Vi_Vi

Arc 2 Another Story Ch8 JP Text

Jan 11th, 2022 (edited)
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  1. FILENAME: text_207801-1_RY9kG.txt
  2. 十七夜: いってらっしゃい、ご主人 いつでも帰りを待っているぞ
  3. カラ~ン カラ~ン
  4. 店長: はい、残業お疲れ様 今日はもうあがっていいわよ
  5. 十七夜: おネェさま では、今日はあがるとしよう
  6. 店長: なぎたんが言うから シフトを増やしたけど
  7. 店長: やっぱり無理してるんじゃない? 大丈夫?
  8. 十七夜: 気にするな てんちょ…おネェさま
  9. 十七夜: プライベートが忙しかった手前 バイトの時間が減っていたからな
  10. 十七夜: どこかで挽回しないと、 どのみち家計が苦しくなるだけだ
  11. 店長: だからってこの鬼シフト 学校もあるのに心配よ?
  12. 十七夜: 生きるためだ、仕方ない
  13. 十七夜: それに、今月さえしのげば 多少は楽になる
  14. 十七夜: 来月からは父も働き 和泉家に余裕ができるからな
  15. 店長: あらそうなの おめでとう
  16. 店長: とはいえ、あまりお家の事情を 明け透けに話すモノじゃないわ
  17. 十七夜: おネェさまのことは信頼している 家の事情を知っていても構わない
  18. 店長: それはいいけど…
  19. 店長: 壁に耳あり障子に目あり なんて言うでしょ?
  20. 店長: そんなに大きな声じゃなくても ご主人様の耳にも入っちゃう
  21. 店長: パンツの前後を間違えたって バズっちゃってたわよ
  22. 十七夜: そうか、それは自重せねばな はっはっは
  23. 十七夜: …………
  24. ももこの声: お疲れ 十七夜さん
  25. 十七夜: ん…?
  26. 十七夜: なんだ十咎か
  27. ももこ: 珍しいね こんな時間までお店にいるなんて
  28. 十七夜: 魔法少女の活動が忙しいからな とうとう我が家は金欠だ
  29. 十七夜: そこで短期間に集中して シフトを入れてもらったんだ
  30. 十七夜: しかしそのおかげもあってか
  31. 御園 かりん: きゅ、急に来て悪かったの!
  32. 御園 かりん: みんなが集まってる場所が わからなくて
  33. 御園 かりん: それで、ここなら 絶対になぎたんが居ると思ったの
  34. 十七夜: アポなしでやってきた画伯とも 遭遇できた
  35. 十七夜: そういえば、 画伯は竜真館に来たか?
  36. 十七夜: 行けば十咎たちに会える かもしれないと伝えたのだが…
  37. ももこ: うん、来たよ
  38. ももこ: 実はそのときの話をしに ここまで来たんだ
  39. 十七夜: 店に直接足を運ぶほど 重要な話か
  40. ももこ: 果てなしのミラーズが関わってる
  41. 十七夜: ――っ!?
  42. ももこ: どうも 鏡の魔女になった魔法少女は
  43. ももこ: 大東と関わりがあるみたいなんだ
  44. みたま: 本当に元になった魔法少女は “瀬奈みこと”だって言ったの?
  45. みかげ: うん!
  46. やちよ: 以前からみたまは 果てなしのミラーズの正体を
  47. やちよ: “瀬奈みこと”だと あたりを付けて考えていた
  48. ももこ: つまり、 調整屋の想定は当たってたのか…
  49. ももこ: それってこの件を伝えたら 果てなしのミラーズの対策が
  50. ももこ: 取りやすくなるってことだよな?
  51. やちよ: 可能性はあるわね
  52. みかげ: じゃあ、ももたん! ミィが今の話伝えておくよ!
  53. みかげ: 正解だったら、 姉ちゃも喜んでくれるよね!?
  54. ももこ: アタシからも一報入れるけど みかげちゃんからも頼むよ
  55. みかげ: だから、こうやって 姉ちゃに伝えたんだよ!
  56. みかげ: 姉ちゃの予想 大当たりだったね!
  57. みたま: ええ、そうね…
  58. みたま: あ、そろそろ夕飯の時間だけど 帰らなくて大丈夫?
  59. みかげ: ほんとだ、帰らないと! 姉ちゃは?
  60. みたま: ごめんね、まだお店を 閉めるわけにはいかなくて…
  61. みかげ: ふーん、わかった ミィひとりで帰るね
  62. みかげ: じゃあね、姉ちゃ
  63. みたま: …………
  64. みたま: 瀬奈…みことが…
  65.  
  66. FILENAME: text_207801-2_RY9kG.txt
  67. 十七夜: …………
  68. ~~♪~~♪
  69. 十七夜: む…
  70. 十七夜: なんだ、八雲か
  71. みたま: 今、どこ?
  72. 十七夜: 家にいるが、どうした
  73. みたま: 下の公園に来てくれる? そこで待ってるから
  74. 十七夜: …どうした
  75. みたま: あのね…
  76. 十七夜: 十咎から話を聞いて、 自分も驚いた…
  77. 十七夜: まさかここにきて 彼女の名が出てくるとはな…
  78. 十七夜: 瀬奈みこと…
  79. みたま: ええ…さらに アリナが記憶を取り戻して
  80. みたま: 共に滅びに向けて 動き出したとも言ってた…
  81. みたま: 恐らく全て、わたしの願いが 影響してるに違いないわ…
  82. 十七夜: なぜ、そう言い切れる
  83. みたま: 昔、魔法少女が魔女になる 宿命を知って
  84. みたま: わたしが失踪した魔法少女たちを 調査してたときがあったでしょ?
  85. みたま: あのとき、十七夜から話を聞いて 瀬奈みことのことも調べてたのよ
  86. みたま: そして、わたしは見つけたの 瀬奈みことの日記を…
  87. みたま: 書かれていたのは 悲惨な環境を呪う悲痛な言葉や
  88. みたま: 取り返しのつかない状況を 作りあげてしまった
  89. みたま: 願いを叶えたことへの 後悔だった…
  90. 十七夜: それが鏡の魔女の…
  91. 十七夜: 瀬奈みことの 背負っている過去か
  92. 十七夜: 不幸な生い立ちが生み出した 悲しき怪物…
  93. 十七夜: 大東に生きる我々にとっては、 よくある話だ
  94. みたま: それでね、その日記は 途中で終わってるんだけど…
  95. 十七夜: だろうな 鏡の魔女になったのだから
  96. みたま: その途切れた日付というのが
  97. みたま: わたしが願いを叶えた日と 一致するの
  98. 十七夜: ――っ!?
  99. みたま: 神浜を滅ぼす存在になりたい
  100. みたま: その願いが、瀬奈みことを 鏡の魔女にしたのかもしれない
  101. 十七夜: 飛躍しすぎだ
  102. 十七夜: 八雲の願いとは関係なく 彼女はその日魔女になったはず…
  103. 十七夜: 日記にも、願ったことに対する 後悔の言葉があったんだろう
  104. 十七夜: それに八雲の願いは、 “自身が滅ぼす存在になる”こと
  105. 十七夜: 八雲が行動をしない限り、 滅ぼす存在にはなり得ない
  106. みたま: 十七夜が言う通りよ
  107. 十七夜: じゃあ、なぜそこまで 深刻に考える…
  108. みたま: わたしが唯一滅びのために 行動したタイミングがあるからよ
  109. 十七夜: …いつだ
  110. みたま: 願ったときよ
  111. みたま: それ自体が 滅ぼすための行動でしょ
  112. みたま: だから何もしなくても すべては滅びに向けて動き出した
  113. みたま: わたしが願いを叶えた時点で 願いの内容は成立していたのよ
  114. 十七夜: じゃあ、みかげの願いはどうなる
  115. 十七夜: 八雲の願いを知った上で、 お前の妹は願ったんだろう
  116. 十七夜: 『神浜を守って』と
  117. みたま: ミィの願いは叶ってるわよ
  118. みたま: イブとワルプルギスの夜を相手に 奇跡を起こして神浜を守ったもの
  119. みたま: だからミィの願いは終わって、 わたしの願いだけが続いてるわ
  120. 十七夜: 相殺されて叶わなくなった そうは考えないのか
  121. みたま: キュゥべえの願いを叶える力 それだけは絶対よ
  122. みたま: 叶わないこともあるなんて、 わたしも淡い期待をしてたけど
  123. みたま: 果てなしのミラーズの話で 心がポッキリ折れちゃったわ…
  124. みたま: 本人の生死に関わらず いずれ願いは叶ってしまう
  125. みたま: 調整屋でみんなを覗いていれば わかっていたことなのにね
  126.  
  127. FILENAME: text_207801-3_RY9kG.txt
  128. 十七夜: 八雲は これからどうするつもりだ
  129. みたま: 最終的にどうあっても 願いが叶うのなら…
  130. みたま: わたしの願いで、どうあがいても 滅びが訪れるのなら…
  131. みたま: わたしはもう、抗わない
  132. みたま: 滅びの潮流に乗って 願い通りの未来にする
  133. 十七夜: …………!
  134. 十七夜: …そうか、戻るのだな あのとき以前に…
  135. みたま: そうね 一度は別の道を模索したけど…
  136. 十七夜: お前は望むか、この町の滅びを
  137. みたま: …………
  138. みたま: 今のわたしを見ても 分からないの?
  139. 十七夜: 愚問だったな
  140. みたま: わたしたちは魔法少女である前に 社会の中で生きる人間なのよ
  141. みたま: これ以上、 我慢する必要なんてないわ
  142. 十七夜: ただいま帰った
  143. 十七夜の父: ああ、十七夜か …今、いいか?
  144. 十七夜の弟: ただいまー
  145. 十七夜の父: ああ、お前も帰ってきたか ちょうどよかった
  146. 十七夜の父: ふたりとも、少し時間をくれ 大事な話がある
  147. 十七夜: 別にいいが…
  148. 十七夜の弟: どうしたの、改まって
  149. 十七夜の父: …………
  150. 十七夜の父: 父さん、来月から参京区の会社で 新しい仕事があると言ったろ…
  151. 十七夜: ああ、聞いたな
  152. 十七夜: 足が不自由なのも気にせず 採用してくれたと聞いた
  153. 十七夜の弟: 父さん、頑張ってパソコンの 資格も取ったみたいだし
  154. 十七夜の弟: きっと努力が認められたんだよ
  155. 十七夜の父: その会社から連絡があってな
  156. 十七夜の父: 採用がなかったことになった…
  157. 十七夜の弟: ――っ!?
  158. 十七夜: な…!
  159. 十七夜の父: すまない…
  160. 十七夜の父: やっとお前たちに 楽をさせてやれると思ったのに…
  161. 十七夜の父: ダメな父親でごめんな…
  162. 十七夜の父: まだしばらく 苦労をかけることになる…
  163. 十七夜: 父さんはダメな父親ではない それに大丈夫だ
  164. 十七夜: 最近はメイドの仕事も板について 楽しくなぎたんをやっている
  165. 十七夜の父: 十七夜…
  166. 十七夜の弟: …………
  167. 十七夜の弟: …どうして… どうして内定取り消しなのさ
  168. 十七夜の父: …………
  169. 十七夜の父: …すべて、父さんが無能だからだ 変な考えを持つな
  170. 十七夜の弟: 東だからだろ…!
  171. 十七夜の父: それが理由なら 最初から内定は出さない
  172. 十七夜の弟: 違う、この前の選挙だ アレで東の印象が悪くなったんだ
  173. 十七夜の父: だとしても、 社長さんが悪いわけじゃない
  174. 十七夜の父: 向こうも小さい会社で、 地元の人たちで運営している…
  175. 十七夜の父: 様々な考えがある中で、 東を嫌う者も一定数いるんだ…
  176. 十七夜の父: このまま父さんが入れば 父さんが苦しむ
  177. 十七夜の父: 社長さんも、あとのことを 気に掛けての決断だったんだ…
  178. 十七夜の弟: なんだか、急に東に向けて 向かい風が吹いてきたみたいだ
  179. 十七夜の弟: アイツらだって、 前はしつこくなかったのに…
  180. 十七夜の父: 何かあったのか…?
  181. 十七夜の弟: ごめん、西のヤツとケンカした
  182. 十七夜の弟: 先に向こうが突っかかってきて 本当はダメってわかってたけど
  183. 十七夜の弟: 反撃してぶん殴った…
  184. 十七夜の父: 今は我慢の時期だ 悪循環を起こすだけだぞ…
  185. 十七夜の弟: わかってる…! けど、耐えられなかったんだ!
  186. 十七夜の父: …………
  187. 十七夜: (ふたりの言うことはわかる… もう悪循環に入っている…)
  188. 十七夜: (また我々は危険だという 風評にさらされ続け)
  189. 十七夜: (次第に社長さんのような 考えを持つ人も消えてゆく…)
  190. 十七夜: っ…
  191. 十七夜: (この状況を作り出した 少数の人間も憎たらしいが)
  192. 十七夜: (利用されるこの神浜市の歴史 そのものが、邪魔をする…)
  193.  
  194. FILENAME: text_207801-4_RY9kG.txt
  195. みたま: 魔法少女の中では 東西なんてものはなく皆が平等
  196. みたま: 十七夜の言葉も 間違いではなかった
  197. みたま: だからこそわたしは 救われていた
  198. みたま: でもね、結局それは 一時的な現実逃避
  199. みたま: 目を逸らしてるだけ…
  200. みたま: わたしは魔法少女以前に 人間でもあって…
  201. みたま: 「人間として」生きる必要に 常に迫られて…
  202. みたま: この視界には、どうあがいても 人間社会が入り込んでくる
  203. みたま: だから、わたしは…!
  204. 燦: 西も東も関係なく 神浜そのものを恨んでいるのね
  205. ミユリ: それならそれなら! 魔法少女至上主義に従って
  206. ミユリ: ミユたちに付いてくるべきです
  207. 燦: そうね、東の境遇からくる 裏切りを期待していたけど
  208. 燦: 人間に報復して平等を求むなら それも私たちのもとでやれるわ
  209. みたま: 信じていいのね?
  210. 燦: 詳しい話が知りたい?
  211. ミユリ: でもでも…後悔することに なるかもしれませんよ…?
  212. 燦: 聞いたら最後 こちらに踏み込むことになるわ
  213. みたま: 構わないわ
  214. みたま: どっちに転んでも 後悔するぐらいなら…
  215. ミユリ: …………
  216. みたま: わたしは自分の感情に任せて 無駄にならない方を選ぶわ
  217. 燦: そう、わかったわ
  218. 燦: でも詳しい話は他の子を交えて 後日改めて
  219. 燦: こんなところで 立ち話する内容じゃないわ
  220. ミユリ: 追って日時と場所を お伝えします
  221. 十七夜: そうか、貴様は ネオマギウスに行くのか
  222. アオ: まだ確定ではないけどね~
  223. 十七夜: 自分も誘いは受けたものの まだ決めあぐねている
  224. アオ: 前にわたしの中を覗いたときに 共感するところがあったでしょ
  225. 十七夜: 平等や搾取のことか…
  226. アオ: 今の神浜市ってどうなの? 東の人は辛そうに見えるけど
  227. 十七夜: …うむ、図星だな
  228. 十七夜: 魔法少女の中では平等でも、 蓋を開けば人間社会にいる
  229. 十七夜: 共に生きているだけで、 歴然とした格差を感じる上に
  230. 十七夜: それを埋めようとしても、 連綿と続く歴史が邪魔をする
  231. 十七夜: 変えようとしても、 変わろうとしても
  232. 十七夜: 悪い方に再生してゆく姿は、 見るに堪えぬものがあるな
  233. アオ: それなら聞いてみない? ネオマギウスの話
  234. アオ: 魔法少女至上主義を広めれば 神浜の人たちも平等にできるし
  235. アオ: 魔法少女の中でも天辺を取れば 搾取されることもない
  236. 十七夜: …………
  237. アオ: わたしと一緒に 平和と平等の管理者になろう!
  238. アオ: みんなで力を合わせれば イージーゲームだよ!
  239. 十七夜: そうか…
  240. アオ: そんでね、ネオマギウスが 今度詳しい話をしてくれるみたい
  241. アオ: ちょっと遠いけど 十七夜さんも行くよね?
  242. 十七夜: …………
  243. 十七夜: (恐らく自分が伝えなくても)
  244. 十七夜: (八雲はネオマギウスが 生きていることを知るだろう)
  245. 十七夜: (そしてそのままネオマギウスの 側に付くはずだ…)
  246. 十七夜: わかった 自分もその会合に参加しよう
  247.  
  248. FILENAME: text_207802-1_ZbioY.txt
  249. ガタンゴトン…
  250. みたま: …………
  251. 十七夜: …………
  252. みたま: ねぇ、 どうして今日、付いて来たの?
  253. みたま: これから行く場所わかってる? ネオマギウスが待ってるのよ?
  254. 十七夜: それは承知している …意外だったか?
  255. みたま: 意外って言うか… まあ、意外ね…
  256. みたま: ネオマギウスの話を聞けば、 もう断れないと思うわよ
  257. みたま: それに十七夜はわたしよりも、 神浜市のみんなが好きでしょ?
  258. 十七夜: …………
  259. 十七夜: 悪いが、自分が思うより 自分は環君や七海が好きらしい
  260. みたま: 東のことだけを考えても、 令ちゃんの想いを背負ってるし
  261. みたま: 家族のこともバイト先のことも 大切な人がたくさんいるわ
  262. みたま: だから、今さら神浜の滅びを 望むなんて、できないと思ってた
  263. 十七夜: 八雲ほど割り切れてないだろう
  264. 十七夜: それに、目的を果たしたとして 申し訳なさもある
  265. 十七夜: だが、未来を担う若い世代が、 東西の闇に飲まれる姿を見れば
  266. 十七夜: 長い歴史の中で変わらぬ町に 諦めを覚えても仕方がない…
  267. みたま: もしかして… ミィが石を投げられたこと…?
  268. 十七夜: …………
  269. こうやって!
  270. ヒュッ
  271. みかげ: った!
  272. 十七夜: …見くびるな
  273. 十七夜: 一側面だけを取り上げて 十把一絡げに評価は下さない
  274. 十七夜: …今はみかげだけでなく 他の者たちも被害を受けている
  275. みたま: ずいぶん怒りをはらんだ 言い方をするのね…
  276. みたま: もしかして、 家族に何かあったの…?
  277. 十七夜: …これからはもっと酷くなる
  278. 十七夜: 未来はもはや、 目も当てられないかもしれん…
  279. 十七夜: ならば、 せめて未来を救うために
  280. 十七夜: 過去の歴史を焼き尽くすほどの 強行策に出てもいいはずだ
  281. 十七夜: 最大の懸念事項は… トップを失ったネオマギウスに
  282. 十七夜: 滅びを与えるほどの力が あるかどうかだ…
  283. カランカラン
  284. ミユリの声: あ、こっちこっち こちらです~!
  285. 十七夜: …………!
  286. みたま: 時女の…!
  287.  
  288. FILENAME: text_207802-2_ZbioY.txt
  289. 十七夜: これは意外だな
  290. 静香: 笑うなら笑うがいいわ
  291. 静香: ただ、私にだって 話を聞きに来た理由がある
  292. 十七夜: それなら自分たちも同じだ 笑いはしない
  293. みたま: むしろ、頼もしいくらいよ…
  294. 燦: ふふ、みんな仲良くなれそうね
  295. 燦: さ、挨拶はそこまでにして さっそく始めましょうか
  296. 十七夜: …………
  297. 十七夜: (相手は本当にふたりか… いささか無防備だな…)
  298. アオ: ねえ、これで本当に話す気?
  299. アオ: これでもわたしたちは敵だしさ 少しは警戒した方がいいよ~
  300. アオ: ここでわたしたちが暴れて、 撃破されるとか考えないの?
  301. 燦: 考えた上で無防備なのよ
  302. 燦: ソウルジェムを人質みたいに とることだってできるけど
  303. 燦: しょせんは、その場しのぎ
  304. 燦: ネオマギウスが他グループより 戦力で劣ってる以上
  305. 燦: あなたたちをヘッドハント できなかった時点で詰むのよ
  306. 十七夜: ふむ、崖っぷちかつ 綱渡りということだな
  307. 燦: そういうことね
  308. 燦: だから、これから話を聞いて、 判断して欲しいわ
  309. 燦: …まず、ネオマギウスの目的は 魔法少女至上主義の流布
  310. 燦: それによって自分たちが 人々の上に立つということよ
  311. みたま: それは知ってるけど、 理由を聞かせてもらえるかしら
  312. 燦: 魔法少女の方が人間と比べて 優れている存在であり
  313. 燦: 現代に至るまで、人類の歴史を 牽引してきたからよ
  314. 十七夜: なるほど
  315. 十七夜: それで、人類の上に立つ過程で 我々の目的も成就されると…
  316. ミユリ: 当然の当然ですよ!
  317. ミユリ: 魔法少女至上主義が広まれば、 みんなの想いが叶うんです!
  318. ミユリ: 「魔法少女は人類を超える神様のような存在 だからこそ 燦様は光塚の火祭りの神様になれる!」
  319. ミユリ: 「ミユも人より上になれば 人相手に緊張する必要はなくなりますし 結果的に暴走して いたずらに人を傷付ける心配もありません!」
  320. ミユリ: 「安積だって 人にバカにされないようになりますし」
  321. ミユリ: 「宮尾だって他人に干渉されることなく 自分がしていることを 認められるようになるんです」
  322. 燦: つまり、魔法少女至上主義を 刷り込む過程と結果をもってして
  323. 燦: バラバラである私たちの目的は すべて叶えることができる
  324. 燦: 私たちが魔法少女の天辺に行けば 可能なことよ
  325. みんな: …………
  326. 十七夜: …貴様たちの言う 天辺とはなんだ
  327. 燦: 天井のさらに上…
  328. 燦: 高く飛ぶだけじゃ 絶対に届かないところ
  329. 燦: 人間という領域を超えた私たちは 魔法少女の上にも立つ
  330. 燦: すべての神となる
  331.  
  332. FILENAME: text_207802-3_ZbioY.txt
  333. 十七夜: 神、か…
  334. 燦: 不可能だと思ってる?
  335. 十七夜: …………
  336. 燦: あまりに飛躍した言葉だから 信じられないのも無理はないわね
  337. アオ: わたしは… 神とかよくわかんないけど…
  338. アオ: 少なくとも魔法少女が 人間を超えた存在だ、って
  339. アオ: みんなが認めざるを得ない世界を 目指すってことだよね?
  340. 燦: ええ、その通りよ
  341. アオ: その上で魔法少女の頂点も 目指せるって話なら
  342. アオ: わたしが目指すことと 向いてる方向は同じだと思う…
  343. 静香: そうね、私も同じよ
  344. 静香: 「もしも神になれるのなら…」
  345. 静香: 「あなたが言う通り 私は巫として人々が悪に染まらないように 導けるのかもしれない」
  346. アオ: 「わたしも怯える必要がない“力”を得て 搾取のない平等な世界を作れる」
  347. みたま: 「わたしも神浜市の人々に罰を与えることで 悔い改めてもらえるわね」
  348. 十七夜: …………
  349. ミユリ: 十七夜さんは…?
  350. 十七夜: ん?
  351. 十七夜: …………
  352. 十七夜: 欲張りかもしれないが…
  353. 十七夜: 自分は八雲のように 町の人々を罰したいとも思い
  354. 十七夜: 三女のように 平等を求め
  355. 十七夜: 時女のように 人々を導きたいとも考えている
  356. みたま: …………
  357. 十七夜: ただし、正義であることに 固執するつもりはない
  358. 十七夜: 求めるのは 人々がひとつになれるような存在
  359. 十七夜: たとえば…そうだな
  360. 十七夜: すべての人々の敵として君臨する 絶対的な恐怖の象徴だ
  361. 十七夜: そんな存在に 自分はならなければいけないし
  362. 十七夜: そのために神浜市の歴史を 塗りつぶすことも必要だと思う
  363. 燦: 欲張り、結構なことよ 天辺に行けば全部が実現できる
  364. 燦: だって神なんだから
  365. 十七夜: だがひとつ、心配なことがある
  366. 燦: なに?
  367. 十七夜: こうして説明を受けている手前 言いにくいことではあるが
  368. 燦: らしくないわね なんでも言いなさいよ
  369. 十七夜: 魔法少女至上主義を広めるという ご大層な理念…
  370. 十七夜: 今のネオマギウスでは 実現できるとは到底思えない
  371. 十七夜: 自分はそれが気になっていた
  372. 十七夜: 神なんて言葉は 普通に聞けば鼻で笑われ…
  373. ひめな: それは私チャンがいないから?
  374. 十七夜: ――っ!?
  375.  
  376. FILENAME: text_207802-4_ZbioY.txt
  377. みたま: …藍家…ひめな…
  378. 静香: そんな…あのときたしかに… 私たちが殺したはず…
  379. アオ: お化け…なわけないよね…
  380. ひめな: みんなリアクション完璧!
  381. ひめな: 正真正銘、 ナマの私チャンだよ★
  382. 十七夜: どういうことだ…!
  383. ひめな: あは、きゃぱいってカンジだね
  384. ひめな: じゃあその辺の説明と ついでに…
  385. ひめな: 私チャンの計画について 説明したげる
  386. ひめな: なぎりんは私チャンの実力を 疑ってるみたいだしね★
  387. 十七夜: …………
  388. みんな: …………
  389. 静香: そ、そんな…
  390. ひめな: どう?
  391. 十七夜: むぅ…! なんという凶行…!
  392. 十七夜: だが、確かにそれなら… 人々を追い込み、押さえつけ…
  393. 十七夜: 話を聞かせ、従わせることも できるかもしれない…!
  394. ひめな: でしょ!? なぎりん、わかりみが深い!
  395. アオ: すごい…! いける、いけるよっ…!
  396. 十七夜: (計画を進める過程で 神浜は滅びるかもしれない…)
  397. 十七夜: (そして、人々の矛先を 自分に向けることもできる…)
  398. 十七夜: (だが…)
  399. ひめな: ん…? どしたの?
  400. 十七夜: (この女の心の底を 見極めねばならん…!)
  401. 十七夜: (今、ここで… 確実に…!)
  402. 十七夜: ――っ!?
  403. 十七夜: (バカな…!)
  404. ひめな: ちょっと、店ん中で変身とか マジでイミフなんだけど!
  405. ひめな: …もしかしてなぎりん 私チャンに何かした…?
  406. 十七夜: っ…
  407. 十七夜: …自分の固有魔法で 貴様の心を読もうとした
  408. ひめな: え、ヤバ! そんなんされたら生きていけない
  409. アオ: …………
  410. 十七夜: だが、読めなかった…
  411. みたま: 十七夜が失敗…?
  412. 十七夜: 頭の中の何かに阻まれた… おそらく、男だと思うが
  413. ひめな: え?
  414. 十七夜: その影に邪魔をされた 一瞬で定かではないがな…
  415. ひめな: …………
  416. ひめな: な~~んだ ヒコ君の仕業だった?
  417. ひめな: うん、うん…
  418. ひめな: キャハッ★
  419. ひめな: ヒコ君ってときどき、 カッコイイとこ見せるよね~
  420. アオ: 中に男の人…? え、どういうこと…?
  421. 燦: 姫様が魔法少女至上主義で 求めるのは自由な恋愛でね
  422. ミユリ: その相手が、今は姫様の 頭の中にいるんです
  423. ミユリ: ふたりでよく 作戦を立ててます
  424. 静香: 変わった体質っていうことよね
  425. 十七夜: …そう捉えるしかない
  426. 十七夜: 一瞬見えたのは幻ではなかった… 故に妄想の類ではないのだろう…
  427. 十七夜: (前々から、脳内の人間と 話しているとは聞いていたが…)
  428. 十七夜: (正気だったか…)
  429. 十七夜: (となると、今までの計画から これからの計画に至るまで)
  430. 十七夜: (全ては冷静に考えて 組まれたものだということ…)
  431. 十七夜: …………
  432. 十七夜: (冷静なる凶行か…)
  433. みたま: 十七夜…?
  434. 十七夜: 自分はかなり、ネオマギウスを 侮っていたらしい
  435. 十七夜: ただの腐った烏合の衆では なかったようだ
  436. ひめな: だいぶ失礼な気がするけど わかってんじゃん
  437. ひめな: 私チャンたちは運命を共にする マイメン同士だからね
  438. 十七夜: (最後に残る懸念は… この「自分」だ…)
  439. 十七夜: (自分はまだ他の者と比べ… 「潔さ」が足りていない…!)
  440. 十七夜: (それは恐らく自分が…)
  441. 十七夜: (まだ自分が、 この者たちに比べ…)
  442.  
  443. FILENAME: text_207803-1_69ea8.txt
  444. アオ: ―アオ― だからこそ人に支配されずに支配する
  445. 静香: ―静香― 故に人を導くことが道理であり
  446. 十七夜: ―十七夜― 人を罰することが許される
  447. みたま: ―みたま― 謝罪がなければ滅びも辞さない
  448. 4人: 私たちはネオマギウスの一員として この神浜市を掌握する
  449. みたま: わたしたち やったのよね
  450. 十七夜: ああ、やりきったな…
  451. みたま: ふふ、ちょっと清々しい気分
  452. 十七夜: そうか…
  453. ひめな: 姫君
  454. ひめな: ん?
  455. 十七夜: 次の自分たちの行動はなんだ? 何をすればいい?
  456. ひめな: ふふ、焦んなくていーよ なぎりん
  457. ひめな: ここからは「待ち」の時間
  458. ひめな: 裏でコソコソするのは もうやんなくていいの
  459. ひめな: これからの計画と準備は 見えるように進めるつもりだから
  460. 十七夜: それは、他のグループの連中と 正面からぶつかるということか…
  461. 十七夜: 準備が不十分な状態である以上 見切り発車だと思うが…
  462. ひめな: ん~…なんていうかね
  463. ひめな: ヒコ君的には、 今こそ競争するときみたい
  464. ひめな: 実はこうでしたって あとから言われて負けを知るより
  465. ひめな: リアルタイムで衝突した方が 負けたことを実感できるし
  466. ひめな: 心が折れるでしょ?
  467. ひめな: だから、他のグループの人とは なるべくしっかり戦って
  468. ひめな: 心の底から敗北感を味わわせて 抵抗する気を削ぎたいんだよね
  469. 十七夜: …………
  470. ひめな: 反対意見でもある?
  471. 十七夜: いや、微塵もない
  472. 十七夜: あくまで敵に対しても 魔法少女至上主義なのだな
  473. 燦: そろそろ宝崎市ね
  474. ひめな: あ、ほんとだ 話しすぎちゃった
  475. ミユリ: お見送りありがとうございました
  476. ひめな: それじゃーまたね バイバイ
  477. みたま: ええ
  478. 十七夜: 失礼する
  479. 十七夜: …神浜を滅ぼしたら その後はどうするつもりだ
  480. みたま: …そうねぇ
  481. みたま: たぶん身勝手に絶望して 死ぬのかしら
  482. 十七夜: …まあ、だろうな
  483. みたま: 止めてくれる?
  484. 十七夜: どうだろうな
  485. 十七夜: 今回ばかりは自分も 絶望しないという保証はない…
  486. みたま: そうよね
  487. みたま: わたしたちのせいで みんないなくなるんだもの
  488. 十七夜: …………
  489. みたま: なに?
  490. 十七夜: 淡々としているな いつも通りの八雲だ
  491. みたま: ここまで足を突っ込めば、 もう怖いものなんてないもの
  492. 十七夜: 吹っ切れて当然かもしれんな
  493. みたま: じゃあ十七夜 わたしはこの辺りで失礼するわ
  494. 十七夜: ん、なんだ? 調整屋でも寄るのか?
  495. みたま: まさか、寄らないわよ ミィが居るかもしれないし
  496. みたま: …………わたしね、 もう家にも帰ってないの
  497. 十七夜: …! まあ、そうだろうな
  498. 十七夜: ではこの辺りに、 仮の住まいがあるということか
  499. みたま: そういうこと
  500. みたま: どう? 十七夜も寄ってく?
  501. 十七夜: 遠慮する
  502. みたま: …十七夜はまだ吹っ切れないのね
  503. 十七夜: そうだな、自分はまだ 思い切りが足りていないようだ
  504. 十七夜: …それこそ、情の問題だろう…
  505. 十七夜: …家族の待つ 我が家に帰るとする
  506. みたま: それがいいわ また明日
  507. みたま: …………ねえ十七夜
  508. 十七夜: どうした
  509. みたま: …わたしたちって東西の争いや マギウスの計画とか
  510. みたま: たくさんの 困難を乗り越えてきたでしょう?
  511. 十七夜: そうだな
  512. みたま: そして今は、この町に留まらず 色んな時代や空間に繋がる
  513. みたま: 果てなしのミラーズを 前にしている
  514. 十七夜: 何が言いたい
  515. みたま: …滅びをもたらす力ってね 実はわたしが抗えば抗うほど
  516. みたま: それを乗り越えようとして 危険性が増すのかもしれない
  517. みたま: 必ず願いを成就させるために
  518. みたま: それなら神浜市を滅ぼした方が 未来は幸せかもしれないわ
  519. 十七夜: それが八雲の言う 『滅びの潮流』に乗った理由か…
  520.  
  521. FILENAME: text_207803-2_69ea8.txt
  522. 十七夜: …………
  523. ~~♪~~♪
  524. 十七夜: む…?
  525. 十七夜: 父さんか どうした
  526. 十七夜の父: 十七夜! 大変なんだ!
  527. 十七夜の父: 今どこにいる!!
  528. 十七夜: な、なんだ…! 今は新西区だが…!
  529. 十七夜の父: そうか…! ちょ、ちょうどよかった
  530. 十七夜の父: 急いで病院に行ってくれ!
  531. 十七夜の弟: ………… …………
  532. 十七夜: …父さんと母さんは 今急いで向かってるらしい…
  533. 十七夜の弟: うぅ…
  534. 十七夜: いったい何があったんだ…!
  535. 十七夜: 骨折しているらしいが 車にでもハネられたのか…!
  536. 十七夜の弟: …やっぱり 父さんや姉さんの言う通り…
  537. 十七夜の弟: どんなことがあっても 手を出しちゃダメだった…
  538. 十七夜: どういうことだ…
  539. 十七夜の弟: この間、西のヤツと ケンカしたって言ったろ…
  540. 十七夜の弟: そいつらに報復されたんだよ
  541. 十七夜: 人にやられたのか そ、そのケガ…!
  542. 十七夜の弟: タイマンで負けたわけじゃないぞ か、囲まれて…
  543. 十七夜: どうでもいいっ!
  544. 十七夜: 警察…警察は…!
  545. 十七夜の弟: さっき話したけど変だった
  546. 十七夜の弟: まともに取り合うつもりが ないみたいで…
  547. 十七夜: ――っ!?
  548. 十七夜: なんでだっ!!
  549. 十七夜の弟: わかんないよ…
  550. 十七夜の弟: 最初に話した警官は しっかり聞いてくれたんだけど…
  551. 十七夜の弟: スーツの刑事さんが来たら 急に冷めてあっさりして…!
  552. 十七夜: っ…!
  553. 十七夜: …………
  554. 十七夜の弟: 関係あるかわかんないけど…
  555. 十七夜の弟: …ケンカしたアイツ… バックになんかいやがった…
  556. 十七夜: どういうことだ
  557. 十七夜の弟: 囲ってきた奴らの中にひとり、 見たことのあるヤツがいた
  558. 十七夜: 誰だ
  559. 十七夜の弟: …ってグループのヤツで…
  560. 十七夜: …………!
  561. 十七夜: 間違いないのか…
  562. 十七夜の弟: うん、それは間違いない…
  563. 十七夜: (そのグループの名前は 八雲から聞かされていた…)
  564. 十七夜: (以前の選挙で、西の候補を 妨害していたグループだ…)
  565. 十七夜: (この病院の院長に 投石したのもそのグループ…)
  566. 十七夜: (それも西側の自作自演で…)
  567. 十七夜: (自分たちも東を貶める エサにされるぐらいなら…)
  568. 十七夜: …そのグループの拠点を教えろ
  569. 十七夜の弟: え…?
  570. 十七夜の弟: ね、姉さんやめろ…! 何をするつもりだ…!
  571. 十七夜: 次に何かあるようなら、 こちらから食らいにいく
  572. 十七夜: 言わないなら覗かせてもらうぞ
  573.  
  574. FILENAME: text_207803-3_69ea8.txt
  575. 十七夜: 裏口から失礼する
  576. 店長: あら、なぎたん 今日は非番よね?
  577. 十七夜: シフトについて相談しにきた
  578. 十七夜: 少々、家の事情で 立て込んでいて
  579. 十七夜: 今日から数日間、 またシフトに入れそうにない…
  580. 十七夜: 迷惑をかけて申し訳ない…
  581. 店長: まあ、そんなのメールで 言ってくれればいいのに…
  582. 十七夜: …………
  583. 店長: …どうしたの?
  584. 十七夜: 気のせいかもしれないが 今、おネェさま…
  585. 十七夜: 少し、ホッとしなかったか?
  586. 店長: ――っ!?
  587. 店長: そ、そんなことないわ
  588. 店長: なぎたんという戦力に 助けてもらえないんだもの
  589. 十七夜: そうだな…隣のお店も 休業との張り紙があったし…
  590. 十七夜: うちの店も しばらく忙しくなりそうだ
  591. 十七夜: にもかかわらず 力添えできないのは申し訳ない
  592. 店長: 気にしないで
  593. 十七夜: …………
  594. まって、なぎたん
  595. 十七夜: む…?
  596. …あのね、このお店… 少し前から、脅されてるの…!
  597. 十七夜: なにっ…!
  598. 十七夜: どういうことだ 誰の仕業だ
  599. おネェさまは 隠してたみたいだけど…
  600. 十七夜: (またその集団の名前か…!)
  601. 十七夜: (八雲から聞かされ… 昨日弟を襲った…!)
  602. …………
  603. 十七夜: だが、どうして うちの店が標的に…
  604. …………!
  605. 十七夜: おネェさまも おネェさまだ
  606. 十七夜: こんな大変な目に遭っているなら 相談すればいいものを…
  607. …………
  608. 十七夜: …………ああ、そうか 襲撃された原因は…
  609. 十七夜の弟: 違う、この前の選挙だ アレで東の印象が悪くなったんだ
  610. 十七夜の父: その会社から連絡があってな
  611. 十七夜の父: 採用がなかったことになった…
  612. 店長: とはいえ、あまりお家の事情を 明け透けに話すモノじゃないわ
  613. 十七夜: …自分か…!
  614. 十七夜: 自分が大東区の出身だから…!
  615. 違う、まだ なぎたんのせいじゃない
  616. 十七夜: まだ…?
  617. 選挙の後からちょくちょくね、 そういう人たちが
  618. 大東区の人を雇うなって 脅してきたのは本当…
  619. でも、おネェさまは その脅しを拒んでる状態
  620. まだなぎたんのことは バレてない…
  621. だけど、別のお店で バレたところもあって…
  622. 十七夜: まさか、あの休業中の…! アレは襲撃を受けての…!?
  623. …………
  624. だからお願い! お店を辞めろとは言わない!
  625. でも、出身地だけは 絶対に口外しないでっ…!
  626. 十七夜: …………ああ、当然だな 約束しよう
  627. …………
  628. …うっ…うぅ…
  629. 十七夜: なぜ泣く…
  630. だってぇ…
  631. ごんなこどお願いされる なぎたんが可哀想でぇ…
  632. ごめんねぇ…
  633. 十七夜: 自分で言っておきながら 謝るとは…
  634. 十七夜: …いや、言いづらいことを 言わせてしまったようだな…
  635. 十七夜: ありがとう
  636. 十七夜: 今のでまたひとつ 吹っ切れたかもしれない
  637. 十七夜: では…行ってくる
  638. 十七夜: …………手を、掛けに
  639.  
  640. FILENAME: text_207803-4_69ea8.txt
  641. ドサッ…
  642. 十七夜: ハァ…ハァ…
  643. うぅ…
  644. 苦しい…痛い…
  645. 殺してくれ…
  646. 何も見えない…
  647. 十七夜: ハァ…ハァ…
  648. 十七夜: …………
  649. 十七夜: やって…しまったのか… 自分は、人間を相手に…
  650. 十七夜: …………
  651. 十七夜: (まだ自分が、 この者たちに比べ…)
  652. 十七夜: 人を手に掛ける…
  653. 十七夜: その一線を越えるほどの虚しさを 抱えていないと思っていた…
  654. 十七夜: …いよいよ、秩序を保つために 人を害するのを是としてしまった
  655. 十七夜: すまない…
  656. 十七夜: みんな、すまない 自分はもう…
  657. ???: 「戻れると思うな」
  658. 十七夜: 誰だ
  659. ???: ここまでお前はやったんだ もう進むしかない
  660. 十七夜: …………
  661. ???: 戻れると思うな
  662. ???: あのヌルくも心地のいい 素晴らしき日々に
  663. ???: お前はもう、戻る資格も可能性も 持ち合わせていない
  664. ???: もう自分は誰かの優しさを感じ 温もりを得ることはできない
  665. 十七夜: …………
  666. ???: だがまあ、よく考えてみろ
  667. ???: そもそも、 本来のお前はどっちだ?
  668. ???: 冷静なフリをして、 怒りを蓄えてきたのが自分だろう
  669. 十七夜: 違う、自分は変わろうとしたんだ
  670. ???: でも、変われなかった ということだ
  671. 十七夜: 悔しいな
  672. ???: だが前向きになれ、自分 お前は解放感を覚えている
  673. ???: 今、お前を満たしている 感情はなんだ?
  674. ???: 真っ黒か?
  675. ???: 違うんだろ? わかるぞ
  676. 十七夜: …その通りだ
  677. 十七夜: 期待していたよりずいぶんと 晴れやかな気分だ…
  678. ???: そうだ お前は今、前に進んでいる
  679. ???: いや、天辺か
  680. ???: お前は今日、超えられないと 思っていた一線を超えた
  681. ???: 人を手に掛けられたんだ だからこそ、こんな言葉を贈ろう
  682. ???: 平等のためなら 出てくるものを打て
  683. ???: 人を含めた 全てを平らげろ
  684. ???: 不毛となった滅びこそ 真の平等だ
  685. 十七夜: …………ふふっ
  686. 十七夜: 全てを平らげろ、か…
  687. 十七夜: ああ、その通りだな
  688. 十七夜: よくぞ言った 自分の中の自分よ
  689. 十七夜: 神浜市における 負を生み続ける歴史を壊して
  690. 十七夜: 些細な対立など 忘れてしまうような大悪党になる
  691. 十七夜: それが愛する人を 苦しめるとしても…
  692. ???: ああ、それこそが 真の救いだ
  693. 十七夜: …ふふっ
  694. 十七夜: 皮肉なものだな
  695. 十七夜: かつてマギウスの翼が 成し得なかったことを
  696. 十七夜: 今、自分が成そうとしている
  697. 十七夜: 大丈夫、大丈夫だ自分
  698. 十七夜: 自分の夢は 諦めなければきっと叶う
  699. 十七夜: 自分は一線を超えられた… 超えられる人間だった
  700. 十七夜: もう何も恐くない
  701. 十七夜: 全てを平らにしてみせよう
  702. ???: ああ、行ってこい
  703. 十七夜: …………
  704. 十七夜: 覚悟はできた
  705. 昨日未明、神浜市に拠点を置く 反社会的勢力の事務所が襲撃を受けました
  706. 被害者は全て、事務所にいた構成員で その多くが意識不明の重体とのことです
  707. 唯一意識を取り戻した被害者によると 襲撃をした犯人は たったひとりの少女とのことですが
  708. 証言に要領を得ないことも多く 警察はあらゆる線を踏まえ 捜査を進めていく方針です
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