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- FILENAME: text_519601-0.txt
- <西暦79年>
- <ポンペイ>
- ???: まるで、世界の終わり…
- ???: すべてが壊れ
- ???: すべてが失われてゆく
- ???: 大切な思い出も
- ???: 大切な人たちも
- ???: もしも、過去に生まれ変わって
- ???: みんなの命を 救うことができたなら…
- ???: ………… …………
- [From the opening sequence]
- 小さな世界を守りたかった
- やがてすべてが 壊れてしまう前に…
- [Title card] ピュエラ・ヒストリア パクス・ロマーナの恋人編
- FILENAME: text_519601-1_BPssF.txt
- ひめな: マイメンたち 全員そろったー?
- 時雨: …そろってない…
- 燦: 三輪がいないわ
- みつねの声: ごめん、遅くなって…
- はぐむ: あ、もしかして… 足がまだ治りきってないから?
- はぐむ: リハビリ終わったばかりだよね? 迎えに行けばよかった…
- 三輪 みつね: …あ、いや…その 足はもう大丈夫なんだけど…
- 時雨: …迷子になってた、とか?
- 三輪 みつね: え、どうしてわかっ… …じゃなくて!
- 三輪 みつね: …えっと、強いて言えば ヒーローは最後に来る的な…?w
- 万年桜のウワサ: |近くをうろうろしてたから 私が連れてきた|
- ミユリ: つまりつまり! 迷子になっていたと?
- 三輪 みつね: …………うん
- ひめな: …準備はいい? それじゃ、しゅっぱーつ!
- ミユリ: 姫様姫様! あのあの、行先はどこでしょう?
- ひめな: あ、そうだね そのへんの話は…
- ひめな: この本の中の 小さい人から解説よろ~★
- ねむ: わかった、では僕が…
- ねむ: これから向かうのは西暦79年 ローマの植民市ポンペイ
- ねむ: 火山噴火で壊滅した町だ
- 時雨: …………
- ひめな: 噴火が起きたのはその年?
- ねむ: そう、西暦79年のこと
- ねむ: 住民の大多数は命からがら 逃げ延びることができたけれど
- ねむ: それでも人口の1割…
- ねむ: 1000人を下らない数が 犠牲になったとされる大災害だ
- ひめな: ………… …………
- ねむ: この災厄と前後して
- ねむ: 奇跡を祈り 歴史を変えた魔法少女がいる
- ねむ: 名前はアマリュリス
- はぐむ: …お花の名前みたい?
- ねむ: 当時は人名にすぎなかった
- ねむ: 花の名前として広まったのは かなり最近の話だよ
- 燦: 歴史を変えた少女って… 何を変えたのかしら?
- ねむ: くわしくはわからない 記録にかなりの欠落があるんだ
- ねむ: ただ、悲劇の原因となった 天災そのものは起きているから
- ねむ: 噴火自体を止めたいと 願ったわけではないようだ
- 燦: つまり、そのアマリュリスという 魔法少女の行動を追うことで
- 燦: 環いろはの概念の一部を 回収できるということね
- ねむ: そうなるね
- ひめな: じゃ、あらためて…
- ミユリ: 出発ですぅ!
- 燦&はぐむ: …?
- 三輪 みつね: …なんか、思ってたのと違う
- ひめな: それ、めっちゃわかりみ!
- ひめな: ぶっちゃけタイムトラベルって もっとこう…
- ミユリ: パッと消えて ビューンと過去に出現!
- ミユリ: …みたいな感じだと 思ってましたよね?
- ねむ: この景色には僕も戸惑っている
- ねむ: もしかすると、時空間に なんらかの異常が…
- 燦: 物騒なことを言い出すわね
- ねむ: さっきも言ったけれど 僕達が目指す西暦79年は
- ねむ: アマリュリスという少女によって 一度、歴史が変更されている
- ねむ: 僕達の干渉が、二度目の 歴史改変を意味するとすれば
- ねむ: 時空が不安定になる 要因になることも考えられる…
- ガガガーン
- ひめな: …魔女の…
- 時雨: …結界…!
- ひめな: 何これ!? 見るからにヤバそうなんだけど!
- 三輪 みつね: 時空がどうって話と関係が?
- はぐむ: …ま、魔女なら 私が…!
- 燦: いいわよ、安積 その意気よ
- ひめな: 魔女が相手なら はぐりんの出番だよね★
- FILENAME: text_519601-2_BPssF.txt
- ひめな: ちょ…えっ!?
- 時雨: …姫…!
- 燦: 宮尾、姫様をお願い!
- 燦: ミユは私と来て 魔女の目をこっちへ引くわ
- はぐむ: …あ…えっと その隙に、私たちが魔女を…?
- 燦: そう、三輪は安積をアシストして ふたりで魔女に近づいて!
- 三輪 みつね: 了解、改竄の魔法で 魔女の目をあざむいてみる
- 燦: 頼んだわ じゃあ、いくわよ!
- 三輪 みつね: 教官、ミユリちゃん! 危ない!
- 燦&ミユリ: えっ…?
- ミユリ: …うぅ…
- はぐむ: ミユリちゃん!?
- 三輪 みつね: はぐむちゃん 私たちだけで魔女を!
- はぐむ: う、うん…!
- 燦: 無謀よ! 正面から突っ込んでは…
- 三輪 みつね: ――っ!?
- はぐむ: きゃうっ!
- ひめな: はぐりん、みわりん!
- 燦: これ以上はもたないわ! いったん退きましょう
- 時雨: …退くって…どこへ?
- 燦: 結界の出口を探すわ 宮尾、一緒に…
- 燦: え…? 魔女が…消えた?
- 時雨: …ここ…どこ?
- 燦: …惨敗ね 連係が機能しなかったわ
- 時雨: うん…
- 時雨: みんな、怪我は大丈夫…?
- ひめな: 私チャンたちは大丈夫… はぐりんとみわりんは?
- はぐむ: 平気…それより…
- はぐむ: へんてこなところに出たけど ここが過去の世界?
- 三輪 みつね: 不思議空間としか 言いようがないよね?
- ひめな: …ちょ!? な、なにこれ?
- 燦: 文字が浮かんだり 消えたりしている…?
- ひめな: どうなってるわけ?
- ねむ: 本の記録が消えたり 元に戻ったりを繰り返している
- ねむ: まるで、お姉さんが記録した アマリュリスという少女の行動が
- ねむ: 最初から“なかったこと”に なろうとしているように見えるね
- ミユリ: …えっと どういう意味でしょう?
- ねむ: …もしかすると
- ねむ: 今まさに、タイムパラドクスが 起きているのかもかもしれない
- ねむ: 時空間をこんなにしてしまうほど 深刻なパラドクスがね
- ねむ: …最初に説明したように
- ねむ: 僕達の目指していた西暦79年は 一度、歴史が改変されている
- ねむ: もともと不安定だったこの年代に 僕達が近づいたことで
- ねむ: 事象の矛盾…タイムパラドクスが 拡大するきっかけを
- ねむ: 作ってしまった可能性がある
- 三輪 みつね: つまり、この不思議な場所は タイムパラドクス空間…!
- ねむ: あるいは、壊れた時空とでも いうべき空間かもしれないね
- ねむ: 実際、この本の記述も…
- ねむ: まるでタイムパラドクスに 呼応するかのように
- ねむ: 不安定になっている
- 三輪 みつね: タイムパラドクス空間の状態に リンクしてるってことだね…!
- 燦: 三輪のテンションが謎に高いわね
- ひめな: ヒコ君もみわりんと 同じ見解だって★
- 時雨: …とにかく、目的の西暦79年に たどり着かないと
- ミユリ: ではでは あたりを探ってみましょう!
- 燦: 足元が不安定ね… 年上の3人が前を歩きましょう
- はぐむ: 全然…進んでる感じがしないかも
- 燦: 目印になるものが 何もないのよね
- 三輪 みつね: …私、今日ずっと迷子なんだけど
- ガガーン
- はぐむ: な…なに!?
- 三輪 みつね: 空間の様子が変…?
- ねむ: 本の状態も ひどく不安定になっている…!
- はぐむ: ――っ!?
- 燦: 足元に亀裂が…!
- ひめな: 教官たち!?
- ミユリ: ままままずいです!
- 時雨: いま、助けるから…!
- 燦: だめ! あなたたちも巻き込まれるわ!
- ひめな: で、でも…
- ひめな: きゃわ!? まぶし…
- FILENAME: text_519601-3_BPssF.txt
- ひめな: ………… …………
- ひめな: 私チャン…気を失ってた?
- ひめな: ――っ!?
- ひめな: 頭の中に… 誰かの記憶が…
- ???: …コルネリア、ユニア
- ???: ふたりは マリウスのことが好きか?
- ユニア: はい!
- ユニア: ユニアはマリウス様のことが 大好き~!
- ???: ははは、そうか コルネリアはどうだ?
- コルネリア: あ…はい、お父様 私は…
- ユニア: お姉様も大好きだよね? マリウス様!
- コルネリアの父: どうした、コルネリア?
- コルネリア: …あ…えっと
- コルネリア: マリウス様は、その… 優しくて…とっても素敵な方で…
- コルネリア: …………
- コルネリアの父: はは、口に出すのは恥ずかしいか
- コルネリアの父: ふたりともマリウスと 仲良くやっているようで安心した
- コルネリアの父: 将来、ふたりのどちらかが
- コルネリアの父: マリウスに嫁ぐことに なるかもしれんからな
- コルネリア&ユニア: えっ…
- コルネリア: それって…
- ユニア: マリウス様のお嫁さんに なるってこと…?
- コルネリアの父: そう まだ少し先の話だがな
- コルネリア: …………
- コルネリア: 私が…マリウス様の…
- ひめな: 今のって、誰かの夢…?
- ひめな: コルネリアとユニア… 双子…かな? 瓜ふたつの顔してたよね
- ひめな: あれ…また… 意識が…遠く…
- <西暦77年・初頭>
- <ポンペイ>
- ???: …きて… …ねえ、起きて!
- みんな: ………… …………
- ひめな: …はっ!?
- ひめな: みゆりん、しぐりん! 目を覚まして!
- 時雨: …ん…?
- ミユリ: うみゃうみゃ… ミユはまだ眠いです…
- ひめな: 寝ぼけてる場合じゃないって!
- ???: 目が覚めた?
- コルネリア: 私はコルネリア あなたたちは、誰?
- ひめな: えっ…コルネリア?
- コルネリア: あれ…? 私を知ってるの?
- ひめな: (さっきの夢の子だ…!)
- ひめな: (少し大きくなってるけど… 面影が残ってる)
- ひめな: ううん、初めましてだよね
- ひめな: 私チャンはひめな★ こっちがみゆりんとしぐりんで…
- コルネリア: ひめな… みゆりん…しぐりん?
- ひめな: そう、それから あっ…!
- ミユリ: 燦様たちがいないです!
- 時雨: …うん、はぐむんと三輪さんも
- ひめな: どうしよ!? 3人とはぐれちゃった?
- 時雨: 近くに…倒れてたりしない?
- ミユリ: …見あたらないです…
- コルネリア: …何か事情があるの? なんだか困ってるみたい
- ひめな: うん…ぶっちゃけ ここがどこかもわからないし
- コルネリア: 私の家よ あなたたち、中庭に倒れてたの
- ひめな: あ…そうなんだ
- ひめな: (そういえば… 夢で見た場所と同じ?)
- ガヤガヤ…
- コルネリア: いけない、人が来ちゃう あっちに隠れてて!
- コルネリア: ここなら誰も来ないから 少し待っててくれる?
- 時雨: う…うん…
- コルネリア: あ、お腹とかすいてない?
- コルネリア: これ、私のおやつ みんなで食べちゃっていいから
- ひめな: …かくまってくれたの? すごくいい子じゃん!
- ミユリ: それにそれに 香ばしいお菓子もくれましたし
- 時雨: パンみたいな形だけど チーズとハチミツの匂いがする…
- ねむ: 古代ローマ時代のチーズケーキだ 本で見たことがある
- ねむ: どうやら…
- ねむ: 火山噴火が起きる前の ポンペイに着いたようだね
- FILENAME: text_519601-4_BPssF.txt
- ミユリ: ポンペイ…
- ひめな: 目指してた町に着いたってこと?
- ねむ: そのようだ
- 時雨: でも… …はぐむんたちは…どこへ?
- ひめな&ミユリ: ………… …………
- はぐむ: な…なに!?
- 三輪 みつね: 空間の様子が変…?
- ねむ: 本の状態も ひどく不安定になっている…!
- はぐむ: ――っ!?
- 燦: 足元に亀裂が…!
- ねむ: もしもあれが タイムパラドクスが原因で生じた
- ねむ: 時空の狭間のような ものだとすると…
- 時雨: …パラドクスを解消すれば また合流できる?
- ねむ: その可能性は高いと思う
- ねむ: 本来であれば パラドクスを回避するために
- ねむ: 歴史への干渉は 極力避けたいんだけど
- ねむ: すでに矛盾が発生しているなら 正常に戻す必要があるよ
- ミユリ: つまりつまり ミユたちがまずやるべきは…
- ミユリ: 歴史がどこか狂ってないか 調べることでしょうか?
- ひめな: ワンチャンそれがよさそうだね もしかするとみわりんたちも
- ひめな: 今ごろこっちの心配を してるかもしれないし!
- ???: 『コルネリア様~!』
- ミユリ: …ん?
- ひめな: この声 さっきの中庭のほうからだね
- ミユリ: そこから覗けます!
- コルネリア: あら、遅かったじゃない アマリュリス
- アマリュリス: すみません、ユニア様のご用事が なかなか片づかなくって…!
- ひめな: え、アマリュリス!?
- ミユリ: ミユたちが探してる 魔法少女の名前です!
- 時雨: 何を話してるんだろ…
- アマリュリス: それで… 例の選挙の話なんですけど
- コルネリア: えっと…次の造営官の?
- アマリュリス: そうです!
- アマリュリス: このままいくと、私たちにとって 都合の悪いことに…
- <数分後…>
- ひめな: …なんか 難しそうな話してない?
- 時雨: うん…ずっと 政治の話をしてる
- ミユリ: ミユよりかなり年下に見えるのに 頭のよさそうな子たちです…
- ひめな: …てかさ、今さらなんだけど
- ひめな: 私チャンたち、なんで あの子たちの言葉がわかるわけ?
- ねむ: 僕を生みだしたうわさは 過去で無事に過ごすためのもの
- ねむ: 言語や服装といった壁も 心配する必要はないよ
- ミユリ: そういうことですか…
- 時雨: あ…ふたりの話 終わったみたい
- アマリュリス: …それじゃ、コルネリア様 息抜きにルドゥスを少しだけ!
- コルネリア: そうね、ひと勝負したいわ あっちへ行きましょう
- 時雨: ――っ!?
- ミユリ: こっちに来ます!
- ねむ: ルドゥス…今でいう 盤上ゲームのようだね
- ひめな: もしかして私チャンたちが ここにいること、忘れてる!?
- ミユリ: どどど、どうしましょう!?
- ねむ: 逃げる暇はなさそうだよ
- コツ…
- アマリュリスたち: あ…
- アマリュリス: …あの、コルネリア様 この方たちは?
- コルネリア: ごめんなさい…えっと
- コルネリア: ひめなと みゆりんと、しぐりんよ
- FILENAME: text_519601-5_BPssF.txt
- アマリュリス: 初めまして、ひめな様 みゆりん様、しぐりん様
- アマリュリス: アマリュリスと申します
- アマリュリス: わたしは ユニア様お付きの侍女で…
- ひめな: (ユニア…さっきの夢に 出てきた子だよね…?)
- コルネリア: ユニアは私の双子の妹 普段は離れて住んでいるの
- 時雨: …混乱してきたかも…
- ひめな: …おけまる★ だいたいわかった!
- ねむ: 「コルネリアはこの大きな屋敷のお嬢様で ユニアという双子の妹がいる」
- ねむ: 「ユニアは幼い頃に 他の家に養子に出されていて」
- ねむ: 「アマリュリスはそのユニアの侍女」
- ねむ: 「今日はユニアが実家を訪れる日で アマリュリスは手が空いた隙に コルネリアに会いにきた、と」
- ねむ: …こういうことだね?
- ひめな: まとめ、あざお★
- コルネリア: …ひめなは誰と話してるの?
- アマリュリス: あっ…コルネリア様には ねむ様が見えないのでしょうか?
- ねむ: ごめん、僕の姿を認識できるのは 魔法少女だけなんだ
- ねむ: 声だけでも聞こえるよう 少し調整してみよう
- ねむ: …どうかな?
- コルネリア: あ…女の子の声が聞こえる 姿は見えないけど…
- コルネリア: ひめなたちも アマリュリスと同じように
- コルネリア: 不思議な力を使うのね
- アマリュリス: そのようですね …あっ、もしかして!
- アマリュリス: ひめな様たちも わたしと同じように
- アマリュリス: 過去を変えるために 未来からやってきたのでしょうか
- 時雨: えっ…!?
- ミユリ: まさかまさかの タイムトラベラー同士ですか!?
- ひめな: アマリュリスも 未来からきたんだね?
- アマリュリス: はい…
- アマリュリス: 「今からおよそ2年半後、ポンペイを 恐ろしい災禍が襲い この町を一夜にして押し潰します」
- アマリュリス: 「…わたしは、その生き残りなんです」
- アマリュリス: 「わたしは、みなさんにそのことを知らせ 来たる災禍から救うために 過去の世界へと生まれ変わりました」
- アマリュリス: 「この身のすべてを捧げることを クビウス様に誓って…」
- ねむ: クビウス… キュゥべえのことだね
- ねむ: ウェスウィウス山が噴火して ポンペイの町が壊滅したのは
- ねむ: 僕達の暦でいうところの 西暦79年の終わりごろだから
- ねむ: 現在はその2年半ほど前… 西暦77年のポンペイのようだね
- コルネリア: ひめなたちはどうして この町へ来たの?
- ひめな: 私チャンたちはね…
- ひめな: 私チャンたちにとって 大切な人の足跡を探して
- ひめな: 2000年後の未来から ここへ来たんだよね
- アマリュリス: はわ… にに、2000年後ですか!?
- コルネリア: アマリュリスよりも もっと遠い未来からきたのね
- アマリュリス: そのようです…
- アマリュリス: わたしはあの災禍の日に クビウス様に祈りを捧げ
- アマリュリス: 気づくと、3年ほど前の 自分に生まれ変わっていました
- アマリュリス: ですので、わたしが遡った歳月は わずか3年ほどです
- 時雨: 3年…? 2年半じゃなくて?
- アマリュリス: あ…生まれ変わってから 何ヶ月か経っていますので!
- ミユリ: なるほどです
- アマリュリス: すぐにこのことを、みなさんに 伝えようとしたのですが…
- アマリュリス: 近い将来、山が割れ 空から火と石が降ると言っても
- アマリュリス: 誰も信じてはくれませんでした…
- アマリュリス: 予言を信じてもらえない 呪いをかけられたという
- アマリュリス: トロイアの王女カサンドラ様も こんな気持ちだったのでしょうか
- コルネリア: みんな、信じたくないのよ
- コルネリア: 悲劇はもう終わりだと 思ってたんだから
- ミユリ: どういう意味でしょう?
- ねむ: ポンペイでは西暦62年… 15年前に大きな地震があった
- ねむ: 多くの建物が倒壊し いまだ復興のさなかにあるんだよ
- コルネリア: うん…私たちが生まれる 少し前のことよ
- 時雨: その地震は、噴火の前兆に すぎなかったってこと…?
- ねむ: おそらくは、ね
- アマリュリス: 復興に向けて みんなが一生懸命なときに
- アマリュリス: 町を捨てて逃げだそうだなんて 誰も思いませんよね
- アマリュリス: …でも コルネリア様だけは違いました
- アマリュリス: 初対面だったわたしの言葉を 信じてくれたんです!
- FILENAME: text_519601-6_BPssF.txt
- <西暦76年>
- <ポンペイ>
- コルネリア: アマリリ…アマリュリス?
- アマリュリス: あ… アマリリスで結構ですよ
- アマリュリス: わたしどもギリシャ系の名前は 発音しにくいと思いますので!
- コルネリア: ありがとう アマ…アマリュリス
- コルネリア: ユニアお付きの 侍女っていうことは…
- コルネリア: 同じ家庭教師の先生から 勉強を教わってたりするの?
- アマリュリス: はい、ウェルギリウス様の詩から 弁論術まで…
- アマリュリス: 身に余るほどの教養を 学ぶ機会をいただいております!
- コルネリア: へぇ…そうなのね それで、私になんの用?
- アマリュリス: 実は…
- コルネリア: …そんな感じで いきなり押しかけてきたんだよね
- アマリュリス: えへ…わたし、前から コルネリア様びいきだったんです
- ひめな: ファンってことだね!
- アマリュリス: はい、ずっと憧れてました 聡明で、穏やかで、優しくて…
- コルネリア: 初対面なのに、私の好物まで 知ってたから引いたわよ
- アマリュリス: 以前から、ユニア様と一緒に お屋敷にお邪魔してましたので!
- コルネリア: …ユニアは6歳のときに よその家の養子になったの
- コルネリア: 養子先は、お父様の親友の家で… 今もよくうちへ来るのよ
- ねむ: 姉妹なのに名前が違うのは 違う家の子になったからだね
- ミユリ: それはそれは どういう意味でしょう?
- ねむ: 古代ローマ時代、姉妹は 同じ名前で呼ばれていたらしい
- アマリュリス: はい、このお屋敷に住んでいた頃
- アマリュリス: ユニア様はコルネリア・ミノル… 小コルネリア様と呼ばれてたとか
- 時雨: …ややこしい…?
- ひめな: で、コルネリアは
- ひめな: アマリュリスの話を あっさり信じちゃったの?
- コルネリア: うん…その日、人気役者の パリス様のお芝居の途中で
- コルネリア: 突然、大雨が降って 大騒ぎになるって予言して
- コルネリア: ほんとにその通りになったし…
- アマリュリス: それから、折を見て
- アマリュリス: お邪魔させて いただくようになりました
- ひめな: 仲良くなったんだね!
- アマリュリス: はい、コルネリア様の好みは 調べ上げておりましたので
- アマリュリス: 特に、この盤上ゲームを 持ち込んだときなど
- アマリュリス: 興味津々のご様子で…
- コルネリア: ま、前から遊んでみたかったのよ でも、機会がなくて…
- アマリュリス: わたしもルドゥスが趣味なので 意気投合した感じですね
- アマリュリス: でも、ただ遊んでいたわけじゃ ないですよ?
- ねむ: …ひとりの力で 未来を変えるのは難しい
- ねむ: だからコルネリアに 手伝ってもらおうと思ったのかな
- アマリュリス: よ、よくわかりましたね!? おっしゃる通りです!
- ひめな: でも、どうして コルネリアを選んだの?
- アマリュリス: それには 深いわけがあるのですが…
- アマリュリス: そのことを話す前に…わたしから ひとつお伺いしたいことが
- ひめな: なに?
- アマリュリス: さきほどのねむ様のお話だと… わたしたちを襲ったあの災禍は
- アマリュリス: 2000年後の未来まで 語り継がれているんですよね?
- ねむ: うん…ひとつの町が消滅した 史上稀に見る悲劇としてね
- ねむ: とても皮肉なことだけれど 町全体が灰に埋もれたことで
- ねむ: まるで時が止まったような ポンペイの町並みは
- ねむ: 訪れる者の心を動かさずには おかない遺跡となっている
- コルネリア: アマリュリスの言葉だけでは なかなか実感が湧かなかったけど
- コルネリア: もうすぐこの町は 本当になくなってしまうのね…
- ミユリ: ねむ様ねむ様…
- ミユリ: アマリュリスさんは キュゥべえにお願いして
- ミユリ: 噴火そのものをなかったことには できなかったのでしょうか?
- ねむ: この時代の人々の多くは
- ねむ: 火山噴火は自然現象ではなく 神々の怒りだと捉えていた
- ミユリ: あ…
- ねむ: それに、もし仮に その願いを叶えたとしても
- ねむ: 先に待つのは、新たな噴火に おびえる日々だっただろうね
- ひめな: うん… 簡単じゃないよね
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- アマリュリス: やはり、災禍が降りかかるのは この町の運命なのですね…
- アマリュリス: でも、神々はクビウス様を通じて
- アマリュリス: 3年の猶予を わたしにくださいました
- アマリュリス: その日が来る前に、みんなで町を 離れることができれば…!
- 時雨: 町ごと避難するっていう意味…?
- コルネリア: もちろん簡単じゃないと思うけど 私たちはそのために
- コルネリア: お父様たちを 動かしたいと思ってるの
- アマリュリス: コルネリア様のお父様は 町でも有数の交易商なんです
- ミユリ: さっき選挙がどうこうって 話をしてたのも、そのためです?
- ひめな: そんな感じっぽいね
- アマリュリス: 山が火を噴いたあの日…
- アマリュリス: 人々はみんな、町に留まって 災禍が収まるのを待ちました
- アマリュリス: …でも、その判断が 間違いだったんです
- アマリュリス: 半日ほど経って… 燃える雲が町を襲いました
- アマリュリス: 助かった人は… ほとんど…いなくて…
- コルネリア&ひめな: ………… …………
- ねむ: …痛ましい記憶だ
- ねむ: ただ…今の話で ひとつひっかかることがある
- ミユリ: それはなんでしょう…?
- ねむ: ポンペイの人々の大多数は 避難に成功したはずなんだよ
- ミユリ&時雨: あっ…
- 時雨: たしかに… ねむ様はそう言ってた
- ねむ: アマリュリスの言う通り
- ねむ: 噴火が始まってから 致命的な事態に至るまで
- ねむ: 半日ほどの時間があったとされる
- ねむ: 命を落とした人も 決して少なくはなかったけれど…
- ねむ: それでも町の人口の大部分は 助かったというのが定説だ
- アマリュリス: わたしが経験したのとは… …違う…?
- アマリュリス: …と、いうことは
- アマリュリス: このあと未来が変わって 多くの人が助かるということ…?
- ねむ: 事前に避難の動きが あったのかは不明だけど
- ねむ: 最初の噴火のあと 大多数の人が逃げ延びたはずだよ
- アマリュリス: すべての命が救われるわけでは ないのですね…
- コルネリア: …でも、何かが変わってる?
- アマリュリス: はい、わたしたちの力で 未来は変えられるのかも…!
- ねむ: ………… …………
- 時雨: 何か、気になることがあるの?
- ねむ: うん…もしかすると今ので 話がつながったかもしれない
- ミユリ: 何がですか?
- ねむ: 例のタイムパラドクスのことだよ
- 時雨: どういうこと…?
- ねむ: …いま僕達の前で ふたつの歴史が枝分かれしている
- ねむ: アマリュリスが経験した歴史A… 多くの命が失われる未来
- ねむ: そして、アマリュリスによって 改変された歴史B…
- ねむ: 町の住民の大多数が 避難に成功する未来だ
- ねむ: これが、僕達の知る正史であり…
- ねむ: お姉さんの記録と一致する歴史 すなわち歴史Bだ
- ねむ: …ところが、だ
- ねむ: タイムパラドクスに呼応して この本の記述は揺れ動いている
- ひめな: それって、どういうこと?
- ねむ: アマリュリスの行動が なかったことになって
- ねむ: 最初の歴史Aで起きた惨禍が 繰り返されようとしているんだ
- アマリュリス: いったいどうしてでしょう…?
- ねむ: 言いにくいことだけど…
- ねむ: 本来はアマリュリスが 実現するはずだった歴史B
- ねむ: その歩みを、僕達が 妨害してしまったんだろう
- ミユリ&時雨: ええっ…?
- コルネリア: 何があったの?
- ねむ: わからない…ただ、結果的に 歴史への干渉は引き起こされた
- ねむ: その原因は僕達としか思えない
- ねむ: なにしろ僕達の目的は この本にお姉さんが記録した
- ねむ: アマリュリスの軌跡を 追うことだったんだからね
- ひめな: …待って待って! 他の可能性もあるってヒコ君が!
- ねむ: どういうことかな?
- ひめな: 私チャンたちが近づいたことで 別の存在を刺激したのかも、って
- ミユリ: 別の存在…?
- 時雨: …あっ
- 時雨: …あの魔女…?
- ねむ: そうか、なるほど
- ねむ: 僕達の接近を感じ取ったことで 強大な魔女が活性化した…
- ねむ: その魔女が起こした事件によって
- ねむ: アマリュリスが変えた 西暦76年以降の3年間の歴史が
- ねむ: どっちつかずの、極めて 不安定な状態になってしまった
- ねむ: 西暦79年を目指していた僕達が 西暦77年に着地したのも
- ねむ: ここより先の未来が、明確に 定まっていないせいかもしれない
- 時雨: 78年や79年は 足場が不安定で下車できない…?
- ねむ: その通り、いい喩えだね
- ねむ: はぐれてしまった3人は まさにその不安定な時空間…
- ねむ: 時空の狭間に 囚われてしまったんだろう
- ミユリ: ではでは、やはり タイムパラドクスを解消して
- ミユリ: 歴史Bを取り戻せば 燦様たちと合流できると?
- ひめな: ヒコ君もそう思うって!
- コルネリア: よくわからないけれど 意見がまとまってきた感じ…?
- ひめな: そうだね、とりま アマリュリスを手伝って
- ひめな: 町のみんなが避難できるように がんばればいいんだよね
- ミユリ: ですです、最初のきっかけを 作った責任は取らないと!
- ねむ: その方針に賛成だよ
- アマリュリス: み…みなさん…! ありがとうございます!
- 時雨: 具体的には何をするの?
- アマリュリス: はい、いろいろありますが… 最も重要な計画がこちらです
- アマリュリス: コルネリア様が幼馴染の マリウス様と婚約できるように
- アマリュリス: 各方面に手を回していきます
- ひめな: …え?
- アマリュリス: そして、最大のライバルは 双子の妹であるユニア様!
- アマリュリス: 本日、マリウス様のお屋敷で 行われる晩餐会が勝負です!
- 時雨: …どういうこと?
- FILENAME: text_519601-8_BPssF.txt
- アマリュリス: ではこれから、みなさんには
- アマリュリス: コルネリア様の新しい侍女として 晩餐会に同行していただきます!
- ミユリ: あのあの 本当に大丈夫でしょうか…?
- アマリュリス: 大丈夫です!
- アマリュリス: わたしがコルネリア様の 侍女長になりすまして
- アマリュリス: 侍女たちに 言い含めておきましたので!
- アマリュリス: 新しい子たちに 晩餐会の様子を見せておきたいの
- アマリュリス: あなたたちに留守はまかせたわよ
- はいっ!
- ひめな: アマリュリスって すごい魔法が使えるんだね★
- アマリュリス: メタモルフォセス… なりすましの魔法です
- コルネリア: 見た目がそっくりなだけじゃ ないのよね?
- アマリュリス: はい、わたしが誰かに なりすましていた間の言動は
- アマリュリス: 多少、辻褄が合わなくても
- アマリュリス: 怪しまれないという おまけつきです!
- ひめな: あのときあそこにいたはず、とか 追及されない感じ?
- ねむ: それで、新しい侍女3人の話も 疑われずに済むわけか
- ねむ: 周囲の認識にまで効果が及ぶとは なかなかすごい魔法だね
- アマリュリス: えへ…でも 戦いの役には立ちません
- ミユリ: …そうでもなかった…?
- 時雨: どうしてそんな魔法を…?
- アマリュリス: そうですね…たぶん 大詩人オウィディウス様の
- アマリュリス: 『転身譚』を愛読していた せいでしょうか…?
- ねむ: 原題はメタモルフォセス… “変身”をモチーフにした傑作だ
- アマリュリス: 後世にも読み継がれて いるのですね…感動です!
- アマリュリス: では、コルネリア様 そろそろ晩餐会に向かう時間です
- アマリュリス: ひめな様たちも出発の準備を!
- ひめな: おけまる★
- コルネリア: あなたはユニアと一緒でしょ?
- アマリュリス: ここで油を売っていたら ユニア様に置いていかれました…
- ひめな: お付きの侍女なのに!?
- アマリュリス: なので、コルネリア様と ご一緒させていただきますね!
- <ポンペイ市街>
- ひめな: それにしても…
- ひめな: 避難を円滑に進めるための秘策が 晩餐会のセッティングだなんてね
- ねむ: …でも、アマリュリスの話は たしかに筋が通っているよ
- ねむ: 「コルネリアの父とユニアの義父は 昔からの親友で、ともにポンペイ有数の豪商だ」
- ねむ: 「そして、コルネリアとユニアの幼馴染で ふたりが兄のように慕うマリウス…」
- ねむ: 「親同士の関係も良好で その家は、都市参事会において 絶大な発言力を持っている」
- アマリュリス: …そして、近い将来 3つの家の結びつきを
- アマリュリス: 確固たるものにするのが ユニア様の存在です
- アマリュリス: コルネリア様とユニア様の お父様は
- アマリュリス: ワインの交易を手がける大船主…
- アマリュリス: そして、ユニア様の養子先… すなわちユニア様のお義父様は
- アマリュリス: ワイン醸造で財をなした 大地主で大商人
- アマリュリス: おふたりを父に持つユニア様が 名門のマリウス様と婚約すれば
- ひめな: 3つの家が きれいに結びついちゃうよね!
- アマリュリス: でも、2年半ほど先に このことが仇になってしまいます
- アマリュリス: わたしの経験した未来では 三家の思惑が一致する形で
- アマリュリス: ユニア様は、マリウス様と 婚約されました
- コルネリア: …………
- ミユリ: あのあの… 婚約ってそんなに若いうちから?
- ねむ: この時代では普通だね
- アマリュリス: お相手のマリウス様がお若いぶん それでも少し遅らせたんですよ
- アマリュリス: そして婚約が決まったあと マリウス様の家は
- アマリュリス: 地元産のワイン醸造を中心に この町を復興する政策を
- アマリュリス: 強く支持するようになります
- ひめな: ユニアの家は地主さんで ワインを造ってるんだもんね
- ねむ: …そしてマリウスの家は 参事会に強い影響力があった
- ねむ: ポンペイの人口は1万程度… 現代なら町ひとつくらいの規模だ
- ねむ: 参事会の意向がすなわち 町の命運を左右すると言っていい
- アマリュリス: 思えば、災厄の前兆は いくつもあったんです
- アマリュリス: 大地が揺れる日がしだいに増えて 避難を考える家族もいました
- アマリュリス: あんなことになると知っていれば もっと早く逃げることだって…
- 時雨: 心の準備があるだけでも 結果は違ったかもしれないね…
- アマリュリス: …はい
- アマリュリス: 実際は、山が火を噴いたあとも 参事会は避難に消極的でした
- アマリュリス: ここまで復興した町を 捨てることはできなかったんです
- FILENAME: text_519601-9_BPssF.txt
- ミユリ: あのあの…
- ミユリ: もし、マリウスさんのお相手が コルネリアさんだったとしたら?
- アマリュリス: 町の運命は 変わっていたと思います…!
- ねむ: コルネリアの家は交易商だから この地が本当に危ないとわかれば
- ねむ: 他の港に拠点を移すことも 視野に入れて動ける
- ねむ: 町全体にそうした動きが広まれば
- ねむ: マリウスやユニアの家も 考えを変えざるを得なくなるね
- 時雨: でも、この町の運命を まだ誰も知らないんだよね…?
- ねむ: 改変される前の、歴史Aで 起きた悲劇を知っているのは
- ねむ: アマリュリスただひとりだからね
- アマリュリス: はい…
- アマリュリス: 誰も信じてくれないのなら
- アマリュリス: わたしがこの町の未来を 変えるしか…!
- ひめな: 私チャンたちも一緒だよ★
- アマリュリス: とても心強いです…!
- コルネリア: …もうすぐ マリウス様のお屋敷よ
- ミユリ: ところでところで…
- ミユリ: どうして今日の晩餐会が 勝負なのでしょうか?
- アマリュリス: 実は、三家が一堂に会するこの日
- アマリュリス: 晩餐会の様子をご覧になった お父様がたの間で
- アマリュリス: マリウス様とユニア様こそ お似合いだというお話になって
- アマリュリス: ユニア様が本命の方向で 婚約話が動きだすんですよね
- ひめな: そうなんだ?
- アマリュリス: なのでここはコルネリア様に がんばっていただいて
- アマリュリス: マリウス様との仲の良さを お父様がたにアピールしないと…
- コルネリア: う…うん…
- ねむ: この時代、大きな家同士の結婚は いわば会社の合併のようなもので
- ねむ: 大人たちの思惑だけで決まると どこかで読んだけれど
- ねむ: 本人たちの相性も やはり考慮されるんだね
- アマリュリス: そうですね… 結婚と愛情は別と割り切って
- アマリュリス: 正妻以外の女性に愛を捧げる 男性も多いと聞きますが
- アマリュリス: ひとりの相手に注ぐ愛情しか
- アマリュリス: 持ち合わせないという方も いらっしゃいますし
- アマリュリス: ユダヤの王女様と恋に落ちた
- アマリュリス: ローマの執政官ティトゥス様も そのような方とのお噂…
- ひめな: マリウスも、ひとりしか 愛せない人なんだね?
- アマリュリス: はい、マリウス様はとても 真面目な方ですので
- アマリュリス: 結婚する相手が決まったら
- アマリュリス: その方を好きになろうと 努力なさると思います
- アマリュリス: 実際、婚約が決まったあとは
- アマリュリス: ユニア様を 誰よりも大切になさいましたし
- 時雨: …その相手が コルネリアだったら?
- アマリュリス: 当然コルネリア様を 大切にされるはずです!
- ミユリ: マリウスさんは、本当は どっちが好きなんでしょう?
- アマリュリス: わたしなら迷わず コルネリア様を選びますけどね
- ミユリ: アマリュリスさんの好みは 聞いてないのですがぁ
- コルネリア: 私もユニアも、マリウス様とは 家族ぐるみのつきあいだから
- コルネリア: どっちも妹みたいに 思ってるとおもう…
- アマリュリス: どうでしょう? 今でもそうでしょうか?
- アマリュリス: 最近のマリウス様…
- アマリュリス: コルネリア様に少し 優しいと思うんですけど
- コルネリア: …え?
- ひめな: 心あたり、ありそう!
- アマリュリス: それに…コルネリア様も マリウス様が好きですよね?
- コルネリア: え…あっ… …うん…大好き
- コルネリア: でも…ユニアにも 幸せになってほしいし…
- ひめな: (そこで… ためらっちゃう子なんだね)
- ひめな: (夢で見たのと、一緒…)
- アマリュリス: 甘いです!
- コルネリア: ――っ!?
- アマリュリス: かのオウィディウス様も 『恋の技法』でおっしゃってます
- アマリュリス: 恋は戦争である、と! それに…
- アマリュリス: 未来を変えなければ みんな…死んじゃうんですよ!
- アマリュリス: マリウス様も…ユニア様も… コルネリア様も!
- コルネリア&ひめな: …………
- コルネリア: そうだったわね…
- コルネリア: アマリュリス、あなたは一度 この町の最期を見たのよね
- アマリュリス: はい…でもコルネリア様と マリウス様が婚約なさったら
- アマリュリス: 参事会を動かして 未来を変えられます!
- アマリュリス: だいたい、ユニア様のほうが 立場的にほんの少し有利なだけで
- アマリュリス: コルネリア様もユニア様と並ぶ 婚約者候補の筆頭なわけですし
- アマリュリス: 個人的には、むしろ 断然お似合いだと思います!
- ミユリ: だいぶ強火の ひいきっぷりですね…
- アマリュリス: いえ、コルネリア様にはもっと 強気になっていただかないと
- アマリュリス: まだまだ洗脳が 足りないようですので…!
- コルネリア: それ、本人の前で言うの…?
- 時雨: あの…ユニアってどんな子なの?
- コルネリア: すごくいい子よ
- コルネリア: あの子を嫌いな人なんて いないと思うわ
- ひめな: ………… …………
- ユニア: ユニアはマリウス様のことが 大好き~!
- ひめな: (ユニアの今の気持ちは どうなんだろ…?)
- <マリウスの屋敷前>
- ようこそ、コルネリア様 お迎えにあがりました
- 侍女のみなさまは このまま少々お待ちを…
- コルネリア: ひめなたち、ごめんね またあとでね
- ねむ: …これで理解できたよ
- ねむ: アマリュリスがコルネリアに 接触した背景には
- ねむ: そういう事情があったわけだね
- アマリュリス: 納得していただけましたか?
- 時雨: ………… …………
- 時雨: (何か…忘れてるような)
- 時雨: (歴史Bの実現を 邪魔する存在…)
- ひめな&ミユリ: ――っ!?
- 時雨: 魔女!?
- アマリュリス: コルネリア様が 向かったほうです!
- FILENAME: text_519601-10_BPssF.txt
- ひめな: コルネリア!?
- アマリュリス: いま、お助けしますのでっ!
- FILENAME: text_519601-11_BPssF.txt
- ひめな: やったね、みゆりん★
- アマリュリス: コルネリア様…!
- コルネリア: …あ? アマリュリス…?
- アマリュリス: 大丈夫ですか、コルネリア様! 痛いところはありませんか!?
- コルネリア: う、うん… なんともない
- アマリュリス: よかった…
- アマリュリス: あっ、みゆりん様 ありがとうございました
- アマリュリス: 神話の怪物を倒していただいて…
- ミユリ: 魔女のことですか? どういたしまして…
- 時雨: ねえ…ぼくたちの名前 訂正しなくていいの?
- ミユリ: タイミングを完全に 見失ってしまいましたね…
- ざわざわ…
- ひめな: あ… 騒ぎになるとまずいかも!
- アマリュリス: その前にコルネリア様を 晩餐会にお連れしないと!
- アマリュリス: コルネリア様、いけますよね!?
- コルネリア: う、うん…!
- アマリュリス: では、お迎えの方になりすまして いい感じにごまかします!
- ひめな: とりま、よろ~★
- <マリウスの屋敷>
- コルネリア様の侍女の方々ですね こちらへどうぞ…
- 時雨: …って言われて ここへ通されたけど
- ミユリ: 晩餐会が終わるまで ここで待機ですか?
- ねむ: 晩餐の間に入れるのは コルネリアだけのようだね
- ひめな: 古代ローマ時代のごちそう 食べてみたかったのに~!
- ねむ: 待遇に差があるのは仕方ない
- ねむ: 侍女や使用人はおろか 娘のコルネリアでさえ
- ねむ: ローマ市民権を持つ 父親の所有物という時代だよ
- ミユリ: アマリュリスさんとも 別室になってしまいました…
- ねむ: 彼女はコルネリアではなく ユニアの侍女だからね
- ねむ: コルネリアひとりで、うまく やってくれることを祈るしかない
- ひめな: マリウスと 仲良くしてるといいね★
- ミユリ: 結菜さんたちや静香さんたちは 他の時代へ向かったわけですけど
- ミユリ: 幼馴染のイケメンを 双子の姉妹で奪い合いとか
- ミユリ: こんなラブコメ展開になってる組 他にあるんでしょうか!?
- 時雨: ないと思う…
- ミユリ: ただ この時代に来てよかったのは
- ミユリ: 長いトーガの裾から、ちらりと 覗く足のよさを知ったことですぅ
- 時雨: そこ…?
- ねむ: ………… …………
- ひめな: あ、ねむりんが呆れてる
- ねむ: そうじゃない 思案に暮れていたんだ
- ねむ: もし、コルネリアをあの魔女から 救出できなかったら?…と
- ミユリ: もしかして、歴史Bのルートが 消えるとこでした?
- ひめな: え、実は めちゃヤバだったってこと?
- ねむ: うん、コルネリアを救ったことで その危険は排除したけれど
- ねむ: パラドクスの解消には まだ至っていないようだ
- ひめな: ヒコ君の見解は 他にも条件があるのかも、だって
- コツ…
- ???の声: あの…
- ひめな: ん…?
- ???: ここって、コルネリアお姉様の 侍女の方々の控室ですよね?
- ひめな: あ、うん…
- 時雨: コルネリアお姉様…?
- ミユリ: じゃあ、もしかして…
- ユニア: はい、妹のユニアです! おすそわけをお持ちしました
- ミユリ: ありがとうです… って、こんなにたくさん?
- ユニア: せっかくのごちそうなのに
- ユニア: わたしたちしか食べられないのは 申し訳ないと思って…
- ひめな: こっちも めちゃくちゃいい子じゃん!?
- 時雨: よその家の侍女にまで 気を遣ってくれてるってこと…?
- ミユリ: …前世でどんな徳を積めば こんな双子に愛されるんでしょう
- FILENAME: text_519601-12_BPssF.txt
- ユニア: ………… …………
- ひめな: …どうしたの? 晩餐会に戻らなくていいの?
- ユニア: えっと…はい
- ユニア: 戻ってお姉様とマリウス様に もっと甘えたいんですけど
- ユニア: おふたりがすごく楽しそうに 話していたので
- ユニア: お邪魔になっちゃいそうで…
- ミユリ: 空気読んでくれました!
- 時雨: アマリュリスの計画通り…?
- ひめな: いつもふたりに甘えてるの?
- ユニア: はい!
- ユニア: 最近は3人で会える機会が なかなかありませんし
- ユニア: 今日はお昼の用事が長引いて
- ユニア: お姉様にもあんまり ハグできなかったので
- ユニア: ちょっと寂しいです…
- ひめな: コルネリアにいつも ハグしてるんだ…
- ミユリ: ちょっと天然な子っぽいです
- 時雨: コルネリアとマリウスの両方に 可愛がられてるんだね
- ひめな: だね…この子もマリウスが 好きなんだとしたら
- ひめな: ちょっと罪悪感あるかも…
- ミユリ: やっぱり好きなんでしょうか?
- ミユリ: その、ライクじゃなくて ラブ的な意味で!
- ひめな: まだわかんないんだけどさ
- ひめな: …やっぱ、好きピ同士で 一緒になってほしいじゃん?
- ユニア: …お邪魔しました!
- ユニア: ふふっ…少しだけど おしゃべりできて楽しかったです
- ひめな: うん、またね★
- ひめな: あの子がコルネリアの ライバルかぁ
- ミユリ: 正直、やりにくくなりました…
- ひめな: 3人とも仲がよさそうだから なおさらだよね
- ねむ: コルネリア陣営の僕達としては 会わない方がよかったかな?
- ひめな: 私チャンたちにも 感情があるからね
- 時雨: うん、キュゥべえみたいに 計算だけじゃ動けないし…
- ひめな: あれっ? そういえば!
- ひめな: こっちに来てから一度も キュゥべえと会ってなくない?
- 時雨: …たしかにそうかも
- ねむ: キュゥべえにしてみれば
- ねむ: 未来からきた君達は 正体不明の魔法少女だ
- ねむ: 敵か味方もわからない以上 今は静観しているのかもしれない
- ひめな: あ、そっか…契約してない子が いきなり現れたんだもんね
- 時雨: その点は アマリュリスも同じだよね?
- アマリュリス: おっしゃる通りです!
- アマリュリス: 過去に戻ってクビウス様と 最初にお会いしたときは
- アマリュリス: 事情説明に苦労しましたね
- 時雨: ――っ!?
- ミユリ: いつからいたのですか!?
- アマリュリス: あ、ついさっきです
- アマリュリス: 晩餐会も無事 お開きになったので…
- アマリュリス: コルネリア様とマリウス様は 実にいい感じに見えましたし
- アマリュリス: おかげさまで 今日の計画は大成功です!
- ひめな: あれっ、晩餐の間に入れたの?
- アマリュリス: えへ…
- アマリュリス: 給仕係になりすましたりして ちらちら様子を窺ってました
- アマリュリス: あとは、次の選挙をにらんで さりげない差し入れで
- アマリュリス: わたしたちが推す造営官候補の 好感度を上げたりなど…
- 時雨: それって何…?
- ねむ: 造営官は、選挙で選ばれる 町の要職だね
- ねむ: 将来の政策に影響がありそうだ
- アマリュリス: はい、町ぐるみの避難や移住に 理解のある方が当選されると
- アマリュリス: 実権を持つ、参事会のお歴々の 考えも変わってきますので…
- ねむ: この町で再興を目指す 復興派よりも
- ねむ: 町を離れる心がまえのある 避難派を増やしたい…
- ねむ: ということだね?
- アマリュリス: はい…急には無理でも 徐々にでも…
- ミユリ: つまりつまりアマリュリスさんは 晩餐会で選挙のアシストをして
- ミユリ: 歴史Bのフラグを 立ててきたということですか?
- ひめな: みゆりんの言い方 いちいちウケる~
- ひめな: コルネリアも無事 マリウスと仲良くなったし
- ひめな: ヒコ君の言ってた タイムパラドクス解消の条件も
- ひめな: そろそろ満たせたんじゃない?
- ミユリ: 満たせたらどうなるんでしょう?
- ねむ: 不安定だった“足場”が 定まったことで
- ねむ: 最初に目指していた西暦79年に 近づくことになるのかな?
- ミユリ: ――っ!?
- 時雨: 消えた…?
- アマリュリス: …えっ…ひめな様…? みゆりん様…しぐりん様…?
- アマリュリス: 消えてしまいました…
- FILENAME: text_519601-13_BPssF.txt
- ひめな: …なに、ここ?
- ねむ: 時間を移動中の空間のようだね
- ミユリ: 三輪風に言えば タイムトラベル空間でしょうか…
- ねむ: タイムパラドクスが解消されて お姉さんの記録の一部が復活した
- ねむ: アマリュリスに関する話が 部分的に読めるようになったよ
- 時雨: じゃあ、環いろはの概念も 回収できたってこと…?
- ねむ: …まだだね
- ねむ: すべてのパラドクスが 解消されたわけではないようだ
- 時雨: はぐむんたちとは まだ会えないんだね…
- ひめな: 他の組もこんな風に パラドクスに巻き込まれてるの?
- ねむ: いや、君達だけだと思う
- ねむ: この時代はアマリュリスの 願いによって
- ねむ: 時空が不安定になりやすい 状況があったからね
- ひめな: あ…
- ミユリ: …光が…!
- <西暦77年・夏>
- <ポンペイ>
- アマリュリス: …以上が、ユニア様よりの ご伝言です
- コルネリア: ありがと、アマリュリス
- アマリュリス: それから…
- ドサドサッ
- コルネリア: な…なに?
- ミユリ: いたた…
- アマリュリス: ひめな様たち…!?
- コルネリア: …人払いしてきた
- ひめな: あざまる★
- ねむ: アマリュリスの話を聞くかぎり
- ねむ: ここは前に君達と会ってから 数ヶ月後のポンペイのようだね
- コルネリア: ええ、あの晩餐会の夜 ひめなたちが消えたって聞いて
- コルネリア: 何があったんだろうって 心配してたのよ
- ひめな: コルネリア、少し 大人っぽくなったね!
- コルネリア: そ、そう…かな?
- 時雨: 目指してた西暦79年じゃなくて 77年の夏ってこと…?
- ねむ: そのようだね
- ねむ: アマリュリスが歴史を変えてゆく 西暦76年から79年までは
- ねむ: 時空がかなり不安定な状態だった
- ねむ: 晩餐会の夜に、パラドクスを ひとつ解消したことで
- ねむ: “足場”が安定して西暦79年に ほんの数ヶ月だけ近づけたんだよ
- 時雨: でも、この先の歴史は まだ揺れ動いてる…?
- ねむ: うん、パラドクスの原因は ひとつじゃないんだろう
- ねむ: この前の晩餐会と同様
- ねむ: パラドクスの原因となる事件が もうすぐ起きるのかもしれない
- ミユリ: ではでは、前と同じ要領で アマリュリスさんたちを助けて
- ミユリ: 歴史Bの成立フラグを 片っぱしから立てていけば
- ミユリ: パラドクスも解決して ミユたちの目的も達成!
- ミユリ: …ってことですか?
- ねむ: そうだね
- ねむ: 果たして今度の事件は ポンペイの将来にかかわることか
- ねむ: それとも、マリウスの婚約に かかわることか…
- コルネリア: …………
- 時雨: …あの、アマリュリスは ユニアにこの話はしてないの?
- アマリュリス: え、あ…はい
- 時雨: あの子だったら将来起きる悲劇も 信じてくれそうだけど…
- ひめな: だから言えないんじゃない?
- ひめな: 自分とマリウスとの婚約が原因で みんなが逃げ遅れると知ったら
- ひめな: あの子、婚約を辞退するとか 言い出しちゃうかも
- ひめな: だからアマリュリスは ユニアには内緒にしたんだよね?
- ミユリ: なるほどなるほど!
- ミユリ: 実際には辞退なんて 認められないとしても
- ミユリ: そんな展開はコルネリアさんも 納得できないと思いますし!
- コルネリア: うん…ユニアの本当の気持ちは わからないけど、でも…
- コルネリア: あの子には、自分の心に 嘘をついてほしくない、かな
- ひめな: 結局、そこなんだよね
- ユニア: ユニアはマリウス様のことが 大好き~!
- ひめな: ユニアって… マリウスのことが好きなのかな?
- アマリュリス: はい、もちろんです
- ひめな: え、じゃあ…
- アマリュリス: でも、違うんですよ あの方の“好き”は…
- ひめな: どういうこと?
- アマリュリス: 前に、侍女のひとりが
- アマリュリス: 冗談でこんなことを ユニア様に聞いたんです
- ユニア様が いちばん大切に想っている方は
- どなたなんでしょう?
- ユニア: えっ…?
- ユニア: うーん、コルネリアお姉様に マリウス様…
- ユニア: お義父様、お義母様 実家のお父様、お母様…
- ユニア: いつもよくしてくれる あなたたちや町のみんな…
- ユニア: みんな大好きで …どうしよう、選べない
- す、すみません! そんなにお困りになるなんて
- ミユリ: つまりつまり、ユニアさんは みんなが平等に大切だと?
- アマリュリス: そう、あの方の“好き”に “特別”はないんです!
- アマリュリス: クピド様の矢に射られたような 燃え上がる恋じゃないんですよ
- ひめな: クピド… キューピッドのことだね★
- コルネリア: ユニアは誰と話すときも ニコニコ笑ってて
- コルネリア: 怒った顔なんて 見せたことがないの
- ミユリ: そこまでくると もう聖女様って感じですぅ
- コルネリア: それでも、マリウス様は 特別なんだと思ってたけど…
- コルネリア: 『…どうしよう、選べない』か
- アマリュリス: 双子でも案外 わからないものなんですね
- コルネリア: 私たち、6歳の頃にはもう 別々に暮らしてたし…
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- ひめな: あとはやっぱり マリウスの気持ちだよね
- ひめな: コルネリアとユニア いったいどっちが好きなのか!
- アマリュリス: …ああっ! 大切なことを忘れておりました
- 時雨: な…なに?
- アマリュリス: えっと、コルネリア様…
- アマリュリス: こちら、マリウス様からの 預かりものです
- コルネリア: マリウス様から…!?
- ひめな: …普通、それ忘れる?
- アマリュリス: その…渡そうとしたときに みなさんがいらっしゃいまして
- ミユリ: …ミユたちのせいでした
- アマリュリス: こちらは、お父様と一緒に 視察で訪れた
- アマリュリス: ネアポリスのおみやげだとか
- ねむ: ネアポリス…ナポリのことだね
- アマリュリス: 近々、こちらにも伺うので みやげ話を楽しみにしてほしいと
- コルネリア: マリウス様…
- アマリュリス: えへ…嬉しそうで 届けた甲斐がありました
- 時雨: どうしてアマリュリスが 預かってきたの…?
- コルネリア: マリウス様のお屋敷は ユニアの家のすぐ近くだから
- アマリュリス: …はい、ついでに頼まれました!
- ミユリ: あー、アマリュリスさんは ユニアさんの侍女でしたね
- ひめな: マリウスとその後も順調みたいで 安心だね★
- アマリュリス: それから、もうひとつ 耳寄りな情報が…
- コルネリア: なに?
- アマリュリス: 実は、マリウス様のお屋敷で お父様がたの立ち話を
- アマリュリス: お聞きしてしまったのですが…
- アマリュリス: そもそもマリウス様は ずっと前からコルネリア様に
- アマリュリス: 惹かれておいでの様子だったと!
- コルネリア: えっ… マリウス様が?
- ひめな: もうこれ両片想いじゃん! やったね、コルネリア!
- ミユリ: ですです このまま行くしかないです!
- コルネリア: …で、でも…
- アマリュリス: ためらうなんて コルネリア様らしくないです!
- コルネリア: 私のイメージを 勝手に作らないでくれる…?
- アマリュリス: 好きなものは好きって ちゃんと言ってほしいんですよ
- アマリュリス: わたしはコルネリア様の
- アマリュリス: そういうハッキリしたところに 憧れてるんです!
- アマリュリス: なのに恋に関することだけ どうして臆病なんですか!?
- コルネリア: …それは…
- アマリュリス: そもそもユニア様とマリウス様が ありえないほどご近所な時点で
- アマリュリス: コルネリア様は かなり不利な立場なんですよ?
- ねむ: 侍女のアマリュリスが 届けものを頼まれるくらい
- ねむ: 頻繁に行き来があるようだしね
- アマリュリス: そうなんです…
- ねむ: 三家の思惑を考えても、ユニアが 婚約の第1候補という話だったね
- アマリュリス: はい、わたしの知る未来では 実際そうなりましたし…
- アマリュリス: なので今回は、コルネリア様に がんばっていただいて!
- コルネリア: 今回って言われても…
- ねむ: 2回目なのは アマリュリスだけだからね
- ミユリ: はぁ…こんなに想われるなんて どんなイケメンなんでしょう?
- アマリュリス: 実際、わたしから見ても マリウス様は素敵な方ですよ
- アマリュリス: 見た目も格好いいですけど お優しくて聡明ですし!
- ひめな: キャハッ★ 四角関係はじまっちゃう?
- アマリュリス: ややややめてください!
- アマリュリス: 今の三角関係だけでも 充分ややこしいのに!
- コルネリア: ひめなの冗談でしょ? アマリュリスって割と単純よね
- コルネリア: ルドゥスでも 次の手がすぐ読めちゃうし
- アマリュリス: うっ…策士を自認する者として 致命的なことを言われた気が…
- ひめな: 真面目な話、アマリュリスには 好きな人っていないの?
- アマリュリス: もちろん コルネリア様びいきですけど?
- ひめな: じゃなくてコルネリアにとっての マリウスみたいな!
- アマリュリス: うーん、そうですね わたしは、誰かに恋するより…
- アマリュリス: この平穏な世の中を守ることに 生涯を捧げたいです
- ねむ: この時代は、2000年後にまで
- ねむ: “パクス・ロマーナ”… ローマの平和と呼ばれる
- ねむ: 輝かしい時代として 伝わっているよ
- アマリュリス: 本当ですか!? それじゃ…わたしがなりたいのは
- アマリュリス: パクス・ロマーナの恋人です!
- コルネリア: まるで…
- コルネリア: ウェスタの煌(ひかり)乙女 みたいなことを言うのね
- 時雨: それって…?
- ねむ: ローマを守護する 女神ウェスタに身を捧げた少女…
- ねむ: 選ばれし巫女たちのことだ
- ねむ: 幼い頃に神殿に入って 生涯、未婚を通し
- ねむ: 聖なる炎を守る義務を負ったとか
- アマリュリス: …実はわたし、小さいときに
- アマリュリス: クビウス様を連れた 煌乙女と会って
- アマリュリス: 神殿に来るつもりはないかって 言われたんですよ
- コルネリア: えっ…
- ひめな: その煌乙女たちって、もしかして 魔法少女だったとか?
- ねむ: 長く続いたローマの平和の秘密が そこにあるのかもしれないね
- アマリュリス: …まあ、その話はわたし 断ったんですけどね
- ミユリ: ええ?
- アマリュリス: いえ、その… 自分はふさわしくない気がして
- アマリュリス: …そして次に クビウス様と会ったのは
- アマリュリス: 山が火を噴いた、あの日でした
- ひめな: あ…
- アマリュリス: クビウス様に願いを告げたとき
- アマリュリス: わたしはウェスタの煌乙女として この身を捧げる覚悟でしたけど
- コルネリア: …なってなくない?
- アマリュリス: はい、過去の世界に 生まれ変わってしまいましたので
- ねむ: そもそもウェスタに仕える 少女たちは
- ねむ: ローマ市民の娘に 限られると読んだ気がするけれど
- アマリュリス: あ…そういえばそうですね
- アマリュリス: なぜ、クビウス様は わたしに声を?
- ミユリ: つまりつまり! 今のアマリュリスさんは
- ミユリ: ウェスタの煌乙女のようで そうじゃない何か…?
- アマリュリス: …………
- アマリュリス: …今、わかりましたよ わたしが名乗るべきふたつ名が
- コルネリア: それって?
- アマリュリス: “パクス・ロマーナの恋人”です
- FILENAME: text_519601-15_BPssF.txt
- ひめな: …で、アマリュリスたちは 今どんな作戦を進めてるの?
- アマリュリス: 怪しげな予言を 流布しているところです
- コルネリア: もう少し言い方が…
- ねむ: くわしく聞かせてくれるかな?
- ねむ: …なるほど ふたりは神々の神殿を通じて
- ねむ: 山が火を噴くという予言を 広めようとしているんだね
- アマリュリス: はい…まずは女神イシス様の 教団に接触したところです
- ねむ: 「ポンペイでは守護女神であるウェヌスのほか ユピテルやアポロなど 多くの神々が祀られていた」
- ねむ: 「イシスはエジプトの女神だけど ローマ領内でも信仰され 特に交易商や女性に人気があったようだ」
- アマリュリス: はい…イシス教団は 選挙にも影響力がありますし
- アマリュリス: 位の高い方に、予言を 信じていただくことができれば
- アマリュリス: ねむ様の言う“避難派”を 増やすことにもつながるかと…!
- ねむ: 増加する地震を、噴火の予兆と みなす人が増えてくれば
- ねむ: 他の土地への移住や事前の避難を 考える空気が生まれるだろうね
- アマリュリス: うまくいったら、他の教団にも 予言を広めたいと考えています
- アマリュリス: 教団を通じて、他の町にも この予言が広まれば
- アマリュリス: ポンペイだけではなく 近郊の町の人たちも
- アマリュリス: 悲しい涙を流さずに済みますから
- アマリュリス: …実は、他の町への議会工作も すでに始めているんです
- ねむ: たしかに、ポンペイ以外の ヘルクラネウムやスタビアエ…
- ねむ: オプロンティスといった町も 壊滅的な被害を受けることになる
- アマリュリス: やっぱり… では、ネアポリスは?
- ねむ: 風向きの関係で 大きな破壊は免れたようだね
- アマリュリス: ヌケリアはどうだったのでしょう 対岸のミセヌムは…?
- ねむ: そうだね 僕の知るかぎりだと…
- ひめな: …未来のこと、かなり くわしく教えちゃってたね
- ねむ: うん、歴史への干渉には 本来、慎重になるべきなんだけど
- ねむ: 僕達の存在が契機となって すでにパラドクスが起きた以上
- ねむ: 目指すべき歴史Bの情報を 積極的に供与しておきたいんだ
- ねむ: ポンペイ以外の町では 犠牲者は比較的少なかったから
- ねむ: アマリュリスが他の町を救っても 僕達の歴史とは矛盾しない
- ねむ: もちろん線引きは必要だけどね… なんでも話していいわけじゃない
- アマリュリス: …なるほど、他の町については
- アマリュリス: ねむ様にいただいた 新しい情報も踏まえて
- アマリュリス: 慎重に、計画を 進めていく必要がありますね…
- 時雨: 思ったよりずっと 大きな話になってるんだね
- アマリュリス: でも、やるしかありません! みんなに助かってほしいですから
- ねむ: イシスの教団にはすでに 働きかけたと言っていたね?
- アマリュリス: はい… メタモルフォセスを使って
- アマリュリス: 神命により 未来の災禍を告げにきた者だと
- イシスの神官: …あなたたちが仕える神の名は 明かせぬというのですね?
- アマリュリス: はい…残念ながら
- コルネリア: ですが、神々は
- コルネリア: いずれの神を奉じる者も 等しく命を救いたいとお考えです
- イシスの神官: あなたたちが本当に 未来を知るというのであれば…
- イシスの神官: 何か証拠を 示していただきたいものです
- ミユリ: ふむふむ その、証拠とは?
- アマリュリス: あさって行われる 戦車競走の結果です!
- アマリュリス: 新進気鋭の御者 “左利きのヒラルス”様が初勝利
- アマリュリス: そしてこの日から 破竹の連勝が始まるんです!
- ミユリ: 推しなんですね?
- アマリュリス: はい!
- アマリュリス: 戦車競走は、ルドゥスの次に 大好きな息抜きなんです
- ひめな: 人生、楽しそう★
- アマリュリス: クビウス様にいただいた 二度目の命ですので…
- ひめな: そっか… そうだよね
- ひめな: 息抜きのときくらいは 全力で楽しまないとねっ
- 時雨: レースの結果が当たったら イシス教団は協力してくれるの?
- コルネリア: うん、そういう話になってる
- コルネリア: なりすましの魔法が効いて すんなり信じてくれたのかも
- アマリュリス: なので、あさってのレースは わたしも応援に行くんです
- アマリュリス: もうひとつ 大事な目的がありますので!
- 時雨: 大事な目的…?
- アマリュリス: はい、あさっては コルネリア様の誕生日で
- アマリュリス: コルネリア様とマリウス様が 御一緒に観戦されるんです
- ミユリ: 誕生日デート!? フラグ追加のチャンスですぅ
- ひめな: コルネリアの誕生日って ユニアと一緒じゃないの?
- アマリュリス: ユニア様はその時間 お屋敷でお義父様とお祝いです!
- コルネリア: アマリュリスはその間に 私と合流して観戦するのよね?
- アマリュリス: はい、そうなるように 裏でいろいろと工作したので…
- アマリュリス: …というわけで そろそろおいとましますね!
- アマリュリス: 他の町からお越しの客人に 偽造書簡を届けに向かいますので
- コルネリア: 私も行くわ お邪魔ならやめておくけど
- アマリュリス: 大丈夫です…今日の予定は それで終わりですし
- ひめな: 私チャンたちも行っていい?
- ひめな: この間みたいなことがあっても 守ってあげられるし!
- アマリュリス: あ…ありがとうございます!
- 時雨: 偽造書簡って言ってたけど… これから何をするつもりなの?
- アマリュリス: ヘルクラネウムの有力者への 買収工作的なやつですね
- ミユリ: 割とえげつないです!
- ひめな: …他にも いろいろやってるんだよね?
- アマリュリス: はい、ユニア様のお義父様に 地元ワインの醸造にこだわると
- アマリュリス: 未来がないという空気が 伝わるよう工作したり…
- アマリュリス: コルネリア様のお父様に 別の港へ拠点を移すよう
- アマリュリス: 商売仲間の方々から 持ちかけていただいたりなど…
- コルネリア: …せっかくだし、ひめなたちに
- コルネリア: メルクリウス通りと 凱旋門を案内してあげない?
- アマリュリス: そうですね ここからすぐですし!
- ねむ: …………
- ひめな: どうしたの、ねむりん?
- ねむ: 本の状態がかなり不安定なんだ
- ねむ: もしかして、タイムパラドクスの 原因が近くに…?
- ひめな: ――っ!?
- 時雨: やっぱり出た…!
- ミユリ: 今回、ミユたちは バトル担当みたいです…
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- ひめな: …今度は使い魔だったね
- ミユリ: 前に戦った魔女たちと 魔力の性質が似てる気がします
- アマリュリス: 町でも、同じような怪物が だんだん増えている気が…
- ねむ: 僕達がこの時代に来たことで
- ねむ: 強大な魔女が活性化した…という 説が正しいのかもしれない
- 時雨: 町で、そいつから派生した 魔女や使い魔が増殖してる…?
- ひめな: それは困るよね パラドクス起きまくっちゃう!
- ミユリ: ノーモア歴史Aルートですぅ…
- ねむ: そうか…増殖した魔女や使い魔が パラドクスを引き起こした結果
- ねむ: 時空が不安定になっているのかも
- 時雨: それって、最初に戦った ボス級の魔女を倒せていたら
- 時雨: こうはならなかったってこと…?
- ひめな&ミユリ: ………… …………
- ミユリ: …でもでも、変です! ミユたちは使い魔を倒したのに
- ミユリ: 例のタイムトラベル空間に 飛ばされませんし!
- 時雨: この前も、魔女を倒しただけじゃ パラドクス解消はできなかったし
- 時雨: 他のフラグも回収しないと 歴史Bルートに戻らないんじゃ…
- ひめな: みゆりん語に汚染されてて草
- ミユリ: 他のフラグって… 何がありましたっけ?
- ざわ…
- ミユリ: なんでしょう? あっちに人だかりが…
- 「人が倒れてるぞ!」
- 「こいつじゃないか!? 騒ぎを起こしたのは!」
- ???: いえ、私は…
- アマリュリス: “左利きのヒラルス”様!?
- 時雨: あの人がそうなの…?
- アマリュリス: ちょっと見てきます!
- ざわざわ…
- アマリュリス: 話を聞いてきました
- アマリュリス: 町の人たちが怪物たちの結界に 誘い込まれそうになったみたいで
- アマリュリス: ヒラルス様がみなさんを 押しとどめようとしたのですが…
- ひめな: 逆にヒラルスのせいだと 思われちゃった!?
- 時雨: みんなに使い魔は見えないから…
- アマリュリス: はい…さいわい、みなさんに 怪我はなかったのですが
- ミユリ: でもでも! これってまずくないですか?
- ミユリ: ヒラルスさんが犯人扱いされたら レースに出られなくなるんじゃ…
- アマリュリス: はわ… そ、それは困ります…!
- お前が暴れたせいじゃないのか?
- なんとか言ったらどうだ?
- コルネリア: 「あの…」
- ん…?
- コルネリア: 何かあったのですか?
- なんだ、お嬢さん?
- コルネリア: 私はプブリウス・コルネリウス・ アンニウスの娘…
- コルネリア: コルネリアと申します
- コルネリア: この、左利きのヒラルスは 私が買い取る予定の御者で
- コルネリア: たったいま、身元を引き受けに きたところなのですが…
- 左利きのヒラルス: …………
- コルネリア: もしや何か、みなさまの ご迷惑になることでも…?
- おい、コルネリアって…
- ああ…豪商 コルネリウス・アンニウス様の…
- …事を荒立てるのはやめとくか
- 誰も怪我したわけじゃないしな…
- アマリュリス: す…すごいです! コルネリア様!
- アマリュリス: あんなに荒ぶっていた方々を 優雅に鎮めてしまうなんて…!
- ミユリ: 本物のお嬢様にしか できないムーブです!
- ひめな: みゆりんも 社長令嬢じゃなかった…?
- 左利きのヒラルス: あの…さっきのお話ですが 私を買い取るというのは…?
- 時雨: ぼくも気になる… どういう意味?
- ねむ: 御者や剣闘士の多くは 自由身分ではないんだ
- ねむ: 富裕なローマ市民やその家族の 所有物…つまり奴隷なんだよ
- ひめな: …あれっ じゃあ、侍女や使用人も?
- ねむ: そういうことだね
- ねむ: ただ、待遇は千差万別で 自由身分になる者も多かったし
- ねむ: アマリュリスのような お付きの侍女ともなると
- ねむ: 主人の娘と同じような教育を 受けていたとも聞くよ
- コルネリア: で、あなたを 買い取るという話だけど…
- コルネリア: ごめん、出まかせ
- アマリュリス: ええっ!?
- コルネリア: ヒラルス様の現在の所有者は たしかニギディウス様よね?
- 左利きのヒラルス: はい、そうですが…
- コルネリア: 父がニギディウス様と 懇意にしているので
- コルネリア: 私の誕生祝いにあなたの身柄を 買い取ってもらえるように
- コルネリア: おねだりしようと思うの
- コルネリア: そうすれば、さっきの言葉も 嘘にならないでしょ?
- 左利きのヒラルス: 私を…助けてくれたのですか
- アマリュリス: コルネリア様… とっさにそんな機転を…
- コルネリア: それに、ニギディウス様との 共同名義にしてもらえれば
- コルネリア: 住む場所や待遇も いままでと変わらないと思うし
- コルネリア: どうかしら?
- 左利きのヒラルス: ありがとうございます
- 左利きのヒラルス: 次のレースでは、新たなる主人 コルネリア様のために
- 左利きのヒラルス: 必ずや勝利を…!
- アマリュリス: コルネリア様… 立派に成長なさって…!
- アマリュリス: …………
- アマリュリス: ひいきの御者が ひいきの令嬢に勝利を誓うって
- アマリュリス: すごく尊い光景ですね
- ひめな: あの子、ちょっと みゆりんみあるかも?
- 時雨: …うん
- アマリュリス: あとはご自身の恋にもこのくらい 積極的になっていただければ
- コルネリア: そうね…
- アマリュリス: えっ…
- FILENAME: text_519601-17_BPssF.txt
- <2日後…>
- <円形闘技場前>
- マリウス: 誕生日おめでとう コルネリア
- マリウス: 今日、左利きのヒラルスが 勝ってくれたら最高だね
- コルネリアの父: コルネリアが珍しく わがままを言ってきたから
- コルネリアの父: 誕生祝いには ちょうどいいと思ったが
- コルネリアの父: まだまだ無名の御者のようだな
- コルネリアの父: おまけに今日は 無敵のマクシムスが出走する
- コルネリアの父: 会場は彼めあての客で満員だ
- コルネリア: …大丈夫です、お父様 彼は勝ちます
- コルネリアの父: ほー、すごい自信だ
- マリウス: 僕もヒラルスを応援しますよ コルネリアが推す御者ですから
- マリウス: ユニアも 来られればよかったんだが…
- アマリュリス: かわりにわたしが見届けて 仔細にご報告さしあげます!
- コルネリアの父: ははは、よろしく頼むよ
- 時雨: ちゃっかり潜り込んでる…
- ミユリ: 大事な推し活ですからね
- ざわ…
- ワァァーーーッ!!!
- マジかよ…おい 無敵のマクシムスがあんなに離されて…
- あの赤い御者…すげぇぞ!
- アマリュリス: ―アマリュリス― ヒラルス様、いっけー!
- コルネリア: ―コルネリア― うそ…こんなに速いなんて
- アマリュリス: ―アマリュリス― えへへっ このまま独走で優勝です!
- <コルネリアの屋敷>
- アマリュリス: …というわけで、ヒラルス様が 勝つという予言は的中です!
- ねむ: これでイシス教団の協力を 得られる算段がついたかな?
- アマリュリス: はい!
- アマリュリス: それに、さきほどヒラルス様が コルネリア様に挨拶に来られて…
- 左利きのヒラルス: この日の輝かしき勝利を コルネリア様に捧げます…!
- コルネリア: ありがとう 素晴らしいレースだったわ
- マリウス: 最高の誕生祝いになったね コルネリア
- コルネリア: は、はい…!
- 左利きのヒラルス: あらぬ嫌疑をかけられ、一時は 出走もままならぬかと覚悟した身
- 左利きのヒラルス: コルネリア様への恩に報いるため 今後も勝利を重ねてまいります
- マリウス: …何かあったのかな?
- 左利きのヒラルス: はい、実は…
- マリウス: …なるほど、そんなことが
- マリウス: コルネリアの機転が 彼の未来を救ったわけだね
- ミユリ: …ふむふむ マリウスさんへの好感度も上昇と
- ひめな: キャハッ★ 順調みたい
- アマリュリス: 夕刻にはここ、コルネリア様の お屋敷で晩餐会が行われます…
- アマリュリス: 今度はユニア様も御一緒です わたしも侍女の務めに戻らないと
- <夕方…>
- 時雨: …晩餐会、そろそろ終わるね
- ひめな: 今度もおすそわけ、もらえたね
- ミユリ: 最後のスポンジケーキみたいなの ふわふわで美味しかったですぅ
- ひめな: あ…
- ひめな: 向こうにいるの コルネリアたちじゃない?
- マリウス: そろそろ迎えの者が来る頃だね
- ユニア: ふふっ…3人そろってのお食事 本当に楽しかったです…!
- コルネリア: 今日のユニアは 一段とご機嫌ね
- ユニア: お姉様とマリウス様に たっぷり甘えられたので…!
- マリウス: ユニアは養子に出る前から 甘えん坊だったね
- マリウス: 僕がこの家を訪ねると わんこみたいに駆け寄ってきて…
- コルネリア: ふたりのときは 私にずっと抱きついてたんですよ
- マリウス: ははは、覚えてるよ
- マリウス: …じゃあ、また今度
- ユニア: お姉様、お元気で!
- ひめな: おつかれっ、コルネリア!
- ミユリ: マリウスさんと1日過ごせて 誕生日イベントは大成功ですぅ!
- コルネリア: ありがとう
- コルネリア: …でもやっぱり、戦車競走も ユニアと一緒に観たかった
- ひめな: 抜け駆けみたいなのは イヤだった?
- コルネリア: …うん 私、心を決めたの
- コルネリア: だから、後ろめたい気持ちで この恋と…
- コルネリア: マリウス様と向き合いたくない
- カタン…
- コルネリア: えっ…
- ユニア: あ…
- ユニア: お祝いの品を、あちらの部屋に 置き忘れてしまって…
- ひめな: …今の話、聞こえたよね?
- ユニア: 聞こえちゃいました…
- 時雨: それって…まずいんじゃ…
- コルネリア: ううん、ちょうどいいわ
- コルネリア: ユニアに話そうと思ってたから わたしの決心を
- コルネリア: …ユニア
- ユニア: は、はい!
- コルネリア: 近々、お父様に お願いしようと思っているの
- コルネリア: マリウス様と婚約できるよう 取り計らっていただけないかって
- ユニア: え…
- コルネリア: マリウス様の婚約者として
- コルネリア: お父様たちが第1候補に 考えているのはユニア、あなたよ
- コルネリア: でも私は、マリウス様が好きなの
- ユニア: お姉様が…マリウス様を?
- コルネリア: ええ、そうよ そのことを知って
- コルネリア: あなたの侍女のアマリュリスが 私のために動いてくれていた
- コルネリア: でも、こそこそするのは 性に合わないわ
- コルネリア: 今日の戦車競走だって 本当は…
- ユニア: ………… …………
- コルネリア: …ユニア?
- ユニア: 素敵ですぅ!
- コルネリア: ちょっ…抱きつかないで!
- ユニア: お姉様とマリウス様が 結婚したら…
- ユニア: ここにくれば、いつでもふたりに 甘えられるってことですよね!?
- コルネリア: え、あ… そ、そうだけど…ええっ?
- コルネリア: あ、あなたはマリウス様のことを どう思ってるの?
- ユニア: もちろん、どっちも大好きです! だからお姉様を応援します!
- ユニア: ふふっ…ご婚約はいつでしょう? お祝いは何がいいかなぁ…
- コルネリア: ………… …………
- アマリュリス: そう、あの方の“好き”に “特別”はないんです!
- コルネリア: (この子は、ただ純粋に みんなのことが大好きで…)
- コルネリア: (悩む必要なんて 何もなかったってこと?)
- 時雨: …あれ ライバルに応援されてる?
- ミユリ: これってもう 勝ち確じゃないですか!?
- ねむ: うん あとはアマリュリスたちが
- ねむ: イシス教団の協力を 取りつけられるかどうかだね
- FILENAME: text_519601-18_BPssF.txt
- <翌日…>
- <イシス神殿>
- イシスの神官: たしかに予言の通りになりました
- アマリュリス: では、わたしたちに協力を…?
- イシスの神官: ですが、勝利した 左利きのヒラルスなる御者は
- イシスの神官: 先立って、そちらの令嬢が 買い上げた者とのことですが?
- コルネリア: あ…それは…
- イシスの神官: 所有者だからといって 勝てる保証はありませんので
- イシスの神官: そのことはよいでしょう
- イシスの神官: …そのかわり あなた方が知る未来のできごとを
- イシスの神官: もっとくわしく伺いたいものです
- アマリュリス: くわしく、とは…
- イシスの神官: ぶどうや小麦の好不作から 来年、再来年の天候
- イシスの神官: ニギディウスの催す興行の演目
- イシスの神官: そして、山が火を噴くに至る 予兆と経過を仔細に至るまで
- アマリュリス: …わかりました わたしの知るかぎりお話しします
- イシスの神官: …なるほど、この先には そのような明日が待っている、と
- アマリュリス: はい…ただ、わたしたちの行動が 少しずつ未来を変えつつある今…
- アマリュリス: 神々の決める運命はともかく 人のなす営みまでが
- アマリュリス: 今後もすべてわたしの見た通りに なるかどうかは…
- イシスの神官: …………
- イシスの神官: …信じましょう
- コルネリア: えっ…
- イシスの神官: さきほど、あなた方が口にした
- イシスの神官: 予言のいくつかは 遠からず真偽が判明すること…
- イシスの神官: それらの真偽を見きわめつつ われらイシス教団は
- イシスの神官: ウェスウィウス山が もたらすという大禍にそなえ
- イシスの神官: 自身と家族の身を守るよう 信徒たちに説いてゆきましょう
- アマリュリス: あ… ありがとうございます!
- コルネリア: …信じていただけないかと 思っていました
- イシスの神官: 信じてみたくなったのですよ
- イシスの神官: 仮に真実であれば いくらでも悪用できる情報を
- イシスの神官: 惜しげもなく明かすあたり…
- イシスの神官: ずいぶんと うぶな子たちのようですから
- アマリュリス: はわ…!
- イシスの神官: 少なくとも、悪意から発せられた 警告でないということは
- イシスの神官: たしかに伝わりましたよ
- …本当によいのですか?
- イシスの神官: …あの少女は、今後の予兆として 大きな地揺れがしだいに増え
- イシスの神官: アウグスタ水道が 枯れる日すらあると言いました
- たしかに最近は 地揺れが増えています
- イシスの神官: ええ、それに水脈の異常は… 古の災厄に同種の記録があります
- イシスの神官: 彼女の他の言葉からも
- イシスの神官: 実際に体験したとしか思えない 真実味が感じられました
- 体験、ですか…?
- イシスの神官: 来年の6月、とあるやんごとなき お方が亡くなって大騒ぎになる…
- イシスの神官: というお話がありましたね
- はい、肝心の 名前ははぐらかされましたが…
- イシスの神官: ローマの最高権力者
- イシスの神官: ウェスパシアヌス様は かなりのご高齢…
- イシスの神官: 内々に、長男のティトゥス様への 委譲の準備が進んでいます
- …えっ
- イシスの神官: ふふ…あの少女は 未来からきたのかもしれませんよ
- イシスの神官: 彼女は未来を知ったのではなく “見た”と言いましたよね?
- アマリュリス: 今後もすべてわたしの見た通りに なるかどうかは…
- あ…
- イシスの神官: そう、まるで演技を忘れて 口が滑ったかのようでした
- でも、まさか…
- イシスの神官: 彼女の言葉が真実かどうかは 今後明らかになっていくでしょう
- イシスの神官: それに、この動きは教団にとって よい機会だと考えます
- イシスの神官: 町の人々の間では 再興への機運はいまだ高いものの
- イシスの神官: 大地が揺れるたび、壁が剥がれ
- イシスの神官: ようやく再建したこの神殿も 補修を繰り返しているのが現状…
- イシスの神官: もし、この状態が続くのであれば 別の町へ拠点を移す日が来ます
- イシスの神官: ならば他に先駆けて そのための布石を打っておく…
- イシスの神官: 教団としても、利のある行動だと 思いませんか?
- ひめな: うまくいったんだね!
- アマリュリス: まあ、その…わたしたちが うまくやったというよりも
- アマリュリス: 誠意だけは酌んでいただけた… という感じですかね
- コルネリア: 次は女神ウェヌス様…
- コルネリア: それからアポロ様の神殿にも 手を回さないとね
- コルネリア: あ、それと明日お父様と一緒に パリス様の後見会に出るの
- 時雨: …誰…?
- アマリュリス: とても人気のある役者様です! …その人脈、使えそうですね
- コルネリア: 言うと思った…
- ひめな: …え、ヒコ君 なに?
- ひめな: 歴史Bルートへのフラグも そろそろ立ったんじゃないか?
- ひめな: それはありそうだね あ、ということは…
- 時雨: …またこのパターン…?
- ミユリ: そうみたいですぅ…
- コルネリア: 次に会うのは来年かな…?
- FILENAME: text_519601-19_BPssF.txt
- <西暦78年・夏>
- <コルネリアの屋敷>
- アマリュリス: はわ…!? その手だけはご容赦を…!
- コルネリア: 他に動かしようがないじゃない? あなたの負けよ
- アマリュリス: うぅ…これで何連敗でしょうか…
- アマリュリス: コルネリア様に 二度と勝てる気がしません
- コルネリア: あなたって根が正直だから
- コルネリア: いま何を考えてるか だいたいわかっちゃうのよね
- コルネリア: 嘘をつくときは目をつぶるし 問いつめられると目が泳ぐし…
- アマリュリス: えっ…
- コルネリア: やっぱり自覚ないのね
- アマリュリス: はわ… 言われてみれば!
- アマリュリス: …それにしても、ですよ サイコロで駒を進めるゲームで
- アマリュリス: ここまでコテンパンに のされるコトってあります?
- コルネリア: 相手の狙いを正しく読んで 勝率の高い手を打つだけよ
- アマリュリス: コルネリア様が急に 遠い存在に見えてきました…
- ドカドカッ
- アマリュリス: あの音… 中庭のほうですよね?
- コルネリア: きっと…ひめなたちね
- アマリュリス: …やっぱり ひめな様たちでしたね
- ひめな: コルネリアは また大人っぽくなったよね!
- ミユリ: 最後に会ってから、そっちは どのくらい経ってるんでしょう?
- コルネリア: えっと… もう、1年になるかも
- 時雨: …そんなに…!?
- アマリュリス: 左利きのヒラルス様も すっかり人気御者です
- ねむ: 今の状況を聞かせてくれるかな?
- ねむ: 西暦78年…
- ねむ: ウェスウィウス山の噴火まで あと1年と少ししかない
- ねむ: ただ、アマリュリスたちの努力で 状況はずいぶん変わったようだね
- ねむ: 「女神イシスの教団をはじめ さまざまな集団の協力が得られた結果 『ウェスウィウス山が火を噴く』という 予言めいた噂がささやかれるようになり…」
- ねむ: 「さらには、それと呼応するかのように 大きな地震が増加した結果… コルネリアのお父さんをはじめ 商業拠点の移転を考える有力者や 他の町へ移住する住民が現れはじめた」
- ねむ: 「そうした動きは 選挙の結果などにも影響し 都市参事会においても 復興より、避難や移住を 検討する空気が生まれている…」
- アマリュリス: みなさんの不安を煽るのは 心苦しいですが…
- ひめな: でも、1年後に噴火が起きるのは 本当のことだからね
- コルネリア: ポンペイよりもむしろ 他の町のほうが
- コルネリア: 何かあったらすぐ避難…という 機運が強くなっているくらいよ
- ミユリ: ポンペイが最大の問題ですか…
- アマリュリス: はい、ポンペイの参事会は まだまだ復興派が多数なので
- アマリュリス: いろいろと 手を打ってはいるのですが…
- ひめな: マリウスとコルネリアの婚約話も そのひとつだよね?
- アマリュリス: もちろんです!
- アマリュリス: マリウス様のお父様の 影響力を考えれば…
- アマリュリス: この婚約のゆくえが 参事会の意向を左右する
- アマリュリス: 最大の鍵になると思います
- ミユリ: コルネリアさんとマリウスさんは 順調なんでしょうか?
- アマリュリス: まだ正式ではありませんが 婚約成立は時間の問題ですね
- アマリュリス: 今日もマリウス様からのご伝言を わたしが届けに来たくらいですし
- ミユリ: ふたりの伝書鳩を してるんですね…
- 時雨: アマリュリスって ユニアの侍女じゃなかった…?
- アマリュリス: そのユニア様に頼まれましたので
- ひめな: めっちゃ応援されてるじゃん!
- アマリュリス: ただ…みなさんの命を救うには もっと大きく世論を動かさないと
- アマリュリス: そのために、お力を お借りしたい方がいます
- ねむ: それは?
- アマリュリス: 『博物誌』を上梓なさった 海軍提督プリニウス様です
- ねむ: 「ガイウス・プリニウス・セクンドゥス… 37巻にも及ぶ大著 『博物誌』で知られる軍人で博物学者 後世にも名を残す知識人だ」
- ねむ: 「『博物誌』は現在でいう 百科事典のような書だけど…」
- ねむ: 「彼が書物から得た 地誌や天文学などの膨大な知見に混じって ユニコーンやフェニックスといった 幻獣のことも記録されていることでも有名だよ」
- ねむ: …彼ほどの知識人なら 地震をはじめとする各種の異変が
- ねむ: 火山噴火の予兆だと 気づいているかもしれないね
- アマリュリス: はい、それにプリニウス様は ウェスパシアヌス様をはじめ
- アマリュリス: ローマ中枢との関係が深く
- アマリュリス: ローマ随一の大艦隊の 長でもあります
- アマリュリス: もし、あの方に町ぐるみの避難を 呼びかけていただけたら…!
- コルネリア: 大地の揺れは、未来でも 災禍の予兆だとされているの?
- ねむ: 噴火前の地震増加や水脈の異変は いずれも地殻変動と連動した
- ねむ: ひとつながりの事象だと 考えられているよ
- コルネリア: そうなのね
- コルネリア: 聡明なプリニウス様なら 現在起きている異変から
- コルネリア: 正しい洞察を導けるかも…
- ひめな: でも、その人にどう伝えるの? すごく偉い人なんでしょ?
- コルネリア: お父様を通じて ご紹介いただけないか
- コルネリア: 手を回してみたんだけど なにぶん多忙な方みたいで…
- アマリュリス: なので、だめでもともとで 突撃しようと思ってます!
- 時雨: どうやって…?
- アマリュリス: プリニウス様は現在
- アマリュリス: ポンペイの対岸にあるミセヌムに 駐留されていますので
- アマリュリス: コルネリア様のお父様の商船で ミセヌムまで渡る予定です!
- アマリュリス: そこでなんとか、接触の機会を 得られないかと思って…
- ミユリ: ふむふむ まずは動いてみるってことですね
- ねむ: ………… …………
- ひめな: どうしたの、ねむりん?
- ねむ: いや… さっきは言わなかったけど
- ねむ: プリニウスは火山噴火が原因で 命を落とす運命なんだ
- ミユリ&時雨: ええっ!?
- ねむ: 彼はウェスウィウス山の噴火中 調査および知人の救助のため
- ねむ: ポンペイの近くのスタビアエに 上陸し、そこで亡くなった
- ねむ: その話を記した彼の甥の書簡は
- ねむ: ウェスウィウス山の噴火を記した 貴重な資料として
- ねむ: 僕達の時代まで残されているんだ
- FILENAME: text_519601-20_BPssF.txt
- <ミセヌムへ向かう船上>
- ひめな: 見てみて、ヒコ君! 綺麗な海だねっ
- ミユリ: 姫様が浮かれぎみですぅ…
- 時雨: 結局、みんなでミセヌムへ 行くことになっちゃったね
- ねむ: 他に居場所もないし
- ねむ: コルネリアたちの護衛役も兼ねて 同行したのは賢明だよ
- ねむ: ………… …………
- ねむ: 本の記述が また不安定になっている
- ねむ: これまでのパターンから考えると
- ねむ: いずれアマリュリスたちの行動を 邪魔する者が現れる
- ひめな: また、魔女か使い魔?
- ミユリ: バトル担当の出番ですね!
- 時雨: パラドクスを解消すれば はぐむんたちが帰ってくるのなら
- 時雨: やるしかないよ…!
- アマリュリス: …………
- コルネリア: どうしたの、アマリュリス
- アマリュリス: いえ、プリニウス様とお会いする 算段を考えているのですが
- アマリュリス: まずは魔法で軍の方になりすまし プリニウス様のご予定を聞き出し
- アマリュリス: おひとりになるときを見計らって コルネリア様をお連れする…
- コルネリア: アマリュリスが もうひとり欲しいわね
- アマリュリス: そうなんですよ
- ひめな: 私チャンの “合成”の魔法を使えば
- ひめな: アマリュリスと同じように メタモルフォセスが使えるかも?
- ひめな: じゃあ、やってみるね…
- アマリュリス: すごいです!
- ミユリ: 姫様の“合成”で 他の人の魔法をコピーすれば
- ミユリ: 別の人でもその能力が 使えるようになるんです
- アマリュリス: わたし、いなくてもいいのでは…
- 時雨: …落ち込まないで…
- <ミセヌム近郊・海岸>
- コルネリア: …プリニウス様はここへ 本当にひとりでいらっしゃるの?
- アマリュリス: はい…最近はこのあたりの自然や 海の生き物にご興味をお持ちで
- アマリュリス: 少数のお供を連れて ここを訪れるのが日課だとか
- アマリュリス: ひめな様がなりすましの魔法で
- アマリュリス: うまくお供の方々を 遠ざけてくれるといいのですが…
- 時雨: あっ…あれ!
- ???: ………… …………
- バサバサッ
- ???: ん…? 島で鳥が群れるのは雨の前兆…
- ???: テオフラストスの書には そう記されていましたが
- ???: ここは突き出た半島 果たして…
- ひめな: お供の人たちは しばらく戻ってこないから
- ひめな: 今がチャンスだよっ
- 時雨: …あ、姫! 戻ってきたんだね
- ミユリ: じゃあ、あれがプリニウスさん?
- ひめな: そゆこと! あとはうまくやってね
- ひめな: 私チャンたちは 物陰に隠れて待ってるから!
- アマリュリス: は、はいっ!
- プリニウス: …………
- アマリュリス: 『プリニウス様…!』
- プリニウス: ん…?
- コルネリア: お耳に入れたいお話がございます
- プリニウス: …ふむ、つまりお嬢さんたちは
- プリニウス: 16年前に起きた大地震も 近ごろ増えている地震もすべて
- プリニウス: ウェスウィウス山が引き起こす 災いの前兆だと言うのですね?
- アマリュリス: はい…!
- プリニウス: たしかに、火山噴火と地震には 強い結びつきがあります
- プリニウス: 少し難しい話になりますが…
- プリニウス: 我々の住む大地が 球体であるということは
- プリニウス: ギリシャの先賢たちが唱え すでに常識となっています
- プリニウス: その球体の、いわば 卵の殻のような薄皮の下で起きる
- プリニウス: 大きな変動…これが 火山噴火や地震の原因です
- プリニウス: ですが、そのような 巨大な力を生むものは何か?
- プリニウス: かのアリストテレスによれば
- プリニウス: 地下へ吹き込む“風”こそが その源だというのが定説です
- プリニウス: すなわち、風や天候… これらに起きる異変を知ることが
- プリニウス: 噴火の前ぶれを見逃さぬための 重要な鍵となるわけです
- プリニウス: 事実アナクシマンドロスのように 地震の予言を的中させた者もいる
- プリニウス: ただ、今のウェスウィウス山に その兆候があるかというと…
- ミユリ: 風?…なんだかよくわからない 話になってきました
- ねむ: 僕達の時代とは 世界観そのものが違うからね
- アマリュリス: どう言えば ご納得いただけるのでしょう…?
- ねむ: うーん マントルやプレートの概念を
- ねむ: この時代の人にも納得できるよう 説明するのは難しそうだし…
- アマリュリス: 困りました…
- プリニウス: ん…誰かと話しているのかな?
- アマリュリス: はわ…! あっ、いえ…その…
- ガサッ
- プリニウス: む…? そこに誰かいますね
- 時雨: 見つかった…!
- プリニウス: 保養中の貴族の侍女…? いや、よくよく見れば奇妙な服装
- プリニウス: …近ごろ、迷信深い民の間で
- プリニウス: ウェスウィウス山が火を噴くとの 噂が飛び交っているようですが
- プリニウス: もしや、広めているのは お嬢さんたちなのでは?
- アマリュリス: はわ… そそ、それは…!
- コルネリア: …その通りです、プリニウス様
- アマリュリス: えっ… コルネリア様?
- コルネリア: ご賢察の通り その話を広めたのは私たちです
- プリニウス: フフ…潔く認めますか しかし、どうしてそんな真似を?
- コルネリア: このアマリュリス そしてそこにいるひめなたちは
- コルネリア: 未来の世界からきて 未来を知る者たちだからです
- プリニウス: なんですと…?
- コルネリア: この者たちの忠告に従わないと みな、命を落とすことになります
- コルネリア: アマリュリス、ひめな この方の目はあざむけません
- コルネリア: 隠さずお話ししてあげて
- コルネリア: あなたたちの知っていることも 私たちの目的も、すべて
- ミユリ: さすがに、プリニウスさん自身が 噴火で亡くなることは
- ミユリ: 言わない方がいいですよね?
- 時雨: うん…
- FILENAME: text_519601-21_BPssF.txt
- プリニウス: ふむ…地震はさらに増えてゆき
- プリニウス: そしてアウグスタ水道の異変を 合図とするかのように
- プリニウス: ウェスウィウス山から黒雲が昇る
- プリニウス: ポンペイやヘルクラネウムは 一夜にして白い灰に埋もれ
- プリニウス: 2000年後まで語り継がれる 死の町と化す、と…
- プリニウス: 古今の学説や火山伝説とは 符合しない点も多いですが
- プリニウス: むしろそれゆえに 奇妙な説得力があります…
- プリニウス: ………… …しかし
- プリニウス: お嬢さんたち 何か隠していますね
- ミユリ&時雨: ――っ!?
- ミユリ: なな、なぜそれを…!?
- アマリュリス: えっ、あれ?
- アマリュリス: …例のお話って みゆりん様たちにしましたっけ
- プリニウス: やはり、図星ですか…
- プリニウス: しかもその感じだと、それぞれ 別個の隠しごとがある様子…
- アマリュリス: はわ…!? 墓穴を掘ってしまいました!
- プリニウス: 残念ながら、すべてを明かすまで 協力は約束できませんね
- アマリュリス: …………
- アマリュリス: …仕方ありません
- アマリュリス: 畏れ多くて、どうしても 口にできませんでしたが…
- アマリュリス: 来年の6月、新しい インペラートルが誕生します
- ねむ: インペラートル…今で言う 皇帝のことだね
- プリニウス: なんと…
- アマリュリス: はい、ウェスパシアヌス様が ご病気で倒れ
- アマリュリス: 長男のティトゥス様が新たな インペラートルを名乗られます
- プリニウス: なるほど…たしかにおいそれと 口にしがたい内容ではあります
- プリニウス: …では、そちらのお嬢さんたちの 隠しごとは?
- ミユリ: あのあの… えっと、その…
- プリニウス: 落ち着きなさい 何を言っても怒ったりしませんよ
- ミユリ: …はい、じゃあ…
- ミユリ: プリニウスさんは、その噴火で 亡くなる運命…らしいです…
- プリニウス: ん…?
- アマリュリスたち: ええっ…!?
- プリニウス: …ふむ、私は噴火の直後に スタビアエへと向かい
- プリニウス: そこで死ぬというのですね
- ミユリ: は、はい…
- プリニウス: その経緯を記した 甥っ子で養子のガイウスが
- プリニウス: 私の後釜に座り 小プリニウスなどと呼ばれると…
- ねむ: ずいぶん聞き出されてしまったね
- 時雨: う…うん
- プリニウス: フフッ なかなかに面白い話です
- プリニウス: 私の『博物誌』が後世に残る 仕事になるであろうことは
- プリニウス: 執筆中から確信していましたが…
- プリニウス: 若き日に記した戦術書の名まで 未来の人が知っているとは
- プリニウス: 愉快な話ですね…!
- 時雨: あれ…結構 信じてくれてるっぽい?
- ひめな: そんな感じだよねっ
- プリニウス: しかし、仮にこれらの話が すべて真実であったとしても
- プリニウス: 私は、お嬢さんたちには 協力できません
- アマリュリス: えっ…
- コルネリア: なぜでしょう?
- プリニウス: まずウェスウィウス山を エトナ山のように
- プリニウス: 常に煙を吐いている山と 同じに考えるべきではありません
- プリニウス: これは多くの学者の見解が 一致するところ…
- プリニウス: 地震と噴火が連動して 起きることに疑問の余地はない
- プリニウス: ですが、すべての地震が 噴火の予兆であるとはかぎらず
- プリニウス: アリストテレス以来の 知見をもって洞察を重ねても
- プリニウス: あの山が噴火するという予言は いささか説得力を欠きます
- アマリュリス: そんな…!
- プリニウス: 仮にお嬢さんたちの予言が正しく 私がそれを支持したとしても
- プリニウス: 多くの学者に反駁されるでしょう
- プリニウス: お嬢さんたちは、彼らの説を 覆す根拠を示せますか?
- コルネリア: …………
- プリニウス: そして私には、彼らの学説を 曲げさせる権利などない
- プリニウス: 今の私に与えられているのは
- プリニウス: 艦隊に命令を下す 権限にすぎません…
- アマリュリスたち: …………
- みんな: …………
- ねむ: ………… …………
- ひめな: どうしたの、ねむりん?
- ねむ: いや… 少しひっかかって
- プリニウス: あの少女たちが言っていることは
- プリニウス: 私が長い年月をかけて 培った知見とは相容れませんが
- プリニウス: 真実とは往々にして
- プリニウス: 最も受け入れがたい姿をして 現れるもの…
- プリニウス: ゴホッ…ゴホッ…
- プリニウス: ウェスパシアヌス様も私も 来年には世を去る、と…?
- プリニウス: 逃れられぬ死のさだめと それが持つ意味に気づいたとき
- プリニウス: 人はどうふるまうべきか…
- プリニウス: まったく、やっかいな問題を 持ち込んでくれたものです
- FILENAME: text_519601-22_BPssF.txt
- <翌日…>
- <コルネリアの屋敷>
- 時雨: うまくいかなかったね…
- ひめな: うん…
- アマリュリス: プリニウス様ほどの方に 危機感をお持ちいただければ
- アマリュリス: 世論が変えられると 期待したのですが…
- ねむ: 現代とは学問の常識が違いすぎて 溝を埋められなかったね
- ねむ: この時代の人に、現代の知識を くわしく伝えることは
- ねむ: 歴史への干渉がゆきすぎる 懸念もあるし…
- ミユリ: でもでも、それってもう 結構やっちゃってません?
- ひめな: 私チャンたちがきっかけで もう歴史は変わりはじめてて
- ひめな: 干渉しないと元の歴史Bルートに 戻せないんだよね?
- ねむ: うん、干渉自体はやむをえない 問題はその内容と性質だよ
- ねむ: プリニウスが自身の死について 知ることにまでなったのは
- ねむ: まずかったかもしれない…
- ミユリ: そのせいでプリニウスさんが 違う行動を取ったら…?
- ねむ: うん、歴史が変わってしまう 危険がある
- コルネリア: 気を取り直して 他の計画を進めるしかないわよね
- アマリュリス: そうです!
- アマリュリス: 次の選挙に向けて 有力者への働きかけを続けつつ
- アマリュリス: コルネリア様にはなんとしても
- アマリュリス: マリウス様と ご婚約いただかないと!
- 時雨: マリウスのお父さんが支持すれば
- 時雨: 避難派が主流になるかも しれないんだっけ?
- アマリュリス: そうなります
- ミユリ: 最後の切札って感じですね
- アマリュリス: なので、あさってのピクニックも うまくやっていただいて…
- ひめな: ん…? ピクニック?
- ミユリ: デートイベントですか!?
- ミユリ: もしかしてマリウスと ふたりきりっ!?
- コルネリア: ユニアも一緒よ お供の人だっているし
- ねむ: 魔女や使い魔にも 警戒した方がいいね
- ねむ: 今度こそ何かあるかもしれないし
- 「コルネリア様、あの…」
- コルネリア: どうかしたの?
- お客様が…
- ………… …………
- ひめな: 誰?
- コルネリア: わかりません 軍の方のようですが…
- ミユリ: 敵か、味方か… 宮尾、わかりませんか?
- 時雨: …わかると思う
- アマリュリス: はわ… 何を始めるつもりでしょう!?
- 時雨: ………… …………
- 時雨: …大丈夫、敵じゃない
- コルネリア: …そんなこと、わかるの?
- ミユリ: 実は、これが宮尾の魔法です!
- ミユリ: 相手が害のある存在かどうかを 見極めることができるんです
- コルネリア: ありがとう、安心して 話をすることができそうね
- コルネリア: お待たせして申し訳ありません 私がコルネリアです
- コルネリア: 私にご用と伺いましたが…
- はい、とある方よりの 言伝をお持ちしました
- 明後日、コルネリア様と 内密にお会いしたいと…
- コルネリア: とある方とは…?
- ローマの執政官ティトゥス様です
- アマリュリス&ねむ: ――っ!?
- ミユリ: えっと よく聞こえなかったんですが…
- ねむ: ウェスパシアヌスの長男 執政官ティトゥス…
- ねむ: 次期皇帝だよ
- [Part 1 end]
- ---
- [Part 2 start]
- FILENAME: text_519602-1_wzPd8.txt
- <翌々日…>
- ひめな: コルネリアとアマリュリスは 神殿で次期皇帝と謁見中かぁ…
- 時雨: うまくやってるかな…?
- ねむ: 信じるしかない
- ねむ: 僕達にできるのは 外の見張りぐらいだよ
- ミユリ: 謁見が終わったら 午後はピクニックでしたよね?
- ねむ: コルネリアたちは 過密スケジュールだね
- コツ…
- ティトゥス: おお、来たな
- ティトゥス: 前置きも遠慮もいらん さっそく話を始めよう
- コルネリア: は、はい…!
- ティトゥス: たまたま近くに滞在していた私に プリニウスが伝えてきた
- ティトゥス: インペラートルが死に ウェスウィウス山が火を噴くとの
- ティトゥス: 不吉な予言を流布する 不届き者がいる、とな
- アマリュリスたち: ………… …………
- ティトゥス: ハハハ、別にそのことで 罪に問おうなどとは思っていない
- ティトゥス: ただ、くわしい話を 聞かせてほしいのだ
- ティトゥス: いずれ父にかわって ローマ領を預かる者としてな
- コルネリア: ティトゥス様…!
- ティトゥス: プリニウスは考えの読めぬ男で 時に不可解な態度も取るが
- ティトゥス: 彼なりに、そなたたちの話には 耳を傾ける価値がある…
- ティトゥス: ことによると、信用に足るとすら 感じたのだろう
- ティトゥス: でなければ、わざわざ私の耳に 入れようとはしないはずだ
- アマリュリス: では…お話しします
- 時雨: 次の皇帝になるティトゥスって どんな人なの…?
- ねむ: 現皇帝の長男で 皇帝の片腕とも言える人物だ
- ねむ: 来年の西暦79年6月 父親の崩御を受けて新皇帝となる
- ねむ: この史実は日付まで 現代に伝わっていて
- ねむ: アマリュリスの証言とも 正確に一致する
- ねむ: 僕達、未来の人間から見れば
- ねむ: ポンペイが壊滅した日に ローマ皇帝だった人だね
- ねむ: 相次ぐ災害にも迅速に対処した 有能な為政者として
- ねむ: 市民からは人気があったらしい
- ひめな: 他にも何か アマリュリスが言ってたよね?
- ひめな: たしかユダヤの王女様と…
- ねむ: ああ、ベレニケとの恋の話だね
- ねむ: 後世に戯曲にもなったくらい 有名な話だ
- ねむ: 現在ティトゥスには、恋人がいる ユダヤの王族の娘ベレニケだ
- ねむ: でも、ローマ市民は次期皇帝が 異邦の王女を妻に迎えることに
- ねむ: 猛反発している
- ひめな: えっ、じゃあ… このあとどうなっちゃうの?
- ねむ: 僕の知る歴史通りに進むなら
- ねむ: ふたりが結ばれることはなく ティトゥスは新皇帝になる
- ねむ: 彼はその後も独身を貫いたそうだ
- ひめな: ………… …………
- ティトゥス: …なるほど
- ティトゥス: 来年の6月23日に父が死に 私がインペラートルに即位する
- ティトゥス: そこまで断言するのだな
- アマリュリス: はい…!
- ティトゥス: その時点で、そなたらの予言の 真偽ははっきりする
- ティトゥス: ひとまず、現時点では 判断を保留して
- ティトゥス: その予言が的中したと 仮定して話を聞くとしよう
- アマリュリス: でも、それから山が火を噴くまで あまり時間がありません
- アマリュリス: 本音を言えば、今すぐにでも ティトゥス様の権限を行使して
- アマリュリス: 町のみなさんに、他の土地へ 移住していただきたいくらいで…
- ティトゥス: 噴火は10月24日と言ったか?
- アマリュリス: そうです
- ティトゥス: 私がインペラートルを称して わずか4ヶ月か…
- アマリュリス: 日付がわかっているのですから
- アマリュリス: せめて迅速な避難が実現できれば みなさんの命を救えます…!
- ティトゥス: そうだな…
- ティトゥス: あるいは数日前に軍を動かすなり することも考えられるが…
- アマリュリス: ティトゥス様…!
- FILENAME: text_519602-2_wzPd8.txt
- ティトゥス: そうだな…
- ティトゥス: あるいは数日前に軍を動かすなり することも考えられるが…
- アマリュリス: ティトゥス様…!
- ティトゥス: いや、そなたが期待を抱く前に はっきりと言わねばならぬ
- ティトゥス: すべての命を救うことは あきらめてくれ、と…
- アマリュリスたち: え…
- ティトゥス: インペラートルの権限を もってしても
- ティトゥス: 他の町への集団移住はおろか
- ティトゥス: 危機の兆候を見てとってからの 避難準備さえも
- ティトゥス: 難しいと言わざるをえない
- コルネリア: なぜでしょう…?
- ティトゥス: …予言が真実であると 事前に証明できないのだ
- ティトゥス: おそらくプリニウスも 同じことを言ったのではないか?
- アマリュリス: あ…たしかに
- ティトゥス: 確たる根拠も示さずに インペラートルの権限を用いて
- ティトゥス: 万を超す民に、父祖の土地からの 移住を強いたり
- ティトゥス: あるいは大軍を動かしたりすれば
- ティトゥス: 市民は私のことを、流言に 惑わされた暴君と非難するだろう
- ティトゥス: ローマ市民が私を どのような目で見ているか
- ティトゥス: そなたらも知らぬではあるまい?
- アマリュリスたち: …………
- ティトゥス: 異邦の女王クレオパトラに ローマが振りまわされたことは
- ティトゥス: 人々の記憶に新しい…
- ティトゥス: 私が同じ轍を踏むのではないかと 市民は疑っている
- ティトゥス: 私がインペラートルになれば
- ティトゥス: 愛するベレニケを 妻にすることはできないだろう
- アマリュリス: …………
- ティトゥス: 市民の生き方を決めるのは ローマ市民自身だ
- ティトゥス: ただ強権をふるっても 彼らを統治することはできない
- ティトゥス: さりとて私が父を継がねば 内戦の時代に逆戻りだ
- ティトゥス: …執政官にもインペラートルにも 真の自由など存在しないのだよ
- アマリュリス: ………… …………
- ティトゥス: ただ…
- ティトゥス: ここまで真に迫った予言を 無下にする心持ちにはなれんな
- コルネリア: …………
- ティトゥス: 頻発する地震を怖がって 自ら移住を決める民もいると聞く
- ティトゥス: 不吉な予言を広める者が いるせいらしいが…?
- ティトゥス: 私はそなたらの行動を 止めようとは思わないし
- ティトゥス: いざ噴火が始まったあとにも 極力多くの者が避難できるよう
- ティトゥス: 事前に打てる手は打っておこう …父にも働きかけてな
- ティトゥス: 噴火の当日は少しでも多くの民が 無事に逃げ出せるよう
- ティトゥス: 町のみなで力を尽くしてほしい
- コルネリア: はい…!
- ティトゥス: それから、ネアポリスの被害は 比較的小さいと言っていたな?
- アマリュリス: …は、はい!
- ティトゥス: 災禍のあとにはなってしまうが… ネアポリスを中心に
- ティトゥス: 被災した民の受け入れが 円滑に進むよう尽力しよう
- アマリュリス: ありがとうございます…!
- アマリュリス: …信じて いただけたのでしょうか
- ティトゥス: 予言の真偽は来年6月に判明する それまでは判断保留…だがな
- コルネリア: インペラートルの権限でも 集団移住はかなわないのね…
- アマリュリス: でも、実りある会見でした…
- アマリュリス: けど…
- アマリュリス: …うっ…
- アマリュリス: 平穏な日々は、もうすぐ 壊れてしまう…
- アマリュリス: 本当は、ひとりだって 犠牲になってほしくないのに…
- アマリュリス: …どうして…
- コルネリア: アマリュリス…
- コルネリア: それじゃ、ひめなたちに 報告してきましょうか
- アマリュリス: はいっ!
- 時雨: アマリュリスたち 少しは成果があったみたいだね…
- ひめな: あとはマリウスとコルネリアの デートを成功させないとねっ!
- ミユリ: とりあえず ピクニックコースの入口まで
- ミユリ: 先まわりしてみたわけですが…
- ひめな&ミユリ: ――っ!?
- ひめな: やっぱり!
- 時雨: これが今回の パラドクスの原因…?
- ミユリ: デートイベントの邪魔です! やっつけましょう!
- FILENAME: text_519602-3_wzPd8.txt
- ミユリ: ふぅ…ちょっとやばかったです
- 時雨: うん、すごく強い魔女だった…
- ねむ: いままで戦ったのと 同じ魔女から派生した敵だろうね
- ねむ: 大元は別にいる… おそらく、最初に戦った魔女だ
- ひめな: …………
- ガヤガヤ…
- ひめな: あっ コルネリアとお供の人たちだよ!
- ねむ: このあと マリウスとユニアが合流して
- ねむ: 全員そろったら 丘の上までピクニックだったね
- 時雨: ぼくたち、邪魔かも…?
- ひめな: とりま どっかに隠れてよっ?
- コルネリア: ………… …………
- マリウス: 「コルネリア!」
- マリウス: はぁ、はぁ… お待たせ!
- コルネリア: マリウス様! どうしたんですか?
- コルネリア: そんなに息を切らして
- マリウス: 父が…僕たちの婚約を 認めてくれたんだ!
- コルネリア: えっ…えっ…? ええっ!?
- マリウス: このあと正式連絡があるけど 一刻も早く知らせたくて…!
- コルネリア: どうしよう… 嬉しい…マリウスさ…
- ユニア: 「お姉様!」
- コルネリア: ユニア!?
- ユニア: おめでとうございます! おね…
- ユニア: きゃ!?
- ドサササッ
- コルネリア: ちょっと、大丈夫!?
- ユニア: 大丈夫です! 木の葉に埋もれただけですので
- ユニア: それよりご婚約 おめでとうございます!
- コルネリア: あ、ありがと…って ちょっと待って?
- コルネリア: もしかして私以外 みんな知ってるの?
- ユニア: あ…わたしもさっき お義父様から聞いたところで…
- 時雨: おめでたいけど…
- ミユリ: ちょっと出ていきづらいです
- 時雨: いつまで隠れてれば いいんだろう…
- ひめな: あっ、みんなで 丘の上に行くみたいだよっ
- ミユリ: それじゃそれじゃ こっそりついていきましょう!
- マリウス: ―マリウス― 着いたね 素敵な眺めだ
- コルネリア: ―コルネリア― はい…マリウス様
- コルネリア: ―コルネリア― やっと、ここまで来ることができました あの子のおかげです
- マリウス: ―マリウス― あの子って…?
- コルネリア: ―コルネリア― ふふ…内緒です
- ユニア: ―ユニア― お姉様…! マリウス様…!
- マリウス: それじゃ、また!
- コルネリア: 今日はありがとうございました マリウス様
- コルネリア: ユニアもありがとう 一緒に来てくれて
- ユニア: …………
- コルネリア: …ユニア? どうしたの、ぼうっとして?
- ユニア: あ…ごめんなさい お姉様
- ユニア: 3人で過ごせたのが すごく楽しくて
- ユニア: この1日がずっと続けば いいのにと思って…!
- コルネリア: ずっと続けば…
- コルネリア: …………
- アマリュリス: 平穏な日々は、もうすぐ 壊れてしまう…
- コルネリア: ………… …………
- ユニア: …お姉様?
- コルネリア: ああ、ごめんなさい なんでもないの
- コルネリア: あ…
- コルネリア: (そういえば、ひめなたち どこへ行ったのかしら…?)
- ミユリ: デートイベント完了を見届けたら 即行でここに飛ばされましたね…
- ねむ: 西暦78年の記録が復活した
- ひめな: じゃあ、次は79年?
- ねむ: そうだね ウェスウィウス山が噴火する年だ
- ミユリ: 最初に戦ったボスみたいなやつが 待ちかまえてそうです…
- ねむ: うん、僕達の接近を感知して
- ねむ: 3年前の西暦76年から 活動を活発化させていたんだろう
- ねむ: おそらくそこから増殖した “株分け”のなかに
- ねむ: さっき戦ったような 強力な個体も現れて
- ねむ: アマリュリスの行動を阻害した… それがタイムパラドクスの正体だ
- 時雨: でも、まだパラドクスは 残ってるよね…?
- ねむ: うん、まだ大きな欠落がある
- ねむ: “歴史B”を取り戻すためには 例の魔女との対決を
- ねむ: 覚悟しておいたほうが いいだろうね
- FILENAME: text_519602-4_wzPd8.txt
- ひめな: ここは、どこ…?
- ひめな: 誰かの、夢…?
- キュゥべえ: ………… …………
- ???: 『クビウス様…』
- ???: 『これは、神々の罰なのでしょうか?』
- ???: 『あのとき、ウェスタの煌乙女になることを わたしが、拒んだから…』
- ひめな: (今のって アマリュリスの夢だよね?)
- ひめな: (あの子は…)
- ひめな: (ずっと罪の意識を 感じていたんだね)
- <西暦79年10月>
- <ポンペイ>
- …!
- また揺れたぞ… 今日は一段とひどいな
- オレたちも避難したほうが いいんじゃないか?
- 水道はまだ枯れてるみたいです
- いよいよ、予言通りに なってしまうの…?
- ひめな: …………
- ひめな: あ…
- ミユリ&時雨: …………
- コルネリア: ひめなたち…?
- コルネリア: …あれから1年が経ったわ
- コルネリア: アマリュリスの言う通り ウェスパシアヌス様にかわって
- コルネリア: 6月にティトゥス様が インペラートルへと即位された
- コルネリア: 都市参事会の空気も変わった…
- ひめな: マリウスのお父さんの力?
- コルネリア: うん…移住に踏み切った人は 全体からみると少ないけど
- コルネリア: 大きな地震も増えてきたし… どの町も、何かあったら
- コルネリア: すぐに避難しようって 雰囲気になってきてる
- ひめな: 地震…! 噴火まで、あと何日なの?
- コルネリア: …あと2日よ もう、時間がないの
- タタッ
- アマリュリス: コルネリア様!
- アマリュリス: ユニア様は無事に 避難していただけました…
- アマリュリス: …って、あれっ? ひめな様たち…?
- コルネリア: 今はもう、噴火が始まったら みんながすぐに逃げだせるように
- コルネリア: できる準備を進めるしかないわ
- ひめな: ユニアの家族は もう避難したんだね
- アマリュリス: はい、三家のお父様がたはすでに
- アマリュリス: この町に住むことの 危険を理解されています
- アマリュリス: 地元と強い結びつきを持つ ユニア様のお義父様は
- アマリュリス: みなさんに範を示す意味で 早期にご家族を避難させました
- アマリュリス: そして、コルネリア様と マリウス様のお父様…
- アマリュリス: そしてマリウス様とともに
- アマリュリス: 避難を円滑に進めるための 準備を進めています
- アマリュリス: …本当は、コルネリア様にも 避難していただきたいのですが
- コルネリア: 私はひとりでも多くを救えるよう できるかぎりのことをするわ
- アマリュリス: コルネリア様…!
- ひめな: 私チャンたちも!
- ゴゴゴ…
- コルネリアの父: 地鳴りがひどい… ただごとではないな
- コルネリアの父: 2~3年ほど前は あまりにコルネリアが怯えるので
- コルネリアの父: 万が一の災禍にも 目配りしておこう…
- コルネリアの父: ぐらいの気持ちだったが
- コルネリアの父: あの噂…いや予言は 的中しそうに思えてならん
- ユニアの義父: それには同意せざるをえんな
- ユニアの義父: 正直うちの商売は 地元産のワイン頼みだったし
- ユニアの義父: 参事会の、地元にこだわらず やっていこうって方針も
- ユニアの義父: あんたとマリウスの親父に 押し切られる形で渋々呑んだが…
- ユニアの義父: 今ではむしろ感謝している
- ユニアの義父: あのまま参事会の趨勢が 変わらなければ
- ユニアの義父: 避難などとんでもない!…と 先頭に立って反対していただろう
- ゴゴゴゴ…
- コルネリアの父: …このぶんだと 数日以内に何か起きそうだな
- ユニアの義父: うむ…“万が一”のときは
- ユニアの義父: 早めに陸路での避難を促すのが 最善だと考える
- コルネリアの父: 逃げ遅れた住民が乗れるように
- コルネリアの父: 商船も待機させているが… いかんせん数が足りない
- ???の声: …船がご入用でしょうか?
- コルネリアの父: あなたは、女神イシスの…
- イシスの神官: わが教団の信者のなかには 船主の方が多くいらっしゃいます
- イシスの神官: よろしければ ご協力をいただけるよう
- イシスの神官: お声がけしてみますが…
- コルネリアの父: おお、それは助かります!
- マリウス: 僕は父とともに、参事会の 重鎮がたに働きかけてきます
- マリウス: 何かあったとき、彼らが 避難を渋るようなことになれば
- マリウス: その家族や使用人の方々は 逃げたくても逃げられませんから
- <そして…>
- <西暦79年10月24日>
- FILENAME: text_519602-5_wzPd8.txt
- アマリュリス: みなさんを東へ誘導してください 今なら陸伝いに逃げられます!
- 左利きのヒラルス: 承知しました!
- アマリュリス: 燃える雲に襲われたら 町全体が危険です…!
- アマリュリス: 一刻も早く、みなさんを 町の外へ…
- コルネリア: わかったわ お父様たちに伝えてくる
- 時雨: 昼なのに… こんなに暗く…
- ミユリ: 灰と石が積もって 家が壊れはじめてます…
- ねむ: さすがにまずいと判断して 住民の多くが避難を始めたようだ
- コルネリアの父: 頭を守りながら逃げろ! 使用人は解放してやれ!
- コルネリアの父: 命より価値のある財産など ありはしないぞ!
- 時雨: 避難、意外と順調…?
- ひめな: 残ってる人は、あんまり 多くないみたいだね
- ねむ: マリウスたちが重鎮を説得して 早期の避難を実現させたんだ
- ねむ: アマリュリスの言う通り 今のうちなら
- ねむ: 安全に避難できる可能性が高い
- パラパラッ…
- コルネリア: 石が激しく降りはじめました…
- マリウス: 風向きが悪いね 東に逃げるのはもう難しいかも…
- コルネリアの父: 頃合、か…
- ユニアの義父: 逃げ遅れた住民を海側へ集めよう 船は出せそうか?
- コルネリアの父: 荒れているが、大丈夫だ
- コルネリアの父: 数をそろえてくれた イシス教団にも感謝しないとな
- 左利きのヒラルス: …コルネリア様、御者たちがまだ 営舎に取り残されているとのこと
- コルネリア: えっ…主人に置いていかれたの?
- コルネリアの父: 救出に向かわねばなるまいな
- コルネリアの父: コルネリアは 先に船に乗っておけ
- コルネリア: いえ、私はマリウス様と一緒に
- コルネリアの父: そうか… マリウス、頼んだぞ
- マリウス: はい!
- アマリュリス: あの…ご主人様たちは…?
- コルネリア: ご主人様…? あ、ユニアのお義父様のことね
- ユニアの義父: 心配ない、町のやつらを乗せたら 同じ船で逃げる
- コルネリアの父: 私もだ、死ぬつもりはないよ
- ざわざわ…
- ひめな: あれっ? 人があんなに!?
- 早めに避難した人たちが 様子を見に戻ってきたみたいで…
- ………… …………
- ミユリ: 目つきがおかしいです
- 時雨: 見て、あれ… 魔女の口づけ!
- ひめな: 近くに魔女がいるの? 探さなきゃ!
- コルネリア: 戻ってきた人たちの様子が変… 北のほうへ向かってる…?
- マリウス: あそこは火の手が上がってる 止めないと…!
- マリウス: アマリュリス、コルネリアを頼む
- アマリュリス: は、はい…!
- アマリュリス: あの、マリウス様 何をするおつもりでしょう?
- マリウス: すぐに戻る ヒラルスさん、一緒に来て!
- 左利きのヒラルス: はい…!
- ………… …………
- コルネリアの父: どうする? あの人数を押しとどめるのは…
- アマリュリス: ――っ!?
- アマリュリス: 神話の怪物のしわざですね
- アマリュリス: いままで感じたことのないような 強力な魔力…
- アマリュリス: ここは、わたしが…
- ひめなの声: 待って!
- 時雨: この魔力、間違いない… あいつはぼくたちが…!
- ミユリ: そうですそうです!
- ミユリ: あのボス魔女には 借りがありますので!
- ひめな: 町の人たちはまかせたから! こいつは私チャンたちにまかせて
- アマリュリス: …わかりました
- コルネリア: あなたたちが戻るまで 船を待たせたいけど…
- ねむ: いや、その必要はない
- ねむ: 最後のパラドクスを解消すれば 僕達は元の時代に戻れる
- ひめな: ここでお別れかもねっ!
- コルネリア: そうなの…?
- コルネリア: ひめな、みゆりん しぐりん、ねむ
- コルネリア: いままでありがとう
- ミユリ: ど、どういたしまして!
- アマリュリス: あの、最後までみなさんに 助けられてばかりでしたけど…
- アマリュリス: 本当に、本当に ありがとうございました…!
- ひめな: あざまる★ りゅりりん!
- ひめな: ねりりんは 好きピ同士でお幸せにっ!
- ひめな: あと、ゆにりんにもよろしくねっ
- ミユリ: いまさら愛称呼びですか!?
- ひめな: わかりにくいかと思って 自重してたんだよね
- 時雨: 行こう
- 時雨: …おたがい、まだ やることが終わってない
- ミユリ: あの魔女にリベンジです!
- FILENAME: text_519602-6_wzPd8.txt
- 時雨: くっ…!
- ひめな: しぐりん!
- 時雨: …大丈夫 ふたりは攻撃を続けて
- ひめな: りょーかいっ!
- ミユリ: 燦様燦様 待っててください!
- ミユリ: もうすぐ現世に帰れますので!
- 時雨: …現世…?
- ひめな: おけまる★ みゆりん、燃えてるっ
- 時雨: でも、早く倒さないと みんなが避難できない…
- …………
- コルネリア: きゃ…
- アマリュリス: コルネリア様っ!
- アマリュリス: …人が多すぎます 押し戻すのは無理です
- アマリュリス: …救えないの…? 今回も…
- コルネリア: アマリュリス、あきらめないで 未来は変えられる!
- コルネリア: ひめなたちは、あなたが変えた 未来からきたんだから!
- アマリュリス: は、はいっ そうでした…!
- アマリュリス: (でも、このままじゃ…)
- マリウス: 「コルネリア! アマリュリス!」
- コルネリア: えっ?
- マリウス: 援軍を連れてきたぞ!
- アマリュリス: 御者の方々…! あんなにたくさん…
- マリウス: あの人たちを押し戻して もらえますか?
- マリウス: 何かに憑かれているみたいで…!
- 無敵のマクシムス: 手荒なやり方でいいなら かまわんぞ!
- 無敵のマクシムス: あんたらのおかげで 命拾いしたからな!
- 左利きのヒラルス: 営舎に閉じ込められていた彼らを マリウス様が解放したんです
- マリウス: ヒラルスさんの ライバルの方々です!
- コルネリアの父: なるほど…そういうことか
- コルネリアの父: 海に船を待たせてある 住民を海へ誘導してほしい
- ユニアの義父: 暴れたら気絶させて運んでやれ!
- 無敵のマクシムス: 承知した! よし、やるか
- みんな: おうっ!!
- コルネリアの父: 満員の船はすぐに出せ! 海が荒れてきたぞ!
- コルネリアの父: マリウス、そっちはどうだ?
- マリウス: はい、御者たちのおかげで
- マリウス: みなさんをこちらへ 運んでくることができました
- ユニアの義父: マリウスの親父たちが 町に残った連中を探しているが…
- ユニアの義父: ここらが潮時だな
- ユニアの義父: これ以上、海が荒れては 船が出せなくなる
- ユニアの義父: マリウス、親父を呼び戻してこい
- マリウス: は…はい
- アマリュリスたち: …………
- コルネリアの父: お前たちのせいではない 手を尽くしても救えぬ命もある
- コルネリアの父: これだけの人を救えたのだと 誇りに思え
- コルネリア: アマリュリス…
- アマリュリス: …わかっています これ以上待てば、ここも危ない
- アマリュリス: でも、みなさんを救えないのは 悔しいです…
- ざわざわ…
- コルネリア: …なにかしら?
- プブリウス様!
- 別の門で立ち往生していた一団が こちらに集まってきたようです
- コルネリアの父: …ん? かなりの数だな
- ユニアの義父: まずいな… 船が足りんぞ
- コルネリア: そんな…!
- アマリュリス: コルネリア様! あれを…!
- コルネリア: ―コルネリア― あの船…ローマ海軍!
- アマリュリス: ―アマリュリス― はい! プリニウス様旗下の艦隊です!
- コルネリア: ―コルネリア― プリニウス様の…?
- アマリュリス: ―アマリュリス― はい…それも あんな大艦隊で…
- アマリュリス: ―アマリュリス― こんな大荒れを ものともせずに…!
- 副官: 接岸し、ポンペイの民を 救出せよ!
- 副官: それから、プリニウス提督の 通達である…
- 副官: 『恐れるな! 幸運は勇者に味方する!』
- コルネリア: みんなを 岸辺まで集めましょう
- アマリュリス: はいっ…!
- FILENAME: text_519602-7_wzPd8.txt
- <ポンペイ近郊・スタビアエ>
- プリニウス: 雲と煙が混じって 空はひどい有様です…
- プリニウス: 昼か夜かすらわからない
- プリニウス: ここにも危険が迫っています みな、今のうちに逃げなさい
- 書記: し、しかし…
- プリニウス: 私はこの地で死ぬさだめです それにつきあうことはない
- プリニウス: そして、甥っ子のガイウスへ 私の死にざまを伝えるのです
- プリニウス: 「プリニウスはこの災禍を事前に予見できず」
- プリニウス: 「学者としての好奇心と知人の救助という ふたつの目的から 少数の艦船を率いて調査に向かったが」
- プリニウス: 「噴煙に阻まれ、やむなく寄港したスタビアエで 黒煙に巻かれて死んだ…」
- 書記: ですが…!
- プリニウス: フフ…勇敢なのか愚か者なのか よくわからぬ死に方ですが
- プリニウス: 私らしい運命とも思えます
- 書記: 予見できなかった、などと…!
- 書記: どうしていつわりを 記さねばならないのですか?
- 副官: なぜ、これほどの艦隊を 集結させる必要が…?
- プリニウス: 案ずることはありません
- プリニウス: ティトゥス様も 黙認されている行動ですから
- プリニウス: 艦隊は近海に待機させておき
- プリニウス: ウェスウィウス山に異変が 起きた際は
- プリニウス: ただちにポンペイへと 救援に向かうように
- プリニウス: ひるまず、進んでください… 幸運は勇者に味方します
- プリニウス: そうそう、そしてこれは…
- プリニウス: プリニウスの命によるものとせず 貴下の手柄としてください
- プリニウス: …彼が私の言いつけを破って
- プリニウス: プリニウスの通達などと 口にせねばよいのですが
- プリニウス: フフ…あとで辻褄を合わせる あなたの仕事が大変になる
- 書記: どうして、真実を伏せるのです?
- プリニウス: 未来からきたという少女たちに 私は自分の運命を聞きました
- プリニウス: あのお嬢さんたちが 取り戻そうとしているのは
- プリニウス: 私が勇敢な愚か者として死ぬ未来
- プリニウス: あなたが甥っ子のガイウスに 伝える私の死にざまは
- プリニウス: 2000年先の未来まで 語り継がれるそうです
- プリニウス: 万が一、ガイウスが それとは異なる記録を残せば
- プリニウス: 時が逆説に蝕まれ 世界を壊してしまうでしょう
- プリニウス: だから、私は明日死ぬ それでいいのです
- プリニウス: 未来を知ろうが知るまいが 私の運命は同じであるべきです…
- 書記: 理解できません
- プリニウス: 歳を取ればわかりますよ
- プリニウス: ゴホッ、ゴホッ…
- プリニウス: フフ…喉の疾患持ちに この空気はこたえますね…
- FILENAME: text_519602-8_wzPd8.txt
- 時雨: うあっ…!
- ひめな: しぐりん、逃げてっ これ以上はやばいよ!
- 時雨: ううん…
- 時雨: まともに攻撃が通ってるの 遊狩さんだけだし
- 時雨: ぼくと姫とで あいつを引きつけるしか…
- ひめな: …わかった
- ひめな: (このままじゃ負け確だし)
- ひめな: (しぐりんがその覚悟なら ワンチャンやるしかない…!)
- ひめな: じゃあ、私チャンが左 しぐりんは右ね!
- 時雨: うん…!
- ひめな: みゆりん、今だよっ! リミッター外しちゃって!
- ひめな: 暴走したら 私チャンが止めるから!
- ミユリ: わわ、わかりました!
- ミユリ: …………
- ひめな: 「みゆりん、みゆりん…!」
- 時雨: 「遊狩さん…!」
- ミユリ: …………
- ミユリ: はっ…!?
- ミユリ: 魔女は…!? ミユはまた暴走したんですか?
- 時雨: 魔女は遊狩さんが倒したよ 暴走は…姫が止めてくれた
- ひめな: ぶっちゃけ教官抜きで 止められると思わなかったよね…
- ひめな: 止めたっていうか 止まったって感じだったし!
- ???の声: それでいいのよ
- ???の声: 受け止めるんじゃなくて 受け流す要領ね
- ひめな: だよね、教官! ちょっとコツがつかめたかもっ
- ひめな: …って、教官!?
- 燦: やっと見つけたわ
- はぐむ: 時雨ちゃんたち 無事でよかった…!
- はぐむ: へんな空間を ずっと歩いてたの…
- 三輪 みつね: …私、今回 ずっと迷子なんだけど…
- ひめな: やったね! マイメンたち復活だよっ
- ミユリ: 燦様、お会いしたかったですぅ~
- 時雨: よかった、はぐむん…
- 時雨: みんなが戻ってきたってことは…
- 時雨: 魔女を倒したから、パラドクスが 解消されたってこと?
- ねむ: そうだろうけど…
- 三輪 みつね: この景色… どう見ても解消されてないよね?
- 燦: 形勢がこっち寄りに傾いて 部分的に解消…という感じかしら
- ねむ: うん… 一時的なもののような気がする
- 燦: ――っ!?
- 時雨: あの魔女…!
- ミユリ: たた、倒せてなかったですぅ!
- ねむ: でも、明らかに存在が不安定だ
- 三輪 みつね: …最初にここで同じのと戦って 負けた結果を
- 三輪 みつね: 3人がさっき勝って 上書きしたはずだよね…?
- ねむ: 時空がひどく乱れてるからね
- ねむ: 魔女にも勝つ可能性があるかぎり 復活してくるということかな…
- 燦: それなら、可能性がなくなるまで 叩き伏せるだけよ
- 燦: いままで何もできなかったぶん 派手にやらせてもらうわ
- 燦: 安積、三輪! あなたたちもね
- はぐむ: はいっ!
- 三輪 みつね: …ふふっ、まかせて
- 三輪 みつね: 最初に言ったよね…? 『ヒーローは最後に来る』ってw
- ミユリ: 大遅刻ですぅ!
- FILENAME: text_519602-9_wzPd8.txt
- 全員、乗り込んだか!
- はい!
- この波だ… これ以上は待てんな
- よし、出すぞ! こいつが最後の船だ!
- <ポンペイ沖・船上>
- ザザァ…
- コルネリア: きゃ…
- マリウス: コルネリア!
- マリウス: 船から投げ出されないように どこかにつかまって
- コルネリア: あ…ありがとうございます
- コルネリア: ………… あれは…
- コルネリアたち: ………… …………
- コルネリアの父: …もう、戻れないんだな
- ユニアの義父: ああ…
- マリウスの父: ネアポリスで再出発だ マリウス
- マリウス: は、はい…!
- マリウスの父: 命があれば、またやり直せる
- コルネリア: ひめな、みゆりん、しぐりん… 未来へ、無事に帰ってね
- 燦: どんなに強くても魔女は魔女ね 安積の攻撃が有効よ
- 燦: 前に失敗した連係を またやってみましょう
- はぐむ: えっと…私とみつねちゃんで こっそり近づくんですよね?
- 燦: そう 残りの4人で陽動よ
- 燦: 前回はミユと 私のふたりだけだったけど
- 燦: 今は姫様も宮尾も無事だから
- 三輪 みつね: はぐむちゃん 責任重大だよ…!
- 燦: 余計なプレッシャーをかけないの
- 燦: それじゃ、一斉にいくわよ!
- みんな: 了解っ!
- 三輪 みつね: はぐむちゃん、今のうちに…
- はぐむ: う、うんっ…
- はぐむ: きゃ…!
- 三輪 みつね: …当たった、と思うじゃん? 魔女さん
- 三輪 みつね: それ、私が“改竄”した 認識なんだよねww
- 燦: 今よ、安積!
- はぐむ: は、はいっ!
- はぐむ: や、やああああーーーっ!!
- はぐむ: か…勝った?
- 時雨: やった、はぐむん…!
- 燦: なに、この場所…?
- ミユリ: ポンペイです… 火が、燃えひろがってます…
- 時雨: …船はもう出たみたい
- ねむ: ということは…
- ねむ: 君達が魔女を足止めしている間に 無事に船を出せたんだね
- ねむ: 魔女が原因で引き起こされた 最後のタイムパラドクスも
- ねむ: きっと解消しているはずだ
- 三輪 みつね: 元に戻った…!
- はぐむ: ということは、環さんの概念も…
- ひめな: おけまる★ いろりんの欠片、無事回収だねっ
- ねむ: たくさんの犠牲を生んだ 悲しいできごとだったけれど…
- 時雨: …うん…
- ねむ: 僕達の知る歴史の通り 救われた命もたくさんあった
- ねむ: 新皇帝ティトゥスは
- ねむ: 避難民がネアポリスなどへ すみやかに受け入れられるよう
- ねむ: 迅速に手を打ったと伝わっている
- ねむ: コルネリアたちも、新天地で 再興を期しているはずだよ
- 三輪 みつね: あ…
- ねむ: 任務完了だ 現代へ戻ろう
- ひめな: これは…
- ひめな: また、誰かの記憶…?
- ひめな: え、ヒコ君、なに…?
- ひめな: そっか… いろりんの本を持ってる私チャンと 書かれてる記録が同調して… それでこの夢を見てるんだね?
- ???: 『…わたしが、ウェスタの煌乙女に?』
- ウェスタの煌乙女: はい、あなたには その資格があるようです
- ???: 『うーん…』
- ???: 『わたしには、無理かも…』
- ???: 『…わたしに、この腕輪を?』
- マリウス: そう 僕からの贈りものだよ
- ひめな: (いま見えたのって…?
- ひめな: (いろりんの本の 読めなくなってた記録…?)
- ひめな: え、なに?…ヒコ君
- ひめな: これは誰の記憶なんだろうって… ああっ!?
- ひめな: 私チャン ポンペイへ戻らなきゃ…!
- ひめな: もう無理だって…そんな…!! だって、アマリュリスは…!
- コルネリア: …………
- コルネリア: アマリュリスは、どこ?
- FILENAME: text_519603-1_c8l3c.txt
- ???: あなたのことが、好きでした 小さな頃から…ずっと
- ???: だからわたしは、ウェスタの煌乙女には なれないと思いました だって、マリウス様と一緒になりたかったから
- ???: あなたが婚約の証に この腕輪を贈ってくれた あの日の喜び…
- ???: あの一瞬を感じられただけで わたしの一生は 幸せだったと言えると思います
- <ポンペイ沖・船上>
- ザザァ…
- アマリュリス: ………… …………
- ユニア: …マリウス様
- ユニア: 婚約が決まったあと、あなたは 妹のような存在でしかなかった私に 優しくしてくださいました
- ユニア: 好きになろうと、努力してくださいました
- ユニア: そして、空から火が降ったあの日… 恋する乙女“ユニア”は死にました わたしが守りたかった小さな世界は壊れ すべては灰の下に埋もれました
- ユニア: あなたも、大好きなお姉様も… わたしの恋心も
- ユニア: あの日のマリウス様を… わたしの婚約者だったマリウス様のことを 決して忘れません
- ユニア: 落ちてくる屋根から 身を挺してわたしを助けてくれたこと
- ユニア: 最期の瞬間に 『愛してる』と言ってくれたこと
- ユニア: そして…
- ユニア: 神々はわたしに、最後の機会をくださいました わたしを生き直す機会を …3年の猶予を
- ユニア: ―ユニア― あれから二度目の生を生き
- ユニア: ―ユニア― お姉様たちと過ごした日々…
- ユニア: …まるで、夢のようでした
- トンッ…
- ユニア: クビウス様…
- ユニア: …えっ?
- ユニア: どうしてお姉様と一緒の船に 乗らなかったのか…ですって?
- ユニア: こちらの船のほうが
- ユニア: “ユニア”がいるはずの場所に 早く着くからですよ
- ユニア: お姉様たちの乗られた船は 経由地が違うようでしたので…
- ユニア: ほんの1~2日なら
- ユニア: “なりすまし”の魔法を 使っているときの嘘が効いて
- ユニア: わたしの不在を 誰も怪しみませんけど
- ユニア: 何日もいないと、いろいろと 不都合が出てきますので
- ユニア: …それにしても 本当に不思議な魔法ですね
- ユニア: この世にアマリュリスなんて 少女は存在しないのに
- ユニア: 会う人の誰もが 疑問に思わないなんて
- ユニア: …あれは、わたしが 魔法でなりすましたいつわりの姿
- ユニア: ユニアの侍女を名乗りながら ユニアと一緒にいたことは 一度もないのに…
- ユニア: …正体を悟られないように
- ユニア: 数えきれないほどの 嘘とごまかしを重ねました
- ユニア: わたしの出自も、秘めた恋も
- ユニア: 時には神の遣いを騙ってまで…
- ユニア: ふふ、転身の魔法を得たのだって 本当はわたしが…
- ユニア: 過去に生まれ変わりたいと 願ったからですよね?
- ユニア: 真実は、胸の内に秘めたまま 誰にも言いませんでした
- ユニア: マリウス様のお気持ちを お姉様に向けるため…
- ユニア: お姉様のお気持ちを マリウス様に向けるため…
- ユニア: ひとつ嘘をつくたびに 心が悲鳴をあげました
- ユニア: …それでも、みんなを 守りたかったんです
- ユニア: だって、他にどうすればいいか わからなくて…
- ユニア: ひとつの願いとひきかえに わたしはすべてを捧げました 命を、魂を、恋心を
- ユニア: お姉様も、マリウス様も お義父様もお義母様も 大好きなみんなも亡くして… わたしは最後に、“ユニア”を… 恋する心を殺しました
- ユニア: 女神様に一生を捧げる覚悟を決めて ウェスタの煌乙女に なったつもりだったのに…
- ユニア: わたしは過去のわたし自身に 生まれ変わっていました
- ユニア: わたしが一度目の生を生きた証拠は ただひとつ、この腕輪だけ
- ユニア: 来たるべき災禍のことを いくら口にしても 怖がりな娘だと思われるばかりで
- ユニア: 誰にも信じてもらえなかった…
- ユニア: まるで、神の愛を拒んだ カサンドラ姫の受けた呪いが わたしに下ったかのようでした
- ユニア: かつて煌乙女になるのを拒んだわたしに…
- ユニア: もしも、あのまま“ユニア”でいれば 魔法の力を借りなければ
- ユニア: わたしの言葉は誰ひとり動かせず マリウス様への想いも お姉様に気づかれていたでしょう
- ユニア: だから、わたしは “アマリュリス”になりました
- ユニア: 出会ったみんなに助けられて 未来を変えることはできたけれど
- ユニア: すべての命を救うことは できませんでした…
- ユニア: 本当は、みんな助けたかった 誰ひとり傷ついてほしくなかった
- ユニア: それが神意を拒んだ わたしの罪ならば…
- ユニア: わたしはその罪を あがないながら生きていきます
- ユニア: この腕輪を… きらめく思い出のよすがとして
- ユニア: 救えなかった人々を弔いながら この命が尽きるまで…
- ユニア: ローマの安寧に身を捧げ 平和と添い遂げる者として
- ユニア: …パクス・ロマーナの恋人として
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