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- FILENAME: text_310441-1.txt
- みこと: 私はたくさんの感謝に溢れている
- みこと: 学校の友だちは 私がちょっと疲れた顔をしていたら 気遣ってくれたり、心配してくれたりする
- みこと: みんなとっても優しくて… みんなといるのがとっても楽しいから 毎日学校に行くのが楽しみで仕方ないの
- みこと: そんな私たちにもひとつだけルールがある それは、思ったことは何でも言うこと
- みこと: 遠慮なんてダメ 嫌われるかなって思って隠しちゃうのもダメ 全部ぶつけていくの!
- みこと: たまにケンカになることもあるけど… すぐに仲直りして、もっといい関係になるから だから、私たちは衝突を恐れないんだ
- みこと: こんなにいい友だちに恵まれて 充実した学校生活を送れて… 私は、本当に感謝しかない
- みこと: …そして 家では、優しい両親が私を迎えてくれる!
- みこと: 学校から帰って玄関のドアを開けると 決まって晩ご飯のいい匂いがするの
- みこと: お母さんの料理は本当に美味しいから 私はつまみ食いしたくなるんだけど…
- みこと: 私のやりそうなことなんて全部見抜かれてるから コラって叱られちゃうんだ
- みこと: それで、そんな様子をお父さんは 楽しそうに眺めているの
- みこと: 本当は忙しいのに私との時間を つくりたいから、毎日早く仕事を 切り上げて帰ってきてるんだよ?
- みこと: ちょっと過保護だよね~ …でも、うれしいな
- みこと: ここには私の欲しいものがすべてある
- みこと: もちろん家は裕福じゃないし 私も何でもできたりするわけじゃないから 手に入らないものはいっぱいあるよ?
- みこと: それでも、本当に欲しいものは 私を包むようにそこかしこにあって そして、お前が必要だと言ってくれている
- みこと: だから私はここに…この神浜に、この世界に 心から感謝しているの 生まれてきて本当によかったと思って…
- みことの母の声: もう嫌よ、こんな生活!
- みこと: ――っ!?
- みことの母の声: 家のことは放り出して お金ばっかり使い込んで!
- みことの母の声: こんなんじゃ生きていけない! 私たちのことも考えてよ!
- みことの父の声: 仕事で忙しいんだ! 金だって接待で使ってるだけだ!
- みことの父の声: 何も知らないくせに ごちゃごちゃ言うんじゃない!
- みことの母の声: 嘘を言わないでよ!
- みこと: …………
- みこと: 響き渡る両親の怒声…
- みこと: 私は部屋の片隅でふたりに気づかれないよう 気配を殺し、ここにはいないものとなって ただ時間が過ぎるのを待っている
- みこと: せっかく楽しい夢を見ていたのに どうしてこんな嫌な現実に引き戻すのだろう?
- みこと: 私はまぶたを閉じ、耳を塞ぎ この世界を拒絶して 幸せの中へ溺れていく…
- みこと: それは私自身を失っていくような… 自分が透明になっていく感覚だった
- みこと: あるいは、幽霊になるような…
- みこと: だとすると私なんていうものは この世には存在しないのかもしれない
- みこと: そんな思いは家だけじゃなく 学校でクラスメイトたちと過ごしていても 自然と強まってくる
- それ本当?
- みこと: ホント、ホント! だから私ね…
- みこと: ごく普通の家庭で育った 明るくて元気な女の子… という瀬奈みことを私は演じつづけている
- みこと: 奔放な父親に母親はずっと苦しめられ 家計も火の車で私もあまりご飯を食べられず
- みこと: ひもじい思いをしながら、それでも 学校に通えることを幸運に感じている…
- みこと: そんな本当の自分を知られてしまうと 敬遠されるんじゃないかって 思ってしまったからだった
- みこと: だから私は嘘で塗り固めた自分を演じている
- みこと: 不思議なもので、ずっと嘘の中にいると それが本当のように思えてくる
- あはは、みことは面白いね~
- 友だちが多いのもわかるよ
- みこと: えーそうかなあ?
- みこと: でもこれは 顔色を窺って生きているのと変わらない
- みこと: 本当のこと、思ったことは何も言えず 彼女たちが求める私を 鏡のように反射しているだけの…
- みこと: そういう、自分を失っていく日常
- みこと: はあ…
- みこと: 放課後はよくここで時間を潰している
- みこと: 極力家にはいたくない ふらっと父親が帰ってきたら嫌だから
- みこと: …………
- え、帰るの…?
- 新しくできたクレープ屋さんに 行こうって話してたんだけど…
- 用事があるんだから仕方ないよ みこと、忙しいもん
- みこと: 用事なんてないってバレたら 感じ悪いよね…
- みこと: ただでさえ いつも断ってるんだから…
- みこと: 父親が家にお金を入れない上に 勝手に使い込んだりするから 家にはほとんどお金がなかった
- みこと: だから放課後遊びにいこうって 誘われても、断るしかない
- みこと: 今でこそ表面上はみんなと 友だち付き合いができているけど 断ってばかりだとそのうち嫌われるかも
- みこと: …嫌われるのは、やだ…
- みこと: どうして?
- みこと: たぶん…
- みこと: 「みんなに認めてほしいから」
- みこと: …………
- FILENAME: text_310441-2.txt
- みことの母: …………
- みこと: あ、お母さん
- みことの母: みこと…? 今帰ってきたのね
- みこと: どうしたの、ぼんやり立って 家の中に入ろうよ
- みことの母: うん…
- みこと: お母さんの頬が 赤く腫れていることに気づいた
- みこと: …お父さんにやられたんだ
- みことの母: ああ、これ? ちょっとケンカしただけだから…
- みこと: お父さん、帰ってきてるの?
- みことの母: …………
- みことの母: ねえ、みこと、これ…
- みこと: お母さんが渡してきたのは しわくちゃになった千円札だった
- みことの母: お小遣い ずっと渡せてなかったでしょ?
- みこと: え、でも…
- みことの母: いいから… これくらいで遠慮しないで
- みこと: 普通の家と比べたら 確かに「これくらい」なんだろう
- みこと: けれどお母さんの頬が腫れているのが きっとこのせいなんだってわかるから 私は死んでも「これくらい」なんて言わない
- みこと: …私、働くよ お母さんに楽をさせたいもん
- みことの母: そんな歳で働くなんて…!
- みこと: だって…
- みことの母: そんなことしなくていいの お母さん、頑張るから…!
- みこと: …………
- みこと: どうしてお母さんが 頑張らないといけないのだろう?
- みこと: 悪いのはあの人なのに…
- みこと: いつだったか…お母さんに どうしてあの人と別れないのかと 聞いたことがある
- みこと: あの人を捨てて、別の町で私と暮らす… そうしたら何もかも解決するんじゃないか と私は思ったのだけど…
- みことの母: 「そんなに簡単な話じゃないの」
- みこと: その言葉を聞いて、まだお母さんには あの人への情があるのだと知った だから逃げられないし、逃げようともしない
- みこと: 不思議で仕方ないけど… 夫婦って、そういうものなのかもしれない
- みこと: でも私は あの人がいなくなればいい そう願っている
- みこと: …………
- みこと: 家が無茶苦茶になったのも 学校で自分を偽ることになったのも 結局はあの人が原因
- みこと: あの人がいる限り 私たちは幸せになれない
- みこと: それなのにお母さんは あの人と別れてくれない…
- みこと: だったらどうすればいい? どうすればここから抜け出せる?
- みこと: あ、そっか…
- みこと: あの人がいなくなればいいんだ
- みこと: …………
- みことの母: …みこと?
- みこと: ちょっと、用事を思い出したの
- みこと: 出かけてくるね
- みことの母: あ、みこと…!
- みこと: 私があの人を消す
- みこと: お母さんからあの人を 無理やり引き剥がす
- みこと: そうすれば何もかも きっとうまくいく…
- みこと: 幸いにも 今の私は千円札を持っている
- みこと: これは幸福へのチケットだ
- みこと: このチケットを使って 手に入れるんだ…
- みこと: あの人を殺す道具を
- みこと: ナイフを買おうと いくつか店を覗いてみたけど 店頭には置いてなかった
- みこと: それにカタログを見る限り とても手持ちのお金では買えない…
- みこと: 100円ショップで探してみても ナイフはなかった
- みこと: でも、包丁はあった
- みこと: 切れ味はどうなんだろう? 突き刺せばいいだけなんだから そこまで考えなくてもいい…?
- みこと: …とりあえず 買っておこうかな…?
- みこと: 透明なプラスチックのケースに入った 万能包丁を手に取る
- みこと: これで…たった100円で あの人を殺せる
- みこと: 100円で解決する問題に 今まで悩まされていたなんてバカみたい
- みこと: …や、やってやる…
- みこと: あの人を殺して、幸せになるんだ
- みこと: そう思って握り締めたときだった
- みこと: どうしてか、昔のことを思い出した
- みことの母: みこと、何でも好きなものを 食べていいからね
- 幼いみこと: う、うん…
- みことの父: …………
- みこと: ずっと昔のことだ… 私たちは家族全員で お祭りにやってきていた
- みこと: つまらなさそうな顔をしながらも 父親は私たちについてきていた
- みこと: どうして一緒に来てくれたのか 理由はわからない
- みこと: けど私は、うれしかったんだ 家族3人でお祭りにくるのが はじめてだったから
- 幼いみこと: …………
- みこと: くじ引きの景品の中に 欲しかったものがあった
- みこと: あれは、何だったのだろう? もう覚えていないけど… たぶん学校で流行っていたものだと思う
- みことの父: …あれが欲しいのか
- 幼いみこと: え、うん…
- みことの父: 待ってろ
- みこと: あの人はそう言ってくじを引いた
- みこと: けど、何度引いても 目当てのものが当たることはなかった
- みことの母: …あなた もうお金なくなっちゃうから
- みことの父: ああ…
- みこと: 結局当たったのは 安っぽくて小さな手鏡だった
- みこと: あの人はそれを私に渡し 少しだけ、申し訳なさそうな顔をして…
- みことの父の声: ごめんな、みこと
- みこと: ――っ!?
- みこと: 気づけば、手が震えていた
- みこと: ずっと忘れていたことなのに 今になってどうして思い出すの…?
- みこと: …あの手鏡はどこに行ったんだっけ…?
- あの、お客さん
- みこと: え…!?
- 何かお探しですか?
- みこと: え、えっと…私…
- みこと: ごめんなさい…!
- みこと: 私は慌てて包丁を戻し 逃げるようにその場から走り去った
- みこと: 呼び止める声が聞こえたけど 私は振り返らなかった
- FILENAME: text_310441-3.txt
- みこと: …………
- みこと: 結局私は逃げてしまった
- みこと: 今から別の店に行って 他の刃物を手に入れる気にはならない
- みこと: なぜ逃げたのかと自分自身へ疑問を感じる… 同時に、逃げてきてホッとしている自分が とっても不愉快だった
- アナウンス: …行き、最終電車 間もなく発車します
- みこと: ――っ!?
- みこと: 駅から最終電車の出発を 知らせる声が聞こえてくる…
- みこと: それを聞いた人たちが 慌てて駅へ駆け込んでいた
- みこと: 電車…
- みこと: 手持ちのお金で いけるところまで行ってみようか?
- みこと: こんなところなんて捨ててしまって まったく別の土地で、まったく別の生活を送る…
- みこと: それは簡単な話じゃないだろう
- みこと: でも、ここで自分を失いながら 何の幸せも、何のいいこともなく 耐えるように生きるくらいなら…
- みこと: お母さんを捨てるの?
- みこと: …それは…
- みこと: 本当にここには 捨てたいものしかなかったの?
- みこと: …………
- 幼いみこと: お母さんは休んでて! 今日は私がお料理するんだから!
- みことの母: でも…お友だちと 遊ぶはずだったんじゃないの?
- 幼いみこと: いいの!説明したら ちゃんとわかってくれるから
- 幼いみこと: お母さん、毎日大変だから 私が…何だっけ?…ね、ねぎ…
- みことの母: ねぎらう?
- 幼いみこと: そう、ねぎらってあげたいの!
- みことの母: みこと…
- 幼いみこと: 大丈夫だよ お母さんには私がいるから!
- みこと: そう、捨てたいものばかりじゃなくて ちゃんと守りたいものもここにはあった…
- みこと: なんでさっきから こんなことばかり思い出すの?
- みこと: なんで決心を鈍らせようとする?
- みこと: 思い出に浸ったって 何も変わらない
- みこと: ただ…私を縛りつけるだけだ
- みこと: あの人も、思い出も なくなればいいのに…
- みこと: 全部、なくなればいい…
- みこと: そうしたら私 自由になれるのに…
- ???の声: その願いが叶うって言ったら どうするかな?
- みこと: え…?
- キュゥべえ: はじめまして、瀬奈みこと ボクの名前はキュゥべえ
- みこと: ――っ!?
- みこと: その動物のような何かに話しかけられて 私は困惑して、言葉を失っていた
- みこと: けれど 何かがはじまる予感は 確かにここにあった
- FILENAME: text_310441-4.txt
- みこと: な~んだ また使い魔だったんだね
- $+@!!
- みこと: 慌てない慌てない
- みこと: どうせあなたは…そこから どこへも行けないんだから
- %&・##!?
- みこと: ほら…ね?どこへも行けない 動くこともできないでしょ?
- みこと: じゃあ、倒しちゃうね?
- %・~#*!?
- みこと: ふう…これで4体目か
- みこと: でも魔女は倒せてないから 頑張らないといけないね!
- みこと: 私は、魔法少女になっていた
- みこと: …まあ、契約して魔法少女になってほしいって 言われたときは、何を言っているんだろうって 思ったんだけど…
- みこと: 願いを叶えてくれるって言うから ふたつ返事で契約した
- みこと: テレビか何かのドッキリじゃないかって ちょっと疑いもしていたけど
- みこと: 契約したすぐ後に使い魔と戦うことになり キュゥべえの言っていたことが本当なんだと 否が応にも実感した
- みこと: だったら…と私は気づいた
- みこと: 願いも叶っている?
- みこと: お母さん…!!
- みこと: ――っ!?
- みこと: 家に帰ると 泣き崩れたお母さんの姿があった
- みことの母: みこと…お父さんが…
- みこと: あの人がどうしたの!?
- みことの母: 出ていったの… 他の女の人と暮らすんだって…
- みことの母: 今日帰ってきてたのも 荷物を持っていくためだったの
- みこと: …………
- みこと: …叶った…
- みこと: 願いが、叶った…
- みことの母: え…?
- みこと: 私の願いは 父親がここからいなくなること
- みこと: キュゥべえは本当に叶えてくれたんだ 殺すしかないと思っていたあの人を こんなにもあっさり消してくれた
- みこと: やった…これで私もお母さんも苦しまなくていい お金だって放課後遊びにいけるようになる くらいには余裕が生まれるはず
- みこと: 生活が変わるんだ!
- みこと: それを機に私も生まれ変わろう ちゃんと友だちと向き合って 本音で話せるようになろう
- みこと: 勉強だって今よりもっと頑張って 将来、いい会社に入るんだ
- みこと: そして、お母さんに恩返しするの!
- みこと: …は…は、はは…
- みこと: 夢見ていたものが 手の届くところに転がり込んできた
- みこと: それもこれも魔法少女になったおかげだ キュゥべえには感謝してもしきれない
- みこと: 今の私はたくさんの感謝に溢れている!
- みこと: ははは…はははははは…っ!
- みこと: 私は笑い崩れながら、幸福に浸った
- みこと: いつまでもこの幸福がつづくと 信じて疑わなかった
- みこと: 私は、甘かった
- みこと: また手紙だけ…
- みこと: 『…少し遊びに行ってきます 食費はこれで…』
- みこと: …………
- みこと: お母さんは何か埋め合わせをするかのように 頻繁に家を空けては、遊び歩くようになった
- みこと: 家のお金を使い込み、あの人がいた頃より 少ないお金しか渡してもらえなかったので 私はろくに食事にありつけない状況だった
- みこと: あの人がいなくなれば 全部解決するはずだったのに…
- みこと: お母さんがあの人みたいになってしまい 私の夢は簡単に崩れ去った
- みこと: これが報いだというなら… 皮肉なものだね
- みこと: はあ…
- みこと: なんだか、もう どうでもいいな…
- あら…?
- ちょっと あなたみことちゃんじゃないの?
- みこと: え…?
- 私は同じ団地の…覚えてない? こんな時間まで遊んでたの?
- ダメだよ!遊びほうけてると ろくな人間にならないんだから
- ウチの旦那がいい証拠! なっはっはっは!
- みこと: …………
- お母さんとケンカでもした? ウチ来る?佃煮いっぱいあるわよ
- みこと: …ふふっ 優しいんですね
- みこと: きっとおばさんの家庭は 幸せな家庭なんだろうな…
- そんな大層なものじゃないわよ どこにでもある普通の家
- みこと: …羨ましい
- え、そう?ならウチの子になる? 娘が出てって寂しいからねえ
- みこと: じゃあ、そうしようかな?
- ――っ!?
- みこと: んふふ…驚いた? でも本当に驚くのはこれから…
- みこと: 私、不思議な魔法が使えるの 何でも言うことを聞かせる魔法が
- みこと: 人には使っちゃダメだと思ってた けど…もういいよね?
- あ、あんた、何を…?
- みこと: 私をその輪に入れてよ …娘として
- …………
- あれ…あたし…?
- みこと: どうしたの、お母さん? 早く帰ろうよ
- そ、そうね…お母さん、ちょっと ぼうっとしてた
- 早く帰ろうか、みことちゃん… あれ?…みことちゃんって…
- みこと: …お母さん、いつもみことって 呼んでるでしょ?
- そう、だったね… それで違和感が…
- みこと: んふふ…ほら、帰ろう?
- みこと: 魔法少女になってよかったことがある それは、魔法が使えるようになったこと
- みこと: 私の場合は…自分の言うことを 結果的に聞かせる魔法が使えるようになった
- みこと: 私がこうしてほしいと言えば 相手は必ずそうしてくれる 私の望み通りにしてくれる
- みこと: だからこんなふうに 他人の家の娘になるなんて 私の魔法を使えば簡単だった
- ほら、いっぱい食べな、みこと!
- いいなあ… みことの好きなものばかりだ
- みこと: んふふふっ
- みこと: 賑やかで楽しい家… 私がずっと欲しかったものが こんなにも簡単に手に入るんだ
- みこと: あれ、でも…油っぽいものばかり 私、あんまり…
- あんたは昔から、唐揚げとか お肉が好きだったでしょ?
- だから いっぱい用意してあげたよ!
- やっぱり運動していると そういうのが好きになるんだな
- あ、そうだ、この間の大会 どうだった?うまくいったか?
- みこと: …………
- みこと: この人たちは何の話をしているのだろう
- みこと: 娘は私なのに、この人たちはずっと 違う誰かのことを見ている…
- たくさんお食べ、みこと
- よかったな、みこと
- みこと: …うん
- みこと: 魔法を使っても満たされることはなかった
- みこと: だから…
- みこと: ここにも使い魔がいる… さっさと5体目を倒しちゃおう…
- みこと: 私は取り憑かれたように 魔法少女として戦うことにのめり込んでいった
- みこと: もうそれしかなかったからだ
- みこと: 魔法少女という役割すらなくなってしまうと 本当に自分には何もなくなってしまうような そんな気がしていた
- みこと: え、あれって…?
- ???: あがっ…!
- &$・#!
- みこと: このとき私は はじめて自分以外の魔法少女を見た
- みこと: そっか、私以外にもいるんだ… そりゃそうだよね
- みこと: ガッカリしなかったと言えば嘘になるけど そんなつまらない感情なんて 一瞬で消えるほどの希望を抱いた
- みこと: あの子に賭けてみよう
- みこと: 同じ魔法少女であるあの子なら 私のことをわかってくれるかもしれない 必要としてくれるかもしれない
- みこと: 私がここにいてもいい理由に なってくれるかもしれない…
- ???: …このぉ~!
- みこと: その人を攻撃してはダメ!
- みこと: 私は言うことを聞かせる魔法を使い そして一歩踏み出した
- みこと: どうしてか、胸が高鳴っていた
- みこと: そこから私たちの物語が はじまっていった
- FILENAME: text_310442-1.txt
- みこと: 更紗帆奈… それが彼女の名前だった
- みこと: 警戒心が強く、いつも腕を組んで こちらを探るような視線を向けてくる でも、全然嫌な感じはしなかった
- みこと: はじめて見つけた私以外の魔法少女… きっといい関係になれる と思っていた
- みこと: 帆奈ちゃん、今日こそは 私たちの力で魔女を倒そうね!
- 更紗 帆奈: う、うん…
- みこと: 帆奈ちゃん、帆奈ちゃん! 使い魔だよ!
- 更紗 帆奈: 見たらわかるって…
- みこと: え、もしかして帆奈ちゃん 引いてる?私、うざい?
- 更紗 帆奈: いいから… 戦いに集中して
- みこと: 私はとにかく必死で 帆奈ちゃんと少しでも仲よくなれるように 積極的に距離を詰めようとした
- みこと: 結果は言うまでもなく 空回りだったんだけど…
- みこと: でも私はめげなかった 共通の好みを探した
- みこと: それを糸口に帆奈ちゃんと 仲よくなるのだ
- 更紗 帆奈: …あはは…
- みこと: 何してるの、帆奈ちゃん?
- 更紗 帆奈: 動物がいるんだよ だから撫でてて…
- みこと: あ、イヌだ~ 可愛いね~!
- 更紗 帆奈: …そうだね…はは…
- みこと: ねーねー帆奈ちゃん こっちにはネコがいるよ
- みこと: ほら、ネコ~~っ
- 更紗 帆奈: うん、可愛いね
- みこと: そうだよね~ 私、ネコのほうが好きだな
- みこと: 帆奈ちゃんはどっち?
- 更紗 帆奈: どっちも可愛いと思うけど…
- 更紗 帆奈: あえて言うなら、イヌかな?
- みこと: ――っ!?
- みこと: ねーねー帆奈ちゃん、あれ
- 更紗 帆奈: んー…チョコレートのお菓子?
- みこと: そう、どんぐりとくるみの!
- みこと: どっちが好きかで 派閥分かれたりしなかった?
- 更紗 帆奈: …そういうの くだらないと思うけど
- みこと: すうー…はあー…
- 更紗 帆奈: え、どうしたの? 深呼吸して
- みこと: 勝負の前に 気持ちを落ち着かせてるの
- みこと: さて…
- みこと: 帆奈ちゃんはどっちが好き!? 私は断然くるみ!!
- みこと: 帆奈ちゃんもそうだよねっ!!
- 更紗 帆奈: あたしは、どんぐりだけど
- みこと: ――っ!?
- みことの声: じゃ、じゃあ…
- みことの声: あんこといえば つぶあんだよね!
- 帆奈の声: こしあん
- みことの声: 目玉焼きには、ソース!
- 帆奈の声: 醤油
- みことの声: 住むなら、持ち家!
- 帆奈の声: 賃貸
- みこと: ダ、ダメだ… もう終わりだ…
- みこと: どうやら私は決定的に帆奈ちゃんと 相性が悪いらしい
- みこと: 帆奈ちゃんとなら うまくいくと思ったのに…
- みこと: というか、帆奈ちゃんもダメだったら もう私のことをわかってくれる人なんて…
- 更紗 帆奈: …ふふ…
- みこと: え、笑われた…? 私、何か変だった?
- 更紗 帆奈: ずっと変っていうか 空回りしてるんだけど…
- 更紗 帆奈: あんた、面白いね
- みこと: 面白い?…え、えっと… それって…
- 更紗 帆奈: あはは… ほら、いつもの店行くよ、瀬奈!
- 更紗 帆奈: わけわかんないことより 魔法について話し合わないと
- みこと: あ、待って、帆奈ちゃん! 置いてかないでよ!
- みこと: 帆奈ちゃんはさっさと進んでいくんだけど
- みこと: なんだか、お互いの距離は 縮まっているような気がした
- FILENAME: text_310442-2.txt
- みこと: 帆奈ちゃんは頭がいい 私が気づかないことを 次々と解き明かしてくれる
- みこと: 私の言うことを聞かせる魔法… もとい暗示の魔法が自分自身にも かけられると突き止めたのも帆奈ちゃん
- みこと: それにはすっごく感謝している
- みこと: だって、想像の中のものだった 優しくて仲睦まじい両親や楽しい学校生活…
- みこと: それらすべてが暗示を自分にかけることによって 本物だと、ここにあるものなんだと 信じられるようになったんだから
- みこと: お母さん、お父さん ただいま!
- みこと: …あれ、誰もいない…?
- みこと: …………
- みこと: あ…そうか…そうだった… 全部、暗示だったね…
- みこと: まあ、家に帰って現実を突きつけられると 暗示も解けちゃって苦しくなるんだけど…
- みこと: でも、また暗示をかければ幸せになれる それだけで充分だった
- みこと: この日も私は自分に暗示をかけて 出かけていたんだけど…
- みこと: それは失敗だった
- みこと: あ、いけない そろそろ帰らないと
- 更紗 帆奈: もう?
- みこと: ごめんね、最近帰りが遅いから 色々と言われてて…
- 更紗 帆奈: あ…
- みこと: 違う違う! 怒られてるわけじゃないから!
- みこと: ただ、お父さんが心配性なだけ 悪い虫がつくんじゃないかって
- 更紗 帆奈: 悪い虫ならもうついてるけど?
- みこと: 帆奈ちゃんは違うよ~
- みこと: まあ、帆奈ちゃんのことを 両親がちゃんと知ってくれたら
- みこと: もう何も言わないと思うけどね 理解力はある方だから
- 更紗 帆奈: ふーん… じゃあ、挨拶しにいこっか?
- みこと: え、悪いよ
- 更紗 帆奈: いや…魔女のこともあるからさ…
- 更紗 帆奈: 瀬奈には自由の利く状態で いてほしいんだよ
- みこと: …で、でも…私の家だよ? 本当にわざわざ来てくれるの?
- 更紗 帆奈: なんで疑うの…? 瀬奈はツレが多いんでしょ?
- 更紗 帆奈: だったらさ、こんなのは よくあることじゃないの?
- 更紗 帆奈: …あたしはあんまり知らないけど
- みこと: す、すごい…友だちが家に 来てくれるなんてはじめて…!
- 更紗 帆奈: はじめて…?
- みこと: あ、でも、今日は外食することに なってるから、また今度でいい?
- 更紗 帆奈: 別にいいけど…
- みこと: 本当だよ? やっぱなしはなしだよ!
- 更紗 帆奈: …なんでそんなに 必死なわけ…?
- みこと: だって嬉しいもん
- みこと: 一番大切な帆奈ちゃんが家に 来てくれるって思うだけで
- みこと: なんかすっごく楽しい…!
- 更紗 帆奈: もう、わかったから… 門限なんでしょ?早く帰りなよ
- みこと: うん、また明日ね! ちゃんと日取り決めようね!
- みこと: いや、日取り決めちゃダメだよ…
- みこと: 家に帰ってきて暗示の解けた私は 今さらながら自分がとんでもない約束を してしまったと気づいた
- みこと: ど、どうしよう…
- みこと: 嘘を吐いていたって白状したら 帆奈ちゃんに嫌われるかもしれない… と思ったら、胸が張り裂けそうになった
- みこと: それは帆奈ちゃんが自分にとって 大きな存在になっている証拠でもあった
- みこと: だけど 誤魔化す方法なんてないし…
- みこと: そうだ、あの人たちがいる
- みこと: あの人たちをまた使えば…
- みこと: 私が娘だと暗示をかけたあの人たちのところへ 帆奈ちゃんを連れていけば うまく誤魔化せる…
- みこと: もうそれしかない 嘘を吐いていたってバレたくないもん
- みこと: …準備に取りかからないと
- FILENAME: text_310442-3.txt
- みこと: あのおばさんとおじさんは 幸いにも暗示にかかったままだった
- みこと: 私はふたりに友だちが来ることを伝え 帆奈ちゃんとの待ち合わせの場所へ向かった
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: 約束の時間はまだなのに 帆奈ちゃんは待っていた
- みこと: 今日は自分に暗示をかけていない
- みこと: 嘘を誤魔化さないといけないんだから やっぱり素面でないと…
- みこと: …………
- みこと: それでも不安は募る
- みこと: 不安を消す暗示をかけようとして… ハッとなってやめた
- みこと: さあ、入って入って!
- 更紗 帆奈: …おじゃまします
- 更紗 帆奈: あ、いい匂い…
- みこと: 私がつくるはずだったのに お母さんが勝手にはじめてて…
- みこと: ねえ、お母さん! 残りは私がつくるからね!
- 更紗 帆奈: …瀬奈も料理するんだ?
- みこと: うん、得意なの! もやし料理!
- 更紗 帆奈: え、もやし…?
- はいはい、残りは任せるから… 帆奈ちゃん、いらっしゃい
- 更紗 帆奈: あ…あの、はじめまして…
- いやあ…わざわざ挨拶に きてくれるなんて…
- みこと: そうだよ これでわかった?
- みこと: 私はこんなにちゃんとした 帆奈ちゃんと一緒にいるの
- みこと: 変なことなんて するわけないでしょ
- そうそう、あんたもいい加減 子離れしなさい!いいわね!
- はい…
- 更紗 帆奈: …え、えっと…
- 帆奈ちゃん、今日は いっぱい食べていきなさいよ
- おばさんが腕によりをかけて つくるから!
- みこと: だーかーらー! 私がつくるんだって!
- みこと: もう行こう、帆奈ちゃん!
- みこと: 私は帆奈ちゃんの手を引っ張って 台所へと向かった
- みこと: うまく騙せている
- みこと: それどころかこれは… 私が夢見ていた光景そのものだった…
- みこと: ―みこと― ごめんね、手伝ってもらって
- 更紗 帆奈: ―帆奈― いいよ、これくらい… けどさ、たいしたことはできないよ
- みこと: 帆奈ちゃんとふたりで料理をつくる…
- みこと: テーブルではおばさんとおじさんが 怒鳴り合うわけでも、言い争うわけでもなく 静かに笑みをたたえて私たちを眺めている
- みこと: ふたりは本当に私の両親のようだった
- みこと: いや、もうふたりが両親でいい そうしたほうが、きっといい
- みこと: ―みこと― わっ、帆奈ちゃん! 吹きこぼしてるよー
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あ、本当だ
- みこと: ―みこと― いや、腕組んでないで 早く火を止めて~
- みこと: ああ、楽しいな…
- みこと: …きっとこれが、幸せというものなんだ
- みこと: 私はずっと欲しかった 普通の幸せを手にしつつある
- みこと: あのお父さんは暴れ回ったりしない お金だって使い込まない
- みこと: 私がそう言い聞かせてあるんだから 絶対に守ってくれる
- みこと: 優しくて、家族を大切にしてくれる… 私の欲しかったお父さんでいてくれる
- みこと: お母さんだってそう…
- みこと: ちゃんと私を見てくれるし 私を放って好き勝手に遊び回ったりもしない
- みこと: 私がそう言い聞かせてあるんだから 絶対に守ってくれる
- みこと: このちょっと甘めのだし巻き玉子も 私が好きだからって散々言い聞かせた
- みこと: だからちゃんと用意してくれている
- みこと: 私の望むことを何でもしてくれる…
- みこと: こんなにも理想的な家族なら もうこれを本物にしちゃえばいい
- みこと: そうすれば嘘が本当になり 帆奈ちゃんに嫌われなくて済む
- みこと: もしかしたら クラスメイトとの関係もよくなるかも…
- みこと: いいことばかり… まるで夢みたい!
- みこと: 今日からこれを本物にしよう 永遠に解けない暗示を自分にかけよう
- みこと: これまでの全部を捨て去って…
- みこと: ―みこと― ふふふ…楽しいね、帆奈ちゃん
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ねえ…
- みこと: ―みこと― なあに?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― どうして瀬奈は、そんなに辛そうなの?
- みこと: ―みこと― …え、なに? よく聞こえなかったかも
- 更紗 帆奈: ―帆奈― たまにあんた家のこととか学校のこととか 話してくれるでしょ?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― それであんたはいっつも 自分は幸せだって言う…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あたしさ、今まで自慢話をされているんだと 思っていたんだけど、違ったんだね
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 瀬奈は自分に幸せだって言い聞かせている
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あんたが何の問題を抱えているのか あたしにはわからないけどさ…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …無理してるんじゃない?
- みこと: ―みこと― …………
- みこと: ―みこと― …無理ってなに? 私、こんなに幸せなんだよ?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― うん、そうだね…
- みこと: ―みこと― みんな、ちゃんと私を見てくれてて… ここにいていいって…言ってくれてるみたいで…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― うん…
- みこと: ―みこと― でも…満たされないの
- みこと: ―みこと― 家でも学校でもずっとそうで…なんだか… 自分がどこにもいないような気がして…
- みこと: ―みこと― だから見つけてほしかったの
- みこと: ―みこと― 私を、捨てないでほしかったの
- 更紗 帆奈: ―帆奈― うん…
- みこと: ―みこと― …うん、うん、って本当に聞いてるの?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 聞いてるって、ちゃんと あたしはわかるから…なんとなくだけど
- 更紗 帆奈: ―帆奈― それでもよかったら あたしに話せばいいよ
- みこと: 帆奈ちゃんは私のすぐ近くで 何をするわけでもなく ただそばにいてくれた
- みこと: いつまでも、そばに…
- FILENAME: text_310442-4.txt
- 更紗 帆奈: はい、これ…
- みこと: 一緒につくった料理を食べた後 帆奈ちゃんはすぐに帰ることになった
- みこと: 送っていく道すがら 帆奈ちゃんは忘れ物を取り出すかのように 私へ一冊のノートを差し出してきた
- みこと: これは…?
- 更紗 帆奈: 日記だけど…
- みこと: 日記? え、日記ってもしかして…
- みこと: 交換する系の日記!?
- 更紗 帆奈: そうだけど…悪い?
- みこと: わ、悪くないけど、どうして? 帆奈ちゃんこういうの嫌いかと…
- 更紗 帆奈: 魔女とかの情報を共有するため それだけ…他に意味はないから
- みこと: へ~…ふ~ん…
- 更紗 帆奈: …まあ、思ってることがあるなら ついでに書けばいいんじゃない?
- 更紗 帆奈: あたしたち一応、コンビだから…
- みこと: 帆奈ちゃん… うれしい!一生、大切にするね!
- 更紗 帆奈: いや…話聞いてた? ちゃんと書いてよ
- みこと: なんだか気恥ずかしいけど こうして私たちは交換日記をすることになった
- みこと: はい、書いてきたよ帆奈ちゃん!
- 更紗 帆奈: え、もう? 昨日渡したところなのに…
- みこと: 書くことがいっぱいあるんだもん 仕方ないよ
- みこと: あ、それとね… 日記のお礼にこれを買ってきたの
- みこと: お揃いのペン! 日記を書くときはこれを使って!
- 更紗 帆奈: …あたしの趣味とは違うんだけど
- みこと: え、なんで?可愛くない? ほら持ってみて
- 更紗 帆奈: こう…?
- みこと: わ~、ファンシーなペンを 持ってる帆奈ちゃんかわいい~!
- 更紗 帆奈: …捨てる
- みこと: やめてやめて!嘘だから!
- みこと: 正直なところ 日記に何を書くかすごく迷った…
- みこと: でもそれは、私が自分を偽ってきた証拠… たくさん嘘を重ねてきたから自分を見失い 書くべきものを見つけられなくなっている
- みこと: でもね…私は気づいたんだ
- みこと: 自分で自分を見失ってしまったのなら 誰かに見つけてもらえばいいって…
- みこと: 帆奈ちゃん… 今はまだ勇気がないから 真実をすべて明かすことはできないけど
- みこと: けどいつか…それができるようになればいい
- みこと: …心から、そう思う
- みこと: でも私は、偽りの世界しか 映していなかった
- FILENAME: text_310443-1.txt
- 更紗 帆奈: 瀬奈へ
- 更紗 帆奈: 瀬奈の家に呼ばれてから… 親御さんに許してもらったけど それでも…
- 更紗 帆奈: 帰りが遅くならないように 団地の周辺で結界を探してるでしょ?
- 更紗 帆奈: そんな理由で決めた割に 使い魔はたくさん見つかる
- 更紗 帆奈: これってさ 瀬奈の団地に魔女が いるってことなのかな?
- 更紗 帆奈: とりあえず、今度 徹底的に調べてみようよ
- 更紗 帆奈: 本当に魔女がいたら あんたも不安でしょ?
- みこと: 帆奈ちゃんへ
- みこと: 心配してくれてありがとー! 帆奈ちゃんはやっぱり優しいなあ
- みこと: あ、そういえばね、学校の帰りに クレープ屋さんを通りがかったの
- みこと: クラスメイトがよく行ってるんだけど 今度、私たちも行ってみない?
- みこと: 美味しいらしいから 帆奈ちゃんも気に入ると思うな!
- みこと: ああ、楽しみだなあ… お金貯めておかないと
- 更紗 帆奈: 瀬奈へ いや、魔女探そうよ
- みこと: えー、日記それだけ!? もっと色々書いてほしいな…
- みこと: これを機に帆奈ちゃんのこと いっぱい知りたいからね
- みこと: たとえば…帆奈ちゃんって 学校ではどんな感じなの?
- 更紗 帆奈: …そんなことより 魔女の話しようよ
- みこと: もー…教えてくれても いいのに~…
- みこと: あ、そういえば、うちの家族がまた 帆奈ちゃんを連れてこいって うるさいの
- みこと: 帆奈ちゃんの家はどんな感じ? 私も挨拶した方がいい?
- 更紗 帆奈: 別にいいよ、そんなの
- みこと: なんか冷たいなあ…
- みこと: 魔女の話じゃないと 書いてくれないの?
- みこと: そうだな…魔女かあ…
- みこと: というか、魔女ってどれくらい ここにいるんだろうね
- みこと: 魔法少女も 他にどれだけいるんだろう?
- みこと: 私たち以外にもきっといるはず どんな人たちなんだろう…
- 更紗 帆奈: 会ってみたいの?
- みこと: 会いたくないの?
- 更紗 帆奈: 他の魔法少女なんて 要は競争相手だからね
- みこと: グリーフシードのこと? そっか…そういう考え方も できるんだ…
- 更紗 帆奈: とりあえず、他のやつらの動きには 注意しておこうか
- 更紗 帆奈: 魔力を回復させられなくて 魔法が使えなくなることも 考えられるからさ…
- みこと: 暗示が使えなくなる…
- みこと: そんなこともあり得るのかと気づくのと同時に 私は言いようのない不安に支配された
- みこと: 『しばらく遊びに行ってきます 食費は前の分で…』
- みこと: お母さん…
- みこと: 暗示をかけていれば手紙だけで姿を見せない お母さんのことや辛いことも忘れられる…
- みこと: でも今の私には帆奈ちゃんがいるから 自分に暗示をかけなくても耐えられる
- みこと: 問題なのは、暗示が使えなくなると 私が何の役にも立てなくなること
- みこと: 私は暗示に頼り切った戦い方をしているから 使えなくなったら魔法少女として 満足に戦えなくなる
- みこと: そうなってしまったら…きっと帆奈ちゃんは 私のそばから離れてしまう
- みこと: それが何より不安だった
- みこと: …知ってるんだ、帆奈ちゃんが 私のそばにいてくれるのは…
- みこと: 私が使い道のある魔法少女だからって
- みこと: 帆奈ちゃんにとって私は 競争相手ではない、協力し合える魔法少女… しかも無条件に
- みこと: だから帆奈ちゃんは私といてくれる というか、そうでなきゃ私なんかのそばに いてくれるはずがないんだ
- みこと: 嫌だよ…帆奈ちゃんに 置いていかれたくない…
- みこと: もうこの現実世界の中で 私を必要としてくれるのは 帆奈ちゃんしかいないから…
- みこと: そこに打算があったっていい 裏の事情があっても何でもいい
- みこと: 帆奈ちゃんがここにいてくれるなら何でも…
- FILENAME: text_310443-2.txt
- 更紗 帆奈: 今日も空振り… 使い魔ばっかりだったね…
- みこと: 帆奈ちゃん 次の場所を探そう
- みこと: 魔女を倒さないと
- 更紗 帆奈: …いや…もう遅いし…
- みこと: そんなこと言ってられないよ!
- みこと: 魔法少女は魔女を 倒さないといけないんだから!
- 更紗 帆奈: う、うん…
- 更紗 帆奈: 瀬奈へ
- 更紗 帆奈: 最近、すごく熱心に 魔女を探してるけど、何かあった?
- 更紗 帆奈: …他の魔法少女に会って 何か言われた、とか…
- みこと: ううん、会ってないよ
- みこと: ただ…ほら、魔女がみんなを 苦しめてるんだから
- みこと: 魔法少女として 何とかしたいだけ
- みこと: それが私たちの仕事だからね
- 更紗 帆奈: そう… それならいいんだけど
- みこと: もちろん私は そんな立派なことは思っていない
- みこと: 自分のために必死… ううん、焦っていた
- 十七夜: まずは一段落だな
- みこと: 和泉…十七夜さん…! ありがとうございました!
- 十七夜: うむ
- みこと: その魔法少女…十七夜さんは 私たちよりよっぽど戦いに慣れた 雰囲気があった
- みこと: 私は、魔法少女の知り合いが増えてうれしい といった自分を演じながら、彼女に探りを入れた
- みこと: 結論としては…彼女とは仲間になれない
- みこと: 魔女探索をしているとき… 色々と話しかけて情報を得ようとしていたら 私はあることに気づいた
- みこと: それは、私が情報を聞き出そうとしても 未然に防がれてしまうこと
- みこと: 偶然なんかじゃなかった
- みこと: 私がこれを聞こうと思ったことを 何度も会話で先回りして 回避するのだから
- みこと: …魔法だと直感した
- みこと: 私は暗示をかけて言うことを聞かせられる… 帆奈ちゃんは誰かの魔法をコピーして 自分の魔法にすることができる…
- みこと: そんなふうに何でもありなんだ 人の心が読める魔法くらいあるはず
- 十七夜: …………
- みこと: …………
- みこと: 私がたくさん嘘を吐いているって この人は気づいているかもしれない
- みこと: もしそうだったら、危険だ
- みこと: 帆奈ちゃんにも伝わってしまうかもしれない
- みこと: だから私は、十七夜さんの記憶を消すことにした
- みこと: もう私に関わってほしくない 私のことをすっかり忘れてもらうんだ
- みこと: 大丈夫、暗示を使えばきっとできるはず…
- みこと: そう思って十七夜さんを追いかけると すでにそこには帆奈ちゃんの姿があった
- 更紗 帆奈: あたしたちのことは もう忘れてください…
- 十七夜: …なぜだ?
- 更紗 帆奈: …あんた…面倒くさそうだから
- みこと: ――っ!?
- みこと: (帆奈ちゃん もしかして十七夜さんの記憶を)
- 更紗 帆奈: あたしが消してあげるから!
- 十七夜: なっ…!?
- 十七夜: …………
- 十七夜: …ん…
- 十七夜: …?
- みこと: 十七夜さんは小首を傾げながらも 何ごともなかったかのように去っていった
- みこと: まるで、これまでのことが 彼女の中で「なかったこと」になったように
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …あっは…
- みこと: 帆奈ちゃんの魔法は上書きの魔法… 誰かの魔法をコピーすることができる
- みこと: といっても帆奈ちゃんは私の暗示の魔法を 気に入って、ずっとそれを使っていた
- みこと: そう…帆奈ちゃんは私と同じ魔法を使える
- みこと: つまり、これは…
- みこと: 私がやろうとしていたように 帆奈ちゃんも暗示を使って十七夜さんの記憶から 私たちの存在を消したってこと
- みこと: 彼女は私たちと出会っていない 少なくとも彼女の中ではそうなっている
- みこと: たぶん、私が警戒しているのを見て そういうふうに処理してくれたんだ
- みこと: 帆奈ちゃんは本当に優しい…
- みこと: どうせならグリーフシードに関することも きれいさっぱり消して、競争から脱落させれば よかったのに、それをしなかったんだもん
- みこと: …本当に優しい
- みこと: でも、大丈夫だよ
- みこと: そう…大丈夫
- みこと: 心優しい帆奈ちゃんのかわりに 私がいっぱいグリーフシードを 手に入れればいいだけなんだから
- みこと: …………
- みこと: ソウルジェムがひどく濁っている
- みこと: 私は起きている間はずっと魔法を 使っているようなものだったから 魔力の消費が激しい
- みこと: もっと手に入れないと…って思った
- みこと: そして私は 魔女退治に没頭していく…
- みこと: どうせなら私が役に立つことも 帆奈ちゃんにアピールしておこうと思って 本当にたくさん戦った
- みこと: 帆奈ちゃんと一緒にいたい… そればかり考えて
- FILENAME: text_310443-3.txt
- みこと: 帆奈ちゃんへ
- みこと: 明日はどこから探そっか? また団地の方で探す?
- みこと: 一段落ついたって言ってたけど 本当にそうかな?って思うの
- みこと: それとも遠出して探しにいく? それもいいね!
- 更紗 帆奈: 瀬奈へ
- 更紗 帆奈: 魔女のこともいいけど 最近さ…そればっかりじゃない?
- 更紗 帆奈: 学校には行ってる? 家にもちゃんと帰ってる?
- 更紗 帆奈: 根を詰めないで ほどほどにした方がいいと思う…
- みこと: なに言ってるの、帆奈ちゃん
- みこと: 手を抜いたらそれだけ みんなが困ることになるでしょ?
- みこと: 私、みんなのために魔女と戦って 平和を守るのはやりがいを感じて …すごく充実してるの
- みこと: 私は今、とっても幸せ だからやめたりしないよ
- みこと: 交換日記をはじめた頃は 帆奈ちゃんが魔女の話ばかりしていたけど 今では立場が逆になっている
- みこと: 帆奈ちゃんは、戸惑っていた
- みこと: でも本当のことを話すわけにはいかない …浅ましい自分を見せたくなかったから
- 更紗 帆奈: …ねえ、瀬奈…実はあたし 言ってないことがあるの
- みこと: 何かな、改まって… そんなふうに言われると 緊張しちゃうかもー
- 更紗 帆奈: あたし 学校でいじめられてたんだ
- 更紗 帆奈: …その上、両親はクズで 結局両方死んでさ… 施設送りになったんだけど…
- みこと: 帆奈ちゃんはこれまでどんな人生を 送ってきたのか赤裸々に書いてくれた
- みこと: それは私が体験したものより壮絶で 読んでいるだけで辛くなるものだった
- 更紗 帆奈: いいことなんて何もなくて 気の許せる人もいなくて みんな敵だった
- 更紗 帆奈: 真っ暗だったんだ あたしの人生
- 更紗 帆奈: けど瀬奈と出会って…
- 更紗 帆奈: ふたりで時間を忘れて 話したり…色んな場所へ 行ったりしたよね?
- 更紗 帆奈: なんか、そういうのがさ
- 更紗 帆奈: 私の中できらきらしてる
- 更紗 帆奈: これからもずっと真っ暗 なんだって思ってたから 余計にまぶしく思える…
- 更紗 帆奈: あたしなんかにも そんなものが手に入るんだ
- 更紗 帆奈: …そう瀬奈が教えてくれた
- 更紗 帆奈: だからもし 瀬奈が何かに苦しんでたり もうムリだってなってたりしたら…
- 更紗 帆奈: あたしを頼ってよ
- 更紗 帆奈: あたしに、何でも言ってよ
- みこと: 何でも、言う…? それって…本当のことも…?
- みこと: …今が、そのときなのかな…
- 鏡のみこと: 「もう打ち明けようよ」
- みこと: でも…嫌われるんじゃ…
- 鏡のみこと: 嫌われるわけない!
- みこと: ――っ!?
- 鏡のみこと: ずっと一緒にいたんだから わかるでしょう?
- 鏡のみこと: 帆奈ちゃんなら 嘘を吐いていたことだって
- 鏡のみこと: 許してくれる
- 鏡のみこと: 嫌わずにいてくれる
- 鏡のみこと: 私が役に立たなくなったって 置いていったりしない
- 鏡のみこと: それくらいわかってるでしょう? ずっと一緒にいたんだから
- みこと: …そう、わかっていた
- みこと: わかっていたけど、怖かった
- みこと: 何かを信じると 裏切られるような気がして…
- 鏡のみこと: 大丈夫…帆奈ちゃんは 私を裏切ったりはしない
- 鏡のみこと: 信じようよ、帆奈ちゃんを
- みこと: 帆奈ちゃん…
- みこと: 私は、これまで隠していたことを全部書いた
- みこと: 学校のことも、家のことも 帆奈ちゃんに偽の家族を紹介したことも、全部
- みこと: そして、ごめんなさいと謝った
- みこと: 結局私は、何も持ってないの
- みこと: だから偽りで埋めていた
- みこと: 空っぽなんだ、私は
- みこと: 帆奈ちゃんは私と過ごした日々を きらきらしたものだって言ってくれたけど
- みこと: それは偽りの私との日々…
- みこと: でも、もし…こんな私を許してくれて 一緒にいてくれるのなら
- みこと: 空っぽの私でも そういうきらきらとしたものを 手に入れられるかな…?
- みこと: 自分さえない私でも ここにいていいんだって思える… そういう、きらきらとした美しいものを
- みこと: 帆奈ちゃんと一緒なら 手に入れられそうな気がする
- みこと: そうだったらいいな…
- みこと: そこまで書いて 私はそのページを本音と一緒に破り捨てた
- みこと: そして…偽りを書き綴る
- みこと: そうなんだ…帆奈ちゃんにも 大変なことがあったんだね…
- みこと: でも、大丈夫 これからは私が守ってあげる
- みこと: 話してくれてありがとう
- 更紗 帆奈: そういうことじゃなくて…
- 更紗 帆奈: あのさ、はっきり言うけど あたしは魔女のことなんて 知ったこっちゃないのよ
- 更紗 帆奈: 瀬奈が大丈夫なのか それだけが気がかりなの!
- 更紗 帆奈: もし瀬奈が色んなことに がんじがらめになって…
- 更紗 帆奈: 自分自身でもどうしようも なくなっていたら
- 更紗 帆奈: いっそ… あたしと一緒にどこかへ…
- 更紗 帆奈: …いや…パーッとどこかで 遊ぶのもいいかもって…
- みこと: 私はそんなことはしない… どこにも行ったりしないよ
- みこと: ここで守りたいものが… ここでしか得られない 幸せがあるから
- みこと: だから私はここで 魔法少女として戦うの
- 更紗 帆奈: …そっか
- みこと: うん
- みこと: 私は大丈夫だから
- みこと: ここで全部打ち明けるのは… 許してくれるとわかっている相手に泣きつくのは
- みこと: 甘えでしかない
- みこと: 私は立ち向かわなくてはならない
- みこと: いじけて、殻にこもるのではなく 状況を変えるため行動を起こさなくてはならない
- みこと: 自分を取り巻くすべてから 逃げていてはダメなんだ
- みこと: まず私にはやるべきことがある
- みこと: それを果たしてから 今度こそ帆奈ちゃんと向かい合おう
- みこと: …とそのときの私は思った
- みこと: けど、もう手遅れだったんだ
- みこと: あ、あああああああ!
- 更紗 帆奈: 瀬奈!?
- みこと: 報いの時間は目前に迫っていたのだから
- FILENAME: text_310443-4.txt
- みこと: は、帆奈ちゃん! ど、どうしよう!?
- みこと: 苦しいよ…!! た、助け…て…!!
- みこと: 私は無理をしすぎていた
- みこと: そのおかげでソウルジェムには 穢れが溜まりきってしまい…
- みこと: この団地の屋上で…私は 私ではない何かに成り果てようとしていた
- 更紗 帆奈: 無理してんじゃないの…? 時々、しんどそうな顔してるよ?
- みこと: 魔女探しに向かう前 帆奈ちゃんは私にそう言った
- みこと: 前に、私の偽の家に招いたときも 無理してるんじゃないかって言われたけど… やっぱり帆奈ちゃんに隠しごとはできないね
- みこと: ねえ、本当は何もかも気づいている? 気づいた上で帆奈ちゃんは気づいていないふりを してくれていたの…?
- みこと: どうなんだろう… 今となってはもう確かめる術がない…
- 更紗 帆奈: 瀬奈!瀬奈!
- みこと: 帆奈ちゃんがひどく取り乱して 私の名を呼んでいる…
- みこと: 私のせいで帆奈ちゃんにそんな顔を させてしまうのは、すごく嫌だった
- みこと: どうせなら、笑っていてほしい
- みこと: 私はあのときはじめて ここにいていいんだって思えた
- みこと: そう、私はここに… この神浜に、この世界にいたかった
- みこと: 私を産んでくれた両親のもとで 私に話しかけてくれたクラスメイトたちと そして、一番の友だちの帆奈ちゃんと一緒に…
- みこと: …みんなで、幸せになりたかった
- みこと: けど私は傷つくのが怖くて 別の世界に逃げ込んでしまった
- みこと: お父さんやお母さんにも何かしてあげられた はず…こんなの本当の家族ではないって 思い込むより先に…そう…
- みこと: 勇気を出して立ち向かうべきだったんだ
- みこと: クラスメイトたちにも自分を偽らず 勇気を出して本当の自分をさらけ出すべきだった
- みこと: 帆奈ちゃんにも何でも伝えるべきだった
- みこと: 自分から踏み出せば… 傷つくのを恐れなければ きっと何もかもうまくいったはずなんだ
- みこと: …そういったことをこの前、理解したのに…
- みこと: どうして希望はいつも私を裏切るの…?
- みこと: 意識が持っていかれそうになる
- みこと: これから私はどうなるんだろう? それはまったくわからないけど…
- みこと: 夕日がきれいなのはよくわかった
- みこと: ああ…辛くて悲しいことばかりでも 世界はこんなにきれいに見えるんだ…
- みこと: 私はいったい何を見ていたんだろう…? こんなにもきれいだって どうして知ろうとしなかったんだろう
- みこと: バカだよ…何にも知ろうとせずに お父さんを消しちゃうなんて…
- みこと: 報いを受けて当然だ
- みこと: …帆奈ちゃん…!
- みこと: でも、私はたくさんの感謝に溢れている
- みこと: 本当にどうしようもないくらい 感謝に満ち溢れている
- みこと: だってここに帆奈ちゃんがいてくれるんだもん
- 更紗 帆奈: 瀬奈ーっ!
- みこと: 帆奈ちゃんの向こう側で 夕日がきらきらと輝いていた
- みこと: それはあんまりにもきれいで 思わず涙がこぼれてしまう
- みこと: 私はそれを、伝えたかった…
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …よし…こんなもんかなー?
- 更紗 帆奈: …あっは…変なペン…
- 更紗 帆奈: 瀬奈、聞こえてる? あっは!聞こえないか
- 更紗 帆奈: まー、どーでもいいんだけどさー とりあえずさー
- 更紗 帆奈: あんたがあのとき 何を言おうとしたのか
- 更紗 帆奈: なんとなーくだけど 伝わってきたんだよね~
- 更紗 帆奈: んで、あたしとしてはさ
- 更紗 帆奈: …その気持ちをあんたに 忘れてほしくないわけ
- 更紗 帆奈: なんでかなー? なんでだろうねー?
- 更紗 帆奈: …ま、きれいなものは きれいなままでいてほしいでしょ
- 更紗 帆奈: そういうこと…あっは…
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: 待ってて、瀬奈
- 更紗 帆奈: あんたが本当に 欲しがってたものは…
- 更紗 帆奈: あたしがここに用意してあげるからさ
- みこと: 本当に欲しかったものは 何だったんだろう?
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