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- FILENAME: text_326021-1.txt
- 杏子: ある日、神浜市で遭遇した ちょっとした出来事がきっかけで
- 杏子: いつもとは違う、こんな姿になった
- 杏子: …で、それを聞きつけたキュゥべえが さっそくあたしの前に現れた
- 杏子: …詳しい話を聞きたい?
- キュゥべえ: 是非ともお願いしたいね
- 杏子: そう言われてもね…
- 杏子: あの姿に変身したのって その1回きりだし
- 杏子: あのあと、何度か変身したけど
- 杏子: いつも通りの魔法少女の 衣装だったよ
- キュゥべえ: 神浜市の外ではそうだろうね
- キュゥべえ: キミの身に起きた現象は 神浜市の内部でのみ発現する
- キュゥべえ: ドッペルという現象を 前提としたものだからね
- 杏子: …アンタの方が よくわかってるみたいだし
- 杏子: あたしに何を聞きたいのさ?
- キュゥべえ: 当事者の証言は大事さ
- キュゥべえ: キミが引き起こしたのは とても珍しい現象で
- キュゥべえ: 神浜市の自動浄化システムとの 関係においても
- キュゥべえ: 非常に重要な意味を持ってくる
- 杏子: 何を企んでるんだか…?
- キュゥべえ: とにかく 次に神浜市に行くことがあれば
- キュゥべえ: また同じ姿に変身できたかどうか 結果を聞かせてほしいな
- 杏子: …まあ 実際にそうなったら、ね
- 杏子: で、実はここまでの話は これからする話とはあまり関係がない
- 杏子: どちらかというと、ここからが本題だ
- ドタドタ…
- なぎさ: …あ、杏子! ここにいたのですか!
- 杏子: なんだ? あたしになんか用?
- なぎさ: そうなのです! 杏子に相談があるのです
- 杏子: あたしに?
- FILENAME: text_326021-2.txt
- ぱくっ
- なぎさ: うーん、やっぱり このお店のチーズバーガーは
- なぎさ: いつ食べても最高なのです!
- 杏子: …タダ飯を食いに 来たわけじゃないだろ?
- 杏子: なんだよ、あたしに相談って
- なぎさ: 実は… 一緒に嘘をついてほしいのです
- 杏子: あたしを悪事に 巻き込もうっていうわけ?
- なぎさ: そ、そんなことはないのです これには込み入った事情が…
- 杏子: …わかったよ、いちおう聞くよ
- なぎさ: ありがとうなのです!
- なぎさ: 少し前、マミたちと
- なぎさ: 幼稚園児たちを助けたのを 覚えていますか?
- 杏子: あー、そんなこともあったな
- なぎさ: 子どもたちを 1ヶ所に集めたのです!
- ほむら: 結界が解けて 空中に投げ出されても
- ほむら: ここなら、巴さんのリボンが クッションになって安全です
- さやか: 杏子、いくよ!
- 杏子: まかせろ あたしが魔女の動きを縛る!
- さやか: ナイス、杏子! これで…とどめだぁーーっ!
- 杏子: …あれがどうかしたのか?
- なぎさ: 実は昨日、そのとき助けた 幼稚園の子たちと
- なぎさ: 近くの公園で会ったのです
- 杏子: へえ、偶然だな
- なぎさ: 引率の先生も 一緒だったのですが…
- なぎさ: 実は子どもたちの話を聞くと
- なぎさ: なぎさたちの戦っているところが 見られていて
- なぎさ: 何人かはそのことを、うっすらと 覚えているようなのです
- 杏子: ん…? まずくないか、それ?
- なぎさ: 先生の方は
- なぎさ: 夢でも見たんじゃないかと 言ってくれたのですが…
- 杏子: 子どもたちの方は 納得しなかったと?
- なぎさ: そうなのです
- なぎさ: 本物の魔法少女を見たと 思われているようなのです
- 杏子: いや、だって本物だし…
- なぎさ: 問題はそこなのです!
- なぎさ: でも本当のことを 言うわけにもいかないので
- なぎさ: 次にその子たちに会ったときに 一緒に嘘をついてほしいのです
- 杏子: …なるほど でもなんであたしに?
- 杏子: マミにでも頼めばいいんじゃ?
- なぎさ: その子たちは毎日、同じ時間に 公園に来るらしいのですが
- なぎさ: その時間 マミたちは学校なのです
- なぎさ: 杏子は学校にも行ってなくて 一番ヒマそうなので…
- 杏子: …あたしを怒らせたいわけ?
- なぎさ: そ、そんなことはないのです!
- なぎさ: でも、魔法少女を信じて
- なぎさ: 危ないところに 近づいたりしないように
- なぎさ: 誤解は解いた方が いいと思うのです
- 杏子: いや、この場合は 「誤解を解く」の逆のような
- 杏子: あたしと口裏合わせて ごまかしたいってことだよね
- なぎさ: そうとも言うのです
- 杏子: で、どう嘘をつこうと?
- なぎさ: それなのですが…
- なぎさ: 趣味で映画を撮っていた… というのはどうでしょう?
- 杏子: …なるほど
- なぎさ: もうすぐ、その子たちが 公園に来る時間なのです
- 杏子: そんな感じで、なぎさにつきあって 公園に行くことになった
- FILENAME: text_326021-3.txt
- あっ… なぎさおねーちゃんだ!
- ほんとだ!
- ほら、ちゃんと ご挨拶しましょうね
- はーい、先生!
- こんにちはー!
- なぎさ: えへへー、なのです
- そっちのおねーちゃんは?
- なぎさ: 杏子なのです!
- 杏子: よろしくな
- …あっ、覚えてるよ!
- そっちのおねーちゃんも 魔法を使ってたよね!
- うん、使ってた!
- 杏子: …!
- 杏子: あたしも見られてたのか…
- なぎさ: そうみたいなのです…
- あら…またそのお話?
- すみません、たぶん テレビで見た何かと
- 混じっちゃってるみたいで…
- なぎさ: そのことなのですが…
- …あら、なんでしょう?
- なぎさ: 子どもたちの夢を壊すようで… たいへん心苦しいのですが…
- えっ… 映画を撮っていた?
- なぎさ: そうなのです
- なぎさ: なぎさたちの趣味で 本格的なものではないのですが…
- そうだったんですね じゃあ、この子たちが見たのは
- あなたたちのロケだったんですね
- ロケってなぁに?
- えっとね、テレビや映画の撮影…
- と言っても、わからないよね…
- おねーちゃんたち テレビに出てるヒロインなの?
- すごーい!
- 杏子: …うーん、わかってるんだか わかってないんだか
- 見学の機会でもあれば 理解できると思うんですけど…
- 杏子: 見学…ねぇ
- はい…杏子さんたちのロケって
- 前にこの子たちと会ったあたりで やってるんでしょうか?
- なぎさ: はいなのです! この公園でやることもあるのです
- 杏子: 適当なこと言ってんじゃないよ
- 杏子: 見学させてくださいとか 言われたらどうする?
- なぎさ: でも、趣味で撮ってるって 設定ですし…
- なぎさ: ここから離れた場所だと 不自然だと思うのです
- 杏子: あたしはもっと離れた 風見野市から来てるんだけど?
- なぎさ: とにかく相手の出方を見るのです
- あら、それだったら…
- よろしければ今度
- 撮影、この子たちと一緒に 見学させてもらえませんか?
- 杏子&なぎさ: ――っ!?
- FILENAME: text_326021-4.txt
- さやか: …で
- さやか: 「魔法少女の映画を 趣味で撮ってる」って設定で
- さやか: 幼稚園児たちに
- さやか: 撮影現場を見学させてあげないと いけなくなったわけね?
- なぎさ: そうなのです…
- さやか: その子たちの前で
- さやか: 「実は魔法なんて使ってません! 撮影用のトリックでーす!」
- さやか: …ってフリをするわけだよね
- まどか: ちょっとむずかしそうだね…
- ほむら: うん…
- さやか: 下手な言い訳をしたせいで 話がややこしくなってない?
- 杏子: あたしもそう思うよ…
- まどか: ふふっ でもなんだか楽しそう
- マミ: そうね、そうなったからには みんなで手伝いましょう?
- なぎさ: そうしてもらえると ありがたいのです…
- さやか: でも…まだサンタさんがいると 信じてるような小さい子の
- さやか: 夢を壊しちゃうことに なっちゃうんじゃ…?
- 杏子: いや、魔法少女に夢を持ったまま 育つ方がヤバイだろ?
- 杏子: 将来、キュゥべえの口車に 乗るきっかけになりかねないし
- マミ: 魔法少女に憧れてもらえるなら うれしいけれど
- マミ: できれば架空のお話だと 思っていてほしいわね
- ほむら: …で、どうしましょう? ロケっぽく見せたいんですよね
- ほむら: 趣味っていう設定なら
- ほむら: そんなに本格的じゃなくても いいと思うけど…
- さやか: 誰かに撮影機材を借りたりとか?
- マミ: 衣装はどうするの?
- まどか: 本当に変身するわけには いかないし…
- まどか: 本物そっくりの衣装を作って 早着替えするとか?
- さやか: 武器も本物を 使っちゃうのはまずいよね?
- 杏子: 槍とか剣は 演劇用の小道具にしないとな
- ほむら: えっと…私は…
- 杏子: ほむらの武器って… ゴルフクラブとか爆弾か
- まどか: 爆弾は使っちゃダメだよ!?
- さやか: 魔法、関係ないしね…
- ほむら: だよね…私は裏方で…
- マミ: 魔法少女役は2~3人で充分よ
- マミ: 本当に撮影するわけじゃ ないんだから
- まどか: それじゃ…撮影用の機材と 衣装や小道具を用意して
- まどか: 公園で撮影をしてみれば いいのかな…?
- なぎさ: 準備が大変そうなのです
- まどか: …神浜の子たちに力を 貸してもらえないか
- まどか: いろはちゃんに聞いてみようか?
- さやか: それがいいかもね
- 杏子: あたしだって…そういうのに 憧れて魔法少女になったんだよね
- FILENAME: text_326022-1.txt
- 杏子: 映画撮影のフリをして 幼稚園児たちの目をあざむく作戦は
- 杏子: いつのまにか、本格的になってきて…
- アシュリー・テイラー: 早着替え用のコスプレ衣装?
- アシュリー・テイラー: Leave it to me!! まかせてくだサーイ!
- アシュリー・テイラー: 既製品のアレンジでよければ 特急で作れマース!
- 史乃 沙優希: 刀剣の小道具ですかぁ?
- 史乃 沙優希: それならいい職人さんを たくさん知ってますぅ~
- 史乃 沙優希: そこまで似せなくてもいいなら
- 史乃 沙優希: 沙優希のステージで使ったものも お貸しできますので
- 史乃 沙優希: お役に立てればうれしいですぅ~
- 三穂野 せいら: 撮影機材ならまかせて!
- 三穂野 せいら: 我が映画研究部の本格機材を 惜しみなく提供するから!
- 吉良 てまり: …歴史研究部です、三穂野
- 三穂野 せいら: 使い方も 初心者でもわかるように
- 三穂野 せいら: 万全に!…ケアするので!
- 三穂野 せいら: …あと、どうせならこの際
- 三穂野 せいら: 殺陣とかも 本格的にやっちゃいましょう!
- 三穂野 せいら: この三穂野せいら監督が… 責任監修するので!
- 吉良 てまり: 演技指導ってことですよね?
- 古町 みくら: 三穂野のスイッチが 入っちゃったね…
- 三穂野 せいら: 「カット、OKです!」
- さやか: はぁ…はぁ…
- さやか: やっと終わったか…
- 杏子: あのさ… アクションシーンの立ち回りとか
- 杏子: ここまで本格的に 練習する必要あるわけ?
- 三穂野 せいら: んー、ふたりとも魔法少女だし 身体能力は高いから
- 三穂野 せいら: 動き自体はレベル高いんだけど
- 三穂野 せいら: カメラの前で魅せるアクションは 少し技術がいるからね
- 杏子: 使ってるのも、慣れない 舞台用の小道具だからな…
- 史乃 沙優希: それに魔法少女姿と違って 撮影用の衣装はぁ…
- 史乃 沙優希: 武器に引っかかるだけで 簡単に破れてしまうのでぇ~
- さやか: 役者さんの大変さが よくわかったよ…
- 三穂野 せいら: それじゃ、次は カメラの取り回しの復習だね
- ほむら: …よ、よろしくお願いします
- なぎさ: がんばれなのですー!
- 杏子: なぎさも手伝うはずじゃ…?
- アシュリー・テイラー: では、そのあいだに 杏子とさやかは来てくだサイ!
- アシュリー・テイラー: あちらの部屋で 衣装の採寸をさせてもらいマス!
- 杏子: りょーかい
- さやか: よろしくー!
- 古町 みくら: …あっちもかなり本格的みたい
- 吉良 てまり: ここまでされると あとに退けないですよね
- 杏子: スケジュールの関係で 早着替え衣装が作れるのは 2着までってことで…
- 杏子: あたしとさやかが衣装を作ってもらって メインキャストの魔法少女役をやることになった
- 杏子: ほむらがカメラ担当、演出担当はマミ まどかとなぎさがアシスタントって配役
- 杏子: 本当に映画を撮るわけじゃないし 園児たちに見せるのはほんの1シーンだから それっぽく見えれば充分なんだけど
- アシュリー・テイラー: Okay! ばっちりデース!
- アシュリー・テイラー: 早着替えできるように ちょっと細工をして
- アシュリー・テイラー: 衣装が完成したら すぐにお届けしマース!
- さやか: ありがとね、アシュちゃん!
- アシュリー・テイラー: You're welcome! どういたしましてデス!
- FILENAME: text_326022-2.txt
- 杏子: そして見学当日…
- マミ: それじゃ、見学のみんな
- まどか: 今日はよろしくねっ!
- みんな: よろしくおねがいしまーす!
- マミ: それじゃ さっそく撮影を始めるわね
- マミ: 主演のふたりは位置についた?
- 杏子: いつでもいいよ
- まどか: 照明もばっちりです!
- マミ: 暁美さん、カメラはOK?
- ほむら: は、はい…!
- マミ: それじゃ…
- マミ: 「アクション!」
- さやか: いつでもかかってきなさいよ
- 杏子: …やるしかないみたいだな
- ピカッ
- わぁっ…!
- すごい、変身したよ!
- マミ: あれはね、照明を光らせてる あいだに早着替えしたの
- マミ: 最初の服の下に着ていたのよ
- なぎさ: ふたりが脱いだ服は なぎさが回収したのです
- すごいですね…!
- マミ: 本当に変身したように見えたわね
- まどか: すごいですね アシュちゃんの衣装
- まどか: 時間がなくて既製品を アレンジしたって言ってたのに
- まどか: いつもの杏子ちゃんたちと 同じ格好に見えるし…
- さやか: やああっ!
- 杏子: くっ…!
- 杏子: さやかのやつ、どこに消えた?
- 杏子: どこから来る…? 右か、左か…?
- 杏子: ――っ!?
- 杏子: この気配… 上か!!
- ザシュッ
- さやか: うわっ…!?
- いま、槍が光ったよ!
- ほんとに魔法みたい…!
- さやか: やーらーれーたー!
- さやか: …………
- FILENAME: text_326022-3.txt
- マミ: 「カット!…OKよ!」
- マミ: うまく撮れたかしら?
- ほむら: は、はい…! 撮れてると思います…
- なぎさ: 杏子もさやかも おつかれさまなのです!
- まどか: すごい! 本当の魔法少女みたいだったよ!
- さやか: あはは… まどか、ありがとう
- 杏子: ほんとに魔法少女だっての…
- さやか: まあ、いいんじゃない?
- パチパチパチ…
- みんな: わぁっ…!
- すごいですね…!
- 趣味って聞いてたから
- こんなに本格的な撮影だなんて 思ってなかったわ
- マミ: 喜んでもらえてよかったです
- さやか: いやー、早着替えの練習が 一番大変だったよね
- 杏子: コートが引っかかって すぐに脱げなかったりね…
- なぎさ: 今日は無事成功して よかったのです
- あの、武器が光ったのは どうやったの?
- まどか: 武器を振るのに合わせて 色のついた光をあてれば
- まどか: 本当に魔法を使ったように 見せられるんだよ!
- なぎさ: シャボン玉を飛ばすのも おすすめなのです
- ほむら: このあと、撮影した映像に 効果音をつけると
- ほむら: もっと魔法らしく 見えると思います
- へえぇえー!
- おねーちゃんたちを 最初に見たときは
- テレビで見た魔法のヒロインが
- 本当にいるんだって 思っちゃった!
- 何も知らない子どもたちが見たら
- そう思ってしまうのも 無理はないですよね
- マミ: ふふ…そうですよね
- 映画って、ひとつひとつの場面に こんなに手間をかけて
- 丁寧に作っていくんですね…!
- おねーちゃんたちみたいに わたしも映画作ってみたい!
- わたしは出てみたいなー!
- ふふっ 将来の夢ができてよかったね
- ご無理を言って 見学させていただきましたけど
- とってもためになりました
- 今日は本当に ありがとうございました…!
- みんな: ありがとうございましたー!
- なぎさ: どういたしましてなのです!
- さあ、明日は遠足だからね
- みんな、おうちに帰ったら 早く寝ましょうね
- みんな: はーい!
- FILENAME: text_326022-4.txt
- 杏子: …なんとか無事に終わったか
- 杏子: ったく、なんでこんな 大げさな話になったんだか…
- なぎさ: 元はと言えば なぎさが原因なのです…
- さやか: 結局、最後まで 面倒見ちゃうんだから
- さやか: 杏子もつきあいがいいよね
- マミ: 子どもたちも喜んでくれたし
- マミ: 私たちが魔法少女だってことも ばれなくて済んでよかったわ
- ほむら: ………… …………
- まどか: ほむらちゃん、どうしたの?
- ほむら: あ…カメラで撮った映像を 見返していたの
- さやか: いつでもかかってきなさいよ
- 杏子: …やるしかないみたいだな
- ピカッ
- まどか: よく撮れてるね! ほんとに変身したみたい
- まどか: わたしだったら こんなにうまく撮れなかったかも
- ほむら: そんな…鹿目さんが うまく光で隠してくれたし
- ほむら: 佐倉さんと美樹さんの 演技もよかったから…
- 杏子: めちゃくちゃ練習したしな
- なぎさ: なぎさもこの裏で 脱いだ服を拾っているのです!
- マミ: みんなで がんばった甲斐があったわね
- マミ: この動画だけ見たら
- マミ: まるで本物の魔法だと 思っちゃう人もいるかもね
- 杏子: ………… …………
- さやか: どうしたのさ、杏子 ぽかんとしちゃって
- 杏子: …あ、いや なんでもない
- まどか: なんだか、もったいないね…
- まどか: こんなによく撮れたのに この動画、消しちゃうんだよね?
- マミ: そうね、せっかくだから みんなに送って記念にしましょう
- ほむら: 今すぐには無理ですね パソコンを使わないと…
- 杏子: 明日、神浜市まで カメラと衣装を返しに行くから
- 杏子: そのときにせいらに頼んでみるよ
- 杏子: ったく、 いつまでバカやってんだか…
- FILENAME: text_326023-1.txt
- 杏子: 次の日…
- 杏子: ………… …………
- 杏子: 借りた槍と剣を沙優希に返して 次にあたしが向かったのは…
- 杏子: …アシュリーとせいらが どっちも工匠学舎で助かったよ
- 杏子: おかげで、カメラなんかの機材と 衣装をまとめて返せるけど
- 杏子: …まだ、約束の時間まで 2時間以上あるな…
- 杏子: 沙優希との用事が 早く片づいたしな…
- 杏子: さて、どこでヒマを潰すか…
- 杏子: ………… …………
- 杏子: (そういや、ここって 神浜市なんだよね)
- キュゥべえ: キミが引き起こしたのは とても珍しい現象で
- キュゥべえ: 神浜市の自動浄化システムとの 関係においても
- キュゥべえ: 非常に重要な意味を持ってくる
- 杏子: 何を企んでるんだか…?
- キュゥべえ: とにかく 次に神浜市に行くことがあれば
- キュゥべえ: また同じ姿に変身できたかどうか 結果を聞かせてほしいな
- 杏子: (…今のとこ別に 何も変わったことはないな)
- 杏子: (変身したらどうなるかは まだ試してないけど…)
- 杏子: …ま、どうでもいいか! それよりどこで遊ぶかな
- 杏子: …?
- 「冬のアクアリウム展」開催中! 南凪海浜公園
- 杏子: 水族館ね…
- 杏子: ま、ヒマが潰せるなら どこでもいいか
- 杏子: (…冬の水族館って どんなものかと思ったけど)
- 杏子: (中はライトアップされてて 案外、面白かったな)
- 杏子: (…建物の中は寒くないしね!)
- 杏子: (工匠区方面の電車はあっちだな それじゃ、駅に向かうか!)
- 杏子: 雪…少し積もってきたか? 珍しいな
- 杏子: せっかくカメラもあるんだし ちょっと撮ってみるか
- おさかなさん 綺麗だったねー!
- うん、たのしかったー!
- おほしさまみたいに光ってたよね
- 杏子: …ん?
- 杏子: (昨日の幼稚園児たちか…)
- 杏子: (そういや今日は 遠足だとか言ってたような…?)
- 杏子: (同じ神浜市の水族館まで 遠出したってことか)
- 杏子: (なんだか縁があるよな…)
- 杏子: ――っ!?
- 杏子: (魔女…!?)
- 杏子: (どこだ…? 結構近いぞ!)
- 杏子: …見つけた!
- 杏子: あいつらが結界に近づく前に 魔女を片づけねぇと!
- 杏子: 荷物が邪魔だな
- 杏子: とりあえず そのへんに置いといて…と
- 杏子: …?
- 杏子: …いつもの姿と変わらないな
- 杏子: 神浜市で変身したら
- 杏子: 必ずあの格好になるって わけじゃないのか…
- 杏子: …………
- 杏子: 今はどうでもいい!
- 杏子: とにかく… さっさと魔女を狩る!
- FILENAME: text_326023-2.txt
- 杏子: コイツで…
- 杏子: 決まりだぁーっ!
- 杏子: ―杏子― 食らいやがれ!
- 杏子: ………… …………
- 杏子: (子どもたちが巻き込まれる前に なんとか倒せたな)
- 杏子: (グリーフシードも手に入ったし まあ、御の字ってとこだね)
- あ… 杏子おねーちゃん?
- もしかして… また撮影?
- 杏子: ――っ!?
- 杏子: あ、ああ…
- 杏子: そう! 撮影だよ撮影!
- さっき、槍から 火が出てたように見えましたけど
- どうやったんですか?
- 杏子: い、いやぁ… 目の錯覚じゃないかな?
- そうかなー?
- 杏子: (魔女を倒して 結界が消滅した瞬間に)
- 杏子: (立ってたところを 見られたのか…?)
- 杏子おねーちゃん… ほんとに魔法を使えるんじゃ…
- 杏子: な…!
- 杏子: そ、そんなこと あるわけないだろ?
- そうなのかなぁ… ま、いいや
- 雪がひどくなる前に そろそろ帰りましょうか
- みんな: はーい!
- それじゃ、またねー! 杏子おねーちゃん!
- 杏子: そんなこんなでやってきた 工匠学舎
- アシュリー・テイラー: Welcome! 時間ぴったりデスネー!
- アシュリー・テイラー: せいらは歴史研究部で 待ってマスヨー!
- 三穂野 せいら: お、来たね!
- 杏子: まず借りたモンを返さないとね
- 杏子: あたしとさやかの衣装… それから機材一式
- アシュリー・テイラー: 衣装は差し上げた つもりだったのデスガ…
- 杏子: 気持ちはありがたいんだけど
- 杏子: 変身すれば同じ格好に いつでもなれるしな
- アシュリー・テイラー: 確かに、言われてみると…
- アシュリー・テイラー: では、次に着る機会まで 私の家で保管しておきマス!
- 杏子: そうしてくれよ
- 杏子: それで… ひとつ頼みがあるんだけどさ
- 杏子: 撮影した動画のファイルが 記念に欲しいんだよね
- 三穂野 せいら: お安い御用!
- 三穂野 せいら: ついでにちょこっと編集して
- 三穂野 せいら: 映画の一場面っぽく してもいいけど?
- 杏子: マジか?
- 三穂野 せいら: うん、少し時間もらえれば!
- アシュリー・テイラー: 私も見学したいデース!
- FILENAME: text_326023-3.txt
- 三穂野 せいら: …できた!
- 杏子: おおっ!?
- 杏子: すごいな、これ! 音楽もついて
- 杏子: あたしとさやかが 宿命の対決でもしてるみたいだ!
- アシュリー・テイラー: Wow! 映画の予告編みたいデスネー!
- 三穂野 せいら: じゃ、あとでこのファイルを 巴さんたちに共有しておくよ!
- 杏子: サンキュー
- 三穂野 せいら: じゃ、カメラの方のファイルは 消しちゃうかな
- 三穂野 せいら: …あれっ? まだなんか映ってるね
- 杏子: あ…
- 杏子: さっき、雪が降ってたんで カメラを回したんだよ
- 杏子: そしたら魔女の反応があったんで
- 杏子: 魔女を倒して 結界から出てきたらさ
- 三穂野 せいら: …自分が映っちゃったわけかー
- 杏子: ………… …………
- 杏子: なあ、さっきやってた その映像編集?…とかいうので
- 杏子: あたしが槍から出してる炎を 動画から消したりできないかな?
- 三穂野 せいら: どういうこと?
- 三穂野 せいら: なるほど!
- 三穂野 せいら: この場面を子どもたちに 思いっきり見られたけど
- 三穂野 せいら: 実は炎なんて出てなかったと 言い張るために
- 三穂野 せいら: 捏造動画を作りたいと!
- 杏子: まあそうなんだけどね ハッキリ言うな…
- 三穂野 せいら: ごめん、でもそれ 私の技術不足で無理なんだよね
- 三穂野 せいら: 無駄に高いソフト使ってるから 上手い人ならできるんだけど…
- アシュリー・テイラー: Huh?
- アシュリー・テイラー: この動画から 杏子の炎を消せばいいんデスカ?
- 杏子: …アンタ、できるわけ?
- アシュリー・テイラー: できマスヨー!
- アシュリー・テイラー: むかしダディから ちょこっと教わったことが…
- 三穂野 せいら: え、何? どんなダディなの、それ?
- アシュリー・テイラー: 映画監督をやってマシタ! でも、せっかく教わった技術も
- アシュリー・テイラー: 私は動画配信を盛るのに ちょこっと使うぐらいデスガ…
- 三穂野 せいら: え…テイラー…監督…? まさかハリウッドの超大物…?
- アシュリー・テイラー: Yup! 結構有名人でシタネー!
- 三穂野 せいら: …え、なに? この人、神の子?
- アシュリー・テイラー: その話はあとにして… とりあえず、炎を消しまショウ!
- 杏子: …なんか、すごいな
- アシュリー・テイラー: できマシタ!
- 杏子: 助かった! 恩に着るよ
- 三穂野 せいら: 炎を消した捏造動画も 巴さんに送っておけばいい?
- 杏子: ああ、頼むよ
- 杏子: 今度、子どもたちに見せて
- 杏子: 炎なんて出てなかったって証拠に するからさ
- アシュリー・テイラー: 子どもを騙すのは よくないデスネー
- 杏子: そう言うなって…
- FILENAME: text_326023-4.txt
- 杏子: というわけで…
- 杏子: さやかと一緒に 加工済みの動画を見せに行った
- みんな: ほんとだー!
- 火、出てないね…
- うん、見間違いだったんだね
- 杏子: だろ? 魔法なんて使ってないからね
- 今にも火を噴きそうな感じで 槍を構えていたから
- みんな、そんな風に 見えちゃったのかもしれませんね
- さやか: そうそう、目の錯覚! 映画にするときには編集して
- さやか: 炎を出しているように 見せたりもできるらしいけどね!
- そうなんですね… とても勉強になりました!
- さ、みんなもお礼を言って
- おねーちゃんたち! ありがとー!
- みんな: ありがとう!
- 杏子: ………… …………
- 杏子: 魔法なんて使えない、か…
- キュゥべえ: どうにかごまかせたようだね
- さやか: …ん?
- 杏子: なんだ、キュゥべえか いつからそこに?
- キュゥべえ: キミたちの話が終わるのを 待っていたんだよ
- キュゥべえ: 神浜市に行ってきたんだろう?
- キュゥべえ: 是非そのときの報告を 聞かせてもらいたくてね
- 杏子: ああ…その話か
- 杏子: あっちでも一度変身したけど いつもと変わりなかったよ
- キュゥべえ: …そうか、なるほど
- キュゥべえ: ドッペルが関係している 現象だけに
- キュゥべえ: ただ神浜市内で 変身するだけではなく
- キュゥべえ: キミ自身の内面も含めて 特殊な状況にならないと
- キュゥべえ: あの現象は 再現しないのかもしれないね
- 杏子: いやに熱心に知りたがるよね
- 杏子: あたしが変身した 一度きりのあの姿のことを
- キュゥべえ: それはそうさ
- キュゥべえ: もしかするとキミが見せた 新しい姿は
- キュゥべえ: 魔法少女そのものの
- キュゥべえ: 未知の可能性を 切り拓いたかもしれないからね
- 杏子: 未知の可能性ねえ…
- さやか: …なんか、そっけない反応だね
- さやか: 結構すごいことを言われたような 気がするんだけど?
- 杏子: いや…まあ そうなんだろうけどさ
- さやか: …けど?
- さやか: 魔法少女の可能性なんて どうでもいいって口ぶりだけど…
- 杏子: いや…だってさ そういう気分にもなるだろ?
- 杏子: 変身なら早着替えでも どうにかなるし…
- 杏子: 必死で練習すれば それっぽい動きもできて
- 杏子: 子どもに夢を与えることまで できてしまう
- 杏子: 逆に、魔法で出した炎なんて
- 杏子: 動画編集で簡単に なかったことにされてしまう…
- 杏子: 未知の可能性っていうけど… そもそも魔法って…
- 杏子: 魔法少女って、必要あるのかな?
- さやか: なに言い出すのよ!?
- さやか: あたしたちにしか できないことだってあるでしょ?
- 杏子: たとえば?
- さやか: たとえばほら…
- さやか: …………
- さやか: …テレパシーとか?
- 杏子: スマホをうまく使えば 似たようなことができそうだけど
- さやか: …うっ! 変なとこで冴えてるわね
- さやか: とにかくやめなさいよ 急にたそがれたりとか!
- 杏子: …まあ、そんなに真剣に
- 杏子: 落ち込んでるとかじゃ ないんだけどさ
- 杏子: でも…
- 杏子: 魔法少女にしかできないことって 本当になんなんだろうな?
- キュゥべえ: 言うまでもなく魔女退治だね
- 杏子: …うん、そういうことだよね
- 杏子: 結局、それをがんばるのが あたしらの存在意義ってことだ
- さやか: …なんだ
- さやか: 自分を見失って、深く悩んでた… とかじゃないのね
- 杏子: …お、ひょっとして 心配してくれてたのか?
- さやか: ――っ!?
- さやか: もしかして杏子 あたしをからかったの!?
- 杏子: さあ…どうだろうな!
- 杏子: あたしは、 あたしのしたいようにするだけ
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