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- FILENAME: text_318011-1.txt
- ジリリリリリ!
- 黒江: あ…
- 黒江: 今朝のアラーム 止めてなかった
- 黒江: もう着替えまで済んじゃったし
- 黒江: 朝ごはんを食べたら 早めに家を出ようかな
- 黒江: ごちそうさま
- 黒江: じゃあ、学校行ってくるね
- 黒江の母: あら、もう行くの?
- 黒江: 教室で自習でもしようかなって
- 黒江: 行ってきます
- 黒江の母: いってらっしゃい
- いろは: おはよう、黒江さん
- 黒江: おはよう 今日は早いんだね
- いろは: 天気がよかったから 早く目が覚めちゃって
- いろは: 黒江さんはいつも早いよね
- 黒江: うん、寝起きは 悪くないほうだから
- いろは: 羨ましいなぁ
- 黒江: 普通だよ
- 黒江: あ、放課後は委員会活動があって 遅くなるけど
- 黒江: パトロールは行けるから
- いろは: それなら、先に町に出て 待ってるね
- 黒江: わかった
- いろは: お疲れさま! 余裕だったね
- 黒江: 環さんがいてくれたからだよ
- いろは: そうかな、また戦い方が 上手になったんじゃない?
- 黒江: 環さんを真似してるだけだよ
- 黒江: 放課後のパトロールが順調なのも 環さんと行動してるからだし
- いろは: そう言ってもらえるのは嬉しいな
- いろは: でも、油断しないでいこうね
- 黒江: もちろん
- 黒江: これからもよろしくね 環さん
- ジリリリリリ!
- 黒江: ……………
- 黒江: う… もう少しだけ…寝かせて…
- 黒江: ……………
- 黒江: あれ…着替えないで 寝ちゃってた…
- 黒江: (制服、しわだらけだ…)
- 黒江: …………はぁ…
- 黒江: (今の夢… 現実と違いすぎ…)
- 黒江: (あれは私の願望ってこと…? 恥ずかしい…)
- 黒江: …………
- 黒江: (どうせ早く起きたって いつもと変わらない1日だし…)
- 黒江: (二度寝しよ…)
- バサッ
- FILENAME: text_318011-2.txt
- 黒江: ふぅ…
- 黒江: (授業、やっと終わった…)
- このあとどうする?
- 新しくできたお店が 気になっててさー
- へー、行ってみよっか
- 黒江: …………
- 黒江: (魔法少女になる前は 私もたまに遊んでたっけ…)
- 黒江: (何をしていたかは あんまり思い出せないけど…)
- 黒江: …………
- 黒江: (…そろそろパトロールに 行かないと)
- 黒江: …………
- 黒江: (使い魔と魔女の気配はなし…)
- 黒江: (よかった…)
- 黒江: (ひとりで戦うのは やっぱり緊張するから…)
- 黒江: …………
- 黒江: (夢の私は、環さんと一緒に 行動してたっけ…)
- 黒江: (ひとりは気楽だし 嫌いじゃないけど)
- 黒江: (本音では、誰かと組みたいって 思ってるのかな…)
- 黒江: …………
- ピロン♪
- 黒江: ん…?
- 黒江: 宝崎市魔法少女の緊急連絡網から メッセージ…?
- 燦: 私は神楽燦 宝崎市の子を中心に、戦闘指導や アドバイスをしている魔法少女よ
- 燦: 緊急連絡網を使っているから 驚かせてしまっていたらごめんなさい せっかくだから、普段連絡を取らない子にも この機会に伝えたいことがあるの
- 燦: 今から、宝崎市の魔法少女たちで 集会を開くわ
- 燦: 近くにいる子で、魔女退治に不安があったり 情報交換をしたい子がいれば参加して
- 燦: 今から15分以内に、河川敷まで来なさい 以上よ
- 黒江: (…神楽燦って)
- 黒江: (マギウスの翼で鬼教官って 恐れられてた、あの…?)
- 黒江: (…自動浄化システムが 世界中に広がったから)
- 黒江: (各地で魔法少女同士が 助け合うようになったのかな…)
- 黒江: (こういう集会は、環さんなら きっと参加するんだろうな…)
- 黒江: ………… ……………………
- 黒江: (…ひとりで行動していても きっと何も変わらないし)
- 黒江: (行ってみようかな 魔法少女の集会…)
- 燦: さて、おおむね揃ったわね
- 燦: …あら?
- 黒江: …………
- 燦: さっそく新しい顔が増えてるわね
- 燦: いつも来てくれている子には おさらいになるけれど…
- 燦: この集まりは、各地域の 情報交換をしたり
- 燦: 魔女退治が苦手な子に 指導をしたりする場よ
- 燦: 共同パトロールに参加すれば
- 燦: 即席で組んだペアで 実地訓練もできるわ
- 燦: 各自、必要なものを見極めて 参加して
- 黒江: (私は…パトロールに参加 しようかな…)
- 黒江: (いつもひとりだから、誰かと 組むのも経験になるかも…)
- 燦: それじゃ、共同パトロールに 参加する者はペアを組みなさい
- 黒江: えっと…
- …あの、一緒にどうですか?
- 黒江: あ…うん よろしく…
- こちらこそ…!
- 黒江: …………
- …………
- 黒江: (こんな時、環さんだったら うまく話せるのかな…)
- 黒江: …じゃあ、出発しようか
- は、はい…!
- 黒江: …………
- 黒江: (現実は順調にはいかないな…)
- FILENAME: text_318011-3.txt
- 黒江: …………
- 黒江: ここにも魔女や使い魔は いないみたいだね
- そうですね…
- 黒江: 時間も遅くなってきたし 集合場所に戻ろうか
- …グリーフシード、 欲しかったな…
- 黒江: …私が持ってるのでよかったら 使う?
- あ、いえ… 申し訳ないですし…
- 黒江: そう…
- …………
- 黒江: …………
- 黒江: (学校では、誰とも話さなくても 気にならないのに)
- 黒江: (魔法少女相手だと、 なんだか気まずいな…)
- 黒江: (環さんといる時は 感じないのに…)
- ???の声: …………ぅ…
- 黒江: え…? 何か言った?
- いえ、何も…
- 黒江: そう…?
- ???の声: …………ぁ…ぁ…
- 黒江: やっぱり…! 小さいけど、声が聞こえる
- 黒江: こっち…かな
- 黒江: あ…!
- …………ぅ…ぁ…
- 大丈夫ですか…!?
- 黒江: 魔女の口づけを受けてるね
- でも、近くに魔女の気配は 感じなかったのに…
- 黒江: もっと集中して探してみよう
- 黒江: …………魔女がいるのは、 もう少し先の場所だね
- 黒江: ここから離れることになるし この人のために応援を呼ぼう
- わ、わかりました…!
- 黒江: 見つけた…! じゃあ、行くよ
- あの、こっちにも応援を 呼んだ方がいいんじゃ…?
- 黒江: その間に逃げられちゃうかも
- 黒江: この魔女、気配を隠すのが 巧妙みたいだから
- 黒江: 見失えば被害が増えると思う
- …そうですね
- すみません、 弱気になってしまって…
- 黒江: 気にしてないよ それじゃ…!
- …えい!
- わ、避けられた…!?
- 黒江: 焦らないで、 まずは距離を取ろう…!
- 黒江: (冷静に魔女の出方を伺って 隙を狙う…!)
- きゃっ!?
- 黒江: (一瞬だけど、攻撃前に 力を溜めてる…?)
- 黒江: (それなら…)
- 黒江: 私の合図で魔女を攻撃して!
- え…わ、わかりました…!
- 黒江: やっ!
- 黒江: 今…!
- …えぇーーーい!!
- やった…倒せました…!
- 黒江: お疲れさま グリーフシードも回収できたね
- 私だけじゃ倒せなかったので それはあなたがもらってください
- 黒江: 私はひとつ予備があるし、いいよ
- 黒江: あなたのほうが 困ってるみたいだから使って
- ありがたいですけど、 そういうわけには…
- 黒江: どうして遠慮するの? 私、何も気にしてないよ
- …………
- …私が弱いから、 同情してくれてるんですよね
- 黒江: えっと…何かダメだった?
- …っ………… …強い人にはわからないですよね
- グリーフシードを得るのも 大変な魔法少女の気持ちなんて…
- 黒江: 待って、どうして怒るの…?
- …失礼します!
- 黒江: えぇ…
- 黒江: (私も弱いから気持ちは わかるって伝えたかったのに…)
- 黒江: (…やっぱり、他の人と組むのは 向いてないのかな…)
- 燦: 黒江さん!
- 黒江: あ…教官…
- 燦: さっきは連絡ありがとう 倒れていた人は無事だったわ
- 燦: それで…ペアを組んでいた子は?
- 黒江: …わかりません
- 黒江: でも、たぶん私が悪いんだと 思います…
- 燦: どういうこと…?
- 黒江: …すみません 疲れたので、今日は失礼します…
- FILENAME: text_318011-4.txt
- 黒江: …………
- 黒江: はぁ…
- 黒江: (普通に振る舞ったつもりが 傷つけちゃったのかな…)
- 黒江: (こうなるなら、集会になんて 参加しなければよかった…)
- ピロン♪
- 黒江: …? 誰だろ…
- 黒江: あ… 環さん…!?
- いろは: 返信遅くなっちゃってごめんね! 少しバタバタしてたんだけど ようやく落ち着いたよ
- いろは: 黒江さんは元気だった? 変わったことはない?
- 黒江: …………
- 黒江: (久しぶりのメッセージ… 嬉しいけど、どう返そう…?)
- 黒江: (近況も何も、変わったことも 面白いこともないし…)
- 黒江: (何か環さんに伝えたいこと…)
- 黒江: (…久しぶりに会えないか 聞いてみようかな…?)
- 黒江: (けど、忙しいだろうし 困らせたくない…)
- 黒江: …………
- 黒江: 元気だよ 変わったこともないし、平和だと思う
- 黒江: …………
- 黒江: (散々悩んだのに、うまい返信が 思いつかなかった…)
- 黒江: (何か、他に話題は…)
- ピロン♪
- いろは: そっか、それならよかった
- いろは: 実はね、次の週末に実家に泊まるんだけど 黒江さんがよかったら その時に宝崎市で会えないかな?
- 黒江: ――っ!?
- 黒江: 私はいつでも、どこでも大丈夫 環さんの都合に合わせるよ
- 黒江: …………
- 黒江: (…次の週末に 環さんに会える…!)
- 黒江: …………
- 黒江: …楽しみだな
- 黒江: いつもと変わらない1日… じゃないのかも
- FILENAME: text_318012-1.txt
- 黒江: …………
- 黒江: (…もうすぐ待ち合わせの時間)
- 黒江: (久しぶりに環さんに会うって 考えると、緊張してきた…)
- いろは: 黒江さん!
- 黒江: わぁっ!?
- いろは: きゃっ!
- 黒江: ご、ごめん… びっくりしちゃって…
- いろは: ううん、こっちこそ 後ろから声を掛けてごめんね
- いろは: 早く着いちゃったから お店で時間を調整してたの
- 黒江: (…本当に環さんだ…)
- いろは: …大丈夫?
- 黒江: あ、うん…久しぶりに会うから ちょっと緊張して…
- いろは: ええっ?
- いろは: そうだ…これを食べたら リラックスできるかな
- いろは: さっきコンビニで見つけて 買ったものなんだけど…
- 黒江: 飴…?
- いろは: ―いろは― 毎年ね、この時期にだけ売ってる 期間限定商品なの
- いろは: ―いろは― 缶のデザインが可愛いし 好きな味だからつい買っちゃうんだ
- 黒江: ―黒江― そうなんだ…
- 黒江: ―黒江― ありがとう、いただきます…
- 黒江: …………美味しい
- いろは: …少し落ち着いた?
- 黒江: うん、ありがとう
- 黒江: (…よかった、色々あっても 環さんは変わってない)
- 黒江: (一緒にいるだけで 安心する…)
- いろは: もっとゆっくり話したいし お店に入ろっか
- いろは: …あのファストフードのお店は どう?
- 黒江: …………
- いろは: 黒江さん…?
- 黒江: 学校のクラスメイトがいる… 話したことはあまりないけど…
- いろは: じゃあ別のお店にする?
- いろは: でもこの辺だと、黒江さんの 知り合いに会っちゃいそうだし…
- 黒江: …そうだ、あそこなら…
- いろは: そっか、公園…!
- 黒江: ここは広いし、知り合いがいても 気にならないかなって
- いろは: キッチンカーもあるみたいだし
- いろは: 食べたい物を買ってきて ゆっくりお話しよっか
- 黒江: いいね
- いろは: …ふふ
- 黒江: どうしたの?
- いろは: 友だちとして、黒江さんと普通に 過ごせてるのが嬉しくて…
- 黒江: …………
- いろは: あ、ごめんね…!
- いろは: マギアレコードから戻ってきて なんだか浮ついちゃってるのかも
- 黒江: …………
- いろは: 黒江さん…?
- 黒江: …普通って、難しい どう振る舞うのが正解なのかな
- いろは: 何かあったの?
- 黒江: 私、普通にしてるつもりでも 他の人を傷つけるみたいだから…
- いろは: 私は傷つけられたことないよ?
- 黒江: 環さんはすごく優しいから わからないだけなのかも…
- 黒江: 普通の魔法少女からしたら 私は変で
- 黒江: 馴染めない私に 原因があるんだと思う
- 黒江: でも、どう振る舞えばいいのか わからないんだ…
- いろは: 黒江さんはそのままでいいんだよ
- 黒江: でも…
- いろは: 考えすぎないで、今日は1日 “普通”に過ごしてみよう?
- いろは: 私も協力する!
- FILENAME: text_318012-2.txt
- いろは: えっと…じゃあ甘いものを 買いに行こう!
- 黒江: それが普通に過ごすってこと…? わかった
- いろは: すみません クレープください
- 何になさいますか?
- いろは: うーん…人気メニューは… メガ盛りホイップクリーム…?
- 黒江: え…クリームだけ…!?
- いろは: インパクトのある見た目だけど 食べるのは大変そうだね…
- 黒江: うん… 私はジュースにしようかな
- いろは: 私も…
- 黒江: あ、たこ焼き作ってる
- いろは: 買っていく?
- 黒江: ううん、焼いてるのを見るのが 好きなだけだから
- いろは: じゃあ、あそこのベンチで ジュースを飲もう
- いろは: たこ焼きを焼いているのが 見られそうだし
- 黒江: うん
- いろは: 意外と焼いてるのを見るだけでも 面白かったね
- いろは: 他にも何かあるかな? 宝崎市に来るのも久しぶりだし…
- 黒江: あの…環さん
- いろは: うん?
- 黒江: 私、普通に過ごせてるかな…?
- いろは: …あ
- 黒江: やっぱり傷つけてた…?
- いろは: ううん、そうじゃないの!
- いろは: クレープ屋さんでジュースだけ 頼んでみたり
- いろは: たこ焼きが焼かれるのを 見てみたり…
- いろは: これが黒江さんらしい過ごし方 なのかなって思ったら
- いろは: なんだか新鮮で 楽しくなっちゃって
- いろは: “普通”に過ごそうって 提案したこと、忘れてた…
- 黒江: …………
- 黒江: 何それ…ふふ…!
- 黒江: ―黒江― 環さん、変なの…!
- いろは: ―いろは― ごめんね、でも…ぷっ
- いろは: ―いろは― あははっ なんか、笑いが止まらなくなっちゃった
- いろは: はぁ…
- いろは: やっぱり、黒江さんは普通に 過ごしてても問題なんてないよ
- いろは: 私は一緒にいて楽しいもん
- 黒江: そうなのかな…
- ???の声: あの、お嬢ちゃん
- いろは: はい…?
- 図書館に行きたいんだけれど 道を教えてもらえないかしら
- いろは: それならここを真っ直ぐです よければ一緒に行きましょうか?
- あら、いいの? 助かるわぁ
- いろは: ごめんね、黒江さん ちょっと待ってて…!
- 黒江: え、あ…うん
- 黒江: …………あ 私もついていけばよかった
- 黒江: …………
- 黒江: (私だったら色々考えちゃうけど 環さんは何も考えない)
- 黒江: (困ってる人は誰でも助けるのが 普通なんて、本当にすごいな…)
- …パサッ
- 黒江: あ…
- 黒江: (あの人… お財布、落とした…?)
- 黒江: ………… ……………………
- 黒江: あ、あの…! お財布、落としましたよ…!
- え?
- やだ、ありがとうございます!
- 黒江: い、いえ…
- ダッ
- 黒江: (緊張した… けど、声掛けできた…)
- いろは: …黒江さん!
- 黒江: あ、環さん… さっきの人は…
- いろは: もう案内してきたよ
- いろは: それより、今… 落とし物を拾ってあげてた?
- 黒江: あ…あの人が自分で気づいたら 声を掛けないつもりだったよ…
- いろは: でも拾ってあげてるし 黒江さんは優しいと思うよ
- 黒江: …ううん
- 黒江: 私が誰かに親切にするのは 周りの目が気になるからだし…
- いろは: それでも、誰かのためを考えて 動けるのは優しいからだよ
- いろは: 実際に行動できるのも 勇気があるからだと思うし
- 黒江: そ…そんなことないよ
- 黒江: (だって私は、環さんを真似して 行動してるだけで…)
- いろは: …本当はね ちょっと心配だったの
- 黒江: え?
- いろは: マギアレコードから戻ってきて
- いろは: 周りの人に聞いても、黒江さんの 近況はわからなかったから…
- いろは: だけど、黒江さんはひとりで 頑張ってたんだよね
- いろは: 変わらず優しいままでいてくれた んだなって、嬉しくなっちゃった
- 黒江: …………
- 黒江: (ううん、変わったよ)
- 黒江: (私のままじゃ嫌で、少しでも 環さんみたいになりたいから…)
- 黒江: (でも、褒められたってことは 環さんに近づけてるってこと?)
- 黒江: (そうだったら、嬉しいな…)
- FILENAME: text_318012-3.txt
- いろは: ん…? 黒江さん、あれは…?
- 黒江: あぁ…私でも知ってる
- 黒江: 宝崎市が最近進めてる観光事業の 一環らしいんだけど
- 黒江: 映画のロケ地に写真映えのする セットを置いて
- 黒江: フォトスポットにしてるんだって
- いろは: あ、その映画って 最近話題になってた恋愛ものの?
- 黒江: かな…? 映画はよく知らないんだけど…
- いろは: 私も観たわけじゃないけど
- いろは: やちよさんが映画の優待券を もらってきた時に
- いろは: 宝崎市で撮影したって聞いて ちょっと気になってたの
- いろは: せっかくだから 一緒に写真撮ってみない?
- 黒江: え…
- いろは: あ、ごめん…! 嫌だった…?
- 黒江: いいけど… 映画を観たわけでもないのに…?
- いろは: あはは…言われてみればそうだね
- いろは: でも、今日黒江さんと遊んだ記念 にはなるし…!
- 黒江: …それもそうだね じゃあ、セットの前に立って…
- ???の声: あ~~~!! 見つけた~~~!!!
- ???の声: ここ!!ここだよ教官みゆりん!! 鷲尾くんが主人公に告白すんの!
- いろは: あれ、この声は… 藍家さん?
- ひめな: でもねでもね! 主人公にはトラウマがあって
- ひめな: どうしても鷲尾くんを 信じられなくて…
- ひめな: ここからがいいんだけど! 鷲尾くんが後ろから主人公を…
- 燦: はい、わかったわかった
- ミユリ: とにかく、とにかく!
- ミユリ: 映画が盛り上がるシーンで 登場した場所ってことですぅ?
- ひめな: ま、ぶっちゃけそういうこと!
- ひめな: ってワケで、ここでも撮影する からね!
- ひめな: はい!教官とみゆりんも入って?
- 燦: また私たちも撮るの…?
- いろは: 藍家さんはかなり思い入れが あるんだね…
- 黒江: 私たちがここで撮影するのは 気が引けるかも…
- いろは: 写真を撮るのは、 別の場所にしようか
- 燦: …! 黒江さんと環さん…?
- 黒江: あ…どうも…
- いろは: ふたりとも、知り合いなの?
- 黒江: 面識はある、くらいかな…
- 燦: …………邪魔したわね
- 燦: 行きましょう、姫様
- ひめな: え!? まだ撮影してないけど!?
- 燦: いいから ミユも行くわよ
- ミユリ: はわわわ!? 燦様燦様!待ってくださぁい!
- いろは: え…え…? 神楽さん、どうしたんだろう…?
- 黒江: …この前のことで 気を遣わせちゃってるのかも
- いろは: 何があったの…?
- 黒江: …私が普通にしてるつもりでも
- 黒江: 他の人を傷つけてるみたいって 話したでしょ
- 黒江: その時のことなんだけどね…
- 黒江: 宝崎市の魔法少女の集会に 参加して
- 黒江: ペアになった子と魔女を倒して グリーフシードを譲ったんだ
- 黒江: 普通に振る舞ったつもりだった けど、なんか怒られちゃって…
- 黒江: 集会を仕切ってた教官には 迷惑をかけたと思う…
- いろは: でも、黒江さんは何も 悪いことはしてないよね…?
- いろは: 何か勘違いされちゃってるなら
- いろは: 説明するきっかけが作れると いいんだけど…
- 黒江: 別にいいよ
- 黒江: (宝崎市内ではやりづらいけど)
- 黒江: (私は環さんが理解してくれて いるなら、それだけでいいし)
- いろは: でも…優しい黒江さんを理解して もらえないなんて、悲しいよ…
- 黒江: …………
- 黒江: …あの、さ
- 黒江: 譲ってもらっちゃったし フォトスポットで写真、撮る…?
- いろは: あ、そうだね…
- 黒江: …じゃあ、撮るよ
- パシャッ
- 黒江: …………
- いろは: …………
- 黒江: (…笑顔のつもりだったけど うまく笑えてなかったな…)
- FILENAME: text_318012-4.txt
- 黒江: …日が暮れてきたね
- いろは: のんびり過ごしてたのに 気づいたらあっという間だったな
- 黒江: (…もう少し、環さんと一緒に 過ごしたいけど…)
- 黒江: そろそろ帰るよね?
- 黒江: 実家に泊まるのも 久しぶりなんでしょ?
- いろは: …まだ帰れないよ
- 黒江: え…
- いろは: 黒江さんを放っておけない
- いろは: 他の魔法少女とわだかまりを 残したままなんて悲しいよ…
- 黒江: 環さん…
- いろは: …お母さんたちには遅くなるって 連絡すれば大丈夫だから
- いろは: 私のことは気にしないで
- いろは: 黒江さんの力になれるなら 私に手伝わせてほしいの
- 黒江: 気持ちはありがたいけど どうしてもらえばいいのか…
- いろは: …あ、私が魔法少女の集会に 参加して説明するのはどう?
- 黒江: えぇ…!? いいよ、恥ずかしいよ…!
- いろは: そ、そうだよね…! ごめんね、出しゃばって…
- 黒江: そうじゃなくて…
- 黒江: そこまでしてもらうのは 申し訳ないってことだよ
- いろは: じゃあ何なら協力できるかな…
- いろは: 私にできることなんて 限られてるけど…
- 黒江: ………… 環さんらしいね
- いろは: えっ、そうかな…?
- 黒江: (誰かのために行動する意志を 常に持ってる…)
- 黒江: (そんな環さんみたいな 魔法少女が、私のなりたい姿)
- 黒江: ――っ!?
- いろは: これは…
- 黒江: 近くにいるね でもこの気配は…使い魔、かな
- いろは: 行こう、黒江さん!
- 黒江: …………
- いろは: 黒江さん?
- 黒江: 他にも魔法少女はいるし
- 黒江: 私が行って周りを困らせるよりも 行かないほうがいいのかなって…
- いろは: …私にもそういう時があったよ
- いろは: でもね、誰かのために 一生懸命頑張ってる子を
- いろは: わからない人たちじゃないと 思うよ
- いろは: だから…
- 黒江: …………
- いろは: あ、違うよ?
- いろは: 黒江さんに無理をさせたいんじゃ なくて…
- 黒江: …………
- 黒江: (私は今まで通りで 何もしない…?)
- 黒江: (環さんが私のためを思って 動いてくれてるのに…?)
- 黒江: (…………それは、嫌)
- 黒江: (弱くて空っぽな自分を変えたい 環さんみたいになりたいなら)
- 黒江: (立ち止まってるわけには いかない…!)
- 黒江: …わかってる 環さんが励ましてくれてること…
- 黒江: 私は…応えたい
- 黒江: 応えられる 魔法少女になりたい…!
- いろは: 黒江さん…
- 黒江: お願い、環さん… 私と戦ってほしい…!
- いろは: もちろんだよ…!
- いろは: 私にできることがあるなら、 何でもやるつもり
- FILENAME: text_318013-1.txt
- 黒江: やっと見つけた…!
- いろは: 気配が弱々しくて 逆に探すのが難しかったね…
- 黒江: 行こう、環さん…!
- いろは: うん!
- 黒江: 誰か戦ってる…?
- いろは: あれは…
- やあっ!
- 燦: 悪くない攻撃よ
- 燦: この結界には使い魔だけだから 存分に戦ってみなさい
- 燦: 何かあれば支援するわ
- 黒江: (教官たちが戦ってたんだ)
- 黒江: (私はいらなかった…)
- 黒江: …ごめん、環さん もう帰ろう
- いろは: え、でも、使い魔がまだ…
- 黒江: 教官たちだけで十分倒せるよ
- 黒江: (環さんに励ましてもらって あんなに張り切って恥ずかしい)
- 黒江: (私が必要とされることなんか ないのに…)
- 黒江: ――っ!?
- いろは: 景色が変わった…!?
- 黒江: これ…この前、倒した魔女の 結界に似てる…!?
- 黒江: でも、そんなはずは…!
- いろは: 株分けしていたのかも…
- 黒江: (あの魔女は気配を隠すのが うまかった)
- 黒江: (…ってことは)
- 黒江: 教官…! 魔女が隠れています!
- 燦: え…!? でも気配なんて…
- …!!!!!
- きゃああっ!
- 燦: な…! 捕まった…!?
- 燦: くっ…使い魔だけと思わせて 油断させられた…!
- 燦: その子を離しなさい!
- 黒江: …………
- 黒江: (きっと私が助けに行かなくても 教官たちなら乗り切る…)
- 黒江: (むしろ弱い私が行けば みんなを困らせて…)
- 黒江: …………
- 黒江: (ああ… こんな自分、変えたいのに…)
- いろは: …黒江さん 大丈夫だよ
- 黒江: え?
- いろは: 黒江さんは自分で思ってるよりも 強いし、みんなを助けられる
- いろは: 私は信じてるから いつも通りにやってみよう?
- 黒江: …………
- 黒江: (自信なんてないし 自分を信用したこともない)
- 黒江: (でも…)
- 黒江: (…環さんの言葉だけは 信じられる)
- 黒江: …うん やってみる…!
- FILENAME: text_318013-2.txt
- 黒江: 教官! 私にも手伝わせてください…!
- 燦: 黒江さん…
- 燦: 何かを決めた顔ね…いいわ
- 燦: 私はあの子の解放を優先して 行動するから
- 燦: その間に魔女を倒してみなさい
- 黒江: わかりました…!
- 黒江: はっ!やああっ!!
- 黒江: まだまだ…!
- うっ…
- 燦: おっと…!
- 燦: こちらの目的は達成したわ あとはあなた次第よ、黒江さん!
- 黒江: はい…!
- 黒江: (これで大きく立ち回っても 被害は出ない…!)
- 黒江: (攻撃してくる…! この至近距離で避けられる…!?)
- 黒江: ――っ!?
- いろは: 黒江さん、いまだよ!
- 黒江: ありがとう、環さん!
- 黒江: (私がいま出せる ありったけの力を込めて…!)
- 黒江: これで…やられちゃって!
- 黒江: はぁ…はぁ…
- いろは: やったね、黒江さん! 魔女を倒せたよ!
- 黒江: うん…でも、また環さんに 助けてもらっちゃった…
- 黒江: そうだ、その子は…!?
- 燦: 怪我もないみたいだし、無事よ
- うぅ………… …あれ、魔女は…?
- 黒江: 今、私と環さんで倒したよ
- あ、あなたは…!
- 黒江: あのね… この前はごめん
- 黒江: グリーフシードに困ってた頃が 私にもあったから
- 黒江: 譲らないで 後悔したくなかったんだ
- そうだったんですか…
- 黒江: でも、傷つけちゃったよね…
- 黒江: 本当に、ごめん…
- …謝るのは私の方です
- 何も知らずに見下されてると 思って、怒ったりして…
- すみませんでした…
- 黒江: ううん… 気持ちはわかるから
- 燦: …………
- いろは: あ、あの、神楽さん…!
- いろは: 黒江さんは とても優しい人なんです…!
- いろは: すごく落ち着いて見えるから 誤解されやすいかもしれないけど
- いろは: でも…!
- 燦: 知ってるわ
- いろは: …へ?
- 燦: 周囲との距離を詰めるのは 苦手そうだけれど
- 燦: 単独でも、共同でも 魔女退治をこなせる実力はある
- 燦: 黒羽根だった頃を考えると だいぶ成長しているわ
- 黒江: …………えっと…
- 燦: つまり、あなたのことは 評価してるつもりよ
- 黒江: ――っ!?
- 黒江: (嬉しいけど…面と向かって 言われると恥ずかしい…)
- …………
- …今は弱くても
- 諦めないで頑張れば、私も 成長できるのかな…
- 黒江: …そうなのかもしれない
- 黒江: 自分では、弱い自分を 信じられなくても
- 黒江: 誰かが信じてくれていたら 諦めない力になる…のかも
- 誰かが…
- 黒江: (私には 環さんがいてくれたように…)
- いろは: 黒江さん、色々解決できて よかったね
- 黒江: うん… ありがとう、環さん
- FILENAME: text_318013-3.txt
- 黒江: 今日はありがとう
- 黒江: 色々あったけど… 楽しかった
- いろは: 私もだよ また連絡するね
- 黒江: …ううん、今度は私から連絡する
- いろは: …! わかった、待ってるね
- 黒江: …あ、その… 写真、撮り直してもいい…?
- 黒江: フォトスポットで撮った時、 あんまり笑えなかったから…
- いろは: もちろんだよ
- パシャッ
- 黒江: ありがとう…
- 黒江: (忘れそうになっても この写真を見れば思い出せる)
- 黒江: (環さんのこと… 私が環さんに近づきたいこと…)
- 黒江: それじゃあ…
- いろは: またね、黒江さん
- 黒江: 今日もパトロール、頑張ろう
- いろは: 張り切ってるね、黒江さん
- 黒江: そう、なのかな…
- 黒江: …魔女との戦いは怖いけど 環さんと一緒なら勇気が出るし
- 黒江: 積極的になれるんだよね
- いろは: それならよかった!
- いろは: じゃあ行こうか 困っているみんなを助けに
- 黒江: ああ、これは夢だ…
- 黒江: 私と環さんは同じ学校じゃないし 普段から一緒にパトロールはしてない
- 黒江: だけど…どうしてだろう? 違和感が少ない気がする
- 黒江: マギウスの翼で黒羽根をしていた頃は ただ、生きていくのに必死で 強い魔法少女たちは別世界の存在だと思ってた
- 黒江: でも、今は少し違う
- 黒江: 弱くて、何もできない空っぽな私ではいたくない もっと環さんに近づきたい
- 黒江: 環さんと対等になって、同じものを見て 誰かのために戦う強い魔法少女になりたい
- 黒江: その願望が反映されているこれは夢だし 私の理想にすぎないけど…
- 黒江: 夢の違和感が少なくなってきたのは ちょっとずつ、現実が理想に近づいているから なのかな…?
- 黒江: ねえ、環さん 私、頑張るね
- 黒江: 環さんみたいに、強くて
- 黒江: みんなを助けられる魔法少女に なりたいから…
- ???: 「無理だよ」
- ???: 「魔女なんかと戦いたくない 魔法少女でなんかいたくない」
- ???: 「いつになったら、私を認めてくれるの?」
- 黒江: え?
- 黒江: あ…まだ夜中…
- 黒江: …………
- 黒江: (…変な夢…)
- FILENAME: text_318013-4.txt
- 黒江: …………
- 黒江: (環さんと会ってから 変な夢を見るのが増えたな…)
- 黒江: (こう毎日続くと、 さすがに疲れるかも…)
- 黒江: はぁ…
- 黒江: (でも、最近は色んな事が うまくいってる気がする)
- …ポトン
- 黒江: あ、ハンカチ落としましたよ
- あらあら、ありがとう 親切なお嬢さんねえ
- 黒江: …いえ
- 黒江: (環さんを意識して 振る舞うようにすると)
- 黒江: (日常でも、魔法少女たちとも うまく関われるようになった)
- 黒江: (ただ…困りごとが減った分 気疲れは増えた気がする…)
- 黒江: (ソウルジェムも濁りやすく なった感じがするし…)
- 黒江: …………
- 黒江: (でも、休んでられない)
- 黒江: (環さんみたいに、強くなって 必要とされる人になって)
- 黒江: (隣に並んでも恥ずかしくない 私になりたいから…)
- 黒江: …………うぅ…
- 黒江: (…いつもより体が重い)
- 黒江: (…今日だけは、このまま帰って 休もうかな…)
- 黒江: …………
- 黒江: (あ、コンビニ…)
- 黒江: …………
- 黒江: (放課後に、パトロール以外で 寄り道するのはあまりないし…)
- 黒江: (たまにはいいよね)
- 「ありがとうございましたー」
- 黒江: …………
- いろは: ―いろは― 毎年ね、この時期にだけ売ってる 期間限定商品なの
- いろは: ―いろは― 缶のデザインが可愛いし 好きな味だからつい買っちゃうんだ
- 黒江: ―黒江― そうなんだ…
- 黒江: ―黒江― ありがとう、いただきます…
- 黒江: …………買っちゃった…
- 黒江: 環さんとお揃いの飴…
- 黒江: …………
- 黒江: (環さん、 今日はどうしてるかな…)
- 黒江: (連絡したら、きっとすぐにでも 会ってくれるだろうけど)
- 黒江: (いまはこのまま、ひとりで 頑張ってみたい…)
- 黒江: (そう思えるようになったのも 環さんのおかげ…)
- 黒江: …………
- 黒江: …次はいつ会えるかな
- 黒江: またね、環さん 今度は私が会いに行くよ…
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