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- ネット上の犯罪歴、削除の可否は 定まらない司法の基準
- https://www.asahi.com/articles/ASMDX3CDTMDXUTIL006.html
- 2020年1月4日 6時00分
- インターネット上に残る犯罪歴は、どんな場合に削除を認めるべきか。安易な削除を認めれば、社会の公益になる情報が制約されるが、個人のプライバシーや更生(立ち直り)への配慮も欠かせない。ネット時代の新たな課題に、司法も明確な判断を示せていない。
- 犯罪歴の公表をどこまで認めるかは以前からある問題だ。出版物については、最高裁が1994年の判決で、当事者の社会的地位や影響力のほか、出版物の目的や意義などを踏まえ、「公表されない利益」と「公表される利益」を比べて決める判断を示した。だが、時間とともに読む人が減る本や新聞と違い、ネット空間では逮捕された情報などが半永久的に誰でも簡単にアクセスできるため、改めて問題になってきた。
- 男性が過去の児童買春事件の記事の削除を大手検索サイト「グーグル」に求めた仮処分決定で、最高裁は2017年、94年判決の判断枠組みを踏襲しつつ、新たな基準を示した。
- 最高裁は、独自の結果を示す点で検索サイトには表現行為の側面があり、多くの人が自由に情報を発信・入手する「現代社会での情報流通の基盤」と重視。削除すればこの役割を制約するため、「二つの利益を比べて逮捕歴を公表しない利益が『明らかに』上回れば削除できる」と判示。出版物についての判断になかった「明らかに」という言葉を使い、検索サイトでの削除のハードルを上げた。
- その上で児童買春は社会的に強い非難の対象とされていることなどから、「公表しない利益が明らかに上回るとはいえない」として、削除を認めなかった。
- ただ、ネットには検索サイト以外にも個人のSNSやブログがある。19年10月に東京地裁判決は「ツイッター」について、検索結果は日時順に並べただけで、表現行為の側面がないことを指摘し、検索サイトのように「社会インフラ」とまでは言えないと判断。17年の最高裁決定を踏まえつつ、「明らかに」の条件を付けずに再びハードルを下げた。
- 争われた逮捕歴が7年以上前の建造物侵入罪で、社会的に大きく取り上げられたものではないことなどから、「公表しない利益が上回る」と削除を認めた。
- だが、最高裁は別の事件について18年4月の決定で、ツイッターを「社会インフラ」と位置づけて「明らかに」の条件を付けた高裁判断を追認。基準はあいまいになっており、同種訴訟で下級審の判断を積み重ねた上で、最高裁が改めて統一判断を示す必要がありそうだ。
- 17年の最高裁決定は削除の可否について大枠の方向性を示したが、社会の関心が薄まるまでの期間や社会で共有すべき犯罪類型、欧州で認められている「忘れられる権利」などには言及していない。具体的な基準は今後、判例の積み重ねに委ねられる。
- ネット上には、公人の不適切な言動など社会で共有されるべき情報のほか、私人の逮捕歴といったプライバシー情報もあふれる。検索サイトや投稿サイトのほか、個人ブログなど様々な形で情報が共有されるのが現状だ。17年のグーグルをめぐる最高裁決定で申立人の代理人を務めた神田知宏弁護士は「検索結果を提供するグーグルと、ツイッターなどサイトの運営者、書き込んだ個人では立場が異なる。それぞれの基準を考えていく必要がある」と話す。
- ■逮捕歴ある男性「そろそろ前向きに生きたい」
- 「世間に文句を言える立場でないことは重々承知しています。しかし、私はそろそろ前向きに生きていきたいと考えています」
- ツイッターの検索で7年前の逮捕歴が表示されるとして削除を求め、2019年10月の東京地裁判決で認められた北日本の男性は、裁判所に提出した陳述書でこう訴えた。男性は建造物侵入罪で逮捕されて罰金刑を受けたが、実名で報道された記事を引用したツイートが投稿されていた。
- 陳述書によると、男性は逮捕後に「まだ若いし、いくらでもやり直せる」と会社に促されて退職した。別の会社の面接を受けたが不採用。その後、逮捕歴のある自分が職を探していることが地元でうわさになっていると、人づてに聞いた。
- 地元から離れた場所で内定を得たが、直前になって逮捕歴が知られ、取り消された。居酒屋のアルバイトを始めると、同僚から「悪いことしたんですか?」。うわさが広まり、居づらくなって辞めた。
- その後も逮捕歴を理由に採用を断られ、親族の会社で働いている。迷惑をかけないように、取引先との電話やメールを極力控え、誰とも名刺交換はしない。年収はアルバイトを含めて約200万円に満たない。
- 「ネットで前科が公表されている限り、私が自分の名前で仕事をすることはできません。家族が、私の前科が理由で肩身の狭い思いをすることも、何としても避けたい」
- 男性の代理人の田中一哉弁護士によると、17年の最高裁決定以降、検索サイトではない掲示板「2ちゃんねる」などについても、削除が認められにくくなった。仮処分が認められない時点で断念する依頼人も少なくない。田中弁護士は、罪を犯したら相応の罰を受けるべきだとしながらも「ネットによって、忘れてもいいはずのことを世間が忘れず、更生を妨げている面がある」と話す。
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