Vi_Vi

Last Bird's Hope JP Text

May 10th, 2024 (edited)
346
0
Never
Not a member of Pastebin yet? Sign Up, it unlocks many cool features!
text 138.37 KB | None | 0 0
  1. FILENAME: text_521510-0.txt
  2. 魔法は 何処にある?
  3. 感情が 魔法を生むなら、 私の感情は 何処にある?
  4. 明日からの 私の魔法は、 きっと 過去からやってくる。
  5. ――あなたを失う、すべての私たちへ――
  6. 黒江: …ふっ!
  7. 黒江: これで…最後っ!
  8. 黒江: …………ふぅ
  9. あ、ありがとうございます
  10. あんな恐ろしい魔女を退治して しまうなんてすごいです…
  11. お強いんですね
  12. 黒江: 別に…普通
  13. 黒江: それよりこの電車、危ないから 早く降りたほうがいいよ?
  14. …それは、できません
  15. 父を見つけるまでは…
  16. 黒江: …?
  17. 黒江: この列車に、あなたの お父さんが乗っているの?
  18. まだわからないのです…
  19. この場所にいるのか、それとも この線路が向かう先にいるのか…
  20. でも、この列車に 乗ってさえいれば
  21. 必ず見つけられると思うのです
  22. 黒江: …お父さんだって
  23. 黒江: あなたが危険な目に遭って欲しい とは思ってないんじゃないかな?
  24. 黒江: 死んじゃったら なんにもならないよ?
  25. 黒江: あなたは一度降りてから…
  26. ごめんなさい それは、無理なんです
  27. 一度降りてしまったら
  28. きっともう、ここには 二度と戻って来られない…
  29. 黒江: そんなことないよ
  30. 黒江: 生きてさえいれば 何度だって…
  31. 一度降りてしまったらきっと
  32. 僕も、あなただって 気付いてしまう
  33. この旅が 永遠ではないことに…
  34. それなのに僕はまだ 一番大切だった父に
  35. ありがとうも さようならも言えてない
  36. 黒江: …………
  37. 黒江: じゃあ、私にも一緒に探させて?
  38. よいのですか?
  39. 黒江: うん… あなたの気持ち、わかるから
  40. 黒江: 私にもいるんだ 大切な人…
  41. 黒江: 空っぽな私に 色んなものをくれたの…
  42. 黒江: 私もまだ、あの子に伝えられてない
  43. 黒江: ありがとうも さようならも…
  44.  
  45. [From the opening sequence]
  46. 暗い夜空に迷う、小さな羽根
  47. 彼女が選び取る“希望”とは…
  48. [Title card] Last Bird's Hope
  49.  
  50. FILENAME: text_521510-1_OWfjt.txt
  51. たどり着かなかった夢は 蜃気楼に過ぎない
  52. けれども 失ったものの幻影には 質量がある
  53. 手をつかんだことがあるなら なおさらに
  54. 黒江: はぁ…はぁ…
  55. 黒江: (…休んでちゃダメだ)
  56. 黒江: (もっともっと魔女を倒さないと いけないのに…)
  57. 黒江: 環さんはいなくなってしまった
  58. 黒江: 詳しいことは 最後まで何も話してくれないまま…
  59. 黒江: …信じていたかった 遠くにいても環さんはずっと みんなを助け続けているんだって…
  60. 黒江: でも 分かってる
  61. 黒江: 私なんかが寂しいと思うなんて 傲慢なことくらい…
  62. 黒江: 私は、環さんが救った たくさんの魔法少女たちの そのうちのたったひとりに過ぎない
  63. 黒江: 私なんかよりも ずっと悲しい人たちがいる…
  64. 黒江: 私の中にあるこの傲慢な喪失感は ひとりで解決しなきゃいけない…
  65. 黒江: …ふぅ…
  66. 黒江: 少し休んだら 魔女を探さないと…
  67. 黒江: そうだよね? 環さん…
  68. …………
  69. 黒江: 呼びかけても返事なんてない 彼女に何かが届くわけじゃない
  70. 黒江: でも、私は環さんを忘れたくないから つい呼びかけてしまう
  71. 黒江: 環さんを忘れるわけなんてないのに 私は、忘れてしまうことに怯えている
  72. 黒江: 環さんに助けてもらった私が 僅かでも環さんを忘れてしまうなんて 許されるはずがない…
  73. 黒江: あれから私は、環さんみたいに 魔女を倒して人を助け続けている 環さんがしていたように、私もそうする
  74. 黒江: 私にとっての魔法少女は 環さんの姿をしているから
  75. 黒江: ふふ…
  76. 黒江: 魔法少女の運命は 私には重すぎたはずなのに
  77. 黒江: 環さんといた時よりも
  78. 黒江: ひとりになった今の方が 意外と頑張れてる気がする…
  79. 黒江: そうだよね? 環さん…
  80. …………
  81. 黒江: (…さて、休憩終わり)
  82. 黒江: (パトロールの範囲を 隣駅のほうまで広げてみて…)
  83. 黒江: (うっ…体が重い…)
  84. 黒江: (さすがに魔力を 使いすぎた…?)
  85. 黒江: (…もったいないけど…)
  86. 黒江: これで、もう少し動ける
  87. 黒江: 今日はまだ、使い魔しか 退治できてない…
  88. 黒江: どこかに生みの親の魔女が 隠れてるかも…
  89. 自分の行動に理由をつけたがるのは 失ったものの大きさに 私の魂が見合っていないからかもしれない
  90.  
  91. FILENAME: text_521510-2_OWfjt.txt
  92. 黒江: ふぅ…………
  93. 黒江: (この地域にも 魔女の気配はない…)
  94. 黒江: (いいことなんだけど…)
  95. 黒江: (これじゃ、環さんみたいに 人助けができない…)
  96. あらあれ、あの子じゃない? ほら見そほら見そ?
  97. 最近、よそ様のナワバリで 魔女を狩ってるとお噂の?
  98. そうそう そうだば
  99. なるほど この辺りじゃ お初な見た目な魔法少女…
  100. 黒江: …………
  101. 黒江: (さすがに目立ち過ぎたかな…)
  102. 黒江: (でも仕方ないよね)
  103. 黒江: (魔法少女は 人を助けることが優先だし)
  104. 黒江: (地域がどうとか 言ってられない…)
  105. やあ、あなた
  106. この地域の担当じゃないって 思うんだけど?
  107. 黒江: …私の地域に 魔女がいなくなっちゃったから
  108. あらあら びっくり!
  109. ナワバリのルールすら ご存じない?
  110. それともグリーフシードを ひとり占め?
  111. 黒江: そんなつもりはないよ…
  112. 黒江: ただ、魔女を倒したくて…
  113. …あらら? あの、それ大丈夫?
  114. 黒江: え…?
  115. ソウルジェムが濁ってる? みたく見えたから…
  116. もしか あなた グリーフシードに困ってたり?
  117. 話聞こか?
  118. 黒江: グリーフシードは持ってるけど… 自動浄化システムがあるし
  119. 黒江: 平気だよ
  120. 黒江: (環さんが魔法少女のために 用意してくれた希望…)
  121. 黒江: (本当はもうグリーフシードを 取り合わなくたって…)
  122. …どして魔女退治に こだわってらっしゃるの?
  123. 黒江: そんなの、ひとりでも 多くの人を救いたいから…
  124. 黒江: あの、本当にごめんね 私もう帰るから
  125. 黒江: それじゃあ…
  126. あ、待て待て
  127. 「人助けを頑張ってる 黒いフードの魔法少女」を
  128. 絶賛捜索中な子がいたんだけど
  129. それって もしか あなたのことだとか…?
  130. 黒江: ? 人違いじゃないかな?
  131. 黒江: 私べつに そんな魔法少女じゃないし…
  132. 黒江: …………
  133. 黒江: …はぁ 困ったな…
  134. 黒江: (魔女を倒したいだけなのに)
  135. 黒江: (今の方法じゃ限界かも…)
  136. 黒江: (…あまり現実的じゃないけど)
  137. 黒江: (魔女が生まれそうな場所を 警戒してみる…?)
  138. 黒江: でも、どうやって…
  139. うわ、速報 また強盗事件だって
  140. 宝崎市で? ここ最近多くない?
  141. 宝崎治安ヤバ過ぎ?
  142. 黒江: …………
  143. 黒江: (宝崎市内で頻繁に起き始めた 詐欺や強盗事件…)
  144. 黒江: (魔法少女としてできることは 何もないけど)
  145. 黒江: (いくらなんでも 急に増えすぎてる…)
  146. 黒江: (もし、魔女が 絡んでるんだとしたら?)
  147. 黒江: (今まで見逃してしまっていた)
  148. 黒江: (魔力を隠すことに長けた魔女の 仕業だとしたら…?)
  149. 黒江: (あたってみる価値は ある…よね)
  150.  
  151. FILENAME: text_521510-3_OWfjt.txt
  152. 黒江: 宝崎市内で頻発する詐欺や強盗事件には 犯罪組織が関わっている …って、報道されていたけど
  153. 黒江: 実はそれが魔女の仕業だったとしても 今まで見つけられてないものを どうやったら見つけられるんだろう?
  154. 黒江: ひとまず、治安の悪そうな場所を 回ってみることにした
  155. 黒江: 魔女の気配を探すんじゃなくて 事件そのものを探す これは案外良い発想かもしれない
  156. 黒江: …なんて思ったけど
  157. 黒江: 普通に、無理だよね…
  158. 黒江: (この3日くらい、色んな場所を 回ってみたけど)
  159. 黒江: (魔女なんて見つからないし、 私が見て回ってる間も)
  160. 黒江: (その地域で 事件は起き続けていた)
  161. 黒江: (たとえ魔女のせいじゃなかった としても)
  162. 黒江: (事件ひとつ 見つけられないなんて…)
  163. 黒江: (でもよく考えたら)
  164. 黒江: (通りすがりでも気が付けるの って強盗くらいかも?)
  165. 黒江: …………
  166. 黒江: (魔女の気配じゃなくて 事件の気配を…)
  167. 黒江: (いや、事件を起こしそうな人が 分かるにはどうしたら…)
  168. 黒江: …うっ…
  169. 黒江: (まただ…)
  170. 黒江: (最近は浄化しても ソウルジェムがすぐ濁ってくる)
  171. 黒江: (魔力は節約してるのに…)
  172. 黒江: どうしてなのかな… 環さん…
  173. 黒江: …………
  174. 父とは頻繁に会うような 間柄じゃなかったから
  175. 少しだけ、 再会するのが不安なんです
  176. まだ何にもなれていない僕を見て
  177. 父はがっかりしてしまうんじゃ ないかと
  178. 黒江: そんなことないよ
  179. 黒江: お父さんは、あなたと会える だけでうれしいに決まってる
  180. はい…父はきっと
  181. ただ、喜んでくれるに 違いありません…
  182. だけれど…
  183. 残された僕自身が まだ僕のことを許せないんです…
  184. 黒江: …………
  185. 黒江: …………
  186. 黒江: (次に回ってみたい場所は 2駅先か…)
  187. 黒江: (電車、まだあるよね…)
  188. 黒江: ――っ!?
  189. 黒江: (何、この生臭い匂い…!)
  190. 黒江: (ま、まさか…血…!?)
  191. はぁっ、はぁっ、うああああ!!
  192. 黒江: え、え、え…!?
  193. 黒江: (様子、変だったよね…)
  194. 黒江: (どうしよう…追いかけた方が いいの…?)
  195. 黒江: (それともこの匂いの正体を 確かめる…?)
  196. 黒江: …………
  197. 黒江: (怖い…………)
  198. 黒江: (けど…環さんなら 逃げたりしないよね…)
  199. 黒江: …………
  200. 黒江: …っ、追いかけよう…!
  201. 黒江: ――っ!?
  202. 黒江: (魔女…!ほんとにいた!)
  203. 黒江: (…あの人も 魔女から逃げてた?)
  204. 黒江: (考えたくないけど、 あの匂いも?)
  205. 黒江: (犠牲者が増える前に 倒さなきゃ…!)
  206. 黒江: (こんな魔女、私ひとりで…!)
  207. 黒江: うっ…!? こんな時に、また…!
  208. 黒江: (体が動かない…! どうして…!?)
  209. 黒江: (私は…魔女を倒さないと いけないの…!)
  210. 黒江: お願い…!動いて…!
  211. ザリザリ…▲…◎…
  212. 黒江: え…!?
  213. 黒江: 逃げられた…
  214. 黒江: …………
  215. 黒江: (…何してるんだろ、私…)
  216. 黒江: (何もできなかったどころか 魔女にも相手されないなんて…)
  217. 黒江: …………
  218. 黒江: (…こんなところで ぼうっとしてられない)
  219. 黒江: (魔女を追いかけ…)
  220. 黒江: (…そういえば、 あの生臭い匂い)
  221. 黒江: …あれ?
  222. 黒江: 匂いが消えてる…?
  223. 黒江: (気のせい…じゃなかったはず)
  224. 黒江: (まさか魔女の口づけで 操られた人たちがどこかで…?)
  225. 黒江: (わ、わからないけど…)
  226. 黒江: (さっき逃げて行った男の人も 怪我とかしてるかも…)
  227. 黒江: (でもあの人、どこに行ったのか 駅を出たのかもわからないし)
  228. 黒江: (匂いも消えちゃったし…)
  229. 黒江: (どうしよう?どうしよう?)
  230. 黒江: (で、でもまずは逃げた魔女を 追いかけなきゃ…!)
  231. ???の声: 「この件から手を引くのです」
  232. 黒江: ――っ!?
  233.  
  234. FILENAME: text_521510-4_OWfjt.txt
  235. 黒江: えっと…誰…?
  236. なぎさ: なぎさはなぎさなのです
  237. 黒江: なぎさ…さん
  238. 黒江: (この子も魔法少女なんだ)
  239. なぎさ: お前はさっさと帰るのです
  240. 黒江: あ…えっと
  241. 黒江: さっき魔女に 逃げられちゃってね…?
  242. 黒江: 怪我をしてるかもしれない 男の人も…!
  243. 黒江: …あ、それと さっきものすごく変な匂いが…
  244. なぎさ: 聞こえなかったのですか? お前は、さっさと、帰るのです
  245. 黒江: えっと…あのね?
  246. なぎさ: 魔女はなぎさがさっき退治したし 怪しい男なんていないし
  247. なぎさ: この駅は無味無臭なのです
  248. なぎさ: だから今すぐ走って帰るのです
  249. 黒江: …………
  250. 黒江: 駄目だよ!
  251. 黒江: 魔女をほっといたら 大変なことに…
  252. なぎさ: 魔女を倒しといたのは本当なので 安心するのです
  253. なぎさ: なぎさは強いのです
  254. 黒江: …魔女“は”?
  255. なぎさ: な、なぎさは何も知らないのです
  256. 黒江: …さっきは男の人もいないし
  257. 黒江: 匂いもしなかったって 断言したじゃない
  258. 黒江: 気のせいだったらいいけど
  259. 黒江: 魔女のせいで誰かが大変なことに なってるかもしれないんだよ?
  260. なぎさ: なぎさは何も知らないけど とにかく手を引くのです
  261. なぎさ: 知らないけど
  262. なぎさ: 関わったって良いことなんか ひとつもないのです!
  263. 黒江: もしかして…何か知ってるの?
  264. 黒江: 止められないといけないような ことなの?
  265. なぎさ: なぎさはなぎさの目的があるので 詳細は話せないのです!
  266. 黒江: それじゃ納得できないよ…
  267. なぎさ: 強情なのです…
  268. 黒江: どっちが…?
  269. なぎさ: はぁ…
  270. なぎさ: …………
  271. なぎさ: お前はそうやって
  272. なぎさ: 環いろはにでもなるつもり なのですか?
  273. 黒江: !!
  274. なぎさ: そんな似合わないことやったって うまくいきっこないのです
  275. なぎさ: 自滅するのがオチなのです
  276. 黒江: 違う!
  277. 黒江: 私なんかが 環さんになれるわけな…
  278. 黒江: え?
  279. 黒江: あなた…環さんを知ってるの?
  280. なぎさ: なぎさはただ者じゃないので それくらいわかるのです!
  281. 黒江: (この子も、環さんに助けて もらったことがあるのかな?)
  282. なぎさ: 環いろはの代わりは
  283. なぎさ: 偽物の環いろはじゃ 埋まらないのです
  284. なぎさ: さっさと他の場所で 新しい大切なことを探すのです
  285. 黒江: (分かってるよそんなこと…)
  286. 黒江: 環さんになれるわけないって 言ったでしょ!?
  287. 黒江: それに人を助けようとすることの 何が悪いの!?
  288. 黒江: 私たち魔法少女なんだよ? 環さんだって…きっとそうする!
  289. なぎさ: 本当に間抜けなのです
  290. なぎさ: 環いろはが助けた自分の命を 軽く見るのは
  291. なぎさ: 環いろはへの 裏切りじゃないのですか?
  292. 黒江: …………っ 私は死んだりしない!
  293. 黒江: 大きなお世話だよ…!
  294. なぎさ: ………… …………
  295. なぎさ: ふぅ… やっと帰ってくれたのです
  296. なぎさ: 黒江の運命を変えちゃった気も するのですが…
  297. なぎさ: 大きなホツレを修正するためには
  298. なぎさ: 小さなホツレなんか 気にしてられないのです!
  299. なぎさ: 一刻も早く、あいつを探して…!
  300. なぎさ: ――っ!?
  301. なぎさ: しまったのです…
  302. なぎさ: …“さっきの死体の山”を 無理に消したせいで
  303. なぎさ: なぎさが抱える穢れが増幅して しまっているのです…
  304. なぎさ: とはいえ、なぎさは 「円環の理」の使者…
  305. なぎさ: グリーフシードに頼らずに なぎさの穢れを浄化するには…
  306. なぎさ: …ドッペルで放出するしか ないのです…?
  307.  
  308. FILENAME: text_521510-5_OWfjt.txt
  309. 黒江: (…はぁ、私…あんな小さな子に 大人げなかったな…)
  310. 黒江: (環さんみたいに、 姉弟だっているのに…)
  311. 黒江: (あたりを探してみたけど)
  312. 黒江: (さっきの魔女、本当にあの子が ひとりで倒したんだ…)
  313. 黒江: (あの子、強いんだ…)
  314. 黒江: …………あ
  315. 黒江: (そういえば、 終電終わっちゃってる…)
  316. 黒江: …………
  317. 黒江: (いいや、2駅くらい歩けるし)
  318. 黒江: (…ついでに、さっきの男の人も 探してみようかな)
  319. 黒江: (その辺で倒れたりしてたら 大変だもんね…)
  320. 黒江: ――っ!?
  321. 黒江: (何、この魔力…? まるで落下するような感覚…)
  322. 黒江: (魔女とは…ちょっと違う? でもこれは…!?)
  323. ???: …………あれ?
  324. 黒江: あ…えっと…
  325. 黒江: (ただの女の子…? でもそんな気配じゃなかった…)
  326. ???: もしかして、あなたも魔法少女?
  327. 黒江: …えっと、あなたもそうなの?
  328. ???: そうだよ? あなたとおんなじ魔法少女
  329. 黒江: (すごく背が高い… どのくらいあるんだろ)
  330. ???: 奇遇だね! お散歩してたの?
  331. 黒江: 私は…うん そんなところ…かな?
  332. ユゥ: ワタシ、ユゥって言うの あなた、名前は?
  333. 黒江: …黒江…
  334. ユゥ: 黒江ちゃん! ちょっと待ってね
  335. ユゥ: えっと… うんうん…
  336. ユゥ: 黒江ちゃんはリストに 載ってないから善い人なんだね!
  337. ユゥ: 黒江ちゃん!よろしくね!
  338. ユゥ: ワタシ、ユゥって言うの あなたとおんなじ魔法少女
  339. 黒江: (…ちょっとよく分からないけど 敵意は、ないのか…な?)
  340. ユゥ: あのね、 ちょっと聞きたいんだけど
  341. ユゥ: この辺で悪い人見なかった?
  342. 黒江: ざっくりだね…
  343. ユゥ: うーんとね、若い男の人? で、とにかく悪い人なの!
  344. ユゥ: リストに載ってるんだ …えーと、名前はジョン!
  345. ユゥ: さっき話しかけたんだけどね? 逃げられちゃって困ってたんだ
  346. 黒江: えっと…その逃げた人かどうかは わからないけど
  347. 黒江: もしかしたら、見たかもしれない
  348. ユゥ: ホント!?
  349. 黒江: うん でも、私も見失っちゃった…
  350. 黒江: (あの人、 悪い人だったのかな?)
  351. ユゥ: そっかぁ…
  352. ユゥ: 困ったナァ、困ったナァ
  353. ユゥ: もうこの辺りで リストに載ってるのは
  354. ユゥ: ジョンって人だけなのに…
  355. ユゥ: あ!そーだった 魔女の結界も探してるんだった!
  356. ユゥ: 一度にたくさん なくしちゃったから
  357. ユゥ: 早く捨てちゃわないと いけないんだ!
  358. 黒江: (…捨てちゃわないと?)
  359. 黒江: あの…さっき駅にいた魔女なら 他の子がやっつけちゃったみたい
  360. ユゥ: え!そーなの? 困ったナァ、困ったナァ
  361. ユゥ: でも魔女がいなくなったのは 良いことだよね?
  362. 黒江: うん、そうだね
  363. 黒江: (…ちょっと変わった人だけど)
  364. 黒江: (困ってるみたいだし 助けてあげた方がいいよね…)
  365. 黒江: (魔法少女が一般人を追うのも)
  366. 黒江: (何か事情があるのかも しれないし)
  367. 黒江: あの…ユゥさん 私もその人を探すのを手伝うよ
  368. ユゥ: え、いいの!?
  369. ユゥ: ありがとう、うれしいなぁ! ひとりよりふたりだもんね!
  370. 黒江: そうだね…
  371. 黒江: えっと…二手に分かれようか
  372. 黒江: この近くを探してみて、状況は テレパシーで共有すればいいかな
  373. ユゥ: うん、わかった
  374. 黒江: それじゃ、あとで…
  375. 黒江: はや…!? もういない…
  376. 黒江: …………
  377. 黒江: (とりあえず、この辺りを 探して…)
  378. 黒江: (新しい魔女…!?)
  379. 黒江: (…ううん、違う この感じは…ドッペル…!)
  380. 黒江: (しかも、これは駅… なぎささんがいた方向からだ…)
  381. 黒江: (次から次へと… 理解が追いつかない…)
  382. 黒江: …………
  383. 黒江: (…魔女の気配はしてないのに どうしてドッペルを?)
  384. 黒江: (何か起こってるのかも…)
  385. 黒江: …………
  386. 黒江: (環さんなら、魔法少女のことも 見捨てない…)
  387. 黒江: (あの子とは、もう会わずに 済むならそれがよかったけど…)
  388. 黒江: …………
  389. 黒江: あの、ユゥさん…!
  390. 黒江: ちょっと気になることがあって 少しの間、人探しを中断するね…
  391. 黒江: …………
  392. 黒江: (反応ないけど、 ユゥさんを待ってられないし)
  393. 黒江: (…行ってみよう…!)
  394.  
  395. FILENAME: text_521510-6_OWfjt.txt
  396. 黒江: なぎささん…! いるの…!?
  397. 黒江: …あ、あれって…!?
  398. 黒江: ―黒江― なぎささんのドッペル…!?
  399. 黒江: ―黒江― なんか、様子が変…? なりふり構わず暴れてるような…
  400. なぎさの声: 「う…」
  401. なぎさの声: 「うげえ…!」
  402. 黒江: ――っ!?
  403. 黒江: (こっちに攻撃してきた! 制御できてないの…!?)
  404. 黒江: くっ…
  405. 黒江: うぅ…!
  406. 黒江: (一瞬でも油断したら あのドッペルに食べられる…!)
  407. 黒江: きゃっ!
  408. なぎさの声: 「う…ぁぁ…! 助け…て…」
  409. 黒江: …………もう…!
  410. 黒江: 人には手を引けとか 言ったくせに!
  411. 黒江: …大人しくしてっ!
  412. 黒江: 消えた…? 終わったの…?
  413. なぎさ: おぇぇ…
  414. 黒江: 大丈夫…? …じゃない、よね…
  415. 黒江: グリーフシードは…
  416. なぎさ: いらないのです…
  417. なぎさ: ドッペルを出したことで 一応、穢れは放出できたのです…
  418. なぎさ: しかし大反省なのです…まさか あんなふうに暴走するなんて…
  419. なぎさ: 「円環の理」の使者が なんたるしったい
  420. 黒江: 円環…?
  421. なぎさ: あ、こっちの話なのです…!
  422. なぎさ: 黒江には世話になったのです ありがとうなのです
  423. 黒江: …どういたしまして
  424. 黒江: (…って、あれ? 私の名前、言ったっけ…)
  425. 黒江: …落ち着いたならよかったけど 無理しないでね?
  426. なぎさ: はいなのです… しばらく休ませてもらうのです…
  427. なぎさ: ――っ!?
  428. なぎさ: いちなんさってまたいちなん…
  429. なぎさ: なぎさが不安定になった隙に またあいつらが現れたのです…!
  430. 黒江: あいつらって…魔女のこと…!?
  431. …………ぁ…
  432. 黒江: ――っ!? さっきの人が結界に…!?
  433. なぎさ: それだけじゃないのです!
  434. なぎさ: 魔女の口づけを受けた人間たちが おびきよせられてるのです!
  435. 黒江: 助けなくちゃ…!
  436. なぎさ: なななっ!?
  437. なぎさ: 黒江ひとりの手に負える相手じゃ ないのです!待つのです!
  438. 黒江の声: 危ない!
  439. 黒江: …っ!
  440. 黒江: この結界、どうなってるの…? 魔女が複数いるなんて…
  441. なぎさ: 詳しくは言えないのですが
  442. なぎさ: なぎさが呼び寄せている というか…
  443. なぎさ: とにかく、倒さないと ずんずん増えるのです…!
  444. 黒江: よくわからないけど… ふたりで協力して魔女を…!
  445. なぎさ: なぎさもそうしたいのは 山々なのですが
  446. なぎさ: さっきドッペルを出したせいで ヘトヘトなのです…
  447. なぎさ: 持ち直すまで、黒江ひとりで 持ちこたえてほしいのです…!
  448. 黒江: えぇ…!?
  449. 黒江: わ…!
  450. 黒江: (無理だよ…!)
  451. 黒江: (ひとりで魔女を何匹も 相手にできっこない…!)
  452. 黒江: (こんな時、環さんがいたら…)
  453. 黒江: (環さんだったら…!)
  454. なぎさ: うわわっ!?
  455. 黒江: (どうしよう…このままじゃ ふたりともやられちゃう!)
  456. 黒江: (やっぱり私じゃダメなの…?)
  457. 黒江: (環さん…!)
  458. ???の声: 「やっ、やあぁ!!」
  459.  
  460. FILENAME: text_521510-7_OWfjt.txt
  461. 黒江: あなたは…
  462. 大丈夫ですか!?
  463. 黒江: あの時の…
  464. なぎさ: おおぅ… 黒江の知り合いなのです…?
  465. 黒江: 一応、そう…だけど…
  466. 黒江: ありがとう…
  467. 黒江: 魔女の注意が逸れて 助かったよ…
  468. あわわわ! とんでもないです!
  469. 黒江: …………
  470. 黒江: …無事だったんだね、あの後も…
  471. は、はい!
  472. あの時は助けていただいて ありがとうございました!
  473. 私どうしても、もう一度会って お礼を伝えたくて…
  474. あなたのこと探してたんです!
  475. はぁ~~でもこうしてようやく 夢が叶いました!
  476. 黒江: そう、なんだ…
  477. 黒江: …………
  478. ――っ!
  479. はあああっ… …死ぬかと思いました!
  480. ありがとうございます
  481. 黒江: …うん
  482. 黒江: 私は前に、魔女を倒して この子を助けたことがある
  483. 黒江: でもそれは この子からそう見えていただけで 真実は違った
  484. 黒江: 魔女と戦ってソウルジェムが濁っていたこの子は グリーフシードを持っていないかと 私に聞いてきたけど 私は…嘘をついて グリーフシードを分けてあげなかった
  485. 黒江: この子は私よりもずっと弱くて ひとりぼっちで、きっと不安だった
  486. 黒江: でも、あの時の私は今よりも弱くて 自分のことで精いっぱいで 不安だったから 魔法少女なら自分で何とかしてよって 思ってしまった
  487. 黒江: 私は、私より弱いこの子を 見殺しにしてしまったも同然…
  488. 黒江: 自分を変えたくて頑張ってきたけど… 全部環さんのおかげで何とかなっただけで 本当の私はきっと、何も変われてないんだ
  489. 黒江: 理想には近づけないまま 環さんは幻みたいに消えてしまって この子がまた現れるなんて…
  490. まさか魔女の結界で会うことに なるとは思わなかったですけど…
  491. 魔法少女らしいと言えば そうですよね!
  492. 黒江: 本当、皮肉だよね…
  493. え…?
  494. 黒江: ごめん こっちの話
  495. そうですか?
  496. いやー、偶然とはいえ 運命とか感じちゃいます!
  497. この辺におばあちゃんが住んでて たまたま遊びに来てたんですけど
  498. 弱いなりに、一応パトロールして おこうって外に出ていて!
  499. …って、すみません! 私のことばっかり…!
  500. 黒江: えっと…そうだね
  501. 黒江: ひとまず今は、 魔女に集中したほうがいいかも
  502. わわっ!? まだいるんですか?
  503. 黒江: 仕掛けてきそうだね…
  504. おおお、怯えてばかりじゃ いられません!
  505. 私あれから少しでも あなたに近づくため
  506. 毎日放課後に 特訓を重ねたのです!
  507. おふたりは そこで見ててください!
  508. 黒江: あ…うん…
  509. なぎさ: …………
  510. おりゃあああ!
  511.  
  512. FILENAME: text_521510-8_OWfjt.txt
  513. ぎゃああああ!
  514. すみませんすみません!
  515. ちょっと待って!! タイムタイム!
  516. 黒江: あ、あの… ほんとにひとりで大丈夫…?
  517. なぎさ: うう~ん… あの魔法少女…
  518. なぎさ: 弱いけど 根性ある逃げ足なのです…!
  519. 黒江: 感心してる場合…!?
  520. 黒江: (まぁ、予想通りでは あるけど…)
  521. 黒江: (あの時も、この子は 私よりもっと弱かったし…)
  522. 黒江: ねえ…!
  523. 黒江: 私がフォローするから 一緒に戦って…!
  524. ひぃぃ!
  525. すみませんすみません!! やっぱりこれ無理かもです~~!
  526. 黒江: …本当にまずいかも…
  527. …………
  528. 黒江: …………
  529. 黒江: (なぎささんは まだ戦える状態じゃないし)
  530. 黒江: (私も本調子じゃない…)
  531. 黒江: (あの子をフォローしながら)
  532. 黒江: (結界におびき寄せられた人も 守って戦うのは相当厳しい…)
  533. 黒江: ――っ!?
  534. 黒江: (こんな状況で、魔女を1体倒す だけでも難しいけど…)
  535. 黒江: (弱音なんて吐けない…)
  536. 黒江: 大丈夫… 大丈夫…………
  537. 黒江: 環さんならきっと、どんな ピンチでもみんなを助ける…!
  538. なぎさ: 落ち着くのです お前は環いろはじゃ…
  539. 黒江: 知ってる!
  540. 黒江: 環さんは私みたいに 誰かを見捨てたりしない!
  541. 黒江: 弱い自分を 言い訳にしたりしない!
  542. 黒江: 都合が悪いことを 忘れた振りなんかしない!
  543. 黒江: (環さんは、 私なんかと違う…!)
  544. 黒江: …やあああっ!
  545. 黒江: はぁ…はぁ…!
  546. 黒江: やった…!
  547. 黒江: ――っ!?
  548. 黒江: (倒しきれてなかった…!?)
  549. 黒江たち: きゃあぁっ!!
  550. なぎさ: あわわわ…! これは…まずいのです…!
  551. なぎさ: うぐぐっ…!
  552. なぎさ: 休んでる場合じゃないのです
  553. なぎさ: なぎさが魔女をひきつけるので 黒江たちは逃げるのです…!
  554. なぎさ: あぁ…!
  555. 黒江: なぎささん…!
  556. …うぅ…
  557. 黒江: (私じゃ 誰も助けられないの…?)
  558. 黒江: (やっぱり私には無理なの…?)
  559. 黒江: え…何が…
  560. ユゥ: 黒江ちゃん、みーつけた
  561.  
  562. FILENAME: text_521510-9_OWfjt.txt
  563. ユゥ: 黒江ちゃん、みーつけた
  564. ひ、ひいいい!?
  565. 黒江: ユゥ、さん…?
  566. 黒江: (見た目は相当違うけど…)
  567. 黒江: (これって魔法少女… なんだよね?)
  568. ユゥ: 戻ってこなかったから 心配で探したんだよ?
  569. ユゥ: 結界の中にいたんだね よかったよかった
  570. なぎさ: あ…ああーーーっ!! ついに発見なのです!
  571. ユゥ: ん?
  572. ユゥ: あれ?なぎさちゃん! なぎさちゃんだよね?
  573. ユゥ: わぁ、また会えてうれしいなあ
  574. 黒江: 知り合いなの…?
  575. なぎさ: …そんなところなのです
  576. なぎさ: 今はそれよりも! なぎさの目的が最優先なのです!
  577. なぎさ: この宇宙のホツレは なぎさが直すのです…!
  578. ユゥ: どうしちゃったのなぎさちゃん? なんか怖い感じだけど…
  579. ユゥ: ワタシ、何か 怒らせちゃったりした?
  580. なぎさ: お前さっき、駅の中に
  581. なぎさ: 大量のなくしちゃった後の人 ほったらかしにしてたのですね?
  582. ユゥ: あ! もしかして、あの人たちのこと
  583. ユゥ: なぎさちゃんが 片付けてくれたの?
  584. ユゥ: でも違うんだよ?
  585. ユゥ: ほったらかしに してたんじゃないよ?
  586. ユゥ: お片付けもするつもり だったんだけど
  587. ユゥ: 近くに魔女の結界がなくてね?
  588. なぎさ: あんなの通報されたら どうする気だったのです!
  589. ユゥ: ひゃっ! 迷惑かけちゃってごめんね?
  590. ユゥ: なぎさちゃん、まだ怒ってる?
  591. なぎさ: はぁ… ユゥは相変わらずなのです
  592. なぎさ: …………
  593. なぎさ: ユゥ、カラッポは 埋められたのですか?
  594. ユゥ: ううん!
  595. ユゥ: ワタシのカラッポ、 どんどんおっきくなって
  596. ユゥ: ワタシの中のワタシ もう砂粒みたいになっちゃった
  597. なぎさ: …そうなのですか
  598. なぎさ: 悪く思うな…なのです…!
  599. ユゥ: なんでなんでぇぇ! 暴力はんたーい!
  600. なぎさ: (ユゥは得体の知れない魔法を 使うのです)
  601. ユゥ: わわ?
  602. ユゥ: シャボン玉に 閉じ込められちゃった!
  603. なぎさ: (このまま 何もさせないのです!)
  604. なぎさ: ――っ!?
  605. なぎさ: この感覚は…! マズイ…ので……
  606. おわああ! だだ、大丈夫ですか!?
  607. 黒江: …気を失ってるみたい
  608. そ、そして あのオバケみたいな人は?
  609. 黒江: あの人も、たぶん魔法少女… だと思う
  610. まっ……!???
  611. ユゥ: 困ったナァ、困ったナァ
  612. ユゥ: またワタシのせいかな? どうしよう!
  613. 黒江: ユゥさん、この子といったい…
  614. ???の声: う…うわあああ!?
  615. 黒江: ――っ!?
  616. 今度は何――ッ!?
  617. お、お、お前は…!
  618. 黒江: (気絶してた人… 目が覚めたんだ…)
  619. ユゥ: んん?
  620. ユゥ: あ、黒江ちゃんすごい! 見つけてくれてたんだ!
  621. ユゥ: ワタシの探してる悪い人!
  622. ユゥ: あなた“ジョン”だよね?
  623. ジョン: ゆ、許してくれ! 俺は…やらされてただけで!
  624. ジョン: 本当はイヤだったんだ!
  625. ジョン: まさかあんなことの 手伝いだったなんて…!
  626. ユゥ: んー、ワタシに言われてもなぁ
  627. ユゥ: あんた、リストに載ってんし ちゃんと悪い人なんだから
  628. ユゥ: なくされちゃおう?
  629. ジョン: ぎゃっ…!
  630. 黒江: ユ、ユゥさん!?
  631. ユゥ: ん?どしたの?
  632. 黒江: 事情は知らないけど
  633. 黒江: それ以上やったら、 この人死んじゃう!
  634. ユゥ: ? うん ちゃんとなくしちゃうよ?
  635. 黒江: なくしちゃうって…まさか
  636. ユゥ: あ、もしかして方法のこと? 刺しちゃおうと思ってんの
  637. 黒江: ――っ!?
  638. だだだッだめですよ! 私たち、魔法少女なのに…!
  639. ユゥ: え!?魔法少女って 刺しちゃダメな感じ?
  640. 黒江: 悪い人なら、とりあえず捕まえて 警察に引き渡そうよ…!
  641. ユゥ: えーと…そっかそっか
  642. ユゥ: あのね、黒江ちゃん…
  643. ユゥ: 実はね…警察の人ってね…
  644. ユゥ: 悪い人を渡しても、 なくしてくれないの!
  645. ユゥ: ワタシも初めて知ったとき びっくりしちゃった!
  646. ユゥ: えっと、だからね?
  647. ユゥ: 警察の人はなくしてくれないから うまくいかなかったんだよ?
  648. 黒江: ???
  649. ジョン: あ、あんたたち! 早く逃げろ!
  650. ジョン: そいつは狂ってて 先輩たちを皆殺しに…!
  651. あなたの先輩たちを…? コ、コロ…?
  652. ユゥ: ちゃんとリストに載ってる 悪い人だよ?
  653. ユゥ: なくさなきゃなんだよ?
  654. 黒江: (…あの生臭い匂い まさか、本当に…血の…?)
  655. ユゥ: 大変だったんだよ
  656. ユゥ: ひとりずつ呼んだのに みんな一緒に来ちゃってね?
  657. ユゥ: あんなたくさんだったから
  658. ユゥ: 魔女の結界まで運べなくて 困っちゃった…
  659. ユゥ: なくしちゃった後のを ほっといちゃうと
  660. ユゥ: シィからすごく怒られんのに…
  661. ユゥ: だからね… …あれ? 何の話だっけ?
  662. ジョン: ほ、ほら、わかったろ!? ヤバい奴なんだよ!
  663. ジョン: 早く逃げろ!
  664. 黒江: でもあなた…怪我して…
  665. ジョン: 俺はなんとかなるからはやく!
  666. ユゥ: あ、そうそう
  667. ユゥ: 悪い人をなくしちゃう話 だったっけ?
  668. ユゥ: だからね、黒江ちゃんたち 危ないからちょっと離れててね?
  669. 黒江: きゃあっ!
  670. びゃひいい!?
  671. ユゥ: えぇぇ!?だからほんとに 危ないんだってば!
  672. 黒江: 逃げよう!
  673. はっはい―ッ!
  674.  
  675. FILENAME: text_521510-10_OWfjt.txt
  676. なななな、 なんなんですかあの人!?
  677. ほんとに魔法少女なんですか?
  678. 黒江: わかんない…わかんないけど 今はとにかく隠れなきゃ…
  679. 黒江: ユゥさんが、他の場所に 行ってくれたらいいんだけど…
  680. ジョン: …待ってくれ
  681. ジョン: 後は俺ひとりでも平気だ あんたらは早く帰りな
  682. 黒江: 平気じゃないよ 怪我だって軽くないみたいだし…
  683. そうですよ!
  684. さっきの怖い人だって ここまで探しに来るかもですよ?
  685. ジョン: あんたたちまで 危ない目に遭うことなんかねえよ
  686. ご心配には及びません! 私はともかく…
  687. この方は困った人を見捨てたり なんかしないんですよ?
  688. 黒江: え!?…いや…そんなこと…
  689. かく言う私も、かつてこの方に 命をお助け頂きました!
  690. 忘れもしません! あれは私がまだ…
  691. ジョン: …ありがとよ 気持ちだけ貰っとくな
  692. やや、まさか疑ってるんですか?
  693. ジョン: そうじゃねえよ…
  694. ジョン: 俺は…あいつが言ってた通り 本当に悪人なんだ…
  695. ジョン: 楽に儲かるって騙されて 取り返しがつかないことを…
  696. ジョン: だから自業自得なんだよ
  697. 黒江: …………
  698. だ、だからって、暴力で 解決されるのは間違ってます!
  699. 見過ごせません!
  700. ジョン: いや…あの化け物の方が 正しいんだ
  701. ジョン: あんたらも本当の俺を知ったら 俺を殺したくなるはずだ…
  702. な、なんでそんなこと 言うんですか!
  703. あなたがやった悪いこと 私も許せないかもしれないけど
  704. でも、だからってあなたが 死ねばいいことにならないです!
  705. 後悔すればいいじゃないですか!
  706. 死んだら 後悔出来ないじゃないですか!
  707. なんでそんな適当なこと 言うんですか!
  708. 黒江: お、落ち着いて…?
  709. ジョン: …………
  710. ジョン: 悪かったよ …………そうだよな
  711. ジョン: 俺、死なないで ちゃんと自首するよ
  712. ジョン: 罪は消えねぇけど、少しでも 償うために何ができるか…
  713. ジョン: 何もできないかもしんねぇけど
  714. ジョン: 化け物に殺されて終わるだけじゃ それもなんか違うもんな?
  715. ジョンさん…
  716. ジョン: まあ、今となっちゃ
  717. ジョン: 檻の中が一番安全そうでも あるけどな
  718. 黒江: 朝になったら せめて警察署まで送ります
  719. 黒江: 他には何もしてあげられないし…
  720. ジョン: ありがとう、もう十分過ぎるさ…
  721. ジョン: ぐぁ!?
  722. ユゥ: 悪い人、みーつけた!
  723. ああっ!
  724. 黒江: 待ってユゥさん!
  725. 黒江: お願い!待って!
  726. 黒江: どうして悪い人を 殺さなきゃいけないの?
  727. ユゥ: 魔法少女だからだよ?
  728. ユゥ: 魔法少女はね
  729. ユゥ: みんなを困らせる悪者を なくしちゃうような
  730. ユゥ: とっても良いことをする存在 なんだよ?
  731. 黒江: ――っ!?
  732. こ、こんなこと 良いことなんかじゃありません!
  733. もしジョンさんが 悪人だったとしても
  734. 良いことなんかじゃないです!
  735. ユゥ: う~ん…困ったナァ
  736. ユゥ: やっぱワタシ説明が下手だから ぜんぜん伝わってくんない…
  737. ジョン: ま、待ってくれ!
  738. ジョン: 分かった、もう諦める どうせこの傷じゃ逃げられない
  739. ジョン: だからこの子たちには 何もしないって誓ってくれ!
  740. ユゥ: えぇぇ…
  741. ユゥ: なんでワタシが黒江ちゃんに なんかする感じになってんの?
  742. ユゥ: あ、そーだ
  743. ユゥ: 黒江ちゃんの隣の子の名前は まだ…
  744. ユゥ: 刺されちゃった
  745. ジョン: はあ…はあ… なんもするなって言っただろ!
  746. ユゥ: も~~ 面倒くさいなぁ…
  747. ジョン: (こいつ… 刺されても何ともないのか?)
  748. ジョンさん!
  749. ジョン: お前ら逃げろ!
  750. ユゥ: えーと、じゃあ… さよなら?
  751. 黒江: ――っ!!
  752.  
  753. FILENAME: text_521510-11_OWfjt.txt
  754. 黒江: 環さんみたいにならなきゃ
  755. 黒江: 魔女を倒して、人を助けて みんなから必要とされる存在に…
  756. 黒江: そうだ
  757. 黒江: 魔法少女はすべてを救う
  758. 黒江: 魔女とは一見、関係なくても 事件があれば助けられた方がいいし 悪い人も捕まえた方がいいに決まってる
  759. 黒江: 環さんなら、見過ごしたりするはずない
  760. 黒江: でも
  761. 黒江: 悪い人だけど、いい人だったら? いい人だけど、悪い人だったら?
  762. 黒江: 悪い人を殺す魔法少女がいたら どうすればいいんだっけ?
  763. 黒江: 環さんならどうするだろう?
  764. 黒江: こんな状態の私を環さんが見たら なんて思うだろう…
  765. 黒江: 環さんがいなくなって 私なんかが取り残されたのに
  766. 黒江: 私、魔法少女なのに何もできない 魔法少女なのに何も決められない
  767. 黒江: このままじゃ 環さんを裏切ったことになっちゃう…
  768. あ… あぁぁ…!
  769. 黒江: ユゥさん、どうしてこんなこと…
  770. ユゥ: あれ?さっき言わなかったっけ? やっぱ言ってないかも?
  771. ユゥ: 魔法少女だからだよ?
  772. ユゥ: 魔法少女は 良いことをするんだよ?
  773. ユゥ: リストに載ってる人だったし
  774. ユゥ: ほんとに ちゃんと悪い人なんだよ?
  775. ユゥ: 間違えちゃったりしてないよ? ほんとだよ?
  776. …ちょっとくらい
  777. 話を聞いてあげても よかったじゃないですか!
  778. ユゥ: …だってぇ、お話聞くと 長くなっちゃうんだもん…
  779. 私にはジョンさんが 悪い人には思えませんでした…!
  780. 後悔だって してたじゃないですか!
  781. 何か間違ってしまったって やり直すことも
  782. 反省することすら 許されないんですか!?
  783. ユゥ: で、でも、この人が反省してる とか後悔してるとかはとくに…
  784. ユゥ: ワタシ、裁判官さんじゃないので
  785. ユゥ: 罪状を決めたりとか 刑を与えてるわけじゃ…
  786. ユゥ: はっ!
  787. ユゥ: もしかして、黒江ちゃんたちは 裁判官ちゃん!?
  788. 黒江: (分からない…私には この人の考えが、分からない)
  789. ユゥ: あれ… 黒江ちゃん、大丈夫?
  790. ユゥ: ソウルジェムも濁ってるし このままじゃ危ないよ?
  791. ――っ!?
  792. や、やめてください! この人に近づかないで!!
  793. ユゥ: ―ユゥ― ごめんね! でも限界そうだったし、助けなくちゃって…
  794. ユゥ: ―ユゥ― ワタシ、こんな時 相談に乗れる人知っててね?
  795. あ、あなたが相談してる人なんて 絶対めちゃくちゃ怖い人じゃないですか!
  796. こここ、この人は私が守るので… だ、大丈夫なので退いてください!
  797. ユゥ: ―ユゥ― うーん…? あ、そーだった!
  798. ユゥ: ―ユゥ― 悪い人を見つけてくれた黒江ちゃんに ちゃんとお礼もしなきゃ!
  799. うぅぅぅ…!
  800. この人は…
  801. く、黒江さんは 私が守ります…!
  802. ――っ!?
  803. 黒江: な…!?
  804. ユゥ: ご、ごごごごめんなさい!
  805. ユゥ: ワタシの周りにいる人、 変になっちゃう時があって…!
  806. ユゥ: でもワタシ、 何もしてないんだよ?
  807. ユゥ: ほら、動いてもない!
  808. ユゥ: だから、ね?怖いのはイヤだから もう襲ってこないでね?
  809. ユゥ: ね?ね?
  810. 黒江: あなたはどうなりたいの…?
  811. 黒江: 悪いって理由だけで どうして人を殺すの…?
  812. ユゥ: 困ってる人がいるからだよ?
  813. ユゥ: えっと、えっと… 困ってるっていうのは
  814. ユゥ: 悪い人が夢に出ていてね? うなされちゃうんだって
  815. ユゥ: あ、もちろん悪い人は夢の中でも 悪いことをするから
  816. ユゥ: とってもつらくて 困ってるらしいの!
  817. ユゥ: でもね! その悪い人をなくすと
  818. ユゥ: 夢には出てこなくなるって わかったんだ!
  819. ユゥ: だからワタシはリストに載ってる 悪い人をなくして回ってて…
  820. 黒江: …………
  821. ユゥ: やっぱり、ワタシの説明 分かりづらかったりしちゃう?
  822. 黒江: …っ…………
  823. 黒江: (私が混乱してるから?)
  824. 黒江: (それだけじゃない…)
  825. 黒江: (私はこの人を とても理解できそうに…)
  826. ユゥ: 黒江ちゃんは なんで魔法少女になったの?
  827. 黒江: !
  828. 黒江: …私は、取るに足らない願いで 魔法少女になっちゃって
  829. 黒江: ずっと後悔しながら 魔法少女として生きてた
  830. 黒江: でも、環さんに出会えて 環さんに救われて
  831. 黒江: 私は変わりたいと思った
  832. 黒江: こんな私でも魔法少女として 少しでも多くの人を助けたい…!
  833. ユゥ: そーなんだ!
  834. ユゥ: ワタシとおんなじだね? うれしい!
  835. 黒江: ち、違う! 私は…
  836. ユゥ: なぎさちゃんが言ってたの
  837. ユゥ: ワタシたちって 大切なものをなくしちゃって
  838. ユゥ: そのせいでできたカラッポを 埋めなきゃいけないから
  839. ユゥ: 魔法少女やってんだよ?
  840. 黒江: …………!
  841. 黒江: (どうしたらいいの? どうするのが正しいの?)
  842. 黒江: (環さんならどうする…?)
  843. 黒江: (教えて、環さん…!)
  844. ???: 大丈夫だよ、黒江さん
  845. ???: 黒江さんなら 黒江さんの答えを選べるよ
  846. 黒江: 無理だよ…
  847. 黒江: だって、何が正しいのかも もう…わからない…
  848. 「黒江ちゃん…」
  849. 「くろえちゃん…」
  850. ユゥ: クロエチャン?
  851.  
  852. FILENAME: text_521510-12_OWfjt.txt
  853. 黒江: 意識を失った私は
  854. 黒江: 沈んでゆく意識の中で
  855. 黒江: 夢を見た
  856. 「ユゥを、殺して…」
  857. 黒江: あたりを満たす
  858. 黒江: 夜香花と海の匂い
  859. 「物語はもう終わってんのに」
  860. 「私を置いて、みんな未来へ行っちゃう」
  861. 黒江: これは、誰だろう? 誰かの声が、私に話しかける
  862. 黒江: ユゥさんに とてもよく似た 雰囲気の声
  863. 「だからお願い」
  864. 「ユゥを殺して」
  865. 黒江: あの人を…………私が?
  866. 「過ぎ去る日々が」
  867. 「あの子のぜんぶを消しちゃう前に」
  868. 「ユゥを殺して」
  869. 黒江: この声はきっと ユゥさんが失った大切な誰かだ
  870. 黒江: なぜだろう 理由はわからないが 私は そう思った そうとしか 思えなかった
  871. 「あんたも知ってんでしょ?」
  872. 「オシマイの先には何もないんだって…」
  873. 黒江: そうだ、私は知っている
  874. 黒江: 未来はいつだって ひとりぼっち
  875. 黒江: 大切なものも、正しかったことも もう 過去にしか現れない
  876. 黒江: 私の魂よ これ以上
  877. 黒江: あの人から 遠くならないで…
  878.  
  879. FILENAME: text_521520-1_wFS6q.txt
  880. 黒江: ずっと昔は、猫を飼ってたんだ…
  881. 黒江: でもあれ以来、 他の猫は飼ってないの
  882. 黒江: 私には、あの子がいたから
  883. ほむら: そうなんですね… でも、もうその子は
  884. ほむら: どんなにあなたのことが心配でも 傍にはいてあげられないんですよ
  885. 黒江: …………
  886. ほむら: いけない、もうこんな時間… 次の駅で降りなきゃ…
  887. 黒江: え…? ここで降りるの?
  888. ほむら: はい 私は、見滝原のみんなと一緒に
  889. ほむら: ここで時計の針を進めることに 決めたんです
  890. ほむら: 見滝原のみんなとなら
  891. ほむら: 魔法少女として 生きていけるかもって
  892. ほむら: 思うことが出来たから…
  893. 黒江: …………
  894. ほむら: 黒江さんは まだ降りないんですか?
  895. 黒江: 私は………… でも、降りちゃったら…
  896. ほむら: この列車は真っすぐに、 どこまでも進む…
  897. ほむら: どこまでも、どこまでも…
  898. ほむら: でも、ここから降りなくては 明日へは行けません
  899. 黒江: …失ったことを 思い知るくらいなら
  900. 黒江: 昨日の夢を見ながら ずっと過去のままでいたいのは
  901. 黒江: いけないことなのかな?
  902. ほむら: …………
  903. ほむら: 黒江さんの中の思い出を 未来へ連れて行けるのは
  904. ほむら: 黒江さんだけなんですよ?
  905. 黒江: …………
  906. ほむら: 夜香花の香りの方にお会いしたら 謝っておいてもらえますか?
  907. ほむら: あの人から見たら 私は薄情者なのかも…
  908. ほむら: では、お先に失礼します また 明日
  909.  
  910. FILENAME: text_521520-2_wFS6q.txt
  911. 黒江: 明日は不安で恐ろしくて ずっと悲しい
  912. 黒江: 辺りに満ちるのは 夜香花と海の香り
  913. “何度生まれ変わったって あなたと出会って人生が終わる”
  914. 私とユゥは、あの日ふたりで 岬から身を投げた
  915. あの瞬間が私達のオシマイ 私達が生まれた意味のぜんぶ
  916. なのに、 ユゥだけ生き残っちゃった
  917. 意味を失った世界に たったひとり…
  918. だからあんた、ユゥを殺して
  919. 過ぎ去る日々が あの子の全部を消しちゃう前に…
  920. 黒江: やっぱりこの人が
  921. 黒江: ユゥさんが失った大切な人
  922. ケイ: 私はケイ あの子が背負う、刑
  923. 黒江: “感情が魔法を生む” 魔法少女は実態に実感を伴って 思い出に呪われる
  924. 黒江: 私はいつか、偽物の環さんを 魔法で作り出してしまうかもしれない
  925. 黒江: …………
  926. 黒江: ここは…?
  927. ユゥ: お元気? ワタシだよ!
  928. 黒江: きゃあ!!
  929. ユゥ: わわわ!
  930. ユゥ: びっくりしちゃった? そんなことなかった?
  931. ユゥ: 黒江ちゃん、悩んでてね? そんでね?
  932. ユゥ: 心配だったから シィんとこ、連れてきたんだよ
  933. 黒江: ほ、他の人… なぎささんたちは…!?
  934. ユゥ: みんな寝ちゃったから 置いてきちゃった
  935. 黒江: …ジョンさんは…?
  936. ユゥ: 黒江ちゃん運ばなきゃだから 魔女結界に捨てちゃった
  937. 黒江: 捨て…
  938. ユゥ: ごめんねシィ 捨てちゃったから中身売れないや
  939. ユゥ: 他の悪い人も 一度に来ちゃったから
  940. ユゥ: 誰も運べなかったんだ…
  941. ユゥ: ごはん、困る?
  942. ???の声: 大丈夫よ、そんなに急に 貯えがなくなったりしないわ
  943. ユゥ: そっかー
  944. ユゥ: あ、もしかして黒江ちゃんも 欲しい部分とかあった?
  945. 黒江: ――っ!?
  946. 黒江: (夢…じゃない…ジョンさんを… 本当に殺して…しかも…)
  947. ???: ユゥ、黒江さんが困っているわ
  948. ユゥ: 困っちゃってんの? どっか痛かった?
  949. ユゥ: 痛いとこ、取っちゃう?
  950. ???: そうじゃなくて、あなたが色々と 一気に話すものだから
  951. ユゥ: そうなの?そうだったかも!
  952. ユゥ: あのね、黒江ちゃんはリストに 載ってないから善い子なんだよ?
  953. ???: そうね、知ってるわ
  954. 黒江: あなたは…
  955. シィ: わたしはシィ
  956. シィ: 強引に連れてきてしまったようで ごめんなさい
  957. 黒江: …魔法少女じゃないみたいだけど
  958. 黒江: あなたも人を殺すの…?
  959. シィ: …わたしはただの人間
  960. シィ: でも、あなたたちが使う魔法と 同じような力が使えるの
  961. シィ: ユゥは、その力でならあなたの 悩みを解決できると思って
  962. シィ: ここに連れてきたみたい
  963. 黒江: 人を、殺してるの?
  964. シィ: …………そうよ、わたしがユゥに リストを渡しているの
  965. シィ: ユゥ、あとは任せて
  966. ユゥ: うん! ワタシ、悪い人探してくんね?
  967. 黒江: 待って! また誰かを殺しに!?
  968. シィ: ユゥは、良いことを実践して
  969. シィ: 自分の中のカラッポを 埋めようとしてるの
  970. シィ: わたしのことが きっかけだったけど
  971. シィ: 今は本人も夢中になってる…
  972. 黒江: あんなデタラメなリストで
  973. 黒江: 人を殺すことが良いことだって 言うの!?
  974. シィ: 確かに“良いこと”は 言い過ぎかもね
  975. シィ: “やらないよりマシなこと” くらいかしら?
  976. シィ: で、ユゥに約束してしまったから
  977. シィ: 悩みの相談は 受けておきたいのだけど?
  978. 黒江: あなたたちに解決して欲しい 悩みなんて ない!
  979. シィ: …………
  980. シィ: …大切な人が遠くへ 行ってしまって、寂しいのね…?
  981. 黒江: …………!
  982. シィ: でも、あなたの大切だった人も
  983. シィ: あなたを悲しませたくはない はずよ?
  984. シィ: 時間は、不安も苦しみも 丸く削って溶かしてくれる
  985. シィ: 大切だった人も、砕けた心も
  986. シィ: いつの間にか世界と混ざって 思い出に変わっていく
  987. シィ: 思い出は、あなたの血肉となって 元の色が思い出せなくなっても…
  988. 黒江: …やめて!
  989. シィ: …お気に召さないかしら?
  990. 黒江: 私がいつか大切な人のことを 忘れてしまうみたいな…
  991. 黒江: 悲しくなくなるみたいな言い方 しないで…!
  992. 黒江: それじゃまるで
  993. 黒江: その人を思い出せなくなったら 私が救われるみたいじゃない!!
  994. シィ: …………
  995. シィ: …ごめんなさい
  996. シィ: わたし、あなたがその悩みを 解決したいものだと思ったから…
  997. シィ: でも、違うのね
  998. シィ: あなたは、ずっとその傷を 抱えたままでいたいのね
  999. 黒江: …………
  1000. シィ: あなたの“環さん”が それ望まなかったとしても
  1001. 黒江: ――っ!? あなた、どこでその名前を…
  1002. シィ: “他人の悩みや苦しみが分かる” それが私の持つ力…
  1003. シィ: まあ、解決する力はないから
  1004. シィ: さっきみたいにデタラメな言葉で
  1005. シィ: ごまかすしか 出来ないのだけれど…
  1006. シィ: この力は
  1007. シィ: 私の母親が、魔法少女として 契約する時の願いで
  1008. シィ: 私に与えた力らしいの
  1009. シィ: おかしな話でしょ?
  1010. 黒江: あなた、本当に 魔法少女じゃないの?
  1011. シィ: 魔法少女の資質があるとは キュゥべえから言われたわ
  1012. シィ: でもまだ私は契約していないの
  1013. シィ: わたしには魔法少女たちが
  1014. シィ: 魔女化の悩みを抱えていることも 分かるのに
  1015. シィ: 契約なんてしようと思う?
  1016. シィ: あなたの思考も 以前はそうだったようだけど?
  1017. 黒江: …うん
  1018. シィ: しかも私は母親の願いとやらで この呪われた力を押し付けられた
  1019. シィ: こんなものを押し付けてきた 母の…
  1020. シィ: 魔法少女が、 正しい選択だと思えない
  1021. シィ: …ごめんなさい、あなたに 言うようなことじゃなかったわね
  1022. 黒江: ううん 分かるよ
  1023. 黒江: 私もずっと
  1024. 黒江: 魔法少女になったこと 後悔してたから…
  1025. 黒江: あなたのお母さんも願い事で 後悔してたかも
  1026. シィ: …あなたはとても興味深いわ
  1027. シィ: あなたが今、環さんの喪失感に 支配されていることとは別に
  1028. シィ: 魔法少女の運命に対する恐怖は 過去のものとなりつつある
  1029. 黒江: 環さんが私に教えてくれたの
  1030. 黒江: 私なんかでも魔法少女を 続けていく決意と目標を…
  1031. シィ: そう…
  1032. シィ: わたしにも 教えてもらえないかしら
  1033. シィ: あなたが知る魔法少女の話を…
  1034. シィ: あなたは知ってるんでしょ?
  1035. シィ: 自意識の無力さと魔女化に怯え
  1036. シィ: 自己嫌悪で支配されていた あなたに
  1037. シィ: 希望を与えてくれた魔法少女を…
  1038.  
  1039. FILENAME: text_521520-3_wFS6q.txt
  1040. 黒江: 「もう知ってるみたいだけど…」
  1041. 黒江: 「私みたいに弱い魔法少女は 生きる意志も、願いすら希薄になって 魔女となる恐怖に囚われたまま ただ生きるためグリーフシードを 集める日々を過ごすしかなかった」
  1042. 黒江: 「…でも、環さんのような 確かな希望を胸に秘めた魔法少女たちは 魔法少女とそれ以外のすべての人たちを 魔女から守るために戦っていた」
  1043. 黒江: 「私も環さんたちから 聞かせて貰っただけなんだけど」
  1044. 黒江: 「たとえ魂の在り処が変わっても 強い希望を抱けるなら 魔法少女は人間でいられる 何かになれるんだって思えたの」
  1045. 黒江: 「私は、とてもそうはなれなかったけど」
  1046. 黒江: 「環さんに名前を呼んでもらえたから 私は、私を見失わずにいられた」
  1047. 黒江: 「魔法少女は、本当に人を殺せてしまう 人を殺すことでも、人を救えてしまう」
  1048. 黒江: 「でも、殺されても仕方ないような人すら 環さんは救ってしまうかもしれない」
  1049. 黒江: 「私にはどうしようもない人たちも 環さんは変えてしまうかもしれない」
  1050. 黒江: 「環さんなら救えるかもしれない人を 私は傷つけたくない…」
  1051. シィ: 環いろはさんは気高い理想を 実現した魔法少女だったのね
  1052. 黒江: …そうだよ
  1053. 黒江: ユゥさんと話して気が付いたの
  1054. 黒江: 彼女の中のある空っぽには 私の魂まで引き寄せられちゃう…
  1055. 黒江: 崖から下を覗き込んだみたいな あの吸い込まれる感じ…
  1056. 黒江: 正反対だけど ユゥさんの空っぽと同じように
  1057. 黒江: 環さんの魂が持つ希望に 私は引き寄せられてしまった
  1058. シィ: …わたしたちはそれぞれ
  1059. シィ: 希望と呪いに魅了された 誰でもない者たちなのね
  1060. 黒江: 理屈じゃないの
  1061. 黒江: ユゥさんを知るあなたになら 分かるはず
  1062. 黒江: 私自身が変わったことが 希望の証拠になる
  1063. 黒江: …………
  1064. 黒江: もしかしたら、ジョンさんは
  1065. 黒江: 本当に許されないことを したのかもしれない
  1066. 黒江: でもジョンさんの中にも 弱くて臆病な私が、確かに居たの
  1067. 黒江: 私とあなたに共感できる部分が あるみたいに
  1068. 黒江: 変われるかもしれない希望が 確かに居たんだよ!
  1069. 黒江: 私たちが、そうだったように!
  1070. シィ: …ありがとう
  1071. シィ: あなたと環いろはさんのこと
  1072. シィ: なんとなくだけど 分かったような気がしたわ
  1073. 黒江: …………
  1074. 黒江: どうして こんなことをしているの?
  1075. 黒江: 悪人だと決めつけて殺すことが
  1076. 黒江: 本当に正しいことだと 思ってるの?
  1077. 黒江: 死体を売るだとか言ってたけど
  1078. 黒江: いくらなんでも それが目的じゃないでしょ?
  1079. 黒江: あなたがユゥさんをただ都合よく 利用してるとも思えない
  1080. シィ: …………
  1081. シィ: 買い被り過ぎだわ…
  1082. シィ: わたしはユゥに 一方的に救われている
  1083. シィ: 都合よく利用しているのは 本当のことよ…
  1084. シィ: でもあなたの言う通り 死体を売るのはあくまでオマケ
  1085. シィ: ただ勿体ないから
  1086. シィ: そしてわたしがリストに記す名が 悪人だということも本当
  1087. シィ: その悪人を殺すことで わたし自身が救われることも本当
  1088. シィ: 魔法少女の願いのせいで、悪人を 特定することが出来ると言えば
  1089. シィ: 少しは信ぴょう性があるかしら?
  1090. 黒江: あなたのお母さんの願い…
  1091. シィ: そうね… どこから話そうかしら
  1092. シィ: 少し…長くなるわ
  1093.  
  1094. FILENAME: text_521520-4_wFS6q.txt
  1095. シィ: 「わたしは生まれた日に 病院で起きた爆発事故で、両親を失った」
  1096. シィ: 「物心ついた時、わたしは 自我の覚醒がどうとかいうセミナーを 主催する施設に引き取られていて」
  1097. シィ: 「その時にはもう“他人の悩みを知る”能力が あったんだけど 施設の人間はそれを知ると わたしを使って商売を始めた」
  1098. シィ: 「フフ…そういえば表向きは 商売じゃなくてボランティアだったわね」
  1099. シィ: 「ともかく、内容はさっきあなたに やったみたいなインチキお悩み相談よ」
  1100. シィ: 「相談っていうのは 解決しなくても共感してあげるだけで 相手をコントロール出来てしまうの」
  1101. シィ: 「商売は大成功して 大きな建物に移り住んで いいものも食べられるようになった」
  1102. シィ: 「でも、わたしはどんどん疲弊していた」
  1103. シィ: 「わたしの他人の悩みを知る力が 強くなっていく一方で わたしは毎晩 夢で、どこかの誰かの苦しみを 体験するようになっていたの」
  1104. シィ: 「夢の中のわたしは 自分じゃない誰かの姿になって 見ず知らずの人間に襲われ罵倒され 殴られ焼かれ切り刻まれ殺されてしまう」
  1105. シィ: 「体を裂く痛みと苦しみ、恐怖と怒りが 現実そのものの感覚で入ってくる」
  1106. シィ: 「想像できる?」
  1107. シィ: 「わたしは毎晩 いろんな誰かに殺されるの わたしは毎晩 知らない誰かを憎む」
  1108. シィ: 「わたしを人間とも思わない 上品で優しそうな誰か」
  1109. シィ: 「わたしを生きたまま解体する 地味で純朴そうな誰か」
  1110. シィ: 「悩みもなくわたしを殺す誰か」
  1111. シィ: 「わたしを殺しながら、別の悩みに夢中な誰か」
  1112. シィ: 「わたしはわたし以外の人たちの 誰が善人で誰が悪人なのか 何も分からなくなっていた」
  1113. シィ: 「通りを歩く一見普通の人たちも 次の瞬間にはわたしを殺しに 来るんじゃないかと怯えていたわ」
  1114. シィ: 「そんな日々が続いていた頃よ わたしの前にキュゥべえが現れたのは…」
  1115. キュゥべえ: おそらくキミの持つ能力は
  1116. キュゥべえ: 母親が魔法少女の契約をした時に キミに備わったものだよ
  1117. キュゥべえ: そして、キミにも 魔法少女になる資質がある
  1118. キュゥべえ: 魔法少女になれば
  1119. キュゥべえ: 願いで、その能力を消すことも 可能だよ
  1120. シィ: 少し迷ったけど… 結局、願いは叶えなかった
  1121. 黒江: お母さんのこともあるとは 思うけど
  1122. 黒江: 魔法少女の願いなら、本当に その悪夢を見なくできるとは思う
  1123. 黒江: それに今なら環さんのおかげで 魔女化に怯える必要だって…
  1124. シィ: そうね…でも悪夢を見ることは
  1125. シィ: 他人の悩みを知る力の 副作用みたいなものらしいの
  1126. シィ: 悪夢を消せば、悩みを知る力も なくなるかもしれない
  1127. シィ: 呪いだなんだとは言ったけれど
  1128. シィ: わたしの存在価値は、悩みを 言い当てられることだけだったし
  1129. シィ: 他人の悩みや苦しみを知ることは 苦痛でしかないのだけど
  1130. シィ: その悩みを知ることができてなお
  1131. シィ: 誰が殺人鬼に豹変するかも 分からないのに
  1132. シィ: 相手の考えが 何も知れなくなったら
  1133. シィ: 恐ろし過ぎて、一歩も 外へ出られなくなってしまうわ
  1134. シィ: それに、悪夢のことを 一度だけ施設の人に相談したら
  1135. シィ: “誰かと苦しみを共有し 救うための試練”だ
  1136. シィ: とか言われたのよ? 可笑しいでしょ?
  1137. シィ: もし本当にそうだとしたら 悪夢を拒絶することは
  1138. シィ: 誰かの助けを無視することに なっちゃうのにね?
  1139. シィ: でも、あの頃の私は
  1140. シィ: そんな戯言にも すがってしまっていたから…
  1141. シィ: まぁ…本音を言うと
  1142. シィ: キュゥべえと初めて会ったときは 契約しようかとも考えたんだけど
  1143. シィ: わたしが答える前に キュゥべえが殺されちゃったの
  1144. シィ: ひ…!
  1145. シィ: こ、殺しちゃったの…?
  1146. ユゥ: ありゃ? ダメだったりした?
  1147. ユゥ: なんかちょっと迷惑そうに してたから
  1148. ユゥ: 押し売りされてんのかと思って…
  1149. ユゥ: もしかして契約しようとしてたり しちゃってたとか?
  1150. シィ: …あなた 本当に人間なの?
  1151. ユゥ: どうだろ?たぶん違ったような?
  1152. シィ: 「わたしの能力を使っても ユゥの悩みは分からなかった」
  1153. シィ: 「そもそも悩みがなかったの」
  1154. ユゥ: あ、そうそう キュゥべえ!
  1155. ユゥ: コイツらすぐ湧いてくるから
  1156. ユゥ: 新しいのに頼めば 魔法少女にはなれるけど
  1157. ユゥ: 契約して後悔してる子も たくさんいるから
  1158. ユゥ: ちょっと考えてからの方が良いと 思うよ?
  1159. ユゥ: ワタシ魔法少女になんの 遅かったし
  1160. ユゥ: あんま参考になんないから
  1161. ユゥ: 誰か話が聞ける魔法少女の子 探してあげんね?
  1162. シィ: まさか、あなたも魔法少女なの?
  1163. ユゥ: そーだよ?
  1164. ユゥ: 魔法少女っていうのは 善いことをすんだって聞いたから
  1165. ユゥ: 困ってそうなあなたを 助けたかったんだけど
  1166. ユゥ: 余計なお世話様だった?
  1167. シィ: そんなこと…ないわ
  1168. ユゥ: よかった~ じゃぁ、なんでも言ってね?
  1169. ユゥ: どうにもなんなかったら 一緒に困ってあげんね?
  1170. シィ: 「わたしには、悩みすらない彼女が 嘘をつくようには思えなかった」
  1171. シィ: 「悪意なく嘘をつく人間がいることも 善意や正義で嘘をつく人間も 自分の嘘を認識できない人間も わたしは知っていた」
  1172. シィ: 「それでもわたしの感情だけが 彼女は嘘をつかないと知らせていた」
  1173. ユゥ: ワタシはユゥ
  1174. ユゥ: 魔法少女だから 善いことをするんだよ?
  1175. ユゥ: ワタシ、カラッポで悪い人だから せめて善いことがしたいんだ
  1176. シィ: 「そのうち、わたしから頼んで ユゥと一緒に過ごすようになったの」
  1177. シィ: 「ユゥはどんな話も聞いてくれた わたしの能力のことも そのせいで悪夢にうなされることも 能力が、母の願いのせいらしいことも…」
  1178. ユゥ: シィのお母さんが 願ってくれたことには
  1179. ユゥ: きっと意味があると思うよ?
  1180. ユゥ: 善い意味なのか 悪い意味だったか
  1181. ユゥ: どっちにしたって 人生をかけちゃうお願いだったら
  1182. ユゥ: シィが特別な子だったことに 違いはないって思うよ?
  1183. ユゥ: シィが怖い夢をみた朝は
  1184. ユゥ: なるだけ傍にいて 怖くない歌を歌ってあげる
  1185. シィ: 「魔法少女の契約について 悩まない日はなかったわ…」
  1186. シィ: 「けれど、わたしは初めて まず悪夢と向き合うことにしたの」
  1187. シィ: 「怖くても、辛くても、苦しくても… 毎晩の夢の内容を日記につけ始めた」
  1188. シィ: それが…ユゥの “リスト”の原形よ
  1189.  
  1190. FILENAME: text_521520-5_wFS6q.txt
  1191. シィ: 「襲われるだけの夢でも 日記に書けることはけっこうあったわ」
  1192. シィ: 「容姿の特徴はもちろん、些細な悩みからでも 相手の職種や生活環境は分かるし 被害者の顔見知りだった場合は 相手の名前がわたしの中にも浮かぶから」
  1193. シィ: 「それである日、たまたま見た事件の報道と わたしの夢の詳細が一致することに 気が付いたのよ」
  1194. シィ: 「薄々そんな気はしていたんだけど わたしが見る悪夢は現実の誰かの体験」
  1195. シィ: 「わたしが夢で体験した苦しみを 実際に受けた誰かがいる…」
  1196. シィ: 「ところが毎晩うなされていた悪夢を 日記につけるようになってから 次第に、悪夢を見る回数が減っていったの」
  1197. シィ: 「その理由はわからなかったけど ユゥと出会ってから 事態が好転したのは確かだった」
  1198. シィ: 「すべてはユゥのおかげ…」
  1199. シィ: 「いつだってユゥは答えてくれる」
  1200. シィ: 「誰も信じられないとつぶやけば そうなんだとだけ言った」
  1201. シィ: 「ユゥの見た目が怖いと言えば シーツをかぶって座っていた」
  1202. シィ: 「ひとりで生きる術をもっていないと嘆いたら それはもちたくないの? まだもってないってことなの? と不思議そうだった」
  1203. シィ: 「ユゥはわたしを理解してくれる」
  1204. シィ: わたし、自由が欲しい
  1205. ユゥ: シィは不自由なの?
  1206. シィ: この施設にいる限り わたしは何処へも行けないわ
  1207. ユゥ: 困ったナァ、困ったナァ
  1208. シィ: あなたがわたしを連れ出して
  1209. シィ: もう二度と、わたしが 嘘をつかなくて良いように
  1210. ユゥ: いいよ 一緒にいろんな場所へ行こうね
  1211. ユゥ: シィがもし忘れちゃっても
  1212. ユゥ: ワタシが何度だって シィは自由だって言ってあげんね
  1213. シィ: 「その日… 施設の人たちはみんな、ユゥに殺された」
  1214. シィ: ここまでしなくてよかったのに…
  1215. ユゥ: ちゃんとお話したんだけど 全然聞いてくれなかったんだよ?
  1216. ユゥ: “シィにはこうして欲しい” ばっかりで
  1217. ユゥ: シィが苦しいことなんか あんま興味なかったみたい
  1218. ユゥ: だからもういいかなって シィもいらなそうだったし
  1219. シィ: 決して善い人たちでは なかったけど
  1220. シィ: 表向きだけでも優しかったのよ…
  1221. シィ: 殺したって何にもならないわ…
  1222. ユゥ: そんなことないよ
  1223. ユゥ: シィが見る怖い夢の数だって 減ったでしょ?
  1224. ユゥ: やっぱり悪い人を みんな殺しちゃえば
  1225. ユゥ: 解決しちゃうんじゃないかな?
  1226. シィ: …………
  1227. シィ: ――っ!?
  1228. シィ: まさか、夢に出てくる人たちも…
  1229. シィ: 「わたしはそれまで あまり不思議に思わなかった」
  1230. シィ: 「自分の心が強くなれたからだなんて 都合が良い解釈をしていた」
  1231. シィ: 「なぜ、わたしが日記に書いた悪夢は 二度と見なくなったのか なぜ、ユゥは夜毎に出かけるのか」
  1232. ユゥ: 悪い人のとこに
  1233. ユゥ: 夢に出るのはやめてって お願いに行ったんだけど
  1234. ユゥ: 刃物とか持ってくる人がいてね?
  1235. ユゥ: やめてってやってたら、 死んじゃった
  1236. ユゥ: でね?何回か続けたらね
  1237. ユゥ: うっかり 殺しちゃった人たちだけが
  1238. ユゥ: シィの日記に書かれなくなったの
  1239. シィ: 「わたしの悪夢は ユゥが悪人を殺すことで解決していた」
  1240. シィ: 「しかもわたしは それに希望を感じてしまっていたのよ」
  1241. シィ: 「わたしを見て効果を確信したユゥは 施設の人たちもそうすればいいと思ったの」
  1242. シィ: どうして… 言ってくれなかったの?
  1243. ユゥ: だってシィは、 法律とかルールとか
  1244. ユゥ: 気にしちゃうんじゃないかと 思って
  1245. シィ: わたしたちは人間なのよ? 人間を裁いていいのは法律だけよ
  1246. ユゥ: ワタシ、裁いちゃったり してないよ?
  1247. ユゥ: シィが苦しい思いをしなくって いいようにお願いしてたら
  1248. ユゥ: 殺しちゃっただけだよ?
  1249. シィ: 楽になりたいとか助かりたいとか たとえその願いが叶ったって
  1250. シィ: 方法が間違ってたら 意味がないのよ
  1251. ユゥ: 意味ならあるよ
  1252. ユゥ: シィの苦しさが ちょっとでも減ったなら
  1253. シィ: 人間は、衝動で動いては いけないの
  1254. シィ: 本能が正しいと感じることだって
  1255. シィ: 本当に正しいか 考えなくちゃいけないのよ!
  1256. シィ: 考えることだけが 人間の意味じゃないの!?
  1257. ユゥ: 人間は、考えたりしないよ? “脳髄ハ物ヲ考エル処ニ非ズ”
  1258. シィ: え?
  1259. ユゥ: ワタシたちの人格は、思考は 心に空いた底のないカラッポに
  1260. ユゥ: ただ落ち続ける細胞たちの 悲鳴がつくる輪郭に過ぎないの
  1261. ユゥ: 思考が感情を生むんじゃなくて
  1262. ユゥ: 感情の言い訳のためだけに 思考は存在するんじゃないかな?
  1263. ユゥ: ワタシ、何も分かんないけど
  1264. ユゥ: あの人たちよりもシィのことを 助けたいと思ったんだ
  1265. ユゥ: だから選んだの
  1266. ユゥ: 夢の中でシィが体験する人たちも
  1267. ユゥ: 誰かに助けてほしかったんじゃ ないかな?
  1268. ユゥ: 夢の中で助けてもらいたい 誰かとシィ
  1269. ユゥ: 相手を傷つけることを 手放せない人
  1270. ユゥ: シィは、どっちを選びたい?
  1271. シィ: わたしは…わたしを選べない 選べるような理由がないわ
  1272. ユゥ: 理由なんてなくても シィが苦しそうなのは、やだよ?
  1273. ユゥ: 正しくなくたって ワタシは助けたい人を助けるよ
  1274. ユゥ: シィが選べなくても、 ワタシがシィを選ぶよ
  1275. ユゥ: それにね
  1276. ユゥ: シィが苦しいのは、 誰かが苦しかったこと
  1277. ユゥ: きっとそれって 理由にできんじゃないかな?
  1278. シィ: …………
  1279. シィ: …………ユゥ
  1280. シィ: 魔女結界は、普通の人には 見つからない場所なんだよね?
  1281. ユゥ: うん そうだよ?
  1282. シィ: …今から ふたりで 施設のみんなを捨ててこよう
  1283.  
  1284. FILENAME: text_521520-6_wFS6q.txt
  1285. 黒江: …………
  1286. シィ: 最後にわたしたちは ルールを作った
  1287. シィ: せめて曖昧な情報で 人を殺さないため
  1288. シィ: 殺すのは、相手の名前を手に入れ 身元を確定できてから
  1289. シィ: 言い訳するつもりはないわ…
  1290. シィ: あなたが出会った ジョンという男だけど
  1291. シィ: 彼が何をしたか知ってる?
  1292. シィ: 彼は犯罪グループの下っ端で 彼はあまりにも不運だった…
  1293. シィ: 無理やり同行させられた窃盗先で
  1294. シィ: 鉢合わせしてしまった女性を 殴り殺し、その娘を突き飛ばした
  1295. シィ: 頭を打った娘は意識を失ったまま 今も目を覚ましていない…
  1296. シィ: それでも わたしはね
  1297. シィ: 彼が悪人じゃなかったことを 知ってるわ…
  1298. シィ: あの時、 彼がどれほど怯えていたか
  1299. シィ: 必死だったのか知ってるのよ?
  1300. シィ: だって、わたしは夢の中で 彼に突き飛ばされた娘になって
  1301. シィ: 一か月以上毎日、母を殺され
  1302. シィ: 自分の未来を 奪われ続けたんだもの
  1303. シィ: 彼が私を突き飛ばす瞬間 泣いてたことだって知ってる
  1304. シィ: 彼はずっと震えてた…
  1305. シィ: けれど、そうね…
  1306. シィ: ある朝、急にどうでもよくなって リストに名前を書いたの
  1307. シィ: だから、彼はユゥに殺された
  1308. シィ: 彼の名前を書いたのは “どうでもよくなったから”
  1309. シィ: それ以上でも以下でもない
  1310. シィ: 救うために殺すのでも 正しいから殺すのでもない
  1311. シィ: 思考で言い訳を付けようと思えば いくらだって付けられるけど
  1312. シィ: そんなこと虚しいだけだわ…
  1313. シィ: 代弁者っていうのはね
  1314. シィ: 場合によっては 正しさから最も遠いのよ?
  1315. シィ: わたしがリストに名を記すのは 誰かと私の感情だけが理由
  1316. 黒江: …………
  1317. シィ: 施設の人はすべて殺したのに
  1318. シィ: わたしはいつまでも この施設から出られずにいる
  1319. シィ: 自由な場所へは、行けなかった… でもいいの
  1320. シィ: 不自由なことを わたしが選んだから
  1321. シィ: 正しくないことが わたしとユゥの繋がりだから
  1322. シィ: あなたは、どう思う?
  1323. 黒江: …私は
  1324. ドン!!
  1325. ユゥ: わわわわっ!
  1326. 黒江: ユゥさん!?
  1327. シィ: 襲撃?
  1328. なぎさ: 不意打ち成功なのです…!
  1329. なぎさ: ユゥ… もう逃がさないのです!
  1330.  
  1331. FILENAME: text_521520-7_wFS6q.txt
  1332. なぎさ: ユゥ… もう逃がさないのです!
  1333. …あ! 黒江さん!!
  1334. 黒江: なんでここに…?
  1335. いやいや、探したんですよ!?
  1336. 私たちが目を覚ました時には 黒江さんが消えてたので…!
  1337. 黒江: あ…そうだよね…
  1338. なぎささんがユゥさんを探すのに ついてきて正解でした!
  1339. ご無事みたいでなによりです!
  1340. 黒江: えっと…ごめんね 心配かけて…
  1341. なぎさ: 観念するのです ユゥ…
  1342. なぎさ: いえ、夢乃夕乍!
  1343. ユゥ: 誰のこと?
  1344. シィ: ?
  1345. 黒江: !
  1346. なぎさ: お前の本名は、夢乃夕乍
  1347. なぎさ: 世都佳と共に岬から身を投げて ひとり生き残ってしまった女
  1348. ユゥ: ユゥはユゥだよ?
  1349. 黒江: (夢でみたケイさんは やっぱり本物だったの?)
  1350. なぎさ: 前に会ってから、お前のことを 調べ上げるのに苦労したのです
  1351. なぎさ: (なぎさもほむらから話を 聞いただけなのですが…)
  1352. 黒江: ユゥさんは 記憶喪失ってことなの?
  1353. なぎさ: そうなのです
  1354. なぎさ: 記憶をなくした夢乃夕乍は
  1355. なぎさ: 夢遊の亡霊ユゥと 成り果てると共に
  1356. なぎさ: この宇宙のホツレと なってしまったのです
  1357. なぎさ: ホツレてしまったものは 二度と元には戻らない
  1358. なぎさ: ホツレは 断ち切るしかないのですが
  1359. なぎさ: それでも、 ユゥが記憶を取り戻せば
  1360. なぎさ: 夢遊の亡霊でなくなりさえすれば 或いは…なのです
  1361. あの…ここに来る前にも 聞きましたけど
  1362. “ホツレ”ってなんなんですか?
  1363. なぎさ: ホツレとは…
  1364. なぎさ: 『「円環の理」から分離してしまった この宇宙においてだけイレギュラーに発生する 取り返しのつかない 最悪の未来に繋がる因子のことを なぎさはホツレと呼んでいるのです』
  1365. エンガワのオコトワリ?
  1366. 黒江: 最悪の未来…?
  1367. ユゥ: うーん、よくわかんないけど…
  1368. ユゥ: ワタシ、悪い人を なくさなきゃだし
  1369. ユゥ: あとでもいい?
  1370. なぎさ: ダメなのです!
  1371. なぎさ: (ユゥの魔法の正体が まだよく分かんないのですが)
  1372. なぎさ: (なぎさの精神が 押し負けなければ)
  1373. なぎさ: (魔法にもかからない… はずなのです)
  1374. なぎさ: ユゥは何を願って魔法少女に なったのですか?
  1375. ユゥ: う~ん、忘れちゃった
  1376. なぎさ: ひとり生き残ったお前が 願いを叶えるとしても
  1377. なぎさ: おしまいに固執する世都佳は 生き返りなんて望まない
  1378. なぎさ: だからお前は願いによって
  1379. なぎさ: 自分の正気を 失うことにしたのです
  1380. ユゥ: そうなの?そうかなぁ?
  1381. なぎさ: それでも自死を願わなかったのは
  1382. なぎさ: 自分の記憶の中にいる 本当の世都佳が
  1383. なぎさ: この世から消えてしまうことに きっと耐えられなかったのです
  1384. シィ: …………
  1385. なぎさ: 誰かの綺麗ごとで 書き換えられていない
  1386. なぎさ: 本当の世都佳の思い出は もうお前の中にしかないのです!
  1387. なぎさ: 夢乃夕乍の魂に空いた 空っぽの中から
  1388. なぎさ: 世都佳を見つけるのです!
  1389. なぎさ: 自分を思い出して 明日へ行くのです
  1390. なぎさ: おしまいを越えていくことは 裏切りじゃないのです
  1391. なぎさ: 失ったものを忘れていくことも 薄情だからじゃないのです
  1392. ユゥ: うーん…なんも分かんない 困ったナァ、困ったナァ
  1393. シィ: ユゥ!耳を貸しちゃだめ! あなたの名前はユゥよ!
  1394. なぎさ: のああ! お前誰なのです!? 邪魔すんななのです!
  1395. シィ: 夢乃夕乍なんて もうどこにもいない!
  1396. シィ: ここにいるのはユゥよ!
  1397. ???の声: いいぞ嬢ちゃんたち
  1398. ???の声: なにが原因かは知らんが ぶつかり合うって青春だなあ
  1399. ユゥ: んん?
  1400. まさか本当に
  1401. 君らみたいなお嬢さんたちが 死体屋の正体だなんてな…
  1402. おじさんは放課後の部室に 迷い込んだ気分だよ
  1403. なぎさ: 誰なのですこいつら? ガスの検針なのですか?
  1404. ユゥ: 神様のご本をくれるひと?
  1405. シィ: 知らないお客様よ? ずいぶん下品なお召し物だけど
  1406. シィ: あなた、どなた?
  1407. 君たちにお世話になった うちのバイトくんたちの上の者さ
  1408. まあ、うちの社員も過去に何人か 君たちに加工されたみたいだが…
  1409. ユゥ: バイトくん?しゃいん?
  1410. シィ: ユゥがなくした人たちのこと じゃない?
  1411. ユゥ: あ!そっかー 悪い人たちのお友だち?
  1412. なぎさ: そんなことより
  1413. なぎさ: なぎさたちまでユゥの仲間だと 思われてんじゃないのですか?
  1414. ユゥ: えー? なぎさちゃんはお友だちだよう
  1415. なぎさ: お前らと一緒にするななのです! 黒江もなんか言ってやるのです!
  1416. 黒江: わ、私?…え? 何言えばいいの?
  1417. ブルブル (すっごい怖い人たち)
  1418. ははは 若い子は賑やかでいいねえ
  1419. それでなんだけど
  1420. 本当に君たちが 死体屋さんをしているのかな?
  1421. ユゥ: うん! 悪い人も なくすだけだともったいないから
  1422. ユゥ: 欲しい人にあげてんの!
  1423. てめえ!わけわかんねぇこと 言ってんじゃ…
  1424. なるほど“悪い人”…か 悪い人なら仕方ないかなあ?
  1425. ユゥ: そうだよ? 悪い人は 悪いことをしちゃうんだよ?
  1426. でもね、君らが殺したのは… 彼らはただの一般人だよ?
  1427. ユゥ: いっぱんじん?
  1428. 利用されていただけの一般人…
  1429. ちょっとしたお願い事を 叶えてもらった代わりに
  1430. 怖い人たちから一生こき使われる とても可哀そうな奴らさ
  1431. 少なくとも 悪人なんかじゃ、なかった
  1432. ユゥ: そうなの? そうかなあ?
  1433. ユゥ: 人に頼まれて誰かを傷つけたら 悪くない人なのかな?
  1434. ユゥ: 仕方ない理由があったりしたら
  1435. ユゥ: 誰かから奪っちゃっても いいのかな?
  1436. ユゥ: それに可哀そうでも 悪い人は悪い人だよ?
  1437. …そうだね、確かに彼らは実際に
  1438. 間違いを犯してしまった かもしれない
  1439. しかしだからといって あいつらから罪を償う機会まで
  1440. 取り上げていいわけじゃない だろう?
  1441. 法律上、私刑は禁止…なんて 野暮なことを言う気はないが
  1442. 君らのおかげで
  1443. 哀れなあいつらは 永遠に犯罪者のままだ
  1444. シィ: 改心できるなら、もっと前に
  1445. シィ: 改心すれば よかったんじゃないかしら?
  1446. ユゥ: 悪い人たちなのに 刑まで欲しいなんて
  1447. ユゥ: わがままはよくないよ?
  1448. つれないなぁ
  1449. 悪党を処刑したいなら
  1450. もっと模範的な善人で あるべきじゃないのかい?
  1451. ユゥ: えっとね、 勘違いしてるかもなんだけど…
  1452. ユゥ: ワタシ、善い人じゃないよ?
  1453. ユゥ: シィからお願いされたし、 理由もあるけど
  1454. ユゥ: 悪いことは、 悪いことのままだよ?
  1455. ユゥ: ワタシの悪いことを 勝手に許さないでよ
  1456. …………
  1457. (どれだけ死体屋を洗っても)
  1458. (集団失踪した 怪しいセミナー団体の情報しか)
  1459. (出てこない)
  1460. (上から聞いたのも)
  1461. (『ケツ持ちを 割る必要はない』)
  1462. (『ポリに気づかれる前に消せ すべて埋めろ』、だけ)
  1463. (そしてこの度胸とイカレ具合)
  1464. (経験則だが、 たぶん嘘はついていない)
  1465. (まさかこいつら)
  1466. (死体売ってるどころじゃなく ヤバい奴らなのか?)
  1467. まだ信じられないな…
  1468. 映画でしか観ないような 殺人鬼共だ…
  1469. シィ: あなたは今、わたしたちの態度に 困惑し悩んでいる
  1470. シィ: いい気なものね、わたしが夢で
  1471. シィ: あなたに何度殺されたかも 知らないくせに…
  1472. はははは
  1473. 俺があと20年若けりゃ 恋に落ちてたようなセリフだ
  1474. おい、お前ら お嬢さん方を生きて帰すな
  1475. オス!
  1476.  
  1477. FILENAME: text_521520-8_wFS6q.txt
  1478. おい、お前ら お嬢さん方を生きて帰すな
  1479. オス!
  1480. 俺にも 君らと同じくらいの娘がいるんだ
  1481. 心が痛むよ
  1482. !!
  1483. ユゥ: んんん??
  1484. は!? 今、当たっただろ…
  1485. シィ: ユゥ、大丈夫?
  1486. ユゥ: うん
  1487. ユゥ: でも腕は折れちゃったから 取り換えちゃった方が早いかも
  1488. メリ…メリメリギチチチ
  1489. ブヂッ
  1490. ズリュッ
  1491. !!!!!!?
  1492. え゛?????
  1493. ううう、腕がもげて 新しいのが生えた?
  1494. なぎさ: (やっぱりユゥは)
  1495. なぎさ: (自分の体を物としてしか 認識していないのです)
  1496. なぎさ: (だからこそ簡単に生やして 取り換えたりが出来る…)
  1497. ユゥ: シィ、この人たちって、 悪い人かな?
  1498. シィ: …みんな ろくな悩みを持っていないし
  1499. シィ: たぶん悪い人じゃないかしら?
  1500. ユゥ: もう、悪いことしちゃダメだよ
  1501. ギャ!!
  1502. 化け物め…!
  1503. 黒江: や、やめて! そんなことしても…!
  1504. ユゥ: ひどいしあぶない!
  1505. ユゥ: みんなに当たっちゃったら どーすんの?
  1506. …………マジかよ
  1507. ユゥ: えい
  1508. グチャ
  1509. う、うわああああ!!!!
  1510. ヒィィィィ…
  1511. シィ: ユゥ、出来ればでいいけど
  1512. シィ: 前腕かふくらはぎを狙って 無力化してくれると
  1513. シィ: 後でまだお話が聞けると思うわ
  1514. ユゥ: うん!わかったー
  1515. ぎゃっっ
  1516. ボギッ ブチッ
  1517. や、やめろ!やめて!
  1518. ユゥ: えっと、えっと
  1519. ユゥ: これが頭で… これが太ももだから…
  1520. メキ バキ ブチチ
  1521. あ…あわわぁ…
  1522. ガクッ
  1523. ギギャァアアアア!!!!!!!
  1524. なぎさ: …………はぁ
  1525. べキャ ブツッ
  1526. 黒江: う゛っ…うぇ…………
  1527. ズルュ ベリベリベリベリ
  1528. シィ: …………
  1529. シィ: わたしの伝え方が悪かったわね…
  1530. シィ: ユゥ、あのね
  1531. シィ: さっき言った場所を千切って 欲しかったわけじゃないのよ…
  1532. シィ: そんなことしたら、死んじゃうわ
  1533. ユゥ: あ、あれ!?そーなの?
  1534. 黒江: 魔女を倒せば人を助けられる
  1535. 黒江: 私にはそれだけでよかったのに
  1536. 黒江: のろまな私が考えるスピードより もっともっと早い速度で 悪いことの塊が どっと押し寄せてきて
  1537. 黒江: 巻き込まれた私は どうすることもできない
  1538. 黒江: (私は、どうしよう?)
  1539. 黒江: (誰を助ければいいんだろう?)
  1540. 黒江: (どうやって 助ければいいんだろう?)
  1541. 黒江: (どうすれば、環さんみたいに 正しくいられるの?)
  1542. 黒江: (私には何もわからないよ… どうしよう…環さん…)
  1543. なぎさ: …最ッ悪なのです!
  1544. なぎさ: 本格的に一般人と問題を 起こしはじめやがったのです!
  1545. シィ: ごめんなさい
  1546. シィ: ユゥはわたしを 守ろうとしてくれたの
  1547. ユゥ: 悪い人はあぶないんだよ?
  1548. シィ: それにあの人たちは 自分たちのことを
  1549. シィ: 一般的な人間だとは 思っていなかったわ
  1550. なぎさ: ええい… 屁理屈をうだうだとなのです
  1551. なぎさ: でも、お前らが“ホツレ”となる 要因が分かったのです
  1552. 黒江: ?
  1553. なぎさ: 今はお前らだけの問題なのですが このまま放っておくと
  1554. なぎさ: 魔法少女全体の問題になる 可能性があるのです…
  1555. 黒江: …どういうこと?
  1556. なぎさ: よく考えるのです
  1557. なぎさ: 魔法少女の力で 法律を誤魔化す奴は
  1558. なぎさ: すでにいっぱいいるのです
  1559. なぎさ: でも、もしそれが “悪党を殺したい”という
  1560. なぎさ: シンプルで正しそうな感情を 肯定する思想が伝播し
  1561. なぎさ: 多くの魔法少女たちが 共感してしまったら…
  1562. 黒江: みんなそんなことしたくないよ
  1563. 黒江: そんなことに共感できるなら もっと正しい意見にだって…!
  1564. なぎさ: 自由な暴力を手にしても 悪党を退治したくない人間は
  1565. なぎさ: 黒江が思っているよりは たぶん少ないのです
  1566. なぎさ: (この宇宙は マギアレコードの実現により)
  1567. なぎさ: (グリーフシードの奪い合いが 徐々に減少していくのです…)
  1568. なぎさ: (「円環の理」に比べて)
  1569. なぎさ: (マギアレコードは、魔法少女の 生存期間が大きく延びる…)
  1570. なぎさ: (リソースに余裕ができた 一部の魔法少女たちの間で)
  1571. なぎさ: (魔女以外の新しい矛先が 常態化されてしまう危険性は)
  1572. なぎさ: (十分考えられるのです)
  1573. シィ: あなたの言うことは最もだけれど 魔法少女の長い歴史の中では
  1574. シィ: わたしたちと同じ考えの人だって 大勢いたんじゃない?
  1575. なぎさ: 中世の頃はまだ、 世界中の人間から
  1576. なぎさ: 共感を得られる方法なんて なかったのです
  1577. なぎさ: 近代になっても、 メッセージを発信して
  1578. なぎさ: 世界中で キャッチしてもらうのが限界
  1579. なぎさ: お前たちが、社会の欲求に 答えるような相互理解を
  1580. なぎさ: 実時間で進めていったら
  1581. なぎさ: 魔法少女は社会の…
  1582. なぎさ: いえ、 人類の敵にされてしまうのです
  1583. シィ: …………なるほど
  1584. シィ: けれど それっていずれは来る 未来なんじゃないかしら?
  1585. シィ: 生きることを満たした人間は
  1586. シィ: 周囲の環境も良くしたいと 考えるものよ?
  1587. シィ: その考えは健全なものでしょう?
  1588. なぎさ: それは…………
  1589. なぎさ: 暴力に頼らなければの話 なのです!
  1590. ユゥ: わわわっ! 暴力はんたーい!
  1591. なぎさ: ユゥ…明日へ行かず 昨日に引きこもったままなら
  1592. なぎさ: お前をここで処分せざるを 得ないのです
  1593. ユゥ: そんなこと言われても、ユゥは 明日に行っちゃいけないんだよ?
  1594. ユゥ: あっ そーだ!
  1595. ユゥ: ワタシは明日なんか 欲しくないけど
  1596. ユゥ: なぎさちゃんは欲しいんでしょ?
  1597. ユゥ: なぎさちゃんが言うホツレ? の未来?
  1598. ユゥ: なぎさちゃんにあげっから そんで許してくんないかなぁ?
  1599. なぎさ: そんな未来いらねえって話を なぎさはしているのです!
  1600. ユゥ: えぇ~?明日に行けって言ったり 行くなって言ったり…
  1601. ユゥ: やっぱり明日なんて ロクデモナイ!
  1602. ユゥ: 明日が来るから みんな困っちゃうんだ!
  1603. なぎさ: ぐぬううう!
  1604. なぎさ: ユゥの魔法の影響で 論破されテしまいそうナノデス!
  1605. なぎさ: 黒江も何か言ってやるのです!
  1606. 黒江: わ、私!? 急に言われても…
  1607. 黒江: ケ、ケンカはよくないよ!
  1608. ユゥ: そーだそーだ!
  1609. 黒江: あ、あれ?
  1610. なぎさ: う…!
  1611. なぎさ: また、コノ感覚… ユゥの魔法でなぎさの精神ガ…!
  1612. なぎさ: ええい!ヤブれカブれなのです!
  1613. なぎさ: 全包囲シャボン爆弾!!!!
  1614. ユゥ: わわっ! そんなのちょっと困るかもー!
  1615. シィ: ――っ!?
  1616. 黒江: あぶないっ!!
  1617. 黒江: ああ…!!
  1618. シィ: 黒江さん…!?
  1619. 黒江: (私ダッテ…本当ハ 明日ニなんか行きたくナイ)
  1620. 黒江: (明日にハ、 環さんがいないカラ…)
  1621. 黒江: (ソレなのニ…知らない問題ガ 押し寄せてキテ)
  1622. 黒江: (私が明日へ、 押し出されチャウ…)
  1623. 黒江: …ッ、ア”ァア”アア!!
  1624. ユゥ: なんかアブナイかも!? シィ!一回逃げちゃおう!
  1625. シィ: あ…待って…!
  1626. なぎさ: たたた大変なことに なってるのです!
  1627. なぎさ: やっちまったのです!
  1628. なぎさ: お前もいつまで寝てるのです!
  1629. う…うう~~ん……
  1630. って、ななぁっ!?
  1631. なぎさ: 黒江が自分のドッペルに 呑み込まれそうなのです!
  1632. …!
  1633. 黒江さん、黒江さん…! 返事をしてください!!
  1634.  
  1635. FILENAME: text_521520-9_wFS6q.txt
  1636. 黒江: ………… どうしてだろう
  1637. 黒江: どうしてみんな 分からないことばかり聞くんだろう
  1638. 黒江: どうして私には 正しいことが分からないんだろう
  1639. 黒江: 環さんが魔法少女を救ってくれたのに どうして余計なことばかり始めるんだろう
  1640. 黒江: …そうだ、考えてみれば 当たり前のことだった
  1641. 黒江: 環さんのいない明日には 価値なんてなかったんだ…
  1642. 黒江: 環さんがいなくなったあの日 あの日がきっと、私のオシマイ
  1643. 黒江: どうして私はオシマイの向こうまで
  1644. 黒江: 生きていかなきゃいけないの?
  1645. お姉さんの探していた人は 見つかりましたか?
  1646. 黒江: ううん
  1647. 黒江: あの人はもう、 どこにもいないんだった
  1648. 黒江: …あなたのお父さんは 見つかったの?
  1649. いいえ
  1650. 僕もあなたと 同じなのかもしれません…
  1651. 父とは会えませんでしたが
  1652. 僕は次の駅で 降りようかと思います
  1653. 黒江: え…本当にそれでいいの?
  1654. いいんです
  1655. 僕はまだ誰でもないけれど
  1656. 僕が父の息子であったことだけは なくなったりしません
  1657. 日々の積み重ねで どれだけ思い出が希釈されようと
  1658. 僕の過去には、確かに父がいる
  1659. 何もなくなったりはしないんです
  1660. 黒江: でも、今日は、明日にも お父さんはいないんだよ?
  1661. 明日に持っていけるのは 父との記憶の欠片だけ…
  1662. それすらも、いつかきっと 溶けてしまう
  1663. だからせめて この列車を降りてしまうその前に
  1664. お別れくらいは決心しなくちゃ…
  1665. 「…黒江さんッ!」
  1666. 黒江: え…
  1667. よかった、黒江さ…
  1668. うぐ…!
  1669. 黒江: どうして、あなたが…?
  1670. 黒江さんがドッペルに 呑み込まれそうだったから
  1671. 助けようと思ったんですが…
  1672. 私も巻き込まれちゃって え、えへへ…
  1673. ぐぅ…
  1674. 黒江: 大丈夫…?
  1675. ここ、なんだか息苦しくって… 早く出ましょう…!
  1676. 黒江: …………
  1677. 黒江さん…?
  1678. 黒江: …私は、出なくていいよ
  1679. え?
  1680. 黒江: ここを出たら…明日に 行かなきゃいけなくなっちゃう
  1681. ほ??
  1682. 黒江: …私ね、私…
  1683. 黒江: あなたが思ってるような 魔法少女じゃないんだ
  1684. へ??? きゅ、急にどうしたんですか?
  1685. 黒江: 本当の私は何も決められないの
  1686. 黒江: 私が憧れた人みたいに
  1687. 黒江: 誰かを助けてみたかった 希望を分けてみたかった
  1688. 黒江: 魔法少女に…なりたかった
  1689. 黒江: でも、なれなかった…
  1690. 何言ってるんですか!
  1691. 黒江さんは私を! 助けてくれたじゃないですか!
  1692. 黒江: 違うの…そんなことないの
  1693. 黒江: あなたのことは 運よくそうなっただけ…
  1694. 黒江: 私はあの時、グリーフシードを あなたに分けてあげられなかった
  1695. 黒江: 環さんなら、絶対に渡してた…
  1696. 黒江: 私はずっと…怖くて震えてるだけ 迷って足踏みしてるだけ
  1697. 黒江: 誰かを助けられる力なんて 持たなきゃよかった…
  1698. 黒江: せっかく魔法少女の魔法で
  1699. 黒江: 誰かを助けられるように なったのに
  1700. 黒江: 助けられなかった人と
  1701. 黒江: 助けないことにした人の ことばかり思い出しちゃう
  1702. 黒江: 今までは仕方なかったことが 正しくないことに変わっちゃう…
  1703. 黒江: 私は環さんみたいに すべての魔法少女を選ぶどころか
  1704. 黒江: ユゥさんやなぎささんみたいに
  1705. 黒江: 選ばない人を 決めることも出来ない
  1706. 黒江: 魔法少女になんか ならなきゃよかった…
  1707. 黒江: 初めから誰かを助けられる 魔法なんてなければ
  1708. 黒江: こんなことで 悩まずに済んだのに…
  1709. 私は…
  1710. 私は魔法少女になれて よかったです!
  1711. 私、魔法少女じゃなくても 何もできなかったから
  1712. 何も選んだりできなかったから
  1713. 魔法少女になった今なら
  1714. いつかひとつくらい 選べるかもしれない
  1715. 選べなかったことは 過ちじゃなくて
  1716. ただの失敗なんですよ?
  1717. 私のろまだから 失敗することには慣れてるんです
  1718. ママが言ってました
  1719. 失敗は別のことでも 取り返せるって
  1720. 出来なかったことは全部
  1721. 過ちじゃなくて、 失敗にしときなさいって
  1722. 誰かを助けられなかったことを 後悔する人に過ちが…
  1723. 罪があっていいはずない じゃないですか!
  1724. 黒江: …………
  1725. …黒江さんの苦しみが 続いてしまうなら
  1726. 私がその… 環さんみたいになります!
  1727. 明日の私は すごい魔法少女になって――
  1728. …っ!
  1729. 黒江さんから貰えなくたって
  1730. 両手いっぱいの グリーフシードを…!
  1731. 黒江さんの過去にいる私のことを
  1732. 過ちじゃなくて ただの失敗にしてみせます!
  1733. 黒江: (…ああ、そうか、そうなんだ)
  1734. 黒江: (この子はどこか、 環さんに似てる…)
  1735. 黒江: (羨ましいな…)
  1736. ???: あなたも本当は 分かってるでしょ?
  1737. ???: あなたは環いろはを 崇拝しているけど
  1738. ???: あなたの魂が共感できるのは ユゥやシィなんだよ
  1739. ???: あなたの狭くて臆病な魂は
  1740. ???: 人一倍正しさに怯えるくせに 正しさに反発してしまう
  1741. ???: 自身の感情の希薄さを 嫌悪する癖に
  1742. ???: 道理より感情を優先する
  1743. ???: あなたの感情は ちっぽけだからこそ妥協できない
  1744. ???: あなたが逃げたすべては 罪悪の因果であり
  1745. ???: 背徳と裏切りに他ならない
  1746. ???: あなたは 魔法少女になれるどころか
  1747. ???: 本来は 魔法少女に殺される側の人間…
  1748. ???: だからもう 明日へ行く必要なんかないよ?
  1749. ???: この宇宙であなただけは あなたの魂を許してはいけない
  1750. ???: あなたの本質は
  1751. ???: 空に届かぬ
  1752. ???: 真っ黒な星
  1753.  
  1754. FILENAME: text_521520-10_wFS6q.txt
  1755. 黒江: 環さんはもういない
  1756. 黒江: 環さんは正しいまま 私だけが、どんどんみじめになっていく
  1757. 黒江: 環さん、どうしよう 私、私のこと 誰に聞いたらいいのかもわからない
  1758. 黒江: 私の中身が漏れ出していく
  1759. 黒江: 環さんは、どうして私を助けたの?
  1760. 黒江: もしもあの時、諦めていてくれたら こんな思いは しなくて済んだ
  1761.  
  1762. FILENAME: text_521520-11_wFS6q.txt
  1763. シィ: はぁ…はぁ…!
  1764. シィ: (ここまで来れば… 大丈夫だと思うけど…)
  1765. シィ: …ユゥとはぐれちゃった…
  1766. シィ: (なぎさって子を撒くために あえてわたしと離れたのかな…)
  1767. シィ: (…わたしが一緒にいても 何もしてあげられないけれど…)
  1768. シィ: …………
  1769. シィ: (…黒江さんから現れた ドッペル…)
  1770. シィ: (ユゥは知らないみたい だったけど)
  1771. シィ: (あれが魔法少女の可能性…)
  1772. ???: やあ、シィ
  1773. ???: そろそろ魔法少女の契約を する気になったかい?
  1774. シィ: キュゥべえ… 久しぶりね
  1775. シィ: 相変わらずあなたにも 悩みがないのね…
  1776. シィ: やっぱり信用できないわ
  1777. キュゥべえ: 悩みか… 問題なら山積みではあるんだけど
  1778. キュゥべえ: あいにくボクらには 感情がないからね
  1779. キュゥべえ: それはそうと
  1780. キュゥべえ: 夢遊の亡霊が戻ってくる前に 以前の続きといこう
  1781. キュゥべえ: キミが魔法少女として契約し 願いを叶えさえすれば
  1782. キュゥべえ: キミの悪夢は終わる
  1783. シィ: …………
  1784. キュゥべえ: 先刻の反社会勢力との 無益な抗争も
  1785. キュゥべえ: キミの悪夢が消え去れば 起こり得ないことだ
  1786. キュゥべえ: それに今のまま人類相手に 自己満足の制裁を加えるよりも
  1787. キュゥべえ: 魔女の脅威から 善良な市民を守る方が
  1788. キュゥべえ: よほど有益だとは思わないかい?
  1789. シィ: …………
  1790. キュゥべえ: それにしても意外だよ
  1791. キュゥべえ: なぜキミは夢遊の亡霊に 殺人行為を続けさせるんだい?
  1792. キュゥべえ: キミの能力と証言から推察するに
  1793. キュゥべえ: 夢遊の亡霊もキミの悪夢には 現れているんだろう?
  1794. シィ: …………
  1795. ユゥ: もしワタシが シィの夢に出てきたら言ってね?
  1796. ユゥ: ワタシ悪い人だから いつか夢に出ちゃうと思うんだ
  1797. ユゥ: そん時は ワタシのこともなくさなきゃ
  1798. シィ: うん…分かった その時は、必ず伝えるわ…
  1799. シィ: わたしは、あなたに ひとつだけ嘘をついた
  1800. シィ: わたしは、あなたになら 何度殺されたって構わないのよ
  1801. シィ: 夢の中でどれだけ恐怖し あなたを憎んでしまっても
  1802. シィ: それすらも わたしとあなたの繋がりだから…
  1803. シィ: それなのにわたしには あなたに報いる方法が何もない
  1804. シィ: …わたし、ユゥを守りたい
  1805. キュゥべえ: 夢遊の亡霊の…かい?
  1806. シィ: 今までも、今も、ユゥは わたしのことを見てくれた
  1807. シィ: “先生”でも“氏子様”でもない わたしの名前を呼んでくれた
  1808. シィ: ユゥが手を引いてくれたから
  1809. シィ: わたしは生まれた意味を 考えることができた
  1810. シィ: その答えが間違っていたとしても ユゥは、わたしの希望なの…
  1811. シィ: それなのにわたしは あの人の好意に甘え
  1812. シィ: ユゥにまで罪を背負わせている
  1813. シィ: 魔法少女になって せめてユゥと罪を共にしたい…
  1814. シィ: 魔法少女になれば ユゥを守ることは可能かしら?
  1815. キュゥべえ: キミの意図は理解しかねるけれど 造作もないだろうね
  1816. キュゥべえ: キミがボクと契約して 魔法少女になればね
  1817. キュゥべえ: さあ、キミの願いを 聞かせてくれるかい?
  1818. シィ: …………
  1819. シィ: わたしは…誰かの悩みや苦しみを 知るだけじゃなくて
  1820. シィ: 相手の希望や喜びを知りたい
  1821. シィ: わたしの中にあるような
  1822. シィ: ちっぽけで 薄っぺらなものじゃない
  1823. シィ: 黒江さんが聞かせてくれた
  1824. シィ: 善人も悪人も 分け隔てなく救ってしまう
  1825. シィ: 人の心の愛を知りたい
  1826. キュゥべえ: キミの能力で得られる情報の幅を 広げたいということかい?
  1827. キュゥべえ: キミはその能力が見せる悪夢に 悩まされていたはずだけど?
  1828. シィ: 魔法少女が抱く希望が持つ意味を
  1829. シィ: 感情のすべてを 知ることができたら
  1830. シィ: わたしは二度と、諦めや 誰かのせいにするんじゃなくて
  1831. シィ: わたしの意思で ユゥと共に罪を重ねられるわ
  1832. シィ: わたしは夢の中で
  1833. シィ: 虐げられた誰かと
  1834. シィ: 過ちを犯した誰かの 希望と絶望のすべてと同化して
  1835. シィ: わたしかもしれなかった誰かを わたしが殺せる
  1836. キュゥべえ: ボクとしては 人間なんかじゃなくて
  1837. キュゥべえ: 魔女を倒して もらいたいんだけどね
  1838. キュゥべえ: それにキミは
  1839. キュゥべえ: あれほど悪夢のことを 嫌っていたじゃないか
  1840. シィ: たとえ悪夢が終わらなくても
  1841. シィ: わたしにも 正しい希望が見えたら…
  1842. シィ: あの人の心の中にある愛が 見えたら
  1843. シィ: わたしの巨大で醜い希望を あの人に伝える術があれば
  1844. シィ: どれほど虚しく 呪われた道だとしても
  1845. シィ: わたしは自分自身の力で あの人の手を引いて明日へ行ける
  1846. シィ: ユゥと共に間違い続けられる
  1847. キュゥべえ: 願いは叶えてあげられるけど
  1848. キュゥべえ: キミのそれは 魔法少女の義務ではない
  1849. キュゥべえ: キミはまだ、どんな魔法少女に だってなれるんだ
  1850. シィ: …………
  1851. シィ: あなたには 理解できないだろうけど
  1852. シィ: わたしたちはもう手遅れなの
  1853. シィ: 叶えてよ、キュゥべえ わたしの願いは
  1854. シィ: 「相手の心と繋がりたい」
  1855. キュゥべえ: わかった 契約は成立だ
  1856. シィ: 「わたしは…間違い続けるために 心が知りたい…」
  1857. シィ: これで… 願いは叶ったの…?
  1858. キュゥべえ: ああ
  1859. キュゥべえ: どんな形で叶ったのかは ボクにもわからないけどね
  1860. シィ: それなら…試させて まずはあなたで…
  1861.  
  1862. FILENAME: text_521520-12_wFS6q.txt
  1863. シィ: これで… 願いは叶ったの…?
  1864. キュゥべえ: ああ
  1865. キュゥべえ: どんな形で叶ったのかは ボクにもわからないけどね
  1866. シィ: それなら…試させて まずはあなたで…
  1867. シィ: 「うっ…!?」
  1868. シィ: キュゥべえの膨大な記憶が わたしに流れ込んでくる…?
  1869. シィ: ユゥからも前に聞いた、魔法少女と魔女の関係性 宇宙を維持するためのエネルギーは 魔法少女が魔女になる時に回収されていること
  1870. シィ: でも、この宇宙には魔法少女の穢れを浄化する 自動浄化システムが存在していて ドッペルはそのための仕組み…
  1871. シィ: 魔法少女の真実も、キュゥべえの中には ただの情報として入ってる…
  1872. シィ: それにしても膨大な量ね あまり繋がり過ぎると危険…
  1873. シィ: …他にも流れ込んでくる?
  1874. シィ: キュゥべえがこれまでに契約してきた 魔法少女たちの記憶と感情…!
  1875. シィ: 黒江さん…環いろは…百江なぎさ…
  1876. シィ: この記憶は…
  1877. シィ: ここは…病院…?
  1878. シィ: 赤ん坊…?
  1879. ???: ―???― お願い、キュゥべえ
  1880. ???: ―???― このままじゃ病院の人たちも、私も、この子も 魔女に取り込まれて死んじゃう
  1881. ???: ―???― 魔法少女の契約をさせて…!
  1882. キュゥべえ: ―キュゥべえ― 魔法少女に適した精神年齢は過ぎているし
  1883. キュゥべえ: ―キュゥべえ― 資質が弱まっているキミが魔法少女になっても 魔女には勝てないよ?
  1884. ???: ―???― それでも、ほんの少しでも この子が生き残る可能性があるなら…
  1885. キュゥべえ: ―キュゥべえ― …わかったよ 願いはどうするんだい?
  1886. ???: ―???― 願いは…
  1887. ???: ―???― 「この子が人の痛みを、苦しみを わかる人になりますように」
  1888. ???: ―???― ママはそれがわからずに いろんな人を傷つけちゃったから…
  1889. ???: ―???― ごめんね、思惟(しゆい)…
  1890. ???: ―???― あなたはママみたいにならないで…
  1891. ???: ―???― キュゥべえ
  1892. ???: ―???― この子の未来を選ばせてくれて ありがとう
  1893. シィ: ………… …………
  1894. シィ: 思惟… わたしの、名前…
  1895. キュゥべえ: 「“対象と記憶を同期する” これがキミの魔法のようだね」
  1896. キュゥべえ: 「キミには何が見えたんだい?」
  1897. シィ: …魔法少女に関する記憶
  1898. シィ: それから…わたしのお母さんが 契約した時の記憶…
  1899. シィ: …………
  1900. シィ: お母さんは… わたしのために願っていた…
  1901. シィ: わたしの人生のはじまりは
  1902. シィ: 決して 憎しみや絶望じゃなかった…
  1903. シィ: わたしはこれから 道を踏み外すけど
  1904. シィ: その前に知れてよかったわ
  1905. シィ: ありがとう キュゥべえ
  1906. ユゥの声: シィ!シィ?
  1907. シィ: ユゥ…!
  1908. ユゥ: よかった! 無事だったんだ!
  1909. ユゥ: なぎさちゃんから逃げんのに 時間掛かっちゃった
  1910. ユゥ: …んん?もしかして魔法少女? お願い事、見つかったんだ!
  1911. シィ: うん… やっと覚悟が決まったの
  1912. シィ: これからはユゥと一緒に
  1913. シィ: わたしも魔法少女として 生きていける
  1914. ユゥ: うんうん シィはもっと悪い人に
  1915. ユゥ: いなくなって もらいたかったんだね
  1916. シィ: これからも、わたしと一緒に 罪を重ねてくれる?
  1917. ユゥ: うん!シィは善い子だから なんだって手伝ってあげんね?
  1918. ユゥ: 本当は黒江ちゃんたちを 助けてあげたいんだけど
  1919. ユゥ: なぎさちゃんに 追いつかれちゃうかもだし
  1920. ユゥ: 困ったナァ、困ったナァ…
  1921. シィ: ねえ、ユゥ
  1922. ユゥ: うん?
  1923. シィ: わたしには、 あなただけが希望なの
  1924. シィ: あなたがくれたものが、 わたしを変えてくれた
  1925. シィ: あなたが 名前を呼んでくれたことが
  1926. シィ: わたしにわたしの意思をくれた
  1927. ユゥ: ? そーなの?そーかも?
  1928. シィ: 好きよ、ユゥ
  1929. ユゥ: うんうん ワタシもシィのこと好きだよ?
  1930. シィ: わたしたちの行く末が どれだけ呪われていようと
  1931. シィ: あなたを ひとりにしたりしないわ…
  1932. ユゥ: ワタシも寂しいの嫌だから シィと一緒にいれたらいいなぁ
  1933. シィ: あなたの顔、もっとよく見せて
  1934. シィ: あなたのこと、あなたの愛を もっとわたしに教えて
  1935. シィ: わたしに勇気を分けて
  1936. ユゥ: ………… …………
  1937. シィ: ………… …………
  1938. ユゥ: ??? ?????
  1939. シィ: ……………………
  1940. ユゥ: 今、なんか あった? なかったかも?
  1941. シィ: …うそ
  1942.  
  1943. FILENAME: text_521520-13_wFS6q.txt
  1944. シィ: …うそ
  1945. シィ: …………ユゥ
  1946. シィ: ごめんね
  1947. シィ: ごめんね、ユゥ…
  1948. シィ: ごめんなさい…………
  1949. シィ: 「相手の心と繋がりたい」
  1950. シィ: ユゥがわたしをどう思っているのか もし愛してくれていたなら………… ただ知りたかった
  1951. シィ: もしそれが愛ではなかったとしても 別によかった 構わなかった
  1952. シィ: けれど…
  1953. シィ: ユゥの心は、空っぽだった
  1954. シィ: 本当に、そこにはなにひとつ、入っていなかった
  1955. シィ: 蔑みも、同情も、愛も、何も、なかった
  1956. シィ: がらんどうの心に、人から聞いたであろう 「魔法少女は良いことをする」という言葉が たったひとつ、落ちていた
  1957. シィ: ユゥはただ優しい魔法少女で わたしが困っていたから、悪人を殺した わたしが望んだから、施設の人間を殺した
  1958. シィ: わたしは自分に都合のいい姿を彼女に投影して まるでユゥが、わたしのために人を殺している ように錯覚していた
  1959. シィ: 引き返せないところまで彼女を連れ出したのは わたしだったんだ…
  1960. シィ: わたしが、そうさせてしまった…
  1961. シィ: 何が 罪を共にだ… ユゥには初めから咎なんてない
  1962. シィ: 無邪気なお人よしを、わたしが勝手に巻き込んだ 罪人は、初めからわたしひとり
  1963. シィ: 今までありがとう、ユゥ…………
  1964. シィ: ごめんなさいユゥ…
  1965. シィ: わたしがあなたの美しい魂を 捻じ曲げ、穢してしまった…
  1966. シィ: ここがきっと わたしのオシマイ これより先は、必要ない
  1967. シィ: 必要ないのに わたしはまだ生きている
  1968. シィ: どうしてだろう?
  1969. シィ: わたしは… わたしは…………
  1970. シィ: …………そうだ
  1971. シィ: 母がわたしに託した想い… 「人の痛み、苦しみがわかるように」 わたしが生きるためじゃなく 夢で見る誰かのために生きよう
  1972. シィ: わたしがユゥに希望をもらったように わたしが誰かの希望になろう
  1973. シィ: たとえそれが幻だったとしても 正しい輝きではなかったとしても
  1974. シィ: わたしがユゥになれば もっとたくさんのわたしを救える
  1975.  
  1976. FILENAME: text_521520-14_wFS6q.txt
  1977. なぎさ: やっと見つけたのです!
  1978. シィ: …………
  1979. なぎさ: おわっ ユゥはなんで寝て――
  1980. なぎさ: …!
  1981. なぎさ: …………
  1982. なぎさ: …お前が、ユゥを殺したのです?
  1983. シィ: …ユゥのソウルジェムは 胃の内壁にあるんだ
  1984. シィ: 僕はそれを知っていたせいで 彼女を、殺せてしまった
  1985. なぎさ: …理由はよくわからないのですが
  1986. なぎさ: ホツレを修正する手間が 省けたのです
  1987. なぎさ: なぎさは黒江たちのところに 向かうのです
  1988. シィ: …君は
  1989. なぎさ: …?
  1990. シィ: 何処からやって来たんだい?
  1991. シィ: 宇宙のホツレなんて話は 君の妄想ではないのかい?
  1992. なぎさ: ム…! 妄想とは心外な…
  1993. シィ: 説明はいらない 君と同期させてもらうよ
  1994. シィ: …………
  1995. なぎさ: な、何なのです…!?
  1996. なぎさ: 今の記憶は…シィの…?
  1997. シィ: 言葉通り 君と僕を同期したんだ
  1998. シィ: しかし…そうか これが君の記憶
  1999. シィ: こことは違う宇宙 「円環の理」…
  2000. なぎさ: (…なぎさ、もしかして)
  2001. なぎさ: (ヤバいレベルの じょうほうろうえいを)
  2002. なぎさ: (やらかしたのでわ?)
  2003. シィ: …何が宇宙のホツレだ
  2004. シィ: 結局、他の宇宙から来た君の
  2005. シィ: イレギュラーさが 招いたものだろ?
  2006. シィ: ユゥがあんな状態で 生き延びたことも
  2007. シィ: 君の残骸のような魔女が 幾度も現れたことも
  2008. シィ: 全て、君がこの宇宙に 留まった事が原因……
  2009. なぎさ: うぐぐ…! バレちゃあしょうがねえのです
  2010. なぎさ: でも今更なぎさが おめおめ還っても
  2011. なぎさ: ホツレは直ったりしないのです
  2012. なぎさ: それにまぁ…なぎさのせいで 酷いことになった人もいますが
  2013. なぎさ: なぎさのおかげで良くなった ことだってあるはずなのです
  2014. なぎさ: 人生っていうのはそういうことの 繰り返しだと思うのです
  2015. シィ: …それには賛同するよ
  2016. シィ: しかし、それなら聞こう
  2017. シィ: 君の言う、ホツレが生む “悪因”というものは
  2018. シィ: どの視点からの“悪”に なるんだい?
  2019. シィ: 悪意の程度?犠牲者の数? それとも被害総額かい?
  2020. なぎさ: …………
  2021. なぎさ: なぎさから情報を抜いたなら 知っているはずなのです
  2022. なぎさ: “悪因”の部分は
  2023. なぎさ: なぎさがそう言っているだけ なのです…
  2024. シィ: “「円環の理」が悲しむ事態に 繋がる要因”
  2025. シィ: 君はそれを悪因だと定義している
  2026. シィ: 「円環の理」というシステムが
  2027. シィ: ひとりの魔法少女由来なのも 驚きだが
  2028. シィ: そこから脱走した君が そんなことを気にするなんてね
  2029. なぎさ: なぎさは「円環の理」を 困らせている自覚はあっても
  2030. なぎさ: 「円環の理」を悲しませるほど 恩知らずじゃないのです
  2031. シィ: そして君は、「円環の理」ならば
  2032. シィ: 「はじめから悪くなると 決まった運命なんてない」
  2033. シィ: と考えるのではとも思っている
  2034. なぎさ: なぎさ自身は
  2035. なぎさ: そんな甘っちょろいこと 考えちゃいないのです!
  2036. なぎさ: 最悪の未来は必ず なぎさが改ざんするのです!
  2037. シィ: …たとえお互いの全てが 分かっても
  2038. シィ: 理解し合えるかどうかは こんなにも違うんだね?
  2039. なぎさ: いまさらそんなことに 気が付くなんて
  2040. なぎさ: 人間一年目かなんかなのですか?
  2041. なぎさ: そんなだから…
  2042. なぎさ: お前は…
  2043. なぎさ: …………
  2044. なぎさ: どうしてユゥを殺したのです!
  2045. なぎさ: ユゥは確かに空っぽだけど
  2046. なぎさ: そのまま明日へ 連れていくことだって…
  2047. なぎさ: なぎさがやるならともかく なんでお前が…!
  2048. シィ: 君も、僕の心は知ったはずだ
  2049. シィ: これ以上、 僕の浅ましく醜い希望で
  2050. シィ: ユゥを塗り替えてしまうことは 最も唾棄すべきこと
  2051. なぎさ: なぎさはお前みたいな
  2052. なぎさ: 妥協できない奴が 大嫌いなのです!
  2053. シィ: フフフ…………そうだったね
  2054. シィ: 僕はもう行くよ
  2055. なぎさ: …!!
  2056. なぎさ: どこに行くのですか…?
  2057. シィ: 分かっているだろう?
  2058. シィ: 僕は…誰かのために生きる
  2059. シィ: 誰かの無念、怒りを晴らす そういう魔法少女になりたいんだ
  2060. シィ: 僕自身、自分の能力の全容は 理解できてはいなかったけれど
  2061. シィ: キュゥべえからの情報で 推察できた
  2062. シィ: 僕が夢で体験することの大半は
  2063. シィ: 魔法少女の資質がある者の 感情の影響
  2064. シィ: なぎさ
  2065. シィ: 君が母親から受けた仕打ちを 僕が夢で体験したことも
  2066. シィ: 君の感情が遠因だったんだ
  2067. なぎさ: …だったらなんなのです!
  2068. なぎさ: お礼でも 言って欲しいのですか!?
  2069. シィ: 故意に魔法少女を 選択する訳ではないけど
  2070. シィ: 僕は黒江さんから聞いたような
  2071. シィ: 優しく弱い者たちの為だけに 生きようと思っている
  2072. シィ: 僕にはもう“個”は必要ない
  2073. シィ: 声なき声に耳を傾け 誰かの代弁者を続けよう
  2074. シィ: 君が恐れていたような
  2075. シィ: 新しい方法で人を救う 魔法少女だよ
  2076. シィ: それが、僕の選んだ魔法少女
  2077. なぎさ: 誰かの復讐をしたって そんなの手遅れなだけなのです!
  2078. なぎさ: そんなの なぎさが許さないのです!
  2079. シィ: そうだね、 僕は許されたりしない
  2080. シィ: けれど今の僕は魔法少女だ
  2081. シィ: 手段を選ばなければ救える者を 救わずにいることは
  2082. シィ: 僕が納得し諦めることで 誰かの心が踏みにじられるのは
  2083. シィ: 見捨てることと同義だと 思わないか?
  2084. なぎさ: 救われたりしないって 言ってんのです!
  2085. なぎさ: お前はなんのために
  2086. なぎさ: 希望を、幸せを、他人と 共有したいと願ったのですか!?
  2087. なぎさ: こんなことは呪いと絶望だけ あればやれることなのです!
  2088. シィ: …………そうだね 君の言う通りかもしれない
  2089. シィ: けれどユゥならきっと
  2090. シィ: 間違ったまま 最後のひとりまで救おうとする…
  2091. シィ: ユゥならきっと、自分のために
  2092. シィ: ひとりでも多くの自分を 救おうとする
  2093. シィ: そうだろ? ユゥ…
  2094. なぎさ: わわっ!?ドッペルと 一体化したのです…!?
  2095. なぎさ: (これは…なんだかマズイものな 気がするのです…!)
  2096. なぎさ: 大玉シャボン連弾!
  2097. なぎさ: やっ!
  2098. なぎさ: 外した…!?
  2099. なぎさ: ど、どこに?
  2100. シィの声: 「さようなら、百江なぎさ」
  2101. シィの声: 「僕の時間はもう動くことはないだろう 僕は昨日の世界から 明日を目指す君を見ている」
  2102. シィの声: 「さようなら、オシマイの先を目指す魔法少女」
  2103. なぎさ: シィ! よく聞くのです!
  2104. なぎさ: 悪因とは最悪の未来!
  2105. なぎさ: でもホツレはホツレ! 良いも悪いもないのです!
  2106. なぎさ: 明日のことなんて、なにひとつ 決まっちゃいないのです!
  2107. なぎさ: そんなの明日のお前が 勝手に決めればいいのです!
  2108. なぎさ: でもお前の所業は しっかり通報しとくので
  2109. なぎさ: せいぜい逃げ回る生活を 満喫するといいのです!
  2110. なぎさ: 負け惜しみじゃないのですよ!? バーカバーカ!
  2111. なぎさ: ザマーミロなのです!
  2112. なぎさ: …………
  2113.  
  2114. FILENAME: text_521520-15_wFS6q.txt
  2115. ぐぅ…
  2116. (地面がドロドロで… 動けない…!?)
  2117. 黒江さん…!
  2118. (ど、どうにかして ここを出なきゃ…)
  2119. 黒江: …………
  2120. ???: お前は何も分からない お前は何も決められない
  2121. 黒江: …………
  2122. ???: お前は、いつか その優しさのせいで間違いを選び
  2123. ???: 出来ることを、やってしまう
  2124. ???: お前はいつか その優しさすらも疑ってしまう
  2125. ???: 戦うべきことからも逃げ出し
  2126. ???: 受け入れるべきことを 拒絶してしまう
  2127. ???: お前は、魔法少女失格なんだ
  2128. 黒江: …………
  2129. ???: お前は、必ず 環さんとは違う魔法少女になる
  2130. ???: お前の魂は
  2131. ???: 今と未来において 魔法少女失格
  2132. ???: だから、お前はここで 黒い星となろう
  2133. ???: それがきっと、最善のオシマイ
  2134. 黒江: ぐっ…!
  2135. 黒江さん!? 何か見えてるんですか…!?
  2136. うーん、うーん…! 私にできることは…
  2137. このドロドロを消して 黒江さんをここから連れ出す…!
  2138. 私だってそれぐらいは…!
  2139. やああっ!
  2140. ???: あなたからは明日の匂いがする 気持ち悪いやつ…
  2141. びゃああっ!!
  2142. …ううぅ…!
  2143. 黒江さん…
  2144. 私はきっと、ここで あなたを助けるために
  2145. 魔法少女になったんです…!
  2146. でやあっ!
  2147. ぐっ、ぐぅ…!
  2148. 黒江: もういいよ…もういいの
  2149. 黒江: あなたが生きていてくれて 私、うれしかった…
  2150. 黒江: ほっとしちゃった…
  2151. 黒江: だからお願い あなたは、私なんかと違う…
  2152. 黒江さん!手を!
  2153. 私は諦めません! 無理かもしれないけど 無理じゃないかもしれない!
  2154. ごめんなさい黒江さん あの時私がもっと強ければ 余計なお願いをしなければ…
  2155. 私、失敗しちゃったけど
  2156. 今度こそちゃんと ありがとうって伝わるまで 絶対に手を離しません!
  2157. 黒江: ―黒江― なんで…どうしてそんな…
  2158. 黒江さんも私だからです! 何も分からないから 優しくなりたくて必死なんです!
  2159. 私は私を諦めたりしない!
  2160. ???: 本当に気持ち悪い…
  2161. ああっ!
  2162. 黒江…さ…
  2163. 黒江: …ごめん、ごめんなさい
  2164. 黒江: やっぱり私、魔法少女になんか なっちゃいけなかった…
  2165. 黒江: 環さんがいないと 何もできない…誰も助けられない
  2166. 黒江: 魔法少女にさえならなかったら
  2167. 黒江: 助けてもらうことに 感謝してさえいればよかったのに
  2168. 黒江: どうして…………
  2169. 黒江: ああ、そっか、私もう
  2170. ???の声: 「黒江さん」
  2171. 黒江: ――っ!?
  2172. だ、誰…?
  2173. ???の声: 「教えてくれるかな?」
  2174. ???の声: 「あなたは、誰のために魔法を使う?」
  2175. 私はっ!
  2176. 私の魔法で困ってる人を 目の前の人を助けたい!
  2177. 私たちは不幸じゃないって 証明したい!
  2178. ???の声: 「うん、任せて」
  2179. いろは: ―いろは― 黒江さん
  2180. 黒江: ―黒江― 環さ…!
  2181. 黒江: ―黒江― …………
  2182. 黒江: ―黒江― やっぱり私は、環さんを…
  2183. 黒江: ―黒江― ごめんね、環さん
  2184. 黒江: ―黒江― 私はあなたにすがりたくて あなたの幻まで作っちゃった
  2185. 黒江: ―黒江― ごめんなさい…
  2186. 黒江: ―黒江― 私はあなたが救った、たくさんの 魔法少女のひとりに過ぎないのに
  2187. 黒江: ―黒江― あなたには私なんかより 大切な人たちがいっぱいいるのに
  2188. 黒江: ―黒江― ごめんなさい…
  2189. いろは: ―いろは― どうしてあやまるの?
  2190. 黒江: ―黒江― 環さんがいなくなって 私、何も分からなくなっちゃったの
  2191. 黒江: ―黒江― ある日突然 私の中身がなくなっちゃったみたいな
  2192. 黒江: ―黒江― 大好きだった歌がこの世から消えてしまって
  2193. 黒江: ―黒江― あんなに口ずさんだメロディを 思い出せなくなっちゃうような
  2194. 黒江: ―黒江― 大好きだった物語がこの世から消えてしまって
  2195. 黒江: ―黒江― あの日感動した私の心まで一緒に この世界からなくなっちゃったような
  2196. 黒江: ―黒江― 今までの感情が全部 気のせいだったのかもって…
  2197. いろは: ―いろは― 哀しい思いをさせちゃってごめんね…
  2198. いろは: ―いろは― …私のわがままだけど 私は黒江さんには、笑顔でいてほしい
  2199. いろは: ―いろは― そのためなら 私、いくらでも頑張れるんだよ?
  2200. いろは: ―いろは― 優しい黒江さんが 悲しい思いをしなくて済むような…
  2201. 黒江: ―黒江― 私だって!
  2202. 黒江: ―黒江― あなたが生きるための理由になれるなら 私のことなんかどうでもよかった!
  2203. 黒江: ―黒江― 環さんが生き続けなきゃいけない 理由になれるんだったら!
  2204. 黒江: ―黒江― あなたじゃなくて私だったら! 死んじゃっても、魔女になったって!
  2205. いろは: ―いろは― そんなこと言わないで
  2206. いろは: ―いろは― 言わないでよ、黒江さん
  2207. いろは: ―いろは― そんなことは、二度と言っちゃいやだよ
  2208. いろは: …黒江さん、私、幻じゃないよ?
  2209. いろは: 黒江さんが私を 信じてくれたから…
  2210. いろは: 少しだけど、 また奇跡が起こせたの
  2211. 黒江: 環さん…
  2212. 黒江: …せっかく あなたが助けてくれた私は
  2213. 黒江: 何も分からなかったの 何にもなれなかったの
  2214. 黒江: 魔法少女なのに なにが正しかったのかも…
  2215. いろは: いいんだよ、黒江さん 正しくなくたっていいんだよ?
  2216. いろは: 魔法少女だとか、正しくあること なんて関係なくて…
  2217. いろは: 黒江さんは黒江さんだよ 何も変わったりしないし
  2218. いろは: 変わらなくたって ひとりぼっちじゃない
  2219. いろは: 私たちは おんなじ魔法少女
  2220. いろは: 私も黒江さんなんだよ 弱虫だから優しくなりたい女の子
  2221. いろは: 私たちはいつも 何も分からないから必死なの…
  2222. いろは: 優しくありたくて… それしかできなくて…
  2223. 黒江: (あの子も同じこと、言ってた… でも私はきっと…)
  2224. いろは: 黒江さん、 私に黒江さんのことを呼ばせて?
  2225. いろは: あなたが 黒江さんじゃなくなったら
  2226. いろは: あなたを呼べなくなっちゃう
  2227. 黒江: …………
  2228. 黒江: …環さん、ありがとう
  2229. 黒江: 私を見つけてくれて
  2230. 黒江: あなたの名前を、呼ばせてくれて ありがとう…
  2231. 黒江: 私は…私になりたい…!
  2232. 黒江: 私が私であることを忘れなければ 環さんは、消えない
  2233. 黒江: 環さんがいたことを… 私が…………
  2234. 黒江: たとえそれが あなたとは違ってしまっても…
  2235. いろは: うん…
  2236. いろは: 黒江さん 私を明日へ連れて行って…
  2237. 黒江: うん…!
  2238. 黒江: 環さんが知っている私…
  2239. 黒江: 環さんを知っている私…
  2240. 黒江: この私なら、 間違ってたって怖くない…!
  2241.  
  2242. FILENAME: text_521520-16_wFS6q.txt
  2243. いろは: 黒江さん! 手を!
  2244. 黒江: うん…!
  2245. 黒江: 私は… 魔法少女失格でも構わない…!
  2246. 黒江: 私は私のまま…!
  2247. 黒江&いろは: 明日へ!!
  2248. 黒江: …………はぁ…
  2249. いろは: 黒江さんの穢れは 浄化できたみたいだね
  2250. 黒江: ありがとう…環さん…
  2251. いろは: 私は黒江さんに 寄り添っただけだよ
  2252. いろは: それにもし この子の体を借りられなかったら
  2253. いろは: なにもできなかったんだから
  2254. いろは: 黒江さんとこの子が 自分で助かったんだよ…
  2255. 黒江: …………
  2256. 黒江: …………これで 本当にお別れ、なのかな…
  2257. いろは: …うん
  2258. 黒江: …あのね、私…
  2259. 黒江: やっぱり私… 環さんを過去にしたくない…!
  2260. 黒江: いつかこの気持ちを 忘れちゃうことが怖い!
  2261. 黒江: それなのに…どんどん環さんが 過去になっちゃう!
  2262. 黒江: もし私がずっと生きられたって
  2263. 黒江: 未来の私が“環さんのことは 良い思い出だった”なんて
  2264. 黒江: そんなの許せない 許せないの…
  2265. 黒江: いつか終わりが来ちゃうことを 受け入れなきゃいけないの?
  2266. 黒江: やっぱり過去は呪いで、 未来は希望なの?
  2267. 黒江: 過去にしか、 環さんはいないのに…!
  2268. いろは: 私はね、悲しみを無理に忘れて ほしいとは思ってないよ
  2269. 黒江: ほんと…?
  2270. 黒江: ほんとに、忘れないまま、 いられるかな?
  2271. いろは: 忘れられなくても 寂しさを埋められなくても
  2272. いろは: その上に新しい思い出を 少しずつ重ねることはできるから
  2273. いろは: 梅干しが酸っぱかったり
  2274. いろは: そよ風にのって来た 猫の匂いを感じたり
  2275. いろは: 昔好きだった飴が、またお店に 並ぶのをわくわくして待ったり
  2276. いろは: そんな些細でも温かな出来事を 感じながら
  2277. いろは: 悲しくても
  2278. いろは: まだ生きていられる理由を とぼとぼ探しているうちに
  2279. いろは: 大切だった人も、傷の輪郭も わからなくなっていく…
  2280. 黒江: 嫌だよ! そんなの嫌…!
  2281. 黒江: 私が弱いから そんなことを言うの…!?
  2282. 黒江: 私は環さんを憶えていたい…!
  2283. 黒江: 忘れなくて良いって 言ったじゃない!
  2284. いろは: 今は受け入れられなくても 時間は、あなたの味方だよ
  2285. 黒江: ――っ!?
  2286. 黒江: 環さん…!?
  2287. いろは: どうか、優しいままでいて 約束だよ、黒江さん
  2288. 黒江: た…まきさん…!
  2289. いろは: いつか、思い出になった頃に
  2290. いろは: もう一度だけ 私を思い出して
  2291. 黒江: …………
  2292. 黒江: 環さん…
  2293. …黒江さん!? 気がついたんですね!
  2294. は~~~、よかったぁ…
  2295. 黒江: …………
  2296. 黒江: ―黒江― なんで…どうしてそんな…
  2297. 黒江さんも私だからです! 何も分からないから 優しくなりたくて必死なんです!
  2298. 黒江: …………
  2299. 黒江: えっと…体調とか大丈夫?
  2300. へ?私ですか?
  2301. 必死だったので なんかよく覚えてないんですが…
  2302. 黒江さんが無事なようで よかったです!
  2303. 黒江: …そっか
  2304. すみません、黒江さんを 助けたかったのに
  2305. ずっと役立たずでしたね…
  2306. 黒江: そんなことないよ
  2307. 黒江: あなたがいてくれたから 私、ここに帰ってこれた
  2308. …………!
  2309. ふぇ?うぉへへ… そ、そんな、照れちゃいます!
  2310. 黒江: …ありがとう
  2311. …!
  2312. 黒江: あなたが知ってくれてた私のこと 本当だと思えなくて、ごめん
  2313. 黒江: でも、もう大丈夫だと思う
  2314. 黒江: あなたが知っていた私のことを 教えてくれたおかげで
  2315. 黒江: 正しくいられない日が来ても…
  2316. 黒江: 魔法少女失格のまま 生きていける気がするの
  2317. 黒江: だから…ありがとう
  2318. …………
  2319. …どういたしまして!
  2320.  
  2321. FILENAME: text_521520-17_wFS6q.txt
  2322. 魔法で紡がれた物語は 何処にも残らない
  2323. あなたの声も 掌の温度も
  2324. あなたが見つけてくれた私以外
  2325. いつかすべて この世界に溶けてしまう
  2326.  
  2327. FILENAME: text_521520-18_wFS6q.txt
  2328. 黒江: ユゥさんとシィさん、そしてジョンさん 他の死んじゃった人たちも見当たらなくて 私たちは魔法にかけられたような気分だった
  2329. 黒江: なぎささんとはテレパシーが繋がって 合流することができたけど…
  2330. 黒江: …つまり…
  2331. ユゥさんもシィさんも 逃げちゃったってことですか!?
  2332. なぎさ: ま、まあ、そんなところ? なのです!
  2333. なぎさ: いやぁ~なぎさとしたことが だいしったい?なのです!
  2334. 黒江: …ユゥさんが起こした事件は どうなっちゃうのかな…
  2335. なぎさ: ユゥとシィがやったことは
  2336. なぎさ: 魔法少女がどうとか 関係ないのです
  2337. なぎさ: あれは普通の連続殺人事件
  2338. なぎさ: なぎさたちの出る幕じゃ ないのです
  2339. なぎさ: たぶんそのうち捕まるのです
  2340. 黒江: …………
  2341. 黒江: (ユゥさんたちは魔女の結界に 証拠を捨てているはず…)
  2342. 黒江: (それになぎささんが言っていた ホツレの話だと)
  2343. 黒江: (魔法少女が表立って トラブルを起こすのは…)
  2344. 黒江: (なぎささんはふたりが 捕まらないと思ってるんだ)
  2345. 黒江: ユゥさんとシィさんは 理由があって事件を起こしてた
  2346. 黒江: これからも、繰り返すよね…?
  2347. ひぃ…止めないと 大変なことになっちゃいます…!
  2348. なぎさ: き、きっと大丈夫なのです、よ?
  2349. 黒江: どうして…?
  2350. なぎさ: えぇと、えーと…
  2351. なぎさ: 実は、あのあとシィが 魔法少女の契約をしたのです
  2352. なぎさ: 悪人を更生させる力が欲しい だとか、なんだとかを願って…
  2353. なぎさ: そりゃそうなのです
  2354. なぎさ: 悪人は更生させた方が コスパが良いのです!
  2355. 黒江: …………
  2356. なぎさ: な、何なのです…?
  2357. 黒江: …そう
  2358. なぎさ: むむむむ…
  2359. なぎさ: (疑われているのです…?)
  2360. いや~、それを聞いて 安心しました!
  2361. 魔法少女になることで、改心して くれたのかもしれませんね!
  2362. 黒江: …あ、うん そうだね……
  2363. なぎさ: 黒江も不安はあると思うのですが
  2364. なぎさ: ユゥとシィのことは、なぎさが 責任を持って監視しとくので
  2365. なぎさ: 黒江たちは今まで通りに 生きていけばいいのです!
  2366. はぁ、でもさすがに 全部お任せするのは…
  2367. なぎさ: なぎさはお前の500倍強いので 心配無用なのです
  2368. なぎさ: もし何かあったら ちゃんとこき使ってやるのです!
  2369. う~ん、 まあそこまで言うのでしたら…
  2370. なぎさ: そんなに心配いらないのです
  2371. なぎさ: (…この宇宙でなら)
  2372. なぎさ: (呪いと共に生きたって それも自由かもしれないのです)
  2373. なぎさ: …黒江
  2374. 黒江: なに?
  2375. なぎさ: 魔法少女だって まず自分のために生きるのです
  2376. なぎさ: 人のことがどうとかは
  2377. なぎさ: 心に余裕がある奴に 任せとけばいいのです
  2378. 黒江: …うん
  2379. なぎさ: それから――
  2380. なぎさ: 誰かを助けるっていうのは
  2381. なぎさ: チーズを分け与える程度で いいのですよ?
  2382. なぎさ: 運命だとか使命っていうのは なんか窮屈で自由じゃないのです
  2383. 黒江: …うん?そうかもね? どうしちゃったの?
  2384. なぎさ: …………
  2385. なぎさ: …黒江 お前だけは、逃げ続けるのです
  2386. なぎさ: 明日の先が終わるまで
  2387. なぎさ: どんな試練からも 逃げ切って欲しいのです
  2388. 黒江: ううん 大丈夫だよ?
  2389. 黒江: 環さんはきっと 立ち向かったと思うから…
  2390. 黒江: 私はもう、逃げずにいられる たとえそれが…
  2391. なぎさ: …………
  2392. 還るべき者たちは残り
  2393. 希望と絶望の境界は混じり合って 宇宙は、ゆっくりと衰弱していく
  2394. ホツレた因果は元には戻らない
  2395. それでも、もつれながら生きていく 寄せ集めた糸で不恰好に取り繕いながら…
  2396. なぎさ: (やっぱり妥協できない奴は)
  2397. なぎさ: (面倒くさいから 好きじゃないのです…)
  2398. なぎさ: それじゃあサラバなのです
  2399. なぎさ: こんな辛気臭いとこは さっさと後にして
  2400. なぎさ: マミの家でチーズを貰うのです
  2401. 黒江: うん…さよなら
  2402. またお会いしましょう!
  2403. さてと
  2404. いろいろなことが あり過ぎましたけど
  2405. それでも私は今まで通りに 生きるしかありません!
  2406. 黒江: 今まで通りに…
  2407. 黒江: …そうだね、それが環さんに 望まれたことでもあるし…
  2408. あ!もちろん向上心を 忘れたわけではありませんよ!
  2409. 自分が どれだけちっぽけで弱いのか
  2410. この度あらためて実感しました
  2411. 私も早く一人前になって 魔女退治を頑張ります!
  2412. 黒江: …………
  2413. 黒江: …環さん…
  2414. 黒江: (みじめでも、情けなくても)
  2415. 黒江: (これからも私は今まで通りに… 私らしく生きていくよ)
  2416. 黒江: (正しくあろうなんて もう考えない)
  2417. 黒江: (私は私のまま…)
  2418. 黒江: (環さんたちが教えてくれた 私のままでいるね)
  2419. 黒江: …………
  2420. 黒江: …あ
  2421. 黒江: (結局、お別れ 言えなかったな…)
  2422. 黒江: ……………
  2423. 黒江: ありがとう環さん さようなら環さん
  2424. 黒江: 私、まだ本当は、新しい何かで 環さんの思い出が埋まっていくことに 我慢できる自信がないの
  2425. 黒江: でも生きてみるよ
  2426. 黒江: あなたが去ったおしまいの向こう あなたがいない世界の始まりの先
  2427. 黒江: 環さん…
  2428. 黒江: いつかあなたの顔も声も 思い出せなくなる頃に
  2429. 黒江: きっと思い出すよ
  2430. 黒江: あなたのかけらが少しづつ無くなって それなのに世の中は全然平気で
  2431. 黒江: いつか魔法少女たちですら 本当と童話の区別もつかなくなった頃
  2432. 黒江: 私、必ずあなたを思い出して
  2433. 黒江: もう一度だけ、泣くね
  2434. see you
  2435. ありがとう
  2436. …………
  2437. …………
  2438. …………
  2439. さようなら
  2440. …………
  2441. …………
  2442. おしまい
  2443. …………
  2444. …………
  2445. …………
  2446. …………
  2447. …………
  2448. …………
  2449. …………
  2450. オシマイ
  2451. …………
  2452. …………
  2453. …………
  2454. 荒々しい頂は丸く削られ お庭の小石たちの母となり
  2455. 昨日芽吹いた新芽たちが 立派なお社に姿を変える頃
  2456. 「ねえねえ聞いた?」
  2457. 「ねえ見ちゃった!」
  2458. 「ヨダカ様のその噂!」
  2459. 「ええ~それって 恐ろしい暴走ドッペルの話?」
  2460. 「なにをおっしゃる!ヨダカ様は この世の魔法少女が如何に救われたか」
  2461. 「遥か昔に誕生したマギアレコードと ひとりの少女の伝説を哀れな我らに伝えたもう いにしえからの使徒ぞ?」
  2462. 「いやいやそんなこといって 鳥のバケモノだって話じゃない?」
  2463. 「いやいやちゃんと人間だよ? 名前だって教えてくれるんだから!」
  2464. 「信仰と同じその名前は」
  2465. 「×××イ××」
  2466. Not continue. This is the last.
Add Comment
Please, Sign In to add comment