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- 1.序章
- 「日出~Einleitung, oder Sonnenaufgang~」
- ビスマルク: 鉄血艦隊所属のすべての艦船に告ぐ!
- ビスマルク: この日のために、我らはありとあらゆる力を蓄えてきた
- ビスマルク: この日のために、我らは幾度も好機を逃し、苦渋を舐めさせられ続けた
- ビスマルク: 課された試練は終わり、今や世界に我らが意志を示す時だ
- ビスマルク: 不屈の勇者には真の敗北などありえず、
- ビスマルク: そして真理は我が主砲の射程内にあり!
- ビスマルク: この先にもはや権謀術数や話し合いなど小細工は不要――
- ビスマルク: 我らが安息の海は、この黒鉄の力と赤き血潮を以て奪わねばならん!
- ビスマルク: すべての戦友たちよ!努力せよ!そして共に進軍せよ!
- ビスマルク: これこそが我が鉄血艦隊、そしてレッドアクシズの生き残る方法となるのだ!
- ビスマルク: 我らに大いなる勝利を!鉄血に大いなる栄光を!
- ――我らに大いなる勝利を!
- 艦船たち: ――鉄血に輝かしき未来を!
- 2a.第一楽章
- 「裏側の物語」
- 作戦海域【■■■■■】・未明
- プリンツ・オイゲン: というわけで、フッドは戦闘不能になり、ウェールズは南東方面に離れてるわ。これで静かになったわね
- プリンツ・オイゲン: ビスマルク、少し速力を落としてもいいかしら?この荒波でずっと全速力は少しキツイわ
- プリンツ・オイゲン: ロイヤルネイビーは今混乱状態になってるはずだから、追手が来るとしても少し後になりそうよ
- ビスマルク: 敵を侮らないで。ロイヤルネイビーがこのまま大人しく手を引くとは思えないわ
- プリンツ・オイゲン: ……………
- プリンツ・オイゲン: そっちの損傷は大丈夫?「あの力」を使ったとはいえ…
- ビスマルク: 平気よ。迫りくる敵に比べればこの程度大したことないわ
- プリンツ・オイゲン: ふーん。また強がっちゃって
- ビスマルク: オイゲン、隊列を維持して
- プリンツ・オイゲン: だーめ。こっちはもうクタクタ。そっちも少しコンディションを整えた方がいいわよ
- ビスマルク: あなた……!
- プリンツ・オイゲン: リーダーの無謀な強行を止めるのも部下の責務じゃなくて?
- ビスマルク: ……こういうところばかりはあなたに勝てないのね。オイゲン
- プリンツ・オイゲン: それはどうも
- 2b.
- プリンツ・オイゲン: あら、ネズミが尾行してきてるのね
- ノーフォーク: み、見つかっちゃいました!?
- サフォーク: あわわわ、早く打電を!
- プリンツ・オイゲン: ビスマルク、ちょっとあの子と遊んできてもいい?
- ビスマルク: 交戦を許可する。追い払え
- ビスマルク: ……でも深追いはしないで。こっちの場所はバレてるわ
- ビスマルク: 戦力の分散はできるだけ避けるべきよ
- プリンツ・オイゲン: ふふふ、了解~
- 2c.
- プリンツ・オイゲン: 追っ払ってきたわ。レーダーの反応も消えたし、結構遠くに逃げたみたいね
- プリンツ・オイゲン: で、次は何するの?そろそろロイヤルの主力艦隊がお見えになるんじゃない?
- ビスマルク: オイゲン
- プリンツ・オイゲン: ん?
- ビスマルク: こっちの損害は想定以上、このまま作戦続行するわけには行かないわ。鉄血に帰還するわよ
- プリンツ・オイゲン: でも…ビスマルク、本当に大丈夫?このまま直行するにしてもかなりの距離があるわ
- ビスマルク: あなたはそのまま帰還して。私は別ルートを取る
- プリンツ・オイゲン: 一人で帰るつもり?あまり名案とは言えないわ
- ビスマルク: 盟友の勢力下の海域がある。そこにたどり着ければいくらロイヤルだって簡単に手出し出来ないわ
- プリンツ・オイゲン: ヴィシアか……なんだ、やっぱりちゃんと考えてるじゃない
- ビスマルク: ……命令厳守よ。これ以上ワガママを許すわけにはいかないわ
- プリンツ・オイゲン: ………
- プリンツ・オイゲン: わかったわ。今は非常時だから、ね?
- ビスマルク: 時間がないから、すぐに出発して
- ビスマルク: そして全速力よ、安全な海域にたどり着くまで足を止めないでちょうだい
- ビスマルク: もう一度言うわ。これは鉄血艦隊のリーダーとしての命令よ
- プリンツ・オイゲン: 了解。幸運を祈るわ
- ビスマルク: そちらこそご武運を
- ビスマルク: ……我らに大いなる勝利を
- プリンツ・オイゲン: ……鉄血に輝かしき未来を
- 3a.第二楽章
- 「力への渇望」
- ビスマルク: ……あなたたち――「セイレーン」を信じる理由はないわ
- オブザーバー: フフフ♪まあ、大人しく私の話を聞きなさいな。鉄血艦隊の指導者さん?
- ビスマルク: くっ……!
- オブザーバー: このままいけば、鉄血はこの世界でも消されるわよ?
- オブザーバー: あなた方の「相手」は…そう、あなた方が守る人を傷つけ、富を貪り、あなたの生命線たるその青き航路をも我が物にする
- オブザーバー: 屈辱的な敗北とはこういうものかしら?
- オブザーバー: 仲間たちの誰一人逃れることなくこの敗北を味わうことになるの。特にあなたの大事な妹…ティルピッツ……フフフ
- オブザーバー: まさか、あなたの知っていた「第11段落」をもう一度味わいたいのかしら?
- ビスマルク: ほざくな!
- ビスマルク: 鉄血の存在は、そんなちっぽけな敗北一つ二つ程度で消えてなくなるものか!
- ビスマルク: 戦友と共に勝利を掴み、人類の敵であるあなたたちをもう一度駆逐するまでよ!
- オブザーバー: フフフ…そういえば人間の残した言葉にこういうものがあるな……
- オブザーバー: 「ヒトは木と同じく、高みへ明るみへと上へ伸びていこうとするほど、その根は強く向かっていく。地へ、下へ、深みへ、――悪のなかへ」
- オブザーバー: そうね。あなたは光に憧れないのかしら?
- ビスマルク: セイレーンと交わす言葉はあるまい……!Feuer!
- オブザーバー: この程度の力では、あなたの願いは到底叶いそうにないわ
- オブザーバー: よく考えてご覧なさい?私たちがあなたたちに求めているものは一体何なのかしら?
- オブザーバー: その貧弱な技術力?無いに等しい財産?それとも既に手中に収めているこの「海」
- オブザーバー: あなたたちは――何も、持っていないわよ
- ビスマルク: …………
- オブザーバー: ロイヤルネイビーの艦隊の力だけでもあなたたちの数倍、その気になれば鉄血の航路をいつでも封鎖可能……
- オブザーバー: 生存を脅かす敵はセイレーンではなく、ロイヤルだと、あなたならこの大局をわかっているはずだわ
- オブザーバー: こう見えても、自由だの正義だのを抜かす偽善者たちと違って、私はあなたのことを買ってるつもりよ?
- オブザーバー: だからこうしてあなたに未来を開く「鍵」を渡したの。それがもたらすのは破滅か、それとも希望か……
- オブザーバー: 禁断の力を飲み干して未来を切り開くのか、それとも既知に拘り悲愴な終焉を辿るか、全てはアナタ次第
- オブザーバー: ――また会えるわ。フフフ……
- ビスマルク: …………私はずっと震えていた
- ビスマルク: あまりにも大きすぎる力の差――協議どころか、話し合いにすらなかった。私は「あの力」を受け入れるしかなかった
- ビスマルク: 私の「名前」……あの御方なら、一体どんな選択をするのかしら……
- ヴィクトリアス: ふっふん、目標のビスマルクを発見よ!航空攻撃、やってもいいかしら?
- キング・ジョージ5世: 良かろう。許可する。空母の力、大いに見せつけるのだ
- ヴィクトリアス: 了解!航空母艦ヴィクトリアス、攻撃隊発進!――女王陛下に栄光を!
- 3b.
- ビスマルク: これは…空母艦載機か?
- ビスマルク: グラーフ・ツェッペリンさえここにいれば…と、弱音を吐くのはまだ早いか
- ビスマルク: この程度の攻撃で鉄血の戦艦を沈められると思わないことだ!
- ビスマルク: 対空火力、敵艦載機攻撃隊に集中!
- ビスマルク: ――Feuer!
- 3c.
- ヴィクトリアス: ビスマルクに命中弾確認!…って、速力全然落としていないじゃない!
- ヴィクトリアス: 攻撃隊を回収したのち、第二波を用意するわ!見てなさい!
- キング・ジョージ5世: ははは!よくやった、ヴィクトリアス!
- キング・ジョージ5世:(……しかし、あの損傷で連戦してなお速力を維持できているとは、恐ろしい戦闘力だ)
- キング・ジョージ5世:(このままヴィシアの海域に逃げられたら少しまずい)
- キング・ジョージ5世:(どんな手を使っても、あのスピードを落とさなければ…!)
- ヴィクトリアス: あんたのところのH部隊、そろそろ到着するわ!あと30分で接敵よ!
- キング・ジョージ5世: ふむ、ロイヤルネイビーの主力艦が総出したってことか
- キング・ジョージ5世: 王家の栄光にかけて――ビスマルクを捕捉し、撃破する!
- 4a. 第三楽章
- 「苦悩と情熱」
- U-556: ビスマルクさま、ビスマルクさま、お待ち下さい!
- ビスマルク: 潜水艦の子か。うむ、おはよう
- U-556: あの!ええとビスマルクさまの昨日の演説が素晴らしくて、このU-556、一生忘れられそうにないんです!
- ビスマルク: …………
- U-556: つ、つまりはですね!ビスマルクさま!ひとつだけお願いできないでしょうか!
- ビスマルク: それは?
- U-556: は、はい!えっと、実はあたし今日就役したばかりで!
- U-556: あたしの好きなおとぎ話的にね!ええと、「今日からこのU-556、尊き騎士ことサー・パーシヴァルのように、海を駆け巡る!」……ど、どうですか?
- ビスマルク: おめでとう。鉄血のために力を尽くしなさい
- U-556: ああそうじゃなくて!ええと、だからね、すーーーっごく厚かましくて申し訳ないというか失礼というか恥ずかしいですけど……
- U-556: ビスマルクさまから出陣のご祝福をいただければこのU-556、より一層粉骨砕身して頑張りたいと思います!
- ビスマルク: そ、そうだ!あたしの得意技をお見せします!
- U-556: ええい!逆立ち潜航!
- どぼーん、とU-556はバク転して海に突っ込んだ。
- ビスマルク: …………ふふっ
- よくわからないと定評のある特技に、流石にビスマルクも頬を綻ばせた。
- U-556: ビスマルク…さま?
- ビスマルク: ううん、なんかほかの子とは違って少し感心したわ
- U-556: ビスマルクさま、すごく威厳があって近づき難いって聞いたけど……
- U-556: 全然そんなことないです…潜水艦のあたしもこうして会話できるし、本当は親切なお方なんですね!
- ビスマルク: (…私、そう思われているのかしら……少し凹むわ)
- 心の中でそう思っていながらも、ビスマルクは笑顔を引っ込めて、海の中から顔を出しているU-556に別れを告げた。
- ビスマルク: あなたの願い、しかと聞き入れた。では
- U-556一人が海に残された。
- U-557: 556、どうしたの?……元気なさそうね
- U-556: うん…………
- U-556: ビスマルクさま、出陣の祝福をしてくれると約束したのに、まだ来ていないよね…
- U-557: ビスマルクさまはお忙しいから…多分覚えていないと思うよ…?
- U-556: うん…そうよね。戦果を上げて、いつかビスマルクさまに柏葉勲章をつけてもらって……
- U-556: そう!憧れの柏葉騎士章!それこそこの海のパーシヴァルであるU-556に相応しい!ふふん!
- U-556: よぉし!潜水艦U-556、出撃するよー!……ん?
- 視線の先に饅頭たちが集まっているのに気づく。そして――
- ビスマルク: 我が鉄血艦隊の新しい仲間が、今初陣に挑もうとしている
- ビスマルク: その体躯が小さくとも、戦力として頼もしいことこの上ない。
- ビスマルク: さあ、新たな勇者よ!このビスマルクは鉄血艦隊を代表して、そなたに出陣の祝福を捧げよう!
- ビスマルク: その武名を大洋に轟かし、その戦果で敵を震え上がらせるのだ!潜水艦U-556、ご武運を!
- ビスマルク: 饅頭たちで構成される軍楽隊は、戦士の出征を祝福する楽章を奏で始めた。
- 世界最大レベルの戦艦は、小さな潜水艦に祝福を送ったのだ。
- U-556: ビスマルクさま…!
- 憧れのビスマルクを前に、U-556は一つ決心をした。
- ビスマルクさま、せ、センエツながらもう一つお願いが……
- ビスマルク: 欲張りな子ね。なんのお願いかしら?
- U-556: あの……「アネキ」と呼ばせてください!
- ビスマルク: ………ん?
- 予想外のお願いに流石にビスマルクも面食らった。
- U-556: はい!感謝と尊敬を込めて…ええと、「ビスマルクのアネキ」と呼んでもいいでしょうか!
- ビスマルク: まあ……うん、いいわ
- U-556: び、ビスマルクのアネキ!ありがとうございます!
- ビスマルク: ……っ
- (そう言えばティルピッツにすらここまで親しく呼ばれたことはないわね……)
- U-556: あっ、ビスマルクのアネキ、出撃の前にこれをお渡ししたいと思います!
- U-556が一枚の紙切れをビスマルクに渡した。
- ビスマルク: これは……?
- U-556: 昨日書かせてもらいました誓いの証明書です!
- U-556: では、誓います!――いつでもどこでもビスマルクのアネキをお守りします!
- ビスマルクは優しく微笑んで、U-556に向かって頷いた。
- U-556: あ!ごめんなさい!今は出撃ですね!……ビスマルクのアネキ、先に行ってきます!
- U-556: また今度お願いします!U-556、発進!
- U-556は艤装に乗り、U-557たちと一緒に母港から出発した。
- ビスマルク: 妹、か…悪くないわね……
- ビスマルク: …………
- ビスマルク: ティルピッツも大丈夫かしら………
- 海の神さま、そしてありとあらゆる川・湖などなどの神さまに誓って、
- あらゆる飛行機と魚雷からビスマルクのアネキをお守りし、
- ビスマルクのアネキがもし傷ついたら
- いつでもどこでも駆けつけ、引っ張ってでも母港にお連れ帰ります
- ――海のパーシヴァルこと、U-556より
- レナウン: ロイヤルネイビーH部隊所属――巡洋戦艦レナウン、貴艦の要撃の命により参りました!無駄な抵抗をやめてください!
- ビスマルク: くっ…!新手か…!
- レナウン: 王家のすべての主力艦がここに集結してきています!逃しませんっ!
- ビスマルク: ……どうやら一つ見落としていることがあるようだな
- ビスマルク: 砲撃戦では遅れを取るだろうが、今の状況ならこちらが有利!
- ビスマルク: 悪いが、翻弄させてもらう!全速前進!
- アーク・ロイヤル: 思った通り抵抗してきたな!
- アーク・ロイヤル: キングジョージ5世の言った通りだ、まずはその速力を鈍らせる!
- アーク・ロイヤル: ソードフィッシュ隊、発進!ビスマルクを取っ捕まえるぞ!
- 4b.
- ビスマルク: そろそろ終わりにさせてもらう!
- アーク・ロイヤル: 逃すか!818中隊、狙え!
- ビスマルク: くっ…死角から……!?
- ビスマルク: 回避が……間に合わない……!
- ビスマルク: スクリュー損傷……違う、艤装に食い込んだ?
- ビスマルク: 複葉機と侮ったせいね……不覚……
- アーク・ロイヤル: 周辺のロイヤル艦隊に告ぐ。敵艦ビスマルクは航行能力を失いつつある!繰り返す、ビスマルクは航行能力を失いつつある!
- アーク・ロイヤル: 今から位置を打電する!すぐに増援を!
- レナウン: ビスマルク、アーク・ロイヤルの言う通り貴艦の航行能力は致命的な損傷を受けています。無駄な抵抗はやめてください!
- ビスマルク: …………
- ビスマルク: …………違う。
- ビスマルク: 私は、ここで終わるべきではない…!
- ビスマルク: たとえ作戦が失敗したとしても、例え航行能力を失ったとしても…
- ビスマルク: 私には守るべき仲間がいて、叶えたい夢がある…!
- ビスマルク: 私にはまだ、「あの力」がある……!
- ビスマルク: さあ、銃身が焼きつくまで、砲弾を撃ち尽くすまで……
- ビスマルク: 戦わせてもらうッ!
- ビスマルク: ――鉄血に、大いなる栄光を!
- 5a.第四楽章
- 「黒鉄の挽歌」
- 「ロイヤルネイビーとは、王家の栄光、そして力強さを象徴するもの」
- 「平和を望むなら、戦いに備えよう」
- 「いかなる時にも優雅に、華麗に、ロイヤルレディらしく」
- 「各人は己が責務を全うし、ロイヤルのために尽くすことを願う」
- 「……この戦いはすべきことではないかもしれませんが、世界の平和と均衡のためには、力を振るう時もあるのです」
- 「共に参りましょう。レパルス、レナウン、ウェールズ」
- 「ventis secundis(佳き風とともに)――」
- 『陛下に、栄光を』
- 5b.
- キング・ジョージ5世: ビスマルク、これで最後だ
- キング・ジョージ5世: 抵抗をやめたまえ。陛下の名のもとに、あなたをロイヤルに連行し、アズールレーンを裏切った審判を受けてもらうぞ――
- ビスマルク: あなたたちアズールレーンに私を裁く権利などないわ
- ビスマルク: それよりキングジョージ5世、あなたは本当は私と戦艦としての戦いをしたいのではなくて?フッドを傷つけたかどうかは関係なく
- ビスマルク: ……優雅だの栄光だの、くだらない理想と信条のために自分の願望を抑え込むその偽善こそ、私が軽蔑する理由よ
- キング・ジョージ5世: ははは、さすがは鉄血のリーダー、よく言い当てたな
- キング・ジョージ5世: だが一つ訂正させてもらおう。優雅と栄光は我がロイヤルネイビーの伝統にして誇り、あなたの言うような心に抑え込むための存在などではない
- キング・ジョージ5世: まあ、そのへんは陛下に会うときに気が済むまで語らせてもらうとして……
- キング・ジョージ5世: 最後にもう一回だけ問うが――
- ビスマルク: Feuer!
- キング・ジョージ5世: 至近弾か!?ふん、初撃からやってくれる…!
- キング・ジョージ5世: ならば望み通り――
- キング・ジョージ5世: 全艦隊、砲撃用意!ロイヤルネイビーの栄光のために撃ちまくれ!
- 5c.
- キング・ジョージ5世: 大したタフさだ…よもや私の14インチ砲すらことごとく弾いてくれるとは…!
- ビスマルク: 旧式の装甲でもこの距離では防御性能が上回るわよ!乱戦に持ち込めばいくら相手が多くても――
- ビスマルク: 右舷より砲撃!?
- ビスマルク: この火力……まさか……
- ロドニー:戦艦ロドニー、これより援護します!
- ロドニー:さあ、ビッグセブンの火力を味わってもらいますよ!
- ロドニー:主砲、ビスマルクに火力全開!
- 5d.
- ビスマルク: まだよ!
- ビスマルク: 戦艦の砲撃戦で!
- ビスマルク: 沈められるのは…!
- ビスマルク: 鉄血戦艦として本望よ!
- ビスマルク: くっ…!ドーラが!?
- ビスマルク: ここが限界になるのか……!?
- ロドニー:艦橋に照準、全砲門――
- ロドニー:きゃっ!?視界外からの砲撃!?
- ロドニー:違っ…これは…まさか、そんな!?
- ロドニー:ジョージ、全艦に後退命令を出してください!セイレーンよ!
- テスター: そこまでよ、ロイヤル
- テスター: このままサンプルを壊してくれたら迷惑だわ。下がってなさい
- キング・ジョージ5世: セイレーン!?こんなときに…!
- キング・ジョージ5世: 全艦隊、一旦後退して陣形を立て直せ!
- 6a.第五楽章
- 「知識の結晶」
- テスター: ビスマルク、こんなにボロボロになって…「あの力」を使うつもりになったのかしら?
- ビスマルク: 手を出すんじゃないわ。これは私たちの問題よ
- テスター: オブザーバーが教えたはずよ。あなたがその気になれば、これしきの敵など片手間で蹂躙できる
- ビスマルク: フッドと戦ってわかったわ
- ビスマルク: そう、あなたたちセイレーン技術を少しでも取り入れてしまった私がいかに愚かだったかと
- ビスマルク: 「あの力」だけは決して私たち…いいえ、ヒトの手に負えるものではない
- ビスマルク: 廃墟、残骸、煙、炎、悲鳴、赤い血、殺戮に満ちた黒い海――
- ビスマルク: あの「キューブ」が見せてくれたおぞましい光景の連続こそ、「あの力」の源よ
- ビスマルク: このままでは、私は私ではなく、あなた達の望む兵器になってしまう
- テスター: ……
- ビスマルク: オイゲンに先に行かせたのは、ここから何が起こるかわからなかったから
- ビスマルク: でも今ははっきりわかるわ。私は、ここですべてを終わらせる……!
- テスター: ターミナルに状況報告:テスト結果No.151、ネガティブ、特異点に該当せず、次の命令を
- ???: 了解。回収プロトコルの執行を許可するわ
- ビスマルクはテスターに砲門を向けて攻撃した
- ビスマルク: 私は鉄血艦隊のビスマルク――
- ビスマルク: 鉄血の仲間のために、私たちの敵をすべて倒す!
- テスター: ……
- テスター: No.151、テスト結果を修正。覚醒の観測を開始して
- ???: 変化を確認。覚醒フローの続行をお願い
- テスター: プロトコルに準じて、エリア内の目標を排除。覚醒対象の独立性を確保する――
- キング・ジョージ5世: ロドニー、損傷報告を!
- ロドニー: ダメージコントロールが効いてます!A砲塔が無力化しましたけど、まだ戦えます!
- キング・ジョージ5世: 良し!セイレーンも鉄血も、逃すんでないぞ!
- 6b.
- レナウン: 巡洋戦艦レナウン、戦闘に参加します!撃て!
- アーク・ロイヤル: 航空母艦アーク・ロイヤル、参るぞ!
- ヴィクトリアス: 同じく、航空母艦ヴィクトリアス!
- ヴィクトリアス: ソードフィッシュ隊、発進!
- キング・ジョージ5世: 制空権は任せた!私はロドニーとやつの守りを貫くことに集中する!敵を一隻たりとも逃がすな!
- テスター: ふん、この戦い方、全然優雅じゃないのね!
- テスター: 戦術でも何でもなく、ただのゴリ押しじゃない……!
- テスター: (……テストのデータは変よ)
- テスター: (オブザーバーのセンサーほどではないけど、こっちでも熱量の観測値が狂っている)
- テスター: (ビスマルクに渡した「キューブ」の影響か……?)
- テスター: ターミナル、観測データの提供を――
- テスター: キューブの活性化テストを行うよう申請する――
- ???: ■■■■■■■■■■■■■■――
- テスター: (通信が………遮断されている……?)
- テスター: …………
- テスター: (まあ、いい機会だし…「キューブ」に関するテストデータをもっと集められるね)
- キング・ジョージ5世: : セイレーンの動きが鈍くなった!全力で攻撃せよ!
- テスター: (エネルギーレベル、なおも上昇…ふふふ、その怒りと火力をもっとぶつけるがいい……)
- 激しい轟音。
- セイレーン、そしてビスマルクを襲ってくる砲火は無数の水しぶきを上げて、そして――
- まるで炎に触れたかのように、水しぶきが一瞬で蒸発し、戦場は霧に包まれた。
- アーク・ロイヤル: この霧……艦載機の視野も観測装置のデータも何も見えないぞ!
- テスター: ……
- テスター: 人間の歴史とは技術による進化の歴史……
- テスター: 進化のためなら、どんな犠牲も厭わない――
- キング・ジョージ5世: ……まさか…
- キング・ジョージ5世: 緊急回避!!
- キング・ジョージ5世: ————————————————
- 高熱をこもった白き光が、戦場を覆う霧を切り裂いた。
- 光を放ったのが「彼女」とは――
- キング・ジョージ5世: ビスマルク……!
- キング・ジョージ5世: 全艦、戦闘配置!
- 7a. 第六楽章
- 「再生」
- ビスマルク: はあああああ!!
- キング・ジョージ5世: くっ!装甲が…!
- キング・ジョージ5世: 気をつけろ!ただの砲撃ではない!
- キング・ジョージ5世: (戦艦クラスの装甲でも、一撃で……!?)
- ビスマルク: ……
- そこに立っているのは確かに「彼女」――ビスマルクだ。
- その艤装にはうっすらと赤い光をまとっている。
- 一方、セイレーンのテスターはどこかに消えていった。
- ビスマルク: 「カミハ私の願イ、叶えてくレル……」
- ビスマルク: 「だが、カミナドイナイ……ワタシガ、カミ二ナラナイカギリ…!」
- キング・ジョージ5世: これは……セイレーンの力に飲み込まれたのか…!
- キング・ジョージ5世: ……ビスマルク、陣営こそ違えど、あなたのことは尊敬している
- キング・ジョージ5世: 戦艦としての性能ではなく、鉄血艦隊を率いるカリスマでも、セイレーンの技術をいち早く取り入れるその決断力でもない。
- キング・ジョージ5世: 仲間を守るために己の犠牲も惜しまない――その気高さこそ私が、我がロイヤルネイビーが憧れているのだ
- キング・ジョージ5世: もし、セイレーンの力がその気高さを奪ったというのなら――
- キング・ジョージ5世: このキングジョージ5世が、栄誉のある最期をくれてやろう!
- 7b.
- キング・ジョージ5世: ようやくここまで近づかせてくれたな。ビスマルク
- キング・ジョージ5世: フッドを傷つけた時はセイレーンの力を用いたと聞いた
- キング・ジョージ5世: それが今の力とはどういう関係かわからないが……どっちにしても変わらない
- ビスマルク: 「…………」
- キング・ジョージ5世: ロイヤルの栄光を賭けてあなたを打倒してみせよう!
- ビスマルク: 「ロイヤルノ……エイコウ……」
- キング・ジョージ5世: 全艦、火力全開!
- 7c.
- ビスマルク: はあ……はあ……はああああああ!!
- 制御を失った力の奔流が近くのセイレーンの量産型をブラックホールのように吸い込み、その姿を跡形もなく消し去っていく
- キング・ジョージ5世: セイレーンの艦船が…吸い込まれている…!?
- ロドニー: セイレーンの力が暴走しています!
- アーク・ロイヤル: それだけじゃない!ビスマルクがこちらを狙っている!今の状態で直撃を受けたら……
- キング・ジョージ5世: くっ……!
- キング・ジョージ5世: ………………
- キング・ジョージ5世: ………
- キング・ジョージ5世: なにも、起きなかった…?
- セイレーンの艦船も、破壊の力を振るう光も、戦場を覆っていた霧もまるで最初からなかったかのように消えた。
- ロイヤル艦隊から遠く離れた場所に、艤装の大半が破壊され、重傷を負っているビスマルク、そしてテスターだけがそこで佇んでいた。
- ビスマルク: はあ…はあ……はあ…………
- ビスマルク: これが……限界、か
- テスター: 自分で接続を切ったとは……キューブとの融合がやっぱり十分ではなかったか
- ビスマルク: ふふ、悔しいわ……「あの力」を使わないよう必死に抑えていても
- ビスマルク: 結局、一瞬の心の弱みをつかれて……
- ビスマルク: あの力に飲み込まれかけていたのね………
- テスター: ……
- テスター: 報告:No.151、キューブの活性化の影響を単独で脱したことから、特異点となる素質が高レベルと推定。全体的なデータは目標値に未達…
- ビスマルク: セイレーン、あなたたちの本当の狙いは今でもわからないが……
- ビスマルク: 私たちの誇り…人類の誇りを、あなたたちに踏みにじらせはしない!
- ビスマルク: …………………
- ビスマルク: 、私は負けるべくして負けるか、それとも勝つか……
- ビスマルク: 私がここで沈むか、それとも生き残って、仲間たちの元に帰れるかは……
- ビスマルク: その運命は、私たち自身の力で決める……!
- ビスマルク: ――鉄血に輝かしき未来を!
- ロイヤル艦隊のいる方向に向けて、ビスマルクの最後の主砲が鳴り響く。
- 測距装置も照準装置もほぼ完全に破壊されたためか、砲弾はロイヤルの艦船から大きくハズレた。
- ヴィクトリアス: 照準もままならないのに、反撃してくるなんて……
- ヴィクトリアス: 一体どうしてそこまで……
- キング・ジョージ5世: ビスマルク……やはりこの結末を選んだのか
- キング・ジョージ5世: 潔いとはこういうものだ。敬意を込めて最後の攻撃をくれてやろう
- キング・ジョージ5世: 全艦、ビスマルクに火力を集中せよ!
- ビスマルク:(そうか……)
- ビスマルク:(まだ……無理のようね……)
- ビスマルク: (大洋をも制する……)
- ビスマルク: (最強の海軍、は……)
- ビスマルク: 待ちなさい!
- オブザーバー: まだ何か聞きたいことがあるの?ビスマルク
- ビスマルク: あくまで可能性の話よ。あなたたちが観測…いや、演算できる「未来」の中で、もしや…………
- オブザーバー: ないわよ、そんなの
- ビスマルク: ………………っ!
- オブザーバー: 人類史というデータはとてつもなく膨大なの。貴女の存在などその中のごくわずかな一欠片に過ぎないわ
- オブザーバー: そんなのわざわざリソースを消費してまで演算するものでもないし、そもそもあなたがそれを知ったところで何も変わらないわ
- オブザーバー: 戦うために生まれたあなたは、戦いの中で沈むの
- オブザーバー: あの「再現」の戦いで生き残れるかどうかに関係なく、それは決して変わらないわ
- ビスマルク: ……違う。そんなことではないわ
- ビスマルク: 私が知りたいのは私自身ではなく、鉄血の「未来」よ
- ビスマルク: この世界の鉄血の人間たち、私の仲間たち……そしてティルピッツ
- ビスマルク: 彼女たちの「未来」は変えられるのだろうか
- オブザーバー: ……………
- オブザーバー: 面白いサンプルね。あなた。私の予測の優先順位で一番低い回答をしてくれるなんて
- オブザーバー: そうね。もし方法があると言ったら、大いなる責任を背負っているあなたは何をするの?鉄血艦隊の指導者さん?
- ビスマルク: ……あらゆる手を使うまでよ
- ビスマルク: 戦艦ビスマルクであると同時に、私は仲間たちを、「鉄血」を守る存在
- ビスマルク: 役目を果たすためなら、なんだってしてやるわ
- オブザーバー: ふふふ……気が変わったわ。あなた、もしかしたら「本当に」運命を変えられるかもしれないのね
- オブザーバー: いいわ。私たちの力を使って、この世界を変えてみなさいな
- オブザーバー: あなたが「ビスマルク」という存在をもし超克することが出来たら、その方法が自ずと見えてくるはずよ
- オブザーバー: 私たちはその先であなたを待っているわ――
- ビスマルク: ………確かそういう話があったわね
- ビスマルク: ………確かそういう話があったわね
- ビスマルク: 「音楽は心を違う感情を呼び起こす――戦場にいるような荒々しい激情か、田園にいるような清々しい安逸か」
- ビスマルク: 今は、少し静かに音楽を聞きたいわ……
- ビスマルク: もしかしたら私、少し疲れたのかしら……
- ビスマルク: 鉄の規律と…血の栄誉……
- 私の名の込められた意味…私は、鉄血を………
- (ティルピッツ……会いたいわ……)
- ロドニー: これで…終わり、ですよね……
- ヴィクトリアス: ふぅ…………
- キング・ジョージ5世: うむ、セイレーンもこの海域から消えたし、私たちの勝利で間違いない
- レナウン: 鉄血、そしてセイレーン…手応えのある勝利ですね
- キング・ジョージ5世: ……
- キング・ジョージ5世: (あの最後の砲撃は、セイレーンの力によるものではなく、ビスマルク自身の砲撃だったな)
- キング・ジョージ5世: (……あなたの覚悟、よくぞ見せてくれた)
- キング・ジョージ5世: ――諸君、今日はよく戦ってくれた。将来数倍の敵に囲まれようが、今日の戦いを思い出してほしい
- キング・ジョージ5世: そして、我がロイヤルネイビーの栄光と伝統を貫いてほしい
- キング・ジョージ5世: 陛下に栄光を――
- みんな: 陛下に栄光を――
- キング・ジョージ5世: (願わくば、ビスマルク、あなたともう一度手合わせできれば…)
- 7d.
- U-556: 救援信号が近い……この残骸ってもしかして……
- U-556: ビスマルクのアネキがピンチよ!!
- U-556: こうしちゃいられない…!U-556、全速力よ!
- U-556: はあああああ――!
- U-556: ビスマルクのアネキ、待ってて!
- U-556: あたしがきっと守ってみせるから!!
- 海の神様に誓います
- 海でも湖でも、川でも細流でも
- 飛行機と魚雷からビスマルクのアネキをお守りし
- いつでもどこでも、ビスマルクのアネキが傷ついたら
- 引っ張ってでも、母港までお連れします!
- 「だから、今度こそ、きっと――」
- 7e.
- ティルピッツ: そこのあなた、母港の海域でイタズラをしないことよ。所属を言いなさい
- U-556: ふ、ふふふふ……柏葉勲章受章者、海のパーシヴァルことU-556とはあたしのこと!
- U-556: ティルピッツのアネキ、おはようございまーす!
- ティルピッツ: これ以上勝手に騒いだら人を呼ぶわよ
- U-556: ふふん、U-556はそう簡単に捕まらないですよ!
- U-556: あ、せっかくですから、ティルピッツのアネキ、これを真似してみてー
- ティルピッツ: ……?
- 艤装で一瞬だけ身体を浮かし、U-556はどぼーん、とバク転して海に突っ込んだ。
- ティルピッツ: …………ちょっと!!
- ティルピッツは拡声器を片手にU-556に注意し続けた。
- U-556: ティルピッツさん、冷たい人って聞いたのに、あんな顔もするんだ……
- U-556: やっぱりビスマルクのアネキと似ているね!
- U-556: 556、任務を頑張っちゃうぞー!
- 7f.
- オブザーバー: キューブで収集した情報の解読は失敗したのかしら
- テスター: 残念だけどそうね。それ以外にも色々と面白いデータを集めたが
- テスター: にしても、なぜビスマルクをテストの対象にした?彼女以外にも、あなたにとって「王手<Major pieces>」になれる子は一杯いるのに"
- オブザーバー: 鉄血の敗北は未来の確定事項よ。あら、たしか人間にはこういう物語があるわね――
- オブザーバー: 「神の声が聞こえる踊り子は、神の奏でる曲で踊るけど…」
- オブザーバー: 「神の声が聞こえない人間からすれば、彼女は狂人以外何者でもないの」
- オブザーバー: 彼女とよく似合う悲劇の物語ね。ふふふふ
- テスター: 今の例え方、この時代の人間に似ているのね
- オブザーバー: 旧文明の文献の解析時に少しインスパイアされただけよ
- オブザーバー: 文明の芸術遺産の保存も、私たちに任されたタスクのひとつなのではなくて?
- テスター: …………
- テスター: そんなことより、あなたが注文した鏡面海域が完成したけど
- テスター: テストの内容はどんなものにするつもり?
- オブザーバー: あなたの集めたデータのおかげで、この世界の鉄血陣営の「素体」がほぼ完成したわ
- オブザーバー: 鏡面海域に映し出される者――「鏡映されし異色」は、どんな結果を映し出してくれるのかしら?ふふふ……
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