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Puella Historia: Sweetheart of Pax Romana JP Text

Jul 24th, 2023 (edited)
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  1. FILENAME: text_519601-0.txt
  2. <西暦79年>
  3. <ポンペイ>
  4. ???: まるで、世界の終わり…
  5. ???: すべてが壊れ
  6. ???: すべてが失われてゆく
  7. ???: 大切な思い出も
  8. ???: 大切な人たちも
  9. ???: もしも、過去に生まれ変わって
  10. ???: みんなの命を 救うことができたなら…
  11. ???: ………… …………
  12.  
  13. [From the opening sequence]
  14. 小さな世界を守りたかった
  15. やがてすべてが 壊れてしまう前に…
  16. [Title card] ピュエラ・ヒストリア パクス・ロマーナの恋人編
  17.  
  18. FILENAME: text_519601-1_BPssF.txt
  19. ひめな: マイメンたち 全員そろったー?
  20. 時雨: …そろってない…
  21. 燦: 三輪がいないわ
  22. みつねの声: ごめん、遅くなって…
  23. はぐむ: あ、もしかして… 足がまだ治りきってないから?
  24. はぐむ: リハビリ終わったばかりだよね? 迎えに行けばよかった…
  25. 三輪 みつね: …あ、いや…その 足はもう大丈夫なんだけど…
  26. 時雨: …迷子になってた、とか?
  27. 三輪 みつね: え、どうしてわかっ… …じゃなくて!
  28. 三輪 みつね: …えっと、強いて言えば ヒーローは最後に来る的な…?w
  29. 万年桜のウワサ: |近くをうろうろしてたから 私が連れてきた|
  30. ミユリ: つまりつまり! 迷子になっていたと?
  31. 三輪 みつね: …………うん
  32. ひめな: …準備はいい? それじゃ、しゅっぱーつ!
  33. ミユリ: 姫様姫様! あのあの、行先はどこでしょう?
  34. ひめな: あ、そうだね そのへんの話は…
  35. ひめな: この本の中の 小さい人から解説よろ~★
  36. ねむ: わかった、では僕が…
  37. ねむ: これから向かうのは西暦79年 ローマの植民市ポンペイ
  38. ねむ: 火山噴火で壊滅した町だ
  39. 時雨: …………
  40. ひめな: 噴火が起きたのはその年?
  41. ねむ: そう、西暦79年のこと
  42. ねむ: 住民の大多数は命からがら 逃げ延びることができたけれど
  43. ねむ: それでも人口の1割…
  44. ねむ: 1000人を下らない数が 犠牲になったとされる大災害だ
  45. ひめな: ………… …………
  46. ねむ: この災厄と前後して
  47. ねむ: 奇跡を祈り 歴史を変えた魔法少女がいる
  48. ねむ: 名前はアマリュリス
  49. はぐむ: …お花の名前みたい?
  50. ねむ: 当時は人名にすぎなかった
  51. ねむ: 花の名前として広まったのは かなり最近の話だよ
  52. 燦: 歴史を変えた少女って… 何を変えたのかしら?
  53. ねむ: くわしくはわからない 記録にかなりの欠落があるんだ
  54. ねむ: ただ、悲劇の原因となった 天災そのものは起きているから
  55. ねむ: 噴火自体を止めたいと 願ったわけではないようだ
  56. 燦: つまり、そのアマリュリスという 魔法少女の行動を追うことで
  57. 燦: 環いろはの概念の一部を 回収できるということね
  58. ねむ: そうなるね
  59. ひめな: じゃ、あらためて…
  60. ミユリ: 出発ですぅ!
  61. 燦&はぐむ: …?
  62. 三輪 みつね: …なんか、思ってたのと違う
  63. ひめな: それ、めっちゃわかりみ!
  64. ひめな: ぶっちゃけタイムトラベルって もっとこう…
  65. ミユリ: パッと消えて ビューンと過去に出現!
  66. ミユリ: …みたいな感じだと 思ってましたよね?
  67. ねむ: この景色には僕も戸惑っている
  68. ねむ: もしかすると、時空間に なんらかの異常が…
  69. 燦: 物騒なことを言い出すわね
  70. ねむ: さっきも言ったけれど 僕達が目指す西暦79年は
  71. ねむ: アマリュリスという少女によって 一度、歴史が変更されている
  72. ねむ: 僕達の干渉が、二度目の 歴史改変を意味するとすれば
  73. ねむ: 時空が不安定になる 要因になることも考えられる…
  74. ガガガーン
  75. ひめな: …魔女の…
  76. 時雨: …結界…!
  77. ひめな: 何これ!? 見るからにヤバそうなんだけど!
  78. 三輪 みつね: 時空がどうって話と関係が?
  79. はぐむ: …ま、魔女なら 私が…!
  80. 燦: いいわよ、安積 その意気よ
  81. ひめな: 魔女が相手なら はぐりんの出番だよね★
  82.  
  83. FILENAME: text_519601-2_BPssF.txt
  84. ひめな: ちょ…えっ!?
  85. 時雨: …姫…!
  86. 燦: 宮尾、姫様をお願い!
  87. 燦: ミユは私と来て 魔女の目をこっちへ引くわ
  88. はぐむ: …あ…えっと その隙に、私たちが魔女を…?
  89. 燦: そう、三輪は安積をアシストして ふたりで魔女に近づいて!
  90. 三輪 みつね: 了解、改竄の魔法で 魔女の目をあざむいてみる
  91. 燦: 頼んだわ じゃあ、いくわよ!
  92. 三輪 みつね: 教官、ミユリちゃん! 危ない!
  93. 燦&ミユリ: えっ…?
  94. ミユリ: …うぅ…
  95. はぐむ: ミユリちゃん!?
  96. 三輪 みつね: はぐむちゃん 私たちだけで魔女を!
  97. はぐむ: う、うん…!
  98. 燦: 無謀よ! 正面から突っ込んでは…
  99. 三輪 みつね: ――っ!?
  100. はぐむ: きゃうっ!
  101. ひめな: はぐりん、みわりん!
  102. 燦: これ以上はもたないわ! いったん退きましょう
  103. 時雨: …退くって…どこへ?
  104. 燦: 結界の出口を探すわ 宮尾、一緒に…
  105. 燦: え…? 魔女が…消えた?
  106. 時雨: …ここ…どこ?
  107. 燦: …惨敗ね 連係が機能しなかったわ
  108. 時雨: うん…
  109. 時雨: みんな、怪我は大丈夫…?
  110. ひめな: 私チャンたちは大丈夫… はぐりんとみわりんは?
  111. はぐむ: 平気…それより…
  112. はぐむ: へんてこなところに出たけど ここが過去の世界?
  113. 三輪 みつね: 不思議空間としか 言いようがないよね?
  114. ひめな: …ちょ!? な、なにこれ?
  115. 燦: 文字が浮かんだり 消えたりしている…?
  116. ひめな: どうなってるわけ?
  117. ねむ: 本の記録が消えたり 元に戻ったりを繰り返している
  118. ねむ: まるで、お姉さんが記録した アマリュリスという少女の行動が
  119. ねむ: 最初から“なかったこと”に なろうとしているように見えるね
  120. ミユリ: …えっと どういう意味でしょう?
  121. ねむ: …もしかすると
  122. ねむ: 今まさに、タイムパラドクスが 起きているのかもかもしれない
  123. ねむ: 時空間をこんなにしてしまうほど 深刻なパラドクスがね
  124. ねむ: …最初に説明したように
  125. ねむ: 僕達の目指していた西暦79年は 一度、歴史が改変されている
  126. ねむ: もともと不安定だったこの年代に 僕達が近づいたことで
  127. ねむ: 事象の矛盾…タイムパラドクスが 拡大するきっかけを
  128. ねむ: 作ってしまった可能性がある
  129. 三輪 みつね: つまり、この不思議な場所は タイムパラドクス空間…!
  130. ねむ: あるいは、壊れた時空とでも いうべき空間かもしれないね
  131. ねむ: 実際、この本の記述も…
  132. ねむ: まるでタイムパラドクスに 呼応するかのように
  133. ねむ: 不安定になっている
  134. 三輪 みつね: タイムパラドクス空間の状態に リンクしてるってことだね…!
  135. 燦: 三輪のテンションが謎に高いわね
  136. ひめな: ヒコ君もみわりんと 同じ見解だって★
  137. 時雨: …とにかく、目的の西暦79年に たどり着かないと
  138. ミユリ: ではでは あたりを探ってみましょう!
  139. 燦: 足元が不安定ね… 年上の3人が前を歩きましょう
  140. はぐむ: 全然…進んでる感じがしないかも
  141. 燦: 目印になるものが 何もないのよね
  142. 三輪 みつね: …私、今日ずっと迷子なんだけど
  143. ガガーン
  144. はぐむ: な…なに!?
  145. 三輪 みつね: 空間の様子が変…?
  146. ねむ: 本の状態も ひどく不安定になっている…!
  147. はぐむ: ――っ!?
  148. 燦: 足元に亀裂が…!
  149. ひめな: 教官たち!?
  150. ミユリ: ままままずいです!
  151. 時雨: いま、助けるから…!
  152. 燦: だめ! あなたたちも巻き込まれるわ!
  153. ひめな: で、でも…
  154. ひめな: きゃわ!? まぶし…
  155.  
  156. FILENAME: text_519601-3_BPssF.txt
  157. ひめな: ………… …………
  158. ひめな: 私チャン…気を失ってた?
  159. ひめな: ――っ!?
  160. ひめな: 頭の中に… 誰かの記憶が…
  161. ???: …コルネリア、ユニア
  162. ???: ふたりは マリウスのことが好きか?
  163. ユニア: はい!
  164. ユニア: ユニアはマリウス様のことが 大好き~!
  165. ???: ははは、そうか コルネリアはどうだ?
  166. コルネリア: あ…はい、お父様 私は…
  167. ユニア: お姉様も大好きだよね? マリウス様!
  168. コルネリアの父: どうした、コルネリア?
  169. コルネリア: …あ…えっと
  170. コルネリア: マリウス様は、その… 優しくて…とっても素敵な方で…
  171. コルネリア: …………
  172. コルネリアの父: はは、口に出すのは恥ずかしいか
  173. コルネリアの父: ふたりともマリウスと 仲良くやっているようで安心した
  174. コルネリアの父: 将来、ふたりのどちらかが
  175. コルネリアの父: マリウスに嫁ぐことに なるかもしれんからな
  176. コルネリア&ユニア: えっ…
  177. コルネリア: それって…
  178. ユニア: マリウス様のお嫁さんに なるってこと…?
  179. コルネリアの父: そう まだ少し先の話だがな
  180. コルネリア: …………
  181. コルネリア: 私が…マリウス様の…
  182. ひめな: 今のって、誰かの夢…?
  183. ひめな: コルネリアとユニア… 双子…かな? 瓜ふたつの顔してたよね
  184. ひめな: あれ…また… 意識が…遠く…
  185. <西暦77年・初頭>
  186. <ポンペイ>
  187. ???: …きて… …ねえ、起きて!
  188. みんな: ………… …………
  189. ひめな: …はっ!?
  190. ひめな: みゆりん、しぐりん! 目を覚まして!
  191. 時雨: …ん…?
  192. ミユリ: うみゃうみゃ… ミユはまだ眠いです…
  193. ひめな: 寝ぼけてる場合じゃないって!
  194. ???: 目が覚めた?
  195. コルネリア: 私はコルネリア あなたたちは、誰?
  196. ひめな: えっ…コルネリア?
  197. コルネリア: あれ…? 私を知ってるの?
  198. ひめな: (さっきの夢の子だ…!)
  199. ひめな: (少し大きくなってるけど… 面影が残ってる)
  200. ひめな: ううん、初めましてだよね
  201. ひめな: 私チャンはひめな★ こっちがみゆりんとしぐりんで…
  202. コルネリア: ひめな… みゆりん…しぐりん?
  203. ひめな: そう、それから あっ…!
  204. ミユリ: 燦様たちがいないです!
  205. 時雨: …うん、はぐむんと三輪さんも
  206. ひめな: どうしよ!? 3人とはぐれちゃった?
  207. 時雨: 近くに…倒れてたりしない?
  208. ミユリ: …見あたらないです…
  209. コルネリア: …何か事情があるの? なんだか困ってるみたい
  210. ひめな: うん…ぶっちゃけ ここがどこかもわからないし
  211. コルネリア: 私の家よ あなたたち、中庭に倒れてたの
  212. ひめな: あ…そうなんだ
  213. ひめな: (そういえば… 夢で見た場所と同じ?)
  214. ガヤガヤ…
  215. コルネリア: いけない、人が来ちゃう あっちに隠れてて!
  216. コルネリア: ここなら誰も来ないから 少し待っててくれる?
  217. 時雨: う…うん…
  218. コルネリア: あ、お腹とかすいてない?
  219. コルネリア: これ、私のおやつ みんなで食べちゃっていいから
  220. ひめな: …かくまってくれたの? すごくいい子じゃん!
  221. ミユリ: それにそれに 香ばしいお菓子もくれましたし
  222. 時雨: パンみたいな形だけど チーズとハチミツの匂いがする…
  223. ねむ: 古代ローマ時代のチーズケーキだ 本で見たことがある
  224. ねむ: どうやら…
  225. ねむ: 火山噴火が起きる前の ポンペイに着いたようだね
  226.  
  227. FILENAME: text_519601-4_BPssF.txt
  228. ミユリ: ポンペイ…
  229. ひめな: 目指してた町に着いたってこと?
  230. ねむ: そのようだ
  231. 時雨: でも… …はぐむんたちは…どこへ?
  232. ひめな&ミユリ: ………… …………
  233. はぐむ: な…なに!?
  234. 三輪 みつね: 空間の様子が変…?
  235. ねむ: 本の状態も ひどく不安定になっている…!
  236. はぐむ: ――っ!?
  237. 燦: 足元に亀裂が…!
  238. ねむ: もしもあれが タイムパラドクスが原因で生じた
  239. ねむ: 時空の狭間のような ものだとすると…
  240. 時雨: …パラドクスを解消すれば また合流できる?
  241. ねむ: その可能性は高いと思う
  242. ねむ: 本来であれば パラドクスを回避するために
  243. ねむ: 歴史への干渉は 極力避けたいんだけど
  244. ねむ: すでに矛盾が発生しているなら 正常に戻す必要があるよ
  245. ミユリ: つまりつまり ミユたちがまずやるべきは…
  246. ミユリ: 歴史がどこか狂ってないか 調べることでしょうか?
  247. ひめな: ワンチャンそれがよさそうだね もしかするとみわりんたちも
  248. ひめな: 今ごろこっちの心配を してるかもしれないし!
  249. ???: 『コルネリア様~!』
  250. ミユリ: …ん?
  251. ひめな: この声 さっきの中庭のほうからだね
  252. ミユリ: そこから覗けます!
  253. コルネリア: あら、遅かったじゃない アマリュリス
  254. アマリュリス: すみません、ユニア様のご用事が なかなか片づかなくって…!
  255. ひめな: え、アマリュリス!?
  256. ミユリ: ミユたちが探してる 魔法少女の名前です!
  257. 時雨: 何を話してるんだろ…
  258. アマリュリス: それで… 例の選挙の話なんですけど
  259. コルネリア: えっと…次の造営官の?
  260. アマリュリス: そうです!
  261. アマリュリス: このままいくと、私たちにとって 都合の悪いことに…
  262. <数分後…>
  263. ひめな: …なんか 難しそうな話してない?
  264. 時雨: うん…ずっと 政治の話をしてる
  265. ミユリ: ミユよりかなり年下に見えるのに 頭のよさそうな子たちです…
  266. ひめな: …てかさ、今さらなんだけど
  267. ひめな: 私チャンたち、なんで あの子たちの言葉がわかるわけ?
  268. ねむ: 僕を生みだしたうわさは 過去で無事に過ごすためのもの
  269. ねむ: 言語や服装といった壁も 心配する必要はないよ
  270. ミユリ: そういうことですか…
  271. 時雨: あ…ふたりの話 終わったみたい
  272. アマリュリス: …それじゃ、コルネリア様 息抜きにルドゥスを少しだけ!
  273. コルネリア: そうね、ひと勝負したいわ あっちへ行きましょう
  274. 時雨: ――っ!?
  275. ミユリ: こっちに来ます!
  276. ねむ: ルドゥス…今でいう 盤上ゲームのようだね
  277. ひめな: もしかして私チャンたちが ここにいること、忘れてる!?
  278. ミユリ: どどど、どうしましょう!?
  279. ねむ: 逃げる暇はなさそうだよ
  280. コツ…
  281. アマリュリスたち: あ…
  282. アマリュリス: …あの、コルネリア様 この方たちは?
  283. コルネリア: ごめんなさい…えっと
  284. コルネリア: ひめなと みゆりんと、しぐりんよ
  285.  
  286. FILENAME: text_519601-5_BPssF.txt
  287. アマリュリス: 初めまして、ひめな様 みゆりん様、しぐりん様
  288. アマリュリス: アマリュリスと申します
  289. アマリュリス: わたしは ユニア様お付きの侍女で…
  290. ひめな: (ユニア…さっきの夢に 出てきた子だよね…?)
  291. コルネリア: ユニアは私の双子の妹 普段は離れて住んでいるの
  292. 時雨: …混乱してきたかも…
  293. ひめな: …おけまる★ だいたいわかった!
  294. ねむ: 「コルネリアはこの大きな屋敷のお嬢様で ユニアという双子の妹がいる」
  295. ねむ: 「ユニアは幼い頃に 他の家に養子に出されていて」
  296. ねむ: 「アマリュリスはそのユニアの侍女」
  297. ねむ: 「今日はユニアが実家を訪れる日で アマリュリスは手が空いた隙に コルネリアに会いにきた、と」
  298. ねむ: …こういうことだね?
  299. ひめな: まとめ、あざお★
  300. コルネリア: …ひめなは誰と話してるの?
  301. アマリュリス: あっ…コルネリア様には ねむ様が見えないのでしょうか?
  302. ねむ: ごめん、僕の姿を認識できるのは 魔法少女だけなんだ
  303. ねむ: 声だけでも聞こえるよう 少し調整してみよう
  304. ねむ: …どうかな?
  305. コルネリア: あ…女の子の声が聞こえる 姿は見えないけど…
  306. コルネリア: ひめなたちも アマリュリスと同じように
  307. コルネリア: 不思議な力を使うのね
  308. アマリュリス: そのようですね …あっ、もしかして!
  309. アマリュリス: ひめな様たちも わたしと同じように
  310. アマリュリス: 過去を変えるために 未来からやってきたのでしょうか
  311. 時雨: えっ…!?
  312. ミユリ: まさかまさかの タイムトラベラー同士ですか!?
  313. ひめな: アマリュリスも 未来からきたんだね?
  314. アマリュリス: はい…
  315. アマリュリス: 「今からおよそ2年半後、ポンペイを 恐ろしい災禍が襲い この町を一夜にして押し潰します」
  316. アマリュリス: 「…わたしは、その生き残りなんです」
  317. アマリュリス: 「わたしは、みなさんにそのことを知らせ 来たる災禍から救うために 過去の世界へと生まれ変わりました」
  318. アマリュリス: 「この身のすべてを捧げることを クビウス様に誓って…」
  319. ねむ: クビウス… キュゥべえのことだね
  320. ねむ: ウェスウィウス山が噴火して ポンペイの町が壊滅したのは
  321. ねむ: 僕達の暦でいうところの 西暦79年の終わりごろだから
  322. ねむ: 現在はその2年半ほど前… 西暦77年のポンペイのようだね
  323. コルネリア: ひめなたちはどうして この町へ来たの?
  324. ひめな: 私チャンたちはね…
  325. ひめな: 私チャンたちにとって 大切な人の足跡を探して
  326. ひめな: 2000年後の未来から ここへ来たんだよね
  327. アマリュリス: はわ… にに、2000年後ですか!?
  328. コルネリア: アマリュリスよりも もっと遠い未来からきたのね
  329. アマリュリス: そのようです…
  330. アマリュリス: わたしはあの災禍の日に クビウス様に祈りを捧げ
  331. アマリュリス: 気づくと、3年ほど前の 自分に生まれ変わっていました
  332. アマリュリス: ですので、わたしが遡った歳月は わずか3年ほどです
  333. 時雨: 3年…? 2年半じゃなくて?
  334. アマリュリス: あ…生まれ変わってから 何ヶ月か経っていますので!
  335. ミユリ: なるほどです
  336. アマリュリス: すぐにこのことを、みなさんに 伝えようとしたのですが…
  337. アマリュリス: 近い将来、山が割れ 空から火と石が降ると言っても
  338. アマリュリス: 誰も信じてはくれませんでした…
  339. アマリュリス: 予言を信じてもらえない 呪いをかけられたという
  340. アマリュリス: トロイアの王女カサンドラ様も こんな気持ちだったのでしょうか
  341. コルネリア: みんな、信じたくないのよ
  342. コルネリア: 悲劇はもう終わりだと 思ってたんだから
  343. ミユリ: どういう意味でしょう?
  344. ねむ: ポンペイでは西暦62年… 15年前に大きな地震があった
  345. ねむ: 多くの建物が倒壊し いまだ復興のさなかにあるんだよ
  346. コルネリア: うん…私たちが生まれる 少し前のことよ
  347. 時雨: その地震は、噴火の前兆に すぎなかったってこと…?
  348. ねむ: おそらくは、ね
  349. アマリュリス: 復興に向けて みんなが一生懸命なときに
  350. アマリュリス: 町を捨てて逃げだそうだなんて 誰も思いませんよね
  351. アマリュリス: …でも コルネリア様だけは違いました
  352. アマリュリス: 初対面だったわたしの言葉を 信じてくれたんです!
  353.  
  354. FILENAME: text_519601-6_BPssF.txt
  355. <西暦76年>
  356. <ポンペイ>
  357. コルネリア: アマリリ…アマリュリス?
  358. アマリュリス: あ… アマリリスで結構ですよ
  359. アマリュリス: わたしどもギリシャ系の名前は 発音しにくいと思いますので!
  360. コルネリア: ありがとう アマ…アマリュリス
  361. コルネリア: ユニアお付きの 侍女っていうことは…
  362. コルネリア: 同じ家庭教師の先生から 勉強を教わってたりするの?
  363. アマリュリス: はい、ウェルギリウス様の詩から 弁論術まで…
  364. アマリュリス: 身に余るほどの教養を 学ぶ機会をいただいております!
  365. コルネリア: へぇ…そうなのね それで、私になんの用?
  366. アマリュリス: 実は…
  367. コルネリア: …そんな感じで いきなり押しかけてきたんだよね
  368. アマリュリス: えへ…わたし、前から コルネリア様びいきだったんです
  369. ひめな: ファンってことだね!
  370. アマリュリス: はい、ずっと憧れてました 聡明で、穏やかで、優しくて…
  371. コルネリア: 初対面なのに、私の好物まで 知ってたから引いたわよ
  372. アマリュリス: 以前から、ユニア様と一緒に お屋敷にお邪魔してましたので!
  373. コルネリア: …ユニアは6歳のときに よその家の養子になったの
  374. コルネリア: 養子先は、お父様の親友の家で… 今もよくうちへ来るのよ
  375. ねむ: 姉妹なのに名前が違うのは 違う家の子になったからだね
  376. ミユリ: それはそれは どういう意味でしょう?
  377. ねむ: 古代ローマ時代、姉妹は 同じ名前で呼ばれていたらしい
  378. アマリュリス: はい、このお屋敷に住んでいた頃
  379. アマリュリス: ユニア様はコルネリア・ミノル… 小コルネリア様と呼ばれてたとか
  380. 時雨: …ややこしい…?
  381. ひめな: で、コルネリアは
  382. ひめな: アマリュリスの話を あっさり信じちゃったの?
  383. コルネリア: うん…その日、人気役者の パリス様のお芝居の途中で
  384. コルネリア: 突然、大雨が降って 大騒ぎになるって予言して
  385. コルネリア: ほんとにその通りになったし…
  386. アマリュリス: それから、折を見て
  387. アマリュリス: お邪魔させて いただくようになりました
  388. ひめな: 仲良くなったんだね!
  389. アマリュリス: はい、コルネリア様の好みは 調べ上げておりましたので
  390. アマリュリス: 特に、この盤上ゲームを 持ち込んだときなど
  391. アマリュリス: 興味津々のご様子で…
  392. コルネリア: ま、前から遊んでみたかったのよ でも、機会がなくて…
  393. アマリュリス: わたしもルドゥスが趣味なので 意気投合した感じですね
  394. アマリュリス: でも、ただ遊んでいたわけじゃ ないですよ?
  395. ねむ: …ひとりの力で 未来を変えるのは難しい
  396. ねむ: だからコルネリアに 手伝ってもらおうと思ったのかな
  397. アマリュリス: よ、よくわかりましたね!? おっしゃる通りです!
  398. ひめな: でも、どうして コルネリアを選んだの?
  399. アマリュリス: それには 深いわけがあるのですが…
  400. アマリュリス: そのことを話す前に…わたしから ひとつお伺いしたいことが
  401. ひめな: なに?
  402. アマリュリス: さきほどのねむ様のお話だと… わたしたちを襲ったあの災禍は
  403. アマリュリス: 2000年後の未来まで 語り継がれているんですよね?
  404. ねむ: うん…ひとつの町が消滅した 史上稀に見る悲劇としてね
  405. ねむ: とても皮肉なことだけれど 町全体が灰に埋もれたことで
  406. ねむ: まるで時が止まったような ポンペイの町並みは
  407. ねむ: 訪れる者の心を動かさずには おかない遺跡となっている
  408. コルネリア: アマリュリスの言葉だけでは なかなか実感が湧かなかったけど
  409. コルネリア: もうすぐこの町は 本当になくなってしまうのね…
  410. ミユリ: ねむ様ねむ様…
  411. ミユリ: アマリュリスさんは キュゥべえにお願いして
  412. ミユリ: 噴火そのものをなかったことには できなかったのでしょうか?
  413. ねむ: この時代の人々の多くは
  414. ねむ: 火山噴火は自然現象ではなく 神々の怒りだと捉えていた
  415. ミユリ: あ…
  416. ねむ: それに、もし仮に その願いを叶えたとしても
  417. ねむ: 先に待つのは、新たな噴火に おびえる日々だっただろうね
  418. ひめな: うん… 簡単じゃないよね
  419.  
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  421. アマリュリス: やはり、災禍が降りかかるのは この町の運命なのですね…
  422. アマリュリス: でも、神々はクビウス様を通じて
  423. アマリュリス: 3年の猶予を わたしにくださいました
  424. アマリュリス: その日が来る前に、みんなで町を 離れることができれば…!
  425. 時雨: 町ごと避難するっていう意味…?
  426. コルネリア: もちろん簡単じゃないと思うけど 私たちはそのために
  427. コルネリア: お父様たちを 動かしたいと思ってるの
  428. アマリュリス: コルネリア様のお父様は 町でも有数の交易商なんです
  429. ミユリ: さっき選挙がどうこうって 話をしてたのも、そのためです?
  430. ひめな: そんな感じっぽいね
  431. アマリュリス: 山が火を噴いたあの日…
  432. アマリュリス: 人々はみんな、町に留まって 災禍が収まるのを待ちました
  433. アマリュリス: …でも、その判断が 間違いだったんです
  434. アマリュリス: 半日ほど経って… 燃える雲が町を襲いました
  435. アマリュリス: 助かった人は… ほとんど…いなくて…
  436. コルネリア&ひめな: ………… …………
  437. ねむ: …痛ましい記憶だ
  438. ねむ: ただ…今の話で ひとつひっかかることがある
  439. ミユリ: それはなんでしょう…?
  440. ねむ: ポンペイの人々の大多数は 避難に成功したはずなんだよ
  441. ミユリ&時雨: あっ…
  442. 時雨: たしかに… ねむ様はそう言ってた
  443. ねむ: アマリュリスの言う通り
  444. ねむ: 噴火が始まってから 致命的な事態に至るまで
  445. ねむ: 半日ほどの時間があったとされる
  446. ねむ: 命を落とした人も 決して少なくはなかったけれど…
  447. ねむ: それでも町の人口の大部分は 助かったというのが定説だ
  448. アマリュリス: わたしが経験したのとは… …違う…?
  449. アマリュリス: …と、いうことは
  450. アマリュリス: このあと未来が変わって 多くの人が助かるということ…?
  451. ねむ: 事前に避難の動きが あったのかは不明だけど
  452. ねむ: 最初の噴火のあと 大多数の人が逃げ延びたはずだよ
  453. アマリュリス: すべての命が救われるわけでは ないのですね…
  454. コルネリア: …でも、何かが変わってる?
  455. アマリュリス: はい、わたしたちの力で 未来は変えられるのかも…!
  456. ねむ: ………… …………
  457. 時雨: 何か、気になることがあるの?
  458. ねむ: うん…もしかすると今ので 話がつながったかもしれない
  459. ミユリ: 何がですか?
  460. ねむ: 例のタイムパラドクスのことだよ
  461. 時雨: どういうこと…?
  462. ねむ: …いま僕達の前で ふたつの歴史が枝分かれしている
  463. ねむ: アマリュリスが経験した歴史A… 多くの命が失われる未来
  464. ねむ: そして、アマリュリスによって 改変された歴史B…
  465. ねむ: 町の住民の大多数が 避難に成功する未来だ
  466. ねむ: これが、僕達の知る正史であり…
  467. ねむ: お姉さんの記録と一致する歴史 すなわち歴史Bだ
  468. ねむ: …ところが、だ
  469. ねむ: タイムパラドクスに呼応して この本の記述は揺れ動いている
  470. ひめな: それって、どういうこと?
  471. ねむ: アマリュリスの行動が なかったことになって
  472. ねむ: 最初の歴史Aで起きた惨禍が 繰り返されようとしているんだ
  473. アマリュリス: いったいどうしてでしょう…?
  474. ねむ: 言いにくいことだけど…
  475. ねむ: 本来はアマリュリスが 実現するはずだった歴史B
  476. ねむ: その歩みを、僕達が 妨害してしまったんだろう
  477. ミユリ&時雨: ええっ…?
  478. コルネリア: 何があったの?
  479. ねむ: わからない…ただ、結果的に 歴史への干渉は引き起こされた
  480. ねむ: その原因は僕達としか思えない
  481. ねむ: なにしろ僕達の目的は この本にお姉さんが記録した
  482. ねむ: アマリュリスの軌跡を 追うことだったんだからね
  483. ひめな: …待って待って! 他の可能性もあるってヒコ君が!
  484. ねむ: どういうことかな?
  485. ひめな: 私チャンたちが近づいたことで 別の存在を刺激したのかも、って
  486. ミユリ: 別の存在…?
  487. 時雨: …あっ
  488. 時雨: …あの魔女…?
  489. ねむ: そうか、なるほど
  490. ねむ: 僕達の接近を感じ取ったことで 強大な魔女が活性化した…
  491. ねむ: その魔女が起こした事件によって
  492. ねむ: アマリュリスが変えた 西暦76年以降の3年間の歴史が
  493. ねむ: どっちつかずの、極めて 不安定な状態になってしまった
  494. ねむ: 西暦79年を目指していた僕達が 西暦77年に着地したのも
  495. ねむ: ここより先の未来が、明確に 定まっていないせいかもしれない
  496. 時雨: 78年や79年は 足場が不安定で下車できない…?
  497. ねむ: その通り、いい喩えだね
  498. ねむ: はぐれてしまった3人は まさにその不安定な時空間…
  499. ねむ: 時空の狭間に 囚われてしまったんだろう
  500. ミユリ: ではでは、やはり タイムパラドクスを解消して
  501. ミユリ: 歴史Bを取り戻せば 燦様たちと合流できると?
  502. ひめな: ヒコ君もそう思うって!
  503. コルネリア: よくわからないけれど 意見がまとまってきた感じ…?
  504. ひめな: そうだね、とりま アマリュリスを手伝って
  505. ひめな: 町のみんなが避難できるように がんばればいいんだよね
  506. ミユリ: ですです、最初のきっかけを 作った責任は取らないと!
  507. ねむ: その方針に賛成だよ
  508. アマリュリス: み…みなさん…! ありがとうございます!
  509. 時雨: 具体的には何をするの?
  510. アマリュリス: はい、いろいろありますが… 最も重要な計画がこちらです
  511. アマリュリス: コルネリア様が幼馴染の マリウス様と婚約できるように
  512. アマリュリス: 各方面に手を回していきます
  513. ひめな: …え?
  514. アマリュリス: そして、最大のライバルは 双子の妹であるユニア様!
  515. アマリュリス: 本日、マリウス様のお屋敷で 行われる晩餐会が勝負です!
  516. 時雨: …どういうこと?
  517.  
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  519. アマリュリス: ではこれから、みなさんには
  520. アマリュリス: コルネリア様の新しい侍女として 晩餐会に同行していただきます!
  521. ミユリ: あのあの 本当に大丈夫でしょうか…?
  522. アマリュリス: 大丈夫です!
  523. アマリュリス: わたしがコルネリア様の 侍女長になりすまして
  524. アマリュリス: 侍女たちに 言い含めておきましたので!
  525. アマリュリス: 新しい子たちに 晩餐会の様子を見せておきたいの
  526. アマリュリス: あなたたちに留守はまかせたわよ
  527. はいっ!
  528. ひめな: アマリュリスって すごい魔法が使えるんだね★
  529. アマリュリス: メタモルフォセス… なりすましの魔法です
  530. コルネリア: 見た目がそっくりなだけじゃ ないのよね?
  531. アマリュリス: はい、わたしが誰かに なりすましていた間の言動は
  532. アマリュリス: 多少、辻褄が合わなくても
  533. アマリュリス: 怪しまれないという おまけつきです!
  534. ひめな: あのときあそこにいたはず、とか 追及されない感じ?
  535. ねむ: それで、新しい侍女3人の話も 疑われずに済むわけか
  536. ねむ: 周囲の認識にまで効果が及ぶとは なかなかすごい魔法だね
  537. アマリュリス: えへ…でも 戦いの役には立ちません
  538. ミユリ: …そうでもなかった…?
  539. 時雨: どうしてそんな魔法を…?
  540. アマリュリス: そうですね…たぶん 大詩人オウィディウス様の
  541. アマリュリス: 『転身譚』を愛読していた せいでしょうか…?
  542. ねむ: 原題はメタモルフォセス… “変身”をモチーフにした傑作だ
  543. アマリュリス: 後世にも読み継がれて いるのですね…感動です!
  544. アマリュリス: では、コルネリア様 そろそろ晩餐会に向かう時間です
  545. アマリュリス: ひめな様たちも出発の準備を!
  546. ひめな: おけまる★
  547. コルネリア: あなたはユニアと一緒でしょ?
  548. アマリュリス: ここで油を売っていたら ユニア様に置いていかれました…
  549. ひめな: お付きの侍女なのに!?
  550. アマリュリス: なので、コルネリア様と ご一緒させていただきますね!
  551. <ポンペイ市街>
  552. ひめな: それにしても…
  553. ひめな: 避難を円滑に進めるための秘策が 晩餐会のセッティングだなんてね
  554. ねむ: …でも、アマリュリスの話は たしかに筋が通っているよ
  555. ねむ: 「コルネリアの父とユニアの義父は 昔からの親友で、ともにポンペイ有数の豪商だ」
  556. ねむ: 「そして、コルネリアとユニアの幼馴染で ふたりが兄のように慕うマリウス…」
  557. ねむ: 「親同士の関係も良好で その家は、都市参事会において 絶大な発言力を持っている」
  558. アマリュリス: …そして、近い将来 3つの家の結びつきを
  559. アマリュリス: 確固たるものにするのが ユニア様の存在です
  560. アマリュリス: コルネリア様とユニア様の お父様は
  561. アマリュリス: ワインの交易を手がける大船主…
  562. アマリュリス: そして、ユニア様の養子先… すなわちユニア様のお義父様は
  563. アマリュリス: ワイン醸造で財をなした 大地主で大商人
  564. アマリュリス: おふたりを父に持つユニア様が 名門のマリウス様と婚約すれば
  565. ひめな: 3つの家が きれいに結びついちゃうよね!
  566. アマリュリス: でも、2年半ほど先に このことが仇になってしまいます
  567. アマリュリス: わたしの経験した未来では 三家の思惑が一致する形で
  568. アマリュリス: ユニア様は、マリウス様と 婚約されました
  569. コルネリア: …………
  570. ミユリ: あのあの… 婚約ってそんなに若いうちから?
  571. ねむ: この時代では普通だね
  572. アマリュリス: お相手のマリウス様がお若いぶん それでも少し遅らせたんですよ
  573. アマリュリス: そして婚約が決まったあと マリウス様の家は
  574. アマリュリス: 地元産のワイン醸造を中心に この町を復興する政策を
  575. アマリュリス: 強く支持するようになります
  576. ひめな: ユニアの家は地主さんで ワインを造ってるんだもんね
  577. ねむ: …そしてマリウスの家は 参事会に強い影響力があった
  578. ねむ: ポンペイの人口は1万程度… 現代なら町ひとつくらいの規模だ
  579. ねむ: 参事会の意向がすなわち 町の命運を左右すると言っていい
  580. アマリュリス: 思えば、災厄の前兆は いくつもあったんです
  581. アマリュリス: 大地が揺れる日がしだいに増えて 避難を考える家族もいました
  582. アマリュリス: あんなことになると知っていれば もっと早く逃げることだって…
  583. 時雨: 心の準備があるだけでも 結果は違ったかもしれないね…
  584. アマリュリス: …はい
  585. アマリュリス: 実際は、山が火を噴いたあとも 参事会は避難に消極的でした
  586. アマリュリス: ここまで復興した町を 捨てることはできなかったんです
  587.  
  588. FILENAME: text_519601-9_BPssF.txt
  589. ミユリ: あのあの…
  590. ミユリ: もし、マリウスさんのお相手が コルネリアさんだったとしたら?
  591. アマリュリス: 町の運命は 変わっていたと思います…!
  592. ねむ: コルネリアの家は交易商だから この地が本当に危ないとわかれば
  593. ねむ: 他の港に拠点を移すことも 視野に入れて動ける
  594. ねむ: 町全体にそうした動きが広まれば
  595. ねむ: マリウスやユニアの家も 考えを変えざるを得なくなるね
  596. 時雨: でも、この町の運命を まだ誰も知らないんだよね…?
  597. ねむ: 改変される前の、歴史Aで 起きた悲劇を知っているのは
  598. ねむ: アマリュリスただひとりだからね
  599. アマリュリス: はい…
  600. アマリュリス: 誰も信じてくれないのなら
  601. アマリュリス: わたしがこの町の未来を 変えるしか…!
  602. ひめな: 私チャンたちも一緒だよ★
  603. アマリュリス: とても心強いです…!
  604. コルネリア: …もうすぐ マリウス様のお屋敷よ
  605. ミユリ: ところでところで…
  606. ミユリ: どうして今日の晩餐会が 勝負なのでしょうか?
  607. アマリュリス: 実は、三家が一堂に会するこの日
  608. アマリュリス: 晩餐会の様子をご覧になった お父様がたの間で
  609. アマリュリス: マリウス様とユニア様こそ お似合いだというお話になって
  610. アマリュリス: ユニア様が本命の方向で 婚約話が動きだすんですよね
  611. ひめな: そうなんだ?
  612. アマリュリス: なのでここはコルネリア様に がんばっていただいて
  613. アマリュリス: マリウス様との仲の良さを お父様がたにアピールしないと…
  614. コルネリア: う…うん…
  615. ねむ: この時代、大きな家同士の結婚は いわば会社の合併のようなもので
  616. ねむ: 大人たちの思惑だけで決まると どこかで読んだけれど
  617. ねむ: 本人たちの相性も やはり考慮されるんだね
  618. アマリュリス: そうですね… 結婚と愛情は別と割り切って
  619. アマリュリス: 正妻以外の女性に愛を捧げる 男性も多いと聞きますが
  620. アマリュリス: ひとりの相手に注ぐ愛情しか
  621. アマリュリス: 持ち合わせないという方も いらっしゃいますし
  622. アマリュリス: ユダヤの王女様と恋に落ちた
  623. アマリュリス: ローマの執政官ティトゥス様も そのような方とのお噂…
  624. ひめな: マリウスも、ひとりしか 愛せない人なんだね?
  625. アマリュリス: はい、マリウス様はとても 真面目な方ですので
  626. アマリュリス: 結婚する相手が決まったら
  627. アマリュリス: その方を好きになろうと 努力なさると思います
  628. アマリュリス: 実際、婚約が決まったあとは
  629. アマリュリス: ユニア様を 誰よりも大切になさいましたし
  630. 時雨: …その相手が コルネリアだったら?
  631. アマリュリス: 当然コルネリア様を 大切にされるはずです!
  632. ミユリ: マリウスさんは、本当は どっちが好きなんでしょう?
  633. アマリュリス: わたしなら迷わず コルネリア様を選びますけどね
  634. ミユリ: アマリュリスさんの好みは 聞いてないのですがぁ
  635. コルネリア: 私もユニアも、マリウス様とは 家族ぐるみのつきあいだから
  636. コルネリア: どっちも妹みたいに 思ってるとおもう…
  637. アマリュリス: どうでしょう? 今でもそうでしょうか?
  638. アマリュリス: 最近のマリウス様…
  639. アマリュリス: コルネリア様に少し 優しいと思うんですけど
  640. コルネリア: …え?
  641. ひめな: 心あたり、ありそう!
  642. アマリュリス: それに…コルネリア様も マリウス様が好きですよね?
  643. コルネリア: え…あっ… …うん…大好き
  644. コルネリア: でも…ユニアにも 幸せになってほしいし…
  645. ひめな: (そこで… ためらっちゃう子なんだね)
  646. ひめな: (夢で見たのと、一緒…)
  647. アマリュリス: 甘いです!
  648. コルネリア: ――っ!?
  649. アマリュリス: かのオウィディウス様も 『恋の技法』でおっしゃってます
  650. アマリュリス: 恋は戦争である、と! それに…
  651. アマリュリス: 未来を変えなければ みんな…死んじゃうんですよ!
  652. アマリュリス: マリウス様も…ユニア様も… コルネリア様も!
  653. コルネリア&ひめな: …………
  654. コルネリア: そうだったわね…
  655. コルネリア: アマリュリス、あなたは一度 この町の最期を見たのよね
  656. アマリュリス: はい…でもコルネリア様と マリウス様が婚約なさったら
  657. アマリュリス: 参事会を動かして 未来を変えられます!
  658. アマリュリス: だいたい、ユニア様のほうが 立場的にほんの少し有利なだけで
  659. アマリュリス: コルネリア様もユニア様と並ぶ 婚約者候補の筆頭なわけですし
  660. アマリュリス: 個人的には、むしろ 断然お似合いだと思います!
  661. ミユリ: だいぶ強火の ひいきっぷりですね…
  662. アマリュリス: いえ、コルネリア様にはもっと 強気になっていただかないと
  663. アマリュリス: まだまだ洗脳が 足りないようですので…!
  664. コルネリア: それ、本人の前で言うの…?
  665. 時雨: あの…ユニアってどんな子なの?
  666. コルネリア: すごくいい子よ
  667. コルネリア: あの子を嫌いな人なんて いないと思うわ
  668. ひめな: ………… …………
  669. ユニア: ユニアはマリウス様のことが 大好き~!
  670. ひめな: (ユニアの今の気持ちは どうなんだろ…?)
  671. <マリウスの屋敷前>
  672. ようこそ、コルネリア様 お迎えにあがりました
  673. 侍女のみなさまは このまま少々お待ちを…
  674. コルネリア: ひめなたち、ごめんね またあとでね
  675. ねむ: …これで理解できたよ
  676. ねむ: アマリュリスがコルネリアに 接触した背景には
  677. ねむ: そういう事情があったわけだね
  678. アマリュリス: 納得していただけましたか?
  679. 時雨: ………… …………
  680. 時雨: (何か…忘れてるような)
  681. 時雨: (歴史Bの実現を 邪魔する存在…)
  682. ひめな&ミユリ: ――っ!?
  683. 時雨: 魔女!?
  684. アマリュリス: コルネリア様が 向かったほうです!
  685.  
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  687. ひめな: コルネリア!?
  688. アマリュリス: いま、お助けしますのでっ!
  689.  
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  691. ひめな: やったね、みゆりん★
  692. アマリュリス: コルネリア様…!
  693. コルネリア: …あ? アマリュリス…?
  694. アマリュリス: 大丈夫ですか、コルネリア様! 痛いところはありませんか!?
  695. コルネリア: う、うん… なんともない
  696. アマリュリス: よかった…
  697. アマリュリス: あっ、みゆりん様 ありがとうございました
  698. アマリュリス: 神話の怪物を倒していただいて…
  699. ミユリ: 魔女のことですか? どういたしまして…
  700. 時雨: ねえ…ぼくたちの名前 訂正しなくていいの?
  701. ミユリ: タイミングを完全に 見失ってしまいましたね…
  702. ざわざわ…
  703. ひめな: あ… 騒ぎになるとまずいかも!
  704. アマリュリス: その前にコルネリア様を 晩餐会にお連れしないと!
  705. アマリュリス: コルネリア様、いけますよね!?
  706. コルネリア: う、うん…!
  707. アマリュリス: では、お迎えの方になりすまして いい感じにごまかします!
  708. ひめな: とりま、よろ~★
  709. <マリウスの屋敷>
  710. コルネリア様の侍女の方々ですね こちらへどうぞ…
  711. 時雨: …って言われて ここへ通されたけど
  712. ミユリ: 晩餐会が終わるまで ここで待機ですか?
  713. ねむ: 晩餐の間に入れるのは コルネリアだけのようだね
  714. ひめな: 古代ローマ時代のごちそう 食べてみたかったのに~!
  715. ねむ: 待遇に差があるのは仕方ない
  716. ねむ: 侍女や使用人はおろか 娘のコルネリアでさえ
  717. ねむ: ローマ市民権を持つ 父親の所有物という時代だよ
  718. ミユリ: アマリュリスさんとも 別室になってしまいました…
  719. ねむ: 彼女はコルネリアではなく ユニアの侍女だからね
  720. ねむ: コルネリアひとりで、うまく やってくれることを祈るしかない
  721. ひめな: マリウスと 仲良くしてるといいね★
  722. ミユリ: 結菜さんたちや静香さんたちは 他の時代へ向かったわけですけど
  723. ミユリ: 幼馴染のイケメンを 双子の姉妹で奪い合いとか
  724. ミユリ: こんなラブコメ展開になってる組 他にあるんでしょうか!?
  725. 時雨: ないと思う…
  726. ミユリ: ただ この時代に来てよかったのは
  727. ミユリ: 長いトーガの裾から、ちらりと 覗く足のよさを知ったことですぅ
  728. 時雨: そこ…?
  729. ねむ: ………… …………
  730. ひめな: あ、ねむりんが呆れてる
  731. ねむ: そうじゃない 思案に暮れていたんだ
  732. ねむ: もし、コルネリアをあの魔女から 救出できなかったら?…と
  733. ミユリ: もしかして、歴史Bのルートが 消えるとこでした?
  734. ひめな: え、実は めちゃヤバだったってこと?
  735. ねむ: うん、コルネリアを救ったことで その危険は排除したけれど
  736. ねむ: パラドクスの解消には まだ至っていないようだ
  737. ひめな: ヒコ君の見解は 他にも条件があるのかも、だって
  738. コツ…
  739. ???の声: あの…
  740. ひめな: ん…?
  741. ???: ここって、コルネリアお姉様の 侍女の方々の控室ですよね?
  742. ひめな: あ、うん…
  743. 時雨: コルネリアお姉様…?
  744. ミユリ: じゃあ、もしかして…
  745. ユニア: はい、妹のユニアです! おすそわけをお持ちしました
  746. ミユリ: ありがとうです… って、こんなにたくさん?
  747. ユニア: せっかくのごちそうなのに
  748. ユニア: わたしたちしか食べられないのは 申し訳ないと思って…
  749. ひめな: こっちも めちゃくちゃいい子じゃん!?
  750. 時雨: よその家の侍女にまで 気を遣ってくれてるってこと…?
  751. ミユリ: …前世でどんな徳を積めば こんな双子に愛されるんでしょう
  752.  
  753. FILENAME: text_519601-12_BPssF.txt
  754. ユニア: ………… …………
  755. ひめな: …どうしたの? 晩餐会に戻らなくていいの?
  756. ユニア: えっと…はい
  757. ユニア: 戻ってお姉様とマリウス様に もっと甘えたいんですけど
  758. ユニア: おふたりがすごく楽しそうに 話していたので
  759. ユニア: お邪魔になっちゃいそうで…
  760. ミユリ: 空気読んでくれました!
  761. 時雨: アマリュリスの計画通り…?
  762. ひめな: いつもふたりに甘えてるの?
  763. ユニア: はい!
  764. ユニア: 最近は3人で会える機会が なかなかありませんし
  765. ユニア: 今日はお昼の用事が長引いて
  766. ユニア: お姉様にもあんまり ハグできなかったので
  767. ユニア: ちょっと寂しいです…
  768. ひめな: コルネリアにいつも ハグしてるんだ…
  769. ミユリ: ちょっと天然な子っぽいです
  770. 時雨: コルネリアとマリウスの両方に 可愛がられてるんだね
  771. ひめな: だね…この子もマリウスが 好きなんだとしたら
  772. ひめな: ちょっと罪悪感あるかも…
  773. ミユリ: やっぱり好きなんでしょうか?
  774. ミユリ: その、ライクじゃなくて ラブ的な意味で!
  775. ひめな: まだわかんないんだけどさ
  776. ひめな: …やっぱ、好きピ同士で 一緒になってほしいじゃん?
  777. ユニア: …お邪魔しました!
  778. ユニア: ふふっ…少しだけど おしゃべりできて楽しかったです
  779. ひめな: うん、またね★
  780. ひめな: あの子がコルネリアの ライバルかぁ
  781. ミユリ: 正直、やりにくくなりました…
  782. ひめな: 3人とも仲がよさそうだから なおさらだよね
  783. ねむ: コルネリア陣営の僕達としては 会わない方がよかったかな?
  784. ひめな: 私チャンたちにも 感情があるからね
  785. 時雨: うん、キュゥべえみたいに 計算だけじゃ動けないし…
  786. ひめな: あれっ? そういえば!
  787. ひめな: こっちに来てから一度も キュゥべえと会ってなくない?
  788. 時雨: …たしかにそうかも
  789. ねむ: キュゥべえにしてみれば
  790. ねむ: 未来からきた君達は 正体不明の魔法少女だ
  791. ねむ: 敵か味方もわからない以上 今は静観しているのかもしれない
  792. ひめな: あ、そっか…契約してない子が いきなり現れたんだもんね
  793. 時雨: その点は アマリュリスも同じだよね?
  794. アマリュリス: おっしゃる通りです!
  795. アマリュリス: 過去に戻ってクビウス様と 最初にお会いしたときは
  796. アマリュリス: 事情説明に苦労しましたね
  797. 時雨: ――っ!?
  798. ミユリ: いつからいたのですか!?
  799. アマリュリス: あ、ついさっきです
  800. アマリュリス: 晩餐会も無事 お開きになったので…
  801. アマリュリス: コルネリア様とマリウス様は 実にいい感じに見えましたし
  802. アマリュリス: おかげさまで 今日の計画は大成功です!
  803. ひめな: あれっ、晩餐の間に入れたの?
  804. アマリュリス: えへ…
  805. アマリュリス: 給仕係になりすましたりして ちらちら様子を窺ってました
  806. アマリュリス: あとは、次の選挙をにらんで さりげない差し入れで
  807. アマリュリス: わたしたちが推す造営官候補の 好感度を上げたりなど…
  808. 時雨: それって何…?
  809. ねむ: 造営官は、選挙で選ばれる 町の要職だね
  810. ねむ: 将来の政策に影響がありそうだ
  811. アマリュリス: はい、町ぐるみの避難や移住に 理解のある方が当選されると
  812. アマリュリス: 実権を持つ、参事会のお歴々の 考えも変わってきますので…
  813. ねむ: この町で再興を目指す 復興派よりも
  814. ねむ: 町を離れる心がまえのある 避難派を増やしたい…
  815. ねむ: ということだね?
  816. アマリュリス: はい…急には無理でも 徐々にでも…
  817. ミユリ: つまりつまりアマリュリスさんは 晩餐会で選挙のアシストをして
  818. ミユリ: 歴史Bのフラグを 立ててきたということですか?
  819. ひめな: みゆりんの言い方 いちいちウケる~
  820. ひめな: コルネリアも無事 マリウスと仲良くなったし
  821. ひめな: ヒコ君の言ってた タイムパラドクス解消の条件も
  822. ひめな: そろそろ満たせたんじゃない?
  823. ミユリ: 満たせたらどうなるんでしょう?
  824. ねむ: 不安定だった“足場”が 定まったことで
  825. ねむ: 最初に目指していた西暦79年に 近づくことになるのかな?
  826. ミユリ: ――っ!?
  827. 時雨: 消えた…?
  828. アマリュリス: …えっ…ひめな様…? みゆりん様…しぐりん様…?
  829. アマリュリス: 消えてしまいました…
  830.  
  831. FILENAME: text_519601-13_BPssF.txt
  832. ひめな: …なに、ここ?
  833. ねむ: 時間を移動中の空間のようだね
  834. ミユリ: 三輪風に言えば タイムトラベル空間でしょうか…
  835. ねむ: タイムパラドクスが解消されて お姉さんの記録の一部が復活した
  836. ねむ: アマリュリスに関する話が 部分的に読めるようになったよ
  837. 時雨: じゃあ、環いろはの概念も 回収できたってこと…?
  838. ねむ: …まだだね
  839. ねむ: すべてのパラドクスが 解消されたわけではないようだ
  840. 時雨: はぐむんたちとは まだ会えないんだね…
  841. ひめな: 他の組もこんな風に パラドクスに巻き込まれてるの?
  842. ねむ: いや、君達だけだと思う
  843. ねむ: この時代はアマリュリスの 願いによって
  844. ねむ: 時空が不安定になりやすい 状況があったからね
  845. ひめな: あ…
  846. ミユリ: …光が…!
  847. <西暦77年・夏>
  848. <ポンペイ>
  849. アマリュリス: …以上が、ユニア様よりの ご伝言です
  850. コルネリア: ありがと、アマリュリス
  851. アマリュリス: それから…
  852. ドサドサッ
  853. コルネリア: な…なに?
  854. ミユリ: いたた…
  855. アマリュリス: ひめな様たち…!?
  856. コルネリア: …人払いしてきた
  857. ひめな: あざまる★
  858. ねむ: アマリュリスの話を聞くかぎり
  859. ねむ: ここは前に君達と会ってから 数ヶ月後のポンペイのようだね
  860. コルネリア: ええ、あの晩餐会の夜 ひめなたちが消えたって聞いて
  861. コルネリア: 何があったんだろうって 心配してたのよ
  862. ひめな: コルネリア、少し 大人っぽくなったね!
  863. コルネリア: そ、そう…かな?
  864. 時雨: 目指してた西暦79年じゃなくて 77年の夏ってこと…?
  865. ねむ: そのようだね
  866. ねむ: アマリュリスが歴史を変えてゆく 西暦76年から79年までは
  867. ねむ: 時空がかなり不安定な状態だった
  868. ねむ: 晩餐会の夜に、パラドクスを ひとつ解消したことで
  869. ねむ: “足場”が安定して西暦79年に ほんの数ヶ月だけ近づけたんだよ
  870. 時雨: でも、この先の歴史は まだ揺れ動いてる…?
  871. ねむ: うん、パラドクスの原因は ひとつじゃないんだろう
  872. ねむ: この前の晩餐会と同様
  873. ねむ: パラドクスの原因となる事件が もうすぐ起きるのかもしれない
  874. ミユリ: ではでは、前と同じ要領で アマリュリスさんたちを助けて
  875. ミユリ: 歴史Bの成立フラグを 片っぱしから立てていけば
  876. ミユリ: パラドクスも解決して ミユたちの目的も達成!
  877. ミユリ: …ってことですか?
  878. ねむ: そうだね
  879. ねむ: 果たして今度の事件は ポンペイの将来にかかわることか
  880. ねむ: それとも、マリウスの婚約に かかわることか…
  881. コルネリア: …………
  882. 時雨: …あの、アマリュリスは ユニアにこの話はしてないの?
  883. アマリュリス: え、あ…はい
  884. 時雨: あの子だったら将来起きる悲劇も 信じてくれそうだけど…
  885. ひめな: だから言えないんじゃない?
  886. ひめな: 自分とマリウスとの婚約が原因で みんなが逃げ遅れると知ったら
  887. ひめな: あの子、婚約を辞退するとか 言い出しちゃうかも
  888. ひめな: だからアマリュリスは ユニアには内緒にしたんだよね?
  889. ミユリ: なるほどなるほど!
  890. ミユリ: 実際には辞退なんて 認められないとしても
  891. ミユリ: そんな展開はコルネリアさんも 納得できないと思いますし!
  892. コルネリア: うん…ユニアの本当の気持ちは わからないけど、でも…
  893. コルネリア: あの子には、自分の心に 嘘をついてほしくない、かな
  894. ひめな: 結局、そこなんだよね
  895. ユニア: ユニアはマリウス様のことが 大好き~!
  896. ひめな: ユニアって… マリウスのことが好きなのかな?
  897. アマリュリス: はい、もちろんです
  898. ひめな: え、じゃあ…
  899. アマリュリス: でも、違うんですよ あの方の“好き”は…
  900. ひめな: どういうこと?
  901. アマリュリス: 前に、侍女のひとりが
  902. アマリュリス: 冗談でこんなことを ユニア様に聞いたんです
  903. ユニア様が いちばん大切に想っている方は
  904. どなたなんでしょう?
  905. ユニア: えっ…?
  906. ユニア: うーん、コルネリアお姉様に マリウス様…
  907. ユニア: お義父様、お義母様 実家のお父様、お母様…
  908. ユニア: いつもよくしてくれる あなたたちや町のみんな…
  909. ユニア: みんな大好きで …どうしよう、選べない
  910. す、すみません! そんなにお困りになるなんて
  911. ミユリ: つまりつまり、ユニアさんは みんなが平等に大切だと?
  912. アマリュリス: そう、あの方の“好き”に “特別”はないんです!
  913. アマリュリス: クピド様の矢に射られたような 燃え上がる恋じゃないんですよ
  914. ひめな: クピド… キューピッドのことだね★
  915. コルネリア: ユニアは誰と話すときも ニコニコ笑ってて
  916. コルネリア: 怒った顔なんて 見せたことがないの
  917. ミユリ: そこまでくると もう聖女様って感じですぅ
  918. コルネリア: それでも、マリウス様は 特別なんだと思ってたけど…
  919. コルネリア: 『…どうしよう、選べない』か
  920. アマリュリス: 双子でも案外 わからないものなんですね
  921. コルネリア: 私たち、6歳の頃にはもう 別々に暮らしてたし…
  922.  
  923. FILENAME: text_519601-14_BPssF.txt
  924. ひめな: あとはやっぱり マリウスの気持ちだよね
  925. ひめな: コルネリアとユニア いったいどっちが好きなのか!
  926. アマリュリス: …ああっ! 大切なことを忘れておりました
  927. 時雨: な…なに?
  928. アマリュリス: えっと、コルネリア様…
  929. アマリュリス: こちら、マリウス様からの 預かりものです
  930. コルネリア: マリウス様から…!?
  931. ひめな: …普通、それ忘れる?
  932. アマリュリス: その…渡そうとしたときに みなさんがいらっしゃいまして
  933. ミユリ: …ミユたちのせいでした
  934. アマリュリス: こちらは、お父様と一緒に 視察で訪れた
  935. アマリュリス: ネアポリスのおみやげだとか
  936. ねむ: ネアポリス…ナポリのことだね
  937. アマリュリス: 近々、こちらにも伺うので みやげ話を楽しみにしてほしいと
  938. コルネリア: マリウス様…
  939. アマリュリス: えへ…嬉しそうで 届けた甲斐がありました
  940. 時雨: どうしてアマリュリスが 預かってきたの…?
  941. コルネリア: マリウス様のお屋敷は ユニアの家のすぐ近くだから
  942. アマリュリス: …はい、ついでに頼まれました!
  943. ミユリ: あー、アマリュリスさんは ユニアさんの侍女でしたね
  944. ひめな: マリウスとその後も順調みたいで 安心だね★
  945. アマリュリス: それから、もうひとつ 耳寄りな情報が…
  946. コルネリア: なに?
  947. アマリュリス: 実は、マリウス様のお屋敷で お父様がたの立ち話を
  948. アマリュリス: お聞きしてしまったのですが…
  949. アマリュリス: そもそもマリウス様は ずっと前からコルネリア様に
  950. アマリュリス: 惹かれておいでの様子だったと!
  951. コルネリア: えっ… マリウス様が?
  952. ひめな: もうこれ両片想いじゃん! やったね、コルネリア!
  953. ミユリ: ですです このまま行くしかないです!
  954. コルネリア: …で、でも…
  955. アマリュリス: ためらうなんて コルネリア様らしくないです!
  956. コルネリア: 私のイメージを 勝手に作らないでくれる…?
  957. アマリュリス: 好きなものは好きって ちゃんと言ってほしいんですよ
  958. アマリュリス: わたしはコルネリア様の
  959. アマリュリス: そういうハッキリしたところに 憧れてるんです!
  960. アマリュリス: なのに恋に関することだけ どうして臆病なんですか!?
  961. コルネリア: …それは…
  962. アマリュリス: そもそもユニア様とマリウス様が ありえないほどご近所な時点で
  963. アマリュリス: コルネリア様は かなり不利な立場なんですよ?
  964. ねむ: 侍女のアマリュリスが 届けものを頼まれるくらい
  965. ねむ: 頻繁に行き来があるようだしね
  966. アマリュリス: そうなんです…
  967. ねむ: 三家の思惑を考えても、ユニアが 婚約の第1候補という話だったね
  968. アマリュリス: はい、わたしの知る未来では 実際そうなりましたし…
  969. アマリュリス: なので今回は、コルネリア様に がんばっていただいて!
  970. コルネリア: 今回って言われても…
  971. ねむ: 2回目なのは アマリュリスだけだからね
  972. ミユリ: はぁ…こんなに想われるなんて どんなイケメンなんでしょう?
  973. アマリュリス: 実際、わたしから見ても マリウス様は素敵な方ですよ
  974. アマリュリス: 見た目も格好いいですけど お優しくて聡明ですし!
  975. ひめな: キャハッ★ 四角関係はじまっちゃう?
  976. アマリュリス: ややややめてください!
  977. アマリュリス: 今の三角関係だけでも 充分ややこしいのに!
  978. コルネリア: ひめなの冗談でしょ? アマリュリスって割と単純よね
  979. コルネリア: ルドゥスでも 次の手がすぐ読めちゃうし
  980. アマリュリス: うっ…策士を自認する者として 致命的なことを言われた気が…
  981. ひめな: 真面目な話、アマリュリスには 好きな人っていないの?
  982. アマリュリス: もちろん コルネリア様びいきですけど?
  983. ひめな: じゃなくてコルネリアにとっての マリウスみたいな!
  984. アマリュリス: うーん、そうですね わたしは、誰かに恋するより…
  985. アマリュリス: この平穏な世の中を守ることに 生涯を捧げたいです
  986. ねむ: この時代は、2000年後にまで
  987. ねむ: “パクス・ロマーナ”… ローマの平和と呼ばれる
  988. ねむ: 輝かしい時代として 伝わっているよ
  989. アマリュリス: 本当ですか!? それじゃ…わたしがなりたいのは
  990. アマリュリス: パクス・ロマーナの恋人です!
  991. コルネリア: まるで…
  992. コルネリア: ウェスタの煌(ひかり)乙女 みたいなことを言うのね
  993. 時雨: それって…?
  994. ねむ: ローマを守護する 女神ウェスタに身を捧げた少女…
  995. ねむ: 選ばれし巫女たちのことだ
  996. ねむ: 幼い頃に神殿に入って 生涯、未婚を通し
  997. ねむ: 聖なる炎を守る義務を負ったとか
  998. アマリュリス: …実はわたし、小さいときに
  999. アマリュリス: クビウス様を連れた 煌乙女と会って
  1000. アマリュリス: 神殿に来るつもりはないかって 言われたんですよ
  1001. コルネリア: えっ…
  1002. ひめな: その煌乙女たちって、もしかして 魔法少女だったとか?
  1003. ねむ: 長く続いたローマの平和の秘密が そこにあるのかもしれないね
  1004. アマリュリス: …まあ、その話はわたし 断ったんですけどね
  1005. ミユリ: ええ?
  1006. アマリュリス: いえ、その… 自分はふさわしくない気がして
  1007. アマリュリス: …そして次に クビウス様と会ったのは
  1008. アマリュリス: 山が火を噴いた、あの日でした
  1009. ひめな: あ…
  1010. アマリュリス: クビウス様に願いを告げたとき
  1011. アマリュリス: わたしはウェスタの煌乙女として この身を捧げる覚悟でしたけど
  1012. コルネリア: …なってなくない?
  1013. アマリュリス: はい、過去の世界に 生まれ変わってしまいましたので
  1014. ねむ: そもそもウェスタに仕える 少女たちは
  1015. ねむ: ローマ市民の娘に 限られると読んだ気がするけれど
  1016. アマリュリス: あ…そういえばそうですね
  1017. アマリュリス: なぜ、クビウス様は わたしに声を?
  1018. ミユリ: つまりつまり! 今のアマリュリスさんは
  1019. ミユリ: ウェスタの煌乙女のようで そうじゃない何か…?
  1020. アマリュリス: …………
  1021. アマリュリス: …今、わかりましたよ わたしが名乗るべきふたつ名が
  1022. コルネリア: それって?
  1023. アマリュリス: “パクス・ロマーナの恋人”です
  1024.  
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  1026. ひめな: …で、アマリュリスたちは 今どんな作戦を進めてるの?
  1027. アマリュリス: 怪しげな予言を 流布しているところです
  1028. コルネリア: もう少し言い方が…
  1029. ねむ: くわしく聞かせてくれるかな?
  1030. ねむ: …なるほど ふたりは神々の神殿を通じて
  1031. ねむ: 山が火を噴くという予言を 広めようとしているんだね
  1032. アマリュリス: はい…まずは女神イシス様の 教団に接触したところです
  1033. ねむ: 「ポンペイでは守護女神であるウェヌスのほか ユピテルやアポロなど 多くの神々が祀られていた」
  1034. ねむ: 「イシスはエジプトの女神だけど ローマ領内でも信仰され 特に交易商や女性に人気があったようだ」
  1035. アマリュリス: はい…イシス教団は 選挙にも影響力がありますし
  1036. アマリュリス: 位の高い方に、予言を 信じていただくことができれば
  1037. アマリュリス: ねむ様の言う“避難派”を 増やすことにもつながるかと…!
  1038. ねむ: 増加する地震を、噴火の予兆と みなす人が増えてくれば
  1039. ねむ: 他の土地への移住や事前の避難を 考える空気が生まれるだろうね
  1040. アマリュリス: うまくいったら、他の教団にも 予言を広めたいと考えています
  1041. アマリュリス: 教団を通じて、他の町にも この予言が広まれば
  1042. アマリュリス: ポンペイだけではなく 近郊の町の人たちも
  1043. アマリュリス: 悲しい涙を流さずに済みますから
  1044. アマリュリス: …実は、他の町への議会工作も すでに始めているんです
  1045. ねむ: たしかに、ポンペイ以外の ヘルクラネウムやスタビアエ…
  1046. ねむ: オプロンティスといった町も 壊滅的な被害を受けることになる
  1047. アマリュリス: やっぱり… では、ネアポリスは?
  1048. ねむ: 風向きの関係で 大きな破壊は免れたようだね
  1049. アマリュリス: ヌケリアはどうだったのでしょう 対岸のミセヌムは…?
  1050. ねむ: そうだね 僕の知るかぎりだと…
  1051. ひめな: …未来のこと、かなり くわしく教えちゃってたね
  1052. ねむ: うん、歴史への干渉には 本来、慎重になるべきなんだけど
  1053. ねむ: 僕達の存在が契機となって すでにパラドクスが起きた以上
  1054. ねむ: 目指すべき歴史Bの情報を 積極的に供与しておきたいんだ
  1055. ねむ: ポンペイ以外の町では 犠牲者は比較的少なかったから
  1056. ねむ: アマリュリスが他の町を救っても 僕達の歴史とは矛盾しない
  1057. ねむ: もちろん線引きは必要だけどね… なんでも話していいわけじゃない
  1058. アマリュリス: …なるほど、他の町については
  1059. アマリュリス: ねむ様にいただいた 新しい情報も踏まえて
  1060. アマリュリス: 慎重に、計画を 進めていく必要がありますね…
  1061. 時雨: 思ったよりずっと 大きな話になってるんだね
  1062. アマリュリス: でも、やるしかありません! みんなに助かってほしいですから
  1063. ねむ: イシスの教団にはすでに 働きかけたと言っていたね?
  1064. アマリュリス: はい… メタモルフォセスを使って
  1065. アマリュリス: 神命により 未来の災禍を告げにきた者だと
  1066. イシスの神官: …あなたたちが仕える神の名は 明かせぬというのですね?
  1067. アマリュリス: はい…残念ながら
  1068. コルネリア: ですが、神々は
  1069. コルネリア: いずれの神を奉じる者も 等しく命を救いたいとお考えです
  1070. イシスの神官: あなたたちが本当に 未来を知るというのであれば…
  1071. イシスの神官: 何か証拠を 示していただきたいものです
  1072. ミユリ: ふむふむ その、証拠とは?
  1073. アマリュリス: あさって行われる 戦車競走の結果です!
  1074. アマリュリス: 新進気鋭の御者 “左利きのヒラルス”様が初勝利
  1075. アマリュリス: そしてこの日から 破竹の連勝が始まるんです!
  1076. ミユリ: 推しなんですね?
  1077. アマリュリス: はい!
  1078. アマリュリス: 戦車競走は、ルドゥスの次に 大好きな息抜きなんです
  1079. ひめな: 人生、楽しそう★
  1080. アマリュリス: クビウス様にいただいた 二度目の命ですので…
  1081. ひめな: そっか… そうだよね
  1082. ひめな: 息抜きのときくらいは 全力で楽しまないとねっ
  1083. 時雨: レースの結果が当たったら イシス教団は協力してくれるの?
  1084. コルネリア: うん、そういう話になってる
  1085. コルネリア: なりすましの魔法が効いて すんなり信じてくれたのかも
  1086. アマリュリス: なので、あさってのレースは わたしも応援に行くんです
  1087. アマリュリス: もうひとつ 大事な目的がありますので!
  1088. 時雨: 大事な目的…?
  1089. アマリュリス: はい、あさっては コルネリア様の誕生日で
  1090. アマリュリス: コルネリア様とマリウス様が 御一緒に観戦されるんです
  1091. ミユリ: 誕生日デート!? フラグ追加のチャンスですぅ
  1092. ひめな: コルネリアの誕生日って ユニアと一緒じゃないの?
  1093. アマリュリス: ユニア様はその時間 お屋敷でお義父様とお祝いです!
  1094. コルネリア: アマリュリスはその間に 私と合流して観戦するのよね?
  1095. アマリュリス: はい、そうなるように 裏でいろいろと工作したので…
  1096. アマリュリス: …というわけで そろそろおいとましますね!
  1097. アマリュリス: 他の町からお越しの客人に 偽造書簡を届けに向かいますので
  1098. コルネリア: 私も行くわ お邪魔ならやめておくけど
  1099. アマリュリス: 大丈夫です…今日の予定は それで終わりですし
  1100. ひめな: 私チャンたちも行っていい?
  1101. ひめな: この間みたいなことがあっても 守ってあげられるし!
  1102. アマリュリス: あ…ありがとうございます!
  1103. 時雨: 偽造書簡って言ってたけど… これから何をするつもりなの?
  1104. アマリュリス: ヘルクラネウムの有力者への 買収工作的なやつですね
  1105. ミユリ: 割とえげつないです!
  1106. ひめな: …他にも いろいろやってるんだよね?
  1107. アマリュリス: はい、ユニア様のお義父様に 地元ワインの醸造にこだわると
  1108. アマリュリス: 未来がないという空気が 伝わるよう工作したり…
  1109. アマリュリス: コルネリア様のお父様に 別の港へ拠点を移すよう
  1110. アマリュリス: 商売仲間の方々から 持ちかけていただいたりなど…
  1111. コルネリア: …せっかくだし、ひめなたちに
  1112. コルネリア: メルクリウス通りと 凱旋門を案内してあげない?
  1113. アマリュリス: そうですね ここからすぐですし!
  1114. ねむ: …………
  1115. ひめな: どうしたの、ねむりん?
  1116. ねむ: 本の状態がかなり不安定なんだ
  1117. ねむ: もしかして、タイムパラドクスの 原因が近くに…?
  1118. ひめな: ――っ!?
  1119. 時雨: やっぱり出た…!
  1120. ミユリ: 今回、ミユたちは バトル担当みたいです…
  1121.  
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  1123. ひめな: …今度は使い魔だったね
  1124. ミユリ: 前に戦った魔女たちと 魔力の性質が似てる気がします
  1125. アマリュリス: 町でも、同じような怪物が だんだん増えている気が…
  1126. ねむ: 僕達がこの時代に来たことで
  1127. ねむ: 強大な魔女が活性化した…という 説が正しいのかもしれない
  1128. 時雨: 町で、そいつから派生した 魔女や使い魔が増殖してる…?
  1129. ひめな: それは困るよね パラドクス起きまくっちゃう!
  1130. ミユリ: ノーモア歴史Aルートですぅ…
  1131. ねむ: そうか…増殖した魔女や使い魔が パラドクスを引き起こした結果
  1132. ねむ: 時空が不安定になっているのかも
  1133. 時雨: それって、最初に戦った ボス級の魔女を倒せていたら
  1134. 時雨: こうはならなかったってこと…?
  1135. ひめな&ミユリ: ………… …………
  1136. ミユリ: …でもでも、変です! ミユたちは使い魔を倒したのに
  1137. ミユリ: 例のタイムトラベル空間に 飛ばされませんし!
  1138. 時雨: この前も、魔女を倒しただけじゃ パラドクス解消はできなかったし
  1139. 時雨: 他のフラグも回収しないと 歴史Bルートに戻らないんじゃ…
  1140. ひめな: みゆりん語に汚染されてて草
  1141. ミユリ: 他のフラグって… 何がありましたっけ?
  1142. ざわ…
  1143. ミユリ: なんでしょう? あっちに人だかりが…
  1144. 「人が倒れてるぞ!」
  1145. 「こいつじゃないか!? 騒ぎを起こしたのは!」
  1146. ???: いえ、私は…
  1147. アマリュリス: “左利きのヒラルス”様!?
  1148. 時雨: あの人がそうなの…?
  1149. アマリュリス: ちょっと見てきます!
  1150. ざわざわ…
  1151. アマリュリス: 話を聞いてきました
  1152. アマリュリス: 町の人たちが怪物たちの結界に 誘い込まれそうになったみたいで
  1153. アマリュリス: ヒラルス様がみなさんを 押しとどめようとしたのですが…
  1154. ひめな: 逆にヒラルスのせいだと 思われちゃった!?
  1155. 時雨: みんなに使い魔は見えないから…
  1156. アマリュリス: はい…さいわい、みなさんに 怪我はなかったのですが
  1157. ミユリ: でもでも! これってまずくないですか?
  1158. ミユリ: ヒラルスさんが犯人扱いされたら レースに出られなくなるんじゃ…
  1159. アマリュリス: はわ… そ、それは困ります…!
  1160. お前が暴れたせいじゃないのか?
  1161. なんとか言ったらどうだ?
  1162. コルネリア: 「あの…」
  1163. ん…?
  1164. コルネリア: 何かあったのですか?
  1165. なんだ、お嬢さん?
  1166. コルネリア: 私はプブリウス・コルネリウス・ アンニウスの娘…
  1167. コルネリア: コルネリアと申します
  1168. コルネリア: この、左利きのヒラルスは 私が買い取る予定の御者で
  1169. コルネリア: たったいま、身元を引き受けに きたところなのですが…
  1170. 左利きのヒラルス: …………
  1171. コルネリア: もしや何か、みなさまの ご迷惑になることでも…?
  1172. おい、コルネリアって…
  1173. ああ…豪商 コルネリウス・アンニウス様の…
  1174. …事を荒立てるのはやめとくか
  1175. 誰も怪我したわけじゃないしな…
  1176. アマリュリス: す…すごいです! コルネリア様!
  1177. アマリュリス: あんなに荒ぶっていた方々を 優雅に鎮めてしまうなんて…!
  1178. ミユリ: 本物のお嬢様にしか できないムーブです!
  1179. ひめな: みゆりんも 社長令嬢じゃなかった…?
  1180. 左利きのヒラルス: あの…さっきのお話ですが 私を買い取るというのは…?
  1181. 時雨: ぼくも気になる… どういう意味?
  1182. ねむ: 御者や剣闘士の多くは 自由身分ではないんだ
  1183. ねむ: 富裕なローマ市民やその家族の 所有物…つまり奴隷なんだよ
  1184. ひめな: …あれっ じゃあ、侍女や使用人も?
  1185. ねむ: そういうことだね
  1186. ねむ: ただ、待遇は千差万別で 自由身分になる者も多かったし
  1187. ねむ: アマリュリスのような お付きの侍女ともなると
  1188. ねむ: 主人の娘と同じような教育を 受けていたとも聞くよ
  1189. コルネリア: で、あなたを 買い取るという話だけど…
  1190. コルネリア: ごめん、出まかせ
  1191. アマリュリス: ええっ!?
  1192. コルネリア: ヒラルス様の現在の所有者は たしかニギディウス様よね?
  1193. 左利きのヒラルス: はい、そうですが…
  1194. コルネリア: 父がニギディウス様と 懇意にしているので
  1195. コルネリア: 私の誕生祝いにあなたの身柄を 買い取ってもらえるように
  1196. コルネリア: おねだりしようと思うの
  1197. コルネリア: そうすれば、さっきの言葉も 嘘にならないでしょ?
  1198. 左利きのヒラルス: 私を…助けてくれたのですか
  1199. アマリュリス: コルネリア様… とっさにそんな機転を…
  1200. コルネリア: それに、ニギディウス様との 共同名義にしてもらえれば
  1201. コルネリア: 住む場所や待遇も いままでと変わらないと思うし
  1202. コルネリア: どうかしら?
  1203. 左利きのヒラルス: ありがとうございます
  1204. 左利きのヒラルス: 次のレースでは、新たなる主人 コルネリア様のために
  1205. 左利きのヒラルス: 必ずや勝利を…!
  1206. アマリュリス: コルネリア様… 立派に成長なさって…!
  1207. アマリュリス: …………
  1208. アマリュリス: ひいきの御者が ひいきの令嬢に勝利を誓うって
  1209. アマリュリス: すごく尊い光景ですね
  1210. ひめな: あの子、ちょっと みゆりんみあるかも?
  1211. 時雨: …うん
  1212. アマリュリス: あとはご自身の恋にもこのくらい 積極的になっていただければ
  1213. コルネリア: そうね…
  1214. アマリュリス: えっ…
  1215.  
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  1217. <2日後…>
  1218. <円形闘技場前>
  1219. マリウス: 誕生日おめでとう コルネリア
  1220. マリウス: 今日、左利きのヒラルスが 勝ってくれたら最高だね
  1221. コルネリアの父: コルネリアが珍しく わがままを言ってきたから
  1222. コルネリアの父: 誕生祝いには ちょうどいいと思ったが
  1223. コルネリアの父: まだまだ無名の御者のようだな
  1224. コルネリアの父: おまけに今日は 無敵のマクシムスが出走する
  1225. コルネリアの父: 会場は彼めあての客で満員だ
  1226. コルネリア: …大丈夫です、お父様 彼は勝ちます
  1227. コルネリアの父: ほー、すごい自信だ
  1228. マリウス: 僕もヒラルスを応援しますよ コルネリアが推す御者ですから
  1229. マリウス: ユニアも 来られればよかったんだが…
  1230. アマリュリス: かわりにわたしが見届けて 仔細にご報告さしあげます!
  1231. コルネリアの父: ははは、よろしく頼むよ
  1232. 時雨: ちゃっかり潜り込んでる…
  1233. ミユリ: 大事な推し活ですからね
  1234. ざわ…
  1235. ワァァーーーッ!!!
  1236. マジかよ…おい 無敵のマクシムスがあんなに離されて…
  1237. あの赤い御者…すげぇぞ!
  1238. アマリュリス: ―アマリュリス― ヒラルス様、いっけー!
  1239. コルネリア: ―コルネリア― うそ…こんなに速いなんて
  1240. アマリュリス: ―アマリュリス― えへへっ このまま独走で優勝です!
  1241. <コルネリアの屋敷>
  1242. アマリュリス: …というわけで、ヒラルス様が 勝つという予言は的中です!
  1243. ねむ: これでイシス教団の協力を 得られる算段がついたかな?
  1244. アマリュリス: はい!
  1245. アマリュリス: それに、さきほどヒラルス様が コルネリア様に挨拶に来られて…
  1246. 左利きのヒラルス: この日の輝かしき勝利を コルネリア様に捧げます…!
  1247. コルネリア: ありがとう 素晴らしいレースだったわ
  1248. マリウス: 最高の誕生祝いになったね コルネリア
  1249. コルネリア: は、はい…!
  1250. 左利きのヒラルス: あらぬ嫌疑をかけられ、一時は 出走もままならぬかと覚悟した身
  1251. 左利きのヒラルス: コルネリア様への恩に報いるため 今後も勝利を重ねてまいります
  1252. マリウス: …何かあったのかな?
  1253. 左利きのヒラルス: はい、実は…
  1254. マリウス: …なるほど、そんなことが
  1255. マリウス: コルネリアの機転が 彼の未来を救ったわけだね
  1256. ミユリ: …ふむふむ マリウスさんへの好感度も上昇と
  1257. ひめな: キャハッ★ 順調みたい
  1258. アマリュリス: 夕刻にはここ、コルネリア様の お屋敷で晩餐会が行われます…
  1259. アマリュリス: 今度はユニア様も御一緒です わたしも侍女の務めに戻らないと
  1260. <夕方…>
  1261. 時雨: …晩餐会、そろそろ終わるね
  1262. ひめな: 今度もおすそわけ、もらえたね
  1263. ミユリ: 最後のスポンジケーキみたいなの ふわふわで美味しかったですぅ
  1264. ひめな: あ…
  1265. ひめな: 向こうにいるの コルネリアたちじゃない?
  1266. マリウス: そろそろ迎えの者が来る頃だね
  1267. ユニア: ふふっ…3人そろってのお食事 本当に楽しかったです…!
  1268. コルネリア: 今日のユニアは 一段とご機嫌ね
  1269. ユニア: お姉様とマリウス様に たっぷり甘えられたので…!
  1270. マリウス: ユニアは養子に出る前から 甘えん坊だったね
  1271. マリウス: 僕がこの家を訪ねると わんこみたいに駆け寄ってきて…
  1272. コルネリア: ふたりのときは 私にずっと抱きついてたんですよ
  1273. マリウス: ははは、覚えてるよ
  1274. マリウス: …じゃあ、また今度
  1275. ユニア: お姉様、お元気で!
  1276. ひめな: おつかれっ、コルネリア!
  1277. ミユリ: マリウスさんと1日過ごせて 誕生日イベントは大成功ですぅ!
  1278. コルネリア: ありがとう
  1279. コルネリア: …でもやっぱり、戦車競走も ユニアと一緒に観たかった
  1280. ひめな: 抜け駆けみたいなのは イヤだった?
  1281. コルネリア: …うん 私、心を決めたの
  1282. コルネリア: だから、後ろめたい気持ちで この恋と…
  1283. コルネリア: マリウス様と向き合いたくない
  1284. カタン…
  1285. コルネリア: えっ…
  1286. ユニア: あ…
  1287. ユニア: お祝いの品を、あちらの部屋に 置き忘れてしまって…
  1288. ひめな: …今の話、聞こえたよね?
  1289. ユニア: 聞こえちゃいました…
  1290. 時雨: それって…まずいんじゃ…
  1291. コルネリア: ううん、ちょうどいいわ
  1292. コルネリア: ユニアに話そうと思ってたから わたしの決心を
  1293. コルネリア: …ユニア
  1294. ユニア: は、はい!
  1295. コルネリア: 近々、お父様に お願いしようと思っているの
  1296. コルネリア: マリウス様と婚約できるよう 取り計らっていただけないかって
  1297. ユニア: え…
  1298. コルネリア: マリウス様の婚約者として
  1299. コルネリア: お父様たちが第1候補に 考えているのはユニア、あなたよ
  1300. コルネリア: でも私は、マリウス様が好きなの
  1301. ユニア: お姉様が…マリウス様を?
  1302. コルネリア: ええ、そうよ そのことを知って
  1303. コルネリア: あなたの侍女のアマリュリスが 私のために動いてくれていた
  1304. コルネリア: でも、こそこそするのは 性に合わないわ
  1305. コルネリア: 今日の戦車競走だって 本当は…
  1306. ユニア: ………… …………
  1307. コルネリア: …ユニア?
  1308. ユニア: 素敵ですぅ!
  1309. コルネリア: ちょっ…抱きつかないで!
  1310. ユニア: お姉様とマリウス様が 結婚したら…
  1311. ユニア: ここにくれば、いつでもふたりに 甘えられるってことですよね!?
  1312. コルネリア: え、あ… そ、そうだけど…ええっ?
  1313. コルネリア: あ、あなたはマリウス様のことを どう思ってるの?
  1314. ユニア: もちろん、どっちも大好きです! だからお姉様を応援します!
  1315. ユニア: ふふっ…ご婚約はいつでしょう? お祝いは何がいいかなぁ…
  1316. コルネリア: ………… …………
  1317. アマリュリス: そう、あの方の“好き”に “特別”はないんです!
  1318. コルネリア: (この子は、ただ純粋に みんなのことが大好きで…)
  1319. コルネリア: (悩む必要なんて 何もなかったってこと?)
  1320. 時雨: …あれ ライバルに応援されてる?
  1321. ミユリ: これってもう 勝ち確じゃないですか!?
  1322. ねむ: うん あとはアマリュリスたちが
  1323. ねむ: イシス教団の協力を 取りつけられるかどうかだね
  1324.  
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  1326. <翌日…>
  1327. <イシス神殿>
  1328. イシスの神官: たしかに予言の通りになりました
  1329. アマリュリス: では、わたしたちに協力を…?
  1330. イシスの神官: ですが、勝利した 左利きのヒラルスなる御者は
  1331. イシスの神官: 先立って、そちらの令嬢が 買い上げた者とのことですが?
  1332. コルネリア: あ…それは…
  1333. イシスの神官: 所有者だからといって 勝てる保証はありませんので
  1334. イシスの神官: そのことはよいでしょう
  1335. イシスの神官: …そのかわり あなた方が知る未来のできごとを
  1336. イシスの神官: もっとくわしく伺いたいものです
  1337. アマリュリス: くわしく、とは…
  1338. イシスの神官: ぶどうや小麦の好不作から 来年、再来年の天候
  1339. イシスの神官: ニギディウスの催す興行の演目
  1340. イシスの神官: そして、山が火を噴くに至る 予兆と経過を仔細に至るまで
  1341. アマリュリス: …わかりました わたしの知るかぎりお話しします
  1342. イシスの神官: …なるほど、この先には そのような明日が待っている、と
  1343. アマリュリス: はい…ただ、わたしたちの行動が 少しずつ未来を変えつつある今…
  1344. アマリュリス: 神々の決める運命はともかく 人のなす営みまでが
  1345. アマリュリス: 今後もすべてわたしの見た通りに なるかどうかは…
  1346. イシスの神官: …………
  1347. イシスの神官: …信じましょう
  1348. コルネリア: えっ…
  1349. イシスの神官: さきほど、あなた方が口にした
  1350. イシスの神官: 予言のいくつかは 遠からず真偽が判明すること…
  1351. イシスの神官: それらの真偽を見きわめつつ われらイシス教団は
  1352. イシスの神官: ウェスウィウス山が もたらすという大禍にそなえ
  1353. イシスの神官: 自身と家族の身を守るよう 信徒たちに説いてゆきましょう
  1354. アマリュリス: あ… ありがとうございます!
  1355. コルネリア: …信じていただけないかと 思っていました
  1356. イシスの神官: 信じてみたくなったのですよ
  1357. イシスの神官: 仮に真実であれば いくらでも悪用できる情報を
  1358. イシスの神官: 惜しげもなく明かすあたり…
  1359. イシスの神官: ずいぶんと うぶな子たちのようですから
  1360. アマリュリス: はわ…!
  1361. イシスの神官: 少なくとも、悪意から発せられた 警告でないということは
  1362. イシスの神官: たしかに伝わりましたよ
  1363. …本当によいのですか?
  1364. イシスの神官: …あの少女は、今後の予兆として 大きな地揺れがしだいに増え
  1365. イシスの神官: アウグスタ水道が 枯れる日すらあると言いました
  1366. たしかに最近は 地揺れが増えています
  1367. イシスの神官: ええ、それに水脈の異常は… 古の災厄に同種の記録があります
  1368. イシスの神官: 彼女の他の言葉からも
  1369. イシスの神官: 実際に体験したとしか思えない 真実味が感じられました
  1370. 体験、ですか…?
  1371. イシスの神官: 来年の6月、とあるやんごとなき お方が亡くなって大騒ぎになる…
  1372. イシスの神官: というお話がありましたね
  1373. はい、肝心の 名前ははぐらかされましたが…
  1374. イシスの神官: ローマの最高権力者
  1375. イシスの神官: ウェスパシアヌス様は かなりのご高齢…
  1376. イシスの神官: 内々に、長男のティトゥス様への 委譲の準備が進んでいます
  1377. …えっ
  1378. イシスの神官: ふふ…あの少女は 未来からきたのかもしれませんよ
  1379. イシスの神官: 彼女は未来を知ったのではなく “見た”と言いましたよね?
  1380. アマリュリス: 今後もすべてわたしの見た通りに なるかどうかは…
  1381. あ…
  1382. イシスの神官: そう、まるで演技を忘れて 口が滑ったかのようでした
  1383. でも、まさか…
  1384. イシスの神官: 彼女の言葉が真実かどうかは 今後明らかになっていくでしょう
  1385. イシスの神官: それに、この動きは教団にとって よい機会だと考えます
  1386. イシスの神官: 町の人々の間では 再興への機運はいまだ高いものの
  1387. イシスの神官: 大地が揺れるたび、壁が剥がれ
  1388. イシスの神官: ようやく再建したこの神殿も 補修を繰り返しているのが現状…
  1389. イシスの神官: もし、この状態が続くのであれば 別の町へ拠点を移す日が来ます
  1390. イシスの神官: ならば他に先駆けて そのための布石を打っておく…
  1391. イシスの神官: 教団としても、利のある行動だと 思いませんか?
  1392. ひめな: うまくいったんだね!
  1393. アマリュリス: まあ、その…わたしたちが うまくやったというよりも
  1394. アマリュリス: 誠意だけは酌んでいただけた… という感じですかね
  1395. コルネリア: 次は女神ウェヌス様…
  1396. コルネリア: それからアポロ様の神殿にも 手を回さないとね
  1397. コルネリア: あ、それと明日お父様と一緒に パリス様の後見会に出るの
  1398. 時雨: …誰…?
  1399. アマリュリス: とても人気のある役者様です! …その人脈、使えそうですね
  1400. コルネリア: 言うと思った…
  1401. ひめな: …え、ヒコ君 なに?
  1402. ひめな: 歴史Bルートへのフラグも そろそろ立ったんじゃないか?
  1403. ひめな: それはありそうだね あ、ということは…
  1404. 時雨: …またこのパターン…?
  1405. ミユリ: そうみたいですぅ…
  1406. コルネリア: 次に会うのは来年かな…?
  1407.  
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  1409. <西暦78年・夏>
  1410. <コルネリアの屋敷>
  1411. アマリュリス: はわ…!? その手だけはご容赦を…!
  1412. コルネリア: 他に動かしようがないじゃない? あなたの負けよ
  1413. アマリュリス: うぅ…これで何連敗でしょうか…
  1414. アマリュリス: コルネリア様に 二度と勝てる気がしません
  1415. コルネリア: あなたって根が正直だから
  1416. コルネリア: いま何を考えてるか だいたいわかっちゃうのよね
  1417. コルネリア: 嘘をつくときは目をつぶるし 問いつめられると目が泳ぐし…
  1418. アマリュリス: えっ…
  1419. コルネリア: やっぱり自覚ないのね
  1420. アマリュリス: はわ… 言われてみれば!
  1421. アマリュリス: …それにしても、ですよ サイコロで駒を進めるゲームで
  1422. アマリュリス: ここまでコテンパンに のされるコトってあります?
  1423. コルネリア: 相手の狙いを正しく読んで 勝率の高い手を打つだけよ
  1424. アマリュリス: コルネリア様が急に 遠い存在に見えてきました…
  1425. ドカドカッ
  1426. アマリュリス: あの音… 中庭のほうですよね?
  1427. コルネリア: きっと…ひめなたちね
  1428. アマリュリス: …やっぱり ひめな様たちでしたね
  1429. ひめな: コルネリアは また大人っぽくなったよね!
  1430. ミユリ: 最後に会ってから、そっちは どのくらい経ってるんでしょう?
  1431. コルネリア: えっと… もう、1年になるかも
  1432. 時雨: …そんなに…!?
  1433. アマリュリス: 左利きのヒラルス様も すっかり人気御者です
  1434. ねむ: 今の状況を聞かせてくれるかな?
  1435. ねむ: 西暦78年…
  1436. ねむ: ウェスウィウス山の噴火まで あと1年と少ししかない
  1437. ねむ: ただ、アマリュリスたちの努力で 状況はずいぶん変わったようだね
  1438. ねむ: 「女神イシスの教団をはじめ さまざまな集団の協力が得られた結果 『ウェスウィウス山が火を噴く』という 予言めいた噂がささやかれるようになり…」
  1439. ねむ: 「さらには、それと呼応するかのように 大きな地震が増加した結果… コルネリアのお父さんをはじめ 商業拠点の移転を考える有力者や 他の町へ移住する住民が現れはじめた」
  1440. ねむ: 「そうした動きは 選挙の結果などにも影響し 都市参事会においても 復興より、避難や移住を 検討する空気が生まれている…」
  1441. アマリュリス: みなさんの不安を煽るのは 心苦しいですが…
  1442. ひめな: でも、1年後に噴火が起きるのは 本当のことだからね
  1443. コルネリア: ポンペイよりもむしろ 他の町のほうが
  1444. コルネリア: 何かあったらすぐ避難…という 機運が強くなっているくらいよ
  1445. ミユリ: ポンペイが最大の問題ですか…
  1446. アマリュリス: はい、ポンペイの参事会は まだまだ復興派が多数なので
  1447. アマリュリス: いろいろと 手を打ってはいるのですが…
  1448. ひめな: マリウスとコルネリアの婚約話も そのひとつだよね?
  1449. アマリュリス: もちろんです!
  1450. アマリュリス: マリウス様のお父様の 影響力を考えれば…
  1451. アマリュリス: この婚約のゆくえが 参事会の意向を左右する
  1452. アマリュリス: 最大の鍵になると思います
  1453. ミユリ: コルネリアさんとマリウスさんは 順調なんでしょうか?
  1454. アマリュリス: まだ正式ではありませんが 婚約成立は時間の問題ですね
  1455. アマリュリス: 今日もマリウス様からのご伝言を わたしが届けに来たくらいですし
  1456. ミユリ: ふたりの伝書鳩を してるんですね…
  1457. 時雨: アマリュリスって ユニアの侍女じゃなかった…?
  1458. アマリュリス: そのユニア様に頼まれましたので
  1459. ひめな: めっちゃ応援されてるじゃん!
  1460. アマリュリス: ただ…みなさんの命を救うには もっと大きく世論を動かさないと
  1461. アマリュリス: そのために、お力を お借りしたい方がいます
  1462. ねむ: それは?
  1463. アマリュリス: 『博物誌』を上梓なさった 海軍提督プリニウス様です
  1464. ねむ: 「ガイウス・プリニウス・セクンドゥス… 37巻にも及ぶ大著 『博物誌』で知られる軍人で博物学者 後世にも名を残す知識人だ」
  1465. ねむ: 「『博物誌』は現在でいう 百科事典のような書だけど…」
  1466. ねむ: 「彼が書物から得た 地誌や天文学などの膨大な知見に混じって ユニコーンやフェニックスといった 幻獣のことも記録されていることでも有名だよ」
  1467. ねむ: …彼ほどの知識人なら 地震をはじめとする各種の異変が
  1468. ねむ: 火山噴火の予兆だと 気づいているかもしれないね
  1469. アマリュリス: はい、それにプリニウス様は ウェスパシアヌス様をはじめ
  1470. アマリュリス: ローマ中枢との関係が深く
  1471. アマリュリス: ローマ随一の大艦隊の 長でもあります
  1472. アマリュリス: もし、あの方に町ぐるみの避難を 呼びかけていただけたら…!
  1473. コルネリア: 大地の揺れは、未来でも 災禍の予兆だとされているの?
  1474. ねむ: 噴火前の地震増加や水脈の異変は いずれも地殻変動と連動した
  1475. ねむ: ひとつながりの事象だと 考えられているよ
  1476. コルネリア: そうなのね
  1477. コルネリア: 聡明なプリニウス様なら 現在起きている異変から
  1478. コルネリア: 正しい洞察を導けるかも…
  1479. ひめな: でも、その人にどう伝えるの? すごく偉い人なんでしょ?
  1480. コルネリア: お父様を通じて ご紹介いただけないか
  1481. コルネリア: 手を回してみたんだけど なにぶん多忙な方みたいで…
  1482. アマリュリス: なので、だめでもともとで 突撃しようと思ってます!
  1483. 時雨: どうやって…?
  1484. アマリュリス: プリニウス様は現在
  1485. アマリュリス: ポンペイの対岸にあるミセヌムに 駐留されていますので
  1486. アマリュリス: コルネリア様のお父様の商船で ミセヌムまで渡る予定です!
  1487. アマリュリス: そこでなんとか、接触の機会を 得られないかと思って…
  1488. ミユリ: ふむふむ まずは動いてみるってことですね
  1489. ねむ: ………… …………
  1490. ひめな: どうしたの、ねむりん?
  1491. ねむ: いや… さっきは言わなかったけど
  1492. ねむ: プリニウスは火山噴火が原因で 命を落とす運命なんだ
  1493. ミユリ&時雨: ええっ!?
  1494. ねむ: 彼はウェスウィウス山の噴火中 調査および知人の救助のため
  1495. ねむ: ポンペイの近くのスタビアエに 上陸し、そこで亡くなった
  1496. ねむ: その話を記した彼の甥の書簡は
  1497. ねむ: ウェスウィウス山の噴火を記した 貴重な資料として
  1498. ねむ: 僕達の時代まで残されているんだ
  1499.  
  1500. FILENAME: text_519601-20_BPssF.txt
  1501. <ミセヌムへ向かう船上>
  1502. ひめな: 見てみて、ヒコ君! 綺麗な海だねっ
  1503. ミユリ: 姫様が浮かれぎみですぅ…
  1504. 時雨: 結局、みんなでミセヌムへ 行くことになっちゃったね
  1505. ねむ: 他に居場所もないし
  1506. ねむ: コルネリアたちの護衛役も兼ねて 同行したのは賢明だよ
  1507. ねむ: ………… …………
  1508. ねむ: 本の記述が また不安定になっている
  1509. ねむ: これまでのパターンから考えると
  1510. ねむ: いずれアマリュリスたちの行動を 邪魔する者が現れる
  1511. ひめな: また、魔女か使い魔?
  1512. ミユリ: バトル担当の出番ですね!
  1513. 時雨: パラドクスを解消すれば はぐむんたちが帰ってくるのなら
  1514. 時雨: やるしかないよ…!
  1515. アマリュリス: …………
  1516. コルネリア: どうしたの、アマリュリス
  1517. アマリュリス: いえ、プリニウス様とお会いする 算段を考えているのですが
  1518. アマリュリス: まずは魔法で軍の方になりすまし プリニウス様のご予定を聞き出し
  1519. アマリュリス: おひとりになるときを見計らって コルネリア様をお連れする…
  1520. コルネリア: アマリュリスが もうひとり欲しいわね
  1521. アマリュリス: そうなんですよ
  1522. ひめな: 私チャンの “合成”の魔法を使えば
  1523. ひめな: アマリュリスと同じように メタモルフォセスが使えるかも?
  1524. ひめな: じゃあ、やってみるね…
  1525. アマリュリス: すごいです!
  1526. ミユリ: 姫様の“合成”で 他の人の魔法をコピーすれば
  1527. ミユリ: 別の人でもその能力が 使えるようになるんです
  1528. アマリュリス: わたし、いなくてもいいのでは…
  1529. 時雨: …落ち込まないで…
  1530. <ミセヌム近郊・海岸>
  1531. コルネリア: …プリニウス様はここへ 本当にひとりでいらっしゃるの?
  1532. アマリュリス: はい…最近はこのあたりの自然や 海の生き物にご興味をお持ちで
  1533. アマリュリス: 少数のお供を連れて ここを訪れるのが日課だとか
  1534. アマリュリス: ひめな様がなりすましの魔法で
  1535. アマリュリス: うまくお供の方々を 遠ざけてくれるといいのですが…
  1536. 時雨: あっ…あれ!
  1537. ???: ………… …………
  1538. バサバサッ
  1539. ???: ん…? 島で鳥が群れるのは雨の前兆…
  1540. ???: テオフラストスの書には そう記されていましたが
  1541. ???: ここは突き出た半島 果たして…
  1542. ひめな: お供の人たちは しばらく戻ってこないから
  1543. ひめな: 今がチャンスだよっ
  1544. 時雨: …あ、姫! 戻ってきたんだね
  1545. ミユリ: じゃあ、あれがプリニウスさん?
  1546. ひめな: そゆこと! あとはうまくやってね
  1547. ひめな: 私チャンたちは 物陰に隠れて待ってるから!
  1548. アマリュリス: は、はいっ!
  1549. プリニウス: …………
  1550. アマリュリス: 『プリニウス様…!』
  1551. プリニウス: ん…?
  1552. コルネリア: お耳に入れたいお話がございます
  1553. プリニウス: …ふむ、つまりお嬢さんたちは
  1554. プリニウス: 16年前に起きた大地震も 近ごろ増えている地震もすべて
  1555. プリニウス: ウェスウィウス山が引き起こす 災いの前兆だと言うのですね?
  1556. アマリュリス: はい…!
  1557. プリニウス: たしかに、火山噴火と地震には 強い結びつきがあります
  1558. プリニウス: 少し難しい話になりますが…
  1559. プリニウス: 我々の住む大地が 球体であるということは
  1560. プリニウス: ギリシャの先賢たちが唱え すでに常識となっています
  1561. プリニウス: その球体の、いわば 卵の殻のような薄皮の下で起きる
  1562. プリニウス: 大きな変動…これが 火山噴火や地震の原因です
  1563. プリニウス: ですが、そのような 巨大な力を生むものは何か?
  1564. プリニウス: かのアリストテレスによれば
  1565. プリニウス: 地下へ吹き込む“風”こそが その源だというのが定説です
  1566. プリニウス: すなわち、風や天候… これらに起きる異変を知ることが
  1567. プリニウス: 噴火の前ぶれを見逃さぬための 重要な鍵となるわけです
  1568. プリニウス: 事実アナクシマンドロスのように 地震の予言を的中させた者もいる
  1569. プリニウス: ただ、今のウェスウィウス山に その兆候があるかというと…
  1570. ミユリ: 風?…なんだかよくわからない 話になってきました
  1571. ねむ: 僕達の時代とは 世界観そのものが違うからね
  1572. アマリュリス: どう言えば ご納得いただけるのでしょう…?
  1573. ねむ: うーん マントルやプレートの概念を
  1574. ねむ: この時代の人にも納得できるよう 説明するのは難しそうだし…
  1575. アマリュリス: 困りました…
  1576. プリニウス: ん…誰かと話しているのかな?
  1577. アマリュリス: はわ…! あっ、いえ…その…
  1578. ガサッ
  1579. プリニウス: む…? そこに誰かいますね
  1580. 時雨: 見つかった…!
  1581. プリニウス: 保養中の貴族の侍女…? いや、よくよく見れば奇妙な服装
  1582. プリニウス: …近ごろ、迷信深い民の間で
  1583. プリニウス: ウェスウィウス山が火を噴くとの 噂が飛び交っているようですが
  1584. プリニウス: もしや、広めているのは お嬢さんたちなのでは?
  1585. アマリュリス: はわ… そそ、それは…!
  1586. コルネリア: …その通りです、プリニウス様
  1587. アマリュリス: えっ… コルネリア様?
  1588. コルネリア: ご賢察の通り その話を広めたのは私たちです
  1589. プリニウス: フフ…潔く認めますか しかし、どうしてそんな真似を?
  1590. コルネリア: このアマリュリス そしてそこにいるひめなたちは
  1591. コルネリア: 未来の世界からきて 未来を知る者たちだからです
  1592. プリニウス: なんですと…?
  1593. コルネリア: この者たちの忠告に従わないと みな、命を落とすことになります
  1594. コルネリア: アマリュリス、ひめな この方の目はあざむけません
  1595. コルネリア: 隠さずお話ししてあげて
  1596. コルネリア: あなたたちの知っていることも 私たちの目的も、すべて
  1597. ミユリ: さすがに、プリニウスさん自身が 噴火で亡くなることは
  1598. ミユリ: 言わない方がいいですよね?
  1599. 時雨: うん…
  1600.  
  1601. FILENAME: text_519601-21_BPssF.txt
  1602. プリニウス: ふむ…地震はさらに増えてゆき
  1603. プリニウス: そしてアウグスタ水道の異変を 合図とするかのように
  1604. プリニウス: ウェスウィウス山から黒雲が昇る
  1605. プリニウス: ポンペイやヘルクラネウムは 一夜にして白い灰に埋もれ
  1606. プリニウス: 2000年後まで語り継がれる 死の町と化す、と…
  1607. プリニウス: 古今の学説や火山伝説とは 符合しない点も多いですが
  1608. プリニウス: むしろそれゆえに 奇妙な説得力があります…
  1609. プリニウス: ………… …しかし
  1610. プリニウス: お嬢さんたち 何か隠していますね
  1611. ミユリ&時雨: ――っ!?
  1612. ミユリ: なな、なぜそれを…!?
  1613. アマリュリス: えっ、あれ?
  1614. アマリュリス: …例のお話って みゆりん様たちにしましたっけ
  1615. プリニウス: やはり、図星ですか…
  1616. プリニウス: しかもその感じだと、それぞれ 別個の隠しごとがある様子…
  1617. アマリュリス: はわ…!? 墓穴を掘ってしまいました!
  1618. プリニウス: 残念ながら、すべてを明かすまで 協力は約束できませんね
  1619. アマリュリス: …………
  1620. アマリュリス: …仕方ありません
  1621. アマリュリス: 畏れ多くて、どうしても 口にできませんでしたが…
  1622. アマリュリス: 来年の6月、新しい インペラートルが誕生します
  1623. ねむ: インペラートル…今で言う 皇帝のことだね
  1624. プリニウス: なんと…
  1625. アマリュリス: はい、ウェスパシアヌス様が ご病気で倒れ
  1626. アマリュリス: 長男のティトゥス様が新たな インペラートルを名乗られます
  1627. プリニウス: なるほど…たしかにおいそれと 口にしがたい内容ではあります
  1628. プリニウス: …では、そちらのお嬢さんたちの 隠しごとは?
  1629. ミユリ: あのあの… えっと、その…
  1630. プリニウス: 落ち着きなさい 何を言っても怒ったりしませんよ
  1631. ミユリ: …はい、じゃあ…
  1632. ミユリ: プリニウスさんは、その噴火で 亡くなる運命…らしいです…
  1633. プリニウス: ん…?
  1634. アマリュリスたち: ええっ…!?
  1635. プリニウス: …ふむ、私は噴火の直後に スタビアエへと向かい
  1636. プリニウス: そこで死ぬというのですね
  1637. ミユリ: は、はい…
  1638. プリニウス: その経緯を記した 甥っ子で養子のガイウスが
  1639. プリニウス: 私の後釜に座り 小プリニウスなどと呼ばれると…
  1640. ねむ: ずいぶん聞き出されてしまったね
  1641. 時雨: う…うん
  1642. プリニウス: フフッ なかなかに面白い話です
  1643. プリニウス: 私の『博物誌』が後世に残る 仕事になるであろうことは
  1644. プリニウス: 執筆中から確信していましたが…
  1645. プリニウス: 若き日に記した戦術書の名まで 未来の人が知っているとは
  1646. プリニウス: 愉快な話ですね…!
  1647. 時雨: あれ…結構 信じてくれてるっぽい?
  1648. ひめな: そんな感じだよねっ
  1649. プリニウス: しかし、仮にこれらの話が すべて真実であったとしても
  1650. プリニウス: 私は、お嬢さんたちには 協力できません
  1651. アマリュリス: えっ…
  1652. コルネリア: なぜでしょう?
  1653. プリニウス: まずウェスウィウス山を エトナ山のように
  1654. プリニウス: 常に煙を吐いている山と 同じに考えるべきではありません
  1655. プリニウス: これは多くの学者の見解が 一致するところ…
  1656. プリニウス: 地震と噴火が連動して 起きることに疑問の余地はない
  1657. プリニウス: ですが、すべての地震が 噴火の予兆であるとはかぎらず
  1658. プリニウス: アリストテレス以来の 知見をもって洞察を重ねても
  1659. プリニウス: あの山が噴火するという予言は いささか説得力を欠きます
  1660. アマリュリス: そんな…!
  1661. プリニウス: 仮にお嬢さんたちの予言が正しく 私がそれを支持したとしても
  1662. プリニウス: 多くの学者に反駁されるでしょう
  1663. プリニウス: お嬢さんたちは、彼らの説を 覆す根拠を示せますか?
  1664. コルネリア: …………
  1665. プリニウス: そして私には、彼らの学説を 曲げさせる権利などない
  1666. プリニウス: 今の私に与えられているのは
  1667. プリニウス: 艦隊に命令を下す 権限にすぎません…
  1668. アマリュリスたち: …………
  1669. みんな: …………
  1670. ねむ: ………… …………
  1671. ひめな: どうしたの、ねむりん?
  1672. ねむ: いや… 少しひっかかって
  1673. プリニウス: あの少女たちが言っていることは
  1674. プリニウス: 私が長い年月をかけて 培った知見とは相容れませんが
  1675. プリニウス: 真実とは往々にして
  1676. プリニウス: 最も受け入れがたい姿をして 現れるもの…
  1677. プリニウス: ゴホッ…ゴホッ…
  1678. プリニウス: ウェスパシアヌス様も私も 来年には世を去る、と…?
  1679. プリニウス: 逃れられぬ死のさだめと それが持つ意味に気づいたとき
  1680. プリニウス: 人はどうふるまうべきか…
  1681. プリニウス: まったく、やっかいな問題を 持ち込んでくれたものです
  1682.  
  1683. FILENAME: text_519601-22_BPssF.txt
  1684. <翌日…>
  1685. <コルネリアの屋敷>
  1686. 時雨: うまくいかなかったね…
  1687. ひめな: うん…
  1688. アマリュリス: プリニウス様ほどの方に 危機感をお持ちいただければ
  1689. アマリュリス: 世論が変えられると 期待したのですが…
  1690. ねむ: 現代とは学問の常識が違いすぎて 溝を埋められなかったね
  1691. ねむ: この時代の人に、現代の知識を くわしく伝えることは
  1692. ねむ: 歴史への干渉がゆきすぎる 懸念もあるし…
  1693. ミユリ: でもでも、それってもう 結構やっちゃってません?
  1694. ひめな: 私チャンたちがきっかけで もう歴史は変わりはじめてて
  1695. ひめな: 干渉しないと元の歴史Bルートに 戻せないんだよね?
  1696. ねむ: うん、干渉自体はやむをえない 問題はその内容と性質だよ
  1697. ねむ: プリニウスが自身の死について 知ることにまでなったのは
  1698. ねむ: まずかったかもしれない…
  1699. ミユリ: そのせいでプリニウスさんが 違う行動を取ったら…?
  1700. ねむ: うん、歴史が変わってしまう 危険がある
  1701. コルネリア: 気を取り直して 他の計画を進めるしかないわよね
  1702. アマリュリス: そうです!
  1703. アマリュリス: 次の選挙に向けて 有力者への働きかけを続けつつ
  1704. アマリュリス: コルネリア様にはなんとしても
  1705. アマリュリス: マリウス様と ご婚約いただかないと!
  1706. 時雨: マリウスのお父さんが支持すれば
  1707. 時雨: 避難派が主流になるかも しれないんだっけ?
  1708. アマリュリス: そうなります
  1709. ミユリ: 最後の切札って感じですね
  1710. アマリュリス: なので、あさってのピクニックも うまくやっていただいて…
  1711. ひめな: ん…? ピクニック?
  1712. ミユリ: デートイベントですか!?
  1713. ミユリ: もしかしてマリウスと ふたりきりっ!?
  1714. コルネリア: ユニアも一緒よ お供の人だっているし
  1715. ねむ: 魔女や使い魔にも 警戒した方がいいね
  1716. ねむ: 今度こそ何かあるかもしれないし
  1717. 「コルネリア様、あの…」
  1718. コルネリア: どうかしたの?
  1719. お客様が…
  1720. ………… …………
  1721. ひめな: 誰?
  1722. コルネリア: わかりません 軍の方のようですが…
  1723. ミユリ: 敵か、味方か… 宮尾、わかりませんか?
  1724. 時雨: …わかると思う
  1725. アマリュリス: はわ… 何を始めるつもりでしょう!?
  1726. 時雨: ………… …………
  1727. 時雨: …大丈夫、敵じゃない
  1728. コルネリア: …そんなこと、わかるの?
  1729. ミユリ: 実は、これが宮尾の魔法です!
  1730. ミユリ: 相手が害のある存在かどうかを 見極めることができるんです
  1731. コルネリア: ありがとう、安心して 話をすることができそうね
  1732. コルネリア: お待たせして申し訳ありません 私がコルネリアです
  1733. コルネリア: 私にご用と伺いましたが…
  1734. はい、とある方よりの 言伝をお持ちしました
  1735. 明後日、コルネリア様と 内密にお会いしたいと…
  1736. コルネリア: とある方とは…?
  1737. ローマの執政官ティトゥス様です
  1738. アマリュリス&ねむ: ――っ!?
  1739. ミユリ: えっと よく聞こえなかったんですが…
  1740. ねむ: ウェスパシアヌスの長男 執政官ティトゥス…
  1741. ねむ: 次期皇帝だよ
  1742. [Part 1 end]
  1743. ---
  1744. [Part 2 start]
  1745. FILENAME: text_519602-1_wzPd8.txt
  1746. <翌々日…>
  1747. ひめな: コルネリアとアマリュリスは 神殿で次期皇帝と謁見中かぁ…
  1748. 時雨: うまくやってるかな…?
  1749. ねむ: 信じるしかない
  1750. ねむ: 僕達にできるのは 外の見張りぐらいだよ
  1751. ミユリ: 謁見が終わったら 午後はピクニックでしたよね?
  1752. ねむ: コルネリアたちは 過密スケジュールだね
  1753. コツ…
  1754. ティトゥス: おお、来たな
  1755. ティトゥス: 前置きも遠慮もいらん さっそく話を始めよう
  1756. コルネリア: は、はい…!
  1757. ティトゥス: たまたま近くに滞在していた私に プリニウスが伝えてきた
  1758. ティトゥス: インペラートルが死に ウェスウィウス山が火を噴くとの
  1759. ティトゥス: 不吉な予言を流布する 不届き者がいる、とな
  1760. アマリュリスたち: ………… …………
  1761. ティトゥス: ハハハ、別にそのことで 罪に問おうなどとは思っていない
  1762. ティトゥス: ただ、くわしい話を 聞かせてほしいのだ
  1763. ティトゥス: いずれ父にかわって ローマ領を預かる者としてな
  1764. コルネリア: ティトゥス様…!
  1765. ティトゥス: プリニウスは考えの読めぬ男で 時に不可解な態度も取るが
  1766. ティトゥス: 彼なりに、そなたたちの話には 耳を傾ける価値がある…
  1767. ティトゥス: ことによると、信用に足るとすら 感じたのだろう
  1768. ティトゥス: でなければ、わざわざ私の耳に 入れようとはしないはずだ
  1769. アマリュリス: では…お話しします
  1770. 時雨: 次の皇帝になるティトゥスって どんな人なの…?
  1771. ねむ: 現皇帝の長男で 皇帝の片腕とも言える人物だ
  1772. ねむ: 来年の西暦79年6月 父親の崩御を受けて新皇帝となる
  1773. ねむ: この史実は日付まで 現代に伝わっていて
  1774. ねむ: アマリュリスの証言とも 正確に一致する
  1775. ねむ: 僕達、未来の人間から見れば
  1776. ねむ: ポンペイが壊滅した日に ローマ皇帝だった人だね
  1777. ねむ: 相次ぐ災害にも迅速に対処した 有能な為政者として
  1778. ねむ: 市民からは人気があったらしい
  1779. ひめな: 他にも何か アマリュリスが言ってたよね?
  1780. ひめな: たしかユダヤの王女様と…
  1781. ねむ: ああ、ベレニケとの恋の話だね
  1782. ねむ: 後世に戯曲にもなったくらい 有名な話だ
  1783. ねむ: 現在ティトゥスには、恋人がいる ユダヤの王族の娘ベレニケだ
  1784. ねむ: でも、ローマ市民は次期皇帝が 異邦の王女を妻に迎えることに
  1785. ねむ: 猛反発している
  1786. ひめな: えっ、じゃあ… このあとどうなっちゃうの?
  1787. ねむ: 僕の知る歴史通りに進むなら
  1788. ねむ: ふたりが結ばれることはなく ティトゥスは新皇帝になる
  1789. ねむ: 彼はその後も独身を貫いたそうだ
  1790. ひめな: ………… …………
  1791. ティトゥス: …なるほど
  1792. ティトゥス: 来年の6月23日に父が死に 私がインペラートルに即位する
  1793. ティトゥス: そこまで断言するのだな
  1794. アマリュリス: はい…!
  1795. ティトゥス: その時点で、そなたらの予言の 真偽ははっきりする
  1796. ティトゥス: ひとまず、現時点では 判断を保留して
  1797. ティトゥス: その予言が的中したと 仮定して話を聞くとしよう
  1798. アマリュリス: でも、それから山が火を噴くまで あまり時間がありません
  1799. アマリュリス: 本音を言えば、今すぐにでも ティトゥス様の権限を行使して
  1800. アマリュリス: 町のみなさんに、他の土地へ 移住していただきたいくらいで…
  1801. ティトゥス: 噴火は10月24日と言ったか?
  1802. アマリュリス: そうです
  1803. ティトゥス: 私がインペラートルを称して わずか4ヶ月か…
  1804. アマリュリス: 日付がわかっているのですから
  1805. アマリュリス: せめて迅速な避難が実現できれば みなさんの命を救えます…!
  1806. ティトゥス: そうだな…
  1807. ティトゥス: あるいは数日前に軍を動かすなり することも考えられるが…
  1808. アマリュリス: ティトゥス様…!
  1809.  
  1810. FILENAME: text_519602-2_wzPd8.txt
  1811. ティトゥス: そうだな…
  1812. ティトゥス: あるいは数日前に軍を動かすなり することも考えられるが…
  1813. アマリュリス: ティトゥス様…!
  1814. ティトゥス: いや、そなたが期待を抱く前に はっきりと言わねばならぬ
  1815. ティトゥス: すべての命を救うことは あきらめてくれ、と…
  1816. アマリュリスたち: え…
  1817. ティトゥス: インペラートルの権限を もってしても
  1818. ティトゥス: 他の町への集団移住はおろか
  1819. ティトゥス: 危機の兆候を見てとってからの 避難準備さえも
  1820. ティトゥス: 難しいと言わざるをえない
  1821. コルネリア: なぜでしょう…?
  1822. ティトゥス: …予言が真実であると 事前に証明できないのだ
  1823. ティトゥス: おそらくプリニウスも 同じことを言ったのではないか?
  1824. アマリュリス: あ…たしかに
  1825. ティトゥス: 確たる根拠も示さずに インペラートルの権限を用いて
  1826. ティトゥス: 万を超す民に、父祖の土地からの 移住を強いたり
  1827. ティトゥス: あるいは大軍を動かしたりすれば
  1828. ティトゥス: 市民は私のことを、流言に 惑わされた暴君と非難するだろう
  1829. ティトゥス: ローマ市民が私を どのような目で見ているか
  1830. ティトゥス: そなたらも知らぬではあるまい?
  1831. アマリュリスたち: …………
  1832. ティトゥス: 異邦の女王クレオパトラに ローマが振りまわされたことは
  1833. ティトゥス: 人々の記憶に新しい…
  1834. ティトゥス: 私が同じ轍を踏むのではないかと 市民は疑っている
  1835. ティトゥス: 私がインペラートルになれば
  1836. ティトゥス: 愛するベレニケを 妻にすることはできないだろう
  1837. アマリュリス: …………
  1838. ティトゥス: 市民の生き方を決めるのは ローマ市民自身だ
  1839. ティトゥス: ただ強権をふるっても 彼らを統治することはできない
  1840. ティトゥス: さりとて私が父を継がねば 内戦の時代に逆戻りだ
  1841. ティトゥス: …執政官にもインペラートルにも 真の自由など存在しないのだよ
  1842. アマリュリス: ………… …………
  1843. ティトゥス: ただ…
  1844. ティトゥス: ここまで真に迫った予言を 無下にする心持ちにはなれんな
  1845. コルネリア: …………
  1846. ティトゥス: 頻発する地震を怖がって 自ら移住を決める民もいると聞く
  1847. ティトゥス: 不吉な予言を広める者が いるせいらしいが…?
  1848. ティトゥス: 私はそなたらの行動を 止めようとは思わないし
  1849. ティトゥス: いざ噴火が始まったあとにも 極力多くの者が避難できるよう
  1850. ティトゥス: 事前に打てる手は打っておこう …父にも働きかけてな
  1851. ティトゥス: 噴火の当日は少しでも多くの民が 無事に逃げ出せるよう
  1852. ティトゥス: 町のみなで力を尽くしてほしい
  1853. コルネリア: はい…!
  1854. ティトゥス: それから、ネアポリスの被害は 比較的小さいと言っていたな?
  1855. アマリュリス: …は、はい!
  1856. ティトゥス: 災禍のあとにはなってしまうが… ネアポリスを中心に
  1857. ティトゥス: 被災した民の受け入れが 円滑に進むよう尽力しよう
  1858. アマリュリス: ありがとうございます…!
  1859. アマリュリス: …信じて いただけたのでしょうか
  1860. ティトゥス: 予言の真偽は来年6月に判明する それまでは判断保留…だがな
  1861. コルネリア: インペラートルの権限でも 集団移住はかなわないのね…
  1862. アマリュリス: でも、実りある会見でした…
  1863. アマリュリス: けど…
  1864. アマリュリス: …うっ…
  1865. アマリュリス: 平穏な日々は、もうすぐ 壊れてしまう…
  1866. アマリュリス: 本当は、ひとりだって 犠牲になってほしくないのに…
  1867. アマリュリス: …どうして…
  1868. コルネリア: アマリュリス…
  1869. コルネリア: それじゃ、ひめなたちに 報告してきましょうか
  1870. アマリュリス: はいっ!
  1871. 時雨: アマリュリスたち 少しは成果があったみたいだね…
  1872. ひめな: あとはマリウスとコルネリアの デートを成功させないとねっ!
  1873. ミユリ: とりあえず ピクニックコースの入口まで
  1874. ミユリ: 先まわりしてみたわけですが…
  1875. ひめな&ミユリ: ――っ!?
  1876. ひめな: やっぱり!
  1877. 時雨: これが今回の パラドクスの原因…?
  1878. ミユリ: デートイベントの邪魔です! やっつけましょう!
  1879.  
  1880. FILENAME: text_519602-3_wzPd8.txt
  1881. ミユリ: ふぅ…ちょっとやばかったです
  1882. 時雨: うん、すごく強い魔女だった…
  1883. ねむ: いままで戦ったのと 同じ魔女から派生した敵だろうね
  1884. ねむ: 大元は別にいる… おそらく、最初に戦った魔女だ
  1885. ひめな: …………
  1886. ガヤガヤ…
  1887. ひめな: あっ コルネリアとお供の人たちだよ!
  1888. ねむ: このあと マリウスとユニアが合流して
  1889. ねむ: 全員そろったら 丘の上までピクニックだったね
  1890. 時雨: ぼくたち、邪魔かも…?
  1891. ひめな: とりま どっかに隠れてよっ?
  1892. コルネリア: ………… …………
  1893. マリウス: 「コルネリア!」
  1894. マリウス: はぁ、はぁ… お待たせ!
  1895. コルネリア: マリウス様! どうしたんですか?
  1896. コルネリア: そんなに息を切らして
  1897. マリウス: 父が…僕たちの婚約を 認めてくれたんだ!
  1898. コルネリア: えっ…えっ…? ええっ!?
  1899. マリウス: このあと正式連絡があるけど 一刻も早く知らせたくて…!
  1900. コルネリア: どうしよう… 嬉しい…マリウスさ…
  1901. ユニア: 「お姉様!」
  1902. コルネリア: ユニア!?
  1903. ユニア: おめでとうございます! おね…
  1904. ユニア: きゃ!?
  1905. ドサササッ
  1906. コルネリア: ちょっと、大丈夫!?
  1907. ユニア: 大丈夫です! 木の葉に埋もれただけですので
  1908. ユニア: それよりご婚約 おめでとうございます!
  1909. コルネリア: あ、ありがと…って ちょっと待って?
  1910. コルネリア: もしかして私以外 みんな知ってるの?
  1911. ユニア: あ…わたしもさっき お義父様から聞いたところで…
  1912. 時雨: おめでたいけど…
  1913. ミユリ: ちょっと出ていきづらいです
  1914. 時雨: いつまで隠れてれば いいんだろう…
  1915. ひめな: あっ、みんなで 丘の上に行くみたいだよっ
  1916. ミユリ: それじゃそれじゃ こっそりついていきましょう!
  1917. マリウス: ―マリウス― 着いたね 素敵な眺めだ
  1918. コルネリア: ―コルネリア― はい…マリウス様
  1919. コルネリア: ―コルネリア― やっと、ここまで来ることができました あの子のおかげです
  1920. マリウス: ―マリウス― あの子って…?
  1921. コルネリア: ―コルネリア― ふふ…内緒です
  1922. ユニア: ―ユニア― お姉様…! マリウス様…!
  1923. マリウス: それじゃ、また!
  1924. コルネリア: 今日はありがとうございました マリウス様
  1925. コルネリア: ユニアもありがとう 一緒に来てくれて
  1926. ユニア: …………
  1927. コルネリア: …ユニア? どうしたの、ぼうっとして?
  1928. ユニア: あ…ごめんなさい お姉様
  1929. ユニア: 3人で過ごせたのが すごく楽しくて
  1930. ユニア: この1日がずっと続けば いいのにと思って…!
  1931. コルネリア: ずっと続けば…
  1932. コルネリア: …………
  1933. アマリュリス: 平穏な日々は、もうすぐ 壊れてしまう…
  1934. コルネリア: ………… …………
  1935. ユニア: …お姉様?
  1936. コルネリア: ああ、ごめんなさい なんでもないの
  1937. コルネリア: あ…
  1938. コルネリア: (そういえば、ひめなたち どこへ行ったのかしら…?)
  1939. ミユリ: デートイベント完了を見届けたら 即行でここに飛ばされましたね…
  1940. ねむ: 西暦78年の記録が復活した
  1941. ひめな: じゃあ、次は79年?
  1942. ねむ: そうだね ウェスウィウス山が噴火する年だ
  1943. ミユリ: 最初に戦ったボスみたいなやつが 待ちかまえてそうです…
  1944. ねむ: うん、僕達の接近を感知して
  1945. ねむ: 3年前の西暦76年から 活動を活発化させていたんだろう
  1946. ねむ: おそらくそこから増殖した “株分け”のなかに
  1947. ねむ: さっき戦ったような 強力な個体も現れて
  1948. ねむ: アマリュリスの行動を阻害した… それがタイムパラドクスの正体だ
  1949. 時雨: でも、まだパラドクスは 残ってるよね…?
  1950. ねむ: うん、まだ大きな欠落がある
  1951. ねむ: “歴史B”を取り戻すためには 例の魔女との対決を
  1952. ねむ: 覚悟しておいたほうが いいだろうね
  1953.  
  1954. FILENAME: text_519602-4_wzPd8.txt
  1955. ひめな: ここは、どこ…?
  1956. ひめな: 誰かの、夢…?
  1957. キュゥべえ: ………… …………
  1958. ???: 『クビウス様…』
  1959. ???: 『これは、神々の罰なのでしょうか?』
  1960. ???: 『あのとき、ウェスタの煌乙女になることを わたしが、拒んだから…』
  1961. ひめな: (今のって アマリュリスの夢だよね?)
  1962. ひめな: (あの子は…)
  1963. ひめな: (ずっと罪の意識を 感じていたんだね)
  1964. <西暦79年10月>
  1965. <ポンペイ>
  1966. …!
  1967. また揺れたぞ… 今日は一段とひどいな
  1968. オレたちも避難したほうが いいんじゃないか?
  1969. 水道はまだ枯れてるみたいです
  1970. いよいよ、予言通りに なってしまうの…?
  1971. ひめな: …………
  1972. ひめな: あ…
  1973. ミユリ&時雨: …………
  1974. コルネリア: ひめなたち…?
  1975. コルネリア: …あれから1年が経ったわ
  1976. コルネリア: アマリュリスの言う通り ウェスパシアヌス様にかわって
  1977. コルネリア: 6月にティトゥス様が インペラートルへと即位された
  1978. コルネリア: 都市参事会の空気も変わった…
  1979. ひめな: マリウスのお父さんの力?
  1980. コルネリア: うん…移住に踏み切った人は 全体からみると少ないけど
  1981. コルネリア: 大きな地震も増えてきたし… どの町も、何かあったら
  1982. コルネリア: すぐに避難しようって 雰囲気になってきてる
  1983. ひめな: 地震…! 噴火まで、あと何日なの?
  1984. コルネリア: …あと2日よ もう、時間がないの
  1985. タタッ
  1986. アマリュリス: コルネリア様!
  1987. アマリュリス: ユニア様は無事に 避難していただけました…
  1988. アマリュリス: …って、あれっ? ひめな様たち…?
  1989. コルネリア: 今はもう、噴火が始まったら みんながすぐに逃げだせるように
  1990. コルネリア: できる準備を進めるしかないわ
  1991. ひめな: ユニアの家族は もう避難したんだね
  1992. アマリュリス: はい、三家のお父様がたはすでに
  1993. アマリュリス: この町に住むことの 危険を理解されています
  1994. アマリュリス: 地元と強い結びつきを持つ ユニア様のお義父様は
  1995. アマリュリス: みなさんに範を示す意味で 早期にご家族を避難させました
  1996. アマリュリス: そして、コルネリア様と マリウス様のお父様…
  1997. アマリュリス: そしてマリウス様とともに
  1998. アマリュリス: 避難を円滑に進めるための 準備を進めています
  1999. アマリュリス: …本当は、コルネリア様にも 避難していただきたいのですが
  2000. コルネリア: 私はひとりでも多くを救えるよう できるかぎりのことをするわ
  2001. アマリュリス: コルネリア様…!
  2002. ひめな: 私チャンたちも!
  2003. ゴゴゴ…
  2004. コルネリアの父: 地鳴りがひどい… ただごとではないな
  2005. コルネリアの父: 2~3年ほど前は あまりにコルネリアが怯えるので
  2006. コルネリアの父: 万が一の災禍にも 目配りしておこう…
  2007. コルネリアの父: ぐらいの気持ちだったが
  2008. コルネリアの父: あの噂…いや予言は 的中しそうに思えてならん
  2009. ユニアの義父: それには同意せざるをえんな
  2010. ユニアの義父: 正直うちの商売は 地元産のワイン頼みだったし
  2011. ユニアの義父: 参事会の、地元にこだわらず やっていこうって方針も
  2012. ユニアの義父: あんたとマリウスの親父に 押し切られる形で渋々呑んだが…
  2013. ユニアの義父: 今ではむしろ感謝している
  2014. ユニアの義父: あのまま参事会の趨勢が 変わらなければ
  2015. ユニアの義父: 避難などとんでもない!…と 先頭に立って反対していただろう
  2016. ゴゴゴゴ…
  2017. コルネリアの父: …このぶんだと 数日以内に何か起きそうだな
  2018. ユニアの義父: うむ…“万が一”のときは
  2019. ユニアの義父: 早めに陸路での避難を促すのが 最善だと考える
  2020. コルネリアの父: 逃げ遅れた住民が乗れるように
  2021. コルネリアの父: 商船も待機させているが… いかんせん数が足りない
  2022. ???の声: …船がご入用でしょうか?
  2023. コルネリアの父: あなたは、女神イシスの…
  2024. イシスの神官: わが教団の信者のなかには 船主の方が多くいらっしゃいます
  2025. イシスの神官: よろしければ ご協力をいただけるよう
  2026. イシスの神官: お声がけしてみますが…
  2027. コルネリアの父: おお、それは助かります!
  2028. マリウス: 僕は父とともに、参事会の 重鎮がたに働きかけてきます
  2029. マリウス: 何かあったとき、彼らが 避難を渋るようなことになれば
  2030. マリウス: その家族や使用人の方々は 逃げたくても逃げられませんから
  2031. <そして…>
  2032. <西暦79年10月24日>
  2033.  
  2034. FILENAME: text_519602-5_wzPd8.txt
  2035. アマリュリス: みなさんを東へ誘導してください 今なら陸伝いに逃げられます!
  2036. 左利きのヒラルス: 承知しました!
  2037. アマリュリス: 燃える雲に襲われたら 町全体が危険です…!
  2038. アマリュリス: 一刻も早く、みなさんを 町の外へ…
  2039. コルネリア: わかったわ お父様たちに伝えてくる
  2040. 時雨: 昼なのに… こんなに暗く…
  2041. ミユリ: 灰と石が積もって 家が壊れはじめてます…
  2042. ねむ: さすがにまずいと判断して 住民の多くが避難を始めたようだ
  2043. コルネリアの父: 頭を守りながら逃げろ! 使用人は解放してやれ!
  2044. コルネリアの父: 命より価値のある財産など ありはしないぞ!
  2045. 時雨: 避難、意外と順調…?
  2046. ひめな: 残ってる人は、あんまり 多くないみたいだね
  2047. ねむ: マリウスたちが重鎮を説得して 早期の避難を実現させたんだ
  2048. ねむ: アマリュリスの言う通り 今のうちなら
  2049. ねむ: 安全に避難できる可能性が高い
  2050. パラパラッ…
  2051. コルネリア: 石が激しく降りはじめました…
  2052. マリウス: 風向きが悪いね 東に逃げるのはもう難しいかも…
  2053. コルネリアの父: 頃合、か…
  2054. ユニアの義父: 逃げ遅れた住民を海側へ集めよう 船は出せそうか?
  2055. コルネリアの父: 荒れているが、大丈夫だ
  2056. コルネリアの父: 数をそろえてくれた イシス教団にも感謝しないとな
  2057. 左利きのヒラルス: …コルネリア様、御者たちがまだ 営舎に取り残されているとのこと
  2058. コルネリア: えっ…主人に置いていかれたの?
  2059. コルネリアの父: 救出に向かわねばなるまいな
  2060. コルネリアの父: コルネリアは 先に船に乗っておけ
  2061. コルネリア: いえ、私はマリウス様と一緒に
  2062. コルネリアの父: そうか… マリウス、頼んだぞ
  2063. マリウス: はい!
  2064. アマリュリス: あの…ご主人様たちは…?
  2065. コルネリア: ご主人様…? あ、ユニアのお義父様のことね
  2066. ユニアの義父: 心配ない、町のやつらを乗せたら 同じ船で逃げる
  2067. コルネリアの父: 私もだ、死ぬつもりはないよ
  2068. ざわざわ…
  2069. ひめな: あれっ? 人があんなに!?
  2070. 早めに避難した人たちが 様子を見に戻ってきたみたいで…
  2071. ………… …………
  2072. ミユリ: 目つきがおかしいです
  2073. 時雨: 見て、あれ… 魔女の口づけ!
  2074. ひめな: 近くに魔女がいるの? 探さなきゃ!
  2075. コルネリア: 戻ってきた人たちの様子が変… 北のほうへ向かってる…?
  2076. マリウス: あそこは火の手が上がってる 止めないと…!
  2077. マリウス: アマリュリス、コルネリアを頼む
  2078. アマリュリス: は、はい…!
  2079. アマリュリス: あの、マリウス様 何をするおつもりでしょう?
  2080. マリウス: すぐに戻る ヒラルスさん、一緒に来て!
  2081. 左利きのヒラルス: はい…!
  2082. ………… …………
  2083. コルネリアの父: どうする? あの人数を押しとどめるのは…
  2084. アマリュリス: ――っ!?
  2085. アマリュリス: 神話の怪物のしわざですね
  2086. アマリュリス: いままで感じたことのないような 強力な魔力…
  2087. アマリュリス: ここは、わたしが…
  2088. ひめなの声: 待って!
  2089. 時雨: この魔力、間違いない… あいつはぼくたちが…!
  2090. ミユリ: そうですそうです!
  2091. ミユリ: あのボス魔女には 借りがありますので!
  2092. ひめな: 町の人たちはまかせたから! こいつは私チャンたちにまかせて
  2093. アマリュリス: …わかりました
  2094. コルネリア: あなたたちが戻るまで 船を待たせたいけど…
  2095. ねむ: いや、その必要はない
  2096. ねむ: 最後のパラドクスを解消すれば 僕達は元の時代に戻れる
  2097. ひめな: ここでお別れかもねっ!
  2098. コルネリア: そうなの…?
  2099. コルネリア: ひめな、みゆりん しぐりん、ねむ
  2100. コルネリア: いままでありがとう
  2101. ミユリ: ど、どういたしまして!
  2102. アマリュリス: あの、最後までみなさんに 助けられてばかりでしたけど…
  2103. アマリュリス: 本当に、本当に ありがとうございました…!
  2104. ひめな: あざまる★ りゅりりん!
  2105. ひめな: ねりりんは 好きピ同士でお幸せにっ!
  2106. ひめな: あと、ゆにりんにもよろしくねっ
  2107. ミユリ: いまさら愛称呼びですか!?
  2108. ひめな: わかりにくいかと思って 自重してたんだよね
  2109. 時雨: 行こう
  2110. 時雨: …おたがい、まだ やることが終わってない
  2111. ミユリ: あの魔女にリベンジです!
  2112.  
  2113. FILENAME: text_519602-6_wzPd8.txt
  2114. 時雨: くっ…!
  2115. ひめな: しぐりん!
  2116. 時雨: …大丈夫 ふたりは攻撃を続けて
  2117. ひめな: りょーかいっ!
  2118. ミユリ: 燦様燦様 待っててください!
  2119. ミユリ: もうすぐ現世に帰れますので!
  2120. 時雨: …現世…?
  2121. ひめな: おけまる★ みゆりん、燃えてるっ
  2122. 時雨: でも、早く倒さないと みんなが避難できない…
  2123. …………
  2124. コルネリア: きゃ…
  2125. アマリュリス: コルネリア様っ!
  2126. アマリュリス: …人が多すぎます 押し戻すのは無理です
  2127. アマリュリス: …救えないの…? 今回も…
  2128. コルネリア: アマリュリス、あきらめないで 未来は変えられる!
  2129. コルネリア: ひめなたちは、あなたが変えた 未来からきたんだから!
  2130. アマリュリス: は、はいっ そうでした…!
  2131. アマリュリス: (でも、このままじゃ…)
  2132. マリウス: 「コルネリア! アマリュリス!」
  2133. コルネリア: えっ?
  2134. マリウス: 援軍を連れてきたぞ!
  2135. アマリュリス: 御者の方々…! あんなにたくさん…
  2136. マリウス: あの人たちを押し戻して もらえますか?
  2137. マリウス: 何かに憑かれているみたいで…!
  2138. 無敵のマクシムス: 手荒なやり方でいいなら かまわんぞ!
  2139. 無敵のマクシムス: あんたらのおかげで 命拾いしたからな!
  2140. 左利きのヒラルス: 営舎に閉じ込められていた彼らを マリウス様が解放したんです
  2141. マリウス: ヒラルスさんの ライバルの方々です!
  2142. コルネリアの父: なるほど…そういうことか
  2143. コルネリアの父: 海に船を待たせてある 住民を海へ誘導してほしい
  2144. ユニアの義父: 暴れたら気絶させて運んでやれ!
  2145. 無敵のマクシムス: 承知した! よし、やるか
  2146. みんな: おうっ!!
  2147. コルネリアの父: 満員の船はすぐに出せ! 海が荒れてきたぞ!
  2148. コルネリアの父: マリウス、そっちはどうだ?
  2149. マリウス: はい、御者たちのおかげで
  2150. マリウス: みなさんをこちらへ 運んでくることができました
  2151. ユニアの義父: マリウスの親父たちが 町に残った連中を探しているが…
  2152. ユニアの義父: ここらが潮時だな
  2153. ユニアの義父: これ以上、海が荒れては 船が出せなくなる
  2154. ユニアの義父: マリウス、親父を呼び戻してこい
  2155. マリウス: は…はい
  2156. アマリュリスたち: …………
  2157. コルネリアの父: お前たちのせいではない 手を尽くしても救えぬ命もある
  2158. コルネリアの父: これだけの人を救えたのだと 誇りに思え
  2159. コルネリア: アマリュリス…
  2160. アマリュリス: …わかっています これ以上待てば、ここも危ない
  2161. アマリュリス: でも、みなさんを救えないのは 悔しいです…
  2162. ざわざわ…
  2163. コルネリア: …なにかしら?
  2164. プブリウス様!
  2165. 別の門で立ち往生していた一団が こちらに集まってきたようです
  2166. コルネリアの父: …ん? かなりの数だな
  2167. ユニアの義父: まずいな… 船が足りんぞ
  2168. コルネリア: そんな…!
  2169. アマリュリス: コルネリア様! あれを…!
  2170. コルネリア: ―コルネリア― あの船…ローマ海軍!
  2171. アマリュリス: ―アマリュリス― はい! プリニウス様旗下の艦隊です!
  2172. コルネリア: ―コルネリア― プリニウス様の…?
  2173. アマリュリス: ―アマリュリス― はい…それも あんな大艦隊で…
  2174. アマリュリス: ―アマリュリス― こんな大荒れを ものともせずに…!
  2175. 副官: 接岸し、ポンペイの民を 救出せよ!
  2176. 副官: それから、プリニウス提督の 通達である…
  2177. 副官: 『恐れるな! 幸運は勇者に味方する!』
  2178. コルネリア: みんなを 岸辺まで集めましょう
  2179. アマリュリス: はいっ…!
  2180.  
  2181. FILENAME: text_519602-7_wzPd8.txt
  2182. <ポンペイ近郊・スタビアエ>
  2183. プリニウス: 雲と煙が混じって 空はひどい有様です…
  2184. プリニウス: 昼か夜かすらわからない
  2185. プリニウス: ここにも危険が迫っています みな、今のうちに逃げなさい
  2186. 書記: し、しかし…
  2187. プリニウス: 私はこの地で死ぬさだめです それにつきあうことはない
  2188. プリニウス: そして、甥っ子のガイウスへ 私の死にざまを伝えるのです
  2189. プリニウス: 「プリニウスはこの災禍を事前に予見できず」
  2190. プリニウス: 「学者としての好奇心と知人の救助という ふたつの目的から 少数の艦船を率いて調査に向かったが」
  2191. プリニウス: 「噴煙に阻まれ、やむなく寄港したスタビアエで 黒煙に巻かれて死んだ…」
  2192. 書記: ですが…!
  2193. プリニウス: フフ…勇敢なのか愚か者なのか よくわからぬ死に方ですが
  2194. プリニウス: 私らしい運命とも思えます
  2195. 書記: 予見できなかった、などと…!
  2196. 書記: どうしていつわりを 記さねばならないのですか?
  2197. 副官: なぜ、これほどの艦隊を 集結させる必要が…?
  2198. プリニウス: 案ずることはありません
  2199. プリニウス: ティトゥス様も 黙認されている行動ですから
  2200. プリニウス: 艦隊は近海に待機させておき
  2201. プリニウス: ウェスウィウス山に異変が 起きた際は
  2202. プリニウス: ただちにポンペイへと 救援に向かうように
  2203. プリニウス: ひるまず、進んでください… 幸運は勇者に味方します
  2204. プリニウス: そうそう、そしてこれは…
  2205. プリニウス: プリニウスの命によるものとせず 貴下の手柄としてください
  2206. プリニウス: …彼が私の言いつけを破って
  2207. プリニウス: プリニウスの通達などと 口にせねばよいのですが
  2208. プリニウス: フフ…あとで辻褄を合わせる あなたの仕事が大変になる
  2209. 書記: どうして、真実を伏せるのです?
  2210. プリニウス: 未来からきたという少女たちに 私は自分の運命を聞きました
  2211. プリニウス: あのお嬢さんたちが 取り戻そうとしているのは
  2212. プリニウス: 私が勇敢な愚か者として死ぬ未来
  2213. プリニウス: あなたが甥っ子のガイウスに 伝える私の死にざまは
  2214. プリニウス: 2000年先の未来まで 語り継がれるそうです
  2215. プリニウス: 万が一、ガイウスが それとは異なる記録を残せば
  2216. プリニウス: 時が逆説に蝕まれ 世界を壊してしまうでしょう
  2217. プリニウス: だから、私は明日死ぬ それでいいのです
  2218. プリニウス: 未来を知ろうが知るまいが 私の運命は同じであるべきです…
  2219. 書記: 理解できません
  2220. プリニウス: 歳を取ればわかりますよ
  2221. プリニウス: ゴホッ、ゴホッ…
  2222. プリニウス: フフ…喉の疾患持ちに この空気はこたえますね…
  2223.  
  2224. FILENAME: text_519602-8_wzPd8.txt
  2225. 時雨: うあっ…!
  2226. ひめな: しぐりん、逃げてっ これ以上はやばいよ!
  2227. 時雨: ううん…
  2228. 時雨: まともに攻撃が通ってるの 遊狩さんだけだし
  2229. 時雨: ぼくと姫とで あいつを引きつけるしか…
  2230. ひめな: …わかった
  2231. ひめな: (このままじゃ負け確だし)
  2232. ひめな: (しぐりんがその覚悟なら ワンチャンやるしかない…!)
  2233. ひめな: じゃあ、私チャンが左 しぐりんは右ね!
  2234. 時雨: うん…!
  2235. ひめな: みゆりん、今だよっ! リミッター外しちゃって!
  2236. ひめな: 暴走したら 私チャンが止めるから!
  2237. ミユリ: わわ、わかりました!
  2238. ミユリ: …………
  2239. ひめな: 「みゆりん、みゆりん…!」
  2240. 時雨: 「遊狩さん…!」
  2241. ミユリ: …………
  2242. ミユリ: はっ…!?
  2243. ミユリ: 魔女は…!? ミユはまた暴走したんですか?
  2244. 時雨: 魔女は遊狩さんが倒したよ 暴走は…姫が止めてくれた
  2245. ひめな: ぶっちゃけ教官抜きで 止められると思わなかったよね…
  2246. ひめな: 止めたっていうか 止まったって感じだったし!
  2247. ???の声: それでいいのよ
  2248. ???の声: 受け止めるんじゃなくて 受け流す要領ね
  2249. ひめな: だよね、教官! ちょっとコツがつかめたかもっ
  2250. ひめな: …って、教官!?
  2251. 燦: やっと見つけたわ
  2252. はぐむ: 時雨ちゃんたち 無事でよかった…!
  2253. はぐむ: へんな空間を ずっと歩いてたの…
  2254. 三輪 みつね: …私、今回 ずっと迷子なんだけど…
  2255. ひめな: やったね! マイメンたち復活だよっ
  2256. ミユリ: 燦様、お会いしたかったですぅ~
  2257. 時雨: よかった、はぐむん…
  2258. 時雨: みんなが戻ってきたってことは…
  2259. 時雨: 魔女を倒したから、パラドクスが 解消されたってこと?
  2260. ねむ: そうだろうけど…
  2261. 三輪 みつね: この景色… どう見ても解消されてないよね?
  2262. 燦: 形勢がこっち寄りに傾いて 部分的に解消…という感じかしら
  2263. ねむ: うん… 一時的なもののような気がする
  2264. 燦: ――っ!?
  2265. 時雨: あの魔女…!
  2266. ミユリ: たた、倒せてなかったですぅ!
  2267. ねむ: でも、明らかに存在が不安定だ
  2268. 三輪 みつね: …最初にここで同じのと戦って 負けた結果を
  2269. 三輪 みつね: 3人がさっき勝って 上書きしたはずだよね…?
  2270. ねむ: 時空がひどく乱れてるからね
  2271. ねむ: 魔女にも勝つ可能性があるかぎり 復活してくるということかな…
  2272. 燦: それなら、可能性がなくなるまで 叩き伏せるだけよ
  2273. 燦: いままで何もできなかったぶん 派手にやらせてもらうわ
  2274. 燦: 安積、三輪! あなたたちもね
  2275. はぐむ: はいっ!
  2276. 三輪 みつね: …ふふっ、まかせて
  2277. 三輪 みつね: 最初に言ったよね…? 『ヒーローは最後に来る』ってw
  2278. ミユリ: 大遅刻ですぅ!
  2279.  
  2280. FILENAME: text_519602-9_wzPd8.txt
  2281. 全員、乗り込んだか!
  2282. はい!
  2283. この波だ… これ以上は待てんな
  2284. よし、出すぞ! こいつが最後の船だ!
  2285. <ポンペイ沖・船上>
  2286. ザザァ…
  2287. コルネリア: きゃ…
  2288. マリウス: コルネリア!
  2289. マリウス: 船から投げ出されないように どこかにつかまって
  2290. コルネリア: あ…ありがとうございます
  2291. コルネリア: ………… あれは…
  2292. コルネリアたち: ………… …………
  2293. コルネリアの父: …もう、戻れないんだな
  2294. ユニアの義父: ああ…
  2295. マリウスの父: ネアポリスで再出発だ マリウス
  2296. マリウス: は、はい…!
  2297. マリウスの父: 命があれば、またやり直せる
  2298. コルネリア: ひめな、みゆりん、しぐりん… 未来へ、無事に帰ってね
  2299. 燦: どんなに強くても魔女は魔女ね 安積の攻撃が有効よ
  2300. 燦: 前に失敗した連係を またやってみましょう
  2301. はぐむ: えっと…私とみつねちゃんで こっそり近づくんですよね?
  2302. 燦: そう 残りの4人で陽動よ
  2303. 燦: 前回はミユと 私のふたりだけだったけど
  2304. 燦: 今は姫様も宮尾も無事だから
  2305. 三輪 みつね: はぐむちゃん 責任重大だよ…!
  2306. 燦: 余計なプレッシャーをかけないの
  2307. 燦: それじゃ、一斉にいくわよ!
  2308. みんな: 了解っ!
  2309. 三輪 みつね: はぐむちゃん、今のうちに…
  2310. はぐむ: う、うんっ…
  2311. はぐむ: きゃ…!
  2312. 三輪 みつね: …当たった、と思うじゃん? 魔女さん
  2313. 三輪 みつね: それ、私が“改竄”した 認識なんだよねww
  2314. 燦: 今よ、安積!
  2315. はぐむ: は、はいっ!
  2316. はぐむ: や、やああああーーーっ!!
  2317. はぐむ: か…勝った?
  2318. 時雨: やった、はぐむん…!
  2319. 燦: なに、この場所…?
  2320. ミユリ: ポンペイです… 火が、燃えひろがってます…
  2321. 時雨: …船はもう出たみたい
  2322. ねむ: ということは…
  2323. ねむ: 君達が魔女を足止めしている間に 無事に船を出せたんだね
  2324. ねむ: 魔女が原因で引き起こされた 最後のタイムパラドクスも
  2325. ねむ: きっと解消しているはずだ
  2326. 三輪 みつね: 元に戻った…!
  2327. はぐむ: ということは、環さんの概念も…
  2328. ひめな: おけまる★ いろりんの欠片、無事回収だねっ
  2329. ねむ: たくさんの犠牲を生んだ 悲しいできごとだったけれど…
  2330. 時雨: …うん…
  2331. ねむ: 僕達の知る歴史の通り 救われた命もたくさんあった
  2332. ねむ: 新皇帝ティトゥスは
  2333. ねむ: 避難民がネアポリスなどへ すみやかに受け入れられるよう
  2334. ねむ: 迅速に手を打ったと伝わっている
  2335. ねむ: コルネリアたちも、新天地で 再興を期しているはずだよ
  2336. 三輪 みつね: あ…
  2337. ねむ: 任務完了だ 現代へ戻ろう
  2338. ひめな: これは…
  2339. ひめな: また、誰かの記憶…?
  2340. ひめな: え、ヒコ君、なに…?
  2341. ひめな: そっか… いろりんの本を持ってる私チャンと 書かれてる記録が同調して… それでこの夢を見てるんだね?
  2342. ???: 『…わたしが、ウェスタの煌乙女に?』
  2343. ウェスタの煌乙女: はい、あなたには その資格があるようです
  2344. ???: 『うーん…』
  2345. ???: 『わたしには、無理かも…』
  2346. ???: 『…わたしに、この腕輪を?』
  2347. マリウス: そう 僕からの贈りものだよ
  2348. ひめな: (いま見えたのって…?
  2349. ひめな: (いろりんの本の 読めなくなってた記録…?)
  2350. ひめな: え、なに?…ヒコ君
  2351. ひめな: これは誰の記憶なんだろうって… ああっ!?
  2352. ひめな: 私チャン ポンペイへ戻らなきゃ…!
  2353. ひめな: もう無理だって…そんな…!! だって、アマリュリスは…!
  2354. コルネリア: …………
  2355. コルネリア: アマリュリスは、どこ?
  2356.  
  2357. FILENAME: text_519603-1_c8l3c.txt
  2358. ???: あなたのことが、好きでした 小さな頃から…ずっと
  2359. ???: だからわたしは、ウェスタの煌乙女には なれないと思いました だって、マリウス様と一緒になりたかったから
  2360. ???: あなたが婚約の証に この腕輪を贈ってくれた あの日の喜び…
  2361. ???: あの一瞬を感じられただけで わたしの一生は 幸せだったと言えると思います
  2362. <ポンペイ沖・船上>
  2363. ザザァ…
  2364. アマリュリス: ………… …………
  2365. ユニア: …マリウス様
  2366. ユニア: 婚約が決まったあと、あなたは 妹のような存在でしかなかった私に 優しくしてくださいました
  2367. ユニア: 好きになろうと、努力してくださいました
  2368. ユニア: そして、空から火が降ったあの日… 恋する乙女“ユニア”は死にました わたしが守りたかった小さな世界は壊れ すべては灰の下に埋もれました
  2369. ユニア: あなたも、大好きなお姉様も… わたしの恋心も
  2370. ユニア: あの日のマリウス様を… わたしの婚約者だったマリウス様のことを 決して忘れません
  2371. ユニア: 落ちてくる屋根から 身を挺してわたしを助けてくれたこと
  2372. ユニア: 最期の瞬間に 『愛してる』と言ってくれたこと
  2373. ユニア: そして…
  2374. ユニア: 神々はわたしに、最後の機会をくださいました わたしを生き直す機会を …3年の猶予を
  2375. ユニア: ―ユニア― あれから二度目の生を生き
  2376. ユニア: ―ユニア― お姉様たちと過ごした日々…
  2377. ユニア: …まるで、夢のようでした
  2378. トンッ…
  2379. ユニア: クビウス様…
  2380. ユニア: …えっ?
  2381. ユニア: どうしてお姉様と一緒の船に 乗らなかったのか…ですって?
  2382. ユニア: こちらの船のほうが
  2383. ユニア: “ユニア”がいるはずの場所に 早く着くからですよ
  2384. ユニア: お姉様たちの乗られた船は 経由地が違うようでしたので…
  2385. ユニア: ほんの1~2日なら
  2386. ユニア: “なりすまし”の魔法を 使っているときの嘘が効いて
  2387. ユニア: わたしの不在を 誰も怪しみませんけど
  2388. ユニア: 何日もいないと、いろいろと 不都合が出てきますので
  2389. ユニア: …それにしても 本当に不思議な魔法ですね
  2390. ユニア: この世にアマリュリスなんて 少女は存在しないのに
  2391. ユニア: 会う人の誰もが 疑問に思わないなんて
  2392. ユニア: …あれは、わたしが 魔法でなりすましたいつわりの姿
  2393. ユニア: ユニアの侍女を名乗りながら ユニアと一緒にいたことは 一度もないのに…
  2394. ユニア: …正体を悟られないように
  2395. ユニア: 数えきれないほどの 嘘とごまかしを重ねました
  2396. ユニア: わたしの出自も、秘めた恋も
  2397. ユニア: 時には神の遣いを騙ってまで…
  2398. ユニア: ふふ、転身の魔法を得たのだって 本当はわたしが…
  2399. ユニア: 過去に生まれ変わりたいと 願ったからですよね?
  2400. ユニア: 真実は、胸の内に秘めたまま 誰にも言いませんでした
  2401. ユニア: マリウス様のお気持ちを お姉様に向けるため…
  2402. ユニア: お姉様のお気持ちを マリウス様に向けるため…
  2403. ユニア: ひとつ嘘をつくたびに 心が悲鳴をあげました
  2404. ユニア: …それでも、みんなを 守りたかったんです
  2405. ユニア: だって、他にどうすればいいか わからなくて…
  2406. ユニア: ひとつの願いとひきかえに わたしはすべてを捧げました 命を、魂を、恋心を
  2407. ユニア: お姉様も、マリウス様も お義父様もお義母様も 大好きなみんなも亡くして… わたしは最後に、“ユニア”を… 恋する心を殺しました
  2408. ユニア: 女神様に一生を捧げる覚悟を決めて ウェスタの煌乙女に なったつもりだったのに…
  2409. ユニア: わたしは過去のわたし自身に 生まれ変わっていました
  2410. ユニア: わたしが一度目の生を生きた証拠は ただひとつ、この腕輪だけ
  2411. ユニア: 来たるべき災禍のことを いくら口にしても 怖がりな娘だと思われるばかりで
  2412. ユニア: 誰にも信じてもらえなかった…
  2413. ユニア: まるで、神の愛を拒んだ カサンドラ姫の受けた呪いが わたしに下ったかのようでした
  2414. ユニア: かつて煌乙女になるのを拒んだわたしに…
  2415. ユニア: もしも、あのまま“ユニア”でいれば 魔法の力を借りなければ
  2416. ユニア: わたしの言葉は誰ひとり動かせず マリウス様への想いも お姉様に気づかれていたでしょう
  2417. ユニア: だから、わたしは “アマリュリス”になりました
  2418. ユニア: 出会ったみんなに助けられて 未来を変えることはできたけれど
  2419. ユニア: すべての命を救うことは できませんでした…
  2420. ユニア: 本当は、みんな助けたかった 誰ひとり傷ついてほしくなかった
  2421. ユニア: それが神意を拒んだ わたしの罪ならば…
  2422. ユニア: わたしはその罪を あがないながら生きていきます
  2423. ユニア: この腕輪を… きらめく思い出のよすがとして
  2424. ユニア: 救えなかった人々を弔いながら この命が尽きるまで…
  2425. ユニア: ローマの安寧に身を捧げ 平和と添い遂げる者として
  2426. ユニア: …パクス・ロマーナの恋人として
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