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- FILENAME: text_516010-0.txt
- 黒江: あの日、私は神浜市に向かっていた
- 黒江: ある噂を確かめるために…
- 黒江: (“神浜市に行けば 魔法少女は救われる”、か…)
- 黒江: (神浜市では、いったい 何が起きてるんだろう…)
- 黒江: …ふぅ
- 黒江: (少し緊張する…)
- 黒江: ――っ!?
- 黒江: 魔女の反応… どこで…!?
- いろは: くっ…! 全然当たらない…!?
- 黒江: 電車の外に結界が…!?
- 黒江: (あ…もう誰か戦ってる…)
- 黒江: …………
- 黒江: 見殺しにはできない…
- 黒江: 怖いけど… 助けないと…!
- 黒江: (あそこの窓から飛び降りれば 結界に入れそう…!)
- ガラッ
- 黒江: っ…………
- 黒江: (やっぱり、怖い…)
- グラッ…!
- 黒江: あ…! 落ちる…!!
- 黒江: あ…!
- ドサッ
- 黒江: いっ、たぁ…
- 黒江: …………あ…
- 黒江: (魔女の反応が… どんどん遠くなっていく…)
- 黒江: (…私、ホッとしてる…)
- 黒江: …………最低だ…
- 黒江: 逃げるつもりはなかったけど… きっと私が行っても あそこにいた魔法少女を助けるなんて できなかったと思う
- 黒江: そもそも誰かを助けられるくらい 私が魔法少女として強かったなら “神浜市に行けば、魔法少女は救われる” なんて噂を確かめる必要はなかったし…
- 黒江: …私、本当に救われるのかな…
- (from the opening sequence images)
- 「魔法少女になんてなるんじゃなかった。
- 願いなんて、叶わなければよかった・・・」
- Little Bird's Star
- FILENAME: text_516010-1_GKU3X.txt
- みんな: …す、すみませんでした…
- 白羽根: 調整屋から荷物を運ぶ途中で 尾行されるなんて…
- 白羽根: マギウスの翼の訓練は 何度か受けているはずよね?
- 黒江: 一応…
- 白羽根: フェントホープの場所が バレたらまずいことになるわ
- 白羽根: 今後はくれぐれも注意しなさい
- 黒江: はい… 失礼します…
- 黒羽根: 怒られちゃったね…
- 黒江: 少し訓練したくらいで
- 黒江: 白羽根の人みたいに、 うまく戦えるはずないのに…
- 黒羽根: それくらいできてたら マギウスの翼に入ってないしね…
- 黒羽根: これでうわさを守れって 指示されでもしたら
- 黒羽根: とてもじゃないけど無理だよ…
- 黒羽根: 相手は“七海やちよ”かも しれないもんね…
- 黒江: 誰だっけ…
- 黒羽根: みふゆさんとも渡り合える 大ベテランの魔法少女だよ
- 黒羽根: うわさを消して回ってるって この間、話題になったじゃん!
- 黒江: あ、あぁ…あの人か…
- 黒羽根: 住む世界が違うよねえ
- 黒江: 私たちみたいな弱い魔法少女が いることなんて、知らなさそう
- 黒羽根: 言えてる…
- 黒羽根: 私なんか、みふゆさんに 誘ってもらってなかったら
- 黒羽根: いまごろ魔女になってたと思う…
- 黒羽根: 私もだよ…
- 黒江: …私もマギウスの翼に入ったのは 梓さんがきっかけ
- 黒江: 「神浜市に行けば、魔法少女は救われる」
- 黒江: って噂を確かめに来たら 偶然会ったんだ…
- ドサッ
- 黒江: いっ、たぁ…
- 黒江: …………あ…
- 黒江: (魔女の反応が… どんどん遠くなっていく…)
- 黒江: (…私、ホッとしてる…)
- 黒江: …………最低だ…
- みふゆの声: 大丈夫ですか!?
- 黒江: ――っ!?
- みふゆ: 魔女の気配を追っていたら
- みふゆ: あなたが空から落ちてきたので 驚きましたよ…
- みふゆ: 魔法少女のようですが… ケガはありませんか?
- 黒江: あ…はい…
- 黒江: …あの、あなたは 神浜市の魔法少女…ですよね?
- みふゆ: ええ、そうですが…
- 黒江: 私、宝崎市から来たんです…
- 黒江: 神浜市に来れば、魔法少女は 救われるって噂を聞いて…
- みふゆ: …………!
- みふゆ: それならお話しましょう
- みふゆ: ワタシたち、マギウスの翼が 目指す魔法少女の解放について…
- 黒江: マギウスの翼に 誘ってもらえたのはよかったけど
- 黒江: 私たち、役に立ってるのかな…
- 黒羽根: ううん、全然だと思う…
- 黒羽根: せめて魔女と戦えるくらい 強かったらなぁ…
- 黒羽根: 私たちじゃ、魔女にやられてる 人を助けるどころか
- 黒羽根: 戦う魔法少女のサポートだって 無理だしね…
- 黒江: そうだね…
- みふゆの声: ちょっとねむ! 話は終わってませんよ!
- 黒江: …梓さん? それと…
- ねむ: 少し話せるかな?
- 黒羽根: …え、ねむ様…!?
- みふゆ: ワタシの話も少しは 聞いてください
- ねむ: いまはうわさのことが最優先だ 異論は認めないよ
- みふゆ: …………
- 黒江: あの…どうかしたんですか?
- ねむ: 君達に手伝ってほしいことが あって、お願いしに来たんだよ
- 黒江: 私たちじゃ役に立たないと 思いますけど…
- ねむ: 黒羽根の君達にしか できないことなんだ
- 黒羽根: 私でも役に立てるなら… 手伝わせてほしいです…!
- 黒羽根: 私も…!
- ねむ: 君はどうかな?
- 黒江: 自信は、ないですけど… 本当にやれることがあるなら…
- ねむ: 助かるよ
- ねむ: 詳しくは説明するけれど 君達にはうわさを調査してもらう
- みふゆ: …………
- FILENAME: text_516010-2_GKU3X.txt
- ねむ: 調査してもらうのは 新しいうわさ
- ねむ: 「やっかみカワードのうわさ」だ
- 黒江: うわさは人間の感情エネルギーを 集めるものって聞きましたけど…
- 黒江: それ、大丈夫なんですか…? 人が死んじゃったりとか…
- ねむ: 「昔、境遇を嘆いて自死した者が 怨霊になって生者を呪った」
- ねむ: という都市伝説を うわさの元にしているから
- ねむ: 感情を発露した者は 呪いの影響で気絶するけれど
- ねむ: 命を奪われることはないよ
- 黒江: それなら…いい、のかな…
- ねむ: 君達、黒羽根には
- ねむ: うわさが内容通りに発生するか 調査してほしいんだ
- 黒羽根: 私たちだけで 務まるでしょうか…
- ねむ: うわさの出現場所が特殊だから 調査には僕も同行するよ
- みふゆ: …………
- ねむ: それじゃあ早速出かけよう
- みふゆ: …あの、みなさん どうか気をつけて
- 黒江: …? はい…
- ガヤガヤガヤ…
- 黒江: …………
- 黒江: (…こんな町中で 本当にうわさが出現するのかな)
- でさー、この間の配信 最後まで見ちゃったんだよね
- マジ!? 6時間くらいやってたのに!?
- あーあ、部活だるいなぁ…
- 仮病つかって休んじゃえば?
- 黒江: …………
- 黒江: (魔法少女になる前なら、私も こんな会話してたのかな…)
- 黒江: …………
- 黒江: …………
- 黒江: (…もう、思い出せないな…)
- ねむ: なかなかうわさの出現が 確認できないね…
- 黒江: すみません…
- ねむ: ふむ…学生が多い場所なら
- ねむ: うわさを出現させやすいと 思ったんだけれど
- ねむ: 僕の見当違いだったかな…
- 黒江: …………
- 黒江: (魔法少女になったのに 魔女とも戦えないどころか)
- 黒江: (ちょっとした任務も まともにこなせないなんて…)
- 黒江: やっぱり私たちが役に立つなんて 無理なんだ…
- 黒羽根: うん…
- 黒羽根: あの、ねむ様… すみません…
- 黒羽根: この後、習い事があるので 帰ってもいいですか…?
- 黒江: …………
- 黒羽根: 私も…家が遠いので
- 黒羽根: そろそろ神浜市を出ないと 親に心配されてしまいます…
- ねむ: そういうことなら構わないよ ご苦労さま
- 黒江: …………
- ねむ: 君はまだ大丈夫かな?
- 黒江: あ、はい…何もないですし 帰りが遅くなっても平気です
- 黒江: …………
- 黒江: (なんだ… 私が思ってるよりみんなは)
- 黒江: (魔法少女になっても 普通の生活を送れてるんだ…)
- 黒江: (私と一緒だと思ってたのに)
- 黒江: (普通でいられなくなったのは 私だけなのかも…)
- 黒江: …いいな、みんなは…
- ねむ: これは…!
- 黒羽根たち: きゃあああっ!!
- 黒江: ――っ!?
- 黒江: 何が起きたの…?
- FILENAME: text_516010-3_GKU3X.txt
- 黒江: 何が起きたの…?
- ねむ: うわさの内容通り機能している
- ねむ: …成功だ
- 黒江: わ…!
- 黒江: …………あれ? 元に戻ってる…
- 黒江: …そうだ! あの子たちは…!?
- 黒江: だ、大丈夫…!? 何があったの…!?
- 黒羽根たち: …………
- 黒江: …気を失ってる…
- ねむ: 僕が他の羽根たちを 応援に呼ぶから
- ねむ: 君はここで彼女たちを 介抱してくれるかな
- 黒江: それは構わないですけど…
- 黒江: 一体何が起きたんですか? 私にはさっぱりで…
- ねむ: やっかみカワードのうわさが 出現したんだよ
- 黒江: さっきの気配が…?
- 黒江: じゃあこの子たちは… 呪いの影響で気絶しちゃった…?
- ねむ: そういうことになるね
- ねむ: 出現条件も問題ないようだし 周囲に与える影響も検証できた
- ねむ: 今日のところは 調査を完了にしよう
- 黒江: え、でも… 本当に問題ないんですか?
- 黒江: 何もしてないこの子たちが ウワサに襲われたのに…
- ねむ: 少し休めば回復するだろうし 大きな問題ではないよ
- ねむ: それに、黒羽根ふたりがしばらく 動けないとしても
- ねむ: 組織的な影響は微々たるものだよ
- 黒江: …はい…
- 黒江: (ただでさえ私たち黒羽根は 役に立ってないし…)
- ねむ: …そうだ、明日以降は 神浜市内をくまなく回って
- ねむ: 市内全域でうわさが出現するかを 調査しておいてほしい
- 黒江: …え、調査は完了って 言いませんでしたっけ…?
- ねむ: 今日のところは、 と言ったはずだよ
- 黒江: 無理ですよ…!
- 黒江: 私、うわさのことなんか 何もわからないのに…
- ねむ: 知識がなくても 調査には問題ないよ
- ねむ: それから、もし邪魔者が現れたら うわさを保護してほしい
- 黒羽根: これでうわさを守れって 指示されでもしたら
- 黒羽根: とてもじゃないけど無理だよ…
- 黒羽根: 相手は“七海やちよ”かも しれないもんね…
- 黒江: 冗談ですよね…?
- 黒江: 私、魔女を倒すのも怖いのに…
- 黒江: 他の魔法少女からうわさを 守り切れる自信なんてないです…
- ねむ: それでも、君には適性がある 問題ないよ
- 黒江: ええ…
- 黒江: (適性って何なの…?)
- ねむ: ただ、ひとりじゃ不安だろうから 白羽根たちを呼んでおくよ
- ねむ: 困ったことがあったら 頼るといい
- ねむ: それじゃ、僕は用事があるから 後のことは頼んだよ
- 黒江: あ…!?
- 黒江: …行っちゃった…
- 黒羽根たち: …………
- 黒江: はぁ…どうしよう
- FILENAME: text_516010-4_GKU3X.txt
- <翌日>
- コンコン
- 黒江: あ、はい…
- 月咲: 失礼しまーす
- 月夜: ねむ様から
- 月夜: うわさを保護するお役目を 頼まれた黒羽根でございますね
- 黒江: はい… そうみたいです…
- 月咲: 今日からウチらが一緒だから 気になることがあれば相談してね
- 黒江: ありがとうございます…
- 月夜: …あまり気が乗らないで ございますか?
- 黒江: というより…わからないこと ばかりで混乱してて…
- 月咲: ほらほら!しっかりして!
- 月咲: ねむ様に託されたんだから お役目はしっかり果たそう!
- 黒江: うぅ…
- 月夜: 私たちがサポートするので 大丈夫でございますよ
- 黒江: …………はい…
- 黒江: (やっぱり白羽根の人は 自信があって頼もしいな…)
- 月咲: それで、うわさの調査には どこに行けばいいの?
- 黒江: えっと、私にもよく わからなくて…
- 黒江: 学生が多い場所のほうが うわさを出現させやすいって
- 黒江: 柊さんが話してたんですけど
- 黒江: 昨日うわさが出たのは ひと気のない場所だったし…
- 月咲: そうなんだ…?
- 月夜: 他に手がかりもないですし まずはねむ様の言う通り
- 月夜: 学校がある地域を中心に 調査するでございますよ
- 月咲: それがいいかもね
- 月咲: じゃ、しゅっぱーつ!
- 黒江: あ、はい…!
- ガヤガヤガヤ…
- 黒江: …………
- 月咲: どうだった?
- 黒江: うわさの出現は 確認できなかったです…
- 月夜: 学生が多い以外にも 何か条件があるのでしょうか…
- 月咲: まだわからないね…
- 月咲: ねぇ、昨日はほかに どの辺りを調査したの?
- 黒江: 栄区のこの辺りだけです…
- 月咲: じゃあ、他の場所にも 行ってみようよ!
- 月咲: 何かわかるかもしれないよ
- 黒江: そう、ですね…
- 黒江: …………
- 黒江: (本当に神浜市全域で あのうわさが出現するなら)
- 黒江: (危険じゃないのかな…)
- 黒江: (昨日の黒羽根のふたりも あんなことになっちゃったし…)
- 黒江: (間接的でも、私がみんなを 苦しめるみたいでイヤだな…)
- 月夜: 何か気になることがある でございますか?
- 黒江: あ、いえ… 行きましょうか…
- …………
- 黒江: あれ…? 人通りが少ない…?
- 月夜: この地域の学校は、自家用車や スクールバスでの登校が多いので
- 月夜: 人通りが少ないのでございます…
- 黒江: そうなんですね…
- 黒江: すみません、神浜市のこと まだあまりわかってなくて…
- 月咲: 神浜市外から来てるなら 仕方ないよ
- 月咲: 少し調べたら 次の場所に行ってみよう!
- 黒江: はい…
- 黒江: …あ
- うちの猫を捜してます 些細な情報でも構いません 電話してください
- 黒江: (迷い猫のポスター…)
- 黒江: (猫だったら、私でも 見つけられるのかな…)
- 月夜&月咲: ――っ!?
- 月夜: 大変でございます、月咲ちゃん!
- 月咲: うん、まずいよ月夜ちゃん…!
- 黒江: え、え…? どうかしたんですか…?
- 月咲: 七海やちよとその仲間たちが 近くにいるんだよ!
- 黒羽根: みふゆさんとも渡り合える 大ベテランの魔法少女だよ
- 黒羽根: うわさを消して回ってるって この間、話題になったじゃん!
- ねむ: それから、もし邪魔者が現れたら うわさを保護してほしい
- 黒江: 冗談ですよね…?
- 黒江: (うわさを消す、 あの七海やちよが…!?)
- 黒江: (どうしよう… 大変なことになっちゃった…)
- 月夜: 厄介なことになる前に 逃げるでございます!
- 黒江: は、はい…!
- FILENAME: text_516010-5_GKU3X.txt
- 月夜: 急ぐでございますよ!
- 黒江: わ、わかってますけど…!
- 黒江: (これ以上 速く走れないよ…!)
- 黒江: あっ!
- 月咲: 大丈夫!?
- 黒江: いたた… 木の根っこに引っかかって…
- やちよの声: 追いついたわよ、笛姉妹…!
- 月咲: あ…
- 月夜: 七海やちよ…!
- 黒江: (あの人が…)
- やちよ: あなたたちに聞きたいことが 山ほどあるのよ
- いろは: お願いします 少しだけ時間をもらえませんか?
- 黒江: (…あ、電車で見た子…! 神浜市の魔法少女だったんだ…)
- いろは: 柊ねむちゃんのこと… 知っていたら教えてほしいんです
- 黒江: ――っ!?
- 月咲: 何を聞かれても 答える気なんてないよ!
- 月夜: それに私たちは忙しいので 邪魔しないでほしいでございます
- フェリシア: まーた悪だくみしてんのかよ
- 月夜: ち、違うでございますよ!
- 黒江: (隠しきれてない…)
- さな: 悪だくみじゃなかったとしても
- さな: マギウスの翼のやることなら 見過ごせません…
- 鶴乃: うん、 全力で止めさせてもらうよ!
- 月夜: 無礼なうえに暴力で解決なんて はしたないでございます…!
- 月咲: でも、そっちがその気なら…
- バッ!
- 月咲: 受けて立つよ!
- 黒江: (…いまのって、 私もやる場面だった…!?)
- バッ!
- 月咲: あれ、ローブ脱いじゃったの!?
- 黒江: 脱がなくて よかったんですか…!?
- 鶴乃: その隙もらったー!!
- 黒江: わわっ!?
- 月咲: ウチらも仕掛けよう!
- 月夜: はい、月咲ちゃん!
- ~~♪
- やちよ: あなたたちの狙いは読めてるわ!
- やちよ: 鶴乃、フェリシア!
- 鶴乃: 任せてししょー!
- 鶴乃&フェリシア: 「っちゃらあああ!」 「うおりゃあああ!」
- 月夜&月咲: 「きゃあああっ!?」
- 月咲: ―月咲― いったたぁ…
- 黒江: ―黒江― え、えぇぇ…!?
- 黒江: ―黒江― (白羽根のふたりがやられちゃってる…!?)
- 月夜: ―月夜― まずいことになったでございます…!
- 月咲: ―月咲― どうしよう… 大ピンチだよ…!
- 月夜: こうなったら… 取るべき策はひとつでございます
- 月咲: 撤退だね!
- 月夜: ねー!
- 月夜: さぁ、あなたも 行くでございますよ!
- 黒江: …………えっ!?
- 鶴乃: 逃がさないよ!
- 黒江: …………
- 黒江: (逃げ遅れちゃった…)
- やちよ: …さて、ひとまずあなたから 話を聞かせてもらうわよ
- 黒江: (七海やちよ…!)
- いろは: あの、柊ねむちゃんって子を 知りませんか…?
- 黒江: …知らない、わからない…
- やちよ: じゃあ北養区にいた目的は何?
- 黒江: …本当に何も知らないんです! 私は黒羽根で、下っ端だし…
- やちよ: 何も知らないのに 言われたことには従うの?
- やちよ: 意思はないの?
- 黒江: だって…私は…
- 黒江: (ただ救われたいだけだから…)
- 黒江: (私だって七海やちよみたいに もっと強い魔法少女だったら)
- 黒江: (マギウスの翼にだって 入ってない…)
- 黒江: 私なんかと次元が違う人に わかるわけないですよ…
- 黒江: ――っ!?
- 黒江: (何これ…私…!?)
- やちよ: 分身…!?
- やちよ: いえ、この気配は… ウワサ…!?
- やちよ: くっ…!
- いろは: 消えた…?
- やちよ: まさか黒羽根がウワサを 操れるなんてね…
- 黒江: ご、誤解です…! 私は何も知らなくて…!
- やちよ: 白々しいわね…
- 黒江: ほ…本当なんです…!
- 黒江: (私… どうなってしまったの…?)
- FILENAME: text_516010-6_GKU3X.txt
- 鶴乃: ごめん、ししょー… 天音姉妹を逃がしちゃった…
- やちよ: そう…仕方ないわね…
- 鶴乃: 迷いがなかったし、意外と この辺りの地形に詳しいのかも?
- フェリシア: オレたちが最初に追いつけたのは コイツがどんくさかったからか?
- 黒江: う…
- 黒江: (私…白羽根のふたりの 足手まといになってたんだ…)
- 鶴乃: その子には、柊さんのことは 聞いてみたの?
- やちよ: それどころじゃないわ… ウワサを操って襲ってきたのよ
- 鶴乃: え!?
- 黒江: 違います…! 私は本当に何もしてません…
- いろは: …………
- いろは: やちよさん、これから どうしますか…?
- やちよ: …キャンセルするわけにも いかないし
- やちよ: 予定通り向かいましょう
- さな: この人はどうするんですか…?
- やちよ: とりあえず監視しつつ 私たちと行動してもらうわ
- 黒江: え…!?
- 鶴乃: ウワサのこともあるし 仕方ないね…
- フェリシア: だからってなんでコイツと キャンプすることになんだよ!
- フェリシア: オレはぜってーヤダ!
- やちよ: ひとまず同行させるだけだから 我慢しなさい
- 黒江: キャンプって…?
- いろは: あ、この先に新しく開業した キャンプ場があるんです
- いろは: やちよさんのマネージャーさんに 紹介してもらって
- いろは: 1泊2日で無料キャンプ体験を させてもらうんですよ
- 黒江: えっと…マネージャーって…?
- いろは: やちよさんは事務所に所属して モデルさんをやってるんです
- やちよ: 環さん… そこまで説明しなくていいわよ…
- 鶴乃: とうちゃーく!
- やちよ: オーナーに挨拶してくるから 環さんたちはここにいて
- いろは: わかりました
- 黒江: …………
- 黒江: えっと…天音さんたち… 私です…黒江です…
- 黒江: 聞こえたら返事してください…
- 黒江: …………
- 黒江: (ダメ、か…)
- いろは: …あの~…
- 黒江: ――っ!?
- いろは: …私、環いろはって言います お名前を教えてくれませんか?
- 黒江: …………言いたくない… 私に構わないで…
- いろは: あ…
- フェリシア: やな感じだな、オマエ!
- 鶴乃: フェリシアだって知らない人に 監視されたら怖いしイヤでしょ?
- 鶴乃: それと一緒だよ
- 黒江: …………
- いろは: …………あのっ
- いろは: よかったら 一緒にキャンプしませんか?
- 黒江: …え?
- さな: い、いろはさん… ちょっと急すぎるんじゃ…?
- いろは: あ、ごめんね…
- いろは: でも、同じ魔法少女だし 少しは打ち解けられたらって…
- 黒江: …………
- いろは: それに、キャンプは 普段の日常を忘れられる環境で
- いろは: 自分を見つめ直すのに いいらしいので
- いろは: マギウスの翼にいることを 考え直すきっかけになればなって
- いろは: マギウスの翼は 危険な組織だと思うから…
- 黒江: …あなたには関係ないでしょ
- いろは: …すみません… きっと事情があるんですよね…
- 黒江: …………
- やちよ: 戻ったわよ
- いろは: おかえりなさい、やちよさん
- やちよ: オーナーに許可をもらえたから
- やちよ: あなたには日帰りで、 キャンプ体験に参加してもらうわ
- 黒江: …え!?
- やちよ: このまま解放して、町中で ウワサを出されても困るもの
- やちよ: 事情を話すまでは 付き合ってもらうわよ
- いろは: あの…楽しんでもらえるように サポートしますね…!
- 黒江: (全然嬉しくない…)
- FILENAME: text_516010-7_GKU3X.txt
- オーナー: みなさん、今日が初めての キャンプ体験だと伺いました
- オーナー: 山での過ごし方や オリエンテーションについて
- オーナー: 順に説明していきますね
- みんな: お願いします
- 黒江: …………
- 黒江: (私、何してるんだろ…)
- 月咲: あー!? いたー!
- 黒江: ――っ!?
- 月夜: 連絡がつかなかったので もしやと思い戻ってみれば…
- 月夜: 七海やちよたちに 捕まっていたのでございますね…
- 月咲: ごめん、ウチらが 置いていっちゃったから…
- 黒江: いえ…でも、助けてもらえると 嬉しいんですけど…
- 月咲: このまま挑んでも、今度は ウチらまで捕まっちゃうよ…
- 黒江: 確かにそうかも…
- 月咲: かと言って、すぐにはいい作戦が 思いつかないし…
- 月夜: 一度、戻って ねむ様に相談するでございますよ
- 月夜: ここは山奥で 電話も繋がらないでございますし
- 月咲: そうだね…
- 月咲: 不安だと思うけど待ってて! なるべく早く戻るから!
- 黒江: …わかりました…
- 黒江: …………
- 黒江: (白羽根の行動を 邪魔したくないし)
- 黒江: (余計なことはしないように 気をつけよう…)
- いろは: …あの、聞こえてました?
- 黒江: えっ!?
- フェリシア: ボーっとすんなよな
- 黒江: あ、うん…
- やちよ: …………
- いろは: あ、えっと…
- いろは: これからテントを張ったり 昼食の準備をしたりするので
- いろは: 手伝ってもらえませんか?
- 黒江: …どうして私が…
- 鶴乃: 働かざる者食うべからず!だよ!
- 黒江: …私、別に食べたいなんて 言ってない…
- ぐー
- 黒江: …………
- さな: えっと、いまの…
- フェリシア: オレもばっちり聞こえたぞ!
- いろは: その… せっかくのキャンプですし…!
- いろは: 少しだけで構わないので 手伝ってもらえませんか…?
- 黒江: …でも…………
- 黒江: (知り合いでもないのに 共同作業なんて気まずい…)
- いろは: …あ、すみません この状況じゃ気まずいですよね…
- いろは: …私とふたりで薪拾いに行くのも ダメですか…?
- 黒江: …………
- やちよ: …環さん、甘やかすのは あまり感心しないわ
- いろは: でも、もう少し話せるように 打ち解けたいですし…
- 黒江: …………
- 黒江: …わかった
- いろは: …………! ありがとうございます…!
- 黒江: (余計なことはしないつもり だったけど)
- 黒江: (この人とふたりきりなら 逃げるチャンスがあるかも…)
- FILENAME: text_516010-8_GKU3X.txt
- いろは: …この辺で 薪を探しましょうか
- 黒江: …ふたりだけじゃ、たくさんは 拾えなさそうだけど…
- いろは: あ、大きい薪はもうあるので
- いろは: 火を起こすときの火種にするのに 乾いた小枝を拾うんです
- 黒江: …そうなんだ 詳しいんだね
- いろは: いえ、さっきオーナーさんが 話してた内容そのままですけど…
- 黒江: …………
- 黒江: (聞いてなかった…)
- いろは: えっと… とりあえず探しましょうか
- 黒江: …うん…
- いろは: …………
- いろは: …あの、まだお名前は 教えてもらえないですか…?
- 黒江: …………
- いろは: …す、すみません…
- 黒江: (どうしよう、 気まずい…)
- いろは: …………
- いろは: …こんなふうに小枝を拾うなんて 小学生以来かもしれません
- いろは: 懐かしい…
- 黒江: …………
- 黒江: (…適当に話したほうが 気まずさが紛れるし)
- 黒江: (隙も作れるかも…)
- 黒江: …私も、久しぶりだと思う…
- いろは: …………!
- 黒江: …あ、あそこに落ちてる枝 ちょうど良さそう…
- いろは: 私、拾ってきますね!
- 黒江: (よし…逃げるなら、いま…!)
- いろはの声: きゃあっ!?
- 黒江: ――っ!?
- いろは: と、取ってください!! 腕に毛虫…毛虫がっ…!
- 黒江: …………
- パシッ
- 黒江: …はい、落ちたよ
- いろは: …あ、ありがとうございます…
- いろは: すみません、取り乱しちゃって…
- 黒江: ううん… 私もびっくりすると思うし…
- いろは: うぅ…恥ずかしいです…
- 黒江: (七海やちよと違って、この子は 普通の子なんだ…)
- 黒江: …………
- 黒江: …私、黒江
- いろは: え…、あ…!
- いろは: 改めて… 私は環いろはです
- いろは: よろしくお願いします 黒江さん…!
- 黒江: (結局、逃げそびれた…)
- オーナー: おや、おかえりなさい いい薪を拾えたみたいですね
- いろは: はい、黒江さんのおかげで
- 黒江: …たまたまです…
- フェリシアの声: あーもう! なんでこのテント倒れんだよ!
- やちよ: おかしいわね… 説明書通りに組み立ててるのに…
- フェリシア: なら、そんなの読まずに シュババっと組み立てよーぜ!
- フェリシア: テントなんて釘をズガンって 打てばオーケーだろ!
- さな: ええ…そうなんでしょうか…?
- 鶴乃: もしかして、ししょーって 説明書とか苦手だったりする?
- やちよ: 違うわよ…!
- やちよ: そう…この説明書のイラストが わかりづらいだけ…!
- 黒江: (完璧で隙がなさそうに 見えたけど)
- 黒江: (七海やちよにも 苦手なことってあるんだ…)
- オーナー: そろそろ助け船を出したほうが いいかな…?
- 黒江: …………
- いろは: 黒江さん…?
- 黒江: …インナーテントが裏返しだから 説明書の絵と違ってるんだと思う
- やちよ: え…あ、本当だわ…
- 黒江: あと、テントを張るときは 川からはなるべく遠ざけて
- 黒江: 地面にペグが刺さらないなら 別の場所を探してもいいから
- 鶴乃: お、おぉぉ…?
- いろは: …黒江さん、 慣れてるんですね…?
- 黒江: 前に、教わったことがあるから…
- 黒江: (マギウスの翼の特訓合宿で 野外宿泊させられたし…)
- 黒江: (あのときは、大量の炊き出しも 強制的にやらされたっけ…)
- さな: なんだか意外です…
- フェリシア: だな! 見直したぞ、くろえ
- 黒江: 呼び捨て…
- フェリシア: だってお前の名前、 くろえなんだろ?
- 黒江: まぁ、いいけど…
- 黒江: …………
- 黒江: (…まさかマギウスの翼での 経験が役に立つなんて…)
- いろは: テント、完成しましたね!
- やちよ: 黒江さんのおかげね… 助かったわ
- 黒江: あ、いえ…
- やちよ: さて、環さんたちの薪で 火を起こして
- やちよ: 昼食を作りましょ
- いろは: 黒江さんも 手伝ってくれますか…?
- 黒江: (白羽根のふたりが戻ってくる 気配もないし…)
- 黒江: …うん
- FILENAME: text_516010-9_GKU3X.txt
- 黒江: 串に刺す食材は 野菜と肉で分けたほうがいいけど
- 黒江: 見栄え重視なら 野菜と肉交互でもいいと思う
- 鶴乃: へ~! 詳しいね、黒江!
- 黒江: また呼び捨て…
- やちよ: バーベキューも手慣れてるなんて 思わなかったわ…
- 鶴乃: うん!こんなに器用なら 万々歳でも即戦力になるよ!
- やちよ: お店でこんなに大量の食材を さばくときがあるの?
- 鶴乃: ちょ! ひどいよししょー!
- フェリシア: 今度、みかづき荘でもやろーぜ! バーベキュー!
- さな: フェリシアさんは… お肉を食べたいだけじゃ…?
- フェリシア: おう! 肉だけでいいぞ!
- いろは: バーベキューをやるときは 黒江さんも招待しますね
- 黒江: 私はお肉より、たこ焼きのほうが いいな…
- いろは: ふふっ、たこ焼きパーティーでも いいですよ
- 黒江: え、いいの?
- いろは: はいっ
- 黒江: …………
- 黒江: (いけない…私、この人たちに 監視されてるのに)
- 黒江: (うっかりしてると、雰囲気に 引っ張られそうになる…)
- いろは: そろそろ串を焼いていこっか
- さな: そうですね…
- みんな: ごちそうさまでした!
- 鶴乃: 外で食べるって 最高に気持ちいいね!
- フェリシア: 肉もうまかったしな!
- 黒江: わ…!?
- いろは: 大丈夫ですか?
- 黒江: あ、うん… びっくりしただけ…
- 逃げるなよ! ごはんやるって言ってるのにさ
- 私、こっちから行くから 捕まえて!
- あっ、待てー!
- 黒江: (怖がってるみたいだし、 追いかけない方がいいのに…)
- 黒江: …………
- 黒江: (…私が注意したって 聞いてくれるはずないか…)
- 黒江: (…あれ、そういえばあの猫 どこかで見たような…)
- やちよ: しまった、忘れてたわ…
- 鶴乃: ん?なになに?
- やちよ: オーナーから聞いたんだけど
- やちよ: この近くにある滝の水を飲むと 幸運が訪れるらしいのよ
- さな: いわゆるパワースポットですね…
- やちよ: ええ、食後にその水で お茶を淹れたかったんだけれど
- やちよ: すっかり忘れてたわ…
- 黒江: …私が汲んできますよ
- いろは: え、黒江さんが!?
- 黒江: お昼、ごちそうしてもらったし…
- やちよ: …逃げるつもりなら やめたほうがいいわよ
- 黒江: あ…はい…
- 黒江: (…バレバレだった…)
- いろは: じゃあ、また私と行きませんか?
- 黒江: うん…
- いろは: やちよさん、 この水筒を借りていきますね
- やちよ: ええ、お願いするわ
- 黒江: (バレてる手前、逃げようと してもうまくいかないだろうし)
- 黒江: (白羽根の人たちが 助けてくれるまで)
- 黒江: (トラブルを起こさないように 気をつけないと…)
- FILENAME: text_516010-10_GKU3X.txt
- 黒江: …………あのさ…
- いろは: ど、どうかしましたか…!?
- 黒江: さっきから同じところを 歩いてない…?
- いろは: …………
- 黒江: 道に迷ってるよね、これ…?
- いろは: …………すみません…
- 黒江: 責めてるわけじゃないけど…
- いろは: …やちよさんに手書きの地図を もらってきたんですけど
- いろは: いまどこを歩いてるのか わからなくなっちゃって…
- 黒江: …それなら一度、 キャンプ場に戻る道を見つけて
- 黒江: 最初からやり直す…?
- いろは: うーん…でも結構歩いてきて 黒江さんも疲れてると思うし…
- いろは: 私ひとりでキャンプ場に戻って 滝までの道を聞いてくるので
- いろは: 黒江さんは ここで待っててください!
- 黒江: え、え…!?
- 黒江: (道に迷ってる人が キャンプ場に戻れるの…?)
- 黒江: 待って…! 私も行くよ…!
- 黒江: ハァ…ハァ…!
- 黒江: …どうしよう あの子を見失っちゃった…
- 大丈夫?
- 黒江: ――っ!?
- あ、びっくりさせちゃった?
- 黒江: …かなり…
- ごめんなさい
- パワースポットの滝に 行きたいのかと思って…
- この辺りで迷ってる人って 大体そうだから
- 黒江: …詳しいんですね
- 何度も来てるからね
- ここからならすぐに着くわよ ほら、こっちに来て
- はい、到着! 水の容器は持ってきてる?
- 黒江: あ…水筒を持ってた子と はぐれちゃって…
- あら、そうだったの?
- じゃあこのペットボトルを使って 1本多く持ってきたから
- 黒江: …どうも
- 黒江: (…本当にお世話好きな人 なんだな…)
- コポポポ…
- 黒江: …………
- 黒江: (…監視役のあの子とはぐれた 時点で逃げればよかった)
- 黒江: (あの子もいないのに 水を汲む必要もなかったし…)
- さて、道に出るところまで送るわ
- 黒江: …ありがとうございます
- 黒江: あの…迷ってる人にはいつも 声をかけてるんですか?
- ええ、そうよ
- 黒江: …すごいですね
- 黒江: (私なんか、魔法少女になっても 誰も助けられないのに…)
- 道案内しただけで大げさよ
- 私だって、悩みがなければ あそこには行かないわ
- 黒江: …行けば解決するような悩み なんですか…?
- ふふ、疑うのはわかるわ
- 黒江: え、あ…すみません… そういうつもりじゃ…
- …あなたの言う通り、あそこに 行っても何も解決しないし
- 滝の水を飲んだって 幸運は訪れないわ
- 黒江: え…
- だけどね、私にとってあの場所は 気持ちをリセットして
- もう一度やれるだけやってみよう って思える力をくれるの
- だから私にとっては、確かに あそこはパワースポットなのよ
- 黒江: …………
- 黒江: (マギウスの翼に入れば 全部解決する…)
- 黒江: (そう思い込んで 何もしてないのは私だ…)
- 黒江: (でも、私には何もできないし どうしたらいいかもわからない)
- 黒江: 私にも、自分で前を向ける力が あればよかったのに…
- 黒江: また…!?
- きゃああ!?
- 黒江: あ…あぁ…
- …………
- 黒江: これ…本当に私のせいなの…?
- 黒江: (私は誰かを救うどころか 傷つけてる…!?)
- いろはの声: 黒江さん!!
- 黒江: ――っ!?
- いろは: 良かった、見つかった…!
- いろは: さっき、一瞬ですけど こっちからウワサの気配がして…
- いろは: え… その人、どうしたんですか…!?
- 黒江: 違う…! 本当に、違うから…!
- 黒江: (どうしたらいいの… 私は…私は…!)
- 黒江: …っ、助けて… 環、さん…
- [Part 1 end]
- ----
- [Part 2 start]
- FILENAME: text_516020-1_e1M3z.txt
- 黒江: (どうすればいいの… 私は…私は…!)
- 黒江: …っ、助けて… 環、さん…
- いろは: …………!
- いろは: ま、まずは落ち着きましょう…!
- いろは: この方も運ばないと いけないですし…!
- …………
- 黒江: そうだよね…
- 黒江: 私が背負うから、キャンプ場まで 案内をお願いしていい…?
- いろは: やちよさんたちの魔力反応を 手繰れば、できると思います…!
- 黒江: …よいしょっと…
- 黒江: …………
- 黒江: (…本当に私のせいで、 うわさが人を襲ってるなら)
- 黒江: (どうすればいいの…?)
- 黒羽根: 相手は“七海やちよ”かも しれないもんね…
- 黒江: 誰だっけ…
- 黒羽根: みふゆさんとも渡り合える 大ベテランの魔法少女だよ
- 黒羽根: うわさを消して回ってるって この間、話題になったじゃん!
- 黒江: (そうだ…七海やちよたちなら きっとうわさを消せる…)
- 黒江: (だけど…このまま環さんが 七海やちよに全て話せば)
- 黒江: (うわさを消す前に、 私が消されちゃうかも…)
- ぶるっ…
- いろは: …黒江さん、大丈夫ですか?
- 黒江: あ、あぁ…うん…
- 黒江: …………
- 黒江: (環さんに、つい助けてって 言っちゃったけど…)
- 黒江: (羽根としては、うわさを 消すわけにはいかない…)
- 黒江: (でも私のせいでうわさの被害が 増えるのも嫌だし…)
- 黒江: (私…どうすればいいの…?)
- 鶴乃: え、じゃあその人 突然倒れちゃったの!?
- いろは: そうみたいです…
- やちよ: …さっき、一瞬だったけど うわさの気配を感じた
- やちよ: その人が倒れたのは
- やちよ: あなたとうわさが 関係してるんじゃないの?
- 黒江: …………
- いろは: わかりません…
- いろは: でも、黒江さんのせいじゃないと 思います
- 黒江: (環さんが…私をかばった…?)
- やちよ: …その結論はまだ早いわよ
- やちよ: ひとまず、キャンプ場の管理棟に 倒れた人を運びましょう
- さな: ここのテントよりは 安静にさせてあげられますしね…
- 鶴乃: わたしとフェリシアで 連れて行くよ!
- フェリシア: よっし、任せろ!
- 黒江: …………
- 月咲: 戻ったよ!
- 黒江: ――っ!?
- 月夜: ねむ様に相談してきた でございます
- 月夜: あなたは七海やちよたちと このまま行動するでございます
- 黒江: …え!?
- 月咲: ねむ様が言うには
- 月咲: やっかみカワードのうわさは あなたに憑いてるんだって
- 黒江: 憑いてるって、 おばけみたいな…?
- 月咲: ごめん、詳しいことは ウチらもわからないんだ…
- 月夜: とにかくねむ様は、検証のため
- 月夜: 七海やちよたちと行動することが 最善と判断されたのでございます
- 黒江: この状況で、まだ検証を続ける ってことですか…?
- 月咲: ねむ様がそれを望んでるから…
- 月咲: …ほらっ、何かあれば ウチらもフォローするし!
- 月咲: だからあとはよろしくね!
- 黒江: あっ…
- 黒江: (…人がうわさに襲われてるのは やっぱり私のせいなんだ…)
- 黒江: (やめさせたいけど)
- 黒江: (うわさを消すのは マギウスの翼の活動に反するし)
- 黒江: (もし追い出されでもしたら それこそ困る…)
- いろは: さなちゃん、黒江さん! 手を貸してもらえますか!?
- さな: わかりました…!
- 黒江: …うん…
- FILENAME: text_516020-2_e1M3z.txt
- いろは: さっきの女性の方、 目が覚めたそうですよ
- いろは: 倒れる前後の記憶は曖昧らしい ですけど、怪我はないみたいです
- 黒江: そっか…
- 黒江: (悪いことしちゃったな…)
- やちよ: それで、うわさのことだけど
- やちよ: これ以上あなたを監視していても らちが明かないし
- やちよ: 被害が増えるだけなら うわさは消させてもらうわ
- 黒江: …私はマギウスの翼だから
- 黒江: うわさを消すなんてできない って思ってます…
- やちよ: あなたの意思は関係ないわ
- 黒江: …………
- いろは: でも、どうやるんですか…?
- いろは: どうしたらうわさが出てくるかも わからないのに…
- やちよ: 一度は出てきたんだもの 何かしら方法はあるはずよ
- いろは: …まさか黒江さんを 攻撃することはないですよね…?
- 黒江: ――っ!?
- やちよ: 私だって気は進まないけれど 場合によっては…
- 黒江: …………
- いろは: もう少しだけでも 様子を見守りませんか…!?
- いろは: うわさが出てくる条件が わかるかもしれないですし…!
- やちよ: 環さん…
- 黒江: …もういいよ
- 黒江: どうしてそこまでして かばってくれるの…?
- いろは: だって、悪いのは 黒江さんじゃなくて
- いろは: うわさだと思うし…
- いろは: いずれはうわさも消せたら って思いますけど
- いろは: それよりも、まず 「うわさを消したくない」
- いろは: っていう黒江さんの考えを 変えてほしいから…
- やちよ: …………はぁ…
- やちよ: 私もむやみに黒江さんを 傷つけたいわけじゃないわ…
- やちよ: …このあとは オリエンテーションもあるし
- やちよ: その時間にじっくり考えて もらってかまわないわ
- いろは: やちよさん…!
- やちよ: だけど、少しでも怪しいところが あれば容赦はしない
- やちよ: これが最後のチャンスだと 思いなさい
- 黒江: …………
- いろは: …出しゃばったことを言って すみません…
- いろは: でも…黒江さんが 私たちから逃げなかったのも
- いろは: 助けを求めてくれたのも
- いろは: うわさを消したいから なんじゃないかって思ったから…
- 黒江: …そんなわけないよ…
- いろは: …黒江さんが うわさを消すって言ってくれたら
- いろは: 私は…黒江さんの味方になります
- いろは: だから… あとで答えを聞かせてくださいね
- 黒江: …………
- やちよ: オリエンテーションは このペアで始めるわ
- 鶴乃: 内容はスタンプラリーで…
- 鶴乃: 順路は、各ペアに渡されてる 地図を見ればいいんだよね
- フェリシア: 一番にクリアしよーぜ!鶴乃!
- 鶴乃: え、でもタイムは競わないよ?
- フェリシア: にゃっ!?
- やちよ: 5か所のスタンプを集める中で ペアの相手と20個ずつ質問して
- やちよ: お互いの交流を深めるのが 目的だからね
- さな: 20個って、結構ありますよね…
- やちよ: 色々と教えてもらうから よろしくね、二葉さん
- さな: は、はい…! こちらこそ…
- やちよ: それじゃ、スタンプラリー開始よ
- みんな: おー!
- 黒江: …………
- いろは: …………
- 黒江: (うわさを消しちゃったら)
- 黒江: (マギウスの翼の人たちに 怒られちゃう)
- いろは: …あ、最初のスタンプ台 あれじゃないですか?
- 黒江: …うん
- いろは: 私がスタンプ押してくるので 黒江さんのカードも預かりますよ
- 黒江: …うん
- 黒江: (でも、本当にそれで いいのかな?)
- 黒江: (人を傷つけておいて… 救われたいなんて…)
- いろは: …………
- いろは: …やっぱり、迷惑でしたよね…
- 黒江: え…
- いろは: 無理に誘っちゃってすみません
- いろは: 黒江さんが今後を考えられる 時間にしたかったんですけど
- いろは: 私が一緒だと集中できないし 気分も塞ぎますよね…
- 黒江: …………
- 黒江: (周りに気を遣いすぎたり その結果ネガティブになったり)
- 黒江: (…もしかして、 環さんって私に似てるのかも)
- 黒江: …私には、そんなに気を 遣ってくれなくていいから…
- 黒江: とりあえず回ろう スタンプラリー…
- FILENAME: text_516020-3_e1M3z.txt
- ポンッ
- いろは: これでふたつ目のポイントを クリアですね
- 黒江: …スタンプが集まってくると なんか嬉しいかも…
- いろは: ふふっ
- いろは: …あ、そういえば質問を 忘れてました…
- 黒江: お互いに20個ずつしないと いけないんだっけ
- いろは: えっと…黒江さんの出身とか 聞いてもいいですか…?
- 黒江: …宝崎市
- いろは: ――っ!? 私もなんです…!
- 黒江: そうなんだ
- いろは: てっきり黒江さんは 神浜市の方なんだと思ってました
- いろは: …あ、私は事情があって 最近神浜市に引っ越したんです
- 黒江: 噂を聞いたから…とか?
- いろは: いえ、別の事情なんですけど…
- いろは: …その、黒江さんの言う噂って もしかして…
- いろは: “神浜市に行けば 魔法少女は救われる”…ですか?
- 黒江: 環さんも知ってるんだ
- いろは: 私も人に聞いただけですけど…
- 黒江: …そうなんだ
- 黒江: じゃあ環さんが 引っ越してきた理由は?
- いろは: …妹の行方がわからなくて 手がかりを探すために来たんです
- 黒江: …立ち入ったこと 聞いちゃってごめん…
- 黒江: 早く見つかるといいね
- いろは: ありがとうございます…
- 黒江: …あ、分かれ道だけど どっちに行く?
- いろは: それじゃあ、せーので 同時に言いませんか?
- 黒江: いいけど…
- いろは: せーのっ
- 黒江&いろは: 右!
- いろは: あ、揃いましたね
- 黒江: うん… 右のルートから行ってみよう
- ポンッ
- いろは: 3つ目のポイントも クリアですね
- 黒江: …環さんって、スタンプの押し方 きれいだよね
- いろは: 黒江さんこそ
- いろは: 向きも揃ってますし すごく几帳面じゃないですか
- 黒江: 普段はそこまでじゃないんだけど 揃えたくなっちゃうんだよね…
- いろは: あ、わかります…
- いろは: 誰に見せるわけじゃないのに なんだか気になるんですよね
- 黒江: 次のスタンプ台の場所は… あれ、ここって…
- いろは: キャンプ場…みたいですね
- ポンッ
- いろは: まさかここに4つ目の スタンプ台があったなんて…
- 黒江: 意外だったね
- いろは: スタンプは残り1つですけど… 質問も残り1つになりましたね
- 黒江: あ、いつのまにか 結構話してたんだ…
- いろは: うーん、最後の質問は…
- 黒江: マギウスの翼のこと以外がいいな
- いろは: そ…そうですよね…
- いろは: それじゃあ…黒江さんが 将来なりたいものは何ですか?
- 黒江: …………
- いろは: …す、すみませんっ 答えづらかったら変えます…!
- 黒江: …ううん、いざ聞かれると 自分でもわからないなって…
- 黒江: 環さんはどうなの?
- いろは: …すみません、聞いておいて 私もまだ決めてなくて…
- 黒江: …そっか
- いろは: …なんだか私たち、似てますね
- 黒江: え…?
- いろは: …す、すみません!
- 黒江: あ、怒ったんじゃないよ ただ、意外で…
- 黒江: (私もそう思ってたから…)
- いろは: 同じ宝崎市出身の魔法少女で ちょっとしたこだわりがあって…
- いろは: 将来の夢も曖昧だったりして…
- いろは: …って、思ったんですけど これだけでしたね…
- 黒江: あと…周りに気を遣いすぎて ネガティブになりがちだし…
- いろは: え…!
- 黒江: うん…結構あると思う 似てるところ…
- やちよの声: あら… 意外とみんな早く揃ったわね
- いろは: え…やちよさんとさなちゃん… 鶴乃ちゃんたちも…
- 鶴乃: お疲れさまーいろはちゃん! 5か所回るの、結構大変だったね
- 黒江: 私たち…ここで 4か所目なんですけど…
- フェリシア: え、遅くねえ?
- さな: 私たちはもう終わりましたよ…
- いろは: えっ、そうなの…!?
- 黒江: ゆっくりしすぎたのかな…
- いろは: 早く5か所目に行きましょう…!
- FILENAME: text_516020-4_e1M3z.txt
- いろは: これで最後のスタンプ…
- ポンッ
- 黒江: やっと全部集まったね
- いろは: はい!
- いろは: やちよさんたちを待たせてますし 早くキャンプ場に戻らないと…
- 黒江: このあとも何か予定が あるんだっけ
- いろは: 次は夕食の準備ですよ
- 黒江: 食べてばっかりだね
- いろは: あはは…そうかもしれません
- 黒江: …私は日帰り参加なんだよね?
- いろは: あ…はい…
- いろは: …その、黒江さんが うわさを消すって決めてくれて
- いろは: 一緒に倒せたら、いつでも 解放してあげられるんですけど…
- 黒江: …でも私はマギウスの翼だし…
- いろは: でも…!
- いろは: ――っ!?
- 黒江: え、魔女…!? こんなところにも出るの…!?
- いろは: 黒江さん、警戒してください!
- 縺[]豌玲戟*蟇昴x溘!!
- 黒江: …………!
- いろは: 一緒に戦ってもらえますか!?
- 黒江: う、うん…
- 黒江: でも…神浜市の魔女は強いから 私じゃ役に立てないかも…
- いろは: 私も強くないんです… だからふたりで頑張りましょう
- いろは: 気配を探知したら
- いろは: やちよさんたちも 助けに来てくれるはずです…!
- 黒江: それまで持ちこたえないとね…
- 黒江: わっ!?
- いろは: 動きが速い…!
- いろは: 黒江さん、一度離れてください! 私が攻撃して隙を作ります!
- 黒江: それってもしかして… 私がとどめを刺すの…!?
- 黒江: ひっ…
- 黒江: (本気で言ってるのかな? こんな強い魔女…)
- いろはの声: 黒江さん!! 右に大きく跳んでください!
- 黒江: あ…!
- いろは: ふっ!!
- ヮ]窶ヲ繧a庶!?
- いろは: このまま決めます…!
- いろは: やああっ!!
- 黒江: …………
- いろは: 大丈夫ですか、黒江さん!?
- 黒江: あ… …うん…
- いろは: 良かったぁ…
- 黒江: ごめん… 私、おとりにしかなれなかった…
- いろは: 謝らないでください!
- いろは: 黒江さんのおかげで 勝てたんですから
- 黒江: そうかな… 環さんが強かったからだよ…
- 黒江: (環さんは私と似てて なんとなくホッとしてた)
- 黒江: (私みたいな人は他にもいるんだ って思えたから…)
- 黒江: (だけど、それは私の勘違いで… 環さんは私とは違ってた)
- 黒江: (魔法少女の役目を投げ出さずに ひとりでも戦ってる…)
- 黒江: (怖くて逃げだすような私とは 全然違うんだ…)
- FILENAME: text_516020-5_e1M3z.txt
- 黒江: …………
- いろは: 黒江さん…? もしかしてケガしたとか…?
- 黒江: …ううん
- 黒江: 環さんが強かったから なんかびっくりしたっていうか…
- いろは: 強くなんてないですよ
- いろは: 神浜市の魔女とも 一応戦えるようになったのは
- いろは: みたまさんや、やちよさん… 色んな人のおかげなんです
- いろは: 支えてくれる人がいなかったら
- いろは: 妹を捜すのも 途中で諦めてたかもしれません…
- 黒江: (…私も マギウスの翼がなかったら)
- 黒江: (全部投げ出して とっくに魔女になってた…)
- 黒江: (やっぱりマギウスには 感謝しなきゃいけないのかも…)
- いろは: ひとりじゃ何もできない自分が 情けなくて
- いろは: 嫌になったこともあります…
- 黒江: …………
- いろは: でも、いまは… 妹が戻ってきたときに
- いろは: 少しでも頼られるお姉ちゃんに なっていたいって思うんです…
- 黒江: …………!
- 黒江: (やっぱり環さんは… 私とは全然違う…)
- 黒江: (私にないものを たくさん持ってる…)
- いろは: すみません、私ばかり 話してしまって…
- 黒江: …ううん…………
- 黒江: 私は、周りに支えてもらっても 無理だった…
- 黒江: ひとりだと使い魔を倒すのが限界
- 黒江: 魔女退治では、他の魔法少女を サポートするしかできないし…
- 黒江: それすら怖くて できないことだってあった…
- いろは: 命を落とすかもしれないのに 怖くないわけがないです…!
- いろは: それに、ひとりで魔女を倒すのは 大変なことなのに
- いろは: 黒江さんが負い目を感じること ないですよ…!
- 黒江: …あなたにはわからないよ…
- いろは: え…
- 黒江: (ただ自分が救われるために 神浜市へ来ただけの私を)
- 黒江: (妹さんを捜すために 神浜市へ来た環さんが)
- 黒江: (理解できるわけない…)
- 黒江: …ごめん、何でもない
- 黒江: 助けてくれてありがとう…
- 黒江: 帰ろう、キャンプ場に
- いろは: あ…はい…
- 黒江: …………
- 黒江: (こんな私を 誰かが理解してくれるわけない)
- 黒江: (そんなの当たり前なのに…)
- 黒江: (なんでこんなに悲しいの…)
- FILENAME: text_516020-6_e1M3z.txt
- 鶴乃: いろはちゃん! 大丈夫だった!?
- いろは: うん、展望台に現れた魔女は 黒江さんと倒したよ
- 黒江: …倒したのは環さんで 私は役に立ちませんでしたけど…
- 鶴乃: …どうかしたの?
- 黒江: 何がですか
- 鶴乃: ううん、なんだか雰囲気が 違った気がしたから…
- 黒江: …………
- 黒江: 少し、ひとりになっても いいですか…
- やちよ: …私たちの目が届くところでなら 構わないわ
- 黒江: どうも…
- フェリシア: あんなヤツほっといて 夕飯の準備してくれよいろは!
- いろは: あ、うん…
- さな: 黒江さんのことは 私が見ておきます…
- いろは: お願いね、さなちゃん…
- 黒江: …………
- いろは: …なんだか私たち、似てますね
- いろは: 同じ宝崎市出身の魔法少女で ちょっとしたこだわりがあって…
- いろは: 将来の夢も曖昧だったりして…
- いろは: …って、思ったんですけど これだけでしたね…
- 黒江: あと…周りに気を遣いすぎて ネガティブになりがちだし…
- いろは: え…!
- 黒江: うん…結構あると思う 似てるところ…
- いろは: ひとりじゃ何もできない自分が 情けなくて
- いろは: 嫌になったこともあります…
- いろは: でも、いまは… 妹が戻ってきたときに
- いろは: 少しでも頼られるお姉ちゃんに なっていたいって思うんです…
- 黒江: (環さんは、誰かに救って もらおうなんて考えてないし)
- 黒江: (怖くても逃げ出したりしない)
- 黒江: (何もなくて諦めてる私とは 何もかもが違う…)
- 黒江: …………
- 黒江: 願いを叶えて魔法少女になったけど 弱くてひとりじゃ魔女も倒せなくて 魔法少女をやめたかった
- 黒江: だけどやめられないし 魔女と戦うのも、死ぬのも怖い… 誰の役にも立てないまま、惨めだった…
- 黒江: それでも何とかして救われたかったから マギウスの翼に入った
- 黒江: 黒羽根としてただ活動しているときは 何もわからなかったのに ここに来たら、急に色んなことが見え始めた
- 黒江: もうとっくに諦めてたはずなのに 私にはまだ憧れる気持ちがあった でもきっと無理だからって周りを羨んでた
- いろは: それじゃあ…黒江さんが 将来なりたいものは何ですか?
- 黒江: …………
- 黒江: 私が、なりたいもの…
- 黒江: (普通でいられなくなったのは 私だけなのかも…)
- 黒江: …いいな、みんなは…
- 黒江: (私だって七海やちよみたいに もっと強い魔法少女だったら)
- 黒江: (マギウスの翼にだって 入ってない…)
- 黒江: 私なんかと次元が違う人に わかるわけないですよ…
- 黒江: (でも、私には何もできないし どうしたらいいかもわからない)
- 黒江: 私にも、自分で前を向ける力が あればよかったのに…
- いろは: それじゃあ…黒江さんが 将来なりたいものは何ですか?
- 黒江: (環さんの言うように、 自分を見つめ直してみても)
- 黒江: (惨めな気持ちになるだけで なりたいものはわからない…)
- 黒江: だけど…そっか…
- 黒江: なりたいものなんてなかったんだ
- 黒江: 誰かを羨んだり妬んだりはしても
- 黒江: 私は…なりたいものがない
- …………
- 黒江: きゃっ!?
- いろは: 黒江さん!!
- フェリシア: なんだありゃ!?
- やちよ: ウワサが暴走してるの…!?
- 鶴乃: よくわからないけど 黒江が狙われてるみたいだよ!
- さな: 早く倒さないと危険です…!
- いろは: 黒江さん、 ウワサを倒しましょう!
- 黒江: …………
- いろは: 黒江さん!!
- 黒江: どうしよう環さん
- 黒江: 私、どうすればいいの? 誰になったらいいの?
- 黒江: 強い魔法少女? マギウスの翼の裏切りもの?
- 黒江: 無理だよそんなこと 私、誰にもなれないよ
- いろは: ちがうよ黒江さん
- いろは: 黒江さんが誰かになる必要なんて ない!
- いろは: だから、私に黒江さんのことを 教えて!
- いろは: 強くないあなたを
- いろは: マギウスの翼じゃないあなたを
- いろは: 魔法少女じゃない あなたのことを!
- 黒江: どうしよう環さん… どうすればいいの?
- いろは: 私に、あなたを分けてください!
- 黒江: 私にはそんなもの…
- いろは: 黒江さんは、何になりたくない? 何がこわい?
- 黒江: 私は…………
- FILENAME: text_516020-7_e1M3z.txt
- 鶴乃: ちゃらああ!
- さな: っ…受け止めました…!
- やちよ: いまよ、環さん!黒江さん!
- いろは: はい!
- 黒江: (私は…)
- 黒江: (私でなくなってしまうことが こわい)
- いろは: 行きましょう黒江さん!
- いろは: 黒江さんじゃない黒江さんを、 私たちでやっつけましょう
- 黒江: うん…!
- 黒江&いろは: やあああッ!!
- 黒江: はぁ…はぁ…っ、ふぅ…
- 黒江: ウワサは…?
- いろは: 消せました… 消せましたよ、黒江さん!
- 黒江: …………!
- やちよ: 黒江さんがウワサを倒すって 決めてくれたおかげかしら
- 黒江: …本当にそうかも
- 鶴乃: ほっ? というと…?
- 黒江: 「やっかみカワードのうわさ」 って言ううわさがあって…
- 黒江: 人の感情エネルギーを奪ったり 呪いで気絶させるうわさが
- 黒江: 私に憑いてたみたい…
- フェリシア: オマエ、うわさに 呪われてたのか!?
- 黒江: そ、そういうことに なるのかな…?
- やちよ: でも、うわさに 憑かれてただけで
- やちよ: 黒江さんの意思では 操れなかったんでしょう?
- さな: 何か出現する条件が あったんでしょうか…
- 黒江: それは、たぶん…
- 黒江: 「うわさに憑かれてる私が 誰かを羨んだとき」…
- 鶴乃: あ!
- 鶴乃: だから 「やっかみカワードのうわさ」!
- 黒江: 合ってるかは わからないですけど…
- さな: …ただ、さっきのウワサは 黒江さんを狙ってましたし
- さな: 暴走してるみたいでしたよね…?
- いろは: もしかして黒江さん…
- いろは: うわさの内容を否定したんじゃ ないでしょうか…?
- 黒江: そうなのかな…?
- いろは: 誰かのことじゃなくて
- いろは: 黒江さんが自分のことを 考えられたから
- いろは: ウワサが姿を現して 倒せたんだと思います
- 黒江: 私のこと…?
- フェリシア: …あ!! そういえばオレの夕飯は!?
- 鶴乃: 確か食材を全部煮込み終わって
- 鶴乃: カレールウを溶かしてる 途中だったよね?
- やちよ: まずい… 鍋を火にかけっぱなしだわ!
- フェリシア: いま助けるぞ!カレー!!
- 黒江: …………ぷっ…
- 月咲: ちょっと!?
- 黒江: ――っ!?
- 月咲: うわさ、消しちゃったの!?
- 黒江: あ…えっと… すみません…
- 月夜: またしても大失態でございます…
- 月咲: うぅ…また怒られちゃうよぅ…
- 月夜: ですが報告しないわけにも いかないでございますし…
- 月咲: そうだね…
- 月咲: また置いて行って悪いけど ウチらは先に戻ってるよ!
- 月夜: 頃合いを見て、ここから 脱出しておくでございますよ!
- 黒江: あ、はい…!
- 黒江: (うわさを消しちゃったの、 やっぱりまずかったよね…)
- 黒江: (でも…)
- 黒江: (どうしてかな… 全然、後悔してない…)
- FILENAME: text_516020-8_e1M3z.txt
- 黒江: それじゃ、私はこれで…
- いろは: あの、黒江さん…!
- 黒江: 何…?
- いろは: もう少しだけ話せませんか…?
- いろは: 黒江さんをもっと知りたくて… ダメでしょうか…?
- 黒江: …………
- やちよ: ふたりに汲んできてもらった 滝の水もまだ飲めてないし
- やちよ: お茶を1杯飲むくらいは ゆっくりしていったら?
- やちよ: 幸運が訪れるかもしれないわよ
- 黒江: …言われてみたらそうですね わかりました
- いろは: ありがとうございます…!
- 黒江: …七海…さんって、 あんなふうに笑うんだね
- 黒江: もっと冷たい人かと思ってた
- いろは: やちよさんは すごく優しい人ですよ
- いろは: 私たちや他の魔法少女のことも いつも考えてくれてますから
- 黒江: そうなんだ… 外見とか噂だけじゃわからないね
- いろは: …あの、黒江さん マギウスの翼に戻るんですよね
- 黒江: うん
- いろは: 魔法少女の解放を目指して 活動してるみたいですけど
- いろは: 私は…マギウスの翼のやり方は 正しくないと思ってます…
- 黒江: …それでも、私が 他にやれることないし
- 黒江: マギウスの翼をやめる気はないの
- いろは: でも…!
- 黒江: 私、弱いから…
- 黒江: マギウスの翼にいれば、いつかは 解放されるって考えるだけで
- 黒江: すごく安心できる…
- いろは: そうですか…
- いろは: …………わかりました
- 黒江: え、いいの…?
- いろは: マギウスの翼は、黒江さんの 「希望」なんですよね?
- いろは: それなら奪うなんて できないですから…
- いろは: 情けないですけど、私もひとりで 妹を捜せてるわけじゃないし…
- いろは: 正しいとかじゃなくたって
- いろは: 誰かといることの方が 大事なときもあるんだと思います
- 黒江: …………
- 黒江: 環さんのそういうところ… やっぱり安心する
- いろは: ええ…どういう意味ですか…?
- 黒江: ―黒江― あのさ、将来なりたいものは何かって 質問してくれたでしょ?
- いろは: ―いろは― はい
- 黒江: ―黒江― 少し考えててね まだ曖昧なんだけど…
- 黒江: ―黒江― …環さんみたいになれたらって思う
- いろは: ―いろは― わ、私ですか…!?
- 黒江: ―黒江― うん…
- 黒江: ―黒江― 環さんは… 早く妹さんが見つかるといいね
- いろは: ―いろは― ありがとうございます…
- いろは: ―いろは― …今日は黒江さんに会えてよかったです
- 黒江: ―黒江― …私も
- 黒江: ―黒江― …幸運を見つけられた気がする
- 待てー!
- 黒江: いたっ…!
- いろは: 黒江さん…!?
- 黒江: うぅ…また…?
- 黒江: (あ、昼間の子たちだ…)
- おーい、こっち来いよー!
- 怖くないから~!
- 黒江: …………
- 黒江: (…私なんかが注意しても 聞いてくれないだろうな…)
- 黒江: (ってすぐに諦めるのは 違うよね…)
- いろは: え、黒江さん…?
- 黒江: …あの
- ん? なに、お姉ちゃん
- 黒江: あなたたちが この猫と同じ状況だったら…
- 黒江: たとえば…そう 知らない大人たちに囲まれて
- 黒江: 可愛いねとか、ご飯をあげるって 追い回されたとしたらどう…?
- …ちょっと怖い
- 黒江: だよね… 私もそう思った
- 黒江: 可愛いし、構いたくなるけど… 放っておいてあげようよ
- 黒江: この子は幼いけど 自分の意思があると思うから
- …わかった
- 黒江: …………はぁ… 緊張した…
- いろは: その子猫のこと 気にかけてたんですね
- 黒江: うん…昼間も追われてたから…
- ニャー
- 黒江: …………やっぱりどこかで 見たような気がするけど…
- うちの猫を捜してます 些細な情報でも構いません 電話してください
- 黒江: あ…!
- 黒江: ポスターに載ってた 迷い猫…!?
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- やちよ: その猫のことは頼んだわ
- 黒江: はい 帰りがけ、飼い主に届けてきます
- フェリシア: 羽根のヤツでも いいところあるんだな
- さな: フェリシアさんっ… 失礼ですよ…?
- 鶴乃: そーだよ
- 鶴乃: マギウスの翼に入ってる イコール悪者じゃないんだから
- やちよ: 次に会うときは、 敵同士じゃないといいけれど…
- 黒江: それは… わかりません
- やちよ: そう…マギウスの翼を やめる気はないのね
- 黒江: 理解してもらえないのは わかってます…
- やちよ: ええ、理解できないわ
- やちよ: 救われるために誰かを 傷つけるのは違うと思うから
- 黒江: …………
- やちよ: ただ…誰だって怖くて、不安で 迷うことだってあるし
- やちよ: 正しくないものに すがってしまうときもある
- やちよ: だから、ひとりで 思い詰めないようにね
- 黒江: あ… ありがとう…ございます…
- いろは: あの…よかったら、連絡先を 交換しませんか?
- いろは: お友だちとして またお話しできたら嬉しいです…
- 黒江: …………
- 黒江: …今日、スマホ 忘れてきたから…
- 鶴乃: え、でも何度か スマホを見てなかった!?
- 黒江: …さよなら!
- 黒江: ハァ…ハァ…
- 黒江: (…別に追われてないのに 走ってきちゃった…)
- 黒江: はぁ…………
- ニャー?
- 黒江: …もう少しで君の家に着くから 待っててくれる?
- ニャー
- 黒江: …いい子だね
- 黒江: この猫で間違いないですか…?
- るーちゃん…! るーちゃんだ!
- ありがとう!
- 黒江: ――っ!?
- 本当にありがとう! るーちゃんを見つけてくれて…
- 黒江: …………
- 黒江: (私、この人を 助けられたってことだよね…?)
- 黒江: (私でも できることがあったんだ…)
- あ、そうだ お礼を…!
- 黒江: …いいえ、いりません
- でもそういうわけには…!
- 黒江: もう、十分もらいましたから
- FILENAME: text_516020-10_e1M3z.txt
- ねむ: 白羽根から報告は受けているよ
- ねむ: ご苦労さま 今日は大変だったようだね
- みふゆ: 無茶をさせてしまって 本当にすみませんでした…
- 黒江: はぁ…
- 黒江: …あの、うわさを消したこと 咎めないんですか…?
- ねむ: 今回は複雑な事情があったからね 十把一絡げに咎められないよ
- 黒江: …?
- ねむ: 君には、うわさが憑いたとだけ 伝えていたけれど
- ねむ: やっかみカワードのうわさは
- ねむ: 現状に不満を持つ者の姿を借りて 出現するうわさだったんだ
- 黒江: ――っ!?
- ねむ: うわさの内容としては…
- アラもう聞いた?誰から聞いた? やっかみカワードのそのウワサ
- 夢も理想もあるけれど ひとりじゃなんにもできなくて 他人が引いたレールに乗ってる 意気地なしの臆病者!
- いつかは憧れそのものになりたいけど なれっこないって諦めてる アンビバレントな変わり者なのに 嫉妬だけは1人前に強いからサァ大変!
- 妬まれたら最後、呪われて 気絶させられちゃうから厄介だって 神浜市のエリートの間ではもっぱらのウワサ
- ヤッカミキンシー!
- ねむ: といったところだね
- 黒江: …だから私が誰かを羨むと
- 黒江: 私の姿をしたウワサが 勝手に現れたんですね…
- ねむ: そうだよ
- ねむ: 昨日の調査で、学生の多い場所に 行ってもらったのも
- ねむ: 普通の学生生活を送れる 同世代への妬みを引き出すため
- ねむ: 比較的早くに適性のある君を 見つけられてよかったよ、むふっ
- 黒江: (私たち黒羽根は、マギウスには 替えのきく駒でしかないんだ…)
- みふゆ: 結果的に利用する形になって すみません…
- 黒江: …いえ…
- 黒江: (私だって、救われるために マギウスの翼を利用してるし…)
- ねむ: 七海やちよたちとの遭遇は 想定外だったけど
- ねむ: 最悪、彼女たちがいれば
- ねむ: うわさが事故を起こしても 処理できると判断した
- ねむ: だから君を彼女たちのもとに 留めたんだよ
- 黒江: でも、結果的には うわさを消してしまいました…
- ねむ: 残念ではあるけれど 気に病む必要はないよ
- ねむ: うわさを失った以上に 大きな成果を得られたからね
- 黒江: …?
- ねむ: うわさを特定の人物へ憑依させる 可能性を探れそうなんだ
- ねむ: 今後がますます楽しみだよ
- みふゆ: …検証は結構ですが
- みふゆ: 今後、勝手に羽根の子たちを 利用するのはやめてください
- みふゆ: 彼女たちは実験動物では ないんですよ
- ねむ: むぅ…
- ねむ: …気分を害された 僕はこれで失礼するよ
- 黒江: …え、いまのって すねたんですか…?
- みふゆ: そうですね…マギウスと言えど、 まだまだ子どもですから…
- 黒江: (完璧に見えてもそうじゃない… 知らないことばっかりだな…)
- みふゆ: 明日からは通常の任務に 戻ってもらっていいですからね
- みふゆ: 本当に今日は遅くまで ありがとうございました
- 黒江: それじゃ…失礼します
- ガチャ…
- 黒江: …………
- 黒江: はぁ…疲れたな…
- 黒江: (色んな人に会って 色んなことがあったし)
- 黒江: (魔法少女になってから、 一番長い1日だったかも…)
- 黒江: …………
- いろは: それじゃあ…黒江さんが 将来なりたいものは何ですか?
- 黒江: ―黒江― まだ曖昧なんだけど…
- 黒江: ―黒江― …環さんみたいになれたらって思う
- 本当にありがとう! るーちゃんを見つけてくれて…
- 黒江: …………
- 黒江: (私にできることを 少しずつでも続けて)
- 黒江: (いつか環さんみたいに なりたいな…)
- 黒江: …また、会えるといいな…
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