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Toyo MSS JP Text

Jun 26th, 2023
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  1. FILENAME: text_310521-1.txt
  2. トヨ: こ、こーけーしゃこーほの トヨなのだ
  3. トヨ: …あの…皆、 よろしくなのだ
  4. 住民: ヒミコ様の後継者候補が ついに決まったのか…
  5. 住民: ヒミコ様の御子って話だけど… 祟り神の子じゃなかったの…?
  6. ヒミコの声: はい、違います
  7. 住民たち: ――っ!?
  8. ヒミコ: トヨが祟り神の子と呼ばれるのは 根も葉もない誹り…
  9. ヒミコ: むしろトヨには たぐいまれな鬼道の才があります
  10. ヒミコ: …神懸かりを起こしていたのも 神意をより直接受けていたから…
  11. ヒミコ: そう…トヨは祟られてなどいない 神霊に祝福されているのです
  12. トヨ: わ、吾にはそんな…
  13. ヒミコ: トヨ…
  14. トヨ: …あ
  15. トヨ: …………
  16. トヨ: そうなのだ…ヒミコ様より ご説明のあった通りなのだ
  17. トヨ: 吾はこの力を皆のために使う だから…吾を信じてほしいのだ
  18. 住民: …ど、どう思う…?
  19. 住民: ヒミコ様がそう仰るなら… そうなのかも…
  20. 住民: 雨乞いにも成功したって 聞いてるし…
  21. 住民: そうか…しかし…
  22. ももこ: なるほどねえ…
  23. ももこ: トヨが祟られている証拠だって 言われていたものは
  24. ももこ: むしろ鬼道の才能がありすぎた せいで引き起こされていたもの…
  25. ももこ: …っていうことにしたのか
  26. かえで: あんまり納得してもらえてない みたいだけど…
  27. レナ: 別にトヨは祟られてなんか いないんだから
  28. レナ: 変な言い訳を 取り繕わなくていいじゃない
  29. ももこ: そういうわけにもいかないって
  30. ももこ: トヨは後継者候補になったんだ みんなの支持も必要になる…
  31. かえで: そのためにこうやって お披露目をしてるもんね
  32. レナ: んなことはわかってるけど 納得できないのよ
  33. ももこ: まーまー…気持ちはわかるけど 変な噂はなくなった方がいいだろ
  34. ももこ: 前に水路をつくったときみたいに 民のことを想って頑張れば
  35. ももこ: ちゃーんとみんな 認めてくれるようになるはず
  36. ももこ: これはそのための地ならし… 必要なことなんだ
  37. レナ: …はあ、大人みたいなこと言って
  38. レナ: わかったわかった もう水を差したりしないわよ
  39. ももこ: ははは…ただ…
  40. ヒミコ: …さてお披露目も終わりましたね この後は…
  41. トヨ: は、はいなのだ
  42. ヒミコ: …………
  43. トヨ: …………
  44. ヒミコ: …わ、私は用事がありますので
  45. トヨ: あ、はい…なのだ 吾は…鬼道の修練でも…
  46. ヒミコ: え、ええ…そうしなさい 日々の努力を忘れてはなりません
  47. トヨ: あ…
  48. トヨ: …………
  49. トヨ: よ、よし…頑張るのだ!
  50. かえで: …あのふたり 親子…なんだよね?
  51. レナ: らしいけど… ぎこちないわね
  52. ももこ: …ま、ずっと離れて 暮らしていたんだ
  53. ももこ: いきなり親子の関係には なれないよな…
  54.  
  55. FILENAME: text_310521-2.txt
  56. トヨ: 贈り物…なのだ?
  57. ももこ: そーそー ヒミコ様にプレゼントするんだよ
  58. かえで: こういうのはきっかけがあれば 案外うまくいくと思うの
  59. かえで: きっとトヨちゃんもヒミコ様と 自然に話せるようになるよ
  60. レナ: アンタたち親子、なんだか もどかしいものね
  61. トヨ: わ、吾とかか様は もどかしい関係ではないのだ!
  62. レナ: いや、もどかしいわよ…
  63. トヨ: ヒ、ヒミコ様…
  64. ヒミコ: トヨ
  65. トヨ: は、はいなのだ
  66. ヒミコ: 今日の女王としての役目は もう終わりました
  67. ヒミコ: つまり、今ここにいる私は ただのヒミコと言いますか…
  68. ヒミコ: そなたの…あの…
  69. トヨ: わ、吾の…?
  70. ヒミコ: で、ですから… その…呼び方…
  71. トヨ: 呼び方…
  72. トヨ: ヒミコ…さん?
  73. ヒミコ: そうではなく… もっと距離を、縮めて…
  74. トヨ: 距離を縮める…?
  75. トヨ: ヒミコちゃん!
  76. ヒミコ: な、なぜそうなるのです!
  77. トヨ: 違ったのだー!
  78. レナ: …さっさと お母さんって呼びなさいってのよ
  79. ももこ: まーまー、ここは堪えて…
  80. トヨ: か、かか様…
  81. ヒミコ: あ…
  82. ヒミコ: …ごほん トヨ、今私たちは仕事を…
  83. トヨ: そ、そうだったのだ… ごめんなさいなのだ、ヒミコ様
  84. ヒミコ: …いえ、まあ…いいでしょう
  85. トヨ: …………
  86. ヒミコ: …………
  87. ヒミコ: 別に…私のことをかか様と 呼んでも構わないのですよ…?
  88. トヨ: は、はいなのだ… そのうち…
  89. ヒミコ: …………
  90. ヒミコ: いや…別に、いいんですよ…?
  91. トヨ: はいなのだ… 仕事が終わったら…
  92. ヒミコ: …いや…まあ… 別に…いいんですよ…?
  93. レナ: 早く呼びなさいよっ! もどかしいわねっ!
  94. ももこ: まーまー…堪えて
  95. トヨ: …言われてみればそうなのだ 大変もどかしいのだ…
  96. かえで: トヨちゃんが鈍いだけのような 気もするけど…
  97. トヨ: ともかく 贈り物をすればいいのだな?
  98. レナ: プレゼントするだけじゃダメよ そのあとが肝心なんだから
  99. ももこ: そうだよ、プレゼントはあくまで 会話のきっかけ…
  100. ももこ: 重要なのはそのあと自然に ヒミコ様と話すことなんだ
  101. トヨ: つまり…かか様がよろこびそうで 会話の広がりそうなものがよい?
  102. ももこ: そういうことだね
  103. トヨ: わかったのだ! ちょっと待ってるのだ!
  104. ももこ: …トヨ 何をプレゼントする気なんだろ?
  105. かえで: お花なんていいと思う!
  106. ももこ: 花かあ…母の日みたいでいいね
  107. かえで: きれいなお花を摘んでくれば きっとヒミコ様もよろこぶよ!
  108. かえで: うん、お花以外考えられない!
  109. トヨ: セミの抜け殻なのだ!
  110. かえで: なんでえ…
  111. かえで: トヨちゃん…セミの抜け殻じゃ きっとよろこばないよ…
  112. レナ: それにどう会話を広げるつもりよ
  113. トヨ: でも…いっぱい集めたのだ
  114. レナ: うっ…気持ち悪い…
  115. ももこ: ほ、他にない?
  116. トヨ: 他といわれても… タケノコくらいしか…
  117. ももこ: 選択肢の幅が狭い…
  118. トヨ: ふむ…仕方がないのだ
  119. トヨ: タケノコにセミの抜け殻を刺して かか様に渡してくるのだ
  120. かえで: だから、なんでえ…!?
  121. かえで: わ、私がお花を摘んでくるよ! そうしよう?そうして、お願い
  122. トヨ: ダメなのだ! これは吾の手でなさねばならん!
  123. かえで: そんな心意気 今はいらないよお…
  124. レナ: …セミの抜け殻って タケノコに刺さるの…?
  125. トヨ: 善は急げなのだ! ともかく渡してみるのだ!
  126. ももこ: あっ、ちょっと…!
  127. ヒミコ: …………
  128. ヒミコ: セミの、抜け殻と…タケノコ…
  129. ヒミコ: …………
  130. レナ: あんなに反応に困ってた人 生まれてはじめて見たわ
  131. かえで: …拒否することもできなくて ただ、かたまってたもんね…
  132. トヨ: うう…失敗したのだ… なぜなのだ…
  133. レナ: …いや、当然の結果でしょ…
  134. ももこ: 諦めるなよ、トヨ 次に成功したらいいんだから
  135. トヨ: 次…?
  136. ももこ: ヒミコ様とトヨの距離を近づける 作戦は…まだ終わってないんだよ
  137. トヨ: ももこ…!
  138. レナ: …何なのよ、その作戦…
  139.  
  140. FILENAME: text_310521-3.txt
  141. トヨ: イヌ…なのだ?
  142. ももこ: そーそー、偉い人の間でイヌを 飼うのが流行ってるんだって
  143. レナ: 狩りに連れていくみたいよ
  144. トヨ: そうなのか…
  145. かえで: ヒミコ様は狩りにはいかない と思うけど…
  146. かえで: 動物は可愛いから よろこんでくれるよ
  147. トヨ: わかったのだ イヌを渡すことにするのだ
  148. ももこ: …問題はどこに 野良がいるかだけど…
  149. トヨ: 心配いらないのだ こーゆーときは鬼道なのだ!
  150. トヨ: ―トヨ― ふむ…ふむふむ…
  151. レナ: ―レナ― 本当に占いで イヌの居場所がわかるの…?
  152. トヨ: ―トヨ― うるさいのだ 気が散るから隅にいるのだ
  153. かえで: ―かえで― 早くしないと ヒミコ様、帰ってきちゃうよ
  154. トヨ: ―トヨ― わかっているのだ
  155. トヨ: ―トヨ― …うん?これは…
  156. ももこ: ―ももこ― わかったのか?
  157. トヨ: ―トヨ― この亀裂…間違いないのだ… イヌは…
  158. トヨ: ここにいるのだ!
  159. イヌ: ばおーん
  160. みんな: …………
  161. トヨ: な、何なのだその反応…ちゃんと 野良のイヌを見つけたのだぞ?
  162. ももこ: い、いや…なんていうか…
  163. レナ: これ…本当にイヌ…?
  164. かえで: ばおーんって鳴いてたよ
  165. トヨ: 何を言っているのだ! どこからどう見てもイヌなのだ!
  166. ももこ: …この時代にこんな見た目の イヌなんていたかな…?
  167. レナ: バカみたいに大きいし… やっぱりイヌじゃないんじゃ…
  168. イヌ: ばうばうっ
  169. レナ: ――っ!?
  170. レナの声: な、何すんのよ! 顔を舐めないで!!
  171. ももこ: 懐かれてるねえ
  172. かえで: やっぱり鳴き声が気になるよ…
  173. レナ: あーもう、ひどい目に遭った…
  174. トヨ: でも…楽しそうなのだ
  175. レナ: どこがよ
  176. イヌ: …………
  177. トヨ: うん?
  178. イヌ: ばうばうっ
  179. トヨ: ぬわああああっ!
  180. トヨの声: なーっはっはっは! こら、べろべろするでないのだ!
  181. トヨの声: だーかーらー、やめ…っ なっはっは!くすぐったいのだ!
  182. レナ: レナのときより顔を舐めてる…
  183. かえで: トヨちゃんのことが 好きなのかな…?
  184. ももこ: 最初に見つけたのは トヨだからねえ
  185. イヌ: …………
  186. ももこ: え…?
  187. イヌ: ばうばうっ!
  188. ももこ: うわっ!ちょっと! 誰でもいいのかよ!
  189. トヨ: なはは、べろべろするのが そんなに好きなら…
  190. トヨ: 今日から汝の名は べろべろなのだ!
  191. べろべろ: …………
  192. べろべろ: ばうっ!
  193. トヨ: おお、わかるのか、べろべろ?
  194. べろべろ: ばうばうっ!
  195. トヨ: すごいのだ! 頭がいいのだ!
  196. ももこ: いや…べろべろって…
  197. かえで: 他にもっといい名前が あると思うけど…
  198. トヨ: いーのだ! べろべろはべろべろなのだ!
  199. べろべろ: ばう!
  200. トヨ: 利口な汝であれば かか様もよろこんでくれるのだ!
  201. かえで: そ、そうかな…
  202. ももこ: あ、ヒミコ様のところへ 連れていくなら
  203. ももこ: ちゃんと洗ってあげたあとの方が いいかもな…ちょっと汚れてるし
  204. レナ: そのイヌだけじゃなくて レナたちもね…
  205. トヨ: なっはっは! 散々べろべろされたものな!
  206. レナ: 本当よ…まったく 顔から獣の匂いが…
  207. レナ: ねえ…べろべろってイヌじゃなく クマの子とかだったりしない…?
  208. トヨ: はん、何を言うかと思えば…
  209. トヨ: レナにはわからんかもしれんが かか様ならわかってくれるのだ
  210. トヨ: べろべろは間違いなくイヌだと!
  211. ヒミコ: イヌではないでしょう…
  212. ヒミコ: そのような得体の知れないもの 飼うことなどできません
  213. ヒミコ: 野に帰してきなさい
  214. レナ: イヌじゃないって
  215. トヨ: くっ…
  216. ももこ: ま、確かに… 得体は知れないかもな…
  217. かえで: どうするの、この子…?
  218. トヨ: どうもこうも…かか様は 野に帰せと仰っているのだ
  219. トヨ: だから…
  220. べろべろ: くう~ん…
  221. トヨ: …弱ったのだ
  222.  
  223. FILENAME: text_310521-4.txt
  224. べろべろ: ばうっ!ばうばうっ!
  225. トヨ: こらこら… 引っ張るな、なのだ
  226. かえで: 遊んでほしいのかも…?
  227. トヨ: そうなのだ…?
  228. べろべろ: ばうっ!
  229. トヨ: …そうだな…このまま 野に帰すのは、寂しいのだ
  230. トヨ: 遊んでやるのだ
  231. かえで: ねえトヨちゃん… べろべろ、飼えないの?
  232. トヨ: う、うーむ…
  233. ももこ: トヨも含めてアタシたちは 居候の身だからな…
  234. ももこ: 飼うにしてもヒミコ様の 許可がいるんじゃないのか…?
  235. かえで: ふゆぅ…ムリそうだよ…
  236. レナ: …トヨは飼いたいの?
  237. トヨ: そ、それは…
  238. トヨ: かか様にめーわくを かけたくない…のだが…
  239. べろべろ: …………
  240. トヨ: うう…
  241. 住民: なっ、なにこの動物…!?
  242. 住民: 化け物なんじゃないか…? やっぱり、祟り神の子だから…
  243. レナ: まだそんなこと言ってるの? ヒミコが否定してたじゃない
  244. 住民: け、けど…
  245. 住民: ヒミコ様がどう仰ろうと こんな生き物、普通じゃないわ
  246. 住民: 化け物、祟り神の子…! どこかへ行って!
  247. レナ: …アンタたちねえ
  248. トヨ: よ、よいのだ、レナ
  249. トヨ: なあ、べろべろ…? 一緒にあっちへ行くのだ
  250. べろべろ: ばう
  251. レナ: あっ…
  252. かえで: トヨちゃん!
  253. 住民: ふん、せいせいした もう姿を見せなければいいものを
  254. 住民: 気味が悪いものね
  255. レナ: ――っ!?
  256. レナ: ア、アッタマに来た トヨの気も知らないで…!
  257. ももこ: レナ、やめときな
  258. レナ: 何でよ!
  259. ももこ: そんな人たちと関わるだけ レナが損する
  260. ももこ: 何を言ったって通じないんだから
  261. レナ: だったらトヨは ずっとこんな扱いを受けるの…?
  262. ももこ: …………
  263. かえで: トヨちゃんはヒミコ様の子ども…
  264. かえで: …たったそれだけなのに なんで伝わらないんだろうね…
  265. トヨ: ここなら誰もいないのだ
  266. トヨ: …どうして皆 汝を認めてくれないのだろうな
  267. べろべろ: ばう…
  268. トヨ: 心配するな 吾は認めるのだ
  269. トヨ: べろべろはイヌなのだ、絶対に
  270. トヨ: …吾が人の子であるようにな
  271. べろべろ: ばうっ!ばうっ!
  272. トヨ: ああ、そうだったのだ 遊びたいのであったな
  273. トヨ: …ひとりで遊ぶのは 寂しいからなあ
  274. ももこ: 確か、トヨはこの辺りに…
  275. レナ: あっ、見て!
  276. トヨ: なーっはっはっは! 吾の方が速いのだ!
  277. べろべろ: ばうばうっ!
  278. トヨ: 悔しかったら 吾に勝ってみろなのだ!
  279. トヨ: なっはっはっは! きょーそーなのだっ!
  280. べろべろ: ばうばうっ!
  281. かえで: 一緒に走ってる…
  282. ももこ: ま、落ち込んでるよりは よっぽどいいよ
  283. レナ: けどあの様子だと…
  284. ももこ: 飼うって言い出すだろうねえ…
  285. トヨ: べろべろを飼う許可が ほしーのだ!
  286. レナ: …やっぱり
  287. トヨ: べろべろはイヌだと認められず 寂しい思いをしているのだ
  288. トヨ: その思いは 吾ならわかってやれるのだ
  289. ヒミコ: トヨ…
  290. みんな: …………
  291. トヨ: お願いなのだ! べろべろを飼いたいのだ!
  292. トヨ: かか様のお手伝いも 今以上にいっぱいするのだ!
  293. トヨ: 吾にできることなら 何でもしてみせるのだ!
  294. トヨ: だから…!
  295. ヒミコ: …動物を飼うというのは 命を預かることでもあります
  296. ヒミコ: そなたは責任を持って 育てることができますか…?
  297. トヨ: が、頑張るのだ!
  298. ももこ: アタシたちも協力しますから…
  299. かえで: うん、トヨちゃんと一緒に お世話します
  300. レナ: 途中で投げ出そうとしたら レナが叱ってやるわ
  301. トヨ: な、投げ出さないのだ!
  302. ヒミコ: …………
  303. ヒミコ: …はあ
  304. トヨ: やったのだべろべろ! 今日からずっと一緒なのだ!
  305. べろべろ: ばうばうっ!
  306. トヨ: これからは吾とともに 楽しいことをいっぱいするのだ!
  307. べろべろ: ばうっ!
  308. ももこ: …いつの間にか あんなに仲よくなって
  309. かえで: 見てるこっちまで 微笑ましくなるね
  310. レナ: …あのさ 言うべきか迷ってたんだけど
  311. レナ: 最初の目的、忘れてない…?
  312. ももこ: あっ…
  313. トヨ: べろべろ~ 明日も一緒に遊ぶのだ~!
  314. べろべろ: ばおーん!
  315. トヨ: どこからどう見ても べろべろはイヌなのだ
  316.  
  317. FILENAME: text_310522-1.txt
  318. トヨの声: ふきふき…ふきふき…
  319. トヨ: なーのだ!
  320. ヒミコ: …トヨ 掃除ですか…?
  321. トヨ: はいなのだ きれーになったのだ!
  322. ヒミコ: ええ…そうですね
  323. トヨ: あっ、次の仕事があるのだ! 出かけてくるのだ!
  324. ヒミコ: あっ…
  325. ヒミコ: …ふふ、あんなに張り切って
  326. 住民: ほ、本当に穢れを 祓えるんですか…?
  327. トヨ: 心配はいらんのだ 吾の鬼道を信じろなのだ
  328. トヨ: …というかもう祓ったのだ
  329. 住民: え、もう…?
  330. トヨ: あとはきれーな水で 傷口を洗うのだ
  331. トヨ: 血はまだ出てくるだろうが それは穢れが除去されている証
  332. トヨ: この清潔な麻で傷口を 覆っていればそのうち治る
  333. 住民: 嘘…じゃないですよね…? だって、あなた様は…
  334. トヨ: 祟り神の子… だから信じられないのだ?
  335. 住民: …………
  336. トヨ: …吾を信じなくてもよいが これはヒミコ様より授かった知
  337. トヨ: ヒミコ様の鬼道は 疑うべきではないのだ
  338. 住民: は、はい…
  339. トヨ: よし、なのだ
  340. トヨ: …次の者!
  341. かえで: トヨちゃん…お医者さんみたいな こともしてるんだね
  342. ももこ: 鬼道っておまじないとか占いとか そういうものだと思ってたけど…
  343. ももこ: なんだかもう、知識全般 担ってる感じだなあ…
  344. レナ: …忙しそうよね
  345. ももこ: 早いとこべろべろを見つけて トヨを手伝おうか
  346. かえで: そうだね…でも どこに行っちゃったのかな?
  347. ももこ: 本当だよー…どこ行ったんだよ~ べろべろ~!
  348. べろべろ: …………
  349. べろべろ: ばうっばうっ!
  350. トヨ: うん…? もう、朝なのだ…?
  351. べろべろ: ばおーん!ばうばう
  352. トヨ: こ、こら… べろべろするでないのだ
  353. トヨ: …そういえば汝、昨日は 行方をくらませていたそうだな?
  354. トヨ: ひょっとして 吾に会いたかったのか?
  355. べろべろ: ばうっ!
  356. トヨ: なはは…そうだと言ったのか? ういやつなのだ
  357. べろべろ: ばうばうっ!
  358. トヨ: わかっている…わかっているのだ ちゃんと散歩に連れていくのだ
  359. ももこ: ふわあ…おはよー、トヨ
  360. かえで: 朝早いんだね、トヨちゃん…
  361. トヨ: ちょっと散歩にいってくるのだ
  362. かえで: え、でも… トヨちゃん昨日は遅くまで…
  363. トヨ: では行くのだ、べろべろ!
  364. べろべろ: ばうっ!
  365. かえで: あっ、トヨちゃん!
  366. ももこ: 大丈夫かな…?
  367. トヨ: …ただいまなのだ
  368. べろべろ: ばうっ!
  369. かえで: お、おかえり…
  370. トヨ: もう、ヘトヘトなのだ… ちょっと、ひと休み…
  371. レナ: あれ、トヨ…? 朝の仕事は?
  372. トヨ: ああ、そうだったのだ… 休んでる暇はないのだ…!
  373. ももこ: いや、少し休んでいきなよ
  374. トヨ: そーゆーわけにもいかんのだ
  375. トヨ: すまんが、吾が留守の間 べろべろを頼むのだ
  376. かえで: …行っちゃった
  377. ももこ: 体、悪くしないといいんだけど…
  378. べろべろ: ばうっばうっ!
  379. ももこ: ああ、ご飯か よし、待ってな…何か食材を…
  380. かえで: 食材って言っても、べろべろが ほとんど食べちゃったよ…
  381. ももこ: …ま、 デッカい体してるもんなあ…
  382. レナの声: あーーーっっ!!
  383. ももこ&かえで: ――っ!?
  384. ももこ: 何だよ、急に大声出して…
  385. かえで: びっくりしちゃったよ
  386. レナ: べろべろが麻を破いてるのよ
  387. レナ: これがないと地面の上に 直接寝ることになるのに…
  388. かえで: しつけもちゃんとしないと…
  389. ももこ: …いやー、イヌを飼うのって 結構大変だね
  390. べろべろ: ばうっ!
  391.  
  392. FILENAME: text_310522-2.txt
  393. トヨ: うとうと…うとうと…なのだ
  394. ヒミコ: …………
  395. トヨ: ――っ!?
  396. トヨ: か、かか様…違うのだ! 吾は決して居眠りなど…!
  397. ヒミコ: …最近 疲れているのではないですか?
  398. トヨ: いや…そんなことはないのだ 吾は元気なのだ
  399. ヒミコ: イヌのこともいいですが 体を壊してはなりませんよ
  400. トヨ: は、はいなのだ…
  401. トヨ: …こーけーしゃこーほたる者 体調は万全でないといけないのだ
  402. ヒミコ: …………
  403. ヒミコ: …ともかく ムリをしないように
  404. トヨ: はいなのだ…かか様にめーわくは かけないのだ…
  405. ヒミコ: …………
  406. トヨ: …とゆーように今日もいい感じに かか様と会話できたのだ…!
  407. レナ: どこがよ…
  408. ももこ: ヒミコ様ともっと距離を 縮められるようにしたいけど…
  409. ももこ: 今はべろべろのことで 手一杯だからな…
  410. トヨ: 食べ物のことか…? それなら吾がタケノコを…
  411. ももこ: イヌってタケノコを 食べてもよかったっけ…?
  412. かえで: 消化はよくなさそうだから 避けたほうがいいかも…
  413. トヨ: …ダメなのか?
  414. ももこ: そうだねえ…
  415. レナ: あと、しつけもちゃんとしないと
  416. トヨ: や、やることがいっぱいなのだ… 目が回るのだ…
  417. かえで: トヨちゃん お昼の仕事はいいの?
  418. トヨ: あっ!? そうだったのだ!
  419. 住民: ほ、本当に穢れを 祓えるんだろうな…?
  420. トヨ: …というかもう祓ったのだ
  421. 住民: え…!?
  422. トヨ: 傷口も水で洗ったのだ あとは麻を…
  423. べろべろ: ばうっ!
  424. トヨ: そうそう、これなのだ これくらいの麻を傷口に…
  425. トヨ: ――っ!?
  426. トヨ: べ、べろべろ…? 汝、吾についてきたのか…?
  427. べろべろ: ばうばう
  428. 住民: な…何だこの化け物!
  429. トヨ: 化け物ではないのだ! べろべろはべろべろなのだ!
  430. トヨ: 見ての通り愛嬌に満ちており その上、とっても利口で…
  431. トヨ: …………
  432. トヨ: …汝、麻を破いていたのは 吾を手伝うため…なのだ?
  433. トヨ: 吾の仕事を見ていて… だから麻を…
  434. べろべろ: ばう!
  435. トヨ: …………
  436. トヨ: …よし、一緒に仕事をするのだ
  437. 住民: 一緒にって…そんな化け物 どっかへやってくれ!
  438. トヨ: べろべろ!
  439. べろべろ: ばう!
  440. 住民: うわああっ!
  441. 住民の声: や、やめてくれ~! 顔が…よだれ塗れに…!!
  442. トヨ: 大人しくしているのだ こうやって麻を縛りつけ…
  443. トヨ: ほらできたのだ もう行ってよいのだ
  444. 住民: ひ、ひいい…っ
  445. トヨ: …べろべろが手伝ってくれた おかげで無事終わったのだ
  446. トヨ: 吾らはよい組み合わせなのだ 似たもの同士で…
  447. べろべろ: ばうばうっ!
  448. トヨ: …この調子で 全部やってしまうのだ
  449.  
  450. FILENAME: text_310522-3.txt
  451. 住民: 巨大なイヌを連れて 各地の問題を解決する…
  452. 住民: それがトヨ様ってわけさ
  453. 住民: 本当なの…?
  454. 住民: 私、トヨ様に穢れを祓って もらったらよくなったわ!
  455. 住民: お、俺も… あのイヌは怖いけど
  456. ももこ: トヨがべろべろを連れて 仕事をしだしたときは
  457. ももこ: どうなるかと思ったけど… うまくいってるみたいだな
  458. かえで: 一緒に掃除もしてるんだって
  459. レナ: …え、どうやって…?
  460. ももこ: ま、ともかく
  461. ももこ: べろべろが手伝ってるおかげで トヨも楽になってよかったな
  462. かえで: お利口だよね、べろべろ
  463. かえで: 麻を破いてたのもトヨちゃんを 手伝うためだったみたいだし
  464. べろべろ: ばうばうっ!
  465. かえで: あっ、べろべろ…? トヨちゃんと一緒じゃないの?
  466. べろべろ: ばうばうばう!
  467. レナ: …ついてこいって言ってるの?
  468. べろべろ: ばう!
  469. ももこ: …とりあえず、行ってみよっか?
  470. べろべろ: ばうばう!
  471. ももこ: そんなに急ぐなよ…
  472. かえで: あ、池があるよ
  473. トヨ: べろべろと一緒に見つけたのだ
  474. べろべろ: ばう!
  475. トヨ: お~、べろべろ~ ちゃんと皆を連れてきて偉いのだ
  476. レナ: …本当に利口なのね
  477. トヨ: そうなのだ
  478. トヨ: たとえば、吾が待てと言えば いつまでも待っているのだ
  479. トヨ: べろべろは賢いのだ!
  480. ももこ: それはよくわかったけど どうしてここにアタシたちを…?
  481. トヨ: ほれ、あれを見るのだ
  482. かえで: わっ…魚がいっぱい
  483. レナ: トヨが釣ったの?
  484. トヨ: べろべろが捕まえたのだ ここは川魚がたくさんいるのだ
  485. かえで: 本当だ…たくさん泳いでるね
  486. レナ: これで食糧問題も解決…?
  487. ももこ: さすがに毎日魚だけを 食べるわけにはいかないって
  488. ももこ: けど…ある程度は 余裕が生まれたね
  489. トヨ: この調子で他の食材も べろべろと見つけるのだ!
  490. べろべろ: ばうばう!
  491. レナ: …この魚、どうする?
  492. かえで: 結構な量だね
  493. ももこ: うーん…保存もできないからな…
  494. トヨ: 皆で食べればいいのだ! 魚の宴なのだ!
  495. レナ: 何なのよ、それ…
  496. トヨ: なはは…でも 楽しそうなのだ
  497. トヨ: はあ…お腹いっぱいなのだ
  498. ももこ: 結構食べたね
  499. レナ: べろべろも相当だったけど…
  500. べろべろ: ばうっ!
  501. かえで: ふふふ…なんだか キャンプにきたみたいだね
  502. トヨ: きゃんぷ?
  503. ももこ: えっと…野宿…は違うか 野営…かな?
  504. かえで: 外でみんなとご飯食べたり 一緒に寝たりすることだよ
  505. トヨ: うわあ…楽しそうなのだ
  506. レナ: 今やってるところじゃない
  507. ももこ: あ、今日はこのまま ここで寝る?
  508. レナ: えー、ここで…?
  509. トヨ: 吾はべろべろの上で寝るのだ もふもふで、きもちいーのだ
  510. レナ: ずるい!
  511. トヨ: なーっはっはっは! 吾はずるいのだ!
  512. トヨ: そうなのだ…皆と楽しい日々を こんなに満喫できて…
  513. トヨ: 吾はずるいやつなのだ…なはは
  514. ももこ: …別にずるくないって
  515. ももこ: これくらい当然なんだよ 本当はさ
  516. トヨ: そーか…とーぜんなのか…
  517. トヨ: とーぜんの日々というものは かくもきらきらしいものなのだな
  518. ももこ: トヨ…
  519. ももこ: …………
  520. ももこ: だったら、もっとトヨにあげるよ
  521. トヨ: え…?
  522. かえで: うん…これくらいなら 私たちでもできるもんね
  523. かえで: 楽しい思い出をつくろうよ 一緒に
  524. トヨ: 皆…
  525. トヨ: なはは…この夏はほんとーに 吾にとって特別の夏なのだ…
  526. レナ: なに言ってんのよ
  527. レナ: 「…これからは今日みたいな日が ずっとつづいていくの」
  528. トヨ: きゃんぷの次は海かあ…
  529. かえで: よかったね、トヨちゃん ヒミコ様も来てくれるって
  530. トヨ: うん…うれしーのだ
  531. べろべろ: ばうばうっ!
  532. トヨ: べろべろもうれしーのだ…?
  533. トヨ: でも…ごめんなのだ… べろべろはつれていけないのだ
  534. かえで: 泊まりがけの旅になるからね…
  535. レナ: あ、大丈夫よ!預かって もらえる人は見つけたから
  536. レナ: …ヒミコの弟だけど
  537. ももこ: ま、この際、贅沢は言えないよ 預かってくれるだけありがたい
  538. トヨ: しばしのおわかれなのだ べろべろ
  539. べろべろ: くう~ん…
  540. トヨ: …あ…そんなかなしいかおを するでないのだ…
  541. トヨ: ふむ…ちょっといっしょに おいかけっこをしよーか…?
  542. トヨ: べろべろは、われとはしるのが すきだったのだ
  543. べろべろ: ばうばうっ!
  544. トヨ: なはは…ひっぱるな、なのだ せかさんでも、すぐに…
  545. トヨ: …………
  546. レナ: どうしたの、トヨ?
  547. トヨ: あ、いや…
  548. トヨ: すまんのだ、べろべろ われはちょっとつかれたのだ
  549. トヨ: しゅっぱつの…あしたのあさ… いっしょにはしろーなのだ
  550. べろべろ: ばう!
  551. ももこ: そんな時間あるかな…?
  552. トヨ: なに、ちょっとだけなのだ…
  553. トヨ: ちょっとだけ…
  554. ももこ: え…
  555. かえで: ト、トヨちゃん…!?
  556. トヨの声: なはは…ころんだのだ
  557. レナ: 転んだって…
  558. トヨの声: ちょっと、おこしてくれなのだ
  559. かえで: う、うん…
  560. トヨ: なはは…めんぼくないのだ
  561. ももこ: トヨ…大丈夫なのか?
  562. トヨ: だいじょーぶ だいじょーぶ、なのだ
  563. トヨ: ああ…あしたがたのしみなのだ…
  564. トヨ: …な、べろべろ?
  565. べろべろ: ば、ばう…
  566.  
  567. FILENAME: text_310522-4.txt
  568. ヒミコ: …おや
  569. べろべろ: ばう
  570. ヒミコ: そなたは、トヨの…
  571. ヒミコ: トヨはまだ家の中ですか? 遅いから迎えにきたのですが…
  572. ヒミコ: …なんて イヌに聞いても仕方ありませんね
  573. べろべろ: ばう?
  574. ヒミコ: 私は中に入ります そなたはどうするのですか…?
  575. べろべろ: …………
  576. ヒミコ: そう…そこにいるように トヨに言われているのですか
  577. ヒミコ: …偉いですね
  578. べろべろ: ばう!
  579. ヒミコ: 当のトヨは、寝坊でしょうか… 飼い犬を見習った方がいいですね
  580. べろべろ: …………
  581. べろべろ: …………
  582. ももこ: ――っ!?
  583. ももこ: ああ、そっか…最近は家の外で 起きてくるのを待つように
  584. ももこ: トヨに言われてたんだったな
  585. べろべろ: ばう!
  586. ももこ: え、ええと…トヨ? トヨなら…
  587. ももこ: いや、今は…水… ごめん、べろべろ!急ぐから
  588. べろべろ: …ばう?
  589. レナ: わけわかんないわよ!
  590. かえで: レナちゃん…
  591. レナ: どうしてよ… どうしてトヨがこんな目に…
  592. べろべろ: ――っ!?
  593. べろべろ: ば、ばうばうっ!
  594. べろべろ: ばうっ!ばうばうっ!!
  595. トヨ: おー…べろべろか… そーか…そーだったのだ…
  596. トヨ: いっしょにはしるやくそく… してたのだ…
  597. べろべろ: ばうっ!ばうっ!
  598. トヨ: なはは…ひっぱるな、なのだ
  599. ヒミコ: お止めなさい! トヨは…トヨは…!
  600. べろべろ: ば、ばう…?
  601. トヨ: …きゅーにおこられて びっくりしたのだ…?
  602. トヨ: われもほんとーは…なんじと あそんでやりたい、のだが…
  603. トヨ: …ここから…うごけないのだ…
  604. べろべろ: ばう…?
  605. トヨ: うごきたくても…てあしが いうことを…きかないのだ…
  606. ヒミコ: 病の…病のせいで…
  607. べろべろ: …………
  608. トヨ: …なあ、べろべろ
  609. トヨ: ごめんなのだ…なはは、われ はしれなくなっちゃったのだ
  610.  
  611. FILENAME: text_310523-1.txt
  612. トヨ: …………
  613. べろべろ: …………
  614. ももこ: トヨのそばから 離れようとしないな…
  615. かえで: べろべろも心配なんだよ
  616. レナ: …もうまったく 動けないわけじゃないんでしょ?
  617. ももこ: 波があるみたいだよ 調子のいいときと…悪いときの
  618. レナ: …治せないの?
  619. ももこ: この時代の医療だと…
  620. レナ: …………
  621. トヨ: あ…べろべろ… おなかすいたのだ…?
  622. トヨ: われが、よーい してやるのだ…
  623. トヨ: あっ…
  624. レナ: ちょ、ちょっとトヨ!
  625. トヨ: ごめんなのだ… うまく…あるけなくて…
  626. ももこ: ご飯の用意なら アタシたちがやるから…!
  627. かえで: トヨちゃんは 横になってて
  628. トヨ: ありがとー…なのだ
  629. べろべろ: くうーん…
  630. トヨ: こんなからだになって… みんなに、めーわくをかけて…
  631. トヨ: ほんとーに、もーしわけないのだ
  632. トヨ: うみにも、いけなかったうえに… われのせわまでさせて…
  633. トヨ: …べろべろも ごめんなのだ…
  634. トヨ: いっしょに、はしれなくて…
  635. べろべろ: ばう…
  636. トヨ: ごめんなのだ…べろべろ… つまらないおもいを、させて…
  637. トヨ: こんなかいぬしだと… べろべろも…いやなのだ
  638. トヨ: もっと…じょーぶなかいぬしが べろべろも、いいのだ…
  639. トヨ: …きっと…そうなのだ…
  640. べろべろ: ばう…?
  641.  
  642. FILENAME: text_310523-2.txt
  643. ももこ: べろべろを…捨てろ?
  644. ヒミコ: はい、トヨはあの状態… イヌを飼うのはムリです
  645. かえで: で、でも…世話なら 私たちが…
  646. ヒミコ: イヌにはもともと 不可解な呪いがあります
  647. ヒミコ: 知りませんか、突然祟りに 憑かれたように暴れ出すのを
  648. ヒミコ: …ああ、むろん 呪いというのは言葉の綾です
  649. ヒミコ: 目に見えない何かに冒され 次々と取り憑かれていくそれを
  650. ヒミコ: 呪いとしか言いようがなくて…
  651. レナ: …けど、呪い自体は 信じてないんでしょ?
  652. レナ: だったら、別に捨てなくても…
  653. ヒミコ: 私はその何かがトヨに 取り憑こうとしているため
  654. ヒミコ: 体に悪影響を与えているのではと 疑っているのです
  655. ヒミコ: そんな私が…トヨのそばにイヌが いるのを容認するとでも?
  656. かえで: でも、べろべろは…
  657. ヒミコ: …何ですか?
  658. かえで: あ、いえ…
  659. かえで: ヒミコ様が言っているのって… 狂犬病のこと、だよね?
  660. ももこ: たぶんね
  661. ももこ: べろべろは狂犬病に かかってないと思うし
  662. ももこ: トヨの症状とも 無関係のはずだけど…
  663. ももこ: …どう説明したものかな
  664. かえで: 現代の知識を教えちゃ ダメだもんね…
  665. ももこ: …………
  666. ヒミコ: …これで話は終わりです イヌを野に帰してきてください
  667. ももこ: …けど、トヨはべろべろのことを とても大事にしています
  668. ももこ: 病気で弱っているときに 引き離すのは…
  669. ヒミコ: …そなたは トヨが呪われてもよいと?
  670. ももこ: いや、呪いは関係ないんですよ
  671. ヒミコ: どうして言い切れるのです
  672. ももこ: あ、えっと…それは…
  673. レナ: アンタ、呪いとか信じてるの?
  674. ももこ: ちょっと、レナ…!
  675. レナ: 何でよ!鬼道っていうのは 知識の結晶なんでしょ?
  676. レナ: …トヨはそう言ってたのに アンタは迷信を信じるんだ
  677. ヒミコ: 迷信でも何でも信じます
  678. ヒミコ: それが、トヨのためになるなら
  679. レナ: え…?
  680. ヒミコ: …ともかく、これは決定です 早くトヨに伝えてきなさい
  681. レナ: アンタが伝えなさいよ
  682. ヒミコ: …私は、他にやるべきことが あるのです
  683. レナ: 今、他にやることなんて…!
  684. ヒミコ: そこの者!
  685. 邪馬台国兵: はっ、お呼びでしょうか
  686. ヒミコ: この者たちはお帰りになります 送って差し上げなさい
  687. レナ: ちょっと、まだ話は…
  688. ヒミコ: 話は終わっています
  689. 邪馬台国兵: さあ、どうぞ お送りします
  690. レナ: …何なのよ
  691. ももこ: …………
  692. かえで: トヨちゃん、悲しむよね…
  693. ももこ: うん…
  694. トヨ: そーか…かかさまが…
  695. レナ: ムリに従う必要はないのよ
  696. レナ: トヨはべろべろに そばにいてほしいでしょ?
  697. トヨ: うん、なのだ… いてほしーのだ…
  698. レナ: だったら…
  699. トヨ: でも…べろべろとは おわかれするのだ
  700. レナ: …ど、どうしてよ?
  701. トヨ: われといっしょにいても… べろべろは…つまらないのだ
  702. トヨ: われは…べろべろには… たのしーおもいをしてほしーのだ
  703. レナ: トヨ…
  704. トヨ: レナ…ももこ…かえで… なんじらも、そーなのだ…
  705. トヨ: われのそばにいても… たのしくないのだ
  706. トヨ: もっと、たのしーところへ いったほーが…いいのだ
  707. レナ: …行かないわよ
  708. レナ: レナたちは、どこにも行かない
  709. かえで: そうだよ…トヨちゃんが 辛い思いをしてるのに
  710. トヨ: だからって…みんなまで しんきくさいおもいをせずとも…
  711. ももこ: いいんだって… 好きでやってるんだから
  712. トヨ: …………
  713. トヨ: …なんじらは そーかもしれんのだ…
  714. トヨ: だが…べろべろは きっとちがうのだ…
  715. べろべろ: ばう?
  716. かえで: …そんなこと ないと思うけど…
  717. トヨ: ううん、なのだ…
  718. トヨ: イヌは…げんきに、のはらを かけまわっているべきなのだ…
  719. トヨ: われは…あしでまとい、なのだ
  720. みんな: …………
  721. トヨ: べろべろ…
  722. べろべろ: ばうっ!
  723. トヨ: さいごに…あそぶのだ…
  724. トヨ: われと、さいごの… なつのおもいでを…
  725.  
  726. FILENAME: text_310523-3.txt
  727. べろべろ: ばうばうっ!
  728. トヨ: なはは…はしゃいでいるのだ
  729. トヨ: ひさしぶりに… はしるものな…
  730. べろべろ: ばうっ!
  731. ももこ: トヨ…大丈夫なのか?
  732. かえで: ムリしてない…?
  733. トヨ: きょーは、いつもより ちょーしがいいのだ
  734. レナ: …本当なんでしょうね?
  735. トヨ: うたぐり、ぶかいのだ…
  736. レナ: アンタならこんなとき 絶対ムリするでしょ
  737. レナ: …わかってるから みんな、心配してるのよ
  738. トヨ: …………
  739. トヨ: わかっているのなら… めをつぶっていてほしーのだ
  740. レナ: じゃあ、アンタ…!
  741. トヨ: …とめたって われはいうことをきかない…
  742. トヨ: …なんじらなら…それも わかっているはずなのだ…
  743. レナ: …………
  744. トヨ: すこしだけ、なのだ…
  745. トヨ: すこしだけ…べろべろと はしれれば…それで…
  746. べろべろ: ばうばうっ!
  747. トヨ: なはは…もうまてないのだ…? わかったのだ…
  748. トヨ: では…きょーそーなのだ
  749. トヨ: ―トヨ― なはは… べろべろ…あしがはやくなったのだ…?
  750. べろべろ: ―べろべろ― ばうばうっ!
  751. トヨ: ―トヨ― おかしーのだ…まえは… われのほーが、はやかったのだ…
  752. トヨ: ―トヨ― あー…そーか…われが、うまく はしれなく、なっているから…なのだ
  753. トヨ: ―トヨ― べろべろ…われを おいていかないで、なのだ
  754. べろべろ: ―べろべろ― ばう!
  755. トヨ: ―トヨ― おー…ならんで、はしって くれるのだ…?
  756. トヨ: ―トヨ― べろべろは、やさしーのだ…
  757. べろべろ: ―べろべろ― はっはっはっ!
  758. トヨ: ―トヨ― そんなに、しっぽをふって… うれしーのだ?
  759. トヨ: ―トヨ― こんな…われと、あそんで うれしーのだ…?
  760. べろべろ: ―べろべろ― ばうばうっ!
  761. トヨ: ―トヨ― …………
  762. トヨ: ―トヨ― ごめんな、なのだ… われが、ちゃんと、はしれたら…
  763. トヨ: ―トヨ― われのからだが…ふつーだったら…
  764. トヨ: ―トヨ― われが…ふつーのこ…だったら
  765. トヨ: ―トヨ― べろべろは…もっと たのしかったのに…
  766. トヨ: ―トヨ― ごめんな…なのだ… こんな…われで…ごめんなのだ…
  767. べろべろ: ―べろべろ― ばうばうっ!ばおーん!
  768. トヨ: ―トヨ― な、なにが、ばおーん…なのだ こんなときに、へんな、こえを…
  769. トヨ: ―トヨ― なはは…なんじのよーな、へんなイヌ われしか、かいぬしに…なれないのだ…
  770. トヨ: ―トヨ― …われ、しか…
  771. トヨ: ―トヨ― …だから、べろべろ… われを…わすれろ、なのだ
  772. トヨ: ―トヨ― われなんか、さっさと、わすれて… ちがうところで、たのしく、くらすのだ…
  773. トヨ: ―トヨ― なんじが…ばけものだのなんだの…いわれるのは われと…いっしょに、いるから…なのだ
  774. トヨ: ―トヨ― われと…たたりがみのこ…と、はなれれば… なんじはまだ、へんなイヌで、すむのだ
  775. トヨ: ―トヨ― われと、はなれれば…いっぱいはしれて… たのしーまいにちが…まっているのだ…
  776. トヨ: ―トヨ― だから…われなんて、わすれて… とおくへ、いってしまえ…っ
  777. トヨ: ―トヨ― わ、われも…われも…っ なんじのことなんて、わすれてやるのだ…っ!
  778. トヨ: ―トヨ― すぐに、なんじのことなど… わすれて…っ!
  779. トヨ: ―トヨ― そ、そーすれば…しあわせそーな、なんじを みかけても…わ、われは…
  780. トヨ: ―トヨ― われは…さみしくない、のだ…
  781. べろべろ: ―べろべろ― はっはっはっ! ばうばうっ!
  782. トヨ: ―トヨ― だから…こんなときに…っ しっぽをふるな…ばかイヌめ…っ
  783. トヨ: ―トヨ― ほんとーに…われしか… かいてが、いなくなるぞ…っ!
  784. トヨ: べろべろは、いつまでもしっぽをふって われと、はしりつづけたのだ われのすぐよこで…ぴったりとはなれず…
  785. トヨ: レナたちが、われらをみていたのだ なにもいわず、じっとこちらをみて…
  786. トヨ: とーくのほーで、ゆーひがしずんでいく… ひぐらしのこえが、きこえる… なつが、よるにきえていくのだ
  787. トヨ: われは、このきらきらとしたしゅんかんを えーえんにわすれないように こころに、やきつけたのだ
  788.  
  789. FILENAME: text_310523-4.txt
  790. トヨ: あれから…随分とたったのだ
  791. トヨ: …っと、なのだ!
  792. トヨ: もうすっかり 祟り神退治にも慣れてきたのだ…
  793. トヨ: …レナ、ももこ、かえで… 皆、元気でやっているのだ…?
  794. トヨ: 吾は…とっても元気なのだ
  795. トヨ: 皆と別れてから随分たつが この季節になる度 吾は皆の顔と…べろべろを思い出すのだ
  796. トヨ: この季節…夏になる度
  797. トヨ: 確か、ここのはずだったのだ
  798. トヨ: 結局吾は…あのあと倒れてしまって べろべろときちんとお別れできなかったのだ
  799. トヨ: …いやむしろ それでよかったのかもしれないのだ
  800. トヨ: お別れに立ち会うことがあれば… きっと、大泣きしてしまうのだ
  801. トヨ: …それは、カッコ悪いのだ
  802. トヨ: でも、もし… もう一度、会えたら…
  803. トヨ: そうなのだ…吾なら… 必要な人を呼び寄せられる…
  804. トヨ: …………
  805. トヨ: やめだやめだ、なのだ
  806. トヨ: べろべろの気持ちを捻じ曲げて しまいそうで…いやなのだ
  807. トヨ: それに、べろべろは人ではなく イヌなのだ
  808. トヨ: きっとこの力の対象外…なのだ
  809. トヨ: …はあ、帰るのだ 皆が待って…
  810. べろべろ: 「ばうっ!」
  811. トヨ: ――っ!?
  812. トヨ: …い、いや…そんな、はず… ないのだ…
  813. トヨ: あれから、どれだけたったと… これが、何度目の夏だと…
  814. トヨ: …………
  815. べろべろ: 「ばうばうっ!」
  816. トヨ: 気づいたら、吾は駆け出していたのだ
  817. トヨ: そんなはずはないとわかっている… もしもなんてあり得ない…
  818. トヨ: でも…期待してしまうのだ
  819. トヨ: 今度こそ ちゃんと一緒に駆け回りたい
  820. トヨ: べろべろが満足するまで… 飽きるまで走り回りたい
  821. トヨ: 今の体ならできるのだ この脚なら、それができるのだ
  822. トヨ: あのときしてあげられなかったことが この今の吾なら…っ!
  823. トヨ: だから…べろべろ あのときは、忘れろなんて言ったが…
  824. トヨ: 吾を覚えていてほしい
  825. トヨ: 吾を見つけたら またうれしそうにべろべろしてほしい
  826. トヨ: こんな勝手なことばかり願うのは 本当にどうかと思うのだが… 吾はやっぱり…べろべろと一緒にいたいのだ
  827. トヨ: 楽しいこと、いっぱいしよう…なのだ
  828. トヨ: べろべろ…っ!
  829. トヨ: …………
  830. トヨ: …なはは…
  831. トヨ: …おかえり、なーのだ
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