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- Diablo II 25周年記念対談 要約(Q&A形式)
- Q1: 今回の対談のきっかけは何ですか?
- A1: 『Diablo II』(以下、D2)の25周年を祝うためです。インタビュアーのクリス・ウィルソン氏は、D2が自身の人生で最もプレイしたゲームであり、『Path of Exile』を制作する直接的なきっかけになったと語っています。
- Q2: 25年前、D2のリリース日はあなたにとってどのようなものでしたか?
- A2:
- クリス・ウィルソン氏: 当時17歳で、大学の試験をそっちのけでゲームストアに並び、手に入れた後は一週間ぶっ通しでプレイしました。
- デビッド・ブレヴィック氏: 開発終盤の過酷な長時間労働(クランチ)からの解放感と、世間にどう受け入れられるかという大きな不安が入り混じった、非常に感情的な日でした。リリース日には地元の店でサイン会も行いましたが、その後はすぐにオフィスに戻り、バグや不正行為(エクスプロイト)への対応に追われました。
- Q3: 当時としては画期的なライブサービスとして、リリース初期にバグを迅速に修正するプレッシャーはありましたか?
- A3: はい、ありました。ゴールド増殖バグなどがすぐに見つかりました。D2は初のクライアントサーバー方式のゲームだったため、インフラの監視も大変でした。最初はパッチを適用するプロセスも不慣れで少し不格好でしたが、すぐに改善され、数日以内に修正パッチを迅速に展開できるようになりました。
- Q4: 現代と当時とでは、バグ発覚後の対応にどのような違いがありますか?
- A4: 当時はSNSが未発達で、情報は一部の熱心なファンの間でのみ共有されていました。そのため、開発側は比較的落ち着いて対応できました。一方、現代ではストリーマーやSNSによってバグが瞬時に世界中に拡散されるため、対応のプレッシャーやスピード感が全く異なります。
- Q5: D2が後続のゲームに与えた影響の中で、最も驚いたものは何ですか?
- A5: 「スキルツリー」です。ARPGだけでなく、シューターやカードゲームなど、あらゆるジャンルのゲームに採用されたことに最も驚きました。色分けされたアイテムのレアリティも広く普及しましたが、スキルツリーが与えた影響はそれを超えるものだと感じています。
- Q6: 現代の多くのゲームがRPG要素を取り入れていることについてどう思いますか?
- A6: プレイヤーがそれを好むからです。RPG要素はプレイヤーに進捗を可視化させ、プレイを継続させる力があります。時には後付けに感じることもありますが、ゲームに深みを与える強力なツールなので、多くのゲームが採用する理由は理解できます。
- Q7: D2の「あと少しだけ」とプレイを続けさせる中毒性の仕組みは、どのように作られたのですか?
- A7: レベルアップ、ウェイポイント、アイテム鑑定、クエスト報酬など、常に次の小さな目標がすぐそこにあるように、複数の「進捗」のレイヤーを重ねることで実現しました。これにより、プレイヤーは常に達成感を得られ、次の目標に向かってプレイを続けてしまうのです。
- Q8: D2のオンラインプレイは、当初から必須要素として設計されていましたか?
- A8: 『Diablo I』は当初シングルプレイ中心でしたが、開発終盤にマルチプレイを追加したところ、その面白さがデザインに大きな影響を与えました。その経験から、D2ではオンラインプレイは最初から必須の重要要素として設計されました。
- Q9: あなたがゲーム開発者を目指すきっかけとなったインスピレーションは何でしたか?
- A9: 『Wizardry』や『Ultima』です。特に、リチャード・ギャリオットが『Ultima』で大金を稼いだという雑誌記事を読み、「ゲーム開発で生計を立てられる」と知ったことが決定的でした。大学時代にプレイした『Rogue』やその派生ゲームも、D2制作の大きなインスピレーションになりました。
- Q10: D2開発中に影響を受けた、ゲーム以外のメディア(映画、本、音楽など)は何ですか?
- A10: 様々なものがありますが、特にNine Inch Nailsのアルバム『The Downward Spiral』は、ゲームのダークな雰囲気作りに非常に大きな影響を与えました。他にもホラー映画や、クエストデザインの面では『スタートレック』のようなTV番組からも影響を受けています。
- Q11: D2の影響を受けているが伝統的なARPGではない、という「意外な」ゲームでお気に入りはありますか?
- A11: 『World of Warcraft』です。タレントツリー(スキルツリー)、アイテムのレアリティ色分け、シームレスな世界など、D2のデザインから多くの影響を受けており、最も多くプレイしたゲームの一つです。
- Q12: あなたが個人で開発したゲーム『It Lurks Below』について、D2から学んだことをどう活かし、D2との差別化をどう図りましたか?
- A12: D2への期待値は非常に高いため、意図的に「D2に近づけすぎない」ように設計しました。『Starbound』や『Terraria』のような掘削・クラフト要素と、D2のようなランダムアイテムやアクション要素を融合させ、D2とは異なるゲーム体験を目指しました。
- Q13: 大規模チームの責任者から離れ、個人で自由に開発することの魅力は何ですか?
- A13: 全てを自分でコントロールし、自分の頭の中にあるビジョンをそのまま形にできることです。誰にも邪魔されず、純粋な創造的プロセスに没頭できるのは非常に楽しい経験でした。
- Q14: 『Diablo I』からD2への進化の方向性は、最初から明確でしたか?
- A14: いいえ、試行錯誤の連続でした。クライアントサーバー化や、より壮大な世界観を目指すといった大枠はありましたが、「スキルツリー」や「シームレスな世界」といった重要な要素は、開発の途中で思いついたアイデアです。
- Q15: 開発中に仕様が肥大化しすぎたとのことですが、リスクが高いとしてカットしたアイデアはありましたか?
- A15: いいえ、そしてそれが問題でした。当時は現代的なプロジェクト管理の手法がなく、良いアイデアはすべて実装しようとしました。何もカットしなかった結果、ゲームの規模が手に負えなくなり、最終的に過酷なクランチ(長時間労働)に繋がりました。これは悪い開発プロセスだったと反省しています。
- Q16: もし開発期間がもう1年あったら、D2はどうなっていましたか?
- A16: カットせざるを得なかったアクト(Act)を完全に実装できていたでしょう。最終的にAct 4は予定の半分の規模になりましたが、時間があれば本来の構想通り、同じ規模の5つのアクトを持つ、より大きな製品になっていたはずです。
- Q17: D2開発における最も賢明だった決断は何ですか?
- A17: 一つに絞るのは困難です。D2は無数の小さな良い決断の積み重ねでできています。あえて挙げるなら、「他のゲームではなく、Diabloの続編を作る」と決めたこと自体が、最高の決断だったかもしれません。
- Q18: 逆に、D2開発における最大の間違いや後悔は何ですか?
- A18: 「スタミナバー」です。新規プレイヤーには理不尽なペナルティとして機能し、ゲーム後半では意味がなくなるため、デザインとして優れていなかったと後悔しています。もっと良い方法があったはずです。
- Q19: D2(クラシック版)と拡張版『Lord of Destruction』(LoD)は、ゲーム性が大きく異なると感じます。この違いについてどう思いますか?
- A19: その通りです。クラシック版は特定の高性能な「レアアイテム」をひたすら探す「アイテムハントゲーム」でした。一方、LoDで導入された「ルーンワード」は、素材を集めて強力なアイテムを自作する要素が強く、「クラフトゲーム」に近い体験です。ルーンワードはより多くのプレイヤーが目標を達成しやすく、間口を広げる効果がありましたが、ゲーム性が変化したのは事実です。どちらが良い悪いではなく、「違う」ものだと認識しています。
- Q20: なぜD2は『Lord of Destruction』以降、拡張版が出なかったのですか?もし出ていたらという可能性はありましたか?
- A20: 当時は拡張版を出すごとにプレイヤーが減ると考えられていたことと、チームが何よりも『Diablo III』を作りたいという強い意欲を持っていたことが理由です。しかし、もしチームが解散していなければ、D3を開発するチームとは別に、もう一つのチームがD2の2つ目の拡張版(実際にデザインの構想はあった)を開発していた可能性は高かったと思います。
- Q21: あなたが開発していた幻の『Diablo III』がもし完成していたら、シリーズにとって正しい方向性だったと思いますか?
- A21: 当時はそう信じていましたし、非常にエキサイティングな内容でした。しかし、私たちの開発スタイルは作りながら進化させていくものだったので、最終的にどうなっていたかは誰にも分かりません。実際にリリースされたD3とは全く方向性が異なるため、どちらが良かったかを比較することは不可能です。
- Q22: D2開発において、あまり知られていないけれど重要な貢献をした「縁の下の力持ち」はいますか?
- A22: 大勢いすぎて挙げきれません。ブリザードノースでは、役職に関係なく誰もがデザインに貢献できる文化がありました。アーティストやプログラマーがモンスターやスキルのアイデアを出し、それが実装されることも多々ありました。D2はそうしたチーム全体の協力の賜物です。
- Q23: D2を制作した経験は、その後の『Hellgate: London』などのプロジェクトにどう影響しましたか?
- A23: 良い面と悪い面がありました。良い面は、D2の過酷なクランチを二度と繰り返さないと誓い、より健全な開発プロセスを意識するようになったことです。悪い面は、ブリザードという恵まれた環境から出て、資金や納期、パブリッシャーの都合といったゲーム業界の厳しい現実に直面し、多くの困難を経験したことです。
- Q24: もし現代のPCパワーでD2を作っていたら、デザインはどう変わっていましたか?
- A24: 間違いなくグラフィックは高解像度の3Dになっていたでしょう。また、サーバーの処理能力も上がるため、より多くのプレイヤーが同時にプレイできるなど、技術的な制約から解放されたデザインが可能だったはずです。
- Q25: アクションRPG(ARPG)は、次にどのような方向に進むべきだと思いますか?
- A25: このジャンルは少し停滞気味に感じます。単なるアイテム集めや大量のモンスターを倒すという定型から脱却し、もっと没入感のある、危険な世界を探索する「怖さ」や「体験」に焦点を当てた、大きな革新が見たいです。
- Q26: デビッド・ブレヴィック氏の現在の活動について教えてください。
- A26: Skystone Gamesというパブリッシング会社を経営し、インディーゲーム開発者を支援しています。自身の経験を活かして開発者にアドバイスをすることが、他の会社との違いです。他にも公表できないプロジェクトを複数進めています。
- Q27: クリス・ウィルソン氏の現在の活動について教えてください。
- A27: 1年間の休養の後、友人たちとLight Patternという小さなスタジオを立ち上げました。『Path of Exile』の開発初期のように、小規模なチームで創造的な活動を楽しんでいます。プロジェクトの詳細はまだ秘密ですが、今日の対談内容と関係があるかもしれません。
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