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- 341211-1
- <1428年10月>
- ラ・イル: メリッサ、悪いが休憩はナシだ!
- ラ・イル: この先でバタールの旦那を 待たせてるからな!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: は、はいっ! お父様!
- ラ・イル: 行くぞ!
- ラ・イル: オルレアンのヤツらが 助けを待ってる
- おおーっ!
- ドドドドッ…
- キューブ: あれは… オルレアンへ向かう援軍かな?
- ペレネル・フラメル: 王太子派の主力部隊のようね
- ペレネル・フラメル: イングランド軍の 包囲が始まった直後には
- ペレネル・フラメル: オルレアンが陥落するのも 時間の問題かと思われたけど…
- ペレネル・フラメル: これでわからなくなったわ
- キューブ: オルレアンは王太子派にとって フランス最後の要衝だ
- キューブ: 万が一、あの街が落ちれば フランスの多くの土地が
- キューブ: イングランド軍の手中に 収まってゆくだろうね
- ペレネル・フラメル: そのイングランドを陰で操るのは “売国妃”イザボー
- ペレネル・フラメル: 「フランスは ひとりの女によって滅び」
- ペレネル・フラメル: 「ひとりの少女によって 救われる」…
- ペレネル・フラメル: この予言の前半…
- ペレネル・フラメル: ひとりの女が フランスを滅ぼす…という部分は
- ペレネル・フラメル: すでに実現しつつあるわ
- ペレネル・フラメル: キューブ、あなたが彼女に与えた 力によってね
- キューブ: ………… …………
- ラ・イル: …とうとうオルレアンにまで
- ラ・イル: イングランド軍が 攻め込んできやがったんだな
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …どうしてこんなことに なってしまったんでしょうか?
- ラ・イル: 100年近く続いてる戦争だしな 話は単純じゃねぇが…
- ラ・イル: トロワ条約、あれは最悪だったな
- メリッサ・ド・ヴィニョル: トロワ条約…
- ラ・イル: ああ、当時フランス王妃だった イザボーの娘を
- ラ・イル: イングランド国王に嫁がせて
- ラ・イル: 生まれた子を次代の フランス国王とする取り決めだ
- ラ・イル: つまり、イングランドに フランスを丸ごとを売り渡して
- ラ・イル: イザボーと周りの連中だけの ものにしちまったんだ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …………
- ラ・イル: 今じゃ、イングランド軍が
- ラ・イル: 我が物顔でフランスを 闊歩してやがる
- ラ・イル: …ったく、売国妃とは よく言ったもんだ
- ペレネル・フラメル: …フランスはいよいよ 滅亡の淵へと追い込まれたわ
- ペレネル・フラメル: あなたが選んだ少女は
- ペレネル・フラメル: 予言の通りフランスを 救うことができるのかしら?
- キューブ: 誤解しないんでほしいんだけど
- キューブ: 単にイングランドから フランスを救うためだったら
- キューブ: ボクが介入することはない
- キューブ: あくまでキミたち人類同士の 争いなんだからね
- ペレネル・フラメル: フランスの惨状はもともと あなたが撒いた種でしょうに…
- キューブ: 言い訳するつもりはないけど 仮にボクと契約しなくても
- キューブ: 彼女はフランスとイングランドを 手に入れていただろうね
- ペレネル・フラメル: …なぜそう言えるのです?
- キューブ: ずっと以前… ボクが出会った頃のイザボーは
- キューブ: それほどの聡明さと 野心を持ち合わせた少女だった
- キューブ: …同時に魔法少女としても とてつもない素質を持っていたよ
- ペレネル・フラメル: ゆえにあなたは契約を持ちかけ
- ペレネル・フラメル: フランスとイングランドに 留まらない災禍を招いた…
- キューブ: そうだね、ボクとしても 予想もしない結果になった
- キューブ: そのことは否定しないよ
- 341211-2
- <1385年>
- <フランス北部、アミアン>
- …………
- 「いきなり結婚式をあげてしまうなんて…」
- 「陛下のひとめ惚れだそうよ」
- 「素敵よね…!」
- 「私は認めたくないわ 憧れの陛下が、あんな小娘なんかに…」
- 「あんなって…お父様は神聖ローマ皇帝の 血を引くバイエルン公… お母様はミラノの名門ヴィスコンティ家の令嬢」
- 「フランス王妃に迎えるに これ以上ないほど、ふさわしい血筋の方よ」
- 「しっ! エリザベート様がいらっしゃるわ」
- シャルル6世: 来たな
- エリザベート: …はい…
- シャルル6世: ハハハ、緊張するな ただの顔合わせだ
- シャルル6世: これから、身の周りの世話を してくれる者たちとの、な
- エリザベート: エリザベート、です …よろしくお願いします
- シャルル6世: 少々つたないのは 大目に見てほしい
- シャルル6世: エリザベートはまだ この国の言葉を勉強中だからな
- (確かに綺麗な子だけど ずいぶんと小柄よね…)
- (身のこなしもぎこちないし)
- (少し、からかいたく なっちゃう)
- 陛下…少々 気になりますことが
- シャルル6世: なんだ、申してみよ
- 宮廷でもこのまま
- エリザベート様とお呼びして よろしいのでしょうか…?
- シャルル6世: ふむ…フランス流でというならば “イザベル”であろうが…
- シャルル6世: いや、我が妹も宮廷では イザベルと呼ばせているな
- はい…そこで
- エリザベート様のことは “イザボー”様とお呼びしては?
- シャルル6世: なるほど、“イザベル”の愛称か なかなか可愛らしいが…
- (確かに可愛らしいけれど 威厳はどうかしら?)
- (まるで王妃というより 侍女の名前だわ…)
- (エリザベート様に嫉妬して… 少し意地悪したつもりね)
- ふふ、いかがでしょう?
- エリザベート: …………
- イザボー: ―イザボー― はいっ! とってもうれしいです!
- イザボー: ―イザボー― 素敵な名前をつけていただいて ありがとうございます!
- イザボー: ―イザボー― 宮廷の作法、これからもいろいろ 教えてくださいね!
- えっ…あっ はい!
- よ、よろしくお願いします イザボー様
- シャルル6世: うむ 仲良くやっていけそうだな!
- …………
- (なんて健気な子なの…?)
- (まるで…天使の笑みじゃない)
- (こんな子に意地悪しようと していたなんて…)
- (自分が恥ずかしい…)
- 341211-3
- ペレネル・フラメル: 正規のラテン語を 難なく読み書きし
- ペレネル・フラメル: 才媛の誉れ高かった イザボーにとっては…
- ペレネル・フラメル: フランスの宮廷の方こそ
- ペレネル・フラメル: 知性も品格も欠いた 垢抜けない地と映ったでしょうに
- キューブ: 相手の流儀や好みに合わせて 自分自身を変えられるのは
- キューブ: 彼女が生まれ持った 才能のひとつだね
- ペレネル・フラメル: 必ずしも歓迎一色ではなかった 初対面の侍女たちを
- ペレネル・フラメル: 真っ先に味方にしてしまうなんて
- キューブ: 初めて会ったとき 彼女が言っていたよ
- イザボー: ここは私を知る者のいない 異国の地…
- イザボー: いちばん近くにいる者たちこそ 最優先で味方にすべき相手
- イザボー: まして敵に回すのは 愚か者のすることでしょう?
- ペレネル・フラメル: 天使の笑みの裏に隠された 貪欲な野心家の素顔には
- ペレネル・フラメル: 誰も気づけなかったのですね
- キューブ: それどころか、侍女たちはみな イザボーに同情すら抱いていた
- キューブ: フランス王室を彩る お飾りのような境遇にね
- ペレネル・フラメル: 本当に不幸なのは 自分たちフランスの民だと
- ペレネル・フラメル: 気づいた者は いなかったでしょうね…
- <1385年>
- 「イザボー様の利発さには驚かされますわ」
- 「宮廷の教師も唸ったそうよ 次は大学の先生を連れてこないと…って」
- 「なんだか、もったいないわね」
- 「王妃となる方に期待されているのは 華やかに宮廷を彩ることと…」
- 「お世継ぎをもうけることだけだものね」
- イザボー: …………
- タッ…
- イザボー: …………!
- イザボー: ――っ!?
- イザボー: 誰…?
- キューブ: ボクの名前はキューブ
- キューブ: ボクと契約して 魔法少女になって欲しいんだ
- イザボー: …魔法少女?
- キューブ: 魔女を狩る者たちのことさ
- キューブ: もちろんタダでとは言わない
- キューブ: かわりにひとつだけ どんな願い事でも叶えてあげるよ
- イザボー: 魔女…? 願い事…?
- 341211-4
- ペレネル・フラメル: 魔法少女とは何か… 魔女とは何か…
- ペレネル・フラメル: 契約とは…願いとは… それらすべてを聞き出した上で
- ペレネル・フラメル: 14歳のイザボーは あの恐るべき願いを口にした
- ペレネル・フラメル: 危険だとは考えなかったの?
- キューブ: そもそもリスクを完全に 排除することなんて不可能だ
- キューブ: 彼女から 回収が見込めるエネルギーには
- キューブ: 危険を冒す価値があると 判断したまでのことだよ
- ペレネル・フラメル: そう…
- <1385年>
- ぐちゅ
- カラン…
- キューブ: いきなり ひどいことをするねキミは
- キューブ: 説明したように ボクには無意味なんだ
- イザボー: 失礼したわね
- イザボー: けれどこれでわかったわ
- イザボー: あなたの言っていることは 真実のようね
- イザボー: キューブ
- イザボー: 私はお飾りの女王になるために フランスに来たわけじゃない
- イザボー: 私は欲しいの この国も、イングランドも
- イザボー: ポルトガルや 神聖ローマ帝国だって
- キューブ: キミはそれを願うのかい? かまわないよ
- キューブ: どんな奇跡だって 起こしてあげられる
- イザボー: あぁ…素敵 それもいいわね、キューブ
- イザボー: まるであなたの囁きは
- イザボー: 「悪魔(インキューブ)」の ように魅力的
- イザボー: でも、もっと欲しいものが 今できたわ
- イザボー: 私の願いは
- イザボー: あなたの全てが欲しい
- キューブ: ―キューブ― いいだろう
- キューブ: ―キューブ― キミの願いは今、聞き届けられた…
- イザボー: ―イザボー― あ…うっ…
- イザボー: ―イザボー― あぁああぁーーっ!!!
- イザボー: …………
- イザボー: あ…
- イザボー: この姿は…?
- キューブ: 魔法少女として魔女と戦うために 最適な姿…といったところだね
- イザボー: ふぅん…
- イザボー: で…私が望んだものは 得られたのかしら?
- キューブ: もちろんだ キミには備わったはずだよ
- キューブ: 因果を負って生まれた者たちの 願いを聞き届け
- キューブ: その魂を物質化して 魔法少女へと変える力が…
- キューブ: それだけじゃない
- キューブ: ボクたちと同様の知識が 備わっているはずだ
- キューブ: 心の中を覗いてごらん
- イザボー: …………
- イザボー: …確かにそうみたいね 理解が及ばないことも多いけれど
- キューブ: キミとボクとでは種族が違う いくらキミが聡明でも
- キューブ: おたがい理解できない概念は たくさんあるだろうね
- イザボー: …あなたと同じ 不滅の肉体も手に入ったの?
- キューブ: 老いることのない肉体… という意味ではその通りだね
- キューブ: どうだい、感想は?
- イザボー: ふふ…気に入ったわ だって、この姿
- イザボー: …まるで私自身が 悪魔になったみたいだもの
- イザボー: 私の願いは 「あなたの全てが欲しい」
- 341212-1
- ペレネル・フラメル: イザボーはあなたと同様に
- ペレネル・フラメル: 願いを叶え、魔法少女を
- ペレネル・フラメル: 生み出すことのできる存在に なってしまった…
- ペレネル・フラメル: このことを、あなたがさほど 危険視しなかったというのは
- ペレネル・フラメル: 不思議に思えるわ
- キューブ: 今のキミたち人類では
- キューブ: 真の意味で、ボクに 取って代わることはできないよ
- ペレネル・フラメル: どういう意味かしら?
- キューブ: たとえボクたちと同等の 知識を得たところで
- キューブ: キミたち人類にはそのすべてを 理解することはできないからね
- キューブ: ひとつ、例をあげようか?
- キューブ: 「あらゆる慣性系において 光の速度は不変である」…
- キューブ: これはこの宇宙における 基本法則のひとつだけど
- キューブ: この知識を理解し 応用できる人類はまだいない
- キューブ: イザボーはもちろん
- キューブ: キミや、キミの配偶者ほどの 叡智の持ち主ですら、ね
- ペレネル・フラメル: あなたと同等の知識と力を得ても
- ペレネル・フラメル: 使いこなすことができなければ 脅威ではない…と?
- キューブ: そういうことさ
- キューブ: それに彼女は、ボクたちに対して 敵対的だったわけじゃない
- キューブ: イザボーが望んだのは フランスやイングランド…
- キューブ: ゆくゆくはヨーロッパすべての 土地と人々を
- キューブ: 征服し、支配すること…
- キューブ: 彼女は一歩ずつ その過程を踏んでいった
- キューブ: 願いで手に入れたもののひとつ
- キューブ: 衰えを知らぬ容姿と 尽きぬ寿命を利用して
- キューブ: たっぷりと、時間をかけてね
- ペレネル・フラメル: …………
- <1385年>
- <フランス、パリ>
- …宮中のことを もっとお知りになりたい?
- イザボー: ええ 教えてほしいの
- (確かに、慣れない異国…それも 陰謀渦巻く宮廷に放り込まれて)
- (とても心細いはずよね)
- (…信頼に、お応えしないと)
- …宮廷で最も力をお持ちなのは
- シャルル国王陛下の叔父にあたる ブルゴーニュ公フィリップ様…
- まだお若い国王陛下に代わり
- 摂政として 国政を司っておられます
- イザボー様と陛下のご結婚を 後押しされたのもこの方ですわ
- イザボー: …ええ
- ただ、王であるシャルル様が 立派に成長された今
- シャルル国王陛下みずから 国政を担う日は近いはず
- イザボー: …あの…もし… もしもだけれど…
- イザボー: シャルル様に…何かあったら?
- それは… 大変なことになるでしょうね…
- …王位継承権を持つ、弟ぎみの ルイ様を担ぐ者も出るでしょうし
- イザボー: そう…
- イザボー: もっと、いろいろ聞かせて?
- イザボー: …勉強になったわ ありがとう!
- いえ…イザボー様の お役に立てたのであれば
- 光栄の至りです
- 私の望みはただひとつ…
- これからもずっとイザボー様に お仕えすることですから!
- イザボー: …………
- イザボー: …その気持ちが本当なら
- イザボー: あなたの願い 叶えてあげられるかも
- え…?
- イザボー: 目を閉じて、心を無にして
- イザボー: そして願うの 私への永遠の忠誠を…
- 341212-2
- <1392年>
- <フランス、パリ>
- …シャルル国王陛下に異変?
- ああ、ここだけの話だがな
- 遠征中に奇妙な予言に怯え 弟のルイ様を斬りつけたとか…
- …………
- タッ
- …ん?
- どうかしたか?
- 誰かいたような…
- イザボーの声: …入りなさい
- ………… …………
- イザボー: ―イザボー― そう…シャルル様のお心に 狂気の兆候ありと…
- イザボー: ―イザボー― 報告ご苦労でした 下がっていいわ
- イザボー: …………
- イザボー: …………
- キューブ: ひさしぶりだね イザボー
- イザボー: …キューブ?
- キューブ: キミに心酔する侍女たちに 永遠の忠誠を願わせ
- キューブ: 魔法少女に変えて 身の周りを固めるとは
- キューブ: 冴えたやりかたを 考えついたものだね
- イザボー: …………
- キューブ: …それだけじゃない
- キューブ: 一度きりの願いを、キミのために 捧げさせられる子もいる
- キューブ: ただの魔法じゃない 強力な“奇跡”の力で
- キューブ: キミ自身はますます 強大な存在になってゆくわけだ
- イザボー: あなたにとっては 迷惑なことかしらね?
- キューブ: …そうだね、今はともかく この状況が拡大するようだと
- キューブ: ボクたちにとって 好ましい事態とは言えない
- キューブ: 契約の際に意志を放棄し 心を失くしてしまった子からは
- キューブ: エネルギーの回収も 見込めないからね
- イザボー: そう…
- キューブ: 次は何をするつもりだい?
- イザボー: そうね…
- イザボー: そろそろ国王陛下には 舞台から降りていただこうかしら
- 341212-3
- <1393年>
- <パリ近郊、サンマルシュ>
- 今宵の舞踏会…
- お招きいただき 誠にありがとうございます
- イザボー: 今日は我が侍女の婚礼祝い
- イザボー: シャルル様も 催し物に参加なさいます
- 国王陛下が直々に…? それは楽しみですな
- イザボー: ふふ… どうか存分にお楽しみください
- ドッ…
- 「あはははっ!」
- 「これは滑稽な…!」
- イザボー: …あら、始まったようですわ
- おお、私も観にいかねば…
- イザボー: フフッ…
- ざわ…
- おや…?
- 「きゃぁーっ!」
- 「火が…人から火が!」
- シャルル6世: あああっ!?
- 「国王陛下っ!?」
- イザボー: シャルル様!
- イザボー: 早く、シャルル様をお助けして!
- はっ! シャルル様、しっかり!
- イザボー: …………
- …国王陛下のご様子は?
- 王妃であるイザボー様のことも わからぬようだ
- 舞踏会で九死に一生を得たものの
- 医師の見立てでは… あの事件がきっかけで
- 真性の狂気に 心を蝕まれたのでは…と
- …では国政の全権は 摂政のブルゴーニュ公に逆戻りか
- 面白くないのは王の弟ぎみ… ルイ様だろうな
- 王位継承権を持ち ご自身も野心家でありながら
- 宮廷は長年、ブルゴーニュ公に 牛耳られっぱなし…
- おふたりの確執がこのまま続けば
- この先も、宮廷闘争の 火種になり続けるのは間違いない
- <1403年>
- <フランス、パリ>
- イザボー様が… 王国議会の議長に?
- ええ、事実上の最高権力者ね シャルル様があの状態では…
- 激しく対立するブルゴーニュ公と ルイ様の調停役として
- イザボー王妃なら 誰も文句は言えないものね
- ただ、今も実権を握っているのは ブルゴーニュ公でしょうけど…
- <翌1404年…>
- コツ…
- ルイ: イザボー様…? なんのご用件で?
- イザボー: …お話を伺いに
- ルイ: 私の話など聞いて なんになるのです
- ルイ: いまやフランスは、あなたと ブルゴーニュ公の手の中にある
- ルイ: 私は権力闘争に敗れたのです
- イザボー: …権力が欲しいの?
- ルイ: ええ、欲しいですとも! 未練がましいと言われようと!
- ルイ: 私ならば、叔父よりも、兄よりも
- ルイ: この国を…フランスを よりよく導くことができるのに!
- イザボー: ふふふっ…
- ルイ: イザボー様…?
- イザボー: 私… 正直な方は好きよ?
- 341212-4
- <1407年11月>
- <フランス、パリ>
- いったいイザボー様は 何を考えておられるのだ?
- 先代のブルゴーニュ公の後押しで 今の地位を築かれたというのに
- よりによって、その政敵の ルイ様と浮名を流すなど…
- おい、大変だ!
- ルイ様が街中で 暴漢に襲われて亡くなったと…!
- なっ…
- イザボー様のお屋敷から 帰宅される途中だったそうだ
- キューブ: ルイを暗殺した犯人をめぐって 宮廷は騒然としているよ
- キューブ: 黒幕は、キミを後押ししてきた 先代ブルゴーニュ公の息子
- キューブ: 現在のブルゴーニュ公である ジャンだというんだからね
- イザボー: …………
- キューブ: ただ、パリの世論は ジャンに同情的なようだね
- キューブ: キミがブルゴーニュ公を裏切って 政敵のルイに接近していたことで
- キューブ: 世間の目はかなり厳しいみたいだ
- イザボー: ふふ…
- イザボー: それがなんだというのかしら?
- <1410年>
- ラ・イル: …アルマニャック派?
- ああ、ブルゴーニュ公の ブルゴーニュ派に対抗するために
- 新しく結成された同盟の通称だ
- ラ・イル: 暗殺された王弟ルイ様の 遺志を継ごうってわけか…
- そういうことだ
- ブルゴーニュ派の首領はもちろん ブルゴーニュ公ジャン
- …それから、イザボー王妃だな
- ラ・イル: ルイ様に近づいて 好き勝手しておいて
- ラ・イル: 今度はルイ様を暗殺したヤツに 鞍替えするとは…
- ラ・イル: 節操がないにも程があるな あの女は!
- おかげでフランスは真っぷたつだ
- アルマニャック派は近々 パリを武力制圧するつもりだろう
- 忙しくなるぞ
- ラ・イル: 内戦か
- ラ・イル: 俺たち傭兵にとっちゃ 稼ぎどきってワケだが…
- キューブ: 何もかも、キミの 思い描いた通りってワケかい?
- イザボー: 全部というわけではないわ でも、着実に前に進んでいる
- キューブ: フランスはふたつに分かれて 内戦状態のようだけど…
- イザボー: 混迷のときこそ好機よ 手札は豊富にある
- イザボー: イングランドは虎視眈々と 介入の機会を狙っているし
- イザボー: 可愛い娘たちも 順調に育ってるわ
- キューブ: 娘を嫁がせて 外交に使おうというのかい?
- イザボー: ええ…それに “素質”のある子もいるわ
- キューブ: なるほど、魔法少女の素質か
- キューブ: 一緒に遠出をしたりして ずいぶん可愛がっているようだね
- イザボー: ふふ…本当は愛おしくて
- イザボー: いつまでも手元に 置いておきたいくらいだわ
- キューブ: しかし、キミの持つ力を使えば もっと手っ取り早く
- キューブ: フランスを手に入れることが できたんじゃないのかい?
- キューブ: キミは魔法少女としての力を
- キューブ: あまり活用していないように 見えるけど…
- イザボー: 権勢も支配も、それを 手に入れる過程が楽しいの
- イザボー: 私には老いない肉体が… 尽きない寿命がある
- イザボー: 急いで手に入れてしまっては 長く楽しめないわ
- キューブ: 尽きない寿命、か…
- ペレネル・フラメル: …その後、アルマニャック派は 王位継承者として
- ペレネル・フラメル: イザボーの息子である シャルル王太子を擁立…
- ペレネル・フラメル: かつて王弟ルイを暗殺した ブルゴーニュ公ジャンは
- ペレネル・フラメル: そのシャルル王太子によって 暗殺されたのでしたね
- キューブ: うん、親子の争いは 血で血を洗う陰謀劇に発展した
- キューブ: イザボーはイングランドの介入を 裏で手引きしつつ
- キューブ: シャルル王太子が王の血を引かぬ 不義の子だとほのめかして
- キューブ: 王位の継承を妨害した…
- キューブ: その後の1420年 問題のトロワ条約が結ばれ
- キューブ: イングランドの国王に嫁いだ イザボーの娘が産んだ子が
- キューブ: イングランドとフランス両国の 次の王を兼任することが決まった
- キューブ: あとは両方の国王が倒れれば
- キューブ: フランスもイングランドも 等しくイザボーの手に落ちる
- キューブ: そして…
- <1422年8月31日>
- <イングランド国王ヘンリー5世、死去>
- <1422年10月21日>
- <フランス国王シャルル6世、死去>
- イザボー: …………
- <イングランド・フランス二重王国、誕生>
- イザボー: 私はお飾りの女王になるために フランスに来たわけじゃない
- 341213-1
- ペレネル・フラメル: …イザボーはこうして
- ペレネル・フラメル: フランスとイングランドを その手に収めたかに見えたけれど
- ペレネル・フラメル: 実は大きな落とし穴があった
- キューブ: そうだね イザボー最大の誤算だ
- キューブ: 彼女は願いによって ボクと同じ力を得たけれど
- キューブ: その魂は人間の… 魔法少女のものにすぎない
- キューブ: 彼女の娘のうち、コルボーが 最初に魔法少女になって
- キューブ: イザボーのもとで 活動しはじめた頃には
- キューブ: イザボーの精神はすでに 異常をきたしていた
- キューブ: 子煩悩で知られた彼女が
- キューブ: 娘たちのことをほとんど 認識できなくなるほどにね
- ペレネル・フラメル: 妄執に憑かれ ただ権勢拡大のためだけに
- ペレネル・フラメル: 周囲を操る、人の形をした怪物…
- ペレネル・フラメル: それが本物の怪物… “魔女”になってしまうのも
- ペレネル・フラメル: 時間の問題だった
- キューブ: そう
- キューブ: イザボー自身は 時間は無限にあると
- キューブ: 思っていたようだけど
- キューブ: 支配の過程を楽しむような余裕は 実際にはなかったんだ
- ペレネル・フラメル: 絶望し、魔力を使い果たした 魔法少女は魔女になる宿命…
- キューブ: イザボーもまた例外ではないよ
- ペレネル・フラメル: それがあなたの狙いであり 勝算はそこにあった
- ペレネル・フラメル: あなたは確かに賭けに勝った… そのはずだった
- キューブ: ………… …………
- イザボー: …ここで……ここで終わる…?
- イザボー: そんなことは許されない…!
- イザボー: まだ…私は手に入れていないの
- イザボー: フランスも…イングランドも… ヨーロッパも…何もかも…!
- コルボー: …お母さま…?
- コルボー: うっ…!
- コルボー: なんてことだ…
- コルボー: あれは… もうダメだ…
- ラピヌ: 「イヤだっ!」
- ラピヌ: 「こんなのヤダよぉっ!」
- ラピヌ: 「私も…私も魔法少女になるっ!!」
- ラピヌ: 「だからっ!」
- ラピヌ: 「だからお母さまを…」
- ラピヌ: 「もとに戻してっ!!」
- 341213-2
- ペレネル・フラメル: イザボーのソウルジェムは 彼女の娘たちの目の前で
- ペレネル・フラメル: 強大な魔女 “ラ・レーヌの黄昏”を産み出し
- ペレネル・フラメル: キューブ、あなたの目論見は 成功したかに見えた
- ペレネル・フラメル: あなたにとって想定外だったのは
- ペレネル・フラメル: そのとき、娘のラピヌの願いが 聞き届けられたことね
- キューブ: うん…不完全とはいえ その力が残っていたことも
- キューブ: 願いの内容も意外だったよ
- ペレネル・フラメル: 娘のラピヌの願いの結果 起きたこと…それは
- ペレネル・フラメル: 人の姿をした肉体… すなわちイザボーの抜け殻が残り
- ペレネル・フラメル: 魔女の本体には 邪悪な意志が宿った
- ペレネル・フラメル: すなわち、魔女がフランスを… ヨーロッパを支配しようとする
- ペレネル・フラメル: 人々にとって
- ペレネル・フラメル: 悪夢のような状況だけが 残ったと…
- キューブ: そう
- キューブ: 人々が“イザボー王妃”だと 思っているのは魔女の操り人形
- キューブ: かつてイザボーと呼ばれた 魔法少女の抜け殻だ
- ペレネル・フラメル: 他人ごとのように言うのね
- ペレネル・フラメル: あなたの誤算が引き起こした 危機だというのに…
- キューブ: …厄介なのは、抜け殻を通じて
- キューブ: イザボーが今でも魔法少女を 増やし続けていることだ
- ペレネル・フラメル: 魔法少女になった イザボーの娘は3人だったわね
- ペレネル・フラメル: 権勢への欲望に 突き動かされるだけの存在が
- ペレネル・フラメル: 魔法少女を増やし、率いる悪夢…
- ペレネル・フラメル: 人類が破滅するまで イザボーは暴走し続けるわ
- キューブ: そうなってしまっては ボクも困るんだけどね
- <1428年>
- <フランス、パリ>
- イザボー: ………… …………
- ミヌゥ: はい… お母さま…
- ラピヌ: お母さまは、なんて?
- ミヌゥ: はい…
- ミヌゥ: 次の目標はオルレアンである、と
- コルボー: いよいよか
- ラピヌ: いっぱい遊べるねっ!
- ミヌゥ: ええ…ただ 急いではなりません
- ミヌゥ: その前に ノルマンディーから南下する
- ミヌゥ: イングランド軍を支援せよと…
- コルボー: …そうか
- ミヌゥ: お姉さま方はイングランド軍に 合流してくださいませ
- ラピヌ: ミヌゥは?
- ミヌゥ: 道中、周辺にいくつか 反抗的な村がございますので
- ミヌゥ: 少しばかり争いの種を 撒く仕事が…
- コルボー: グリーフシードか
- ミヌゥ: ええ
- …………
- ミヌゥ: …………
- ラピヌ: どうしたの?
- ミヌゥ: いえ…そろそろ あの子たちにも
- ミヌゥ: 新しい仲間が必要かと思いまして
- コルボー: ふむ…
- ミヌゥ: また時間を割いて 探す必要がありますが
- ミヌゥ: 素質のある子は限られますので…
- 341213-3
- ぐあああっ!
- よし、我が軍が圧倒しているぞ このまま押し返せ!
- おおぉーっ!
- ラピヌ: コルボー、行っていい?
- コルボー: はい…ここは お姉さまにおまかせします
- コルボー: 私が力を使うと…
- コルボー: ラピヌお姉さまに ご迷惑がかかってしまいますし
- ラピヌ: じゃ、いっくねー♪
- なんだ…あれは?
- わかりません
- イングランド軍の方から 何者かが…
- ぐぁぁぁっ!
- ラピヌ: イッヒヒ♪
- ラピヌ: 遊ぼうよっ!
- ぐっ…!?
- ラピヌ: もう終わり~?
- なんだ…コイツは…!?
- 応戦しろ!
- ラピヌ: ムダだよっ!
- ぐあぁああっ!
- コルボー: フフフ…
- ミヌゥ: …これが最後の グリーフシードですわね
- ミヌゥ: この先の村の住人も
- ミヌゥ: しばらくは領主に
- ミヌゥ: 刃向かうどころでは なくなることでしょう…
- ミヌゥ: さあ、お待たせしたわね では、行くわよ
- は…はい… あの…どちらへ?
- ミヌゥ: あなたの新しい主人…
- ミヌゥ: 偉大なるイザボー・ド バヴィエール様の館ですわ
- ミヌゥ: …失礼いたします お母さま
- ミヌゥ: この子が、新しく お仕えすることになりましたので
- ミヌゥ: ご挨拶を…と思いまして
- イザボー: …………
- イザボー: 「おいでなさい(ヴィアン・イスィ)…」
- 341213-4
- ペレネル・フラメル: …で、あなたには 今度こそ勝算があるのかしら?
- ペレネル・フラメル: ここまで悪化してしまった 事態を収拾できる算段が…
- キューブ: もちろんそのつもりで 動いているよ
- キューブ: このままイザボーが 権勢を拡大し続ければ
- キューブ: この星はボクたちにとって 無価値になってしまうからね
- キューブ: キミも知っているはずだろう?
- ペレネル・フラメル: ヨーロッパの各地に現れた いくつかの希望…
- ペレネル・フラメル: そして今、ひときわ大きく 輝こうとしている
- ペレネル・フラメル: ひとつの光、ですか…
- キューブ: 魔女に対抗するには 魔法少女の力を借りるしかない
- キューブ: まさにあの予言の通りじゃないか
- ペレネル・フラメル: 「フランスは ひとりの女によって滅び」
- ペレネル・フラメル: 「ひとりの少女によって 救われる」…のことね
- ペレネル・フラメル: 人々の命運を、ひとりの 魔法少女に託すつもりですか?
- ペレネル・フラメル: 予言など信じるあなたでは ないでしょうに
- キューブ: 予言自体に根拠はなくとも
- キューブ: 言葉が広まったことで 現実になってしまうことはある
- キューブ: たとえば、人々が予言にすがり 希望を託すことで
- キューブ: 束ねられた因果が ひとりの魔法少女の力となる…
- ペレネル・フラメル: つまり、予言に頼ると…?
- キューブ: ひとつの可能性を述べたまでだよ
- キューブ: キミたち人間のように 過度な期待はしないさ
- キューブ: イザボーは願いを叶える力を まだ保っている
- キューブ: これから何が起きるか まだわからないからね
- ペレネル・フラメル: 最後に魔法少女になった イザボーの娘…
- ペレネル・フラメル: あのミヌゥという少女は いったい何を願ったのか…
- キューブ: ボクにはわからないね
- ペレネル・フラメル: いずれにせよ イザボーと戦う者たちの前に
- ペレネル・フラメル: 立ちはだかる壁は とてつもなく高く
- ペレネル・フラメル: それを乗り越えて
- ペレネル・フラメル: ラ・レーヌの黄昏を 滅ぼすまでの道は
- ペレネル・フラメル: かつて人類が経験したことの ないほどの試練になるでしょうね
- キューブ: それほどの事態を前にして キミはどうふるまうんだい?
- ペレネル・フラメル: 言うつもりはないわ
- ペレネル・フラメル: あなたに言うと 他人に筒抜けになってしまいます
- ペレネル・フラメル: ただ…
- ペレネル・フラメル: かつて私は、我が夫ニコラから ひとつの真実を学びました
- ペレネル・フラメル: あなたが売り歩くそれとは違う “本物”の奇跡があることを
- キューブ: ふむ…
- ペレネル・フラメル: そして、この状況を覆し
- ペレネル・フラメル: 真の奇跡を 起こすことができるのは
- ペレネル・フラメル: ただひとつ、人の心だけ…
- ペレネル・フラメル: “彼女”はそれを 呼び起こすことができるのか…
- ペレネル・フラメル: 私は、最後まで 見届けたいと思います
- イザボー: 悦楽と共に行きましょう
- イザボー: 決して訪れることのない 女王の黄昏へと
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