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- 327001-1.txt
- なぎさ: 『神浜日記』
- なぎさ: 2月14日なぎさは今、見滝原に来ているのですそして、たいへん後悔しているのです
- なぎさ: …どうしてなぎさは『神浜日記』なんて
- なぎさ: 地域限定の名前をつけてしまったのですか!?
- なぎさ: タイムマシンがあったらあのときの自分を叱りたいのです
- なぎさ: 『なぎさ日記』ではいけなかったのですか!?…と!
- なぎさ: (「円環の理」の使いとして地上に来て)
- なぎさ: (自由になったのが嬉しくて深く考えていなかったのです…)
- なぎさ: …コホン
- なぎさ: そもそも今は日記を書いている場合ではないのです
- なぎさ: 事態は1分1秒を争うのですどうしてかというと…
- なぎさ: 今日はバレンタインデー!
- なぎさ: 安売りチョコを狙うショコラハンターにとって開戦の日なのです
- なぎさ: そう…少ないお小遣いでやりくりするなぎさにとって
- なぎさ: バレンタインの後が本当の戦争なのです!
- なぎさ: マミに招待されたショコラパーティーまであと3時間…
- なぎさ: (バレンタインデーの午後…)
- なぎさ: (早い店ではセールが始まる時間なのです)
- なぎさ: (本当はバレンタイン前に街中のお店をチェックして)
- なぎさ: (売れ残りが出そうなお店を確認しておくのが基本ですが)
- なぎさ: (…実は、なぎさが見滝原に戻ってきたのは今日なのです!)
- なぎさ: (正直言ってこれは大きなハンデなのです)
- なぎさ: …おまけに今日は時間も限られていますし
- なぎさ: 戦争は明日あさってと続くのです
- なぎさ: だから、今日は今日しかできないことをやるのです
- なぎさ: なぎさが大人だったら見切りの早い生チョコや
- なぎさ: チョコレートケーキを置いているお店を回るのですが…
- なぎさ: 子どもでも買えるお買い得品に狙いを絞るのです
- なぎさ: つまり…
- なぎさ: なぎさが大好きな
- なぎさ: “ピンク・タピール”のバレンタイン限定メダルチョコ…
- なぎさ: それを少しでも安く買えるお店をチェックするのです!
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- 327001-2.txt
- なぎさ: フルーツケーキの店“シュガープラム”
- ざわざわ…
- なぎさ: 意外なのです…
- なぎさ: おいしいのに、いつもすいてる!
- なぎさ: チョコとフルーツの奇跡の出会い!
- なぎさ: …なぎさお気に入りのこのお店が
- なぎさ: いつのまにか、こんな人気店になっていたのです
- なぎさ: バレンタインにはメダルチョコも置いているはずなのですが
- なぎさ: もう売り切れだったのです…
- 杏子の声: お、なぎさじゃん
- なぎさ: …杏子!どうしてここに!?
- 杏子: ん…まぁ、ちょっとな
- なぎさ: む…秘密ですか?秘密はよくないのです
- 杏子: たいしたことじゃないから気にすんなって
- 杏子: オマエのそのエプロンの方は…材料買いに来ましたって感じだな
- なぎさ: 確かになぎさは、こう見えても一人前のショコラティエ…
- なぎさ: (なぎさは女の子なので正確にはショコラティエールですが…)
- なぎさ: でも今はショコラティエではなくショコラハンターなのです
- 杏子: …おっ?
- 杏子: この店をチェック済みとはさすがだな
- 杏子: ここのチョコレートアップルパイほんと病みつきになるよな!
- なぎさ: ――っ!?
- なぎさ: (“シュガープラム”のチョコレートアップルパイを)
- なぎさ: (リピートしている…!?)
- なぎさ: (うらやましい…じゃなくてかなりの通なのです…!)
- 杏子: あいにく、今日はもうほとんど品切れみたいだぞ?
- なぎさ: …見滝原はひさしぶりなので
- なぎさ: こんなに人気が出ているとは知らなかったのです
- 杏子: …なるほどねで、このあとはどうすんだ?
- 杏子: マミのショコラパーティーまでまだ少しあるよな?
- なぎさ: あ、なぎさは他の用事を片づけてから行くのです
- 杏子: 用事?
- なぎさ: な、内緒の用事なのです
- 杏子: さっき秘密はよくないって言ったの、誰だよ…?
- 杏子: …ま、どうでもいいけどさんじゃ、またあとでな!
- なぎさ: はいなのです!
- なぎさ: ===============================================
- なぎさ: 327001-3.txt
- なぎさ: とってもラッキーだったのです♪
- なぎさ: バレンタイン限定チョコレートチーズタルト!
- なぎさ: 指をくわえて見ていたらお店の人に声をかけられて
- なぎさ: 売れ残りをタダで食べさせてもらえたのです…!
- なぎさ: チョコとチーズが混ざってないのが最高なのです
- なぎさ: チョコの甘みとチーズのコクが
- なぎさ: 口に入れるたびに違った割合で溶けあっていくのです…!
- なぎさ: (そして…これはなぎさにしかできない楽しみ方なのですが…)
- なぎさ: (よし…今なら誰も見ていないのです)
- ぱくっ
- なぎさ: (この姿のときは、チーズがよりおいしく感じられて…)
- なぎさ: (この姿のときはチョコレートが最高においしく味わえるのです)
- なぎさ: …ひと皿で二度おいしい!
- なぎさ: まるでなぎさのために作られたメニューなのです!
- なぎさ: なぎさのエプロン姿には、秘密があるのです
- なぎさ: ショコラティエモードに変身すると変わるのは味覚だけではないのです
- なぎさ: この格好のもとになった、他の宇宙のなぎさ…ショコラを知りつくしたなぎさの記憶を引き出せるのです!
- なぎさ: あっちの宇宙とこっちの宇宙で
- なぎさ: 見滝原のバレンタイン事情が違ってなくてよかったのです…
- なぎさ: まあ、おめあてのメダルチョコはここでも売り切れだったのですが
- なぎさ: 代わりにおいしいケーキをごちそうになったのです
- なぎさ: …いい気分でショコラハントを再開できそうなのです
- なぎさ: というわけで、お店を出…
- なぎさ: ――っ!?
- 杏子: …ん?
- なぎさ: 杏子もここにいたのですか!?
- 杏子: いま出るトコだよ
- 杏子: チョコレートチーズタルトうまかったなぁ
- なぎさ: …はぁ
- なぎさ: まさか杏子も同じものを…
- なぎさ: ===============================================
- なぎさ: 327001-4.txt
- なぎさ: …で
- なぎさ: どうしてついて来るのですか!?
- 杏子: …ついて来てんのはそっちだろ?
- なぎさ: あくまで偶然だと言い張るつもりなのですか!?
- なぎさ: ありえないのです!
- なぎさ: 行く店ぜんぶでばったり杏子と会うなんて!
- なぎさ: いったいどこへ向かうつもりなのですか!?
- 杏子: “ピンク・タピール”駅前支店…
- 杏子: メダルチョコで有名なブランドの直営店だよ
- なぎさ: なっ…?
- なぎさ: …なぎさと…同じ?
- なぎさ: まさか…杏子の狙いもピンクのメダルチョコ?
- 杏子: なーんだオマエも好きなんだな、あれ
- なぎさ: 好きどころじゃないのです!
- なぎさ: 宇宙で2番目においしいチョコだと思うのです!
- 杏子: …あそこのメダルチョコは日持ちするから安売りしないけど
- 杏子: 限定チョコは例外なんだよね
- なぎさ: バレンタインを過ぎたら需要がなくなってしまうのです
- 杏子: そうそう
- 杏子: 例年通りならもうすぐセールの時間だろ?
- なぎさ: その通りなのです!
- 杏子: 今日は時間がないからゆっくり食べ歩くのは無理だし
- 杏子: 安く買える可能性がある
- 杏子: バレンタイン限定チョコを集めようと思ってね
- 杏子: だからバレンタイン当日の今日いちばんの狙い目は…
- 杏子: “ピンク・タピール”だな、と
- なぎさ: むむむ…
- なぎさ: まさかそこまで見滝原のバレンタイン事情に詳しいとは!
- なぎさ: じゃあ、行く先々のお店でばったり会ったのは…?
- 杏子: ああ、まっすぐ行ったらちょっと時間が余るだろ?
- 杏子: だから途中にあるスーパーとかに寄って…
- なぎさ: …見切りの早そうなお店のワゴンセールを覗いていたと?
- 杏子: そういうこと
- 杏子: よくわかってんじゃん、オマエ
- 杏子: マミのショコラパーティーもこのあとに控えてるしね
- 杏子: 限られた時間内でなるべくたくさん
- 杏子: 店を回っとこうと思ってさ!
- なぎさ: ……………………
- なぎさ: …どこまで考えることが同じなのですか!
- なぎさ: …確かに同時に“シュガープラム”を出て
- なぎさ: 途中にあるお店を効率よく覗きながら
- なぎさ: 最終的に“ピンク・タピール”を目指すとすると…
- 杏子: …このルートしかないよな?
- なぎさ: ……………………
- なぎさ: デキるのです!
- なぎさ: (なぎさと完全に行動パターンが被るとは…)
- なぎさ: (かなり優秀なショコラハンターなのです!)
- 杏子: そういや、さっきなぎさが言ってた用事ってさ…
- なぎさ: あ、なぎさは他の用事を片づけてから行くのです
- 杏子: セールめあてで店を回るって意味だったのか?
- なぎさ: そうなのです…
- なぎさ: はぁ…まさか杏子も同じだったとは
- なぎさ: ひさしぶりの見滝原なのです
- なぎさ: ===============================================
- なぎさ: 327002-1.txt
- なぎさ: なぎさのショコラハントに思わぬライバルが出現したのです
- なぎさ: “ピンク・タピール”のバレンタイン限定チョコを
- なぎさ: 杏子も狙っていたなんて…
- 杏子: バレンタイン前だといい値段するからなぁ
- なぎさ: こだわりの材料を使っているので仕方ないのです
- なぎさ: でも、いまたくさん集めれば
- なぎさ: 毎日がバレンタインになるのです!
- 杏子: ライバル出現だな
- なぎさ: 予想外だったのです
- なぎさ: …待つのです戦争はまだ始まったばかり
- なぎさ: この分だと、明日も同じように
- なぎさ: 行く先々で出会う可能性が高いのです
- 杏子: ああ、潰しあいだな
- 杏子: 今年は不作だしねセールやってる店が少ない
- 杏子: 2割引の店ならあったけど
- なぎさ: それは罠なのです駅前支店なら7割引なのです
- 杏子: それ以下なら即買いだよね…って、競争になっちまうな
- なぎさ: このままだと、そうなるのです
- 杏子: だったら…
- 杏子: 手分けして店を回って情報交換でもするか?
- なぎさ: …それなのです!
- なぎさ: ふたりで協力すれば2倍のお店を回れるのです!
- 杏子: あたしはかまわないよチョコは山分けでいいな?
- なぎさ: もちろんなのです!同盟成立なのです!
- 杏子: で、今日はこのまま
- 杏子: “ピンク・タピール”の駅前支店を目指すかい?
- なぎさ: …それでいいと思うのです
- なぎさ: 駅前支店より安く買えるお店は今年は少なそうなのです
- なぎさ: そんなわけで…ふたりのショコラハンターの同盟が結ばれたのです
- なぎさ: ===============================================
- なぎさ: 327002-2.txt
- “ピンク・タピール”見滝原駅前支店
- 杏子: …………
- なぎさ: …………
- あ、そちらのお嬢さんたち
- もしかして限定メダルチョコのセールをお待ちですか?
- なぎさ&杏子: ――っ!?
- 杏子: ま、まあね
- いつもありがとうございますお姉さんの方は
- 去年もいらっしゃっていたような気がしたから…
- 杏子: はぁ…まさか顔を覚えられていたとはね
- なぎさ: (なぎさも危なかったのです…)
- なぎさ: (ここが、チーズ好きのなぎさの宇宙じゃなかったら)
- なぎさ: (たぶんなぎさも顔を覚えられていたのです…)
- …失礼しました
- でも、お声をおかけしてよかったです
- 実は今年から、この店舗ではセールはしていないんです
- なぎさ&杏子: ――っ!?
- 杏子: 頼みの綱が…!
- なぎさ: ピンチなのです!
- あ、ご安心を当店で売れ残った限定品は
- 新しくできたアウトレット店でまとめてお売りするので…
- よろしければ、お店の場所をお教えしましょうか?
- なぎさ: よ、よろしくなのです!
- 杏子: 是非頼む!いやぁ、チェックが甘かったな…
- いえ、お店としてはバレンタインデーの前から
- 売れ残りセールを宣伝するわけにはいきませんしね
- 杏子: …知らなくて当然ってこと?
- はい、ですのでお店までお越しいただいた
- 熱心なお客様にはご案内差し上げようかと
- なぎさ: 来てよかったのです
- では、こちらの地図をお渡ししますね
- セール開始までまだ時間がございますので
- 充分間に合うと思いますよ
- なぎさ: 親切にありがとうなのです!
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- 327002-3.txt
- なぎさ: メダルチョコ♪メダルチョコ♪宇宙で2番目のメダルチョコ♪
- 杏子: ほんとに好きなんだな
- なぎさ: はいなのです!
- 杏子: 何か理由でもあるわけ?好きになったきっかけとか
- なぎさ: きっかけ…
- なぎさ: ないこともないのです
- なぎさ: ピンクのメダルチョコを初めて食べたのは…
- なぎさ: なぎさのお母さんが入院していた病院であった
- なぎさ: バレンタインのチャリティイベントなのです
- なぎさ: なぎさはその日…お母さんのお見舞いに来ていたのです
- なぎさ: そこで、ショコラハントが始まったのです
- なぎさ: …ショコラハントって?
- チャリティイベントだよ!
- 病院のフロントにピンクのメダルチョコが
- たくさん隠してあるんだって!
- 見つけた子はぜんぶ食べていいんだよ!
- 騒いだり病室に入ったりしなければ
- 自由に探していいって!
- なぎさ: でも…なぎさはお見舞いにきただけなのです
- なぎさ: 入院してる子じゃないと参加できないのでは…?
- お見舞いに来た子もOKって
- ボランティアのお姉さんが言ってたよ!
- なぎさ: …………
- なぎさ: その日はお母さんの機嫌も悪くなくて好きにしたら、と言ってくれたのです
- なぎさ: それから、他の子どもたちとチョコを探しはじめたら…
- なぎさ: …また見つけたのです!
- なぎさ: 今度は椅子の下に3つもあったのです!
- なぎさちゃん、すごーい!
- ピンク色で可愛いチョコだよね!
- なぎさ: えっへん!…なのです
- なぎさ: チョコを見つけるゲームにすっかりハマってしまったのです
- なぎさ: いっぱい集めたのです!
- うん!
- なぎさ: それじゃ、さっそく…味見してみるのです
- なぎさ: 包み紙を…
- なぎさ: ペリッとはがして…
- ぱくっ
- なぎさ: ――っ!?
- なぎさ: お、お…
- どうしたの、なぎさちゃん?
- なぎさ: おいしいのです~!
- なぎさ: ===============================================
- なぎさ: 327002-4.txt
- 杏子: …なるほどそんな思い出がねぇ
- なぎさ: そうなのです
- なぎさ: (といっても、この宇宙で起きたできごとではなくて)
- なぎさ: (こことは違う宇宙のなぎさの記憶なのですが…)
- 杏子: うんうんそのイベントがきっかけで…
- 杏子: 食い意地の張ったショコラハンターになったと
- なぎさ: 真面目に聞いていたのですか!?
- なぎさ: なぎさはメダルチョコとのなれ初めの話をしたのです!
- なぎさ: いま話したショコラハントは子ども向けのイベントの話で
- なぎさ: なぎさと杏子が安売りチョコを探してまわる
- なぎさ: ショコラハントとは別なのです!
- 杏子: はははわかってるって!
- 杏子: 金色のメダルチョコも確かにうまいんだけどさ
- 杏子: バレンタイン限定のピンクのメダルチョコは
- 杏子: ふわっと甘くてイイよな!
- なぎさ: なぎさは年相応にその甘さが気に入っているのですが…
- なぎさ: もしかして杏子は味覚がお子ちゃまなのですか?
- 杏子: …自分で年相応とか言ってんじゃねぇよ
- ブロロ…
- 杏子: お、あのトラック…“ピンク・タピール”のロゴだな
- なぎさ: あれは商品をお店に運ぶトラックなのです
- なぎさ: なぎさたちのチョコを載せたトラックに間違いないのです
- キキッ
- なぎさ: あれは…どうしたのでしょう?
- 杏子: ん…?
- なぎさ: トラックが変な感じで止まったのです
- 杏子: ……………………
- 杏子: なぁ、あの車線ってさ
- 杏子: 例のアウトレット店ってのと逆方向じゃないか?
- なぎさ: 確かに…もらった地図と逆なのです
- なぎさ&杏子: ――っ!?
- 杏子: 魔力反応!?
- ブロォォオ…ッ!
- なぎさ: トラックが走り出したのです!
- 杏子: 信号無視だぞ!他のクルマもだ!
- なぎさ: 魔女の仕業なのです!
- 杏子: あぁ…近くに魔女の気配がある
- 杏子: 魔女の口づけで犠牲者を集めてるんだ
- なぎさ: 追いかけるのです!
- 杏子: ったく…じゃあ、行くぞ!
- なぎさ: 待つのです!そのチョコを置いていくのです
- なぎさ: ===============================================
- なぎさ: 327003-1.txt
- なぎさ: 大変なのです!ピンクのメダルチョコを載せたトラックが魔女のせいで暴走を始めてしまったのです!
- なぎさ: はぁ…はぁ…
- なぎさ: 走っても追いつけないのです…
- なぎさ: それにしてもチョコを運ぶトラックを狙うとは
- なぎさ: なんて甘党な魔女なのですか!
- 杏子: いや、チョコは関係ないだろ…
- キキィッ!
- 杏子: …ヤバいなあの運転じゃすぐ事故るぞ
- なぎさ: 魔女の口づけのせいで死にたがりになってるのです
- 杏子: …って、おい!トラックの正面!
- なぎさ: タンクローリーなのです!
- なぎさ: 何であんなところに停めてあるのですか!
- 杏子: 絶体絶命ってヤツか…それなら!
- なぎさ: その武器…どうするつもりなのですか?
- 杏子: 見てな!
- ヒュルンッ
- なぎさ: (鎖みたいに投げた…!?)
- なぎさ: (トラックに引っかけたのです!)
- 杏子: 跳ぶぞ!あたしに掴まれ!
- なぎさ: はいなのです!
- 杏子: …よし!トラックの屋根に取りついた!
- なぎさ: トラックを止めるのです!
- 杏子: 窓から入るぞ!
- なぎさ: 免許は?
- 杏子: あるわけねーだろ!
- キキィーーッ!
- 杏子: ふぅ…あぶねぇ
- なぎさ: ギリギリだったのです…
- 杏子: 他のクルマは?
- なぎさ: …なぜか静かなのです
- 杏子: 事故ったワケじゃないよな?自分で止まったのか?
- なぎさ: あれを見るのです!
- 杏子: 魔女の結界…!
- ……………………
- なぎさ: 運転手さんたちが入ろうとしているのです!
- 杏子: 魔女を倒すぞ!
- なぎさ: おまかせなのです!
- なぎさ: ===============================================
- なぎさ: 327003-2.txt
- なぎさ: あうっ!
- 杏子: おい、大丈夫か?
- なぎさ: 平気なのです
- なぎさ: でも、なかなか相手が止まってくれないのです
- 杏子: 止めてどうするんだ?
- なぎさ: …禁断の技を解き放つのです
- 杏子: 何だよそれ…
- なぎさ: 本当なのです!とても恐ろしい技なのです!
- 杏子: チッ…!
- 杏子: このままじゃラチが明かねぇな
- 杏子: あたしが動きを止めてやる
- 杏子: その禁断の技とやらを見せてもらおうじゃないの!
- なぎさ: おまかせなのです!
- 杏子: そらよっ!
- なぎさ: 槍が…鎖みたいになって巻きついたのです!
- 杏子: いけ!
- なぎさ: はいなのです!
- なぎさ: あま~いショコラを
- なぎさ: 召し上がれ、なのです~!
- 杏子: ……………………
- 杏子: 魔女が消し飛んだ…というか…
- 杏子: 魔女みてーなモンが魔女を攻撃してなかったか?
- なぎさ: ど、どうなのでしょう…?きっと気のせいなのです
- 杏子: ドッペルってやつか?
- 杏子: いや…でもあれは神浜だけの現象って聞いたような…
- 杏子: …マジで禁断の技だったってことか?
- なぎさ: き、気のせいなのです!
- 杏子: 不思議なヤツだな、オマエほんとにただの魔法少女なのか?
- なぎさ: 普通の魔法少女かどうかはよくわからないのです
- なぎさ: (…魔法少女かどうかもよくわからないのですが)
- 杏子: …ま、いっか
- 杏子: トラックも他のクルマも
- 杏子: 奇跡的に事故らなかったみたいだしね
- なぎさ: ===============================================
- なぎさ: 327003-3.txt
- “ピンク・タピール”アウトレット店
- 今年もたくさんお買い上げいただき
- ありがとうございます!
- 来年もお越しくださいませ!
- 杏子: …いやぁ、入荷してよかった!
- なぎさ: なぎさもいっぱい買えたのです!
- なぎさ: これでしばらくは毎日がバレンタインなのです
- 杏子: こんなバレンタインはもうこりごりだけどな…
- なぎさ: トラックが無事に着いたときは思わず拍手してしまったのです
- 杏子: ほんとになよく騒ぎにならなかったよ…
- なぎさ: ところで…
- 杏子: ん、何だ?
- なぎさ: 杏子はさっきのアウトレットのお店の人にも
- なぎさ: 顔を覚えられていたみたいなのですが…
- なぎさ: ここは新しいお店ではなかったのですか?
- 杏子: ああ…あの店員去年は駅前支店にいたからな
- なぎさ: なるほどなのです!
- 杏子: さっきは駅前支店でも声かけられたしな
- 杏子: そんなに目立ってたのかなぁあたし…
- 杏子: どう見てもなぎさの方が目につく格好じゃん
- なぎさ: そ、そんなことはないのです
- なぎさ: 本当は、こっちの宇宙のなぎさはメダルチョコに興味がなかったので…
- なぎさ: お店にも来たことがなかったのです
- なぎさ: ……………………
- なぎさ: (もしも…)
- なぎさ: (こっちの宇宙のなぎさもバレンタインデーに)
- なぎさ: (お母さんをお見舞いに行っていたら…)
- なぎさ: (こっちの宇宙のなぎさもピンクのメダルチョコに)
- なぎさ: (同じようにハマっていたのでしょうか…?)
- なぎさ: (なぎさにメダルチョコのおいしさを教えてくれた)
- なぎさ: (チャリティイベントのボランティアのお姉さんたちは)
- なぎさ: (こちらの宇宙では何をしているのでしょうか…)
- なぎさ: (同じようにチャリティを手伝っていて)
- なぎさ: (なぎさとは、ちょっとしたすれ違いで)
- なぎさ: (出会わなかっただけ…なのでしょうか?)
- 杏子: あっ…!もうこんな時間だぞ!
- なぎさ: ――っ!?
- なぎさ: 本当なのです!
- なぎさ: 急がないとショコラパーティーに遅刻してしまうのです!
- 杏子: 行くぞ!
- なぎさ: はいなのです!
- なぎさ: ===============================================
- なぎさ: 327003-4.txt
- ピンポーン
- ガチャ
- マミ: なぎさちゃん…?
- マミ: あら、佐倉さんも一緒?
- 杏子: ああ他のヤツらは?
- マミ: …まだみたいもうすぐ時間なんだけど
- 杏子: 一番乗りかよ…
- なぎさ: 急いで損したのです…
- 杏子: コイツはおみやげだ
- マミ: “シュガープラム”のチョコレートケーキ…?
- 杏子: そう、全員分あるから冷蔵庫に入れといてくれ
- マミ: ありがとう、佐倉さん
- マミ: 素敵なショコラパーティーになりそうね!
- なぎさ: あ…
- なぎさ: 最初に言ってた杏子の用事って
- なぎさ: …杏子!どうしてここに!?
- 杏子: ん…まぁ、ちょっとな
- なぎさ: おみやげを買っていたのですね…
- 杏子: なぎさの分もあったし
- 杏子: どこのケーキかバラしちまうのもどうかと思ってさ
- なぎさ: それで秘密だったのですね
- なぎさ: なぎさもスペシャルプレゼントを用意してきたのですが…
- なぎさ: それとは別にみんなへのおみやげがあるのです
- マミ: まあ、何かしら?
- なぎさ: 今日の戦利品…ピンクのメダルチョコなのです
- マミ: あら、可愛い!
- 杏子: …メダルチョコ?自分で食うんじゃなかったのか?
- なぎさ: 自分の分はちゃんと別に取ってあるのです
- 杏子: …やっぱりな
- なぎさ: それに、戦争は明日からが本番なのです
- 杏子: ショコラハントか
- マミ: ショコラハント?
- なぎさ: 杏子となぎさは同盟を結んだのです
- なぎさ: 今日はふたりで上々の成果を納めましたが…
- なぎさ: 安売りショコラ争奪戦は
- なぎさ: 明日とあさってが本当のクライマックスなのです!
- マミ: 何だかよくわからないけれど…
- マミ: ふたりが仲良くなったみたいでよかったわ
- なぎさ: はいなのです!
- なぎさ: …そんなわけで、大変な1日だったのですが最後はマミの部屋のショコラパーティーで楽しく終えることができたのです
- なぎさ: おしまい
- “ピンク・タピール”アウトレット店
- 早乙女先生: …こんにちは
- いらっしゃいませお待ちしておりました
- ピンクのメダルチョコはこちらです
- 毎年たくさんお買い上げいただきありがとうございます
- 早乙女先生: …今年から、こちらのお店に変わったんですってね
- 早乙女先生: 駅前支店の方に伺ったらここを教えてもらえて
- お越しいただけてよかったです
- 病院でチャリティイベントをなさってるんでしたよね?
- 早乙女先生: …そうなんです
- 早乙女先生: 友だちに誘われてお手伝いしたら子どもたちが凄く喜んでくれて
- 早乙女先生: それから毎年…
- 素敵なお話ですね
- あっ…申し訳ありませんお引き留めしてしまいました
- お客様はこれからイベントのご準備があるのでは?
- 早乙女先生: はい、これから病院です
- 早乙女先生: 子どもたちに見つからないように急いでチョコを隠さないと…!
- なぎさ: 包み紙をはがす瞬間が、たまらないのです…
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