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The Inheritors of Our Souls (Tart5) JP Text

Mar 18th, 2022 (edited)
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  1. FILENAME: text_515910-0.txt
  2. ―プロローグ―
  3. タルト: ―タルト― この世界を闇の中へ落とそうとする者…
  4. タルト: ―タルト― イザボー・ド・バヴィエール
  5. タルト: これで 終わらせます
  6. タルト: 「光あれ」…
  7. タルト: 「天国の扉(ラ・ポルトゥ・ドゥ・パラディ)」
  8. ガコンッ
  9. かごめ: ………… …………
  10. 「…以上の理由により、教会は」
  11. 「ジャンヌ・ラ・ピュセルと名乗る者を 異端者と認め」
  12. 「火刑に処す」
  13. ラ・イル: ―ラ・イル― あのお嬢ちゃんは… “乙女”は俺たちの戦友なんだ!
  14. ラ・イル: ―ラ・イル― それを助けることが 今の俺たちのやるべきことだ
  15. ラ・イル: ラ・ピュセル! ラ・ピュセル!! ラ・ピュセル! ラ・ピュセル!!
  16. タルト: …………
  17. エリザ・ツェリスカ: ――っ!?
  18. エリザ・ツェリスカ: もう火がっ!!
  19. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルト! タルトっ!!
  20. タルト: ………… …………
  21. ペレネル・フラメル: 私も…祈りましょう
  22. ペレネル・フラメル: 聖女の… “乙女”の伝説の最後に…
  23. タルト: ………… …………
  24. タルト: ―タルト― すべてのことに…
  25. タルト: ―タルト― ありがとう(メルシー・ヴレモン)
  26. かごめ: …………
  27. ???: 「…お願い」
  28. ???: 「彼女の想いを、なかったことにはしないで」
  29. かごめ: …………
  30. かごめ: はっ… 何…いまの夢?
  31. かごめ: あれっ…?
  32. かごめ: シャープペンシル…? 持って寝ちゃってたんだ…
  33. かごめ: 確か私の…だよね? でも…いつ買ったんだっけ
  34. かごめ: …………
  35. コン、コン
  36. おはようございます 佐鳥かごめさん
  37. かごめ: あ…看護師さん
  38. 今日は退院ですね おめでとうございます!
  39. かごめ: …あ…ありがとうございます
  40. 朝食、ここに置いておきますね それじゃ…
  41. バタン…
  42. アルちゃん: <…ふぅん、きみ かごめちゃんっていうんだ?>
  43. かごめ: …え…?
  44. かごめ: …えっ…ええっ!?
  45. かごめ: (アルちゃんが…)
  46. かごめ: (勝手にしゃべった…!?)
  47. アルちゃん: <聞いていい?ここはどこ?>
  48. かごめ: …えぇっ…と…
  49. かごめ: <そっか…ここはわたしにとって 未来の世界みたいだね!>
  50. アルちゃん: <あのね、お願いがあるの! “乙女”ジャンヌとか…>
  51. アルちゃん: <ジャンヌ・ダルクって 呼ばれてる人のことを>
  52. アルちゃん: <一緒に調べてほしいの!>
  53.  
  54. FILENAME: text_515910-1_35Bxz.txt
  55. 第1部
  56. 第1章「消えてゆく記憶」
  57. かごめ: アルちゃんの口を借りて私に話しかけてきたのは トルテという名前の女の子らしくて…。
  58. かごめ: 彼女は、本当は15世紀のフランスに住んでいて 自分の国を救ったジャンヌ・ダルクが 未来にどう語り継がれてるのかを 知りたいんだって。
  59. かごめ: なんて、メモしてたら…
  60. アルちゃん: <ねえ、そのペン ちょっと見せて!?>
  61. かごめ: えっ… このシャープペンシル?
  62. アルちゃん: <そう、なんか今 カチカチッってしたよね?>
  63. かごめ: あ…うん こうすると芯が出てくるの
  64. アルちゃん: <カッコいい! どんな仕組みなの?>
  65. かごめ: トルテちゃんは すごく好奇心旺盛で、人懐っこくて ぐいぐい来る女の子で…。
  66. かごめ: 押し負けた私は 一緒にジャンヌ・ダルクのことを調べに 図書館に行くことになった。
  67. かごめ: 午後から、クレセントハウスにお邪魔して 退院の挨拶をする予定だったけど それまで、時間も空いてたし…。
  68. かごめ: (でも、ジャンヌ・ダルクって 確か…)
  69. タルト: ………… …………
  70. かごめ: …………
  71. かごめ: …あれっ…?
  72. かごめ: 百科事典になら 載ってると思ったんだけど…
  73. アルちゃん: <どうしたの?>
  74. かごめ: …うぅん… 私の探し方が悪いのかも
  75. かごめ: 司書さんに聞いてみるね
  76. かごめ: えっ…?
  77. かごめ: ないんですか? 1冊も?
  78. ごめんね、他の図書館にも 問い合わせてみたんだけど…
  79. かごめ: …………
  80. アルちゃん: <ジャンヌについての本 見つからないの?>
  81. かごめ: うん…
  82. かごめ: 1冊もないなんてこと あるはずがないんだけど…
  83. かごめ: あっ…ごめんね そろそろ行かなきゃ!
  84. かごめ: クレセントハウスで いろはさんたちが待ってるから
  85. いろは: …退院できて、本当によかったね
  86. かごめ: ありがとうございます…
  87. やちよ: まだ完治していないんでしょう? 無理は禁物よ
  88. かごめ: はい…
  89. かごめ: …………
  90. かごめ: あの…ところで… ちょっと、聞いてもいいですか?
  91. やちよ: 何かしら?
  92. かごめ: えっと…ジャンヌ・ダルクの ことなんですけど…
  93. フェリシア: なんだそれ? クルマの名前か?
  94. かごめ: えっ…? 聞いたこと…ない、とか?
  95. やちよ: フェリシアはもう少し 勉強しなさい
  96. やちよ: フランスを救った少女よ
  97. やちよ: 小学生のういちゃんでも 知ってるわよね?
  98. うい: …あ…えっと 名前くらいは
  99. うい: …………
  100. やちよ: どうかしたの?
  101. うい: あ…なんだか 不思議な感じがして…
  102. いろは: フランスを救った少女…
  103. いろは: もしかすると… ジャンヌ・ダルクも
  104. いろは: 魔法少女だったのかも しれませんね
  105. アルちゃん: <そう!>
  106. アルちゃん: <すごく強い 魔法少女だったんだって!>
  107. いろは: ――っ!?
  108. いろは: …アルちゃんの話し方 ちょっと変わった?
  109. かごめ: あっ…えっと …そうじゃなくて
  110. かごめ: (…今のは…トルテちゃんで…)
  111. かごめ: (ジャンヌ・ダルクは魔法少女… 本当…なのかな?)
  112. フェリシア: おーい、いろはー そろそろ行かなくていーのか?
  113. いろは: あ、かごめちゃん ごめんね
  114. いろは: 私たち、これから みふゆさんに会いに行くの
  115. フェリシア: オレは鶴乃と待ち合わせだぞ
  116. かごめ: あ…じゃあ私は…
  117. うい: ううん、すぐに戻るから ゆっくりしていって
  118. うい: 桜子ちゃんもいるから!
  119. 万年桜のウワサ: |かごめは、私と留守番|
  120. かごめ: …………
  121.  
  122. FILENAME: text_515910-2_35Bxz.txt
  123. 万年桜のウワサ: |データベースを使いたい?|
  124. かごめ: はい…
  125. かごめ: 図書館になかったジャンヌの資料 …調べさせてもらえないかな
  126. 万年桜のウワサ: |…変|
  127. 万年桜のウワサ: |…ジャンヌ・ダルクの情報が データベースに存在しない|
  128. アルちゃん: <もしかして…>
  129. アルちゃん: <まるで“乙女”なんて いなかったみたいに?>
  130. 万年桜のウワサ: |確かに「消された」というより 最初からなかったように見える|
  131. かごめ: でも…桜子ちゃんは 知ってるんだよね?
  132. かごめ: ジャンヌ・ダルクのこと
  133. 万年桜のウワサ: |うん、知ってる だから変|
  134. 万年桜のウワサ: |私もデータベースで知るか 誰かに聞くかして知ったはず…|
  135. 万年桜のウワサ: |…次はデータベースじゃなくて ネットで調べてみる|
  136. かごめ: …どう?
  137. 万年桜のウワサ: |ない…まるで|
  138. 万年桜のウワサ: |ジャンヌ・ダルクという人が 存在しなかったみたい…|
  139. アルちゃん: <やっぱり…未来にも 伝わっていないんだ…>
  140. かごめ: やっぱりって…どういう意味? トルテちゃん
  141. ゴーン…
  142. かごめ&万年桜のウワサ: ――っ!?
  143. 万年桜のウワサ: |この音は…?|
  144. かごめ: …外、真っ暗だよ!?
  145. 万年桜のウワサ: |空を見て|
  146. かごめ: …何、あの月の色?
  147. 万年桜のウワサ: |いろはたちが心配|
  148. かごめ: 電話…つながらない… メッセージは…?
  149. かごめ: あれっ? ネットにつながらない
  150. 万年桜のウワサ: |異常事態|
  151. 万年桜のウワサ: |ネットワーク全体が ダウンしてるみたい|
  152. かごめ: …ええっ!?
  153. かごめ: この画面…変かも… だんだん黒くなってる…
  154. かごめ: …あれっ…?
  155. かごめ: …桜子ちゃん…どこ…?
  156. ゴーン…
  157. かごめ: ――っ!?
  158. かごめ: ここ… どこなの…?
  159.  
  160. FILENAME: text_515910-3_35Bxz.txt
  161. ???: 「…ちゃん」
  162. ???: 「かごめちゃん!」
  163. かごめ: …………
  164. かごめ: …はっ!?
  165. ???: 目が覚めた?
  166. かごめ: その声… トルテちゃん…?
  167. トルテ: そう!
  168. かごめ: (話がしっかりしてるし 同い年くらいかと思ってたけど)
  169. かごめ: (結構小さい子なんだね…)
  170. かごめ: あの… ここって…
  171. トルテ: “想いの箱舟”っていう世界
  172. かごめ: 想いの…箱舟…?
  173. トルテ: うん、いろんな人の記憶を
  174. トルテ: 本の形にして 集めた場所なんだって!
  175. トルテ: かごめちゃんの本は そこにあるやつだよ
  176. かごめ: これが…私の本?
  177. トルテ: そう!
  178. トルテ: わたし、そこに飛び込んで さっきまで一緒に
  179. トルテ: かごめちゃんの 心の中の世界にいたの
  180. かごめ: 心の中…? 私、夢を見てたの?
  181. かごめ: 図書館に行ったのも いろはさんたちと話をしたのも
  182. かごめ: 夢とは思えなかったけど…
  183. トルテ: あ、一緒に行ったよね 図書館!
  184. かごめ: そのときトルテちゃん… アルちゃんになってた…よね?
  185. トルテ: へっ…? なんのこと?
  186. かごめ: なんだかわけがわからなかったけど トルテちゃんは15世紀の女の子。 ある魔法を使って、想いの箱舟に来たんだって。
  187. かごめ: …で、ここは いろんな人の記憶を集めた場所らしくて ここにある本のひとつひとつに ひとりひとりの記憶が刻まれてるみたい。
  188. かごめ: 本の中に飛び込むと、その人の心に入れるけど そこは「心の中の世界」だから、現実じゃない。
  189. かごめ: トルテちゃんは、普通に私のそばにいて 話しかけてるつもりだったらしいけど… 実際は、私の頭の中にいて 私の目を通して、未来の世界を見ていたの。
  190. かごめ: でも現実の世界では、アルちゃんを通じて 私と話をしていた…っていうことみたい。
  191. かごめ: …っていうことは
  192. かごめ: 図書館にジャンヌ・ダルクの本が 1冊もなかったのは現実なの?
  193. トルテ: だと思う! 未来で実際に起きてることだよ!
  194. かごめ: あの赤い月も…? 現実とは思えないんだけど…
  195. トルテ: そんなことないよ!
  196. トルテ: 月が赤いのも、“乙女”が いなかったことにされたのも…
  197. トルテ: わたしのいる15世紀に 本当に起きてることだもん!
  198. かごめ: ええっ…!?
  199.  
  200. FILENAME: text_515910-4_35Bxz.txt
  201. かごめ: ―かごめ― オルレアンの町をイングランドから解放して フランスの王様を戴冠に導いた“乙女”ジャンヌ
  202. かごめ: 彼女が亡くなって10年近く経った1440年…。
  203. かごめ: ジャンヌのことを覚えている人は ほとんどいなくなっちゃってるの、って トルテちゃんは言った。
  204. かごめ: ただ忘れられたんじゃなくて、まるで 最初から「いなかった」みたいに、って…。
  205. トルテ: わたしが生まれたのは “乙女”が亡くなったあとだけど
  206. トルテ: でも、お母さんは覚えてて いつも話してくれたの
  207. トルテ: 悪い魔女をやっつけて フランスを取り戻した
  208. トルテ: すごい魔法少女なんだよって…
  209. かごめ: あっ、そうだ…! そのことを聞こうと思ってたの
  210. かごめ: ジャンヌ・ダルクって 本当に魔法少女だったの?
  211. トルテ: そうみたい …魔法少女に興味があるの?
  212. かごめ: うん…
  213. かごめ: 私は魔法少女じゃないんだけど… 魔法少女のことを取材してて
  214. トルテ: 取材…記録ってことかな? その未来のペンみたいなので?
  215. かごめ: うん…いつもこれでって わけじゃないけどね
  216. トルテ: じゃあ、“乙女”のことも 調べてみたい?
  217. かごめ: そうだね…取材するのは 無理かもしれないけど
  218. かごめ: ジャンヌを知っている人たちに… 話が聞けたら…
  219. トルテ: じゃあ、わたしの仲間だね!
  220. トルテ: わたしも“乙女”ジャンヌのこと いろいろ知りたいの!
  221. トルテ: …それでね、話は戻るけど この想いの箱舟という場所には
  222. トルテ: まだ失われていない“乙女”の 記憶が集まってるみたいなの!
  223. かごめ: あ…そういうことなんだ
  224. かごめ: それでトルテちゃんは この箱舟という場所に来て
  225. かごめ: みんなの心の中にある
  226. かごめ: ジャンヌの記憶を 探してたってこと?
  227. トルテ: そうそう!
  228. トルテ: …ここに集まった本に飛び込めば
  229. トルテ: “乙女”を知っている人の記憶を 知ることができるかなって!
  230. かごめ: なんとなく わかってきたかも…
  231. トルテ: でね、最初に入ったのが かごめちゃんの心の中だったの
  232. かごめ: えっ…?
  233. かごめ: …私、ジャンヌ・ダルクに 会ったことなんてないよ?
  234. かごめ: (えっと…ひとつ、ふたつ…)
  235. かごめ: 箱舟にある本って 全部で6冊しか見あたらないけど
  236. かごめ: そのうちのひとつが私…?
  237. トルテ: そうだよね… それが不思議なんだよね
  238. トルテ: 時代も未来みたいだったから
  239. トルテ: 本とか伝説とかになって 伝わってるのかなと思って
  240. トルテ: それで“乙女”のことを 調べたいって言ったんだ
  241. かごめ: 未来にはちゃんと伝わってるよ だから私も知ってたの
  242. かごめ: ただ、なぜか… 本や記録は消えちゃってたけど…
  243. トルテ: うーん、でもかごめちゃんも かごめちゃんが会った子たちも
  244. トルテ: ジャンヌの名前は 忘れてなかったよね?
  245. かごめ: うん…ただ思い返すと
  246. かごめ: 司書さんはジャンヌ・ダルク自体 知らないような感じだったかも
  247. かごめ: 私が名前を覚えていたのは 実は特別なことで…
  248. かごめ: それで、私の本が ここにあったのかな?
  249. トルテ: そうかもしれないね!
  250. かごめ: …そのうち1冊が 私の心の世界だってことは…
  251. かごめ: そこに飛び込めば もとの世界に戻れるの?
  252. トルテ: たぶん、そうだと思うよ
  253. かごめ: いつでも戻れるんだったら ちょっと安心だけど…
  254. トルテ: でも、せっかくだから もう少し取材を続けない?
  255. かごめ: うん… 私も取材はしたいけど…
  256. トルテ: じゃあ、決まりだね! 次は2冊目の本に一緒に入ろっ!
  257. かごめ: …えっ…い、いま?
  258. トルテ: うん! さあ、こっち!
  259. かごめ: え…ま、待って!?
  260.  
  261. FILENAME: text_515910-5_35Bxz.txt
  262. かごめ: …赤い月… ここが、誰かの心の中?
  263. トルテ: そうみたいだね
  264. かごめ: トルテちゃんの時代は 月が赤いって言ってたけど
  265. かごめ: 15世紀っていつもこうなの?
  266. トルテ: うん…昔はそうじゃ なかったらしいんだけど
  267. かごめ: 暗いし… ちょっと怖いかも
  268. トルテ: 夜だからね でも、もうすぐ夜が明けそう
  269. かごめ: …そうなの? よくわかるね
  270. トルテ: 夜明けまで、しばらく休もうか? 魔法陣の中にいれば安全だから
  271. かごめ: ま…魔法陣? そんなの作れるの!?
  272. トルテ: うん!
  273. トルテ: お父さんとお母さんの工房から 持ち出した道具があるから!
  274. かごめ: 夜が明けたね…!
  275. トルテ: じゃ、人里めざして しゅっぱーつ!
  276. かごめ: …ねえ、トルテちゃんが ジャンヌのことを調べてるのって
  277. かごめ: 何か、理由があるの?
  278. トルテ: …うん
  279. トルテ: わたし、普段は トルテって呼ばれてるけど
  280. トルテ: 本当はジャンヌって名前なの
  281. トルテ: “乙女”からもらった名前だって お母さんが言ってて
  282. かごめ: そっか…気になるよね
  283. かごめ: 自分の名前の もとになった人だって言われたら
  284. トルテ: でしょ?…それにわたしの顔って “乙女”によく似てるんだって!
  285. かごめ: そうなんだ…?
  286. トルテ: うん! だから自分が魔法少女になる前に
  287. トルテ: 立派な先輩のことを いろいろ知っておきたいな、って
  288. かごめ: …魔法少女に… なりたいの…?
  289. トルテ: キミには素質があるよって
  290. トルテ: キューブにずっと つきまとわれてるんだよね
  291. トルテ: でも、お母さんはね
  292. トルテ: 奇跡を願えるのは1回だけだから よく考えて決めなさい、って
  293. かごめ: キューブ…
  294. かごめ: それって キュゥべえのことだよね?
  295. トルテ: あ、もしかしてかごめちゃんも キューブが見えるの?
  296. かごめ: あ…うん…
  297. トルテ: わ、一緒だ! よろしくね!
  298. トルテ: そっか、キュゥべえか… 言葉が違うと呼び名も違うんだね
  299. かごめ: たぶん…そうだと思うけど… っていうか、あれ?
  300. かごめ: 言葉っていえば…どうして私たち 言葉が通じてるの!?
  301. トルテ: それは、わたしが持ってる 魔法石のおかげだよ!
  302. かごめ: 魔法石…?
  303. トルテ: そう!
  304. トルテ: はい、かごめちゃんにも ひとつあげる
  305. トルテ: これで誰と会っても 取材できるはずだよ!
  306. かごめ: あ…ありがと
  307. かごめ: …………
  308. かごめ: …結局、ここって 誰の心の中なのかな?
  309. トルテ: さあ?
  310. かごめ: ジャンヌ・ダルクを 知ってる誰か…
  311. かごめ: ………… …………
  312. かごめ: え…?
  313. トルテ: どうしたの?
  314. かごめ: いま、何か…
  315. かごめ: ――っ!?
  316. БЯЯЯЯЯЯяЯЯЯ!!!!
  317. トルテ: わわ! 使い魔!?
  318. かごめ: ど…どうしよう!?
  319. トルテ: お母さんの魔術道具で なんとか…!
  320. かごめ: なるの?
  321. トルテ: …わかんない
  322. かごめ: ええっ?
  323.  
  324. FILENAME: text_515910-6_35Bxz.txt
  325. 第2章「ニコラとペレネル」
  326. БяяяяЯ!?
  327. トルテ: えっ!?
  328. かごめ: 誰か、倒してくれたの…?
  329. ???の声: 探しましたよ
  330. かごめ: トルテちゃん 見て、上!
  331. ペレネル・フラメル: ―ペレネル― 近所で遊んでるのかと思ったら まさかこんな…
  332. ニコラ・フラメル: ―ニコラ― 聞けばキューブも 一緒じゃないって言うし
  333. ニコラ・フラメル: ―ニコラ― 僕たち心配したよ!
  334. トルテ: …お父さん、お母さん
  335. かごめ: え… この人たちが?
  336. ニコラ・フラメル: 初めまして!
  337. ニコラ・フラメル: 僕は錬金術士の ニコラ・フラメル
  338. ペレネル・フラメル: 同じく錬金術士にして魔法少女の ペレネル・フラメルと申します
  339. かごめ: あ…あの 佐鳥かごめ…です
  340. ペレネル・フラメル: 娘のトルテ…いえ、ジャンヌが ご迷惑をおかけしたみたいで
  341. ペレネル・フラメル: 誠に申し訳ありません
  342. ペレネル・フラメル: 私もなるべく目を離さないように しているのですが
  343. ペレネル・フラメル: なにぶん手に負えないお転婆で…
  344. トルテ: ごめんなさい… お父さん…お母さん
  345. かごめ: えっ…えっと…? お、お父さん…?
  346. かごめ: (私と 同じくらいに見えるけど…?)
  347. ペレネル・フラメル: ああ、ニコラの見た目は 気にしないでくださいね
  348. ペレネル・フラメル: わけあって 歳を取らない体質なので…
  349. かごめ: (そんな体質あるの…?)
  350. トルテ: あのね、聞いて!
  351. トルテ: かごめちゃんは 未来から来たんだよ!
  352. ニコラ・フラメル: 未来から…?
  353. キューブ: それは興味深いね
  354. かごめ: きゅ、キュゥべえ!?
  355. キューブ: やっぱりキミには ボクの姿が見えるみたいだね
  356. キューブ: まさかこんなところで 魔法少女の素質がある子に
  357. キューブ: 出会えるとは思わなかったよ
  358. かごめ: ………… …………
  359. トルテ: …どうしたの、かごめちゃん?
  360. かごめ: いろんな情報が入ってきて 頭が混乱しちゃって…
  361. ニコラ・フラメル: うーん、そうだね とりあえず…
  362. ニコラ・フラメル: 僕たちが何をしているのかを 話すことにしようか?
  363. ペレネル・フラメル: そうね
  364.  
  365. FILENAME: text_515910-7_35Bxz.txt
  366. ペレネル・フラメル: ―ペレネル― いまから10年近く前…
  367. ペレネル・フラメル: ―ペレネル― “乙女”は強大な魔女 “女王(ラ・レーヌ)の黄昏”を倒し
  368. ペレネル・フラメル: ―ペレネル― 売国妃イザボーの手からフランスを… いえ、ヨーロッパを救いました
  369. ペレネル・フラメル: ―ペレネル― そして、みずから火刑になる道を選んだのです
  370. かごめ: …………
  371. ペレネル・フラメル: 異常に気づいたのは そのあとだったわ
  372. ニコラ・フラメル: うん
  373. ニコラ・フラメル: まるで“乙女”が、初めから 「いなかった」かのように
  374. ニコラ・フラメル: 人々の記憶が変化しはじめたんだ
  375. ニコラ・フラメル: 世界が不自然な力で 変えられようとしている…
  376. ニコラ・フラメル: そう考えたペレネルと僕は
  377. ニコラ・フラメル: 人々に残る記憶を集めて 失われることのないように
  378. ニコラ・フラメル: 書物の中に閉じこめることにした
  379. ペレネル・フラメル: それによってできた 書物の中の空間…
  380. ペレネル・フラメル: それが、あなたたちが入り込んだ “想いの箱舟”よ
  381. ペレネル・フラメル: 箱舟の中にある「本」の ひとつひとつは
  382. ペレネル・フラメル: “乙女”ジャンヌにゆかりのある 人々の想いで構成されているの
  383. ニコラ・フラメル: そう、想いの箱舟は…
  384. ニコラ・フラメル: いわば“乙女”の夢を 集めたような場所と言えるね
  385. かごめ: そうだったんだ…
  386. ニコラ・フラメル: そうして箱舟に集まった記憶を 調べることで
  387. ニコラ・フラメル: 僕たちは世界の異変の原因を 探ろうとしていた
  388. ニコラ・フラメル: そして、他にも協力者を 募っていたところだったんだ
  389. ペレネル・フラメル: ところが…
  390. ペレネル・フラメル: トルテが書物の中の空間に 勝手に立ち入ってしまったのよね
  391. ニコラ・フラメル: うん、それであわてて 追いかけてきたってわけ
  392. トルテ: えっと… …ごめんなさい
  393. キューブ: トルテも箱舟に集まった記憶を 調査して
  394. キューブ: 世界の異変の原因を探ろうと していたのかい?
  395. トルテ: 調べようとはしてたけど そんな立派な動機じゃないの
  396. トルテ: ただ、わたしと同じ名前の “乙女”のことを
  397. トルテ: もっと知りたいって 思っただけだから…
  398. ニコラ・フラメル: 好奇心を持つのはいいけど
  399. ニコラ・フラメル: 迷惑をかけたかごめちゃんに ちゃんと謝らないとね
  400. トルテ: うん… ごめんね、かごめちゃん
  401. かごめ: あ…ううん 私もさっきまで
  402. かごめ: ジャンヌ・ダルクさんのことを 取材できたらな…なんて
  403. かごめ: そんな考えでいたし…
  404. かごめ: 今も、ペレネルさんが 魔法少女だって知って
  405. かごめ: 取材させてほしいな…なんて 思っちゃったし…
  406. ペレネル・フラメル: 取材とは…?
  407. トルテ: あ、かごめちゃんはね…
  408. トルテ: 魔法少女のことを 記録に残してるんだって
  409. トルテ: お母さんも協力してあげて!
  410. ―取材記録― ペレネル・フラメル
  411. ペレネル・フラメル: 「“知りたい”… 真理を究めんとする者として それが私の望みであり、私のすべてでした」
  412. ペレネル・フラメル: 「でも、“乙女”との出会いが私を変えました …少し丸くなったと言われることもあります」
  413. ペレネル・フラメル: 「あのとき…魔女になる運命が 決して避けられぬと知った“乙女”は 戦友たちの命と引き換えに 火刑となる道を選びました」
  414. ペレネル・フラメル: 「そして“乙女”は…タルトは みずから敵に囚われてゆきました。 「最後まで傍観者にすぎなかった私に 『みんなをお願いします』と言い残して…」
  415. ペレネル・フラメル: 「…“乙女”の死を目の当たりにして 私は長い人生で初めて、我が夫以外の誰かに 祈りを捧げました」
  416. ペレネル・フラメル: 「ただ、祈りを捧げることしか できなかったのです…」
  417. ペレネル・フラメル: 「我が娘が、“乙女”に関心を持ち その生きざまを知りたいというのなら」
  418. ペレネル・フラメル: 「亡き“乙女”ジャンヌのために 自分に何ができるのか、真剣に考えてほしい」
  419. ペレネル・フラメル: 「それが今の、私の望みね」
  420.  
  421. FILENAME: text_515910-8_35Bxz.txt
  422. ペレネル・フラメル: で、このあとどうするかだけど…
  423. ニコラ・フラメル: トルテも僕たちと一緒に 調査をすればいいんじゃない?
  424. ペレネル・フラメル: そうね このまま目を離すよりは…
  425. トルテ: やったー!
  426. トルテ: あっ、あの人たちだ…!
  427. トルテ: この世界は あの人たちの心の中だよ!
  428. キューブ: トルテにはわかるのかい?
  429. トルテ: うん、ほら!
  430. トルテ: かごめちゃんのときも同じように 髪の毛が反応したから!
  431. トルテ: 話、聞きにいこっ!
  432. かごめ: でも…変じゃないかな… 本1冊で、ひとりのはずじゃ…?
  433. ペレネル・フラメル: そうなってないわね
  434. ペレネル・フラメル: この本では、複数の人の記憶が つながってしまったのかしら?
  435. ニコラ・フラメル: 気をつけて接触しないと
  436. ニコラ・フラメル: 街道荒らしって言うんだけど… 略奪団と化した兵が増えてるから
  437. …“乙女”ジャンヌ? 誰だそれは?
  438. トルテ: 覚えてないかな…? オルレアンを解放して
  439. トルテ: ランスでシャルル様を 戴冠に導いた“乙女”のこと…
  440. イングランドに包囲された オルレアンの戦況を建て直して
  441. 解放に導いたのは バタールの旦那やラ・イル様だし
  442. ランスへの進軍の総指揮官は アランソン公だったよな?
  443. 道中はリッシュモン様の援軍も 大きかったと聞く
  444. そしてシャルル陛下の戴冠式で
  445. 聖油を捧げ持つ大役を担ったのは ジル・ド・レ様だ
  446. ペレネル・フラメル: みな、“乙女”とともに戦った 戦友たちよ
  447. かごめ: …………
  448. ペレネル・フラメル: 人々の記憶から、“乙女”の 存在だけが抜け落ちている…
  449. シャルル国王陛下に忠誠を尽くす リッシュモン元帥が
  450. 宮廷を掌握してくれたおかげで
  451. 5年前のアラスの和約からは
  452. イングランドの影響力も だいぶ削がれたが…
  453. 貴族同士のゴタゴタが続いて フランスは荒れたままだな
  454. リッシュモン元帥のやり方に 反対するアランソン公や
  455. バタールの旦那が 国王陛下に盾突く始末だしな…
  456. おかげで治安も荒れ放題だ
  457. イングランドを追い出すどころか フランス人同士で殺し合ってる
  458. ペレネル・フラメル: かつての“乙女”の戦友同士が 敵対している…
  459. ペレネル・フラメル: これが、“乙女”の死後に 起きていることよ
  460. かごめ: そんな…
  461. トルテ: ねえ、兵隊さんたち… 本当に思い出せないの?
  462. トルテ: わたしの顔によく似た 女の子のこと!
  463. お嬢ちゃんに似た…?
  464. トルテ: そう!
  465. おいおい、そんなに 目を近づけるなって…
  466. ――っ!?
  467. どうした?
  468. …………!
  469. おい…!
  470. ああ… 思い出したぞ…!
  471. うぉおおおっ!
  472. ついにオルレアン解放は成った!
  473. タルト: 王太子様
  474. タルト: オルレアンにおきまして 私たちフランス軍は…
  475. ガシッ
  476. タルト: ――っ!?
  477. シャルル王太子: 良い! すでに聞き及んでいる
  478. タルト: …………
  479. シャルル王太子: 本当に… 良くやってくれた、“乙女”
  480. ラ・ピュセル… どうして…忘れちまってたんだ?
  481. まったくだ
  482. …オレたちは、あのお嬢ちゃんと 確かに一緒に戦った
  483. そして、何度も命を 救われたんだ…
  484. ペレネル&ニコラ: …………!
  485. トルテ: 思い出してくれたの?
  486. ああ…
  487. 戦場ではいつも先頭に立って オレたちを励ましてくれた
  488. でも、普段は気さくで、純朴で… 本当に優しい子だったよ
  489. かごめ: あの…お話、もっと 聞かせてもらってもいいですか?
  490. …ハハハ、そんなこともあったな
  491. “乙女”への差し入れで 天幕があふれたこともあったぞ
  492. そうそう! どこに行っても人気があったよな
  493. ちっとも気取ったところがない 素朴な村娘だからな
  494. その名前がフランス中に まだ知れわたる前から
  495. 行く先々で大人気だったらしい
  496. ラ・ピュセル!
  497. 今日の朝採れた卵を 持ってまいりました
  498. どうぞお召し上がりを!
  499. お体は崩されたりして おりませんかな?
  500. ラ・ピュセルのお姉ちゃん! また私たちと遊んで!
  501. リズ・ホークウッド: このところ毎日… 大した人気ね
  502. ………… …………
  503. そう…“乙女”は 確かにオレたちの仲間で
  504. 一番の戦友だった… それを、忘れちまってたなんて
  505. かごめ: …………
  506. トルテ: でも、ありがとう 思い出してくれて
  507. …………
  508. お嬢ちゃん、本当にそっくりだな …“乙女”ジャンヌに
  509. ああ、だいぶ幼いけど 瓜ふたつだ
  510. トルテ: …間近に見てきた人たちにも そう見えるんだね
  511. キューブ: ところで記録は終わったのかい? 佐鳥かごめ
  512. かごめ: あ…うん! いまちょうど書き終えたところ…
  513. ペレネル・フラメル: ――っ!?
  514. ニコラ・フラメル: 消えた…?
  515. どうなってるんだ…?
  516. 4人ともいなくなったぞ?
  517.  
  518. FILENAME: text_515910-9_35Bxz.txt
  519. ニコラ・フラメル: …かごめちゃんが 記録を書き終えたとたんに
  520. ニコラ・フラメル: 箱舟に戻されちゃったね
  521. ペレネル・フラメル: トルテたちはどこかしら…
  522. ニコラ・フラメル: いたよ!
  523. かごめ: あ…ニコラさんたち
  524. ペレネル・フラメル: …気づいたことがふたつあるわ
  525. トルテ: なぁに、お母さん?
  526. ペレネル・フラメル: ひとつは、トルテ あなたの目には…
  527. ペレネル・フラメル: “乙女”の記憶を呼び覚ます力が あるということ
  528. トルテ: ええっ!?
  529. ペレネル・フラメル: あなたがさっきの兵士たちと 目を合わせたときに
  530. ペレネル・フラメル: なんらかの魔法が発動したわ
  531. ニコラ・フラメル: トルテの姿が “乙女”とよく似ていることで
  532. ニコラ・フラメル: 人々の記憶が甦るための 魔術的な触媒になっている…?
  533. ペレネル・フラメル: そんなところかしらね …そして、もうひとつ
  534. ペレネル・フラメル: かごめ嬢 あなたがそのペンを使って
  535. ペレネル・フラメル: “乙女”の記録を記すことで
  536. ペレネル・フラメル: 誰かの心の中の世界から ここに戻ることができるみたいね
  537. かごめ: えっ… …そうなんですか?
  538. ペレネル・フラメル: ええ、そのペンは 特殊な魔力を帯びているわ
  539. ペレネル・フラメル: 記録された冊子の方からも 同じ魔力を感じます…
  540. ペレネル・フラメル: 魔法のペンで書くことで 魔法の記録になるのでしょう
  541. かごめ: これ、どこで買ったのか 思い出せなかったけど…
  542. かごめ: 魔法のシャープペンシル… だったの?
  543. ニコラ・フラメル: トルテが“乙女”の記憶を 聞き出して
  544. ニコラ・フラメル: かごめちゃんがその話を そのペンで記録する…
  545. ニコラ・フラメル: このふたつを繰り返して “乙女”の記憶を集めることに
  546. ニコラ・フラメル: 意味があるってことかな?
  547. ペレネル・フラメル: この空間の性質はまだ よくわかっていないの
  548. ペレネル・フラメル: でもトルテが最初に会ったのが かごめ嬢だったこと自体が
  549. ペレネル・フラメル: 不思議な力が働いた結果のように 思えるわ
  550. キューブ: キミたちとタルトがなんらかの 因果で結ばれているとすれば
  551. キューブ: ありえない話ではないね
  552. かごめ: ジャンヌさんと…私たちが?
  553. トルテ: …それって、どんな?
  554. キューブ: それはボクにもわからない
  555. トルテ: …とにかく、さっきと同じことを 繰り返してみるしかないよね
  556. かごめ: そうだね… でも、次はどの本に入ろう?
  557. トルテ: 本があるところに戻ろう!
  558. トルテ: 早くはやく! かごめちゃん!
  559. かごめ: はぁ…はぁ やっと追いついた
  560. トルテ: この大きい本に入ろうよ! 次で3冊目だね!
  561. かごめ: うん、いいけど みんなが追いついてからだよ?
  562. かごめ: えっ…? トルテちゃん!?
  563. ペレネル&ニコラ: ――っ!?
  564. キューブ: ふたりとも本に 近づきすぎたようだね
  565. ニコラ・フラメル: お、追いかけないと…!
  566. かごめ&トルテ: …………
  567. かごめ: ここって…?
  568. トルテ: あっ…
  569. トルテ: ここは、あの人の心の中だよ!
  570. ジル・ド・レ: おお…! なんたる奇跡か!
  571. ジル・ド・レ: 我が招きに応じて ついに、我が聖女が…!
  572. ジル・ド・レ: “乙女”ジャンヌが復活なされた
  573. かごめ&トルテ: ――っ!?
  574. かごめ: トルテちゃんを… ジャンヌさんだと思ってる?
  575. トルテ: でも、それって…“乙女”を 覚えてるってことだよね?
  576. かごめ: まだ、トルテちゃんの目を 見てないのに…?
  577. ジル・ド・レ: 我が聖女と、連れの方よ
  578. ジル・ド・レ: どうかこのジル・ド・レの 歓待をお受けください…!
  579. トルテ: え、ジル・ド・レ様…?
  580. かごめ: あ…さっき名前を聞いたかも
  581. トルテ: うん、“乙女”と一緒に オルレアンを解放した
  582. トルテ: フランスの大貴族だよ!
  583. ジル・ド・レ: オルレアンの戦い… おお、懐かしい
  584. ジル・ド・レ: あれから10年…いや それ以上の月日が過ぎたとは…
  585. トルテ: あれ…なんか、変?
  586. かごめ: うん…ちゃんと会話できそうな 感じがしない…かも…
  587. ジル・ド・レ: 待ち侘びましたぞ、我が聖女よ さあ、我が館へ…
  588. ザッ…
  589. ???の声: いまの、見ましたわね?
  590. ???の声: …はい
  591.  
  592. FILENAME: text_515910-10_35Bxz.txt
  593. ジル・ド・レ: どうぞ、お客人がた こちらは極上のイポクラスです
  594. かごめ: イポクラス…?
  595. トルテ: …あ、お酒の一種! 飲まない方がいいよ!
  596. トルテ: ごめんなさい、あの… 山羊のミルクとかないですか?
  597. ジル・ド・レ: おお、そうでした! 我が聖女は酒が苦手でしたな!
  598. ジル・ド・レ: ご所望のものを すぐにお持ちしましょう
  599. かごめ: お、お願いします…
  600. ジル・ド・レ: …まったく 嘆かわしいかぎりです
  601. ジル・ド・レ: かつて“乙女”とともに戦い
  602. ジル・ド・レ: その奇跡を目のあたりにした 兵士たちが
  603. ジル・ド・レ: 今では“乙女”の…我が聖女の
  604. ジル・ド・レ: 存在そのものを忘れたかのように ふるまっている…
  605. かごめ: あの… “乙女”の奇跡って…?
  606. ジル・ド・レ: おや、連れの方は ご存じないようですな?
  607. ジル・ド・レ: いや、そのお歳では 無理もありませんな
  608. ジル・ド・レ: 何しろ、10年以上も昔のこと…
  609. コルボー: ―コルボー― 私の魔法からは逃げられない 敵も味方も等しくな!!
  610. コルボー: ―コルボー― さぁ、踊りくるえ 死の舞踏を
  611. コルボー: ―コルボー― ラ・ダンス・マカブル!
  612. リズ・ホークウッド: ―リズ― これはっ…
  613. リズ・ホークウッド: ―リズ― 黒死病(ペスト)!
  614. コルボー: ―コルボー― この魔法は特別製さ! 私が振りまく黒死の病は
  615. コルボー: ―コルボー― 即座に発病し 逃れられない死を与える
  616. タルト: すべてを壊そうとするあなたたちを もう許すことはできない
  617. タルト: 私はすべてを救ってみせる!
  618. おぉ… これは…
  619. 体が…楽に
  620. ジル・ド・レ: この光は… “乙女”から…?
  621. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルト…
  622. リズ・ホークウッド: 死にかけていた私たちを 全員…癒したというの?
  623. 敵である我々までも…?
  624. 奇跡の“乙女”…
  625. 聖女だ…
  626. コルボー: ふ…
  627. コルボー: ふざけるな! 私の魔法をかき消しただと!
  628. コルボー: そんなことが… 貴様は…
  629. コルボー: 貴様はいったい何なんだ!?
  630. キューブ: 「“イレギュラー”さ」
  631. ペレネル・フラメル: それも… とっておきのね
  632. かごめ: 聖なる光で… みんなの病気を癒した?
  633. ジル・ド・レ: そう…! 敵味方問わず、すべての兵を!
  634. ジル・ド・レ: その場にいたイングランド軍は
  635. ジル・ド・レ: 聖女に刃を向けることなど 到底できなくなったのです!
  636. かごめ: …すごいね
  637. トルテ: うん…
  638. ジル・ド・レ: …さて、そろそろ 支度ができたようです
  639. ジル・ド・レ: 我が聖女よ、出立の準備を
  640. トルテ: へっ…? 出立って、どこへ?
  641. ジル・ド・レ: 我が聖女が甦る この日のために
  642. ジル・ド・レ: 常によりすぐりの精鋭を 手元に置いておりました
  643. ジル・ド・レ: “乙女”がひと声発すれば
  644. ジル・ド・レ: 地獄の底まで攻め入ることも いとわぬつわものたちです
  645. ジル・ド・レ: “乙女”を忘却した 恩知らずどもに
  646. ジル・ド・レ: 裁きを下しましょう
  647. ジル・ド・レ: …さあ、ご命令を!
  648. かごめ: …ど、どうしよう? まずい雰囲気だよ
  649. トルテ: うん…それに ジル・ド・レ様って
  650. トルテ: 会ってから一度も、わたしと 目を合わせようとしないの…
  651. かごめ: そうなの…?
  652. トルテ: うん、真実の記憶が甦れば
  653. トルテ: ちゃんと話を聞いてもらえるかと 思ったんだけど…
  654. ジル・ド・レ: …どうしましたか、我が聖女よ 遠慮することはありませんぞ
  655. トルテ: う…うん
  656. ???: 「待ちなさい!」
  657. エリザ・ツェリスカ: “乙女”の名を騙る不届者は このわたくしが許しませんわ!
  658. トルテ: へっ?
  659. かごめ: あなたは…?
  660. エリザ・ツェリスカ: わたくしは神聖ローマ皇帝 ジギスムントの偉大なる妃
  661. エリザ・ツェリスカ: バルバラ・ツェリスカが娘 ドラゴン騎士団がひとり…
  662. トルテ: …エリザさん?
  663. エリザ・ツェリスカ: ――っ!?
  664. エリザ・ツェリスカ: なんで知ってますの?
  665.  
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  667. 第3章「メリッサとエリザ」
  668. かごめ: 私たちの前に現れたふたり… エリザさんとメリッサさんは “乙女”…タルトの親友として、一緒に戦った 伝説の魔法少女。
  669. かごめ: エリザさんは、神聖ローマ皇帝妃の娘で… メリッサさんは、“憤怒(ラ・イル)”の 異名で知られる英雄の娘。
  670. かごめ: 実は、ペレネルさんが箱舟を調査するときに 「協力を要請した」相手というのが このふたりで…。
  671. かごめ: エリザさんたちも偶然、私たちと同じ この心の世界に入り込んでいた。
  672. かごめ: でも、その事実がわかったのは 少しあとの話で、このときはおたがいに 何も知らなかったし…。
  673. かごめ: おまけに、トルテちゃんはふたりのことを ペレネルさんから聞いていたけど ふたりはトルテちゃんの存在を知らなくて…。
  674. エリザ・ツェリスカ: …これはいったい どういうことですの?
  675. エリザ・ツェリスカ: タルトの名を騙るニセモノなど
  676. エリザ・ツェリスカ: とても見逃せないと思って 出てきてみれば
  677. エリザ・ツェリスカ: タルトと瓜ふたつの上に わたくしを知っている…?
  678. トルテ: うん! エリザさんとメリッサさんだよね
  679. トルテ: ヨーロッパいちの魔法少女だって お母さんに聞いてる!
  680. エリザ・ツェリスカ: にょわほほほ!
  681. エリザ・ツェリスカ: それは褒めすぎですわ …じゃなくて!
  682. メリッサ・ド・ヴィニョル: あなたたちはいったい…?
  683. かごめ: この子はトルテちゃん… 私は、佐鳥かごめ…です…
  684. トルテ: あ、トルテは愛称で ジャンヌ・フラメルが本名だよ!
  685. メリッサ・ド・ヴィニョル: …フラメル…? ひょっとしてお母さんの名前って
  686. トルテ: ペレネル・フラメルだよ
  687. エリザ・ツェリスカ: ペレネルに娘がいたんですの!?
  688. メリッサ・ド・ヴィニョル: しかも…タルトにそっくり…?
  689. ジル・ド・レ: はて…何やら 混乱しているようですが…
  690. エリザ・ツェリスカ: あなたのことは後まわしですわ!
  691. メリッサ・ド・ヴィニョル: …ああ、そうだったんですね
  692. メリッサ・ド・ヴィニョル: ふたりも私たちと同じように ジル・ド・レ様の心の中に入って
  693. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトの記憶を 調べていたんですね?
  694. エリザ・ツェリスカ: それが、復活したタルトだか 生まれ変わりだかと間違われて
  695. エリザ・ツェリスカ: 叛乱の片棒をかつがされそうに なっていたと…
  696. メリッサ・ド・ヴィニョル: まあ、ここは心の中の世界だから 大事には至らないでしょうけど…
  697. かごめ: ペレネルさんとはぐれたのが よくなかったですね…
  698. エリザ・ツェリスカ: まあいいですわ お仲間というのはわかりましたし
  699. エリザ・ツェリスカ: 残る問題は…
  700. メリッサ・ド・ヴィニョル: ジル・ド・レ様ですね
  701. エリザ・ツェリスカ: あの男は、狂気に陥っていますわ なのにタルトのことは覚えている
  702. トルテ: わたしと絶対に 目を合わせようとしないの…
  703. メリッサ・ド・ヴィニョル: …記憶は残っているけど 現実からは目を背けている?
  704. エリザ・ツェリスカ: 少々、荒療治ですが…
  705. エリザ・ツェリスカ: あの男に、無理やりにでも トルテと向き合わせてみては?
  706. メリッサ・ド・ヴィニョル: 私がトルテちゃんを 連れて行ってみます
  707. メリッサ・ド・ヴィニョル: 安心して 何があっても、私が守るから
  708. トルテ: うん、わかった!
  709. エリザ・ツェリスカ: トルテの前では 黙っていましたが…
  710. エリザ・ツェリスカ: …あの男は タルトが最期を迎えたあと
  711. エリザ・ツェリスカ: 許されない罪を犯したのですわ
  712. かごめ: 罪って…?
  713. エリザ・ツェリスカ: 領内で、年端もゆかぬ少年たちを 100人以上も浚い
  714. エリザ・ツェリスカ: 黒い儀式の生贄とした罪…
  715. かごめ: ――っ!?
  716. かごめ: そんな…!
  717. エリザ・ツェリスカ: 証拠は山とあります
  718. エリザ・ツェリスカ: 近く、その罪は露見して あの男は死刑となるでしょう
  719. エリザ・ツェリスカ: …皮肉な話ですわ
  720. エリザ・ツェリスカ: ともに死地を馳せた者たちすら 記憶を失くしていった中で
  721. エリザ・ツェリスカ: あの男だけはタルトを忘れず 誰よりも崇拝し続けていたなんて
  722. ジル・ド・レ: 「ああぁぁああーーっ!!」
  723. かごめ: …………!
  724. エリザ・ツェリスカ: どうやら、少しばかり 正気が戻ったようですわね
  725. ジル・ド・レ: あ… ああ…!
  726. ジル・ド・レ: 私は…私はなんということを してしまったのだ…!
  727. ガシャーン
  728. ジル・ド・レ: なぜ!なぜ!!
  729. ジル・ド・レ: 我が聖女が 死ななければならない!
  730. ジル・ド・レ: あなたが魔女であるならば 私は…私は悪魔にでもなろう!
  731. ジル・ド・レ: そしてまたいつか 我が聖女のもとに!
  732. ジル・ド・レ: …………
  733. エリザ・ツェリスカ: やっと我に返ったのですわね
  734. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…
  735. メリッサ・ド・ヴィニョル: トルテちゃんと目を合わせるのを 避けていたのは
  736. メリッサ・ド・ヴィニョル: もう、タルトに顔向けできない… そんな気持ちからだと思います
  737. トルテ: …………
  738. かごめ: ジャンヌ・ダルクさんが 悲惨な最期を迎えたことで
  739. かごめ: みんなが傷ついていたんですね…
  740. エリザ・ツェリスカ: それは… わたくしたちも同じですわ
  741. かごめ: …………
  742. ジル・ド・レ: …………
  743. エリザ・ツェリスカ: この男は、タルトの記憶は 失うことがなかったけれど
  744. エリザ・ツェリスカ: でも、もっと大切なものを 見失ってしまったのですわ
  745. メリッサ・ド・ヴィニョル: ジル・ド・レ様はいま その罪を自覚なさいました…
  746. メリッサ・ド・ヴィニョル: 現実の世界でも罪に気がつき 激しい後悔に襲われるでしょうが
  747. メリッサ・ド・ヴィニョル: 彼に裁きを下すのは 私たちの仕事ではありません
  748. かごめ: …………
  749. かごめ: 私たちはこのあと、そっと館を後にして それから、メリッサさんとエリザさんに 少し、話を聞いた。
  750. かごめ: かつて、ジャンヌ・ダルクさんの仲間として ともに戦ったふたりは ジャンヌさんが亡くなったあとも その想いを継いで、10年近くのあいだ ヨーロッパの各地で戦い続けてきたんだって。
  751. かごめ: そんなふたりにとって ジャンヌさんの記憶がみんなから消えて かつての戦友たちが争いを繰り返し イングランドを追い出せないでいる状況は すごく、もどかしいんだろうなって思う…。
  752.  
  753. FILENAME: text_515910-12_35Bxz.txt
  754. エリザ・ツェリスカ: で…
  755. メリッサ・ド・ヴィニョル: 想いの箱舟まで 戻されましたけど…
  756. かごめ: ペレネルさんたちは…?
  757. トルテ: あ、いた!
  758. エリザ・ツェリスカ: わたくしの本音としては、まず
  759. エリザ・ツェリスカ: ペレネルにタルトそっくりの 娘がいたことについて
  760. エリザ・ツェリスカ: 問い正したいところなのですが…
  761. ペレネル・フラメル: その理由については ご想像におまかせするわ
  762. エリザ・ツェリスカ: ええ、今回の件が片づくまで 追及しないことにします
  763. エリザ・ツェリスカ: それよりも…
  764. エリザ・ツェリスカ: タルトの記憶が人々から 消えていく謎について
  765. エリザ・ツェリスカ: 何かわかりましたの?
  766. ペレネル・フラメル: 残念ながら、何も…
  767. エリザ・ツェリスカ: タルトの…あの子の生きた証を なかったことにするなんて…
  768. エリザ・ツェリスカ: 何者かのしわざだとしたら 決して許せませんわ
  769. メリッサ・ド・ヴィニョル: こんなことができるとしたら 考えられるのは
  770. メリッサ・ド・ヴィニョル: “売国妃”と呼ばれた あの方なんですけど…
  771. エリザ・ツェリスカ: 最悪の魔女と化したイザボーは
  772. エリザ・ツェリスカ: タルトがその命を燃やして 確かに倒しましたわ
  773. エリザ・ツェリスカ: そして5年前 生き残った娘のミヌゥも…
  774. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…私たちが この手で討ち果たしました
  775. トルテ: その話は、お母さんに聞いたよ
  776. トルテ: イングランド陣営の黒幕たちは それで完全にいなくなった…
  777. トルテ: メリッサさんとエリザさんの おかげだって!
  778. ペレネル・フラメル: …ええ、ふたりこそが
  779. ペレネル・フラメル: “乙女”亡きあとのヨーロッパを 守り続けてきた
  780. ペレネル・フラメル: 英雄であることは間違いないわ
  781. エリザ・ツェリスカ: タルトがイザボーを倒した時点で すべては終わったも同然でしたわ
  782. メリッサ・ド・ヴィニョル: …私たちは、ただ
  783. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトの想いを 無にしたくなかったんです
  784. かごめ: この時代から10年近く前のこと… “乙女”ジャンヌの最後の敵になったのは 元フランス王妃の イザボーさんという強大な魔法少女で…。
  785. かごめ: 1431年 イングランド陣営の黒幕だった彼女が ジャンヌさんの手で倒されて 世界は闇に呑まれずに済んだらしいの。
  786. かごめ: そして、その数年後の1435年 メリッサさんとエリザさんが 生き残った娘のミヌゥさんを討ったことで 黒幕たちの野望は完全についえた…。
  787. かごめ: そこにはまだ、語られていない物語が あるみたいだけど…。
  788. かごめ: ただ、今のフランスで起きている戦乱は 魔法少女ではなくて、人と人、国と国の争いで… だから「“乙女”の記憶が失われる」という おかしな現象がなぜ起きているのか ペレネルさんたちは不思議がっているの。
  789. ニコラ・フラメル: …まるで、僕たちの世界が
  790. ニコラ・フラメル: もうひとつの世界の 侵食を受けているように見えるね
  791. メリッサ・ド・ヴィニョル: もうひとつの世界…?
  792. ニコラ・フラメル: そう…“乙女”ジャンヌが 存在しない世界
  793. ニコラ・フラメル: そして空には、赤い月がある
  794. ニコラ・フラメル: 最初に赤い月が観測されたのは 40年くらい前…
  795. ニコラ・フラメル: 1400年頃の話だ
  796. ニコラ・フラメル: その頃から僕たちの世界は
  797. ニコラ・フラメル: “乙女”がいない赤い月の世界に 侵食されはじめたんじゃないかな
  798. ペレネル・フラメル: もうひとつの世界の侵食… 冴えた見方かもしれないわね
  799. ペレネル・フラメル: …ごめんなさい、ニコラには 見えない相手と話をするけれど
  800. ペレネル・フラメル: キューブはどう思う?
  801. キューブ: 悪くない仮説だね きっかけは不明だけど
  802. キューブ: 1400年頃、なんらかの理由で 世界の可能性はふたつに分岐した
  803. キューブ: ひとつは“赤い月の世界”… タルトが誕生しない世界だ
  804. キューブ: もうひとつはボクたちの世界… タルトがフランスを救った世界だ
  805. キューブ: ただ、ボクたちの世界は 赤い月の世界にすでに侵食されて
  806. キューブ: 赤い月が空に昇るようになり
  807. キューブ: タルトの記憶も徐々に 人々の世界から消えつつある…
  808. キューブ: さっきのニコラの仮説は このように解釈できる
  809. かごめ: ジャンヌさんが誕生する世界と しない世界…
  810. かごめ: ふたつの可能性のあいだで 歴史が揺れ動いてるってこと?
  811. トルテ: あ、だから未来の記録からは
  812. トルテ: “乙女”に関することが 消えちゃってたんだ…?
  813. ペレネル・フラメル: でしょうね…ただ、影響は
  814. ペレネル・フラメル: “乙女”に関することだけに 今のところ留まっているけど
  815. ペレネル・フラメル: “乙女”が存在しなかったら イザボーも倒されないし
  816. ペレネル・フラメル: もっと大きな変化が起きるはず
  817. ペレネル・フラメル: 徐々にしか影響が出ないのは 何か理由があるのかしら?
  818. キューブ: 魔法が関わっているからだろうね
  819. キューブ: それに、ペレネル
  820. キューブ: キミたちがこの“想いの箱舟”に 人々の記憶を封じ込めたことで
  821. キューブ: 侵食に抵抗していることも 理由のひとつだと思うよ
  822. エリザ・ツェリスカ: …わたくしやメリッサの記憶は ここにはありませんの?
  823. ペレネル・フラメル: もっと危うい、失われそうな 記憶を優先して集めたので…
  824. ニコラ・フラメル: 集まったのはたったの6冊分…
  825. ニコラ・フラメル: “乙女”の記憶は 人々からなくなる寸前だったんだ
  826. かごめ: もしもジャンヌ・ダルクさんの 痕跡が完全になくなって
  827. かごめ: その存在ごと消えちゃったら
  828. かごめ: 私が知ってる未来には きっとならないよね…?
  829. かごめ: ちょっと…心配になってきたかも
  830. トルテ: もういちど、かごめちゃんの本に 飛び込んで
  831. トルテ: 未来の様子を確かめてみようか?
  832. ニコラ・フラメル: 今度は、みんなで一緒にね!
  833. エリザ・ツェリスカ: ずいぶん大所帯ですけれど 仕方ありませんわね!
  834.  
  835. FILENAME: text_515910-13_35Bxz.txt
  836. メリッサ・ド・ヴィニョル: ここが、未来の世界…?
  837. トルテ: 前に来たときと 変わってないみたいだね
  838. かごめ: 桜子ちゃんは…いない…?
  839. トルテ: 外の様子も見てみないと!
  840. かごめ: そうだね…
  841. かごめ&トルテ: ――っ!?
  842. かごめ: 町が…ない?
  843. ニコラ・フラメル: 空には… 赤い月が昇っているね
  844. エリザ・ツェリスカ: 落ち着きなさい 少し、あたりを探ってみましょう
  845. トルテ: そうだね
  846. かごめ: 道もないし 町の灯りも見えない…
  847. ペレネル・フラメル: そうね、人が暮らしている痕跡が まったく感じられないわ
  848. メリッサ・ド・ヴィニョル: 人間が…滅んでしまったの?
  849. キューブ: どうやらそのようだね
  850. キューブ: “乙女”が存在せず イザボーが権勢を拡大し続ければ
  851. キューブ: 行き着く先は人類の文明の崩壊だ
  852. トルテ: でも、さっきいた部屋は? 誰が作ったの?
  853. キューブ: もとの世界がまだ完全には 侵食されていないから
  854. キューブ: 残っているだけだよ
  855. キューブ: 佐鳥かごめの存在や、その建物は 世界の変化に影響されない
  856. キューブ: 特異点のような場所に なっているのかもしれないね
  857. かごめ: …クレセントハウスが?
  858. ペレネル・フラメル: まずは、そこに戻りましょうか
  859. かごめ: 考えてなかった…
  860. かごめ: 人類が消えてしまうほどの 危機だったなんて…
  861. ペレネル・フラメル: まずは、状況を整理して 打開策を考えましょう
  862. ニコラ・フラメル: …かごめちゃんの存在が ひとつの鍵になっているのは
  863. ニコラ・フラメル: 間違いないと思うよ
  864. ニコラ・フラメル: どうにか箱舟に保存できた “乙女”の記憶は6冊…
  865. ニコラ・フラメル: その、たった6冊のうち1冊が かごめちゃんの記憶なんだから
  866. ニコラ・フラメル: トルテがお邪魔したときも かごめちゃんの周りの人たちは
  867. ニコラ・フラメル: “乙女”ジャンヌの名前を ちゃんと覚えていたんだよね?
  868. かごめ: はい…いろはさんとやちよさん ういちゃんに、桜子ちゃん…
  869. かごめ: あ、フェリシアさんは 知らないみたいだったけど…
  870. ペレネル・フラメル: そこに共通項が あるのかもしれないわ
  871. ペレネル・フラメル: たとえば、なんらかの形で
  872. ペレネル・フラメル: “乙女”と因果で結ばれた 少女である、とか…
  873. トルテ: そのペンも関係あるよね?
  874. エリザ・ツェリスカ: 謎の魔法のペンの持ち主… 関係ないはずがありませんわ!
  875. ニコラ・フラメル: 未来の少女が魔法のペンで 魔法少女を取材して記録している
  876. ニコラ・フラメル: その中には、消えてしまいそうな
  877. ニコラ・フラメル: “乙女”ジャンヌに関する記録が たくさん含まれている…
  878. ニコラ・フラメル: かごめちゃんの行為自体が 赤い月の世界の侵食から
  879. ニコラ・フラメル: 未来を守る 役に立っているのかもしれないよ
  880. ペレネル・フラメル: ――っ!?
  881. ペレネル・フラメル: そうよ、その通りよ
  882. ペレネル・フラメル: 私たちは世界をもとに戻す方法を 探していましたが…
  883. ペレネル・フラメル: かごめ嬢が記録を続けることで もとの世界を取り戻せるわ
  884. トルテ: どういうこと?
  885. キューブ: 「未来」の住人である 佐鳥かごめがタルトを記録すれば
  886. キューブ: 「タルトが存在した過去」を なかったことにはできないからね
  887. キューブ: おまけにそのペンとノートは なんらかの魔法で守られている…
  888. ペレネル・フラメル: あとは、トルテの存在ね
  889. ペレネル・フラメル: トルテがかごめ嬢と出会ったのも 偶然ではないはずよ
  890. メリッサ・ド・ヴィニョル: とにかく、ふたりを助けて タルトの記録を続ければ…
  891. メリッサ・ド・ヴィニョル: 世界はもとに 戻るということでしょうか?
  892. エリザ・ツェリスカ: すべきことが はっきりしましたわね
  893. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…!
  894. ニコラ・フラメル: もうひとつ 気づいたことがあるよ
  895. エリザ・ツェリスカ: なんですの?
  896. ニコラ・フラメル: あの赤い月の正体だよ
  897. メリッサ・ド・ヴィニョル: えっ…?
  898. ニコラ・フラメル: あの赤色って、想いの箱舟の色に よく似てる気がしない?
  899. ペレネル・フラメル: …確かにそうね
  900. ニコラ・フラメル: 世界には固有の“色”があってね
  901. ニコラ・フラメル: ある種の魔法を通して見ると 異なる世界に属するものは
  902. ニコラ・フラメル: 異なる色で見えると 言われているんだ
  903. ニコラ・フラメル: あの赤色が、僕たちの 本来の世界の色なんだとすると
  904. ニコラ・フラメル: あの赤い月は “乙女”がいない世界から見た
  905. ニコラ・フラメル: 僕たちの世界の影なのかも
  906. かごめ: 私たちの世界の…影?
  907. ニコラ・フラメル: うん、侵食が完了して 僕たちの世界が消滅したら
  908. ニコラ・フラメル: あの赤い月も なくなるんじゃないかなって
  909. エリザ・ツェリスカ: そんなことにはさせませんわ
  910. メリッサ・ド・ヴィニョル: そうです!
  911. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトの記憶は 決して消させたりしません!
  912. トルテ: そうだね! がんばろう!
  913. かごめ: ところで…その… どうやって箱舟に戻ろう…?
  914. トルテ: 取材…すればいいんじゃない?
  915. かごめ: …誰を?
  916. メリッサ&エリザ: …………
  917. ―取材記録― メリッサ・ド・ヴィニョル エリザ・ツェリスカ
  918. メリッサ・ド・ヴィニョル: 「できるなら、今すぐにでも タルトに会いたい… それが私の本当の望みかもしれません」
  919. メリッサ・ド・ヴィニョル: 「でも、それは決して適わない… それならば、タルトの想いを継ぐことが 私の生きる道だって思ったんです」
  920. メリッサ・ド・ヴィニョル: 「だから私は、これからも戦い続けます タルトが望んだ、平穏な世界が実現するまで」
  921. エリザ・ツェリスカ: 「タルトに本当の救いが訪れること… わたくしが望むのは、それだけですわ」
  922. エリザ・ツェリスカ: 「でもタルトは自身の救いなど 望まないでしょう 最後の瞬間まで、他の誰かのためを想い 他の誰かのために死んでいったあの子ならば…」
  923. エリザ・ツェリスカ: 「だからわたくしは 今を精一杯生き抜いてみせます いつかこの世を去るとき タルトに胸を張って向き合えるように」
  924. エリザ・ツェリスカ: 「そして、ヨーロッパの安寧のために わたくしもこれだけのことをやってきた、と 堂々と報告できるように…」
  925.  
  926. FILENAME: text_515910-14_35Bxz.txt
  927. 第4章「叛乱」
  928. ペレネル・フラメル: 全員、揃ったかしら?
  929. トルテ: うんっ!
  930. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい!
  931. ペレネル・フラメル: では、向かいましょう 4冊目の本の中へ
  932. ニコラ・フラメル: 6冊中の4冊目… そろそろ、変化があるかもね!
  933. トルテ: また、森…?
  934. ニコラ・フラメル: でも、さっきとは違う… フランスのどこかだと思う
  935. ニコラ・フラメル: 踏み固められた道もあるし 人里は近いよ
  936. エリザ・ツェリスカ: 少し歩きますわよ!
  937. トルテ: 最初は何をどうしていいか わからなくて不安だったけど…
  938. トルテ: 何をすればいいか わかってきたよね!
  939. ペレネル・フラメル: そうね、ただ 解けていない謎もあるわ
  940. かごめ: それって…?
  941. ペレネル・フラメル: 誰が“乙女”のいない世界を 望んだのかということよ
  942. かごめ: あ… そうですよね
  943. かごめ: 何がきっかけで ふたつの世界が分かれたのかも
  944. かごめ: まだ、わかってないですし…
  945. トルテ: あっ!
  946. トルテ: ここにいるよ!
  947. トルテ: この世界は、この野営地にいる 誰かの心の中だよ!
  948. かごめ: また兵隊さんってこと?
  949. メリッサ・ド・ヴィニョル: いったい、どの人でしょう…?
  950. ラ・イル: …………
  951. トルテ: あの人だよ!
  952. メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様!?
  953. かごめ&トルテ: ええっ!
  954. メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様…
  955. ラ・イル: おお、メリッサじゃないか!
  956. ラ・イル: 今度の戦い… お前も手伝ってくれるのか?
  957. かごめ: 戦いって…?
  958. エリザ・ツェリスカ: なるほど、わかりましたわ この軍は…
  959. エリザ・ツェリスカ: フランス王シャルル7世陛下への 叛乱軍ですわ
  960. かごめ: ――っ!?
  961. かごめ: あの、いいんでしょうか…?
  962. かごめ: メリッサさんとお父さんの ふたりだけにして…
  963. エリザ・ツェリスカ: 親子ふたりで話をさせましょう
  964. エリザ・ツェリスカ: 私たちが必要になれば そのうち呼びにくるでしょう
  965. トルテ: それより、さっきの話… 叛乱軍って…?
  966. トルテ: “憤怒(ラ・イル)”様って 10年以上前に
  967. トルテ: 国王シャルル様を戴冠まで 導いた“乙女”の戦友だよね?
  968. ペレネル・フラメル: そのときの戦友の多くは
  969. ペレネル・フラメル: 現在のシャルル国王陛下に 不満を持っているようね
  970. ペレネル・フラメル: ラ・イルの盟友サントライユ アランソン公、バタール…
  971. ペレネル・フラメル: かつて“乙女”に心酔し ともに戦った戦友たちが
  972. ペレネル・フラメル: シャルル陛下の息子である ルイ王太子を担ぎ出して
  973. ペレネル・フラメル: 叛乱を起こしたのよ
  974. キューブ: 今回は、これまでになく 大規模になりそうだね
  975. キューブ: このままではイングランドとの 戦争どころじゃなくなるよ
  976. かごめ: 戦友同士で争ってるって話は 前にも聞いたけど
  977. かごめ: どうしてそうなったのか よくわからない…かも
  978. エリザ・ツェリスカ: 理由はいろいろありますわ
  979. エリザ・ツェリスカ: ひとつには、シャルル陛下の側近 リッシュモン元帥の存在…
  980. エリザ・ツェリスカ: リッシュモンもタルトの戦友で
  981. エリザ・ツェリスカ: 軍人としても政治家としても 恐ろしく有能な男ですわ
  982. エリザ・ツェリスカ: 彼は、イングランドの 組織化された軍に対抗するには
  983. エリザ・ツェリスカ: 貴族の私兵や傭兵団ではなく
  984. エリザ・ツェリスカ: 国王直属の常備軍を拡大する 必要があると考えています
  985. エリザ・ツェリスカ: 昔ながらの騎士の戦いでは
  986. エリザ・ツェリスカ: イングランドを追い出せないと 知っているのです
  987. ペレネル・フラメル: …でも、それを進めると 貴族たちの力は削られ
  988. ペレネル・フラメル: 街道荒らしや略奪で 生計を立てている傭兵崩れも
  989. ペレネル・フラメル: 好き勝手ができなくなる…
  990. エリザ・ツェリスカ: だからリッシュモンには 敵も多いのですわ
  991. エリザ・ツェリスカ: …それに加えて、シャルル陛下に 怨恨を持つ将も多いはず
  992. トルテ: どうして…?
  993. エリザ・ツェリスカ: タルトが捕虜になったとき シャルル陛下が身代金を支払えば
  994. エリザ・ツェリスカ: タルトは 解放されたかもしれないのです
  995. かごめ: あ…
  996. ペレネル・フラメル: でも、シャルル国王陛下は “乙女”を見捨てた…
  997. ペレネル・フラメル: それが“乙女”自身が望んだ 最期だったのだとしても
  998. ペレネル・フラメル: “乙女”に心酔する彼らは そうは考えないわ
  999. かごめ: “乙女”ジャンヌがいなくなって みんながバラバラに…
  1000. ニコラ・フラメル: “乙女”がこのことを知ったら とても悲しむだろうね
  1001. トルテ: あれっ?
  1002. トルテ: でも、みんなは“乙女”のことを 忘れちゃってるはずだよね?
  1003. エリザ・ツェリスカ: …ええ、だからもう どうして叛乱をくわだてたのか
  1004. エリザ・ツェリスカ: 自分でもわからなくなっている はずですわ
  1005. エリザ・ツェリスカ: …おそらくは、ラ・イルも
  1006. メリッサ・ド・ヴィニョル: エリザ…聞こえますか? みんなと来てください
  1007. エリザ・ツェリスカ: いいでしょう みんな、行きますわよ!
  1008.  
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  1010. メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様、どうしてわかって いただけないんですか!
  1011. メリッサ・ド・ヴィニョル: シャルル様に権限を集め
  1012. メリッサ・ド・ヴィニョル: 治安を回復して、フランスから イングランドを追い出す…!
  1013. メリッサ・ド・ヴィニョル: リッシュモン元帥に みんなが協力することが
  1014. メリッサ・ド・ヴィニョル: フランスの平和への 近道なんですよ!
  1015. ラ・イル: シャルル様は信用ならねえ…!
  1016. ラ・イル: 身代金をケチられたせいで 俺もサントライユも
  1017. ラ・イル: 危うく見殺しにされる ところだったんだぞ!
  1018. メリッサ・ド・ヴィニョル: だからって、フランス人同士で 内乱なんてやってたら…
  1019. かごめ: ええっ!?
  1020. トルテ: めちゃくちゃ喧嘩してる!
  1021. キューブ: どちらも譲りそうもないね
  1022. ペレネル・フラメル: 似た者親子ですね
  1023. ニコラ・フラメル: ど、どうするの…?
  1024. エリザ・ツェリスカ: もうすぐ終わりますわ
  1025. パンッ!
  1026. ラ・イル: …………
  1027. かごめ&トルテ: …………
  1028. ニコラ・フラメル: …暴力で解決したね
  1029. ペレネル・フラメル: 話しあった意味は あったのかしら…?
  1030. メリッサ・ド・ヴィニョル: お見苦しいところを お見せしてしまって…
  1031. ラ・イル: …………
  1032. メリッサ・ド・ヴィニョル: …お父様はタルトのことを 忘れてらっしゃいました
  1033. メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様もサントライユ様も
  1034. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトを救い出そうと 何度もルーアンを攻撃して
  1035. メリッサ・ド・ヴィニョル: 捕虜になったのだって そのせいだったのに…
  1036. かごめ: “乙女”ジャンヌを心から 大切にしていたんですね
  1037. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…
  1038. メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様が目を覚ましたら
  1039. メリッサ・ド・ヴィニョル: トルテちゃんは 目を覗き込んであげてください
  1040. トルテ: あ、うん…
  1041. メリッサ・ド・ヴィニョル: そうすればきっと 思い出してくれると思うから
  1042. ラ・イル: …うぅ…ううーん…
  1043. トルテ: あっ!
  1044. メリッサ・ド・ヴィニョル: お願いします
  1045. ラ・イル: ―ラ・イル― …………? なんだ、この記憶は
  1046. ラ・イル: ―ラ・イル― あの嬢ちゃんは…確か…
  1047. ラ・イル: ―ラ・イル― “乙女”…!
  1048. ラ・イル: ―ラ・イル― そうだ…死にかけてた俺とメリッサを “乙女”が身を挺して助けてくれて
  1049. ラ・イル: ―ラ・イル― そのせいで、嬢ちゃんは 危うく命を落としかけて…
  1050. ラ・イル: ―ラ・イル― …そうだ、ルーアンで 最後に会ったときだって
  1051. ラ・イル: ―ラ・イル― 嬢ちゃんは俺たちの安全と引き換えに 自分の命を差しだしたんだ
  1052. ガシャガシャッ
  1053. タルト: …私を捕らえなさい
  1054. ミヌゥ: なっ!?
  1055. タルト: あなたが一番憎いのは 私でしょう?
  1056. タルト: 私はどうなっても構いません
  1057. タルト: その代わり
  1058. タルト: みんなには 手を出さないで下さい
  1059. ラ・イル: …メリッサ
  1060. メリッサ・ド・ヴィニョル: …思い出しました?
  1061. ラ・イル: ああ…何もかもな
  1062. ラ・イル: どうして忘れちまってたんだ 嬢ちゃんのことを…
  1063. ラ・イル: 俺たち戦友のために 何度も身を投げ出してくれて
  1064. ラ・イル: 最後まで 他の誰かのことだけを考えていた
  1065. ラ・イル: “乙女”を絶対に救出しようって
  1066. ラ・イル: サントライユと一緒に ルーアンを攻めて…
  1067. ラ・イル: 結局、助けられなくて…
  1068. ラ・イル: ………… …………
  1069. かごめ&トルテ: …………
  1070. かごめ: (あとに残された人たちも みんな、悲しんで…)
  1071. ラ・イル: シャルル様を恨んだのは
  1072. ラ・イル: 自分たちが見殺しにされたせいと 思い込んでたが…本当は…
  1073. ラ・イル: “乙女”を見殺しにされたのが 許せなかったんだ…
  1074. メリッサ・ド・ヴィニョル: …お父様、聞いてください
  1075. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトがフランスのために 立ち上がったのは
  1076. メリッサ・ド・ヴィニョル: 目の前で妹を失ったからなんです
  1077. タルト: ―タルト― 同じような悲劇を もう誰にもあわせたくありません
  1078. タルト: ―タルト― だから私… 魔法少女になる
  1079. キューブ: ―キューブ― そうか、タルト… キミは何を望むんだい?
  1080. タルト: ―タルト― フランスに 光をもたらす力を!
  1081. メリッサ・ド・ヴィニョル: あの頃は、正式な王が不在で 国内は荒れ放題でしたけど
  1082. メリッサ・ド・ヴィニョル: いまはリッシュモン元帥が シャルル様を支えて
  1083. メリッサ・ド・ヴィニョル: フランスに平穏な日々を 取り戻そうとしてらっしゃいます
  1084. メリッサ・ド・ヴィニョル: あの方もまたタルトの意志を 継ごうとしているんです
  1085. メリッサ・ド・ヴィニョル: だから今は、みんなで一緒に フランスを…
  1086. ラ・イル: …大きくなったな、メリッサ
  1087. メリッサ・ド・ヴィニョル: えっ…?
  1088. ラ・イル: 俺ひとり刃を収めたとこで 簡単にゃコトは収まらないだろう
  1089. ラ・イル: 人は情で動くモンだからな
  1090. ラ・イル: だけど、もう忘れたりしないぜ “乙女”のことを…
  1091. ラ・イル: そう、絶対にな!
  1092. メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様…!
  1093. エリザ・ツェリスカ: ふっ…
  1094. トルテ: よかった…!
  1095. ラ・イル: にしても、ちっちゃいお嬢ちゃん “乙女”に本当に似てるな…
  1096. トルテ: えへへ…よく言われます
  1097. ペレネル・フラメル: …無事に記録できたかしら? かごめ嬢
  1098. かごめ: はい…!
  1099. かごめ: えっ、ここって…?
  1100. ペレネル・フラメル: …………!
  1101. イザボー: …死になさい
  1102. キューブ: あれは… イザボー・ド・バヴィエール!
  1103. メリッサ&エリザ: …………
  1104. ペレネル・フラメル: みなさん、下がってください
  1105.  
  1106. FILENAME: text_515910-16_35Bxz.txt
  1107. ブゥン
  1108. ペレネル・フラメル: …………
  1109. イザボー: ふん、たいした防御魔法ね
  1110. イザボー: 私の攻撃を浴びても 傷ひとつつかないなんて
  1111. ペレネル・フラメル: ………… …………
  1112. イザボー: 私は、はるか遠い未来を 覗き見たわ
  1113. イザボー: この先、私の計画を 台無しにするのは
  1114. イザボー: “乙女(ラ・ピュセル)”と 呼ばれる者だけかと
  1115. イザボー: 思っていたけれど…
  1116. イザボー: 邪魔者は他にもいたようね
  1117. イザボー: 今日はここまでにしてあげる
  1118. イザボー: ふふ… またお会いしましょう
  1119. キューブ: …………
  1120. エリザ・ツェリスカ: 箱舟に戻ったようですけれど… さっきの妙な空間は…?
  1121. エリザ・ツェリスカ: いえ、それより さっき戦った相手…
  1122. エリザ・ツェリスカ: あれは 売国妃イザボーでしたわよね!?
  1123. キューブ: うん、間違いない
  1124. メリッサ・ド・ヴィニョル: でも…イザボーは タルトが討ったはず
  1125. ペレネル・フラメル: それに、イザボーのあの姿は…
  1126. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい、私たちが 戦ったときとは違う
  1127. メリッサ・ド・ヴィニョル: “魔法少女”の姿でした
  1128. キューブ: うん
  1129. キューブ: あの姿は、まだ魔女となって 大いなる変貌を遂げる前…
  1130. キューブ: それどころか、ミヌゥたちが 誕生するよりずっと前
  1131. キューブ: ひとりの魔法少女だった頃の 若き日のイザボーだ
  1132. ペレネル&ニコラ: …………!
  1133. メリッサ&エリザ: ――っ!?
  1134. エリザ・ツェリスカ: …なんですって!?
  1135. A Suivre(つづく)...
  1136.  
  1137. [Part 1 end]
  1138. -----
  1139. (Part 2 start)
  1140.  
  1141. FILENAME: text_515920-1_BK8zF.txt
  1142. 第2部
  1143. 第5章「残された者たち」
  1144. キューブ: あの姿は、まだ魔女となって 大いなる変貌を遂げる前…
  1145. キューブ: それどころか、ミヌゥたちが 誕生するよりずっと前
  1146. キューブ: ひとりの魔法少女だった頃の 若き日のイザボーだ
  1147. ペレネル&ニコラ: …………!
  1148. メリッサ&エリザ: ――っ!?
  1149. エリザ・ツェリスカ: …なんですって!?
  1150. キューブ: おそらく40年ほど前… 赤い月が現れた頃の彼女が
  1151. キューブ: ボクたちの動きを妨害するために 襲撃してきたんだ
  1152. キューブ: 箱舟に残る本はあと2冊… 形勢はこちらに傾いているからね
  1153. トルテ: キューブには、何かわかったの?
  1154. キューブ: うん、何が起きているのか これではっきりしたよ
  1155. キューブ: 40年前の1400年頃、世界は ふたつに分岐した
  1156. キューブ: いずれタルトが誕生する世界と 誕生しない世界だ
  1157. キューブ: 世界がふたつに分かれた原因は イザボーが未来を覗き見たことだ
  1158. かごめ: あ…
  1159. イザボー: 私は、はるか遠い未来を 覗き見たわ
  1160. イザボー: この先、私の計画を 台無しにするのは
  1161. イザボー: “乙女(ラ・ピュセル)”と 呼ばれる者だけかと
  1162. イザボー: 思っていたけれど…
  1163. かごめ: はるか遠い未来って 私のいた未来…とか?
  1164. ペレネル・フラメル: そうね…
  1165. ペレネル・フラメル: どのくらい先の未来かは 断定できないけれど
  1166. ペレネル・フラメル: 「フランスは ひとりの女によって滅び」
  1167. ペレネル・フラメル: 「ひとりの少女によって 救われる」
  1168. ペレネル・フラメル: この予言の通り
  1169. ペレネル・フラメル: 自身の野望が “乙女”に打ち砕かれ
  1170. ペレネル・フラメル: “乙女”ジャンヌの伝説が
  1171. ペレネル・フラメル: かごめ嬢の時代にまで 語り継がれていることを知れば
  1172. ペレネル・フラメル: “乙女”が誕生しないように 立ち振る舞うこともできる…
  1173. トルテ: その結果、枝分かれした “乙女”が存在しない世界が
  1174. トルテ: 赤い月の世界ってこと?
  1175. キューブ: そうだろうね
  1176. ニコラ・フラメル: 世界はふたつの可能性のあいだで 揺れ動いているんだ
  1177. ニコラ・フラメル: 赤い月の世界の侵食が強まれば “乙女”の記憶は消えていくし
  1178. ニコラ・フラメル: 僕たちが“乙女”の存在を 引き留めることができれば
  1179. ニコラ・フラメル: もとの世界は帰ってくる…
  1180. キューブ: おおむねニコラの言う通りだ
  1181. キューブ: ボクの話が聞こえなくても
  1182. キューブ: 彼には正しく 洞察できているようだね
  1183. キューブ: タルトが存在せず、誰にも イザボーの野望を止められない
  1184. キューブ: それが、赤い月の世界だ
  1185. ペレネル・フラメル: 現に、かごめ嬢の時代には 人類の影が消え失せていたわ
  1186. キューブ: イザボーの野望の 行き着く先としては
  1187. キューブ: 妥当すぎる終着点だよ
  1188. トルテ: そんな恐ろしいことを 軽く言わないで!
  1189.  
  1190. FILENAME: text_515920-2_BK8zF.txt
  1191. エリザ・ツェリスカ: わたくしたちの側にも 好材料はありますわ
  1192. エリザ・ツェリスカ: ここにある6冊のうち すでに4冊を取材して記録した
  1193. エリザ・ツェリスカ: イザボーみずから 襲撃してきたのは
  1194. エリザ・ツェリスカ: わたくしたちの行動に危機感を 持ったからに違いありません
  1195. かごめ: ときどき誰かに見られてるような 感じがしてたんだけど…
  1196. かごめ: え…?
  1197. トルテ: どうしたの?
  1198. ペレネル・フラメル: 私も視線を感じていたわ おそらく監視されていたのよ
  1199. ペレネル・フラメル: この“想いの箱舟”は 魔法の書物の中にある世界…
  1200. ペレネル・フラメル: あのイザボーは時を超えて
  1201. ペレネル・フラメル: 箱舟に干渉する手段を 持っているようね
  1202. キューブ: イザボーは他の魔法少女の願いを 自分のために利用している
  1203. キューブ: そのくらいのことができても なんの不思議もないね
  1204. メリッサ・ド・ヴィニョル: その力を使って、わざわざ 妨害してきたということは
  1205. メリッサ・ド・ヴィニョル: 私たちの“箱舟”での行動が 成果を上げているということです
  1206. エリザ・ツェリスカ: ラ・イルたちが起こした叛乱は かなり大規模なものでした
  1207. エリザ・ツェリスカ: 完全に鎮火することは 難しいかもしれませんが…
  1208. エリザ・ツェリスカ: その戦火を最小限に留められれば 世界は大きく変わりますわ
  1209. ペレネル・フラメル: 箱舟の本は、あと2冊…
  1210. ペレネル・フラメル: そのためにも、かごめ嬢とともに
  1211. ペレネル・フラメル: “乙女”の記憶を 記録し続けましょう
  1212. かごめ&トルテ: うん…!
  1213. エリザ・ツェリスカ: では…次の本に
  1214. エリザ・ツェリスカ: まいりますわよ!
  1215. かごめ: ここは…?
  1216. トルテ: お城の中に見えるね
  1217. むっ…?
  1218. おまえたち、何者だ!
  1219. かごめ: ――っ!?
  1220. トルテ: 逃げるよ!
  1221. メリッサ・ド・ヴィニョル: はぁ…はぁ…
  1222. エリザ・ツェリスカ: つられて逃げてしまいましたが
  1223. エリザ・ツェリスカ: わたくしは別に、身分の 怪しい者ではありませんし
  1224. エリザ・ツェリスカ: 堂々と名乗れば よかったのではないかしら?
  1225. ペレネル・フラメル: 神聖ローマ帝国の王族… 確かにこの上なく高貴なご身分ね
  1226. メリッサ・ド・ヴィニョル: 味方の城ならいいんですけど そうじゃなかったら…
  1227. ペレネル・フラメル: とりあえず、みなさんの姿を 見えないようにしましょう
  1228. かごめ: えっ、できるんですか?
  1229. ペレネル・フラメル: はい、この魔法石で…
  1230. ペレネル・フラメル: これで怪しまれずに済みます
  1231. ニコラ・フラメル: あ…! ここ、ロッシュのお城だ
  1232. トルテ: 知ってるの?
  1233. ニコラ・フラメル: うん、ずいぶん前だけど シャルル国王陛下に
  1234. ニコラ・フラメル: 書物の装丁を 依頼されたことがあって
  1235. ペレネル・フラメル: そんなこともあったわね
  1236. ペレネル・フラメル: ふたりで製本業を営んでいた縁で
  1237. ペレネル・フラメル: わざわざ遠いロッシュまで 納品に向かったことが…
  1238. メリッサ・ド・ヴィニョル: 確か、シャルル様の お気に入りの住まいですよね
  1239. トルテ: じゃあ、5冊目のこの本は シャルル様の心の中なのかな
  1240. エリザ・ツェリスカ: いずれはっきりしますわ
  1241. シャルル7世: …………
  1242. トルテ: いたよ、シャルル様だ!
  1243. トルテ: …………
  1244. シャルル7世: はぁ…
  1245. メリッサ・ド・ヴィニョル: おひとりだけですね
  1246. かごめ: …チャンスかも! でも、話を聞いてもらえるかな…
  1247. エリザ・ツェリスカ: わたくしが話をしますわ
  1248. エリザ・ツェリスカ: あなた方も姿を見せて 従者のフリでもしていなさい
  1249. かごめ: は、はい…!
  1250. シャルル7世: おや…? 客人かな
  1251. エリザ・ツェリスカ: おひさしぶりですわ シャルル国王陛下
  1252. シャルル7世: おお! そなたは神聖ローマ帝国の…
  1253. エリザ・ツェリスカ: ええ、ドラゴン騎士団がひとり エリザ・ツェリスカ
  1254. エリザ・ツェリスカ: “乙女(ラ・ピュセル)”の 戦友にして盟友ですわ
  1255. シャルル7世: …“乙女”…とは?
  1256. かごめ: (やっぱり… 忘れちゃってるんだ…)
  1257.  
  1258. FILENAME: text_515920-3_BK8zF.txt
  1259. かごめ: シャルル7世。 この時代の、フランス国王。 “乙女”ジャンヌによって戴冠式へと導かれ 正式な王様と認められた人。
  1260. かごめ: メリッサさんのお父さんは 王様の乱心で、“乙女”は見殺しにされたって 怒っていたけど…。
  1261. かごめ: フランスをひとつにまとめるためには 絶対に必要な人なんだって。
  1262. かごめ: だけど、間近に見たシャルル7世は 何かにおびえてるみたいに ずっとびくびくしていて…。
  1263. シャルル7世: …余は悩んでおるのだ
  1264. シャルル7世: リッシュモンの言う通り 貴族たちの反発を押し切って
  1265. シャルル7世: 軍政改革を進めてよいものか…
  1266. エリザ・ツェリスカ: 初めて会ったとき あの男は傑物と直観しましたわ
  1267. エリザ・ツェリスカ: 加えて、いまどき珍しいほどの 忠義の人…
  1268. エリザ・ツェリスカ: リッシュモンにまかせるのが 平和への近道ですわ
  1269. シャルル7世: ああ…だが 余は怖いのだ
  1270. シャルル7世: 母上が… あの女…イザボーが…
  1271. メリッサ・ド・ヴィニョル: ――っ!?
  1272. ペレネル・フラメル: (イザボー・ド・バヴィエールは シャルル国王陛下の実の母…)
  1273. ペレネル・フラメル: (シャルル陛下はイザボーと 何度も敵対して)
  1274. ペレネル・フラメル: (殺されかけたこともある…)
  1275. エリザ・ツェリスカ: でも、イザボーはもう この世に存在しません
  1276. エリザ・ツェリスカ: 現在起きているのは 人と人の戦争…
  1277. エリザ・ツェリスカ: 勝敗は理不尽な魔法ではなく 人心と組織の力で決します
  1278. エリザ・ツェリスカ: イングランド陣営にはもう あのような怪物はおりませんわ
  1279. シャルル7世: わかっている…わかっているのだ それでも、夢に見るのだ…
  1280. シャルル7世: イングランドを追い出して 勝利を手にしようとすると
  1281. シャルル7世: あの女が甦って 余を焼き殺す夢を…
  1282. かごめ: (イザボーさんのことが… 本当に怖いんだね…)
  1283. エリザ・ツェリスカ: …………
  1284. エリザ・ツェリスカ: (…焼き殺される?)
  1285. エリザ・ツェリスカ: (確かにイザボーが そのような魔法を使うのを)
  1286. エリザ・ツェリスカ: (見たことがありますが)
  1287. エリザ・ツェリスカ: (…王が恐れているのは 本当にイザボーなのでしょうか)
  1288. タルト: ………… …………
  1289. エリザ・ツェリスカ: …………
  1290. エリザ・ツェリスカ: …国王陛下
  1291. シャルル7世: …なんだ?
  1292. エリザ・ツェリスカ: 悪夢によく効く まじないを知っておりますわ
  1293. エリザ・ツェリスカ: この子の目をご覧ください
  1294. シャルル7世: …こうか?
  1295. シャルル王太子: 「聞け!」
  1296. シャルル王太子: 「皆の者!!」
  1297. シャルル王太子: この者 真の乙女
  1298. シャルル王太子: 真の神の使いなり!!
  1299. ジル・ド・レ: あれは…
  1300. バタール: まさか!?
  1301. バタールの声: 王太子自ら 臣下を出迎えるとは…
  1302. タルト: 王太子様
  1303. タルト: オルレアンにおきまして 私たちフランス軍は…
  1304. ガシッ
  1305. タルト: ――っ!?
  1306. シャルル王太子: 良い! すでに聞き及んでいる
  1307. タルト: …………
  1308. シャルル王太子: 本当に… 良くやってくれた、“乙女”
  1309. ジル・ド・レ: …聖油を
  1310. 「万歳(ノエル)!」
  1311. タルト: 王太子様… いえ、シャルル陛下
  1312. タルト: ご即位 おめでとうございます
  1313. シャルル7世: …“乙女”…
  1314. トルテ: 思い出してくれたよ…!
  1315. かごめ: うん…
  1316. シャルル7世: “乙女”がオルレアンを取り返し
  1317. シャルル7世: 我が頭上に真の王冠を 授けてくれたのだ
  1318. シャルル7世: なのに…余は “乙女”が囚われたときも…
  1319. シャルル7世: 何もできず…むざむざと…
  1320. シャルル7世: それどころか…その存在すら 忘れてしまっていたとは…
  1321. エリザ・ツェリスカ: 国王陛下…
  1322. シャルル7世: …なんだ
  1323. エリザ・ツェリスカ: あなたが本当に恐れていたのは
  1324. エリザ・ツェリスカ: お母上ではなく ご自身の罪悪感なのでは…?
  1325. エリザ・ツェリスカ: 囚われたタルトを… “乙女”を救うことができず
  1326. エリザ・ツェリスカ: 見殺しにしてしまったという 罪の意識…
  1327. エリザ・ツェリスカ: それが悪夢を見せていたのでは ありませんか…?
  1328. シャルル7世: ああ…
  1329. シャルル7世: …そうかもしれぬ
  1330. シャルル7世: “乙女”は神の使いであり 真の聖女であった
  1331. シャルル7世: その“乙女”が…異端者として
  1332. シャルル7世: 人を惑わす魔女として 処刑されるという欺瞞…
  1333. シャルル7世: 余は、決して 見過ごしてはならなかったのだ
  1334. メリッサ&エリザ: …………
  1335. かごめ&トルテ: …………
  1336. シャルル7世: せめて“乙女”の… “乙女”の名誉を回復せねば…
  1337. メリッサ・ド・ヴィニョル: …………!
  1338. メリッサ・ド・ヴィニョル: では教会で… タルトの裁判のやり直しを?
  1339. シャルル7世: 一足飛びにそこまで進めることは 世俗の王である余の手に余る
  1340. シャルル7世: それに…
  1341. シャルル7世: 異端審問が行われたルーアンは イングランドの手にあり
  1342. シャルル7世: 今は、裁判の正当性を 調査することすら適わない
  1343. メリッサ・ド・ヴィニョル: …そう…ですよね
  1344. シャルル7世: しかし… ルーアンを取り戻した暁には…
  1345. メリッサ・ド・ヴィニョル: シャルル様…!
  1346. シャルル7世: ああ、約束する “乙女”の名誉回復のために
  1347. シャルル7世: 力を尽くすことを
  1348. トルテ: よかったね、メリッサさん!
  1349. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…!
  1350. かごめ: 敬虔なメリッサさんは、見ているこっちが うれしくなるくらいに喜んでいた。
  1351. かごめ: エリザさんは、それでジャンヌさんが 救われるわけじゃないと言っていたけど… 残された家族や戦友たちの救いになるなら、って 少しうれしそうだった。
  1352. かごめ: 心の中の世界で起きた、王様の心の変化は 現実の15世紀半ばの世界を 少しずつ、いい方向に変えてくれるはず。
  1353. かごめ: そして、私は思ったの。 “乙女”ジャンヌの悲劇は 残された人たちの人生も歪めてしまっていて…。 それは本当に、悲しいことだって。
  1354.  
  1355. FILENAME: text_515920-4_BK8zF.txt
  1356. メリッサ・ド・ヴィニョル: リッシュモン様はかつて 口ぐせのように仰っていました
  1357. メリッサ・ド・ヴィニョル: “乙女”の意志は 決して消させない、と…
  1358. メリッサ・ド・ヴィニョル: あの方を信頼して事を進めれば
  1359. メリッサ・ド・ヴィニョル: シャルル様はイングランドから フランスを取り返せます…!
  1360. シャルル7世: …そうだな だが…
  1361. エリザ・ツェリスカ: 何か、心配事でも?
  1362. シャルル7世: ああ 我が息子、ルイ王太子のことだ
  1363. シャルル7世: ルイは玉座への野心に 憑かれている
  1364. シャルル7世: 何かに突き動かされるように 余への叛乱を起こしている…
  1365. シャルル7世: 余に不満を持つ貴族たちに 利用されているだけかと思ったが
  1366. エリザ・ツェリスカ: そうではない、と…?
  1367. シャルル7世: ああ、あれは普通ではない 正気とは思えないのだ
  1368. シャルル7世: 先ほどまでの余と同じように
  1369. かごめ&トルテ: …………!
  1370. トルテ: えっと…ルイ王太子様を 正気に戻さないかぎり…
  1371. トルテ: イングランドとの戦いに 勝利はないってこと…?
  1372. ペレネル・フラメル: そうね
  1373. ペレネル・フラメル: 王太子が貴族たちに担がれて 大規模な叛乱を起こす…
  1374. ペレネル・フラメル: こんな危機が続くようでは
  1375. ペレネル・フラメル: タルトが望んだ光は フランスにもたらされません
  1376. かごめ: ルイ王太子を止めれば
  1377. かごめ: 侵食されている世界も もとに戻るの…?
  1378. キューブ: ラ・イルが考えを変えたことで
  1379. キューブ: イザボーが 焦りを見せるほどの変化が起きた
  1380. キューブ: 未来を左右する危機的な状況で ルイ王太子も矛先を収めるなら
  1381. キューブ: 世界が大きく変わる きっかけになりうるだろうね
  1382. トルテ: 箱舟に残った最後の1冊って… ルイ王太子様の本かも!
  1383. ニコラ・フラメル: うん、そうだといいね
  1384. ペレネル・フラメル: ええ
  1385. トルテ: あっ…ごめんなさい シャルル様
  1386. トルテ: よくわからない話をしちゃって…
  1387. シャルル7世: いや、かまわんが…
  1388. シャルル7世: しかし、そなたは “乙女”に実によく似ているな
  1389. トルテ: そうみたいです!
  1390. トルテ: …それじゃかごめちゃん!
  1391. トルテ: 最後の1冊の中を取材して 世界をもとに戻していこう!
  1392. かごめ: あ、うん…
  1393. メリッサ&エリザ: ………… …………
  1394. トルテ: あれっ…? 何か気になるの?
  1395. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…
  1396. メリッサ・ド・ヴィニョル: 世界がもとに戻るということは
  1397. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトに、また同じ苦しみを 味わわせることになるのでは…と
  1398. メリッサ・ド・ヴィニョル: 思えてきてしまって…
  1399. トルテ: あ…
  1400. かごめ: …そうだよね
  1401. ペレネル・フラメル: エリザ嬢も メリッサと同じですか?
  1402. エリザ・ツェリスカ: ええ…でも、このまま 放っておくというわけにも…
  1403. かごめ: 赤い月の世界の侵食が進めば
  1404. かごめ: “乙女”自体が 存在しなかったことになる…
  1405. トルテ: それは…あんまりだよ! 生まれない方がよかったなんて!
  1406. キューブ: それに、その先に待つのは 人類のいない未来だからね
  1407. メリッサ・ド・ヴィニョル: 他に道がないことは わかっているんです…
  1408. エリザ・ツェリスカ: ええ…仮にどちらかを 選べるとしたら
  1409. エリザ・ツェリスカ: タルトはもういちど同じ生を 生きることを選ぶでしょう
  1410. メリッサ・ド・ヴィニョル: でも…
  1411. エリザ・ツェリスカ: …………
  1412. ペレネル&ニコラ: …………
  1413. かごめ&キューブ: ………… …………
  1414. トルテ: ふたりには、選べないと思う つらすぎる思い出だから
  1415. トルテ: …だから、わたしが選ぶよ
  1416. かごめ: えっ…?
  1417. メリッサ&エリザ: …………
  1418. トルテ: わたしね…ここに来る前は ううん、来てからも
  1419. トルテ: 自分と同じ名前で、顔もよく似た “乙女”のことを知りたくて
  1420. トルテ: ただ、それだけの気持ちで 首を突っ込んできたけど
  1421. トルテ: …でも、今は違う
  1422. トルテ: 次はわたしたちが “乙女”の想いを受け継いで
  1423. トルテ: それを実現しなきゃ いけないんだって思う
  1424. トルテ: だって“乙女”は… タルトさんは
  1425. トルテ: 誰かに歩いてほしくて 道を切り拓いたんだから
  1426. かごめ: あ…
  1427. トルテ: 必死の想いで作った道を 誰も歩いてくれなかったら
  1428. トルテ: やっぱり寂しいと思うんだ
  1429. メリッサ・ド・ヴィニョル: …………
  1430. エリザ・ツェリスカ: …そうですわね
  1431. トルテ: だからメリッサさんたちが 選べないんだったら
  1432. トルテ: わたしのせいでいいよ
  1433. トルテ: もし、このまま進んでいって その道が間違っていたとしたら
  1434. トルテ: 全部、わたしのせい
  1435. トルテ: …それでどうかな?
  1436. エリザ・ツェリスカ: …生意気ですわよ?
  1437. メリッサ・ド・ヴィニョル: ふふっ
  1438. かごめ: 責任重大だね…
  1439. トルテ: 大丈夫 絶対にうまくいくから!
  1440. トルテ: (そう…絶対に)
  1441. かごめ: …………?
  1442. かごめ: ジャンヌさんの取材がしたかった私も 好奇心で箱舟に来たトルテちゃんも 最初は、どこか傍観者っていうか… お客さんみたいな気分だったと思う。
  1443. かごめ: でも、いつのまにか トルテちゃんは変わっていた。 傍観者じゃなくて当事者になる覚悟を口にした。
  1444. かごめ: そして私だって 魔法のペンで記録することを通じて 本当はもう、当事者になってしまっている… そう気づいたとき、私は怖くなった。
  1445. かごめ: 巻き込まれたから、たまたまそこにいたから… そんな理由じゃなくて 自分の意志で、取材をして、記録する。 何かを変えるために、当事者として、記録する。
  1446. かごめ: いつか、遠くない将来 私がそうしなきゃいけなくなったとき… トルテちゃんみたいに、当事者になる覚悟は 私にあるのかなって…。
  1447. ニコラ・フラメル: 記録は終わった?
  1448. かごめ: …はい…!
  1449. かごめ: ――っ!?
  1450. かごめ: ここって…!
  1451. トルテ: …今度はさっきの わけわかんない空間!
  1452. エリザ・ツェリスカ: 何がどうなってるんですの!?
  1453. イザボー: また会ったわね
  1454. かごめ: …………!
  1455.  
  1456. FILENAME: text_515920-5_BK8zF.txt
  1457. 第6章「邂逅と決意」
  1458. エリザ・ツェリスカ: イザボー・ド・バヴィエール…!
  1459. イザボー: ふふ…
  1460. シャルル7世: は…母上…!?
  1461. トルテ: シャルル様も巻き込まれてる!?
  1462. ペレネル・フラメル: キューブ、さっきも現れた この空間はいったいなんなのです
  1463. キューブ: 時空の歪みが極大に達してる…
  1464. キューブ: タイムパラドクスによって 壊れた時空間みたいだ
  1465. かごめ: タイムパラドクス…!?
  1466. キューブ: うん、トルテたちの行動で 本来の世界が息を吹き返し
  1467. キューブ: タルトの誕生する世界と
  1468. キューブ: 誕生しない世界の バランスが拮抗した
  1469. キューブ: つまり、矛盾する事象が 同時に存在する状態になったんだ
  1470. かごめ: 時空の歪み…? タイムパラドクス…?
  1471. かごめ: ――っ!?
  1472. かごめ: ここって…!
  1473. かごめ: 原因は… 株分けのミラーズ…?
  1474. トルテ: へっ?
  1475. キューブ: …どういう意味だい?
  1476. かごめ: さっき、鏡がいっぱいある場所が 見えたよね?
  1477. かごめ: あそこに未来と過去をつなぐ
  1478. かごめ: タイムトンネルみたいなものが あるの!
  1479. かごめ: それで私の時代と1400年頃が つながっちゃったんだと思う!
  1480. パラ…
  1481. かごめ: (灯花ちゃんの話…)
  1482. かごめ: (どこかに…メモしてたはず あっ、これだ!)
  1483. かごめ: 過去が変わって… 世界がいくつかに分かれると
  1484. かごめ: 徐々に歴史が 変更されちゃうかもって…!
  1485. キューブ: そうか…イザボーがそれを通じて 未来を覗き見たことで
  1486. キューブ: 世界がふたつに分岐して…
  1487. キューブ: ふたつの世界が拮抗したことで パラドクスが起きたんだ
  1488. エリザ・ツェリスカ: で、結局 何をすればいいんです?
  1489. かごめ: さっきの場所に行って 鏡を壊せばいいはず…
  1490. エリザ・ツェリスカ: どうやって行くんです?
  1491. キューブ: さっきと同じ状況を再現すれば 可能性はある
  1492. キューブ: 残るひとりの心の中に飛び込んで
  1493. キューブ: 世界のバランスを こちらに引き寄せるんだ
  1494. トルテ: 最後の1冊は… どこだろ?
  1495. メリッサ・ド・ヴィニョル: 本は見あたりませんけど 心の入口を見つければ…
  1496. トルテ: …あれは?
  1497. トルテ: …………!
  1498. トルテ: 間違いない、あそこだよ!
  1499. イザボーの声: …そういうことですか
  1500. イザボー: ふっ
  1501. ブゥン
  1502. ペレネル・フラメル: …………
  1503. イザボー: 興味深いお話でしたので つい聞き入ってしまったわ
  1504. イザボー: あなた方は私にとっては 未来を生きる者たちで
  1505. イザボー: 私があの鏡張りの結界を 知ったことで変わった歴史を
  1506. イザボー: もとの状態に戻そうとしている… そして、その方法を見つけた
  1507. イザボー: そういうことよね、キューブ?
  1508. キューブ: ………… …………
  1509. イザボー: あら?…だんまり? つれないのね
  1510. イザボー: いいわ、聞くべき話はもう 残っていないことだし
  1511. イザボー: あとは皆殺しにするだけ…
  1512. メリッサ・ド・ヴィニョル: …ふたりはあの入口に 飛び込んでください
  1513. メリッサ・ド・ヴィニョル: 私とエリザがイザボーたちを 引きつけます
  1514. トルテ: うん…
  1515. かごめ: わかりました
  1516. エリザ・ツェリスカ: 他の方はペレネルのうしろに …シャルル国王陛下も
  1517. シャルル7世: わ、わかった
  1518. シャルル7世: そなたたち…もしも会えたなら どうかルイを頼む
  1519. シャルル7世: 余も生きて戻り
  1520. シャルル7世: “乙女”の名誉回復という約束を 必ず果たす
  1521. かごめ: はい…!
  1522. トルテ: じゃあ、いくよ!
  1523. イザボー: そうはさせないわ!
  1524. メリッサ・ド・ヴィニョル: それは…
  1525. エリザ・ツェリスカ: こっちのセリフですわ!
  1526. イザボー: ぐっ…!!
  1527. イザボー: この者たちを… 血の海に沈めなさい!
  1528. エリザ・ツェリスカ: ―エリザ― 囮だなんて、おたがい無茶したものですわね 相手はあのイザボーですわよ?
  1529. メリッサ・ド・ヴィニョル: ―メリッサ― 予定通りです! これでふたりを送り出せるなら…
  1530. メリッサ・ド・ヴィニョル: ―メリッサ― それに、以前の私たちとは違うんです
  1531. メリッサ・ド・ヴィニョル: ―メリッサ― あれから10年近くのあいだ ヨーロッパを守ってきたんですから…!
  1532. エリザ・ツェリスカ: ―エリザ― ふっ…そうでしたわね ひと味違うところを、見せてあげますわ
  1533. トルテ: ここだよ!
  1534. かごめ: はぐれないように 手をつないで行こう!
  1535. トルテ&かごめ: …せーのっ!
  1536. トルテ: ―トルテ― 髪の毛が反応してる! こっちだよ、かごめちゃん!
  1537. かごめ: ―かごめ― えっ、あっ… ちょっ、ちょっと待って!
  1538. トルテ: ―トルテ― ふふっ、待たない! 待たないし、手も放さない!
  1539. かごめ: ―かごめ― それじゃ… こ、転んじゃうよ…!
  1540. トルテ: ―トルテ― 速く走ればいいよ!
  1541. トルテ: ―トルテ― 速く走るコツはね…迷わないこと! 前だけ向いて、まっすぐ走るの
  1542. かごめ: (迷わないこと…)
  1543. かごめ: (前だけ向いて まっすぐ走ること)
  1544. かごめ: (当事者になる 覚悟を決めたんだね)
  1545. かごめ: (私も… 負けないように!)
  1546. ドサッ
  1547. メリッサ・ド・ヴィニョル: はぁ…はぁ…
  1548. エリザ・ツェリスカ: お人形さんたちが てこずらせてくれましたわね
  1549. エリザ・ツェリスカ: くっ…!
  1550. イザボー: あら、もう息切れかしら?
  1551. イザボー: お楽しみはこれからでしょう?
  1552. イザボー: フフフッ
  1553. イザボー: さあ、いらっしゃい たっぷりと可愛がってあげるわ
  1554.  
  1555. FILENAME: text_515920-6_BK8zF.txt
  1556. ざわ…
  1557. かごめ: …こういうの ものものしい…っていうのかな?
  1558. トルテ: 兵隊さんがいっぱい集まってるね
  1559. ランスへの進軍はまだか!
  1560. 次はオルレアンの防衛を 固めるって話もあるぞ
  1561. 噂の“乙女(ラ・ピュセル)”が 取り戻したオルレアンか…
  1562. 俺たちも奇跡の乙女と 一緒に戦いたいな!
  1563. かごめ: え…オルレアン? “乙女”…?
  1564. かごめ: ジャンヌさんがオルレアンを 解放したのって、確か…
  1565. トルテ: 1429年! わたしが生まれるより前だよ
  1566. かごめ: まるでこのあいだの話みたいに 聞こえたけど…
  1567. トルテ: ここは心の中の世界だから…
  1568. トルテ: 最後の1冊の主の心は その頃のままなのかもしれないね
  1569. トルテ: あ…
  1570. ???: ………… …………
  1571. トルテ: …………!
  1572. トルテ: この人だ…!
  1573. ???: 私は…
  1574. ???: …………
  1575. ???: …誰なのだ?
  1576. かごめ: え… 記憶を失ってる?
  1577. トルテ: 何も思い出せないんですか?
  1578. ???: …わからない…
  1579. ???: 私はただ… 父が許せなかった
  1580. ???: 私が王であったなら… あの方を…あんな風には…!
  1581. ???: ただ…そう思い続けて…
  1582. かごめ&トルテ: …………
  1583. ペレネルの声: その方は、ルイ王太子様よ
  1584. ニコラ・フラメル: 記憶を失って 昔の夢を見ているみたいだね
  1585. トルテ: お父さん、お母さん…
  1586. かごめ: メリッサさんとエリザさんは?
  1587. キューブ: 彼女たちなら心配ない
  1588. ニコラ・フラメル: イザボーたちを撃退したら 想いの箱舟に戻れたんだ
  1589. ニコラ・フラメル: シャルル陛下を もとの世界に送り届けたら
  1590. ニコラ・フラメル: こっちに向かうって
  1591. ペレネル・フラメル: …ここもロッシュ城のようね
  1592. トルテ: 10年以上前…オルレアンが 解放された頃みたい
  1593. ペレネル・フラメル: 奇跡の乙女の噂を聞いて
  1594. ペレネル・フラメル: 兵たちが各地から 続々と集まりはじめた時期ね
  1595. かごめ: それでこんなに騒がしいんだ…
  1596. ルイ王太子: ロッシュ城…
  1597. ルイ王太子: 城の大広間に向かわねば…
  1598. かごめ: 追いかけましょう!
  1599. ペレネル・フラメル: そうね
  1600. ペレネル・フラメル: 怪しまれないように みんなの姿を見えなくして…
  1601. ルイ王太子: …………
  1602. かごめ: お城の中、誰もいませんね…
  1603. ニコラ・フラメル: 夢の中だからかな…?
  1604. ペレネル・フラメル: オルレアン解放後のロッシュ城…
  1605. ペレネル・フラメル: 即位する前のシャルル様が ランスへの進軍を決めた場所ね
  1606. ペレネル・フラメル: 確か“乙女”も 一時滞在していたはず…
  1607. ルイ王太子: あの方と… もう一度、あの方と会いたい…
  1608. ペレネル・フラメル: …………
  1609. ペレネル・フラメル: トルテ、ルイ王太子の記憶を 戻してさしあげて
  1610. トルテ: わかった、姿を見せるね!
  1611. トルテ: ルイ王太子様! わたしの目を見て!
  1612. ルイ王太子: ん…?
  1613. ルイ王太子: …………!
  1614. ルイ王子: …………
  1615. トルテ: ルイ様が!?
  1616. ニコラ・フラメル: 当時の姿に戻ったんだね
  1617. ニコラ・フラメル: まだ「王太子」でなく 「王子」だった頃に…
  1618. ルイ王子: いかなきゃ…
  1619. ルイ王子: あの部屋に、“乙女”様が…
  1620. かごめ&トルテ: ――っ!?
  1621.  
  1622. FILENAME: text_515920-7_BK8zF.txt
  1623. ルイ王子: いかなきゃ…
  1624. ルイ王子: あの部屋に、“乙女”様が…
  1625. かごめ&トルテ: ――っ!?
  1626. トルテ: いるの…? この先に…?
  1627. トルテ: あの…“乙女”ジャンヌが
  1628. ペレネル・フラメル: ふたりはまだ 会ったことがないのよね
  1629. かごめ: はい…
  1630. ニコラ・フラメル: あ… 何か聞こえない?
  1631. ニコラ・フラメル: 大広間の方から…
  1632. タルトの声: …ですから ここは一刻も早く
  1633. タルトの声: ランスへ向かうべきだと思います
  1634. キューブ: タルトの声だ
  1635. トルテ: ――っ!?
  1636. ルイ王子: “乙女”様…!
  1637. かごめ: あっ…
  1638. ニコラ・フラメル: 追いかけよう!
  1639. ペレネル・フラメル: …そうですね こちらの姿は見えませんし
  1640. タルト: 王太子様がランスの大聖堂で 国王として戴冠される
  1641. タルト: これこそが、今のフランスの 人々にとって必要なことです
  1642. ジル・ド・レ: 国王として聖別を受ければ
  1643. ジル・ド・レ: イングランドを支持する勢いは 徐々に弱まっていくはずです
  1644. シャルル王太子: うむ…
  1645. ペレネル・フラメル: …“乙女”たちの主張に 文官たちが反対して
  1646. ペレネル・フラメル: 王太子だったシャルル様は
  1647. ペレネル・フラメル: ランスへの進軍を 最後まで迷っていたと聞いたわ
  1648. カツッ
  1649. シャルル王太子: …………
  1650. ルイ王子: お父様
  1651. シャルル王太子: おお… ルイか
  1652. 王太子妃: 殿下 申し訳ございません!
  1653. 王太子妃: 止めたのですが
  1654. 王太子妃: この子が“乙女”に どうしても会ってみたいと…
  1655. タルト: 私に?
  1656. ルイ王子: “乙女”様
  1657. ルイ王子: このたびはオルレアンの勝利 ありがとうございました
  1658. タルト: そんな もったいないお言葉です、ルイ様
  1659. ルイ王子: どうか…どうかお願いです
  1660. ルイ王子: あなたの力でお父様を フランス王に導いてください
  1661. ふわっ
  1662. ルイ王子: ―ルイ王子― …………?
  1663. タルト: ―タルト― はい…お任せください
  1664. タルト: ―タルト― ルイ様のためにも 必ずや王太子様を戴冠させてみせます
  1665. ジル・ド・レ: おぉ…
  1666. グッ…
  1667. シャルル王太子: 余は… 私は決めたぞ
  1668. シャルル王太子: 次なる目標はランスだ!
  1669. シャルル王太子: “乙女”の導きによって 私は王に戴冠する!
  1670. シャルル王太子: このフランスに 平和をもたらそうではないか!
  1671. タルト&ルイ王子: …………!
  1672. トルテ: このとき、ルイ様が “乙女”と出会ったことで
  1673. トルテ: シャルル様はランスへと 進軍する決意を固めたんだね
  1674. ザッ…
  1675. かごめ: あ… おふたりも来てくれたんですね
  1676. エリザ・ツェリスカ: ええ…
  1677. エリザ・ツェリスカ: タルト…
  1678. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい、すぐそばに…
  1679. メリッサ・ド・ヴィニョル: 二度と会えないと思ってた…
  1680. かごめ: (そっか…ふたりにとっては…)
  1681. かごめ: ………… …………
  1682. かごめ: ルイ王太子は10年が経っても このとき会った“乙女”への感謝を 隠さない人だったんだって。
  1683. かごめ: 「自分が国王だったら“乙女”を救えたのに…」 世界の侵食で“乙女”の存在を忘れたあとは ただ、父親への反発だけが残ってしまって 叛乱をくわだてたんじゃないか…っていうのが ペレネルさんの説だった。
  1684. かごめ: ジャンヌさんやシャルル王太子と一緒に フランスの平和を願っていた、このときの 優しい気持ちを取り戻してくれたら…。
  1685. かごめ: 今は、こんなことを してるときじゃないと思いなおしてくれる。 きっと、大規模な叛乱も鎮まってくれる…。 そうなってほしいと願わずにはいられなかった。
  1686. タルト: あれっ?
  1687. タルト: メリッサに…エリザ様…?
  1688. メリッサ&エリザ: ――っ!?
  1689. タルト: おふたりとも、なんだか雰囲気が 違うような…?
  1690. かごめ: (じゃ…ジャンヌさん?)
  1691. ニコラ・フラメル: 落ち着いて!
  1692. ニコラ・フラメル: 魔法石を持ってない者に 僕たちの姿は見えないから
  1693. リズ・ホークウッド: …なんだか変な気分なのよね
  1694. リズ・ホークウッド: 眠っていたと思ったらここにいて まるで夢でも見ているような…
  1695. タルト: 私もです…
  1696. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルト…リズ…
  1697. エリザ・ツェリスカ: …本物…なんですの?
  1698. タルト: …どういう意味でしょう?
  1699. トルテ: 本物かもしれないね …夢に呼ばれたのかも!
  1700. ペレネル・フラメル: かごめ嬢が未来から来たように… 過去から?
  1701. かごめ: あの、リズさんって…?
  1702. ペレネル・フラメル: そうね…“乙女”の姉のような 存在というべきかしら
  1703. ペレネル・フラメル: “乙女”に最後まで寄り添って 心の支えだった魔法少女よ
  1704. トルテ: かごめちゃん! ふたりに取材させてもらったら?
  1705. かごめ: えっ?
  1706. トルテ: 姿、見せちゃおうよ!
  1707. メリッサ・ド・ヴィニョル: …ふたりの想いを 未来に伝えてください
  1708. ―取材記録― リズ・ホークウッド ジャンヌ・ダルク(タルト)
  1709. リズ・ホークウッド: 「この手で真の英雄を誕生させる… それだけを望んで、長い旅をしてきたわ」
  1710. リズ・ホークウッド: 「その途中で、幾度もの別れ 幾度もの失意を味わった」
  1711. リズ・ホークウッド: 「タルトは私の希望の光…長い旅路の果てに ようやく出会えた希望の光なの」
  1712. リズ・ホークウッド: 「この先、どんなことがあろうとも 私はこの光を、決して消させたりしないわ」
  1713. タルト: 「最愛の妹であるカトリーヌを失ったとき 私はその墓前に誓いました 必ずこの国を救い フランスに光をもたらすと」
  1714. タルト: 「だから今の私は、天使様のお導きに従って たとえ何があろうとも まっすぐに進み続けるだけです」
  1715. タルト: 「その先に、みんなが 平和に暮らせる世界が… 希望があると信じて」
  1716. タルト: 「光を信じて…ただ、前だけを向いて」
  1717.  
  1718. FILENAME: text_515920-8_BK8zF.txt
  1719. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトと…リズと もういちど会って話せたなんて
  1720. メリッサ・ド・ヴィニョル: まるで夢みたいです
  1721. エリザ・ツェリスカ: はぁ、誤魔化すのが大変でしたわ
  1722. メリッサ・ド・ヴィニョル: エリザは当時 私たちと出会ったばかりで
  1723. メリッサ・ド・ヴィニョル: あの頃からもう 10年以上経っていますからね
  1724. エリザ・ツェリスカ: それに、昔のわたくしと 鉢合わせでもしたら…
  1725. トルテ: えっ、当時も近くにいたんですか
  1726. エリザ・ツェリスカ: 当然ですわ 当時、城にルイ王子を招いたのは
  1727. エリザ・ツェリスカ: わたくしと ヴォル爺だったのですから
  1728. ニコラ・フラメル: そのおかげでシャルル様は ランスへの進軍を決意した…
  1729. ニコラ・フラメル: そして念願の戴冠を果たし
  1730. ニコラ・フラメル: 正式なフランス国王と みんなに認められたんだよね
  1731. メリッサ・ド・ヴィニョル: はい… その先に待ち受ける運命を
  1732. メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトもリズも まだ知りません…
  1733. エリザ・ツェリスカ: ………… …………
  1734. ペレネル・フラメル: …さて、まだ 私たちの仕事は残っています
  1735. キューブ: そうだね、佐鳥かごめが 最後の1冊の記録を終えて
  1736. キューブ: タルトがいない世界の侵食を 止める必要がある
  1737. かごめ: そして、果てなしのミラーズの ターミナルにたどり着けたら
  1738. かごめ: 鏡を壊すんだよね…
  1739. キューブ: キミの情報が正確だとしたら
  1740. キューブ: そうすることで タルトが誕生しなかった時間軸…
  1741. キューブ: すなわち、赤い月の世界は あとかたもなく消滅するはずだよ
  1742. ニコラ・フラメル: うまくいくといいけど…
  1743. トルテ: 大丈夫!
  1744. トルテ: (ダメだったら、わたしが…)
  1745. かごめ: …どうかしたの、トルテちゃん
  1746. トルテ: う…ううん、なんでもない!
  1747. エリザ・ツェリスカ: では… あとは、おまかせしますわ
  1748. ペレネル・フラメル: …かごめ嬢、記録をお願いします
  1749. かごめ: はいっ…!
  1750. かごめ: この不思議な旅の記録は たぶん、これでおしまいになると思う。
  1751. かごめ: 私がこの記録…6冊目の世界の記録を終えたら ルイ王太子は、心の中の世界から “乙女”の大切な思い出を持ち帰る。 そして、現実の15世紀で起きている フランスの危機は終息に向かうはず…。
  1752. かごめ: “乙女”とメリッサさんたちとの 再会のお手伝いができて、よかったって… 私はほっとした気持ちになった。
  1753. かごめ: でも、この経験って 株分けのミラーズが原因で起きたことだから ターミナルの鏡を壊して タイムパラドクスが解消されると 「なかったこと」になるんだよね?
  1754. かごめ: そうなったらきっと 私の記憶も、消えちゃうんだって気がついて… ちょっと、寂しくなった。
  1755. かごめ: …書き終えました
  1756. メリッサ&エリザ: …………
  1757. ペレネル&ニコラ: …………
  1758. キューブ: 何も起きないようだね
  1759. かごめ: 予定だと、これで もとの世界を取り戻せるから
  1760. かごめ: 私たちは箱舟に戻るか さっきと同じように
  1761. かごめ: 果てなしのミラーズに行けると …思ったん…だけど…
  1762. エリザ・ツェリスカ: どこにも戻れないのは 困りますわよ!?
  1763. キューブ: これが最後の1冊なんだから 世界を取り戻せる条件は整ってる
  1764. キューブ: ただ、何かが足りないんだ… 欠けたパーツがあるんだろう
  1765. ペレネル・フラメル: まだ解けてない謎があるとすれば それが原因でしょうか?
  1766. かごめ: まだ解けてない謎…それって
  1767. かごめ: どうして私が 記録役に選ばれたのか…とか?
  1768. メリッサ・ド・ヴィニョル: 確かにどうしてかごめちゃんが 魔法のペンを持っているのか
  1769. メリッサ・ド・ヴィニョル: まだわかっていませんよね…?
  1770. かごめ: はい…
  1771. エリザ・ツェリスカ: トルテを見た相手の 記憶が戻るのも不思議ですわ
  1772. ペレネル・フラメル: まるで、かごめ嬢とトルテ そして“乙女”の記憶のあいだに
  1773. ペレネル・フラメル: 強い因果のつながりが あるかのような…
  1774. トルテ: …わたしはもう、わかったよ その理由
  1775. かごめ: えっ…?
  1776. トルテ: かごめちゃんとわたしが 出会ったことも
  1777. トルテ: 特別な力をもらったことも
  1778. トルテ: わたしが“これから”キューブに お願いする奇跡の結果なの
  1779. ニコラ・フラメル: えっ…?
  1780. ペレネル・フラメル: …トルテ、何を考えているの?
  1781. ペレネル・フラメル: キューブに奇跡を願えば…
  1782. トルテ: うん、知ってる ごめんね、お母さん
  1783. トルテ: ずっとひとりで考えてた
  1784. トルテ: お母さんも言ってたよね?
  1785. トルテ: 亡き“乙女”のために 何ができるか考えてほしいって
  1786. ペレネル・フラメル: 私はそのために あなたを手伝ったわけでは…
  1787. トルテ: ううん、これはね… 残されたみんなの記憶を見て
  1788. トルテ: “乙女”の… みんなの想いを知って
  1789. トルテ: わたしの意志で決めたことなんだ だから後悔なんてしないよ
  1790. ペレネル・フラメル: …いいのですね?
  1791. トルテ: うんっ
  1792. ペレネル&ニコラ: …………
  1793. かごめ: トルテちゃん…!
  1794. かごめ: (最後の1冊に飛び込んだ あのときにはもう…)
  1795. かごめ: (トルテちゃんは 決めてたんだ…)
  1796. かごめ: (私に…こんな決断が できるのかな…?)
  1797. トルテ: 聞いて、キューブ! 私の願いは…
  1798. トルテ: 「“乙女”の想いが、決して失われることなく… この世界に正しく語り継がれてほしい」
  1799. メリッサ&エリザ: …………
  1800. トルテ: ごめんね、かごめちゃん ここでお別れみたい
  1801. かごめ: そんな…
  1802. トルテ: かごめちゃん、元気でね!
  1803. かごめ: …………
  1804.  
  1805. FILENAME: text_515920-9_BK8zF.txt
  1806. 第7章「想いをつなぐ」
  1807. トルテ: …………
  1808. トルテ: あ…
  1809. トルテ: わたし、魔法少女に なったんだよね?
  1810. キューブ: そうさ
  1811. キューブ: キミの願いは聞き届けられた
  1812. キューブ: この鏡を壊せば 赤い月の世界は消滅し
  1813. キューブ: ペレネルやかごめたちも もとの世界に戻って
  1814. キューブ: 何事もなかったように もとの生活に戻るはずだ
  1815. キューブ: ルイ王太子たちによる叛乱計画も どうにか鎮まるだろうね
  1816. トルテ: うんうん、よかった!
  1817. トルテ: あれっ…? このカッコいいペン…?
  1818. キューブ: キミの願いによって作られた 真新しいペンのようだね
  1819. トルテ: やっぱり…! 思った通りだ!
  1820. キューブ: どういう意味だい?
  1821. トルテ: キューブ、ここの場所って 未来につながってるんだよね?
  1822. キューブ: 佐鳥かごめの話ではそうだね
  1823. トルテ: だったら、未来にいるはずの
  1824. トルテ: “箱舟に来る前”の かごめちゃんの夢の中に…
  1825. トルテ: このペンをこっそり 届ければいいんだ!
  1826. キューブ: …なるほど、そういうことか
  1827. キューブ: 佐鳥かごめが魔法のペンを 持っていたから
  1828. キューブ: 彼女が選ばれたんじゃなくて…
  1829. キューブ: 彼女が魔法のペンを 持っていたそのこと自体が
  1830. キューブ: トルテの願いの結果なんだね
  1831. トルテ: そう!
  1832. トルテ: そして“乙女”の想いが 正しく語り継がれてほしいって
  1833. トルテ: わたしが願ったから
  1834. トルテ: かごめちゃんが 魔法のペンで記録したことも
  1835. トルテ: 真実になっていったんだと思う
  1836. キューブ: 原因と結果の順が 普通とは逆だったわけか…
  1837. キューブ: 最後まで謎が解けないわけだよ
  1838. トルテ: それじゃ、するべきことをして… それから、もとの時代に帰るね!
  1839. キューブ: まずは、過去に来る前の 佐鳥かごめに
  1840. キューブ: そのペンを届けることだ
  1841. トルテ: それから鏡を壊すんだったね
  1842. トルテ: ペンを届けるのって… どうやればいいんだろう…?
  1843. ゴーン…
  1844. トルテ: …………?
  1845. トルテ: 鐘の音が…
  1846. トルテ: …………!
  1847. かごめ: …………
  1848. トルテ: 「…かごめちゃん、聞こえる? わたしだよ、トルテだよ」
  1849. トルテ: 「鏡を壊して、世界がもとに戻ったら わたしと一緒にした旅も 全部、なかったことになって」
  1850. トルテ: 「…次に目が覚めたとき かごめちゃんは、すべてを忘れちゃうんだって」
  1851. トルテ: 「でもね、かごめちゃんが知った “乙女”の想いは、いつまでも その胸の中で生き続けていてほしい… わたしはそう思ってるの」
  1852. トルテ: 「…だからお願い」
  1853. トルテ: 「彼女の想いを、なかったことにはしないで」
  1854.  
  1855. FILENAME: text_515920-10_BK8zF.txt
  1856. コン、コン
  1857. おはようございます 佐鳥かごめさん
  1858. かごめ: あ…看護師さん
  1859. 今日は退院ですね おめでとうございます!
  1860. かごめ: …あ…ありがとうございます
  1861. 朝食、ここに置いておきますね それじゃ…
  1862. バタン…
  1863. かごめ: ふぅ… そっか、退院なんだよね
  1864. かごめ: (午後にはクレセントハウスに お邪魔して)
  1865. かごめ: (退院のあいさつをする 予定だけど…)
  1866. かごめ: …………
  1867. かごめ: 少し早く病院を出て 図書館に行こうかな…
  1868. かごめ: ………… …………
  1869. かごめ: あれっ…?
  1870. かごめ: (私…どうして…)
  1871. かごめ: (ジャンヌさんのことばかり 調べてるの?)
  1872. アルちゃん: <ジャンヌさんって ジャンヌ・ダルクのこと?>
  1873. アルちゃん: <まるで知り合いみたいだよ?>
  1874. かごめ: …………
  1875. かごめ: (…図書館では静かにしないと)
  1876. ジャンヌ・ダルクの死後 リッシュモン元帥のもとで 軍政改革を進めたフランス王国は イングランドから次々に勝利をおさめ 1453年、百年戦争は事実上終結。
  1877. 国王シャルル7世は “勝利王”と呼ばれることになる。
  1878. 1449年、ジャンヌへの 異端判決が下された町 ルーアンを奪回したシャルル7世は 翌年、裁判の正当性に関する再調査を指示。
  1879. その後、ジャンヌ・ダルクの 復権裁判が行われ、1456年7月7日 教会の異端判決は無効とされた。
  1880. ジャンヌを異端とした 裁判の判決文は破り捨てられ かつての戦友たちや、ジャンヌの母ロメ そしてジャンヌ・ダルクによって救われた オルレアンの市民は歓喜したという。
  1881. ジャンヌの伝説はその後も大切に 語り継がれ、死後数百年が経った 1920年5月6日、ジャンヌ・ダルクは ローマ教皇によって列聖され “聖人”として認定された。
  1882. かごめ: (シャルル7世は… ちゃんと約束を守ったんだ…!)
  1883. かごめ: (“乙女”ジャンヌの想いは ちゃんと語り継がれたんだね…)
  1884. かごめ: ………… …………
  1885. かごめ: (約束って…何?)
  1886. 1440年、ルイ王太子を擁立する 貴族らによる叛乱 “プラグリーの乱”が起きたが ルイ王太子が降伏したことで 早期に鎮圧された。
  1887. 結果的にシャルル7世の 軍政改革は大きく前進し イングランドの排除と 国内治安の回復に向けて フランスは歩みを早めていった。
  1888. ルイ王太子はその後 フランス国王ルイ11世として即位。
  1889. 終生、ジャンヌ・ダルクへの 感謝を口にし続け ふたりの娘に「ジャンヌ」と 名づけたことが知られている。
  1890. かごめ: …………
  1891. かごめ: (どうして気になったのか わからないけど…)
  1892. かごめ: (なんだか、ホッとした…)
  1893. かごめ: (えっと、こっちの項目は…)
  1894. かごめ: (錬金術士ニコラ・フラメルと その妻ペレネル・フラメル…?)
  1895. かごめ: あっ…! そろそろ行かなきゃ
  1896. かごめ: 約束の時間に遅れちゃう…
  1897.  
  1898. FILENAME: text_515920-11_BK8zF.txt
  1899. ―エピローグ―
  1900. いろは: …退院できて、本当によかったね
  1901. かごめ: ありがとうございます…
  1902. やちよ: まだ完治していないんでしょう? 無理は禁物よ
  1903. かごめ: はい…
  1904. かごめ: …………
  1905. 万年桜のウワサ: |かごめの取材記録 あれから増えた?|
  1906. かごめ: はい、ピュエラケアのみなさんに 協力してもらったりして…
  1907. かごめ: こんな感じで…
  1908. ―取材記録― ペレネル・フラメル
  1909. かごめ: えっ…えっ!?
  1910. アルちゃん: <かごめちゃん! 落ち着いて!落ち着いて!>
  1911. いろは: どうしたの?
  1912. 万年桜のウワサ: |取材記録を見て動揺してる?|
  1913. アルちゃん: <メリッサさん、エリザさん リズさん…>
  1914. アルちゃん: <知らない魔法少女の名前が いっぱいあるみたい>
  1915. かごめ: (知ってる名前もひとつあるけど 「知り合い」じゃないよ!)
  1916. かごめ: (ジャンヌ・ダルクって…!)
  1917. さな: あの…ピュエラケアの人たちに 書いてもらった分とかじゃ…?
  1918. かごめ: でもこれ、私の字だよ…? 私の字はね…
  1919. カチカチッ
  1920. かごめ: ほら…こんな感じ
  1921. フェリシア: 確かにかごめの字だな
  1922. やちよ: あら、そのシャープペンシル 可愛いわね
  1923. かごめ: え、そっちですか?
  1924. やちよ: くっついてるマスコット アルちゃんでしょ?
  1925. かごめ: えっ…あれっ!? ええっ!?
  1926. アルちゃん: <かごめちゃん 買った記憶がないみたい>
  1927. 万年桜のウワサ: |かごめがいろいろとおかしい|
  1928. かごめ: 私…入院前の記憶が 飛んじゃってる…とか?
  1929. いろは: ええっ、大丈夫?
  1930. うい: …そんなにありえないような 取材記録なの…?
  1931. かごめ: 少し…読ませてください
  1932. うい: あ、でもみんながいると 読みにくいよね?
  1933. やちよ: あっちの部屋で ゆっくり読むといいわ
  1934. やちよ: ひさしぶりに外出して 疲れたでしょう?
  1935. やちよ: お茶とお菓子、用意するから
  1936. かごめ: …………
  1937. コン、コン
  1938. かごめ: あ…はい…
  1939. さな: お茶とお菓子、持ってきました
  1940. うい: ここに置いておくね!
  1941. いろは: それで…どうだった?
  1942. いろは: 取材記録を読んで 何かわかった?
  1943. かごめ: はい、その…
  1944. タルト: 「その先に、みんなが 平和に暮らせる世界が… 希望があると信じて」
  1945. タルト: 「光を信じて…ただ、前だけを向いて」
  1946. かごめ: ここに書いてあることが 全部本当だとしたら
  1947. かごめ: 私の記憶がなくなってることも 辻褄が合うんですけど…
  1948. かごめ: でも…
  1949. いろは: でも?
  1950. かごめ: (ジャンヌ・ダルクの 取材記録だなんて…!)
  1951. かごめ: その…信じてもらえそうな 気がしないっていうか…
  1952. アルちゃん: <かごめちゃん自身が 信じられないみたい>
  1953. いろは: あはは…それじゃ仕方ないね
  1954. いろは: いつか話したくなったら 話してくれればいいよ
  1955. かごめ: …ありがとうございます
  1956. かごめ: でも、ここに書かれてる いろんな人たちの想いは
  1957. かごめ: きっと本当のことだって 気がするんです…
  1958. いろは: ふふふっ
  1959. さな: …ところで、かごめさんの 魔法少女の取材記録…
  1960. さな: だいぶ溜まってきましたけど
  1961. さな: 名前とか、つけないんですか?
  1962. うい: 本の題名みたいに…?
  1963. さな: そう…ちょっと気になって
  1964. かごめ: 名前ですか? いちおう…考えてます
  1965. いろは: へえ、聞いてもいいかな?
  1966. かごめ: はい…
  1967. かごめ: 「マギアレコード」という名前に しようと思ってます
  1968. La Fin.(おしまい)
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