Advertisement
Not a member of Pastebin yet?
Sign Up,
it unlocks many cool features!
- Title : 姪のビッチ化が許せない!
- Author: 午前央人
- G
- [image "cover.jpg" file=../Images/cover.jpg] [image "cover.jpg" file=../Images/kutie1.jpg] [image "cover.jpg" file=../Images/tobira.jpg] [image "巻頭絵" file=../Images/p001.jpg] [image "巻頭絵" file=../Images/p002.jpg] [image "cover.jpg" file=../Images/toc.jpg] 序章 再 会
- 一章 盗 撮
- 二章 暴 走
- 三章 過 去
- 四章 逆 襲
- 五章 変 化
- 終章 結 末
- [image "P000.png" file=../Images/m000.png] 「はー、あっつー」
- 車に乗り込んだ男は、すぐさまエアコンのスイッチを入れた。
- 「ふー」
- 送風口から流れ出してくる風は、まだ生ぬるい。それでも、さっきよりはずっとマシだった。男はシャツの胸元をくつろげ、パタパタと風を送り込みながら、車内の温度が少し下がるのを待つ。
- 運転席に座る男……大学の理工学部で准教授として応用情報学を研究している芦あし原はら弘ひろ樹きは、さきほどかかってきた兄・雄ゆう一いちからの電話を思い出していた。
- 「珍しいよな、兄貴が俺に頼み事なんて」
- 弘樹の三つ違いの兄、雄一。ガチガチの体育会系で、弘樹とはかなり違ったタイプの性格をしていた。いわゆる、硬派と呼ばれる種類に属する。どちらかといえば軟派者だった弘樹とは、そのせいでよく衝突したりもしていた。だが、仲が悪かったわけではない。小さいころは弘樹も雄一を真似て、柔道を習ったりもしていたのだから。
- 「よし、そろそろ行くか」
- いい具合に涼しくなってきた車内で、弘樹はハンドルを握る。
- 季節はもうすぐ夏……いや、もうすでに夏といっても差し支えないかもしれない。弘樹の勤めている大学の学生たちも、夏休みの予感にソワソワと浮ついた雰囲気になりはじめていた。そんな感覚が伝染していたのか、弘樹も何かが起こるような予感を抱きながら、兄の家へ向けてアクセルを踏んだ。
- 「はあ!? この人が私の家庭教師!?」
- 芦原家のリビングに、怒声に近い少女の声が響く。少女の名は芦原千ち咲さき。弘樹の兄雄一と、その妻佳か織おりとの間の娘、つまり弘樹にとって姪にあたる少女だった。
- (こ……この子が……ちーちゃん?)
- 雄一の家に着いた弘樹は佳織に出迎えられると、リビングで兄と久しぶりの対面を果たした。兄弟故の遠慮のなさで、すぐさま用事はなんだと切り出す弘樹に、珍しく歯切れの悪い雄一。いつもとは違う兄の様子にどういうことかと首をひねっていると、佳織が娘の千咲を連れてきた。
- 雄一と佳織の娘千咲。弘樹は以前から千咲とは面識があった。というか、弘樹にとって千咲は特別な存在だった。清楚で真面目で、それでいてどことなく色気のある少女。それは、一目惚れだった。叔父と姪という関係であるというのに、弘樹は千咲に強い恋慕の情を抱いてしまった。そんな千咲との久しぶりの再会。雄一の様子は気になったが、それよりも弘樹にとっては千咲のことの方が重要だった。それなのに……。
- [image "01" file=../Images/p003.jpg] 「そうだ。弘樹は俺とは違って研究の道を選んだ優秀な男だ。弘樹に勉強を教えてもらって、成績くらいは元に戻せ」
- 「そんなのイヤよ。せっかくの夏休みなのに」
- 「その夏休みが補習で潰れそうになってるのはどこの誰だ?」
- 「ふんっ」
- 「……」
- 弘樹の思考は停止していた。目の前で雄一や佳織から千咲と呼ばれている少女。その少女は、弘樹の知っている千咲とは似ても似つかない派手な外見をしていた。肌は浅黒く焼け、髪は茶髪。おそらく校則違反であろうほどに短くされたスカート。胸元もだらしなく着崩され、元々のデザインとは異なる華美なリボンが胸元を飾っていた。それは、いわゆる【ギャル】と呼ばれる存在。弘樹の知る千咲からは、想像もできない遠い存在。両者がどうしてもイコールで繋げることができずに、弘樹は固まっていた。
- 「ちーちゃん、お父さんの言うことを聞きなさい」
- 「イヤよ。家庭教師なんて絶対にイヤ!」
- 「千咲。わがまま言うんじゃない」
- 「わがままなのはそっちでしょ! 人の予定を勝手に決めないで!」
- 「ちーちゃんっ!」
- 「……」
- なぜ自分が兄に呼ばれたのか、弘樹はようやくわかってきた。だが、それなら話はまとめておいてくれ、とも思った。弘樹が固まっている間にも、目の前で家族の言い争いが続いている。どうすることもできずに、弘樹はただ黙って見ていることしかできなかった。
- * * *
- 自宅に戻った弘樹は、ベッドに横になると一つため息を吐いた。
- 「はー……ちーちゃんがあんなになってるとはなあ」
- 弘樹にとって憧れの存在だった千咲。まじめな優等生で、少し地味だが目の奥にキラリと光る魅力を持った理想的な女の子。それが、しばらく会わない間にギャル化していた。
- 「はー……」
- 再びため息を吐く弘樹。雄一から聞いた話だと、千咲があんなになってしまったのはここ最近のことらしい。見た目があんなになってしまっただけでなく、生活の方も乱れているらしい。休日は家に寄りつかず、外泊もし、当然のように成績もガタ落ち。このままでは来年の受験どころか、今年の進級も危ういとか。
- 「まあそうだろうな……ちーちゃんの学校、そこそこの進学校だしなあ」
- 千咲が今の学校に入学したとき、雄一は自宅に弘樹を招き、制服姿の千咲を鼻高々で自慢してきた。おそらくあのときが、弘樹が千咲に会った最後のとき。そこから、しばらく会わない間に、千咲はギャル化してしまっていた。そこで雄一は成績くらいはどうにかしようと、弟である弘樹に白羽の矢を立てた。
- 「まあ家庭教師なら学生のころに散々バイトでやったけどさあ……」
- 弘樹は、家庭教師をすること自体は、それほどイヤではなかった。しかし、相手はあのギャル化してしまった千咲。昔のちーちゃんならイザ知らず、あの変わってしまった千咲とどう接すればいいのか。戸惑いが、まだ弘樹の中でくすぶっていた。
- 「って、そうか。俺でもそんななんだから、兄貴は余計だよな」
- そこそこの女性経験を持つ弘樹とは違い、雄一の知っている女性は妻の佳織だけだ。そんな雄一にとって、今の千咲は宇宙人といってもいいほどの理解できない存在なのだろう。だからこそ、できるのは無理矢理言うことを聞かせるくらい。そしてそれが余計に、千咲との間の溝を深くしてしまう。
- 「にしてもあの兄貴の言うことの聞かせ方はすごかったなあ」
- 家庭教師の話に猛反発していた千咲。だが千咲は、最終的には渋々ながらも雄一の指示を受け入れることになった。家庭教師を受けるか退学するか。雄一にそう突きつけられたからだ。
- 「学校、やめたくないんだろうな。千咲」
- 弘樹には、少しだけその気持ちがわかった。千咲の通っている今の学校は、制服がおしゃれなことで有名な学校だった。それこそ、女子ならば誰もが必ず一度は憧れるくらいの高いレベルのおしゃれブランド校。そんな学校だからこそ、千咲はどうしても通い続けたかった。なんちゃって制服ではなく、本物の制服に袖を通し続けるために。
- 「まあ、兄貴にはそういうところはわからないだろうけどな」
- 家庭教師は夏休みに入ってから。正確には、夏休み前の補習期間にそれを補強するような形でやることになった。弘樹は何も言っていなかったが、雄一は当然のように弘樹が自分の言うことを聞く前提で話していた。
- 「ああいうとこ、昔と変わらないよな」
- そこもまた千咲との折り合いが悪い理由だったが、当の雄一はまったく気づいていない。それどころか、自分はいつも千咲のために行動していると思い込んでいた。
- 「ま、いいんだけどさ」
- 弘樹は反対することなく、雄一の指示に従った。変わってしまったとはいえ、あの千咲と同じ時間を過ごせるということに、少しだけトキメキのようなものを憶えたから。
- もちろん何もする気はない。何もする気はないけれども……。
- 「はぁ……」
- 弘樹はこの日何度目かのため息を吐いた。胸中の複雑な気持ちを吐き出すかのように。
- (でも、それでも俺は……)
- 久しぶりの千咲との再会で、ずっと胸の中に秘めてきた大切な偶像が木っ端微塵に打ち砕かれてしまった弘樹。しかしそれでも、すべての想いが雲散霧消してしまったわけではなかった。うっすらとした憤り。そしてその奥に潜む、正体不明の感情。弘樹は、自分が千咲に対してどういう想いを抱いているのかが、よくわからなくなってしまった。
- (でも、それでもやっぱり……)
- ずっと胸の中に秘めておくつもりだった姪への道ならぬ想い。その想いが、予想外の出来事でグラグラと揺れ動かされている。これから自分がどうなってしまうのか、弘樹自身にもよくわからなかった。わかっていたのは、千咲が変わってしまったということだけ。そしてそんな千咲と、家庭教師という時間を過ごすということだけ。
- 変わってしまった千咲。それに対応して、弘樹の気持ちも変わっていくのか。
- それとも……。
- [image "P000.png" file=../Images/m001.png] そして夏休み。弘樹と千咲の家庭教師生活がスタートした。
- と言っても、毎日二人が顔を突き合わせて個人レッスンをするわけではない。基本的には月水金の週三回。場所は弘樹の部屋。補習の帰りに千咲が弘樹の部屋に寄り、そこで家庭教師を受ける。時間はだいたい三時間。日数の関係もあり、すべての科目をカバーするわけではなく、千咲の不得意科目だけに絞って指導することになった。
- 「こんちわー」
- 約束どおりの時間に千咲が現れる。弘樹はもしかしたら千咲が姿を現さないのではないか、と思っていた。しかし、千咲はきちんとやってきた。かなり渋々な感じではあったが。見た目は変わっても、中身は昔どおりの真面目な子なのかもしれない。そんな風に弘樹は千咲を再評価したが、その思いは成績表を見た瞬間に見事に打ち砕かれた。
- (なんだ……これ……)
- 今の学校に合格するくらいだから、千咲の成績は悪くなかったと弘樹は記憶していた。だが、そこに記されているものはそうではなかった。最悪をギリギリ回避しているレベル。平均にも満たないモノがほとんどという有様だった。
- これはやっかいそうだなと、弘樹は眉をしかめる。ところが指導をはじめてみると、弘樹の予想は別の意味で再度裏切られた。
- (おっ……これは……)
- 驚くほどのスピードで、新しい知識をスルスルと吸収していく千咲。それはまるで、乾いた地面が水を吸い込んでいくようだった。もしかしたらと、弘樹は千咲の今の状態を推測した。
- (勉強ができないってよりも、勉強そのものが嫌い……努力することへの拒否感みたいなものを感じるようになっちゃったんじゃないか? 努力しない自分カッコイイ……みたいな感じの)
- 何かを努力している者を下に見る、イマドキな若者が陥りやすい罠。弘樹の同世代にも、その罠に陥ってドンドン底辺に落ちていった仲間がいた。努力をしていないのではなく、努力を苦にしないから、端から見ると努力していないように見える。そのあたりの違いは、弘樹自身も大人になってからようやく気づいたくらいだ。
- 千咲くらいの年頃なら、その罠に陥っても仕方がない。そんなことを考えながら、思っていた以上に順調に弘樹は千咲に勉強を教えていった。
- そうこうしているうちに少しは打ち解けてきたのか、千咲は弘樹にいろいろなことを話しはじめた。学校のこと、自分のこと、友達のこと。もちろんそれが時間稼ぎのためでもあるというのは弘樹も気づいていたが、最近の千咲のことが知れるのは弘樹自身も嬉しく、コミュニケーションも重要だろうと千咲のその話に付き合っていた。もっともその余裕も、千咲のかなり踏み込んだプライベートな話を聞くまでだったが。
- 「でね、去年の夏ごろに初体験したの」
- 「え?」
- 弘樹は固まった。こんな外見になってしまったのだから当然そういうことはしているだろうとは思っていたが、本人の口から聞かされるのはまた別だった。
- 「ずっと口説いてきてた男がいてさ、いつまでも処女ってのもうざったかったから、やらしてあげたんだ」
- 以来千咲は、その男の取り巻きとも言えるギャルたちと親しくなり、いろいろと知らない世界を知るようになったとか。
- 弘樹は固まったまま、千咲の話を聞き続ける。
- 以前はセフレが何人もいただとか、エンジョの経験もあるだとか、今はセフレが一人しかいないだとか、そのセフレの嫉妬がすごくてちょっと辟易してるだとか、でもソイツとは身体の相性が最高で、セックスがものすごく気持ちいいだとか、ホントはもっと他の男ともいろいろな経験もしてみたいだとか。
- 弘樹の中に、幻滅に近い感情が生まれる。ずっと胸の中に秘めていた、可愛い姪への秘密の想い。それが、ドブの底のヘドロのようなものでどんどん汚されていった。こんな格好になってしまっても、少しは昔の千咲が残っているのではないかと、弘樹はわずかながらも期待していた。だがそれは、弘樹の願望に過ぎなかった。
- まさにビッチ。
- 弘樹は、そう判断せざるを得なかった。
- これでは、あの雄一とはソリが合うはずがない。少しは女慣れしている弘樹ですら、軽く引くのだから、あのお堅い雄一では話にもならない。雄一は、女は佳織しか知らない。そんな雄一の常識では、千咲の今いる世界は想像することすらできない。ゆえに雄一は千咲への接し方がわからず、千咲はそんな雄一の腫れ物に触るような態度が余計に気に障り、さらに雄一に反発していく。まさに家族関係のデフレスパイラル。
- おそらく雄一にとっては、今回のことは関係改善のためのカンフル剤のつもりなのだろう。冷え込み、硬直化した自分と千咲の関係に弘樹を投入する。それによって、なんとか互いの関係を改善しようと考えたのだろう。
- 弘樹は目の前で大人しく課題に向かっている千咲を見つめる。
- (黙ってればそんな風には見えないんだけどな)
- 単なるファッションビッチ。そうだったらどんなによかっただろうと弘樹は思った。しかし、そんなことを考えていてもなにもはじまらない。とにかく弘樹は、千咲の成績を上げることに全力を尽くしてみることにした。学習習慣を取り戻させれば、もしかしたら生活環境自体も一変するかもしれないと小さな希望を抱きながら。
- 「ねえ」
- 不意に千咲が弘樹に話しかけてくる。
- 「ん? なんだ」
- 「おじさんってさ、彼女とかいるの?」
- まるで友達に対するような問いかけ。歳が近いということで、雄一よりは接しやすいと思っているのかも知れない。そもそも男臭い雄一に比べて、弘樹ははるかに女性ウケするタイプの見た目をしている。その点においても、千咲は弘樹に対して気安いものを感じているのかもしれなかった。
- (それにしても……)
- 千咲の軽口を慣れた様子であしらいながら、弘樹はジッと千咲の姿を観察していた。
- (変わったのは、髪とか肌の色だけじゃなかったんだな……)
- 派手なメイクや髪色、日に焼けた肌。インパクトの強いそれらに目を奪われていて、弘樹はそれまで、千咲の本質的な変化に気づいていなかった。千咲の身体のライン……肉付きが、弘樹の知っている千咲とは明確に変化していた。
- 弘樹の知っている千咲は、完全に少女の千咲だった。だが、目の前にいるのはそうではない。スカートからスラリと伸びた生脚、ブラウスを押し上げる形のよさそうな胸、くびれた腰から張り出した、ほどよい肉付きのヒップ。胸元からチラリと覗く形のいい鎖骨が、弘樹の視線を釘付けにしていた。肌を焼いたギャルになど興味はない。弘樹はそんな風に思っていた。だが、実際はそうではなかった。目の前にいる少女……それはまさに、オンナとしての魅力を十分に備えていた。
- (くっ……)
- その気持ち自体が弘樹は辛かった。湧き上がる劣情が、自分の知っていた千咲を……ちーちゃんを汚してしまっているような気がして。
- (俺が惹かれていたちーちゃんは、そんなじゃなかったはずなのに……)
- 弘樹は自分自身の抱いていた気持ちが、よくわからなくなってしまう。自分が千咲のどんな部分に惹かれていたのか。それは、千咲の変化によって失われてしまったのではなかったのか。それとも、変化とは関係なく自分は千咲に魅力を感じているのか。
- 怒りとも嫉妬ともつかぬ黒い感情が、弘樹の中で渦巻きはじめる。
- 自分の不甲斐なさと、自分にそんな風な混乱をもたらした千咲の存在に。そして、千咲に変化を与えた千咲の背後にいる見知らぬ存在たちに。
- そんな感情を抱えながらも、弘樹はなんとか千咲に勉強を教え続けた。
- そしてそれは、そんなある日に起きた出来事だった。
- * * *
- 「前から思ってたけどさ、おじさんの部屋って本がいっぱいあるよね」
- いつもとほぼ同じ時間に弘樹の部屋へとやってきた千咲は、すぐには勉強に取り掛からずに部屋の中をウロウロとしていた。すでに家庭教師は五回目。それほど珍しいものでもないだろうと弘樹は思っていたが、すぐに千咲の思惑に気がついた。
- (なるほど、今日はそういう時間稼ぎか)
- 弘樹の思っていたほどには反発してこなかった千咲だが、一度ついてしまった勉強嫌いのクセはそう簡単には治らない。今までは雑談で時間を稼いでいたけれども、そのネタもついに尽きたのかもしれなかった。
- 千咲は弘樹の本棚をゴソゴソといじりはじめる。
- 「兄貴に比べたら多いかもしれないが、そのくらい普通だぞ。いいからほら、勉強はじめるぞ」
- 「はーい」
- しばらくは様子を見ていた弘樹だったが、そのままではキリがないと千咲に声をかける。千咲は席に着き、筆記具や参考書、ノートなどをテーブルの上に並べはじめた。
- 「よし。じゃあまずは前回出しておいた宿題の答え合わせからな」
- 弘樹の言葉に、千咲の動きがピタリと止まる。
- 「宿題?」
- 「ああ。参考書のこのページ。ここからここまでの応用問題をやってくるように言っておいたはずだぞ」
- 参考書の上をすべる弘樹の指先を追い、千咲の視線が動く。思い出すかのようにしばらく黙ったあと、千咲は気まずそうに口を開いた。
- 「そういえば、そういうのもあったような……」
- やれやれと呆れる弘樹。どうやら、宿題の記憶はこの部屋を出た瞬間にスッパリと忘れ去られていたようだ。
- 「はー」
- 「別にいいじゃないのよー、宿題くらい」
- 弘樹のため息に千咲が言い訳をかぶせてくる。
- 「ここではちゃんとやってるんだからさー。ね? 今からやるから、解き方教えてよ」
- 少しは罪悪感を憶えているのか、千咲の声にはいつもよりも猫なで声成分が強い。
- 「それじゃあ意味がない。自分でやる習慣をつけることが大事なんだから」
- 「ちぇっ」
- 頬を膨らませ、むくれる千咲。こういう表情を見ると、弘樹は千咲の中にまだ昔の千咲が残っているのではないかと思ってしまう。しかしそれは、すぐに千咲自身によって否定される。
- 「じゃーさー。お詫びにフェラしてあげるから。それで許してよ。ね?」
- あまりの飛躍に、弘樹は千咲の言っている意味がすぐにはわからなかった。だがわかった瞬間、弘樹はカーッと身体が熱くなるのを感じた。
- 「なっ! おまっ……な、な、な、何を言って!?」
- 驚きと怒りと、そこにわずかに入り混じった興奮。弘樹は自分の見立てが甘かったことに、ようやく気づいた。弘樹の思っていた以上に、千咲は変わってしまっていた。少しくらいは昔の千咲が残っているのではないかと思っていたが、その可能性はほぼない。というよりも弘樹的には、そんなものはこれっぽっちも残っていて欲しくはなかった。
- 「今彼女とかいないんだよね、おじさん。だったら、たまってるでしょ? 私が出してあげるからさ、今回はそれで勘弁してよ。ね?」
- 蠱惑的な千咲の表情。否応なく、弘樹の中に欲望が湧き上がってきてしまう。
- 満たされない千咲への想いを代替するかのように付き合ってきた過去の恋人たち。その恋人たちとの行為の記憶が、弘樹をさらに苦しめた。気持ちの足りない部分を知識で補うかのように没頭した様々なセックス。思いつくままに、あらゆるコトを試してきた。その経験と記憶が、快楽への欲求としてムクムクと弘樹の中で頭をもたげていた。
- 「そんな、こと……いいわけないだろ」
- 柔らかい唇、絡みつく舌、あたたかい頬、ぬめりつく喉奥。千咲の仕草が、フェラチオの気持ちよさを思い出させる。硬くなったペニスを柔らかな女の手で握られたときの悦びが、どうしても欲しくなってしまう。
- 「いーんだよ。ホントはヤリたいんでしょ? 私のいろんなとこ、ずっとチラチラ見てたのわかってるんだよ?」
- 抑え続けてきた千咲への欲望が、弘樹の中で膨れあがってきてしまう。それを敏感に感じ取ったかのように、千咲は弘樹にしなだれかかってくる。
- 「だ、ダメだ……ダメなんだ……」
- 「ふふふ……」
- まるで蛇に睨まれた蛙のように、弘樹は身動きが取れなくなってしまう。後ずさろうにもズボンの中の強ばったモノが、弘樹の行動を激しく制限する。少し擦れただけで、イってしまいそうなほどの快感が走った。
- 「ここ……どうなってる? もうカチカチ?」
- 千咲の細い指が、ズボン越しに弘樹のそこに触れる。弘樹は身をよじってかわそうとするも、それすらも満足にできない。
- 「や、め……」
- 「なーにカッコつけてるのよ。こんなに硬くしてるのに。したいんでしょ? 私みたいな若い子と。そーいうおじさん、たくさんいたよ?」
- 「ッ!」
- 弘樹の表情が強ばった。
- 『エンジョとか、したことあるよ』
- 雑談の中で聞いた千咲のひと言が、弘樹の中で蘇ってくる。
- (エンジョ……援助交際……)
- 弘樹がずっと想いを寄せ続けていた千咲は、千咲自身の手で汚されてしまっていた。お金の代わりに、自分の身体を提供することも厭わないくらいに。
- 「返事がないのはOKってことかなー」
- 獲物を捕らえたとでもいうかのように、千咲がペロリと唇を舐めた。そのどこか淫猥な様子は弘樹の抵抗の気持ちをさらに萎えさせる一方で、抑え込んでいた欲望の炎を、さらに強く燃え上がらせた。
- 「ここじゃなんだから……こっち来て」
- 千咲はチラッと本棚を見た後、弘樹の手をとってベッドへと導く。抗う気持ちを失ってしまった弘樹は、まるであやつり人形のように、フラフラと千咲についていく。
- 「はい、じゃあズボン脱いで」
- ベッドに腰かけ、弘樹の股間と正対する千咲。弘樹を見上げながら、次の行動を促す。しかし、弘樹は動かない。理性と欲望の狭間で、金縛りのような状態に陥っていた。
- 「なによー。さっさとしなさいよねー。心変わりしちゃっても知らないよー?」
- パンッと千咲が弘樹の太ももを叩く。まるでそれが合図だったかのように、弘樹の緊張が緩んでしまった。
- 「ふふっ。おじさんだって男なんだよねー。ガマンするのなんかやめればいいのに」
- 千咲はシナを作りながら弘樹の太ももに身を寄せる。弘樹はどうにか堪えようとするが、千咲の身体の温かさと柔らかさ、そして千咲の『おじさんだって男』というセリフが、それを許さない。千咲から【男】として見られているという事実が、弘樹の中の男性自身を奮い立たせてしまった。
- 「い、いい加減に……」
- 残り少ない理性を振り絞り、弘樹は千咲から目を逸らそうとする。だが、その気配を察した千咲が弘樹の機先を制してきた。
- 「ほーら。これでもまだそんなこと言える?」
- 千咲が制服の胸元をはだける。白く輝く柔肌が、弘樹の視界に飛び込んでくる。
- [image "01" file=../Images/p004.jpg] 「ほらほらほら。見たかったんでしょ? 私がかがむ度に、この辺ジッと見てたもんね」
- (ううっ……バレてたのか)
- 羞恥心が弘樹の股間に血液を集める。
- 「興味ないフリしててもバレバレなんだから。ほら、だから正直になろ? もうこんなチャンスないかもよ?」
- 千咲が親指と人差し指で輪っかを作り、それを口元に近づけてシコシコと架空のペニスをしごくような真似をする。舌は妖しげに動き、架空の亀頭を唾液まみれにしていた。
- 「今日だけ特別なんだから。特別だよ? ト・ク・ベ・ツ」
- 上目遣いで弘樹を見上げながら、千咲がウインクする。ドクンと弘樹の心臓が高鳴り、全身がカーッと熱くなっていく。
- (俺は……俺、は……)
- 状況は違えど、何度も妄想したことがいま目の前で起きていた。そのあまりの現実感のなさに、弘樹は夢の中にいるような心地になってしまう。そこから先は、もう自分でもよくわからなくなってしまった。なぜそうなってしまったのか、なぜそうしてしまったのか。気づくと弘樹は、すっかり変わってしまった姪の前で、ズボンを下ろしてしまっていた。
- 「そうそう。そうやって最初から素直になればいいのよねー」
- 弘樹を見上げていた千咲の視線が、その部分へと降りていく。両手をパンツのゴムにかけ、そのまま引き下ろす。半ば勃起状態になっていた男性器が、ブルンと揺れながら姿を現した。
- 「ふふっ。やっぱりおじさんだってただの男。こうやって私の前では……え……」
- 千咲の言葉が途切れた。その視線はジッと、弘樹のペニスをとらえ続けていた。
- 「なにこれ……すご……」
- 全身から血液を集め、完全勃起状態へと移行していく弘樹のペニス。それは、千咲の知っているどのペニスよりも長大で肉厚なものだった。
- 「ちょっと、すごいじゃない。おじさんのチンポ、すごい大きいねっ」
- 瞳をキラキラ輝かせながら、千咲が弘樹を見上げる。弘樹は千咲のその反応に、嬉しくなるとともに悲しくもなった。千咲を喜ばせているという事実と、千咲がそんなことで喜んでいるという事実。その二つの事実が、再び弘樹の中に葛藤を生む。
- 「ふふ。こんなの舐められるなんて、ちょっと楽しみー」
- 充血したペニスが、千咲のわずかな息づかいを感じてピクピクと動く。先端からはガマン汁。快感の予感に、弘樹はわずかに腰を震わせた。
- 「ねえねえおじさん。私、乱暴にされるのが好きだから。だから、遠慮しなくていいからね? 精液飲みたいから、最後は口に出してね?」
- 弘樹の頭が混乱する。あの千咲がそんなことを言うはずがない。しかし弘樹の鼓膜は、しっかりとその千咲のセリフをとらえていた。目の前にいる本物の千咲が、信じられないほど卑猥なことを自分に言ってきているのを。
- (なんだこれ……ナンダコレ……なンダこレ……)
- 混乱した頭に、千咲のその言葉が染み込んでいく。そしてその言葉が消えないうちに、千咲は弘樹のペニスへと唇をかぶせていった。
- 「んっ……んむ……ふあっ。やっぱり……んんっ。おっきい、ね……あむ……ん、ん、ん、ん、ん、ん」
- ゾワゾワゾワッと、フェラチオ独特の感覚がペニスから湧き上がる。
- 「れろ……ん……ちゅっ……はむ……んっ、んっ、んっ、んっ……れろ……んんんんっ」
- 千咲の柔らかな舌が、ペニスを這い回る。唾液がまぶされ、唇でしごかれる。
- 「ちゅっ、れろ……んんんんっ……いいよおじさん。もっと奥まで入れても……私、マゾで乱暴にされるの好きだから……喉を突かれてもオエッてならないから……んんんっ」
- 言いながら、ググッとさらに千咲は弘樹のペニスを飲み込んでいく。
- 「ひああああ……あ、あ、あ、あ……大丈夫、だから……もっと……んんんんっ……喉の奥を突かれるとイッちゃうの……だから……んうううっ。もっと、奥に……」
- 涙目で自分のペニスを咥える千咲。その光景が、弘樹に最後の一撃を加えた。
- 「んうううううううううううううっっっ!!! んぐっ! んっ! んんんんんっ!」
- グイッと思いきり腰を突き出す弘樹。容赦なく、並以上の大きさのペニスを千咲の喉の奥まで挿入する。
- 「げほっ……んぐっ! んっ、んぐぅぅぅぅぅぅ……んっ、んっ、んっ、んはぁぁ……」
- 千咲の喉奥の粘膜が、グニュリと亀頭に絡みついてきた。弘樹は呻きながら、千咲の表情を見つめた。千咲は目元にうっすらと涙を浮かべている。しかし、弘樹にはその動きを止めることはできなかった。
- 「んうぅぅぅう……んっ、んんんんっ……んっ、かはっ……あっ、はぁぁぁぁ……」
- 喉奥から溢れてくる千咲の湿った吐息が、弘樹の陰毛を妖しくくすぐる。その微細な感覚さえ、弘樹は快感として感じていた。
- 「んふうううっ!!! んっ! んっ! んっ! んっ!」
- 野性の命ずるままに、弘樹は千咲の頭を掴み無理矢理前後させる。ペニスに生じる摩擦が次々と快感を生み出し、その痺れるような感覚に弘樹は腰を震わせた。
- 「んはっ! あっ、はっ! あっ、あぁぁぁぁ……んっ、んんんっ……んぐっ! んっ、うぅぅぅぅぅぅぅっ」
- その乱暴な行為に、さすがに千咲は苦しげな呻きを漏らした。だが、もう弘樹の暴走は止まらない。さきほどの千咲のセリフが、弘樹の中で免罪符となって弘樹にその行為を推奨していた。この行為は、千咲自身の望んだものなのだから、と。
- 「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、あっ、はっ、んはあっ!」
- 弘樹は容赦なく千咲の喉奥を突く。絡みつく粘膜の感触に、身体の奥底に熱い塊が生じていく。それが、徐々にせり上がってくる。出口を求めて、身体の奥底からペニスの先端へと。弘樹は、その衝動がもう抑えられなかった。
- 「くっ……うううっ……で、出る……ちさ、き……俺……で、る……」
- 弘樹には、千咲がコクンと頷いたように見えた。もしかするとそれは、弘樹が千咲の頭を掴んでいたせいかもしれなかった。だが、そう見えただけで弘樹には十分だった。
- 「くうううっ! 千咲っ!!!」
- 「んんんんんんんんっ!!!」
- [image "01" file=../Images/p005.jpg] ドクンと、弘樹の心臓が大きく跳ね上がった。送り出された血液が流れ込み、ペニスも大きく脈動する。
- 「んっ、んんんっ……こふっ……」
- 何度も脈打ちながら、精液が千咲の喉奥へと流し込まれていく。千咲は苦しげに呻きながらも、それをなんとか飲み込んでいく。
- 「ん、ん、ん……コクッ……コクッ……コクッ……」
- 千咲の喉が動き、弘樹の精液が嚥えん下かされていく。叔父の精液が、姪の喉の奥へと流し込まれていく。飲みきれなかった精液は、口端から溢れて形のいい唇を白く汚した。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ」
- 射精したことによって、弘樹の中に少しずつ冷静さが戻ってきてしまう。それによって自分が何をしたのか、冷静に判断できるようになってしまう。湧き上がってくる後悔の念。痺れるような快感の残滓が、余計にその暗澹たる気持ちを際立たせてしまう。
- 「んくっ……んくっ……んくっ……ふぅ」
- ようやく飲み干したのか、千咲が弘樹のペニスから口を離した。
- 「きゃっ」
- まだ若干硬さを残していたペニスがバネのように跳ね、尿道に残っていた精液を千咲の顔や頭に飛び散らせる。
- 「んもー。あれだけ出したのに、まだ残ってたの?」
- 頬についた精液が千咲の細い顎を伝い、そこからトロリと胸元へと垂れ落ちる。
- 「若いなあ、おじさん。まだまだ全然現役なんじゃん」
- 何気ない千咲の言葉に、ピクリと弘樹のペニスが反応する。頭の方では後悔していても、身体の方ではそうではないようだった。
- (俺は……俺と千咲は……)
- 姪と叔父という関係。ひとまわり以上離れた歳の差。いくつもの障害が、自分と千咲の間には横たわっていた。それを飛び越えて関係を持ってしまったという事実。弘樹の心には、深い後悔の念が刻み込まれていた。
- 「うわぁ、すっごい飛び散ってる。ほら、こんなところにもついてるよ?」
- ひと息ついて落ち着いたころ、千咲はピラッとスカートをめくって弘樹に見せた。
- 「すまない、そんなに汚してしまって」
- 日焼けした千咲のピチピチとした太ももに、やや半透明な弘樹の精液が付着している。弘樹はやや落ち着きを失いながらも、それでもどうにか大人の態度を保とうとした。
- 「あー、全然大丈夫だから。それに、口に出してって言ったのは私の方でしょ?」
- 弘樹の動揺とは対照的に、あっけらかんとした口調の千咲。少なくとも表面上は、こんなことはなんでもないと思っているように見えた。
- 「そうか」
- 心の動揺を悟られまいと、弘樹は千咲から目を背ける。実のところその明け透けな態度を見ているだけでも、再び性的欲求がかき立てられそうになるのだ。
- 「ね、ちょっと洗って来ちゃうから、バスルーム借りるね?」
- 「あ、ああ」
- 弘樹にとっては渡りに舟だった。今は少しでも千咲と距離をとりたい。弘樹の返事とほとんど同時に、千咲は部屋から出て行く。勝手知ったる他人の家。ごく当たり前のように、まっすぐにバスルームへと向かって行った。
- 「ふぅ……」
- ギシッとベッドをきしませながら、弘樹が腰を下ろす。思っていた以上に力が入っていたのか、弘樹は膝の辺りがガクガクしていることに気づいた。
- 「まさかなあ……」
- 両手で顔を覆いながら、起きてしまった事実について想いを馳せる。
- まさか、こんなことになるとは思っていなかった。家庭教師を頼まれたときにも似たようなことを思った記憶があるが、そのときよりももっと今の状況は複雑怪奇だと弘樹はため息を吐く。
- 「それにしても……いったいどういうつもりなんだ」
- 宿題を誤魔化すため……なのだろうか。それにしてはフェラはやりすぎだと弘樹には思えた。だが、それ以外にまとも(?)な理由が思いつかない。
- 「それとも、千咲にとってはフェラなんてその程度の簡単なことなんだろうか……」
- 自分と千咲の価値感がまったく違うことはわかっていた。しかし、これほどまでの差があるとは思ってはいなかった。
- (待てよ)
- 一つの可能性を弘樹は思いつく。
- 「実は、俺のことが好きでずっと前からチャンスをうかがっていた……とか」
- 自分で言って自分でバカらしくなる。
- 「ないな」
- 即座に否定する弘樹。だが今日のことで、嫌われてはいなさそうだ、という希望が少しだけ生まれた。嫌っていたらフェラチオなんかはしない。そうは思うものの、その考えにもイマイチ自信が持てなかった。千咲の考えていることが、これっぽっちも理解できそうになかったから。
- 「なんだかなあ……」
- そのままベッドに仰向けになろうとした弘樹の手に、冷たいモノが触れた。
- 「あ……」
- イヤなものに触れたという嫌悪感が、一瞬湧き上がってしまう。
- (って、そりゃないよな。自分の身体から出てきたモノなのに)
- とはいえ、出た瞬間にそういう風に属性が変わってしまうのも仕方ないように思える。元は自分の一部でも、出た瞬間にそれは異物に変わるのだから。
- 弘樹はシーツに飛び散った精液を拭こうと、ティッシュを取りに立ち上がった。
- 「……ん?」
- 何かが弘樹の意識に引っかかった。しかし、それがなんだかわからない。サイドボードの上にあるティッシュに手を伸ばしたまま、弘樹はジッと目をこらして視界に入るモノを観察し続けた。
- 「……これか」
- 伸ばしていた手を、本棚の方へと移動させる。綺麗に並べられた本棚の中程にある、きっちり揃っているはずの全集本。その3巻と7巻の間に不自然な隙間が空いていた。
- 「間の三冊は……」
- 弘樹が周りを探すと、その三冊はすぐに見つかった。横にして、本と本棚の隙間に差し込んであった。弘樹のスタイルとして、そういう本の並べ方はしないはずだった。
- 「どういうことだ?」
- 首をひねりながら、その作られた隙間を確認する。そこには、何かが押し込まれていた。それは、角度によっては目立たない。だが一度気づいてしまえば簡単に見つけることができるような、稚拙な隠し方だった。
- 「ふむ……」
- 弘樹はそれを隠し場所から取り出した。それが何なのか、弘樹にはすぐにわかった。
- 「小型カメラか……」
- 部屋の中を物色するかのようにウロウロしていた千咲。宿題を忘れた代わりに差し出された、あまりに大きすぎる代償。頭の中でモヤモヤしていたものが、一本に繋がる。
- 「なるほど、な」
- 強い落胆が弘樹の心を押しつぶす。手の中の小型カメラをどうしようか考えたところで、遠くからかすかにバタンと音が聞こえてきた。おそらく、バスルームを出た千咲が扉を閉めた音だろう。
- 弘樹は急いで小型カメラを調べ、記録メディアに使われているメモリカードを確認する。手持ちのメモリカードの中から同じ型番のものをピックアップし、小型カメラのものとすり替える。
- 「よし」
- そして気づかれないように、元の場所へと小型カメラを戻した。
- 「ふー、さっぱりした」
- 顔と髪を流すだけでなく軽くシャワーを浴びてきたのか、千咲が全身からうっすらと湯気を漂わせながら部屋に戻ってきた。弘樹はいつも自分が使っているシャワーを千咲が使ったと思うと、妙な興奮を憶えてしまった。
- (いかんいかん)
- 小型カメラのことを思い出し、千咲への甘い感情を強引に抑えつける。
- 「ねえ、おじさんもシャワー浴びてくれば? チンポ洗いたいでしょ?」
- 瞬間、千咲の視線がチラリと本棚の方へと泳いだのを弘樹は見逃さなかった。
- (なるほど。俺を部屋から追い出して、カメラを回収したいってことか)
- すでにその対策を終えている弘樹は、敢えて千咲の思惑に乗ることにした。
- 「わかった。じゃあ、すぐに戻るから。勉強の準備をしておいて」
- 「うん、わかった。いってらっしゃい」
- いつも以上に素直な様子の千咲に、弘樹は黒い感情を抱く。
- (自分の思うとおりに事態が進んでると思って上機嫌なんだろうな。ところが、そうはいかないからな……)
- 弘樹は表情を隠しながら、部屋から出て行く。
- そして弘樹がシャワーから戻ってきたときには、本棚はいつものとおりに戻っていた。代わりにいつも以上に膨らんでいる千咲のカバン。おそらく、カメラはあそこに回収されたのだろう。
- その日弘樹は、とくにそのことに触れもせず、いつもどおりに千咲に勉強を教え、いつもどおりの時間に千咲を帰路につかせた。企みが目論見どおりに成功したと思っている者と、その企みを未然に防いだ者。次の行動の選択権は、弘樹にあった。
- 「さて……」
- 千咲を帰したあと、部屋に一人になった弘樹はPCに向かった。手には、例のメモリカード。
- 「あまり自分のされてるところなんか見たくはないけど、まあ一応……な」
- メモリカードをPCにセットし、データをPCで読み込む。中には動画ファイルと、それ用のサムネイルファイルがひとつ。再生ソフトにドラッグして再生させると、そこには見覚えのある部屋が映っていた。
- 「やっぱりな」
- 動画の冒頭には、レンズを覗き込んで映っているか確認している千咲のアップ。そこからフラフラと画面が揺れ、ベッドが映るような位置で固定される。再び千咲のアップ。角度を調節しているのか、画面が何度かガクガクと揺れる。そしてその背後では、何も知らない弘樹がお茶の用意をしていた。
- 「間抜けすぎる。全然気づかなかった……」
- 自分の無警戒さを嘆く弘樹。しかし油断した人間なんて、この程度のものだろう。まさか姪が盗撮を仕掛けてくるだなんて、予想できるはずがないのだから。
- 「うおっ」
- 画面には、先ほどの千咲と弘樹の行為がバッチリと映し出されていた。ベッドに腰かけた千咲の口に、勃起した弘樹のペニスが挿入されている。
- 「なるほど……」
- 弘樹はこの盗撮の意図が、なんとなく掴めてきた。
- 「これを使って俺を脅すとか……もしかしたら家庭教師を辞めさせようっていう魂胆だったのかもしれないな」
- そのための画面作り……弘樹を煽って、強引に千咲に迫っているように見える状況を作り出す。そしてその思惑に、弘樹はまんまと乗せられてしまった。
- 「危ない危ない。もしこんなのが兄貴の目に触れてたら、家庭教師を辞めさせられるどころの話じゃなかったぞ」
- シークバーのつまみをスライドさせ、ザッピングしながら動画を最後まで確認する弘樹。最後に映っていたのは、カメラに気づいてそれを取り上げる自分の姿。そこもうまく細工されると、盗撮したことすら弘樹のせいにできそうだった。
- 「念のためにっと」
- PCに動画をバックアップする弘樹。その上で、メモリカードのデータは消去する。
- 「……そうだ」
- 弘樹の顔に、ニヤリとしたどことなく悪意に満ちた笑みが浮かんだ。千咲の悪意に影響されたのか、やり返してやろうという気持ちが弘樹の中に湧き上がってきた。
- 「こいつを……こうして……」
- PCに差したままになっているメモリカードの消去済みデータを、復元ソフトを使ってサルベージしてみる。大した物は見つからないかもしれない。それどころか、使えるデータを復元することすらできないかもしれない。しかしそれでも、弘樹は一向に構わなかった。確かにやり返してやろうという気持ちはあったが、それよりも強かったのはちょっとしたイタズラ心と、好奇心の方だったから。
- 「とりあえず、お茶でも入れてくるか」
- いくつかのデータ復元ツールを用意し、それらすべてにメモリカードをスキャンさせてみる。情報処理を専門にしているだけあって、弘樹のPCはかなりのハイスペックだったが、それでもこのメモリカードの容量では、それなりの時間がかかりそうだった。
- そうして、小一時間ほどが経つ。
- 「おっ」
- いくつかのツールを試してみたが、復元できたのはさっき自分で消した今日のファイルと、多少のゴミファイルだけ。そこで弘樹は、プロ用のツールを試してみることにした。すると、見知らぬ動画ファイルをいくつか復元することができた。
- 「これならいけるかもしれないな」
- 弘樹は、【140623】という味気ない名前の動画ファイルを再生してみた。
- しばらくの黒画面。ジッと待っていると、画面に映像が現れてきた。その映像を見た弘樹は、衝撃のあまり声を出すこともできなくなっていた。
- 『俺の専属にならないか? ウリなんてしなくても金なら俺がやるからさ』
- 『お金が欲しいわけじゃないの。いろいろな人とセックスしてみたいだけ』
- 『俺が満足させてやるから。俺たち、けっこう相性いいだろ?』
- 『うん……悪くはないけど……』
- 『あと、そろそろ生でヤラせてくれよ。ゴムって窮屈なんだよ』
- 『それだけは絶対にダメ!』
- 画面に映し出されたのは、明らかに行為中と思われる男女。男の方には見覚えはない。しかし女の方は、どこかで見たことがあるような気がした。それは、弘樹の予想していた動画とはかなり違ったものだった。弘樹が予想していたのは、もっと普通のプライベートなもの。どこかに遊びに行ったときのものとか、仲間うちでのふざけた様子とか、そういったごく普通の動画を予想していた。確かにこれもプライベートなものではあるだろう。だが、あまりにもプライベートすぎるものだった。
- そうこうしているうちに、画面の中の男女はさらに行為をエスカレートさせていく。
- 『ちぇっ。しょーがねえな。したらギリギリまで極薄なやつにするからな』
- 『してくれるんならそれでいいよ』
- 『新商品のすっげえ薄いヤツにするからな。薄すぎてビックリすんなよ』
- 『するわけないじゃん』
- 弘樹は少しずつ冷静さを取り戻し、画面の二人を観察しはじめた。
- (これは……千咲だよなあ? というか、ちーちゃんって言った方がいいか?)
- そう。男の方は弘樹の知らない男だったが、女の方はそうではなかった。黒髪で色白の、変わる前の千咲の姿。口調や態度は今の千咲のものだったが、外見は弘樹の知っているころの千咲にずっと近いモノがあった。
- 雄一の家で見かけた入学式のときの写真が思い出される。あの写真の中に写っていた制服姿の千咲。少し髪は長いが、あのときの千咲が、今画面の中で見知らぬ男に組み敷かれていた。
- (たぶん、こいつのせいなんだろうな)
- 勉強中に聞いた千咲の話が思い出される。去年の夏の初体験の話、そのあと友達になったギャルたちの話。
- (こいつと付き合うようになって、それで中から変えられて、最終的に今みたいなギャルギャルしい外見の千咲が完成したんだろう)
- 『したらさ、そろそろハメていいか? もうこっちの準備もできてるだろ?』
- 画面の中では男と千咲が親しげに絡み合っている。その姿が、弘樹の昏くらい心に火を点けた。興奮とイラ立ちと怒りと欲情と。わけのわからない感情で、弘樹は頭がクラクラしはじめた。
- 『いいけど、ちゃんとゴムしてよね』
- 『ちっ。わーってるよ』
- 男はめんどくさげにゴムを装着し、濡れ光る千咲の中へとペニスを挿入していく。
- 『ん……ふ……んんんん』
- [image "01" file=../Images/p006.jpg] 苦痛とも快楽ともつかない表情を浮かべる千咲。弘樹の中の理系な部分が、その映像の内容についても分析しはじめた。これは、どんなタイミングで録られた映像なのだろうか。何回目のセックスなのだろうか。千咲は、どんなことを感じているのだろうか。どの程度、千咲の女性器は使い込まれているのだろうか。
- 『んっ、あっ……あっ、はっ……あっ、ああん』
- あえぎ声も、どこかまだぎこちない。感じて声が出ているというよりは、男に中を突かれて自然と声が漏れてしまっているような感じだ。弘樹は、この千咲はまだかなりウブなのではないかと推測する。
- 『はあ、はあ、はあ、はあ。なあ千咲。やっぱり俺のチンポって、お前と相性いいだろ?気持ちいいだろ?』
- 『う、うん……祥しょう吾ごのチンポ……気持ちいい……んっ、あっ、あっ、あっ』
- 『だろ? だからさ、さっきの話……考えといてくれよ……んっ! 俺は、お前をあんま他のヤツに抱かせたくないんだよ……』
- 『うぅぅぅ……でもやっぱり、もっといろんなセックスしてみないと……うううっ。祥吾のチンポが一番いいかどうか、わかん、ないし……んああっ』
- 『くそっ』
- 軽く舌打ちすると、祥吾と呼ばれた男は力任せに千咲の中を突きはじめた。
- 『あっ、あっ、あっ、あっ、うっ、うっ、うっ、うっ』
- そんな祥吾に、千咲はされるがままになっている。弘樹はモヤモヤした気持ちを抱えながらも、その様子をジックリと観察した。どうにかして、この男から千咲を取り戻したいと考えながら。
- それにしても……と弘樹は思う。
- (こんなセックスで、本当に満足してるのか?)
- 男の方にも千咲の方にも、技巧の欠片も見られない。ただ入れて動いているだけ。まだまだ相性云々を言う段階には至っていないように思えるのに、この二人はいったい何を根拠に先ほどまでのような話をしていたのだろうか、と。
- 『んっ、んっ、んっ、んっ、あっ、あっ、あっ、あっ』
- そんな稚拙なセックスでも、千咲はきちんと高まっていっているようだった。そして男の方も、射精へ向かって一直線。
- 『うぅぅぅぅぅ……千咲……お前の中……最高、だ……』
- 『んっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ』
- 祥吾と呼ばれた男の動きが速くなっていく。そして千咲の身体が強ばっていく。
- 『うっ、うっ、うっ、うっ……イク……イク、ぞ……千咲っ』
- 『んんんんんんっ!!!』
- 『イクッ!!!』
- 絶頂の瞬間、男はペニスを引き抜いて素早くゴムを外した。そして飛び出す精液を、そのまま千咲の身体にぶちまける。
- 『ああああぁぁぁ……もう……バカ……かけるのやめてって言ったのに……』
- 『はあっ、はあっ、はあっ、はあっ』
- 満足げな男の吐息と、不満を口にしながらも快感の余韻でボンヤリした様子の千咲。嫉妬と興奮で頭の中をグチャグチャにしながらも、弘樹はその映像の中からひとつの情報を正確にキャッチしていた。
- (これ、は……)
- もしかすると、千咲はイッてないのではないだろうか。男にぶっかけられたあとの表情から、弘樹はそんな風な印象を受けた。画面の中の男は、もうすっかり満足したような表情をしている。
- 「……」
- 動画の再生が終わり、再生ソフトの画面が真っ黒になった。ディスプレイには、弘樹の顔が映っている。
- (けっこう……ショックだったな……)
- 千咲がすでにそれなりの経験を積んでいることは、弘樹にもわかっていた。だが知っているのと、実際に見るのとは大違いだった。
- 黒いディスプレイには、ひどい顔をした男がひとり映っている。
- (もしかしたら、知らない方がよかったかもしれない。俺のちーちゃんが、あんなチャラい男にヤられてたなんて……)
- いつのまにか弘樹の中で、千咲に対する独占欲のようなものが強まっていた。実際に千咲が犯されているところを見たからこそ、嫉妬心に火が点いて千咲を独占したくなってしまったのかもしれない。
- (くそ……チャラ男め……)
- 弘樹の中で、千咲を抱いていた男の呼称が確定した。侮蔑の意味も込めて彼のことを弘樹は【チャラ男】と呼ぶことにした。
- (さて、他の動画はどうなんだろう)
- 【140623】をプライベートな隠しフォルダに保存し、弘樹は別のファイルを調べはじめた。最初はただの好奇心からだったが、今ではそれは祥吾への対抗心へと変わってきていた。
- (何かあるはずだ……何か……)
- 具体的にそれがなんなのかはわかっていなかったけれども、何かあるのではないかという期待が、弘樹を突き動かす。
- 炯けい々けいとした光を目に宿しながら、弘樹はジッとディスプレイを凝視し続けた。
- 「ふぅ……」
- 夜も深い時間になって、弘樹はようやくすべてのファイルに目を通し終えた。【140623】以外のファイルも、基本的にはすべてハメ撮り動画だった。その中には、千咲以外の女の子も出てきた。だが男の方はすべて祥吾。もしかするとあのカメラもこのメモリカードも、千咲のものじゃないのかもしれないと、弘樹は思った。弘樹は、千咲の今日の行動の裏にあるものにおおよその見当をつける。
- (たぶん、チャラ男クンだな)
- 主犯がどちらかはわからない。もしかすると千咲かもしれないし、千咲が祥吾にそそのかされてのことかもしれない。だがともかく、千咲の背後には祥吾がいる。それだけは間違いないと、弘樹は確信していた。そして、もう一つのことも弘樹はハッキリと認識していた。
- (チャラ男クン、セックス下手)
- 何本もハメ撮り動画を見たことで、弘樹は祥吾にテクニックのテの字もないことがわかった。確かに祥吾と千咲は身体の関係にあった。だがそれは、弘樹が知っているようなセックスとはまったく違ったものだった。祥吾が抱いている、他の女の子との動画でもそれは同じだった。まだ若いから仕方ないとは思うものの、それはあまりにも稚拙で適当な交わりでしかなかった。快楽の入り口にも到達していないようにも思えた。
- (でだ)
- 弘樹には、逆転のための道筋がうっすらとだが見えてきたように思えた。動画を見る限り、千咲はセックスに対してかなりの思い入れがあるように見えた。しかし、祥吾にはそのテクニックがない。となれば、その点に関して祥吾を上回ればあるいは……。
- 「……」
- 弘樹はずっと千咲を大切に想ってきた。そしてそれは、決して表に出してはいけないことだとも思ってきた。千咲は実の兄の娘。弘樹とは叔父と姪の関係に当たる。そんな千咲に対して、それは抱いていい感情ではなかった。だからこそそれを、弘樹はずっと押し殺してきた。しかし今回その禁忌を、千咲の方から破ってきた。
- 「俺は……もう……」
- 弘樹は、もうガマンしなくてもいいのかもしれないと思った。
- ずっと秘めてきた想い、欲望。それらを心の奥底から開放してやるときが来たのかもしれなかった。
- [image "P000.png" file=../Images/m002.png] 千咲を奪い返す決意をした弘樹は、早速行動を開始した。
- 「あんなクズが、俺の大切なちーちゃんを汚すなんて……それどころか、アイツ色に染めちまうなんて……」
- ブツブツとつぶやきながら動画を見返す弘樹。何度もしつこくそれらを見ているうちに、弘樹の中の嫉妬の感情はどんどん大きく膨らんでいった。しかしそれらに支配されることなく、弘樹の中には冷静な感情が残っていた。そしてその冷静な部分が、さまざまな情報を動画の中から拾い上げていく。
- (ウリなんてしなくても、金なら俺がやるからさ……か)
- ハメ撮りをしながら祥吾が発した言葉。そこから弘樹は、祥吾が千咲のウリについて知っているのだと理解する。おそらく千咲のウリ行為は、祥吾の取り巻きのギャル連中から仕込まれたのだろう。もしかすると祥吾自身も最初はそれを率先して推奨していたのかもしれない。しかし、いつしか千咲の身体が惜しくなってしまった。
- (まさに、クズと呼ぶに相応ふさわしいな)
- 心の中で弘樹は唾を吐き捨てる。動画の中からいろいろな情報を得たものの、しかしながら決定的な何かは見つけることができていない。
- 「まだ情報が足りない……な」
- おそらくチャラ男……祥吾は取り巻きのギャルたちを使って女ぜ衒げんまがいのことをしているのだろう。しかしそれをハッキリと証明する情報はまだ手に入れられていない。祥吾を追い詰めるには、告発するに足る証拠が必要だった。
- 弘樹は、祥吾を破滅させるつもりだった。千咲を祥吾の手から取り返すには、それが一番の近道だと思っていた。それに、理由はもう一つあった。やられる前にやる。今では弘樹は、盗撮の件を千咲を使って仕掛けてきたのは祥吾だと思い込んでいた。仕掛けてきたのは向こうの方。ならば、次はこちらから攻撃を仕掛ける番だと。
- (やるかやられるか、弱肉強食……だ)
- 勝てなければ弘樹の方が排除されてしまうかもしれない。運良く向こうは、まだ弘樹が反撃するつもりであることには気づいていない。
- 「もしかするとちーちゃんを怒らせることになるかもしれないけど……」
- しかしそれでも、弘樹はやるつもりでいた。一時的には嫌われたとしても、そのあとのためにはこれが絶対に必要なことだと信じていた。
- * * *
- 翌日……。
- 「ちょっと! おっさんっ!!!」
- 部屋に入ってくるなり、千咲が汚い言葉で弘樹を怒鳴りつけてきた。
- 「あんた! 何かしたでしょ!」
- こうなるだろうと予想していた弘樹には、プリプリ怒る千咲もちょっと可愛いな、などと思う程度の余裕があった。
- 「何か言いなさいよ!」
- 本来ならば、今日は家庭教師の日ではない。それがなぜ、こうして弘樹の部屋で千咲と弘樹が会っているのか。それは、わざわざ千咲が連絡してきたからだ。曰く、話があるからいつもの時間に部屋にいて、とのこと。
- (思ったよりも早く気づいたみたいだな)
- 連絡があったときからそのことだろうと予測していた弘樹は、思いのほか反応が早いことに少なからず感心していた。もしかしたら、ただ録画に失敗しただけと思い込み、もう一度くらいは色仕掛けでくるのではないかと思っていたくらいだ。
- (千咲本人か、その後ろで操ってるチャラ男クンかはわからないけど、俺が思っていたほど抜けてるってわけじゃなさそうだな)
- 弘樹は気を引き締めた。実のところ、千咲が弘樹のところに怒鳴り込んできたのは、単に自分がミスしたとは思いもせず、失敗イコール弘樹が邪魔したからと、短絡的に判断したからなのだが。
- ともあれ、事態は急速に動きはじめた。
- 「何かって何のことだ? そもそも、俺はどうして今日呼び出されたのかがわからないんだが?」
- 「……」
- 唇を引き結んだまま、千咲は弘樹を睨み付けている。なんとなく、いつもと弘樹の様子が違うことに気づいたのかもしれない。
- 「わかってて言ってるんでしょ」
- 「何がだ?」
- 「何がだじゃないわよっ!」
- 千咲がイライラを爆発させる。整った顔立ちを怒りに歪め、弘樹を強く睨み付ける。弘樹は一瞬ひるみそうになるが、どんなことをしても千咲を取り戻すと誓ったことを思い出し、グッと腹の底に力を込めて千咲の視線を正面から受け止めた。
- 「くっ」
- 弘樹の強い態度に、逆に千咲がひるんでしまう。
- 「何のことなのかきちんと言ってもらわないと、俺にはまったく話が見えてこないぞ」
- 「この……わかってる……くせに……」
- 俯きながら、千咲がブツブツとつぶやく。効いてるな、と精神的に優位に立ちながら、弘樹は軽くアゴを上げて千咲を見下ろすようにした。千咲はさらに気け圧おされ、視線がフラフラとさまようようになる。悔しさからか唇を噛み、何度か迷った末に千咲はカバンに手を入れて何かを取り出した。
- 「これよっ! あんた、メモリカードをすり替えたんでしょ!」
- 弘樹に小型カメラを突きつけ、声を荒げる千咲。しかし弘樹は、悠然としている。
- 「ほう。どうして俺がそんなことを?」
- 「そんなのわかってるでしょ! 映ってるからよ!」
- 「映ってる? 何が?」
- 「何がって……んもうっ!」
- かなり余裕がなくなり、千咲は今にも地団駄を踏み出しそうだった。弘樹は、そんな千咲をさらに追い込む。
- 「何が映ってるんだい?」
- 「うっ」
- ズイッと一歩踏み込み、千咲に顔を寄せる。気圧され、後ずさる千咲。背中がトンと、壁に突き当たる。
- 「仮に……そう。仮にだけど……そこにこういうものが映っていたとして、それをどうしようっていうんだ?」
- そう言って弘樹は、何かがプリントされたものを千咲に見せつけた。
- 「なっ!」
- 絶句する千咲。もちろんそれは、例の盗撮動画の一場面だった。
- 「確かに映っていたよ。君が俺のペニスに嬉しそうにしゃぶりついてるところが」
- 「ち、ちが……あれはっ!」
- 「違う? ああ、あとで編集でもして、俺に乱暴されているように見せかけるつもりだったのかい?」
- 「くっ!」
- 図星をつかれたとでも言うかのように、千咲は言葉を失う。おそらく、すべては弘樹の読みどおりだったのだろう。弘樹に関係を強要されたというビデオをでっちあげ、弘樹を家庭教師から解任する。そうすることで、千咲もしくは祥吾は自由な時間が取り戻せるとでも思っていたのかもしれない。もっともそんなことになったら、余計に千咲の自由は奪われていただろう。怒れる雄一は、千咲の外出すら許可しなくなっていた可能性すらある。あまりにも杜ず撰さんな計画だが、だからこそ弘樹はそこにつけいる隙があると思っていた。
- 「で、千咲は……それ以外の動画についても知っているのかい?」
- 「え? それ……以外?」
- 「このメモリカードに入っていた動画だよ。全部見させてもらったぞ?」
- 弘樹はメモリカードを取り出す。千咲は目を白黒させながら、弘樹の言っている言葉の意味をなんとか理解しようとする。
- 「は? え? だってそれ……空っぽだったはずじゃ……」
- 「まあ、確かに消してあったよ。でもな、ああいうのって復元するソフトがあるって知ってたか?」
- 「はあっ!?」
- 雄一ほどではないが、PCには詳しくない千咲。それなりに使いこなすことはできるが、弘樹の知識にはさすがについていくことはできない。
- 「PCのHDDでも何でもいいけど、ああいうののデータ消去ってのは、そこにデータがあるのを見えなくしてるだけなんだ」
- 「どういう……こと?」
- 「そうだな……わかりやすく言えば、千咲の携帯からアドレス帳を消すみたいなもの」
- 「え?」
- まるで大学の講義のときのように、千咲に知識を与える弘樹。千咲は大人しく、弘樹からのレクチャーを受けていた。
- 「友達の連絡先は依然として存在してるけど、番号がわからないと電話することができないだろ? つまり、そういうことだ」
- 「それじゃあ……」
- 千咲の顔が真っ赤になった。そして次に、真っ青になる。
- 「じゃあ……じゃあ……もしかしておじさん……私と祥吾の……」
- 「ああ。見たよ。それだけじゃなくて、千咲の彼氏が他の女の子とヤッてるところもね」
- 「べ、別にあんなの彼氏じゃないっ!」
- 「ああそう。ま、そのへんはどうでもいいんだけどね」
- 「うぅぅぅ……」
- 羞恥心や怒り、戸惑い、いろいろな感情が入り交じってオーバーフローを起こしているのか、千咲は、どうしたらいいのかわからないといった表情を浮かべていた。
- そんな千咲に、弘樹がさらに追い打ちをかける。
- 「どうする? これ、兄貴に報告しといた方がいい?」
- 「兄貴って……ええっ! ちょっ! 待って!!! それだけはっ!!!」
- 千咲が、これまでで一番強い反応を示した。
- (やっぱり、ここが千咲の弱点か)
- 千咲の弱点は父親である雄一。弘樹は薄々そう予想していたが、今の千咲の反応でかなり強い確信を持った。千咲を攻めるならここだと、弘樹は慎重に千咲の心の柔らかい部分に触れていく。
- 「条件次第では、黙っててやらないことはない」
- 「条件?」
- 追い詰め、逃げ道を用意する。最も基本的な他者の操縦法を弘樹は使用する。
- 「なに、簡単なことだ。次の模試でいい点数をとったら、盗撮の件は不問にする。もちろん、データも完全に消去する」
- 「ホントに!?」
- 「ああ」
- わずかな希望が千咲の瞳に光を灯す。次の模試まで二週間。弘樹は勉強に専念させることで、しばらく千咲から祥吾のことを忘れさせる計画だった。
- 「でも……いい点数って言ったって……」
- 「大丈夫。そこは俺の役目だからな。きっちり準備はしておいた」
- ドサッと弘樹が大量の課題をテーブルの上に積み上げた。
- 「ええっ!?」
- すぐにその意味を悟り、千咲が目を丸くする。
- 「こんなに……やれって言うの?」
- 「心配ない。確かに量は多く見えるが、毎日こなしていけばきちんとできるレベルだ。ほんの二週間。ほんの二週間の我慢だぞ」
- 「……」
- 「大丈夫。千咲はできる子だ。俺が保証する」
- 「……ホント?」
- 「ああ」
- 短いやりとりの中で、弘樹は昔の千咲がチラッと姿を現したような気がした。だがそれは、すぐに曇りの日の太陽のように顔を隠してしまう。
- 「ふ、ふんっ。仕方ないわね。それじゃあ少しだけ付き合ってあげるわ」
- 弘樹は心の中で苦笑した。そして、計画を次の段階に進める。
- 「できるだけ俺もサポートする。わからないところがあれば、家庭教師の日じゃなくても連絡してきていいから」
- 「うーん……でも、わざわざここまで来るのめんどくさい」
- 「そう言うと思って、ちょっとしたものを用意しておいた」
- 「え?」
- 「ちょっとスマホ貸してみ」
- 千咲はあからさまに警戒する。しかし弘樹は顔色一つ変えずに、手を出したまま千咲を見つめ続ける。
- 「はー……」
- 今日の弘樹が簡単には折れないということを学習したのか、千咲は一つため息をつくと諦めたようにスマホを渡してきた。
- 「専用のアプリを作った。俺と千咲直通のアプリだ」
- 「え? そんなことできるの?」
- 「まあな。これでも情報工学の准教授だし」
- 「ふーん。けっこうおじさんすごいじゃん」
- 素直に感心してくる千咲の様子に、弘樹はチクリと胸が痛んだ。
- (これも千咲のためなんだ。少しの嘘はしょうがない)
- 自分を正当化しながら、自作のアプリを千咲のスマホにインストールする。
- 「これでよしっと。データ通信だから、通話料とかはかからない。画像も動画も送れる。課題のデータも入ってるから、どこについての質問なのかもすぐにわかる」
- 「へー」
- 弘樹から返されたスマホを、千咲がスルスルといじっている。
- 「なるほどね。無料通話アプリみたいなもんか」
- 「スマホもほどほどにな。息抜き程度はいいけど、遊んでるヒマなんてほとんどないはずだからな」
- 「はー……なんで私がこんな目に」
- 自業自得だろと言いたい気持ちを弘樹はグッと抑える。あまり煽って反発されても、これからの計画の邪魔になりそうだからだ。
- 「それじゃあ今日は帰っていい。課題は今夜からでもいいし、明日からでも構わん。千咲がこれなら終わらせられるって思うスケジュールを立てろ」
- 「はあ? そんなことまでやらせるの?」
- 「自分で勉強する習慣をつける訓練だ」
- 「ちぇー」
- 千咲の様子には、部屋に押しかけて来たときの激しい怒りはもうどこにも見られなくなっていた。元々、怒りが持続しないタイプなのかもしれない。
- 「次の家庭教師のときまでに、少しは進めておくんだぞ」
- 「はーい。わかりましたよ、センセイ」
- 皮肉っぽくそう言うと、千咲は課題でパンパンになったカバンを持って弘樹の部屋から出て行った。
- 「さて……」
- 弘樹はPCに向かう。
- 「まずは、さっき千咲のスマホに仕込んだアプリを使って……」
- 開かれたコマンドプロンプトにいくつかの命令を打ち込む。するとズラズラと、何かのデータが羅列されはじめた。
- 「これでよしっと。処理が終わるまで、仮眠でも取るか」
- 「えーっと、こっちのデータをここにマウントして、それでここからIDを取得してログインすれば……」
- 数時間後、弘樹は第一段階の作業を完了しようとしていた。
- 千咲のスマホにインストールした自作アプリ。そこに仕掛けたバックドアからスマホをハックして、データをすべて抜き出す。そのデータを使い、千咲のスマホのクローンを作成する。そしてそこから、祥吾のスマホへと接続する予定だった。
- 「あったあった。やっぱり入ってた。まあイマドキなら使ってない方が珍しいよな」
- 今や定番となっている無料通話アプリ。それを立ち上げ、名前一覧に目を通す。
- 「どれだ? 全部ハンドルネームになってるから、ちょっとわかんないな……」
- 弘樹が探しているのは、もちろん祥吾のアカウント。仕方なく弘樹は、アカウントをひとつずつ確認していく。千咲の無料通話アプリには、弘樹のそれとは比べものにならないほどの人数が登録されていた。男もいれば女もいる。若者もいれば年寄りも。もちろん、そのプロフィールがすべて本当だとは限らないが。
- 「あったあった。これだな」
- 無数にあるアカウントの中で、一番頻繁に千咲にメッセージを送ってきている男。どうやらそれが、チャラ男こと祥吾のアカウントだと弘樹は推測した。
- 「祥吾だからショウか……ずいぶんひねりのないハンドルだな」
- 別にひねればいいというものではないが、弘樹にとっては少し拍子抜けだった。
- 「まあいいか」
- 弘樹は計画を次に進めていく。さっき作ったクローンスマホを使い、千咲になりすましてショウにメッセージを送る。画像ファイルに偽装した自作アプリへの誘導アドレスのおまけをつけて。
- 「ほいっ、送信っと」
- さすがと言うかなんと言うか、おそらく祥吾は一日中千咲からのメッセージを待っているのだろう。送信とほとんどタイムラグなくメッセージは既読状態になった。
- 「よし」
- 千咲の無料通話アプリ上からメッセージを削除し、アクセスログも消す。クローンスマホの接続を切り、どこからも見えない状態にする。
- 「あとは……」
- 祥吾がアドレスを踏んで、弘樹の自作アプリが自動インストールされるのを待つだけ。しばらくすると、PC上に何かが表示されはじめた。
- 「ふむ……」
- それは祥吾のスマホのデータだった。弘樹の思惑どおり、祥吾のスマホに弘樹のハッキングアプリがインストールされた。そしてそのデータが次々に弘樹の元へと転送されてくる。
- 「来た来た。順調だな」
- 弘樹はそれらのデータを調べはじめた。弘樹にとって都合のいいことに、祥吾はスマホを日記代わりにしているようだった。それにより連絡先その他のデータだけでなく、祥吾の素性や日頃の行動パターンなどが、ほぼ完璧に弘樹に把握されることとなる。
- 「ふーん。塚つか田だ祥吾ねえ……」
- 即座に弘樹はその名前でネット検索をかける。すると、面白いことがわかった。
- 「あれ……これって……」
- 弘樹が期待していたのは、塚田祥吾自体がネットに晒した情報だった。だが、それ以上に面白いものが見つかった。
- 「ふむ……」
- 塚田祥吾という名前の息子がいる、ちょっとした有名人が存在した。塚田竜りゅう太た郎ろう。それは、弘樹の勤める大学のそばにあるそこそこ大きな中核市の市会議員だった。
- 「塚田竜太郎……ね」
- 弘樹は塚田竜太郎について調べはじめる。公式のプロフィールや、塚田竜太郎自身のSNS、後援会の活動記録、塚田竜太郎の周辺人物の発言エトセトラエトセトラ。それらをジックリ調べてみると、どうやら竜太郎と祥吾は、弘樹の予想したとおりの関係で間違いないようだった。
- 「なんだよ。もしかして祥吾クン、お坊ちゃんなのか?」
- 弘樹は祥吾のスマホのデータからクレジットの使用履歴を割り出してみた。
- 「ヒュー」
- 思わず口笛を吹いてしまう弘樹。そこには、思っていた以上の収穫があった。
- 「めちゃくちゃだな、これ」
- 出て行く額も大きければ、入ってくる額も大きい。ハッキリいって、それは普通の学生が個人で使う金額をはるかに超えていた。
- 「これは……まっとうな使い方、じゃないよなあ」
- 父親からの入金以外に、バイトをしているらしき入金もある。しかしそれ以外にも、よくわからない金の動きがそこかしこにあった。
- 「なんだろ……個人的な商売でもしてるのか?」
- 祥吾の口座には、日によっては何十万もの入金がある。しかもそれが、だいたい同じような時間に入金されていた。弘樹は祥吾の日記の行動パターンと、その入金サイクルとを照らし合わせてみる。
- 「えーっと……この日はAちゃんと遊びにいって、途中で某企業の社長さんが二人に合流して……って、あら」
- 弘樹が拍子抜けするほど、それはわかりやすかった。情報が漏れることなど、まったく気にしてなかったのかも知れない。祥吾の日記を読むことで、彼が何をしているのかが弘樹に丸わかりになった。
- 「っていうか、これって日記じゃなくて営業日報だったのかもしれないな」
- 弘樹がそう思ってしまうくらい、そこには祥吾の個人的な事業の内容……女衒としての活動内容が、細かく記されていた。
- 「そこそこ悪いことはしてるだろうなと思っていたけど、コイツはそこそこどころじゃないなあ」
- 黒も黒、真っ黒。弘樹の予想していた数十倍の黒が、祥吾の中には潜んでいた。
- 「こんなんじゃ俺に追い込まれても自業自得だよな」
- そうつぶやきつつ、弘樹は次の作業に取り掛かる。
- 「追い込む材料はこれくらいでいいか。あとは……」
- 祥吾のスマホの通信データを解析し、祥吾の自宅の家庭内ネットワークへと接続する。そしてそこから、祥吾のPCへと侵入した。
- 「うわぁ……セキュリティゆるゆるだなあ」
- 弘樹の予想どおりというか予想以上というか、祥吾のPCは鍵どころか窓や扉すら存在しない家のような状態になっていた。
- 「てか、こんな場所に千咲の動画が保存されてたのかよ……」
- 弘樹がブルッと身体を震わせる。
- 「もし俺より先に誰かが侵入してたら……」
- 想像しただけで恐ろしくなる。
- 「ったく……ヤバいデータを扱うなら、セキュリティはしっかりしろよな」
- いざというときのために、いろいろなトラップを仕掛ける弘樹。
- 「もし誰かが侵入したら、俺にわかるようにしておいて……あとは……」
- 念のために、弘樹が出入りする以外の穴はすべて塞いでおく。
- 「まったく。技術料を取りたいくらいだぜ」
- もちろん弘樹といえども、それで完璧だと思っているわけではない。だが、保てばいいのはほんの一週間ほど。それ以降は、祥吾のPCを生かしておくつもりはなかった。
- 「ん。これでいいな」
- 弘樹のすべての仕掛けが完了した。あとは、何事もなかったかのように過ごすだけ。研究や講義のために大学に通い、自宅では千咲に勉強を教える。それと、一通の手紙の用意。それをある場所へ、善意を込めていろいろなことを記して送付すればいい。それで、すべての片が付くはずだった。
- * * *
- 数日後。弘樹の家の玄関のチャイムが鳴った。今日は家庭教師の日。おそらく千咲が来たのだろうと、弘樹は席を立った。
- 「こんちわー」
- 扉の開く音と、ダルそうな千咲の声。昨夜も遅くまで起きていたからそのせいだろうと弘樹は推測する。勉強ではない。スマホで、かなり遅くまで何かをやっていた。
- (まったく……勉強終わらせたらさっさと寝ればいいのに。まあ、友達付き合いもいろいろあるんだろうけど、それで寝不足になってたらしょうがないだろうが)
- クローンスマホでしっかり覗き見していた弘樹は心の中でそうつぶやく。細かいやりとりは見ていないが、本当に意味のないやりとりを千咲たちは寝ないでいつまでもダラダラと続けていた。
- 「眠そうだな」
- 本当は何をしていたかを知りつつ、弘樹は知らないフリをしながら気遣うような言葉を千咲にかける。
- 「あー、うん。あんたの出した課題が山ほどあるから」
- 「そうか。一所懸命なのはいいが、睡眠は十分とるようにな。ボーッとしながらやっても、頭に入らないだろ」
- 「じゃあ課題の量を減らしなさいよ」
- 「それは無理だ。あれが必要最低限の量。あれ以上減らすと、押さえるべき部分が押さえられなくなる」
- 「ちっ」
- 半分本当で半分が嘘。課題の主な目的は、千咲の遊びを封じること。そのためには、あれだけの量が必要なのだった。
- 「ほら、とっとと勉強はじめるぞ」
- 「はーい」
- 最初のころに比べると、千咲の態度はかなり従順になっていた。やはり、一度弘樹に強く出られたことが影響しているのかもしれない。そもそも千咲の性質として、強く出られることが実はそれほど嫌いではない。というよりも、強く出られることの方が好みに近いとも言える。だからこそ腫れ物に触れるような雄一の態度が、どうにも気にくわないのだ。
- そして、時折ブツブツと不平を言いながらも、今日も千咲は弘樹に勉強を見てもらう。時間にしておよそ四十分が過ぎたころ──。
- 「よし、じゃあ少し休憩にするか」
- 「いえーい」
- 「飲み物でも準備するから、少し待っててくれ」
- 「はーい」
- 千咲の集中力が切れるのを見計らって、弘樹は休憩を入れた。キッチンに立ち、冷蔵庫からペットボトルを取り出し、コップに注いで自分の分と千咲の分を用意する。それらを両手に持ち、リビングへと戻った。
- 「最近学校で何か変わったことでもあったか?」
- 気分転換に、弘樹は適当な雑談を千咲に振った。
- 「別にないよ。補習受けに行ってるだけだし」
- 「まあ、そうか」
- 「そういえば、おじさんってテレビとか見るの?」
- 「ん? あんまり見ないなあ」
- 「そっか。でもそうだよね。ニュースとかはネット見ればだいたいわかるし、わざわざ時間どおりに番組見たりするのもめんどくさいもんね」
- 「ああ」
- そんな感じで、しばらくまったりとした時間を過ごす。
- 「あ、そういえば……」
- そろそろ勉強に戻ろうかと弘樹が思いはじめたころ、不意に千咲が弘樹に新しい話題を振ってきた。
- 「祥吾が転校しちゃったのよね。なんか急に」
- 「え?」
- あまりにも突然な話題に、弘樹は千咲が何を言っているのかが一瞬わからなかった。 数瞬戸惑ったのちに、祥吾=チャラ男クンと脳内で回路が繋がる。
- 「そうか……もう、そういうことになったか」
- 思わず口に出してつぶやいてしまう弘樹。自分の言ったことに気づいてハッとして千咲を見ると、ものすごい目で千咲は弘樹のことを睨んでいた。
- 「今の……どういうこと?」
- 「どういうこととは?」
- 「今言ったことの意味よっ!」
- バンッと千咲が平手でテーブルを打った。それまでの従順な様子が芝居だったのか、それとも言うとおりに従っていたのに裏で弘樹が何かしていたことが逆鱗に触れたのか、とにかく千咲はしばらくぶりに弘樹に対して怒りを露わにした。
- 「別に、大した意味はない」
- 「そんなわけないでしょ。あんたの言い方だと、祥吾が転校した理由を知ってるみたいじゃないっ」
- 弘樹はどう答えるべきか考えた。誤魔化すことも可能だったが、そうした場合、後々面倒になるような気がした。すでに嘘をついているのに、その上に嘘を重ねては、真実を明かすときに信用度がさらに下がってしまうように思えた。そして、もうひとつ気がかりなことがあった。千咲の、祥吾に対する気持ちである。
- 祥吾が千咲に対して執拗にアプローチを繰り返していたことは弘樹も知っていた。そしてそれを、千咲は軽くあしらっていた。だが、まったく相手にしていないというわけではないように弘樹には思えていた。祥吾に対する好意が欠片もない……とハッキリとは言い切れない。そんな中途半端なモヤモヤとした感じを、弘樹は千咲の態度に感じていた。もしかすると、憎からず思っていたのかもしれない。今の態度からも、弘樹はそんな風に判断しかけた。
- (って、ちょっと待てよ……)
- 微妙な違和感に、弘樹は判断を保留する。
- (そもそも、千咲は俺がチャラ男クンにあまりいい感情を抱いていなかったのは知っているはずだ。それなのに、わざわざ俺の前でチャラ男クンの話をするか? それも、あんなおかしなタイミングで)
- 違和感がどんどん膨らんでいく。
- (雑談の流れの中で、ポロッと出たりするのなら、まあわからなくもない。なにしろ俺にとってはとっとと排除してしまいたい相手でも、千咲にとっては日常の中のごく近しい存在なのだから。だが……)
- 考える中で、弘樹は一つの結論に達した。
- 「……」
- 「なにか言いなさいよ」
- 「そうか。ハメられたのは俺の方か」
- 「え?」
- 「そういうことだろ? 急にチャラ男クンの話題なんか出してきたりして」
- 千咲はフンと一つ鼻を鳴らした。
- 「なんか怪しいと思ってたのよ。転校するなんてこと、祥吾全然言ってなかったし。あまりにも急だったもの」
- 「だろうな」
- 「やっぱりアンタがなんかしたのね。何したのよ! 答えなさいよ!」
- 掴みかからんばかりの勢いで千咲が弘樹に詰め寄る。弘樹は顔色一つ変えない。それどころか、逆に怒りを露わにしはじめた。
- 「彼は当然の報いを受けたまでだ」
- 「はあ?」
- 「それに俺が直接彼に何かしたわけでもない。俺は事実をありのままに伝えただけだ」
- 千咲はわけがわからないという表情を浮かべる。弘樹が何を言っているのかわからないまま、自分が言いくるめられるのではないかと恐れながら、さらに追及を続ける。
- 「伝えたって、誰によ」
- 「彼の行動が世に出ると都合の悪い人にだ」
- 「はあ? あんたの言ってることってよくわかんないのよ。もっとハッキリ言いなさいよ」
- 「別にわかる必要はない」
- 「なんでよっ」
- 「これは彼の問題であって、千咲の問題じゃないからな」
- 「そんなわけないじゃないっ。祥吾は友達なんだからっ!」
- バンッと再び千咲がテーブルを叩いた。どうやら弘樹が思っていたよりも、ずっと強い絆で二人は結ばれていたようだ。ただし、友情もしくは仲間意識という名の絆で。
- 「ハッキリ言う。彼とは付き合うべきじゃない」
- 「なんでよ」
- 「アレは人間のクズだ。してはいけないことを、わかっていながら平然とやれるタイプの人間だ。周りを不幸にしかしない」
- 「別に私は不幸になんかされてないっ!」
- 「じゃあ千咲以外の友達はどうなんだ? ウリの斡旋をしてもらって、幸せになったのか?」
- 「ウッ……」
- 千咲が言葉に詰まる。おそらく祥吾の女衒行為には、彼女の方でも思うところがあったのだろう。ただ、仲間だからということで見逃していた。黙認するのがギリギリといったところだったのかもしれない。
- 「売られた先だって、全員いい人だったってわけでもないだろ。むしろ、そんな非合法な手で女の子を抱こうとするヤツらだ。いい人なわけがない」
- 「……」
- 「お前もウリをやったことがあるって言ってたな。それはアイツに斡旋してもらった相手か?」
- 「……うん」
- しばらく躊躇したあと、千咲は力なく頷いた。
- 「でも! 私の相手してくれたおじさんたちは大体いい人たちだったよ! ちょっとキモい人とかもいたけど、みんな優しくていい人だったもん!」
- 千咲はどうにかして自分の過去と、仲間だった祥吾の行為を正当化しようとする。しかし、弘樹はそんな千咲の思惑も叩きつぶす。
- 「そりゃそうだ。ヤラしてくれる女の子には、基本的に男は優しい。それに……」
- 「それに?」
- 「チャラ男クンの方でも、そういう良客を選んでお前にあてがったんだと思うぞ。なにしろお前は、チャラ男クンのお気に入りだったからな」
- 「……」
- 圧倒するように千咲を見下ろす弘樹。いつも以上に、千咲は弘樹との身長差を感じてしまう。千咲はしぶしぶながら、小さく頷いた。
- 「たまたま運がよかっただけだ。たぶん利益度外視で、チャラ男クンはお前にいい客を回してたんだと思うぞ? でも、他の子たちは違う。チャラ男クンに、いい金稼ぎの道具にされてただけだ」
- 俯いた千咲の身体が小さく震えはじめた。弘樹は、もしかすると泣いているのかもしれないと感じた。そんな千咲が、小さな声で精一杯の抵抗をする。
- 「でも……でも……だって……」
- しかし千咲の反論は、言葉にすらならない。何か言い返したいのだが、その言葉すらうまく見つからない。千咲は弘樹の言っていることの正しさを認めながらも、それを受け入れることができなかった。
- 「もし本当にアイツがいいヤツなら、俺が何をしたって別に何も起きないはずだ。つまり、こういう結果になったってことが、アイツの悪を証明してるんだよ」
- 俯き、顔を背けている千咲の肩に手を置き、弘樹は自分の方を向かせる。そして、強い言葉を千咲に投げかけた。
- 「そんなヤツと、親しく付き合うべきじゃないっ!」
- 弱々しい動きで、千咲が顔を上げる。別に泣いてはいなかったが、目が少し赤くなっていた。涙がこぼれそうなのを、必死で我慢しているのかもしれない。
- 「なんで、そこまでするの」
- グッと唇を噛みしめながら、千咲がそう言う。感情の高ぶっていた弘樹は、浮かび上がってきた言葉を何も考えずにそのまま千咲に伝えた。
- 「お前のことが好きだからに決まってるだろ」
- 「ッ!!!」
- 言ってから弘樹は自分が何を言ってしまったのかに気づく。
- 「ち、ちが……今のは……」
- 弘樹は親族としての愛情を示したつもりだった。だが、話の流れからして、それ以外のものが含まれていると思われても仕方なかった。そして、それも真実の一端ではあった。何しろ弘樹の行動の一番の原因になっているのは、祥吾への嫉妬心なのだから。
- 「叔父が姪に欲情しないでよ、気持ち悪い」
- 「ッ!!!」
- 一気に立場が逆転してしまう。
- 「ま、知ってたけどさ。あんたが私のことエロい目で見てたのは」
- 「そ、そうじゃない。さっきのはそういう意味じゃなくて」
- 「そういう意味じゃない? ふーん。その割りにはフェラされてすっごい気持ちよさそうだったよねー」
- 「くっ」
- 物理的な意味では、弘樹の方が身長が高く上から見下ろす形になっている。しかし精神的な意味では、今や千咲が弘樹の方を見下ろす形になっていた。
- 「邪魔しないでよねっ! 私が何をしてもおじさんには関係ないでしょっ!」
- 「俺はっ、お前のためを思って……」
- 「何が私のためよっ! 私はセックスしたいだけなんだから! 祥吾がいなくなったら、誰とセックスすればいいのよ! 誰がセックスの相手を紹介してくれるのよっ! まったく余計なことばっかりして! 新しいセフレを探さなきゃいけないじゃないっ!」
- セックス、セックス、セックス、セックス。弘樹の頭の中で、千咲のセックスという言葉がグルグルと回り続けた。
- (なんで俺はこんな……千咲にこんなことを言わせたかったんじゃない……俺は千咲のためを思って……こうすれば千咲の……ちーちゃんのためになると思ったから……)
- プチンと弘樹の中で何かが切れた。ずっと抑えていたものが、限界を超えた。ずっと長年抑え続けて、変わってしまった千咲をも見守ることに決めて、それでどうにか折り合いをつけて、なんとかこれでやっていけると思っていたものが、ついに外へと溢れ出してきてしまった。
- 「ふん。あんな稚拙なセックスしかしてないくせに。あんなので本当のセックスを知ってると言えるのか?」
- ハメ撮り動画を見たときから、ずっと思っていたことを言葉にして千咲にぶつける。
- 「はあ!? あんたに何がわかるのよっ。どーせ勉強ばっかりしてた童貞おじさんのくせにっ」
- 売り言葉に買い言葉。弘樹も千咲も、どんどんヒートアップしていく。
- 「俺が童貞に見えるのか? それこそ大した経験を積めてない証拠だな」
- 「童貞くさいから童貞くさいって言ってるだけでしょ。精液だってあんな青臭かったくせに。なんか文句でもあるの」
- 「文句なんかない。ただ、そこまで言うのなら教えてやろうと思ってな」
- 「はんっ。あんたに何を教えられるっていうのよ。勉強しか知らないガリ勉のくせに」
- 「ホントになにも知らないんだな。大人のことも、それに本当のセックスのことも」
- 「あんたよりずっと経験豊富よっ! 私がどれだけセックスしてきたと思ってるのよっ!」
- 「あんなのはセックスじゃない。他人の身体を使ったただのオナニーだ。俺が本当のセックスを教えてやる。ガキのセックスじゃない、大人のセックスをな」
- 弘樹の目は血走っていた。鼻息は荒くなり、明らかにいつもの様子とは違っていた。千咲もようやくそれに気づいた。どうやら自分が、弘樹の触れてはいけない部分に触れてしまっていたということに。
- 「ちょっ! イヤッ!!!」
- 弘樹は千咲の細い手首を掴み、力任せにねじ上げた。雄一ほどではないが、弘樹は見た目よりもずっと鍛えている。弘樹のことをヒョロいガリ勉オヤジだと見くびっていた千咲は、その想像以上の力の強さに瞬時に悟ってしまった。もう自分が、逃げられない状態に追い込まれてしまったことを。
- 「なっ! ちょっと! はな……せっ……いやっ!」
- 弘樹は手加減なしに、千咲をベッドに押しつける。ギシギシと二人分の体重でベッドが軋む。千咲はジタバタと暴れるが、弘樹に掴まれた腕はふりほどけそうになかった。
- 「はなせ……よ……どけっ……くっ!」
- いつも自分が寝ているベッドに千咲が横たわっている……妙なことで弘樹は興奮し、余計に千咲を押しつけた。千咲はどうにか弘樹との距離を取ろうと片膝を引き上げ、それを自分と弘樹の間に押し込もうとする。だが弘樹はそれを許さない。片手で千咲の両手を押さえ付けたまま、空いた手でその千咲の片脚を押し下げる。
- 「うぅぅぅぅ」
- 強引な弘樹の行為が次の段階に入った。
- 「なっ! やめっ……ちょっ!!!」
- 手近なところにあったPCの電源ケーブルを引き寄せ、それを使って千咲の両手を拘束する。千咲の顔が驚きに染まった。まさか、そこまでするとは思っていなかった。
- 「くっ! ふざけん、な……こんなことして……ただで……」
- どうにかして両手の拘束を解こうと、手首をいろいろな方向にねじる千咲。だが効果はまったくない。まるでそれが本来の用途であったかのように、電源コードは千咲の手首に絡みついて、その動きを完全に封じていた。
- 「ほ、ど、けっ……くううっ!」
- ジタバタと千咲は暴れる。その動きを、弘樹は片手一本で容易に制圧する。
- 「くそっ」
- 冷酷な表情の弘樹。これまで千咲に見せていた顔とは、根本的に違う。昂ぶりすぎて、感情がどうかしてしまったのだろうか。それとも、怒りのあまりに表情が凍り付いたのか。千咲がどんなに暴れても、弘樹は表情一つ変えなかった。
- 「なあ……冗談でしょ? 今なら許してあげるから……だから早く……んくっ! ほどい、て……うううっ」
- 力任せではどうにもならないと学習したのか、今度は千咲は弘樹に対して下手に出た。しかし、弘樹は眉一つ動かさない。
- 「こんな……のって……あんたらしくない」
- 千咲の中では、弘樹は相当の意気地なしに思えていたのだろう。どんなに罵っても手を出さない優しいおじさん。自分に対して好意を抱いていて、ちょっとお願いすればすぐに折れてくれるチョロい相手。そんな風に、千咲は弘樹を捉えていたのだろう。だからこその、あの隠しカメラの罠を仕掛けてきた。もし失敗したとしても、弘樹相手なら簡単に言いくるめられると思っていた。ちょっと脅かして、そのあと優しくすれば、弘樹などは簡単に思いどおりにできると思っていた。しかし……。
- 「くっ! もういい加減に……しろ……あんたの言うセックスなんて、どうせ……」
- 弘樹が動きを止めている間も、千咲はどうにか逃げ出せないかと抵抗を続けていた。しかしそれらはすべてムダに終わる。千咲は、完全に弘樹の支配下に置かれていた。
- 「んあああっ! ちょっ、やめっ……くううんっ!」
- 弘樹の手が千咲の下着の中に滑り込む。そのままショーツを引き下ろし、唾液で湿らせた指を割れ目の中に挿入する。
- [image "01" file=../Images/p007.jpg] 「い、た……やめ……そんな無理矢理したら……くっ!」
- 苦痛に悶絶する千咲。形のいい眉が、ハの字型に歪む。
- 「抜い、て……指……キツイ、から……うぅっっ」
- だがもちろん、弘樹が千咲の言うことに従うわけがない。かといって、そのまま強引に挿入を繰り返したりするわけではない。挿入した指のポジションをキープし、指先の感覚に神経を研ぎ澄まし、千咲の中の状況を把握する。そしてわずかに動かしながら、千咲の弱点を探していた。
- 「はあ、はあ……んっ……く……」
- 何かを耐えるような千咲の表情。視線を弘樹に向けて、相手が何をしようとしているのかを探ろうとしている。しかし弘樹はそんなことはお構いなしに、千咲の中をジックリと探索する。
- (中は……思ったよりも広い……確かにそこそこは使ってるみたいだ……だがやっぱり若い……締め付けがかなりキツイ……しかしその分だけ順応性が……)
- 弘樹の指先が、ジンワリと何かが湧き出してくるのを感じた。
- 「もう、やだ……うぅぅぅ……抜いて……抜いてよ……その汚い指……早く……私の中から……」
- 湧き出して来た千咲の分泌液が、弘樹の指先に絡みつく。その分泌液を通して、わずかな振動が指先に伝わってくる。振動のリズムは、千咲の話すリズムとシンクロしている。
- (ここ……か)
- その振動で膣肉の柔らかさを詳細に感じ取り、弘樹は千咲の敏感な部分を探り出した。入り口から少し入ったところ。その、お腹側。そのあたりに少し感触の違う部分がある。
- 「んああああっ!!!」
- グッと弘樹がそこを指で押し込むと、千咲は強い反応を示した。
- 「や、やだ……なに、これ……んんんんっ!」
- 弘樹は激しく指を出し入れするのではなく、指を挿入したままでウネウネと動かし、その部分をリズミカルに刺激する。
- 「んっ、ふっ、んっ、んんんっ! あ、あ、あ、あ、あ……こんな……うそ……やだこれ……んはあっ!」
- 千咲が腰をくねらせる。反射的な動きなのか、それとも弘樹の指から逃れようとしてのものなのかはわからない。だがともかく弘樹は千咲を逃がすまいと、足首を掴んで身体を引き寄せ、指は挿入したままにしてGスポットを刺激し続けた。
- 「あっ、はっ、あっ、あっ、あっ、あはぁっ……んっ、はっ、はっ、はっ、あっ、はっ、あっ、ああっ」
- 弘樹の指の動きに合わせて、千咲の口から声が漏れる。それは意識して出しているというものではなく、ごく自然な反応として出てしまっているという感じだった。自然な反応であるがために、それを抑えることは容易ではない。
- 「んうぅぅぅっ……こんな、のって…こんな……知ら、な……い……んひいっ! あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
- 弘樹の指を、千咲の中が締め付けてくる。太ももにも力が入り、弘樹の腕を左右から強く圧迫してきた。
- 「やだ……こんな……こんなので……指……だけでわた、し……んっ、くっ、うっ、くっ、んっ、んんんっ!」
- 無言で千咲を責める弘樹。湿った卑猥な音が、千咲の股間から漏れ聞こえてきた。弘樹は指を止めることはしない。そのままで限界まで、千咲を責め続けるつもりだった。
- 「うっ、くっ! うっ、うううんっ……くっ、はっ、はっ、やっ、はっ!」
- 千咲の唇から漏れる快楽の悲鳴。それは弘樹の指によって紡ぎ出され、抑えたくても抑えることができない。身体が勝手に反応してしまい、千咲の意識とは無関係に声が漏れ出てしまう。こんなにもイヤらしい声が出るだなんて、千咲自身ですら知らなかった。
- 「んうぅぅぅぅっっ……んっ、くっ! うぅぅぅぅっ」
- 苦悶の表情ともとれる千咲の顔。両手が自由ならば、思いきり口を塞いでいたであろう。しかし千咲の手は完全に拘束されていた。わずかな抵抗は弘樹によって片手で容易に制圧され、思うがままに女性器を嬲られていた。
- 「んっ、はっ、やっ、はっ、あっ、はっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あああっ!!!」
- 薄く日焼けした張りのある太ももが、弘樹の腕を挟み込みながら妖しくくねっている。その絶妙な柔らかさと滑らかな肌の感触に、弘樹の興奮が静かに高まっていく。
- 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、んっ、んんっ……くっ、うっ、ふっ、ううんっ」
- 荒い呼吸に合わせて上下する千咲の下腹。その動きが忙せわしなくなり、快感のレベルがある地点を突破しようとしていた。
- 「んんんんんんっっっ!!! な、に、これ……こんな……わたし……もうっ!」
- ググッと千咲の腰が勝手にせり上がっていく。膣の内部も弘樹の指を強く締め付ける。若鹿のような千咲の全身の筋肉が、その瞬間に一気に緊張した。
- 「んはああああっっっ!!! い、イクぅぅぅっっ!!!」
- ガクガクガクガクッと全身を震わせる千咲。はじめての体験に頭の中が真っ白になる。数瞬の緊張のあと、千咲の身体から一気に力が抜け、全身がダラリと緩み、大量の淫ら汁が千咲のアソコから溢れ出してきて弘樹の手を濡らした。
- 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」
- 口をパクパクさせながら、荒く息を吐く千咲。これまで感じたことのなかった快感に、脳細胞が大量の酸素を必要としていた。そんな千咲を見下ろしながら、弘樹はズボンのベルトを外した。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……え?」
- その物音に気づいた千咲が、視線を上げる。弘樹がしようとしていることに気づき、抗議の声をあげる。
- 「ちょっ……まさかあんた……うそっ……」
- 目を見開き、驚きの表情を浮かべる千咲に、弘樹は冷たく言い放つ。
- 「セックスがしたいと言ったのはそっちの方だ」
- 「そうだけどそうじゃないっ! 私は、こんな風に──」
- フル勃起した弘樹のモノが姿を現す。
- 「う、うそ……こないだよりも、また大きく……」
- 並以上の大きさを持つ弘樹のペニスを見て、千咲が絶句する。確かに以前千咲がフェラチオしたときよりも、弘樹のペニスはひと回りほど大きく漲っていた。それは、弘樹の興奮度の強さの証。この状態が弘樹の本気の臨戦態勢だった。弘樹は、本気で千咲を犯す気でいた。
- 「ちょっ! 待ちなさいよっ! するならせめてゴム着けてよ!」
- 両手を縛られた状態で、千咲は可能な限りの抵抗をする。しかし身体の方は、先ほどまでの弘樹の責めでグショ濡れ状態。すでに、挿入の準備が整ってしまっていた。
- 「ま、待って……私ゴムなしはまだ……んあああっ!!!」
- ズブズブと弘樹の分身が千咲の中へ侵入していく。もちろん、ゴムも何も着けない自然なままの状態で。
- 「んっ、んうぅぅぅぅぅぅっ……入って、きちゃう……生で……ああああああっ。生でおちんちんが……入って、きちゃう……」
- 弘樹のペニスに、千咲の膣壁が柔らかくねっとりと絡みついてきた。長年の願望がついに叶い、弘樹は自分の抑えが利かなくなっていくのを感じた。腰が勝手に動き出し、身体の方が、もっともっとと千咲を求めてしまう。
- 「んはあああっ!!! あっ、あっ、あっ、あっ、んっ、はっ、あっ、やんっ!」
- [image "01" file=../Images/p008.jpg] 弘樹は、自分自身の反応に戸惑っていた。本当は、もっとじっくり責めるつもりだった。それなのに身体が勝手に動いてしまう。こんなのは大人のセックスではない。あのチャラ男がしていた稚拙なセックスと、ほとんど変わらないではないか、と。
- 「んっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……なに、これ……なにこれぇ……こんな……はうぅぅっ。こんなに、なって……ただハメられてるだけなのにぃぃぃ……んんっ!」
- しかし、千咲の方は違っているようだった。祥吾がしていたのと同じような、ただの力任せな稚拙なセックス。しかし、感じ方が違う。身体の奥深くが熱くなり、湧き出してくる快感にビクンビクンと小さく震えてしまう。
- (もしかして千咲……イッてる?)
- 膣奥を激しく突きながら、弘樹は千咲の反応を見ていた。
- (なんだこれ……まるで何度も何度も小さな絶頂を迎えてるみたいな……)
- 弘樹の頭に、マルチプルオーガズムという単語が思い出された。
- (もしかしてあれか? 連鎖的に性的絶頂を迎えるとかいう……絶頂の快感が次の快感のトリガーになって、連続でイキ続けるとかなんとか……そんなのホントにあったのか?)
- 弘樹自身も、知識としてしか知らないような現象。それが、千咲の身に起きていた。どうしてそうなったのかは弘樹もよくわからなかった。Gスポットへの刺激がそれを引き起こしたのかも知れない。しかし、過去の女性たちでもそういう反応を起こした相手はひとりもいなかった。弘樹もはじめての体験。しかし千咲は、それが弘樹の言っていた大人のセックスなのだと思い込んでしまった。
- 「んはああああっ……ああぁぁぁぁぁ……やだぁ……こんな……こんなにされたら……わたし……わたしぃ……」
- 予想外の現象に興奮しながら、弘樹はさらに動き続ける。深く浅く、強く弱く。暴走しすぎになりそうな自分をどうにか制御しながら、千咲の身体に快感を送り込み続ける。
- 「んっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
- いっそう甲高くなっていく千咲の声。中から溢れ出す液体の粘り気が増し、弘樹のペニスに白く濁って絡みつく。
- 「んふぅぅぅん……んっ、はっ、やっ、はっ、あっ、あああんっ!」
- 苦痛と快楽は紙一重。見ようによっては、千咲の今の表情はかなり苦しそうに見えた。気持ちよすぎて辛くなってしまっているのかもしれないと、弘樹は思った。
- 「なんで……なんでぇぇ……こんな……私……無理矢理犯されてるのにぃ……んああああああっ……」
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……千咲……千咲……ちーちゃん……んんんんっ!」
- 攻める弘樹の方にも、余裕がなくなってくる。快感の熱い塊が長年の思いとともに、出口を求めて亀頭の先へと殺到していく。
- 「あっ、あっ、あっ……やっ、んんんっ……こんな……私……うそ……くうううんっ!」
- はじめての激しすぎる快感に翻弄されている千咲。意識も散り散りになって、自分の上でブツブツとつぶやいている弘樹の声は、その耳には届いていない。弘樹の方もそれはわかっていた。だからこそ安心して、秘め続けてきた想いを千咲にぶちまけていた。
- 「ちーちゃん……んんんんっ……ちーちゃん……んあああああっ!」
- グチュグチュと千咲のアソコが泡立ちはじめる。千咲の愛液と弘樹の先走り汁が混じり合い、この上なく淫らな化合物となり二人の間を繋いでいた。
- 「も、もう……あうううっ……私……わ、た……んはあああああっ!」
- 「イク……俺も……ちーちゃんっっっ!!!」
- 「くぅぅぅぅぅっ!!!」
- 「好きだぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
- 「んあああああああああああっっっっ!!!」
- 意識がはじけ飛ぶほどの快感。弘樹の想いと精液が、千咲の中に流れ込んでいく。
- 「あ、は……あぁぁぁぁぁ……」
- 千咲にとってはじめての生中出し。その感覚を感じ取っているのか、どこか呆然とした表情のまま千咲はピクピクと震えていた。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ」
- 想いと精液を吐き出し、少しずつ弘樹の頭が冷めていく。
- 「ん、んうぅぅぅ……中、に……あぁぁぁぁ」
- つぶやく千咲の声に押し出されるように、射精してわずかに力を失った男性器が、千咲の中からヌルリと抜け出してきた。
- 「んっ、あぁぁぁぁぁ」
- ペニスが出て行く感触を感じたのか、千咲がわずかに腰をくねらせた。ピクンピクンと未練がましく震えている弘樹のペニス。中に残っていた精液が、ジワリとしみ出て千咲の尻や背中に白い印を残した。
- 「はあ……はあ……はあ……はあ……」
- 千咲の目には、かすかに涙の粒が浮かんでいた。その雫が、弘樹を決定的な現実に引き戻す。目の前にグッタリと横たわる千咲が、犯してしまった罪の大きさを実感させた。
- (俺は……なんてことを……)
- 欲望の嵐が過ぎ去り、冷えはじめていた弘樹の身体がさらに冷えていく。
- (くそぉ……)
- 自分のしてしまったことが、走馬燈のように蘇ってくる。千咲を力ずくで押し倒し、両手を拘束して無理矢理イカせた。そのまま生で犯し、中出しした。そしてそんなことをしながらも、長年秘めていた想いを千咲にぶつけてしまった。
- あまりの軽率さに、弘樹は頭を抱える。自分自身の評価を、弘樹は変えざるを得なかった。もっと自分は冷静な人間だと思っていた。きちんと計算で動ける人間だと思っていた。だが、違っていたようだ。一時の熱情にかられて、衝動的な行動を起こしてしまった。
- (どうすりゃいいんだ……)
- 考え込む弘樹に、千咲が声をかける。
- 「これ……ほどいて」
- 「あっ……」
- いつの間にか絶頂の衝撃から回復していた千咲。唐突に声をかけられ、弘樹は一瞬身構えた。我に返った千咲に、もしかしたら反撃されるかもしれないと思ったのだ。だが、そのままにしておくわけにはいかなかった。弘樹は覚悟を決め、千咲の拘束を解いた。
- 「……」
- 自由を取り戻した千咲は身体を起こし、拳をグーパーグーパーと何度か閉じたり開いたりした。
- (やっぱり殴られるのか……)
- それも仕方ない。そう思いつつ弘樹が身を固くしていると、千咲は何もせずにスッと立ち上がった。
- 「帰る」
- 「え?」
- 予想外の千咲の態度に、拍子抜けする弘樹。まるでバカにでもなったかのようにポカンと口を開け、無言で身支度を調え部屋を出て行く千咲を見送ることしかできなかった。
- 「……」
- 弘樹は、何が起きたのかよくわからなくなってしまっていた。もしかすると全部幻で、さっきまでのことは自分の妄想か何かなのではないかと思いはじめた。だがベッドの上に証拠がある。飛び散った精液と、残された千咲の痕跡。床に投げ捨てられた電源コードが、先ほどまでのことが事実であると告げていた。
- 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
- うめきながらうずくまる弘樹。今後起こるであろう事態が脳裏に次々と思い浮かぶ。
- 「終わった……兄貴になんて言えばいいんだ……」
- 答えは出ない。出るはずがない。出口のない迷宮に、弘樹は自ら迷い込んでしまった。
- [image "P000.png" file=../Images/m003.png] あれから数日が経った。
- 弘樹はまだ、精神的な衝撃から立ち直れずにいた。いつも上の空で仕事も手に付かず、普段ならしないようなミスを連発して、学生たちや同僚から心配されたりもした。だがその原因を打ち明けるわけにもいかず、弘樹は悶々としたままで毎日を過ごしていた。
- そして、家庭教師の日がやってくる。
- (まさか……来るわけないよなあ)
- そう思いつつも弘樹は仕事を早めに切り上げ、いつものように準備をして部屋で千咲のことを待っていた。
- あんなことをしでかした自分の部屋に、千咲がまた来る可能性は億分の一すらない……そう思いつつも、弘樹は一縷の望みをかけて千咲を待ち続けた。
- 「えッ!!!」
- 最初弘樹は、それが何の音かわからなかった。だがすぐに、それが自分の家のチャイムの音だと理解した。心臓が早鐘を打ちはじめる。千咲に来て欲しいと願っていたくせに、来たかもしれないと思った途端に怖くなってきてしまった。バクバクと動悸が速くなり、心臓が口から飛び出してしまいそうになる。それでも何とか腰を上げ、玄関に向かってそろそろと歩きはじめる。チャイムを鳴らした人物が、誰かを確かめるために。
- 「ッ!!!」
- だが弘樹が玄関へ向かうより先に、ガチャリと扉を開ける音が聞こえてきた。当然それは、玄関の扉だ。玄関には鍵が掛けてあった。だからその扉を開けられるのは鍵を持っている人物だけ。合い鍵を持っているのは兄と両親、そして家庭教師中の千咲だけ。弘樹はすばやくそこまで考える。その中の最良の可能性と最悪の可能性が同時に頭の中で再生され、弘樹は身体が強ばって動けなくなってしまう。
- 心臓の鼓動が収まらない。ハアハアと息が荒くなり、立っているだけで辛くなってきてしまう。ジットリと汗が浮かび、考えがまとまらなくなってくる。そしてついに……。
- 「……」
- リビングの扉が開かれ、誰かの入って来た気配がする。弘樹は恐ろしくて、そちらに目を向けることができない。しかしずっとそうしているわけにもいかず、弘樹は覚悟を決めて顔を上げた。
- 「なっ! え!? でも……そんなっ」
- 部屋の入り口から弘樹を見ていた人物。それは、千咲だった。喜びと驚愕と申し訳なさと、いくつもの感情が弘樹の頭の中でごちゃ混ぜになる。呆けたようにポカンと口を開いたまま、弘樹はただ見つめることしかできなかった。千咲はなぜか、頬を染めながら怒ったような表情を浮かべて、そんな弘樹を見つめ返していた。
- 「なによ……変な顔して」
- 千咲の態度は、いつもどおりだった。弘樹に向かっていつもどおりの憎まれ口を叩いていた。ただし、うっすらと頬を染めながら。
- (?)
- 弘樹の頭の中にハテナマークが浮かぶ。その疑問の存在が、弘樹の心の混乱に一定の方向性を与えた。そのわずかな落ち着きが、弘樹に考える余裕を与える。
- 「今日……家庭教師の日でしょ」
- 「あ、ああ」
- 「だから私、来たの」
- 「そうか」
- 「……」
- (千咲……怒ってない? いやでも、変に落ち着きがないような……でも……)
- いまだ千咲の顔を見つめ続けている弘樹と、どこか所在なさげにあたりをチラチラと見回し落ち着きのない千咲。弘樹は、千咲がそんな態度をとるのがどうしてなのかがよくわからなかった。そしてその疑問が、徐々に好奇心へと姿を変えていく。
- 「ちょ、ちょっと……なにさっきからジッと見てるのよ」
- 千咲がさらに頬を染める。その染めた頬をプーッと膨らませ、弘樹の視線から逃れるようにそっぽを向く。その様子からは、これっぽっちも怒りは感じ取れなかった。
- (やっぱり……怒ってない?)
- 弘樹は自分の感覚が信じられなかった。というかそもそも、これまで千咲の気持ちなんてこれっぽっちも考えていなかったことに今さらながらに気づいた。そしてその反省は、自分の過去すべてに対しても繋がっていることに気づいてしまった。
- (そうか……俺は……)
- 弘樹には女性との交際経験がそれなりにあった。ただそれらすべては、向こうから言い寄られてのものだった。千咲への想いを誤魔化すために、弘樹はそれらすべてを受け入れてきた。つまりすべては受動的なものであって、弘樹の側から相手がどう思っているかを考えたことなど一度もなかった。
- (なんてことだ……)
- 弘樹が自分の過去について反省し後悔している間も、千咲はなにやらモジモジと自分の手指を絡ませながら、チラチラと時折弘樹の方に視線を投げかけていた。そして、沈黙に耐えられなくなったかのように口を開く。
- 「この間は……怖かったんだから」
- 「あ、ああ……ごめん」
- 「ホントに私のこと……好きなの?」
- 「う、うん」
- 「……」
- 千咲の言葉が途切れる。弘樹もどう反応していいかわからず、部屋の中が微妙な雰囲気になる。さぐるように千咲を見る弘樹と、そんな弘樹をチラチラと見る千咲。やがて千咲が、どこか言いづらそうにしながら口を開いた。
- 「そ、それじゃあ……」
- 言いかけて途中でやめる。一瞬迷ったあと、意を決したかのように再び口を開く。
- 「それじゃあ……今度は優しくしなさいよね。そしたら、許してあげてもいい」
- 「……」
- 顔を真っ赤にする千咲。わけがわからないといった風な弘樹。再び室内が無言で包まれ、お互いの鼓動の音だけが、鳴り響いているように感じられた。
- (今度? 優しくする? いったい何のことを言ってるんだ?)
- 「セックスよ! セックス! あんたのセックスが気持ちよかったから、許してあげてもいいって言ってるのよっ!」
- ついに千咲が痺れを切らして声を荒げながら弘樹にそう言った。弘樹は一瞬ポカンとしてしまうが、ようやく千咲が何を考えていたのかを理解することができた。
- 「……ああ」
- (なるほどな。大人のセックスを教えてやるって俺の宣言を、どうやら千咲はしっかり憶えてたってわけか)
- 弘樹は乱暴してしまったという結果についてずっと思い悩んでいたけれども、千咲の方はそうではなかった。弘樹に乱暴された原因……大人のセックスを教えるという弘樹の言い訳。そのことの方が、千咲にとっては結果よりもずっと重要だった。弘樹は、そう理解した。
- 「私はセックスをしたいだけ……か」
- 千咲自身が言っていた千咲の基本的な考え方。それは詭弁なのかと思っていたけれども、どうやら千咲の本心だったようだ。弘樹には理解できないが、それは千咲にとってはもの凄く重要なことだったのだろう。だからこそ、同じアクシデントに対する答えが弘樹と千咲ではまったく違ったものになってしまった。弘樹はあの強引なセックスをマイナスにとらえていたが、千咲の方はプラスなモノとして自分の中で消化していた。
- 「ええ、そうよ。私はセックスがしたいだけ。だから来たの。あんたが私のセフレを追い払っちゃったんだからねっ。ちゃんと責任とりなさいよっ!」
- 「はいはい」
- 一番恐れていた事態……雄一に自分の乱暴がバレるということを回避できた安堵感からか、弘樹は顔が緩んでしまってしょうがなかった。そんな弘樹の態度が気に入らないのか、千咲は終始プリプリしている。もっともそこには、弘樹に自分の欲求を素直に告げてしまったことへの照れ隠しもあるのだろう。それを感じ取っているのかいないのか、弘樹は機嫌よく千咲に応対をする。
- 「セックスは勉強のあとだからな」
- 「えー、まだ家庭教師するつもりなの?」
- 「当たり前じゃないか。それが俺に課せられた役目だ」
- 「ふんっ。しょうがないわね」
- 文句を言いつつも、千咲は帰らない。それどころかむしろ、どこか嬉しげに勉強道具を机の上に広げていく。どうにかしてその嬉しさを表情には出さないように努力しながら。
- そして、いつものように勉強の時間がはじまる……。
- 「大人のセックス……今日もちゃんと教えなさいよね」
- 「ああ」
- いつもの勉強のあとは、場所を変えてセックスのお勉強。ベッドに横たわる千咲に、弘樹が覆いかぶさっていた。その状況は前のときと少し似ているが、その雰囲気はまるで違う。弘樹を見上げる千咲の目には、にこやかとは言い難いが睨み付けるような刺々しさはまったくない。それどころかむしろ、チラチラと快感への期待のようなものが見え隠れする。
- (なるほど……な)
- 弘樹は自分の思っていたこと……千咲が怒るよりもセックスの快楽を選んだという結論が正しいのだと再認識した。もちろん他の思惑もあるかもしれない。ただそれでも、弘樹自身はこの状況を喜ぶべきだと思った。なにしろ、あの千咲をついに合意のもとで抱けるのだから。
- 「なんなら別に……縛ってもいいよ。その方があんたが興奮するなら」
- 千咲は両腕を合わせて、弘樹に捧げてみせる。
- 「いや、別に俺は……千咲がそうしたいならするが?」
- 「ふ、ふんっ。私はそんな変態じゃないわ。いいからとっとと気持ちよくしなさいよ」
- 「はいはい」
- ラブラブ……とまではいかないが、かなり距離が近くなったと弘樹は感じた。瓢箪から駒。弘樹は自分のとった思い切った行動がこの意外な結果を引き寄せたのだと、あのときの自分に対する認識を改めた。もちろん、これが例外中の例外だということはハッキリとわかっていたが。
- 「んっ……ふ……」
- 制服姿の千咲が喘ぐ。以前はこんなはしたない格好などと思っていたが、こうして見てみると意外と悪くはない、などと弘樹は自分勝手な感想を抱いた。
- 「あ……」
- 弘樹が千咲の髪の香りを嗅ぐ。髪から耳元へと唇を寄せる。この間はしなかった丁寧な愛撫に、千咲がかすかに驚きの表情を浮かべる。
- 「そんな……ん……」
- 耳元から首筋、鎖骨へとキスをし、身体中の敏感な部分を刺激していく。優しくしなさいという千咲のリクエストに従い、弘樹は思いつく限りの丁寧な愛撫を千咲に振る舞っていった。舐めたり触ったりではなく、唇だけを使った愛撫。指先から手首、二の腕……つま先からヒザ、太もも。ありとあらゆる場所に、フェザータッチのキスの雨を降らせる。
- 「はあはあ……なに、これ……キスされてるだけなのに……私……どんどん……んんん」
- 千咲の身体が熱くなっていく。全身がじっとりと汗ばみ、サラサラとしたキメの細かい肌の触り心地を変えていく。弘樹はその感覚を味わいながら、今度は全身をなぞるように指先で刺激しはじめた。
- 「んんんっ……ん、あ、あ、あ、あ、あ」
- ピクピクと小刻みに千咲が身体を震わせる。汗だけでなく、別の液体も溢れてきた。千咲の股間を覆う小さな布きれ……下着がもうすでにグッショリと濡れはじめていた。
- 「すご……い……こないだよりも……もっと……んんん」
- 当然ながら、弘樹の方の準備ももう完了している。唇と指先は千咲に触れたまま、片手でベルトを外し、腰を器用に動かしながらズボンを脱いでいく。仕上げにトランクスを脱いでペニスを露わにすると、それを千咲の熱くなった股間へと押し当てた。
- 「あ……そんなに……おっきく……なって……」
- 視線だけで千咲が弘樹のモノを見る。そこにわずかに浮かんだ嬉しそうな表情を、弘樹は見逃さない。千咲にその表情を浮かべさせたことを誇らしく思いながら弘樹はペニスを千咲のアソコに擦りつけた。
- 「んっ……ふっ!」
- 鼻にかかった吐息が千咲の口から漏れる。その艶めかしい吐息に我慢ができず、弘樹はそれ以上の焦らしはやめてとっとと挿入することにした。
- ゴムを装着し、千咲の入り口へとペニスを押しつける。
- 「んっ、んんっ! んあぁぁぁ……くっ! 大きい……」
- 熱くぬめる千咲の中が、弘樹のペニスに絡みついていく。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……ゴム……してくれ……たの?」
- この間は流れで生でしてしまった弘樹だったが、妊娠の可能性を考えればゴムの必要性は十分に理解していた。弘樹は返事の代わりに腰を動かす。
- [image "01" file=../Images/p009.jpg] 「あぁぁぁぁ……んっ、あっ、あっ、あっ、やんっ」
- この間の交わりで、すでに千咲の中の構造は理解していた。ゴムのおかげで若干わかりづらくはなるが、弘樹は千咲のGスポットを刺激するように腰を動かしていく。
- 「んっ、んっ、んっ、んっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
- 弘樹の動きに合わせるように、千咲が気持ちよさそうに喘ぐ。その声を聞きながら、さらにリズミカルに動く弘樹。ギシギシと揺れるベッドが、二人のシンクロ具合を表しているようだった。
- 「あっ、あっ、あっ、あっ、んっ、あっ、やっ、はんっ」
- 弘樹はこの間とはまた違う感動を憶えていた。複雑に絡みついた千咲の中が、自分のペニスを刺激してくる。そのフィットした感じは、これまでの誰とのセックスでも感じたことはなかった。ジンジンとした痺れるような快感が、股間の奥から湧き出してくる。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……え?」
- 順調に腰を動かしていた弘樹をアクシデントが襲う。
- 「んんんっ! な、なに?」
- 突然動きを止めた弘樹に、千咲が反応する。
- 「しまっ……た……ううぅぅぅ」
- 「うそ……もう?」
- それは、弘樹自身も初めての経験だった。入れてからまだほとんど時間は経っていない。それなのに猛烈な射精感がこみ上げてきて、堪える間もなくイッてしまった。
- 「ごめん。あんまりにも気持ちがよかったから……でも、まだ大丈夫だ」
- 「え?」
- 弘樹はペニスを引き抜く。見ると、ゴムの中には信じられないほどの量の精液が溜まっていた。それをこぼさないように引き抜き、素早く新しいゴムと取り替える。
- 「気持ちよかったから、まだ全然萎えてない。だからこのまま……」
- 「そんな……まさかこのまま……んんんんっ!」
- 間髪入れず、弘樹は千咲の中に再挿入する。たっぷりと溢れはじめていた千咲の愛液を、硬いままのペニスでかき混ぜグチュグチュとした卑猥な音を奏でていく。
- 「あっ、あっ……一度出した、のに……またするなんて……んっ、んっ、んっ、んっ」
- かき混ぜられた千咲の愛液が、泡立ち白く濁りはじめている。弘樹自身も少し驚いていた。自分はまだまだ若いとは思っていたが、それでも年齢は年齢だ。一度出せば、しばらくの復活はない。今日まではそう思っていた。だが、千咲相手なら違っていた。続けて何度でもできそうな気がした。千咲が相手なら、ひと晩中でもセックスし続けられるような気がしていた。
- 「んあああああっ……あっ、あっ、あっ、んっ、んっ、んっ、んっ……」
- 快感に身を任せている千咲を眺めながら、弘樹は腰を振る。形のいい乳房が、プルプルと震えていた。
- 「んふぅぅぅ……んっ、んっ、んっ、んっ……あ、あ、あ、あ……んあああああっ」
- うっすらと日焼けした千咲の肌。柔らかな二つの膨らみも、薄い小麦色に彩られていた。その中心に、可愛らしいピンク色のつぼみがある。その二つの膨らみは、気持ちよさを表すかのようにピンと硬く勃起していた。
- 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……んはああ……」
- 弘樹の動きに呼応するかのように、千咲の腰が揺れはじめた。意識してのものではなく、無意識の反応で動いてしまっているようだった。
- 「んはぁぁぁ……いい……気持ち、いい……あんたのおちんちん……すごく……んっ、あっ、あっ、あっ……すごく、いい……」
- うっとりと潤んだ瞳で千咲が弘樹を見上げる。
- 「千咲……」
- ずっと思い焦がれてきた千咲のその表情だけで、弘樹はまた射精しそうになってしまう。グッと下腹部に力を込め、それをどうにか防ぐ。そして限界がくるまえに千咲に感じてもらおうと、弘樹は腰の動きを変えた。深く大きく、より千咲をえぐるようなものに。
- 「んんんんんんっっっ!!!」
- 千咲の表情が変わる。うっとりとしただけではなく、快感に苦痛の入り混じったような感じ。気持ちよさがリミットを超えて、苦しさすらも感じるようになっていた。
- 「んあああああああっ……く、る……奥まで……んはああああっ……おちんちんが、暴れて……あはああああっ! あっ! あっ、あっ……気持ち、いい……気持ちいいっ!」
- それは悲鳴と紙一重の喘ぎ声だった。苦痛と快楽の境界線上を、千咲の意識が行ったり来たりする。
- 「んふぅぅぅぅ……あ、あ、あ、あ、あ、あ……私……わた、し……んはあああっ」
- 激しい感覚に、朦朧としはじめる千咲の意識。そしてそれに連動するように、千咲の中がうごめきはじめる。その千咲の絶頂の予兆に、弘樹の性感が引きずられていく。
- 「うっ……くっ……今度は、一緒……に……」
- 「うん……うん……来て……また私で……ああっ……おじさんの射精、感じさせてぇ」
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……イク、ぞ……イクぞ?」
- 「来てぇ……精液……ああああああっ……私の、中にぃぃ……」
- 「くっ!!!」
- 「イクぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」
- ギューッと千咲の中が、弘樹のペニスを絞るように収縮していく。弘樹の絶頂と千咲の絶頂。互いの絶頂が見事に重なり、二人の快楽はいつも以上の高みへと到達した。
- 「あああっ……あ、あ、あ、あ、あ……出て、る……おじさんのおちんちん……ビクビクって震えて……ん、ん、ん、ん」
- ゴム越しとはいえ、千咲は弘樹の射精を感じ取っていた。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……うぅぅぅぅ」
- [image "01" file=../Images/p010.jpg] 二度目だとは信じられないほどの射精の激しさに、弘樹はクラクラとしてしまう。まるで自分自身がすべて吐き出されてしまったかのように。
- 「んっ、くっ……うぅぅぅ……抜け、ちゃう……」
- 絶頂後の強い締め付けに、弘樹のペニスが千咲の中から押し出されてくる。
- 「あ……あぁぁぁ」
- 中が敏感になっているのか、そのペニスが抜け出る感覚で千咲が喘ぐ。
- 「んふぅ……」
- まるで何かを産み落としたかのように、丸くて太い息を一つ落とす千咲。そのタイミングに合わせて、ヌプンと弘樹のペニスが姿を現した。
- 「あ、すご、い……」
- ゴムの中は、精液でいっぱいになっていた。弘樹は少しばつの悪さを感じながら、それを抜き取ってこぼれないように口を縛る。
- 「はあ、はあ、はあ……なんか、もったいない、よね……」
- 弘樹は千咲のその言葉が何を指しているのかよくわからなかったが、その視線がどこか物欲しそうに精液のたっぷりつまったゴムを見ていることだけはよくわかった。
- 「ん……ふ……」
- 少しずつ息の整ってきた千咲に覆いかぶさり、弘樹がキスをする。恋人同士のようなはじめてのキス。ごく当たり前のように千咲も受け入れていたが──。
- 「ちょ、調子に乗らないでよねっ!」
- ハッと我に返ると、思いきり弘樹を突き飛ばして自分の上から退けさせた。
- (まあ、恋人同士になったわけでもないしな)
- 弘樹は少しだけ複雑な心境だった。あくまでもセフレ。それが、今の自分と千咲の関係だと再認識してしまったから。
- * * *
- その日以来、千咲と弘樹の関係は完全に変わった。
- 千咲は家庭教師の日以外も、頻繁に弘樹の部屋を訪れるようになり、弘樹の方もそんな千咲を迎えるために仕事を早々に切り上げて帰ってくることが多くなった。
- 当然のように、二人は身体を重ねた。弘樹が蓄えてきた知識を、千咲は乾ききった砂のようにどんどん吸収していった。勉強だけでなく、セックスでも。
- そんなある日……。
- * * *
- いつものように、大学での用事を早々に片付け、自宅で千咲を待っている弘樹。
- (そろそろだな)
- 時計を見上げて、時間を確認する。千咲の昼の補習が終わってから、ちょうど一時間。そろそろ、千咲が弘樹の家に到着してもよさそうな時間だった。
- 「来たか」
- ピンポンと弘樹の部屋のチャイムが鳴った。弘樹は千咲が到着したのだろうと、ややソワソワしながらいつものように扉が開くのを待った。
- 「おはよー」
- 屈託のない笑顔の千咲。
- 「おはよう」
- もう昼過ぎだが、弘樹も同じように挨拶を返した。
- 「にへへー」
- 何が嬉しいのか、妙な笑い方で笑顔を浮かべる千咲。以前は険しい表情が多かったが、最近はこの手の崩れたリラックスしきった笑顔を浮かべることが多い。弘樹に気を許して、無駄な緊張をしなくなったのだろう。
- 「あ、そうだ」
- 千咲が手に持っていたコンビニ袋を弘樹に渡してきた。
- 「これ、ドアノブのところにかかってたよ?」
- 「コンビニ袋?」
- 「誰かのお届け物とかじゃないの?」
- 「うーん……覚えがないなあ」
- 何も考えずにそれを受け取る弘樹。コンビニ袋の中には、何かを包んだ新聞があった。
- 「なんだこれ」
- 弘樹はそれを広げてみる。
- 「げっ!」
- 「きゃっ!」
- プーンと室内に独特の臭いが充満していく。詳しく調べるまでもなく、それは動物のウンコだった。大きさからして、おそらくネコの。
- 「やだ、なにこれ。なんでこんなのがおじさんの部屋に?」
- 「知らないよ俺だって」
- 顔をしかめながら、弘樹はそれを片付ける。千咲はそれを自分が運んできてしまったということに気づき、自分の手が汚れているのではないかと眉をひそめる。
- 「まったく……なんなんだ一体……」
- 「ねえおじさん。いきなりだけど、シャワーいいかな」
- 「ん? ああ、そうだな。直接触ったわけじゃないけど、なんか気持ち悪いしな」
- 「うん」
- 弘樹は千咲と連れ立ち、バスルームへと向かう。猫のウンコの件は、たちの悪い誰かのイタズラだろうと安易に考えながら。
- 「ふう、さっぱりした」
- 数分後、二人は連れ立ってリビングへと戻ってきた。バスタオルで頭を拭きながらソファに腰を下ろす弘樹の隣に、当然のように千咲も腰かける。
- 「えへへ」
- 笑顔を浮かべながら、コツンと弘樹の肩に自分の頭をもたせかける。フワリと漂ってくる千咲のシャンプーの香りに弘樹は少し興奮する。
- 「ねえねえ、いいよね」
- 「ん? なにがだ」
- 「今日も……しよ?」
- 当然のように弘樹の身体を求めてくる千咲。弘樹の方も、もちろんそのつもりだったのだが、少しだけこんなことをしていていいのか、という思いはあった。そもそも、千咲が弘樹の部屋にくるのは家庭教師のためなのである。セックスだけでなく勉強の方もそれなりにこなしてはいたが、それでもやはり多少の罪悪感はあった。
- それに、気になることが弘樹にはひとつあった。それは、千咲の性欲があまりにも旺盛過ぎやしないかということだった。確かに千咲くらいの年齢なら、ヤリたい盛りであっても当然のように思える。弘樹にだって、サルのようにヤリまくった時期はあった。だが、それにしても千咲はヤリ過ぎなのではないかと弘樹は少しだけ思っていた。
- (もしかして……ちょっとしたセックス依存ってやつになりかけてるんじゃないか? じゃなけりゃ、ニンフォマニアとか)
- かわいい姪の精神状態を疑うことは、弘樹にとって少し心苦しいことではあった。しかし、そう思ってしまうくらい頻繁に千咲は弘樹を求めてきた。
- (まあ……そんなに心配するほどでもないか)
- そう思って弘樹は自分を納得させる。気持ちいいものは気持ちいいし、自分の方だって結局は千咲を受け入れているのだから、と。
- 弘樹がそんな風に考えている間も、千咲は弘樹の胸やお腹を指でツンツン突いていた。
- 「ねーってば。やるの? やらないの? やらないなら私、外に男引っかけに行っちゃうよ?」
- それが千咲の最近の殺し文句だった。惚れた弱み。そう言われては、弘樹は頷くしかなかった。
- 「するからそれはやめてくれ」
- 「それじゃあ、今日はどんな風にする?」
- あらゆることを試し続けていた弘樹と千咲は、ややアブノーマルなプレイにも踏み込みはじめていた。正常位、騎乗位、後背位、立ちバック、駅弁……思いつくような体位はほぼ試し済み。それゆえに、プレイにちょっとした味付けをするのが最近の流行だった。
- 「そうだな……」
- 弘樹には一つやってみたいことがあった。しかし、ちょっとした理由からそれを言い出すのには少しためらいがあった。だが、それ以外にいいプレイのネタが思いつかない。断られたら断られたで、そのときは別のことを考えよう。そう思いつつ、弘樹は千咲にそのことを提案した。
- 「ハメ撮りがしたい」
- 「え?」
- 「チャラ男クンともしただろ? だったら、俺ともして欲しいんだが」
- もしかするとヤキモチと思われるかもしれない。それが、弘樹がためらっていた理由だった。だがそういう気持ちがあることも事実だし、そもそも弘樹が千咲に手を出すに至った原因がそこにあることは千咲の方も知っているのだから、そんなに気にすることではないのは弘樹もわかっていた。要するに、ちょっとしたプライドの問題だったのだ。
- 「いいよ。ハメ撮り。やろっ」
- 千咲はフフッと笑うと、何の屈託もなく弘樹のその提案を受け入れた。弘樹はその千咲の態度が少々意外だった。なにしろハメ撮りは、弘樹が最初に千咲を脅したときに使った材料だったから。それに、祥吾のことを思い出すのではないかとも思っていた。
- (まあいい)
- 弘樹はいろいろ考えるのをやめた。ともかく、自分の要望が千咲に聞き入れられたのだから、ともかく今はそれを楽しむことにしようと頭を切り換えた。
- 「ふふふー。じゃあ、まずはパイズリね」
- 制服姿の千咲に導かれ、弘樹はベッドに腰かけた。
- 弘樹の要望であるハメ撮り。はじめてみれば、千咲の方がその行為にはノリノリだった。わざわざ制服に着替え、アングルを指定し、プレイの内容を細かく弘樹に指定してくる。
- 「ちゃんと撮れてる?」
- 弘樹の前に跪ひざまずいた千咲が尋ねる。
- 「ああ。ちゃんとかわいく撮れてるぞ」
- 「へへーんだ。お世辞なんか言っても、出てくるのはおっぱいだけなんだからねー」
- 制服の前をはだけ、千咲が形のいい胸を露わにする。プルンとしたその質感に、弘樹は思わず生唾を飲み込む。
- 「お、反応した。おじさん、ホントおっぱい好きだよね」
- 千咲の視線が弘樹の股間に注がれている。そこは、すでにモッコリと膨らみはじめていた。その膨らみを、千咲がツンツンと指先でいたずらする。
- 「チャック下ろすよ?」
- 「ああ」
- カメラ越しにその光景を見ている弘樹は、それが自分のモノなのか他人のモノなのかがよくわからなくなってくる。わかるのは、千咲がエロいことをしているという事実。そして、自分のモノに触れる千咲の指先の気持ちよさ。
- 「おー」
- 勃起したペニスが、千咲の手によって引き出される。ヒンヤリとした手の感触に、弘樹は腰を震わせる。
- 「やっぱり大きいよねー、おじさんの」
- そう言いながら千咲は、勃起ペニスを柔らかな乳房で挟み込んだ。
- 「ううっ」
- どこかヒンヤリとしたその感触に弘樹は声を漏らす。
- 「ふふっ。どう? どんな感じ?」
- 「柔らかい……な」
- 「だよねー。自分でもそう思う」
- 細身の割りには、ボリュームのある千咲の胸。グッとくびれた腰からのギャップが、男たちの目を引きつけてやまない。そしてそれは、弘樹にとっても同じだった。
- 「じゃあ動くよ。すぐにイッたりしないでよね」
- 「わかった」
- 「んっ、ふっ……んんんっ」
- 千咲が身体ごと動き出す。柔らかなEカップ乳が、熱くなったペニスをしごき上げる。
- (これは……なかなか……)
- 弘樹は素直に感動した。パイズリの経験が、過去になかったわけではない。だが千咲のパイズリは、以前受けたそのどれとも違っていた。
- (受け手側の気持ちが変わるだけでこんなに違うのか……)
- 千咲よりも胸が大きい相手がいなかったこともない。千咲よりも肌が綺麗な女の子にしてもらったことがなくもない。しかしそれでも、千咲の胸が一番の快感を与えてくれた。そんな弘樹に、千咲はチラチラと何度も視線を送ってきた。
- 「な、なんだよ。どうかしたか?」
- 千咲の視線に気づいて、弘樹は動揺してしまう。
- 「ふふっ。気持ちよさそうな顔してるから」
- 「え? そ、そう……か?」
- 「顔だけじゃないよ。こっちも……」
- そう言いながら千咲は、弘樹のペニスに向けて舌を伸ばしはじめた。
- 「え、まさか……」
- 「れろ……ちゅっ……」
- 「くっ!」
- 「れろれろ……ほーら。こんなに先っちょから気持ちのいいおつゆが溢れてる。ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ……おいしいよ、おじさんのガマン汁」
- 「うぅぅぅぅ……」
- 千咲の柔らかな舌が、弘樹の亀頭を舐め回す。鋭い快感が、亀頭の先から脳天へと突き抜ける。フンワリとした胸の感触と、ぬめる舌の感触。二つの違った感触によって、弘樹の脳細胞は快楽で満たされてしまった。
- 「どう? 気持ちいいでしょ、挟まれながら舐められるの。気持ちよかったら、声に出していいんだよ?」
- 頭の中が気持ちよさでいっぱいになると同時に、気にしないようにしていたことが、弘樹の脳裏にフワリと浮かんできてしまった。
- (この上手さは……誰かに仕込まれたんだろうなあ。チャラ男クンか?)
- 久しぶりの黒い感覚。弘樹は頭の中が嫉妬で染まりそうになるが、千咲はそれを敏感に感じ取った。
- [image "01" file=../Images/p011.jpg] 「ふふっ。なんか変なこと考えてるでしょー。わかるんだから……ぺろっ、ちゅっ」
- 千咲のピンクの舌が亀頭のくびれを舐め回す。柔らかな唇が亀頭の先にキスをしてガマン汁を吸い上げてくる。そうして湧き上がる快楽が、弘樹の嫉妬を押し流してくれた。
- (そうだな。無駄なことを考える必要はないな)
- 弘樹は快楽に身を任せることにした。そもそも今の千咲は弘樹ひとりのモノ。過去のことなど気にする必要はない。むしろ、その過去があったからこそこうして千咲を手に入れることができたのだ。今の千咲には弘樹だけ。弘樹だけが千咲を自由にできるのだから。
- 「と言いつついろいろ話しちゃうのでしたー。あのねー、パイズリはねー」
- 「うわあああっ」
- そんな弘樹の想いを弄ぶかのように、千咲が自分の過去話をしようとしてくる。弘樹は急いでカメラを持っていない方の手で耳を塞いだ。
- 「うん。いい反応。おじさんけっこうヤキモチ焼きだよね。知ってるー」
- 「くっ」
- 何度も身体を合わせることで弘樹が千咲を理解したのと同じように、千咲の方も今では弘樹を深く理解していた。その結果どうなったか。元々の性格もあったのだろう。こうして千咲は、弘樹に対してイタズラのような攻撃をいろいろ仕掛けてくるようになった。
- (それはそれで楽しいときもあるんだけど……やられっぱなしってのもなあ)
- 弘樹としては、あくまで主導権はいつでも自分で握っておきたかった。というわけで、こんな風にしてやられたときは、いつも何かしらの反撃をするようにしていた。
- 「んあっ! 急になに……んんんっ!!!」
- 傍らにカメラを置いて両手を自由にして、弘樹は千咲の乳首をつまみ上げた。
- 「くううっ……そんな、ことされたら……んっ、んっ、んっ、んっ」
- 弘樹の指先で、千咲の乳首が様々に形を変える。しっかりとしたグミのような柔らかさの千咲の乳首。それを弘樹は、弄ぶかのようにグニグニと指先で揉みしだく。
- 「はっ、はっ、はっ、はっ……や、やだ……乳首……んんんんっ!」
- 乳首は、千咲の弱点の一つだ。そのことを知る弘樹は、執拗にそこを責めた。
- 「ほら、動きが止まってるぞ。ちゃんとパイズリしてくれよ」
- 「でも……でも……おじさんが乳首いじるから……んっ、あんっ」
- 「俺ばっか気持ちよくなったら悪いから、お返しにしてやってるんだろ?」
- 弱点を攻められ、感じる千咲に弘樹がニヤニヤしながらそう告げる。千咲は悔しそうな表情を浮かべると、ふたたび身体を動かしはじめた。
- 「んっ、くっ、うっ、んっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
- 感じながらも、確実にツボをついた動きをしてくる千咲。千咲もまた、弘樹の弱点をよく知っているのだった。
- 「ふう、ふう、はあ、はあ」
- 千咲の乳首を摘んだまま、徐々に昂ぶっていく弘樹。
- 「ね、ねえ……出そう? 私のおっぱいで……出そうになってる?」
- 「ああ……イキそうだ……」
- 「そしたらいつでもイッていいからね……んっ、くっ! 私のおっぱいで……ああんっ……挟まれたまま……イッていい、から……んんんっ!」
- 千咲は喘ぎながら、さらに動きを激しくする。そしてそれに同調するように、弘樹もまた乳首を強くつまみ上げた。
- 「んっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……イッて……ねえ……イッって!」
- 「くうっ!!! 出るっ!!!」
- 「んんんんんんっっっ!!!」
- 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」
- 千咲の乳房で柔らかく圧迫されながら、弘樹は射精の瞬間を迎えた。ギュッと押しつけられた胸の谷間から、ジワッと弘樹の精液が溢れてくる。セックスの中出しとは、また違った感覚。弘樹は千咲の胸でイッたという事実に、ある種の感動を憶えていた。
- [image "01" file=../Images/p012.jpg] 「んはぁぁ……おじさん、すごい出たねぇ……」
- 千咲もまた、弘樹の乳首つねりで絶頂を迎えていた。うっとりとした表情を浮かべながら、舌先を伸ばして胸の谷間に溢れた弘樹の精液を舐め取る。
- 「はむ……ちゅ……れろ……」
- 張りのある千咲の肌を彩る白濁した精液。千咲がピンクの舌で、それを舐め取る。卑猥な光景が、弘樹の脳細胞に興奮を与えた。一度の射精で失った精力が、再び充填されていくのを弘樹は感じていた。
- そしてしばらく休み、第二ラウンド。千咲は制服を脱ぎ捨て、弘樹の上に跨ってきた。
- 「おお、これは……」
- 「ふふふ、いいでしょ。裸にニーソとリボンだけって」
- 「ああ。エロさが増すな」
- 「男の人って、みんなマニアックだよねー」
- 「マニアックついでに一ついいか?」
- 「ん?」
- 「実はだな……」
- 身体を起こし、千咲に耳打ちする弘樹。千咲は弘樹の提案を聞いて、照れたような笑みを浮かべた。
- 「えー。恥ずかしいなあ。でもまっ、しょーがないか」
- 千咲が弘樹の指示どおりのポーズを取る。しゃがんだまま両膝を左右に開き、M字のポーズ。両腕も上げ、頭の後ろで両手を組む。アソコも胸も、そして脇も露わになる。
- 「うー。大丈夫だよね。脇、きれいに処理できてるよね?」
- 「できてなかったとしたら、それはそれで興奮する」
- 「ばか」
- 千咲の頬が朱に染まる。恥ずかしさが、千咲の興奮を倍加させる。
- 「うー。男ってどうしてこの格好させたがるの? ちょっと恥ずかしいんだけど」
- 意識して言ったのではないだろうが、千咲のそのセリフが弘樹の嫉妬心を刺激した。誰かが自分よりも前に千咲にその格好をさせた。そんな弘樹の嫉妬心を感じ取ったのか、千咲が次の行動に移る。
- 「ゴム、着けるね」
- 「ああ」
- 千咲が弘樹のペニスをつまみ、クルクルと根本まで器用にゴムをかぶせていく。そしてそのまま腰を下ろし、千咲に向かってそそり立っていた弘樹のペニスを、ズブズブと飲み込んでいった。
- 「んっ、はぁ……あああぁぁぁ……」
- 「うっ、うぅぅぅ」
- 気持ちよさで、弘樹のヤキモチが打ち消される。ジッと千咲の中に飲み込まれていく自分の分身を見つめ続ける弘樹。その光景を見つめていると、まるで自分が千咲に飲み込まれていくような錯覚を覚えた。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ。やっぱおじさんのって大きいよね。私の中がいっぱいだよ」
- 弘樹のお腹の上まで腰を下ろすと、千咲は自分の下腹部を軽く撫でた。そのくらいの位置まで自分のモノが埋まっているのかと思うと、弘樹は妙に興奮した。
- 「じゃあ動くよ」
- 「ああ」
- 千咲が足の力だけを使って腰を上下に動かす。弘樹のペニスが千咲の中から姿を現し、そして再び千咲の中に飲み込まれていく。
- 「んっ、はっ、あっ、はっ、あっ、ああんっ」
- ベッドがギシギシときしみはじめる。ファインダーを覗いていた弘樹は画面が揺れないようにカメラを宙空で固定した。だがそれでも、画面はユラユラと揺れてしまう。
- 「んっ、んっ、んっ……ふふ。揺れちゃうんでしょ? ハメ撮りって難しくない?」
- 「ああ。思ったより、難しいかもしれない」
- 「でしょ? 三脚とか……んっ、んっ、んっ。使った方がいいみたい、よ……ああっ」
- 千咲からのアドバイスに、最初弘樹は感心した。しかしその感心が、すぐにヤキモチへと変換されてしまう。千咲のハメ撮り知識は、おそらく祥吾との情事で蓄えたものだろうから。
- 「あああぁぁぁ……気持ち、いい……おじさんのおっきいちんぽ……私の中にフィットして……んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ」
- そんな弘樹の心情とは無関係に、千咲は徐々に昂ぶっていく。弘樹が動かない分だけ、自分のペースで感じることができた。そのマイペースさが、千咲をいつもより饒舌にさせた。
- 「んっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……いい……気持ちいい……中が押し広げられて……中から押し上げられて……んんんんっ。気持ちいいよぉ……あ、あ、あ、あ」
- 千咲の動きが激しくなっていく。快感で表情が緩み、だらしのない顔になっていく。わずかにヨダレを垂らしながら、夢中で腰を振り続ける。
- 「いい……いいなあやっぱ……おじさんのちんぽ……私とすっごく……んっ、んっ、んっ、んっ……相性が、いい……んはああっ」
- 千咲が喘ぐたびに、弘樹はキュッキュと中で締め付けられるのを感じた。断続的な締め付けと、上下運動。柔らかくぬめる千咲の内側でしごかれ、弘樹も気持ち良くなる。
- 「あぁぁぁぁ……んっ、あっ、はっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あああああっ……いい……いいよぉ……気持ちいいよぉ」
- [image "01" file=../Images/p013.jpg] 弘樹は相性なんてものは気にしてなかったが、それでも千咲とのセックスはこれまでしてきたどのセックスよりも気持ちがいいと感じていた。その理由はおそらく、千咲への思い入れ。肉体的な理由よりも精神的な理由。弘樹は、そんな風に考えていた。
- 「んっ、ふっ、あっ、はっ、あっ、あっ、あんっ! おじさんのちんぽ……フィットしてるから……んんっ! いっぱい動いても……ずれないから……好き……んはあっ!」
- だがしかし、千咲が感じているように弘樹のペニスと千咲のヴァギナは、確かに驚くほどピッタリとハマり合っていた。もしかするとそれは、叔父と姪という遺伝子的に近い関係がそうさせているのかもしれない。
- (だとすると、やっぱり肉体的な相性ってヤツはあるのかもしれないな)
- 「んんんんんんんっっっ……あっ、はっ、やっ、はっ、あっ、ああんっ! んっ、んっ、んっ、んっ、あっ、あっ、あっ、あっ!」
- 体位のせいか、弘樹よりも一足早く千咲が限界に近づいていく。迫るオーガズムに、千咲の中がウネウネと動きはじめる。まるで弘樹のペニスから、精液を搾りだそうとしているかのように。
- 「す、ご……い……ああんっ……おじさん……おじさんとセックス……あっ、あっ、あっ、あっ……大人セックス……気持ちいい……くううんっ」
- 千咲の中で擦られるガチガチになったペニスが、前立腺の収縮を伴いながらヒクヒク動きはじめる。弘樹にもまた、限界が近づいてきていた。千咲の快感とシンクロするように、弘樹もオーガズムに近づいていく。
- 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……イッて……おじさん……もう一回私で……あんっ! 今日も私の中で……くううんっ。イッてぇっ!!!」
- 「千咲ぃっ!」
- 弘樹はラストスパートをかけるかのように、下から腰だけで千咲を突き上げる。だがそれも、ほんの数回しか保たなかった。限界一歩手前だった弘樹は、容易に絶頂に達した。
- 「んああああああああああっっっ!!!」
- 弘樹のゴム越しの射精を受けながら、千咲も絶頂に達する。グーッと背中を仰け反らせ、細い腰を限界まで引き絞る。
- 「うっ、うっ、うっ、うっ……おじさんのちんぽから……精液が……あぁぁぁぁ……」
- ビクンビクンと震える弘樹のペニス。たとえゴムを着けていたとしても、その震えは伝わる。もしこれが生だったら……弘樹がそう考えると同時に、千咲もその想像を脳裏に思い浮かべていた。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……」
- やがて弘樹の射精が収まる。千咲もまた、トロンとした表情で絶頂の余韻に浸っていた。
- 「気持ちよかったぁ……」
- 心底幸せそうに、そうつぶやく千咲。そんな姪の表情を見ていると、弘樹は千咲がニンフォマニアなのではないかとかセックス依存なんじゃないかとか、そんなことを考えていた自分がバカのように思えてきた。そんなのはどうでもいい。今の千咲は、心の底から充実しているように見える。そして千咲をそんな風にさせているのは自分。ならば、なんの問題もないじゃないか、と。
- 「ふふふ……またしようね、おじさん」
- 「ああ」
- ゴロンと弘樹の胸に覆いかぶさってくる千咲。髪をくしけずりながら、弘樹は千咲の頭を撫でてやる。心の底から湧き上がってくる幸せな感情。一時は変わってしまった千咲に不満を抱いたりしたものの、そんなことは些細な問題だったと弘樹は気づく。どんな千咲でも千咲は千咲。弘樹が愛した、愛しいちーちゃんであることに変わりはないのだから。
- ハメ撮りを終えた弘樹は、ベッドに横たわり、心地よい気だるさに包まれながら、まったりした時間を過ごしていた。
- 「あー、さっぱりしたー」
- そこへ、シャワーを浴びた千咲が戻ってくる。
- 「何か飲むか?」
- 弘樹が身体を起こし、千咲へ問いかける。千咲はバスタオルで髪を乾かしながら、弘樹に答えた。
- 「うん。じゃあビール」
- 「だーめ。ジンジャーエールでいいだろ?」
- 「あ、じゃあ。ノンカロリーの炭酸にして。甘くないやつ」
- 「OK」
- 恋人同士のようなやりとりをしながら弘樹は冷蔵庫へと向かうと、中から千咲のご注文の炭酸と自分の分のビールを取り出した。
- 「ほいっ」
- 「ありがと」
- 千咲は軽く投げ渡されたペットボトルを受け取る。パシュッと軽い破裂音を響かせながらペットボトルを開き、美味しそうに喉を潤していく。
- 「んく、んく、んく、んく……ぷはぁ」
- まるでCMか何かのように絵になる千咲の飲み姿。思わず弘樹はうっとりとそんな千咲の姿に見とれてしまった。
- 「ん? なに?」
- その視線に気づいた千咲が弘樹の方へと振り向く。
- 「いや、別になんでもない」
- 「変なの」
- よっぽど喉が渇いていたのか、千咲はふたたびペットボトルをあおる。
- 「んくっ、んくっ、んくっ、んくっ……ふぅ。やっぱりしたあとは喉が渇くよねー。いろいろ外に出すからかな。おじさんもそうじゃない?」
- 「そうだな」
- ややぬるくなりはじめていたビールを、弘樹もあおる。
- 「ふぅ」
- ひと息ついた千咲が、眼をキラキラさせながら弘樹に尋ねかけてきた。
- 「ねえおじさん。次はなにする?」
- 「次って……今日はもう遅いだろ?」
- 「そうじゃないよ。次のときってこと」
- 「ふむ」
- もうすっかりそういう関係になっている千咲と弘樹。もちろん勉強の面倒も見てはいるが、それはそれ、これはこれ、だ。
- 「そうだなあ。ハメ撮り第二弾ってことで、オナニーでも撮らせてもらおうかな」
- 特に深く考えず、弘樹は思いつきでそう提案する。しかし、千咲の反応は意外なものだった。
- 「オナニー? はあ?」
- ノリのいい千咲のことだから、面白がってOKするだろうと弘樹は思っていた。しかし千咲は、これっぽっちも面白くないといった風な表情を浮かべ、弘樹の提案を無下に断ってくる。
- 「イヤよ。私、オナニー嫌いなの」
- 「意外だな。エッチ好きなのにオナニーは嫌いなのか?」
- 「そんなの関係ないでしょ? エッチ好きだからって、オナニー好きじゃなきゃいけない理由なんてないわ」
- 「……」
- 弘樹は、久しぶりに千咲に反発された気がした。千咲のこんなにも不機嫌な表情を見たのは、いつ以来だろう。
- 「オナニー、撮らせてくれないのか?」
- 「ええ」
- 「そこをなんとか頼む。いいだろ? 見てみたいんだよ、千咲のオナニー」
- 千咲の妙なこだわりが、逆に弘樹を引きつけた。そこになにかあるのではないかという思いが、弘樹を食い下がらせた。そしてそれが、千咲の怒りに火を点ける。
- 「イヤだって言ってるでしょ! オナニーは人に見せるもんじゃないのよっ!」
- もはや激昂寸前。キレてるといってもいい状態になってしまった。
- 「だいたいなんでそんなに私のオナニーなんか見たいのよっ! 頭おかしいんじゃないのっ!?」
- その反応の強さが、そこに何かが隠されているということを弘樹に確信させる。だがともかく、今は千咲の怒りを静めるべき。そう思った弘樹は、ハメ撮りの件を引っ込めた。
- 「すまない千咲。そんなに怒るとは思わなかったんだ」
- 「ふんっ。変なこと言うから悪いのよっ」
- 「ホントにすまない。でもな、ちょっとだけいいか?」
- 「なによ」
- 「ホントは千咲……オナニー嫌いじゃないよな?」
- 「はあ!?」
- 再び千咲がキレそうになる。そんな千咲の機先を制するように、弘樹が自分の推論を述べていく。
- 「だってな千咲。お前が激しく反応したのは、オナニーを俺に『見せる』って部分だ」
- 「うぐっ……」
- 図星を突かれたのか、千咲が言葉に詰まる。
- 「気持ちいいこと大好きなお前が、オナニーを嫌いなわけがない。だろ?」
- 探るような表情で、千咲は弘樹を見る。弘樹は一瞬睨まれているのかと思ったが、どうやらそうではないようだった。これまでにないほどの千咲の真剣な表情。それが、弘樹にそんな風に感じさせた原因だった。
- 「俺に見せるのがイヤなのか? それとも誰かに見られながらするのがイヤなのか?」
- 弘樹の追及が続く。生来の好奇心と、千咲のことならなんでも知りたいという気持ち。それらが弘樹の行動を加速させていた。弘樹自身も、こんなこと聞く必要がないというのはわかっていたが、走り出してしまった欲求は抑えられなかった。
- 「ねえ」
- 「ん?」
- 「なんでそんなこと聞くの?」
- 「なんでって言われても……」
- 弘樹は深呼吸をし、自分の気持ちを確認してみる。なぜ自分はそんなにも千咲に問いかけたのか。なにが自分を突き動かしたのか。弘樹が到達した答えは、ごくシンプルなものだった。
- 「聞きたかったから……かな」
- 「興味本位ってわけ?」
- 千咲がわずかにムッとする。
- 「違う」
- 「なにが違うのよ」
- 「確かに、広義の意味では興味本位かもしれない。だが、別に面白半分で知りたがっているわけじゃない」
- 「どういう意味よ」
- 「千咲のことだから、知っておきたいんだ」
- 「ッ!」
- カーッと千咲の頬が染まる。
- 「ふ、ふんっ。相変わらず変な人」
- 千咲は口では憎まれ口を叩いているが、表情はそうではない。先ほどまでの不機嫌そうな顔とは、正反対の表情だ。
- 「ま、まあ……いいかもね。あんたになら教えてあげても」
- そう言うと千咲は、自分がオナニーにそんな風なこだわりを持つことになった原因について話してくれた。
- 「あれは……受験生だったころよ」
- 元々千咲はセックスよりもオナニー、というタイプだったらしい。というよりも、このころはまだ処女。湧き上がる性欲は、オナニーによってのみ処理されていた。そしてそれは同時に、受験勉強からくるストレスの発散にもなっていた。
- 「今にして思うと何でなんだろうとは思うけど、私いつもするとき、全裸でしてたのよ」
- 「全裸って……裸か?」
- 「うん。なんか、自分が解放されたような気がして」
- 弘樹は千咲のその気持ちが、なんとなく理解できるような気がした。千咲の父親……弘樹の兄である雄一は、かなりの厳格な性格の持ち主だ。そんな雄一が、受験生である千咲にどんな生活を強いていたかは想像に難くない。
- (というか、俺も昔は兄貴にいろいろ言われたしなあ)
- 自分が受験生だったころのことを思い出す弘樹。そのころもかなり雄一から口うるさく言われたが、もしかするとそれは千咲の比ではないかもしれない。男と女、弟と娘という立場の違いからすると雄一の指導は弘樹のときよりもずっと厳しいものだったのかもしれない。
- 「でね、そんなある日のことなんだけど……」
- 本当にそれは偶然の出来事だったらしい。深夜の受験勉強中、いつものようにムラムラした千咲はその鬱屈したものを発散しようと、全裸でオナニーに励んでいた。いつもならみんな寝静まっている時間で、それまではまったく問題なかった。油断もあったのだろう。千咲は特に部屋に鍵を掛けたりもせず、まったくの無防備で自分を慰めていた。そして、その悲劇が起こった。
- 「見られちゃったの、アイツに」
- アイツとは弘樹の兄であり、千咲の父親である雄一のことである。
- 「もうパニックよ。寝る前に応援に来たとかわけわかんないことアイツ言ってたけど、こっちはとっとと出て行って欲しくて仕方ないわけ。なのにアイツってば……」
- このあたりになってくると、千咲の説明がチグハグになってくる。おそらく無意識のうちに、そのことを思い出さないようにしようとしてしまっているのだろう。ともかく細かい部分はさておき、起きたこととしては父親に全裸オナニーを見られた娘と、そんな娘を叱責してしまった父親、という図。
- (あー、その光景が目に浮かぶようだな)
- 弘樹の脳裏には、千咲と一緒にパニックになっている雄一の姿が思い浮かんでいた。いつも夜遅くまで頑張っている優秀な娘を激励しようと、寝る前に部屋を訪れた雄一。娘は机に向かって、懸命に勉強していると思っていた。だが、そこにあったのはこれっぽっちも予想していなかった姿。全裸で、自慰に耽るふしだらな娘。頭の固い雄一には、叱ることしか思いつかなかった。それ以外、どうしたらいいのかわからなかった。
- (不器用だからな、あの男)
- もし千咲の父親が弘樹だったのなら、もっと別なアプローチをしていたかもしれない。弘樹じゃないにしろ、もっと女性慣れしていれば雄一も千咲に無駄なトラウマを植え付けずに済んだのかもしれない。しかし、組み合わせが最悪だった。
- (兄貴はあのとおりだし、千咲も実は兄貴に似て融通が利かないし)
- その体験以来、千咲はどうにも自室でオナニーをすることができなくなったとか。罪悪感と拒否感。しようとしてみても、興奮がまるでついてこない。ストレスが溜まるばかりで、イライラがどんどん募る。運良く受験には成功したものの、それを喜ぶ雄一の姿ですら汚らわしいものに見えて仕方がなかったとか。そんなタイミングで、雄一の単身赴任が決まったのも最悪だったのだろう。
- 「やったと思った。アイツがいなければ、家で自由にできるんだから」
- ところが、事態はそんなに単純じゃなかった。千咲の中にガッチリと根付いてしまったオナニーへの妙な忌避感は、雄一の不在程度では修正されなかった。そして、千咲は例の連中と出会ってしまう。
- 「何にも面白いことがなかった私に、祥吾たちがいろんなことを教えてくれたの。ファッションや街での遊び方、授業のサボり方、ナンパのあしらい方、逆ナンの方法……」
- そして、男の味。祥吾たちと出会うことで、千咲のイライラは解消されるようになった。オナニー代わりのセックス。だから千咲はあんな風な、ガッツクだけの稚拙なセックスでも満足していたのだろうと、弘樹は思った。
- 「だから、ぜーんぶアイツのせいなのよ。私がオナニーできなくなったのも、ウリをするようになったのも、あんたの嫌いなこんな格好をするようになったのもね」
- そこまで話すと、千咲は荷物をまとめはじめた。
- 「あーあ。すっかりテンション下がっちゃった。私、今日はもう帰るね」
- 弘樹が声をかける間もなく、千咲は足早に部屋をあとにする。弘樹の頭の中では、千咲の話していたことがグルグル回っていた。いろいろ疑問に思っていたことが、今日の話で一本に繋がりそうだった。雄一と千咲の確執、千咲のギャルファッション、過剰とも思える性への執着。それが、あのオナニー問題に繋がっているように思えた。
- (そこのとこを解決することが、俺と千咲の関係にとってものすごく重要な気がする)
- そう考える弘樹の脳裏に、すっかり遠くなってしまっていたちーちゃんの後ろ姿が、うっすらと見えてきたような気がした。
- * * *
- そして、次の家庭教師の日がやってくる。あのあと数日、千咲は弘樹の部屋を訪れなかった。あんな話をしたあとだけに弘樹は気になってしまっていた。それとなくメールをしてみても、ごく普通の返事しか返ってこない。会うことも考えたが、最終的には千咲の出方を見ることにした。
- そして、部屋のチャイムが鳴らされる。合い鍵が使われ、玄関の扉が開く。廊下を歩くスリッパの音。弘樹は千咲の最初の表情を見逃さないように、注意を払った。
- 「やっほー。しばらくぶりー」
- そこには、弘樹が拍子抜けするほどのいつもどおりの千咲の表情があった。
- 「よう」
- 対する弘樹も、いつもどおりに挨拶する。そしていつもどおりにはじまる家庭教師。いつもどおりの勉強をして、いつもどおりの時間に用意していた課題が終わる。
- 「さーて終わった終わった。あー、疲れた」
- グーッと伸びをする千咲。弘樹はそんな千咲の様子をうかがっている。今日はどうなるのだろう。あの時の雰囲気をいまだに引きずっている弘樹には、このあとどうなるのかがイマイチわからなかった。
- (しないってことはないのかもしれないけど、千咲が乗り気じゃなければ無理強いはできないし)
- 弘樹としては、別にしなくてもかまわなかった。するだけの関係に対して疑問を抱いていたのも事実だし、こうして一緒にいられるだけでも弘樹には十分に幸せだったから。だが、千咲がどう考えているのかがわからない。弘樹は、そんなことばかり考えていた。
- 「さ、今日はなにしよっか」
- 「え?」
- 「するでしょ、今日も」
- 「あ、ああ」
- 「またハメ撮りする? あ、この間も言ったけど、オナニーはなしだからね。理由はもうわかってるでしょ?」
- 千咲の表情はどことなくスッキリしている。弘樹はどうやら細かいことを気にしていたのは自分だけだったと気づいた。そしてもう一つ。ずっとため込んでいたことを話したことで、千咲の中のこだわりが少しは解消したのではないかと。
- (これは……上手くやれば千咲の問題を解消できるかもしれないぞ)
- デリケートな内容だけに、弘樹は慎重に千咲の問題に踏み込んでいった。
- 「あのな、千咲」
- 「ん? したいこと決まった?」
- 「俺、やっぱりお前のオナニーが見たいんだ」
- 「ちょっ!」
- 千咲が瞬間的に沸騰しそうになるが、その隙を与えずに弘樹は自分の考えを伝えた。
- 「待ってくれ千咲。俺の話を聞いてくれ」
- 「話?」
- ここまで培ってきた信頼感のおかげか、訝しげな表情を浮かべながらも千咲は弘樹の話をとりあえずは聞いてくれそうだった。
- 「お前の方の事情はこないだ聞いたからわかってる。それで、俺なりに考えてみたんだ」
- 「考えてみたって何をよ」
- 「千咲がオナニーできる方法を」
- 「はあ? あんた、そんなに私のオナニーが見たいの?」
- 理由はそれだけではないが、そう思ってくれていた方がやりやすいと弘樹は判断し、千咲の誤解を利用した。
- 「まあ、そういうことだ」
- 「はー。やっぱり変態だね、おじさん」
- 「欲求に素直なだけだ」
- 「ふふっ。ってことは、私と一緒か」
- 「まあ、そういうことになるな」
- 話の流れから飛び出した変態仲間宣言。偶然の産物のそれが、場の空気を和やかにさせた。そしてその結果か、千咲は弘樹の提案をとりあえず受け入れる決心をした。
- 「たぶんムダだとは思うけど、おじさんのアイデアに乗ってあげてもいいよ。どういうことを考えてきたのか、興味もあるしね」
- 「うむ。任せろ」
- 「で、私は何をすればいいの?」
- 「まずはだな……」
- 弘樹はうっすら考えていた千咲のオナニー回復作戦を、ついに実行に移した。
- 「んっ、あぁぁぁ……あ、あ、あ、あ、あ、あ」
- ベッドの上で、制服姿の千咲を弘樹が背後から抱きすくめる。そして両手を、千咲の感じる部分へと触れさせる。
- 「んんん……これで……いいの? これ、いつもの前戯と変わらなくない?」
- 「気にしなくていい。とりあえず千咲はリラックスして」
- 「う、うん……んんんんっ……あ、ああ……そこ、いい」
- 幾度もの経験から弘樹はすでに千咲の性感帯を、ほぼ完全に把握していた。耳たぶから首筋、鎖骨に沿ったリンパのあたり、そして脇腹へと、弘樹の指先が這い回る。千咲はそれらすべてから性感を得て、いつものように感じはじめていた。
- 「んはあっ……あ、あ、あ、あ、あ、あ……気持ち、いい……おじさんの手……んはあ……私の感じるところを……全部……んっ、んっ、んっ、んっ」
- 弘樹の手がスーッと下りていく。スカートの中に潜り込んで敏感な部分に触れると見せかけて、そのまま太ももを撫で回す。
- 「んはあんっ……いじ、わる……そのままいってくれれば……すごく、感じたのにぃ」
- 腰をくねらせ、弘樹の思惑どおりに千咲が昂ぶっていく。サワサワと太ももをさすり続ける弘樹の手。千咲は焦らされ、身体の内側に熱を溜めていった。
- [image "01" file=../Images/p014.jpg] 「んふぅぅぅん……んっ、はっ、あっ、あっ、あっ、あああんっ……ねえ、おじさぁん……そこも……ああああっ……アソコも触ってよぉ」
- そろそろだなと、頃合いを見て弘樹は千咲から離れる。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……え? なんでやめちゃうの?」
- 「ここからは自分で触るんだ」
- 「自分で……って、ええ!?」
- 「大丈夫。ちゃんと感じられるはずだから」
- 「でも……」
- ためらう千咲のクリトリスに、弘樹はほんの一瞬だけ触れる。
- 「んはあっ!」
- 「ほら。もう準備万端だから」
- しばらく千咲は考え、渋々といった感じで弘樹の提案を受け入れた。
- 「……わかった」
- ここまでは弘樹の思惑どおり。千咲の身体に火を点けて、その上で放置する。身体が疼く千咲は、オナニーを我慢できないはず。あとはその興奮が冷めないようにうまく誘導してやれば、最後までイケるはずだった。
- 「これで……いい?」
- 「ああ」
- 千咲は制服を脱ぎ、全裸になった。
- 「リラックスだ千咲。ここには俺とお前しかいない。誰も邪魔しない。だから、安心して気持ちよくなっていいんだ」
- 「う、うん……」
- 千咲は目を閉じる。意識を研ぎ澄ましながら、指先を敏感な部分に触れさせる。
- 「ん……んんん……」
- 唇からわずかに声が漏れる。一応感じてはいるようだが、その声は喘ぎとはほど遠い。やはりいつものように感じるのは、少し難しいようだった。
- 弘樹の前で裸になるのなんて、すでに当たり前のことになっているはずなのに、今日の千咲は妙に緊張しているように見えた。セックスではなくオナニーだということが、千咲の気持ちを固くしてしまっているらしい。弘樹が思っていたよりも、千咲の精神的障壁は高い。とはいえ、弘樹に策がないわけではなかった。
- (時間さえかければ、きっとできるはず。不感症じゃないんだから、気持ちさえ入れれば必ず感じるはずだ)
- 「んっ……あ……あぁぁぁ……」
- 千咲の手が胸に伸びた。千咲自身も、感じようとしているのかもしれない。感じたときのことを思い出しながら乳首や股間に触れているのだろうが、どうにも動きがぎこちない。表情も、イマイチ固いままだった。
- 「ん……あ……」
- (感じよう感じようとしちゃってるのが、逆にダメなのかもな。自然にしてればいいのに、意識しすぎて感じるってのがどういうことかわからなくなってるのかもしれない)
- 千咲のそんな状態を打破しようと、弘樹は用意してきた秘策を実行に移す。
- 「千咲……こっちを見てごらん」
- 「え?」
- 閉じられていた千咲の目が開かれる。千咲の視界に入ったのは、全裸になっていた弘樹の姿。そしてその弘樹は、半勃起状態になったペニスをゆるゆるとしごいていた。
- 「ほら千咲。俺も一緒にするから……ひとりでしてないんだから、オナニーじゃないだろ?」
- 「う、うん……そうかも……」
- それが詭弁だということは、弘樹も千咲もわかっていた。だが千咲は、弘樹のその屁理屈に付き合う。一緒にするのだからオナニーではない。そう自分に言い聞かせながら、千咲は自らの身体への愛撫を再開した。
- 「んっ……は……あ、あ、あ、あ、あ、あ」
- 千咲の胸がドキドキしてくる。目の前ではじめて見る男性の……弘樹のオナニー。
- 「んはぁ……あぁぁぁぁ……んっ、あっ……あっ、はんっ」
- 表情から固さが取れ、指の動きがスムーズになった。自分のペニスに意識を向けさせるという弘樹の相互オナニー作戦は、見事功を奏しているようだった。
- 「んうぅぅぅ……んっ、ふっ、んっ、はっ、あっ、あんっ」
- 一度は乾きはじめていた千咲の女性器から、クチュクチュと湿った音が再度響きはじめる。千咲が感じはじめた。その様子を見ている弘樹もまた、煽られるように興奮を高めていく。
- 「はっ、はっ、はっ、はっ……気持ち、いい……んふぅ」
- 鼻にかかった千咲の甘い声。その声が、弘樹のペニスに直撃する。
- 「んふぅぅ……おじさんのちんぽ……硬く、なってる……あ、あ、あ、あ……」
- 「千咲を見てるからだぞ。千咲のことを……千咲の裸を……千咲のオナニーを見ながらしてるから、どんどん大きくなってくるんだぞ」
- 「私、の……オナ、ニー……」
- 千咲の指の動きがどんどん激しくなっていく。それに連れて漏れ出るクチュクチュ音も、さらに激しくなっていく。
- 「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ……あっ、はっ、やっ、はっ、あっ、ああああんっ」
- 「どうだ千咲。オナニー気持ちいいか?」
- 「う、うん……気持ち、いい……オナニー……ああああっ。オナニー、気持ちいい……んっ、ふっ、んっ、はっ、あっ、やっ、はっ、あっ、あっ、ああんっ!」
- 一時的に激しい興奮状態に陥っていることもあるだろうが、もうオナニーへの変なこだわりはなくなっているように弘樹には見えた。綺麗な顔立ちに綺麗な身体。そんな見目麗しい千咲が淫らに自分の指で感じている。最高のオカズの出現に、弘樹の方のオナニーも史上最高に捗っていた。
- 「んんんんんっ……おじさん……おじさんも……オナニー……ちんぽ擦ってるぅ……」
- 弘樹がペニスを擦れば千咲が興奮する。千咲が興奮してアソコをかき回せば弘樹が興奮する。興奮の無限ループ。二人はお互いを際限なく高め合っていた。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……千咲……お前の指は……俺のちんぽだ……お前の中に入ってるのは……俺のフル勃起ちんぽだ……」
- 「んくぅぅぅぅぅんっ! んっ、はっ、はっ、はっ、あっ、はあんっ! おじさんのちんぽ……おじさんのフル勃起ちんぽ気持ちいい! 私のグチュグチュのアソコをかき回して……思いっきり……ああんっ! 思いっきりかき回してぇぇぇぇっ」
- 千咲は自分の指が弘樹のペニスだと妄想し、弘樹は自分の手を千咲の女性器だと妄想した。お互いの妄想がリンクする。実際は触れ合っていないのに、まるでセックスをしているかのように二人は同時に昂ぶり合った。
- 「うぅぅぅぅっ! で、出そう……だっ」
- 弘樹の限界の声に、千咲も自らの限界を口にする。
- 「んっ、はっ、やっ、はっ、あっ、ああんっ! い、イキそう……おじさんっ……私……オナニーで……あ、あ、あ、あ、あ、あ……イ、ク……」
- ついに訪れる絶頂。それは、千咲が待ちに待ったオナニーでの絶頂だった。
- [image "01" file=../Images/p015.jpg] 「んくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」
- 「うううううっ!」
- ほぼ同時に達する二人。女性器の奥深くまで指を埋め込みながらビクビクと身体を震わせる千咲と、大量の白濁液をペニスの先から溢れ出させる弘樹。
- 「くっ……かはっ……あっ……はっ……くっ……うぅぅぅ」
- 久しぶりのオナニーでの絶頂は、息が詰まるほどの強い快感を千咲にもたらしていた。
- ビクビクと震える千咲の姿を、ビクビクとペニスを震わせながら弘樹は見つめている。大量に浴びせかけた精液が、千咲の肌の上に白い航跡を描いていた。
- 「はあっ……はあっ……はあっ……はあっ……ああぁぁぁぁ」
- 千咲は精液まみれのまま、とろけ顔を弘樹に晒していた。
- 「イケたな、千咲」
- 「う、うん……イケ、た……」
- それですべてが解決するとは弘樹も思っていなかったが、それでも何かを達成したという感覚がいつもの射精感にミックスされていた。
- オナニーができるとかできないとか、そんなことは些細なことでしかないと弘樹は千咲に気づかせたかった。それが達成できたのかどうかはわからないが、ともかく今日の千咲はいつも以上にスッキリしているように見えた。精神的な重荷が一つなくなった。千咲自身も、そう感じているように弘樹には思えた。
- [image "P000.png" file=../Images/m004.png] 千咲が数年ぶりにオナニーで絶頂を迎えた翌あくる日、部屋を掃除していた弘樹は千咲の忘れ物を見つけた。それは、千咲の履いていたショーツ。おそらく事後には穿き替えて帰ったために、来るときに穿いていたものを忘れていってしまったのだろう。
- 「忘れ物は届けてやらないとな」
- 弘樹は不意に思いついたアイデアに、ニヤッと笑みを浮かべる。
- 「ん?」
- にやける弘樹の耳に、チャイムの音が聞こえてきた。
- 「なんだ? こんな時間に」
- 千咲が来るはずはない。千咲は今ごろ、学校で補習を受けているはずだ。
- 「はーい、どちら様ですか?」
- 声をかけるが、何の反応も返ってこない。ショーツの件で浮かれていたのか、弘樹は無警戒に玄関の扉を開けた。しかし……。
- 「誰も……いない?」
- 扉の向こうには誰の姿もない。扉の影にでも隠れているのかと、弘樹は玄関から一歩踏み出した。
- 「げっ」
- ぐちゃっとイヤな感触が足の裏に伝わってくる。弘樹は踏んだモノを確認した。
- 「なんで……こんなところに……」
- そこには動物のフンが落ちていた。細かくはわからないが、大きさからしておそらくイヌかネコのものだろう。
- 「くそ……」
- 悪態をつきながら、弘樹は玄関の扉を閉める。
- (出かける前にシャワーを浴びないと)
- 直前に起きた不運と、その前に起きたショーツのこと。それらのことで頭がいっぱいになっていた弘樹は、何日か前に起きた似たような出来事と、ついさっき起きたソレとを結びつけることができずにいた。
- そしてその日の午後、ちょうど千咲の補習が終わるころ。弘樹は、とある場所に立っていた。複雑な文様が刻まれた立派な門柱。脇には守衛用の控え室。立ち止まり、中の様子をうかがっている弘樹のことを、門番のように立っている守衛がジロジロと見ている。
- (さすがは名門校。警備が厳重だな)
- ここは王心館学園。千咲の通っている学園の校門前だ。
- 「さて……」
- 警戒されていることを理解しつつも、弘樹は何でもない風を装って校門に向かって歩き出す。当然のことながら、守衛の視線が弘樹の一挙手一投足に注がれる。
- (よそ者一人入れないぞって感じだが……)
- 実は、そこに落とし穴がある。大学に勤めている弘樹には、それがよくわかっていた。
- 「……」
- 無言で自分を見る守衛に向かって弘樹は軽く手を挙げ、いかにも知り合いといった感じで挨拶をしながら足を止めずに堂々と門をくぐる。守衛は軽く会釈をし、興味を失ったように弘樹から視線を外す。
- (まあ、結局はこんなもんだよな)
- この手の警備はあからさまに怪しい人物でない限りは、堂々としていればすり抜けられてしまう。そこそこ人の出入りのある学校のような場所で厳重なボディチェックなんかやっていたら、どれだけ時間があっても足りなくなってしまうからだ。
- (で、目指す教室は……)
- 千咲のクラスは調べ済みだった。しかし、校舎内の構造が弘樹にはわからない。となれば、誰かに聞くのが手っ取り早い。だがグラウンドには、人影が見当たらなかった。
- 「ふむ……」
- 少し考え、弘樹はそのまま校舎に入ることにした。中に入れば案外わかるかも知れない。それに、さすがに校舎内には誰かいるだろうと。
- 「こっちか?」
- 弘樹はほぼ勘で校舎の中を移動していた。上級生ほど上の階にいそうなどという適当な理由で、階段を上がる。しかし、その適当さが上手くいったのか、途中の踊り場で弘樹は人のざわめきに気づくことができた。
- (あそこか)
- ざわめきを頼りに、階段から廊下へと戻る。他の教室はすべて灯りが消えていたが、その教室だけは違っていた。人の気配とともに、灯りが廊下に漏れている。
- (おっ……)
- こっそりと廊下から教室の中を覗くと、千咲が真面目に補習を受けていた。他の生徒たちはダラけていたが、千咲だけは違う。
- (ふむ。狙ってたわけじゃないけど、いい影響が出てるみたいだな)
- 弘樹との関係が出来上がり、それまでの友人関係をほぼリセットした千咲。見た目はまだギャルのままだが、中身はかなり以前の千咲に戻ってきているようだった。
- (ん?)
- 弘樹が妙なものに気づく。廊下側から覗いている弘樹とは反対側。教室の窓側に、チラチラと黒い影が見える。
- (なんだ?)
- 弘樹は目をこらしてそれを見た。
- (窓の外?)
- 最初はわけがわからなかったが、どうやらそちら側にはベランダのようなものが設置されているらしい。そこに隠れて、教室の様子をうかがっている人物がいる。どことなく薄汚れた身なりに、金に近い茶髪。遠くてハッキリとはわからなかったが、弘樹はその人物に見覚えがあるような気がした。
- (まさか……)
- チャイムが鳴り、補習が終わる。するとその人物も、隠れるように姿を消した。
- 「あ……」
- 廊下に出てきた千咲が弘樹に気づいた。どことなく不機嫌そうな顔をする。
- 「なんで……おじさんがここにいるの?」
- どうやら千咲的には、あまりここには来ないで欲しかったらしい。
- 「すまんすまん。かわいい教え子の普段の姿を一度くらいは見ておこうと思ってな」
- 弘樹は千咲の頭をポンポンとする。
- 「ちょ、ちょっと……やめなさいよ」
- どことなく照れた表情を浮かべながら、千咲が弘樹の手を払いのける。弘樹が周りを見ると、その理由がすぐにわかった。補習を受けていた他の生徒たち……千咲の友人たちが、こちらを興味深そうに見ていたからだった。
- 「で、何か用なの? 用事があるならとっととして」
- 「ああ、うん。忘れ物を届けてやろうと思ってな」
- 「忘れ物?」
- 弘樹はわざわざ紙袋に入れて持ってきた例のモノを千咲に手渡す。千咲は意味がわからずに、怪訝そうな表情を浮かべる。
- 「なによこれ」
- 「見ればわかる」
- 袋の口を開き、中を覗き込む千咲。しかしそこに入っているものが何かわからずに、手を入れて取り出そうとする。弘樹はパッとその手を取り、千咲にそれをやめさせる。
- 「ちょっ、何するのよ」
- 「ここでは出して見ない方がいいと思うぞ?」
- 「見なきゃわからないじゃない」
- 「まあ、そりゃそうなんだけどな」
- 「まったく……相変わらず変な人ね」
- 弘樹が手を離すと、千咲はためらいなく紙袋に手を入れてソレを取り出してしまった。
- 「……」
- 自分が手に持っているモノが何なのかわからない千咲。先に気づいたのは、弘樹たちの動向をシゲシゲと観察していた千咲の友人たちだった。
- 「きゃーっ」
- 黄色い歓声が上がる。千咲はその意味がわからずに、頭にハテナマークを浮かべる。弘樹はソッと千咲の手を押し戻し、持っているものを紙袋の中に隠させる。
- 「それよりもう補習終わりだろ? 送っていくから、帰らないか?」
- 「う、うん。別にかまわないけど……」
- わけがわからないと言った風の千咲。けっきょく千咲が紙袋の中身の正体に気づくのは、弘樹の車の助手席に座ってからだった。
- 「まったくもう……」
- 助手席に座った千咲がプリプリと怒っている。弘樹の悪戯に腹を立てているのだ。
- 「ははは。すまんすまん。ちょっとした出来心だ」
- 「あのねえ、私にだって学校での立場ってものがあるんだから。はー。明日っからあの子たちに何言われるか」
- 「別にいいじゃないか。清純派に鞍替えしたわけじゃないだろ?」
- 「それはそうなんだけどさー」
- 軽快なエンジン音を響かせながら、弘樹は千咲を助手席に乗せて学校から弘樹のマンションへと向かっていた。
- 「ん?」
- 途中、弘樹は妙なことに気づいた。自分の後ろをついてくる車が、学校を出て少し経ったあたりから、ずっと同じ車なのだ。
- 「あ……」
- ミラー越しにその車の運転席を確認し、弘樹はその車がつけてくる理由がわかった。
- 「千咲」
- 「なに?」
- 「最近、チャラ男クン見かけたか?」
- 「チャラ男?」
- 千咲が誰それという顔をする。そういえばそれは自分の中での呼び名だったなと、弘樹は言い直す。
- 「祥吾くんだ」
- 「ああ、祥吾ね。見てないわよ。おじさんがこの街から追い出しちゃったんでしょ?」
- 「彼、戻ってきてるぞ」
- 「え!?」
- 弘樹は、学校で見かけた窓から覗いていた人影について千咲に話した。
- 「うそ。マジ?」
- 「ああ」
- 「怖っ。なにそれ、ストーカーじゃん」
- 一時は彼のために盗撮までしようとしていたのに、この言いよう。祥吾に対する千咲の気持ちは、すっかり冷めてしまっているようだった。
- 「それとだな、後ろを振り向かずに聞いてくれ」
- 「え?」
- 弘樹は、ずっとつけてきている車のことを話す。
- 「振り向くんじゃないぞ、ミラー越しに視線だけで確認しろ」
- 「う、うん」
- 千咲は後ろをついてくる車を確認する。
- 「どうだ?」
- 「祥吾の車。間違いないわ」
- 「やっぱりな」
- 弘樹はアクセルを踏み込む。
- 「少し飛ばすぞ。どこかに掴まってろ」
- 「う、うん」
- 弘樹の車のスピードが上がる。後ろについてた祥吾の車との距離はみるみる離れていく。拍子抜けする弘樹。てっきり祥吾もスピードを上げてついてくるものだと思っていた。
- 「あれ? 祥吾の車、離れて行くよ?」
- 「そうだな。俺もてっきりついてくるものだと思ってた」
- 二つほど角を曲がり、もう平気だろうと思ったくらいの距離をとり、弘樹はスピードを緩めた。ところが……。
- 「あ、また来た」
- 「なに?」
- 来たというよりも、待っていたという表現の方が正しいかも知れない。弘樹たちが乗った車を待ち構えていたかのように、脇道から派手派手しい祥吾の車が合流してきた。
- 「いったいどうなってるんだ……」
- 「まるで私たちの進む方向がわかってるみたいだね」
- 「ああ」
- 再度スピードを上げて振り切るか考えた弘樹の脳裏に、一つの疑惑が生まれた。
- 「もしかして……」
- 「どうかした?」
- 「千咲、ちょっとお前のスマホ見せてみろ」
- 「え? 何よ急に」
- 「いいから」
- 「まったく……相変わらず自分勝手なんだから」
- 助手席に座る千咲が、スクールバッグからスマホを取り出す。弘樹はそれを受け取り、片手で操作した。千咲はその様子を怪訝そうな表情で見つめている。
- 「変なことしないでよね」
- 「わかってる。アプリを確認してるだけだ」
- 「アプリ? 別に普通だと思うけど?」
- 「普通にしてたら見えない状態で勝手に動くアプリがあるんだよ」
- 「は? なにそれ」
- 器用に片手でスマホを操作する弘樹。探していたものを見つけ、軽く眉をしかめる。
- 「ああ、やっぱりな」
- スマホの画面を千咲に見せる弘樹。
- 「これが何かわかるか?」
- 身を乗り出して千咲はスマホの画面を見る。怪訝そうな表情は、さらに険しくなった。
- 「なにこれ、こんなの私入れてないんだけど」
- 「だろうな。たぶん、チャラ男クンが入れたんだ」
- 「えーっ! なに勝手なことしてんのよアイツっ!」
- 以前弘樹が千咲のスマホをハックしたときには、こんなアプリは見当たらなかった。だとすると、これを入れたのはそれ以降。この街を追い出される段になって、祥吾が対策をとってきたのだろう。
- 「でだ。簡単に説明すると、これはマニアな世界ではそこそこ知られたアプリで、こいつは千咲の……っていうかこのスマホの現在位置を、登録されたスマホに自動送信する」
- 「は?」
- 弘樹から説明されたものの、千咲は理解することができない。
- 「つまり、千咲の居場所を勝手に知らせるんだよ。このスマホが」
- 「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ。じゃあいつでも私のいる場所が祥吾に把握されてるってこと?」
- 「まあそうだな。正確にはスマホがある位置だが」
- 「キモい……」
- 千咲はかなり引いたような表情を浮かべる。
- 「そんなの、とっとと削除しちゃってよ」
- 「まあ待て。向こうがこういうのに頼ってるってことがわかったんだから、それを逆に利用してやればいんだ」
- 「え?」
- 「もう一回飛ばすぞ。ちゃんと掴まってろ」
- 「う、うん」
- スマホをダッシュボードに置いてハンドルを握り直し、弘樹はアクセルを踏む。再び加速する弘樹の車。背後につけていた祥吾は、それを悠々と見送る。
- そして祥吾の視界から、弘樹たちを乗せた車は姿を消した。
- 「で、ここはどこ?」
- 「さあな、俺もはじめて来た」
- 「あのねえ……」
- 小一時間ほどの後、弘樹と千咲は目指していた弘樹のマンションとはまったく別の方角にある、中程度の大きさの公園に来ていた。車は、そこの駐車場に停めてある。
- 「本当はホテルの地下駐車場とかが隠れやすくていいと思ったんだけどな」
- 弘樹のプランはごく簡単なものだった。駐車場に車を停め、その中にスマホを放置する。車の中に放置されたスマホを見れば、祥吾は自分が撒かれたと思い込む。そののちにスマホを回収してアプリを削除すればもう追跡されることはないだろう、というものだった。
- 弘樹がそれを説明しようとすると、千咲がチョイチョイと弘樹の服を引っ張った。
- 「ん?」
- 「あのさ、おじさんが何を企んでるのかはよくわからないけどさ」
- なぜか千咲は頬を薄く染めている。そしてその理由は、弘樹にもすぐにわかった。
- 「もしかしてこの公園って……」
- 「え?」
- 千咲に促され、周囲の様子をうかがう弘樹。すると、そこかしこの茂みには自分たちと同じように隠れているカップルがいるようだった。
- 「なるほど……」
- 祥吾を罠にはめようと弘樹が適当に選んだ公園。それは、ある種のカップルたちにとっての名所のような場所だった。
- 「そういえばそんな噂も聞いたことあったな。その手の公園がここら辺にあるって」
- 「ホントにー? もしかして、知ってて連れてきたんじゃないのー?」
- 疑うような視線で、千咲が弘樹を見る。弘樹はニヤッと笑って千咲を抱き寄せた。
- 「そうだとしたら、何か問題あるか?」
- 「え? え? え?」
- 唐突な弘樹の行為に、ドギマギする千咲。弘樹の顔を見れずに視線を泳がせてしまう。
- 「べ、別に……ないけど……」
- そもそも弘樹と千咲はすでにそういう関係だ。いろいろなスタイルで身体を重ね、いろいろなプレイをしてきた。たまたま、外での経験がまだなかったというだけだ。
- 「よし、じゃあただ待ってるのもヒマだからな」
- 弘樹は茂みの少し奥まで千咲の手を引いて移動する。
- 「するぞ、千咲。いいよな?」
- 「ここで?」
- 「ああ。どうせマンションに帰ったらするつもりだっただろ?」
- 「えー」
- 「なんだ? 外でするのが怖いのか?」
- 「べ、別にそんなことないけど。っていうか、したことないわけじゃないし」
- 「なに? チャラ男クンとか?」
- 「ううん。おじさんの知らない人」
- 「くっ」
- 悪戯っぽい笑顔でそう言う千咲。うまく誘導しようと思った弘樹だったが、逆に千咲に煽られてしまう。嫉妬心が興奮を加熱させ、弘樹は後戻りできなくなった。
- 「そうと聞いたら余計にしたくなってきた」
- 「あー、おじさんってやっぱヤキモチ焼き」
- 「うるさい。しょうがないだろうが」
- 「あははー。ま、半分くらいわかってて言ったんだけどね」
- 「このー」
- 「きゃー」
- じゃれるようなやりとり。弘樹は半ば力ずくで、千咲を抱き寄せた。
- 「もうするからな。やめてって言っても知らないぞ」
- 「はーい。わかってるってば。するなら気持ちよくしてよね」
- 「ったく……ホントにエッチ好きだな千咲は」
- 「おじさんだからだよ?」
- 「くっ」
- それが一〇〇%の事実ではないと知りつつも、弘樹は嬉しくなってしまう。
- 弘樹は千咲に後ろを向かせると、木に手を突いて尻を突き出させた。
- 「外でするのはいいけど……ゴムとか持ってるの?」
- 「任せろ。何かあったときのために、常にこうして……」
- 千咲のスカートをまくり上げながら、片手でポケットからコンドームを取り出す弘樹。
- 「用意がいいというかなんというか」
- 「チャンスがあるのに持ってなくてできないとか最悪だからな」
- 「ま、別におじさん相手ならいいんだけど」
- 「ん? 何か言ったか?」
- 「なんでもないっ」
- プイッとそっぽを向く千咲の胸を、背後からのしかかりながら弘樹が揉みしだく。
- 「んっ!」
- 「どうだ? たまには外でというのも興奮するだろ?」
- 「私は……んっ、あっ……あんまり好きじゃないけど……」
- 「けど?」
- 「嫌いでもない……あんっ」
- まだ刺激しはじめたばかりだというのに、千咲の乳首はもう勃起していた。そして弘樹の手が千咲の股間に伸びる。
- 「あっ、あっ、あっ、あっ……」
- 弘樹の予想どおり、千咲のこちらもしっとりといい感じに濡れはじめていた。
- 「なんだ。もう準備できてるじゃないか」
- 「だって……んあっ! おじさんが……こんなとこに連れてくるから……んっ、んんっ」
- 「これは俺のせいだって言うのか?」
- クチュクチュと弘樹の手が、千咲の秘部から漏れ出してきた蜜液をかき回す。
- 「そう…だよ……あんっ! おじさんが火を点けたんだから……責任、とってよね……あっ」
- 弘樹はニヤリと笑う。
- 「望むところだ。感じすぎて、大声出すんじゃないぞ」
- 千咲のスカートをまくり上げながら、片手で自分のズボンを下ろす弘樹。器用にペニスにゴムを装着すると千咲のそこにあてがった。
- [image "01" file=../Images/p016.jpg] 「入れるぞ? いいな」
- 「う、うん……来て」
- 千咲の肉の割れ目に、勃起したペニスがズブブと飲み込まれていく。
- 「んはああっ! き、来た……すごい……大きい……んっ、んんんっ」
- すっかり千咲は、嬉しそうに弘樹のモノを飲み込むようになった。それまで乱暴で稚拙なセックスしか知らなかった千咲。そんな千咲が求めていたモノを、弘樹が与えてくれたからだ。きっかけはどうあれ、千咲は弘樹によって十分に満たされていた。
- 「んっ、あっ、あっ、あっ……いい……いい……気持ちいい……おじさんのちんぽ……んんっ。おじさんとのセックス……ホントに……あああっ。ホントに、気持ちいい……」
- うっとりと快感に浸りながら恍惚の表情を浮かべる千咲。木の幹にしっかりと掴まりながら、自わから弘樹の方に腰を押しつけてくる。
- 「んうぅぅぅっ……んっ、ふっ、んっ、はっ、あっ、はっ、あっ、ああああっ」
- 千咲の中がうねり、弘樹のペニスを柔らかく包み込む。その淫靡な感触に、弘樹も夢中になりはじめる。そのとき、弘樹の背後で茂みがガサリと小さな音を立てた。
- (?)
- 一瞬弘樹の意識が冷静に戻る。風か何かのせいかと判断しかけるが、そうではないことにすぐに気づく。人の視線。弘樹は背後の茂みから、強烈な人の視線を感じていた。
- (覗き……いや、違うな。もしかしたらチャラ男クン……か?)
- 弘樹は自分たちがなぜこの公園に来ているのかを忘れかけていた。この公園に来たのは、車であとをつけてきている祥吾を罠にかけるため。置き去りにされた千咲のスマホを確認させて、尾行に失敗したと思わせるのが目的だった。
- (車の中に俺たちがいなかったから周りを探したのか……)
- 考えてみれば当然だった。ここは、カップルがそういうことをすることで有名な公園。その駐車場で弘樹たちの車を発見すれば、祥吾は弘樹たちがそういう目的でここに来たのだと判断して探すに決まっている。
- (失敗したな……いや、そうでもないか)
- 弘樹はこのチャンスを逆に活かすことにした。
- (どうせ尾行を撒いたとしても、また周りをウロチョロされることには変わりはない。だったら、もう自分にはチャンスがないことを見せつけて……)
- 「んっ、ふっ、あっ、はっ、あっ、はっ、あっ、あんっ! い、いい……気持ち、いい……もっと……もっといっぱい突いて……奥まで……んはあっ!!!」
- 思いついたアイデアを実行すべく、弘樹は千咲の中をさらに蹂躙する。
- 「あっ、やっ、はっ、あっ、はっ、あっ、あっ、あああんっ! いい……おじさん……ああああああっ……おじさんのちんぽ……気持ち、いい……んくうっ!」
- [image "01" file=../Images/p017.jpg] 弘樹の快感の強度が高まる。いつもならそれをセーブしつつ、千咲に快感を与えながら同時に達するようにコントロールしていた。しかし……。
- 「うううっ!」
- 「えっ!?」
- 弘樹は、躊躇なく絶頂に達した。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ」
- 「え? え? え? ちょ、ちょっと……もしかして……イッた?」
- 「ああ。お前の中が気持ちよすぎるから」
- 「そう言ってくれるのは嬉しいけど、私まだ全然だったんですけど」
- 「悪いな。ちょっと堪えきれなかったんだ」
- 「んもー」
- ガサガサと弘樹の背後の茂みが揺れ、ククッと忍び笑いが漏れてくる。
- (俺を早漏だとでも思って笑ってるな)
- 弘樹の思惑どおりだった。一度上げてから落とす。その方が、効果が大きい。
- 「でもまあ、おじさんならまだ連続でできるよね? いつも一度じゃ終わらないし」
- 「もちろん。俺の方は全然問題ない。ただ……な」
- 「ただ? 何よ。何か問題でもあるの?」
- 弘樹はさっき破ったゴムの包みを千咲に見せる。
- 「これが品切れだ」
- 「え? 品切れって?」
- 「ゴムがないってことだよ」
- 「あー、そっかー」
- 千咲は視線を泳がせ、考えるような表情をする。だが、弘樹にはその答えがわかっていた。そしてその答えを、背後の茂みに隠れている人物に聞かせるつもりだった。
- 「これでもうおしまいでいいか? 俺はもう出したし」
- わざと意地悪く弘樹は千咲に言う。
- 「えーっ、ちょっと待ってよ。私全然満足してないってば」
- 「でもゴムがないぞ? それでもいいのか?」
- 「うーん……」
- まだ迷っている千咲。そんな千咲に、弘樹は助け船を出す。
- 「久しぶりに生でしてみないか? どうせ一度してるんだし、構わないだろ?」
- ガサッと背後の茂みから大きな音が聞こえる。
- 「そう……だよね。おじさんとはもうしちゃってるもんね」
- 「ああ。今度はイクときちゃんと抜くから。それなら大丈夫だろ?」
- 「うん。そう、だね」
- ガサガサと茂みの揺れがどんどん大きくなる。茂みの主が、動揺して震えているのだろうか。弘樹は、もうひと押しだと思った。
- 「じゃあ入れるぞ千咲。久しぶりの生ハメ……だな」
- 「うん。きておじさん。おじさんの生ちんぽで、私を最後まで気持ちよくして」
- 千咲が再びお尻を突き出し、弘樹の生ペニスを待ち構える。弘樹は外したゴムをしばって地面に放り投げると、千咲の腰に手をかけ、ゴムなしペニスを千咲のまだ濡れたままの秘所に挿入しようとした。その瞬間──。
- 「うおおおおおおっ! 俺にはさせなかった生ハメを、ソイツには許すのか!?」
- ガサガサガサッと茂みをかき分けながら祥吾が飛び出してきた。
- 「きゃっ、なに!?」
- 驚く千咲の膣口がキュッと締まった。それを弘樹は感じながら、すばやく振り向く。
- 「お前かっ! お前がいたせいで俺はっ!」
- 拳を振り上げ、飛び出してきた勢いのまま弘樹に殴りかかろうとしている祥吾。それが自分をこの街から出て行かざるを得なくなった原因を作った人間だとは理解していなかったが、少なくとも自わから千咲を寝取った相手だとは認識していた。弘樹はフッとほくそ笑みながら、千咲を抱え込んだままヒラリと身をかわす。
- 「おわっ! 祥吾!?」
- 「なっ!」
- 強引に身体ごと場所をズラされた千咲も驚く。目の前から弘樹と千咲がいなくなった祥吾も驚く。弘樹と千咲がいなくなれば、必然的に祥吾の突進した先に残るのは……。
- 「ぎゃっ!!!」
- ズドンと、千咲が手を突いていた木の幹に祥吾が正面衝突する。そのままズルズルと崩れ落ち、地面に倒れ込んでしまう。
- 「ありゃー、痛そー」
- 「ぅ……ぅぅぅ……ぅぅぅぅぅ……」
- ピクピクと震えている祥吾。鼻が妙な形に曲がっているのは、木にぶつかったせいなのかは、顔をよく知らない弘樹には判断できなかった。
- 「ちょ、ちょっと……これってどういうこと?」
- まだ事態を飲み込めないでいる千咲が弘樹に説明を求める。
- 「さあな。俺にもよくわからん」
- 半分本当で半分嘘。何かしてやろうとは思っていたが、こういう結果になるとは弘樹も思っていなかった。もっと手こずるかと思っていたが、予想以上に祥吾はあっけない最後を迎えてしまった。
- 「うわぁ……変な顔。人って気絶すると、こんな風になるのか」
- 千咲が祥吾の顔を覗き込み、眉をしかめている。結果には満足していたが、弘樹は千咲が祥吾に意識を向けていることが無性に腹立たしくなってしまった。
- 「場所を変えるぞ、千咲」
- 自分の嫉妬深さに苦笑しつつ、弘樹は千咲の手をとる。
- 「え? ちょ、ちょっと……祥吾このままでいいの?」
- 「気にするな。すぐに目を覚ますさ」
- 「う、うん」
- 弘樹は千咲を連れて茂みを出た。さっきの続きをするのに、もっといい場所の目星はつけてあった。
- 「やだ……これ……恥ずかしい……」
- 人ひと気けのない場所のベンチで、弘樹は千咲に恥ずかしい格好をさせていた。ベンチに腰かけ、両脚を抱え込ませる。当然のように千咲の秘所が弘樹に丸見えになる。
- 「でも興奮するだろ?」
- 「わかんない……けど……」
- 「ん?」
- 「わかるような気も……する」
- 「やっぱりエロいな、千咲は」
- 「や、だ……そんな言い方……んんんっ」
- 正面から弘樹の手が伸び、千咲の胸や股間がいじり回される。中途半端な状態でお預けされていた千咲は、すぐさま興奮に火が点いてしまう。
- 「んはぁぁぁ……こんなところで……公園のベンチで……イヤらしいことされてるぅ」
- 「すごいぞ千咲。乳首もクリトリスもこんなに勃って……中もこんなにグチャグチャだ」
- 弘樹の指が勃起した乳首をつまむ。反対の手は、蜜液が溢れ出した女性器をクチュクチュと卑猥な音を立てながらかき回した。
- 「あっ、あっ、あっ……ゆ、び……じゃヤダぁ……もっと……もっと大きいの欲しいぃ」
- [image "01" file=../Images/p018.jpg] さっきまではもっと大きなモノで刺激されていた。その事実が、千咲に物足りなさを感じさせていた。
- 「指じゃないってことは、これしかないけどいいのか?」
- 弘樹は千咲に、さっきの立ちバックの余韻で半勃ちになっているペニスを指し示す。千咲はジッとソレを見つめたまま、弘樹に懇願してしまう。
- 「それ……それがいいの……おじさんのちんぽで……私を……あ、あ、あ、あ……私を気持ちよくしてぇ」
- すでに了承はとっているが、祥吾の介入で中断していたため、弘樹は再度念押しする。
- 「ゴムはもうないんだぞ? それでもいいんだな?」
- 「うん……うん……わかってる。生でしても、外で出せば大丈夫だもんね?」
- 「ああ。外で出せば妊娠しないもんな」
- 「うん」
- 弘樹が生ペニスを千咲の女性器に近づける。千咲は自らの指で女性器を広げて、弘樹の生ペニスを迎え入れる準備をする。
- 「ね、入れて……早く入れて。生でいいから、おじさんのちんぽ早く私の中に入れてぇ」
- 千咲の求めに応じて、弘樹が腰を進めていく。
- 「んんっ! んはぁぁぁぁぁぁっ……生……生ちんぽが……入って、くるぅぅぅぅぅ」
- グチュリとトロトロになった千咲の生ヒダをかき分けながら、弘樹の勃起ペニスが千咲の中に挿入されていく。レイプまがいのはじめてのとき以来の生ハメ。弘樹は温かなその感触にフウと快楽の吐息を漏らした。
- 「んっ、んうぅぅぅぅぅっ……んっ、あっ、あっ。す、ごい……これ、が……生ちんぽ……やっぱり……ゴムしてるときとは……全然……くうんっ。ちが……う……んんんんっ」
- 生の感触に、千咲も喜びの声を上げる。こんなことなら早く生ですればよかったと思いながら、弘樹の動きを受け止める。
- 「んふぅぅぅぅぅっ……んっ、はっ、あっはっ、あっ、あっ……なにこれ……なにこれぇ……中が……あぁぁぁぁ……中が吸い出されて……ひあああんっ」
- ベンチでM字開脚しての対面挿入という変則的な体位のせいか、千咲はいつもとはまったく違った感覚を得ていた。たっぷりと濡れた千咲の中で、弘樹がゆっくりと動く。その動きに従って、千咲の中が弘樹のペニスに絡みついて前後に蠢いていた。
- 「あっ! あっ! あっ! あっ! いい……気持ちいい……生ハメ……ああんっ。生ちんぽ……気持ちいいっ」
- どれだけの快感を得ているのか、千咲は妖艶な笑みまで浮かべながら激しく悶えている。口端からはよだれを溢れさせ、普段の可愛さが台無しになるほどの感じようだった。
- 「中がとろけて……んうぅぅぅぅ……熱いちんぽが擦れて……はあああっ……おじさんのちんぽ……おじさんのちんぽの亀頭が……んはあああんっ。擦れて気持ちいいっ!」
- ジュッポジュッポと千咲のアソコから卑猥な音が漏れてくる。千咲はいつもより濡れていた。それが生ハメだからなのか、それとも外でしているからなのかはわからない。もしかすると、さっきの一件が関係しているのかもしれなかった。弘樹による見事な祥吾の撃退劇。それにより弘樹の中に強いオスを感じ、千咲の中のメスが反応した。祥吾の過度な干渉からの解放と、強い弘樹への従属。安心して快楽に身を任せられる環境が整い、千咲はただ純粋にセックスを楽しめるようになった。
- 「んはああああっ! あっ、あっ、あっ、あっ……いい……気持ちいい……こんなによかったなんて……んはああっ! 生ハメがこんなに気持ちよかったなんて……知らなかった……あああああっ……私、知らなかった……んんんんっ!」
- 精神的な変化が、肉体の方にも影響を及ぼしていた。ただでさえいつもとは違う生ハメが、より一層強い快感を千咲にもたらしていた。
- 「んっ、ふっ、んっ、んんんっ、あっ、やっ、はっ、あああんっ!」
- 激しい快楽が、繋がり合っている弘樹にも伝播していく。千咲の激しい締め付けに、弘樹は早くも射精感を憶えはじめていた。
- 「んっ、はっ、はっ、はっ、あっ、はっ、あっ、んんっ」
- 熱い千咲の肉ヒダが、舐めるように弘樹のペニスに絡みついている。生ハメがいいのは、千咲だけでなく弘樹もだった。
- 「ち、千咲っ!!!」
- たまらず弘樹は限界のうめきを漏らす。どうにかして堪える方法もなくはなかったが、今日は衝動に任せることにした。その上で、さらにこの先を求めるつもりだった。
- 「んはあああっ!!! あ、あ、あ、あ……な、なに? なんなの……中で……中でビクビクッて……んんんんっ!」
- 馴染みのない感覚に、千咲が身を震わせる。そしてすぐにそれが、弘樹の射精の震えだということに気づいた。
- 「あ、あ、あ、あ、あ、あ……まさか……まさか……出てるの?」
- 小さいながらも絶頂を感じているのか、千咲はトロンとした表情を浮かべながら弘樹を上目遣いで見上げていた。
- 「はあ、はあ。大丈夫だ、俺はまだ動けるから」
- そんな千咲を見下ろしながら、弘樹はそう宣言する。
- 「え? え? え?」
- 千咲は何を言われているのかがよくわからなかった。普通の状態だったなら、そういう話ではないと弘樹に詰め寄っただろう。だが今は、快楽に浮かされてしまっていた。とろけた頭では、中出しの意味というモノを即座に理解することができなかった。
- 「んはあああああっっっ!!! あっ、あっ、あっ、あっ……また……んあああっ! また、動いて……んくぅぅぅぅぅっ!」
- 中出ししたまま、弘樹が再び動き出す。グチュグチュと女性器の中で精液がかき混ぜられ、弘樹の出したモノと千咲の溢れさせたモノが入り混じり、白濁した粘つく液体と化していた。
- 「んっ! んっ! んっ! こん、な……グチャグチャになって……でも、熱くて……」
- 液体の濃度が増したことで、さらに粘度が高くなったように弘樹には感じられた。熱く粘つく白濁した液体が絡みつくペニスで、千咲の中を縦横無尽にかき回す。中に溢れていたモノをかき出し、そして再び奥へと押し込んでいく。
- 「これ、が……生ハメ……生ちんぽ……生でしてるとこんなに感じるなんて……うぅぅぅぅぅ……最、高……んはああああっ!」
- ペニスの温度もさることながら、中出しされた液体の熱さが千咲を昂ぶらせていた。自分の中で精液がかき回されている。その状況が、いつも以上の興奮を与えてくれた。
- 「はっ、はっ、はっ、はっ、んっ、くっ、うっ、んっ、んんんんんっ!」
- 弘樹と千咲、二人分の体重を預けられているベンチがギシギシと鳴っている。これがベッドなら、跳ね返ってくる弾力を使ってもっと楽に動けたことだろう。だが、ベンチではそうはいかない。弘樹はすべて自分の力で腰を振り、いつも以上に消耗しながら再びの絶頂へと自分と千咲を高めていった。
- 「うううっ! ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」
- 弘樹の額に玉のような汗が浮かぶ。その汗がアゴを伝って千咲の身体に滴り落ちた。
- 「んんんっ!」
- そのわずかな刺激にも、千咲はビクビクと身体を震わせる。千咲が震えた瞬間、千咲の中もまた弘樹のモノをグイグイと強く締め付けた。
- 「くうっ!」
- 強い刺激に、弘樹が快感の声を漏らす。その声が、千咲の成長を促した。
- 「はっ、はっ、はっ、はっ……なんか、今の……す、ご……い……んうぅぅぅっっ……こ、こう……かな? こうすると気持ちいい、のかな……んんんっ」
- 千咲の中の動きが変化する。それまでは無意識のものしかなかったところに、意識的な動きが加わってくる。
- 「んっ、はっ! あっ、あんっ……ううううっ」
- それは弘樹を責め立てるための動きであると同時に、千咲が感じるための動きでもあった。千咲は感じながら、弘樹もまた感じさせている。二人の快楽が絡み合い、同時に上昇していく。
- 「ううううっ……ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ……くっ、ううう」
- 「んっ、あっ、あっ、んっ、んっ、んっ……ふっ、はっ、あっ、はっ、あっ、んんんっ」
- 二人の喘ぎ声が重なる。リズミカルに跳ねる千咲の吐息が、弘樹の胸元をくすぐる。
- 「はっ、はっ、はっ……んっ、んっ……ふっ、はっ、あっ、はっ、あっ、んんんっ」
- 弘樹の腰の動きと千咲の締め付け。二つのリズムがシンクロし、二人はより高い快楽のステージへと突入する。
- 「んはああああっ……あっ、あっ、あっ、あっ、んっ、くっ、うっ、んんんんっ!」
- 腰の辺りにジーンとした痺れを感じはじめた弘樹は、射精の予兆にスパートをかけた。
- 「ひあああああっ! んっ、はっ、あっ、はっ、あっ、ああああっ!」
- 弘樹の激しい動きに反応し、千咲が快楽の声を上げた。ベンチを掴む手に力がこもり、弘樹の腰の打ちつけを全身で受け止める。
- 「出そう? おじさん、出そうなの?」
- 千咲は弘樹の限界を察する。これだけ何度も抱かれていれば、千咲もそのくらいのことは察するようになる。弘樹は堪えながら、腰を使い続けた。
- 「ああ。また……ううっ。イキそう……だ……くっ!」
- 先ほどの中出しのことを思い出し、千咲は少し怯えたような表情を見せる。
- 「今度は外で……んはあああっ! 今度は外でイッてね……中は……んっ、んっ、んっ、んっ……ヤバい、から……ああんっ」
- ヤバイからこそ気持ちがいいのだと、弘樹は千咲に教えてやりたかった。
- 「んっ、はっ、あっ、あっ、はっ、あっ、はっ、あっ、あっ、あんっ!」
- 千咲の中の収縮の頻度が、弘樹のスパートを受けてさらに頻繁になっていく。
- 「わた、しも……くうううううっ……私もイッちゃいそう……おじさんの生ちんぽで……んはあああっ! イッちゃいそう……んんんんっ!」
- グチュグチュと千咲の秘部が泡立つ。千咲から溢れてきたモノと弘樹の出したモノをかき混ぜ、卑猥な音を響かせながら弘樹は猛烈なピストンで千咲の中を蹂躙した。
- 「ひあああっっっ! あっ、あっ、あっ、あっ……はげ、しい……んんんっ!!!」
- ガタガタとベンチが揺れる。よく見るとフレームが歪んで、左右の高さが違ってしまっていた。元々立て付けが悪かったのか、それともこんな使い方をされたために劣化してしまったのか、弘樹にはわからなかった。それに、そんなことを考える余裕もなかった。湧き上がってくる熱い塊が、出口を求めてペニスの先端へと再び集中しはじめていた。
- 「はあっ! はあっ! はあっ! はあっ! んっ! あっ! はっ! あっ! んっ! んんんんんっ!!!」
- ギュウッと千咲の中が締まった。その強い締め付けに吸い込まれるように、弘樹はペニスを一番奥まで挿入して、そのまま精を解き放った。
- 「んはああああああああっっっ!!! イクうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」
- ドックンドックンと千咲の中で弘樹のペニスが脈動している。
- 「また……また出てるぅ……私の中で精液……あぁ……また生で出ちゃってるぅ……」
- きっとそうするんじゃないかと薄々感づいていた千咲は、弘樹とともに迎えた激しい絶頂の中で弘樹の吐き出す精液の熱さを感じていた。
- 「ふう、ふう、ふう、ふう」
- まだ八割方の硬度を保っているペニスを、弘樹は千咲の中から引き抜いた。
- 「んんんっ」
- 微細な刺激に、千咲が身を震わせる。呆れるほど大量に射精された精液が、ドロドロと千咲の中から溢れ出してきた。
- [image "01" file=../Images/p019.jpg] 「あぁぁぁ……出てるぅ……私の中から……おじさんの精液ぃ……」
- 快楽の余韻に浸る千咲の表情は、口元も緩みヨダレまで溢れていた。そのだらしのない表情が、弘樹とのセックスへののめり込みを示しているようにも見えた。
- (そうだ……)
- 二度ほどの射精によって意識が明瞭化したのか、弘樹は祥吾のことを思い出した。
- 「千咲。チャラ男クンを始末してくるから、それまでに身支度を調えておいてくれ」
- 「ほえ?」
- 気の抜けた炭酸のような千咲の返事。いまだに快楽の余韻から醒めていない千咲には、弘樹の言葉はイマイチ伝わっていないようだった。
- 「あったあった」
- まるで落とし物でも見つけたようなひと言を発しながら、弘樹は祥吾に近づく。祥吾はいまだに気絶し、グッタリと横たわったままだらしのない姿を晒していた。
- 「えーっと、だな……」
- 弘樹は祥吾をそのままに、別のモノを探しはじめた。
- 「チャラ男クンより重要なものを忘れてたの思い出したんだよな」
- 目星をつけていたあたりに、弘樹はソレを見つける。
- 「そうそう、これこれ」
- もしそれが見つけられた場合、祥吾の一件に弘樹が関わっていることが疑われてしまう。弘樹はさきほど自分が使った使用済みコンドームをティッシュでくるみ、とりあえず自分のポケットにしまった。
- (まあ、気持ち悪いけどしょうがないよな。どこか離れた場所で捨てるまでのガマンだ)
- そして弘樹は祥吾の方をつま先で軽く小突く。
- 「で、こっちの始末の方だけど……」
- 「ぅ……ぅぅぅ……」
- わずかに反応するものの、いまだ目覚める気配はない。
- 祥吾の始末を考えていた弘樹は、祥吾のポケットからスマホがこぼれそうになっているのを見つけた。
- 「そういえばコイツ……」
- 千咲のスマホに入っていたGPS追跡アプリのことを弘樹は思い出した。千咲の方で削除するつもりだったが、もっといい方法を弘樹は思いついた。
- 「えーっと……」
- 祥吾のスマホを拾い上げ、勝手に操作しようとする。だが、ホーム画面にはロックがかかっていた。
- 「む、さすがにそう簡単にはいかないか。パスワードは……」
- とりあえず弘樹は生年月日あたりから試してみようと考えた。しかし、そう簡単にはいかない。そもそも、弘樹は祥吾の誕生日を知らなかった。
- 「そうだ。そういえばこっちに……」
- 弘樹は自分のスマホを操作する。念のためにそちらにコピーしておいた千咲のアドレス帳から、祥吾のプロフィールを調べていく。
- 「8月23日生まれか。ってことは0823っと……む、ダメか」
- 順番もいろいろ組み替えてみたり、生まれ年と混ぜてみたりするが、ロックは一向に解除できない。
- 「まいったな……まさか、千咲の誕生日じゃないよな?」
- 弘樹は念のために、千咲の誕生日6月17日を入力してみた。
- 「ありゃ」
- 当然のように解除される祥吾のスマホのロック。弘樹は思わず苦笑する。
- 「ホントに千咲にベタ惚れだったんだな、チャラ男クン」
- 祥吾の報われない恋に、弘樹は少しだけ可哀相になってしまった。とはいえしたことはしたこと。悪用厳禁のツールを使って、千咲にストーキング行為をしたのは許されることではない。
- 「千咲は俺のだからな。追いかけるなら別の子にしてくれ」
- 弘樹はGPS追跡ツールの設定を、適当なものに変える。それにより祥吾のスマホは、誰のモノだかわからない情報を受信しはじめた。
- 「これでよしっと……って、待てよ」
- 弘樹はフトしたことを思い出した。
- 「そういえば、コイツを街から追い出してから……」
- 弘樹の自宅の玄関に、何度か妙なものが届けられていた。コンビニ袋に入れられたネコのフン。それ以外にも、もしかしたらそうなんじゃないかと思われるようなものが、いくつか思い出される。
- 「もしかして、アレもコイツが?」
- 可能性はなくはなかった。街を追い出された祥吾が千咲のあとをつけ、弘樹の部屋に出入りしていることを知れば……。
- 「……」
- 一度そう思いはじめてしまうと、あらゆることが祥吾の犯行のように弘樹には思えてきてしまった。
- 「ちぇっ。せっかくもう許してやろうと思ってたのに。これじゃあもうちょっとお仕置きしないと俺の気が済まないじゃないか」
- 弘樹はこの場でできそうな祥吾への辱めを、即座に考える。
- 「えーっと、それじゃあっと」
- 思いついたお仕置きを実行に移すため、気絶したままの祥吾のズボンを脱がせた。ボロンと露わになる、祥吾の男性器。それを見て弘樹は、思わず微笑んでしまった。
- 「あらら、コイツはかわいい」
- ハメ撮りビデオで勃起した状態は目にしていたが、通常状態の祥吾の男性器と対面するのははじめてだった。それは、だいぶお粗末なものでしかなかった。
- 「なるほどな。これじゃあ満足できないよな、千咲」
- つぶやきながら、パシャパシャと祥吾のスマホでご本人の痴態を撮影する。そして、それをメールに添付し、ある場所へと送信した。
- 「えーと、チャラ男クンのお父様はっと……あった、あった」
- 祥吾の父親で、市会議員である塚田竜太郎。その人のところへ、弘樹は祥吾の恥ずかしいメールを送りつけた。
- 「うえーん。公園でおしっこしてたら気絶しちゃったよー……送信っと」
- これであとは祥吾の身内の人間……というか、竜太郎の身内の人間が、いい具合に片をつけてくれるだろう。
- 「街を追い出されるだけで済めばいいけど……あ、そうだ」
- 弘樹はもう一つ復讐をすることにした。
- 「ちょうどいいことに、ここにこんなモノが落ちてるしな」
- マナーの悪い犬の散歩者が捨てていったのか、それとも野良犬の仕業か、茂みの中に立派な犬のフンが鎮座ましましていた。
- 「コイツを、チャラ男クンのそばまで転がして……」
- つま先で蹴飛ばし、イヌのフンをいいポジションにセットする。そして今度は、祥吾の方を蹴飛ばしながら転がした。
- 「これでよしっと」
- ベシャリと、露わになった男性器がまだ柔らかかったイヌのフンを押しつぶす。自分でやっておいて、そこがどんな状態になっているのか弘樹は想像するのすらイヤだった。
- 「お前が悪いんだからな、チャラ男クン」
- つぶやきながら茂みを出て、弘樹は千咲を迎えにベンチへと向かう。いろいろしたせいで、身体中が汗やホコリでベトベトになっていた。できるだけ早く、シャワーを浴びたい気分だった。
- 「そうだ。どうせならマンションじゃなくて……」
- この日の帰り、弘樹と千咲ははじめてラブホテルに寄った。そして、当然のようにそこでもメチャクチャ生ハメセックスする二人だった。
- [image "P000.png" file=../Images/m005.png] そして、一週間が経った。
- どういう処理が行われたのかは弘樹にはわからなかったが、祥吾はあれ以来二人の前に姿を現すことはなくなった。
- 変化したのは、祥吾のことだけではなかった。千咲が、あれ以来弘樹の部屋を訪れていない。途中何度か予定されていた家庭教師のスケジュールもキャンセルされ、弘樹が連絡しようと試みても、忙しいだのなんだのと千咲に体よくあしらわれてしまった。
- さすがに弘樹は心配になり、実家の方に連絡をとってみることにした。
- 「あ、もしもし」
- 「あら弘樹さん。珍しいわね」
- 弘樹が千咲の実家……兄の雄一の自宅に電話をかけると、雄一の妻であり千咲の母である佳織が出た。まあ、平日の昼間であれば当然のことであろう。
- 「えっと、千咲のことなんですけど」
- 普段から長電話などをしない弘樹は、いきなり本題を切り出した。このあたり、兄の雄一とかなり似ている。佳織はそのことに気づいて、クスリと笑った。
- 「ああ、はいはい。ちーちゃんのことね」
- ごく普通の世間話でもするかのような、佳織の気楽な態度。もしかしたら病気にでもかかったのではないかと危惧していた弘樹は、千咲のその態度に安心する。
- 「ごめんなさいね。ちょっといろいろしなくちゃいけないことがあって、家庭教師の方には行けてないのよ。でも補習の方にはちゃんと出てるから大丈夫。課題も毎日ちゃんとやってるみたいよ」
- 「はあ」
- なぜか妙に嬉しそうに、今日の佳織はよくしゃべる。義姉はもっと落ち着いた人ではなかったかと弘樹は訝しむが、それとは無関係に千咲は話し続けた。
- 「それにしてもあのちーちゃんがねえ……」
- 受話器越しに聞こえてくる佳織の含み笑い。弘樹はだんだんなんのために電話をかけたのかよくわからなくなってきてしまった。
- ちょうど、そのタイミングだった。
- 「ねえママー。ちょっと聞きたいんだけど……って、あっ」
- 受話器の向こうでうっすらと聞こえてきた千咲の声。しばらくぶりのその声に、弘樹は思わず胸がドキッとする。
- 「あ、ちーちゃん。今ね、ちょうど弘樹さんから電話がかかってきたのよ」
- 「え!? おじさんからっ!」
- 「そうそう。それでね、ちーちゃんの話を──」
- ガチャンと、唐突に電話が切れる。プープーと言う無機質な音だけが、弘樹の耳には届いていた。
- 「なんなんだ一体……」
- どういうことなのか、まるで意味がわからなかった。だが千咲が元気だということだけは、弘樹にもわかった。
- 「まあ……いいか」
- 弘樹はとりあえず、もうしばらく様子を見てみることにした。佳織の言葉どおりであれば、補習にはきちんと行っているようだったし、模試までにやるべき課題ももうすでに渡してある。それに……。
- 「なんか、声も元気そうだったしな。俺が心配する必要なんてなかったのかもしれん」
- それはそれで少し寂しい弘樹。少なくともただのセフレ程度からは卒業できていると思っていたが、もしかするとそれも弘樹の方の一方通行だったのかもしれない。そうだったとしても仕方ないよな、と自分に言い聞かせつつ、弘樹はいつもどおりの生活に戻る。
- そして、翌あくる日……。
- 今日も弘樹は仕事を早めに切り上げて帰宅していた。何しろ今日は、予定どおりならば千咲の家庭教師があるはずだからだ。もっとも、千咲が姿を現さないここ最近は、すべて単なる自宅作業の日になっていた。弘樹は今日も来ないだろうと半ば諦めながら、いつものようにPCに向かう。そこで祥吾との一件のときにふと思いついていたスマホ用アプリを、ポチポチと組み上げていた。
- しばらく時間が経ち、そろそろ休憩でもしようと時計を見上げたとき……。
- 「え?」
- ピンポーンと聞き慣れたチャイムの音が、弘樹の耳に飛び込んでくる。不意を突かれた弘樹は、イスの上でビクンと震えてしまった。
- (もしかして……イヤイヤ焦るな。宅配便か何かの可能性もある)
- 待ちわびた訪問者の姿を思い浮かべただけで、弘樹はソワソワと落ち着かなくなってしまう。すぐに確認しに行きたい気持ちもあったが、違っていた場合に落ち込む自分を見たくない。そんなどこか情けない気持ちに支配されながら、弘樹は次のアクションを待った。すると……。
- 「っ!」
- ガチャリと玄関の扉が開かれた。いつものように扉には鍵がかけてあった。合い鍵を持っているのは、限られた人間。その中には、弘樹がずっと待っていた人物が含まれる。
- (もしかして……やっぱり……)
- 弘樹はPCデスクから立ち上がり、リビングへと移動する。そんな弘樹の耳に、パタパタと小さなスリッパの音が聞こえてきた。この夏になってから、何度も聞いた足音。その足音が玄関からリビングまでの、それほど長くはない廊下を抜け、ここに通じる扉をガチャリと開いた。
- 「ごめんなさい、しばらく休んじゃって。今日からまた、よろしくお願いします」
- 弘樹は、思わずキョトンとしてしまう。扉を開けて入って来た女の子が、弘樹の予想していたのとは違っていたからだ。いや、正確には【女の子が】ではなく、【女の子の姿が】かもしれない。深々と頭を下げている女の子。それは、明らかに千咲だった。ただし、弘樹がようやく見慣れてきたギャル姿の千咲ではなかったが。
- (千咲……でいいんだよな?)
- イマイチ自信を持てない弘樹。その女の子の姿は、白い肌に綺麗な黒髪。少しだけ野暮ったい感じのするメガネ。着崩すことなく、きちんと身につけられた制服。校則どおりの真面目なネクタイ……と、明らかに弘樹の知っている千咲の姿ではなかったから。
- [image "01" file=../Images/p020.jpg] (千咲っていうよりも、ちーちゃん……だな)
- それは弘樹がずっと思い描いていた姪の姿。再会するだろうと思っていた千咲の姿。
- (でも……なんで急に……)
- 弘樹の頭の中を、グルグルと疑問が回り続けていた。
- 「あれ? おじさん?」
- 下げていた頭を上げた千咲は、弘樹が自分をボーッと見つめていることに気づいた。弘樹のその表情の意味がわからず、千咲もキョトンとした表情を浮かべてしまう。だがすぐに、その顔は笑顔でいっぱいになった。
- 「ぷっ、くすくすくす。なんて顔してるのよ」
- 「あ、いや……だって」
- 「あ、これ?」
- スカートの裾をつまみ上げ、軽くポーズを取りながら千咲がクルッと一回転する。
- 「どう? ご感想は?」
- 「えと……」
- 弘樹が戸惑っていると、千咲はプーッと頬を膨らませる。
- 「なによー。おじさんが喜ぶと思って、ギャル系のファッションやめてきたんだよー?」
- 「え!? そ、そうだったのか?」
- 「んもー」
- 弘樹は自分の感覚が、思い違いではなかったことに気づいた。千咲とは、かなり親しくなれている。それも、弘樹の思っていたよりもずっと。セフレどころではない。なにしろ千咲は、自分の姿を弘樹好みに変えてきてくれたのだから。
- 「ごめん、あんまりにも驚いちゃって」
- 「そっか。まあ、そうだよね。自分でも、ここまで変われるとは思わなかったもん」
- そう言って千咲は、再びくるりと回って見せた。
- 「で、どう?」
- 「いやあ……見事に変わったなあ。いや、戻ったなって言った方がいいのか?」
- 「なんかね、さっきも言ったとおりおじさんの好みってのもあったんだけど、私自身もギャルファッションでいる必要性っていうのがよくわかんなくなっちゃって」
- 「ん?」
- そう言うと千咲はベッドに腰かけ、スカートの裾を指先でいじりながら、心境の変化について訥とつ々とつと語りはじめた。
- 「この間のおじさんと一緒にしたオナニーのあとさ、ちょっと思い立って自分の部屋でもしてみたの。オナニー」
- 「ああ」
- 「そしたら、何の抵抗もなく普通にオナニーできてさ、今までの苦労はなんだったんだろーって」
- 「ははは。まあ、悩みなんてのはそんなもんだ」
- 「で、そしたら急にいろんなことがどうでもよくなっちゃって。あ、いい意味でね」
- 「うむ」
- 「もちろんあの一件でのお父さんを許したわけじゃないけど、でもまあだからといって反発し続ける必要もないしなって不意に思って」
- 「そうか」
- 「まあだってあのお父さんだもん。娘のそんな姿見たりしたら、パニクってもしょうがないよ」
- 以前よりも、どこか大人びて見える千咲の笑顔。トラウマを乗り越えて、人間的に少し成長したのかもしれない。
- 「でさ、ギャルファッションにこだわりがなくなったらさ、そのあとどうしようかなーって思って。祥吾ともあんな風になっちゃったしさ」
- 「まあな」
- 「それで、思いついたのがこれ。どうせならおじさん驚かせようと思って、そしたらちょっと時間かかっちゃったの。ごめんね」
- しばらく話してみて、千咲の根本的な部分は何一つ変わっていないことに弘樹は気づいた。というか元々、ギャルファッションに身を包んでいたときも、中身は【千咲】ではなく【ちーちゃん】だったのかもしれない。
- 「で、どーよおじさん。この格好、可愛いと思う?」
- 「ああ。可愛いと思うよ」
- 「ふふっ。ありがと」
- 「というか、千咲が俺のために変わろうと思ってくれたこと自体が可愛いかな」
- 「も、もうっ」
- パーッと千咲の頬が赤くなる。もとの色白な肌に戻ったためか、以前よりももっと照れているようにも見える。
- 「でね、おじさん」
- 「ん?」
- 「今日が家庭教師の日だっていうのはわかってるんだけどさ、その……」
- 千咲がさらに頬を赤く染める。それだけでなく、瞳までウルウルとさせてくる。
- 「しばらくしてなかったからさ、もうガマンできないんだ。勉強なら帰ったらちゃんとやるからさ、だから──」
- 言いかけた千咲を、弘樹がグッと抱き寄せる。そして最後まで言わせることなく、千咲の耳元に弘樹はささやきかける。
- 「この格好でする初セックスだな。いっぱい気持ちよくしてやるからな」
- 「うん」
- 恥ずかしそうに千咲ははにかんで俯く。そんな千咲を弘樹はお姫様抱っこで抱え上げ、そのままベッドへと運んだ。
- ベッドの縁に腰かけた弘樹のヒザの上に、制服姿の千咲が座っている。二人は、まるで恋人同士のように見つめ合っていた。
- 「ふふふ、なんか……こうやって見つめ合うと照れるね」
- 「それがいいんだけどな」
- 「んもう、ばか」
- 弘樹の手が、千咲のスカートの中に伸びる。スベスベの太ももをなぞりながら、指先が下着越しに女性器に触れる。
- 「ん? もしかしてもう濡れてるか?」
- 「だって……久しぶりにおじさんに抱いてもらえると思ったら……」
- 「ったく。可愛いこと言ってくれるな」
- 「あんっ」
- 弘樹の指が下着の中に潜り込む。言葉どおり、千咲のアソコはすでに十分に潤んでいた。
- 「お……すごいな。ホントにビチャビチャだ」
- 「ねえおじさん。早く入れて……おじさんの大きいちんぽで、私の中をいっぱいにして」
- 見た目が変わっても、千咲は千咲だった。優等生な見た目とはギャップのあるエロい挑発に、弘樹は簡単に煽られる。ズボンを下ろして勃起したペニスを取り出すと、弘樹はそれを千咲に見せつけるようにしながら、千咲の秘部へと押しつけた。
- [image "01" file=../Images/p021.jpg] 「あぁぁ……おじさんの大きいちんぽ……それ……それが欲しかったの……」
- その様子をジッと見つめる千咲。弘樹は千咲に見られながら、ゆっくりと勃起ペニスを千咲の中へと挿入していった。
- 「んっ、んんんっ! あはぁ……やっぱり、おっきい……おじさんのちんぽ……ああぁぁぁ……おじさんのちんぽ、嬉しい……」
- 久しぶりの挿入に、千咲が笑み混じりのあえぎ声を上げる。弘樹もまた、しばらくぶりのその感触にさらに股間を漲らせる。
- 「んっ、ふっ! んんんん……あはっ、まだ大きくなってる。私の中、そんなに気持ちいいの?」
- 「ああ。久しぶりの千咲の中、気持ちいいぞ」
- 「浮気しないで溜めててくれたんだ?」
- 「まあな」
- 「ふふっ。私もだよ。私も、おじさんとしかしたくないから」
- それが千咲の本心からの言葉なのかはわからないまま、それでも弘樹は千咲のその言葉に喜びを感じた。惚れた弱みだな、などと心の中で苦笑しながら弘樹はゆっくりと動きはじめた。
- 「んっ、ふっ、んっ、んんっ……あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」
- いつものように千咲が悶える。それはいつもと同じはず。だが弘樹は、それがなんとなくいつもとは違うように感じていた。
- 「んっ、はっ、んんんっ……ねえ、おじさん。もっとこっち……もっとこっち来て……」
- 「ん?」
- 腰を動かしながら、千咲の要求に応じて身体を寄せていく弘樹。すると千咲は、弘樹を抱き寄せて唇を重ねてきた。
- 「んっ、あっ……はむ……ちゅ、れろ……」
- 舌を絡め合う激しいキス。千咲とのキスははじめてではなかったが、千咲の方からキスをしてきたのはこれがはじめてだった。やはりこの格好だと、千咲の方の気分も違うのだろう。ギャルの時よりも弘樹に甘えた雰囲気がある。もしかするとギャルの格好のときよりも、エッチに対して貪欲になっているかもしれない。
- 「んんんん……んっ、れろ……んは……ん、ん、ん……あむ……んっ……ちゅっ」
- キスの方では、完全に千咲が主導権を握っていた。弘樹の口の中へと舌を侵入させ、舌や歯、頬の内側を舌先で刺激していく。逆に下の方では、弘樹が主導権を握っていた。クイクイと腰を動かし続け、千咲の中の締め付けをペニスで感じ取る。ときおりコリッとした子宮口を感じながら、弘樹は千咲を犯し続けていた。
- 「んふぅぅぅぅ……んっ、んっ、んっ、んっ……おじさん……おじさぁん……おじさんのちんぽもキスも……はむっ、ちゅ……気持ちいい……」
- それは激しいセックスではなかったけれども、ゆったりとした深い快感を得られるセックスだった。
- 「んっ、はっ、あっ、あっ、あっ、あっんっ、あああああああっ」
- 身体の奥深くから快感が溢れてくる。その気持ちよさに反応して、千咲が喘ぐ。
- 「ふっ、はっ、はっ、んっ、くっ……んうぅぅぅぅぅ……おじ、さん……ああああっ! おじさん! セックス……セックス気持ちいいっ!」
- 「くぅぅぅぅぅ……ちさ、き……んんんっ!」
- キューッと千咲の中が弘樹を強く締め付けてきた。その締め付けに抗いながら、弘樹は何度も千咲の中にペニスを出し入れする。
- 「んはあああっ……あっ、あっ、あっ、あっ……すご、い……おじさんのちんぽ……あああっ! 私の中に出たり入ったり……んくぅぅっ!」
- 抱き合うようなこの姿勢だと視線を下げるだけで結合部がよく見える。弘樹と千咲は額を合わせるようにしながら、互いの性器を見つめ合い、互いに腰を振り立て合った。
- 「あっ! あっ! あっ! あっ! 気持ち、いい……イク……もう私……イッちゃうっ!」
- 「うぅぅぅぅ……お、俺も……千咲っ……もうっ」
- 二人とも久しぶりのセックスのせいか、いつも以上に早く限界を迎える。だがそれはもしかすると、千咲の服装のせいかもしれなかった。弘樹のずっと求めていた昔のとおりの千咲の姿。自分を無理に着飾ることをしなくなった千咲の姿。それが、二人の気持ちを解放して、より高い性感をもたらしているのかもしれなかった。
- 「いいよおじさんっ……今日も私の中で……ああああっ! 私の中に……出してっ! 白いのでいっぱいに……んはあっ! 精液でいっぱいにしてぇっ!」
- ごく自然な流れで、当たり前のように生ハメしていた二人。妊娠の可能性などこれっぽっちも考えず、ただ純粋に快楽を求めて千咲は中出しを求めた。そして、弘樹もそれに応えてしまう。
- 「イクうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」
- 「くうっ!」
- ドックンドックンと、千咲の中で弘樹のペニスが震えながら精液を吐き出しはじめる。そんなペニスを絞り取るように、絶頂を迎えた千咲の膣も収縮を繰り返す。
- 「あぁぁぁぁ……すごい……出てるぅ……」
- 大量の精液を子宮に浴びながら、千咲がヒクヒクと身体を震わせる。ずっと求めていた千咲の喘ぐその姿に、弘樹もいつも以上の興奮を憶えていた。
- 「んっ、んっ、んっ、んっ……んうぅぅぅぅ。おじさぁん」
- 中で出されているのを感じるのか、弘樹のペニスの収縮に合わせるように千咲も膣を締め付けていた。そしてそのまま顔を寄せ、弘樹の唇に自分の唇を重ねる。
- 「はむっ……ちゅっ……んんんん」
- 絶頂の余韻に浸りながらのキス。息を整えながらになるため、お互い鼻息が荒くなりがちだが、それすらも二人は快感に変換していた。
- 「んふぅ……ん、ん、ん、ん……んはぁ」
- [image "01" file=../Images/p022.jpg] ギュッと弘樹に抱きつく千咲。弘樹も負けじと千咲を抱きしめ返す。
- 「ふふふ……イッたあとにこういう風にすると……なんだかすごく安心する」
- 脱力した身体を互いに預け合う。そうしていると、まるでそのまま身体が溶け合ってしまうのではないかという錯覚に弘樹は陥った。
- 「ね、おじさん」
- そんな弘樹の耳元で千咲が囁く。
- 「あのね、私ね、この格好だけじゃなくて、もう一つおじさんにプレゼントがあるんだ」
- 「もう一つ?」
- 「うん。でもまだ今は内緒。準備に、もうちょっとかかるから」
- 「そうか」
- 「ふふふ。楽しみにしててね」
- 「ああ」
- こうして二人は今日もまた、予定の時間が過ぎるまで、目いっぱい甘く密やかな時間を過ごした。
- * * *
- いつものように大学で仕事をしていた弘樹は、千咲から不意の連絡を受け、急いで作業を切り上げて自宅へと戻った。
- (今日は家庭教師の予定はないはずなのに……どうしたんだろう)
- ギャルから戻る期間に休んだ分を取り戻したいのかと弘樹は思ったが、そもそも勉強の方のスケジュールはほとんど遅れてはいない。ただ、弘樹の部屋での勉強がキャンセルされていただけだ。となると理由が思い当たらないが、それでも弘樹は素直に部屋で千咲を待った。なぜなら、千咲が部屋で待っていて欲しいと頼んだからだ。
- そうこうしているうちに、弘樹の部屋のチャイムが鳴らされる。いつものように合い鍵を使い、千咲が部屋に入って来た。
- 「ごめんね、急に呼び出しちゃって」
- まだ少し慣れない優等生ルックの千咲に、再び弘樹はキュンとなってしまう。ギャル千咲も好きになりかけていたが、やはりこの地味めなのに実は美少女という味わいが弘樹はたまらなく好みだった。
- 「いや、別にかまわないよ」
- 平静を装いつつ弘樹は答える。だが千咲には、弘樹の内心の反応はお見通しだった。
- 「あはは。私のためならいつでも飛んでくるって感じ?」
- 「まあな」
- 「んもう。嬉しいこと言ってくれるんだから」
- 弘樹も千咲も少なくない人数の異性と付き合ってきたが、そのどれともこの関係は違っているように思えた。心の中身をさらけ出しても許し合えるような関係。この関係は心地がいい。それだけは、二人ともよくわかっていた。
- 「で、用事って?」
- 「あ、うん。あのね、プレゼントの準備ができたから」
- 「プレゼント? このあいだ言ってたやつか?」
- 「うん。そう」
- 千咲がギャルファッションをやめて、はじめて弘樹に抱かれた日。そのとき千咲は、もう一つプレゼントがあると弘樹に言っていた。
- (いったい何のことなんだろう……)
- 疑問に思う弘樹の目の前で、千咲がおもむろに制服を脱ぎはじめた。
- 「え? お、おい」
- 止める間もなく千咲は、ニーソックスに制服のリボンだけというなんとも刺激的な格好になってしまう。
- 「前のバージンはあげられなかったけど、今日は後ろのバージンをもらって欲しくて……ね、おじさん。私のはじめて……あげるね」
- 千咲は床にヒザ立ちになってベッドに上半身を預けると、自分でお尻の肉を左右に割り開いていった。
- 「ゴクッ……」
- 目の前に唐突に現れた綺麗な菊門。弘樹はそれを凝視した。
- 「さすがに……恥ずかしいなあ」
- 照れくさそうにつぶやきながら、千咲は弘樹の方を振り返る。
- 「えっとね……本とか読んでいろいろ調べて、自分なりに準備とかしてきたから」
- 「準備?」
- 「うん。おじさんのちんぽ入れられるように、お尻の穴をほぐしたりとか……あと、ここに来る前に綺麗に洗ったりだとか……ごにょごにょごにょ」
- 恥ずかしさが耐えきれなくなったのか、千咲の言葉は聞き取れなくなる。
- 「えっと……ホントにいいのか?」
- 「うん。おじさんにもらって欲しいの」
- まるで普通の初体験のときのような会話を交わす弘樹と千咲。さすがの弘樹も、アナルでの経験はまだなかった。つまり千咲も初体験ではあるが、弘樹の方も初体験だった。
- 「その……こんなこと言うと不安になるかもしれないが、さすがにアナルは俺もやったことないんだ。それでもいいのか?」
- 「えっ、そうなの?」
- 「ああ」
- 「嬉しい……」
- それは、弘樹の予想とは少し違った反応。千咲は乙女のように頬を赤らめると、嬉しそうにはにかんだ。
- 「じゃあ二人とも初体験だね。一緒に、手探りしながらしてみようか」
- 「ふっ、そうだな」
- 「うん」
- 二人揃っての共同作業。弘樹はまずはズボンを脱ぎ、千咲の腰に手を添えて構えた。
- 「うあ、もうおっきくなってる」
- 「そりゃな。千咲のこんな綺麗なお尻見せられたら、勃起しない方がおかしいって」
- 「あはは、そっか」
- 「じゃあまずはどうするかな……」
- 「えっと、本とかだとローションとか使うみたいだけど……」
- 「ふむ」
- 「おじさん、ローションとか持ってる?」
- 「いや、特にそういうのはないな」
- 「何かで代用してもいいと思うんだけど……」
- こんな格好でするには少し間抜けな会話だなと思いつつ、弘樹は目の前の千咲の姿を見つめた。滑らかで触り心地のよさそうな千咲のヒップ。その下にはいつも味わっている女性器がヒクヒクと物欲しそうに震えていた。それを見て、弘樹は代用品になりそうなものを、一つ思いついた。
- [image "01" file=../Images/p023.jpg] 「そうか。天然物で代用できるものがあるぞ」
- 弘樹はおもむろに、千咲の膣なかに自分自身を挿入していく。
- 「んああんっ! おじ、さん……はうううっ」
- 弘樹のペニスに、千咲の愛液がネットリと絡みつく。弘樹はまだ何もしていない。だが千咲のそこはすでに十分に濡れていた。お尻でのセックスというアブノーマルな行為の予感だけで、千咲はそこをグッショリと濡らしてしまっていたのだった。
- 「んっ、あっ、あっ、あっ……ちが、う……今日はそっちじゃなくて……んんんっ」
- 「いいんだよ千咲。まずはこっちで、ペニスを濡らすんだ」
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……そっか。そういうこと、か……んんんんんっ」
- 弘樹の意図を理解したことで、千咲の戸惑いが消えた。せっかくだから楽しもうと決めたのか、千咲の表情に快感の色が表れはじめる。
- 「あっ、あっ……やっぱりおじさんのちんぽ、気持ちいい……んっ、んっ、んっ、んっ」
- 弘樹はペニスをしっかりと濡らすために、根本まで千咲の中に挿入してグリグリと腰でこねるようにする。
- 「んはあっ! そ、それ……それされると……背中がゾクゾクしてきちゃうぅぅぅぅ」
- 今日のメインメニューではないのに、千咲が本気で感じはじめてしまう。弘樹は行為を中断すると、ペニスを千咲の中から引き抜いた。
- 「はあ、はあ、はあ……うぅぅ。なんか物足りない」
- 切なそうな表情で、千咲が弘樹を振り返る。
- 「何言ってるんだよ。今日は、これからが本番だろ?」
- 「う、うん。そうだった」
- 千咲の愛液を纏ってヌルヌルになったペニスを、弘樹は千咲のアナルにあてがった。
- 「ひゃうっ……お尻に、なんか……熱いのが……」
- 「わかるか?」
- 「う、うん……お尻の穴を……おじさんのちんぽが擦ってる……」
- 「これから入れるからな。ゆっくり息を吐いて、力まないように」
- 「わかった……がんばってみる」
- 千咲の表情が変わった。はじめての体験への緊張感。そこに、お尻でのセックスというアブノーマルな行為への欲情が加わる。やや強ばった上気した表情。しかし瞳は、アナルセックスへの期待で輝いていた。
- 「いくぞ?」
- 「うん。来て……」
- 弘樹が千咲の尻を引き寄せながら、自分の腰を進めていく。
- 「んっ、くっ……んうぅぅぅぅぅぅ」
- 「くっ……」
- 勃起した弘樹の亀頭が、千咲のアナルを押し開いていく。だが、そう簡単には内部への侵入を許してくれない。いくらヌルヌルにしたとはいえ、弘樹のペニスほどの大きさのものを飲み込むには、千咲のアナルは小さすぎなように思えた。
- 「んっ、はっ! くぅぅぅぅぅぅ……き、つい……うぅぅぅ」
- 眉を寄せ、苦痛の声をあげる千咲。弘樹はペニスを押し込む力を少し弱め、千咲に声をかけた。
- 「大丈夫か? 千咲。いったん抜くか?」
- 「ううん、平気。そのままゆっくりしてくれたら……大丈夫、だから……んっ、くっ!」
- 伸びきった輪ゴムのようにキチキチになりながら、弘樹のペニスを咥え込んでいく千咲のアナル。弘樹はひるんで引き抜きたくなる気持ちと、そのまま強引に押し込みたくなる気持ちの間で揺れながら、なんとか自分を律してゆっくりとペニスを押し込んでいった。
- 「んっ……くっ! んうぅぅぅぅぅぅ……はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」
- 短く千咲が息を吐く。そのたびに、アナルも小刻みに収縮する。
- 「千咲、もうちょっとだ。もうちょっとで、俺が全部入るぞ」
- 「う、うん」
- 千咲はゆっくりと息を吐く。
- 「はあああああああああ……」
- 千咲の呼気に合わせて、肛門がわずかに緩んでいく。弘樹はその緩みと呼吸を合わせるようにして、最後の一押しを加えた。
- 「んはあっ!!!」
- ペタリと、千咲のお尻が弘樹の下腹部に密着する。それはつまり、弘樹のモノがすべて千咲の中に入り込んだことを示していた。
- 「はっ、はっ、はっ、はっ……やった……やったよおじさん」
- 軽く下腹部を震わせながら千咲が振り向き、そう言った。
- 「ああ。千咲のアナルバージン、ちゃんと受け取った」
- 「うん。私も……おじさんのアナル童貞、もらっちゃったよ」
- 「ははっ。なんかそういう言い方すると、俺がアナルを犯されてるみたいだな」
- 「でも、それ以外の言い方が思いつかないよ」
- 「まあな」
- 二人は繋がったままで、いくつかの言葉を交わす。まだ動くには早い。無意識のうちに、そう理解し合っていた。そうしてしばらくジッとしていたことで、千咲のアナルが少しこなれてきたように感じられた。
- 「そろそろ動いても平気か?」
- 「う、うん。多分大丈夫」
- 「じゃあ動くからな」
- 「うん」
- 「んっ、くっ、ふっ、んっ、んんんっ!」
- ぎこちなさを漂わせながら、弘樹がゆっくりと動きはじめた。ヴァギナでしているときほど、スムーズには動けない。しかしそれでも弘樹の経験が、少しずつその動きを滑らかにしていった。
- 「ちゃんと準備……してきたから……あんっ。お尻でセックスできるように……くっ! して、きた……から……やんっ!」
- 少しずつ……ほんの少しずつだが、千咲の声から苦しそうな成分が減り、それに変わって艶を帯びた快楽の成分が増しはじめた。
- 「あっ、あっ、あっ、あっ……おし、り……んはぁあぁぁ……お尻、に……おじさんのちんぽ……おっきなちんぽが入って、るぅぅぅぅぅぅ」
- 強い異物感。お尻に熱くて硬い棒でも入れられているかのように千咲には感じられた。だが、不思議とイヤな感じではない。それどころか、それは徐々に気持ちのいいものへと変化していった。
- 「んっ、はっ、あっ、はっ、あっ、はっ、やっ、はっ、あっ、あっ、んっ、くっ、んっ、んああああっ」
- 弘樹の動きも徐々に変化しはじめた。ヴァギナのときとの微妙な角度の違いがようやくアジャストされたのか、無駄な力みが消え、いつもどおりの滑らかな腰の動きが取り戻されていく。
- 「んっ! あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ……すご、い……すごい……お尻が熱く……お尻が熱くなってきて……くふぅぅぅうんっ……い、いいよ……気持ち、いい……」
- 二人の相性がいいからなのか、それとも元々後ろでする適性があったからなのか、はじめてにも関わらず二人はアナルセックスの快感にのめり込んでいく。
- 「私……できてる……ああんっ。おじさんとアナルセックス……お尻でセックス……できてるぅぅぅ」
- 「はっ、はっ、はっ、はっ。千咲ぃ……」
- いつもとは違う快感と、お尻でしているという達成感。それらが徐々に、二人の快楽を高めていく。
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……千咲……俺、そろそろ……」
- [image "01" file=../Images/p024.jpg] 「んっ、んっ、んっ、んっ……いい、よ……おじさん……私の中で……んあああっ……私のお尻で……射精しても……精液で浣腸しても……くふうんっ……いい、よ……」
- 「千咲ぃっ!」
- 「んはあああああっっっ!!!」
- 限界一歩手前でなんとか踏みとどまり、弘樹はラストスパートとばかりに千咲のアナルをガンガンに突いた。
- 「んっ! はっ! あっ! はっ! やっ! はっ! あっ! あんっ!」
- 千咲の唇から、悲鳴寸前のあえぎ声が漏れる。
- 「お尻……お尻が……壊れ、ちゃう……そんなにされたら……あああんっ! 壊れちゃうぅぅぅっ」
- 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……イヤか千咲。俺にお尻を壊されるのイヤか?」
- 「う、ううん……いいよおじさんがしたいなら……くふうううんっ! 私のお尻……おじさんの好きにして……いい、よ……んはあああああっ!!!」
- 「千咲ぃっ! 千咲ぃっ!」
- もちろん弘樹には、そんなつもりは毛頭ない。だが、本当に壊れてしまうのではないかというくらい激しく千咲のアナルを突く。弘樹は限界まで千咲を求めたかった。千咲のアナルで最高に気持ちよくなり、千咲のアナルを最高に気持ちよくしてやりたかった。
- 「あんっ! あんっ! あんっ! あんっ! おじ、さん……おじさんっ! 私……私……お尻、で……お尻でぇぇぇっ……お尻で、イッちゃ、う……」
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……いいぞ千咲……一緒に……うううっ。一緒に、イクぞ!」
- 「う、うんっ」
- 弘樹の望みどおり、千咲はアナルで絶頂を迎えようとしていた。そして弘樹もまた、すでに限界を超えている。ただその一瞬を同時に迎えるために歯を食いしばりながら、弘樹は千咲のアナルをガツガツと責め続けた。
- 「んっ、はっ、あっ、はっ、あっ、あっ、あっ、あっ……い、イク……お尻で……イッちゃ、う……んはあああああああああああああっっっ!!!」
- 「うううっ!!!」
- ガクガクガクッと千咲が全身を震わせる。そして弘樹もまた、ビクビクと腰を震わせながら千咲の中で絶頂を迎えた。
- 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」
- キツいアナルでしごいたからなのか、弘樹はいつも以上に熱い射精感を憶えていた。
- 「ん、は、あ、は、あ、あ、あ、あ、あ……お尻……お尻で……出てるぅぅぅ」
- お尻で出された千咲は、どこかうっとりとした表情を浮かべながらアナルでの中出しの感覚を味わっていた。
- 「んふぅぅぅぅ……おじさんの精液……あぁぁぁぁ……私のお尻に、溢れてるぅ……」
- 千咲からもらった最高のプレゼント。それは弘樹にとって、この上なく幸せなものだった。そして弘樹も、千咲に最高のお返しができたと思っていた。最高に気持ちのいいアナルセックス。これからもまた、弘樹はそれを何度も味わわせてやるつもりだった。
- 「はあ……はあ……気持ち、よかったぁ……はあ……はあ……はあ……はあ……」
- 満足そうに微笑む千咲のアナルから、白い精液がトロリとひと筋流れ落ちた。それはまるで、千咲のアナルが垂らした、歓喜の涙のようにも見えた。
- [image "01" file=../Images/p025.jpg]
- * * *
- そしてついに、模試の日がやってきた。
- 毎日のように弘樹とのセックスに耽りながらも、勉強の習慣を取り戻した千咲はグングン成績を伸ばしていた。それこそ家庭教師など必要ないくらいに。家庭教師などというのは、すでに弘樹と会うための口実にしか過ぎなくなっていた。もっとも、弘樹とのセックスにハマっている千咲は、そんな理由などなくても弘樹のマンションに通っただろうが。
- そして、そんな模試の日の夜……。
- 「芦原さん」
- 研究室でレポートのまとめをしていた弘樹に、一人のゼミ生が声をかけてきた。
- 「ん、帰るんじゃなかったのか?」
- 「そのつもりだったんですけど、入り口のところで案内を頼まれまして」
- 「案内?」
- 「芦原さんの姪御さんって方が」
- 「俺の姪って……千咲か?」
- 「じゃあ私はもう帰りますんで。あとお願いします」
- 「あ、ああ」
- 必要最低限の説明だけして、ゼミ生は研究室を出て行く。事態を飲み込めていない弘樹がその後ろ姿を眺めていると、入れ替わるようにして制服姿の千咲が入って来た。
- 「へー、これがおじさんの職場なんだ。研究室っていうから、もっとゴチャゴチャしたの想像してたけど、けっこう綺麗なんだね」
- ニコニコと機嫌のよさそうな顔で、あたりを見回している千咲。いつも働いている無機質な研究室に制服姿の千咲がいることに妙な違和感を憶えながらも、弘樹は立ち上がり千咲を出迎えた。
- 「まあな。研究室とは言っても俺のやってるのは情報工学だ。千咲の想像してるのは、理化学系とかの研究室じゃないのか?」
- 「まあそうかも。フラスコとかビーカーがあって、何かの薬品がコポコポコポーッて」
- 「だろうな」
- 「ふふふ」
- 千咲のその楽しそうな笑顔から、弘樹はだいたいの用事は推測できた。だが、とりあえず千咲の口からソレを聞き出すことにした。
- 「で、どうした急に」
- 「んー、まあなんていうか……」
- 「ん?」
- 「我慢できなくて会いに来ちゃった」
- ペロッと舌を出してイタズラっぽく笑う千咲。そういうことを聞きたいのではなかったが、弘樹は思わず嬉しくなってしまう。
- 「そうか。俺はまた何かあったのかと思ったぞ」
- ポンポンと千咲の頭を軽く叩く弘樹。千咲は嬉しそうに首をすくめた。
- 「別になにもなかったってば。模試もちゃんとできたし」
- 「そうか」
- 「で、模試が終わって解放されたーって思ったら、なんか急におじさんに会いたくなっちゃってさ」
- 「ならいつもみたいに電話してくれればよかったのに」
- 「いーの。だって今日は、働いてるおじさんが見てみたかったんだもん」
- 「そうか」
- ジーッと千咲が上目遣いで弘樹を見つめてくる。
- 「で、どうだ? 別に普通だろ?」
- 「ううん。かっこいいよ」
- 「そうか?」
- 「白衣とか着てると、なんかかっこよさ二割増しって感じ」
- 「なんだ千咲。白衣フェチか?」
- 「ふふっ。おじさんだって、私の制服姿に萌えたりするでしょ?」
- 「ん。まあな」
- 「それと同じよー」
- 「ま、それもそうだな」
- 「でさあ、おじさん」
- 「ん?」
- 千咲が弘樹の白衣の裾を摘む。そうして軽く裾を引っ張りながら、上目遣いで瞳をウルウルさせる。
- 「おじさんのおかげでオナニーできるようにはなったんだけど、やっぱりそれだけじゃ満足できないのよねえ」
- そのあとにどんな言葉が続くのか、弘樹には予想できていた。そしてそれは、こんな場所で言っていい言葉ではない。しかし弘樹には、それを遮ることはできなかった。なにしろ弘樹自身も、それを期待していなかったわけではなかったから。
- 「だから……セックスしよ?」
- 「セックスって……ここでか?」
- 「うん」
- 「いや、ここじゃマズイだろ……いつ誰が来るかわからないし」
- 形ばかりの抵抗を見せる弘樹。
- 「大丈夫よ。あの扉、内側から鍵掛けられるじゃない」
- 「いやまあ、そりゃそうなんだけど……」
- 「ね? おじさん」
- 悩む弘樹。実を言えば身体の方はもう準備万端整っているのだが、心の方はまだそうはいかなかった。しかし押しつけられる千咲の温かさと柔らかさが、その背中を押す。弘樹は我慢することをやめ、欲望に従うことにした。
- 「ええい。なるようになれだ」
- 「やった!」
- 扉に歩み寄ると、弘樹はガチャリと研究室の内鍵を閉める。大学の決まりでは女子生徒と二人きりになることは禁じられていたが、千咲は大学の生徒ではないのだからいいだろうと、弘樹は都合のいい判断をした。もっとも、こんな時間にこんな場所に誰かが来ることなど滅多になかったが。
- 「んんんん……自分で言い出したことだけど、やっぱ緊張するね」
- 「だろ?」
- 千咲の元に戻ると、弘樹は机の上に千咲を寝かせた。そして、制服の上からその身体をまさぐる。
- 「でも、これがクセになっちゃったりして」
- 「ばーか」
- 「くすくすくす」
- いつも仕事で使っている机の上に、千咲が寝転んでいるのは不思議な光景だった。だが、その不思議さが弘樹を興奮させる。
- 「ねえ、おじさん。自分の職場でセックスするのって、どんな感じ?」
- 「妙な感じだな。幻でも見てるみたいだ」
- 「じゃあさ、幻じゃないことを実感してみてよ。私の方なら、もう準備できてるから」
- 「そうなのか?」
- 「うん。ここでするんだって思ったときから、もうアソコ濡れっぱなし」
- どうぞ確認してみてといわんばかりに、千咲がスカートをまくり上げる。弘樹は下着に手をかけ、スルリと脱がした。すると、確かにそこはもうヌレヌレ状態になっていた。
- 「俺と同じだな」
- 「え?」
- 弘樹は千咲の手を取り、自分の股間へと導く。
- 「俺の方も、もうカチカチになってるからさ」
- 千咲は硬くなった弘樹のペニスをズボンの布越しに撫でると、嬉しそうに笑った。
- 「ふふ。やっぱり私たち、相性バッチリだね」
- 「そうだな」
- 弘樹はおもむろにチャックを下ろすと、カチカチのペニスを取り出した。
- 「挿れるぞ」
- 「うん」
- あそこを両手で広げ、弘樹のペニスを待つ千咲。千咲の肩越しに机に手を突き、覆いかぶさるようにしながら弘樹はペニスを挿入していった。
- 「んあっ! あっ、あああああっ」
- ズブズブと弘樹のペニスが千咲の中に埋没していく。
- [image "01" file=../Images/p026.jpg] 「く……る……そう……やっぱこれが……ああああっ。オナニーよりも……おじさんの方が……いいっ」
- 挿入しながら弘樹は制服の前をはだけ、ブラを押し上げて千咲の胸を露わにする。
- 「んあっ! そっちも……してくれるの?」
- 弘樹は答えずに、行動で示す。
- 「ちゅっ、れろ……」
- 「ひゃうんっ! おじさんの、舌が……あ、あ、あ、あ……私の乳首を……んんんんっ」
- 弘樹は千咲の乳首を舐めながら、腰を動かした。かなり窮屈な体勢だったが、乳首も膣も、両方同時に味わいたかった。
- 「んっ、んはっ……あ、あ、あ、あ……はうっ……んっ、んんんんっ」
- 「見えるか千咲。こんな場所で……俺の仕事場で、セックスしちゃってるんだぞ?」
- 弘樹は軽く身体を起こし、千咲の視線を結合部へと誘導する。
- 「う、うん……見える……はっ、はっ、はっ……おじさんの研究室で……私……机の上で……こんな風にちんぽ入れられて……あうううんっ。感じちゃってるぅぅ」
- 正確には弘樹だけのための研究室ではないが、そんなことはどうでもよかった。弘樹は千咲の中を味わいながら、さらに千咲を興奮させるにはどうすればいいか考えた。そして、ナイスなアイデアが思い浮かぶ。
- 「そうだ千咲。自分で乳首とクリトリスをいじってごらん」
- 「はあ、はあ、はあ、はあ……自分で、乳首とクリトリスを?」
- 「ああ。俺にハメられながら、オナニーをするんだ」
- 「おじさんとセックスしながら……オナニー」
- ポーッと千咲の頬が紅潮していく。千咲は確かにセックスが好きだが、それと同じくらいオナニーも好きだ。それを同時にさせればどうなるか。弘樹は自分のアイデアで、さらに股間が滾ってくるのを感じた。
- 「う、うん……しちゃう、ね……おじさんのちんぽ入れながら……オナニー……だから、よく見ててね」
- 「ああ」
- 千咲が自分の股間に触れやすいように、やや腰を反り気味にする弘樹。そうして腰をユルユルと動かしながら、千咲の手を結合部へと導いていった。
- 「んあああああっ! あっ、あっ、あっ、あっ……すご、い……乳首も……クリトリスも……あ、あ、あ、あ……いつもより……感じるぅぅぅぅ」
- そこに自分で触れた途端、千咲はビクビクと若鮎のように跳ねはじめた。
- 「そんなに感じるのか? 千咲」
- 「うん……すごいの……まるでそこが何かのスイッチになっちゃったみたいに……ちょっと触るだけで……はううんっ!」
- ビクビクビクッとまたしても千咲が震える。そしてそのたびに、ギュウギュウと弘樹のペニスが締め上げられた。
- (すげ……)
- 入れながらのオナニー……弘樹の目の前でするオナニーというのが、千咲の性癖にジャストフィットしたのかもしれない。トラウマからの脱却を目指した結果、弘樹は千咲の新しい扉を開いてしまったのかもしれなかった。
- (それとももしかすると、あんなに兄貴に見られたことにこだわってたのは、隠れたその性癖に対する無意識のうちの反発だったんじゃないか?)
- 弘樹がそんなことを考えている間にも、千咲はどんどん昂ぶっていく。
- 「んっ、ふっ、ふっ、くっ、うっ、んっ、んんんんっ! もっと……もっと動いて……おじさん……もっと……もっとしてぇ!」
- 自分の乳首とクリトリスを刺激しながら、千咲は腰をクネクネとくねらせている。
- 「それじゃあ本気でいくからな。気持ちよすぎて失神するなよ?」
- 「う、うん。きて……」
- 「ふんっ!」
- 「んはああああああっ!!! あっ、あっ、あっ、あっ! いいっ! 気持ちいいっ!」
- やはり研究室だということで、弘樹の頭にはどこかでブレーキがかかっていたのかも知れない。それが、千咲のおねだりによって外された。弘樹は欲望の赴くままに、千咲に向かって腰を激しく振り立てた。
- 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……んっ、くっ、うっ、ううううううっ!」
- 千咲はそんな弘樹と自分の繋がっている部分を凝視しながら、乳首とクリトリスを執拗に愛撫する。容赦も手加減もないその動きは、完全に本気オナニーになっていた。とにかく自分の身体を感じさせようという欲望のみの動き。その激しくもはしたない動きが、弘樹をさらに興奮させた。
- 「んはあああっっっ!!! あっ、あっ、あっ、あっ……そ、そこ……もっと……乳首つねって……クリトリスも……んんんんんっ!!!」
- 何度も千咲の身体が跳ね上がりそうになる。弘樹はそんな千咲を押さえ付けながら、フル勃起ペニスで千咲の中をガンガン蹂躙し続けた。
- 「んっ、あっ! あっ、はっ、やっ、はっ、あっ、ああああああっ!!!」
- 千咲の中がギュウギュウと弘樹のモノを締め付けてくる。それは、いつもの絶頂のときの動きに似ているように弘樹には感じられた。もしかすると千咲は、小さめのオーガズムを断続的に感じているのかもしれない。弘樹の中にわずかに残った冷静な部分が、千咲の激しい感じ方をそんな風に分析していた。
- 「あっ! あっ! あっ! あっ! いいっ……気持ちいいっ! 乳首も……クリも……おじさんのちんぽもぉっ! んうぅぅぅぅっ……んっ、はっ、あっ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ……すご、い……こんなに……クリトリス勃起して……それに……おじさんのちんぽが……んんっ! おじさんのちんぽがっ……出たり入ったりしてるぅぅぅぅっ!」
- [image "01" file=../Images/p027.jpg] 「うううっ!」
- 千咲が自分の状態をイヤらしい言葉で実況する。その実況が弘樹を聴覚でも興奮させ、弘樹自身もまた絶頂に向かって一歩、また一歩と追い詰められてしまった。
- 「んううっ……イッちゃう……イッちゃいそう……ね、おじさん……私……私もう……」
- 潤んだ瞳で弘樹を見上げる千咲。弘樹は千咲を見つめたまま、コクンと頷く。
- 「うん……イこう……一緒に……んあああんっ……一緒に……思いっきり……イッちゃおう!」
- 弘樹の額に浮かんだ汗が、頬を伝って顎からポタリと滴り落ちる。ちょうど唇に落ちてきたそれを、千咲がピンクの舌で舐め取る。
- 「んっ、くっ! 千咲……千咲ぃぃぃっ!」
- まるでそれが合図だったかのように、弘樹が猛烈なラストスパートをかけた。
- 「ひああああああっっっ!!! あっ! あっ! あっ! あっ! おじさんっ! おじさんっ!!! んあああああああっっっ!!!」
- 絶叫に近い千咲の叫び。たとえ扉が閉まって鍵がかかっていたとしても、この研究室は防音ではない。近くに誰かいたら、確実に聞かれてしまっていただろう。しかし千咲にも弘樹にも、もうそんなことを考える余裕は残されていなかった。
- 「んっ! んっ! んっ! んっ! イク! イッちゃう! イクゥゥぅぅぅぅぅ!!!」
- ギューッと千咲が自分のクリトリスと乳首を強い力でつまみ上げた。まるでその力がそのまま伝わったかのように、千咲の膣が弘樹のペニスを締め付ける。
- 「くううううっ!!!」
- それが最後の引き金になる。弘樹は、欲望のすべてを千咲の中に解き放った。
- 「んはああああああっっっ!!! あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
- ドクンドクンと、絶頂で仰け反る千咲の胎内に弘樹のペニスが大量の精液を流し込んでいく。収まりきらなかった精液は結合部からドロリと溢れ、弘樹の机を白く汚していた。
- 「あぁぁぁ……溢れてる……おじさんの精液……私の中から……」
- 激しい絶頂に疲労困憊しながらも、どこか満足げな千咲の笑み。弘樹はそんな千咲の上にグッタリと倒れ込み、千咲の胸に頭を寄せた。
- 「はあ、はあ、はあ……こんなに毎日生ハメしてたら、そのうち妊娠しちゃうかもな」
- ドクドクと早鐘のような千咲の鼓動を聞きながら、弘樹はそうつぶやいた。千咲はそっと弘樹の頭に腕を回すと、ギュッと抱きしめ耳元で囁いた。
- 「いいよ。おじさんになら孕ませられても。っていうか、おじさんの赤ちゃん妊娠したい……かも」
- 「千咲……」
- 「ふふふ。なーんてね」
- 嘘かホントかわからない、単なる事後のピロートーク。弘樹も千咲も、そんな風に思っていた。しかし……。
- [image "P000.png" file=../Images/m006.png] 家庭教師が終わった。
- とりあえず予定されていた夏休み前のスケジュールが終わり、模試の結果の報告に来た弘樹に、雄一はこの上なく感謝した。それもそのはず。落第寸前まで落ち込んでいた千咲の成績を以前と同じかそれ以上の水準まで引き上げ、そればかりかどう対応していいのかわからなくなっていたギャル千咲を、元の優等生千咲に戻してくれたのだから。しかし直後、雄一は激怒することになる。なにしろ、千咲が家を出て弘樹のところに居候すると言い出したからだ。それには弘樹も驚いた。そんなこと、事前になにも聞いていなかったから。ギャーギャーわめく雄一と、突然のことに唖然とする弘樹。そんな二人を見ながらニヤニヤする千咲と、なぜか微笑む雄一の妻・佳織。その態度から弘樹は、知らなかったのは男性陣だけだったと気づく。結局この日はそのままお開きになり、後日改めて話し合いの場が設けられた。
- 結局、千咲は弘樹の部屋に居候することになった。最初から賛成だった佳織の意見に渋々ながら雄一が同意した形になった。これには弘樹も驚いた。
- 佳織曰く、「確かにちーちゃんは元の成績や見た目に戻ったけど、中身はそれほど変わらない。相変わらず雄一さんは娘にどう接すればいいかわからないし、ちーちゃんの方でもあまり雄一さんを相手にしていない」とのこと。その佳織の言葉に、弘樹は頷くしかなかった。あれだけの経験をしていれば、昔の千咲のままでいられるはずがなかったし、そもそもギャル千咲の中身は優等生千咲の中身とそれほど変化していなかった。千咲の好みが少し変化しただけで、ギャル千咲の存在というのもそれほどイレギュラーなものではなかったのだ。つまり雄一は、もともと千咲と折り合いが悪かったことになる。雄一がそれを自覚していたかどうかは不明だが。
- そして雄一としても、誰かわけのわからない相手ならともかく、弟である弘樹なら千咲を預けても大丈夫、そんな風に思うようになったらしい。しかし弘樹は、雄一には別の思惑があるのではないかと弟ながらに邪推していた。それは、佳織との二人きりの生活を取り戻せるということである。千咲が家を出たら、佳織とまたイチャイチャできる、佳織にベタ惚れな雄一は、そんな風に考えたのではないか、と。
- ともあれ、弘樹と千咲はそうして同棲生活を開始した。千咲は弘樹の部屋から学校に通い、放課後は弘樹に勉強を教わり、弘樹の食事の支度をし、弘樹の身の回りの世話をし、夜には同じベッドで一緒に眠った。そして春には、千咲は弘樹の大学に通う学生の一人となった。
- 表面的には順風満帆。雄一の方も、弘樹に預けて正解だった、などと喜んでいた。だが、問題がないわけではなかった。
- 「んっ、んっ、んっ……ふふふ。やっぱりおじさんとのセックスは気持ちいいなあ」
- 当たり前のように、その日も千咲は弘樹にまたがる。しかし、明らかに以前と違っているところが一つあった。
- 「気持ちいいのはいいんだけどな、千咲」
- 「ん?」
- 「大丈夫なのか? お腹」
- 「うん。大丈夫だよ。もう安定期だしね」
- 「そうか」
- 出ているところは出ているが、どちらかと言えばスリムな方だった千咲。しかし今は、そのお腹がポッコリと出ている。胸も以前より膨らみ、腰回りも気持ちガッシリとしていた。お腹が邪魔なのか、今日は弘樹に背中を向けるような形でまたがっている。
- 「それに、無理に我慢する方が身体に毒だってさ。あんまり激しいのはダメだけどね」
- 「そういうもんなのか?」
- 「そゆこと。だから、安心して私を気持ちよくさせてね、パパさん」
- 「ああ」
- そう。千咲は妊娠していた。もちろん、その子の父親は弘樹である。
- 「んっ、んっ、んっ、んっ」
- お腹が大きくなり若干窮屈そうに、千咲が腰を振る。弘樹は恐る恐る千咲のお腹を支えながら、下から小さく腰を突き上げた。
- 「んああああ……あ、あ、あ。ね、おじさん……おっぱいも……おっぱいも揉んで……」
- 「ああ。わかった……こうか?」
- 「うん、そう……ん、ん、ん、ん」
- 背後から手を回して、弘樹が千咲の胸を揉む。同棲して以来、当然のようにほぼ毎日セックスしていた千咲と弘樹。その二人からすれば、今日のこのセックスはかなり久しぶりのものだった。
- 「あああ……気持ちいい……んっ、あっ、あっ、あっ」
- 我慢できずに弘樹は何度か千咲に手や口で抜いてもらってはいたが、本番行為はほぼゼロ。その反動なのか、いつも以上に千咲は積極的に見えた。
- 「ふふふ」
- 不意に笑みを漏らす千咲。
- 「ん? どうした?」
- 「いや、なんかよく私がこんなに長い間セックスなしで我慢できたなーって思った」
- 「それか。俺も今、そのこと考えてた」
- 「まあでも、その代わりにいろんなことはしてたけどねー」
- 「だな」
- 手コキにフェラチオ、乳首責めにアナルいじり。挿入以外のことはほとんどした。
- [image "01" file=../Images/p028.jpg] といっても、それはほぼ千咲が攻めで弘樹が受けである。千咲にとっては、ややストレスのたまる行為ばかりだった。
- 「んはあああっ……あっ、あっ、あっ、あっ……いい……すごくいい……やっぱりこれがないと……んはああ……おじさんのちんぽがないと、満足できない……」
- 少しずつ千咲の動きが滑らかになっていく。大きなお腹を抱えたままでのセックスに、慣れてきたのかもしれない。
- 「んっ、んっ、んっ……あっ、あっ、あっ、あっ……ああんっ……んあああああっ」
- 千咲がセックスに没頭していく。弘樹も引きずられそうになるが、最低限の意識は冷静なままで残した。深く突きすぎないように注意しなければいけない。何しろ、千咲のお腹には弘樹の子供がいるのだから。
- 「んはあっ!!!」
- 弘樹は意識を分散させようと、胸を揉む手の方の動きを活発化させた。妊娠前と比べてややくすんだ色合いに変化したように思える千咲の乳首を、指先でキュッと摘む。千咲は以前からそこが敏感だったが、妊娠してからはやや鈍くなったように思えた。もしかするとそれは、授乳の準備なのかもしれない。
- 「ふあっ!」
- 「なっ!」
- 思わず弘樹は声を上げる。千咲も、驚きの表情を浮かべていた。
- 「あ、あ、あ、あ……なに、それ……」
- 弘樹がギュッと強く握った乳首の先端……妊娠して少し色が変わった千咲の乳首から、白っぽい液体がビュビュッと噴き出していた。
- 「ペロ……これは……母乳?」
- 弘樹は指先についたそれを舐め取り、舌先で味を確認する。
- 「んっ、んっ、んっ、んっ……わた、し……ホントに……ママに……あああああっ」
- 弘樹が千咲の乳首を摘むたびに、ピュッピュッと白い液体が飛び出した。時期は少し早いかもしれないが、妊娠しているのだからそうなっても当然なのかもしれない。弘樹は妙な感慨に浸りながら、千咲の乳首を刺激し続けた。
- 「んはあああっ! あっ、あっ、あっ……出てる……母乳……私母乳出てるぅっ!」
- 久しぶりのセックスであることに加え、大きくなったお腹と乳首から噴き出す母乳。それは千咲がいつも以上の興奮を憶えるのに十分な材料だった。乳首を摘む弘樹の手に自分の手を重ねながら、千咲はさらに激しく腰を揺すっていく。
- 「母乳セックス! 私、本当に妊娠しちゃってるっ! おじさんの子供……ああんっ。おじさんの赤ちゃん、孕んじゃってるぅぅぅっ」
- 背後から千咲の胸を揉みながら、クイクイと腰を動かす弘樹。弘樹は、千咲の中が以前とは違っているように感じていた。久しぶりだから、というだけではない。やはり妊娠したことによって、千咲の中は微妙に変化しているようだった。とはいえ、その締め付けはやはり素晴らしい。むしろ、柔軟性が増して以前より気持ちよさが増しているようにも感じられた。
- 「ああんっ……セックス……セックス気持ちいい……おじさんの生ちんぽ……いいっ!」
- 気持ちよさに軽く仰け反った千咲が、その頭を弘樹の肩に預けてきた。千咲の髪から、千咲の香りが弘樹の鼻腔に届く。うすい石鹸の香りに汗の匂いが少し混じったような香り。弘樹はそれを胸一杯に吸い込みながら、千咲の中を思いきり突いた。
- 「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ……あっ、あっ、あっ、あっ!」
- 千咲の声が甲高くなっていく。弘樹の息づかいも、切羽詰まったものになっていく。
- 「ダメ……イク……お腹に赤ちゃんいるのに……おじさんのちんぽで……私……私……」
- 弘樹は自分の中の熱い塊が、千咲の子宮に吸い上げられるのを感じた。
- 「くっ! 千咲っ、外に出すぞっ」
- 瞬時の判断で、弘樹はペニスを引き抜こうとした。しかし千咲は、グイッと腰を強く押しつけてくる。
- 「ダメぇっ! おじさんのは全部、私の中で受け止めるのぉっ!」
- 妊娠してるのだからと弘樹は思ったが、千咲の膣が抜くなと言わんばかりにギュギュッと締まってきた。その締め付けが、弘樹の射精を促してしまう。
- 「あっ! あっ! あっ! あっ! イク……私……くっ! イクゥぅぅぅッ!!!」
- 「ちさ、き……んんんっ!」
- [image "01" file=../Images/p029.jpg] 「んはああああああああっっっ!!! イクぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」
- ビュビュビュッと、久々に千咲の中で弘樹の欲望が爆発した。大量の精液を胎内に浴びて、千咲もガクガクと身体を震わせながら絶頂に達した。
- 「んはああっ……おっぱい……おっぱいがぁ……」
- イク瞬間に弘樹がギュッと乳房を握りしめたためか、まるで射精でもしたかのように千咲の乳頭からも見事に白いモノがビュビュビュッと噴き出していた。
- 「あぁぁぁ……すごい……私も……白いの……いっぱい出しちゃったぁ……射精みたいに……はあ……はあ……はあ……射精みたいにいっぱい……」
- うっとりとした表情を浮かべながら、千咲がグッタリと弘樹に寄りかかっていく。
- 「千咲……」
- 弘樹はそんな千咲を抱き留め、ジットリと汗ばんだ身体にピッタリと密着しながら、そっと首筋にキスをした。
- 「んっ……」
- 千咲が小さく身体を震わせる。その震えが、いまだに繋がったままの下半身を通して弘樹のペニスにも伝わってきた。
- 絶頂の余韻に浸り、グッタリと身体を弛緩させている千咲。しかしその膣は、弘樹のペニスをしっかりと咥え込んだままで離さない。しかもわずかにウネウネと動いて、最後の一滴まで精液を搾り取ろうとしている。弘樹は、そんなヴァギナとペニスの関係が、まるで自分と千咲のことを表しているようだと思った。
- 「ふふふ……これからもずっと一緒だからね、おじさん」
- 「ああ」
- 「赤ちゃんのこと、いつ報告しに行こうか?」
- そのひと言で、弘樹の心臓がドクンと一つ跳ね上がる。密着した背中越しにそれを感じ取り、千咲の口元が小さくイタズラっぽく微笑んだ。
- 「ふふっ。生まれちゃう前に決心してよね。パパ」
- 弘樹の仕事も千咲の勉強も、すべてが順調だった。たった一つ、そのことだけが問題だった。とはいえ、弘樹も千咲もそれをマイナスには考えていない。とてつもなくめんどくさくてとてつもなく難しい問題だが、それをどうにかして乗り越えようというポジティブさが二人にはあった。しかし、雄一には……。
- 最悪で、最高に幸せな悩み。
- 弘樹はその悩みにどうやって兄を巻き込んでやろうかと、最愛の姪の身体を抱きしめながら、ゆっくりと考えていた。
- 午前央人
- Outo Hirumae
- みなさまギャルはお好きですか? 私は好きです。
- もちろん黒髪美少女も好きですが、ギャルにはギャルの独特のよさがあると思います。派手な外見で包み隠した、柔らかく純粋な魂。彼女らは自分たちの好みに素直に従ったが故に、あのような見た目や生き方を選択しています。周りの目を気にせず、自分たちに正直に。ある意味、オタクの生き方に一番近い異性は彼女たちなのかもしれません。出会いさえあれば、最高のパートナーになってくれる可能性もあることでしょう。オタクの生き方をリスペクトし、普段はギャルでも、あなたの前では素顔の少女……みたいな。以上ここまで、個人的妄想と思い込み。
- そんなギャルと黒髪美少女の両方を楽しめるのが本作です。ノベル版『姪のビッチ化が許せない!』は、いかがでしたでしょうか。ゲーム版の方では主人公・弘樹の選択によって二つのルートに分岐しますが、ノベル版ではそれをアレンジしてひとつのルートとして描いています。個人的にはチャラ男クンをもっとクローズアップしてみたい気持ちもありましたが、ぶっちゃけ本筋とあまり絡みがないのでゲーム版と同じように弘樹の策略の餌食となってもらいました。グッバイチャラ男。また会う日まで。続編があるとしたら、千咲の友達たちに注目してみるのもいいかもしれません。外見どおりに派手なのか。それとも千咲同様、ひと皮向けば別の個性が息を潜めているのか。
- それでは、また別の作品でお会い出来ることを祈りつつ、本日はこれにて。
- オトナ文庫
- 姪めいのビッチ化かが許ゆるせない!
- 2015年 EPUB版発行
- ■著 者 午前央人
- ■イラスト 了藤誠仁
- ■原 作 Blue Devil
- 発行者 久保田裕
- 発行所 株式会社パラダイム
- 〒166-0011
- 東京都杉並区梅里2-40-19 ワールドビル202
- TEL 03-5306-6921
- (c)OUTO HIRUMAE (c)Blue Devil
- この本は縦書きでレイアウトされています。
- また、ご覧になる機種により、表示の差が認められることがあります。
- ●著作権に関して
- 本作品の全部または一部を複製、編集、修正、変更、頒布、貸与、公衆送信、翻案、配布する等の著作権及び著作者人格権侵害となる行為、および有償・無償に関わらず、本データを第三者に譲渡することは禁止いたします。
- ●お断り
- 本作品を電子書籍にて発行するにあたり、簡体字・繁体字などの電子書籍として表現できない文字、ルビ、記号、表組み等、または電子書籍として表現がむずかしい部分等は、印刷出版と異なる表記になっている場合があります。
- また本作品で紹介したwebサイトのURLは印刷出版した時点の情報となります。リンク切れや情報が異なる場合があります。
Advertisement
Add Comment
Please, Sign In to add comment
Advertisement