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A Bouquet for Tomorrow's Happiness JP Text

Jun 9th, 2023 (edited)
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  1. From the opening sequeunce in 519310-0
  2. 幸せって
  3. なんだろう
  4. …なんて問題は得意じゃない
  5. [Title card] あしたの幸せに花束を
  6.  
  7. FILENAME: text_519310-1_mJvgp.txt
  8. みたま: はいっ 調整が終わったわよぉ
  9. 江利 あいみ: ありがとう、みたまさん!
  10. みたま: …………
  11. 江利 あいみ: ん…どうかしました?
  12. みたま: その…ごめんね、あいみちゃんの 妄想が見えちゃったと言うか…
  13. みたま: 話題にしない方が いいんだろうけど
  14. みたま: 好奇心に負けてもいいかしら…
  15. 江利 あいみ: えっ!? あ、えっと…はい?
  16. みたま: あいみちゃんって… …結婚式は、チャペル派なのぉ?
  17. 江利 あいみ: ――っ!?
  18. 江利 あいみ: 私、今そんな妄想してました!? うぅ~恥ずかしい!
  19. みたま: ごめんなさいね 見る気は無かったんだけどぉ
  20. 江利 あいみ: だって、やっぱり ウェディングドレスって憧れだし
  21. 江利 あいみ: でも、最近は白無垢を着るのも いいかなって思ってたり…
  22. 江利 あいみ: その場合、結婚式場は神社とか 和風な感じになるのかな…ふふ
  23. 江利 あいみ: まぁ…その前に告白から… なんですけどね…
  24. ???の声: こんにちは~…
  25. 江利 あいみ: あ、ふたりとも遅かったね? …って、なんか元気ない?
  26. 加賀見 まさら: 来る途中、いろいろあって…
  27. みたま: あら…! ウェディングフォトのモデル?
  28. みたま: しかも、海での撮影だなんて ロマンチックねぇ~
  29. 江利 あいみ: スカウトって ふたりともすごいじゃん!
  30. 粟根 こころ: うーん…
  31. 江利 あいみ: …あれ? あんまり嬉しくない感じ?
  32. 粟根 こころ: そうじゃないけど なんか、複雑で…
  33. 粟根 こころ: ほら、うちの親は1回別れてるし なんだかな~って
  34. 江利 あいみ: あ、そっか…
  35. みたま: なら、スカウトは どうして断らなかったのぉ?
  36. 加賀見 まさら: …誘ってきたカメラマンさんが どうしてもと頼んできて
  37. 粟根 こころ: ふたり以外にモデルは ありえないとか言われちゃったら
  38. 粟根 こころ: さすがに 断りづらいよねぇ…
  39. みたま: そうだったの…
  40. みたま: でも、そのくらいふたりが モデルにぴったりってことよぉ!
  41. 江利 あいみ: うんうん! すごいことだよね!
  42. 粟根 こころ: そ、そうかなぁ… だったら嬉しいけど…
  43. みたま: それに、ウェディングフォトを 無料で撮ってもらえるんでしょ?
  44. みたま: ふたりにとっても、いい思い出に なるんじゃないかしら?
  45. 加賀見 まさら: …珍しい機会なのは確かだし 一理あるのかも
  46. 粟根 こころ: うん…うん、そうだね
  47. 粟根 こころ: よーし、引き受けたからには 本気でやるか!
  48. 江利 あいみ: それなら、まずは結婚する ふたりの気持ちにならなきゃ!
  49. 加賀見 まさら: 結婚するふたりの?
  50. 江利 あいみ: そう…愛し合うふたりが 結ばれる…それが結婚…!
  51. 江利 あいみ: 結婚式を挙げるなら、チャペルも 和風っぽいのも憧れちゃうけど
  52. 江利 あいみ: 海辺なんかも素敵だよね…!
  53. 神父: 病める時も健やかなる時も 愛し合うことを誓いますか?
  54. 伊勢崎 隼人: はい、誓います
  55. 江利 あいみ: …わ、私も…! 誓います!
  56. 神父: それでは、誓いのキスを…
  57. 江利 あいみ: あいみ…
  58. 江利 あいみ: 隼人くん…
  59. 粟根 こころ: あいみー! あーいーみー!
  60. 江利 あいみ: わっ!?
  61. 江利 あいみ: あはは、ごめんごめん つい妄想に力が…
  62. みたま: ふふっ…でも、そうよね
  63. みたま: 結婚って、なんだか ロマンのある響きよねぇ
  64. 加賀見 まさら: ロマン…
  65. みたま: せっかくだし みんなで恋バナでもしたら
  66. みたま: ウェディングフォトを撮るための 参考になるんじゃないかしら
  67. 加賀見 まさら: …そういうもの?
  68. 江利 あいみ: じゃあ、レッツ恋バナ~!
  69.  
  70. FILENAME: text_519310-2_mJvgp.txt
  71. 江利 あいみ: ではでは、さっそく! みたまさんにとって結婚とは!
  72. みたま: 結婚…それは愛とロマンが 詰まった素敵なもの
  73. みたま: …とは言え、結婚って 家族になることでもあるでしょ?
  74. みたま: もちろん、ロマンを 求めたい気持ちはあるけど
  75. みたま: もし、自分がするなら相手選びは かなり慎重になっちゃうかも
  76. 江利 あいみ: なるほどなるほど どんな人が好みなんですか?
  77. みたま: そうねぇ、価値観が合うとか 一緒に居て楽…とかも大事だけど
  78. みたま: でも、それ以前に 生活にはお金が必要だから…
  79. みたま: ロマンと現実を併せた上での わたしの理想は、石油王かしら♪
  80. 加賀見 まさら: 石油王… 出会うのが大変そう
  81. 粟根 こころ: お金かぁ…まあ実際 暮らしには大事なことだよね
  82. 江利 あいみ: …確かに、一理ある…
  83. 江利 あいみ: でもでも!私は、貧しくっても 愛さえあれば幸せだと思う!
  84. 江利 あいみ: だから、好きな人と 結婚したーい!
  85. みたま: ふふ、そういう考え方も とっても素敵よねぇ
  86. 粟根 こころ: って言うか、あいみは 伊勢崎くんと…でしょ?
  87. 江利 あいみ: ま、まぁそれは そうなんだけども…えへへ
  88. 江利 あいみ: あと、結婚って言ったら プロポーズにも夢があるよね!
  89. みたま: あいみちゃんには 理想のプロポーズがあるの?
  90. 江利 あいみ: んー、好きな人からなら なんでも嬉しいと思うけど
  91. 江利 あいみ: 理想、と言うか妄想と言うか やっぱり王道なところだと…
  92. 伊勢崎 隼人: あいみ 今日は大事な話があるんだ
  93. 江利 あいみ: 話…?
  94. パカッ
  95. 江利 あいみ: これ…指輪!?
  96. 伊勢崎 隼人: 俺と…結婚してくれませんか
  97. 江利 あいみ: ~~~~っ! はい、喜んでっ!
  98. 粟根 こころ: わ…王道のやつ! めっちゃいい!
  99. 江利 あいみ: ただね、そんなシャキッと したやつじゃなくても…
  100. 江利 あいみ: たとえば、一緒に暮らす ふたりのお部屋とかで…
  101. 江利 あいみ: 隼人くんと暮らしはじめて もうずいぶん経ったね…
  102. 伊勢崎 隼人: うん、あいみのおかげで 毎日がとっても楽しいよ
  103. 伊勢崎 隼人: …ねぇ、あいみ
  104. 伊勢崎 隼人: これから先も、ずっと 俺の隣に居てくれないかな
  105. 江利 あいみ: え、それって…
  106. 江利 あいみ: 結婚しよう、あいみ
  107. 加賀見 まさら: …あいみ、またやってる
  108. 江利 あいみ: はっ!ごめんごめん つい楽しくなっちゃって
  109. 粟根 こころ: でも、話を聞いてると なんだか私までドキドキしちゃう
  110. 江利 あいみ: ねっ、こころには そういう理想ってないの?
  111. 粟根 こころ: え、あ…私!?
  112. 粟根 こころ: んー、ドキドキはするけど 結婚…結婚かぁ…
  113. 粟根 こころ: 自分のことって言われると 急に難しくなるって言うか…
  114. みたま: じゃあ、どんな家族になりたい …とかなら考えやすくない?
  115. 粟根 こころ: 家族…
  116. こころの母: あ! こころちゃん、見て?
  117. こころの母: 可愛いお花だねぇ 何て名前だろうね?
  118. こころの父: ツツジだろう
  119. こころの母: えぇ? やぁだ、お父さんったら
  120. こころの母: 知ってる花の名前 適当に言ってるだけなんだから
  121. こころの父: えぇ? 違うのか?
  122. こころの父: これ…ツツジだよな? なぁ、こころ?
  123. 粟根 こころ: やっぱり、家族みんなが仲良しで お休みは遊びに行ったり…
  124. 粟根 こころ: うん、家族が笑顔で 一緒にいられたらいいなって
  125. 粟根 こころ: それが私にとっての “家族の幸せ”なのかも
  126. 加賀見 まさら: …………
  127. みたま: ふふ、素敵じゃない
  128. 江利 あいみ: そっか…
  129. 江利 あいみ: 愛し合って結婚したら 家族になるってことで…
  130. 江利 あいみ: そしたら、子どもが できることだってあるかもだよね
  131. 粟根 こころ: あいみだったら いいお母さんになれそうだよね!
  132. 江利 あいみ: えへへへへ… そ、そうかなぁ…
  133. みたま: ねぇねぇ、まさらちゃんには 何か理想ってないの?
  134. 加賀見 まさら: 私…? 私は別に、そういうのは…
  135. みたま: もぉ~ 恥ずかしがらなくていいのよ?
  136. 加賀見 まさら: そういうのじゃないですけど…
  137. 江利 あいみ: 私も、まさらの恋愛観とか 気になるかも!
  138. 粟根 こころ: 確かに…あんまり 聞いたことない…よね?
  139. 加賀見 まさら: …………
  140. みたま: どーぉ?
  141. 加賀見 まさら: …私は、みんなみたいな 理想はないから…
  142. みたま: どうしてぇ?
  143. 加賀見 まさら: だって、結婚って言っても 結局は“契約”でしかないですし
  144.  
  145. FILENAME: text_519310-3_mJvgp.txt
  146. 加賀見 まさら: だって、結婚って言っても 結局は“契約”でしかないですし
  147. 江利 あいみ: え、け、契約? 結婚が?
  148. 加賀見 まさら: ええ
  149. 加賀見 まさら: 「結婚は、財産や相続… 様々な法的拘束力を伴うし ひとつの契約と考えるのが妥当だと思うわ」
  150. 加賀見 まさら: 「公的補助とか、経済的、社会的な安定… そういったメリットがあるのも事実だろうけれど 同時に、他者と人生を共にするという選択は デメリットを生むことだってあるはず」
  151. 加賀見 まさら: 「だから、私個人として結婚の是非はともかく そこに対してロマン…とかはあまり抱かないわ」
  152. 加賀見 まさら: それに、愛によって結婚すると 多くの人は言うけれど
  153. 加賀見 まさら: 愛なんて定義が曖昧なものを どうやって証明するの?
  154. 江利 あいみ: しょ、証明!? 気持ちの証明は難しいかも…
  155. 加賀見 まさら: そんな不確かなもので 正しい判断は下せるのかしら
  156. 江利 あいみ: え、えっと…うぅん…
  157. 加賀見 まさら: …あ
  158. 加賀見 まさら: ごめんなさい、あいみたちの 意見を否定するつもりはないの
  159. 加賀見 まさら: …こうなるから 言わない方がいいかと思って
  160. みたま: いいえ、こちらこそ 無理に聞いてごめんなさいね
  161. 粟根 こころ: うん…ごめん、まさら
  162. 加賀見 まさら: …こころたちは悪くないわ
  163. 粟根 こころ: …………
  164. みたま: …………
  165. みたま: あ!そうそう!
  166. みたま: ウェディングフォトの話って 親御さんにはもうしたの?
  167. みたま: モデルとは言え、娘の晴れ姿だし 見たがるんじゃない?
  168. 粟根 こころ: えぇ、そんなことないですよ
  169. 加賀見 まさら: …でも、こころ
  170. 加賀見 まさら: カメラマンさんが念のために 保護者の同意を貰ってほしいって
  171. 粟根 こころ: そういえば言ってたね…! 忘れてた~
  172. 江利 あいみ: なら、そのときにお父さんと お母さんに聞いてみたら?
  173. 粟根 こころ: ん?何を?
  174. 江利 あいみ: 両親の馴れ初めとか 結婚について…とか!
  175. 粟根 こころ: うーん…うちはちょっと 聞きにくいかもだけど…
  176. 江利 あいみ: あ、ごめん…! 私ってばデリカシー無かったね…
  177. 粟根 こころ: ううん、無理に 気を遣われるよりずっといいし
  178. 粟根 こころ: 確かに一度くらい 聞いてみてもいいのかも
  179. 粟根 こころ: そういう話、私自身が 必要以上に避けちゃってたし
  180. 粟根 こころ: ちょっと気になるから… 昔のお父さんとお母さんのこと
  181. 加賀見 まさら: こころがそう言うのなら 私も、帰ったら聞いてみるわ
  182. 粟根 こころ: うんっ!
  183. 粟根 こころ: ふたりとも、話を聞いてくれて ありがとう!
  184. 粟根 こころ: 写真撮影、なんだか やる気が出てきたよ!
  185. みたま: なら、良かったわぁ
  186. みたま: …じゃあ、ついでに もうひとついいかしらぁ
  187. みたま: ふたりに試してみたい 面白い調整があってぇ
  188. 加賀見 まさら: …みたまさんの“面白い”は 不安になるけど…
  189. みたま: 大丈夫大丈夫~ 悪いようにはしないからっ
  190. 粟根 こころ: …まぁ、そんなに言うなら やってもらってみる?
  191. 加賀見 まさら: …こころが構わないなら 私は気にしないわ
  192. みたま: じゃあ、いくわよぉ♪
  193. 粟根 こころ: …………
  194. 粟根 こころ: …特に変わった感じは ないみたいですけど…
  195. 加賀見 まさら: 何をしたんですか?
  196. みたま: ふふっ、調整屋さんから 衣装のプレゼントよぉ
  197. 江利 あいみ: それって、ウェディングドレスに なったりとか!?
  198. みたま: さぁ…衣装が変わるかどうかは ふたりの気持ち次第ねぇ
  199. 粟根 こころ: どうなるか怖いけど ちょっと面白そうかも
  200. 加賀見 まさら: …そうね
  201. みたま: あ、撮影当日は わたしたちも見に行くから
  202. みたま: 魔法少女姿も、良かったら 見せてくれたら嬉しいわぁ
  203. 江利 あいみ: 楽しみにしてるよ!
  204. 粟根 こころ: あはは、恥ずかしいなぁ…
  205.  
  206. FILENAME: text_519310-4_mJvgp.txt
  207. 加賀見 まさら: じゃあ、こころ また明日
  208. 粟根 こころ: うん、またね! まさら!
  209. 粟根 こころ: …………
  210. 粟根 こころ: (結婚かぁ…お母さんたちの ことがあったから)
  211. 粟根 こころ: (どちらかと言うと今まで 悪いイメージがあったけど)
  212. 粟根 こころ: (今日、みんなの話を聞いて ちょっと印象が変わったかな)
  213. 粟根 こころ: (まさらは、相変わらず ドライな考え方だったけど…)
  214. 粟根 こころ: (モデルのこと…ちょっとだけ 楽しみになってきたかも…!)
  215. 粟根 こころ: ふふっ どんな衣装を着るんだろう
  216. 粟根 こころ: ただいまー
  217. ???の声: 「――!――――!」
  218. 粟根 こころ: (この声…)
  219. 粟根 こころ: (あぁ…)
  220. こころの父の声: 「――!―!――――!」
  221. こころの母の声: 「―!――――!――!」
  222. 粟根 こころ: (…また、言い争い)
  223. 粟根 こころ: (そうだよね、我が家は こんな感じだった…)
  224. 粟根 こころ: (みたまさんや あいみの話を聞いて)
  225. 粟根 こころ: (一瞬でも夢を見た私が バカだったみたい…)
  226. 粟根 こころ: (私も結婚したら、こんな風に なっちゃったりするのかな…)
  227. 粟根 こころ: (ああ、やだなぁ… 期待なんてしなければよかった)
  228. みたま: 結婚…それは愛とロマンが 詰まった素敵なもの
  229. 江利 あいみ: でもでも!私は、貧しくっても 愛さえあれば幸せだと思う!
  230. 江利 あいみ: だから、好きな人と 結婚したーい!
  231. 粟根 こころ: やっぱり、家族みんなが仲良しで お休みは遊びに行ったり…
  232. 粟根 こころ: うん、家族が笑顔で 一緒にいられたらいいなって
  233. 粟根 こころ: (夢…理想… でも、現実はこれ…)
  234. 粟根 こころ: (バカみたいだなぁ、私…)
  235. 粟根 こころ: (それに…)
  236. 江利 あいみ: そっか…
  237. 江利 あいみ: 愛し合って結婚したら 家族になるってことで…
  238. 江利 あいみ: そしたら、子どもが できることだってあるかもだよね
  239. 粟根 こころ: …………
  240. こころの母: あ…こころちゃん… 帰ってたのね、おかえり
  241. こころの父: あ、あぁ…おかえり
  242. 粟根 こころ: …………
  243. 粟根 こころ: …いいよ、そういうの
  244. こころの母: え… どうしたの、こころちゃん?
  245. 粟根 こころ: 私が帰ってきたのに気づいて あからさまにケンカやめるとか
  246. 粟根 こころ: なんか、なんかさ…
  247. こころの父: こころ…?
  248. 粟根 こころ: …ねぇ、子どもってさ ひとつの愛の結晶…って言うよね
  249. こころの父: ああ、そうだな… こころだってもちろん…
  250. 粟根 こころ: 私だってもちろん…何? さっきまでケンカしてたよね
  251. こころの父: …………
  252. 粟根 こころ: …ねぇ、私って いったいなんなんだろうね
  253. 粟根 こころ: 私、なんで生まれてきたの?
  254. 粟根 こころ: …あー、ごめん
  255. 粟根 こころ: こんなこと 言いたいんじゃないのに…
  256. 粟根 こころ: もう…もう嫌になっちゃった…
  257. こころの母: こころちゃん…!
  258. 粟根 こころ: 子どもは愛の結晶だって言うのなら
  259. 粟根 こころ: 愛し合っていないふたりの間に生まれた私は いったい、なんだって言うんだろう
  260.  
  261. FILENAME: text_519310-5_mJvgp.txt
  262. 加賀見 まさら: ただいま
  263. まさらの母の声: おかえり~
  264. まさらの母の声: ごめん、机の上の新聞 取ってもらっていい?
  265. 加賀見 まさら: …わかった
  266. カサッ
  267. 加賀見 まさら: …お母さん、何か落ちてるけど これ、手紙…?
  268. まさらの母: あら、ありがとう それね、同窓会へのお誘いなの
  269. 加賀見 まさら: へぇ…行くの?
  270. まさらの母: うーん、悩み中ね
  271. 加賀見 まさら: そう… …この手紙の人、字が綺麗
  272. まさらの母: 可愛い字をしてるわよね 学級委員をしてた人なのよ
  273. 加賀見 まさら: …仲が良かったのね
  274. まさらの母: え?
  275. 加賀見 まさら: そんな話し方に聞こえたけど 違った…?
  276. まさらの母: ふふ…ううん、実はその人と 昔、つき合ってたのよ
  277. 加賀見 まさら: 昔の恋人…
  278. まさらの母: あらぁ、お母さんにだって うら若き乙女の頃があったのよ?
  279. まさらの母: ヤキモチ妬いちゃうから この話、お父さんには内緒ね
  280. 加賀見 まさら: …………
  281. 加賀見 まさら: …ねえ、お母さんは その人のことを愛してた?
  282. まさらの母: ええっ!? 愛…どうかしら…
  283. 加賀見 まさら: じゃあ、お父さんは?
  284. まさらの母: それは、もちろん愛してるわよ
  285. 加賀見 まさら: …でも、昔の恋人は わからないの?
  286. まさらの母: …んん~ なかなか難しい質問ね
  287. 加賀見 まさら: やっぱり、愛も ただの気分だから?
  288. まさらの母: 気分…っていうのも ちょっと違う気がするの
  289. まさらの母: もう随分と前のことだし お母さんたちも若かったから…
  290. まさらの母: あれが愛なのか、恋なのか… どちらでもなかったのか…
  291. まさらの母: 今となっては、わからないけれど 大切な存在だったとは思うわ
  292. 加賀見 まさら: 今は?
  293. まさらの母: お父さんと結婚しているんだから 何かあったら大問題よ、ふふ
  294. まさらの母: 愛でも、恋でも それ以外だとしてもね
  295. まさらの母: どこかで、元気に幸せで 生きていてほしいとは思うけど
  296. まさらの母: 今、愛しているのはお父さんと まさら、あなたよ
  297. まさらの母: でも…あの人との 時間があったからこそ
  298. まさらの母: お父さんやあなたに出会えて 幸せな今があるとも思うの
  299. 加賀見 まさら: …どういう意味?
  300. まさらの母: うーん… 説明が難しいわね…
  301. まさらの母: すべてが今に 繋がってる…って言うか…
  302. まさらの母: そうだ! なら、あなたに見せたいものが…
  303. ピンポーン♪
  304. まさらの母: あらやだ、お客さんかしら
  305. 加賀見 まさら: …じゃあ、私は ちょっと買い物に行ってくる
  306. 加賀見 まさら: 帰ったら、続きを聞かせて
  307. まさらの母: え、あ、ちょっとまさら…!
  308.  
  309. FILENAME: text_519310-6_mJvgp.txt
  310. 粟根 こころ: はぁ…はぁ…
  311. 粟根 こころ: 家…飛び出してきちゃった 心配…させちゃうかな…
  312. 粟根 こころ: でも…
  313. 粟根 こころ: …結婚って いったいなんなんだろう…
  314. 粟根 こころ: (ふたりだって 愛し合って、結婚して…)
  315. 粟根 こころ: (そして、私が生まれたはず…)
  316. 粟根 こころ: (…でも、お母さんは 私を置いて家を出て行って…)
  317. 粟根 こころ: (私が、願いで家族を もう一度、繋いで…)
  318. 粟根 こころ: (それでも、ムリなら いったい…)
  319. 粟根 こころ: (あー…ダメだダメだ 少し落ち着いて考えよう…)
  320. 粟根 こころ: (普段、考え事をするときは 山に登ったりするけど…)
  321. 粟根 こころ: (今日は、なんとなく そんな気分になれないし…)
  322. 粟根 こころ: (…なら)
  323. 粟根 こころ: (…波の音って、なんだか少し 落ち着けるような気がする)
  324. 粟根 こころ: …………
  325. 粟根 こころ: (…ん? 何か聞こえる…?)
  326. 「病める時も健やかなる時も…」
  327. 粟根 こころ: …近くで結婚式をしてたんだ
  328. 「…愛し、敬い 慈しむことを誓いますか」
  329. 粟根 こころ: (お父さんとお母さんも 愛を誓った…はずなんだよね)
  330. 粟根 こころ: (きっと、結婚を決めたときは それが幸せだと思ってたはずで)
  331. 粟根 こころ: (私が小さい頃だって…)
  332. 粟根 こころ: (幸せだったのに…)
  333. 粟根 こころ: (どうして、こんなことに なっちゃったんだろう…)
  334. 粟根 こころ: (…そういえば、聞きそびれたな ふたりが結婚した理由…)
  335. 粟根 こころ: (なんか、想像できないよ… ふたりが結婚する前なんて)
  336. ビュ~ッ
  337. 粟根 こころ: わ…! すごい風…!
  338. パサ…
  339. 粟根 こころ: ん?ハンカチ…? あっちから飛んできたのかな
  340. 粟根 こころ: (…あの人たち?)
  341. 粟根 こころ: (…って、渡しに来たはいいけど なんか…険悪な雰囲気…)
  342. 婚約を破棄したいって いったいどうして…!
  343. 海外への転勤が決まったの…
  344. あなたと一緒にいたいけど 仕事も諦めたくなくて…
  345. 粟根 こころ: (…なんだか今日は この手の話が多いな…)
  346. なら、別々に住めばいい それでも結婚はできるよ
  347. でも… それでいいのかな
  348. 僕は、君と家族になりたい だって今の僕らは結局他人なんだ
  349. もし、明日お互いが死んでも 連絡はなく、気づかないまま
  350. 君の手を握ることも 最後の言葉を交わすことも
  351. そんなこともできずに 永遠に別れるかもしれない
  352. 愛しているのに そんなの、嫌なんだ…
  353. …それに僕は、君が安心して 帰ってこられる場所になりたい
  354. 仕事を頑張る君を 癒やせる家族でありたいんだ
  355. でも、そんなの私に 都合よすぎないかな…?
  356. あはは、いいんだよ だって君が大好きなんだから
  357. もう…そんなの 理屈が通ってないでしょ…ふふ
  358. 粟根 こころ: (あ…仲直りした…みたい?)
  359. 粟根 こころ: (でも…)
  360. 粟根 こころ: (…って、いい感じに なってきちゃったし)
  361. 粟根 こころ: (早くハンカチを 渡さないと…!)
  362. 粟根 こころ: あ、あのっ…!
  363.  
  364. FILENAME: text_519310-7_mJvgp.txt
  365. 粟根 こころ: ふぅ… ハンカチは返せたけど…
  366. 粟根 こころ: なんか…ますます わからなくなってきたかも
  367. なら、別々に住めばいい それでも結婚はできるよ
  368. 粟根 こころ: (…一緒にいなくても 愛し合える…幸せだってこと?)
  369. 粟根 こころ: (でも、家族なら…夫婦なら 一緒にいるべきじゃないの?)
  370. 僕は、君と家族になりたい だって今の僕らは結局他人なんだ
  371. 粟根 こころ: (…確かに、結婚するまでは どんなに好きでも他人同士…)
  372. 粟根 こころ: (そう考えると、結婚は)
  373. 粟根 こころ: (他人同士が家族になれる 手段ってことになるのかな…)
  374. …それに僕は、君が安心して 帰ってこられる場所になりたい
  375. 仕事を頑張る君を 癒やせる家族でありたいんだ
  376. 粟根 こころ: (帰ってこられる場所…)
  377. 粟根 こころ: (家族になるって そういうこと…なのかな)
  378. 粟根 こころ: (…人それぞれ…って言うけど みんなは、どうなんだろう)
  379. 粟根 こころ: 夕方の海でも 案外、人はいっぱいいる…
  380. 粟根 こころ: 犬の散歩をしているおじいさん はしゃぐ子どもの面倒を見るお母さん ひとりで海を眺める人 友だち同士でおしゃべりをする人 海辺を歩く、お年寄りの夫婦
  381. 粟根 こころ: あの人たちはみんな幸せなのかな 幸せってなんだろう…?
  382. 粟根 こころ: 結婚すれば幸せになれるのかな 子どもがいるのが幸せなのかな ひとりでも幸せになれるのかな 誰かと一緒にいるのが幸せなのかな
  383. 粟根 こころ: (…わかりそうで わからないような…)
  384. 粟根 こころ: (多分、その理由は…)
  385. 粟根 こころ: (私にとっての幸せが ずっと“あの日”だから…)
  386. 粟根 こころ: …………
  387. 粟根 こころ: あれは、幸せ…だったんだよね
  388. 粟根 こころ: …なんだか、それすらも もう、わかんなくなっちゃった
  389. ピロン♪
  390. 粟根 こころ: …あ、ニュースの通知
  391. 【速報】 元交際相手を刺した容疑で20代の女性を逮捕 原因は交際トラブルとみられ…
  392. 【独占スクープ!】 あのおしどり夫婦に不倫疑惑か
  393. 粟根 こころ: …はぁ、なんだかなぁ
  394. 粟根 こころ: …………
  395. 粟根 こころ: 愛…結婚…
  396. 粟根 こころ: 家族とか、愛とか、結婚とか… 幸せに満ちたものだと思っていたし そうであってほしいと願っていたけど
  397. 粟根 こころ: もしかしたら 私が世間知らずだっただけで 本当は、そういうのってとても曖昧で くだらない…ものなのかな…
  398. 粟根 こころ: こんな考え、悲しいはずなのに 今の私には…否定ができない
  399. 粟根 こころ: ああ、やだなぁ
  400. 粟根 こころ: …まさらなら、こんなとき どんな答えを出すんだろう
  401.  
  402. FILENAME: text_519310-8_mJvgp.txt
  403. 【速報】 元交際相手を刺した容疑で20代の女性を逮捕 原因は交際トラブルとみられ…
  404. 【独占スクープ!】 あのおしどり夫婦に不倫疑惑か
  405. 加賀見 まさら: …物騒な世の中ね
  406. 加賀見 まさら: やっぱり、愛なんて曖昧なもので 動くべきじゃないわ
  407. 加賀見 まさら: …ねえ、お母さんは その人のことを愛してた?
  408. まさらの母: ええっ!? 愛…どうかしら…
  409. 加賀見 まさら: (…感情は、薄れゆくもの 曖昧で、不確かなもの…)
  410. 加賀見 まさら: (だけど、多くの人は その“愛”によって動いている)
  411. 加賀見 まさら: …………
  412. 加賀見 まさら: この時間でも、意外と人はいるのね
  413. 加賀見 まさら: 手を繋いで歩く人 楽しそうな人 穏やかな時間を過ごす人 愛し合う人たち…
  414. 加賀見 まさら: だけどそれも、一過性のもの こころの両親も、そうだったらしいけれど 愛を誓ったふたりであっても ずっとそのままとは限らない
  415. 加賀見 まさら: さっきのニュースのように 愛し合って結婚したとしても、簡単に裏切ったり 様々な理由で、別れを選ぶ人が多くいるのは事実 気持ちが薄れゆくだけならまだしも 愛が憎悪に変わることだって珍しくはない
  416. 加賀見 まさら: 感情なんて、曖昧で証明もできず 信用に値しないものさしで 大きな決断をするなんて合理的じゃない
  417. 加賀見 まさら: (…結局、感情なんて ただの気分でしかない)
  418. 加賀見 まさら: (だからきっと…)
  419. 加賀見 まさら: 私は私がいつ死んだって 構わないと思ってる
  420. 加賀見 まさら: …私がいなくなったら…………
  421. 加賀見 まさら: …最初こそ、不足感がある かもしれないけれど…
  422. 加賀見 まさら: きっと大丈夫
  423. 加賀見 まさら: 人は強いものだと思うから
  424. 加賀見 まさら: (もし、私が死んでも やっぱり家族は大丈夫)
  425. 加賀見 まさら: (願いで得たお金も残せるし 愛や悲しみもいつかは薄れる)
  426. 加賀見 まさら: …………
  427. ビュ~ッ
  428. 加賀見 まさら: …すごい風
  429. 加賀見 まさら: …?
  430. 加賀見 まさら: (…あの人、夏でもないのに)
  431. 加賀見 まさら: (服のまま浅瀬で… 何をしているのかしら…)
  432. 加賀見 まさら: (しかも、なんだか雰囲気が…)
  433. 加賀見 まさら: …っ!
  434. 加賀見 まさら: (波…!)
  435. うっ…うぅ…けほっ
  436. 加賀見 まさら: …あなた、大丈夫?
  437. ひゃぁ!?
  438. 加賀見 まさら: (魔女の口づけ… では、なさそうね)
  439. 加賀見 まさら: 驚かせてごめんなさい
  440. 加賀見 まさら: けれど その格好で海に入るのは危険
  441. 加賀見 まさら: 今も、波に 飲まれていたみたいだし
  442. 加賀見 まさら: 泳ぐのなら、近くの店で 道具を売っているはずだから…
  443. えっ、いや、その…!
  444. 加賀見 まさら: …………
  445. 加賀見 まさら: …掴まって あっちで拭くものを渡すわ
  446.  
  447. FILENAME: text_519310-9_mJvgp.txt
  448. あぁ~…すみません 濡れちゃいましたよね…
  449. ハンカチまで貸してくれて ほんと、ありがとうございます
  450. 加賀見 まさら: …いえ、気にしないで
  451. 加賀見 まさら: それより邪魔…してしまった?
  452. え…
  453. 加賀見 まさら: もし、身投げを試みていたのなら 意思を邪魔することになったから
  454. 加賀見 まさら: …ただ、見てしまった以上 そのままにはできなくて
  455. 加賀見 まさら: 私のエゴで声を掛けたわ ごめんなさい
  456. え…あ、違うんです違うんです! 身投げとかじゃなくって!
  457. あの… お恥ずかしい話なんですけど
  458. 加賀見 まさら: …海に向かって叫んでいたら 高波に飲まれた…?
  459. へへ…まぁ、ないですか? 海に不安を吐き出したくなること
  460. 加賀見 まさら: …ないけど、あなたには 叫びたいことがあったのね
  461. …えっと、私 高校を卒業したら結婚する予定で
  462. 加賀見 まさら: …そう それに対して、何か不安が?
  463. 加賀見 まさら: マリッジブルーは よくある事象…と聞くわ
  464. 加賀見 まさら: 婚約者に対して 不足や不満があるとか…
  465. …いえ、彼に対しての 不満とか…そういうのは全然!
  466. むしろ、私はとても幸せなんです 大好きな彼と結婚できるので!
  467. 加賀見 まさら: …それなら、なぜ? 幸せなのに不安なの…?
  468. だって、今は良くても いつか嫌われちゃったり…
  469. ほら私、こんな感じだから 捨てられちゃうかもとか…
  470. そう考えたら不安になって 気づいたら海で叫んでました
  471. 加賀見 まさら: …そういうものなのね
  472. 加賀見 まさら: (…悲観したところで 将来の行方なんてわからない)
  473. 加賀見 まさら: (それに悲観的な未来が訪れても 時間が解決して乗り越えられる)
  474. 加賀見 まさら: (…なんて答え 彼女はきっと望んでいない)
  475. 加賀見 まさら: …………
  476. …って、すみません 初対面なのにこんな困りますよね
  477. 加賀見 まさら: いえ、気にしないで …それより、帰りは…
  478. …ちゃーんっ!
  479. …あっ
  480. はぁ…はぁ…探したよ…! え、ちょ、なんで濡れてるの!?
  481. あはー…遊んでたら 海に落ちたー
  482. もう、怪我したらどうすんの 心配したでしょ
  483. この人が助けてくれたから 大丈夫だよ、ありがと
  484. 加賀見 まさら: え…あ、はぁ…
  485. すみません… ありがとうございます
  486. 加賀見 まさら: いえ…別に…
  487. …………
  488. じゃあ、ありがとうございました またいつか~
  489. 加賀見 まさら: …………
  490. 加賀見 まさら: (幸せだから不安になる…?)
  491. 加賀見 まさら: (あるかもわからない未来で)
  492. 加賀見 まさら: (人は悲しみを乗り越えるように できているのに…?)
  493. 加賀見 まさら: (…でも、そういえば こころは…)
  494. 粟根 こころ: …お金とかっ…事後処理とか… そういう問題じゃないよ…
  495. 粟根 こころ: あなたが死んだら… あなたがいなくなったら…
  496. 粟根 こころ: 家族がどんな気持ちになるか… 考えたことある…?
  497. 加賀見 まさら: …………
  498. 加賀見 まさら: (…感情は、難しい)
  499. 加賀見 まさら: (あの子なら、愛や結婚に どんな答えを出すのかしら)
  500. ???の声: …あれ、まさら?
  501. 加賀見 まさら: こころ…
  502.  
  503. FILENAME: text_519310-10_mJvgp.txt
  504. 加賀見 まさら: …そんなことがあったのね
  505. 粟根 こころ: うん…
  506. 粟根 こころ: …………
  507. 粟根 こころ: ねえ、まさらはどう思う? 結婚とか、愛とか…
  508. 加賀見 まさら: …こころは 何か思うことがあった?
  509. 粟根 こころ: …私はね、親のことがあるから 元々複雑に感じていたけど
  510. 粟根 こころ: あいみたちと話していたら 結婚もいいことかもって思ったの
  511. 粟根 こころ: だから私も、ちょっとだけ 夢を見ちゃったりしたけど
  512. 粟根 こころ: それは、錯覚だったみたい
  513. 加賀見 まさら: …そう
  514. 粟根 こころ: だって、結婚が簡単に 反故にされる約束だってこと
  515. 粟根 こころ: 私は、とっくに 知っちゃってたんだもん
  516. 加賀見 まさら: …結局、ただの契約
  517. 加賀見 まさら: しかも、あなたの言うように 破ろうとすればできる
  518. 加賀見 まさら: …愛も、所詮は “気分”でしかないのだから
  519. 粟根 こころ: 気分…かぁ そう考えると納得かも
  520. 粟根 こころ: …それなら私って 気分…で、生まれたんだ
  521. 加賀見 まさら: …こころ?
  522. 粟根 こころ: まさら、出会った頃 私に言ったでしょ?
  523. 粟根 こころ: 自分が死んでも、家族は いつか乗り越えられるって
  524. 粟根 こころ: あのときは、まさらに対して 怒ったりしたけど
  525. 粟根 こころ: 今は、わかっちゃった気がするの
  526. 粟根 こころ: 確かに、私がいなくなったら 両親は悲しんでくれると思うけど
  527. 粟根 こころ: 多分、大丈夫だと思う
  528. 粟根 こころ: というか、愛の無いふたりから 生まれてきたんだもん
  529. 粟根 こころ: いつ居なくなったって 困らないかもしれないね
  530. 加賀見 まさら: え…そんなこと…
  531. 粟根 こころ: あはは、ごめん 気にしないで
  532. 粟根 こころ: 前は、まさらに怒ったくせに 矛盾してるよね、私
  533. 粟根 こころ: 家族を失う悲しさは わかってるはずなんだけど…
  534. 粟根 こころ: うん…ちょっと 頭冷やした方がいいのかも
  535. 加賀見 まさら: …………
  536. 加賀見 まさら: (私、今…)
  537. 加賀見 まさら: (そんなこと言わないで…って 言おうとした…?)
  538. 加賀見 まさら: …………
  539. 加賀見 まさら: (もし、こころがいなくなったら 私は乗り越えられる?)
  540. 加賀見 まさら: (…わからない 考えたく、ない…なんて)
  541. 加賀見 まさら: (私こそ矛盾…している)
  542. 粟根 こころ: まさら?
  543. 加賀見 まさら: …なに、こころ
  544. 粟根 こころ: …ウェディングフォトのこと どうしよっか
  545. 加賀見 まさら: …親の同意はまだもらってないわ
  546. 粟根 こころ: あはは、私も…
  547. 粟根 こころ: それより、私なんかが モデルやっていいのかなって
  548. 加賀見 まさら: どういうこと?
  549. 粟根 こころ: 今、私ね…
  550. 粟根 こころ: 愛なんてくだらないなーって 思っちゃってるの
  551. 粟根 こころ: そんな人がウェディングフォトの モデルをやっていいわけないよ
  552. 加賀見 まさら: …………
  553. 粟根 こころ: カメラマンさんには 申し訳ないけど、断ろうかな
  554. 加賀見 まさら: こころがそうしたいなら 私は、それで構わないわ
  555. 粟根 こころ: うん…
  556. ~~♪~~♪
  557. 粟根 こころ: あ、電話…?
  558. 粟根 こころ: …………
  559. 粟根 こころ: はい、もしもし
  560. 粟根 こころ: あ、お母さん… その、さっきは…
  561. 粟根 こころ: え…? 救急車…?
  562. 粟根 こころ: ちょ、ちょっと お母さん、落ち着いて…!
  563. 粟根 こころ: …うん、うん…
  564. 粟根 こころ: …………そんな
  565. 粟根 こころ: お父さんが、事故に…?
  566. [Part 1 end]
  567. ---
  568. [Part 2 start]
  569. FILENAME: text_519320-1_cape9.txt
  570. 粟根 こころ: はぁ…は… お母さん…っ!
  571. 加賀見 まさら: …私は、ここで待ってるから
  572. 粟根 こころ: …うんっ
  573. 粟根 こころ: お母さんっ!
  574. こころの母: あ、こ、こころちゃん…!
  575. 粟根 こころ: お父さんは…
  576. こころの母: わからない… ど、どうしよう…私…
  577. 粟根 こころ: …………
  578. 粟根 こころ: 落ち着いて… 何があったか教えて
  579. 粟根 こころ: …ね、お母さん
  580. こころの母: …………
  581. こころの母: …え、ええ…ごめんね お母さん、取り乱しちゃって…
  582. こころの母: …その、こころちゃんが 家を出たあとにね…
  583. 粟根 こころ: もう…もう嫌になっちゃった…
  584. こころの母: こころちゃん…!
  585. こころの父: こころ…!
  586. こころの父: …………
  587. こころの母: …………
  588. こころの父: 迎えに行ってくる
  589. こころの母: …わかったわ
  590. こころの母: 遅い… いったい、何をして…
  591. こころの母: やっぱり任せず 私が行けばよかったかも…
  592. ~~♪~~♪
  593. こころの母: …知らない番号から電話…?
  594. こころの母: はい、もしもし…
  595. こころの母: …え
  596. こころの母: 事故を起こした相手…から 電話があって…
  597. こころの母: 車との接触…とか… 救急車がどうとか…
  598. こころの母: 気が動転しちゃって あまり覚えていないけど…
  599. こころの母: …あの人が 死んじゃったらどうしよう
  600. こころの母: いってらっしゃいも気をつけても 意地張って、言わなくて…
  601. 粟根 こころ: …お母さんのせいじゃないよ
  602. 粟根 こころ: 私が… 私が出ていったせいで…
  603. 粟根 こころ: …っう
  604. ???の声: あ…こころ!? こんなところで何を…!
  605. 粟根 こころ: …へ?
  606. 粟根 こころ: お父さん!?
  607.  
  608. FILENAME: text_519320-2_cape9.txt
  609. 粟根 こころ: えっと… つまりこういうこと…?
  610. 粟根 こころ: 「お父さんが事故に遭ったのは事実だけど 本当はちょっとかすっただけで軽いケガ…」
  611. 粟根 こころ: お母さんの勘違い…?
  612. こころの母: …よく思い出したら 電話の口調が軽めだったような
  613. こころの母: でも救急車がどうとか 電話の方が…
  614. こころの父: いや、転んだだけなんだが 軽く頭を打ったから
  615. こころの父: 運転手の方が 救急車を呼んでくれてな
  616. こころの父: 多分、お母さんへの電話も その時にしてたんだろう
  617. こころの父: ただ、検査をしても 問題はなかったし
  618. こころの父: 本当に軽いケガで済んだよ
  619. こころの父: 一応、精密検査のために また来る必要はあるらしいけどな
  620. こころの父: …心配させて悪い
  621. こころの父: ずいぶんな大ケガだと 勘違いをさせたみたいだな…
  622. 粟根 こころ: なんだぁ… 早とちりが過ぎるよ…
  623. こころの母: …そっか、早とちり…
  624. こころの母: ぅ…良かった… 良かったぁ…
  625. こころの父: お、おい… 何も泣かなくても…
  626. こころの母: うぅ…ごめんなさい
  627. こころの父: …………
  628. こころの父: あー…こっちも 心配かけて、ごめんな
  629. こころの父: 意地張って、連絡しないでいた 俺も悪かった
  630. こころの母: …私こそ ごめんなさい…
  631. 粟根 こころ: …私も出て行って 心配かけてごめんね
  632. こころの父: いや、それについては 元々お父さんたちが悪かったしな
  633. こころの母: …えぇ
  634. こころの父: じゃあ、まぁ… とりあえず家に帰るか
  635. こころの母: そうね
  636. 粟根 こころ: …………
  637. 粟根 こころ: …あれ、ふたりとも さっきまでケンカしてなかった?
  638. 粟根 こころ: そっちは、もういいの?
  639. 粟根 こころ: …別にケンカを してほしいわけじゃないけど…
  640. こころの父: …まあ、そうか そう思うよな…
  641. こころの父: ケンカの内容なんて大体 取るに足らないようなことだし
  642. こころの父: 納得できないかもしれないけど これでも、家族だから
  643. こころの母: …ええ
  644. 粟根 こころ: えっと、ケンカするほど仲が良い …みたいなこと?
  645. こころの母: それも…ちょっと違う…かしら
  646. こころの母: 別にお父さんとお母さんは お互いを嫌いなわけじゃないの
  647. こころの母: 口にするのは気恥ずかしいけど
  648. こころの母: お互いを愛する上での距離が 今だと近すぎるのよ
  649. こころの父: 昔は恋人として 近い距離で愛し合ってたんだがな
  650. こころの父: 今は少し離れていた方が お互いを想う愛を感じられる
  651. こころの父: お父さんもお母さんも 最近気づいたことだけどな
  652. 粟根 こころ: てっきり、ふたりにはもう 愛なんてないんだと…
  653. こころの母: むしろお互いを好きだからこそ 話し合ってたのよ
  654. こころの母: あなたが家を出たら 夫婦で別々に暮らそうかって
  655. 粟根 こころ: え…
  656.  
  657. FILENAME: text_519320-3_cape9.txt
  658. 粟根 こころ: え…
  659. 粟根 こころ: 別々に暮らす…って
  660. 粟根 こころ: 私が居るせいで ふたりは今まで一緒に…?
  661. 粟根 こころ: (私の、願いのせいで…?)
  662. 粟根 こころ: じゃあ…私、早く家を 出た方がいいってこと…
  663. こころの父: そうじゃない そういう話じゃないんだ
  664. こころの父: …こころがいるから 一緒にいるのは事実だけど…
  665. 粟根 こころ: なら…!
  666. こころの父: お父さんとお母さんは こころのことも愛してるんだよ
  667. こころの父: だからこころのそばに居たいし 成長を見届けたい
  668. こころの母: たとえ愛する距離が 間違っていたとしてもね
  669. こころの母: こころと一緒にいることも 私たちにとっての幸福なのよ
  670. 粟根 こころ: …じゃあ、なんでお母さんは 私の前からいなくなったの…?
  671. こころの母: …ごめんなさい
  672. こころの母: お母さん、あの頃は 本当にどうかしてた…
  673. こころの母: 私が家を出た方があなたも お父さんも幸せになれると思った
  674. こころの母: …ううん、それもきっと 自分に対して都合の良い言い訳ね
  675. こころの母: 矛盾してるのはわかってるけど それでも、どうしようもなくて…
  676. 粟根 こころ: (…矛盾、かぁ)
  677. 粟根 こころ: 前は、まさらに怒ったくせに 矛盾してるよね、私
  678. 粟根 こころ: 家族を失う悲しさは わかってるはずなんだけど…
  679. 粟根 こころ: (…一緒なんだ お母さんも、私も…)
  680. こころの母: 謝って済むことではないけれど 本当にごめんなさい…
  681. こころの父: お父さんも、ごめんな こころにたくさん迷惑をかけた
  682. 粟根 こころ: …………
  683. こころの母: たとえ、夫婦の愛情が変わって 最初とは違う形になったとしても
  684. こころの母: あなたへの愛は変わらない
  685. こころの母: だって、あなたは お母さんとお父さんの宝物
  686. こころの母: ふたりにとっての 愛の結晶…なのだから
  687. こころの父: お父さんたち、伝えるのが下手で 本当にすまない
  688. こころの父: 手探りのまま親になって こころに辛い思いをさせた
  689. こころの父: それでも、お父さんたちにとって こころが大切で
  690. こころの父: 愛しい娘だってことだけは どうか、信じてほしい
  691. 粟根 こころ: …………
  692. 粟根 こころ: (昔と同じように愛していても 時間が経てば愛し方も変わる…)
  693. 粟根 こころ: …そっか
  694. 粟根 こころ: 私は、ずっと “あの日”の幸福に縛られてたんだ
  695. 粟根 こころ: …そうだよね 幸せの形って人それぞれなんだ
  696. 粟根 こころ: 海で出会ったあのふたりも
  697. 粟根 こころ: いろんな時間を過ごしていた 他の人たちも
  698. 粟根 こころ: (本人たちが幸せなら それが正解ってことだよね)
  699. 粟根 こころ: 私、家族は一緒にいるべきって ふたりに押しつけてたのかも
  700. 粟根 こころ: やっぱり家族は 一緒に居たいって思うけど
  701. 粟根 こころ: でも、少し離れることが ふたりの幸せなら…
  702. 粟根 こころ: (今は、そうは思えなくても)
  703. 粟根 こころ: (いつかそれが幸せだったと わかる日が来るよね)
  704. こころの母: …ただ、その話ね さっき話したばかりだけど
  705. こころの母: ちょっと考え直そうと思ってるの
  706. 粟根 こころ: へ…!?
  707.  
  708. FILENAME: text_519320-4_cape9.txt
  709. 粟根 こころ: 考え直す…って…
  710. 粟根 こころ: え、今やっと 覚悟を決めたところなのに!?
  711. こころの母: んーでも、今回みたいに 何かあったとき困るでしょ?
  712. こころの父: …ああ、それは俺も ちょっと考えてた
  713. こころの父: 老後のことなんかも 考えないといけないよな
  714. こころの父: こころにも、これ以上 面倒をかけたくないし…
  715. こころの父: 別居とは言っても 近くに住んでおきたいよな
  716. こころの父: お互いに何かあっても 気づけないんじゃ仕方ないし
  717. こころの母: 同じマンションの 隣の部屋とか…別の階?
  718. こころの父: それはいい案だな
  719. こころの母: こころちゃんが帰ってきたときは どっちかの部屋に集合したり…
  720. 粟根 こころ: ふっ… あははっ、何それ…!
  721. 粟根 こころ: も~、覚悟して損した 拍子抜けだよ
  722. こころの母: ふふ、ごめんなさいね
  723. こころの父: まったくだな、はは
  724. 粟根 こころ: (幸せはいろいろで… こうして形を変えていくんだ)
  725. 粟根 こころ: (時には矛盾をはらみながらも その人たちにとっての最善に…)
  726. 粟根 こころ: (…なら、幸せの形って 本当にたくさんあるのかも)
  727. 粟根 こころ: (私にとっての幸せも いつか変わっていくのかな…)
  728. 粟根 こころ: …………
  729. 粟根 こころ: …ねぇ、ふたりとも
  730. こころの父: ん?
  731. 粟根 こころ: 私、今度ウェディングフォトの モデルを頼まれたんだけどね…
  732. こころの父: ウ、ウェディング!?
  733. こころの母: そう、まさらちゃんと一緒に
  734. 粟根 こころ: それで一応 親の同意が必要なんだけど…
  735. こころの母: 反対する理由なんてないわよ 楽しんで撮ってきてね
  736. こころの母: …こころちゃんのドレス姿 ふふ、きっと素敵でしょうね
  737. こころの母: お父さんもそう思うでしょ?
  738. こころの父: え、あ、あぁ… 本当に結婚するわけじゃないし…
  739. 粟根 こころ: ありがとう!
  740. 粟根 こころ: あとね、参考にふたりが 結婚したころの話とか聞きたくて
  741. 粟根 こころ: ダメ…?
  742. こころの父: ダメ…じゃないけど …それは、恥ずかしいな
  743. こころの母: お父さん、出会った頃から 恥ずかしがり屋だったわよね
  744. こころの母: そのくせ、私に一目惚れして 告白してきたのよ?
  745. こころの父: …う、あの頃は その…若かったんだよ
  746. こころの母: プロポーズは海だったの ビシっときめててねぇ
  747. こころの母: まだ学生だったけど バラの花束を持ってきてくれて
  748. こころの母: 結婚してください!って
  749. こころの父: か、からかうなって…
  750. 粟根 こころ: …………
  751. こころの母: バラの花束なんて 急にどうしたの…?
  752. こころの父: ………… け、結婚して…くだ…さい…
  753. こころの母: ふふ、まっかっかね
  754. こころの父: か、からかうなって… それで…答えは…
  755. こころの母: …うん 末永くよろしくね
  756. 粟根 こころ: (…なんか今 幻が見えた…ような…)
  757. 粟根 こころ: (あいみの妄想が移った? …なんて)
  758. 粟根 こころ: (でも、そっか…)
  759. 粟根 こころ: (お父さんとお母さんも 昔は、若いカップルだったんだ)
  760. 粟根 こころ: (今は…あんな関係だけど ラブラブだった時もあったのか)
  761. 粟根 こころ: (自分にとってのふたりは ずっと、親だったから)
  762. 粟根 こころ: (私が知らない ふたりの時間があって…)
  763. 粟根 こころ: (それで、今がある…なんて 考えたことなかった)
  764. こころの母: こころを身籠ったって知った日 お父さん、泣いちゃったわよね
  765. こころの父: …嬉しかったんだから 仕方ないだろう
  766. 粟根 こころ: (そうだよね…ふたりだって 最初から親だったわけじゃない)
  767. 粟根 こころ: (一組のカップルが結婚して 私が生まれて、親になって…)
  768. 粟根 こころ: (…ふたりは ちゃんと愛し合ってたんだ)
  769. 粟根 こころ: (時間が経って、関係が変わって それは形を変えてしまったけど)
  770. 粟根 こころ: (私は、確かに愛されて 望まれて生まれてきたんだ)
  771. 粟根 こころ: …………
  772. 粟根 こころ: (ふたりが、今まで私のために 一緒にいてくれたのなら)
  773. 粟根 こころ: (私が、願いで両親を 縛ってしまったのだとしたら)
  774. 粟根 こころ: (これから先は、ふたりの 幸せを応援するべきだよね)
  775. こころの父: あれ、こころ固まってる…? おい、引いちゃったんじゃ…
  776. こころの母: ええっ!?
  777. こころの父: よく考えたら気持ち悪いだろ 親の馴れ初め話なんて…
  778. 粟根 こころ: ううん! 私、もっと聞きたいな
  779. こころの父: それはそれで勘弁してくれよ…
  780. 粟根 こころ: (いつか私も家庭を築く日が 来るかもしれない)
  781. 粟根 こころ: (だけど、そのとき描く幸せは どんなものでもいいんだ)
  782. 粟根 こころ: (だって、幸せの形は ひとつに決まっていないから)
  783. こころの母: そうそう、お父さんったら 指輪のサイズを間違えて…
  784. こころの父: な!それは秘密だって…!
  785. 粟根 こころ: あはは、お父さんったら おっちょこちょい
  786. 加賀見 まさら: …………
  787.  
  788. FILENAME: text_519320-5_cape9.txt
  789. 加賀見 まさら: …………
  790. 加賀見 まさら: (こころの父親が 無事でよかった)
  791. 加賀見 まさら: (それより、不思議なものね)
  792. 加賀見 まさら: (こころの両親は 不仲だと聞いていたから)
  793. 加賀見 まさら: (てっきり、愛は消えたのかと 思っていたけれど)
  794. 加賀見 まさら: (相手を想って泣くだなんて 少し、驚いた…)
  795. 加賀見 まさら: …………
  796. 加賀見 まさら: (感情は薄れ、消える… そういうものと思っていた)
  797. 加賀見 まさら: (消えずに変化するとしても 愛が憎悪になるように)
  798. 加賀見 まさら: (感情そのものが、まったくの 別物になるのだとばかり)
  799. 加賀見 まさら: (…でも そうではなく、時間を経て)
  800. 加賀見 まさら: (愛という感情は残したまま)
  801. 加賀見 まさら: (在り方だけが 変わることもあるということ?)
  802. 加賀見 まさら: (それに、こころの母親を見て ひとつ、思い出した)
  803. 加賀見 まさら: まだ幼かったころ 私は不注意で車にひかれかけ すんでのところで両親に助けられたことがあった
  804. まさらの父: まさらっ!
  805. まさらの母: …まさら、ケガはない? ああ、良かった…良かった…
  806. 加賀見 まさら: 血相を変えて飛んできた両親に 私は叱られると思ったけれど ただ、強く抱きしめられていた
  807. 加賀見 まさら: 後にも先にも、両親のあんな顔を 私は、見たことがなかった
  808. 加賀見 まさら: (仮に…それが「愛」と 呼ばれるものなら…)
  809. 粟根 こころ: …お金とかっ…事後処理とか… そういう問題じゃないよ…
  810. 粟根 こころ: あなたが死んだら… あなたがいなくなったら…
  811. 粟根 こころ: 家族がどんな気持ちになるか… 考えたことある…?
  812. 加賀見 まさら: (両親は、きっと悲しむけど)
  813. 加賀見 まさら: (人は強いものだから いつかは乗り越えられる…)
  814. 加賀見 まさら: (だけど…)
  815. 加賀見 まさら: これ以上… 私が不快な思いをしないため
  816. 加賀見 まさら: あなたが傷付けられることは… 私にとって不快なことだから
  817. 粟根 こころ: 確かに、私がいなくなったら 両親は悲しむと思うけど
  818. 粟根 こころ: 多分、大丈夫だと思う
  819. 粟根 こころ: というか、愛の無いふたりから 生まれてきたんだもん
  820. 粟根 こころ: いつ居なくなったって 困らないかもしれないね
  821. 加賀見 まさら: え…そんなこと…
  822. 加賀見 まさら: (あの子と出会って 私は、知ってしまった…)
  823. 加賀見 まさら: (傷ついてほしくない 失いたくない…という気持ちを)
  824. 加賀見 まさら: …………
  825. 加賀見 まさら: (失ったら、私は…)
  826. 加賀見 まさら: …………
  827. 加賀見 まさら: (家族も、これに似た感情を 抱いているのなら)
  828. 加賀見 まさら: (あの子の言う通り、もっと 自分を大切にすべきなのかも)
  829. 加賀見 まさら: (それに…)
  830. だって、今は良くても いつか嫌われちゃったり…
  831. ほら私、こんな感じだから 捨てられちゃうかもとか…
  832. そう考えたら不安になって 気づいたら海で叫んでました
  833. 加賀見 まさら: (彼女の気持ちも 今なら、少しは理解できそう)
  834. 加賀見 まさら: (感情は、一時的なもの… その認識は変わらないけれど)
  835. 加賀見 まさら: (その時間は、自分が思うより 長い時間であったり)
  836. 加賀見 まさら: (想像できないほど 深い悲しみを伴うのかも)
  837. 加賀見 まさら: …………
  838. 加賀見 まさら: …感情は、理屈では 語りきれないもの…?
  839.  
  840. FILENAME: text_519320-6_cape9.txt
  841. 粟根 こころ: まさら、今日は遅くまで つき合ってくれてありがとう
  842. 粟根 こころ: こんな時間まで 待ってもらっちゃってごめんね
  843. 加賀見 まさら: いえ、あなたのお父さんが 無事で何よりよ
  844. 加賀見 まさら: …それより、ご両親と 一緒に帰らなくて良かったの?
  845. 粟根 こころ: うん、今日はふたりに しておこうかなーって
  846. 粟根 こころ: 雰囲気もよさそうだったから
  847. 粟根 こころ: 離れて暮らすのが幸せなら それでいいとは言ったけど
  848. 粟根 こころ: 仲良くできるなら それに越したことはないしね!
  849. 加賀見 まさら: …そう、こころがいいなら いいのだけど
  850. 粟根 こころ: …あ、ねぇまさら
  851. 粟根 こころ: さっき、まさらに言う前に 両親に聞いちゃったんだけどさ…
  852. 粟根 こころ: ウェディングフォトのモデル やってもいいかな…
  853. 加賀見 まさら: 構わないけど、心境の変化?
  854. 粟根 こころ: うん…そんな感じ
  855. 加賀見 まさら: わかった、やりましょう 私も両親に聞いておくわ
  856. 粟根 こころ: ありがとう、まさら! それじゃあまたね
  857. 加賀見 まさら: ええ、気をつけて
  858. ピロン♪
  859. 加賀見 まさら: (…遅くなったし お母さんからかしら)
  860. 今日の帰りは何時くらい?
  861. 加賀見 まさら: …………
  862. 遅くなってごめんなさい これから帰ります
  863. ピロン♪
  864. 了解!気をつけて帰ってきてね! 帰ってきたら見せたいものがあるからよろしく
  865. 加賀見 まさら: (…そういえば そんなこと言ってたような)
  866. まさらの母: うーん… 説明が難しいわね…
  867. まさらの母: すべてが今に 繋がってる…って言うか…
  868. まさらの母: そうだ! なら、あなたに見せたいものが…
  869. 加賀見 まさら: (見せたいものって …なんのことかしら)
  870. 加賀見 まさら: …ただいま
  871. まさらの母: あ、おかえりなさい!
  872. まさらの母: お父さんより帰りが早くて 良かったわぁ
  873. 加賀見 まさら: 見せたいものと 何か関係があるの…?
  874. まさらの母: お父さんの前だと ちょっと見せにくくてね
  875. まさらの母: …これ、お母さんの日記
  876. まさらの母: さっきの話、腑に落ちてない みたいだったから
  877. まさらの母: 証明…は、難しいけど 過去が今を作っているって
  878. まさらの母: お母さんが、そう考える理由が ここにあると思うの
  879. 加賀見 まさら: …見ていいの?
  880. まさらの母: ええ、そのために 引っぱり出してきたんだもの
  881. 加賀見 まさら: …ありがとう
  882. ぺらっ
  883. 両親に、お見合いについて相談された あまり気は進まないけど 恋愛は、学生時代に経験できたし 結婚するのはお見合いでもいいのかも
  884. お見合い相手と初めての顔合わせ 無愛想で、無口で、よくわからない人… でも、悪い人ではなさそう
  885. 将来のために結婚することを決めた 今後の生活や親のことを考えれば早い方がいい
  886. 明日、結婚するみたい…全然、実感がない 彼は何を考えているかわからないし不安 ちゃんとやっていけるのかな…
  887. 今日は、体調が悪くてずっと寝ていた 彼が作ってくれたお粥は上手じゃなかったけど なんだか、優しい味がした…変なの
  888. びっくり…赤ちゃんができたみたい お腹の中に、もうひとりいるって不思議 彼が喜んでいて、初めてあんな顔を見た
  889. 赤ちゃんがお腹を蹴った! 姿も見えないのに、可愛くて仕方ない 早く会えるといいなぁ…楽しみ!
  890. 赤ちゃんが生まれた!名前は「まさら」 まさらと一緒に、彼が泣いていた 泣いたり、笑ったり、忙しい人たちだなあ 面白くて、愛しくて、私まで泣いちゃった 今日、やっと家族になれた気がする
  891. 加賀見 まさら: …………
  892. まさらの母: 過去に出会った人たちとの 関わりが今に繋がる
  893. まさらの母: その証明にはならないと思う…
  894. まさらの母: でも悩んで、選択して… そういう時間が今に繋がってるの
  895. まさらの母: だから、もし感情が消えても 何かを後に残してるのかな…とか
  896. まさらの母: 愛は、確かに気分とも言えるけど それだけじゃないって伝えたくて
  897. まさらの母: んー… やっぱり説明が難しいわ…
  898. 加賀見 まさら: …………
  899. まさらの母: …ふふ、わかってたけど なんだか恥ずかしいものね
  900. 加賀見 まさら: どうして…?
  901. まさらの母: 若い頃の日記を 娘に見せるのは照れ臭いのよ
  902. 加賀見 まさら: …そういうものなんだ でも私は、読めて良かったと思う
  903. まさらの母: そう?
  904. 加賀見 まさら: …だけど、正直 驚きが勝ってる
  905. 加賀見 まさら: 結婚の理由とか お父さんのこととか…
  906. まさらの母: そうね、お見合い結婚で 恋愛結婚じゃないから…
  907. まさらの母: ガッカリしちゃったかしら?
  908. 加賀見 まさら: どちらかというと逆
  909. 加賀見 まさら: 恋愛感情だけで結婚するのが 私には理解し難かったから
  910. 加賀見 まさら: …お父さんを選んだ理由は 感情的で適当だと思ったけど
  911. 加賀見 まさら: “結婚”を決めたのは、将来を 見据えてという現実的な選択で
  912. 加賀見 まさら: 感情だけでなく、合理的な 理由で判断していたことに驚いた
  913. 加賀見 まさら: それに、お父さんとの関係も 今とは違うものだったから…
  914. まさらの母: そうね 結婚自体はする利点とか
  915. まさらの母: そういうことを 考えてのことだったけど
  916. まさらの母: 今は結婚して良かったって思うし お父さんのことも大好きよ
  917. まさらの母: 変な人だーって結婚しなかったら 今は無いって考えると
  918. まさらの母: 感情的な選択も 悪くないと思わない?
  919. 加賀見 まさら: …そうね
  920. 加賀見 まさら: …お母さんの考え方 なんだか私に似てるのかも
  921. まさらの母: ふふ、それは逆ね まさらがお母さんに似たのよ
  922. 加賀見 まさら: …………
  923. 加賀見 まさら: …うん、それもそうね
  924. 加賀見 まさら: …ねえ、もっと聞かせてほしいの お母さんたちの、昔の話
  925.  
  926. FILENAME: text_519320-7_cape9.txt
  927. まさらの母: それでお父さんったら 喜んじゃってね
  928. 加賀見 まさら: …ふふ
  929. まさらの母: …こんな風に まさらと話すのは初めてかしら
  930. 加賀見 まさら: そう…?
  931. まさらの母: 恋バナ…みたいなのって 親子でなかなかしないでしょ?
  932. 加賀見 まさら: …かもしれない
  933. まさらの母: こんな話をしていると なんだか、結婚前夜みたいね
  934. 加賀見 まさら: …結婚
  935. 加賀見 まさら: …お母さんは、私に 結婚してほしいと思う?
  936. まさらの母: んー、どうかしらね
  937. まさらの母: お母さんは、まさらが幸せなら それでいいと思ってるわよ
  938. まさらの母: 私は結婚して良かったと思うけど 人生、それがすべてじゃないし
  939. まさらの母: あ、私みたいに親のことなんて 考えなくていいんだからね!
  940. まさらの母: あなたが元気でいてくれることが 1番の親孝行なんだから
  941. 加賀見 まさら: …そう
  942. まさらの母: それに、最近のあなたは 前より楽しそうで、安心してるの
  943. 加賀見 まさら: え?
  944. まさらの母: あら、気づいてないの?
  945. まさらの母: こころちゃんと仲良くなってから 笑顔が増えたでしょ?
  946. まさらの母: だから、良かったねって お父さんとよく話してるのよ
  947. 加賀見 まさら: …知らなかった
  948. 加賀見 まさら: (…この人は、私の幸せを 心から願ってくれている…)
  949. 加賀見 まさら: (私が居なくなったら きっと…とても悲しむ)
  950. 加賀見 まさら: (一時の感情とは言え …悲しませるのは…そうね)
  951. 加賀見 まさら: (なんだか、私の心が痛みそう)
  952. 加賀見 まさら: (自分が死んだあとのことなら 心を痛める必要はないし)
  953. 加賀見 まさら: (そもそも、そんな感情もすべて 存在しないはず)
  954. 加賀見 まさら: (…なのに、想像して 苦しくなってしまうのはなぜ?)
  955. 加賀見 まさら: 私と一緒にいたところで…
  956. 加賀見 まさら: あなたには 何のメリットもないと思うけど…
  957. 粟根 こころ: 私があなたと一緒にいたいの…! …ただ、それだけ
  958. 加賀見 まさら: (理屈じゃ説明できない感情は たくさんあるのかもしれない…)
  959. 加賀見 まさら: (こころも私も、みんな…)
  960. 加賀見 まさら: (人は矛盾した想いを抱えて それでも幸せになろうと)
  961. 加賀見 まさら: (そうやって 生きているのかもしれない)
  962. まさらの母: まさら、考え事?
  963. 加賀見 まさら: …いえ でも話したいことならあった
  964. まさらの母: 何かしら?
  965. 加賀見 まさら: …お母さん、私
  966. 加賀見 まさら: ウェディングフォトのモデルを することになったの
  967. 加賀見 まさら: …ということなんだけど 保護者として同意をもらえる?
  968. まさらの母: まぁ! こころちゃんと!?
  969. まさらの母: …………
  970. 加賀見 まさら: …お母さん?
  971. まさらの母: 結婚はしなくても 構わないと言ったけど
  972. まさらの母: 娘のウェディング姿を見られる となったら、話は別よ!
  973. まさらの母: 昔、使っていたカメラは どこに片づけたかしら…
  974. 加賀見 まさら: …………
  975. まさらの父の声: ただいまー
  976. まさらの母の声: あ、お父さん! 大変大変!
  977. まさらの母の声: まさらがウェディングで… あの、カメラはどこかしら…!
  978. まさらの父の声: はぁ!?ウェディング!? というか、何の話だ…!?
  979. まさらの母: まさら!
  980. 加賀見 まさら: は、はい…!
  981. まさらの母: みんなで見に行くから あとで場所とか教えてね!
  982. 加賀見 まさら: あ、え、えぇ… 同意はもらえたのね…
  983. まさらの母: 当り前よ!
  984. まさらの母の声: ほら、お父さんも一緒に カメラ探してってば!
  985. まさらの父の声: …いや、だからウェディングって なんの話だよ…!
  986. 加賀見 まさら: …………
  987. 加賀見 まさら: ふ、ふふっ… はしゃぎすぎ…
  988. 加賀見 まさら: (私、こんなに 愛されていたのね…)
  989. 加賀見 まさら: (…魔法少女である私たちが あとどれだけ生きられるのか)
  990. 加賀見 まさら: (それは、わからないけど)
  991. 加賀見 まさら: (…そう簡単には死ねないわね)
  992.  
  993. FILENAME: text_519320-8_cape9.txt
  994. 加賀見 まさら: いよいよ、撮影当日ね
  995. 粟根 こころ: うー、緊張しちゃう!
  996. 加賀見 まさら: こころなら大丈夫よ …それより、人が多いわね
  997. 粟根 こころ: 親も来てるし みたまさんたちも…
  998. 加賀見 まさら: 同じ日に撮影する人や 下見…結婚式当日の人もいるわね
  999. 粟根 こころ: いろんな人がいるね ひとりの人も…?
  1000. 加賀見 まさら: ソロウェディングって いうのがあるらしいわ
  1001. 粟根 こころ: へー、知らなかった! なんか素敵だね!
  1002. 加賀見 まさら: あら…あそこにいるのって…
  1003. 粟根 こころ: あやめたちだ!
  1004. 粟根 こころ: やっほー、あやめ!
  1005. 三栗 あやめ: こころじゃん! ちょっと助けてよー
  1006. 粟根 こころ: どうしたの?
  1007. 三栗 あやめ: あちしたち家族写真を 撮るから衣装を選んでんだけど
  1008. 遊佐 葉月: あやめには可愛い服の方が 似合ってるんじゃない?
  1009. 静海 このは: 少し値は張るけれど
  1010. 静海 このは: あやめのためなら これくらいは実質無料ね
  1011. 三栗 あやめ: ふたりとも、悩みすぎてさー あちしは、なんでもいいんだけど
  1012. 加賀見 まさら: …まあ、仕方ないわよ
  1013. 三栗 あやめ: そうなのかー?
  1014. 加賀見 まさら: ふたりとも、あなたのことが 可愛くて仕方ないんでしょう
  1015. 三栗 あやめ: そっかー… なら、仕方ないなー!
  1016. 粟根 こころ: …………
  1017. 粟根 こころ: まさらがあんなこと言うなんて 私、ちょっと驚いちゃった
  1018. 加賀見 まさら: そう?
  1019. 粟根 こころ: だって、いつもなら 合理的じゃないって言うでしょ?
  1020. 加賀見 まさら: …理屈を越えた感情もある それを教えたのはこころでしょ
  1021. 粟根 こころ: へ?
  1022. 粟根 こころ: …ん? あれ、あの人たちって…
  1023. 粟根 こころ: 海で会った人…!
  1024. 君が帰ってきたとき 美味しい料理が振舞えるよう
  1025. 料理教室に通うことにしたよ
  1026. なら、私は海外の料理を覚えて あなたに作ってあげなきゃだね
  1027. 加賀見 まさら: …こころ、知り合い?
  1028. 粟根 こころ: 前に、海であの人たちが 落としたハンカチを拾ったの
  1029. 粟根 こころ: そのとき話してたのが たまたま聞こえたんだけど
  1030. 粟根 こころ: 別居婚する~みたいな内容で 勝手に心配してたんだ
  1031. 粟根 こころ: でも…ふふ、良かった ちゃんと幸せそうで
  1032. 粟根 こころ: …やっぱり幸せって いろいろなんだね
  1033. 加賀見 まさら: …ええ、そうね
  1034. 粟根 こころ: そうだ、今なら想像できるかな 結婚するふたりの気持ち!
  1035. 加賀見 まさら: 被写体になるにあたり …ってことよね
  1036. 粟根 こころ: うん!
  1037. 加賀見 まさら: …私は、まだ結婚する人の 気持ちまではわからない
  1038. 加賀見 まさら: ただ、思ったのは
  1039. 加賀見 まさら: 結婚することが すべてではないけれど
  1040. 加賀見 まさら: 幸せになりたいと考えて 結婚する人が多いと思ったわ
  1041. 粟根 こころ: うん、そうだね
  1042. 粟根 こころ: 幸せって人によって違うし 家族に求めるものも人それぞれ
  1043. 粟根 こころ: 結婚したからって必ずしもそれが 正解とは限らないって、正直思う
  1044. 粟根 こころ: でも、幸せになりたい人は… ここにいる人たちは
  1045. 粟根 こころ: みんな、笑顔だよね
  1046. 加賀見 まさら: …ええ、そうね
  1047. 粟根 こころ: じゃあ、あれかな…
  1048. 粟根 こころ: モデルをする上で 心掛けることって…
  1049. 加賀見 まさら: …笑顔、ってことになるわね
  1050. 粟根 こころ: だねっ! 笑う門には福来るって言うし!
  1051. 加賀見 まさら: ふふ、そうね…
  1052.  
  1053. FILENAME: text_519320-9_cape9.txt
  1054. 粟根 こころ: 笑顔で写真を撮ってもらおう! って、決めたはいいけど
  1055. 粟根 こころ: 笑顔って どうしたらいいんだっけ!?
  1056. 粟根 こころ: まさら、助けて~
  1057. 加賀見 まさら: こころ、焦りすぎ 少し落ち着いて
  1058. 加賀見 まさら: 笑顔が課題なのは、むしろ私
  1059. 加賀見 まさら: …こころは、普段通りに していれば問題ないわ
  1060. 粟根 こころ: そ、そうかなぁ…
  1061. 加賀見 まさら: ええ、大丈夫よ
  1062. 粟根 こころ: …って、あれ?
  1063. 粟根 こころ: まさら、あそこにいるのって カメラマンさんじゃない?
  1064. 加賀見 まさら: そうね、だけどなんだか 慌てているように見えるわ
  1065. 粟根 こころ: 確かに…ちょっと 話を聞きに行ってみようか
  1066. 粟根 こころ: ええっ!? 私たちの衣装が届いてない!?
  1067. 加賀見 まさら: しかも、花嫁がひとり マリッジブルーで脱走…
  1068. カメラマン: はい…いや、どうしたものか… 申し訳ない…
  1069. 粟根 こころ: なら…花嫁の方は 私たちで探してきます!
  1070. 粟根 こころ: 衣装も…ちょっと なんとかしてみます…!
  1071. 加賀見 まさら: …ええ
  1072. カメラマン: そ、そんな悪いですよ…!
  1073. 粟根 こころ: 任せてください!
  1074. 粟根 こころ: あ!脱走した花嫁って もしかして、あの子かな?
  1075. 粟根 こころ: 高校生って言ってたし…
  1076. 加賀見 まさら: …彼女…
  1077. 粟根 こころ: まさらの知り合い?
  1078. 加賀見 まさら: 知り合い…というか 以前、海で会ったときは
  1079. 加賀見 まさら: 結婚に対しての不安を海に叫んで 波に飲まれてしまったらしいけど
  1080. え…あ、違うんです違うんです! 身投げとかじゃなくって!
  1081. 加賀見 まさら: 今回は… あの時と明らかに様子が違う
  1082. 加賀見 まさら: 本当に、身投げをしようとする なんて…これは…
  1083. 加賀見 まさら: …魔女の、口づけ
  1084. 加賀見 まさら: …彼女が抱く不安に 魔女がつけこんだのね
  1085. 粟根 こころ: …許せない
  1086. 加賀見 まさら: こころ?
  1087. 粟根 こころ: 結婚って多分、いろいろで… いいことばっかりじゃないけど
  1088. 粟根 こころ: それでも幸せになりたいとか 大切な人と一緒に居たいとか
  1089. 粟根 こころ: いっぱい考えて、悩んで 未来を選ぶものなんだと思うから
  1090. 粟根 こころ: きっと不安になるのも 当たり前で、仕方ないこと…
  1091. 粟根 こころ: だから…!
  1092. 粟根 こころ: ―こころ― みんなが悩みながら 幸せに向かって必死に足掻いているのに
  1093. 粟根 こころ: ―こころ― その気持ちにつけこむなんて 私、絶対に許せない!
  1094. 加賀見 まさら: ―まさら― …………
  1095. 加賀見 まさら: ―まさら― …そうね 私も同じ気持ちよ
  1096. 加賀見 まさら: ―まさら― …魔女を倒して 彼女を救いましょう
  1097. 粟根 こころ: ―こころ― うんっ!
  1098. 粟根 こころ: …って、この格好は…!?
  1099. 加賀見 まさら: …もしかして…
  1100. みたま: ふふっ、調整屋さんから 衣装のプレゼントよぉ
  1101. 江利 あいみ: それって、ウェディングドレスに なったりとか!?
  1102. みたま: さぁ…衣装が変わるかどうかは ふたりの気持ち次第ねぇ
  1103. 加賀見 まさら: 結婚に対しての想いが 私たちの中で変わったから…?
  1104. 粟根 こころ: それで、ウェディングっぽい 感じになったってこと!?
  1105. 粟根 こころ: …でも、なんで この配役なんだろう?
  1106. 加賀見 まさら: よくわからないけど 魔法少女姿には変わらないわ
  1107. 加賀見 まさら: 行きましょう、こころ
  1108. 粟根 こころ: …う、うん!
  1109. 加賀見 まさら: ふっ!
  1110. 粟根 こころ: やぁっ!
  1111. まさら&こころ: はぁあああっ!
  1112. 加賀見 まさら: ふぅ… こころ、ケガはない?
  1113. 粟根 こころ: うん、大丈夫! まさらも無事そうで良かった
  1114. 粟根 こころ: それより、あの子は…!
  1115. 加賀見 まさら: 魔女の影響は大丈夫だろうけど 多分、彼女自身がまだ…
  1116. 加賀見 まさら: あなた、大丈夫? しっかりして…
  1117. …え、あ…あれ…私… 今…海で…え…?
  1118. 不安…だけど、だからって 死のうなんて…私…!
  1119. 加賀見 まさら: …大丈夫 あなたのせいじゃない
  1120. 加賀見 まさら: …不安は、まだ拭えない?
  1121. …………
  1122. わかってるんだぁ… 今、ちゃんと幸せだって
  1123. でも、幸せだと思うほど 失ったらって怖くなるんです…
  1124. 加賀見 まさら: …………
  1125. 加賀見 まさら: すべてのことには終わりがある それは仕方のないこと
  1126. 加賀見 まさら: …愛だって、永遠に 続くとは限らない
  1127. …………
  1128. 加賀見 まさら: それでも、あなたは 彼を愛しているのよね
  1129. それは、もちろん!大好き!
  1130. 加賀見 まさら: なら、今生きているこの時間を 大切にする方が合理的
  1131. へ…? 合理、的…?
  1132. 加賀見 まさら: 人はいつか死ぬし 気持ちだって移ろうかもしれない
  1133. 加賀見 まさら: だけど、あなたたちは今 生きて愛し合っている
  1134. 加賀見 まさら: なら、今のうちに一緒にいるのが 最も笑顔になれる選択だと思う
  1135. そ、そうですよね… 不安がってる暇なんて…
  1136. 加賀見 まさら: …いえ、矛盾するけど 不安に思う時間も大切だと思うわ
  1137. 加賀見 まさら: その時間が…いつかの未来を作る 過去や、今が、明日に繋がるから
  1138. 加賀見 まさら: だから、あなたの想いを 無理に捨てる必要はない
  1139. 加賀見 まさら: 不安を抱えて生きることは 悪いことではないはずだから
  1140. 加賀見 まさら: …けど、その不安な想いを 彼には伝えたの…?
  1141. ううん、だって彼には 面倒臭いとか思われたくないから
  1142. 加賀見 まさら: そう…だけどそれは 本当に彼のためになるの?
  1143. 加賀見 まさら: 自分は、何も知らないまま ひとりであなたが悩むことを
  1144. 加賀見 まさら: 彼は、望んでいるの?
  1145. 加賀見 まさら: 結婚のことはよくわからないけど
  1146. 加賀見 まさら: 病める時も健やかなる時も… って、誓うんでしょう
  1147. あ…
  1148. 加賀見 まさら: けど、これはあなたの人生だから 私が口出しをすることでは…
  1149. …ちゃーんっ!
  1150. え、なんでまたそんな濡れて…! あ!この前の…!えと…
  1151. …あのね、聞いて
  1152. どうしたの?
  1153. …私、ずっと 不安だったことがあって…!
  1154.  
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  1156. 粟根 こころ: よかったね…ふたりとも
  1157. 粟根 こころ: 泣きながら話していたけど 最後は、ちゃんと笑顔になって
  1158. 加賀見 まさら: …ええ
  1159. 粟根 こころ: それにしても、やっぱり私 まさらの考え方が好きだなぁ
  1160. 加賀見 まさら: …さっきのは配慮に欠けた発言と 反省していたところなんだけど
  1161. 粟根 こころ: んー、変な同情じゃないからこそ ガツンと刺さるものがあるなって
  1162. 加賀見 まさら: …そう、ならよかった
  1163. 粟根 こころ: 私たちも、いつか 結婚したりするのかなぁ
  1164. 加賀見 まさら: どうかしら… …ただ、悪くないものだと思うわ
  1165. 加賀見 まさら: 大切な存在がいるということは 時として人を強くするだろうから
  1166. 粟根 こころ: それが、愛ってやつなのかねー
  1167. 加賀見 まさら: そうね…私も、あなたには 傷ついてほしくないと思うし
  1168. 加賀見 まさら: …いなくなったら、悲しい
  1169. 粟根 こころ: へっ!?
  1170. 加賀見 まさら: 親が私へ向ける心配なんかも それと同じなのかもって…
  1171. 粟根 こころ: あ、あー! そういう愛!
  1172. 加賀見 まさら: …?
  1173. 粟根 こころ: でも、そうだね…結婚とか そういう話だけじゃなくて
  1174. 粟根 こころ: 家族に対しての愛も いっぱい感じられたかも
  1175. 加賀見 まさら: そうね… いい経験だったわ
  1176. 粟根 こころ: …って 終わった雰囲気出してるけど
  1177. 粟根 こころ: 撮影まだじゃんか! 衣装、どうしよう!
  1178. カメラマンの声: モデルさん方~!花嫁さん 見つけて頂き助かりましたーっ
  1179. カメラマンの声: そろそろ撮影いけますか~
  1180. 粟根 こころ: ヤバい、来ちゃう! とりあえず制服に戻って…
  1181. 加賀見 まさら: …待って、こころ このまま行きましょう
  1182. 粟根 こころ: えぇ!?
  1183. 加賀見 まさら: ウェディングフォトには ぴったりの衣装でしょう
  1184. 粟根 こころ: …確かに!? え、いや…でも…
  1185. カメラマン: おや…その衣装は…!? なんと素晴らしい!
  1186. 粟根 こころ: あ、あはは…えーと… なんとかしちゃいました
  1187. カメラマン: なんとか…? それはいったい…
  1188. 加賀見 まさら: …今、それを論じている暇は ないんじゃないかしら
  1189. 加賀見 まさら: 窃盗やそのほか、法律に 反するものではないから安心して
  1190. カメラマン: ふむ…なら問題ない…か?
  1191. 加賀見 まさら: ええ、問題ないわ
  1192. カメラマン: まあ…そう…そうですね! では、さっそく撮影にしましょう
  1193. カメラマン: あっちで、おふたりの家族と ご友人も待ってますからね!
  1194. 粟根 こころ: ぷっ…あはは! まさら、すっごい強引!
  1195. 加賀見 まさら: 自分でも上手くいきすぎて 少し驚いてるわ
  1196. 加賀見 まさら: あ…こころ
  1197. 粟根 こころ: ん?
  1198. 加賀見 まさら: 今のあなた、とてもいい笑顔よ
  1199. 粟根 こころ: えへへ、それを言ったら まさらもだよ!
  1200. 加賀見 まさら: 私、笑ってるの? …気づかなかった
  1201. 加賀見 まさら: …あなたといると楽しいから そのせいね
  1202. 加賀見 まさら: さ、行きましょうか こころ
  1203. 粟根 こころ: ここは、衣装的に 私がエスコートしなきゃじゃ?
  1204. 加賀見 まさら: いいでしょ、どっちでも
  1205. 粟根 こころ: …それもそっか!
  1206. 江利 あいみ: ふたりの衣装… あれって魔法少女姿だったり?
  1207. みたま: ふふ、結婚するふたりの 気持ちがわかったってことね!
  1208. 江利 あいみ: ふーん、それってどんな?
  1209. みたま: 詳しいところまでは わからないけれど…
  1210. みたま: 見る限り、幸せな気持ちや 笑顔になれるような気持ちかしら
  1211. 江利 あいみ: 確かに、ふたりとも いい笑顔だもんね!
  1212. 江利 あいみ: あれ…でも、なんでこころは 花婿っぽいんだろう?
  1213. みたま: うーん…わからないけれど 家族や友だち…
  1214. みたま: みんなの幸せな未来を 守りたいっていう彼女の想いが
  1215. みたま: こころちゃんを あの姿にしたのかもねぇ
  1216. 江利 あいみ: そっか…!
  1217. 江利 あいみ: うん、ふたりとも すっごくいい感じだね!
  1218. カメラマン: じゃあ、結婚するふたりの 幸せな表情を意識して…
  1219. カメラマン: …いや、そのままで 問題ないですね
  1220. カメラマン: いきますよー!
  1221. カメラマン: 3・2・1
  1222. パシャッ
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