矢島妙子 祝祭の組織編成にみる都市性と継承性

祝祭の組織編成にみる都市性と継承性
一「YOSAKO Iソーラン祭り」における参加集団の分類と特徴一

はじめに
「YOSAKO Iソーラン祭り」は1992（平成4）年に始まる北海道・札幌の
祭りで、現代都市の新しい祭りである。祭りとはいっても基本的には!MJりのみが
行われているo 鳴子と呼ばれる和楽棋を手にすることと、「ソーラン節」（アレン
ジ可）を1節でも入れた曲で踊ることがルールで、あり、その他に踊りの種類や背
楽や衣装については規制がない。
「YOSAKO Iソーラン祭りJでの踊りfは一般公募によって集められるこ
とが多く、自分が好む踊りをするチームをi選択して踊り子となる。
本稿では、多様な意図のもとに集l•Jl形成をされたチームの事例から、「Y OS
AKO Iソーラン祭りJにおける参加集団の分類と特徴にみる都市性と継承性に
ついて考察したい。
1 .「YOSAKO Iソーラン祭りJの概観
北海道大学の男子学生が高知の「よさこい祭りJ(I}を参考にして始めた祭りで
ある。主催はYOSAKO Iソーラン祭り組織委員会である。現在の開催期間は
6月上旬から中旬の5日間で、札幌市内の30数カ所の競演場で踊る。ステージと
パレードの2つの形式があり、パレード形式では「地）J車（じかたしゃ）Jと呼
ばれる音響設備を格載してさまざまな装飾を凝らしたトラックのあとを踊るo
2001 （平成13）年の第lOIJJIには、408チーム、約4万1千人の踊り子が参加し
た。観客動員数は201万人、また経済効果も206億円といわれる。若者が運営や踊
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り手の中心となってはいるものの、若者だけの祭りではなく、踊り子の年齢層の
，~~は広く、見物する側にも年配者が多く見られる。また、「Y OSAKO Iソー
ラン祭り」に彫響されて全国で約70の「よさこい」系の祭り〈原JlJとしてi鳴子を
手に持ち、地元の民謡などを取り入れた曲に合わせて踊る祭り）が能主している。

2.結合契機によるチームの分類とその特徴
「YOSAKO Iソーラン祭りjではチームを形成する原理は多様であり、多
様な縁で集団編成が可能である。一般に募集の方法は、口コミ・ポスター・タウ
ン紙・インターネットなどが用いられる。自分の好みのチームを選んで、数千円
から数万円の参加費を払って踊り子となる。その際にオーディションを行うとこ
ろもある。衣装代、I！鳥子代などは別途徴収されることが多い。
チームはその結合契機により、一般チーム、企業チーム、企業・大学生合同チー
ム、学生チーム、そして地域チームなどに分けられるヘ
(1) 一般チーム
踊りたいという友人数名が呼びかけて仲間を募る。仕事仲間、飲み仲間などで
ある。その一部をあげると次のようになる。
① 「labor（れいば一〉」：1996年～。札幌市。職業安定所の仲間中心で結成したのが始まりである。
衣装の法被の背中に「衆Jの象形文字がある。平均年総
は25歳である（平均年齢については2001年のデー夕、以下同じ）。
②「手鼓舞（てこまい）」： 1997年～。苫小牧市。既作のチームから抜けた人が
結成した。「こじめ」という太鼓（太鼓と紋の中間のような形状の楽総）を使
い、パチで日｜］きながら踊る。平均年齢は30歳である。
③ 「札幌男気流（さっぽろだんきりゅう）」： 1998年～。札幌市。メンバーは
男性だけである。「YOSAKO Iソーラン祭りJは全体的に久－性の参加が多
く、踊りfの約7'iliiJが女性であるため、このチームのを場は注目を浴びた。振
り付けも特徴的で、殺陣を人れる。既存のチームから抜けた人が結成した。平
均年齢は25成である。
④ 「祭響スコフ
白官を｛吏則して旅芸人）重lの振り村．けをする。それまで他のチームの振り付けをし
ていた女性が自分のチームを持ちたいと結成した。平均年総は28歳である。
⑤ 「WEBMEN （うえぶめん）」： 2000年～。札幌市。インターネットを通じ
て知り合った仲間により結成された。本名ではなくハンドルネームで呼び合い、
練習の情報もインターネットで送り、練習に参加できない人には振り十Iけも岡
像で送る。平均年齢は26歳であるo
⑤ 「道～DA O～（たお）」： 2001年～。札幌市。既存のチームが事情により得
続できなくなったため別名称で再結成した。美容師やその常述客、看護婦が中
心となる。平均年齢は24歳である。
⑦ 「天晴末広∞梅津屋社中（あっばれすえひろがりうめっゃしゃちゅう）J:20 01
年～。札幌市。「祭響スコブノレ」の中心人物が新たに別の種類の踊りをするチー
ムとして結成した。平均年齢は30歳である。

企業チーム
企業名は掲げていても踊り子は部外者の場合が多い。これは練習のための時間
がとれない、また祭り当日は業務を休めない企業が多いためである。
① 「JAL 極楽とんぼ（じゃるごくらくとんぼ）J:19 95年～。札幌市。 JAL
が一般から募集して結成したチームである。平均年齢は29歳である。
② 「DoCoMoOLE! OLE!YE AH! YEAH! （どこもおれおれやーやー）」 ：1996
年～。札幌市。NT Tドコモが一般から募集して結成したチームである。平均
年齢は25歳である。
③ 「a・la ・collette?4プラ（あ・ら・これって？よんぷら〉」： 1996年～。札
幌市。すすきのに位置するファッションビノレ「4丁目プラザ」がスポンサーで
ある。一般募集で、入るに際してオーディションがある。若い女性を対象とし
たファッションを扱うので、踊りは女性美・優雅さを表した洋風の踊りである。
平均年齢は24歳である。
④ 「wamiles踊り子隊美朔女（わみれすおどりこたいびしょうじょ） J:1997
年～。札幌市。踊り子が内部の者のみという「YOSAKO Iソーラン祭り」
では例外的なチームで、「ワミレス化粧品」というところが経営するエステサ
ロンが持つチームである。踊り子は社員とエステサロンの会員である。平均年
齢は33歳である。
(3) 企業・大学生合同チーム
資金を企業が負担し、大学生が踊る。踊り手が欲しい企業と資金が欲しい学生
とは相互補完の関係にある。「YOSAKO Iソーラン祭り」全体では、大学生
のチームは20チームあるが、そのうち企業がスポンサーとなっているものは約半
数であるヘ
①「パスキー＆北海道医療大学（ぱすきーあんどほっかいどういりょうだいが
く）J:19 94年～。札幌市。「パスキー」とは消費者金融会社である。踊り子は
社会人（パスキーの社員と大学生OBなど）と現役大学生で構成される。現在
は社会人4に対して、大学生6の割合である。平均年齢は20歳である。
② 「コカ・コーラ札幌国際大学（こかこーらさっぽろこくさいだいがく）」：
1994年～。札幌市。踊り子は札幌国際大学の大学生である。札幌国際大学は元
が静修女子大学という女子大だったため、現在も踊り子はほとんどが女性であ
る。平均年齢は20歳である。

4) 学生チーム

①「北海道大学“縁”（ほっかいどうだいがくえん〉」： 1999年～。札幌市。北海
道大学の学生中心だが、他大学や専門学校生も含んでいる。平均年齢は19歳で
ある。
② 「稚内市立稚内南中学校（わっかないしりつわっかないみなみちゅうがっこ
う）」： 1993年～。稚内市。この中学の3年生が踊り子となる。教育活動の一環
として学校全体で取り組んでおり、毎年新3年生に、背中に「学び座」と警か
れた衣装の法被が受け継がれるo IYOSAKO Iソーラン祭りJが誕生する
以前からロック調のソーラン節で踊っていたもので、「問中くなんちゅう〉ソー
ラン」と呼ばれる。l鳴子は持たずに踊る特別なチームで、審査の対象外である。
1994年と2001年は参加していない。
③ 「旭川末広北小学校（あさひかわすえひろきたしょうがっこう）」： 1998年～。
旭川市。「YOSAKO Iソーラン祭り組織委員会」が学校教行用に制作した
オリジナルの曲・振り付けの「教材用ソーラン」で踊る。2001年は参加していなし、。
(5) 地域チーム
その地域の屑住者が中心となってチームが結成されるが、地域を基盤としなが
らさらにその結合形態の展開もみられる。
① 地域密着型
・「平岸天神（ひらぎしてんじん）J:19 93年～。札幌市豊平区平岸。この地従来
の「平岸天神太鼓」に続く郷土芸能として「平岸天神ソーラン保存会Jをつくっ
て活動している。漁師をイメージした和風の衣装と踊りである。4つのs（ス
ピード、シャープ、ストロング、スマイル）をモットーにしている。大賞を4
回、準大賞を2回受賞している人気チームである。平均年齢は26歳である。
－ 「三石なるこ会（みついしなるこかい）」： 1994年～。三石町。漁業、牧畜、馬
の生産や製材業などに携わっている主婦が中心となる。平均年齢は46歳である0
．「乱舞章（らんぶどう）J:19 95年～。白老町。白老八幡神社の宮司が始めた。
この神社の例大祭でも踊る。平均年齢は26歳である。
－「新琴似天舞龍神（しんことにてんぷりゅうじん）」；1996年～。札幌市北区新
琴似。新琴似は屯田兵が開拓した地であり、踊りも関妬魂を表現する（詳細後
平均年齢は29歳である
「清田フレンズ（きよたふれんず）」： 1996年～。札幌市清田区。地元有志が中
心となって呼び儲けて結成した。正調風のソーラン節にこだわり、“和”を基
調としている。一方、パラパラ調の踊り、「KI y Oノマラ」も観答をも含めて
皆で楽しめるように創作している。平均年齢は29歳である。
－ 「石狩流星海（いしかりりゅうせいかい）」： 1997年～。石狩市。“石狩の海と
鮭の一生”がテーマで踊りの型を原則として変えない（詳細後述）。平均年齢
は25歳である。
「北見YOSAKO Iチーム薄荷輩子（きたみよさこいちーむはつかと、うじ）J:
1997年～。北見市。特産の薄荷の匂いをしみ込ませた衣装で踊る。平均年齢は
29歳である。
－ 「特（ひびき）」： 2000年～。札幌市北区新琴似。先にできていた「新琴似天舞
龍神jに次ぐ新琴似のチームとして結成された。家族参加が多い。平均年齢は
20歳である。
② 地域と企業
・「蒼天湖華and富士建材（そうてんらんかあんどふじけんざい）」： 1998年～。
千歳市。チームと地元の企業が結びついた例である。この企業はスポンサーで
はなく大口協賛である。山伏風の衣装で踊る。平均年齢は28歳である。
③ 地域と大学
「札幌学院大学・文京台（さっぽろがくいんだいがく・ぶんきょうだい）」：
1998年～。江別市文京台。札幌学院大学のある江別市文京台の地域住民と大学
生が中心となる。大学生以外が半数以上であるO 平均年齢は21歳である。
④地域チームと近隣区の大学チームのジョイント
－「、清田フレンズ＆札幌大学（きょたふれんずあんどさっぽろだいがく）」： 2000
年のみの参加であるo 札幌市消－田区の地域チーム「清田フレンズ」と隣の豊平
区にある「札幌大学Jがジョイントして、「YOSAKO Iソーラン祭り」で
2000年から始まった「正調ソーラン節部門」の踊りに出場した。
一般チームの例でみられたように、既存のチームから抜けた人が新たなチームを結成をすることも多い。国Ltlは、チームの踊りに対する取り組みノjに賛同でき
なくなるなどである。例えば、賞ねらいばかりが嫌になったとか、逆に1J:をねら
うほどのチームになりたいとか、あるいはまったく巡った種頒のチームを作りた
いなどである。
また、大学生の中には北海道ではそれぞれの自分の大学のチームに服しながら、
他地域の「よさこいJ系の祭りに、大学：の枠を超えて遠征専用のチームを新たに
結成することもある。仙台の「みちのくYOSAKO Iまつり」(1998年～〉に
は「BOTCH （ぽっち）」というチームが初回から2000年まで参加していたω。
名古屋の「にっぽんど真ん巾祭りJ(1999年～）には、「ZEAL （じーる）Jと
いう北海道大学と藤女子大の学生中心のチームが2001年に参加している。
つまり、踊り子たちは、いろいろな参加動機、そしてさまざまな結合契機でチー
ムを編成している。既存のチームから抜けて新たにチームを作ったり、大学生の
例にみられるように複数のチームに所属したりする。
このようにして編成されたチームは、そのチームの独自性を表出しようとする。
他のチームとの違いを強調しようとし、タj性だけのメンバーで殺陣の振り付けを
するチームや、インターネット仲間のチームや、水芸をしたり南京玉僚を使用す
るチームなどが最近登場している。また、地域チームも、地域の居住者だけでな
く、企業や大学と結びつく例が近年みられる。
そしてチームの独自性はそのチームの「型」となり、定着しつつある。例えば、
「“洋”の『ア・ラ・コレJ、“和”の『平岸』Jという言い方がある。企業・大学
生合同チームの踊り子のl~l には、その踊りで進路（大学〉を決定した人もいるほ
どである。
全体的にも「型jができているチームが多いなかで＼ここ2年ほど、特に地域
密着型のチームにおいて、その踊りを「続けたいJ「伝えたい」という言葉が頻
繁に聞かれるようになってきている。
3. 地域密着型チームの事例
では、ここでその地域密着型チームの2例について報告したし、。

(1) 「新琴似天舞龍神（しんことにてんぶりゅうじん）」
このチームは「YOSAKO Iソーラン祭りJには1996年（第5回〉から出場
している。1996年（第5回）新人口、1998年（第7回〉優秀賞、1999年（第8回）
第3位、2001年（第10回）第3位の受賞歴がある。また、ジュニア部門の「新琴
似子総隊（しんことにこりゅうたいけは北海道深川でのジュニア大会で4年連
続グランプリを受賞している。
所在する札幌市北区新琴似は、明治期に屯田兵が入植して作られた町で、農地
として開発された場所が札幌市の人口増加で宅地化された。人口7万人であるo
新琴似と新琴｛以西に町内会が分かれる。町内ごとの夏まつりなどはさかんであっ
たが新琴似全体の祭りやイベントがなかった。1995年の「YOSAKO Iソーラ
ン祭り」を見た新琴似症住のI氏らがこの年12月に仲間8人で発足したものであ
る。
人気チーム「平岸天神」の“天神”に対抗して“龍神”、北区なので「北舞龍
神」も考えたがより広く“天”とし、「天舞龍神JJに決め、頭に地域名の新琴似
を付けた。
現在のメンバー数は170人で女性が8害ljである。小学生以上が条件である。ジュ
ニア隊「新琴似子龍隊（しんことにこりゅうたい）」（小学生・中学生、1998年に
結成）と、シニア隊「新琴似拓魂（しんことにたっこん）J(40歳以上、2000年に
結成）もある。全体の年齢は6歳～60歳で、親子三代の参加もあるo 平均年齢は
29歳である。本祭出場の150人ωは練習出席率8割以上の人となっている。
チームのコンセプトとして、「地域の活性化」「青少年の健全育成」「感動の共
有」をあげている。子どもが踊り子として参加するには親も踊り子かスタッフと
して参加することを義務づけているo 子どもを人に任せきりにしないためである。
踊りは開拓魂をイメージし、“和”を強調し、着流しの着物を着、編笠を使用
する。
衣装、振り付け、地方車は新琴似居住者に依頼している。曲はメンバーの知人
で札幌市豊平区在住のプロに依頼している。演奏の三味線は津軽三味線（仙台在
住、メンバーの知人〉、太鼓はメンバー5人である。歌は新琴似在住の民謡の先
生の弟子で、隣接する石狩市花川在住の女性（素人）である。

年間運営費は約1,000万円で地元協賛金を得ているo 射在、地元の商店・病院・
個人ら約600件が協力している。
年間活動として年100Imほどの「YOSAKO Iソーラン祭り」以外での活動
がある。地元新琴似の祭り、主に夏祭りにも10回ほど参加している。また、地之
居の新琴似歌舞伎にも出演している。道内ではさまざまなイベントや然り、道外
では主に「よさこい」系の祭りへの参加している【写点．①】。
写真① 「新琴似夫舞龍村リ
(2001年、於：新符似会場）
(2) 「石狩流星海（l、しかりりゅうせいかい）」
「YOSAKO Iソーラン祭り」には1997年（第6ml）から1¥J易している。1998年（第7回〉優秀賞、1999年（第8回）優秀賞、2001年（第10回〉準大賞を受賞
している。
所不1：する石狩市花川は札幌市のベッドタウンで、働く人のうち8害ljが札幌市内
に勤務する。19961平に石狩町から石狩市になった。入門5万5千人である。この
地域は北海道内のさまざまな地ノ5の人が集まった新興住宅地で＼これといった祭
りがなく、1996年の「YOSAKO Iソーラン祭りJを見て、j迂籾14人と子ども
4人で結成した。この年の7月7日の地元「七夕まつりjで踊りを初めて披泌し
た。七夕にデビューしたので、流れ星のイメージで「流星」、そして石狩の印刷、
頭に地域名を付けて「石狩流星海Jとした。
現在のメンバー数は150人で女性が8制である。入るに際しての条件はない。
家族参加が多く、親子二三代の参加もある。全体の年齢は3歳～58歳で、平均年齢
は25育長である。
チームのコンセプトは特：に燭げてはいないが、「地域住民との親！陸J「活気あふ
れる街づくりjがモットーである。
「石狩の海と鮭の一生Jがテーマで、毎年ほとんど踊りの型を変えないのが特
徴である。これは石狩を出ていった子どもたちがいつ帰ってもまた踊れるような、
「盆踊り型Jの踊りを目指しているからである。年齢により、イクラ／稚魚／成
魚／ほっちゃれ（産卵のため川に戻ったメス）に分かれて踊る（6）。鮭の絵のつい
た法被と編笠を使用する。
衣装、振り付け、地方車は石狩市居住者に依頼している。曲はメンバーの知人、
札幌在住のプロに依頼している。演奏は太鼓はメンバー（北響太鼓）、歌はチー
ムの代表である。
年間運営費は約400万円で、踊りが制限されるのを好まないため、スポンサー
はあえてっけない。
年間活動として、年50回ほどの「YOSAKO Iソーラン祭りj以外での活動
がある。道内が主で、その中でも石狩市内の活動が多し1。地元の商店街の祭り、
神社の祭りなどに参加している。その他、病院や老人ホームの慰問などを行って
いる【写真②】。

4. 考察
地域密着型としてあげた2つのチームは、地域性をチームの独自性として強く
表出し、地域内の祭り・イベントに参加する一方で、「YOSAKO Iソーラン
祭り」での上位入賞を果たす人気チームとなり、他地域の多くのイベントにそれ
ぞれの地域を代表するチームとして参加しているo 内的にも外的にも認められた
存在となっているo
また、どちらも子どもをチームのメンバーとして大事にし、次世代のことを考
えている。回を重ねるごとに、この踊りを「続けたしリ、そして次のIl"代にこの
チームの独自性を「伝えたい」という意識が出てきている。親子三代の参加もあ
り、それは同時期に三世代が同じ文化を共有しているということである。
また、すでに述べたように、それ以外のチームにおいても、地域性に限らず、
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そのチームの「型」を創り出してきている。一般チームにおいても、最近では特
に既存のチームとの泌いを強制するようになっている。構成人員が特徴的なチー
ム（男性だけ）や、結合契機が特徴的なチーム（インターネット仲間）や、振り
付けや小道具が特徴的なチーム（水芸・南京玉策、殺陣の取り入れ）である。そ
の他の地域チームにおいても、企業や大学と結び、つくなど多様な結合方法がみら
れるようになってきた。
おわりに
「YOSAKO Iソーラン祭り」における参加集団は、参加動機が多様で、さ
まざまな結合契機で編成される。既存のチームから抜けて新たにチームを作るこ
ともでき、複数のチームに所属することもできる。また、企業・大学・地域がい
ろいろなかたちで結ーび、つくこともできる。
つまり、「YOSAKO Iソーラン祭りJという祭りの中には、いろいろな受
け皿が用意されている。多機な動機・欲求に基づく参加意思を受け入れることが
でき、また、さらなる集団編成へと展開する流動的な結び、つきも可能である。こ
こに多機で流動的という都市性がみられる。流動的ではあってもそこには既存の
ものとは違う新たな参加意思がみられ、結果的にはそれは多様性を示すことにな
る。そうであるがゆえに、この祭りそのものは続いていく。ここに社会的・集団
的継承性がみられる。また、独白性のある、すでに「型jができているチームが
多く、地域密着型のチームでは明らかに「伝える」意識が出てきており、文化的
継承性もみられる。
また、「YOSAKO Iソーラン祭りJにおけるチームの独自性の表出は、各
チームの踊りをめぐる文化の継承のみならず、チームの独自性を競い合うことが
祭りのエネルギーとなり、祭りそのものを継続させる結果となっている。特に地
域密着型のチームにおいては、地域というレベルに細分化されたエネルギーが
「YOSAKO Iソーラン祭り」全体を支えることになっているのである。
(1) 高知の「よさこい祭り」は195'1（昭和29）年に、戦後の経済復興と夏枯れのよヌ気対策
を目的に隣県・徳島の「阿波おどりJに対抗して、商工会議所の発案により始まった。
祭りを始めるにあたって曲作りを依頼された両知在住の作曲家が、歴史のある「阿波お
どりJに対抗するには素手ではかなわないのでイ！鳥子を手に持つことを思いついたという。
こうして「よさこい鳴子踊りj という山が作られ、当初は正調の曲・踊りで踊っていた
が、1972年にフランスのニースのカーニパルにサンパ調の「よさこい鳴子踊り」の曲・
振り付けで参加したのをきっかけに徐々にアレンジされた曲・踊りが増えていった。現
在では鳴子を手にもつことと、「よさこい鳴子踊り」の曲を一節でも入れることがルール
となっているo 2001年（第48回〉には153チーム、約i万7千人の踊り子が参加しているo
(2) これらは唱者による踊り子の結合契機からの分類であるo 祭りを主催する「YOSA
KO Iソーラン祭り組織委員会Jはスポンサーの有無によりチームを3つに分けているo
同組織委員会によると、チームは「企業チームJr一般チームJ1-fども会・小学校・中
学校チームJ に分類される。チーム名もしくは衣装もしくは地方•IIのいずれかひとつに
企業名もしくは商品名が人っている場合は磁山の大小を問わずf企業チームJとみなし
ている。「一般チーム」はチーム名もしくは衣装もしくは地方車のいずれにおいても企業
名もしくは商品名が入っていない場合をいう。「子ども会・小学校・中学校チームJとは
チーム名もしくは衣装もしくは地方車のいずれにおいても企業名もしくは商品名が入っ
ておらず、踊り子の構成のうち70%以上が該当する会・学校の児お・生徒の場合をいう。
参加賀として「企業チーム」20万円、「一般チーム」5万円（「子ども会・小学校・中学
校チーム」は無料）、運営協力伐としてメンバー1人につき1200円払うことが必要であ
るo 以上、「YOSAKO Iソーラン祭り組織委員会」の規定であるo
(3）公式のがイドブックや新聞によると、大学名が出ているチームは20チームである。こ
のうち企業名が併記されているものは9チームであるが、企業の名は出さずにスポンサー
となる場合があるので（軌道にのるかl～2年ほど様子をみる例がある）、企業・大学生
合同チームは約半数と判断した。
(4）「BOTCH （ぼっち）」は「みちのくYOSAKO Iまつり」の第l回から第3固ま
で連続参加していたが、中心人物の卒業で自然解散となってしまったそうであるo
(5) 「YOSAKO Iソーラン祭り」は参加人数は40人以上150人以下と決まっている。こ
の人数には踊り子だけでなく、旗振り・声出しなど衣装を岩た人すべてを含む。
(6) イクラは小学校低学年以下（35人〉、稚魚は3年生以上の小学生（30人）、成魚は中学
生以上（40人）、ほっちゃれは母親（40人）である。