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- ==Part A==
- 口恭介の病室
- ベッドをリクライニングさせて座っている恭介と、介添川の椅子に腰掛けているさやか。
- さやか「はい、これ」
- 見舞いに来たさやかから、ヴァイオリンのCDを手渡される恭介。驚きに日を見聞く。
- 恭介「うわ、凄い...これネットでも手に入らない廃盤だよ!」
- さやか「そ、そうなんだ...たまたま寄ったお店で見かけたんで、買ってみたんだけど」
- ベッドサイドのテーブルには、他にもCDのケースが積み上げられている。すべてさやかが買ってきたものである。
- 恭介「いつも、本当にありがとう。さやかはレアなCDを見つける天才だね」
- さやか「はは、そんな...う、運がいいだけだよ。きっと」
- 照れてはにかむさやか。
- 恭介はさっそくケースを開けて、CDをポータブルプ
- レーャーにセットする。
- 恭介「この人の演奏は、本当に凄いんだ。さやかも聴いてみる?」
- ヘッドホンの片方だけを嵌めて、もう一方をさやかに差し山す恭介。
- さやか「ぃ、いいのかな...」
- 恭介「本当はスピーカーで聴かせたいんだけど、病院だしね」
- コードの長さの都合で、やや身を寄せ合う姿勢になる二人。内心で照れまくるさやか。
- だが山曲が始まると、優しい旋律に心が利まされる。
- 優しい旋律に浸るさやか。
- x x x
- さやか幼少期の記憶。
- ヴァイオリンの発表会で楓爽と演奏をしている恭介と、その姿に目を奪われているさやか。
- × x x
- ふと目を開けるさやか。隣で恭介が静かに泣いているのに気付く。
- ベッドの上で力なく投げ出された恭介の左腕。無惨な手術跡。もう二度と演奏のできなくなった指が、演奏の記憶を辿って震えている。
- やるせない惣いに、胸が痛くなるきゃか。
- 口夜の公園(異界化中)
- 魔砲からアルティマシュートを放つマミ。
- 直撃をくらい、悲鳴を上げて消滅していく使い魔。
- それを固唾を呑んで見守るまどかとさやか。
- 結界は解かれ、周囲はもとの公園の景色に戻る。マミも変身を解除。ほっと安堵するギャラリー二人。
- さやか「やっぱマミさんつてカツコいいね~」
- マミ「もう。見せ物じゃないのよ。危ないことしてる、って意識は忘れないでおいてほしいわ」
- さやか「いえーす」
- 手にした護身用パットを掲げ上げるさやか。
- まどか「グリーフシード、落とさなかったね」
- キユウべえ「今のは魔女から分裂した使い魔でしかないからね。グリーフシードは持つてないよ」
- まどか「魔女じゃなかったんだ...」
- さやか「なんか、ここんとこずっとハズレだよねえ」
- マミ「使い魔だって放っておけないのよ。成長すれば分裂元と同じ魔女になるから。ーーさ、行きましょ」
- × × ×
- 静寂を取り戻した夜の公園を、並んで歩くマミ、さやか、まどかとキユウベえ。
- マミ「二人とも、何か願い事は見つかった?」
- さやか「う~ん、まどかは?」
- まどか「う~ん...」
- 困リ果てる二人に、苦笑するマミ。
- マミ「まあ、そういうものよね。いざ考えろって言われたら」
- まどか「マミさんは、どんな願い事をしたんですか?」
- まどかが訊いた途端、マミの表情が陰る。やや慌てるまどか。
- まどか「いや、あの、どうしても聞きたいってわけじゃなくて、ちょっと気になった、っていうか、その...」
- マミ「ううん、いいの。別に隠すほどのことでもないし」
- 遠い眼差しで追憶するマミ。
- マミ「私の場合はーー」
- x x ×
- マミの回想。高速道路での大規模な事故。
- 潰れた車に閉じ込められて瀕死のマミが、手を差し伸べたその先に、キユウベえの姿がある。
- マミoff「ーー考えている余裕さえ、なかったってだけ」
- × x ×
- 再び現代。夜の公園。マミが語った過去に、ややショックを受けている二人。
- マミ「ーー後悔してるわけじゃないのよ。今の生き方も、あそこで死んじゃうよりは余程良かったと思ってる」
- マミ「でもね、ちゃんと選択の余地がある子には、きちんと考えた上で決めてほしいの。私にできなかったことだからこそ、ね」
- 意を決して、質問をぶつける気になるさやか。
- さやか「ねえ、マくさん...願い事つて、自分のための事柄でなきや駄目なのかな?」
- マミ「ぇ?」
- さやか「たとえばーーたとえばの話なんだけどさ。あたしなんかより、よほど困ってる人がいて、その人のために願い事をするのはーー」
- まどか「それって...上条くんのこと?」
- さやか「た、例え話だって言ってるじゃんか!」
- 慌てるさやかを余所に、冷静に頷くキユウベえ。
- キユウベえ「べつに契約者自身が願い事の対象になる必然性はないんだけどね。前例もないわけじゃないし」
- マミ「...でも、あまり感心できた話じゃないわ」
- やや険しい声で異論を挿むマミ。
- マミ「他の人の願いを叶えるのなら、なおのことれ分の望みをはっきりさせておかないと。ーー美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの?それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」
- さやか「...」
- マミの言い様に、さすがに憮然と押し黙るさやか。狼狽えるまどか。
- まどか「マミさんーー」
- マミ「同じようでも全然違うことよ。これ」
- さやか「...その言い方は、ちょっと酷いと思う」
- マミ「ごめんね。でも今のうちに言っておかないと。そこを履き違えたまま先に進んだら、あなた、きっと後悔するから」
- さやか「...」
- さやか、しばし押し黙って考え込んでから、深呼吸し、領く。
- さやか「...そうだね。あたしの考えが甘かった。ごめん」
- きっぱりと謝罪するさやかに、安堵するまどか。マミも笑顔を返す。
- マミ「やっぱり、難しい事柄よね。焦って決めるべきじゃないわ」
- キユウベえ「僕としては、早ければ早いほどいいんだけど」
- ぼやくキユウべえの頭を小突くマミ。
- マミ「駄目ょ。女の子を急かす男は嫌われるぞ」
- 笑うマミとさやか。まどかも釣られて笑うものの、その胸の内はやや複雑。
- 口まどかの部屋
- 就寝間際、パジャマに着替えてベッドの上でごろごろしているまどか。傍らにはキユウベえ。
- 公園でのさやかとマミの問答を思い出し、溜息をつくまどか。
- まどか「...やっぱり、簡単なことじゃないんだよね...」
- キュゥベえ「僕の立場で急かすわけにはいかないしね。助言するのもルール違反だし」
- まどか「ただ、なりたいってだけじゃ、駄目なのかな...」
- ノートの落書きの変身プランを眺めるまどか。華麗に戦うマミを思い出し、その姿に自分を重ねて妄想する。
- キユウベえ「まどかは力そのものに憧れているのかい?」
- まどか「ゃ、そんなんじゃなくて...う~ん、そうなのかな?私ってどんくさいし、何の取り柄もないし、だからマミさんみたいに格好良くて素敵な人になれたら、それだけでもう充分に幸せなんだけど...」
- キユウベえ「まどかが魔法少女になれば、マミよりずっと強くなれるよ」
- まどか「へ?」
- 思わぬ言葉に、狐につままれたかのようなまどか。
- キユウベえ「もちろん、どんな願い事で契約をするかにもよるけれど...まどかが生み出すかもしれないソウルジエムの大きさは、僕にも測定しきれない。これだけの素質を持つ子と出会ったのは初めてだ」
- まどか「はは...何言ってるのよ、もう。嘘でしょ」
- キユウべえ「いやーー」
- そこに扉をノックする音。
- 知久「まどか、起きてるか?」
- まどか「うん?どしたの?」
- 知久「ママが帰ってきたんだが...ちょっと手伝ってくれないかな」
- 口鹿り一家玄関
- 上がり枢で、泥酔した詢子が潰れている。
- まどか「あー、またか...まったくもう」
- やや呆れ気味に苦笑いするまどか。
- 詢子「み、水...」
- 既に川意しであったコップの水を詢子に飲ませる知久。
- 知久「ともかくベッドまで運んで、着替えさせないと。ほら、そっち持ってくれ」
- まどかと知久、二人がかりで詢子を肩に担いで、寝室まで引っ張っていく。
- 詢子「ぐえええ...このスダレハゲ...呑みたきゃ手酌でやってろっつ、つの...」
- 譫言のように愚痴を漏らす詢子。
- 口両親の寝室
- 布団にくるまり、安らかな寝息を立てている詢子。
- 一仕事終えた知久とまどか、ほっと一息。
- 知久「ココアでも入れようか?」
- まどか「うん、お願い」
- ロダイニングキヴチン
- 寝間着姿にガウンを羽織り、テーブルで差し向かいに座ってホットココアを啜る二人。
- まどか「なんでママは、あんなに仕事が好きなのかな。昔からあの会社で働くのが夢だったーーなんて、ないよね?」
- 知久「ママは仕事が好きなんじゃなくて、頑張るのが好きなのさ」
- まどか「...?」
- 知久「嫌なことも辛いこともいっぱいあるだろうけど、それを乗り越えたときの満足感が、ママにとっては最高の宝物なのさ。そういう意味で、今の難しくて大変な仕事は、とてもやり甲斐があるんだろうね」
- まどか「ママは...満足なのかな、それで」
- 知久「そりゃ、会社勤めが夢だったわけじゃないだろうけどさ。それでもママは、理想と思っていた生き方を通してる。そんな風にして叶える夢もあるんだよ」
- まどか「...生き方そのものを、夢にするの?」
- 知久「どう思うかは人それぞれだろうけどーー僕はね、ママのそういうところが大好きだ。尊敬できるし、自慢できる。素晴らしい人だってね」
- まどか「...うん」
- 父の笑顔に、表情を和ませるまどか。
- 口夜道
- まどか、さやかと別れて帰路を歩くマミ。ふと背後についてくる気配を感じ、足を止める。
- 街灯の光を避けるように、闇の中に佇んでいるほむら。
- ほむら「分かっているの?あなたは無関係な一般人を危険に巻き込んでいる」
- マミ「彼女たちはキユウベえに選ばれたのよ。もう無関係じゃないわ」
- ほむら「あなたは二人を魔法少女に誘導している」
- マミ「それが面白くないわけ?」
- ほむら「ええ。迷感よ。...特に鹿目まどか」
- マミ、ほむらの真意を見透かし(たと勘違いして)日を細める。
- マミ「ふうん...そう、あなたも気付いてたのね、あの子の素質に」
- ほむらの眼差しがさらに険しくなる。
- ほむら「彼女だけは、契約させるわけにはいかない」
- マミ「自分より強い相手は邪魔者ってわけ?いじめられつ子の発想ね」
- 内心でかっとなるほむらだが、一旦目を閉じて気持ちを静める。
- ほむら「あなたとは戦いたくないのだけれど」
- マミ「なら二度と会うことがないよう努力して」
- ほむらの側にこの場で仕掛けてくる意図がないと判断したマミは、踵を返す。
- マミ「話し合いだけで事が済むのは、きっと今夜で最後だろうから」
- 捨て台詞を残して去っていくマミ。ほむらは事態が思うように進まないことに苛立ち、歯噛みする。
- ほむら「...」
- 口封院ロビー(翌日、放課後)
- 恭介が入院している病院。さやかの見舞いに付き添って来たまどかが、ペンチでさやかの戻リを待っている。隣にはキユウベえ。
- そこで溜息をつきつつエレベーターから降りてくるさやか。
- さやか「ょ、お待たせ」
- まどか「あれ? ...上条くん、逢えなかったの?」
- さやか「なんか今日は都合悪いみたいでさ。わざわざ来てやったのに、失礼しちゃうわよね~」
- 口病院・訴の駐輪場
- 連れ立つて、病院の中庭を横切るまどかとさやか。
- ふと気になって、駐輪場の奥にある物置のスペースに目をやるまどか。
- そこで何かが怪しく光っている。
- まどか「...?」
- さやか「ん? どしたの?」
- まどか「あそこ、何か...」
- 胸騒ぎを感じて、近寄って調べる二人。
- そこには、壁に突き刺さるようにして埋まっているグリーフシード。まるで呼吸するかのように光を脈動させている。
- キユウベえ「グリーフシードだ...孵化しかかってる!」
- まどか「嘘、なんでこんな所に...」
- キユウベえ「まずいよ。早く逃げないと。この辺りはもうこいつの魔力に侵食されはじめてる。もうすぐ結界が出来上がる」
- さやか「またあの迷路が...」
- さやかの脳裏を、かつてマミから聞いた言葉が過ぎる。
- x x x
- マミ「...それから、病院とかに取り憑かれると最悪よ。ただでさえ弱っている人たちから生命力が吸い上げられるから、日も当てられないことになる」
- × × ×
- これは断じて見過ごせないと、意を決するさやか。
- さやか「まどか、先に行って。マミさんを呼んできて。あたしはこいつを見張ってる」
- まどか「そんな!」
- キユウベえ「無茶だよ。中の魔女が出てくるまでにはまだ時間があるけど、結界が閉じたら君は外に出られなくなる。マミの助けが間に合うかどうかーー」
- さやか「あの迷路が出来上がったら、こいつの居所も分からなくなっちゃ、つんでしょ?」
- さやかの脳裂を過ぎる、衰弱した恭介のイメージ。
- さやか「放つておけないよ。こんな場所で...」
- さやかの決意を察して、頷くキユウベえ。まどかの肩から降りる。
- キユウベえ「まどか、先に行ってくれ。さやかには僕がついてる」
- まどか「キユウべえ...」
- キユウベえ「マミならテレパシーで僕の位置が解る。ここでさやかと一緒にグリーフシードを見張っていれば、最短距離で結界を抜けられるよう、マミを誘導できるから」
- さやか「ありがとう。キユウベえ」
- まどか「...あたし、すぐにマミさんを連れてくるから!」
- 走り去るまどか。さやかとキユウベえの周囲は徐々に異界化し、現実枇界と隔てられていく。
- 駐輪場を出る前に、振り返ってさやかたちがいた辺りを見るまどか。そこは既に不気味な静寂に包まれて、誰もいない。
- x x x
- 病院の屋上に立っているほむら。
- 駐輪場から駆け出ていくまどかを、無言で見守っている。
- ==Part B==
- 口結界内部
- 脈動するグリーフシードを前にして、キユウベえを抱きかかえているさやか。
- キユウベえ「恐いかい? さやか」
- さやか「そりゃあまあ...当然でしょ」
- キユウベえ「願い事さえ決めてくれれば、今この場で君を魔法少女にしてあげることもできるんだけど」
- さやか「うん、いざとなったら頼むかも。...でも、今はやめとく。マミさんを待つよ」
- 弱気になりそうな自分を奮い立たせようと、深呼吸するさやか。
- さやか「あたしにとっても、大事なことだから。...できる』となら、いい加減な気持ちで決めたくない」
- 口病院袋の駐輪場
- マミを連れて再び戻ってくるまどか。
- マミ「ここね...」
- マミ、魔力で結界の入口を開く。二人の前に晒される異界の迷路。マミはキユウべえにテレパシーで呼びかける。
- マミ『キユウべえ、状況は?」
- キユウベえ『まだ大丈夫。すぐに孵化する様子はないよ』
- まどか『さやかちゃん、大丈夫?』
- さやか『へーきへーき。退屈で居眠りしちゃいそう』
- キユウベえ『むしろ迂闊に大きな魔力を使って卵を刺激する方がまずい。急がなくていいから、なるべく静かに米てくれるかい?』
- マミ『わかったわ」
- マミ、変身することなく結界の中へと踏み込む。後に続くまどか。
- まどか「間に合って良かった...」
- マミ「無茶しすぎ、って怒りたいところだけれど。今回に限つては冴えた手だったわ。これなら魔女を取り逃がす心配はーー」
- 言いかけて立ち止まり、振り向くマミ。まどかもまた背後を見て息を呑む。
- 二人の後から、ほむらが結界に踏み込んでくる。
- マミ「...言ったはずよね。二度と会いたくないって」
- ほむら「今回の獲物は私が狩る。あなたたちは手を退いて」
- マミ「そうもいかないわ。美樹さんとキユウベえを迎えに行かないと」
- ほむら「その二人の安全は保証するわ」
- マミ「信用すると思って?」
- マミ、予め床に仕掛けておいた魔力の網を発動。
- 不意を突かれ、網に捕らりわれて動けなくなるほむら。
- ほむら「馬鹿ッ...こんなことやってる場合じゃ!」
- マミ「もちろん怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保証しかねるわ」
- 忠行をよそに抵抗するほむら。だが魔力の拘束はますます固く彼女を締め上げる。
- ほむら「今度の魔女は、これまでの奴らとはワケが違う!」
- マミ「大人しくしていれば、帰りにちゃんと解放してあげる。ーー行きましょう、鹿目さん」
- まどか「は、はい...」
- ほむら「待て...ぐッ!」
- ますますマミの魔力が絞まり、声も出せなくなるほむら。
- まどかはその様子を心配げに眺めつつ、マミに促されるままついていく。
- 口結界迷路の途中
- 迷路を徘徊する使い魔たちの背後を、そっと忍び足で通り抜けるマミとまどか。
- 何となく沈黙が重くて、マミに声をかけるまどか。
- まどか「おの...マミさん?」
- マミ「なに?」
- まどか「願い事、私なりに、色々と考えてみたんですけど...」
- マミ「決まりそうなの?」
- まどか「はい。でも、あの、もしかしたらマミさんには、考え方が甘いって、怒られそうで...」
- マミ「どんな夢を叶えるつもり?」
- まどか、自分なりに思考を整理しようと努めつつ、たどたどしく語りはじめる。
- まどか「私って、昔から、得意な学科とか、人に自慢できる才能とか、何にもなくて...きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま、迷惑ばかりかけていくのかなって...それが嫌でしょうがなかったんです」
- マミ「...」
- まどか「でも、マミさんと会って...誰かを助けるために戦ってるの、見せてもらって...同じことが、私にもできるかもしれないって言われて...何よりも嬉しかったのは、そのことで...」
- 黙って聞いているマミに、勇気を出して告白するまどか。
- まどか「だから私、魔法少女になれたなら、それで願い事は叶っちゃうんです。こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって、胸を張って生きていけたら...それが一番の夢だから...」
- 先を行くマミは、振り向くことなく問い返す。
- マミ「...大変だよ? 怪我もするし、恋したり遊んだりしてる暇もなくなっちゃうよ?」
- まどか「でも、それでも頑張ってるマミさんに...私、憧れてるんです」
- 立ち止まるマミ。
- マミ「憧れるほどのもんじゃないわよ。私」
- まどか「...?」
- マミの背中を見守るまどか。その肩が震えているのに気付く。
- マミ「無理してカッコつけてるだけで、恐くても、辛くても、誰にも相談できないし、独りぼっちで泣いてばっかり。いいものじゃないわよ。魔法少女なんて」
- まどか「マミさんはもう独りぼっちなんかじゃないです」
- マミ「そうね、そうなんだよね」
- 振リ向いて、まどかの手を握るマミ。その日に光る涙を見て、やや驚くまどか。
- マミ「本当に、これから...私と一緒に、戦ってくれるの?側にいてくれるの?」
- 擦れた声で問、つマミに、やや気後れしつつ、それでもきっぱりと頷くまどか。
- まどか「はい。...私なんかで、良かったら」
- マミは涙を堪えようとして、無理に照れ笑いを浮かべようとする。
- マミ「まいったなあ...まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのになあ...やっぱり私、駄目な子だ...」
- まどか「マミさん...」
- ようやく涙を引っ込めて、笑うマミ。
- マミ「...でもさ、折角なんだし、願い事は何か考えておきなよ」
- まどか「折角ーーですかね、やっぱり」
- 冗談めかしたマミの声に、釣られて笑うまどか。
- マミ「契約は契約なんだから、ものはついでと思っておこうよ。億万長者とか、素敵な彼氏とか、何だっていいじゃない」
- まどか「いやあ、その...」
- マミ「じゃあ、こうしましょ。この魔女をやっつけるまでに願い事が決まらなかったら、そのときはキユウベえに、ごちそうとケーキを頼みましょ」
- まどか「け、ヶーキ?」
- マミ「そう、最高におつきくて贅沢な、お祝いのケーキ。それでみんなでパーティーするの。私と鹿目さんの、魔法少女コンビ結成記念よ」
- まどか「ゎ、私、ヶーキで魔法少女に?」
- マミ「嫌なら、ちゃんと自分で考える!」
- まどか「ふええ...」
- 口結界最深部
- さやかとキユウべえが見守る眼前で、やおら変形しはじめるグリーフシード。そのおぞましさに息を呑むさやか。
- キユウべえ「マミ! グリーフシードが動き始めた!孵化が始まるーー急いで!」
- 口結界迷路の途中
- キユウべえからのテレパシーを受けて、頷くマミ。
- マミ「オツケー、わかったわ。今日という今日は速攻で片付けるわよ!」
- まどか「わわ、そんなーー」
- 魔力を抑える理由のなくなったマミは、魔法少女スタイルに変身。
- まどかの手を引いて、疾風のように結界の迷路を駆け抜ける。
- 今更ながらマミたちの存在に気付く使い魔たちだが、勢いづいたマミの魔力で片っ端から吹き飛ばされていく。
- マミM 『身体が軽いーーこんな幸せな気持ちで戦うなんて
- 初めて』
- 切迫した状況にも拘わらず、微笑みを浮かべているマミ。
- その笑みに勇気づけられたまどかも、マミの視線に微笑を返す。
- マミM 『もう何も恐くない。私ーー独りぼっちじゃないもの!』
- 口結界最深部
- 孵化中眼前のグリーフシードから後退るさやかとキユウベえの前に、使い魔たちを蹴散らしながら駆け込んでくるマミとまどか。
- マミ「お待たせ!」
- さやか「ふう...間に合ったあ」
- キユウべえ「気を令けてーー出てくるよ!」
- グリーフシード、孵化。現れ出る異形の魔女。
- だがマミはまどかたちを庇いつつ、いつにない気迫で身構える。
- マミ「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!」
- マミ、魔力の投網を発動。先手を打たれていきなり縛り上げられる魔女。
- そのままマミは魔銃を魔砲へと変形させ、発射態勢に。
- さやか「ゃったーー」
- だが今回の魔女は身体が伸縮自在な構造だった。いきなり伸び上がった首から先が、ちょうどマミの頭を丸呑みするほどに顎を拡げて、覆い被さってくる。
- マミ「ーーえ?」
- 信じられない、といった表情で硬直するマミ。
- 恐怖に目を見開くまどかとさやか。
- 口結界入口付近
- マミの緊縛魔術に縛られていたほむら。
- だがふいにマミの魔力が消失し、拘束から解放される。
- ほむら「まさか...ッ!」
- 痛恨の面持ちで舌打ちするほむら。
- 口結界最深部
- 糸が切れた人形のように倒れ伏すマミの身体。(実は頭が無くなっているのだがアングルで誤魔化す方向で)
- その上に、自由になった魔女の巨体が覆い被さり、隠す。
- 肉と骨を附み砕き、呑み込む音。
- まどかとさやかは恐怖のあまり固まって、目を逸らすことも、悲鳴を上げることもできない。
- キユウベえ「二人ともーー今すぐ僕と契約を!」
- 叱陀するキユウベえ。聞こえていても反応できない二人。
- キユウベえ「願い事を決めるんだ! 早く!」
- マミの骸を食べ終えて、顔(?)を上げる魔女。その眼がまどかとさやかを見据える。
- まどか「あ...」
- 死を覚悟する二人。
- キユウベえ「まどか! さやか!」
- ほむら「ーーその必要はないわ」
- 掠み上がった二人を背に庇って、魔女の前に立ちはだかるほむら。
- ほむら「こいつを仕留めるのは、私ーー」
- ほむら、変身シークェンス。魔法少女スタイルに。
- 予想だにしなかった救援に、呆然となるまどかとさやか。
- 魔女はマミのときと同様に、一瞬で伸縮する身体でほむらを捕らえようとする。
- だがほむらは瞬間移動したかのように別の位置に。代わりに魔女が捕まえたのは起爆寸前の爆弾である。触手を吹き飛ばされ、絶叫する魔女。
- ほむらは次々と瞬間移動を繰り返し、そのたびに次から次へと出現する置き土産の罠にひっかかり、一方的に翻弄される魔女。(ほむらは得意の時間静止魔術を駆使しているのだが、見守っているまどかやさやかには理解できない)
- 華麗だったマミの戦闘スタイルとに違い、冷附かつ無駄のない戦略。全く違う次元の魔法戦闘を見せつけられるまどか。
- ほむら「...ふん」
- 最後に何事もなかったかのように鼻を鳴らして、いきなり変身を解除するほむら。まどかたちの方に向き直る。
- ほむら「命拾いしたわね、あなたたち」
- さやか「なーー」
- ここぞとばかりに襲いかかる魔女。だがその周囲は、既に必殺の罠で完全に包囲されている。
- 背を向けたほむらの背後で、とどめを刺され、絶叫とともに出消滅する魔女。
- ほむら「目に焼きつけておきなさい。魔法少女になるって、そういうことよ」
- 半泣きになりながら、地面の一画(マミの死体がある辺り)を見つめているまどかとさやか。
- 魔女が消滅したことで、結界もまた消えていく。周囲は再び、もとの駐輪場の光景に。
- 後に残されたグリーフシードを、ほむらが拾い上げる。
- それを見て、遣り場のない怒りに駆られるさやか。
- さやか「...返してよ」
- ほむら「...」
- 無言で見つめ返すほむらに、掴みかかるさやか。
- さやか「返せよッ!それはーーそれはマミさんのものだ!」
- 逆上するさやかを振り払い、そのまま冷ややかな眼差しで見下ろすほむら。
- ほむら「そうよ。これは魔法少女のためのもの。ーーあなたたちには触る資格なんて、ない」
- 言い放ち、そのまま去っていくほむら。
- 後には泣き崩れるさやかと、虚ろな目で立ち尽くすまどかが取り残される。
- そしてキユウべえは、絶望する二人ではなく、去っていくほむらの背中を、何やら物思いに耽りながら見送る。
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