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- FILENAME: text_420271-1.txt
- 五十鈴 れん: 記憶ミュージアムが私に見せたのは とても懐かしい光景…
- 五十鈴 れん: (空が、近い…)
- 五十鈴 れん: …そう これは、初めて私が私を 終わらせようとしたあの時
- 五十鈴 れん: (…地面が、遠い)
- 五十鈴 れん: (ここから落ちたら、私は…)
- 五十鈴 れん: “もう苦しまなくて済む” そう思った時には こんな風に体が宙に浮いていた…
- 五十鈴 れん: でも、地面が迫ってきて感じたのは 安堵ではなく“恐怖”で…
- キュゥべえ: 「キミの願いを叶えてあげるよ」
- 五十鈴 れん: だから、願ったの
- 五十鈴 れん: 『私っ… やっぱり死にたくありません…!』
- 五十鈴 れん: まだ、生きていたいって…
- 五十鈴 れん: ま、じょ…?
- 五十鈴 れん: 魔法少女になった私が キュゥべえに教えられたのは 魔女…“禍の種”の存在
- 五十鈴 れん: そう… 人々が傷付けあうのは魔女の呪いのせいだって 知ったのもこの時
- 五十鈴 れん: そういうことなら… そういうことなら、私は…
- 五十鈴 れん: 魔法少女を… 頑張りたいです…!
- 五十鈴 れん: 誰も…人を傷付けない… 優しい世界で在るように…!
- 五十鈴 れん: 私は…私は………… 生きて…魔女と戦います…!
- 五十鈴 れん: そういえば まだあの時は希望を持っていた
- 五十鈴 れん: 魔女を倒せば 人々が傷付けあうことはなくなる、と
- 五十鈴 れん: でも、この世界はそんなに単純ではなくて…
- 五十鈴 れん: 世界からすべての魔女を消しても 人々から悪意はなくならないと気付くまで 時間はかからなかった
- 五十鈴 れん: (この世界から…理不尽な痛みが 消えることはないのなら…)
- 五十鈴 れん: 私はもう… 生きていたくない…
- 五十鈴 れん: だから、世界に失望して 2度目の自殺を決意するまでに 時間はかからなかった…
- 綾野 梨花: やめて!
- 五十鈴 れん: でも、あの時助けてくれたんだよね 梨花ちゃんが…
- 五十鈴 れん: …………
- 五十鈴 れん: (…私が魔法少女になって 間もない頃の記憶…)
- 五十鈴 れん: (いい思い出とは… 言えないけれど…)
- 五十鈴 れん: (振り返った意味は あった、のかな…)
- それでは来週までに 希望の進路を書いてきてください
- 高校への進学を考えている人も 普通科だけではなく
- 他の学科のことも 調べてみてくださいね
- 将来、やりたいことを 見つける役にも立つはずです
- 五十鈴 れん: (…進路調査 普通科に進学するつもりだけど)
- 五十鈴 れん: (将来、やりたいことって… 考えたことなかった)
- 五十鈴 れん: (夢、なんて… 持ったことないから…)
- 五十鈴 れん: …………
- 五十鈴 れん: 『誰も…人を傷付けない… 優しい世界で在るように…!』
- 五十鈴 れん: …………私の、理想…
- 五十鈴 れん: かつて、一度だけ持った希望 叶うことのなかった理想…
- 五十鈴 れん: 魔女を倒して 誰も人を傷付けない 優しい世界にしたいという想い
- 五十鈴 れん: (記憶ミュージアムに来て 当時の気持ちを思い出せば)
- 五十鈴 れん: (私にもやりたいことが 見つかるかもって思ったけど…)
- 五十鈴 れん: (…………わかりません…)
- 五十鈴 れん: 2回目の時… 助けてもらって…梨花ちゃんに 優しさを…居場所をもらったから…
- 五十鈴 れん: 今、生きていたいと思えている自分がいる… それは確かだけど…
- 五十鈴 れん: (でも…最初は…?)
- 五十鈴 れん: (何もなくて 空っぽだったのに…)
- 五十鈴 れん: (それでも、とっさに 願ってしまっただけ…?)
- 五十鈴 れん: (…わからないことが 増えてしまいました…)
- FILENAME: text_420271-2.txt
- 綾野 梨花: そのリップ新色じゃん! めっちゃいい!
- 木崎 衣美里: でしょ、でしょ!
- 木崎 衣美里: お小遣いすっからかんだけど ちょー満足!
- 木崎 衣美里: みゃーこ先輩も使ってみる?
- 都 ひなの: いや、アタシは…
- 綾野 梨花: そうそう、みゃこ先輩には ちょっと大人っぽ過ぎるって
- 綾野 梨花: もっと淡い方が似合いそう!
- 都 ひなの: おいっ!塗ってみたら 化ける可能性だってあるだろ!
- 都 ひなの: 貸してみろ!
- 五十鈴 れん: …ぁの、こんにちは
- 綾野 梨花: あっ、れんちゃん こんにちは!
- 木崎 衣美里: はみ出さずに… おっ、できたね
- 都 ひなの: あのな、アタシだって リップくらい付けられる
- 木崎 衣美里: 見て見て、れんぱす! どーよ、みゃーこ先輩は!
- 都 ひなの: 大人っぽい色だって似合うだろ?
- 五十鈴 れん: …………ふふっ…
- 五十鈴 れん: エミリーのお悩み相談所
- 五十鈴 れん: 賑やかなこの場所は 今の私にとっては大切な居場所…
- 五十鈴 れん: 2度も死を願っておきながら まだ生き続けている私が見つけた かけがえのない場所…
- 木崎 衣美里: れんぱすにまで笑われてんじゃん
- 都 ひなの: なっ!? れんまで似合わないってか…!?
- 五十鈴 れん: ぁ…違…す、すみません… 似合って…ます…はぃ
- 綾野 梨花: 気を遣わなくてもいーのに
- 綾野 梨花: じゃあ、またね れんちゃん!
- 五十鈴 れん: ぅん…また、ね…
- 五十鈴 れん: 大切な友だちがいて 失くしたくない居場所がある
- 五十鈴 れん: そう、これも私が生きていたいと思う 理由のひとつ
- 五十鈴 れん: だけど、それは 願いを叶えた時にはなかったもの…
- 五十鈴 れん: (それならどうして… 私は“生きたい”って…)
- 五十鈴 れん: …………
- 五十鈴 れん: (進路を考えていたはずなのに おかしい、な…)
- 五十鈴 れん: (でも、私の将来にとっても 大切なことのような気がする)
- 五十鈴 れん: …ただい、ま…
- 五十鈴 れん: (お母さん、いない…?)
- 五十鈴 れん: (あ、メモ…)
- 五十鈴 れん: (“買い物に行ってます”)
- テレビ: 「続いてのニュースです」
- 五十鈴 れん: (テレビつけっぱなし… 消して…)
- テレビ: 「近年増加している 中高生の自殺についてですが…」
- 五十鈴 れん: ――っ!?
- テレビ: 「そうですね 昨年に比べて1割程、件数にして…」
- 五十鈴 れん: (自殺の件数… 亡くなった人の、数…)
- 五十鈴 れん: (もし、あの時… 成功していたら…)
- 五十鈴 れん: (その数は、ひとつ… 増えていた…)
- 五十鈴 れん: (数が、ひとつ増えて…)
- 五十鈴 れん: ………… …………
- 五十鈴 れん: …増えて…それ、だけ?
- れんの母: ただいまー れんも帰っていたのね
- れんの母: …れん、何かあった? また学校で…
- 五十鈴 れん: ぅ、ぅうん… なんでもない、よ…
- 五十鈴 れん: もし、あの時 私が死んでしまっていたら お母さんやお父さんは 悲しんでくれたんだとは思う…
- 五十鈴 れん: でも、他には…?
- 五十鈴 れん: あの頃 他に私を見てくれる人はいなくて…
- 五十鈴 れん: あってもなくても同じ存在 それが死にたいと願っていた時の、私…
- 五十鈴 れん: 死んでしまっても 誰にも顧みられることのない人生…
- 五十鈴 れん: 数字だけで語られる彼らにも 見つけてもらえなかっただけで “生きたい”という想いがあったのかも…
- 五十鈴 れん: そう考えてしまう私は傲慢でしょうか…?
- FILENAME: text_420271-3.txt
- 五十鈴 れん: …………
- テレビ: 「近年増加している 中高生の自殺についてですが…」
- 五十鈴 れん: (そろそろ寝る時間なのに…)
- 五十鈴 れん: (あのニュースが 頭から離れない…)
- 五十鈴 れん: (全然、眠くないな…)
- 五十鈴 れん: ………… …………
- 五十鈴 れん: (迷惑、かな…)
- 五十鈴 れん: (時間も遅いし… 寝てるかも…)
- 五十鈴 れん: …………
- 五十鈴 れん: (でも、梨花ちゃんなら…)
- 綾野 梨花: もしもし、れんちゃん? どーしたの?
- 五十鈴 れん: ぁ…えっと…そのぉ…
- 綾野 梨花: うん
- 五十鈴 れん: 用事が…ある、わけじゃ… なぃんだけど…
- 五十鈴 れん: 少し…ぉ話…したくて…
- 綾野 梨花: …………
- 五十鈴 れん: (やっぱり… 迷惑だった、かな…?)
- 綾野 梨花: それで連絡してくれたの? いいよ、いっぱい話そっ!
- 五十鈴 れん: ぁ、りがと…
- 五十鈴 れん: ぇっと…でも、ぉ話したいことが あるわけじゃなくて…
- 五十鈴 れん: (ちょっとだけ 声を聞きたかっただけ…)
- 綾野 梨花: ん?
- 綾野 梨花: あー、あるよね そーいうとき!
- 綾野 梨花: あっ、そうだ
- 綾野 梨花: ちょうど、れんちゃんに 話したいことがあったんだ
- 綾野 梨花: 学校でのことなんだけど…
- 五十鈴 れん: 学校であったことや家であったこと 面白かったことや、ちょっとした愚痴 梨花ちゃんが色々な話をしてくれる
- 五十鈴 れん: 今…私がほしかった 温かくて柔らかい時間…
- 五十鈴 れん: 今…私が感じたかった日常
- 綾野 梨花: 今度一緒にれんちゃんも 見に行こーよ
- 綾野 梨花: ネイルって自分でやっても 楽しいからさ!
- 五十鈴 れん: …ん
- 綾野 梨花: 眠くなっちゃった?
- 五十鈴 れん: …ぅ、ごめん
- 綾野 梨花: ううん、気にしないで
- 綾野 梨花: おやすみ、れんちゃん
- 五十鈴 れん: ぅ…ん…ぁりがと… 梨花、ちゃん…
- 五十鈴 れん: (…ああ、そっか これが、私の求めていた…)
- 五十鈴 れん: ささやかで限りなく優しい日常
- FILENAME: text_420271-4.txt
- 五十鈴 れん: 夢を見た…
- 五十鈴 れん: それは私が 自殺に成功したあとの夢… 私がいなくなったあとの世界
- 五十鈴 れん: その世界は何も変わってなくて… よくなることもないけれど 悪くなることもないみたい
- 五十鈴 れん: 理不尽な痛みは相変わらず存在して でも、死を決意した時には気付けなかった 優しさもいたるところにあった
- 五十鈴 れん: “私たち”が優しさに気付けなかったのは それを向けられたことがなかったから… 向けられたことがないと“思っていた”から
- 五十鈴 れん: でも… でも…………
- 五十鈴 れん: …ん、ぁさ…
- 五十鈴 れん: (…寝るまで梨花ちゃんに お話付き合ってもらっちゃった)
- 五十鈴 れん: (優しい、な…)
- 五十鈴 れん: 今の私は優しさを知ってる 梨花ちゃんが教えてくれたから
- 五十鈴 れん: 彼女が教えてくれた優しさは 私の視野を広げて 他にも優しさが溢れていると教えてくれた
- 五十鈴 れん: 例えば、ずっと当たり前に与えられていたのに 気付けていなかった両親の優しさとか…
- 五十鈴 れん: (昨日、電話してみて よかった…)
- 五十鈴 れん: きっと… “死にたくない”と思った私は 願っていたんだと思う
- 五十鈴 れん: 生まれたこの世界が 冷たいだけの世界でなければいいって…
- 五十鈴 れん: 本当は素敵なこともあるはずなのに それを知らないまま終わりたくなかった
- 五十鈴 れん: ささやかで限りなく優しい日常が ほしかっただけ
- 五十鈴 れん: (だから、魔女の存在を 知った時は…)
- 五十鈴 れん: (救われた気持ちになった)
- 五十鈴 れん: 本当は悪い人はいなくて 私や、昨日のニュースで語られていた 自殺してしまった人たちが 不幸になる原因を失くせると思ったから
- 五十鈴 れん: (でも、冷たく理不尽なところも 確かにこの世界の一面、だった)
- 五十鈴 れん: それを受け入れられなかった私は 世界に失望して もう一度死んでしまいたいと思った
- 五十鈴 れん: 優しさなんて存在しないと思ったから
- 五十鈴 れん: (…でも、 梨花ちゃんに助けられた)
- 五十鈴 れん: きっと、私が3回目を試みることはないと思う
- 五十鈴 れん: だって、もうたくさんの人に 優しさをもらって
- 五十鈴 れん: どれだけこの世界が冷たく理不尽だったとしても 同時に温かさもあることを 教えてもらったから
- 五十鈴 れん: (だから、今度は 私が優しさをわけたい…)
- 五十鈴 れん: (この世界に失望して 諦めようとしている人に…)
- 五十鈴 れん: (この世界を…諦めなくてもいい って思ってもらえるように)
- 五十鈴 れん: (わけてもらった優しさを 届けたい…)
- 五十鈴 れん: (だって、きっと… それが…)
- 五十鈴 れん: (死にたくないと願った私が 知りたかったものだから)
- 五十鈴 れん: せっかく生まれてきたこの場所に 絶望したまま終わりたくない
- 五十鈴 れん: それが、やっと気付けた あの時とっさに祈った私の願いの意味
- 五十鈴 れん: …梨花ちゃんたちに出会ってみつけた 後付けの意味かもしれないけれど
- 五十鈴 れん: 今、振り返れば 私の魔法少女としての初心も これから生きていく目標としても 相応しいと思うから
- 綾野 梨花: 進路?
- 五十鈴 れん: ぅん…梨花ちゃんのおかげで やりたいことを見つけられたから
- 五十鈴 れん: 聞いてほしくて…
- 綾野 梨花: うん、聞かせて!
- 五十鈴 れん: 世の中から悪意を失くしていきたいこと そして、悪意にさらされた人や 悪意を持ってしまった人の助けになりたいこと 私は変わらず口下手なままだったけど 梨花ちゃんは最後まで真剣に聞いてくれた
- 五十鈴 れん: 簡単、ではないと思う…けど…
- 五十鈴 れん: 生きづらさを… 感じている人の力になりたいの…
- 綾野 梨花: なんかれんちゃんらしいね!
- 五十鈴 れん: 私、らしい…?
- 綾野 梨花: れんちゃんの経験があったから 見つけた進路なのかなって
- 五十鈴 れん: (私らしい…私だけの、進路…)
- 五十鈴 れん: …うん
- 綾野 梨花: そうだ!
- 綾野 梨花: どんな仕事や活動があるかとか 調べてみよーよ!
- 五十鈴 れん: …梨花ちゃん
- 綾野 梨花: ん?
- 五十鈴 れん: ありがとぅ…
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