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- FILENAME: text_515910-0.txt
- ―プロローグ―
- タルト: ―タルト― この世界を闇の中へ落とそうとする者…
- タルト: ―タルト― イザボー・ド・バヴィエール
- タルト: これで 終わらせます
- タルト: 「光あれ」…
- タルト: 「天国の扉(ラ・ポルトゥ・ドゥ・パラディ)」
- ガコンッ
- かごめ: ………… …………
- 「…以上の理由により、教会は」
- 「ジャンヌ・ラ・ピュセルと名乗る者を 異端者と認め」
- 「火刑に処す」
- ラ・イル: ―ラ・イル― あのお嬢ちゃんは… “乙女”は俺たちの戦友なんだ!
- ラ・イル: ―ラ・イル― それを助けることが 今の俺たちのやるべきことだ
- ラ・イル: ラ・ピュセル! ラ・ピュセル!! ラ・ピュセル! ラ・ピュセル!!
- タルト: …………
- エリザ・ツェリスカ: ――っ!?
- エリザ・ツェリスカ: もう火がっ!!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルト! タルトっ!!
- タルト: ………… …………
- ペレネル・フラメル: 私も…祈りましょう
- ペレネル・フラメル: 聖女の… “乙女”の伝説の最後に…
- タルト: ………… …………
- タルト: ―タルト― すべてのことに…
- タルト: ―タルト― ありがとう(メルシー・ヴレモン)
- かごめ: …………
- ???: 「…お願い」
- ???: 「彼女の想いを、なかったことにはしないで」
- かごめ: …………
- かごめ: はっ… 何…いまの夢?
- かごめ: あれっ…?
- かごめ: シャープペンシル…? 持って寝ちゃってたんだ…
- かごめ: 確か私の…だよね? でも…いつ買ったんだっけ
- かごめ: …………
- コン、コン
- おはようございます 佐鳥かごめさん
- かごめ: あ…看護師さん
- 今日は退院ですね おめでとうございます!
- かごめ: …あ…ありがとうございます
- 朝食、ここに置いておきますね それじゃ…
- バタン…
- アルちゃん: <…ふぅん、きみ かごめちゃんっていうんだ?>
- かごめ: …え…?
- かごめ: …えっ…ええっ!?
- かごめ: (アルちゃんが…)
- かごめ: (勝手にしゃべった…!?)
- アルちゃん: <聞いていい?ここはどこ?>
- かごめ: …えぇっ…と…
- かごめ: <そっか…ここはわたしにとって 未来の世界みたいだね!>
- アルちゃん: <あのね、お願いがあるの! “乙女”ジャンヌとか…>
- アルちゃん: <ジャンヌ・ダルクって 呼ばれてる人のことを>
- アルちゃん: <一緒に調べてほしいの!>
- FILENAME: text_515910-1_35Bxz.txt
- 第1部
- 第1章「消えてゆく記憶」
- かごめ: アルちゃんの口を借りて私に話しかけてきたのは トルテという名前の女の子らしくて…。
- かごめ: 彼女は、本当は15世紀のフランスに住んでいて 自分の国を救ったジャンヌ・ダルクが 未来にどう語り継がれてるのかを 知りたいんだって。
- かごめ: なんて、メモしてたら…
- アルちゃん: <ねえ、そのペン ちょっと見せて!?>
- かごめ: えっ… このシャープペンシル?
- アルちゃん: <そう、なんか今 カチカチッってしたよね?>
- かごめ: あ…うん こうすると芯が出てくるの
- アルちゃん: <カッコいい! どんな仕組みなの?>
- かごめ: トルテちゃんは すごく好奇心旺盛で、人懐っこくて ぐいぐい来る女の子で…。
- かごめ: 押し負けた私は 一緒にジャンヌ・ダルクのことを調べに 図書館に行くことになった。
- かごめ: 午後から、クレセントハウスにお邪魔して 退院の挨拶をする予定だったけど それまで、時間も空いてたし…。
- かごめ: (でも、ジャンヌ・ダルクって 確か…)
- タルト: ………… …………
- かごめ: …………
- かごめ: …あれっ…?
- かごめ: 百科事典になら 載ってると思ったんだけど…
- アルちゃん: <どうしたの?>
- かごめ: …うぅん… 私の探し方が悪いのかも
- かごめ: 司書さんに聞いてみるね
- かごめ: えっ…?
- かごめ: ないんですか? 1冊も?
- ごめんね、他の図書館にも 問い合わせてみたんだけど…
- かごめ: …………
- アルちゃん: <ジャンヌについての本 見つからないの?>
- かごめ: うん…
- かごめ: 1冊もないなんてこと あるはずがないんだけど…
- かごめ: あっ…ごめんね そろそろ行かなきゃ!
- かごめ: クレセントハウスで いろはさんたちが待ってるから
- いろは: …退院できて、本当によかったね
- かごめ: ありがとうございます…
- やちよ: まだ完治していないんでしょう? 無理は禁物よ
- かごめ: はい…
- かごめ: …………
- かごめ: あの…ところで… ちょっと、聞いてもいいですか?
- やちよ: 何かしら?
- かごめ: えっと…ジャンヌ・ダルクの ことなんですけど…
- フェリシア: なんだそれ? クルマの名前か?
- かごめ: えっ…? 聞いたこと…ない、とか?
- やちよ: フェリシアはもう少し 勉強しなさい
- やちよ: フランスを救った少女よ
- やちよ: 小学生のういちゃんでも 知ってるわよね?
- うい: …あ…えっと 名前くらいは
- うい: …………
- やちよ: どうかしたの?
- うい: あ…なんだか 不思議な感じがして…
- いろは: フランスを救った少女…
- いろは: もしかすると… ジャンヌ・ダルクも
- いろは: 魔法少女だったのかも しれませんね
- アルちゃん: <そう!>
- アルちゃん: <すごく強い 魔法少女だったんだって!>
- いろは: ――っ!?
- いろは: …アルちゃんの話し方 ちょっと変わった?
- かごめ: あっ…えっと …そうじゃなくて
- かごめ: (…今のは…トルテちゃんで…)
- かごめ: (ジャンヌ・ダルクは魔法少女… 本当…なのかな?)
- フェリシア: おーい、いろはー そろそろ行かなくていーのか?
- いろは: あ、かごめちゃん ごめんね
- いろは: 私たち、これから みふゆさんに会いに行くの
- フェリシア: オレは鶴乃と待ち合わせだぞ
- かごめ: あ…じゃあ私は…
- うい: ううん、すぐに戻るから ゆっくりしていって
- うい: 桜子ちゃんもいるから!
- 万年桜のウワサ: |かごめは、私と留守番|
- かごめ: …………
- FILENAME: text_515910-2_35Bxz.txt
- 万年桜のウワサ: |データベースを使いたい?|
- かごめ: はい…
- かごめ: 図書館になかったジャンヌの資料 …調べさせてもらえないかな
- 万年桜のウワサ: |…変|
- 万年桜のウワサ: |…ジャンヌ・ダルクの情報が データベースに存在しない|
- アルちゃん: <もしかして…>
- アルちゃん: <まるで“乙女”なんて いなかったみたいに?>
- 万年桜のウワサ: |確かに「消された」というより 最初からなかったように見える|
- かごめ: でも…桜子ちゃんは 知ってるんだよね?
- かごめ: ジャンヌ・ダルクのこと
- 万年桜のウワサ: |うん、知ってる だから変|
- 万年桜のウワサ: |私もデータベースで知るか 誰かに聞くかして知ったはず…|
- 万年桜のウワサ: |…次はデータベースじゃなくて ネットで調べてみる|
- かごめ: …どう?
- 万年桜のウワサ: |ない…まるで|
- 万年桜のウワサ: |ジャンヌ・ダルクという人が 存在しなかったみたい…|
- アルちゃん: <やっぱり…未来にも 伝わっていないんだ…>
- かごめ: やっぱりって…どういう意味? トルテちゃん
- ゴーン…
- かごめ&万年桜のウワサ: ――っ!?
- 万年桜のウワサ: |この音は…?|
- かごめ: …外、真っ暗だよ!?
- 万年桜のウワサ: |空を見て|
- かごめ: …何、あの月の色?
- 万年桜のウワサ: |いろはたちが心配|
- かごめ: 電話…つながらない… メッセージは…?
- かごめ: あれっ? ネットにつながらない
- 万年桜のウワサ: |異常事態|
- 万年桜のウワサ: |ネットワーク全体が ダウンしてるみたい|
- かごめ: …ええっ!?
- かごめ: この画面…変かも… だんだん黒くなってる…
- かごめ: …あれっ…?
- かごめ: …桜子ちゃん…どこ…?
- ゴーン…
- かごめ: ――っ!?
- かごめ: ここ… どこなの…?
- FILENAME: text_515910-3_35Bxz.txt
- ???: 「…ちゃん」
- ???: 「かごめちゃん!」
- かごめ: …………
- かごめ: …はっ!?
- ???: 目が覚めた?
- かごめ: その声… トルテちゃん…?
- トルテ: そう!
- かごめ: (話がしっかりしてるし 同い年くらいかと思ってたけど)
- かごめ: (結構小さい子なんだね…)
- かごめ: あの… ここって…
- トルテ: “想いの箱舟”っていう世界
- かごめ: 想いの…箱舟…?
- トルテ: うん、いろんな人の記憶を
- トルテ: 本の形にして 集めた場所なんだって!
- トルテ: かごめちゃんの本は そこにあるやつだよ
- かごめ: これが…私の本?
- トルテ: そう!
- トルテ: わたし、そこに飛び込んで さっきまで一緒に
- トルテ: かごめちゃんの 心の中の世界にいたの
- かごめ: 心の中…? 私、夢を見てたの?
- かごめ: 図書館に行ったのも いろはさんたちと話をしたのも
- かごめ: 夢とは思えなかったけど…
- トルテ: あ、一緒に行ったよね 図書館!
- かごめ: そのときトルテちゃん… アルちゃんになってた…よね?
- トルテ: へっ…? なんのこと?
- かごめ: なんだかわけがわからなかったけど トルテちゃんは15世紀の女の子。 ある魔法を使って、想いの箱舟に来たんだって。
- かごめ: …で、ここは いろんな人の記憶を集めた場所らしくて ここにある本のひとつひとつに ひとりひとりの記憶が刻まれてるみたい。
- かごめ: 本の中に飛び込むと、その人の心に入れるけど そこは「心の中の世界」だから、現実じゃない。
- かごめ: トルテちゃんは、普通に私のそばにいて 話しかけてるつもりだったらしいけど… 実際は、私の頭の中にいて 私の目を通して、未来の世界を見ていたの。
- かごめ: でも現実の世界では、アルちゃんを通じて 私と話をしていた…っていうことみたい。
- かごめ: …っていうことは
- かごめ: 図書館にジャンヌ・ダルクの本が 1冊もなかったのは現実なの?
- トルテ: だと思う! 未来で実際に起きてることだよ!
- かごめ: あの赤い月も…? 現実とは思えないんだけど…
- トルテ: そんなことないよ!
- トルテ: 月が赤いのも、“乙女”が いなかったことにされたのも…
- トルテ: わたしのいる15世紀に 本当に起きてることだもん!
- かごめ: ええっ…!?
- FILENAME: text_515910-4_35Bxz.txt
- かごめ: ―かごめ― オルレアンの町をイングランドから解放して フランスの王様を戴冠に導いた“乙女”ジャンヌ
- かごめ: 彼女が亡くなって10年近く経った1440年…。
- かごめ: ジャンヌのことを覚えている人は ほとんどいなくなっちゃってるの、って トルテちゃんは言った。
- かごめ: ただ忘れられたんじゃなくて、まるで 最初から「いなかった」みたいに、って…。
- トルテ: わたしが生まれたのは “乙女”が亡くなったあとだけど
- トルテ: でも、お母さんは覚えてて いつも話してくれたの
- トルテ: 悪い魔女をやっつけて フランスを取り戻した
- トルテ: すごい魔法少女なんだよって…
- かごめ: あっ、そうだ…! そのことを聞こうと思ってたの
- かごめ: ジャンヌ・ダルクって 本当に魔法少女だったの?
- トルテ: そうみたい …魔法少女に興味があるの?
- かごめ: うん…
- かごめ: 私は魔法少女じゃないんだけど… 魔法少女のことを取材してて
- トルテ: 取材…記録ってことかな? その未来のペンみたいなので?
- かごめ: うん…いつもこれでって わけじゃないけどね
- トルテ: じゃあ、“乙女”のことも 調べてみたい?
- かごめ: そうだね…取材するのは 無理かもしれないけど
- かごめ: ジャンヌを知っている人たちに… 話が聞けたら…
- トルテ: じゃあ、わたしの仲間だね!
- トルテ: わたしも“乙女”ジャンヌのこと いろいろ知りたいの!
- トルテ: …それでね、話は戻るけど この想いの箱舟という場所には
- トルテ: まだ失われていない“乙女”の 記憶が集まってるみたいなの!
- かごめ: あ…そういうことなんだ
- かごめ: それでトルテちゃんは この箱舟という場所に来て
- かごめ: みんなの心の中にある
- かごめ: ジャンヌの記憶を 探してたってこと?
- トルテ: そうそう!
- トルテ: …ここに集まった本に飛び込めば
- トルテ: “乙女”を知っている人の記憶を 知ることができるかなって!
- かごめ: なんとなく わかってきたかも…
- トルテ: でね、最初に入ったのが かごめちゃんの心の中だったの
- かごめ: えっ…?
- かごめ: …私、ジャンヌ・ダルクに 会ったことなんてないよ?
- かごめ: (えっと…ひとつ、ふたつ…)
- かごめ: 箱舟にある本って 全部で6冊しか見あたらないけど
- かごめ: そのうちのひとつが私…?
- トルテ: そうだよね… それが不思議なんだよね
- トルテ: 時代も未来みたいだったから
- トルテ: 本とか伝説とかになって 伝わってるのかなと思って
- トルテ: それで“乙女”のことを 調べたいって言ったんだ
- かごめ: 未来にはちゃんと伝わってるよ だから私も知ってたの
- かごめ: ただ、なぜか… 本や記録は消えちゃってたけど…
- トルテ: うーん、でもかごめちゃんも かごめちゃんが会った子たちも
- トルテ: ジャンヌの名前は 忘れてなかったよね?
- かごめ: うん…ただ思い返すと
- かごめ: 司書さんはジャンヌ・ダルク自体 知らないような感じだったかも
- かごめ: 私が名前を覚えていたのは 実は特別なことで…
- かごめ: それで、私の本が ここにあったのかな?
- トルテ: そうかもしれないね!
- かごめ: …そのうち1冊が 私の心の世界だってことは…
- かごめ: そこに飛び込めば もとの世界に戻れるの?
- トルテ: たぶん、そうだと思うよ
- かごめ: いつでも戻れるんだったら ちょっと安心だけど…
- トルテ: でも、せっかくだから もう少し取材を続けない?
- かごめ: うん… 私も取材はしたいけど…
- トルテ: じゃあ、決まりだね! 次は2冊目の本に一緒に入ろっ!
- かごめ: …えっ…い、いま?
- トルテ: うん! さあ、こっち!
- かごめ: え…ま、待って!?
- FILENAME: text_515910-5_35Bxz.txt
- かごめ: …赤い月… ここが、誰かの心の中?
- トルテ: そうみたいだね
- かごめ: トルテちゃんの時代は 月が赤いって言ってたけど
- かごめ: 15世紀っていつもこうなの?
- トルテ: うん…昔はそうじゃ なかったらしいんだけど
- かごめ: 暗いし… ちょっと怖いかも
- トルテ: 夜だからね でも、もうすぐ夜が明けそう
- かごめ: …そうなの? よくわかるね
- トルテ: 夜明けまで、しばらく休もうか? 魔法陣の中にいれば安全だから
- かごめ: ま…魔法陣? そんなの作れるの!?
- トルテ: うん!
- トルテ: お父さんとお母さんの工房から 持ち出した道具があるから!
- かごめ: 夜が明けたね…!
- トルテ: じゃ、人里めざして しゅっぱーつ!
- かごめ: …ねえ、トルテちゃんが ジャンヌのことを調べてるのって
- かごめ: 何か、理由があるの?
- トルテ: …うん
- トルテ: わたし、普段は トルテって呼ばれてるけど
- トルテ: 本当はジャンヌって名前なの
- トルテ: “乙女”からもらった名前だって お母さんが言ってて
- かごめ: そっか…気になるよね
- かごめ: 自分の名前の もとになった人だって言われたら
- トルテ: でしょ?…それにわたしの顔って “乙女”によく似てるんだって!
- かごめ: そうなんだ…?
- トルテ: うん! だから自分が魔法少女になる前に
- トルテ: 立派な先輩のことを いろいろ知っておきたいな、って
- かごめ: …魔法少女に… なりたいの…?
- トルテ: キミには素質があるよって
- トルテ: キューブにずっと つきまとわれてるんだよね
- トルテ: でも、お母さんはね
- トルテ: 奇跡を願えるのは1回だけだから よく考えて決めなさい、って
- かごめ: キューブ…
- かごめ: それって キュゥべえのことだよね?
- トルテ: あ、もしかしてかごめちゃんも キューブが見えるの?
- かごめ: あ…うん…
- トルテ: わ、一緒だ! よろしくね!
- トルテ: そっか、キュゥべえか… 言葉が違うと呼び名も違うんだね
- かごめ: たぶん…そうだと思うけど… っていうか、あれ?
- かごめ: 言葉っていえば…どうして私たち 言葉が通じてるの!?
- トルテ: それは、わたしが持ってる 魔法石のおかげだよ!
- かごめ: 魔法石…?
- トルテ: そう!
- トルテ: はい、かごめちゃんにも ひとつあげる
- トルテ: これで誰と会っても 取材できるはずだよ!
- かごめ: あ…ありがと
- かごめ: …………
- かごめ: …結局、ここって 誰の心の中なのかな?
- トルテ: さあ?
- かごめ: ジャンヌ・ダルクを 知ってる誰か…
- かごめ: ………… …………
- かごめ: え…?
- トルテ: どうしたの?
- かごめ: いま、何か…
- かごめ: ――っ!?
- БЯЯЯЯЯЯяЯЯЯ!!!!
- トルテ: わわ! 使い魔!?
- かごめ: ど…どうしよう!?
- トルテ: お母さんの魔術道具で なんとか…!
- かごめ: なるの?
- トルテ: …わかんない
- かごめ: ええっ?
- FILENAME: text_515910-6_35Bxz.txt
- 第2章「ニコラとペレネル」
- БяяяяЯ!?
- トルテ: えっ!?
- かごめ: 誰か、倒してくれたの…?
- ???の声: 探しましたよ
- かごめ: トルテちゃん 見て、上!
- ペレネル・フラメル: ―ペレネル― 近所で遊んでるのかと思ったら まさかこんな…
- ニコラ・フラメル: ―ニコラ― 聞けばキューブも 一緒じゃないって言うし
- ニコラ・フラメル: ―ニコラ― 僕たち心配したよ!
- トルテ: …お父さん、お母さん
- かごめ: え… この人たちが?
- ニコラ・フラメル: 初めまして!
- ニコラ・フラメル: 僕は錬金術士の ニコラ・フラメル
- ペレネル・フラメル: 同じく錬金術士にして魔法少女の ペレネル・フラメルと申します
- かごめ: あ…あの 佐鳥かごめ…です
- ペレネル・フラメル: 娘のトルテ…いえ、ジャンヌが ご迷惑をおかけしたみたいで
- ペレネル・フラメル: 誠に申し訳ありません
- ペレネル・フラメル: 私もなるべく目を離さないように しているのですが
- ペレネル・フラメル: なにぶん手に負えないお転婆で…
- トルテ: ごめんなさい… お父さん…お母さん
- かごめ: えっ…えっと…? お、お父さん…?
- かごめ: (私と 同じくらいに見えるけど…?)
- ペレネル・フラメル: ああ、ニコラの見た目は 気にしないでくださいね
- ペレネル・フラメル: わけあって 歳を取らない体質なので…
- かごめ: (そんな体質あるの…?)
- トルテ: あのね、聞いて!
- トルテ: かごめちゃんは 未来から来たんだよ!
- ニコラ・フラメル: 未来から…?
- キューブ: それは興味深いね
- かごめ: きゅ、キュゥべえ!?
- キューブ: やっぱりキミには ボクの姿が見えるみたいだね
- キューブ: まさかこんなところで 魔法少女の素質がある子に
- キューブ: 出会えるとは思わなかったよ
- かごめ: ………… …………
- トルテ: …どうしたの、かごめちゃん?
- かごめ: いろんな情報が入ってきて 頭が混乱しちゃって…
- ニコラ・フラメル: うーん、そうだね とりあえず…
- ニコラ・フラメル: 僕たちが何をしているのかを 話すことにしようか?
- ペレネル・フラメル: そうね
- FILENAME: text_515910-7_35Bxz.txt
- ペレネル・フラメル: ―ペレネル― いまから10年近く前…
- ペレネル・フラメル: ―ペレネル― “乙女”は強大な魔女 “女王(ラ・レーヌ)の黄昏”を倒し
- ペレネル・フラメル: ―ペレネル― 売国妃イザボーの手からフランスを… いえ、ヨーロッパを救いました
- ペレネル・フラメル: ―ペレネル― そして、みずから火刑になる道を選んだのです
- かごめ: …………
- ペレネル・フラメル: 異常に気づいたのは そのあとだったわ
- ニコラ・フラメル: うん
- ニコラ・フラメル: まるで“乙女”が、初めから 「いなかった」かのように
- ニコラ・フラメル: 人々の記憶が変化しはじめたんだ
- ニコラ・フラメル: 世界が不自然な力で 変えられようとしている…
- ニコラ・フラメル: そう考えたペレネルと僕は
- ニコラ・フラメル: 人々に残る記憶を集めて 失われることのないように
- ニコラ・フラメル: 書物の中に閉じこめることにした
- ペレネル・フラメル: それによってできた 書物の中の空間…
- ペレネル・フラメル: それが、あなたたちが入り込んだ “想いの箱舟”よ
- ペレネル・フラメル: 箱舟の中にある「本」の ひとつひとつは
- ペレネル・フラメル: “乙女”ジャンヌにゆかりのある 人々の想いで構成されているの
- ニコラ・フラメル: そう、想いの箱舟は…
- ニコラ・フラメル: いわば“乙女”の夢を 集めたような場所と言えるね
- かごめ: そうだったんだ…
- ニコラ・フラメル: そうして箱舟に集まった記憶を 調べることで
- ニコラ・フラメル: 僕たちは世界の異変の原因を 探ろうとしていた
- ニコラ・フラメル: そして、他にも協力者を 募っていたところだったんだ
- ペレネル・フラメル: ところが…
- ペレネル・フラメル: トルテが書物の中の空間に 勝手に立ち入ってしまったのよね
- ニコラ・フラメル: うん、それであわてて 追いかけてきたってわけ
- トルテ: えっと… …ごめんなさい
- キューブ: トルテも箱舟に集まった記憶を 調査して
- キューブ: 世界の異変の原因を探ろうと していたのかい?
- トルテ: 調べようとはしてたけど そんな立派な動機じゃないの
- トルテ: ただ、わたしと同じ名前の “乙女”のことを
- トルテ: もっと知りたいって 思っただけだから…
- ニコラ・フラメル: 好奇心を持つのはいいけど
- ニコラ・フラメル: 迷惑をかけたかごめちゃんに ちゃんと謝らないとね
- トルテ: うん… ごめんね、かごめちゃん
- かごめ: あ…ううん 私もさっきまで
- かごめ: ジャンヌ・ダルクさんのことを 取材できたらな…なんて
- かごめ: そんな考えでいたし…
- かごめ: 今も、ペレネルさんが 魔法少女だって知って
- かごめ: 取材させてほしいな…なんて 思っちゃったし…
- ペレネル・フラメル: 取材とは…?
- トルテ: あ、かごめちゃんはね…
- トルテ: 魔法少女のことを 記録に残してるんだって
- トルテ: お母さんも協力してあげて!
- ―取材記録― ペレネル・フラメル
- ペレネル・フラメル: 「“知りたい”… 真理を究めんとする者として それが私の望みであり、私のすべてでした」
- ペレネル・フラメル: 「でも、“乙女”との出会いが私を変えました …少し丸くなったと言われることもあります」
- ペレネル・フラメル: 「あのとき…魔女になる運命が 決して避けられぬと知った“乙女”は 戦友たちの命と引き換えに 火刑となる道を選びました」
- ペレネル・フラメル: 「そして“乙女”は…タルトは みずから敵に囚われてゆきました。 「最後まで傍観者にすぎなかった私に 『みんなをお願いします』と言い残して…」
- ペレネル・フラメル: 「…“乙女”の死を目の当たりにして 私は長い人生で初めて、我が夫以外の誰かに 祈りを捧げました」
- ペレネル・フラメル: 「ただ、祈りを捧げることしか できなかったのです…」
- ペレネル・フラメル: 「我が娘が、“乙女”に関心を持ち その生きざまを知りたいというのなら」
- ペレネル・フラメル: 「亡き“乙女”ジャンヌのために 自分に何ができるのか、真剣に考えてほしい」
- ペレネル・フラメル: 「それが今の、私の望みね」
- FILENAME: text_515910-8_35Bxz.txt
- ペレネル・フラメル: で、このあとどうするかだけど…
- ニコラ・フラメル: トルテも僕たちと一緒に 調査をすればいいんじゃない?
- ペレネル・フラメル: そうね このまま目を離すよりは…
- トルテ: やったー!
- トルテ: あっ、あの人たちだ…!
- トルテ: この世界は あの人たちの心の中だよ!
- キューブ: トルテにはわかるのかい?
- トルテ: うん、ほら!
- トルテ: かごめちゃんのときも同じように 髪の毛が反応したから!
- トルテ: 話、聞きにいこっ!
- かごめ: でも…変じゃないかな… 本1冊で、ひとりのはずじゃ…?
- ペレネル・フラメル: そうなってないわね
- ペレネル・フラメル: この本では、複数の人の記憶が つながってしまったのかしら?
- ニコラ・フラメル: 気をつけて接触しないと
- ニコラ・フラメル: 街道荒らしって言うんだけど… 略奪団と化した兵が増えてるから
- …“乙女”ジャンヌ? 誰だそれは?
- トルテ: 覚えてないかな…? オルレアンを解放して
- トルテ: ランスでシャルル様を 戴冠に導いた“乙女”のこと…
- イングランドに包囲された オルレアンの戦況を建て直して
- 解放に導いたのは バタールの旦那やラ・イル様だし
- ランスへの進軍の総指揮官は アランソン公だったよな?
- 道中はリッシュモン様の援軍も 大きかったと聞く
- そしてシャルル陛下の戴冠式で
- 聖油を捧げ持つ大役を担ったのは ジル・ド・レ様だ
- ペレネル・フラメル: みな、“乙女”とともに戦った 戦友たちよ
- かごめ: …………
- ペレネル・フラメル: 人々の記憶から、“乙女”の 存在だけが抜け落ちている…
- シャルル国王陛下に忠誠を尽くす リッシュモン元帥が
- 宮廷を掌握してくれたおかげで
- 5年前のアラスの和約からは
- イングランドの影響力も だいぶ削がれたが…
- 貴族同士のゴタゴタが続いて フランスは荒れたままだな
- リッシュモン元帥のやり方に 反対するアランソン公や
- バタールの旦那が 国王陛下に盾突く始末だしな…
- おかげで治安も荒れ放題だ
- イングランドを追い出すどころか フランス人同士で殺し合ってる
- ペレネル・フラメル: かつての“乙女”の戦友同士が 敵対している…
- ペレネル・フラメル: これが、“乙女”の死後に 起きていることよ
- かごめ: そんな…
- トルテ: ねえ、兵隊さんたち… 本当に思い出せないの?
- トルテ: わたしの顔によく似た 女の子のこと!
- お嬢ちゃんに似た…?
- トルテ: そう!
- おいおい、そんなに 目を近づけるなって…
- ――っ!?
- どうした?
- …………!
- おい…!
- ああ… 思い出したぞ…!
- うぉおおおっ!
- ついにオルレアン解放は成った!
- タルト: 王太子様
- タルト: オルレアンにおきまして 私たちフランス軍は…
- ガシッ
- タルト: ――っ!?
- シャルル王太子: 良い! すでに聞き及んでいる
- タルト: …………
- シャルル王太子: 本当に… 良くやってくれた、“乙女”
- ラ・ピュセル… どうして…忘れちまってたんだ?
- まったくだ
- …オレたちは、あのお嬢ちゃんと 確かに一緒に戦った
- そして、何度も命を 救われたんだ…
- ペレネル&ニコラ: …………!
- トルテ: 思い出してくれたの?
- ああ…
- 戦場ではいつも先頭に立って オレたちを励ましてくれた
- でも、普段は気さくで、純朴で… 本当に優しい子だったよ
- かごめ: あの…お話、もっと 聞かせてもらってもいいですか?
- …ハハハ、そんなこともあったな
- “乙女”への差し入れで 天幕があふれたこともあったぞ
- そうそう! どこに行っても人気があったよな
- ちっとも気取ったところがない 素朴な村娘だからな
- その名前がフランス中に まだ知れわたる前から
- 行く先々で大人気だったらしい
- ラ・ピュセル!
- 今日の朝採れた卵を 持ってまいりました
- どうぞお召し上がりを!
- お体は崩されたりして おりませんかな?
- ラ・ピュセルのお姉ちゃん! また私たちと遊んで!
- リズ・ホークウッド: このところ毎日… 大した人気ね
- ………… …………
- そう…“乙女”は 確かにオレたちの仲間で
- 一番の戦友だった… それを、忘れちまってたなんて
- かごめ: …………
- トルテ: でも、ありがとう 思い出してくれて
- …………
- お嬢ちゃん、本当にそっくりだな …“乙女”ジャンヌに
- ああ、だいぶ幼いけど 瓜ふたつだ
- トルテ: …間近に見てきた人たちにも そう見えるんだね
- キューブ: ところで記録は終わったのかい? 佐鳥かごめ
- かごめ: あ…うん! いまちょうど書き終えたところ…
- ペレネル・フラメル: ――っ!?
- ニコラ・フラメル: 消えた…?
- どうなってるんだ…?
- 4人ともいなくなったぞ?
- FILENAME: text_515910-9_35Bxz.txt
- ニコラ・フラメル: …かごめちゃんが 記録を書き終えたとたんに
- ニコラ・フラメル: 箱舟に戻されちゃったね
- ペレネル・フラメル: トルテたちはどこかしら…
- ニコラ・フラメル: いたよ!
- かごめ: あ…ニコラさんたち
- ペレネル・フラメル: …気づいたことがふたつあるわ
- トルテ: なぁに、お母さん?
- ペレネル・フラメル: ひとつは、トルテ あなたの目には…
- ペレネル・フラメル: “乙女”の記憶を呼び覚ます力が あるということ
- トルテ: ええっ!?
- ペレネル・フラメル: あなたがさっきの兵士たちと 目を合わせたときに
- ペレネル・フラメル: なんらかの魔法が発動したわ
- ニコラ・フラメル: トルテの姿が “乙女”とよく似ていることで
- ニコラ・フラメル: 人々の記憶が甦るための 魔術的な触媒になっている…?
- ペレネル・フラメル: そんなところかしらね …そして、もうひとつ
- ペレネル・フラメル: かごめ嬢 あなたがそのペンを使って
- ペレネル・フラメル: “乙女”の記録を記すことで
- ペレネル・フラメル: 誰かの心の中の世界から ここに戻ることができるみたいね
- かごめ: えっ… …そうなんですか?
- ペレネル・フラメル: ええ、そのペンは 特殊な魔力を帯びているわ
- ペレネル・フラメル: 記録された冊子の方からも 同じ魔力を感じます…
- ペレネル・フラメル: 魔法のペンで書くことで 魔法の記録になるのでしょう
- かごめ: これ、どこで買ったのか 思い出せなかったけど…
- かごめ: 魔法のシャープペンシル… だったの?
- ニコラ・フラメル: トルテが“乙女”の記憶を 聞き出して
- ニコラ・フラメル: かごめちゃんがその話を そのペンで記録する…
- ニコラ・フラメル: このふたつを繰り返して “乙女”の記憶を集めることに
- ニコラ・フラメル: 意味があるってことかな?
- ペレネル・フラメル: この空間の性質はまだ よくわかっていないの
- ペレネル・フラメル: でもトルテが最初に会ったのが かごめ嬢だったこと自体が
- ペレネル・フラメル: 不思議な力が働いた結果のように 思えるわ
- キューブ: キミたちとタルトがなんらかの 因果で結ばれているとすれば
- キューブ: ありえない話ではないね
- かごめ: ジャンヌさんと…私たちが?
- トルテ: …それって、どんな?
- キューブ: それはボクにもわからない
- トルテ: …とにかく、さっきと同じことを 繰り返してみるしかないよね
- かごめ: そうだね… でも、次はどの本に入ろう?
- トルテ: 本があるところに戻ろう!
- トルテ: 早くはやく! かごめちゃん!
- かごめ: はぁ…はぁ やっと追いついた
- トルテ: この大きい本に入ろうよ! 次で3冊目だね!
- かごめ: うん、いいけど みんなが追いついてからだよ?
- かごめ: えっ…? トルテちゃん!?
- ペレネル&ニコラ: ――っ!?
- キューブ: ふたりとも本に 近づきすぎたようだね
- ニコラ・フラメル: お、追いかけないと…!
- かごめ&トルテ: …………
- かごめ: ここって…?
- トルテ: あっ…
- トルテ: ここは、あの人の心の中だよ!
- ジル・ド・レ: おお…! なんたる奇跡か!
- ジル・ド・レ: 我が招きに応じて ついに、我が聖女が…!
- ジル・ド・レ: “乙女”ジャンヌが復活なされた
- かごめ&トルテ: ――っ!?
- かごめ: トルテちゃんを… ジャンヌさんだと思ってる?
- トルテ: でも、それって…“乙女”を 覚えてるってことだよね?
- かごめ: まだ、トルテちゃんの目を 見てないのに…?
- ジル・ド・レ: 我が聖女と、連れの方よ
- ジル・ド・レ: どうかこのジル・ド・レの 歓待をお受けください…!
- トルテ: え、ジル・ド・レ様…?
- かごめ: あ…さっき名前を聞いたかも
- トルテ: うん、“乙女”と一緒に オルレアンを解放した
- トルテ: フランスの大貴族だよ!
- ジル・ド・レ: オルレアンの戦い… おお、懐かしい
- ジル・ド・レ: あれから10年…いや それ以上の月日が過ぎたとは…
- トルテ: あれ…なんか、変?
- かごめ: うん…ちゃんと会話できそうな 感じがしない…かも…
- ジル・ド・レ: 待ち侘びましたぞ、我が聖女よ さあ、我が館へ…
- ザッ…
- ???の声: いまの、見ましたわね?
- ???の声: …はい
- FILENAME: text_515910-10_35Bxz.txt
- ジル・ド・レ: どうぞ、お客人がた こちらは極上のイポクラスです
- かごめ: イポクラス…?
- トルテ: …あ、お酒の一種! 飲まない方がいいよ!
- トルテ: ごめんなさい、あの… 山羊のミルクとかないですか?
- ジル・ド・レ: おお、そうでした! 我が聖女は酒が苦手でしたな!
- ジル・ド・レ: ご所望のものを すぐにお持ちしましょう
- かごめ: お、お願いします…
- ジル・ド・レ: …まったく 嘆かわしいかぎりです
- ジル・ド・レ: かつて“乙女”とともに戦い
- ジル・ド・レ: その奇跡を目のあたりにした 兵士たちが
- ジル・ド・レ: 今では“乙女”の…我が聖女の
- ジル・ド・レ: 存在そのものを忘れたかのように ふるまっている…
- かごめ: あの… “乙女”の奇跡って…?
- ジル・ド・レ: おや、連れの方は ご存じないようですな?
- ジル・ド・レ: いや、そのお歳では 無理もありませんな
- ジル・ド・レ: 何しろ、10年以上も昔のこと…
- コルボー: ―コルボー― 私の魔法からは逃げられない 敵も味方も等しくな!!
- コルボー: ―コルボー― さぁ、踊りくるえ 死の舞踏を
- コルボー: ―コルボー― ラ・ダンス・マカブル!
- リズ・ホークウッド: ―リズ― これはっ…
- リズ・ホークウッド: ―リズ― 黒死病(ペスト)!
- コルボー: ―コルボー― この魔法は特別製さ! 私が振りまく黒死の病は
- コルボー: ―コルボー― 即座に発病し 逃れられない死を与える
- タルト: すべてを壊そうとするあなたたちを もう許すことはできない
- タルト: 私はすべてを救ってみせる!
- おぉ… これは…
- 体が…楽に
- ジル・ド・レ: この光は… “乙女”から…?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルト…
- リズ・ホークウッド: 死にかけていた私たちを 全員…癒したというの?
- 敵である我々までも…?
- 奇跡の“乙女”…
- 聖女だ…
- コルボー: ふ…
- コルボー: ふざけるな! 私の魔法をかき消しただと!
- コルボー: そんなことが… 貴様は…
- コルボー: 貴様はいったい何なんだ!?
- キューブ: 「“イレギュラー”さ」
- ペレネル・フラメル: それも… とっておきのね
- かごめ: 聖なる光で… みんなの病気を癒した?
- ジル・ド・レ: そう…! 敵味方問わず、すべての兵を!
- ジル・ド・レ: その場にいたイングランド軍は
- ジル・ド・レ: 聖女に刃を向けることなど 到底できなくなったのです!
- かごめ: …すごいね
- トルテ: うん…
- ジル・ド・レ: …さて、そろそろ 支度ができたようです
- ジル・ド・レ: 我が聖女よ、出立の準備を
- トルテ: へっ…? 出立って、どこへ?
- ジル・ド・レ: 我が聖女が甦る この日のために
- ジル・ド・レ: 常によりすぐりの精鋭を 手元に置いておりました
- ジル・ド・レ: “乙女”がひと声発すれば
- ジル・ド・レ: 地獄の底まで攻め入ることも いとわぬつわものたちです
- ジル・ド・レ: “乙女”を忘却した 恩知らずどもに
- ジル・ド・レ: 裁きを下しましょう
- ジル・ド・レ: …さあ、ご命令を!
- かごめ: …ど、どうしよう? まずい雰囲気だよ
- トルテ: うん…それに ジル・ド・レ様って
- トルテ: 会ってから一度も、わたしと 目を合わせようとしないの…
- かごめ: そうなの…?
- トルテ: うん、真実の記憶が甦れば
- トルテ: ちゃんと話を聞いてもらえるかと 思ったんだけど…
- ジル・ド・レ: …どうしましたか、我が聖女よ 遠慮することはありませんぞ
- トルテ: う…うん
- ???: 「待ちなさい!」
- エリザ・ツェリスカ: “乙女”の名を騙る不届者は このわたくしが許しませんわ!
- トルテ: へっ?
- かごめ: あなたは…?
- エリザ・ツェリスカ: わたくしは神聖ローマ皇帝 ジギスムントの偉大なる妃
- エリザ・ツェリスカ: バルバラ・ツェリスカが娘 ドラゴン騎士団がひとり…
- トルテ: …エリザさん?
- エリザ・ツェリスカ: ――っ!?
- エリザ・ツェリスカ: なんで知ってますの?
- FILENAME: text_515910-11_35Bxz.txt
- 第3章「メリッサとエリザ」
- かごめ: 私たちの前に現れたふたり… エリザさんとメリッサさんは “乙女”…タルトの親友として、一緒に戦った 伝説の魔法少女。
- かごめ: エリザさんは、神聖ローマ皇帝妃の娘で… メリッサさんは、“憤怒(ラ・イル)”の 異名で知られる英雄の娘。
- かごめ: 実は、ペレネルさんが箱舟を調査するときに 「協力を要請した」相手というのが このふたりで…。
- かごめ: エリザさんたちも偶然、私たちと同じ この心の世界に入り込んでいた。
- かごめ: でも、その事実がわかったのは 少しあとの話で、このときはおたがいに 何も知らなかったし…。
- かごめ: おまけに、トルテちゃんはふたりのことを ペレネルさんから聞いていたけど ふたりはトルテちゃんの存在を知らなくて…。
- エリザ・ツェリスカ: …これはいったい どういうことですの?
- エリザ・ツェリスカ: タルトの名を騙るニセモノなど
- エリザ・ツェリスカ: とても見逃せないと思って 出てきてみれば
- エリザ・ツェリスカ: タルトと瓜ふたつの上に わたくしを知っている…?
- トルテ: うん! エリザさんとメリッサさんだよね
- トルテ: ヨーロッパいちの魔法少女だって お母さんに聞いてる!
- エリザ・ツェリスカ: にょわほほほ!
- エリザ・ツェリスカ: それは褒めすぎですわ …じゃなくて!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: あなたたちはいったい…?
- かごめ: この子はトルテちゃん… 私は、佐鳥かごめ…です…
- トルテ: あ、トルテは愛称で ジャンヌ・フラメルが本名だよ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …フラメル…? ひょっとしてお母さんの名前って
- トルテ: ペレネル・フラメルだよ
- エリザ・ツェリスカ: ペレネルに娘がいたんですの!?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: しかも…タルトにそっくり…?
- ジル・ド・レ: はて…何やら 混乱しているようですが…
- エリザ・ツェリスカ: あなたのことは後まわしですわ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …ああ、そうだったんですね
- メリッサ・ド・ヴィニョル: ふたりも私たちと同じように ジル・ド・レ様の心の中に入って
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトの記憶を 調べていたんですね?
- エリザ・ツェリスカ: それが、復活したタルトだか 生まれ変わりだかと間違われて
- エリザ・ツェリスカ: 叛乱の片棒をかつがされそうに なっていたと…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: まあ、ここは心の中の世界だから 大事には至らないでしょうけど…
- かごめ: ペレネルさんとはぐれたのが よくなかったですね…
- エリザ・ツェリスカ: まあいいですわ お仲間というのはわかりましたし
- エリザ・ツェリスカ: 残る問題は…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: ジル・ド・レ様ですね
- エリザ・ツェリスカ: あの男は、狂気に陥っていますわ なのにタルトのことは覚えている
- トルテ: わたしと絶対に 目を合わせようとしないの…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …記憶は残っているけど 現実からは目を背けている?
- エリザ・ツェリスカ: 少々、荒療治ですが…
- エリザ・ツェリスカ: あの男に、無理やりにでも トルテと向き合わせてみては?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 私がトルテちゃんを 連れて行ってみます
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 安心して 何があっても、私が守るから
- トルテ: うん、わかった!
- エリザ・ツェリスカ: トルテの前では 黙っていましたが…
- エリザ・ツェリスカ: …あの男は タルトが最期を迎えたあと
- エリザ・ツェリスカ: 許されない罪を犯したのですわ
- かごめ: 罪って…?
- エリザ・ツェリスカ: 領内で、年端もゆかぬ少年たちを 100人以上も浚い
- エリザ・ツェリスカ: 黒い儀式の生贄とした罪…
- かごめ: ――っ!?
- かごめ: そんな…!
- エリザ・ツェリスカ: 証拠は山とあります
- エリザ・ツェリスカ: 近く、その罪は露見して あの男は死刑となるでしょう
- エリザ・ツェリスカ: …皮肉な話ですわ
- エリザ・ツェリスカ: ともに死地を馳せた者たちすら 記憶を失くしていった中で
- エリザ・ツェリスカ: あの男だけはタルトを忘れず 誰よりも崇拝し続けていたなんて
- ジル・ド・レ: 「ああぁぁああーーっ!!」
- かごめ: …………!
- エリザ・ツェリスカ: どうやら、少しばかり 正気が戻ったようですわね
- ジル・ド・レ: あ… ああ…!
- ジル・ド・レ: 私は…私はなんということを してしまったのだ…!
- ガシャーン
- ジル・ド・レ: なぜ!なぜ!!
- ジル・ド・レ: 我が聖女が 死ななければならない!
- ジル・ド・レ: あなたが魔女であるならば 私は…私は悪魔にでもなろう!
- ジル・ド・レ: そしてまたいつか 我が聖女のもとに!
- ジル・ド・レ: …………
- エリザ・ツェリスカ: やっと我に返ったのですわね
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: トルテちゃんと目を合わせるのを 避けていたのは
- メリッサ・ド・ヴィニョル: もう、タルトに顔向けできない… そんな気持ちからだと思います
- トルテ: …………
- かごめ: ジャンヌ・ダルクさんが 悲惨な最期を迎えたことで
- かごめ: みんなが傷ついていたんですね…
- エリザ・ツェリスカ: それは… わたくしたちも同じですわ
- かごめ: …………
- ジル・ド・レ: …………
- エリザ・ツェリスカ: この男は、タルトの記憶は 失うことがなかったけれど
- エリザ・ツェリスカ: でも、もっと大切なものを 見失ってしまったのですわ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: ジル・ド・レ様はいま その罪を自覚なさいました…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 現実の世界でも罪に気がつき 激しい後悔に襲われるでしょうが
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 彼に裁きを下すのは 私たちの仕事ではありません
- かごめ: …………
- かごめ: 私たちはこのあと、そっと館を後にして それから、メリッサさんとエリザさんに 少し、話を聞いた。
- かごめ: かつて、ジャンヌ・ダルクさんの仲間として ともに戦ったふたりは ジャンヌさんが亡くなったあとも その想いを継いで、10年近くのあいだ ヨーロッパの各地で戦い続けてきたんだって。
- かごめ: そんなふたりにとって ジャンヌさんの記憶がみんなから消えて かつての戦友たちが争いを繰り返し イングランドを追い出せないでいる状況は すごく、もどかしいんだろうなって思う…。
- FILENAME: text_515910-12_35Bxz.txt
- エリザ・ツェリスカ: で…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 想いの箱舟まで 戻されましたけど…
- かごめ: ペレネルさんたちは…?
- トルテ: あ、いた!
- エリザ・ツェリスカ: わたくしの本音としては、まず
- エリザ・ツェリスカ: ペレネルにタルトそっくりの 娘がいたことについて
- エリザ・ツェリスカ: 問い正したいところなのですが…
- ペレネル・フラメル: その理由については ご想像におまかせするわ
- エリザ・ツェリスカ: ええ、今回の件が片づくまで 追及しないことにします
- エリザ・ツェリスカ: それよりも…
- エリザ・ツェリスカ: タルトの記憶が人々から 消えていく謎について
- エリザ・ツェリスカ: 何かわかりましたの?
- ペレネル・フラメル: 残念ながら、何も…
- エリザ・ツェリスカ: タルトの…あの子の生きた証を なかったことにするなんて…
- エリザ・ツェリスカ: 何者かのしわざだとしたら 決して許せませんわ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: こんなことができるとしたら 考えられるのは
- メリッサ・ド・ヴィニョル: “売国妃”と呼ばれた あの方なんですけど…
- エリザ・ツェリスカ: 最悪の魔女と化したイザボーは
- エリザ・ツェリスカ: タルトがその命を燃やして 確かに倒しましたわ
- エリザ・ツェリスカ: そして5年前 生き残った娘のミヌゥも…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…私たちが この手で討ち果たしました
- トルテ: その話は、お母さんに聞いたよ
- トルテ: イングランド陣営の黒幕たちは それで完全にいなくなった…
- トルテ: メリッサさんとエリザさんの おかげだって!
- ペレネル・フラメル: …ええ、ふたりこそが
- ペレネル・フラメル: “乙女”亡きあとのヨーロッパを 守り続けてきた
- ペレネル・フラメル: 英雄であることは間違いないわ
- エリザ・ツェリスカ: タルトがイザボーを倒した時点で すべては終わったも同然でしたわ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …私たちは、ただ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトの想いを 無にしたくなかったんです
- かごめ: この時代から10年近く前のこと… “乙女”ジャンヌの最後の敵になったのは 元フランス王妃の イザボーさんという強大な魔法少女で…。
- かごめ: 1431年 イングランド陣営の黒幕だった彼女が ジャンヌさんの手で倒されて 世界は闇に呑まれずに済んだらしいの。
- かごめ: そして、その数年後の1435年 メリッサさんとエリザさんが 生き残った娘のミヌゥさんを討ったことで 黒幕たちの野望は完全についえた…。
- かごめ: そこにはまだ、語られていない物語が あるみたいだけど…。
- かごめ: ただ、今のフランスで起きている戦乱は 魔法少女ではなくて、人と人、国と国の争いで… だから「“乙女”の記憶が失われる」という おかしな現象がなぜ起きているのか ペレネルさんたちは不思議がっているの。
- ニコラ・フラメル: …まるで、僕たちの世界が
- ニコラ・フラメル: もうひとつの世界の 侵食を受けているように見えるね
- メリッサ・ド・ヴィニョル: もうひとつの世界…?
- ニコラ・フラメル: そう…“乙女”ジャンヌが 存在しない世界
- ニコラ・フラメル: そして空には、赤い月がある
- ニコラ・フラメル: 最初に赤い月が観測されたのは 40年くらい前…
- ニコラ・フラメル: 1400年頃の話だ
- ニコラ・フラメル: その頃から僕たちの世界は
- ニコラ・フラメル: “乙女”がいない赤い月の世界に 侵食されはじめたんじゃないかな
- ペレネル・フラメル: もうひとつの世界の侵食… 冴えた見方かもしれないわね
- ペレネル・フラメル: …ごめんなさい、ニコラには 見えない相手と話をするけれど
- ペレネル・フラメル: キューブはどう思う?
- キューブ: 悪くない仮説だね きっかけは不明だけど
- キューブ: 1400年頃、なんらかの理由で 世界の可能性はふたつに分岐した
- キューブ: ひとつは“赤い月の世界”… タルトが誕生しない世界だ
- キューブ: もうひとつはボクたちの世界… タルトがフランスを救った世界だ
- キューブ: ただ、ボクたちの世界は 赤い月の世界にすでに侵食されて
- キューブ: 赤い月が空に昇るようになり
- キューブ: タルトの記憶も徐々に 人々の世界から消えつつある…
- キューブ: さっきのニコラの仮説は このように解釈できる
- かごめ: ジャンヌさんが誕生する世界と しない世界…
- かごめ: ふたつの可能性のあいだで 歴史が揺れ動いてるってこと?
- トルテ: あ、だから未来の記録からは
- トルテ: “乙女”に関することが 消えちゃってたんだ…?
- ペレネル・フラメル: でしょうね…ただ、影響は
- ペレネル・フラメル: “乙女”に関することだけに 今のところ留まっているけど
- ペレネル・フラメル: “乙女”が存在しなかったら イザボーも倒されないし
- ペレネル・フラメル: もっと大きな変化が起きるはず
- ペレネル・フラメル: 徐々にしか影響が出ないのは 何か理由があるのかしら?
- キューブ: 魔法が関わっているからだろうね
- キューブ: それに、ペレネル
- キューブ: キミたちがこの“想いの箱舟”に 人々の記憶を封じ込めたことで
- キューブ: 侵食に抵抗していることも 理由のひとつだと思うよ
- エリザ・ツェリスカ: …わたくしやメリッサの記憶は ここにはありませんの?
- ペレネル・フラメル: もっと危うい、失われそうな 記憶を優先して集めたので…
- ニコラ・フラメル: 集まったのはたったの6冊分…
- ニコラ・フラメル: “乙女”の記憶は 人々からなくなる寸前だったんだ
- かごめ: もしもジャンヌ・ダルクさんの 痕跡が完全になくなって
- かごめ: その存在ごと消えちゃったら
- かごめ: 私が知ってる未来には きっとならないよね…?
- かごめ: ちょっと…心配になってきたかも
- トルテ: もういちど、かごめちゃんの本に 飛び込んで
- トルテ: 未来の様子を確かめてみようか?
- ニコラ・フラメル: 今度は、みんなで一緒にね!
- エリザ・ツェリスカ: ずいぶん大所帯ですけれど 仕方ありませんわね!
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- メリッサ・ド・ヴィニョル: ここが、未来の世界…?
- トルテ: 前に来たときと 変わってないみたいだね
- かごめ: 桜子ちゃんは…いない…?
- トルテ: 外の様子も見てみないと!
- かごめ: そうだね…
- かごめ&トルテ: ――っ!?
- かごめ: 町が…ない?
- ニコラ・フラメル: 空には… 赤い月が昇っているね
- エリザ・ツェリスカ: 落ち着きなさい 少し、あたりを探ってみましょう
- トルテ: そうだね
- かごめ: 道もないし 町の灯りも見えない…
- ペレネル・フラメル: そうね、人が暮らしている痕跡が まったく感じられないわ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 人間が…滅んでしまったの?
- キューブ: どうやらそのようだね
- キューブ: “乙女”が存在せず イザボーが権勢を拡大し続ければ
- キューブ: 行き着く先は人類の文明の崩壊だ
- トルテ: でも、さっきいた部屋は? 誰が作ったの?
- キューブ: もとの世界がまだ完全には 侵食されていないから
- キューブ: 残っているだけだよ
- キューブ: 佐鳥かごめの存在や、その建物は 世界の変化に影響されない
- キューブ: 特異点のような場所に なっているのかもしれないね
- かごめ: …クレセントハウスが?
- ペレネル・フラメル: まずは、そこに戻りましょうか
- かごめ: 考えてなかった…
- かごめ: 人類が消えてしまうほどの 危機だったなんて…
- ペレネル・フラメル: まずは、状況を整理して 打開策を考えましょう
- ニコラ・フラメル: …かごめちゃんの存在が ひとつの鍵になっているのは
- ニコラ・フラメル: 間違いないと思うよ
- ニコラ・フラメル: どうにか箱舟に保存できた “乙女”の記憶は6冊…
- ニコラ・フラメル: その、たった6冊のうち1冊が かごめちゃんの記憶なんだから
- ニコラ・フラメル: トルテがお邪魔したときも かごめちゃんの周りの人たちは
- ニコラ・フラメル: “乙女”ジャンヌの名前を ちゃんと覚えていたんだよね?
- かごめ: はい…いろはさんとやちよさん ういちゃんに、桜子ちゃん…
- かごめ: あ、フェリシアさんは 知らないみたいだったけど…
- ペレネル・フラメル: そこに共通項が あるのかもしれないわ
- ペレネル・フラメル: たとえば、なんらかの形で
- ペレネル・フラメル: “乙女”と因果で結ばれた 少女である、とか…
- トルテ: そのペンも関係あるよね?
- エリザ・ツェリスカ: 謎の魔法のペンの持ち主… 関係ないはずがありませんわ!
- ニコラ・フラメル: 未来の少女が魔法のペンで 魔法少女を取材して記録している
- ニコラ・フラメル: その中には、消えてしまいそうな
- ニコラ・フラメル: “乙女”ジャンヌに関する記録が たくさん含まれている…
- ニコラ・フラメル: かごめちゃんの行為自体が 赤い月の世界の侵食から
- ニコラ・フラメル: 未来を守る 役に立っているのかもしれないよ
- ペレネル・フラメル: ――っ!?
- ペレネル・フラメル: そうよ、その通りよ
- ペレネル・フラメル: 私たちは世界をもとに戻す方法を 探していましたが…
- ペレネル・フラメル: かごめ嬢が記録を続けることで もとの世界を取り戻せるわ
- トルテ: どういうこと?
- キューブ: 「未来」の住人である 佐鳥かごめがタルトを記録すれば
- キューブ: 「タルトが存在した過去」を なかったことにはできないからね
- キューブ: おまけにそのペンとノートは なんらかの魔法で守られている…
- ペレネル・フラメル: あとは、トルテの存在ね
- ペレネル・フラメル: トルテがかごめ嬢と出会ったのも 偶然ではないはずよ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: とにかく、ふたりを助けて タルトの記録を続ければ…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 世界はもとに 戻るということでしょうか?
- エリザ・ツェリスカ: すべきことが はっきりしましたわね
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…!
- ニコラ・フラメル: もうひとつ 気づいたことがあるよ
- エリザ・ツェリスカ: なんですの?
- ニコラ・フラメル: あの赤い月の正体だよ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: えっ…?
- ニコラ・フラメル: あの赤色って、想いの箱舟の色に よく似てる気がしない?
- ペレネル・フラメル: …確かにそうね
- ニコラ・フラメル: 世界には固有の“色”があってね
- ニコラ・フラメル: ある種の魔法を通して見ると 異なる世界に属するものは
- ニコラ・フラメル: 異なる色で見えると 言われているんだ
- ニコラ・フラメル: あの赤色が、僕たちの 本来の世界の色なんだとすると
- ニコラ・フラメル: あの赤い月は “乙女”がいない世界から見た
- ニコラ・フラメル: 僕たちの世界の影なのかも
- かごめ: 私たちの世界の…影?
- ニコラ・フラメル: うん、侵食が完了して 僕たちの世界が消滅したら
- ニコラ・フラメル: あの赤い月も なくなるんじゃないかなって
- エリザ・ツェリスカ: そんなことにはさせませんわ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: そうです!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトの記憶は 決して消させたりしません!
- トルテ: そうだね! がんばろう!
- かごめ: ところで…その… どうやって箱舟に戻ろう…?
- トルテ: 取材…すればいいんじゃない?
- かごめ: …誰を?
- メリッサ&エリザ: …………
- ―取材記録― メリッサ・ド・ヴィニョル エリザ・ツェリスカ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 「できるなら、今すぐにでも タルトに会いたい… それが私の本当の望みかもしれません」
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 「でも、それは決して適わない… それならば、タルトの想いを継ぐことが 私の生きる道だって思ったんです」
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 「だから私は、これからも戦い続けます タルトが望んだ、平穏な世界が実現するまで」
- エリザ・ツェリスカ: 「タルトに本当の救いが訪れること… わたくしが望むのは、それだけですわ」
- エリザ・ツェリスカ: 「でもタルトは自身の救いなど 望まないでしょう 最後の瞬間まで、他の誰かのためを想い 他の誰かのために死んでいったあの子ならば…」
- エリザ・ツェリスカ: 「だからわたくしは 今を精一杯生き抜いてみせます いつかこの世を去るとき タルトに胸を張って向き合えるように」
- エリザ・ツェリスカ: 「そして、ヨーロッパの安寧のために わたくしもこれだけのことをやってきた、と 堂々と報告できるように…」
- FILENAME: text_515910-14_35Bxz.txt
- 第4章「叛乱」
- ペレネル・フラメル: 全員、揃ったかしら?
- トルテ: うんっ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい!
- ペレネル・フラメル: では、向かいましょう 4冊目の本の中へ
- ニコラ・フラメル: 6冊中の4冊目… そろそろ、変化があるかもね!
- トルテ: また、森…?
- ニコラ・フラメル: でも、さっきとは違う… フランスのどこかだと思う
- ニコラ・フラメル: 踏み固められた道もあるし 人里は近いよ
- エリザ・ツェリスカ: 少し歩きますわよ!
- トルテ: 最初は何をどうしていいか わからなくて不安だったけど…
- トルテ: 何をすればいいか わかってきたよね!
- ペレネル・フラメル: そうね、ただ 解けていない謎もあるわ
- かごめ: それって…?
- ペレネル・フラメル: 誰が“乙女”のいない世界を 望んだのかということよ
- かごめ: あ… そうですよね
- かごめ: 何がきっかけで ふたつの世界が分かれたのかも
- かごめ: まだ、わかってないですし…
- トルテ: あっ!
- トルテ: ここにいるよ!
- トルテ: この世界は、この野営地にいる 誰かの心の中だよ!
- かごめ: また兵隊さんってこと?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: いったい、どの人でしょう…?
- ラ・イル: …………
- トルテ: あの人だよ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様!?
- かごめ&トルテ: ええっ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様…
- ラ・イル: おお、メリッサじゃないか!
- ラ・イル: 今度の戦い… お前も手伝ってくれるのか?
- かごめ: 戦いって…?
- エリザ・ツェリスカ: なるほど、わかりましたわ この軍は…
- エリザ・ツェリスカ: フランス王シャルル7世陛下への 叛乱軍ですわ
- かごめ: ――っ!?
- かごめ: あの、いいんでしょうか…?
- かごめ: メリッサさんとお父さんの ふたりだけにして…
- エリザ・ツェリスカ: 親子ふたりで話をさせましょう
- エリザ・ツェリスカ: 私たちが必要になれば そのうち呼びにくるでしょう
- トルテ: それより、さっきの話… 叛乱軍って…?
- トルテ: “憤怒(ラ・イル)”様って 10年以上前に
- トルテ: 国王シャルル様を戴冠まで 導いた“乙女”の戦友だよね?
- ペレネル・フラメル: そのときの戦友の多くは
- ペレネル・フラメル: 現在のシャルル国王陛下に 不満を持っているようね
- ペレネル・フラメル: ラ・イルの盟友サントライユ アランソン公、バタール…
- ペレネル・フラメル: かつて“乙女”に心酔し ともに戦った戦友たちが
- ペレネル・フラメル: シャルル陛下の息子である ルイ王太子を担ぎ出して
- ペレネル・フラメル: 叛乱を起こしたのよ
- キューブ: 今回は、これまでになく 大規模になりそうだね
- キューブ: このままではイングランドとの 戦争どころじゃなくなるよ
- かごめ: 戦友同士で争ってるって話は 前にも聞いたけど
- かごめ: どうしてそうなったのか よくわからない…かも
- エリザ・ツェリスカ: 理由はいろいろありますわ
- エリザ・ツェリスカ: ひとつには、シャルル陛下の側近 リッシュモン元帥の存在…
- エリザ・ツェリスカ: リッシュモンもタルトの戦友で
- エリザ・ツェリスカ: 軍人としても政治家としても 恐ろしく有能な男ですわ
- エリザ・ツェリスカ: 彼は、イングランドの 組織化された軍に対抗するには
- エリザ・ツェリスカ: 貴族の私兵や傭兵団ではなく
- エリザ・ツェリスカ: 国王直属の常備軍を拡大する 必要があると考えています
- エリザ・ツェリスカ: 昔ながらの騎士の戦いでは
- エリザ・ツェリスカ: イングランドを追い出せないと 知っているのです
- ペレネル・フラメル: …でも、それを進めると 貴族たちの力は削られ
- ペレネル・フラメル: 街道荒らしや略奪で 生計を立てている傭兵崩れも
- ペレネル・フラメル: 好き勝手ができなくなる…
- エリザ・ツェリスカ: だからリッシュモンには 敵も多いのですわ
- エリザ・ツェリスカ: …それに加えて、シャルル陛下に 怨恨を持つ将も多いはず
- トルテ: どうして…?
- エリザ・ツェリスカ: タルトが捕虜になったとき シャルル陛下が身代金を支払えば
- エリザ・ツェリスカ: タルトは 解放されたかもしれないのです
- かごめ: あ…
- ペレネル・フラメル: でも、シャルル国王陛下は “乙女”を見捨てた…
- ペレネル・フラメル: それが“乙女”自身が望んだ 最期だったのだとしても
- ペレネル・フラメル: “乙女”に心酔する彼らは そうは考えないわ
- かごめ: “乙女”ジャンヌがいなくなって みんながバラバラに…
- ニコラ・フラメル: “乙女”がこのことを知ったら とても悲しむだろうね
- トルテ: あれっ?
- トルテ: でも、みんなは“乙女”のことを 忘れちゃってるはずだよね?
- エリザ・ツェリスカ: …ええ、だからもう どうして叛乱をくわだてたのか
- エリザ・ツェリスカ: 自分でもわからなくなっている はずですわ
- エリザ・ツェリスカ: …おそらくは、ラ・イルも
- メリッサ・ド・ヴィニョル: エリザ…聞こえますか? みんなと来てください
- エリザ・ツェリスカ: いいでしょう みんな、行きますわよ!
- FILENAME: text_515910-15_35Bxz.txt
- メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様、どうしてわかって いただけないんですか!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: シャルル様に権限を集め
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 治安を回復して、フランスから イングランドを追い出す…!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: リッシュモン元帥に みんなが協力することが
- メリッサ・ド・ヴィニョル: フランスの平和への 近道なんですよ!
- ラ・イル: シャルル様は信用ならねえ…!
- ラ・イル: 身代金をケチられたせいで 俺もサントライユも
- ラ・イル: 危うく見殺しにされる ところだったんだぞ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: だからって、フランス人同士で 内乱なんてやってたら…
- かごめ: ええっ!?
- トルテ: めちゃくちゃ喧嘩してる!
- キューブ: どちらも譲りそうもないね
- ペレネル・フラメル: 似た者親子ですね
- ニコラ・フラメル: ど、どうするの…?
- エリザ・ツェリスカ: もうすぐ終わりますわ
- パンッ!
- ラ・イル: …………
- かごめ&トルテ: …………
- ニコラ・フラメル: …暴力で解決したね
- ペレネル・フラメル: 話しあった意味は あったのかしら…?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: お見苦しいところを お見せしてしまって…
- ラ・イル: …………
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …お父様はタルトのことを 忘れてらっしゃいました
- メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様もサントライユ様も
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトを救い出そうと 何度もルーアンを攻撃して
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 捕虜になったのだって そのせいだったのに…
- かごめ: “乙女”ジャンヌを心から 大切にしていたんですね
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様が目を覚ましたら
- メリッサ・ド・ヴィニョル: トルテちゃんは 目を覗き込んであげてください
- トルテ: あ、うん…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: そうすればきっと 思い出してくれると思うから
- ラ・イル: …うぅ…ううーん…
- トルテ: あっ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: お願いします
- ラ・イル: ―ラ・イル― …………? なんだ、この記憶は
- ラ・イル: ―ラ・イル― あの嬢ちゃんは…確か…
- ラ・イル: ―ラ・イル― “乙女”…!
- ラ・イル: ―ラ・イル― そうだ…死にかけてた俺とメリッサを “乙女”が身を挺して助けてくれて
- ラ・イル: ―ラ・イル― そのせいで、嬢ちゃんは 危うく命を落としかけて…
- ラ・イル: ―ラ・イル― …そうだ、ルーアンで 最後に会ったときだって
- ラ・イル: ―ラ・イル― 嬢ちゃんは俺たちの安全と引き換えに 自分の命を差しだしたんだ
- ガシャガシャッ
- タルト: …私を捕らえなさい
- ミヌゥ: なっ!?
- タルト: あなたが一番憎いのは 私でしょう?
- タルト: 私はどうなっても構いません
- タルト: その代わり
- タルト: みんなには 手を出さないで下さい
- ラ・イル: …メリッサ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …思い出しました?
- ラ・イル: ああ…何もかもな
- ラ・イル: どうして忘れちまってたんだ 嬢ちゃんのことを…
- ラ・イル: 俺たち戦友のために 何度も身を投げ出してくれて
- ラ・イル: 最後まで 他の誰かのことだけを考えていた
- ラ・イル: “乙女”を絶対に救出しようって
- ラ・イル: サントライユと一緒に ルーアンを攻めて…
- ラ・イル: 結局、助けられなくて…
- ラ・イル: ………… …………
- かごめ&トルテ: …………
- かごめ: (あとに残された人たちも みんな、悲しんで…)
- ラ・イル: シャルル様を恨んだのは
- ラ・イル: 自分たちが見殺しにされたせいと 思い込んでたが…本当は…
- ラ・イル: “乙女”を見殺しにされたのが 許せなかったんだ…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …お父様、聞いてください
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトがフランスのために 立ち上がったのは
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 目の前で妹を失ったからなんです
- タルト: ―タルト― 同じような悲劇を もう誰にもあわせたくありません
- タルト: ―タルト― だから私… 魔法少女になる
- キューブ: ―キューブ― そうか、タルト… キミは何を望むんだい?
- タルト: ―タルト― フランスに 光をもたらす力を!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: あの頃は、正式な王が不在で 国内は荒れ放題でしたけど
- メリッサ・ド・ヴィニョル: いまはリッシュモン元帥が シャルル様を支えて
- メリッサ・ド・ヴィニョル: フランスに平穏な日々を 取り戻そうとしてらっしゃいます
- メリッサ・ド・ヴィニョル: あの方もまたタルトの意志を 継ごうとしているんです
- メリッサ・ド・ヴィニョル: だから今は、みんなで一緒に フランスを…
- ラ・イル: …大きくなったな、メリッサ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: えっ…?
- ラ・イル: 俺ひとり刃を収めたとこで 簡単にゃコトは収まらないだろう
- ラ・イル: 人は情で動くモンだからな
- ラ・イル: だけど、もう忘れたりしないぜ “乙女”のことを…
- ラ・イル: そう、絶対にな!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: お父様…!
- エリザ・ツェリスカ: ふっ…
- トルテ: よかった…!
- ラ・イル: にしても、ちっちゃいお嬢ちゃん “乙女”に本当に似てるな…
- トルテ: えへへ…よく言われます
- ペレネル・フラメル: …無事に記録できたかしら? かごめ嬢
- かごめ: はい…!
- かごめ: えっ、ここって…?
- ペレネル・フラメル: …………!
- イザボー: …死になさい
- キューブ: あれは… イザボー・ド・バヴィエール!
- メリッサ&エリザ: …………
- ペレネル・フラメル: みなさん、下がってください
- FILENAME: text_515910-16_35Bxz.txt
- ブゥン
- ペレネル・フラメル: …………
- イザボー: ふん、たいした防御魔法ね
- イザボー: 私の攻撃を浴びても 傷ひとつつかないなんて
- ペレネル・フラメル: ………… …………
- イザボー: 私は、はるか遠い未来を 覗き見たわ
- イザボー: この先、私の計画を 台無しにするのは
- イザボー: “乙女(ラ・ピュセル)”と 呼ばれる者だけかと
- イザボー: 思っていたけれど…
- イザボー: 邪魔者は他にもいたようね
- イザボー: 今日はここまでにしてあげる
- イザボー: ふふ… またお会いしましょう
- キューブ: …………
- エリザ・ツェリスカ: 箱舟に戻ったようですけれど… さっきの妙な空間は…?
- エリザ・ツェリスカ: いえ、それより さっき戦った相手…
- エリザ・ツェリスカ: あれは 売国妃イザボーでしたわよね!?
- キューブ: うん、間違いない
- メリッサ・ド・ヴィニョル: でも…イザボーは タルトが討ったはず
- ペレネル・フラメル: それに、イザボーのあの姿は…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい、私たちが 戦ったときとは違う
- メリッサ・ド・ヴィニョル: “魔法少女”の姿でした
- キューブ: うん
- キューブ: あの姿は、まだ魔女となって 大いなる変貌を遂げる前…
- キューブ: それどころか、ミヌゥたちが 誕生するよりずっと前
- キューブ: ひとりの魔法少女だった頃の 若き日のイザボーだ
- ペレネル&ニコラ: …………!
- メリッサ&エリザ: ――っ!?
- エリザ・ツェリスカ: …なんですって!?
- A Suivre(つづく)...
- [Part 1 end]
- -----
- (Part 2 start)
- FILENAME: text_515920-1_BK8zF.txt
- 第2部
- 第5章「残された者たち」
- キューブ: あの姿は、まだ魔女となって 大いなる変貌を遂げる前…
- キューブ: それどころか、ミヌゥたちが 誕生するよりずっと前
- キューブ: ひとりの魔法少女だった頃の 若き日のイザボーだ
- ペレネル&ニコラ: …………!
- メリッサ&エリザ: ――っ!?
- エリザ・ツェリスカ: …なんですって!?
- キューブ: おそらく40年ほど前… 赤い月が現れた頃の彼女が
- キューブ: ボクたちの動きを妨害するために 襲撃してきたんだ
- キューブ: 箱舟に残る本はあと2冊… 形勢はこちらに傾いているからね
- トルテ: キューブには、何かわかったの?
- キューブ: うん、何が起きているのか これではっきりしたよ
- キューブ: 40年前の1400年頃、世界は ふたつに分岐した
- キューブ: いずれタルトが誕生する世界と 誕生しない世界だ
- キューブ: 世界がふたつに分かれた原因は イザボーが未来を覗き見たことだ
- かごめ: あ…
- イザボー: 私は、はるか遠い未来を 覗き見たわ
- イザボー: この先、私の計画を 台無しにするのは
- イザボー: “乙女(ラ・ピュセル)”と 呼ばれる者だけかと
- イザボー: 思っていたけれど…
- かごめ: はるか遠い未来って 私のいた未来…とか?
- ペレネル・フラメル: そうね…
- ペレネル・フラメル: どのくらい先の未来かは 断定できないけれど
- ペレネル・フラメル: 「フランスは ひとりの女によって滅び」
- ペレネル・フラメル: 「ひとりの少女によって 救われる」
- ペレネル・フラメル: この予言の通り
- ペレネル・フラメル: 自身の野望が “乙女”に打ち砕かれ
- ペレネル・フラメル: “乙女”ジャンヌの伝説が
- ペレネル・フラメル: かごめ嬢の時代にまで 語り継がれていることを知れば
- ペレネル・フラメル: “乙女”が誕生しないように 立ち振る舞うこともできる…
- トルテ: その結果、枝分かれした “乙女”が存在しない世界が
- トルテ: 赤い月の世界ってこと?
- キューブ: そうだろうね
- ニコラ・フラメル: 世界はふたつの可能性のあいだで 揺れ動いているんだ
- ニコラ・フラメル: 赤い月の世界の侵食が強まれば “乙女”の記憶は消えていくし
- ニコラ・フラメル: 僕たちが“乙女”の存在を 引き留めることができれば
- ニコラ・フラメル: もとの世界は帰ってくる…
- キューブ: おおむねニコラの言う通りだ
- キューブ: ボクの話が聞こえなくても
- キューブ: 彼には正しく 洞察できているようだね
- キューブ: タルトが存在せず、誰にも イザボーの野望を止められない
- キューブ: それが、赤い月の世界だ
- ペレネル・フラメル: 現に、かごめ嬢の時代には 人類の影が消え失せていたわ
- キューブ: イザボーの野望の 行き着く先としては
- キューブ: 妥当すぎる終着点だよ
- トルテ: そんな恐ろしいことを 軽く言わないで!
- FILENAME: text_515920-2_BK8zF.txt
- エリザ・ツェリスカ: わたくしたちの側にも 好材料はありますわ
- エリザ・ツェリスカ: ここにある6冊のうち すでに4冊を取材して記録した
- エリザ・ツェリスカ: イザボーみずから 襲撃してきたのは
- エリザ・ツェリスカ: わたくしたちの行動に危機感を 持ったからに違いありません
- かごめ: ときどき誰かに見られてるような 感じがしてたんだけど…
- かごめ: え…?
- トルテ: どうしたの?
- ペレネル・フラメル: 私も視線を感じていたわ おそらく監視されていたのよ
- ペレネル・フラメル: この“想いの箱舟”は 魔法の書物の中にある世界…
- ペレネル・フラメル: あのイザボーは時を超えて
- ペレネル・フラメル: 箱舟に干渉する手段を 持っているようね
- キューブ: イザボーは他の魔法少女の願いを 自分のために利用している
- キューブ: そのくらいのことができても なんの不思議もないね
- メリッサ・ド・ヴィニョル: その力を使って、わざわざ 妨害してきたということは
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 私たちの“箱舟”での行動が 成果を上げているということです
- エリザ・ツェリスカ: ラ・イルたちが起こした叛乱は かなり大規模なものでした
- エリザ・ツェリスカ: 完全に鎮火することは 難しいかもしれませんが…
- エリザ・ツェリスカ: その戦火を最小限に留められれば 世界は大きく変わりますわ
- ペレネル・フラメル: 箱舟の本は、あと2冊…
- ペレネル・フラメル: そのためにも、かごめ嬢とともに
- ペレネル・フラメル: “乙女”の記憶を 記録し続けましょう
- かごめ&トルテ: うん…!
- エリザ・ツェリスカ: では…次の本に
- エリザ・ツェリスカ: まいりますわよ!
- かごめ: ここは…?
- トルテ: お城の中に見えるね
- むっ…?
- おまえたち、何者だ!
- かごめ: ――っ!?
- トルテ: 逃げるよ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はぁ…はぁ…
- エリザ・ツェリスカ: つられて逃げてしまいましたが
- エリザ・ツェリスカ: わたくしは別に、身分の 怪しい者ではありませんし
- エリザ・ツェリスカ: 堂々と名乗れば よかったのではないかしら?
- ペレネル・フラメル: 神聖ローマ帝国の王族… 確かにこの上なく高貴なご身分ね
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 味方の城ならいいんですけど そうじゃなかったら…
- ペレネル・フラメル: とりあえず、みなさんの姿を 見えないようにしましょう
- かごめ: えっ、できるんですか?
- ペレネル・フラメル: はい、この魔法石で…
- ペレネル・フラメル: これで怪しまれずに済みます
- ニコラ・フラメル: あ…! ここ、ロッシュのお城だ
- トルテ: 知ってるの?
- ニコラ・フラメル: うん、ずいぶん前だけど シャルル国王陛下に
- ニコラ・フラメル: 書物の装丁を 依頼されたことがあって
- ペレネル・フラメル: そんなこともあったわね
- ペレネル・フラメル: ふたりで製本業を営んでいた縁で
- ペレネル・フラメル: わざわざ遠いロッシュまで 納品に向かったことが…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 確か、シャルル様の お気に入りの住まいですよね
- トルテ: じゃあ、5冊目のこの本は シャルル様の心の中なのかな
- エリザ・ツェリスカ: いずれはっきりしますわ
- シャルル7世: …………
- トルテ: いたよ、シャルル様だ!
- トルテ: …………
- シャルル7世: はぁ…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: おひとりだけですね
- かごめ: …チャンスかも! でも、話を聞いてもらえるかな…
- エリザ・ツェリスカ: わたくしが話をしますわ
- エリザ・ツェリスカ: あなた方も姿を見せて 従者のフリでもしていなさい
- かごめ: は、はい…!
- シャルル7世: おや…? 客人かな
- エリザ・ツェリスカ: おひさしぶりですわ シャルル国王陛下
- シャルル7世: おお! そなたは神聖ローマ帝国の…
- エリザ・ツェリスカ: ええ、ドラゴン騎士団がひとり エリザ・ツェリスカ
- エリザ・ツェリスカ: “乙女(ラ・ピュセル)”の 戦友にして盟友ですわ
- シャルル7世: …“乙女”…とは?
- かごめ: (やっぱり… 忘れちゃってるんだ…)
- FILENAME: text_515920-3_BK8zF.txt
- かごめ: シャルル7世。 この時代の、フランス国王。 “乙女”ジャンヌによって戴冠式へと導かれ 正式な王様と認められた人。
- かごめ: メリッサさんのお父さんは 王様の乱心で、“乙女”は見殺しにされたって 怒っていたけど…。
- かごめ: フランスをひとつにまとめるためには 絶対に必要な人なんだって。
- かごめ: だけど、間近に見たシャルル7世は 何かにおびえてるみたいに ずっとびくびくしていて…。
- シャルル7世: …余は悩んでおるのだ
- シャルル7世: リッシュモンの言う通り 貴族たちの反発を押し切って
- シャルル7世: 軍政改革を進めてよいものか…
- エリザ・ツェリスカ: 初めて会ったとき あの男は傑物と直観しましたわ
- エリザ・ツェリスカ: 加えて、いまどき珍しいほどの 忠義の人…
- エリザ・ツェリスカ: リッシュモンにまかせるのが 平和への近道ですわ
- シャルル7世: ああ…だが 余は怖いのだ
- シャルル7世: 母上が… あの女…イザボーが…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: ――っ!?
- ペレネル・フラメル: (イザボー・ド・バヴィエールは シャルル国王陛下の実の母…)
- ペレネル・フラメル: (シャルル陛下はイザボーと 何度も敵対して)
- ペレネル・フラメル: (殺されかけたこともある…)
- エリザ・ツェリスカ: でも、イザボーはもう この世に存在しません
- エリザ・ツェリスカ: 現在起きているのは 人と人の戦争…
- エリザ・ツェリスカ: 勝敗は理不尽な魔法ではなく 人心と組織の力で決します
- エリザ・ツェリスカ: イングランド陣営にはもう あのような怪物はおりませんわ
- シャルル7世: わかっている…わかっているのだ それでも、夢に見るのだ…
- シャルル7世: イングランドを追い出して 勝利を手にしようとすると
- シャルル7世: あの女が甦って 余を焼き殺す夢を…
- かごめ: (イザボーさんのことが… 本当に怖いんだね…)
- エリザ・ツェリスカ: …………
- エリザ・ツェリスカ: (…焼き殺される?)
- エリザ・ツェリスカ: (確かにイザボーが そのような魔法を使うのを)
- エリザ・ツェリスカ: (見たことがありますが)
- エリザ・ツェリスカ: (…王が恐れているのは 本当にイザボーなのでしょうか)
- タルト: ………… …………
- エリザ・ツェリスカ: …………
- エリザ・ツェリスカ: …国王陛下
- シャルル7世: …なんだ?
- エリザ・ツェリスカ: 悪夢によく効く まじないを知っておりますわ
- エリザ・ツェリスカ: この子の目をご覧ください
- シャルル7世: …こうか?
- シャルル王太子: 「聞け!」
- シャルル王太子: 「皆の者!!」
- シャルル王太子: この者 真の乙女
- シャルル王太子: 真の神の使いなり!!
- ジル・ド・レ: あれは…
- バタール: まさか!?
- バタールの声: 王太子自ら 臣下を出迎えるとは…
- タルト: 王太子様
- タルト: オルレアンにおきまして 私たちフランス軍は…
- ガシッ
- タルト: ――っ!?
- シャルル王太子: 良い! すでに聞き及んでいる
- タルト: …………
- シャルル王太子: 本当に… 良くやってくれた、“乙女”
- ジル・ド・レ: …聖油を
- 「万歳(ノエル)!」
- タルト: 王太子様… いえ、シャルル陛下
- タルト: ご即位 おめでとうございます
- シャルル7世: …“乙女”…
- トルテ: 思い出してくれたよ…!
- かごめ: うん…
- シャルル7世: “乙女”がオルレアンを取り返し
- シャルル7世: 我が頭上に真の王冠を 授けてくれたのだ
- シャルル7世: なのに…余は “乙女”が囚われたときも…
- シャルル7世: 何もできず…むざむざと…
- シャルル7世: それどころか…その存在すら 忘れてしまっていたとは…
- エリザ・ツェリスカ: 国王陛下…
- シャルル7世: …なんだ
- エリザ・ツェリスカ: あなたが本当に恐れていたのは
- エリザ・ツェリスカ: お母上ではなく ご自身の罪悪感なのでは…?
- エリザ・ツェリスカ: 囚われたタルトを… “乙女”を救うことができず
- エリザ・ツェリスカ: 見殺しにしてしまったという 罪の意識…
- エリザ・ツェリスカ: それが悪夢を見せていたのでは ありませんか…?
- シャルル7世: ああ…
- シャルル7世: …そうかもしれぬ
- シャルル7世: “乙女”は神の使いであり 真の聖女であった
- シャルル7世: その“乙女”が…異端者として
- シャルル7世: 人を惑わす魔女として 処刑されるという欺瞞…
- シャルル7世: 余は、決して 見過ごしてはならなかったのだ
- メリッサ&エリザ: …………
- かごめ&トルテ: …………
- シャルル7世: せめて“乙女”の… “乙女”の名誉を回復せねば…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …………!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: では教会で… タルトの裁判のやり直しを?
- シャルル7世: 一足飛びにそこまで進めることは 世俗の王である余の手に余る
- シャルル7世: それに…
- シャルル7世: 異端審問が行われたルーアンは イングランドの手にあり
- シャルル7世: 今は、裁判の正当性を 調査することすら適わない
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …そう…ですよね
- シャルル7世: しかし… ルーアンを取り戻した暁には…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: シャルル様…!
- シャルル7世: ああ、約束する “乙女”の名誉回復のために
- シャルル7世: 力を尽くすことを
- トルテ: よかったね、メリッサさん!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…!
- かごめ: 敬虔なメリッサさんは、見ているこっちが うれしくなるくらいに喜んでいた。
- かごめ: エリザさんは、それでジャンヌさんが 救われるわけじゃないと言っていたけど… 残された家族や戦友たちの救いになるなら、って 少しうれしそうだった。
- かごめ: 心の中の世界で起きた、王様の心の変化は 現実の15世紀半ばの世界を 少しずつ、いい方向に変えてくれるはず。
- かごめ: そして、私は思ったの。 “乙女”ジャンヌの悲劇は 残された人たちの人生も歪めてしまっていて…。 それは本当に、悲しいことだって。
- FILENAME: text_515920-4_BK8zF.txt
- メリッサ・ド・ヴィニョル: リッシュモン様はかつて 口ぐせのように仰っていました
- メリッサ・ド・ヴィニョル: “乙女”の意志は 決して消させない、と…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: あの方を信頼して事を進めれば
- メリッサ・ド・ヴィニョル: シャルル様はイングランドから フランスを取り返せます…!
- シャルル7世: …そうだな だが…
- エリザ・ツェリスカ: 何か、心配事でも?
- シャルル7世: ああ 我が息子、ルイ王太子のことだ
- シャルル7世: ルイは玉座への野心に 憑かれている
- シャルル7世: 何かに突き動かされるように 余への叛乱を起こしている…
- シャルル7世: 余に不満を持つ貴族たちに 利用されているだけかと思ったが
- エリザ・ツェリスカ: そうではない、と…?
- シャルル7世: ああ、あれは普通ではない 正気とは思えないのだ
- シャルル7世: 先ほどまでの余と同じように
- かごめ&トルテ: …………!
- トルテ: えっと…ルイ王太子様を 正気に戻さないかぎり…
- トルテ: イングランドとの戦いに 勝利はないってこと…?
- ペレネル・フラメル: そうね
- ペレネル・フラメル: 王太子が貴族たちに担がれて 大規模な叛乱を起こす…
- ペレネル・フラメル: こんな危機が続くようでは
- ペレネル・フラメル: タルトが望んだ光は フランスにもたらされません
- かごめ: ルイ王太子を止めれば
- かごめ: 侵食されている世界も もとに戻るの…?
- キューブ: ラ・イルが考えを変えたことで
- キューブ: イザボーが 焦りを見せるほどの変化が起きた
- キューブ: 未来を左右する危機的な状況で ルイ王太子も矛先を収めるなら
- キューブ: 世界が大きく変わる きっかけになりうるだろうね
- トルテ: 箱舟に残った最後の1冊って… ルイ王太子様の本かも!
- ニコラ・フラメル: うん、そうだといいね
- ペレネル・フラメル: ええ
- トルテ: あっ…ごめんなさい シャルル様
- トルテ: よくわからない話をしちゃって…
- シャルル7世: いや、かまわんが…
- シャルル7世: しかし、そなたは “乙女”に実によく似ているな
- トルテ: そうみたいです!
- トルテ: …それじゃかごめちゃん!
- トルテ: 最後の1冊の中を取材して 世界をもとに戻していこう!
- かごめ: あ、うん…
- メリッサ&エリザ: ………… …………
- トルテ: あれっ…? 何か気になるの?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 世界がもとに戻るということは
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトに、また同じ苦しみを 味わわせることになるのでは…と
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 思えてきてしまって…
- トルテ: あ…
- かごめ: …そうだよね
- ペレネル・フラメル: エリザ嬢も メリッサと同じですか?
- エリザ・ツェリスカ: ええ…でも、このまま 放っておくというわけにも…
- かごめ: 赤い月の世界の侵食が進めば
- かごめ: “乙女”自体が 存在しなかったことになる…
- トルテ: それは…あんまりだよ! 生まれない方がよかったなんて!
- キューブ: それに、その先に待つのは 人類のいない未来だからね
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 他に道がないことは わかっているんです…
- エリザ・ツェリスカ: ええ…仮にどちらかを 選べるとしたら
- エリザ・ツェリスカ: タルトはもういちど同じ生を 生きることを選ぶでしょう
- メリッサ・ド・ヴィニョル: でも…
- エリザ・ツェリスカ: …………
- ペレネル&ニコラ: …………
- かごめ&キューブ: ………… …………
- トルテ: ふたりには、選べないと思う つらすぎる思い出だから
- トルテ: …だから、わたしが選ぶよ
- かごめ: えっ…?
- メリッサ&エリザ: …………
- トルテ: わたしね…ここに来る前は ううん、来てからも
- トルテ: 自分と同じ名前で、顔もよく似た “乙女”のことを知りたくて
- トルテ: ただ、それだけの気持ちで 首を突っ込んできたけど
- トルテ: …でも、今は違う
- トルテ: 次はわたしたちが “乙女”の想いを受け継いで
- トルテ: それを実現しなきゃ いけないんだって思う
- トルテ: だって“乙女”は… タルトさんは
- トルテ: 誰かに歩いてほしくて 道を切り拓いたんだから
- かごめ: あ…
- トルテ: 必死の想いで作った道を 誰も歩いてくれなかったら
- トルテ: やっぱり寂しいと思うんだ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …………
- エリザ・ツェリスカ: …そうですわね
- トルテ: だからメリッサさんたちが 選べないんだったら
- トルテ: わたしのせいでいいよ
- トルテ: もし、このまま進んでいって その道が間違っていたとしたら
- トルテ: 全部、わたしのせい
- トルテ: …それでどうかな?
- エリザ・ツェリスカ: …生意気ですわよ?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: ふふっ
- かごめ: 責任重大だね…
- トルテ: 大丈夫 絶対にうまくいくから!
- トルテ: (そう…絶対に)
- かごめ: …………?
- かごめ: ジャンヌさんの取材がしたかった私も 好奇心で箱舟に来たトルテちゃんも 最初は、どこか傍観者っていうか… お客さんみたいな気分だったと思う。
- かごめ: でも、いつのまにか トルテちゃんは変わっていた。 傍観者じゃなくて当事者になる覚悟を口にした。
- かごめ: そして私だって 魔法のペンで記録することを通じて 本当はもう、当事者になってしまっている… そう気づいたとき、私は怖くなった。
- かごめ: 巻き込まれたから、たまたまそこにいたから… そんな理由じゃなくて 自分の意志で、取材をして、記録する。 何かを変えるために、当事者として、記録する。
- かごめ: いつか、遠くない将来 私がそうしなきゃいけなくなったとき… トルテちゃんみたいに、当事者になる覚悟は 私にあるのかなって…。
- ニコラ・フラメル: 記録は終わった?
- かごめ: …はい…!
- かごめ: ――っ!?
- かごめ: ここって…!
- トルテ: …今度はさっきの わけわかんない空間!
- エリザ・ツェリスカ: 何がどうなってるんですの!?
- イザボー: また会ったわね
- かごめ: …………!
- FILENAME: text_515920-5_BK8zF.txt
- 第6章「邂逅と決意」
- エリザ・ツェリスカ: イザボー・ド・バヴィエール…!
- イザボー: ふふ…
- シャルル7世: は…母上…!?
- トルテ: シャルル様も巻き込まれてる!?
- ペレネル・フラメル: キューブ、さっきも現れた この空間はいったいなんなのです
- キューブ: 時空の歪みが極大に達してる…
- キューブ: タイムパラドクスによって 壊れた時空間みたいだ
- かごめ: タイムパラドクス…!?
- キューブ: うん、トルテたちの行動で 本来の世界が息を吹き返し
- キューブ: タルトの誕生する世界と
- キューブ: 誕生しない世界の バランスが拮抗した
- キューブ: つまり、矛盾する事象が 同時に存在する状態になったんだ
- かごめ: 時空の歪み…? タイムパラドクス…?
- かごめ: ――っ!?
- かごめ: ここって…!
- かごめ: 原因は… 株分けのミラーズ…?
- トルテ: へっ?
- キューブ: …どういう意味だい?
- かごめ: さっき、鏡がいっぱいある場所が 見えたよね?
- かごめ: あそこに未来と過去をつなぐ
- かごめ: タイムトンネルみたいなものが あるの!
- かごめ: それで私の時代と1400年頃が つながっちゃったんだと思う!
- パラ…
- かごめ: (灯花ちゃんの話…)
- かごめ: (どこかに…メモしてたはず あっ、これだ!)
- かごめ: 過去が変わって… 世界がいくつかに分かれると
- かごめ: 徐々に歴史が 変更されちゃうかもって…!
- キューブ: そうか…イザボーがそれを通じて 未来を覗き見たことで
- キューブ: 世界がふたつに分岐して…
- キューブ: ふたつの世界が拮抗したことで パラドクスが起きたんだ
- エリザ・ツェリスカ: で、結局 何をすればいいんです?
- かごめ: さっきの場所に行って 鏡を壊せばいいはず…
- エリザ・ツェリスカ: どうやって行くんです?
- キューブ: さっきと同じ状況を再現すれば 可能性はある
- キューブ: 残るひとりの心の中に飛び込んで
- キューブ: 世界のバランスを こちらに引き寄せるんだ
- トルテ: 最後の1冊は… どこだろ?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 本は見あたりませんけど 心の入口を見つければ…
- トルテ: …あれは?
- トルテ: …………!
- トルテ: 間違いない、あそこだよ!
- イザボーの声: …そういうことですか
- イザボー: ふっ
- ブゥン
- ペレネル・フラメル: …………
- イザボー: 興味深いお話でしたので つい聞き入ってしまったわ
- イザボー: あなた方は私にとっては 未来を生きる者たちで
- イザボー: 私があの鏡張りの結界を 知ったことで変わった歴史を
- イザボー: もとの状態に戻そうとしている… そして、その方法を見つけた
- イザボー: そういうことよね、キューブ?
- キューブ: ………… …………
- イザボー: あら?…だんまり? つれないのね
- イザボー: いいわ、聞くべき話はもう 残っていないことだし
- イザボー: あとは皆殺しにするだけ…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …ふたりはあの入口に 飛び込んでください
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 私とエリザがイザボーたちを 引きつけます
- トルテ: うん…
- かごめ: わかりました
- エリザ・ツェリスカ: 他の方はペレネルのうしろに …シャルル国王陛下も
- シャルル7世: わ、わかった
- シャルル7世: そなたたち…もしも会えたなら どうかルイを頼む
- シャルル7世: 余も生きて戻り
- シャルル7世: “乙女”の名誉回復という約束を 必ず果たす
- かごめ: はい…!
- トルテ: じゃあ、いくよ!
- イザボー: そうはさせないわ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: それは…
- エリザ・ツェリスカ: こっちのセリフですわ!
- イザボー: ぐっ…!!
- イザボー: この者たちを… 血の海に沈めなさい!
- エリザ・ツェリスカ: ―エリザ― 囮だなんて、おたがい無茶したものですわね 相手はあのイザボーですわよ?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: ―メリッサ― 予定通りです! これでふたりを送り出せるなら…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: ―メリッサ― それに、以前の私たちとは違うんです
- メリッサ・ド・ヴィニョル: ―メリッサ― あれから10年近くのあいだ ヨーロッパを守ってきたんですから…!
- エリザ・ツェリスカ: ―エリザ― ふっ…そうでしたわね ひと味違うところを、見せてあげますわ
- トルテ: ここだよ!
- かごめ: はぐれないように 手をつないで行こう!
- トルテ&かごめ: …せーのっ!
- トルテ: ―トルテ― 髪の毛が反応してる! こっちだよ、かごめちゃん!
- かごめ: ―かごめ― えっ、あっ… ちょっ、ちょっと待って!
- トルテ: ―トルテ― ふふっ、待たない! 待たないし、手も放さない!
- かごめ: ―かごめ― それじゃ… こ、転んじゃうよ…!
- トルテ: ―トルテ― 速く走ればいいよ!
- トルテ: ―トルテ― 速く走るコツはね…迷わないこと! 前だけ向いて、まっすぐ走るの
- かごめ: (迷わないこと…)
- かごめ: (前だけ向いて まっすぐ走ること)
- かごめ: (当事者になる 覚悟を決めたんだね)
- かごめ: (私も… 負けないように!)
- ドサッ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はぁ…はぁ…
- エリザ・ツェリスカ: お人形さんたちが てこずらせてくれましたわね
- エリザ・ツェリスカ: くっ…!
- イザボー: あら、もう息切れかしら?
- イザボー: お楽しみはこれからでしょう?
- イザボー: フフフッ
- イザボー: さあ、いらっしゃい たっぷりと可愛がってあげるわ
- FILENAME: text_515920-6_BK8zF.txt
- ざわ…
- かごめ: …こういうの ものものしい…っていうのかな?
- トルテ: 兵隊さんがいっぱい集まってるね
- ランスへの進軍はまだか!
- 次はオルレアンの防衛を 固めるって話もあるぞ
- 噂の“乙女(ラ・ピュセル)”が 取り戻したオルレアンか…
- 俺たちも奇跡の乙女と 一緒に戦いたいな!
- かごめ: え…オルレアン? “乙女”…?
- かごめ: ジャンヌさんがオルレアンを 解放したのって、確か…
- トルテ: 1429年! わたしが生まれるより前だよ
- かごめ: まるでこのあいだの話みたいに 聞こえたけど…
- トルテ: ここは心の中の世界だから…
- トルテ: 最後の1冊の主の心は その頃のままなのかもしれないね
- トルテ: あ…
- ???: ………… …………
- トルテ: …………!
- トルテ: この人だ…!
- ???: 私は…
- ???: …………
- ???: …誰なのだ?
- かごめ: え… 記憶を失ってる?
- トルテ: 何も思い出せないんですか?
- ???: …わからない…
- ???: 私はただ… 父が許せなかった
- ???: 私が王であったなら… あの方を…あんな風には…!
- ???: ただ…そう思い続けて…
- かごめ&トルテ: …………
- ペレネルの声: その方は、ルイ王太子様よ
- ニコラ・フラメル: 記憶を失って 昔の夢を見ているみたいだね
- トルテ: お父さん、お母さん…
- かごめ: メリッサさんとエリザさんは?
- キューブ: 彼女たちなら心配ない
- ニコラ・フラメル: イザボーたちを撃退したら 想いの箱舟に戻れたんだ
- ニコラ・フラメル: シャルル陛下を もとの世界に送り届けたら
- ニコラ・フラメル: こっちに向かうって
- ペレネル・フラメル: …ここもロッシュ城のようね
- トルテ: 10年以上前…オルレアンが 解放された頃みたい
- ペレネル・フラメル: 奇跡の乙女の噂を聞いて
- ペレネル・フラメル: 兵たちが各地から 続々と集まりはじめた時期ね
- かごめ: それでこんなに騒がしいんだ…
- ルイ王太子: ロッシュ城…
- ルイ王太子: 城の大広間に向かわねば…
- かごめ: 追いかけましょう!
- ペレネル・フラメル: そうね
- ペレネル・フラメル: 怪しまれないように みんなの姿を見えなくして…
- ルイ王太子: …………
- かごめ: お城の中、誰もいませんね…
- ニコラ・フラメル: 夢の中だからかな…?
- ペレネル・フラメル: オルレアン解放後のロッシュ城…
- ペレネル・フラメル: 即位する前のシャルル様が ランスへの進軍を決めた場所ね
- ペレネル・フラメル: 確か“乙女”も 一時滞在していたはず…
- ルイ王太子: あの方と… もう一度、あの方と会いたい…
- ペレネル・フラメル: …………
- ペレネル・フラメル: トルテ、ルイ王太子の記憶を 戻してさしあげて
- トルテ: わかった、姿を見せるね!
- トルテ: ルイ王太子様! わたしの目を見て!
- ルイ王太子: ん…?
- ルイ王太子: …………!
- ルイ王子: …………
- トルテ: ルイ様が!?
- ニコラ・フラメル: 当時の姿に戻ったんだね
- ニコラ・フラメル: まだ「王太子」でなく 「王子」だった頃に…
- ルイ王子: いかなきゃ…
- ルイ王子: あの部屋に、“乙女”様が…
- かごめ&トルテ: ――っ!?
- FILENAME: text_515920-7_BK8zF.txt
- ルイ王子: いかなきゃ…
- ルイ王子: あの部屋に、“乙女”様が…
- かごめ&トルテ: ――っ!?
- トルテ: いるの…? この先に…?
- トルテ: あの…“乙女”ジャンヌが
- ペレネル・フラメル: ふたりはまだ 会ったことがないのよね
- かごめ: はい…
- ニコラ・フラメル: あ… 何か聞こえない?
- ニコラ・フラメル: 大広間の方から…
- タルトの声: …ですから ここは一刻も早く
- タルトの声: ランスへ向かうべきだと思います
- キューブ: タルトの声だ
- トルテ: ――っ!?
- ルイ王子: “乙女”様…!
- かごめ: あっ…
- ニコラ・フラメル: 追いかけよう!
- ペレネル・フラメル: …そうですね こちらの姿は見えませんし
- タルト: 王太子様がランスの大聖堂で 国王として戴冠される
- タルト: これこそが、今のフランスの 人々にとって必要なことです
- ジル・ド・レ: 国王として聖別を受ければ
- ジル・ド・レ: イングランドを支持する勢いは 徐々に弱まっていくはずです
- シャルル王太子: うむ…
- ペレネル・フラメル: …“乙女”たちの主張に 文官たちが反対して
- ペレネル・フラメル: 王太子だったシャルル様は
- ペレネル・フラメル: ランスへの進軍を 最後まで迷っていたと聞いたわ
- カツッ
- シャルル王太子: …………
- ルイ王子: お父様
- シャルル王太子: おお… ルイか
- 王太子妃: 殿下 申し訳ございません!
- 王太子妃: 止めたのですが
- 王太子妃: この子が“乙女”に どうしても会ってみたいと…
- タルト: 私に?
- ルイ王子: “乙女”様
- ルイ王子: このたびはオルレアンの勝利 ありがとうございました
- タルト: そんな もったいないお言葉です、ルイ様
- ルイ王子: どうか…どうかお願いです
- ルイ王子: あなたの力でお父様を フランス王に導いてください
- ふわっ
- ルイ王子: ―ルイ王子― …………?
- タルト: ―タルト― はい…お任せください
- タルト: ―タルト― ルイ様のためにも 必ずや王太子様を戴冠させてみせます
- ジル・ド・レ: おぉ…
- グッ…
- シャルル王太子: 余は… 私は決めたぞ
- シャルル王太子: 次なる目標はランスだ!
- シャルル王太子: “乙女”の導きによって 私は王に戴冠する!
- シャルル王太子: このフランスに 平和をもたらそうではないか!
- タルト&ルイ王子: …………!
- トルテ: このとき、ルイ様が “乙女”と出会ったことで
- トルテ: シャルル様はランスへと 進軍する決意を固めたんだね
- ザッ…
- かごめ: あ… おふたりも来てくれたんですね
- エリザ・ツェリスカ: ええ…
- エリザ・ツェリスカ: タルト…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい、すぐそばに…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 二度と会えないと思ってた…
- かごめ: (そっか…ふたりにとっては…)
- かごめ: ………… …………
- かごめ: ルイ王太子は10年が経っても このとき会った“乙女”への感謝を 隠さない人だったんだって。
- かごめ: 「自分が国王だったら“乙女”を救えたのに…」 世界の侵食で“乙女”の存在を忘れたあとは ただ、父親への反発だけが残ってしまって 叛乱をくわだてたんじゃないか…っていうのが ペレネルさんの説だった。
- かごめ: ジャンヌさんやシャルル王太子と一緒に フランスの平和を願っていた、このときの 優しい気持ちを取り戻してくれたら…。
- かごめ: 今は、こんなことを してるときじゃないと思いなおしてくれる。 きっと、大規模な叛乱も鎮まってくれる…。 そうなってほしいと願わずにはいられなかった。
- タルト: あれっ?
- タルト: メリッサに…エリザ様…?
- メリッサ&エリザ: ――っ!?
- タルト: おふたりとも、なんだか雰囲気が 違うような…?
- かごめ: (じゃ…ジャンヌさん?)
- ニコラ・フラメル: 落ち着いて!
- ニコラ・フラメル: 魔法石を持ってない者に 僕たちの姿は見えないから
- リズ・ホークウッド: …なんだか変な気分なのよね
- リズ・ホークウッド: 眠っていたと思ったらここにいて まるで夢でも見ているような…
- タルト: 私もです…
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルト…リズ…
- エリザ・ツェリスカ: …本物…なんですの?
- タルト: …どういう意味でしょう?
- トルテ: 本物かもしれないね …夢に呼ばれたのかも!
- ペレネル・フラメル: かごめ嬢が未来から来たように… 過去から?
- かごめ: あの、リズさんって…?
- ペレネル・フラメル: そうね…“乙女”の姉のような 存在というべきかしら
- ペレネル・フラメル: “乙女”に最後まで寄り添って 心の支えだった魔法少女よ
- トルテ: かごめちゃん! ふたりに取材させてもらったら?
- かごめ: えっ?
- トルテ: 姿、見せちゃおうよ!
- メリッサ・ド・ヴィニョル: …ふたりの想いを 未来に伝えてください
- ―取材記録― リズ・ホークウッド ジャンヌ・ダルク(タルト)
- リズ・ホークウッド: 「この手で真の英雄を誕生させる… それだけを望んで、長い旅をしてきたわ」
- リズ・ホークウッド: 「その途中で、幾度もの別れ 幾度もの失意を味わった」
- リズ・ホークウッド: 「タルトは私の希望の光…長い旅路の果てに ようやく出会えた希望の光なの」
- リズ・ホークウッド: 「この先、どんなことがあろうとも 私はこの光を、決して消させたりしないわ」
- タルト: 「最愛の妹であるカトリーヌを失ったとき 私はその墓前に誓いました 必ずこの国を救い フランスに光をもたらすと」
- タルト: 「だから今の私は、天使様のお導きに従って たとえ何があろうとも まっすぐに進み続けるだけです」
- タルト: 「その先に、みんなが 平和に暮らせる世界が… 希望があると信じて」
- タルト: 「光を信じて…ただ、前だけを向いて」
- FILENAME: text_515920-8_BK8zF.txt
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトと…リズと もういちど会って話せたなんて
- メリッサ・ド・ヴィニョル: まるで夢みたいです
- エリザ・ツェリスカ: はぁ、誤魔化すのが大変でしたわ
- メリッサ・ド・ヴィニョル: エリザは当時 私たちと出会ったばかりで
- メリッサ・ド・ヴィニョル: あの頃からもう 10年以上経っていますからね
- エリザ・ツェリスカ: それに、昔のわたくしと 鉢合わせでもしたら…
- トルテ: えっ、当時も近くにいたんですか
- エリザ・ツェリスカ: 当然ですわ 当時、城にルイ王子を招いたのは
- エリザ・ツェリスカ: わたくしと ヴォル爺だったのですから
- ニコラ・フラメル: そのおかげでシャルル様は ランスへの進軍を決意した…
- ニコラ・フラメル: そして念願の戴冠を果たし
- ニコラ・フラメル: 正式なフランス国王と みんなに認められたんだよね
- メリッサ・ド・ヴィニョル: はい… その先に待ち受ける運命を
- メリッサ・ド・ヴィニョル: タルトもリズも まだ知りません…
- エリザ・ツェリスカ: ………… …………
- ペレネル・フラメル: …さて、まだ 私たちの仕事は残っています
- キューブ: そうだね、佐鳥かごめが 最後の1冊の記録を終えて
- キューブ: タルトがいない世界の侵食を 止める必要がある
- かごめ: そして、果てなしのミラーズの ターミナルにたどり着けたら
- かごめ: 鏡を壊すんだよね…
- キューブ: キミの情報が正確だとしたら
- キューブ: そうすることで タルトが誕生しなかった時間軸…
- キューブ: すなわち、赤い月の世界は あとかたもなく消滅するはずだよ
- ニコラ・フラメル: うまくいくといいけど…
- トルテ: 大丈夫!
- トルテ: (ダメだったら、わたしが…)
- かごめ: …どうかしたの、トルテちゃん
- トルテ: う…ううん、なんでもない!
- エリザ・ツェリスカ: では… あとは、おまかせしますわ
- ペレネル・フラメル: …かごめ嬢、記録をお願いします
- かごめ: はいっ…!
- かごめ: この不思議な旅の記録は たぶん、これでおしまいになると思う。
- かごめ: 私がこの記録…6冊目の世界の記録を終えたら ルイ王太子は、心の中の世界から “乙女”の大切な思い出を持ち帰る。 そして、現実の15世紀で起きている フランスの危機は終息に向かうはず…。
- かごめ: “乙女”とメリッサさんたちとの 再会のお手伝いができて、よかったって… 私はほっとした気持ちになった。
- かごめ: でも、この経験って 株分けのミラーズが原因で起きたことだから ターミナルの鏡を壊して タイムパラドクスが解消されると 「なかったこと」になるんだよね?
- かごめ: そうなったらきっと 私の記憶も、消えちゃうんだって気がついて… ちょっと、寂しくなった。
- かごめ: …書き終えました
- メリッサ&エリザ: …………
- ペレネル&ニコラ: …………
- キューブ: 何も起きないようだね
- かごめ: 予定だと、これで もとの世界を取り戻せるから
- かごめ: 私たちは箱舟に戻るか さっきと同じように
- かごめ: 果てなしのミラーズに行けると …思ったん…だけど…
- エリザ・ツェリスカ: どこにも戻れないのは 困りますわよ!?
- キューブ: これが最後の1冊なんだから 世界を取り戻せる条件は整ってる
- キューブ: ただ、何かが足りないんだ… 欠けたパーツがあるんだろう
- ペレネル・フラメル: まだ解けてない謎があるとすれば それが原因でしょうか?
- かごめ: まだ解けてない謎…それって
- かごめ: どうして私が 記録役に選ばれたのか…とか?
- メリッサ・ド・ヴィニョル: 確かにどうしてかごめちゃんが 魔法のペンを持っているのか
- メリッサ・ド・ヴィニョル: まだわかっていませんよね…?
- かごめ: はい…
- エリザ・ツェリスカ: トルテを見た相手の 記憶が戻るのも不思議ですわ
- ペレネル・フラメル: まるで、かごめ嬢とトルテ そして“乙女”の記憶のあいだに
- ペレネル・フラメル: 強い因果のつながりが あるかのような…
- トルテ: …わたしはもう、わかったよ その理由
- かごめ: えっ…?
- トルテ: かごめちゃんとわたしが 出会ったことも
- トルテ: 特別な力をもらったことも
- トルテ: わたしが“これから”キューブに お願いする奇跡の結果なの
- ニコラ・フラメル: えっ…?
- ペレネル・フラメル: …トルテ、何を考えているの?
- ペレネル・フラメル: キューブに奇跡を願えば…
- トルテ: うん、知ってる ごめんね、お母さん
- トルテ: ずっとひとりで考えてた
- トルテ: お母さんも言ってたよね?
- トルテ: 亡き“乙女”のために 何ができるか考えてほしいって
- ペレネル・フラメル: 私はそのために あなたを手伝ったわけでは…
- トルテ: ううん、これはね… 残されたみんなの記憶を見て
- トルテ: “乙女”の… みんなの想いを知って
- トルテ: わたしの意志で決めたことなんだ だから後悔なんてしないよ
- ペレネル・フラメル: …いいのですね?
- トルテ: うんっ
- ペレネル&ニコラ: …………
- かごめ: トルテちゃん…!
- かごめ: (最後の1冊に飛び込んだ あのときにはもう…)
- かごめ: (トルテちゃんは 決めてたんだ…)
- かごめ: (私に…こんな決断が できるのかな…?)
- トルテ: 聞いて、キューブ! 私の願いは…
- トルテ: 「“乙女”の想いが、決して失われることなく… この世界に正しく語り継がれてほしい」
- メリッサ&エリザ: …………
- トルテ: ごめんね、かごめちゃん ここでお別れみたい
- かごめ: そんな…
- トルテ: かごめちゃん、元気でね!
- かごめ: …………
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- 第7章「想いをつなぐ」
- トルテ: …………
- トルテ: あ…
- トルテ: わたし、魔法少女に なったんだよね?
- キューブ: そうさ
- キューブ: キミの願いは聞き届けられた
- キューブ: この鏡を壊せば 赤い月の世界は消滅し
- キューブ: ペレネルやかごめたちも もとの世界に戻って
- キューブ: 何事もなかったように もとの生活に戻るはずだ
- キューブ: ルイ王太子たちによる叛乱計画も どうにか鎮まるだろうね
- トルテ: うんうん、よかった!
- トルテ: あれっ…? このカッコいいペン…?
- キューブ: キミの願いによって作られた 真新しいペンのようだね
- トルテ: やっぱり…! 思った通りだ!
- キューブ: どういう意味だい?
- トルテ: キューブ、ここの場所って 未来につながってるんだよね?
- キューブ: 佐鳥かごめの話ではそうだね
- トルテ: だったら、未来にいるはずの
- トルテ: “箱舟に来る前”の かごめちゃんの夢の中に…
- トルテ: このペンをこっそり 届ければいいんだ!
- キューブ: …なるほど、そういうことか
- キューブ: 佐鳥かごめが魔法のペンを 持っていたから
- キューブ: 彼女が選ばれたんじゃなくて…
- キューブ: 彼女が魔法のペンを 持っていたそのこと自体が
- キューブ: トルテの願いの結果なんだね
- トルテ: そう!
- トルテ: そして“乙女”の想いが 正しく語り継がれてほしいって
- トルテ: わたしが願ったから
- トルテ: かごめちゃんが 魔法のペンで記録したことも
- トルテ: 真実になっていったんだと思う
- キューブ: 原因と結果の順が 普通とは逆だったわけか…
- キューブ: 最後まで謎が解けないわけだよ
- トルテ: それじゃ、するべきことをして… それから、もとの時代に帰るね!
- キューブ: まずは、過去に来る前の 佐鳥かごめに
- キューブ: そのペンを届けることだ
- トルテ: それから鏡を壊すんだったね
- トルテ: ペンを届けるのって… どうやればいいんだろう…?
- ゴーン…
- トルテ: …………?
- トルテ: 鐘の音が…
- トルテ: …………!
- かごめ: …………
- トルテ: 「…かごめちゃん、聞こえる? わたしだよ、トルテだよ」
- トルテ: 「鏡を壊して、世界がもとに戻ったら わたしと一緒にした旅も 全部、なかったことになって」
- トルテ: 「…次に目が覚めたとき かごめちゃんは、すべてを忘れちゃうんだって」
- トルテ: 「でもね、かごめちゃんが知った “乙女”の想いは、いつまでも その胸の中で生き続けていてほしい… わたしはそう思ってるの」
- トルテ: 「…だからお願い」
- トルテ: 「彼女の想いを、なかったことにはしないで」
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- コン、コン
- おはようございます 佐鳥かごめさん
- かごめ: あ…看護師さん
- 今日は退院ですね おめでとうございます!
- かごめ: …あ…ありがとうございます
- 朝食、ここに置いておきますね それじゃ…
- バタン…
- かごめ: ふぅ… そっか、退院なんだよね
- かごめ: (午後にはクレセントハウスに お邪魔して)
- かごめ: (退院のあいさつをする 予定だけど…)
- かごめ: …………
- かごめ: 少し早く病院を出て 図書館に行こうかな…
- かごめ: ………… …………
- かごめ: あれっ…?
- かごめ: (私…どうして…)
- かごめ: (ジャンヌさんのことばかり 調べてるの?)
- アルちゃん: <ジャンヌさんって ジャンヌ・ダルクのこと?>
- アルちゃん: <まるで知り合いみたいだよ?>
- かごめ: …………
- かごめ: (…図書館では静かにしないと)
- ジャンヌ・ダルクの死後 リッシュモン元帥のもとで 軍政改革を進めたフランス王国は イングランドから次々に勝利をおさめ 1453年、百年戦争は事実上終結。
- 国王シャルル7世は “勝利王”と呼ばれることになる。
- 1449年、ジャンヌへの 異端判決が下された町 ルーアンを奪回したシャルル7世は 翌年、裁判の正当性に関する再調査を指示。
- その後、ジャンヌ・ダルクの 復権裁判が行われ、1456年7月7日 教会の異端判決は無効とされた。
- ジャンヌを異端とした 裁判の判決文は破り捨てられ かつての戦友たちや、ジャンヌの母ロメ そしてジャンヌ・ダルクによって救われた オルレアンの市民は歓喜したという。
- ジャンヌの伝説はその後も大切に 語り継がれ、死後数百年が経った 1920年5月6日、ジャンヌ・ダルクは ローマ教皇によって列聖され “聖人”として認定された。
- かごめ: (シャルル7世は… ちゃんと約束を守ったんだ…!)
- かごめ: (“乙女”ジャンヌの想いは ちゃんと語り継がれたんだね…)
- かごめ: ………… …………
- かごめ: (約束って…何?)
- 1440年、ルイ王太子を擁立する 貴族らによる叛乱 “プラグリーの乱”が起きたが ルイ王太子が降伏したことで 早期に鎮圧された。
- 結果的にシャルル7世の 軍政改革は大きく前進し イングランドの排除と 国内治安の回復に向けて フランスは歩みを早めていった。
- ルイ王太子はその後 フランス国王ルイ11世として即位。
- 終生、ジャンヌ・ダルクへの 感謝を口にし続け ふたりの娘に「ジャンヌ」と 名づけたことが知られている。
- かごめ: …………
- かごめ: (どうして気になったのか わからないけど…)
- かごめ: (なんだか、ホッとした…)
- かごめ: (えっと、こっちの項目は…)
- かごめ: (錬金術士ニコラ・フラメルと その妻ペレネル・フラメル…?)
- かごめ: あっ…! そろそろ行かなきゃ
- かごめ: 約束の時間に遅れちゃう…
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- ―エピローグ―
- いろは: …退院できて、本当によかったね
- かごめ: ありがとうございます…
- やちよ: まだ完治していないんでしょう? 無理は禁物よ
- かごめ: はい…
- かごめ: …………
- 万年桜のウワサ: |かごめの取材記録 あれから増えた?|
- かごめ: はい、ピュエラケアのみなさんに 協力してもらったりして…
- かごめ: こんな感じで…
- ―取材記録― ペレネル・フラメル
- かごめ: えっ…えっ!?
- アルちゃん: <かごめちゃん! 落ち着いて!落ち着いて!>
- いろは: どうしたの?
- 万年桜のウワサ: |取材記録を見て動揺してる?|
- アルちゃん: <メリッサさん、エリザさん リズさん…>
- アルちゃん: <知らない魔法少女の名前が いっぱいあるみたい>
- かごめ: (知ってる名前もひとつあるけど 「知り合い」じゃないよ!)
- かごめ: (ジャンヌ・ダルクって…!)
- さな: あの…ピュエラケアの人たちに 書いてもらった分とかじゃ…?
- かごめ: でもこれ、私の字だよ…? 私の字はね…
- カチカチッ
- かごめ: ほら…こんな感じ
- フェリシア: 確かにかごめの字だな
- やちよ: あら、そのシャープペンシル 可愛いわね
- かごめ: え、そっちですか?
- やちよ: くっついてるマスコット アルちゃんでしょ?
- かごめ: えっ…あれっ!? ええっ!?
- アルちゃん: <かごめちゃん 買った記憶がないみたい>
- 万年桜のウワサ: |かごめがいろいろとおかしい|
- かごめ: 私…入院前の記憶が 飛んじゃってる…とか?
- いろは: ええっ、大丈夫?
- うい: …そんなにありえないような 取材記録なの…?
- かごめ: 少し…読ませてください
- うい: あ、でもみんながいると 読みにくいよね?
- やちよ: あっちの部屋で ゆっくり読むといいわ
- やちよ: ひさしぶりに外出して 疲れたでしょう?
- やちよ: お茶とお菓子、用意するから
- かごめ: …………
- コン、コン
- かごめ: あ…はい…
- さな: お茶とお菓子、持ってきました
- うい: ここに置いておくね!
- いろは: それで…どうだった?
- いろは: 取材記録を読んで 何かわかった?
- かごめ: はい、その…
- タルト: 「その先に、みんなが 平和に暮らせる世界が… 希望があると信じて」
- タルト: 「光を信じて…ただ、前だけを向いて」
- かごめ: ここに書いてあることが 全部本当だとしたら
- かごめ: 私の記憶がなくなってることも 辻褄が合うんですけど…
- かごめ: でも…
- いろは: でも?
- かごめ: (ジャンヌ・ダルクの 取材記録だなんて…!)
- かごめ: その…信じてもらえそうな 気がしないっていうか…
- アルちゃん: <かごめちゃん自身が 信じられないみたい>
- いろは: あはは…それじゃ仕方ないね
- いろは: いつか話したくなったら 話してくれればいいよ
- かごめ: …ありがとうございます
- かごめ: でも、ここに書かれてる いろんな人たちの想いは
- かごめ: きっと本当のことだって 気がするんです…
- いろは: ふふふっ
- さな: …ところで、かごめさんの 魔法少女の取材記録…
- さな: だいぶ溜まってきましたけど
- さな: 名前とか、つけないんですか?
- うい: 本の題名みたいに…?
- さな: そう…ちょっと気になって
- かごめ: 名前ですか? いちおう…考えてます
- いろは: へえ、聞いてもいいかな?
- かごめ: はい…
- かごめ: 「マギアレコード」という名前に しようと思ってます
- La Fin.(おしまい)
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