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- 517001-1_KaCgt [Kagome node]
- かごめ: えっと… このルーズリーフで全部かな…?
- かごめ: こうやって並べてみると、 いっぱい取材したね、アルちゃん
- アルちゃん: <でも、取材内容を書いた ルーズリーフよりも>
- アルちゃん: <かごめちゃんが自分でメモした ルーズリーフの方が多いよ>
- かごめ: そうかもしれないね
- かごめ: 長い休みに入って 私は今までのメモをまとめることにした
- かごめ: 何が起きるかわからない毎日だから あとでパズルみたいに整理できるよう 小さなルーズリーフに 色んなことを書いてるんだけど
- かごめ: 気がつけば、そのメモの数々は 専用の引き出しの中を一杯にしていた
- かごめ: これは初めて いろはさんと会ったとき…
- かごめ: 時女一族とネオマギウスの 戦いについて
- かごめ: 灯花ちゃんとねむちゃんに聞いた 魔法少女のこと
- かごめ: 魔法少女同士が争っていたから 殺伐とした内容のメモが多い
- かごめ: だけど…
- かごめ: これって、調整屋で起きた 料理の事件の話だ
- かごめ: それに、まなかちゃんの お料理教室の話
- かごめ: こっちは水名女学園の 学園祭の話だよね…ふふっ
- かごめ: 魔法少女だということを除けば みんなは私と同じ普通の女の子として 日常を過ごしている
- かごめ: だから私は、周りの人たちと変わらない 魔法少女たちの実像も記したくて こうしてみんなの日常もメモしていた
- アルちゃん: <お正月とかクリスマスとか 色んな行事のメモがあるね>
- かごめ: 私が来る前にあった話も含めて たくさん教えてもらったからね
- かごめ: 特に多いのは… うん、“夏休み”のお話かも
- ミーンミンミンミンミンミ゙ィー…
- かごめ: ふふっ
- かごめ: 今日は戦いじゃなくて 日常の話をまとめてみようかな
- かごめ: 目の前にはあるのは自分のメモ
- かごめ: そして、みんなからもらった “夏にまつわる思い出”のエピソード
- かごめ: 一度まとめ方を考えるよりも前に 読み返してみたいと思う
- かごめ: みんなが過ごした夏の日々を
- 517002-2_KaCgt [Kuroe branch (Kuroe & Iroha)]
- 黒江: いつも通りの夏休み…
- 黒江: お兄ちゃんからのお願いを断り切れずに 場違いな海の家で手伝いをしている …なんて、少しの違いはあるけど 結局、終わってみればいつも通りなんだろうな
- 黒江: この水着も調整屋さんで準備してもらったけど 海の家のお手伝いをこなしてるだけじゃ たいした出番もなく終わりそうだし…
- 黒江: 肝心のこれも、まだほとんど使えてないし 楽しそうに海で遊ぶ人たちを眺めながら ただ、ぼーっとしてるだけ
- 黒江: 人の輪の中へ踏み出す勇気なんてないし 相も変わらず、私はひとり “変わりたい”のに、“変われない”… 結局、何者にもなれないまま 今年もいつも通りの夏を過ごすに決まってる
- 黒江: …あれ、でも私って 海で遊んでる人みたいになりたいんだっけ
- 黒江: 違うよね… 私はもっと、こう… 魔法少女として…
- 黒江: なんで環さんが思い浮かぶの…
- 黒江: うーん…調整屋さんでも 環さんのこと意識しちゃってたな…
- みたま: いらっしゃ~い
- みたま: あら、黒江ちゃん久しぶりね 調整が必要かしら?
- 黒江: …えっと チラシを読んで…
- みたま: あぁ、水着調整キャンペーン?
- みたま: 元黒羽根さんたちに チラシを配っておいてよかったわ
- みたま: 可愛くしてあげるから任せて
- みたま: じゃあ、どんな風になりたいか イメージを教えてくれるかしら?
- 黒江: …SUP教室の手伝いもあるから SUPがある程度できるような…
- みたま: SUPって スタンドアップパドルボード?
- 黒江: …はい サーフィンみたいなやつ…ですね
- みたま: なるほどねぇ デザインはどんな感じがいい?
- 黒江: あんまり派手じゃないのが いいかな…
- 黒江: (どんな風になりたいか… って聞かれると)
- 黒江: (デザインと関係ないことまで 考えちゃうな)
- 黒江: (誰かを救う勇気がある人…)
- 黒江: (そんな自分に変われないかな …なんて、思っちゃう)
- 黒江: (そう…環さんみたいに…)
- みたま: わかったわ
- みたま: それじゃあ、もう少し 細かいデザインについて
- みたま: 教えてもらえるかしら♪
- みたま: はいっ できたわよ~
- みたま: あらぁ、とっても似合ってるわ♪
- みたま: SUPも、きっと上手に できるようになってるはずよ
- 黒江: …ありがとうございます
- みたま: あら、その手足のお花 いろはちゃんのと似てるわね
- 黒江: …えっ?
- みたま: あぁ、ごめんなさい… 黒江ちゃんの話を聞いてるうちに
- みたま: いろはちゃんの水着と イメージが被っちゃって
- みたま: 調整のとき、無意識に 似せちゃったのかも…
- 黒江: あ…いえ、別に…被っても…
- 黒江: (デザインの話のときに 環さんのこと考えてたのが)
- 黒江: (伝わっちゃってたのかな… 恥ずかしい…)
- 黒江: あ…いけない お兄ちゃんを手伝わなきゃ
- 黒江: …ふぅ 疲れたな…
- いろはの声: あれ? もしかして黒江さん!?
- 黒江: …………環さん?
- いろは: やっぱり、黒江さんだ…!
- 黒江: 環さん…どうしてここに…?
- いろは: やちよさんが、仕事の関係で 招待券をもらったから…
- いろは: せっかくだからって みんなでSUP体験に来たの
- 黒江: え…それ、私が お手伝いしてるところ…かも
- いろは: ほんと!? すごい、偶然だね!
- 黒江: (あれ、みんな …っていうことは)
- みふゆ: お久しぶりですね 今日はお世話になります
- ねむ: 君は元黒羽根の子か 僕達相手じゃやりにくくないかな
- 黒江: …別に、そんなことは
- ねむ: 僕はこの足だから 基本的にはずっと座って見学…
- ねむ: ということになるけどね
- 万年桜のウワサ: |大丈夫、私がだっこする …それより、灯花はまだ?|
- 黒江: …あ 里見さんは…来てないんですか?
- ねむ: ああ、少しばかり 遅れる、と言っていたね
- いろは: 鶴乃ちゃんとフェリシアちゃんも 寄り道してから来るみたい
- 黒江: そうですか…
- ピンポンパンポーン♪
- 「迷い犬のお知らせです 白い大型犬のサマー君が迷子になっています 見かけた方は 迷子センターまでお知らせください」
- いろは: 迷い犬かぁ… 早く見つかるといいけど…
- 黒江: …うん
- 鶴乃: どうしよう、やちよ! フェリシアとはぐれちゃった!
- やちよ: えっ
- ピンポンパンポーン♪
- 「続けて、迷子のお知らせです 神浜市からお越しの深月フェリシアちゃんが 迷子センターでお連れ様をお待ちです お心当たりのお客様は 迷子センターまでお越しください」
- 鶴乃: ええっ?
- いろは: あ、よかったぁ…
- やちよ: …私が迎えに行くわ
- ピンポンパンポーン♪
- 「迷子のお知らせ…あ、ちょっとあなた待っ…」
- 灯花: 「わたくしは迷子じゃなーい! ちょっとみふゆ、どこ行ってるのー!? 早くわたくしを迎えに来てよねー!」
- みふゆ: なっ…灯花!? ワタシも行ってきます!
- ねむ: 灯花…みふゆを呼びつけるために 迷子センターに駆け込んだね…
- いろは: あ、あはは… 慌ただしくてごめんね…
- 黒江: それから、環さんたちは なんとか深月さんと里見さんと合流して みんなでSUPの講習を受けはじめた
- 黒江: SUPの先生に教えてもらいながら 楽しそうに笑っている環さんたちを眺めて 私は、暇を持てあましていた
- 黒江: (…楽しそうだな)
- 黒江: (…やっぱり手首の花 環さんのと同じだ…)
- いろはの声: 黒江さーん!
- 黒江: ――っ!?
- いろは: あの、講習が終わって これから自由時間なんだけど…
- いろは: 先生も見ててくれるらしいから… 黒江さんも一緒に遊ばない?
- 黒江: …………うん
- 517003-3_KaCgt
- 黒江: (一緒に遊ぶ …とは言ったけど)
- 黒江: (この人たちの相手は やっぱり緊張する、かも…)
- ねむ: じゃあ、僕は 車椅子SUPっていう
- ねむ: この体でも楽しめそうなものが あると聞いたから
- ねむ: 桜子とみふゆと一緒に、先生に 教えてもらうことにするよ
- ねむ: 先生に、君もSUPの経験者だと 聞いているし…
- ねむ: みんなも経験者の彼女に 何か教えてもらったらどうかな?
- フェリシア: え、お前プロなのか?
- 黒江: いや、全然プロじゃ…
- 灯花: 海の家のお手伝いを してるんだっけー?
- 黒江: そうだけど… そんなに上手くないから…
- 黒江: 私がSUPを 教えているわけでもないし…
- フェリシア: なぁなぁ! なんかすげー技見せろよ!
- 黒江: え…えっと… そんなこと言われても…
- いろは: もう、ふたりとも! 黒江さんを困らせ…キャッ!?
- ずてっ
- 黒江: (…転んだ…)
- 灯花: お姉さま!? 大丈夫!?
- いろは: あはは…大丈夫だけど 恥ずかしいな…
- フェリシア: ったく、いろはは ほんっとドジだよなー
- 黒江: (なんか、可愛い人…だな)
- 黒江: (不思議…さっきまでの 緊張が消えちゃった)
- いろは: …さっきは恥ずかしいところを 見られちゃったね…あはは
- 黒江: …ううん、助けようとしてくれて ありがとう
- いろは: こっちこそ灯花ちゃんたちが ごめんね…!
- いろは: それにしてもSUPって 知らないことばっかりだったよ
- いろは: 普通の海水浴場と離れたところで しないといけないってこととか
- いろは: 全然、知らなかったもん
- 黒江: うん…人にぶつかったりしたら 危ないから…
- いろは: あと、こっちには島もあるんだね …ほら、あそこ!
- 黒江: あぁ、あの小島までの一本道… 綺麗だって有名らしくて
- 黒江: 潮の満ち引きで現れたり 消えたりするみたい
- 黒江: 一本道では綺麗な貝殻とかも 見つかる…って聞いた
- いろは: へぇ…そうなんだ…!
- いろは: そういえば、海の家に来る前に 点々と貝が落ちててね
- いろは: 貝拾いしてた子が 落としちゃったみたいで
- いろは: 拾って鶴乃ちゃんと その人を追いかけたんだ
- 黒江: …なんか、落ちたものを たどっていくって
- 黒江: ヘンゼルとグレーテルみたい
- いろは: そうそう、私もそう思ったの!
- いろは: 道に迷いそうになったら、私も ヘンゼルとグレーテルみたいに
- いろは: 何か物を落として戻れるように しようかなって
- フェリシアの声: おーい! いろはーくろえー!
- フェリシア: ねむと桜子がやってる ふたり乗り!オレもやりたい!
- いろは: フェリシアちゃん… そんな黒江さんに迷惑…
- 黒江: …いいよ 先生の目が届くところなら
- フェリシア: よっしゃー!
- いろは: ありがとう、黒江さん
- 黒江: …これくらいしかできないから
- フェリシア: それじゃ、くろえ! 一緒にあっち行こうぜ!
- 黒江: …で、柊さんたちが ふたり乗りしてた話だよね
- フェリシア: おう!ねむは車椅子だったけど そうじゃなくてもできるだろ?
- 黒江: うん…
- 黒江: あんな風にパドルボードに ふたり乗りすることを
- 黒江: タンデムって言うんだけど
- 黒江: …ちょっとやってみようか
- 灯花の声: あーっ! いたー!
- 灯花: わたくしも、いろいろ やってみたいことがあるんだけど
- 黒江: あ…えっと…
- フェリシア: ―フェリシア― わりぃけど、くろえはオレと タンデムってやつをやるのにいそがしーから!
- 灯花: ―灯花― そんなのズルいにゃー! わたくしだっていろいろやってみたいのにー!
- 黒江: ―黒江― えっと…順番に…
- フェリシア&灯花: ―フェリシア&灯花― じゃあオレから! じゃあわたくしからだね!
- 黒江: ―黒江― あ、あぁ…
- いろは: もう、ふたりとも! 黒江さんを困らせちゃだめだよ
- フェリシア: じゃあさ、いろは あれはいいのかよ
- いろは: へっ?
- やちよ: 黒江さん、パドルボードの上で ヨガをするっていう
- やちよ: SUPヨガをしてみたいんだけど
- 鶴乃: えーそれよりわたしと 競争しようよー!
- 鶴乃: せっかくやるからには
- 鶴乃: SUPでも最強を 目指したいからね!
- さな: 私は、わんちゃんと パドルボードに乗って楽しむ
- さな: ドッグSUPっていうのを やってみたいんですけど…
- さな: userNameは 代わりにはならない…かな…
- 鶴乃: ほっ? …もしかしてそれ
- 鶴乃: 普通の人が見たら 無人のボードに見えちゃう気が…
- さな: そ、そうでした… すみません…
- 黒江: あの…えっと…
- 黒江: (環さんって、この人たちと いつも一緒にいるんだよね…)
- 黒江: (環さんも控えめな性格なのに なんでやっていけてるんだろ)
- いろは: だめだよみんな
- いろは: いっぺんに話しかけられて 黒江さん困ってますよ!
- やちよ: あ…そうよね ごめんなさい…黒江さん
- 黒江: (あ…こういうところ なのかな…)
- 黒江: (見た目によらず、怒るとこは ちゃんと怒れるから…)
- 黒江: (たくさんの仲間と一緒でも 環さんのままでいられるのかも)
- 517004-4_KaCgt
- 黒江: それから、七海さんたちと いろんな種類のSUPをやってみたり 里見さんたちに振り回されたりしたあと 環さんとふたりでSUPで遊んだ
- 黒江: ただ、漂うように海の上を進む時間は 他の人と過ごすよりも穏やかで こういう風に人と過ごすのは 悪くないのかもって思った
- いろは: あ、あそこに魚がいるね…!
- 黒江: ほんとだ…SUPで 釣りとかもできるらしいけど
- 黒江: あとでやってみる…?
- いろは: あ、ちょっとやってみたいかも…
- 鶴乃の声: このまま ビュビューンと行っちゃうよー!
- いろは: わっ!? 鶴乃ちゃんとフェリシアちゃん!
- 鶴乃: ふんふん! こんな乗り方もできちゃうよっ!
- フェリシア: オレだって負けねーぞ! タンデムってやつも覚えたしな!
- 黒江: (…みんな元気だな)
- いろは: 「それじゃあ、あとで私も フェリシアちゃんのボードに 乗せてもらおうかな?」
- 鶴乃: 「それはお勧めしないよっ!」
- 鶴乃: 「さっき、さなが乗ったら フェリシアが全速力で回転させちゃって ふらふらになってたし!」
- いろは: 「ええ!? さなちゃん、大丈夫かな…?」
- フェリシア: 「へーきへーき! いろはも乗せてやるから来いよ!」
- 黒江: (環さんはすごいな… みんなと仲良くできて…)
- 黒江: (そういえば、手と足に ついている花…)
- 黒江: (たしか、アネモネ…?)
- 黒江: (サンダルも可愛くて 花と合ってるな…)
- ザザーン…
- 黒江: (わ…大きな波が…)
- ぐらっ
- 黒江: え…?
- バッシャーン
- 黒江: 海に落ちた…!? どうしよう…!? 私、ほとんど泳げない…!
- フェリシアの声: おい! くろえがボードから落ちたぞ!
- いろはの声: 大変! 助けなくちゃ!
- 鶴乃の声: ちょ!? 待って、いろはちゃん!
- ボチャンッ
- 黒江: あれ…でもここって…
- 黒江: あ…浅い…立てた
- 黒江: (それより…!)
- 黒江: (さっき環さん 飛び込んだ…よね!?)
- いろは: あぷ…はっ…
- ブクブクブク…
- 黒江: 環さん!? 泳げないの!?
- 黒江: (どうしよう、私のせいで!)
- 黒江: あ、こっち… 手掴んで…立てるから…!
- ガシッ
- 黒江: あ…
- バッシャーン
- 黒江: どうしよ…私まで 一緒に溺れ…
- 鶴乃: 落ち着いて、浅いから! フェリシア、助けるよ!
- フェリシア: おー、任せろ!
- いろは: はー…はー… まさかあんなに浅かったなんて
- 鶴乃: いろはちゃん、カナヅチなのに 無茶しすぎだよ!
- フェリシア: 立てるとこでも 溺れるヤツっているんだな
- フェリシア: オレ、ちょっと怖かったぞ…
- いろは: うぅ…ごめんなさい…
- 黒江: あ…助けようと してくれたんだよね…?
- いろは: でも、私が余計なことしたから 黒江さんまで溺れそうに…
- 黒江: …………
- 鶴乃: ふたりは少しここで休んでて
- 鶴乃: わたしとフェリシアで タオルもらってくるから
- いろは: 本当にごめんね…黒江さん
- 黒江: …………
- 黒江: …どうして環さんは あんなことができるの?
- 黒江: 自分も泳げないのに 人を助けるなんて…
- 黒江: (私だったら、きっと そんな勇気出せないから…)
- いろは: え? えっと…
- いろは: ごめん…私、余計なこと しちゃったよね…
- いろは: 助けなくても、黒江さん あの深さなら立ててたし…
- 黒江: …え、あぁ…
- 黒江: (もしかして、責めたように 聞こえちゃった…?)
- 黒江: (どうしよう…そんなつもりじゃ なかったのに…!)
- いろは: …………
- 黒江: …………
- 黒江: (環さんならきっとこういうとき 何かフォローするんだろうけど)
- 黒江: (何も出てこない…)
- 黒江: …えっと…
- 灯花の声: ねー!SUPの人ー! ちょっと来てくれないかにゃー!
- 517005-5_KaCgt
- 黒江: それから、里見さんに連れていかれて 質問攻めにされたり無理難題を出されたり…
- 灯花: ジェットエンジンつきのやつは ないのかにゃー
- 黒江: そうこうしているうちに すごく時間が経っちゃった
- 黒江: (疲れた…)
- 黒江: (環さんのところに 戻らなきゃ…)
- 黒江: …あれ?
- 黒江: 環さん、他のところに 行ったのかな…?
- 黒江: (きっと七海さんとかと 一緒にいるんだよね…)
- やちよ: あら、黒江さん いろは知らないかしら?
- 黒江: え…七海さんも 知らないんですか…?
- やちよ: 黒江さんと別れてから、誰も いろはの姿を見ていないのね…
- 黒江: ひとりで、どこかに買い物とか 行ったんじゃないですか…?
- やちよ: いろはの性格的に あまり考えられないわね…
- フェリシア: 迷子になったんじゃねーの?
- やちよ: スマホは持ってるはずだし 連絡が来るはずよ
- やちよ: 最悪、迷子センターとかにも 行けるでしょうし
- やちよ: そもそも、さっきから 既読もつかないのよね…
- うい: お姉ちゃん泳げないし… 溺れてたりしないかな…
- さな: でも、ひとりで海に 入ったりするでしょうか…
- 鶴乃: 溺れかけたばっかりだよ? さすがにないんじゃないかな
- やちよ: そうね…とは言え 何かあってからじゃいけないし
- やちよ: まずは 海の家の大人に相談しましょう
- 鶴乃: やちよ、どうだった?
- やちよ: ライフセーバーの人が来てくれて すぐに動いてもらってるわ
- 鶴乃: 迷子の場合も、ライフセーバーに 知らせるんだっけ
- やちよ: ええ、海の事故は恐いから…
- やちよ: それで、海の家の方とも相談して ただの迷子かもしれないから
- やちよ: 私たちも危険じゃない場所を 手分けして探すことになったわ
- 鶴乃: うん、それがいいね!
- やちよ: 私、みふゆ、それから鶴乃の 3班に分かれて探しましょう
- ねむ: 僕は足を引っ張ってしまうから 灯花と桜子とここに残って
- ねむ: お姉さんが戻ったときのために 待機しておくよ
- 万年桜のウワサ: |海の家のお客さんたちにも いろはを見てないか聞いておく|
- やちよ: ええ、お願いするわ
- やちよ: それじゃあ、捜索は このメンバーで行きましょう
- やちよ: それじゃあ、何かあったら 逐一報告をしてちょうだい
- ねむ: 僕達に情報を集約して 共有漏れのないようにしたい
- うい: うん、わかった!
- うい: 頑張ろうね みふゆさん、黒江さん
- みふゆ: はいっ
- 黒江: …うん その、環さんの妹…さん?
- うい: ういでいいよ!
- 黒江: …うん よろしく…ういちゃん
- 517006-6_KaCgt
- 黒江: それから、砂浜中を探したけど 環さんが見つかる気配はなくて ただただ、時間だけが過ぎていった
- うい: …お姉ちゃん どこに行っちゃったんだろう…
- いろは: ごめん…私、余計なこと しちゃったよね…
- いろは: 助けなくても、黒江さん あの深さなら立ててたし…
- 黒江: (あれが最後とか そんなの、最悪だ…)
- 黒江: (私が、あのとき環さんと 一緒にいたら…)
- 黒江: (里見さんのところに 行っていなかったら…)
- うい: …黒江さん? 大丈夫…?
- 黒江: …あ、うん…ごめん
- ピロン♪
- うい: あ、やちよさんから…!
- うい: …………
- うい: 一度、元の場所に 集まるように…だって
- やちよ: これで全員ね
- 鶴乃: 結構、探し回ったけど 見つからないね…
- うい: かなり時間も経ってるよね やっぱり、何かあったのかな…
- ねむ: 大人達も探してくれているけど まだ見つからないらしい
- やちよ: 直接、電話もかけてみたけど 繋がらなかった…
- やちよ: 電池切れかもしれないけど 嫌な想像もできてしまうわね…
- みふゆ: そうですね…他に何か 変わったことはありましたか?
- 鶴乃: 迷子犬の放送が またあったくらいかな?
- フェリシア: あー、でっけーわんこを見かけた ってヤツが知らせに行ってたな
- フェリシア: 島に続く道にいた… とかナントカ
- 黒江: でっけーわんこ…?
- 「迷い犬のお知らせです 白い大型犬のサマー君が迷子になっています 見かけた方は 迷子センターまでお知らせください」
- いろは: 迷い犬かぁ… 早く見つかるといいけど…
- 黒江: (まさか…)
- 黒江: (いや、でも環さんなら ありえるのかも…)
- 黒江: あ、あの…七海さん! 1ヶ所だけ確認したい場所が…
- やちよ: …どこ?
- 黒江: …あの小島です
- さな: …あ、潮の満ち引きで現れる 道があるって話ですよね
- 黒江: はい…環さんがその犬を見かけて
- 黒江: それで、追いかけていったんじゃ ないかって
- 黒江: …その道、今は海の下にあって 歩いては通れないけど
- 黒江: SUPでなら行けると思うから…
- やちよ: わかったわ
- やちよ: いずれにしても ライフセーバーさんと
- やちよ: 海の家の大人たちに 現状は報告しておくわ
- やちよ: そちらの判断によっては 警察や、いろはのご両親に
- やちよ: 連絡してもらう ことになるかと思うから
- 黒江: …はい それじゃあ、私行ってきます
- みふゆ: 待ってください
- みふゆ: でしたら、ワタシも 黒江さんと一緒に行きます
- みふゆ: ひとりで行かせられませんから
- やちよ: 二次被害の危険があるわ
- やちよ: 海に出るなら 大人に同伴してもらわないと…
- みふゆ: いえ…魔法少女だけの方が いいと思うんです
- みふゆ: もしも島に、魔女がいたりしたら ワタシたちだけの方が…
- やちよ: …あっ そうね、迂闊だったわ
- やちよ: いろはとの連絡が取れない以上 その可能性も考えられる…
- やちよ: ここはみふゆに任せましょう
- やちよ: 後で大人たちに怒られるのは 覚悟しておいて
- みふゆ: 承知の上です
- うい: あの、だったらわたしも…!
- やちよ: …わかった 3人とも、十分気をつけてね
- うい: ここから、本当なら 島への道があるんだよね?
- 黒江: うん…今は潮が満ちてるから 海に沈んじゃってるけど
- 黒江: …あれ?
- みふゆ: 黒江さん?
- 黒江: (これ…確かにそうだ…!)
- うい: どうしたの? それ…お花?
- 黒江: …これ、環さんがつけてた アネモネの花…
- うい: え、それって…!
- 黒江: やっぱり、環さんは この先に行ったんだと思う…
- 517007-7_KaCgt
- 黒江: 環さんを探しに 島まで続く道へと向かった私たちは そこで、環さんが手足につけていた アネモネの花びらを見つけた
- 黒江: さっきも話したけど…
- 黒江: 多分、犬が島に向かっていくのを 見つけた環さんが
- 黒江: それを追いかけて 島に向かったんだと思う…
- うい: 道、沈んじゃってるけど お姉ちゃん大丈夫かな…!?
- 黒江: 島までは、そこまで遠くないし 道のあるうちに
- 黒江: あっちの島に着いているなら 大丈夫だと思う…
- みふゆ: やっちゃんたちには 連絡しておいたので
- みふゆ: さっそく、ワタシたちは島まで SUPで向かいましょう
- うい: うん…電話が繋がらないのは 心配だけど
- うい: 島に渡ったまま
- うい: 迷い犬のサマー君と一緒に 取り残されちゃってるのかな…?
- みふゆ: そうですね 無事でいる可能性が出てきました
- みふゆ: …ただ、悪い想像は したくありませんが
- みふゆ: 島で危険な魔女と 遭遇してしまったという場合も…
- みふゆ: …無事でいてくれると いいのですが
- 黒江: …はい
- みふゆ: では、ワタシより黒江さんの方が SUPは上手いと思うので
- みふゆ: ういさんを一緒に乗せるのは お願いしてもいいですか?
- みふゆ: ワタシも、すぐ後ろを ついていきますから
- 黒江: わかりました
- みふゆ: ういさんたちは 大丈夫そうですかー?
- うい: うん! 黒江さんのおかげで順調だよ
- うい: あ、ずっと漕いでくれてるけど 黒江さんは疲れてない?大丈夫?
- 黒江: うん…
- うい: あ、そういえば…
- うい: どうしてお姉ちゃんが わんちゃんを追ったと思ったの?
- 黒江: …環さんなら そうすると思ったから…かな
- 黒江: 泳げないのに、私のこと 助けようとしてたし
- うい: そうだったんだ
- うい: …たしかに、お姉ちゃんって 目の前で困っている人がいたら
- うい: 何も考えずに 助けに行っちゃうもんね
- 黒江: うん…
- 黒江: でも、それじゃあ環さんのことは いったい誰が助けるんだろう…
- うい: そのために、わたしたちは ここに来たんだよ
- 黒江: あ…
- うい: 一緒に、お姉ちゃんを見つけて 助けてあげないとね!
- 黒江: うん…そうだね 私たちで環さんを助けよう
- 黒江: (私だって、環さんみたいに 誰かを助ける私でありたいから)
- 517008-8_KaCgt
- うい: 着いたね…!
- みふゆ: ほとんど人の気配がないですね…
- 黒江: 道が沈んじゃうと こっちに来る人も少ないから…
- うい: 小さい島に見えたけど 迷っちゃいそう…
- みふゆ: …………
- みふゆ: 近くに魔女の気配は 感じられませんね
- みふゆ: はぐれないように みんなで一緒に動きましょう
- うい: おねえーちゃーん!
- ザザーン…
- うい: ダメだ…大きな声を出しても 波の音でかき消されちゃう…
- みふゆ: メッセージも電話も応答なし… どこにいるんでしょう…?
- うい: 途中で波にさらわれたなんて 思いたくないけど…
- 黒江: …………
- 黒江: …あれ?
- みふゆ: どうしました?
- 黒江: いや、あそこに足跡が…
- うい: さっき歩いたときの わたしたちの足跡じゃなくって?
- 黒江: …そう、かもしれないけど
- 黒江: (サンダルも可愛くて 花と合ってるな…)
- 黒江: 環さんのサンダル あんな形だったと思って…
- うい: そこまで覚えてるだなんて 黒江さん、すごいね…!
- 黒江: …いや
- 黒江: (どうしよう…環さんのこと すごく見てたとか…)
- 黒江: (気持ち悪いとか 思われてないかな…)
- みふゆ: 足跡の向かう方へ 進んでみましょう!
- うい: あっ! また、さっきの花びら!
- みふゆ: あっちにもあります! 島に来る前にもありましたね
- 黒江: (あ…)
- 黒江: …なんか、落ちたものを たどっていくって
- 黒江: ヘンゼルとグレーテルみたい
- いろは: そうそう、私もそう思ったの!
- いろは: 道に迷いそうになったら、私も ヘンゼルとグレーテルみたいに
- いろは: 何か物を落として戻れるように しようかなって
- 黒江: もしかしたら、これ… 環さんがつけた目印かも
- 黒江: ヘンゼルとグレーテル…みたいに
- うい: それって、帰り道が わかるようにってこと…?
- 黒江: うん…環さんと今日 そんな話をしたの
- 黒江: 犬を追いかけはじめたときに
- 黒江: 迷わないように 花びらを落としていったのかも
- みふゆ: 花びらを追いかけましょう!
- 黒江: あれ、環さんのサンダルじゃ…!
- うい: ほんとだ…!
- みふゆ: だけど、この先は崖です… まさか、落ちて…!
- うい: …っ、お姉ちゃん!!
- わんっ わんわんっ!
- みふゆ: 犬の声…?
- 黒江: もしかして…!
- いろは: うい!? なんでみんなここに…!?
- うい: おねえちゃーんっ!
- 黒江: 環さん…!
- いろは: ういと黒江さん! それにみふゆさんまで…!
- うい: お姉ちゃんを探しに来たんだよ!
- いろは: こんなところまで…!? ごめんなさい…!
- みふゆ: それより、いろはさん! ケガはないですか!?
- いろは: はい、私もわんちゃんも 大丈夫です…
- いろは: スマホの電池が切れて 連絡ができなくて
- いろは: 潮が満ちちゃったので 身動きも取れなくて…
- いろは: …心配かけちゃいましたよね ごめんなさい
- 黒江: うん… でも、無事でよかった
- うい: はい、お姉ちゃんのサンダル 崖の上にあったよ
- いろは: あ、そこにあったんだ それじゃ心配しちゃうよね…
- 517009-9_KaCgt
- 黒江: 環さんはやっぱり、迷子の犬を追いかけて 島まで来てしまったみたい
- 黒江: スマホの電池が切れて誰にも連絡ができず… 気づけば潮が満ちて 戻ることもできなくなっていたらしい
- 黒江: 花びらは、思った通り 自分が迷子にならないように落としたもので… そんな話をしながら 環さんは終始、申し訳なさそうにしていた
- 黒江: (でも、環さんはまた 誰かのために動いてたんだ…)
- うい: わんちゃんを助けようとして… 自分も戻れなくなっちゃったんだ
- うい: もしかしたら、魔女に やられちゃったんじゃないかって
- うい: すごく心配だったの!
- いろは: うぅ…ごめんね… 反省してます…
- みふゆ: そうですよ、みなさん心配して… 大人の方もたくさん探してます
- みふゆ: ライフセーバーの方から 警察への連絡も行ってるかも…
- みふゆ: …って、早くやっちゃんたちに 見つけたって連絡しないと!
- うい: あ、そうだね! 大人のひとにも伝えなきゃ!
- いろは: どうしよう… すごい迷惑かけちゃった…
- いろは: 黒江さんもごめんね…?
- 黒江: ううん…それより
- 黒江: あのとき、環さんを置いて 行っちゃってごめん
- 黒江: …どうして環さんは あんなことができるの?
- 黒江: 自分も泳げないのに 人を助けるなんて…
- 黒江: なんか、話の途中で ひとりにしちゃって…
- 黒江: そのせいで、こんなことに…
- いろは: そんな、黒江さんは なんにも悪くないよ
- いろは: そのあと、私が勝手に わんちゃんを追いかけたんだし!
- 黒江: …………
- 黒江: …環さんは、すごいね
- いろは: へ…?
- 黒江: 今回の犬のこともだけど 私が海に落ちたときも…
- 黒江: 環さんはどうして 自分のことを省みないで
- 黒江: 人のことを 助けられるんだろう…って
- いろは: そんな… 全然すごくないよ…!
- いろは: 今回のもそうだけど 結局、迷惑をかけちゃってるし…
- いろは: 多分、あんまり後のことを 考えてないだけだから…
- いろは: ただ、目の前で困ってる人がいて 助けられないのが嫌っていうか…
- いろは: 何もしなかった自分に ガッカリしたくないのかな
- いろは: たとえその相手が どんな人でも同じなだけだよ
- いろは: そう考えると、私って 結構…自分勝手だね
- 黒江: …………
- いろは: よく言われるんだけど 私、頑固なんだって
- いろは: 多分、だからだと思うよ
- いろは: 助けたいって気持ちを 譲れないだけ
- いろは: それで迷惑をかけてたら 意味がないんだけどね…
- 黒江: (ううん、きっと違うよ 環さんは、特別だから…)
- 黒江: (私は、環さんみたいには きっとなれない)
- 黒江: (でも、なれたらいいなって 少し、思っちゃう)
- みふゆ: さて、やっちゃんたちには 連絡できましたし
- みふゆ: みんなで帰りましょうか
- 517010-10_KaCgt
- うい: 潮が少し引いたよ! これなら歩けそう!
- みふゆ: はい、浜まで歩いて 帰ることができますね
- わんっ!
- みふゆ: 暴れん坊のあなたをボードに 乗せるのは大変そうですから
- うい: あ、お姉ちゃんたちと 結構、離れちゃったね
- みふゆ: たしかに、ワタシたちも 少し急いだほうがいいですね
- いろは: 浜までもう少しだね
- 黒江: …うん なんだか冒険した気分…
- いろは: あんなところまで 来てもらっちゃったもんね
- いろは: あ、そう言えばここら辺って 綺麗な貝殻が落ちてるんだっけ
- 黒江: うん…そう聞いてるよ
- いろは: フェリシアちゃんたちに 拾っていってあげようかな
- いろは: うーん…あ、あった! …きゃっ!?
- ドテッ
- 黒江: 環さん、大丈夫…!?
- いろは: あたた… また転んじゃった…
- いろは: すぐ立てるからだいじょう…
- ずるっ
- いろは: あ…
- どぼっ
- ブクブクブク…
- 黒江: ――っ!?
- 黒江: (環さんが海に…!)
- 黒江: (なんで… 急に深くなってた…!?)
- 黒江: (それより、どうしよう…! 環さん、泳げない…!)
- 黒江: (私だって あんまり泳げないけど…)
- 黒江: (でも…あのとき 環さんは私を助けてくれた)
- いろは: ただ、目の前で困ってる人がいて 助けられないのが嫌っていうか…
- いろは: 何もしなかった自分に ガッカリしたくないのかな
- いろは: たとえその相手が どんな人でも同じなだけだよ
- 黒江: …!
- バッシャーン
- 黒江: 私、もう…何もできなかった自分に ガッカリしたくない
- 黒江: 私は環さんみたいに 誰でも分け隔てなく助けたりできないけど 環さんのためなら…きっと…!
- 黒江: 環さんなら、こんなとき 迷わず海に飛び込むと思うから
- 黒江: こんな風にためらってから飛び込んだ私は 環さんみたいには、きっとなれない
- 黒江: 自分を省みずに、知らない誰かを 助けることなんて、できるようにはならない
- 黒江: だけど、私を助けてくれた環さんはかっこよくて 私もそうなれたらいいなって思えたから…
- 黒江: 誰でも助ける環さんを、今度は 私が救いたいって思ったから…だから…!
- 黒江: いた…環さん…!
- 黒江: いま、助けるから…!
- 黒江: ぷはっ!
- 黒江: (海面までは来られたけど…)
- 黒江: (このままじゃ、ふたりとも 溺れちゃう…!)
- 黒江: (助けを…!)
- 黒江: はぁ…う、ういちゃん…! 梓…さん…っ!
- うい: ――っ!?
- うい: いたよ、みふゆさん! お姉ちゃんと黒江さんが!
- みふゆ: なんとか無事みたいですね…!
- みふゆ: ここは、ヒューマン・チェーンで 助けに行きましょう…!
- うい: それってどうやるの!?
- みふゆ: ワタシとういさんで 手首を握り合って
- みふゆ: 陸といろはさんたちとを 人の鎖となって繋ぐんです!
- うい: うん、わかった!
- 黒江: はー…はー…
- いろは: はー…はー… た、助かったぁ…
- みふゆ: 浜までは、もう少しですからね
- うい: もう少し休んだら歩けそう…?
- やちよ: いろはーっ!
- フェリシア: 迎えにきたぞー! お、犬もいんじゃん!
- さな: だ、大丈夫ですか…? いろはさん、溺れかけたって…
- いろは: えっと、なんとか無事かも…
- わんっ!わんわん!
- みふゆ: あ、ちょっと 逃げないでください!
- 鶴乃: てんやわんやだね…
- ねむ: もうすぐお姉さんたちが 浜に着くみたいだよ…!
- 灯花: タオルも酸素も 全部、準備OKだよ!
- 万年桜のウワサ: |救急箱も一応、持ってきた|
- いろは: や、やっと…
- うい: 着いたー!
- どさっ
- うい: ―うい― はぁ…帰ってこられたね お姉ちゃん、黒江さんっ
- 黒江: ―黒江― …うん、なんとかだけどね
- いろは: ―いろは― はー…本当にごめんね、黒江さん いろいろと迷惑かけちゃって
- 黒江: ―黒江― ううん、私もたくさん助けてもらったし
- うい: ―うい― ふふっ、なんだか変な感じ 安心したらすっごい疲れてきちゃった
- いろは: ―いろは― ふふふ、ほんとだね でもなんか、生きてるって感じかも
- 黒江: ―黒江― うん…生きてるね、ふふ
- 黒江: ―黒江― …………
- 517011-11_KaCgt
- ダメじゃないか!
- 勝手に島に渡った上に 2人も溺れかけただなんて…!
- 一歩間違えばどうなっていたか!
- みふゆ: 申し訳ありません… 大人の方に相談もせず…
- やちよ: 私の判断が甘かったわ… ごめんなさい
- それに黒江ちゃん… 助けたい気持ちはわかるけど
- いきなり飛び込むのは 良くなかったね
- 黒江: ごめんなさい…
- まあ、反省したならいいよ 小言はここまでにしよう
- 無事でよかった
- 体調もすっかり 良くなったみたいだしね
- 疲れてるだろうから うちでご飯食べていきな!
- そこの浜辺にバーベキューを 一式、用意してるからね
- フェリシア: っしゃー! 肉だ、肉ーっ!
- フェリシア: くろえ、お手柄だな! いろはを助けたし肉もゲットだ!
- 黒江: ううん…結局ういちゃんたちに 助けてもらったし
- 黒江: それに、深月さんが犬のこと 覚えてくれてたおかげ
- フェリシア: マジで!? じゃあ、オレが一番偉いじゃん!
- やちよ: …まったく、調子に乗らないの
- やちよ: でも黒江さん…本当にありがとう いろはを助けてくれて
- 黒江: い、いえ…そんな…
- 黒江: (だって、多分…私は)
- さな: 飛び込んで助けるだなんて なかなかできないですよね…っ
- ねむ: まぁ、危険だから評価するのは 勇気のみに留めるけどね
- 灯花: そうだよー! お姉さまは反省してよね!
- 灯花: わたくし すごーく心配したんだから!
- 万年桜のウワサ: |私も、心配したから いろはは反省してほしい|
- いろは: あうぅ… みんなごめんね…
- うい: でもお姉ちゃんのおかげで
- うい: 迷い犬のサマー君も 飼い主さんに会えたよね
- みふゆ: はい、飼い主さん とても喜んでました
- 鶴乃: じゃあ、今日のMVPは 黒江といろはちゃんと…
- フェリシア: オレも!
- 灯花: わたくしも頑張ったよー?
- 鶴乃: じゃあ、全員頑張った! ということで
- 鶴乃: かんぱーい!
- みんな: かんぱーい!
- 黒江: …………
- 黒江: (…私、こんなに 褒められていいことしてない…)
- 黒江: それから数日が経ったころ 私は、ずっと気になっていたことを 調整屋さんに聞きに行った
- 黒江: …ということがあったんですけど 私が環さんを助けられたのは
- 黒江: 調整屋さんの魔法の力の おかげなんじゃないかと思って…
- みたま: どういう意味かしらぁ?
- 黒江: 手足の花が環さんに似たように 中身も調整の力で似たのかもって
- 黒江: 泳ぐのが苦手なのに あんな勇気出せるはずないし
- 黒江: そもそもあんなに 潜れたのも初めてだし…
- 黒江: 全部、魔法のおかげ なのかな…って
- 黒江: (だって、私なんかが…)
- 黒江: (環さんみたいに なれるわけがない)
- みたま: うーん…
- みたま: わたし、そんな調整は してないわよぉ?
- 黒江: え…?
- みたま: イメージ的にアネモネの花が 被っちゃったけど…
- みたま: SUPができるようになる上に 勇気まで出せるなんて
- みたま: そんな都合のいい魔法は かけてないわぁ
- 黒江: でも、それじゃあ…
- みたま: 火事場の馬鹿力か 黒江ちゃんの実力なんじゃない?
- 黒江: (魔法のおかげじゃなかった?)
- 黒江: (私、ほとんど泳げないし あんなのできるわけ…)
- 黒江: (だけど、もしも本当に 魔法の力じゃないのなら…)
- 黒江: 確かに、あのときの私は 環さんを助けるために飛び込んだ
- 黒江: 環さんみたいに後先考えずに 飛び込んだとは言えないし 知らない犬でも助けるような 環さんのようには、きっと私はなれない
- 黒江: ただ、何もしなかった自分に ガッカリしたくなかっただけだった
- 黒江: それは、自分本位の理由なのかもしれないけど 少しだけ、何かが変わるのかもしれない
- 黒江: 私、環さんのために 頑張れたんだ…
- 黒江: (環さんみたいには なれなくても…)
- 黒江: (ほんの少しだけ 近づけた…のかな)
- 黒江: …………
- 黒江: …楽しかったな
- 黒江: ああでも、筋肉痛だし 日焼けも痛い…
- 黒江: (疲れるまで遊ぶなんて いったいいつぶりだろう…)
- 黒江: いつも通り何も変わらない そんな夏休みになると思ったけど
- 黒江: 退屈なんかとは程遠い… 慌ただしい夏休みだった
- 黒江: こんな私でも、ほんの少しだけ 変われるかもって思えたし…
- 黒江: 騒々しくて、にぎやかな夏を みんなと一緒に過ごせた
- 黒江: 疲れたけど 楽しかったな…
- 黒江: また…
- ピロン♪
- いろは: この前はいろいろとありがとう! 私のせいでいろいろ時間取らせちゃったし 良かったら、また遊んでくれたら嬉しいな あ、あとでみんなで撮った写真も送るね!
- 黒江: …………
- 黒江: ありがとう うん、また遊ぼう
- 517012-12_KaCgt [Promised Blood branch (Yuna)]
- ひかる: 冷たいっす! サイコーっす!
- アオの声: ひかる、ひかる こっち向いて?
- ひかる: なんすか?
- アオ: えいっ
- パシャ
- ひかる: わわっ! 不意打ちは卑怯っす!
- アオ: てへっ
- 結菜: ふふ 楽しそうねぇ
- アオ: はぁ~ クーラーサイコ~…
- ひかる: もう一歩も動きたくないっす…
- 結菜: …せっかく別荘に遊びに来たのに
- 結菜: これじゃあ、二木市にいるのと 変わらないわねぇ…
- アオ: 姉さまの別荘に招待されたのは ありがたいんだけど…
- アオ: 外の陽射しを見たら 出る気が失せたよ~
- ひかる: 樹里さんたちが来るまで 涼みたいっす…
- 結菜: じゃぁ、涼しいところに 行きましょぅ
- アオ: えぇ~ 出かけるのやだよ~
- 結菜: …なんて言っていたのに
- ひかる: 結菜さん! 結菜さんも一緒に泳ぐっす!
- アオ: 見てるだけじゃ退屈でしょー?
- 結菜: 嬉しい誘いだけど…
- 結菜: 後から来る樹里たちを 迎えに行かないといけないから
- 結菜: まだ水着には 着替えられないのよぉ
- アオ: あー…補習とかだっけ? 夏休みなのにかわいそ~
- 結菜: 補習は樹里だけよぉ
- 結菜: さくやは部活でうららは私用、 らんかは学校の用事ねぇ
- ひかる: いつ来るんすか?
- 結菜: もうすぐだと思うわぁ
- 樹里: よっしゃー! 着いたぜ!
- 鈴鹿 さくや: 駅から出てすぐ川なんだね 綺麗なところ…
- 智珠 らんか: ふーん 悪くないじゃん
- うらら: 別荘も楽しみなんよ!
- 鈴鹿 さくや: じゃあ、結菜に連絡しよっか 迎えに来てくれるんだよね?
- 樹里: いや、歩いて行こうぜ!
- 智珠 らんか: 賛成! こーゆーとこあんま来ないし
- うらら: 自然を満喫したい ってことなのん?
- 樹里: たまにはいーだろ?
- 智珠 らんか: 確か、川の上流にあるんだっけ? 遡ってけば着くっしょ
- 鈴鹿 さくや: うーん…とりあえず 結菜に連絡してみるよ
- 結菜: えっ…? 歩いて来るのぉ?
- 結菜: 私も歩いて別荘に 来たことはないんだけど…
- ザァアアアーーー
- 樹里: あ?なんて? 水の音かなんかで聞こえねーぞ
- 結菜: ああ、きっと滝の音ねぇ…
- 結菜: 迎えに行った方が いいんじゃないかしらぁ…?
- ザァアアアーーー
- 樹里: 別荘地だから整備されてんだろ? 大丈夫だって!
- 結菜: そうだけど…
- ザァアアアーーー
- 樹里: じゃあ、そーゆーことで! よく聞こえねーし切るぞ
- 結菜: あっ、ちょっと! 気をつけてくるのよぉ…!
- 鈴鹿 さくや: なんだって?
- 樹里: 気をつけて来いってさ
- 結菜: …………大丈夫かしらぁ…?
- 517013-13_KaCgt
- 結菜: …………大丈夫かしらぁ…?
- アオ: 小さい子どもじゃないんだし 大丈夫じゃない?
- ひかる: っす!樹里さんが 言い出したことっすからね!
- ひかる: それより、 結菜さんも一緒に遊ぶっす!
- アオ: 迎えに行かなくていいなら 着替えても問題ないよね~?
- 結菜: そうだけど…
- 結菜: …いちおう、到着するまでは このまま待っているわぁ
- 結菜: 整備されてるから危険はないけど 迷うかもしれないし
- 結菜: 別荘を管理してくれている人に 道を聞いて来るわねぇ
- 結菜: すぐ戻るつもりだけど 何かあったら、連絡を頂戴
- アオ: えっ、スマホ 別荘に置いて来ちゃったよ
- ひかる: ひかるもっすけど… もう行っちゃったっす
- 樹里: カブトムシとかいねーのか?
- 智珠 らんか: 虫取りとか小学生かよ って感じなんだけど
- 鈴鹿 さくや: 朝じゃないといないんじゃない?
- うらら: 運がよければ 昼でも出会えるんよ
- 鈴鹿 さくや: それより、全然着かないね… 結構歩いたと思うんだけど
- 樹里: おい、何か見えてきたぞ
- うらら: キャンプしてる人たちがいるんよ
- 鈴鹿 さくや: キャンプ場、かな…?
- ~~♪~~♪
- 樹里: 姉さんからだ
- 結菜: もしもし 今どこにいるのぉ…?
- ザァアアアーーー
- アオ&ひかるの声: 「きゃーーーーっ!」 「あははっ!」
- 樹里: あ? 後ろ、うるせーぞ…
- 結菜: そろそろ着いてもいい頃だけど 今、どこにいるのぉ…?
- 樹里: どこにいるか、って? …キャンプ場みてーだけど?
- 結菜: だったら、近いわね 電話でナビするわぁ
- 樹里: そんな心配しなくても…
- 樹里: …姉さんがこの道順で来いってさ
- 智珠 らんか: 森林浴も、もう終わりかぁ…
- この先 土砂崩れのため通行止め
- 樹里: もう少しくらい 寄り道しろってことだな
- 樹里: あっちの道、行ってみようぜ
- 智珠 らんか: なんかあるの?
- 鈴鹿 さくや: ちょっと、ダメだって! 勝手な行動しないで!
- 鈴鹿 さくや: うらら、私が連れ戻すから 結菜に連絡しておいて!
- うらら: わ、わかったんよ…!
- うらら: …というわけで 通行止めだったんよ
- 結菜: そこまで 迎えに行きましょうかぁ…?
- うらら: 平気なんよ!
- うらら: 別荘の住所を教えてもらえば ナビアプリでたどり着けるんよ!
- 結菜: じゃぁ、メモして頂戴…
- 鈴鹿 さくや: もう、あんまり勝手に 動かないでよね…
- 樹里: カッカすんなって せっかくの避暑地なんだからさ
- 智珠 らんか: ちょっと寄り道したって 怒られないでしょ
- うらら: 長女さんから別荘の住所 教えてもらったんよ!
- うらら: これで、ナビアプリを使えば 迂回路がわかるんよ!
- 鈴鹿 さくや: じゃあ、改めて出発だね
- 樹里: ちぇー…
- ~~♪~~♪
- 鈴鹿 さくや: 結菜から? 心配かけちゃってるみたいだね
- 結菜: 小さな公園を 通り過ぎた頃かしらぁ…?
- 樹里: いや、まだだな
- ~~♪~~♪
- 樹里: 公園ならさっき通り過ぎたぞ 結構広かったけどな
- 結菜: あらぁ…? 地図だと小さそうだったけどぉ
- ~~♪~~♪
- 智珠 らんか: また結菜からじゃん 心配しすぎだろ…
- 結菜: そろそろキャンプ場が 見えてきたかしらぁ…?
- 樹里: キャンプ場?さっきのか?
- 結菜: いえ、別のところよぉ…
- 樹里: …どっちにしろ見えねーな
- 樹里: ところで、滝の音しねーけど こっちに向かってたりしないよな
- 結菜: ノイズカットの設定を いじったのよぉ
- 結菜: それより、キャンプ場が 見えないのはおかしいわねぇ…
- 結菜: (ナビアプリが間違うことは ないはずだけど…)
- 結菜: …変ねぇ
- ひかる: いくっすよぉー!
- ザバァアアン!
- アオ: 甘いよ~!
- ビシャッ!
- 結菜: ――っ!?
- ポチャン…
- アオ&ひかる: あっ…
- ひかる: 結菜さんごめんなさいっす! そっちまで水が行くなんて…!
- アオ: ウソ、スマホ水没? どうしよ…?コレ防水!?
- 結菜: …大丈夫だから落ち着きなさぁい
- 樹里: …………切れた
- 鈴鹿 さくや: えっ…? かけ直したら?
- 樹里: …………
- 樹里: ダメだな、出ねー…
- 智珠 らんか: …ひかるも出ないね
- うらら: 三女さんも出ないんよ…
- 樹里: まー、いーだろ ナビもあるんだし
- 鈴鹿 さくや: …そうだね 住所はわかってるし大丈夫かな
- 工事中のため 迂回にご協力ください
- 樹里: マジか
- すみません ボヤが出たので通れません
- 鈴鹿 さくや: こんなことある…?
- 鈴鹿 さくや: …なんだろうこの感じ
- うらら: 何かに 邪魔されてるみたいなんよ…
- 智珠 らんか: いや、偶然でしょ
- 517014-14_KaCgt
- 鈴鹿 さくや: あっ、コンビニだ 飲み物買ってく?
- うらら: 賛成なんよ!
- 樹里: なぁ、それより 面白そーなチラシが貼ってあるぜ
- キャンプ場主催 宝探しオリエンテーリング! 参加用紙を購入で どなたでもご参加いただけます
- 智珠 らんか: ふーん… 参加費も安いし、子ども向け?
- 樹里: ちょっと遊んでこーぜ
- 鈴鹿 さくや: いやいや、いまは 遊んでるヒマないでしょ!
- うらら: 長女さんたちが心配してるんよ
- 智珠 らんか: 樹里ってば、すぐ寄り道するよね
- 樹里: なんだよ、自信ないのか?
- 智珠 らんか: …自信?
- 樹里: 見つける自信ねーなら 仕方ないか…
- 智珠 らんか: はぁ?ちょっと待って 自信がないわけじゃないから
- 樹里: じゃあ、参加するよな
- 智珠 らんか: そうまで言われたら 引き下がれないからね
- 鈴鹿 さくや: ちょっと! これから遊ぼうっての?
- 智珠 らんか: 遊びじゃなくて真剣勝負だから
- 樹里: じゃ、ここからは 別行動ってことで!
- 智珠 らんか: またあとでね
- うらら: 置いてかれたんよ…
- 鈴鹿 さくや: …………ウソでしょ
- ひかる: …どうっすか? 使えそうっすか?
- アオ: スマホ壊しちゃった ごめんね、姉さま…
- 結菜: そんなに謝られる方が困るわぁ…
- ひかる: でも、申し訳ないっす…
- 結菜: だったら、こうしましょぅ
- 結菜: 謝罪は受け取るわぁ この件はこれでおしまぃ
- 結菜: いいわねぇ?
- ひかる: …結菜さんがそれでいいなら
- アオ: わたしも…
- 結菜: ただ、樹里たちに 連絡を取りたいから
- 結菜: スマホを貸してもらっても いいかしらぁ?
- アオ: じゃあ、わたしのスマホを使って 防水だから
- アオ: 別荘に置いてきちゃったけど…
- 結菜: ありがとぅ
- 結菜: 取りに行って来るから ふたりは遊んでていいわよぉ
- 結菜: ついでに、浮き輪や水鉄砲も 持ってくるわぁ
- ひかる: 至れり尽くせりっす!
- 結菜: ふふ、あなたたちが楽しそうだと 私も嬉しいからねぇ
- アオ: じゃあ、気合入れて 遊ぼうかな~
- 鈴鹿 さくや: …はぁ、ダメだ やっぱり結菜たちに繋がらない
- うらら: 次女さんたちにも 繋がらないんよ…
- 鈴鹿 さくや: 樹里たちは、 出るつもりがないんだろうね…
- うらら: これから、どうするのん?
- 鈴鹿 さくや: ここにいても仕方ないから 私たちだけで別荘に向かおう
- 鈴鹿 さくや: …あのふたり、別荘に行くこと 忘れてないといいけど
- 樹里: ここがオリエンテーリングの 次の目的地だな
- 智珠 らんか: 洞窟は… へぇ、特別ステージ…?
- 樹里: イイものがあるらしいぜ
- 智珠 らんか: うわっ、ダンジョン探索とか RPGみたいじゃん
- 智珠 らんか: テンション上がってきたかも
- 樹里: まっ、よく見ると 人の手が入ってるんだけどな
- 智珠 らんか: …テンション下がること 言わないでよ
- 樹里: はははっ!
- うぇええん… おとうさぁん…おかあさぁ~ん…
- うらら: キャンプ場についたはいいけど
- うらら: これはもしかしなくても 迷子なんよ!
- うらら: ど、どうしよう…
- 鈴鹿 さくや: と、とりあえず 私が様子を見ておくから
- 鈴鹿 さくや: キャンプ場の迷子センターに 連絡してくれる?
- うらら: わかったんよ!
- 517015-15_KaCgt
- 樹里&らんか: 見つけた!
- 樹里: 宝箱だ!!
- 智珠 らんか: 中身は?
- 樹里&らんか: …………
- 智珠 らんか: …フライングディスク? ただのおもちゃじゃん!
- 樹里: しかも、 キャンプ場のロゴ入りだぞ!
- 智珠 らんか: あははっ!ウケる!
- 智珠 らんか: まぁ、子ども向けだろーし こんなもんかぁ
- 智珠 らんか: …ん? 宝探し会場、出ちゃった?
- 樹里: …洞窟から出る時に コースから外れたみたいだな
- 樹里: まーいっか そろそろ飽きてきたし…
- 智珠 らんか: じゃあ、結菜の別荘行く?
- 樹里: そーいや、 姉さんの別荘に行く途中だっけ
- …………
- 智珠 らんか: …行かないの?
- 樹里: あ?樹里サマが 道、知ってるわけないだろ?
- 智珠 らんか: はぁ!? 別荘の住所聞いてたでしょ?
- 樹里: うららがな 樹里サマは知らねー
- 智珠 らんか: つまり、アタシたち 詰んでるってこと…?
- 樹里: まーそうなるな
- 智珠 らんか: どうすんの…?
- 樹里: 樹里サマに聞かれたって わかんねーよ!
- ブーン
- 樹里&らんか: …ん?
- ブーンブーンブーン…
- 樹里&らんか: ――っ!?
- アオ: おかえり、姉様!
- 結菜: はい、浮き輪と水鉄砲… それから他にもいろいろ
- ひかる: すごい量っす!
- 結菜: たまには息抜きもねぇ
- アオ: え~、どれから遊ぼ~?
- ひかる: ひかるは浮き輪で のんびりしたいっす
- アオ: じゃあ、わたしはそこを 水鉄砲で狙い打とうかな~
- ひかる: 卑怯っす!
- 結菜: ふふ、 その前にアオ、スマホを…
- アオ: あっ、ごめん パス解除しないと使えないよね
- お姉ちゃんたち、ありがと!
- 鈴鹿 さくや: どういたしまして!
- うらら: じゃあね
- うらら: …ふぅ、保護者が見つかったのは よかったけど
- うらら: また寄り道したんよ
- うらら: 本当に別荘に たどり着けるのん…?
- 鈴鹿 さくや: 何度も邪魔が入ると ちょっと不安になるよね…
- 鈴鹿 さくや: …………
- 鈴鹿 さくや: いちおう、道が合っているか キャンプ場の人に聞いてみよっか
- うらら: …うん
- …うーん、その住所だと ここから結構あるよ
- 鈴鹿 さくや: えっ!
- しかも、 電車もバスも通ってないからなぁ
- 鈴鹿 さくや: 歩くしかないんですね…
- 鈴鹿 さくや: どこかで道を間違えたのかな…?
- うらら: もはや 呪われてるかもしれないんよ…
- 鈴鹿 さくや: いや、そんなことは… ないって言えないかも…
- ブーンブーンブーン…
- 樹里&らんか: ――っ!?
- 智珠 らんか: ちょっと何アレ! でっかい蜂!?
- 樹里: スズメバチってやつか? 逃げるぞ!
- ブブブブブブブブッ!
- 智珠 らんか: 追いかけてくるんだけど!!
- 樹里: 走れ走れ!
- 517016-16_KaCgt
- 鈴鹿 さくや: …はぁ…はぁ… 結構歩いたね
- うらら: さすがに疲れたんよ…
- 鈴鹿 さくや: この先、 二手に分かれてるみたいだ
- うらら: えっ…もし間違えたら もう行き倒れると思うんよ
- 鈴鹿 さくや: ナビアプリだと右らしいけど ここまでのことを考えると…
- うらら: …うん ちょっと怖いんよ
- ~~♪~~♪
- さくや&うらら: ――っ!?
- 鈴鹿 さくや: アオからだ!
- 鈴鹿 さくや: アオ!
- 結菜: …結菜よぉ
- 結菜: スマホを水没させてしまって アオに借りたのぉ
- 鈴鹿 さくや: どっちでもありがたいよ! 助かった!
- うらら: もうダメかと思ったんよ…
- 結菜: 連絡がつかなくてごめんなさい
- 結菜: GPSは使えるぅ? そっちの現在地を送って
- 結菜: …よかったわぁ すぐ近くみたいねぇ
- 鈴鹿 さくや: えっ? ナビアプリだとまだ遠いけど…
- 結菜: それが変なのよねぇ
- 結菜: もしかして住所が正しく 伝わってなかったとかぁ…?
- うらら: あっ…!
- うらら: きっとそれなんよ! たぶんウチがやらかしたんよ!
- うらら: …ごめんなさいなんよ
- 結菜: こっちもメッセージで送れば よかったわねぇ…
- 結菜: ともかく、 これから迎えに行くわぁ
- ブブブブブブブブッ!
- 智珠 らんか: なんで!? ずっと追いかけてくる!!
- 樹里: 止まったら刺されるぞ!
- 結菜: 別荘はこの先だけど
- 結菜: ひと休みできるように 飲み物を用意しておいたのぉ
- ひかる: 冷え冷えっすよ!
- アオ: しかも、すごくおいしいよ~
- 鈴鹿 さくや: ありがとう 生き返る…
- うらら: ウチも川で涼みたいんよ…
- 結菜: じゃあ、私は 樹里たちにも連絡を…
- 樹里: 「くっそ、しつこい!! ウェルダンにしてやろうか!?」
- 智珠 らんか: 「それはマズいって! 山火事になるし!」
- ひかる: …この声は… 噂をすれば影っすね…
- アオ: なんで、走ってるの…?
- 智珠 らんか: 水ん中に逃げるぞ!
- 樹里: 飛び込め! 姉さんたちも!
- 結菜: …はぁ?
- ザバァアアーーーン!!
- ブブブブブブブブッ…
- ひかる: 大きなハチっす!
- 鈴鹿 さくや: えっ!? 連れてきたってこと!?
- 樹里の声: ふたりも早く飛び込め!
- うらら: えっ? でもアレって…
- 結菜の声: 落ち着いて そのまま動かなければ大丈夫よぉ
- ブーン…………
- アオ: あっ、行っちゃった…
- 樹里: …ふぅ、助かったぜ
- 智珠 らんか: まさか、 スズメバチに遭遇するなんてね
- 結菜: …アレはスズメバチじゃなくて クマバチよぉ
- 樹里: クマバチ? 強そーだな…
- うらら: ああ見えて、温厚なハチなんよ オスは針も持ってないし
- 結菜: それに、ハチと遭遇したら 慌てて逃げちゃダメよぉ
- 結菜: 急に動くと 敵だと思われるわぁ
- 樹里: へぇ、そうだったのか 走って損したな…
- 結菜: …ところで 他に言うことはないかしらぁ?
- アオ: 姉ちゃんたちのせいで 姉さままで水に落ちちゃったから
- ひかる: びしょ濡れっす… 怒っていいっす!
- 樹里: あー…悪かったな
- 樹里: でも、もうびしょ濡れだし このまま遊ぼーぜ
- 鈴鹿 さくや: いや、せめて水着に着替えなよ
- 樹里の声: かたいこと言うなって!
- さくや&うらら: ――っ!?
- ザバァアアーーーン!!
- 鈴鹿 さくや: あ、あぶなっ! いきなり引っ張り込まないでよ…
- 樹里: 冷たくて気持ちいーだろ?
- うらら: …それはそうだけど
- 智珠 らんか: 諦めて遊んじゃえば?
- 結菜: そうねぇ… 言いたいことはあるけど
- 結菜: まずは、 避暑を楽しみましょぅ
- 結菜: せっかくの夏休みだものねぇ
- 517017-17_KaCgt [Azalea Sisters branch (Hazuki)]
- <夏休み>
- 三栗 あやめ: はい、このは! 今週の予定表!
- 静海 このは: ………… …遊ぶ予定ばかりね
- 三栗 あやめ: そ、そんなことないよ! ほら火曜日は…!
- いつ:(火) どこで:フェリシアん家で だれが:フェリシアとさなとかこと一緒に なにを:宿題をやる
- 三栗 あやめ: だし!
- 静海 このは: (…これは絶対に途中で飽きて 遊ぶパターンの気がするけど…)
- 静海 このは: (ひとまずは あやめを信じることにするわ…)
- 静海 このは: (過干渉もよくないし…)
- 静海 このは: それと、この金曜日…
- いつ:(金) どこで: だれが:フェリシアと なにを:出かける
- 静海 このは: どこで、の欄が抜けてるわ どこに行くつもりなの?
- 三栗 あやめ: えっと… ま、まだ決まってないんだよ!
- 静海 このは: そう…
- 遊佐 葉月: 一応アタシも はい、今週の予定表
- 静海 このは: ありがとう
- 静海 このは: …………
- 静海 このは: (あやめの予定表を見た後だから 余計に感じるけど…)
- 静海 このは: (葉月の予定…遊ぶ予定が ほとんどないわね…)
- 静海 このは: (大人びてるとはいえ まだ中学生…)
- 静海 このは: (もっと年相応に遊んでも いいと思うけど…)
- 静海 このは: (…そういえば私… 葉月の学校生活のこと)
- 静海 このは: (ほとんど知らないわ…)
- 静海 このは: (普通の子に比べたら かなり忙しい部類なわけで)
- 静海 このは: (うまくやれてるのかしら…)
- 遊佐 葉月: …ど、どうしたの…? え、何か問題あった?
- 静海 このは: …いえ、大丈夫よ
- 遊佐 葉月: そう…
- 静海 このは: あら…?
- 静海 このは: どうしよう? 麦茶のパック、切らしてたわ
- 遊佐 葉月: アタシが買ってくるよ スーパー、ギリ開いてるし
- 遊佐 葉月: …ふぅ、買えたけど ほんとに閉店間際だったね
- 遊佐 葉月: ――っ!?
- 遊佐 葉月: 魔女か… 一刻を争うかもしれないし…
- 遊佐 葉月: このはたちに連絡入れつつ ひとりでも行った方がいいよね
- 遊佐 葉月: ふぅ…
- 遊佐 葉月: 口づけを受けてる子もいたし 急いで来て正解だったかな
- 遊佐 葉月: このはたちが来る前に 倒せちゃったし
- 遊佐 葉月: …ってこの子、よく見たら 同じクラスの…
- …アレ? 遊佐さん…?
- 遊佐 葉月: (見られた…!)
- 遊佐 葉月: え、ええと… こ、この格好は…こ、こ…
- コスプレ?
- 遊佐 葉月: そう! そうそう、コスプレ
- へぇ… 遊佐さんコスプレとかするんだ…
- 遊佐 葉月: ま、まあね~
- じゃあさ、今度の金曜…
- 私と一緒に 夏カミケに行かない?
- 遊佐 葉月: …………
- 遊佐 葉月: カ…カミケ…?
- 517018-18_KaCgt
- 着替え、終わったみたいだね
- 遊佐 葉月: うん、コスプレイヤーの登録も 済ませたよ
- 遊佐 葉月: それにしても…すごい人だね…
- 遊佐 葉月: さすが神浜市最大の 同人誌即売会ってヤツ?
- 遊佐 葉月: わ、あのキャラは… モカウサギだっけ…?
- 遊佐 葉月: こんな暑い日に 着ぐるみとか大丈夫なのかな…
- 遊佐さんのは涼しそうだね! 知らないキャラだけど…
- もしかしてスマホゲームの キャラとか?
- 遊佐 葉月: そ、そうだね…そんな感じ
- はあ~、それにしても あの人気者の遊佐さんが
- 私と同じ “隠れオタク”だったなんてね!
- こうしてカミケに参加できて すっごく嬉しい!
- 遊佐 葉月: ア…アタシもだよ
- 遊佐 葉月: (…ごめん、本当はこういう アニメ?とかよく知らない…)
- 遊佐 葉月: (全部、変身姿を見られたことを 誤魔化すための嘘で…)
- 私、家族にもこの趣味のこと 内緒にしててさ~
- 今日のことも 黙って来ちゃった!
- 中学生だけで行くってなったら 怒られちゃいそうだしね!
- 遊佐 葉月: あ、アタシも同じ
- 遊佐 葉月: (これは本当…)
- 遊佐 葉月: (あやめとこのはには 内緒にしてきちゃったんだよね)
- 遊佐 葉月: (バカにしたり怒ったりは しないと思うけど…)
- 遊佐 葉月: (なんか…恥ずかしくて…)
- あやめの声: おーい! フェリシア、待てよー!
- 遊佐 葉月: …………え? 今の声って…
- 遊佐 葉月: ――っ!?
- 遊佐 葉月: (あやめ!?)
- フェリシア: …おい、あやめ 今日のこと家族にバレてないよな
- 三栗 あやめ: 当然! 予定表もうまく誤魔化したよ!
- フェリシア: やちよのヤツ 心配しょーだからな…
- フェリシア: 子どもだけで行って 大丈夫なのかどーかとか
- フェリシア: うるさく聞かれそうだしな…
- 三栗 あやめ: このはも聞いてきそう! だから内緒で来たけど…
- 三栗 あやめ: もしバレたら めっちゃ怒られそうなんだよね…
- フェリシア: ぜってーバレるなよ! オレまで巻き込まれそーだし!
- 三栗 あやめ: フェリシアこそ! やちよにバレるんじゃないよ!
- 遊佐 葉月: (なんであやめがここに…?)
- 遊佐 葉月: (まっずいなあ…! ここは目立たないように…)
- さあ遊佐さん、撮影しよう!
- このへんってちょうど コスプレ撮影用のエリアだし
- 遊佐 葉月: …いいけど って、やけに立派なカメラだね?
- うん! 私は撮影が趣味なのっ!
- カシャッ
- 遊佐 葉月: そうだったんだ…
- いや~素晴らしいよ 遊佐さんほんと
- カシャッ カシャッ カシャッ
- 遊佐 葉月: い、いやいやいや…!
- 遊佐 葉月: 着替えた同級生の写真なんて 撮っても楽しくないでしょ!?
- あはは、楽しいんだな~これが
- あら、撮影ですか? 私も参加していいですか?
- 一緒に私も撮りたいです!
- 僕もお願いします!
- 遊佐 葉月: ど、どうぞ…
- カシャッ カシャッ カシャッ
- 遊佐 葉月: (って、しまった… 人が集まって目立っちゃう…)
- 遊佐 葉月: (よかった…あやめは着ぐるみに 夢中で気づいてない…)
- さ、ひととおり撮影は終わったし 私たちも同人誌ブース行こ!
- フェリシア: これって、モカウサギだっけ? へぇー、よくできてんなー!
- 三栗 あやめ: …………
- 三栗 あやめ: (今、あの人だかりの中に… 葉月が見えた…)
- 三栗 あやめ: (なんでっ!?)
- 三栗 あやめ: (葉月がカミケに 興味あるわけないし…)
- 三栗 あやめ: (てことは、あちしがカミケに 行くことに気づいてた…?)
- 三栗 あやめ: (そんで、証拠の写真を撮って… このはにチクる気だっ!)
- 三栗 あやめ: (カメラマンの友だちと 一緒みたいだし!)
- 三栗 あやめ: (どうしよう フェリシアに相談した方が…)
- 三栗 あやめ: (だ、だめだめ! 言ったらきっと…)
- フェリシア: ハァ!? もうバレてんのかよ?
- フェリシア: 罰として弁当のおかず 全部もらうからなっ!!
- 三栗 あやめ: (こうなるに決まってる!!)
- 三栗 あやめ: (…………黙ってよう… でもここは危険だから…)
- 三栗 あやめ: フェ、フェリシア! もうモカウサギはいいっしょ!?
- 三栗 あやめ: 早くデカゴンボールのコーナーへ 行こう!
- フェリシア: お、そうだな!
- 517019-19_KaCgt
- 遊佐 葉月: (確かあやめが好きなのって… デカゴンボール…だっけ?)
- 遊佐 葉月: (じゃあ、それ関係の エリアに近づかなきゃいいか)
- 遊佐 葉月: これからどこに行くの?
- デカゴンボールのエリアだよ!
- 私のすごい好きなレイヤーさんが 売り子さんをやってるんだ!
- 遊佐 葉月: ――っ!?
- フェリシア: ここにデカゴンボールの グッズとかがあんだな!
- 三栗 あやめ: …………
- 三栗 あやめ: ん?
- 三栗 あやめ: もういるしっ!!
- 遊佐 葉月: (あやめたち… 絶対この辺にいるよな…)
- あっ!いた!
- 遊佐 葉月: ええっ!?
- ほほ~ 今回はセロリのコスプレかぁ~
- 遊佐 葉月: あ、ああ…コスプレのこと… どの人?
- まだだいぶ遠いよ このエリアの一番端っこ
- 遊佐 葉月: ああ、あの壁際に立ってる?
- 遊佐 葉月: 確かに、この距離からでも めちゃくちゃすごいのが伝わるね
- ね!すごいでしょ!
- 劇中で新造インゲンたちを 次々と吸収していった
- あの巨大な尻尾も 完全再現してる!
- 遊佐 葉月: …あはは、そうなんだ
- さ、行こ!
- 遊佐 葉月: わ、ちょっと、引っ張らないで… …ん?
- 遊佐 葉月: (あのセロリ?の コスプレイヤーの近くに…)
- フェリシア: よくできてんなー! それに尻尾でけー!
- 三栗 あやめ: (葉月に…見つかる…!)
- 三栗 あやめ: 尻尾…………あ!そうだっ!
- 遊佐 葉月: (あやめっ!)
- 遊佐 葉月: (ヤバい、どんどん近づいてる… こ、このままじゃ…)
- 遊佐 葉月: ね、ねぇアタシは別のところに 行ってもいいかな…
- だーめ!
- 遊佐さんとセロリの 2ショットを撮るの!
- 遊佐 葉月: (マジかぁ)
- 遊佐 葉月: (着いちゃったけど………… アレ…?)
- こんにちは! 素晴らしいセロリですね!
- ふふ、そうでしょ?
- 特にこの尻尾を作るの とっても大変だったんだから
- 遊佐 葉月: あやめたちが…いない…?
- ほら、遊佐さん 並んで並んで!
- 遊佐 葉月: う、うん…
- カシャッ
- ありがとうございましたー!
- …………それで、あの… あなたたち…
- 突然この尻尾に隠れて どうしたの?
- ガサゴソ
- フェリシア: なんなんだよー、あやめ!
- フェリシア: オレのことまで 無理やり押し込みやがって!
- 三栗 あやめ: い、いや~、もっと近くで 尻尾を見たくなってさ!
- フェリシア: 自分だけで見ればいいだろっ! わけわかんねーぞ!
- 三栗 あやめ: う…そうだよね
- フェリシア: …それより、次いこーぜ 気になるモンがあるんだ!
- 三栗 あやめ: う、うん…
- 517020-20_KaCgt
- 遊佐 葉月: (なんとかあやめには 見つからずに済んだけど…)
- 遊佐 葉月: ん…あのモカウサギ ちょっと、様子が変…?
- 遊佐 葉月: なんか…オロオロしてない…?
- ほんとだ…
- 遊佐 葉月: こんにちは 何かお困りですか?
- モカウサギ: え、ええ… ちょっと困ったことが…
- モカウサギ: …じゃなくて! ええと…そ、そうなんだモカ!
- モカウサギ: 行きたい場所があるけど 道に迷ってしまったんだモカ!
- モカウサギ: お友だちともはぐれてしまって とっても困ってるんだモカ!
- カタログは持ってないの? そこに地図も載ってるけど…
- モカウサギ: あるけど、この着ぐるみの手で ページがめくれないんだモカ!
- モカウサギ: 視界も悪いから お友だちはすぐに見失うし
- モカウサギ: なかなか見つけられなくて もう大変なんだモカ!
- 遊佐 葉月: 脱げばいいんじゃ…?
- モカウサギ: そ、それはダメモカ…!
- せっかくのコスプレだもんね
- 遊佐 葉月: まあそういう事情なら その場所まで案内してあげようよ
- うん、そうだね!
- モカウサギ: ありがとうモカ!
- モカウサギ: 行きたいのは…
- モカウサギ: 「モーモーファームのひみつ」 という本を売ってる場所モカ!
- それなら………… 情報系同人誌のエリアだね
- こっちを通ってまっすぐ行けば 目的の本があるエリアだよ
- あ、それで遊佐さんごめん
- 遊佐 葉月: どうしたの?
- 私、ちょっと別のエリアに 行きたくて
- そろそろ並ばなきゃ 買えなくなっちゃうから…
- 遊佐 葉月: うん、いいよ 案内はアタシがするから
- ありがとう、遊佐さん! やっぱり優しいね!
- モカウサギ: …キミはいいモカか? お目当てのグッズとかモカ
- 遊佐 葉月: え、ああ…うん 実は連れの子にも内緒だけど
- 遊佐 葉月: 本当はこういうの あんまり詳しくなくて…
- 遊佐 葉月: でもさっきの子にはコスプレが 趣味だと思われちゃってさ
- 遊佐 葉月: まあ今日だけならと思って 付き合ってるみたいな感じ
- モカウサギ: そうだったモカか じゃあ、家族にも内緒モカ?
- 遊佐 葉月: うん、秘密にしてる…んだけど
- 遊佐 葉月: どうもこの会場に 妹がいるみたいでさ…
- 遊佐 葉月: 見つかっちゃうんじゃないかって ヒヤヒヤしてるんだよね~
- モカウサギ: そうだったモカか
- 遊佐 葉月: さ、着いたみたいだよ
- モカウサギ: ありがとうモカ!
- 遊佐 葉月: (モーモーファーム、だっけ? あやめは興味なさそうだし)
- 遊佐 葉月: (モカウサギさんのお友だちを 探しながら)
- 遊佐 葉月: (アタシはしばらく ここでゆっくり…)
- フェリシアの声: あったあった この本だ!
- 遊佐 葉月: …………
- フェリシア: ふむふむ…モーモーファームを 200%楽しむための本かー
- フェリシア: おー、オレも知らねーことが いっぱい書いてあるみたいだ!
- 三栗 あやめ: そっかそっか! 来てよかったじゃん!
- 遊佐 葉月: (なんでいるんだよぉ~)
- 遊佐 葉月: ご、ごめん、モカウサギさん! ちょ、ちょっと後ろ貸して!
- モカウサギ: どうしたモカ!?
- ぐ~
- 三栗 あやめ: あ…フェリシア お腹空いた?
- フェリシア: あやめの腹も鳴ってただろ?
- 三栗 あやめ: お弁当食べよっか
- フェリシア: だな! でも、ここじゃ食えねーし…
- フェリシア: …確かテーブルがたくさんある ところがあったよな
- 三栗 あやめ: フリースペースって言うみたい カタログに書いてあるよ
- 三栗 あやめ: 一番近いのは 北の出口から出たところっぽい
- フェリシア: あのモカウサギがいる方向だな!
- 三栗 あやめ: じゃあそっちに…
- 三栗 あやめ: (葉月いるじゃん…!!!)
- フェリシア: ~~♪
- 三栗 あやめ: (フェリシアはまだ 気づいてないみたいだけど…)
- 三栗 あやめ: あ、あのさフェリシア! やっぱ南の出口にしない?
- フェリシア: ハァ? なんでだよ、遠いだろ?
- 三栗 あやめ: な、なんかほら こっちの方が涼しいみたいでさ…
- フェリシア: そんなの行ってみないと わかんねーだろ?
- 三栗 あやめ: うぬぬ…
- 三栗 あやめ: …………じゃあ… 唐揚げひとつあげるからさ…
- フェリシア: ほんとか!? だったらいいぞ!!
- 517021-21_KaCgt
- 遊佐 葉月: ふぅ…
- 遊佐 葉月: (ふたりともこのエリアから 出てってくれるか…)
- 遊佐 葉月: (んじゃ、モカウサギさんの 用事の方を済ませますか!)
- 遊佐 葉月: はぐれたっていうお友だち… このあたりにいるんだよね?
- 遊佐 葉月: どう、いそうかな…?
- モカウサギ: …いたモカ!
- 遊佐 葉月: ほんと? よかった
- モカウサギ: 移動中みたいモカ! 追いかけるモカ!
- モカウサギ: ありがとうモカ!
- 遊佐 葉月: う、うん
- 遊佐 葉月: さてと…
- あぶなかった~ 残り数冊しかなかったよ~
- 遊佐 葉月: 買えたんだね
- あれ? モカウサギちゃんは?
- 遊佐 葉月: お友だちが見つかったらしくて 追いかけていったんだよね
- そっか じゃあ私たちも行こっか
- 次はね… ここに行きたいな
- 遊佐 葉月: (お、あやめたちが 行った方向と真逆だね…)
- 遊佐 葉月: (ふぅ、やっと逃げ切れそう)
- 遊佐 葉月: ええっ!?
- 通行止め…
- 遊佐 葉月: な、ななななんでっ!? せっかく…!!
- 先ほどこの会場で 参加者のトラブルがありまして
- その関係で数ヶ所が 一時的に通行止めです
- 「暴れた人 有名な同人作家らしいよ…」
- 「聞いた聞いた」
- 「解決したのは 若い女の子たちだって!」
- 遊佐 葉月: (なんだかわからないけど… 大変なトラブルがあったんだな)
- それでカタログの…このブースに 行くにはどうすれば…?
- ああ…それでしたら… 引き返していただいて
- 一度、会場の外に 出ていただいた方が早いですね
- あら、そうですかー ありがとうございます!
- 遊佐 葉月: …………
- さあ、引き返そう 遊佐さん!
- 遊佐 葉月: (えっ、ちょっと待って! やっと逃げ切れたと思ったのに)
- 遊佐 葉月: (あやめがいたあたりに 逆戻りなんだけど…!)
- 三栗 あやめ: …………!!
- フェリシア: なんだよ行き止まりかよー!
- うん、ごめんね…
- でもフリースペースなら 反対側の方が近いから…
- フェリシア: だな! 引き返すぞ、あやめ!
- 三栗 あやめ: …………
- 三栗 あやめ: (あ、まずいっ! そっちは葉月がっ!!)
- 遊佐 葉月: ………… ――っ!?
- 遊佐 葉月: (やっぱり、進行方向に… あやめがいる…!)
- 三栗 あやめ: (葉月がいるっ!!)
- 三栗 あやめ: (このままだと 見つかっちゃうよっ!)
- 遊佐 葉月: (まずいね…お互い どんどん近づいてるよ)
- 遊佐 葉月: (どうしよう… 他人のフリをする…!?)
- 遊佐 葉月: (いや、この格好で他人のフリは 流石にムリがあるよね…!)
- フェリシア: おい、あやめ なんか顔色悪くねーか?
- 三栗 あやめ: そ、そう…………かな…?
- フェリシア: ぜってー変だぞ!? おい、大丈夫か?
- 遊佐 葉月: あっちゃー、もう無理だね
- …どうしたの遊佐さん
- 遊佐 葉月: あっはは… これは観念するしか
- ゆ、遊佐さん?
- 遊佐 葉月: …………
- 遊佐 葉月: 終わりかな…
- モカウサギ: …………
- ん、なんだろ
- 遊佐 葉月: 霧…?
- フェリシア: うわ、なんも見えないぞ!
- 三栗 あやめ: か、固まって歩こう!
- ざわ…
- フェリシア: お、晴れた
- 三栗 あやめ: なんだったんだろ…
- 遊佐さん、大丈夫だった?
- 遊佐 葉月: うん…
- 変な霧だったね
- トラブルがあった後だし ちょっと怖いな…
- 遊佐 葉月: …あれ?
- 遊佐 葉月: (あやめがいない…)
- 三栗 あやめ: (葉月がいない!)
- 三栗 あやめ: (あの霧で見えない間に 逃げ切れたみたい…!)
- …なんだったんだ 今の霧みたいなの?
- 異臭とかもなかったし
- 誰かが保冷剤のドライアイスでも ぶちまけたのかな?
- フェリシア: スゲー楽しかったな!
- 三栗 あやめ: うんっ! 次もまた来よう!
- 遊佐 葉月: お待たせ! さ、帰ろっか
- 今日は来てくれてありがとう! とっても楽しかった!
- 遊佐 葉月: こっちこそ 誘ってくれてありがとう
- 遊佐 葉月: (なんだかんだとありつつも 楽しかったな)
- モカウサギ: …………
- <更衣室>
- ガサゴソ…
- 静海 このは: ぷはっ!
- 静海 このは: 空気…真夏の空気が 涼しいわ…
- 静海 このは: …………
- 静海 このは: (あやめの様子が変だったから)
- 静海 このは: (着ぐるみまで借りて 後をつけてみたけど…)
- 静海 このは: (まさか、葉月にまで こんなところで出会うとはね…)
- 静海 このは: (あやめにバレたくないって ことだから)
- 静海 このは: (わざわざ霧の魔法まで 使ってしまったわ)
- 静海 このは: それにしても、葉月… 予定表は随分そっけなかったけど
- 静海 このは: 楽しく「普通の中学生」 やれてるんじゃない
- 517022-22_KaCgt [Team Nanaka branch (Nanaka & Kako)]
- 夏目 かこ: 小さい頃から 夏休みが待ち遠しくて仕方ありませんでした
- 夏目 かこ: 今もそうです だって、夏休みになると 楽しい毎日が私たちを待っているから…
- 志伸 あきら: これってカブトムシかな?
- 常盤 ななか: そうですね 郊外なので多くいるんでしょう
- 純 美雨: 10、20、30… いぱいいるネ!
- 夏目 かこ: え、えええ…そんなにですか? それはちょっと怖…
- 夏目 かこ: へ?ふわ…っ!
- 志伸 あきら: あ!かこちゃんが 木の根っこにつまづいた!
- 純 美雨: カブトムシの群れにツコむヨ!
- かこの声: ひええぇぇ~~っ!!
- 志伸 あきら: いくよ、かこちゃん
- 夏目 かこ: わわ…っ!
- 志伸 あきら: あはは、どう?冷たい?
- 純 美雨: かこ、一緒に反撃するネ この水鉄砲を使うカ
- 夏目 かこ: 私たちはこの夏休み とうかん村と呼ばれる場所に 遊びにきていました
- 夏目 かこ: この村は自然豊かで 都会では体験できない夏を 私たちに用意してくれました
- 夏目 かこ: あう…カブトムシ塗れになって… 水浸しになって…散々です…
- 志伸 あきら: ラムネあげるから元気出してよ
- 純 美雨: 本当にあきらは好きネ 毎日飲んでるヨ
- 志伸 あきら: みんなだって飲んでるじゃないか
- 純 美雨: まあ、美味しいからネ それに…
- 常盤 ななか: それに、懐かしい気持ちにも させてくれますから
- 夏目 かこ: …そう、ですね…
- 夏目 かこ: その懐かしさのせいなのでしょうか? 夏休みの宿題から逃げて遊ぶ子どものように 毎日を過ごしていました
- 志伸 あきら: あーあ、ずっと夏休みだったら いいのに
- 純 美雨: 儚い夢ネ ずっとつづくなんてあり得ないヨ
- 夏目 かこ: あ、あの…本当に夏休みがずっと つづいたら、どう思いますか…?
- 常盤 ななか: …………
- 志伸 あきら: どうって…ねえ?
- 純 美雨: そうネ
- あきら&美雨の声: 最高!
- 夏目 かこ: …本当にそうなのでしょうか?
- 志伸 あきら: あちゃー、もう暗くなってきてる
- 純 美雨: これだと間に合わないネ
- 夏目 かこ: 間に合わない? 何が…ですか?
- 志伸 あきら: 何がって…ふふ、嫌だなあ そんなの決まってるよね?
- 純 美雨: くすくす…決まてるヨ
- 夏目 かこ: ふたりは笑っているだけで 何も答えてくれません
- 夏目 かこ: でも、今さらどうしたんだろうとは思いません またいつものあれが、始まったのです
- 夏目 かこ: そ、そういえば…ななかさんは?
- 純 美雨: いないてことは、そういうことヨ
- 志伸 あきら: そうそう
- あきら&美雨: オウガマ様が迎えにきたんだよ
- 夏目 かこ: ――っ!?
- 夏目 かこ: そのとき背後から、ひた、ひた、と 何かが近づいてくる音が聞こえました
- 志伸 あきら: かこちゃんにもオウガマ様が お迎えがきたみたいだね
- 夏目 かこ: オウガマ、様…!?
- 夏目 かこ: 私がゆっくり振り返ると…
- 夏目 かこ: そこには 何か恐ろしいものが立っていました
- 常盤 ななか: もう朝ですよ 起きてください、かこさん
- 夏目 かこ: ――っ!?
- 志伸 あきら: うわっ、すごい汗
- 純 美雨: 暑かたカ?麦茶飲むカ?
- 夏目 かこ: 気づくと私は宿にいました みんな何事もなかったかのように 楽しそうに笑っています
- 常盤 ななか: 顔色が悪いですよ? 今日は宿で休んでいますか?
- 志伸 あきら: そんなのもったいないよ
- 志伸 あきら: 今日は昨日より 楽しい予定を立てたのにさ
- 夏目 かこ: 昨日より…あの… 今日って、何日でしたか…?
- みんな: …………
- みんな: 「8月62日だよ」
- 517023-23_KaCgt
- 夏目 かこ: この村では延々と夏がつづいています 8月はとっくに終わっているはずなのに みんな、それを信じようとしません
- 夏目 かこ: 何か不思議な出来事があっても みんな、それを当たり前のように受けいれ 村から出ることなく夏休みを満喫しています
- 夏目 かこ: …私も少し前まではそうでした
- 夏目 かこ: もともと遊ぶために、ここへやってきたのですが 滞在するうちに魔女の反応を感知して その対応をすることになったのです
- 夏目 かこ: だから…本当は魔女の退治をしないといけない それはわかっているはずなのに ある日、オウガマ様が私たちを迎えにきて…
- 夏目 かこ: 魔女のことをすっかり忘れ 夏休みをただ遊びつづけるように されてしまったのです
- 夏目 かこ: 風鈴の音が聞こえます… この音を聞くと夏を実感します
- 夏目 かこ: でもそれだけではなく この音色を聞いているうちに 私は記憶を取り戻したのです
- 夏目 かこ: ななかさんのおかげで…
- 夏目 かこ: え、わざわざ風鈴を 持ってきたんですか?
- 常盤 ななか: 必要になると思いましてね…
- 常盤 ななか: かこさん、この風鈴に 魔力を込めてもらえますか?
- 常盤 ななか: 全員分込めたかったんですが それだと気取られてしまうので
- 夏目 かこ: いいですけど… 込めると、どうなるんですか?
- 常盤 ななか: 魔除けの効果を発揮します
- 常盤 ななか: といっても 通じるかわかりませんし
- 常盤 ななか: もしかしたら、かこさんだけ… という場合も想定されます
- 夏目 かこ: 私だけ…?
- 常盤 ななか: それは避けたいんですけどね
- 常盤 ななか: …魔女を倒さない限り 抜け出せないでしょうから
- 夏目 かこ: (ななかさんは何が起きるのか 予見していたんです…でも…)
- 常盤 ななか: どうしたんですか、 難しい顔をして
- 常盤 ななか: 早く支度をして 遊びにいきましょう
- 夏目 かこ: 今のななかさんはこの不思議な世界… まるで夏の夢のような世界に すっかり染まってしまっています
- 夏目 かこ: (それだけならまだしも ソウルジェムまで穢れるなんて)
- 志伸 あきら: ソウルジェムが穢れてきている?
- 夏目 かこ: そ、そうなんです ここにいるだけで、どんどん…
- 夏目 かこ: だから…早く村から出ましょう このままだとみんな…!
- 志伸 あきら: 何言ってるんだよ 今は夏休みなのに
- 純 美雨: 8月の間はこの村で遊ぶヨ そうみんなで決めたネ
- 夏目 かこ: け、けど、ソウルジェムが…
- 常盤 ななか: そんなの放っておきましょうよ だって…夏休みなんですから
- 夏目 かこ: (あれから何度言っても 話が通じませんでした…)
- 夏目 かこ: (意識が戻っているのは私だけ… 私がどうにかしないと…!)
- 常盤 ななか: どうしたんですか 早く遊びにいきましょうよ
- 夏目 かこ: あ、あの!じ、実は、今日は 用事があって…だから私抜きで…
- 志伸 あきら: そんなつれないこと言わないでさ 川原に行こうよ、楽しいよ?
- 純 美雨: 連射機能のついた水鉄砲を貸すネ 思いきり水遊びしようヨ
- 夏目 かこ: ダ、ダメです!私はですね 夏を満喫してる場合では…っ!
- 夏目 かこ: あはは…水遊び楽しいです!
- 純 美雨: うう…やられたネ
- 夏目 かこ: えへへ、どんなもんですかっ 私のことは夏の魔物と呼んで…
- 夏目 かこ: (って、満喫しちゃってる!?)
- 夏目 かこ: ああ、なんてことでしょうか… 遊んでいる場合ではないとか言っておいて ひとりだけ水着を着てはしゃぐだなんて…
- 夏目 かこ: …気を抜いたらまた私も みんなのようになるってこと なのかもしれません
- 夏目 かこ: いえ、ひょっとしたら そんなのは関係なく…
- 夏目 かこ: ううん…そんなことない… みんなのためにも、急がないと…
- 常盤 ななか: さて、今日は早く帰りましょうか オウガマ様が迎えにくる前に
- 純 美雨: 夕方までに帰るのカ? つまらないネ
- 常盤 ななか: オウガマ様に迷惑をかけるのは よくありませんよ
- 夏目 かこ: (オウガマ様…)
- 夏目 かこ: オウガマ様は夕方になると 家の外にいる者を迎えにいきます。 私自身、何度もその経験をしました
- 夏目 かこ: オウガマ様の正体は、普通に考えれば魔女 延々とつづく8月を 引き起こしているのも、きっと…
- 常盤 ななか: …魔女を倒さない限り 抜け出せないでしょうから
- 夏目 かこ: (こんな特殊な魔女…私ひとりで 倒せるんでしょうか…?)
- 夏目 かこ: 正直に言って不安だらけです でも、ソウルジェムの穢れが どんどん溜まっていって…
- 夏目 かこ: 早くここから抜け出して みんなを助けないといけません
- 夏目 かこ: 私が…頑張るんだ…っ
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: …ところで、こんな話を 聞いたことがありますか?
- 常盤 ななか: オウガマ様は 夏の風物詩を嫌う、って
- 夏目 かこ: (夏の風物詩を…嫌う? だから…風鈴が魔除けに…?)
- 夏目 かこ: (でも…風鈴は使えません 万が一失ったら、私の意識も…)
- 常盤 ななか: かこさん?
- 夏目 かこ: へ?あ、いえ…夏の風物詩って 何があったかな…って
- 常盤 ななか: 今まさに着ているではないですか 夏ならではのものを
- 夏目 かこ: あ…水着!
- 夏目 かこ: と、と、というわけで! はい!水着です…!
- 夏目 かこ: どうですか!? これであなたは…
- 夏目 かこ: 背後から気配を感じたので 今だ!と見せつけた次の瞬間 私の意識は暗闇に包まれてしまいました
- 常盤 ななか: もう朝ですよ 起きてください、かこさん
- 夏目 かこ: ――っ!?
- 夏目 かこ: 気づくと私は宿で朝を迎えていました みんないつものように笑っています …私は、失敗したようです
- 夏目 かこ: が…頑張ったのに…
- 志伸 あきら: さあ、かこちゃん 今日は何をしようか
- 純 美雨: 楽しいことが いっぱい待てるヨ
- 夏目 かこ: あの…この村から出るという 選択肢は…ないんでしょうか?
- 志伸 あきら: 村から出る?どうして? 夏休みなんだよ?
- みんな: 8月の間は ずっとここで遊ぶよ
- 夏目 かこ: そう、ですか…
- 夏目 かこ: 8月63日… 夏休みは、まだつづく
- 517024-24_KaCgt
- 夏目 かこ: うわあ…とうかん村には灯台も あるんですね…!
- 常盤 ななか: ええ、昨日見つけたんです
- 志伸 あきら: 探検してたの? 誘ってくれたらよかったのに
- 夏目 かこ: ま、まあまあ…私もひとりで 散策に出かけてましたから…
- 夏目 かこ: けど…すごいですね 山間の村に海があるなんて!
- 夏目 かこ: …………
- 夏目 かこ: …いや、ないですよ 山間に海なんてデタラメです…
- 純 美雨: 何がおかしいヨ? そういうこともあるんじゃないカ
- 志伸 あきら: だよね!それよりボク 灯台の中を見てみたいんだけど
- 純 美雨: 私も行くネ!
- 夏目 かこ: みんなは違和感を持たなかったみたいです といっても「そういう状態」に されているので仕方がないと思います
- 夏目 かこ: 問題なのは…こんなおかしな地形が 当たり前のように存在していること
- 夏目 かこ: どうして…? これも、オウガマ様のせい…?
- 常盤 ななか: そのオウガマ様なんですが
- 夏目 かこ: わわっ!?び、びっくりしました… 残っていたんですね
- 常盤 ななか: ええ、新しいオウガマ様の噂を 耳にしたので、お伝えしようと
- 常盤 ななか: 興味があるんですよね? 昨日の態度からそう思いましたが
- 夏目 かこ: そ、それは…えっと…
- 夏目 かこ: あ、それより、噂って何ですか?
- 常盤 ななか: 前にオウガマ様は夏の風物詩を 嫌うとお伝えしましたが
- 常盤 ななか: なかでもスイカを 嫌うそうなんです
- 夏目 かこ: スイカ、を…?
- 夏目 かこ: ふぅ…はぁ… これだけ大玉のスイカなら…
- 夏目 かこ: ――っ!? こ、この気配…!
- 夏目 かこ: オ、オオ、オウガマ様! 一緒にスイカ割りなんてどうで…
- 常盤 ななか: もう朝ですよ 起きてください、かこさん
- 夏目 かこ: あ、あうぅ…失敗ですか…
- 夏目 かこ: (…ですが、挫けません みんなのために、何度でも…!)
- 常盤 ななか: どうしたんですか?
- 夏目 かこ: あ、あの…!
- 夏目 かこ: オウガマ様 かき氷が嫌いらしいですね…!
- 夏目 かこ: ほ、ほら…どうですか…!? こんなにもしゃかしゃか食べて…
- 夏目 かこ: うっ…あ、頭が…キーンって…
- 夏目 かこ: これならどうです 線香花火ですよ…!?
- 夏目 かこ: パチパチ…線香花火を見てると 切ない気持ちになりますね…
- 夏目 かこ: こ、こうなったら… 最後の手段…!
- 夏目 かこ: 風鈴です…! オウガマ様、この音を…
- 夏目 かこ: …………
- 夏目 かこ: …あ、あれ? オウガマ様の気配が、ない…
- 夏目 かこ: や、やった…! 私、オウガマ様に勝ったんだ!
- 夏目 かこ: へっ、オウガマ様…!? しま…っ!!
- ななかの声: 伏せてください!
- 常盤 ななか: やっと姿を拝めました… やはり、魔女でしたか
- 夏目 かこ: な、ななかさん…!? どうして?
- 常盤 ななか: 説明は後です…! 今はとにかく離脱します
- 夏目 かこ: は、はい…!
- 常盤 ななか: ここなら 少しは隠れていられそうですね
- 夏目 かこ: ななかさん 意識が戻っていたんですね
- 常盤 ななか: というより、最初から 術にはかかっていませんでしたよ
- 常盤 ななか: 調査するには、術にかかっている 振りをした方が好都合でしたので
- 常盤 ななか: だますような真似をして すみません…
- 夏目 かこ: あ、謝らなくていいです 敵を騙すにはまず味方からって…
- 夏目 かこ: …私に色々と実験させたのも その調査の一環なんですよね?
- 夏目 かこ: あはは…なんだか恥ずかしいもの ばかり回された気がしますけど…
- 常盤 ななか: いえ、かこさんにはマシなものを 回していましたよ
- 常盤 ななか: 私は…くっ…説明するのも はばかれるような実験を…
- 夏目 かこ: どんな実験を…
- 常盤 ななか: ともかく、オウガマ様には なぜか私たちの攻撃が通じません
- 夏目 かこ: 効果があるのは風鈴だけ…?
- 常盤 ななか: なので、夏の風物詩に弱いと 思ったのですが
- 常盤 ななか: かこさんの頑張りから そうではないとわかりました
- 夏目 かこ: じゃあ…何に弱いんですか…?
- 常盤 ななか: 魔力の共振かと
- 夏目 かこ: なるほど…風鈴が鳴ることで 込めた魔力が共振してるんですね
- 夏目 かこ: とすると…風鈴を たくさん用意して戦えば…!
- 常盤 ななか: いえ、風鈴は本当に魔除け程度 私たちが使うのは…
- ななかの声: この超電磁波レーダーです
- かこの声: ふええええ…っ!?
- 517025-25_KaCgt
- 夏目 かこ: あ、あの…ななかさん 急に壮大というか、何というか…
- 夏目 かこ: というか…超電磁波レーダー? なんでそんなものが、ここに…
- 夏目 かこ: …いや、ないですよ 山間に海なんてデタラメです…
- 夏目 かこ: (デタラメ… そう、デタラメなんです…)
- 夏目 かこ: (8月がつづいたり 変なものがあったり…)
- 夏目 かこ: (まるで…夢の中のような…)
- 常盤 ななか: おや、難しい顔をして… もしかして心配していますか?
- 常盤 ななか: 大丈夫です、レーダーの 操作はマスターしています
- 常盤 ななか: 時間はたっぷりありましたからね
- 夏目 かこ: すごいです、ななかさん…!
- 常盤 ななか: さあ、魔力を込めましょう! 勝利は目前ですよ!!
- 常盤 ななか: ああ!!超電磁波レーダーが!!
- 夏目 かこ: ええええ!?
- 常盤 ななか: くう…っ
- 夏目 かこ: うう…なんとか 難は逃れましたけど…
- 常盤 ななか: レーダーが破壊されています… これでは…
- 夏目 かこ: ふ、風鈴を使うのはどうですか? 一応、まだ持ってるんですけど…
- 常盤 ななか: 通用しなかったじゃないですか
- 夏目 かこ: でも…風鈴のおかげで 意識は戻りました
- 夏目 かこ: だから、もっと魔力を込めれば 全部もとに戻ったりするんじゃ…
- 常盤 ななか: そんな都合よくいかないかと
- 夏目 かこ: あう…やっぱりレーダーくらい 巨大じゃないとダメですか…?
- 夏目 かこ: うん…? 巨大な、風鈴…?
- 常盤 ななか: ――っ!? 危ない…っ!!
- 常盤 ななか: うっ… 怪我は、ない?
- 夏目 かこ: 私のことより ななかさんは…!?
- 常盤 ななか: 平気です、これくらい
- 夏目 かこ: あの…ななかさん 走れますか?
- 常盤 ななか: え…?
- 夏目 かこ: ついてきてください 作戦があるんです…!
- 夏目 かこ: はあ…はあ…っ
- 常盤 ななか: かこさん オウガマ様がついてきてますが!
- 夏目 かこ: それでいいんです ここで倒しますから
- 常盤 ななか: ここでって…どうやって!?
- 夏目 かこ: 巨大な風鈴こと 梵鐘(ぼんしょう)を使って
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 夏目 かこ: ありったけの魔力を込めて それを除夜の鐘のように鳴らす…
- 夏目 かこ: すると、巨大な共振が起きます! 風鈴と同じ原理というわけです!
- 常盤 ななか: …水を差すようで悪いのですが
- 常盤 ななか: ここ、神社ですよ…? 梵鐘があるのは、お寺かと…
- 夏目 かこ: …………
- 常盤 ななか: …………
- 常盤 ななか: いや…でも、ここが神仏習合の 神社なら鐘があるかもしれません
- 夏目 かこ: あう…普通の神社っぽいです…
- 常盤 ななか: う、うかつでしたね…
- 常盤 ななか: あ…待ってください! 普通の神社なら、あれが…
- かこ&ななか: ――っ!?
- ???: 「そうはさせないって」
- 志伸 あきら: 帰ってこないから どこで何してるかと思えば
- 純 美雨: まさかオウガマ様と 揉めてるとはネ
- 夏目 かこ: あきらさん、美雨さん…!
- 常盤 ななか: ふたりとも 意識はもとに戻ったんですか!?
- 純 美雨: 意識?何の話ネ
- 志伸 あきら: よくわかんないけど ふたりが戦ってるんだ
- 志伸 あきら: そりゃ、ボクも戦うよ 相手が誰であろうと
- 純 美雨: 腐れ縁てやつヨ
- 常盤 ななか: ふたりとも…
- 志伸 あきら: といっても時間稼ぎにしか ならなさそうだけど…
- 純 美雨: 何もしないよりはいいネ 行くヨ、あきら!
- 夏目 かこ: 私たちも行きましょう…!
- 常盤 ななか: …行ったところで あの魔女を倒すことはできません
- 夏目 かこ: それは… そうかもしれませんけど…!
- 常盤 ななか: 大丈夫、もう少しおふたりを 信用してください
- 常盤 ななか: 私たちが作戦に取りかかる時間を きっちり稼いでくれるはずです
- 夏目 かこ: 作戦…!? 何か思いついたんですか?
- 常盤 ななか: 思いつくも何も そこにあるじゃないですか
- 純 美雨: くっ…押される一方ネ
- 志伸 あきら: 全然攻撃が通らないもんなぁ… どうなってるんだか
- 志伸 あきら: せめて弱ってくれたら… …え?何やってるの?
- 純 美雨: どうしたネ?よそ見してる場合カ
- 志伸 あきら: いや、見てよ かこちゃんとななかが…
- 純 美雨: …鈴を鳴らそうとしてる?
- 常盤 ななか: 神社には鐘がなくても 鈴ならありますからね!
- 夏目 かこ: お参りのときにガラガラする鈴… 確かにこれも共振しそうですね
- 常盤 ななか: 理屈ではそうですが、実際に 効果があるかはわかりません
- 常盤 ななか: …まあ、神頼みってわけですね あまり好きではありませんが
- 夏目 かこ: う、運も実力のうちです…!
- 常盤 ななか: …ですね
- 常盤 ななか: では行きますよ、かこさん! 魔力を込めてください…!!
- 夏目 かこ: はい…!
- 純 美雨: な、何ネ…?この魔力は…!?
- 志伸 あきら: 魔力が広がって… 村全体を包んでいく…?
- 夏目 かこ: こ、これは…
- 常盤 ななか: どうやら うまくいったようですね
- 夏目 かこ: うまくいった…? 魔女はまだ…
- 常盤 ななか: ですが、結界の正体が明らかに なりました…弱体化した証拠です
- 夏目 かこ: 結界…?
- 常盤 ななか: 「この村全体が、魔女に 見せられていた幻だったんです」
- 517026-26_KaCgt
- 夏目 かこ: ずっと夢を見せられていました
- 夏目 かこ: あの懐かしさを感じさせる景色も ラムネの味も、いつまでもつづく8月も 全部、夏の夜の夢でした
- 夏目 かこ: だから、この気持ちもきっと 本物じゃない 朝になれば消えてなくなる
- 夏目 かこ: …そう思っていました
- 夏目 かこ: 私たちは最初から 結界の中にいた、ってことですか
- 夏目 かこ: じゃあ… 私たちが見ていたものは…
- 常盤 ななか: おそらく、夢です…デタラメな ことが多かったのもそのため
- 常盤 ななか: 要は、夏の夢に溺れさせ 衰弱させようとしていたんです
- 常盤 ななか: 時間をかけて、私たちの魔力を 消費させるつもりで
- 夏目 かこ: ここに留めておくのが 狙いだったんですね…
- 常盤 ななか: ええ…とはいっても現実では どれくらい時間が流れているか…
- 常盤 ななか: ――っ!?
- 常盤 ななか: …お喋りをしている暇は なさそうですね
- 志伸 あきら: どうする?
- 常盤 ななか: ご覧の通りもう神社はありません 当然、鈴も…
- 純 美雨: その風鈴は?
- 夏目 かこ: へっ…? ああ、これは消えたりしなくて…
- 常盤 ななか: 私が外から持ってきたものなので なくならないんでしょう
- 常盤 ななか: 今あるのは風鈴だけ… 賭けてみるしかありませんね
- 夏目 かこ: 魔力を込めるんですか?
- 常盤 ななか: ええ、限界まで
- 志伸 あきら: じゃあ しっかり魔力を込めてよ!
- 志伸 あきら: くう~ やっぱり攻撃は通らないか
- 純 美雨: 通す必要はないネ 時間を稼げばそれでいいヨ
- 志伸 あきら: よし…!
- 志伸 あきら: え…これは…?
- 純 美雨: 結界が、村の景色に…
- 常盤 ななか: なるほど また私たちに夢を見せようと…?
- 常盤 ななか: 向こうの方が押しているのに こんなことをわざわざするなんて
- 常盤 ななか: …風鈴を使ってほしくないと 言っているのと同じなのでは?
- 志伸 あきら: うっ…
- 常盤 ななか: あきらさん?
- 志伸 あきら: あれ、ボク…何をして… 早く…早く、帰らなくちゃ…
- 志伸 あきら: 明日には もっと楽しいことが、待って…
- 純 美雨: 気を、しかり持つネ…! 魔女の…思うつぼヨ!くっ…
- 志伸 あきら: そうだ…魔女… 魔女を倒さないと…
- 常盤 ななか: (夢の効果が強くなっている? これが切り札だったのですね)
- 常盤 ななか: (いや…そもそもなぜ夢に 溺れさせる必要がある…?)
- 常盤 ななか: (衰弱させるだけなら他にも やりようはあるのに…)
- 常盤 ななか: もしかしたら…
- 志伸 あきら: ともかく…魔女を牽制しないと…
- 純 美雨: ふたりとも…早くするネ! そう長くはもたないヨ
- 常盤 ななか: わかりました では、かこさん…!
- 夏目 かこ: …どうしてそんなことを しないといけないんですか…?
- 夏目 かこ: …夏休みなのに
- 常盤 ななか: かこ、さん…?あなた…
- 夏目 かこ: うっ…でも、何かやらなくちゃ いけないことが…あったような…
- 夏目 かこ: このままではいけない…と思って 何かをしていた気も…
- 常盤 ななか: そ、そうです!あなたは延々と つづく夏を終わらせようと…
- 常盤 ななか: みんなのソウルジェムを守ろうと 魔女に立ち向かっていたんです
- 夏目 かこ: それが、私のやるべきこと…?
- 夏目 かこ: けれど、そこに… 意味はあるのでしょうか?
- 夏目 かこ: 魔女を倒しても、それですべて終わりじゃない また次の魔女が現れて それを倒してもまた現れて…
- 夏目 かこ: 延々とつづくのはどっち?
- 常盤 ななか: …………
- 夏目 かこ: ななかさんは、勘違いしてます 私はそんなに立派な人間じゃない
- 夏目 かこ: ずっとこの時間がつづけばいいと 毎日、毎日、思っていたんです
- 常盤 ななか: それは…魔女の影響で…!
- 夏目 かこ: いいえ…ななかさんに起こされて 同じ朝を迎えたとき…
- 夏目 かこ: 確かに私は、ほっとしていた… それは、覚えてるんです…くっ…
- 常盤 ななか: かこさん!?
- 夏目 かこ: ねえ、ななかさん…もうちょっと いいじゃないですか…
- 夏目 かこ: 魔女のことを忘れて、毎日遊んで 大好きなみんなと一緒にいる…
- 夏目 かこ: そんな時間がもう少しあっても いいじゃないですか…?
- 常盤 ななか: …そうやって人は 溺れていくんです
- 夏目 かこ: ななかさんは強い人だから わからないんですよ…
- 常盤 ななか: わかりますよ 私も、同じことを思いましたから
- 常盤 ななか: 思うに決まっている じゃないですか…!
- 夏目 かこ: え…?
- 常盤 ななか: …けどそれではダメなんです 夢見心地のまま死んでしまったら
- 常盤 ななか: 私が今までやってきたことへ 責任が果たせなくなる
- 夏目 かこ: …………
- 常盤 ななか: かこさん、あなたは今 夢と現実の狭間にいる…
- 常盤 ななか: この夢は優しいけれど未来はない 現実は辛いけれど未来がある…
- 常盤 ななか: あなたはどちらに 希望を持ちますか?
- 夏目 かこ: ――っ!?
- 常盤 ななか: 精一杯生きるなら 希望を信じましょうよ
- 夏目 かこ: …で、でも… どう、したら…?
- 常盤 ななか: 夢の終わりを望んでください そして…その望みを魔力に込める
- 常盤 ななか: この夏休みは、きっと… 私たちがどこかで望んでいたもの
- 常盤 ななか: 私たちが望みつづける限り 夏休みはつづく…だから…!
- 純 美雨: まだカ!? もうもたないネ!!
- 常盤 ななか: かこさん…!!
- 夏目 かこ: …わ、私…私は…
- 夏目 かこ: 私は…!
- 夏目 かこ: 私は、夢から醒めることを 望みました
- 夏目 かこ: そして… 私たちの夏休みは、終わりました
- 夏目 かこ: もとの日常に戻った私たちを待っていたのは 魔女との戦いでも何でもなく 夏の余韻を引きずった暑さと…
- 夏目 かこ: ほんの少しの、寂しさでした
- 夏目 かこ: …………
- 常盤 ななか: かこさん
- 夏目 かこ: あ、ななかさん どうしたんですか…?
- 常盤 ななか: 迎えにきたんです ここのところ様子が変だったので
- 夏目 かこ: うう…変ではないです…
- 夏目 かこ: ただ、夏は終わったんだなって 思ってしまって…
- 常盤 ななか: 秋には秋のよさがありますよ
- 夏目 かこ: …そうですね
- 常盤 ななか: では行きましょう…あきらさんと 美雨さんが待ってます
- 夏目 かこ: …はい!
- 夏目 かこ: 不安はあるけれど それでも精一杯生きていこう
- 夏目 かこ: 夏休みが終わって 私は、そう思えるようになりました
- 517027-27_KaCgt [Neo-Magius branch (Shigure & Hagumu)]
- その世界にはひとつだけ 不思議な星がありました
- 世界の果ての真上にあると言われる ひときわ明るいその星を…
- 人々はいつしか、願いを叶える “願い星”と呼ぶようになりました…
- <宝崎市・公民館>
- ひめな: …何してるの、みゆりん? ずっとスマホ見てるけど
- ミユリ: えっとえっと、これはですね “リトル・バケーション”…!
- ミユリ: 前にマギウスの翼で流行った スマホゲームです
- ミユリ: ひさびさに起動して 懐かしい~、ってなってました
- ミユリ: 作ったのは灯花様たちだって 聞いた…ような…?
- ひめな: …マギウスが作ったゲーム?? どんな感じなの?
- ミユリ: えっとですね、ちょっぴり ファンタジーな架空の世界で
- ミユリ: ミユたちのAIが生活してるのを 眺めるゲームです
- ひめな: ゲームなのに見てるだけ? キャハッ、ちょっとウケる★
- ひめな: 私チャンも見ていい? …あれっ、なんか雪降ってるけど
- ミユリ: クリスマスが永遠に続く世界… という設定なので!
- ひめな: これがみゆりんのAIかぁ …横にいるのは教官?
- ミユリ: そうですそうです! ミユのAIはいま、燦様と一緒に
- ミユリ: 工匠ジャンクシティという町を 目指してるみたいで…
- ミユリ: そのあいだは、バーチャル燦様の 尊いおみ足も見放題なんですぅ!
- ひめな: 不純度MAXで草
- 燦の声: …姫様、ミユ 全員揃ったわよ
- ミユリ: ――っ!? さささ、燦様っ!?
- アレクサンドラ: ひめちゃん、お待たせ♪ さあ、会合を始めましょ
- 三輪 みつね: …ん、ミユリちゃん いまスマホ隠した?
- ミユリ: いえいえ、バーチャルおみ足とか 断じて隠したりしてないですぅ!
- 燦: バーチャル…何?
- ミユリ: ななな、なんでもないですぅ!
- ミユリ: それよりそれより! 早く今日の会合を始めましょう!
- <リトル・バケーション内、工匠ジャンクシティ>
- 鶴乃: スーパートナカイさん2号・改! スターブースター、ON!
- 鶴乃: ―鶴乃― 星空に向かって…
- フェリシア: ―フェリシア― いっけぇ~っ!!
- 鶴乃: 願い星が… すぐそこだよ!
- フェリシア: かこ! ビームは?
- はぐむ: 行ったね…
- 時雨: …うん…
- 枇々木 めぐる: あっ…
- 枇々木 めぐる: 星屑が…!
- 時雨&はぐむ: …………
- はぐむ: …何か見えた? 時雨ちゃん
- 時雨: ううん…今日も、何も… …………
- はぐむ: (由比さんと深月さん …ふたりのトナカイサンタを)
- はぐむ: (願い星の向こうに送り出した あの夜から…)
- はぐむ: (時雨ちゃんは毎日 星空を見上げて暮らしてる)
- はぐむ: ふたりは、星の向こうにある 天使たちの世界にたどり着いて
- はぐむ: 今もみんなに 笑顔を届けてるはず…だよね?
- 時雨: うん…きっとぼくたちに 無事を知らせてくれるはず
- 時雨: …約束、したから
- 鶴乃: 天使たちの世界に 無事にたどり着いたら
- 鶴乃: いつか、向こうの世界の流れ星を 時雨ちゃんたちに見せてあげるね
- はぐむ: そうだよね…! 無事で…いてほしい、けど
- 時雨: いちばん可能性が高い結末は… 虚空に投げ出されて…最後は消滅
- 時雨: それでも、行きたいの? 本当の“世界の果て”に
- 鶴乃: うん!
- フェリシア: たりめーだろ!
- はぐむ: ………… …ねえ、時雨ちゃん
- はぐむ: …流れ星を見せるって どういう意味なの…かな?
- 時雨: …わからない…けど
- 時雨: 願い星の向こうから 何かの信号が送られてくるのかも
- 時雨: だからこうやって 観測を続けてる
- はぐむ: うん… そうだったね
- 時雨: ………… …………
- はぐむ: …時雨ちゃん 疲れてるみたい
- はぐむ: やっぱり…心配なんだよね? あのふたりのことが…
- 時雨: うん… でも、それだけじゃない気がする
- はぐむ: …毎日、空ばかり見上げてて 疲れちゃった…とか?
- 時雨: …………
- 時雨: ぼくはずっと、願い星の向こうの 天使たちの世界に憧れてた
- 時雨: そこに住む三賢者に 声を届けたかったんだ
- 時雨: …この世界を創造した存在に
- はぐむ: うん…
- 時雨: でも、その夢はもう実現した
- 時雨: 三賢者の返事はなかったけど ぼくたちの“声”は
- 時雨: 間違いなく届いたって 確信できたからね
- 時雨: おまけに、ふたりのサンタも 天使たちの世界に送り届けたから
- 時雨: 目標がなくなって 少し気が抜けたの、かも…?
- はぐむ: …………
- 517028-28_KaCgt
- <宝崎市・公民館>
- ひめな: じゃ、今日の話は終わり とりま解散ってことでよろ~★
- ミユリ: あのあの、その前に! ミユからみなさんに質問が…!
- ひめな: ん? どったの、みゆりん?
- ミユリ: 夏休みの自由研究… まだ終わってない人いますか?
- ミユリ: 学校はバラバラですが…
- ひめな: 私チャンはまだだよ★
- 時雨: …ぼくも何するか決めてない
- アレクサンドラ: あらあら♪ 中学生組は大変ですね
- ミユリ: …でしたらでしたら! 一緒に天体観測はどうでしょう?
- ミユリ: キャンプ場に1日泊まり込んで 合同でやるんです!
- 時雨: …確かに 1日で済むのはいいかも
- ミユリ: ですです、それです!
- ミユリ: ネオマギウスの活動も これから忙しくなりますし!
- ひめな: みんなでキャンプってこと? キャハッ、いいかも★
- ひめな: 私チャン、織姫が月の舟に乗って
- ひめな: ヒコ君の星に会いに行くのを 観察したいなっ
- 時雨: 彦星のこと…? 七夕はもう過ぎてるけど
- ひめな: もうすぐ旧暦の七夕でしょ?
- ひめな: その日にね、月がちょうど 舟みたいな形になるんだって!
- ひめな: だから、月が天の川を渡る瞬間を 望遠鏡で撮るの!
- ひめな: エモみヤバくない?
- ひめな: …ん、何? ヒコ君
- ひめな: …………
- ひめな: え…ほんとに天の川を 月が横切るわけじゃないの?
- ひめな: そうなんだ…ぴえん
- 燦: …なんだか危なっかしいわね 大丈夫かしら
- アレクサンドラ: 自分たちでテーマを決めるのも 課題のうちですから♪
- 三輪 みつね: …ミユリちゃんは何か やりたいことがあるんじゃないの
- 三輪 みつね: 自分で言い出したくらいだしさ
- ミユリ: ありますあります!
- ミユリ: ミユは流れ星を つかまえたいです!
- 時雨: 流れ星を…つかまえる?
- ミユリ: はいです!
- ミユリ: 流れ星が偶然落ちてくる瞬間を 動画に撮るんです!
- ミユリ: 最近読んだ漫画の影響で ミユもやりたくなったんですぅ
- ひめな: いいね、面白そうじゃん!
- 三輪 みつね: …でも、ひと晩で撮れるの? 運ゲーすぎない?
- 三輪 みつね: あらかじめ位置がわかってる 有名な流星群じゃないんだよね?
- 時雨: うん…360度どこから 流れ星が落ちるかわからないし
- 時雨: 見つけてからカメラ向けても 間に合わないんじゃ…?
- ミユリ: そっ、それは… そうなのですがぁ…
- ミユリ: (あ…)
- ミユリ: クリスマスが永遠に続く世界… という設定なので!
- ミユリ: (そうだ!)
- ミユリ: 大丈夫です! サンタさんにお願いして
- ミユリ: クリスマスプレゼントを 前借りするので!
- ひめな: …プレゼントの前借り?
- ミユリ: そう、ミユの今年のプレゼントを 流れ星にしてもらうんです!
- 燦: (えっ…?)
- ひめな: それならワンチャン いけそうな気がするね!
- 時雨: …でも、いいの? 貴重なプレゼント権使っちゃって
- 燦: (…姫様?…宮尾??)
- ミユリ: 問題ありません!
- ミユリ: 家に帰ったら、お父さん経由で お願いしておきます!
- ひめな: あざお★
- アレクサンドラ: ミユちゃんのおうちでは お父さんが代理人なんですね♪
- 燦: ちょっと、サーシャ なんで話、合わせちゃうわけ?
- アレクサンドラ: だって…3人ともサンタさんを 信じてるみたいですし
- はぐむ: 私も…中学生の頃まで 信じてたかも
- 燦: ………… …ちなみに三輪は?
- 三輪 みつね: …ん、サンタクロース機関の話? 長くなるけど、いい?ww
- ひめな: …おけまる★
- ひめな: キャンプ場とテントの手配は 私チャンにまかせて!
- ミユリ: 望遠鏡や撮影用の機材は 天文部に頼んで借りてきます!
- 時雨: 詳しい撮影の方法とか… これから調べてみる
- アレクサンドラ: …教官は何も言わないんですか?
- 燦: 好きにさせるわ 失敗も自由研究のうちでしょう?
- 517029-29_KaCgt
- <リトル・バケーション内、工匠ジャンクシティ>
- はぐむ: 雪…町中にも 降ってきちゃったね
- 時雨: うん…
- 時雨: 町を覆ってる魔法のドーム… 直さなきゃ
- はぐむ: えっ… どうやって?
- 時雨: 壊れたドームの修理を
- 時雨: セキュリティボットに やらせてみる
- はぐむ: そんなこと、できるの!?
- 時雨: うん…最近気づいた
- 時雨: システムの一部を 乗っ取れそうなんだ
- 時雨: …必要なデータは揃ってたから もっと早くできたはずなんだけど
- 時雨: 今まで、そういうのは 考えたことがなくて…
- はぐむ: 時雨ちゃんは、ずっと 願い星の向こうにある
- はぐむ: 天使たちの世界のことばかり 考えてたもんね
- はぐむ: あ…
- はぐむ: …外の雪、やんだみたいだよ
- 時雨: …………
- はぐむ: …また、空を見てたの?
- 時雨: …うん…
- 時雨: ………… …………
- はぐむ: …ねえ、もしかして 時雨ちゃんも、行ってみたいの?
- はぐむ: 天使たちの世界へ…
- 時雨: …………
- 時雨: …違う
- 時雨: 確かに、ぼくたちはずっと 世界の境界の先を目指してた
- 時雨: 境界を越えて、声を届けて… ふたりのサンタも送り出した
- 時雨: …でも、ぼくはただ 知りたかったんだと思う
- 時雨: 三賢者の住むという 天使たちの世界のことを
- はぐむ: どんなことを知りたかったのかな
- はぐむ: 天使たちは、どんな姿で どんな町に住んでるのか…とか?
- 時雨: …ううん
- 時雨: ぼくが知りたかったのは 世界を創った三賢者が…
- 時雨: (あっ…)
- はぐむ: どうしたの?
- 時雨: わかったよ…ぼくは 創造主の答えが欲しかったんだ
- 時雨: どうして、この世界を創ったのか どうして、ぼくたちを創ったのか
- 時雨: どうしてぼくたちを置いて どこかへ行ってしまったのか
- 時雨: その答えを求めて ずっと空を見上げてた
- はぐむ: …うん
- 時雨: みんなで“声”を届けたのも 三賢者の答えが欲しかったからで
- 時雨: …でも、返事はもらえなかった
- はぐむ: 時雨ちゃん…
- 時雨: だけど、もういいんだ
- 時雨: 次にやりたいことを やっと見つけたから
- はぐむ: えっ…?
- 時雨: ぼくは、この世界を ぼくたちの世界にしたい
- 時雨: この世界をもっと住みよくしたい
- 時雨: …空を見上げて暮らすのは もうやめる
- 時雨: これからは、ぼくたちが この世界を創るんだ…!
- はぐむ: 時雨ちゃん…!
- はぐむ: …私にも、手伝わせて
- はぐむ: わぁあっ…!
- はぐむ: 時雨ちゃん、すごい! これが“夏”…?
- 時雨: うん…ボットを操作して作った ミニドームの内部だけ
- 時雨: 気候を変えてみた
- 時雨: 図書館にあった本の記述を 再現してみただけだから
- 時雨: 天使たちの世界の夏とは 違うかもしれないけど…
- はぐむ: …でも、すごいよ!
- はぐむ: 陽射しがぽかぽかして 水に入ったら気持ちよさそう!
- はぐむ: 一緒に泳ごう、時雨ちゃん!
- 時雨: う…うん…!
- ポツ…ポツ…
- はぐむ: …あれっ?
- ザァアァァーッ!!!
- はぐむ: あわわ…すごい雨?
- 時雨: ごめん、天候設定のミスかも 直してくる…
- 517030-30_KaCgt
- <宝崎市郊外・キャンプ場>
- ザァァ…
- ミユリ: なぜになぜに! なぜに雨なのですかぁー!
- ミユリ: サンタさんに! ちゃんと!…お願いしたのに!
- ミユリ: ミユの今年のプレゼント権を 前借りしたはずですぅ!
- 三輪 みつね: …そもそも、プレゼント権の 前借りが可能なのかどうか
- 三輪 みつね: 機関に確認しておくべきだったね
- 燦: …反省すべき点は そこじゃないと思うわよ?
- ひめな: とりまテントの中で 準備だけでもしておこうよ
- ひめな: ワンチャン、夜は晴れて 星が見えるかもしれないし!
- ミユリ: ハッ…そうです! たとえ1%の可能性でも
- ミユリ: 信じて努力した者にだけ サンタさんは微笑むんです!
- 燦: …いちばん大事なところが 運とサンタさん頼みなんだけど?
- <北養区・クレセントハウス>
- うい: …………
- 灯花: ういは何を読んでるのかにゃ?
- うい: クラスで流行ってるマンガだよ! 天文サークルのお話なの
- うい: 流れ星をつかまえようって みんなではりきってる場面!
- 灯花: つかまえる…?
- ねむ: 動画に収めるという意味だよ
- うい: …あれっ、ねむちゃんも 読んだことあるの?
- ねむ: 原作の小説を読了済みだからね
- 灯花: むぅ…知らないのは わたくしだけ…?
- 灯花: …確かに流れ星の撮影は 根気のいる作業だよねー
- 灯花: 事前に予測できるのは、流星群と 人工衛星のフレアくらいだし!
- うい: …人工衛星も関係あるの?
- 灯花: 衛星の光が流れ星みたいに 見えることもあるよ
- 灯花: まぁ、よく見ると違うんだけどね
- 灯花: そもそも、流れ星のほとんどは
- 灯花: 隕石やスペースデブリを含む 宇宙のゴミだから
- 灯花: 人工物も珍しくないんだよー
- うい: 空から星屑が 降ってくるってことだよね?
- ねむ: 同じことを言っているのに ういの方が情趣があるね…
- 灯花: そういえば、流れ星になりそうな 大きなデブリを監視して
- 灯花: 詳細なデータをネットで 公開してる研究所もあったにゃ
- ねむ: …つまり、そのデータを使えば
- ねむ: 流れ星の落ちる時間と方向を 予測できるということかな?
- 灯花: そーいうこと! 100%じゃないけどね
- うい: へええ…!
- 鶴乃: …フェリシア、聞いた?
- フェリシア: おー、聞いたぞ! 面白そうなマンガだよな
- 鶴乃: そっちじゃなくて! 研究所のデータを手に入れれば
- 鶴乃: 流れ星を、やっと つかまえられるかもしれないよ!
- 517031-31_KaCgt
- <宝崎市郊外・キャンプ場>
- ミユリ: …雨がやみました!
- 時雨: うそ…雲も消えてる
- ミユリ: はい、星がばっちり見えます!
- 時雨: 夜の降水確率… 80%だったのに
- ミユリ: お天気ガチャに勝ちました! サンタさん、ありがとう!
- ひめな: とりまテントから 機材を運び出そっ
- 時雨: …テントの灯り、消してきた
- ひめな: おけまる★ 光が邪魔だもんね
- ミユリ: 望遠鏡も準備完了です!
- アレクサンドラ: スマホをつないで 動画を撮れる望遠鏡なんですね♪
- ミユリ: はいです! ミユのスマホを接続済みです
- ピロン♪
- ひめな: 着信? みゆりんのスマホだよね
- ミユリ: 通知切るの忘れてました… 撮影中じゃなくてよかったです
- ミユリ: …いったい誰からでしょう?
- ミユリ: ――っ!? こ…これは…!
- トナカイサンタから、流れ星のプレゼント! 天の川の恋人たちに望遠鏡を向けてみて!
- ミユリ: 姫様、見てください!
- ひめな: これって… サンタさんのメッセージ!?
- 時雨&はぐむ: …ええっ?
- ミユリ: ほら、ここに!
- トナカイサンタから、流れ星のプレゼント! 天の川の恋人たちに望遠鏡を向けてみて!
- はぐむ: いま…何かいたよね?
- 時雨: うん… サンタさん…なの?
- ひめな: 天の川の恋人たちって 織姫と彦星のことだよねっ?
- ミユリ: ですねですね そっちに望遠鏡を向けましょう!
- 燦: …それにしても 誰がこんなメッセージを…?
- 三輪 みつね: 言うまでもないよねw 機関が代理人を通じて…
- ミユリ: 来ました来ました! 流れ星ですぅ!
- はぐむ: わわっ…流れ星がいっぱい…!
- アレクサンドラ: ちょうど 織姫と彦星のあいだですね♪
- ひめな: キャハッ、天の川に 橋がかかったみたい★
- 時雨: 動画…ちゃんと撮れた?
- ミユリ: 完璧です!
- ミユリ: サンタさん、助かりました! 本当にありがとうです!
- 鶴乃: よしっ、笑顔のお届け完了! そっちはどう?
- フェリシア: なんかキラキラしたやつが この中に吸い込まれたぞ
- 鶴乃: それが、あの子たちが つかまえた流れ星だよ!
- 鶴乃: おこぼれを少し 分けてもらったんだ!
- 鶴乃: それじゃ、獲れたてほやほやの 流れ星を持って
- 鶴乃: 約束を果たしにいくよっ!
- フェリシア: おー!
- <北養区・灯花の部屋>
- 灯花: …なるほどねー
- 灯花: ネットの海へと脱走した トナカイサンタたちは
- 灯花: 本物の流れ星には触れないけど
- 灯花: スマホで撮影した動画データなら つかまえられるんだね
- ピロン♪
- 灯花: んんー?
- エマージェンシーアラート 世界管理者に緊急通知
- 灯花: (…トナカイサンタたちが)
- 灯花: (リトル・バケーションの サーバーに侵入を試みてる…?)
- 灯花: (つかまえた流れ星を 誰かにプレゼントするつもり?)
- 灯花: …サンタさんの真似事なんて 楽しいのかにゃー?
- 灯花: AIたちの生きる世界の方が 時間の流れが速くて
- 灯花: 変化も成長も速いから
- 灯花: どんな考えで動いてるのか わたくしにも想像がつかないにゃ
- 灯花: …………
- 灯花: (前にパパ様が、サンタさんの 代理をしてくれたときは…)
- 灯花も大人になればわかるよ もらうより贈る方がうれしいって
- 灯花: わたくしにはまだ わからないにゃー
- bg_adv_20642.jpg: <リトル・バケーション、工匠ジャンクシティ>
- 「さて、今日も元気な海賊放送 ラジオセントラル! …とか言ってる場合じゃないです!」
- 「プールで遊んでるおふたりさんに緊急連絡! めっちゃ私信ですけど 願い星から、異常な信号が!」
- 時雨: 願い星から…?
- はぐむ: …時雨ちゃん、見て!
- 時雨: ―時雨― ――っ!?
- 時雨: ―時雨― はぐむん、これって…!
- はぐむ: ―はぐむ― うん…すごい…!
- はぐむ: ―はぐむ― トナカイサンタさんのプレゼントだよ…!
- はぐむ: ―はぐむ― 天使の世界の流れ星を ほんとに届けてくれたんだ…!
- はぐむ: 待ってて、よかったね 時雨ちゃん…
- 時雨: …うん、よかった 本当に…
- 時雨: 次は…ぼくたちの番
- はぐむ: …どういう意味?
- 時雨: 今日、はぐむんに 小さな“夏”を贈ってみて
- 時雨: 初めてわかったんだ
- 時雨: 誰かが創った世界を ただ与えられるより
- 時雨: 自分たちで 住みよい世界を創っていく方が…
- 時雨: そう、誰かに プレゼントをもらうより
- 時雨: 誰かにプレゼントをあげる方が ずっとうれしいんだって
- <翌日…>
- <宝崎市・公民館>
- ミユリ: 昨日はすごい動画が撮れました! これもサンタさんのおかげですぅ
- ミユリ: 自由研究は終わったも同然ですし 今日はゆっくりゲームでも…
- ミユリ: ――っ!?
- ドタタタ…
- ミユリ: 燦様、燦様! たいへんです!
- ミユリ: バーチャル宮尾と バーチャル安積の!
- ミユリ: 足が! 水着の…ナマ足が…!
- 燦: …何を言っているのかしら?
- 517032-32_KaCgt [Masara & Kokoro branch]
- ???: 「試合終了、か…」
- ???: ………… …………
- ???: 「ここまで…かな…」
- 粟根 こころ: 夏休みのある日 まさらと海へ出かけることになった
- 粟根 こころ: わぁ…まぶしい! 夏の陽射しって感じだね
- 加賀見 まさら: 直射日光が一番強いのは 6月の夏至の日よ
- 粟根 こころ: ふふふっ
- 加賀見 まさら: …何?
- 粟根 こころ: いつものまさらだな、って
- ワァアッ…!
- 粟根 こころ: あれっ? 向こうで何かやってる
- 「お待たせしました! 次は女子の部の予選を始めまーす! まずは出場チームの紹介から!」
- 粟根 こころ: ビーチキックベースの大会だって
- 粟根 こころ: キックベースって、サッカーと 野球を合わせたような競技だよね
- 加賀見 まさら: …それをビーチで やるってことかしら
- ???の声: …どうしよう かわりの子、見つからない…
- ???の声: 今からじゃ、人数揃わないよね…
- 加賀見 まさら: …?
- あっ… 加賀見先輩?
- 粟根 こころ: まさらの知り合い?
- 加賀見 まさら: うん、水泳部の後輩よ 中等部の2年生
- いつもお世話になってます!
- 粟根 こころ: 私は粟根こころ 中等部の3年だよ
- 粟根先輩…ですね よろしくお願いします!
- あ…もしかして先輩たちも ビーチキックベースの大会に…?
- 粟根 こころ: ううん、出ないよ 観ようとしてただけ
- 加賀見 まさら: その言い方だと、あなたたちは 大会に出るの?
- はい!
- この日のために、気合入れて 練習してきたんです
- 粟根 こころ: 水泳部もあるのに? がんばったんだね
- はい! そうなんですけど…
- …実は、試合に出るはずの子が ふたりほど来られなくなって
- 粟根 こころ: ええっ?
- 2日前には帰省先から 戻ってる予定だったんですけど
- 強風で飛行機が飛ばなくて 今日の夜になるって…
- そうなんです このままじゃ棄権するしか…
- 粟根 こころ: みんなで、がんばったのにね…
- はい…
- …あの、先輩たち
- よかったら試合に 出てもらえませんか?
- 加賀見 まさら: …え…?
- 粟根 こころ: いきなりのお願いにまさらは戸惑っていたけど…
- 粟根 こころ: 落ち込んでいるまさらの後輩たちを 放っておけなくて 『一緒に出ようよ』と私が言ったら…
- 加賀見 まさら: ………… …こころがその気なら、いいわ
- 粟根 こころ: 私たちの“熱い”夏は そんな感じで始まったの
- …私がチームのコーチを やらせてもらっているの
- よろしくね 加賀見さん、粟根さん
- 粟根 こころ: よろしくお願いします!
- 加賀見 まさら: …この格好でいいんでしょうか?
- 服装は自由だけど 水着で参加してる子が多いみたい
- 粟根 こころ: 準備運動と、軽い練習を終えると いよいよ試合が始まった
- 粟根 こころ: ビーチでキックベースなんて 今まで聞いたこともなかったし スライディングとかも禁止のゆるい大会だけど 毎年、けっこう盛り上がってるんだって!
- 「セーフ!」
- 加賀見 まさら: …………
- 粟根 こころ: やった!
- 粟根先輩のタイムリーヒットで 加賀見先輩がホームイン!
- 勝ち越しです!
- 粟根 こころ: まさらは水泳、私は趣味の登山で 普段から運動していたのがよかったみたいで…
- 粟根 こころ: …なんとか勝てたね!
- 決勝点は 先輩たちのコンビでしたね
- 加賀見 まさら: コーチの指示通りにしただけよ だから出塁できた
- 粟根 こころ: 私もそうだよ
- 粟根 こころ: ライトの守備が深いから 右に蹴れって言われて…
- これで予選突破ね
- はい、10日後に 決勝トーナメントです!
- 粟根 こころ: 今日来られなかった子たちも 次は出場できるんだよね?
- はいっ、今日は助かりました! ありがとうございました!
- 粟根 こころ: ふふっ どういたしまして
- 粟根 こころ: 私たちの役目は、ここで 終わりのはずだったんだけど…
- じゃ、私たち ライバルの偵察に行ってきます!
- 加賀見 まさら: ライバル?
- 大会6連覇中の すごいチームがあるんです!
- 先輩たちも一緒に観ます?
- 粟根 こころ: …話は、そこで終わらなかったの
- ざわ…
- 「10対0…!? 2回コールド勝ちだって!」
- 「1チームだけ異次元じゃん」
- 粟根 こころ: 大会ルールで 試合は5回までのはずだよね?
- 加賀見 まさら: 実力差がありすぎて 2回で終わったということね
- 私たち、決勝トーナメントで あんなチームと戦うの…?
- う、うん…
- 優勝するつもりなら 避けては通れないよ
- こころ&まさら: …………
- アシュリー・テイラー: …ん?
- アシュリー・テイラー: 面白そうなコトを やってるみたいデスネー!
- 517033-33_KaCgt
- 粟根 こころ: 翌日…
- 空穂 夏希: …………
- 加賀見 まさら: …夏希?
- 粟根 こころ: そこで何してるの?
- 空穂 夏希: あ…こころさんたち
- 空穂 夏希: あの子たち 熱心に練習してるなって!
- 次、レフトいくよ!
- バシッ
- ナイスキャッチ!
- 粟根 こころ: 昨日の子たち!
- 粟根 こころ: ここでビーチキックベースの 練習をしてたのね
- 空穂 夏希: あれっ、もしかして知り合い…?
- あっ、加賀見先輩たち!
- 粟根 こころ: 再会は、まったくの偶然だった
- 空穂 夏希: なるほど~! こころさんたちとそんな縁が!
- 空穂 夏希: …で、みなさんは
- 空穂 夏希: 決勝トーナメントに向けて 自主練中と!
- 加賀見 まさら: 試合の次の日くらいは 身体を休めた方がいいのに
- そうも言っていられません! あんなチームを見ちゃったし…
- 私たち、優勝を 目指してますので!
- 空穂 夏希: いいね、気合入ってる!
- 加賀見 まさら: でも…
- 「10対0…!? 2回コールド勝ちだって!」
- 「1チームだけ異次元じゃん」
- 粟根 こころ: …すごい強敵がいるんだよね
- 加賀見 まさら: 正直、コールド負けしなければ 上出来な気がするくらいよ
- はい…その通りです 私たち、新しいチームだし…
- 相手はサッカーの 強豪校の子が中心みたいで
- 正直言うと、昨日の試合を観て びびっちゃいました…
- 粟根 こころ: それでも優勝するつもりだなんて 何か理由がありそうだと思って 聞いてみると…
- えっと、実は… コーチと約束してるんです
- もし優勝したら ひとつお願いを聞いてもらうって
- 粟根 こころ: なんて?
- まだコーチには内緒なんですけど もしも私たちが優勝したら
- 現役復帰してくださいって お願いするつもりなんです
- 加賀見 まさら: 現役って… ビーチキックベースの?
- あ、そうじゃなくて 実はあの人…
- 女子野球ワールドカップの 日本代表選手だったんですよ
- 夏希&こころ: ええっ!?
- 粟根 こころ: 元野球少女だった夏希は コーチの名前を聞いて二度びっくりしてた
- 空穂 夏希: …知ってる知ってる! 元日本代表のレギュラーじゃない
- 空穂 夏希: ショートで主軸打ってて! …でも、今年引退したんだよね
- 粟根 こころ: 何か事情があったのかな?
- 空穂 夏希: 雑誌のインタビューで 読んだんだけど…
- 粟根 こころ: 実は、コーチのお父さんは オリンピックのメダリストで 彼女がずっと野球を続けてきた理由は 亡くなったお父さんに 金メダルを捧げるためだったの
- 粟根 こころ: でも、女子硬式野球はオリンピックに なかなか公認されなくて… 所属していたクラブチームの 解散が決まったのを機に 現役引退を決めたんだって
- 加賀見 まさら: …女子硬式野球って オリンピック競技じゃないのね
- 空穂 夏希: そうなんですよ! ワールドカップはあるんですけど
- 空穂 夏希: 野球女子って、そんな感じで 何かと不遇だったり…
- でも、コーチにはやっぱり 野球を続けてほしいんです
- 空穂 夏希: うん…もったいないよね
- 粟根 こころ: 夏希の場合は、野球をやめたあとで チアリーディングに夢中になったらしいんだけど …やっぱり野球への未練は 今でもちょっぴりあるよ、と言って笑う
- 粟根 こころ: コーチはもう、野球とは関係ない仕事に就いてて 今日も多忙で来られないみたい… 本人の気持ちは、どうなのかな?
- 空穂 夏希: あんなにがんばって 野球に打ち込んでた人なのに…
- はい…だから私たち お願いするつもりなんです
- もう一度、野球の グラウンドに立ってほしいって!
- 粟根 こころ: だから絶対に優勝したいんだね…
- はい…
- 粟根 こころ: そんな話をしていたら…
- 先輩たち…
- よかったら決勝トーナメントにも 出てもらえたりしませんか?
- 粟根 こころ: こんな成りゆきになってしまって…
- 加賀見 まさら: …メンバーはもう 揃っているでしょう?
- はい、でも…
- 昨日の試合も、先輩たちの活躍で 勝てたようなものですし
- それに、今いるメンバーも みんな出番はあると思うので!
- 粟根 こころ: …彼女たちの想いを聞いた私は なんとかしてあげたい気持ちになっていた
- 空穂 夏希: こころさんたちがその気なら 私も練習手伝うよ?
- 空穂 夏希: 部活の合宿があるから 決勝は観にいけないんだけどね
- 粟根 こころ: うーん…よし! まさら、一緒にやろうよ
- 加賀見 まさら: …そう言うと思った
- 空穂 夏希: 決まりですね!
- 空穂 夏希: それじゃ、地獄の特訓開始! ゴー・ファイ・ウィン!!
- 粟根 こころ: いま「地獄の」って 言ったよね…?
- 空穂 夏希: 「それじゃ、ラスト一本!」
- 空穂 夏希: …ナイスキャッチ! 今日はこれでおしまいかな?
- 粟根 こころ: …はぁ…はぁ… 夏希が思ったより鬼だったね…
- 加賀見 まさら: …でも、連携はだいぶ よくなったんじゃないかしら?
- 明日はコーチも来てくれます また、がんばりましょう!
- 粟根 こころ: その帰り道…
- 加賀見 まさら: …………
- 粟根 こころ: どうしたの、まさら?
- 加賀見 まさら: 道の向こう…
- 粟根 こころ: あ、コーチ…
- 粟根 こころ: 声をかけることはできなかった 彼女が真剣な面持ちで スポーツ用品店に飾られた 日本代表のユニフォームを見つめていたから
- 517034-34_KaCgt
- 粟根 こころ: 試合の日が近づくにつれて チームの動きも洗練されてきて…
- 空穂 夏希: サード!
- 加賀見 まさら: …!
- バシッ
- 空穂 夏希: ナイスプレー!
- 空穂 夏希: キックベースらしい動きに なってきましたよ!
- 粟根 こころ: えーいっ!
- ドカッ
- 右中間まっぷたつね
- 粟根先輩、3塁打! すごいです!
- 粟根 こころ: そしてとうとう… 決勝トーナメントの日がやってきた
- 粟根 こころ: 残ったのは4チーム つまり、今日の1試合目が準決勝! それに勝ったチーム同士で 優勝を決める決勝戦が行われるんだって
- 加賀見 まさら: 要するに… 2戦とも勝てば優勝ということね
- ふふ…簡単に言うのね でも、そういうこと!
- 粟根 こころ: 抽選の結果、準決勝でいきなり 6連覇中の最強チームと当たるのは避けられて
- 粟根 こころ: いよいよ、準決勝が始まった
- 相手は予選も7対0で突破… かなりの好チームよ
- その試合、観てました!
- でも、私たちも 10日前の私たちとは違います!
- そうね、びっくりするほど みんな上手くなった
- はい、絶対に優勝して
- コーチにお願いを 聞いてもらうつもりなので!
- 私に何をさせたいのかしら…
- 「それでは、準決勝・第1試合を始めます! プレイボール!」
- 「セーフ!」
- 加賀見 まさら: …………
- 加賀見先輩、ナイスです!
- トップバッターが出塁ね
- 私も…!
- バシッ
- ボール…捕られた!? でも…!
- ダダッ…
- 粟根 こころ: セーフ! 内野安打ね!
- キックしてすぐ走り出す練習 ずっとやってたものね
- …次は粟根さんね ちょっと耳を貸して
- 粟根 こころ: 猛特訓の甲斐あって 私たちのチームは見違えるほど強くなっていた コーチの指示も的確で 私たちは終始リードを保ち…
- 「試合終了、6対3です!」
- 粟根 こころ: やった!
- 加賀見 まさら: …決勝進出ね
- 粟根 こころ: 続く準決勝・第2試合 私たちが客席から見守る中 6連覇中のチームが歓声とともに登場した
- 粟根 こころ: その結果は、なんと…
- 「試合終了、10対0… 1回コールドです!」
- ざわ…
- 1回コールドって…!
- 加賀見 まさら: 準決勝なのに 予選より早く終わったわね
- うぅ…やっぱり強い
- …守備も堅いし キックも強くて正確
- 正直、まともにぶつかったら まず勝ち目はないわね
- でも、勝ちたいんです! 私たちが勝ったら
- コーチも、もう一度 日本代表としてプレーして…
- あっ、その話はまだ内緒…
- …えっ? どういうこと?
- 粟根 こころ: 決勝戦の目前に、そのハプニングは起きた 優勝するまで秘密のはずだった 「お願い」の内容が コーチにバレてしまったの
- じゃあ、あなたたち 優勝したら私に…
- はい…野球のグラウンドに 復帰してほしいって
- お願いするつもりでした…
- そのために あんなに熱心に練習を…?
- はい…コーチはやっぱり
- 日本代表のユニフォームの方が 似合うと思って
- こころ&まさら: ………… …………
- …………
- …いいでしょう そのお願い、聞いてあげる
- 粟根 こころ: えっ…
- それじゃあ…!
- もちろん、あなたたちが 優勝できたらの話だからね
- …はいっ!
- 517035-35_KaCgt
- …さっきも言ったけどね
- まともにぶつかったら とても勝てる相手じゃないよ
- もしも勝てる可能性が あるとしたら…
- 加賀見 まさら: …あるとしたら?
- 守りを徹底的に固めて 接戦に持ち込む…
- その上で、どこかで 勝負をかけないとね
- アシュリー・テイラー: Hurry up! 試合、始まっちゃいマース!
- 三穂野 せいら: ごめんごめん 新しい機材にまだ慣れてなくて
- 粟根 こころ: あれっ…? アシュちゃんたち…
- アシュリー・テイラー: スミマセーン!
- アシュリー・テイラー: 試合の様子を生配信させて ほしいのデスガ…
- 粟根 こころ: いつもの動画配信? 理子は一緒じゃないんだね
- アシュリー・テイラー: 今日はカメラのテストを兼ねて せいらにお願いしマシタ!
- 粟根 こころ: アシュちゃんたちによる 動画の生配信も行われる中… 相手チームにとっては7連覇がかかった 注目の決勝戦が始まった
- 「それでは… 決勝戦、試合開始です!」
- 粟根 こころ: あちらが先攻ですね
- いい、最初が勝負よ?
- いきなり大きい当たりを連発して 心を折ってくるから
- …!
- 加賀見 まさら: センター、バック!
- 捕るっ…!
- バシッ
- 加賀見 まさら: 追いついた…!
- 粟根 こころ: ナイスキャッチ!
- 粟根 こころ: 特訓の甲斐あって 私たちはフライもゴロも 難なく処理できるようになっていた
- サード!
- 加賀見 まさら: まかせて
- シュッ
- やった! 三者凡退です!
- ざわざわ…
- アシュリー・テイラー: Wow!! こころたちが0点に抑えました
- 三穂野 せいら: それだけで、このざわめき…?
- 準決勝の相手は いきなり10点取られてるからね
- あちらのコーチも、これまでとは 違うと思ったんじゃない?
- …………
- 粟根 こころ: そして…
- ええいっ!
- アシュリー・テイラー: Wow!! 大きい当たりデース!
- 粟根 こころ: まさらがホームに…!
- セーフ! 先制点よ!
- 粟根 こころ: 先制点は私たち! 絶対王者が初めてリードを許す展開に 客席も盛り上がってきて…
- ふふ、いいね 空気がどよめいてる
- もしかすると…っていう 期待が伝わってくる
- 相手も、次の攻撃は 手堅く1点を取りにくるかも…
- そうね、でも…
- 粟根 こころ: そうなれば、僅差の勝負に持ち込める 野球と違って、たった5回で終了だから いくつか戦術を試すうちに試合が終わる… コーチの狙いはそこだったの
- だから実力の差があっても 逃げ切るチャンスはあるよ
- アシュリー・テイラー: 盛り上がってきまシタネー!
- 粟根 こころ: うまく接戦に持ち込めたけど 実力差を完全に埋めることはできなかった 私たちは3回に逆転を許し、スコアは1対2… 試合はもつれた
- 粟根 こころ: 会場、満員だよ!?
- ビーチで遊んでた人が 集まってきたみたいです
- 加賀見 まさら: 配信を観て来た人も 結構いるみたい
- 粟根 こころ: …そして試合は1対2のまま 最終回の5回裏 私たちの攻撃を残すのみとなった
- アシュリー・テイラー: 1点差…この回に点を取らないと こころたちが負けちゃいマス…
- 三穂野 せいら: キックひとつ取っても 迫力が全然違うし
- 三穂野 せいら: ここまで競っただけでも 大健闘って感じの相手だからね
- 粟根 こころ: 私たちのチームは まさらと水泳部の後輩が出塁して 1アウト1・2塁と絶好のチャンス! そして、キッカーは私…
- 粟根 こころ: (逆転のチャンス…! 最低でも1点返して同点に…!)
- 粟根 こころ: ところが、気負った私は…
- アシュリー・テイラー: あっ…
- 粟根 こころ: (しまった! ボテボテのゴロ…!)
- ファーストへ! サードは間に合わないわ!
- うん、確実に…!
- 「アウト!」
- 粟根 こころ: (ああ、2アウト…)
- 粟根 こころ: でも、そのとき…
- 加賀見 まさら: …!
- ダッ…
- バックホーム! ランナー走ってる!
- 粟根 こころ: …まさら!?
- ホームに突入する気…!?
- 粟根 こころ: 私も予想していなかった まさらの無茶な走塁 でも、そのおかげで 相手も不意を突かれたみたいで…
- くっ…!
- 送球、逸れました!
- 「セーフ!」
- アシュリー・テイラー: Amazing!! 同点デス!
- 三穂野 せいら: プレーは続いてるよ!
- 三穂野 せいら: 1塁ランナーも ホームに突っ込んでる
- アシュリー・テイラー: えっ…!?
- (ここで一気に逆転しなきゃ!)
- (延長戦になったら 勝ち目なんて、とても…!)
- ザザッ…
- ボール、戻ってきた!
- 粟根 こころ: タッチは…?
- 「…セーフ!」
- ワァアアアーーッ!!
- 517036-36_KaCgt
- 「…セーフ!」
- ワァアアアーーッ!!
- アシュリー・テイラー: Wow!! 一気に2点デス!
- 三穂野 せいら: 逆転サヨナラだー!
- 粟根 こころ: やったね! 優勝だよ!
- ナイスランだったね ふたりとも!
- 延長戦になれば苦しかったし 勝負に出たのは正解よ
- 加賀見さんは ちょっと暴走ぎみだったけど
- おかげでミスを誘えたね
- 加賀見 まさら: コーチの言葉を思い出したんです
- 加賀見 まさら: まともにぶつかったら 勝てない相手だから
- 加賀見 まさら: どこかで勝負をかけないと、って
- 粟根 こころ: へえ…ちゃんと考えてたんだ
- 粟根 こころ: てっきり、まさらまで 熱くなったのかと思っちゃった
- 加賀見 まさら: そんなことは…
- 粟根 こころ: まさらはそう口にしかけて… そして言いなおした
- 加賀見 まさら: …わからない 少し冷静じゃなかったのかも
- おめでとう 悔しいけど完敗よ
- でも来年は負けないからね…!
- 粟根 こころ: もう来年の話…!?
- アシュリー・テイラー: Perfect!!! いい配信ができマシタ!
- 粟根 こころ: 約束通り、優勝を決めた私たちは コーチにお願いを聞いてもらうことになった
- 約束は守るよ
- 日本代表として、もう一度 プレーしてほしい…だっけ?
- はい、それなんですけど… あれから、みんなで考えて…
- 粟根 こころ: 私も、まさらも、後輩たちも 毎日の練習を通じて コーチは本当に野球が… スポーツが大好きなんだって感じていた
- 粟根 こころ: だから… こうお願いすることにしたの
- 自分のために 野球を続けてほしい…?
- はい…!
- 今日だって、試合に勝つ策を 真剣に考えてくれたし
- それに観客が集まってきたら すごく楽しそうにしてたし…
- 何かのためとか 誰かのためとかじゃなくて
- コーチ自身のために グラウンドに戻ってほしいなって
- あなたたち…
- …確かに私は 純粋に野球を楽しむことよりも
- オリンピックという目標に 囚われすぎていたのかも…
- じゃあ…!
- でも復帰は簡単じゃないよ まずは所属チームを探さないと…
- ???の声: こんにちは
- 粟根 こころ: あ…
- 加賀見 まさら: 相手チームのコーチの方ですね
- ええ、挨拶に来たの そちらのコーチに用があって
- 私に…?
- 私のこと、覚えてない?
- えっ…ああっ!? うそ、気づかなかった!
- 粟根 こころ: え… まさか、お知り合い?
- 粟根 こころ: 実は、相手チームのコーチと 私たちのコーチは 高校の頃、同じ野球部にいたらしいの!
- 粟根 こころ: その人は、今はスポーツ関係の 広報の仕事についているらしいんだけど…
- 粟根 こころ: その口から出てきたのは、意外な言葉だった
- …実は、某プロ野球チームが 女子部を作ることになってね
- 担当スカウトから、あなたを 紹介してほしいって言われてるの
- えっ…?
- 粟根 こころ: すごい…!
- あなたの事情は 私も知ってるつもりよ
- …でも、オリンピックは もういいんじゃない?
- 世界大会は他にもあるんだし
- 亡くなったお父さんも きっと、そう言ってくれると思う
- うん…
- それに野球を続けてさえいれば
- 規則が変わって、オリンピックに いつか出られるかもしれないし!
- あ、私たちのことなら 心配しないでください!
- コーチがいなくたって 大会連覇してみせますから!
- …………
- …ありがとう
- さっきのスカウトさんの話… 詳しく聞かせてくれるかな?
- 粟根 こころ: そのあと、どうなったかっていうと…
- 粟根 こころ: アシュちゃんの生配信は ネットで想像以上にバズってたらしくて 私たちの手伝ったチームに 入りたいっていう子が殺到!
- 粟根 こころ: チームの今後は心配なさそうだけど まさらの後輩は、水泳部との両立に 悩んじゃってるみたい
- 粟根 こころ: そして、私たちのコーチは…
- 空穂 夏希: …見てください! 野球雑誌のこの記事!
- 粟根 こころ: わ、コーチの写真!
- 空穂 夏希: はい、現役復帰と入団発表の話が こんなに大きく!
- 加賀見 まさら: よかったわね
- 空穂 夏希: なんか、熱いですよね! 私も本気出してみようかな…?
- 粟根 こころ: えっ? 夏希も野球を再開するの?
- 空穂 夏希: あはは、じゃなくて チアリーディングの方ですよ!
- 空穂 夏希: 私、感動したんです
- 空穂 夏希: 誰かの熱意が誰かに伝わって 人を動かすこともあるんだ、って
- 空穂 夏希: それって、応援にも 通じることかもと思って!
- 粟根 こころ: 誰かの熱意が誰かを動かす…
- 加賀見 まさら: …!
- 粟根 こころ: …うん、そうだね それって絶対にあるよ!
- 加賀見 まさら: …………
- 加賀見 まさら: どうして私の方を見て言うの?
- 517037-37_KaCgt [Mizuna Girls' School branch (Ria & Mayu)]
- 梢 麻友: 水名女学園 夏の名物…臨海学校
- 梢 麻友: 自由参加ですが 毎年多くの方が参加します
- 梢 麻友: そして、あの恐ろしい“事件”が起きたのは その臨海学校初日のことでした…
- 史乃 沙優希: あっ…! 来たみたいですぅ~!
- 阿見 莉愛: 麻友さん、遅いわよ!
- 梢 麻友: すみません… 準備に手間取ってしまって…
- 阿見 莉愛: 麻友さんも来たし 思いっきり遊びますわよ~!
- 史乃 沙優希: おーっ!ですぅ~!
- 月夜: …お邪魔しているようで 申し訳ないでございます…
- 阿見 莉愛: 固いこと言わないでくださる?
- 梢 麻友: せっかく同じ班なんですから 一緒に楽しみましょう
- 梢 麻友: この日 高等部の生徒は班ごとに自由時間を満喫し…
- 若菜 つむぎ: …はぁ さなも来れたらよかったのに…
- 胡桃 まなか: 仕方ありませんよ
- 胡桃 まなか: みかづき荘のみなさんと 出かける予定があるんですから
- 胡桃 まなか: それより、準備に集中しないと まだ終わってないんですよね?
- 若菜 つむぎ: …うん、まなかは自分の分、 もう終わったの?
- 胡桃 まなか: はい! これから報告に行くところです
- 七瀬 ゆきか: 作業が終わったら生徒会まで ご連絡をお願いしますっ
- 梢 麻友: 中等部の子たちは ゆきかちゃんたち高等部の生徒会と一緒に 夜に行うキャンプファイアの準備をしていました
- あの…スイカがひとつ 足りないみたいなんですが…
- 七瀬 ゆきか: えっ?取りに行ってくれる人を 探さないとっ…!
- オバケ…! オバケが出ました…!?
- 七瀬 ゆきか: オバケの対処って 生徒会の仕事なんでしょうか…?
- 梢 麻友: キャンプファイアの後片付けは 明日、高等部の生徒で行うので
- 梢 麻友: たくさん遊べる今日のうちに 海を楽しんでおこうと思っていました
- 梢 麻友: それっ…!
- 月夜: きゃっ!
- 月夜: ふふっ、冷たいでございます…!
- 史乃 沙優希: わわっ!
- 史乃 沙優希: 沙優希だって負けませんよぉ~!
- 阿見 莉愛: ふふんっ♪ 甘いわねっ!
- 阿見 莉愛: …ふぅ、そろそろ日焼け止めを 塗り直さないと…
- 阿見 莉愛: さっき終わっちゃったから 部屋から予備を取ってくるわ
- 月夜: 実は、 参加するか迷っていたのですが…
- 月夜: 来てよかったでございます
- 史乃 沙優希: とぉ~っても 楽しいですよねぇ~!
- 梢 麻友: 今夜はキャンプファイア、 明日はスイカ割り大会と
- 梢 麻友: まだまだ楽しいことが たくさんありますから
- 梢 麻友: 一緒に楽しみましょうね…!
- 月夜: はい…!
- 史乃 沙優希: …スイカ…割り…?
- 史乃 沙優希: ――っ!?
- 史乃 沙優希: ちょ、ちょっと 気になることがあるので
- 史乃 沙優希: 沙優希、失礼しますぅ~!
- 月夜: えっ…? 何かあったでございますか…?
- 梢 麻友: さ、さぁ…? 忘れ物でしょうか…?
- 梢 麻友: …えっと 私たちはどうしましょう?
- 月夜: 少し泳ぎ疲れたので、海の家で 一休みしたいでございます
- 梢 麻友: いいですね 私も喉が渇いていたんです
- 梢 麻友: あっ、でも誰もいないと 戻って来た莉愛ちゃんが困るかな
- 月夜: …確かに それは申し訳ないでございます
- 梢 麻友: 私、莉愛ちゃんを 迎えに行ってきますね
- 月夜: では、私は先に海の家に行って 席を取っているでございます
- ドサッ
- 梢 麻友: 「…ん?今のは…?」
- …………
- 梢 麻友: 「莉愛ちゃん、いますか…?」
- 梢 麻友: ―麻友― …………えっ…?
- 梢 麻友: ―麻友― 莉愛、ちゃん…?
- 梢 麻友: ―麻友― う、そ… …そ、そんな…そんなぁ…
- 梢 麻友: ―麻友― い、いやぁああああああああっ…!!
- 517038-38_KaCgt
- 梢 麻友: ―麻友― い、いやぁああああああああっ…!!
- 史乃 沙優希: 麻友ちゃん…!?
- 竜城 明日香: 今の悲鳴は…! ご無事ですか!?
- 沙優希&明日香: ――っ!?
- 沙優希&明日香: …………
- 若菜 つむぎ: 何かあったの…?
- みんな: ――っ!?
- みんな: …………
- 梢 麻友: 莉愛ちゃんが… 莉愛ちゃんが…死ん…
- 莉愛の声: …うぅ…………
- 胡桃 まなか: …死んではいない、みたいですね
- 七瀬 ゆきか: …まずは阿見センパイを 保健の先生に診せません…?
- 七瀬 ゆきか: スヤスヤ眠っています… 保健の先生は
- 七瀬 ゆきか: おそらく頭を打って 気を失ったんじゃないか
- 七瀬 ゆきか: …っておっしゃってました
- 梢 麻友: …私、莉愛ちゃんをこんな目に あわせた人が許せません…
- 梢 麻友: 必ず犯人を見つけてみせます…!
- 竜城 明日香: その必要はありません!
- 梢 麻友: …えっ?
- 竜城 明日香: なぜなら犯人は…
- 竜城 明日香: 私だからです!
- 梢 麻友: …明日香ちゃんが 莉愛ちゃんを襲ったんですか…?
- 竜城 明日香: 正確には、そこに落ちている 木刀…“名刀瓜切”が、です!
- 竜城 明日香: えいっ! やぁ!とうっ!
- 竜城 明日香: スイカ割り大会に備えて 素振りをしていたのですが…
- 竜城 明日香: 手からすっぽ抜けて 飛んで行ってしまったんです…
- 竜城 明日香: そして、その直後に 麻友先輩の悲鳴が聞こえました
- 梢 麻友: ―麻友― 木刀が落ちていたのは そういうわけだったんですね…
- 竜城 明日香: その木刀が莉愛先輩に ぶつかってしまったようです…
- 梢 麻友: …………
- 史乃 沙優希: ま、待ってくださ~い…!
- 史乃 沙優希: それなら沙優希だってぇ 犯人ですぅ~!
- 史乃 沙優希: その木刀はぁ… 沙優希のなんですぅ~…
- 梢 麻友: …そうなんですか?
- 竜城 明日香: スイカ割り大会のために お借りしました
- 史乃 沙優希: そして…そのですねぇ~…
- 史乃 沙優希: 実は、その木刀 “名刀瓜切”ではなくぅ…
- 史乃 沙優希: 呪われた木刀 “妖刀西瓜割”だったんですぅ…
- 梢 麻友: 呪われた…?
- 史乃 沙優希: 持ち主の望まないものを 叩き割ってしまう
- 史乃 沙優希: 呪われた木刀ですぅ…
- 史乃 沙優希: スイカ割り大会の話が出たとき
- 史乃 沙優希: 間違えて持って来てしまったかも って思ってぇ…
- 史乃 沙優希: あれが妖刀だとしたらぁ… 回収せねばぁ~!
- 竜城 明日香: えいっ! やぁ!とうっ!
- 史乃 沙優希: 明日香ちゃ~ん…!! 大変ですぅ~!
- 竜城 明日香: ――っ!?
- スポーンッーー…
- 史乃 沙優希: …あのとき、焦った沙優希が 声をかけたせいでぇ…
- 史乃 沙優希: 呪いが発動したんですぅ~…
- 竜城 明日香: それは違います!
- 竜城 明日香: そこで手を滑らせたのは 私の未熟ゆえ…!
- 七瀬 ゆきか: …………
- 七瀬 ゆきか: あの…元はと言えば 多分わたしのせいだと思います
- 七瀬 ゆきか: 全部わたしのトラブル体質が 引き起こした事故かと…
- 梢 麻友: 落ち着いてください…! みなさんは犯人ではありません
- みんな: …えっ?
- 梢 麻友: まず、ゆきかちゃんですが
- 梢 麻友: いつものパターンと ちょっと違う気がしませんか…?
- 七瀬 ゆきか: …………
- 七瀬 ゆきか: 言われてみると… いつもの面倒事なら
- 七瀬 ゆきか: 今ごろはわたし自身が スリリングな目に遭ってるはず…
- 梢 麻友: …やっぱりそうですよね だから違う気がするんです
- 梢 麻友: それから、明日香ちゃんと 沙優希ちゃんの木刀ですが…
- 梢 麻友: 莉愛ちゃんを襲ったのは 木刀ではないと思うんです…
- 竜城 明日香: ですが、木刀はここに…
- 梢 麻友: 木刀みたいに固いものが 飛んできて当たったのなら
- 梢 麻友: 打撲の痕が はっきり残ると思うんです
- 竜城 明日香: …確かに「頭を打ったかも?」 とは言われましたが…
- 竜城 明日香: 木刀が直撃したら もっと痛そうな痕が残るはず…
- 胡桃 まなか: なるほど、梢先輩 まるで名探偵みたいですね…!
- 梢 麻友: や、やめてください…
- 梢 麻友: えっと…ともかくですね…
- 梢 麻友: 木刀は“凶器”ではないと 思うんです…
- 胡桃 まなか: だから、史乃先輩たちは 犯人ではないということですか
- 史乃 沙優希: おおっ!沙優希犯人じゃなかった みたいですぅ~!
- 史乃 沙優希: …はれぇ? ではぁ、誰が犯人ですぅ…?
- 梢 麻友: …そうですね 考えたくないことですけど
- 梢 麻友: 魔法少女である莉愛ちゃんが
- 梢 麻友: 気を失うほどの力で 殴られたんだとすると…
- 梢 麻友: 犯人は同じ魔法少女 …ということも…
- 史乃 沙優希: そ、そんなぁ…!
- 517039-39_KaCgt
- 竜城 明日香: この部屋にいたのは、莉愛先輩 だけだったんでしょうか?
- 梢 麻友: はい…同室の4人で 浜辺へ遊びに行ったんですけど…
- 梢 麻友: 莉愛ちゃんは日焼け止めを取りに 部屋に戻っていたんです
- 七瀬 ゆきか: 確かここって… 梢センパイたちの部屋でしたね
- 史乃 沙優希: 沙優希と麻友ちゃん、月夜ちゃん あみめさんのお部屋ですぅ~…
- 梢 麻友: この部屋に、他の魔法少女が 来た可能性は…
- 若菜 つむぎ: …………
- チラッ…
- 胡桃 まなか: …………
- チラッ…
- 梢 麻友: まなかちゃんとつむぎちゃん
- 梢 麻友: お互いを気にしているようですが 何か心当たりがあるんですか…?
- つむぎ&まなか: …………
- 若菜 つむぎ: まなか、自首して!
- 胡桃 まなか: えっ!? 自首するのはつむぎさんでは!?
- 若菜 つむぎ: …私? なんで?
- 竜城 明日香: おふたりとも 何か…隠してます?
- 梢 麻友: よかったら、 話してください…
- 若菜 つむぎ: …………えっとね…
- 若菜 つむぎ: あっ、まなかと莉愛先輩だ! 何してるんだろー?
- 胡桃 まなか: はぁ…また調子に乗って!
- 胡桃 まなか: スイカのカドに頭でも ぶつければいいんです
- 若菜 つむぎ: …って言ってるのを 聞いちゃったし…
- 若菜 つむぎ: そのあと、まなかがスイカを 運んでるのを見たから…
- 史乃 沙優希: ええぇ…ほ、本当ですかぁ!? このスイカであみめさんを…
- 胡桃 まなか: いつもの軽口ですってば 本気でやるわけないでしょう?
- 胡桃 まなか: まなかは割れたスイカを見て つむぎさんを疑いましたよ…
- 若菜 つむぎ: わーい!スイカ拾っちゃった! いただきまーす!
- 阿見 莉愛: ちょっとそのスイカどうしたの? まさか盗んで…
- 若菜 つむぎ: ち、違うんです…!
- 胡桃 まなか: …食い意地の張ったつむぎさんが そんな感じで
- 胡桃 まなか: 口封じのために やっちゃったのかと…
- 若菜 つむぎ: ヒドイっ!
- 若菜 つむぎ: ただの想像じゃん! スイカを持ってたのはまなかだし
- 竜城 明日香: どちらの言い分も 証拠がないんですよね…
- 梢 麻友: う~ん、ふたりがその時間
- 梢 麻友: ここにいなかったって 証明できるといいんですけど…
- 史乃 沙優希: 犯行時刻のアリバイって やつでしょうかぁ~?
- 梢 麻友: はい、そうです
- 梢 麻友: 実はさっき、 言いそびれちゃったんですけど…
- 梢 麻友: 犯行時刻はかなり絞り込めます
- 梢 麻友: 私が部屋に入る直前に 莉愛ちゃんが倒れる音がしたので
- ドサッ
- 梢 麻友: 「…ん?今のは…?」
- 竜城 明日香: つまり、麻友先輩が悲鳴をあげた 直前に犯行が行われたと…!
- 七瀬 ゆきか: あの…でしたら、わたしが
- 七瀬 ゆきか: まなかちゃんとつむぎちゃんの アリバイを証明できますっ
- 七瀬 ゆきか: 梢センパイの悲鳴が聞こえたとき ふたりはわたしと一緒でしたっ
- 梢 麻友: 一緒…? 何をしていたんですか…?
- 七瀬 ゆきか: えっと…生徒会の仕事です 詳しく後で話しますけど…
- 胡桃 まなか: あっ、そうですよ! 3人一緒に悲鳴を聞いてます
- 若菜 つむぎ: 麻友先輩は、悲鳴をあげる直前に
- 若菜 つむぎ: 莉愛先輩が倒れた物音を 聞いてるんだから…
- 胡桃 まなか: そうです…! まなかたちに犯行は不可能です!
- 梢 麻友: …確かにそれなら、莉愛ちゃんを 襲うことはできないですね…
- 若菜 つむぎ: よかったね、まなか! 疑いが晴れたよっ…!
- 胡桃 まなか: そもそもつむぎさんが 変なことを言い出したからでは?
- 若菜 つむぎ: うっ…でも、まなかだって 挙動不審だったじゃん
- 梢 麻友: …うーん、そうなると この割れたスイカはどこから…?
- 七瀬 ゆきか: あっ…えっと その話なんですが…!
- 胡桃 まなか: 「まなかは七瀬先輩に頼まれて スイカ割り用のスイカを運んでいたんです その途中でつむぎさんを見かけて…」
- 若菜 つむぎ: お腹空いて動けない~…
- 若菜 つむぎ: 「って、へばってた私を手伝って キャンプファイア用の薪を 一緒に運んでくれたんだよねっ!」
- 胡桃 まなか: 「そのときに、運んでいたスイカを いったん近くにあったベンチに置いたんです…」
- 若菜 つむぎ: 「それから薪運びが終わって ゆきか先輩に報告していたときに 麻友先輩の悲鳴を聞いたんだよ」
- 胡桃 まなか: 「…で、スイカなんですが ベンチに置いたことを忘れてそのままに…」
- 梢 麻友: スイカを運んでと頼んだのは ゆきかちゃんだったんですか?
- 七瀬 ゆきか: はい…ひとつ足りないと 生徒会に報告があったので…
- あの…スイカがひとつ 足りないみたいなんですが…
- 七瀬 ゆきか: えっ?取りに行ってくれる人を 探さないとっ…!
- 梢 麻友: なるほど…ここにあったのは
- 梢 麻友: まなかちゃんが置き忘れた スイカだったんですね
- 胡桃 まなか: この特徴的なしま模様は 間違いありません…
- 七瀬 ゆきか: 申し訳ございませんっ わたしもすぐに気づいたんですが
- 七瀬 ゆきか: 誰がここに運んだのか 見当がつかなくて
- 七瀬 ゆきか: ぐるぐると考えているうちに 言いそびれてしまいました…
- 梢 麻友: …様子がおかしかったのは そのせいだったんですね
- 史乃 沙優希: ではぁ…結局ベンチから部屋に スイカを運んだのはぁ…?
- 胡桃 まなか: …阿見先輩が拾って 食べようとしていたのでは?
- 胡桃 まなか: そこを誰かに成敗されたとか
- 梢 麻友: そんなことはありえません! 莉愛ちゃんが拾い食いなんて…!
- 竜城 明日香: …ところで、さきほどから 気になっているんですが
- 竜城 明日香: 月夜先輩は…どこに?
- 七瀬 ゆきか: 梢センパイと 同じ部屋のはずですよね?
- 梢 麻友: ――っ!?
- 梢 麻友: いけない…! 海の家で待たせていました…!
- 胡桃 まなか: スイカを置いたベンチも 海の家の近くですが…
- 胡桃 まなか: 犯人は魔法少女…いや、まさか 明槻先輩にかぎって…
- 梢 麻友: まずは海の家に行きましょう ベンチの様子も確かめたいです…
- 517040-40_KaCgt
- 胡桃 まなか: …スイカを置いたベンチは ここなんですが…
- 月夜: う、う~ん…う~ん…
- 梢 麻友: 月夜ちゃんがうなされながら 寝ています…!
- 胡桃 まなか: …というか、気絶したところを 誰かが寝かせたのでは?
- 史乃 沙優希: はわわわ…あみめさんに続いて ふたりめの犠牲者がぁ…!?
- 梢 麻友: いえ、この様子…何か 怖いものでも見たんでしょうか?
- 七瀬 ゆきか: …オバケかもしれませんっ
- 竜城 明日香: オ、オバケ…?
- 七瀬 ゆきか: この辺りでオバケを見たと
- 七瀬 ゆきか: 中等部の方から 生徒会に報告があったんです…
- オバケ…! オバケが出ました…!?
- 七瀬 ゆきか: オバケの対処って 生徒会の仕事なんでしょうか…?
- 月夜: …うぅ…………はっ!
- 梢 麻友: 目が覚めました…? 一体何があったんですか…?
- 月夜: オ、オバケが 出たでございます…!!
- 梢 麻友: えっ…!? まさか本当に…?
- ???の声: あっ、気がついたのね
- 月夜: ――っ!?
- 月夜: また出たでございます…!?
- バタンッ…!
- 史乃 沙優希: 月夜ちゃんがまたベンチに 倒れちゃいましたぁ~…!
- 竜城 明日香: おのれオバケ! 仇を討ちます…!
- 矢宵 かのこ: ちょっと待って! 私よ、私!
- 梢 麻友: あっ、かのこちゃん…
- 月夜: う~ん…う~ん… キノコのオバケでございます~…
- 若菜 つむぎ: つまり… オバケの正体はかのこ先輩で
- 竜城 明日香: 倒れた月夜先輩のために
- 竜城 明日香: 飲み物を取りに行って 戻って来たところだったと…
- 矢宵 かのこ: …そうだけど オバケはヒドくないかしら?
- 月夜: まさか、水着だとは思わず…
- 月夜: お騒がせして 申し訳ないでございます…
- 胡桃 まなか: というか、それ水着だけど 泳げないんですよね?
- 矢宵 かのこ: ふっふっふ… 実はあれから改良を重ねて…
- 胡桃 まなか: あっ、すみません 今はそれどころじゃないので
- 七瀬 ゆきか: ともあれ オバケ騒動は解決ですね…
- 史乃 沙優希: …ところで麻友ちゃんは 何をしているんですかぁ~…?
- 梢 麻友: …ベンチを調べていました
- 史乃 沙優希: ベンチをぉ~…?
- 梢 麻友: 月夜ちゃん 確認しておきたいのですが…
- 梢 麻友: ベンチにスイカは 置いてありましたか…?
- 月夜: スイカ、でございますか…?
- 月夜: …衝撃的な出会いがあったので 記憶が少々曖昧でございますが…
- 月夜: あった気がするでございます
- 梢 麻友: あったんですね…
- 月夜: …あれ、でも今は スイカがないでございます…?
- 梢 麻友: …ふぅ すべての謎は解けました
- 梢 麻友: 莉愛ちゃんをあんな目に遭わせた 凶器はスイカです…!
- 517041-41_KaCgt
- 梢 麻友: …ふぅ すべての謎は解けました
- 梢 麻友: 莉愛ちゃんをあんな目に遭わせた 凶器はスイカです…!
- 月夜: どういうことでしょう…?
- 梢 麻友: 念のため 確認したいことがあります
- 梢 麻友: かのこちゃん
- 梢 麻友: 月夜ちゃんが倒れた直後に 私の悲鳴を聞きませんでしたか?
- 矢宵 かのこ: 悲鳴…聞いたわね あれって、あなたの声だったんだ
- 梢 麻友: ありがとうございます
- 梢 麻友: では、この事件の謎を 解いていこうと思います…
- 梢 麻友: 『日焼け止めを取りに部屋に戻った莉愛ちゃんは なんらかの理由で窓を開けました 少し暑かったのかもしれません…』
- 梢 麻友: 『そのとき…』
- 梢 麻友: ドサッ
- 梢 麻友: 『窓の外から飛んできたスイカが額に当たって 莉愛ちゃんは気を失いました』
- 梢 麻友: 『その直後…わずかな差で 木刀が飛んで来て… 莉愛ちゃんを襲ったスイカに命中 真っぷたつにしました』
- 梢 麻友: ―麻友― …そして、私が発見した この光景ができあがったんです…
- …………
- 胡桃 まなか: …どうやってスイカが 飛んできたんですか…?
- 梢 麻友: えっと…スイカが飛んできた 原因はですね…
- 梢 麻友: 『莉愛ちゃんを襲ったスイカは… ゆきかちゃんに頼まれたまなかちゃんが 運んでいる途中で…』
- 梢 麻友: 『行き倒れていたつむぎちゃんを助けるために ベンチに置き忘れてしまったものです』
- 梢 麻友: ただ、 置いた場所が悪かったんです…
- 梢 麻友: 見てください
- ギィー…
- 胡桃 まなか: このベンチ…まるで シーソーみたいに動きますね!
- 梢 麻友: 古くなって壊れていたようです…
- 若菜 つむぎ: さっきはこれを調べていたんだ…
- 月夜: ま、まさか…
- 梢 麻友: おそらく月夜ちゃんが 考えている通りです…
- 梢 麻友: 『スイカが置いてあるベンチに…』
- 梢 麻友: 『かのこちゃんに驚いた 月夜ちゃんが倒れ込んだことで てこの原理で、スイカが飛ばされたんです…』
- 梢 麻友: …そして、莉愛ちゃんのところへ 飛んでいきました…
- 矢宵 かのこ: うそ… そんなことが…
- 梢 麻友: おそらく、間違いありません…
- 梢 麻友: 次は、木刀についてですが… これはすでに判明済みです
- 梢 麻友: 『明日香ちゃんが スイカ割り大会に備えて 素振りをしていたところ…』
- 梢 麻友: 『木刀を間違えた可能性に気づいて 慌てて回収にきた沙優希ちゃんに 声をかけられて驚いてしまい…』
- 梢 麻友: 『手からすり抜けて飛んでいき 莉愛ちゃんを襲ったスイカを割ったんです』
- 梢 麻友: …これが真相だと思います
- 史乃 沙優希: な、なるほどぉ~…! 辻褄が合いますぅ~…!
- 胡桃 まなか: …いや、そんな奇跡的な偶然って あるんですか…?
- 七瀬 ゆきか: でも、ベンチの向きを考えると あの窓に向かって飛びそうですね
- 月夜: …私が 倒れたせいだったでございますね
- 矢宵 かのこ: で、その推理が正しいとして 確かめる方法は…?
- 竜城 明日香: …本人に聞く、とかでしょうか?
- 梢 麻友: あっ、そうですよね…!
- 梢 麻友: 被害者である莉愛ちゃんに 聞けばいいんです
- 胡桃 まなか: …というか、最初から そうすべきだったのでは…?
- 阿見 莉愛: …そうよ 麻友さんの推理の通り…
- 阿見 莉愛: 窓の外からスイカと木刀が 飛んできて…
- 阿見 莉愛: スイカが私に当たったの…
- 阿見 莉愛: 意識を失う直前
- 阿見 莉愛: 真っぷたつに 割れたスイカを見たわ
- 史乃 沙優希: 麻友ちゃんの推理 正解でしたねぇ~…!
- 七瀬 ゆきか: この場合、 犯人は誰になるんでしょう…?
- …………
- 梢 麻友: …犯人は、 いないんじゃないでしょうか?
- 七瀬 ゆきか: えっ…?
- 梢 麻友: 今回のことは
- 梢 麻友: 誰かひとりでも欠けたら 起こらなかったはずです…
- 梢 麻友: つまりは、偶然が起こした 不幸な事故…だと思います
- 阿見 莉愛: そうね 麻友さんの言う通りだわ
- 阿見 莉愛: だいたい、木刀は 私には当たってないんだし
- 阿見 莉愛: スイカが飛んできたおかげで 木刀を回避できたわけだから
- 阿見 莉愛: むしろ感謝すべきかもね!
- 梢 麻友: 莉愛ちゃん…
- 梢 麻友: …あっ、すみません ひとつ謎が残ってました
- 梢 麻友: 莉愛ちゃんが、どうして 部屋の窓を開けたか、です…
- 阿見 莉愛: 窓を…開けた?
- 阿見 莉愛: 私は開けてないわよ
- 阿見 莉愛: 誰かが窓を閉め忘れてたから 窓を閉めようとしていたの
- 梢 麻友: …えっ…………
- 史乃 沙優希: えっとぉ… 最後に部屋を出たのってぇ…
- 史乃 沙優希: あっ…! 来たみたいですぅ~!
- 阿見 莉愛: 麻友さん、遅いわよ!
- 梢 麻友: すみません… 準備に手間取ってしまって…
- 梢 麻友: 私、ですね… たぶん…窓を閉め忘れたのも…
- 阿見 莉愛: …麻友さんっ!!
- 梢 麻友: はわわわ… す、すみませ~ん…!!
- 梢 麻友: こうしてこの不幸な事故は… みんながみんな悪かったということで みんなで莉愛ちゃんに謝って終わりました
- 阿見 莉愛: …というか
- 阿見 莉愛: せっかくの新しい水着なのに 活躍の機会がなかったわよ!?
- 阿見 莉愛: ほとんど 気を失っていただけじゃない!!
- 517042-42_KaCgt [Kamihama Daito Housing Complex branch (Mito, Reira/Leila, Seika)]
- 伊吹 れいら: 私たちが住む神浜大東団地では 自治会のバックアップのもとで 夏休みに子どもたちが主体となって執り行う 恒例のイベントがあるの
- 伊吹 れいら: そのイベントの、今回の催し物は…
- 相野 みと: 聞いたよ!
- 相野 みと: 今回は「流しそうめん」を やるんだって!?
- 伊吹 れいら: え… もう知ってるの!?
- 相野 みと: えへへ~! 元住民だからね!
- 桑水 せいか: …私とれいらが 実行委員をやることになったの
- 相野 みと: へぇ~ そうなんだ!
- 伊吹 れいら: だから、よかったら遊びに…
- 相野 みと: 私もやる!!
- 伊吹 れいら: え…えぇっ!?
- 伊吹 れいら: それって、実行委員を 一緒にやるってこと…?
- 相野 みと: そんな楽しそうなイベント 参加するしかないでしょ!
- 相野 みと: 私も仲間に入れて!
- 桑水 せいか: で、でも…話し合いのたびに ここまで来るのは大変じゃ…
- 相野 みと: 全然へっちゃらだよ!
- 相野 みと: せっかくの夏休みだし、少しでも れいらたちと一緒にいたい!
- 桑水 せいか: みと…
- 伊吹 れいら: そっか…
- 伊吹 れいら: 私たちは3人でひとりみたいな ものだもんね…
- 伊吹 れいら: それじゃ、 みとも一緒に手伝ってくれる?
- 相野 みと: うん! もちろんだよ
- ぐすっ…ぐすっ…
- 相野 みと: あれ…?
- ぐすっ…ぐすっ…
- 相野 みと: ねぇ!泣いてる 女の子たちがいるよ?
- 伊吹 れいら: どうしたんだろう…? ちょっと行ってみよう
- 伊吹 れいら: どうしたの?
- あのね…あーちゃんが お引越ししちゃうの…
- …遠い外国へ…
- 伊吹 れいら: …?
- 伊吹 れいら: 詳しく話を聞くと この子たちは団地で育った仲良し3人組…
- 伊吹 れいら: でもこの夏、そのうちのひとり“あーちゃん”が 家族と一緒に外国へ引っ越してしまうようで…
- 伊吹 れいら: …なんだか、ちょっと前の 私たちみたいだね…
- 桑水 せいか: …だけど、外国へ引っ越すなら そう簡単に会えないよね…
- 伊吹 れいら: そっか…それだと みとのときより深刻なのかも…
- 相野 みと: 可哀想だよー! なんとかしてあげたい!
- 伊吹 れいら: うーん…引っ越しは さすがに止められないし
- 伊吹 れいら: でも、他に何かできることは… …そうだ…!
- 伊吹 れいら: ねぇ、あーちゃんは いつお引越しするの?
- あーちゃん: …2週間後ってママが…
- 伊吹 れいら: それなら、流しそうめんの イベントには参加できそうだね!
- 流しそうめん…?
- それって… 夏休みイベントの話?
- 伊吹 れいら: うん、私たちが実行委員なんだ
- 伊吹 れいら: みんなでワイワイしながら食べる そうめんは絶対に美味しいよ
- 伊吹 れいら: そこで、離ればなれになっても 忘れられないような
- 伊吹 れいら: 素敵な思い出を たっくさん作ろうよ!
- 相野 みと: あっ! そういうことかー!
- 相野 みと: それなら 絶対に参加した方がいいよ!
- 相野 みと: 私たちがとびっきり楽しい イベントにするから~!
- 伊吹 れいら: ねっ! せいかもそう思うでしょ?
- 桑水 せいか: う、うん…楽しい思い出は つらいとき心の支えになるから…
- えっと… お姉ちゃん、怒ってるの…?
- 桑水 せいか: …うっ…
- 伊吹 れいら: だ、大丈夫! ちっとも怒ってないよ!
- ふふっ… おもしろいお姉ちゃんたちだね
- あーちゃん: 私…イベントに参加したい
- あーちゃん: みんなとの思い出を 少しでも残したいから
- …そうだよね
- いいと思う! 私たちも同じ気持ちだもん
- あーちゃん: うん、ありがとう…!
- あーちゃん: お姉ちゃんたち イベント楽しみにしてるね!
- 伊吹 れいら: もちろん、任せて!
- 伊吹 れいら: こうして、あーちゃんたちの 思い出作りのための 一大プロジェクトがスタートした…
- 伊吹 れいら: …だけど…
- 伊吹 れいら: どうしよう… 全然いい案が思いつかない…
- 伊吹 れいら: 外へ出れば、何かしら アイディアが浮かぶと思ったのに
- 桑水 せいか: お笑いウルトラ流しそうめんは やっぱりダメ…?
- 伊吹 れいら: 大喜利で爆笑を取らないと 食べられないってやつ?
- 伊吹 れいら: 子どもたちには難しくないかな?
- 相野 みと: 私も 食べられなくなっちゃうよー!
- 桑水 せいか: そっか…残念…
- ミーンミンミンミーン…
- 相野 みと: ふぃ~… それにしても暑いー!
- 相野 みと: そうだ、このあいだできた ウォーターパークへ行こうよ!
- 伊吹 れいら: プール!? 今から!?
- 相野 みと: だって、暑すぎて 何も思い浮かばないよ~
- 相野 みと: ざばーん!って飛び込んで 頭冷やしたい~!
- 伊吹 れいら: …まあ、この暑さだし 気持ちはわかるけど
- 伊吹 れいら: あそこのウォータースライダー 結構、面白かったしね
- 桑水 せいか: あれでそうめん流したら すごいスピードで流れてきそう…
- 伊吹 れいら: …!! それ…面白いかも!
- 517043-43_KaCgt
- 伊吹 れいら: ウォータースライダー型の 流しそうめんって斬新じゃない?
- 伊吹 れいら: 見た目が変わるだけでも だいぶ違うと思うんだ!
- 相野 みと: うわぁ~! 楽しそうだし、涼しそー!
- 桑水 せいか: 私たちはいいけど… あの子たちも楽しんでくれるかな
- 伊吹 れいら: そうだね…
- 伊吹 れいら: メインはあの子たちだし 直接聞いてみよっか!
- ウォーター…
- スライダー…
- あーちゃん: 流しそうめん…?
- 伊吹 れいら: どう…かな…?
- みんな: おもしろそー!!
- どんな風になるの!?
- 相野 みと: えへへ、まだ秘密だよ!
- 伊吹 れいら: とにかく、喜んでもらえそうで ほっとした!
- 伊吹 れいら: 企画の方向性も決まったし より一層頑張らないと
- 伊吹 れいら: こうして、私たちは自治会長さんと一緒に 設備設置の協力を 団地のお店へお願いをしに行くことになったの
- <団地内・工務店>
- ウォータースライダー型の 流しそうめん台を作れって!?
- 伊吹 れいら: やっぱり難しいですか…?
- そうだなぁ だいぶ工夫しないとだけど…
- とは言っても、年に一度しかない 団地のビッグイベントだしな…
- みとちゃんも 遠くから来てくれてるし
- ここはなんとかしたいが…
- おっ、そうだ 現場の足場を使えばいけるな!
- よし、引き受けた!
- 相野 みと: 本当!? おじさん、ありがとー!
- 桑水 せいか: …緊張したけど なんとかなってよかった…
- 自治会長: いつも悪いね、頼んだよ
- 伊吹 れいら: さてと、お次は…
- <団地内・水道事業店>
- 今回は流しそうめんか! 風流でいいねぇ
- もうそんな時期なんだなぁ
- 伊吹 れいら: そうめん台の話を工務店さんに お願いしたんだけど
- 伊吹 れいら: 水回りのことでおじさんの協力が 欲しいって言われて…
- おう、任せときな!
- ずっとここに住んでるオレには みんな家族同然だし
- こんなときこそ協力しないとな
- 工務店の親父とタッグを組んで とんでもねぇもん作ってやるから
- 楽しみにしておきな!
- 自治会長: 悪いね、助かるよ
- なーに、いいってことよ 久々にみとちゃんにも会えたしな
- 相野 みと: えへへ、ありがとう!
- 相野 みと: これでイベントの準備は 整ったー!
- 伊吹 れいら: みと、肝心なものを忘れてる!
- 相野 みと: えっ? う~ん…なんだろう…
- 相野 みと: わかんない!
- 伊吹 れいら: それはね… 「そうめん」だよ!
- 517044-44_KaCgt
- 自治会長: さぁ、みんな…! 気合を入れて行こう!
- 伊吹 れいら: え、気合を入れるって?
- 伊吹 れいら: このあたりでは評判の 乾麺屋さんらしいですけど…
- 伊吹 れいら: 味は保証つきだって お母さんも言ってましたし…
- 自治会長: あー、行けばわかるよ…
- 自治会長: こんにちは…
- …なんの用だい?
- 桑水 せいか: …!!
- 相野 みと: な、なんだか 怖そうなおばあさん…
- 伊吹 れいら: 実はこのお店、そうめんが 美味しいって評判なんだけど…
- 伊吹 れいら: 店主が変わり者ということでも 評判らしいの…
- 伊吹 れいら: 気に入らないと どんな客でも叩き出されるとか…
- 桑水 せいか: わ…私じゃ 到底太刀打ちできる気がしない…
- 伊吹 れいら: 私から話してみる!
- うちのそうめんを ウォーターなんとかに…?
- そんな得体の知れない催しに うちのそうめんは売れないね!
- 相野 みと: ひゃあっ!?
- 桑水 せいか: …え…あの… えっと…
- 伊吹 れいら: あっ、でも… その、聞いてください
- なんだい?
- 伊吹 れいら: 確かにちょっと変わった イベントだと思うんですが…
- 伊吹 れいら: 私、どうしても 成功させたいんです
- 伊吹 れいら: 実は、このイベントを 楽しみにしてる
- 伊吹 れいら: 小さな子たちがいて
- 伊吹 れいら: その中に、もうすぐ 外国に行っちゃう子がいるんです
- 伊吹 れいら: でも、イベントが盛り上がって
- 伊吹 れいら: ここの美味しい麺を 楽しく味わうことができれば
- 伊吹 れいら: いつまでも忘れられない 思い出になると思うんです
- 伊吹 れいら: だから…今回だけでも 売っていただけませんか…?
- …………
- 伊吹 れいら: だ…だめですか…?
- …若いのにしっかりしてるね いいこと言うじゃないか
- 伊吹 れいら: へっ…?
- そういうことなら いくらでも用意してやるよ
- 自治会長: いや、たいしたものだよ なかなかの交渉力だ
- 伊吹 れいら: いえいえ、おばあさんが話せば わかってくれる人でよかったです
- 伊吹 れいら: こうして、設備や物品の交渉は ひととおり終わって…
- スライダーは こんなもんでいいかい?
- 伊吹 れいら: すごい! とってもいいと思います!
- それじゃ、水回りの方も 進めておくね
- 伊吹 れいら: よろしくお願いします!
- 伊吹 れいら: イベント開催当日に向けて 着々と準備が進行していった…
- お待たせ そうめんの納品にきたよ
- 相野 みと: そうめんがいっぱい! 少しだけ味見したらダメ?
- 伊吹 れいら: 味見って、今? そのまま食べたらお腹壊すよ!
- あーちゃん: あっ…! そうめん台ができたんだ!
- 伊吹 れいら: うん! 今日ようやく完成したの
- 大きいー!
- そうめん、どんな感じで 流れるんだろー?
- 伊吹 れいら: ふふっ! それは当日のお楽しみだよ
- ビュウゥゥウウ~
- 桑水 せいか: …! …風…強いね
- 伊吹 れいら: …そうだね
- 伊吹 れいら: …そして… イベント2日前に事件が起きたの
- 相野 みと: そ…そんな…!
- 桑水 せいか: そうめん台が…
- 伊吹 れいら: 壊れちゃった…!?
- 517045-45_KaCgt
- みんな: …………
- 自治会長: 昨日の強風のせいだな…
- 自治会長: 何かが飛んできて ぶつかったみたいだ
- 相野 みと: ど、どうしよー!?
- 伊吹 れいら: おじさんたち 一生懸命作ってくれたのに…
- こればかりは仕方ねえが… 特注の部品が壊れちまってるな
- 取り寄せるのにも時間がかかるし 開催日までに直すのは無理だな
- 桑水 せいか: だったら、イベントを 延期にするとか…
- 自治会長: 申し訳ないんだけど…
- 自治会長: 今回は会場や人手の関係で 延期は無理なんだ
- 伊吹 れいら: それに、あーちゃんも 参加できなくなっちゃうしね…
- 相野 みと: それじゃあ、どうするの…?
- 桑水 せいか: …………
- 伊吹 れいら: どうしよう…
- 伊吹 れいら: あの子たち すごく楽しみにしてたのに…
- 自治会長: そうめんは届いてるし みんなで普通に食べるしか…
- 相野 みと: 「普通にそうめんを食べる会」に 変更ってこと!?
- 相野 みと: そんなのがっかりだよ~!!
- 自治会長: 私もなんとかしてあげたいが…
- 伊吹 れいら: あの…イベント内容の変更って 何時まで待ってもらえますか?
- 自治会長: そうだなぁ…
- 自治会長: 明日中に準備を終わらせる 必要があるから…
- 自治会長: 企画を練り直すにしても 明日の12時ぐらいが限界かな
- 伊吹 れいら: わかりました 私たちでもう1回考えてみます
- 伊吹 れいら: みと、せいか
- 伊吹 れいら: いったん解散して 後でアイディアを出しあわない?
- 伊吹 れいら: 明日の朝までになんとか まとめられたら…!
- せいか&みと: わかった…!
- 伊吹 れいら: …どうしよう…
- 伊吹 れいら: 全然新しいアイディアが 浮かばない…
- 伊吹 れいら: …そうだ…! “あの人”に聞いてみよう!
- 胡桃 まなか: …なるほど なかなか厳しい状況みたいですね
- 伊吹 れいら: レシピの相談ってわけでもないし
- 伊吹 れいら: まなか先生に聞く話じゃ なかったかも…
- 胡桃 まなか: いえ、そうでもありません たとえばこんなのはどうでしょう
- 胡桃 まなか: トマトやカレーのような 変わり種のおつゆや薬味が
- 胡桃 まなか: よりどりみどりの アラカルトそうめん、とか?
- 伊吹 れいら: あっ、いいかも…! さすが先生です!
- 伊吹 れいら: そんな楽しそうな案が さっと出てくるなんて!
- 胡桃 まなか: 外食は 誰にとっても特別な経験ですし
- 胡桃 まなか: シェフの仕事というのは 調理や店の雰囲気づくり…
- 胡桃 まなか: おもてなしの心まで含めて お客さんに楽しんでもらう
- 胡桃 まなか: いわばエンターテインメントの ようなものですから!
- 胡桃 まなか: ただ、アラカルトそうめんは 少し大人向けというか
- 胡桃 まなか: 小さなお子さんには あまり刺さらない気もします
- 胡桃 まなか: もう少し遊び心が欲しいかも
- 伊吹 れいら: なるほど…遊び心…
- 胡桃 まなか: その点、ウォータースライダーは いい発想だったと思うんですが
- 伊吹 れいら: 私たち、 間違ってなかったんですね
- 伊吹 れいら: (遊び心…遊び心… うーん…)
- 伊吹 れいら: (何も解決策がないまま 夜になっちゃった…)
- ~~♪~~♪
- 伊吹 れいら: あっ…
- ピッ
- 伊吹 れいら: みと!せいか!
- 相野 みと: 何か思いついた?
- 伊吹 れいら: ううん、「子どもが楽しめる」と 「半日で準備」がネックで…
- 伊吹 れいら: ふたりは?
- 相野 みと: 私もだよ~
- 桑水 せいか: 私も…
- 伊吹 れいら: そっか…
- 伊吹 れいら: まなか先生にもらった
- 伊吹 れいら: アラカルトそうめんっていう 案があるから
- 伊吹 れいら: 自治会長に話はしておくね
- 伊吹 れいら: 明日の12時までに それ以上の案が出なかったら
- 伊吹 れいら: それでいこうか…?
- 桑水 せいか: …そうだね
- 相野 みと: うん
- <翌日>
- 桑水 せいか: 無理…何も浮かばない…!
- 相野 みと: もうすぐタイムリミットだよー!
- 伊吹 れいら: アラカルトそうめんでいくなら すぐに準備を始めたいよね
- 伊吹 れいら: これも間に合わないと…
- 伊吹 れいら: 「普通にそうめんを食べる会」に なっちゃう!
- 桑水 せいか: それだと味気なさ過ぎて そうめんの減りが悪いかも…
- 相野 みと: もし余ったら、私たちで 全部食べるってことー?
- 伊吹 れいら: 捨てるわけにもいかないし 最悪そうなるかもね…
- 桑水 せいか: …わんこそば状態…
- 伊吹 れいら: …え…?
- 伊吹 れいら: 今、なんて言った? …わんこそば…?
- 桑水 せいか: …うん…
- 伊吹 れいら: それだよ!
- 伊吹 れいら: 「わんこそうめん」大会! 盛り上がると思わない?
- 伊吹 れいら: せいかの何気ないひと言から思いついた 「わんこそうめん」案… 無事、自治会長さんのOKももらえて 私たちは準備に駆けまわった
- 伊吹 れいら: 「えっ…お椀が足りない?」
- 伊吹 れいら: 「団地のみなさんに提供してもらいます!」
- 相野 みと: はぁ…はぁ…
- 相野 みと: お椀集めミッション すっごい大変だったー
- 伊吹 れいら: ふたりともお疲れ様! おかげで数は揃えられたかな
- 桑水 せいか: …そうだ… れいら、これ
- 伊吹 れいら: ん…? 袋いっぱいに何かが入ってる…?
- 桑水 せいか: お椀と一緒に もらっちゃって…
- 相野 みと: あっ…おもちゃや かわいい雑貨が入ってる!
- 桑水 せいか: 雑貨店のおじさんが イベントの話を聞いて
- 桑水 せいか: 子どもたち向けの賞品に どうかな、って…
- 相野 みと: いろいろあるよ!? これ、みんなにあげたいね!
- 伊吹 れいら: そうだね… 勝った人だけじゃなくて
- 伊吹 れいら: 子どもたちみんなが 楽しめるように…
- 伊吹 れいら: (そう… もっと遊び心を…)
- 伊吹 れいら: そうだ…!!
- 伊吹 れいら: たくさん食べたかどうかを 競うんじゃなくて…
- 伊吹 れいら: こうしたらどうかな…?
- 517046-46_KaCgt
- <イベント当日>
- 伊吹 れいら: 「皆様、本日はお集まりいただき ありがとうございます!」
- 伊吹 れいら: 「予定していた流しそうめんは 残念ながら中止になりましたが…」
- 伊吹 れいら: 「代わりにみんなで楽しめる わんこそうめんイベントを開催いたします!」
- 『わんこそうめん』…?
- 何それ…?
- あーちゃん: 私、わんこそばなら 知ってる!
- あーちゃん: 次々とお椀におそばを入れて いっぱい食べた人が勝ちなやつ!
- 相野 みと: そー、それのそうめん版! でも、勝ち負けはなし!
- 桑水 せいか: …お、お椀の裏には
- 桑水 せいか: 数字が書いてある シールが貼ってあって
- 桑水 せいか: 獲得ポイントごとに プレゼントがもらえる…
- 相野 みと: 楽しくいっぱい食べて プレゼントをゲットしよー!
- へぇー、おもしろそう!
- 何がもらえるのかな!
- あーちゃん: わーい、楽しみ!
- 相野 みと: みんな、わくわくしてるね!
- 伊吹 れいら: 楽しみながら食べて さらにプレゼントももらえる…
- 伊吹 れいら: まなか先生の言ってた “遊び心”は残せた、かも…!
- 伊吹 れいら: その後、イベントは順調に進んで…
- あっ… ポイントがたまった!
- 相野 みと: おめでとう! はい、プレゼント!
- わーい!
- ぼくもたまったよ!
- 伊吹 れいら: はいはい!今行きまーす!
- オレも!
- あたしも!
- 桑水 せいか: せ、せわしない…!
- 伊吹 れいら: 無事、終えることができた…
- あーちゃん: おねえちゃん!
- 伊吹 れいら: あーちゃんたち…! どうだった、今日のイベント?
- とってもおもしろかった!
- そうめんをこんなに楽しく 食べたのは初めて!
- あーちゃん: 流しそうめんができなかったのは 残念だったけど…
- あーちゃん: 今日のイベントで 大切な宝物ができたんだ
- 伊吹 れいら: これは… プレゼントのヘアピンセット…
- ちょうど3つあったから 3人で分けたんだ!
- これがあれば、離れていても 寂しくないでしょ?
- あーちゃん: うん…外国で寂しくなったら このヘアピンを見て…
- あーちゃん: みんなのことを思い出すね
- 伊吹 れいら: そっか…素敵な思い出と かけがえのない宝物ができたのね
- あーちゃん: 今日のことは大人に なっても絶対に忘れない
- あーちゃん: ありがとう…みんな… それにお姉ちゃんたちも…
- あーちゃん…
- ううう…ぐすっ…
- 桑水 せいか: …なんだか… 私まで寂しくなって…うっ…
- 相野 みと: 私たちもあーちゃんのこと 絶対に忘れないよ!
- 伊吹 れいら: 次、日本に帰ってきたら また会おうね!
- あーちゃん: うん… 本当にありがとう!
- 伊吹 れいら: いろいろアクシデントもあって 大変なイベントだったけど 結果的には大成功!
- 伊吹 れいら: 団地の夕焼けを眺めながら 私たちは心の中でお祈りした
- 伊吹 れいら: たとえ遠く離れてしまっても 3人の友情がいつまでも続きますように、って
- 伊吹 れいら: そして、最後のお別れは いつもと同じように…
- 伊吹 れいら: 「バイバイ…また明日!」
- [Part 1 end]
- ---
- [Part 2 start]
- 517071-1_pVeLS [Madoka branch]
- まどか: 夏休み わたしたちは南国のリゾートへ おでかけをすることに
- まどか: これはその旅先で体験した とっても楽しくて、とってもおかしな 夏の思い出の一場面
- まどか: わぁ! ここが貸し切りエリア?
- なぎさ: 今から全部 なぎさたちのものなのです!
- ほむら: ここなら、他の人たちのことを 気にせず遊べるね
- さやか: じゃ、さっそく始めよっか
- さやか: マミさんとさやかちゃん主催! 夏の陣取り合戦!!
- 杏子: 水鉄砲を使った 陣取りゲームだっけ?
- マミ: そうよ 景品にするプレゼントは
- マミ: 各自このリゾートで買って 持ち寄る約束だったけど
- マミ: みんな持ってきたかしら?
- まどか: はい!
- まどか: とっておきのものを 見つけてきました!
- さやか: とっておきかー まどか、気合入ってるね
- まどか: うん! だって、ママと…
- まどかの母: 「忘れ物はないな?」
- まどか: 大丈夫!
- まどかの母: 「課題、覚えてるかい?」
- まどか: うん…!
- まどかの母: 「よーし、いい子だ それじゃ…」
- まどかの母: 「今しかできないことを存分に楽しんできな」
- まどか: 今しかできないことを 存分に楽しむって約束したから
- まどか: ここだけの特別な思い出を たくさん作りたい
- さやか: 存分にって 全力でってことだよね?
- さやか: じゃあ、思いっきり遊びますか!
- まどか: うんっ!
- まどか: それから、みんなが持ち寄ったプレゼントを 誰のものかわからないように集めて…
- まどか: ほむらちゃんは どんなプレゼントにしたの?
- ほむら: えっと、たぶん すごくいいものを選べたかな…?
- ほむら: (鹿目さんも、お店で 気になってそうな品だったし…)
- ほむら: (鹿目さんが用意したっていう)
- ほむら: (“とっておきのもの”も 気になるけど…)
- 杏子: ふーん… すごくいいもの、ね
- まどか: ええと、ルール説明の時間になったんだけど…
- さやか&マミ: …………
- なぎさ: ふふ~ん♪
- まどか: あとから思うと このときからみんなの様子が 少しおかしかったような気がして…
- まどか: プレゼントの山をちらちら見てたりして なんだか落ち着かない感じで…
- 517072-2_pVeLS
- マミ: みんな 水鉄砲は行き渡ったかしら?
- まどか: はい!
- さやか: 大丈夫そうだね じゃあ、まずはチーム発表!
- まどか: わたしたちが始めたのは 水鉄砲を使った陣取りゲーム
- まどか: 2人1組の3チームに分かれて 陣地を奪い合うという内容なんだ
- まどか: わたしはほむらちゃんと同じチームで
- まどか: さやかちゃんは杏子ちゃんと
- まどか: マミさんはなぎさちゃんと 一緒のチームになった
- まどか: よろしくね、ほむらちゃん!
- ほむら: う、うん…
- マミ: 次は、ルールの説明を していくわね
- まどか: ゲームのルールは… 終了時間に、いちばん多くの陣地を 占領していたチームが優勝!
- まどか: 陣地は全部で3つあって 最初は自分のチームの陣地からスタート 敵の陣地に入れば、占領できるんだけど
- まどか: 他の人に水鉄砲を当てられたら 自分の陣地に戻らなきゃいけなくて 3回当たったら、その人は退場 ふたりとも脱落したチームは負けになっちゃう
- まどか: ちなみに魔法やテレパシーは禁止だって
- まどか: 陣地を取らないと 優勝できないけど…
- まどか: ひとりで取りにいったら
- まどか: 陣地を守ってるチームに 狙い撃ちにされちゃうよね…
- まどか: でも、ふたりで行ったら 自分の陣地を取られちゃうかも?
- ほむら: …………
- まどか: 最初は陣地を取りに行くよりも まずは他のチームの子を狙って
- まどか: 人数が減ってから 陣地の取り合いになるのかな?
- まどか: ほむらちゃん、どう思う?
- ほむら: …………えっ? あ、うん…そうかも!
- ほむら: (ダメダメ…!)
- ほむら: (ゲームに集中しないと いけないのに…)
- ほむら: (鹿目さんの景品は何だろうって 考えちゃってた…)
- さやか: じゃあ、最後に…
- さやか: 各順位でもらえる景品を 決めていくよ
- まどか: 景品は 1位のチームが3つ 2位のチームが2つ 3位のチームが1つ もらえることになっていて
- まどか: どれが誰のプレゼントか 自分以外にはわからないように マミさんが景品を集めて くじ引きで順位ごとに割り当ててくれた
- マミ: 3位のプレゼントは、この箱ね
- まどか: あっ…!
- ほむら: (えっ…?)
- まどか: …………
- まどか: (…いま、3位の景品が わたしのだって)
- まどか: (みんなにバレちゃったかも…)
- さやか: 2位はこの2つで…
- さやか: 1位はこの3つだね!
- なぎさ: なぎさのがあるのです!
- 杏子: バラすなよ
- まどか: そんなやりとりをして景品を決めたあとで…
- まどか: えっと… 順位ってどう決めるんだっけ?
- さやか: 陣地の数と残り人数だよ!
- マミ: そうね、あと 全滅した場合はその順番だけど
- 杏子: 最初に全滅したチームは 3位確定ってことだな!
- マミ: 全員、自分の陣地に入ったわね?
- マミ: それじゃあ…
- マミ: 「ゲームスタート!」
- 517073-3_pVeLS
- マミ: 全員、自分の陣地に入ったわね?
- マミ: それじゃあ…
- マミ: 「ゲームスタート!」
- まどか: 頑張ろうね、ほむらちゃん!
- ほむら: う、うん…!
- ほむら: (3位には 鹿目さんが用意した景品が…)
- ほむら: (ダメ… 今は集中しなきゃ…!)
- 杏子: 隙ありだ、まどか!
- まどか: わっ…
- ほむら: 鹿目さん…!?
- マミ: 逃がさないわよ
- まどか: わわっ! いきなり当てられちゃった!?
- ほむら: 佐倉さんのチームが 巴さんたちと組んでる…?
- まどか: じゃあ、2対4ってこと…?
- マミ: ごめんなさいね、鹿目さん
- 杏子: 最初にひとつのチームを 集中して狙うのも、作戦だろ?
- まどか: 作戦…
- まどか: わたしたち、甘かったみたい…
- まどか: いきなり陣地を取るのは難しいから お互い、人数が減るまで 2チームを相手にするのかなって 思ってたんだけど
- まどか: 杏子ちゃんは マミさんに同盟を持ちかけたみたい
- 杏子: (一度に2チームと戦うのは マミだって避けたいはず)
- 杏子: (…うまくいけば1チーム減って 2位以上は決まりだしね)
- 杏子: (まっ、あたしとしては どっちと組んでもいいんだけど)
- 杏子: (マミの方が 話が早そうだったからな!)
- 杏子: マミ、組もうぜ!
- マミ: …佐倉さん?
- マミ: そうね、三つ巴になって 両方を相手するよりは…
- 杏子: 悪いね 恨みっこはナシで!
- さやか: ごめん、まどか ちょっと卑怯な気もするけど
- なぎさ: 勝負は非情なのです
- 残りライフ
- まどか:○○× ほむら:○○○ さやか:○○○ 杏 子:○○○ マ ミ:○○○ なぎさ:○○○
- まどか: きゃっ!
- ほむら: あう…
- さやか: マミさん、絶好調ですね!
- マミ: ふふっ 負けられない理由があるもの
- さやか: 負けられない、理由…?
- ほむら: また陣地に戻されちゃった…
- まどか: やっぱり2対4だとキツイね
- まどか: 普段から銃を使ってるから マミさん、上手だし…
- まどか: あ…でも、ほむらちゃんも たまに銃を使ってるよね!
- ほむら: わ、私はまだ練習中で… 全然使いこなせてないし
- まどか: そっか… わたしたちも何か作戦考えなきゃ
- ほむら: そう、だね…
- ほむら: (このまま負けたら3位…)
- ほむら: (鹿目さんの景品… ちょっと気になるけど…)
- ほむら: (…ダ、ダメ! 鹿目さん、頑張ってるのに!)
- 残りライフ
- まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○○ 杏 子:○○○ マ ミ:○○○ なぎさ:○○○
- 517074-4_pVeLS
- さやか: マミさん、いい調子だね
- 杏子: やたらと気合入ってるな
- 杏子: ありゃ本気で優勝狙ってるぞ
- さやか: そうなの?
- 杏子: …ま、あたしもだけどな!
- マミ: …………
- マミ: (…絶対に負けられないわ)
- マミ: (優勝して、なぎさちゃんの 景品を手に入れないと)
- なぎさの声: 「ふっふっふ… 面白いものを見つけたのです」
- マミ: (この声は、なぎさちゃん?)
- なぎさの声: 「この箱を開けたら、みんな びっくりするに違いないのです!」
- なぎさの声: 「開けた人の反応が楽しみなのです」
- マミ: (なぎさちゃんが用意した プレゼントは…)
- マミ: (たぶんビックリ箱か何かよね)
- マミ: (せっかくのバカンスなのに)
- マミ: (他の子が開けることになったら 可哀想だし…)
- さやか: 1位はこの3つだね!
- なぎさ: なぎさのがあるのです!
- マミ: (1位になって 私が回収しないと!)
- マミ: 悪いけど、優勝はいただくわ!
- まどか: わわっ!
- ほむら: ど、どうしよう…! このままじゃ…!
- なぎさ: マミ、頑張れなのです!
- マミ: ええ、優勝しましょう なぎさちゃん!
- なぎさ: …………
- なぎさ: (優勝…?)
- なぎさ: (優勝はちょっと困るのです)
- まどか: 私たちが追い込まれてる間に マミさんとなぎさちゃんのチームでは すれ違いが起きはじめていたみたい
- まどか: 次、当たったら わたしはもう退場だから…
- まどか: 何か作戦を考えないと!
- ほむら: えっと…
- 杏子: ぼんやり立ってると… こうだ!
- まどか: わわっ! ほむらちゃん、危ない!
- ほむら: (他のチームは無傷なのに 私たちだけ全滅しそう…)
- ほむら: (ここから逆転するのは さすがに難しいかも…?)
- まどか: ほむらちゃん
- まどか: 出だしでつまずいて 追い込まれちゃったけど
- まどか: わたしは最後まで諦めないで 優勝を狙いたい
- ほむら: 優勝…
- ほむら: (そうだよね…)
- ほむら: (まだできることが あるかもしれないのに)
- ほむら: うん…
- ほむら: どんなに不利で ダメかもしれなくても
- ほむら: 諦めるのは、もっとダメだよね
- まどか: うんっ! 最後まで全力で頑張ろう!
- ほむら: …うん
- ほむら: (鹿目さんのおかげで やっと勝負に集中できた…)
- ほむら: (巴さんのチームと 佐倉さんのチームは本来敵同士)
- ほむら: (最後まで協力し合ったまま 終わるはずがない…)
- ほむら: (私たちが簡単に倒されなければ いつか勝機が訪れるはず)
- ほむら: ―ほむら― 勝とう、鹿目さん! 優勝を目指そう…!
- まどか: ―まどか― ここから反撃開始だね
- 517075-5_pVeLS
- ほむら: ―ほむら― 巴さんたちは私が相手するから 鹿目さんは、佐倉さんと美樹さんを牽制して!
- まどか: ―まどか― うん!
- ほむら: ―ほむら― 今は守りに徹して、ここを乗り切れば きっとチャンスが来ると思うから
- まどか: ―まどか― わかった、ほむらちゃん! 陣地を守り抜こう
- 杏子: ――っ!?
- 杏子: あぶねぇ… こりゃ迂闊に近づけないね
- さやか: 窮鼠、猫を噛むってやつ?
- ほむら: いきます…!
- マミ: ――っ!?
- マミ: そうよね…簡単には 勝たせてくれないわよね
- まどか: まずは守りに徹してチャンスを待つ…
- まどか: ほむらちゃんは これ以上やられないように耐えながら 相手チームの隙をじっくり探していこうって そう言ったみたいなんだけど
- まどか: 風向きは、意外と早く変わってきた
- まどか&ほむら: …………
- さやか: …下手に近づくと こっちがやられちゃうね
- 杏子: マミも攻めあぐねてるみたいだ
- 杏子: ほむらの動きも 急によくなってきたしね
- 杏子: …と言っても、4人で囲めば 逃げ場はないよな?
- 杏子: マミ、一斉にいくぞ 援護する
- マミ: …わかったわ! なぎさちゃんも来て!
- なぎさ: …は、はいなのです!
- まどか&ほむら: ――っ!?
- ほむら: 4人で一斉に…!
- まどか: ど、どうしよう? 逃げ場がないよっ
- マミ: ふたりには悪いけど もらったわ!
- まどか: 絶体絶命のピンチ! 1発当てられたら、わたしは退場…
- まどか: そのとき、まさかの出来事が起きた
- マミ: ふたりには悪いけど もらったわ!
- ほむら: 鹿目さんっ!
- マミ: …えっ…?
- さやか: なぎさの水鉄砲が マミさんに…?
- なぎさ: ご、ごめんなさいなのです…
- 杏子: マミチームの自爆かよ 何やってんだよ?
- マミ: 誰だってミスはあるものよ 仕方ないわ
- なぎさ: …………
- さやか: …………
- さやか: (誰も気づいてないのかな?)
- さやか: (今のって… わざと味方に当てたよね…?)
- 残りライフ
- まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○○ 杏 子:○○○ マ ミ:○○× なぎさ:○○○
- なぎさ: (うぅぅぅううう~ ものすごい罪悪感なのです)
- なぎさ: (マミが優しく許してくれたので 余計に気が咎めるのです…)
- なぎさ: (でも…)
- リゾート限定チーズケーキは いかがですか?
- なぎさ: チーズケーキ…!
- マミ: 賞味期限はいつまでですか?
- 冷蔵で明後日までになります
- マミ: それじゃあ ホールのものをひとつください
- マミ: …なぎさちゃん きっと喜ぶわね
- なぎさ: マミ…!
- なぎさ: (マミがなぎさのために 用意してくれたチーズケーキ…)
- なぎさ: (なんとしてもあれを ゲットしないといけないのです)
- なぎさ: (マミは 優勝するつもりみたいですが…)
- なぎさ: (なぎさは見たのです)
- なぎさ: (…チーズケーキの箱が 2位の景品の中にあることを!)
- なぎさ: (杏子たちとの優勝争いが 始まってしまう前に)
- なぎさ: (少しハンデを付けて あげようとしたのですが…)
- なぎさ: 本当にごめんなさいなのです…
- マミ: そんなに謝らないでいいのよ 気にしてないから
- まどか: なぎさちゃん、間違えて
- まどか: マミさんに 当てちゃったみたいだね
- ほむら: うん… これで少しわからなくなったかも
- まどか: えっ、まだまだわたしたちが 不利だと思うけど…
- ほむら: 佐倉さんのチームは 今は巴さんと組んでるけど
- ほむら: 佐倉さんが一番警戒してるのは 巴さんだと思う
- ほむら: 巴さんのチームと 直接対決をする前に
- ほむら: もう少し有利にしておきたいって 気持ちが働いてくれたら…
- まどか: 銃を使えばマミさんが一番… マミさんとの付き合いが長い杏子ちゃんは 誰よりもそれを意識していたと思う それがゲームの行方を変えていくことに…
- 517076-6_pVeLS
- 杏子: …………
- 杏子: (マミはあと2回で脱落… 無傷のチームはあたしらだけか)
- 杏子: (まどかたちは壊滅寸前だし このまま一気に落とせば)
- 杏子: (あたしらとマミのチームで 優勝を争うことになるけど…)
- 杏子: (水鉄砲でマトモにやりあって マミに勝てるのか?)
- 杏子: (もう1回事故が起きれば マミは残り1発で退場になって)
- 杏子: (かなりやりやすくなるけど…)
- 杏子: ………… …………
- 杏子: …よし、やるか!
- まどか: マミさんが陣地に戻って、ゲームが再開した
- さやか: 杏子、いくよ!
- 杏子: ああ、仕切り直しだ! マミとなぎさも!
- マミ: わかったわ!
- なぎさ: はいなのです!
- まどか: また来るよ…!
- ほむら: うん
- ほむら: 今度は囲まれないように 左右に広がって
- まどか: わかった!
- マミ: そうね、さっきと同じように 動くはずがないわよね
- さやか: …マミさん、まどかはあたしが!
- マミ: ありがとう そっちは任せるわ
- 杏子: (マミの後ろがガラ空き…! …チャンスか?)
- 杏子: 悪いな、マミ!
- マミ: なっ…?
- なぎさ: えっ…?
- さやか: ちょっと、杏子!? なんでマミさんに当てたの?
- 杏子: いやー、悪いわるい
- マミ: …今のはわざとよね?
- マミ: その場所からじゃ 鹿目さんたちには届かないもの
- 杏子: 違うって言っても信じないよね?
- マミ: …同盟はここまで ということかしら
- 残りライフ
- まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○○ 杏 子:○○○ マ ミ:○×× なぎさ:○○○
- まどか: またマミさんが撃たれた…?
- ほむら: えっと、もしかすると…
- まどか: ほむらちゃんの話だと…
- まどか: マミさんは、あと1回で退場だから これまでみたいに自由には動けなくなる
- まどか: マミさんが退場すれば、残りはなぎさちゃんだけ
- まどか: わたしもあと1回当てられたら退場だから ここまで無傷の さやかちゃんと杏子ちゃんのチームが 圧倒的に優勝に近くなった
- まどか: 杏子ちゃんは、わたしたちを全滅させてから 万全のマミさんたちとぶつかるより この方が有利だって考えたみたい
- マミ: 佐倉さん… やってくれたわね
- 杏子: …ってなわけで、作戦変更だ マミたちとの同盟は解消
- 杏子: ここで一気にマミを落とす! そうすりゃ、残りはなぎさだけだ
- 杏子: なんなら今すぐ、ほむらたちと 組んでもいいかもな
- さやか: えっ…そんな… 急に?
- 杏子: 優勝したいだろ?
- さやか: う…うん… そりゃまあ…
- まどか: ところが…
- さやか: (…マズいよ!)
- さやか: (まどかには悪いけど マミさんたちと組めば)
- さやか: (2位以上は確定だと思ったから この作戦に乗ったのに…)
- まどか: …ラッピング、お店で やってもらえばよかったな
- まどか: こうして、リボンをかけて…
- さやか: …まどか、ここにいたんだ
- まどか: ――っ!?
- まどか: びっくりしたあ…!
- まどか: も、もしかして
- まどか: わたしのプレゼント 見えちゃったかな?
- さやか: うう…ごめん…
- まどか: ううん
- まどか: わたしもさやかちゃんがいること 気がつかなったから…
- さやか: それを買ったんだ?
- まどか: うんっ! 可愛いよね
- まどか: でも、みんなには内緒にしてね?
- さやか: (ハァ… まどかには言わなかったけど)
- さやか: (なんで、まどかの景品と あたしのが被ってるのよ!)
- さやか: (せっかくまどかが選んだのに 悪いよね)
- さやか: (あたしのプレゼントは 2位の景品になってるから…)
- さやか: (なんとしても2位になって 自分の景品を回収しないと)
- さやか: (杏子は優勝する気満々だし… なぎさの動きも怪しいし)
- さやか: (このままじゃ あたしたちが優勝しちゃうよ!)
- 杏子: さやか、行くぞ!
- 杏子: マミを両側から追い詰めて 仕留める!
- さやか: う…うん…!
- マミ: …来たわね
- なぎさ: いったいどうなったのですか? 杏子は味方じゃないのですか?
- マミ: 今からは敵よ
- 杏子: ほむら、まどか! どうせなら援護してくれよ!
- 杏子: マミを仕留めるまで そっちは撃たないからさ!
- まどか: ええ?
- ほむら: …巴さんが すぐにやられるとは思えない
- ほむら: 少し様子を見よう、鹿目さん
- 杏子: …ま、乗ってこないか ふたりで始めるぞ、さやか!
- さやか: (…ど、どうしよ って、やるしかないよね?)
- さやか: (まだ2位になれるかどうかも わからないんだし…)
- 杏子: マミがそっちに行った! チャンスだ!
- さやか: …!
- マミ: 遅いわ!
- さやか: あっ…
- 残りライフ
- まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○× 杏 子:○○○ マ ミ:○×× なぎさ:○○○
- 杏子: ボンヤリすんなよ…
- さやか: …ごめん
- ほむら: …………
- ほむら: (美樹さん、迷ってる…?)
- 517077-7_pVeLS
- まどか: さやかちゃんが自分の陣地に戻る間に ほむらちゃんが次の作戦を考えてくれた
- まどか: えっ、マミさんたちと組む…?
- ほむら: うん、さっき佐倉さんから 同盟を持ちかけられたけど
- ほむら: もし巴さんが脱落して
- ほむら: 私たちが佐倉さんたちと 優勝を争うことになったら…
- ほむら: たぶん勝てないと思う
- まどか: 杏子ちゃん、まだ無傷だもんね わたしは、あと1発で退場なのに
- ほむら: うん…
- ほむら: だから、今は巴さんに 生き残ってもらって
- ほむら: 佐倉さんを集中攻撃したら 3チームとも互角になると思う
- ほむら: (それに…)
- ほむら: (美樹さんの動きにも 少し迷いがあるみたいだし…)
- ほむら: 鹿目さんはもう後がないから… 危険な賭けだけど
- まどか: …………
- まどか: わかった、そうしよう!
- まどか: ほむらちゃんが言った通り やっとチャンスが来たんだし
- まどか: わたし、全力で戦いたい!
- ほむら: 鹿目さん…! うん、頑張ろう!
- 杏子: 戦闘再開だな よし、行くか!
- 杏子: …って、あれ?
- まどか: マミさん! 一緒に戦いましょう!
- ほむら: みんなで佐倉さんを狙います!
- マミ: …!
- マミ: ありがとう、助かるわ なぎさちゃん、行くわよ
- なぎさ: は、はいなのです!
- なぎさ: (よくわかりませんが 2位を確保するまでは)
- なぎさ: (ほむらたちと 組む方がよさそうなのです!)
- 杏子: くっ、そう来たか!
- さやか: あんたがマミさんを 裏切ったせいでしょ!
- 杏子: まどかのやつ…イチかバチか 突っ込んでくるなんて
- 杏子: 思い切ったね
- さやか: どうすんのよ?
- 杏子: 返り討ちにすりゃいいだろ?
- 杏子: よっと…
- なぎさ: …!
- 杏子: ちっ… 反撃するヒマが…
- 杏子: 冷たっ!?
- 杏子: マジか… くっそ、どこから撃った?
- マミ: そっちに避けると思ってたわ
- まどか: すごい! 狙い撃ち…!
- 杏子: マミかよ…やっぱりな
- 残りライフ
- まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○× 杏 子:○○× マ ミ:○×× なぎさ:○○○
- 杏子: 陣地に戻ったぞ! 再開だ!!
- まどか: マミさん、さっきと同じように!
- マミ: ええ、まだ佐倉さんたちが 有利だものね
- 杏子: やられっぱなしに なってたまるかっての!
- 杏子: さやか、援護を頼む!
- さやか: うん!
- まどか: 杏子ちゃんを狙うよ!
- ほむら: うん、私も!
- マミ: なぎさちゃんは 美樹さんを止めて!
- マミ: その間に3人で 佐倉さんを追いつめるから
- なぎさ: はいなのです!
- さやか: (…あれ、杏子 めちゃくちゃ狙われてる?)
- さやか: 恨みっこナシとか言って 全員敵に回すから…!
- さやか: (でもちょっと待って? この場合どうすれば…?)
- さやか: (まだ一応、あたしたちが リードしてるはずだけど…)
- さやか: (杏子があと1回やられたら 2位も危なくない?)
- さやか: (でも、とりあえず…)
- さやか: (こっちに向かってきた なぎさを止めないと!)
- みんな: …………
- 杏子: くっそー、3対1かよ
- まどか: 杏子ちゃん、いくよっ!
- 517078-8_pVeLS
- まどか: そのころ、さやかちゃんとなぎさちゃんは…
- さやか: …………
- なぎさ: …………
- なぎさ: (睨みあいに なってしまったのです)
- なぎさ: (いったい、何をすればいいのか なぎさには難しすぎるのです…)
- なぎさ: (ここで杏子がやられたら)
- なぎさ: (マミひとりだけでも 優勝してしまう気がするのです)
- なぎさ: (でも、マミがやられたら 2位も無理なのです…)
- なぎさ: (マミに言われたので さやかを止めに来たのですが…)
- まどか: どうしていいかわからなくて ふたりとも動けなくなってたみたいで…
- さやか: (なぎさ… やっぱり様子がおかしいよね?)
- さやか: (マミさんを後ろから撃ったり)
- さやか: (あっ…2位の景品に チーズケーキの箱があったけど)
- さやか: (もしかして… なぎさも2位狙いなんじゃ…?)
- まどか: さやかちゃんが迷って動けない間に わたしたちは、杏子ちゃんを追いつめていた
- 杏子: はぁ…はぁ… さすがにキツイな
- マミ: いつまで逃げ切れるかしら?
- 杏子: それじゃ、反撃だ!
- 杏子: さすがに速いね
- ほむら: 私もっ…!
- 杏子: ちっ… おい、さやか!
- 杏子: なぎさとにらめっこしてないで 援護してくれよ
- さやか: ――っ!?
- さやか: (しまった なぎさに構いすぎた…!)
- さやか: (杏子を守らないと 2位どころか最下位だよ!)
- さやか: ごめん、いま行く! 待ってて!
- なぎさ: あっ、待つのです!
- まどか: でも、さやかちゃんが駆けつけたときには もう遅くて…
- ビシャッ
- 杏子: …………
- まどか: あっ…当たった?
- ほむら: やった、鹿目さん…!
- さやか: 杏子…
- 杏子: あー もう少しだったのになあ
- ピーッ!
- ほむら: タイマーが…!
- マミ: …ちょうど前半戦が終わったわね
- 残りライフ
- まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○× 杏 子:○×× マ ミ:○×× なぎさ:○○○
- 517079-9_pVeLS
- まどか: そして、休憩時間…
- 杏子: おいさやか、どうしたってんだよ なぎさひとり相手に
- さやか: うん、ごめん…
- ほむら: あれっ… 美樹さんたち、どうしたんだろう
- まどか: わたし、ちょっと行ってくる!
- 杏子: ったく、勝つ気あんのか?
- さやか: いや、勝つ気はあるんだけどね… その…
- さやか: (2位狙いだったなんて 言えないし…)
- 杏子: なんでそこで 歯切れが悪くなるんだよ…
- さやか: …………
- まどか: さやかちゃん、杏子ちゃん!
- まどか: どうしたの? 何かあった?
- 杏子: いや、別に…
- 杏子: さやかのヤツ、急にやる気を なくしちまったみたいだからさ
- さやか: (心配して まどかたちも来ちゃった)
- さやか: (うん…こういうのって やっぱりよくないよね)
- さやか: (…正直に言おう)
- さやか: 杏子、ごめん! 実は2位狙いだったの!
- 杏子: …ハァ? 2位?…なんで?
- まどか: みんなの様子がちょっとおかしかったことに わたしは全然気づいてなかったんだけど…
- まどか: さやかちゃんの告白がきっかけになって みんなの思惑が少しずつ すれ違ってたことがわかって
- さやか: …あたしが用意した景品が 2位にあるんだけど
- さやか: 中身がまどかと被ってて…
- まどか: …え!?
- さやか: まどかが箱に詰めてるときに 中身が見えちゃったんだよね
- 杏子: それで2位狙いってわけか
- 杏子: 自分の箱が何位の景品かは 見ればわかるもんな
- さやか: …うん、まどかが
- さやか: とっておきを用意したって 言ってたから
- さやか: 被っちゃったのが なんか申し訳なくて…
- さやか: せっかくのまどかの景品に
- さやか: 水を差すみたいに なっちゃうなって…
- まどか: それって、わたしのために? 気にしなくてよかったのに
- 杏子: なるほどね、でも 気を回しすぎなんじゃない?
- さやか: …そうかも ごめん
- まどか: マミさんとなぎさちゃんもこっちに来て 全員揃ったところで
- まどか: 今度はほむらちゃんが…
- ほむら: あの…実は私も
- ほむら: 3位でもいいかな、なんて ちょっと思っちゃって…
- ほむら: それで集中できなくて…
- まどか: えっ、どうして?
- ほむら: それは…その… 鹿目さんの…プレゼントが…
- さやか: あー、3位は まどかの景品だもんね
- マミ: 3位のプレゼントは、この箱ね
- まどか: あっ…!
- まどか: やっぱりバレちゃってたよね…
- さやか: まどかが“とっておき”なんて 言ったから
- さやか: 期待しちゃったなー?
- ほむら: あっ…えっと… はい…
- ほむら: …ごめんね、鹿目さん
- まどか: ううん、大丈夫!
- なぎさ: …………
- なぎさ: (なぎさも謝るべきなのです…)
- なぎさ: …マミ、ごめんなさいなのです
- なぎさ: 実はあのとき…なぎさは わざとマミに当てたのです…
- マミ: えっ? どうして?
- なぎさ: 2位になりたくて…
- さやか: あっ、やっぱり…
- さやか: なぎさの狙いって チーズケーキでしょ?
- なぎさ: はいなのです
- なぎさ: マミがなぎさのために 用意してくれた景品だと
- なぎさ: 知ってしまったので…
- マミ: えっと…私が用意した景品は チーズケーキじゃないわよ?
- なぎさ: えっ…?
- なぎさ: でもあれは間違いなく チーズケーキの箱なのです!
- 杏子: 2位のチーズケーキの箱なら あたしの景品だぞ?
- 杏子: 中身はケーキじゃないけど
- なぎさ: ――っ!?
- なぎさ: ど、どういうことなのですか!?
- 杏子: 景品を入れるものがなかったから マミに箱だけもらったんだよ
- なぎさ: じゃ、じゃあチーズケーキは どこへ行ったのですか!?
- マミ: 夜、みんなで食べようと思って 冷蔵庫に入れてあるわ
- なぎさ: そ、そんな…
- 杏子: はは、みんな狙ってるものが あったんだな
- さやか: 杏子もあったの?
- 杏子: ほむらが“すごくいいもの”を 用意したらしいから、それだね
- 杏子: 優勝すれば景品3つだから そのうちのどれかだろって
- ほむら: え…
- まどか: ほむらちゃんは どんなプレゼントにしたの?
- ほむら: えっと、たぶん すごくいいものを選べたかな…?
- ほむら: (鹿目さんも、お店で 気になってそうな品だったし…)
- ほむら: (…あれは)
- ほむら: (鹿目さんが好きそうっていう 意味で…)
- 杏子: …? ま、いいけど
- 杏子: マミは普通に 1位狙いだったよな?
- マミ: ううん… 実は結構、必死だったのよ
- マミ: なぎさちゃんの ひとりごとを聞いちゃって…
- なぎさの声: 「この箱を開けたら、みんな びっくりするに違いないのです!」
- なぎさの声: 「開けた人の反応が楽しみなのです」
- なぎさ: まさか…ビックリ箱か何かだと 思ったのですか?
- マミ: えっ…違うの?
- なぎさ: 全然、違うのです!
- ほむら: 百江さんの箱は 1位の景品だったよね
- 杏子: 他のヤツに開けさせないように マミは優勝を狙ってたのか…
- さやか: 景品に惑わされずに 純粋にゲームを楽しんでたのは
- さやか: まどかだけだったわけね
- ピーッ!
- まどか: あっ、休憩はここまでだね
- マミ: さて、ここからは正々堂々と 勝負しましょう
- みんな: はいっ!
- 517080-10_pVeLS
- まどか: そして、後半戦が終わって 最後まで立っていたのは…
- マミ: …………
- 杏子: …マミ以外全滅かよ
- まどか: 終了時間前に終わっちゃったね
- さやか: やっぱ強いわ…
- マミ: 水鉄砲は私に有利だったかしら 今度は別の競技で勝負しましょ
- 最終結果
- 1位 マミ・なぎさチーム
- 2位 さやか・杏子チーム
- 3位 まどか・ほむらチーム
- ほむら: 結局3位になっちゃったね
- ほむら: 先に脱落しちゃって ごめんなさい…
- さやか: まどか、すごいよ あの状況から
- さやか: 最後の3人になるまで 残るなんて!
- なぎさ: マミと杏子とまどかが残って すごかったのです
- まどか: 最後は負けちゃったけど でも楽しかった!
- さやか: きっと、全力で楽しんだからだね
- マミ: それじゃ、みんなで
- マミ: 景品のプレゼントを 開けましょうか?
- まどか: …まさか、このあとで この日一番の驚きが待っているなんて 思ってもいなかった
- さやか: ではでは… 景品開封タイム!
- マミ: 3位の景品から 開けていきましょうか
- さやか: 3位はまどかたちのチームだね
- まどか: えへへ…これは わたしが用意したものだから
- まどか: ほむらちゃんにあげるね
- ほむら: あ、ありがとう…
- さやか: ちなみにそれ あたしと被ったやつだから
- さやか: あたしは中身を知ってるけどね
- 杏子: “とっておき”ってヤツだよな?
- まどか: うん、えへへ… ほむらちゃん、開けてみて
- ほむら: う…うん…
- パカッ
- ほむら: これは…!?
- まどか: えへへっ サガリバナのさがりんだよ!
- まどか: ご当地ゆるキャラの ぬいぐるみなんだって!
- まどか: 可愛いよね
- さやか: …確かにずっと見てると 可愛く見えてくるかも?
- まどか: えっ?
- まどか: さやかちゃんも、可愛いって 思ったから選んだんじゃないの?
- さやか: いや、あの その、あはは…
- さやか: (ごめん…ネタ枠)
- …………
- まどか: えっと、もしかして 可愛くなかった…?
- まどか: ごめんね…ほむらちゃん
- ほむら: ううん、違うの ええと…
- ほむら: …そ、それより 2位の景品も開けてみない…?
- マミ: そうしましょうか
- マミ: 2位の景品って確か、佐倉さんと 美樹さんが用意したものよね?
- さやか: あはは、これじゃ杏子との プレゼント交換みたいだよね
- さやか: あたしのは、まどかと一緒だから 杏子のやつを開けるね
- 杏子: あ…いや…
- さやか: どうしたの、杏子?
- なぎさ: チーズケーキの箱に入ってるのが 杏子のプレゼントなのです
- 杏子: あー、そうなんだけどさ…
- パカッ
- さやか: えっ…どういうこと? これ、あたしの箱じゃないよね?
- まどか&ほむら: …………
- さやか&杏子: …………
- マミ&なぎさ: …………
- まどか: まさか、みんな同じ景品を 用意してたなんて…
- さやか: …みんな、なんでこれにしたか 聞いてもいい?
- マミ: 私は、こういうとき
- マミ: お菓子とかお茶を 用意することが多いから
- マミ: たまには違うものを…と探したら 目に留まったの
- マミ: 暁美さんは?
- ほむら: その…鹿目さんがお店で じっと見てたから…
- 杏子: …なぎさは?
- なぎさ: おみやげもの屋さんにあった中で 一番へんてこりんだったのです!
- なぎさ: だから、みんな びっくりすると思ったのですが…
- まどか: えっ? そんなに変かなぁ…?
- 杏子: あたしのは、地元の子どもと 交換で手に入れたんだよ
- さやか: え、何と?
- 杏子: ゲーセンで獲ったぬいぐるみ!
- 杏子: 箱は捨てちゃったけど 買ったばかりだって言うからさ
- なぎさ: え…じゃあ
- なぎさ: それで入れるものがなくて チーズケーキの箱に!?
- まどか: …ふふふっ
- まどか: でも、面白いね こんな偶然が起きるなんて!
- マミ: 本当…ふふっ まさかよね
- ほむら: 奇跡みたいな偶然ですね
- さやか: こんなことあるんだね
- マミ: 鹿目さん、これどうぞ 暁美さんが用意したものよ
- まどか: えっ… 1位のチームが3つですよね?
- マミ: せっかくだし、みんなで ひとつずつ持てばいいと思って
- まどか: …それじゃ、遠慮なく! ありがとう、マミさん!
- 杏子: 1位の景品の残りは マミとなぎさが用意したヤツだし
- 杏子: 3チームとも、チームメイトと プレゼント交換したようなもんか
- さやか: …ま、いいんじゃない? いい思い出になったし!
- まどか: ―まどか― みんなとプレゼントを準備したり 水鉄砲で遊んだり
- まどか: ―まどか― わたしにとっては
- まどか: ―まどか― かけがえのない夏の思い出のひとつに なったと思う
- まどか: ―まどか― はっきりとそう言える理由は、そう…
- まどか: ―まどか― 最後まで、全力で楽しんだから!
- まどか: えへへ… みんなお揃いだね!
- 517081-11_pVeLS [Ashley & Riko branch]
- 千秋 理子: 今日の分の 夏休みの宿題、終わりました!
- アシュリー・テイラー: Well done!! 偉いデスネー!
- 千秋 理子: えへへっ アシュお姉さんはどうですか?
- アシュリー・テイラー: あと古文・漢文だけなのデスガ もう少しかかりそうデース…
- 千秋 理子: じゃあ、調べ物をしてきても いいですか?
- アシュリー・テイラー: Sure!
- アシュリー・テイラー: 理子が戻ってくるまでに 終わらせマスヨー!
- 千秋 理子: うーん… やっぱり、いいのがないなぁ…
- 千秋 理子: どうしよう…
- アシュリー・テイラー: 理子
- 千秋 理子: アシュお姉さん…! あれ、宿題は?
- アシュリー・テイラー: 終わりまシタヨー
- アシュリー・テイラー: なかなか戻って来ないから 様子を見に来まシタ
- アシュリー・テイラー: 探している本、 見つからないデスカ?
- 千秋 理子: 実は、本を 探しているわけじゃないんです
- 千秋 理子: 夏休みの自由研究が決まらなくて 参考になるものがあればと思って
- アシュリー・テイラー: 自由研究…?
- アシュリー・テイラー: なるほど…
- アシュリー・テイラー: 自分でテーマを決めて 内容をまとめるんデスネー
- 千秋 理子: でも、全然いいテーマが 思いつかないんです…
- アシュリー・テイラー: サイエンスの レポートみたいな感じデスヨネ?
- アシュリー・テイラー: だったら、 いいもの知ってマスヨ!
- アシュリー・テイラー: ビーチコーミングは どうでしょう?
- 千秋 理子: ビーチコーミング…?
- アシュリー・テイラー: 浜辺に流れ着いたモノを 拾って集めるんデス
- アシュリー・テイラー: 集めた漂流物を使って 展示品を作ってもいいデスシ
- アシュリー・テイラー: それについて調べてみるのも いいと思いマス!
- 千秋 理子: 面白そう…
- アシュリー・テイラー: ちょうど海に遊びに行く 予定もありマスカラ
- アシュリー・テイラー: あわせて、やってみるのも いいと思いマス!
- 千秋 理子: そうですね! やってみたいです
- 千秋 理子: ただ…
- 千秋 理子: どうやってやるのかわからなくて ちょっと不安です…
- アシュリー・テイラー: でしたら、 いいモノを見せマスヨー!
- アシュリー・テイラー: ビーチコーミングをテーマにした 映画デース!
- 千秋 理子: へぇ… 面白そう
- 千秋 理子: あっ、この監督さんって
- 千秋 理子: もしかしてアシュお姉さんの お父さんですか?
- アシュリー・テイラー: Yes!! ダディが撮った映画デス!
- アシュリー・テイラー: 娘のひいき目なしに 面白いデスヨー!
- アシュリー・テイラー: もちろん、ビーチコーミングの 参考にもなりマス!
- 千秋 理子: とっても面白かったです…!
- 千秋 理子: 主人公のお兄さんが まん丸なシーグラスを
- 千秋 理子: 友情のしるしに プレゼントするところ
- 千秋 理子: とっても素敵でした…
- アシュリー・テイラー: …気に入ってもらえて嬉しいデス
- アシュリー・テイラー: 私もそのシーン 大好きなんデスヨー
- 千秋 理子: (…あれ? でも、なんだか…)
- 千秋 理子: (アシュお姉さん、寂しそう)
- 千秋 理子: (もしかして…)
- 千秋 理子: (お父さんのことを 思い出しちゃったのかな…?)
- 千秋 理子: …………
- アシュリー・テイラー: どうかしまシタカ?
- 千秋 理子: う、ううん! なんでもないです…!
- 千秋 理子: (いつも助けてくれるし…)
- 千秋 理子: (わたしもアシュお姉さんの 力になりたいな)
- 千秋 理子: (何か、 元気になってくれるもの…)
- 千秋 理子: ――っ!?
- 千秋 理子: (そうだ…!)
- 千秋 理子: (…ビーチコーミングのときに こっそり探してみよう…)
- 517082-12_pVeLS
- アシュリー・テイラー: 海デース!
- アシュリー・テイラー: よく晴れていて 海水浴日和デスネー!
- 千秋 理子: はい!
- アシュリー・テイラー: ビーチコーミングの前に たくさん遊んじゃいまショウ!
- 千秋 理子: (泳ぎながら “アレ”…見つけたいな…!)
- ザブン…
- アシュリー・テイラー: Oh!マメジの浮き輪デスネ! とってもKAWAIIデス!
- 千秋 理子: やっぱり、マメジに そっくりですよねっ…!
- 千秋 理子: お店で見つけたときに
- 千秋 理子: 『マメジがいる』って 家族で盛り上がったんです
- アシュリー・テイラー: 理子とマメジは 海でも一緒なんデスネー
- 千秋 理子: えへへ
- 千秋 理子: ――っ!?
- 千秋 理子: (足元…海の底に貝殻が…)
- 千秋 理子: (だったら、他のものも 見つかるかも…?)
- 千秋 理子: アシュお姉さん
- 千秋 理子: ちょっとマメジ 預かっててください…!
- 千秋 理子: えいっ!
- アシュリー・テイラー: What!? 理子!?
- 千秋 理子: (う、うまく潜れない…!)
- 千秋 理子: ぷはっ!
- アシュリー・テイラー: 大丈夫デスカ!?
- 千秋 理子: あ、大丈夫です… うまく潜れませんでしたけど…
- アシュリー・テイラー: びっくりしマシタ… 急にどうしたんデスカ?
- 千秋 理子: え、えっと…
- 千秋 理子: 学校で潜水の練習をしたから 海でもできるかなぁって…
- 千秋 理子: (ご、ごめんなさい… でも、ウソではないんです…)
- アシュリー・テイラー: Umm…
- 千秋 理子: えへへ…
- アシュリー・テイラー: 海でたくさん遊んだら 水分補給も大切デース!
- アシュリー・テイラー: 少し休憩にしまショウ!
- 千秋 理子: はーい!
- 千秋 理子: (休憩しながら 浜辺も探してみよう)
- 千秋 理子: ―理子― (うーん、見つからない… どこを探せばあるんだろう?)
- 千秋 理子: ―理子― (あっ、可愛い貝殻! でも、探しているのはこれじゃなくて…)
- アシュリー・テイラー: ―アシュリー― 理子? どうしたんデスカ?
- アシュリー・テイラー: ―アシュリー― 何か落としたなら 一緒に探しマスヨ?
- 千秋 理子: ―理子― ――っ!?
- 千秋 理子: ―理子― だ、大丈夫です!
- 千秋 理子: それより そろそろ海に戻りませんか?
- アシュリー・テイラー: …そうデスネー!
- アシュリー・テイラー: …………
- アシュリー・テイラー: (もしかして 楽しめてないのでショウカ?)
- 千秋 理子: 海の家で食べるやきそばって ちょっと特別ですね
- アシュリー・テイラー: That's true! おいしかったデス!
- アシュリー・テイラー: 遊び終わって お昼も食べまシタシ
- アシュリー・テイラー: 着替えてビーチコーミングを 始めまショウカ
- 千秋 理子: はい!
- あかりの声: ちょっと! 寝ないでってば!
- 千秋 理子: …あれ?
- 由良 蛍: ん~…ちょっとだけぇ~…
- 真井 あかり: ダメ!こんなところで寝たら 熱中症になるわよ!
- 由良 蛍: それはぁ~…困っちゃうねぇ~…
- 真井 あかり: まったく、どっちが付き添いか わからないわね
- 千秋 理子: あかりちゃんだっ…!
- アシュリー・テイラー: 蛍もいマスネー!
- 千秋 理子: じゃあ、あかりちゃんたちも ビーチコーミングに来たの?
- 真井 あかり: そう、自由研究のためにね
- 由良 蛍: 私は付き添い~…
- 真井 あかり: ひとりで海に行くのは ダメだって言われて…
- 真井 あかり: でも、陽斗お兄さんは 部活の合宿だし…
- 真井 あかり: パパとママも忙しいから 蛍に頼んだの
- 千秋 理子: わたしも…
- 千秋 理子: お母さんが、アシュお姉さんと 一緒ならいいよって
- 真井 あかり: せっかくだし、一緒にやる?
- 千秋 理子: うんっ…!
- アシュリー・テイラー: では、まずは 着替えてきまショウカ
- 517083-13_pVeLS
- アシュリー・テイラー: ビーチコーミングの注意事項 覚えてマスカ?
- 千秋 理子: えっと…
- 千秋 理子: クラゲとかウミヘビとか 危ないものには近づかない
- 真井 あかり: あと、注射器とか信号弾とか
- 真井 あかり: 危険な人工物も 触っちゃダメなのよね?
- 千秋 理子: あとは…生きてるものは 獲っちゃダメなんでしたっけ?
- アシュリー・テイラー: そうデス!
- 真井 あかり: あっ、欲張って たくさん持ち帰るのもダメ
- アシュリー・テイラー: Yeah! 必要な分だけにしまショウ!
- 理子&あかり: はーい!
- 由良 蛍: アシュリーがいてくれるとぉ… すごく助かるなぁ~…
- 真井 あかり: だからってサボっちゃダメよ!
- 由良 蛍: ふわぁ~…い~…
- 真井 あかり: あくびしながら返事しないの…
- 千秋 理子: ピンク色の可愛い貝殻 いっぱい拾えたね
- 千秋 理子: なんていう貝殻なんだろう?
- 真井 あかり: 図鑑を持ってきたから 調べてみましょう
- アシュリー・テイラー: 準備がいいデスネー
- 由良 蛍: あかりはそういうところ しっかりしてるからぁ~…
- 千秋 理子: 茶色い貝は、ハマグリだね
- 真井 あかり: …なんで丸い穴が あいてるのかしら?
- 千秋 理子: 図鑑には書いてない?
- 真井 あかり: …………なさそう
- アシュリー・テイラー: それは、他の貝に 食べられちゃったからデスヨー
- 理子&あかり: えっ!?
- 由良 蛍: 二枚貝が好物の巻貝がぁ… いるんだよぉ~…
- 由良 蛍: なんて名前だったかなぁ~…
- アシュリー・テイラー: 図鑑借りマスネー
- アシュリー・テイラー: …いまシタ! この子デース!
- 千秋 理子: ツメタガイ…?
- 真井 あかり: あっ、このページには
- 真井 あかり: 二枚貝に穴をあけて食べちゃう って書いてあるわ!
- 千秋 理子: 貝って貝を食べるんだ… ちょっと怖いね
- 真井 あかり: …う、うん
- 千秋 理子: あかりちゃん 次はあっちへ行ってみよう!
- 真井 あかり: ええ!
- 由良 蛍: 元気だねぇ~…
- アシュリー・テイラー: 仲がいいのはいいことデス!
- 千秋 理子: あのね…
- 真井 あかり: 何?
- こそこそ…
- 真井 あかり: わかったわ 私も手伝ってあげる
- 千秋 理子: ありがとう!
- 真井 あかり: ちょっと向こうの方に 行って来るわ!
- 由良 蛍: ん~…いいけどぉ~… 勝手に遠くへ行かないでぇ~…
- アシュリー・テイラー: …………
- アシュリー・テイラー: (仲がいいのはいいことデス)
- アシュリー・テイラー: (でも、ちょっと 寂しいかもしれまセン…)
- 517084-14_pVeLS
- アシュリー・テイラー: …………
- 由良 蛍: ん~…どーしたのぉ~…? 疲れちゃったぁ~…?
- アシュリー・テイラー: No… 疲れたわけではないのデスガ…
- アシュリー・テイラー: 理子も同年代と 遊ぶ方が楽しそうで
- アシュリー・テイラー: ちょっと寂しく 思ってしまいまシタ…
- 由良 蛍: ん~…
- アシュリー・テイラー: Oh!理子が楽しいのは もちろん、いいことデスヨー!
- 由良 蛍: それはちょっとぉ… 違う気がするけどなぁ~…
- アシュリー・テイラー: Huh?
- アシュリー・テイラー: デスガ…遊んでいるときも 他のことが気になる様子でシタシ
- アシュリー・テイラー: 私と遊ぶのは 退屈だったのかなと思いマス…
- 由良 蛍: そーかなぁ~… 私にはそう見えなかったけどぉ…
- 千秋 理子: どうしよう… 全然見つからない…
- 千秋 理子: もうすぐ帰らないといけない 時間なのに…
- 真井 あかり: すごく珍しいものだものね…
- 千秋 理子: うん…
- 真井 あかり: …………
- 真井 あかり: …あっ、そうだ! 確か、あっちに…
- 真井 あかり: 理子さん、行こう!
- 千秋 理子: えっ…?
- 真井 あかり: 漂流物が 流れ着きやすいところがあるの!
- アシュリー・テイラー: 走り出しまシタ!?
- 由良 蛍: え~…? なんでぇ…急にぃ~…?
- アシュリー・テイラー: 追いかけまショウ!
- 由良 蛍: ん~… 見失ったらマズいもんねぇ~…
- 千秋 理子: あった! あったよ、あかりちゃん…!
- 真井 あかり: 本当だ! すごい!
- アシュリーの声: 理子! あかり!
- 理子&あかり: ――っ!?
- 真井 あかり: わっ! アシュリーさん来ちゃった!
- 千秋 理子: ど、どうしよう…! え、えっと…
- アシュリー・テイラー: 急に走り出して どうしたんデスカ?
- 千秋 理子: ご、ごめんなさい… こっち来ちゃダメ…!
- アシュリー・テイラー: えっ…?
- 由良 蛍: 追いついたぁ~… 目の届くところにぃ…
- 由良 蛍: ってぇ…気まずそうだけどぉ… どーしたのぉ~…?
- アシュリー・テイラー: …やっぱり、同年代同士の方が 楽しいデスヨネ…
- 由良 蛍: ん~…?
- 千秋 理子: えっ…!? ごめんなさい!
- 千秋 理子: そんな風に 誤解させちゃってたなんて!
- 真井 あかり: そ、そうです! 仲間はずれとかじゃなくて!
- 由良 蛍: ん~…アシュリー…
- 由良 蛍: まずはぁ…理子の話を 聞いてあげればぁ~…?
- 517085-15_pVeLS
- アシュリー・テイラー: …………
- 千秋 理子: えっと…
- 千秋 理子: 実はこれを アシュお姉さんにあげたくて
- アシュリー・テイラー: えっ、これって…
- アシュリー・テイラー: Wow!! まん丸なシーグラス、デス!
- 千秋 理子: 映画を観たあと 寂しそうだったから
- 千秋 理子: 元気になってほしくて…
- 千秋 理子: 今日、こっそり探して
- 千秋 理子: きれいに包んでから プレゼントしよう
- 千秋 理子: って思ってたんです…
- アシュリー・テイラー: 理子…
- 千秋 理子: 内緒にしててごめんなさい
- アシュリー・テイラー: 私もごめんなさいデス 誤解してまシタ…
- 千秋 理子: えっと…拾ったままだけど もらってくれますか?
- アシュリー・テイラー: Yup!! Thank you so much!
- アシュリー・テイラー: もちろんデス! 理子、ありがとうございマス!
- アシュリー・テイラー: とっても元気が出まシタ!
- 千秋 理子: えへへ よかった…
- 由良 蛍: めでたしめでたしぃ~… だねぇ~…
- 真井 あかり: 誤解されちゃってて ちょっと、ひやっとしたけどね
- 千秋 理子: あかりちゃんは 漂流物を種類ごとに分けて
- 千秋 理子: どんなものがあったか 紹介することにしたんだ?
- 真井 あかり: ええ、図鑑の受け売りに ならないようにするのが
- 真井 あかり: ちょっと大変だけど 結構、まとまってきたわ
- 千秋 理子: …本当だ! すごいね
- 真井 あかり: えへへ~…
- 真井 あかり: 理子さんは、箱の中に漂流物を 並べて浜辺を再現してるのね
- 真井 あかり: すごくかわいい…
- 千秋 理子: えへへっ 模造紙にはね
- 千秋 理子: 拾ったときの状況や 写真を載せるつもりなんだ
- 由良 蛍: お招きありがとぅ~…
- アシュリー・テイラー: ひとりでまとめるより
- アシュリー・テイラー: ふたりでまとめた方が 楽しいデス!
- アシュリー・テイラー: 私たちも見届けられマスヨー!
- 由良 蛍: ん~…そーだねぇ~…んん~…
- アシュリー・テイラー: …もしかして 寝ちゃいそうデスカ?
- 由良 蛍: ん~…すぅ…
- アシュリー・テイラー: …Oh 寝ちゃいまシタネ…
- 真井 あかり: すみません…
- 真井 あかり: 映画を観ているときは 寝ちゃわないようにするので…
- アシュリー・テイラー: 気にしてまセンヨー!
- アシュリー・テイラー: それより、自由研究の進捗は どうデスカ?
- 真井 あかり: もう少しで終わりそうです
- 千秋 理子: わたしもです…!
- 千秋 理子: あの、アシュお姉さん
- 千秋 理子: まん丸なシーグラスの写真を 撮らせてもらってもいいですか?
- 千秋 理子: 模造紙に載せたくて…
- アシュリー・テイラー: もちろん、いいデスヨ! いいカメラもありマス!
- 理子&あかり: できた!
- アシュリー・テイラー: Excellent job!! ばっちりデスネー!
- 千秋 理子: えへへ…ありがとうございます 次は映画見るんですよね?
- 真井 あかり: アシュリーさんのお父様が 撮った映画でしたっけ?
- 真井 あかり: 楽しみです…!
- 真井 あかり: あっ、蛍を起こさないと…
- アシュリー・テイラー: では、私は熊乃介を 連れてきマスネー!
- アシュリー・テイラー: 熊乃介と理子からもらった
- アシュリー・テイラー: まん丸なシーグラスと一緒に 映画鑑賞デス!
- 千秋 理子: はいっ…!
- 517086-16_pVeLS [Girls Across the Shore branch (Mel/Meru & Kanae)]
- やちよ: お買い物、つきあってくれて ありがとう
- やちよ: 二葉さん、ういちゃん
- うい: どういたしまして!
- さな: …すみません、やちよさん
- さな: ねこさん印の色鉛筆… 買ってもらっちゃって
- やちよ: 気にしないで いつも手伝ってくれてるお礼よ
- うい: えへへ…
- うい: 前からさなさんと 欲しいって話してたんだよね
- うい: これで楽しく絵が描けそう!
- さな: 私も…お話作り がんばります
- うい: それじゃ、帰ろう!
- やちよ: …………
- うい: …どうしたの、やちよさん?
- やちよ: あ、ごめんなさい なんでもないわ
- さな: ポスターを じっと見てましたけど…
- 夏の音楽フェスティバル 「神浜音楽祭」今年も開催決定!
- 新人発掘オーディションも実施! あなたのバンドも ルーキーステージに出演できるかも!?
- やちよ: 昔のことを思い出していたのよ
- さな: 昔のこと、ですか…?
- やちよ: ええ ちょうどこの場所でね…
- かなえ: …ん… 夏フェス…出られるわけ?
- やちよ: 入賞すれば出演できるみたいね …競争率、凄そうだけど
- みふゆ: でも、かなえさん… 曲とか揃うんですか?
- かなえ: ………… …今から作れば…間に合うかも
- みふゆ: えっ…本気なんです?
- さな: …そんなことが…
- やちよ: 今となっては、決して叶わない 夢になってしまったけれど…
- うい: …………
- うい: かなえさん…前に みかづき荘にいた人ですよね?
- やちよ: …ええ、かなえとメルのことは 今でも家族みたいに思っているわ
- さな: 私…どんな人たちだったのか… 詳しく聞いたこと、ないかも
- さな: …いろんなことが あったんですね
- やちよ: そうね
- やちよ: もしも運命が ほんの少し違っていたら
- やちよ: 今はもういない子たちにも 違う未来があったのかしら…?
- さな&うい: …………
- うい: …できた! 絵本、完成したね
- さな: ありがとう、ういちゃん
- うい: 今回は大変だったね いろんな人に話を聞いたし!
- さな: ちょっとヤングアダルト風? …って言うんでしょうか
- さな: こういうお話を作ったのは 初めてなので…
- さな: 取材、がんばっちゃいました
- さな: やちよさんに読んでもらうの… 少し、どきどきします
- うい: 一緒に、見せにいこう!
- 絵本のページ: そこは、「もうひとつの神浜市」…
- 絵本のページ: この世界によく似ているけれど みんなが少しだけ魔法を使える世界
- 絵本のページ: そんな世界の片隅の、とあるメイドカフェで… …おや? 何かが始まるみたいですよ
- メル: はぁ…
- 牧野 郁美: …どうしたの、メルちゃん 元気ないよぉ?
- メル: 実は…その…
- 牧野 郁美: なぁに?
- メル: ボクの占いが当たらないと ひそかに噂になってるですよ
- 牧野 郁美: えっ…そうなのぉ?
- 牧野 郁美: メルちゃんの占いコーナーは くみのお店でも大人気だし
- 牧野 郁美: 絶対当たるって 評判だったんじゃ?
- メル: 前は…そうだったんですが… …最近、調子がおかしいんです
- メル: 英語の資格を受験するっていう お客さんを占ったら
- メル: 占い結果とは逆に 不合格になったりとか…
- 牧野 郁美: メルちゃんはぁ、占いで その人の未来が見えるんだよね?
- メル: そう… それがボクの魔法の力です!
- メル: タロットを並べると 近い未来が鮮明に見えるです!
- メル: そのときも、合格になる未来が はっきり見えたのに…
- 牧野 郁美: 外れちゃったんだ…
- メル: はい…そんなのが続いたせいで 「絶対外れる」って噂が立って
- メル: 悪い結果の方が 喜ばれることもあるぐらいで…
- カランコロン
- 牧野 郁美: あっ、お帰りなさいませぇ~ ご主人様っ♪
- あっ…あの…占いコーナーって …どちらでしょう?
- 牧野 郁美: メルちゃん、出番だよっ!
- …あの、どうでした? 占いの結果は…?
- メル: うーん… 見える、見えるです
- (ごくっ…)
- 私、夫と… 仲直りできるでしょうか?
- メル: はい!
- メル: 笑顔で仲直りしている おふたりの未来が見えたですよ!
- …!
- そう…ですか…
- メル: はい、それはもう、はっきりと!
- …安心しました ありがとう…ございました
- メル: うわぁ~ん!
- 牧野 郁美: め、メルちゃん…
- メル: 今の人、ボクの占いが 絶対外れると信じてるですよ!
- メル: だから「仲直りできる」と聞いて 逆にガッカリしてたです!
- 観鳥 令: …うん、正直そう見えたよね
- 牧野 郁美: ちょっとぉ、令ちゃん! 何しれっと混ざってるの!
- 牧野 郁美: キッチンのお仕事 まだあるんじゃないのっ?
- 観鳥 令: 今日のバイトは終わり これから帰るとこだよ
- 観鳥 令: でも、困ったね…
- 観鳥 令: 安名ちゃんの魔法の力… どうなっちゃったんだろう?
- 牧野 郁美: 占い師の悩みって 誰に相談すればいいのかなぁ…?
- メル: …あっ!
- 牧野 郁美: どうしたのぉ?
- メル: そういえば最近 ボク自身を占ってなかったです!
- メル: 自分の未来を占ってみれば 何かわかるかも…?
- 観鳥 令: …なるほどね ちょっと試してみたら?
- 「お待たせしました! 神浜音楽祭ルーキーステージ いよいよ開幕です!」
- 「登場するのは、この夏の ベスト・ニューカマーこと、その名も…」
- ワァアアーッ!!!
- 牧野 郁美: …どう? 何か見えた?
- メル: はいです…
- メル: ボクたちが、バンドを組んで 夏フェスに出てたです…
- 517087-17_pVeLS
- 牧野 郁美: 神浜音楽祭の募集ページ 見つけたよっ!
- 牧野 郁美: ほんとに新人バンドでも 夏フェスに出演できるみたい!
- 観鳥 令: …いやいや、激戦を勝ち抜いて オーディション入賞が条件だよ?
- 観鳥 令: だいたいさ…
- 観鳥 令: いつもメイドカフェのステージで 歌ってる牧野チャンはともかく
- 観鳥 令: なんで観鳥さんと 安名ちゃんがバンドを…?
- メル: 理由はわかりませんが… でも、はっきり見えたです!
- メル: 郁美さんがボーカルで 令さんがドラムで
- メル: ボクと、あとひとり知らない人が ギターみたいなのを持ってたです
- 観鳥 令: それたぶん、どっちかがギターで どっちかがベースだからね?
- メル: おぉ!?…もしかして令さんは バンドの経験が?
- 観鳥 令: いや、全然ないけど?
- 牧野 郁美: 令ちゃんもメルちゃんも 素人ってことかぁ~
- 牧野 郁美: なのにオーディションで入賞して 夏フェスのステージに…?
- 観鳥 令: それが安名ちゃんの占った未来? ちょっと実現しそうもないけど…
- メル: …はい…そうですよね… 自分でもそう思うです…
- 牧野 郁美: う~ん、メルちゃんは それでいいのかなっ?
- メル: えっ…?
- 牧野 郁美: 確かに最近、占いの調子が 悪かったのかもしれないけど
- 牧野 郁美: メルちゃん自身が 信じられなくなっちゃったら
- 牧野 郁美: 誰がメルちゃんの占いを 信じてくれるのっ?
- メル: (はっ…)
- メル: そうです! 郁美さんの言う通りです!
- メル: ボクは自分の見た未来を 信じるです!
- メル: たとえ無理めの運命でも 自分たちで叶えればいいんです!
- 観鳥 令: えっ… 待って、そういう流れ?
- メル: 今からバンドを組んで 夏フェス出演を目指すです!
- 絵本のページ: そして翌日… どうやら、最後のメンバーが 現れたみたいです
- カランコロン
- 牧野 郁美: お帰りなさいませぇ~ ご主人様っ♪
- かなえ: あの…メンバー募集を見て 連絡した雪野だけど…
- メル: あーっ、この人です! 昨日見た4人目の人!
- かなえ: 昨日…見た??
- かなえ: 占いで見た未来を 実現するために、バンドを…?
- メル: そうです! 夏フェス、一緒に出ましょう!
- かなえ: …いいね… 気合…入ってる
- 牧野 郁美: かなえちゃんのパートは ギターだっけ?
- かなえ: ん…一応
- かなえ: ギターかベースの どっちか募集、ってあったから…
- メル: …と、いうことは ボクはベースですね!
- 観鳥 令: こんな雑な募集でよく来たよね…
- メル: ボクの占った未来が 実現しつつある証拠ですよ…!
- かなえ: …早速、スタジオ入る? 時間あれば…だけど
- 牧野 郁美: 時間はあるけど… でも、楽器とか…
- かなえ: スタジオで…借りればいい
- ボワ~~~~~ン
- 牧野 郁美: ~♪~♪~♪
- 牧野 郁美: あの子はキュンキュンでぇ~?
- かなえ: うん、ボーカルはいい感じ 声、ちゃんと出てるし
- かなえ: …あんまり…バンド風の 歌い方じゃないけど…
- 観鳥 令: メイドカフェの アイドルだからね…
- かなえ: で、ベースとドラムだけど…
- かなえ: …ごめん…未経験者だって 知らなかった…
- ボワ~~~~~~~~ン
- メル: もー、ボワボワうるさいです!
- かなえ: それ、アナタのベースの音… ハウってる…
- メル: ハウ…?
- かなえ: ハウリング…ノイズの一種 音量、絞れば消える
- メル: こうですか!?
- ボワ~~~~~~~~~~!!!
- 牧野 郁美: ボリューム上がったよっ!?
- 観鳥 令: 夏フェスは遠そうだね…
- ドタタタタッ…ドタタタタッタッ…
- かなえ: ん…パワーある ドラムの才能あるかも
- 観鳥 令: 単純なリズムはいいんだけどさ… ちょっと複雑なことをすると
- ドッ… ドッドッ… タタタッタ…
- メル: …一気に素人っぽく!
- 観鳥 令: いやさ、両手両足で それぞれ別のリズム刻むとか
- 観鳥 令: 人類には不可能でしょ?
- かなえ: まあ…今日が初めてだし… こんなものだと思う
- 牧野 郁美: これでオーディションに 間に合うのかなぁ~?
- 牧野 郁美: 何ヶ月かあとには 審査員の前で演奏するんだよね?
- かなえ: …この4人でも、できそうな曲… 作ってみる…
- 517088-18_pVeLS
- 絵本のページ: そんな感じで始まった、4人のバンド 演奏の方も、練習を重ねるうちに なんとか形になってきたみたいですが…?
- 牧野 郁美: ♪たとえ明日の銀河が キミのいない世界だとしても
- 牧野 郁美: ♪僕の音符はいつまでも キミを奏で続ける
- ジャーン
- ダダン!
- 観鳥 令: うん、バッチリ録れてる! いいPVが作れそう
- メル: 1次審査には サウンドと映像が必要ですからね
- メル: いい感じに編集お願いするです
- 観鳥 令: ちなみに撮影本番はまだだよ? 今日はリハーサル!
- 観鳥 令: 提出する音源も まだ完成してないしね
- かなえ: またこの格好でここに来るわけ…
- かなえ: なんか… ひとりだけメイドさんだし
- 観鳥 令: ボーカルの牧野チャンが 目立つ方が美味しいでしょ?
- 観鳥 令: メイドカフェのアイドルなんだし ガンガン推してかないとね!
- 牧野 郁美: …あ、それ 今さら気になったんだけど
- 牧野 郁美: くみって、一応デビュー済みの アイドルな気がするんだけど
- 牧野 郁美: そもそも…応募できるの?
- 観鳥 令: そこはバッチリ調査済みだよ 応募条件なし、プロでもOK!
- メル: ええっ? 新人発掘オーディションなのに?
- 観鳥 令: ガチな審査員だけで決定するから ファンの組織票もない公平審査!
- 観鳥 令: うちらの場合、アイドルが 素人とバンド組んだフリをして
- 観鳥 令: 再デビュー狙い?…とか思われて むしろ厳しく審査されそうだし
- 観鳥 令: そのへんは心配なし!
- 牧野 郁美: 逆に心配になったよっ!?
- かなえ: 要は…実力しだい…?
- 観鳥 令: そういうこと
- 観鳥 令: 明日はスタジオで練習だよね がんばろう
- ターン
- ダダトン!
- 牧野 郁美: 令ちゃん、すごい! めちゃくちゃ上手くなってる~!
- 観鳥 令: レコーディングも近いからね そろそろ仕上げないと
- 絵本のページ: でも、そんななか ちょっぴり苦戦中の子がいるようです…
- ボボボボ…ボヮーン
- メル: あー!? また同じところをミスったです!
- 牧野 郁美: メルちゃんは苦戦中だね~
- メル: ベースがこんなに大変とは 知らなかったです…
- かなえ: バンドは…ドラムとベースが命 リズムが狂うと曲が迷子になる
- メル: 今、さらっと 重圧が増した気がするですよ!
- 観鳥 令: でも、ちょっとヤバいね
- 観鳥 令: そろそろ1次審査に出す音源の レコーディングが近いし
- 観鳥 令: いっそ…ベースの録音も 雪野さんにやってもらう?
- メル: えっ?
- 牧野 郁美: かなえちゃん、ベース弾けるの?
- かなえ: ん…少しなら…
- 観鳥 令: 2次審査は 審査員の前で生演奏だから
- 観鳥 令: それまでには自分で弾けるように 練習してもらうってことで
- メル: …………
- メル: (ボクが始めたバンドなのに… ボクが足を引っ張ってる?)
- メル: …1週間 あと1週間くださいです!
- メル: ボクの未来は ボクの力で叶えるです!
- 牧野 郁美: メルちゃん…!
- 観鳥 令: …そうだよね ゴメン、安名ちゃん
- かなえ: …ふふ
- 絵本のページ: それから1週間後… はたして練習の成果は表れたでしょうか?
- ボボボボ…ボーン!
- メル: どうです!
- 観鳥 令: おー、バッチリ! 相当練習したとみたね
- メル: ふふふ…あと、かなえさんに アレンジを変えてもらったです
- かなえ: ん…ちょっとベースラインを 弾きやすくした
- 観鳥 令: なるほどね
- 牧野 郁美: 楽器の録音は終わったから あとは明日のボーカル入れだねっ
- かなえ: それじゃ…今日は解散
- かなえ: …曲のミックスとかは あたしがやっておくから
- 牧野 郁美: …………
- かなえ: (ん…ここのギターの音量… 少し下げた方がいい?)
- かなえ: (あ…そういえば… バンド名、まだ決めてない)
- かなえ: …………
- かなえ: 『…たとえ明日の銀河が キミのいない世界だとしても』
- かなえ: ここの歌詞…変えたい イマイチしっくりこない
- コツ…
- 牧野 郁美: …「キミ」を「僕」に変えたら どうかな?
- かなえ: え…?
- 牧野 郁美: …あ、何か手伝えないかと思って
- 牧野 郁美: ミックスも曲のアレンジも 全部ひとりでやってて
- 牧野 郁美: かなえちゃん 大変そうだったから…
- 牧野 郁美: バンド経験者が 他にいないからって
- 牧野 郁美: 全部ひとりで抱え込まなくても いいんだよっ?
- かなえ: …………
- かなえ: …さっきの案、いいと思う 歌詞の変更…任せていい?
- かなえ: あと…バンド名決めたいから みんなに連絡お願い
- 牧野 郁美: うんっ…!
- 絵本のページ: そんなこんなで、4人はおたがい助け合いながら レコーディングを無事に終え オーディションに応募するための映像も 完成させたのでした
- 牧野 郁美: ♪たとえ明日の銀河が 僕のいない世界だとしても
- 牧野 郁美: ♪僕の音符はいつまでも 夏を刻み続ける
- 517089-19_pVeLS
- 絵本のページ: みんなでがんばった甲斐あって バンドは1次審査を通過!
- 絵本のページ: そして迎えた、オーディション2次審査 念願の夏フェス出演をかけて とっても厳しいと評判の審査員たちの前で 練習の成果を披露します…
- 牧野 郁美: お客さん、いっぱいいるよっ!?
- 観鳥 令: 入場フリーだからね 採点するのは審査員さんだよ
- 牧野 郁美: 厳しそうな顔してるぅ~!
- 観鳥 令: ここまで残ったバンド… 結構あるみたいだね
- かなえ: 持ち時間は各バンド10分ずつ… 3日に分けて審査するって
- 牧野 郁美: ライバルがまだ そんなに残ってるの!?
- メル: あの…ところで いま気づいたんですが…
- メル: ボク、人前で演奏するの 初めてです…
- 観鳥 令: 観鳥さんもそうだな
- かなえ: ――っ!?
- かなえ: ごめん…肩ならしに… 一度はライブ入れとくべきだった
- 牧野 郁美: かなえちゃん、バンドのこと いろいろ抱え込んでたし…
- 牧野 郁美: そこまでやるのは 無理だったと思うよぉ?
- メル: うぅ…まずいです… 緊張してきたです…
- メル: バンド名も…強気すぎたです… 実力に見合ってない気が…
- 観鳥 令: そんなときは審査員も観客も ジャガイモだと思えばいいよ
- メル: そ…そうするです…!
- 次のバンドの名前は… 「ベスト・ニューカマー」?
- 最優秀新人…それがバンド名?
- ふふっ、大きく出たね
- 観鳥 令: いくぞっ!
- 観鳥 令: 「1・2・3・4!」
- 牧野 郁美: ♪知らない言葉が聞こえる みんなが昨日と違う言葉を話す
- 牧野 郁美: ♪自由落下する世界の加速度に 僕は取り残された
- かなえ: (みんな…いい感じ 練習の成果が出てる)
- かなえ: (で、次のコーラス終わりで 演奏止めて、ブレイク…)
- メル&郁美: ――っ!?
- かなえ: …!
- かなえ: (ここでブレイク? タイミング…間違えてた!)
- かなえ: (忙しくしすぎて…自分の練習 あんまりしてなかったから!)
- ボボン、ボボン
- メル: コーラス、1回増やすです! そこで今度こそブレイクです!
- 牧野 郁美: りょ~かいっ!
- かなえ: ごめん…本番で…
- 観鳥 令: 大丈夫、審査員さん 気づいてないっぽい!
- …………
- 観鳥 令: …はぁ…
- 牧野 郁美: たった10分の出番なのに 今日はすっごく疲れたよぉ~
- メル: でも、ベストは尽くしたです!
- かなえ: ごめん…あたしのミスを みんなにフォローさせちゃって
- かなえ: 大事な本番でやらかすなんて…
- メル: かなえさんは慣れないボクたちを ずっとフォローしてくれたから
- メル: 当然の恩返しです!
- かなえ: …………
- 牧野 郁美: …どうしたの?
- かなえ: いや…
- かなえ: バンドっていいな、って
- 観鳥 令: ふふっ
- メル: あとは…結果を待つのみです!
- 絵本のページ: そしてついに、ルーキーステージの 出演バンドが発表される 運命の日がやって来ました
- 絵本のページ: でも、残念ながら… 4人のバンドの名前は 読み上げられませんでした
- 517090-20_pVeLS
- メル: ぐず…悔しいです みんなでがんばったのに…
- メル: 占いが外れたのもショックですが
- メル: 入賞できなかったのが 本当に悔しくて…
- 牧野 郁美: メルちゃん…
- 観鳥 令: 本気で悔しいのは 本気でやったからなんだよね…
- かなえ: …………
- カランコロン
- 牧野 郁美: あ、お帰りなさいませぇ~ ご主人様っ♪
- あの…メルちゃん、いますか? 私、ずっと前にここで
- 英語の資格が取れるか 占ってもらったんですけど…
- メル: あー、あのときの!
- メル: …ボクは合格だって言ったのに 確か…不合格になったって…
- …はい、でも悔しくて もう1回チャレンジしたら
- 今度は受かったんです! なので、その報告に!
- メル: …え?
- 観鳥 令: じゃあ、安名ちゃんの占いは…
- 牧野 郁美: 当たってたってこと!?
- はい! そのお礼を言いたくて…
- 私のせいで、悪い評判が 広まっちゃったかもしれないから
- 占い、ちゃんと当たったよって これからみんなに宣伝します…!
- カランコロン
- こんにちは
- メル: あ…このあいだのお客さん…
- はい、夫と仲直りできるかを 占ってもらった者ですけど…
- 観鳥 令: その顔…うまくいったんですね?
- はい! 占ってもらった通りでした!
- かなえ: また当たった…?
- 牧野 郁美: メルちゃんが見た未来は やっぱり本物だったってことぉ?
- 観鳥 令: そうなるね…どっちも 何ヶ月も前の占いだけど
- 観鳥 令: あっ…まさか…
- メル: 何かわかったですか?
- 観鳥 令: いや…ただの推測だけど…
- 観鳥 令: もしかして安名ちゃん…前は 近い未来しか見えなかったけど
- 観鳥 令: 何かのきっかけで力が強まって
- 観鳥 令: 遠い未来まで 見えるようになったんじゃない?
- メル: ――っ!?
- メル: 言われてみると…前より遠くを 見ているような感覚が…
- かなえ: 占いは、外れてたんじゃなくて… すぐには実現しなかっただけ?
- 牧野 郁美: …悪い未来が 見えた人もいるんだよね?
- メル: それも実現すると思うです…
- メル: でも、そんなにひどい未来は なかったと思うです…
- 観鳥 令: それはよかった
- カランコロン
- 牧野 郁美: あ、お帰りなさいませぇ~ ]って、あれっ?
- かなえ: あの人、確か… 新人発掘オーディションの…
- ああ、審査員をしていた者だよ
- メル: あっ、ジャガイモさん?
- ジャガイモ…?
- 牧野 郁美: なんでもないです~!
- 牧野 郁美: それで…あの ご用件…でしょうか?
- うん、ベスト・ニューカマーの 溜まり場はここだと聞いてね
- 君たち、いいバンドだったよって 伝えにきたんだ
- 入賞させるには演奏力不足だし 1ヶ所、ミスってたようだけど…
- メル: バレてたですか!?
- でも、曲とセンスは光ってた 他にない個性を感じたよ
- 来年は本物の 「ベスト・ニューカマー」に
- なれるかもね
- …審査席で待ってるよ
- 郁美&令: ――っ!?
- メル&かなえ: …!
- かなえ: わざわざ…そのことを伝えに?
- メル: ありがとうです! ボクたちの手で、今度こそ
- メル: ボクの見た未来を 実現してみせるです!
- 未来を実現…いいね
- かなえ: ふっ…
- 郁美&令: ふふふっ
- 絵本のページ: こうして、4人の夏はひとまず終わりました
- 絵本のページ: それは、未来の記憶のどこか… あるいは過去の可能性のどこかに 誰かがそっとしまった夏の物語
- 絵本のページ: そこから始まる、いくつもの夢をつむぎながら 物語は眠り続けます …いつかあなたに、見つけてもらうまで
- 絵本のページ: おしまい
- やちよ: …………
- さな: あっ…あの…
- うい: どう…でした?
- やちよ: …ありがとう、ふたりとも
- やちよ: ふふ、子ども向けじゃない こんな物語も書けたのね
- さな: はい… 挑戦してみました
- うい: ちょっと違う未来があって ちょっと違う仲間がいて…
- うい: どこかの世界に、こんな夏が 本当にあるといいですよね!
- やちよ: そうね
- やちよ: …誰も知らない、どこかに
- 517091-21_pVeLS [Adjuster/Coordinator branch (Mitama & Rena)]
- レナ: ちょっとちょっと! 大ニュースよ!
- かえで: レナちゃん、どうしたの?
- レナ: 絶対に参加しないと いけないイベントができたわ!
- ももこ: それって…?
- レナ: 「“ビーチでドキドキ! 夏の創作料理大会”よ!」
- ももこ: つまり南凪区のビーチで開かれる 創作料理大会ってやつに
- ももこ: さゆさゆが審査員として 参加するってことか
- かえで: レナちゃん、自分の料理を 食べてもらいたいの?
- レナ: 違うわよ! むしろ、それは怖いけど…
- レナ: このイベントの優勝賞品が 勝者のためだけに行われる
- レナ: スペシャルライブへの 招待券なのよ!
- ももこ: へえ、そりゃ豪華だし レナとしても見逃せないな
- かえで: 「ビーチでドキドキ」って… みたまさんが好きそうな名前だね
- ももこ: 確かに…調整屋と 波長が合いそうなセンスだな
- レナ: ちょっとやめてよね!
- レナ: みたまさんが参加したら 大惨事なんだから
- ももこ: だな、調整屋には悪いけど この話は秘密にしないと
- <翌日…>
- みたま: そういえば今度南凪区で開かれる 創作料理大会に参加するのよぉ
- みたま: ビーチでドキドキ! って最高の響きよね
- レナ: お、終わった… どうしよう…
- かえで: レナちゃん…
- かえで: みたまさんだけ仲間外れは 可哀想だよ~
- レナ: ちっがうわよ! 審査員がさゆさゆなのよ!?
- かえで: えっ…? あ…!
- レナ: わかった?
- レナ: あの毒料理を さゆさゆが食べるなんて
- レナ: ぜーったいに 許されないことなんだから!
- ももこ: さゆさゆだけじゃない… 審査員全員の命にかかわるぞ
- かえで: ど、毒料理って…
- レナ: みたまさんには悪いけど 他に言いようがないでしょ?
- レナ: いったい何人の魔法少女が あの料理にやられたか…
- ももこ: あれは人が食べちゃ いけないものだよ…
- かえで: …でも、どうするの? 参加しないでなんて言えないよ…
- みたま: 何を作ろうかしら♪
- ももこ: それは、そうなんだよな…
- レナ: 困ったわね…
- 十七夜: 八雲、いるか む、十咎たちも来ていたのか
- レナ: あ…十七夜さん!
- レナ: ねえ、ももこ
- レナ: 十七夜さんにみたまさんの フォローをしてもらえないかな?
- ももこ: あー、その手があったか!
- レナ: 十七夜さん、ちょっと お願いがあるんだけど…
- みたま: 十七夜も創作料理大会に 出場してくれるなんて嬉しいわ
- 十七夜: …うむ
- ももこ: ごめん…十七夜さん! これもさゆさゆのためだ…!
- 十七夜: 人命がかかっているなら仕方ない
- 十七夜: あれを自分にフォローしきれるか いささか不安だが…
- みたま: 他の魔法少女の子も何人か 参加するって言ってたけど
- みたま: わたしと十七夜が組んだら 優勝しちゃうかもしれないわね
- レナ: え、他にも魔法少女が 参加するの?
- みたま: ええ 応援にも何人か行くみたいよ
- ももこ: それだ!
- かえで: 他の子にも、協力して もらうつもりなの…?
- みたま: …?
- <大会前日>
- ももこ: …ということで 大会に参加する人は
- ももこ: 調整屋の料理を監視して 隙を見てフォローしてくれるかな
- レナ: 明日の料理大会で 死人を出さないためにもね!
- 鶴乃: そういうことなら仕方ないね! 注意して見ておくよ!
- 阿見 莉愛: 史乃さんだけじゃなく 他の審査員も危ないですもの
- 夏目 かこ: で、できる限りの ことはします…っ!
- レナ: さゆさゆのチケットどころじゃ なくなっちゃったわね…
- かえで: みたまさんの監視で 料理してるヒマなさそうだもんね
- さな: 私たち観戦組は…?
- 純 美雨: 蒼海幇のメンバーも 一緒に見にいくし
- 純 美雨: できそうなことあれば いつでも協力するヨ
- 胡桃 まなか: 料理のアドバイスが必要なら まなかにお任せください!
- 胡桃 まなか: それに、お父さんも 審査員で参加しますので!
- ももこ: ウォールナッツのシェフも?
- レナ: 大丈夫…? 舌がおかしくなったりとか…
- ももこ: 調整屋の料理を食べないように 事前に伝えておくか?
- かえで: そんなことできるの?
- 鶴乃: だったら、さゆさゆにも 直接言えばいいんじゃ…?
- 胡桃 まなか: 審査員って 審査を拒否できるんでしょうか
- ももこ: 無理かもな… とにかく作戦会議を開くぞ!
- レナ: これなら、なんとか なるかもしれないわね!
- ももこ: それじゃあ、みんな 当日もよろしくな!
- みんな: 「おー!」
- <大会当日>
- レナ: みんな、作戦は頭に入ったわね?
- 阿見 莉愛: それは問題ないのだけど 胡桃さんがまだなのよ…
- かえで: えっ… 変な料理になりそうだったら
- かえで: うまくフォローできるように アドバイスしてもらう予定なのに
- 阿見 莉愛: 家は出てるみたいなんだけど メッセージに反応がないのよね…
- ひみかの声: あれ?みなさん お揃いでどうしたんです?
- 阿見 莉愛: あなたたちこそどうしたの?
- 眞尾 ひみか: 私は、大会で試食があると聞いて 見学に来たんですよー
- 眞尾 ひみか: で、たまたま紗枝さんたちを 見かけて一緒に
- 伊吹 れいら: 私も、まなか先生が 観戦するほどの大会なら
- 伊吹 れいら: お料理の勉強になるかも… と思って来ました!
- 桐野 紗枝: わたしも… 料理の知恵を探しに
- 桐野 紗枝: (本当は、地域の催しって聞いて 人脈目的で来たんだけど…)
- 阿見 莉愛: でしたら、彼女たちにも 協力してもらいませんこと?
- ももこ: そうだね 人数は多い方が助かるよ!
- 眞尾 ひみか: よくわかりませんが 私たちで力になれるなら!
- 眞尾 ひみか: ね、紗枝さんっ
- 桐野 紗枝: え、あぁ…もちろん
- ももこ: じゃあ、気張っていこう!
- 517092-22_pVeLS
- 枇々木 めぐる: 「さてさて始まりました! ビーチでドキドキ!夏の創作料理大会!」
- 枇々木 めぐる: 「司会進行は南凪自由学園放送部の 枇々木めぐるが、水着で料理するみなさんに 負けないハイテンションでお届けします!」
- 枇々木 めぐる: 「今回、審査員を務めますのは 話題の刀剣愛ドルこと史乃沙優希さん 洋食の名店・ウォールナッツのシェフなど… 地域の様々な方にご協力いただいています!」
- 史乃 沙優希: よろしくお願いしますですぅ~
- かえで: 遂に始まっちゃうね… 緊張してきたぁ…
- レナ: あの作戦は 忘れていないわね?
- ももこ: あぁ、開始したら調整屋の 用意した食材をすり替える
- かえで: みたまさんたちの 隣のブースになれてよかったね
- ももこ: 十七夜さんからの情報で 事前に聞いた範囲だと
- ももこ: やばそうなものばっかり だったからな…
- 枇々木 めぐる: 「ルールはいたってシンプル! 海の幸をメインにした料理を 1時間以内に完成させること!」
- 枇々木 めぐる: 「それ以外は基本的になんでもあり! まさに料理のバーリトゥード大会!」
- 枇々木 めぐる: 「さてさて、この南凪のビーチで ベストオブサマーシェフに輝くのは誰なのか! ビーチでドキドキ!夏の創作料理大会…」
- 枇々木 めぐる: 「いま…いよいよスタートです!」
- みたま: それじゃあ、食材オープン!
- 十七夜: なっ…八雲、事前の話と 違ってないか…?
- みたま: 今朝になって思いついてね いろいろ追加しちゃった♪
- みたま: お魚も足りなかったから 朝釣りしてきたのよぉ
- 枇々木 めぐる: 「おーっと、この食材は…な、なんだぁ!? 八雲・和泉ペアがロケットスタートかぁ!?」
- ももこ: あぁ…! もう想定外のことが起き始めた!
- レナ: なんか、ヤバい色の ソースがあるんだけど!?
- かえで: れ、レナちゃん… あれまずいよ!
- レナ: はぁ? あれってどれ?
- レナ: 見た目から全部ヤバいんだけど
- かえで: あの大きなイモ! 生のキャッサバだよあれ!
- レナ: 何よそれ、見た目的には 変わったイモってくらいだけど
- かえで: えっと、タピオカとかの 原料なんだけど…
- かえで: 料理の方法を間違えると 猛毒の植物なんだよぉ!
- ももこ: いや…そんなの どこで手に入れてきたんだよ…
- 鶴乃: それだけじゃないよ! あの魚、どう見てもフグだよね!
- 鶴乃: フグ毒は本当に シャレにならないよ!?
- 鶴乃: 調理には免許がいるはずだし 絶対に止めないと!
- レナ: ちょっと! 運営のチェックとかないわけ!?
- 鶴乃: さっき釣ってきたみたいだし チェックから漏れたのかも…?
- 夏目 かこ: サプライズ食材が ふたつとも猛毒だなんて…!
- 阿見 莉愛: どうにかして食材を 差し替えないと大変よ!
- レナ: さっそく想像を超えてきたけど なんとかなるんじゃない?
- レナ: 食材をすり替えるっていう目的は 変わってないんだから!
- ももこ: あぁ、客席の仲間と一緒に この危機を乗り越えるぞ!
- ももこ: そっちの準備は大丈夫か?
- 純 美雨: 事情はわかたネ みたまの気を客席に逸らすヨ
- さな: ただ、胡桃さんがまだ来ないのが 気がかりですね…
- ももこ: だな…とりあえず今は 自分たちでできることをしよう!
- 鶴乃: ねぇ、みたま! 客席で騒ぎが起きてるよ!
- みたま: ええっ!? 何かあったのかしら?
- 鶴乃: レナ! 今だよ!
- レナ: 任せて!
- レナ: キャッサバは山芋に 差し替えたわ!
- かえで: フグも、カワハギに 入れ替えてきたよ…!
- ももこ: バレなきゃいいけど… 調整屋が疑う様子はないな
- みたま: 次はこれを入れて…と
- 枇々木 めぐる: 「おっと、八雲・和泉ペアの鍋から 何やら毒々しいにおいが…! もしやこれは、彼女たちの隠し味… 秘伝のスパイスなのでしょうか!?」
- レナ: 十七夜さんがフォローしてるけど
- レナ: みたまさんが何かするたびに ひどくなってるわね
- かえで: 毒じゃないかもしれないけど すごい色のスープだよぉ…
- 阿見 莉愛: あれをどうにかできるのは もはや胡桃さんだけね
- 鶴乃: そうだね… いったいどうしちゃったんだろう
- 眞尾 ひみか: それなら私たちが 探してきましょうか!
- 伊吹 れいら: これだけ遅れてるってことは 何かあったのかもしれませんし
- 桐野 紗枝: そろそろ時間にも余裕が なくなってきたから…
- ももこ: ああ、助かるよ…!
- ももこ: こっちも、十七夜さんの フォローに回ろう!
- 517093-23_pVeLS
- かえで: フォローって言うけど 結構難しいよぉ…
- かえで: 私たち、みたまさんとは 別のチームだから
- かえで: 堂々とやるわけにもいかないし…
- さな: それなら 私に任せてください…っ!
- さな: 私なら消えられるので バレずにできます…っ
- レナ: それじゃあ、レナは十七夜さんの 姿になってフォローするわ
- ももこ: それ、十七夜さんがふたりとか そういうことにならないか?
- レナ: はぁ、バカにしてるの? バレないようにやるわよ!
- みたま: あらぁ…このお鍋 いつの間に火が消えてたのかしら
- 十七夜: 八雲、自分はあちらで食材を 切ってくる
- みたま: ええ、わかったわぁ なんだかテキパキ進んでるわねぇ
- 十七夜(レナ): み…八雲、こちらの味つけを 少し整えておいたぞ
- みたま: えぇっ、十七夜!? さっき食材を切りにいったんじゃ
- 十七夜(レナ): そんなのはすぐに終わった 八雲は少し休んでいても…
- 枇々木 めぐる: 「な、なんと八雲選手! ケチャップ&チョコを鍋にイン! 我々が見ているのはビーチの料理革命か… はたまた滅びの瞬間なのかぁー!?」
- 十七夜(レナ): ムリムリムリ!
- 十七夜(レナ): もう、みたまさんに 何もさせたくないんだけど!
- ももこ: それができたら 苦労はしないんだよな…
- 十七夜(レナ): ももこ、敵情視察って感じで みたまさんの気を引いて!
- 十七夜(レナ): その間に、さなと一緒に なんとかするわ!
- ももこ: あぁ、やってみる
- ももこ: よっ、調整屋 そっちの様子はどう?
- みたま: きゃっ…なんだ、ももこね びっくりしたわぁ
- ドボボボボ…
- ももこ: お、おい調整屋…手元!
- みたま: あらやだ、びっくりして 激辛ソースがこんなに…
- 枇々木 めぐる: 「十咎選手のバッドタイミングな声掛けにより 鍋に解き放たれたのは恐ろしい量の激辛ソース! この偶然がもたらすのは料理の女神の微笑みか それとも暗黒微笑かぁ!?」
- 鶴乃: (あれっ…魔力…?)
- みたま: まぁ、これくらい大丈夫よぉ それより、ももこの方はどう?
- みたま: …って あんまり進んでないのね?
- かえで: あー…えっと… そうなんだよねー…あはは
- みたま: こっちは順調なんだけどぉ… 何かが足りない気がするのよね
- みたま: あっ…
- ももこ: 調整屋、どうかしたか?
- みたま: ひらめいた…!
- みたま: わたし、海に食材を 捕りに行ってくるわぁ!
- ももこ: はぁ…!? おい、何するつもりだ…!?
- さな: わ、私…隠れてあとを 追いかけておくので…
- さな: そっちはよろしくお願いします!
- ももこ: わ、わかった!
- レナ: …ねぇ! これってチャンスじゃない?
- レナ: みたまさんがいない今のうちに 食べられる料理にするわよ!
- かえで: でも、みんなでやったら さすがに怪しまれない?
- 阿見 莉愛: お任せなさい! 打ち合わせしたでしょう?
- 阿見 莉愛: 私の“隠蔽”の魔法で みんなの目を誤魔化すわ
- 純 美雨: そしてすべてが終わった後に ワタシの“偽装”の魔法で
- 純 美雨: 審査員からは、みたまたちが 普通に料理を続けていたように
- 純 美雨: 事実を偽装するヨ
- 夏目 かこ: 誰も気づいてないみたいです…!
- レナ: ありがと! まなかがいないのは痛いけど…
- レナ: レナたちでできるところまで 全力を尽くすわよ!
- みんな: おー!
- かえで: 私たちの料理は 全然進んでないし…
- かえで: 本当にビーチでドキドキに なっちゃったよぉ
- みたま: さて…と これでいいかしらぁ?
- さな: えっ…ええっ…!?
- さな: あぁぁ…みんなに 早く伝えないと…!
- 517094-24_pVeLS
- 十七夜: …できうる限りのことは したと思うが…わからんな
- かえで: 誰も味見はしてないけど… しなきゃ、だよね…?
- ももこ: 元が元だからな でも、やるしかないか…
- レナ: …レナがやる
- ももこ: なっ!? おい、やめとけよレナ…
- レナ: これは、レナが始めたことよ
- レナ: さゆさゆを守るためなら レナのお腹くらい…!
- まなかの声: ストーップ!
- 阿見 莉愛: 胡桃さん…! まったく大遅刻ですわよ
- 胡桃 まなか: すみません、つむぎさんに 捕まって…というのは今いいです
- 胡桃 まなか: 話は聞かせてもらいました
- 胡桃 まなか: さっそくですが、ここまで 何を使ってどうしたのか
- 胡桃 まなか: 記憶している方は いらっしゃいますか?
- 夏目 かこ: 全部は覚えていませんけど… 私の“再現”の力を使えば…
- 胡桃 まなか: それじゃあ、お願いします
- 夏目 かこ: ど、どうでしょう…
- レナ: どうにかなりそう…?
- 胡桃 まなか: …無理ですね まなかの理解を超えています
- 阿見 莉愛: なんとかできないの!?
- 胡桃 まなか: 食材の組み合わせが斬新すぎて 味の想像がつきません
- 胡桃 まなか: これをどうにかするぐらいなら 全部捨てて最初から作り直します
- 胡桃 まなか: なんとか料理の形を保ってるのが ある意味奇跡ですね
- 十七夜: くっ…もはやここまでか…
- レナ: そんな…
- 胡桃 まなか: とは言え、みなさんのおかげで 生焼けなどはないですし
- 胡桃 まなか: 毒になるようなものもないので 食べて死ぬようなことはないかと
- 胡桃 まなか: 一応、これなら 食べることはできるはずです
- 胡桃 まなか: これ以上、下手に 手をくわえなければ…ですが
- 鶴乃: ほんと!?
- 胡桃 まなか: ええ、まなかのお父さんも 審査員席にいますから
- 胡桃 まなか: まなかにとっても 他人事ではありませんし
- 胡桃 まなか: ここはまなかがひとつ 味見をしてみましょうか
- ももこ: いや、それはやめた方が…!
- パクッ…
- かえで: た、食べちゃった…!
- 胡桃 まなか: …………
- レナ: 無言なのが怖いんだけど!?
- 枇々木 めぐる: 「制限時間も残りわずかとなってきましたが それぞれ状況はどうでしょうか…!?」
- 枇々木 めぐる: 「おっと、過激な料理で終始注目を集めてきた 八雲・和泉ペアの方から、香り立つ芳香が… これはベストオブビーチクッキングの予感!」
- 鶴乃: あれっ…またこの魔力? これって、もしかして…
- さなの声: み、みなさーん…!
- さな: はぁ…はぁ…みたまさんが そろそろ…帰ってきます…っ!
- さな: それから…
- レナ: 大変…! みんな、早く元の位置に!
- 純 美雨: ワタシも、急いで審査員に 魔法をかけてくるヨ!
- さな: あ、あの…みたまさんが その…大変なものを…
- さな: き…聞こえてない… どうしよう…
- みたま: 戻ったわよぉ♪
- みたま: あら、なんだかいい匂い 十七夜がやってくれたの?
- 十七夜: …まぁな
- 十七夜: …って、待て八雲 その手に持っているものは何だ
- みたま: 獲れたての海の幸よぉ
- 十七夜: 自分の目が狂っていなければ それはナマコとフジツボ…か?
- みたま: うふふ、よくわかったわね アクセントになるかと思って
- 十七夜: まさか、それを 入れるつもりか…!?
- 枇々木 めぐる: 「さぁ、時はまさにエンドオブタイム! タイムアップまで残り1分!」
- みたま: 当り前よぉ そのために捕ってきたんだからぁ
- レナ: はぁ!? ナマコ!?
- レナ: フジツボ…って あのキモいやつよね!?
- ももこ: まずい…止めないと!
- 枇々木 めぐる: 「残り5秒!」
- 十七夜: 八雲…よせ…!
- みたま: 投入~っと♪
- ボチャン
- 枇々木 めぐる: 「タイムアーップ!ここで終了です! さてさて、優勝の栄冠はいったい誰の手に…!」
- レナ: お、終わった…
- 枇々木 めぐる: 「それでは、審査員のみなさんに 試食をして頂きましょう! トップバッターは史乃沙優希さん! 八雲・和泉ペアの料理をどうぞ!」
- 史乃 沙優希: それでは、いただきますですぅ~
- あーむっ もぐもぐ
- 史乃 沙優希: うっ…うぅ…
- 517095-25_pVeLS
- 史乃 沙優希: うっ…うぅ…
- レナ: あぁ…レナのせいで… さゆさゆが…
- 枇々木 めぐる: 「おっと、審査員の史乃沙優希さん 何やら異変でしょうか…!? 料理をひと口食べるや否や うなりごえをあげているようですが…」
- 史乃 沙優希: う…うぅ…と、とと…
- 史乃 沙優希: とっても美味しいですぅ~!
- レナ: へっ!?
- ももこ: そんな馬鹿な…!
- みたま: あら、失礼しちゃうわぁ 味には自信あったのよ?
- 史乃 沙優希: 「山芋のとろっとした触感に 灼けた刃物のような刺激的な辛さ… そして、口の中にふわふわ広がる海の香り… これぞ、まさに…絶品!ですぅ」
- レナ: うそでしょ!? それじゃあ…
- レナ: キャッサバは山芋に 差し替えたわ!
- みたま: あらやだ、びっくりして 激辛ソースがこんなに…
- レナ: ああいうのが、うまいこと いってたってこと!?
- 鶴乃: これって、たぶん… 実況のめぐるちゃんの魔法かも?
- 枇々木 めぐる: 「十咎選手のバッドタイミングな声掛けにより 鍋に解き放たれたのは恐ろしい量の激辛ソース! この偶然がもたらすのは料理の女神の微笑みか それとも暗黒微笑かぁ!?」
- 鶴乃: (あれっ…魔力…?)
- 枇々木 めぐる: 「おっと、過激な料理で終始注目を集めてきた 八雲・和泉ペアの方から、香り立つ芳香が… これはベストオブビーチクッキングの予感!」
- 鶴乃: あれっ…またこの魔力? これって、もしかして…
- 純 美雨: 確かに、ワタシもあのとき 覚えのある魔力を感じたヨ
- 鶴乃: わたしたちは、あの実況に 応援されたことがあるもんね
- レナ: どういうことよ?
- 鶴乃: あ、めぐるちゃんの実況には 魔法の力があるみたいで
- 鶴乃: よくも悪くも場を盛り上げて 実況されてる人たちは
- 鶴乃: 実力以上のものが出せちゃう… ということがあるみたい!
- 胡桃 まなか: 実はまなかが試食した時点で 結構、美味でしたよ
- 胡桃 まなか: 調理過程を知っていただけに 脳が追いつきませんでしたが
- 十七夜: そうだったのか…!
- 十七夜: だが、最後にいれたアレは どうなんだ…?
- 胡桃 まなか: …フジツボとナマコですね お父さんが今、食べたみたいです
- まなかの父: 「これは…ナマコですね? コリコリとした触感がクセになる… 味と触感がひと口ごとに表情を変える 万華鏡のような素敵な料理になっています」
- まなかの父: 「おっ、こっちはフジツボですね…! 実は、フジツボは高級食材とも言われていて… とても美味しい甲殻類なんですよ」
- まなかの父: 「エビやカニを思わせる独特の香りが 他の食材と絶妙にマッチして… スープの味のアクセントにもなっていますね」
- まなかの父: ただ、下処理が難しいはずだけど 君は海の知識があるのかな?
- みたま: それなら、海にいた漁師さんが そのまま鍋に入れるって言ったら
- みたま: 下処理したものを くださったんです
- みたま: なまことフジツボの美味しさを 是非、広めてきてほしいって
- まなかの父: なるほど…
- まなかの父: 地元の海の幸の魅力も引き出せて とてもいい料理ですね
- みたま: ありがとうございます♪
- 枇々木 めぐる: 「さてさて、それではお待ちかね! ビーチでドキドキ!夏の創作料理大会! 優勝者の発表を行います! 優勝の栄冠はいったい誰の手に渡るのか…!?」
- かえで: 結局、自分たちの料理は 全然作れなかったね~…
- ももこ: 優勝賞品のライブは とっくにあきらめてたけどな
- レナ: でも、結果的にさゆさゆが 喜んでくれたからいいわよ
- 枇々木 めぐる: 「勝利の女神が微笑み 見事ベストサマーシェフに選ばれたのは… なな、なんと!八雲・和泉ペアだーっ!」
- みたま: あらやだ! 十七夜、やったわぁ♪
- 十七夜: …うむ、八雲が嬉しいなら まぁ…それでいいか
- みたま: …?
- 史乃 沙優希: それではぁ、優勝賞品として スペシャルライブの招待券を…
- 史乃 沙優希: と思ったのですがぁ
- 史乃 沙優希: 沙優希は素敵なお料理に 感動してしまったので
- 史乃 沙優希: お礼に1曲、ここで 披露させてほしいんですぅ
- 史乃 沙優希: よろしいでしょうかぁ?
- みたま: ええ、もちろん! みんなで楽しみたいもの!
- 史乃 沙優希: ではぁ、料理を作ってくれた みなさんへ感謝の気持ちをこめて
- 史乃 沙優希: 沙優希、歌いますぅ♪
- ももこ: マジか!?
- かえで: よかったね、レナちゃん
- レナ: うっ…うぅ… 頑張って良かったぁ…
- <数日後>
- ももこ: おーい調整屋ぁ
- みたま: あらぁ、ももこたちね いらっしゃーい
- 十七夜: む、十咎たちも来たのか 自分も今来たところでな
- みたま: あ、そうだ これだけ人もいることだし
- みたま: あの日に作った料理を ご馳走しようと思うんだけど…
- ももこ: なっ!?
- レナ: あんな奇跡二度と…じゃなくて 気遣わなくていいわよ!
- かえで: う…うん! 私たち今お腹いっぱいだし!
- みたま: そ~お? わたし、自信あるんだけど?
- ももこ: いや、あのときのは… あれだよ、な、十七夜さん!
- 十七夜: …そこで自分に振るのか?
- 十七夜: ふむ…では、今日は自分たちが 料理をふるまおう
- ももこ: そうそう、調整屋は ゆっくりしていてくれよ!
- みたま: あらぁ、いいの?
- ももこ: もちろん! 日頃の感謝ってやつだよ!な!
- レナ: いつも世話になってるからね!
- かえで: う、うんっ!
- みたま: なぁに~もうっ みんな優しいじゃない
- みたま: うふふっ 嬉しいわねぇ♪
- 517096-26_pVeLS [Tokime Clan branch (Shizuka)]
- 静香: 絶対に負けないわ… 時女本家の意地にかけて…!
- 青葉 ちか: 私たちを敵に回すだなんて… 後悔させてあげます
- 南津 涼子: へっ、大口を叩けるのも 今のうちだ!
- すなお: 仲間内で戦いたくは ありませんが…
- すなお: 今さら引き下がれません…!
- ちはる: みんな…!
- ちはる: うぅ… どうしてこんなことに…
- ちはる: そう…事の発端は ちょっとした言い争いだった…
- ちはる: わたしたち時女一族は、 静香ちゃんの帰省も兼ねて 集落へ遊びにいった
- ちはる: それで静香ちゃんのお家で、 夕飯をごちそうになったんだけど…
- <前日の夜>
- 静香の母: さぁ、みんなお夕飯よ
- ちはるの母: お腹空いたでしょう?
- 南津 涼子: 面倒かけちまって悪ぃなぁ
- ちはるの母: いいのよ 子どものうちは甘えておきなさい
- 静香: あっ… 今夜はアユ料理なのね!
- ちはる: 塩焼きに煮物… フライにアユ飯まで…!
- ちはる: 至れり尽くせりだぁ!
- すなお: 久しぶりのアユですね
- ちはるの母: たくさん作ったから いっぱい食べてね
- 静香の母: 今夜はふたりで作った共作よ! 主に広江さん作だけど…
- 青葉 ちか: このアユって 集落の川で獲れたものですか?
- 静香の母: ええ、そうよ
- 静香の母: 臭みがまったくなくて とっても美味しいの
- 静香: こんな素晴らしいアユを 食べられないだなんて…
- 静香: 旭は本当に気の毒ねぇ
- ちはる: 別の用事があったんだもん 仕方ないよ
- すなお: ふふ、せっかくですし 温かいうちにいただきましょう
- 静香: うん…やっぱり時女伝統の アユ飯は最高ね!
- 青葉 ちか: ほどよい味つけが、素材の魅力を 最大限に引き出しています!
- 南津 涼子: この塩焼きも最高だな!
- すなお: シンプルにして至高ですね 素材の味がよくわかりますし
- ちはる: とにかく 全部美味しいってことだよね!
- ちはるの母: ふふ、喜んでくれて嬉しいわ
- 静香の母: 最近、暗い話ばっかりで うんざりしていたから…
- 静香: えっ…? どうしたの、何かあった?
- 静香の母: 大したことじゃないわ
- 静香の母: 一時期増えていた観光客が ちょっぴり減ってるだけよ
- 静香: だ、大問題じゃない!
- 静香の母: 心配いらないわよ 私たちでなんとかするから
- 静香: でも…
- ちはるの母: あら、お料理の皿が空っぽ! おかわりを持ってきてあげるわ
- 静香の母: 他の子の分は 私が持ってくるわね
- 静香: あっ…
- すなお: ああ言われても 少し心配ですね…
- ちはる: 観光のウリが「だいだいっこ」 だけじゃ足りないのかなぁ…
- ちはる: 美味しいのに…
- すなお: 世間的にはマイナーな果物だから ピンとこない…とか…?
- 静香: そうねぇ…もう少し わかりやすい何かがあれば…
- 南津 涼子: わかりやすく美味いモンなら 目の前にあるんじゃねぇか?
- 静香: …ん…?
- 青葉 ちか: ああ!なるほどですね
- 静香: んんん~? あっ…
- 静香: あーー! アユ…!
- すなお: 確かに、このアユなら みんなに喜ばれそうです
- 静香: 灯台下暗しとは まさにこのことだわ…!
- ちはる: でも、ここに争いの火種が くすぶっていたなんて まだ誰も知らなかったんだ…
- 517097-27_pVeLS
- ちはる: アユ料理で集客かぁ… うん、いけそうな気がする!
- 青葉 ちか: ちなみに静香さんはどの料理を 一番オススメしたいですか?
- 静香: そうねぇ… やっぱりこのアユ飯かしら
- 静香: 時女一族伝統のタレで炊き込む ご飯は絶品よ
- ちはる: はい、静香ちゃん そのアユ飯をどうぞ!
- 静香: ちゃる、ありがと! いただきまーす!
- あむっ…
- 南津 涼子: んー…アユ飯もいいけど、 ちょいと渋すぎねぇかな?
- 南津 涼子: あたしは豪快な塩焼きを 前面に出すのがいいと思う
- 静香: 塩焼きも美味しいけど 時女ならではって感じがしないわ
- ちはる: ええっと… 両方出せばいいんじゃないかな
- 静香: もちろん塩焼きも 欠かせない料理だけど…
- 静香: みんなに魅力的に映る料理を 何にするかが問題なのよ
- 静香: それに… やっぱりアユ飯の方が美味しいし
- すなお: …静香、代々塩焼き派の 土岐家としては
- すなお: 最後の言葉は 聞き捨てなりませんね
- ちはる: ええ!? 代々…塩焼き派?
- 静香: むっ…すなおも アユ飯を否定する気?
- すなお: アユ飯は確かに 時女一族の伝統料理です
- すなお: 一族を束ねるからこそ 塩焼きの良さを知るべきです
- ちはる: ちょ、ちょっと落ち着いて! ちかちゃんも何とか言ってよぅ!
- 青葉 ちか: 今日、集落のアユ料理を食べて 改めて思いました…
- 青葉 ちか: 私は断然アユ飯の方が 好きだということを…!
- ちはる: ちかちゃんの好みは 聞いてないよぅ!
- 静香&ちか: むぅ…
- 涼子&すなお: …………
- 静香の母: あら…どうしちゃったの?
- ちはる: それが…
- 静香の母: なるほど…みんな集落の将来を 一生懸命考えてくれてるのね
- ちはる: (そ、そういう問題かなぁ…?)
- 静香の母: 大人が出しゃばる場面じゃないし
- 静香の母: 納得いくまで とことんやりあうといいわ
- ちはる: 助けてくれないんだ…
- ちはる: …と、こんな経緯で時女一族は 静香ちゃん率いるアユ飯派… そして涼子ちゃん率いる塩焼き派の 真っぷたつに分断して…
- ちはる: お互いの威信をかけた 勝負が始まっちゃったんだよね…
- 南津 涼子: …で…決着つけようって いったい何をしようってんだ
- 静香: 今の私たちに一番ふさわしい 対決…アユ釣りで勝負よ!!
- 静香: 制限時間は90分でどうかしら
- 南津 涼子: なるほど…そうきたか
- 南津 涼子: だが、釣りの名人とやりあうのは いささか不公平じゃねぇか?
- 静香: 私は「友釣り」で挑むわ
- ちはる: 友釣り…オトリのアユを使う 難しい釣りだよね?
- 静香: 初心者の涼子はエサ釣りでも 何でも好きな方法でOKよ
- 静香: 私は友釣りシバリって ことでどう?
- 静香: それと、ハンデとして涼子に…
- 静香: そうね、釣った数に プラス10匹してあげる
- 南津 涼子: そんなに?
- すなお: 静香の腕前でも ちょっときついぐらいですね
- すなお: 妥当だと思います
- 南津 涼子: ふーん…わかった その条件で受けて立ってやるよ
- 静香: そうこなくちゃね
- 静香: ちゃるには審判を任せたいの お願いできる?
- ちはる: うぅ…わかった…
- 静香: 制限時間内に1匹でも多く アユを釣った方が勝ちよ
- 静香: …それじゃ、始めましょ!
- ググッ…
- 静香: さっそくきたわね… まずは1匹!
- バシャッ!
- 南津 涼子: さすがだな 釣りの名人は伊達じゃねぇってか
- 静香: これぐらい、まだまだ序の口よ!
- ちはる: その後も静香ちゃんの方にアタリが続いた…
- ちはる: 一方、涼子ちゃんの方はというと…
- バシャバシャッ
- 南津 涼子: よっと…! やっと1匹目…!
- 静香: 随分ペースが遅いみたいね
- 南津 涼子: こちとら初心者だからな ハンデ込みで勝てばいいのさ
- ググッ…
- 静香: 言ってるそばからまたきたわ! もうすぐ逆転するわよ?
- 南津 涼子: チッ…!
- バシャッ
- 南津 涼子: (なんでアタリがこない?)
- 南津 涼子: (なんとかしねぇと アユ飯派に負けちまう…!)
- 517098-28_pVeLS
- バシャッ
- 南津 涼子: うーん、アタリが止まっちまった なんでだ…?
- すなお: 涼子さん…ちょっと
- 南津 涼子: なんだ?
- 南津 涼子: アユに勘づかれてる?
- すなお: はい…気迫を込めるあまり 水の流れを乱しているような…
- 南津 涼子: 言われてみれば、バシャバシャ 水音立てまくってたかもな
- 南津 涼子: つまり…気配を消せばいいのか?
- すなお: ふふ、涼子さん 得意ですよね?
- 南津 涼子: 寺育ちだからな!
- 南津 涼子: …………
- 静香: (涼子が黙った…? 潔く負けを認めたのかしら)
- 青葉 ちか: あっ…あれ!
- ググッ…
- 南津 涼子: きたな…そら!
- バシャッ!
- ちはる: アユだーー!!
- 南津 涼子: へへっ… さっそく釣果が出たな!
- 静香: むっ…やるわね 私も負けていられないわ!
- ちはる: 調子が出てきた涼子ちゃんに対抗して 静香ちゃんもペースを上げてきた
- ちはる: そして…
- ちはる: 時間だよ、勝負はここまで! 結果は…
- ちはる: 静香ちゃんが15匹… 涼子ちゃんも15匹で…
- ちはる: 引き分け!! ハンデの10匹込みだけどね
- 南津 涼子: ちぇっ…勝利には もう一歩及ばなかったか…
- すなお: それにしても怒涛の追い上げ、 かっこよかったですよ
- 南津 涼子: なははっ! 嬉しいこと言ってくれるねぇ
- 静香: くっ…
- 静香: ハンデがあったとしても 初心者が私と肩を並べるなんて
- 静香: まったく…恐れ入ったわ
- 静香: でも…どうして急に 釣れるようになったのかしら
- 南津 涼子: 心を無にして 自然と一体になったんだ
- 南津 涼子: 人の気配を感じると、 アユは逃げるって
- 南津 涼子: すなおに言われて気づいたんだよ
- 南津 涼子: ま、これも日々の 修行の賜物ってやつかな
- ちはる: それじゃあ、これにて 一件落着ってことで…
- 静香: …まだよ まだ勝負はついてないわ
- ちはる: え…?
- 南津 涼子: ああ、塩焼き派とアユ飯派の話に ケリをつけねぇと
- すなお: 次は私とちかさんで勝負するのは どうですか?
- 静香: いいと思うわ ちか、任せたわよ!
- 青葉 ちか: もちろんです!
- すなお: そういうことで… ちゃる、引き続きお願いします
- ちはる: うぅ~…わかったよぅ
- ちはる: …それですなおちゃん 水着に着替えて何をするの?
- すなお: 次の対決はシンプルに アユのつかみ獲りにしましょう
- すなお: これなら力量に 差がつかないですし
- ちはる: 確かに、釣りよりは 単純でわかりやすいかも!
- 青葉 ちか: さっきと同じく、より多くアユを 獲った方が勝ちですね
- 青葉 ちか: よーし…なんだか ワクワクしてきました!
- 南津 涼子: ちかはこういうの得意そうだけど 大丈夫か?
- すなお: 確かに、すんなり勝てるとは 思いませんが…
- すなお: 絶対に負けられない戦いなので 粉骨砕身の思いで挑みます…!
- 南津 涼子: …わかった 頑張れよ、すなお!
- すなお: …はい!
- 517099-29_pVeLS
- ちはる: それじゃ、始めるね よーい…スタート!
- ちか&すなお: …!!
- 青葉 ちか: …………
- 南津 涼子: …ん…どこへ行くんだ?
- 南津 涼子: アユならあっちに たくさん泳いでるのに…
- 青葉 ちか: (その辺を泳いでいるアユを 捕まえるのは至難の業…)
- 青葉 ちか: (だから、岩場に潜んでいる 個体を誘い出して…)
- 青葉 ちか: …そこです!
- グッ…!
- 青葉 ちか: ふふっ! この勝負…私がもらいます!
- ヌルン…!
- 青葉 ちか: (えっ…確実に つかんだと思ったのに!)
- 青葉 ちか: (でも、このまま逃がしは しません…!)
- 青葉 ちか: 捕まえた!
- 静香: やったわ!1匹ゲットね!
- 青葉 ちか: はい…なんとか…
- 静香: ん?…何かあったの?
- 青葉 ちか: いえ…なんでもありません
- 青葉 ちか: …川が違うと、勝手が違いますね 気を引き締めていかないと!
- すなお: えいっ!
- 南津 涼子: すなおも負けてないぞ! さすが地元っ子だな!
- 青葉 ちか: おっと…おしゃべり している場合じゃないですね!
- ちはる: ふたりはその後も、 互角な戦いを続けて…
- 青葉 ちか: はぁ…はぁ… なかなか手ごわいですね…!
- すなお: はぁ…はぁ… ちかさんこそ…!
- ちはる: どっちも5匹ずつ…
- 静香: このままじゃ埒が明かないわ 涼子、私たちも参戦するわよ!
- 静香: 2対2で勝負よ!
- 南津 涼子: お…? おう…!
- ちはる: 静香ちゃん!? 涼子ちゃん!?
- 静香: ー静香ー よっと…!2匹目捕獲!
- 青葉 ちか: ーちかー 静香さん速い…! 私も負けられません…!
- すなお: ーすなおー きゃっ! なんて活きのいいアユなの!?
- 南津 涼子: ー涼子ー まったくだな! だけど、絶対に逃がしゃしねぇ!
- ちはる: ーちはるー みんな…すごい!
- ちはる: ーちはるー どっちが勝つか もう全然わからないよ…!
- ちはる: 時間だよ! 勝負はここまで!
- 静香&ちか: はぁ~…はぁ~…
- 静香: さ…さすがに疲れたわ…
- 涼子&すなお: はぁ~…はぁ~…
- 南津 涼子: もう1歩も動けねぇ…
- ちはる: それじゃ、集計を始めるね ええっと…ひぃふぅみぃ…
- ちはる: …!! ど、どっちも10匹だ…
- 静香: ひ…引き分け!? そんな…
- 南津 涼子: なんてこった…!
- すなお: これ以上戦う気力は もうありません…
- 静香: …私も同じね
- 青葉 ちか: …………
- 静香: どうしたの?捕まえたアユを じっと見てるけど…
- 青葉 ちか: あの…もしかして この川のアユなんですけど…
- 青葉 ちか: 絶滅したはずの 亜種なんじゃないかと思って…
- みんな: ええっ…!?
- 5170100-30_pVeLS
- 青葉 ちか: あの…もしかして この川のアユなんですけど…
- 青葉 ちか: 絶滅したはずの 亜種なんじゃないかと思って…
- みんな: ええっ…!?
- 青葉 ちか: お尻をよく見てください 3点の模様がありますよね?
- 青葉 ちか: 普通のアユには こういう斑点はないんです
- 青葉 ちか: でも、絶滅したはずの 亜種にはあって…
- 青葉 ちか: ちょっとわかりにくいので スマホで写真を見せますね
- 青葉 ちか: ほら、これです…!
- ちはる: あっ…生け簀に入ってるアユと まったく同じ模様だ…!
- 静香: 本当だわ…!
- すなお: じゃあ、この川のアユたちは…
- すなお: 絶滅したと思われていた亜種で 間違いないってことですか…?
- 青葉 ちか: その可能性が高そうです
- 青葉 ちか: 専門家に調べてもらわないと 正確なところはわかりませんが…
- 南津 涼子: よく気づいたな!
- 南津 涼子: あたしなら絶対に 気づかない自信がある
- 青葉 ちか: 昔、図鑑で見たのをうっすら 覚えていたんです
- 青葉 ちか: あと、普通のアユより ヌルヌルして捕まえにくくて…
- 静香: あ…それで勝手が違うって 言ってたのね?
- 青葉 ちか: はい…気になってよく見たら 特徴的な模様に気づいたんです
- 静香: 時女集落のアユが そんな貴重なアユだったなんて…
- 南津 涼子: 何も知らずに バクバク食ってたよな
- すなお: この川では今も昔も たくさん泳いでいますからね…
- すなお: とにかく、これは私たちだけの 問題ではなくなりましたね
- 静香: そうね、ひとまず 大人たちに報告しないと
- 静香: この件が話題になったら きっと観光客も増えるわ
- 静香: アユ料理の話どころじゃ なくなったわね
- ちはる: えっ…! それじゃあ…
- 静香: 今回の勝負は これでおひらきにしましょ
- 静香: 涼子たちもそれでいい?
- 南津 涼子: ああ、構わないよ
- すなお: もちろんです
- ちはる: よ…よかったぁ…!
- ちはる: そんなこんなで、 一時は分断していた時女一族だったけど 無事、仲直りすることができたんだ
- ちはる: そして、旭ちゃんに報告したの
- 静香: …っていうことがあったのよ
- 青葉 ちか: 絶滅したとされていた 亜種だって確認されたみたいです
- 旭: ほ~! それはめでたいであります!
- 静香: あの川のアユはとりあえず 自主禁漁になったけどね
- 南津 涼子: 幻の亜種だっていうんじゃ 保護するしかねぇよな
- 旭: では、時女のアユは もう味わえないでありますか?
- ちはる: 集落にはもう1本川が流れてて そっちには普通のアユがいるの
- ちはる: それなら今まで通り食べても 大丈夫なんだって
- 静香: 時女の伝統料理が途絶えなくて よかったわ…
- すなお: けっこうニュースになったから
- すなお: 観光客も増え始めてるみたいで 集落の大人たちも喜んでました
- ちはる: 注目されてるうちに 村おこしにつなげたいから
- ちはる: アユのグッズや 記念館を作るんだって
- ちはる: はりきってたよ!
- 旭: おお! それは何よりであります!
- すなお: 地元にしかない貴重な 恵みだとわかりましたからね
- すなお: こういう機会を活かして
- すなお: 集落も少しずつ 自立していかないと
- 旭: 密漁されたりしないよう これからも注意が必要ですな!
- 旭: …しかし、我もその勝負に 参加したかったであります!
- 静香: あら、別に今から参戦しても 構わないわよ?
- 静香: アユ獲り以外の勝負になるけど
- 南津 涼子: おっと、今度こそ 決着をつけるか?
- 旭: 望むところであります!
- ちはる: ええ!?
- ちはる: 意地の張り合いは もうたくさんだよ~!!
- 5170101-31_pVeLS [Counseling Room branch (Emiri)]
- ガラガラ…
- コロン…!
- 木崎 衣美里: ん…金色…?
- 木崎 衣美里: 夏休みのある日 商店街の福引に挑戦したあーし…
- …!! この色は…
- 木崎 衣美里: え?…え!? これってまさか…
- つ、ついに特賞が出た…! おめでとうございまーす!
- 木崎 衣美里: マジマジ? …鬼ヤバきたっ!?
- 木崎 衣美里: おばさんのあまりの盛り上がりに、 めっちゃテンション上がったんだけど…
- 木崎 衣美里: まさか特賞が 超高級体重計とか…
- 木崎 衣美里: てっきり一番いいヤツと思ったら
- 木崎 衣美里: その上に超特賞とスーパー特賞が あったなんてさぁ…
- 木崎 衣美里: …ま、いっか!
- 木崎 衣美里: 最近、測ってなかったし せっかくだから乗ってみよ
- ギシッ…
- 木崎 衣美里: …って… めっちゃ増えてる!?
- 木崎 衣美里: いや…きっと何かの間違いだし! もう1回測り直せば…
- ギシッ…
- 木崎 衣美里: へ…変化なしって… はぁ~…マジかぁ…
- 木崎 衣美里: いくら成長期でも この増え方は激ヤバ案件じゃね?
- 綾野 梨花: やっほー 遊びに来たよー!
- 木崎 衣美里: あ、りかっぺたち や、やっほ…
- 美凪 ささら: ん…テンション低め? 何かあったの?
- 木崎 衣美里: な、なんでもない…! 夏あっついな~、みたいな?
- 竜城 明日香: むむっ…! そこにあるのは…
- 矢宵 かのこ: あーっ! これ今話題の超高級体重計!?
- 矢宵 かのこ: いろんな数値が超正確に測れて すっごい便利なヤツでしょ
- 木崎 衣美里: ちょ、ちょー正確…
- 矢宵 かのこ: どうしたのコレ?
- 木崎 衣美里: 福引で当たったの… …特賞で…
- 綾野 梨花: あー… その表情は、体重が…
- 木崎 衣美里: それ以上は言わないでぇ~!
- 眞尾 ひみか: あの… 私も測ってみていいですか!?
- 木崎 衣美里: 別にいいけど、ひみかみんは 増えてる感なさげじゃない?
- 眞尾 ひみか: 物足りない食事が続いたので 減ってないといいなと…
- 木崎 衣美里: あっ…そゆこと?
- 眞尾 ひみか: では、お言葉に甘えて… そりゃ!
- ギシッ…
- 眞尾 ひみか: …え…えーー!? も、ものすごく増えてる…
- 綾野 梨花: 物足りないって言ってたのに?
- 眞尾 ひみか: 心あたりと言えば…今朝食べた 野汁が多めだったくらいですが
- 眞尾 ひみか: 油断しました…うぅ…
- 竜城 明日香: 私も測らせてもらえますか?
- 竜城 明日香: 体脂肪とかも測れるようですし 日頃の鍛錬の成果を…
- ギシッ…
- 竜城 明日香: なっ…!
- 美凪 ささら: 増えてたのね…
- 木崎 衣美里: その後、なんだかんだで、 順番に体重を測っていくと…
- 木崎 衣美里: ふふっ、仲間が増えて あーしは心強いよ!
- 美凪 ささら: それにしても みんな仲良く増量だなんて…
- 矢宵 かのこ: おかしい… 少し食べすぎた…?
- 木崎 衣美里: このままじゃ、せっかくの 夏休みが台なしだよっ!!
- 木崎 衣美里: ここはみんなで ダイエット作戦しかないっしょ!
- 5170102-32_pVeLS
- 矢宵 かのこ: ダイエットか… だったら、水泳はどう?
- 矢宵 かのこ: 新作の水着があってね その名も新マーリンギ…
- 綾野 梨花: 却下!!
- 矢宵 かのこ: はやっ!!
- 木崎 衣美里: 太ったのに水着になるとか ありえないっしょ!
- 綾野 梨花: 毎日プールに通うのは お小遣い的にも厳しいよね
- 眞尾 ひみか: 断食ダイエットというのは どうでしょう?
- 眞尾 ひみか: お金も節約できて 一石二鳥です!
- 美凪 ささら: できれば健康的に痩せたいかな
- 眞尾 ひみか: た、確かに…
- 竜城 明日香: お金もかからず…健康的に
- 竜城 明日香: あっ…いいものがありますよ! 商店街で借りられたはず…
- 竜城 明日香: お待たせしました! これです!
- 美凪 ささら: 何この大きなボールは?
- 竜城 明日香: ここに座って、弾んでいる だけで痩せるらしいですよ!
- 綾野 梨花: それマジ!?
- 木崎 衣美里: 面白そうじゃん! やらせてよ!
- ぼよんぼよん
- 木崎 衣美里: おおーー!? ちょー楽しくね!?
- ぼよんぼよん
- 綾野 梨花: あたしにもやらせて!
- ぼよんぼよん
- 綾野 梨花: いいじゃん! これなら続けられるかも!
- 綾野 梨花: はぁ~楽しかった!
- 竜城 明日香: 評価は上々のようですね!
- 竜城 明日香: では、これを日課にしましょう 毎日乗れば、身体が鍛えられて…
- 美凪 ささら: ちょっと待って ボールって1個しかないの?
- 竜城 明日香: 倉庫にしまってあったのは これだけでした
- 美凪 ささら: 1個じゃひとりずつしか 使えないけど
- 竜城 明日香: …あっ…!
- 眞尾 ひみか: 交代で使うのは さすがに非効率的ですね…
- 竜城 明日香: 私ってば そんな簡単なことに気づかず…!
- 竜城 明日香: くっ…
- 美凪 ささら: 自害はダメよ
- 竜城 明日香: …! は、はい…
- 木崎 衣美里: うーん…残念だけど 他の方法を探さなきゃかー
- 綾野 梨花: だねー
- 5170103-33_pVeLS
- ぐぅ~…
- 木崎 衣美里: あっ…!
- 木崎 衣美里: ハンパに運動したら 小腹が空いちゃったよー
- 綾野 梨花: あたしも~…
- 矢宵 かのこ: きのこのチョコがあるけど 食べる?
- 美凪 ささら: 今はダメ!絶対!
- 竜城 明日香: 欲望に屈すると 止まらなくなりますからね
- 木崎 衣美里: わかるー!
- 木崎 衣美里: んで、結局 止まらなくて全部食べたり?
- 綾野 梨花: 小さい積み重ねが、今回みたいな ことになるんだよね…
- 眞尾 ひみか: それなら いい対処方法がありますよ!
- 矢宵 かのこ: 本当!?
- 眞尾 ひみか: はい! 私についてきてください!
- 眞尾 ひみか: ここです!
- 美凪 ささら: ここって… ケーキ屋さんじゃない
- 竜城 明日香: ダイエットとは 真逆の場所じゃないですか?
- 眞尾 ひみか: ケーキは買いません!
- 眞尾 ひみか: お店の裏にある ダクトにご注目です!
- 美凪 ささら: ダクト…?
- ほわ~ん…
- 木崎 衣美里: うげ! ちょー美味しそうな匂い!!
- 眞尾 ひみか: ここからが本題です
- 眞尾 ひみか: ケーキを焼いている いい匂いが漂ってきましたね?
- 眞尾 ひみか: 目を瞑って 匂いを思いっきり吸い込んだら…
- 眞尾 ひみか: 脳内でケーキをお腹いっぱい 食べる自分を想像してください
- 眞尾 ひみか: …すると、アラ不思議! 食欲がフルに満たされるんです!
- 綾野 梨花: そ、そうなの…?
- 眞尾 ひみか: ものは試しですよ!
- 眞尾 ひみか: さぁ、みなさんも レッツチャレンジです!
- ほわ~ん…
- 木崎 衣美里: くんくん…
- 木崎 衣美里: (あーしは今ケーキを食べてる… ガッツリ食べてる…)
- 木崎 衣美里: …………
- 眞尾 ひみか: どうです? 心も胃袋も満たされたでしょ?
- 木崎 衣美里: …無理っしょ! むしろ食欲そそられたし!!
- 眞尾 ひみか: ええ!? ほ、他のみなさんは…
- 美凪 ささら: 全然ダメ
- 矢宵 かのこ: 私も…
- 綾野 梨花: ああ~ 本物のケーキが食べたいよぉ
- 竜城 明日香: 修行というより 拷問に近かったです…
- 眞尾 ひみか: そんなぁ…!! どうして…
- 眞尾 ひみか: 私はこれで毎日のおやつを 済ませているというのに…!
- 美凪 ささら: 私たちにはちょっと レベル高すぎると思う…
- 綾野 梨花: これも失敗だね
- 木崎 衣美里: ラクに痩せようとか やっぱ無理なんじゃね?
- 竜城 明日香: ですね、ここはやはり 正攻法でいくしか…!
- 木崎 衣美里: それって…
- 美凪 ささら: ランニングとか?
- 竜城 明日香: 正解です、ささらさん
- 竜城 明日香: 身体ひとつでできる 効果的な方法かと!
- 綾野 梨花: ダイエットの王道だねっ
- 美凪 ささら: 外で運動するのなら、 熱中症に気をつけないとね
- 木崎 衣美里: それじゃ、さっそく ランニングでGO!
- 5170104-34_pVeLS
- 木崎 衣美里: E・M・I・R・I エミリー、ファーイトー!
- 矢宵 かのこ: ね、ねぇ… なんなのこの掛け声…
- 木崎 衣美里: どうせ走るなら やっぱ体育会系のノリっしょ!
- 木崎 衣美里: じゃ、次はあすきゃんね!
- 木崎 衣美里: A・S・U・K・A あすきゃんファーイトー!
- 木崎 衣美里: K・A・N・O・K・O かのちんファーイトー!
- 矢宵 かのこ: ちょっと…恥ずかしいんだけど 普通に走らせて…
- 木崎 衣美里: ふぅ… ちょっと喉乾いてきたかも…
- 綾野 梨花: あれ…? えみりん、あそこ!!
- 木崎 衣美里: ん…? ああっ!?
- 新発売のミルクティーの 試飲はいかがですかー?
- 木崎 衣美里: いま超バズってる 限定フレーバーのミルクティー!
- 美凪 ささら: 試飲できるの…!?
- 眞尾 ひみか: …ってことは、無料ですか!?
- 竜城 明日香: 売り切れ続出で、お金を出しても なかなか飲めないやつですよ
- ごくり…
- 木崎 衣美里: ダメダメダメー!!
- 木崎 衣美里: せっかく頑張って走ってるのに 無駄にすることはやめよ!
- 綾野 梨花: そ、そうだよね…!
- 竜城 明日香: いち武道家として、容易く 心を折る訳にはいきません!
- 美凪 ささら: 水分補給は持ってきた水で 我慢しましょう
- 木崎 衣美里: うぅぅう…残念…!! グッバイミルクティー!!!
- 木崎 衣美里: はぁ…はぁ… た…ただいまぁ~…
- 矢宵 かのこ: さすがに疲れたわね…
- 綾野 梨花: 喉渇いたよぉ~
- 美凪 ささら: はい、お水
- 綾野 梨花: ありがと…
- 綾野 梨花: ごくっ…ごくっ… はぁ…生き返った
- 綾野 梨花: でも、やっぱり水だけだと 味気ないなぁ…
- 木崎 衣美里: 限定ミルクティーを 見てきたあとだし…
- 竜城 明日香: それは言わない約束です!
- 木崎 衣美里: ごめん…うぅ…
- 都 ひなの: 衣美里たち、いるか?
- 五十鈴 れん: …こ、こんにちは…
- 木崎 衣美里: みゃーこ先輩! れんぱすとあきらっちも!
- 志伸 あきら: あれ…どうしたのみんな? やけに疲れてるけど
- 綾野 梨花: えっと、さっきまで 運動してたんだよね
- 都 ひなの: この暑いのに元気だな
- 五十鈴 れん: …だったら… ちょうどよかった、かも…
- 志伸 あきら: そうそう、みんなに 差し入れを持ってきたんだ
- 眞尾 ひみか: おお! 救援物資とは助かります!
- 都 ひなの: ふふふ…見ろ! アイスがよりどりみどりだ!
- みんな: …………
- 木崎 衣美里: みゃーこ先輩…
- 都 ひなの: なんだ?
- 木崎 衣美里: 見た目は小学生でも
- 木崎 衣美里: 大人の気遣いができる人だって 信じてたのに…
- 都 ひなの: 『見た目は小学生でも』が 完全に余分なんだが…
- 志伸 あきら: …えっと、よくわからないけど
- 志伸 あきら: アイスの差し入れをしたら まずいタイミングだったのかな?
- 綾野 梨花: うん…
- 綾野 梨花: …実は今さ、みんなで ダイエット中なんだよね…
- 五十鈴 れん: …ぇえっ…?
- 都 ひなの: なるほど… それで運動してたのか
- 都 ひなの: カロリーを消費した直後に このアイスは目の毒だな…
- 木崎 衣美里: そーゆーこと!!
- 志伸 あきら: でも、どうしてまた 急にダイエットを?
- 木崎 衣美里: …というわけ!
- 都 ひなの: うーん、事情は理解したが…
- 五十鈴 れん: …アイス…どうしましょう…?
- 志伸 あきら: このままじゃ溶けちゃうな
- 都 ひなの: 仕方ない、みんなには悪いが 3人で食べるしかないな…
- 五十鈴 れん: …で…でも…
- 志伸 あきら: 無駄にするのももったいないよ
- 都 ひなの: あー、でも結構あるぞ 食べきれるのか、これ?
- みんな: …………
- 木崎 衣美里: …わかった、あーしも食べる!
- 木崎 衣美里: みゃーこ先輩たちの気持ちを 踏みにじれないっしょ!
- 綾野 梨花: あたしも!
- 眞尾 ひみか: 私も、ガマンの限界です!
- 木崎 衣美里: 結局、みんなでアイスを 食べることになって…
- 5170105-35_pVeLS
- 木崎 衣美里: ふー、満足満足! これこそ禁断の味!!!
- 綾野 梨花: やっぱり夏はアイスだよねー!
- 都 ひなの: …よかったのか? かなりガッツリ食ってたぞ?
- 眞尾 ひみか: 大丈夫です!
- 眞尾 ひみか: またゼロから やり直せばいいだけですよ
- 竜城 明日香: 明日からまた ダイエット修行の再開です
- 美凪 ささら: 今日じゃないんだ?
- 竜城 明日香: うぅ… 今回は見逃してください…
- 矢宵 かのこ: 私はもういいかな… そろそろ新作に本腰を入れたいし
- 木崎 衣美里: ダイエットから逃げちゃだめ!
- 都 ひなの: お前たち、そんなにヤバいのか…
- 「衣美里ちゃん、いる~?」
- 木崎 衣美里: …んんー?
- あ、ここにいたのね 探したのよ、衣美里ちゃん
- 木崎 衣美里: あれ…おばさんどったの?
- あなたが福引で当てた 体重計があったでしょ?
- あれ、不良品だったのよ
- 木崎 衣美里: えっ…えぇーーーっ!?
- なんでも、実際の体重より かなり重く表示されるみたいで
- テレビで、メーカー回収の お知らせをやってたの!
- 綾野 梨花: そ、それじゃあ… あたしたちが太ったんじゃなくて
- 矢宵 かのこ: 体重計が間違ってた…?
- 眞尾 ひみか: どうりで…! あり得ない増え方でしたし!
- 美凪 ささら: でも、絶対ないかっていうと ありそうな数字だったのよね…
- 竜城 明日香: な、なんて人騒がせな…!
- あらあら、だいぶ 迷惑かけちゃったみたいね…
- お詫びにこれを持ってきたから みんなで食べてちょうだい
- ドン!
- 今回は本当にごめんなさい
- それじゃ この体重計は預かっていくわね
- 木崎 衣美里: こんなこと、ある…?
- 都 ひなの: まさかの展開に 驚きを隠せないようだな
- 木崎 衣美里: で、でも…もうダイエットを しなくていいんだよね?
- 綾野 梨花: よかったね、えみりん!
- 美凪 ささら: ところで、さっきのおばさん 何を持ってきたの…?
- ガサガサ…
- 竜城 明日香: こ、これは…
- 美凪 ささら: 高級アイス! しかも大量に…!?
- 綾野 梨花: ええ! またアイス!?
- 眞尾 ひみか: 冷凍庫はパンパンですし とっておくのは無理そうです…
- 美凪 ささら: 私はもう入らないかな…
- 矢宵 かのこ: こんなにあるけど、どうするの?
- 木崎 衣美里: うぅぅ…食べたい、けど…
- 木崎 衣美里: こんなに食べたら 本当に太っちゃうじゃん!!
- 木崎 衣美里: で、結局 高級アイスはどうなったかって言うと…
- ひみかの弟: うまい!
- ひみかの妹: こんなおいしいアイス 初めて食べた!
- 眞尾 ひみか: うんうん!
- 眞尾 ひみか: 一度に食べるともったいないから 味わって食べるんだよ
- ひみかの弟&ひみかの妹: はーい!
- 木崎 衣美里: ひみかみんの家族が 美味しくいただいたってことで!
- 木崎 衣美里: ま、結果オーライかも?
- 5170106-36_pVeLS [Nayuta Family branch]
- <夏のある日…>
- 那由他: …♪
- ピロン♪
- 那由他: あら? もうコメントがついてますの
- ピクニックに持っていくお弁当の レシピをお伺いしたいですの! Nayutan
- 夏のお弁当は、傷みとの戦いです まず傷まない、バゲット中心のレシピで ピクニック気分を上げていくのはどうでしょう? よければ詳細書きます 旅
- 那由他: (なるほど… バゲットという手が!)
- 那由他: (「ぜひお願いします」と お返事して…)
- 那由他: (…これでよし!)
- 那由他: (今回もお上手な方に アドバイスをいただけそうで)
- 那由他: (オンラインお料理サークル… 入ってみて正解でしたの)
- ラビ: …………
- 那由他: あ、ラビさん! ちょうどいいところに
- ラビ: ………… …………
- 那由他: …ラビさん?
- ラビ: あっ、申し訳ありません ぼうっとしていました
- 那由他: 珍しいですの
- ラビ: お気になさらず …で、なんのお話でしょう?
- 「8時になりました ニュースをお伝えします」
- ラビ: …みかげさんとピクニックに?
- 那由他: ですの
- 那由他: みたまさんのお許しも 無事にいただけて…
- 那由他: お友だちの月出里さんも いらっしゃるそうですの
- 「政府は、今月の月例経済報告で 景気判断を 『緩やかに持ち直している』として…」
- ラビ: ………… …………
- 那由他: …ラビさん?
- ラビ: あ…失礼しました
- 那由他: …ちょっと変ですの
- ラビ: 大丈夫です 緩やかに持ち直しました
- ラビ: えっと… ピクニックのお話でしたね
- 那由他: そうですの 今週末の土曜に
- ラビ: …私が所用で不在の日ですね
- 那由他: ええ、ラビさんも ご一緒できればよかったのですが
- 那由他: みかげさんが、この日しか 無理だということでしたの…
- ラビ: 残念ですが、仕方ありません では、お弁当は私が朝のうちに…
- 那由他: あ、それなんですが 今回は私が用意したいんですの!
- 那由他: (お料理サークルの方たちから お知恵をお借りすれば…)
- 那由他: (私でも無理なく おいしいお弁当が作れるはず!)
- ラビ: ………… ちょうどいいかもしれません
- ラビ: 那由他様が自立するための いい機会になりそうですし
- 那由他: …? どういう意味ですの?
- ラビ: …実は
- 那由他: …実は?
- ラビ: 実は…その…
- 「…次に、神浜市が運営する団体の口座から およそ7000万円を着服したとみられる職員と 連絡が取れなくなっていることがわかりました」
- ラビ: …………
- 那由他: 実はなんですの? 言いにくそうですの
- ラビ: 実際、言いにくいので…
- 那由他: 7000万円を着服したのは 私ですとか言い出しますの?
- ラビ: いえ…そうではなく
- ラビ: 近々、お暇を いただくことになりました
- 那由他: ――っ!?
- 那由他: お暇…おいとま…?
- 那由他: 私の使用人を 辞めるということですの!?
- ラビ: はい…
- 那由他: いったい、どうしてですの!?
- ラビ: それは…
- ラビ: (今日、教授から…)
- ラビ: ………… …………
- ラビ: …家庭の事情です
- 那由他: そんな…
- ラビ: …そんなわけで
- ラビ: 今後は那由他様の調整など よろしくお願い申し上げます
- ヨヅル: それでわざわざ御挨拶に?
- リヴィア: お代さえいただければ 私はかめへんけど
- リヴィア: にしても、なんや急な話やなあ どうもならへん事情なんか?
- ラビ: ………… …はい
- リヴィア: あー、紛らわしかったわ なんか聞き出そうとかやないで
- 月出里: ふむむんむ、ふむむ?
- ヨヅル: …ピクニックは来るのかと 申しております
- リヴィア: そうそう、週末のピクニック あんたも行くんかいな?
- ラビ: いえ、所用がありまして それに那由他様がやる気なので
- ヨヅル: …やる気とは?
- 那由他: 「今度のピクニックは、お弁当もその他諸々も すべて私ひとりの力で準備して」
- 那由他: 「みかげさんと月出里さんを 無事引率してみせます!」
- 那由他: 「私が自立できることを証明して ラビさんが安心して旅立てるように…!」
- ラビ: …そう宣言されました
- リヴィア: ええ話やん
- ラビ: 他人事だからでしょう 私には不安しかありません
- 月出里: ふむむむ、ふんむむ
- ヨヅル: 月出里もがんばるそうですよ
- リヴィア: …あかん 急に心配になってきたわ
- ラビ: お邪魔しました では私は、これで
- 太助: 「いよいよ、“その時”が来た… 各人、身辺の整理を進め 私の次の連絡を待ってほしい」
- ラビ: ………… …………
- ラビ: いつか来ることはわかってた でも…
- 那由他: ………… …なぜ、今ですの…?
- 5170107-37_pVeLS
- <ピクニック当日>
- ラビ: …那由他様、お早いですね
- 那由他: ええ 朝の2時半に起きましたので
- ラビ: 朝というより深夜ですね… お弁当の準備ですか?
- 那由他: ですの バゲットのディップですの
- ラビ: こちら、抗菌作用のあるハーブを 使っているようですね
- 那由他: そうですの
- ラビ: なかなかよいレシピです
- 那由他: 夏のお弁当は 傷みとの戦いですの!
- ラビ: …………
- ラビ: そうですね まさにその通りです
- ラビ: よく勉強なさったようですね
- 那由他: 念のため保冷バッグに入れて 持っていきますの
- 那由他: あとは焼きたてのバゲットを お店で買っていくだけですの!
- ラビ: それなら傷む心配もありませんね 私でもそうすると思います
- 那由他: ラビさんの お墨付きなら安心ですの!
- 那由他: (お料理サークルの方々に 感謝ですの…!)
- 那由他: …ここに、これを詰めて あとは、お弁当を…
- 那由他: 準備完了ですの!
- ラビ: そちらに積まれた山は 何の装備でしょうか?
- 那由他: もちろん今日の ピクニックですの!
- ラビ: (…ピクニック? キャンプか登山では?)
- ラビ: (途中棄権しそうな重装備ですが 口出しは禁物です)
- ラビ: (那由他様の自立のために…)
- ピロン♪
- 那由他: あ、みかげさんたち 家を出たそうですの
- 那由他: お店に寄らないといけませんし 私も早めに出発しますの
- みかげ: なゆたん、おはよー!
- 月出里: ふむむん!
- 那由他: おはようございますですの
- みかげ: …なゆたん、荷物多くない? 汗だくだくだよ!?
- 那由他: 重装備すぎましたの… コインロッカーに置いてきますの
- 那由他: それでは、あらためまして…
- みかげ: しゅっぱーつ!
- 月出里: ふむ、ふむん!
- ラビ: ………… …………
- みかげ: まだ山じゃないよね?
- 那由他: はい、この先にあります
- 那由他: 初心者用ピクニックコースを 歩きますの
- ヨヅル: …ここまでは大丈夫そうですね
- リヴィア: せやな、向かっとるのも 危険な要素のないコースやし
- ヨヅル: ですね …おや?
- ラビ: …!
- ヨヅル: …氷室様? 所用がおありのはずでは?
- ラビ: 延期してきました
- ラビ: そちらは 月出里さんの見守りですか?
- リヴィア: そんなところや おたがい心配性やな
- 那由他: ここでランチにしますの!
- 月出里: ふむっ!
- みかげ: らくしょーだったね!
- リヴィア: ぴったりお昼やな
- ラビ: 順調すぎますね
- リヴィア: ええことやん
- ヨヅル: …ところで氷室様の離職を みかげさんはご存じなのですか?
- ラビ: 知らないはずです
- リヴィア: 月出里も言わんやろうしな
- みかげ: あっ、これ フランスパンだよね?
- みかげ: これつけて食べるの? おいしー!
- 月出里: ふむふむっ!
- 那由他: ディップはいろいろあるので お好みのものをどうぞ
- 那由他: おいしいジュースも 持ってきましたの
- みかげ: なゆたん、すごーい! ラビたんが手伝ってくれたとか?
- 那由他: あ…いえ… ひとりで準備しましたの
- みかげ: …そうなんだ?
- みかげ: ふぅー、おなかいっぱい!
- 月出里: ふむむんむむん!
- 那由他: このあとは山頂まで登って 下山する予定ですの
- みかげ: そっかー ミィ、もっと冒険してみたいなー
- 月出里: ふむむん?
- 那由他: 冒険…ですの? それなら…
- 那由他: 隣に少し高い山があるので そちらの山頂を目指してみますの
- 那由他: そこもピクニックコースですし
- みかげ: うん、そうしよー!
- 月出里: ふむふむっ!
- ヨヅル: …大丈夫でしょうか?
- リヴィア: そっちも初心者向けコースや 迷子になるとかありえへんやろ
- ラビ: そう…ですね…
- 5170108-38_pVeLS
- 月出里: …………
- みかげ: …ここ…どこ?
- 那由他: わかりませんの…
- ラビ: …隣の区のキャンプ場ですね
- リヴィア: ピクニックコースから 完全に外れとる
- ヨヅル: あの道から外れて迷子になるのが 信じられないのですが…
- リヴィア: ある意味、才能やな
- ポツ…ポツ…
- ザアァアー!
- みかげ: 雨だよ!?
- 那由他: あちらに小屋が…! 雨宿りさせてもらいますの!
- 月出里: ふむ、ふむっ!
- みかげ: おじゃまします…
- 那由他: あ…
- 那由他: (先客が…)
- 那由他: …あの、少し雨宿りをさせて もらいたいんですの
- 那由他: えっと、大人の方は…?
- 私たち…ママたちとはぐれて 迷子になっちゃったの
- お姉ちゃんたち、道わかる?
- 那由他: ――っ!?
- 那由他: (私たちも迷子ですのに…!)
- みかげ: ミィたちも 道、わかんないんだよね…
- みかげ: すごい雨だし やむまでここにいていいかな?
- う、うん…わかった
- 那由他: 立ったままもつらいですし… 座ってやむのを待ちましょうか?
- うんっ
- 那由他: では、私はこちらのベンチに…
- ガタッ
- 那由他: あらら?
- 月出里: ふむっ?
- 那由他: ベンチが傾いてますの 少し動かしますの
- みかげ: ミィ、手伝うよ!
- みかげ: あれっ? ベンチの下にバッグがあるよ?
- 那由他: 丈夫そうなビジネスバッグですの 誰かの忘れものでしょうか?
- 那由他: 部屋の隅に移動して…
- みかげ: あっ、なゆたん! そのバッグ開いてる…!
- バサバサバサッ…
- みかげ: えっ…バッグから 札束がいっぱい出てきたよ!
- ええっ!?
- 月出里: ふんむむ?
- 那由他: …本物みたいです
- 那由他: ひとつ100万円として… 数千万円分ですの
- ギィッ…
- 那由他: ひっ…!
- みかげ: 誰か入ってきた!
- はぁ…はぁ…
- あ、ひーちゃん! ここにいたのね…?
- 那由他: (親御さんでしたのね…)
- バッ
- ――っ!?
- …ば、バッグに現金を戻して こちらに投げて!
- キラッ
- 那由他: (ハサミ…!?)
- そ…そのお金は私のものなの!
- この子を刺されたくなかったら 言うことを聞いて!
- 那由他: (この女性…! 親御さんじゃありませんの)
- 「…次に、神浜市が運営する団体の口座から およそ7000万円を着服したとみられる職員と 連絡が取れなくなっていることがわかりました」
- 那由他: (あの事件の…!? ここに現金を隠してましたの?)
- みかげ: な…なゆたん、どうしよう…!?
- 那由他: …人質を取られていますの 逆らってはいけませんの!
- ウゥーーーウ!
- リヴィア: なんやパトカーが 集まってきよったで?
- ザザザッ
- ラビ: …那由他様のいる小屋を 警官が取り囲んでいます
- すみません 神浜北警察署の者ですが
- いつからここに いらっしゃいましたか?
- ラビ: あ…はい 20分ほど前から
- そうですか…では少し お話を聞かせてください
- ラビ: …何かあったんでしょうか?
- 実は、女が人質を取って 小屋に立てこもっておりまして…
- ラビ: えっ…
- 5170109-39_pVeLS
- ご協力ありがとうございました 解決に全力を尽くします!
- リヴィア: 月出里たちが小屋に入ったあと 駆け込んだ女性がおったな
- リヴィア: あいつがあの子らを人質に取って 立てこもったんか…
- ヨヅル: 警察の方の会話から察するに
- ヨヅル: 最近、ニュースになっていた 7000万円着服の職員ですね
- ヨヅル: 刑事さんが 話を聞こうとしたところ
- ヨヅル: 小屋に立てこもったようです
- ラビ: 小屋の近くで、立ち話をしている 人たちがいましたが
- ラビ: あれが刑事さんだったんですね…
- リヴィア: 衝動的な犯行、ってやつやな 3人とも運が悪いわ
- リヴィア: テレビで見たんやけど 確かその職員…
- リヴィア: 騙されて人様の金に手をつけた お人好しらしいわ
- ヨヅル: …そうですね 凶悪なタイプではなさそうですが
- リヴィア: ただ…月出里の心の傷が えぐられそうで心配や
- ヨヅル: 先生は月出里の 実質保護者ですからね
- ヨヅル: 魔法少女の力で 解決できればいいのですが…
- ヨヅル: 中にいるという、幼い子たちを 巻き添えにはできませんしね
- リヴィア: 警察の人は、また報告くれるって 言っとったけど…
- ラビ: 那由他様…
- 那由他: (人質の中で、私が最年長… 私がしっかりしなければ)
- 那由他: あ、あの… 話がありますの
- …何よ?
- バタン
- リヴィア: 出てきたで!
- メディロスさん
- 佐和月出里さんたち4人が 無事、解放されました
- ラビ: 4人…那由他様は…?
- みかげ: …あっ、ラビたん! リヴィアさんたちも!
- みかげ: なゆたんが…なゆたんが ミィたちの身代わりに…!
- ラビ: …なるほど 幼い女の子が人質に取られたので
- ラビ: 最年長の那由他様が 自分だけ人質になると申し出て
- ラビ: かわりに4人を解放させたと…
- みかげ: うん…
- ヨヅル: 女の子たちの方は無事で ご両親が迎えに来たそうです
- ヨヅル: 幼い子たちが人質になっていた 最悪の状態は脱しました
- ラビ: 那由他様は魔法少女ですからね
- ラビ: 両手を縛られている、との ことですが…
- ラビ: 犯人に命を脅かされる危険は 比較的小さいです
- ヨヅル: 自らそういう状況になるように 犯人を説得されたわけですね
- ラビ: …?
- ラビ: (那由他様が… そこまで考えて…?)
- リヴィア: 月出里が、はよう解放されたんは 感謝やけど…
- リヴィア: 無茶せんとええけどな
- ラビ: …………
- 那由他: (残る人質は私だけ…)
- 那由他: (これでもう 他の方には、危険が及びません)
- 那由他: (あとは…)
- 那由他: (あまり、気の強そうな方では ありませんわね…)
- ――っ!?
- …ば、バッグに現金を戻して こちらに投げて!
- 那由他: (小さな子も、あっさり 解放してくれましたし…)
- 那由他: (どちらかというと 気の優しい方に見えますの)
- 那由他: (どんな事情があったのかは わかりませんが…)
- 那由他: (できれば…自ら投降して 罪を償ってほしいですの)
- 那由他: (魔法少女の力を使うのは 最後の手段…)
- 那由他: あの…
- な…何?
- ヨヅル: 雨がやみましたね
- ざわ…
- ラビ: あ…
- リヴィア: 犯人が投降したみたいやな
- みかげ: なゆたん、助かったの!?
- ヨヅル: …意外と早く解決しましたね
- 「人質の子が犯人を説得したらしいぞ…」
- 「7000万ぽっちじゃ人生逃げきれないから 罪を償ってまたやり直せって」
- リヴィア: …エグいな!? 大人にそんな説得したんか?
- ヨヅル: 犯人を刺激するような言動は タブーだと聞きましたが
- ラビ: はい、危険です… あとでお説教です
- 里見那由他さんをお連れしました
- 那由他: ラビさん…!
- ラビ: 那由他様…!
- みかげ: なゆたん、よかった…!
- ドサッ
- ラビ: 那由他様…大丈夫ですか?
- 那由他: ラビさん… 私、がんばりましたの
- 那由他: ラビさんが安心して 我が家を旅立てますように
- 那由他: …………
- かなりお疲れのようですので このあと、念のため病院に…
- ラビ: …危険ですし、無茶ですし ちっとも安心できませんが
- ラビ: でも…
- ラビ: …よくがんばりました 那由他様
- みかげ: あれっ…そう言えば
- みかげ: ラビたんもみんなも どうしてキャンプ場にいたの?
- みかげ: 警察に連絡もらってから来たの? ちょっと早すぎない?
- ヨヅル: うっ…それは…
- リヴィア: あかん、気づいてもうたか…
- 5170110-40_pVeLS
- <2日後…>
- みかげの声: 「なーーーゆーーーたーーーん! ラーーービーーーたーーーん!」
- ラビ: いらっしゃいましたね
- 那由他: ええ… 私が玄関へ迎えに参りますの
- 那由他: それでは… ラビさんの送別会を始めますの!
- ラビ: …ありがとうございます
- みかげ: ラビたんとお別れなんて… ミィ、びっくりしちゃった
- ラビ: はい、寂しいですが…
- 那由他: …ご家庭の事情とのことですので
- ラビ: …………
- ラビ: (それは嘘です、那由他様…)
- 太助: 「いよいよ、“その時”が来た… 各人、身辺の整理を進め 私の次の連絡を待ってほしい」
- ラビ: (教授からそう指示があった、と うららに聞いたのが先週のこと)
- ラビ: (…急いで教授に コンタクトを取ったところ)
- ラビ: (確かにそのように伝えた、との お返事をいただいたのです…)
- ラビ: (真実をお伝えできないのは… やはり心苦しい)
- みかげ: …ラビたん、悲しそう
- 那由他: …ですの
- 那由他: でも最後くらい 笑顔でお別れしたいですの!
- みかげ: そうだね!
- 那由他: そのために今日は これを用意しましたの!
- コトン…
- ラビ: これは… レアチーズケーキですか?
- みかげ: トッピングはブルーベリー? おいしそう!
- 那由他: ええ、どうぞ召し上がって
- みかげ: おいしー! お店のケーキみたい!
- ラビ: 本当においしいです 驚きました
- みかげ: これ、なゆたんが作ったの?
- 那由他: そうですの!
- 那由他: …全部ひとりで、と 胸を張りたいところですが
- 那由他: 最近お世話になっている オンラインお料理サークルの方に
- 那由他: 初心者でも絶対に失敗しない レシピを教えてほしいって
- 那由他: 無理を言って 泣きついたんですの…
- そうですね…レアチーズなら お店で売っている材料の組み合わせでも作れます 生地も市販のお菓子を活かせば失敗しにくいかと
- …何より失敗しないコツは 自己流で余計な工夫をしないことです レシピに忠実にやれば、絶対うまくいきますので 旅
- ラビ: …………
- みかげ: …で、でも実際に作ったのは なゆたんなんだよね?
- 那由他: それはもちろんですが レシピ以外にもたくさん質問して
- 那由他: お料理サークルの方に 頼りっぱなしでしたの
- 那由他: 本当は、ラビさんが安心して この家を発てるように
- 那由他: 全部ひとりで できればよかったのですが…
- ラビ: …いえ、感心しました
- ラビ: ご自分で相談相手を見つけ 疑問に思ったことは質問する…
- ラビ: 自身の技量を客観視できて 正しい行動が取れている証拠です
- ラビ: 今後も、それが続けられれば…
- ラビ: 私がいなくても 那由他様は大丈夫です
- 那由他: それじゃ…!
- ラビ: はい、これで私も安心して ここを発つことができます
- みかげ: やった! ラビたん、笑顔になった!
- みかげ: よかったね、なゆたん!
- 那由他: ええ…!
- みかげ: あ…ラビたんって そのあとはどうするの?
- みかげ: ここを発つって… 遠くへ行っちゃうとか?
- ラビ: いえ、そういうわけでは…
- ピロン♪
- ラビ: …申し訳ありません こんなときに
- ラビ: (ん…うららから…?)
- 那由他: その顔…大切な連絡ですの?
- ラビ: …そうかもしれません ちょっと失礼
- ラビ: …………
- ラビ: ………… …………
- みかげ: どうしたの?
- ラビ: …あの、このような素敵な会を 開いていただいておきながら
- ラビ: 大変心苦しいのですが…
- ラビ: このお家を出てゆく理由が なくなりました
- 那由他&みかげ: ――っ!?
- 那由他: それでは…
- ラビ: はい…いままで通り ここに置いていただけましたら…
- うらら: 「ラビさん、ごめんなさいなんよ… 先週、教授がウチに言ったのは 本当はこういう意味だったらしいんよ」
- 太助: 「いよいよ、“その時”が来たら… 各人、身辺の整理を進め 私の次の連絡を待ってほしい」
- ラビ: 「“その時”が来たら」の 「ら」が抜けて伝わっていた…?
- ラビ: 教授が「そのように伝えた」と言っていたのは あくまで「“その時”が来た場合」の話…?
- 那由他: …ど、どうしてそんな急に?
- ラビ: その…伝達ミスと言いますか 認識違いがあったようで…
- ラビ: あの…どうぞ今後とも よろしくお願いします…
- 那由他: え、ええ…こちらこそ
- みかげ: ………… …………
- みかげ: チーズケーキ、おいしいね!
- ラビ: …………
- 那由他: 最近お世話になっている オンラインお料理サークルの方に
- 那由他: 初心者でも絶対に失敗しない レシピを教えてほしいって
- 那由他: 無理を言って 泣きついたんですの…
- ラビ: (名前に親しみを覚えたので 少し前から、お料理サークルで)
- ラビ: (アドバイスさせて もらっていましたが…)
- ラビ: (Nayutanさんが 那由他様本人だったとは…)
- ラビ: なかなかよいレシピです
- 那由他: 夏のお弁当は 傷みとの戦いですの!
- ラビ: …………
- ラビ: そうですね まさにその通りです
- ラビ: (那由他様が、“旅”さんと 同じ言葉を口にしたときにも)
- ラビ: (変だとは思ったのですが…)
- ピロン♪
- ラビ: …?
- 大切な人に贈るチーズケーキ… おかげさまで、大好評でしたの! 旅さん、本当にありがとうですの! Nayutan
- ラビ: …………
- ラビ: (“旅”が私だということは 内緒のままにしておきましょう)
- ラビ: (登録のとき、ふと思いついて そのまま使っていた名前ですが)
- ラビ: (本名で登録しなくて よかったです…)
- お役に立ててよかったです 旅
- 5170111-41_pVeLS [Minaminagi School branch (Hinano)]
- 枇々木 めぐる: みなさん、こんにちは
- 枇々木 めぐる: 夏休みの登校日 元気に過ごしていますか?
- 枇々木 めぐる: こちらは南凪自由学園放送部 枇々木めぐるです
- 枇々木 めぐる: え、いつもとテンションが違う? なんか普通すぎて怖い…?
- 枇々木 めぐる: ふふふ…それは、今日のテーマが “怖い都市伝説”だからです…
- 枇々木 めぐる: では、さっそく この夏めぐるが遭遇した
- 枇々木 めぐる: 残暑も吹き飛ぶ、こわ~いお話を お送りしましょう…
- 枇々木 めぐる: 「それは… 南凪自由学園の特別課外授業 写生大会でのことでした」
- 枇々木 めぐる: 「めぐるは、とある先輩がた… そうですね 仮にAさんとBさんとお呼びしましょう」
- 枇々木 めぐる: 「そのおふたりと一緒に 大会に参加していました」
- 枇々木 めぐる: うわ~… おっきいひまわりですね!
- 万年桜のウワサ: |ひなのが埋もれて見えない|
- 都 ひなの: あのな、これは “ひまわり迷路”だぞ
- 都 ひなの: アタシじゃなくても たいていのヤツは埋もれるだろ!
- 万年桜のウワサ: |迷路? ひまわりで?|
- 都 ひなの: 桜子には珍しいか
- 枇々木 めぐる: 子どもとかに人気ですよね
- 枇々木 めぐる: めぐるも小さいころは 迷って出られなくなったものです
- 万年桜のウワサ: |迷路、興味ある|
- 都 ひなの: …遊ぶのはあとだぞ 今日は、写生に来てるんだからな
- 枇々木 めぐる: でも、早く終わらせて
- 枇々木 めぐる: 時間が余ったら遊ぶのも いいと思います!
- 都 ひなの: 時間が余ればな
- 万年桜のウワサ: |………… …………|
- 都 ひなの: …なんか企んでる顔だな
- 万年桜のウワサ: |…企む?|
- 万年桜のウワサ: |ただ、ひまわりは迷路にも なれるのに|
- 万年桜のウワサ: |桜はなれないのかなって 考えてただけ|
- 都 ひなの: 桜の迷路を作りたいってことか?
- 万年桜のウワサ: |そう、桜の迷路を作れれば ういたちが喜んでくれるはず|
- 枇々木 めぐる: 桜の花が舞い散る迷路? 幻想的でよさそうですね!
- 都 ひなの: …迷い込んだら最後 二度と出てこられなそうだけどな
- 枇々木 めぐる: あ、そういう都市伝説 聞いたことがあります!
- 枇々木 めぐる: 確か、えっと…
- 都 ひなの: って、雑談してる場合じゃない! 早く写生始めるぞ!
- 枇々木 めぐる: 「それからめぐるたちは 写生に勤しみました」
- 万年桜のウワサ: |…こう?|
- 枇々木 めぐる: うわっ! 上手い!?
- 枇々木 めぐる: おーっと、桜子選手 なんと写実的な絵画でしょう!
- 枇々木 めぐる: まるでリアルをそのまま 切り取ったかのようだー!
- 万年桜のウワサ: |…でも、 絵っぽくない気がする|
- 万年桜のウワサ: |見たままを 描いただけだから?|
- 枇々木 めぐる: いやいや、そんな! めぐるよりずっと上手ですよ!
- 枇々木 めぐる: ねぇ、ひなのさん
- …………
- 万年桜のウワサ: |…ひなの いなくなってる|
- 枇々木 めぐる: いつのまに!?
- 枇々木 めぐる: 「なんと気がつくとAさんが いなくなっていたんです!」
- 万年桜のウワサ: |…電話、出ない|
- 枇々木 めぐる: 探しに行きましょう!
- 枇々木 めぐる: ひなのさーーーーんっ!!
- 万年桜のウワサ: |ひなの、出てきて|
- 万年桜のウワサ: |出てこないと 迷子の呼び出しするから|
- 枇々木 めぐる: 「めぐるたちはAさんを探すために Aさんの名前を呼びながら ひまわりの迷路に入っていきました」
- 5170112-42_pVeLS
- 枇々木 めぐる: 「一方、そのころ… Aさんも異変に気がついていました」
- 都 ひなの: …ん?
- 都 ひなの: …桜子たちから 離れすぎちまったみたいだな
- 都 ひなの: (何枚かラフを描いたが いまいちだな)
- 都 ひなの: (場所を変えるか)
- 都 ひなの: 少し移動するから 何かあったら連絡してくれ
- 万年桜のウワサ: |…………|
- 枇々木 めぐる: 了解っす…
- 都 ひなの: (聞いてるか怪しかったし 急にいなくなったと誤解され…)
- めぐるの声: ひなのさーーーーんっ!!
- 万年桜のウワサの声: |ひなの、出てきて|
- 万年桜のウワサの声: |出てこないと 迷子の呼び出しするから|
- 都 ひなの: やめろっ!!
- 都 ひなの: 呼び出し放送だけは避けたい… すぐ戻らないと
- …………
- 都 ひなの: (…迷ったか?)
- 都 ひなの: (めぐるたちの声が聞こえた方に 行ってみたが)
- 都 ひなの: (誰もいなかったし…)
- 枇々木 めぐる: 「それでも仲間のところに戻るため Aさんは歩き続けたそうです」
- 枇々木 めぐる: 「でも、Aさんがたどり着いたのは めぐるやBさんのところではなく…」
- 都 ひなの: …どこだ、ここ?
- 枇々木 めぐる: 「…なんと まったく知らない場所だったのです!」
- 都 ひなの: さむっ…
- 枇々木 めぐる: 「肌寒さを感じたAさんは 引き返そうとしましたが なぜか林を抜けることができません」
- 都 ひなの: (どっちから来たか わからなくなったな…)
- 都 ひなの: (…しかも、連絡しようにも 電波が入らない)
- 枇々木 めぐる: 「ひまわりの迷路にも戻れず 仲間にも連絡がつかない」
- 枇々木 めぐる: 「薄気味悪いものを感じながらも Aさんは元の場所に戻るために 辺りをさまよいます」
- 都 ひなの: (自動販売機… 歩きっぱなしだし、何か買うか)
- 都 ひなの: …………なんだこれ?
- 枇々木 めぐる: 「のどの渇きを覚えていたAさんは これ幸いと自動販売機に駆け寄りました」
- 枇々木 めぐる: 「しかし、飲み物を買おうとしたものの 電子マネーが使えません」
- 枇々木 めぐる: 「しかも、売っている飲み物は どれも見たことがないものでした…」
- 都 ひなの: ………… …妙に古めかしい自販機だな
- 枇々木 めぐる: 「ふと、Aさんの頭を とある言葉がよぎります」
- 枇々木 めぐる: 「“ヨモツヘグイ”」
- 枇々木 めぐる: 「あの世の食べ物を口にした者は 死者の世界のものとなってしまい 現世に帰れなくなる…というものです」
- 都 ひなの: …やめとくか
- 枇々木 めぐる: 「Aさんは何も買わずに 自動販売機から離れると 元の場所に戻るために歩き出しました」
- 5170113-43_pVeLS
- 枇々木 めぐる: 「しばらく歩くと 楽しそうな声が聞こえてきます」
- 枇々木 めぐる: 「それは、甲高い子どもの声でした…」
- 都 ひなの: (子どもたちがなんで?)
- 都 ひなの: (しかもあれは、浴衣… それとも着物か?)
- 都 ひなの: (どっちにしろ古風な柄だな)
- 枇々木 めぐる: 「まず奇妙に感じたのは 子どもたちが着ているものでした」
- 枇々木 めぐる: 「お祭り用の浴衣とは異なり 古風な柄のものだったのです」
- あれ、もしかして 遅れてきたの?
- 遅れてきたから 用意してもらえなかったの?
- 都 ひなの: えっと…なんの話だ?
- 枇々木 めぐる: 「子どもたちは、Aさんに気がつくと わっと寄ってきて囲みました」
- 枇々木 めぐる: 「唯一いる大人の女性は にこにこと見ているばかりです」
- でも、ちょうどよかった 人数が足りなかったの!
- 一緒に遊ぼうよ
- 都 ひなの: いや、アタシは戻らないと…
- 都 ひなの: ひまわり畑で 友だちが待ってるんだ
- ちょっとだけ、 ちょっとでいいから遊ぼう?
- 都 ひなの: えっと…人数が足りないなら
- 都 ひなの: あそこの人に遊んで もらえばいいんじゃないか?
- ダメダメ 大人はダメだよ
- そうそう、 大人はズルになっちゃうよ
- 都 ひなの: アタシも子どもじゃないんだが…
- まずは花いちもんめ!
- 枇々木 めぐる: 「子どもたちは Aさんの話を聞くことなく ぐいぐいと手を引っ張ると 仲間に入れてしまいました」
- 枇々木 めぐる: 「女性は相変わらず にこにことAさんたちを見ていました」
- これね、メンコっていうの 知ってる?
- 都 ひなの: まぁ…聞いたことぐらいは
- じゃあ、こっちは? ベーゴマ
- 都 ひなの: ベーゴマ? 貝でできてるようだが…
- おじいちゃんが 作ってくれたんだよ
- 枇々木 めぐる: 「Aさんは ひまわり畑に戻りたいと思いながら しばらくは子どもたちに付き合いました」
- 次は何して遊ぼうか? 時間はまだまだあるよ
- 都 ひなの: (妙に古い遊びばかりだな…)
- 都 ひなの: (アタシの親の時代でも やってたか怪しいぞ)
- キーンコーンカーンコーン
- ――っ!?
- 枇々木 めぐる: 「どこかから チャイムの音が聞こえて来たとき…」
- ひまわり畑はあちらですよ
- 枇々木 めぐる: 「にこにこと見てるだけだった女性が Aさんに耳打ちしました」
- 都 ひなの: えっ…
- 今のうちに どうぞおかえりください
- 都 ひなの: …ありがとうございます
- こちらこそ
- 枇々木 めぐる: 「子どもたちがチャイムに気を取られている間に Aさんは忠告に従って抜け出します」
- 5170114-44_pVeLS
- 都 ひなの: ひまわり畑まで戻れたか…
- 枇々木 めぐる: 「女性に教えてもらった方へ行くと Aさんは無事 ひまわりの迷路に戻ることができました」
- 万年桜のウワサ: |ひなの!|
- 万年桜のウワサ: |…ダメ 見つからない|
- 枇々木 めぐる: えっと…迷子の放送、 かけてもらいましょうか…?
- 都 ひなの: 待て! アタシはここだ!!
- 枇々木 めぐる: ――っ!?
- 万年桜のウワサ: |…ひなのの声?|
- 枇々木 めぐる: 「そして… 心配していた仲間と 再会することができたのです」
- 枇々木 めぐる: ひなのさんが迷子になるなんて 意外でした…
- 都 ひなの: 迷子という言い方は やめてほしいんだが
- 万年桜のウワサ: |どこに行ってたの?|
- 都 ひなの: …………
- 万年桜のウワサ: |ひなの?|
- 都 ひなの: それが、よくわからないんだ
- 枇々木 めぐる: 「Aさんはめぐるたちと再会するまでのことを 話してくれました」
- 枇々木 めぐる: 「…そう、めぐるが今まで みなさんに話した内容です」
- 枇々木 めぐる: そ、そそそそそれは…!
- 枇々木 めぐる: いま流行っている 都市伝説にそっくりです!
- 都 ひなの: …都市伝説?
- 枇々木 めぐる: 「道に迷いに迷って あちら側に連れて行かれた小学生は 子どもの幽霊の仲間になってしまって 二度と帰って来られない…」
- 枇々木 めぐる: 「行きついた先は 亡くなった子どもたちの記憶が混ざり合う ひと昔前の、レトロな心象風景…」
- 枇々木 めぐる: 「そう、神浜市では今 そんな都市伝説がささやかれているのです」
- 枇々木 めぐる: 「Aさんが遭遇した状況は まさにその都市伝説に そっくりだと思いませんか?」
- 万年桜のウワサ: |確かに、ひなのも迷って|
- 万年桜のウワサ: |子どもの幽霊…? と遊ばされてた|
- 枇々木 めぐる: しかも、なかなか帰して もらえなかったんですよね?
- 都 ひなの: ああ…
- 都 ひなの: ずっとにこにこしてた女性が 隙を見て逃がしてくれなかったら
- 都 ひなの: 今もまだあそこにいたかもな…
- 枇々木 めぐる: まさにビンゴです!
- 枇々木 めぐる: ズバリ都市伝説に巻き込まれた… と言って間違いないでしょう!
- 都 ひなの: …いや、でもなぁ
- 都 ひなの: アタシは、 こうして帰ってきてるし
- 万年桜のウワサ: |…………|
- 万年桜のウワサ: |ひなのが 小学生じゃなかったから…?|
- 都 ひなの: はっ?
- 万年桜のウワサ: |ひなのは小さいけど 小学生じゃないから|
- 万年桜のウワサ: |戻ってこられたのかも|
- 枇々木 めぐる: 確かにめぐるが聞いた話だと
- 枇々木 めぐる: 戻ってこられないのは 小学生だけだったはず!
- 枇々木 めぐる: ナゾは解けましたね!
- 都 ひなの: おいっ! じゃあ、なんだ?
- 都 ひなの: あの子どもたちは
- 都 ひなの: アタシを同じくらいの子どもだと 思ってたってことか?
- 万年桜のウワサ: |そう|
- 万年桜のウワサ: |でも、女性は欺けなかった|
- 都 ひなの: 怪奇現象なら 最初から見破っとけ!
- 万年桜のウワサ: |ひなのは 怪奇現象すら欺く…覚えた|
- 都 ひなの: 覚えなくていい! むしろ忘れてくれ!
- 都 ひなの: そもそもだ!
- 都 ひなの: そんな非科学的なこと ありえないだろ
- 都 ひなの: アタシの勘違いとか いろいろ変な偶然が重なったんだ
- 枇々木 めぐる: 「Aさんは、非科学的だと否定しましたが めぐるは知っています」
- 枇々木 めぐる: 「Aさんも内心では “もしかして?”と思って ひやっとしていたことを…」
- 5170115-45_pVeLS
- 枇々木 めぐる: …いかがでしたか?
- 枇々木 めぐる: この夏、めぐるが出会った ちょっと不思議な出来事でした!
- 枇々木 めぐる: 続いては、 お便りのコーナーです!
- 枇々木 めぐる: なになに?
- 枇々木 めぐる: おっ! また都市伝説のお話ですね
- 枇々木 めぐる: 最近生まれたばかりの都市伝説 “遊んでくれる妖精さん”!
- 枇々木 めぐる: では、紹介していきましょう!
- 都 ひなの: 今度は妖精さんか… 都市伝説のネタは尽きないな
- 都 ひなの: …と言っても、アタシが体験した あの不思議な時間といい
- 都 ひなの: 都市伝説には何か元になるような 出来事があるのかもしれないが…
- <2週間前>
- <写生大会の日の午後…>
- そろそろお姉ちゃんが 迎えに来るからね
- やったー!
- 由貴 真里愛: みんなー こんにちは!
- あっ、真里愛お姉ちゃん!
- 由貴 真里愛: 子ども祭りの準備が終わったから みんなを呼びに来たの
- ごめんね、来てもらって ここ、電波が悪いから…
- 由貴 真里愛: 気にしないでください
- 由貴 真里愛: それより、待っている間 飽きたりしてませんでした?
- 由貴 真里愛: 浴衣も慣れないから 動きにくいでしょうし…
- 全然、大丈夫! もう慣れちゃったよ
- 最初はね
- ちょっと古くていやだなぁって 思っちゃったんだけど
- 着てみたら可愛いね
- 由貴 真里愛: それはよかったわ
- 由貴 真里愛: (お家で浴衣を 用意できない子もいるから)
- 由貴 真里愛: (地域の方に協力してもらって)
- 由貴 真里愛: (古い着物を仕立て直した かいがあったわね)
- …この辺って
- 古い自動販売機が そのままになってたりして
- ひと昔前みたいな風景だし
- 私たちの学童保育って
- 今の子がしないような 昔の遊びを教えてあげてるから
- あのお姉さん おかしな場所に迷い込んだって
- 焦ったかもしれないわね
- 由貴 真里愛: …あのお姉さん?
- あのね、真里愛お姉ちゃん 妖精のお姉ちゃんがいたの
- 由貴 真里愛: 妖精の…お姉ちゃん…?
- うん、親切な妖精さんで ずっと一緒に遊んでくれたんだよ
- ちっちゃいけどいろいろ知ってて 優しいんだ
- 由貴 真里愛: あらあら 素敵な妖精さんね
- でもね、チャイムが鳴ったから 帰っちゃったの
- 由貴 真里愛: チャイム?
- うん… 先生に聞いたら
- 妖精さんがここにいられるのは チャイムが鳴るまでかもって…
- お祭りも 一緒に行きたかったのに…
- 由貴 真里愛: あの子たちが言う 妖精さんってさっき言ってた
- 由貴 真里愛: 迷い込んだ お姉さんのことですよね?
- 由貴 真里愛: どうして、妖精さんなんて 話になったんですか?
- あなたと同じ制服の子が 迷い込んでしまったみたいで
- 子どもたちに なつかれちゃったのよ
- でも、親切に遊んでくれたの
- それであの子たちがチャイムに 気を取られている間に
- 帰してあげたんだけど…
- 由貴 真里愛: みんなには消えたように 見えたんですね
- そう…だから、妖精さん 可愛い考え方でしょう?
- 由貴 真里愛: はい…!
- 由貴 真里愛: 私も会ってみたかったですね
- 5170116-46_pVeLS [Kagome node; Normal End]
- かごめ: なんだか、こうして読んでると みんな楽しそうだね
- アルちゃん: <どうしたの、かごめちゃん 少しだけ寂しそうだけど…>
- かごめ: なんだかいいなって 少しうらやましくなっちゃった
- かごめ: 私もこういう楽しい夏休みって 経験したことはあるけど
- かごめ: ほら、アルちゃんを通さないと、 私って話せなかったでしょ…?
- かごめ: だから、こっちに引っ越してきて 幼馴染がいなくなってからは
- かごめ: こうして遊べる学校の友だちって いなくなったなって…
- アルちゃん: <心配しなくても大丈夫>
- アルちゃん: <だってこんなにいっぱい 取材をしてきたんだもん>
- アルちゃん: <あの頃のかごめちゃんより 成長してるはずだよ>
- かごめ: そうかな? 少しずつ変わってるかな?
- アルちゃん: <うん、広げられたメモの数が 成長の証だと思うよ>
- かごめ: …そうだね、そうかもしれない
- かごめ: だってこんなに人と関わるなんて 昔の私からは考えられないもん
- かごめ: …うん、なんだか元気が出てきた
- かごめ: みんなの物語を原動力にして、 楽しい夏休みになるようにしよう
- アルちゃん: <その意気だよ!>
- かごめ: じゃあ、図書館に行ってくるね
- かごめ: なんだか家より外で 作業を進めたくなっちゃった
- アルちゃん: <うんっ>
- 5170117-47_pVeLS [Kagome node; True End]
- かごめ: (うん、とりあえず今日は ここまでにしようかな…)
- かごめ: (明日はどうしようかな… 明日もまた図書館…?)
- かごめ: (でも、私もたまには 友だちと一緒にうんと遊びたい)
- かごめ: ――っ!?
- 風の伝道師のウワサ: …………
- かごめ: …この近くに魔女の反応がある?
- 風の伝道師のウワサ: …………
- かごめ: …うん、わかった
- かごめ: いろはさんに連絡して 状況を聞いてみるね
- かごめ: と、ここでとっさにスマートフォンを見ると 自分で驚いてしまった
- かごめ: 連絡を取るために開いたメッセージアプリには 私が思ってもみなかったぐらい たくさんの人の名前が並んでいる
- かごめ: 意識していなかったけど 私は前から誰かとコミュニケーションを とり続けていたんだ
- かごめ: そして、今もまた 私は平気でいろはさんと連絡を取ろうとしてる
- かごめ: でも… この違いって何なんだろう…
- かごめ: 取材したり記録することは平気でできるのに 「遊びませんか?」っていうたった一言は ひどく重く感じてしまう
- かごめ: (それにメモをまとめてる間に、 こんなにメッセージも来てる…)
- すなお: 静香たちと霧峰村に帰省して お土産を持ってきました 今度お会いする時にお渡ししますね
- 樹里: なあ、お前ってゲームできるか? こっち頭数がたんなくてさ 神浜市のヤツらをぶちのめしてーから来いよ 最悪、取材だけでもかまわねーから
- 木崎 衣美里: ねえねえ、今度一緒にプールいかね!? 商店街でもらったタダ券むっちゃあんの! あすきゃんの水着とか見たいっしょ!?
- 遊佐 葉月: ねえ、売り子ってなんの事かわかる? 本を書いてる人だし何か知らないかな…? また急にイベントに巻き込まれそうで…
- みたま: 調整屋では次の日曜日に 納涼大感謝祭を開催するわよぉ~ みんなでいっぱい楽しめると思うから かごめちゃんも一緒に遊びましょ
- かごめ: みんな、すごく自然…
- かごめ: 私だって自然に接してるけど、 それは取材や記録のことだけ…
- かごめ: そう、たぶん魔法少女を取材するということを 言い訳にし続けて、壁を作ってるのは私…
- かごめ: みんなは私自身と繋がろうとしてるのに 私が取材という言葉で 差し伸べてくれた手を払いのけてるんだ…
- かごめ: だから、勇気を出さないと… これだけの人と私は繋がれたんだ…
- かごめ: 私はみんなと一緒に 同じような日常を過ごせるはずだし
- かごめ: 同じ時間を共有したい…!
- かごめ: だから…
- ~~♪~~♪
- かごめ: あ、いろはさん 魔女のことってお気づきですか?
- かごめ: …よかった、倒したんですね
- かごめ: …はい、それだけなんですけど あの…
- かごめ: …………
- かごめ: 今度、一緒にみたまさんの 納涼大感謝祭に行きませんか!?
- かごめ: みんなも連れて、遊びに…!
- かごめ: この時、私の夏休みも動き始めた
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