Vi_Vi

Asahi Miura MSS JP Text

Jan 28th, 2022
108
0
Never
Not a member of Pastebin yet? Sign Up, it unlocks many cool features!
text 45.63 KB | None | 0 0
  1. FILENAME: text_310341-1.txt
  2. ちはる: 今日は、旭ちゃんが 時女一族に来た記念の親睦会!
  3. ちはる: みんな集まってくれて ありがとう!
  4. すなお: みなさん 飲み物は手元にありますか?
  5. ちはる: それじゃあ、旭ちゃんが 時女一族に合流したことを祝って
  6. 静香: かんぱーい!
  7. みんな: 「かんぱーい!」
  8. 旭: いやはや…
  9. 旭: 我が遅参したというのに 申し訳ないであります…
  10. 静香: 気にすることないわよ
  11. 静香: 一応、時女一族が全員集まった 記念でもあるんだから
  12. 静香: ここで改めてお互いを知って 親睦を深めていきましょう
  13. ちはる: そうそう!
  14. ちはる: これでやっと時女一族の巫たちが 神浜市に集まったんだもん
  15. すなお: これから慣れない都会で 一緒に頑張っていくわけですし
  16. すなお: 改めて、一致団結しないと いけませんからね
  17. 旭: それもそうでありますか
  18. 静香: そうよ、だから 今日は楽しみましょう!
  19. すなお: それじゃあ、みなさん
  20. すなお: ひとりずつ前に出て 自己紹介をお願いします
  21. 青葉 ちか: …そういうわけで
  22. 青葉 ちか: その願いは 遠回りな方法で叶ってしまい
  23. 青葉 ちか: 山深い時女の分家で 暮らすことになったのですが
  24. 青葉 ちか: この度、時女本家から連絡を頂き 神浜市に戻ってくる運びになり…
  25. 南津 涼子: ほんっと 聞く度にひでー話だって思うよ
  26. 南津 涼子: ズビッ… っしゃ!次はちはるの番だ!
  27. ちはる: はいはーい! わたしの名前は広江ちはる!
  28. ちはる: 好きなものは…等々力耕一と ゆすりん坊将軍とそれから…
  29. ちはる: あ、ゆすりん坊将軍 っていうのはね…
  30. 静香: これで、ひととおり 自己紹介は終わったかしら
  31. 南津 涼子: ちはるのゆすりん坊将軍講座 の間違いじゃなくてか?
  32. ちはる: ごめーん… つい楽しくなっちゃって
  33. 旭: 我は、ちはる殿の説明を聞いて
  34. 旭: ゆすりん坊将軍が 気になってきたでありますよ
  35. ちはる: 本当!?
  36. ちはる: それじゃあこの後、夜通しで 1話から観る会でも…!
  37. 旭: 何話くらいあるのでありますか?
  38. ちはる: シリーズ累計で 約1000話くらいだよ!
  39. ちはる: ちなみに、わたしは サブタイトル全部覚えてるんだ!
  40. 旭: …それは、すごいでありますが
  41. 旭: さすがに1000話は 遠慮しておくでありますよ…
  42. ちはる: だよねぇ…
  43. すなお: それじゃ、最後に旭さん 自己紹介をお願いできますか?
  44. 旭: あ、我でありますか? 我はそんな…
  45. 静香: 今日の主役なんだから むしろ旭が挨拶しないと
  46. 静香: みんな 旭のことが知りたいんだから
  47. 旭: …では、僭越ながら
  48. 旭: 三浦旭、16歳
  49. 旭: 遅れての参加ではありますが …時女一族の一員として
  50. 旭: しっかりと 務めを果たす所存であります
  51. ちはる: うんうんっ!
  52. …………
  53. 青葉 ちか: …?
  54. 旭: …以上であります
  55. ちはる: えぇ!? それだけぇ!?
  56.  
  57. FILENAME: text_310341-2.txt
  58. ちはる: えぇ!? それだけぇ!?
  59. 旭: それだけ…とは
  60. ちはる: いやっ、もうちょっとさ 自己紹介だよ!?
  61. ちはる: 趣味とか出身とか なんかそういう…
  62. ちはる: わたし、もっと 旭ちゃんのこと知りたいよぅ!
  63. 旭: 困りましたなぁ…
  64. 旭: 我の話など、聞いたところで 大して面白くないでありますよ?
  65. 旭: …………
  66. 旭: では、狩猟について お話しするでありますよ
  67. ちはる: やったぁ!
  68. 旭: …このように、止め刺しの作業は
  69. 旭: なるべく苦しませないという点で 非常に重要なことなのであります
  70. ちはる: …命の重みだぁ
  71. ちはる: わたし、これからはもっと いただきますに力いれるねぇ…
  72. 旭: よい心がけであります
  73. 静香: それじゃあ、いい時間になったし そろそろお開きにしましょう
  74. ちはる: …ってぇ!
  75. ちはる: これじゃ狩りの話しか 聞けてないよぅ!
  76. 旭: ちはる殿のゆすりん坊将軍講座に 我もならったのでありますが…
  77. 旭: まずかったでありますか?
  78. ちはる: し、しまった~!
  79. ちはる: うわーん! 気になるよぅ!
  80. 静香: ちょっとちゃる いきなりどうしたのよ
  81. すなお: そうですよ 夜に騒いだら近所迷惑です
  82. ちはる: ご、ごめん… じゃなくて旭ちゃんの話だよぅ!
  83. ちはる: 旭ちゃんの自己紹介 狩りの話しかしてないんだよ!?
  84. 静香: それは、ちゃるの話に あわせてくれたからじゃない
  85. ちはる: でも、わたしたちが回ってきた 分家の出身じゃないし
  86. ちはる: 願いも…趣味だってわかんない… なーんもわかんないんだよぅ!
  87. 静香: あ、願いと言えば 私も話しそびれたわね
  88. すなお: …まぁ、願いについては 巫にとって繊細な話題ですし…
  89. すなお: 話したがらないのなら 無理に聞くべきではないかと…
  90. ちはる: それもそうなんだけど… なんか、気になっちゃって
  91. 静香: …悪意でも感じるの?
  92. ちはる: それは全然…
  93. 静香: えぇ…ちゃるったら どうしちゃったのよ?
  94. 静香: 旭はこれから仲間になるんだから 無闇に詮索するのは良くないわ
  95. ちはる: …うん 静香ちゃんの言う通りだね
  96. ちはる: …でも、旭ちゃんのこと知って もっと仲良くなりたいのに…
  97. ちはる: なんだかモヤモヤするよぅ…
  98. 静香: …じゃあ、今日は3人で 一緒に雑魚寝しましょう!
  99. ちはる: えぇ!?
  100. 静香: 沢山、話をしたら すっきりするかもしれないし
  101. すなお: ふふ、なんだかいいですね 修学旅行みたいで
  102. すなお: こういうの、ガールズトーク …って言うんですよね?
  103. 静香: …がーるずとーく?
  104.  
  105. FILENAME: text_310341-3.txt
  106. 静香: むにゃ…すぅ…
  107. すなお: すー…すー…
  108. ちはる: んんぅ…
  109. ちはる: (あれ、お喋りしながら 寝落ちしちゃってた…?)
  110. ちはる: (うぅ…なんだか、おトイレに 行きたくなってきたよぅ…)
  111. ちはる: (お寺の夜って暗くて 怖いから、イヤなんだけどな…)
  112. ガサガサ…
  113. ちはる: (ひ…! こんな時間に外から物音…?)
  114. ちはる: (泥棒かもしれないし 見に行かなくちゃ…!)
  115. ちはる: (ここら辺から音が した気がしたんだけど…)
  116. ちはる: (…あっ)
  117. ちはる: (旭ちゃんだ… …誰かと話してる?)
  118. ちはる: ――っ!?
  119. ちはる: (あの女の人って…!)
  120. ちはる: (最近、お寺で 葬儀をあげられてた人…!?)
  121. ちはる: (いやでもそんなまさか…)
  122. ちはる: (あ、あああ足が透けてる! オ、オバケだ…!)
  123. ドタバタドタ…ドテッ
  124. ゴソゴソ
  125. すなお: ひゃっ!? 布団になにか入って…!?
  126. ちはる: ひーん… すなおちゃぁん…
  127. すなお: ちゃる!? どうしたんですか!?
  128. ちはる: オ、オバケがぁ… オバケが出たんだよぅ…
  129. すなお: ええっ?
  130. ちはる: 旭ちゃんは オバケだったのかも…
  131. すなお: はい…?
  132. すなお: えっと、それで…
  133. すなお: 旭さんが、最近亡くなったはずの 女性と話していたから
  134. すなお: 旭さんに気付かれる前に ちゃるは逃げて来た…と?
  135. ちはる: うん…
  136. すなお: そこからどうして 旭さんがオバケになるんです?
  137. ちはる: だってだって ゆすりん坊将軍で見たんだもん…
  138. ちはる: オバケと話していた子が 実はもう死んじゃってて…
  139. ちはる: だからオバケと 話せたんだって…
  140. すなお: 話が飛躍しましたね…
  141. ちはる: …お盆休み特別編で ディスク化もされてなかったから
  142. ちはる: わたしも1回しか見たことなくて うろ覚えなんだけど…
  143. すなお: うーん…旭さんが霊能力者とか… それに、私たちは巫ですし
  144. すなお: 固有魔法が関わっている… なんて可能性もありますよね
  145. ちはる: でも、固有魔法だとしたら いったいどんな願いを…
  146. すなお: たしかに固有魔法は願いが 関係してることもありますし…
  147. 静香: もうっ、旭が オバケなわけないでしょ
  148. すなお: あ、静香も起きたんですね
  149. 静香: 旭には足も生えてるし 触れるんだから!
  150. 静香: お、オバケなんて… オバケなんて…!
  151. すなお: あ、震えてる 静香も怖いんですね…
  152. 静香: きっと、ちゃるが寝ぼけていて 見間違えたのよ…!
  153. ちはる: そ、そんなはずないよ!
  154. ちはる: はっ…!
  155. ちはる: (そういえば、ゆすりん坊将軍 お盆休み特別編第二弾では…)
  156. ちはる: 今みたいに、オバケを見つけた将軍は 家臣にそれを話すんだけど信じてもらえなくて
  157. ちはる: だけど、その晩から一人ずつ消えていって… それは、オバケに操られていたみんなが 自ら黄泉の国へ行こうとしちゃってたから …っていうお話があった!
  158. ちはる: (もしかしたら静香ちゃんたちも オバケに操られてるんじゃ…!)
  159. すなお: …ちゃる?
  160. ちはる: (静香ちゃんたちは わたしが守らないと…!)
  161. 静香: …じゃあ見間違いってことで そろそろ寝ても良いかしら?
  162. ちはる: あ、待って!
  163. ちはる: あの…誰か一緒に おトイレについてきてくれない?
  164.  
  165. FILENAME: text_310341-4.txt
  166. <翌朝>
  167. 水徳寺の住職: 大事な話があるということ だったが、どうしたんじゃ?
  168. ちはる: 実は、このお寺には オバケがいるかもしれないんだ!
  169. 水徳寺の住職: なるほど…
  170. 水徳寺の住職: もしかしたら、それは オニババの仕業かもしれぬのう
  171. ちはる: …オニババ?
  172. 水徳寺の住職: 寺に昔から伝わる 昔話があってな…
  173. 水徳寺の住職: 「そのオニババは、人を操って 食べてしまうと言われているんじゃが 特に子どもが狙われやすくてな…」
  174. 水徳寺の住職: 「夜ふかしをしていると姿を現して 子どもを洗脳するような術をかけるんじゃが 術をかけられた子は、皆そろって オニババの存在に気付けなくなる…」
  175. 水徳寺の住職: そうして気付けないまま ガブっ!…とな
  176. ちはる: ひいぃぃ…!
  177. 水徳寺の住職: そうそう、ちょっと待っておれ
  178. 水徳寺の住職: これじゃ
  179. ちはる: 古い巻物…?
  180. 水徳寺の住職: ここに書いてあるこの絵 これがオニババじゃ
  181. ちはる: 怖い… すごい大きな包丁を持ってるね
  182. 水徳寺の住職: オニババはな この包丁を夜な夜な砥いでは
  183. 水徳寺の住職: 獲物を探して 夜の闇を歩くんじゃよ
  184. ちはる: ――っ!?
  185. ちはる: (そういえば、前に旭ちゃんの 部屋の前を通ったとき…)
  186. ちはる: (刃物を砥ぐような音がしたし)
  187. ちはる: (ちらっと 部屋の中が見えたときなんか)
  188. ちはる: (怖そうな包丁とか拳銃が 置いてあったのが見えた…)
  189. ちはる: あ…!
  190. ちはる: (もしかして、昨日の夜 外にいたのも獲物を探しに!?)
  191. ちはる: (じゃあ… あのオバケの女の人は)
  192. ちはる: (既にオニババの餌食になった 被害者だったり…!?)
  193. ちはる: こうしちゃいられないよぅ…!
  194. ちはる: 早くみんなの目を 覚まさないと大変なことに!
  195. ちはる: 水徳寺の平和は わたしが守らなきゃ…!
  196. 静香: えぇ!? 旭がオニババ!?
  197. ちはる: しー! 声が大きいよ静香ちゃん…!
  198. すなお: 朝早くに呼び出すから なにごとかと思ったら…
  199. すなお: ちゃる… さすがに失礼ですよ…
  200. 静香: そ、そうよ…旭が そんな悪い妖怪なわけ…!
  201. ちはる: でも、包丁を砥ぐ音も聞いたし 拳銃だって見たんだよぅ!
  202. ちはる: 住職さんも言ってたし 間違いないよ…!
  203. 静香: …でも…うーん… 旭は仲間だし…
  204. 静香: …………はっ!
  205. 静香: もしかして、旭自身が オニババに操られてるとか…!
  206. すなお: 静香…?
  207. 静香: そう…きっとそうに違いないわ! 旭にオニババが憑いてるのよ!
  208. ちはる: たしかに…それも ないとは言い切れない…!
  209. 静香: それなら、旭から オニババを祓わないとね!
  210. ちはる: うん…!
  211. ちはる: 旭ちゃん自身がオニババなのか それとも憑りつかれているのか
  212. ちはる: まずは、そこから調査だね!
  213. すなお: ちょ、ちょっとふたりとも!?
  214. すなお: 旭さんに 迷惑をかけないで下さいよ!?
  215. 旭: 我の話なんて つまらないものでありますよ
  216.  
  217. FILENAME: text_310342-1.txt
  218. 旭: んん…
  219. 旭: (まだ慣れない環境 ということもあるのか…)
  220. 旭: (昨晩も、あまり 眠れなかったでありますなぁ…)
  221. ちはる: あ、旭ちゃん!
  222. 旭: ちはる殿…
  223. 旭: 顔色が悪いでありますが どうかしたのでありますか
  224. ちはる: その、なんか… いつもと違うところとかない?
  225. 旭: …特にないでありますよ?
  226. ちはる: そ、そっか…そうだよね! わかった!
  227. 旭: …?
  228. 旭: (何だか今朝は空気が おかしいでありますな…)
  229. 旭: (やけに視線を感じる…)
  230. 旭: (我が本当に所属している グループがバレた…?)
  231. 旭: (…いや、そんなボロは 出していないはずであります…)
  232. 旭: (ただ、絶対にバレないという 保証もないでありますから…)
  233. 旭: (警戒をするに越したことは なさそうであります)
  234. 静香: 旭!
  235. 旭: ――っ!?
  236. 旭: (さっそく何か…)
  237. パァン!
  238. 旭: おわっ!?
  239. 旭: なぜ、突然背中を 叩いたでありますか!?
  240. 静香: 憑き物にはこれが 一番と聞いたんだけど…
  241. 静香: 変わりはないかしら…?
  242. 旭: いや、はぁ…えぇ?
  243. 旭: (ツキモノ…?)
  244. ちはる: むむ、見える…見えるよ…!
  245. 旭: えぇっと… 見える…でありますか?
  246. ちはる: 旭ちゃんに悪霊が! お祓いしなくちゃ…!
  247. 旭: (まぁ正直、憑いていても おかしくはないでありますが…)
  248. ちはる: じゃあ今から わたしの言う通りにしてね!
  249. ちはる: まずは、その場でジャンプ!
  250. 旭: こう…でありますか?
  251. ちはる: あれれ…全然音がしない やっぱり持ち歩いてないのかな…
  252. 旭: …カツアゲでありますか?
  253. ちはる: そうじゃなくて武器とか隠し持… な、なななんでもない!
  254. ちはる: あ、これあげる!
  255. 旭: …おふだ?
  256. 旭: ふぁ…ねむ… …………ぐぅ…
  257. 静香: 悪霊退散~悪霊退散~
  258. ちはる: 旭ちゃんはだんだん 本当のことが言いたくなーる…
  259. 旭: …なんでありますか
  260. ちはる: うぇえ!? 起きたぁ!?
  261. 静香: 祓うのに成功したの…!?
  262. 旭: …耳元で話されたら 誰でも起きるでありますよ
  263. 旭: (そもそも、最後に 熟睡したのはいつだったやら…)
  264. 静香: もう、ちゃるが大きな声を 出すからいけないのよ…!
  265. 静香: そもそも祓わなきゃいけないのに ちゃるは何をしているの?
  266. ちはる: 催眠術で旭ちゃんの謎を 解こうとしてたんだよ!
  267. ちはる: 事件を解決に導くには 先入観を捨てるべきだ
  268. ちはる: って、等々力耕一も言ってたし
  269. ちはる: 本当に旭ちゃんが “アレ”だったら大変だから
  270. ちはる: 憑いてる以外の可能性も 考えておかなきゃだよ!
  271. 静香: じゃあ、ちゃるは 仲間を疑うって言うわけ!?
  272. ちはる: そうじゃないけど…!
  273. 旭: あ、あの…?
  274. ちはる: はっ!
  275. 静香: ち、違うのよ旭、これは…!
  276. すなお: ご、ごめんなさい! ご迷惑をおかけしました…!
  277. 旭: 本当に、なんなのでありますか…
  278. 旭: (はらう…ツキモノ… あ、憑き物を祓う?)
  279. 旭: (時女一族には霊能力者か何か いるのでありましょうか…)
  280. 旭: (霊能力者…というなら我の方が 近い気はするでありますが…)
  281. 旭: (いや、それより気にすべきは ちはる殿の発言であります…)
  282. 旭: (我に隠し事がある …と踏んでいるような発言…)
  283. 旭: (我について何かバレて…?)
  284. 旭: …はぁ、少し様子を 窺ってみるでありますか
  285. 旭さんが…? でも…そんなわけは…
  286. 何しろ…って噂だけど…
  287. 旭: (大事なところが 聞こえないでありますが)
  288. 旭: (何やら我について妙な噂が たっているようでありますな)
  289. 旭: (何となくちはる殿がこの話の 中心にいるようでありますが…)
  290. 旭: (…というか、何やら 揉めているようでありますな)
  291. ちはる: 一通り試したけど駄目だったし やっぱり旭ちゃん自身が…
  292. すなお: だからって それはやりすぎですよ…!
  293. ちはる: だけどこれは、旭ちゃんの潔白を 証明するためでもあるんだよ
  294. 静香: …もし本当に旭がそうなら
  295. 静香: ちゃるの言う通り 本人に聞くわけにはいかないわね
  296. ちはる: うん…わたしたちで 調べるしかないよ…!
  297. 静香: 旭の潔白を証明するためなら 仕方ない…わよね
  298. すなお: 本気ですか…?
  299. ちはる: うん 旭ちゃんの部屋をあらためよう
  300. 旭: ――っ!?
  301.  
  302. FILENAME: text_310342-2.txt
  303. 旭: (我の部屋をあらためる…?)
  304. 旭: (やはり 我の潜入がバレた…!?)
  305. 旭: (部屋を見られたところで 証拠は出ないはずでありますが)
  306. 旭: (そもそも、あの部屋には 色々と見られたくないものが…)
  307. 旭: (それに、潜入先のグループ内で 疑われているようでは)
  308. 旭: (ここで我がすべきことも できぬかもしれないであります)
  309. 旭: (何はともあれ、まずは 部屋への侵入を防がねば…!)
  310. 旭: (これはさながら罠猟… 血がたぎるでありますなぁ)
  311. 旭: (…っと、その前にあちらが 部屋に侵入する隙を与えねば…)
  312. 旭: さて、ちはる殿たちには 少ししたら外出すると伝えたゆえ
  313. 旭: 恐らくは、その時間に 突入してくるはずであります
  314. 旭: さっそく、ちはる殿たちを 迎え撃つ準備をしないとですな
  315. 旭: 中まで入られるのは 覚悟しないとでありますし
  316. 旭: 先日砥いだ 猟で使うサバイバルナイフも
  317. 旭: 危ないので しまっておかないとでありますな
  318. 旭: …趣味で集めているモデルガンや 階級章のレプリカ…
  319. 旭: おじいちゃんに貰ったものも 結構あるでありますな…
  320. 旭: スチームパンクっぽいと思って 買ったゴーグルと時計も…
  321. ガチャ、ガサゴソ、シャン
  322. 旭: う…細々したもので ごちゃついているであります…
  323. 旭: そして、こう見ると 迷彩柄のものが多い…
  324. 旭: 趣味のものは、もう少し実家に 置いてくるべきでありましたか…
  325. 旭: いや、しかし 地元に帰ることも、もう…
  326. 旭: どうにかして 片付けるほかないでありますな
  327. 旭: …無可動実銃なんて見られたら あらぬ誤解を受けそうであります
  328. 旭: ふぅ…途中でコレクションに 気を取られてはいたでありますが
  329. 旭: なんとか見られたら困るものは しまいきれたでありますな…
  330. 旭: まぁ… 主に趣味のものでありますが
  331. 旭: カレンダーから文房具、本棚まで 趣味が滲み出ていたゆえ
  332. 旭: 片付けたら何もない部屋に なってしまったでありますね
  333. 旭: 現在入手困難なアンティーク物と おじいちゃんに貰った懐中時計は
  334. 旭: 何かあったら困るでありますから 机の引き出しにしまい…
  335. 旭: あとは部屋の周りに トラップを仕掛けて…っと
  336. 旭: …できたであります!
  337. 旭: 廊下…縁側…庭… 部屋への導線に沿って罠は設置済
  338. 旭: ケガはさせられないので
  339. 旭: 縄を使った簡単な トラップが中心でありますが
  340. 旭: テリトリーに侵入される前に 食い止めるには十分であります
  341. 旭: あとは…
  342. 旭: …狩りの基本 待つのみであります
  343. 旭: どこまで噂が広がっているか 状況は定かではないでありますが
  344. 旭: 分家にも伝わっている以上は 何人で攻め入ってくるかも未知数
  345. 旭: 我の身の上も知られている恐れがあるなら 時女一族を去るという選択も 考えておくべきでありますな…
  346. ちはる: みんな、準備はいい?
  347. 静香: えぇ、旭の潔白を 証明するためだもの
  348. すなお: …ここまで来たら 覚悟はできました…
  349. すなお: まったく 気乗りはしないですけど…
  350. ちはる: それじゃあ、庭から まわっていくよ!
  351. 旭: …………来たでありますな
  352.  
  353. FILENAME: text_310342-3.txt
  354. ちはる: じゃあ、みんな行くよ!
  355. 一番槍は私が…!
  356. ちはる: みんな続けて突入!
  357. 静香: わかったわ!
  358. 「きゃああっ!?」
  359. ちはる: な、何事!?
  360. 「うわぁあ!」
  361. 静香: 今行くわ…!
  362. 静香: きゃっ!?
  363. ちはる: し、静香ちゃんが消えた!? 何が起きてるの!?
  364. 「うわぁああっ」
  365. 旭: (順調に罠に かかっているようでありますな)
  366. 旭: (この調子なら、部屋への侵入は 阻止できそうであります)
  367. 旭: ――っ!?
  368. 旭: (まさか…!)
  369. 旭: 部屋の中まで辿り着いてしまうとは…
  370. 旭: いや、入られただけでは まだ問題はないであります…
  371. 旭: 押し入れか机に手をかけ次第…
  372. ちはる: …あれ、前にあった 強そうな包丁がない?
  373. ちはる: ギザギザしてて料理で使うのとは 違うやつだった気がするんだけど
  374. ちはる: 本当に、わたしの 見間違いだったのかな…
  375. ちはる: ていうか この部屋なんっもない!
  376. ちはる: …あ、机の引き出しが ちょこっと開いてる…
  377. ちはる: …………ちょこっと… ちょこっと覗くだけなら…
  378. 旭: そこまでであります
  379. ちはる: ――っ!?
  380. 旭: 何のつもりか 知らないでありますが
  381. 旭: それ以上の干渉は やめて欲しいであります
  382. ちはる: た、たた…
  383. 旭: …た?
  384. ちはる: た、食べないでぇ~!
  385. 旭: はっ?
  386. じゃらじゃら
  387. 旭: …ちはる殿が持っているのは 数珠でありますか!?
  388. 静香: あ、あわわわわわ 悪霊退散悪霊退散~~!
  389. 旭: えぇ…? 静香殿は、いったい何を…?
  390. すなお: ご、ごめんなさいごめんなさい!
  391. すなおの声: ふたりを止めきれなかった 私のせいなんです!
  392. 旭: ちょ、すなお殿!? 土下座はやめるであります!
  393. 旭: というか、みんな何故 数珠やらお札やらを…!?
  394. 南津 涼子: おいおい何の騒ぎだこれは 悪霊でも出たってぇのか!
  395. 青葉 ちか: 不審者ですか!?
  396. 旭: いやちょっと我にも いったいぜんたい…
  397. 旭: (我の素性が割れた…などという ことではなさそうな雰囲気…?)
  398. ちはる: お母さーん! うわーん!
  399. 静香: 悪霊退散くわばらくわばら…
  400. すなお: ごめんなさいごめんなさい
  401. 旭: あーもう!
  402. 旭: 一旦!一旦みんな 落ち着くでありますよ!
  403.  
  404. FILENAME: text_310342-4.txt
  405. 旭: 我が…オニババ?
  406. 静香: ちゃるは最初そう言ってたけど…
  407. 静香: 私は旭がオニババに 取り憑かれてるんだと思って…
  408. 旭: それで祓うための行動が
  409. 旭: 突然背中を叩くなどの 珍行動でありましたか…
  410. 旭: それに数珠やお札も… 納得いったであります…
  411. 旭: そして、我がオニババだと 思ったきっかけは
  412. 旭: 我がオバケと喋ってたから …でありますか?
  413. ちはる: ゆすりん坊将軍で 似たような話があったし
  414. ちはる: 住職さんにもオニババの巻物を 見せてもらったから…
  415. ちはる: でも、よく考えたら 旭ちゃんがオニババとか
  416. ちはる: ありえないよね… ごめんね旭ちゃん
  417. 旭: いや…わかってもらえたなら 何よりでありますが…
  418. 旭: (ということは、やはり 我の秘密はバレていない…?)
  419. 南津 涼子: というか、そのオニババの話 住職に聞いたんだよな?
  420. ちはる: うん、なんかお寺に伝わる話 って言ってたんだけど
  421. ちはる: もしかして涼子ちゃんも 聞いたことあった?
  422. 南津 涼子: いや、あたしは別に 聞いたことねぇなぁ…
  423. 南津 涼子: 似たような子どもだましの話は 聞いたことあんだけど…
  424. 青葉 ちか: …それってもしかして…
  425. 水徳寺の住職の声: 「う、うわぁああああ」
  426. ちはる: ――っ!?
  427. ちはる: 住職の声だ
  428. 旭: もしや庭にある我の罠に かかったのでは…
  429. ちはる: 見に行ってみよう!
  430. 水徳寺の住職の声: た、助けてくれぇ…
  431. 南津 涼子: ありゃ、宙ぶらりんじゃねえか
  432. 旭: まさか住職がひっかかるとは …申し訳ないであります
  433. 水徳寺の住職の声: いや、申し訳ないのは ワシの方なんじゃ…
  434. 旭: とりあえず降ろすでありますから 話はそれから…
  435. ちはる: …え、つまり嘘ってこと?
  436. 青葉 ちか: やっぱり…盛ったんですね?
  437. 南津 涼子: オイオイ住職が 妄語たぁ、どういう了見だ?
  438. 水徳寺の住職: 返す言葉もないわい…
  439. 水徳寺の住職: オニババ伝説自体は事実じゃが ちはるちゃんに話したのは
  440. 水徳寺の住職: 子どもに夜ふかしさせないために 色々改変した作り話なんじゃ
  441. 水徳寺の住職: ちはるちゃんの反応がいいもんで つい楽しくなってしまったが…
  442. 水徳寺の住職: まさか、こんな大騒動に なっていたとは知らず
  443. 水徳寺の住職: ついさっき、状況を知って 駆け付けたところじゃった
  444. 水徳寺の住職: 旭ちゃんには迷惑をかけて 本当に申し訳ない…
  445. 旭: 誤解が解けたのなら 我は構わないのでありますよ
  446. ちはる: わたしもごめんね…
  447. 旭: いや、我も…罠に少々本気を 出し過ぎたようでありますから
  448. 旭: 狩人の血が騒いだゆえ 申し訳ないであります…
  449. 静香: ううん… 先に疑ったのは私たちだもの
  450. すなお: …本当にごめんなさい
  451. 申し訳ありません…
  452. …………
  453. 南津 涼子: なんっだこの空気は!
  454. 青葉 ちか: そうですよ 住職さんの嘘は許されませんが
  455. 水徳寺の住職: ウッ…
  456. 青葉 ちか: お互い誤解は解けたわけですし
  457. 南津 涼子: お、そうだ みんなで飯にしようぜ
  458. 南津 涼子: ちょうど今朝、ちかと 釣りをしてきて大漁だったしな
  459. 南津 涼子: 同じ釜の飯を食えば なんとやらってやつだ!
  460. 南津 涼子: まぁ、前にも歓迎会で飯は 食ってるけど、改めてな!
  461. 青葉 ちか: いい案ですね
  462. 旭: では、我もお詫びとして ジビエ料理を振舞うでありますよ
  463. 水徳寺の住職: ワシも何か振舞うから 許してくれぇ…
  464. 旭: 別に、我はもう 気にしていないのでありますが…
  465. ちはる: じゃあ…ジュースとお菓子!
  466. すなお: こら、ちゃる…
  467. 旭: オニババ…ですと?
  468.  
  469. FILENAME: text_310343-1.txt
  470. 静香: それじゃあ、仲直りの印 ということで…
  471. ちはる: 住職さんに 買ってもらったジュースで
  472. みんな: 「乾杯!」
  473. 旭: いやはや、時女一族は 宴会が多いでありますなぁ
  474. 静香: 確かに、集落でも大人たちが よく宴会を開いていたわね
  475. ちはる: ねぇねぇ、これ 旭ちゃんが作ったの?
  476. 旭: そうでありますよ
  477. 旭: 無骨なものばかりではありますが ジビエ料理は得意なのであります
  478. ちはる: すっごく美味しいね!
  479. ちはる: なんか、もっと獣臭かったり するのかなって思ったけど
  480. ちはる: 全然、そんなことないよ!
  481. すなお: はい、とっても美味しいです!
  482. 旭: お口にあったようで 何よりであります
  483. 旭: 獣臭さをやわらげるため
  484. 旭: 色々と下処理をしておいた 甲斐があったものであります
  485. ちはる: …あの、旭ちゃん 今回は、ほんとにごめんね
  486. 旭: いえいえ、その話は もういいでありますよ
  487. 旭: 元々は誤解させた 我にも責任がある以上
  488. 旭: やりすぎたのは お互い様であります
  489. ちはる: でも…あの、1個だけ すっごい気になってて
  490. ちはる: 聞いてもいいかな?
  491. 旭: 内容によるでありますが…
  492. ちはる: あの、オバケ!
  493. ちはる: あれだけはさすがに 気になって気になって!
  494. ちはる: 話したくなければ全然 いいん…だけどぉ…
  495. 旭: 顔と言葉が 喧嘩してるでありますな
  496. 旭: …あれは 我の固有魔法でありますよ
  497. ちはる: 固有魔法?
  498. すなお: ほら、最初に私が 言ったじゃないですか!
  499. ちはる: あれれ、そうだったっけ?
  500. 静香: 旭の固有魔法って オバケと話せるものなの?
  501. 旭: まぁ、そんなところであります
  502. 旭: 話していた女性は 以前、保護した迷い猫の飼い主で
  503. 旭: ひとり暮らしと聞いていたため 猫の引き取り先にあてがあるのか
  504. 旭: 固有魔法を用いて 確認していたのでありますよ
  505. ちはる: そうだったんだ…
  506. 静香: 旭は 人にも動物にも優しいのね
  507. ちはる: それなのに、わたしは オニババだなんて…うぅ
  508. 旭: あぁ、ちはる殿が またブルーに…
  509. 涼子の声: おーい!
  510. 南津 涼子: 住職のおごりで 菓子を用意してもらったぞ!
  511. 青葉 ちか: 一緒に温かいお茶も いれてきたんですけど
  512. 青葉 ちか: お取り込み中でした…?
  513. 旭: いや、ありがたい ちょうだいするでありますよ
  514. ズズッ
  515. 旭: ―旭― あっちち…!
  516. ちか: ―ちか― え、そんなに熱かったですか? すみません…
  517. 旭: ―旭― あぁいや、気にせずとも問題ないであります 我は少しばかり猫舌でありまして…
  518. 旭: ―旭― 普段は気をつけているのでありますが 完全に気を抜いていた我の責任であります
  519. ちはる: …なんか意外かも
  520. 南津 涼子: たしかに、新たな一面 ってぇ、感じがあったかもな
  521. 旭: えぇ…? 猫舌ごときで大げさでありますよ
  522. 静香: そっか…
  523. 旭: どうしたでありますか?
  524. 静香: 誰かのことを知るのに 聞き出す必要なんてないのよ
  525. 静香: 今、旭が猫舌なのを 初めて知ったみたいに
  526. 静香: 日々を一緒に過ごす中で お互いのことを詳しくなっていく
  527. 静香: それが自然なんだなって
  528. 静香: …だからごめんなさい
  529. 静香: 私たち、旭と仲良くなりたくて 無理矢理知ろうとしちゃったけど
  530. 静香: それってよくないことよね
  531. すなお: …そうですね
  532. すなお: 焦らず、ゆっくり お互い知っていけたらいいですね
  533. ちはる: うん!
  534. 旭: そうして頂けると 我としてもありがたいであります
  535.  
  536. FILENAME: text_310343-2.txt
  537. ラビ: …それで、旭の方はどう?
  538. ラビ: オニババ…とかなんとかで 揉めていた件については?
  539. 旭: ちょいちょいその話を 蒸し返してくるでありますなぁ…
  540. うらら: ラビさんの お気に入りの話題なんよ
  541. うらら: 真顔でぶっこんでくるから 不意打ちで笑いそうになるんよ
  542. アレクサンドラ: ラビちゃん自身も、何度か 思い出して肩震わせてたもんね
  543. 旭: 人の危機をネタ扱いしないで 欲しいでありますよ…
  544. 旭: そもそも、オニババの疑いは すでに晴れたと何度も…
  545. 旭: それに…
  546. ちはる: 旭ちゃん、おはよ~
  547. 旭: おはようであります
  548. 旭: (オニババの疑いが 晴れてからというもの…)
  549. 旭: (穏やかな日が続いている)
  550. 旭: あんなに我を嗅ぎまわっていた ちはる殿もすっかり鳴りをひそめ 周囲からの嫌な視線も感じなくなった
  551. 旭: (なんだかここは 息がしやすいであります)
  552. 旭: ふぁ…
  553. 旭: (落ち着くと思ったら 寝てしまっていたであります…)
  554. 旭: (こんな風に眠るのは いつぶりでありましたか…)
  555. 旭: (…ん、腹にタオル… 誰がかけたのでありましょうか)
  556. すなお: あ、すみません …起こしちゃいました?
  557. すなお: お腹を冷やすと悪いと思って タオルをかけたんですが…
  558. 旭: …いえ、ありがたいであります
  559. 青葉 ちか: 旭さん起きたんですね 良ければお茶をいかがですか?
  560. 旭: え、あぁ… ちょうだいするであります
  561. ズッ
  562. 旭: …あっ、熱くない
  563. 青葉 ちか: ふふ、気付かれました? 前回の学びから冷ましてきました
  564. 旭: ふっ、ちょうどいい あったかさでありますなぁ…
  565. 旭: 時女一族は、我をあたたかく 受け入れてくれているであります
  566. ラビ: …それなら良かった
  567. 旭: 本題は、ここからで…
  568. 旭: 先日、時女の集落に 行ってきたでありますが…
  569. 旭: あの境遇において本家たちが まっすぐ純粋でいられるのは
  570. 旭: 素直にすごいと思う反面で 危うさも感じているであります
  571. <霧峰村>
  572. 旭: ここが、その裳着の儀をする 場所でありますか…
  573. 静香: そうよ
  574. 静香: わざわざ立派な衣装を纏ってね ここから突き落とされるの
  575. 静香: すぐ先は滝壺
  576. 静香: 私の憧れだった人たちはみんな そこで眠っているわ…
  577. 旭: っ…
  578. ちはる: わたしも見たよ 一緒に滝壺に落ちたから…
  579. 静香: 「私たち時女一族は 生まれた時から巫と共にあり 他者のために命を全うする存在!」
  580. 静香: 「非業によって志半ばにしてこの世を去った 巫たちの想いを背負い 魔女化という理不尽を打ち破り 全力で日の本と人々のために尽くすのよ!」
  581. 静香: 「巫であることを人生の添え物にして ただ宿命から逃げようとする者たちとは違うわ!」
  582. 旭: 彼女らを取り囲んでいたのは 欲望に塗れた大人たちの思惑…
  583. 旭: それでも彼女たちは 汚れず、まっすぐに生きて
  584. 旭: 時女の集落を訪れ、我は…
  585. ラビ: 旭…
  586. 旭: あぁ、いけないであります
  587. 旭: 早く帰らないと 心配させてしまうでありますよ
  588. 旭: では、我はここで
  589. ラビ: ………
  590. 旭: (少しの間、身を置くだけの 関係であることはわかっている)
  591. 旭: (それでも、気を抜くと 離れがたくなってしまう…)
  592. 旭: (いまだ汚れず 純粋さも忘れぬ彼女らは)
  593. 旭: (諦念を信じた我には いささか眩しすぎるであります)
  594. 旭: (行きつくところは 皆、同じであるとしても)
  595. 旭: (我は…)
  596. ちかの声: あ、旭さん! ここにいたんですね!
  597. 旭: …ちか殿 いかがしたでありますか?
  598. 青葉 ちか: あの、今からみんなで 私の掘っ立て小屋で
  599. 青葉 ちか: 天体観測をしないかって 話をしていたんですけど
  600. 青葉 ちか: 旭さんも一緒にいかがですか?
  601. 旭: …ぜひ、ご一緒するでありますよ
  602.  
  603. FILENAME: text_310343-3.txt
  604. すなお: 今日は、流星群が ピークなんだそうですよ
  605. 旭: そうなのでありますね 知らなかったであります
  606. 静香: 集落よりも 見える星の数は少ないけど
  607. 静香: 都会の山でも ちゃんと星は見えるのね…
  608. ちはる: ねぇねぇ、流れ星と言えば やっぱりお願いだよね!
  609. 南津 涼子: おうおう、煩悩に まみれてんなぁ、ちはる!
  610. ちはる: そういう涼子ちゃんだって さっきお願いごとしてたくせに!
  611. 南津 涼子: まぁ、ちっと世界平和をな!
  612. ちはる: 規模がおっきい!
  613. ちはる: わたしはさっきから考えてるけど 全然、願いが決まんないんだよぅ
  614. 静香: 私たち巫にとっては 願いって大事なものだものね
  615. 旭: …そうでありますなぁ
  616. ちはる: 旭ちゃんは お星さまになんてお願いするの?
  617. 旭: …我でありますか?
  618. 旭: 我は…
  619. 旭: …………
  620. 旭: もし叶うならば 魔法少女になったあの日の自分を
  621. 旭: どうにかして 叱ってやりたいであります
  622. 旭: …そんな願いはやめろ、と
  623. すなお: 後悔するような願い …だったんですか?
  624. 旭: …そうであります
  625. 旭: 『我、昔は人と一緒にいるのが大好きで… よく児童館の子どもたちに勉強を教えに行ったり 自ら知人の相談相手になっていたりと 積極的に人と関わっていたのであります』
  626. 旭: 『ただ、人から干渉される側になるのはイヤで… 当時からやっかいな性格だったのでありますよ』
  627. 旭: 『そんな中、反抗期ゆえか 祖父が自分に向ける干渉が嫌で嫌で…』
  628. 旭: 『それで、キュゥべえに願ったのであります 祖父の干渉を止めて欲しい…と』
  629. 旭: 『しかしその願いは、祖父の父が奉られている 戦争の慰霊碑の取り壊しによって 祖父が落ち込んで体調を崩す…という』
  630. 旭: 『とても迂遠な経緯で 叶うこととなったのであります…』
  631. 旭: 我は、日に日に衰弱していく 祖父の姿を見て
  632. 旭: ひどく後悔したでありますよ…
  633. 旭: 今なら…祖父が我に干渉してきた 理由も、わかるでありますから
  634. 旭: 当時だって、愛されていたことに 気付けぬような馬鹿ではなかった
  635. 旭: それでも、あの頃の我は 祖父が鬱陶しくて仕方なくて
  636. 旭: …でも、そんな風に願いが 叶うだなんて思いもしなかった
  637. 旭: …そして、そんな悼む気持ちが 現れた結果があの固有魔法
  638. 旭: だから、魔法少女になるなら せめて他の願いで…
  639. 旭: そう 昔の我を叱りたいのであります
  640. 旭: 叶いっこないのでありますが
  641. ちはる: うっ…うぅ…
  642. 旭: ちはる殿!?
  643. ちはる: そんなの 九兵衛様もあんまりだよぅ…!
  644. ちはる: ぐすっ…
  645. すなお: …ちなみに、ですが
  646. 旭: …?
  647. すなお: 干渉って、何にされたんです?
  648. 旭: なっ…
  649. ちはる: 干渉…恋愛とか!?
  650. 旭: ~~~~!
  651. 静香: えっ、れ、れ、恋愛!? 恋愛って…あの!?
  652. 旭: ち、違う! 違うでありますよ!
  653. すなお: あ、あぁすみません…
  654. すなお: あんまり聞いたら まずいところでしたか…
  655. 旭: …いや、その、進路がどうとか 学校での様子とか、それから…
  656. ちはる: それから…?
  657. 旭: っ… 笑わないで、ありますか…
  658. ちはる: どんな大恋愛だろうと わたしは絶対に笑わないよ!
  659. 旭: いやだからそういう話じゃ ないでありますよ…
  660. 旭: …その、趣味に 干渉されたのでありますよ
  661.  
  662. FILENAME: text_310343-4.txt
  663. 旭: …その、趣味に 干渉されたのでありますよ
  664. 旭: …武家の家系ゆえ 祖父から戦争の話を聞いたり
  665. 旭: 近くの自衛隊基地の人に 影響されたりして…その
  666. 旭: ミリタリーものが 好きになったり…
  667. 旭: …そこから発展して スチームパンクとかが好きで…
  668. ちはる: うん
  669. 旭: …うん!?
  670. 旭: その、子どもっぽいとか 笑わないでありますか?
  671. ちはる: いやだって、魔法少女服とか… 狩りしてることとか知ってるし…
  672. ちはる: なんかその趣味も 旭ちゃんのイメージ通りだし
  673. ちはる: っていうか、全然 子どもっぽくないと思うよ?
  674. ちはる: どっちかっていうと大人の趣味 ってイメージすらあるかも
  675. 旭: そう…なのでありますか?
  676. すなお: そうですね…
  677. すなお: 私も、その… 可愛いものとか好きなので…
  678. すなお: それを言ったら私の方が 子どもっぽい趣味かも…
  679. ちはる: あ、もしかして前に旭ちゃんの 部屋にあった武器みたいなのって
  680. ちはる: その、ミリタリー趣味と 関係してるの?
  681. 旭: 見られていたでありますか… …まぁ、そんなとこであります
  682. ちはる: 包丁砥いでるみたいな音も 全部それだったんだね…!
  683. 旭: それは、狩猟で使う サバイバルナイフでありますが…
  684. ちはる: あ…!
  685. ちはる: 趣味のものを見られたくなくって あんなに罠もはってたんだね!
  686. ちはる: 部屋に何もなかったのも 全部しまってたからなのか!
  687. 旭: まぁ、そうでありますな…
  688. ちはる: 色々と気になってたけど 謎は全て解けたっ!
  689. ちはる: あ、ねえねえ! 今度、他のものも見てみたいな!
  690. 青葉 ちか: 私もご一緒したいです! 旭さんが嫌でなければですが…
  691. 旭: 引かないなら 少しはいいでありますよ…
  692. ちはる: あっ… また、ズケズケとごめん
  693. ちはる: でも、絶対に引かないよ!
  694. ちはる: だって旭ちゃんのことが 前より知れるの、嬉しいから!
  695. 旭: …っ、そうでありますか
  696. 静香: …ところで、みりたりーとか すちーむぱんく…ってなに?
  697. 旭: …そこからでありましたか
  698. 南津 涼子: あたしもよくは知らねえけど 大体同じようなもんじゃねえのか
  699. 旭: 全然違うでありますよ…!
  700. 旭: そもそもミリタリーと 一口に言っても…
  701. 南津 涼子: お! 流れ星…!
  702. 旭: ちょ、話をそらさないで 欲しいでありますよ…!
  703. ちはる: あ、でもほんとに流れ星だ!
  704. すなお: 今の時間が ピークみたいですね
  705. ちはる: どうしようどうしよう 早くお願いしなきゃ!
  706. ちはる: えっとえっと…そうだ!
  707. ちはる: 「おばあちゃんになっても、こうやって みんなで仲良く一緒にいられますよーに!」
  708. 旭: …………
  709. ちはる: ほらほら みんなも早く!
  710. すなお: じゃあ 毎日平和に仲良く、とか…?
  711. 南津 涼子: …………
  712. ちはる: 涼子ちゃん 今度は何をお願いしたの?
  713. 南津 涼子: ん? まぁ、ちょっとな
  714. 青葉 ちか: 私は、また両親と一緒に 自然の中で暮らせたらいいな…
  715. 静香: 私は、何を願おう… 時女一族の繁栄…とか?
  716. すなお: それは本家としての願いですよね 静香自身はどうなんです?
  717. 静香: …うーん、わからないけど
  718. 静香: みんなが平等で 幸せな未来がいいわね
  719. ちはる: 旭ちゃんは?
  720. 旭: 我…でありますか?
  721. 旭: …そうでありますね
  722. 旭: (我らの願いは決して叶わない)
  723. 旭: (おばあちゃんになることも …未来の平和も、なにもかも)
  724. 旭: (我らを待つのは滅びだけ…)
  725. 旭: (でも…それでも、もしも 願いが叶うというのなら…)
  726. 旭: これからもずっと穏やかに みんなと共に居られれば…
  727. 旭: そうしたらきっと 楽しいでありますな
  728. ちはる: うんっ! そうだね旭ちゃん!
  729. 静香: ふふっ
  730. すなお: どうしたんですか静香
  731. 静香: なんだか、みんなと また少し近づけた気がしたのよ
  732. 静香: 正直、最初は旭のことも 知らないことばかりで
  733. 静香: それは、今も変わらないんだけど
  734. 静香: それでも、私たちは少しずつ 仲間になれてるんだなって
  735. 静香: …そう思ったの
  736. 静香: …ねぇ、旭
  737. 静香: これからも、時女一族として 共に歩んでくれるかしら
  738. 旭: っ… もちろんであります
  739. 旭: (離れなければならぬ その日が来るまで)
  740. 旭: (我はここで、できうる限りの ことをするであります)
  741. 旭: (…本当は、ここまで 肩入れする必要はない)
  742. 旭: (それでも…)
  743. 静香: ありがとう、旭!
  744. 旭: (無邪気に笑う彼女らが 不幸になるのは見たくない)
  745. 旭: たとえ 行きつくところは同じであるとしても…
  746. 旭: 少しでも長く生きて欲しいと できるだけ笑っていて欲しいと そう、思ってしまうのであります
  747. 旭: だから…叶わないとはわかっていても 期待した分だけ、絶望が色濃くなるとしても 少しだけ、希望を見てしまう
  748. 旭: …祈らずには、いられないのであります
  749. 旭: いつか来る、そのときまで
  750. 旭: どうか…
  751. 旭: 希望などない… それでも、信じたくなる
Add Comment
Please, Sign In to add comment