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1
カルナ
2
【表記】
3
【俗称】
4
【種族】サーヴァント(APorムーンセル)
5
【備考】
6
【切札】
7
8
【設定】
9
【ステータス】
10
ランサー
11
筋力B 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具EX
12
ランチャー
13
筋力B 耐久A 敏捷A 魔力B 幸運A+
14
【クラス別スキル】
15
対魔力:C
16
二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
17
大魔術、儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
18
ただし宝具である黄金の鎧の効果を受けているときは、この限りではない。
19
20
【固有スキル】
21
貧者の見識:A
22
相手の性格・属性を見抜く眼力。
23
言葉による弁明、欺瞞に騙されない。
24
天涯孤独の身から弱きものの生と価値を問う機会に恵まれたカルナが持つ、相手の本質を掴む力を表す。
25
26
騎乗:A
27
幻獣・神獣ランクを除くすべての獣、乗り物を自在に操れる。
28
『マハーバーラタ』では戦車を駆り、戦場を走る姿が描かれている。
29
ライダーのクラス適性も備えるほどランクが高い。
30
31
無冠の武芸:-
32
様々な理由から他者に認められなかった武具の技量。
33
相手からは剣、槍、弓、騎乗、神性のランクが実際のものより一段階低く見える。
34
真名が明らかになると、この効果は消滅。
35
36
魔力放出(炎):A
37
武器に魔力を込める力。
38
カルナの場合、燃え盛る炎が魔力となって使用武器に宿る。
39
このスキルは常時発動しており、カルナが握った武器はすべてこの効果を受けることになる。
40
41
神性:A
42
太陽神スーリヤの息子であり、死後にスーリヤと一体化するカルナは、最高の神霊適正を持つ。
43
この神霊適正は神性がB以下の太陽神系の英霊に対して、高い防御力を発揮する。
44
45
【宝具】
46
『日輪よ、具足となれ(kavacha & kundala カヴァーチャ&クンダーラ)』
47
カルナの母クンティーが未婚の母となることに恐怖を感じ、
48
息子を守るためにスーリヤに願って与えた黄金の鎧と耳輪。
49
太陽の輝きを放つ、強力な防御型宝具である。
50
光そのものが形となった存在であるため、神々でさえ破壊は困難。
51
カルナの肉体と一体化している。
52
53
『梵天よ、地を覆え(Brahmastra ブラフマーストラ)』
54
カルナがバラモンのパラシュラーマから授けられた対軍、対国宝具。
55
クラスがアーチャーなら弓、他のクラスなら別の飛び道具として顕現する。
56
ブラフマー神の名を唱えることで敵を追尾して絶対に命中するが、
57
呪いにより実力が自分以上の相手には使用できない。
58
59
『梵天よ、我を呪え(Brahmastra kundala ブラフマーストラ・クンダーラ)』
60
隠されたカルナの宝具。
61
奥の手。
62
飛び道具のブラフマーストラに、カルナの属性である炎熱の効果を付与して発射する。
63
もとより広い効果範囲を持つブラフマーストラの効果範囲をさらに広め、威力を格段に上昇させる。
64
その性能は核兵器に例えられるほど。
65
66
『日輪よ、死に随え(Vasavi shakti ヴァサヴィ・シャクティ)』
67
神々をも打ち倒す、一撃のみの光槍。
68
雷光でできた必滅の槍。
69
インドラが黄金の鎧を奪う際、カルナの姿勢があまりにも高潔であったため、
70
それに報いねばならないと思い与えた。
71
黄金の鎧と引換に顕現し、絶大な防御力の代わりに強力な"対神"性能の槍を装備する。
72
73
74
黄金の鎧
75
インド神話において、
76
英雄カルナが身にまとっていた黄金の鎧と耳輪。
77
カルナの母クンティーが未婚の母となる事に恐怖を感じ、
78
息子を守るためにスーリヤに願った鎧と耳飾り。
79
80
太陽そのものの輝きを放つ、強力な防御型宝具。
81
光そのものが形となったものであるため、
82
神々でさえ破壊は困難であり、
83
インドラはこれを無効化しようと尽力した。
84
85
神話において、インドラはバラモン僧に変化して
86
カルナの館を訪ね、カルナが御前の沐浴をしている時に
87
“貴方の持ち物をいただきたい”とせまったという。
88
89
カルナには沐浴の時にバラモンに請われたら断らない、
90
という誓いがあった。
91
彼はインドラの罠と知りながらもこの申し出を受け、
92
求められるまま、
93
唯一の出自の証ともいえる鎧を差し出したという。
94
95
             ◆
96
97
神話では奪われたままだが、
98
サーヴァント化したカルナはこの鎧を所持している。
99
見た目こそ重厚になってしまうが、物理・概念とわず
100
あらゆる敵対干渉を削減する無敵の鎧である。
101
102
これがあるかぎり、カルナにはダメージ数値は
103
十分の一しか届かない。
104
105
106
施しの英雄
107
『マハーバーラタ』において
108
施しの聖者と言われたカルナの特長。
109
110
感情表現の乏しいカルナだが、
111
自らを拾い上げたもの、
112
擁護したものを貶められる事には憤怒する傾向にある。
113
それが利益のみの関係であれ、
114
恩義には恩義で酬いるのがカルナの在り方だからだ。
115
116
そんな滅私奉公な性格からか、
117
カルナは人から何かを求められた時、
118
道理が通っていればたいていのものは与えてしまう。
119
120
これは彼が持ち物や財産にこだわらず、
121
心の在り方を第一に考えているためだろう。
122
123
             ◆
124
125
ただし、聖杯戦争中は主人の勝利が第一なので、
126
“勝ちを譲ってくれ”という求めには応じられないし、
127
それが相手にとって良くない提案であると諭す。
128
129
「ふざけた勘違いだ。
130
 そもそも勝利とは自らでしか勝ち得ぬもの。
131
 俺が施す勝利は、本当におまえにとっての勝利なのか?」
132
133
これは嫌味ではなく、
134
勝ちを譲られた時点で人生に負けているのではないか?
135
と本気で心配しての質問である。
136
137
138
神性:A
139
太陽神スーリヤの息子。
140
のちにスーリヤと一体化するため、最高の神性を持つ。
141
神性がB以下の太陽神系の英霊に対して
142
高い防御力を発揮する。
143
144
             ◆
145
146
自己主張の乏しいカルナだが、
147
父である太陽神の威光を守る事には激しい決意を見せる。
148
149
母のいないカルナだが、父が太陽神である事だけは
150
確かであり、その力を授かった以上、決して、
151
父を貶める事はできないと誓っているからだろう。
152
153
154
無冠の武芸:-
155
様々な理由から認められる事のなかった武具の技量。
156
剣、槍、弓、騎乗、神性のそれぞれのスキルランクを
157
マイナス1し、属性を真逆のものとして表示する。
158
ただし、真名が明かされた場合、このスキルは消滅する。
159
160
また余談ではあるが、
161
幸運値のランクはカルナ本人による申告である。
162
163
164
貧者の見識:-
165
相手の性格・属性を見抜く眼力。
166
言葉による弁明、欺瞞に騙される事がない。
167
168
実はたいへん思慮深い、人間的に優れた英雄。
169
異なる思想、敵側のものであろうとその生き方を受け入れ、
170
“それもあり”と尊重する徳の高さを持っている。
171
172
しかし、カルナのそういった本質は伝わりづらい。
173
カルナの言動は本質を突く。
174
自らを偽った言動、取り繕う態度、信念。
175
そういったものを見抜き、
176
『相手が隠しておきたい本質』を率直に語ってしまう。
177
178
結果、たいていの相手に嫌われてしまい、
179
戦闘を余儀なくされる。
180
181
誰だって自らの短所を語られるのは嫌なものだ。
182
183
             ◆
184
185
言うまでもなく、カルナの言動は相手(の短所)を
186
嫌悪してのものではない。
187
188
人それぞれの立ち位置を肯定するカルナにとって、
189
相容れぬ信念、理解できない美醜も尊ぶもの。
190
心の中では感心しているものの言葉には出さないため、
191
結果として“あらゆるものを否定し、嫌っている”ように
192
勘違いされてしまうようだ。
193
194
195
宝具
196
日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)
197
一撃のみの光槍。雷光で出来た必滅の槍。
198
199
カルナとアルジュナの戦いが最終局面を迎えた時、
200
アルジュナの父であり神々の王であるインドラは
201
アルジュナを助けるため、カルナの最大の武具である
202
『黄金の鎧』を策略で取り上げてしまった。
203
204
しかし、その時のカルナの態度があまりにも
205
高潔だったため、インドラは我が子の敵であるカルナに
206
心酔し、鎧を取り上げた代償として自身ですら
207
使いこなせなかった雷神の力を与えた。
208
209
それがこの『雷槍』である。
210
神々をも打ち倒す力を持つというが、
211
神話においてカルナがこれを使用した記録はない。
212
213
214
人物背景Ⅰ
215
倒される側の英雄である。
216
(マハーバーラタはパーンダヴァ王家とカウラヴァ王家、
217
両勢力による戦いを主軸として描かれたもの)
218
219
インド神話の大英雄アルジュナのライバルとして名高い。
220
221
             ◆
222
223
カルナは人間の王の娘クンティーと、
224
太陽神スーリヤとの間に生まれた。
225
226
クンティーはクル王パーンドゥの妻だったが、
227
パーンドゥは子供を作れない呪いにかかっており、
228
后たちは各々の手段で子供をもうけるしかなかった。
229
230
クンティーは任意の神々と交わり、
231
子供を産むマントラを授かった女で、
232
この手段でパーンドゥの子供を産む。
233
234
……が。彼女は王の妻となる前に、
235
マントラの実験として子を一人もうけていた。
236
この子供こそカルナ。太陽神スーリヤと
237
交わるコトで生まれた、黄金の英雄である。
238
239
クンティーはしたたかな女で、初出産の恐れ、
240
神々が自分の子を認知するかといった不安から、
241
太陽神スーリヤに
242
“この子供が貴方の息子である証拠がほしい”と願った。
243
244
太陽神スーリヤはクンティーの言葉を聞き入れ、
245
生まれてくる子供に自らの威光、属性を与える。
246
247
これがカルナを不死身たらしめる黄金の鎧の出自である。
248
249
             ◆
250
251
が。そこまでの恩寵、誠実さを示されながら、
252
クンティーは一人目の息子を捨ててしまう。
253
クル王パーンドゥの后になる事が決まっていた彼女には、
254
息子の存在は無用でしかなかったからだ。
255
256
こうして母に捨てられたカルナは自らの出自を知らず、
257
ただ、太陽神スーリヤを父に持つ事のみを
258
胸にして生きていく。
259
260
母の顔を知らず、また、その母の動機が不純だった為か、
261
カルナの姿は見目麗しいものとは言えなかった。
262
263
父の輝かしい威光は備わっているものの、
264
その姿は黒く濁っていた。
265
顔つきは酷薄で、その一挙一動は粗暴につきる。
266
人間の母親がいなかった為に人の感情の機微を学べず、
267
まわりの人間からは煙たがれる日々だった。
268
269
そんな境遇で育ったカルナだが、彼は母や周りを
270
恨まなかった。むしろ全てを肯定していた。
271
272
「俺が生を受けたのは父と母あってこそ。
273
 母がどのような人物であれ、俺が母を貶める事はない。
274
 俺が恨み、貶めるものがあるとすれば、
275
 それは俺自身だけだ」
276
277
カルナはその外見とは裏腹に、
278
優れた徳と悟りを得た子供だった。
279
神の子でありながら天涯孤独の身であったからだろう。
280
カルナは弱きものたち、
281
その生と価値を問う機会に恵まれた。
282
その結論として、彼は自らの潔癖さを貫く道を選んだ。
283
284
「人より多くのものを戴いて生まれた自分は、
285
 人より優れた“生の証”を示すべきだ。
286
 そうでなければ、力なき人々が報われない」
287
288
カルナにあるものは父の威光を汚さず、
289
報いてくれた人々に恥じる事なく生きる信念だけ。
290
“冷酷、無慈悲ではあるが、同時に尊厳に満ちている”
291
カルナのスタンスはこうしてかたちどられた。
292
293
             ◆
294
295
そうして青年に成長したカルナは、
296
クル族の協議会に参加する。
297
協議会ではパーンダヴァ五兄弟がその武芸を誇り、
298
名声をほしいままにしていた。
299
特に三男アルジュナの弓の腕は素晴らしく、
300
誰もかなう者はいないと讃えられた。
301
302
場がパーンダヴァを讃える声で一色になった時、
303
カルナは飛び入りで参加し、
304
アルジュナと同格の武芸を披露する。
305
306
(余談だが、消極的なカルナがなぜアルジュナと
307
競おうとしたかは伝説上でも不明とされている。
308
誰も羨まない、誰も恨まないカルナが唯一意識した相手が
309
アルジュナである理由は、後に判明する事になる)
310
311
カルナは優劣を決しようとアルジュナに挑戦する。
312
が、王族であるアルジュナに挑戦するには
313
クシャトリア以上の資格が必要となる。
314
315
(※クシャトリア……
316
 カースト制度でいう武門、王族。
317
 カルナはヴァイシャ(商人)、
318
 あるいはシュードラ(奴隷)だったと思われる)
319
320
身分の差から挑戦を断られ、笑いものにされるカルナ。
321
そんなカルナを救ったのはパーンダヴァと対立する一族、
322
カウラヴァ百王子の長兄、ドゥリーヨダナだった。
323
324
彼はカルナを気に入り、その場で王として迎え入れる。
325
こうしてカルナは不名誉から救われたが、
326
カルナの出世を聞きつけた養父が現れ、
327
カルナの出自が判明してしまった。
328
329
パーンダヴァ五兄弟は自分たちより上の武芸を
330
見せたカルナをさらなる笑いものにする。
331
“御者の息子風情が恥を知れ”と。
332
333
カルナはこの言葉に激怒した。
334
自分の事ならあまんじて受けるが、
335
養父を侮辱された事は聞き逃せない。
336
……たとえそれが欲にかられて名乗り出た
337
養父だとしても、カルナにとっては自らを
338
育ててくれた誇るべき父だからだ。
339
340
カルナと五兄弟の対立はもはや引き下がれないものと
341
なるが、日没を迎え、協議会は幕を下ろした。
342
343
以後、カルナは自分を救い、王として扱ってくれた
344
ドゥリーヨダナを友とし、
345
彼らカウラヴァ百王子の賓客として生きる事になる。
346
347
348
その先に待つ、パーンダヴァ五兄弟―――
349
大英雄アルジュナとの過酷な戦いを理解した上で。
350
351
352
人物背景Ⅱカルナが武人として弓を預けるカウラヴァ百王子と、
353
アルジュナを筆頭とするパーンダヴァ五兄弟の対立は
354
激しさを増し、最終的には領地をかけての戦となった。
355
356
この戦をクルクシェートラの戦いと呼び、
357
カルナはこの戦でその命を終える事となる。
358
359
             ◆
360
361
カルナはカウラヴァ百王子を、ひいてはドゥリーヨダナを
362
勝たせる為にその力を振るい続けた。
363
パーンダヴァ側でカルナに対抗できるのはアルジュナだけ
364
であり、そのアルジュナをもってしてもカルナとの
365
直接対決は死を覚悟しなければならないものだった。
366
367
いくつかの衝突、因縁、憎しみ合いを経て、
368
両陣営の戦いはクルクシェートラに到達する。
369
370
371
ことここに至って、
372
カルナの母・クンティーは最後の賭けにでた。
373
カルナに自らの出自を明かし、
374
パーンダヴァ陣営に引き入れようと考えたのである。
375
376
クンティーはアルジュナの従者にして友人・クリシュナに
377
のみ事情を明かし、二人だけでカルナと面会する。
378
379
クンティーは自分がカルナの母である事を明かし、
380
実の兄弟で戦う事の無益さを涙ながらに語り、
381
アルジュナたちと共に戦い、
382
栄光を手にするべきだと説得した。
383
384
カルナは宿敵アルジュナの友人であるクリシュナに
385
礼を欠かさず、また、母の説得を静かに聞き入れた。
386
その後に、
387
388
「貴女の言葉は分かった。兄弟たちと手を取り、
389
 正しい姿に戻る。
390
 それはなに一つ欠点のない、光に満ちた物語だろう」
391
392
では、と喜ぶクンティーに対し、
393
カルナはなお静かに言葉を続ける。
394
395
「だが、一つだけ答えてほしい。
396
 貴女はその言葉を、遅すぎたとは思わないのか」
397
398
母と名乗るのが遅すぎた。
399
カルナを省みるのが遅すぎた。
400
それを恥と思わないのであれば、どうか答えてほしい。
401
―――母を名乗る貴方が、自らに何の負い目もないという
402
のなら、自分も恥じる事なく過去を受け入れる、と。
403
404
クンティーは身勝手な女ではあるが、
405
それも生来の天真爛漫さ、無邪気さからくるもので、
406
決して恥を知らない女ではない。
407
彼女とて自らの行い……
408
自分のために生まれたばかりのカルナを捨てた事……
409
が我欲に満ちたものだと自覚、自責はあった。
410
411
なればこそ、彼女にも最低限の誇りはある。
412
今まで独りで育ち、養父たちに感謝し、何の憎しみも
413
抱かないカルナに、醜い嘘だけはつけなかったのである。
414
415
クンティーは答えられず、交渉は決裂。
416
うなだれて立ち去るクンティーにカルナは告げる。
417
418
「それは欺瞞、独りよがりの愛だ。
419
 アナタの愛で救えるのは、アナタだけだ。
420
 アナタの愛はアナタにしか向けられていない。
421
 だが―――」
422
423
「その気持ちに応えよう。
424
 以後、戦において俺に及ばぬ兄弟を仕留める事はない。
425
 俺が全力を尽くすのは、我が宿敵アルジュナだけだ」
426
427
五兄弟のうち、実力の劣る他の兄弟には
428
手を出さないとカルナは誓う。
429
これ以後、カルナは幾度となく五兄弟を
430
見逃すのはこの誓いからである。
431
432
「自ら手にした場所へ帰るがいい。
433
 ……一度だけだが。
434
 息子と呼ばれた事には、感謝している」
435
436
館の門を閉め、クンティーを送り出すカルナ。
437
それはカルナなりの母親・クンティーへの愛。
438
いまさら母恋しでもないが、最後に「母親としての情」に
439
訴えたクンティーの覚悟……それが真偽さだからぬものと
440
しても……に、彼は応えたのだ。
441
クンティーは自らの過去を明かす、という危険を冒した。
442
施しの英雄であるカルナにとって、
443
その決意は酬いるに値するものだったのだ。
444
445
             ◆
446
447
そうして、最後の戦いの直前。
448
カルナの懐柔はできないと悟ったアルジュナの父、
449
雷神インドラはバラモン僧に化けてカルナと接触し、
450
彼から黄金の鎧を奪った。
451
452
父スーリヤから授かった不死身性を失ったカルナだったが、
453
それでも戦いに赴く事をやめるとは言わなかった。
454
カルナは黄金の鎧を失った時点で、
455
速やかに自らの破滅を受け入れたにも関わらずだ。
456
457
あまりにも潔いカルナに感じ入ったのか、
458
インドラは何故、と問う。
459
アルジュナ愛しでこのような計略に走るインドラを
460
非難せず、鎧を失い、なぜ戦場に向かえるのかと。
461
462
「アナタを恨む事はない。
463
 一枚上手だっただけの話だろう。
464
 むしろ―――そうだな。神といえど父親である、
465
 というのが俺には喜ばしい」
466
467
では戦いに赴くのは何故だ、とインドラ。
468
469
「俺にとって敗北とは、父の威光を汚す事だ。
470
 死が待っているにしても、逃げる事はできない」
471
472
なにしろ、その為だけに生きてきた。
473
自らを生み、育ててくれたものたちに胸を張れるように
474
生きてきたカルナにとって、
475
自らの命は、彼自身のものですらなかったのだ。
476
477
「それに、ドゥリーヨダナにも恩がある。
478
 俺はなぜか、あの厚顔で小心な男が眩しくてな。
479
 我が父への不敬となるが、たまに、あの甘い光こそが、
480
 日の暖かさだと思うのだ」
481
482
カルナの背負う太陽の火ではなく、
483
絶対的なスーリヤの輝きでもなく、
484
人間が見せる不完全な魅力こそが太陽だとカルナは語る。
485
486
その姿にスーリヤそのものの神性を見たインドラは、
487
自らの槍をカルナに与えた。
488
彼はこの高潔な英雄から命以上のものを奪った。
489
その見返りにあたるものを与えなければ
490
自らの名誉を貶める事になるし、なにより―――
491
己が息子にも与えなかった最強の槍を、
492
この男なら使いこなせるのでは、と惚れてしまったのだ。
493
494
             ◆
495
496
こうしてカルナはバラモン僧を送り、鎧(肉)を失い、
497
幽鬼のようにやせ細った姿で戦場に向かった。
498
499
アルジュナとの最後の戦い。
500
カルナには既に味方はなく、身を任せる馬車の御者すら
501
パーンダヴァに内通する敵だった。
502
503
数々の重荷、異母兄弟である弟への感情。
504
505
呪いによりカルナの馬車の車輪は轍にはまり、
506
アルジュナの矢の弦が限界まで引き絞られる。
507
長く、見えない縁に操られるよう覇を競いあった兄弟は、
508
ここぞとばかりに渾身の一撃を放ち合う。
509
510
――果たして、アルジュナの弓は、太陽を撃ち落とした。
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512
513
             ◆
514
515
カルナは死後、父スーリヤと一体化したと言われている。
516
『施しの英雄』と呼ばれ、何かを乞われたり
517
頼まれたりした時に断らない事を信条とした聖人。
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519
非常に高い能力を持ちながら、
520
血の繋がった兄弟と敵対する悲劇を迎え、
521
様々な呪いを受け、その真価を発揮する事なく命を
522
落とした英雄―――それがカルナである。
523
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余談ではあるが、
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アルジュナが真相……カルナが自分の兄である事……を
526
知っていたかどうかは定かではない。
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528
カルナがクンティーの息子である事を知っているのは、
529
カルナとクンティー、クリシュナ、
530
太陽神スーリヤだけと思われる。