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jul_cnr_c01

a guest
Nov 25th, 2021
71
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  1. (今日は、ユニット結成記念ポスターのお渡し会だ)
  2.  
  3. (CDを買ってくれた人に、アイドルが直接、
  4. 記念ポスターを手渡しするというものだが……)
  5.  
  6. 「はぁ……」
  7.  
  8. 「どうしたんだ、ため息なんかついて」
  9.  
  10. 「いや、こんなフツーの場所でさ、
  11. フツーにファンの人たちと会うのって……」
  12.  
  13. 「なんか、フツーすぎて、ちょっと……
  14. 落ち着かないってゆーか」
  15.  
  16. 「……フツーだらけで、よくわからないぞ。
  17. まあ、俺なりに推理すると……」
  18.  
  19. 「普通の、普段のジュリアとしてファンに
  20. 接するのが、はずかしいってことか?」
  21.  
  22. 「は、はずかしい、とか……。
  23. あたしは、別に、そんな……」
  24.  
  25. (はずかしいんだな?)
  26.  
  27. 「だ、だいたいさ!
  28. こういうのって、アレじゃない?」
  29.  
  30. 「よろしくお願いしま~す なんて、きゃぴるんして
  31. ポスター渡されるから、ファンの人は嬉しいんだろ?」
  32.  
  33. 「まあ、きゃぴるんはともかく、笑顔は重要だな」
  34.  
  35. 「だったら、あたし、いない方がいいって。
  36. 自分で言うのもなんだけど、無愛想だし!」
  37.  
  38. (どうも、しり込みしてるらしい。
  39. ここはひとつ、俺が背中を押してやらなくては!)
  40.  
  41. 逆に考えろ!
  42.  
  43. 無愛想でOK!
  44.  
  45. どすこい!
  46.  
  47. 「ジュリア、逆の立場で考えてみたらどうだ?
  48. 例えば、そうだな……」
  49.  
  50. 「ジュリアが好きなバンドのサイン会に行って、
  51. 目当てのメンバーがいなかったとしたら、どう思う?」
  52.  
  53. 「えっ? そりゃ……。
  54. がっかり、する」
  55.  
  56. 「だろ? お渡し会にジュリアがいなかったら、
  57. がっかりするファンの人も、いるんじゃないかな」
  58.  
  59. 「それに、何より、来てくれた人に失礼だろう?」
  60.  
  61. 「う、うん……。いや、わかってるよ?
  62. ちょっと、言ってみただけだもん」
  63.  
  64. (よし、大事なことは、ちゃんと
  65. 思い出してくれたみたいだ)
  66.  
  67. 「別に、無愛想でいいんだよ。
  68. それでこそ、ジュリアなんだから」
  69.  
  70. 「えっ? そうなの?」
  71.  
  72. 「こういう交流っぽいイベントで、ぶすっとしてる
  73. のって……。やっぱ、悪い気がするんだけど」
  74.  
  75. 「なら、ズル休みはもっと悪い気がするだろ?」
  76.  
  77. 「うっ。ま、まあ……。いや、わかってるけどね。
  78. ちょっと、言ってみただけだし」
  79.  
  80. 「そうか? なら、いいんだけどな」
  81.  
  82. 「どすこい! プッシュ、プッシュ!!」
  83.  
  84. 「どわあっ、あぶなっ……!
  85. なんだよ、なんでいきなり、つき飛ばすんだよ?」
  86.  
  87. 「いや、しり込みしてるみたいだから、
  88. 背中を押してやろうかと……」
  89.  
  90. 「脳みそカビてんのか、この真性バカ!
  91. そういうときは、言葉で押せよ! 手で押すなよ!」
  92.  
  93. 「そ、それもそうだな。
  94. すまん、俺としたことが、つい……」
  95.  
  96. 「しかも、完全に正面から押したし……。それじゃ、
  97. ただのつっぱりだろ、バカ! つっぱりバカP!」
  98.  
  99. (くっ、なんだか言われたい放題だが、
  100. 言われても仕方がない気がする……)
  101.  
  102. 「あれ? でも、怒鳴ったら、なんか……。
  103. 今日の仕事も、どうってことない気がしてきた」
  104.  
  105. 「ははっ、なんか、あんたのバカっぷりが、
  106. 役に立ったかも?」
  107.  
  108. 「そ、そうか?
  109. それは、よかったよ……」
  110.  
  111. 「にしても、こういうポスター渡すイベントって、
  112. どんなファンサービスすればいいの?」
  113.  
  114. 「ん? どういうことだ?」
  115.  
  116. 「だって、歌も歌わないし。本当に『はい』って感じで、
  117. フツーに渡すだけじゃ、つまんなくない?」
  118.  
  119. 「うーん、ポスターの渡し方か……」
  120.  
  121. 普通でいいよ
  122.  
  123. ハートを込めて
  124.  
  125. ロックに決めろ
  126.  
  127. 「普通に渡せばいいよ。
  128. むしろ、普通だから、いいんじゃないかな」
  129.  
  130. 「それ、どういうコト?」
  131.  
  132. 「ファンの人にとっては、ステージの上とは違う、
  133. アイドルの素顔に近づけることが重要なんだ」
  134.  
  135. 「だから、なるべく普通に、自然に接して、
  136. その上で……」
  137.  
  138. 「いつもありがとうとか、ジュリア自身の
  139. 言葉を伝えれば、いいと思う」
  140.  
  141. 「ん……、そっか……。
  142. うん、OK! なんか、イメージできた気がする」
  143.  
  144. 「あんたって、たま~にいいコト言うよね。
  145. んじゃ、フツーにお礼言いながら、渡してみるよ!」
  146.  
  147. 「俺としては、常にいい事を言ってるつもりなんだが、
  148. それはともかく、その意気だ!」
  149.  
  150. (その後のお渡し会で、ジュリアが見せた
  151. フランクなファン対応ぶりは……)
  152.  
  153. (集まってくれたファンにも、すこぶる好評だった)
  154.  
  155. 男性ファン
  156.  
  157. 「ジュリアちゃん、これからも応援してるから!」
  158.  
  159. 女性ファン
  160.  
  161. 「が、がんばってくださいね!」
  162.  
  163. (よかった。アドバイスをした甲斐があったな……!)
  164.  
  165. 「ハートを込めて、つまり心を込めて渡せば
  166. いいんじゃないか?」
  167.  
  168. 「だから、どんな心を込めればいいのかって
  169. 聞いてんのっ」
  170.  
  171. 「もちろん、応援してくれてることへの感謝とか、
  172. 真心とか、ファンへの愛情とか、そういうもんだよ」
  173.  
  174. 「な、なんか、いろいろ混ぜるんだな……。
  175. ま、やってみるっきゃないか」
  176.  
  177. 「ああ、とにかく、やってみれば何とかなる!」
  178.  
  179. (その後のお渡し会で、ジュリアはジュリアなりに
  180. 心を込めて、ポスターを渡していたが……)
  181.  
  182. (ポスターを握りしめて離さないまま、目を閉じて
  183. ブツブツと念を送るジュリアの姿は……)
  184.  
  185. (正直、ちょっと怖かった)
  186.  
  187. 困ったファン
  188.  
  189. 「あ、あの……。もう、いいですか?」
  190.  
  191. (……くっ、すまない、ジュリア。
  192. まさか、そこまでやるとは……)
  193.  
  194. 「ジュリアらしく、ロックに決めつつ
  195. ポスターを渡せばいいんじゃないか?」
  196.  
  197. 「ロックに決めつつ……。
  198. って、なんか全然、イメージできないんだけど?」
  199.  
  200. 「そこは、ジュリアのロックなソウルで、
  201. いい感じに解釈してもらうとして……」
  202.  
  203. 「とにかく、そういうジュリアらしさが
  204. 出せればいいと思うんだ」
  205.  
  206. 「ちぇ、肝心なトコで適当だな、もう。
  207. いいよ、自分で考えるから!」
  208.  
  209. (その後のお渡し会で、ジュリアはジュリアなりの、
  210. ロックな渡し方を試みた)
  211.  
  212. (しかしファンの人は、だいたい、
  213. 不思議そうな顔をするだけだった)
  214.  
  215. 戸惑うファン
  216.  
  217. 「あは、あはは……。
  218. あ、それじゃ、次の人もいるんで、これで……」
  219.  
  220. (どうやら、余計なアドバイスをしてしまったらしい。
  221. すまなかった、ジュリア……)
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