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Madoka (Swimsuit ver.) MSS JP Text

Aug 10th, 2022
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  1. FILENAME: text_321061-1.txt
  2. まどか: わぁ、きれいな海…!
  3. まどか: わたしは今 さやかちゃんたちと一緒に 南国のリゾートへ来ています
  4. まどか: ホテルに荷物を置いてきたら さっそく海で遊ぼうとしていたんだけど
  5. まどか: (みんな、来ないなぁ…)
  6. サァーー…
  7. まどか: わっ! 風が…
  8. フワッ…
  9. まどか: あれ? 今、飛んでいったのって帽子?
  10. ま、待って!
  11. まどか: 大変!
  12. まどか: おばあさん、待ってて わたし、拾ってきます!
  13. まどか: はぁ…はぁ… 随分飛ばされちゃったみたい
  14. まどか: あっ! 帽子が海に…
  15. まどか: …………
  16. まどか: …誰もいない、よね?
  17. ザパンッ…!
  18. まどか: 帽子、取れた! よかったぁ…
  19. まどか: おばあさん、はい さっき飛ばされた帽子です!
  20. まどか: 海に落ちちゃって 少し濡れちゃったんですけど…
  21. あ、それで水着なのね? 服の下に着ていたのかしら
  22. まどか: あ…はい、そうなんです …えへへ
  23. まどか: (急に水着になったこと 怪しまれなくてよかった)
  24. …まどかちゃんっていうのね ご親切にどうもありがとう
  25. ひまりに選んでもらった 大切なものだったから助かったわ
  26. まどか: ひまり…さん?
  27. 娘の名前よ
  28. 本当にありがとう それじゃ、バカンスを楽しんで
  29. まどか: (えへへ…新しい水着 さっそく役立っちゃった)
  30. まどか: きっかけは、ここに来る前の ママのひと言だったの
  31. まどかの母: 「今しかできないことを存分に楽しんできな」
  32. まどか: だけど何から始めようか迷っちゃって…
  33. まどかの母: 「うーん、あたしなら水着を新調して 気合入れるところから始めるけどなぁ」
  34. まどか: …そう言われて みたまさんのところで この格好に調整してもらったんだ
  35. まどか: “今しかできないこと”が 見つかるといいな
  36. まどか: …そういえば さやかちゃんたち、遅いなぁ
  37. まどか: (帽子を取りに行っている間に すれ違っちゃったのかな?)
  38. さやか: あっ、いた! 待ち合わせ場所、あっちだよ!
  39. まどか: えっ、うそ?
  40. さやか: まぁ、もうその姿に なってるってことは
  41. さやか: 更衣室に行く 必要はなさそうだけどね
  42. まどか: ごめんね…わたし 場所、間違えちゃったんだね
  43. さやか: 大丈夫、杏子も遅刻だしね! そんじゃ、いきますか!
  44.  
  45. FILENAME: text_321061-2.txt
  46. なぎさ: なぎさが一番乗りで 海に飛び込むのです!
  47. マミ: 準備体操をしてからよ!
  48. 杏子: せっかくだし 遠くまで泳いでみようぜ
  49. さやか: あんた、 そんなに泳ぐの得意だった?
  50. 杏子: へへーん、泳げるように 調整済みだからな!
  51. さやか: 自力で泳げるように なりなさいよね…
  52. まどか: 準備体操、終わったよ! 行こう、ほむらちゃん!
  53. ほむら: うん 行こう、鹿目さん
  54. まどか: 波間にぷかぷか浮いてるだけでも 楽しいね
  55. ほむら: うん、こんなにのんびりした 時間を過ごせるなんて…
  56. ほむら: 来てよかった…
  57. なぎさ: そろそろ陸地に戻るのです! 広い砂浜があるのです!
  58. マミ: あっ、浮き輪が外れないように 気をつけてね
  59. マミ: 鹿目さんたちも、波に 流されないように気をつけて
  60. まどか&ほむら: はいっ
  61. さやか: 遊泳エリアはここまでみたいね 結構、泳いだなぁ
  62. 杏子: やっぱり浮き輪がない方が 快適だな!
  63. さやか: 遠くまで来たし、 そろそろビーチに戻る?
  64. なぎさ: みんな、来てほしいのです!
  65. さやか: なぎさがこっちに来いって
  66. 杏子: …みたいだな
  67. さやか: ちょうどいいし 戻ろっか
  68. なぎさ: なぎさは一番大きな砂のお城を 作りたいのです!
  69. なぎさ: なので、みんなで手分けして 砂を集めてほしいのです
  70. マミ: みんな、よければ 少しだけ付き合ってあげて
  71. さやか: ふーん、面白いかもね! 特大のお城、作りましょう!
  72. 杏子: でもさ 場所、変えた方がよくないか?
  73. 杏子: ここまで波が来そうだけど
  74. なぎさ: なぎさはここがいいのです… 海が一番きれいに見えるのです
  75. マミ: 好きなように やらせてあげたいけど
  76. マミ: 佐倉さんの言う通りかも…
  77. さやか: …まぁ、それも勉強ってことで!
  78. まどか: それじゃあ、さっそく集めよう!
  79. なぎさ: な、なぎさのお城が…
  80. まどか: …大きな波にさらわれちゃったね
  81. なぎさ: なぎさが甘かったのです 杏子の言う通りだったのです
  82. マミ: また作り直せばいいのよ とりあえず休憩にしましょう
  83. さやか: じゃあ、何か買いに
  84. さやか: おみやげもの屋さんに 行ってこようかな
  85. ほむら: あっ…
  86. さやか: ほむらも来る?
  87. ほむら: うん 鹿目さんもどう?
  88. まどか: わたしは 少し海岸を歩いてこようかな
  89. 杏子: あたしは、ゲーセン覗いてくる
  90. さやか: こんなところまで来て ゲーセン!?
  91. マミ: ふふふ それじゃあ、いったん解散ね
  92. マミ: なぎさちゃんは 私と一緒にアイス食べましょう?
  93. なぎさ: アイス… 食べるのです!
  94. まどか: じゃあ、またあとでね
  95. まどか: う~ん… 風が気持ちいいなぁ…
  96. まどか: あんまり遠くに行かないように 気をつけなきゃ
  97.  
  98. FILENAME: text_321061-3.txt
  99. まどか: …………
  100. まどか: (ふふ、みんな楽しそう…)
  101. まどか: (リゾート、だもんね)
  102. まどか: (ママが言ってたこと…)
  103. まどか: (リゾートでしかできないこと …っていう意味なのかな?)
  104. まどか: …………
  105. まどかの母: 「忘れ物はないな?」
  106. まどか: 大丈夫!
  107. まどかの母: 「課題、覚えてるかい?」
  108. まどか: うん…!
  109. まどかの母: 「よーし、いい子だ それじゃ…」
  110. まどかの母: 「今しかできないことを存分に楽しんできな」
  111. まどか: (今日もすごく楽しいけど)
  112. まどか: (今しかできないこと、とは ちょっと違うような…?)
  113. まどか: うーん…?
  114. きゃっ…!?
  115. まどか: ――っ!?
  116. まどか: ご、ごめんなさい…!
  117. まどか: 考え事をしてて ちゃんと前を見てなくて…!
  118. …………
  119. まどか: えっと…すみません… 大丈夫、ですか…?
  120. まどか: もしかして、その大きなカメラ 壊れちゃいました…?
  121. あっ…こちらこそごめんなさい カメラも私も大丈夫よ
  122. ちょっと驚いちゃって…
  123. まどか: ごめんなさい…
  124. 驚いたのは、 ぶつかったことじゃないから
  125. そんなに謝らないで
  126. まどか: えっ…違うんですか?
  127. ふふ、驚いたのはね
  128. そのポニーテールが 昔の私とそっくりだったからよ
  129. まどか: 昔のお姉さんと?
  130. …そう、私ね
  131. 初めてここに来たとき ちょうど君みたいな髪型だったの
  132. 今日、ここに来たのも
  133. そのときの大切な思い出を 振り返るためなんだけどね
  134. まどか: …………
  135. まどか: (大切な思い出…)
  136. あ…変なこと言ってごめんね
  137. まどか: そんなことないです!
  138. まどか: 『大切な思い出』って言葉が ちょっと気になっちゃって…
  139. それはそうだよね
  140. まどか: その… お姉さんのせいじゃなくて
  141. まどか: 実はわたし、ママから
  142. まどか: 『今しかできないこと』を 楽しんでこいって言われてて…
  143. ん…?
  144.  
  145. FILENAME: text_321061-4.txt
  146. …なるほどねー
  147. それで、今しか できないことをしたい、か…
  148. まどか: はい…それで お姉さんの言葉を聞いて
  149. まどか: 今しかできないことを楽しめば 大人になって振り返りたいほど
  150. まどか: 大切な思い出になるのかな、って 思ったんです
  151. うーん… そうだねぇ…
  152. 後悔のないように 思いっきり楽しむことは大切だよ
  153. まどか: でも、今しかできないことが 何かわからなくて…
  154. それって普通はあとになって
  155. 結果的にそうだったって わかるようなことだからねぇ
  156. まどか: そうなんですね
  157. まどか: でも、見つけたいなぁ…
  158. …………
  159. 今しかできないことかは わからないけど
  160. ここでしか…南国でしか できないことなら教えられるかも
  161. まどか: それって…?
  162. 夜に咲いて、 朝には花を落としちゃう…
  163. つまり、 一晩しか咲かない花があるの
  164. サガリバナっていうんだけどね
  165. まどか: もしかして、この辺りでも それが見られるんですか…?
  166. そう…ただ、ボートを予約して 見に行かないといけないのよね
  167. まどか: それって 今からだと難しいですよね…?
  168. ふふっ ところがそうでもないの
  169. 今、リゾートホテルの主催で
  170. “思い出写真ラリー”っていう イベントをやっててね
  171. チェックポイントを 全部通過すると
  172. 誰でもサガリバナツアーに 参加する権利が手に入るの
  173. まどか: サガリバナツアー…
  174. まどか: 詳しいんですね
  175. それはね… 実は私も参加中だから!
  176. まどか: そうなんですね
  177. まどか: わたしも友だちと一緒に 参加してみます
  178. うん
  179. おみやげもの屋さんのところに ポスターがあったから
  180. 詳しい内容は それを確認するといいよ
  181. まどか: あ、もしかしてそのカメラも このツアーのため…ですか?
  182. まどか: すごく立派なカメラだから お仕事用だと思ってました
  183. それも正解 一応、プロの写真家なの
  184. 仕事で来たわけじゃないけど
  185. 植物を撮るのが好きだから いつも持ち歩いてるんだ
  186. まどか: 植物を…それで お花のことも詳しいんですね
  187. そんなところね
  188. それより、お友だちを誘って 写真ラリーに参加してきたら?
  189. 時間は有限だよ
  190. まどか: あっ、そうでした!
  191. まどか: いろいろありがとうございました
  192. …………
  193. まどかの声: みんなー!
  194. ほむら: あっ、鹿目さん…
  195. まどか: みんなで思い出写真ラリーに 参加しよう!
  196. ほむら: 思い出写真ラリー…?
  197. まどか: 今年の夏しか楽しめないこと… うーん…難しいなぁ
  198.  
  199. FILENAME: text_321062-1.txt
  200. さやか: …思い出写真ラリー?
  201. まどか: うん、おみやげもの屋さんに ポスターがあるみたいなんだけど
  202. マミ: このポスターね
  203. マミ: えっと… 指定されたチェックポイントで
  204. マミ: 一緒に参加している人 全員が写っている写真を撮って
  205. マミ: 時間までにゴールする っていうイベントみたいね
  206. なぎさ: 面白そうなのです!
  207. 杏子: いいんじゃない?
  208. 杏子: ちょうど、次何しようか 話してたところだしさ
  209. さやか: あたしもやってみたい!
  210. ほむら: あ…今晩のボートに乗るなら
  211. ほむら: 夕方までにゴールしないと ダメみたいです…!
  212. マミ: 急いだほうがよさそうね
  213. まどか: じゃあ、わたし エントリーしてきます!
  214. まどか: お待たせ! 6人でエントリーできたよ
  215. さやか: ありがと、まどか! それ、チェックポイントの地図?
  216. まどか: ううん、地図じゃなくて
  217. まどか: 見本の写真と場所のヒントが 書かれてるチラシだよ
  218. ほむら: ということは、自分たちで
  219. ほむら: チェックポイントを探さないと いけないのかな…?
  220. さやか: みたいだね
  221. マミ: そういえば…
  222. マミ: 同じチラシを持った水着の人が 結構いるわね
  223. なぎさ: …あっ、このチェックポイントは 見覚えがあるのです!
  224. まどか: え、もうわかったの?
  225. 杏子: ここって…なぎさの 城が流されたとこだよね?
  226. なぎさ: ふっふっふっ… よく見るのです
  227. なぎさ: 砂浜と海をここから見ると 写真と同じなのです!
  228. ほむら: …あっ、本当だ
  229. マミ: すごいわ よく気がついたわね
  230. さやか: そういえば、ここが一番 海がきれいだとか言ってたね
  231. なぎさ: この調子でなぎさが 全部見つけてやるのです!
  232. まどか: さっそく写真を撮ろう!
  233. マミ: 全員で写らないとポイントを 通ったことにならないから
  234. マミ: みんな、集まって!
  235. さやか: 自撮り棒、用意しといて よかったですね
  236. カシャッ
  237.  
  238. FILENAME: text_321062-2.txt
  239. まどか: あっ、ここ…!
  240. まどか: みんなー! チェックポイント見つけたよー!
  241. ほむら: やりましたね…!
  242. さやか: あたしらも向こうで チェックポイント見つけたよ
  243. 杏子: 写真撮ったら 行ってみようぜ
  244. カシャッ
  245. まどか: すごい滝…!
  246. さやか: ね? 間違いようがないでしょ?
  247. カシャッ
  248. マミ: ちょっとわかりにくいけど この先じゃないかしら
  249. まどか: あっ、本当ですね ここかも!
  250. カシャッ
  251. なぎさ: ゴールはまだなのですか?
  252. なぎさ: なぎさは飽きてきたのです また海で遊びたいのです…
  253. まどか: えっ、全部見つけるって 張り切ってたのに…
  254. さやか: このヒント、難しいからね 子どもは飽きちゃうかも
  255. マミ: …ちょうどいいから 休憩にする?
  256. ほむら: そうですね… 暑いですし…
  257. 杏子: よし、じゃあ かき氷でも買ってくるか
  258. さやか: じゃ、あたしも付き合うよ
  259. なぎさ: なぎさも 食べたいのです!
  260. さやか: 先に言っておくけど チーズのトッピングはないからね
  261. なぎさ: …えっ…………
  262. ほむら: …もしかして あると思ってたの…?
  263. マミ: ふふふ…私も かき氷が食べたくなってきたわ
  264. 杏子: ふたりで全員分か… 持ちきれるか?
  265. まどか: じゃあ、わたしも
  266. ほむら: 私も行きます
  267. マミ: せっかくだし みんなで買いにいきましょうか
  268. みんな: 「はーい」
  269. カシャッ
  270. カシャッ
  271. カシャッ
  272. まどか: うーん… あと1ヶ所なんだけど
  273. ほむら: ひまわり畑だけ、見つからないね
  274. 杏子: そんなにわかりにくいモンじゃ ないと思うんだけどな…
  275. なぎさ: …なぎさは疲れてきたのです
  276. マミ: もう少しだから頑張りましょう?
  277. さやか: 時間もないし、手分けして探す? 見つけたら合流ってことで!
  278. まどか: そうだね! ふたりずつがいいかな?
  279. まどか: チーム分けは… じゃんけんで決めよっか?
  280. マミ: あら
  281. 杏子: あたしはマミとか
  282. なぎさ: ほむらと一緒なのです
  283. ほむら: うん、よろしくね
  284. さやか: で、あたしはまどかと一緒ね
  285. まどか: じゃあ、見つけたら 連絡してね
  286. まどか: うーん…?
  287. まどか: この灯台って さっき通った灯台とは別…?
  288. さやか: …かな? 似てるけどちょっと違うかも
  289. まどか: じゃあ、こっちの方は まだ探してないよね
  290. まどか: 行ってみよう、さやかちゃん!
  291. まどか: …あ、あった! ここだよ、さやかちゃん!
  292. さやか: やった!
  293. さやか: いやー、苦労しちゃったね! こんなところにあるなんて
  294. まどか: あっ! あのお姉さん…
  295. さやか: 知り合い?
  296. まどか: 思い出写真ラリーのことを 教えてくれた人なの
  297. まどか: わたし、 あの人にお礼言ってくる!
  298. さやか: なら、あたしはその間に マミさんたちに連絡しておくね
  299.  
  300. FILENAME: text_321062-3.txt
  301. まどか: あの…!
  302. あれっ、まどかちゃん…?
  303. まどか: はい、思い出写真ラリーのこと 教えてもらったお礼を言いたくて
  304. その様子だと ちゃんと楽しんでいるみたいね
  305. まどか: はいっ!
  306. まどか: もう全部のチェックポイント 回ったんですか?
  307. うん、私はね あとはゴールするだけだよ
  308. ただ、もう少し この場所を見ていたくて…
  309. まどか: 何か、あるんですか?
  310. …ここはね 私の思い出の場所のひとつなの
  311. まどか: あ…
  312. 今日、ここに来たのも
  313. そのときの大切な思い出を 振り返るためなんだけどね
  314. まどか: …それってさっき お姉さんが言ってた…
  315. そうよ
  316. …こんな言い方されると 気になっちゃうわよね
  317. 聞きたい? 私の思い出
  318. まどか: …はい 聞いてみたいです
  319. あんまり楽しい話じゃないけど
  320. …ここへは、君くらいの歳の頃に 両親に連れられて遊びに来たの
  321. あの頃から 花とか植物が好きだったから
  322. 海で遊ぶよりも 花を探してまわってた
  323. まどか: それで、この場所を 見つけたんですか…?
  324. そうよ、この場所と そして…
  325. その夏だけの友だちを、ね
  326. まどか: その夏だけの…?
  327. まどか: 「うん どこの誰なのかお互いに聞かなかったから 名前とお互い花が好きなことくらいしか 知らないままだったの」
  328. まどか: 「でも、ふたりで一緒に いろんな花が咲いてるところを見てまわって…」
  329. 今でも忘れられない 思い出になってる
  330. まどか: (…なんだか悲しそう?)
  331. …でもね
  332. その子とは、 もう二度と会えないの
  333. そのあとすぐに、 亡くなってしまったから
  334. まどか: えっ…!
  335. …なのに、最後に会ったとき 気まずい別れ方をしちゃってね…
  336. あ…これじゃ 何があったかわからないよね
  337. 長くなるけど、いいかな?
  338. まどか: はい…
  339. …その子と初めて出会ったのが この場所だったの
  340. それからここで 何度か会ったあと
  341. リゾートから帰る前にね
  342. 私が見つけたとっておきの場所に ふたりで行こうって約束したの
  343. でも、約束の前日に 些細なことで口喧嘩しちゃって…
  344. 約束の日に その子は来なかった
  345. まどか: そんな…
  346. それっきり会えてないの
  347. それでね
  348. 次の年にここへ来たときに 初めて知ったんだけど
  349. その子は、旅行じゃなくて 療養のために来てたんだって
  350. まどか: 療養…?
  351. ここって 療養所が併設されてるでしょ?
  352. まどか: あ、そういえば…
  353. 病弱な子だったらしくてね
  354. その療養所の職員さんに 夏の終わりに大きい病院へ移って
  355. その後、亡くなったって 教えてもらったの
  356. まどか: そんな…ケンカ別れしたままに なっちゃったんですね…
  357. そう…あれから そのことがずっと心残りだった
  358. 仕事で外国に行くことになって しばらくここには来れないから
  359. 最後に区切りをつけようと思って 今回は来たのよ
  360. ちょぴり苦くても
  361. ここは、 “大切な思い出の場所”だから
  362. まどか: …………
  363. …ごめんね 暗い話になっちゃって
  364. 君には、私みたいに 苦い思い出じゃなくて
  365. 楽しくて素敵な思い出だけ 持って帰ってくれたらいいな
  366. まどか: はい…
  367. まどか: お姉さんに教えてもらった 思い出写真ラリー
  368. まどか: みんなですごく楽しんでます!
  369. それはよかった
  370. …今しかできないことを 見つけてね
  371. まどか: …はい!
  372. さやか: まどかー! みんなこっち来るって!
  373. お友だちも戻って来たみたいだし 私はこれで
  374.  
  375. FILENAME: text_321062-4.txt
  376. まどか: この場所ならみんなわかるかな?
  377. さやか: 灯台なら目立つし 集合場所にはぴったりじゃない?
  378. まどか: そうだね
  379. まどか: ひまわり畑の場所は 説明が難しいし…
  380. マミ: 鹿目さーん!美樹さーん!
  381. まどか: あっ、マミさんたちだ!
  382. さやか: おっ、さっそく!
  383. …………
  384. まどか: …ほむらちゃんたち まだ来ないね…
  385. 杏子: あたしらが来てから 結構経ったよな?
  386. マミ: 迷っちゃったのかしら…?
  387. さやか: なぎさはともかく ほむらまで…?
  388. 杏子: そろそろ ゴールまで時間ないけど…
  389. まどか: 写真は全員で撮らないと ダメだから…
  390. まどか: 電話してみるね
  391. まどか: えっ? いま、灯台にいるの?
  392. ほむら: うん…
  393. ほむら: でも、みんないないし ひまわり畑も見当たらなくて…
  394. まどか: …あっ、もしかして!
  395. まどか: ごめんね、ほむらちゃん 灯台はもうひとつあるの
  396. ほむら: えっ…ごめんなさい てっきり…
  397. ほむら: じゃあ、今からそっちへ行くね
  398. まどか: うん、でも案内しないと 迷いやすい場所なんだよね
  399. ほむら: けど、迎えに来てもらったら ゴールの時間に
  400. ほむら: 間に合わないと思うから 誰かに道を聞いてみる
  401. ほむら: 必ず間に合うから、待ってて
  402. まどか: …うん ここで待ってるね
  403. マミ: 待つしかないみたいね
  404. なぎさ: おまたせなのです!
  405. マミ: よかった! 迷わなかった…?
  406. ほむら: この方たちが ここまで案内してくれたんです
  407. まどか: あっ あのときの…!
  408. 今朝は帽子を拾ってくれて ありがとう
  409. 困っているみたいだから ここまで案内してきたの
  410. まどかちゃんのお友だちと聞いて 驚いちゃったわ
  411. これで少しは 恩返しができたかな?
  412. まどか: 恩返しだなんてそんな… こちらこそありがとうございます
  413. 杏子: さて、全員揃ったことだし
  414. 杏子: ひまわり畑で写真を撮って ゴールしない?
  415. まどか: うんっ!
  416. カシャッ
  417. ゴールおめでとうございます!
  418. なぎさ: これでサガリバナツアーに 参加できるのです!
  419. ほむら: 一夜しか咲かない花 楽しみだね
  420. まどか: うん 早く夜にならないかなぁ
  421. まどか: 夏って、なんだか ちょっぴり浮かれちゃうな
  422.  
  423. FILENAME: text_321063-1.txt
  424. 本日予定しておりました サガリバナツアーは
  425. 強風のため、安全を考慮して 中止とさせていただきます
  426. 楽しみにしてくださっていた 皆さまには
  427. 大変申し訳ございません
  428. まどか: そんな…
  429. まどか: (…もしかしたら)
  430. まどか: (特別な思い出になるかもって 思ってたのに…)
  431. …今日に限って中止かー
  432. 見たかったのになぁ…
  433. えー、やだぁ! お花見たーい!
  434. 残念だけど、 無理なものは無理なの
  435. ざわざわ…
  436. まどか: (集まったみんなも残念そう…)
  437. なぎさ: …残念なのです
  438. 杏子: 天気ばっかりはなぁ…
  439. マミ: どうしようもないわよね
  440. まどか: …………
  441. さやか: えっと…とりあえず今夜は 夜更かししちゃう?
  442. さやか: カードゲームやボードゲーム、 貸してくれるみたいだし
  443. ほむら: そ、そうだね…!
  444. ほむら: サガリバナは残念だったけど その分、楽しい時間にしよう…!
  445. まどか: うん、パジャマで ゲームして遊ぼう!
  446. まどか: あっ… お姉さん…
  447. さやか: 思い出写真ラリーのことを 教えてくれたっていう?
  448. まどか: そう 挨拶してくるね
  449. まどか: あの… 残念でしたね、ツアー
  450. …そうだね
  451. 私も花が咲いているところを 見ておきたかったんだけど…
  452. まどか: せっかく教えてもらったのに…
  453. …………
  454. まどか: あっ、でも友だちが ツアーに参加できなかった分
  455. まどか: カードゲームとかボードゲームで 遊ぼうって言ってくれて
  456. まどか: きっとこれも 大切な思い出になります!
  457. ふふっ、よかったわね
  458. …………
  459. …あのね、まどかちゃんが よかったらでいいんだけど
  460. 明日の朝、お友だちと一緒に 少し付き合ってくれないかな?
  461. まどか: えっ…?
  462. 見せてあげたい場所があるの
  463. まどか: 明日の朝、ですか…?
  464. 今はまだ特別じゃないからね
  465. まどか: 今はまだ…?
  466. 行ってみればわかるよ
  467. それに 今晩は強風で危ないしね
  468. まどか: そうですね、 みんなに聞いてみます…!
  469. 水場にあるから 濡れてもいい格好で来てね
  470.  
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  472. <翌朝…>
  473. まどか: おはようございます
  474. おはよう さっそく出発しようか
  475. マミ: あの…どこに行くんですか?
  476. 特別なものが見られる秘密の場所
  477. ちょっと遠いから はぐれないようについてきてね
  478. まどか: …この花ってまさか
  479. サガリバナだよ
  480. 花が咲いて、 水に落ちちゃったあとは
  481. ここに集まってくるの
  482. ツアーが中止になって
  483. 咲いているところは 見られなかったけど
  484. でも、これもすごく きれいでしょう?
  485. まどか: じゃあ、昨日
  486. まどか: 『今はまだ特別じゃない』って 言ってたのは…
  487. まどか: 流れ着くまでに 時間がかかるから…?
  488. …そういうこと
  489. まどか: すごくきれい…
  490. さやか: 確かにこれは特別だね
  491. ほむら: うん…
  492. マミ: 本当に…きれいね…
  493. なぎさ: 持って帰りたいくらいなのです
  494. 杏子: 景色は持って帰れないぞ?
  495. まどか: ―まどか― …………
  496. …まどかちゃん 写真、撮ってもいいかな?
  497. まどか: ―まどか― はい! お願いします
  498. まどか: あの…もしかしてなんですけど 昨日言っていた…
  499. リゾートから帰る前にね
  500. 私が見つけたとっておきの場所に ふたりで行こうって約束したの
  501. まどか: “とっておきの場所”って ここですか…?
  502. 素敵な場所でしょ?
  503. まどか: はい
  504. …君の言う通り ここがあの子…
  505. ひまりちゃんと 来たかった場所なの
  506. 一緒に見たかったなぁ…
  507. まどか: (“ひまり”ちゃんって どこかで聞いたような…)
  508. まどか: あっ…!
  509. ひまりに選んでもらった 大切なものだったから助かったわ
  510. まどか: ひまり…さん?
  511. 娘の名前よ
  512. まどか: (あのおばあさんたちの 娘さんの名前…)
  513. まどか: (…でも、そんな偶然って あるのかな…?)
  514. まどか: …………
  515. 最後に区切りをつけようと思って 今回は来たのよ
  516. ちょぴり苦くても
  517. ここは、 “大切な思い出の場所”だから
  518. まどか: (勘違いかもしれないけど…)
  519. まどか: (お姉さんにとって すごく大切なことだよね…?)
  520. まどか: (だったら、 今、行動しないと…)
  521. まどか: (きっと…)
  522. まどか: (“今しかできないこと”だと 思うから!)
  523. まどか: お姉さん…!
  524. まどか: みんなも… ちょっと聞いてもらっていい?
  525.  
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  527. あの子のご両親が 来てるかもしれない…?
  528. まどか: わたしの 勘違いかもしれないんですけど…
  529. まどか: でも、もしかしたらって…
  530. ほむら: 近くに 泊まっているかもしれないね
  531. さやか: 探してみるしかないでしょ
  532. マミ: じゃあ、手分けしましょうか
  533. まどか: あっ…! あの人たちです
  534. あら、まどかちゃん
  535. また会ったね …何かご用かな?
  536. まどか: あの…えっと、実は…
  537. まどか: 昨日話してた 娘さんのことなんですけど…
  538. …娘… ああ、ひまりのことね
  539. 私が言ったことが 何か気になったのかしら?
  540. だったらごめんなさいね
  541. あの子はね… もういないのよ
  542. …………
  543. ここに来たのはね あの子が亡くなるとき
  544. 最後まで行きたがっていた ところがあったからなの
  545. 私たちはね その場所を探すためにきたのよ
  546. まどか: え…?
  547. お友だちと一緒に行く約束をした 特別な場所らしいんだけど…
  548. 手がかりが何もなくてね
  549. 近くを歩いてみれば 何かわかるかと思って
  550. ここを訪ねてみたんだ
  551. じゃあ…あなたたちが…
  552. あら、そちらのお嬢さんは?
  553. まどか: あの、実は…
  554. じゃあ、あなたが ひまりの言っていたお友だち…?
  555. はい…
  556. あの日、会えなかったことが ずっと心残りだったんです…
  557. ひまりも最後まで あなたに会いたがっていたわ
  558. えっ… そうなんですか?
  559. そうよ 息を引き取るまで、ずっと
  560. …あの子が…………
  561. それにしても なんていう偶然だろうね
  562. 偶然じゃないわ まどかちゃんのおかげよ
  563. まどか: えっ…? そんな…
  564. そうだったね ありがとう、まどかちゃん
  565. 私からもお礼を言わせて
  566. あの…それから
  567. もしよければ、約束の場所まで 案内させてください
  568. ぜひお願いするわ
  569. ここが… 約束の場所だったんです
  570. …本当に素敵ね 確かに、特別な場所だわ
  571. 静かで穏やかで 植物と花だけがある…
  572. あの子が好きそうなところだ
  573. この場所を見たら ひまりもきっと喜んだでしょうね
  574. ごめんなさい…
  575. 前の日につまらない口喧嘩を したせいで…
  576. ひまりちゃんは来なくて ここを見せられなくて…
  577. 口喧嘩?
  578. ひまりが約束を守れなかったのは 病状が悪化したからだよ
  579. ケンカの話なんて 一度もしてなかった
  580. え…私、ずっと 怒らせちゃったからだと思って…
  581. 些細なことだったんでしょう? 怒ったりしてなかったと思うわ
  582. その後、大きな病院へ 移ったあともね
  583. あなたとの約束を 守れなかったことを
  584. ずっと気に病んでた
  585. 気まずいままで
  586. お別れしたくない気持ちも あったのかもね…
  587. …………
  588. そうだね、約束したのにって そればかり言ってた
  589. 私、自分のせいだって ずっと思ってた…
  590. でも、そうじゃなかった…の?
  591. …………
  592. まどか: (お姉さん、泣いてる…)
  593. あの子のことがずっと 重しになっていたのね…
  594. 申し訳ないことをしたわ
  595. …もう、自分を責めないで
  596. あなたが悲しんでいたら ひまりだってきっと悲しいわ
  597. はい…はいっ…
  598. まどか: …………
  599. ありがとう
  600. 君たちのおかげで 救われた気がする
  601. まどか: いえ、 とんでもないです
  602. 大きすぎる恩返しをして もらっちゃったみたいね
  603. ひまりのお友だちに会えるなんて 夢にも思わなかったわ
  604. 本当に助けてもらってばかりで…
  605. なぎさ: そんなことないのです!
  606. なぎさ: ふたりは なぎさを助けてくれたのです
  607. 今度ね、 ひまりちゃんのお墓に
  608. この場所の写真を 供えさせてもらうことになったの
  609. ちょっと形は違うけど… 約束は果たしたいからね
  610. まどか: …はい
  611.  
  612. FILENAME: text_321063-4.txt
  613. さやか: ラスト半日! 最後まで遊び尽くすからね!
  614. なぎさ: またまた なぎさが一番乗りなのです!
  615. まどか: …………
  616. まどか: さやかちゃんたちと過ごした リゾートでの数日間は あっという間に終わってしまって…
  617. まどか: (楽しいことが たくさんあったなぁ…)
  618. まどか: (でも、もう今日の午後には 帰らないといけないんだよね…)
  619. まどか: (…楽しかったから ちょっと寂しいな…)
  620. まどかちゃーん!
  621. まどか: あっ、お姉さん…!
  622. 今日帰るって聞いてたから これ、間に合うように現像したの
  623. まどか: これは…
  624. まどか: あの場所で 撮ってくれた写真!
  625. まどか: わっ、すごい…! すごく素敵です!
  626. 喜んでもらえてよかった
  627. そういえば、 “今しかできないこと”
  628. 見つかった?
  629. まどか: …………
  630. まどか: はい!
  631. まどか: みんなと一緒に、 思い出を作ったことも
  632. まどか: ここでしか見られない景色や
  633. まどか: お姉さん、おばあさんたちと 出会ったことも
  634. まどか: 全部、かけがえのない瞬間で 大切な思い出です
  635. うん…そうだね
  636. まどか: でも、間違いなく
  637. まどか: 今このときだから できたのは…
  638. まどか: お姉さんを、おばあさんたちと 会わせてあげられたことかも…
  639. …………
  640. そうだね
  641. ひまりちゃんのご両親と私 そして、まどかちゃんたち
  642. みんながこの夏、 このリゾートへ来てなかったら
  643. たぶん、私は本当のことを 知らないままだった
  644. まどかちゃん 素敵で特別な夏をありがとう
  645. まどか: えへへ… こちらこそありがとうございます
  646. まどか: わたしにとっても 素敵で特別な夏になりました!
  647. まどか: もしかしたら 大人になったわたしも お姉さんみたいに昔を懐かしんで またこの場所に来たりするのかな?
  648. まどか: ふふ…
  649. さやか: おーい、まどかー!
  650. ほむら: 泳がないの?
  651. まどか: あっ…さやかちゃん ほむらちゃん…
  652. …ふふ、 引き止めちゃったみたいね
  653. まどかちゃんも泳いできたら?
  654. まどか: はい お姉さん、また!
  655. うん、またね
  656. まどか: …………
  657. まどか: もしわたしが、もう一度 この場所に来ることがあったら
  658. まどか: 大人になったわたしは どんな想いでこの島の景色を見るのかな?
  659. まどか: 夏の思い出、 たっくさんできたね!
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