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- ==Part A==
- 口恭介の病室
- ベッドをリクライニングさせて座っている恭介と、介添用の椅子に腰掛けているさやか。
- さやか「はい、これ」
- 見舞いに来たさやかから、ヴァイオリンのCDを手渡される恭介。驚きに目を見開く。
- 恭介「うわ、凄い...これネットでも手に入らない廃盤だよ!」
- さやか「そ、そうなんだ...たまたま寄ったお店で見かけたんで、買ってみたんだけど」
- ベッドサイドのテーブルには、他にもCDのケースが積み上げられている。すべてさやかが買ってきたものである。
- 恭介「いつも、本当にありがとう。さやかはレアなCDを見つける天才だね」
- さやか「はは、そんな...う、運がいいだけだよ。きっと」
- 照れてはにかむさやか。
- 恭介はさっそくケースを開けて、CDをポータブルプレーヤーにセットする。
- 恭介「この人の演奏は、本当に凄いんだ。さやかも聴いてみる?」
- ヘッドホンの片方だけを嵌めて、もう一方をさやかに差し出す恭介。
- さやか「ぃ、いいのかな...」
- 恭介「本当はスピーカーで聴かせたいんだけど、病院だしね」
- コードの長さの都合で、やや身を寄せ合う姿勢になるこ人。内心で照れまくるさやか。
- だが曲が始まると、優しい旋律に心が和まされる。
- 優しい旋律に浸るさやか。
- × × ×
- さやか幼少期の記憶。
- ヴァイオリンの発表会で颯爽と演奏をしている恭介と、その姿に目を奪われているさやか。
- × × ×
- ふと目を開けるるさやか。隣で恭介が静かに泣いているのに気付く。
- ベッドの上でカなく投げ出された恭介の左腕。無惨な手術跡。
- もう二度と演奏のできなくなった指が、演奏の記憶を迪って震えている。
- やるせない想いに、胸が痛くなるきゃか。
- 口夜の公園(異界化中)
- 炸裂するマミの必殺技。
- 悲鳴を上げて消滅していく魔女。
- それを固唾を呑んで見守るまどかとさやか。
- 結界は解かれ、周囲はもとの公園の景色に一一反る。マミも変身を解除。ほっと安堵するギャラリー二人。
- さやか「やっぱマミさんの魔女退治は何度見てもカツコいいね~」
- マミ「もう。見せ物じゃないのよ。危ないことしてる、って意誠は忘れないでおいてほしいわ」
- さやか「いえーす」
- 手にした護身用パットを掲げ上げるさやか。
- そこへ、周囲を探していたキユゥベえが戻ってくる。
- キユウべえ「グリーフシードは持つてなかったみたいだ。空振りだね」
- まどか「ぇ、また?」
- さやか「なんかここんとこハズレばっかりじゃない?」
- マミ「そういうものよ。だからって魔女を放っておくわけにもいかないし。ーーさ、行きましょ」
- × × ×
- 静寂を取り戻した夜の公園を、並んで歩くマミ、さやか、まどかとキユゥベえ。
- マミ「二人とも、何か願い事は見つかった?」
- さやか「う~ん、まどかは?」
- まどか「う~ん...」
- 困り果てる二人に、苦笑するマミ。
- マミ「まあ、そういうものよね。いざ考えろって言われたら」
- まどか「マミさんは、どんな願い事をしたんですか?」
- まどかが訊いた途端、マミの表情が陰る。やや慌てるまどか。
- まどか「いや、あの、どうしても聞きたいってわけじゃなくて、ちょっと気になった、っていうか、その...」
- マミ「ううん、いいの。別に隠すほどのことでもないし」
- 遠い眼差しで追憶するマミ。
- マミ「私の場合はーー」
- × × ×
- マミの回想。高速道路での大規模な事故。
- 潰れた車に閉じ込められて瀕死のマミが、手を差し伸べたその先に、キュウベえの姿がある。
- マミoff「ーー考えている余裕さえ、なかったってだけ」
- × × ×
- 再び現代。夜の公園。マミが語った過去に、ややショックを受けている二人。
- マミ「ーー後悔してるわけじゃないのよ。今の生き方も、あそこで死んじゃうよりは余程良かったと思ってる」
- マミ「でもね、ちゃんと選択の余地がある子には、きちんと考えた上で決めてほしいの。私にできなかったことだからこそ、ね」
- 意を決して、質問をぶつける気になるきゃか。
- さやか「ねえ、マミさん...願い事って、自分のための事柄でなきゃ駄目なのかな?」
- マミ「え?」
- さやか「たとえばーーたとえばの話なんだけどさ。あたしなんかより、よほど困ってる人がいて、その人のために願い事をするのはーー」
- まどか「それって...上条くんのこと?」
- さやか「た、例え話だって言ってるじゃんか!」
- 慌てるさやかを余所に、冷静に頷くキユウベえ。
- キュゥベえ「べつに契約者自身が願い事の対象になる必然性はないんだけどね。前例もないわけじゃないし」
- マミ「...でも、あまり感心できた話じゃないわ」
- やや険しい声で異論を挿むマミ。
- マミ「他の人の願いを叶えるのなら、なおのこと自分の望みをはっきりさせておかないと。ーー美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」
- さやか「...」
- マミの言い様に、さすがに憮然と押し黙るさやか。狼狽えるまどか。
- まどか「マミさんーー」
- マミ「同じようでも全然違うことよ。これ」
- さやか「...その言い方は、ちょっと酷いと思う」
- マミ「ごめんね。でも今のうちに言っておかないと。そこを履き違えたまま先に進んだら、あなた、きっと後悔するから」
- さやか「...」
- さやか、しばし押し黙って考え込んでから、深呼吸し、頷く。
- さやか「...そうだね。あたしの考えがけかった。ごめん」
- さっぱりと謝罪するさやかに、安堵するまどか。マミも笑顔を返す。
- マミ「やっぱり、難しい事柄よね。焦って決めるべきじゃないわ」
- キユゥベえ「僕としては、早ければ早いほどいいんだけど」
- ぼやくキユウベえの頭を小突くマミ。
- マミ「駄目ょ。女の子を急かす男は嫌われるぞ」
- 笑うマミとさやか。まどかも釣られて笑、つものの、その胸の内はやや複雑。
- 口まどかの部屋
- 就寝間際、パジャマに着替えてベッドの上でごろごろしているまどか。傍らににはキュゥベえ。
- 公園でのさやかとマミの問答を思い出し、溜息をつくまどか。
- まどか「...やっぱり、簡単なことじゃないんだよね...」
- キユウベえ「僕の立場で急かすわけにはいかないしね。助言するのもルール違反だし」
- まどか「ただ、なりたいってだけじゃ、駄目なのかな...」
- ノートの落書きの変身プランを眺めるまどか。華麗に戦うマミを思い出し、その姿に自分を重ねて妄想する。
- キユウベえ「まどかは力そのものに憧れているのかい?」
- まどか「ゃ、そんなんじゃなくて...う~ん、そうなのかな? 私ってどんくさいし、何の取り柄もないし、だからマミさんみたいに絡好良くて素敵な人になれたら、それだけでもう充分に幸せなんだけど...」
- キユウベえ「まどかが魔法少女になれば、マミよりずっと強くなれるよ」
- まどか「へ?」
- 思わぬ言葉に、狐につままれたかのようなまどか。
- キユウベえ「もちろん、どんな願い事で契約をするかにもよるけれど...まどかが生み出すかもしれないソウルジエムの大きさは、僕にも測定しきれない。これだけの素質を持つ子と出会ったのは初めてだ」
- まどか「はは...何言ってるのよ、もう。嘘でしょ」
- キユウベえ「いやーー」
- そこに扉をノックする音。
- 知久「まどか、起きてるか?」
- まどか「うん?どしたの?」
- 知久「ママが帰ってきたんだが...ちょっと手伝ってくれないかな」
- 口鹿自家玄関
- 上がり框で、泥酔した詢子が潰れている。
- まどか「あー、またか...まったくもう」
- やや呆れ気味に苦笑いするまどか。
- 詢子「み、水...」
- 既に用意してあったコップの水を詢子に飲ませる知久。
- 知久「ともかくベッドまで運んで、着替えさせないと。ほら、そっち持ってくれ」
- まどかと知久、二人がかりで詢子を肩に担いで、寝室まで引っ張っていく。
- 詢子「ぐえええ...このスダレハゲ...呑みたきや手酌でやってろつつうの...」
- 譫言のように愚痴を漏らす詢子。
- 口両親の寝室
- 布団にくるまり、安らかな寝息を立てている詢子。
- 一仕事終えた知久とまどか、ほっと一息。
- 知久「ココアでも入れようか?」
- まどか「うん、お願い」
- ロダイニングキッチン
- 寝間着姿にガウンを羽織り、テーブルで差し向かいに座ってホットココアを啜る二人。
- まどか「うちで飲むときはちゃんと加減するのに...なんで外だとあんなに酔っぱらっちゃうかなあ。平気なうちに帰ってくればいいのに」
- 知久「会社勤めだと、飲むのも仕事のうちうて場合があるからね。残業だと思えば抜け出せないさ」
- まどか「嫌にならないのかな、そういうの...」
- 知久「嫌になることもあるだろうね。でもそれよりもっと頻繁に、働いてて良かったと思うことの方が多いのさ」
- いまいち納得できず、頬杖をつくまどか。
- まどか「なんでママは、あんなに仕事が好きなのかな。昔からこの仕事に就くのが夢だったーーなんて、ないよね?」
- 知久「ママは仕事が好きなんじゃなくて、頑張るのが好きなのさ」
- まどか「...?」
- 知久「嫌なことも辛いこともいっぱいあるだろうけど、それを乗リ越えたときの満足感が、ママにとっては最高の宝物なのさ。
- そういう意味で、今の難しくて大変な仕事は、とてもやり甲斐があるんだろうね」
- まどか「ママは...満足なのかな、それで」
- 知久「そりゃ、会社勤めが夢だったわけじゃないだろうけどさ。それでもママは、理想と思っていた生き方を通してる。そんな風にして叶える夢もあるんだよ」
- まどか「...生き方そのものを、夢にするの?」
- 知久「どう思うかは人それぞれだろうけどーー僕はね、ママのそういうところが大好きだ。尊敬できるし、自慢できる。素晴らしい人だってね」
- まどか「...うん」
- 父の笑顔に、表情を和ませるまどか。
- <bg>
- 口夜の学校
- 校庭の真ん中に漫然と作んでいるマミ。
- その前に、闇の奥からほむらが現れる。間合いを挿んで対峙するこ人。
- マミ「わざわざこんな時間に呼び出して、何の用?」
- ほむら「鹿目まどかと美樹さやか...あの二人をいつまで連れ回す気?」
- はなから冷ややかな面持ちで喧嘩腰のほむら。
- ほむら「分かっているの?あなたは無関係な一般人を危険に巻き込んでいる」
- マミ「彼女たちはキユゥベえに選ばれたのよ。もう無関係じゃないわ」
- ほむら「選ばれただけで契約は済ませていない。その先の選択に、あなたが干渉するべきじゃない。ーーなのに、あなたは二人を魔法少女に誘導している」
- マミ「それが面白くないわけ?」
- ほむら「ええ。迷惑よ。...特に鹿目まどか」
- マミ、ほむらの真意を見透かした(と勘違いして)日を細める。
- マミ「ふうん...そう、あなたも気付いてたのね、あの子の素質に」
- ほむらの眼差しがさらに険しくなる。
- ほむら「彼女だけは、契約させるわけにはいかない」
- マミ「自分より強い相手は邪魔者ってわけ?いじめられつ子の発想ね」
- 内心でかっとなるほむらだが、一旦目を閉じて気持ちを静める。
- ほむら「...ひとつの街に、魔法少女は一人で充分よ。今ここに二人いるだけでも多すぎる」
- マミ「同意しかねる言葉だけれど、あなたの前だと頷きたくなるわ」
- ほむら「あなたは戦いに向いてない。身を退くべきよ」
- マミ「勝手なこと言わないで。今日までこの街を守ってきたのは私ょ。そして、これからも」
- 両者の間に緊張が走る。一触即発の危機。
- マミ「...はっきりしたみたいね。お互い、どうあっても相容れそうにない」
- ほむら「あなたとは戦いたくないのだけれど」
- マミ「なら二度と会うことがないよう努力して」
- ほむらの側にこの場で仕掛けてくる意図がないと判断したマミは、踵を返す。
- マミ「話し合いだけで事が済むのは、きっと今夜で最後だろうから」
- 捨て台詞を残して去っていくマミ。ほむらは事態が思うように進まないことに苛立ち、歯噛みする。
- ほむら「...」
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