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- 646301-1_L40sg
- 久しぶりに覗いてみよう
- この魔法少女の物語を…
- やちよ: ふぅ… あとはお皿を出して…
- さな: 手伝いますよ、やちよさん…
- やちよ: ありがとう
- やちよ: ただ、フェリシアを起こして もらうほうがいいかもしれないわ
- さな: あ、それなら 大丈夫だと思います…
- フェリシア: おはよー
- やちよ: …おはよう
- さな: おはようございます フェリシアさん…
- やちよ: ついクセで心配しちゃうけど もう起きられるようになったわね
- さな: 少し前は、登校するギリギリまで パジャマでしたしね
- フェリシア: ま、オレも せいちょーしてるからな!
- フェリシア: そうだ、やちよ これ洗ってくれ!
- やちよ: ちょっと…昨日の給食で使った ランチョンマットじゃない!
- やちよ: 汚れ物はその日のうちに出して っていつも言ってるでしょ
- フェリシア: 昨日は見つかんなかったんだよ
- やちよ: もう…
- やちよ: …っと、この話はあとにして 早く朝ごはんを食べましょう
- バタン!
- バタバタバタバタッ
- 鶴乃: おっはよー!
- 鶴乃: 今日も元気で笑顔な鶴乃ちゃん 参上!!
- やちよ: おはよう、鶴乃 朝ごはんはどうする?
- 鶴乃: わたしは食べてきたから だいじょーぶ!
- 鶴乃: それより!!
- 鶴乃: すっごくハラハラする ニュースを見たんだよ!
- 鶴乃: またテレビでやるかもっ
- フェリシア: あ? なんだ?
- 鶴乃: ―鶴乃― カルガモ親子の行進だよ! ほらっ
- フェリシア: ―フェリシア― うわっ!あぶねえ!
- フェリシア: ―フェリシア― なんで道路のど真ん中を通るんだよ!? もっと安全な道を行けって!
- 鶴乃: ―鶴乃― あはは! テレビに向かって言ってもしょーがないよ
- さな: ―さな― あ、あの…ふたりとも…! ゆっくりテレビを見る時間はないですよ…!?
- やちよ: ―やちよ― まったく…成長したと思ったけど まだまだ変わってないわね…
- やちよ: ―やちよ― ほら、学校に遅刻するわけにはいかないし 早く朝ごはんを食べちゃって
- ごちそうさまでした
- 鶴乃: おそまつさまでした!
- やちよ: …って、なんで鶴乃が言うのよ
- 鶴乃: えへへー、勢いで!
- フェリシア: まだ時間あるよな? さっきのテレビの続きを…
- やちよ: ダメよ
- やちよ: 忘れ物がないかのチェックも してないでしょ
- やちよ: 今日は忘れ物をしても 届けてあげられないんだから
- 鶴乃: ほっ? やちよは仕事の日だっけ?
- やちよ: ちょっと人と会う予定があるのよ
- やちよ: みんなの今日の予定は?
- 鶴乃: わたしは万々歳を手伝ったら またみかづき荘に来るよ!
- 鶴乃: 今日は泊まる予定!
- フェリシア: オレはかことあやめと遊ぶぞ!
- さな: 特に予定はないので 学校が終わったら帰ってきます
- やちよ: 夜にみんなが揃うなら 何かお土産でも買ってくるわ
- フェリシア: よっしゃー! 買うなら肉一択だからな!
- やちよ: 今夜は魚にするつもりだから デザートになるものを買うわよ
- フェリシア: むー…ま、それでもいいぞ!
- やちよ: ふふ…それじゃ出発しましょ
- やちよ: …………
- やちよ: …行ってきます
- 646301-2_b3Aan
- 鶴乃: じゃあこの辺でね!
- さな: はい、また放課後に…!
- やちよ: フェリシアは寄り道しないで まっすぐ学校に行くのよ
- フェリシア: ふぇーい
- フェリシア: …………
- フェリシア: (このまま学校に行っても つまんねえ…)
- フェリシア: (授業まで 教室で寝ててもいーけど)
- フェリシア: (ちょっと寄り道すっかな…!)
- フェリシア: (面白いモンが見つかったら あやめとかこに教えてやろっと)
- フェリシア: 寄り道するなって言われたけど バレなきゃ大丈夫だろ!
- フェリシア: …………
- フェリシア: …………
- フェリシア: (なんもねえ…)
- フェリシア: (どこに行っても 忙しそうな大人ばっかだぞ)
- フェリシア: (けどあんまり遠くまで行くと 学校に遅刻しそーだし…)
- フェリシア: (そうなったら やちよにバレて怒られるぞ…)
- フェリシア: …………ん?
- …………
- フェリシア: …………
- フェリシア: (オレと同じ制服だし 迷子…じゃなさそーだな)
- フェリシア: (落とし物でもしたのか?)
- フェリシア: (ま、オレには関係ねえけど)
- フェリシア: …………
- フェリシア: …………
- フェリシア: …………戻るか
- フェリシア: おい
- ――っ!?
- フェリシア: 通学路でウロウロするなんて きょどーふしんだぞ!
- フェリシア: なんか困ってることでも あるのか?
- え…えっと…
- フェリシア: オレさ、今日はいつもより 早く家を出られたんだ
- そうなんだ…?
- フェリシア: だから、落とし物したなら 探すのに付き合ってやれるぞ!
- フェリシア: どうだ?
- あ…ありがとう…
- でも、そういうのに 困ってるんじゃなくて…
- フェリシア: あ?
- フェリシア: じゃあ朝飯食べるの忘れて 腹が減ってるのか?
- …………
- …ちょっとね、学校に 行きづらいなって思ってただけ…
- フェリシア: なんでだよ
- …………
- 昨日、お友だちとケンカしてね 謝りたいんだけど…
- 許してくれなかったらって思うと 怖くて…
- フェリシア: なんだよ、そんなことか
- そんなことって…!
- フェリシア: んなの、謝ってみねーと わかんないだろ
- そうだけど…
- フェリシア: こーいうのは、早ければ早いほど いいってやちよが言ってたぞ!
- フェリシア: 怖いならオレが付き合ってやるし 早く学校行って謝ろーぜ!
- フェリシア: もしまだ怒ってたらさ そん時に考えればいいじゃん
- フェリシア: オレも力貸すし!
- うん… ありがとう…
- フェリシア: おうっ
- フェリシア: いろはとういと約束したんだ 1日1回はイイコトをするって
- フェリシア: オレ、まだまだ周りが 見えてなかったりして
- フェリシア: 自分のことばっかりに なっちまうけど
- フェリシア: いろはとういが考えてたみたいに
- フェリシア: 周りのヤツ全員がいつも笑って いられるように頑張りたいんだ
- フェリシア: だからさ、約束は守るよ
- フェリシア: オレ、ふたりにびっくりされる くらい成長するからさ!
- フェリシア: …ずっと見ててくれよな
- 646301-3_gzkcd
- さな: …………
- …はい、やめ
- では、テストを隣の席の人と 交換して採点してください
- 先生、隣の人が いないんですけどー
- じゃあ前後の人も含めて 3人で交換してください
- はーい
- さな: …………
- さな: (魔法少女になった時の 願いのせいで)
- さな: (魔法少女以外には、私の存在が とても薄くなっちゃう…)
- さな: (慣れたけど、こういう時は やっぱり困るな…)
- さな: (でも…魔法少女になったから 手に入れられたものもある…)
- キーンコーンカーンコーン
- まなかの声: さなさーん!
- さな: 胡桃さん…!
- 胡桃 まなか: お待たせしました 昼食にしましょう!
- 若菜 つむぎ: うんうん、早く食べよう? お腹が空いて倒れそうだよ~!
- 胡桃 まなか: それは いつものことじゃないですか…
- 阿見 莉愛: 麻友さんと史乃さんも来るけれど 授業の後片付けで遅れるそうよ
- 若菜 つむぎ: そういうことなら、私たちで 先に食べ始めてようよ!
- 胡桃 まなか: まあ…そうですね、つむぎさんは 我慢できないでしょうし…
- さな: ふふ… じゃあ、さっそく…
- みんな: いただきます
- さな: 胡桃さんのお弁当は 今日も美味しそうですね…!
- 胡桃 まなか: 1口、食べますか? このオムレツでもどうです?
- さな: え、いいんですか…?
- 胡桃 まなか: はい、今日のは自信作なので!
- さな: えっと…じゃあ… いただきます…!
- 胡桃 まなか: 遠慮なくどうぞ!
- さな: あ、あの…料理人の胡桃さんには 失礼かもですけど…
- さな: もらうだけでは申し訳ないので 私のおかずと交換しませんか…?
- 胡桃 まなか: いいんですか?
- 胡桃 まなか: では…その卯の花を 1口もらいたいです!
- さな: はい、どうぞ…!
- 胡桃 まなか: あーむっ
- 胡桃 まなか: …………
- 胡桃 まなか: うん、美味しいですね!
- さな: 本当ですか…?
- 胡桃 まなか: はい!
- 胡桃 まなか: 味は薄めですが、調味料の配合は よく考えられています
- 胡桃 まなか: さなさんが食べる人を想って 作っているのがわかりますよ
- さな: …………
- さな: それは…
- さな: …………
- 胡桃 まなか: どうかしました?
- さな: いえ…
- さな: …ありがとうございます
- さな: 胡桃さんにわかってもらえて すごく…嬉しいです…
- さな: 卯の花も、他の料理も
- さな: いろはさんに教わって作れる ようになったものばかりですね…
- さな: 味を褒めてもらえて嬉しいのに いろはさんにはもう伝えられない
- さな: そのことが寂しくて 下を向きそうになるけど…
- さな: 『嬉しいことをしてもらったら 必ず感謝を伝える』って
- さな: いろはさんとういちゃんと 約束をしたから、前を向けます
- さな: …魔法少女以外の人に 認識してもらえない私にとって
- さな: 誰かに何かをしてもらえるのは すごく嬉しいことだから
- さな: 孤独に思えても、誰かは私を見て くれているって忘れないように
- さな: これからも感謝を伝えて 生きていきます…
- さな: だから… いろはさん、ういちゃん…
- さな: 私、頑張りますから… きっと見ていてくださいね…!
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- 鶴乃: ありがとうございましたー!
- 鶴乃: いやぁ~、この時間にしては 珍しく混んだねぇ
- 鶴乃の父: ありがとな
- 鶴乃の父: しばらくは客足も落ち着くし あとは手伝わなくて大丈夫だ
- 鶴乃: んー、じゃあ…
- 鶴乃: 今のうちにお父さんの夕飯を ちゃちゃっと作っておくよ!
- 鶴乃の父: いやいやいいよ それくらい自分で作れる
- 鶴乃: それはまかない料理でしょ?
- 鶴乃: 毎日同じような中華しか食べて ないって知ってるんだから!
- 鶴乃: 栄養が偏るといけないし ここはわたしに任せてよ!
- 鶴乃の父: 鶴乃は言い出したら 聞かないからなぁ…
- 鶴乃の父: …仕方ない 甘えさせてもらうよ
- 鶴乃: よしっ!
- 鶴乃: 鶴乃ちゃん特製! 特盛冷やし中華の完成ー!
- 鶴乃の父: 結局、中華…!?
- 鶴乃: 野菜たっぷりで栄養満点だから これはこれでいいの!
- 鶴乃: 冷蔵庫に入れておくから 作業が落ち着いたら食べてね?
- 鶴乃の父: あ、ああ…ありがとう
- 鶴乃: さてと! お次は宿題だー!
- 鶴乃の父: そういえば今晩、やちよちゃんの お宅に行くんじゃ…?
- 鶴乃: うん、だから行く前にパパッと 宿題を終わらせるんだ!
- 鶴乃: あっちではフェリシアの宿題を 見てあげたいからね!
- 鶴乃の父: …いつものことだが、もう少し ゆっくりしても罰は当たらんぞ
- 鶴乃: いやー、むしろ今やれることを やらないと気になっちゃって…
- 鶴乃: そんなに疲れてもないし わたしのことならだいじょーぶ!
- ???の声: こんにちはー
- 鶴乃: ほっ?
- 鶴乃: あれ、ししょー!?
- やちよ: 近くで夕飯の買い物をしていてね ついでに迎えに来たわ
- 鶴乃: ししょーってば優しい~!
- やちよ: 大げさね
- やちよ: …今日も張り切りすぎて 暴走してないかと思っただけよ
- 鶴乃: 『今日も』って何さー
- 鶴乃の父: ははは、やちよちゃんは よくわかってるなぁ
- 鶴乃: ちょ…お父さんまで!?
- やちよ: とりあえず、このまま一緒に 行きましょう
- 鶴乃: でも宿題がまだ…
- やちよ: 今日は私が見てあげるわ
- 鶴乃: いいの? ししょーも忙しいのに…
- やちよ: たまには人を頼って 肩の力を抜きなさい
- 鶴乃: あ!! そーだった!
- やちよ: ――っ!?
- やちよ: ちょっと…大きな声出さないで びっくりするじゃない…
- 鶴乃: ごめぇん…
- 鶴乃: でもね、思い出したんだ 大事な約束をしてたって!
- 鶴乃: いろはちゃんとういちゃんにも 言われたんだ
- 鶴乃: ひとりで頑張りすぎだし いつも心配してるって…
- 鶴乃: わたしは平気なつもりでも
- 鶴乃: 周りの人を心配させるような 頑張り方じゃダメなんだよね
- 鶴乃: だから、『時々は肩の力を抜いて 自分を労う時間を作る!』って
- 鶴乃: いろはちゃんたちと約束したのに もう破っちゃうところだった…
- 鶴乃: わたしはまだまだ未熟者だけど
- 鶴乃: 遠くに行ったいろはちゃんたちに 心配させたくないから
- 鶴乃: 約束はしっかり守るよ!
- 鶴乃: だから、安心して… ずっと見ていてくれたら嬉しいな
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- 鶴乃: ごちそうさまでしたー!
- 鶴乃: いやー、今日もししょーの料理は 絶品だね!
- フェリシア: オレはもっと肉があっても よかったけどな
- さな: やちよさん お皿は私が洗いますね…
- やちよ: ありがとう、助かるわ
- やちよ: …………
- やちよ: (みかづき荘に帰ってきたら 支度をして)
- やちよ: (全員が揃ったところで 夕飯を囲む)
- やちよ: (いつもの光景ではあるけど この時間が一番ホッとするわね)
- やちよ: (それに…)
- 鶴乃: よし、フェリシア! 宿題をやるよ!
- フェリシア: えー
- 鶴乃: 今日はわたしも自分のをやるから 一緒に頑張ってみよーよ!
- フェリシア: うー… でもオレ、ゲームしたいぞ…
- 鶴乃: 宿題終わったら やればいいじゃん!
- フェリシア: むぅ…あ!
- フェリシア: さな! オレも皿洗いを手伝うぞ!
- 鶴乃: ごまかされた!?
- さな: お手伝いは嬉しいですけど
- さな: 割らないように 気を付けてくださいね…?
- フェリシア: わーってるって!
- 鶴乃: じゃあわたしも手伝うー!
- やちよ: …………
- やちよ: (前から、みんなでよく一緒に リビングにいたけれど)
- やちよ: (ここ最近は特に、一緒に過ごす 時間が増えた気がするわ)
- やちよ: あ…そうだわ みんなにお土産があるんだった
- 鶴乃: そういえば今朝言ってたね
- フェリシア: デザートだよな!? 早く食べよーぜ!
- さな: あ、その前に お皿を洗っちゃいましょう…!
- やちよ: じゃあ私は今のうちに お茶を淹れておくわね
- やちよ: 私からのお土産はこれよ
- やちよ: 宝崎市の名産品の 「ザックザクサブレ」
- さな: なんだかこのお菓子、 見覚えがあります…
- やちよ: 前に一度、いろはがお土産にって 買ってきたことがあったからね
- 鶴乃: 今朝、人と会うって言ってたけど 宝崎市に行ったんだ?
- やちよ: ええ、いろはとういちゃんの ご両親に会ってきたの
- 鶴乃: え…!?
- やちよ: ご両親からいただいたお菓子も あるから、みんなで開けましょう
- フェリシア: お、おい…待てよやちよ!
- フェリシア: なんでやちよがいろはたちの 父ちゃんたちに会ったんだ…?
- やちよ: それは…
- やちよ: いろはたちとの約束を 果たすためよ
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- やちよ: 「いろはとういちゃん 里見さんに柊さん…」
- やちよ: 「“4人がいなくなったあとで 私たちに少しずつ日常が戻って来たと思えた頃に それぞれの家族へ預かりものを渡す”って いろはたちと約束していたの」
- やちよ: 「だから私は、まずはじめに 柊さんのお母さんへ会いに行ったわ」
- ねむの母: 待たせたわよね ごめんなさい
- やちよ: いえ、お忙しいのに お呼び立てしてすみません
- ねむの母: いいのよ
- ねむの母: …ねむのことで話があるって 言われたら
- ねむの母: どんな仕事だって片づけて来るわ
- やちよ: …ありがとうございます
- ねむの母: …………
- やちよ: …………
- やちよ: …………あの…
- ねむの母: ねむがいなくなる前に 魔法少女のこと、聞いてはいたの
- やちよ: そうだったんですか…
- ねむの母: でもね、あまりに現実味がないし
- ねむの母: それこそあの子の 創作みたいな話でしょう?
- ねむの母: だから信じてなかった
- ねむの母: …信じてあげられなかった
- やちよ: …………
- ねむの母: …ねむがいなくなったあとも 信じられなかったけど
- ねむの母: 里見さんのお父さんと叔父さんに 話を聞かせてもらって
- ねむの母: 少しずつ受け入れられるように なって、やっと実感も湧いたの…
- ねむの母: …バカよね
- ねむの母: こんな状況になってから じゃないと後悔できないなんて…
- やちよ: …失ってから気づくことも たくさんあります…
- ねむの母: 慰めなくていいわよ
- ねむの母: ダメな母親だったって 自分でわかってる
- ねむの母: 最後に何かしてあげたかったけど
- ねむの母: あの子のために私ができることは もうないのよね…
- ねむの母: ねむも今ごろ、諦めを通り越して きっと呆れてるわ…
- やちよ: …まだあります ねむさんのためにできること…
- ねむの母: え?
- やちよ: 今日お呼びした理由です
- やちよ: ねむさんから預かったものを お渡ししたいんです
- ねむの母: …? シロクマのぬいぐるみ…?
- やちよ: 覚えていませんか
- ねむの母: うーん… ねむの入院中に買ったのかしら?
- ねむの母: 入院期間が長かったし、色々と 差し入れてたからわからなくて…
- ねむの母: ねむはこのぬいぐるみが 一番好きだったのかな
- やちよ: …このシロクマは ねむさんが入院した時に
- やちよ: お母さんから初めてもらった ぬいぐるみだったそうです
- ねむの母: …………
- やちよ: ねむさんは、ご両親が多忙で お見舞いに来られなくても
- やちよ: このぬいぐるみといれば
- やちよ: 家族と繋がっているように 感じられて、安心できたそうです
- ねむの母: …………
- やちよ: 『お母さんに、このシロクマを 僕だと思って持っていてほしい』
- やちよ: …と言っていました
- ねむの母: …………
- ねむの母: …考えてみれば
- ねむの母: 入院していた頃のねむは わがままを全然言わない子だった
- ねむの母: …そんなあの子のお願いだもの
- ねむの母: このぬいぐるみ 一生、大切にするわ
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- やちよ: 「柊さんのお母さんと別れたあとは 里見さんのお父さんを訪ねたの」
- 灯花の父: わざわざ来てもらって すまないね
- やちよ: いえ、お元気そうで良かったです
- 灯花の父: はは…一時は死も覚悟したんだが 私もなかなかしぶといようだ
- やちよ: すみません… 魔法少女に関わったせいで…
- 灯花の父: いや、七海さんが 気にすることじゃない
- 灯花の父: それに、これから何が起きても
- 灯花の父: 魔法少女のことを広めるのに 手を貸すのは変わらないよ
- 灯花の父: それが灯花の願いだったからね
- やちよ: ありがとうございます とても心強いです
- 灯花の父: 嬉しい言葉だが、私は非力だし あまり役には立てないよ
- 灯花の父: 娘ひとり、過酷な運命から 助けてやれなかったんだ…
- やちよ: そんな…………
- 灯花の父: 今でもたまに、娘の運命を 理不尽だと思ってしまう
- 灯花の父: 幼くして病を患い、 外の世界を知ることもできず
- 灯花の父: 願いと引き換えに 魔法少女になって
- 灯花の父: 最後は魔法少女と世界のために 全てを投げ出して…
- やちよ: …………
- 灯花の父: …いや、わかってはいるんだ
- 灯花の父: 私があの子の決断を悲観するのは 許されない
- 灯花の父: 幼い灯花を入院させて 自由を与えなかったのは…
- 灯花の父: あの決断に至らせたのは 他の誰でもなく、私だからだ…
- 灯花の父: あの子のためにしてやれるのは 意志を継いでやることだけだ…
- やちよ: …………
- 灯花の父: ああ、すまない 私のことばかり話してしまった
- 灯花の父: 今日は灯花のことで 話があるんだったね?
- やちよ: あ、はい…
- やちよ: 実は灯花さんからお父さんへ 預かっているものがあるんです
- 灯花の父: …それは?
- やちよ: 灯花さんが使っていた スマートフォンです
- やちよ: これに、お父さんに見てほしい 動画が残されているらしくて
- 灯花の父: …!
- やちよ: 見ていただけますか?
- 灯花の父: …もちろんだ
- 灯花の声: 「えっとー、この動画は 1回しか再生できない仕組みにしてるから 耳をゾウさんにして、よーく聞いてね!」
- 灯花の声: 「…きっと今のパパ様には わたくしの言葉が必要だと思うから」
- 灯花の声: 「…わたくしはね パパ様を恨んでなんかない」
- 灯花の声: 「魔法少女になる前のわたくしに 自由はなかったけど その分、パパ様がたくさんの知識を 与えてくれてたって、今ではわかってるから」
- 灯花の声: 「だからね パパ様も、もう自分を責めないで わたくしの意志とは関係なく パパ様がやりたいことをやってね」
- 灯花の声: 「あっ、でもできればこれからも たくさんの人を救ってほしいかにゃー」
- 灯花の声: 「それがわたくしの大好きで 憧れるパパ様だから、くふふっ」
- プツッ
- やちよ: …終わりみたいですね
- やちよ: あ…動画… 本当に再生できなくなってる…
- 灯花の父: …っ…………
- 灯花の父: …ありがとう、灯花…
- やちよ: 里見さん…
- 灯花の父: 灯花のいない寂しさは消えないが
- 灯花の父: それ以上に、大勢の人々を救うと 決断したあの子は私の誇りだよ
- 灯花の父: …私もいつまでも こんな気持ちでいてはいけないね
- 灯花の父: 灯花への贖罪のためじゃない
- 灯花の父: 私も、誰かを助けるために 前を向こう
- やちよ: …………
- 646301-8_to4JE
- やちよ: 「最後は宝崎市に行って いろはとういちゃんのご両親を訪ねたわ」
- やちよ: 色々と…聞きたいことも 言いたいこともありますよね…
- いろはの父: ああ…そうだね…
- いろはの父: ただ、一体何から 話せばいいのか…
- いろはの母: いろはとういから、魔法少女の 話を聞いた時は正直驚いたわ…
- いろはの父: ただ、ふたりとも真剣だったし
- いろはの父: あの子たちが嘘をついて 困ったことなんてなかったしな…
- やちよ: すぐには信じられなくて 当然だと思います…
- いろはの母: いろはとういがいなくなったあと
- いろはの母: 灯花ちゃんのお父さんと 叔父さんからもお話を聞いてね
- いろはの母: 嘘でもごまかしでもないって 理解したつもりではいるのよ…
- いろはの父: それでも… 誰もいない子ども部屋も
- いろはの父: 残されたあの子たちの物も 受け入れるのはまだ難しくてね…
- やちよ: …………
- いろはの母: いろはたちの決断はみんなを救う って、聞いてはいたけれど
- いろはの母: こうして置いて行かれてしまうと やっぱり悲しいわ…
- いろはの母: …本音を言えばね 世界中の人が幸せになっても
- いろはの母: いろはとういがいないのに
- いろはの母: 私たちは幸せになんかなれない って思ってしまうから…
- いろはの父: …七海さんの前だぞ…
- やちよ: …すみません
- いろはの母: やだ、違うのよ… 誰かのせいだなんて思ってないわ
- いろはの母: それにね、たまにだけれど 前向きになれる時もあるのよ
- やちよ: え…
- いろはの母: 宝物のふたりがいなくなって 毎日寂しいけれど…
- いろはの母: 穏やかな日常も 誰かの笑顔も、些細な幸せも
- いろはの母: あの子たちがこの世界を守って いるおかげなんだって思うとね
- いろはの母: 心が温かくなって あの子たちを近くに感じられるの
- やちよ: …………
- いろはの母: みんなが穏やかに 暮らせているなら
- いろはの母: あの子たちの決断は間違いじゃ なかったって思えるわ…
- やちよ: …………
- やちよ: あの…今日こうして 来させてもらったのは
- やちよ: 娘さんたちからご両親へ預かった ものを渡すためなんです
- いろはの父: …?
- やちよ: これをどうぞ
- いろはの母: 星型のライト…?
- いろはの父: 手作りみたいだね こっちは…
- カサ…
- いろはの父: あ…家族の似顔絵…!
- いろはの母: これはういの絵ね…
- いろはの父: じゃあライトは…
- やちよ: いろはさんの手作りだそうです
- やちよ: 『ライトと似顔絵を 天井や壁に飾って』
- やちよ: 『寂しくなったら見上げてね』 って言っていました
- やちよ: 『私たちはいつでもお父さんと お母さんを見守っているから』と
- いろはの父: ああ…
- いろはの母: っ…ごめんね、いろは…うい…
- いろはの母: お母さん…自分が寂しいからって そのことばかり考えて…
- いろはの母: いろはとういだって 寂しかったはずだよね…
- いろはの父: 本当に… どこまでも人を気遣って…
- いろはの父: こんなに優しい子たちに 育ってくれていたんだな…
- いろはの母: ええ…
- やちよ: …………
- いろはの父: ありがとう、七海さん…
- いろはの父: みかづき荘のみなさんにも よろしく伝えてください
- いろはの父: 娘たちが楽しく過ごせたのは みなさんのおかげですから
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- やちよ: …そういうわけで
- やちよ: いろはたちとの約束を 全部果たしてきたの
- さな&フェリシア: …………
- 鶴乃: …………
- やちよ: どうかした、鶴乃?
- 鶴乃: あ、えっと… やちよは大丈夫…?
- やちよ: え…
- 鶴乃: いろはちゃんとういちゃんは
- 鶴乃: わたしには「もっと自分を労う」 って約束を残してくれたんだ
- 鶴乃: だけど、やちよは
- 鶴乃: いろはちゃんたちとの約束を 果たしちゃった
- 鶴乃: 今までは、約束を果たす タイミングを考えたりして
- 鶴乃: いろはちゃんたちとの繋がりを 感じられてたかもしれない…
- 鶴乃: でも…
- やちよ: …………
- やちよ: …鶴乃の心配は当たってるわ
- やちよ: 私も正直怖かった
- やちよ: いろはたちの約束を果たしたら 私には何も残らないのかもって…
- さな: …………
- やちよ: だけどね、今は不思議なくらい 晴れ晴れとした気持ちなの
- フェリシア: そーなのか…?
- やちよ: ええ…
- やちよ: 「いろはとういちゃんがいない日常は わかっていたけれど、やっぱり寂しかったし 当たり前のものになんかならない」
- やちよ: 「隣にいたはずの姿を探してしまうし 聞こえていたはずの声を待ってしまう」
- やちよ: 「それでも 何もかもなくなったわけじゃない」
- やちよ: 「いろはたちとの温かい記憶が いろはたちが約束として残した優しさが ここにはある」
- やちよ: 「それに、いろはたちのおかげで 魔法少女が魔女にならずに済むこの世界には 希望だけが残されてる」
- やちよ: 「あの子たちがいない日常は、寂しいけれど 想像していたよりはずっと温かくて 穏やかで、安心できる場所だった」
- やちよ: この幸せを享受するだけだったら
- やちよ: 私には 何も残らなかったでしょうね
- 鶴乃: じゃあ…
- やちよ: いろはたちとの約束はないけれど 私には、私に課した使命がある
- やちよ: あの子たちが残した希望を 広めるっていう使命が、ね
- 鶴乃: …!
- やちよ: だから、私は大丈夫よ
- やちよ: この使命を忘れない限り、きっと いろはたちと繋がっていられるわ
- 鶴乃: …………
- 鶴乃: よかったー!! それでこそ、ししょーだよ!!
- やちよ: きゃっ!? 急にやめてよ…!
- 鶴乃: ごめんごめん! でもなんか嬉しくなっちゃって!
- やちよ: 嬉しい…?
- 鶴乃: わたしもししょーと同じでさ 魔法少女の希望を広め続けて
- 鶴乃: ずっといろはちゃんたちと 繋がっていたいって思ってた!
- フェリシア: 難しいことはわかんねーけど
- フェリシア: それでいろはたちが 見ててくれるならオレもやるぞ!
- さな: 私ももっと役に立てるように 頑張ります…!
- やちよ: みんな…
- やちよ: …全員で頑張りましょう いろはたちのためにも…!
- みんな: おー!
- フェリシア: …で、やちよの土産と もらったお菓子はいつ食うんだ?
- 鶴乃: あ…忘れてた!
- さな: やちよさんが淹れてくれたお茶、 すっかり冷めちゃいましたね…
- 鶴乃: わたしが淹れ直してくるよ!
- やちよ: ええ、お願い
- やちよ: ――っ!?
- 鶴乃: 魔女の気配だね ここからそんなに遠くない
- フェリシア: っしゃあ! 久々にズガンとかますぜ!
- さな: やちよさん…!
- やちよ: みんなで向かいましょう!
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- やちよ: ふぅ…
- さな: お疲れさまでした…!
- フェリシア: あっという間だったな!
- 鶴乃: わたしたちの連携プレーがあれば どんな魔女でもへっちゃらだよ!
- フェリシア: ――っ!?
- 鶴乃: また魔女…? 最近だと珍しいね
- フェリシア: 行こーぜ、鶴乃!
- フェリシア: 今度はオレがフィニッシュを 決めるんだ!
- 鶴乃: ちょっ!?
- 鶴乃: 連携が大事なんだから 単独行動はダメだよ!
- さな: 私たちも行きましょう やちよさん…!
- やちよ: ええ…!
- やちよ: …………
- やちよ: …………
- やちよ: この世界から魔女がいなくなるまで戦って 魔法少女の希望を広め続ける
- やちよ: それが私たちの理想だけれど…
- やちよ: 魔女を生む原因になる 悲しみも憎しみも、人の悪意も 簡単には世界からなくならない…
- やちよ: 私たちの理想は 無謀なんかじゃないわよね…? いろは…
- やちよ: …っと、今は魔女退治が優先
- やちよ: 急がないと…
- やちよ: …………
- かえで: 待ってよぉ、レナちゃん…!
- レナ: 早くしなさいよね! レナたちが一番に倒すんだから!
- ももこ: 張り切るのはいいけど ケンカはするなよ?
- みたま: あらあら、ももこたちってば 来るのが早いのねぇ
- 都 ひなの: これだけ頭数が揃っていれば 楽勝だな
- 十七夜: 都、油断は禁物だぞ 警戒を怠るな
- みふゆ: 魔女1体に魔法少女がこんなに…
- 月夜: 大集合にございます
- 月咲: ねー!
- みふゆ: でも、それだけみなさんが 積極的に活動している証拠ですね
- 鶴乃: あっれー? もうみんな来てたんだ!
- さな: 私たちが一番早いと 思ってました…
- フェリシア: つーか、みんな 張り切りすぎじゃね?
- ももこ: あはは、ホントだな
- レナ: 別にフツーよ、フツー
- レナ: 魔女も使い魔も早く倒して 平和な世の中にするわよ
- かえで: うんっ じゃあ早速行こう…!
- レナ: って、 なんでかえでが仕切るのよ!?
- やちよ: …………
- やちよ: …………ふふ…
- さな: …? やちよさん…?
- やちよ: あ、ううん… なんだかホッとしてね…
- やちよ: 私やみかづき荘のみんなだけじゃない
- やちよ: いろはたちが残してくれた希望を 世界中に広めたいと思ってくれて 同じように活動する仲間はたくさんいる
- やちよ: それは、神浜市の魔法少女だけに留まらない
- やちよ: 時女一族の魔法少女たち
- やちよ: 二木市の魔法少女たち
- やちよ: ネオマギウスの魔法少女たち
- やちよ: 湯国市の魔法少女たち
- やちよ: 調整屋として各地を回る魔法少女たち
- やちよ: 私たちがまだ会ったことのない 世界中の魔法少女たちも いろはたちが残した希望を受け取って 活動してくれている
- やちよ: …………
- やちよ: (今は夢物語のように思えても 途方もない目標に見えても)
- やちよ: (希望を願った魔法少女になら きっと叶えられる)
- やちよ: (辿り着ける場所がある)
- やちよ: …………
- やちよ: …みんな、準備はいいわね?
- やちよ: (託されたこの世界を 私たちの手で守るために…)
- やちよ: さあ、行くわよ
- みんな: 「はい!」
- やちよ: いろは…
- やちよ: 私は、あなたが残した希望を 受け継いで
- やちよ: この世界から 魔女がいなくなるまで戦うわ
- やちよ: それがたとえ無謀な願いに 思えてもね
- やちよ: だって、私たちの道は まだまだ続くんだもの
- やちよ: この願いが叶うのかどうか 未来まで行って確かめるわ
- やちよ: だから…
- やちよ: 私たちのこと 見ていてね、いろは
- やちよ: どんな時も、信じているから…
- まだ誰も知らないこの物語の続きを 私たちが見届けよう
- いつか、みんなに伝えられる その時がくるまで…
- おわり
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