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Dark Halloween is the Color of Love!? JP Text

Oct 24th, 2022 (edited)
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  1. (From the opening sequence in 517610-0)
  2. 顔を隠して 何者でもなくなったら
  3. 新たな恋の 予感を感じつつ…
  4. 闇色ハロウィンパーティー の始まりよ!
  5. [Title card] 闇色ハロウィンは恋の色!? ~繋げて・恋の東西最前線!~
  6.  
  7. FILENAME: text_517610-1_5ewzo.txt
  8. ももこ: で、相談ってなんだ?
  9. みたま: 実は、神浜学生会議に 提案したいことがあるの
  10. みたま: 神浜学生会議
  11. みたま: それは、神浜市の学生たちが これからの神浜市のために 東西問題を考えて解決していこう っていう、有志の集まり
  12. みたま: 今は、神浜市の現状を踏まえて 西側の代表と東の代表をそれぞれ ももこと十七夜が任されているけど
  13. みたま: そういう意識を失くしていくことも わたしたちの課題のひとつでもあるわ
  14. みたま: ももこは学生会議の 西側の代表だから
  15. みたま: 先に意見を聞こうと思って
  16. ももこ: なるほど、 だから十七夜さんもいるんだな
  17. 十七夜: いや、代表だから 呼ばれたわけではないぞ
  18. 十七夜: 自分と八雲で考えたから 同席しているだけだ
  19. みたま: それで提案したい内容なんだけど ハロウィンに合わせて
  20. みたま: 学生会議主催のイベントを 開催したいの
  21. ももこ: そういえば もうすぐハロウィンだったな
  22. 十七夜: うむ、せっかくのイベントだから
  23. 十七夜: これを機会に学生会議で 活発な議論ができればと思ってな
  24. 十七夜: とりあえずテーマをふたつだけ 用意してみた
  25. みたま: ひとつめのテーマは “みんなで作る”よ
  26. みたま: 学生会議は発足したばかりだから
  27. みたま: ひとつのイベントを一緒に 作ることで
  28. みたま: お互いを知っていけたらと 思っているの
  29. ももこ: それいいな!
  30. ももこ: ちょうど親交を深める機会を 作りたかったところなんだ
  31. 十七夜: …それで、もうひとつのテーマ イベント自体のテーマなんだが…
  32. みたま: …………
  33. ももこ: ん、どうした?
  34. みたま: イベント全体のテーマは “何者でもなくなる”にしたいの
  35. 十七夜: 光明が見え始めたとはいえ 東西問題はまだまだ闇の中だ
  36. 十七夜: だから、あえて暗い雰囲気の中で 仮面を被って正体を失くすことで
  37. 十七夜: 何者でもない者として 出身を超えて交流する
  38. ももこ: アタシは いいアイデアだと思うけど
  39. ももこ: なんでふたりして暗い顔を…?
  40. みたま: この衣装を使いたいの…
  41. ももこ: それをハロウィンの衣装に…?
  42. みたま: …ええ、東西問題で 悲しみに囚われていた自分を
  43. みたま: 再現することで乗り越えた姿を みんなに見せたいと思って…
  44. 十七夜: 私情が過ぎるということは わかっている…
  45. 十七夜: だが、皆に対する感謝と
  46. 十七夜: 同じ過ちを繰り返さない という決意を伝える
  47. 十七夜: いい機会だと自分も思ってな…
  48. みたま: でも、魔法少女のみんなを
  49. みたま: 不愉快にさせてしまうかも っていう思いもあって…
  50. ももこ: じゃあ、ユニオンのみんなに 聞いてみるか!
  51. みたま: えっ…?でも、 そのために集まってもらうのは…
  52. ももこ: アプリの投票機能で聞くんだよ
  53. ももこ: 誰が入れたかわからないから 投票もしやすいだろうし
  54. 十七夜: …なるほど いい案かもしれない
  55. ももこ: …結果、出たよ
  56. みたま&十七夜: …………
  57. みたま: …反対は、1票だけ?
  58. 十七夜: コメントがついてるな
  59. やちよ: 反対に入れたけど 自虐じゃないなら賛成よ
  60. みたま: やちよさん…
  61. ももこ: って、ことは決まりだな!
  62. 十七夜: うむ…ありがたいことだ…
  63. ももこ: 感動してる場合じゃないぞ
  64. ももこ: ハロウィンまで1か月切ってるし 急いで準備しないと
  65. みたま: じゃあ、明日の学生会議の 集まりで提案して
  66. みたま: みんなから同意してもらえたら すぐ準備に入らないとねぇ
  67. 十七夜: イベントでやりたいことも 募らないといけないな…
  68. みたま: ふふっ… 忙しくなってきたわぁ~!
  69.  
  70. FILENAME: text_517610-2_5ewzo.txt
  71. みたま: ももこに相談したあと… わたしたちは早速学生会議で ハロウィンイベントの開催を提案したの
  72. みたま: わたしたちの提案は受け入れられて みんな、たくさんのアイデアを出してくれたわ
  73. みたま: 音頭を取るのは、 発案者であるわたしと十七夜に決まって 代表のひとりであるももこは 今回は宣伝を担当してくれることになったの
  74. みたま: イベントの内容も固まったし 参京区にあるイイ感じの会場も借りられたわ
  75. みたま: そんなわたしたちが開催する ハロウィンイベントの名前は… 闇色ハロウィンパーティー!
  76. みたま: イベントに来てくれた人には 入口で“何者でもなくなるための仮面”と 交流用のお菓子を配って
  77. みたま: 交流スペースでお菓子を交換したり 軽食を楽しんでもらったりするの
  78. みたま: それから… 外には“常闇ツアー”
  79. みたま: 驚かす役のスタッフに こわぁ~い衣装を着てもらって お客様をおもてなしする ちょっとホラーな催し物も用意する予定
  80. みたま: 準備の班分けは 東西の子たちが 同じくらいの人数になるように割り振って
  81. みたま: これから当日までの約3週間 一緒に作業することで 親睦を深めながら進めていく予定
  82. みたま: 会場の設営は、 本番の3日前からよ
  83. みたま: それまでに、必要な物の手配や 会場に設置するものの作成
  84. みたま: 衣装の作成など 全部終わらせるからねぇ
  85. みんな: 「おーっ!」
  86. 十七夜: では、各班 軽く自己紹介をしたら作業開始だ
  87. 相野 みと: じゃあ、私から! みとだよー、よろしくねー!
  88. 相野 みと: 次、夏希ちゃん!
  89. 空穂 夏希: 参京院中学2年生の空穂夏希です よろしくお願いしまーす!
  90. ???: ふたりは知り合いなんですね
  91. 相野 みと: うんっ!
  92. 相野 みと: あとね、私、前は大東区の団地に 住んでたから
  93. 相野 みと: 弟くんのことも知ってるよー
  94. ???: 弟くん言うな 俺の方が先輩だぞ
  95. 相野 みと: それより自己紹介しないとー
  96. 和泉 壮月: 和泉壮月(いずみ そうげつ) 大東学院の中等部3年生…です
  97. 相野 みと: あとなぎたんの弟!
  98. 相野 みと: あなたは?
  99. えっとね…ぼくは、 工匠学舎の小学5年生で…
  100. ???: (最後は私かな…)
  101. ???: (男の子もいるし ちょっと緊張しちゃうなぁ…)
  102. 相野 みと: じゃあ、最後 お姉さんの番だね!
  103. 塩屋 晴海: は、はい…
  104. 塩屋 晴海: 塩屋晴海(しおや はるみ)と 申します
  105. 塩屋 晴海: 水名女学園の高等部1年生です よろしくお願いします…
  106. 和泉 壮月: …………
  107. 塩屋 晴海: …………えっと… 私、何か変…だった…かな?
  108. 和泉 壮月: あっ!ご、ごめん…! いや、ごめんなさい
  109. 和泉 壮月: その…き、緊張してるのかもって 思ってさ…いや、思ったんです…
  110. 塩屋 晴海: …えっ…あ、わかっちゃった…? ずっと女子校だったから…
  111. 和泉 壮月: そうなんだ…じゃなくて えっと…そうなんですね…!
  112. 和泉 壮月: でも、同じ人間だから そんな緊張しなくて大丈夫です
  113. 塩屋 晴海: …………ふふっ 気を遣ってくれてありがとう
  114. 塩屋 晴海: その…私だけ高校生だけど あまり気を遣わないで…?
  115. 塩屋 晴海: みんなもよかったら、 楽に話してくれたら嬉しいな
  116. 相野 みと: うんっ! わかったー!
  117. 空穂 夏希: …………
  118. 相野 みと: 夏希ちゃん…?
  119. 空穂 夏希: 頭の中のあいみが…
  120. 相野 みと: 頭の中にあいみさんがいるの…?
  121. 空穂 夏希: いないんだけど…
  122. 江利 あいみ: これは… 新たな恋の予感…!
  123. 空穂 夏希: …ううん、なんでもない
  124. 空穂 夏希: それより、自己紹介が終わったら 班長を決めるんだよね?
  125. 相野 みと: 立候補する人!
  126. 塩屋 晴海: (…一番年上だし やった方がいいのかな…?)
  127. 和泉 壮月: …俺やるよ
  128. 塩屋 晴海: いいの…?
  129. 和泉 壮月: おう
  130. 空穂 夏希: …………
  131. 江利 あいみ: うんうんっ! いいとこ見せたいんだね!
  132. 空穂 夏希: …うぅ、静まって…
  133. 相野 みと: …?
  134. 和泉 壮月: じゃあ、作業予定確認してくぞ
  135. 壮月: 「準備期間は全部で3週間だから… 今から約2週間はオブジェクト作りだな」
  136. 壮月: 「そんで会場の設営が3日前からだから… 更にその前々日に 作ったオブジェとかの梱包開始 同じ日に、合間を見て スタッフの衣装合わせも行う予定らしい」
  137. 壮月: 「常闇ツアーの驚かす役の衣装合わせは その翌日…設営の前日だな うちの班だと相野と空穂か…」
  138. 壮月: 「残りのメンバーはその間に “あした屋”に交流用のお菓子を 取りに行く…っと」
  139. 和泉 壮月: 会場設営に関しては、 また別途振り分けがあるらしい
  140. 空穂 夏希: 了解!
  141. 相野 みと: あした屋さんの場所わかる?
  142. 塩屋 晴海: 大丈夫だよ
  143. 塩屋 晴海: 小さい頃はお世話になったし 今は妹をよく迎えにいくから
  144. 和泉 壮月: 水名からだと近いもんな
  145. 和泉 壮月: 俺ん家からだと遠かったから 小さい頃は羨ましかった…
  146. 塩屋 晴海: 和泉くんも小さい頃は 通ってたの?
  147. 和泉 壮月: いや、遠いから ホントたまーになんだけどさ
  148. 和泉 壮月: あそこのバアさん、 口は悪いけど面倒見いいだろ?
  149. 和泉 壮月: だから…落ち着くっていうか… たまに行きたくなるんだよな
  150. 塩屋 晴海: ふふっ、わかるなぁ…
  151. 塩屋 晴海: 今回も協力してくれるし 優しいよね
  152. 塩屋 晴海: …って言ったら 怒られちゃうかな?
  153. 空穂 夏希: …………
  154. 江利 あいみ: 共通の話題で盛り上がって 親密度アップ!
  155. 相野 みと: 大丈夫…?
  156. 空穂 夏希: 友だちの影響って…怖いね…
  157.  
  158. FILENAME: text_517610-3_5ewzo.txt
  159. みたま: 準備開始から1週間
  160. 和泉 壮月: 痛っ! やべぇ、血ィ出た…
  161. 塩屋 晴海: あっ、大変…これ、絆創膏 傷口を洗ったら貼ってね
  162. 和泉 壮月: …ありがと
  163. みたま: 準備は順調に進み…
  164. おいっ! こっち、数足らねぇぞ!!
  165. 塩屋 晴海: ――っ!?
  166. 和泉 壮月: 声でかすぎ、 ビックリしてるだろ
  167. あっ、悪ィ… 怒ってるわけじゃなねぇからな
  168. 塩屋 晴海: 私もビックリしちゃって ごめんね…
  169. 塩屋 晴海: 和泉くん、ありがとう
  170. 和泉 壮月: …いや別に、仲間同士なのに 誤解があったら嫌だからさ
  171. みたま: 学生会議では ある噂が流れ始めていたの
  172. 空穂 夏希: あいみたちの班でも 噂になってるんだ…
  173. 相野 みと: れいらの班やせいかの班でも…?
  174. 伊吹 れいら: うん、東西を超える恋だって 浮かれてる子もいるよ
  175. 桑水 せいか: …結構、期待されてるよね…
  176. 空穂 夏希: 一応、聞くけど あいみが広めてたり…?
  177. 江利 あいみ: してないよ!
  178. 江利 あいみ: ふたりの邪魔に なっちゃうかもしれないし…!
  179. 空穂 夏希: 邪魔って…?
  180. 江利 あいみ: キミたちの恋に東西問題が かかっているんだ!!
  181. 江利 あいみ: …なんて言われたら ふたりが困っちゃうでしょ?
  182. 空穂 夏希: あー…それは確かに…
  183. みたま: 流れていた噂の内容 それは…
  184. みたま: 壮月君と晴海ちゃんが いい雰囲気なんじゃないかってこと
  185. 相野 みと: あっ! 弟くんと晴海さんだー!
  186. 和泉 壮月: だから、弟くんは… もういいや
  187. 和泉 壮月: それより、帰るところなら 塩屋も一緒にいいか?
  188. 和泉 壮月: もう日が暮れるし ひとりだと危ないだろ?
  189. 空穂 夏希: 確かに… でも、私たち…
  190. 空穂 夏希: 魔女退治に 行くところなんだよね…
  191. 江利 あいみ: 魔法少女じゃない子を 連れてくのは危ないし…
  192. 桑水 せいか: それに…たぶんだけど…
  193. 伊吹 れいら: うん、ふたりとも まだ一緒にいたそうだね
  194. 相野 みと: それなら!
  195. 相野 みと: 私たち、まだ やらないといけないことあるから
  196. 相野 みと: 弟くん送ってあげなよ!
  197. 和泉 壮月: 俺…!?
  198. 塩屋 晴海: それは悪いよ…反対方向だし ひとりでも帰れるよ…?
  199. 相野 みと: 弟くんはそのつもりだったよね?
  200. 和泉 壮月: …………
  201. 相野 みと: うんっ! きまりだねー!
  202. 塩屋 晴海: いいの、かな…?
  203. 和泉 壮月: あした屋の話したら 寄りたくなったし…
  204. 和泉 壮月: だから、ちょうどいいよ
  205. 塩屋 晴海: …うん、ありがとう
  206. 江利 あいみ: あれでお互いの気持ちに 気づいてないなんて…
  207. 空穂 夏希: …それは、あいみが言うの? になっちゃうよ…
  208. 江利 あいみ: うっ…
  209. 塩屋 晴海: いっぱい買ったね
  210. 和泉 壮月: 懐かしくなっちゃって…
  211. 和泉 壮月: 塩の専門店、なんてあるんだな…
  212. 塩屋 晴海: ふふっ、 最初はびっくりするよね
  213. 塩屋 晴海: 私の家は、ずっと塩の売買で 生計を立ててきたから
  214. 塩屋 晴海: 両親も家業を続けていきたいって 思ったらしくて
  215. 塩屋 晴海: 今はいろんな種類の お塩をそろえてみたり
  216. 塩屋 晴海: 食用だけじゃなくて 美容商品も扱ったりしてるんだ
  217. 塩屋 晴海: お姉さんと仲良いんだね
  218. 和泉 壮月: 仲良いっていうか… たったひとりの姉だからな
  219. 塩屋 晴海: ふふふ、 兄弟姉妹がいるっていいよね
  220. 和泉 壮月: そういえば、妹がいるんだっけ
  221. 塩屋 晴海: うん、学生会議に 参加するきっかけは妹だったの
  222. 塩屋 晴海: 送ってくれてありがとう
  223. 和泉 壮月: 気にすんなよ 俺が自分で言い出したことだし
  224. 和泉 壮月: …じゃあ、俺はこれで
  225. 塩屋 晴海: うん、気をつけてね また明日
  226. 和泉 壮月: おうっ
  227. 塩屋 晴海: …………
  228. 塩屋 晴海: (もう少し お話したかったなぁ…)
  229. 塩屋 晴海: えっ…あ、あれ…
  230. 和泉 壮月: …………
  231. 十七夜: …………げつ?
  232. 和泉 壮月: (この絆創膏… 塩屋がくれたんだよな…)
  233. 十七夜: おい、ぼんやりしてどうした? 絆創膏を替えるんじゃないのか?
  234. 和泉 壮月: えっ… いや、このままでいいよ!
  235. 十七夜: …?
  236. 十七夜の父: こりゃ、春だな
  237. 十七夜: …今は秋だが 父さんまでどうしたんだ?
  238.  
  239. FILENAME: text_517610-4_5ewzo.txt
  240. 十七夜: …ということが、 昨日あったのだがどう思う?
  241. 相野 みと: 春だよ!
  242. 伊吹 れいら: 春ですね…
  243. 桑水 せいか: …はい、春…です
  244. 十七夜: いや、 『春だ、春だ』と言うが秋だぞ
  245. 伊吹 れいら: そうじゃなくて、 “青春”ってことです…!
  246. 十七夜: 青春…?
  247. 桑水 せいか: つまり…その… 恋、してるのでは…?
  248. 十七夜: …恋? 自分の弟が?誰にだ?
  249. 相野 みと: 晴海さんに!
  250. 十七夜: …………なるほど、理解したぞ 自分に妹ができるということか
  251. 伊吹 れいら: 何段階かすっとんでません!?
  252. 十七夜: む…そ、そうか…
  253. 塩屋 晴海: あの…
  254. 十七夜: ――っ!?
  255. 塩屋 晴海: ご、ごめんなさい 驚かしてしまいましたか…?
  256. 十七夜: いや、どうした?
  257. 塩屋 晴海: 和泉さんに…その… ご相談があって…
  258. 十七夜: う、うむ… 場所を移すか
  259. 塩屋 晴海: 急に申し訳ありません…
  260. 塩屋 晴海: 和泉くん…えっと弟さんのことで 聞きたいことがあるんです…
  261. 十七夜: どちらも和泉でややこしいだろう 十七夜か、なぎたんと呼んでくれ
  262. 塩屋 晴海: なぎたん…?
  263. 塩屋 晴海: あっ、メイドカフェで 働いてらっしゃるんですよね
  264. 十七夜: 弟から聞いたのか
  265. 塩屋 晴海: はい、和泉くんから すごく人気があるって聞きました
  266. 十七夜: 弟のことも壮月でいいぞ
  267. 塩屋 晴海: えっ! い、いえ…そんなまだ早いです…
  268. 十七夜: そ、そうか…
  269. 十七夜: …なんというか こそばゆいな…
  270. 和泉 壮月: (塩屋と姉さん…?)
  271. 塩屋 晴海: それで、その…昨日家まで送って もらったお礼をしたいのですが…
  272. 塩屋 晴海: 和泉くんの好みがわからなくて
  273. 和泉 壮月: …何、やってるんだ?
  274. 和泉 壮月: (話してる内容は 聞こえねぇけど…)
  275. 和泉 壮月: (姉さんが、塩屋の髪に触れて)
  276. 和泉 壮月: ――っ!?
  277. 和泉 壮月: (な、なんか照れてる…!?)
  278. 十七夜: 発泡スチロールの欠片が ついていた
  279. 塩屋 晴海: 作業の準備をしていたから… やだ…はしたないところを…
  280. 和泉 壮月: …………
  281. 和泉 壮月: (まさか…いや…うっ… でも、みたまさんが…)
  282. みたま: なぎたんってば 女の子にもモテモテなのよぉ~♪
  283. 十七夜: そんなところで 突っ立って何をしている?
  284. 和泉 壮月: べ、別に…!
  285. 和泉 壮月: 姉さんこそ、 塩屋と何を話してたんだ…?
  286. 十七夜: む? そうだな…
  287. 十七夜: …彼女の気持ちを聞いていた と言えばいいか…
  288. 和泉 壮月: えっ…
  289. 十七夜: それより、早く中に入れ 準備することは山ほどあるぞ
  290. 和泉 壮月: …………
  291. 和泉 壮月: (ウソだろ… 実の姉が、ライバル…?)
  292. みたま: あはははっ! それで、わたしにねぇ~
  293. 和泉 壮月: 笑うことねぇだろ…
  294. みたま: だってぇ…ちょっと前まで あんなに小さかったのに
  295. みたま: もうっ 色気づいちゃってぇ~!
  296. バシッバシッ
  297. 和泉 壮月: いてっ! 背中叩くなよ!
  298. 晴海の妹: ミィちゃん、どうしたの?
  299. みかげ: 姉ちゃと壮月くんが話してるから 終わるのを待ってるの!
  300. 晴海の妹: ホントだ なんか楽しそうだね
  301. 和泉 壮月: それで…その… みたまさんはどう思う?
  302. みたま: どうってぇ… …………ふふ
  303. みたま: 十七夜がライバルなら 厳しいかもしれないわねぇ
  304. 塩屋 晴海: こんなところにいたの? そろそろ帰るよ
  305. 晴海の妹: お姉ちゃん!
  306. 塩屋 晴海: みかげちゃんも…
  307. みかげ: 姉ちゃ、待ってるの!
  308. 塩屋 晴海: みたまさんを…?
  309. 塩屋 晴海: (あれ、和泉くんと一緒…?)
  310. みたま: 女の子の気を引きたいなら もっと積極的にならないとぉ~
  311. みたま: 今のままじゃ 及第点もあげられないわよぉ
  312. 和泉 壮月: ぐっ…
  313. 塩屋 晴海: (和泉くん、もしかして みたまさんのこと…?)
  314. 塩屋 晴海: …みかげちゃん
  315. 塩屋 晴海: お姉さんと和泉くん って仲良い、の…?
  316. みかげ: 姉ちゃと壮月くん?
  317. みかげ: 昔から知ってるし 一緒に遊んだりしてたよ
  318. 塩屋 晴海: (もしかして…憧れの お姉さんだったりするのかな…)
  319. 塩屋 晴海: (男の子として見てほしいって 話をしていた、とか…?)
  320. 塩屋 晴海: (…みたまさんみたいに 素敵な人が)
  321. 塩屋 晴海: (和泉くんの好きな人なら 勝ち目なんて…)
  322.  
  323. FILENAME: text_517610-5_5ewzo.txt
  324. 十七夜: こちらでの事前準備も 残り半分を切った
  325. みたま: 設営に向けて漏れがないように しっかり準備していきましょう!
  326. 壮月&晴海: …………
  327. 空穂 夏希: …なんていうか 様子がおかしくない…?
  328. 相野 みと: …そうだねー
  329. 相野 みと: 昨日、なぎたんに相談したときに 何かあったのかな…
  330. みかげ: 壮月くんも姉ちゃに 何か相談してたよ!
  331. 晴海の妹: それを見ちゃってから お姉ちゃんの様子がおかしいの
  332. 相野 みと: わぁっ!? びっくりした…!
  333. 空穂 夏希: …………
  334. 江利 あいみ: 気になるあの人が 別の女の子と親しげにしていたら
  335. 江利 あいみ: 焦っちゃう気持ち わかるなぁ~…
  336. 江利 あいみ: だって、恋する女の子にとって
  337. 江利 あいみ: 大好きなあの人は 世界で一番素敵な人だもん
  338. 江利 あいみ: 誰だって好きになっちゃうはず! …って思っちゃうでしょ?
  339. 空穂 夏希: …って、 あいみなら言いそう、かも?
  340. みかげ: あっ! テラピチにも書いてあったよ!
  341. 晴海の妹: それが恋の魔法…? なんだっけ?
  342. 空穂 夏希: たぶん…?
  343. みかげ: でも、姉ちゃたちは そういう関係じゃないと思うけど
  344. 空穂 夏希: 実際はそうじゃなくても 状況的に勘違いしちゃったとか?
  345. みかげ: そうなの…?
  346. みかげ: じゃあ、ミィが誤解だよって 教えてきてあげようか?
  347. 空穂 夏希: うーん…それって 逆にこじれちゃったりしない?
  348. 相野 みと: 弟くん、自分を塗装してるね
  349. 晴海の妹: …お姉ちゃんは、お墓を作る 発泡スチロールと見つめ合ってる
  350. みかげ: このままだと 作業にも影響しちゃいそう…
  351. 相野 みと: …でもぉ、出しゃばるのも よくないような…
  352. 晴海の妹: お姉ちゃんが嫌がるってこと…?
  353. 空穂 夏希: うん、繊細な問題だし…
  354. 空穂 夏希: だから、数日様子を見てみて ふたりの様子があのままなら
  355. 空穂 夏希: みたまさんたちに話を聞いてみる …で、いいかな?
  356. 晴海の妹: うん、お願いします!
  357. 十七夜: …お前、何をしてるんだ?
  358. 和泉 壮月: げっ!姉さん…
  359. 十七夜: 様子を見に来ただけなのに 『げっ!』とはなんだ
  360. 塩屋 晴海: あ、なぎたんさん お疲れ様です
  361. 和泉 壮月: なぎたんさん!?
  362. 塩屋 晴海: 和泉くんと和泉さんだと わかりにくいから
  363. 塩屋 晴海: そう呼んでいいって 言ってくれたの
  364. 十七夜: うむ 呼ばれ慣れているからな
  365. 和泉 壮月: (いつの間にか、姉さんの方が 仲良くなってる!?)
  366. 和泉 壮月: お、俺…! 姉さんには負けないからな!
  367. 十七夜: む?
  368. 十七夜: …………!
  369. 十七夜: うむ、いい心がけだな 受けて立とう
  370. 塩屋 晴海: (本当に仲が良いんだなぁ…)
  371.  
  372. FILENAME: text_517610-6_5ewzo.txt
  373. 十七夜: 数日前から、壮月と塩屋君の 様子がおかしい…?
  374. みたま: それでわたしたちに 話を聞きたいの?
  375. 空穂 夏希: つまり、みたまさんは 恋愛相談に乗ってたんですね
  376. みたま: そうよぉ ホントにそれだけ
  377. 十七夜: なぜ、自分ではなく 八雲に相談したんだ?
  378. 伊吹 れいら: …失礼かもしれないんですけど 恋愛相談されて答えられます…?
  379. 十七夜: …………努力はする
  380. みかげ: ミィ、姉ちゃも向いてるとは 思えないな…絶対面白がるもん…
  381. みたま: 実際、面白がっちゃったから 否定はできないわね…
  382. みたま: ただ十七夜の性格を抜きにしても 相談しにくかったと思うわ…
  383. みたま: 十七夜のことを恋のライバルだと 思っているみたいだったし
  384. 十七夜: …………なぜだ?
  385. みたま: 晴海ちゃんとふたりで話している ところを見かけたらしいんだけど
  386. みたま: イチャイチャしているように 見えたみたい
  387. 十七夜: …?
  388. みたま: 髪に触ったりしてたって 言ってたわよ
  389. 十七夜: …髪?
  390. 十七夜: ああ…それは ゴミを取っていただけだ
  391. 江利 あいみ: 恋愛あるある勘違い!
  392. みたま: 他にも勘違いさせること 言ったんじゃないかしら…?
  393. 十七夜: うむ… 言ったのか…?
  394. 十七夜: ――っ!?
  395. 相野 みと: どうしたの?
  396. 十七夜: 数日前のことなのだが…
  397. 和泉 壮月: お、俺…! 姉さんには負けないからな!
  398. 十七夜: む?
  399. 十七夜: …………!
  400. 十七夜: うむ、いい心がけだな 受けて立とう
  401. 十七夜: …これはもしかして 恋のライバル宣言だったのか…?
  402. 桑水 せいか: …たぶん?
  403. 江利 あいみ: いや、間違いなく そうだと思いますけど…
  404. 十七夜: …やらかしたな
  405. 相野 みと: つまり…
  406. 相野 みと: 弟くんと晴海さんは 両想いだけど
  407. 相野 みと: 相手に、別に好きな人がいるって 勘違いしてるってことだよね?
  408. 伊吹 れいら: そうだね それでギクシャクしちゃってる…
  409. 相野 みと: そっかー… なら、まだよかったかも
  410. 桑水 せいか: えっ…?
  411. 相野 みと: 学生会議のみんなが ふたりに期待してたみたいだから
  412. 相野 みと: 周りの期待がプレッシャーに なっちゃったのかなって
  413. 相野 みと: ずっと心配してたの…
  414. 空穂 夏希: 周りが追い込んじゃうのは よくないもんね…
  415. 相野 みと: でも、勘違いしてるだけなら 私たちにできることもあるかも!
  416. 伊吹 れいら: …みとの魔法とか?
  417. 桑水 せいか: あっ…心を繋げる魔法
  418. 空穂 夏希: えっ!? それは反則じゃない!?
  419. 相野 みと: ダメ…?
  420. 空穂 夏希: だって、それはチアリーダーが 応援だけじゃなくて
  421. 空穂 夏希: グランドに 入ってくようなものだよ!
  422. 江利 あいみ: …例えはともかく 私もダメだと思う!
  423. 十七夜: …うむ 恋はよくわからんが
  424. 十七夜: 自分も魔法で 解決すべきではないと思うぞ
  425. 相野 みと: そっか…誤解を解くためとはいえ 近道しすぎるのも違うかも…
  426. みたま: ふたりの恋路は ふたりだけのものだものね
  427. みたま: 外野がお節介しすぎるのは 確かによくないかもしれないわ…
  428. みかげ: じゃあ、どうするの?
  429. みたま: そうねぇ…
  430. みたま: わたしたちにできることは 誤解を解くお手伝いをして
  431. みたま: あとは…
  432. みたま: やっぱりそっと 見守ることじゃないかしら?
  433. 十七夜: …うむ そうだな
  434.  
  435. FILENAME: text_517610-7_5ewzo.txt
  436. みたま: わたしたちのイベントの進捗は 衣装作りに少し遅れはあるけれど おおむね順調に進んでいる
  437. みたま: むしろ、みんなが心配しているのは ふたりの恋の行方の方ね…
  438. 十七夜: 明日は、お菓子の調達と スタッフ以外の衣装合わせだ
  439. 十七夜: よって、今日中に 大まかな梱包を終わらせる
  440. みたま: 手が足りないところは 助けを回すから言ってちょうだい
  441. みたま: 協力して間に合わせましょう!
  442. みんな: 「おーっ!」
  443. 塩屋 晴海: すごいなぁ…
  444. 塩屋 晴海: (ふたりとも人前で あんなに堂々してられるなんて)
  445. 和泉 壮月: …………
  446. 相野 みと: 弟くん、なぎたんに 嫉妬してる…?
  447. 空穂 夏希: 晴海さんが見惚れてると 思ってるのかも…
  448. 塩屋 晴海: (…和泉くんは)
  449. 塩屋 晴海: (ああいうカッコイイ お姉さんが好きなのかな…?)
  450. 相野 みと: 晴海さん、今度は 落ち込んじゃったね…
  451. 空穂 夏希: …うん なんでかはわからないけど
  452. 空穂 夏希: 昨日打ち合わせた通りに やってみよう
  453. 相野 みと: ふたりっきりにするのが いーと思う!
  454. 空穂 夏希: ふたりっきり…?
  455. 伊吹 れいら: ふたりで話す時間を作って あげるのがいいってことかな?
  456. 相野 みと: そうっ!
  457. 伊吹 れいら: たしかに、コミュニケーションが 足りてないカンジあるもんね
  458. 相野 みと: 晴海さんと弟くんで 何か作業できたらいーよね!
  459. 空穂 夏希: うーん…作業は 班のみんなでやるし…
  460. みたま: じゃあ、夏希ちゃんたちには 他にまわってもらいましょうか
  461. 十七夜: 作業量を調整すれば問題ないな
  462. 空穂 夏希: えっ?責任者権限で…? それって職権乱用じゃ…
  463. 十七夜: 人手が足りないところへ ヘルプに回すだけだ
  464. みたま: …根本的な解決には ならないと思うけど…
  465. みたま: きっかけくらいになったら いいわねぇ
  466. 相野 みと: なぎたんが呼びに来るのを 待つんだよね
  467. 空穂 夏希: あっ!
  468. 十七夜: すまないが、針仕事に 人を貸してくれないだろうか?
  469. 矢宵 かのこ: スタッフ衣装の仕上げが まだ少し残っているの…
  470. 空穂 夏希: じゃあ、私が!
  471. 十七夜: 野球部のマネージャーは 針仕事もすると言っていたな
  472. 塩屋 晴海: あの、私も… 洋裁なら少しはできます
  473. みんな: えっ…
  474. 矢宵 かのこ: 少しだなんて! 晴海さん、すごく上手じゃない
  475. 十七夜: ちょ、ちょっと待ってくれ 自分は空穂君を…
  476. 塩屋 晴海: 私じゃダメですか…
  477. 十七夜: いや、 そういうわけではないんだが…
  478. 和泉 壮月: …………
  479. 矢宵 かのこ: 晴海さんの腕は私が保証するわ 同級生だからよく知ってるの
  480. 矢宵 かのこ: あっ、夏希も手伝ってね
  481. 空穂 夏希: あ、はい…
  482. 空穂 夏希: ご、ごめんなさい
  483. 空穂 夏希: かのこさんに 伝えてませんでした…!
  484. 相野 みと: なんか… さらに誤解されちゃったかな…?
  485. 相野 みと: なぎたんが来たら 手伝いに行ったー…みたいな…?
  486. 十七夜: …うむ 壮月の目はそう言っているな…
  487. 相野 みと: …えっと、こっちは 頑張ってフォローしておくね…!
  488. 相野 みと: えっとね…そのねー…うーん…
  489. 相野 みと: なぎたんが呼びに来たから 手伝いに行ったわけじゃないよ?
  490. 相野 みと: 晴海さん、 お裁縫が得意みたいだし…?
  491. 和泉 壮月: …みたいだな
  492. 和泉 壮月: 姉さんと違って 器用そうだもんな…
  493. 相野 みと: うーん…嫉妬と惚気…どっち…?
  494. 和泉 壮月: は、はぁっ!? どっちもちげーからな!
  495. 相野 みと: わぁー! 怒らせちゃった!
  496. 相野 みと: 励ましたいのに!
  497.  
  498. FILENAME: text_517610-8_5ewzo.txt
  499. みかげ: 小学生組…改め お菓子部隊集合ー!
  500. みかげ: 中学生以上のお兄さんお姉さんは 集合しなくて大丈夫だよ
  501. みかげ: お菓子は小学生の なわばりだから!
  502. 行ってくるね
  503. 和泉 壮月: おう
  504. みと&壮月: …………
  505. みたま: ごめんさぁい ちょっと手を貸してほし、い…?
  506. 和泉 壮月: なんで疑問形なんだよ?
  507. みたま: えっとぉ~…
  508. みたま: どうして、みとちゃんと 壮月君だけなの…?
  509. 相野 みと: それが、晴海さん お裁縫得意みたいで…
  510. 相野 みと: なぎたんについて行っちゃった…
  511. みたま: 十七夜に…?
  512. みたま: まさか、 壮月君の機嫌が悪いのは…
  513. 相野 みと: さらに勘違い させちゃったからだと思う…
  514. みたま: あらまぁ… うーん、どうしましょう…
  515. 和泉 壮月: おーい、なんで固まったんだ? 用事があるんだろ?
  516. みたま: あー、それなんだけど…
  517. 御園 かりん: 小道具を直す人、 早く連れて来てなのー!
  518. 和泉 壮月: あれか
  519. みたま: わ、わたしが呼びにきたのは みとちゃんよ…!
  520. 和泉 壮月: 相野?
  521. みたま: ちょ、ちょっと繊細な作業だから
  522. 和泉 壮月: だったらなおさら 相野じゃねぇじゃん
  523. 相野 みと: それは失礼だよー!
  524. 相野 みと: 私、どんぐりで おままごとしたりするもん!
  525. 和泉 壮月: そういや、なんか細工してたな
  526. 和泉 壮月: でも、それなら俺だって 負けてないぞ
  527. 和泉 壮月: 団地の子どもたちに おもちゃ作ってやってるだろ?
  528. みたま: そういえば、ミィが昔 もらったって喜んでたわね
  529. 和泉 壮月: なっ! ちょっとした工作なら任せとけ
  530. かりんの声: はーやーくーなのー!
  531. 和泉 壮月: ほら、準備ギリギリなんだろ 遊んでないで行くぞ
  532. みたま: 押さないで!
  533. みたま: わ、わたしが 誘ったんじゃないのよ!
  534. 塩屋 晴海: …………
  535. 十七夜: 八雲はどうしたんだ…?
  536. 空穂 夏希: …たぶん、誤解されないように 言い訳したかったんだと思います
  537. 塩屋 晴海: …好きな人が困ってたら 助けたくなっちゃうもんね…
  538. 十七夜: 逆に誤解を招いたようだが…
  539. 空穂 夏希: …うーん、どーしよ…
  540. みんな: …はぁ
  541. 矢宵 かのこ: えっ、何どうしたの? 縫いにくいところあった?
  542. 空穂 夏希: そうじゃないんですけど…
  543.  
  544. FILENAME: text_517610-9_5ewzo.txt
  545. みかげ: えぇ!? ふたりっきりにする作戦失敗!?
  546. みかげ: それどころか 誤解が深まっちゃったの?
  547. みたま: ミィにも手伝ってもらったのに ごめんねぇ…
  548. 空穂 夏希: ごめんなさい かのこさんに伝えてなくて…
  549. 十七夜: …いや 衣装の作成はギリギリだから
  550. 十七夜: こちらの事情で配慮してもらう 余裕はなかったかもしれん
  551. 十七夜: 当然だが、準備が優先だからな 自分も見通しが甘かった…
  552. みたま: こうなったら…誰もいない 倉庫に閉じ込めちゃう?
  553. 十七夜: 少女漫画の読み過ぎだ
  554. みたま: でも、ピンチで芽生える恋も あるじゃない?
  555. 相野 みと: 恋は芽生えてるよ
  556. 空穂 夏希: すれ違ってるだけですね…
  557. みたま: …そうだったわ わたし、焦ってるわね…
  558. 十七夜: うむ、自分たちが 障害になっているからな…
  559. みたま: 手助けするつもりなのに どうしてこうなるのかしら…
  560. ???: スタッフ組 みんな着替え終わったわよ
  561. みたま: えっと…
  562. 十七夜: すまないが、誰だ?
  563. 矢宵 かのこ: 私よ! 全然わからなかった?
  564. 相野 みと: うん…! ぱっと見わからなかった!
  565. 矢宵 かのこ: じゃあ、テーマ通りね!
  566. 矢宵 かのこ: 早く中に入って きっとビックリするわよ
  567. 相野 みと: わぁ… 誰が誰だか全然わかんない…
  568. みたま: ホントにねぇ…
  569. みたま: ふふ、“何者でもなくなる” っていうテーマ通りだわ
  570. 十七夜: 何者でもなくなった人々は 生まれも育ちも関係なく
  571. 十七夜: ただハロウィンの一夜を楽しむ…
  572. 空穂 夏希: だから、スタッフも 一見、誰だかわからない方がいい
  573. 空穂 夏希: …でしたね
  574. みたま: そうよぉ
  575. みたま: 何者でもないまま いろんな人と仲良くなるの
  576. 相野 みと: ハロウィンが終わっても 仲良くしてくれるといーね!
  577. みたま: …ええ
  578. 和泉 壮月: あっ、お疲れ これ、手伝ってたんだよな?
  579. 塩屋 晴海: あ、うん… お裁縫はちょっとできるから
  580. 塩屋 晴海: 小道具の方は大丈夫そう?
  581. 和泉 壮月: 見てたのか? だいたい直し終わったぜ
  582. 相野 みと: お互いに 誰だかわかってるみたい…!
  583. みたま: あらまぁ…
  584. 空穂 夏希: あいみなら…
  585. 夏希&あいみ: 愛の力だよっ!
  586. 空穂 夏希: って、うわぁああっ!? びっくりしたー…
  587. 江利 あいみ: わかってるじゃん、夏希! 恋バナいっぱいした成果?
  588. 空穂 夏希: …かも?
  589. みたま: でも、なんでわかったのかしら?
  590. 空穂 夏希: うーん…仕草とか?
  591. 相野 みと: ふたりとも 相手をよく見てるのかもねー…
  592. みたま: なるほどねぇ… 確かに愛の力かもねぇ
  593. 十七夜: …少しはっぱをかけてやれば
  594. 十七夜: あとは当人たちが うまくやるのかもしれないな
  595. みたま: じゃあ、もうちょっとだけ お節介してみましょうか
  596.  
  597. FILENAME: text_517610-10_5ewzo.txt
  598. みたま: すれ違う壮月君と晴海ちゃんの恋を なんとかしたくて ふたりだけになれる機会を作ろうとしたけど
  599. みたま: 失敗…
  600. みたま: オブジェクトとかの資材の梱包を終えれば 会場の設営に移っちゃうから その前にお節介をすることにしたの
  601. みたま: つまり… 遠回しなことをせずに直接、背中を押したのよ
  602. みたま: そして、翌日 公民館での準備、最終日
  603. みかげ: みんな、ちゅうもーく!
  604. みかげ: お菓子部隊の隊長かつ あした屋2代目のミィだよ!
  605. 和泉 壮月: 自称2代目だろ…
  606. 塩屋 晴海: ふふっ、すごいよね
  607. 塩屋 晴海: あした屋を継ぐために 勉強中だって妹が言ってた
  608. みかげ: じゃあ、みんなはぐれないように ミィについて来てね
  609. みかげ: 壮月くんと晴海さんは 付き添いだから一番後ろね
  610. みんな: 「はーい!」
  611. 塩屋 晴海: じゃあ、私たちも行こっか
  612. 和泉 壮月: …おう
  613. 塩屋 晴海: 和泉くんはどんな駄菓子が好き?
  614. 和泉 壮月: 俺か…?
  615. 和泉 壮月: うーん、最近は 食わなくなったからなぁ…
  616. 塩屋 晴海: 子どもの頃 好きだったものでもいいよ?
  617. みたま: 晴海ちゃん、 もうストレートに聞いちゃうけど
  618. みたま: 壮月君のこと好きよね?
  619. 塩屋 晴海: えっ… き、気付いていたんですか…?
  620. 和泉 壮月: ガキの頃なら… たくさん入ってるやつ買ってた
  621. 和泉 壮月: なんか、得な気がしてさ…
  622. 塩屋 晴海: わかるかも… いっぱい入ってると嬉しいよね
  623. 和泉 壮月: そうそう! …けど、それでも物足りなくてさ
  624. 和泉 壮月: 変なところで鋭いのか 姉さんがわけてくれるんだよな
  625. 塩屋 晴海: いっぱい食べるんだ 今もそう?
  626. みたま: 本当は、そっと見守る つもりだったんだけど…
  627. みたま: 誤解させてしまっている みたいだから…
  628. 空穂 夏希: うん、私たちは応援してるって 伝えたかったの…!
  629. 塩屋 晴海: …!
  630. みたま: 誰かを好きになるって とても素敵なことだと思うわ
  631. みたま: だから、 その気持ちを大切にしてほしくて
  632. 和泉 壮月: どーだろ…? 男子なら普通くらい、か?
  633. 塩屋 晴海: ふふっ
  634. 和泉 壮月: ん? 俺、変なこと言ったか?
  635. 塩屋 晴海: ううん
  636. 塩屋 晴海: ただね、 いいなって思ったの
  637. 塩屋 晴海: (そう…)
  638. 塩屋 晴海: (和泉くんとこうやって 何気ないことを話す時間が)
  639. 塩屋 晴海: (すごくいいなって思ったの)
  640. 和泉 壮月: えっ…? そ、そっか…
  641. みかげの声: あぁーーーーっ!!
  642. 和泉 壮月: どうした!?
  643. みかげ: …ミィ、やっちゃった…
  644. みかげ: 姉ちゃから お金、預かってくるの忘れた…
  645. 和泉 壮月: はぁっ!?
  646. 塩屋 晴海: えっと…一度戻る?
  647. 和泉 壮月: 全員で戻るのは無駄だろ?
  648. 和泉 壮月: 塩屋はこいつら連れて 先に行っててくれ
  649. 和泉 壮月: 走って取ってくる
  650. 塩屋 晴海: で、でも 結構遠いよ…?
  651. 和泉 壮月: 大丈夫だって 体力には自信あるから
  652. 和泉 壮月: じゃっ、こっちは頼む!
  653. 塩屋 晴海: …行っちゃった
  654. 塩屋 晴海: (カッコイイなぁ、もう…)
  655. みかげ: ごめんね…
  656. 塩屋 晴海: 悲しい顔しないで 失敗なんて誰にでもあるんだから
  657. タッタッタッタッ…!
  658. 和泉 壮月: …………
  659. 十七夜: 壮月…その、なんだ…あれだ…
  660. 和泉 壮月: …どれだよ
  661. 十七夜: いや、うむ…
  662. 相野 みと: なぎたん! スッと言ってバン!だよ!!
  663. 十七夜: …うむ ひと言で言うとだな
  664. 十七夜: 誤解だ
  665. 和泉 壮月: 誤解…?
  666. 十七夜: 重要なのは自分自身の気持ちと 真実を見極める目だぞ
  667. 和泉 壮月: …もしかして、姉さんを ライバルだって思ったのは…
  668. 十七夜: どうしてもと懇願するなら 真実にしてやってもいいが
  669. 和泉 壮月: 望んでねぇよ!
  670. 和泉 壮月: …ははっ 下手な励まし方だよな!
  671. 和泉 壮月: (でもさ…)
  672. 塩屋 晴海: ただね、 いいなって思ったの
  673. 和泉 壮月: (俺もいいなって思ったよ 塩屋とただ話すだけの時間…)
  674. 和泉 壮月: そういうことなんだよなぁ
  675. みたま: みんなお疲れ様ぁ~! こっちでの準備は完了よ!
  676. 十七夜: 明日からは設営だ! 気を抜かず、共に頑張ろう!
  677. みんな: 「わぁああああっ!」
  678. 塩屋 晴海: みたまさん、夏希ちゃん 昨日は応援してくれてありがとう
  679. 塩屋 晴海: 私ね、ふたりのおかげで わかったの
  680. 塩屋 晴海: やっぱり、あの人が好きだって
  681. みたま&夏希: …!
  682. 塩屋 晴海: だから…
  683. 和泉 壮月: 姉さん、ありがとな… なんか気持ちを整理できた
  684. 十七夜: うむ
  685. 和泉 壮月: 相野もな
  686. 和泉 壮月: それでさ…
  687. 晴海&壮月: 「ハロウィンイベントが終わったら 告白してみようと思う…!」
  688. [Part 1 end]
  689. ---
  690. [Part 2 start]
  691. FILENAME: text_517620-1_zmbz5.txt
  692. 塩屋 晴海: 告白しようって決めてから 気持ちがふわふわしてる
  693. 塩屋 晴海: お夕食が終わって 家族でのんびりするだけの時間 いつものように妹が 話しているのに耳を傾けているだけなのに
  694. 塩屋 晴海: なんだかドキドキしている自分がいて 幸せなような緊張しているような 落ち着かない気持ちなの
  695. 晴海の妹: それでね、明日から 会場の準備をするんだよ!
  696. 晴海の母: ふふっ、 学生会議、楽しそうね
  697. 塩屋 晴海: うん、いい人ばっかりで 雰囲気もすごくいいの
  698. 晴海の父: そうか、いいことだな
  699. 晴海の妹: それに、お姉ちゃん 好きな人できたもんね
  700. 塩屋 晴海: ――っ!?
  701. 塩屋 晴海: ちょ、ちょっと…!
  702. 晴海の妹: だって、ホントのことだもん
  703. 晴海の父: …それは、学生会議で 出会った人か?
  704. 塩屋 晴海: …う、うん
  705. 晴海の母: 東の人?
  706. 塩屋 晴海: そうだけど…
  707. 塩屋 晴海: えっ、どうしたの?
  708. 晴海の両親: …………
  709. 晴海の母: 晴海の気持ちは 尊重してあげたいけどね…
  710. 塩屋 晴海: 東の人とは 付き合うなって言うの…?
  711. 塩屋 晴海: 私たちは今、そういう偏見を 失くそうとしているんだよ
  712. 晴海の父: ああ、わかっている 立派な活動だとも思っているよ
  713. 晴海の父: …だが、東の方と付き合うのは 今はまだ手放しで賛成できない
  714. 塩屋 晴海: どうして?
  715. 晴海の父: 周りはまだその流れに ついて来れていないだろ?
  716. 晴海の父: 東西の関係が改善してからなら 反対なんてしないんだが…
  717. 晴海の父: 今の関係を考えると、な…
  718. 塩屋 晴海: …!
  719. 晴海の母: つまりね…
  720. 晴海の母: お父さんとお母さんは 反対してるんじゃなくて
  721. 晴海の母: 心配しているのよ…
  722. 晴海の母: あなたたちが頑張っていることが 正しかったとしても
  723. 晴海の母: 理解してくれない人はいるし
  724. 晴海の母: それがきっかけで
  725. 晴海の母: これまで仲良くしていた人と 疎遠になるかもしれないわ…
  726. 塩屋 晴海: …………
  727. 晴海の父: 晴海は、家を継ぎたいって 言ってくれていたしな…
  728. 晴海の父: 東の方と縁付いて 店も継いでもらうとなると
  729. 晴海の父: 相当苦労する覚悟をしないと いけなくなる
  730. 晴海の母: 世知辛いけど お客様あっての商売だからね…
  731. 晴海の母: でも、お母さんたちとしては 応援してあげたいのは本当よ…
  732. 晴海の父: だが残念なことに 現実は理想とはまだ程遠い
  733. 晴海の父: それでもというなら 相応の覚悟が必要になるぞ
  734. 塩屋 晴海: …………
  735. 塩屋 晴海: (お父さんとお母さんが 言ってることは間違ってない)
  736. 塩屋 晴海: (…これまでは あまり実感がなかったけど)
  737. 塩屋 晴海: (東西問題を知ってから 振り返ってみれば…)
  738. 塩屋 晴海: (それがよくわかる…)
  739. 塩屋 晴海: (ただ好きだから… それだけじゃダメなのも…)
  740. 塩屋 晴海: ごめん… 部屋に戻るね…
  741. 晴海の妹: …お姉ちゃん!
  742. 晴海の妹: お父さんもお母さんも ひどいよ!
  743. 晴海の母: わかっているわ…
  744. 晴海の父: でも、いずれ直面するなら 早い方がいい…
  745. 晴海の母: ええ、外で傷つくよりもね…
  746. 晴海の妹: …………
  747.  
  748. FILENAME: text_517620-2_zmbz5.txt
  749. 和泉 壮月: 昨日、告白する! …って決めたせいか 俺は浮かれているらしい
  750. 和泉 壮月: 仲の良いやつらにはすぐにわかったらしく 根掘り葉掘り聞かれる羽目になった…
  751. 和泉に好きな奴か!
  752. しかも水名のお嬢さんってのは 驚きだな
  753. 和泉 壮月: …うるせぇな いいだろ、別に…
  754. まっ、水名女学園の お嬢様に憧れる気持ちはわかるわ
  755. なんかいいもんな
  756. 和泉 壮月: …そういうので 好きになったわけじゃねぇからな
  757. わかってるって!
  758. 和泉が好きになったってことは いい子なんだろ
  759. たださぁ… 水名のお嬢様って憧れはあるけど
  760. 実際付き合うってなったら 大変だよな
  761. あーね…
  762. 和泉 壮月: なんでだよ
  763. だって、いろいろ言ってくる奴 絶対いるじゃん…
  764. 和泉はいい奴だけど
  765. 西側から見たら東のオレらなんて 全部同じに見えるだろーしなぁ…
  766. 和泉 壮月: だから、 偏見を失くそうとしてんだろ
  767. えっと…学生会議だっけ?
  768. でも、 始まったばっかりなんだろ?
  769. 一番、大変な時期じゃん
  770. 和泉 壮月: はぁ?周りに言われたからって 俺が負けると思うか?
  771. オマエはいーかもしんねぇけど 相手の子はどうなんだよ
  772. 和泉 壮月: えっ?
  773. 和泉だけの問題じゃねぇもん
  774. 相手の子だって 同じ目に遭うかもだろ
  775. 和泉 壮月: …………
  776. …あ、ごめん ちょっと言い過ぎた…
  777. うん、悪ぃ…
  778. 和泉 壮月: おまえたちは悪くねぇよ…
  779. 和泉 壮月: むしろ、俺がバカだった…
  780. 和泉 壮月: そーいうの考えず、 浮かれてたみたいだ…
  781. 和泉 壮月: …………
  782. 和泉 壮月: (周りの目、か…)
  783. 和泉 壮月: (塩屋が悪意にさらされたら 俺、守ってやれるのかな…)
  784. 和泉 壮月: (守ってやりたいけど 守りきれるのか…?)
  785. 十七夜: そんなところで 突っ立ってどうした?
  786. 和泉 壮月: …姉さん
  787. 和泉 壮月: …………
  788. 十七夜: …本当にどうした? 嫌なことでもあったのか?
  789. 和泉 壮月: 嫌なことはねぇよ…
  790. 和泉 壮月: なんていうか… 俺はまだガキだなって…
  791. 十七夜: …む?
  792. 十七夜: まだ中学生なのだから 子どもの範囲だろう?
  793. 和泉 壮月: ははっ…
  794. 和泉 壮月: なんか姉さんと話したら 元気出たわ
  795. 和泉 壮月: 早く行こーぜ! 今日は会場の設営だろ?
  796. 十七夜: …………
  797.  
  798. FILENAME: text_517620-3_zmbz5.txt
  799. みたま: ここが交流会場よぉ~! 入口には受付を設置する予定なの
  800. みたま: 昨日終わらなかった 驚かす役の衣装合わせを
  801. みたま: 先にやっちゃってから 飾りつけになるわぁ!
  802. 十七夜: 内観担当者は
  803. 十七夜: 作業に入れるようになるまでは 外観の飾りつけの手伝いを頼む
  804. 矢宵 かのこ: 衣装関係の人だけ残って
  805. 矢宵 かのこ: 昨日、家で調整してきた 衣装の最終合わせをするから!
  806. 矢宵 かのこ: あ、晴海さんも手伝って もらっていい?
  807. 塩屋 晴海: …あっ、もちろん!
  808. 十七夜: 外観の飾りつけは 力仕事が多くなる
  809. 十七夜: 男子が中心の作業になるが
  810. 十七夜: 力に自信がある女子も もちろん大歓迎だ!
  811. みたま: 十七夜も外観担当だものねぇ
  812. 御園 かりん: 外観の飾りつけの総指揮は 引き続き
  813. 御園 かりん: デザインを担当した わたしがやるの!
  814. 御園 かりん: さっそく作業に… と言いたいところだけどまずは…
  815. 御園 かりん: 講義の合間を縫って
  816. 御園 かりん: 搬入と設置作業を 先にやっていてくれた
  817. 御園 かりん: 大学生組のみんなに 感謝の拍手なの!
  818. パチパチパチパチ!
  819. やちよ: 空いている時間を 有効活用しただけよ
  820. やちよ: じゃあ、あとのかじ取りは よろしくね
  821. 御園 かりん: 任せろなの!
  822. 和泉 壮月: …………
  823. 和泉 壮月: (…塩屋が嫌な目に遭ったら…)
  824. 十七夜: …作業を始めるが
  825. 和泉 壮月: …!
  826. 和泉 壮月: お、おう!
  827. 矢宵 かのこ: うんっ 完璧ね!
  828. 相野 みと: じゃーん!
  829. 空穂 夏希: おおっ、昨日より 動きやすくなった!
  830. 矢宵 かのこ: 装飾をずらして 布も足に絡まないようにしたの
  831. 空穂 夏希: ありがとうございます!
  832. 相野 みと: 晴海さんもありがとー! たくさん手伝ってくれたんだよね
  833. 塩屋 晴海: そんなことないよ 少しだけ、だから…
  834. 矢宵 かのこ: 謙遜しなくていいのに …っていうか、元気ないわね
  835. 塩屋 晴海: 昨日、寝るのが 遅くなっちゃって…
  836. 相野 みと: 悩み事…?
  837. 塩屋 晴海: ううん…本を読んでたら 時間を忘れちゃったの…
  838. 塩屋 晴海: (うそついちゃった…)
  839. 塩屋 晴海: (本当は時間を忘れたいから 本を読んでたんだけど…)
  840. 空穂 夏希: でも、大丈夫には見えないけど…
  841. 塩屋 晴海: 大丈夫…!
  842. 塩屋 晴海: それより、衣装をみんなに見せて 会場の準備に移らないと!
  843. 塩屋 晴海: 時間は待ってくれないよ?
  844. 相野 みと: …………うん
  845. 塩屋 晴海: (…ぼんやりしてる 場合じゃないのに)
  846. 塩屋 晴海: (今、大切なのは ハロウィンの準備なんだから…)
  847. 空穂 夏希: 外の準備も進んでるね
  848. 塩屋 晴海: うん
  849. 塩屋 晴海: (…和泉くんもいる)
  850. 伊勢崎 隼人: じゃあ、こっち持つから
  851. 和泉 壮月: はい せーので行きましょう
  852. 壮月&隼人: せーのっ!
  853. 塩屋 晴海: (…一緒に作業しているのは 中央学園の人、かな)
  854. 塩屋 晴海: …ここではみんな 仲良くできるのになぁ
  855.  
  856. FILENAME: text_517620-4_zmbz5.txt
  857. こっち、ひとり助っ人頼む!
  858. 和泉 壮月: じゃあ、俺 次はあっち手伝ってきます
  859. 伊勢崎 隼人: あっちの段ボール 重めの資材が入ってるから
  860. 伊勢崎 隼人: 崩さないように気をつけて
  861. 和泉 壮月: はい!
  862. 和泉 壮月: うおっ…! 確かに重いな
  863. 和泉 壮月: 慎重に降ろして運ばねぇと…
  864. 和泉 壮月: (積みあがってる段ボールを 崩さないように取って…)
  865. 和泉 壮月: …ん?
  866. 和泉 壮月: (…塩屋? 衣装合わせ終わったのか)
  867. グラッ…
  868. 和泉 壮月: (あ、やべ… 段ボールのバランスが崩れ…)
  869. 和泉 壮月: (落ちてくる…!!)
  870. 十七夜: 「壮月!!」
  871. 十七夜: …くっ
  872. 和泉 壮月: 俺のこと庇って…
  873. 和泉 壮月: ごめん、姉さん…! 俺、ぼんやりしてて!
  874. 十七夜: 落ち着け 自分は無事だ
  875. 十七夜: お前は無事か?
  876. 和泉 壮月: …う、うん
  877. 十七夜: ならいい
  878. 十七夜: よっと… 崩れた段ボールは少ないな
  879. 十七夜: …………うむ 中の資材も大丈夫だ
  880. 塩屋 晴海: 和泉くん!! なぎたんさんも…!
  881. 十七夜: 大丈夫だ
  882. 十七夜: 少し段ボールが崩れただけで 自分たちも資材も大事ない
  883. 塩屋 晴海: …本当にケガはないんですか?
  884. 十七夜: うむ、自分は頑丈だからな
  885. 和泉 壮月: 俺も、大丈夫… 姉さんが助けてくれたから…
  886. 塩屋 晴海: よかったぁ…
  887. 和泉 壮月: …………
  888. 和泉 壮月: (よく、ねぇよ…)
  889. 和泉 壮月: (塩屋のこと守りたいとか 思っておきながら)
  890. 和泉 壮月: (ヘマして 姉さんに助けられるとか…)
  891. 和泉 壮月: (全然、よくねぇ…)
  892. 十七夜: 騒がせてすまなかった! 皆、作業に戻ってくれ!
  893. 和泉 壮月: …………
  894. 和泉 壮月: (現実は見えてないし みんなの足は引っ張るし…)
  895. 和泉 壮月: (俺、いいとこねぇな…)
  896. 和泉 壮月: (…だっせぇ)
  897.  
  898. FILENAME: text_517620-5_zmbz5.txt
  899. 塩屋 晴海: (みかげちゃんと お話があるから先に帰ってて)
  900. 塩屋 晴海: (…って言ってたけど)
  901. 塩屋 晴海: (帰って来る気配がないし 迎えに行こうかな)
  902. 晴海の妹: お姉ちゃーん!
  903. 塩屋 晴海: あっ、よかった 帰って来た…
  904. みたま: こんにちは
  905. 塩屋 晴海: 送ってくれたんですね わざわざ申し訳ありません…
  906. みたま: 気にしないでぇ
  907. みたま: わたしも晴海ちゃんに 用事があったから
  908. 塩屋 晴海: 私に…?
  909. みたま: 実はね、妹さんから
  910. みたま: ご両親との間にあったことを 相談されたの
  911. 塩屋 晴海: …!
  912. みたま: 自分のせいでお姉ちゃんを 悲しませちゃったって
  913. 塩屋 晴海: …あの子にまで 心配かけてたなんて…
  914. みたま: もしよかったら
  915. みたま: 心に溜めてしまっていることを 聞かせて…?
  916. 塩屋 晴海: …………
  917. 塩屋 晴海: …ごめんなさい
  918. みたま: …じゃあ、わたしの話を 聞いてくれる?
  919. 塩屋 晴海: えっ…? いい、ですけど…
  920. みたま: …………
  921. みたま: …わたし、水名女学園に 通っていたときがあるの
  922. 塩屋 晴海: みたまさんが…?
  923. 塩屋 晴海: …………あ、もしかして…?
  924. みたま: そう…大東に出戻りした、ね 噂くらいは知ってるでしょ?
  925. 塩屋 晴海: …はい
  926. 塩屋 晴海: でも、明槻先輩… 部活の先輩なんですが
  927. 塩屋 晴海: 彼女から退学になった方に 非はなかったと聞きました
  928. みたま: …あのときは、わたし よくわからなくなっちゃって
  929. みたま: いろんなものを憎んだり恨んだり 呪ったりしてた…
  930. みたま: わたしが晴海ちゃんと お話したいと思ったのは
  931. みたま: 妹さんに 頼まれたからだけじゃなくて
  932. みたま: あのときのわたしみたいに なってほしくなかったからなの
  933. 塩屋 晴海: …………
  934. みたま: わたしには東西問題を 一気に解決する力なんてないけど
  935. みたま: 話を聞くことはできるわ
  936. みたま: 辛い気持ちや悲しい気持ち 恨み言だっていい
  937. みたま: 聞かせてくれたら 解決はできなくても寄り添うから
  938. 塩屋 晴海: 恥ずかしい、話ばかりですよ… 愚痴ばっかりかも…
  939. みたま: ええ、それでも聞きたいわ
  940. 塩屋 晴海: 私も… よく、わからないんです
  941. 塩屋 晴海: 私はただ… 彼のことが好きなだけなのに
  942. 塩屋 晴海: お父さんやお母さんの話を聞いて 冷や水を浴びた気持ちになって…
  943. 塩屋 晴海: 私のこの気持ちだって 間違っていないはずなのにって…
  944. みたま: …うん、わたしもどっちも 間違ってないと思うわ
  945. 塩屋 晴海: でも…
  946. 塩屋 晴海: “この恋を邪魔しないで”って 叫んでも届かないんです…
  947. 塩屋 晴海: そういう恋なんだって やっとわかっちゃって…
  948. 和泉 壮月: …………
  949. 和泉 壮月: 姉さん、いるんだろ?
  950. 十七夜: …む? なぜバレた?
  951. 和泉 壮月: 草に紛れてたつもりだろうけど 髪が見えてた
  952. 十七夜: …うむ、また失敗か 上手く隠れるのは難しいな
  953. 十七夜: まぁ、ちょうどいい そろそろ帰るぞ
  954. 和泉 壮月: なぁ、俺…彼女のこと 守ってやれると思うか?
  955. 十七夜: 昼間のことを気にしているのか?
  956. 十七夜: 失敗なら誰にでもある もう気に病むな
  957. 和泉 壮月: …それだけじゃなくてさ 悪意とか、そういう…やつから…
  958. 十七夜: …悪意から人を守ることは 容易ではない
  959. 十七夜: ひとりで背負おうとするのは 傲慢だと自分は学んだな
  960. 和泉 壮月: そっか…
  961. 和泉 壮月: …帰ろうぜ
  962. 十七夜: …守る、か
  963. みたま: あらぁ… 帰りを待っててくれたの?
  964. 十七夜: 塩屋君も心配だからな どうだった…?
  965. みたま: 理屈ではわかっていても 心から受け入れられるかは別よ…
  966. 十七夜: …うむ
  967. 十七夜: 現状をただ受け入れて さらに進むというのは難しい…
  968. みたま: まさにわたしたちが…
  969. みたま: 学生会議がしようとしていること …だものね
  970. みたま: …………あ…
  971. 十七夜: どうした?
  972. みたま: …わたしたちがしようと していることってつまり…
  973. 十七夜: …む なるほど…
  974.  
  975. FILENAME: text_517620-6_zmbz5.txt
  976. みたま: 明日のリハーサルに 間に合わせるために
  977. みたま: 今日中に大まかに 仕上げちゃうわよぉ~!
  978. 十七夜: 日が暮れたら、 ライティングの調整もする予定だ
  979. 十七夜: 全体の雰囲気を把握するために 皆には衣装の着用をお願いしたい
  980. 和泉 壮月: (姉さんは、いつでも 冷静に見えるよな…)
  981. 和泉 壮月: (強くて… なんでも自分で解決できそうで)
  982. 和泉 壮月: (でも…)
  983. 和泉 壮月: (あの姉さんでさえ 心の中では悩みを抱えてた)
  984. 和泉 壮月: (姉さんは、生まれ育った町が 大好きで守りたいだけなのに)
  985. 和泉 壮月: (現実はついてこないから ひとりで抱え込んで…)
  986. 和泉 壮月: (失踪までした)
  987. 和泉 壮月: (そのときにたぶん 言えないようなこともしてる…)
  988. 和泉 壮月: (いつもニコニコしてる みたまさんだって…)
  989. 和泉 壮月: (心の内では ずっと傷を抱えてたみたいだし)
  990. 和泉 壮月: (俺は、気づかなくて ふたりの力にはなれなかった…)
  991. 和泉 壮月: (…もし、塩屋が 悩んだり傷つくことがあったら)
  992. 和泉 壮月: (気づいてやれるのかな…)
  993. 和泉 壮月: (何かして やれることがあるのか…?)
  994. 和泉 壮月: (できないなら隣にいたいなんて 言う資格ねぇよな…)
  995. 和泉 壮月: (俺なんてただ、迷惑に なるだけじゃないのか…?)
  996. 伊勢崎 隼人: 和泉くん、大丈夫…?
  997. 和泉 壮月: あ…伊勢崎さん すみません、ぼんやりしてて…
  998. 和泉 壮月: 昨日のヘマした分 取り返さないといけないのに
  999. 伊勢崎 隼人: 昨日のことは、 誰も気にしてないと思うよ
  1000. 伊勢崎 隼人: 和泉くんたちに ケガがなかっただけで十分
  1001. そうだぜ、暗い顔してると イケメンが台無しだぞ
  1002. 和泉 壮月: イケメンじゃないんで…! からかわないでください!
  1003. ははっ、元気が出たとこで 作業するぞ!
  1004. 塔立てるらしいから気張れよ!
  1005. 和泉 壮月: (ここのやつらは みんないーやつらだよな…)
  1006. 和泉 壮月: (学生会議の外も こうだったら…)
  1007. 和泉 壮月: (…ってこうじゃないから 神浜学生会議があるんだよな)
  1008. 和泉 壮月: (誰かを恨んでも変わらねぇから 頑張ってる)
  1009. 和泉 壮月: 少しずつ進むしかないって わかってても
  1010. 和泉 壮月: やるせねぇよ…
  1011. おーい! 和泉ー!
  1012. 和泉 壮月: あっ、すみません すぐ行きます!
  1013. 十七夜: …………
  1014. みたま: みんなぁ、お疲れ様~!
  1015. みたま: ライティングもいい感じだし 衣装も馴染んでいるわねぇ…
  1016. 塩屋 晴海: …きれい
  1017. 塩屋 晴海: …本当に誰が誰なのか わからないなぁ…
  1018. 塩屋 晴海: (“何者でもなくなる”)
  1019. 塩屋 晴海: (…ここでなら、私は)
  1020. 塩屋 晴海: (“水名で生まれ育った 塩屋晴海”じゃなくて…)
  1021. 塩屋 晴海: (仮面をつけてパーティーを 楽しむただひとりの人間)
  1022. 塩屋 晴海: (誰でもないから 町のことも家のことも関係ない)
  1023. 塩屋 晴海: (ここには私を悩ませるものは 何もないから…)
  1024. 塩屋 晴海: (憂いもなくあの人と 一緒にいられる…かも)
  1025. 塩屋 晴海: 私…本当に…
  1026. 塩屋 晴海: “何者でもなければ” よかったのに…
  1027. みたま: …………
  1028.  
  1029. FILENAME: text_517620-7_zmbz5.txt
  1030. 塩屋 晴海: 私…本当に…
  1031. 塩屋 晴海: “何者でもなければ” よかったのに…
  1032. 塩屋 晴海: (なんて… そんなこと叶うわけないのにね)
  1033. 十七夜: ―十七夜― 悩めるお嬢さん
  1034. みたま: ―みたま― その願い わたしたちが叶えましょう
  1035. 塩屋 晴海: ―晴海― えっ… なぎたんさんとみたまさん…?
  1036. ???: ―???― あらぁ わたしはみたまじゃないわぁ
  1037. 常闇の淑女: ―常闇の淑女― 常闇の淑女よぉ♪
  1038. ???: ―???― じ、自分は… 常闇の…仮面?…だ?
  1039. 常闇の淑女: ―常闇の淑女― もうちょっとあるでしょぉ… 騎士とか
  1040. 常闇の騎士: ―常闇の騎士― …む 失礼、常闇の騎士だ
  1041. 常闇の淑女: わたしはベールを被ったわ
  1042. 常闇の騎士: 自分も仮面を被ったぞ
  1043. 塩屋 晴海: えっ…えっと…
  1044. 常闇の淑女: だからねぇ…
  1045. 常闇の淑女: 終わらないハロウィンに 連れて行ってあげる!
  1046. 塩屋 晴海: あ…
  1047. 塩屋 晴海: (もしかして、 常闇ツアーの練習…?)
  1048. 常闇の淑女: さぁ、行きましょう? 永遠の闇に…
  1049. 塩屋 晴海: はい…
  1050. 塩屋 晴海: わぁ…外もすごいですね…
  1051. 塩屋 晴海: (中の会場担当だったから 完成したところは初めて見る…)
  1052. 塩屋 晴海: (…私たちが 作ったもののはずなのに)
  1053. 塩屋 晴海: (ちょっと…怖い)
  1054. 常闇の淑女: 素敵でしょう…?
  1055. 常闇の淑女: 今日からあなたも ここの住人になるのよ
  1056. 常闇の淑女: “何者でもない者”としてねぇ ふふ…
  1057. 塩屋 晴海: 永遠に…?
  1058. 常闇の淑女: そう…永遠に、よぉ…
  1059. 常闇の騎士: だが、その目は まだ闇になれないだろう
  1060. 常闇の騎士: しばらくは自分が君の手を引こう
  1061. 塩屋 晴海: ありがとうございます なぎたんさん…
  1062. 常闇の騎士: 自分はなぎたんではないぞ 常闇の騎士だ
  1063. 塩屋 晴海: …あの、どこまで行くんですか?
  1064. 常闇の騎士: どこまで? おかしなことを聞くな
  1065. 常闇の淑女: ここは常闇…
  1066. 常闇の淑女: どこまで行っても闇の中なら どこにも行かないのと同じよ…?
  1067. 常闇の淑女: だって、それが…
  1068. 常闇の淑女: 永遠に“何者でもなくなる” ということだもの
  1069. 塩屋 晴海: …………
  1070. 塩屋 晴海: (演出、だよね…?)
  1071.  
  1072. FILENAME: text_517620-8_zmbz5.txt
  1073. 和泉 壮月: 姉さんたちと…塩屋か…? 何やってんだ?
  1074. 名もなき魔導士: いたよ、いたよ! 勇者様を発見だー!
  1075. 和泉 壮月: はっ…!? 何事だ?
  1076. 名もなき踊り子: さぁ、共に参りましょう
  1077. 名もなき踊り子: 迷える少女が 常闇に囚われてしまう前に…
  1078. 和泉 壮月: …常闇ツアーの練習か? でも、俺練習に付き合う気分じゃ
  1079. 名もなき踊り子: 勇者様もまた常闇に 囚われかけている様子
  1080. 名もなき魔導士: ならば我らが 背中を押すしかあるまーい!
  1081. グイグイッ
  1082. 和泉 壮月: だから、 俺以外に頼めって…!
  1083. 名もなき魔導士: でも、あなたが 連れ戻さなくていいの?
  1084. 名もなき魔導士: このままだとあの子は ずっと“何者でもない”ままだよ
  1085. 名もなき踊り子: そして、永遠に闇の世界を 彷徨うことになるのです
  1086. 和泉 壮月: …あの子って、塩屋のことか?
  1087. 名もなき踊り子: ここでは名前は意味を持ちません
  1088. 名もなき踊り子: 誰もが “何者でもない”のですから…
  1089. 名もなき魔導士: さぁさぁ、不安はごもっとも
  1090. 名もなき魔導士: でも、一歩を踏み出さなければ 永遠に闇の中…
  1091. 名もなき踊り子: 共に助けに参りましょう
  1092. 名もなき魔導士: 心を繋げに参りましょう!
  1093. 和泉 壮月: …はぁ、わかった 付き合えばいいんだろ…
  1094. 和泉 壮月: …で、どこにいるんだ?
  1095. 名もなき魔導士: しーっ
  1096. 名もなき魔導士: 見つかったらあなたも 引き込まれちゃうよ
  1097. 名もなき踊り子: あぁ…いらっしゃいました そっとご覧くださいませ
  1098. 常闇の淑女: 心配しないでぇ
  1099. 常闇の淑女: ここでは誰もあなたの気持ちを 踏みにじったりしないわ
  1100. 常闇の騎士: 闇は暗く深い
  1101. 常闇の騎士: 故に悍ましいものが 照らし出されることはない
  1102. 常闇の淑女: あなたは優しく 迎え入れられるの
  1103. 塩屋 晴海: …………
  1104. 和泉 壮月: …みんなが優しいなら それでもいいんじゃないか?
  1105. 名もなき魔導士: でもね、誰とも繋がれないよ?
  1106. 名もなき魔導士: 誰でもないから 誰とも心を繋げられない
  1107. 常闇の淑女: 辛いことに 向き合う必要はないわぁ
  1108. 常闇の淑女: 嫌なことから目を背けて
  1109. 常闇の淑女: 世界を呪って恨んで 弱さに甘えていたっていいのよ
  1110. 塩屋 晴海: …………
  1111. 常闇の騎士: 何者でもなくなった君を 喜んで受け入れよう
  1112. 塩屋 晴海: 私が私じゃなくなれば…
  1113. 名もなき踊り子: 何者でないなら “あの子”は誰…?
  1114. 名もなき踊り子: “あの子”が“あの子”で なくなってしまったら
  1115. 名もなき踊り子: 寄せた想いは どこに行くのでしょう?
  1116. 名もなき魔導士: 我らのように、永遠の闇へ 溶けて消えちゃうのかな?
  1117. 名もなき者踊り子&名もなき魔導士: 「もう守れないね」
  1118. 和泉 壮月: …!
  1119. 常闇の淑女: さぁ、受け入れて 常闇の住人になりましょう
  1120. 塩屋 晴海: …私を捨てて
  1121.  
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  1123. 常闇の淑女: さぁ、受け入れて 常闇の住人になりましょう
  1124. 塩屋 晴海: …私を捨てて
  1125. 和泉 壮月: ちょっと待て!
  1126. 和泉 壮月: 自分じゃなくなるとか 自分を捨てるとかやめろよ…!
  1127. 和泉 壮月: 辛いんなら俺が守るから
  1128. 塩屋 晴海: あ…
  1129. 塩屋 晴海: (和泉、くん…)
  1130. 塩屋 晴海: (…なんだか 夢を見ていたみたい)
  1131. 和泉 壮月: それに…このままでもダメだろ
  1132. 和泉 壮月: 学生会議のみんなは優しいし いいやつらばっかだけど
  1133. 和泉 壮月: ここだけで完結してたら ダメだから
  1134. 和泉 壮月: みんな集まったんだろ 変えてくためにさ…!
  1135. 和泉 壮月: 出身とか育ちで 辛い思いしないために…
  1136. 和泉 壮月: あぁっ!!もう自分でも 何言ってんのかわかんねぇけど!
  1137. 塩屋 晴海: …ううん、 私には伝わったよ
  1138. 塩屋 晴海: 私、やっぱり 終わらないハロウィンは嫌です
  1139. 常闇の淑女: あらぁ… 現実は辛いだけよぉ
  1140. 塩屋 晴海: …“私”の気持ちは “何者でもない”誰かじゃなくて
  1141. 塩屋 晴海: “私”のものじゃないと ダメだから…
  1142. 常闇の騎士: だが、外の世界は冷たい
  1143. 常闇の騎士: 叩かれれば折れる 折れ曲がれば歪む
  1144. 塩屋 晴海: 折れれば繋ぎ直します 曲がったら戻します
  1145. 塩屋 晴海: 歪んだら正せばいい
  1146. 塩屋 晴海: 私ひとりではできなくても
  1147. 塩屋 晴海: 助けてくれる人が… 助けてくる人たちがいます
  1148. 常闇の淑女: …本当にそうかしら?
  1149. 塩屋 晴海: おふたりと一緒に この闇の中を歩いてわかりました
  1150. 塩屋 晴海: 「常闇の世界を彩るたくさんのオブジェクト それらを映し出す微かな明かり …その中に潜むための衣装」
  1151. 塩屋 晴海: 全部、みんなで少しずつ 時間をかけて作ったものです
  1152. 塩屋 晴海: ひとりでは決して作れない
  1153. 塩屋 晴海: でも、ひとりじゃなかったから 作り上げることができた…
  1154. 塩屋 晴海: 私たちの活動と同じですね
  1155. 和泉 壮月: …!
  1156. 和泉 壮月: みんなで支え合って 励まし合って作り上げる…
  1157. 塩屋 晴海: うん 私たちが作ろうとしてる未来にも
  1158. 塩屋 晴海: ちょっとずつ 進んでいくしかないんだと思う
  1159. 塩屋 晴海: 急いでも、逃げ出しても 作り出せないの
  1160. 塩屋 晴海: だから、私に必要なのは 仲間に甘えることじゃなくて…
  1161. 塩屋 晴海: 仲間と一緒に諦めない“強さ” 私自身に負けない心を持つこと
  1162. 塩屋 晴海: そうですよね、常闇の淑女さん
  1163. 常闇の淑女: …………ええ
  1164. 和泉 壮月: …………
  1165. 和泉 壮月: 俺も、わかったよ 守ってやれるかどうかじゃなくて
  1166. 和泉 壮月: 必要なのは… 支え合い、励まし合って
  1167. 和泉 壮月: 一緒に目的へ進んでいく そういう覚悟だったんだな
  1168. 常闇の騎士: …うむ、 ひとりで抱えず、な
  1169. 和泉 壮月: だからさっ、 俺と…
  1170. 塩屋 晴海: 待って
  1171. 塩屋 晴海: 私、今は何者でもないよ
  1172. 塩屋 晴海: ハロウィンが終わるまでは 私は何者でもないままなの
  1173. 和泉 壮月: …!
  1174. 塩屋 晴海: それは、何者でもない 私が聞いていいことなの?
  1175. 和泉 壮月: いや、俺もこの格好じゃ 何者でもないしな…
  1176. 和泉 壮月: ハロウィンが 終わってからにするよ
  1177. 塩屋 晴海: うん
  1178. 御園 かりん: 常闇ツアー特別版大成功なの!
  1179. 御園 かりん: …でも、ちょっと怖すぎたから 本番用に手直しするの…
  1180. みたま: ふふ… ちょっと熱が入り過ぎたわね
  1181. 十七夜: うむ、お節介が過ぎたかもしれん
  1182. みたま: でも、 見ていられなかったんだものぉ…
  1183. 空穂 夏希: 緊張したぁ…
  1184. 江利 あいみ: でも、よかったよ! 本番もこの調子で頑張って!
  1185. 相野 みと: 今回は、魔法を使わなくても 心を繋げられたかな?
  1186. 桑水 せいか: うん、ばっちりだと思う
  1187. 伊吹 れいら: お疲れ、みと!
  1188. みたま: わたしたちも 持ち続けないといけないわね
  1189. みたま: “自分に負けない強さ”
  1190. 十七夜: うむ… この賑やかな仲間たちと共にな
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  1193. みたま: さぁ、みんな ハロウィン本番よぉ~!
  1194. ももこ: アタシら、宣伝部隊も 気合を入れて広報したからな
  1195. ももこ: 忙しくなるぞ!
  1196. 十七夜: これまでの準備を活かして 存分にもてなそう
  1197. みんな: 「おーっ!!」
  1198. ???: トリックオアトリート!
  1199. ???: 闇色ハロウィンパーティーに ようこそ!
  1200. ???: “何者でもない者”として パーティーを楽しんでもらうため
  1201. ???: トリックとしてこちらの仮面を つけていただいております
  1202. ???: こちらの交流用のお菓子と一緒に
  1203. ???: 日常を忘れてパーティーを 楽しんでくださいね!
  1204. ありがとう!
  1205. ???: 常闇ツアーに参加ご希望の方は こちらに集まってください
  1206. ???: 順番にご案内します!
  1207. 常闇の淑女: 闇色ハロウィンパーティーの 常闇ツアーにようこそ…
  1208. 常闇の淑女: これよりご案内しますは… 常闇の世界
  1209. 常闇の淑女: 優しく甘ぁ~い 闇の世界でございます…
  1210. 名もなき魔導士: このままだと闇に呑まれて 戻れなくなっちゃう!
  1211. 名もなき魔導士: でもね、心配しないで ちょっとだけ助けてあげるから!
  1212. 名もなき踊り子: 怖がる必要はございません…
  1213. 名もなき踊り子: 己を強く持つこと… それだけで大丈夫なのです
  1214. 常闇の騎士: …ふっ、ここまでたどり着くとは 余程強い心の持ち主なのか
  1215. 常闇の騎士: それとも、貴様の采配か?
  1216. 常闇の淑女: ふふっ… 強き心を闇に染めること…
  1217. 常闇の淑女: それがわたしの使命だもの
  1218. ???: …ふぅ
  1219. ???: はい、よかったら飲んで
  1220. ???: どーも 休憩か?
  1221. ???: うん、 常闇ツアーはどう?
  1222. ???: 姉さんが怖すぎて泣く子どもが 続出してる以外は問題ない
  1223. ???: ふふっ… 迫真の演技だもんね
  1224. ???: 受付や交流スペースはどうだ?
  1225. ???: 問題はないけど…
  1226. ???: 知らない人と積極的に 交流しようとする人は少ないかな
  1227. ???: 一緒に来た人と楽しむ方が 気楽だろうし
  1228. ???: 仕方ないとは思うけど…
  1229. ???: まぁ、まだ1歩目だしな
  1230. ???: うん、今回は同じ空間を 共有してもらうだけでも十分
  1231. ???: …あのさ、姉さんが このイベント終わったら
  1232. ???: 片づける前に常闇ツアーのとこ 開けといてくれるっていうから
  1233. ???: 少し…時間もらってもいいか?
  1234. ???: …うん、いいよ
  1235. ???: お越しいただき ありがとうございました
  1236. ???: お気をつけておかえりください
  1237. …………
  1238. みたま: 今の人たちが最後のお客様ね…
  1239. 十七夜: うむ、終わった… いや終わってしまったな
  1240. みたま: でも、もうひと仕事あるのよねぇ
  1241. 十七夜: …む? トラブルでもあったか?
  1242. みたま: あなたの弟の行く末を 見届けないとっ!
  1243. 十七夜: …野次馬根性はよくないぞ
  1244. みたま: そうじゃなくて 花を添えてあげるのよ
  1245. みたま: 常闇はもう終わりなんだからぁ
  1246. 和泉 壮月: …………
  1247. みたま: いたわねぇ
  1248. 十七夜: 何をするつもりだ?
  1249. みたま: 待って、まだよぉ…
  1250. 塩屋 晴海: お待たせ…
  1251. 和泉 壮月: お、おう…
  1252. みたま: 今ね
  1253. 塩屋 晴海: ―晴海― …灯が…きれい…
  1254. 和泉 壮月: ―壮月― (姉さんたちだな…)
  1255. 和泉 壮月: ―壮月― …………あのさ… えっと…………
  1256. 和泉 壮月: ―壮月― (くそっ…考えてきたのに 全部飛んだ…!)
  1257. 和泉 壮月: ―壮月― その…好き、好き…だ!
  1258. 和泉 壮月: ―壮月― 苦労も多いと思う けど、晴海さんのことが好きだから
  1259. 和泉 壮月: ―壮月― …一緒に頑張っていきたい
  1260. 塩屋 晴海: ―晴海― …わた、しも 私も壮月くんのことが好きだよ…
  1261. 塩屋 晴海: ―晴海― 壮月くんがくじけることがあったら 私が支えるから
  1262. 塩屋 晴海: ―晴海― 私がくじけちゃったときは 一番近くで壮月くんに支えてほしいの
  1263. 塩屋 晴海: ―晴海― そういう関係に、なりたい!
  1264. 十七夜: ―十七夜― …ここで何か言うのは野暮だろうか
  1265. みたま: ―みたま― そうねぇ… 黙って泣いておきなさい
  1266. みたま: ―みたま― (そう…“よかった”なんて 言葉すら野暮だわ…)
  1267. みたま: ―みたま― (わたしたちも彼らも ここからよ…)
  1268. みたま: ―みたま― (大きな大きな、小さな1歩目を 踏み出したばかりだもの)
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