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- FILENAME: text_311211-1.txt
- 結菜: ハロウィンのとある出来事が終わった日のこと…
- 結菜: その日は、うららと一緒に 三浦さんと氷室さんも 我が家に遊びに来ていて…
- YOU WIN!
- 旭: ふむ、こんなもんでありますね
- 樹里: っだー! お前ゲームできんのかよ!
- 樹里: 時女のヤツはこういうの できねーんじゃねーの!?
- ひかる: それは偏見じゃないっすか? …リーダーは無理そうっすけど
- 旭: まぁ…我もそこまで嗜むわけでは ないのでありますが…
- 旭: このゲームは 直感的で簡単でありましたから
- 樹里: てんめぇ…! ウェルダンにすんぞ!
- ひかる: 樹里さんステイ! ステイっす!
- アオ: 三浦さんさぁ…無自覚煽りは 一番効くヤツだよぉ~?
- ラビ: …旭は 割とそういうところがある
- 旭: も、申し訳ないであります! 大庭殿への配慮が足らず…
- 智珠 らんか: まあ、樹里が煽り耐性 無さすぎってとこはあるけどね
- うらら: 次は、ウチが旭さんと ゲームしたいんよ!
- 結菜: ふふ…今日はにぎやかねぇ…
- ~~♪~~♪
- アオ: ん? 姉さま、電話?
- 結菜: …父からねぇ 少し静かにしていてもらえるぅ?
- 結菜: はぁ…困ったわぁ
- 樹里: どうした、姉さん
- アオ: やだ、なんかデジャヴ… 電話で何かあったの?
- 結菜: …いえ、そこまで深刻な 話じゃないから安心してぇ…
- 樹里: そんで?
- 結菜: ハロウィンの地域貢献活動に 参加することが決まったわぁ
- 智珠 らんか: げ…なんかダルそう…
- ひかる: どんなことをするんすか?
- 結菜: ゴミ拾いとか、高齢者の方を 訪問したり…とかかしらぁ?
- 旭: なるほど 立派な取り組みでありますなぁ
- 樹里: そんな面倒事 断りゃよかったのに
- 結菜: だけど、コネクションづくりは 大事なことよぉ…
- 結菜: 自分の将来に関わるのはもちろん 魔法少女の未来を考えれば
- 結菜: いずれ政治に関わる必要だって 生じてくるでしょうからぁ
- ひかる: さすがは結菜さんっす! ひかるも見習うっす!
- 結菜: それに、市長の娘かつ生徒会長… この肩書きで、断れないものぉ…
- 樹里: けっ、優等生も 大変なこったな
- ~~♪~~♪
- 樹里: …あ?親父からだ
- 樹里: もしもし、どうかしたか?
- 樹里: …はぁ!? ハロウィンの地域貢献活動!?
- 樹里: ようやく雇ってくれた社長の 頼みって言われても…
- 樹里: …いや、最近いろいろと 心配かけたのは…まぁ…
- 樹里: わりーとは…思ってるけど それとこれとは話が…!
- 樹里: ちょ…出席日数の話を出されたら そりゃ…確かにやべーけど…
- 樹里: 救済措置…?確かにあの学校じゃ そんくらい融通が利きそうか…
- 樹里: …チッ、わーったよ! やりゃいいんだろ!やりゃあ!
- 樹里: …………
- アオ: え、姉ちゃんも?
- 樹里: あぁ…最悪のハロウィンだ…
- 結菜: 一緒に頑張りましょうねぇ… 樹里ぃ
- FILENAME: text_311211-2.txt
- 樹里: ハァ…なんっでこんな格好して ゴミ拾いしなきゃいけねーんだ
- 結菜: …ハロウィンだもの 仮装するのは仕方ないわぁ…
- 結菜: それに、事務所で準備されてた 衣装は樹里も見たでしょぉ…?
- 結菜: ―結菜― あんな可愛いのを着て外に出るくらいなら 魔法少女姿の方が、かなりマシねぇ…
- 樹里: ―樹里― まぁ…猫耳メイドよりかは断然いいけどよ…
- 結菜: ―結菜― でも、樹里が本当に来て驚いたわぁ… もしかしてバックれるんじゃないかとぉ…
- 樹里: ―樹里― この活動が出席日数に含まれるかも …なんて聞いたら、来ざるを得ねーだろ
- 結菜: ―結菜― 融通が利く学校で良かったじゃなぃ…
- 樹里: ―樹里― いいことばっかじゃねえよ… むしろダルいことの方が多いっつーの
- 樹里: つーか… なんでお前らもいるんだ?
- うらら: 楽しそうだったから お手伝いに来たんよ!
- 旭: …という、うららに 巻き込まれた形であります
- ラビ: 衣装は以前、サーシャたちが 作ってくれていたから…
- 樹里: ご愁傷様だな
- 樹里: んで、まずはゴミ拾いだろ さっさと終わらせちまおうぜ
- 結菜: えぇ、知り合いにでも会ったら やってられないからねぇ…
- 結菜: 地域貢献活動…と言っても 大仰なことをするわけではなく 仕事内容は、おおよそ自治体のボランティア
- 結菜: ハロウィンらしい格好をする以外は 特に難しいこともないため 活動はすぐに終え、私は大人たちとの コネクション作りへと向かうつもりだったけど…
- 結菜: …うららぁ
- うらら: うぅ…
- 結菜: 私、うららはもう少し いい子だと思ってたんだけどぉ…
- 結菜: 使えそうでもゴミはゴミ… 持ち帰ろうとしないでちょうだぃ
- うらら: だ、だってもったいないんよ…!
- 結菜: はぁ…家具とか雑貨なら わからないでもないんだけどぉ…
- 結菜: …いくらゴミとは言っても 持ち帰ってしまうと…
- 結菜: 遺失物等横領罪として 犯罪になってしまうのよぉ…
- うらら: え!? し、知らなかったんよ…
- 結菜: これから気をつけましょうねぇ…
- 結菜: …あと頼むから、食材だけは 手を出さないでくれるぅ…?
- 結菜: 心配になるわぁ…
- うらら: うぅ…わかったんよ…
- ラビ: …カボチャがこんなに安く!? いやしかし持ち帰る労力が…
- ラビ: けど…那由他に美味しい ハロウィンメニューを…
- ラビ: それにパンプキンパイなどは みかげさんもきっと喜んで…
- 結菜: …氷室さん 手を動かしてもらえるぅ…?
- ラビ: 失礼しました… つい、チラシが目に入って…
- 旭: こ、これは年代物の記念メダル…
- 旭: こんな掘り出し物に出会えるとは 我は、ラッキーでありますよ!
- 結菜: 三浦さぁん…?
- 旭: すまないでありますが 構ってる暇はないのであります!
- 旭: これは、国の財産と言っても 過言ではないのでありますよ!
- 結菜: えぇ…?
- 結菜: …はぁ
- 結菜: (ただのゴミ拾いなのに どうして、こんなに疲労が…)
- 結菜: 樹里…なんとかして…
- 結菜: …って、樹里がいない…? どこかでサボってるのかしらぁ…
- 結菜: こんな道の真ん中に 缶が落ちてるほど進んでないのに
- 結菜: もう、ひとりで終わらせるしか ないようねぇ…
- 樹里の声: オイ、何してんだよ姉さん!
- 結菜: あら…樹里いたのねぇ… 早く手伝って…
- 樹里: じゃなくて! それ、缶蹴りの缶なんだよ!
- 樹里: 何拾ってくれちゃってんだ
- 結菜: は?
- 樹里: コイツらと遊んでやってたんだよ ニヒッ
- 結菜: 子どもたちと交流するのは いいことだと思うけどぉ…
- 結菜: ゴミ拾いをしなさいって 言ったでしょぉ…!
- 結菜: そんなこんなで、他4人を叱りつつ どうにか終わったゴミ拾い
- 樹里: っしゃー! これで終わり!解散!
- 結菜: いいえ… むしろ、ここからが本番
- うらら: まだ何かするのん?
- 結菜: ええ…お宅訪問よぉ…
- 樹里: はぁ!? マジかよ…
- 樹里: 樹里サマ、早く帰って マンガを買わなきゃなんねーのに
- 旭: なんのマンガでありますか?
- 樹里: “帰ってきた ガリ勉ボウズ・キヨマロ伝説”
- うらら: あ、打ち切りになったって 言ってたマンガなんよ?
- 樹里: そ、番外編をやるらしくてさ 楽しみなんだよな~ニヒッ
- 旭: どんなマンガでありますか?
- 結菜: ギャグ系の不良マンガ…よねぇ?
- 樹里: おう、公家出身で弱いキヨマロが 頭脳プレイで戦おうとすんだが
- ラビ: それでガリ勉…
- 樹里: けど、結局ピンチになるから 古い家臣団を呼んで解決したり
- 旭: 卑怯であります…
- 樹里: 敵の親がキヨマロんちの息が かかったやつで遠隔勝利…とか
- 樹里: 先祖の力をフル活用して勝つ! っていう、ぶっとんだ話なんだよ
- ラビ: …それは、打ち切りになるのも わかる気がする…
- 樹里: 結構、いい話とか刺さるセリフも あるっつーのに…
- 樹里: あーあ、キヨマロ談議が できるやつが居ればなぁ
- 結菜: キヨマロはいいから 次の仕事へ行くわよぉ…
- FILENAME: text_311211-3.txt
- 樹里: んで、じいちゃんばあちゃんの 住む家に行って
- 樹里: 元気か確認するっつーのが 次の仕事で合ってるか?
- 結菜: まぁ…ざっくりだけど そうねぇ…
- 樹里: んじゃ、行くか
- ドンドンドン!
- 樹里: おーい、いるかー?開けろー いるのはわかってんだぞー!
- 結菜: ちょっと樹里ぃ!? やめなさぃ…!
- 結菜: 取り立てみたいに なってるでしょぉ…!
- ガチャ
- 何事かと思ったら…
- 可愛い子たちが たくさんねぇ…うふふ
- 結菜: すみません…この子が… 乱暴に…
- 樹里: あ?だって声が 聞こえなきゃ困んだろ
- 結菜: ちょっと…!
- ふふ、それでその格好 お菓子をもらいに来たのかい?
- 結菜: いえ、私たちは地域活動として 皆様のお宅を訪問して…
- ちょっと待っててねぇ
- 樹里: ほら、姉さん声ちっせーから ばあちゃんに聞こえてねーよ
- 結菜: 樹里ぃ…
- はい、お菓子よぉ はっぴーはろうぃんねぇ
- 結菜: …そんな 頂けないですよぉ…
- 樹里: ま、樹里サマたちは もう高校生だからなー
- 私からしたらみーんな 可愛い子どもよぉ
- うらら: じゃあ、遠慮なくいただくんよ! ありがとうなんよ!
- 結菜: うららぁ…
- 結菜: そのあとも、何軒かの家を訪問しては 住んでいる方と話し、交流し ときどきお菓子を頂いたり…
- 結菜: 高校生にもなって子ども扱いをされるのは 少しだけむずがゆかったけれど… 人との触れ合いはあたたかくて なんだか、不思議な気持ちになった
- 結菜: それから、この訪問の中で 私は、みんなの知らなかった一面を垣間見た
- おお、お手玉かい ずいぶん上手じゃないか
- うらら: ふふん、ウチ実は大道芸とか いろいろやってるんよ!
- うらら: だから、簡単なお手玉なら 教えてあげられるんよ!
- 結菜: うららは、大道芸をやっていた影響か 人と話をするのが上手く すぐに、相手の懐へと入っていった
- 結菜: これは、彼女がプロミストブラッドで 可愛がられていたことからも 想像できたことではあったけれど…
- 旭: む…そこにある本は かの有名な戦艦の…
- 君、これがわかるのかい なかなか渋い趣味をしてるねぇ
- 旭: 我の祖父が、そういったものを 好きでありまして
- 結菜: 三浦さんは、ミリタリー系に詳しいらしく 高齢の方たちとよく話が合ったり
- 結菜: それに、新たな一面を見たと感じたのは 彼女たちも同じだったようで…
- 樹里: おい…におわねーか
- 結菜: な…失礼でしょぉ…
- 樹里: いや、なんか焦げてんぞ!
- ああ、そういえばお鍋の 火をかけっぱなしだったわ!
- どうしましょう… 今晩の夕食が…
- 樹里: なら、樹里サマに任せろ!
- 樹里: オイ、お前も協力しろよ 家政婦
- ラビ: 私は那由他専門の お手伝いだけど…いいでしょう
- ラビ: 鍋の様子は… それなりにひどいみたい
- 樹里: でもまあ、消し炭には なってねえみたいだし
- ラビ: ええ、私たちで なんとかできそう
- 旭: 大庭殿は料理が できたのでありますか!
- 結菜: 父親の食事を 作ることもあるそうよぉ
- 旭: それは初耳でありますな!
- ラビ: なんとか、一家庭の 夕食を守ることができた…
- 樹里: お前、料理に関しては 意外と強気でビビったわ
- ラビ: あなたこそ、手際が良くて …正直驚いた
- ラビ: プロミストブラッドというと 野蛮で怖い印象もあったし…
- 旭: 料理や、人との交流から 優しい面を見て驚いたであります
- 結菜: まったく…失礼ねぇ…
- うらら: 次の訪問場所は病院?
- 樹里: これでラストか! やっとだな!
- うらら: そのまま入ってきちゃったけど なんだか場違いなんよ…
- ラビ: 病院にお化けの仮装は 良くなかったかもしれない…
- 旭: 時すでに遅しでありますよ 我は、死神っぽさすらあるので
- 看護師: あら、みなさんが 地域活動の…?
- 結菜: ええ、紅晴です 本日はお願いします
- 樹里: んで、何したらいい?
- 看護師: 交流スペースにみなさん 集まっていただいているので
- 看護師: こちらで用意したお菓子を 配りつつ、お話を…
- うらら: お話だけなんよ?
- 看護師: ええ、よろしくお願いします
- 結菜: 市の活動で来ましたぁ… 楽しいハロウィンにしましょぉ…
- なんの仮装なんだい?
- 樹里: 樹里サマたちは 吸血鬼って感じだな
- おー、俺の悪い病気も 吸ってもらいたいもんだなぁ
- 樹里: いや…反応しづれーって
- 結菜: …ん?
- 結菜: (あの女の子、どこかで 見たことがあるような…)
- FILENAME: text_311211-4.txt
- 結菜: 最後の活動として、病院での 交流をすることになった私たちは それぞれお菓子を渡したり会話をしたりと 順調に奉仕活動をしていた
- 結菜: ただ、そこで出会った見覚えのある少女… 彼女は、引っ込み思案なのかずっと隅に居て それが、少し気がかりだった
- 結菜: はい、あなたもお菓子をどうぞぉ
- あ…りがとう…
- ごめんなさい…この子 ちょっと人見知りでねぇ
- けど、病気の私を見舞ってくれる とってもいい子なのよぉ…ふふ
- 結菜: そうですかぁ… 優しいお孫さんなんですねぇ…
- 結菜: …ああ、そうだ…うちに 大道芸が得意な子がいて…
- うらら: 呼んだんよ?
- 結菜: うらら、何かここで お見せできるものはあるぅ?
- うらら: 任せるんよ!
- うらら: ラビさんたちと一緒にやる 大技を見せてあげるんよ!
- うらら: …っと、こんな感じなんよ!
- 旭: せ、成功でありますな…
- ラビ: ひやひやした…
- …わぁ…すごい…
- 結菜: (良かった…少しだけ 表情がほぐれたみたい)
- ぁ…あの、お姉さん
- 結菜: なぁに…結菜でいいわぁ
- 結菜…お姉さんは、算数…得意? 宿題がわからなくて…
- 結菜: わからないところがあるのぉ? いいわぁ、教えてあげる…
- 樹里: 宿題なら、樹里サマが パパっとやってやろうか
- 結菜: コラ…自分でやることに 意味があるのよぉ…?
- 樹里: はは、冗談だっつーの
- 樹里: …って、お前 ノートに描いてある絵…!
- …ぁ、その…これは…
- 樹里: “ガリ勉ボウズ・キヨマロ伝説” 樹里サマも好きなんだよ!
- 樹里: ぶっ飛んだ設定が いいんだよな!
- …ぅ、うん!
- 樹里: お前、誰が好き?
- あ…あのね、キヨマロと いつも一緒に居る…
- 樹里たち: お供のサキチ!
- 樹里: わかってんじゃん!ニヒッ
- …頑張り屋さんのとこが なんか…すごいなぁ…って
- 樹里: そうそう、公家出身のキヨマロは いつも先祖の力に頼って
- 樹里: 結局、権力とか根回しとかで 勝つのがお決まりなんだが
- 樹里: 農家出身のサキチは努力だけで 敵を倒しちまうんだよなぁ
- …お供なのに、力も サキチの方が強かったり…
- 樹里: そのせいで、キヨマロが呼んだ 家臣団に敵って勘違いされたりな
- 結菜: それから、樹里と少女は 私たちの帰る時間になるまで キヨマロ談議に花を咲かせた
- ラビ: では、私たちはここで
- 結菜: 一日ありがとぉ… 気をつけてねぇ…
- 結菜: じゃ、私たちも帰りましょうかぁ 今日はお疲れ様ぁ…
- 樹里: あぁ…マジで疲れた
- 樹里: でも、キヨマロ読んでるちびっこ アイツは将来有望だな!
- 結菜: ふふ、意外と楽しめたみたいで 良かったわぁ
- 樹里: …それ言ったら姉さんだって なんだかんだ楽しんでたろ
- 結菜: …樹里たちの奔放さには 振り回されたけどぉ…
- 結菜: 魔法少女になってからは あまり無かった時間だったからぁ
- 樹里: ま、樹里サマはこんな活動 二度とゴメンだけどな
- 結菜: あら、そうなのぉ…?
- 樹里: キヨマロの話だけでいいなら 構わねーが、そうもいかないだろ
- 樹里: でも、それももう終わりだ!
- 樹里: って、あー マンガ買い忘れちまった…
- 樹里: ま、明日買いに行きゃいいか どうせ暇だし
- ~~♪~~♪
- 樹里: あ? 馬から電話か…?
- 樹里: ん、もしもし どうした、馬?
- 樹里: あぁ!?
- 樹里: やーっと、面倒事から解放… されんだよな…?
- FILENAME: text_311212-1.txt
- 樹里: …なんで樹里サマが 馬の言いなりになんか…
- 結菜: 和やかに終わりを告げたかと思っていた ハロウィンの地域貢献活動だったけれど
- 結菜: あの日、ひかるからかかってきた電話によれば 彼女の進路をかけた一大事を解決するため 数日にわたって子ども会の手伝いをしてほしい とのことだった
- 樹里: つーか、なんだよ進路って 自分でなんとかしろっつーの
- 結菜: 出席日数欲しさに活動へ参加した 樹里が言うのも…だけど
- 結菜: 私も詳しく聞きたいわぁ…
- ひかる: ひかるは、このまま大人になれば ダメ人間まっしぐらっす…
- ひかる: だからせめて、いい大学へ 進学したいと思ってるんすけど…
- ひかる: 子ども会の手伝いをすれば 内申点がもらえるらしくてっすね
- ひかる: そうしたら推薦でいい学校に いけるかもしれないんすよ!
- 樹里: …お前、それ一般入試から 逃げたいだけなんじゃねーの
- ひかる: ギクッ そ、そそそんなことないっすよ!
- 結菜: …言っておくけど、推薦も そんなに簡単じゃないわよぉ…
- ひかる: え、そーなんすか!?
- 結菜: あと、あなたまだ中学生だし 大学受験には早くなぃ…?
- 樹里: つーか、なんで馬たちは 仮装してねーんだよ!
- アオ: 別に、仮装してこいなんて 言われてないよ~?
- 智珠 らんか: 恥ずかしい格好、したくないしね
- 樹里: んだよ、それ…やってらんねぇ 樹里サマは帰る!
- 結菜: ちょっと樹里…
- …ぁ、樹里お姉さん…?
- 樹里: ――っ!?
- …お姉さんたち、子ども会も 来てくれたんだ…
- 結菜: ええ、今日もよろしくねぇ
- …でも、樹里お姉さん もう帰るって…
- 樹里: …いや、買い損ねたキヨマロの 単行本を買いに行こうかと…
- あ、番外編の…? それなら持ってきてる…よ
- 子ども会が終わったら その…一緒に読む…?
- 樹里: …んあー…わーったよ わーった
- 樹里: 仕方ねーから 最後までいてやるよ
- ほんと…? ふふ、嬉しー…
- 樹里: …ほら、そろそろ始まるし お前もみんなの輪に入っとけ
- …ぁ、うん…
- 結菜: じゃあ、さっそくゲームを 始めましょうかぁ…
- ひかる: 最初はしっぽ取りっすよ!
- ひかる: 樹里さんの後ろにつけた しっぽを追うっすよ~!
- 追え追え~!
- きゃ~!
- 樹里: オ、オイ! やめ、囲むんじゃねえ!
- …………
- アオ: 次は、大根抜きだよ~
- 智珠 らんか: 結菜さんたちに 引っこ抜かれないようにね
- 樹里: オラオラ! 大漁だ~!
- 結菜: ちょっと…力は加減してよねぇ…
- …………
- 結菜: …あなたも 一緒に鬼役をやるぅ?
- …ううん、見てるから 大丈夫…
- 結菜: …………
- 結菜: いくつかのゲームで、会は盛り上がっていたけど 彼女は、ずっと端っこで孤立していて それだけが、少し気がかりだった
- 結菜: そして心配していたのは、私だけではなく…
- 樹里: …………
- FILENAME: text_311212-2.txt
- アオ: それじゃあ、お待ちかね すごろくの時間だよ~!
- 智珠 らんか: とりあえず、こっちで お手本をやるから見ててよ
- ひかる: 別にお手本なんて… って、なんすかこれ!?
- 結菜: すごろくでそんなに 驚くようなこと…えぇ…!?
- 樹里: んだこの 罰ゲームだらけのマスは!?
- アオ: あ、みんなにやってもらうのは もっと優しいのだから安心して?
- アオ: お手本は刺激的な方が 楽しいでしょ?クスッ
- アオ: あ、わたしは進行役だから やらないけどね~
- 樹里: てめぇ…はめやがったな…
- アオ: じゃあ、はじまりはじまり~!
- 結菜: こうしてすごろくを始めた私たちは 順に罰ゲームのマスを踏んでいき…
- アオ: じゃあ、みんな一斉に 罰ゲームをどうぞ~!
- アオ: ―アオ― まずは、姉さま! ネコのポーズ!
- 結菜: ―結菜― …ぅ、にゃ、にゃぁ…
- アオ: ―アオ― 続けて、姉ちゃん! お嬢様のマネ!
- 樹里: ―樹里― お嬢様…って、何したらいいんだ?
- アオ: ―アオ― なんかほら、語尾とかポーズとかさ
- 樹里: ―樹里― お、お嬢様…ですの~? で、いいのか?ですのだ~?ですのよ?
- 結菜: ―結菜― …それは、氷室さんのとこの子じゃない…?
- アオ: ―アオ― じゃあ、らんかは…ふふ、うふふ ぶりっこ~!ぷふっ!
- 智珠 らんか: ―らんか― ぶりっこって、こんな感じのポーズ? …ほんと、アオぶっ飛ばすからね
- アオ: ―アオ― 最後に~、ひかるは馬!
- ひかる: ―ひかる― ひ、ひひ~ん…っす なんすかコレ!
- 樹里: ―樹里― いつもどおりじゃねーか
- あはは、すげーおもしれー!
- 智珠 らんか: 笑ってる場合じゃないから! 次はあんたらがやんのよ?
- アオ: じゃ、すごろく開始~!
- アオ: あなたの罰ゲームは~… 犬の鳴きマネね!
- よっしゃ!わんわん! こんなん楽勝だぜ!
- 樹里: おい、甘くねーか?
- アオ: あんまり恥ずかしいのはダメって 大人に止められたんだもん~
- 結菜: …それで 私たちにやらせたのぉ?
- アオ: テヘッ
- アオ: あ、次の罰ゲームは 好きなひらがなを書く!
- ひかる: もはや罰ゲーム感うすいっすね
- 結菜: そのあとも、優しい罰ゲームが続いていき 和気あいあいとした空気だったけれど…
- ぁ…私、罰ゲーム…
- アオ: おっけー じゃあ、次は~…
- アオ: わたしたちの内、誰かの 似顔絵を描いてほしいな!
- …ぇ
- 智珠 らんか: はい、紙とペンね
- …………
- ひかる: 上手くなくても全然いいっすよ? ほら、ひかるを馬として描いても
- 智珠 らんか: 自分で言う? てか、馬って割とむずくない?
- …………
- 描かねーのー?
- そうだよ 後ろ詰まってるんだけど
- ひかる: まぁまぁ…そう焦らず こんなんテキトーでいいんすよ?
- 結菜: (…嫌な空気ねぇ)
- みんなやってんだから 早くやんなよ
- …………
- アオ: じゃあ、罰ゲーム引き直して~
- なんでだよ~えこひいきかよ~ マジ萎えるんだけど~
- アオ: …………
- なに固まってんだよ~ 姉ちゃんも固まり病かよ!
- アオ: …………頭きた
- 結菜: …アオ?
- アオ: …マジ萎える…は こっちのセリフなんだけど
- は?
- アオ: 罰ゲーム提示したわたしが 言うのはおかしいかもだけど
- アオ: 文句ばっかり言って あなた、楽しい?
- アオ: というか、得意不得意なんて あなたにもあるんじゃないの
- 結菜: …アオ
- アオ: だって、あの子…!
- 結菜: 女の子の方が居づらくなるわぁ…
- アオ: あっ…
- …………
- アオ: ぁ…ごめ、ん…
- アオ: ごめん、姉さま…
- アオ: なんか、昔の自分に あの子が重なっちゃって…
- 結菜: …えぇ、大丈夫
- 結菜: じゃあ、時間もそろそろだし 次の遊びにしましょうかぁ…
- …………
- 結菜: …あ
- あの子、逃げちゃった
- あの子のせいでお姉さんに 怒られちゃったし…
- もう来なければいいのに
- 結菜: …………
- FILENAME: text_311212-3.txt
- 結菜: 罰ゲームができなかったあの子への野次… それについて、アオが叱ったのをきっかけに 場にはぎくしゃくとした空気が流れ続けたが…
- 結菜: どうにか私たちは その日の活動を終えることができた
- アオ: …ほんと、ごめん 暴走しちゃった…
- アオ: 大人げなかったよね…わたし
- 智珠 らんか: まあ、正直ムカつくのはわかる けど、やっちゃったね…
- 結菜: 私たちも、ああなる前に フォローできればよかったけどぉ
- ひかる: …ひかるもフォローのつもりが 追い詰めてたかもっす…
- アオ: わたしのせいで、あの女の子 絶対…居づらくなっちゃったよね
- 結菜: 罰ゲームと彼女との相性が 悪かったのかもしれないわぁ…
- 結菜: あの子も、アオも悪くないわよぉ
- 結菜: ただ…元々、隅っこに 寄りがちな子ではあったから
- 結菜: 明日の子ども会に来てくれるか 少し、心配ねぇ…
- 樹里: …………
- アオ: うぅ…どうしよう…
- 智珠 らんか: ま、こっちが落ち込んでたら 楽しんでもらえないだろうし
- 智珠 らんか: とりあえず、ゲーセンで すっきりしてから帰ろ
- アオ: …うん
- 結菜: 私たちも何かできることが ないか考えておくわぁ…
- アオ: ありがと、姉さま
- 結菜: ふぅ…
- 樹里: あ…
- 結菜: 樹里、どうしたのぉ…?
- 樹里: あそこにいんの、アイツだろ
- 結菜: ほんとねぇ… 声をかけてみましょうかぁ…
- 結菜: こんばんはぁ…
- あ…お姉さんたち… 今日…その…
- 樹里: なあ、お前チョコは食えるか 病院でも食ってたよな?
- え、あ…うん…
- 樹里: これ、残ってたからやる …今日はアオが悪かった
- 樹里: そのお詫びってことで 受け取っとけ
- …ぁ、ありがと…
- 樹里: …ちょっと、そこで 寄り道していかね?
- 樹里: …んで、お前さ、それ どうにかなんねーの?
- 結菜: 樹里…
- 樹里: だってコイツ オドオドする必要ねーじゃん
- 樹里: 絵は上手いんだし罰ゲームも 困る内容じゃなかったろ
- …恥ずかしい、し テキトーとか…難しくて…ぐす
- 樹里: ちょ、おい泣くなって 言い方…悪かったか?
- 樹里: えっと…その… 話なら、聞くからさ
- …ぅ…ふぅ…うん
- 結菜: 落ち着きはじめた少女が ぽつりぽつりと語ってくれたのは 1年ほど前に引っ越してきてから今までのこと
- 結菜: 彼女は、二木市に越してきてからというもの 元の性格も相まってずっとなじめずにいたらしい
- 結菜: そして、唯一彼女の味方である祖母も 最近は体調を崩しがちなのだという
- 私も…みんなの輪に 入りたい…って思う
- おばあちゃん、私がひとりなの 心配…してるから…でも…
- うっ…うぅ~…
- 結菜: 大丈夫…大丈夫だから 泣かないでぇ…?
- ふぅ…うぅ…
- 結菜: どうしましょぉ…
- 樹里: オイ、こっち見ろ
- …へ?
- 樹里: オラッ
- わぁ…ちっちゃい花火…?
- 樹里: …マジックだ
- 樹里: アオが小さい頃…じゃなくて えっと…あれだ
- 樹里: 親戚のチビが これ見ると泣き止んだんだよ
- 樹里: どうだ、すげえだろ 超練習したんだぞ
- うん…すごい…
- 樹里: 樹里サマは、こういう 小細工ってのは嫌いなんだけどさ
- 樹里: ア…じゃなくて、チビに 泣き止んでほしくて…変わった
- 変わった…
- 樹里: お前は、変わりたくねーの? 弱い自分からさ
- 樹里: 強くなりてーなら樹里サマが 鍛えてやってもいいんだぜ
- …ぅ、わ、わかんない…
- 樹里: …そうか
- 樹里: なぁ、困ったらさ 樹里サマたちを呼べよ
- 樹里: いいな?
- …うん
- FILENAME: text_311212-4.txt
- 結菜: …あの子、大丈夫かしらぁ
- 樹里: さぁな
- 結菜: 私たちにできることって 何があるのかしらねぇ
- 樹里: …自分でなんとかするだろ
- 結菜: …とか言って、本当は 助けてあげるつもりでしょぉ…
- 樹里: 誰が、そんなだりーこと
- 結菜: でも、言ってたじゃなぃ… 困ったら呼べ…って
- 結菜: 樹里は、無責任に そんなこと言わない…でしょ?
- 結菜: それに…アオのために習得した 魔法まで見せて…
- 樹里: オイ、こっち見ろ
- …へ?
- 樹里: オラッ
- わぁ…ちっちゃい花火…?
- 樹里: …マジックだ
- 樹里: チッ…んで、何が言いたい
- 結菜: あの子のために何ができるか 一緒に考えてくれなぃ?
- 樹里: …仕方ねーな
- 結菜: あなたも乗り気でしょぉ?
- 樹里: 別に、アイツが 小さいアオに重なっただけ
- 樹里: …それに、今日はアオが いろいろやらかしちまったし
- 樹里: その責任を取るのは 樹里サマたちだろ
- 結菜: もう親じゃないし、いいのよ?
- 樹里: うっせーな いいから考えるぞ
- 結菜: ふふ…そうねぇ…
- 結菜: あ、もう遅いしうちに泊まるぅ? 今日は両親も出かけてるし…
- 樹里: いいぜ、明日も一緒なら その方が楽そうだしな
- 結菜: 夜通し、対策を練るわよぉ…
- 結菜: あの子は、そもそも性格が 引っ込み思案みたいよねぇ
- 結菜: あまり話をせずにできる ゲームをやってみる…とか
- 樹里: けど、それは一時しのぎだろ 今後のことを考えるなら…
- 結菜: (…樹里にしては 珍しく入れ込んでる…)
- 結菜: 私には、この出来事が 樹里にとって大きなものになるような そんな、予感がしていた
- 結菜: (茶化さず、私もしっかり 向き合わないとねぇ)
- 樹里: オイ、姉さん聞いてんのか?
- 結菜: あぁ…ごめんなさぃ 考えごとを…
- 結菜: とりあえず お腹が空いてきたわぁ…
- 樹里: …まあ確かに 腹が減っては…ってやつだな
- 樹里: なんか簡単に作るから 台所借りてもいいか?
- 結菜: あらぁ、作ってくれるのぉ?
- 樹里: 樹里サマの方が手際いいからな 姉さんは案でも出してろ
- 結菜: わかったわぁ…
- 結菜: そして、その話し合いは 樹里の作ってくれた夜食を食べながら 明け方まで行われた
- 結菜: そして、いつの間にか眠っていた私は 夢うつつで、ここ数日のことを振り返りながら ふと、思った
- 結菜: こんな風に小さい子へ 入れ込んだのはアオ以来だ…と
- 結菜: そして、生徒会長として プロミストブラッドのリーダーとして 大切な人たちのために心を費やしてきたけれど
- 結菜: 出会って間もないような少女に対して こんなに時間を割いたのは
- 結菜: 今回が、初めてだったのかもしれない…
- 樹里: あの頃のアオと重なったから …ただ、そんだけだよ
- FILENAME: text_311213-1.txt
- 樹里: ん…ふぁ… っべー、寝ちまった
- 樹里: 姉さん、姉さん起きろ 朝だぞ
- 結菜: …ん、おはよぉ…
- 樹里: 朝飯食ったら 昨日の話、最終調整すんぞ
- 結菜: …わかったわぁ
- 樹里: あーほら、早く顔洗ってこい 飯作んのに台所借りるからな
- 結菜: ありがとぉ… 助かるわぁ…
- 樹里: んじゃ、いただきますっと
- 結菜: あら…?
- 樹里: どうした?
- 結菜: 勝負の日なのに トンカツじゃないのねぇ…
- 樹里: 姉さん、朝からトンカツは 食えねぇって言ってたろ
- 樹里: それに…戦いの主役は 樹里サマたちじゃなくてアイツだ
- 結菜: 確かにそうねぇ…
- 結菜: そして迎えた子ども会2日目…
- 結菜: …あの子は来てるぅ…?
- 樹里: あぁ…ただ、さすがに 居心地は悪そうだな
- 結菜: 上手くいけばいいけどぉ…
- 樹里: …それはアイツ次第だろ
- アオ: 姉さま、言ってたもの 用意しておいたけど…
- 智珠 らんか: 大きな紙とペン… で、いいんだよね?
- ひかる: いったい、何をするんすか?
- 結菜: お楽しみよぉ…
- 樹里: んじゃ、今日のゲームを 発表すんぞ~
- 結菜: 今日するのは、絵しりとりよぉ
- 智珠 らんか: ちょっと…正気? 昨日、絵でダメだったじゃん
- アオ: そうだよ! またできなかったら…
- 結菜: …あの子を信じましょぉ
- 樹里: じゃ、スタートだ
- はい、描けた!
- 結菜: …次はあなたの番ねぇ
- …………
- また、固まってるじゃん
- アオ: ちょっと…
- でもさ、大丈夫なの?
- ねー、昨日もダメだったし
- ざわざわ…
- …………
- っ…
- 樹里: …逃げちまうのか?
- ぅ…だって…
- 樹里: …サキチがキヨマロを 叱咤激励するとき言うんだ
- え?
- 樹里: 「先祖の力も、才能も、努力の結果も 内に秘めているだけでは役に立たず 駆使して初めて、お主の助けとなるのだ」
- 樹里: その言葉で、キヨマロは 新たな力を解放して敵に勝つ
- 樹里: しかも、普段は威光に頼って 勝つキヨマロだけど
- 樹里: この回は、ガリ勉で得た 知識も役立って好きな回なんだよ
- …………
- 樹里: …つまり、何が言いたいかってさ
- 樹里: お前が持ってる力 見せてやれよ、アイツらに
- …ぅん
- FILENAME: text_311213-2.txt
- 樹里: お前が持ってる力 見せてやれよ、アイツらに
- …ぅん
- なーボソボソ話してねーで 早く描かないのかよー
- もしかして、絵が すっごい下手なんじゃない?
- だから描かなかったの?
- っ…
- カリカリカリ…
- アオ: あ…描き始めた
- 智珠 らんか: 良かった…ていうか あれ…待って待って!
- ひかる: めっちゃうまくないすか!?
- えーほんと?
- わ、すごい…上手!
- …確かに
- ねえ、それアニメのキャラ? 絵、得意なの?
- ちょっと…だけ…
- あれ描いてよ! 朝にやってるさ…!
- おいずりーぞ、お前らばっか! なあ、俺にも描いてよ!
- 智珠 らんか: 絵しりとりどころじゃ なくなっちゃってんじゃん
- アオ: 一躍ヒーロー…って感じ?
- 智珠 らんか: …ていうか、何したの 結菜さんたち
- 結菜: …いろいろと策を考えたんだけど あの子を信じることにしたのぉ
- ひかる: どういうことっすか?
- 樹里: 結局のところ、樹里サマたちは なんもしてねーんだよ
- 結菜: ただ、絵が得意なあの子が 少しやりやすい遊びにしただけ
- 結菜: 解決したのは全部…
- 結菜: 彼女の勇気よぉ…
- 樹里: アイツ、実力は持ってんのに 自信だけがなかったんだ
- 樹里: ま、これを乗り越えれば 今後もちょっとは変わるだろ
- 樹里: っし…これで終わりだな
- 結菜: …ええ 今度こそ、お疲れ様ぁ…
- 樹里: にしても、馬たちは元気だな 解散後、即遊びに行くなんてさ
- 結菜: ふふ…本当ねぇ
- お、お姉さんたち…!
- 結菜: あら、今日のヒーローねぇ
- ヒーロー…なんて、そんな…
- 樹里: アイツらちゃんと謝ったか?
- …ぅん、見直したー…って 今度ね、遊ぶ約束もしたの
- 樹里: 手のひら返しで釈然としねーけど お前がいいなら、それでいいか
- 樹里: そんで…今、帰り?
- ぁ…病院に寄ってこうと…
- 今日のこと話したら おばあちゃん、喜ぶから…
- だから…あの、改めてね
- …ありがと、結菜お姉さん 樹里お姉さん
- 結菜: 頑張ったのは、あなたよぉ
- 樹里: ま、よくやったんじゃねーの
- …えへへ
- 樹里: っし、病院まで送ってく
- そんな…大丈夫…
- 樹里: 暗くなってきたし 遠慮すんなっつーの
- 樹里: それに、会うのもたぶん 今日が最後だろ?
- …そっか… …ぁ、ありがとう…
- じゃあ…ここで
- 結菜: おばあさまによろしくね
- 樹里: …あー、良くなるといいな お前のばあちゃん
- ありがと… またね、お姉さんたち
- 結菜: いくらなんでも、病気は どうにもできないわねぇ…
- 樹里: …だな
- 樹里: あ、つーかマンガ 読ませてもらうの忘れてたな
- 結菜: ――っ!?
- 樹里: …魔女
- 樹里: チッ…病院にいやがんのか アイツらが危ねーな
- 結菜: 急ぎましょぉ…!
- FILENAME: text_311213-3.txt
- …あ、おばあちゃん
- お部屋から出てたんだね 体調、良くなったの…?
- あの、今日ね、私 嬉しいことがあってね…
- …………
- おばあ…ちゃん…?
- ぐ…うぅ…
- おばあちゃん…? ねえ、どうしたの…!?
- あ…えっと、看護師さんを 呼ばなくちゃ…!
- きゃ!?
- 停電…?
- ど、どうしよう…
- ぅ…うぅ… 誰か…
- ぁ…
- 樹里: なぁ、困ったらさ 樹里サマたちを呼べよ
- た、助けて…
- 樹里お姉さん… 結菜お姉さん…っ!
- 樹里の声: おう
- え…?
- 樹里: お前、でっかい声も ちゃんと出るんじゃん
- 結菜: 助けを呼べて偉いわねぇ
- なんで…ふたりが…
- 樹里: あー、樹里サマたち 実はホンモノの吸血鬼でさ
- 樹里: 悪い病気を吸いに来たんだ
- 病気を…?
- 結菜: 私たちは、血だけじゃなくて 悪い病気も吸い取れるのよぉ…
- 樹里: だから、安心しろ ばあちゃん、すぐ良くなっから
- 樹里: その代わり、いいって言うまで 待ってろ…わかったな?
- …わかった
- 樹里: 言っとくが、ばあちゃんにも 友だちにも内緒だからな
- うん
- 樹里: そんじゃ、行ってくる! 目、しっかり閉じとけよ!
- …………
- ………… …………
- ………… ………… …………
- 樹里の声: 「もう、目開けていいぞ」
- はっ…
- 停電…直ってる?
- あ、おばあちゃんは!?
- 樹里: 大丈夫 ちょっと寝てるだけだ
- 結菜: 念のため、看護師さんは 呼んでおいてねぇ
- …お姉さんたち 吸血鬼だったの…?
- 樹里: あ?なんのことだ 夢でも見たんじゃねーの?
- …じゃあ、ヒーロー…かな
- 樹里: …………
- 私、私ね…ふたりみたいな ヒーローに…な、なりたい!
- 結菜: (…思い出したわぁ この子…前に会ってる…)
- 結菜: それは、恐らく彼女が引っ越してきたころ 魔女の口づけを受けていた少女を助けたときに 言われたことを、今の今まで忘れていた
- ヒーローみたい…
- 結菜: (幸い、彼女はそのことを 覚えていないようだけど…)
- 結菜: (ヒーロー…だなんて)
- どうしたら…私も ヒーローになれるの?
- 樹里: …樹里サマたちは ヒーローなんかじゃねえよ
- …吸血鬼だから?
- 樹里: そんな、いいもんじゃない 樹里サマたちは…
- …?
- 樹里: …いいか、よく聞け
- 樹里: ヒーローになんて なろうとするんじゃねえ
- …やっぱり、弱い私には 難しい…から?
- 樹里: そうじゃない お前は、お前のままでいい
- 樹里: 変わりたいなら今日みたいに 一歩踏み出すだけでいい
- 樹里: 自分の力で 自分だけのやり方を見つけろ
- 言ってること…難しいよ…
- 樹里: 自信持て…っつーことだ
- 樹里: いいか、間違っても 誰かの誘惑に乗ったりすんな
- 樹里: 願いは、自分で叶えろ お前なら、できるはずだ
- 樹里: …なんせ、キヨマロを読んでる 将来有望なちびっこだからな!
- わかんないけど…わかった
- 私は…私… 最強の私になる!
- 樹里: 最強…くく、なんつーか いいじゃねーか、それ
- えへへ…ありがとう お姉さん
- あ、あとねひとつ お願いがあるの…!
- FILENAME: text_311213-4.txt
- 結菜: そして、ハロウィンの気配も過ぎ去ったころ…
- あ!お姉さんたち! 来てくれたんだ!
- 樹里: おー
- …私がお願いしたから?
- あ、あとねひとつ お願いがあるの…!
- 吸血鬼なの、内緒にするから また、子ども会に来てね…!
- 樹里: ちげーよ、約束してたマンガ 読ませてもらってねーと思ってな
- ふーん…?ほんとう?
- 樹里: なんかお前、図々しくなったな
- ふふ…だって 最強の私になるって決めたから
- 樹里: あー、だりーことになっちまった
- 結菜: あの一件を終えて、今後政治にも関わるのなら 子どもたちへ寄り添う必要があると考えた私は 定期的に子ども会へ参加することにした
- 結菜: 気晴らし…と同行する樹里だけど 恐らく、半分本当で半分嘘
- 結菜: 実際、子どもたちとヘトヘトになって 遊ぶ中でストレスを解消できているのか 以前より炎を溜め込まなくなったけど
- 結菜: 理由の半分は、たぶんあの子との出会い
- 樹里: ヒーローになんて なろうとするんじゃねえ
- 結菜: あの日…樹里はきっと彼女に対して “魔法少女になってほしくない” という想いを抱いたのだろう
- 結菜: 何度か話題に出し、聞いてはみたけど 『アイツ、しょうもない願いで契約しそうだろ』 と、毎回はぐらかされてしまう
- 結菜: だけど、あの子と出会って 樹里の中に今までなかった感情が 生まれたんじゃないかと、私は思っている
- …あのね、樹里お姉さん 今日は相談があるの
- 樹里: あぁ?いじめられたってなら 樹里サマがぶっ飛ばしてやる
- そ、そうじゃなくてね… ほら、あの子
- 樹里: …なんか、ちょっと前の お前みたいなやつだな
- そうなの…
- 樹里: っしゃ任せろ!
- 樹里: オイ、お前!
- ひぃ! な、なん…ですか…
- 樹里: お前、ボクシングに 興味ねーか?
- 樹里: 力がつきゃ自信もつくってもんだ どうだ?一緒に強くなろーぜ
- え、えぇ…ボクシングって もっとなんか、ないの…?
- 樹里: じゃあ、えっと…なんだ どうしたらいい…?
- 例えば…勉強、とか 頭の良さも強さ…でしょ?
- 樹里: 確かに、キヨマロは ガリ勉か…いやーでもなぁ…
- 結菜: (子どもたちを助けるつもりが あの子も学んでるみたいねぇ…)
- 紅晴さん
- 結菜: あぁ、こんにちは 学童保育の方…ですよねぇ…
- ええ、話を聞きたいって… 場所はここでよかったのかしら?
- 結菜: …子どもの未来を考えるなら 子どもたちを見ながらがいいかと
- 結菜: 私は私で、こうして繋がりを持ちながら 未来のために何ができるか 大人の力を借りて、動き始めている
- 結菜: 魔法少女の未来を作ること それは、子どもたちの今をより良くする… ということとも繋がっているだろうから
- 樹里: 今日もクッソ疲れたけど… ま、悪くない疲労感だな
- 結菜: …子どもの相手 意外と得意なのねぇ
- 樹里: 別にちびっこは 好きじゃねーよ
- 樹里: …あいつらと遊ぶのも 嫌いじゃねぇけどな
- 結菜: また、魔女ねぇ… 行きましょうかぁ…
- 樹里: 魔女はこっちで倒すから 姉さんは巻き込まれたヤツらを
- 結菜: 任せてちょうだぃ…
- 樹里: っりゃあああああ!
- 樹里: …なんつーか、今までも結界に 囚われたヤツらは助けてたが…
- 結菜: あくまで生きるための魔女退治で 人助けのためじゃなかったわねぇ
- 樹里: 樹里サマなんかストレスを 発散するために戦ってたからな
- 結菜: …魔法少女として、人との関係を 見つめなおしてもいいのかもぉ…
- 樹里: 言っとくが樹里サマは樹里サマの 生き方を変えるつもりはねえよ
- 樹里: 目の前に困ってるヤツがいたら 助けてやってもいい…そんだけだ
- 樹里: あと、そうだ…頼まれたから 次の子ども会でやる企画を…
- 樹里: …オイ 何、笑ってんだよ
- 結菜: いえ…
- 結菜: (楽しそうな顔してるわね …とは言わないでおきましょぅ)
- 樹里: あれか、未来のことを言えば 鬼が笑う…ってやつか?
- 結菜: そうかもしれないわねぇ…ふふっ
- 結菜: 未来を語り合える日が また来るなんてねぇ…
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