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- エピソード2 ジェターク寮の歓迎会
- Female student: 誰に贈る?
- Female student: 今年は花束にしようかな。
- Male student: バックが強いとプレゼントだけで大変だよ。
- Lauda: なんだか寮の雰囲気が浮ついてるな。
- Felsi: ああ、これあれじゃないすか?
- Petra: アスティカシア・グレイトフルデー。
- Kamil: 元々は古い地球の風習をベースにしてるんだっけか?
- Petra: この学園に根付いたのは好きな人や友達、仲良くなりたい人になにかプレゼントを贈るやつですね。チョコレートや花束が人気あるとか。
- Lauda: 思い出してきた。去年大変だったんだ。
- Kamil: 今年もグエルの門番をやるのか? ラウダ。
- Lauda: カミル、兄さんにはホルダーとして大事な役目がある。兄さんはもちろんその役目を見失ったりしないだろうけど、万が一にでも変な虫がついて雑念が生じるような事態は、絶対に避けなきゃならないんだ。
- Kamil: 変な虫ね…
- Petra: そういえばそろそろ新入生歓迎会の準備も始めないとですね。
- Lauda: ああ、兄さんの寮長としての大仕事だ。僕も色々と考えておこう。
- Lauda: やっぱりだ。兄さんのロッカーにプレゼントを仕掛けてるやつがいるな。
- Kamil: 仕掛けてるって別にトラップじゃないんだからよ。
- Lauda: 回収する。
- Kamil: さっき教室でも回収してたよな。どうするんだそのプレゼントは?
- Lauda: 中身をチェックして、メッセージや連絡先が書いてあったら兄さんの代わりに返信しておく。感謝しつつ丁寧に、断りの文面で。
- Kamil: そこまでするのか…
- Lauda: 兄さんに変な虫がつくのはまずいが、評判が落ちるのも良くないからな。
- Kamil: そんなにグエルが信用できないのか?
- Lauda: そうじゃない。兄さんは強くて優秀だ。だが少しだけ単純で調子に乗りやすいところがある。自信過剰気味でもあるし、それゆえにつまらない油断をする。偉そうなときは本当に偉そうだし、妙なところで頑固、頑固なのに人の影響を受けやすい。それに何より一度落ち込むとかなり面倒くさい。だからこそ不注意で小石につまずかないようにその危険性は排除しておくんだ。
- Kamil: グエルのためだってのは分かるけどやりすぎだと思うぞ。
- Lauda: そんなことはない!これが兄さんにとって最善なんだ!
- Guel: 今日のミーティングは…
- Felsi: 新歓で何をするかが一番大きな議題っす。
- Guel: まだ決まってないのか?お前らは俺がいないとダメダメだな!
- Male student: グエル先輩、今日もキレッキレだな。
- Male student: だね、絶好調だ。
- Kamil: で、去年は何をしたっけか?
- Petra: モビルクラフトで障害物競走です。
- Guel: あれはダメだ。授業の延長みたいで盛り上がりに欠けた。もっといいアイディアを考えるんだ。
- Lauda: 兄さん、僕が考えてきたよ。ズバリ、低重力レスリング大会はどうだろう?
- Everyone: ええ?
- Kamil: ラウダ、そんなの他の寮のやつらがいないなら俺とグエルで決勝に決まってるじゃないか。
- Lauda: それで何が悪いんだ?
- Felsi: すみません、ラウダ先輩それ多分盛り上がらないっす。
- Lauda: 何だと?
- Guel: 俺も反対だな。戦うのは好きだが、新入生の歓迎としては弱い。
- Lauda: 兄さんの言う通りだ、撤回するよ。
- Felsi: もっと楽しくて思い出に残るようなやつが良いっすね。
- Guel: 思い出か…、キャンプファイヤーとかどうだ?
- Felsi: キャンプ?
- Petra: ファイヤー?
- Guel: ああ、要するに大きな焚き火だ。それをみんなで囲んで深夜まで騒いだり語り合ったりする。
- Kamil: それ楽しそうだな。
- Guel: 地球降下を想定したサバイバルの実習があっただろ。ただテントを設営したり、外でレーションを食べるだけだったらその実習と変わりない。だから目玉は派手にキャンプファイヤーだ。
- Lauda: やるとすれば野外活動エリアかな。
- Felsi: フロント内で焚き火って大丈夫っすかね?やるのかなり大変だって前に聞いたんすけど。
- Lauda: ちゃんと申請すれば大丈夫だろう。フロント管理社に問い合わせてみる。
- Guel: よしラウダ、申請は頼んだぞ。
- Guel: メカニック科はカミルとペトラを中心に焚き火台の作成。買い出しと雑用はフェルシーを中心にパイロット科と経営戦略科で進めてくれ。ジェターク寮の威信にかけて失敗は許されない。わかったか?
- Everyone: はい!
- Male student: 明日から準備か。
- Female student: メカニック科が大変そう。
- Male student: いや、そもそも申請通るのかな。
- Lauda: 兄さん。
- Guel: 何だ?
- Lauda: いや、ちょっとだけ気になって。どうしてキャンプファイヤーなんて思いついたのかなって。
- Guel: ああ、それか。この写真、覚えてるか?
- Lauda: ん?父さん?
- Guel: 何かの訓練中か作戦中か、詳しくはわからないが地球で焚き火をしてテントを組んで、すごくリラックスしているように見える。
- Lauda: そうか、良い写真だね。
- Guel: ああ、いや別にこの写真はただヒントになっただけだ。それ以上の意味はないからな。
- Lauda: もちろんわかってるよ、兄さん。
- Kamil: よーし、資材や道具の準備はこんなもんか。
- Petra: 足りない分は今フェルシーたちが買い出しに行ってます。
- Kamil: 焚き火台のデザインに入ろう。
- Petra: とりあえずいくつか案を用意してみました。
- Felsi: これが買い物リストっすか。どれどれ、うわ結構たくさんある…
- Guel: 手分けして効率よくやれ。でも同じものを買ったりするんじゃないぞ。
- Felsi: ういっす。
- Guel: じゃあ俺は俺で買うものがあるから、しばらく一人で動く。
- Felsi: え?何買いに行くんすか?
- Guel: 何でもいいだろ。ほらさっさと動け。
- Felsi: う、ういっす。
- Lauda: 進行台本はこんなものか。
- Lauda: ん?フロント管理社からか。えっと、申請書類に問題あり?修正箇所を添付。どれどれ。
- Lauda: これでどうだ?よし通った。
- Lauda: あ?今度は別の申請が必要?現場や焚き火台の写真、使用する燃焼促進剤の詳細データ…
- Lauda: これって僕が現場に行かなきゃダメってことか?あと促進剤のデータはメーカーから取り寄せて…
- Lauda: ああ…ああ!フロント管理社の担当を直接実施予定の場所に案内してほしいだと?まったく!次から次へと本当に面倒だな!
- Kamil: ラウダ、顔色が悪いぞ。
- Lauda: あ、そうかな?まあ新歓の準備でろくに寝てないからな。
- Kamil: 申請周り、しんどそうだな。
- Lauda: フロント内で焚き火をするのがこんなに大変だとは思わなかった。いろいろな兵器を使ってるから大丈夫だろうと甘く見てた。
- Kamil: もしかして間に合わないか?
- Lauda: いや、当日になってしまうかもしれないが、何とかする。兄さんに恥をかかせるようなことだけは絶対にしない。
- Lauda: ん?噂をすればフロント管理社からだ。また来いだって?カミル、僕は行かなきゃいけないからあとは頼んだぞ。
- Kamil: 大変そうだな。
- Female student: うわあ、新歓すごいね。
- Female student: キャンプファイヤーだって。
- Male student: ものすごい焚き火台ができてる。
- Male student: さすがジェターク!
- Female student: テント設営ってワクワクするね。
- Guel: 今からジェターク寮の新入生歓迎会を始める。寮長のグエル・ジェタークだ。そしてこの学園ナンバーワンのモビルスーツパイロット、ホルダーでもある。
- Guel: 今日の新歓を通して少しでもジェターク寮の結束が強まればうれしい。よろしく頼む。
- Male student: さすが御三家の御曹司!
- Female student: かっこいい!
- Felsi: グエル先輩かっこいいっす!あれ、ラウダ先輩は?
- Petra: まだ来てない。焚き火の申請大丈夫ですかね?
- Kamil: 今フロント管理社に直接行ってるみたいだ。ギリギリだがラウダならきっと大丈夫だろう。
- Female student: あれ?
- Male student: やってみると難しい…
- Guel: ああもう何やってるんだ!ポールの組み立て方はこう!こことここでテント本体のスリーブにポールを通す!
- Felsi: グエル先輩、テント動いちゃうんすけど。
- Guel: テントをペグで固定するときは足を使え、安定する。
- Male student: 手際が良い!
- Male student: あざやかだな!
- Kamil: グエル、張り切ってるな。
- Petra: 忙しい合間を縫って、こっそり練習してましたもんね。
- Kamil: そういえばそろそろキャンプファイヤーの時間だな。
- Kamil: ラウダから電話だ。
- Lauda: カミル、すべて申請が通った。キャンプファイヤー始めてくれ。
- Kamil: わかった。よし始めるか!
- Lauda: あれ、火がついてない?まさか不備が?どうなってるんだ?
- Guel: よし、火をつけるぞ!
- Male student: おお、凄え!
- Female student: 綺麗だな。
- Lauda: カミル、何でこんなに時間がかかってるんだ?僕はもっと早くに連絡してただろ。
- Kamil: グエルがラウダが来るまではやらないって言ってな。
- Lauda: あ、兄さん。
- Kamil: キャンプファイヤー初めて見たが、これはいいもんだな。
- Lauda: ああ、さすが兄さんだ。
- Kamil: それにしてもラウダ、申請お疲れ様。大変だったろう?
- Lauda: 正直なところ、こんなに面倒だとは思わなかったよ。でも兄さんを支えるのが僕の大事な仕事なんだ。
- Guel: おいお前ら、ジェタークの新歓はこれで終わりじゃないぞ!
- Guel: 調べたところキャンプファイヤーではマシュマロを焼いたり、周囲でフォークダンスってやつをやるらしい。
- Petra: 凄い、マシュマロがたくさん。
- Felsi: フォークダンスって何すか?
- Guel: まあ適当な相手を見つけて好きなように踊れ。
- Guel: これは実習じゃない、歓迎会だからみんな楽しんでくれ!
- Everyone: おお!
- Felsi: グエル先輩さすがっす!
- Lauda: フォークダンスか…
- Petra: ラウダ先輩、疲れてるなら休んだ方が…
- Lauda: いや、せっかくの歓迎会だし兄さんが考えた企画だ。僕も参加する。
- Petra: あ、じゃあフォークダンスのお相手よろしくお願いします。
- Lauda: 僕でいいのか?フォークダンスなんてやったことないぞ。
- Petra: やったことがある人なんてそもそもいませんって。
- Felsi: グエル先輩、フォークダンス誰と踊るんすか?
- Guel: ああ、カミルと踊る。
- Felsi: ええ?カミル先輩?
- Guel: 俺の体格に合うのはあいつくらいだ。
- Felsi: フォークダンスの相手って体格で選ぶんすか?
- Female student: グエル先輩、すみませんマシュマロまた焦がしちゃいました!
- Guel: 何をやってるんだ!俺が焼き方を教えてやる!
- Female student: グエル先輩、火が弱くなってきちゃいました。
- Guel: 待ってろ、すぐに付けてやる!
- Male student: グエル先輩、マシュマロ落としちゃいました。
- Felsi: 綺麗だなキャンプファイヤー。マシュマロもおいしかったな。
- Petra: うん、フォークダンスも楽しかった。
- Felsi: しかしグエル先輩、大人気だな。
- Petra: そうだね。私たちさ、最初はけっこう計算で近付いたじゃない?
- Felsi: うん、何しろジェタークの御曹司だし、近くにいれば利用できるかなって。
- Petra: でも、何て言うのかな。
- Felsi: 実際はあんまそういう感じじゃなかったと言うか。
- Petra: だからこそ、付いて行きたくなったと言うか。
- Felsi: わかる。
- Petra: 今日も楽しかったな、こんな日がいつまでも続くといいな。
- Lauda: 兄さん、今日はお疲れ様。無事に終わって良かった。
- Guel: 疲れてるだろラウダ、お前は無理せず寮で寝て良いんだぞ。
- Lauda: 大丈夫だよ兄さん。せっかくの機会だからここで寝るよ。あ、テントの中けっこう広いな。
- Guel: ああ、そう言えばこれ。グレイトフルデーから少し過ぎたが、お前にも用意しておいた。
- Lauda: え?
- Guel: いつも世話になってるからな。今日も助かった。
- Lauda: あ、ありがとう。これは?
- Guel: 腹筋を鍛えるためのローラーだ。パイロットには体幹が必要だからな。
- Lauda: 嬉しいよ、大事に使う。人からプレゼントをもらうって良いものなんだな…、そうだよな。
- Guel: どうしたラウダ?
- Lauda: あ、いや、そうだ兄さん宛のプレゼントがいっぱい来てるんだ。僕の方で取りまとめておいたから明日渡すよ。
- Guel: 俺宛の?なるほどてっきり俺が恐れ多くて、誰も渡せないのかと思っていたが、そういうことだったのか。ありがとうなラウダ!
- Lauda: あ、いや、全然いいんだよ。
- Guel: そうか、そうだったのか!
- Lauda: うん、うん!
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