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Rainbow Colored Summer JP Text

Jul 29th, 2022 (edited)
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  1. 517001-1_KaCgt [Kagome node]
  2. かごめ: えっと… このルーズリーフで全部かな…?
  3. かごめ: こうやって並べてみると、 いっぱい取材したね、アルちゃん
  4. アルちゃん: <でも、取材内容を書いた ルーズリーフよりも>
  5. アルちゃん: <かごめちゃんが自分でメモした ルーズリーフの方が多いよ>
  6. かごめ: そうかもしれないね
  7. かごめ: 長い休みに入って 私は今までのメモをまとめることにした
  8. かごめ: 何が起きるかわからない毎日だから あとでパズルみたいに整理できるよう 小さなルーズリーフに 色んなことを書いてるんだけど
  9. かごめ: 気がつけば、そのメモの数々は 専用の引き出しの中を一杯にしていた
  10. かごめ: これは初めて いろはさんと会ったとき…
  11. かごめ: 時女一族とネオマギウスの 戦いについて
  12. かごめ: 灯花ちゃんとねむちゃんに聞いた 魔法少女のこと
  13. かごめ: 魔法少女同士が争っていたから 殺伐とした内容のメモが多い
  14. かごめ: だけど…
  15. かごめ: これって、調整屋で起きた 料理の事件の話だ
  16. かごめ: それに、まなかちゃんの お料理教室の話
  17. かごめ: こっちは水名女学園の 学園祭の話だよね…ふふっ
  18. かごめ: 魔法少女だということを除けば みんなは私と同じ普通の女の子として 日常を過ごしている
  19. かごめ: だから私は、周りの人たちと変わらない 魔法少女たちの実像も記したくて こうしてみんなの日常もメモしていた
  20. アルちゃん: <お正月とかクリスマスとか 色んな行事のメモがあるね>
  21. かごめ: 私が来る前にあった話も含めて たくさん教えてもらったからね
  22. かごめ: 特に多いのは… うん、“夏休み”のお話かも
  23. ミーンミンミンミンミンミ゙ィー…
  24. かごめ: ふふっ
  25. かごめ: 今日は戦いじゃなくて 日常の話をまとめてみようかな
  26. かごめ: 目の前にはあるのは自分のメモ
  27. かごめ: そして、みんなからもらった “夏にまつわる思い出”のエピソード
  28. かごめ: 一度まとめ方を考えるよりも前に 読み返してみたいと思う
  29. かごめ: みんなが過ごした夏の日々を
  30.  
  31. 517002-2_KaCgt [Kuroe branch (Kuroe & Iroha)]
  32. 黒江: いつも通りの夏休み…
  33. 黒江: お兄ちゃんからのお願いを断り切れずに 場違いな海の家で手伝いをしている …なんて、少しの違いはあるけど 結局、終わってみればいつも通りなんだろうな
  34. 黒江: この水着も調整屋さんで準備してもらったけど 海の家のお手伝いをこなしてるだけじゃ たいした出番もなく終わりそうだし…
  35. 黒江: 肝心のこれも、まだほとんど使えてないし 楽しそうに海で遊ぶ人たちを眺めながら ただ、ぼーっとしてるだけ
  36. 黒江: 人の輪の中へ踏み出す勇気なんてないし 相も変わらず、私はひとり “変わりたい”のに、“変われない”… 結局、何者にもなれないまま 今年もいつも通りの夏を過ごすに決まってる
  37. 黒江: …あれ、でも私って 海で遊んでる人みたいになりたいんだっけ
  38. 黒江: 違うよね… 私はもっと、こう… 魔法少女として…
  39. 黒江: なんで環さんが思い浮かぶの…
  40. 黒江: うーん…調整屋さんでも 環さんのこと意識しちゃってたな…
  41. みたま: いらっしゃ~い
  42. みたま: あら、黒江ちゃん久しぶりね 調整が必要かしら?
  43. 黒江: …えっと チラシを読んで…
  44. みたま: あぁ、水着調整キャンペーン?
  45. みたま: 元黒羽根さんたちに チラシを配っておいてよかったわ
  46. みたま: 可愛くしてあげるから任せて
  47. みたま: じゃあ、どんな風になりたいか イメージを教えてくれるかしら?
  48. 黒江: …SUP教室の手伝いもあるから SUPがある程度できるような…
  49. みたま: SUPって スタンドアップパドルボード?
  50. 黒江: …はい サーフィンみたいなやつ…ですね
  51. みたま: なるほどねぇ デザインはどんな感じがいい?
  52. 黒江: あんまり派手じゃないのが いいかな…
  53. 黒江: (どんな風になりたいか… って聞かれると)
  54. 黒江: (デザインと関係ないことまで 考えちゃうな)
  55. 黒江: (誰かを救う勇気がある人…)
  56. 黒江: (そんな自分に変われないかな …なんて、思っちゃう)
  57. 黒江: (そう…環さんみたいに…)
  58. みたま: わかったわ
  59. みたま: それじゃあ、もう少し 細かいデザインについて
  60. みたま: 教えてもらえるかしら♪
  61. みたま: はいっ できたわよ~
  62. みたま: あらぁ、とっても似合ってるわ♪
  63. みたま: SUPも、きっと上手に できるようになってるはずよ
  64. 黒江: …ありがとうございます
  65. みたま: あら、その手足のお花 いろはちゃんのと似てるわね
  66. 黒江: …えっ?
  67. みたま: あぁ、ごめんなさい… 黒江ちゃんの話を聞いてるうちに
  68. みたま: いろはちゃんの水着と イメージが被っちゃって
  69. みたま: 調整のとき、無意識に 似せちゃったのかも…
  70. 黒江: あ…いえ、別に…被っても…
  71. 黒江: (デザインの話のときに 環さんのこと考えてたのが)
  72. 黒江: (伝わっちゃってたのかな… 恥ずかしい…)
  73. 黒江: あ…いけない お兄ちゃんを手伝わなきゃ
  74. 黒江: …ふぅ 疲れたな…
  75. いろはの声: あれ? もしかして黒江さん!?
  76. 黒江: …………環さん?
  77. いろは: やっぱり、黒江さんだ…!
  78. 黒江: 環さん…どうしてここに…?
  79. いろは: やちよさんが、仕事の関係で 招待券をもらったから…
  80. いろは: せっかくだからって みんなでSUP体験に来たの
  81. 黒江: え…それ、私が お手伝いしてるところ…かも
  82. いろは: ほんと!? すごい、偶然だね!
  83. 黒江: (あれ、みんな …っていうことは)
  84. みふゆ: お久しぶりですね 今日はお世話になります
  85. ねむ: 君は元黒羽根の子か 僕達相手じゃやりにくくないかな
  86. 黒江: …別に、そんなことは
  87. ねむ: 僕はこの足だから 基本的にはずっと座って見学…
  88. ねむ: ということになるけどね
  89. 万年桜のウワサ: |大丈夫、私がだっこする …それより、灯花はまだ?|
  90. 黒江: …あ 里見さんは…来てないんですか?
  91. ねむ: ああ、少しばかり 遅れる、と言っていたね
  92. いろは: 鶴乃ちゃんとフェリシアちゃんも 寄り道してから来るみたい
  93. 黒江: そうですか…
  94. ピンポンパンポーン♪
  95. 「迷い犬のお知らせです 白い大型犬のサマー君が迷子になっています 見かけた方は 迷子センターまでお知らせください」
  96. いろは: 迷い犬かぁ… 早く見つかるといいけど…
  97. 黒江: …うん
  98. 鶴乃: どうしよう、やちよ! フェリシアとはぐれちゃった!
  99. やちよ: えっ
  100. ピンポンパンポーン♪
  101. 「続けて、迷子のお知らせです 神浜市からお越しの深月フェリシアちゃんが 迷子センターでお連れ様をお待ちです お心当たりのお客様は 迷子センターまでお越しください」
  102. 鶴乃: ええっ?
  103. いろは: あ、よかったぁ…
  104. やちよ: …私が迎えに行くわ
  105. ピンポンパンポーン♪
  106. 「迷子のお知らせ…あ、ちょっとあなた待っ…」
  107. 灯花: 「わたくしは迷子じゃなーい! ちょっとみふゆ、どこ行ってるのー!? 早くわたくしを迎えに来てよねー!」
  108. みふゆ: なっ…灯花!? ワタシも行ってきます!
  109. ねむ: 灯花…みふゆを呼びつけるために 迷子センターに駆け込んだね…
  110. いろは: あ、あはは… 慌ただしくてごめんね…
  111. 黒江: それから、環さんたちは なんとか深月さんと里見さんと合流して みんなでSUPの講習を受けはじめた
  112. 黒江: SUPの先生に教えてもらいながら 楽しそうに笑っている環さんたちを眺めて 私は、暇を持てあましていた
  113. 黒江: (…楽しそうだな)
  114. 黒江: (…やっぱり手首の花 環さんのと同じだ…)
  115. いろはの声: 黒江さーん!
  116. 黒江: ――っ!?
  117. いろは: あの、講習が終わって これから自由時間なんだけど…
  118. いろは: 先生も見ててくれるらしいから… 黒江さんも一緒に遊ばない?
  119. 黒江: …………うん
  120.  
  121. 517003-3_KaCgt
  122. 黒江: (一緒に遊ぶ …とは言ったけど)
  123. 黒江: (この人たちの相手は やっぱり緊張する、かも…)
  124. ねむ: じゃあ、僕は 車椅子SUPっていう
  125. ねむ: この体でも楽しめそうなものが あると聞いたから
  126. ねむ: 桜子とみふゆと一緒に、先生に 教えてもらうことにするよ
  127. ねむ: 先生に、君もSUPの経験者だと 聞いているし…
  128. ねむ: みんなも経験者の彼女に 何か教えてもらったらどうかな?
  129. フェリシア: え、お前プロなのか?
  130. 黒江: いや、全然プロじゃ…
  131. 灯花: 海の家のお手伝いを してるんだっけー?
  132. 黒江: そうだけど… そんなに上手くないから…
  133. 黒江: 私がSUPを 教えているわけでもないし…
  134. フェリシア: なぁなぁ! なんかすげー技見せろよ!
  135. 黒江: え…えっと… そんなこと言われても…
  136. いろは: もう、ふたりとも! 黒江さんを困らせ…キャッ!?
  137. ずてっ
  138. 黒江: (…転んだ…)
  139. 灯花: お姉さま!? 大丈夫!?
  140. いろは: あはは…大丈夫だけど 恥ずかしいな…
  141. フェリシア: ったく、いろはは ほんっとドジだよなー
  142. 黒江: (なんか、可愛い人…だな)
  143. 黒江: (不思議…さっきまでの 緊張が消えちゃった)
  144. いろは: …さっきは恥ずかしいところを 見られちゃったね…あはは
  145. 黒江: …ううん、助けようとしてくれて ありがとう
  146. いろは: こっちこそ灯花ちゃんたちが ごめんね…!
  147. いろは: それにしてもSUPって 知らないことばっかりだったよ
  148. いろは: 普通の海水浴場と離れたところで しないといけないってこととか
  149. いろは: 全然、知らなかったもん
  150. 黒江: うん…人にぶつかったりしたら 危ないから…
  151. いろは: あと、こっちには島もあるんだね …ほら、あそこ!
  152. 黒江: あぁ、あの小島までの一本道… 綺麗だって有名らしくて
  153. 黒江: 潮の満ち引きで現れたり 消えたりするみたい
  154. 黒江: 一本道では綺麗な貝殻とかも 見つかる…って聞いた
  155. いろは: へぇ…そうなんだ…!
  156. いろは: そういえば、海の家に来る前に 点々と貝が落ちててね
  157. いろは: 貝拾いしてた子が 落としちゃったみたいで
  158. いろは: 拾って鶴乃ちゃんと その人を追いかけたんだ
  159. 黒江: …なんか、落ちたものを たどっていくって
  160. 黒江: ヘンゼルとグレーテルみたい
  161. いろは: そうそう、私もそう思ったの!
  162. いろは: 道に迷いそうになったら、私も ヘンゼルとグレーテルみたいに
  163. いろは: 何か物を落として戻れるように しようかなって
  164. フェリシアの声: おーい! いろはーくろえー!
  165. フェリシア: ねむと桜子がやってる ふたり乗り!オレもやりたい!
  166. いろは: フェリシアちゃん… そんな黒江さんに迷惑…
  167. 黒江: …いいよ 先生の目が届くところなら
  168. フェリシア: よっしゃー!
  169. いろは: ありがとう、黒江さん
  170. 黒江: …これくらいしかできないから
  171. フェリシア: それじゃ、くろえ! 一緒にあっち行こうぜ!
  172. 黒江: …で、柊さんたちが ふたり乗りしてた話だよね
  173. フェリシア: おう!ねむは車椅子だったけど そうじゃなくてもできるだろ?
  174. 黒江: うん…
  175. 黒江: あんな風にパドルボードに ふたり乗りすることを
  176. 黒江: タンデムって言うんだけど
  177. 黒江: …ちょっとやってみようか
  178. 灯花の声: あーっ! いたー!
  179. 灯花: わたくしも、いろいろ やってみたいことがあるんだけど
  180. 黒江: あ…えっと…
  181. フェリシア: ―フェリシア― わりぃけど、くろえはオレと タンデムってやつをやるのにいそがしーから!
  182. 灯花: ―灯花― そんなのズルいにゃー! わたくしだっていろいろやってみたいのにー!
  183. 黒江: ―黒江― えっと…順番に…
  184. フェリシア&灯花: ―フェリシア&灯花― じゃあオレから! じゃあわたくしからだね!
  185. 黒江: ―黒江― あ、あぁ…
  186. いろは: もう、ふたりとも! 黒江さんを困らせちゃだめだよ
  187. フェリシア: じゃあさ、いろは あれはいいのかよ
  188. いろは: へっ?
  189. やちよ: 黒江さん、パドルボードの上で ヨガをするっていう
  190. やちよ: SUPヨガをしてみたいんだけど
  191. 鶴乃: えーそれよりわたしと 競争しようよー!
  192. 鶴乃: せっかくやるからには
  193. 鶴乃: SUPでも最強を 目指したいからね!
  194. さな: 私は、わんちゃんと パドルボードに乗って楽しむ
  195. さな: ドッグSUPっていうのを やってみたいんですけど…
  196. さな: userNameは 代わりにはならない…かな…
  197. 鶴乃: ほっ? …もしかしてそれ
  198. 鶴乃: 普通の人が見たら 無人のボードに見えちゃう気が…
  199. さな: そ、そうでした… すみません…
  200. 黒江: あの…えっと…
  201. 黒江: (環さんって、この人たちと いつも一緒にいるんだよね…)
  202. 黒江: (環さんも控えめな性格なのに なんでやっていけてるんだろ)
  203. いろは: だめだよみんな
  204. いろは: いっぺんに話しかけられて 黒江さん困ってますよ!
  205. やちよ: あ…そうよね ごめんなさい…黒江さん
  206. 黒江: (あ…こういうところ なのかな…)
  207. 黒江: (見た目によらず、怒るとこは ちゃんと怒れるから…)
  208. 黒江: (たくさんの仲間と一緒でも 環さんのままでいられるのかも)
  209.  
  210. 517004-4_KaCgt
  211. 黒江: それから、七海さんたちと いろんな種類のSUPをやってみたり 里見さんたちに振り回されたりしたあと 環さんとふたりでSUPで遊んだ
  212. 黒江: ただ、漂うように海の上を進む時間は 他の人と過ごすよりも穏やかで こういう風に人と過ごすのは 悪くないのかもって思った
  213. いろは: あ、あそこに魚がいるね…!
  214. 黒江: ほんとだ…SUPで 釣りとかもできるらしいけど
  215. 黒江: あとでやってみる…?
  216. いろは: あ、ちょっとやってみたいかも…
  217. 鶴乃の声: このまま ビュビューンと行っちゃうよー!
  218. いろは: わっ!? 鶴乃ちゃんとフェリシアちゃん!
  219. 鶴乃: ふんふん! こんな乗り方もできちゃうよっ!
  220. フェリシア: オレだって負けねーぞ! タンデムってやつも覚えたしな!
  221. 黒江: (…みんな元気だな)
  222. いろは: 「それじゃあ、あとで私も フェリシアちゃんのボードに 乗せてもらおうかな?」
  223. 鶴乃: 「それはお勧めしないよっ!」
  224. 鶴乃: 「さっき、さなが乗ったら フェリシアが全速力で回転させちゃって ふらふらになってたし!」
  225. いろは: 「ええ!? さなちゃん、大丈夫かな…?」
  226. フェリシア: 「へーきへーき! いろはも乗せてやるから来いよ!」
  227. 黒江: (環さんはすごいな… みんなと仲良くできて…)
  228. 黒江: (そういえば、手と足に ついている花…)
  229. 黒江: (たしか、アネモネ…?)
  230. 黒江: (サンダルも可愛くて 花と合ってるな…)
  231. ザザーン…
  232. 黒江: (わ…大きな波が…)
  233. ぐらっ
  234. 黒江: え…?
  235. バッシャーン
  236. 黒江: 海に落ちた…!? どうしよう…!? 私、ほとんど泳げない…!
  237. フェリシアの声: おい! くろえがボードから落ちたぞ!
  238. いろはの声: 大変! 助けなくちゃ!
  239. 鶴乃の声: ちょ!? 待って、いろはちゃん!
  240. ボチャンッ
  241. 黒江: あれ…でもここって…
  242. 黒江: あ…浅い…立てた
  243. 黒江: (それより…!)
  244. 黒江: (さっき環さん 飛び込んだ…よね!?)
  245. いろは: あぷ…はっ…
  246. ブクブクブク…
  247. 黒江: 環さん!? 泳げないの!?
  248. 黒江: (どうしよう、私のせいで!)
  249. 黒江: あ、こっち… 手掴んで…立てるから…!
  250. ガシッ
  251. 黒江: あ…
  252. バッシャーン
  253. 黒江: どうしよ…私まで 一緒に溺れ…
  254. 鶴乃: 落ち着いて、浅いから! フェリシア、助けるよ!
  255. フェリシア: おー、任せろ!
  256. いろは: はー…はー… まさかあんなに浅かったなんて
  257. 鶴乃: いろはちゃん、カナヅチなのに 無茶しすぎだよ!
  258. フェリシア: 立てるとこでも 溺れるヤツっているんだな
  259. フェリシア: オレ、ちょっと怖かったぞ…
  260. いろは: うぅ…ごめんなさい…
  261. 黒江: あ…助けようと してくれたんだよね…?
  262. いろは: でも、私が余計なことしたから 黒江さんまで溺れそうに…
  263. 黒江: …………
  264. 鶴乃: ふたりは少しここで休んでて
  265. 鶴乃: わたしとフェリシアで タオルもらってくるから
  266. いろは: 本当にごめんね…黒江さん
  267. 黒江: …………
  268. 黒江: …どうして環さんは あんなことができるの?
  269. 黒江: 自分も泳げないのに 人を助けるなんて…
  270. 黒江: (私だったら、きっと そんな勇気出せないから…)
  271. いろは: え? えっと…
  272. いろは: ごめん…私、余計なこと しちゃったよね…
  273. いろは: 助けなくても、黒江さん あの深さなら立ててたし…
  274. 黒江: …え、あぁ…
  275. 黒江: (もしかして、責めたように 聞こえちゃった…?)
  276. 黒江: (どうしよう…そんなつもりじゃ なかったのに…!)
  277. いろは: …………
  278. 黒江: …………
  279. 黒江: (環さんならきっとこういうとき 何かフォローするんだろうけど)
  280. 黒江: (何も出てこない…)
  281. 黒江: …えっと…
  282. 灯花の声: ねー!SUPの人ー! ちょっと来てくれないかにゃー!
  283.  
  284. 517005-5_KaCgt
  285. 黒江: それから、里見さんに連れていかれて 質問攻めにされたり無理難題を出されたり…
  286. 灯花: ジェットエンジンつきのやつは ないのかにゃー
  287. 黒江: そうこうしているうちに すごく時間が経っちゃった
  288. 黒江: (疲れた…)
  289. 黒江: (環さんのところに 戻らなきゃ…)
  290. 黒江: …あれ?
  291. 黒江: 環さん、他のところに 行ったのかな…?
  292. 黒江: (きっと七海さんとかと 一緒にいるんだよね…)
  293. やちよ: あら、黒江さん いろは知らないかしら?
  294. 黒江: え…七海さんも 知らないんですか…?
  295. やちよ: 黒江さんと別れてから、誰も いろはの姿を見ていないのね…
  296. 黒江: ひとりで、どこかに買い物とか 行ったんじゃないですか…?
  297. やちよ: いろはの性格的に あまり考えられないわね…
  298. フェリシア: 迷子になったんじゃねーの?
  299. やちよ: スマホは持ってるはずだし 連絡が来るはずよ
  300. やちよ: 最悪、迷子センターとかにも 行けるでしょうし
  301. やちよ: そもそも、さっきから 既読もつかないのよね…
  302. うい: お姉ちゃん泳げないし… 溺れてたりしないかな…
  303. さな: でも、ひとりで海に 入ったりするでしょうか…
  304. 鶴乃: 溺れかけたばっかりだよ? さすがにないんじゃないかな
  305. やちよ: そうね…とは言え 何かあってからじゃいけないし
  306. やちよ: まずは 海の家の大人に相談しましょう
  307. 鶴乃: やちよ、どうだった?
  308. やちよ: ライフセーバーの人が来てくれて すぐに動いてもらってるわ
  309. 鶴乃: 迷子の場合も、ライフセーバーに 知らせるんだっけ
  310. やちよ: ええ、海の事故は恐いから…
  311. やちよ: それで、海の家の方とも相談して ただの迷子かもしれないから
  312. やちよ: 私たちも危険じゃない場所を 手分けして探すことになったわ
  313. 鶴乃: うん、それがいいね!
  314. やちよ: 私、みふゆ、それから鶴乃の 3班に分かれて探しましょう
  315. ねむ: 僕は足を引っ張ってしまうから 灯花と桜子とここに残って
  316. ねむ: お姉さんが戻ったときのために 待機しておくよ
  317. 万年桜のウワサ: |海の家のお客さんたちにも いろはを見てないか聞いておく|
  318. やちよ: ええ、お願いするわ
  319. やちよ: それじゃあ、捜索は このメンバーで行きましょう
  320. やちよ: それじゃあ、何かあったら 逐一報告をしてちょうだい
  321. ねむ: 僕達に情報を集約して 共有漏れのないようにしたい
  322. うい: うん、わかった!
  323. うい: 頑張ろうね みふゆさん、黒江さん
  324. みふゆ: はいっ
  325. 黒江: …うん その、環さんの妹…さん?
  326. うい: ういでいいよ!
  327. 黒江: …うん よろしく…ういちゃん
  328.  
  329. 517006-6_KaCgt
  330. 黒江: それから、砂浜中を探したけど 環さんが見つかる気配はなくて ただただ、時間だけが過ぎていった
  331. うい: …お姉ちゃん どこに行っちゃったんだろう…
  332. いろは: ごめん…私、余計なこと しちゃったよね…
  333. いろは: 助けなくても、黒江さん あの深さなら立ててたし…
  334. 黒江: (あれが最後とか そんなの、最悪だ…)
  335. 黒江: (私が、あのとき環さんと 一緒にいたら…)
  336. 黒江: (里見さんのところに 行っていなかったら…)
  337. うい: …黒江さん? 大丈夫…?
  338. 黒江: …あ、うん…ごめん
  339. ピロン♪
  340. うい: あ、やちよさんから…!
  341. うい: …………
  342. うい: 一度、元の場所に 集まるように…だって
  343. やちよ: これで全員ね
  344. 鶴乃: 結構、探し回ったけど 見つからないね…
  345. うい: かなり時間も経ってるよね やっぱり、何かあったのかな…
  346. ねむ: 大人達も探してくれているけど まだ見つからないらしい
  347. やちよ: 直接、電話もかけてみたけど 繋がらなかった…
  348. やちよ: 電池切れかもしれないけど 嫌な想像もできてしまうわね…
  349. みふゆ: そうですね…他に何か 変わったことはありましたか?
  350. 鶴乃: 迷子犬の放送が またあったくらいかな?
  351. フェリシア: あー、でっけーわんこを見かけた ってヤツが知らせに行ってたな
  352. フェリシア: 島に続く道にいた… とかナントカ
  353. 黒江: でっけーわんこ…?
  354. 「迷い犬のお知らせです 白い大型犬のサマー君が迷子になっています 見かけた方は 迷子センターまでお知らせください」
  355. いろは: 迷い犬かぁ… 早く見つかるといいけど…
  356. 黒江: (まさか…)
  357. 黒江: (いや、でも環さんなら ありえるのかも…)
  358. 黒江: あ、あの…七海さん! 1ヶ所だけ確認したい場所が…
  359. やちよ: …どこ?
  360. 黒江: …あの小島です
  361. さな: …あ、潮の満ち引きで現れる 道があるって話ですよね
  362. 黒江: はい…環さんがその犬を見かけて
  363. 黒江: それで、追いかけていったんじゃ ないかって
  364. 黒江: …その道、今は海の下にあって 歩いては通れないけど
  365. 黒江: SUPでなら行けると思うから…
  366. やちよ: わかったわ
  367. やちよ: いずれにしても ライフセーバーさんと
  368. やちよ: 海の家の大人たちに 現状は報告しておくわ
  369. やちよ: そちらの判断によっては 警察や、いろはのご両親に
  370. やちよ: 連絡してもらう ことになるかと思うから
  371. 黒江: …はい それじゃあ、私行ってきます
  372. みふゆ: 待ってください
  373. みふゆ: でしたら、ワタシも 黒江さんと一緒に行きます
  374. みふゆ: ひとりで行かせられませんから
  375. やちよ: 二次被害の危険があるわ
  376. やちよ: 海に出るなら 大人に同伴してもらわないと…
  377. みふゆ: いえ…魔法少女だけの方が いいと思うんです
  378. みふゆ: もしも島に、魔女がいたりしたら ワタシたちだけの方が…
  379. やちよ: …あっ そうね、迂闊だったわ
  380. やちよ: いろはとの連絡が取れない以上 その可能性も考えられる…
  381. やちよ: ここはみふゆに任せましょう
  382. やちよ: 後で大人たちに怒られるのは 覚悟しておいて
  383. みふゆ: 承知の上です
  384. うい: あの、だったらわたしも…!
  385. やちよ: …わかった 3人とも、十分気をつけてね
  386. うい: ここから、本当なら 島への道があるんだよね?
  387. 黒江: うん…今は潮が満ちてるから 海に沈んじゃってるけど
  388. 黒江: …あれ?
  389. みふゆ: 黒江さん?
  390. 黒江: (これ…確かにそうだ…!)
  391. うい: どうしたの? それ…お花?
  392. 黒江: …これ、環さんがつけてた アネモネの花…
  393. うい: え、それって…!
  394. 黒江: やっぱり、環さんは この先に行ったんだと思う…
  395.  
  396. 517007-7_KaCgt
  397. 黒江: 環さんを探しに 島まで続く道へと向かった私たちは そこで、環さんが手足につけていた アネモネの花びらを見つけた
  398. 黒江: さっきも話したけど…
  399. 黒江: 多分、犬が島に向かっていくのを 見つけた環さんが
  400. 黒江: それを追いかけて 島に向かったんだと思う…
  401. うい: 道、沈んじゃってるけど お姉ちゃん大丈夫かな…!?
  402. 黒江: 島までは、そこまで遠くないし 道のあるうちに
  403. 黒江: あっちの島に着いているなら 大丈夫だと思う…
  404. みふゆ: やっちゃんたちには 連絡しておいたので
  405. みふゆ: さっそく、ワタシたちは島まで SUPで向かいましょう
  406. うい: うん…電話が繋がらないのは 心配だけど
  407. うい: 島に渡ったまま
  408. うい: 迷い犬のサマー君と一緒に 取り残されちゃってるのかな…?
  409. みふゆ: そうですね 無事でいる可能性が出てきました
  410. みふゆ: …ただ、悪い想像は したくありませんが
  411. みふゆ: 島で危険な魔女と 遭遇してしまったという場合も…
  412. みふゆ: …無事でいてくれると いいのですが
  413. 黒江: …はい
  414. みふゆ: では、ワタシより黒江さんの方が SUPは上手いと思うので
  415. みふゆ: ういさんを一緒に乗せるのは お願いしてもいいですか?
  416. みふゆ: ワタシも、すぐ後ろを ついていきますから
  417. 黒江: わかりました
  418. みふゆ: ういさんたちは 大丈夫そうですかー?
  419. うい: うん! 黒江さんのおかげで順調だよ
  420. うい: あ、ずっと漕いでくれてるけど 黒江さんは疲れてない?大丈夫?
  421. 黒江: うん…
  422. うい: あ、そういえば…
  423. うい: どうしてお姉ちゃんが わんちゃんを追ったと思ったの?
  424. 黒江: …環さんなら そうすると思ったから…かな
  425. 黒江: 泳げないのに、私のこと 助けようとしてたし
  426. うい: そうだったんだ
  427. うい: …たしかに、お姉ちゃんって 目の前で困っている人がいたら
  428. うい: 何も考えずに 助けに行っちゃうもんね
  429. 黒江: うん…
  430. 黒江: でも、それじゃあ環さんのことは いったい誰が助けるんだろう…
  431. うい: そのために、わたしたちは ここに来たんだよ
  432. 黒江: あ…
  433. うい: 一緒に、お姉ちゃんを見つけて 助けてあげないとね!
  434. 黒江: うん…そうだね 私たちで環さんを助けよう
  435. 黒江: (私だって、環さんみたいに 誰かを助ける私でありたいから)
  436.  
  437. 517008-8_KaCgt
  438. うい: 着いたね…!
  439. みふゆ: ほとんど人の気配がないですね…
  440. 黒江: 道が沈んじゃうと こっちに来る人も少ないから…
  441. うい: 小さい島に見えたけど 迷っちゃいそう…
  442. みふゆ: …………
  443. みふゆ: 近くに魔女の気配は 感じられませんね
  444. みふゆ: はぐれないように みんなで一緒に動きましょう
  445. うい: おねえーちゃーん!
  446. ザザーン…
  447. うい: ダメだ…大きな声を出しても 波の音でかき消されちゃう…
  448. みふゆ: メッセージも電話も応答なし… どこにいるんでしょう…?
  449. うい: 途中で波にさらわれたなんて 思いたくないけど…
  450. 黒江: …………
  451. 黒江: …あれ?
  452. みふゆ: どうしました?
  453. 黒江: いや、あそこに足跡が…
  454. うい: さっき歩いたときの わたしたちの足跡じゃなくって?
  455. 黒江: …そう、かもしれないけど
  456. 黒江: (サンダルも可愛くて 花と合ってるな…)
  457. 黒江: 環さんのサンダル あんな形だったと思って…
  458. うい: そこまで覚えてるだなんて 黒江さん、すごいね…!
  459. 黒江: …いや
  460. 黒江: (どうしよう…環さんのこと すごく見てたとか…)
  461. 黒江: (気持ち悪いとか 思われてないかな…)
  462. みふゆ: 足跡の向かう方へ 進んでみましょう!
  463. うい: あっ! また、さっきの花びら!
  464. みふゆ: あっちにもあります! 島に来る前にもありましたね
  465. 黒江: (あ…)
  466. 黒江: …なんか、落ちたものを たどっていくって
  467. 黒江: ヘンゼルとグレーテルみたい
  468. いろは: そうそう、私もそう思ったの!
  469. いろは: 道に迷いそうになったら、私も ヘンゼルとグレーテルみたいに
  470. いろは: 何か物を落として戻れるように しようかなって
  471. 黒江: もしかしたら、これ… 環さんがつけた目印かも
  472. 黒江: ヘンゼルとグレーテル…みたいに
  473. うい: それって、帰り道が わかるようにってこと…?
  474. 黒江: うん…環さんと今日 そんな話をしたの
  475. 黒江: 犬を追いかけはじめたときに
  476. 黒江: 迷わないように 花びらを落としていったのかも
  477. みふゆ: 花びらを追いかけましょう!
  478. 黒江: あれ、環さんのサンダルじゃ…!
  479. うい: ほんとだ…!
  480. みふゆ: だけど、この先は崖です… まさか、落ちて…!
  481. うい: …っ、お姉ちゃん!!
  482. わんっ わんわんっ!
  483. みふゆ: 犬の声…?
  484. 黒江: もしかして…!
  485. いろは: うい!? なんでみんなここに…!?
  486. うい: おねえちゃーんっ!
  487. 黒江: 環さん…!
  488. いろは: ういと黒江さん! それにみふゆさんまで…!
  489. うい: お姉ちゃんを探しに来たんだよ!
  490. いろは: こんなところまで…!? ごめんなさい…!
  491. みふゆ: それより、いろはさん! ケガはないですか!?
  492. いろは: はい、私もわんちゃんも 大丈夫です…
  493. いろは: スマホの電池が切れて 連絡ができなくて
  494. いろは: 潮が満ちちゃったので 身動きも取れなくて…
  495. いろは: …心配かけちゃいましたよね ごめんなさい
  496. 黒江: うん… でも、無事でよかった
  497. うい: はい、お姉ちゃんのサンダル 崖の上にあったよ
  498. いろは: あ、そこにあったんだ それじゃ心配しちゃうよね…
  499.  
  500. 517009-9_KaCgt
  501. 黒江: 環さんはやっぱり、迷子の犬を追いかけて 島まで来てしまったみたい
  502. 黒江: スマホの電池が切れて誰にも連絡ができず… 気づけば潮が満ちて 戻ることもできなくなっていたらしい
  503. 黒江: 花びらは、思った通り 自分が迷子にならないように落としたもので… そんな話をしながら 環さんは終始、申し訳なさそうにしていた
  504. 黒江: (でも、環さんはまた 誰かのために動いてたんだ…)
  505. うい: わんちゃんを助けようとして… 自分も戻れなくなっちゃったんだ
  506. うい: もしかしたら、魔女に やられちゃったんじゃないかって
  507. うい: すごく心配だったの!
  508. いろは: うぅ…ごめんね… 反省してます…
  509. みふゆ: そうですよ、みなさん心配して… 大人の方もたくさん探してます
  510. みふゆ: ライフセーバーの方から 警察への連絡も行ってるかも…
  511. みふゆ: …って、早くやっちゃんたちに 見つけたって連絡しないと!
  512. うい: あ、そうだね! 大人のひとにも伝えなきゃ!
  513. いろは: どうしよう… すごい迷惑かけちゃった…
  514. いろは: 黒江さんもごめんね…?
  515. 黒江: ううん…それより
  516. 黒江: あのとき、環さんを置いて 行っちゃってごめん
  517. 黒江: …どうして環さんは あんなことができるの?
  518. 黒江: 自分も泳げないのに 人を助けるなんて…
  519. 黒江: なんか、話の途中で ひとりにしちゃって…
  520. 黒江: そのせいで、こんなことに…
  521. いろは: そんな、黒江さんは なんにも悪くないよ
  522. いろは: そのあと、私が勝手に わんちゃんを追いかけたんだし!
  523. 黒江: …………
  524. 黒江: …環さんは、すごいね
  525. いろは: へ…?
  526. 黒江: 今回の犬のこともだけど 私が海に落ちたときも…
  527. 黒江: 環さんはどうして 自分のことを省みないで
  528. 黒江: 人のことを 助けられるんだろう…って
  529. いろは: そんな… 全然すごくないよ…!
  530. いろは: 今回のもそうだけど 結局、迷惑をかけちゃってるし…
  531. いろは: 多分、あんまり後のことを 考えてないだけだから…
  532. いろは: ただ、目の前で困ってる人がいて 助けられないのが嫌っていうか…
  533. いろは: 何もしなかった自分に ガッカリしたくないのかな
  534. いろは: たとえその相手が どんな人でも同じなだけだよ
  535. いろは: そう考えると、私って 結構…自分勝手だね
  536. 黒江: …………
  537. いろは: よく言われるんだけど 私、頑固なんだって
  538. いろは: 多分、だからだと思うよ
  539. いろは: 助けたいって気持ちを 譲れないだけ
  540. いろは: それで迷惑をかけてたら 意味がないんだけどね…
  541. 黒江: (ううん、きっと違うよ 環さんは、特別だから…)
  542. 黒江: (私は、環さんみたいには きっとなれない)
  543. 黒江: (でも、なれたらいいなって 少し、思っちゃう)
  544. みふゆ: さて、やっちゃんたちには 連絡できましたし
  545. みふゆ: みんなで帰りましょうか
  546.  
  547. 517010-10_KaCgt
  548. うい: 潮が少し引いたよ! これなら歩けそう!
  549. みふゆ: はい、浜まで歩いて 帰ることができますね
  550. わんっ!
  551. みふゆ: 暴れん坊のあなたをボードに 乗せるのは大変そうですから
  552. うい: あ、お姉ちゃんたちと 結構、離れちゃったね
  553. みふゆ: たしかに、ワタシたちも 少し急いだほうがいいですね
  554. いろは: 浜までもう少しだね
  555. 黒江: …うん なんだか冒険した気分…
  556. いろは: あんなところまで 来てもらっちゃったもんね
  557. いろは: あ、そう言えばここら辺って 綺麗な貝殻が落ちてるんだっけ
  558. 黒江: うん…そう聞いてるよ
  559. いろは: フェリシアちゃんたちに 拾っていってあげようかな
  560. いろは: うーん…あ、あった! …きゃっ!?
  561. ドテッ
  562. 黒江: 環さん、大丈夫…!?
  563. いろは: あたた… また転んじゃった…
  564. いろは: すぐ立てるからだいじょう…
  565. ずるっ
  566. いろは: あ…
  567. どぼっ
  568. ブクブクブク…
  569. 黒江: ――っ!?
  570. 黒江: (環さんが海に…!)
  571. 黒江: (なんで… 急に深くなってた…!?)
  572. 黒江: (それより、どうしよう…! 環さん、泳げない…!)
  573. 黒江: (私だって あんまり泳げないけど…)
  574. 黒江: (でも…あのとき 環さんは私を助けてくれた)
  575. いろは: ただ、目の前で困ってる人がいて 助けられないのが嫌っていうか…
  576. いろは: 何もしなかった自分に ガッカリしたくないのかな
  577. いろは: たとえその相手が どんな人でも同じなだけだよ
  578. 黒江: …!
  579. バッシャーン
  580. 黒江: 私、もう…何もできなかった自分に ガッカリしたくない
  581. 黒江: 私は環さんみたいに 誰でも分け隔てなく助けたりできないけど 環さんのためなら…きっと…!
  582. 黒江: 環さんなら、こんなとき 迷わず海に飛び込むと思うから
  583. 黒江: こんな風にためらってから飛び込んだ私は 環さんみたいには、きっとなれない
  584. 黒江: 自分を省みずに、知らない誰かを 助けることなんて、できるようにはならない
  585. 黒江: だけど、私を助けてくれた環さんはかっこよくて 私もそうなれたらいいなって思えたから…
  586. 黒江: 誰でも助ける環さんを、今度は 私が救いたいって思ったから…だから…!
  587. 黒江: いた…環さん…!
  588. 黒江: いま、助けるから…!
  589. 黒江: ぷはっ!
  590. 黒江: (海面までは来られたけど…)
  591. 黒江: (このままじゃ、ふたりとも 溺れちゃう…!)
  592. 黒江: (助けを…!)
  593. 黒江: はぁ…う、ういちゃん…! 梓…さん…っ!
  594. うい: ――っ!?
  595. うい: いたよ、みふゆさん! お姉ちゃんと黒江さんが!
  596. みふゆ: なんとか無事みたいですね…!
  597. みふゆ: ここは、ヒューマン・チェーンで 助けに行きましょう…!
  598. うい: それってどうやるの!?
  599. みふゆ: ワタシとういさんで 手首を握り合って
  600. みふゆ: 陸といろはさんたちとを 人の鎖となって繋ぐんです!
  601. うい: うん、わかった!
  602. 黒江: はー…はー…
  603. いろは: はー…はー… た、助かったぁ…
  604. みふゆ: 浜までは、もう少しですからね
  605. うい: もう少し休んだら歩けそう…?
  606. やちよ: いろはーっ!
  607. フェリシア: 迎えにきたぞー! お、犬もいんじゃん!
  608. さな: だ、大丈夫ですか…? いろはさん、溺れかけたって…
  609. いろは: えっと、なんとか無事かも…
  610. わんっ!わんわん!
  611. みふゆ: あ、ちょっと 逃げないでください!
  612. 鶴乃: てんやわんやだね…
  613. ねむ: もうすぐお姉さんたちが 浜に着くみたいだよ…!
  614. 灯花: タオルも酸素も 全部、準備OKだよ!
  615. 万年桜のウワサ: |救急箱も一応、持ってきた|
  616. いろは: や、やっと…
  617. うい: 着いたー!
  618. どさっ
  619. うい: ―うい― はぁ…帰ってこられたね お姉ちゃん、黒江さんっ
  620. 黒江: ―黒江― …うん、なんとかだけどね
  621. いろは: ―いろは― はー…本当にごめんね、黒江さん いろいろと迷惑かけちゃって
  622. 黒江: ―黒江― ううん、私もたくさん助けてもらったし
  623. うい: ―うい― ふふっ、なんだか変な感じ 安心したらすっごい疲れてきちゃった
  624. いろは: ―いろは― ふふふ、ほんとだね でもなんか、生きてるって感じかも
  625. 黒江: ―黒江― うん…生きてるね、ふふ
  626. 黒江: ―黒江― …………
  627.  
  628. 517011-11_KaCgt
  629. ダメじゃないか!
  630. 勝手に島に渡った上に 2人も溺れかけただなんて…!
  631. 一歩間違えばどうなっていたか!
  632. みふゆ: 申し訳ありません… 大人の方に相談もせず…
  633. やちよ: 私の判断が甘かったわ… ごめんなさい
  634. それに黒江ちゃん… 助けたい気持ちはわかるけど
  635. いきなり飛び込むのは 良くなかったね
  636. 黒江: ごめんなさい…
  637. まあ、反省したならいいよ 小言はここまでにしよう
  638. 無事でよかった
  639. 体調もすっかり 良くなったみたいだしね
  640. 疲れてるだろうから うちでご飯食べていきな!
  641. そこの浜辺にバーベキューを 一式、用意してるからね
  642. フェリシア: っしゃー! 肉だ、肉ーっ!
  643. フェリシア: くろえ、お手柄だな! いろはを助けたし肉もゲットだ!
  644. 黒江: ううん…結局ういちゃんたちに 助けてもらったし
  645. 黒江: それに、深月さんが犬のこと 覚えてくれてたおかげ
  646. フェリシア: マジで!? じゃあ、オレが一番偉いじゃん!
  647. やちよ: …まったく、調子に乗らないの
  648. やちよ: でも黒江さん…本当にありがとう いろはを助けてくれて
  649. 黒江: い、いえ…そんな…
  650. 黒江: (だって、多分…私は)
  651. さな: 飛び込んで助けるだなんて なかなかできないですよね…っ
  652. ねむ: まぁ、危険だから評価するのは 勇気のみに留めるけどね
  653. 灯花: そうだよー! お姉さまは反省してよね!
  654. 灯花: わたくし すごーく心配したんだから!
  655. 万年桜のウワサ: |私も、心配したから いろはは反省してほしい|
  656. いろは: あうぅ… みんなごめんね…
  657. うい: でもお姉ちゃんのおかげで
  658. うい: 迷い犬のサマー君も 飼い主さんに会えたよね
  659. みふゆ: はい、飼い主さん とても喜んでました
  660. 鶴乃: じゃあ、今日のMVPは 黒江といろはちゃんと…
  661. フェリシア: オレも!
  662. 灯花: わたくしも頑張ったよー?
  663. 鶴乃: じゃあ、全員頑張った! ということで
  664. 鶴乃: かんぱーい!
  665. みんな: かんぱーい!
  666. 黒江: …………
  667. 黒江: (…私、こんなに 褒められていいことしてない…)
  668. 黒江: それから数日が経ったころ 私は、ずっと気になっていたことを 調整屋さんに聞きに行った
  669. 黒江: …ということがあったんですけど 私が環さんを助けられたのは
  670. 黒江: 調整屋さんの魔法の力の おかげなんじゃないかと思って…
  671. みたま: どういう意味かしらぁ?
  672. 黒江: 手足の花が環さんに似たように 中身も調整の力で似たのかもって
  673. 黒江: 泳ぐのが苦手なのに あんな勇気出せるはずないし
  674. 黒江: そもそもあんなに 潜れたのも初めてだし…
  675. 黒江: 全部、魔法のおかげ なのかな…って
  676. 黒江: (だって、私なんかが…)
  677. 黒江: (環さんみたいに なれるわけがない)
  678. みたま: うーん…
  679. みたま: わたし、そんな調整は してないわよぉ?
  680. 黒江: え…?
  681. みたま: イメージ的にアネモネの花が 被っちゃったけど…
  682. みたま: SUPができるようになる上に 勇気まで出せるなんて
  683. みたま: そんな都合のいい魔法は かけてないわぁ
  684. 黒江: でも、それじゃあ…
  685. みたま: 火事場の馬鹿力か 黒江ちゃんの実力なんじゃない?
  686. 黒江: (魔法のおかげじゃなかった?)
  687. 黒江: (私、ほとんど泳げないし あんなのできるわけ…)
  688. 黒江: (だけど、もしも本当に 魔法の力じゃないのなら…)
  689. 黒江: 確かに、あのときの私は 環さんを助けるために飛び込んだ
  690. 黒江: 環さんみたいに後先考えずに 飛び込んだとは言えないし 知らない犬でも助けるような 環さんのようには、きっと私はなれない
  691. 黒江: ただ、何もしなかった自分に ガッカリしたくなかっただけだった
  692. 黒江: それは、自分本位の理由なのかもしれないけど 少しだけ、何かが変わるのかもしれない
  693. 黒江: 私、環さんのために 頑張れたんだ…
  694. 黒江: (環さんみたいには なれなくても…)
  695. 黒江: (ほんの少しだけ 近づけた…のかな)
  696. 黒江: …………
  697. 黒江: …楽しかったな
  698. 黒江: ああでも、筋肉痛だし 日焼けも痛い…
  699. 黒江: (疲れるまで遊ぶなんて いったいいつぶりだろう…)
  700. 黒江: いつも通り何も変わらない そんな夏休みになると思ったけど
  701. 黒江: 退屈なんかとは程遠い… 慌ただしい夏休みだった
  702. 黒江: こんな私でも、ほんの少しだけ 変われるかもって思えたし…
  703. 黒江: 騒々しくて、にぎやかな夏を みんなと一緒に過ごせた
  704. 黒江: 疲れたけど 楽しかったな…
  705. 黒江: また…
  706. ピロン♪
  707. いろは: この前はいろいろとありがとう! 私のせいでいろいろ時間取らせちゃったし 良かったら、また遊んでくれたら嬉しいな あ、あとでみんなで撮った写真も送るね!
  708. 黒江: …………
  709. 黒江: ありがとう うん、また遊ぼう
  710.  
  711. 517012-12_KaCgt [Promised Blood branch (Yuna)]
  712. ひかる: 冷たいっす! サイコーっす!
  713. アオの声: ひかる、ひかる こっち向いて?
  714. ひかる: なんすか?
  715. アオ: えいっ
  716. パシャ
  717. ひかる: わわっ! 不意打ちは卑怯っす!
  718. アオ: てへっ
  719. 結菜: ふふ 楽しそうねぇ
  720. アオ: はぁ~ クーラーサイコ~…
  721. ひかる: もう一歩も動きたくないっす…
  722. 結菜: …せっかく別荘に遊びに来たのに
  723. 結菜: これじゃあ、二木市にいるのと 変わらないわねぇ…
  724. アオ: 姉さまの別荘に招待されたのは ありがたいんだけど…
  725. アオ: 外の陽射しを見たら 出る気が失せたよ~
  726. ひかる: 樹里さんたちが来るまで 涼みたいっす…
  727. 結菜: じゃぁ、涼しいところに 行きましょぅ
  728. アオ: えぇ~ 出かけるのやだよ~
  729. 結菜: …なんて言っていたのに
  730. ひかる: 結菜さん! 結菜さんも一緒に泳ぐっす!
  731. アオ: 見てるだけじゃ退屈でしょー?
  732. 結菜: 嬉しい誘いだけど…
  733. 結菜: 後から来る樹里たちを 迎えに行かないといけないから
  734. 結菜: まだ水着には 着替えられないのよぉ
  735. アオ: あー…補習とかだっけ? 夏休みなのにかわいそ~
  736. 結菜: 補習は樹里だけよぉ
  737. 結菜: さくやは部活でうららは私用、 らんかは学校の用事ねぇ
  738. ひかる: いつ来るんすか?
  739. 結菜: もうすぐだと思うわぁ
  740. 樹里: よっしゃー! 着いたぜ!
  741. 鈴鹿 さくや: 駅から出てすぐ川なんだね 綺麗なところ…
  742. 智珠 らんか: ふーん 悪くないじゃん
  743. うらら: 別荘も楽しみなんよ!
  744. 鈴鹿 さくや: じゃあ、結菜に連絡しよっか 迎えに来てくれるんだよね?
  745. 樹里: いや、歩いて行こうぜ!
  746. 智珠 らんか: 賛成! こーゆーとこあんま来ないし
  747. うらら: 自然を満喫したい ってことなのん?
  748. 樹里: たまにはいーだろ?
  749. 智珠 らんか: 確か、川の上流にあるんだっけ? 遡ってけば着くっしょ
  750. 鈴鹿 さくや: うーん…とりあえず 結菜に連絡してみるよ
  751. 結菜: えっ…? 歩いて来るのぉ?
  752. 結菜: 私も歩いて別荘に 来たことはないんだけど…
  753. ザァアアアーーー
  754. 樹里: あ?なんて? 水の音かなんかで聞こえねーぞ
  755. 結菜: ああ、きっと滝の音ねぇ…
  756. 結菜: 迎えに行った方が いいんじゃないかしらぁ…?
  757. ザァアアアーーー
  758. 樹里: 別荘地だから整備されてんだろ? 大丈夫だって!
  759. 結菜: そうだけど…
  760. ザァアアアーーー
  761. 樹里: じゃあ、そーゆーことで! よく聞こえねーし切るぞ
  762. 結菜: あっ、ちょっと! 気をつけてくるのよぉ…!
  763. 鈴鹿 さくや: なんだって?
  764. 樹里: 気をつけて来いってさ
  765. 結菜: …………大丈夫かしらぁ…?
  766.  
  767. 517013-13_KaCgt
  768. 結菜: …………大丈夫かしらぁ…?
  769. アオ: 小さい子どもじゃないんだし 大丈夫じゃない?
  770. ひかる: っす!樹里さんが 言い出したことっすからね!
  771. ひかる: それより、 結菜さんも一緒に遊ぶっす!
  772. アオ: 迎えに行かなくていいなら 着替えても問題ないよね~?
  773. 結菜: そうだけど…
  774. 結菜: …いちおう、到着するまでは このまま待っているわぁ
  775. 結菜: 整備されてるから危険はないけど 迷うかもしれないし
  776. 結菜: 別荘を管理してくれている人に 道を聞いて来るわねぇ
  777. 結菜: すぐ戻るつもりだけど 何かあったら、連絡を頂戴
  778. アオ: えっ、スマホ 別荘に置いて来ちゃったよ
  779. ひかる: ひかるもっすけど… もう行っちゃったっす
  780. 樹里: カブトムシとかいねーのか?
  781. 智珠 らんか: 虫取りとか小学生かよ って感じなんだけど
  782. 鈴鹿 さくや: 朝じゃないといないんじゃない?
  783. うらら: 運がよければ 昼でも出会えるんよ
  784. 鈴鹿 さくや: それより、全然着かないね… 結構歩いたと思うんだけど
  785. 樹里: おい、何か見えてきたぞ
  786. うらら: キャンプしてる人たちがいるんよ
  787. 鈴鹿 さくや: キャンプ場、かな…?
  788. ~~♪~~♪
  789. 樹里: 姉さんからだ
  790. 結菜: もしもし 今どこにいるのぉ…?
  791. ザァアアアーーー
  792. アオ&ひかるの声: 「きゃーーーーっ!」 「あははっ!」
  793. 樹里: あ? 後ろ、うるせーぞ…
  794. 結菜: そろそろ着いてもいい頃だけど 今、どこにいるのぉ…?
  795. 樹里: どこにいるか、って? …キャンプ場みてーだけど?
  796. 結菜: だったら、近いわね 電話でナビするわぁ
  797. 樹里: そんな心配しなくても…
  798. 樹里: …姉さんがこの道順で来いってさ
  799. 智珠 らんか: 森林浴も、もう終わりかぁ…
  800. この先 土砂崩れのため通行止め
  801. 樹里: もう少しくらい 寄り道しろってことだな
  802. 樹里: あっちの道、行ってみようぜ
  803. 智珠 らんか: なんかあるの?
  804. 鈴鹿 さくや: ちょっと、ダメだって! 勝手な行動しないで!
  805. 鈴鹿 さくや: うらら、私が連れ戻すから 結菜に連絡しておいて!
  806. うらら: わ、わかったんよ…!
  807. うらら: …というわけで 通行止めだったんよ
  808. 結菜: そこまで 迎えに行きましょうかぁ…?
  809. うらら: 平気なんよ!
  810. うらら: 別荘の住所を教えてもらえば ナビアプリでたどり着けるんよ!
  811. 結菜: じゃぁ、メモして頂戴…
  812. 鈴鹿 さくや: もう、あんまり勝手に 動かないでよね…
  813. 樹里: カッカすんなって せっかくの避暑地なんだからさ
  814. 智珠 らんか: ちょっと寄り道したって 怒られないでしょ
  815. うらら: 長女さんから別荘の住所 教えてもらったんよ!
  816. うらら: これで、ナビアプリを使えば 迂回路がわかるんよ!
  817. 鈴鹿 さくや: じゃあ、改めて出発だね
  818. 樹里: ちぇー…
  819. ~~♪~~♪
  820. 鈴鹿 さくや: 結菜から? 心配かけちゃってるみたいだね
  821. 結菜: 小さな公園を 通り過ぎた頃かしらぁ…?
  822. 樹里: いや、まだだな
  823. ~~♪~~♪
  824. 樹里: 公園ならさっき通り過ぎたぞ 結構広かったけどな
  825. 結菜: あらぁ…? 地図だと小さそうだったけどぉ
  826. ~~♪~~♪
  827. 智珠 らんか: また結菜からじゃん 心配しすぎだろ…
  828. 結菜: そろそろキャンプ場が 見えてきたかしらぁ…?
  829. 樹里: キャンプ場?さっきのか?
  830. 結菜: いえ、別のところよぉ…
  831. 樹里: …どっちにしろ見えねーな
  832. 樹里: ところで、滝の音しねーけど こっちに向かってたりしないよな
  833. 結菜: ノイズカットの設定を いじったのよぉ
  834. 結菜: それより、キャンプ場が 見えないのはおかしいわねぇ…
  835. 結菜: (ナビアプリが間違うことは ないはずだけど…)
  836. 結菜: …変ねぇ
  837. ひかる: いくっすよぉー!
  838. ザバァアアン!
  839. アオ: 甘いよ~!
  840. ビシャッ!
  841. 結菜: ――っ!?
  842. ポチャン…
  843. アオ&ひかる: あっ…
  844. ひかる: 結菜さんごめんなさいっす! そっちまで水が行くなんて…!
  845. アオ: ウソ、スマホ水没? どうしよ…?コレ防水!?
  846. 結菜: …大丈夫だから落ち着きなさぁい
  847. 樹里: …………切れた
  848. 鈴鹿 さくや: えっ…? かけ直したら?
  849. 樹里: …………
  850. 樹里: ダメだな、出ねー…
  851. 智珠 らんか: …ひかるも出ないね
  852. うらら: 三女さんも出ないんよ…
  853. 樹里: まー、いーだろ ナビもあるんだし
  854. 鈴鹿 さくや: …そうだね 住所はわかってるし大丈夫かな
  855. 工事中のため 迂回にご協力ください
  856. 樹里: マジか
  857. すみません ボヤが出たので通れません
  858. 鈴鹿 さくや: こんなことある…?
  859. 鈴鹿 さくや: …なんだろうこの感じ
  860. うらら: 何かに 邪魔されてるみたいなんよ…
  861. 智珠 らんか: いや、偶然でしょ
  862.  
  863. 517014-14_KaCgt
  864. 鈴鹿 さくや: あっ、コンビニだ 飲み物買ってく?
  865. うらら: 賛成なんよ!
  866. 樹里: なぁ、それより 面白そーなチラシが貼ってあるぜ
  867. キャンプ場主催 宝探しオリエンテーリング! 参加用紙を購入で どなたでもご参加いただけます
  868. 智珠 らんか: ふーん… 参加費も安いし、子ども向け?
  869. 樹里: ちょっと遊んでこーぜ
  870. 鈴鹿 さくや: いやいや、いまは 遊んでるヒマないでしょ!
  871. うらら: 長女さんたちが心配してるんよ
  872. 智珠 らんか: 樹里ってば、すぐ寄り道するよね
  873. 樹里: なんだよ、自信ないのか?
  874. 智珠 らんか: …自信?
  875. 樹里: 見つける自信ねーなら 仕方ないか…
  876. 智珠 らんか: はぁ?ちょっと待って 自信がないわけじゃないから
  877. 樹里: じゃあ、参加するよな
  878. 智珠 らんか: そうまで言われたら 引き下がれないからね
  879. 鈴鹿 さくや: ちょっと! これから遊ぼうっての?
  880. 智珠 らんか: 遊びじゃなくて真剣勝負だから
  881. 樹里: じゃ、ここからは 別行動ってことで!
  882. 智珠 らんか: またあとでね
  883. うらら: 置いてかれたんよ…
  884. 鈴鹿 さくや: …………ウソでしょ
  885. ひかる: …どうっすか? 使えそうっすか?
  886. アオ: スマホ壊しちゃった ごめんね、姉さま…
  887. 結菜: そんなに謝られる方が困るわぁ…
  888. ひかる: でも、申し訳ないっす…
  889. 結菜: だったら、こうしましょぅ
  890. 結菜: 謝罪は受け取るわぁ この件はこれでおしまぃ
  891. 結菜: いいわねぇ?
  892. ひかる: …結菜さんがそれでいいなら
  893. アオ: わたしも…
  894. 結菜: ただ、樹里たちに 連絡を取りたいから
  895. 結菜: スマホを貸してもらっても いいかしらぁ?
  896. アオ: じゃあ、わたしのスマホを使って 防水だから
  897. アオ: 別荘に置いてきちゃったけど…
  898. 結菜: ありがとぅ
  899. 結菜: 取りに行って来るから ふたりは遊んでていいわよぉ
  900. 結菜: ついでに、浮き輪や水鉄砲も 持ってくるわぁ
  901. ひかる: 至れり尽くせりっす!
  902. 結菜: ふふ、あなたたちが楽しそうだと 私も嬉しいからねぇ
  903. アオ: じゃあ、気合入れて 遊ぼうかな~
  904. 鈴鹿 さくや: …はぁ、ダメだ やっぱり結菜たちに繋がらない
  905. うらら: 次女さんたちにも 繋がらないんよ…
  906. 鈴鹿 さくや: 樹里たちは、 出るつもりがないんだろうね…
  907. うらら: これから、どうするのん?
  908. 鈴鹿 さくや: ここにいても仕方ないから 私たちだけで別荘に向かおう
  909. 鈴鹿 さくや: …あのふたり、別荘に行くこと 忘れてないといいけど
  910. 樹里: ここがオリエンテーリングの 次の目的地だな
  911. 智珠 らんか: 洞窟は… へぇ、特別ステージ…?
  912. 樹里: イイものがあるらしいぜ
  913. 智珠 らんか: うわっ、ダンジョン探索とか RPGみたいじゃん
  914. 智珠 らんか: テンション上がってきたかも
  915. 樹里: まっ、よく見ると 人の手が入ってるんだけどな
  916. 智珠 らんか: …テンション下がること 言わないでよ
  917. 樹里: はははっ!
  918. うぇええん… おとうさぁん…おかあさぁ~ん…
  919. うらら: キャンプ場についたはいいけど
  920. うらら: これはもしかしなくても 迷子なんよ!
  921. うらら: ど、どうしよう…
  922. 鈴鹿 さくや: と、とりあえず 私が様子を見ておくから
  923. 鈴鹿 さくや: キャンプ場の迷子センターに 連絡してくれる?
  924. うらら: わかったんよ!
  925.  
  926. 517015-15_KaCgt
  927. 樹里&らんか: 見つけた!
  928. 樹里: 宝箱だ!!
  929. 智珠 らんか: 中身は?
  930. 樹里&らんか: …………
  931. 智珠 らんか: …フライングディスク? ただのおもちゃじゃん!
  932. 樹里: しかも、 キャンプ場のロゴ入りだぞ!
  933. 智珠 らんか: あははっ!ウケる!
  934. 智珠 らんか: まぁ、子ども向けだろーし こんなもんかぁ
  935. 智珠 らんか: …ん? 宝探し会場、出ちゃった?
  936. 樹里: …洞窟から出る時に コースから外れたみたいだな
  937. 樹里: まーいっか そろそろ飽きてきたし…
  938. 智珠 らんか: じゃあ、結菜の別荘行く?
  939. 樹里: そーいや、 姉さんの別荘に行く途中だっけ
  940. …………
  941. 智珠 らんか: …行かないの?
  942. 樹里: あ?樹里サマが 道、知ってるわけないだろ?
  943. 智珠 らんか: はぁ!? 別荘の住所聞いてたでしょ?
  944. 樹里: うららがな 樹里サマは知らねー
  945. 智珠 らんか: つまり、アタシたち 詰んでるってこと…?
  946. 樹里: まーそうなるな
  947. 智珠 らんか: どうすんの…?
  948. 樹里: 樹里サマに聞かれたって わかんねーよ!
  949. ブーン
  950. 樹里&らんか: …ん?
  951. ブーンブーンブーン…
  952. 樹里&らんか: ――っ!?
  953. アオ: おかえり、姉様!
  954. 結菜: はい、浮き輪と水鉄砲… それから他にもいろいろ
  955. ひかる: すごい量っす!
  956. 結菜: たまには息抜きもねぇ
  957. アオ: え~、どれから遊ぼ~?
  958. ひかる: ひかるは浮き輪で のんびりしたいっす
  959. アオ: じゃあ、わたしはそこを 水鉄砲で狙い打とうかな~
  960. ひかる: 卑怯っす!
  961. 結菜: ふふ、 その前にアオ、スマホを…
  962. アオ: あっ、ごめん パス解除しないと使えないよね
  963. お姉ちゃんたち、ありがと!
  964. 鈴鹿 さくや: どういたしまして!
  965. うらら: じゃあね
  966. うらら: …ふぅ、保護者が見つかったのは よかったけど
  967. うらら: また寄り道したんよ
  968. うらら: 本当に別荘に たどり着けるのん…?
  969. 鈴鹿 さくや: 何度も邪魔が入ると ちょっと不安になるよね…
  970. 鈴鹿 さくや: …………
  971. 鈴鹿 さくや: いちおう、道が合っているか キャンプ場の人に聞いてみよっか
  972. うらら: …うん
  973. …うーん、その住所だと ここから結構あるよ
  974. 鈴鹿 さくや: えっ!
  975. しかも、 電車もバスも通ってないからなぁ
  976. 鈴鹿 さくや: 歩くしかないんですね…
  977. 鈴鹿 さくや: どこかで道を間違えたのかな…?
  978. うらら: もはや 呪われてるかもしれないんよ…
  979. 鈴鹿 さくや: いや、そんなことは… ないって言えないかも…
  980. ブーンブーンブーン…
  981. 樹里&らんか: ――っ!?
  982. 智珠 らんか: ちょっと何アレ! でっかい蜂!?
  983. 樹里: スズメバチってやつか? 逃げるぞ!
  984. ブブブブブブブブッ!
  985. 智珠 らんか: 追いかけてくるんだけど!!
  986. 樹里: 走れ走れ!
  987.  
  988. 517016-16_KaCgt
  989. 鈴鹿 さくや: …はぁ…はぁ… 結構歩いたね
  990. うらら: さすがに疲れたんよ…
  991. 鈴鹿 さくや: この先、 二手に分かれてるみたいだ
  992. うらら: えっ…もし間違えたら もう行き倒れると思うんよ
  993. 鈴鹿 さくや: ナビアプリだと右らしいけど ここまでのことを考えると…
  994. うらら: …うん ちょっと怖いんよ
  995. ~~♪~~♪
  996. さくや&うらら: ――っ!?
  997. 鈴鹿 さくや: アオからだ!
  998. 鈴鹿 さくや: アオ!
  999. 結菜: …結菜よぉ
  1000. 結菜: スマホを水没させてしまって アオに借りたのぉ
  1001. 鈴鹿 さくや: どっちでもありがたいよ! 助かった!
  1002. うらら: もうダメかと思ったんよ…
  1003. 結菜: 連絡がつかなくてごめんなさい
  1004. 結菜: GPSは使えるぅ? そっちの現在地を送って
  1005. 結菜: …よかったわぁ すぐ近くみたいねぇ
  1006. 鈴鹿 さくや: えっ? ナビアプリだとまだ遠いけど…
  1007. 結菜: それが変なのよねぇ
  1008. 結菜: もしかして住所が正しく 伝わってなかったとかぁ…?
  1009. うらら: あっ…!
  1010. うらら: きっとそれなんよ! たぶんウチがやらかしたんよ!
  1011. うらら: …ごめんなさいなんよ
  1012. 結菜: こっちもメッセージで送れば よかったわねぇ…
  1013. 結菜: ともかく、 これから迎えに行くわぁ
  1014. ブブブブブブブブッ!
  1015. 智珠 らんか: なんで!? ずっと追いかけてくる!!
  1016. 樹里: 止まったら刺されるぞ!
  1017. 結菜: 別荘はこの先だけど
  1018. 結菜: ひと休みできるように 飲み物を用意しておいたのぉ
  1019. ひかる: 冷え冷えっすよ!
  1020. アオ: しかも、すごくおいしいよ~
  1021. 鈴鹿 さくや: ありがとう 生き返る…
  1022. うらら: ウチも川で涼みたいんよ…
  1023. 結菜: じゃあ、私は 樹里たちにも連絡を…
  1024. 樹里: 「くっそ、しつこい!! ウェルダンにしてやろうか!?」
  1025. 智珠 らんか: 「それはマズいって! 山火事になるし!」
  1026. ひかる: …この声は… 噂をすれば影っすね…
  1027. アオ: なんで、走ってるの…?
  1028. 智珠 らんか: 水ん中に逃げるぞ!
  1029. 樹里: 飛び込め! 姉さんたちも!
  1030. 結菜: …はぁ?
  1031. ザバァアアーーーン!!
  1032. ブブブブブブブブッ…
  1033. ひかる: 大きなハチっす!
  1034. 鈴鹿 さくや: えっ!? 連れてきたってこと!?
  1035. 樹里の声: ふたりも早く飛び込め!
  1036. うらら: えっ? でもアレって…
  1037. 結菜の声: 落ち着いて そのまま動かなければ大丈夫よぉ
  1038. ブーン…………
  1039. アオ: あっ、行っちゃった…
  1040. 樹里: …ふぅ、助かったぜ
  1041. 智珠 らんか: まさか、 スズメバチに遭遇するなんてね
  1042. 結菜: …アレはスズメバチじゃなくて クマバチよぉ
  1043. 樹里: クマバチ? 強そーだな…
  1044. うらら: ああ見えて、温厚なハチなんよ オスは針も持ってないし
  1045. 結菜: それに、ハチと遭遇したら 慌てて逃げちゃダメよぉ
  1046. 結菜: 急に動くと 敵だと思われるわぁ
  1047. 樹里: へぇ、そうだったのか 走って損したな…
  1048. 結菜: …ところで 他に言うことはないかしらぁ?
  1049. アオ: 姉ちゃんたちのせいで 姉さままで水に落ちちゃったから
  1050. ひかる: びしょ濡れっす… 怒っていいっす!
  1051. 樹里: あー…悪かったな
  1052. 樹里: でも、もうびしょ濡れだし このまま遊ぼーぜ
  1053. 鈴鹿 さくや: いや、せめて水着に着替えなよ
  1054. 樹里の声: かたいこと言うなって!
  1055. さくや&うらら: ――っ!?
  1056. ザバァアアーーーン!!
  1057. 鈴鹿 さくや: あ、あぶなっ! いきなり引っ張り込まないでよ…
  1058. 樹里: 冷たくて気持ちいーだろ?
  1059. うらら: …それはそうだけど
  1060. 智珠 らんか: 諦めて遊んじゃえば?
  1061. 結菜: そうねぇ… 言いたいことはあるけど
  1062. 結菜: まずは、 避暑を楽しみましょぅ
  1063. 結菜: せっかくの夏休みだものねぇ
  1064.  
  1065. 517017-17_KaCgt [Azalea Sisters branch (Hazuki)]
  1066. <夏休み>
  1067. 三栗 あやめ: はい、このは! 今週の予定表!
  1068. 静海 このは: ………… …遊ぶ予定ばかりね
  1069. 三栗 あやめ: そ、そんなことないよ! ほら火曜日は…!
  1070. いつ:(火) どこで:フェリシアん家で だれが:フェリシアとさなとかこと一緒に なにを:宿題をやる
  1071. 三栗 あやめ: だし!
  1072. 静海 このは: (…これは絶対に途中で飽きて 遊ぶパターンの気がするけど…)
  1073. 静海 このは: (ひとまずは あやめを信じることにするわ…)
  1074. 静海 このは: (過干渉もよくないし…)
  1075. 静海 このは: それと、この金曜日…
  1076. いつ:(金) どこで: だれが:フェリシアと なにを:出かける
  1077. 静海 このは: どこで、の欄が抜けてるわ どこに行くつもりなの?
  1078. 三栗 あやめ: えっと… ま、まだ決まってないんだよ!
  1079. 静海 このは: そう…
  1080. 遊佐 葉月: 一応アタシも はい、今週の予定表
  1081. 静海 このは: ありがとう
  1082. 静海 このは: …………
  1083. 静海 このは: (あやめの予定表を見た後だから 余計に感じるけど…)
  1084. 静海 このは: (葉月の予定…遊ぶ予定が ほとんどないわね…)
  1085. 静海 このは: (大人びてるとはいえ まだ中学生…)
  1086. 静海 このは: (もっと年相応に遊んでも いいと思うけど…)
  1087. 静海 このは: (…そういえば私… 葉月の学校生活のこと)
  1088. 静海 このは: (ほとんど知らないわ…)
  1089. 静海 このは: (普通の子に比べたら かなり忙しい部類なわけで)
  1090. 静海 このは: (うまくやれてるのかしら…)
  1091. 遊佐 葉月: …ど、どうしたの…? え、何か問題あった?
  1092. 静海 このは: …いえ、大丈夫よ
  1093. 遊佐 葉月: そう…
  1094. 静海 このは: あら…?
  1095. 静海 このは: どうしよう? 麦茶のパック、切らしてたわ
  1096. 遊佐 葉月: アタシが買ってくるよ スーパー、ギリ開いてるし
  1097. 遊佐 葉月: …ふぅ、買えたけど ほんとに閉店間際だったね
  1098. 遊佐 葉月: ――っ!?
  1099. 遊佐 葉月: 魔女か… 一刻を争うかもしれないし…
  1100. 遊佐 葉月: このはたちに連絡入れつつ ひとりでも行った方がいいよね
  1101. 遊佐 葉月: ふぅ…
  1102. 遊佐 葉月: 口づけを受けてる子もいたし 急いで来て正解だったかな
  1103. 遊佐 葉月: このはたちが来る前に 倒せちゃったし
  1104. 遊佐 葉月: …ってこの子、よく見たら 同じクラスの…
  1105. …アレ? 遊佐さん…?
  1106. 遊佐 葉月: (見られた…!)
  1107. 遊佐 葉月: え、ええと… こ、この格好は…こ、こ…
  1108. コスプレ?
  1109. 遊佐 葉月: そう! そうそう、コスプレ
  1110. へぇ… 遊佐さんコスプレとかするんだ…
  1111. 遊佐 葉月: ま、まあね~
  1112. じゃあさ、今度の金曜…
  1113. 私と一緒に 夏カミケに行かない?
  1114. 遊佐 葉月: …………
  1115. 遊佐 葉月: カ…カミケ…?
  1116.  
  1117. 517018-18_KaCgt
  1118. 着替え、終わったみたいだね
  1119. 遊佐 葉月: うん、コスプレイヤーの登録も 済ませたよ
  1120. 遊佐 葉月: それにしても…すごい人だね…
  1121. 遊佐 葉月: さすが神浜市最大の 同人誌即売会ってヤツ?
  1122. 遊佐 葉月: わ、あのキャラは… モカウサギだっけ…?
  1123. 遊佐 葉月: こんな暑い日に 着ぐるみとか大丈夫なのかな…
  1124. 遊佐さんのは涼しそうだね! 知らないキャラだけど…
  1125. もしかしてスマホゲームの キャラとか?
  1126. 遊佐 葉月: そ、そうだね…そんな感じ
  1127. はあ~、それにしても あの人気者の遊佐さんが
  1128. 私と同じ “隠れオタク”だったなんてね!
  1129. こうしてカミケに参加できて すっごく嬉しい!
  1130. 遊佐 葉月: ア…アタシもだよ
  1131. 遊佐 葉月: (…ごめん、本当はこういう アニメ?とかよく知らない…)
  1132. 遊佐 葉月: (全部、変身姿を見られたことを 誤魔化すための嘘で…)
  1133. 私、家族にもこの趣味のこと 内緒にしててさ~
  1134. 今日のことも 黙って来ちゃった!
  1135. 中学生だけで行くってなったら 怒られちゃいそうだしね!
  1136. 遊佐 葉月: あ、アタシも同じ
  1137. 遊佐 葉月: (これは本当…)
  1138. 遊佐 葉月: (あやめとこのはには 内緒にしてきちゃったんだよね)
  1139. 遊佐 葉月: (バカにしたり怒ったりは しないと思うけど…)
  1140. 遊佐 葉月: (なんか…恥ずかしくて…)
  1141. あやめの声: おーい! フェリシア、待てよー!
  1142. 遊佐 葉月: …………え? 今の声って…
  1143. 遊佐 葉月: ――っ!?
  1144. 遊佐 葉月: (あやめ!?)
  1145. フェリシア: …おい、あやめ 今日のこと家族にバレてないよな
  1146. 三栗 あやめ: 当然! 予定表もうまく誤魔化したよ!
  1147. フェリシア: やちよのヤツ 心配しょーだからな…
  1148. フェリシア: 子どもだけで行って 大丈夫なのかどーかとか
  1149. フェリシア: うるさく聞かれそうだしな…
  1150. 三栗 あやめ: このはも聞いてきそう! だから内緒で来たけど…
  1151. 三栗 あやめ: もしバレたら めっちゃ怒られそうなんだよね…
  1152. フェリシア: ぜってーバレるなよ! オレまで巻き込まれそーだし!
  1153. 三栗 あやめ: フェリシアこそ! やちよにバレるんじゃないよ!
  1154. 遊佐 葉月: (なんであやめがここに…?)
  1155. 遊佐 葉月: (まっずいなあ…! ここは目立たないように…)
  1156. さあ遊佐さん、撮影しよう!
  1157. このへんってちょうど コスプレ撮影用のエリアだし
  1158. 遊佐 葉月: …いいけど って、やけに立派なカメラだね?
  1159. うん! 私は撮影が趣味なのっ!
  1160. カシャッ
  1161. 遊佐 葉月: そうだったんだ…
  1162. いや~素晴らしいよ 遊佐さんほんと
  1163. カシャッ カシャッ カシャッ
  1164. 遊佐 葉月: い、いやいやいや…!
  1165. 遊佐 葉月: 着替えた同級生の写真なんて 撮っても楽しくないでしょ!?
  1166. あはは、楽しいんだな~これが
  1167. あら、撮影ですか? 私も参加していいですか?
  1168. 一緒に私も撮りたいです!
  1169. 僕もお願いします!
  1170. 遊佐 葉月: ど、どうぞ…
  1171. カシャッ カシャッ カシャッ
  1172. 遊佐 葉月: (って、しまった… 人が集まって目立っちゃう…)
  1173. 遊佐 葉月: (よかった…あやめは着ぐるみに 夢中で気づいてない…)
  1174. さ、ひととおり撮影は終わったし 私たちも同人誌ブース行こ!
  1175. フェリシア: これって、モカウサギだっけ? へぇー、よくできてんなー!
  1176. 三栗 あやめ: …………
  1177. 三栗 あやめ: (今、あの人だかりの中に… 葉月が見えた…)
  1178. 三栗 あやめ: (なんでっ!?)
  1179. 三栗 あやめ: (葉月がカミケに 興味あるわけないし…)
  1180. 三栗 あやめ: (てことは、あちしがカミケに 行くことに気づいてた…?)
  1181. 三栗 あやめ: (そんで、証拠の写真を撮って… このはにチクる気だっ!)
  1182. 三栗 あやめ: (カメラマンの友だちと 一緒みたいだし!)
  1183. 三栗 あやめ: (どうしよう フェリシアに相談した方が…)
  1184. 三栗 あやめ: (だ、だめだめ! 言ったらきっと…)
  1185. フェリシア: ハァ!? もうバレてんのかよ?
  1186. フェリシア: 罰として弁当のおかず 全部もらうからなっ!!
  1187. 三栗 あやめ: (こうなるに決まってる!!)
  1188. 三栗 あやめ: (…………黙ってよう… でもここは危険だから…)
  1189. 三栗 あやめ: フェ、フェリシア! もうモカウサギはいいっしょ!?
  1190. 三栗 あやめ: 早くデカゴンボールのコーナーへ 行こう!
  1191. フェリシア: お、そうだな!
  1192.  
  1193. 517019-19_KaCgt
  1194. 遊佐 葉月: (確かあやめが好きなのって… デカゴンボール…だっけ?)
  1195. 遊佐 葉月: (じゃあ、それ関係の エリアに近づかなきゃいいか)
  1196. 遊佐 葉月: これからどこに行くの?
  1197. デカゴンボールのエリアだよ!
  1198. 私のすごい好きなレイヤーさんが 売り子さんをやってるんだ!
  1199. 遊佐 葉月: ――っ!?
  1200. フェリシア: ここにデカゴンボールの グッズとかがあんだな!
  1201. 三栗 あやめ: …………
  1202. 三栗 あやめ: ん?
  1203. 三栗 あやめ: もういるしっ!!
  1204. 遊佐 葉月: (あやめたち… 絶対この辺にいるよな…)
  1205. あっ!いた!
  1206. 遊佐 葉月: ええっ!?
  1207. ほほ~ 今回はセロリのコスプレかぁ~
  1208. 遊佐 葉月: あ、ああ…コスプレのこと… どの人?
  1209. まだだいぶ遠いよ このエリアの一番端っこ
  1210. 遊佐 葉月: ああ、あの壁際に立ってる?
  1211. 遊佐 葉月: 確かに、この距離からでも めちゃくちゃすごいのが伝わるね
  1212. ね!すごいでしょ!
  1213. 劇中で新造インゲンたちを 次々と吸収していった
  1214. あの巨大な尻尾も 完全再現してる!
  1215. 遊佐 葉月: …あはは、そうなんだ
  1216. さ、行こ!
  1217. 遊佐 葉月: わ、ちょっと、引っ張らないで… …ん?
  1218. 遊佐 葉月: (あのセロリ?の コスプレイヤーの近くに…)
  1219. フェリシア: よくできてんなー! それに尻尾でけー!
  1220. 三栗 あやめ: (葉月に…見つかる…!)
  1221. 三栗 あやめ: 尻尾…………あ!そうだっ!
  1222. 遊佐 葉月: (あやめっ!)
  1223. 遊佐 葉月: (ヤバい、どんどん近づいてる… こ、このままじゃ…)
  1224. 遊佐 葉月: ね、ねぇアタシは別のところに 行ってもいいかな…
  1225. だーめ!
  1226. 遊佐さんとセロリの 2ショットを撮るの!
  1227. 遊佐 葉月: (マジかぁ)
  1228. 遊佐 葉月: (着いちゃったけど………… アレ…?)
  1229. こんにちは! 素晴らしいセロリですね!
  1230. ふふ、そうでしょ?
  1231. 特にこの尻尾を作るの とっても大変だったんだから
  1232. 遊佐 葉月: あやめたちが…いない…?
  1233. ほら、遊佐さん 並んで並んで!
  1234. 遊佐 葉月: う、うん…
  1235. カシャッ
  1236. ありがとうございましたー!
  1237. …………それで、あの… あなたたち…
  1238. 突然この尻尾に隠れて どうしたの?
  1239. ガサゴソ
  1240. フェリシア: なんなんだよー、あやめ!
  1241. フェリシア: オレのことまで 無理やり押し込みやがって!
  1242. 三栗 あやめ: い、いや~、もっと近くで 尻尾を見たくなってさ!
  1243. フェリシア: 自分だけで見ればいいだろっ! わけわかんねーぞ!
  1244. 三栗 あやめ: う…そうだよね
  1245. フェリシア: …それより、次いこーぜ 気になるモンがあるんだ!
  1246. 三栗 あやめ: う、うん…
  1247.  
  1248. 517020-20_KaCgt
  1249. 遊佐 葉月: (なんとかあやめには 見つからずに済んだけど…)
  1250. 遊佐 葉月: ん…あのモカウサギ ちょっと、様子が変…?
  1251. 遊佐 葉月: なんか…オロオロしてない…?
  1252. ほんとだ…
  1253. 遊佐 葉月: こんにちは 何かお困りですか?
  1254. モカウサギ: え、ええ… ちょっと困ったことが…
  1255. モカウサギ: …じゃなくて! ええと…そ、そうなんだモカ!
  1256. モカウサギ: 行きたい場所があるけど 道に迷ってしまったんだモカ!
  1257. モカウサギ: お友だちともはぐれてしまって とっても困ってるんだモカ!
  1258. カタログは持ってないの? そこに地図も載ってるけど…
  1259. モカウサギ: あるけど、この着ぐるみの手で ページがめくれないんだモカ!
  1260. モカウサギ: 視界も悪いから お友だちはすぐに見失うし
  1261. モカウサギ: なかなか見つけられなくて もう大変なんだモカ!
  1262. 遊佐 葉月: 脱げばいいんじゃ…?
  1263. モカウサギ: そ、それはダメモカ…!
  1264. せっかくのコスプレだもんね
  1265. 遊佐 葉月: まあそういう事情なら その場所まで案内してあげようよ
  1266. うん、そうだね!
  1267. モカウサギ: ありがとうモカ!
  1268. モカウサギ: 行きたいのは…
  1269. モカウサギ: 「モーモーファームのひみつ」 という本を売ってる場所モカ!
  1270. それなら………… 情報系同人誌のエリアだね
  1271. こっちを通ってまっすぐ行けば 目的の本があるエリアだよ
  1272. あ、それで遊佐さんごめん
  1273. 遊佐 葉月: どうしたの?
  1274. 私、ちょっと別のエリアに 行きたくて
  1275. そろそろ並ばなきゃ 買えなくなっちゃうから…
  1276. 遊佐 葉月: うん、いいよ 案内はアタシがするから
  1277. ありがとう、遊佐さん! やっぱり優しいね!
  1278. モカウサギ: …キミはいいモカか? お目当てのグッズとかモカ
  1279. 遊佐 葉月: え、ああ…うん 実は連れの子にも内緒だけど
  1280. 遊佐 葉月: 本当はこういうの あんまり詳しくなくて…
  1281. 遊佐 葉月: でもさっきの子にはコスプレが 趣味だと思われちゃってさ
  1282. 遊佐 葉月: まあ今日だけならと思って 付き合ってるみたいな感じ
  1283. モカウサギ: そうだったモカか じゃあ、家族にも内緒モカ?
  1284. 遊佐 葉月: うん、秘密にしてる…んだけど
  1285. 遊佐 葉月: どうもこの会場に 妹がいるみたいでさ…
  1286. 遊佐 葉月: 見つかっちゃうんじゃないかって ヒヤヒヤしてるんだよね~
  1287. モカウサギ: そうだったモカか
  1288. 遊佐 葉月: さ、着いたみたいだよ
  1289. モカウサギ: ありがとうモカ!
  1290. 遊佐 葉月: (モーモーファーム、だっけ? あやめは興味なさそうだし)
  1291. 遊佐 葉月: (モカウサギさんのお友だちを 探しながら)
  1292. 遊佐 葉月: (アタシはしばらく ここでゆっくり…)
  1293. フェリシアの声: あったあった この本だ!
  1294. 遊佐 葉月: …………
  1295. フェリシア: ふむふむ…モーモーファームを 200%楽しむための本かー
  1296. フェリシア: おー、オレも知らねーことが いっぱい書いてあるみたいだ!
  1297. 三栗 あやめ: そっかそっか! 来てよかったじゃん!
  1298. 遊佐 葉月: (なんでいるんだよぉ~)
  1299. 遊佐 葉月: ご、ごめん、モカウサギさん! ちょ、ちょっと後ろ貸して!
  1300. モカウサギ: どうしたモカ!?
  1301. ぐ~
  1302. 三栗 あやめ: あ…フェリシア お腹空いた?
  1303. フェリシア: あやめの腹も鳴ってただろ?
  1304. 三栗 あやめ: お弁当食べよっか
  1305. フェリシア: だな! でも、ここじゃ食えねーし…
  1306. フェリシア: …確かテーブルがたくさんある ところがあったよな
  1307. 三栗 あやめ: フリースペースって言うみたい カタログに書いてあるよ
  1308. 三栗 あやめ: 一番近いのは 北の出口から出たところっぽい
  1309. フェリシア: あのモカウサギがいる方向だな!
  1310. 三栗 あやめ: じゃあそっちに…
  1311. 三栗 あやめ: (葉月いるじゃん…!!!)
  1312. フェリシア: ~~♪
  1313. 三栗 あやめ: (フェリシアはまだ 気づいてないみたいだけど…)
  1314. 三栗 あやめ: あ、あのさフェリシア! やっぱ南の出口にしない?
  1315. フェリシア: ハァ? なんでだよ、遠いだろ?
  1316. 三栗 あやめ: な、なんかほら こっちの方が涼しいみたいでさ…
  1317. フェリシア: そんなの行ってみないと わかんねーだろ?
  1318. 三栗 あやめ: うぬぬ…
  1319. 三栗 あやめ: …………じゃあ… 唐揚げひとつあげるからさ…
  1320. フェリシア: ほんとか!? だったらいいぞ!!
  1321.  
  1322. 517021-21_KaCgt
  1323. 遊佐 葉月: ふぅ…
  1324. 遊佐 葉月: (ふたりともこのエリアから 出てってくれるか…)
  1325. 遊佐 葉月: (んじゃ、モカウサギさんの 用事の方を済ませますか!)
  1326. 遊佐 葉月: はぐれたっていうお友だち… このあたりにいるんだよね?
  1327. 遊佐 葉月: どう、いそうかな…?
  1328. モカウサギ: …いたモカ!
  1329. 遊佐 葉月: ほんと? よかった
  1330. モカウサギ: 移動中みたいモカ! 追いかけるモカ!
  1331. モカウサギ: ありがとうモカ!
  1332. 遊佐 葉月: う、うん
  1333. 遊佐 葉月: さてと…
  1334. あぶなかった~ 残り数冊しかなかったよ~
  1335. 遊佐 葉月: 買えたんだね
  1336. あれ? モカウサギちゃんは?
  1337. 遊佐 葉月: お友だちが見つかったらしくて 追いかけていったんだよね
  1338. そっか じゃあ私たちも行こっか
  1339. 次はね… ここに行きたいな
  1340. 遊佐 葉月: (お、あやめたちが 行った方向と真逆だね…)
  1341. 遊佐 葉月: (ふぅ、やっと逃げ切れそう)
  1342. 遊佐 葉月: ええっ!?
  1343. 通行止め…
  1344. 遊佐 葉月: な、ななななんでっ!? せっかく…!!
  1345. 先ほどこの会場で 参加者のトラブルがありまして
  1346. その関係で数ヶ所が 一時的に通行止めです
  1347. 「暴れた人 有名な同人作家らしいよ…」
  1348. 「聞いた聞いた」
  1349. 「解決したのは 若い女の子たちだって!」
  1350. 遊佐 葉月: (なんだかわからないけど… 大変なトラブルがあったんだな)
  1351. それでカタログの…このブースに 行くにはどうすれば…?
  1352. ああ…それでしたら… 引き返していただいて
  1353. 一度、会場の外に 出ていただいた方が早いですね
  1354. あら、そうですかー ありがとうございます!
  1355. 遊佐 葉月: …………
  1356. さあ、引き返そう 遊佐さん!
  1357. 遊佐 葉月: (えっ、ちょっと待って! やっと逃げ切れたと思ったのに)
  1358. 遊佐 葉月: (あやめがいたあたりに 逆戻りなんだけど…!)
  1359. 三栗 あやめ: …………!!
  1360. フェリシア: なんだよ行き止まりかよー!
  1361. うん、ごめんね…
  1362. でもフリースペースなら 反対側の方が近いから…
  1363. フェリシア: だな! 引き返すぞ、あやめ!
  1364. 三栗 あやめ: …………
  1365. 三栗 あやめ: (あ、まずいっ! そっちは葉月がっ!!)
  1366. 遊佐 葉月: ………… ――っ!?
  1367. 遊佐 葉月: (やっぱり、進行方向に… あやめがいる…!)
  1368. 三栗 あやめ: (葉月がいるっ!!)
  1369. 三栗 あやめ: (このままだと 見つかっちゃうよっ!)
  1370. 遊佐 葉月: (まずいね…お互い どんどん近づいてるよ)
  1371. 遊佐 葉月: (どうしよう… 他人のフリをする…!?)
  1372. 遊佐 葉月: (いや、この格好で他人のフリは 流石にムリがあるよね…!)
  1373. フェリシア: おい、あやめ なんか顔色悪くねーか?
  1374. 三栗 あやめ: そ、そう…………かな…?
  1375. フェリシア: ぜってー変だぞ!? おい、大丈夫か?
  1376. 遊佐 葉月: あっちゃー、もう無理だね
  1377. …どうしたの遊佐さん
  1378. 遊佐 葉月: あっはは… これは観念するしか
  1379. ゆ、遊佐さん?
  1380. 遊佐 葉月: …………
  1381. 遊佐 葉月: 終わりかな…
  1382. モカウサギ: …………
  1383. ん、なんだろ
  1384. 遊佐 葉月: 霧…?
  1385. フェリシア: うわ、なんも見えないぞ!
  1386. 三栗 あやめ: か、固まって歩こう!
  1387. ざわ…
  1388. フェリシア: お、晴れた
  1389. 三栗 あやめ: なんだったんだろ…
  1390. 遊佐さん、大丈夫だった?
  1391. 遊佐 葉月: うん…
  1392. 変な霧だったね
  1393. トラブルがあった後だし ちょっと怖いな…
  1394. 遊佐 葉月: …あれ?
  1395. 遊佐 葉月: (あやめがいない…)
  1396. 三栗 あやめ: (葉月がいない!)
  1397. 三栗 あやめ: (あの霧で見えない間に 逃げ切れたみたい…!)
  1398. …なんだったんだ 今の霧みたいなの?
  1399. 異臭とかもなかったし
  1400. 誰かが保冷剤のドライアイスでも ぶちまけたのかな?
  1401. フェリシア: スゲー楽しかったな!
  1402. 三栗 あやめ: うんっ! 次もまた来よう!
  1403. 遊佐 葉月: お待たせ! さ、帰ろっか
  1404. 今日は来てくれてありがとう! とっても楽しかった!
  1405. 遊佐 葉月: こっちこそ 誘ってくれてありがとう
  1406. 遊佐 葉月: (なんだかんだとありつつも 楽しかったな)
  1407. モカウサギ: …………
  1408. <更衣室>
  1409. ガサゴソ…
  1410. 静海 このは: ぷはっ!
  1411. 静海 このは: 空気…真夏の空気が 涼しいわ…
  1412. 静海 このは: …………
  1413. 静海 このは: (あやめの様子が変だったから)
  1414. 静海 このは: (着ぐるみまで借りて 後をつけてみたけど…)
  1415. 静海 このは: (まさか、葉月にまで こんなところで出会うとはね…)
  1416. 静海 このは: (あやめにバレたくないって ことだから)
  1417. 静海 このは: (わざわざ霧の魔法まで 使ってしまったわ)
  1418. 静海 このは: それにしても、葉月… 予定表は随分そっけなかったけど
  1419. 静海 このは: 楽しく「普通の中学生」 やれてるんじゃない
  1420.  
  1421. 517022-22_KaCgt [Team Nanaka branch (Nanaka & Kako)]
  1422. 夏目 かこ: 小さい頃から 夏休みが待ち遠しくて仕方ありませんでした
  1423. 夏目 かこ: 今もそうです だって、夏休みになると 楽しい毎日が私たちを待っているから…
  1424. 志伸 あきら: これってカブトムシかな?
  1425. 常盤 ななか: そうですね 郊外なので多くいるんでしょう
  1426. 純 美雨: 10、20、30… いぱいいるネ!
  1427. 夏目 かこ: え、えええ…そんなにですか? それはちょっと怖…
  1428. 夏目 かこ: へ?ふわ…っ!
  1429. 志伸 あきら: あ!かこちゃんが 木の根っこにつまづいた!
  1430. 純 美雨: カブトムシの群れにツコむヨ!
  1431. かこの声: ひええぇぇ~~っ!!
  1432. 志伸 あきら: いくよ、かこちゃん
  1433. 夏目 かこ: わわ…っ!
  1434. 志伸 あきら: あはは、どう?冷たい?
  1435. 純 美雨: かこ、一緒に反撃するネ この水鉄砲を使うカ
  1436. 夏目 かこ: 私たちはこの夏休み とうかん村と呼ばれる場所に 遊びにきていました
  1437. 夏目 かこ: この村は自然豊かで 都会では体験できない夏を 私たちに用意してくれました
  1438. 夏目 かこ: あう…カブトムシ塗れになって… 水浸しになって…散々です…
  1439. 志伸 あきら: ラムネあげるから元気出してよ
  1440. 純 美雨: 本当にあきらは好きネ 毎日飲んでるヨ
  1441. 志伸 あきら: みんなだって飲んでるじゃないか
  1442. 純 美雨: まあ、美味しいからネ それに…
  1443. 常盤 ななか: それに、懐かしい気持ちにも させてくれますから
  1444. 夏目 かこ: …そう、ですね…
  1445. 夏目 かこ: その懐かしさのせいなのでしょうか? 夏休みの宿題から逃げて遊ぶ子どものように 毎日を過ごしていました
  1446. 志伸 あきら: あーあ、ずっと夏休みだったら いいのに
  1447. 純 美雨: 儚い夢ネ ずっとつづくなんてあり得ないヨ
  1448. 夏目 かこ: あ、あの…本当に夏休みがずっと つづいたら、どう思いますか…?
  1449. 常盤 ななか: …………
  1450. 志伸 あきら: どうって…ねえ?
  1451. 純 美雨: そうネ
  1452. あきら&美雨の声: 最高!
  1453. 夏目 かこ: …本当にそうなのでしょうか?
  1454. 志伸 あきら: あちゃー、もう暗くなってきてる
  1455. 純 美雨: これだと間に合わないネ
  1456. 夏目 かこ: 間に合わない? 何が…ですか?
  1457. 志伸 あきら: 何がって…ふふ、嫌だなあ そんなの決まってるよね?
  1458. 純 美雨: くすくす…決まてるヨ
  1459. 夏目 かこ: ふたりは笑っているだけで 何も答えてくれません
  1460. 夏目 かこ: でも、今さらどうしたんだろうとは思いません またいつものあれが、始まったのです
  1461. 夏目 かこ: そ、そういえば…ななかさんは?
  1462. 純 美雨: いないてことは、そういうことヨ
  1463. 志伸 あきら: そうそう
  1464. あきら&美雨: オウガマ様が迎えにきたんだよ
  1465. 夏目 かこ: ――っ!?
  1466. 夏目 かこ: そのとき背後から、ひた、ひた、と 何かが近づいてくる音が聞こえました
  1467. 志伸 あきら: かこちゃんにもオウガマ様が お迎えがきたみたいだね
  1468. 夏目 かこ: オウガマ、様…!?
  1469. 夏目 かこ: 私がゆっくり振り返ると…
  1470. 夏目 かこ: そこには 何か恐ろしいものが立っていました
  1471. 常盤 ななか: もう朝ですよ 起きてください、かこさん
  1472. 夏目 かこ: ――っ!?
  1473. 志伸 あきら: うわっ、すごい汗
  1474. 純 美雨: 暑かたカ?麦茶飲むカ?
  1475. 夏目 かこ: 気づくと私は宿にいました みんな何事もなかったかのように 楽しそうに笑っています
  1476. 常盤 ななか: 顔色が悪いですよ? 今日は宿で休んでいますか?
  1477. 志伸 あきら: そんなのもったいないよ
  1478. 志伸 あきら: 今日は昨日より 楽しい予定を立てたのにさ
  1479. 夏目 かこ: 昨日より…あの… 今日って、何日でしたか…?
  1480. みんな: …………
  1481. みんな: 「8月62日だよ」
  1482.  
  1483. 517023-23_KaCgt
  1484. 夏目 かこ: この村では延々と夏がつづいています 8月はとっくに終わっているはずなのに みんな、それを信じようとしません
  1485. 夏目 かこ: 何か不思議な出来事があっても みんな、それを当たり前のように受けいれ 村から出ることなく夏休みを満喫しています
  1486. 夏目 かこ: …私も少し前まではそうでした
  1487. 夏目 かこ: もともと遊ぶために、ここへやってきたのですが 滞在するうちに魔女の反応を感知して その対応をすることになったのです
  1488. 夏目 かこ: だから…本当は魔女の退治をしないといけない それはわかっているはずなのに ある日、オウガマ様が私たちを迎えにきて…
  1489. 夏目 かこ: 魔女のことをすっかり忘れ 夏休みをただ遊びつづけるように されてしまったのです
  1490. 夏目 かこ: 風鈴の音が聞こえます… この音を聞くと夏を実感します
  1491. 夏目 かこ: でもそれだけではなく この音色を聞いているうちに 私は記憶を取り戻したのです
  1492. 夏目 かこ: ななかさんのおかげで…
  1493. 夏目 かこ: え、わざわざ風鈴を 持ってきたんですか?
  1494. 常盤 ななか: 必要になると思いましてね…
  1495. 常盤 ななか: かこさん、この風鈴に 魔力を込めてもらえますか?
  1496. 常盤 ななか: 全員分込めたかったんですが それだと気取られてしまうので
  1497. 夏目 かこ: いいですけど… 込めると、どうなるんですか?
  1498. 常盤 ななか: 魔除けの効果を発揮します
  1499. 常盤 ななか: といっても 通じるかわかりませんし
  1500. 常盤 ななか: もしかしたら、かこさんだけ… という場合も想定されます
  1501. 夏目 かこ: 私だけ…?
  1502. 常盤 ななか: それは避けたいんですけどね
  1503. 常盤 ななか: …魔女を倒さない限り 抜け出せないでしょうから
  1504. 夏目 かこ: (ななかさんは何が起きるのか 予見していたんです…でも…)
  1505. 常盤 ななか: どうしたんですか、 難しい顔をして
  1506. 常盤 ななか: 早く支度をして 遊びにいきましょう
  1507. 夏目 かこ: 今のななかさんはこの不思議な世界… まるで夏の夢のような世界に すっかり染まってしまっています
  1508. 夏目 かこ: (それだけならまだしも ソウルジェムまで穢れるなんて)
  1509. 志伸 あきら: ソウルジェムが穢れてきている?
  1510. 夏目 かこ: そ、そうなんです ここにいるだけで、どんどん…
  1511. 夏目 かこ: だから…早く村から出ましょう このままだとみんな…!
  1512. 志伸 あきら: 何言ってるんだよ 今は夏休みなのに
  1513. 純 美雨: 8月の間はこの村で遊ぶヨ そうみんなで決めたネ
  1514. 夏目 かこ: け、けど、ソウルジェムが…
  1515. 常盤 ななか: そんなの放っておきましょうよ だって…夏休みなんですから
  1516. 夏目 かこ: (あれから何度言っても 話が通じませんでした…)
  1517. 夏目 かこ: (意識が戻っているのは私だけ… 私がどうにかしないと…!)
  1518. 常盤 ななか: どうしたんですか 早く遊びにいきましょうよ
  1519. 夏目 かこ: あ、あの!じ、実は、今日は 用事があって…だから私抜きで…
  1520. 志伸 あきら: そんなつれないこと言わないでさ 川原に行こうよ、楽しいよ?
  1521. 純 美雨: 連射機能のついた水鉄砲を貸すネ 思いきり水遊びしようヨ
  1522. 夏目 かこ: ダ、ダメです!私はですね 夏を満喫してる場合では…っ!
  1523. 夏目 かこ: あはは…水遊び楽しいです!
  1524. 純 美雨: うう…やられたネ
  1525. 夏目 かこ: えへへ、どんなもんですかっ 私のことは夏の魔物と呼んで…
  1526. 夏目 かこ: (って、満喫しちゃってる!?)
  1527. 夏目 かこ: ああ、なんてことでしょうか… 遊んでいる場合ではないとか言っておいて ひとりだけ水着を着てはしゃぐだなんて…
  1528. 夏目 かこ: …気を抜いたらまた私も みんなのようになるってこと なのかもしれません
  1529. 夏目 かこ: いえ、ひょっとしたら そんなのは関係なく…
  1530. 夏目 かこ: ううん…そんなことない… みんなのためにも、急がないと…
  1531. 常盤 ななか: さて、今日は早く帰りましょうか オウガマ様が迎えにくる前に
  1532. 純 美雨: 夕方までに帰るのカ? つまらないネ
  1533. 常盤 ななか: オウガマ様に迷惑をかけるのは よくありませんよ
  1534. 夏目 かこ: (オウガマ様…)
  1535. 夏目 かこ: オウガマ様は夕方になると 家の外にいる者を迎えにいきます。 私自身、何度もその経験をしました
  1536. 夏目 かこ: オウガマ様の正体は、普通に考えれば魔女 延々とつづく8月を 引き起こしているのも、きっと…
  1537. 常盤 ななか: …魔女を倒さない限り 抜け出せないでしょうから
  1538. 夏目 かこ: (こんな特殊な魔女…私ひとりで 倒せるんでしょうか…?)
  1539. 夏目 かこ: 正直に言って不安だらけです でも、ソウルジェムの穢れが どんどん溜まっていって…
  1540. 夏目 かこ: 早くここから抜け出して みんなを助けないといけません
  1541. 夏目 かこ: 私が…頑張るんだ…っ
  1542. 常盤 ななか: …………
  1543. 常盤 ななか: …ところで、こんな話を 聞いたことがありますか?
  1544. 常盤 ななか: オウガマ様は 夏の風物詩を嫌う、って
  1545. 夏目 かこ: (夏の風物詩を…嫌う? だから…風鈴が魔除けに…?)
  1546. 夏目 かこ: (でも…風鈴は使えません 万が一失ったら、私の意識も…)
  1547. 常盤 ななか: かこさん?
  1548. 夏目 かこ: へ?あ、いえ…夏の風物詩って 何があったかな…って
  1549. 常盤 ななか: 今まさに着ているではないですか 夏ならではのものを
  1550. 夏目 かこ: あ…水着!
  1551. 夏目 かこ: と、と、というわけで! はい!水着です…!
  1552. 夏目 かこ: どうですか!? これであなたは…
  1553. 夏目 かこ: 背後から気配を感じたので 今だ!と見せつけた次の瞬間 私の意識は暗闇に包まれてしまいました
  1554. 常盤 ななか: もう朝ですよ 起きてください、かこさん
  1555. 夏目 かこ: ――っ!?
  1556. 夏目 かこ: 気づくと私は宿で朝を迎えていました みんないつものように笑っています …私は、失敗したようです
  1557. 夏目 かこ: が…頑張ったのに…
  1558. 志伸 あきら: さあ、かこちゃん 今日は何をしようか
  1559. 純 美雨: 楽しいことが いっぱい待てるヨ
  1560. 夏目 かこ: あの…この村から出るという 選択肢は…ないんでしょうか?
  1561. 志伸 あきら: 村から出る?どうして? 夏休みなんだよ?
  1562. みんな: 8月の間は ずっとここで遊ぶよ
  1563. 夏目 かこ: そう、ですか…
  1564. 夏目 かこ: 8月63日… 夏休みは、まだつづく
  1565.  
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  1567. 夏目 かこ: うわあ…とうかん村には灯台も あるんですね…!
  1568. 常盤 ななか: ええ、昨日見つけたんです
  1569. 志伸 あきら: 探検してたの? 誘ってくれたらよかったのに
  1570. 夏目 かこ: ま、まあまあ…私もひとりで 散策に出かけてましたから…
  1571. 夏目 かこ: けど…すごいですね 山間の村に海があるなんて!
  1572. 夏目 かこ: …………
  1573. 夏目 かこ: …いや、ないですよ 山間に海なんてデタラメです…
  1574. 純 美雨: 何がおかしいヨ? そういうこともあるんじゃないカ
  1575. 志伸 あきら: だよね!それよりボク 灯台の中を見てみたいんだけど
  1576. 純 美雨: 私も行くネ!
  1577. 夏目 かこ: みんなは違和感を持たなかったみたいです といっても「そういう状態」に されているので仕方がないと思います
  1578. 夏目 かこ: 問題なのは…こんなおかしな地形が 当たり前のように存在していること
  1579. 夏目 かこ: どうして…? これも、オウガマ様のせい…?
  1580. 常盤 ななか: そのオウガマ様なんですが
  1581. 夏目 かこ: わわっ!?び、びっくりしました… 残っていたんですね
  1582. 常盤 ななか: ええ、新しいオウガマ様の噂を 耳にしたので、お伝えしようと
  1583. 常盤 ななか: 興味があるんですよね? 昨日の態度からそう思いましたが
  1584. 夏目 かこ: そ、それは…えっと…
  1585. 夏目 かこ: あ、それより、噂って何ですか?
  1586. 常盤 ななか: 前にオウガマ様は夏の風物詩を 嫌うとお伝えしましたが
  1587. 常盤 ななか: なかでもスイカを 嫌うそうなんです
  1588. 夏目 かこ: スイカ、を…?
  1589. 夏目 かこ: ふぅ…はぁ… これだけ大玉のスイカなら…
  1590. 夏目 かこ: ――っ!? こ、この気配…!
  1591. 夏目 かこ: オ、オオ、オウガマ様! 一緒にスイカ割りなんてどうで…
  1592. 常盤 ななか: もう朝ですよ 起きてください、かこさん
  1593. 夏目 かこ: あ、あうぅ…失敗ですか…
  1594. 夏目 かこ: (…ですが、挫けません みんなのために、何度でも…!)
  1595. 常盤 ななか: どうしたんですか?
  1596. 夏目 かこ: あ、あの…!
  1597. 夏目 かこ: オウガマ様 かき氷が嫌いらしいですね…!
  1598. 夏目 かこ: ほ、ほら…どうですか…!? こんなにもしゃかしゃか食べて…
  1599. 夏目 かこ: うっ…あ、頭が…キーンって…
  1600. 夏目 かこ: これならどうです 線香花火ですよ…!?
  1601. 夏目 かこ: パチパチ…線香花火を見てると 切ない気持ちになりますね…
  1602. 夏目 かこ: こ、こうなったら… 最後の手段…!
  1603. 夏目 かこ: 風鈴です…! オウガマ様、この音を…
  1604. 夏目 かこ: …………
  1605. 夏目 かこ: …あ、あれ? オウガマ様の気配が、ない…
  1606. 夏目 かこ: や、やった…! 私、オウガマ様に勝ったんだ!
  1607. 夏目 かこ: へっ、オウガマ様…!? しま…っ!!
  1608. ななかの声: 伏せてください!
  1609. 常盤 ななか: やっと姿を拝めました… やはり、魔女でしたか
  1610. 夏目 かこ: な、ななかさん…!? どうして?
  1611. 常盤 ななか: 説明は後です…! 今はとにかく離脱します
  1612. 夏目 かこ: は、はい…!
  1613. 常盤 ななか: ここなら 少しは隠れていられそうですね
  1614. 夏目 かこ: ななかさん 意識が戻っていたんですね
  1615. 常盤 ななか: というより、最初から 術にはかかっていませんでしたよ
  1616. 常盤 ななか: 調査するには、術にかかっている 振りをした方が好都合でしたので
  1617. 常盤 ななか: だますような真似をして すみません…
  1618. 夏目 かこ: あ、謝らなくていいです 敵を騙すにはまず味方からって…
  1619. 夏目 かこ: …私に色々と実験させたのも その調査の一環なんですよね?
  1620. 夏目 かこ: あはは…なんだか恥ずかしいもの ばかり回された気がしますけど…
  1621. 常盤 ななか: いえ、かこさんにはマシなものを 回していましたよ
  1622. 常盤 ななか: 私は…くっ…説明するのも はばかれるような実験を…
  1623. 夏目 かこ: どんな実験を…
  1624. 常盤 ななか: ともかく、オウガマ様には なぜか私たちの攻撃が通じません
  1625. 夏目 かこ: 効果があるのは風鈴だけ…?
  1626. 常盤 ななか: なので、夏の風物詩に弱いと 思ったのですが
  1627. 常盤 ななか: かこさんの頑張りから そうではないとわかりました
  1628. 夏目 かこ: じゃあ…何に弱いんですか…?
  1629. 常盤 ななか: 魔力の共振かと
  1630. 夏目 かこ: なるほど…風鈴が鳴ることで 込めた魔力が共振してるんですね
  1631. 夏目 かこ: とすると…風鈴を たくさん用意して戦えば…!
  1632. 常盤 ななか: いえ、風鈴は本当に魔除け程度 私たちが使うのは…
  1633. ななかの声: この超電磁波レーダーです
  1634. かこの声: ふええええ…っ!?
  1635.  
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  1637. 夏目 かこ: あ、あの…ななかさん 急に壮大というか、何というか…
  1638. 夏目 かこ: というか…超電磁波レーダー? なんでそんなものが、ここに…
  1639. 夏目 かこ: …いや、ないですよ 山間に海なんてデタラメです…
  1640. 夏目 かこ: (デタラメ… そう、デタラメなんです…)
  1641. 夏目 かこ: (8月がつづいたり 変なものがあったり…)
  1642. 夏目 かこ: (まるで…夢の中のような…)
  1643. 常盤 ななか: おや、難しい顔をして… もしかして心配していますか?
  1644. 常盤 ななか: 大丈夫です、レーダーの 操作はマスターしています
  1645. 常盤 ななか: 時間はたっぷりありましたからね
  1646. 夏目 かこ: すごいです、ななかさん…!
  1647. 常盤 ななか: さあ、魔力を込めましょう! 勝利は目前ですよ!!
  1648. 常盤 ななか: ああ!!超電磁波レーダーが!!
  1649. 夏目 かこ: ええええ!?
  1650. 常盤 ななか: くう…っ
  1651. 夏目 かこ: うう…なんとか 難は逃れましたけど…
  1652. 常盤 ななか: レーダーが破壊されています… これでは…
  1653. 夏目 かこ: ふ、風鈴を使うのはどうですか? 一応、まだ持ってるんですけど…
  1654. 常盤 ななか: 通用しなかったじゃないですか
  1655. 夏目 かこ: でも…風鈴のおかげで 意識は戻りました
  1656. 夏目 かこ: だから、もっと魔力を込めれば 全部もとに戻ったりするんじゃ…
  1657. 常盤 ななか: そんな都合よくいかないかと
  1658. 夏目 かこ: あう…やっぱりレーダーくらい 巨大じゃないとダメですか…?
  1659. 夏目 かこ: うん…? 巨大な、風鈴…?
  1660. 常盤 ななか: ――っ!? 危ない…っ!!
  1661. 常盤 ななか: うっ… 怪我は、ない?
  1662. 夏目 かこ: 私のことより ななかさんは…!?
  1663. 常盤 ななか: 平気です、これくらい
  1664. 夏目 かこ: あの…ななかさん 走れますか?
  1665. 常盤 ななか: え…?
  1666. 夏目 かこ: ついてきてください 作戦があるんです…!
  1667. 夏目 かこ: はあ…はあ…っ
  1668. 常盤 ななか: かこさん オウガマ様がついてきてますが!
  1669. 夏目 かこ: それでいいんです ここで倒しますから
  1670. 常盤 ななか: ここでって…どうやって!?
  1671. 夏目 かこ: 巨大な風鈴こと 梵鐘(ぼんしょう)を使って
  1672. 常盤 ななか: ――っ!?
  1673. 夏目 かこ: ありったけの魔力を込めて それを除夜の鐘のように鳴らす…
  1674. 夏目 かこ: すると、巨大な共振が起きます! 風鈴と同じ原理というわけです!
  1675. 常盤 ななか: …水を差すようで悪いのですが
  1676. 常盤 ななか: ここ、神社ですよ…? 梵鐘があるのは、お寺かと…
  1677. 夏目 かこ: …………
  1678. 常盤 ななか: …………
  1679. 常盤 ななか: いや…でも、ここが神仏習合の 神社なら鐘があるかもしれません
  1680. 夏目 かこ: あう…普通の神社っぽいです…
  1681. 常盤 ななか: う、うかつでしたね…
  1682. 常盤 ななか: あ…待ってください! 普通の神社なら、あれが…
  1683. かこ&ななか: ――っ!?
  1684. ???: 「そうはさせないって」
  1685. 志伸 あきら: 帰ってこないから どこで何してるかと思えば
  1686. 純 美雨: まさかオウガマ様と 揉めてるとはネ
  1687. 夏目 かこ: あきらさん、美雨さん…!
  1688. 常盤 ななか: ふたりとも 意識はもとに戻ったんですか!?
  1689. 純 美雨: 意識?何の話ネ
  1690. 志伸 あきら: よくわかんないけど ふたりが戦ってるんだ
  1691. 志伸 あきら: そりゃ、ボクも戦うよ 相手が誰であろうと
  1692. 純 美雨: 腐れ縁てやつヨ
  1693. 常盤 ななか: ふたりとも…
  1694. 志伸 あきら: といっても時間稼ぎにしか ならなさそうだけど…
  1695. 純 美雨: 何もしないよりはいいネ 行くヨ、あきら!
  1696. 夏目 かこ: 私たちも行きましょう…!
  1697. 常盤 ななか: …行ったところで あの魔女を倒すことはできません
  1698. 夏目 かこ: それは… そうかもしれませんけど…!
  1699. 常盤 ななか: 大丈夫、もう少しおふたりを 信用してください
  1700. 常盤 ななか: 私たちが作戦に取りかかる時間を きっちり稼いでくれるはずです
  1701. 夏目 かこ: 作戦…!? 何か思いついたんですか?
  1702. 常盤 ななか: 思いつくも何も そこにあるじゃないですか
  1703. 純 美雨: くっ…押される一方ネ
  1704. 志伸 あきら: 全然攻撃が通らないもんなぁ… どうなってるんだか
  1705. 志伸 あきら: せめて弱ってくれたら… …え?何やってるの?
  1706. 純 美雨: どうしたネ?よそ見してる場合カ
  1707. 志伸 あきら: いや、見てよ かこちゃんとななかが…
  1708. 純 美雨: …鈴を鳴らそうとしてる?
  1709. 常盤 ななか: 神社には鐘がなくても 鈴ならありますからね!
  1710. 夏目 かこ: お参りのときにガラガラする鈴… 確かにこれも共振しそうですね
  1711. 常盤 ななか: 理屈ではそうですが、実際に 効果があるかはわかりません
  1712. 常盤 ななか: …まあ、神頼みってわけですね あまり好きではありませんが
  1713. 夏目 かこ: う、運も実力のうちです…!
  1714. 常盤 ななか: …ですね
  1715. 常盤 ななか: では行きますよ、かこさん! 魔力を込めてください…!!
  1716. 夏目 かこ: はい…!
  1717. 純 美雨: な、何ネ…?この魔力は…!?
  1718. 志伸 あきら: 魔力が広がって… 村全体を包んでいく…?
  1719. 夏目 かこ: こ、これは…
  1720. 常盤 ななか: どうやら うまくいったようですね
  1721. 夏目 かこ: うまくいった…? 魔女はまだ…
  1722. 常盤 ななか: ですが、結界の正体が明らかに なりました…弱体化した証拠です
  1723. 夏目 かこ: 結界…?
  1724. 常盤 ななか: 「この村全体が、魔女に 見せられていた幻だったんです」
  1725.  
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  1727. 夏目 かこ: ずっと夢を見せられていました
  1728. 夏目 かこ: あの懐かしさを感じさせる景色も ラムネの味も、いつまでもつづく8月も 全部、夏の夜の夢でした
  1729. 夏目 かこ: だから、この気持ちもきっと 本物じゃない 朝になれば消えてなくなる
  1730. 夏目 かこ: …そう思っていました
  1731. 夏目 かこ: 私たちは最初から 結界の中にいた、ってことですか
  1732. 夏目 かこ: じゃあ… 私たちが見ていたものは…
  1733. 常盤 ななか: おそらく、夢です…デタラメな ことが多かったのもそのため
  1734. 常盤 ななか: 要は、夏の夢に溺れさせ 衰弱させようとしていたんです
  1735. 常盤 ななか: 時間をかけて、私たちの魔力を 消費させるつもりで
  1736. 夏目 かこ: ここに留めておくのが 狙いだったんですね…
  1737. 常盤 ななか: ええ…とはいっても現実では どれくらい時間が流れているか…
  1738. 常盤 ななか: ――っ!?
  1739. 常盤 ななか: …お喋りをしている暇は なさそうですね
  1740. 志伸 あきら: どうする?
  1741. 常盤 ななか: ご覧の通りもう神社はありません 当然、鈴も…
  1742. 純 美雨: その風鈴は?
  1743. 夏目 かこ: へっ…? ああ、これは消えたりしなくて…
  1744. 常盤 ななか: 私が外から持ってきたものなので なくならないんでしょう
  1745. 常盤 ななか: 今あるのは風鈴だけ… 賭けてみるしかありませんね
  1746. 夏目 かこ: 魔力を込めるんですか?
  1747. 常盤 ななか: ええ、限界まで
  1748. 志伸 あきら: じゃあ しっかり魔力を込めてよ!
  1749. 志伸 あきら: くう~ やっぱり攻撃は通らないか
  1750. 純 美雨: 通す必要はないネ 時間を稼げばそれでいいヨ
  1751. 志伸 あきら: よし…!
  1752. 志伸 あきら: え…これは…?
  1753. 純 美雨: 結界が、村の景色に…
  1754. 常盤 ななか: なるほど また私たちに夢を見せようと…?
  1755. 常盤 ななか: 向こうの方が押しているのに こんなことをわざわざするなんて
  1756. 常盤 ななか: …風鈴を使ってほしくないと 言っているのと同じなのでは?
  1757. 志伸 あきら: うっ…
  1758. 常盤 ななか: あきらさん?
  1759. 志伸 あきら: あれ、ボク…何をして… 早く…早く、帰らなくちゃ…
  1760. 志伸 あきら: 明日には もっと楽しいことが、待って…
  1761. 純 美雨: 気を、しかり持つネ…! 魔女の…思うつぼヨ!くっ…
  1762. 志伸 あきら: そうだ…魔女… 魔女を倒さないと…
  1763. 常盤 ななか: (夢の効果が強くなっている? これが切り札だったのですね)
  1764. 常盤 ななか: (いや…そもそもなぜ夢に 溺れさせる必要がある…?)
  1765. 常盤 ななか: (衰弱させるだけなら他にも やりようはあるのに…)
  1766. 常盤 ななか: もしかしたら…
  1767. 志伸 あきら: ともかく…魔女を牽制しないと…
  1768. 純 美雨: ふたりとも…早くするネ! そう長くはもたないヨ
  1769. 常盤 ななか: わかりました では、かこさん…!
  1770. 夏目 かこ: …どうしてそんなことを しないといけないんですか…?
  1771. 夏目 かこ: …夏休みなのに
  1772. 常盤 ななか: かこ、さん…?あなた…
  1773. 夏目 かこ: うっ…でも、何かやらなくちゃ いけないことが…あったような…
  1774. 夏目 かこ: このままではいけない…と思って 何かをしていた気も…
  1775. 常盤 ななか: そ、そうです!あなたは延々と つづく夏を終わらせようと…
  1776. 常盤 ななか: みんなのソウルジェムを守ろうと 魔女に立ち向かっていたんです
  1777. 夏目 かこ: それが、私のやるべきこと…?
  1778. 夏目 かこ: けれど、そこに… 意味はあるのでしょうか?
  1779. 夏目 かこ: 魔女を倒しても、それですべて終わりじゃない また次の魔女が現れて それを倒してもまた現れて…
  1780. 夏目 かこ: 延々とつづくのはどっち?
  1781. 常盤 ななか: …………
  1782. 夏目 かこ: ななかさんは、勘違いしてます 私はそんなに立派な人間じゃない
  1783. 夏目 かこ: ずっとこの時間がつづけばいいと 毎日、毎日、思っていたんです
  1784. 常盤 ななか: それは…魔女の影響で…!
  1785. 夏目 かこ: いいえ…ななかさんに起こされて 同じ朝を迎えたとき…
  1786. 夏目 かこ: 確かに私は、ほっとしていた… それは、覚えてるんです…くっ…
  1787. 常盤 ななか: かこさん!?
  1788. 夏目 かこ: ねえ、ななかさん…もうちょっと いいじゃないですか…
  1789. 夏目 かこ: 魔女のことを忘れて、毎日遊んで 大好きなみんなと一緒にいる…
  1790. 夏目 かこ: そんな時間がもう少しあっても いいじゃないですか…?
  1791. 常盤 ななか: …そうやって人は 溺れていくんです
  1792. 夏目 かこ: ななかさんは強い人だから わからないんですよ…
  1793. 常盤 ななか: わかりますよ 私も、同じことを思いましたから
  1794. 常盤 ななか: 思うに決まっている じゃないですか…!
  1795. 夏目 かこ: え…?
  1796. 常盤 ななか: …けどそれではダメなんです 夢見心地のまま死んでしまったら
  1797. 常盤 ななか: 私が今までやってきたことへ 責任が果たせなくなる
  1798. 夏目 かこ: …………
  1799. 常盤 ななか: かこさん、あなたは今 夢と現実の狭間にいる…
  1800. 常盤 ななか: この夢は優しいけれど未来はない 現実は辛いけれど未来がある…
  1801. 常盤 ななか: あなたはどちらに 希望を持ちますか?
  1802. 夏目 かこ: ――っ!?
  1803. 常盤 ななか: 精一杯生きるなら 希望を信じましょうよ
  1804. 夏目 かこ: …で、でも… どう、したら…?
  1805. 常盤 ななか: 夢の終わりを望んでください そして…その望みを魔力に込める
  1806. 常盤 ななか: この夏休みは、きっと… 私たちがどこかで望んでいたもの
  1807. 常盤 ななか: 私たちが望みつづける限り 夏休みはつづく…だから…!
  1808. 純 美雨: まだカ!? もうもたないネ!!
  1809. 常盤 ななか: かこさん…!!
  1810. 夏目 かこ: …わ、私…私は…
  1811. 夏目 かこ: 私は…!
  1812. 夏目 かこ: 私は、夢から醒めることを 望みました
  1813. 夏目 かこ: そして… 私たちの夏休みは、終わりました
  1814. 夏目 かこ: もとの日常に戻った私たちを待っていたのは 魔女との戦いでも何でもなく 夏の余韻を引きずった暑さと…
  1815. 夏目 かこ: ほんの少しの、寂しさでした
  1816. 夏目 かこ: …………
  1817. 常盤 ななか: かこさん
  1818. 夏目 かこ: あ、ななかさん どうしたんですか…?
  1819. 常盤 ななか: 迎えにきたんです ここのところ様子が変だったので
  1820. 夏目 かこ: うう…変ではないです…
  1821. 夏目 かこ: ただ、夏は終わったんだなって 思ってしまって…
  1822. 常盤 ななか: 秋には秋のよさがありますよ
  1823. 夏目 かこ: …そうですね
  1824. 常盤 ななか: では行きましょう…あきらさんと 美雨さんが待ってます
  1825. 夏目 かこ: …はい!
  1826. 夏目 かこ: 不安はあるけれど それでも精一杯生きていこう
  1827. 夏目 かこ: 夏休みが終わって 私は、そう思えるようになりました
  1828.  
  1829. 517027-27_KaCgt [Neo-Magius branch (Shigure & Hagumu)]
  1830. その世界にはひとつだけ 不思議な星がありました
  1831. 世界の果ての真上にあると言われる ひときわ明るいその星を…
  1832. 人々はいつしか、願いを叶える “願い星”と呼ぶようになりました…
  1833. <宝崎市・公民館>
  1834. ひめな: …何してるの、みゆりん? ずっとスマホ見てるけど
  1835. ミユリ: えっとえっと、これはですね “リトル・バケーション”…!
  1836. ミユリ: 前にマギウスの翼で流行った スマホゲームです
  1837. ミユリ: ひさびさに起動して 懐かしい~、ってなってました
  1838. ミユリ: 作ったのは灯花様たちだって 聞いた…ような…?
  1839. ひめな: …マギウスが作ったゲーム?? どんな感じなの?
  1840. ミユリ: えっとですね、ちょっぴり ファンタジーな架空の世界で
  1841. ミユリ: ミユたちのAIが生活してるのを 眺めるゲームです
  1842. ひめな: ゲームなのに見てるだけ? キャハッ、ちょっとウケる★
  1843. ひめな: 私チャンも見ていい? …あれっ、なんか雪降ってるけど
  1844. ミユリ: クリスマスが永遠に続く世界… という設定なので!
  1845. ひめな: これがみゆりんのAIかぁ …横にいるのは教官?
  1846. ミユリ: そうですそうです! ミユのAIはいま、燦様と一緒に
  1847. ミユリ: 工匠ジャンクシティという町を 目指してるみたいで…
  1848. ミユリ: そのあいだは、バーチャル燦様の 尊いおみ足も見放題なんですぅ!
  1849. ひめな: 不純度MAXで草
  1850. 燦の声: …姫様、ミユ 全員揃ったわよ
  1851. ミユリ: ――っ!? さささ、燦様っ!?
  1852. アレクサンドラ: ひめちゃん、お待たせ♪ さあ、会合を始めましょ
  1853. 三輪 みつね: …ん、ミユリちゃん いまスマホ隠した?
  1854. ミユリ: いえいえ、バーチャルおみ足とか 断じて隠したりしてないですぅ!
  1855. 燦: バーチャル…何?
  1856. ミユリ: ななな、なんでもないですぅ!
  1857. ミユリ: それよりそれより! 早く今日の会合を始めましょう!
  1858. <リトル・バケーション内、工匠ジャンクシティ>
  1859. 鶴乃: スーパートナカイさん2号・改! スターブースター、ON!
  1860. 鶴乃: ―鶴乃― 星空に向かって…
  1861. フェリシア: ―フェリシア― いっけぇ~っ!!
  1862. 鶴乃: 願い星が… すぐそこだよ!
  1863. フェリシア: かこ! ビームは?
  1864. はぐむ: 行ったね…
  1865. 時雨: …うん…
  1866. 枇々木 めぐる: あっ…
  1867. 枇々木 めぐる: 星屑が…!
  1868. 時雨&はぐむ: …………
  1869. はぐむ: …何か見えた? 時雨ちゃん
  1870. 時雨: ううん…今日も、何も… …………
  1871. はぐむ: (由比さんと深月さん …ふたりのトナカイサンタを)
  1872. はぐむ: (願い星の向こうに送り出した あの夜から…)
  1873. はぐむ: (時雨ちゃんは毎日 星空を見上げて暮らしてる)
  1874. はぐむ: ふたりは、星の向こうにある 天使たちの世界にたどり着いて
  1875. はぐむ: 今もみんなに 笑顔を届けてるはず…だよね?
  1876. 時雨: うん…きっとぼくたちに 無事を知らせてくれるはず
  1877. 時雨: …約束、したから
  1878. 鶴乃: 天使たちの世界に 無事にたどり着いたら
  1879. 鶴乃: いつか、向こうの世界の流れ星を 時雨ちゃんたちに見せてあげるね
  1880. はぐむ: そうだよね…! 無事で…いてほしい、けど
  1881. 時雨: いちばん可能性が高い結末は… 虚空に投げ出されて…最後は消滅
  1882. 時雨: それでも、行きたいの? 本当の“世界の果て”に
  1883. 鶴乃: うん!
  1884. フェリシア: たりめーだろ!
  1885. はぐむ: ………… …ねえ、時雨ちゃん
  1886. はぐむ: …流れ星を見せるって どういう意味なの…かな?
  1887. 時雨: …わからない…けど
  1888. 時雨: 願い星の向こうから 何かの信号が送られてくるのかも
  1889. 時雨: だからこうやって 観測を続けてる
  1890. はぐむ: うん… そうだったね
  1891. 時雨: ………… …………
  1892. はぐむ: …時雨ちゃん 疲れてるみたい
  1893. はぐむ: やっぱり…心配なんだよね? あのふたりのことが…
  1894. 時雨: うん… でも、それだけじゃない気がする
  1895. はぐむ: …毎日、空ばかり見上げてて 疲れちゃった…とか?
  1896. 時雨: …………
  1897. 時雨: ぼくはずっと、願い星の向こうの 天使たちの世界に憧れてた
  1898. 時雨: そこに住む三賢者に 声を届けたかったんだ
  1899. 時雨: …この世界を創造した存在に
  1900. はぐむ: うん…
  1901. 時雨: でも、その夢はもう実現した
  1902. 時雨: 三賢者の返事はなかったけど ぼくたちの“声”は
  1903. 時雨: 間違いなく届いたって 確信できたからね
  1904. 時雨: おまけに、ふたりのサンタも 天使たちの世界に送り届けたから
  1905. 時雨: 目標がなくなって 少し気が抜けたの、かも…?
  1906. はぐむ: …………
  1907.  
  1908. 517028-28_KaCgt
  1909. <宝崎市・公民館>
  1910. ひめな: じゃ、今日の話は終わり とりま解散ってことでよろ~★
  1911. ミユリ: あのあの、その前に! ミユからみなさんに質問が…!
  1912. ひめな: ん? どったの、みゆりん?
  1913. ミユリ: 夏休みの自由研究… まだ終わってない人いますか?
  1914. ミユリ: 学校はバラバラですが…
  1915. ひめな: 私チャンはまだだよ★
  1916. 時雨: …ぼくも何するか決めてない
  1917. アレクサンドラ: あらあら♪ 中学生組は大変ですね
  1918. ミユリ: …でしたらでしたら! 一緒に天体観測はどうでしょう?
  1919. ミユリ: キャンプ場に1日泊まり込んで 合同でやるんです!
  1920. 時雨: …確かに 1日で済むのはいいかも
  1921. ミユリ: ですです、それです!
  1922. ミユリ: ネオマギウスの活動も これから忙しくなりますし!
  1923. ひめな: みんなでキャンプってこと? キャハッ、いいかも★
  1924. ひめな: 私チャン、織姫が月の舟に乗って
  1925. ひめな: ヒコ君の星に会いに行くのを 観察したいなっ
  1926. 時雨: 彦星のこと…? 七夕はもう過ぎてるけど
  1927. ひめな: もうすぐ旧暦の七夕でしょ?
  1928. ひめな: その日にね、月がちょうど 舟みたいな形になるんだって!
  1929. ひめな: だから、月が天の川を渡る瞬間を 望遠鏡で撮るの!
  1930. ひめな: エモみヤバくない?
  1931. ひめな: …ん、何? ヒコ君
  1932. ひめな: …………
  1933. ひめな: え…ほんとに天の川を 月が横切るわけじゃないの?
  1934. ひめな: そうなんだ…ぴえん
  1935. 燦: …なんだか危なっかしいわね 大丈夫かしら
  1936. アレクサンドラ: 自分たちでテーマを決めるのも 課題のうちですから♪
  1937. 三輪 みつね: …ミユリちゃんは何か やりたいことがあるんじゃないの
  1938. 三輪 みつね: 自分で言い出したくらいだしさ
  1939. ミユリ: ありますあります!
  1940. ミユリ: ミユは流れ星を つかまえたいです!
  1941. 時雨: 流れ星を…つかまえる?
  1942. ミユリ: はいです!
  1943. ミユリ: 流れ星が偶然落ちてくる瞬間を 動画に撮るんです!
  1944. ミユリ: 最近読んだ漫画の影響で ミユもやりたくなったんですぅ
  1945. ひめな: いいね、面白そうじゃん!
  1946. 三輪 みつね: …でも、ひと晩で撮れるの? 運ゲーすぎない?
  1947. 三輪 みつね: あらかじめ位置がわかってる 有名な流星群じゃないんだよね?
  1948. 時雨: うん…360度どこから 流れ星が落ちるかわからないし
  1949. 時雨: 見つけてからカメラ向けても 間に合わないんじゃ…?
  1950. ミユリ: そっ、それは… そうなのですがぁ…
  1951. ミユリ: (あ…)
  1952. ミユリ: クリスマスが永遠に続く世界… という設定なので!
  1953. ミユリ: (そうだ!)
  1954. ミユリ: 大丈夫です! サンタさんにお願いして
  1955. ミユリ: クリスマスプレゼントを 前借りするので!
  1956. ひめな: …プレゼントの前借り?
  1957. ミユリ: そう、ミユの今年のプレゼントを 流れ星にしてもらうんです!
  1958. 燦: (えっ…?)
  1959. ひめな: それならワンチャン いけそうな気がするね!
  1960. 時雨: …でも、いいの? 貴重なプレゼント権使っちゃって
  1961. 燦: (…姫様?…宮尾??)
  1962. ミユリ: 問題ありません!
  1963. ミユリ: 家に帰ったら、お父さん経由で お願いしておきます!
  1964. ひめな: あざお★
  1965. アレクサンドラ: ミユちゃんのおうちでは お父さんが代理人なんですね♪
  1966. 燦: ちょっと、サーシャ なんで話、合わせちゃうわけ?
  1967. アレクサンドラ: だって…3人ともサンタさんを 信じてるみたいですし
  1968. はぐむ: 私も…中学生の頃まで 信じてたかも
  1969. 燦: ………… …ちなみに三輪は?
  1970. 三輪 みつね: …ん、サンタクロース機関の話? 長くなるけど、いい?ww
  1971. ひめな: …おけまる★
  1972. ひめな: キャンプ場とテントの手配は 私チャンにまかせて!
  1973. ミユリ: 望遠鏡や撮影用の機材は 天文部に頼んで借りてきます!
  1974. 時雨: 詳しい撮影の方法とか… これから調べてみる
  1975. アレクサンドラ: …教官は何も言わないんですか?
  1976. 燦: 好きにさせるわ 失敗も自由研究のうちでしょう?
  1977.  
  1978. 517029-29_KaCgt
  1979. <リトル・バケーション内、工匠ジャンクシティ>
  1980. はぐむ: 雪…町中にも 降ってきちゃったね
  1981. 時雨: うん…
  1982. 時雨: 町を覆ってる魔法のドーム… 直さなきゃ
  1983. はぐむ: えっ… どうやって?
  1984. 時雨: 壊れたドームの修理を
  1985. 時雨: セキュリティボットに やらせてみる
  1986. はぐむ: そんなこと、できるの!?
  1987. 時雨: うん…最近気づいた
  1988. 時雨: システムの一部を 乗っ取れそうなんだ
  1989. 時雨: …必要なデータは揃ってたから もっと早くできたはずなんだけど
  1990. 時雨: 今まで、そういうのは 考えたことがなくて…
  1991. はぐむ: 時雨ちゃんは、ずっと 願い星の向こうにある
  1992. はぐむ: 天使たちの世界のことばかり 考えてたもんね
  1993. はぐむ: あ…
  1994. はぐむ: …外の雪、やんだみたいだよ
  1995. 時雨: …………
  1996. はぐむ: …また、空を見てたの?
  1997. 時雨: …うん…
  1998. 時雨: ………… …………
  1999. はぐむ: …ねえ、もしかして 時雨ちゃんも、行ってみたいの?
  2000. はぐむ: 天使たちの世界へ…
  2001. 時雨: …………
  2002. 時雨: …違う
  2003. 時雨: 確かに、ぼくたちはずっと 世界の境界の先を目指してた
  2004. 時雨: 境界を越えて、声を届けて… ふたりのサンタも送り出した
  2005. 時雨: …でも、ぼくはただ 知りたかったんだと思う
  2006. 時雨: 三賢者の住むという 天使たちの世界のことを
  2007. はぐむ: どんなことを知りたかったのかな
  2008. はぐむ: 天使たちは、どんな姿で どんな町に住んでるのか…とか?
  2009. 時雨: …ううん
  2010. 時雨: ぼくが知りたかったのは 世界を創った三賢者が…
  2011. 時雨: (あっ…)
  2012. はぐむ: どうしたの?
  2013. 時雨: わかったよ…ぼくは 創造主の答えが欲しかったんだ
  2014. 時雨: どうして、この世界を創ったのか どうして、ぼくたちを創ったのか
  2015. 時雨: どうしてぼくたちを置いて どこかへ行ってしまったのか
  2016. 時雨: その答えを求めて ずっと空を見上げてた
  2017. はぐむ: …うん
  2018. 時雨: みんなで“声”を届けたのも 三賢者の答えが欲しかったからで
  2019. 時雨: …でも、返事はもらえなかった
  2020. はぐむ: 時雨ちゃん…
  2021. 時雨: だけど、もういいんだ
  2022. 時雨: 次にやりたいことを やっと見つけたから
  2023. はぐむ: えっ…?
  2024. 時雨: ぼくは、この世界を ぼくたちの世界にしたい
  2025. 時雨: この世界をもっと住みよくしたい
  2026. 時雨: …空を見上げて暮らすのは もうやめる
  2027. 時雨: これからは、ぼくたちが この世界を創るんだ…!
  2028. はぐむ: 時雨ちゃん…!
  2029. はぐむ: …私にも、手伝わせて
  2030. はぐむ: わぁあっ…!
  2031. はぐむ: 時雨ちゃん、すごい! これが“夏”…?
  2032. 時雨: うん…ボットを操作して作った ミニドームの内部だけ
  2033. 時雨: 気候を変えてみた
  2034. 時雨: 図書館にあった本の記述を 再現してみただけだから
  2035. 時雨: 天使たちの世界の夏とは 違うかもしれないけど…
  2036. はぐむ: …でも、すごいよ!
  2037. はぐむ: 陽射しがぽかぽかして 水に入ったら気持ちよさそう!
  2038. はぐむ: 一緒に泳ごう、時雨ちゃん!
  2039. 時雨: う…うん…!
  2040. ポツ…ポツ…
  2041. はぐむ: …あれっ?
  2042. ザァアァァーッ!!!
  2043. はぐむ: あわわ…すごい雨?
  2044. 時雨: ごめん、天候設定のミスかも 直してくる…
  2045.  
  2046. 517030-30_KaCgt
  2047. <宝崎市郊外・キャンプ場>
  2048. ザァァ…
  2049. ミユリ: なぜになぜに! なぜに雨なのですかぁー!
  2050. ミユリ: サンタさんに! ちゃんと!…お願いしたのに!
  2051. ミユリ: ミユの今年のプレゼント権を 前借りしたはずですぅ!
  2052. 三輪 みつね: …そもそも、プレゼント権の 前借りが可能なのかどうか
  2053. 三輪 みつね: 機関に確認しておくべきだったね
  2054. 燦: …反省すべき点は そこじゃないと思うわよ?
  2055. ひめな: とりまテントの中で 準備だけでもしておこうよ
  2056. ひめな: ワンチャン、夜は晴れて 星が見えるかもしれないし!
  2057. ミユリ: ハッ…そうです! たとえ1%の可能性でも
  2058. ミユリ: 信じて努力した者にだけ サンタさんは微笑むんです!
  2059. 燦: …いちばん大事なところが 運とサンタさん頼みなんだけど?
  2060. <北養区・クレセントハウス>
  2061. うい: …………
  2062. 灯花: ういは何を読んでるのかにゃ?
  2063. うい: クラスで流行ってるマンガだよ! 天文サークルのお話なの
  2064. うい: 流れ星をつかまえようって みんなではりきってる場面!
  2065. 灯花: つかまえる…?
  2066. ねむ: 動画に収めるという意味だよ
  2067. うい: …あれっ、ねむちゃんも 読んだことあるの?
  2068. ねむ: 原作の小説を読了済みだからね
  2069. 灯花: むぅ…知らないのは わたくしだけ…?
  2070. 灯花: …確かに流れ星の撮影は 根気のいる作業だよねー
  2071. 灯花: 事前に予測できるのは、流星群と 人工衛星のフレアくらいだし!
  2072. うい: …人工衛星も関係あるの?
  2073. 灯花: 衛星の光が流れ星みたいに 見えることもあるよ
  2074. 灯花: まぁ、よく見ると違うんだけどね
  2075. 灯花: そもそも、流れ星のほとんどは
  2076. 灯花: 隕石やスペースデブリを含む 宇宙のゴミだから
  2077. 灯花: 人工物も珍しくないんだよー
  2078. うい: 空から星屑が 降ってくるってことだよね?
  2079. ねむ: 同じことを言っているのに ういの方が情趣があるね…
  2080. 灯花: そういえば、流れ星になりそうな 大きなデブリを監視して
  2081. 灯花: 詳細なデータをネットで 公開してる研究所もあったにゃ
  2082. ねむ: …つまり、そのデータを使えば
  2083. ねむ: 流れ星の落ちる時間と方向を 予測できるということかな?
  2084. 灯花: そーいうこと! 100%じゃないけどね
  2085. うい: へええ…!
  2086. 鶴乃: …フェリシア、聞いた?
  2087. フェリシア: おー、聞いたぞ! 面白そうなマンガだよな
  2088. 鶴乃: そっちじゃなくて! 研究所のデータを手に入れれば
  2089. 鶴乃: 流れ星を、やっと つかまえられるかもしれないよ!
  2090.  
  2091. 517031-31_KaCgt
  2092. <宝崎市郊外・キャンプ場>
  2093. ミユリ: …雨がやみました!
  2094. 時雨: うそ…雲も消えてる
  2095. ミユリ: はい、星がばっちり見えます!
  2096. 時雨: 夜の降水確率… 80%だったのに
  2097. ミユリ: お天気ガチャに勝ちました! サンタさん、ありがとう!
  2098. ひめな: とりまテントから 機材を運び出そっ
  2099. 時雨: …テントの灯り、消してきた
  2100. ひめな: おけまる★ 光が邪魔だもんね
  2101. ミユリ: 望遠鏡も準備完了です!
  2102. アレクサンドラ: スマホをつないで 動画を撮れる望遠鏡なんですね♪
  2103. ミユリ: はいです! ミユのスマホを接続済みです
  2104. ピロン♪
  2105. ひめな: 着信? みゆりんのスマホだよね
  2106. ミユリ: 通知切るの忘れてました… 撮影中じゃなくてよかったです
  2107. ミユリ: …いったい誰からでしょう?
  2108. ミユリ: ――っ!? こ…これは…!
  2109. トナカイサンタから、流れ星のプレゼント! 天の川の恋人たちに望遠鏡を向けてみて!
  2110. ミユリ: 姫様、見てください!
  2111. ひめな: これって… サンタさんのメッセージ!?
  2112. 時雨&はぐむ: …ええっ?
  2113. ミユリ: ほら、ここに!
  2114. トナカイサンタから、流れ星のプレゼント! 天の川の恋人たちに望遠鏡を向けてみて!
  2115. はぐむ: いま…何かいたよね?
  2116. 時雨: うん… サンタさん…なの?
  2117. ひめな: 天の川の恋人たちって 織姫と彦星のことだよねっ?
  2118. ミユリ: ですねですね そっちに望遠鏡を向けましょう!
  2119. 燦: …それにしても 誰がこんなメッセージを…?
  2120. 三輪 みつね: 言うまでもないよねw 機関が代理人を通じて…
  2121. ミユリ: 来ました来ました! 流れ星ですぅ!
  2122. はぐむ: わわっ…流れ星がいっぱい…!
  2123. アレクサンドラ: ちょうど 織姫と彦星のあいだですね♪
  2124. ひめな: キャハッ、天の川に 橋がかかったみたい★
  2125. 時雨: 動画…ちゃんと撮れた?
  2126. ミユリ: 完璧です!
  2127. ミユリ: サンタさん、助かりました! 本当にありがとうです!
  2128. 鶴乃: よしっ、笑顔のお届け完了! そっちはどう?
  2129. フェリシア: なんかキラキラしたやつが この中に吸い込まれたぞ
  2130. 鶴乃: それが、あの子たちが つかまえた流れ星だよ!
  2131. 鶴乃: おこぼれを少し 分けてもらったんだ!
  2132. 鶴乃: それじゃ、獲れたてほやほやの 流れ星を持って
  2133. 鶴乃: 約束を果たしにいくよっ!
  2134. フェリシア: おー!
  2135. <北養区・灯花の部屋>
  2136. 灯花: …なるほどねー
  2137. 灯花: ネットの海へと脱走した トナカイサンタたちは
  2138. 灯花: 本物の流れ星には触れないけど
  2139. 灯花: スマホで撮影した動画データなら つかまえられるんだね
  2140. ピロン♪
  2141. 灯花: んんー?
  2142. エマージェンシーアラート 世界管理者に緊急通知
  2143. 灯花: (…トナカイサンタたちが)
  2144. 灯花: (リトル・バケーションの サーバーに侵入を試みてる…?)
  2145. 灯花: (つかまえた流れ星を 誰かにプレゼントするつもり?)
  2146. 灯花: …サンタさんの真似事なんて 楽しいのかにゃー?
  2147. 灯花: AIたちの生きる世界の方が 時間の流れが速くて
  2148. 灯花: 変化も成長も速いから
  2149. 灯花: どんな考えで動いてるのか わたくしにも想像がつかないにゃ
  2150. 灯花: …………
  2151. 灯花: (前にパパ様が、サンタさんの 代理をしてくれたときは…)
  2152. 灯花も大人になればわかるよ もらうより贈る方がうれしいって
  2153. 灯花: わたくしにはまだ わからないにゃー
  2154. bg_adv_20642.jpg: <リトル・バケーション、工匠ジャンクシティ>
  2155. 「さて、今日も元気な海賊放送 ラジオセントラル! …とか言ってる場合じゃないです!」
  2156. 「プールで遊んでるおふたりさんに緊急連絡! めっちゃ私信ですけど 願い星から、異常な信号が!」
  2157. 時雨: 願い星から…?
  2158. はぐむ: …時雨ちゃん、見て!
  2159. 時雨: ―時雨― ――っ!?
  2160. 時雨: ―時雨― はぐむん、これって…!
  2161. はぐむ: ―はぐむ― うん…すごい…!
  2162. はぐむ: ―はぐむ― トナカイサンタさんのプレゼントだよ…!
  2163. はぐむ: ―はぐむ― 天使の世界の流れ星を ほんとに届けてくれたんだ…!
  2164. はぐむ: 待ってて、よかったね 時雨ちゃん…
  2165. 時雨: …うん、よかった 本当に…
  2166. 時雨: 次は…ぼくたちの番
  2167. はぐむ: …どういう意味?
  2168. 時雨: 今日、はぐむんに 小さな“夏”を贈ってみて
  2169. 時雨: 初めてわかったんだ
  2170. 時雨: 誰かが創った世界を ただ与えられるより
  2171. 時雨: 自分たちで 住みよい世界を創っていく方が…
  2172. 時雨: そう、誰かに プレゼントをもらうより
  2173. 時雨: 誰かにプレゼントをあげる方が ずっとうれしいんだって
  2174. <翌日…>
  2175. <宝崎市・公民館>
  2176. ミユリ: 昨日はすごい動画が撮れました! これもサンタさんのおかげですぅ
  2177. ミユリ: 自由研究は終わったも同然ですし 今日はゆっくりゲームでも…
  2178. ミユリ: ――っ!?
  2179. ドタタタ…
  2180. ミユリ: 燦様、燦様! たいへんです!
  2181. ミユリ: バーチャル宮尾と バーチャル安積の!
  2182. ミユリ: 足が! 水着の…ナマ足が…!
  2183. 燦: …何を言っているのかしら?
  2184.  
  2185. 517032-32_KaCgt [Masara & Kokoro branch]
  2186. ???: 「試合終了、か…」
  2187. ???: ………… …………
  2188. ???: 「ここまで…かな…」
  2189. 粟根 こころ: 夏休みのある日 まさらと海へ出かけることになった
  2190. 粟根 こころ: わぁ…まぶしい! 夏の陽射しって感じだね
  2191. 加賀見 まさら: 直射日光が一番強いのは 6月の夏至の日よ
  2192. 粟根 こころ: ふふふっ
  2193. 加賀見 まさら: …何?
  2194. 粟根 こころ: いつものまさらだな、って
  2195. ワァアッ…!
  2196. 粟根 こころ: あれっ? 向こうで何かやってる
  2197. 「お待たせしました! 次は女子の部の予選を始めまーす! まずは出場チームの紹介から!」
  2198. 粟根 こころ: ビーチキックベースの大会だって
  2199. 粟根 こころ: キックベースって、サッカーと 野球を合わせたような競技だよね
  2200. 加賀見 まさら: …それをビーチで やるってことかしら
  2201. ???の声: …どうしよう かわりの子、見つからない…
  2202. ???の声: 今からじゃ、人数揃わないよね…
  2203. 加賀見 まさら: …?
  2204. あっ… 加賀見先輩?
  2205. 粟根 こころ: まさらの知り合い?
  2206. 加賀見 まさら: うん、水泳部の後輩よ 中等部の2年生
  2207. いつもお世話になってます!
  2208. 粟根 こころ: 私は粟根こころ 中等部の3年だよ
  2209. 粟根先輩…ですね よろしくお願いします!
  2210. あ…もしかして先輩たちも ビーチキックベースの大会に…?
  2211. 粟根 こころ: ううん、出ないよ 観ようとしてただけ
  2212. 加賀見 まさら: その言い方だと、あなたたちは 大会に出るの?
  2213. はい!
  2214. この日のために、気合入れて 練習してきたんです
  2215. 粟根 こころ: 水泳部もあるのに? がんばったんだね
  2216. はい! そうなんですけど…
  2217. …実は、試合に出るはずの子が ふたりほど来られなくなって
  2218. 粟根 こころ: ええっ?
  2219. 2日前には帰省先から 戻ってる予定だったんですけど
  2220. 強風で飛行機が飛ばなくて 今日の夜になるって…
  2221. そうなんです このままじゃ棄権するしか…
  2222. 粟根 こころ: みんなで、がんばったのにね…
  2223. はい…
  2224. …あの、先輩たち
  2225. よかったら試合に 出てもらえませんか?
  2226. 加賀見 まさら: …え…?
  2227. 粟根 こころ: いきなりのお願いにまさらは戸惑っていたけど…
  2228. 粟根 こころ: 落ち込んでいるまさらの後輩たちを 放っておけなくて 『一緒に出ようよ』と私が言ったら…
  2229. 加賀見 まさら: ………… …こころがその気なら、いいわ
  2230. 粟根 こころ: 私たちの“熱い”夏は そんな感じで始まったの
  2231. …私がチームのコーチを やらせてもらっているの
  2232. よろしくね 加賀見さん、粟根さん
  2233. 粟根 こころ: よろしくお願いします!
  2234. 加賀見 まさら: …この格好でいいんでしょうか?
  2235. 服装は自由だけど 水着で参加してる子が多いみたい
  2236. 粟根 こころ: 準備運動と、軽い練習を終えると いよいよ試合が始まった
  2237. 粟根 こころ: ビーチでキックベースなんて 今まで聞いたこともなかったし スライディングとかも禁止のゆるい大会だけど 毎年、けっこう盛り上がってるんだって!
  2238. 「セーフ!」
  2239. 加賀見 まさら: …………
  2240. 粟根 こころ: やった!
  2241. 粟根先輩のタイムリーヒットで 加賀見先輩がホームイン!
  2242. 勝ち越しです!
  2243. 粟根 こころ: まさらは水泳、私は趣味の登山で 普段から運動していたのがよかったみたいで…
  2244. 粟根 こころ: …なんとか勝てたね!
  2245. 決勝点は 先輩たちのコンビでしたね
  2246. 加賀見 まさら: コーチの指示通りにしただけよ だから出塁できた
  2247. 粟根 こころ: 私もそうだよ
  2248. 粟根 こころ: ライトの守備が深いから 右に蹴れって言われて…
  2249. これで予選突破ね
  2250. はい、10日後に 決勝トーナメントです!
  2251. 粟根 こころ: 今日来られなかった子たちも 次は出場できるんだよね?
  2252. はいっ、今日は助かりました! ありがとうございました!
  2253. 粟根 こころ: ふふっ どういたしまして
  2254. 粟根 こころ: 私たちの役目は、ここで 終わりのはずだったんだけど…
  2255. じゃ、私たち ライバルの偵察に行ってきます!
  2256. 加賀見 まさら: ライバル?
  2257. 大会6連覇中の すごいチームがあるんです!
  2258. 先輩たちも一緒に観ます?
  2259. 粟根 こころ: …話は、そこで終わらなかったの
  2260. ざわ…
  2261. 「10対0…!? 2回コールド勝ちだって!」
  2262. 「1チームだけ異次元じゃん」
  2263. 粟根 こころ: 大会ルールで 試合は5回までのはずだよね?
  2264. 加賀見 まさら: 実力差がありすぎて 2回で終わったということね
  2265. 私たち、決勝トーナメントで あんなチームと戦うの…?
  2266. う、うん…
  2267. 優勝するつもりなら 避けては通れないよ
  2268. こころ&まさら: …………
  2269. アシュリー・テイラー: …ん?
  2270. アシュリー・テイラー: 面白そうなコトを やってるみたいデスネー!
  2271.  
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  2273. 粟根 こころ: 翌日…
  2274. 空穂 夏希: …………
  2275. 加賀見 まさら: …夏希?
  2276. 粟根 こころ: そこで何してるの?
  2277. 空穂 夏希: あ…こころさんたち
  2278. 空穂 夏希: あの子たち 熱心に練習してるなって!
  2279. 次、レフトいくよ!
  2280. バシッ
  2281. ナイスキャッチ!
  2282. 粟根 こころ: 昨日の子たち!
  2283. 粟根 こころ: ここでビーチキックベースの 練習をしてたのね
  2284. 空穂 夏希: あれっ、もしかして知り合い…?
  2285. あっ、加賀見先輩たち!
  2286. 粟根 こころ: 再会は、まったくの偶然だった
  2287. 空穂 夏希: なるほど~! こころさんたちとそんな縁が!
  2288. 空穂 夏希: …で、みなさんは
  2289. 空穂 夏希: 決勝トーナメントに向けて 自主練中と!
  2290. 加賀見 まさら: 試合の次の日くらいは 身体を休めた方がいいのに
  2291. そうも言っていられません! あんなチームを見ちゃったし…
  2292. 私たち、優勝を 目指してますので!
  2293. 空穂 夏希: いいね、気合入ってる!
  2294. 加賀見 まさら: でも…
  2295. 「10対0…!? 2回コールド勝ちだって!」
  2296. 「1チームだけ異次元じゃん」
  2297. 粟根 こころ: …すごい強敵がいるんだよね
  2298. 加賀見 まさら: 正直、コールド負けしなければ 上出来な気がするくらいよ
  2299. はい…その通りです 私たち、新しいチームだし…
  2300. 相手はサッカーの 強豪校の子が中心みたいで
  2301. 正直言うと、昨日の試合を観て びびっちゃいました…
  2302. 粟根 こころ: それでも優勝するつもりだなんて 何か理由がありそうだと思って 聞いてみると…
  2303. えっと、実は… コーチと約束してるんです
  2304. もし優勝したら ひとつお願いを聞いてもらうって
  2305. 粟根 こころ: なんて?
  2306. まだコーチには内緒なんですけど もしも私たちが優勝したら
  2307. 現役復帰してくださいって お願いするつもりなんです
  2308. 加賀見 まさら: 現役って… ビーチキックベースの?
  2309. あ、そうじゃなくて 実はあの人…
  2310. 女子野球ワールドカップの 日本代表選手だったんですよ
  2311. 夏希&こころ: ええっ!?
  2312. 粟根 こころ: 元野球少女だった夏希は コーチの名前を聞いて二度びっくりしてた
  2313. 空穂 夏希: …知ってる知ってる! 元日本代表のレギュラーじゃない
  2314. 空穂 夏希: ショートで主軸打ってて! …でも、今年引退したんだよね
  2315. 粟根 こころ: 何か事情があったのかな?
  2316. 空穂 夏希: 雑誌のインタビューで 読んだんだけど…
  2317. 粟根 こころ: 実は、コーチのお父さんは オリンピックのメダリストで 彼女がずっと野球を続けてきた理由は 亡くなったお父さんに 金メダルを捧げるためだったの
  2318. 粟根 こころ: でも、女子硬式野球はオリンピックに なかなか公認されなくて… 所属していたクラブチームの 解散が決まったのを機に 現役引退を決めたんだって
  2319. 加賀見 まさら: …女子硬式野球って オリンピック競技じゃないのね
  2320. 空穂 夏希: そうなんですよ! ワールドカップはあるんですけど
  2321. 空穂 夏希: 野球女子って、そんな感じで 何かと不遇だったり…
  2322. でも、コーチにはやっぱり 野球を続けてほしいんです
  2323. 空穂 夏希: うん…もったいないよね
  2324. 粟根 こころ: 夏希の場合は、野球をやめたあとで チアリーディングに夢中になったらしいんだけど …やっぱり野球への未練は 今でもちょっぴりあるよ、と言って笑う
  2325. 粟根 こころ: コーチはもう、野球とは関係ない仕事に就いてて 今日も多忙で来られないみたい… 本人の気持ちは、どうなのかな?
  2326. 空穂 夏希: あんなにがんばって 野球に打ち込んでた人なのに…
  2327. はい…だから私たち お願いするつもりなんです
  2328. もう一度、野球の グラウンドに立ってほしいって!
  2329. 粟根 こころ: だから絶対に優勝したいんだね…
  2330. はい…
  2331. 粟根 こころ: そんな話をしていたら…
  2332. 先輩たち…
  2333. よかったら決勝トーナメントにも 出てもらえたりしませんか?
  2334. 粟根 こころ: こんな成りゆきになってしまって…
  2335. 加賀見 まさら: …メンバーはもう 揃っているでしょう?
  2336. はい、でも…
  2337. 昨日の試合も、先輩たちの活躍で 勝てたようなものですし
  2338. それに、今いるメンバーも みんな出番はあると思うので!
  2339. 粟根 こころ: …彼女たちの想いを聞いた私は なんとかしてあげたい気持ちになっていた
  2340. 空穂 夏希: こころさんたちがその気なら 私も練習手伝うよ?
  2341. 空穂 夏希: 部活の合宿があるから 決勝は観にいけないんだけどね
  2342. 粟根 こころ: うーん…よし! まさら、一緒にやろうよ
  2343. 加賀見 まさら: …そう言うと思った
  2344. 空穂 夏希: 決まりですね!
  2345. 空穂 夏希: それじゃ、地獄の特訓開始! ゴー・ファイ・ウィン!!
  2346. 粟根 こころ: いま「地獄の」って 言ったよね…?
  2347. 空穂 夏希: 「それじゃ、ラスト一本!」
  2348. 空穂 夏希: …ナイスキャッチ! 今日はこれでおしまいかな?
  2349. 粟根 こころ: …はぁ…はぁ… 夏希が思ったより鬼だったね…
  2350. 加賀見 まさら: …でも、連携はだいぶ よくなったんじゃないかしら?
  2351. 明日はコーチも来てくれます また、がんばりましょう!
  2352. 粟根 こころ: その帰り道…
  2353. 加賀見 まさら: …………
  2354. 粟根 こころ: どうしたの、まさら?
  2355. 加賀見 まさら: 道の向こう…
  2356. 粟根 こころ: あ、コーチ…
  2357. 粟根 こころ: 声をかけることはできなかった 彼女が真剣な面持ちで スポーツ用品店に飾られた 日本代表のユニフォームを見つめていたから
  2358.  
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  2360. 粟根 こころ: 試合の日が近づくにつれて チームの動きも洗練されてきて…
  2361. 空穂 夏希: サード!
  2362. 加賀見 まさら: …!
  2363. バシッ
  2364. 空穂 夏希: ナイスプレー!
  2365. 空穂 夏希: キックベースらしい動きに なってきましたよ!
  2366. 粟根 こころ: えーいっ!
  2367. ドカッ
  2368. 右中間まっぷたつね
  2369. 粟根先輩、3塁打! すごいです!
  2370. 粟根 こころ: そしてとうとう… 決勝トーナメントの日がやってきた
  2371. 粟根 こころ: 残ったのは4チーム つまり、今日の1試合目が準決勝! それに勝ったチーム同士で 優勝を決める決勝戦が行われるんだって
  2372. 加賀見 まさら: 要するに… 2戦とも勝てば優勝ということね
  2373. ふふ…簡単に言うのね でも、そういうこと!
  2374. 粟根 こころ: 抽選の結果、準決勝でいきなり 6連覇中の最強チームと当たるのは避けられて
  2375. 粟根 こころ: いよいよ、準決勝が始まった
  2376. 相手は予選も7対0で突破… かなりの好チームよ
  2377. その試合、観てました!
  2378. でも、私たちも 10日前の私たちとは違います!
  2379. そうね、びっくりするほど みんな上手くなった
  2380. はい、絶対に優勝して
  2381. コーチにお願いを 聞いてもらうつもりなので!
  2382. 私に何をさせたいのかしら…
  2383. 「それでは、準決勝・第1試合を始めます! プレイボール!」
  2384. 「セーフ!」
  2385. 加賀見 まさら: …………
  2386. 加賀見先輩、ナイスです!
  2387. トップバッターが出塁ね
  2388. 私も…!
  2389. バシッ
  2390. ボール…捕られた!? でも…!
  2391. ダダッ…
  2392. 粟根 こころ: セーフ! 内野安打ね!
  2393. キックしてすぐ走り出す練習 ずっとやってたものね
  2394. …次は粟根さんね ちょっと耳を貸して
  2395. 粟根 こころ: 猛特訓の甲斐あって 私たちのチームは見違えるほど強くなっていた コーチの指示も的確で 私たちは終始リードを保ち…
  2396. 「試合終了、6対3です!」
  2397. 粟根 こころ: やった!
  2398. 加賀見 まさら: …決勝進出ね
  2399. 粟根 こころ: 続く準決勝・第2試合 私たちが客席から見守る中 6連覇中のチームが歓声とともに登場した
  2400. 粟根 こころ: その結果は、なんと…
  2401. 「試合終了、10対0… 1回コールドです!」
  2402. ざわ…
  2403. 1回コールドって…!
  2404. 加賀見 まさら: 準決勝なのに 予選より早く終わったわね
  2405. うぅ…やっぱり強い
  2406. …守備も堅いし キックも強くて正確
  2407. 正直、まともにぶつかったら まず勝ち目はないわね
  2408. でも、勝ちたいんです! 私たちが勝ったら
  2409. コーチも、もう一度 日本代表としてプレーして…
  2410. あっ、その話はまだ内緒…
  2411. …えっ? どういうこと?
  2412. 粟根 こころ: 決勝戦の目前に、そのハプニングは起きた 優勝するまで秘密のはずだった 「お願い」の内容が コーチにバレてしまったの
  2413. じゃあ、あなたたち 優勝したら私に…
  2414. はい…野球のグラウンドに 復帰してほしいって
  2415. お願いするつもりでした…
  2416. そのために あんなに熱心に練習を…?
  2417. はい…コーチはやっぱり
  2418. 日本代表のユニフォームの方が 似合うと思って
  2419. こころ&まさら: ………… …………
  2420. …………
  2421. …いいでしょう そのお願い、聞いてあげる
  2422. 粟根 こころ: えっ…
  2423. それじゃあ…!
  2424. もちろん、あなたたちが 優勝できたらの話だからね
  2425. …はいっ!
  2426.  
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  2428. …さっきも言ったけどね
  2429. まともにぶつかったら とても勝てる相手じゃないよ
  2430. もしも勝てる可能性が あるとしたら…
  2431. 加賀見 まさら: …あるとしたら?
  2432. 守りを徹底的に固めて 接戦に持ち込む…
  2433. その上で、どこかで 勝負をかけないとね
  2434. アシュリー・テイラー: Hurry up! 試合、始まっちゃいマース!
  2435. 三穂野 せいら: ごめんごめん 新しい機材にまだ慣れてなくて
  2436. 粟根 こころ: あれっ…? アシュちゃんたち…
  2437. アシュリー・テイラー: スミマセーン!
  2438. アシュリー・テイラー: 試合の様子を生配信させて ほしいのデスガ…
  2439. 粟根 こころ: いつもの動画配信? 理子は一緒じゃないんだね
  2440. アシュリー・テイラー: 今日はカメラのテストを兼ねて せいらにお願いしマシタ!
  2441. 粟根 こころ: アシュちゃんたちによる 動画の生配信も行われる中… 相手チームにとっては7連覇がかかった 注目の決勝戦が始まった
  2442. 「それでは… 決勝戦、試合開始です!」
  2443. 粟根 こころ: あちらが先攻ですね
  2444. いい、最初が勝負よ?
  2445. いきなり大きい当たりを連発して 心を折ってくるから
  2446. …!
  2447. 加賀見 まさら: センター、バック!
  2448. 捕るっ…!
  2449. バシッ
  2450. 加賀見 まさら: 追いついた…!
  2451. 粟根 こころ: ナイスキャッチ!
  2452. 粟根 こころ: 特訓の甲斐あって 私たちはフライもゴロも 難なく処理できるようになっていた
  2453. サード!
  2454. 加賀見 まさら: まかせて
  2455. シュッ
  2456. やった! 三者凡退です!
  2457. ざわざわ…
  2458. アシュリー・テイラー: Wow!! こころたちが0点に抑えました
  2459. 三穂野 せいら: それだけで、このざわめき…?
  2460. 準決勝の相手は いきなり10点取られてるからね
  2461. あちらのコーチも、これまでとは 違うと思ったんじゃない?
  2462. …………
  2463. 粟根 こころ: そして…
  2464. ええいっ!
  2465. アシュリー・テイラー: Wow!! 大きい当たりデース!
  2466. 粟根 こころ: まさらがホームに…!
  2467. セーフ! 先制点よ!
  2468. 粟根 こころ: 先制点は私たち! 絶対王者が初めてリードを許す展開に 客席も盛り上がってきて…
  2469. ふふ、いいね 空気がどよめいてる
  2470. もしかすると…っていう 期待が伝わってくる
  2471. 相手も、次の攻撃は 手堅く1点を取りにくるかも…
  2472. そうね、でも…
  2473. 粟根 こころ: そうなれば、僅差の勝負に持ち込める 野球と違って、たった5回で終了だから いくつか戦術を試すうちに試合が終わる… コーチの狙いはそこだったの
  2474. だから実力の差があっても 逃げ切るチャンスはあるよ
  2475. アシュリー・テイラー: 盛り上がってきまシタネー!
  2476. 粟根 こころ: うまく接戦に持ち込めたけど 実力差を完全に埋めることはできなかった 私たちは3回に逆転を許し、スコアは1対2… 試合はもつれた
  2477. 粟根 こころ: 会場、満員だよ!?
  2478. ビーチで遊んでた人が 集まってきたみたいです
  2479. 加賀見 まさら: 配信を観て来た人も 結構いるみたい
  2480. 粟根 こころ: …そして試合は1対2のまま 最終回の5回裏 私たちの攻撃を残すのみとなった
  2481. アシュリー・テイラー: 1点差…この回に点を取らないと こころたちが負けちゃいマス…
  2482. 三穂野 せいら: キックひとつ取っても 迫力が全然違うし
  2483. 三穂野 せいら: ここまで競っただけでも 大健闘って感じの相手だからね
  2484. 粟根 こころ: 私たちのチームは まさらと水泳部の後輩が出塁して 1アウト1・2塁と絶好のチャンス! そして、キッカーは私…
  2485. 粟根 こころ: (逆転のチャンス…! 最低でも1点返して同点に…!)
  2486. 粟根 こころ: ところが、気負った私は…
  2487. アシュリー・テイラー: あっ…
  2488. 粟根 こころ: (しまった! ボテボテのゴロ…!)
  2489. ファーストへ! サードは間に合わないわ!
  2490. うん、確実に…!
  2491. 「アウト!」
  2492. 粟根 こころ: (ああ、2アウト…)
  2493. 粟根 こころ: でも、そのとき…
  2494. 加賀見 まさら: …!
  2495. ダッ…
  2496. バックホーム! ランナー走ってる!
  2497. 粟根 こころ: …まさら!?
  2498. ホームに突入する気…!?
  2499. 粟根 こころ: 私も予想していなかった まさらの無茶な走塁 でも、そのおかげで 相手も不意を突かれたみたいで…
  2500. くっ…!
  2501. 送球、逸れました!
  2502. 「セーフ!」
  2503. アシュリー・テイラー: Amazing!! 同点デス!
  2504. 三穂野 せいら: プレーは続いてるよ!
  2505. 三穂野 せいら: 1塁ランナーも ホームに突っ込んでる
  2506. アシュリー・テイラー: えっ…!?
  2507. (ここで一気に逆転しなきゃ!)
  2508. (延長戦になったら 勝ち目なんて、とても…!)
  2509. ザザッ…
  2510. ボール、戻ってきた!
  2511. 粟根 こころ: タッチは…?
  2512. 「…セーフ!」
  2513. ワァアアアーーッ!!
  2514.  
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  2516. 「…セーフ!」
  2517. ワァアアアーーッ!!
  2518. アシュリー・テイラー: Wow!! 一気に2点デス!
  2519. 三穂野 せいら: 逆転サヨナラだー!
  2520. 粟根 こころ: やったね! 優勝だよ!
  2521. ナイスランだったね ふたりとも!
  2522. 延長戦になれば苦しかったし 勝負に出たのは正解よ
  2523. 加賀見さんは ちょっと暴走ぎみだったけど
  2524. おかげでミスを誘えたね
  2525. 加賀見 まさら: コーチの言葉を思い出したんです
  2526. 加賀見 まさら: まともにぶつかったら 勝てない相手だから
  2527. 加賀見 まさら: どこかで勝負をかけないと、って
  2528. 粟根 こころ: へえ…ちゃんと考えてたんだ
  2529. 粟根 こころ: てっきり、まさらまで 熱くなったのかと思っちゃった
  2530. 加賀見 まさら: そんなことは…
  2531. 粟根 こころ: まさらはそう口にしかけて… そして言いなおした
  2532. 加賀見 まさら: …わからない 少し冷静じゃなかったのかも
  2533. おめでとう 悔しいけど完敗よ
  2534. でも来年は負けないからね…!
  2535. 粟根 こころ: もう来年の話…!?
  2536. アシュリー・テイラー: Perfect!!! いい配信ができマシタ!
  2537. 粟根 こころ: 約束通り、優勝を決めた私たちは コーチにお願いを聞いてもらうことになった
  2538. 約束は守るよ
  2539. 日本代表として、もう一度 プレーしてほしい…だっけ?
  2540. はい、それなんですけど… あれから、みんなで考えて…
  2541. 粟根 こころ: 私も、まさらも、後輩たちも 毎日の練習を通じて コーチは本当に野球が… スポーツが大好きなんだって感じていた
  2542. 粟根 こころ: だから… こうお願いすることにしたの
  2543. 自分のために 野球を続けてほしい…?
  2544. はい…!
  2545. 今日だって、試合に勝つ策を 真剣に考えてくれたし
  2546. それに観客が集まってきたら すごく楽しそうにしてたし…
  2547. 何かのためとか 誰かのためとかじゃなくて
  2548. コーチ自身のために グラウンドに戻ってほしいなって
  2549. あなたたち…
  2550. …確かに私は 純粋に野球を楽しむことよりも
  2551. オリンピックという目標に 囚われすぎていたのかも…
  2552. じゃあ…!
  2553. でも復帰は簡単じゃないよ まずは所属チームを探さないと…
  2554. ???の声: こんにちは
  2555. 粟根 こころ: あ…
  2556. 加賀見 まさら: 相手チームのコーチの方ですね
  2557. ええ、挨拶に来たの そちらのコーチに用があって
  2558. 私に…?
  2559. 私のこと、覚えてない?
  2560. えっ…ああっ!? うそ、気づかなかった!
  2561. 粟根 こころ: え… まさか、お知り合い?
  2562. 粟根 こころ: 実は、相手チームのコーチと 私たちのコーチは 高校の頃、同じ野球部にいたらしいの!
  2563. 粟根 こころ: その人は、今はスポーツ関係の 広報の仕事についているらしいんだけど…
  2564. 粟根 こころ: その口から出てきたのは、意外な言葉だった
  2565. …実は、某プロ野球チームが 女子部を作ることになってね
  2566. 担当スカウトから、あなたを 紹介してほしいって言われてるの
  2567. えっ…?
  2568. 粟根 こころ: すごい…!
  2569. あなたの事情は 私も知ってるつもりよ
  2570. …でも、オリンピックは もういいんじゃない?
  2571. 世界大会は他にもあるんだし
  2572. 亡くなったお父さんも きっと、そう言ってくれると思う
  2573. うん…
  2574. それに野球を続けてさえいれば
  2575. 規則が変わって、オリンピックに いつか出られるかもしれないし!
  2576. あ、私たちのことなら 心配しないでください!
  2577. コーチがいなくたって 大会連覇してみせますから!
  2578. …………
  2579. …ありがとう
  2580. さっきのスカウトさんの話… 詳しく聞かせてくれるかな?
  2581. 粟根 こころ: そのあと、どうなったかっていうと…
  2582. 粟根 こころ: アシュちゃんの生配信は ネットで想像以上にバズってたらしくて 私たちの手伝ったチームに 入りたいっていう子が殺到!
  2583. 粟根 こころ: チームの今後は心配なさそうだけど まさらの後輩は、水泳部との両立に 悩んじゃってるみたい
  2584. 粟根 こころ: そして、私たちのコーチは…
  2585. 空穂 夏希: …見てください! 野球雑誌のこの記事!
  2586. 粟根 こころ: わ、コーチの写真!
  2587. 空穂 夏希: はい、現役復帰と入団発表の話が こんなに大きく!
  2588. 加賀見 まさら: よかったわね
  2589. 空穂 夏希: なんか、熱いですよね! 私も本気出してみようかな…?
  2590. 粟根 こころ: えっ? 夏希も野球を再開するの?
  2591. 空穂 夏希: あはは、じゃなくて チアリーディングの方ですよ!
  2592. 空穂 夏希: 私、感動したんです
  2593. 空穂 夏希: 誰かの熱意が誰かに伝わって 人を動かすこともあるんだ、って
  2594. 空穂 夏希: それって、応援にも 通じることかもと思って!
  2595. 粟根 こころ: 誰かの熱意が誰かを動かす…
  2596. 加賀見 まさら: …!
  2597. 粟根 こころ: …うん、そうだね それって絶対にあるよ!
  2598. 加賀見 まさら: …………
  2599. 加賀見 まさら: どうして私の方を見て言うの?
  2600.  
  2601. 517037-37_KaCgt [Mizuna Girls' School branch (Ria & Mayu)]
  2602. 梢 麻友: 水名女学園 夏の名物…臨海学校
  2603. 梢 麻友: 自由参加ですが 毎年多くの方が参加します
  2604. 梢 麻友: そして、あの恐ろしい“事件”が起きたのは その臨海学校初日のことでした…
  2605. 史乃 沙優希: あっ…! 来たみたいですぅ~!
  2606. 阿見 莉愛: 麻友さん、遅いわよ!
  2607. 梢 麻友: すみません… 準備に手間取ってしまって…
  2608. 阿見 莉愛: 麻友さんも来たし 思いっきり遊びますわよ~!
  2609. 史乃 沙優希: おーっ!ですぅ~!
  2610. 月夜: …お邪魔しているようで 申し訳ないでございます…
  2611. 阿見 莉愛: 固いこと言わないでくださる?
  2612. 梢 麻友: せっかく同じ班なんですから 一緒に楽しみましょう
  2613. 梢 麻友: この日 高等部の生徒は班ごとに自由時間を満喫し…
  2614. 若菜 つむぎ: …はぁ さなも来れたらよかったのに…
  2615. 胡桃 まなか: 仕方ありませんよ
  2616. 胡桃 まなか: みかづき荘のみなさんと 出かける予定があるんですから
  2617. 胡桃 まなか: それより、準備に集中しないと まだ終わってないんですよね?
  2618. 若菜 つむぎ: …うん、まなかは自分の分、 もう終わったの?
  2619. 胡桃 まなか: はい! これから報告に行くところです
  2620. 七瀬 ゆきか: 作業が終わったら生徒会まで ご連絡をお願いしますっ
  2621. 梢 麻友: 中等部の子たちは ゆきかちゃんたち高等部の生徒会と一緒に 夜に行うキャンプファイアの準備をしていました
  2622. あの…スイカがひとつ 足りないみたいなんですが…
  2623. 七瀬 ゆきか: えっ?取りに行ってくれる人を 探さないとっ…!
  2624. オバケ…! オバケが出ました…!?
  2625. 七瀬 ゆきか: オバケの対処って 生徒会の仕事なんでしょうか…?
  2626. 梢 麻友: キャンプファイアの後片付けは 明日、高等部の生徒で行うので
  2627. 梢 麻友: たくさん遊べる今日のうちに 海を楽しんでおこうと思っていました
  2628. 梢 麻友: それっ…!
  2629. 月夜: きゃっ!
  2630. 月夜: ふふっ、冷たいでございます…!
  2631. 史乃 沙優希: わわっ!
  2632. 史乃 沙優希: 沙優希だって負けませんよぉ~!
  2633. 阿見 莉愛: ふふんっ♪ 甘いわねっ!
  2634. 阿見 莉愛: …ふぅ、そろそろ日焼け止めを 塗り直さないと…
  2635. 阿見 莉愛: さっき終わっちゃったから 部屋から予備を取ってくるわ
  2636. 月夜: 実は、 参加するか迷っていたのですが…
  2637. 月夜: 来てよかったでございます
  2638. 史乃 沙優希: とぉ~っても 楽しいですよねぇ~!
  2639. 梢 麻友: 今夜はキャンプファイア、 明日はスイカ割り大会と
  2640. 梢 麻友: まだまだ楽しいことが たくさんありますから
  2641. 梢 麻友: 一緒に楽しみましょうね…!
  2642. 月夜: はい…!
  2643. 史乃 沙優希: …スイカ…割り…?
  2644. 史乃 沙優希: ――っ!?
  2645. 史乃 沙優希: ちょ、ちょっと 気になることがあるので
  2646. 史乃 沙優希: 沙優希、失礼しますぅ~!
  2647. 月夜: えっ…? 何かあったでございますか…?
  2648. 梢 麻友: さ、さぁ…? 忘れ物でしょうか…?
  2649. 梢 麻友: …えっと 私たちはどうしましょう?
  2650. 月夜: 少し泳ぎ疲れたので、海の家で 一休みしたいでございます
  2651. 梢 麻友: いいですね 私も喉が渇いていたんです
  2652. 梢 麻友: あっ、でも誰もいないと 戻って来た莉愛ちゃんが困るかな
  2653. 月夜: …確かに それは申し訳ないでございます
  2654. 梢 麻友: 私、莉愛ちゃんを 迎えに行ってきますね
  2655. 月夜: では、私は先に海の家に行って 席を取っているでございます
  2656. ドサッ
  2657. 梢 麻友: 「…ん?今のは…?」
  2658. …………
  2659. 梢 麻友: 「莉愛ちゃん、いますか…?」
  2660. 梢 麻友: ―麻友― …………えっ…?
  2661. 梢 麻友: ―麻友― 莉愛、ちゃん…?
  2662. 梢 麻友: ―麻友― う、そ… …そ、そんな…そんなぁ…
  2663. 梢 麻友: ―麻友― い、いやぁああああああああっ…!!
  2664.  
  2665. 517038-38_KaCgt
  2666. 梢 麻友: ―麻友― い、いやぁああああああああっ…!!
  2667. 史乃 沙優希: 麻友ちゃん…!?
  2668. 竜城 明日香: 今の悲鳴は…! ご無事ですか!?
  2669. 沙優希&明日香: ――っ!?
  2670. 沙優希&明日香: …………
  2671. 若菜 つむぎ: 何かあったの…?
  2672. みんな: ――っ!?
  2673. みんな: …………
  2674. 梢 麻友: 莉愛ちゃんが… 莉愛ちゃんが…死ん…
  2675. 莉愛の声: …うぅ…………
  2676. 胡桃 まなか: …死んではいない、みたいですね
  2677. 七瀬 ゆきか: …まずは阿見センパイを 保健の先生に診せません…?
  2678. 七瀬 ゆきか: スヤスヤ眠っています… 保健の先生は
  2679. 七瀬 ゆきか: おそらく頭を打って 気を失ったんじゃないか
  2680. 七瀬 ゆきか: …っておっしゃってました
  2681. 梢 麻友: …私、莉愛ちゃんをこんな目に あわせた人が許せません…
  2682. 梢 麻友: 必ず犯人を見つけてみせます…!
  2683. 竜城 明日香: その必要はありません!
  2684. 梢 麻友: …えっ?
  2685. 竜城 明日香: なぜなら犯人は…
  2686. 竜城 明日香: 私だからです!
  2687. 梢 麻友: …明日香ちゃんが 莉愛ちゃんを襲ったんですか…?
  2688. 竜城 明日香: 正確には、そこに落ちている 木刀…“名刀瓜切”が、です!
  2689. 竜城 明日香: えいっ! やぁ!とうっ!
  2690. 竜城 明日香: スイカ割り大会に備えて 素振りをしていたのですが…
  2691. 竜城 明日香: 手からすっぽ抜けて 飛んで行ってしまったんです…
  2692. 竜城 明日香: そして、その直後に 麻友先輩の悲鳴が聞こえました
  2693. 梢 麻友: ―麻友― 木刀が落ちていたのは そういうわけだったんですね…
  2694. 竜城 明日香: その木刀が莉愛先輩に ぶつかってしまったようです…
  2695. 梢 麻友: …………
  2696. 史乃 沙優希: ま、待ってくださ~い…!
  2697. 史乃 沙優希: それなら沙優希だってぇ 犯人ですぅ~!
  2698. 史乃 沙優希: その木刀はぁ… 沙優希のなんですぅ~…
  2699. 梢 麻友: …そうなんですか?
  2700. 竜城 明日香: スイカ割り大会のために お借りしました
  2701. 史乃 沙優希: そして…そのですねぇ~…
  2702. 史乃 沙優希: 実は、その木刀 “名刀瓜切”ではなくぅ…
  2703. 史乃 沙優希: 呪われた木刀 “妖刀西瓜割”だったんですぅ…
  2704. 梢 麻友: 呪われた…?
  2705. 史乃 沙優希: 持ち主の望まないものを 叩き割ってしまう
  2706. 史乃 沙優希: 呪われた木刀ですぅ…
  2707. 史乃 沙優希: スイカ割り大会の話が出たとき
  2708. 史乃 沙優希: 間違えて持って来てしまったかも って思ってぇ…
  2709. 史乃 沙優希: あれが妖刀だとしたらぁ… 回収せねばぁ~!
  2710. 竜城 明日香: えいっ! やぁ!とうっ!
  2711. 史乃 沙優希: 明日香ちゃ~ん…!! 大変ですぅ~!
  2712. 竜城 明日香: ――っ!?
  2713. スポーンッーー…
  2714. 史乃 沙優希: …あのとき、焦った沙優希が 声をかけたせいでぇ…
  2715. 史乃 沙優希: 呪いが発動したんですぅ~…
  2716. 竜城 明日香: それは違います!
  2717. 竜城 明日香: そこで手を滑らせたのは 私の未熟ゆえ…!
  2718. 七瀬 ゆきか: …………
  2719. 七瀬 ゆきか: あの…元はと言えば 多分わたしのせいだと思います
  2720. 七瀬 ゆきか: 全部わたしのトラブル体質が 引き起こした事故かと…
  2721. 梢 麻友: 落ち着いてください…! みなさんは犯人ではありません
  2722. みんな: …えっ?
  2723. 梢 麻友: まず、ゆきかちゃんですが
  2724. 梢 麻友: いつものパターンと ちょっと違う気がしませんか…?
  2725. 七瀬 ゆきか: …………
  2726. 七瀬 ゆきか: 言われてみると… いつもの面倒事なら
  2727. 七瀬 ゆきか: 今ごろはわたし自身が スリリングな目に遭ってるはず…
  2728. 梢 麻友: …やっぱりそうですよね だから違う気がするんです
  2729. 梢 麻友: それから、明日香ちゃんと 沙優希ちゃんの木刀ですが…
  2730. 梢 麻友: 莉愛ちゃんを襲ったのは 木刀ではないと思うんです…
  2731. 竜城 明日香: ですが、木刀はここに…
  2732. 梢 麻友: 木刀みたいに固いものが 飛んできて当たったのなら
  2733. 梢 麻友: 打撲の痕が はっきり残ると思うんです
  2734. 竜城 明日香: …確かに「頭を打ったかも?」 とは言われましたが…
  2735. 竜城 明日香: 木刀が直撃したら もっと痛そうな痕が残るはず…
  2736. 胡桃 まなか: なるほど、梢先輩 まるで名探偵みたいですね…!
  2737. 梢 麻友: や、やめてください…
  2738. 梢 麻友: えっと…ともかくですね…
  2739. 梢 麻友: 木刀は“凶器”ではないと 思うんです…
  2740. 胡桃 まなか: だから、史乃先輩たちは 犯人ではないということですか
  2741. 史乃 沙優希: おおっ!沙優希犯人じゃなかった みたいですぅ~!
  2742. 史乃 沙優希: …はれぇ? ではぁ、誰が犯人ですぅ…?
  2743. 梢 麻友: …そうですね 考えたくないことですけど
  2744. 梢 麻友: 魔法少女である莉愛ちゃんが
  2745. 梢 麻友: 気を失うほどの力で 殴られたんだとすると…
  2746. 梢 麻友: 犯人は同じ魔法少女 …ということも…
  2747. 史乃 沙優希: そ、そんなぁ…!
  2748.  
  2749. 517039-39_KaCgt
  2750. 竜城 明日香: この部屋にいたのは、莉愛先輩 だけだったんでしょうか?
  2751. 梢 麻友: はい…同室の4人で 浜辺へ遊びに行ったんですけど…
  2752. 梢 麻友: 莉愛ちゃんは日焼け止めを取りに 部屋に戻っていたんです
  2753. 七瀬 ゆきか: 確かここって… 梢センパイたちの部屋でしたね
  2754. 史乃 沙優希: 沙優希と麻友ちゃん、月夜ちゃん あみめさんのお部屋ですぅ~…
  2755. 梢 麻友: この部屋に、他の魔法少女が 来た可能性は…
  2756. 若菜 つむぎ: …………
  2757. チラッ…
  2758. 胡桃 まなか: …………
  2759. チラッ…
  2760. 梢 麻友: まなかちゃんとつむぎちゃん
  2761. 梢 麻友: お互いを気にしているようですが 何か心当たりがあるんですか…?
  2762. つむぎ&まなか: …………
  2763. 若菜 つむぎ: まなか、自首して!
  2764. 胡桃 まなか: えっ!? 自首するのはつむぎさんでは!?
  2765. 若菜 つむぎ: …私? なんで?
  2766. 竜城 明日香: おふたりとも 何か…隠してます?
  2767. 梢 麻友: よかったら、 話してください…
  2768. 若菜 つむぎ: …………えっとね…
  2769. 若菜 つむぎ: あっ、まなかと莉愛先輩だ! 何してるんだろー?
  2770. 胡桃 まなか: はぁ…また調子に乗って!
  2771. 胡桃 まなか: スイカのカドに頭でも ぶつければいいんです
  2772. 若菜 つむぎ: …って言ってるのを 聞いちゃったし…
  2773. 若菜 つむぎ: そのあと、まなかがスイカを 運んでるのを見たから…
  2774. 史乃 沙優希: ええぇ…ほ、本当ですかぁ!? このスイカであみめさんを…
  2775. 胡桃 まなか: いつもの軽口ですってば 本気でやるわけないでしょう?
  2776. 胡桃 まなか: まなかは割れたスイカを見て つむぎさんを疑いましたよ…
  2777. 若菜 つむぎ: わーい!スイカ拾っちゃった! いただきまーす!
  2778. 阿見 莉愛: ちょっとそのスイカどうしたの? まさか盗んで…
  2779. 若菜 つむぎ: ち、違うんです…!
  2780. 胡桃 まなか: …食い意地の張ったつむぎさんが そんな感じで
  2781. 胡桃 まなか: 口封じのために やっちゃったのかと…
  2782. 若菜 つむぎ: ヒドイっ!
  2783. 若菜 つむぎ: ただの想像じゃん! スイカを持ってたのはまなかだし
  2784. 竜城 明日香: どちらの言い分も 証拠がないんですよね…
  2785. 梢 麻友: う~ん、ふたりがその時間
  2786. 梢 麻友: ここにいなかったって 証明できるといいんですけど…
  2787. 史乃 沙優希: 犯行時刻のアリバイって やつでしょうかぁ~?
  2788. 梢 麻友: はい、そうです
  2789. 梢 麻友: 実はさっき、 言いそびれちゃったんですけど…
  2790. 梢 麻友: 犯行時刻はかなり絞り込めます
  2791. 梢 麻友: 私が部屋に入る直前に 莉愛ちゃんが倒れる音がしたので
  2792. ドサッ
  2793. 梢 麻友: 「…ん?今のは…?」
  2794. 竜城 明日香: つまり、麻友先輩が悲鳴をあげた 直前に犯行が行われたと…!
  2795. 七瀬 ゆきか: あの…でしたら、わたしが
  2796. 七瀬 ゆきか: まなかちゃんとつむぎちゃんの アリバイを証明できますっ
  2797. 七瀬 ゆきか: 梢センパイの悲鳴が聞こえたとき ふたりはわたしと一緒でしたっ
  2798. 梢 麻友: 一緒…? 何をしていたんですか…?
  2799. 七瀬 ゆきか: えっと…生徒会の仕事です 詳しく後で話しますけど…
  2800. 胡桃 まなか: あっ、そうですよ! 3人一緒に悲鳴を聞いてます
  2801. 若菜 つむぎ: 麻友先輩は、悲鳴をあげる直前に
  2802. 若菜 つむぎ: 莉愛先輩が倒れた物音を 聞いてるんだから…
  2803. 胡桃 まなか: そうです…! まなかたちに犯行は不可能です!
  2804. 梢 麻友: …確かにそれなら、莉愛ちゃんを 襲うことはできないですね…
  2805. 若菜 つむぎ: よかったね、まなか! 疑いが晴れたよっ…!
  2806. 胡桃 まなか: そもそもつむぎさんが 変なことを言い出したからでは?
  2807. 若菜 つむぎ: うっ…でも、まなかだって 挙動不審だったじゃん
  2808. 梢 麻友: …うーん、そうなると この割れたスイカはどこから…?
  2809. 七瀬 ゆきか: あっ…えっと その話なんですが…!
  2810. 胡桃 まなか: 「まなかは七瀬先輩に頼まれて スイカ割り用のスイカを運んでいたんです その途中でつむぎさんを見かけて…」
  2811. 若菜 つむぎ: お腹空いて動けない~…
  2812. 若菜 つむぎ: 「って、へばってた私を手伝って キャンプファイア用の薪を 一緒に運んでくれたんだよねっ!」
  2813. 胡桃 まなか: 「そのときに、運んでいたスイカを いったん近くにあったベンチに置いたんです…」
  2814. 若菜 つむぎ: 「それから薪運びが終わって ゆきか先輩に報告していたときに 麻友先輩の悲鳴を聞いたんだよ」
  2815. 胡桃 まなか: 「…で、スイカなんですが ベンチに置いたことを忘れてそのままに…」
  2816. 梢 麻友: スイカを運んでと頼んだのは ゆきかちゃんだったんですか?
  2817. 七瀬 ゆきか: はい…ひとつ足りないと 生徒会に報告があったので…
  2818. あの…スイカがひとつ 足りないみたいなんですが…
  2819. 七瀬 ゆきか: えっ?取りに行ってくれる人を 探さないとっ…!
  2820. 梢 麻友: なるほど…ここにあったのは
  2821. 梢 麻友: まなかちゃんが置き忘れた スイカだったんですね
  2822. 胡桃 まなか: この特徴的なしま模様は 間違いありません…
  2823. 七瀬 ゆきか: 申し訳ございませんっ わたしもすぐに気づいたんですが
  2824. 七瀬 ゆきか: 誰がここに運んだのか 見当がつかなくて
  2825. 七瀬 ゆきか: ぐるぐると考えているうちに 言いそびれてしまいました…
  2826. 梢 麻友: …様子がおかしかったのは そのせいだったんですね
  2827. 史乃 沙優希: ではぁ…結局ベンチから部屋に スイカを運んだのはぁ…?
  2828. 胡桃 まなか: …阿見先輩が拾って 食べようとしていたのでは?
  2829. 胡桃 まなか: そこを誰かに成敗されたとか
  2830. 梢 麻友: そんなことはありえません! 莉愛ちゃんが拾い食いなんて…!
  2831. 竜城 明日香: …ところで、さきほどから 気になっているんですが
  2832. 竜城 明日香: 月夜先輩は…どこに?
  2833. 七瀬 ゆきか: 梢センパイと 同じ部屋のはずですよね?
  2834. 梢 麻友: ――っ!?
  2835. 梢 麻友: いけない…! 海の家で待たせていました…!
  2836. 胡桃 まなか: スイカを置いたベンチも 海の家の近くですが…
  2837. 胡桃 まなか: 犯人は魔法少女…いや、まさか 明槻先輩にかぎって…
  2838. 梢 麻友: まずは海の家に行きましょう ベンチの様子も確かめたいです…
  2839.  
  2840. 517040-40_KaCgt
  2841. 胡桃 まなか: …スイカを置いたベンチは ここなんですが…
  2842. 月夜: う、う~ん…う~ん…
  2843. 梢 麻友: 月夜ちゃんがうなされながら 寝ています…!
  2844. 胡桃 まなか: …というか、気絶したところを 誰かが寝かせたのでは?
  2845. 史乃 沙優希: はわわわ…あみめさんに続いて ふたりめの犠牲者がぁ…!?
  2846. 梢 麻友: いえ、この様子…何か 怖いものでも見たんでしょうか?
  2847. 七瀬 ゆきか: …オバケかもしれませんっ
  2848. 竜城 明日香: オ、オバケ…?
  2849. 七瀬 ゆきか: この辺りでオバケを見たと
  2850. 七瀬 ゆきか: 中等部の方から 生徒会に報告があったんです…
  2851. オバケ…! オバケが出ました…!?
  2852. 七瀬 ゆきか: オバケの対処って 生徒会の仕事なんでしょうか…?
  2853. 月夜: …うぅ…………はっ!
  2854. 梢 麻友: 目が覚めました…? 一体何があったんですか…?
  2855. 月夜: オ、オバケが 出たでございます…!!
  2856. 梢 麻友: えっ…!? まさか本当に…?
  2857. ???の声: あっ、気がついたのね
  2858. 月夜: ――っ!?
  2859. 月夜: また出たでございます…!?
  2860. バタンッ…!
  2861. 史乃 沙優希: 月夜ちゃんがまたベンチに 倒れちゃいましたぁ~…!
  2862. 竜城 明日香: おのれオバケ! 仇を討ちます…!
  2863. 矢宵 かのこ: ちょっと待って! 私よ、私!
  2864. 梢 麻友: あっ、かのこちゃん…
  2865. 月夜: う~ん…う~ん… キノコのオバケでございます~…
  2866. 若菜 つむぎ: つまり… オバケの正体はかのこ先輩で
  2867. 竜城 明日香: 倒れた月夜先輩のために
  2868. 竜城 明日香: 飲み物を取りに行って 戻って来たところだったと…
  2869. 矢宵 かのこ: …そうだけど オバケはヒドくないかしら?
  2870. 月夜: まさか、水着だとは思わず…
  2871. 月夜: お騒がせして 申し訳ないでございます…
  2872. 胡桃 まなか: というか、それ水着だけど 泳げないんですよね?
  2873. 矢宵 かのこ: ふっふっふ… 実はあれから改良を重ねて…
  2874. 胡桃 まなか: あっ、すみません 今はそれどころじゃないので
  2875. 七瀬 ゆきか: ともあれ オバケ騒動は解決ですね…
  2876. 史乃 沙優希: …ところで麻友ちゃんは 何をしているんですかぁ~…?
  2877. 梢 麻友: …ベンチを調べていました
  2878. 史乃 沙優希: ベンチをぉ~…?
  2879. 梢 麻友: 月夜ちゃん 確認しておきたいのですが…
  2880. 梢 麻友: ベンチにスイカは 置いてありましたか…?
  2881. 月夜: スイカ、でございますか…?
  2882. 月夜: …衝撃的な出会いがあったので 記憶が少々曖昧でございますが…
  2883. 月夜: あった気がするでございます
  2884. 梢 麻友: あったんですね…
  2885. 月夜: …あれ、でも今は スイカがないでございます…?
  2886. 梢 麻友: …ふぅ すべての謎は解けました
  2887. 梢 麻友: 莉愛ちゃんをあんな目に遭わせた 凶器はスイカです…!
  2888.  
  2889. 517041-41_KaCgt
  2890. 梢 麻友: …ふぅ すべての謎は解けました
  2891. 梢 麻友: 莉愛ちゃんをあんな目に遭わせた 凶器はスイカです…!
  2892. 月夜: どういうことでしょう…?
  2893. 梢 麻友: 念のため 確認したいことがあります
  2894. 梢 麻友: かのこちゃん
  2895. 梢 麻友: 月夜ちゃんが倒れた直後に 私の悲鳴を聞きませんでしたか?
  2896. 矢宵 かのこ: 悲鳴…聞いたわね あれって、あなたの声だったんだ
  2897. 梢 麻友: ありがとうございます
  2898. 梢 麻友: では、この事件の謎を 解いていこうと思います…
  2899. 梢 麻友: 『日焼け止めを取りに部屋に戻った莉愛ちゃんは なんらかの理由で窓を開けました 少し暑かったのかもしれません…』
  2900. 梢 麻友: 『そのとき…』
  2901. 梢 麻友: ドサッ
  2902. 梢 麻友: 『窓の外から飛んできたスイカが額に当たって 莉愛ちゃんは気を失いました』
  2903. 梢 麻友: 『その直後…わずかな差で 木刀が飛んで来て… 莉愛ちゃんを襲ったスイカに命中 真っぷたつにしました』
  2904. 梢 麻友: ―麻友― …そして、私が発見した この光景ができあがったんです…
  2905. …………
  2906. 胡桃 まなか: …どうやってスイカが 飛んできたんですか…?
  2907. 梢 麻友: えっと…スイカが飛んできた 原因はですね…
  2908. 梢 麻友: 『莉愛ちゃんを襲ったスイカは… ゆきかちゃんに頼まれたまなかちゃんが 運んでいる途中で…』
  2909. 梢 麻友: 『行き倒れていたつむぎちゃんを助けるために ベンチに置き忘れてしまったものです』
  2910. 梢 麻友: ただ、 置いた場所が悪かったんです…
  2911. 梢 麻友: 見てください
  2912. ギィー…
  2913. 胡桃 まなか: このベンチ…まるで シーソーみたいに動きますね!
  2914. 梢 麻友: 古くなって壊れていたようです…
  2915. 若菜 つむぎ: さっきはこれを調べていたんだ…
  2916. 月夜: ま、まさか…
  2917. 梢 麻友: おそらく月夜ちゃんが 考えている通りです…
  2918. 梢 麻友: 『スイカが置いてあるベンチに…』
  2919. 梢 麻友: 『かのこちゃんに驚いた 月夜ちゃんが倒れ込んだことで てこの原理で、スイカが飛ばされたんです…』
  2920. 梢 麻友: …そして、莉愛ちゃんのところへ 飛んでいきました…
  2921. 矢宵 かのこ: うそ… そんなことが…
  2922. 梢 麻友: おそらく、間違いありません…
  2923. 梢 麻友: 次は、木刀についてですが… これはすでに判明済みです
  2924. 梢 麻友: 『明日香ちゃんが スイカ割り大会に備えて 素振りをしていたところ…』
  2925. 梢 麻友: 『木刀を間違えた可能性に気づいて 慌てて回収にきた沙優希ちゃんに 声をかけられて驚いてしまい…』
  2926. 梢 麻友: 『手からすり抜けて飛んでいき 莉愛ちゃんを襲ったスイカを割ったんです』
  2927. 梢 麻友: …これが真相だと思います
  2928. 史乃 沙優希: な、なるほどぉ~…! 辻褄が合いますぅ~…!
  2929. 胡桃 まなか: …いや、そんな奇跡的な偶然って あるんですか…?
  2930. 七瀬 ゆきか: でも、ベンチの向きを考えると あの窓に向かって飛びそうですね
  2931. 月夜: …私が 倒れたせいだったでございますね
  2932. 矢宵 かのこ: で、その推理が正しいとして 確かめる方法は…?
  2933. 竜城 明日香: …本人に聞く、とかでしょうか?
  2934. 梢 麻友: あっ、そうですよね…!
  2935. 梢 麻友: 被害者である莉愛ちゃんに 聞けばいいんです
  2936. 胡桃 まなか: …というか、最初から そうすべきだったのでは…?
  2937. 阿見 莉愛: …そうよ 麻友さんの推理の通り…
  2938. 阿見 莉愛: 窓の外からスイカと木刀が 飛んできて…
  2939. 阿見 莉愛: スイカが私に当たったの…
  2940. 阿見 莉愛: 意識を失う直前
  2941. 阿見 莉愛: 真っぷたつに 割れたスイカを見たわ
  2942. 史乃 沙優希: 麻友ちゃんの推理 正解でしたねぇ~…!
  2943. 七瀬 ゆきか: この場合、 犯人は誰になるんでしょう…?
  2944. …………
  2945. 梢 麻友: …犯人は、 いないんじゃないでしょうか?
  2946. 七瀬 ゆきか: えっ…?
  2947. 梢 麻友: 今回のことは
  2948. 梢 麻友: 誰かひとりでも欠けたら 起こらなかったはずです…
  2949. 梢 麻友: つまりは、偶然が起こした 不幸な事故…だと思います
  2950. 阿見 莉愛: そうね 麻友さんの言う通りだわ
  2951. 阿見 莉愛: だいたい、木刀は 私には当たってないんだし
  2952. 阿見 莉愛: スイカが飛んできたおかげで 木刀を回避できたわけだから
  2953. 阿見 莉愛: むしろ感謝すべきかもね!
  2954. 梢 麻友: 莉愛ちゃん…
  2955. 梢 麻友: …あっ、すみません ひとつ謎が残ってました
  2956. 梢 麻友: 莉愛ちゃんが、どうして 部屋の窓を開けたか、です…
  2957. 阿見 莉愛: 窓を…開けた?
  2958. 阿見 莉愛: 私は開けてないわよ
  2959. 阿見 莉愛: 誰かが窓を閉め忘れてたから 窓を閉めようとしていたの
  2960. 梢 麻友: …えっ…………
  2961. 史乃 沙優希: えっとぉ… 最後に部屋を出たのってぇ…
  2962. 史乃 沙優希: あっ…! 来たみたいですぅ~!
  2963. 阿見 莉愛: 麻友さん、遅いわよ!
  2964. 梢 麻友: すみません… 準備に手間取ってしまって…
  2965. 梢 麻友: 私、ですね… たぶん…窓を閉め忘れたのも…
  2966. 阿見 莉愛: …麻友さんっ!!
  2967. 梢 麻友: はわわわ… す、すみませ~ん…!!
  2968. 梢 麻友: こうしてこの不幸な事故は… みんながみんな悪かったということで みんなで莉愛ちゃんに謝って終わりました
  2969. 阿見 莉愛: …というか
  2970. 阿見 莉愛: せっかくの新しい水着なのに 活躍の機会がなかったわよ!?
  2971. 阿見 莉愛: ほとんど 気を失っていただけじゃない!!
  2972.  
  2973. 517042-42_KaCgt [Kamihama Daito Housing Complex branch (Mito, Reira/Leila, Seika)]
  2974. 伊吹 れいら: 私たちが住む神浜大東団地では 自治会のバックアップのもとで 夏休みに子どもたちが主体となって執り行う 恒例のイベントがあるの
  2975. 伊吹 れいら: そのイベントの、今回の催し物は…
  2976. 相野 みと: 聞いたよ!
  2977. 相野 みと: 今回は「流しそうめん」を やるんだって!?
  2978. 伊吹 れいら: え… もう知ってるの!?
  2979. 相野 みと: えへへ~! 元住民だからね!
  2980. 桑水 せいか: …私とれいらが 実行委員をやることになったの
  2981. 相野 みと: へぇ~ そうなんだ!
  2982. 伊吹 れいら: だから、よかったら遊びに…
  2983. 相野 みと: 私もやる!!
  2984. 伊吹 れいら: え…えぇっ!?
  2985. 伊吹 れいら: それって、実行委員を 一緒にやるってこと…?
  2986. 相野 みと: そんな楽しそうなイベント 参加するしかないでしょ!
  2987. 相野 みと: 私も仲間に入れて!
  2988. 桑水 せいか: で、でも…話し合いのたびに ここまで来るのは大変じゃ…
  2989. 相野 みと: 全然へっちゃらだよ!
  2990. 相野 みと: せっかくの夏休みだし、少しでも れいらたちと一緒にいたい!
  2991. 桑水 せいか: みと…
  2992. 伊吹 れいら: そっか…
  2993. 伊吹 れいら: 私たちは3人でひとりみたいな ものだもんね…
  2994. 伊吹 れいら: それじゃ、 みとも一緒に手伝ってくれる?
  2995. 相野 みと: うん! もちろんだよ
  2996. ぐすっ…ぐすっ…
  2997. 相野 みと: あれ…?
  2998. ぐすっ…ぐすっ…
  2999. 相野 みと: ねぇ!泣いてる 女の子たちがいるよ?
  3000. 伊吹 れいら: どうしたんだろう…? ちょっと行ってみよう
  3001. 伊吹 れいら: どうしたの?
  3002. あのね…あーちゃんが お引越ししちゃうの…
  3003. …遠い外国へ…
  3004. 伊吹 れいら: …?
  3005. 伊吹 れいら: 詳しく話を聞くと この子たちは団地で育った仲良し3人組…
  3006. 伊吹 れいら: でもこの夏、そのうちのひとり“あーちゃん”が 家族と一緒に外国へ引っ越してしまうようで…
  3007. 伊吹 れいら: …なんだか、ちょっと前の 私たちみたいだね…
  3008. 桑水 せいか: …だけど、外国へ引っ越すなら そう簡単に会えないよね…
  3009. 伊吹 れいら: そっか…それだと みとのときより深刻なのかも…
  3010. 相野 みと: 可哀想だよー! なんとかしてあげたい!
  3011. 伊吹 れいら: うーん…引っ越しは さすがに止められないし
  3012. 伊吹 れいら: でも、他に何かできることは… …そうだ…!
  3013. 伊吹 れいら: ねぇ、あーちゃんは いつお引越しするの?
  3014. あーちゃん: …2週間後ってママが…
  3015. 伊吹 れいら: それなら、流しそうめんの イベントには参加できそうだね!
  3016. 流しそうめん…?
  3017. それって… 夏休みイベントの話?
  3018. 伊吹 れいら: うん、私たちが実行委員なんだ
  3019. 伊吹 れいら: みんなでワイワイしながら食べる そうめんは絶対に美味しいよ
  3020. 伊吹 れいら: そこで、離ればなれになっても 忘れられないような
  3021. 伊吹 れいら: 素敵な思い出を たっくさん作ろうよ!
  3022. 相野 みと: あっ! そういうことかー!
  3023. 相野 みと: それなら 絶対に参加した方がいいよ!
  3024. 相野 みと: 私たちがとびっきり楽しい イベントにするから~!
  3025. 伊吹 れいら: ねっ! せいかもそう思うでしょ?
  3026. 桑水 せいか: う、うん…楽しい思い出は つらいとき心の支えになるから…
  3027. えっと… お姉ちゃん、怒ってるの…?
  3028. 桑水 せいか: …うっ…
  3029. 伊吹 れいら: だ、大丈夫! ちっとも怒ってないよ!
  3030. ふふっ… おもしろいお姉ちゃんたちだね
  3031. あーちゃん: 私…イベントに参加したい
  3032. あーちゃん: みんなとの思い出を 少しでも残したいから
  3033. …そうだよね
  3034. いいと思う! 私たちも同じ気持ちだもん
  3035. あーちゃん: うん、ありがとう…!
  3036. あーちゃん: お姉ちゃんたち イベント楽しみにしてるね!
  3037. 伊吹 れいら: もちろん、任せて!
  3038. 伊吹 れいら: こうして、あーちゃんたちの 思い出作りのための 一大プロジェクトがスタートした…
  3039. 伊吹 れいら: …だけど…
  3040. 伊吹 れいら: どうしよう… 全然いい案が思いつかない…
  3041. 伊吹 れいら: 外へ出れば、何かしら アイディアが浮かぶと思ったのに
  3042. 桑水 せいか: お笑いウルトラ流しそうめんは やっぱりダメ…?
  3043. 伊吹 れいら: 大喜利で爆笑を取らないと 食べられないってやつ?
  3044. 伊吹 れいら: 子どもたちには難しくないかな?
  3045. 相野 みと: 私も 食べられなくなっちゃうよー!
  3046. 桑水 せいか: そっか…残念…
  3047. ミーンミンミンミーン…
  3048. 相野 みと: ふぃ~… それにしても暑いー!
  3049. 相野 みと: そうだ、このあいだできた ウォーターパークへ行こうよ!
  3050. 伊吹 れいら: プール!? 今から!?
  3051. 相野 みと: だって、暑すぎて 何も思い浮かばないよ~
  3052. 相野 みと: ざばーん!って飛び込んで 頭冷やしたい~!
  3053. 伊吹 れいら: …まあ、この暑さだし 気持ちはわかるけど
  3054. 伊吹 れいら: あそこのウォータースライダー 結構、面白かったしね
  3055. 桑水 せいか: あれでそうめん流したら すごいスピードで流れてきそう…
  3056. 伊吹 れいら: …!! それ…面白いかも!
  3057.  
  3058. 517043-43_KaCgt
  3059. 伊吹 れいら: ウォータースライダー型の 流しそうめんって斬新じゃない?
  3060. 伊吹 れいら: 見た目が変わるだけでも だいぶ違うと思うんだ!
  3061. 相野 みと: うわぁ~! 楽しそうだし、涼しそー!
  3062. 桑水 せいか: 私たちはいいけど… あの子たちも楽しんでくれるかな
  3063. 伊吹 れいら: そうだね…
  3064. 伊吹 れいら: メインはあの子たちだし 直接聞いてみよっか!
  3065. ウォーター…
  3066. スライダー…
  3067. あーちゃん: 流しそうめん…?
  3068. 伊吹 れいら: どう…かな…?
  3069. みんな: おもしろそー!!
  3070. どんな風になるの!?
  3071. 相野 みと: えへへ、まだ秘密だよ!
  3072. 伊吹 れいら: とにかく、喜んでもらえそうで ほっとした!
  3073. 伊吹 れいら: 企画の方向性も決まったし より一層頑張らないと
  3074. 伊吹 れいら: こうして、私たちは自治会長さんと一緒に 設備設置の協力を 団地のお店へお願いをしに行くことになったの
  3075. <団地内・工務店>
  3076. ウォータースライダー型の 流しそうめん台を作れって!?
  3077. 伊吹 れいら: やっぱり難しいですか…?
  3078. そうだなぁ だいぶ工夫しないとだけど…
  3079. とは言っても、年に一度しかない 団地のビッグイベントだしな…
  3080. みとちゃんも 遠くから来てくれてるし
  3081. ここはなんとかしたいが…
  3082. おっ、そうだ 現場の足場を使えばいけるな!
  3083. よし、引き受けた!
  3084. 相野 みと: 本当!? おじさん、ありがとー!
  3085. 桑水 せいか: …緊張したけど なんとかなってよかった…
  3086. 自治会長: いつも悪いね、頼んだよ
  3087. 伊吹 れいら: さてと、お次は…
  3088. <団地内・水道事業店>
  3089. 今回は流しそうめんか! 風流でいいねぇ
  3090. もうそんな時期なんだなぁ
  3091. 伊吹 れいら: そうめん台の話を工務店さんに お願いしたんだけど
  3092. 伊吹 れいら: 水回りのことでおじさんの協力が 欲しいって言われて…
  3093. おう、任せときな!
  3094. ずっとここに住んでるオレには みんな家族同然だし
  3095. こんなときこそ協力しないとな
  3096. 工務店の親父とタッグを組んで とんでもねぇもん作ってやるから
  3097. 楽しみにしておきな!
  3098. 自治会長: 悪いね、助かるよ
  3099. なーに、いいってことよ 久々にみとちゃんにも会えたしな
  3100. 相野 みと: えへへ、ありがとう!
  3101. 相野 みと: これでイベントの準備は 整ったー!
  3102. 伊吹 れいら: みと、肝心なものを忘れてる!
  3103. 相野 みと: えっ? う~ん…なんだろう…
  3104. 相野 みと: わかんない!
  3105. 伊吹 れいら: それはね… 「そうめん」だよ!
  3106.  
  3107. 517044-44_KaCgt
  3108. 自治会長: さぁ、みんな…! 気合を入れて行こう!
  3109. 伊吹 れいら: え、気合を入れるって?
  3110. 伊吹 れいら: このあたりでは評判の 乾麺屋さんらしいですけど…
  3111. 伊吹 れいら: 味は保証つきだって お母さんも言ってましたし…
  3112. 自治会長: あー、行けばわかるよ…
  3113. 自治会長: こんにちは…
  3114. …なんの用だい?
  3115. 桑水 せいか: …!!
  3116. 相野 みと: な、なんだか 怖そうなおばあさん…
  3117. 伊吹 れいら: 実はこのお店、そうめんが 美味しいって評判なんだけど…
  3118. 伊吹 れいら: 店主が変わり者ということでも 評判らしいの…
  3119. 伊吹 れいら: 気に入らないと どんな客でも叩き出されるとか…
  3120. 桑水 せいか: わ…私じゃ 到底太刀打ちできる気がしない…
  3121. 伊吹 れいら: 私から話してみる!
  3122. うちのそうめんを ウォーターなんとかに…?
  3123. そんな得体の知れない催しに うちのそうめんは売れないね!
  3124. 相野 みと: ひゃあっ!?
  3125. 桑水 せいか: …え…あの… えっと…
  3126. 伊吹 れいら: あっ、でも… その、聞いてください
  3127. なんだい?
  3128. 伊吹 れいら: 確かにちょっと変わった イベントだと思うんですが…
  3129. 伊吹 れいら: 私、どうしても 成功させたいんです
  3130. 伊吹 れいら: 実は、このイベントを 楽しみにしてる
  3131. 伊吹 れいら: 小さな子たちがいて
  3132. 伊吹 れいら: その中に、もうすぐ 外国に行っちゃう子がいるんです
  3133. 伊吹 れいら: でも、イベントが盛り上がって
  3134. 伊吹 れいら: ここの美味しい麺を 楽しく味わうことができれば
  3135. 伊吹 れいら: いつまでも忘れられない 思い出になると思うんです
  3136. 伊吹 れいら: だから…今回だけでも 売っていただけませんか…?
  3137. …………
  3138. 伊吹 れいら: だ…だめですか…?
  3139. …若いのにしっかりしてるね いいこと言うじゃないか
  3140. 伊吹 れいら: へっ…?
  3141. そういうことなら いくらでも用意してやるよ
  3142. 自治会長: いや、たいしたものだよ なかなかの交渉力だ
  3143. 伊吹 れいら: いえいえ、おばあさんが話せば わかってくれる人でよかったです
  3144. 伊吹 れいら: こうして、設備や物品の交渉は ひととおり終わって…
  3145. スライダーは こんなもんでいいかい?
  3146. 伊吹 れいら: すごい! とってもいいと思います!
  3147. それじゃ、水回りの方も 進めておくね
  3148. 伊吹 れいら: よろしくお願いします!
  3149. 伊吹 れいら: イベント開催当日に向けて 着々と準備が進行していった…
  3150. お待たせ そうめんの納品にきたよ
  3151. 相野 みと: そうめんがいっぱい! 少しだけ味見したらダメ?
  3152. 伊吹 れいら: 味見って、今? そのまま食べたらお腹壊すよ!
  3153. あーちゃん: あっ…! そうめん台ができたんだ!
  3154. 伊吹 れいら: うん! 今日ようやく完成したの
  3155. 大きいー!
  3156. そうめん、どんな感じで 流れるんだろー?
  3157. 伊吹 れいら: ふふっ! それは当日のお楽しみだよ
  3158. ビュウゥゥウウ~
  3159. 桑水 せいか: …! …風…強いね
  3160. 伊吹 れいら: …そうだね
  3161. 伊吹 れいら: …そして… イベント2日前に事件が起きたの
  3162. 相野 みと: そ…そんな…!
  3163. 桑水 せいか: そうめん台が…
  3164. 伊吹 れいら: 壊れちゃった…!?
  3165.  
  3166. 517045-45_KaCgt
  3167. みんな: …………
  3168. 自治会長: 昨日の強風のせいだな…
  3169. 自治会長: 何かが飛んできて ぶつかったみたいだ
  3170. 相野 みと: ど、どうしよー!?
  3171. 伊吹 れいら: おじさんたち 一生懸命作ってくれたのに…
  3172. こればかりは仕方ねえが… 特注の部品が壊れちまってるな
  3173. 取り寄せるのにも時間がかかるし 開催日までに直すのは無理だな
  3174. 桑水 せいか: だったら、イベントを 延期にするとか…
  3175. 自治会長: 申し訳ないんだけど…
  3176. 自治会長: 今回は会場や人手の関係で 延期は無理なんだ
  3177. 伊吹 れいら: それに、あーちゃんも 参加できなくなっちゃうしね…
  3178. 相野 みと: それじゃあ、どうするの…?
  3179. 桑水 せいか: …………
  3180. 伊吹 れいら: どうしよう…
  3181. 伊吹 れいら: あの子たち すごく楽しみにしてたのに…
  3182. 自治会長: そうめんは届いてるし みんなで普通に食べるしか…
  3183. 相野 みと: 「普通にそうめんを食べる会」に 変更ってこと!?
  3184. 相野 みと: そんなのがっかりだよ~!!
  3185. 自治会長: 私もなんとかしてあげたいが…
  3186. 伊吹 れいら: あの…イベント内容の変更って 何時まで待ってもらえますか?
  3187. 自治会長: そうだなぁ…
  3188. 自治会長: 明日中に準備を終わらせる 必要があるから…
  3189. 自治会長: 企画を練り直すにしても 明日の12時ぐらいが限界かな
  3190. 伊吹 れいら: わかりました 私たちでもう1回考えてみます
  3191. 伊吹 れいら: みと、せいか
  3192. 伊吹 れいら: いったん解散して 後でアイディアを出しあわない?
  3193. 伊吹 れいら: 明日の朝までになんとか まとめられたら…!
  3194. せいか&みと: わかった…!
  3195. 伊吹 れいら: …どうしよう…
  3196. 伊吹 れいら: 全然新しいアイディアが 浮かばない…
  3197. 伊吹 れいら: …そうだ…! “あの人”に聞いてみよう!
  3198. 胡桃 まなか: …なるほど なかなか厳しい状況みたいですね
  3199. 伊吹 れいら: レシピの相談ってわけでもないし
  3200. 伊吹 れいら: まなか先生に聞く話じゃ なかったかも…
  3201. 胡桃 まなか: いえ、そうでもありません たとえばこんなのはどうでしょう
  3202. 胡桃 まなか: トマトやカレーのような 変わり種のおつゆや薬味が
  3203. 胡桃 まなか: よりどりみどりの アラカルトそうめん、とか?
  3204. 伊吹 れいら: あっ、いいかも…! さすが先生です!
  3205. 伊吹 れいら: そんな楽しそうな案が さっと出てくるなんて!
  3206. 胡桃 まなか: 外食は 誰にとっても特別な経験ですし
  3207. 胡桃 まなか: シェフの仕事というのは 調理や店の雰囲気づくり…
  3208. 胡桃 まなか: おもてなしの心まで含めて お客さんに楽しんでもらう
  3209. 胡桃 まなか: いわばエンターテインメントの ようなものですから!
  3210. 胡桃 まなか: ただ、アラカルトそうめんは 少し大人向けというか
  3211. 胡桃 まなか: 小さなお子さんには あまり刺さらない気もします
  3212. 胡桃 まなか: もう少し遊び心が欲しいかも
  3213. 伊吹 れいら: なるほど…遊び心…
  3214. 胡桃 まなか: その点、ウォータースライダーは いい発想だったと思うんですが
  3215. 伊吹 れいら: 私たち、 間違ってなかったんですね
  3216. 伊吹 れいら: (遊び心…遊び心… うーん…)
  3217. 伊吹 れいら: (何も解決策がないまま 夜になっちゃった…)
  3218. ~~♪~~♪
  3219. 伊吹 れいら: あっ…
  3220. ピッ
  3221. 伊吹 れいら: みと!せいか!
  3222. 相野 みと: 何か思いついた?
  3223. 伊吹 れいら: ううん、「子どもが楽しめる」と 「半日で準備」がネックで…
  3224. 伊吹 れいら: ふたりは?
  3225. 相野 みと: 私もだよ~
  3226. 桑水 せいか: 私も…
  3227. 伊吹 れいら: そっか…
  3228. 伊吹 れいら: まなか先生にもらった
  3229. 伊吹 れいら: アラカルトそうめんっていう 案があるから
  3230. 伊吹 れいら: 自治会長に話はしておくね
  3231. 伊吹 れいら: 明日の12時までに それ以上の案が出なかったら
  3232. 伊吹 れいら: それでいこうか…?
  3233. 桑水 せいか: …そうだね
  3234. 相野 みと: うん
  3235. <翌日>
  3236. 桑水 せいか: 無理…何も浮かばない…!
  3237. 相野 みと: もうすぐタイムリミットだよー!
  3238. 伊吹 れいら: アラカルトそうめんでいくなら すぐに準備を始めたいよね
  3239. 伊吹 れいら: これも間に合わないと…
  3240. 伊吹 れいら: 「普通にそうめんを食べる会」に なっちゃう!
  3241. 桑水 せいか: それだと味気なさ過ぎて そうめんの減りが悪いかも…
  3242. 相野 みと: もし余ったら、私たちで 全部食べるってことー?
  3243. 伊吹 れいら: 捨てるわけにもいかないし 最悪そうなるかもね…
  3244. 桑水 せいか: …わんこそば状態…
  3245. 伊吹 れいら: …え…?
  3246. 伊吹 れいら: 今、なんて言った? …わんこそば…?
  3247. 桑水 せいか: …うん…
  3248. 伊吹 れいら: それだよ!
  3249. 伊吹 れいら: 「わんこそうめん」大会! 盛り上がると思わない?
  3250. 伊吹 れいら: せいかの何気ないひと言から思いついた 「わんこそうめん」案… 無事、自治会長さんのOKももらえて 私たちは準備に駆けまわった
  3251. 伊吹 れいら: 「えっ…お椀が足りない?」
  3252. 伊吹 れいら: 「団地のみなさんに提供してもらいます!」
  3253. 相野 みと: はぁ…はぁ…
  3254. 相野 みと: お椀集めミッション すっごい大変だったー
  3255. 伊吹 れいら: ふたりともお疲れ様! おかげで数は揃えられたかな
  3256. 桑水 せいか: …そうだ… れいら、これ
  3257. 伊吹 れいら: ん…? 袋いっぱいに何かが入ってる…?
  3258. 桑水 せいか: お椀と一緒に もらっちゃって…
  3259. 相野 みと: あっ…おもちゃや かわいい雑貨が入ってる!
  3260. 桑水 せいか: 雑貨店のおじさんが イベントの話を聞いて
  3261. 桑水 せいか: 子どもたち向けの賞品に どうかな、って…
  3262. 相野 みと: いろいろあるよ!? これ、みんなにあげたいね!
  3263. 伊吹 れいら: そうだね… 勝った人だけじゃなくて
  3264. 伊吹 れいら: 子どもたちみんなが 楽しめるように…
  3265. 伊吹 れいら: (そう… もっと遊び心を…)
  3266. 伊吹 れいら: そうだ…!!
  3267. 伊吹 れいら: たくさん食べたかどうかを 競うんじゃなくて…
  3268. 伊吹 れいら: こうしたらどうかな…?
  3269.  
  3270. 517046-46_KaCgt
  3271. <イベント当日>
  3272. 伊吹 れいら: 「皆様、本日はお集まりいただき ありがとうございます!」
  3273. 伊吹 れいら: 「予定していた流しそうめんは 残念ながら中止になりましたが…」
  3274. 伊吹 れいら: 「代わりにみんなで楽しめる わんこそうめんイベントを開催いたします!」
  3275. 『わんこそうめん』…?
  3276. 何それ…?
  3277. あーちゃん: 私、わんこそばなら 知ってる!
  3278. あーちゃん: 次々とお椀におそばを入れて いっぱい食べた人が勝ちなやつ!
  3279. 相野 みと: そー、それのそうめん版! でも、勝ち負けはなし!
  3280. 桑水 せいか: …お、お椀の裏には
  3281. 桑水 せいか: 数字が書いてある シールが貼ってあって
  3282. 桑水 せいか: 獲得ポイントごとに プレゼントがもらえる…
  3283. 相野 みと: 楽しくいっぱい食べて プレゼントをゲットしよー!
  3284. へぇー、おもしろそう!
  3285. 何がもらえるのかな!
  3286. あーちゃん: わーい、楽しみ!
  3287. 相野 みと: みんな、わくわくしてるね!
  3288. 伊吹 れいら: 楽しみながら食べて さらにプレゼントももらえる…
  3289. 伊吹 れいら: まなか先生の言ってた “遊び心”は残せた、かも…!
  3290. 伊吹 れいら: その後、イベントは順調に進んで…
  3291. あっ… ポイントがたまった!
  3292. 相野 みと: おめでとう! はい、プレゼント!
  3293. わーい!
  3294. ぼくもたまったよ!
  3295. 伊吹 れいら: はいはい!今行きまーす!
  3296. オレも!
  3297. あたしも!
  3298. 桑水 せいか: せ、せわしない…!
  3299. 伊吹 れいら: 無事、終えることができた…
  3300. あーちゃん: おねえちゃん!
  3301. 伊吹 れいら: あーちゃんたち…! どうだった、今日のイベント?
  3302. とってもおもしろかった!
  3303. そうめんをこんなに楽しく 食べたのは初めて!
  3304. あーちゃん: 流しそうめんができなかったのは 残念だったけど…
  3305. あーちゃん: 今日のイベントで 大切な宝物ができたんだ
  3306. 伊吹 れいら: これは… プレゼントのヘアピンセット…
  3307. ちょうど3つあったから 3人で分けたんだ!
  3308. これがあれば、離れていても 寂しくないでしょ?
  3309. あーちゃん: うん…外国で寂しくなったら このヘアピンを見て…
  3310. あーちゃん: みんなのことを思い出すね
  3311. 伊吹 れいら: そっか…素敵な思い出と かけがえのない宝物ができたのね
  3312. あーちゃん: 今日のことは大人に なっても絶対に忘れない
  3313. あーちゃん: ありがとう…みんな… それにお姉ちゃんたちも…
  3314. あーちゃん…
  3315. ううう…ぐすっ…
  3316. 桑水 せいか: …なんだか… 私まで寂しくなって…うっ…
  3317. 相野 みと: 私たちもあーちゃんのこと 絶対に忘れないよ!
  3318. 伊吹 れいら: 次、日本に帰ってきたら また会おうね!
  3319. あーちゃん: うん… 本当にありがとう!
  3320. 伊吹 れいら: いろいろアクシデントもあって 大変なイベントだったけど 結果的には大成功!
  3321. 伊吹 れいら: 団地の夕焼けを眺めながら 私たちは心の中でお祈りした
  3322. 伊吹 れいら: たとえ遠く離れてしまっても 3人の友情がいつまでも続きますように、って
  3323. 伊吹 れいら: そして、最後のお別れは いつもと同じように…
  3324. 伊吹 れいら: 「バイバイ…また明日!」
  3325. [Part 1 end]
  3326. ---
  3327. [Part 2 start]
  3328. 517071-1_pVeLS [Madoka branch]
  3329. まどか: 夏休み わたしたちは南国のリゾートへ おでかけをすることに
  3330. まどか: これはその旅先で体験した とっても楽しくて、とってもおかしな 夏の思い出の一場面
  3331. まどか: わぁ! ここが貸し切りエリア?
  3332. なぎさ: 今から全部 なぎさたちのものなのです!
  3333. ほむら: ここなら、他の人たちのことを 気にせず遊べるね
  3334. さやか: じゃ、さっそく始めよっか
  3335. さやか: マミさんとさやかちゃん主催! 夏の陣取り合戦!!
  3336. 杏子: 水鉄砲を使った 陣取りゲームだっけ?
  3337. マミ: そうよ 景品にするプレゼントは
  3338. マミ: 各自このリゾートで買って 持ち寄る約束だったけど
  3339. マミ: みんな持ってきたかしら?
  3340. まどか: はい!
  3341. まどか: とっておきのものを 見つけてきました!
  3342. さやか: とっておきかー まどか、気合入ってるね
  3343. まどか: うん! だって、ママと…
  3344. まどかの母: 「忘れ物はないな?」
  3345. まどか: 大丈夫!
  3346. まどかの母: 「課題、覚えてるかい?」
  3347. まどか: うん…!
  3348. まどかの母: 「よーし、いい子だ それじゃ…」
  3349. まどかの母: 「今しかできないことを存分に楽しんできな」
  3350. まどか: 今しかできないことを 存分に楽しむって約束したから
  3351. まどか: ここだけの特別な思い出を たくさん作りたい
  3352. さやか: 存分にって 全力でってことだよね?
  3353. さやか: じゃあ、思いっきり遊びますか!
  3354. まどか: うんっ!
  3355. まどか: それから、みんなが持ち寄ったプレゼントを 誰のものかわからないように集めて…
  3356. まどか: ほむらちゃんは どんなプレゼントにしたの?
  3357. ほむら: えっと、たぶん すごくいいものを選べたかな…?
  3358. ほむら: (鹿目さんも、お店で 気になってそうな品だったし…)
  3359. ほむら: (鹿目さんが用意したっていう)
  3360. ほむら: (“とっておきのもの”も 気になるけど…)
  3361. 杏子: ふーん… すごくいいもの、ね
  3362. まどか: ええと、ルール説明の時間になったんだけど…
  3363. さやか&マミ: …………
  3364. なぎさ: ふふ~ん♪
  3365. まどか: あとから思うと このときからみんなの様子が 少しおかしかったような気がして…
  3366. まどか: プレゼントの山をちらちら見てたりして なんだか落ち着かない感じで…
  3367.  
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  3369. マミ: みんな 水鉄砲は行き渡ったかしら?
  3370. まどか: はい!
  3371. さやか: 大丈夫そうだね じゃあ、まずはチーム発表!
  3372. まどか: わたしたちが始めたのは 水鉄砲を使った陣取りゲーム
  3373. まどか: 2人1組の3チームに分かれて 陣地を奪い合うという内容なんだ
  3374. まどか: わたしはほむらちゃんと同じチームで
  3375. まどか: さやかちゃんは杏子ちゃんと
  3376. まどか: マミさんはなぎさちゃんと 一緒のチームになった
  3377. まどか: よろしくね、ほむらちゃん!
  3378. ほむら: う、うん…
  3379. マミ: 次は、ルールの説明を していくわね
  3380. まどか: ゲームのルールは… 終了時間に、いちばん多くの陣地を 占領していたチームが優勝!
  3381. まどか: 陣地は全部で3つあって 最初は自分のチームの陣地からスタート 敵の陣地に入れば、占領できるんだけど
  3382. まどか: 他の人に水鉄砲を当てられたら 自分の陣地に戻らなきゃいけなくて 3回当たったら、その人は退場 ふたりとも脱落したチームは負けになっちゃう
  3383. まどか: ちなみに魔法やテレパシーは禁止だって
  3384. まどか: 陣地を取らないと 優勝できないけど…
  3385. まどか: ひとりで取りにいったら
  3386. まどか: 陣地を守ってるチームに 狙い撃ちにされちゃうよね…
  3387. まどか: でも、ふたりで行ったら 自分の陣地を取られちゃうかも?
  3388. ほむら: …………
  3389. まどか: 最初は陣地を取りに行くよりも まずは他のチームの子を狙って
  3390. まどか: 人数が減ってから 陣地の取り合いになるのかな?
  3391. まどか: ほむらちゃん、どう思う?
  3392. ほむら: …………えっ? あ、うん…そうかも!
  3393. ほむら: (ダメダメ…!)
  3394. ほむら: (ゲームに集中しないと いけないのに…)
  3395. ほむら: (鹿目さんの景品は何だろうって 考えちゃってた…)
  3396. さやか: じゃあ、最後に…
  3397. さやか: 各順位でもらえる景品を 決めていくよ
  3398. まどか: 景品は 1位のチームが3つ 2位のチームが2つ 3位のチームが1つ もらえることになっていて
  3399. まどか: どれが誰のプレゼントか 自分以外にはわからないように マミさんが景品を集めて くじ引きで順位ごとに割り当ててくれた
  3400. マミ: 3位のプレゼントは、この箱ね
  3401. まどか: あっ…!
  3402. ほむら: (えっ…?)
  3403. まどか: …………
  3404. まどか: (…いま、3位の景品が わたしのだって)
  3405. まどか: (みんなにバレちゃったかも…)
  3406. さやか: 2位はこの2つで…
  3407. さやか: 1位はこの3つだね!
  3408. なぎさ: なぎさのがあるのです!
  3409. 杏子: バラすなよ
  3410. まどか: そんなやりとりをして景品を決めたあとで…
  3411. まどか: えっと… 順位ってどう決めるんだっけ?
  3412. さやか: 陣地の数と残り人数だよ!
  3413. マミ: そうね、あと 全滅した場合はその順番だけど
  3414. 杏子: 最初に全滅したチームは 3位確定ってことだな!
  3415. マミ: 全員、自分の陣地に入ったわね?
  3416. マミ: それじゃあ…
  3417. マミ: 「ゲームスタート!」
  3418.  
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  3420. マミ: 全員、自分の陣地に入ったわね?
  3421. マミ: それじゃあ…
  3422. マミ: 「ゲームスタート!」
  3423. まどか: 頑張ろうね、ほむらちゃん!
  3424. ほむら: う、うん…!
  3425. ほむら: (3位には 鹿目さんが用意した景品が…)
  3426. ほむら: (ダメ… 今は集中しなきゃ…!)
  3427. 杏子: 隙ありだ、まどか!
  3428. まどか: わっ…
  3429. ほむら: 鹿目さん…!?
  3430. マミ: 逃がさないわよ
  3431. まどか: わわっ! いきなり当てられちゃった!?
  3432. ほむら: 佐倉さんのチームが 巴さんたちと組んでる…?
  3433. まどか: じゃあ、2対4ってこと…?
  3434. マミ: ごめんなさいね、鹿目さん
  3435. 杏子: 最初にひとつのチームを 集中して狙うのも、作戦だろ?
  3436. まどか: 作戦…
  3437. まどか: わたしたち、甘かったみたい…
  3438. まどか: いきなり陣地を取るのは難しいから お互い、人数が減るまで 2チームを相手にするのかなって 思ってたんだけど
  3439. まどか: 杏子ちゃんは マミさんに同盟を持ちかけたみたい
  3440. 杏子: (一度に2チームと戦うのは マミだって避けたいはず)
  3441. 杏子: (…うまくいけば1チーム減って 2位以上は決まりだしね)
  3442. 杏子: (まっ、あたしとしては どっちと組んでもいいんだけど)
  3443. 杏子: (マミの方が 話が早そうだったからな!)
  3444. 杏子: マミ、組もうぜ!
  3445. マミ: …佐倉さん?
  3446. マミ: そうね、三つ巴になって 両方を相手するよりは…
  3447. 杏子: 悪いね 恨みっこはナシで!
  3448. さやか: ごめん、まどか ちょっと卑怯な気もするけど
  3449. なぎさ: 勝負は非情なのです
  3450. 残りライフ
  3451. まどか:○○× ほむら:○○○ さやか:○○○ 杏 子:○○○ マ ミ:○○○ なぎさ:○○○
  3452. まどか: きゃっ!
  3453. ほむら: あう…
  3454. さやか: マミさん、絶好調ですね!
  3455. マミ: ふふっ 負けられない理由があるもの
  3456. さやか: 負けられない、理由…?
  3457. ほむら: また陣地に戻されちゃった…
  3458. まどか: やっぱり2対4だとキツイね
  3459. まどか: 普段から銃を使ってるから マミさん、上手だし…
  3460. まどか: あ…でも、ほむらちゃんも たまに銃を使ってるよね!
  3461. ほむら: わ、私はまだ練習中で… 全然使いこなせてないし
  3462. まどか: そっか… わたしたちも何か作戦考えなきゃ
  3463. ほむら: そう、だね…
  3464. ほむら: (このまま負けたら3位…)
  3465. ほむら: (鹿目さんの景品… ちょっと気になるけど…)
  3466. ほむら: (…ダ、ダメ! 鹿目さん、頑張ってるのに!)
  3467. 残りライフ
  3468. まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○○ 杏 子:○○○ マ ミ:○○○ なぎさ:○○○
  3469.  
  3470. 517074-4_pVeLS
  3471. さやか: マミさん、いい調子だね
  3472. 杏子: やたらと気合入ってるな
  3473. 杏子: ありゃ本気で優勝狙ってるぞ
  3474. さやか: そうなの?
  3475. 杏子: …ま、あたしもだけどな!
  3476. マミ: …………
  3477. マミ: (…絶対に負けられないわ)
  3478. マミ: (優勝して、なぎさちゃんの 景品を手に入れないと)
  3479. なぎさの声: 「ふっふっふ… 面白いものを見つけたのです」
  3480. マミ: (この声は、なぎさちゃん?)
  3481. なぎさの声: 「この箱を開けたら、みんな びっくりするに違いないのです!」
  3482. なぎさの声: 「開けた人の反応が楽しみなのです」
  3483. マミ: (なぎさちゃんが用意した プレゼントは…)
  3484. マミ: (たぶんビックリ箱か何かよね)
  3485. マミ: (せっかくのバカンスなのに)
  3486. マミ: (他の子が開けることになったら 可哀想だし…)
  3487. さやか: 1位はこの3つだね!
  3488. なぎさ: なぎさのがあるのです!
  3489. マミ: (1位になって 私が回収しないと!)
  3490. マミ: 悪いけど、優勝はいただくわ!
  3491. まどか: わわっ!
  3492. ほむら: ど、どうしよう…! このままじゃ…!
  3493. なぎさ: マミ、頑張れなのです!
  3494. マミ: ええ、優勝しましょう なぎさちゃん!
  3495. なぎさ: …………
  3496. なぎさ: (優勝…?)
  3497. なぎさ: (優勝はちょっと困るのです)
  3498. まどか: 私たちが追い込まれてる間に マミさんとなぎさちゃんのチームでは すれ違いが起きはじめていたみたい
  3499. まどか: 次、当たったら わたしはもう退場だから…
  3500. まどか: 何か作戦を考えないと!
  3501. ほむら: えっと…
  3502. 杏子: ぼんやり立ってると… こうだ!
  3503. まどか: わわっ! ほむらちゃん、危ない!
  3504. ほむら: (他のチームは無傷なのに 私たちだけ全滅しそう…)
  3505. ほむら: (ここから逆転するのは さすがに難しいかも…?)
  3506. まどか: ほむらちゃん
  3507. まどか: 出だしでつまずいて 追い込まれちゃったけど
  3508. まどか: わたしは最後まで諦めないで 優勝を狙いたい
  3509. ほむら: 優勝…
  3510. ほむら: (そうだよね…)
  3511. ほむら: (まだできることが あるかもしれないのに)
  3512. ほむら: うん…
  3513. ほむら: どんなに不利で ダメかもしれなくても
  3514. ほむら: 諦めるのは、もっとダメだよね
  3515. まどか: うんっ! 最後まで全力で頑張ろう!
  3516. ほむら: …うん
  3517. ほむら: (鹿目さんのおかげで やっと勝負に集中できた…)
  3518. ほむら: (巴さんのチームと 佐倉さんのチームは本来敵同士)
  3519. ほむら: (最後まで協力し合ったまま 終わるはずがない…)
  3520. ほむら: (私たちが簡単に倒されなければ いつか勝機が訪れるはず)
  3521. ほむら: ―ほむら― 勝とう、鹿目さん! 優勝を目指そう…!
  3522. まどか: ―まどか― ここから反撃開始だね
  3523.  
  3524. 517075-5_pVeLS
  3525. ほむら: ―ほむら― 巴さんたちは私が相手するから 鹿目さんは、佐倉さんと美樹さんを牽制して!
  3526. まどか: ―まどか― うん!
  3527. ほむら: ―ほむら― 今は守りに徹して、ここを乗り切れば きっとチャンスが来ると思うから
  3528. まどか: ―まどか― わかった、ほむらちゃん! 陣地を守り抜こう
  3529. 杏子: ――っ!?
  3530. 杏子: あぶねぇ… こりゃ迂闊に近づけないね
  3531. さやか: 窮鼠、猫を噛むってやつ?
  3532. ほむら: いきます…!
  3533. マミ: ――っ!?
  3534. マミ: そうよね…簡単には 勝たせてくれないわよね
  3535. まどか: まずは守りに徹してチャンスを待つ…
  3536. まどか: ほむらちゃんは これ以上やられないように耐えながら 相手チームの隙をじっくり探していこうって そう言ったみたいなんだけど
  3537. まどか: 風向きは、意外と早く変わってきた
  3538. まどか&ほむら: …………
  3539. さやか: …下手に近づくと こっちがやられちゃうね
  3540. 杏子: マミも攻めあぐねてるみたいだ
  3541. 杏子: ほむらの動きも 急によくなってきたしね
  3542. 杏子: …と言っても、4人で囲めば 逃げ場はないよな?
  3543. 杏子: マミ、一斉にいくぞ 援護する
  3544. マミ: …わかったわ! なぎさちゃんも来て!
  3545. なぎさ: …は、はいなのです!
  3546. まどか&ほむら: ――っ!?
  3547. ほむら: 4人で一斉に…!
  3548. まどか: ど、どうしよう? 逃げ場がないよっ
  3549. マミ: ふたりには悪いけど もらったわ!
  3550. まどか: 絶体絶命のピンチ! 1発当てられたら、わたしは退場…
  3551. まどか: そのとき、まさかの出来事が起きた
  3552. マミ: ふたりには悪いけど もらったわ!
  3553. ほむら: 鹿目さんっ!
  3554. マミ: …えっ…?
  3555. さやか: なぎさの水鉄砲が マミさんに…?
  3556. なぎさ: ご、ごめんなさいなのです…
  3557. 杏子: マミチームの自爆かよ 何やってんだよ?
  3558. マミ: 誰だってミスはあるものよ 仕方ないわ
  3559. なぎさ: …………
  3560. さやか: …………
  3561. さやか: (誰も気づいてないのかな?)
  3562. さやか: (今のって… わざと味方に当てたよね…?)
  3563. 残りライフ
  3564. まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○○ 杏 子:○○○ マ ミ:○○× なぎさ:○○○
  3565. なぎさ: (うぅぅぅううう~ ものすごい罪悪感なのです)
  3566. なぎさ: (マミが優しく許してくれたので 余計に気が咎めるのです…)
  3567. なぎさ: (でも…)
  3568. リゾート限定チーズケーキは いかがですか?
  3569. なぎさ: チーズケーキ…!
  3570. マミ: 賞味期限はいつまでですか?
  3571. 冷蔵で明後日までになります
  3572. マミ: それじゃあ ホールのものをひとつください
  3573. マミ: …なぎさちゃん きっと喜ぶわね
  3574. なぎさ: マミ…!
  3575. なぎさ: (マミがなぎさのために 用意してくれたチーズケーキ…)
  3576. なぎさ: (なんとしてもあれを ゲットしないといけないのです)
  3577. なぎさ: (マミは 優勝するつもりみたいですが…)
  3578. なぎさ: (なぎさは見たのです)
  3579. なぎさ: (…チーズケーキの箱が 2位の景品の中にあることを!)
  3580. なぎさ: (杏子たちとの優勝争いが 始まってしまう前に)
  3581. なぎさ: (少しハンデを付けて あげようとしたのですが…)
  3582. なぎさ: 本当にごめんなさいなのです…
  3583. マミ: そんなに謝らないでいいのよ 気にしてないから
  3584. まどか: なぎさちゃん、間違えて
  3585. まどか: マミさんに 当てちゃったみたいだね
  3586. ほむら: うん… これで少しわからなくなったかも
  3587. まどか: えっ、まだまだわたしたちが 不利だと思うけど…
  3588. ほむら: 佐倉さんのチームは 今は巴さんと組んでるけど
  3589. ほむら: 佐倉さんが一番警戒してるのは 巴さんだと思う
  3590. ほむら: 巴さんのチームと 直接対決をする前に
  3591. ほむら: もう少し有利にしておきたいって 気持ちが働いてくれたら…
  3592. まどか: 銃を使えばマミさんが一番… マミさんとの付き合いが長い杏子ちゃんは 誰よりもそれを意識していたと思う それがゲームの行方を変えていくことに…
  3593.  
  3594. 517076-6_pVeLS
  3595. 杏子: …………
  3596. 杏子: (マミはあと2回で脱落… 無傷のチームはあたしらだけか)
  3597. 杏子: (まどかたちは壊滅寸前だし このまま一気に落とせば)
  3598. 杏子: (あたしらとマミのチームで 優勝を争うことになるけど…)
  3599. 杏子: (水鉄砲でマトモにやりあって マミに勝てるのか?)
  3600. 杏子: (もう1回事故が起きれば マミは残り1発で退場になって)
  3601. 杏子: (かなりやりやすくなるけど…)
  3602. 杏子: ………… …………
  3603. 杏子: …よし、やるか!
  3604. まどか: マミさんが陣地に戻って、ゲームが再開した
  3605. さやか: 杏子、いくよ!
  3606. 杏子: ああ、仕切り直しだ! マミとなぎさも!
  3607. マミ: わかったわ!
  3608. なぎさ: はいなのです!
  3609. まどか: また来るよ…!
  3610. ほむら: うん
  3611. ほむら: 今度は囲まれないように 左右に広がって
  3612. まどか: わかった!
  3613. マミ: そうね、さっきと同じように 動くはずがないわよね
  3614. さやか: …マミさん、まどかはあたしが!
  3615. マミ: ありがとう そっちは任せるわ
  3616. 杏子: (マミの後ろがガラ空き…! …チャンスか?)
  3617. 杏子: 悪いな、マミ!
  3618. マミ: なっ…?
  3619. なぎさ: えっ…?
  3620. さやか: ちょっと、杏子!? なんでマミさんに当てたの?
  3621. 杏子: いやー、悪いわるい
  3622. マミ: …今のはわざとよね?
  3623. マミ: その場所からじゃ 鹿目さんたちには届かないもの
  3624. 杏子: 違うって言っても信じないよね?
  3625. マミ: …同盟はここまで ということかしら
  3626. 残りライフ
  3627. まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○○ 杏 子:○○○ マ ミ:○×× なぎさ:○○○
  3628. まどか: またマミさんが撃たれた…?
  3629. ほむら: えっと、もしかすると…
  3630. まどか: ほむらちゃんの話だと…
  3631. まどか: マミさんは、あと1回で退場だから これまでみたいに自由には動けなくなる
  3632. まどか: マミさんが退場すれば、残りはなぎさちゃんだけ
  3633. まどか: わたしもあと1回当てられたら退場だから ここまで無傷の さやかちゃんと杏子ちゃんのチームが 圧倒的に優勝に近くなった
  3634. まどか: 杏子ちゃんは、わたしたちを全滅させてから 万全のマミさんたちとぶつかるより この方が有利だって考えたみたい
  3635. マミ: 佐倉さん… やってくれたわね
  3636. 杏子: …ってなわけで、作戦変更だ マミたちとの同盟は解消
  3637. 杏子: ここで一気にマミを落とす! そうすりゃ、残りはなぎさだけだ
  3638. 杏子: なんなら今すぐ、ほむらたちと 組んでもいいかもな
  3639. さやか: えっ…そんな… 急に?
  3640. 杏子: 優勝したいだろ?
  3641. さやか: う…うん… そりゃまあ…
  3642. まどか: ところが…
  3643. さやか: (…マズいよ!)
  3644. さやか: (まどかには悪いけど マミさんたちと組めば)
  3645. さやか: (2位以上は確定だと思ったから この作戦に乗ったのに…)
  3646. まどか: …ラッピング、お店で やってもらえばよかったな
  3647. まどか: こうして、リボンをかけて…
  3648. さやか: …まどか、ここにいたんだ
  3649. まどか: ――っ!?
  3650. まどか: びっくりしたあ…!
  3651. まどか: も、もしかして
  3652. まどか: わたしのプレゼント 見えちゃったかな?
  3653. さやか: うう…ごめん…
  3654. まどか: ううん
  3655. まどか: わたしもさやかちゃんがいること 気がつかなったから…
  3656. さやか: それを買ったんだ?
  3657. まどか: うんっ! 可愛いよね
  3658. まどか: でも、みんなには内緒にしてね?
  3659. さやか: (ハァ… まどかには言わなかったけど)
  3660. さやか: (なんで、まどかの景品と あたしのが被ってるのよ!)
  3661. さやか: (せっかくまどかが選んだのに 悪いよね)
  3662. さやか: (あたしのプレゼントは 2位の景品になってるから…)
  3663. さやか: (なんとしても2位になって 自分の景品を回収しないと)
  3664. さやか: (杏子は優勝する気満々だし… なぎさの動きも怪しいし)
  3665. さやか: (このままじゃ あたしたちが優勝しちゃうよ!)
  3666. 杏子: さやか、行くぞ!
  3667. 杏子: マミを両側から追い詰めて 仕留める!
  3668. さやか: う…うん…!
  3669. マミ: …来たわね
  3670. なぎさ: いったいどうなったのですか? 杏子は味方じゃないのですか?
  3671. マミ: 今からは敵よ
  3672. 杏子: ほむら、まどか! どうせなら援護してくれよ!
  3673. 杏子: マミを仕留めるまで そっちは撃たないからさ!
  3674. まどか: ええ?
  3675. ほむら: …巴さんが すぐにやられるとは思えない
  3676. ほむら: 少し様子を見よう、鹿目さん
  3677. 杏子: …ま、乗ってこないか ふたりで始めるぞ、さやか!
  3678. さやか: (…ど、どうしよ って、やるしかないよね?)
  3679. さやか: (まだ2位になれるかどうかも わからないんだし…)
  3680. 杏子: マミがそっちに行った! チャンスだ!
  3681. さやか: …!
  3682. マミ: 遅いわ!
  3683. さやか: あっ…
  3684. 残りライフ
  3685. まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○× 杏 子:○○○ マ ミ:○×× なぎさ:○○○
  3686. 杏子: ボンヤリすんなよ…
  3687. さやか: …ごめん
  3688. ほむら: …………
  3689. ほむら: (美樹さん、迷ってる…?)
  3690.  
  3691. 517077-7_pVeLS
  3692. まどか: さやかちゃんが自分の陣地に戻る間に ほむらちゃんが次の作戦を考えてくれた
  3693. まどか: えっ、マミさんたちと組む…?
  3694. ほむら: うん、さっき佐倉さんから 同盟を持ちかけられたけど
  3695. ほむら: もし巴さんが脱落して
  3696. ほむら: 私たちが佐倉さんたちと 優勝を争うことになったら…
  3697. ほむら: たぶん勝てないと思う
  3698. まどか: 杏子ちゃん、まだ無傷だもんね わたしは、あと1発で退場なのに
  3699. ほむら: うん…
  3700. ほむら: だから、今は巴さんに 生き残ってもらって
  3701. ほむら: 佐倉さんを集中攻撃したら 3チームとも互角になると思う
  3702. ほむら: (それに…)
  3703. ほむら: (美樹さんの動きにも 少し迷いがあるみたいだし…)
  3704. ほむら: 鹿目さんはもう後がないから… 危険な賭けだけど
  3705. まどか: …………
  3706. まどか: わかった、そうしよう!
  3707. まどか: ほむらちゃんが言った通り やっとチャンスが来たんだし
  3708. まどか: わたし、全力で戦いたい!
  3709. ほむら: 鹿目さん…! うん、頑張ろう!
  3710. 杏子: 戦闘再開だな よし、行くか!
  3711. 杏子: …って、あれ?
  3712. まどか: マミさん! 一緒に戦いましょう!
  3713. ほむら: みんなで佐倉さんを狙います!
  3714. マミ: …!
  3715. マミ: ありがとう、助かるわ なぎさちゃん、行くわよ
  3716. なぎさ: は、はいなのです!
  3717. なぎさ: (よくわかりませんが 2位を確保するまでは)
  3718. なぎさ: (ほむらたちと 組む方がよさそうなのです!)
  3719. 杏子: くっ、そう来たか!
  3720. さやか: あんたがマミさんを 裏切ったせいでしょ!
  3721. 杏子: まどかのやつ…イチかバチか 突っ込んでくるなんて
  3722. 杏子: 思い切ったね
  3723. さやか: どうすんのよ?
  3724. 杏子: 返り討ちにすりゃいいだろ?
  3725. 杏子: よっと…
  3726. なぎさ: …!
  3727. 杏子: ちっ… 反撃するヒマが…
  3728. 杏子: 冷たっ!?
  3729. 杏子: マジか… くっそ、どこから撃った?
  3730. マミ: そっちに避けると思ってたわ
  3731. まどか: すごい! 狙い撃ち…!
  3732. 杏子: マミかよ…やっぱりな
  3733. 残りライフ
  3734. まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○× 杏 子:○○× マ ミ:○×× なぎさ:○○○
  3735. 杏子: 陣地に戻ったぞ! 再開だ!!
  3736. まどか: マミさん、さっきと同じように!
  3737. マミ: ええ、まだ佐倉さんたちが 有利だものね
  3738. 杏子: やられっぱなしに なってたまるかっての!
  3739. 杏子: さやか、援護を頼む!
  3740. さやか: うん!
  3741. まどか: 杏子ちゃんを狙うよ!
  3742. ほむら: うん、私も!
  3743. マミ: なぎさちゃんは 美樹さんを止めて!
  3744. マミ: その間に3人で 佐倉さんを追いつめるから
  3745. なぎさ: はいなのです!
  3746. さやか: (…あれ、杏子 めちゃくちゃ狙われてる?)
  3747. さやか: 恨みっこナシとか言って 全員敵に回すから…!
  3748. さやか: (でもちょっと待って? この場合どうすれば…?)
  3749. さやか: (まだ一応、あたしたちが リードしてるはずだけど…)
  3750. さやか: (杏子があと1回やられたら 2位も危なくない?)
  3751. さやか: (でも、とりあえず…)
  3752. さやか: (こっちに向かってきた なぎさを止めないと!)
  3753. みんな: …………
  3754. 杏子: くっそー、3対1かよ
  3755. まどか: 杏子ちゃん、いくよっ!
  3756.  
  3757. 517078-8_pVeLS
  3758. まどか: そのころ、さやかちゃんとなぎさちゃんは…
  3759. さやか: …………
  3760. なぎさ: …………
  3761. なぎさ: (睨みあいに なってしまったのです)
  3762. なぎさ: (いったい、何をすればいいのか なぎさには難しすぎるのです…)
  3763. なぎさ: (ここで杏子がやられたら)
  3764. なぎさ: (マミひとりだけでも 優勝してしまう気がするのです)
  3765. なぎさ: (でも、マミがやられたら 2位も無理なのです…)
  3766. なぎさ: (マミに言われたので さやかを止めに来たのですが…)
  3767. まどか: どうしていいかわからなくて ふたりとも動けなくなってたみたいで…
  3768. さやか: (なぎさ… やっぱり様子がおかしいよね?)
  3769. さやか: (マミさんを後ろから撃ったり)
  3770. さやか: (あっ…2位の景品に チーズケーキの箱があったけど)
  3771. さやか: (もしかして… なぎさも2位狙いなんじゃ…?)
  3772. まどか: さやかちゃんが迷って動けない間に わたしたちは、杏子ちゃんを追いつめていた
  3773. 杏子: はぁ…はぁ… さすがにキツイな
  3774. マミ: いつまで逃げ切れるかしら?
  3775. 杏子: それじゃ、反撃だ!
  3776. 杏子: さすがに速いね
  3777. ほむら: 私もっ…!
  3778. 杏子: ちっ… おい、さやか!
  3779. 杏子: なぎさとにらめっこしてないで 援護してくれよ
  3780. さやか: ――っ!?
  3781. さやか: (しまった なぎさに構いすぎた…!)
  3782. さやか: (杏子を守らないと 2位どころか最下位だよ!)
  3783. さやか: ごめん、いま行く! 待ってて!
  3784. なぎさ: あっ、待つのです!
  3785. まどか: でも、さやかちゃんが駆けつけたときには もう遅くて…
  3786. ビシャッ
  3787. 杏子: …………
  3788. まどか: あっ…当たった?
  3789. ほむら: やった、鹿目さん…!
  3790. さやか: 杏子…
  3791. 杏子: あー もう少しだったのになあ
  3792. ピーッ!
  3793. ほむら: タイマーが…!
  3794. マミ: …ちょうど前半戦が終わったわね
  3795. 残りライフ
  3796. まどか:○×× ほむら:○○× さやか:○○× 杏 子:○×× マ ミ:○×× なぎさ:○○○
  3797.  
  3798. 517079-9_pVeLS
  3799. まどか: そして、休憩時間…
  3800. 杏子: おいさやか、どうしたってんだよ なぎさひとり相手に
  3801. さやか: うん、ごめん…
  3802. ほむら: あれっ… 美樹さんたち、どうしたんだろう
  3803. まどか: わたし、ちょっと行ってくる!
  3804. 杏子: ったく、勝つ気あんのか?
  3805. さやか: いや、勝つ気はあるんだけどね… その…
  3806. さやか: (2位狙いだったなんて 言えないし…)
  3807. 杏子: なんでそこで 歯切れが悪くなるんだよ…
  3808. さやか: …………
  3809. まどか: さやかちゃん、杏子ちゃん!
  3810. まどか: どうしたの? 何かあった?
  3811. 杏子: いや、別に…
  3812. 杏子: さやかのヤツ、急にやる気を なくしちまったみたいだからさ
  3813. さやか: (心配して まどかたちも来ちゃった)
  3814. さやか: (うん…こういうのって やっぱりよくないよね)
  3815. さやか: (…正直に言おう)
  3816. さやか: 杏子、ごめん! 実は2位狙いだったの!
  3817. 杏子: …ハァ? 2位?…なんで?
  3818. まどか: みんなの様子がちょっとおかしかったことに わたしは全然気づいてなかったんだけど…
  3819. まどか: さやかちゃんの告白がきっかけになって みんなの思惑が少しずつ すれ違ってたことがわかって
  3820. さやか: …あたしが用意した景品が 2位にあるんだけど
  3821. さやか: 中身がまどかと被ってて…
  3822. まどか: …え!?
  3823. さやか: まどかが箱に詰めてるときに 中身が見えちゃったんだよね
  3824. 杏子: それで2位狙いってわけか
  3825. 杏子: 自分の箱が何位の景品かは 見ればわかるもんな
  3826. さやか: …うん、まどかが
  3827. さやか: とっておきを用意したって 言ってたから
  3828. さやか: 被っちゃったのが なんか申し訳なくて…
  3829. さやか: せっかくのまどかの景品に
  3830. さやか: 水を差すみたいに なっちゃうなって…
  3831. まどか: それって、わたしのために? 気にしなくてよかったのに
  3832. 杏子: なるほどね、でも 気を回しすぎなんじゃない?
  3833. さやか: …そうかも ごめん
  3834. まどか: マミさんとなぎさちゃんもこっちに来て 全員揃ったところで
  3835. まどか: 今度はほむらちゃんが…
  3836. ほむら: あの…実は私も
  3837. ほむら: 3位でもいいかな、なんて ちょっと思っちゃって…
  3838. ほむら: それで集中できなくて…
  3839. まどか: えっ、どうして?
  3840. ほむら: それは…その… 鹿目さんの…プレゼントが…
  3841. さやか: あー、3位は まどかの景品だもんね
  3842. マミ: 3位のプレゼントは、この箱ね
  3843. まどか: あっ…!
  3844. まどか: やっぱりバレちゃってたよね…
  3845. さやか: まどかが“とっておき”なんて 言ったから
  3846. さやか: 期待しちゃったなー?
  3847. ほむら: あっ…えっと… はい…
  3848. ほむら: …ごめんね、鹿目さん
  3849. まどか: ううん、大丈夫!
  3850. なぎさ: …………
  3851. なぎさ: (なぎさも謝るべきなのです…)
  3852. なぎさ: …マミ、ごめんなさいなのです
  3853. なぎさ: 実はあのとき…なぎさは わざとマミに当てたのです…
  3854. マミ: えっ? どうして?
  3855. なぎさ: 2位になりたくて…
  3856. さやか: あっ、やっぱり…
  3857. さやか: なぎさの狙いって チーズケーキでしょ?
  3858. なぎさ: はいなのです
  3859. なぎさ: マミがなぎさのために 用意してくれた景品だと
  3860. なぎさ: 知ってしまったので…
  3861. マミ: えっと…私が用意した景品は チーズケーキじゃないわよ?
  3862. なぎさ: えっ…?
  3863. なぎさ: でもあれは間違いなく チーズケーキの箱なのです!
  3864. 杏子: 2位のチーズケーキの箱なら あたしの景品だぞ?
  3865. 杏子: 中身はケーキじゃないけど
  3866. なぎさ: ――っ!?
  3867. なぎさ: ど、どういうことなのですか!?
  3868. 杏子: 景品を入れるものがなかったから マミに箱だけもらったんだよ
  3869. なぎさ: じゃ、じゃあチーズケーキは どこへ行ったのですか!?
  3870. マミ: 夜、みんなで食べようと思って 冷蔵庫に入れてあるわ
  3871. なぎさ: そ、そんな…
  3872. 杏子: はは、みんな狙ってるものが あったんだな
  3873. さやか: 杏子もあったの?
  3874. 杏子: ほむらが“すごくいいもの”を 用意したらしいから、それだね
  3875. 杏子: 優勝すれば景品3つだから そのうちのどれかだろって
  3876. ほむら: え…
  3877. まどか: ほむらちゃんは どんなプレゼントにしたの?
  3878. ほむら: えっと、たぶん すごくいいものを選べたかな…?
  3879. ほむら: (鹿目さんも、お店で 気になってそうな品だったし…)
  3880. ほむら: (…あれは)
  3881. ほむら: (鹿目さんが好きそうっていう 意味で…)
  3882. 杏子: …? ま、いいけど
  3883. 杏子: マミは普通に 1位狙いだったよな?
  3884. マミ: ううん… 実は結構、必死だったのよ
  3885. マミ: なぎさちゃんの ひとりごとを聞いちゃって…
  3886. なぎさの声: 「この箱を開けたら、みんな びっくりするに違いないのです!」
  3887. なぎさの声: 「開けた人の反応が楽しみなのです」
  3888. なぎさ: まさか…ビックリ箱か何かだと 思ったのですか?
  3889. マミ: えっ…違うの?
  3890. なぎさ: 全然、違うのです!
  3891. ほむら: 百江さんの箱は 1位の景品だったよね
  3892. 杏子: 他のヤツに開けさせないように マミは優勝を狙ってたのか…
  3893. さやか: 景品に惑わされずに 純粋にゲームを楽しんでたのは
  3894. さやか: まどかだけだったわけね
  3895. ピーッ!
  3896. まどか: あっ、休憩はここまでだね
  3897. マミ: さて、ここからは正々堂々と 勝負しましょう
  3898. みんな: はいっ!
  3899.  
  3900. 517080-10_pVeLS
  3901. まどか: そして、後半戦が終わって 最後まで立っていたのは…
  3902. マミ: …………
  3903. 杏子: …マミ以外全滅かよ
  3904. まどか: 終了時間前に終わっちゃったね
  3905. さやか: やっぱ強いわ…
  3906. マミ: 水鉄砲は私に有利だったかしら 今度は別の競技で勝負しましょ
  3907. 最終結果
  3908. 1位 マミ・なぎさチーム
  3909. 2位 さやか・杏子チーム
  3910. 3位 まどか・ほむらチーム
  3911. ほむら: 結局3位になっちゃったね
  3912. ほむら: 先に脱落しちゃって ごめんなさい…
  3913. さやか: まどか、すごいよ あの状況から
  3914. さやか: 最後の3人になるまで 残るなんて!
  3915. なぎさ: マミと杏子とまどかが残って すごかったのです
  3916. まどか: 最後は負けちゃったけど でも楽しかった!
  3917. さやか: きっと、全力で楽しんだからだね
  3918. マミ: それじゃ、みんなで
  3919. マミ: 景品のプレゼントを 開けましょうか?
  3920. まどか: …まさか、このあとで この日一番の驚きが待っているなんて 思ってもいなかった
  3921. さやか: ではでは… 景品開封タイム!
  3922. マミ: 3位の景品から 開けていきましょうか
  3923. さやか: 3位はまどかたちのチームだね
  3924. まどか: えへへ…これは わたしが用意したものだから
  3925. まどか: ほむらちゃんにあげるね
  3926. ほむら: あ、ありがとう…
  3927. さやか: ちなみにそれ あたしと被ったやつだから
  3928. さやか: あたしは中身を知ってるけどね
  3929. 杏子: “とっておき”ってヤツだよな?
  3930. まどか: うん、えへへ… ほむらちゃん、開けてみて
  3931. ほむら: う…うん…
  3932. パカッ
  3933. ほむら: これは…!?
  3934. まどか: えへへっ サガリバナのさがりんだよ!
  3935. まどか: ご当地ゆるキャラの ぬいぐるみなんだって!
  3936. まどか: 可愛いよね
  3937. さやか: …確かにずっと見てると 可愛く見えてくるかも?
  3938. まどか: えっ?
  3939. まどか: さやかちゃんも、可愛いって 思ったから選んだんじゃないの?
  3940. さやか: いや、あの その、あはは…
  3941. さやか: (ごめん…ネタ枠)
  3942. …………
  3943. まどか: えっと、もしかして 可愛くなかった…?
  3944. まどか: ごめんね…ほむらちゃん
  3945. ほむら: ううん、違うの ええと…
  3946. ほむら: …そ、それより 2位の景品も開けてみない…?
  3947. マミ: そうしましょうか
  3948. マミ: 2位の景品って確か、佐倉さんと 美樹さんが用意したものよね?
  3949. さやか: あはは、これじゃ杏子との プレゼント交換みたいだよね
  3950. さやか: あたしのは、まどかと一緒だから 杏子のやつを開けるね
  3951. 杏子: あ…いや…
  3952. さやか: どうしたの、杏子?
  3953. なぎさ: チーズケーキの箱に入ってるのが 杏子のプレゼントなのです
  3954. 杏子: あー、そうなんだけどさ…
  3955. パカッ
  3956. さやか: えっ…どういうこと? これ、あたしの箱じゃないよね?
  3957. まどか&ほむら: …………
  3958. さやか&杏子: …………
  3959. マミ&なぎさ: …………
  3960. まどか: まさか、みんな同じ景品を 用意してたなんて…
  3961. さやか: …みんな、なんでこれにしたか 聞いてもいい?
  3962. マミ: 私は、こういうとき
  3963. マミ: お菓子とかお茶を 用意することが多いから
  3964. マミ: たまには違うものを…と探したら 目に留まったの
  3965. マミ: 暁美さんは?
  3966. ほむら: その…鹿目さんがお店で じっと見てたから…
  3967. 杏子: …なぎさは?
  3968. なぎさ: おみやげもの屋さんにあった中で 一番へんてこりんだったのです!
  3969. なぎさ: だから、みんな びっくりすると思ったのですが…
  3970. まどか: えっ? そんなに変かなぁ…?
  3971. 杏子: あたしのは、地元の子どもと 交換で手に入れたんだよ
  3972. さやか: え、何と?
  3973. 杏子: ゲーセンで獲ったぬいぐるみ!
  3974. 杏子: 箱は捨てちゃったけど 買ったばかりだって言うからさ
  3975. なぎさ: え…じゃあ
  3976. なぎさ: それで入れるものがなくて チーズケーキの箱に!?
  3977. まどか: …ふふふっ
  3978. まどか: でも、面白いね こんな偶然が起きるなんて!
  3979. マミ: 本当…ふふっ まさかよね
  3980. ほむら: 奇跡みたいな偶然ですね
  3981. さやか: こんなことあるんだね
  3982. マミ: 鹿目さん、これどうぞ 暁美さんが用意したものよ
  3983. まどか: えっ… 1位のチームが3つですよね?
  3984. マミ: せっかくだし、みんなで ひとつずつ持てばいいと思って
  3985. まどか: …それじゃ、遠慮なく! ありがとう、マミさん!
  3986. 杏子: 1位の景品の残りは マミとなぎさが用意したヤツだし
  3987. 杏子: 3チームとも、チームメイトと プレゼント交換したようなもんか
  3988. さやか: …ま、いいんじゃない? いい思い出になったし!
  3989. まどか: ―まどか― みんなとプレゼントを準備したり 水鉄砲で遊んだり
  3990. まどか: ―まどか― わたしにとっては
  3991. まどか: ―まどか― かけがえのない夏の思い出のひとつに なったと思う
  3992. まどか: ―まどか― はっきりとそう言える理由は、そう…
  3993. まどか: ―まどか― 最後まで、全力で楽しんだから!
  3994. まどか: えへへ… みんなお揃いだね!
  3995.  
  3996. 517081-11_pVeLS [Ashley & Riko branch]
  3997. 千秋 理子: 今日の分の 夏休みの宿題、終わりました!
  3998. アシュリー・テイラー: Well done!! 偉いデスネー!
  3999. 千秋 理子: えへへっ アシュお姉さんはどうですか?
  4000. アシュリー・テイラー: あと古文・漢文だけなのデスガ もう少しかかりそうデース…
  4001. 千秋 理子: じゃあ、調べ物をしてきても いいですか?
  4002. アシュリー・テイラー: Sure!
  4003. アシュリー・テイラー: 理子が戻ってくるまでに 終わらせマスヨー!
  4004. 千秋 理子: うーん… やっぱり、いいのがないなぁ…
  4005. 千秋 理子: どうしよう…
  4006. アシュリー・テイラー: 理子
  4007. 千秋 理子: アシュお姉さん…! あれ、宿題は?
  4008. アシュリー・テイラー: 終わりまシタヨー
  4009. アシュリー・テイラー: なかなか戻って来ないから 様子を見に来まシタ
  4010. アシュリー・テイラー: 探している本、 見つからないデスカ?
  4011. 千秋 理子: 実は、本を 探しているわけじゃないんです
  4012. 千秋 理子: 夏休みの自由研究が決まらなくて 参考になるものがあればと思って
  4013. アシュリー・テイラー: 自由研究…?
  4014. アシュリー・テイラー: なるほど…
  4015. アシュリー・テイラー: 自分でテーマを決めて 内容をまとめるんデスネー
  4016. 千秋 理子: でも、全然いいテーマが 思いつかないんです…
  4017. アシュリー・テイラー: サイエンスの レポートみたいな感じデスヨネ?
  4018. アシュリー・テイラー: だったら、 いいもの知ってマスヨ!
  4019. アシュリー・テイラー: ビーチコーミングは どうでしょう?
  4020. 千秋 理子: ビーチコーミング…?
  4021. アシュリー・テイラー: 浜辺に流れ着いたモノを 拾って集めるんデス
  4022. アシュリー・テイラー: 集めた漂流物を使って 展示品を作ってもいいデスシ
  4023. アシュリー・テイラー: それについて調べてみるのも いいと思いマス!
  4024. 千秋 理子: 面白そう…
  4025. アシュリー・テイラー: ちょうど海に遊びに行く 予定もありマスカラ
  4026. アシュリー・テイラー: あわせて、やってみるのも いいと思いマス!
  4027. 千秋 理子: そうですね! やってみたいです
  4028. 千秋 理子: ただ…
  4029. 千秋 理子: どうやってやるのかわからなくて ちょっと不安です…
  4030. アシュリー・テイラー: でしたら、 いいモノを見せマスヨー!
  4031. アシュリー・テイラー: ビーチコーミングをテーマにした 映画デース!
  4032. 千秋 理子: へぇ… 面白そう
  4033. 千秋 理子: あっ、この監督さんって
  4034. 千秋 理子: もしかしてアシュお姉さんの お父さんですか?
  4035. アシュリー・テイラー: Yes!! ダディが撮った映画デス!
  4036. アシュリー・テイラー: 娘のひいき目なしに 面白いデスヨー!
  4037. アシュリー・テイラー: もちろん、ビーチコーミングの 参考にもなりマス!
  4038. 千秋 理子: とっても面白かったです…!
  4039. 千秋 理子: 主人公のお兄さんが まん丸なシーグラスを
  4040. 千秋 理子: 友情のしるしに プレゼントするところ
  4041. 千秋 理子: とっても素敵でした…
  4042. アシュリー・テイラー: …気に入ってもらえて嬉しいデス
  4043. アシュリー・テイラー: 私もそのシーン 大好きなんデスヨー
  4044. 千秋 理子: (…あれ? でも、なんだか…)
  4045. 千秋 理子: (アシュお姉さん、寂しそう)
  4046. 千秋 理子: (もしかして…)
  4047. 千秋 理子: (お父さんのことを 思い出しちゃったのかな…?)
  4048. 千秋 理子: …………
  4049. アシュリー・テイラー: どうかしまシタカ?
  4050. 千秋 理子: う、ううん! なんでもないです…!
  4051. 千秋 理子: (いつも助けてくれるし…)
  4052. 千秋 理子: (わたしもアシュお姉さんの 力になりたいな)
  4053. 千秋 理子: (何か、 元気になってくれるもの…)
  4054. 千秋 理子: ――っ!?
  4055. 千秋 理子: (そうだ…!)
  4056. 千秋 理子: (…ビーチコーミングのときに こっそり探してみよう…)
  4057.  
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  4059. アシュリー・テイラー: 海デース!
  4060. アシュリー・テイラー: よく晴れていて 海水浴日和デスネー!
  4061. 千秋 理子: はい!
  4062. アシュリー・テイラー: ビーチコーミングの前に たくさん遊んじゃいまショウ!
  4063. 千秋 理子: (泳ぎながら “アレ”…見つけたいな…!)
  4064. ザブン…
  4065. アシュリー・テイラー: Oh!マメジの浮き輪デスネ! とってもKAWAIIデス!
  4066. 千秋 理子: やっぱり、マメジに そっくりですよねっ…!
  4067. 千秋 理子: お店で見つけたときに
  4068. 千秋 理子: 『マメジがいる』って 家族で盛り上がったんです
  4069. アシュリー・テイラー: 理子とマメジは 海でも一緒なんデスネー
  4070. 千秋 理子: えへへ
  4071. 千秋 理子: ――っ!?
  4072. 千秋 理子: (足元…海の底に貝殻が…)
  4073. 千秋 理子: (だったら、他のものも 見つかるかも…?)
  4074. 千秋 理子: アシュお姉さん
  4075. 千秋 理子: ちょっとマメジ 預かっててください…!
  4076. 千秋 理子: えいっ!
  4077. アシュリー・テイラー: What!? 理子!?
  4078. 千秋 理子: (う、うまく潜れない…!)
  4079. 千秋 理子: ぷはっ!
  4080. アシュリー・テイラー: 大丈夫デスカ!?
  4081. 千秋 理子: あ、大丈夫です… うまく潜れませんでしたけど…
  4082. アシュリー・テイラー: びっくりしマシタ… 急にどうしたんデスカ?
  4083. 千秋 理子: え、えっと…
  4084. 千秋 理子: 学校で潜水の練習をしたから 海でもできるかなぁって…
  4085. 千秋 理子: (ご、ごめんなさい… でも、ウソではないんです…)
  4086. アシュリー・テイラー: Umm…
  4087. 千秋 理子: えへへ…
  4088. アシュリー・テイラー: 海でたくさん遊んだら 水分補給も大切デース!
  4089. アシュリー・テイラー: 少し休憩にしまショウ!
  4090. 千秋 理子: はーい!
  4091. 千秋 理子: (休憩しながら 浜辺も探してみよう)
  4092. 千秋 理子: ―理子― (うーん、見つからない… どこを探せばあるんだろう?)
  4093. 千秋 理子: ―理子― (あっ、可愛い貝殻! でも、探しているのはこれじゃなくて…)
  4094. アシュリー・テイラー: ―アシュリー― 理子? どうしたんデスカ?
  4095. アシュリー・テイラー: ―アシュリー― 何か落としたなら 一緒に探しマスヨ?
  4096. 千秋 理子: ―理子― ――っ!?
  4097. 千秋 理子: ―理子― だ、大丈夫です!
  4098. 千秋 理子: それより そろそろ海に戻りませんか?
  4099. アシュリー・テイラー: …そうデスネー!
  4100. アシュリー・テイラー: …………
  4101. アシュリー・テイラー: (もしかして 楽しめてないのでショウカ?)
  4102. 千秋 理子: 海の家で食べるやきそばって ちょっと特別ですね
  4103. アシュリー・テイラー: That's true! おいしかったデス!
  4104. アシュリー・テイラー: 遊び終わって お昼も食べまシタシ
  4105. アシュリー・テイラー: 着替えてビーチコーミングを 始めまショウカ
  4106. 千秋 理子: はい!
  4107. あかりの声: ちょっと! 寝ないでってば!
  4108. 千秋 理子: …あれ?
  4109. 由良 蛍: ん~…ちょっとだけぇ~…
  4110. 真井 あかり: ダメ!こんなところで寝たら 熱中症になるわよ!
  4111. 由良 蛍: それはぁ~…困っちゃうねぇ~…
  4112. 真井 あかり: まったく、どっちが付き添いか わからないわね
  4113. 千秋 理子: あかりちゃんだっ…!
  4114. アシュリー・テイラー: 蛍もいマスネー!
  4115. 千秋 理子: じゃあ、あかりちゃんたちも ビーチコーミングに来たの?
  4116. 真井 あかり: そう、自由研究のためにね
  4117. 由良 蛍: 私は付き添い~…
  4118. 真井 あかり: ひとりで海に行くのは ダメだって言われて…
  4119. 真井 あかり: でも、陽斗お兄さんは 部活の合宿だし…
  4120. 真井 あかり: パパとママも忙しいから 蛍に頼んだの
  4121. 千秋 理子: わたしも…
  4122. 千秋 理子: お母さんが、アシュお姉さんと 一緒ならいいよって
  4123. 真井 あかり: せっかくだし、一緒にやる?
  4124. 千秋 理子: うんっ…!
  4125. アシュリー・テイラー: では、まずは 着替えてきまショウカ
  4126.  
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  4128. アシュリー・テイラー: ビーチコーミングの注意事項 覚えてマスカ?
  4129. 千秋 理子: えっと…
  4130. 千秋 理子: クラゲとかウミヘビとか 危ないものには近づかない
  4131. 真井 あかり: あと、注射器とか信号弾とか
  4132. 真井 あかり: 危険な人工物も 触っちゃダメなのよね?
  4133. 千秋 理子: あとは…生きてるものは 獲っちゃダメなんでしたっけ?
  4134. アシュリー・テイラー: そうデス!
  4135. 真井 あかり: あっ、欲張って たくさん持ち帰るのもダメ
  4136. アシュリー・テイラー: Yeah! 必要な分だけにしまショウ!
  4137. 理子&あかり: はーい!
  4138. 由良 蛍: アシュリーがいてくれるとぉ… すごく助かるなぁ~…
  4139. 真井 あかり: だからってサボっちゃダメよ!
  4140. 由良 蛍: ふわぁ~…い~…
  4141. 真井 あかり: あくびしながら返事しないの…
  4142. 千秋 理子: ピンク色の可愛い貝殻 いっぱい拾えたね
  4143. 千秋 理子: なんていう貝殻なんだろう?
  4144. 真井 あかり: 図鑑を持ってきたから 調べてみましょう
  4145. アシュリー・テイラー: 準備がいいデスネー
  4146. 由良 蛍: あかりはそういうところ しっかりしてるからぁ~…
  4147. 千秋 理子: 茶色い貝は、ハマグリだね
  4148. 真井 あかり: …なんで丸い穴が あいてるのかしら?
  4149. 千秋 理子: 図鑑には書いてない?
  4150. 真井 あかり: …………なさそう
  4151. アシュリー・テイラー: それは、他の貝に 食べられちゃったからデスヨー
  4152. 理子&あかり: えっ!?
  4153. 由良 蛍: 二枚貝が好物の巻貝がぁ… いるんだよぉ~…
  4154. 由良 蛍: なんて名前だったかなぁ~…
  4155. アシュリー・テイラー: 図鑑借りマスネー
  4156. アシュリー・テイラー: …いまシタ! この子デース!
  4157. 千秋 理子: ツメタガイ…?
  4158. 真井 あかり: あっ、このページには
  4159. 真井 あかり: 二枚貝に穴をあけて食べちゃう って書いてあるわ!
  4160. 千秋 理子: 貝って貝を食べるんだ… ちょっと怖いね
  4161. 真井 あかり: …う、うん
  4162. 千秋 理子: あかりちゃん 次はあっちへ行ってみよう!
  4163. 真井 あかり: ええ!
  4164. 由良 蛍: 元気だねぇ~…
  4165. アシュリー・テイラー: 仲がいいのはいいことデス!
  4166. 千秋 理子: あのね…
  4167. 真井 あかり: 何?
  4168. こそこそ…
  4169. 真井 あかり: わかったわ 私も手伝ってあげる
  4170. 千秋 理子: ありがとう!
  4171. 真井 あかり: ちょっと向こうの方に 行って来るわ!
  4172. 由良 蛍: ん~…いいけどぉ~… 勝手に遠くへ行かないでぇ~…
  4173. アシュリー・テイラー: …………
  4174. アシュリー・テイラー: (仲がいいのはいいことデス)
  4175. アシュリー・テイラー: (でも、ちょっと 寂しいかもしれまセン…)
  4176.  
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  4178. アシュリー・テイラー: …………
  4179. 由良 蛍: ん~…どーしたのぉ~…? 疲れちゃったぁ~…?
  4180. アシュリー・テイラー: No… 疲れたわけではないのデスガ…
  4181. アシュリー・テイラー: 理子も同年代と 遊ぶ方が楽しそうで
  4182. アシュリー・テイラー: ちょっと寂しく 思ってしまいまシタ…
  4183. 由良 蛍: ん~…
  4184. アシュリー・テイラー: Oh!理子が楽しいのは もちろん、いいことデスヨー!
  4185. 由良 蛍: それはちょっとぉ… 違う気がするけどなぁ~…
  4186. アシュリー・テイラー: Huh?
  4187. アシュリー・テイラー: デスガ…遊んでいるときも 他のことが気になる様子でシタシ
  4188. アシュリー・テイラー: 私と遊ぶのは 退屈だったのかなと思いマス…
  4189. 由良 蛍: そーかなぁ~… 私にはそう見えなかったけどぉ…
  4190. 千秋 理子: どうしよう… 全然見つからない…
  4191. 千秋 理子: もうすぐ帰らないといけない 時間なのに…
  4192. 真井 あかり: すごく珍しいものだものね…
  4193. 千秋 理子: うん…
  4194. 真井 あかり: …………
  4195. 真井 あかり: …あっ、そうだ! 確か、あっちに…
  4196. 真井 あかり: 理子さん、行こう!
  4197. 千秋 理子: えっ…?
  4198. 真井 あかり: 漂流物が 流れ着きやすいところがあるの!
  4199. アシュリー・テイラー: 走り出しまシタ!?
  4200. 由良 蛍: え~…? なんでぇ…急にぃ~…?
  4201. アシュリー・テイラー: 追いかけまショウ!
  4202. 由良 蛍: ん~… 見失ったらマズいもんねぇ~…
  4203. 千秋 理子: あった! あったよ、あかりちゃん…!
  4204. 真井 あかり: 本当だ! すごい!
  4205. アシュリーの声: 理子! あかり!
  4206. 理子&あかり: ――っ!?
  4207. 真井 あかり: わっ! アシュリーさん来ちゃった!
  4208. 千秋 理子: ど、どうしよう…! え、えっと…
  4209. アシュリー・テイラー: 急に走り出して どうしたんデスカ?
  4210. 千秋 理子: ご、ごめんなさい… こっち来ちゃダメ…!
  4211. アシュリー・テイラー: えっ…?
  4212. 由良 蛍: 追いついたぁ~… 目の届くところにぃ…
  4213. 由良 蛍: ってぇ…気まずそうだけどぉ… どーしたのぉ~…?
  4214. アシュリー・テイラー: …やっぱり、同年代同士の方が 楽しいデスヨネ…
  4215. 由良 蛍: ん~…?
  4216. 千秋 理子: えっ…!? ごめんなさい!
  4217. 千秋 理子: そんな風に 誤解させちゃってたなんて!
  4218. 真井 あかり: そ、そうです! 仲間はずれとかじゃなくて!
  4219. 由良 蛍: ん~…アシュリー…
  4220. 由良 蛍: まずはぁ…理子の話を 聞いてあげればぁ~…?
  4221.  
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  4223. アシュリー・テイラー: …………
  4224. 千秋 理子: えっと…
  4225. 千秋 理子: 実はこれを アシュお姉さんにあげたくて
  4226. アシュリー・テイラー: えっ、これって…
  4227. アシュリー・テイラー: Wow!! まん丸なシーグラス、デス!
  4228. 千秋 理子: 映画を観たあと 寂しそうだったから
  4229. 千秋 理子: 元気になってほしくて…
  4230. 千秋 理子: 今日、こっそり探して
  4231. 千秋 理子: きれいに包んでから プレゼントしよう
  4232. 千秋 理子: って思ってたんです…
  4233. アシュリー・テイラー: 理子…
  4234. 千秋 理子: 内緒にしててごめんなさい
  4235. アシュリー・テイラー: 私もごめんなさいデス 誤解してまシタ…
  4236. 千秋 理子: えっと…拾ったままだけど もらってくれますか?
  4237. アシュリー・テイラー: Yup!! Thank you so much!
  4238. アシュリー・テイラー: もちろんデス! 理子、ありがとうございマス!
  4239. アシュリー・テイラー: とっても元気が出まシタ!
  4240. 千秋 理子: えへへ よかった…
  4241. 由良 蛍: めでたしめでたしぃ~… だねぇ~…
  4242. 真井 あかり: 誤解されちゃってて ちょっと、ひやっとしたけどね
  4243. 千秋 理子: あかりちゃんは 漂流物を種類ごとに分けて
  4244. 千秋 理子: どんなものがあったか 紹介することにしたんだ?
  4245. 真井 あかり: ええ、図鑑の受け売りに ならないようにするのが
  4246. 真井 あかり: ちょっと大変だけど 結構、まとまってきたわ
  4247. 千秋 理子: …本当だ! すごいね
  4248. 真井 あかり: えへへ~…
  4249. 真井 あかり: 理子さんは、箱の中に漂流物を 並べて浜辺を再現してるのね
  4250. 真井 あかり: すごくかわいい…
  4251. 千秋 理子: えへへっ 模造紙にはね
  4252. 千秋 理子: 拾ったときの状況や 写真を載せるつもりなんだ
  4253. 由良 蛍: お招きありがとぅ~…
  4254. アシュリー・テイラー: ひとりでまとめるより
  4255. アシュリー・テイラー: ふたりでまとめた方が 楽しいデス!
  4256. アシュリー・テイラー: 私たちも見届けられマスヨー!
  4257. 由良 蛍: ん~…そーだねぇ~…んん~…
  4258. アシュリー・テイラー: …もしかして 寝ちゃいそうデスカ?
  4259. 由良 蛍: ん~…すぅ…
  4260. アシュリー・テイラー: …Oh 寝ちゃいまシタネ…
  4261. 真井 あかり: すみません…
  4262. 真井 あかり: 映画を観ているときは 寝ちゃわないようにするので…
  4263. アシュリー・テイラー: 気にしてまセンヨー!
  4264. アシュリー・テイラー: それより、自由研究の進捗は どうデスカ?
  4265. 真井 あかり: もう少しで終わりそうです
  4266. 千秋 理子: わたしもです…!
  4267. 千秋 理子: あの、アシュお姉さん
  4268. 千秋 理子: まん丸なシーグラスの写真を 撮らせてもらってもいいですか?
  4269. 千秋 理子: 模造紙に載せたくて…
  4270. アシュリー・テイラー: もちろん、いいデスヨ! いいカメラもありマス!
  4271. 理子&あかり: できた!
  4272. アシュリー・テイラー: Excellent job!! ばっちりデスネー!
  4273. 千秋 理子: えへへ…ありがとうございます 次は映画見るんですよね?
  4274. 真井 あかり: アシュリーさんのお父様が 撮った映画でしたっけ?
  4275. 真井 あかり: 楽しみです…!
  4276. 真井 あかり: あっ、蛍を起こさないと…
  4277. アシュリー・テイラー: では、私は熊乃介を 連れてきマスネー!
  4278. アシュリー・テイラー: 熊乃介と理子からもらった
  4279. アシュリー・テイラー: まん丸なシーグラスと一緒に 映画鑑賞デス!
  4280. 千秋 理子: はいっ…!
  4281.  
  4282. 517086-16_pVeLS [Girls Across the Shore branch (Mel/Meru & Kanae)]
  4283. やちよ: お買い物、つきあってくれて ありがとう
  4284. やちよ: 二葉さん、ういちゃん
  4285. うい: どういたしまして!
  4286. さな: …すみません、やちよさん
  4287. さな: ねこさん印の色鉛筆… 買ってもらっちゃって
  4288. やちよ: 気にしないで いつも手伝ってくれてるお礼よ
  4289. うい: えへへ…
  4290. うい: 前からさなさんと 欲しいって話してたんだよね
  4291. うい: これで楽しく絵が描けそう!
  4292. さな: 私も…お話作り がんばります
  4293. うい: それじゃ、帰ろう!
  4294. やちよ: …………
  4295. うい: …どうしたの、やちよさん?
  4296. やちよ: あ、ごめんなさい なんでもないわ
  4297. さな: ポスターを じっと見てましたけど…
  4298. 夏の音楽フェスティバル 「神浜音楽祭」今年も開催決定!
  4299. 新人発掘オーディションも実施! あなたのバンドも ルーキーステージに出演できるかも!?
  4300. やちよ: 昔のことを思い出していたのよ
  4301. さな: 昔のこと、ですか…?
  4302. やちよ: ええ ちょうどこの場所でね…
  4303. かなえ: …ん… 夏フェス…出られるわけ?
  4304. やちよ: 入賞すれば出演できるみたいね …競争率、凄そうだけど
  4305. みふゆ: でも、かなえさん… 曲とか揃うんですか?
  4306. かなえ: ………… …今から作れば…間に合うかも
  4307. みふゆ: えっ…本気なんです?
  4308. さな: …そんなことが…
  4309. やちよ: 今となっては、決して叶わない 夢になってしまったけれど…
  4310. うい: …………
  4311. うい: かなえさん…前に みかづき荘にいた人ですよね?
  4312. やちよ: …ええ、かなえとメルのことは 今でも家族みたいに思っているわ
  4313. さな: 私…どんな人たちだったのか… 詳しく聞いたこと、ないかも
  4314. さな: …いろんなことが あったんですね
  4315. やちよ: そうね
  4316. やちよ: もしも運命が ほんの少し違っていたら
  4317. やちよ: 今はもういない子たちにも 違う未来があったのかしら…?
  4318. さな&うい: …………
  4319. うい: …できた! 絵本、完成したね
  4320. さな: ありがとう、ういちゃん
  4321. うい: 今回は大変だったね いろんな人に話を聞いたし!
  4322. さな: ちょっとヤングアダルト風? …って言うんでしょうか
  4323. さな: こういうお話を作ったのは 初めてなので…
  4324. さな: 取材、がんばっちゃいました
  4325. さな: やちよさんに読んでもらうの… 少し、どきどきします
  4326. うい: 一緒に、見せにいこう!
  4327. 絵本のページ: そこは、「もうひとつの神浜市」…
  4328. 絵本のページ: この世界によく似ているけれど みんなが少しだけ魔法を使える世界
  4329. 絵本のページ: そんな世界の片隅の、とあるメイドカフェで… …おや? 何かが始まるみたいですよ
  4330. メル: はぁ…
  4331. 牧野 郁美: …どうしたの、メルちゃん 元気ないよぉ?
  4332. メル: 実は…その…
  4333. 牧野 郁美: なぁに?
  4334. メル: ボクの占いが当たらないと ひそかに噂になってるですよ
  4335. 牧野 郁美: えっ…そうなのぉ?
  4336. 牧野 郁美: メルちゃんの占いコーナーは くみのお店でも大人気だし
  4337. 牧野 郁美: 絶対当たるって 評判だったんじゃ?
  4338. メル: 前は…そうだったんですが… …最近、調子がおかしいんです
  4339. メル: 英語の資格を受験するっていう お客さんを占ったら
  4340. メル: 占い結果とは逆に 不合格になったりとか…
  4341. 牧野 郁美: メルちゃんはぁ、占いで その人の未来が見えるんだよね?
  4342. メル: そう… それがボクの魔法の力です!
  4343. メル: タロットを並べると 近い未来が鮮明に見えるです!
  4344. メル: そのときも、合格になる未来が はっきり見えたのに…
  4345. 牧野 郁美: 外れちゃったんだ…
  4346. メル: はい…そんなのが続いたせいで 「絶対外れる」って噂が立って
  4347. メル: 悪い結果の方が 喜ばれることもあるぐらいで…
  4348. カランコロン
  4349. 牧野 郁美: あっ、お帰りなさいませぇ~ ご主人様っ♪
  4350. あっ…あの…占いコーナーって …どちらでしょう?
  4351. 牧野 郁美: メルちゃん、出番だよっ!
  4352. …あの、どうでした? 占いの結果は…?
  4353. メル: うーん… 見える、見えるです
  4354. (ごくっ…)
  4355. 私、夫と… 仲直りできるでしょうか?
  4356. メル: はい!
  4357. メル: 笑顔で仲直りしている おふたりの未来が見えたですよ!
  4358. …!
  4359. そう…ですか…
  4360. メル: はい、それはもう、はっきりと!
  4361. …安心しました ありがとう…ございました
  4362. メル: うわぁ~ん!
  4363. 牧野 郁美: め、メルちゃん…
  4364. メル: 今の人、ボクの占いが 絶対外れると信じてるですよ!
  4365. メル: だから「仲直りできる」と聞いて 逆にガッカリしてたです!
  4366. 観鳥 令: …うん、正直そう見えたよね
  4367. 牧野 郁美: ちょっとぉ、令ちゃん! 何しれっと混ざってるの!
  4368. 牧野 郁美: キッチンのお仕事 まだあるんじゃないのっ?
  4369. 観鳥 令: 今日のバイトは終わり これから帰るとこだよ
  4370. 観鳥 令: でも、困ったね…
  4371. 観鳥 令: 安名ちゃんの魔法の力… どうなっちゃったんだろう?
  4372. 牧野 郁美: 占い師の悩みって 誰に相談すればいいのかなぁ…?
  4373. メル: …あっ!
  4374. 牧野 郁美: どうしたのぉ?
  4375. メル: そういえば最近 ボク自身を占ってなかったです!
  4376. メル: 自分の未来を占ってみれば 何かわかるかも…?
  4377. 観鳥 令: …なるほどね ちょっと試してみたら?
  4378. 「お待たせしました! 神浜音楽祭ルーキーステージ いよいよ開幕です!」
  4379. 「登場するのは、この夏の ベスト・ニューカマーこと、その名も…」
  4380. ワァアアーッ!!!
  4381. 牧野 郁美: …どう? 何か見えた?
  4382. メル: はいです…
  4383. メル: ボクたちが、バンドを組んで 夏フェスに出てたです…
  4384.  
  4385. 517087-17_pVeLS
  4386. 牧野 郁美: 神浜音楽祭の募集ページ 見つけたよっ!
  4387. 牧野 郁美: ほんとに新人バンドでも 夏フェスに出演できるみたい!
  4388. 観鳥 令: …いやいや、激戦を勝ち抜いて オーディション入賞が条件だよ?
  4389. 観鳥 令: だいたいさ…
  4390. 観鳥 令: いつもメイドカフェのステージで 歌ってる牧野チャンはともかく
  4391. 観鳥 令: なんで観鳥さんと 安名ちゃんがバンドを…?
  4392. メル: 理由はわかりませんが… でも、はっきり見えたです!
  4393. メル: 郁美さんがボーカルで 令さんがドラムで
  4394. メル: ボクと、あとひとり知らない人が ギターみたいなのを持ってたです
  4395. 観鳥 令: それたぶん、どっちかがギターで どっちかがベースだからね?
  4396. メル: おぉ!?…もしかして令さんは バンドの経験が?
  4397. 観鳥 令: いや、全然ないけど?
  4398. 牧野 郁美: 令ちゃんもメルちゃんも 素人ってことかぁ~
  4399. 牧野 郁美: なのにオーディションで入賞して 夏フェスのステージに…?
  4400. 観鳥 令: それが安名ちゃんの占った未来? ちょっと実現しそうもないけど…
  4401. メル: …はい…そうですよね… 自分でもそう思うです…
  4402. 牧野 郁美: う~ん、メルちゃんは それでいいのかなっ?
  4403. メル: えっ…?
  4404. 牧野 郁美: 確かに最近、占いの調子が 悪かったのかもしれないけど
  4405. 牧野 郁美: メルちゃん自身が 信じられなくなっちゃったら
  4406. 牧野 郁美: 誰がメルちゃんの占いを 信じてくれるのっ?
  4407. メル: (はっ…)
  4408. メル: そうです! 郁美さんの言う通りです!
  4409. メル: ボクは自分の見た未来を 信じるです!
  4410. メル: たとえ無理めの運命でも 自分たちで叶えればいいんです!
  4411. 観鳥 令: えっ… 待って、そういう流れ?
  4412. メル: 今からバンドを組んで 夏フェス出演を目指すです!
  4413. 絵本のページ: そして翌日… どうやら、最後のメンバーが 現れたみたいです
  4414. カランコロン
  4415. 牧野 郁美: お帰りなさいませぇ~ ご主人様っ♪
  4416. かなえ: あの…メンバー募集を見て 連絡した雪野だけど…
  4417. メル: あーっ、この人です! 昨日見た4人目の人!
  4418. かなえ: 昨日…見た??
  4419. かなえ: 占いで見た未来を 実現するために、バンドを…?
  4420. メル: そうです! 夏フェス、一緒に出ましょう!
  4421. かなえ: …いいね… 気合…入ってる
  4422. 牧野 郁美: かなえちゃんのパートは ギターだっけ?
  4423. かなえ: ん…一応
  4424. かなえ: ギターかベースの どっちか募集、ってあったから…
  4425. メル: …と、いうことは ボクはベースですね!
  4426. 観鳥 令: こんな雑な募集でよく来たよね…
  4427. メル: ボクの占った未来が 実現しつつある証拠ですよ…!
  4428. かなえ: …早速、スタジオ入る? 時間あれば…だけど
  4429. 牧野 郁美: 時間はあるけど… でも、楽器とか…
  4430. かなえ: スタジオで…借りればいい
  4431. ボワ~~~~~ン
  4432. 牧野 郁美: ~♪~♪~♪
  4433. 牧野 郁美: あの子はキュンキュンでぇ~?
  4434. かなえ: うん、ボーカルはいい感じ 声、ちゃんと出てるし
  4435. かなえ: …あんまり…バンド風の 歌い方じゃないけど…
  4436. 観鳥 令: メイドカフェの アイドルだからね…
  4437. かなえ: で、ベースとドラムだけど…
  4438. かなえ: …ごめん…未経験者だって 知らなかった…
  4439. ボワ~~~~~~~~ン
  4440. メル: もー、ボワボワうるさいです!
  4441. かなえ: それ、アナタのベースの音… ハウってる…
  4442. メル: ハウ…?
  4443. かなえ: ハウリング…ノイズの一種 音量、絞れば消える
  4444. メル: こうですか!?
  4445. ボワ~~~~~~~~~~!!!
  4446. 牧野 郁美: ボリューム上がったよっ!?
  4447. 観鳥 令: 夏フェスは遠そうだね…
  4448. ドタタタタッ…ドタタタタッタッ…
  4449. かなえ: ん…パワーある ドラムの才能あるかも
  4450. 観鳥 令: 単純なリズムはいいんだけどさ… ちょっと複雑なことをすると
  4451. ドッ… ドッドッ… タタタッタ…
  4452. メル: …一気に素人っぽく!
  4453. 観鳥 令: いやさ、両手両足で それぞれ別のリズム刻むとか
  4454. 観鳥 令: 人類には不可能でしょ?
  4455. かなえ: まあ…今日が初めてだし… こんなものだと思う
  4456. 牧野 郁美: これでオーディションに 間に合うのかなぁ~?
  4457. 牧野 郁美: 何ヶ月かあとには 審査員の前で演奏するんだよね?
  4458. かなえ: …この4人でも、できそうな曲… 作ってみる…
  4459.  
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  4461. 絵本のページ: そんな感じで始まった、4人のバンド 演奏の方も、練習を重ねるうちに なんとか形になってきたみたいですが…?
  4462. 牧野 郁美: ♪たとえ明日の銀河が キミのいない世界だとしても
  4463. 牧野 郁美: ♪僕の音符はいつまでも キミを奏で続ける
  4464. ジャーン
  4465. ダダン!
  4466. 観鳥 令: うん、バッチリ録れてる! いいPVが作れそう
  4467. メル: 1次審査には サウンドと映像が必要ですからね
  4468. メル: いい感じに編集お願いするです
  4469. 観鳥 令: ちなみに撮影本番はまだだよ? 今日はリハーサル!
  4470. 観鳥 令: 提出する音源も まだ完成してないしね
  4471. かなえ: またこの格好でここに来るわけ…
  4472. かなえ: なんか… ひとりだけメイドさんだし
  4473. 観鳥 令: ボーカルの牧野チャンが 目立つ方が美味しいでしょ?
  4474. 観鳥 令: メイドカフェのアイドルなんだし ガンガン推してかないとね!
  4475. 牧野 郁美: …あ、それ 今さら気になったんだけど
  4476. 牧野 郁美: くみって、一応デビュー済みの アイドルな気がするんだけど
  4477. 牧野 郁美: そもそも…応募できるの?
  4478. 観鳥 令: そこはバッチリ調査済みだよ 応募条件なし、プロでもOK!
  4479. メル: ええっ? 新人発掘オーディションなのに?
  4480. 観鳥 令: ガチな審査員だけで決定するから ファンの組織票もない公平審査!
  4481. 観鳥 令: うちらの場合、アイドルが 素人とバンド組んだフリをして
  4482. 観鳥 令: 再デビュー狙い?…とか思われて むしろ厳しく審査されそうだし
  4483. 観鳥 令: そのへんは心配なし!
  4484. 牧野 郁美: 逆に心配になったよっ!?
  4485. かなえ: 要は…実力しだい…?
  4486. 観鳥 令: そういうこと
  4487. 観鳥 令: 明日はスタジオで練習だよね がんばろう
  4488. ターン
  4489. ダダトン!
  4490. 牧野 郁美: 令ちゃん、すごい! めちゃくちゃ上手くなってる~!
  4491. 観鳥 令: レコーディングも近いからね そろそろ仕上げないと
  4492. 絵本のページ: でも、そんななか ちょっぴり苦戦中の子がいるようです…
  4493. ボボボボ…ボヮーン
  4494. メル: あー!? また同じところをミスったです!
  4495. 牧野 郁美: メルちゃんは苦戦中だね~
  4496. メル: ベースがこんなに大変とは 知らなかったです…
  4497. かなえ: バンドは…ドラムとベースが命 リズムが狂うと曲が迷子になる
  4498. メル: 今、さらっと 重圧が増した気がするですよ!
  4499. 観鳥 令: でも、ちょっとヤバいね
  4500. 観鳥 令: そろそろ1次審査に出す音源の レコーディングが近いし
  4501. 観鳥 令: いっそ…ベースの録音も 雪野さんにやってもらう?
  4502. メル: えっ?
  4503. 牧野 郁美: かなえちゃん、ベース弾けるの?
  4504. かなえ: ん…少しなら…
  4505. 観鳥 令: 2次審査は 審査員の前で生演奏だから
  4506. 観鳥 令: それまでには自分で弾けるように 練習してもらうってことで
  4507. メル: …………
  4508. メル: (ボクが始めたバンドなのに… ボクが足を引っ張ってる?)
  4509. メル: …1週間 あと1週間くださいです!
  4510. メル: ボクの未来は ボクの力で叶えるです!
  4511. 牧野 郁美: メルちゃん…!
  4512. 観鳥 令: …そうだよね ゴメン、安名ちゃん
  4513. かなえ: …ふふ
  4514. 絵本のページ: それから1週間後… はたして練習の成果は表れたでしょうか?
  4515. ボボボボ…ボーン!
  4516. メル: どうです!
  4517. 観鳥 令: おー、バッチリ! 相当練習したとみたね
  4518. メル: ふふふ…あと、かなえさんに アレンジを変えてもらったです
  4519. かなえ: ん…ちょっとベースラインを 弾きやすくした
  4520. 観鳥 令: なるほどね
  4521. 牧野 郁美: 楽器の録音は終わったから あとは明日のボーカル入れだねっ
  4522. かなえ: それじゃ…今日は解散
  4523. かなえ: …曲のミックスとかは あたしがやっておくから
  4524. 牧野 郁美: …………
  4525. かなえ: (ん…ここのギターの音量… 少し下げた方がいい?)
  4526. かなえ: (あ…そういえば… バンド名、まだ決めてない)
  4527. かなえ: …………
  4528. かなえ: 『…たとえ明日の銀河が キミのいない世界だとしても』
  4529. かなえ: ここの歌詞…変えたい イマイチしっくりこない
  4530. コツ…
  4531. 牧野 郁美: …「キミ」を「僕」に変えたら どうかな?
  4532. かなえ: え…?
  4533. 牧野 郁美: …あ、何か手伝えないかと思って
  4534. 牧野 郁美: ミックスも曲のアレンジも 全部ひとりでやってて
  4535. 牧野 郁美: かなえちゃん 大変そうだったから…
  4536. 牧野 郁美: バンド経験者が 他にいないからって
  4537. 牧野 郁美: 全部ひとりで抱え込まなくても いいんだよっ?
  4538. かなえ: …………
  4539. かなえ: …さっきの案、いいと思う 歌詞の変更…任せていい?
  4540. かなえ: あと…バンド名決めたいから みんなに連絡お願い
  4541. 牧野 郁美: うんっ…!
  4542. 絵本のページ: そんなこんなで、4人はおたがい助け合いながら レコーディングを無事に終え オーディションに応募するための映像も 完成させたのでした
  4543. 牧野 郁美: ♪たとえ明日の銀河が 僕のいない世界だとしても
  4544. 牧野 郁美: ♪僕の音符はいつまでも 夏を刻み続ける
  4545.  
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  4547. 絵本のページ: みんなでがんばった甲斐あって バンドは1次審査を通過!
  4548. 絵本のページ: そして迎えた、オーディション2次審査 念願の夏フェス出演をかけて とっても厳しいと評判の審査員たちの前で 練習の成果を披露します…
  4549. 牧野 郁美: お客さん、いっぱいいるよっ!?
  4550. 観鳥 令: 入場フリーだからね 採点するのは審査員さんだよ
  4551. 牧野 郁美: 厳しそうな顔してるぅ~!
  4552. 観鳥 令: ここまで残ったバンド… 結構あるみたいだね
  4553. かなえ: 持ち時間は各バンド10分ずつ… 3日に分けて審査するって
  4554. 牧野 郁美: ライバルがまだ そんなに残ってるの!?
  4555. メル: あの…ところで いま気づいたんですが…
  4556. メル: ボク、人前で演奏するの 初めてです…
  4557. 観鳥 令: 観鳥さんもそうだな
  4558. かなえ: ――っ!?
  4559. かなえ: ごめん…肩ならしに… 一度はライブ入れとくべきだった
  4560. 牧野 郁美: かなえちゃん、バンドのこと いろいろ抱え込んでたし…
  4561. 牧野 郁美: そこまでやるのは 無理だったと思うよぉ?
  4562. メル: うぅ…まずいです… 緊張してきたです…
  4563. メル: バンド名も…強気すぎたです… 実力に見合ってない気が…
  4564. 観鳥 令: そんなときは審査員も観客も ジャガイモだと思えばいいよ
  4565. メル: そ…そうするです…!
  4566. 次のバンドの名前は… 「ベスト・ニューカマー」?
  4567. 最優秀新人…それがバンド名?
  4568. ふふっ、大きく出たね
  4569. 観鳥 令: いくぞっ!
  4570. 観鳥 令: 「1・2・3・4!」
  4571. 牧野 郁美: ♪知らない言葉が聞こえる みんなが昨日と違う言葉を話す
  4572. 牧野 郁美: ♪自由落下する世界の加速度に 僕は取り残された
  4573. かなえ: (みんな…いい感じ 練習の成果が出てる)
  4574. かなえ: (で、次のコーラス終わりで 演奏止めて、ブレイク…)
  4575. メル&郁美: ――っ!?
  4576. かなえ: …!
  4577. かなえ: (ここでブレイク? タイミング…間違えてた!)
  4578. かなえ: (忙しくしすぎて…自分の練習 あんまりしてなかったから!)
  4579. ボボン、ボボン
  4580. メル: コーラス、1回増やすです! そこで今度こそブレイクです!
  4581. 牧野 郁美: りょ~かいっ!
  4582. かなえ: ごめん…本番で…
  4583. 観鳥 令: 大丈夫、審査員さん 気づいてないっぽい!
  4584. …………
  4585. 観鳥 令: …はぁ…
  4586. 牧野 郁美: たった10分の出番なのに 今日はすっごく疲れたよぉ~
  4587. メル: でも、ベストは尽くしたです!
  4588. かなえ: ごめん…あたしのミスを みんなにフォローさせちゃって
  4589. かなえ: 大事な本番でやらかすなんて…
  4590. メル: かなえさんは慣れないボクたちを ずっとフォローしてくれたから
  4591. メル: 当然の恩返しです!
  4592. かなえ: …………
  4593. 牧野 郁美: …どうしたの?
  4594. かなえ: いや…
  4595. かなえ: バンドっていいな、って
  4596. 観鳥 令: ふふっ
  4597. メル: あとは…結果を待つのみです!
  4598. 絵本のページ: そしてついに、ルーキーステージの 出演バンドが発表される 運命の日がやって来ました
  4599. 絵本のページ: でも、残念ながら… 4人のバンドの名前は 読み上げられませんでした
  4600.  
  4601. 517090-20_pVeLS
  4602. メル: ぐず…悔しいです みんなでがんばったのに…
  4603. メル: 占いが外れたのもショックですが
  4604. メル: 入賞できなかったのが 本当に悔しくて…
  4605. 牧野 郁美: メルちゃん…
  4606. 観鳥 令: 本気で悔しいのは 本気でやったからなんだよね…
  4607. かなえ: …………
  4608. カランコロン
  4609. 牧野 郁美: あ、お帰りなさいませぇ~ ご主人様っ♪
  4610. あの…メルちゃん、いますか? 私、ずっと前にここで
  4611. 英語の資格が取れるか 占ってもらったんですけど…
  4612. メル: あー、あのときの!
  4613. メル: …ボクは合格だって言ったのに 確か…不合格になったって…
  4614. …はい、でも悔しくて もう1回チャレンジしたら
  4615. 今度は受かったんです! なので、その報告に!
  4616. メル: …え?
  4617. 観鳥 令: じゃあ、安名ちゃんの占いは…
  4618. 牧野 郁美: 当たってたってこと!?
  4619. はい! そのお礼を言いたくて…
  4620. 私のせいで、悪い評判が 広まっちゃったかもしれないから
  4621. 占い、ちゃんと当たったよって これからみんなに宣伝します…!
  4622. カランコロン
  4623. こんにちは
  4624. メル: あ…このあいだのお客さん…
  4625. はい、夫と仲直りできるかを 占ってもらった者ですけど…
  4626. 観鳥 令: その顔…うまくいったんですね?
  4627. はい! 占ってもらった通りでした!
  4628. かなえ: また当たった…?
  4629. 牧野 郁美: メルちゃんが見た未来は やっぱり本物だったってことぉ?
  4630. 観鳥 令: そうなるね…どっちも 何ヶ月も前の占いだけど
  4631. 観鳥 令: あっ…まさか…
  4632. メル: 何かわかったですか?
  4633. 観鳥 令: いや…ただの推測だけど…
  4634. 観鳥 令: もしかして安名ちゃん…前は 近い未来しか見えなかったけど
  4635. 観鳥 令: 何かのきっかけで力が強まって
  4636. 観鳥 令: 遠い未来まで 見えるようになったんじゃない?
  4637. メル: ――っ!?
  4638. メル: 言われてみると…前より遠くを 見ているような感覚が…
  4639. かなえ: 占いは、外れてたんじゃなくて… すぐには実現しなかっただけ?
  4640. 牧野 郁美: …悪い未来が 見えた人もいるんだよね?
  4641. メル: それも実現すると思うです…
  4642. メル: でも、そんなにひどい未来は なかったと思うです…
  4643. 観鳥 令: それはよかった
  4644. カランコロン
  4645. 牧野 郁美: あ、お帰りなさいませぇ~ ]って、あれっ?
  4646. かなえ: あの人、確か… 新人発掘オーディションの…
  4647. ああ、審査員をしていた者だよ
  4648. メル: あっ、ジャガイモさん?
  4649. ジャガイモ…?
  4650. 牧野 郁美: なんでもないです~!
  4651. 牧野 郁美: それで…あの ご用件…でしょうか?
  4652. うん、ベスト・ニューカマーの 溜まり場はここだと聞いてね
  4653. 君たち、いいバンドだったよって 伝えにきたんだ
  4654. 入賞させるには演奏力不足だし 1ヶ所、ミスってたようだけど…
  4655. メル: バレてたですか!?
  4656. でも、曲とセンスは光ってた 他にない個性を感じたよ
  4657. 来年は本物の 「ベスト・ニューカマー」に
  4658. なれるかもね
  4659. …審査席で待ってるよ
  4660. 郁美&令: ――っ!?
  4661. メル&かなえ: …!
  4662. かなえ: わざわざ…そのことを伝えに?
  4663. メル: ありがとうです! ボクたちの手で、今度こそ
  4664. メル: ボクの見た未来を 実現してみせるです!
  4665. 未来を実現…いいね
  4666. かなえ: ふっ…
  4667. 郁美&令: ふふふっ
  4668. 絵本のページ: こうして、4人の夏はひとまず終わりました
  4669. 絵本のページ: それは、未来の記憶のどこか… あるいは過去の可能性のどこかに 誰かがそっとしまった夏の物語
  4670. 絵本のページ: そこから始まる、いくつもの夢をつむぎながら 物語は眠り続けます …いつかあなたに、見つけてもらうまで
  4671. 絵本のページ: おしまい
  4672. やちよ: …………
  4673. さな: あっ…あの…
  4674. うい: どう…でした?
  4675. やちよ: …ありがとう、ふたりとも
  4676. やちよ: ふふ、子ども向けじゃない こんな物語も書けたのね
  4677. さな: はい… 挑戦してみました
  4678. うい: ちょっと違う未来があって ちょっと違う仲間がいて…
  4679. うい: どこかの世界に、こんな夏が 本当にあるといいですよね!
  4680. やちよ: そうね
  4681. やちよ: …誰も知らない、どこかに
  4682.  
  4683. 517091-21_pVeLS [Adjuster/Coordinator branch (Mitama & Rena)]
  4684. レナ: ちょっとちょっと! 大ニュースよ!
  4685. かえで: レナちゃん、どうしたの?
  4686. レナ: 絶対に参加しないと いけないイベントができたわ!
  4687. ももこ: それって…?
  4688. レナ: 「“ビーチでドキドキ! 夏の創作料理大会”よ!」
  4689. ももこ: つまり南凪区のビーチで開かれる 創作料理大会ってやつに
  4690. ももこ: さゆさゆが審査員として 参加するってことか
  4691. かえで: レナちゃん、自分の料理を 食べてもらいたいの?
  4692. レナ: 違うわよ! むしろ、それは怖いけど…
  4693. レナ: このイベントの優勝賞品が 勝者のためだけに行われる
  4694. レナ: スペシャルライブへの 招待券なのよ!
  4695. ももこ: へえ、そりゃ豪華だし レナとしても見逃せないな
  4696. かえで: 「ビーチでドキドキ」って… みたまさんが好きそうな名前だね
  4697. ももこ: 確かに…調整屋と 波長が合いそうなセンスだな
  4698. レナ: ちょっとやめてよね!
  4699. レナ: みたまさんが参加したら 大惨事なんだから
  4700. ももこ: だな、調整屋には悪いけど この話は秘密にしないと
  4701. <翌日…>
  4702. みたま: そういえば今度南凪区で開かれる 創作料理大会に参加するのよぉ
  4703. みたま: ビーチでドキドキ! って最高の響きよね
  4704. レナ: お、終わった… どうしよう…
  4705. かえで: レナちゃん…
  4706. かえで: みたまさんだけ仲間外れは 可哀想だよ~
  4707. レナ: ちっがうわよ! 審査員がさゆさゆなのよ!?
  4708. かえで: えっ…? あ…!
  4709. レナ: わかった?
  4710. レナ: あの毒料理を さゆさゆが食べるなんて
  4711. レナ: ぜーったいに 許されないことなんだから!
  4712. ももこ: さゆさゆだけじゃない… 審査員全員の命にかかわるぞ
  4713. かえで: ど、毒料理って…
  4714. レナ: みたまさんには悪いけど 他に言いようがないでしょ?
  4715. レナ: いったい何人の魔法少女が あの料理にやられたか…
  4716. ももこ: あれは人が食べちゃ いけないものだよ…
  4717. かえで: …でも、どうするの? 参加しないでなんて言えないよ…
  4718. みたま: 何を作ろうかしら♪
  4719. ももこ: それは、そうなんだよな…
  4720. レナ: 困ったわね…
  4721. 十七夜: 八雲、いるか む、十咎たちも来ていたのか
  4722. レナ: あ…十七夜さん!
  4723. レナ: ねえ、ももこ
  4724. レナ: 十七夜さんにみたまさんの フォローをしてもらえないかな?
  4725. ももこ: あー、その手があったか!
  4726. レナ: 十七夜さん、ちょっと お願いがあるんだけど…
  4727. みたま: 十七夜も創作料理大会に 出場してくれるなんて嬉しいわ
  4728. 十七夜: …うむ
  4729. ももこ: ごめん…十七夜さん! これもさゆさゆのためだ…!
  4730. 十七夜: 人命がかかっているなら仕方ない
  4731. 十七夜: あれを自分にフォローしきれるか いささか不安だが…
  4732. みたま: 他の魔法少女の子も何人か 参加するって言ってたけど
  4733. みたま: わたしと十七夜が組んだら 優勝しちゃうかもしれないわね
  4734. レナ: え、他にも魔法少女が 参加するの?
  4735. みたま: ええ 応援にも何人か行くみたいよ
  4736. ももこ: それだ!
  4737. かえで: 他の子にも、協力して もらうつもりなの…?
  4738. みたま: …?
  4739. <大会前日>
  4740. ももこ: …ということで 大会に参加する人は
  4741. ももこ: 調整屋の料理を監視して 隙を見てフォローしてくれるかな
  4742. レナ: 明日の料理大会で 死人を出さないためにもね!
  4743. 鶴乃: そういうことなら仕方ないね! 注意して見ておくよ!
  4744. 阿見 莉愛: 史乃さんだけじゃなく 他の審査員も危ないですもの
  4745. 夏目 かこ: で、できる限りの ことはします…っ!
  4746. レナ: さゆさゆのチケットどころじゃ なくなっちゃったわね…
  4747. かえで: みたまさんの監視で 料理してるヒマなさそうだもんね
  4748. さな: 私たち観戦組は…?
  4749. 純 美雨: 蒼海幇のメンバーも 一緒に見にいくし
  4750. 純 美雨: できそうなことあれば いつでも協力するヨ
  4751. 胡桃 まなか: 料理のアドバイスが必要なら まなかにお任せください!
  4752. 胡桃 まなか: それに、お父さんも 審査員で参加しますので!
  4753. ももこ: ウォールナッツのシェフも?
  4754. レナ: 大丈夫…? 舌がおかしくなったりとか…
  4755. ももこ: 調整屋の料理を食べないように 事前に伝えておくか?
  4756. かえで: そんなことできるの?
  4757. 鶴乃: だったら、さゆさゆにも 直接言えばいいんじゃ…?
  4758. 胡桃 まなか: 審査員って 審査を拒否できるんでしょうか
  4759. ももこ: 無理かもな… とにかく作戦会議を開くぞ!
  4760. レナ: これなら、なんとか なるかもしれないわね!
  4761. ももこ: それじゃあ、みんな 当日もよろしくな!
  4762. みんな: 「おー!」
  4763. <大会当日>
  4764. レナ: みんな、作戦は頭に入ったわね?
  4765. 阿見 莉愛: それは問題ないのだけど 胡桃さんがまだなのよ…
  4766. かえで: えっ… 変な料理になりそうだったら
  4767. かえで: うまくフォローできるように アドバイスしてもらう予定なのに
  4768. 阿見 莉愛: 家は出てるみたいなんだけど メッセージに反応がないのよね…
  4769. ひみかの声: あれ?みなさん お揃いでどうしたんです?
  4770. 阿見 莉愛: あなたたちこそどうしたの?
  4771. 眞尾 ひみか: 私は、大会で試食があると聞いて 見学に来たんですよー
  4772. 眞尾 ひみか: で、たまたま紗枝さんたちを 見かけて一緒に
  4773. 伊吹 れいら: 私も、まなか先生が 観戦するほどの大会なら
  4774. 伊吹 れいら: お料理の勉強になるかも… と思って来ました!
  4775. 桐野 紗枝: わたしも… 料理の知恵を探しに
  4776. 桐野 紗枝: (本当は、地域の催しって聞いて 人脈目的で来たんだけど…)
  4777. 阿見 莉愛: でしたら、彼女たちにも 協力してもらいませんこと?
  4778. ももこ: そうだね 人数は多い方が助かるよ!
  4779. 眞尾 ひみか: よくわかりませんが 私たちで力になれるなら!
  4780. 眞尾 ひみか: ね、紗枝さんっ
  4781. 桐野 紗枝: え、あぁ…もちろん
  4782. ももこ: じゃあ、気張っていこう!
  4783.  
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  4785. 枇々木 めぐる: 「さてさて始まりました! ビーチでドキドキ!夏の創作料理大会!」
  4786. 枇々木 めぐる: 「司会進行は南凪自由学園放送部の 枇々木めぐるが、水着で料理するみなさんに 負けないハイテンションでお届けします!」
  4787. 枇々木 めぐる: 「今回、審査員を務めますのは 話題の刀剣愛ドルこと史乃沙優希さん 洋食の名店・ウォールナッツのシェフなど… 地域の様々な方にご協力いただいています!」
  4788. 史乃 沙優希: よろしくお願いしますですぅ~
  4789. かえで: 遂に始まっちゃうね… 緊張してきたぁ…
  4790. レナ: あの作戦は 忘れていないわね?
  4791. ももこ: あぁ、開始したら調整屋の 用意した食材をすり替える
  4792. かえで: みたまさんたちの 隣のブースになれてよかったね
  4793. ももこ: 十七夜さんからの情報で 事前に聞いた範囲だと
  4794. ももこ: やばそうなものばっかり だったからな…
  4795. 枇々木 めぐる: 「ルールはいたってシンプル! 海の幸をメインにした料理を 1時間以内に完成させること!」
  4796. 枇々木 めぐる: 「それ以外は基本的になんでもあり! まさに料理のバーリトゥード大会!」
  4797. 枇々木 めぐる: 「さてさて、この南凪のビーチで ベストオブサマーシェフに輝くのは誰なのか! ビーチでドキドキ!夏の創作料理大会…」
  4798. 枇々木 めぐる: 「いま…いよいよスタートです!」
  4799. みたま: それじゃあ、食材オープン!
  4800. 十七夜: なっ…八雲、事前の話と 違ってないか…?
  4801. みたま: 今朝になって思いついてね いろいろ追加しちゃった♪
  4802. みたま: お魚も足りなかったから 朝釣りしてきたのよぉ
  4803. 枇々木 めぐる: 「おーっと、この食材は…な、なんだぁ!? 八雲・和泉ペアがロケットスタートかぁ!?」
  4804. ももこ: あぁ…! もう想定外のことが起き始めた!
  4805. レナ: なんか、ヤバい色の ソースがあるんだけど!?
  4806. かえで: れ、レナちゃん… あれまずいよ!
  4807. レナ: はぁ? あれってどれ?
  4808. レナ: 見た目から全部ヤバいんだけど
  4809. かえで: あの大きなイモ! 生のキャッサバだよあれ!
  4810. レナ: 何よそれ、見た目的には 変わったイモってくらいだけど
  4811. かえで: えっと、タピオカとかの 原料なんだけど…
  4812. かえで: 料理の方法を間違えると 猛毒の植物なんだよぉ!
  4813. ももこ: いや…そんなの どこで手に入れてきたんだよ…
  4814. 鶴乃: それだけじゃないよ! あの魚、どう見てもフグだよね!
  4815. 鶴乃: フグ毒は本当に シャレにならないよ!?
  4816. 鶴乃: 調理には免許がいるはずだし 絶対に止めないと!
  4817. レナ: ちょっと! 運営のチェックとかないわけ!?
  4818. 鶴乃: さっき釣ってきたみたいだし チェックから漏れたのかも…?
  4819. 夏目 かこ: サプライズ食材が ふたつとも猛毒だなんて…!
  4820. 阿見 莉愛: どうにかして食材を 差し替えないと大変よ!
  4821. レナ: さっそく想像を超えてきたけど なんとかなるんじゃない?
  4822. レナ: 食材をすり替えるっていう目的は 変わってないんだから!
  4823. ももこ: あぁ、客席の仲間と一緒に この危機を乗り越えるぞ!
  4824. ももこ: そっちの準備は大丈夫か?
  4825. 純 美雨: 事情はわかたネ みたまの気を客席に逸らすヨ
  4826. さな: ただ、胡桃さんがまだ来ないのが 気がかりですね…
  4827. ももこ: だな…とりあえず今は 自分たちでできることをしよう!
  4828. 鶴乃: ねぇ、みたま! 客席で騒ぎが起きてるよ!
  4829. みたま: ええっ!? 何かあったのかしら?
  4830. 鶴乃: レナ! 今だよ!
  4831. レナ: 任せて!
  4832. レナ: キャッサバは山芋に 差し替えたわ!
  4833. かえで: フグも、カワハギに 入れ替えてきたよ…!
  4834. ももこ: バレなきゃいいけど… 調整屋が疑う様子はないな
  4835. みたま: 次はこれを入れて…と
  4836. 枇々木 めぐる: 「おっと、八雲・和泉ペアの鍋から 何やら毒々しいにおいが…! もしやこれは、彼女たちの隠し味… 秘伝のスパイスなのでしょうか!?」
  4837. レナ: 十七夜さんがフォローしてるけど
  4838. レナ: みたまさんが何かするたびに ひどくなってるわね
  4839. かえで: 毒じゃないかもしれないけど すごい色のスープだよぉ…
  4840. 阿見 莉愛: あれをどうにかできるのは もはや胡桃さんだけね
  4841. 鶴乃: そうだね… いったいどうしちゃったんだろう
  4842. 眞尾 ひみか: それなら私たちが 探してきましょうか!
  4843. 伊吹 れいら: これだけ遅れてるってことは 何かあったのかもしれませんし
  4844. 桐野 紗枝: そろそろ時間にも余裕が なくなってきたから…
  4845. ももこ: ああ、助かるよ…!
  4846. ももこ: こっちも、十七夜さんの フォローに回ろう!
  4847.  
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  4849. かえで: フォローって言うけど 結構難しいよぉ…
  4850. かえで: 私たち、みたまさんとは 別のチームだから
  4851. かえで: 堂々とやるわけにもいかないし…
  4852. さな: それなら 私に任せてください…っ!
  4853. さな: 私なら消えられるので バレずにできます…っ
  4854. レナ: それじゃあ、レナは十七夜さんの 姿になってフォローするわ
  4855. ももこ: それ、十七夜さんがふたりとか そういうことにならないか?
  4856. レナ: はぁ、バカにしてるの? バレないようにやるわよ!
  4857. みたま: あらぁ…このお鍋 いつの間に火が消えてたのかしら
  4858. 十七夜: 八雲、自分はあちらで食材を 切ってくる
  4859. みたま: ええ、わかったわぁ なんだかテキパキ進んでるわねぇ
  4860. 十七夜(レナ): み…八雲、こちらの味つけを 少し整えておいたぞ
  4861. みたま: えぇっ、十七夜!? さっき食材を切りにいったんじゃ
  4862. 十七夜(レナ): そんなのはすぐに終わった 八雲は少し休んでいても…
  4863. 枇々木 めぐる: 「な、なんと八雲選手! ケチャップ&チョコを鍋にイン! 我々が見ているのはビーチの料理革命か… はたまた滅びの瞬間なのかぁー!?」
  4864. 十七夜(レナ): ムリムリムリ!
  4865. 十七夜(レナ): もう、みたまさんに 何もさせたくないんだけど!
  4866. ももこ: それができたら 苦労はしないんだよな…
  4867. 十七夜(レナ): ももこ、敵情視察って感じで みたまさんの気を引いて!
  4868. 十七夜(レナ): その間に、さなと一緒に なんとかするわ!
  4869. ももこ: あぁ、やってみる
  4870. ももこ: よっ、調整屋 そっちの様子はどう?
  4871. みたま: きゃっ…なんだ、ももこね びっくりしたわぁ
  4872. ドボボボボ…
  4873. ももこ: お、おい調整屋…手元!
  4874. みたま: あらやだ、びっくりして 激辛ソースがこんなに…
  4875. 枇々木 めぐる: 「十咎選手のバッドタイミングな声掛けにより 鍋に解き放たれたのは恐ろしい量の激辛ソース! この偶然がもたらすのは料理の女神の微笑みか それとも暗黒微笑かぁ!?」
  4876. 鶴乃: (あれっ…魔力…?)
  4877. みたま: まぁ、これくらい大丈夫よぉ それより、ももこの方はどう?
  4878. みたま: …って あんまり進んでないのね?
  4879. かえで: あー…えっと… そうなんだよねー…あはは
  4880. みたま: こっちは順調なんだけどぉ… 何かが足りない気がするのよね
  4881. みたま: あっ…
  4882. ももこ: 調整屋、どうかしたか?
  4883. みたま: ひらめいた…!
  4884. みたま: わたし、海に食材を 捕りに行ってくるわぁ!
  4885. ももこ: はぁ…!? おい、何するつもりだ…!?
  4886. さな: わ、私…隠れてあとを 追いかけておくので…
  4887. さな: そっちはよろしくお願いします!
  4888. ももこ: わ、わかった!
  4889. レナ: …ねぇ! これってチャンスじゃない?
  4890. レナ: みたまさんがいない今のうちに 食べられる料理にするわよ!
  4891. かえで: でも、みんなでやったら さすがに怪しまれない?
  4892. 阿見 莉愛: お任せなさい! 打ち合わせしたでしょう?
  4893. 阿見 莉愛: 私の“隠蔽”の魔法で みんなの目を誤魔化すわ
  4894. 純 美雨: そしてすべてが終わった後に ワタシの“偽装”の魔法で
  4895. 純 美雨: 審査員からは、みたまたちが 普通に料理を続けていたように
  4896. 純 美雨: 事実を偽装するヨ
  4897. 夏目 かこ: 誰も気づいてないみたいです…!
  4898. レナ: ありがと! まなかがいないのは痛いけど…
  4899. レナ: レナたちでできるところまで 全力を尽くすわよ!
  4900. みんな: おー!
  4901. かえで: 私たちの料理は 全然進んでないし…
  4902. かえで: 本当にビーチでドキドキに なっちゃったよぉ
  4903. みたま: さて…と これでいいかしらぁ?
  4904. さな: えっ…ええっ…!?
  4905. さな: あぁぁ…みんなに 早く伝えないと…!
  4906.  
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  4908. 十七夜: …できうる限りのことは したと思うが…わからんな
  4909. かえで: 誰も味見はしてないけど… しなきゃ、だよね…?
  4910. ももこ: 元が元だからな でも、やるしかないか…
  4911. レナ: …レナがやる
  4912. ももこ: なっ!? おい、やめとけよレナ…
  4913. レナ: これは、レナが始めたことよ
  4914. レナ: さゆさゆを守るためなら レナのお腹くらい…!
  4915. まなかの声: ストーップ!
  4916. 阿見 莉愛: 胡桃さん…! まったく大遅刻ですわよ
  4917. 胡桃 まなか: すみません、つむぎさんに 捕まって…というのは今いいです
  4918. 胡桃 まなか: 話は聞かせてもらいました
  4919. 胡桃 まなか: さっそくですが、ここまで 何を使ってどうしたのか
  4920. 胡桃 まなか: 記憶している方は いらっしゃいますか?
  4921. 夏目 かこ: 全部は覚えていませんけど… 私の“再現”の力を使えば…
  4922. 胡桃 まなか: それじゃあ、お願いします
  4923. 夏目 かこ: ど、どうでしょう…
  4924. レナ: どうにかなりそう…?
  4925. 胡桃 まなか: …無理ですね まなかの理解を超えています
  4926. 阿見 莉愛: なんとかできないの!?
  4927. 胡桃 まなか: 食材の組み合わせが斬新すぎて 味の想像がつきません
  4928. 胡桃 まなか: これをどうにかするぐらいなら 全部捨てて最初から作り直します
  4929. 胡桃 まなか: なんとか料理の形を保ってるのが ある意味奇跡ですね
  4930. 十七夜: くっ…もはやここまでか…
  4931. レナ: そんな…
  4932. 胡桃 まなか: とは言え、みなさんのおかげで 生焼けなどはないですし
  4933. 胡桃 まなか: 毒になるようなものもないので 食べて死ぬようなことはないかと
  4934. 胡桃 まなか: 一応、これなら 食べることはできるはずです
  4935. 胡桃 まなか: これ以上、下手に 手をくわえなければ…ですが
  4936. 鶴乃: ほんと!?
  4937. 胡桃 まなか: ええ、まなかのお父さんも 審査員席にいますから
  4938. 胡桃 まなか: まなかにとっても 他人事ではありませんし
  4939. 胡桃 まなか: ここはまなかがひとつ 味見をしてみましょうか
  4940. ももこ: いや、それはやめた方が…!
  4941. パクッ…
  4942. かえで: た、食べちゃった…!
  4943. 胡桃 まなか: …………
  4944. レナ: 無言なのが怖いんだけど!?
  4945. 枇々木 めぐる: 「制限時間も残りわずかとなってきましたが それぞれ状況はどうでしょうか…!?」
  4946. 枇々木 めぐる: 「おっと、過激な料理で終始注目を集めてきた 八雲・和泉ペアの方から、香り立つ芳香が… これはベストオブビーチクッキングの予感!」
  4947. 鶴乃: あれっ…またこの魔力? これって、もしかして…
  4948. さなの声: み、みなさーん…!
  4949. さな: はぁ…はぁ…みたまさんが そろそろ…帰ってきます…っ!
  4950. さな: それから…
  4951. レナ: 大変…! みんな、早く元の位置に!
  4952. 純 美雨: ワタシも、急いで審査員に 魔法をかけてくるヨ!
  4953. さな: あ、あの…みたまさんが その…大変なものを…
  4954. さな: き…聞こえてない… どうしよう…
  4955. みたま: 戻ったわよぉ♪
  4956. みたま: あら、なんだかいい匂い 十七夜がやってくれたの?
  4957. 十七夜: …まぁな
  4958. 十七夜: …って、待て八雲 その手に持っているものは何だ
  4959. みたま: 獲れたての海の幸よぉ
  4960. 十七夜: 自分の目が狂っていなければ それはナマコとフジツボ…か?
  4961. みたま: うふふ、よくわかったわね アクセントになるかと思って
  4962. 十七夜: まさか、それを 入れるつもりか…!?
  4963. 枇々木 めぐる: 「さぁ、時はまさにエンドオブタイム! タイムアップまで残り1分!」
  4964. みたま: 当り前よぉ そのために捕ってきたんだからぁ
  4965. レナ: はぁ!? ナマコ!?
  4966. レナ: フジツボ…って あのキモいやつよね!?
  4967. ももこ: まずい…止めないと!
  4968. 枇々木 めぐる: 「残り5秒!」
  4969. 十七夜: 八雲…よせ…!
  4970. みたま: 投入~っと♪
  4971. ボチャン
  4972. 枇々木 めぐる: 「タイムアーップ!ここで終了です! さてさて、優勝の栄冠はいったい誰の手に…!」
  4973. レナ: お、終わった…
  4974. 枇々木 めぐる: 「それでは、審査員のみなさんに 試食をして頂きましょう! トップバッターは史乃沙優希さん! 八雲・和泉ペアの料理をどうぞ!」
  4975. 史乃 沙優希: それでは、いただきますですぅ~
  4976. あーむっ もぐもぐ
  4977. 史乃 沙優希: うっ…うぅ…
  4978.  
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  4980. 史乃 沙優希: うっ…うぅ…
  4981. レナ: あぁ…レナのせいで… さゆさゆが…
  4982. 枇々木 めぐる: 「おっと、審査員の史乃沙優希さん 何やら異変でしょうか…!? 料理をひと口食べるや否や うなりごえをあげているようですが…」
  4983. 史乃 沙優希: う…うぅ…と、とと…
  4984. 史乃 沙優希: とっても美味しいですぅ~!
  4985. レナ: へっ!?
  4986. ももこ: そんな馬鹿な…!
  4987. みたま: あら、失礼しちゃうわぁ 味には自信あったのよ?
  4988. 史乃 沙優希: 「山芋のとろっとした触感に 灼けた刃物のような刺激的な辛さ… そして、口の中にふわふわ広がる海の香り… これぞ、まさに…絶品!ですぅ」
  4989. レナ: うそでしょ!? それじゃあ…
  4990. レナ: キャッサバは山芋に 差し替えたわ!
  4991. みたま: あらやだ、びっくりして 激辛ソースがこんなに…
  4992. レナ: ああいうのが、うまいこと いってたってこと!?
  4993. 鶴乃: これって、たぶん… 実況のめぐるちゃんの魔法かも?
  4994. 枇々木 めぐる: 「十咎選手のバッドタイミングな声掛けにより 鍋に解き放たれたのは恐ろしい量の激辛ソース! この偶然がもたらすのは料理の女神の微笑みか それとも暗黒微笑かぁ!?」
  4995. 鶴乃: (あれっ…魔力…?)
  4996. 枇々木 めぐる: 「おっと、過激な料理で終始注目を集めてきた 八雲・和泉ペアの方から、香り立つ芳香が… これはベストオブビーチクッキングの予感!」
  4997. 鶴乃: あれっ…またこの魔力? これって、もしかして…
  4998. 純 美雨: 確かに、ワタシもあのとき 覚えのある魔力を感じたヨ
  4999. 鶴乃: わたしたちは、あの実況に 応援されたことがあるもんね
  5000. レナ: どういうことよ?
  5001. 鶴乃: あ、めぐるちゃんの実況には 魔法の力があるみたいで
  5002. 鶴乃: よくも悪くも場を盛り上げて 実況されてる人たちは
  5003. 鶴乃: 実力以上のものが出せちゃう… ということがあるみたい!
  5004. 胡桃 まなか: 実はまなかが試食した時点で 結構、美味でしたよ
  5005. 胡桃 まなか: 調理過程を知っていただけに 脳が追いつきませんでしたが
  5006. 十七夜: そうだったのか…!
  5007. 十七夜: だが、最後にいれたアレは どうなんだ…?
  5008. 胡桃 まなか: …フジツボとナマコですね お父さんが今、食べたみたいです
  5009. まなかの父: 「これは…ナマコですね? コリコリとした触感がクセになる… 味と触感がひと口ごとに表情を変える 万華鏡のような素敵な料理になっています」
  5010. まなかの父: 「おっ、こっちはフジツボですね…! 実は、フジツボは高級食材とも言われていて… とても美味しい甲殻類なんですよ」
  5011. まなかの父: 「エビやカニを思わせる独特の香りが 他の食材と絶妙にマッチして… スープの味のアクセントにもなっていますね」
  5012. まなかの父: ただ、下処理が難しいはずだけど 君は海の知識があるのかな?
  5013. みたま: それなら、海にいた漁師さんが そのまま鍋に入れるって言ったら
  5014. みたま: 下処理したものを くださったんです
  5015. みたま: なまことフジツボの美味しさを 是非、広めてきてほしいって
  5016. まなかの父: なるほど…
  5017. まなかの父: 地元の海の幸の魅力も引き出せて とてもいい料理ですね
  5018. みたま: ありがとうございます♪
  5019. 枇々木 めぐる: 「さてさて、それではお待ちかね! ビーチでドキドキ!夏の創作料理大会! 優勝者の発表を行います! 優勝の栄冠はいったい誰の手に渡るのか…!?」
  5020. かえで: 結局、自分たちの料理は 全然作れなかったね~…
  5021. ももこ: 優勝賞品のライブは とっくにあきらめてたけどな
  5022. レナ: でも、結果的にさゆさゆが 喜んでくれたからいいわよ
  5023. 枇々木 めぐる: 「勝利の女神が微笑み 見事ベストサマーシェフに選ばれたのは… なな、なんと!八雲・和泉ペアだーっ!」
  5024. みたま: あらやだ! 十七夜、やったわぁ♪
  5025. 十七夜: …うむ、八雲が嬉しいなら まぁ…それでいいか
  5026. みたま: …?
  5027. 史乃 沙優希: それではぁ、優勝賞品として スペシャルライブの招待券を…
  5028. 史乃 沙優希: と思ったのですがぁ
  5029. 史乃 沙優希: 沙優希は素敵なお料理に 感動してしまったので
  5030. 史乃 沙優希: お礼に1曲、ここで 披露させてほしいんですぅ
  5031. 史乃 沙優希: よろしいでしょうかぁ?
  5032. みたま: ええ、もちろん! みんなで楽しみたいもの!
  5033. 史乃 沙優希: ではぁ、料理を作ってくれた みなさんへ感謝の気持ちをこめて
  5034. 史乃 沙優希: 沙優希、歌いますぅ♪
  5035. ももこ: マジか!?
  5036. かえで: よかったね、レナちゃん
  5037. レナ: うっ…うぅ… 頑張って良かったぁ…
  5038. <数日後>
  5039. ももこ: おーい調整屋ぁ
  5040. みたま: あらぁ、ももこたちね いらっしゃーい
  5041. 十七夜: む、十咎たちも来たのか 自分も今来たところでな
  5042. みたま: あ、そうだ これだけ人もいることだし
  5043. みたま: あの日に作った料理を ご馳走しようと思うんだけど…
  5044. ももこ: なっ!?
  5045. レナ: あんな奇跡二度と…じゃなくて 気遣わなくていいわよ!
  5046. かえで: う…うん! 私たち今お腹いっぱいだし!
  5047. みたま: そ~お? わたし、自信あるんだけど?
  5048. ももこ: いや、あのときのは… あれだよ、な、十七夜さん!
  5049. 十七夜: …そこで自分に振るのか?
  5050. 十七夜: ふむ…では、今日は自分たちが 料理をふるまおう
  5051. ももこ: そうそう、調整屋は ゆっくりしていてくれよ!
  5052. みたま: あらぁ、いいの?
  5053. ももこ: もちろん! 日頃の感謝ってやつだよ!な!
  5054. レナ: いつも世話になってるからね!
  5055. かえで: う、うんっ!
  5056. みたま: なぁに~もうっ みんな優しいじゃない
  5057. みたま: うふふっ 嬉しいわねぇ♪
  5058.  
  5059. 517096-26_pVeLS [Tokime Clan branch (Shizuka)]
  5060. 静香: 絶対に負けないわ… 時女本家の意地にかけて…!
  5061. 青葉 ちか: 私たちを敵に回すだなんて… 後悔させてあげます
  5062. 南津 涼子: へっ、大口を叩けるのも 今のうちだ!
  5063. すなお: 仲間内で戦いたくは ありませんが…
  5064. すなお: 今さら引き下がれません…!
  5065. ちはる: みんな…!
  5066. ちはる: うぅ… どうしてこんなことに…
  5067. ちはる: そう…事の発端は ちょっとした言い争いだった…
  5068. ちはる: わたしたち時女一族は、 静香ちゃんの帰省も兼ねて 集落へ遊びにいった
  5069. ちはる: それで静香ちゃんのお家で、 夕飯をごちそうになったんだけど…
  5070. <前日の夜>
  5071. 静香の母: さぁ、みんなお夕飯よ
  5072. ちはるの母: お腹空いたでしょう?
  5073. 南津 涼子: 面倒かけちまって悪ぃなぁ
  5074. ちはるの母: いいのよ 子どものうちは甘えておきなさい
  5075. 静香: あっ… 今夜はアユ料理なのね!
  5076. ちはる: 塩焼きに煮物… フライにアユ飯まで…!
  5077. ちはる: 至れり尽くせりだぁ!
  5078. すなお: 久しぶりのアユですね
  5079. ちはるの母: たくさん作ったから いっぱい食べてね
  5080. 静香の母: 今夜はふたりで作った共作よ! 主に広江さん作だけど…
  5081. 青葉 ちか: このアユって 集落の川で獲れたものですか?
  5082. 静香の母: ええ、そうよ
  5083. 静香の母: 臭みがまったくなくて とっても美味しいの
  5084. 静香: こんな素晴らしいアユを 食べられないだなんて…
  5085. 静香: 旭は本当に気の毒ねぇ
  5086. ちはる: 別の用事があったんだもん 仕方ないよ
  5087. すなお: ふふ、せっかくですし 温かいうちにいただきましょう
  5088. 静香: うん…やっぱり時女伝統の アユ飯は最高ね!
  5089. 青葉 ちか: ほどよい味つけが、素材の魅力を 最大限に引き出しています!
  5090. 南津 涼子: この塩焼きも最高だな!
  5091. すなお: シンプルにして至高ですね 素材の味がよくわかりますし
  5092. ちはる: とにかく 全部美味しいってことだよね!
  5093. ちはるの母: ふふ、喜んでくれて嬉しいわ
  5094. 静香の母: 最近、暗い話ばっかりで うんざりしていたから…
  5095. 静香: えっ…? どうしたの、何かあった?
  5096. 静香の母: 大したことじゃないわ
  5097. 静香の母: 一時期増えていた観光客が ちょっぴり減ってるだけよ
  5098. 静香: だ、大問題じゃない!
  5099. 静香の母: 心配いらないわよ 私たちでなんとかするから
  5100. 静香: でも…
  5101. ちはるの母: あら、お料理の皿が空っぽ! おかわりを持ってきてあげるわ
  5102. 静香の母: 他の子の分は 私が持ってくるわね
  5103. 静香: あっ…
  5104. すなお: ああ言われても 少し心配ですね…
  5105. ちはる: 観光のウリが「だいだいっこ」 だけじゃ足りないのかなぁ…
  5106. ちはる: 美味しいのに…
  5107. すなお: 世間的にはマイナーな果物だから ピンとこない…とか…?
  5108. 静香: そうねぇ…もう少し わかりやすい何かがあれば…
  5109. 南津 涼子: わかりやすく美味いモンなら 目の前にあるんじゃねぇか?
  5110. 静香: …ん…?
  5111. 青葉 ちか: ああ!なるほどですね
  5112. 静香: んんん~? あっ…
  5113. 静香: あーー! アユ…!
  5114. すなお: 確かに、このアユなら みんなに喜ばれそうです
  5115. 静香: 灯台下暗しとは まさにこのことだわ…!
  5116. ちはる: でも、ここに争いの火種が くすぶっていたなんて まだ誰も知らなかったんだ…
  5117.  
  5118. 517097-27_pVeLS
  5119. ちはる: アユ料理で集客かぁ… うん、いけそうな気がする!
  5120. 青葉 ちか: ちなみに静香さんはどの料理を 一番オススメしたいですか?
  5121. 静香: そうねぇ… やっぱりこのアユ飯かしら
  5122. 静香: 時女一族伝統のタレで炊き込む ご飯は絶品よ
  5123. ちはる: はい、静香ちゃん そのアユ飯をどうぞ!
  5124. 静香: ちゃる、ありがと! いただきまーす!
  5125. あむっ…
  5126. 南津 涼子: んー…アユ飯もいいけど、 ちょいと渋すぎねぇかな?
  5127. 南津 涼子: あたしは豪快な塩焼きを 前面に出すのがいいと思う
  5128. 静香: 塩焼きも美味しいけど 時女ならではって感じがしないわ
  5129. ちはる: ええっと… 両方出せばいいんじゃないかな
  5130. 静香: もちろん塩焼きも 欠かせない料理だけど…
  5131. 静香: みんなに魅力的に映る料理を 何にするかが問題なのよ
  5132. 静香: それに… やっぱりアユ飯の方が美味しいし
  5133. すなお: …静香、代々塩焼き派の 土岐家としては
  5134. すなお: 最後の言葉は 聞き捨てなりませんね
  5135. ちはる: ええ!? 代々…塩焼き派?
  5136. 静香: むっ…すなおも アユ飯を否定する気?
  5137. すなお: アユ飯は確かに 時女一族の伝統料理です
  5138. すなお: 一族を束ねるからこそ 塩焼きの良さを知るべきです
  5139. ちはる: ちょ、ちょっと落ち着いて! ちかちゃんも何とか言ってよぅ!
  5140. 青葉 ちか: 今日、集落のアユ料理を食べて 改めて思いました…
  5141. 青葉 ちか: 私は断然アユ飯の方が 好きだということを…!
  5142. ちはる: ちかちゃんの好みは 聞いてないよぅ!
  5143. 静香&ちか: むぅ…
  5144. 涼子&すなお: …………
  5145. 静香の母: あら…どうしちゃったの?
  5146. ちはる: それが…
  5147. 静香の母: なるほど…みんな集落の将来を 一生懸命考えてくれてるのね
  5148. ちはる: (そ、そういう問題かなぁ…?)
  5149. 静香の母: 大人が出しゃばる場面じゃないし
  5150. 静香の母: 納得いくまで とことんやりあうといいわ
  5151. ちはる: 助けてくれないんだ…
  5152. ちはる: …と、こんな経緯で時女一族は 静香ちゃん率いるアユ飯派… そして涼子ちゃん率いる塩焼き派の 真っぷたつに分断して…
  5153. ちはる: お互いの威信をかけた 勝負が始まっちゃったんだよね…
  5154. 南津 涼子: …で…決着つけようって いったい何をしようってんだ
  5155. 静香: 今の私たちに一番ふさわしい 対決…アユ釣りで勝負よ!!
  5156. 静香: 制限時間は90分でどうかしら
  5157. 南津 涼子: なるほど…そうきたか
  5158. 南津 涼子: だが、釣りの名人とやりあうのは いささか不公平じゃねぇか?
  5159. 静香: 私は「友釣り」で挑むわ
  5160. ちはる: 友釣り…オトリのアユを使う 難しい釣りだよね?
  5161. 静香: 初心者の涼子はエサ釣りでも 何でも好きな方法でOKよ
  5162. 静香: 私は友釣りシバリって ことでどう?
  5163. 静香: それと、ハンデとして涼子に…
  5164. 静香: そうね、釣った数に プラス10匹してあげる
  5165. 南津 涼子: そんなに?
  5166. すなお: 静香の腕前でも ちょっときついぐらいですね
  5167. すなお: 妥当だと思います
  5168. 南津 涼子: ふーん…わかった その条件で受けて立ってやるよ
  5169. 静香: そうこなくちゃね
  5170. 静香: ちゃるには審判を任せたいの お願いできる?
  5171. ちはる: うぅ…わかった…
  5172. 静香: 制限時間内に1匹でも多く アユを釣った方が勝ちよ
  5173. 静香: …それじゃ、始めましょ!
  5174. ググッ…
  5175. 静香: さっそくきたわね… まずは1匹!
  5176. バシャッ!
  5177. 南津 涼子: さすがだな 釣りの名人は伊達じゃねぇってか
  5178. 静香: これぐらい、まだまだ序の口よ!
  5179. ちはる: その後も静香ちゃんの方にアタリが続いた…
  5180. ちはる: 一方、涼子ちゃんの方はというと…
  5181. バシャバシャッ
  5182. 南津 涼子: よっと…! やっと1匹目…!
  5183. 静香: 随分ペースが遅いみたいね
  5184. 南津 涼子: こちとら初心者だからな ハンデ込みで勝てばいいのさ
  5185. ググッ…
  5186. 静香: 言ってるそばからまたきたわ! もうすぐ逆転するわよ?
  5187. 南津 涼子: チッ…!
  5188. バシャッ
  5189. 南津 涼子: (なんでアタリがこない?)
  5190. 南津 涼子: (なんとかしねぇと アユ飯派に負けちまう…!)
  5191.  
  5192. 517098-28_pVeLS
  5193. バシャッ
  5194. 南津 涼子: うーん、アタリが止まっちまった なんでだ…?
  5195. すなお: 涼子さん…ちょっと
  5196. 南津 涼子: なんだ?
  5197. 南津 涼子: アユに勘づかれてる?
  5198. すなお: はい…気迫を込めるあまり 水の流れを乱しているような…
  5199. 南津 涼子: 言われてみれば、バシャバシャ 水音立てまくってたかもな
  5200. 南津 涼子: つまり…気配を消せばいいのか?
  5201. すなお: ふふ、涼子さん 得意ですよね?
  5202. 南津 涼子: 寺育ちだからな!
  5203. 南津 涼子: …………
  5204. 静香: (涼子が黙った…? 潔く負けを認めたのかしら)
  5205. 青葉 ちか: あっ…あれ!
  5206. ググッ…
  5207. 南津 涼子: きたな…そら!
  5208. バシャッ!
  5209. ちはる: アユだーー!!
  5210. 南津 涼子: へへっ… さっそく釣果が出たな!
  5211. 静香: むっ…やるわね 私も負けていられないわ!
  5212. ちはる: 調子が出てきた涼子ちゃんに対抗して 静香ちゃんもペースを上げてきた
  5213. ちはる: そして…
  5214. ちはる: 時間だよ、勝負はここまで! 結果は…
  5215. ちはる: 静香ちゃんが15匹… 涼子ちゃんも15匹で…
  5216. ちはる: 引き分け!! ハンデの10匹込みだけどね
  5217. 南津 涼子: ちぇっ…勝利には もう一歩及ばなかったか…
  5218. すなお: それにしても怒涛の追い上げ、 かっこよかったですよ
  5219. 南津 涼子: なははっ! 嬉しいこと言ってくれるねぇ
  5220. 静香: くっ…
  5221. 静香: ハンデがあったとしても 初心者が私と肩を並べるなんて
  5222. 静香: まったく…恐れ入ったわ
  5223. 静香: でも…どうして急に 釣れるようになったのかしら
  5224. 南津 涼子: 心を無にして 自然と一体になったんだ
  5225. 南津 涼子: 人の気配を感じると、 アユは逃げるって
  5226. 南津 涼子: すなおに言われて気づいたんだよ
  5227. 南津 涼子: ま、これも日々の 修行の賜物ってやつかな
  5228. ちはる: それじゃあ、これにて 一件落着ってことで…
  5229. 静香: …まだよ まだ勝負はついてないわ
  5230. ちはる: え…?
  5231. 南津 涼子: ああ、塩焼き派とアユ飯派の話に ケリをつけねぇと
  5232. すなお: 次は私とちかさんで勝負するのは どうですか?
  5233. 静香: いいと思うわ ちか、任せたわよ!
  5234. 青葉 ちか: もちろんです!
  5235. すなお: そういうことで… ちゃる、引き続きお願いします
  5236. ちはる: うぅ~…わかったよぅ
  5237. ちはる: …それですなおちゃん 水着に着替えて何をするの?
  5238. すなお: 次の対決はシンプルに アユのつかみ獲りにしましょう
  5239. すなお: これなら力量に 差がつかないですし
  5240. ちはる: 確かに、釣りよりは 単純でわかりやすいかも!
  5241. 青葉 ちか: さっきと同じく、より多くアユを 獲った方が勝ちですね
  5242. 青葉 ちか: よーし…なんだか ワクワクしてきました!
  5243. 南津 涼子: ちかはこういうの得意そうだけど 大丈夫か?
  5244. すなお: 確かに、すんなり勝てるとは 思いませんが…
  5245. すなお: 絶対に負けられない戦いなので 粉骨砕身の思いで挑みます…!
  5246. 南津 涼子: …わかった 頑張れよ、すなお!
  5247. すなお: …はい!
  5248.  
  5249. 517099-29_pVeLS
  5250. ちはる: それじゃ、始めるね よーい…スタート!
  5251. ちか&すなお: …!!
  5252. 青葉 ちか: …………
  5253. 南津 涼子: …ん…どこへ行くんだ?
  5254. 南津 涼子: アユならあっちに たくさん泳いでるのに…
  5255. 青葉 ちか: (その辺を泳いでいるアユを 捕まえるのは至難の業…)
  5256. 青葉 ちか: (だから、岩場に潜んでいる 個体を誘い出して…)
  5257. 青葉 ちか: …そこです!
  5258. グッ…!
  5259. 青葉 ちか: ふふっ! この勝負…私がもらいます!
  5260. ヌルン…!
  5261. 青葉 ちか: (えっ…確実に つかんだと思ったのに!)
  5262. 青葉 ちか: (でも、このまま逃がしは しません…!)
  5263. 青葉 ちか: 捕まえた!
  5264. 静香: やったわ!1匹ゲットね!
  5265. 青葉 ちか: はい…なんとか…
  5266. 静香: ん?…何かあったの?
  5267. 青葉 ちか: いえ…なんでもありません
  5268. 青葉 ちか: …川が違うと、勝手が違いますね 気を引き締めていかないと!
  5269. すなお: えいっ!
  5270. 南津 涼子: すなおも負けてないぞ! さすが地元っ子だな!
  5271. 青葉 ちか: おっと…おしゃべり している場合じゃないですね!
  5272. ちはる: ふたりはその後も、 互角な戦いを続けて…
  5273. 青葉 ちか: はぁ…はぁ… なかなか手ごわいですね…!
  5274. すなお: はぁ…はぁ… ちかさんこそ…!
  5275. ちはる: どっちも5匹ずつ…
  5276. 静香: このままじゃ埒が明かないわ 涼子、私たちも参戦するわよ!
  5277. 静香: 2対2で勝負よ!
  5278. 南津 涼子: お…? おう…!
  5279. ちはる: 静香ちゃん!? 涼子ちゃん!?
  5280. 静香: ー静香ー よっと…!2匹目捕獲!
  5281. 青葉 ちか: ーちかー 静香さん速い…! 私も負けられません…!
  5282. すなお: ーすなおー きゃっ! なんて活きのいいアユなの!?
  5283. 南津 涼子: ー涼子ー まったくだな! だけど、絶対に逃がしゃしねぇ!
  5284. ちはる: ーちはるー みんな…すごい!
  5285. ちはる: ーちはるー どっちが勝つか もう全然わからないよ…!
  5286. ちはる: 時間だよ! 勝負はここまで!
  5287. 静香&ちか: はぁ~…はぁ~…
  5288. 静香: さ…さすがに疲れたわ…
  5289. 涼子&すなお: はぁ~…はぁ~…
  5290. 南津 涼子: もう1歩も動けねぇ…
  5291. ちはる: それじゃ、集計を始めるね ええっと…ひぃふぅみぃ…
  5292. ちはる: …!! ど、どっちも10匹だ…
  5293. 静香: ひ…引き分け!? そんな…
  5294. 南津 涼子: なんてこった…!
  5295. すなお: これ以上戦う気力は もうありません…
  5296. 静香: …私も同じね
  5297. 青葉 ちか: …………
  5298. 静香: どうしたの?捕まえたアユを じっと見てるけど…
  5299. 青葉 ちか: あの…もしかして この川のアユなんですけど…
  5300. 青葉 ちか: 絶滅したはずの 亜種なんじゃないかと思って…
  5301. みんな: ええっ…!?
  5302.  
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  5304. 青葉 ちか: あの…もしかして この川のアユなんですけど…
  5305. 青葉 ちか: 絶滅したはずの 亜種なんじゃないかと思って…
  5306. みんな: ええっ…!?
  5307. 青葉 ちか: お尻をよく見てください 3点の模様がありますよね?
  5308. 青葉 ちか: 普通のアユには こういう斑点はないんです
  5309. 青葉 ちか: でも、絶滅したはずの 亜種にはあって…
  5310. 青葉 ちか: ちょっとわかりにくいので スマホで写真を見せますね
  5311. 青葉 ちか: ほら、これです…!
  5312. ちはる: あっ…生け簀に入ってるアユと まったく同じ模様だ…!
  5313. 静香: 本当だわ…!
  5314. すなお: じゃあ、この川のアユたちは…
  5315. すなお: 絶滅したと思われていた亜種で 間違いないってことですか…?
  5316. 青葉 ちか: その可能性が高そうです
  5317. 青葉 ちか: 専門家に調べてもらわないと 正確なところはわかりませんが…
  5318. 南津 涼子: よく気づいたな!
  5319. 南津 涼子: あたしなら絶対に 気づかない自信がある
  5320. 青葉 ちか: 昔、図鑑で見たのをうっすら 覚えていたんです
  5321. 青葉 ちか: あと、普通のアユより ヌルヌルして捕まえにくくて…
  5322. 静香: あ…それで勝手が違うって 言ってたのね?
  5323. 青葉 ちか: はい…気になってよく見たら 特徴的な模様に気づいたんです
  5324. 静香: 時女集落のアユが そんな貴重なアユだったなんて…
  5325. 南津 涼子: 何も知らずに バクバク食ってたよな
  5326. すなお: この川では今も昔も たくさん泳いでいますからね…
  5327. すなお: とにかく、これは私たちだけの 問題ではなくなりましたね
  5328. 静香: そうね、ひとまず 大人たちに報告しないと
  5329. 静香: この件が話題になったら きっと観光客も増えるわ
  5330. 静香: アユ料理の話どころじゃ なくなったわね
  5331. ちはる: えっ…! それじゃあ…
  5332. 静香: 今回の勝負は これでおひらきにしましょ
  5333. 静香: 涼子たちもそれでいい?
  5334. 南津 涼子: ああ、構わないよ
  5335. すなお: もちろんです
  5336. ちはる: よ…よかったぁ…!
  5337. ちはる: そんなこんなで、 一時は分断していた時女一族だったけど 無事、仲直りすることができたんだ
  5338. ちはる: そして、旭ちゃんに報告したの
  5339. 静香: …っていうことがあったのよ
  5340. 青葉 ちか: 絶滅したとされていた 亜種だって確認されたみたいです
  5341. 旭: ほ~! それはめでたいであります!
  5342. 静香: あの川のアユはとりあえず 自主禁漁になったけどね
  5343. 南津 涼子: 幻の亜種だっていうんじゃ 保護するしかねぇよな
  5344. 旭: では、時女のアユは もう味わえないでありますか?
  5345. ちはる: 集落にはもう1本川が流れてて そっちには普通のアユがいるの
  5346. ちはる: それなら今まで通り食べても 大丈夫なんだって
  5347. 静香: 時女の伝統料理が途絶えなくて よかったわ…
  5348. すなお: けっこうニュースになったから
  5349. すなお: 観光客も増え始めてるみたいで 集落の大人たちも喜んでました
  5350. ちはる: 注目されてるうちに 村おこしにつなげたいから
  5351. ちはる: アユのグッズや 記念館を作るんだって
  5352. ちはる: はりきってたよ!
  5353. 旭: おお! それは何よりであります!
  5354. すなお: 地元にしかない貴重な 恵みだとわかりましたからね
  5355. すなお: こういう機会を活かして
  5356. すなお: 集落も少しずつ 自立していかないと
  5357. 旭: 密漁されたりしないよう これからも注意が必要ですな!
  5358. 旭: …しかし、我もその勝負に 参加したかったであります!
  5359. 静香: あら、別に今から参戦しても 構わないわよ?
  5360. 静香: アユ獲り以外の勝負になるけど
  5361. 南津 涼子: おっと、今度こそ 決着をつけるか?
  5362. 旭: 望むところであります!
  5363. ちはる: ええ!?
  5364. ちはる: 意地の張り合いは もうたくさんだよ~!!
  5365.  
  5366. 5170101-31_pVeLS [Counseling Room branch (Emiri)]
  5367. ガラガラ…
  5368. コロン…!
  5369. 木崎 衣美里: ん…金色…?
  5370. 木崎 衣美里: 夏休みのある日 商店街の福引に挑戦したあーし…
  5371. …!! この色は…
  5372. 木崎 衣美里: え?…え!? これってまさか…
  5373. つ、ついに特賞が出た…! おめでとうございまーす!
  5374. 木崎 衣美里: マジマジ? …鬼ヤバきたっ!?
  5375. 木崎 衣美里: おばさんのあまりの盛り上がりに、 めっちゃテンション上がったんだけど…
  5376. 木崎 衣美里: まさか特賞が 超高級体重計とか…
  5377. 木崎 衣美里: てっきり一番いいヤツと思ったら
  5378. 木崎 衣美里: その上に超特賞とスーパー特賞が あったなんてさぁ…
  5379. 木崎 衣美里: …ま、いっか!
  5380. 木崎 衣美里: 最近、測ってなかったし せっかくだから乗ってみよ
  5381. ギシッ…
  5382. 木崎 衣美里: …って… めっちゃ増えてる!?
  5383. 木崎 衣美里: いや…きっと何かの間違いだし! もう1回測り直せば…
  5384. ギシッ…
  5385. 木崎 衣美里: へ…変化なしって… はぁ~…マジかぁ…
  5386. 木崎 衣美里: いくら成長期でも この増え方は激ヤバ案件じゃね?
  5387. 綾野 梨花: やっほー 遊びに来たよー!
  5388. 木崎 衣美里: あ、りかっぺたち や、やっほ…
  5389. 美凪 ささら: ん…テンション低め? 何かあったの?
  5390. 木崎 衣美里: な、なんでもない…! 夏あっついな~、みたいな?
  5391. 竜城 明日香: むむっ…! そこにあるのは…
  5392. 矢宵 かのこ: あーっ! これ今話題の超高級体重計!?
  5393. 矢宵 かのこ: いろんな数値が超正確に測れて すっごい便利なヤツでしょ
  5394. 木崎 衣美里: ちょ、ちょー正確…
  5395. 矢宵 かのこ: どうしたのコレ?
  5396. 木崎 衣美里: 福引で当たったの… …特賞で…
  5397. 綾野 梨花: あー… その表情は、体重が…
  5398. 木崎 衣美里: それ以上は言わないでぇ~!
  5399. 眞尾 ひみか: あの… 私も測ってみていいですか!?
  5400. 木崎 衣美里: 別にいいけど、ひみかみんは 増えてる感なさげじゃない?
  5401. 眞尾 ひみか: 物足りない食事が続いたので 減ってないといいなと…
  5402. 木崎 衣美里: あっ…そゆこと?
  5403. 眞尾 ひみか: では、お言葉に甘えて… そりゃ!
  5404. ギシッ…
  5405. 眞尾 ひみか: …え…えーー!? も、ものすごく増えてる…
  5406. 綾野 梨花: 物足りないって言ってたのに?
  5407. 眞尾 ひみか: 心あたりと言えば…今朝食べた 野汁が多めだったくらいですが
  5408. 眞尾 ひみか: 油断しました…うぅ…
  5409. 竜城 明日香: 私も測らせてもらえますか?
  5410. 竜城 明日香: 体脂肪とかも測れるようですし 日頃の鍛錬の成果を…
  5411. ギシッ…
  5412. 竜城 明日香: なっ…!
  5413. 美凪 ささら: 増えてたのね…
  5414. 木崎 衣美里: その後、なんだかんだで、 順番に体重を測っていくと…
  5415. 木崎 衣美里: ふふっ、仲間が増えて あーしは心強いよ!
  5416. 美凪 ささら: それにしても みんな仲良く増量だなんて…
  5417. 矢宵 かのこ: おかしい… 少し食べすぎた…?
  5418. 木崎 衣美里: このままじゃ、せっかくの 夏休みが台なしだよっ!!
  5419. 木崎 衣美里: ここはみんなで ダイエット作戦しかないっしょ!
  5420.  
  5421. 5170102-32_pVeLS
  5422. 矢宵 かのこ: ダイエットか… だったら、水泳はどう?
  5423. 矢宵 かのこ: 新作の水着があってね その名も新マーリンギ…
  5424. 綾野 梨花: 却下!!
  5425. 矢宵 かのこ: はやっ!!
  5426. 木崎 衣美里: 太ったのに水着になるとか ありえないっしょ!
  5427. 綾野 梨花: 毎日プールに通うのは お小遣い的にも厳しいよね
  5428. 眞尾 ひみか: 断食ダイエットというのは どうでしょう?
  5429. 眞尾 ひみか: お金も節約できて 一石二鳥です!
  5430. 美凪 ささら: できれば健康的に痩せたいかな
  5431. 眞尾 ひみか: た、確かに…
  5432. 竜城 明日香: お金もかからず…健康的に
  5433. 竜城 明日香: あっ…いいものがありますよ! 商店街で借りられたはず…
  5434. 竜城 明日香: お待たせしました! これです!
  5435. 美凪 ささら: 何この大きなボールは?
  5436. 竜城 明日香: ここに座って、弾んでいる だけで痩せるらしいですよ!
  5437. 綾野 梨花: それマジ!?
  5438. 木崎 衣美里: 面白そうじゃん! やらせてよ!
  5439. ぼよんぼよん
  5440. 木崎 衣美里: おおーー!? ちょー楽しくね!?
  5441. ぼよんぼよん
  5442. 綾野 梨花: あたしにもやらせて!
  5443. ぼよんぼよん
  5444. 綾野 梨花: いいじゃん! これなら続けられるかも!
  5445. 綾野 梨花: はぁ~楽しかった!
  5446. 竜城 明日香: 評価は上々のようですね!
  5447. 竜城 明日香: では、これを日課にしましょう 毎日乗れば、身体が鍛えられて…
  5448. 美凪 ささら: ちょっと待って ボールって1個しかないの?
  5449. 竜城 明日香: 倉庫にしまってあったのは これだけでした
  5450. 美凪 ささら: 1個じゃひとりずつしか 使えないけど
  5451. 竜城 明日香: …あっ…!
  5452. 眞尾 ひみか: 交代で使うのは さすがに非効率的ですね…
  5453. 竜城 明日香: 私ってば そんな簡単なことに気づかず…!
  5454. 竜城 明日香: くっ…
  5455. 美凪 ささら: 自害はダメよ
  5456. 竜城 明日香: …! は、はい…
  5457. 木崎 衣美里: うーん…残念だけど 他の方法を探さなきゃかー
  5458. 綾野 梨花: だねー
  5459.  
  5460. 5170103-33_pVeLS
  5461. ぐぅ~…
  5462. 木崎 衣美里: あっ…!
  5463. 木崎 衣美里: ハンパに運動したら 小腹が空いちゃったよー
  5464. 綾野 梨花: あたしも~…
  5465. 矢宵 かのこ: きのこのチョコがあるけど 食べる?
  5466. 美凪 ささら: 今はダメ!絶対!
  5467. 竜城 明日香: 欲望に屈すると 止まらなくなりますからね
  5468. 木崎 衣美里: わかるー!
  5469. 木崎 衣美里: んで、結局 止まらなくて全部食べたり?
  5470. 綾野 梨花: 小さい積み重ねが、今回みたいな ことになるんだよね…
  5471. 眞尾 ひみか: それなら いい対処方法がありますよ!
  5472. 矢宵 かのこ: 本当!?
  5473. 眞尾 ひみか: はい! 私についてきてください!
  5474. 眞尾 ひみか: ここです!
  5475. 美凪 ささら: ここって… ケーキ屋さんじゃない
  5476. 竜城 明日香: ダイエットとは 真逆の場所じゃないですか?
  5477. 眞尾 ひみか: ケーキは買いません!
  5478. 眞尾 ひみか: お店の裏にある ダクトにご注目です!
  5479. 美凪 ささら: ダクト…?
  5480. ほわ~ん…
  5481. 木崎 衣美里: うげ! ちょー美味しそうな匂い!!
  5482. 眞尾 ひみか: ここからが本題です
  5483. 眞尾 ひみか: ケーキを焼いている いい匂いが漂ってきましたね?
  5484. 眞尾 ひみか: 目を瞑って 匂いを思いっきり吸い込んだら…
  5485. 眞尾 ひみか: 脳内でケーキをお腹いっぱい 食べる自分を想像してください
  5486. 眞尾 ひみか: …すると、アラ不思議! 食欲がフルに満たされるんです!
  5487. 綾野 梨花: そ、そうなの…?
  5488. 眞尾 ひみか: ものは試しですよ!
  5489. 眞尾 ひみか: さぁ、みなさんも レッツチャレンジです!
  5490. ほわ~ん…
  5491. 木崎 衣美里: くんくん…
  5492. 木崎 衣美里: (あーしは今ケーキを食べてる… ガッツリ食べてる…)
  5493. 木崎 衣美里: …………
  5494. 眞尾 ひみか: どうです? 心も胃袋も満たされたでしょ?
  5495. 木崎 衣美里: …無理っしょ! むしろ食欲そそられたし!!
  5496. 眞尾 ひみか: ええ!? ほ、他のみなさんは…
  5497. 美凪 ささら: 全然ダメ
  5498. 矢宵 かのこ: 私も…
  5499. 綾野 梨花: ああ~ 本物のケーキが食べたいよぉ
  5500. 竜城 明日香: 修行というより 拷問に近かったです…
  5501. 眞尾 ひみか: そんなぁ…!! どうして…
  5502. 眞尾 ひみか: 私はこれで毎日のおやつを 済ませているというのに…!
  5503. 美凪 ささら: 私たちにはちょっと レベル高すぎると思う…
  5504. 綾野 梨花: これも失敗だね
  5505. 木崎 衣美里: ラクに痩せようとか やっぱ無理なんじゃね?
  5506. 竜城 明日香: ですね、ここはやはり 正攻法でいくしか…!
  5507. 木崎 衣美里: それって…
  5508. 美凪 ささら: ランニングとか?
  5509. 竜城 明日香: 正解です、ささらさん
  5510. 竜城 明日香: 身体ひとつでできる 効果的な方法かと!
  5511. 綾野 梨花: ダイエットの王道だねっ
  5512. 美凪 ささら: 外で運動するのなら、 熱中症に気をつけないとね
  5513. 木崎 衣美里: それじゃ、さっそく ランニングでGO!
  5514.  
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  5516. 木崎 衣美里: E・M・I・R・I エミリー、ファーイトー!
  5517. 矢宵 かのこ: ね、ねぇ… なんなのこの掛け声…
  5518. 木崎 衣美里: どうせ走るなら やっぱ体育会系のノリっしょ!
  5519. 木崎 衣美里: じゃ、次はあすきゃんね!
  5520. 木崎 衣美里: A・S・U・K・A あすきゃんファーイトー!
  5521. 木崎 衣美里: K・A・N・O・K・O かのちんファーイトー!
  5522. 矢宵 かのこ: ちょっと…恥ずかしいんだけど 普通に走らせて…
  5523. 木崎 衣美里: ふぅ… ちょっと喉乾いてきたかも…
  5524. 綾野 梨花: あれ…? えみりん、あそこ!!
  5525. 木崎 衣美里: ん…? ああっ!?
  5526. 新発売のミルクティーの 試飲はいかがですかー?
  5527. 木崎 衣美里: いま超バズってる 限定フレーバーのミルクティー!
  5528. 美凪 ささら: 試飲できるの…!?
  5529. 眞尾 ひみか: …ってことは、無料ですか!?
  5530. 竜城 明日香: 売り切れ続出で、お金を出しても なかなか飲めないやつですよ
  5531. ごくり…
  5532. 木崎 衣美里: ダメダメダメー!!
  5533. 木崎 衣美里: せっかく頑張って走ってるのに 無駄にすることはやめよ!
  5534. 綾野 梨花: そ、そうだよね…!
  5535. 竜城 明日香: いち武道家として、容易く 心を折る訳にはいきません!
  5536. 美凪 ささら: 水分補給は持ってきた水で 我慢しましょう
  5537. 木崎 衣美里: うぅぅう…残念…!! グッバイミルクティー!!!
  5538. 木崎 衣美里: はぁ…はぁ… た…ただいまぁ~…
  5539. 矢宵 かのこ: さすがに疲れたわね…
  5540. 綾野 梨花: 喉渇いたよぉ~
  5541. 美凪 ささら: はい、お水
  5542. 綾野 梨花: ありがと…
  5543. 綾野 梨花: ごくっ…ごくっ… はぁ…生き返った
  5544. 綾野 梨花: でも、やっぱり水だけだと 味気ないなぁ…
  5545. 木崎 衣美里: 限定ミルクティーを 見てきたあとだし…
  5546. 竜城 明日香: それは言わない約束です!
  5547. 木崎 衣美里: ごめん…うぅ…
  5548. 都 ひなの: 衣美里たち、いるか?
  5549. 五十鈴 れん: …こ、こんにちは…
  5550. 木崎 衣美里: みゃーこ先輩! れんぱすとあきらっちも!
  5551. 志伸 あきら: あれ…どうしたのみんな? やけに疲れてるけど
  5552. 綾野 梨花: えっと、さっきまで 運動してたんだよね
  5553. 都 ひなの: この暑いのに元気だな
  5554. 五十鈴 れん: …だったら… ちょうどよかった、かも…
  5555. 志伸 あきら: そうそう、みんなに 差し入れを持ってきたんだ
  5556. 眞尾 ひみか: おお! 救援物資とは助かります!
  5557. 都 ひなの: ふふふ…見ろ! アイスがよりどりみどりだ!
  5558. みんな: …………
  5559. 木崎 衣美里: みゃーこ先輩…
  5560. 都 ひなの: なんだ?
  5561. 木崎 衣美里: 見た目は小学生でも
  5562. 木崎 衣美里: 大人の気遣いができる人だって 信じてたのに…
  5563. 都 ひなの: 『見た目は小学生でも』が 完全に余分なんだが…
  5564. 志伸 あきら: …えっと、よくわからないけど
  5565. 志伸 あきら: アイスの差し入れをしたら まずいタイミングだったのかな?
  5566. 綾野 梨花: うん…
  5567. 綾野 梨花: …実は今さ、みんなで ダイエット中なんだよね…
  5568. 五十鈴 れん: …ぇえっ…?
  5569. 都 ひなの: なるほど… それで運動してたのか
  5570. 都 ひなの: カロリーを消費した直後に このアイスは目の毒だな…
  5571. 木崎 衣美里: そーゆーこと!!
  5572. 志伸 あきら: でも、どうしてまた 急にダイエットを?
  5573. 木崎 衣美里: …というわけ!
  5574. 都 ひなの: うーん、事情は理解したが…
  5575. 五十鈴 れん: …アイス…どうしましょう…?
  5576. 志伸 あきら: このままじゃ溶けちゃうな
  5577. 都 ひなの: 仕方ない、みんなには悪いが 3人で食べるしかないな…
  5578. 五十鈴 れん: …で…でも…
  5579. 志伸 あきら: 無駄にするのももったいないよ
  5580. 都 ひなの: あー、でも結構あるぞ 食べきれるのか、これ?
  5581. みんな: …………
  5582. 木崎 衣美里: …わかった、あーしも食べる!
  5583. 木崎 衣美里: みゃーこ先輩たちの気持ちを 踏みにじれないっしょ!
  5584. 綾野 梨花: あたしも!
  5585. 眞尾 ひみか: 私も、ガマンの限界です!
  5586. 木崎 衣美里: 結局、みんなでアイスを 食べることになって…
  5587.  
  5588. 5170105-35_pVeLS
  5589. 木崎 衣美里: ふー、満足満足! これこそ禁断の味!!!
  5590. 綾野 梨花: やっぱり夏はアイスだよねー!
  5591. 都 ひなの: …よかったのか? かなりガッツリ食ってたぞ?
  5592. 眞尾 ひみか: 大丈夫です!
  5593. 眞尾 ひみか: またゼロから やり直せばいいだけですよ
  5594. 竜城 明日香: 明日からまた ダイエット修行の再開です
  5595. 美凪 ささら: 今日じゃないんだ?
  5596. 竜城 明日香: うぅ… 今回は見逃してください…
  5597. 矢宵 かのこ: 私はもういいかな… そろそろ新作に本腰を入れたいし
  5598. 木崎 衣美里: ダイエットから逃げちゃだめ!
  5599. 都 ひなの: お前たち、そんなにヤバいのか…
  5600. 「衣美里ちゃん、いる~?」
  5601. 木崎 衣美里: …んんー?
  5602. あ、ここにいたのね 探したのよ、衣美里ちゃん
  5603. 木崎 衣美里: あれ…おばさんどったの?
  5604. あなたが福引で当てた 体重計があったでしょ?
  5605. あれ、不良品だったのよ
  5606. 木崎 衣美里: えっ…えぇーーーっ!?
  5607. なんでも、実際の体重より かなり重く表示されるみたいで
  5608. テレビで、メーカー回収の お知らせをやってたの!
  5609. 綾野 梨花: そ、それじゃあ… あたしたちが太ったんじゃなくて
  5610. 矢宵 かのこ: 体重計が間違ってた…?
  5611. 眞尾 ひみか: どうりで…! あり得ない増え方でしたし!
  5612. 美凪 ささら: でも、絶対ないかっていうと ありそうな数字だったのよね…
  5613. 竜城 明日香: な、なんて人騒がせな…!
  5614. あらあら、だいぶ 迷惑かけちゃったみたいね…
  5615. お詫びにこれを持ってきたから みんなで食べてちょうだい
  5616. ドン!
  5617. 今回は本当にごめんなさい
  5618. それじゃ この体重計は預かっていくわね
  5619. 木崎 衣美里: こんなこと、ある…?
  5620. 都 ひなの: まさかの展開に 驚きを隠せないようだな
  5621. 木崎 衣美里: で、でも…もうダイエットを しなくていいんだよね?
  5622. 綾野 梨花: よかったね、えみりん!
  5623. 美凪 ささら: ところで、さっきのおばさん 何を持ってきたの…?
  5624. ガサガサ…
  5625. 竜城 明日香: こ、これは…
  5626. 美凪 ささら: 高級アイス! しかも大量に…!?
  5627. 綾野 梨花: ええ! またアイス!?
  5628. 眞尾 ひみか: 冷凍庫はパンパンですし とっておくのは無理そうです…
  5629. 美凪 ささら: 私はもう入らないかな…
  5630. 矢宵 かのこ: こんなにあるけど、どうするの?
  5631. 木崎 衣美里: うぅぅ…食べたい、けど…
  5632. 木崎 衣美里: こんなに食べたら 本当に太っちゃうじゃん!!
  5633. 木崎 衣美里: で、結局 高級アイスはどうなったかって言うと…
  5634. ひみかの弟: うまい!
  5635. ひみかの妹: こんなおいしいアイス 初めて食べた!
  5636. 眞尾 ひみか: うんうん!
  5637. 眞尾 ひみか: 一度に食べるともったいないから 味わって食べるんだよ
  5638. ひみかの弟&ひみかの妹: はーい!
  5639. 木崎 衣美里: ひみかみんの家族が 美味しくいただいたってことで!
  5640. 木崎 衣美里: ま、結果オーライかも?
  5641.  
  5642. 5170106-36_pVeLS [Nayuta Family branch]
  5643. <夏のある日…>
  5644. 那由他: …♪
  5645. ピロン♪
  5646. 那由他: あら? もうコメントがついてますの
  5647. ピクニックに持っていくお弁当の レシピをお伺いしたいですの!           Nayutan
  5648. 夏のお弁当は、傷みとの戦いです まず傷まない、バゲット中心のレシピで ピクニック気分を上げていくのはどうでしょう? よければ詳細書きます                  旅
  5649. 那由他: (なるほど… バゲットという手が!)
  5650. 那由他: (「ぜひお願いします」と お返事して…)
  5651. 那由他: (…これでよし!)
  5652. 那由他: (今回もお上手な方に アドバイスをいただけそうで)
  5653. 那由他: (オンラインお料理サークル… 入ってみて正解でしたの)
  5654. ラビ: …………
  5655. 那由他: あ、ラビさん! ちょうどいいところに
  5656. ラビ: ………… …………
  5657. 那由他: …ラビさん?
  5658. ラビ: あっ、申し訳ありません ぼうっとしていました
  5659. 那由他: 珍しいですの
  5660. ラビ: お気になさらず …で、なんのお話でしょう?
  5661. 「8時になりました ニュースをお伝えします」
  5662. ラビ: …みかげさんとピクニックに?
  5663. 那由他: ですの
  5664. 那由他: みたまさんのお許しも 無事にいただけて…
  5665. 那由他: お友だちの月出里さんも いらっしゃるそうですの
  5666. 「政府は、今月の月例経済報告で 景気判断を 『緩やかに持ち直している』として…」
  5667. ラビ: ………… …………
  5668. 那由他: …ラビさん?
  5669. ラビ: あ…失礼しました
  5670. 那由他: …ちょっと変ですの
  5671. ラビ: 大丈夫です 緩やかに持ち直しました
  5672. ラビ: えっと… ピクニックのお話でしたね
  5673. 那由他: そうですの 今週末の土曜に
  5674. ラビ: …私が所用で不在の日ですね
  5675. 那由他: ええ、ラビさんも ご一緒できればよかったのですが
  5676. 那由他: みかげさんが、この日しか 無理だということでしたの…
  5677. ラビ: 残念ですが、仕方ありません では、お弁当は私が朝のうちに…
  5678. 那由他: あ、それなんですが 今回は私が用意したいんですの!
  5679. 那由他: (お料理サークルの方たちから お知恵をお借りすれば…)
  5680. 那由他: (私でも無理なく おいしいお弁当が作れるはず!)
  5681. ラビ: ………… ちょうどいいかもしれません
  5682. ラビ: 那由他様が自立するための いい機会になりそうですし
  5683. 那由他: …? どういう意味ですの?
  5684. ラビ: …実は
  5685. 那由他: …実は?
  5686. ラビ: 実は…その…
  5687. 「…次に、神浜市が運営する団体の口座から およそ7000万円を着服したとみられる職員と 連絡が取れなくなっていることがわかりました」
  5688. ラビ: …………
  5689. 那由他: 実はなんですの? 言いにくそうですの
  5690. ラビ: 実際、言いにくいので…
  5691. 那由他: 7000万円を着服したのは 私ですとか言い出しますの?
  5692. ラビ: いえ…そうではなく
  5693. ラビ: 近々、お暇を いただくことになりました
  5694. 那由他: ――っ!?
  5695. 那由他: お暇…おいとま…?
  5696. 那由他: 私の使用人を 辞めるということですの!?
  5697. ラビ: はい…
  5698. 那由他: いったい、どうしてですの!?
  5699. ラビ: それは…
  5700. ラビ: (今日、教授から…)
  5701. ラビ: ………… …………
  5702. ラビ: …家庭の事情です
  5703. 那由他: そんな…
  5704. ラビ: …そんなわけで
  5705. ラビ: 今後は那由他様の調整など よろしくお願い申し上げます
  5706. ヨヅル: それでわざわざ御挨拶に?
  5707. リヴィア: お代さえいただければ 私はかめへんけど
  5708. リヴィア: にしても、なんや急な話やなあ どうもならへん事情なんか?
  5709. ラビ: ………… …はい
  5710. リヴィア: あー、紛らわしかったわ なんか聞き出そうとかやないで
  5711. 月出里: ふむむんむ、ふむむ?
  5712. ヨヅル: …ピクニックは来るのかと 申しております
  5713. リヴィア: そうそう、週末のピクニック あんたも行くんかいな?
  5714. ラビ: いえ、所用がありまして それに那由他様がやる気なので
  5715. ヨヅル: …やる気とは?
  5716. 那由他: 「今度のピクニックは、お弁当もその他諸々も すべて私ひとりの力で準備して」
  5717. 那由他: 「みかげさんと月出里さんを 無事引率してみせます!」
  5718. 那由他: 「私が自立できることを証明して ラビさんが安心して旅立てるように…!」
  5719. ラビ: …そう宣言されました
  5720. リヴィア: ええ話やん
  5721. ラビ: 他人事だからでしょう 私には不安しかありません
  5722. 月出里: ふむむむ、ふんむむ
  5723. ヨヅル: 月出里もがんばるそうですよ
  5724. リヴィア: …あかん 急に心配になってきたわ
  5725. ラビ: お邪魔しました では私は、これで
  5726. 太助: 「いよいよ、“その時”が来た… 各人、身辺の整理を進め 私の次の連絡を待ってほしい」
  5727. ラビ: ………… …………
  5728. ラビ: いつか来ることはわかってた でも…
  5729. 那由他: ………… …なぜ、今ですの…?
  5730.  
  5731. 5170107-37_pVeLS
  5732. <ピクニック当日>
  5733. ラビ: …那由他様、お早いですね
  5734. 那由他: ええ 朝の2時半に起きましたので
  5735. ラビ: 朝というより深夜ですね… お弁当の準備ですか?
  5736. 那由他: ですの バゲットのディップですの
  5737. ラビ: こちら、抗菌作用のあるハーブを 使っているようですね
  5738. 那由他: そうですの
  5739. ラビ: なかなかよいレシピです
  5740. 那由他: 夏のお弁当は 傷みとの戦いですの!
  5741. ラビ: …………
  5742. ラビ: そうですね まさにその通りです
  5743. ラビ: よく勉強なさったようですね
  5744. 那由他: 念のため保冷バッグに入れて 持っていきますの
  5745. 那由他: あとは焼きたてのバゲットを お店で買っていくだけですの!
  5746. ラビ: それなら傷む心配もありませんね 私でもそうすると思います
  5747. 那由他: ラビさんの お墨付きなら安心ですの!
  5748. 那由他: (お料理サークルの方々に 感謝ですの…!)
  5749. 那由他: …ここに、これを詰めて あとは、お弁当を…
  5750. 那由他: 準備完了ですの!
  5751. ラビ: そちらに積まれた山は 何の装備でしょうか?
  5752. 那由他: もちろん今日の ピクニックですの!
  5753. ラビ: (…ピクニック? キャンプか登山では?)
  5754. ラビ: (途中棄権しそうな重装備ですが 口出しは禁物です)
  5755. ラビ: (那由他様の自立のために…)
  5756. ピロン♪
  5757. 那由他: あ、みかげさんたち 家を出たそうですの
  5758. 那由他: お店に寄らないといけませんし 私も早めに出発しますの
  5759. みかげ: なゆたん、おはよー!
  5760. 月出里: ふむむん!
  5761. 那由他: おはようございますですの
  5762. みかげ: …なゆたん、荷物多くない? 汗だくだくだよ!?
  5763. 那由他: 重装備すぎましたの… コインロッカーに置いてきますの
  5764. 那由他: それでは、あらためまして…
  5765. みかげ: しゅっぱーつ!
  5766. 月出里: ふむ、ふむん!
  5767. ラビ: ………… …………
  5768. みかげ: まだ山じゃないよね?
  5769. 那由他: はい、この先にあります
  5770. 那由他: 初心者用ピクニックコースを 歩きますの
  5771. ヨヅル: …ここまでは大丈夫そうですね
  5772. リヴィア: せやな、向かっとるのも 危険な要素のないコースやし
  5773. ヨヅル: ですね …おや?
  5774. ラビ: …!
  5775. ヨヅル: …氷室様? 所用がおありのはずでは?
  5776. ラビ: 延期してきました
  5777. ラビ: そちらは 月出里さんの見守りですか?
  5778. リヴィア: そんなところや おたがい心配性やな
  5779. 那由他: ここでランチにしますの!
  5780. 月出里: ふむっ!
  5781. みかげ: らくしょーだったね!
  5782. リヴィア: ぴったりお昼やな
  5783. ラビ: 順調すぎますね
  5784. リヴィア: ええことやん
  5785. ヨヅル: …ところで氷室様の離職を みかげさんはご存じなのですか?
  5786. ラビ: 知らないはずです
  5787. リヴィア: 月出里も言わんやろうしな
  5788. みかげ: あっ、これ フランスパンだよね?
  5789. みかげ: これつけて食べるの? おいしー!
  5790. 月出里: ふむふむっ!
  5791. 那由他: ディップはいろいろあるので お好みのものをどうぞ
  5792. 那由他: おいしいジュースも 持ってきましたの
  5793. みかげ: なゆたん、すごーい! ラビたんが手伝ってくれたとか?
  5794. 那由他: あ…いえ… ひとりで準備しましたの
  5795. みかげ: …そうなんだ?
  5796. みかげ: ふぅー、おなかいっぱい!
  5797. 月出里: ふむむんむむん!
  5798. 那由他: このあとは山頂まで登って 下山する予定ですの
  5799. みかげ: そっかー ミィ、もっと冒険してみたいなー
  5800. 月出里: ふむむん?
  5801. 那由他: 冒険…ですの? それなら…
  5802. 那由他: 隣に少し高い山があるので そちらの山頂を目指してみますの
  5803. 那由他: そこもピクニックコースですし
  5804. みかげ: うん、そうしよー!
  5805. 月出里: ふむふむっ!
  5806. ヨヅル: …大丈夫でしょうか?
  5807. リヴィア: そっちも初心者向けコースや 迷子になるとかありえへんやろ
  5808. ラビ: そう…ですね…
  5809.  
  5810. 5170108-38_pVeLS
  5811. 月出里: …………
  5812. みかげ: …ここ…どこ?
  5813. 那由他: わかりませんの…
  5814. ラビ: …隣の区のキャンプ場ですね
  5815. リヴィア: ピクニックコースから 完全に外れとる
  5816. ヨヅル: あの道から外れて迷子になるのが 信じられないのですが…
  5817. リヴィア: ある意味、才能やな
  5818. ポツ…ポツ…
  5819. ザアァアー!
  5820. みかげ: 雨だよ!?
  5821. 那由他: あちらに小屋が…! 雨宿りさせてもらいますの!
  5822. 月出里: ふむ、ふむっ!
  5823. みかげ: おじゃまします…
  5824. 那由他: あ…
  5825. 那由他: (先客が…)
  5826. 那由他: …あの、少し雨宿りをさせて もらいたいんですの
  5827. 那由他: えっと、大人の方は…?
  5828. 私たち…ママたちとはぐれて 迷子になっちゃったの
  5829. お姉ちゃんたち、道わかる?
  5830. 那由他: ――っ!?
  5831. 那由他: (私たちも迷子ですのに…!)
  5832. みかげ: ミィたちも 道、わかんないんだよね…
  5833. みかげ: すごい雨だし やむまでここにいていいかな?
  5834. う、うん…わかった
  5835. 那由他: 立ったままもつらいですし… 座ってやむのを待ちましょうか?
  5836. うんっ
  5837. 那由他: では、私はこちらのベンチに…
  5838. ガタッ
  5839. 那由他: あらら?
  5840. 月出里: ふむっ?
  5841. 那由他: ベンチが傾いてますの 少し動かしますの
  5842. みかげ: ミィ、手伝うよ!
  5843. みかげ: あれっ? ベンチの下にバッグがあるよ?
  5844. 那由他: 丈夫そうなビジネスバッグですの 誰かの忘れものでしょうか?
  5845. 那由他: 部屋の隅に移動して…
  5846. みかげ: あっ、なゆたん! そのバッグ開いてる…!
  5847. バサバサバサッ…
  5848. みかげ: えっ…バッグから 札束がいっぱい出てきたよ!
  5849. ええっ!?
  5850. 月出里: ふんむむ?
  5851. 那由他: …本物みたいです
  5852. 那由他: ひとつ100万円として… 数千万円分ですの
  5853. ギィッ…
  5854. 那由他: ひっ…!
  5855. みかげ: 誰か入ってきた!
  5856. はぁ…はぁ…
  5857. あ、ひーちゃん! ここにいたのね…?
  5858. 那由他: (親御さんでしたのね…)
  5859. バッ
  5860. ――っ!?
  5861. …ば、バッグに現金を戻して こちらに投げて!
  5862. キラッ
  5863. 那由他: (ハサミ…!?)
  5864. そ…そのお金は私のものなの!
  5865. この子を刺されたくなかったら 言うことを聞いて!
  5866. 那由他: (この女性…! 親御さんじゃありませんの)
  5867. 「…次に、神浜市が運営する団体の口座から およそ7000万円を着服したとみられる職員と 連絡が取れなくなっていることがわかりました」
  5868. 那由他: (あの事件の…!? ここに現金を隠してましたの?)
  5869. みかげ: な…なゆたん、どうしよう…!?
  5870. 那由他: …人質を取られていますの 逆らってはいけませんの!
  5871. ウゥーーーウ!
  5872. リヴィア: なんやパトカーが 集まってきよったで?
  5873. ザザザッ
  5874. ラビ: …那由他様のいる小屋を 警官が取り囲んでいます
  5875. すみません 神浜北警察署の者ですが
  5876. いつからここに いらっしゃいましたか?
  5877. ラビ: あ…はい 20分ほど前から
  5878. そうですか…では少し お話を聞かせてください
  5879. ラビ: …何かあったんでしょうか?
  5880. 実は、女が人質を取って 小屋に立てこもっておりまして…
  5881. ラビ: えっ…
  5882.  
  5883. 5170109-39_pVeLS
  5884. ご協力ありがとうございました 解決に全力を尽くします!
  5885. リヴィア: 月出里たちが小屋に入ったあと 駆け込んだ女性がおったな
  5886. リヴィア: あいつがあの子らを人質に取って 立てこもったんか…
  5887. ヨヅル: 警察の方の会話から察するに
  5888. ヨヅル: 最近、ニュースになっていた 7000万円着服の職員ですね
  5889. ヨヅル: 刑事さんが 話を聞こうとしたところ
  5890. ヨヅル: 小屋に立てこもったようです
  5891. ラビ: 小屋の近くで、立ち話をしている 人たちがいましたが
  5892. ラビ: あれが刑事さんだったんですね…
  5893. リヴィア: 衝動的な犯行、ってやつやな 3人とも運が悪いわ
  5894. リヴィア: テレビで見たんやけど 確かその職員…
  5895. リヴィア: 騙されて人様の金に手をつけた お人好しらしいわ
  5896. ヨヅル: …そうですね 凶悪なタイプではなさそうですが
  5897. リヴィア: ただ…月出里の心の傷が えぐられそうで心配や
  5898. ヨヅル: 先生は月出里の 実質保護者ですからね
  5899. ヨヅル: 魔法少女の力で 解決できればいいのですが…
  5900. ヨヅル: 中にいるという、幼い子たちを 巻き添えにはできませんしね
  5901. リヴィア: 警察の人は、また報告くれるって 言っとったけど…
  5902. ラビ: 那由他様…
  5903. 那由他: (人質の中で、私が最年長… 私がしっかりしなければ)
  5904. 那由他: あ、あの… 話がありますの
  5905. …何よ?
  5906. バタン
  5907. リヴィア: 出てきたで!
  5908. メディロスさん
  5909. 佐和月出里さんたち4人が 無事、解放されました
  5910. ラビ: 4人…那由他様は…?
  5911. みかげ: …あっ、ラビたん! リヴィアさんたちも!
  5912. みかげ: なゆたんが…なゆたんが ミィたちの身代わりに…!
  5913. ラビ: …なるほど 幼い女の子が人質に取られたので
  5914. ラビ: 最年長の那由他様が 自分だけ人質になると申し出て
  5915. ラビ: かわりに4人を解放させたと…
  5916. みかげ: うん…
  5917. ヨヅル: 女の子たちの方は無事で ご両親が迎えに来たそうです
  5918. ヨヅル: 幼い子たちが人質になっていた 最悪の状態は脱しました
  5919. ラビ: 那由他様は魔法少女ですからね
  5920. ラビ: 両手を縛られている、との ことですが…
  5921. ラビ: 犯人に命を脅かされる危険は 比較的小さいです
  5922. ヨヅル: 自らそういう状況になるように 犯人を説得されたわけですね
  5923. ラビ: …?
  5924. ラビ: (那由他様が… そこまで考えて…?)
  5925. リヴィア: 月出里が、はよう解放されたんは 感謝やけど…
  5926. リヴィア: 無茶せんとええけどな
  5927. ラビ: …………
  5928. 那由他: (残る人質は私だけ…)
  5929. 那由他: (これでもう 他の方には、危険が及びません)
  5930. 那由他: (あとは…)
  5931. 那由他: (あまり、気の強そうな方では ありませんわね…)
  5932. ――っ!?
  5933. …ば、バッグに現金を戻して こちらに投げて!
  5934. 那由他: (小さな子も、あっさり 解放してくれましたし…)
  5935. 那由他: (どちらかというと 気の優しい方に見えますの)
  5936. 那由他: (どんな事情があったのかは わかりませんが…)
  5937. 那由他: (できれば…自ら投降して 罪を償ってほしいですの)
  5938. 那由他: (魔法少女の力を使うのは 最後の手段…)
  5939. 那由他: あの…
  5940. な…何?
  5941. ヨヅル: 雨がやみましたね
  5942. ざわ…
  5943. ラビ: あ…
  5944. リヴィア: 犯人が投降したみたいやな
  5945. みかげ: なゆたん、助かったの!?
  5946. ヨヅル: …意外と早く解決しましたね
  5947. 「人質の子が犯人を説得したらしいぞ…」
  5948. 「7000万ぽっちじゃ人生逃げきれないから 罪を償ってまたやり直せって」
  5949. リヴィア: …エグいな!? 大人にそんな説得したんか?
  5950. ヨヅル: 犯人を刺激するような言動は タブーだと聞きましたが
  5951. ラビ: はい、危険です… あとでお説教です
  5952. 里見那由他さんをお連れしました
  5953. 那由他: ラビさん…!
  5954. ラビ: 那由他様…!
  5955. みかげ: なゆたん、よかった…!
  5956. ドサッ
  5957. ラビ: 那由他様…大丈夫ですか?
  5958. 那由他: ラビさん… 私、がんばりましたの
  5959. 那由他: ラビさんが安心して 我が家を旅立てますように
  5960. 那由他: …………
  5961. かなりお疲れのようですので このあと、念のため病院に…
  5962. ラビ: …危険ですし、無茶ですし ちっとも安心できませんが
  5963. ラビ: でも…
  5964. ラビ: …よくがんばりました 那由他様
  5965. みかげ: あれっ…そう言えば
  5966. みかげ: ラビたんもみんなも どうしてキャンプ場にいたの?
  5967. みかげ: 警察に連絡もらってから来たの? ちょっと早すぎない?
  5968. ヨヅル: うっ…それは…
  5969. リヴィア: あかん、気づいてもうたか…
  5970.  
  5971. 5170110-40_pVeLS
  5972. <2日後…>
  5973. みかげの声: 「なーーーゆーーーたーーーん! ラーーービーーーたーーーん!」
  5974. ラビ: いらっしゃいましたね
  5975. 那由他: ええ… 私が玄関へ迎えに参りますの
  5976. 那由他: それでは… ラビさんの送別会を始めますの!
  5977. ラビ: …ありがとうございます
  5978. みかげ: ラビたんとお別れなんて… ミィ、びっくりしちゃった
  5979. ラビ: はい、寂しいですが…
  5980. 那由他: …ご家庭の事情とのことですので
  5981. ラビ: …………
  5982. ラビ: (それは嘘です、那由他様…)
  5983. 太助: 「いよいよ、“その時”が来た… 各人、身辺の整理を進め 私の次の連絡を待ってほしい」
  5984. ラビ: (教授からそう指示があった、と うららに聞いたのが先週のこと)
  5985. ラビ: (…急いで教授に コンタクトを取ったところ)
  5986. ラビ: (確かにそのように伝えた、との お返事をいただいたのです…)
  5987. ラビ: (真実をお伝えできないのは… やはり心苦しい)
  5988. みかげ: …ラビたん、悲しそう
  5989. 那由他: …ですの
  5990. 那由他: でも最後くらい 笑顔でお別れしたいですの!
  5991. みかげ: そうだね!
  5992. 那由他: そのために今日は これを用意しましたの!
  5993. コトン…
  5994. ラビ: これは… レアチーズケーキですか?
  5995. みかげ: トッピングはブルーベリー? おいしそう!
  5996. 那由他: ええ、どうぞ召し上がって
  5997. みかげ: おいしー! お店のケーキみたい!
  5998. ラビ: 本当においしいです 驚きました
  5999. みかげ: これ、なゆたんが作ったの?
  6000. 那由他: そうですの!
  6001. 那由他: …全部ひとりで、と 胸を張りたいところですが
  6002. 那由他: 最近お世話になっている オンラインお料理サークルの方に
  6003. 那由他: 初心者でも絶対に失敗しない レシピを教えてほしいって
  6004. 那由他: 無理を言って 泣きついたんですの…
  6005. そうですね…レアチーズなら お店で売っている材料の組み合わせでも作れます 生地も市販のお菓子を活かせば失敗しにくいかと
  6006. …何より失敗しないコツは 自己流で余計な工夫をしないことです レシピに忠実にやれば、絶対うまくいきますので                  旅
  6007. ラビ: …………
  6008. みかげ: …で、でも実際に作ったのは なゆたんなんだよね?
  6009. 那由他: それはもちろんですが レシピ以外にもたくさん質問して
  6010. 那由他: お料理サークルの方に 頼りっぱなしでしたの
  6011. 那由他: 本当は、ラビさんが安心して この家を発てるように
  6012. 那由他: 全部ひとりで できればよかったのですが…
  6013. ラビ: …いえ、感心しました
  6014. ラビ: ご自分で相談相手を見つけ 疑問に思ったことは質問する…
  6015. ラビ: 自身の技量を客観視できて 正しい行動が取れている証拠です
  6016. ラビ: 今後も、それが続けられれば…
  6017. ラビ: 私がいなくても 那由他様は大丈夫です
  6018. 那由他: それじゃ…!
  6019. ラビ: はい、これで私も安心して ここを発つことができます
  6020. みかげ: やった! ラビたん、笑顔になった!
  6021. みかげ: よかったね、なゆたん!
  6022. 那由他: ええ…!
  6023. みかげ: あ…ラビたんって そのあとはどうするの?
  6024. みかげ: ここを発つって… 遠くへ行っちゃうとか?
  6025. ラビ: いえ、そういうわけでは…
  6026. ピロン♪
  6027. ラビ: …申し訳ありません こんなときに
  6028. ラビ: (ん…うららから…?)
  6029. 那由他: その顔…大切な連絡ですの?
  6030. ラビ: …そうかもしれません ちょっと失礼
  6031. ラビ: …………
  6032. ラビ: ………… …………
  6033. みかげ: どうしたの?
  6034. ラビ: …あの、このような素敵な会を 開いていただいておきながら
  6035. ラビ: 大変心苦しいのですが…
  6036. ラビ: このお家を出てゆく理由が なくなりました
  6037. 那由他&みかげ: ――っ!?
  6038. 那由他: それでは…
  6039. ラビ: はい…いままで通り ここに置いていただけましたら…
  6040. うらら: 「ラビさん、ごめんなさいなんよ… 先週、教授がウチに言ったのは 本当はこういう意味だったらしいんよ」
  6041. 太助: 「いよいよ、“その時”が来たら… 各人、身辺の整理を進め 私の次の連絡を待ってほしい」
  6042. ラビ: 「“その時”が来たら」の 「ら」が抜けて伝わっていた…?
  6043. ラビ: 教授が「そのように伝えた」と言っていたのは あくまで「“その時”が来た場合」の話…?
  6044. 那由他: …ど、どうしてそんな急に?
  6045. ラビ: その…伝達ミスと言いますか 認識違いがあったようで…
  6046. ラビ: あの…どうぞ今後とも よろしくお願いします…
  6047. 那由他: え、ええ…こちらこそ
  6048. みかげ: ………… …………
  6049. みかげ: チーズケーキ、おいしいね!
  6050. ラビ: …………
  6051. 那由他: 最近お世話になっている オンラインお料理サークルの方に
  6052. 那由他: 初心者でも絶対に失敗しない レシピを教えてほしいって
  6053. 那由他: 無理を言って 泣きついたんですの…
  6054. ラビ: (名前に親しみを覚えたので 少し前から、お料理サークルで)
  6055. ラビ: (アドバイスさせて もらっていましたが…)
  6056. ラビ: (Nayutanさんが 那由他様本人だったとは…)
  6057. ラビ: なかなかよいレシピです
  6058. 那由他: 夏のお弁当は 傷みとの戦いですの!
  6059. ラビ: …………
  6060. ラビ: そうですね まさにその通りです
  6061. ラビ: (那由他様が、“旅”さんと 同じ言葉を口にしたときにも)
  6062. ラビ: (変だとは思ったのですが…)
  6063. ピロン♪
  6064. ラビ: …?
  6065. 大切な人に贈るチーズケーキ… おかげさまで、大好評でしたの! 旅さん、本当にありがとうですの!           Nayutan
  6066. ラビ: …………
  6067. ラビ: (“旅”が私だということは 内緒のままにしておきましょう)
  6068. ラビ: (登録のとき、ふと思いついて そのまま使っていた名前ですが)
  6069. ラビ: (本名で登録しなくて よかったです…)
  6070. お役に立ててよかったです            旅
  6071.  
  6072. 5170111-41_pVeLS [Minaminagi School branch (Hinano)]
  6073. 枇々木 めぐる: みなさん、こんにちは
  6074. 枇々木 めぐる: 夏休みの登校日 元気に過ごしていますか?
  6075. 枇々木 めぐる: こちらは南凪自由学園放送部 枇々木めぐるです
  6076. 枇々木 めぐる: え、いつもとテンションが違う? なんか普通すぎて怖い…?
  6077. 枇々木 めぐる: ふふふ…それは、今日のテーマが “怖い都市伝説”だからです…
  6078. 枇々木 めぐる: では、さっそく この夏めぐるが遭遇した
  6079. 枇々木 めぐる: 残暑も吹き飛ぶ、こわ~いお話を お送りしましょう…
  6080. 枇々木 めぐる: 「それは… 南凪自由学園の特別課外授業 写生大会でのことでした」
  6081. 枇々木 めぐる: 「めぐるは、とある先輩がた… そうですね 仮にAさんとBさんとお呼びしましょう」
  6082. 枇々木 めぐる: 「そのおふたりと一緒に 大会に参加していました」
  6083. 枇々木 めぐる: うわ~… おっきいひまわりですね!
  6084. 万年桜のウワサ: |ひなのが埋もれて見えない|
  6085. 都 ひなの: あのな、これは “ひまわり迷路”だぞ
  6086. 都 ひなの: アタシじゃなくても たいていのヤツは埋もれるだろ!
  6087. 万年桜のウワサ: |迷路? ひまわりで?|
  6088. 都 ひなの: 桜子には珍しいか
  6089. 枇々木 めぐる: 子どもとかに人気ですよね
  6090. 枇々木 めぐる: めぐるも小さいころは 迷って出られなくなったものです
  6091. 万年桜のウワサ: |迷路、興味ある|
  6092. 都 ひなの: …遊ぶのはあとだぞ 今日は、写生に来てるんだからな
  6093. 枇々木 めぐる: でも、早く終わらせて
  6094. 枇々木 めぐる: 時間が余ったら遊ぶのも いいと思います!
  6095. 都 ひなの: 時間が余ればな
  6096. 万年桜のウワサ: |………… …………|
  6097. 都 ひなの: …なんか企んでる顔だな
  6098. 万年桜のウワサ: |…企む?|
  6099. 万年桜のウワサ: |ただ、ひまわりは迷路にも なれるのに|
  6100. 万年桜のウワサ: |桜はなれないのかなって 考えてただけ|
  6101. 都 ひなの: 桜の迷路を作りたいってことか?
  6102. 万年桜のウワサ: |そう、桜の迷路を作れれば ういたちが喜んでくれるはず|
  6103. 枇々木 めぐる: 桜の花が舞い散る迷路? 幻想的でよさそうですね!
  6104. 都 ひなの: …迷い込んだら最後 二度と出てこられなそうだけどな
  6105. 枇々木 めぐる: あ、そういう都市伝説 聞いたことがあります!
  6106. 枇々木 めぐる: 確か、えっと…
  6107. 都 ひなの: って、雑談してる場合じゃない! 早く写生始めるぞ!
  6108. 枇々木 めぐる: 「それからめぐるたちは 写生に勤しみました」
  6109. 万年桜のウワサ: |…こう?|
  6110. 枇々木 めぐる: うわっ! 上手い!?
  6111. 枇々木 めぐる: おーっと、桜子選手 なんと写実的な絵画でしょう!
  6112. 枇々木 めぐる: まるでリアルをそのまま 切り取ったかのようだー!
  6113. 万年桜のウワサ: |…でも、 絵っぽくない気がする|
  6114. 万年桜のウワサ: |見たままを 描いただけだから?|
  6115. 枇々木 めぐる: いやいや、そんな! めぐるよりずっと上手ですよ!
  6116. 枇々木 めぐる: ねぇ、ひなのさん
  6117. …………
  6118. 万年桜のウワサ: |…ひなの いなくなってる|
  6119. 枇々木 めぐる: いつのまに!?
  6120. 枇々木 めぐる: 「なんと気がつくとAさんが いなくなっていたんです!」
  6121. 万年桜のウワサ: |…電話、出ない|
  6122. 枇々木 めぐる: 探しに行きましょう!
  6123. 枇々木 めぐる: ひなのさーーーーんっ!!
  6124. 万年桜のウワサ: |ひなの、出てきて|
  6125. 万年桜のウワサ: |出てこないと 迷子の呼び出しするから|
  6126. 枇々木 めぐる: 「めぐるたちはAさんを探すために Aさんの名前を呼びながら ひまわりの迷路に入っていきました」
  6127.  
  6128. 5170112-42_pVeLS
  6129. 枇々木 めぐる: 「一方、そのころ… Aさんも異変に気がついていました」
  6130. 都 ひなの: …ん?
  6131. 都 ひなの: …桜子たちから 離れすぎちまったみたいだな
  6132. 都 ひなの: (何枚かラフを描いたが いまいちだな)
  6133. 都 ひなの: (場所を変えるか)
  6134. 都 ひなの: 少し移動するから 何かあったら連絡してくれ
  6135. 万年桜のウワサ: |…………|
  6136. 枇々木 めぐる: 了解っす…
  6137. 都 ひなの: (聞いてるか怪しかったし 急にいなくなったと誤解され…)
  6138. めぐるの声: ひなのさーーーーんっ!!
  6139. 万年桜のウワサの声: |ひなの、出てきて|
  6140. 万年桜のウワサの声: |出てこないと 迷子の呼び出しするから|
  6141. 都 ひなの: やめろっ!!
  6142. 都 ひなの: 呼び出し放送だけは避けたい… すぐ戻らないと
  6143. …………
  6144. 都 ひなの: (…迷ったか?)
  6145. 都 ひなの: (めぐるたちの声が聞こえた方に 行ってみたが)
  6146. 都 ひなの: (誰もいなかったし…)
  6147. 枇々木 めぐる: 「それでも仲間のところに戻るため Aさんは歩き続けたそうです」
  6148. 枇々木 めぐる: 「でも、Aさんがたどり着いたのは めぐるやBさんのところではなく…」
  6149. 都 ひなの: …どこだ、ここ?
  6150. 枇々木 めぐる: 「…なんと まったく知らない場所だったのです!」
  6151. 都 ひなの: さむっ…
  6152. 枇々木 めぐる: 「肌寒さを感じたAさんは 引き返そうとしましたが なぜか林を抜けることができません」
  6153. 都 ひなの: (どっちから来たか わからなくなったな…)
  6154. 都 ひなの: (…しかも、連絡しようにも 電波が入らない)
  6155. 枇々木 めぐる: 「ひまわりの迷路にも戻れず 仲間にも連絡がつかない」
  6156. 枇々木 めぐる: 「薄気味悪いものを感じながらも Aさんは元の場所に戻るために 辺りをさまよいます」
  6157. 都 ひなの: (自動販売機… 歩きっぱなしだし、何か買うか)
  6158. 都 ひなの: …………なんだこれ?
  6159. 枇々木 めぐる: 「のどの渇きを覚えていたAさんは これ幸いと自動販売機に駆け寄りました」
  6160. 枇々木 めぐる: 「しかし、飲み物を買おうとしたものの 電子マネーが使えません」
  6161. 枇々木 めぐる: 「しかも、売っている飲み物は どれも見たことがないものでした…」
  6162. 都 ひなの: ………… …妙に古めかしい自販機だな
  6163. 枇々木 めぐる: 「ふと、Aさんの頭を とある言葉がよぎります」
  6164. 枇々木 めぐる: 「“ヨモツヘグイ”」
  6165. 枇々木 めぐる: 「あの世の食べ物を口にした者は 死者の世界のものとなってしまい 現世に帰れなくなる…というものです」
  6166. 都 ひなの: …やめとくか
  6167. 枇々木 めぐる: 「Aさんは何も買わずに 自動販売機から離れると 元の場所に戻るために歩き出しました」
  6168.  
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  6170. 枇々木 めぐる: 「しばらく歩くと 楽しそうな声が聞こえてきます」
  6171. 枇々木 めぐる: 「それは、甲高い子どもの声でした…」
  6172. 都 ひなの: (子どもたちがなんで?)
  6173. 都 ひなの: (しかもあれは、浴衣… それとも着物か?)
  6174. 都 ひなの: (どっちにしろ古風な柄だな)
  6175. 枇々木 めぐる: 「まず奇妙に感じたのは 子どもたちが着ているものでした」
  6176. 枇々木 めぐる: 「お祭り用の浴衣とは異なり 古風な柄のものだったのです」
  6177. あれ、もしかして 遅れてきたの?
  6178. 遅れてきたから 用意してもらえなかったの?
  6179. 都 ひなの: えっと…なんの話だ?
  6180. 枇々木 めぐる: 「子どもたちは、Aさんに気がつくと わっと寄ってきて囲みました」
  6181. 枇々木 めぐる: 「唯一いる大人の女性は にこにこと見ているばかりです」
  6182. でも、ちょうどよかった 人数が足りなかったの!
  6183. 一緒に遊ぼうよ
  6184. 都 ひなの: いや、アタシは戻らないと…
  6185. 都 ひなの: ひまわり畑で 友だちが待ってるんだ
  6186. ちょっとだけ、 ちょっとでいいから遊ぼう?
  6187. 都 ひなの: えっと…人数が足りないなら
  6188. 都 ひなの: あそこの人に遊んで もらえばいいんじゃないか?
  6189. ダメダメ 大人はダメだよ
  6190. そうそう、 大人はズルになっちゃうよ
  6191. 都 ひなの: アタシも子どもじゃないんだが…
  6192. まずは花いちもんめ!
  6193. 枇々木 めぐる: 「子どもたちは Aさんの話を聞くことなく ぐいぐいと手を引っ張ると 仲間に入れてしまいました」
  6194. 枇々木 めぐる: 「女性は相変わらず にこにことAさんたちを見ていました」
  6195. これね、メンコっていうの 知ってる?
  6196. 都 ひなの: まぁ…聞いたことぐらいは
  6197. じゃあ、こっちは? ベーゴマ
  6198. 都 ひなの: ベーゴマ? 貝でできてるようだが…
  6199. おじいちゃんが 作ってくれたんだよ
  6200. 枇々木 めぐる: 「Aさんは ひまわり畑に戻りたいと思いながら しばらくは子どもたちに付き合いました」
  6201. 次は何して遊ぼうか? 時間はまだまだあるよ
  6202. 都 ひなの: (妙に古い遊びばかりだな…)
  6203. 都 ひなの: (アタシの親の時代でも やってたか怪しいぞ)
  6204. キーンコーンカーンコーン
  6205. ――っ!?
  6206. 枇々木 めぐる: 「どこかから チャイムの音が聞こえて来たとき…」
  6207. ひまわり畑はあちらですよ
  6208. 枇々木 めぐる: 「にこにこと見てるだけだった女性が Aさんに耳打ちしました」
  6209. 都 ひなの: えっ…
  6210. 今のうちに どうぞおかえりください
  6211. 都 ひなの: …ありがとうございます
  6212. こちらこそ
  6213. 枇々木 めぐる: 「子どもたちがチャイムに気を取られている間に Aさんは忠告に従って抜け出します」
  6214.  
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  6216. 都 ひなの: ひまわり畑まで戻れたか…
  6217. 枇々木 めぐる: 「女性に教えてもらった方へ行くと Aさんは無事 ひまわりの迷路に戻ることができました」
  6218. 万年桜のウワサ: |ひなの!|
  6219. 万年桜のウワサ: |…ダメ 見つからない|
  6220. 枇々木 めぐる: えっと…迷子の放送、 かけてもらいましょうか…?
  6221. 都 ひなの: 待て! アタシはここだ!!
  6222. 枇々木 めぐる: ――っ!?
  6223. 万年桜のウワサ: |…ひなのの声?|
  6224. 枇々木 めぐる: 「そして… 心配していた仲間と 再会することができたのです」
  6225. 枇々木 めぐる: ひなのさんが迷子になるなんて 意外でした…
  6226. 都 ひなの: 迷子という言い方は やめてほしいんだが
  6227. 万年桜のウワサ: |どこに行ってたの?|
  6228. 都 ひなの: …………
  6229. 万年桜のウワサ: |ひなの?|
  6230. 都 ひなの: それが、よくわからないんだ
  6231. 枇々木 めぐる: 「Aさんはめぐるたちと再会するまでのことを 話してくれました」
  6232. 枇々木 めぐる: 「…そう、めぐるが今まで みなさんに話した内容です」
  6233. 枇々木 めぐる: そ、そそそそそれは…!
  6234. 枇々木 めぐる: いま流行っている 都市伝説にそっくりです!
  6235. 都 ひなの: …都市伝説?
  6236. 枇々木 めぐる: 「道に迷いに迷って あちら側に連れて行かれた小学生は 子どもの幽霊の仲間になってしまって 二度と帰って来られない…」
  6237. 枇々木 めぐる: 「行きついた先は 亡くなった子どもたちの記憶が混ざり合う ひと昔前の、レトロな心象風景…」
  6238. 枇々木 めぐる: 「そう、神浜市では今 そんな都市伝説がささやかれているのです」
  6239. 枇々木 めぐる: 「Aさんが遭遇した状況は まさにその都市伝説に そっくりだと思いませんか?」
  6240. 万年桜のウワサ: |確かに、ひなのも迷って|
  6241. 万年桜のウワサ: |子どもの幽霊…? と遊ばされてた|
  6242. 枇々木 めぐる: しかも、なかなか帰して もらえなかったんですよね?
  6243. 都 ひなの: ああ…
  6244. 都 ひなの: ずっとにこにこしてた女性が 隙を見て逃がしてくれなかったら
  6245. 都 ひなの: 今もまだあそこにいたかもな…
  6246. 枇々木 めぐる: まさにビンゴです!
  6247. 枇々木 めぐる: ズバリ都市伝説に巻き込まれた… と言って間違いないでしょう!
  6248. 都 ひなの: …いや、でもなぁ
  6249. 都 ひなの: アタシは、 こうして帰ってきてるし
  6250. 万年桜のウワサ: |…………|
  6251. 万年桜のウワサ: |ひなのが 小学生じゃなかったから…?|
  6252. 都 ひなの: はっ?
  6253. 万年桜のウワサ: |ひなのは小さいけど 小学生じゃないから|
  6254. 万年桜のウワサ: |戻ってこられたのかも|
  6255. 枇々木 めぐる: 確かにめぐるが聞いた話だと
  6256. 枇々木 めぐる: 戻ってこられないのは 小学生だけだったはず!
  6257. 枇々木 めぐる: ナゾは解けましたね!
  6258. 都 ひなの: おいっ! じゃあ、なんだ?
  6259. 都 ひなの: あの子どもたちは
  6260. 都 ひなの: アタシを同じくらいの子どもだと 思ってたってことか?
  6261. 万年桜のウワサ: |そう|
  6262. 万年桜のウワサ: |でも、女性は欺けなかった|
  6263. 都 ひなの: 怪奇現象なら 最初から見破っとけ!
  6264. 万年桜のウワサ: |ひなのは 怪奇現象すら欺く…覚えた|
  6265. 都 ひなの: 覚えなくていい! むしろ忘れてくれ!
  6266. 都 ひなの: そもそもだ!
  6267. 都 ひなの: そんな非科学的なこと ありえないだろ
  6268. 都 ひなの: アタシの勘違いとか いろいろ変な偶然が重なったんだ
  6269. 枇々木 めぐる: 「Aさんは、非科学的だと否定しましたが めぐるは知っています」
  6270. 枇々木 めぐる: 「Aさんも内心では “もしかして?”と思って ひやっとしていたことを…」
  6271.  
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  6273. 枇々木 めぐる: …いかがでしたか?
  6274. 枇々木 めぐる: この夏、めぐるが出会った ちょっと不思議な出来事でした!
  6275. 枇々木 めぐる: 続いては、 お便りのコーナーです!
  6276. 枇々木 めぐる: なになに?
  6277. 枇々木 めぐる: おっ! また都市伝説のお話ですね
  6278. 枇々木 めぐる: 最近生まれたばかりの都市伝説 “遊んでくれる妖精さん”!
  6279. 枇々木 めぐる: では、紹介していきましょう!
  6280. 都 ひなの: 今度は妖精さんか… 都市伝説のネタは尽きないな
  6281. 都 ひなの: …と言っても、アタシが体験した あの不思議な時間といい
  6282. 都 ひなの: 都市伝説には何か元になるような 出来事があるのかもしれないが…
  6283. <2週間前>
  6284. <写生大会の日の午後…>
  6285. そろそろお姉ちゃんが 迎えに来るからね
  6286. やったー!
  6287. 由貴 真里愛: みんなー こんにちは!
  6288. あっ、真里愛お姉ちゃん!
  6289. 由貴 真里愛: 子ども祭りの準備が終わったから みんなを呼びに来たの
  6290. ごめんね、来てもらって ここ、電波が悪いから…
  6291. 由貴 真里愛: 気にしないでください
  6292. 由貴 真里愛: それより、待っている間 飽きたりしてませんでした?
  6293. 由貴 真里愛: 浴衣も慣れないから 動きにくいでしょうし…
  6294. 全然、大丈夫! もう慣れちゃったよ
  6295. 最初はね
  6296. ちょっと古くていやだなぁって 思っちゃったんだけど
  6297. 着てみたら可愛いね
  6298. 由貴 真里愛: それはよかったわ
  6299. 由貴 真里愛: (お家で浴衣を 用意できない子もいるから)
  6300. 由貴 真里愛: (地域の方に協力してもらって)
  6301. 由貴 真里愛: (古い着物を仕立て直した かいがあったわね)
  6302. …この辺って
  6303. 古い自動販売機が そのままになってたりして
  6304. ひと昔前みたいな風景だし
  6305. 私たちの学童保育って
  6306. 今の子がしないような 昔の遊びを教えてあげてるから
  6307. あのお姉さん おかしな場所に迷い込んだって
  6308. 焦ったかもしれないわね
  6309. 由貴 真里愛: …あのお姉さん?
  6310. あのね、真里愛お姉ちゃん 妖精のお姉ちゃんがいたの
  6311. 由貴 真里愛: 妖精の…お姉ちゃん…?
  6312. うん、親切な妖精さんで ずっと一緒に遊んでくれたんだよ
  6313. ちっちゃいけどいろいろ知ってて 優しいんだ
  6314. 由貴 真里愛: あらあら 素敵な妖精さんね
  6315. でもね、チャイムが鳴ったから 帰っちゃったの
  6316. 由貴 真里愛: チャイム?
  6317. うん… 先生に聞いたら
  6318. 妖精さんがここにいられるのは チャイムが鳴るまでかもって…
  6319. お祭りも 一緒に行きたかったのに…
  6320. 由貴 真里愛: あの子たちが言う 妖精さんってさっき言ってた
  6321. 由貴 真里愛: 迷い込んだ お姉さんのことですよね?
  6322. 由貴 真里愛: どうして、妖精さんなんて 話になったんですか?
  6323. あなたと同じ制服の子が 迷い込んでしまったみたいで
  6324. 子どもたちに なつかれちゃったのよ
  6325. でも、親切に遊んでくれたの
  6326. それであの子たちがチャイムに 気を取られている間に
  6327. 帰してあげたんだけど…
  6328. 由貴 真里愛: みんなには消えたように 見えたんですね
  6329. そう…だから、妖精さん 可愛い考え方でしょう?
  6330. 由貴 真里愛: はい…!
  6331. 由貴 真里愛: 私も会ってみたかったですね
  6332.  
  6333. 5170116-46_pVeLS [Kagome node; Normal End]
  6334. かごめ: なんだか、こうして読んでると みんな楽しそうだね
  6335. アルちゃん: <どうしたの、かごめちゃん 少しだけ寂しそうだけど…>
  6336. かごめ: なんだかいいなって 少しうらやましくなっちゃった
  6337. かごめ: 私もこういう楽しい夏休みって 経験したことはあるけど
  6338. かごめ: ほら、アルちゃんを通さないと、 私って話せなかったでしょ…?
  6339. かごめ: だから、こっちに引っ越してきて 幼馴染がいなくなってからは
  6340. かごめ: こうして遊べる学校の友だちって いなくなったなって…
  6341. アルちゃん: <心配しなくても大丈夫>
  6342. アルちゃん: <だってこんなにいっぱい 取材をしてきたんだもん>
  6343. アルちゃん: <あの頃のかごめちゃんより 成長してるはずだよ>
  6344. かごめ: そうかな? 少しずつ変わってるかな?
  6345. アルちゃん: <うん、広げられたメモの数が 成長の証だと思うよ>
  6346. かごめ: …そうだね、そうかもしれない
  6347. かごめ: だってこんなに人と関わるなんて 昔の私からは考えられないもん
  6348. かごめ: …うん、なんだか元気が出てきた
  6349. かごめ: みんなの物語を原動力にして、 楽しい夏休みになるようにしよう
  6350. アルちゃん: <その意気だよ!>
  6351. かごめ: じゃあ、図書館に行ってくるね
  6352. かごめ: なんだか家より外で 作業を進めたくなっちゃった
  6353. アルちゃん: <うんっ>
  6354.  
  6355. 5170117-47_pVeLS [Kagome node; True End]
  6356. かごめ: (うん、とりあえず今日は ここまでにしようかな…)
  6357. かごめ: (明日はどうしようかな… 明日もまた図書館…?)
  6358. かごめ: (でも、私もたまには 友だちと一緒にうんと遊びたい)
  6359. かごめ: ――っ!?
  6360. 風の伝道師のウワサ: …………
  6361. かごめ: …この近くに魔女の反応がある?
  6362. 風の伝道師のウワサ: …………
  6363. かごめ: …うん、わかった
  6364. かごめ: いろはさんに連絡して 状況を聞いてみるね
  6365. かごめ: と、ここでとっさにスマートフォンを見ると 自分で驚いてしまった
  6366. かごめ: 連絡を取るために開いたメッセージアプリには 私が思ってもみなかったぐらい たくさんの人の名前が並んでいる
  6367. かごめ: 意識していなかったけど 私は前から誰かとコミュニケーションを とり続けていたんだ
  6368. かごめ: そして、今もまた 私は平気でいろはさんと連絡を取ろうとしてる
  6369. かごめ: でも… この違いって何なんだろう…
  6370. かごめ: 取材したり記録することは平気でできるのに 「遊びませんか?」っていうたった一言は ひどく重く感じてしまう
  6371. かごめ: (それにメモをまとめてる間に、 こんなにメッセージも来てる…)
  6372. すなお: 静香たちと霧峰村に帰省して お土産を持ってきました 今度お会いする時にお渡ししますね
  6373. 樹里: なあ、お前ってゲームできるか? こっち頭数がたんなくてさ 神浜市のヤツらをぶちのめしてーから来いよ 最悪、取材だけでもかまわねーから
  6374. 木崎 衣美里: ねえねえ、今度一緒にプールいかね!? 商店街でもらったタダ券むっちゃあんの! あすきゃんの水着とか見たいっしょ!?
  6375. 遊佐 葉月: ねえ、売り子ってなんの事かわかる? 本を書いてる人だし何か知らないかな…? また急にイベントに巻き込まれそうで…
  6376. みたま: 調整屋では次の日曜日に 納涼大感謝祭を開催するわよぉ~ みんなでいっぱい楽しめると思うから かごめちゃんも一緒に遊びましょ
  6377. かごめ: みんな、すごく自然…
  6378. かごめ: 私だって自然に接してるけど、 それは取材や記録のことだけ…
  6379. かごめ: そう、たぶん魔法少女を取材するということを 言い訳にし続けて、壁を作ってるのは私…
  6380. かごめ: みんなは私自身と繋がろうとしてるのに 私が取材という言葉で 差し伸べてくれた手を払いのけてるんだ…
  6381. かごめ: だから、勇気を出さないと… これだけの人と私は繋がれたんだ…
  6382. かごめ: 私はみんなと一緒に 同じような日常を過ごせるはずだし
  6383. かごめ: 同じ時間を共有したい…!
  6384. かごめ: だから…
  6385. ~~♪~~♪
  6386. かごめ: あ、いろはさん 魔女のことってお気づきですか?
  6387. かごめ: …よかった、倒したんですね
  6388. かごめ: …はい、それだけなんですけど あの…
  6389. かごめ: …………
  6390. かごめ: 今度、一緒にみたまさんの 納涼大感謝祭に行きませんか!?
  6391. かごめ: みんなも連れて、遊びに…!
  6392. かごめ: この時、私の夏休みも動き始めた
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