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- ==Part A==
- 日朝の教室(平行世界・過去)
- ほむら転校初日の朝HR。クラスの全生徒の視線を一身に浴びながら、黒板の前に立たされているほむら。眼鏡に三つ編みの冴えない格好。必要以上に緊張し、萎縮してしまっている、見るからに気弱そうな少女である。
- 和子「はーぃ、それじゃ自己紹介いってみよー」
- ほむら「あ、あの、あああ暁美、ほ、ほむら、です。その...どうか、よよよろしくお願いします」
- 黒板にほむらの名前を書く和子。
- 和子「暁美さんは心臓の病気でずっと入院していたの。久しぶりの学校だから色々と戸惑うことも多いでしょう。みんな、助けてあげてね」
- × × ×
- 休み時間、ほむらの席に抑しかけて興味津々に質問をしてくる女子たち。
- 女子A「暁美さんつて、前はどこの学校だったの?」
- 女子B「前は部活とかやってた?運動系?文化系?」
- 女子C「すごい長い髪だよねー。毎朝編むの、大変じゃない?」
- ほむら「あの...ゎ、私、その...」
- 気弱な眼鏡ほむら、気圧されてたじたじになっている。
- そこに割リ込んでくるまどか。
- まどか「暁美さん、保健室行かなきゃいけないんでしょ? 場所、分かる?」
- ほむら「え?いいえ...」
- まどか「じゃあ案内してあげる。わたし保健委員なんだ。ーーみんな、ごめんね。暁美さんつて休み時間には保健室でお薬飲まないといけないの」
- 女子A「あ、そうだつたの?ごめんね、引き留めちゃって」
- 女子B「暁美さん、また後でね」
- まどかの気さくな取りなしで、あっさり納得して引き下がる女子たち。
- 皆の好奇心から開放されて、やや安堵するほむら。
- 口廊下
- 先に立って案内するまどか。後からおっかなびっくりついてくる眼鏡ほむら。
- まどか「ごめんね。みんな悪気はないんだけど...転校生なんて珍しいから、はしゃいじゃって」
- ほむら「いえ、その...ありがとうございます」
- まどか「そんな緊張しなくていいよ。クラスメイトなんだから」
- 優しい笑顔で、ほむらを和ませるまどか。
- まどか「あたし、鹿目まどか。まどかつて呼んで」
- ほむらでえ、そんな...」
- まどか「いいって。だからわたしも、ほむらちゃんって呼んでいいかな?」
- ほむら「...」
- まどかとの距離を測りかねて、もじもじする眼鏡ほむら。
- ほむら「...私、その、あんまり名前で呼ばれたことってなくて...すごく、変な名前だし」
- まどか「え~?そんなことないよ。なんかさ、燃え上がれ~って感じで。かっこいいと思うな」
- ほむら「...名前負け、してます」
- まどか「そんなの、勿体ないよぉ。せっかく素敵な名前なんだから、ほむらちゃんもカツコよくなっちゃえばいいんだよ」
- ほむら「...」
- 無邪気に笑うまどかに、つい気後れして俯いてしまう眼鏡ほむら。
- 口数学の授業
- 黒板に書かれた問題を前にして、まったく解けず、冷や汗まみれになる眼鏡ほむら。数学教諭、気まずい表情で、
- 数学教諭「あー、うん。君は休学してたんだっけな。友達からノートを借リておくように」
- 口体育の授業
- グラウンドの片隅に青ざめた顔で座っている眼鏡ほむら。皆が元気に走り幅跳びのスコアを競うのを、見学している。
- そんなほむらを見てヒソヒソと雑談する女子たち。
- 女子C「準備体操だけで貧血って、ヤパイよね~」
- 女子B「半年もずっと寝てたんじゃ、仕方ないんじゃない?」
- 口放課後の通学路
- 夕焼けの中一、一人、肩を落として家路につく眼鏡ほむら。自己嫌悪と劣等感で憂鬱顔。
- 脳裏を過ぎるまどかの言葉。
- まどかM 「ーーほむらちゃんもカツコよくなっちゃえばいいんだよーー」
- ほむら「無理だよ...私、何にもできない...」
- 足下だけを見つめて、周囲には注意を払わず、内省に没頭する眼鏡ほむら。
- ほむらM『人に迷惑ばっかりかけて、恥かいて...どうしてなの?私、これからもずっとこのままなの?』
- 落ち込むほむらの脳裏に、心の奥から邪悪な声が囁きかけてくる。
- 魔女M『だったらいっそ、死んだ方がいいよね』
- ほむらM『死んだ方がいいかな...』
- 魔女M『そう、死んじゃ、えばいいんだよ』
- ほむらM「死んでしまえば...』
- 眼鏡ほむら、ふと我に返り、周囲の景色が豹変しているのに気付く。
- 夕陽に照らされた帰リ道のはずが、いつの間にか彼女は魔女の結界に迷い込んでいる。
- ほむら「ど、何処なの?ここ...」
- 怯える眼鏡ほむらの前に、結界の奥の暗闇から躙リ寄ってくる魔女のシルエット。
- ほむら「な...何? 何なの!?」
- 眼鏡ほむらに襲いかかろうとした魔女の行く手を、輝く線が阻む。
- ほむらを中心にして展開されている魔法陣。狼狽えて足踏みする魔女。
- マミ「ーー間一髪ってところね」
- まどか「もう大丈夫だよ。ほむらちゃん」
- 眼鏡ほむらを庇うようにして、魔女の前に立ちはだかるまどかと巴マミ。
- ほむら「ぁ、あなたたちは...」
- 当惑する眼鏡ほむらの脚もとに、キユウベえが現れる。
- キユゥべぇ「彼女たちは、魔法少女。魔女を狩る者たちさ」
- まどか「いきなり秘密がばれちゃったね。クラスのみんなには、内緒だよ」
- まどか、マミ、同時に魔法少女スタイルに変身。タッグを組んで魔女に襲いかかる。
- 魔女「ギャアアアアア...」
- 瞬く間に倒され、消滅していく魔女。
- その鮮烈な光景に、心奪われるほむら。
- ロマミの部屋
- 腿女退治成功の祝杯とばかりお茶会をしているマミ、まどか、キュゥべぇ。
- 窮地を救われた眼鏡ほむらも招待され、シフォンケーキを振る舞われているものの、未だに面食らって萎縮している。
- ほむら「鹿目さん...いつもあんなのと戦ってるんですか?」
- まどか「んー、いつもって...そりゃマミさんはベテランだけど、わたしなんて先週キユウベえと契約したばっかりだし」
- マミ「でも今日の戦い方、最初よりずっと上手かったわよ。鹿目さん」
- マミに褒められ、えへへ、と照れるまどか。
- 眼鏡ほむらは不思議そうに、再びまどかに向けて問う。
- ほむら「...平気なんですか?恐くないんですか?」
- まどか「平気ってことはないし、恐かったりもするけれど、魔女をやっつければそれだけ大勢の人が助かるわけだし。やり甲斐はあるよね」
- ほむら「...」
- そう語るまどかを、羨望の眼差しで見つめる眼鏡ほむら。
- マミ「鹿目さんには、ワルプルギスの夜が来る前に、頑張って一人前になっておいてもらわないとね」
- 口燃えさかる市街地
- ワルプルギスの襲取を受け、炎に包まれた街の中。
- 戦って死んだマミの遺骸に、胸元で手を組ませ、沈鯵に黙祷するまどか。その背中を泣きながら見守る眼鏡ほむら。
- その向こうでは、巨大怪獄ワルプルギスが今なお破壊の限りを尽くしている。
- 立ち上がり、悲壮な決意を秘めた眼差しでワルプルギスを見据えるまどか。
- まどか「...じゃあ、行ってくるね」
- ほむら「そんな、巴さん、死んじゃったのに...」
- まどか「だからだよ。もう「ワルプルキスの佼』を止められるのは、わたしだけしかいないから」
- ほむら「無理よ! 一人だけであんなのに勝てっこない!鹿目さんまで死んじゃうよ!」
- まどか「それでも、わたしは魔法少女だから。みんなのこと守らなきゃいけないから」
- ほむら「...ねえ、逃げようよ...だって仕方ないよ。誰も鹿目さんを恨んだりしないよ...」
- 死を決意した静かな表情で、眼鏡ほむらを諭すまどか。
- まどか「ほむらちゃん、わたしね、あなたと友達になれて嬉しかった。あなたが魔女に襲われたとき、間に合って...今でもそれが自慢なの。だから魔法少女になって本当に良かったって、そう思ってるんだ」
- ほむら「...鹿目、さん...」
- まどか「さよなら、ほむらちゃん。元気でね」
- 変身し、ワルプルギスの夜めがけて突進していくまどか。
- ほむら「...嫌あ!行かないで!鹿目さあん!!」
- 口廃墟の街
- ワルプルギスによって破壊され尽くし、瓦礫の山と化した街に、しんしんと雨が降り注ぐ。
- 廃墟の中に転がっている、無惨な遺体と化したまどか。
- その前に膝をつき、雨に打たれながら号泣する眼鏡ほむら。
- ほむら「どうして...死んじゃうって分かってたのに...私なんか助けるよりも...あなたに生きててほしかったのに...」
- キユウベえ「その言葉は本当かい?暁美ほむら」
- 瓦礫の山の頂に座って、泣きじゃくる眼鏡ほむらを見下ろしているキュゥベぇ。
- キュゥべぇ「君のその祈りのために、魂を賭けられるかい?戦いのさだめを受け入れてまで、叶えたい望みがあるのならーー僕が力になってあげられるよ」
- 泣き濡れた目で、キュゥべえを見上げる眼鏡ほむら。
- ほむら「...あなたと契約すれば、どんな願いも叶えられるの?」
- キユウベえ「そうとも。君にはその資絡がありそうだ。ーー教えてごらん。君はどんな祈りでソウルジエムを輝かせるのかい?」
- ほむら「私はーー」
- 眼鏡を外して涙を拭い、決意の耐持ちで立ち上がるほむら。
- ほむら「ーー鹿目さんとの出会いを、やり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい」
- 直後、痛みに似た衝撃に身を強張らせるほむら。
- ほむらの胸から、眩い輝きとともに浮かび上がるソウルジエム。
- キユウベえ「ーー契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した。さあ、解き放ってごらん。その新しいカを」
- ほむら「...」
- 宙に浮かぶ自らのソウルジェムを、恐る恐る掴み取るほむら。
- その途端、時間が逆行して過去へと遡る。
- 口夜の病院
- 病室のベッドの中で、はっと目覚めるほむら。
- ほむら「...ここは...」
- かつて入院していた病室。カレンダーには退院予定日にマーカーペンで印がしである。
- サイドテーブルには、「編転入生の方へ:市立三咲原中学校」と書かれた書類が載っている。
- ほむら「私、まだ...退院して、ない?」
- ぼんやりと寝惚け眼を擦ろうとしたところで、その手が握っているソウルジェムに気付き、驚きに目を見張るほむら。
- ほむら「...夢じゃ、ない...ツ!!」
- 口朝の教室(平行世界・過去)
- 再び、ほむら転校初日の光景。
- 和子「はーぃ、それじゃ自己紹介いってみよー」
- ほむら「暁美ほむらですっ!よろしくお願いします!」
- 黒板にほむらの名前を書こうとする和子。
- 和子「暁美さんは心臓の病気でずっと...」
- だが眼鏡ほむらは待ちかねてずかずかとまどかの席まで歩み寄り、感激の笑顔で、がっしとまどかの手を握る。
- ほむら「鹿目さん!私も魔法少女になったんだよ! これから一緒に戦おうね!」
- まどか「あ...えっと...うう...」
- 困惑するやら慌てるやらで目を白黒させるまどか。
- ただ呆然となる和子ほかクラスメイト一同。
- 口河川敷、高架橋下
- 誰もいない河原に集合しいてろまどか、マミ、眼鏡ほむら。
- 人の前に仁古びたドラム缶が置かれている。眼鏡ほむらゴルフクラブを手に緊張の面持ち。
- ほむら「それじゃ、いきます!」
- 眼鏡ほむら、魔法少女に変身。盾の砂時計が時間を止める。
- 静止した時間の中で、ひたすらゴルフクラブを振り回しドラム缶を殴りまくる眼鏡ほむら。動作はたどたどしく、何度も空振りし、一度ならず転んだりもする。
- そして時間静止解除。息が切れてへたり込んでいる眼鏡ほむらの横で、ボコボコになって転がっているドラム缶。
- まどか「どう思う?マミさん」
- うーん、と呆れ半分、困り半分に考え込むマミ。
- マミ「時間停止ねえ...:確かに凄いけれど、使い方が問題よね」
- ほむら「は、はい...」
- マミ「まず、いくら一方的に殴れるとはいえ、一発ごとの効き目がないんじゃ意味ないわ。そんな棒きれより、もっと威力のある武器を用意しないと」
- ひん曲がったゴルフクラブを見下ろし、しょんぼりするほむら。
- マミ「あと、誰も動けなかったはずなのに、ドラム缶の位置が変わってるのは、どうして?」
- ほむら「それは...私が触れたものだけ静止が解除されるんで、殴った瞬間にはドラム缶も動いちゃうわけで...」
- マミ「それだと敵にカウンターの機会を与えてしまうわ。時間を止めている問に、相手に一切触れないでダメージを与える方法を考えるべきね」
- ほむら「ゎ、わかりました...」
- 口ほむらの部屋
- 小綺麗なワンルームマンション。まだそれほど荒んだ居住空間ではない。
- テーブルのkに工具を並べ、ノートパソコン首つ引きで、パイプ爆弾を作っている眼鏡ほむら。一心不乱の真剣な熱意。ゥエブブラウザには『腹腹時計オンライン」というタイトル。
- 口魔女の結界
- まどか、マミ、眼鏡ほむらの三人組による魔女退治の光景。
- まずマミが緊縛魔術で魔女を拘束。
- その隙にまどかが弓で攻態。
- さらに眼鏡ほむらが時間を止め、おっかなびっくり魔女の足元に爆弾を仕掛けて、そそくさと走り去る。
- 時間静止解除とともに大爆発。悲鳴を上げて消滅する魔女。
- ほむら「ゃった...ゃった!」
- まどか「凄いよ、ほむらちゃん!」
- マミ「お見事ね」
- 勝利を喜ぶ魔法少女三人。結界は解けて廃工場の景色に。その床に転がるグリーフシード。
- ==Part B==
- 口廃墟の街
- ワルプルギスの夜が撃退された直後。
- 戦いの後の瓦礫の中で、苦しみに身を捩るまどか。
- その手に握ったソウルジエムが、グリーフシードの如く真っ黒に染まっている。
- まどか「ううう...あぐうううツ!」
- ほむら「どうしたの!?ねえ鹿目さん、しっかりして!」
- まどか「どうして...ああああああツ!!」
- まどかの悲鳴とともに、そのソウルジエムから魔女が孵化する。
- x x x
- 降り注ぐ雨の中、眼鏡ほむらが魔法少女スタイルのまま、虚ろな眼差しでまどかの遺体を前にしている。
- ほむら「どうして...何でこんな...」
- 譫言のように眩く眼鏡ほむらの左手の盾、砂の流れ尽きた砂時計のロックが外れ、ぐるりと廻って逆さになる。一気に遡る時間。
- 口夜の病院
- 病室のベッドの中で、はっと目覚めるほむら。またも退院前の日付に戻っている。
- ほむら「伝えなきゃ...みんな、キユウベえに騙されてる!」
- 口廃工場内部
- 夜、魔女退治を前にして作戦会議中のまどか、マミ、さやか、そして眼鏡ほむら。全員が魔法少女スタイル。
- さやか「ーーあのさあ、キユウべえがそんな嘘ついて、いったい何の得があるわけ?」
- ほむら「それは...」
- 露骨に訝るさやかに対し、うまく説明できない眼鏡ほむら。
- さやか「あたしたちに妙なこと吹き込んで、仲間割れでもさせたいの?まさかあんた、本当はあの杏子とかいうヤツとグルなんじゃないでしょうね」
- ほむら「ち、違うわ!」
- まどか「さやかちゃん...それこそ仲間割れだよ」
- まどかに窘められ、不平も露わに歎息するさやか。
- さやか「どっちにしろ、あたし、この子とチーム組むのは反対だわ。まどかやマミさんは飛び道具だから平気だろうけど、いきなり日の前で爆発とか、ちょっと勘弁してほしいんだよね。何度巻き込まれそうになったことか」
- マミ「暁美さんには、爆弾以外の武器つてないのかしら?」
- ほむら「...ちょっと考えてみます」
- 口暴力団事務所
- 時間静止魔術が発動中。動きを止めた組員たちを後目に、ロッカーの中身を漁っている眼鏡ほむら。
- ドスや日本刀は絞り捨て、リボルパー拳銃や猟銃を回収して、盾の裏の四次元ポケットに収納していく。
- 口魔女の結界
- 魔女化したさやかの結界。無数の触手で襲いかかってくる魔女さやかから、必死に身を守るまどか、マミ、杏子、眼鏡ほむら。
- 杏子「テメエいつたい何なんだ!?さやかに何をしやがつたツ!?」
- まどか「...ッ...さやかちゃん、やめて...お願い、思い出して!こんなこと、さやかちやんだって嫌だった筈だよ!」
- 訴えかけるまどか目掛けて、5本の触手が振り下ろされる。
- ほむら「くツ」
- すかさず時間を停止させ、盾の裏からリボルパー拳銃を出す眼鏡ほむら。慎重に狙いをつけて発砲。弾丸は銃口から出た瞬間(ほむらと接点が断たれた途端)に静止し、煙もろとも空中に固定される。そうやって5発の弾丸を宙に並べてから、時間静止を解除するほむら。
- 一斉に動き出した弾丸は5発同時に触手を撃ち抜き、まどかを窮地から救う。
- ほむら「...ごめん、美樹さん」
- 眼鏡ほむら、悲痛に呟いてから、パイプ爆弾を手に瞬間移動。
- 次の刹那、魔女さやかの口の中に置き去リにされた爆弾が発火し、粉微塵に吹き飛ばす。
- 魔女の消滅とともに、結界は解除され通常空間へ。そこは九話冒頭で戦いの舞台になったのと同じ、深夜の駅のホームである。
- あらためて、さやかの魔女化という事態の重さに、しばし言葉もなく立ち尽くす一同。
- 杏子「...さやか...畜生...こんなことって」
- まどか「酷いよ...こんなの、あんまりだよ...」
- 茫然自失の杏子と、泣き崩れるまどか。
- だが次の瞬間、いきなりほむらの足元で発動したマミの緊縛魔術が、ほむらの動きを封じ込める。
- ほむら「ッ!?」
- さらにマミの魔銃が火を噴き、杏子のソウルジエムを吹き飛ばす。何が起こったのかすら分からない表情で、くずおれる杏子。
- ほむら「巴さんーー」
- 魔銃を構えたマミの表情は、完全に正気を失っている。マミ「ソウルジエムが魔女を産むなら...みんな死ぬしかないじゃない!あなたも、私もツ」
- ほむら、時間を止めて緊縛から逃れようと身悶えするが、まるで身動きできないままに効続時間が終わってしまう。いよいよ絶体絶命。マミの銃口を前にして絶望する眼鏡ほむら。
- ほむら「ゃ、やめーー」
- マミの銃が火を噴こうとしたそのとき、横合いから放たれたまどかの矢が、マミのソウルジエムを撃ち抜く。ぐらりと傾き、くずおれるマミの身体。
- 弓を構えた姿勢のまま、肩を震わせて働哭するまどか。
- まどか「...嫌だ...もう、嫌だよ、こんなの...」
- マミの魔力が失せたせいで束縛魔術から解放された眼鏡ほむら。かけるべき言葉於さえ見つからず苦悩しながらも、鳴咽するまどかの側に寄り、寄リ添う。
- ほむら「...大丈夫だよ...二人で、頑張ろう。一緒にワルプルギスの夜を倒そう」
- まどか「...うん...」
- 口廃墟の街
- ワルプルギスの夜、撃退の後。瓦傑の山の中に、寄リ添って倒れているまどかとほむら。ほむらの眼鏡は割れている。
- 二人とも限界以上の魔力を消費したせいで、ソウルジエムは真っ黒に染まっている。
- まどか「わたしたちも、もう、おしまいだね...」
- お互いのソウルジエムを見比べて、寂しそうに呟くまどか。
- ほむら「グリーフシードは?」
- まどか、静かにかぶりを振る。
- 絶望と諦めが、むしろ眼鏡ほむらに安らぎをもたらす。壊れた眼鏡を捨て、憑き物が落ちたかのように和やかな口調で、語りかけるほむら。
- ほむら「...ねえ、私たち、このまま二人で怪物になって...こんな世界、何もかも滅茶苦茶にしちゃおうか...」
- まどか「...」
- まどかの返事はない。ほむらは先を続ける。
- ほむら「嫌なことも、悲しいことも、ぜんぶなかったことにしちゃえるぐらい、壊して、壊しまくって、さ...それはそれで、いいと思わない?」
- 返事の代わりに、隠し持っていたグリーフシードで、ほむらのソウルジエムに触れるまどか。
- 瞬時に呪いの穢れはグリーフシードに吸い取られ、ほむらのソウルジェムは浄化される。
- ほむら「...ツ!?」
- まどか「ーーさっきのは、嘘。一個だけ取っておいたんだ」
- 愕然とするほむらに、微笑みかけるまどか。
- ほむら「そんな...なんで、私に...」
- まどか「わたしに出来なくて、ほむらちゃんに出来ること、
- お願いしたいから...」
- まどか、輝きを取り戻したほむらのソウルジエムに、愛おしむように指先で触れながら、
- まどか「ほむらちゃん、過去に戻れるんだよね?こんな終わり方にならないように、歴史を変えられるって、言ってたよね...」
- ほむら「...うん」
- まどか「キュゥベえに騙される前の、パカなわたしを...助けてあげて、くれないかな」
- ほむら、まどかの手を握りしめて答える。
- ほむら「約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる。何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる」
- まどか「良かった...う、ッ!」
- 安堵の笑みを見せてから、苦痛に呻くまどか。いよいよ彼女のソウルジエムは孵化せんと脈動しはじめる。
- まどか「...もうひとつ、頼んでいい?」
- ほむら「...ツ」
- 頼み事の内容を察して、思わず涙を落とすほむら。
- まどか「わたし、魔女にはなりたくない...嫌なことも、悲しいこともあったけど、守りたいものだって沢山、この世界にはあったから...」
- ほむら「...まどか...ッ」
- 苦痛に耐えながら、尚も微笑んで、ひび割れはじめた自分のソウルジエムを手に乗せ、差し出すまどか。
- まどか「ほむらちゃん...やっと、名前で呼んでくれたね...嬉しい、な...」
- ほむら「...ッ」
- 鳴咽を噛み殺しながら、まどかのソウルジエムに拳銃の狙いをつけるほむら。
- 廃墟に、銃声が轟き波る。
- 口夜の病院
- 病室のベッドから、がぱっと跳ね起きるほむら。
- そのまま足早に洗面所へ。
- ほむらM『誰も、未来を信じないーー』
- 鏡の前で、眼鏡を外し、両目に魔力を込めて視力を矯正。
- さらに三つ編みを解いてストレートヘアになる。
- ほむらM『誰も、未来を受け止められない。だったら、私はーー』
- 口まどかの部屋
- 夜、寝る前に勉強机に向かっているまどか。
- ふと風を感じて、驚いて振り向く。
- 開け放たれた窓の外、闇夜の中に佇むほむらの影。
- まどか「...だ、誰?」
- ほむら「まどか...あなたに奇跡を約束して取り入ろうとする者が現れても、決して言いなりになっては駄目」
- まどか「...え?あの...」
- 用件を告げただけで姿を消すほむら。
- 窓枠の外には、無惨に潰されたキユウベえの死骸が転がっている。
- 口米軍基地
- 静止した時間の中、棒立ちの兵士たちの横をすリ抜けるほむら。武器庫の扉を開け放ち、整然と並ぶ機関銃や手榴弹を見据える。
- 口魔女の結界
- 襲いかかってくる魔女を前にして、悠然と佇んでいる魔法少女ほむら。
- ほむらM 『...もう誰にも頼らない。誰に分かってもらう必要もない』
- 魔女の攻撃が届く寸前で時間停止。ニ挺拳銃を、さらに機関銃を乱射して銃弾の壁を作り出す。
- ほむらM『もうまどかには戦わせない。全ての魔女は、私一人で片付ける...』
- 駄目押しに手榴弹のピンを抜いて魔女の懐に投げ入れる。そして静止解除。
- 魔女「ギヤアアアアツ!!」
- いきなり銃弾の雨を浴びた上に手榴弹に吹き飛ばされ、絶命して消えていく魔女。
- ほむらM『そして今度こそ、ワルプルギスの夜を、この手で...』
- 口燃えさかる市街地
- ワルプルギスの襲撃を受け、炎に包まれた街の中。
- 傷つき、荒い息を吐きながら、単身で巨大な魔女と対峙するほむら。
- その背中を見守るまどかとキユウベえ。
- まどか「ひどい...」
- キユウベえ「仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた」
- まどか「そんな...あんまりだよ! こんなのってないよ!」
- キユウべえの気配を察し、戦いながらもまどかに向かって叫ぶほむら。
- ほむら「まどか!そいつの言葉に耳を貸しちゃ駄目!」
- だが叫びは、ワルプルギスの咆吼と怒涛の攻撃に掻き消され、まどかの耳に届かない。
- キユウベえ「締めたら、それまでだ。でも君れなら運命を変えられる」
- まどか「...本当なの?」
- キユウべえ「避けようのない滅びも、嘆きも、すべて君が覆せばいい。そのための力が、君には備わってるんだから」
- ほむら、まどかたちに気を取られている隙に、ワルプルギスの一撃をくらう。地に伏しながら、それでも必死にまどかに呼びかけるほむら。
- ほむら「騙されないで!そいつの思う壺よ!」
- だがやはり声はまどかに届かない。
- まどか「わたしなんかでも、本当に何かできるの?こんな結末を変えられるの?」
- キュゥべえ「もちろんさ。...だから僕と契約して、魔法少女になってよ!」
- ほむら「駄目えええツ!!」
- 絶叫するほむら。だがまどかとキユウベえの間で交わされる契約の閃光が、彼女の目を眩ませる。
- 口廃墟の街
- 吹きすさぶ風の中、瓦礫の山の上にひざまずくほむら。
- 傷つき、泣き疲れて放心状態。
- 隣の瓦傑の山の上には、キユウべえが座っている。
- キユウべえ「本当に物凄かったね。変身したまどかは」
- ほむら「...」
- キユウべえ「彼女なら最強の魔法少女になるだろうと予測していたけれど、まさかあのワルプルギスの夜を一撃で倒すとはね...」
- ほむら「その結果どうなるのかも、見越した上だったの?」
- ほむら、怒りを噛み殺した掠れ声で問う。
- 地平線の彼方では、ワルプルギスの夜よりも遙かに巨大で凶暴な魔女と化したまどかが、破壊の限りを尽くしている。
- キユウべえ「遅かれ早かれ、結末は一緒だよ」
- 何ら悪びれた様子もなく平然と答えるキユウべえ。
- キュゥべえ「彼女は以強の魔法少女として、最大の敵を倒してしまったんだ。もちろん後は最悪の魔女になるしかない。今のまどかなら、おそらく10日かそこいらでこの星を壊滅させてしまうんじゃないかな。ーーまあ、あとは君たち人類の問題だ。僕らのエネルギー回収ノルマは概ね達成できたしね」
- ほむら「あんたたちは、間違いなく人類の敵よ」
- キュゥべえ「僕たちが永らく干渉してきたからこそ、この星の文明はここまで繁栄できたんだよ。君たちだって、鶏や牛と敵対関係にあるわけじゃないだろう?」
- ほむらの眼差しがなおいっそう憎しみを帯びるのに気付いて、面倒臭そうに歎息するキユウベえ。
- キュゥべえ「ああ、こういう比喩はなおさら感情に障るんだったつけね。まったく、人類とのコミュニケーションは本当に難しいなあ」
- ほむら、決意を固めて立ち上がり、魔女まどかに背を向ける。
- キユウベえ「...戦わないのかい?」
- ほむら「いいえ。私の戦場は、ここじゃない」
- 盾の砂時計を反転させるほむら。遡る時間。
- ロモールの地下通路
- 一話{BパートP.18】と同シチュエーション。逃げるキユウベえと追うほむら。
- ほむらM『繰り返す...私は何度でも繰り返す...』
- ほむらの時間静止攻撃で、粉々に撃ち砕かれるキュゥべぇ。立ち止まり、荒い息をつきながらその死骸を確認するほむら。
- だがそんな彼女の背後を、別のキユゥベえの影が駆け抜ける。
- ほむらM『同じ時間を何度も巡り、たったひとつの出口を探る。
- あなたを絶望の運命から救い出す道を...』
- 気付いたほむらがさらに追う。だが廊下の角を曲がった先で、キユウベえを抱き留めたまどかと対面してしまう。
- ほむらM『まどか...たった一人の、私の友達』
- まどか「ほむら...ちゃん!?」
- 怯えきったまどかの表情に、心苛まれるほむら。
- だがそれでも弱気を見せるわけにはいかず、強面のまま、まどかに詰め寄っていくほむら。
- ほむらM『あなたのためなら、私は永遠の迷路に閉じ込められでも構わない』
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