Vi_Vi

Chizuru MSS JP Text

Jan 27th, 2023
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  1. FILENAME: text_310461-1.txt
  2. 玄雲: 年端も行かぬゆえ 見逃してやるつもりもあったが
  3. 玄雲: 抗うならば、 容赦なく冥府へ送る
  4. 千鶴: …っ!
  5. キュゥべえ: 千鶴、迷ってる暇はない 今すぐボクと契約するんだ
  6. 千鶴: くそっ…アタシはただ… 巧生の職人を 助けたい一心だったんだけどな…
  7. これで、依頼を頂いた武具は全部 間違いはありませんか
  8. 山右衛門: おう、数に違いはねぇ
  9. 山右衛門: 千鶴、質の方はどうだ
  10. 千鶴: 悪くねぇ 硬さも切れ味も抜群だ
  11. 千鶴: いつも通りのいい仕事だよ
  12. 千鶴: 手裏剣ひとつにしても
  13. シュッ
  14. トッ
  15. 千鶴: 重さが均等にできてて 寸分もブレねぇ
  16. 山右衛門: ふっ、問題はないみてぇだな いつも世話をかける
  17. 巧生の職人にとって泰党は ご先祖様が暮らした場所
  18. 力になるのは当然です
  19. それに、泰党の炭がなけりゃ この武具は作れませんから
  20. 持ちつ持たれつですよ
  21. 山右衛門: 確かに俺たちの技が 混然一体となったもんだからな
  22. 千鶴: ちょっとでも 技術が漏れたら大変だな
  23. 山右衛門: もしも、俺たちの技術を 漏らすようなヤツが現れたら
  24. 山右衛門: 生かしちゃおかねぇよ
  25. 千鶴: うーん…
  26. 山右衛門: なんだ、難しい顔して
  27. 千鶴: いや、泰党と巧生の職人は 支え合ってるって話だけどさ
  28. 千鶴: 実際のところアタシらって アイツらを支えられてんのか…?
  29. 千鶴: 今日みたいに 取引ばっかしてる気がする
  30. 山右衛門: ばっかだなぁ、オメエは
  31. 千鶴: ぁあ?
  32. 山右衛門: 俺たちが使う武具以外にも あの職人たちは作ってんだろ?
  33. 千鶴: そりゃな
  34. 山右衛門: 周りのヤツらにしたら、 巧生の武具っつーのは魅力的だ
  35. 山右衛門: 国の長たる隅谷だけじゃねぇ 外の領主たちだって同じ
  36. 山右衛門: テメエたちの兵に使いたいし 外に売って金にもしてぇ
  37. 山右衛門: ってなると、ならず者だって わんさか出てくんだよ
  38. 山右衛門: たまたま最近が 平和だったってだけだ
  39. 千鶴: 立派なもん作ってるのに 解せねぇ話だな
  40. ドタドタ
  41. お頭!
  42. 山右衛門: なんだ、うるせぇな
  43. こちらから炭を届けに 巧生へ向かった者から報告が…
  44. 山右衛門: …どうした
  45. 職人の者たちが襲われて 依頼された品を買い叩かれたと…
  46. 山右衛門: 噂をすればさっそくだな
  47. 千鶴: まさか、こんなに早く 力になれると思わなかったよ
  48.  
  49. FILENAME: text_310461-2.txt
  50. 山右衛門: 簡単に状況は聞いたが、 いったい何があったんだ
  51. 千鶴: ああ、アタシにも聞かせてくれ
  52. …………
  53. 思い出しても腹立たしいのですが 武具を買い叩かれました…
  54. これじゃあ、 材料の元を取るのも難しく…
  55. 千鶴: 買い叩くって… 抵抗はしたんだろ…?
  56. もちろんです!
  57. しかし、相手は険呑としており、 武器もチラつかせる始末…
  58. 殺されてはかなわないと、 応じざるを得なかったのです…
  59. 千鶴: 要は強奪じゃねぇか…
  60. 山右衛門: それで、相手は誰だ
  61. この相磨の国を治められている 隅谷様の一門…熊井様でした…
  62. 山右衛門: やっぱ、野郎か…
  63. 千鶴: やっぱって、 親父は何か知ってたのか…?
  64. 山右衛門: 隅谷が動いてるっていう話を 耳にしてたんだよ
  65. 山右衛門: 今年の天候は 飢饉の前触れがあったからな
  66. 山右衛門: それに乗じたヤツらの侵攻や 農民の蜂起を食い止めたいらしい
  67. 千鶴: そりゃあ立派な話だけど、 金を払わねぇのは駄目だろ…
  68. 千鶴: その武具はどこに行ったんだ アタシらが取り戻してやる
  69. 熊井様の居城となると 恐らく、水名城かと思います
  70. 千鶴: 行こう、親父!
  71. 山右衛門: 急くんじゃねぇ 動くのは情報を集めてからだ
  72. 山右衛門: って、アイツ…
  73. 山右衛門: 千鶴はどこ行きやがった!
  74. 昼頃に居たのは 他の者も目撃しているんだが…
  75. 山右衛門: あのヤロウ… ひとりで突っ走りやがったか…?
  76. 山右衛門: …まあいい ここに集まったヤツで始めるか…
  77. 山右衛門: まず状況についてだが
  78. 山右衛門: 水名城に武具が運び込まれたか 確認はとれてねぇ
  79. 山右衛門: だが、アイツらの蔵を破って 金品を奪える算段はついてる
  80. 山右衛門: 水名城に着いたら 先に向かったヤツらと合流
  81. 山右衛門: ソイツらの手引きで侵入して 金目のものを手に入れるぞ
  82. 手に入れたものについては いつもの流れで?
  83. 山右衛門: ああ、足がつかねぇように流して 他のもんに変える
  84. 山右衛門: それで巧生のヤツらも いくらか足しにできるだろう
  85. わかった
  86. 千鶴の声: ちょっと待ってくれ!
  87. 山右衛門: 待ってくれだぁ?
  88. 山右衛門: テメエ! どこをほっつき歩いてやがった!
  89. 山右衛門: 頭数に入ってんだぞ!
  90. 千鶴: 待てって親父!
  91. 千鶴: 熊井に変な動きがあるって聞いて 調べもんをしてたんだよ!
  92. 山右衛門: なにぃ?
  93. 千鶴: アイツ、手に入れた武具を 水徳寺に依頼して保管してやがる
  94. 山右衛門: ――っ!?
  95. 山右衛門: …独断で動いたのは許せねえが 帳消しにしてやる
  96. 千鶴: ごめん…親父…
  97. 千鶴: でも、熊井と隅谷のヤツらは それで白を切るつもりだ
  98. 千鶴: 城のどこを捜しても 証拠のブツはねぇんだから
  99. 山右衛門: 盗みに入る手前、 相手が何を言おうが構わねぇさ
  100. 山右衛門: ただ、買い叩いた武具がねぇのに 盗むってのは流儀に反する
  101. 山右衛門: 物があるかは確認しておきてぇ
  102. 千鶴: じゃあ何人か貸してくれ アタシが水徳寺に行く
  103. 山右衛門: …よし、わかった
  104. 山右衛門: 俺たちはテメエらの報告まで 水名城の近くで待機だ
  105.  
  106. FILENAME: text_310461-3.txt
  107. 千鶴: 寺の坊主たちは寝静まってる
  108. 千鶴: 見たところ見回りも少ない 今なら手分けして入れそうだ
  109. 手はず通り 武具の確認が先決だ
  110. 千鶴: わあってるよ
  111. 千鶴: さすがに買ったもんすらねぇのに 盗みを働くのは良心が傷付く
  112. 巧生の職人を疑るわけじゃないが 念には念を入れておかねえとな
  113. 千鶴: おう
  114. 千鶴: なんだ…人の気配がない…
  115. 千鶴: (寝静まっていると思ったら… こりゃ違うな…)
  116. 千鶴: (そもそも、人の気配がねぇんだ…)
  117. 「ぐぁあっ!」
  118. 千鶴: (まさか…)
  119. 千鶴: (アタシらが誘い込まれたのか!?)
  120. 千鶴: 「ウゥッ!」
  121. 千鶴: グッ…!
  122. 玄雲: ここにも泰党を名乗る 盗っ人が忍び込んでおったか
  123. 千鶴: ――っ!?
  124. 玄雲: その足では動けまい
  125. 玄雲: 連れて入った仲間も捕まえるゆえ しばし待たれるが良い
  126. 千鶴: (千鶴様を舐めんなよ… 足がやられたぐらいで…)
  127. 千鶴: う…
  128. 千鶴: (めまい… くっそ…毒か…)
  129. キュゥべえ: 助けが必要かい? 千鶴
  130. 千鶴: (なんだ…コイツ…)
  131. キュゥべえ: ボクの名前はキュゥべえ
  132. キュゥべえ: キミがボクと契約して 魔法少女になってくれるなら
  133. キュゥべえ: 何でもひとつ 願いを叶えてあげるよ
  134. 千鶴: (何、言ってんだ…コイツ…)
  135. 千鶴: (毒が回って… 変なもんでも見えてるのか…)
  136. 千鶴: くっ…
  137. ゴクッ…
  138. 千鶴: 幻覚なんかに、救われなくても… これで大体…解毒…できる…!
  139. 千鶴: 『はぁ…はぁ…』
  140. 「気をつけろ! この坊主、分散して武装…」
  141. 千鶴: 『ぐ…うごけ…』
  142. 「グァアアッ!」
  143. 千鶴: 『毒なんかにやられるような… 鍛えかたじゃ…ねぇだろ…!』
  144. 「武具は見つけた…! 誰か…お頭に伝えてくれ…!!」
  145. 千鶴: いける…動ける…
  146. 千鶴: …っ!
  147. 千鶴: よりによって足を狙いやがって…
  148. 玄雲: 動けるようになったか、小娘
  149. 千鶴: (くっそ、 逃げられると思ったのに…)
  150. 玄雲: お主の仲間は片づいた
  151. 玄雲: 盗みを働こうとした罪は、 仲間とともに悔い改めてもらう
  152. 千鶴: この寺が預かった武具は… 隅谷が奪ったようなもんだ…!
  153. 玄雲: 知らぬ
  154. 玄雲: 年端も行かぬゆえ 見逃してやるつもりもあったが
  155. 玄雲: 抗うならば、 容赦なく冥府へ送る
  156. 千鶴: …っ!
  157. キュゥべえ: 千鶴、迷ってる暇はない 今すぐボクと契約するんだ
  158. 千鶴: …………
  159. 千鶴: 今のアタシに 救いなんていらねぇ…
  160. 千鶴: 「ただ、この坊主に勝つ力をくれ」
  161.  
  162. FILENAME: text_310461-4.txt
  163. 千鶴: すげえ、なんだこれ… 体から力が沸いてくるみてぇだ…
  164. 玄雲: これは… まさか戦神子では…
  165. 千鶴: 戦神子…?
  166. 千鶴: なんかわかんねぇけど、 坊主がビビるぐらいの力を得れば
  167. 千鶴: 少なくともこの場は 突破できそうな気がするな
  168.  
  169. FILENAME: text_310461-5.txt
  170. 玄雲: ぬぅっ! 薙刀を折るだと…!?
  171. 千鶴: はぁ…競り勝った…!
  172. 千鶴: 巧生の武器がなけりゃあ 厳しかったかもしれねぇな…
  173. 玄雲: まだ…行かせぬ…! 仲間を見殺しにするつもりか…!
  174. 千鶴: はぁ?
  175. 千鶴: アタシは犠牲になった意味まで 殺すつもりはねぇんだよ
  176. 千鶴: ちなみに、預かった武具は 渡すなり捨てるなり自由にしろ
  177. 千鶴: こっちはあくまで流儀の問題 武具が見つかりゃいい話だからな
  178. それで自分たちが作ったもんは 水徳寺からどこへ…
  179. 山右衛門: さぁな…
  180. 山右衛門: 水徳寺からすれば好意で預かって 泰党の侵入に遭ったんだ
  181. 山右衛門: 隅谷に従った熊井はともかく 隅谷への心象は悪くなったろうし
  182. 山右衛門: 被害にあった分の見返りで 多少は巻き上げてるかもなぁ
  183. 千鶴: ま、作ったもんは戻らねぇけど 金はちゃんと用意してきた
  184. 千鶴: ほら、 買い叩かれた分の差額だ
  185. ありがたい… これでしばらくやっていけます
  186. 山右衛門: その手に入れた金だがな 手をつけずに蓄えておけ
  187. と、言いますと?
  188. 山右衛門: 来年は恐らく凶作になる
  189. 山右衛門: 今のうちに備えておかねぇと 互いに首が絞まるかもしれねぇ
  190. 千鶴: 親父には、お天道様の言葉でも わかるってのか?
  191. 山右衛門: わかるんだよ 長く生きてるとな
  192. 千鶴: 負けて願いを叶えるなんざ、 ちょっと恥ずかしいよな
  193.  
  194. FILENAME: text_310462-1.txt
  195. 千鶴: なんか、 城の近くって面白いよなぁ
  196. 露: そうかしら? 別に普通の町だと思うけど
  197. 千鶴: 露は城に住んでるから よくわかんねぇと思うけど
  198. 千鶴: 住んでる人間が多いからか 土地の状況がわかりやすいんだよ
  199. 露: ああ、そういうこと 言いたいことがわかったわ
  200. 露: 確かに人が多い町だと 空気の変化に気づきやすいもの
  201. 千鶴: そうそう
  202. 千鶴: 飢饉で追い詰められてたときは こんな活気なかったからなぁ
  203. ガヤガヤ…
  204. 露: ふふっ、そうね
  205. 露: あの頃と比べると みんなの表情が明るくなったわ
  206. 露: 最近は妖魔の数も減ったし 姫としては嬉しい限りね
  207. 千鶴: また、くらーい感じに ならねぇといいな
  208. 露: そうね
  209. 戦神子のおふたり!
  210. 千鶴: ――っ!?
  211. 露: あなたは…
  212. 露: あ、この町で 薬師をしている方の娘さんよね
  213. はい、その通りです…!
  214. 不躾なのは 承知しているのですがお願いが!
  215. 露: 私にできることなら なんでも言って
  216. それならお願いです!
  217. 一刻で結構ですので、 この子の面倒を見てください!
  218. 赤ん坊の声: 「あ~ぅ」
  219. 千鶴: うぉっ!?赤ん坊!?
  220. 露: ま、待って待って!
  221. 露: そんな、いきなり 他人の赤ん坊を見るなんて…!
  222. 父に代わって、急いで薬の調合に 向かわねばならないのですが
  223. 息子を預けられる身寄りがなく 困っていたんです…!
  224. 戦神子のおふたりなら 信用できます!
  225. 千鶴: うぇええ…?
  226. 露: 薬の知識があれば代わりたいけど さすがに力仕事以外できないし…
  227. 急いでますので 息子をお願いします!
  228. お礼にあぶり餅を 置いていきますから…!
  229. 露: ちょっとぉ!
  230. 千鶴: こういう便利屋として 頼られるのは不本意だなぁ
  231. 赤ん坊の声: 「うぁ~、キャッキャ」
  232. 露: 見て、千鶴 私の手遊びで笑ったわよ
  233. 千鶴: 今のはアタシの お手玉を見てたんだよ
  234. 露: ええ? 私だと思うけど
  235. 千鶴: いいや、アタシだね
  236. 千鶴: これでも里の中じゃあ 子どもに稽古をつけてんだ
  237. 千鶴: 千鶴姉さんの子どもの扱いを 舐めてもらっちゃあ困る
  238. 露: 私だって親族の子と 遊んだり…したわよ…!
  239. 千鶴: 露はお姫様だから 周りに面倒見てもらう方だろ?
  240. 露: 人を子どもみたいに…!
  241. 千鶴: そこまでムキになるなら、 ひとつ勝負してみるか?
  242. 露: いいわ、内容は?
  243. 千鶴: 赤ん坊ってのは、 なぜかしんねぇけどな
  244. 千鶴: 顔を隠して急に見せると 喜ぶような節がある
  245. 露: あー…あれね…? もちろん知ってるわ
  246. 千鶴: ほんとか…?
  247. 千鶴: まあいいや
  248. 千鶴: それで勝負して、 より子どもが笑った方の勝ちだ
  249. 露: 要は…
  250. 露の声: 「こう隠して」
  251. 露: こう、見せればいいのね
  252. 千鶴: そういうことだ
  253. 千鶴: んじゃ、さっそくやるぞ
  254. 露: ええ
  255. 赤ん坊の声: 「あ~ぁぅ」
  256. 露&千鶴の声: 『「せーのっ!」』
  257. 露: ばあっ!
  258. 千鶴: やあっ!
  259. 露: …………
  260. 千鶴: …………
  261. 露: 赤ちゃんが消えた!?
  262. 千鶴: んなこたあ、わかってるよ!
  263.  
  264. FILENAME: text_310462-2.txt
  265. 千鶴: もぐっ…
  266. 露: あむっ…
  267. 千鶴: あぶり餅を置いてくとか 前じゃ考えらんねぇな
  268. 露: 串についたお餅まで食べないと もったいないわ
  269. 千鶴: なーんて食べちまった手前 責任はアタシらにある…
  270. 露: そして解決できなければ 私たちもただでは済まないわ…
  271. 露: 戦神子の評判は地に落ちて 私たちが争いの火種になるかも…
  272. 露: 早く捜しにいきましょう
  273. 露: もしも人さらいだとしたら、 売られてるかもしれないわ…!
  274. 千鶴: いや、もうさらわれてるって
  275. 千鶴: アタシらが顔を隠した 一瞬の隙をつきやがったんだ
  276. 露: 物音ひとつしなかったけど…?
  277. 千鶴: それができるヤツらが、 この相磨の国にはいるだろ…
  278. 露: …まさか、泰党?
  279. 千鶴: だろうよ
  280. 千鶴: 身内の行動を考えりゃあ まだこの辺りにいるはずだ
  281. 千鶴: アタシらが捜し始めて消えた頃に この場を離れるだろうからな
  282. 露: 気配はある…?
  283. 千鶴: どうだろうな…
  284. 千鶴: …………
  285. 露: …………
  286. 赤ん坊の声: 「ぁああああ゙!うぁああああ゙ん!」
  287. 千鶴: 赤ん坊の声!
  288. チッ、見つかっちまったか
  289. って、誰かと思ったら千鶴か でかくなったなぁ
  290. 露: 誰…?
  291. 千鶴: アタシがちっさい頃にいた クズ野郎だ
  292. 千鶴: 親父がぶっ殺そうとしたけど 逃げ足だけは速くてな
  293. 覚えてくれてたなんて嬉しいね
  294. 千鶴: うるせぇ いいから赤ん坊を返せ
  295. 千鶴: 今ならなんも咎めねぇよ
  296. 金を脅し取るのもわかってたか さすがは山右衛門の娘
  297. だけど、提案されたところで 聞く耳はない
  298. 千鶴: アイツ!
  299. 露: 追いかけるわよ!
  300. はぁ…はっ…はぁ… 振り切れねえ…
  301. オレは何を相手してんだ… 化け物か…!?
  302. 露: いいえ、あなたが相手してるのは 西と東の戦神子よ
  303. 千鶴: これで挟み撃ち成功ってな
  304. まさか、巷で噂になってる 戦神子ってお前らのことかぁ!?
  305. ぬぁああ…ついてねぇ…
  306. 千鶴: さ、しょうもない 追いかけっこは終わりだ
  307. 露: 赤ん坊を返しなさい
  308. …今、返しても許してくれる?
  309. 露: な、わけないでしょ!!
  310.  
  311. FILENAME: text_310462-3.txt
  312. 露: 赤ん坊を返しなさい
  313. …今、返しても許してくれる?
  314. 露: な、わけないでしょ!!
  315. んじゃあ、逃げるまでだ!
  316. 千鶴: ――っ!?
  317. 千鶴: 露!クナイだ!
  318. 露: エッ!?
  319. 露: …っ!
  320. 隙さえできれば十分だ!
  321. 千鶴: ケガは!?
  322. 露: ないけど、アイツが!
  323. はぁっ…はぁ…!
  324. 千鶴: やべっ、また町に戻る 隠れられると厄介だ!
  325. 露: 一か八かだけど任せて!
  326. 露: ふっ!
  327. ぎゃっ!
  328. 露: 赤ちゃんは無事よ!
  329. 千鶴: よしっ、コイツも確保した
  330. いっでぇええッ!
  331. 千鶴: 赤ちゃんはもっと つれぇ思いをしたんだよ
  332. ぬぅぅ…
  333. 千鶴: しっかし、驚いたな
  334. 千鶴: あぶり餅が刺さってた串を 投げて仕留めるなんて…
  335. 露: ふふっ
  336. 露: 戦神子の強化された体じゃないと できない芸当でしょ?
  337. 千鶴: ああ、驚いた
  338. すみません本当に 面倒を見て頂いちゃって
  339. 露: いえいえ そちらは無事に終わりましたか?
  340. はい
  341. ひどい咳の方だったんですけど 無事に落ち着きました
  342. 父が留守だったので、私の知識で 対応できて良かったです
  343. って、あら?
  344. 千鶴: な、なんかあったか…? 赤ん坊なら元気元気!
  345. じゃなくて
  346. おふたりとも なんだか疲れてそうだなって…
  347. お薬出しましょうか…?
  348. 露: いえいえ、そんな!
  349. 千鶴: そうそう、あやし方勝負をして 疲れただけだから
  350. 露: ええ、力が入ったわね!
  351. 千鶴: なっ
  352. 露: あはは
  353. 千鶴: あはは
  354. …………?
  355.  
  356. FILENAME: text_310462-4.txt
  357. 露: はぁ… 今日は変な疲れ方をしたわ…
  358. 千鶴: 助けを求められるっつっても 赤ん坊の面倒は予想外だったなぁ
  359. 千鶴: ただ、アタシとしては 露の攻撃も十分驚いたけどな
  360. 露: もしかして串の話?
  361. 千鶴: そうそう、だって串だろ? 前の露だったら考えられねぇよ
  362. 露: 串を使ってまで攻撃をするように 私を変えたのはあなたじゃない
  363. 千鶴: は?アタシ?
  364. 露: ほら、千鶴たちと一緒に 修練した時があったじゃない
  365. 露: この、一太刀で終わらせる!
  366. 露: はぁああッ!
  367. 露: いたッ!
  368. 千鶴: ニッ、これで1回死んだな
  369. 露: えっえっ? 腕に何かぶつかってきたわ
  370. 千鶴: 単純な話だよ 露に石ころを投げたんだ
  371. 露: 石!?
  372. 千鶴: 卑怯とは言えねぇだろ?
  373. 千鶴: 実戦じゃあ 武器が失われる恐れがある以上
  374. 千鶴: 身の周りにあるもので戦う方法も 会得しとく必要があるんだよ
  375. 露: なるほど…
  376. 露: 確かに私の戦い方って 自分の武器がある前提だわ
  377. 露: 不測の事態を想定できていない…
  378. 露: まさか石ころを投げただけで 形勢を逆転されるなんて…
  379. 千鶴: 隙を作ることが目的だからな
  380. 千鶴: さっき、露の首に当てたのも 細い木の枝だぞ
  381. 露: むぅ…
  382. 露: 今のところ 10勝10敗とは言っても
  383. 露: なんだか悔しいわ…
  384. 千鶴: 言われてみれば そんなこともあったな
  385. 千鶴: んで、悔しいから こっそり訓練を積んでたわけか
  386. 露: まぁ…そうね…
  387. 露: 悔しさもあるけど 年齢は私の方が上でしょ?
  388. 千鶴: あん…?
  389. 露: 姉である私としては、 妹より強くありたいわけよ
  390. 千鶴: いや、姉でも妹でもねぇよ
  391. 千鶴: でもまあ… 姉ちゃんぽいとは思うけど…
  392. 千鶴: つか、得意不得意なんて あってもいいだろ
  393. 千鶴: 露は頭が良くて 色々教えられるんだからさ
  394. 千鶴: ちょっとぐらい妹のアタシにも 自慢できることを残しといてくれ
  395. 露: ふふ、わかったわ
  396. 露: …ちなみに今回の技って 泰党の技のひとつにできるかしら
  397. 千鶴: …戦神子の馬鹿力が必要だから 絶対に技のひとつにはならねぇよ
  398. 千鶴: 腕力だけで鉄砲みたいに 串を飛ばすって言われてもな…
  399. 露: …まあ、そうよね
  400. 千鶴: ほんと、気を抜いた瞬間こそ、 一番気をつけるべきだよな
  401.  
  402. FILENAME: text_310463-1.txt
  403. 露: うーん…
  404. 露: 森に自生する樹木も うまく使えば武器になるのね…
  405. 千鶴: そうそう
  406. 千鶴: 特にアタシらは 隊列を組んだりとかしねぇで
  407. 千鶴: 木の上を 跳び回ることが多いだろ?
  408. 千鶴: だから、追手を追い払うために 枝をしならせてムチにするとか
  409. 千鶴: けっこう応用が利くんだよ
  410. 露: 私たち戦神子の力があれば、 もっと応用できるかしら
  411. 千鶴: 力が強ぇから 幅は広がるかもしれねぇな
  412. 露: 例えば…そうね…
  413. 露: 枝じゃなくて 樹木だってしなるじゃない?
  414. 千鶴: ん、まぁ…
  415. 露: それを私たちの力でしならせて 泰党の人たちを乗せれば
  416. 千鶴: うん
  417. 露: 戻る時の勢いで飛ばせるから 簡単に城へ入られるかも
  418. 露: ほら、泰党の人たちが 木から木に移る時に使う滑空術
  419. 露: あれを使えば きっとできると思うのよね
  420. 千鶴: ムササビみたいに飛べるのは 否定しねぇけどよ
  421. 千鶴: うちの里の連中を なんだと思ってんだよ…
  422. 千鶴: 大砲の弾を人間にしようとか 言いかねないな…
  423. 露: そんな危険なこと 言うわけないでしょ…!
  424. 千鶴、ちょっといいか
  425. 千鶴: ああ、今日の修練も終わったから いつでも大丈夫だ
  426. 露: ええ、そうね
  427. 露: それじゃあ、 私は城に帰らせてもらうわね
  428. 千鶴: ああ、またな
  429. 露: うん
  430. 千鶴: で、何か用か?
  431. 水名とは手を結んでいる だが、あまり連れてくるな
  432. 千鶴: はぁ?なんでだよ… 今までも連れて来てただろ…
  433. あまりにも頻繁すぎる上に 奧まで連れ込みすぎだ
  434. 我々が秘匿したい話などが 露姫の耳に入るのは敵わない…
  435. 千鶴: そりゃなんだよ 露が裏切るとでも言いてぇのか?
  436. その恐れは常に付きまとう そういう世の中だ
  437. 千鶴: 肝っ玉の小せぇヤツだな
  438. なっ
  439. 千鶴: 冗談だ 以後、気をつけるよ
  440. 千鶴: (さ、そろそろ 軽く仮眠でもとっかな…)
  441. ――――
  442. 千鶴: なんか騒がしいな… 親父…?
  443. 笑い事じゃないでしょう
  444. 何百年も我々が耐えられたのは 門戸を閉ざしていたから…
  445. それが開いた今、 秘密は漏れると考えた方がいい
  446. 山右衛門: だけどよ、 千鶴は露を信用してるんだろ?
  447. 山右衛門: 戦神子同士で通じ合うもんが あるってんなら否定はしねぇよ
  448. くう、こういう時に限って お頭は娘に甘い…!
  449. 山右衛門: それなら、 こうするのは名案じゃねぇか?
  450. なんです…
  451. 山右衛門: 千鶴を水名の親族と 祝言させるんだ
  452. 山右衛門: 繋がりが深くなれば お前の悩みも少しは晴れるだろ
  453. ははっ それは面白い話だ
  454. 千鶴: へ…え…
  455. 千鶴: (アタシが祝言だと…!?)
  456.  
  457. FILENAME: text_310463-2.txt
  458. 千鶴: …………
  459. 千鶴: はぁ~あ…
  460. 千鶴: 祝言なんて 微塵も考えてなかったな…
  461. 千鶴: ん?
  462. 露: はぁ…
  463. 千鶴: なーに 辛気くさい顔してんだよ
  464. 露: あら、千鶴 まさかこんな所で会うなんてね
  465. 千鶴: ここで偶然会うのは 初めて会った時以来かもな
  466. 露: ふふっ、そうね
  467. 露: ん?
  468. 千鶴: ん?
  469. 露: 千鶴も浮かない顔ね もしかして何かあった?
  470. 千鶴: 露の気のせいだよ 別になんもねぇ
  471. 千鶴: それより、露は露骨に しんどそうな顔をしてたぞ?
  472. 露: だって 誰もいないと思ってたもの
  473. 千鶴: ってことは、 そっちはなんかあったのか
  474. 露: …ちょっとね 稽古が嫌になって出てきたの
  475. 「ちょっと露姫様! まだ稽古は終わってませんよ!」
  476. 正綱: また、稽古から逃げたそうだな
  477. 露: 逃げたのではありません
  478. 露: 不必要なことに時間を割かず 必要なことに心血を注いだのです
  479. 正綱: ふむ…
  480. 正綱: もちろん、戦神子としての戦いが 重要なのは承知しているが
  481. 正綱: そなたは嫁入り前 嫁ぐ準備をせねばならんのだ
  482. 露: お言葉ですけど父上
  483. 露: これでも和歌には精通してますし 連歌会での私の歌は評判です
  484. 正綱: それは、そうだが…
  485. 露: 計算も家臣より優れているという 自負があります
  486. 露: もしも、戦になるようでしたら 戦費の試算をしましょうか?
  487. 露: 星の動きや距離に合わせて 行軍の計画をしても構いません
  488. 正綱: いや、露…そうではなくてな…
  489. 露: ほら、どこへ嫁に行っても 恥じることなどありません…!
  490. 正綱: 茶や華などといった わびさびを知るのもまた…
  491. 露: 結構です!
  492. 露: 世にはまだ腹を空かせている子が いるというのに…!
  493. 正綱: …………そうか
  494. 露: というわけよ
  495. 千鶴: 露の場合は物臭で さぼってるわけじゃねぇもんな
  496. 千鶴: そういうところ、尊敬する
  497. 露: 何よ急に ちょっと照れるじゃない
  498. 露: …やっぱりおかしい 千鶴も何かあったんでしょ?
  499. 千鶴: …………
  500. 千鶴: 露はさ…嫁入りするために 色々とやってるけど
  501. 千鶴: なんか… 理想の恋愛ってあるのか…?
  502. 露: いえ、別に
  503. 露: いつか父上が決めてくるから もう、私には縁のない話よ
  504. 千鶴: そうだよな… 親父が決めるよな…
  505. 露: ええ、そんなものよ
  506. 千鶴: …………
  507. 露: ――っ!?
  508. 露: もしかして、好きな人がいるの? 泰党の誰か…?
  509. 千鶴: はぁっ!?
  510. 露: まさか… いつも付いてきてるお目付役…?
  511. 露: あれはダメよ 主に対しても金魚の糞だから
  512. 千鶴: いや、ちがっ、そうじゃない!
  513. 露: …そうなの?
  514. 千鶴: もう、この話はやめ!
  515. 千鶴: 妖魔の気配も感じるし 気持ちを切り替えていこう!
  516. 露: ええ…
  517.  
  518. FILENAME: text_310463-3.txt
  519. 露: 少し手強かったけど ふたりでかかれば楽勝だったわね
  520. 千鶴: だなっ
  521. 千鶴: なにしてんだよ
  522. 千鶴: アタシはまだ大丈夫だって そんな穢れも溜まってねぇしさ
  523. 露: 今日、浜辺で会った時と比べると 濁ってたから心配になったの
  524. 千鶴: あぁ…そっか…
  525. 露: ふん…
  526. 露: ねえ、ちょっと付いてきて
  527. 千鶴: えっ?
  528. 千鶴: なんだここ…すげぇ…
  529. 露: この間、妖魔を捜していて 偶然見つけたのよ
  530. 千鶴: へぇ~…
  531. 露: ねぇ、千鶴 蒸し返すようで悪いんだけど
  532. 千鶴: ん?
  533. 露: 恋愛の話
  534. 露: 別に千鶴が誰かを好きになった わけじゃないのよね?
  535. 千鶴: ああ、関係ねぇよ
  536. 露: 何に悩んでるのか知らないけど それなら今を楽しんだ方がいいわ
  537. 露: 私、戦神子としてみんなを救えて 本当に良かったと思ってるけど
  538. 露: それと同じぐらいね こうして得た自由が大好きなのよ
  539. 千鶴: …………
  540. 露: 城の中にずっといて 誰かがいないと外に出られなくて
  541. 露: 外に出たとしても 危険がそこら中にあって
  542. 露: 武勇に秀でていたとしても、 安心することはできない世の中
  543. 露: だけど、今の私は自由に外に出て こんな素敵な場所も見つけられる
  544. 千鶴: …考えもしなかった
  545. 千鶴: アタシも露と出会うまでは ほとんど里の中にいた…
  546. 露: そう思うと、世界が広がった今は 最高の時間だと思わない?
  547. 千鶴: うん、そうかもしれねぇ
  548. 露: 少なくとも私は、戦神子になって 祝言のことを考えるのはやめたわ
  549. 露: 祝言する時は天に任せて
  550. 露: 今は使命を果たしながら 全力で自由を楽しむって決めたの
  551. 千鶴: 自由が短かったとしても 今は楽しんだ者勝ちなのかもなぁ
  552. 千鶴: …うしっ! アタシも考えるのはやめるよ
  553. 千鶴: そして露との時間を楽しむ
  554. 千鶴: もちろん、戦神子としての使命も 果たすけどな
  555. 千鶴: それに、 悩んでる時間がもったいない
  556. 露: そうそう
  557. 露: 今の私たちは、 ならず者ぐらいへっちゃらだしね
  558. 千鶴: 軽くひねって ちょっと散歩にでも繰り出すか
  559.  
  560. FILENAME: text_310463-4.txt
  561. 千鶴: ふぅ…
  562. 露: まさか、あれからまた 妖魔の気配を感知するなんて…
  563. 露: さすがに疲れたから 今日は帰りましょうか
  564. 露: …千鶴?
  565. 千鶴: …………
  566. 露: ん…?
  567. 千鶴: …………
  568. 露: あの… ちょっと袖…放して…
  569. 千鶴: …………かも
  570. 露: なに…?
  571. 千鶴: アタシ…嫁入りするかもぉ…!
  572. 露: ぇえっ!?
  573. 露: もしかして… ずっと悩んでたのって…それ…?
  574. 千鶴: うん…
  575. 露: 嫁入りするかもって… 自由を楽しむどころじゃない…
  576. 千鶴: そうなんだよ…!
  577. 露: それで、相手は…?
  578. 千鶴: 露のところかもしんねぇけど わかんない…
  579. 露: 水名の誰かなのね まあ今の関係なら…そっか…
  580. 千鶴: …アタシさぁ
  581. 千鶴: 体ばっかり鍛えてきて、 人を殺す練習ばっかしてきて
  582. 千鶴: 露みたいに嫁に行くための 稽古なんてしたことねぇんだよ…
  583. 千鶴: ぜってぇ無理だ… うまくいきっこねぇ…
  584. 露: そっか…
  585. 露: うーん…
  586. 露: そういう悩みなら 私で解決できるかもしれない
  587. 露: もし、必要なことがあれば いくらでも稽古の相手になるわ
  588. 千鶴: じゃなくてさ! ごめん、ウソついた!
  589. 露: ま、まってどこから!? 嫁入りの話から!?
  590. 千鶴: 違う…それは本当で… 稽古の話は関係ねぇんだよ…
  591. 露: じゃあ、いったい何…?
  592. 千鶴: 知らないヤツと 急に一緒になるのが…怖い…
  593. 千鶴: 話を聞いてさ… 寝ようとして…
  594. 千鶴: 現実味がねぇから ちょっと想像してみたら
  595. 千鶴: 相手のことわかんねぇし… なんか怖くなってきて…
  596. 露: 可愛いこと言うわね…
  597. 千鶴: だって、そうだろ! 露は怖くねぇのかよ!
  598. 千鶴: 急に知らない男とツラを合わせて はい、コイツが夫ですって
  599. 千鶴: クソみたいなヤツだったら アタシ、どうすりゃいいんだよ!
  600. 露: 言いたいことはわかるけど… そういうものじゃない…
  601. 千鶴: アタシは嫌だぁ!
  602. 千鶴: せめて知ってるヤツがいい!
  603. 千鶴: ひっ…ひぃぃぃん…
  604. 露: ちょっと、千鶴!
  605. 露: …………
  606. 千鶴: …………
  607. 露: 落ち着いた?
  608. 千鶴: ゔん…ごべん…
  609. 千鶴: …ほんとさ 露が男だったら楽だったのに…
  610. 露: それを言われたら 私だって同じ
  611. 露: 千鶴が男だったら 人となりもわかるし嬉しいわ
  612. 露: けど…
  613. 露: 私たちは戦神子同士じゃないと 出会えてないはずよ
  614. 千鶴: ん… なら、女同士で良かった…
  615. 露: とりあえず、悩んでいるよりかは きちんと父上に聞いてみなさい
  616. 千鶴: わかった…そうする…
  617. 山右衛門: はぁ? オメェが祝言する?
  618. 山右衛門: 何言ってんだか 無理に決まってんだろぅが
  619. 千鶴: …は?
  620. 千鶴: ぁあっ!? 昨日話してただろ!
  621. 山右衛門: 昨日だぁ…?
  622. 山右衛門: …あれか
  623. 千鶴: その、あれだよ! 夜中にしゃべってただろ!
  624. 山右衛門: んなもん冗談だ
  625. 山右衛門: 今の泰党にはお前が必要だ 嫁になんてやれるかよ
  626. 山右衛門: 少なくともあと2・3年は しっかり働いてもらうつもりだ
  627. 千鶴: んだよ! 本気で悩んだのにぃ!
  628. 山右衛門: な、珍しい…
  629. 山右衛門: おい、みんなこっち来い! 千鶴のヤツが泣いてんぞ!
  630. 千鶴: ぜってぇ許さねぇ! 覚えてろよ、親父ぃ!
  631. 千鶴: もしかしてアタシって、 そそっかしいところがあんのかな
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