にとって、 私の状況は看過できなかった…?
- 太助: 日本のみならず 世界中を回ってきたけど
- 太助: 魔法少女の存在を広めようとする 活動を目の当たりにしたのは
- 太助: この湯国市が初めてだった
- 太助: それに、民宿の娘さんである ラビちゃんが中心にいたからね
- 太助: どうしても助けたかったし、 失敗させたくなかったんだ…
- ラビ: …………
- 旭: それほど、我々の行動は、 珍しい行動なんでありますか?
- 太助: 魔法少女自体は 遙か昔からいるはずなのに
- 太助: 何千何万という歴史の中で 触れられていないのが証拠だよ
- アレクサンドラ: それだけ魔法少女を広める活動は 失敗してるってことですか…?
- 太助: ただ、失敗してるだけなのか
- 太助: 成功しても失われているのかは 私にもわからない
- 太助: だけどね…
- 太助: 「その理由を求めて世界を巡り 魔法少女らしい人物に関する 書物や物品を調べていくと」
- 太助: 「魔女との戦いや魔法少女の宿命など 語るべき大切な部分は削られて 神話や伝説という物語の中に消えていくんだ」
- 太助: 「時には、魔法少女や魔女に関わった人々が 虐殺されるような歴史も残されているのに 魔法少女という言葉は残されることはない…」
- 太助: 「そうした結末をいくつも眺めてると 魔法少女を広める活動がどうなろうとも 天の悪戯とも思える不思議な力で 理不尽にもねじ曲げられてるような気がするよ」
- アレクサンドラ: 天の悪戯による…ねじ曲げ…
- 太助: 魔法少女や魔女が関わる 事件や事故は不自然に目立たない
- 太助: 身近なところにもあると思うよ
- 旭: そんな、我々の外にある意思に 操られているようであれば
- 旭: 何をしても無駄でありますよ…
- ラビ: 教授もその諦念を払拭するために 自分でもやれることをして
- ラビ: 希望を絶やさないように 抗っている…
- 太助: そう、諦めそうな心を 私自身も鼓舞しているんだよ
- 太助: 魔法少女たちの歴史を塗り替える 千載一遇の機会だからね
- 太助: だから私にも手伝わせて欲しい みんなの幸せのために
- アレクサンドラ: もう、知ってもらうことは 諦めようと思っていたけど
- 旭: もう一度立ち上がってみるで ありますよ
- ラビ: 本来の目的を思い出して もう一度だけ粘ってみよう
- ラビ: ただ、魔法少女の信頼を 回復させるには
- ラビ: 大きい壁を越える必要があるけど
- 旭: 壁、でありますか?
- ラビ: 真実を知った人々にも 受け入れてもらわないといけない
- ラビ: 私たちが魔女になる現実を
- FILENAME: text_515609-1_czJwk.txt
- ラビ: 魔法少女の研究をしている里見教授の協力も得て 私たちはもう一度、魔法少女のことを みんなに知ってもらう試みを始めることにした
- ラビ: 前までは、魔女の被害者たちの怒りと悲しみを 私たち3人が一身に受けることで 彼らにとっての癒やしになればと思っていた
- ラビ: だけど、これまで苦痛を味わった魔法少女たちは 私たちを含めて6人まで数を減らしてしまい 事態は一向に良くなる気配を見せない
- ラビ: だから私たちはもう一度初心に返り 魔法少女と人々が理解し合えるように 動くことを決めた
- ラビ: ただ、このまま私たちが何かしたところで 撲滅派の人々からすると自作自演でしかない そこで、里見教授が動いてくれることになった
- ラビ: 周りの誤解を解く切っ掛けが生まれて 改めて信頼という芽を育てられる状況になれば その時こそ、私たち魔法少女の出番
- ラビ: 次こそ必ず理解してもらおう 本当の魔法少女を
- 旭の母: ほらもう、旭 食事中にケータイ見ないの
- 旭: あ、すまないであります 少々気になる連絡があって…
- 旭の父: お前がケータイに夢中なんて 珍しいこともあるもんだな
- 旭: いやぁ、あはは…
- 旭: (我々以外に残った3人も、 魔法少女の話を広めた当事者…)
- 旭: (特に異論はなさそうで よかったものの)
- 旭: (ラビの宿に泊まってるという 里見太助という民俗学者…)
- 旭: (果たして 何をするつもりなのか…)
- 旭: (我としては撲滅派の動きを 止めたいところであります…)
- 「湯国市のイベントで起きた事故から 町の中では新たな事件や事故が頻発しています」
- 「警察による因果関係の調査も行われていますが 今のところ全ての事件や事故は 繋がりがないとの報告がされています」
- 「特に被害が10代の若者に集中していることから 公立の小中学校では集団下校の実施や 夜間の外出自粛の要請が行われています」
- 旭: (同胞の仕業だと思うと やり切れないでありますな…)
- 黒田: なんだよ、呼び出して とうとう俺を殺す気になったか?
- 旭: まさか、黒田に手を上げる気は 毛頭ないでありますよ
- 黒田: そうかよ… じゃあ、何の用だ?
- 旭: この間、我を守ってくれた教授が 言っていた話は本当であります
- 黒田: お前らの穢れなき魂に 俺たちが救われてるって話か?
- 旭: 違うであります
- 旭: 魔法少女は 魔女になるという話を知らずに
- 旭: 魔女との戦いに命を割いている そういう話であります
- 旭: 夜遊びホームルームで ラビが話していた内容とは
- 旭: 相違なかったかと
- 黒田: それなら俺もあのオッサンの話を 引用させてもらうけど
- 旭: 何でありますか…
- 黒田: 俺たちが魔女にさせた以上はな もう退けない
- 黒田: お前たちの言い分を 今さら受け入れられねえよ
- 旭: …そうでありますな
- 黒田の声: 三浦
- 旭: …………
- 黒田の声: 猟銃はやり過ぎた
- FILENAME: text_515609-2_czJwk.txt
- 太助: (湯国市の教育委員会は、 この辺りみたいだな…)
- 太助: (第三者から魔法少女の話題を アプローチするにしても)
- 太助: (まさかフェストでの対談が こんな形で役立つとは)
- 太助: 引き受けてみるものだな
- 太助: (確か名刺は…)
- 太助: (教育企画室の室長か… 影響力を図りかねるな…)
- 太助: では、学生の噂については こちらでもご存知なんですね
- ええ
- 魔法少女なるものの話が、 学生の間ではやってるのは
- 我々も認識しています
- 太助: 実は私が専門で研究してるのは その魔法少女についてなんですよ
- はは、ご冗談を 学生の噂ですよ?
- 太助: そう言われると、 胸に刺さるものがありますが
- 太助: 例えば、この湯国温泉郷に伝わる 芸事も風俗のひとつですし
- 太助: 民間で信仰があるおとぎ話や 妖怪に関する言い伝えも
- 太助: 民俗学を織りなすひとつです
- なるほど…
- そう言われると確かに、 空想事も捨てたものじゃない
- 太助: その通りで、言い伝えや習わしは 土地を表す顔とも言えます
- 太助: もちろん 魔法少女も同様なのですが
- 太助: 他と違って面白いのは
- 太助: 魔法少女というものは ワールドワイドな存在なんです
- 太助: そこで提案させて欲しいのですが 講演をさせていただけませんか?
- 魔法少女に関する?
- 太助: はい
- 太助: 民俗学で有名な土地に 遠野があるように
- 太助: 湯国市も民俗学の発信地として 名をはせる切っ掛けになります
- 私もよく知らず、 馴染みがないだけに面白いですね
- ただ、何もないと掛け合うことも できないので
- 太助: もちろん、プレゼンになるような 資料はご用意します
- わかりました
- それにしても小さな町の噂に よく飛びついてくださりました
- 太助: このままイジメを放置していると 取り返しがつかなくなるので
- イジメ?
- 太助: 本音を言うと学生の間に伝わる 誤った魔法少女像の影響で
- 太助: 一部の少女たちが イジメを受けてるようなんです…
- 太助: 私としては、まずその点を どうにかしたく
- その件は聞いてませんね…
- 太助: そちらの耳に入る状況ですと 手遅れになるかもしれません…
- 講演の件ですが、 その子たちが関わるんですね?
- 太助: はい
- では、まずは情報を精査しないと 被害が増える恐れがある
- まずは状況を把握したいので お待ち頂けますか?
- 太助: どれぐらいかかりますか
- これから他の部署とも掛け合って 対応を決めるのでなんとも
- 太助: いや、それじゃ遅いです
- 各校からの上申がない以上、 この町にイジメはないんですよ
- それを“ある”と言うのなら、 まず調べないといけない
- 太助: そんな悠長な…!
- 今、魔法少女という噂について お話頂くのは危険と存じます
- 太助: 待ってください
- 時間をおけばイジメの有無は わかりますから
- 太助: っ…
- FILENAME: text_515609-3_czJwk.txt
- 太助: くっ…
- 太助: 食いつきは良かったが、 結局のところは保身か…
- 太助: (経験上、ああなると、 前進しないのが目に見えるな…)
- 准教授: あらぁ、先生にしては 珍しいミスをしてしまいましたね
- 太助: 人間関係を築くのは 得意分野だったんだけどね…
- 准教授: それに驚きましたよ
- 太助: 私の失敗にかい?
- 准教授: いえ、前にも伺いましたけど まだ魔法少女を調べてたんだって
- 太助: もはや私にとっては 人生をかけた研究だからね
- 准教授: 娘さんの命がかかってるから?
- 太助: そうだよ まだ信じられないかな?
- 准教授: 前と比べると、 信じる気持ちになってきましたよ
- 准教授: 一部の学生が話してるのを 耳にするようになって
- 准教授: 本当に掘り下げられていない 題材かもしれないと
- 太助: 君に信じてもらえるなら 噂に感謝だよ
- 太助: 良ければ、魔法少女の話を広める 協力をしてもらえないか
- 太助: 正確に言うと 誤解を解くといった方がいいな
- 准教授: 教授は運が良いですね
- 太助: ん?
- 准教授: 夜遊びホームルームっていう ローカル番組はご存知ですか?
- 太助: もちろん
- 太助: 有愛うららっていう子が、 魔法少女の話をしてたからね
- 准教授: そうなんです
- 准教授: 実は今度、その中でやってる コーナーに呼ばれているんですが
- 准教授: 里見教授もご一緒に出演するのは いかがですか?
- 准教授: 湯国市のマニアックな話を 取り上げるコーナーで
- 准教授: 本当なら湯国漁師の舟歌について 話そうと思ってたんですが
- 太助: そこで魔法少女の話をすると
- 准教授: ご明察です
- うららのマネージャー: うららー、くららー
- うらら: どうしたんよ?
- うららのマネージャー: 次の夜遊びホームルームに 出て貰う予定だった准教授だけど
- うららのマネージャー: トークテーマを変えたいって 連絡が来てた
- うらら: ウチらは合わせるだけだから 別に構わないんよ
- くらら: 私も、ある程度台本があれば 対応できるから任せて
- くらら: ただ、どういうトークテーマに 変えたいの?
- うららのマネージャー: 聞いて驚くなよ?
- くらら: 何よもったいぶって…
- うららのマネージャー: 「魔法少女」
- くらら: なっ!
- うらら: …………
- うららのマネージャー: あはは! 驚いて逆に声も出ない?
- くらら: いやいやどういうこと? 呪われてるの?
- くらら: もう面倒事に巻き込まれるのは ごめんなんだけど!
- うらら: まさか、魔法少女の話題が 他から舞い込んで来るだなんて
- うらら: ぜんぜん思わなかったんよ!
- うらら: どうして急に魔法少女の話を したいって言ってるのん?
- うららのマネージャー: 学生の間で流れてる間違った噂を ちゃんと正したいんだって
- うららのマネージャー: このままじゃ本人たちが 誤解されたまま可哀相だからって
- くらら: そんな厄介そうな話 拒否してよ!
- うららのマネージャー: いいだろ? こうなったら何かの縁
- うららのマネージャー: とことん魔法少女の話題に 付き合ってやれ!
- くらら: えーーーー!?
- うらら: わかったんよ!
- FILENAME: text_515609-4_czJwk.txt
- うららの声: うららと!
- くららの声: くららの!
- うらら&くららの声: 夜遊びホームルーム!!
- うららの声: 今日もいつもの収録スタジオから お送りするんよ!
- 旭: まさか、里見教授が この番組に出ることになるとは…
- アレクサンドラ: みんなに伝える手段として、 結局、頼ることになるんですね…
- ラビ: ただ、いくら第三者の意見でも
- ラビ: 先の放送で私たちは 自分たちの罪を認めてしまった…
- 旭: そんな我々への心象が 学生たちの間で変わるかどうか
- 旭: さすがに未知でありますな
- アレクサンドラ: そうですね…
- 准教授: だから、学生から魔法少女の話を 聞いた時は本当に驚いたの
- 准教授: 里見教授がずっと調べてる ことだったからね
- うらら: でも、湯国市だけでも 何人もの魔法少女がいるのに
- うらら: 世界中でも知られてないのは どういうことなのん?
- 太助: 仮説だけど、大きな理由としては 勘違いされやすいからだと思う
- うらら: 勘違いなのん?
- 太助: さっきも話した通り、魔法少女は 魔女から人々を守ってるけど
- 太助: その魔女になってしまうという 悲しい側面も持っている
- 太助: だから、彼女たちがいなければ 魔女は生まれないという理屈で
- 太助: どうしても、 悪者にされがちなんだ
- くらら: でも、みんなわかってて 魔法少女になってるって話なら
- くらら: 周りに責められても 文句は言えないような気がする
- 太助: 実は魔女になるという事実を 承知の上で契約する子は
- 太助: ほぼいないのが現実だ
- くらら: じゃあ、前にうちの番組に来た 魔法少女が話してたことは…
- 太助: 恐らく本当だと思うよ
- 太助: どんな魔法少女も、進路や夢 家庭や友人との関係など
- 太助: みんなと同じような 等身大の悩みを抱えていて
- 太助: そのどうしようもない想いから なんとか逃れるために
- 太助: 契約を交して魔法少女になる
- 太助: 病気や事故で苦しんでる時に 契約を持ちかけられた子は
- 太助: そんな魔女になるなんて話を する余裕は一切ないだろうね
- うらら: そんな正確に判断できない時に 契約を迫ってくるのん?
- 太助: 契約をする相手のキュゥべえは、 手段を選ばないからね
- うらら: そ、そうかもしれないんよ…
- 太助: こうした事情もあってか 魔法少女になった子というのは
- 太助: 一括りにはできないけど、 純粋な子が多い
- 太助: この間、番組に出演していた 魔法少女たちもそうだ
- うらら: そう、フェストの件は全部 自分たちが悪いって言ってたんよ
- 太助: 何を伝えようとしても、 当事者が話せば自演に聞こえる
- 太助: だから、せめて他の魔法少女が 苦しまないように
- 太助: 今回の件で苦しんだ人たちの 感情のはけ口は残すように
- 太助: 彼女たちなりに 自分を犠牲にしたんだよ
- うらら: それじゃあ、あまりにも みじめすぎるんよ!
- 准教授: だから、さっき里見教授が 言っていた状況になっちゃうのよ
- 太助: そうだね
- 太助: 魔法少女自身が歴史の闇の中に 自ら消えるようになってしまう
- うらら: なんとかできないのん…?
- 太助: 魔法少女に対して 少しだけ優しくしてあげて欲しい
- 太助: そして魔法少女を増やさないよう 周りにも優しくなって欲しい
- 太助: 今できるのはそれだけだ
- うらら: じゃあ、最後にひとことあれば お願いするんよ
- 太助: …………
- 太助: 「湯国市で魔法少女の排斥が進んだ結果 魔女になってしまった子が増えているなら この町ではあらゆる被害が増えているはずだよ」
- 太助: 「ただ、その原因は魔法少女にないし 魔法少女を排斥した人たちにもない 色々な悩みや苦しみを生んでしまう環境にあると 考えてくれたら嬉しい」
- 太助: 「加えて、町の惨状を正すことができるのは 魔法少女だけである以上 たとえ納得できなかったとしても 彼女たちに頼るようにして欲しい」
- 太助: 「それが最も被害を減らす方法だからね」
- 太助: ふぅ…
- ラビ: おかえりなさい、教授
- 太助: ああ、ラビちゃん ただいま
- ラビ: 今日はありがとうございました 本当に助かりました
- 太助: 私にできることはしてるけど、 結果がどうなるかはわからないよ
- ラビ: それでも、私たちのことを 真剣に考えてる人が側にいる
- ラビ: その現実が目の前にあるだけで 私は嬉しいんです
- 太助: 今日もまた自殺者が出ている
- 太助: 状況は周りがわかっている以上 あとは君たち次第になるよ
- ラビ: はい
- FILENAME: text_515609-5_czJwk.txt
- ラビ: ――っ!?
- ラビ: (下駄箱へのいたずらが 目に見えて減っているような…)
- 白金: 氷室先輩
- ラビ: 白金…私と話していていいの…? また目をつけられるんじゃ…
- 白金: いえ、構いません
- 白金: 私は氷室先輩の味方のつもりで 逃げているだけでした
- 白金: 動きやすいかどうかなんて 逃げる言い訳に過ぎませんでした
- 白金: 今までのこと、 どうか謝らせてください
- ラビ: 謝る必要はない
- ラビ: 白金という存在があるだけで、 私がどれだけ支えられているか
- ラビ: むしろ私が謝るべきだから あなたは頭を下げないで
- 白金: ありがとうございます
- アレクサンドラ: …………
- サーシャ…
- アレクサンドラ: ――っ!?
- 私たちも手伝うね 朝の掃除…
- アレクサンドラ: …あ、ありがとうございます
- …………
- …………
- ごめ…ごめんね… サーシャのこと無視して…
- アレクサンドラ: 放送を聞いたんですか?
- うん、それですごく後悔して… わざと距離とって…
- こき使われてるのに、 見てないフリをしてさ…
- アレクサンドラ: …………
- 友だちに戻ってなんて言えない… けど、許して…
- こんなこと言うのも 自分勝手だよね…
- アレクサンドラ: いえ、嬉しいです
- アレクサンドラ: こうして理解してくれる人が、 ひとりでも増えるだけで…私は…
- 旭: (いつもよりクラスメイトが 大人しいような…)
- 旭: (里見教授という第三者でないと 起きない奇跡でありますな…)
- あの…
- 旭: ん?
- ごめんなさい…三浦…
- 旭: なんでありますか急に
- 私、三浦をかばうような フリをしてたのに
- 魔法少女に批判的な人の圧力で 簡単に引いちゃった…
- 私なんかより、三浦の方が 大変だったはずなのに…
- 旭: 気に病むことじゃないで ありますよ
- 旭: 少しでもかばってくれた事実が 我にとっては嬉しいであります
- 本当にごめんね
- 黒田: …………
- 旭: …………
- 「結局、黒田がやってたことって 人殺しみたいなものなんじゃないの…?」
- 「そりゃあ信じてたヤツも悪いけど 主導するヤツがいなかったら こんなにリンチみたいにならないって…」
- 「可哀相だよね…三浦さん…」
- 旭: …………
- FILENAME: text_515609-6_czJwk.txt
- ガチャッ
- 旭: あぁああッ! なんって、腹立たしいッ…!
- 旭: 我々のことを理解してくれるのは 有り難いであります…!
- 旭: けど、我々が何を言ったところで 傍観者だったのはお前たち
- 旭: 撲滅派でも擁護派でもない お前たちであります…!
- 旭: ラビが言ってた同情とは違う…
- 旭: こいつらには感情がない
- 旭: 風に揺られるわたぼうしと同じで ただ流されているだけ…
- 旭: 灰谷を失った黒田の気持ちを 考えれば
- 旭: そんな簡単に手のひらを 返すことだなんて…
- 旭: っ…
- 旭: なんて、人の嫌なところばかりが 見える日々でありますか…!
- 黒田の声: 仕方ないだろ
- 黒田の声: みんなの言う通り、 俺は殺人犯なんだからな
- 旭: 黒田…どうして…
- 黒田: ひとりで悩みたかったのに 三浦がいただけだよ
- 黒田: …好きな子を失ったからって 人を殺していい道理はない
- 黒田: そんなことは 最初からわかってたからさ
- 黒田: 周りが手のひらを返しだしたら 持論なんて維持できないだろ
- 旭: 腹が立たないのでありますか
- 黒田: お前変だよ、三浦 なんで俺のために怒ってるんだよ
- 黒田: どれだけ俺がお前を 傷付けたと思ってるんだよ
- 旭: 我は魔法少女であります
- 旭: 痛みを消すこともできるし あの程度のケガなんて
- 黒田: 普通の人なら死んでるだろ
- 旭: それは…
- 黒田: それに魔女になった魔法少女は 何人もいたはずだ
- 黒田: あれが逃げたわけじゃなく お前らにとっての死であれば
- 黒田: 俺たちは何人も殺したのと 変わらないんだよ
- 旭: …………
- 黒田: なんだよ…
- 旭: その様子だと、灰谷との約束は 守れそうであります
- 黒田: 約束…?
- 旭: 我は死者を呼び出して 対話できるのでありますが
- 旭: 灰谷は言ってたでありますよ
- 旭: これ以上、 黒田に殺させないで欲しいと
- 黒田: そう…か…
- 旭: あれから紆余曲折あったものの 黒田は元に戻ってきた
- 旭: 『猟銃はやり過ぎた』
- 旭: あのひとことを聞いた時が、 最もそう感じたでありますよ
- 黒田: 俺も少しずつ 冷静になってたからな…
- 旭: …………
- 黒田: なあ、三浦
- 旭: なんでありますか
- 黒田: この湯国市で増えてる被害を 魔法少女たちで減らしてくれよ
- 旭: 魔女を倒せと?
- 黒田: それで、この町から事件や事故が 本当に少なくなれば
- 黒田: 俺は心置きなくお前たちを信じて 今の撲滅派を終わらせられる
- 旭: まだ、我に頑張れと ひどい話でありますな
- 旭: でも、どうせ倒すべき相手 構いはしないであります
- 旭: 約束でありますよ
- 黒田: もちろん
- 黒田: …本当は死刑になるべきだけど たぶん、そうはならない
- 黒田: だから、撲滅派を終わらせたら 俺は少年院にでも入るよ…
- 旭: なっ
- 黒田: 償いきれない罪を 己に刻まないと
- 黒田: この先、生きていけるような気が しないんだよ、俺…
- FILENAME: text_515610-1_czJwk.txt
- ラビ: では、始めよう
- 旭: 魔法少女の 信頼を回復させるために
- アレクサンドラ: 魔女になった湯国市の仲間を 救いに行きましょう
- 准教授: そう、それじゃあこの間の放送は 成功だったんですね
- 太助: 撲滅派のやり方には 内心否定的な人も多かったのか
- 太助: やはり第三者の意見が効いたね
- 太助: 少しずつ魔法少女の立場は 学生の間で向上しているようだよ
- 准教授: 事件や事故の増加が 地元の番組で話題になってたけど
- 准教授: 右肩下がりになってきたのは、 魔法少女が原因でしょうか
- 太助: うん
- 太助: 湯国市に残った魔法少女が 6人で倒していってるらしい
- 准教授: 急に減るということは 魔女がそれだけ多かった…
- 准教授: ニュースでも言ってましたけど 被害は10代が多かったとか
- 太助: 魔女になった子を含めると 女性が多いかもしれないね…
- 太助: それでも、治安が改善すれば、 撲滅派とも和解すると聞いてる
- 太助: 魔法少女たちや私にとって 今が正念場だね
- 太助: 魔法少女の存在を広めつつ 擁護してくれる人が現れるという
- 太助: 有史以来叶わなかったことを 成そうとしているんだから…
- 太助: 自分たちの力で成せるのなら 歴史が物語る理不尽な仕打ちに 終止符が打たれるなら
- 太助: 私が抱えている どうしようもなく絶望的な仮説は 消えてなくなるかもしれない…
- アレクサンドラ: グリーフシードは ソウルジェムを浄化してくれる…
- アレクサンドラ: それは、誰かを助けるために戦う 私たち魔法少女が残した
- アレクサンドラ: 最後の優しさかもしれませんね…
- そう考えるとグリーフシードを 落としてくれて良かった
- あの子は 呪いを振りまくだけじゃなくて
- こうして私たちのことを 救ってくれたんだもん…
- アレクサンドラ: 今倒したのは、 幼馴染の方だったんですよね…?
- うん…
- 同じ願いを叶えて衝突しても、 支え合える親友だった
- アレクサンドラ: 以前、少しだけ話を聞いたことは ありましたけど
- アレクサンドラ: 衝突をしただなんて、 聞いたことがありませんでした
- 実はね、好きな人と付き合うのが 私たちの願いだったの
- それだけなら、似た者同士って 笑っていられるんだけど
- 私が好きな人はね あの子と同じ人だったんだ
- アレクサンドラ: えっ!?
- 私の方があとに願ったから 奪うような形になっちゃって
- お互い、好きな相手のことは 知らなかったとは言っても
- 発覚した時は、もう大ゲンカ
- アレクサンドラ: で、ですよね…
- アレクサンドラ: それで、また以前のように 仲良しに戻れたんですか…?
- 私も好きな人を振って 親友との関係をとったから
- アレクサンドラ: あ…
- 魔法少女になった意味って 何だろうって悩んだりもしたけど
- ふたり一緒なら 仲良く魔女退治も頑張れたんだ
- 本当は私たちのことを みんなに知ってもらって
- 少しは報われたら良いねって 話してたんだけどね
- アレクサンドラ: それはすみません たぶん私たちのせいで
- アレクサンドラ: 魔法少女が勘違いされて…
- 希望を抱いたのは、 私たちだって同じだったし
- 信頼できそうな友だちに 魔法少女の話はしてたから
- サーシャが悪いわけじゃない 生きてるみんなお相子だよ
- アレクサンドラ: …このまま叶えましょう 私たちが夢見た希望を
- アレクサンドラ: 魔法少女のことを理解してくれる 人たちが溢れていて
- アレクサンドラ: 人が人に優しくあれる 世界にしていくために
- うん、それが魔女になった あの子との約束でもあるからね
- FILENAME: text_515610-2_czJwk.txt
- 湯国市の治安が改善すれば 魔法少女や擁護派と和解
- これでいいのか…?
- いいわけねーだろ 犠牲が出た過去は変わらねー
- もう少し骨があるかと思ったが 黒田は完全に日和ったな
- でも、魔法少女が成果を出しても 周りが認めないと意味がない
- だから、他の撲滅派の人たちにも 動いてもらって
- グループメッセージとかを通して 印象は操作してもらってるよ
- とは言っても、学校が静かだと こちらの勢いが落ちた印象になる
- 強気には出ず涙を誘った方が いいかもしれないな
- 白金の声: もはや、そんな姑息な方法が 通用する状況ではありませんよ
- お前、擁護派の…
- 白金: もう、力に怯えて隠れるような 私たちではありません
- 白金: あなたたちがSNSや掲示板で 悪辣な風評を広めるのであれば
- 白金: 私たちはそれを食い止めるための 書き込みを続けるだけ
- 白金: あなたたちが学校などで お涙頂戴をするというのなら
- 白金: 涙を拭う手が魔法少女たちの 血で濡れていることを
- 白金: 私たち擁護派が証明するだけです
- 今さら、どこにそんな力がある
- 白金: 私たちは隠れていただけで 常にあなたたちの側にいたんです
- 白金: 舐めないでください
- 白金: あなたたちに対抗するだけの数は こちらにだって居るんですから
- っ…
- 白金さん、湯の花国際の校庭で ヘイトスピーチがあるって…
- 白金: 何人か先に行ってもらって、 大事になる前に止めてください
- あの学校にもメンバーがいるので 大丈夫だと思います
- …こちらが何をしようとしても 情報は筒抜けっていうことか
- 白金: こちらに回ってきた撲滅派の人も 居ますからね
- 白金: 私たちの力が拮抗するのであれば あとは魔法少女の行動次第
- 白金: 彼女たちの命運が決まる 分水嶺なんです
- 白金: 仲良く結末を見守りませんか?
- FILENAME: text_515610-3_czJwk.txt
- 旭: サーシャの方で 魔女を倒したそうでありますが
- 旭: やはり、我々が知る魔法少女が 相手だったようであります…
- 最近の魔女は 流れ着いてきたわけじゃなくて
- 私たちの仲間から 生まれてきたものだから…
- 旭: そうでありますな…
- 旭: 魔女になるところを目撃したり、 その人の特徴を知ってる手前
- 旭: 誰なのかが想像できてしまうのは 非常に心苦しいであります…
- うん…
- 近くで感じる反応は残り2体 だいぶ私たちも倒したけど
- その相手も恐らく 私たちが知っている元魔法少女
- 覚悟を決めていかないと…
- ちなみに撲滅派の動きは大丈夫? 何か邪魔をしてきそうだけど…
- ラビ: 教授たちの動きもあって、 擁護派が盛り返してきてる
- ラビ: 白金から連絡があったけど 撲滅派から流れて来た人もいて
- ラビ: 向こうの動きが掴みやすいから 先回りできてるみたい
- ラビ: だから、あとは私たち次第
- ラビ: 今日は残り2体だから、 私はあなたと一緒に倒しに行く
- うん、オッケー
- 旭: では、我は彼女とタッグで もう1体を相手するであります
- 旭: この反応… かなり近付いたでありますな…
- 旭: やはりご存知の方でありますか?
- 湯国青波学園の水泳部で 部長をやってる人って知ってる?
- 旭: もちろんでありますよ 優れた選手として有名であります
- 旭: 魔法少女としても優れていて 我も助けられたことが…
- 旭: まさか…!
- そう、この反応は彼女なの
- 私は水泳部のマネージャーでね 魔法少女の話を広めてた
- そしたら悪者扱いになっちゃって 指輪の話もしてたから
- 彼女も撲滅派の標的として 狙われるようになってしまったの
- 旭: …元はといえば我々が始めたこと なんと詫びれば良いのか…
- 舞い上がって仲良くない人にまで 話した私が悪いだけ
- むしろ彼女の華々しい学園生活を 奪った自分に呆れてるぐらい…
- 旭: 本当に本人なのでありますか…
- 旭: 湯国市のグループメッセージで 特にそのような方が消えた様子は
- あの人、SNSとかが嫌いで、 私が連絡係をしてたから
- 旭: そういうことでありますか
- ねえ、三浦さん
- あの人は魔法少女として かなり優秀だった
- 町の人を助けるだけじゃなくて 魔法少女のことも助けてきた
- 旭: 実際に我も救われたことが あったであります
- もしも、魔女としても強くて ふたりで倒せない時は
- 私が動きを止めるから、 彼女と一緒に私を貫いて
- FILENAME: text_515610-4_czJwk.txt
- ガシャ!
- ラビ: っ…はぁ…クッ…
- ごめん…! 私が無理させたせいで…
- グリーフシードは、 あなたが使って…!
- ラビ: ありがとう…
- ラビ: けど、ここだと目立つ… 場所を変えよう…
- …本当にごめんなさい
- どんな魔女が相手だったとしても 平気だって覚悟は決めてたのに…
- ラビ: 実の妹が相手ともなれば ためらうのも仕方がない…
- ラビ: つい、この間まで寝食を共にして ひとつ屋根の下で育ってきた
- ラビ: それが突然いなくなるばかりか、 姿を変えて現れたともなれば
- ラビ: 心境を察して余りある…
- 可愛かった… 世界で一番可愛い妹だった…
- いたずら好きで 少し腹立たしいところはあっても
- すぐに何だって許せる…
- 今度、初めてふたりだけで 都会に遊びに行こうって
- 約束してたのに…
- …………ッ!
- ラビ: ごめんなさい…
- ラビ: 私はこういうときに どういう言葉をかけていいか…
- ふっ…ぅ…ぐすっ…うぅぅ…
- ラビ: …このグリーフシードは 私だけに使っちゃいけない
- ラビ: もう姿も形も 違っていたかもしれないけど
- ラビ: こうして妹はそばにいて あなたを癒やしてくれる…
- ラビ: 誰にも倒されることなく 今まで残っていたのは
- ラビ: 妹も姉に一目会って、 挨拶をしたかったのかもしれない
- 太助: おかえり、ラビちゃん
- ラビ: 教授
- 太助: まだ、湯国市のニュースは 見てないよね?
- ラビ: はい、何か変化がありましたか?
- 太助: さっき親御さんと一緒に、 見てたんだけど
- 太助: 増えていた事件や事故が 今日は減ったという話をしてたよ
- ラビ: 本当ですか…!
- 太助: ここしばらく、ラビちゃんたちが 頑張ってきた成果が出てるね
- ラビ: ここまで動きやすくなったのは、 教授のおかげです
- ラビ: 撲滅派の憎悪を受け止めて 終わらせようとしていた私たちに
- ラビ: 救われたいという本来の気持ちを 思い出させてくれたんですから
- ラビ: それに教授のおかげで 学生の心が動いたんですから
- ラビ: 感謝してもしきれません
- 太助: 私はできることをしただけだよ それに私も感謝してるんだ
- 太助: 魔法少女は救われるということを 証明してくれようとしてるからね
- ラビ: まだ、結果はわかりません
- 太助: そうだね
- 太助: だけど、希望を持つのが 魔法少女で
- 太助: そんな魔法少女を信じる私たちも 希望を信じる
- ラビ: …そうですね
- FILENAME: text_515610-5_czJwk.txt
- 「ねえ、今日のネットニュース見た?」
- 「あれでしょ? 湯国市で起きてる怪現象 有り得ない犯罪件数の乱高下ってやつ」
- 「ほんと、ここ暫くの間で すごいことになってるもんね」
- アレクサンドラ: ~~♪
- アレクサンドラ: これで黒板も綺麗になりましたし 新しく書いても読みやすいですね
- アレクサンドラ: (…こうしてまっさらにするのは 私たちが魔女を倒すのと同じ)
- アレクサンドラ: (今までの関係をリセットして やり直そうとしている…)
- アレクサンドラ: 私たちへの理解も深くなれば 嬉しいんですけどね…
- アレクサンドラ: …………
- アレクサンドラ: って、あれ、黒板の譜面って 消して良かったんでしたっけ…
- 消しても問題ないよ
- アレクサンドラ: ――っ!?
- 掃除しろなんて言ってないのに まだちゃんとやってたんだ
- アレクサンドラ: 自発的にやってただけです
- アレクサンドラ: 綺麗な方が気持ち良く 部活ができるじゃないですか
- すごいね、栗栖は…
- 魔法少女は悪くないって話が みんなに広まった今も
- こき使ってた私たちに 何ひとつ恨み言をぶつけない…
- アレクサンドラ: 魔法少女が魔女として 人を殺してるだなんて知ったら
- アレクサンドラ: 怒ったり怯えたりするのは 当然だと思います…
- なんだか自分がちっぽけ…
- …許されないと思うけど、 一応、言わせて
- ごめん、栗栖 今までひどいことして…
- アレクサンドラ: …本当に許せないことが あるとしたら
- アレクサンドラ: 関係ない先生を 巻き込もうとしたことぐらいです
- アレクサンドラ: それに、私はこのままおふたりを 許すつもりもありません
- うん…
- いいよ、それだけのことを 私たちはしたと思ってる…
- アレクサンドラ: 手を取り合うのなら 全てが終わってからです
- えっ…
- アレクサンドラ: だから魔女を倒し終えて、 湯国市の治安が落ち着くまで
- アレクサンドラ: 待ってください
- アレクサンドラ: (下手に安心するのは怖い…)
- アレクサンドラ: (もしも最後に失敗すれば、 今以上のしっぺ返しが待ってる)
- アレクサンドラ: (だけど、これを糧に もう少し頑張ろう…私…!)
- ラビ: 今、感知できている魔女は 残るところあと2体
- ラビ: これまで倒した魔女もいるから 既に治安は改善してきてる
- ラビ: だから今日で最後
- ラビ: あとは示される数字次第で 手を取り合って終われる
- ただ、さすがは最後に残った魔女
- 反応でわかるけど、 ふたりじゃ手強いかもしれないよ
- それなら組合わせは…
- この3人と
- あなたたち3人が良さそう
- 旭: 確かに我々は 3人で戦い慣れてはいるので
- 旭: 連携はとりやすいでありますが…
- アレクサンドラ: そっちは本当に その3人で大丈夫ですか?
- 確実に勝ちを狙うなら この組合わせがベストだと思うよ
- アレクサンドラ: いっそ6人であたるのも 良いと思いますが…
- アレクサンドラ: …………
- 魔女が移動してるのを 感じるでしょ?
- ラビ: 確かに2体とも 活発に動いてるような節がある
- 放っておいたら 被害が出るかもしれない以上
- 3人組で分かれて 同時に倒さないといけない
- …ここで失敗して 白紙に戻しちゃいけないからね
- ラビ: わかった… だけど気をつけて…
- FILENAME: text_515610-6_czJwk.txt
- うらら: ということで、皆さんお待ちかね 魔法少女のコーナーなんよ
- くらら: なんか、気がついたら 私たちの番組に定着してるわね…
- うらら: 最初にウチが話をしてから 色々とゴタゴタがあったけど
- うらら: この番組でしか発信してない 情報だからこそ
- うらら: 視聴者の要望が多いんよ
- くらら: うちの番組ディレクターも ノリノリで構成に入れてるしね
- くらら: で、今日はどんな情報があるの?
- うらら: 前に出演してくれた里見教授から 情報提供があったんだけど
- うらら: ドドン!
- くらら: えーっと
- くらら: 湯国市で発生した事件や事故に 関するSNSへの投稿件数?
- うらら: そう、ビッグデータ? っていうものらしいんよ
- くらら: あるタイミングから上がって、 最近になって下がってるみたいね
- うらら: 上がったタイミングは、 魔法少女が魔女になってた時期
- うらら: つまり撲滅派が魔法少女たちを 追い詰めてた時なんよ
- くらら: じゃあ、下がってるのは、 撲滅派の動きが落ち着いた時?
- くらら: あ、里見教授の出演したあとで 上昇傾向が落ち着いて
- くらら: 最近になってグッと減ってる
- うらら: 今は魔法少女たちも自分たちの 信頼を回復するために
- うらら: 辛くても、元々仲間だった魔女を 倒して湯国市を守ってる
- うらら: その結果が治安の回復という形で しっかり出てきてるんよ
- アレクサンドラ: っ…使い魔の数があまりにも多い
- アレクサンドラ: 倒さないと、魔女がいる最深部に 近づくのは難しいです…!
- ラビ: サーシャの固有魔法で、 気力を削いでもらう必要がある
- アレクサンドラ: 数が多すぎます!
- アレクサンドラ: ラビちゃん、何を…
- ラビ: 私の概念強化の力で、 サーシャの固有魔法を強くした
- ラビ: これで、数の多い相手にも 十分通じるはず
- ラビ: 旭は使い魔の注意を逸らして サーシャに余裕を作ってあげて
- 旭: 了解であります これで道筋は見えたでありますな
- 旭: …さあ使い魔ども
- 旭: 狙うべき敵はこちらであります!
- 旭: 来た!今でありますよ!
- アレクサンドラ: これで演奏に集中できます!
- アレクサンドラ: このまま私の奏でる音で 眠りについてください!
- …………
- ラビ: 最後に私がブーメランで刻んで、 最深部への道を切り開く…!
- ラビ: やぁああああッ!
- みんな…大丈夫…?
- くっ…う、なんとか…!
- って、あなた足…!
- さっきの一撃で もっていかれちゃった…
- 一度、退きませんか…?
- こんな状態で戦っても、 勝ち目はありません…
- 片足ぐらい大丈夫ですから 今は倒すことを先決しましょう…
- 本気で言ってます…?
- この場で私たちが魔女を逃がして 普通の人が傷付けば
- また、弱みに付け込む 隙を与えてしまう…
- わかった…
- 最深部の手前に戻ったら、 グリーフシードを使って浄化
- 改めて固有魔法を確認し合って 作戦を練って挑もう
- はい
- そうですね… 今は逃げられない…!
- FILENAME: text_515610-7_czJwk.txt
- ドサッ…
- なんとか…倒せた…
- 作戦は成功… これで被害も増えないはず…
- ただ…ふふっ… もうみんなして限界ですね…
- やることは決まってる… 覚悟もできています…
- うん…
- 黒田: 魔法少女か…
- やだ、足が…
- おい、これ放っておいたら 死ぬんじゃないか?
- 黒田: いや、魔女になるんだ
- それでまた湯国市のやつらを 見境なく攻撃するっていうのか…
- 黒田: …………
- 黒田: グリーフシードってやつは?
- 落としてくれるのが頼りだった でも、落とさなかった…
- 黒田: 病院での治療は?
- 私たちに魔力が残されてない限り 意味はないよ
- もしかして撲滅派として、 魔女になるところを見に来たの?
- それでまた、私たち魔法少女を 責め立てるために…
- 黒田: どうだろうな
- 諦めて… 私たちは3人で決めたの…
- 最悪の場合、魔女にならない道を 辿るようにしようって…
- ウッ…
- それは私たちにとっては死と同じ
- お願い… 魔女にならないから…約束して…
- 氷室さんたちがこの町を助けたら また、私たち魔法少女と
- 友だちだった時と同じように、 付き合ってくれるって…
- そして私たちは危険じゃないって 他の人に伝えていって…
- おい、いいのか… 簡単に信じて…!
- コイツら何をするかなんて
- 黒田: いや…約束するよ…
- 黒田: 俺はお前たちを理解するし、 本当の魔法少女の姿を伝えるよ
- 黒田: また、みんなが 友だちでいられるようにする…
- よかった…ありがとう…
- パキンッ!
- 何、したの…?
- なんか、 宝石を割ったのか…?
- 黒田: 自殺したみたいだ…
- な…
- 黒田: 俺たちが魔法少女に対して 悪意を抱かないように
- 黒田: 湯国市の人たちを事件や事故で 脅かさないように
- 黒田: 3人は魔女になってしまう前に、 魂の器を壊してしまったんだ…
- それなら私たちは…
- 黒田: 何も魔法少女を責められない…
- 黒田: …白金に感謝しておくよ
- 黒田: わざわざ魔法少女の動きを 教えてくれたことに…
- FILENAME: text_515610-8_czJwk.txt
- アレクサンドラ: ったた…うぅ… 呼吸をすると、つらいです…
- ラビ: 畳みかけるタイミングでの 不意打ちだったから
- ラビ: 完全にカウンターだった…
- 旭: これは、あばら骨がやられてるで ありますなぁ…
- 旭: …魔法少女である手前、 自宅療養でも治るでありますよ
- アレクサンドラ: 痛みはコントロールできるかも しれませんけど
- アレクサンドラ: あんまり、人から外れたことは したくないんですよね…
- ピロン♪
- 旭: …黒田からの連絡であります
- 旭: …………
- 旭: なっ…
- ラビ: 何かあった…?
- 旭: 「本当に…減ってる…」
- ラビ: 「まさか、あの3人は…」
- アレクサンドラ: 「亡くなったっていうことですか…?」
- 旭: 「3人とも、自分でグループメッセージから 抜けたようでありますな…」
- 旭: 「その3人が死ぬ様子も 黒田たちが目の前で確認したようであります…」
- アレクサンドラ: 「撲滅派が何かしたんですか…?」
- 旭: 「彼女たちは魔女になる前に 自分のソウルジェムを壊したとあるので」
- 旭: 「すでに手遅れという状態で 手をかけたわけではないようであります」
- アレクサンドラ: 「え…」
- ラビ: 「そういうこと…」
- ラビ: 「魔女になる前に自分で壊してしまえば 撲滅派が魔法少女を叩く理由はない」
- 旭: 加えて、湯国市の治安も 回復してきたので
- 旭: 黒田は撲滅派を終わらせて、 手を取り合うつもりであります
- 旭: しかし、辛いでありますな…
- アレクサンドラ: 魔法少女も他のみんなも一緒に 楽しく暮らしている未来を望んで
- アレクサンドラ: あの3人も頑張ってたのに…
- ラビ: 残された私たちにできるのは 彼女たちの想いに報いること…
- ラビ: 魔法少女が正しく理解されて、 手を取り合えるようにしないと…
- 白金: (まさか、3人で挑んで やられるほどだなんて…)
- 白金: (良い結末に向かっていても、 素直に喜べない…)
- 白金: (…けど、沈んでられない)
- 白金: (この機会に撲滅派のメンバーと 手を取る場を作らないと…)
- 白金: …………
- 白金: (なんだか変な感じ…)
- 白金: (自分が誰かのために動く人間に なるとは思わなかった…)
- 白金: (多くの人に認識される人間に なるだなんて思わなかった…)
- 白金: (ひとりで戦ってた氷室先輩も きっと同じなんだろうな…)
- 白金: 共に私たちは星空に認められて 存在を証明してきたから
- 旭: …………
- 旭: (これで我々魔法少女は、 救われたのかもしれない…)
- 旭: (見えない何かに狙われて、 自分たちの運命を握られている)
- 旭: (そんな感覚がなくなったことが 証明になっている気がする…)
- 旭: それでも…
- 旭: あぁ…金属片が…胸に… 我の魔力で、なんとか体を…!
- 黒田: おせぇよ…意味ねぇよ…
- 黒田: 抱えてたらわかる… 肌で感じるよ…灰谷の状態は…
- 旭: っ…
- 黒田: なんでだ、どうしてだ… なぁ三浦…なんで殺したんだ…!!
- 旭: 我々は黒田たち被害者の心を、 蔑ろにしてるであります…
- FILENAME: text_515611-1_czJwk.txt
- 太助: いよいよ今日がセレモニーだね
- ラビ: はい、ようやく 手を取り合える日が来ました
- 旭: 黒田と白金も 準備を進めてるようであります
- アレクサンドラ: 確か山の中腹にある展望駐車場が 会場になるんですよね
- 太助: 賢明な判断だと思うよ
- 太助: ひと気が少ない方が 魔女の被害は抑えられるからね
- アレクサンドラ: 夜遊びホームルームの番組が 場所を押さえてるそうなので
- アレクサンドラ: どこまで考えてくれてるかは わかりませんけどね、うふふっ♪
- 旭: しかし、最後の最後まで 縁のある番組でありますな
- ラビ: 今まで魔法少女の話を ピックアップしてきたんだから
- ラビ: 最後まで付き合わせて欲しいって テレビの人が言ってるらしい
- 旭: おかげで声楽部の人たちと、 擁護派をバスに乗せてくれるので
- 旭: ありがたい話でありますよ
- アレクサンドラ: 教授も番組の関係で いらっしゃるんですよね?
- 太助: 専門家として出演したからね 出演して欲しいそうだよ
- 太助: ただ、色々と絡まれたくないから 私はのんびり歩いていくよ
- 太助: それに、今回の一件は 私にとっても感慨深いことだから
- 太助: ゆっくりと喜びを 噛みしめておきたいんだ
- ラビ: 娘さんを救う道を 諦めずに済みましたからね
- ラビ: それで、3人集められたのは、 どういった理由からですか?
- 太助: …うん、実は私が 魔法少女を救う道を諦めていた
- 太助: 本当の理由を 話しておきたかったんだ
- ラビ: 魔法少女が認知されない歴史 それとは別の話でしょうか
- 太助: それよりひとつ深い 認知されない“理由”についてだ
- ラビ: 理由…
- 太助: 私はね、世間に魔法少女の存在が 認知されない原因は
- 太助: “宇宙”にあると思っていたんだ
- ラビ: また、唐突ですね
- 太助の声: 「まず、魔法少女が魔女になってしまうのは その際に発生するエネルギーを使って 宇宙を維持するという明確な理由があるんだ」
- 太助の声: 「キュゥべえは そのエネルギーを回収するために 魔法少女になる契約を交しているんだよ」
- ラビ: それは初耳です…
- 旭: 詰まるところ、我らは宇宙の糧 ということでありますか…
- 太助の声: 「人の体が多くの細胞でできているように 私たちも宇宙を構成する一部だと 考えた方がいいかもしれない」
- 太助の声: 「その中でも魔法少女は 宇宙が活動するために必要なエネルギーを作る 重要な役割を担っている 人の体で言うと細胞の中にある ミトコンドリアと同じかもしれないね」
- 旭: 糧と言うよりかは 糧を生産する者でありますか
- 太助の声: 「その、生きる糧を得るのに 魔法少女の魔女化が必要不可欠なのに それが失われてしまうのは 宇宙にとっては病気だと思わないかい?」
- アレクサンドラ: ミトコンドリアの働きが低下する 病気は聞いたことがあります…
- アレクサンドラ: でも…私たちがそうだとしたら 魔法少女を救う行為は…
- 太助の声: 「まさに宇宙に対する反逆のようなもので 私たちは宇宙にとっては “がん”と同じようなものになってしまう」
- ラビ: 今まで、教授から聞いた話を 踏まえると
- ラビ: 魔法少女の話が残らずに 神話や伝説に溶けて消えるのは
- ラビ: 宇宙にとって都合が悪いから…?
- 旭: あ…
- 太助: 「そうした結末をいくつも眺めてると 魔法少女を広める活動がどうなろうとも 天の悪戯とも思える不思議な力で 理不尽にもねじ曲げられてるような気がするよ」
- 旭: 天の悪戯とも思える力とは このことでありますか…
- 太助の声: 「宇宙に免疫というものが備わっていたり 自浄作用とも言えるものがあるのなら 我々は知らず知らずの間に 宇宙からの攻撃を受けていることになる」
- 太助の声: 「その結果が見えない何者かに狙われている 例えようのない感覚や 魔法少女に関わる事件や事故が騒ぎにならない 不自然な状況を作りあげていると思っていた」
- ラビ: でも今回、 その天の悪戯はなかった…
- 太助: だからこそ嬉しいんだ だからこそ感慨深いんだ
- 太助: ラビも旭もサーシャも 3人は私の仮説を破ったんだ…!
- 太助: だから今日は、この喜びと一緒に 考えていたことを伝えたかった
- 太助: 犠牲になった魔法少女がいる以上 言いづらいことだが
- 太助: それでも、諦念に至るような 虚しい考えが否定されて
- 太助: 魔法少女が救われるという未来に 光が差し込んで来た
- 太助: 私に希望を持たせてくれた3人に 感謝したかったんだ…!
- 太助: ありがとう…
- ラビ: いえ、私たちも教授のおかげで 奮い立つことができたんです
- アレクサンドラ: はい、むしろ ありがとうございます♪
- 旭: あとは、みんなで手を取り合い 締めくくって来るであります
- FILENAME: text_515611-2_czJwk.txt
- 私たちの席はバスの 真ん中の方って言ってたよ
- 番組の中で映るらしいから なんだか緊張してきちゃった…
- こういう時じゃないと、 栗栖への罪滅ぼしもできないし
- 今日のセレモニーは私たちの歌で 最高のものに仕上げないとね
- くらら: 湯の花国際の声楽部は もうバスに乗り込んだよ
- うらら: じゃあ擁護派の人もそろったら 早く席に座って欲しいんよ
- くらら: はぁ…
- くらら: これで面倒だった魔法少女問題が 終わりになるわね…
- うらら: 本当にくららには迷惑を かけたんよ…
- くらら: そういえば、撲滅派の人たちは 一緒にバスには乗ってかないの?
- うらら: 向こうは先に行って、ラビさんと 話をしてるみたいなんよ
- 白金: 今日は魔法少女たちにとっても 町の人にとっても
- 白金: これまでの因縁に終止符を打つ 大切な1日になります
- 白金: なので、放送の際は 気をつけて頂けると幸いです
- うらら: もちろんなんよ
- うらら: 助けてくれた人たちを ないがしろにはしないんよ
- 黒田: 人口が少ないところなら 魔女も現れにくいってことか
- 黒田: 考えたな三浦
- 旭: 白金殿たちのフォローもあって いきついた結論でありますし
- 旭: 夜遊びホームルームのスタッフも 動いてくれたでありますよ
- 旭: むしろ、みんなにはご足労頂いて 悪かったであります
- 黒田: 手を取るとは言ってるけど、 俺たちが謝罪する場でもあるんだ
- 黒田: むしろ手配してくれて 感謝してるよ
- 旭: 事の始まりは我が灰谷たちを 守り切れなかったせいであります
- 黒田: だとしても、 冷静になればわかる
- 黒田: 常に100点を取り続けるなんて どれだけ頑張っても難しいのに
- 黒田: 俺たちはそれを求め続けた…
- 黒田: お前たちに支えられてるだけで 本当は十分だったのにな
- うん…湯国市の事件や事故も 減っていくのを目の当たりにして
- 助けられてたのを実感して、 自分たちの過ちを理解した…
- 魔女にならないように死ぬ姿も この目で見ちまったしな…
- 黒田: それで、俺たちが呼ばれたのは 今までの鬱憤を晴らすためか…?
- 黒田: …俺は約束通り、 この後で警察に出頭するつもりだ
- 旭: いや、そういうわけでは…
- ラビ: 旭は魔女の被害を受けた 撲滅派の人たちだからこそ
- ラビ: その心を救えればと この場にみんなを呼んだ
- アレクサンドラ: 私たちで皆さんを 本当に癒やせたらと思ったんです
- 黒田: 責められることはあっても、 そんな気を遣われるような…
- 旭: ラビが言っていたことを 思い出したのでありますよ
- 旭: 我々はまず、撲滅派のみんなを 癒やさないといけない
- 旭: 当初は暴力を受け止めるという 間違った形になったでありますが
- 旭: 今回はちゃんと我々の手で 癒やせたらと思うであります
- 黒田: 反応に困るけど… 三浦たちがいいなら…
- 旭: これは、魔女…
- 黒田: このタイミングで…!?
- アレクサンドラ: それにこの反応…
- アレクサンドラ: まさか、私の固有魔法を受けて まだ動けるなんて…
- ラビ: それだけ成長してたってことかも
- ラビ: 逃げて会場に向かってる 早く追いかけないと…
- アレクサンドラ: 私たちが逃がして フェストの事故を起こした魔女…
- ラビ: そして、私たちの前で魔女化した 魔法少女の宿命を示した相手…
- ラビ: 始まりとなった相手が 今になって追いかけてきたみたい
- 旭: 締めくくれ そう言ってるようでありますな
- 黒田: …大丈夫なのか
- 旭: おおよそここまで生きていれば 大丈夫な相手ではないであります
- 旭: ただ、無事に戻るであります
- ラビ: ええ、もう私たちは 宇宙の意思に翻弄されたりしない
- FILENAME: text_515612-1_czJwk.txt
- 舌キ縺昴!!
- アレクサンドラ: あぅッ…!
- 旭: サーシャ! 相手に固有魔法は!
- アレクサンドラ: かけているはずなんですが、 まったく効かないみたいで…!
- 旭: 力の差なのか、相性の問題なのか 厄介でありますな…
- アレクサンドラ: 大丈夫ですよ
- アレクサンドラ: それでも私、 なぜか不安を感じてないんです♪
- 旭: ふっ、奇遇でありますな 実は我も同じでありますよ
- ラビ: 勝てる自信とかではなく 大丈夫だという根拠のない確信
- ラビ: 恐らくそれは、今までの犠牲を 無駄にはしないという覚悟が
- ラビ: 私たちにもたらした 不撓不屈の精神なのかもしれない
- アレクサンドラ: はい、そうかもしれませんね♪
- アレクサンドラ: 「始まりは魔法少女が魔女になるという 自分たちの真実を知った時」
- ぐっ、あ、アァアアッ!
- アレクサンドラ: ――っ!?
- アレクサンドラ: なんですか、この反応は…!
- 旭: この反応はまるで…
- ァアアアアアアッ!!
- ラビ: 「魔女になるという真実を嘆き悲しみ 私たちは人々からの慰めを欲した…」
- ラビ: 父が死んだ時ですら、 苛立ちながら救われていた…
- ラビ: 初めて気付いた…
- ラビ: 今、私はその場限りの同情や、 下手な励ましですら欲しいんだ…
- 旭: 「そして魔法少女を知ってもらおうとしたけど 魔女になるという真実が我々を苦しめた」
- 黒田: 結局、都市伝説を作ったのも 雪崩と土砂崩れを起こしたのも
- 黒田: フェストでみんなを殺したのも!
- 黒田: 全部オマエらがやってるだけの 自作自演じゃねーか!!
- アレクサンドラ: それから苦難の時が続きました
- 黒田: ああ、町にいる魔法少女を すべて炙り出すんだ…
- 警官: 俺は事情を聞こうとしただけ… 何がどうなってるんだ…これは…
- ラビ: だけど、苦難を支えてくれる 人たちがいた
- 太助: …いや、ラビちゃん むしろ私に力にならせて欲しい
- 白金: 私は氷室先輩の味方のつもりで 逃げているだけでした
- 旭: そして、最後まで抗ってくれる 魔法少女たちがいた
- 放っておいたら 被害が出るかもしれない以上
- 3人組で分かれて 同時に倒さないといけない
- …ここで失敗して 白紙に戻しちゃいけないからね
- 旭: 我々は、辛い事実を知り 苦難の連続が訪れていなければ
- 旭: 魔法少女を本当の意味で 理解してもらうという
- 旭: 救いのある未来を描けなかった
- アレクサンドラ: 湯国市の人が何人も犠牲になって 魔法少女も私たちだけが残った
- アレクサンドラ: それでも、後ろ向きにならず 前を向いて意味ある犠牲にしたい
- ラビ: だからようやく迎えた この日を決して無駄にしない
- ラビ: 手を取り合うことで成長して、 互いが支え合えるようになる
- ラビ: きっとそうやって人同士が 理解しあって優しくなれたら
- ラビ: 人の未来と魔法少女の未来は もっと幸せになるはずだ!
- ラビ: 私の概念強化で、 ふたりの持つ力を強くする
- 旭: ならば我は死した獣たちを呼んで 我々の味方とするであります!
- アレクサンドラ: 私は魔女のやる気を削いで 完全に無力化します
- Б懊無*為!!
- ラビ: いくら強くても勝てる その確信があれば倒せる
- FILENAME: text_515612-2_czJwk.txt
- 太助: (今ならどんな理不尽をも 跳ね返せるかもしれないね…)
- 太助: (そんな清々しい澄んだ空気を 肌で感じる気がする…)
- 太助: 那由他…
- 太助: まだ魔法少女を救うには、 前途多難かもしれないけど
- 太助: 少なくとも現状を変えることは できそうな気がするよ
- FILENAME: text_515613-1_czJwk.txt
- 黒田: 三浦!
- 無事に魔女は倒せた…?
- 旭: 相手は、間違いなくフェストで 事故を起こした魔女でありました
- 黒田: つまり灰谷を…
- 旭: 死なせる要因を作った 魔女であります
- 旭: ただ、最初に有愛うららを助けた 魔法少女でもあります…
- アレクサンドラ: 魔法少女と魔女が持つ表裏を 最も教えてくれた相手でしたけど
- アレクサンドラ: それを倒したことで魔法少女と 皆さんとの間に起きた問題も
- アレクサンドラ: ようやく締めくくれそうです
- ラビ: 水を差されてしまったけど、 最後にすることがある
- 旭: そう、我々で魔女の被害を受けた 撲滅派のみんなを
- 旭: 癒やすのでありますよ
- 黒田: さっきも言っていたけど、 癒やすって言ってもどうやって
- 旭: 我々に任せるでありますよ
- アレクサンドラ: まずは、私の奏でる音色で リラックスしてください
- ~~♪
- な…
- これ、急に力が…
- なんか頭がぼーっと…
- アレクサンドラ: 急な出来事でビックリしちゃうと いけませんからね♪
- アレクサンドラ: それでは、旭ちゃん、ラビちゃん お願いします♪
- ラビ: 旭、やることは魔女との戦いで やったことと同じだから
- 旭: わかったでありますよ
- ラビ: 概念強化
- 旭: ふぅ…
- 黒田: おい、三浦… どういうつもりだ…
- 旭: 以前、黒田に話した通り、 我は死者を呼び出せるであります
- 黒田: それはつまり…
- 旭: ここには多くの撲滅派の人々が 集まってるであります
- 旭: ゆえにラビの概念強化がないと 成せないのでありますが
- 旭: ほんの少しの間
- 旭: 皆が会いたい人々を我の力で 一気に呼んでみせるでありますよ
- ラビ: それじゃあ、旭 お願い
- 旭: 冥府にいる亡者たちよ 我の声に応えて欲しいであります
- 旭: 冬の雪崩と土砂崩れで 亡くなった人々
- 旭: フェストの事故で失われた命よ
- 旭: 我の声が聞こえたら 姿を現して欲しいであります
- 旭: ここにあなたたちを待つ方々が 何人も居るでありますよ
- 旭: だからせめて ひとりずつだけでも…
- 爺ちゃん…
- お姉ちゃん…!
- 黒田: 灰谷…
- FILENAME: text_515613-2_czJwk.txt
- 本当にお前さんは人を傷付けて、 しょうもないことをしたもんじゃ
- だって、アイツらが居なけりゃ 生きてたって思ったらさ…
- お前の祖父として、ひとつだけ 教えておかなきゃならんな
- なんだよ、 消える前に教えてくれよ…
- 罪を悪んで人を悪まず 折り合いを付けることが大切だ
- 己が欲に従順であってはいけない それでは知性のある動物だからね
- 年に何回か私のことを 思い出してくれたらいいから
- 恨みは捨てて穏やかに生きて いつものあなたが私は好きよ…?
- だって、結婚するって聞いて 嬉しくって私…
- 色んな未来を奪われたって思うと 気持ちを抑えられなくて
- 最後に抱きしめてあげるから その恨みは私の中に捨てていって
- うん…
- 灰谷: 三浦はちゃんと黒田を 救ってくれたんだね
- 黒田: 心配をかけたし、 ヒドいところばかりを見られた…
- 黒田: だけど俺、ちゃんと罪を償うから その時はお前の…灰谷の…
- 灰谷: うん、いつでもおいでよ 償ってくるのを待ってるから
- 黒田: それを聞けただけでも、 俺は満足だよ
- 灰谷: 私は満足じゃない
- 黒田: え…?
- 灰谷: あの日、私に言い忘れたことが あるんじゃない?
- 黒田: …ああ
- 灰谷: お願い、今のうちに言って
- 黒田: …………
- 黒田: …ずっと、ずっと俺は
- 黒田: 灰谷のことが好きでした 付き合ってください
- 灰谷: ありがとう その言葉を聞きたかった…
- 灰谷: 私も好きだったよ 黒田のことが好きだった
- 黒田: っ…
- 灰谷: だけど付き合うことはできない ごめんなさい
- 灰谷: ちっちゃい頃からずっと一緒で これからも隣に居たかった
- 灰谷: けど、私にはそれができないから 黒田を縛り付けるだけだから
- 灰谷: 私は…黒田の次の恋が実ることを 向こうで、祈って…ます…
- 灰谷: だから前を… 前を向いて、黒田!
- 黒田: …おう、前向いて生きるよ…俺…
- 旭: …………
- ラビ: 成功した
- 旭: これで黒田たちは、 救われるでありますかね…
- アレクサンドラ: 大丈夫ですよ、旭ちゃん
- アレクサンドラ: みんなの心の穢れが 晴れていくような気がします♪
- …………
- 「ア゙ア゙ア゙ァアッッ!!」
- 「グッ、ガッ…!」
- 「イヤァアア、アァアアッ!」
- 「ママ!パパァアッ!」
- 「血が、ァアアッ!!」
- 黒田: ウァアアアアッ!
- 黒田: な、なんだ! なんだよこの声は!!
- みんなが死んでく…!
- 声が頭に響く…!
- 黒田: ヤメロヤメロ、ヤメテクレ! 三浦…!早く止めてくれ…!
- 黒田: 断末魔で… あたまがおかしくなる…!
- 灰谷: 三浦!早く!黒田が!
- 旭: 止めたいでありますよ!!
- 旭: ただ、魔法が強化されて… 暴走して…止められない…!
- ラビ: この声はいったいどこから…!
- アレクサンドラ: どうして、声楽部のみんなが!?
- ラビ: ―ラビ― まだ、まだ増えてる…
- アレクサンドラ: ―アレクサンドラ― 旭ちゃんが呼べるのは死んだ人たちだけじゃ
- 旭: ―旭― 間違い無くそうであります…!
- ラビ: ―ラビ― 早く止めないと…!
- ラビ: ―ラビ― 普通の人は、心と体のどちらが壊れても おかしくない!
- 旭: ―旭― しかし、どうやって止めれば…!
- アレクサンドラ: ―アレクサンドラ― 擁護派の人たちの姿も増えてる…
- ラビ: ―ラビ― まさか…これは…!
- 白金: 氷室先輩
- ラビ: 白金!?
- 白金: バスが転落して炎上しました
- ラビ: …なにを…そんな冗談…
- 白金: 残念ながら本当です 多くの人が亡くなり…私も…
- 白金: 最後まで力添えしたかった… 申し訳ありません…
- ラビ: 謝らなくていいからお願い 生き延びて…ここから戻って…!
- 白金: すみませんが私はここまでです
- 白金: 先輩と出会えて 人生の最後は充実していた
- 白金: ありがとうございます
- ラビ: やめて!
- 白金: これからは側で見守りますので 私を見つけてください
- 白金: 今日のお祝いを 用意しておいたんです
- アレクサンドラ: ああ…あの黒煙が…
- 黒田: 三浦、お前は…魔法少女は…! やっぱり、俺たちを…!!
- 旭: 違う、不本意であります…!
- 旭: あぁ、なぜ…魔女も全部… 倒したはずなのに…
- 太助: 私はね、世間に魔法少女の存在が 認知されない原因は
- 太助: “宇宙”にあると思っていたんだ
- 旭: 最後に…絡め取られた…
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- 「生存者確認!早く下に担架を下ろして!」
- 「救急車来たから早く! 第1順位の子から乗せていくから!」
- 「何やってんの、それ黒でしょ!」
- 太助: 今度こそ宇宙の意思なんてものは 信じずに済むと思っていたのに…
- くらら: …………
- うらら: おかしいんよ くららの方が酷いんよ!
- うらら: 先に運んで欲しいんよ!
- 太助: …うららちゃん
- うらら: 教授からも言って欲しいんよ
- 太助: もう、助からない
- うらら: ウソなんよ…さっきまで一緒に… 元気にしてたはずなんよ…
- キュゥべえ: 困っているようだね有愛うらら
- うらら: キュゥべえ…
- 太助: ――っ!?
- 太助: そこにキュゥべえがいるのか ダメだ、契約しちゃいけない…!
- キュゥべえ: 今なら叶えたい願いが あるんじゃないかい?
- 太助: うららちゃん!
- キュゥべえ: さあ、有愛うらら
- キュゥべえ: キミは魂を対価にして どんな願いを叶えるんだい?
- うらら: お願いなんよ! くららを助けて欲しいんよ!
- 太助: うらら…!!
- くらら: …っ、あれ…私…
- うらら: くららっ!
- くらら: うらら、私バスで転落して、 それですごい煙を吸っちゃって…
- くらら: ――っ!?
- くらら: ちょっと待って、 あんたその指輪…もしかして…!
- うらら: そう、魔法少女になったんよ それでくららを助けられたんよ…
- くらら: そんな…
- 「こんなひどい現場…初めてだ…」
- 「ほとんど助からないな…」
- 「ヘリの要請は!」
- 「引き上げるにしても場所が悪い!」
- くらら: どうして…
- うらら: え…
- くらら: どうして私だけ助けたの… 事故を無くせばよかったのに…
- うらら: あ…くららを助けようって 無我夢中で…
- くらら: それで、 他の人を見殺しにしたの…?
- うらら: 見殺しって…違うんよ…!
- くらら: アンタっていつもそうやって 勢いで行動するよね…
- くらら: おかげで魔法少女の件も、 全部私は巻き込まれっぱなしだし
- くらら: 1回死にかけてるとか 本当に笑えない…
- くらら: アンタ、周りが見えてないのに 自分勝手過ぎなのよ…
- うらら: 今までのことは謝るんよ けど今回は助けたい一心で!
- くらら: 触らないで
- うらら: ――っ!?
- くらら: 魔法少女は願いでなんとかする 自分勝手な奴らの集まり
- くらら: 運命をねじ曲げようなんて魂胆が 最初っからクズなのよ
- くらら: そのクズが、 嫌いだったアンタで良かったわ
- うらら: そんなぁ…!
- うらら: うっ…あ、ぁああああっ…
- 旭: 魔女は倒した手前 原因はわからないであります…
- 旭: こんな締めくくりになり、 申し訳ないばかりで…
- アレクサンドラ: ごめんね、うららちゃん
- アレクサンドラ: 私たちのことを信じて キュゥべえと契約したのに…
- 太助: すまない、止められなかった…
- ラビ: あの状況では教授の声は 耳に入らなかったはず
- ラビ: ただ、どういうことですか…
- ラビ: 私たち魔法少女には 救いの道はないのでしょうか
- ラビ: 教授の仮説通りに…
- ラビ: 宇宙の免疫に駆逐されるだけと 諦めるしかないのですか…
- 太助: 本当に…辛いね…
- 太助: ただ、ひとつだけ未来の少女が 救われる方法はあるよ
- ラビ: それは…
- 太助: 今の世界で魔法少女も魔女も 滅ぼした上で
- 太助: 魔法少女が生まれないような 風習を作るんだよ…
- 太助: ゼロにはできないかもしれないが 圧倒的に数を減らせるようにね
- 太助: いつ、宇宙の自浄作用によって 失われるかわからない以上は
- 太助: キュゥべえに干渉されない世界を 作ることもセットかもしれない
- ラビ: 本気ですか…
- 太助: いいや、まだ信じたくないよ
- 太助: 私だって救いたい者がいる以上 まだ諦念の底には落ちたくない…
- 太助: だけど、また同じようなことが 繰り返されるようなら
- 太助: 私たちは宇宙の意思からは 逃れられないと考えた方が良い
- 太助: ゲホッ、ゴホッ!
- ラビ: 教授…!
- ラビ: その手、血が…
- 太助: 本当に、早めに娘の前から 姿を消しておいて良かったよ
- みんな: …………
- 旭: もはや怒りも悲しみもなく ただ広漠として果てのない砂漠が心に広がる 風もなくただ森閑とした心の様態を 諦念だと言うのであれば
- 旭: 我々は否定することなく 諦念に落ちたと言えるのかもしれない
- 旭: もはや心臓は石のようで 傷付いて血を流すこともなく
- 旭: 未来を見つめることに虚しさを覚え ただ、されるがままに射貫かれて そこに横たわるだけであります
- 旭: ただ、ラビは言っていた それでもまだ希望を見出そうと抗う音が 自分から聞こえていると…
- 旭: 我々が何をしようとも どんな者たちに利益や不利益を与えたとしても 魔法少女の行動で曲がらないのが宇宙の意思なら
- 旭: 最後に試してから 本当に諦念に落ちたいと…
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- 旭: …………
- 「アイツよく顔が出せるよな」
- 「灰谷さんが死んだのって 三浦さんのせいでしょ」
- 「黒田だってアイツのせいだろ まだ正気に戻らないって噂だぞ…」
- 旭: っ…
- ラビ: った…
- どうして殺したんですか… 白金さんは心配してたのに…!
- ずっとあなたを…
- 氷室ラビを救うためだけに 活動してたのに、どうして…!
- ラビ: …………
- わかってるでしょ
- アレクサンドラ: はい…もう部活には 顔を出しません
- 本当なら顔すら 合わせたくないんだけど…
- アレクサンドラ: はい、部員をおかしくしたのは、 私ですから…
- うららのマネージャー: 辞めるって本気か… ちょうど売れてきたところだろ…
- うららのマネージャー: バスの転落事故は気にするな お前のせいで起きたわけじゃない
- うらら: 周りはそう思ってくれないから、 事務所の子が危険な目に遭うんよ
- うらら: それに、コンビを解散したいって 話も来るはずなんよ…
- アレクサンドラ: あの駐車場で起きた学生たちの錯乱と 山道を転落したバスの炎上事故
- 旭: 事故に巻き込まれた生徒や撮影クルーの中には 多くの死傷者が出て その死者の断末魔を聞いた生徒たちは 駐車場で心が壊れるという結末になった
- ラビ: 紙面を踊る大事故の写真と見出しは 私たちの心を蝕んでいき それに追い打ちをかけるように教授の説明は 私たちに芽生えた虚しさを少しずつ育んでいった
- うらら: 教授が聞かせてくれたのは 魔法少女とキュゥべえの話に始まって 宇宙との関わりにまで広がっていったんよ
- 旭: 知られないことには存在しない 見つけた石碑も歴史も…
- ラビ: 当然、私たち魔法少女も同じで このまま何も残らず消えてゆく…
- 旭: それを虚しく感じても、 我々がキュゥべえに選ばれた駒で
- 旭: 宇宙を維持するエネルギーを 生み出すためだけの者なら
- 旭: その役割から逃れることは 決して許されないであります…
- うらら: 逃げようとしたら 宇宙のがんみたいな扱いなんよ…
- アレクサンドラ: 教授も言ってましたね
- アレクサンドラ: 私たちが持つ免疫システムは、 知らない間に病を防いでいて
- アレクサンドラ: 宇宙にも同じようなシステムが あるのかもしれないって…
- うらら: だからウチらは知らない間に 宇宙に殺されるんよね…?
- ラビ: …宇宙を人に置き換えれば 私たちは小さな細胞
- ラビ: いえ、その中にある ミトコンドリア
- ラビ: それが肉体維持のルールを外れて 自由にしようとするなら
- ラビ: 排除しようとするのは自然
- 旭: 我が感じていた、 こちらを狙う何者かは
- 旭: 宇宙の意思だったのかも しれないでありますな…
- アレクサンドラ: そうですね…
- アレクサンドラ: 何かを操る見えないものなんて いくらでもあるのかも…
- アレクサンドラ: 自分の体を動かす信号なんて 私には見えません
- アレクサンドラ: そう考えれば、私たちにとって 理不尽な出来事は
- アレクサンドラ: 宇宙の影響だって言われても 有り得るのかもしれません
- うらら: なんかよくわからないけど 変な感じなんよ…
- うらら: 学校のみんなもウチらも ただの操り人形ってことなんよ
- うらら: ウチのこういう言葉もぜーんぶ 宇宙の意思なのん…?
- 旭: 残念でありますが、 我々にはわからないであります…
- 旭: ―旭― ただ、見えない意思によって コントロールされているのは確かであります
- ラビ: ―ラビ― キュゥべえを消そうとしても 私たちの存在を知らせようとしても
- ラビ: ―ラビ― 決して手を届かせることができない 絶対的な意思…
- アレクサンドラ: ―アレクサンドラ― そんな概念を持ち出されてしまったら 私たちには何もできないじゃないですか…
- 旭: ―旭― 何もできないでありますよ
- うらら: ―うらら― 救われることもできないってことなんよ
- 旭: ―旭― そう、一切救われることもないでありますよ
- 旭: ―旭― 我が殺して食べるウサギと同じ
- 旭: ―旭― 我々はいつ宇宙に殺されるかもしれない 宇宙の糧であります
- ラビ: ―ラビ― 救われる時があるとすれば それは見えない宇宙の意思が判断した時
- うらら: ―うらら― 救われるのを諦めることしか できないってことなんよ…
- アレクサンドラ: ―アレクサンドラ― ええ、そうですね…
- 旭: ―旭― 諦念であります…
- ラビ: ―ラビ― ただ、教授も言っていた
- ラビ: ―ラビ― もしも叶うことがあるのであれば この仮説が正しいのか、最後に判断したいと
- キュゥべえ: 人々が魔法少女の存在を知る
- キュゥべえ: その様子を観察したいのなら 神浜市に行けばいいよ
- ラビ: キュゥべえ!?
- 旭: 本当に神出鬼没でありますな…
- うらら: 神浜市に行けっていうのは どういうことなんよ
- アレクサンドラ: そこで教授や私たちの仮説が 検証できるということですか?
- キュゥべえ: 保証することはできないけど
- キュゥべえ: 検証を行う場所としては 最適だろうね
- キュゥべえ: 神浜市では魔法少女の存在を 広めようとする動きがあるからね
- キュゥべえ: それも、ひとりやふたりじゃない 組織的に動いているみたいだった
- アレクサンドラ: わざわざキュゥべえの方から 勧めてくるだなんて
- アレクサンドラ: あなたにとっても得があるような 何か裏があるんじゃないですか?
- キュゥべえ: ボクもキミたちが戦うことで 検証したいことがあるだけだよ
- アレクサンドラ: どうします?
- ラビ: 教授に相談して、 神浜市に向かうのはアリだと思う
- 旭: 我々の考えではキュゥべえもまた 宇宙の歯車でありますからな
- うらら: でも、キュゥべえにとっては そんなに得じゃないはずなんよ
- うらら: ウチらは神浜市に行っても 検証するだけの傍観者なんよ
- 太助: わかった、それならみんなで 様子を見てきて欲しい
- 太助: 私はその間に この下巻を書き進めておくよ
- ラビ: はい
- 太助: 神浜市でも同じことが 起きるようであれば
- 太助: 二度と魔法少女が生まれないよう 風習を作らないといけないね
- 太助: 何千年、何万年と絶えずに、 魔法少女になることを否定する
- 太助: 民俗学史に永遠に刻まれる 永らく続く風習を…
- 太助: そして今いる魔法少女たちも 救わなくてはいけない
- ラビ: 加えて、教授の言われた通り、 魔法少女の滅びを通して…
- 太助: …そうだね
- ラビ: 私たちが居なくなることが 現在も未来も救う重大な決断です
- 太助: その時計は…
- ラビ: 壊れてしまいましたが、 ちょっとした贈り物です…
- ラビ: 0時まで残り5分…
- ラビ: 私がこの時計を0時にした時、 本当に諦めたと思ってください
- 太助: 午前0時を迎えて、民俗学には 新たなしきたりが刻まれる…
- ラビ: …午前0時のフォークロアです
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