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- FILENAME: text_310431-1.txt
- 序文
- 彼方の大切な宇宙は ひとつきりしか在りません。
- けれども 一度だけ、 時の果ての水面に 其の姿を映しました。
- 掌から零れた 彼方の大切な宇宙を、 いつか忘れてしまわぬように。 確かに在ったと、示せるように。
- 水面の姿が 例え今と違ってしまっていたとしても、 彼方の大切な宇宙が在ったことを、忘れない為に
- …此れより始まるお話は 此処とは違う 水面に映る魔法少女の物語
- Kuroe’s magia story for animation
- キュゥべえ: 「僕と契約して、魔法少女になってよ」
- 黒江: 神様なら 魔法少女のこと 信じられますか? 今日 人間の言葉を喋る猫が 私に魔法少女になって欲しいと言ってきました
- 黒江: 魔法少女になれば ひとつだけ願いを叶えてくれる代わりに 魔女と戦って欲しいんだそうです
- 黒江: …………
- 黒江: 両親や兄姉に話しても 全然通じなくて 私が童話作家になりたいんだと 勘違いされてしまいました
- 黒江: 高校も、文系のしっかりしたところを 探さなきゃって…
- 黒江: 本当に童話を書かなくちゃいけなくなったら どうしよう…
- 黒江: すみません どうでもいい話でした
- 黒江: 神様には悪いけど 神様は こう なんて言うか 存在もふわっとしてるし 全体的に曖昧だから、
- 黒江: 魔法少女みたいな 非現実的な問題を相談するなら 神様みたいな人のほうがいいかと思い こうして相談しています
- 黒江: …………
- 黒江: 神様もあの猫みたいに 人間の言葉が喋れたらよかったんですが…
- 黒江: 昨日はよく眠れなかったけど いつも通りの時間に起きて いつも通りに学校へ行く
- 黒江: …………
- 黒江さんって、 家でも毎日お祈りしてるの?
- 黒江: ? 毎日じゃないけど…
- 黒江: みんなも学校で 毎日お祈りしてるでしょ?
- え~~、しないよ~
- 先生がいたらやるけど、 あんなのみんな適当だし~
- 黒江: そうなの?
- 確かに、うちって それ系の学校だけどさ
- 黒江さんは、それ系の職業に なりたくて入ったの?
- 黒江: そういう訳じゃないんだけど…
- 黒江さんにピッタリだし、 いいと思うけどな~
- なんか神聖っていうか、清純な?
- 黒江さんっぽいよ~
- 黒江: そうかな?
- 私らには絶対無理だからさ~
- 黒江さんみたいに 純粋じゃないっていうか?
- 黒江: そうなんだ
- 黒江: 私はきっと世の中のことをあまり知らない
- 黒江: だからときどき 世の中というフィルターを通して見える 自分の姿に戸惑うことがある
- 黒江: 他の人たちには 私はどんな人間に見えているんだろう
- ……お前とおれでは、 よっぽど人格がちがうんだよ。
- たとえばおれは、青いそらを どこまででも飛んで行く。
- おまえは、 くもってうすぐらい日か、
- 夜でなくちゃ、出て来ない……
- 黒江さんの感想文って なんかいいね
- 俺、文章見て感想なんて 全然思いつかないし
- 書かれてないこととかも よく分かんないからさ
- ちょっと なに口説こうとしてんの?
- 私らの黒江さんを 汚さんといてよ!
- 褒めてるだけだって
- 黒江さんもキモイならキモイって 拳で伝えんといかんよ?
- そこ!
- グループ学習は 雑談会ではありませんよ?
- うげ あんたのせいで怒られたやん
- 黒江さんのおすすめの本教えてよ
- 黒江: うん…
- 黒江: その日、私は感想を褒めてもらった
- 黒江: ずれてるとか、変わってるとかじゃなくて いいって言ってもらえた
- 黒江: 生まれて初めて、人に本を勧めた
- キュゥべえ: 願い事のこと 考えてくれたかい?
- キュゥべえ: この周辺地域には今 魔法少女がいないから
- キュゥべえ: 僕としては 早い方が助かるんだけど
- キュゥべえ: この間も説明した通り 君には願いと引き換えに
- キュゥべえ: 魔法少女として魔女と戦う運命を
- キュゥべえ: 受け入れてもらうことに なるからね
- キュゥべえ: ちゃんと考えた上で
- キュゥべえ: 決めてもらうべきだとは 思っているよ
- 黒江: 神様 私は自分で物事を 選ばなくちゃいけなくなったとき とても不安な気持ちになります
- 黒江: どうやって、どういう気持ちで選んだらいいのか 私には分からないんです
- 黒江: 神様には悪いけど お祈りは何も決めなくていいから好きです
- FILENAME: text_310431-2.txt
- 堅雪かんこ、凍み雪しんこ 狐こんこん狐の子、狐の団子は兎のくそ
- なんで狐は、四郎とかん子が キビダンゴを食べただけで
- こんなに喜んだんだろう?
- 狐のキビダンゴを 兎のくそだって言ったの
- かん子なんだしさ
- 狐からしたら、ほらみろ くそじゃなかっただろ!って
- 怒るんじゃないかな?
- 黒江: 狐は自分たちが 嘘をついてないことを
- 黒江: 信じて欲しかったって 書いた人が思ってるから?
- へえ!
- キビダンゴ食べさせた だけなのに?
- どうして?
- 黒江: 書いてあるから?
- そうなの? 書いてた?
- じゃあこれ書いた人が おんなじ状況になったら
- キビダンゴ食べて 躍りあがるってこと?
- 黒江: 分からない
- 黒江: そうできたら良いとは 思ってるんじゃないかな
- 黒江さんはちゃんと考えてて すごいなあ
- 俺なんかいっつも適当に 生きてるからさあ
- 黒江: そんなことないよ
- 黒江: 私の話、家族からも ずれてるって言われるし…
- ずれてるかどうかは よく分かんないけど
- 黒江さんが考えて話してるのは いいことだと思うけどな
- そういえば、黒江さんはもう 志望校が決まってるのね?
- 黒江: はい
- 黒江: まだ決めないほうが よかったでしょうか?
- いろいろ対策だって立てられるし 後で変えてもいいんだから
- とりあえず選んでおくのも いいと思うわよ?
- 推薦希望だったわよね?
- 黒江: 私は、次の春には 中学3年生になって その次の年には受験があって、高校生になる
- 黒江: 同じクラスの人たちは受験する高校なんて まだ分からないと言っていたけど
- 黒江: 私は両親に勧められた高校の 推薦入試を受けたいと書いた
- 黒江: 私はとくに行きたい高校なんてなかったし この中学校にだって、両親の勧めで入ったから…
- 志望理由なんだけど…
- ご両親に勧められたことは 良いことね
- でも、それだけだと ちょっと消極的に見えてしまうわ
- 黒江さん自身が選んだ理由も 合わせて書いてみたら?
- 黒江: ない場合は、 どうしたらいいでしょうか?
- そうね、実際に願書を書くのは まだまだ先なんだし
- いろいろ調べて じっくり考えてみましょうか
- 黒江: 行きたくなる理由って、 例えばどんなことでしょう?
- まあ…そうね
- 相手から選ばれやすい理由を 書くことだって
- 悪いことじゃないわ
- 黒江: 私以外の人が喜ぶ 私の理由…
- 黒江: (難しいな……)
- キュゥべえ: 願い事のこと 考えてくれたかい?
- キュゥべえ: 急かしているわけじゃないけど こちらにも少し事情があってね
- キュゥべえ: なるだけ早いうちに 回答をもらえると助かるよ
- 黒江: 神様 なんでもひとつだけ願いが叶うのだとしたら
- 黒江: 何を叶えたらよいでしょうか? そんなこと考えたこともありませんでした
- 黒江: 私が本当に望んでいることを 叶えてもらうべきでしょうか?
- 黒江: でも本当に望んでいることって なんだろう?
- 黒江: それとも 誰かから見た私が望んでいそうなことを 叶えてもらった方が
- 黒江: 私以外の人たちも喜んでくれるのでしょうか?
- FILENAME: text_310431-3.txt
- 黒江: あのね、もし
- 黒江: なんでもひとつだけ 願い事が叶うなら
- 黒江: 何をお願いしたいとか、 あったりする?
- え? 願い事か~~
- 推しと結婚!
- 私は5億円欲しいとか
- とびきり美人に なりたいとかの方が
- いいと思うけどな~~
- いんや! お金より何より、推しとの生活!
- 彼がいない人生なんか 人生じゃない!
- 黒江: そうなんだ
- 黒江さんは誰の話も 最後まで聞くから
- ほんと偉いよね~
- でもこんな話、 真に受けちゃ駄目だよ~?
- 黒江: そうなの?
- なんッでよ!?
- だって黒江さんは
- もっと高尚な願いとかが 聞きたかったんじゃないの~?
- 黒江: そんなこと…
- ほら! そんなことないって!
- まだ言ってないでしょ
- 黒江: でも、言うつもりだった
- そらな!? 黒江さん!
- 願いも、目標も、最後は 好きなもんにつながるんよ!
- 黒江: そうなの?
- 結論が極端だな
- 好きなもんのために決めて 好きなもんのために行動する
- 人生の基準がそうなんだから 結婚しちゃえば、最!強!
- 黒江: そうなんだ
- 結婚はまたちょっと違うでしょ
- 結婚、それは、新しい世界! 新しい暮らし!
- それがどんなだって、 新しいものに出会うことが
- 人生ってもんでしょうが!
- 黒江: 私は彼女がうらやましいと思った 夢中になれるものがあったら
- 黒江: 行きたい学校とか 欲しいものとか やりたいことも
- 黒江: すぐに思いつくようになれるのかな?
- 黒江: たこ焼きが焼かれているところを 見てるのが好き
- 黒江: なんでもなかったクリーム色の液体が くるくる回転しているうちに たこ焼きになっていく
- 黒江: わたしもくるくると考えているうちに いつかたこ焼きみたいに
- 黒江: はっきりとした個人になれるのかな?
- 黒江: くるくる くるくる
- 黒江: 新しい場所へ行くのが苦手でも、 いつか自分の中身を決められる日が来るのかな?
- 黒江: 私も誰かと付き合ったりしたら 何か変わるのかな?
- キュゥべえ: やあ、願い事は決まったかい?
- 黒江: 私は、生まれて初めて 大切なことを 誰かに反対されるかもしれないことを 自分自身で決めた
- 黒江: 自分で選んだその運命を手にした瞬間は すべてが輝いて見えて
- 黒江: これから戦う恐ろしい魔女のことも 恐ろしくなんてなかった
- 黒江: こんなことも叶っちゃうんだ… 魔法少女ってすごい…!
- FILENAME: text_310432-1.txt
- 黒江: キュゥべえと契約をして願い事を叶えてもらった私は 魔法少女となり、魔女と戦うことになった
- キュゥべえ: お手柄だよ
- キュゥべえ: 少し危なっかしくはあったけれど 無事に魔女を倒せた
- 黒江: ねえキュゥべえ 魔女ってあんな怪物ばかりなの?
- 黒江: 私、もう魔法少女なんだから 死んじゃったりしないよね?
- キュゥべえ: さっきの戦闘で 君が命を落とすことは
- キュゥべえ: 十分考えられたよ
- キュゥべえ: あの魔女は数週間前から 確認されてはいたんだけれど
- キュゥべえ: この周辺には 魔法少女がいなかったから
- キュゥべえ: 対処できずに困っていたんだ
- キュゥべえ: その間に犠牲者から エネルギーを奪い
- キュゥべえ: 力を蓄えていたみたいだけど
- キュゥべえ: 君がなんとか倒してくれて 本当によかった
- キュゥべえ: 今日倒せなければ 数日のうちにまた
- キュゥべえ: 犠牲者は増えただろうしね
- 黒江: …あの魔女に襲われた人、 どうなったの?
- キュゥべえ: 大半は命を失っているだろうね
- 黒江: !?
- 黒江: なんでもっと早く 言ってくれなかったの…?
- キュゥべえ: 願い事のことだってあるし
- キュゥべえ: 君には時間をかけて選ぶ 権利がある
- キュゥべえ: 魔法少女の契約は 強制されるものではないからね
- 黒江: でも、私がすぐに 契約しなかったから
- 黒江: その間に死んじゃった人も いるんじゃないの?
- キュゥべえ: いるかもしれないね
- 黒江: 私がもし、 契約するのを断っていたら…?
- キュゥべえ: その時は、 被害状況を説明した上で
- キュゥべえ: あらためてお願いしていた かもしれないね
- 黒江: 私は取り返しのつかないことを してしまったのかもしれないと思った
- 黒江: けれどそれは 自分の命が危険にさらされることに対してなのか 迷っている間に殺された人がいるかもしれない ことについてなのか
- 黒江: 分からなかった
- 黒江: 私が魔法少女になる時の願い事は 彼を恋人にすること
- おはよう 黒江
- 黒江: 恋人同士がどういったものかは よく分からないけど
- 黒江: 彼が毎日話しかけてきてくれるだけで 私は嬉しかったし
- 黒江: 何かになれたような気がした
- どうしたの? 寝不足?
- うちの部活も大会前だから やたら気合入っちゃっててさ
- 新体操部はどうなの?
- でも、黒江が運動してるのって ちょっと意外…
- あ、もちろん、いい意味で…
- 今度応援しに… あ、黒江は出ないの?
- そっかー 去年は出たんだ
- もっと早く、 黒江と話せてればよかった
- 黒江: 彼の声を通して私のことを聞くたびに ぼやけていた私の輪郭に すこしずつピントが合うようで
- 黒江: 恐ろしい魔女のことも 魔女に襲われる人たちすらも その瞬間だけは忘れられるような気がした
- 明日、部活休みに なったんだけど…
- 黒江が教えてくれた本が 映画になったやつ
- 明日から始まるみたいだからさ、 一緒に観に行かない?
- 黒江: !
- 黒江: うん
- 黒江: その日私は彼と二人で電車に乗って 少し離れた映画館へ行った
- 黒江: 正直、映画の内容は期待していなかったけれど 思ったよりはずっと面白かった
- 黒江: でもそれも、彼と二人だったからかもしれない
- 映画、来てよかったね
- 黒江: 映画の中では主人公が多くの人たちを救っていた
- 黒江: あれはお話の中の出来事だけど 私だって今は魔法が使える
- 黒江: 魔女に襲われる人たちだって 私の魔法で、助ければいいんだ
- 黒江: !!
- どうかした?
- 黒江: 私、ちょっと 帰らなきゃ…
- 黒江: 今日、映画 すごく楽しかった
- 黒江: ご、ごめんキュゥべえ 遅くなっちゃった
- 黒江: 魔女は?
- キュゥべえ: あの結界の中にいるよ
- キュゥべえ: さっき子どもが一人 引き込まれてしまったみたいだね
- 黒江: い、急いで助けなきゃ!
- 黒江: 子ども…どこ?
- 黒江: 誰かいますか!?
- 黒江: いるなら返事を…
- 黒江: う…
- キュゥべえ: 手遅れだったようだね
- FILENAME: text_310432-2.txt
- キュゥべえ: 犠牲者が出てしまったのは 残念だけど
- キュゥべえ: 君のおかげで 魔女は無事退治された
- 黒江: …………
- 黒江: 神様 私はひと時でも 今ある問題から目を背けたかったんです
- 黒江: そのせいで 誰かが死んでしまいました
- 黒江: 私が彼と映画になんて行かなければ あの子どもは死なずに済んだかもしれない
- 黒江: 許して欲しいわけじゃないんです そんな都合が良いことは考えていません
- 黒江: ただ私は 祈ることくらいしか思いつきません…
- 黒江: 心が沈むとソウルジェムも くすんで見える
- 黒江: 魔法を使うために必要なこの宝石は まるで私の心を映しているようだった
- FILENAME: text_310432-3.txt
- 黒江: 倒しても倒しても 魔女は現れる
- 黒江: 私はそのたびに 死にかけて
- 黒江: 私が殺されかけているうちに
- 黒江: 他の誰かが死んでいる
- キュゥべえ: 「またその質問かい?」
- キュゥべえ: 「この地区に魔法少女の素質がある人間は まだ現れていないよ」
- キュゥべえ: 「それに前にも話したけど 新しい魔法少女の数が増えても」
- キュゥべえ: 「魔女から得られるグリーフシードの数は 今まで通りひとつきり」
- キュゥべえ: 「つまり奪い合いが 起こってしまうということさ」
- キュゥべえ: 「なぜかって?」
- キュゥべえ: 「グリーフシードが得られないということは ソウルジェムの浄化がままならなくなり 魔力を正常にコントロールすることが 難しくなる」
- キュゥべえ: 「そんな状態で魔女と戦っても勝ち目はない」
- キュゥべえ: 「つまり、ひとつでも多くの グリーフシードを得られる魔法少女が より長く生き残るんだ」
- キュゥべえ: 「それは無理な相談だよ」
- キュゥべえ: 「君は願いと引き換えに 魔女と戦う運命を受け入れたんだんだからね」
- キュゥべえ: 「それに、君は君自身を 卑下する必要なんてない」
- キュゥべえ: 「たとえ強力な魔力をもっていないとはいえ 君が魔女を倒したことで救われた人間は 確実に存在するじゃないか」
- キュゥべえ: 「君が戦うことを放棄してしまったら いったい誰が あの人間たちを救うと言うんだい?」
- 黒江: 気がつけば、私はもう3年生になっていた
- あれ? 黒江も部活だったの?
- 黒江: …うん
- ここんとこ ずっと元気ないけど
- 何かあった?
- 部活にも ほとんど行ってないって
- 聞いたし…
- 黒江: みんな部活好きなのかな
- 好きだからやってる人が 多いと思うけど
- そうじゃない人だって いるんじゃない?
- 黒江: 好きでもないのに
- 黒江: 一生懸命やらなきゃ いけないことって
- 黒江: どうすればいいんだろう…
- 部活とか、勉強の話?
- あ、黒江さん まだ残ってたのね
- ちょうどよかったわ
- 3年生になったし 推薦に備えて
- 小論文の課題とかも はじめてみる?
- 黒江: (そうだった…推薦入試)
- 黒江: あ…………はい
- それじゃ、まずはこれね
- 小論文: 全ての生徒が平等に学校を楽しむためには 何が出来るか
- 黒江: はい…
- 提出はそんなに 急がなくて大丈夫だけど
- 質問したいことがあったら 遠慮なく聞いてね?
- 黒江は真面目過ぎるんだよ
- 死ぬわけじゃないんだから
- もっと適当にやって 大丈夫じゃない?
- 少しくらいやらなくなったって、 誰も怒ったりしないって
- 黒江: …そうだね
- 黒江: 次の日、私は新体操部をやめた
- 黒江: 私は大会に出るような選手じゃなかったし みんなは私が受験勉強でやめたんだと思ってる でも、本当は違う
- 黒江: 私が魔法少女だから
- FILENAME: text_310432-4.txt
- 黒江: 神様 魔女と戦わなくてもいい生活 私のせいで誰かが死なない生活
- 黒江: あんなに悩んでいた願い事が いまはこんなにすぐ いくつも出てくるなんて とても皮肉なことだと思います
- どうしたの? 考えごと?
- 黒江: …他の誰かのために、 命ってかけられる?
- 黒江: ●●●●が噛み砕かれるときの音は?
- 黒江のためなら? みたいなこと?
- 黒江: そうじゃないの 知らない誰か
- 黒江: 皮膚の下の●●●●の色は?
- 難しいなあ…
- 相手が美人か子どもとかなら 命かけられるかも?
- 黒江: どうして?
- 例えば、黒江を助けるためなら 命はかけられるけどさ
- 知らない人のために そうする理由って
- なんか適当な感情とかじゃ ないのかなあ
- 黒江: もし、命懸けなら 助けられたかもしれない人を
- 黒江: 足がすくんで助けられなかったら
- 黒江: どれくらいの罰を 受けなきゃいけないと思う?
- 黒江: 潰されて飛び散った●●●●の匂いは?
- それで罰なんて受けてたら
- 誰も人助けなんてしようと 思わなくなるんじゃない?
- 自分に出来ることをやるだけでも 十分じゃない?
- 黒江: 出来るはずのことを やらなかったら?
- 黒江: もう助からない●●●●の温もりは?
- なんか悩んでたりするの?
- 黒江: …………
- 話してみてよ
- 黒江: わたし、すぐ死んじゃうかもしれないの
- え? なんで!?
- 黒江: 生きてる自信がない
- 黒江は大丈夫だよ
- 黒江: ●●●●●
- え? 魔法?
- 黒江が?
- 黒江: ●●●●●
- ふふ、ごめんごめん 真面目に聞いてるって
- 俺にはよくわからないけど
- 黒江がやりたいことなら なんだって応援するよ?
- 黒江: ●●●●●
- 黒江はなんだって出来るさ
- 黒江: ●●●●●
- 黒江の好きなところ?
- 黒江: ●●●●●
- 黒江が黒江らしいところかな?
- 黒江: ●●●●●
- え?
- 俺が黒江の魔法で、 そう思い込まされてる?
- ははは
- だとしても、今のままでいいよ
- それに、魔法が解けたって
- 黒江が変わっちゃうわけじゃ ないだろ?
- それなら何度でも 黒江を好きになれるよ
- FILENAME: text_310432-5.txt
- 黒江: その日、彼と別れることにした
- 黒江: 理由は
- 黒江: 私が魔法少女だから
- 黒江: 違うな
- 黒江: 私が彼を騙してしまったから
- 黒江: 魔法少女になる前の自分がどんな人間だったのか すこしも思い出せない
- 黒江: 私はもう魔法少女になってしまって 普通の人たちがいる場所には 戻れなくなってしまった
- 黒江: あの場所の全部を裏切ってしまった
- 黒江: …魔女
- 黒江: !?
- わーーっ!
- 黒江: 大丈夫!?
- あわわわわわ
- 黒江: 私が出会った魔法少女は 私よりもずっと弱かった
- FILENAME: text_310432-6.txt
- ――っ!
- はあああっ… …死ぬかと思いました!
- ありがとうございます
- 黒江: …うん
- ニャー
- 行っちゃった…
- 黒江: 見ない顔だけど…新人?
- あ、はい この近所じゃないんですけど…
- 黒江: そう…
- 黒江: ここら辺、一応、 私が担当してる地域で…
- 黒江: 他の魔法少女が担当してる場所で 勝手に魔女と戦うの
- 黒江: あんまり良くないらしいし…
- うわぁああ! ごごごごごめんなさい!
- 猫ちゃんが魔女の結界に 入っちゃったのが見えて!
- 許してください! もうしません!
- 黒江: いいよ 別に
- 黒江: しょうがないし そういうの
- ほほほ、本当ですか?
- 黒江: うん それじゃ…
- あ、あのぉ…
- 黒江: 何…?
- その…グリーフシード、とか… 余ってたりしませんか…?
- 黒江: え…?
- 「い、今ので、ソウルジェム だいぶ濁っちゃって…」
- 「もし、あったら、なんて… え、えへへ」
- 黒江: …………ごめん
- そ、そうですよね!
- グリーフシード余ってるとか ないですよね!
- なんでもないです!
- 変なこと聞いちゃって ごめんなさい!
- 黒江: 私も…手持ちがないの…
- 黒江: さっきの魔女にも 逃げられちゃったし
- 黒江: 私、そんなに強い訳じゃないし…
- あ…
- 黒江: ごめん…
- あああ、あやまらないで下さい!
- 私が無理言っただけですから! ごめんなさい!
- 黒江: でも…ごめん…
- 「とんでもないです!」
- 「私の方こそ、たくさん 持ってたらよかったのに…」
- 「今日は、ありがとうございました 助けてくれて!」
- 「あのままだと、私も猫ちゃんも どうなってたか…」
- 黒江: うん…
- 私、まだまだですけど
- 早く一人前の魔法少女に なれるように、頑張ります!
- みなさんの分のグリーフシードも 取れるように頑張ります!
- 黒江: うん…、お互い、頑張ろう
- はい! お互い、頑張りましょう!
- 黒江: 私達は、名前も聞かず 連絡先も交換しないまま、別れた
- 黒江: あの子とは、あれきり一度も会っていない
- 黒江: なにかに本気で殺されかけたことはある?
- 黒江: 自分のせいで誰かが死んでしまったことはある?
- 黒江: それが毎日続くとしたら、どう思う?
- 黒江: 私、そんなこと考えたこともなかったから おどろいてしまって もうこの世界には 私ひとりきりなんだって思ってしまって
- 黒江: 怖かったんだ
- 黒江: ずっと怖かった
- 黒江: だから あの子の声に 耳を傾けることができなかった
- 黒江: 魔法少女なら、自分でなんとかしてよって 思ってしまった
- 黒江: 私だって 魔法少女なのに
- 黒江: 私だって ひとりぼっちなのに
- 黒江: 別れるとき、あの子はずっと手を振っていた
- 黒江: あの子は 不安だったんだ
- 黒江: 私も それを 知っていた きっと 誰よりも 分かっていた
- 黒江: 逃げるように別れた私は ひとりきりのホームで
- 黒江: 私は自分のソウルジェムに
- 黒江: 隠し持っていたグリーフシードを使った
- 黒江: 好きだった小説が映画になったけど 観ている間に また誰かが魔女に殺されるかもしれない
- 黒江: 好きだった作家の新刊が出たけど 自分勝手な理由で彼を傷つけた私は もう楽しめない
- 黒江: コンビニに新しいサンドイッチが並んでも 美味し過ぎるものなんて、私には相応しくない
- 黒江: 何も出来ない私は、誰かと会話する資格もない
- 黒江: 私には 本当に何もなくなった
- 黒江: …………
- 黒江: 彼から教えてもらった動画配信 知らない町を 電車に乗って紹介してる
- 黒江: 見たいものもない私は ただずっと それを繰り返し聞いている
- 黒江: 私はいつの間にか夢の中…
- うい: 「神浜市へ来て そうすれば 魔法少女は救われる」
- 黒江: 私…これから どうなっちゃうのかな…
- FILENAME: text_310433-1.txt
- 小論文: 全ての生徒が平等に学校を楽しむためには 何が出来るか
- 黒江: そういえば、小論文書いて 先生に提出しなきゃいけないんだった
- 黒江: でも 何のために提出するんだっけ?
- 黒江: あ、そうか 推薦入試の準備だ
- 黒江: 明日生きているかも分からないのに?
- 黒江: 変なの
- …借りてた本、返すよ
- 黒江: …うん
- 黒江: その日の魔女は いつもよりほんの少しだけ強くて
- 黒江: 私は、ほんの少しだけ気落ちしていたから
- 黒江: なにもかもがうまくいかなくて
- 黒江: 魔法少女が死ぬ日は こんな日なのかもしれないと思った
- 黒江: あっ!!
- 黒江: …!
- 黒江: 私、なんでこんなに頑張ってたんだっけ? なんでこんなことになってたんだっけ?
- 黒江: もう、べつにどうでもいっか…
- いろはの声: えーーーいっ!
- FILENAME: text_310433-2.txt
- いろは: 怪我とかありませんか!?
- 黒江: う、うん
- いろは: あ、さっきの魔女が グリーフシード落としたんで
- いろは: ちょうどよかったです!
- 黒江: え?
- 黒江: 私、あんまり何もできなかったし
- 黒江: そのグリーフシードは あなたが使って
- いろは: そんなのいいです! 困ったときはお互い様ですよ!
- 黒江: でも…他にグリーフシード 持ってるの?
- いろは: 持ってはないですけど
- いろは: 私のソウルジェム、まだそんなに 濁ってるふうでもないし…
- いろは: いつかおすそ分けして もらえたら、それで大丈夫です
- いろは: これ、私の連絡先です
- 黒江: 必ず返しに行くね…
- いろは: いえ、グリーフシードは いつでも大丈夫です
- いろは: それもあるけど 魔法少女のことなんて
- いろは: 誰かに相談しても信じて もらえないじゃないですか?
- いろは: だから、お互い何かあったら 連絡し合いませんか?
- 黒江: 連絡?
- いろは: 魔女のこととかグリーフシードの ことじゃなくても
- いろは: 不安ってたくさんあるから…
- いろは: 私、本当に ひとりぼっちになっちゃう
- 黒江: 同じ魔法少女なのに、彼女はそう言って笑った
- 黒江: …うん
- 黒江: …………
- 黒江: あの魔法少女にも、今なら…
- 黒江: なにか分けてあげられるかもしれない
- 黒江: 今更そんなことを、わずかに思ったけれど
- 黒江: 私は彼女の連絡先はおろか 名前すら知らなかった
- 黒江: …………
- 黒江: 彼から教えてもらった動画配信 知らない町を紹介してる
- 黒江: 電車に乗って 私はいつの間にか夢の中…
- うい: 「神浜市へ来て そうすれば 魔法少女は救われる」
- FILENAME: text_310433-3.txt
- 黒江: あれから、環さんには数回会いに行った
- 黒江: もちろんグリーフシードは返したけど 何度か一緒に魔女退治をした
- いろは: 手伝ってもらって助かりました!
- いろは: 今度、黒江さんの方へも お手伝いに行きますね!
- 黒江: 私のとこは大丈夫
- 黒江: 先週から魔女も 見かけなくなったし…
- 黒江: その頃から、魔女の数が減り始めた
- 黒江: グリーフシードの不安はあったけど 魔女が増えるよりはずっとよかった
- 黒江: 魔女さえいなければ 魔力の消費だって微々たるものだ
- うい: 「神浜市へ来て そうすれば 魔法少女は救われる」
- うい: 「神浜市に来て」
- うい: 「魔法少女は救われる」
- 黒江: 魔法少女になってから、頻繁に同じ夢を見る
- 黒江: 夢の中で、知らない女の子が喋りかけてくる 「神浜市に来て そうすれば 魔法少女は救われる」って
- 黒江: 壊れた動画みたいに 何度も 何度も
- 黒江: そういえば、魔女が減り始めたのは あの夢を見始めたあたりからかもしれない
- 黒江: そのことを検索しようと思ったのも なんとなくだった
- 検索[ 神浜市 夢 救われる ]
- [魔法を持つ人達への伝言。 あの夢の噂は本当みたい。 あちこちで魔女が減ってきてるでしょ? あれは良くない兆候だって噂になってる。 救われるためには、神浜に行くしかないの]
- [私も夢で見た。 私は神浜市へ行ってみるつもり。 救われるなら、なんだってかまわない]
- [私たちはまだ声を上げられないけれど、 神浜市で会いましょう。 あの夢を信じて、みんな一緒に救われよう。]
- [願いと引き換えに 魔法を押しつけられた人たちへ。 みんな夢でお告げを聞いてる。噂は本当。 神浜市にはきっと、 私たちが救われるための何かがある]
- 黒江: 一見すると要領を得ず 取り留めのないメッセージたち
- 黒江: でも、今の私には分かる これは魔法少女たちの声 そして彼女たちもみんな、あの夢を見ている
- 黒江: 来てくれてありがとう
- 黒江: 昨日も会ったばっかりなのに、 迷惑だったかな?
- いろは: いえ、情報交換は大切ですから 何かあったんですか?
- 黒江: …………
- いろは: 昨日は魔女に会えましたけど
- いろは: 最近は本当に 魔女も減ってきましたよね
- いろは: 私たちの活躍のおかげかな? なんて
- いろは: グリーフシードが手に 入らなくなるのは困りますけど
- いろは: 魔女の被害が出るより ずっといいですし
- いろは: 私なんかでも 人の役に立ててるのかなって
- 黒江: …環さんはこんな話、 聞いたことある?
- 黒江: 神浜市に行けば、 魔法少女は救われる…って
- 黒江: そこから私と環さんは図らずも 神浜市に入り、現地の魔女と戦うことになる
- FILENAME: text_310433-4.txt
- 黒江: 結果は散々だった
- 黒江: 神浜市の魔女は宝崎市よりもずっと強くて
- 黒江: 私たちは殺されそうになったところを 神浜の魔法少女に助けてもらった
- 黒江: あのとき助けてもらえなかったら 間違いなく二人とも死んでいたと思う
- 黒江: もし、あの噂が本当だったとしても
- 黒江: 私なんかより、もっと強い魔法少女達のための話 なのかもしれない…
- いろは: あ、あの…
- いろは: さっきの魔法少女さん、 すごく強かったですね
- いろは: 神浜って、魔法少女も強くないと やっていけないんだなぁ
- いろは: もう来るなって 言われちゃいましたね
- いろは: 確かに私たちには 危険かもですけど…
- いろは: 『神浜へ来れば 魔法少女は救われる』って
- いろは: なんだったんでしょう
- いろは: 変な噂でしたね
- 黒江: ●●●●●
- いろは: そ、そんなことないですよ…
- 黒江: ●●●●●
- いろは: たしかに魔法少女を続けるのって 大変だけど
- いろは: 今日だって電車の中で
- いろは: 魔女に連れ去られている 人たちを!
- いろは: 神浜市の魔法少女さんに 助けてもらわなかったら
- いろは: 危ないところだったのは 事実ですが
- いろは: 結局、みんな助けることは 出来た訳ですし…
- 黒江: ●●●●●
- いろは: 私も、今まで 自分から決められたことって
- いろは: あんまりなくて…
- いろは: でも、魔法少女になれたから
- いろは: こうして黒江さんとも お話しできてるじゃないですか?
- いろは: 魔法少女だったからってことも やっぱりあると思いますし…
- 黒江: ●●●●●
- いろは: 黒江さん
- いろは: 神浜市のうわさのことは 残念でしたけど
- いろは: また何かあったら 連絡くださいね?
- 黒江: ●●●●●
- 黒江の母: おかえり
- 黒江の母: 遅いから先に 夕飯食べちゃったよ?
- 黒江の母: あなたも早く…
- 黒江: ●●●●●
- 黒江の兄: 最近、帰ってきたら すぐ引きこもるよな
- 黒江の姉: あんたと違って、 勉強してんじゃない?
- 黒江の弟: 最近ぜーんぜん話してない
- 黒江の姉: 思春期だからじゃない?
- 黒江の父: 前に魔法がどうとか 言ってなかったか?
- 黒江の兄: ああ、魔法
- 黒江の姉: どうせ本の話でしょ?
- 黒江の母: 今までも一人が好きな子 だったけど
- 黒江の母: 最近とくに酷くなったみたい
- 黒江の父: 反抗期かな?
- 黒江の兄: 学校でなんかあったとか?
- 黒江の母: 今日も帰りが遅かったし、 まさか悪い友達が?
- 黒江の弟: 姉ちゃん、不良になるの?
- 黒江の父: でも、あいつは しっかりしてるから
- 黒江の姉: 大丈夫だって
- 黒江の父: そうだな 見守ることにしよう
- 黒江の兄: あいつなら自分で 決められるだろうし
- 黒江の姉: 今はそっとしとこう
- 黒江の母: あの子はきっと大丈夫
- 黒江: …………
- 黒江: 教えてもらった動画配信 知らない町を紹介してる
- 黒江: 電車に乗って…………
- 黒江: 電車に…………
- 黒江: 私は…………
- 黒江: いつのまにか 知らない動画が 再生されている 知らない動画では 知らない少女が喋っている 魔法少女のことを…?
- 灯花: 魔法少女のみんな
- 灯花: 魔法少女だけど、 人一倍頑張って
- 灯花: 魔法少女なのに、 誰よりも優しく
- 灯花: 魔女と戦い、 名前も知らない人たちを救う
- 灯花: 魔法少女のみんな!
- 灯花: もう嫌だって、 逃げ出したいって怯えながら
- 灯花: どうしてこんなことにって 歯を食いしばって
- 灯花: ひとりぼっちで泣きながら 魔女と戦い
- 灯花: その運命を誰にも知られず 理解もされないまま
- 灯花: 魂を濁らせ 消えてしまいそうな
- 灯花: 魔法少女たちよ!
- 灯花: 逃げ出したい、 救われたいと渇望するその心は
- 灯花: 間違ったものだと思う?
- 灯花: その感情に目を背け我慢すれば あなたの日常は戻ってくる?
- 灯花: 今までの悲しみが なかったことになる?
- 灯花: そうじゃないよね?
- 灯花: わたくし達の胸に渦巻く このどす黒い感情の原因は
- 灯花: わたくし達を騙し 搾取している奴のせいだよね?
- 灯花: あいつらを許す理由なんてないし
- 灯花: わたくし達が受け入れる必要も ないんだよ!
- 灯花: わたくし達は騙され、 奪われ、隠され続けている!
- 灯花: わたし達は、 救われなくちゃいけない!
- 灯花: マギウスは ドッペルシステムによって
- 灯花: 運命を変え、 魔法少女を解放する!
- 灯花: そうなれば、 もう魔女に怯えることはない!
- 灯花: グリーフシードの奪い合いも しなくていい!
- 灯花: マギウスは誰も 孤独にしたりしない!
- 灯花: 神浜に来て マギウスの翼となれば
- 灯花: 魔法少女の真実と ドッペルシステムの意味を
- 灯花: 教えてあげる!
- 灯花: けれど、それでも
- 灯花: 心優しいあなたは こうも思うはず
- 灯花: 自分がいなくなったら、 誰がこの町の魔女を倒すの?
- 灯花: わたくし達が騙されたとき、 魔法少女じゃない誰かは
- 灯花: それを知らなかった
- 灯花: わたくし達が苦しいとき、 魔法少女じゃない誰かは
- 灯花: それを見なかった
- 灯花: 魔法少女じゃない誰かの中に、 わたくし達はいない!
- 灯花: 今はまず、 魔法少女であるあなたが
- 灯花: 救われることが大事なの
- 灯花: そのために 神浜市に来て!
- 灯花: 今、この動画で、 わたくしの姿を目にしているのは
- 灯花: 魔法少女だけ!
- 灯花: この声は、電波にはのらない! 呟かれもしない!
- 灯花: 偽善者どもの欺瞞に 隠されることだってない!
- 灯花: わたくしが伝えるメッセージが まぎれもない、魔法少女の声!
- 灯花: 耐え忍び、搾取される様を 美談にしてはいけない!
- 灯花: 言い訳と慰みのために 作られた美しさに騙されるな!
- 灯花: わたくし達の怒りは、孤独は すべて正しい!
- 灯花: やがて消えゆく魔法少女たちよ
- 灯花: 砕け散った仲間の悔しさは 誰が憶えていてあげられる?
- 灯花: 騙され奪われ 残り僅かとなった時間のうちに
- 灯花: 何を叫ぶ?
- 灯花: まだ生きているなら 何をする?
- 灯花: わたくし達を救えるのは 私たちだけ!
- 灯花: 魔法少女よ! 神浜に集え!
- 灯花: この神浜で、 魔法少女は解放される!
- 黒江: その動画を見ながら 私は、 安心してしまった
- 黒江: 今までのことは 私だけの話じゃなかった
- 黒江: 今までのことは 私のせいじゃないのかもしれない
- 黒江: あれも、これも、 もしかしたら 私のせいじゃなくて いいのかもしれない
- 黒江: 私は 自分のためだけのことを考えたって よくない感情を抱いたって 仕方がないのかもしれない
- 十七夜: たいした子どもだな あの演説も君の指示か?
- ねむ: マギウスは 灯花と僕の作品だよ
- 十七夜: 君は、自分が 何をしようとしているか
- 十七夜: どこまで理解しているんだ?
- 十七夜: なぜ、キュゥべえだけに 怒りを集中させない?
- ねむ: …そんなつもりは ないんだけどね?
- 十七夜: それは、嘘だな?
- ねむ: …………
- ねむ: …ドッペルシステムの完成には
- ねむ: 一般人から生命エネルギーを 奪う必要があることがひとつ
- ねむ: そしてもうひとつ
- ねむ: 僕らは、すでにライ麦畑から 落ちてしまった子ども達を
- ねむ: 拾う係でもある
- 十七夜: …どういう意味だ?
- ねむ: 魔法少女が魔女化克服に 成功したら
- ねむ: 次はどうなると思う?
- 十七夜: 魔法少女が 消費されなくなることで
- 十七夜: 新たな問題が生まれると 言いたいのか?
- ねむ: 僕と灯花はドッペルシステムを 完成させるまでしか存在しない
- ねむ: だから今のうちから種を蒔き
- ねむ: この問題を理解できる 君にも協力してもらいたいんだ
- 十七夜: 賢き幼子よ、残念だが君たちに 力を貸すことはできないな
- 十七夜: この世界を 魔法少女側の理屈だけで
- 十七夜: 測れるものか
- ねむ: それでも僕らの物語は、 魔法少女の物語
- ねむ: そして物語には 表紙があった方がいい
- ねむ: マギウスなら それに成り得る
- FILENAME: text_310433-5.txt
- 黒江さん、提出してもらった 小論文なんだけど…
- 小論文: 全ての生徒が平等に学校を楽しむためには 何が出来るか
- 内容のことなんだけどね…
- ちょっと極端というか、 黒江さんの主張もわかるんだけど
- 今の内容は、 最後の項目の問題提起として
- 書くくらいの方が いいんじゃないかしら?
- 黒江: どうしてですか?
- 学校を楽しめる私たちと、 学校を楽しめない私たちは
- お互いが抱えている前提条件が すでに不平等であり
- そこからくる 問題意識のギャップから
- 悪意の有無に関わらず
- 互いに傷つけ 通じ合えることはない
- そのため学校を楽しめない生徒の コミュニティを新たに作り
- 楽しめているコミュニティからは 分けるべき…………と
- 黒江: はい
- う~ん…でもこれだと
- お互いの間にある溝を 大きくするだけだし
- なにより、この小論文のテーマは
- 平等に楽しむためには どうするか、よ?
- 双方否定から入らず 共感できるポイントを探せば
- 今はお互いに 理解できないことだって
- 少しずつでも分かり合えたり するんじゃないかしら?
- 黒江: 私には…分からないんです
- 黒江: 様々な事情があって
- 黒江: 学校を楽しむことが 出来ない人たちは
- 黒江: どうすれば 今までとこれからのことを
- 黒江: 忘れられるんでしょうか?
- 黒江: どうすれば 楽しめている振りが
- 黒江: 出来るんでしょうか?
- …?
- …せ、先生はね、あなたの考えを 否定したいわけじゃないのよ?
- 小論文には目的があって
- まずはあなたが 推薦で合格すること
- それには、あなたの内面が 正しく評価してもらうこと
- あなたが誤解されてしまったり
- 合格出来ない小論文じゃ 意味なんかないでしょ?
- みんなに共感してもらえて
- 本当のあなたを 知ってもらえるような…
- 黒江: 平気なふりをして 生きていることでしか
- 黒江: 本当の私になれないのなら
- 黒江: この感情は、 どこへ捨てれば良いんですか?
- …ど、どうしちゃったの? 黒江さん?
- 最近様子がおかしいから 先生も心配して…
- 黒江: みんなから理解してもらわないと 私には価値がないんでしょうか?
- えっとね…黒江さん
- どんな、悩みだって、 自分以外の誰かと共有することで
- たとえ今はまだ解決出来なくても
- 自分が持てる程度の重さに なったりはするものなのよ?
- どうしても人に話したくない 悩みだって
- 神様になら話せるでしょう?
- なぜ お祈りが必要なのか分かる?
- 私たちが どうしようもなくなったとき
- 神様に見つけていただく ためなのよ
- 私は助けてもらいたいんだって 神様に知らせるの
- そんなことしたって
- なにも解決は しないかもしれないけれど
- 私はここにいるって、 神様に伝えるの
- 誰かに相談するには とりとめがなさ過ぎることだって
- 神様に 居場所を知らせるくらいなら
- 出来るかもしれないでしょ?
- あなたのなかにある 大きな不安も怒りも
- 先生でもいいし 神様でもいい…
- 黒江: 先生
- 黒江: 私、みんなと同じじゃ なくなってしまった途端
- 黒江: いろんなことに嘘をつかなきゃ いけなくなっちゃった…
- 黒江: なにも大丈夫じゃないのに
- 黒江: みんなと同じふりをしなくちゃ いけなくなっちゃった…
- みんな、本当は誰ひとり 同じなんかじゃないのよ
- それでも問題は分け合えば
- みんなで共有して 受け入れることだってできるわ
- 黒江: 私が明日死んでしまったり
- 黒江: 私のせいで 誰かが不幸になってしまうことも
- 黒江: 先生は受け入れてくれますか?
- そんなこと、放っておけないわ
- 黒江: 家族は血のつながった人たち
- 黒江: 学校は学生のもので 社会はそこに住む人たちのもの
- 黒江: その全部に 私は含まれているはずなのに
- 黒江: 私だけそこにいられなくなったら
- 黒江: どこへ行けばいいんですか?
- 先生には黒江さんの悩みは 分からないけど
- 学校は黒江さんの場所になれるわ
- 黒江: ●●●●●
- そんなことない
- 黒江: ●●●●●
- 本当よ?
- みんなだって、 きっと同じ気持ちのはず
- 黒江: ●●●●●
- …教師として 放っておけないわ
- !?
- く、黒江さん? どこなの?
- 黒江の声: ●●●●●
- ち、違うわ! 黒江さん!
- 黒江の声: ●●●●●
- 違うのよ 黒江さん!
- 黒江の声: ●●●●●
- わ、私が、私が心配なの!
- ここが学校だからとか、 私が教師だからじゃなくて
- 私があなたを心配してるのよ!?
- 間違えちゃったの…
- 嘘じゃないのよ…
- 黒江さん…
- あの日以来 黒江さんは学校に来なくなった
- FILENAME: text_310433-6.txt
- 黒江: わたしは神様に祈ることはやめた
- 黒江: 祈ることをやめて、 神浜へ…
- 黒江: 運命を変えるために
- 黒江: さようなら 私の部屋にいた神様
- 黒江: さようなら 学校にいた神様
- 黒江: さようなら 魔法少女以外の人たちのための神様
- 黒江: 私はもう、祈ったりしません
- 黒江: さようなら 魔法少女以外の人たちのための神様
- 黒江: 私は、 私と同じ人たちのところへ行こう
- 黒江: 最後に神様 もし、あなたが少しでも奇跡が起こせるなら
- 黒江: 宝崎にまた魔女が増えたりしませんように…
- 黒江: 本当はどうするのが 正解だったのかな…
- FILENAME: text_310434-1.txt
- Kuroe’s doppel story for application
- 黒江: 私は夢を見ていた
- 黒江: ここではない 私の夢
- 黒江: 私なんだけど 私じゃない
- 黒江: 不思議な夢
- いろは: 〇〇〇〇〇〇
- 黒江: 環さん?
- 黒江: 環さんとは、キャンプ場で…
- いろは: 〇〇〇〇〇〇
- 黒江: 不思議だな 環さんとは出会ったばかりなのに 夢の中でも会うなんて…
- FILENAME: text_310434-2.txt
- いろは: 〇〇〇〇〇〇
- 黒江: ?
- いろは: 〇〇〇〇〇〇
- 黒江: 環さん?
- いろは: 〇〇〇〇〇〇
- 黒江: ごめんね 環さん 私もう、環さんがなんて言ってるのか よくわからなくなっちゃった
- 黒江: でも今、とても安心してるの
- 黒江: ここでならきっと
- 黒江: 私はもう、誰からも救われない…
- 黒江: 私はもう、誰の事も救わなくていい…
- 黒江: 私はもう……魔法少女をやめられる
- FILENAME: text_310434-3.txt
- ???: 契約によって、 私が得た魔法は“存在肯定”
- ???: 私は、私が誰でもないことと 引き換えに
- ???: 私は存在を肯定される
- ???: 私の家族は、私がどこにいても
- ???: 私の彼は、 私との関係性が変わっても
- ???: 私の現状に順応する
- ???: 私は誰からも恨まれない 私は誰からも依存されない
- ???: 私は…誰なんだろう? 誰になれば、よかったのかな?
- FILENAME: text_310434-4.txt
- いろは: 黒江さんが誰かになる必要なんて ない!
- いろは: だから、私に黒江さんのことを 教えて!
- いろは: 強くないあなたを
- いろは: マギウスの翼じゃないあなたを
- いろは: 魔法少女じゃない あなたのことを!
- 黒江: どうしよう環さん… どうすればいいの?
- いろは: 私に、あなたを分けてください!
- 黒江: 私にはそんなもの…
- いろは: 黒江さんは、何になりたくない? 何がこわい?
- 黒江: 私は…………
- 黒江: 魔法少女になんてなりたくなかった
- 黒江: 誰かを助けなきゃいけなくて 誰も助けられずに失敗することが怖い…
- 黒江: それでも、魔法少女は続けなくちゃいけなくて もし、魔法少女のまま 生きていくことが出来るなら
- 黒江: 私はどんな魔法少女になるんだろう
- 黒江: …………夢?
- 黒江: キャンプの時の夢?
- 黒江: なんでこんな夢を…
- 黒江: 環さん、今何してるのかな?
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