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- ==Part A==
- 口恭介の病室(過去)
- 見舞いに訪れるさやか。だがベッドは空。
- その様子を、廊下を通りがかった看護師Aが見各める。看護師A「上条くんのお見舞い?」
- さやか「ええ...」
- 看護師A「ああ、ごめんなさいね。診察の予定が繰り上がって、今ちょうどリハビリ室なの」
- さやか「ぁ、そうでしたか。...どうも」
- ややしょんぼりしながら、会釈して去るさやか。
- そこへさらに通りかかる看護師B。Aと二人でさやかの背中を見送る。
- 看護師B「良く来てくれるわよね。あの子」
- 看護師A「助かるわ。難しい忠者さんだしね。...励ましになってくれてるといいんだけど」
- ロリハビリ家(過去)
- 歩行訓練をしている恭介。だが表情は暗く、渋々やらされている様子でいる。
- 看護側B off「事故に遭う前は、天才少年だったんでしょ?バイオリンの」
- 看護師A off「歩けるようになったとしても、指の方はねえ...もう二度と楽器を弾くなんて、無理でしょうね」
- 口病院、エレベーター内(過去)
- 一階ロビーへと戻るエレベーターの中。一人きりで乗つているさやか。
- さやかM 『...なんで、恭介なのよ?』
- ふと自分の左手を見下ろす。自在に動く5本の指を、悔しそうに握りしめる。
- さやかM 『あたしの指なんて、いくら動いたって何の役にも立たないのに...なんであたしじゃなくて、恭介なの?』
- だがそこで、気持ちを静めて考え直すさやか。
- さやかM 『もしもあたしの願い事で、恭介の身体が治ったとして...それを恭介は、どう思うの?』
- 病室での恭介の笑顔と、彼のために買い集めてきたCDの山を思い出す。
- さやかM 『ありがとうって言われて、それだけ? それとも、それ以上のことを言ってほしいの?」
- 考えを巡らすうちに、自H己嫌怒に駆られるさやか。
- さやか「...あたしって、嫌な女だ」
- 口病院裏の駐輪場
- 三話ラスト直後。
- グリーフシードを手に立ち去っていくほむら。
- それを悔し泣きしながら見送るさやかと、放心しているまどか。
- さやかM『思えばーーそのときのあたしは、まだ何も分かっていなかった。奇跡を望む意味も、その代償も...』
- 口鹿目家ダイニングキッチン
- 一話と同じ鹿目家の朝食の風景。
- タツヤの面倒を見つつ新聞を読みつつコーヒーを飲んでいる詢子と、甲斐甲斐しく配膳している知久。
- だがまどかはぼんやりと目玉焼きを見つめるだけで、心ここにあらずの状態。
- まどかの脳裏を過ぎるのは、昨日までマミと共に過ごした日々の記憶。
- そして、マミを見舞った壮絶な最期。
- 詢子「ーーまどか。さっさと食べないと遅刻だぞ」
- 詢子の声に、はたと我に返るまどか。
- まどか「う、うん...」
- 相変わらずぼんやりしたまま、目玉焼きに箸をつけるまどか。
- だが一口食べた途端に、ぽろりと涙がこぼれる。
- 知久、詢子「...?」
- さすがに様子がおかしいと気付く両親。
- まどか、こらえきれずに、身を震わせてボロボロと泣き始める。
- 姉の様子にきょとんとするタツヤ。
- タツヤ「ねーちゃ、どったの?」
- 知久「ま、不味かったかな...」
- まどか「...ううん、おいしいの。すごく、おいしい...」
- 返事しながらも、まどかの涙は止まらない。
- まどか「...生きてると...パパのごはんが、こんなに美味しい...」
- 口通学路
- 普段と変わらない平和な通学の風景。
- 並んで歩きながら談笑するまどか、さやか、仁美。
- 今日のキユウべえはまどかの肩には乗らず、すぐ後ろを
- ついて歩いている。
- さやかはいつも通り活発に話題を振り、仁美を笑わせて
- いる。
- さやか「でもってユウカったらさあ、それだけ言ってもまだ気付かないのよ。『え? 何? ワタシまた変なこと言った?」とか半ベソになっちゃって、こっちはもう笑い堪えるのに必死でさー」
- まどか「...」
- まどか、うすぼんやりした愛想笑いを浮かべたまま、話を聞き流しつつ、キユウベえ経由のテレパシーで、さやかに呼びかける。
- まどか『...さやかちゃん、昨日のこと...』
- さやか『...ごめん。今はやめよ。また後で』
- 口調ばかりは明るさを保ったまま、思念では沈欝に答えるさやか。
- まどか「...」
- 上手く表面を取り繕えているさやかと、それができない自分との差に、ますます悲しくなるまどか。
- 口授業風景
- 英語の授業。担当は早乙女利子先生。
- 黒板に書かれた英文法のテキストを解説しているかに見えて、実はまったく関係ないことを喋っている。
- 和子「えー、確かに出産適齢期というのは医学的根拠に基づくものですが、そこからの逆算で婚期を見積もることは大きな間違いなんですねー。つまり30歳を越えた女性にも恋愛結婚のチャンスがあるのは当然のことですから、したがってここは過去完了形でなく現在進行形を使うのが正解でーー」
- 授業に集中できないまどか。そっと横目にさやかを見遣
- る。
- あえてまどかと視線を合わそうとしないさやか。切なく
- なるまどか。
- そんなまどかの様子を、ほむらもまた見守っている。
- 口屋上
- 昼休み。フェンス際に並んで腰を下ろし、よりかかっている二人。ぼんやりと空を見上げているまどか。思い詰めた表情のさやか。
- 空気を読んで、ほんの少しだけ聞をおいて座っているキユウベぇ。
- まどか「なんか、違う国に来ちゃったみたいだね」
- さやか「...」
- まどか「学校も、仁美ちゃんも、昨日までとぜんぜん変わってない筈なのに...なんだかまるで、知らない人たちの中にいるみたい」
- さやか「知らないんだよ。誰も」
- 冷めた声で言い捨てるさやか。普段と述、っその口調に、やや怯むまどか。
- さやか「魔女のこと、マミさんのこと。あたしたちは知ってて、他のみんなは何も知らない。それってもう、違う世界で、違うものを見て暮らしてるようなもんじゃない」
- まどか「...さやかちゃん?」
- さやか「とつくの昔に、変わっちゃってたんだ。もっと早くに気付くべきだったんだよ。あたしたちも」
- まどか「...」
- 遠い眼差しで空を見つめるさやか。返す言葉もないまどか。
- さやか「...まどかはさ、今でもまだ、魔法少女になりたいって思ってる?」
- キユウベえ「...」
- さやかの問いに、キユウベえもまどかに注目する。
- まどか「...」
- 素直に『嫌だ』と言う勇気を出せないまどか。重い沈黙。察するさやか。
- さやか「...そうだよね。うん、仕方ないよ」
- まどか「...ずるいって、分かってるの。今さら虫が良すぎるよね...」
- まどか、悔しさと情けなきで涙を溢す。
- まどか「でも...無埋。...わたし、あんな死に方...今でも思い出しただけで、息ができなくなっちゃうの...恐いよ...嫌だよお...」
- さやか、隣にいるまどかの頭を抱き寄せ、肩を寄せあう。
- キユウべえも何も言えず、俯いている。
- さやか「マミさん、本当に優しい人だったんだ。戦うためにどういう覚悟がいるのか、あたしたちに思い知らせるために、あの人は...」
- マミへの追想に授るさやかとまどか。
- さやか、ややあってからキユウべえを見る。
- さやか「ーーねえキユウベえ。この街、どうなっちゃうのかな?マミさんの代わりに、これから誰がみんなを魔女から守ってくれるの?」
- キユウベえ「永らくここはマミの縄張リだったけど、空席になれば他の魔法少女が黙ってないよ。すぐにも他の子が魔女狩りのためにやって来る」
- さやか「でもそれって、グリーフシードだけが目当ての奴なんでしょ? あの転校生みたいに」
- キユウベえ「...確かに、マミみたいなタイプは珍しかった。普通はちゃんと損得を考えるよ。だれだって報酬は欲しいさ」
- さらに何か言おうとするさやかに対し、機先を制して言い足すキユウべえ。
- キユウベえ「でもそれを批難できるとしたら、それは同じ魔法少女としての運命を背負った子だけじゃないかな」
- さやか「...」
- それを言われては返す言葉もないさやか。
- キュゥべえは溜息をついて、立ち上がる。
- キユウベえ「君たちの気持ちは分かった。残念だけど、僕だって無理強いはできない。お別れだね。僕はまた、僕
- PP54
- まどか「...」
- ほむら「でも、あなたの運命は変えられた。一人が救われただけでも、私は嬉しい」
- ほむらの、思いもよらない感情的な言葉に、驚きつつも、ほだされるまどか。
- まどか「ほむらちゃんは、さ...なんだか、マミさんとは別の意味で、ベテラン、って感じだよね」
- ほむら「そうかもね。否定はしない」
- やや訊きづらい問いを口にする前に、少しだけ緊張するまどか。
- まどか「...昨日みたいに、誰かが死ぬとこ、何度も見てきたの?」
- ほむら「そうよ」
- まどか「...何人、ぐらい」
- ほむら、わずかに間をおいて遠い眼差しになる。
- ほむら「数えるのを諦めるほどに」
- まどか「...」
- 素つ気ない、だが重すぎる返事に、しばし言葉を失、つまどか。
- ふと、抜け殻のようだつたマミの部屋に思いを馳せる。
- まどか「あの部屋、ずっと、あのままなのかな...」
- ほむら「巴マミには迷い親戚しか身寄りがいないわ。失除届が出るのは、まだ当分先でしょうね」
- まどか「...誰も、マミさんが死んだこと、気付かないの?」
- ほむら「仕方ないわ。向こう側で死ねば、死体だって残らない。こちらの世界では、彼女は永久に行方不明者のまま。ーー魔法少女の最期なんて、そういうものよ」
- 俯くまどか。再び涙が溢れてくる。
- まどか「...ひどいよ」
- ほむら「...」
- 鳴咽するまどかを、無言で見守るほむら。
- まどか「みんなのために、ずっと独りぼっちで、戦ってきた人なのに...誰にも気付いてもらえないなんて、そんなの...寂しすぎるよ...」
- ほむら「そういう契約で、私たちはこの力を手に入れたの。誰のためでもない、自分自身の祈りのために戦い続けるのよ。誰にも気付かれなくても、忘れ去られでも、それは仕方のないことだわ」
- まどか「わたしは...覚えてる」
- 涙を拭いて、きっぱりと言うまどか。
- まどか「マミさんのこと、忘れない...絶対に」
- ほむら「そう...」
- 虚ろに、やや自嘲的に肱くほむら。
- ほむら「そう言ってもらえるだけ、巴マミは幸せよ。羨ましいほどだわ」
- まどか「...ほむらちやんだって!」
- ほむらの空虚な語調に、なぜか無性に切なくなり、まどかは強く断言する。
- まどか「ほむらちゃんのことだって、わたしは、忘れないもん!昨日、助けてくれたこと...ぜったい忘れたりしないもん!」
- 立ち止まるほむら。湧き上がる悲しみを堪えきれなくなり、俯いて表情を隠す。(別の時間軸を記憶していないまどかにしてみれば、それは何の悪意もない言葉だが、ほむらにとっては胸を块られる発言である)
- ほむらの様子の異変に気付き、立ち止まって振り向くまどか。
- まどか「...ほむらちゃん?」
- ほむら「...あなたは、優しすぎる」
- まどか「え?」
- ほむら、敢えて硬い表情を繕って顔を上げ、まどかを見据える。
- ほむら「忘れないで。...その優しさが、もっと大きな悲しみを呼び寄せることもあるのよ」
- まどか「...?」
- まどか、何のことやら皆目見当もつかない。
- ほむらはそのまま踵を返し、違う道へと去っていく。
- かける言葉もなく、見送るしかないまどか。
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