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- FILENAME: text_520510-0.txt
- <かつて神浜には、ヴィランがいた>
- <そのヴィランは暗示の魔法を使って 多くの人たちを…果ては魔女までをも操り 哄笑とともに厄災をばら撒いたのである>
- <その名は…更紗帆奈(サラサハンナ) 彼女もまた魔法少女だった…>
- <彼女、あるいは彼女の操る魔女によって 運命を翻弄されることになった少女は多くいた 常盤ななか…彼女もその中のひとりである>
- <代々華心流の宗家を受け継いできた常盤家 しかし、魔女の口づけを受けた弟子たちにより 常盤家はすべてを失い、かわりに彼女は 宿命を背負わされることになった…>
- <それでも…同じ魔女に操られた者により 実家の古書店が放火された夏目かこや 魔女によって繋がった他の少女たちと 盟約を結び、真相を追うななか>
- <すべては復讐を果たすという宿命のために>
- <施設「つつじの家」で育った彼女たちも 自分たちを嘲笑するかのような事件に 翻弄されながら、それでも手がかりを追い…>
- <大東団地で起きた事件を調べる彼女たちも すべての元凶である更紗帆奈を追っていく>
- <運命は複雑に絡み合い 多くの困難に行く手を阻まれようと 彼女たちは手を取り合い、その壁を乗り越える>
- <そして、すべての事件に終止符が打たれた… 更紗帆奈が自らのソウルジェムを砕く という形で…>
- <享楽的にひとり厄災を振り撒きつづけた… 誰もが更紗帆奈のことをそう思っていた だが、「ひとり」ではなかった>
- <帆奈のそばには瀬奈みことなる魔法少女がいて すべてを台なしにするべく 更紗帆奈と行動をともにしていたのである>
- <…とはいっても瀬奈みことは 魔女になってすでに肉体を失い 意識体として更紗帆奈の中にいたのではあるが… 神浜を滅ぼすという魔女の影響を多分に受けて>
- <更紗帆奈がやりたかったことは 瀬奈みことが憎むもの、彼女を縛るものを壊し 滅びの意思に囚われないようにすること>
- <そして巨悪となった自分の死をもって 憎しみや絶望に呑まれ、悪に堕ちると 行く着くところは敗北しかない そう瀬奈みことに教えることだった>
- <だから最後に更紗帆奈は 瀬奈みことが生まれ変わって生きていけるよう 祈りに似た希望の明かりを神浜に灯した>
- <瀬奈みことはその光を受けいれることが どうしてもできずに世界を滅ぼす戦いに 身を投じたが…それも終わり すべては過去へ、思い出へとなっていく…>
- みこと: 『それでも帆奈ちゃん 私という存在をいつも見つけてくれた たったひとりのあなたを… 私は、追い求めつづける』
- みこと: 『たとえ何が再び立ちはだかっても…』
- FILENAME: text_520510-1_bXUCP.txt
- みこと: あの頃、放課後が待ち遠しかった
- みこと: 学校の授業が終わると教室から飛び出して 落ちていく太陽に照らされた町を走る… この瞬間ばかりは 目に映るものすべてがきらきらと輝いていた
- みこと: お店のガラスに映った私を見つけると ちょっとだけ前髪を直して ああでもなんか違うなってもう1回直して いつもの喫茶店へ向かってまた走り出す
- みこと: 呼吸は切れ、鼓動は高鳴る 待っている人のこと以外、何も考えられない でもそれだけで十分だった…この夕焼けの一瞬は 私と彼女だけで成立しているのだから
- みこと: …私はここにいた
- みこと: はあ、はあ…
- みこと: 息を整えながら、勝手に使っちゃってる お母さんのコンパクトを取り出して 鏡に映る自分を見るんだけど… ああやっぱり前髪が気になる
- みこと: なんでかな…コンパクトには魔法が宿っていて なりたい自分になれるものだって 相場が決まっているのに 鏡を見れば見るほどそれから遠ざかる気がする
- みこと: でも…いつまでも髪を弄っている暇はない きっと彼女はいつものように もう席について私を待っているはずだから
- みこと: 窓際の、私たちの指定席で 帆奈ちゃんは待ってくれていた
- みこと: いつもそう…私の方が近いはずなのに 帆奈ちゃんが必ず先に着いていて 注文もせずに待ってくれている
- みこと: 本を読んでいるみたい…何の本だろう? 伏せられた帆奈ちゃんの視線がやけに優しくて 私は声をかけるのも忘れて じっと見つめつづけた
- みこと: ふと…帆奈ちゃんはこちらを見た まるで最初から私がここにいるのを わかっていたみたいに何の驚きもなく 小さく笑って…
- みこと: 「見つけた」と口だけ動かした
- みこと: いつでも…どこに私がいたって 帆奈ちゃんは私を見つけてくれたよね?
- みこと: 私が魔女になってしまって 移植の魔法を使って自分の人格だけを そばにいた帆奈ちゃんの中へ移したときも やっぱり私の存在に気づいてくれた
- みこと: 消耗しきっていて話すこともできず 消えかけの幽霊みたいだった私を 暗闇の中から見つけ出して 魔力を分け与えて助けてくれたんだ…
- 更紗 帆奈: 瀬奈はあたしにとってさ 命の恩人だよー
- みこと: 命の?魔力をくれて、私を助けて くれたのは帆奈ちゃんじゃ…
- 更紗 帆奈: 実はあたしさー 死のうとしてたんだよねー
- みこと: ――っ!?
- 更紗 帆奈: あたし、わかってるからさー ソウルジェムのこと
- 更紗 帆奈: 派手に死ぬつもりで、魔力で ソウルジェムを砕こうとしたら
- 更紗 帆奈: なんか失敗して…っていうか この場合は成功?まあ、ともかく
- 更紗 帆奈: 結果的に瀬奈へ魔力が渡って… あたしのもとへ帰ってきてくれた
- 更紗 帆奈: 瀬奈がここにいるなら もう、死のうとしなくていい
- 更紗 帆奈: だからー 瀬奈は命の恩人ってわけ!
- みこと: 帆奈ちゃん…
- 更紗 帆奈: ホント、死ななくてよかった~
- 更紗 帆奈: …お願いだから、もうやめてよ あたしを置いていくのは
- みこと: 置いていったのは 帆奈ちゃんの方じゃない
- みこと: …世界への希望を残すんじゃなくて 帆奈ちゃんが残ってほしかったのに…
- みこと: ねえ帆奈ちゃん… 私は帆奈ちゃんがいてくれたら それでよかったの
- みこと: だって帆奈ちゃんがいなかったら いくら鏡の魔女のエネルギーが この星を包む皮膜になって 自動浄化システムが機能していたところで…
- みこと: 私が生きている意味はない
- みこと: 何もかも終わって…魔法少女の未来への希望も 解決して…ううん、解決したからこそ 魔女ではない私自身の問題が浮き上がってきて 強くそう思うようになったんだ、きっと…
- みこと: 帆奈ちゃん…
- みこと: 会いたいよ、帆奈ちゃん…
- みこと: ここには何にもないよ…
- みこと: …私が私であったのは 帆奈ちゃんと過ごしたあの日々だけ… あの日々は…私の幸せの飽和点 私の希望なんだ
- みこと: いつまで私はこんなところにいさせられる? 人格だけという存在で、帆奈ちゃんのいない 希望のない世界で…ひとりぼっちで…
- みこと: …帆奈ちゃんにひと目会いたい 今度こそ帆奈ちゃんに触れたい 私の手を取って連れていってほしい 誰もいない私たちだけの、きれいな世界へ…
- みこと: ねえ帆奈ちゃん… もう耐えられないよ
- みこと: 私、十分頑張ったよね? 十分、やれたよね?
- みこと: 『だから…もう、いいよね?』
- みこと: 心を決めてからの日々はあっという間だった 季節は冬になり、すでに雪が降っている クリスマスもまだだというのに
- みこと: …ねえ環さんたちは クリスマスどうするの?
- いろは: え、みことさん…?
- いろは: よかった…全然お話しして くれないから心配して…
- やちよ: どうしたの?
- いろは: あ、いえ、みことさんが 久し振りに話しかけてくれて
- うい: お姉ちゃんの中にみことさんが いるのってまだ慣れないね…
- みこと: 私はクリスマスパーティーの話を切り出した 大勢を集めて盛大にお祝いしようと
- みこと: 大きなツリーに飾りつけして 料理もたくさん用意して プレゼント交換もして… 楽しいクリスマスにしようと
- みこと: 私、ずっとひとりだったから クリスマスにいい思い出がないの
- みこと: だから今年は いいクリスマスにしたいなって…
- みこと: …これは本当に思っている
- みこと: ともかく…やちよさんたちにも 今言ったこと伝えてくれる…?
- みんな: …………
- やちよ: …急に何かと思ったら そういうこと
- いろは: …はい、今年は いいクリスマスにしましょうよ
- うい: みんなにも声をかけないとね
- やちよ: …準備が大変そうね
- みこと: どうせなら専門のお店でツリーの 飾りを買おうって伝えて
- みこと: 遠くまで行けば きっとあるはずだから
- みこと: はじめてだから本格的なクリスマスをしたいと ダメ押しで伝えてもらうとみんな快諾してくれた
- みこと: もちろん忘れずに、荷物が多くなるから 次の休みにみんなで買い出しに行った方が いいと伝えてもらい、みかづき荘の面々は その通りにしてくれることになった
- いろは: それなのに、どうして 私だけマギアレコードに…
- みこと: 急に別行動することになったの いやだった?
- いろは: いやじゃないけど… なにも買い出し当日じゃなくても
- ねむ: …あれ、お姉さん?
- いろは: あ、ねむちゃんひとり?
- ねむ: そうだよ…前にも言わなかった?
- ねむ: 灯花は今日みふゆのところにいる 実家には戻っていないようだけど
- みこと: そう…前にも言っていた 私は覚えていたから今日を買い出しの日に 指定して他の人たちを遠くへやった
- ねむ: それより…今日はツリーの飾りを 買いにいくんじゃなかった?
- いろは: そうなんだけど…みことさんが ここに用事があるって…
- みこと: んふふ…ごめんね環さん
- いろは: え…?
- みこと: いいクリスマスにしたいのは本当だけど… あなたたちとそんな思い出を つくりたいわけじゃないの
- みこと: 私が欲しい思い出はいつだって 帆奈ちゃんとの思い出…
- みこと: 『だから…取り戻すことにしたの』
- ねむ: ――っ!?
- ねむ: ぐっ…!
- いろは: ねむちゃん!
- ねむ: …………
- いろは: よ、よかった…何ともない? 急に倒れたからびっくりして…
- ねむ?: …んふふ うまくいった
- いろは: ――っ!?
- いろは: そ、その喋り方… まさか…みこと、さん?
- みこと: そう、正解~ 移植の魔法で乗っ取っちゃった
- いろは: 移植の、魔法…まだ使えたの…?
- みこと: 魔法は消えたりしないよ 私という人格がある限り
- みこと: 『まあ、あなたに気づかれたら面倒くさいから こっそり魔力を溜めていたんだけどね 大変だったなあ、本当に…これで柊ねむを 乗っ取れなかったら最悪だよね、んふふ…』
- みこと: …柊ねむじゃないと 実行できないんだから…
- いろは: え…?
- みこと: それじゃあ、取り戻しちゃうね
- みこと: …私の希望を
- FILENAME: text_520510-2_bXUCP.txt
- いろは: …はじめからねむちゃんを 乗っ取るつもりでここへ?
- みこと: 他に何があるの?
- いろは: …クリスマスは?
- みこと: 買い出しのことなら、あなたの 仲間にすぐ駆けつけられるとね…
- みこと: ほら…困っちゃうでしょう? だから遠くへ行ってほしくて
- いろは: …また、戦いを はじめるつもりなの?
- いろは: 私が約束を果たせなかったことに もし不満があるのなら…
- みこと: そんなの、どうでもいい
- いろは: ど、どうでもいいって…
- みこと: ねえ環さん、絶望に呑まれずに 希望を持つのはいいことだよね?
- いろは: えっ…う、うん
- みこと: 私、あなたとは色々とあったけど それでも協力してあげたよね?
- みこと: 随分、いい子でいたよね?
- みこと: …ならサンタさんがプレゼントを 持ってきてくれてもいいと思うの
- みこと: でも、サンタさんは きっと私を見つけてくれない
- いろは: あの…何の話を…?
- みこと: この世界には 私の希望がないって話
- みこと: だから、ね?サンタさんも 世界も何もしてくれないなら…
- みこと: 『私が自分の手で取り戻すしかないでしょう? 私の希望を…帆奈ちゃんを』
- いろは: ――っ!?
- みこと: んふふ…ようやく… ようやく会えるよ、帆奈ちゃん!
- みこと: 帆奈ちゃん…大好きな帆奈ちゃん 私のすべての帆奈ちゃん…
- みこと: 透明な存在だった私を どこにいても見つけてくれた 帆奈ちゃん…
- みこと: 帆奈ちゃんがいてくれるから 私も自分がここにいるんだと思えた
- みこと: だから…今度は私の番
- みこと: それがどんなに理から外れたものであっても 帆奈ちゃんを世界から消えさせはしない 帆奈ちゃんはここにいる…ここにいるんだ! それを証明してみせる!
- みこと: 帆奈ちゃんに証明してもらったこの私が…!
- 更紗 帆奈: …見つけた
- 更紗 帆奈: ずっと捜してたよ、瀬奈
- 更紗 帆奈: …あ
- 更紗 帆奈: 瀬奈
- みこと: 待ってて、帆奈ちゃん 今度は私が見つけてみせるから!
- いろは: み、みことさん…! 何を…!?
- みこと: 『ああ…』
- みこと: 『…見つけた、帆奈ちゃん!』
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: こ…ここは?
- みこと: 帆奈ちゃん…
- 更紗 帆奈: え…?
- みこと: うっ…うう…
- みこと: 帆奈ちゃあああん!!
- 更紗 帆奈: わっ!? ちょ、ちょっと…!
- いろは: …ねむちゃんの力で帆奈さんを ウワサとして、具現化させた…?
- みこと: …あんまり帆奈ちゃんの名前 口にしないでくれる?
- いろは: え、名前を…?
- みこと: いいから、ともかくあなたは そこで大人しく見ていて
- みこと: さもないとこの体… 大変なことになっちゃうよ?
- いろは: 落ち着いてみことさん
- いろは: あなたがしているのは 失った命を復元するようなもの…
- いろは: 過去を認めずに縋っていたら 私たちは未来に進めなくなる…
- いろは: それに、目の前にいるのは 記録から生まれたコピーだよ…
- みこと: コピー? 違うよ、これは帆奈ちゃん
- いろは: 本物の帆奈さんじゃないよ
- みこと: だから私以外が帆奈ちゃんの 名前を口にするなッ!
- いろは: ――っ!?
- みこと: さてと…次は 私用のウワサをつくらないと
- 更紗 帆奈: え…?
- ウワサ: …………
- 更紗 帆奈: …っ
- 更紗 帆奈: え…なんで、涙…?
- みこと: あ、ごめんね帆奈ちゃん こんな体でべたべたして…
- みこと: 今すぐもとの私に戻るから 待ってて
- 更紗 帆奈: 待つのはそっち! さっきからわけわかんなくて…
- みこと: えー帆奈ちゃんなら すぐ察してくれると思ったのに…
- みこと: 『まあ、ちゃんと説明すると… 帆奈ちゃんは私が蘇らせてね…それで私も この体で帆奈ちゃんにベタベタしたくないから ウワサをつくったってわけ…』
- みこと: …私の体にするために
- ねむ: …っ…
- みこと: …………
- みこと: んふふ…移植の魔法は成功
- みこと: ウワサの人格はまだ覚醒してない …完全に支配できたみたい
- みこと: まあ、そういうふうに つくったから、当たり前だけど
- 更紗 帆奈: …あんた…
- みこと: 帆奈ちゃん、迎えにきたよ 一緒にふたりだけの世界へ行こう
- みこと: 何があっても今度は私が 帆奈ちゃんを守ってみせる
- 更紗 帆奈: あたしを、守る?
- みこと: そう、それが私の… なりたい自分だから
- FILENAME: text_520510-3_bXUCP.txt
- いろは: みことさんもうわさを…?
- ねむ: …そうみたい、だね
- いろは: ねむちゃん、大丈夫!?
- ねむ: 僕は大丈夫…と言いたいけど かなり消耗している
- ねむ: うわさを連続で つくらされたからね…
- ねむ: もっとも…なぜ僕の体を乗っ取り つづけなかったのか不可解だけど
- 更紗 帆奈: …あたしは、あのとき ソウルジェムを砕いたはず…
- みこと: さあ、こんなところから さっさと逃げよう、帆奈ちゃん
- 更紗 帆奈: あんたは… うっ…!
- みこと: は、帆奈ちゃん…!
- みこと: …お前、帆奈ちゃんに何かした?
- ねむ: 君の好きなようにやらせると どうして思えるんだい?
- みこと: 許さない…!
- ねむ: うっ…!
- いろは: や、やめて、みことさん!
- みこと: 私たちのことは放っておいて!
- ねむ: …今の君を放っておくことは できないよ…何をすることか…
- みこと: 私は帆奈ちゃんに そばにいてほしいだけ…!
- ねむ: それでうわさを? 無意味な慰めでしかないよ
- ねむ: 「僕の本で確認する限り…彼女は マギアレコードで保管する1冊の本から生まれた …確かに少し特異ではあるけれど それでもウワサに過ぎず、本人ではない」
- ねむ: 「名前は混沌のヴィランのウワサ… 随分と似せてつくったようだね これなら本人と同じ行動を取るかもしれないけど それは自由意思によって生まれたものではない」
- ねむ: ウワサとしての役割を まっとうしているだけなんだ
- みこと: だから帆奈ちゃんじゃないって? そんなわけない…!
- みこと: 『あの日々を帆奈ちゃんが覚えている限り 帆奈ちゃんは帆奈ちゃんなの 偽物なんかじゃない… 幽霊なんかでもない…!』
- みこと: 帆奈ちゃんは帆奈ちゃんとして ここにいる…!
- みこと: 大切な友だちに生きていてほしい 私の望みはそれだけなの…ッ!
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- ねむ: …ともかく、うわさは 消させてもらうよ
- いろは: 消す…?
- ねむ: うわさの本のページを破るんだよ その結果、瀬奈みことは
- ねむ: また人格をお姉さんなり僕なりに 移さないといけなくなるけど
- ねむ: うわさと一緒に消えてしまうより よっぽどいいはずだよ
- いろは: でもそれをしてしまうと 帆奈さんは…
- ねむ: もちろん、消えてなくなる ウワサだからね
- いろは: …私は、みことさんの希望を 簡単に摘みたくないよ
- いろは: それに、帆奈さんを失ったら 今のみことさんはきっと…
- いろは: 私に人格を戻さないで 死を選んでしまうと思う
- ねむ: それは…そうかもしれないけれど
- みこと: …帆奈ちゃん、あいつらが 揉めてるうちに逃げよう
- いろは: 待って、みことさ…!
- いろは: …え?
- いろは: ――っ!?
- いろは: こ、ここは…結界?
- ねむ: …迂闊だったね…今のでも “捜す”に該当するのか
- いろは: え…?
- ねむ: 館の主…瀬奈みことを捜すと 捕らえられる果てなし鏡のうわさ
- ねむ: …逃げられると厄介だね
- いろは&ねむ: ――っ!?
- ???: …っ!
- いろは: くっ…!
- ねむ: お姉さん!
- ねむ: 悪いけど、もう…
- いろは: ダメだよねむちゃん ページを破ったら
- ねむ: けど…
- いろは: …手下のウワサ、かな?
- ねむ: …………
- ねむ: はあ…そうだよ、あれは 瀬奈みことを捜す者を捕まえて
- ねむ: この果てなし鏡に連れてくる 役目を負っている
- いろは: …私たちがそうされたように
- みこと: やっぱり 分けておいてよかった…
- 更紗 帆奈: 何を、分けたの…?
- みこと: うわさとウワサを
- みこと: 『本当はお揃いにしたかったから 帆奈ちゃんみたいにうわさとウワサを 兼ねたかったんだけどね…』
- みこと: 『でも、あとのことを考えたら 分けておいた方がいいかもって思ったの』
- みこと: …こんなふうに使えるから
- 更紗 帆奈: そ、そう…なんだ
- みこと: …帆奈ちゃん ちょっと様子がおかしいけど…
- みこと: 私のこと わかってる、よね…?
- 更紗 帆奈: え…
- みこと: わ、わからないなんてないよね? 帆奈ちゃんに忘れられたら、私…
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: ねえ瀬奈だよ…瀬奈みこと 帆奈ちゃんの相棒の…!
- みこと: …名前、教えてもらえないかな?
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …更紗帆奈
- みこと: え?帆奈っていうの!?
- 更紗 帆奈: …そ、そうだけど…
- みこと: わー!響きが似てるね! 帆奈と瀬奈!
- みこと: 私がその瀬奈だよ!
- みこと: ああっ…!
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- いろは: ねむちゃん 攻撃するのは…
- ねむ: どうも彼女は更紗帆奈絡みだと まともに会話ができなくなる
- ねむ: 彼女の暴走を止めるには 力を消耗させるしかないよ
- いろは: …つまりねむちゃんからの 力の供給はもう断っている…?
- ねむ: とっくにね…瀬奈みことは すでにじり貧だよ
- ねむ: 本を破らないのなら こうするしかない
- いろは: …………
- いろは: みことさん…希望の叶え方は あとで一緒に考えよう
- いろは: だから、今は…!
- いろは: うっ…!
- 更紗 帆奈: …させないって
- いろは: …帆奈、さん…?
- 更紗 帆奈: ようやく事情が呑み込めてきて 整理もついたんだけどさ
- 更紗 帆奈: ひとつだけ 言いたいことがあるの
- 更紗 帆奈: 帆奈と瀬奈って響きは似てないよ 似てるのはたぶん、字面
- みこと: ――っ!?
- みこと: は、帆奈ちゃん…っ!
- 更紗 帆奈: さて、と… これ以上、瀬奈に手を出すなら
- 更紗 帆奈: …あたしが許さない
- FILENAME: text_520510-4_bXUCP.txt
- ねむ: 混沌のヴィラン…
- ねむ: 「暗示を使って意のままに人を操り 社会や世界に対する鬱憤をもとに すべてに逆らっていくが それには秘密の理由がある…といううわさ」
- ねむ: …簡単にまとめるとそうなるけど この書き振りでは…
- ねむ: …まずいことになる前に 決着をつける必要がある
- ねむ: だけど…あの相手に対して それが可能なんだろうか…?
- いろは: 足を狙えば…!
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- いろは: 当たらない!?
- 更紗 帆奈: そんな腑抜けた攻撃じゃあね!
- いろは: ああ…っ!
- 更紗 帆奈: …はあ、はあ…
- みこと: すご~い! 帆奈ちゃん、つよ~い!
- 更紗 帆奈: …ま、まだ 倒したわけじゃないから…
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- みこと: 帆奈ちゃん!
- ねむ: 避けた…!?
- ねむ: うっ…!
- 更紗 帆奈: 回復してないのに よくやるよ
- ねむ: …教えてほしいんだけど、君は なぜ瀬奈みことの味方をする?
- ねむ: いや…なぜ今の君に それができるんだい…?
- 更紗 帆奈: そんなの、あたしが更紗帆奈 だからに決まってるでしょ!
- ねむ: くっ…!
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: どうしたの、帆奈ちゃん?
- 更紗 帆奈: い、いや…なんでこいつら こんなに強いのかな、って…
- みこと: えー帆奈ちゃんが それ言う~?
- 更紗 帆奈: こ、こっちが優位、なのは こいつらが手を抜いてる…から
- 更紗 帆奈: 正直、動きが速くて… 暗示の魔法を使う暇もなかったし
- みこと: 暗示の魔法…? 上書きの魔法じゃなくて?
- 更紗 帆奈: …まあ、瀬奈なら 知ってる…よね
- みこと: そりゃそうだよ 暗示はもともと私の魔法…
- みこと: あ、きっと私の思いが伝わって 帆奈ちゃんの魔法が暗示に…
- いろは: くっ…そういううわさだから… そうなっているだけ、だよ
- 更紗 帆奈: やっぱり立ち上がるか…
- みこと: …何なの? 今楽しいのに…
- いろは: …私たちから逃げても 袋小路なのは変わらない…
- いろは: …それに、帆奈さんだって あなたの都合で生み出して…
- いろは: それは、人の気持ちを 踏みにじる行為だよ
- みこと: うるさい! 何にも知らないくせに!!
- いろは: 私なりに知ってるつもりだよ?
- みこと: …覗き見女が
- 更紗 帆奈: あのさフード頭
- いろは: えっ、はい…?
- 更紗 帆奈: 自分で選んで生まれるやつなんて この世には誰もいないの
- 更紗 帆奈: それに、気持ち?はん!施設の やつらも似たようなこと言ってた
- いろは: それは、つまり…?
- 更紗 帆奈: クソッタレってこと
- いろは: ――っ!?
- みこと: そいつを足止めしておいて
- いろは: 数が多い…
- 更紗 帆奈: フード頭、勘違いしないでよ? あたしは同情なんか欲しくない
- 更紗 帆奈: 敵意が欲しい
- 更紗 帆奈: はは…忘れた? あたしはあんたらの敵…
- 更紗 帆奈: …ヴィランなんだから
- いろは: …っ
- みこと: それじゃあ、ばいば~い 追いかけてこないでね
- いろは: みことさん!帆奈さん!
- いろは: …くっ ねむちゃんは気を失ってる…
- いろは: 私が守りきらないと
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 常盤 ななか: …………
- 夏目 かこ: あ、見つけましたよ ななかさん!
- 夏目 かこ: あのお店がトゥクパっていう 麺料理を出してくれるみたいで…
- 常盤 ななか: …すみませんが、かこさん 未体験麺料理ツアーは中止です
- 夏目 かこ: えっ…そんな…
- 常盤 ななか: 本当に申し訳ありません ですが、いやな胸騒ぎがして…
- 常盤 ななか: …また戦いが起きるような…
- FILENAME: text_520510-5_bXUCP.txt
- みこと: …ここまで来たら 見つからないよね?
- 更紗 帆奈: たぶんね
- みこと: あ、でも、この格好だと 目立っちゃうね
- みこと: ひとまず、こうしておこっか
- 更紗 帆奈: …大東…
- みこと: どうかしたの?
- 更紗 帆奈: あ、えっと…
- 更紗 帆奈: な、な、懐かしいなって…
- みこと: この制服が?
- みこと: んふふ、そうだよね… この格好でよく会ってたもんね
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: ほらー、帆奈ちゃんも
- 更紗 帆奈: わ、わかってる…
- 更紗 帆奈: …これでいい?
- みこと: うんうん、帆奈ちゃんの学生服も 懐かしいなあ…
- 更紗 帆奈: …ねえ、これから どうする?
- みこと: 帆奈ちゃんと楽しいクリスマスを 過ごしたいなあ…
- 更紗 帆奈: クリスマス…?
- みこと: そう…誰もいない世界で、私たち ふたりでクリスマスを過ごすの
- みこと: ―みこと― 折り紙を輪つなぎにして…あ、普通のじゃなくて きらきら光る色とりどりの折り紙で部屋を飾って
- みこと: ―みこと― それで…私は一度も食べたことないけど 七面鳥を用意して一緒に食べるの
- みこと: ―みこと― サンタに扮した帆奈ちゃんからプレゼントも もらって、私もお返しのプレゼントをして…
- みこと: ―みこと― そんなきらきらとした思い出を 最後につくりたいなあ…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …なら、クリスマスが終わるまでは あいつらに消されるわけにはいかないね…
- みこと: 私も、きっと帆奈ちゃんも この逃避行が私たちの思い出の最後であることを 直感的にわかっている
- みこと: 帆奈ちゃんの存在はきっと認められない
- みこと: しかも、本のページを破られると 消滅してしまうような危うい状態… いつあの人たちの気が変わるかわからない
- みこと: …私たちがふたりでいるのは 最初からムリだってわかっている
- みこと: それでも…一緒にいたい
- みこと: 逃げなくちゃ…あいつらに見つからない場所へ この世界の果てにでも逃げれば大丈夫かな?
- みこと: そこに逃げれば、少しはこの時間を 長引かせられるかな…?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 連れていくよ
- みこと: ―みこと― え…?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 誰にも見つからない、誰もいない世界で クリスマスを過ごすんでしょ?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― いい、と思う…あたしも行きたかったんだ そんな世界にさ
- 更紗 帆奈: …幽霊じゃなくて、ウワサって やつになれば行けるなんてね…
- みこと: …置いてったりしない?
- 更紗 帆奈: 置いていったこと…ないでしょ?
- みこと: あるよ!お、覚えてないの…!?
- 更紗 帆奈: あー…じょ、冗談
- みこと: もー!もー!もー!
- 更紗 帆奈: あはは…牛?
- みこと: 怒ってるの!
- みこと: いくら帆奈ちゃんでも冗談に しちゃダメなことがあるんだから
- みこと: 待って、帆奈ちゃん!
- みこと: 私を置いていかないで!!
- 更紗 帆奈: んじゃ…いい感じなんで…
- 更紗 帆奈: …お先~!
- みこと: ――っ!?
- 常盤 ななか: …あっ!!
- 更紗 帆奈: …あっは…笑えるじゃない…
- 更紗 帆奈: …あたしの…人生…
- みこと: 帆奈ちゃああああんッ!!
- みこと: …そうやってソウルジェムを 砕いたことを冗談にするなんて
- 更紗 帆奈: …いたんだ…
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: いや…常盤ななかも あそこにいたなって
- みこと: はい出た、常盤ななかー!
- 更紗 帆奈: な、なに、その反応…
- みこと: 別に~、何でもないよ
- 更紗 帆奈: …ねえ瀬奈、この町を離れる前に 思い出の場所を巡ってみない?
- 更紗 帆奈: あたしが死んでからどうなったか この目で見ておきたいから
- みこと: う、うん、いいけど… 急だね…
- 更紗 帆奈: …まあ、とにかく 早い、うちに…
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: ど、どうしたの?
- 更紗 帆奈: ちょっと、立ちくらみ… 何でもない
- みこと: …本当に大丈夫?
- 更紗 帆奈: 心配いらないって…それより 最初はどこに行く?
- みこと: 最初は…
- みこと: ここがよく来ていた喫茶店!
- みこと: 懐かしいよ~ ここで色んなことを話したよ~
- 更紗 帆奈: そ、そうだね…
- みこと: …帆奈ちゃんはいつも私より 先に来てて、本とか読んでたね
- みこと: どんな本だったっけ?確か、私が 苦手な難しい本だったと思うけど
- 更紗 帆奈: いや…せ、瀬奈は どんな本なら読めるの?
- みこと: あー…それはね…まあ、ね?
- ご注文はお決まりですか?
- みこと: 私、ミルクティー
- 更紗 帆奈: …あたしはホットコーヒー
- かしこまりました
- みこと: 帆奈ちゃんは お砂糖いらないんだよね?
- 更紗 帆奈: …もちろん?
- みこと: すごいな~ やっぱり帆奈ちゃんは大人だなあ
- 更紗 帆奈: ミルクもいらないから
- みこと: わかってるって、んふふ
- 更紗 帆奈: …………
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- みこと: それで、ここが私の学校!
- みこと: みんなに合わせるので必死で いい思い出なんてなかったけど…
- みこと: でも帆奈ちゃんと一緒にここを 台なしにしたのは、いい思い出
- 更紗 帆奈: うん…
- みこと: もう落書き、残ってないね
- みこと: 黒板に書いた 私たちの名前も…
- みこと: まあ、当たり前だよね…あはは
- 更紗 帆奈: …帆奈と瀬奈 そう書いたんだよね?
- みこと: そうだよ 覚えててくれてうれしいなあ…
- 更紗 帆奈: …そうだと思った
- みこと: え、私がうれしいことが?
- 更紗 帆奈: いや、そうじゃなくて…
- 更紗 帆奈: あたしたちの言いたいことなんて それだけで充分だろうなって
- みこと: う、うん…そうだね
- みこと: それから私たちは色んな場所を巡った
- みこと: 思い出を辿るというより 犯行記録を辿っているようで… なんだかとっても、私たちに相応しかった
- みこと: 私たちは多くの悪事を働き 多くの人たちを不幸にした
- みこと: だから…ひどい結末を迎えるべきなんだろう 破滅するべきなんだろう
- みこと: それでも、もし 少しだけわがままを許してもらえて きれいな終わり方にしてくれるなら…
- みこと: 誰もいない世界の果てで 帆奈ちゃんと一緒に思い出に埋もれて 窒息したい
- みこと: そんな、素敵なクリスマスに 私たちは終わりたい
- みこと: …そうだよ、クリスマスにいいことなんて ひとつもなかったんだから これくらい許してもらえるよね…?
- みことの母親の声: 「…見つけた、みこと」
- みこと: ――っ!?
- 更紗 帆奈: ど、どうしたの? 急に立ち止まって…
- みこと: …団地?
- 更紗 帆奈: ああ、あれのこと?
- みこと: …なんで、来ちゃうかな そんなつもり、なかったのに…
- 更紗 帆奈: …瀬奈?
- みこと: ううん、何でも… あの団地には私の家があるの
- みこと: ほら、前に帆奈ちゃんも 来たことあるでしょ?
- 更紗 帆奈: えっと…
- みこと: …あ、そっか…私の家には ちゃんと案内してなかったね
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: ねえ帆奈ちゃん… 帆奈ちゃんはクリスマス、好き?
- みこと: …私は嫌い
- 更紗 帆奈: あたしも…嫌いだよ
- 更紗 帆奈: 両親がどうしようもなかったから いい思い出なんて何もない
- 更紗 帆奈: 一緒だね、瀬奈
- みこと: 帆奈ちゃん…
- 更紗 帆奈: 町を離れる前に…最後に 言いたいこと言ってやりなよ
- みこと: いいよ、もうあそこに お母さんはいないから
- みこと: それにお母さんは 私のこと死んだと思って…
- 更紗 帆奈: …あ…ごめん…ちょっと…
- 更紗 帆奈: …うっ!
- みこと: 帆奈ちゃん?
- 更紗 帆奈: 何かが…流れて、きて…
- みこと: 帆奈ちゃん!
- みこと: 急な事態に頭が追いつかない 帆奈ちゃんが魔女になってしまう? 違う、そもそも私たちはウワサだ そんなものは関係がない
- みこと: 帆奈ちゃんは気を失って倒れている… 何かいやなものが辺りに漂っていて それが帆奈ちゃんへ流れ込んでいるようだった
- みこと: もしかして… 帆奈ちゃんのうわさのせい?
- みこと: 社会や世界に対する鬱憤をもとに反抗する みたいなうわさにしたけど 鬱憤を『もとに』というのが 怒りや憎しみを取り込むという意味になってる?
- みこと: ち、ちが…そんなつもりじゃ… 私たちの思い出を表すつもりで…
- みこと: どうしよう、私のせいだ… 私のせいで、帆奈ちゃんが…!
- みこと: いやだ…どうすればいいの…!?
- みこと: …待って、ひとつだけあるじゃない 今までこんな使い方できなかったけど ウワサの力を利用できる今なら…
- みこと: そう、帆奈ちゃんを苦しめる怒りや憎しみを 私へ移植させるの
- みこと: …っ、うう…っ!
- みこと: ドロドロとしたいやなものが入ってくる… 穢れが溜まったときとはまた違う感覚だ これはむしろ…私が魔女の影響で滅びの意思に 染まっていったときの感覚と似ている
- みこと: だとするなら…よかった、私が引き受けて 帆奈ちゃんには 私みたいな思いをしてほしくないもん
- みこと: いやなものがウワサの中で溜まっていく… 怒りや憎しみ…それら悪意はある種の力なのか 抑えきれない活力が湧いてきたけど ふいにそれは吸い取られるように消えて…
- ???: これ…私の力にさせてもらうね
- ???: “ウワサの人格”である 私の力に…
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- みこと: あ、気づいたんだね
- 更紗 帆奈: ここって…
- みこと: 団地の屋上 ここなら人目につかないの
- みこと: 大変だったんだよ~ 帆奈ちゃんを背負って運ぶの
- 更紗 帆奈: …瀬奈、何かした?
- みこと: 何かって?
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …瀬奈が言わないなら あたしは何も聞かない
- 更紗 帆奈: けど…ひとりでは抱えきれなく なったら、ちゃんとあたしに…
- みこと: なに言ってるの、私は平気 平気じゃないのは帆奈ちゃんの方
- みこと: じっとしてるのは慣れてるから 帆奈ちゃんは寝てて
- 更紗 帆奈: ごめん…あたし、まだ 辛くて…
- みこと: もー! それならさっさと寝なさい
- 更紗 帆奈: う、うん…
- みこと: …………
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: …おーい、帆奈ちゃーん
- みこと: …本当に寝てる…よっぽど 辛かったんだね…
- みこと: 帆奈ちゃんの役に立てて うれしい…でも…
- みこと: 『なんで私、ここにいるんだっけ?』
- みこと: ――っ!?
- みこと: 思い出した…思い出巡りをしてて 偶然、団地を通りがかって…
- みこと: …記憶があやふやになる瞬間がある きっとこれはウワサ自身の人格が 目を覚ましてしまったからだ
- みこと: 帆奈ちゃんがそうであるように 私を移植したこのウワサにも人格はあるけど まだ目覚めていなかったし、それに…
- みこと: 環いろはの中で蓄えていた分 魔力が上回っていたから 私がウワサの体を支配できていた
- みこと: けれど、帆奈ちゃんの魔力とも言える悪意を この体の中に移植したとき 力に触発されてウワサの人格が目覚めてしまった
- みこと: ウワサの人格は支配権を取り戻そうと この今も抵抗している…それを押さえるには 魔力を消耗しなければならない
- みこと: もちろん“果てなし鏡のうわさ”にいる 環いろはたちを足止めしつづけていると 魔力は消耗する…それだけならよかったんだけど 魔力の消耗が重なった結果…
- みこと: 私自身が弱体化してしまい ウワサの人格に引っ張られて 記憶が混濁を起こしてしまっている …たぶん、そんなところだろう
- みこと: いつか何もかも…帆奈ちゃんとの思い出すら わからなくなるかもしれない
- みこと: わからなくなる…それはつまり 忘れることと同じ…
- みこと: …怖い…怖いよ、帆奈ちゃん…
- みこと: 他のことだったら何でもいい 帆奈ちゃんのことだけは忘れさせないで
- みこと: 忘れたくない、帆奈ちゃんのことだけは… いやだ、いやだ…忘れたくない…!
- みこと: でも私は…今も帆奈ちゃんに集まる悪意を 私の中へと移植させつづけている…
- みこと: それは、昔の私のように滅びに取り憑かれて 何もわからなくなってしまって… 私のことを帆奈ちゃんが忘れてしまうのが もっと怖かったから…
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- みこと: 駅に着くの遅くなっちゃったね
- 更紗 帆奈: …あたしがモタモタしてたから…
- みこと: 帆奈ちゃんは悪くないよ! 私が取りこぼしてたからで…
- 更紗 帆奈: 取りこぼす…?
- みこと: あ、ううん、何でもなくて それより…
- みこと: じゃ~ん、お金~!
- 更紗 帆奈: …瀬奈
- みこと: 違うよ、ドロボーなんてしないよ これ、私の宝箱に入ってたの
- 更紗 帆奈: あの貯水槽の下に隠してたやつ?
- みこと: そう、あの人に盗られないように 大切なものはそこに入れてたの
- みこと: この皺だらけの千円札は 私の幸福へのチケット…
- 更紗 帆奈: …その千円で電車に乗るんだ?
- みこと: うん、魔力は節約しないと いけないから
- 更紗 帆奈: ああ、そっか…ウワサってつねに 魔力を消費してるんだったね
- みこと: 魔力が尽きると私たちは そこで終わり…
- みこと: だから なるべく節約しないといけない
- 更紗 帆奈: …瀬奈はそれでいいんだね? まだ引き返せるけど
- みこと: 戻ったら、帆奈ちゃんが どうなるかわからない
- みこと: そんなとこへ帆奈ちゃんを 連れて帰るわけにはいかないよ
- 更紗 帆奈: あたしのせいで迷惑をかけるね
- みこと: そんなことないよ!
- 更紗 帆奈: 瀬奈…
- みこと: あ、そうだ、千円で どこまで行けるか見てくるね!
- 更紗 帆奈: あっ…
- みこと: 大丈夫、帆奈ちゃんには気づかれていない… うまく隠し通さないと… 自分が悪意を集めてしまううわさなんだって 知ったら、きっと帆奈ちゃんは戻ってしまう
- みこと: 環いろはたちのもとへ戻っても 帆奈ちゃんはきっと認められない 何のかんの理由をつけて消そうとするはず… 今の帆奈ちゃんの状態なら、なおさら
- みこと: …そんなこと、させるものか 私が帆奈ちゃんを守るんだ 何を犠牲にしてでも
- みこと: あ…ふたり分だと あんまり遠くに行けない…
- みこと: でも、まあ、買っちゃおう…早く ここから出ていかないと誰かに…
- ???の声: …瀬奈君?
- みこと: ――っ!?
- 十七夜: やはり、瀬奈みこと君じゃないか
- みこと: …ああ、和泉…十七夜さん 何をしているんですか?
- 十七夜: 見ての通り、慌てている
- みこと: …………
- 十七夜: 環君や柊君の行方がわからない… そんな連絡があれば、な
- みこと: (…里見灯花辺りが気づいたな 思ってたより、遅かったけど…)
- 十七夜: …瀬奈君、君は何を企んでいる? 正直に話してくれれば自分は…
- みこと: たとえば死んだ人を蘇らせるのは やっていいことだと思いますか?
- 十七夜: え?…それは、難しい問題だが… やっていいことではないと思う
- みこと: じゃあ、あなたはいらない
- 十七夜: いらない? それはどういうことだ…?
- 帆奈の声: あんたは面倒くさいってことだよ
- 十七夜: ――っ!?
- 十七夜: さ、更紗…帆奈…君…?
- 更紗 帆奈: あたしたちのこと、忘れな
- 十七夜: しま…っ!?
- 十七夜: …ぅ…っ…
- 更紗 帆奈: 瀬奈、逃げるよ!
- みこと: は、帆奈ちゃん!これ、切符! 無賃乗車はダメだよ!
- 更紗 帆奈: ああもう、わかったから!
- みこと: 大慌てで切符を渡して 私たちは改札を抜ける
- みこと: 私たちはここではないどこかへ ふたりだけの世界へ行くんだ
- 駆け込み乗車はご遠慮ください
- みこと: 帆奈ちゃん、電車が来てるよ! 早く、早く!
- 更紗 帆奈: 瀬奈、階段のところで 靴落ちてたよ!
- みこと: え、シンデレラ…
- みこと: なら、帆奈ちゃんも靴落として! 私が拾ってあげる!
- 更紗 帆奈: そんなことしてる場合!? 早く履いて!
- みこと: 不安はたくさんある このまま逃げたところで そのうち魔力が尽きてしまうし 私の記憶もいつまで保つかわからない
- みこと: 私たちはいつもどん詰まりだね
- みこと: それなのに…なんでこんなにも 今が輝いて見えるんだろう なんでこんなにも私は幸せなんだろう
- みこと: 帆奈ちゃんも同じ気持ちだったらいいのに… それだけで私は、どんな苦痛にも耐えられる
- …行き各駅停車、出発します
- 更紗 帆奈: ふう、間に合ったね
- みこと: うん…
- みこと: …ねえ帆奈ちゃん
- 更紗 帆奈: うん?
- みこと: …………
- みこと: …夕日がきれいだね
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: あたし、幸せだよ… 瀬奈とこんな世界から抜け出せて
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: …不安なんでしょ、この先が
- 更紗 帆奈: あたしを連れてるせいでさ 逃げ回ることになっちゃって…
- 更紗 帆奈: でもあたし…ああ、いやだな こんなこと言いながらうれしい…
- 更紗 帆奈: あんたと一緒にいられるのが
- みこと: 帆奈ちゃん…
- 更紗 帆奈: …ねえ、思い出の場所を巡って 昔の話を聞かせてくれたよね?
- みこと: え?うん…
- 更紗 帆奈: 更紗帆奈(あたし)がどれだけ あんたを必要としていたか…
- 更紗 帆奈: それはもう、自明だよ
- 更紗 帆奈: …だからあたしも あんただけの味方でいい
- 更紗 帆奈: 正義の味方になんて 今さらなれないしね…
- みこと: 帆奈ちゃん…手、繋ご?前は 触れることもできなかったから
- 更紗 帆奈: えっ…う、うん
- みこと: きれいな手
- 更紗 帆奈: あたしの手は汚れてるよ 願いを叶えたときから
- みこと: 世界がそう思っていても 私にはきれいに見える
- みこと: 帆奈ちゃんの手は 私にだけ、きれいなの
- みこと: …うれしいな
- みこと: 電車のガタンゴトンという音が やけに懐かしく聞こえる 流れていく景色がバカみたいに懐かしく思える
- みこと: 私はここから出ていく 大切な帆奈ちゃんと一緒に…
- 夏目 かこ: ここで美雨さんたちと合流する ことになっているんですか?
- 常盤 ななか: ええ…環さんが行方不明になって いるとの情報が入ってきた以上
- 常盤 ななか: 人手を増やして早く手がかりを 見つける必要がありますから
- 夏目 かこ: なるほど…あれ? あそこにいるのは…
- 常盤 ななか: 十七夜さん?
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- みこと: また帆奈ちゃんの負け~
- 更紗 帆奈: 瀬奈はトランプ強いね …罰ゲームがあるんだっけ?
- みこと: んふふ…わざと負けるような 帆奈ちゃんにはとびきりのを…
- 更紗 帆奈: 何のことかわかんないけど… どんな罰ゲームでもいいよ
- みこと: じゃあ、タケノコ踊りして
- 更紗 帆奈: …はあ?
- みこと: だからあ、こうやって…
- みこと: タケノコ!タケノコ!
- みこと: にょっきにょっき~~っ!
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: あ、そろそろ時間だ
- みこと: えええええ…
- 更紗 帆奈: いや、本当にそろそろ… ここの家のやつらが帰ってくる
- みこと: 暗示で旅行させてる人たち? ここに来たの2日前だよ?
- 更紗 帆奈: 長くは不在にさせられないよ あやしまれる
- みこと: ふーん…考えてるんだね
- 更紗 帆奈: とにかく行こう、瀬奈 次の町へ
- みこと: タケノコ踊り…
- みこと: お金がなくなってからは 私たちは歩いて北へ向かっている
- みこと: 歩き疲れれば近くの町に立ち寄り 暗示を使って家を一時的に借りる… そういったことを繰り返し 町を転々としている
- みこと: けどそろそろどこかの町で 働いてお金を貯めるのもいいかもしれない お金があれば電車にだって乗れるし 帆奈ちゃんに好きなものを買ってあげられる
- みこと: そう、クリスマスプレゼント 帆奈ちゃんにクリスマスプレゼントをあげるんだ ふたりで楽しいクリスマスを過ごすために
- みこと: どこも雇ってもらえない…
- みこと: 身元を明かすことができず 履歴書さえ用意することのできない私は どこに行っても面接すらしてもらえなかった
- みこと: どうしたらいいんだろう… せっかくのふたりのクリスマスなのに プレゼントを渡せなかったら がっかりされちゃう…
- みこと: 今の手持ちは百円と少し… 1駅、しかもひとり分のお金しかない こんなお金でプレゼントなんて…
- みこと: …いや…そうだ…
- みこと: あ、それとね… 日記のお礼にこれを買ってきたの
- みこと: お揃いのペン!
- みこと: そうだ、あのペンなら買える ふたつはムリだけど 帆奈ちゃんの分だけなら…
- みこと: 帆奈ちゃんのペンは 星のデザインで、色は紫… よかった、しっかり覚えている
- みこと: あの思い出の詰まったペンを 帆奈ちゃんにプレゼントしよう んふふ、絶対よろこんでくれる!
- 更紗 帆奈: 瀬奈
- みこと: わっ…! は、帆奈ちゃん!?
- 更紗 帆奈: 捜したよ ここで何してたの?
- みこと: ううん、ちょっと考えごと… 帆奈ちゃんはどうだった?
- 更紗 帆奈: 家なら確保したよ ああ、それと…
- 更紗 帆奈: これ、瀬奈にあげる
- みこと: 花の種?
- 更紗 帆奈: この町のことを聞いて回ってたら 花屋の店員からもったんだ
- 更紗 帆奈: あたしは花なんて柄じゃないから 瀬奈にあげるよ
- みこと: あ、ありがとう… 私、お花好きだからうれしい…
- 更紗 帆奈: スノードロップなんだって、それ
- みこと: …雪が溶ける頃に咲く花だよ
- 更紗 帆奈: じゃあ、時季外れ? いや、まくならちょうどいいのか
- みこと: …ねえ帆奈ちゃん 今すぐこの町を出よう
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: いいよ、すぐ出よう こんな町
- 更紗 帆奈: でも…もう夜も遅いから 今晩は用意したところで眠ろう?
- みこと: …うん
- みこと: 私は情けない気持ちでいっぱいだった 帆奈ちゃんは上手にやっているのに 私のこのザマは何なんだろう…?
- みこと: 早くプレゼントを見つけないと… この町にはなかったから…あれ? なかったんだっけ?というか… この町で私、何してたんだっけ?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 瀬奈、待って 置いていかないでよ
- みこと: ―みこと― え…? あれ…もう、夕方…?
- みこと: ―みこと― …あれから私 どうしてたんだっけ…?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― どうしてたって… 大丈夫、瀬奈?
- みこと: ―みこと― う、うん、大丈夫… ちょっと寝不足なのかな?
- みこと: ―みこと― …まあ、それより、せっかくだから スノードロップの種をまいてみようよ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ここに?
- みこと: ―みこと― 雪が溶けて、何もかも消え去ったあと 私たちの歩んだ道にその花が咲いてたら
- みこと: ―みこと― …なんだか、素敵でしょう?
- みこと: そうして私たちは種をまきながら 北へ、北へと逃げていく
- みこと: 誰もいないところへ行けば 私たちは幸せになれる…そんな夢を信じて
- FILENAME: text_520510-9_bXUCP.txt
- みこと: 町を転々としながら 私たちは北へと向かう
- みこと: どこへ行っても私は不審がられ 警察を呼ばれることもあれば トラブルに巻き込まれることもあった
- みこと: 私たちが安穏と過ごすには やっぱり、世界が滅びないといけないみたい
- みこと: でももう、それはいい…逃げればいい そこに労力は割きたくない
- 鏡のみこと: …まだ、抵抗するんだ?
- みこと: ウワサの人格に主導権を渡したくないから
- 鏡のみこと: どうしてそんなに頑張るの?
- みこと: 帆奈ちゃんと楽しいクリスマスを 過ごすため
- みこと: …私にだってそんなクリスマスが あっていいと思うの
- みこと: 私の家にはずっとクリスマスがなかった 父親…あの人は家からお金を持って どこかへ行ってしまうし お母さんは遅くまでパートをしていたから
- みこと: 私はそれが恥ずかしくて仕方がなかった
- みこと: 7歳のとき、朝から家を飛び出して 団地の屋上で何時間も隠れたことがあった なんだかもう全部がいやになってしまったからだ
- みこと: どうせ私なんていてもいなくても変わらない… クリスマスパーティーをしてもらえないのも 私にそれだけの価値がないからだ
- みこと: 普通のことを…普通のものを 私に与えてくれないのも それだけの価値がないからだ
- みこと: そんな私はいなくなればいい どうせ誰も私を見つけてくれないから…
- みことの母親: 「…見つけた、みこと」
- みこと: でもあのとき… お母さんは見つけてくれた
- みこと: お母さんはムリしてパートを休み あの人も連れてきて その日、はじめてわが家で クリスマスパーティーをした
- みこと: お母さんとあの人がスーパーで買ってくれた フライドチキンはべちゃべちゃしていたし バタークリームのケーキは なんだか安っぽい甘さだったけど
- みこと: 私はうれしくて涙が出た
- みこと: 隠れたら捜してくれる、見つけてくれる… そう思った私は8歳のときも9歳のときも 10歳のときも11歳のときも、ずっとずっと クリスマスは屋上で隠れつづけた
- みこと: お母さんが見つけてくれたのは 7歳のときの一度だけだった
- みこと: だから…7歳のクリスマスの思い出は 一番いやな思い出
- みこと: …でも帆奈ちゃんはお母さんと違って こんな私をいつだって見つけてくれる 価値のない私に笑いかけてくれる
- みこと: 私を絶対に見捨てたりしないんだ 帆奈ちゃんは私のヒーローなんだ…!
- みこと: ああ…ペンを手に入れないと 帆奈ちゃんによろこんでもらわないと…
- 鏡のみこと: だったら魔力をたくさん使って 手下たちをコピーすればいい
- 鏡のみこと: それで探すの、ペンを
- みこと: そうだね…帆奈ちゃんをよろこばすためだもん 魔力くらい使わないとダメだよね…
- みこと: あれ…でもあなた、誰だっけ?
- 鏡のみこと: 私は…やがてあなたになる私
- みこと: ――っ!?
- みこと: あ、あれ…私、寝てた…? 最近よく意識が飛ぶような…
- みこと: …帆奈ちゃん? 帆奈ちゃーん…?
- みこと: い、いない…どこにもいないよ… 帆奈ちゃん、出ていったの…?
- みこと: は、帆奈ちゃん…ううっ… 帆奈ちゃん…っ
- 更紗 帆奈: …ただいま
- みこと: 帆奈ちゃん!
- 更紗 帆奈: ど、どうしたの? 泣いてた?
- みこと: だって 帆奈ちゃんがいないんだもん
- 更紗 帆奈: そんな子どもみたいな…
- みこと: …どうせ私は子どもだよ 大人になんかなりたくないし
- 更紗 帆奈: あ…ごめんね、瀬奈 もう勝手に出ていかないよ
- みこと: 本当に? ひとりでいなくならない?
- 更紗 帆奈: うん、約束する
- みこと: …えへへ
- 更紗 帆奈: …お詫びと言っては何だけど 瀬奈に靴をあげるよ
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: 前に駅で靴を落としてたでしょ? 危ないなと思って靴屋を見てたら
- 更紗 帆奈: 瀬奈によく似合いそうな靴を 見つけてね…
- 更紗 帆奈: は、はは…ク、クリスマス プレゼントってやつ
- みこと: 帆奈ちゃんがクリスマスプレゼントをくれる? 私はまだあのペンを見つけられていないのに?
- 更紗 帆奈: お金は大丈夫、頼み込んだんだ 手伝うかわりにこの靴をくれって
- 更紗 帆奈: そしたら、案外うまくいってさ
- みこと: そ、そうなんだ 靴屋さんのお手伝いを…
- テレビの声: …市の歓楽街で若い女性が 意識不明の重体で発見されました
- テレビの声: 警察は事件と事故の両面から 捜査を進めており…
- 更紗 帆奈: 意識不明の重体…
- 更紗 帆奈: …昨日もこんなの なかったけ…?
- みこと: うん…最近多いよね
- みこと: いやだなあ、クリスマスまで もう少しなのに
- みこと: そうだ…もう少しでクリスマスになる 早くプレゼントを見つけないと…! 帆奈ちゃんが用意してくれるのに 私は何もないなんてあり得ない!
- みこと: もっと…もっとたくさん手下をコピーしよう それでコピーたちを町に放って あのペンを手に入れるんだ…!
- みこと: ああ…楽しいクリスマスになるよ、きっと よろこぶ帆奈ちゃんの顔を早く見たいなあ…
- いろは: …退いて!
- いろは: …ねむちゃん、みことさんは 大丈夫なんだよね…?
- ねむ: 直接苦しんだり 痛がることはないよ
- ねむ: ただ、ここまで複製を乱造すると そのうち乗っ取られてしまう
- いろは: 乗っ取られる? 何に…?
- ねむ: ウワサの人格に…もっとも 目覚めていればの話だけど
- いろは: ――っ!?
- 常盤 ななか: よかった 無事のようですね
- いろは: な、ななかさん…!? どうしてここに…?
- 常盤 ななか: 理由はねむさんの方が 詳しいのではありませんか?
- ねむ: …説明した方がいい?
- 常盤 ななか: いえ、その前にこちらも 確認したいことがあります
- 常盤 ななか: 「…更紗帆奈は生きているのですね?」
- FILENAME: text_520510-10_bXUCP.txt
- <Side:帆奈>
- 帆奈の父親: 親になんて目えしやがる! 生意気なガキが!!
- 更紗 帆奈: 肌着姿のまま父親に ベランダに放り出され あたしはガタガタと震えていた…
- 更紗 帆奈: どこからかクリスマスソングが聞こえてきて 今日がそうなんだったと気づいた …サイテーのクリスマスだ
- 帆奈の母親: 「…………」
- 更紗 帆奈: 背後に気配を感じたと思ったら 母親が温かな部屋から 悲しそうな顔で私を見ていた
- 更紗 帆奈: けれど、あたしが助けを求めようとした そのとき…
- 更紗 帆奈: 母親はぷいと視線を逸らして 部屋の奥へ逃げていった
- 更紗 帆奈: そのとき、あたしは強く思ったんだ あんなふうには…母親にはなりたくないと
- 更紗 帆奈: そうだ、見て見ぬ振りをする人間にはならない 困っている人がいれば進んで手を貸そう そうすればきっと、こんな世の中だって…
- なっ、何するのよ!
- 更紗 帆奈: あんたらこそ寄ってたかって ひとりをいじめてるんじゃないよ
- くっ…
- …………
- 更紗 帆奈: あたしの靴が…
- どうしたの?靴、ボロボロだよ? 施設では買ってもらえないの?
- 更紗 帆奈: あんたがやったの…? 仕返しのつもり!?
- あ、ごめ~ん!あなたの体操着 ビリビリにしちゃった!
- 更紗 帆奈: なっ…!
- ほら…行きなよ
- …きょ、教科書も ビリビリにしちゃったよ~
- 更紗 帆奈: あんたまで…
- 更紗 帆奈: その日から、あたしはいじめの標的になった
- 更紗 帆奈: あいつらはあたしの生まれを持ち出して いじめが正当なもののように振る舞ったけど そんなものに正当性なんかあるわけない
- 更紗 帆奈: なのに…誰にもあたしの言い分は通じなかった 助けたあの生徒にさえも…
- 更紗 帆奈: …学校であたしを イラつかせる連中がいるの…
- 更紗 帆奈: そいつらを…消して!
- キュゥべえ: …消す?
- 更紗 帆奈: この世から消してよ!
- 更紗 帆奈: だからあたしは、あんなことを願ってしまった
- 更紗 帆奈: もうあたしはテレビに出てくるヒーローみたいに 誰かを救う資格なんてない… むしろ、そのヒーローに倒される側になった
- 更紗 帆奈: そんなあたしを…
- みこと: 大切な友だちに生きていてほしい 私の望みはそれだけなの…ッ!
- 更紗 帆奈: そんなあたしを大切な友だちだと言って 必要としてくれる人がいるのなら…
- みこと: …怖い…怖いよ、帆奈ちゃん…
- 更紗 帆奈: (…瀬奈…)
- 更紗 帆奈: その人が助けを求めているのなら…
- 更紗 帆奈: たとえ無力であったとしても あたしは、その人の味方でいたい
- 更紗 帆奈: 見て見ぬ振りだけは 死んでもしてやらない
- 更紗 帆奈: …絶対に母親みたいには…
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …瀬奈、遅いな
- 更紗 帆奈: 瀬奈は勝手だ ひとりにするなって言っておいて あたしのことは平気でひとりにする
- 更紗 帆奈: 店長にクリスマスケーキをもらったから ちょっと早いパーティーをふたりでしようと 思って準備してたのに…
- 更紗 帆奈: でも…瀬奈が何かしたいことがあるなら あたしは何も言えない…その資格がない
- 更紗 帆奈: …ただでさえあたしのせいで この旅に付き合わせてるんだから
- 更紗 帆奈: そう…瀬奈はあたしを守るために 破滅へ向かう旅に付き合ってくれている 逃げなくちゃいけないのも 全部、あたしがここにいるせい…
- 更紗 帆奈: それなのに瀬奈の味方でいたいだなんて 何様のつもりなんだろう… 純粋な瀬奈の優しさにつけ込んで あたしは卑怯者だ
- 更紗 帆奈: でも…
- 更紗 帆奈: 瀬奈…ひとりは、寂しいよ …うっ…うう…
- 更紗 帆奈: 瀬奈といればどんな日々でも輝いて見える 忌まわしさしか感じなかった明日に きらきらとした希望を見出すことができる
- 更紗 帆奈: ごめんね瀬奈… あたし、あんたがいないとダメみたいなんだ だから置いていかないで…あたしのとなりで ずっと笑っていて…
- テレビの声: 臨時ニュースです、先ほど…
- 更紗 帆奈: え…?
- テレビの声: …市の路上で倒れている男性が 発見され、意識不明の重体と…
- 更紗 帆奈: それってこの町…? ここでもまた事件が…
- 更紗 帆奈: せ、瀬奈は…!? 瀬奈は大丈夫なの!?
- 更紗 帆奈: 瀬奈!瀬奈!
- 更紗 帆奈: 瀬奈はきっと大丈夫… 一般人の体とは違うんだ あの事件が通り魔の仕業だったとしても きっと…きっと大丈夫
- 更紗 帆奈: …なのになんで こんなに胸がざわつくんだろう…?
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- 更紗 帆奈: あ、あんた…
- 鏡のみこと: …………
- 更紗 帆奈: …ついてこいって、言ってるの?
- 更紗 帆奈: あ、ちょ、ちょっと! どこに行くの!
- 更紗 帆奈: はあ、はあ…ここに、いるの…?
- 更紗 帆奈: そのフロアは、一歩踏み入れただけで 異変をあたしに感じさせた
- 更紗 帆奈: 暗がりのところで何かが蠢いている… すり切れるような声が下の方から聞こえてくる… 本能が止まれ、引き返せと警告していた
- 鏡のみこと: …………
- 更紗 帆奈: 瀬奈は!瀬奈は無事なの!? もし瀬奈に何かしてたら…
- みことの声: 誰かいるの…?
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- みこと: …………
- 更紗 帆奈: 文具コーナーには べったりとした何かを全身に浴びた 瀬奈が立っていた
- 更紗 帆奈: そのとき、あたしは理解した 瀬奈はこいつら手下に何かされたわけではない むしろ…
- 更紗 帆奈: せ、瀬奈…
- みこと: あっ…帆奈ちゃんだったの?
- みこと: おかしいなあ… 一瞬誰かわからなくて…
- みこと: もう忘れないように帆奈ちゃんの 名前書いとこっと…腕にしよう
- 更紗 帆奈: 書く?
- みこと: うん、これを見て
- 更紗 帆奈: これ…ペン?
- みこと: 本当はね、あのお揃いのペンを あげようと思って探してたの
- みこと: なのに…一生懸命探したのに こんな紛い物しか見つからなくて
- みこと: これ、デザインが星じゃなくて 三日月なの…偽物なんだ
- 更紗 帆奈: …あたしの、ために? あたしのために…これを?
- みこと: そう!私、帆奈ちゃんをね よろこばせたかったの!
- 更紗 帆奈: 目の前が真っ暗になる… 瀬奈は取り返しのつかない一線を越えてしまった この町の…いや、この世界の 敵になってしまったんだ…
- 更紗 帆奈: あの一連の事件も瀬奈が起こしたのだろう 考えてみればあたしたちの行く先々で 事件が起きていた …もっと早くに気がつくべきだった
- 更紗 帆奈: どうする?瀬奈を連れて警察に…? いや、そんなところに連れていったって何になる 瀬奈を止められるわけがない
- 更紗 帆奈: こんなふうになってしまった瀬奈は もう、もとには戻らないだろう… 魔力が少ないのにムリをさせすぎたんだ そのせいで瀬奈は様子がおかしくなって…
- 更紗 帆奈: …なら、どうすることもできない? 魔力は減っていく一方なんだから おそらく瀬奈はもっとおかしくなって 何度も同じ過ちを犯すはず…
- 更紗 帆奈: 止めるには、瀬奈を終わらせるしかない
- 更紗 帆奈: …あたしは瀬奈を死なせるつもりはなかった もし追ってくるやつらに捕まったとしても あたしだけが死ぬつもりだった でも…こうなってしまったら、もう…
- 更紗 帆奈: 瀬奈…寂しくはないよ あたしもすぐ追いかけるから
- みこと: 追いかけっこするの? でも、ペンを探さないと
- みこと: 私、帆奈ちゃんにもクリスマスを 楽しく過ごしてほしいの
- みこと: 『いい思い出なんてなかった、なんて もう帆奈ちゃんには言ってほしくないもん』
- みこと: 帆奈ちゃんのいやな思い出は 私が全部、塗り替えてあげるね
- 更紗 帆奈: …なんで、そこまで…?
- みこと: 帆奈ちゃんは 私のヒーローだから!
- 更紗 帆奈: …っ
- 更紗 帆奈: ああ…なんでこうなるんだろう
- 更紗 帆奈: 願いであいつらを消してから、心の底では ずっと後悔していて…自分自身を、そして この悪意に塗れた世界を否定するために 一度は死んだっていうのに…
- 更紗 帆奈: あたしは…本当は正義を信じている その正義を証明できる存在になれれば クソッタレな世界でも愛することができると 願いを叶えるまでは思っていた
- 更紗 帆奈: その夢の未練を、今ここではっきりと断とう
- 更紗 帆奈: あたしは…瀬奈だけの味方でいる
- 更紗 帆奈: 瀬奈…
- みこと: …なあに、帆奈ちゃん
- 更紗 帆奈: あたし、なりたい自分になるよ
- 更紗 帆奈: それがたぶん 魔法少女であることの意味だから
- 更紗 帆奈: …まあ、もうウワサなんだけどさ
- みこと: どういうこと? 難しいの、わかんない
- 更紗 帆奈: …瀬奈はあたしが守るってこと
- 更紗 帆奈: そう、たとえあたしが 瀬奈のことを何も覚えていなくても
- 更紗 帆奈: …手、冷えたんじゃない? あたしが温めてあげる
- みこと: え…い、いいの?でも私、砂遊び してたから、手が汚れちゃって…
- 更紗 帆奈: へえ、砂遊びしてたんだ…
- みこと: そうそう、砂の山が崩れてきて それでこのペンを見つけたの
- 更紗 帆奈: そっか… でも、瀬奈の手はきれいだよ
- 更紗 帆奈: 誰が何と言ったって あたしにはきれいに見える…
- 更紗 帆奈: あたしは瀬奈のことを何も思い出せないまま 瀬奈のために完全な悪になると心に決めた
- FILENAME: text_520520-1_LNbJr.txt
- <Side:帆奈>
- 更紗 帆奈: はぁ~…
- 更紗 帆奈: (あたしもちょい休憩っと…)
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: (そうそう…ここだった)
- 更紗 帆奈: (和泉十七夜と会ったのは…)
- 更紗 帆奈: (…瀬奈はここの夕方の景色が 好きだって言ってたけど…)
- 更紗 帆奈: …ん~…
- 更紗 帆奈: (…あたしは夜だね…!)
- 更紗 帆奈: あっは…
- 更紗 帆奈: あたしの記憶ではこうなっている けれど実際は…
- 更紗 帆奈: はぁ~…
- みこと: 数が多いから疲れちゃったね 私、ちょっと休憩しようっと
- 更紗 帆奈: (あたしもちょい休憩っと…)
- みこと: …帆奈ちゃん、もしかして わざと見つかるようにしてた?
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: …まあ、でも十七夜さんに使った 暗示が解かれちゃったみたいだし
- みこと: ここで十七夜さんと会った過去 そのものを消さないと
- みこと: …どの道、バレちゃうか
- 更紗 帆奈: (そうそう…ここだった)
- 更紗 帆奈: (和泉十七夜と会ったのは…)
- みこと: あのときは夕方だったけどね
- 更紗 帆奈: (…瀬奈はここの夕方の景色が 好きだって言ってたけど…)
- 更紗 帆奈: …ん~…
- 更紗 帆奈: (…あたしは夜だね…!)
- みこと: あー話、逸らしたー!
- 更紗 帆奈: あっは…
- 更紗 帆奈: 本当はこうだったらしい…
- 更紗 帆奈: あたしが自分のソウルジェムを 砕くときだって瀬奈はそばにいた… というか…
- みこと: 要約すると…帆奈ちゃんだけに 見える意識体、かな…?
- 更紗 帆奈: ん~…? つまり、幽霊ってこと?
- みこと: 幽霊…?
- 更紗 帆奈: あー、やっぱりそうなんだ!
- 更紗 帆奈: あのね!あたし、ずっと瀬奈が どこかにいるような気がしてたの
- 更紗 帆奈: 瀬奈は幽霊になって あたしの中にいてくれていたみたい
- 更紗 帆奈: なんでそうなったのかというと…
- みこと: 帆奈…ちゃん…! わ、私…どうした…の!?
- 更紗 帆奈: 瀬奈!瀬奈!
- みこと: …帆奈ちゃん…!
- 更紗 帆奈: 瀬奈ーっ!
- 更紗 帆奈: …瀬奈が魔女になってしまったことが原因
- 更紗 帆奈: 探りを入れれば入れるほど 瀬奈の口からあたしたちの 数奇な運命を聞かされる…
- 更紗 帆奈: けれど、あたしは何も覚えていない
- 更紗 帆奈: まだ、ボロは出ていないと思う うまくやれているはず… 瀬奈のことを覚えていないなんて 悟られるわけにはいない
- 更紗 帆奈: それがどんなに瀬奈を傷つけるか 思い出を失っていてもわかるから…
- みこと: ―みこと― 帆奈ちゃん! ぼんやりしてると置いてっちゃうよ!
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あー…はいはい
- 更紗 帆奈: …どうして瀬奈なんだろう? 覚えていなくても瀬奈が自分にとってどれだけ 大切な存在だったかわかる…そんな相手をなぜ?
- 更紗 帆奈: いや、そんなのわかりきっているか
- ねむ: …教えてほしいんだけど、君は なぜ瀬奈みことの味方をする?
- ねむ: いや…なぜ今の君に それができるんだい…?
- 更紗 帆奈: あいつにやられたからだ
- 更紗 帆奈: おおかた 瀬奈に対する記憶を封じることで あたしが瀬奈に従う理由を なくそうとしたんだろう
- 更紗 帆奈: 実際、あたしは瀬奈に関する記憶がないけど …それでも、私は瀬奈の味方でいる たぶん、きっと…これからも味方でいる
- 更紗 帆奈: あたしが気づいていないだけで 実はそういううわさにされている? これはあたしの意思ではなく、仕組まれたもの?
- 更紗 帆奈: いや、そうじゃないはず… そうだったら説明がつかないことが 多く起きている
- 更紗 帆奈: たとえば…瀬奈と一緒にいるだけで このクソッタレな世界が きらきらと輝いて見えることとか…
- みこと: ―みこと― ねえ帆奈ちゃん ところどころ雪が積もってるよ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …この辺りは 昨日、雪が降ってたみたいだから
- みこと: ―みこと― ふーん…そうなんだ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 町に立ち寄る回数を減らしたいのに… この様子じゃしばらくムリだね
- みこと: ―みこと― 警察のこと、心配してるの?失礼だよね 私たちを通り魔だと間違えるなんて
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …そうだね
- 更紗 帆奈: 警察にもあたしたちの行動がバレてきている… そのうち指名手配だってされるかもしれないし 瀬奈がよくなる見込みはない もう本当に、どん詰まりだ
- みこと: ―みこと― あとどれくらいで誰もいない場所へ着くかな?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ちょうど…クリスマス当日だと思う
- 更紗 帆奈: それでも瀬奈… たとえあんたが過ちを犯しつづけても あたしは絶対に見捨てないよ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …………
- 更紗 帆奈: …罪はあたしが全部、持っていくから だから…安心して、瀬奈
- FILENAME: text_520520-2_LNbJr.txt
- <Side:ななか>
- 常盤 ななか: 「違和感を覚えたのはすぐでした」
- 十七夜: 常盤君、君のところにも 連絡があったのか?
- 常盤 ななか: ええ…環さんたちが 行方不明になったと…
- 十七夜: そうだ…そのため自分は 見ての通り慌ててやってきた
- 常盤 ななか: …………
- 夏目 かこ: …ななかさんは瀬奈みことさんを 気にしてましたけど…
- 常盤 ななか: ええ、おそらく彼女が 関係していると…
- 十七夜: …瀬奈みこと? 誰だ、それは
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 夏目 かこ: お、覚えていないんですか…!?
- 十七夜: 自分と会ったことがあるのか?
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: …既視感があります
- 十七夜: なに…?
- 常盤 ななか: 更紗帆奈さんについては どうですか?
- 十七夜: どうと言われても… 自分は知らないが
- 常盤 ななか: やはり、そうですか
- 夏目 かこ: これって…
- 常盤 ななか: はい、暗示の魔法です
- 常盤 ななか: …更紗帆奈が生きている
- 夏目 かこ: ――っ!?
- 常盤 ななか: かこさんは十七夜さんを連れて みたまさんのもとへ
- 常盤 ななか: 私は瀬奈みことさんが 何か言っていなかったか調べに
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 常盤 ななか: 「突然、私のもとへ何かが現れたと思ったら 次の瞬間にはこの空間に放り込まれていました」
- 常盤 ななか: 「…おそらく引き金になったのは 瀬奈みことさんを捜そうとしたこと…」
- 常盤 ななか: …合っていますか?
- ねむ: 合っているよ
- ねむ: 瀬奈みことを捜そうとすると ここへ強制的に連れてこられる
- いろは: 私とねむちゃんはみことさんを 極力傷つけないように
- いろは: 消耗させて戦えない状態にする ためにここに残っているんです
- ねむ: それに力を発揮できない 状態にしておかないと
- ねむ: 瀬奈みことを捜しにいく度に ここへ連れ戻されてしまうからね
- 常盤 ななか: とすると…他の方も集めて 対処した方がよさそうですね
- 常盤 ななか: 早く消耗してもらわないと 捜しにいけませんから
- ねむ: 君が捜しに…?
- 常盤 ななか: ええ…
- 常盤 ななか: 「1発、ぶん殴りにいくんです」
- 常盤 ななか: …それで、私の他にも殴りに いきたいのが、皆さんですか
- 純 美雨: 結局このメンツネ
- 志伸 あきら: まあ、仕方ないんじゃないかな
- 夏目 かこ: みんな、因縁がありますから…
- 静海 このは: …そんな暗い話ではなく もっと前向きな話にしましょう
- 遊佐 葉月: そうだね そもそもアタシらは
- 遊佐 葉月: アイツを1発ぶん殴るために また集まったんだから
- 伊吹 れいら: それは本当に 前向きなんですか…?
- 常盤 ななか: やちよさんこそいいんですか?
- 常盤 ななか: 他の方は環さんの 協力をしにいきましたが
- やちよ: …私も無関係ではないもの 同行するわ、見届けるために
- 鶴乃: わたしも!
- 純 美雨: …手がかりはあるネ?
- 常盤 ななか: はい、この地図を見てください
- 夏目 かこ: …東北地方の地図ですね
- 遊佐 葉月: このバツ印は?
- 常盤 ななか: …最近頻発する 通り魔事件の発生現場です
- 志伸 あきら: どんどん北上している…
- やちよ: まさか…
- 常盤 ななか: 事件はふたりが逃亡してから 発生するようになりました
- 常盤 ななか: もうすでに警察も動いている… 急がないといけません
- 夏目 かこ: …ふたりが犯人なんですか?
- 常盤 ななか: もしそうなら、湯国市での惨劇が 神浜市でも再現されてしまう
- みんな: …………
- 常盤 ななか: では…作戦を説明します
- FILENAME: text_520520-3_LNbJr.txt
- <Side:みこと>
- みこと: もうすぐクリスマス! 楽しい楽しいクリスマス!
- みこと: そうだよね!
- 鏡のみこと: …………
- みこと: さあ、 プレゼントを探しにいこう!
- みこと: 大型のショッピングモールって どこも同じに見えるなあ…
- みこと: あれ…前はどこで見たんだっけ?
- みこと: まあ、いっか
- みこと: んふふ、ほら探して そこらにいっぱいあるから
- みこと: 私も早く探さないと…
- みこと: …何を探すんだっけ…? というか…誰に渡すものだっけ?
- 帆奈の声: 瀬奈!
- みこと: うん…?
- 更紗 帆奈: はあ、はあ…
- みこと: なあに、あなたもプレゼントを 探したいの?
- 更紗 帆奈: 瀬奈、あたしだよ 帆奈…更紗帆奈!
- みこと: 更紗帆奈…更紗帆奈… それって誰だっけ…? 最近、物忘れが多いなあ…
- みこと: いや、違う…帆奈ちゃんだ 帆奈ちゃんをどうして忘れていた…? 私が帆奈ちゃんを忘れるなんて あり得ないのに…なんで…?
- みこと: …ここ、どこ…? 私、ここで何を…
- 更紗 帆奈: 見なくていい!
- みこと: ふいに私の視界は真っ暗になった 帆奈ちゃんの手で目を覆われてしまったみたい
- みこと: 帆奈ちゃん、これなに? いたずら?
- 更紗 帆奈: いや…ちょっとここ、汚いから 瀬奈は見ない方がいいよ
- みこと: うん、帆奈ちゃんがそう言うなら そうするね
- みこと: でも…ずっとこのまま?
- 更紗 帆奈: こ、このまま…出口に行けるか 遊ぼうよ
- みこと: わー楽しそう!
- みこと: 帆奈ちゃん、私ね いっぱい遊びたいの
- みこと: だってもうすぐ クリスマスなんだから!
- みこと: 『クリスマスにはね 楽しいことがいっぱいあるの 色んなゲームをして、色んなお料理を食べて ケーキだってあるんだよ!』
- みこと: 『それにね、お父さんがサンタさんの振りをして プレゼントを届けにきてくれたり… その日はいつもより遅くまでお母さんが 絵本を読んでくれて、それでね…』
- みこと: 『愛してるって言って 私を優しく寝かしつけてくれるんだから!』
- 更紗 帆奈: それは…た…たの…
- 更紗 帆奈: …楽しみだね
- みこと: うん!
- みこと: …あれ?もう遊びは終わり?
- 更紗 帆奈: とっくに、外に出てたから…
- みこと: あれ?帆奈ちゃん…悲しいの?
- 更紗 帆奈: …悲しくなんかないよ
- みこと: でも、泣いてたんじゃないの?
- 更紗 帆奈: なっ、泣いてなんか…
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- 更紗 帆奈: なんであんたが、ここに…
- 常盤 ななか: 捜していたからです …ようやく見つけましたよ
- 常盤 ななか: 更紗帆奈…!
- FILENAME: text_520520-4_LNbJr.txt
- <Side:ななか>
- やちよ: 今のところ、うまく果てなし鏡に 連れていかれずに済んでいるわね
- 常盤 ななか: 環さんたちのおかげです 気になりますか?
- やちよ: 気にならないって言ったら嘘ね けれど…いるんでしょう?
- 常盤 ななか: ええ、あのふたりは この町にいるはずです
- 純 美雨: …どこにいるネ?
- 夏目 かこ: 手分けして捜しましょう
- 志伸 あきら: …………
- 常盤 ななか: どうかしましたか?
- 志伸 あきら: …本当にあのショッピングモール ふたりがやったのかな…?
- 常盤 ななか: …会って確かめるしかありません
- 鶴乃の声: た、大変だー!!
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 常盤 ななか: 何がありました!?
- 鶴乃: この町のショッピングモールでも また同じ事件が…!!
- 夏目 かこ: そ、そんな…!
- 純 美雨: …ともかく急いで向かうヨ
- 常盤 ななか: …今行っても ふたりはもうそこにいないはず
- やちよ: そうでしょうね
- 常盤 ななか: ならここで網を張っている方が… いや、わざと抜け道をつくって…
- やちよ: 何か作戦があるの…?
- 常盤 ななか: …やちよさん 頼まれてくれますか?
- やちよ: え…?
- 常盤 ななか: …という形にしてもらえれば
- やちよ: ええ、わかったわ
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: …どこかで私は甘く見ていたのかもしれない 彼女の事情を知って、同情していた? あんな目に遭わされておきながら…?
- 常盤 ななか: 私だけではなく、多くの人が 弄ばれたというのに…?
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 常盤 ななか: (声が、聞こえる…)
- 常盤 ななか: (…この声は!)
- みこと: でも、泣いてたんじゃないの?
- 更紗 帆奈: なっ、泣いてなんか…
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- 常盤 ななか: …ようやく見つけましたよ
- 常盤 ななか: 更紗帆奈…!
- 更紗 帆奈: ちっ、思ったより早い
- 常盤 ななか: …………
- 更紗 帆奈: …なに、やらないの?
- 常盤 ななか: あなたは更紗帆奈で いいんですよね…?
- 更紗 帆奈: あたしがウワサだから 偽物だって?
- 常盤 ななか: …つまらないことを聞きました あなたがあの過去を覚えてるなら
- 常盤 ななか: 私にとってあなたは更紗帆奈 以外の何者でもありません
- 更紗 帆奈: …は、はは…まさかあんたに 認めてもらえるなんてね
- 常盤 ななか: あなたの行動は認めません
- 常盤 ななか: …ショッピングモールの事件は ふたりでやったんですか?
- みこと: ショッピングモールの事件?
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- 更紗 帆奈: そう! あたしが全部やったんだよ
- 常盤 ななか: …………
- 更紗 帆奈: ショッピングモールだけじゃない 他も全部だよ、もちろん
- みこと: ねえ帆奈ちゃん この人、なに?
- 更紗 帆奈: え、常盤ななかっていう… まあ、あたしたちの敵だよ
- みこと: ああ、そっか…この人が 帆奈ちゃんをいじめたんだ
- みこと: 無茶苦茶にしてあげて
- 更紗 帆奈: 瀬奈、あんまり力を使ったら…!
- みこと: 平気だよ、こんなの
- 常盤 ななか: くっ…!
- みこと: あははは…そんなものなの?
- 常盤 ななか: そんなわけ…!
- 鏡のみこと: …!
- 常盤 ななか: この数…倒してもキリがない…
- 更紗 帆奈: 瀬奈、逃げるよ!
- みこと: え…逃げるの? こんなやつここで壊せばいいのに
- 更紗 帆奈: きっと他にも仲間がいる 今は戦ってる場合じゃない
- みこと: えーでもー
- 更紗 帆奈: 誰もいない世界へ行くんでしょ!
- みこと: あ、そうだね じゃあ行こっか
- 常盤 ななか: 待ちなさい、更紗帆奈!
- 更紗 帆奈: …ふん
- 常盤 ななか: 更紗帆奈ッ!
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: …なんて、負け犬の遠吠えを すると思いましたか…?
- FILENAME: text_520520-5_LNbJr.txt
- <Side:みこと>
- やちよ: そっちにはいかせない!
- 更紗 帆奈: よっと
- みこと: 帆奈ちゃん、こっち!
- 鶴乃: 待て!
- みこと: 私たちが逃げる先には 必ずと言っていいほど あいつらの姿があった
- 帆奈の声: あいつらが待ち構えている場所へ 誘導させられているんだ
- 帆奈の声: 仕留められなかったら
- 帆奈の声: 次の場所でって あいつらはリレーをしてる
- 更紗 帆奈: まったく、いやな女だよ 常盤ななか…
- みこと: …どうして帆奈ちゃん そんなに楽しそうなの…?
- 更紗 帆奈: 楽しくなんかないって
- みこと: ふーん…ふーん
- 更紗 帆奈: …おっと 次の相手だ
- 夏目 かこ: こ、ここは通しません!
- 更紗 帆奈: どきな!
- 夏目 かこ: わわっ!
- 夏目 かこ: ううっ…
- 更紗 帆奈: 暗示を使うまでもない
- 夏目 かこ: と、突破されてしまいました…
- 常盤 ななか: 問題ありませんよ、かこさん
- 夏目 かこ: ななかさん!
- 常盤 ななか: 葉月さんたちにも 先回りしてもらっています
- 常盤 ななか: 彼女たちはもう 袋のネズミです…
- みこと: それから…どうしただろう 戦っては逃げ…戦っては逃げ それを繰り返しているうちに 夜が明けていた…
- 更紗 帆奈: はあ、はあ…
- みこと: …すごい…
- みこと: 山道を転がるように下ってきた 私たちの視線の先には 真っ白な世界が広がっていた
- みこと: ずっと向こうの向こうまで雪に覆われ すべてがきれいに隠された世界…
- みこと: …誰もいない世界 ねえ、ようやく…えっと…
- 更紗 帆奈: 帆奈…更紗帆奈
- みこと: …ごめんね帆奈ちゃん…なんで 私、思い出せなくなるんだろう
- みこと: よりにもよって帆奈ちゃんを!
- 更紗 帆奈: 気にしないでいいよ…
- 更紗 帆奈: あ、というより… 新しい思い出をつくろう
- みこと: 新しい、思い出…?
- 更紗 帆奈: そう…楽しい思い出をつくるの
- 更紗 帆奈: クリスマスに寂しい思い出しか ないの、いやでしょ
- 更紗 帆奈: だから…
- 更紗 帆奈: 「あたしたちのきらきらとした思い出を このクリスマスに降り積もらせるんだよ」
- 更紗 帆奈: 「羨んでばかりの過去は捨てて あたしたちこそ誰もが羨むような そんなクリスマスの思い出をつくる」
- 更紗 帆奈: 「あたしたちは決してみじめなんかじゃない そう、誰にもみじめだって言わせない だってあたしたちは明日がいらないほど幸せに 思い出をつくるんだから」
- みこと: うん、そうだね… いっぱい思い出をつくろう
- みこと: 追っ手が向かってきているのをわかりながら 私たちは最後の時間を楽しい思い出にするために 雪合戦をして遊び出す…
- みこと: あはは、ほらー!
- 更紗 帆奈: やったなー!
- みこと: 私たちはどうしてここにいるんだっけ? どうして追われているんだっけ…? もうよく思い出せなくなっているけど この時間をやりきりたい
- みこと: だから次は、雪だるま 帆奈ちゃんと私とで どっちが可愛い雪だるまをつくれるか 競争をするの
- 更紗 帆奈: よいしょ、よいしょ
- みこと: …えっと…帆奈ちゃん それ、雪だるま?
- 更紗 帆奈: そうだけど…
- みこと: …苦手、だった? アート系
- 更紗 帆奈: え、そんなに変?
- みこと: でもやっぱり私たちで競争するのは なんだか違う気がしたから 一緒にふたつの雪だるまをつくることにした
- みこと: 帆奈ちゃんの雪だるまはちょっとすごかったから 形を整えるうちに小さくなっちゃったけど 最終的には可愛くできたと思う
- みこと: …これでよし
- みこと: 山小屋でみつけた長いマフラーを ふたつの雪だるまに巻いてあげる 解けないようにかたく結んで…
- みこと: あとは、かまくらをつくって… ソリもしたいなあ
- 更紗 帆奈: いいよ、もっと遊ぼう
- みこと: ああ、楽しいなあ…
- みこと: でもこの楽しい思い出すら すでに忘れていっている…
- みこと: 帆奈ちゃんのことですら 気を抜くと全部忘れてしまいそうになる
- みこと: 忘れたくない…忘れたくない…! 帆奈ちゃんことだけは忘れたくない…ッ!
- みこと: でも、いくら願ったって 帆奈ちゃんとの思い出が 溶けて消えていく…
- みこと: なんでこんなことになるのかな…? 私は帆奈ちゃんと一緒にいたかっただけなのに
- みこと: それはそんなに、悪いことなの…?
- みこと: 気がつけば、夕焼けになっていた
- みこと: 私はここで何をしていたのだろう… 何か大切で、とても愛おしくて 忘れてはいけないことをしていたはずなのに
- みこと: もう、何も思い出せない
- 更紗 帆奈: …瀬奈、ちょっといい?
- みこと: え…? ええと…
- 更紗 帆奈: …思い出さなくて大丈夫 ちょっとこっちにおいで
- みこと: う、うん…
- 更紗 帆奈: この先には集落がある 瀬奈は今からそこに行って
- 更紗 帆奈: 全部、更紗帆奈がやりました って言うの…いいね?
- みこと: 更紗帆奈…?
- 更紗 帆奈: とっても悪いやつさ あんたを人質にしてたんだ
- 更紗 帆奈: でももう大丈夫、あんたは 解放されたの…何も心配いらない
- みこと: わかった 集落に行ってそう言えば…
- みこと: …違う、そんなの言っちゃダメ 帆奈ちゃんは私の友だち…!
- 更紗 帆奈: …………
- みこと: なんで、帆奈ちゃん…? なんでそんなことを私に…!
- 更紗 帆奈: …あんたといられて 本当に楽しかったよ
- 更紗 帆奈: たぶんあたしは、何度あたしを やり直してもあんたの味方になる
- みこと: 帆奈ちゃん…何をする気…!?
- 更紗 帆奈: …瀬奈
- 更紗 帆奈: あたしのこと、忘れて
- みこと: ――っ!?
- みこと: …あ、暗示の…魔法…
- みこと: い、いや…忘れたく… 帆奈ちゃんを、忘れたく、ない…
- みこと: 帆奈…帆奈ちゃああんッ…!
- 更紗 帆奈: …さようなら、瀬奈
- みこと: …………
- みこと: …え、あなたは…誰?
- 更紗 帆奈: …っ
- 更紗 帆奈: 「…誰でもないよ」
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: …遅かったね
- 常盤 ななか: 瀬奈みことさんは?
- 更紗 帆奈: …ふふ
- 更紗 帆奈: 思い出の中だよ
- FILENAME: text_520520-6_LNbJr.txt
- <Side:帆奈>
- 更紗 帆奈: こっちだよ!
- 夏目 かこ: そ、そこなら…!
- 夏目 かこ: あれ…木?
- 更紗 帆奈: どこ見てんのさ
- 夏目 かこ: きゃあっ!
- 更紗 帆奈: 地形は活かさないとね
- 鶴乃: この…!
- 更紗 帆奈: あんたは休…
- 更紗 帆奈: がっ!
- 鶴乃: 暗示は対策済みだよ!
- 更紗 帆奈: …そりゃよかった
- 鶴乃: え…?
- 鶴乃: ああっ!
- やちよ: 鶴乃!
- 純 美雨: …今のは…?
- 更紗 帆奈: くっ…あたしの、新しい力だよ
- 更紗 帆奈: 瀬奈を逃がしてから 怒りや憎しみ…すべての悪意が あたしの中へ急激に入ってくる
- 更紗 帆奈: そう…瀬奈があたしのかわりに この悪意を引き受けてくれていたんだ だから瀬奈はあんなことに…
- 更紗 帆奈: なんで、黙ってたの…? もっとあたしを… 頼ってよ、バカ…!
- 更紗 帆奈: あ、ああ…ああああッ!
- 静海 このは: …うぐっ!
- 更紗 帆奈: どうやらあたしは悪意を力にできるらしい 便利な体になったもんだ…なった? 違う、あたしは最初からウワサで…
- 更紗 帆奈: 力を使う度に自分が自分でなくなるような 何かに侵食されていくような感覚に陥る 同時に、自分を証明する記憶が薄らいでいき 不要なものから思い出せなくなる
- 更紗 帆奈: これはもうダメだね あたしはきっと助からない
- 更紗 帆奈: だったら…瀬奈を忘れる前に 燃え尽きてやる
- 常盤 ななか: これ以上力を使えば、あなたは あなたでなくなりますよ!
- 更紗 帆奈: あの創造主から聞いたの…? でもそんなのどうでもいい
- 更紗 帆奈: 瀬奈のために何かできるなら あたしはそれだけでいいんだよ!
- 相野 みと: …な、なんでこの数で 勝てないの…!?
- 更紗 帆奈: はあ、はあ…
- 桑水 せいか: でも…消耗してる?
- 常盤 ななか: 相手のペースに 乗せられてはいけません
- 常盤 ななか: 攻撃を加えては離れる… それを延々と繰り返してください
- 更紗 帆奈: (いやな真似を…)
- 純 美雨: はあっ!
- 更紗 帆奈: ぐぅ!
- 志伸 あきら: やあっ!
- 更紗 帆奈: ああっ!
- 夏目 かこ: もう降参してもらえませんか…? こんなこと、無意味ですよ…
- 夏目 かこ: それに…そもそもあなたは今 何のために戦っているんですか
- 更紗 帆奈: 何のため…?
- 更紗 帆奈: 何だったっけ…とても大切なもののために 戦っていたような気がする…
- 更紗 帆奈: この人は誰だっけ…? あたしは、この人のために… この人に笑っていてほしくて 戦っていたと思う…
- 更紗 帆奈: なんで覚えてないんだろう…バカだな、あたし こんなにも大事な人のことを忘れてしまうなんて 侵食されようと何があろうとこの人のことは 覚えていないといけないのに…
- 更紗 帆奈: …だって、この人は…
- みこと: 帆奈ちゃん…ッ!
- 更紗 帆奈: …………
- 更紗 帆奈: な、なんで…
- 更紗 帆奈: なんで思い出しちゃうんだよッ!
- 更紗 帆奈: この人は… …あたしの大好きな、瀬奈みこと
- <Side:みこと>
- 更紗 帆奈: 瀬奈、どうして… 暗示は…?
- みこと: 帆奈ちゃんの名前、見たから ほら…腕に書いてあって…
- 更紗 帆奈: それは…
- みこと: もう忘れないように帆奈ちゃんの 名前書いとこっと…腕にしよう
- 更紗 帆奈: それ、だけで…? それだけであたしのことを…?
- みこと: これだけで十分だよ…
- みこと: 『たとえ得体の知れない摂理が 私から何度も帆奈ちゃんを奪おうとも 私はその度に抗って、取り戻してみせる』
- みこと: 帆奈ちゃんは、私の希望だから!
- 更紗 帆奈: 瀬奈…
- 常盤 ななか: …やはり、更紗帆奈のもとへ 戻ってきましたか
- みこと: だからあ…帆奈ちゃんの名前を 私以外が口にするな!
- みこと: (あの空間に送る力は残ってない それなら、数で押すしか…)
- 更紗 帆奈: せ、瀬奈!
- 更紗 帆奈: あんただけはあたしが必ず守る だからもう力は使わないで
- 更紗 帆奈: あんたの力だって そんなには…
- みこと: ここでムリしないとダメ だってそうじゃないと…
- みこと: そうじゃないと帆奈ちゃんが 私を守るために死んじゃうもん… それも、私を置いてけぼりにして
- みこと: そんなことは、させない…!
- みこと: くう…ッ!
- 更紗 帆奈: せ、瀬奈…!何を!?
- みこと: この体をもうひとりの私… ウワサの人格に明け渡すの
- みこと: 私に残った少ない魔力じゃない ウワサの魔力をすべて使えるから
- 更紗 帆奈: なに、言ってるの…? あたしには、意味が…
- 常盤 ななか: やめなさい、瀬奈さん! そんなことをすればあなたは…!
- みこと: うるさいッ!帆奈ちゃんとの 間に他人が割り込むなッ!!
- みこと: ねえ帆奈ちゃん、大丈夫だから 何も心配いらないよ
- みこと: 大好きだから、帆奈ちゃん それは絶対に忘れない…
- みこと: …忘れないでね?
- 更紗 帆奈: ま、待って…なんで そんなこと言うの…?
- 更紗 帆奈: そんなお別れみたいなこと!
- みこと: あ、あああああああ!
- 更紗 帆奈: 瀬奈!?
- みこと: は、帆奈ちゃん!
- 更紗 帆奈: 瀬奈!瀬奈!
- みこと: あ、あああああああ!
- 更紗 帆奈: 瀬奈!?
- みこと: は、帆奈ちゃん! ど、どうしよう!?
- みこと: 苦しいよ…!! た、助け…て…!!
- 更紗 帆奈: 瀬奈!瀬奈!
- みこと: …帆奈ちゃん…!
- 更紗 帆奈: 瀬奈ーっ!
- 更紗 帆奈: 瀬奈ああああッ!
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: あ、あたしを もう置いていかないで!
- 更紗 帆奈: 最後まであたしに 守らせてよ…ッ!
- みこと: 帆奈、ちゃん…?
- 鏡のみこと: これで、私が私になれる…
- 鏡のみこと: …っ、うう…く、苦しい? どうして…?
- みこと: 『誰も瀬奈みことの人格を 明け渡すなんて言ってないよ』
- みこと: 明け渡すのはあくまでウワサの体 まあ、その体も暗示で操るけどね
- 鏡のみこと: 暗示…まさか…!?
- みこと: そう、帆奈ちゃんの暗示を 私に移植しちゃった~
- みこと: 大抵のものは移植できるって 悪意の移植でわかってたからね
- 鏡のみこと: 私を“力”として利用するって? そんなこと、させるものか…!
- みこと: 私だってそうだよ 命を懸けてあなたを支配する
- みこと: 帆奈ちゃんに証明してもらった “瀬奈みこと”を奪わせるものか
- みこと: 私が…本物の私だあああッ!
- 更紗 帆奈: せ、瀬奈…?
- 常盤 ななか: その姿は…
- みこと: 『あなたたちの行動が魔法少女として 正しい行いだとするのなら… 私はそのすべてに背き 情け容赦なく叩きのめしてみせる』
- みこと: それでもと言うのなら 見せてちょうだい
- みこと: 未来に希望を紡ぐ姿を
- FILENAME: text_520520-7_LNbJr.txt
- 静海 このは: みんな、いったん下がって! これは…
- 静海 このは: く、ああ…っ!
- 三栗 あやめ: このはー!
- 夏目 かこ: 危ない、あやめちゃん!
- あやめ&かこ: きゃああっ!
- みこと: んふふ…そこに隠れてるの だーれだ?
- 純 美雨: くっ…!
- 志伸 あきら: 美雨!
- 純 美雨: あ、あきら…来ては…
- みこと: ふたりとも送ってあげる
- 美雨&あきら: があ…っ!
- みこと: んふふ…
- みこと: …熱い
- みこと: 意識がドロドロと溶けていくような心地で ひどく気分が悪い…その上、力を使う度に 刃物で突き刺されたような痛みが全身に走り 何も考えられなくなる…
- みこと: …熱い…熱い…ッ!
- 常盤 ななか: あれは…拒絶反応?
- やちよ: いえ、というより… 何かが抵抗してる…?
- みこと: ああああああっ!
- 更紗 帆奈: 瀬奈!
- みこと: だ、大丈夫、帆奈ちゃん… クリスマス、楽しいね
- 更紗 帆奈: え…?
- みこと: 今日はクリスマスなんだよ 覚えてないの、帆奈ちゃん
- みこと: 私ね、帆奈ちゃんにプレゼントを 用意してたんだ、お揃いのペンを
- みこと: あれ…ここにないな…あのペンね みんな欲しがって横取りするの
- みこと: だから取り返しにいかないと!
- 更紗 帆奈: …そう、だね またショッピングモールに行こう
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 常盤 ななか: …予想はしてましたが やはり犯人はあなたではなく…
- 更紗 帆奈: なに勘違いしてるの あたしがやったんだよ
- 常盤 ななか: …彼女をかばう前に 止めるべきではないのですか
- 常盤 ななか: これ以上 彼女に罪を重ねさせるのは…
- 更紗 帆奈: 瀬奈は何も汚れていないよ 罪は全部あたしが引き受けるから
- 更紗 帆奈: だから…瀬奈はきれいなままだ
- やちよ: あなたは、何を言って…
- 更紗 帆奈: …瀬奈、こいつらを倒そう! それで誰もいない場所へ行こう!
- 更紗 帆奈: そこで…もう一度雪だるまを つくるんだ…もっと大きいやつを
- みこと: 雪だるまって?
- 更紗 帆奈: …うん、そうだね あとでちゃんと教えるよ…
- 常盤 ななか: そんな状態の瀬奈さんを連れて あなたは何をしたいのですか!
- 更紗 帆奈: あんたらこそ 瀬奈をどうするつもり!
- 更紗 帆奈: ここであたしたちを捕まえて それで…そのあとは!?
- 常盤 ななか: …適切な状態に戻します
- 更紗 帆奈: もっとわかりやすく言いなよ 殺すってさ!
- 常盤 ななか: そんなことは…!
- 更紗 帆奈: 嘘を吐くなッ!!
- 更紗 帆奈: あんたらはとっくに瀬奈を 見捨ててるから…切り捨てる
- 更紗 帆奈: …あたしはそうじゃない 絶対に、見捨てたりしない…!
- 更紗 帆奈: それをすれば、あたしは あたしではなくなるから!
- やちよ: うっ!
- 更紗 帆奈: 瀬奈!もう派手にいこう! こいつら全員ぶっ壊そう!
- みこと: うん!
- みと&れいら: うああ…っ!
- みこと: あはは、この遊び楽しいね 帆奈ちゃん!
- 桑水 せいか: …っ!!
- 更紗 帆奈: 強い!さすが瀬奈! もうこのふたりしか残ってないよ
- みこと: えへへ…
- やちよ: くっ…
- 更紗 帆奈: …あんた、そろそろ 本気を出したら…?
- やちよ: …………
- 更紗 帆奈: 何を隠してるのか知らないけど このままだとあんた…
- みこと: あ…ああ…
- 更紗 帆奈: せ、瀬奈、どうしたの…?
- みこと: 力が、急に…なくなって…
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- 更紗 帆奈: どうせあんただろ… 何をした、常盤ななか!!
- 常盤 ななか: …時間は稼ぎました 頼みますよ、皆さん
- いろは: 攻撃をつづけて 消耗を強いてください!
- 十七夜: 凄まじい数だが… 想定通りなのだろう?
- ねむ: 「これは、ウワサを無理に利用している証拠 瀬奈みことが消耗しきるより前に ウワサが消耗しきったら肉体は瓦解する…」
- ねむ: 宿主を失う彼女の人格は 新たな宿主へ移る必要がある
- 灯花: そう、こっちから強制的に 移植させようってわけ
- うい: お姉ちゃん!
- いろは: うん…行こう、うい!
- みこと: あ、ああああ…ッ!!
- 更紗 帆奈: 瀬奈!!
- 常盤 ななか: …ウワサはもう保たない 移植の魔法を使わせなさい
- 更紗 帆奈: なに、勝った気でいるの…?
- 常盤 ななか: ええ すでに勝敗は決しています
- 常盤 ななか: …あなたの相手は 私が務めるのですから
- FILENAME: text_520520-8_LNbJr.txt
- <Side:帆奈>
- 常盤 ななか: そこ…っ!
- 更紗 帆奈: ぐう…っ!
- 更紗 帆奈: この!
- 常盤 ななか: また、雪を…!?
- 更紗 帆奈: 遅いっ!
- 常盤 ななか: うっ!
- 更紗 帆奈: 急所を狙ったのに、体を捻った?
- 更紗 帆奈: ちいっ…!
- 更紗 帆奈: はあ、はあ…
- 更紗 帆奈: もう限界だ…立っているのでやっとだ 前のときもそうだった いつもあたしの戦いはボロボロだ
- 更紗 帆奈: だけど、それは仕方がない あたしは別に才能に恵まれているわけでも 何でもない…もしかしたら平均よりやや下の 力しか持っていないかもしれない
- 更紗 帆奈: それを暗示と小細工で誤魔化しながら 他のやつらと渡り合ってきた でも、もう…策がない
- ななかの声: 瀬奈さんを 置き去りにしていいのですか?
- 常盤 ななか: …あまり時間もかけられません そろそろ決着をつけましょう
- やちよ: 本当に見ているだけでいいのね?
- 常盤 ななか: これは、私闘ですから
- 更紗 帆奈: 何かないか…暗示は散々使った もう通じるような相手じゃない 地形も利用した…他には…
- 更紗 帆奈: 光は?雪は光を反射する 目くらましに使えるんじゃ… いや、その光をどうやって用意する! ええい、考えがまとまらない
- 常盤 ななか: …行きます
- 更紗 帆奈: ――っ!?
- 常盤 ななか: 一閃!
- 更紗 帆奈: がああ…っ!
- 帆奈の声: …っ、あ、ああ…
- 更紗 帆奈: 夕焼けに染まった空が遠くに見える もう体はびくとも動かない どうやらあたしはここまでのようだ
- 更紗 帆奈: ごめんね瀬奈…あんたを守れなかった きっとあんたは先に行っちゃうね? 移植を使って生きながらえようとは 決してしないと思うから…
- 更紗 帆奈: あんたのことを覚えていなくても それくらいはあたしにだってわかるよ わからないこいつらがどうかしてる
- 更紗 帆奈: でもね瀬奈、ひとりじゃないよ? あたしもきっとすぐあとを追う… だから、許してくれるでしょ? 寂しくはないね
- ななかの声: …立ちなさい
- 更紗 帆奈: なに言ってんの…あたしはもうムリ どうせあんたはとどめを刺さないんでしょ? じゃあもう放っておいてよ
- ななかの声: 立ちなさい!
- 常盤 ななか: あなたの意地は その程度だったのですか!
- 帆奈の声: ――っ!?
- 常盤 ななか: 私はそんなものに抗うため復讐へ 身を捧げたわけではありません!
- 帆奈の声: あ、あんた、何を…?
- 常盤 ななか: …私は清廉潔白ではありません
- 常盤 ななか: 目的を達成するために ひどい真似も行いました
- 常盤 ななか: それら業は私が人生を懸けて 償っていく…
- 常盤 ななか: もう一度言います 立て、更紗帆奈!
- 常盤 ななか: 今のお前は私の償うべき 尊いものを貶めている
- 帆奈の声: …は…はは…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 何だよ、それ
- 常盤 ななか: ―ななか― ――っ!?
- 更紗 帆奈: こいつが何を言っていたのか 全然わからない だけど、今のあたしがこいつに 相応しい敵ではないことはわかる
- 更紗 帆奈: …それは、ダメだよね
- 更紗 帆奈: あたしは神浜を混乱のどん底に陥れたヴィラン ここで立ち上がらなきゃ名が廃る
- 更紗 帆奈: 小細工の用意はもうない 使えそうなものもない でも、ひとつだけ忘れていた
- 更紗 帆奈: ヴィランの心意気だ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あたしは混沌のヴィラン あんたたちに厄災を振り撒く者さ!
- 更紗 帆奈: もっとだ、もっと悪意を集めろ… 肉体が壊れても動かせられるように 命が燃え尽きようと戦えるように!
- 更紗 帆奈: 諦めようとするな、弱さを見せるな お前は何も意に介さないように不敵に笑い 完全なる悪として立ちはだかるんだ
- 更紗 帆奈: お前が不幸に叩き落とした者たちが 何の迷いもなくお前を討てるように… それがヴィランの心意気だろ、更紗帆奈!
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …あっは!
- 更紗 帆奈: 守り抜いてみせろ、瀬奈みことを 瀬奈がどんなに悪事を働いていても どんなに取り返しのつかない罪を犯しても お前だけは瀬奈の味方でいろ!
- 更紗 帆奈: …できるな?
- 更紗 帆奈: 当たり前だろ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― そのためにあたしはヴィランになったんだ…!
- 常盤 ななか: ―ななか― …………
- 常盤 ななか: ―ななか― …顔つきが変わりましたね まるで、昔のようです
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 偉そうに上からモノ言わないでくれるー?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― その澄ました顔、ぐっしゃぐしゃに したくなるからさ!あっは!
- 常盤 ななか: ―ななか― …あなたにとどめを刺さなかったこと 一度も後悔はしていません
- 更紗 帆奈: ―帆奈― なに、今回も寸止めするって?
- 常盤 ななか: ―ななか― ええ、あなたには生きて償ってもらいます 瀬奈みことさんと一緒に
- 常盤 ななか: ―ななか― ですがその前に、1発ぶん殴らせてもらいます
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 甘ちゃんだなあ… こんなやつらは死ななきゃ治らないよ?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …ね、瀬奈!
- みこと: ―みこと― んふふ、死んでも治らないかも
- 常盤 ななか: ―ななか― あなた…
- 更紗 帆奈: 瀬奈がそばにいてくれるおかげだろうか? 視界も意識も明瞭になっていく それどころか記憶さえも これまで薄らかかっていたもやが晴れていく
- 更紗 帆奈: 激しい痛みが襲う…記憶がせきを切ったように 流れ込んできて胃袋を鷲づかみにされたような 異様な不快感を覚える
- 更紗 帆奈: …見つけた
- みこと: え…?
- 更紗 帆奈: 最後に会えてよかったよ、瀬奈
- 更紗 帆奈: これは…何だ?
- 更紗 帆奈: こんなやり取りをしたなんて 瀬奈からは聞いていないのに…
- みこと: ―みこと― どうしたの、帆奈ちゃん…?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ううん、何でもー
- 更紗 帆奈: …あたしの頭は回路でも焼き切れたのかな? ありもしない幻覚を見せてくる…
- 更紗 帆奈: もしかしたら…瀬奈に関する記憶が 封印から解かれようとしている…? いや、違う…全然別のところから 瀬奈との記憶が、瀬奈への思いが出てくる
- 更紗 帆奈: まるで更紗帆奈の心が 自分が何者であるか思い出せと訴えるように
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …っ
- 更紗 帆奈: 頭に衝撃が走るような痛みを覚える …今、あたしは何をしているんだった? いや…そうだ、思い出した…まだ大丈夫
- 更紗 帆奈: だけどそのうち、大丈夫じゃなくなるんだろうな 何もかもわからなくなって…
- 更紗 帆奈: それでも…まあ、いっか
- 更紗 帆奈: あたしは錆びついた明日より 輝く今が欲しい
- 更紗 帆奈: 瀬奈だってきっと同じ気持ち… だから、死にそうなのを堪えて立っている
- 更紗 帆奈: …もう、準備は万全だ
- 更紗 帆奈: ―帆奈― そんじゃ、改めて…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― じゃじゃーん! どーもどーも!
- 常盤 ななか: ―ななか― ――っ!?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あたしがお目当ての… 更紗帆奈だよ~っと!
- みこと: ―みこと― 相棒の瀬奈みことだよ~!
- みこと&帆奈: ―みこと&帆奈― あっはー!
- FILENAME: text_520520-9_LNbJr.txt
- <Side:みこと>
- みこと: 降ってくる雪が頬で溶けて 涙のように流れた 意識はまだぼんやりとしている
- みこと: あれから私たちは…どうなったんだっけ…?
- やちよ: 気がついたようね
- みこと: この人は誰だっけ…? 思い出せない それより、帆奈ちゃんは…?
- みこと: は、はん…帆奈、ちゃん…!
- 常盤 ななか: 更紗、帆奈なら… 気を失って、います…
- やちよ: まだ動かないで あなたも危ない状態なのよ
- 常盤 ななか: い、いえ…やちよさん、は… 他の皆さんの手当を…私は…
- 常盤 ななか: このふたりを、連れて、帰ります
- やちよ: でも、もうふたりは…
- 常盤 ななか: 聞きたく、ありません…!
- 常盤 ななか: 私は必ず、ふたりを… 生きて、帰さないと…
- やちよ: …わかったわ けれど、ムリはしないで
- 常盤 ななか: ありがとう、ございます…
- 常盤 ななか: ほ、ほら…行きます、よ
- みこと: どこへ…?
- 常盤 ななか: 帰るんです、神浜へ… ここは、バカに寒くて、いやです
- 常盤 ななか: さあ、手伝ってくだ、さい… 彼女を、背負わないと
- みこと: …どうして、そこまでするの?
- 常盤 ななか: このまま、おふたりを見捨てたら …負けたみたいじゃないですか
- 常盤 ななか: 私自身の、悪意に…
- 常盤 ななか: 私は、そんなものに 負けたくないんです
- 帆奈の声: …あたしには、ムリだったな
- 常盤 ななか: え…?
- 更紗 帆奈: あんたを選んでよかったよ
- 更紗 帆奈: まあ、あんたにとっては 災難でしかなかっただろうけど
- 常盤 ななか: あなた、立って…
- 更紗 帆奈: もうムリせず、眠り…
- 更紗 帆奈: って、痛っ!
- 常盤 ななか: はあ、はあ…暗示は私には 通用しません
- みこと: …もう気はすんだ? なら、眠ってて
- 常盤 ななか: え…あなた…!?
- 更紗 帆奈: 瀬奈~、あたしから盗ったね
- みこと: 違う違う、借りてるだけ 返そっか?
- 更紗 帆奈: もういいよ、それより行こう あいつらが戻ってくる前に…
- 更紗 帆奈: あたしがまだ覚えているうちに…
- みこと: うん…行こう、帆奈ちゃん
- 常盤 ななか: ま、待ちな、さい…!
- 更紗 帆奈: …………
- 常盤 ななか: ま、待て… 待てって、言ってるだろ…ッ!
- ななかの声: 更紗帆奈あああ…ッ!
- みこと: それから私たちは… 体を支え合いながら ともかく、歩きつづけた
- みこと: 私たちの旅の終着地はもうすぐそこだった
- みこと: 降り積もった雪をかき分けて進むのは 想像以上に体力を使い、足ももつれ出す
- みこと: あっ…と思った瞬間 私は倒れ込んでしまった 支え合っていた帆奈ちゃんも倒れる
- みこと: 何か、沈んでいくような感覚だった 体はもう何も動かなくなり 頭の中が溶け出すように思い出がなくなっていく
- みこと: 止めようとしてもムダだった もう私という思い出を記憶する媒体は限界なんだ
- みこと: 思い出が私から見えなくなっていく… それを悲しく思うのに 何を忘れてしまったのかがわからない それがなおさら悲しかった
- みこと: ああ…ここはどこなんだろう? とっても寒い…とっても寂しい…
- みこと: 私は気力を振り絞って手を動かした 体勢も頑張って変えてみたりして そこにあるはずの何かを探す
- みこと: 何を探しているの? わからないけど… そこにあるはずなの
- みこと: 私の大切な思い出が
- みこと: 涙かと思ったら、頬に触れた雪だった いつの間にか、雪が降っていたんだ… だからここはこんなに寒くて…悲しいんだ
- 更紗 帆奈: 「…見つけた」
- みこと: 私の手に誰かの手が当たった その手はとても温かくて 優しい感じがする…
- みこと: ―みこと― 帆奈…ちゃん…?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …そうだよ
- みこと: ―みこと― こんなに近くにいたんだね… 私、もう全然、動けなくて…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あたしも…
- みこと: 帆奈ちゃん…私の大切な人、大好きな人 それは知識としてわかっている
- みこと: でも…帆奈ちゃんとの思い出が もう何も思い出せない
- みこと: …そんなこと、帆奈ちゃんには言えない 言ったらたぶん傷つくと思う そうだよね…?合っているよね…? 私だけ忘れてしまっているなんて、そんなこと…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ねえ…あの…えっと…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― みこと?
- みこと: どうしてか、名前を呼ばれただけで 胸がいっぱいになった
- みこと: 私が帆奈ちゃんって呼んでるんだから 帆奈ちゃんだって私のことを いつも名前で呼んでるんじゃないの…? 合ってるはずなのに、なんで…
- みこと: なんでこんなに、うれしいの…?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …みこと?
- みこと: ―みこと― う、ううん!どうしたの?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あ、えっと…ク、クリスマス 楽しかったよね?
- みこと: クリスマス…いつだったっけ?
- みこと: あ、そうだ、私は帆奈ちゃんと一緒に クリスマスパーティーをしたんだった きらきら光る色とりどりの折り紙で 部屋を目一杯飾って、色んな料理を用意して…
- みこと: ―みこと― 楽しかったけど、帆奈ちゃん 輪つなぎ下手すぎだよ…結局私が全部したもん
- 更紗 帆奈: ―帆奈― ああ…そうだったね あたしなんでこんなに不器用なんだろう?
- 更紗 帆奈: ―帆奈― でもさ、サンタの格好してあげたでしょ
- みこと: ―みこと― そうそう!サンタさんからプレゼントもらうの はじめてだったからすごくうれしかった
- 更紗 帆奈: ―帆奈― みこともプレゼント、ありがとう あのペン、大切にしまっておくよ
- みこと: ―みこと― ちゃんと使ってよー
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あっはは…
- みこと: あのクリスマスは本当に楽しかった はじめて食べる七面鳥はおいしかったし ケーキだって一緒に食べたし…
- みこと: ああ…まぶしい 世界がきらきらして見える
- みこと: きっと私たちの思い出を雪が乱反射させて まばゆく輝かせているからだ
- みこと: ―みこと― ねえ帆奈ちゃん…雪がきれいだよ 色とりどりに輝いている
- みこと: ―みこと― あれは私たちの思い出なんだ 思い出がこの世界に降っている…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― 見えるよ…みこと
- みこと: 雪がドロップのような… 色とりどりのきれいな欠片に変わる
- みこと: ここは 私たちふたりだけの世界だ
- みこと: 優しさと温かさに満ち溢れていて ここなら安心して眠れるはずなのに
- みこと: …どうして私は、こんなにも怖いんだろう
- みこと: ああ、そうだ…誰も私を見つけてくれないからだ 私はひとりぼっちで、どれだけ泣いても 誰も私を捜してくれない…
- みこと: 私はただ、温もりが欲しかったのに…
- みこと: 愛してほしかっただけなのに
- みこと: …そんなことを思っちゃいけなかったのかな…
- みこと: ―みこと― お母さん…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― …心配いらないよ…もう大丈夫…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― あたしがいつまでも一緒にいるから…
- 更紗 帆奈: ―帆奈― みことのそばには…いつも、あたしが…
- みこと: ああ、そうだ… 帆奈ちゃんがいれば大丈夫だ 帆奈ちゃんがいれば何も怖いことなんてないんだ
- みこと: 帆奈ちゃんは私のヒーローで 格好よくて、強くて、絶対に諦めなくて そして、必ず私を見つけて…
- みこと: …絶対に味方でいてくれるんだ!
- みこと: 世界はとっても怖くて汚いけれど 帆奈ちゃんと一緒にいれば不安はないよ
- みこと: そう、帆奈ちゃんがいるから私も強くなれる 帆奈ちゃんがいるから…
- みこと: 私は何にでもなれる
- みこと: まるで…魔法だね
- みこと: …ねえ帆奈ちゃん 私、帆奈ちゃんみたいになりたいなあ… ううん、絶対になるんだ
- みこと: だって…
- みこと: きっと大切な人を幸せにできると思うから!
- FILENAME: text_520520-10_LNbJr.txt
- <Side:ななか>
- 常盤 ななか: あれから…クリスマスが過ぎ 平穏な日々が戻ってきました
- 常盤 ななか: 私はふと思い立って電車に飛び乗り 更紗帆奈と瀬奈みこと… ふたりが消えた場所へ向かっています
- 常盤 ななか: きっと今日見た、夢のせいです
- 常盤 ななか: うっ、くうっ…!
- やちよ: ム、ムリしないで 暗示の魔法が解けたばかりなのよ
- 常盤 ななか: そうは言っていられません 更紗帆奈はどこに…
- 常盤 ななか: …これは?
- やちよ: 誰かがここで寝ていたのかしら… そんな跡よね
- 常盤 ななか: こんな雪の中にですか? しかもこれはふたり分…
- やちよ: つまり… そういうことなんじゃないかしら
- 常盤 ななか: …………
- やちよ: 足跡らしきものはここまでに いくつかあったけれど…
- やちよ: ここから先にはないわ
- 常盤 ななか: …ここが終着地
- やちよ: わからないけれどね…雪が足跡を 隠してしまったかもしれない
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: …バカ
- 常盤 ななか: …本当にバカですよ、そんなの
- 常盤 ななか: ねむさんが物語の経緯を本で確認した限りだと 瀬奈みことはウワサの魔力に呑まれかけたり 自身の魔力を消耗していく中で
- 常盤 ななか: 意識を呑まれるように記憶が 見えなくなっていったそうです
- 常盤 ななか: 最後の瞬間…ふたりはお互いのことを 何も覚えていないのに… 並んで咲く2輪の花のように寄り添っていた…
- 常盤 ななか: それは世間的には悲しい結末になるのでしょうが ふたりの姿を想像すると…どうしてか それでよかったのではないかと思うのです 憎らしいくらいに
- 常盤 ななか: …一応あのふたりは 表向きは行方不明になっていますが 実際のところ、もう戻ってくることはありません
- 常盤 ななか: ねむさんがふたりのうわさのページを 破り捨ててしまったからです
- 常盤 ななか: なぜ、そんなことを…?
- ねむ: ふたりの物語はここで おしまいにしてあげたい
- ねむ: あのふたりは互いの存在のため もう、十分すぎるほど戦ったよ…
- 常盤 ななか: ねむさんが何を言っているのか私には わかりませんでしたが…不思議なものです わかっていないくせに破くという行為が とても正しいことのように思えたのです…
- 常盤 ななか: ふたりは、思い出の中で…永遠に
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: …はあ、いい加減 こっちに来たらどうですか?
- 夏目 かこ: えっ!? き、気づいてたんですか
- 常盤 ななか: そりゃ気づきますよ… なぜ私についてきたんです
- 夏目 かこ: え、えっと…ちょっとだけ 心配だなって…あはは
- 常盤 ななか: …私は大丈夫ですよ
- 常盤 ななか: 大丈夫になれるんです
- 夏目 かこ: そう、ですか…
- 常盤 ななか: …やはり冷えますね、ここは
- 夏目 かこ: あの、ななかさん
- 常盤 ななか: 何ですか?
- 夏目 かこ: 気になっていたんですけど… 自動浄化システムは無事ですか?
- 夏目 かこ: 瀬奈みことさんが いなくなってしまいましたから…
- 常盤 ななか: ああ、それなら心配いりません
- 常盤 ななか: 自動浄化システムは 何の問題もなく機能しています
- いろは: 実は、私の中に時空を繋ぐ力が 残されているんです
- 常盤 ななか: 瀬奈みことが残していったと…? できたんですね、そんなことが
- いろは: 私もみことさんが離れるまで 知らなくて…
- ねむ: 彼女が移植したのは あくまで自分の人格だけ
- ねむ: 持っていくこともできたかも しれないけど、そうしなかった
- 常盤 ななか: …瀬奈みことは未来への希望を 信じていないわけではなかった…
- ねむ: さあ、どうだろうね…
- ねむ: 単に更紗帆奈以外に 興味がなかっただけかもね
- いろは: そんなことないよ
- いろは: みことさんはやっぱりどこかで 期待してるんだと思う
- いろは: 私たちの未来を
- 夏目 かこ: そんなことが…
- 常盤 ななか: 実際私はその力を借りて 鏡の世界から戻ってきたので
- 常盤 ななか: その実在性は きちんと確認しています
- 夏目 かこ: 時空を繋ぐって…あの鏡ですか?
- 常盤 ななか: ええ、そうです 他に出る方法がなかったので
- 夏目 かこ: そうだったんですね…
- 常盤 ななか: …それで、本当にかこさんも 見るんですか?
- 夏目 かこ: はい、一度ちゃんと 見ておきたいなって…
- 夏目 かこ: ななかさんはどうしてですか?
- 常盤 ななか: 何となくです、何となく…
- 夏目 かこ: …………
- 夏目 かこ: …ななかさんはおふたりのことを どう思っていますか…?
- 夏目 かこ: もう、許した…とか?
- 常盤 ななか: いいえ、許すわけがありません
- 常盤 ななか: ふたりの環境も事情も調べました 話も皆さんから聞きました
- 常盤 ななか: けれど、それはそれです 今でもムカついて仕方ありません
- 常盤 ななか: クソッタレ、というやつです
- 夏目 かこ: そ、そうですか…あはは…
- 常盤 ななか: 私は、同情もしていない
- 常盤 ななか: ただ… 後悔はあります
- 夏目 かこ: ――っ!?
- 常盤 ななか: …かこさんはどうですか?
- 夏目 かこ: わ、私は… 願いで元通りにしましたし…
- 夏目 かこ: それに魔法少女になって いいことだってあるんですよ?
- 常盤 ななか: え…?
- 夏目 かこ: 勇気を持つ自分…そう、 なりたい自分になれたんです
- 常盤 ななか: …っ、く…
- 夏目 かこ: え、ど、どうしたんですか? 私、変なこと言いました…?
- 常盤 ななか: …いえ、申し訳ありません 本当に…
- 常盤 ななか: あっ…あそこ、見えますか? あの辺りでふたりが…
- 夏目 かこ: あれ…? お花が咲いてますよ
- 常盤 ななか: え…?
- 夏目 かこ: なんていうお花なんですか?
- 常盤 ななか: ―ななか― …スノードロップ 雪が溶ける頃…ちょうど今頃に咲く花です
- 夏目 かこ: ―かこ― そういえば…ここに来るまでに このお花、他の場所でも咲いてましたよ
- 常盤 ななか: ―ななか― そうなんですか?
- 夏目 かこ: ―かこ― はい、何度か見ましたから!
- 夏目 かこ: ―かこ― えっと…ここでおふたりが いなくなったんですよね?
- 夏目 かこ: ―かこ― ちょうど2輪咲いて…可愛いですね
- 常盤 ななか: ―ななか― これがふたりの証…というわけですか
- 常盤 ななか: あれから何度もあのふたりのことを 考えてみたのですが 私にはふたりが何を思っていたのか どうしてもわかりません
- 常盤 ななか: ふたりがなぜ逃げていたのかも そしてなぜここで消え その後どうなったのかも…
- 常盤 ななか: きっと、この花を見る度に 私はふたりを思い出し、また考え込むのでしょう
- 常盤 ななか: 他の皆さんがふたりを忘れてしまっても 私は何度も何度も思い出すことでしょう
- 常盤 ななか: そして私は、明日へ進んでいく
- 夏目 かこ: ―かこ― ななかさん、そろそろ行きましょう
- 常盤 ななか: ―ななか― はい…
- 常盤 ななか: ―ななか― …いつかまた、どこかで
- 常盤 ななか: このクソッタレの思い出に 持てる限りの愛を込めて…
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