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- [From the opening sequence in 519710-0]
- 噂が噂を呼ぶ 怪異譚に触れた時
- 異界の扉が開く…!
- [Title card] かごめの百怪波瀾~炎夏の宴~
- FILENAME: text_519710-1_yvWxs.txt
- かごめ: 始まりは、あの日…
- 那由他: いらっしゃい パパはこっちですの
- かごめ: ありがとうございます
- 太助: こんにちは、かごめ君
- かごめ: ご無沙汰してます、教授
- かごめ: 取材した魔法少女の記録をまとめていた私は 最終的な編纂のアドバイスをもらうため ある程度構成が見えてきたところで 里見教授を訪ねた
- かごめ: …だけど…
- 太助: そうだね まず構成としては…
- ~~♪~~♪
- 太助: …あ、ごめん、電話だ 誰から…
- 太助: …あー…
- 太助: ちょっと出ていいかな?
- かごめ: お気になさらず…! どうぞ
- 太助: じゃあ、失礼して…
- 太助: もしもし? どうした?“あの件”か?
- かごめ: (“あの件”…?)
- 太助: うん…うん…
- 太助: …またアップされたのか… やれやれ…
- 太助: わかった… ただ、今は来客中でね
- 太助: またあとでかけ直すから 話はその時にでも…
- 太助: …ふぅ…
- かごめ: …………
- 太助: …いや、ごめんね で…えーと…
- かごめ: 構成…ですか…?
- 太助: ああ、構成だ…で、その構成を…
- 太助: …ん…そうか…
- かごめ: え?
- 太助: …こういうのは 広く若者に話を聞いた方が…
- かごめ: 話…?なんのでしょうか…?
- 太助: いや、唐突に申し訳ない
- 太助: 実は、さっきの電話の件 なんだけどね…
- 太助: 相手は私の高校の同級生なんだ 茅野っていうんだけど…
- 太助: 彼は地元に帰り 実家の旅館を継いだんだが
- 太助: 最近、あることで悩んでいて 私に相談を持ち掛けてきたんだ…
- 太助: その悩みの種というのが まあ、なかなかでね…
- かごめ: なんでしょうか…?
- 太助: …カイダン…だよ
- かごめ: …上ったり下りたりの…?
- 太助: そっちじゃなくて 怖い話の方の「怪談」ね
- かごめ: ああ、怪談ですか…
- かごめ: …え!?怪談…!?
- 太助: うん…
- 太助: 元から妖怪やお化けといった 伝説があるとかの土地柄なんだが
- 太助: それが最近になって なぜかネットを中心に広まって
- 太助: 一気に観光客が増えたんだ
- かごめ: …でも、それって宿にとっては プラスになるような…
- 太助: 確かにそうなんだが 訪れる客の質がね…
- 太助: 動画を撮影する客もいて …いわゆる、迷惑系らしい…
- 太助: 面白半分で肝試しをやって夜中に 町中で騒いだりする輩もいたり
- 太助: 最近ではそういうのが大半に なってしまったんだ
- 太助: それで、茅野も ほとほと困り果ててね…
- かごめ: そうですか…
- 太助: こういう今時なトラブルだからね
- 太助: 若者から何か解決のヒントが 得られるかと思ったんだ
- かごめ: それで、私、ですか…
- 太助: あとで那由他たちにも 話を聞こうと思うけど…
- 太助: まずは、かごめ君の意見から 聞いてもいいかな?
- かごめ: あ、はい 私でよければ…
- 太助: ありがとう!
- かごめ: …と、ひょんなことから とある町に起きた騒動の解決を目指して 私と教授のディスカッションが始まった…
- かごめ: だけど、気がつくと私は…
- かごめ: …その件…
- かごめ: 私に調査させてくれませんか?
- 太助: えぇ!?
- かごめ: かつて経験したことのない 未知の扉に手をかけていた…
- FILENAME: text_519710-2_yvWxs.txt
- かごめ: …………
- 「次は、青火野~、青火野~」
- かごめ: (…もうすぐだ…)
- かごめ: 里見教授の友人・茅野さんから 持ち込まれた相談事…
- かごめ: 私と教授は話をしている内にこれを 「怪談騒ぎ」と呼ぶようになった
- 太助: …で、その怪談騒ぎの元と なっている伝来の妖怪譚だけど…
- 太助: 確かに茅野の住む「青火野」には そういう話が伝わっているらしい
- 太助: …いや、今では『伝わっていた』 というのが正しいようだが…
- かごめ: どういうことでしょうか?
- 太助: そもそも、文献に残されている ようなものではなかったようで…
- 太助: ほぼすべて、口伝によって 話が受け継がれてきたらしい
- 太助: しかし、茅野の親世代あたりから 受け継ぐ者が減ってしまい…
- 太助: 今ではわずかな古老が 知るのみだということだ
- かごめ: うーん…そんな状況なのに なぜ今になって…?
- 太助: それが、どうも違った内容で 流布しているようなんだ
- 太助: 今の青火野で最も噂されている 怪談というのは…
- 太助: 『青火野へ来たよそ者は この世ならざる者にかどわかされ 煙のように存在を消す』
- 太助: とかなんとかで…
- 太助: 茅野が伝来の怪談に詳しい 古老に聞いたが
- 太助: そんな話は知らないと 言っていたそうだ
- かごめ: つまり…伝言ゲームみたいな ことが起きたということですか?
- 太助: そうだね…
- 太助: 誰かが怪談話をどこからか 聞きつけ、ネットに流布した…
- 太助: それが回る内にアレンジされ 原型を留めなくなった…
- 太助: あくまで推測でしかないが 可能性としてはゼロではない…
- 太助: それに、実際に行方不明事件も 青火野では起きているんだ
- かごめ: え…?
- 太助: その事実が噂に 拍車をかけたみたいだね…
- かごめ: (…とはいっても…)
- かごめ: (日本では毎年8万人もいる 行方不明者が)
- かごめ: (みんな怪異のせいで いなくなったとは思えない)
- かごめ: (…でも逆に…)
- かごめ: (それがぜんぶ怪異のせいだって 言えなくもないんだよね…)
- かごめ: (だって、この世界には “魔女”がいるから…)
- かごめ: (だから、私は…)
- かごめ: …その件…
- かごめ: 私に調査させてくれませんか?
- 太助: えぇ!?
- 太助: 調査って…私はただ 噂を解消するヒントを…
- かごめ: 実際に現地に赴いて噂の真相を 徹底的に調べ上げてきます
- かごめ: やっぱり、噂に尾ひれがついて 出回っただけの話だと思いますし
- かごめ: そのことをちゃんと発信すれば 怪談騒ぎも収まると思うんです
- 太助: …ううむ…
- かごめ: こういう取材をすることで 自分の経験にもなります
- かごめ: だから、できれば私にやらせて もらいたいなぁと…
- 太助: …………
- 太助: …何か他に、狙いが あったりしないかい?
- かごめ: えっ…!?
- 太助: …もしかして…
- 太助: 行方不明者の事件に 魔女が絡んでいる…とか?
- かごめ: そ、それは…!
- 太助: 魔女の存在…つまり そこに魔法少女が関わっている
- 太助: だから取材したい…
- かごめ: …………
- 太助: …図星みたいだね
- かごめ: …でも、魔女を知る 私たちにとってその可能性は…!
- 太助: …そうだね そのファクターを見落としてたよ
- 太助: そうなると 私の出番はない、か…
- かごめ: …………
- 太助: …しかし、魔女が絡んでいない 可能性もあるからね…
- 太助: まずは私が調べるつもりだよ
- かごめ: え?教授だけで…!?
- 太助: こんな話、君にしてしまったのは 本当にうかつだった…
- 太助: そもそも、私に持ち掛けられた 相談事だから、責任は私が…!
- かごめ: いえ、危険です…! ここは魔法少女である私が…!
- 那由他: ずいぶん賑やかですけど 何の話をしているんですの?
- かごめ&太助: あ…
- かごめ: (…ということで…)
- 那由他: 青火野というのは どういうところですの?
- 太助: 海も山もある 自然豊かな土地だよ
- ラビ: 遊びではないということで 水着は持ってきていません
- 那由他: うーん、仕方ないですの…
- かごめ: …………
- かごめ: 話を聞いていた那由他さんに 『だったら、みんなで行けばいいんですの!』 と提案された教授は
- かごめ: 娘を危険にさらすかもしれないと とても渋っていたけど らちがあかなくて根負け
- かごめ: 私も強く反対する理由もないので 那由他さんも一緒に行くことになった
- かごめ: そしてさらにもうひとり…
- かごめ: …………
- ラビ: …?どうかしましたか?
- かごめ: い、いえ、なんでも…
- かごめ: 那由他さんから話を聞き 一も二もなく同行を決めた氷室さん…
- かごめ: (…これってなんだか…)
- かごめ: (教授の家の夏休み旅行に 私がついてきたみたい…)
- かごめ: (…ま、まあ、とにかく! 肝心なのは調査だから…!)
- かごめ: (青火野に魔法少女の 足跡があるなら…)
- かごめ: (それを記録するのが 私のやるべきこと…!)
- 「間もなく、青火野~、青火野~」
- FILENAME: text_519710-3_yvWxs.txt
- 太助: こんにちは~…
- 茅野: おお、里見!
- 太助: 茅野!お邪魔するよ
- 茅野: いや、こちらこそすまんな… わざわざ来てもらって…
- 茅野: こんなこと相談できるの お前しか浮かばなかったから…
- 太助: もうそれは言うな 気にするなよ
- 茅野: …で、そちらが…
- 太助: 娘の那由他だ
- 那由他: はじめましてですの
- 茅野: 話には聞いていたが… いやぁ、はじめまして!
- 太助: それから…
- ラビ: 氷室ラビです
- 太助: 主に那由他の面倒を 見てもらってる子だよ
- 茅野: …お手伝いさん… みたいなことか…?
- ラビ: そうお考え下さって 結構です
- 太助: それから、調査に協力してくれる 佐鳥かごめ君
- かごめ: よろしくお願いします…!
- 茅野: ありがとう…本当に! すまないね…
- 茅野: とにかく、ここまで来るのに 疲れただろ
- 茅野: さあ、部屋はこっちに 用意してるから
- かごめ: 部屋に荷物を置いて 私たちは改めて状況を確認
- かごめ: そして最初におこなったのは 青火野がどういう所か 自分たちの足で見て回ることだった
- 太助: ふむ…
- 太助: 茅野の民宿周辺は 多少民家や商店もあったが…
- かごめ: こっちはまばらですね
- 那由他: 今、どこへ 向かっているんですの?
- ラビ: 海の方向です 間もなく海水浴場が…
- ???の声: 「んんんんんんんん!!」
- 那由他: な、なんですの!? 今の声にならない悲鳴は…!
- 太助: 海の方から聞こえたね…!
- ラビ: 例の怪談騒ぎの連中でしょうか? それとも…
- かごめ: と、とにかく 行ってみましょう!
- ???の声: 「ひいいぃ!」
- 那由他: これは悲鳴…なんですの?
- 太助: …あそこか?
- ミユリ: うううう~! 眩しすぎます!
- ミユリ: 燦様のおみ足は~!
- 燦: だから大きな声を出さないで! 恥ずかしい…!
- かごめ: あ、あれ…!?
- 燦: …ん?
- ミユリ: これはこれは 見覚えある顔が…?
- かごめ: 神楽さんに遊狩さん!?
- 那由他: まあ!
- ラビ: (ネオマギウスの…)
- 太助: 驚いたな…!
- かごめ: どうしてここに…?
- 燦: あなたたちこそ…!
- ミユリ: 燦様!動かないでください! お、おみ足がぁ…!
- 燦: …あのね、ミユ ここはそんなリアクション…
- ミユリ: わ、わざとじゃないんです! どうしても本能的に反応を…!
- 燦: だから…!
- ミユリ: ふぬぬぬぬ…!
- かごめ: 落ち着いて、遊狩さん!
- かごめ: このようなやり取りが しばらく続いているうちに…
- ラビ: いつまでやってるんでしょうか…
- 太助: ある意味、すごいね… 情熱的とも言えるよ…
- ミユリ: すみません、燦様…! そろそろ気持ちを落ち着かせて…
- 燦: …ホント、いい加減に…
- かごめ: あれ…? どうしました、那由他さん?
- 那由他: ちょっと、気分が…
- 那由他: うーん…
- 太助: な、那由他!?
- ラビ: いけない…! もしかして、熱中症に…!?
- 燦: …どうしたの!?
- ミユリ: …ふぇ?
- かごめ: た、大変…! 急いで宿に…!
- FILENAME: text_519710-4_yvWxs.txt
- 太助: 那由他…
- ラビ: ご気分は?
- 那由他: …大丈夫… もう落ち着いたんですの…
- 那由他: ごめんなさい… 到着早々に迷惑を…
- かごめ: そんなことないですよ!
- 燦: そうよ
- 燦: そもそもミユが理性を欠いて 話が進まなかったせいなんだから
- ミユリ: も、申し訳ないです! 燦様のおみ足が強烈すぎて…
- かごめ: もう落ち着いたんですか…?
- ミユリ: そ、それはもう! 冷や水をぶっかけられたように!
- かごめ: あの、聞きそびれましたが どうしておふたりは青火野に…?
- 燦: ああ、そういえば…
- 燦: この青火野と、私の地元の光塚は 縁があってね
- 燦: 光塚で祀っている神様が こっちにも分祀されているの
- 燦: だから、お祭りのルーツも 同じでね
- 燦: 例年、お互いの祭事を 手伝っているのよ
- かごめ: 光塚のお祭りっていうと あの…
- 燦: 「火祭り」ね
- 太助: なるほど…
- 太助: 『青火野』という地名にも 『火』が入っているしね
- かごめ: …では、遊狩さんは…?
- ミユリ: 手伝いです
- 燦: ちょっと人手が足りなくてね ただし…
- 燦: その条件が 「海で一緒に遊ぶ」だったのよ
- かごめ: …あ、それって…
- ミユリ: い、いやいや!燦様のおみ足を 一目拝もうと思ってとかそんな!
- ラビ: 自白してますね
- ミユリ: ひぃ!つい本音が!
- 燦: …まあそんな魂胆は 見え透いてたけど…
- 燦: で、その約束を果たしていた ところにあなたたちが…
- 燦: そっちはどういう理由で?
- かごめ: …話してもいいですか?
- 太助: ああ、構わないよ
- かごめ: では…
- 燦: 怪談騒ぎの調査ね…
- かごめ: そうなんです
- 太助: そういう話、聞いたことは?
- 燦: ええ、聞いてますよ
- ミユリ: 青い炎の…ってやつですね
- 燦: まあ、そうだけど… その話はねぇ…
- かごめ: え?
- ミユリ: 神隠しの話ですよね?
- 太助: 『この土地へ来たよそ者は…』の 話かい?
- 燦: そうですね
- 燦: 私たち、お祭りの運営をしている 青火野の町内会の人に聞いて…
- 燦: その、例の神隠しの話を…
- ミユリ: しかもその人 目撃したっていうんです!
- 太助: ええっ!?神隠しの現場を… ということかい!?
- ミユリ: 青い炎がポウッと浮かんで それに導かれてどこかに…
- ミユリ: …っていう感じらしいです!
- 燦: その人はお化けでも見たと 思って怖くなり逃げたそうですが
- 燦: 次の日、旅行者がひとり 行方不明になったそうで…
- 太助: 目撃者がいたとは…
- 燦: ただ、『青い炎』っていうのが どうにもマズくて…
- 燦: 火祭りのイメージダウンに 繋がりかねないという話になって
- 燦: 内々の話で抑えていたんです
- ミユリ: でもでも、こっちの人は みんなその話は知っていたので
- ミユリ: ミユたちにも自然と 伝わって来たんですよね
- かごめ: そうだったんですか…
- 太助: こうなると、次にやることは おのずと決まったね
- かごめ: 聴き取り、ですね
- 太助: ああ…
- 那由他: で、では、早速…
- 那由他: …ああ…
- 太助: 那由他! まだ無理をしちゃいけない
- ラビ: そうです 今は安静にしていてください
- 那由他: …申し訳ないですの…
- かごめ: おふたりは那由他さんを 看病していてください
- かごめ: まずは私ひとりで 聞いて回りますから
- 太助: 気持ちは有り難いけど ひとりで平気かい?
- かごめ: 大丈夫です 話を聞いてくるだけです
- 太助: …………
- 太助: …そうか…すまないね…
- かごめ: 氷室さんも、那由他さんの お世話を…
- ラビ: 承知しています
- 那由他: かごめさん…私…
- かごめ: ゆっくり休んでください
- 那由他: …ありがとうございます…
- かごめ: さて、では…
- 燦: 待って
- かごめ: …はい?
- 燦: 私たちも手伝うわ
- かごめ: え!?
- FILENAME: text_519710-5_yvWxs.txt
- 燦: 待って
- かごめ: …はい?
- 燦: 私たちも手伝うわ
- かごめ: え!?
- 燦: どう考えても、こんなことに なってしまった原因は私たち…
- 燦: …でしょ?ミユ
- ミユリ: お、おっしゃる通りで…
- 燦: 彼女の体調は治せないから
- 燦: せめて、罪滅ぼしとして 調査を手伝わせてちょうだい
- ミユリ: お願いします!
- かごめ: いや、でも…
- ミユリ: どうかひとつ!
- かごめ: …え、え~…?
- かごめ: …ということで…
- 燦: あの辺の人に聞いてみる?
- かごめ: あ、はい、そうですね
- ミユリ: さ、燦様…
- 燦: 挙動不審にならないでね、ミユ
- ミユリ: ももももちろん!
- かごめ: おふたり…とりわけ神楽さんに協力してもらって 青火野にいる人たちに聴き取りをしてみた
- かごめ: でも、大半の人が怪談騒ぎの表面しか知らなくて 有益な情報は得られなかった
- かごめ: じゃあ、今まで得た 情報を整理してみましょう
- 燦: そうね…まず…
- 燦: 『地元の人たちは怪談話で 迷惑している』かしら
- かごめ: はい、改めての話ですが とにかくハッキリしてました
- ミユリ: その辺の愚痴というか 苦労話がすぐ出てきましたね…
- かごめ: ただ、話の出元はやはり…
- 燦: うん…どうにも不透明ね…
- かごめ: 土台となっているかもしれない 青火野の妖怪話も…
- ミユリ: わずかに知っている人でも 中身はおぼろげでしたね…
- 燦: 結局、怪談騒ぎを解消するために 有効だと考えられるのは
- 燦: “噂話を解消すること”かしら
- 燦: 『これこれこういう妖怪伝説が 元ネタでそれが変化して…』
- 燦: って、説明するしかなさそうね
- かごめ: でも、怪談騒ぎが起きた要因は 他にもあるような気がしますし
- かごめ: そこに目をつぶって 選択肢を狭めるのは避けたいです
- かごめ: ただ、現時点で集めた 情報では糸口もつかめてません…
- ミユリ: まだまだ大変そうですねぇ…
- かごめ: 正直、少々行き詰ってます
- かごめ: なので…ここは別の視点からも 調査をしていきたいです
- 燦: 別の視点…それってまさか…
- かごめ: はい…
- かごめ: 魔法少女としての視点…
- 燦: 魔女の関与があるのでは… という線ね
- 燦: そうね…
- かごめ: …アルちゃん…
- かごめ: どんなに小さなことでもいいから 情報を集めてきて…!
- アルちゃん: <わかった、かごめちゃん!>
- かごめ: お願いね…!
- FILENAME: text_519710-6_yvWxs.txt
- かごめ: どんなに小さなことでもいいから 情報を集めてきて…!
- アルちゃん: <わかった、かごめちゃん!>
- かごめ: お願いね…!
- かごめ: こうしてアルちゃんたちが 青火野の各地へ飛び散ってから 1時間後のこと…
- アルちゃん: <ただいま!>
- かごめ: どうだった!?
- アルちゃん: <あったよ、魔力の反応!>
- かごめ: ホントに!?
- 燦: 案内してくれる?
- アルちゃん: <ここから近くにある林だよ!>
- ミユリ: …やっぱり魔女が…
- 燦: その可能性は極めて高そうね…
- かごめ: …行ってみましょう!
- 燦: ちょっと待って
- かごめ: すぐに行かないと せっかくの手がかりが…!
- 燦: 旅館で待っている人たちに 報せは入れておいた方がいいわ
- かごめ: …あ… そうでした…
- 燦: ここは連絡も入れつつ 痕跡を追うべきよ
- ミユリ: (さすが燦様…!クール!)
- 燦: …ということで、ミユ ちょっと旅館まで行ってくれる?
- ミユリ: あ、りょ、了解です!
- 燦: それでいい? 佐鳥さん
- かごめ: …すみません ありがとうございます
- 燦: いいのよ
- 燦: そもそも、この青火野に 魔女がいるなんて…
- 燦: その影響で火祭りの実施にも 支障をきたすかもしれないし
- 燦: …じゃあ、行きましょう
- かごめ: はい!
- 燦: ミユ、頼んだわよ
- ミユリ: お任せを!
- かごめ: 私たちは二手に別れ、遊狩さんは旅館へ そして、私と神楽さんは魔力反応があったという 林へと向かった
- かごめ: …ここ…
- 燦: 確かに…かすかではあるけど 魔力を感じるわね…
- かごめ: ですね…
- かごめ: もう少し奥でしょうか?
- 燦: おそらくは…
- かごめ: …あれ?
- かごめ: 見てください!
- 燦: 青い炎…!? 私が聞いた話と同じ…!
- かごめ: 追うしか…
- 燦: ないわね… 明らかに誘っているけど…
- かごめ: でも、ようやく掴んだ尻尾を 手放すのは…
- 燦: …………
- 燦: …仕方ないわね
- かごめ: 近づくと青い炎は消えて別の場所に現れ その都度、私たちは追跡した
- かごめ: そして行き着いたのは…
- かごめ: …ここは…泉…?
- 燦: 魔力の反応が一段と強い…
- かごめ: 炎も泉の上で燃えてます
- かごめ: 消えた!?
- 燦: ここが終着点みたいね…! 身構えて!
- かごめ: はい!
- 燦: …くっ!
- かごめ: 泉に…引き込まれる…!?
- 燦: …結界!
- FILENAME: text_519710-7_yvWxs.txt
- かごめ: …………
- かごめ: 「…ん…んん…」
- かごめ: 「…あれ?…波の…音…?」
- かごめ: …………
- かごめ: …ここは…海…?
- かごめ: (どうしてこんなところに…?)
- かごめ: (確か私、泉の中に 引きずり込まれて…)
- かごめ: …神楽さん…
- かごめ: …神楽さん! 神楽さん!どこですか!?
- かごめ: 神楽…
- かごめ: …え…?
- かごめ: な、なになになに!?
- かごめ: (か、囲まれた…!)
- かごめ: (これ…どういうこと…? お、お化け…!?)
- かごめ: (…でも、どこか 見覚えのある顔…)
- 謎の少女: …………
- かごめ: …ひっ!
- 謎の少女: …………
- かごめ: …あ、あなた…誰!?
- かごめ: (何…!?この…感覚は…?)
- 謎の少女: …………
- かごめ: …え?何か言ってるの?
- 謎の少女: …………
- かごめ: わ、わからない… 聞こえないの!
- 謎の少女: …………
- かごめ: (ち、近づいてきた…!)
- 謎の少女: …………
- かごめ: ご、ごめんなさい! 聞こえなくて!どうしても!
- 謎の少女: …………!
- かごめ: 本当なの! あなたが何を言ってるのか…!
- 謎の少女: …………!
- かごめ: 聞こえないんですー!!
- かごめ: 「…はっ!」
- かごめ: 「…はぁ…はぁ…はぁ…」
- かごめ: 「…さっきの女の子は…!?」
- かごめ: 「…いない…!?」
- かごめ: 「…どういうことなの…?」
- かごめ: 「…夢?…幻?」
- かごめ: 「だとしたら、どこまでが現実で どこからが…」
- かごめ: …ええっ!?
- かごめ: この格好…な、何…!?
- かごめ: …へ…?
- かごめ: も、もしかして…
- かごめ: アルちゃん!?
- 杖アルちゃん: <…………>
- FILENAME: text_519710-8_yvWxs.txt
- かごめ: はぁ…
- かごめ: (いったい全体 何が起きたの…?)
- かごめ: (まず私のこの格好…)
- かごめ: (それに、杖になっちゃった アルちゃん…)
- 杖アルちゃん: <…………>
- かごめ: (言葉も話せないみたい…)
- かごめ: …………
- かごめ: 私、どうなっちゃったんだろう…
- かごめ: (神楽さんも見当たらないし…)
- かごめ: …うーん…
- かごめ: (この状況から 考えられることって…)
- かごめ: (例えば、私はまだ結界にいて 幻覚を見せられているとか…)
- かごめ: (それが魔女の攻撃…?)
- かごめ: (もしくは、結界を出て 青火野の海辺に戻って来た…?
- かごめ: (でも、それはそれでどうやって 戻ってきたかわからない…)
- かごめ: (そして、この姿でしょ…?)
- かごめ: (…ダメ… わからないことだらけ…)
- かごめ: …………
- かごめ: …ただ、ここに居ても意味はない
- かごめ: (何事もまずは取材… そして事実を明らかに…!)
- かごめ: …よし…
- かごめ: (旅館が…ある…)
- かごめ: …あ…!
- かごめ: 茅野さん!すみません!
- 茅野: …………
- かごめ: あ、あの、教授たちは 部屋にいらっしゃいます…よね?
- 茅野: …………
- かごめ: …あの~…茅野さん…?
- 茅野: …………
- 茅野: …あああああああああ!
- かごめ: えええええっ!?
- FILENAME: text_519710-9_yvWxs.txt
- かごめ: …あの~…茅野さん…?
- 茅野: …………
- 茅野: …あああああああああ!
- かごめ: えええええっ!?
- 茅野: ううううううう!
- かごめ: ちょ、ちょっと! どうしちゃったんですか!
- 茅野: うぐ…うぐぉおおおお!
- かごめ: ひいいいいいー!
- かごめ: はぁ…はぁ…!
- かごめ: (こ、怖かった~!)
- かごめ: (どうしたの、茅野さ…)
- かごめ: …あ…
- かごめ: (慌てて入っちゃったけど ここ、自分の部屋じゃ…)
- 太助: …………
- かごめ: きょ、教授!
- かごめ: よかった、ここで 合ってたんだ…!
- かごめ: …あの、教授! 茅野さんの様子が…!
- 那由他: …………
- かごめ: …ああ、那由他さん! 体調は大丈夫ですか?
- ラビ: …………
- ミユリ: …………
- かごめ: 氷室さんに遊狩さんも…
- 燦: …………
- かごめ: …神楽さんも 戻ってきていたんですね…
- 太助: …………
- かごめ: …でも、あれ…? なんだか、皆さん、雰囲気が…
- 太助: うわぁぁぁぁぁぁ!
- かごめ: こ、こっちも~!
- かごめ: 誰か…誰か助けてー!
- かごめ: …!?アルちゃん…!?
- FILENAME: text_519710-10_yvWxs.txt
- かごめ: 誰か…誰か助けてー!
- かごめ: …!?アルちゃん…!?
- かごめ: …あれ…?
- アルちゃん?: <…ぬり~…!>
- かごめ: これって…
- アルちゃん?: <かっぱ!>
- 太助: むぅぅぅぅぅぅ!
- アルちゃん?: <かさかさ~!>
- 那由他: うぐぅぅぅぅぅ!
- かごめ: 私のこと… 守ってくれているの…!?
- かごめ: (それに…心なしか みんなアルちゃん顔してる…?)
- アルちゃん?: <…カゴメ…チャン…>
- かごめ: …え!?
- アルちゃん?: <カゴメチャン…>
- かごめ: あなた、喋れるの!?
- アルちゃん?: <ニゲテ…カゴメチャン…>
- かごめ: 逃げて…って言ってるの!?
- ラビ: ぐるぅぅぅぅぅ!
- アルちゃん?: <ハヤク…ハヤク…>
- ミユリ: アシィィィィィ!
- 燦: マツリェェェェ!
- かごめ: わ、わかった!
- 太助: ウゴルァァァァ!
- かごめ: ふぅ…ふぅ…
- かごめ: …に、逃げ切れた…!?
- かごめ: …あ!
- かごめ: みんなも無事だったんだね!
- アルちゃん?: <ぬりぬり~!>
- かごめ: さっきはありがとう!
- かごめ: 私のこと 守ってくれたんだよね!
- アルちゃん?: <かっぱっぱ!>
- かごめ: (…何を言ってるか わからないけど…)
- かごめ: とにかく 助かってよかった…
- アルちゃん?: <カゴメチャン…>
- かごめ: あ!喋れるあなた!
- かごめ: 今ってどういう状況なの!? お願い、教えて!
- アルちゃん?: <…カゴメチャン…>
- かごめ: うん!
- アルちゃん?: <…アノネ…>
- かごめ: うんうん!
- アルちゃん?: <…ゴメン… ヨクワカンナイ…>
- かごめ: …………
- かごめ: …えーっ!?
- [Part 1 end]
- ---
- [Part 2 start]
- FILENAME: text_519720-1_2csyG.txt
- かごめ: 今ってどういう状況なの!? お願い、教えて!
- アルちゃん?: <…カゴメチャン…>
- かごめ: うん!
- アルちゃん?: <…アノネ…>
- かごめ: うんうん!
- アルちゃん?: <…ゴメン… ヨクワカンナイ…>
- かごめ: …………
- かごめ: …えーっ!?
- アルちゃん?: <…ショボン…>
- かごめ: …あ、大丈夫だよ! そんな落ち込まないで…!
- かごめ: 知らないのなら しょうがないもんね…
- かごめ: …じゃあ、あなたたちの ことを教えて
- かごめ: あなたたちって アルちゃんなの…?
- アルちゃん?: <…タブン…>
- アルちゃん?: <カオ、オナジダシ…>
- かごめ: 自分たちのことも よくわからないの…?
- アルちゃん?: <…ショボン…>
- かごめ: ああ、ごめんね…!
- かごめ: …つまり、何がなんだか よくわからないってことね…
- アルちゃん?: <ソウイウコト>
- かごめ: うーん…
- アルちゃん?: <ヒトツダケワカル>
- かごめ: え?何が!?
- アルちゃん?: <ココ、アブナイ>
- アルちゃん?: <ハヤクニゲナイト>
- かごめ: ここ?この海も…!?
- アルちゃん?: <チガウヨ、ゼンブ>
- かごめ: 全部…? …ここら辺一帯が…ってこと?
- アルちゃん?: <ゼンブ…ゼンブ…>
- アルちゃん?: <ア…キタ…>
- かごめ: …キタ?
- 太助: うぐぅぅぅぅ…
- かごめ: き、来てるぅぅぅ~!
- 太助: ぐおおおおおお!
- かごめ: どうすれば…!?
- かごめ: …あ!杖のアルちゃんが…
- アルちゃん?: <ヒカリ…カンジル…>
- かごめ: ヒカリ…光…? …を…感じる?
- かごめ: (…アルちゃんの光 どこかを指してる…!?)
- かごめ: つまり…この光を感じて…
- 太助: ごあぁっ!
- かごめ: …行くしかない!
- かごめ: ど、どこまで行けばいいの!?
- アルちゃん?: <カンジル…モウスグ…>
- かごめ: 光は…!
- かごめ: …どこまで…!
- かごめ: …………
- かごめ: …あれ?…ここは…?
- 太助: …………
- かごめ: …………
- かごめ: きゃぁぁぁぁっ!
- FILENAME: text_519720-2_2csyG.txt
- かごめ: …あれ?…ここは…?
- 太助: …………
- かごめ: …………
- かごめ: きゃぁぁぁぁっ!
- 太助: うわぁぁっ!
- 燦: 大丈夫よ!落ち着いて!
- かごめ: …え?え?え?
- かごめ: …ちゃんと…喋ってる…?
- 那由他: ど…どういうことですの?
- ラビ: 何を見てきたのですか?
- 燦: とにかく、水でも飲んで 呼吸を整えなさい
- ミユリ: ど、どうぞ!
- かごめ: ありが…とう…
- かごめ: …ふぅ…
- 燦: …どう?
- かごめ: …皆さん… 普通…ということですよね…?
- 太助: 特に変わりはないよ
- 太助: 那由他の体調が 戻ったくらいかな
- 那由他: そうですの ご心配おかけしたんですの
- かごめ: …………
- かごめ: …よかった~… 元に戻って…
- かごめ: …あああああ! この格好…!
- 燦: 戻ってきた時から ずっとそのままよ
- かごめ: …戻って…?
- ミユリ: それに、皆さんも…
- かごめ: …まさか…
- アルちゃん: <ヨカッタネ、カゴメチャン>
- かごめ: み、みんな…!
- かごめ: これってどういう…!?
- 太助: それについては これから答え合わせをしよう
- 太助: まず一致しているのは
- 太助: かごめ君と神楽君が 林に向かったところまでだね
- かごめ: …え?あ、は、はい 確かにそれは…
- かごめ: …それで、あの時…
- かごめ: …あれ?
- かごめ: 見てください!
- 燦: 青い炎…!? 私が聞いた話と同じ…!
- かごめ: …神楽さんと青い炎を 一緒に目撃して…
- 燦: 青い炎…!?やっぱり…
- 燦: あなた、それを見たのね!?
- かごめ: は、はい…ですから一緒に…
- 燦: …私は見ていないわ
- かごめ: …え…?
- 燦: …なるほど… そういうことなのね…
- かごめ: …ど、どういうことなんですか?
- 燦: …林に着いた時点で…
- 燦: あなたの姿が消えていたの
- かごめ: …私が…!?
- FILENAME: text_519720-3_2csyG.txt
- 燦: …林に着いた時点で…
- 燦: あなたの姿が消えていたの
- かごめ: …私が…!?
- 燦: そう…
- かごめ: …ここ…
- 燦: 確かに…かすかではあるけど 魔力を感じるわね…
- かごめ: ですね…
- かごめ: もう少し奥でしょうか?
- 燦: おそらくは…
- かごめ: …あれ?
- 燦: どうしたの?
- 燦: …え…?
- 燦: 佐鳥さん…?
- 燦: (いない…!?)
- 燦: 佐鳥さん…! どこなの?佐鳥さん!
- 燦: あなたは私の側から こつぜんと姿を消してしまった…
- かごめ: そうだったんですか…
- 燦: 青い炎を見て あなたはどうしたの?
- かごめ: 神楽さんと一緒に炎に近づくと 消えて…また離れた所で灯って…
- 燦: …そうやってあなたは、 もうひとりの私と追いかけたのね
- かごめ: はい…それで追いかけた先に 泉があったんです…
- 太助: …泉…!
- かごめ: そこは魔力反応がひと際強くて 結界の入り口だと思いました…
- かごめ: そしたら、何か強い力で 泉に引き込まれて
- かごめ: …気づけば海辺で倒れていました
- かごめ: …あ、そう…!それから…
- 謎の少女: …………
- かごめ: …ひっ!
- 謎の少女: …………
- かごめ: …あ、あなた…誰!?
- かごめ: 女の子を見ました…!
- 太助: 女の子…!
- かごめ: ただ…暗くて 顔もあまり見えなくて…
- かごめ: 何か喋っていたんですけど それもよく聞こえずで…
- 太助: …そうか…
- かごめ: また目が覚めたときには 女の子もいなくなっていて…
- かごめ: 夢なのかなんなのか もう全然わからなくなって…
- かごめ: ふと自分を見ると… こんな格好に…!
- かごめ: 私はそのあとの騒動も一通り 教授たちに伝えた…
- 那由他: …それじゃまるで 私たち、ゾンビですの…!
- ラビ: 腐ってはないようですが…
- 燦: ミユは足に対して ゾンビみたいなものよ
- ミユリ: そんなぁ!
- 太助: ところで、君の見た 姿を変えた…
- かごめ: アルちゃん、です
- 太助: そのアルちゃんたちだけど…
- 太助: アマビエ…に似てる…かな?
- かごめ: アマビエ…?
- 太助: 今、携帯で画像を検索するよ えーと…
- 太助: これだね
- かごめ: …あ、似てますね!
- 太助: …では、他のアルちゃんも… これとかこれとか…
- かごめ: そ、そうですね…!
- 太助: …なるほど…
- 太助: …いや、実はこれらの妖怪は…
- 太助: 青火野に伝わる妖怪伝説の 妖怪たちなんだ…
- FILENAME: text_519720-4_2csyG.txt
- 太助: …いや、実はこれらの妖怪は…
- 太助: 青火野に伝わる妖怪伝説の 妖怪たちなんだ…
- かごめ: 青火野の…妖怪伝説…!?
- かごめ: それって怪談騒ぎの 元となった…
- 太助: そうだね
- 太助: …だが、元ネタになったか どうかはあくまで推測にすぎない
- 太助: 今回は、その真相も含めた 調査だったからね
- かごめ: …そ、そうでした…
- 太助: では、次は私たちが説明するよ どうやって君と再会できたのかを
- かごめ: …お願いします!
- 燦: まず、林であなたを見失った 私は、一度宿に戻った…
- 太助: かごめ君が…!?
- 燦: はい…
- 燦: 申し訳ありません… 私がついていながら…
- ミユリ: 燦様…
- 太助: ともかく その林に行こう!
- 燦: 教授には危険です! 魔力の反応は確かにありました
- 那由他: では、私が行きますの!
- 太助: しかし、那由他は体調が…
- 那由他: もう大丈夫ですの! この通りですの!
- ラビ: この通りと言われても パッと見ではわかりませんが…
- 那由他: 本当に大丈夫ですの!
- 太助: …………
- 太助: すまない那由他…
- 太助: 今はかごめ君の 安否がかかっている…
- 那由他: ええ…四の五の言っては いられないですの!
- ラビ: …私が必ずお守りします
- 太助: ラビ…
- 燦: 教授はここで 待っていてください
- 太助: …いや、じっとはしていられない 私は私のできることをしよう
- 太助: この怪談騒ぎに魔女や魔法少女が 関与している恐れがあるなら
- 太助: 怪談の調査を続けることこそが 新たな事実に繋がるかもしれない
- 太助: だから、 私はその線から追っていく
- 燦: わかりました では、林の方は私たちが…!
- 太助: 頼んだよ!
- 太助: …無事でいてくれ…かごめ君…!
- FILENAME: text_519720-5_2csyG.txt
- 太助: こうして、私たちは 君を捜すことになったんだ
- かごめ: …すみません、ご迷惑を…
- 太助: いや、元を辿れば すべて私の責任なんだ…
- 太助: 私が君に青火野の件を 話さなければ…
- 燦: 教授…続きを説明しても 構いませんか?
- 太助: ああ、お願いするよ…
- 燦: まず、林に到着した私たちは 2組に分かれてあなたを捜し
- 燦: わずかだけど、あなたの魔力を 確かに感じとったのよ
- 燦: だけど、どこを捜しても 見つからなかった…
- 太助: 一方で私の方は 茅野の知り合いを通じて
- 太助: 妖怪伝説を知っているという 老人を紹介してもらったんだ
- かごめ: そういう方が 見つかったんですね…!
- 太助: 方々に連絡してどうにかね
- 太助: そこで、老人からいくつかの 妖怪伝説を聞いたが…
- 太助: そこで出てきた妖怪というのが…
- 太助: 河童…
- 太助: 提灯お化け、一反木綿…
- 太助: ぬっぺふほふ…
- 太助: 唐傘お化け…
- 太助: ぬりかべ…
- 太助: そしてアマビエ…
- 太助: 先ほど私が君に見せた妖怪たちだ
- かごめ: つ、つまりアルちゃんたちが 青火野の妖怪になった、と…!?
- 太助: 私はそう思う…
- 太助: というのも、そう思わせる 別の情報も得たからなんだ
- かごめ: 別の…?それは…?
- 太助: 以前、妖怪伝説を教えてほしいと 訪ねてきた人物がいたそうでね
- 太助: 老人いわく少女だったそうだ 名前までは覚えていなかったが…
- かごめ: 少女…!
- 太助: …その子は“異界”について 並々ならぬ興味があったらしく
- 太助: 『違う世界へ行ってみたい』 とも言っていたらしい…
- 太助: そのことは印象的で 老人も覚えていたそうだ
- 太助: それに、その少女は 火祭りについても調べていた
- 太助: 妖怪と火祭りに関係性はあるのか 訊ねられたと言っていたよ
- かごめ: 関係があるんですか…?
- 燦: 私も初めて知ったんだけど…
- 燦: 火祭りには死者や この世のものでない者たちを
- 燦: 導き、慰めるという 役割もあったらしいの
- 燦: 今ではいつの間にか 豊穣祈念になったそうだけどね
- 太助: 私は神楽君たちと合流してから こうした情報を整理して
- 太助: かごめ君を捜す上での 一助にしようとしたんだが
- 太助: どうにも核心を突くものにならず 君を見つけるには至らなかった…
- 太助: とはいえ、今のところ 材料はこれしかない…
- 太助: そこで、私は集めた情報を元に 推論を立てることにした
- かごめ: 推論…ですか
- 太助: 欠けているピースを推論で埋めて 仮説を導き出す
- 太助: それから次に確証を得る… 打てる手はそれしかなかった
- 太助: そして、その推論だが…
- FILENAME: text_519720-6_2csyG.txt
- 太助: 欠けているピースを推論で埋めて 答えを導き出す
- 太助: それから次に確証を得る… 打てる手はそれしかなかった
- 太助: そして、その推論だが…
- 太助: 老人に話を聞きに来た少女を 魔法少女と設定したんだ
- かごめ: 設定…
- 太助: そして、取材で得た要素を 足していく…
- 太助: 老人いわく青い炎は火祭りの縁起 異界へと誘う現世にはない炎…
- 太助: ゆえに『青火野』という地名の 由来にもなっていたそうだ
- 燦: だから、結局火祭りと 青い炎は関連があったのよね…
- 太助: そして、 少女は火祭りも調べていた
- 太助: 怪談騒ぎにも青い炎の 目撃談がある…
- 太助: 推論だが、これらの事柄と 魔法少女が関係していたとする…
- 太助: …異界に興味があった少女が …魔女となってしまい結界を作り
- 太助: この地に縁のある怪談を元にした 怪談騒ぎを生んだなら…
- 太助: 魔力反応があり かごめ君が消えたあの林こそ
- 太助: 異界に憧れた少女の成れの果て… 魔女の結界が張ってある
- 太助: …と、そこまでは来たが しょせん『そこまで』でしかない
- 太助: 君を見つける手立てを 考えなければ…と
- 太助: …そこで神楽君から提案があった
- 燦: そう…林で火祭りの儀式を 執り行うっていうね
- かごめ: 火祭りの…儀式?
- ミユリ: 篝火の準備、できました!
- 那由他: こっちもOKですの!
- ラビ: いつでも
- 燦: うん…
- 燦: じゃあ、始めようか…!
- 燦: 青い炎は異界へ導く目印…
- 燦: でも、火祭りでの赤い炎は 異界から現世へ導く目印なの
- 燦: そうやってこの世のならざる者と 対話するというのが
- 燦: 火祭りの本来の役割だったみたい
- 太助: 老人から聞いた話で 神楽君が思いついたんだ
- 燦: そんなことをしても 何の意味もないのかもしれない…
- 燦: でも、何か起きるかもしれない
- 燦: 変化があるかもしれない…って
- 太助: だが、結果としては、倒れていた 君を発見することができた
- かごめ: そうだったんですか!? じゃあ、その儀式で私を…
- 燦: いや、儀式で結界を見つけたとか そういうのじゃないのよ
- 燦: あなたが結界から飛び出してきて 倒れたって言った方がいいわね
- かごめ: 私、確かに逃げてるときに 光を見たような気がします…!
- 燦: 怪異譚を模したような魔女だから 炎に反応したのかもしれない
- かごめ: それで、出口が示されて… そんなことが…
- 那由他: とにかく!
- 那由他: ここまでで2日も経っていたから とっても心配していたんですの!
- かごめ: え!? 2日も過ぎていたんですか…!?
- ラビ: はい、そうです
- かごめ: …そうだったんですか…
- かごめ: 皆さんに何とお礼を 言ったらいいか…
- 太助: お礼はいいよ むしろ感謝するのはこちらだよ
- 太助: 君は大事な情報を 持ち帰ってきてくれたからね
- かごめ: …それって…
- 太助: 『少女』と『アルちゃんたち』だ
- かごめ: …え?
- 太助: 君が会ったという少女… それに青火野の妖怪の姿をしたアルちゃん…
- 太助: 確証…とまではいかないが 私たちの得てきた情報と符合するところがある
- 太助: そこから考えれば 少女はそもそも魔法少女であり やがて魔女となって林に結界を作った
- 太助: そういう筋が立ってくる だが、わからないことも多い
- 太助: 結界内と思しき場所で 君の見た風景は現実のものだった それは魔女が見せた幻覚なのだろうか…?
- 太助: そして君の今の姿だが それも結界内で少女と会ったことで 起きた結果の変化なのか…
- 太助: 謎は謎のままだ…
- 燦: でも、これからやることは シンプルでしょ?
- ラビ: 魔女を倒すのは魔法少女の宿業…
- 那由他: 怪談騒ぎの原因かもしれないし 放ってはおけないですの…!
- かごめ: …ということは…
- 燦: うん…
- 燦: 決着を…つけないと
- FILENAME: text_519720-7_2csyG.txt
- 燦: …大丈夫…?
- かごめ: はい…!
- 燦: あの時引き込まれたのは あなただけ…
- 燦: もう一度赴けば 連れていかれるかもしれない
- 燦: もちろん、あなただけじゃない 可能性もある
- 燦: それどころか、5人全員が 囚われる可能性だって…
- ミユリ: そうですね…
- ラビ: どちらにせよ、結界に入らないと 魔女と戦う機会はありません
- ラビ: 相手がどう出ようと その状況で対応するしか…
- 燦: …そうね… 覚悟を決めて飛び込むしかない
- かごめ: …わかりました…
- 那由他: 緊張ですの…
- ラビ: 落ち着いて戦いましょう
- ミユリ: 燦様…ついていきます!
- 燦: よし…
- 燦: 行こう…!
- かごめ: …………
- かごめ: 着きましたね…
- かごめ: …あれ!?
- かごめ: …また私だけ…!
- かごめ: (どうして私だけを狙うの…?)
- かごめ: …いや、今はここでそんなことを 考えている場合じゃない…
- かごめ: 前へ進まないと…!
- かごめ: そして私はまた…
- かごめ: …うっ…
- かごめ: …ここ…やっぱり同じ…
- かごめ: …だったら…
- 太助: ううううう~…
- かごめ: …だよね…
- 那由他: ぐぅぅぅぅ…
- ラビ: ごおあああ…
- 燦: あぐううう…
- ミユリ: アシィィィ…
- かごめ: …きっとみんな…偽者!
- かごめ: そうに違いない…! だから、戦わないと…!
- かごめ: 戦わ…ないと…
- 太助: があああああ!
- かごめ: …ダメ…!
- かごめ: (本当に偽者なの!? その確証はどこにもない…!)
- かごめ: (やはりここに囚われて操られた 教授たちなのかもしれない…!)
- かごめ: (迂闊に手を出したら 取り返しのつかないことにも!)
- かごめ: どうしたら…どうしたら…!
- FILENAME: text_519720-8_2csyG.txt
- かごめ: どうしたら…どうしたら…!
- アマビエアルちゃん: <…ヒカリ…>
- アマビエアルちゃん: <ヒカリ…カンジル…>
- かごめ: え!?また…!?
- アマビエアルちゃん: <ヒカリ…>
- アマビエアルちゃん: <カゴメチャンノテカラ…>
- かごめ: 私の…!?
- かごめ: 杖の…アルちゃん…!
- アマビエアルちゃん: <ヒカリ…ミチビキ…>
- かごめ: 導き…?
- かごめ: …あっ!
- かごめ: …………
- かごめ: …あ、あなたは…!
- 謎の少女: …………
- かごめ: …聞こえない! また私には何も…!
- 謎の少女: …光…
- かごめ: …光!? 聞こえた!
- 謎の少女: …導きの光を…かざして…
- かごめ: 光を…かざす…
- 謎の少女: 異界の扉が…開く…
- かごめ: 異界の…扉…?
- 謎の少女: ……………
- かごめ: …はっ…!
- 太助: うおおるるるる!
- かごめ: 光をかざすと 異界の扉が開く…ということ?
- かごめ: 何がどうなるの…!?
- かごめ: 私…一体…
- アマビエアルちゃん: <カゴメチャン…>
- かごめ: アルちゃん…
- かごめ: …………
- かごめ: …ここは確証のない 謎ばかりの世界…
- かごめ: …真実を知るには…
- かごめ: 行動するしか…ない!
- かごめ: …行くよ、アルちゃん!
- かごめ: 導きの光…!
- かごめ: さあ、答えを教えて…!
- FILENAME: text_519720-9_2csyG.txt
- かごめ: 導きの光…!
- かごめ: さあ、答えを教えて…!
- 太助: …ごあああああ!
- かごめ: くっ…!
- かごめ: …………
- かごめ: …ここは…?
- 燦: 佐鳥さん!
- かごめ: 神楽さん…!?
- 那由他: よかったですの!
- ラビ: 一体、何があったのですか?
- ミユリ: ともかく無事そうで 良かったです~!
- かごめ: 皆さん…!
- 燦: あなた、何かをしたの!?
- かごめ: いや、あの、杖のアルちゃんが 光り出して…
- かごめ: それをこう、ピカーッと…
- 燦: …そうか、その光だったのね…!
- かごめ: …その光…?
- 燦: 林で、またあなただけ いなくなったの
- 燦: 腹は括ってたとはいえ その時はまたしくじったって…
- 燦: とにかく、4人で林を 捜しまわっていたら…
- 燦: どこからか光が差し込んできたの
- 燦: そうしたら、いつの間にか この結界の中に入っていて…!
- かごめ: 光…!
- かごめ: 異界の扉を…開いたんだ…
- 那由他: 異界の扉…? なんのことですの?
- かごめ: それは…
- …………
- ラビ: その話は後にした方が よさそうです
- 那由他: 何か出てきたんですの!
- ミユリ: でも、この感じ… かって知ったるってやつです!
- 燦: そうね…!
- 燦: まだやれる?佐鳥さん
- かごめ: はい! アルちゃんたちは…?
- アマビエアルちゃん: <ダイジョウブ!>
- かごめ: ありがとう…! じゃあ、みんな…
- かごめ: …一緒に!
- FILENAME: text_519720-10_2csyG.txt
- 那由他: じゃあ、みんな…
- 那由他: …一緒に!
- 那由他: …って、勇ましかったですの~!
- かごめ: ちょ、ちょっと やめてください、那由他さん!
- ラビ: 確かに勇ましかったですね
- かごめ: 氷室さんまで…!
- 太助: 何はともあれ、全員無事に 帰ってきてよかったよ…
- かごめ: 私たちは魔女との戦いに臨み…
- かごめ: そして勝利した…!
- かごめ: はぁ…はぁ…
- かごめ: …帰って…これた…!
- 燦: よし…!
- ミユリ: 勝ちましたね!
- 那由他: やったですの!
- ラビ: しかし…危険な戦いでした
- かごめ: …そうですね…
- アマビエアルちゃん: <カゴメチャン…>
- かごめ: ん…?どうしたの?
- アマビエアルちゃん: <…サビシイケド…>
- アマビエアルちゃん: <サヨウナラ…>
- かごめ: …え?どういうこと…?
- アマビエアルちゃん: <…………>
- かごめ: …あ…!
- アルちゃん: <かごめちゃん!>
- かごめ: アルちゃん…! …いつもの…
- アルちゃん: <…え?どういうこと?>
- かごめ: …どういうことって どういうこと…?
- かごめ: どうやらアルちゃんは 妖怪アルちゃんのことをまったく 覚えてない…というか、知らないらしい
- かごめ: そのため、私があの状態に 変身した理由もわからずじまいとなった
- ラビ: …ところで、あの始末で よかったのですか?
- 太助: 『青火野には魔女がいました』 なんて言えないからねぇ
- 太助: まず君たちが魔女を倒して 禍根は絶たれた
- 太助: そして、老人から聞いた話は 私がまとめて茅野に渡した
- 太助: 火祭りの縁起も添えてね
- 太助: あとはそれを正しく発信して 広がっている噂を否定し続ける
- 太助: 古くから伝わる話が広がる過程で 誤って認識されているとね
- 太助: そして徐々に本来の妖怪伝説を 怪談騒ぎの噂よりもっと広めて
- 太助: やがて定着させる
- 那由他: 匂いを香水で誤魔化す 感じですの
- 太助: ふふ…そうだね
- ラビ: しかし、地道な 解決策ではあります
- かごめ: 祭りの手伝いで残った 神楽さんたちもできる限り
- かごめ: 協力すると言ってましたし まあ、今はとにかく…
- ラビ: 行動あるのみ、ですか
- かごめ: …だと思います
- 太助: しかし…かごめ君は 残念だったね
- 太助: 魔法少女の話については 結局わからず仕舞いだった
- ラビ: あの魔女が ああなる前のこと…ですか
- かごめ: …………
- かごめ: …ですが 貴重な体験ができました
- かごめ: あの姿になった理由は いまだにわかりませんが…
- 太助: …そうだ! そのことだ!君に伝えないと!
- かごめ: そのこと…?
- 太助: 実は、例の老人から茅野に 言伝があったんだ
- 太助: まだ話してなかった妖怪伝説が あったってね
- かごめ: 他にもあったんですか!?
- 太助: そう…
- 太助: それで話を聞くと どうも君のあの恰好に似てるんだ
- 太助: 妖怪の姿形がね
- かごめ: そ、そうなんですか…?
- 太助: 普段は人間の少女に化けていて 本性を現すと灯をかかげてね
- 太助: 妖怪たちを人里に導くそうだ 名前は…
- 太助: 『青火の娘』
- かごめ: 青火の…娘…
- 太助: でね、実はこの妖怪の名前こそ 青火野の由来かもしれない…
- 太助: そんな説もあるらしい
- かごめ: そうなんですか…
- 太助: だから、異界への興味から 生まれた魔女は
- 太助: 姿を変えるという特別な力を 持った魔法少女を利用して
- 太助: 実物を再現しようとしたのかも しれないね
- かごめ: …え、まさか… でも、どうして私が…?
- 太助: 君は彼女と似ているところが あったんじゃないかな
- かごめ: 魔女になってしまった その魔法少女と…ですか…?
- 太助: うん…取材したい対象がいて そして実際に行動を起こす
- 太助: …ってところがね
- かごめ: …そういえば ひとつ言ってないことがあって…
- 太助: 言ってないこと…?なんだい?
- かごめ: 私…最初、あの結界で…
- 謎の少女: …………
- かごめ: …あ、あなた…誰!?
- かごめ: (何…!?この…感覚は…?)
- かごめ: 今になってわかってきたんです あの時に感じたものの正体が…
- 太助: …それは?
- かごめ: …高揚感です 未知の存在と向き合った時の…
- かごめ: あるいは、好奇心と 言っていいのかも
- 太助: …そんな状況で、急にかい?
- かごめ: はい…おかしいですよね…
- かごめ: ひょっとしたらそれは あの子の気持ちだったのかも…
- かごめ: (…どうかな?)
- 謎の少女: …………
- 謎の少女: …うふふ…
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